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Purincess*
16
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/04/30(土) 15:53:15 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
ガチャッ!
急に、わたしが一人泣いていた部屋のドアが開く。こんなぐちゃぐちゃな顔、誰にも見せられないと思ってわたしは部屋にあったベットに顔を伏せる。
「ゆり………!」
顔を見なくても分かる。この声は那月だ……! でも、何で? 羽月ちゃんと結ばれたんじゃないのかな。
「なあに……わたしにはなすことなんか、ないでしょ。」
きっとわたし、とっても酷い顔してる。那月に見られてなくても、自分で見れなくても、分かっちゃう。まるで泥をぬられたみたいにぐちゃぐちゃな感じがするもん。もう、何も分かりたくない。
「ナニモワカリタクナイヨ………!」
そんなとき、那月が冷たいわたしを暖めるように抱き締めてくれた。初めて会ったときからずうっと一緒の優しい手がわたしの身体に触れる。触れるところがどんどん暖かくなって、魔法がとけたみたい―――……もう、那月に隠すのはやめようって思った。
「………あのね、わたし……那月に話したいことがあるの。上手く伝わらないかもしれないけど、聞いてくれる?」
顔を伏せて小さくなっていた身体を起こし、涙でぐちゃぐちゃな顔をちゃんと見せて聞く。那月はそっとわたしを離し、こくりと頷く。………身体を離されて、しゅっと勇気が消えていく感じがしたけど、もう那月に頼らないんだ。勇気は貰うんじゃなくて、自分で掴む。
「わたしね、その……初めて会ったとき、那月のことを感じ悪い人って思ってたの。だけど、話す度に見えてくる那月の優しさとか、強さとか、かっこよさにどんどん惹かれていって、いつのまにか恋をしてた。さっきも、羽月ちゃんといっぱい喧嘩した。それでね、羽月ちゃんの気持ちが分かったの。……………だからわたしは、二人が幸せになればいいなって思うよ。二人とも、大好きだから。だから………さよなら。」
那月は、ずっと「うん、うん。」って、優しく頷いて聞いてくれてた。けれど、「さよなら。」って言われたときの顔は怖かったし、それにときどき「えっ?」って顔をしているときもあった。途中怖くなって黙っちゃったけど、ちゃんと話を続けたよ。那月に全てを知ってもらいたかったから。涙でぐちゃぐちゃな顔を、もっともっと溢れる涙でぐちゃぐちゃにすると、優しく、だけど強く、那月が抱き締めてくれた。
「ばか。俺が羽月を好きって気持ちなんか、ないよ。俺が好きなのはゆりだから。」
わ、抱き締められてるけど分かる。那月、耳まで真っ赤だ……! それに、好きだなんて言われたら心臓もたないよ……!
「で、どーなの? 付き合ってくれんの?」
悪戯っぽい笑みで、那月が聞く。わたしは顔を赤く染め、笑って言った。
「つ、付き合ってあげてもいいけどっ!」
「ツンデレかよ。」
ぷぷって、最初は我慢した笑顔も一気に大声に変わる。那月がいるだけで、こんなに世界が変わるなんて思わなかったな。
* 遊 、 次の日 *
今日はいよいよ、ゆりに告白する日だ! 絶対付き合うんだっ、つーか付き合えるっしょ! なんて想像しながら顔がにやける俺の顔を見て、学校に来ている人がじとーっと見詰めてくるのが分かった。恥ずかしくないけれど。そんなとき、後ろを通り掛った女の子が話しかけてきた。ゆりだ………!
「おはよー、遊! 今日の朝はごめんねっ! ちょっと用事ができちゃってさー、一緒に学校行けなかったんだよー………。」
あはは、と残念そうな苦笑で謝るゆり。ゆりが俺のことを好きと知ってから、そんな一つ一つの仕草まで可愛く感じる。
「あ、あのさっ! ちょっと、話があるから、来てくんない?」
「………? うん、いいよ?」
* * *
「………ここって、校舎裏、だよね……?」
ゆりが少しビクビクしてるみたい。だから俺はそっと抱き締めてやった、のに……。
「やめっ………!」
ドンッ!
見事に突き飛ばされてしまった。だけど、照れてるのかなーぐらいにしか思えなかった。思わなかった。
「ごめん。あのね、俺………ゆりのことが好きなんだっ!」
* つづく *
17
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/04/30(土) 18:57:26 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* 遊 *
「………気持ちは嬉しいけど、わたし、昨日彼氏できたの。今日の朝も彼氏と会ってたんだー……ごめんね。」
ゆりはにこっと笑ってるつもりなのだろうけど、大きな瞳からは大粒の涙が零れ落ちている。初めて見た、ゆりの泣く姿。それに、昨日よりゆりは全然可愛い。でも、どれもこれも彼氏のお陰だったんだ。俺は、失恋したんだ。―――シツレンシタノ? オレトユリハ両想イナンジャナイノ? 俺はおかしくなったのかな。気持ちを抑えられなくて、ゆりにキスをした。勿論、ゆりは驚く。
「やっ………さいてー! 彼氏、できたって言ったじゃん。何か今日の遊、遊らしくない………! わたしが振ったからいけないの? わたしが遊と付き合ったら、いつもの遊に戻ってくれるの?!」
突き飛ばされた俺は無表情で頷く。そうだよ、ゆりが付き合ってくれれば俺はいつもの俺になるよ。
「ソシタラユリハ俺ヲ見テクレルンデショ?」
バシンッ!
にこおっと優しいけど気持ち悪い笑みを浮かべてゆりの頬に手を伸ばした。すると、破裂しそうなくらい痛い音で俺の頬が右へ動く。まさかのビンタをされ、ぽかーんと口を開けた。
「ばっかじゃないの?! わたしがいくら遊と付き合ったって、いくらキスしたって遊は戻らないよ! 遊が元に戻るには、遊が自分から入った深い穴からよじのぼって出てこなきゃ、黒いままだよ! こんな黒くて暗い遊嫌だよ……早く、振られたって笑顔になってよ。わたしはずっと、そんな遊に恋してたんだから! わたしが好きになった相手がこんなんじゃダメなんだから!」
目が覚めた。……俺、ばかだ。もう、穴から出てきた。引っ張ってもらったんだ、ゆりに。
「「出してくれて、ありがとう。」」
これは、ゆりに恋をした二人の男の子の言葉でした。
* つづく *
そろそろ終わると思われます←
ゆりと那月と遊と羽月の恋愛編は。
次はお姫様編かなあー……
そしてやっと完結?になるといいな。
18
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 10:07:40 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
恋愛編完結です! 次は姫候補編ですよー*
それでは、恋愛編を最後までお楽しみくださいっ!
* ゆり *
遊に告白されて、正直嬉しかった。けど、わたしにはもう那月っていう世界で一番大切な存在がいる。だから、長年恋してきた遊を振った。その後遊はまるで深い深い穴に落ちるようにおかしくなったけど、ばかで単純だから、すぐに出てきてくれた。そんな遊も好きだったよ。そして今、遊を振って数日後。いつもどおり、わたし達の登下校は一緒。遊も明るく優しいけれど、一つ、二人だけの秘密がある。告白のことだけは、秘密。だけど、那月には言っていいって。ありがとう、遊。
「ゆりーっ!」
璃羽がわたしの名前を呼ぶ。くるりと幸せそうな笑顔で振り向くと、その場には那月が立っていた。ぼっと顔を赤く染めて、那月の元へ向かう。自然に繋がる手が暖かい。
* * *
二人きり、場所を変えてわたしの大好きなお話の時間。那月もわたしもにこっと笑い合って、大切な話をすることにした。
「あのね、わたし……昔っから幼馴染の遊って子が好きだったの。でね、遊ったら中学二年生の頃からお姫様って英語は覚えられなくてさー……PrincessなのにPurincesって間違ってたの! でも、その時にわたしはPurincessになりたいなって思った。それでね、数日前……那月と付き合った次の日に遊に告白されて、振っちゃったんだ。那月が大好きだから、後悔なんてしてないけどさ、ずっと夢見てた、Purincessになれなかったのは残念だなあって―――……。」
那月はうん、うんって、頷きながら聞いてくれた。わたしが話し終えると、ぽんっと頭に手を置いて、喋る。
「よくがんばったな。」
その暖かい手と言葉に、自然と涙が溢れる。そうだ、わたし、小さい頃から何をやっても「がんばったね。」とは言われなかった。だから、嬉しいんだ。泣きながら那月に抱き締められると、那月が耳元で呟く。
「俺も中二の頃、PrincessをPurincessって間違ったことある。」
驚きながら那月を見ると、耳まで赤くしていた。可愛いな。それに、わたしの夢も叶った。ありがとう、那月。
「ありがとう………大好き!」
ありがとう、遊。ありがとう、璃羽、ありがとう、リリーちゃん。ありがとう、羽月ちゃん。ありがとう、りあ。ありがとう、保健の先生。ありがとう、お姫様。―――そして、ありがとう、那月。
わたしは今、とっても幸せです。
* 恋愛編 完結 *
次は姫候補編かなー。
話は考えてありますが微妙に感動気味。
これからもよろしくお願いします*
19
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 10:23:51 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* 姫候補編 ゆり *
「えーっ! リリーちゃんとフリルは姫候補だったの?!」
いや、前々から気づいてたけど、幸せなことがありすぎて忘れてたなあ。今となっては思い出の羽月ちゃんとの喧嘩はもうどうでもよくなって、わたしと羽月ちゃんは今、とっても仲良し。それで、姫候補のことを詳しく聞かせてもらっている。
「そうなんだよー! でさ、その姫決定戦が1カ月後にあるの。その決定戦でこの国の姫が決まるんだー! 楽しみだよねえっ。」
1カ月後って、早くない?! 楽しそうに話す羽月ちゃんとは反対に、わたしは口をぱくぱくさせて言った。
「な、何でそんなに早いのっ?!」
すると、後ろから静かなハイヒールのコツンという足音と共にふりる姫がやってきて言った。
「わたくしの命はもう、そう長く持たないのです。なので、王家の皆様は慌ててこの国に相応しい姫を探していますの。この国が滅びないでいるのは姫がいるから。だから、わたくしが死ねば国は滅びる……。大変ですよね、姫って。」
そんな大切な役目だったんだ。この前は疑ったりして悪かったな。
そんなことを思っているうちに、王子の計画は実行されていた―――……。
* つづく *
20
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 18:45:12 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* スター(王子様) *
「ふーん、ふりるってそろそろ死ぬんだー。じゃあ、新しい姫探さないとな! ちょ、待てよ……あのリリーとかフリルとかいう奴等、姫候補だろ? 俺は姫と結婚しなきゃいけねーのに、そんな餓鬼嫌だからな!」
豪華な俺のお屋敷の前、午前12時を過ぎたあたり、街中静かな夜を迎えている中、俺は大きな声で叫んだ。目線はもう一つのお屋敷。窓から見える高校生の姿にドキンと胸が鳴る気がした。けれど、ずっと見ていると有名で優秀な奴隷の那月と軽くキスしているではないか。
「はあっ?! 奴隷の癖に生意気な……っ! そうだ、あの女こそ姫に相応しいんだから、ふわりに言ってもらえばいい!」
そんなことを叫びながら、豪華なお屋敷の中に入って行った。トホホ、と後ろで苦笑する奴隷の顔面を一発殴ってみてから。
* ゆり *
「………ねー、なつ! また仕事行っちゃうの?」
次の日は土曜日。わたしにとって休日なのに、なつ(那月のこと。)は奴隷のお仕事がある。奴隷って、辛いなあ。なんて思いながら、小さく溜息を吐くと、なつが「招待状」と書かれた紙を差し出した。
「今回はゆりも一緒に来ていいんだって。」
この言葉を言うなつの顔は、少し困ったような、怖い顔だった。わたしは嬉しいのになあ。心配そうに首を傾げてみるとなつは笑顔になって呟く。
「変だな。誰にも付き合ってるって言ってないのに。それに王家に関係のない人が招かれるのは初めてだ。何かあると危ないから、俺の傍を離れるなよ。」
「! はーいっ!」
* つづく *
21
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 19:35:05 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
王家のお屋敷が並んでいる道に着き、大きい豪華なお屋敷をじいっと見詰める。右から姫の家、女王の家、国のど真ん中にあるでっかいお屋敷は王家みんなの家、王様の家、そして、王子の家―――……。
「わあ〜っ! すごいっ、初めて見た! で、なつは何処に入るの?」
わたしは子供みたいにその場でピョンピョン飛び跳ねて言った。なつは落ち着けとでも言うように優しく頭を撫でて、そのまま手をおろし、わたしの手を握り締めて一番真ん中の大きいお屋敷へ入る。
「来た来た、俺の台本どおりじゃん。」
にやっと笑う男に見向きもせずに―――……。
* * *
「これはこれは……、可愛らしい彼女だね。那月君!」
王様らしき人物がぽよんと丸い体を動かしてわたしの元へ向かう。「可愛い」って言葉を言われても嬉しくないのは、言ってくれた人がなつじゃないからかな。とにかく、わたしも作り笑顔を浮かべてお辞儀する。
「は。初めまして! ゆりです。」
ギクシャクしているわたしとは反対に、なつはかっこいいお辞儀と言葉。
「王様、お久し振りです。今日はお招き頂き有難う御座います。―――今回は何を致しましょう。」
かっこいいなあ、と見惚れていると、隣からまた男の人が出て来た。きっと王子様だ。
「今日は二人に来てもらい所があるんだよ。だから、ついてきてね……?」
にやりって笑った王子様。なつが少し後ろに後退りをしたので、わたしも動けないでいた。すると、不満そうな表情で王子様が言う。
「あのさ、那月は優秀な奴隷なんだから何回も言わせないでよね? 俺、別に何にもしないから。那月が素直な限り、ゆりちゃんにはね。」
ゆりって何でわたしの名前を知っているの? という疑問を膨らませつつもなつが前へ進みだすのでわたしもついて行った。
* つづく *
22
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 20:05:31 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「さあ、ここらへんかな。」
きょろりと周りを見回すと、広いお花畑があった。綺麗! と見惚れていると、なつが急に話し出す。
「お前っ! 此処で何をしたいんだよ?」
なつは「奴隷」なんじゃないの? 「王子様」にそんな口聞いていいの? なんて疑問が一つ一つ増えていく中、痛々しい音と共になつが倒れた。
「お前なあ、王子様にそんな口聞いていーんだっけ?」
「やっ! なつ………!」
わたしがなつに駆け寄ろうとした瞬間、王子が此方に向かってきて、がしっと腕を押さえられた。何が何だか分からなくなる。わたしは捕まったの? 何があったの? ナツ、助ケテヨ。
「ふっふっふ……やっとこの存在が手に入った。ゆり……ずっと俺はゆりのことを見ていたよ。だから今度はゆりが俺の方を向いてよ。」
ゆっくりと近づいてくる顔を避けることができない。何故? と思っているとがっちりと頭を抑えられている。いや……! 助けて!
ドンッ!
急に王子がわたしの傍を放れて倒れた。前を向くと、そこにはなつの姿が。で、その後ろに羽月ちゃんとリリーちゃんと……遊にりあに璃羽に、フリルまでいる! キラキラと目を輝かせ、皆に飛びつくと璃羽と羽月ちゃんがぎゅーっと抱き締めてくれた。
「ばか! こんな変態エロ王子についていっちゃうなんて!」
「もうっ! こんな危ないことしちゃ、嫌だよ……?!」
「リリー、本当にゆりを仲間だと思ってるから。勝手に危ないところに行っちゃダメなの!」
「那月君と二人なんて、ずるいわよ!」
「ゆりー! 落とし穴にはまっちゃダメだよーっ!」
「………あんたは嫌いだけど、那月がいるから来てやったわ。」
羽月ちゃん、璃羽ちゃん、リリーちゃん、りあ、遊、フリル………そして、なつ。
「ごめん、危ない目に遭わせて本当にごめんな……。」
助けにきてくれた皆に嬉しくて泣いた。けど、誰がこんなことをしたの? 周りを見回すと、ふわり姫の姿があった。不安そうな表情で立っている。
「わたくしです。王子がゆり様を自分のものにするなんておっしゃりますから、心配になりまして……。それよりゆり様! わたくしの代わりに姫になって頂けませんか? 姫候補にならなくても、ゆり様なら姫に相応しいので任せられます!」
………わたしがこの国の姫になるの? リリーちゃんやフリルはどうなるの? 姫候補にならなきゃダメじゃない。わたしは、わたしは……
「わたしは、もうPurincessだからいーの! それに、リリーちゃんやフリルの方が全然長生きできるよ! だから………だからリリーちゃんかフリル、真のお姫様になって、なつや羽月ちゃんやその他の奴隷達を自由にさせてあげて……!」
これが、わたしの願いだから。なつも普通の高校生になって、普通に暮らすの。羽月ちゃんも、皆幸せに暮らすの。そんな夢を叶えてほしくて、ふわり姫の顔をじっと見る。すると後ろからリリーちゃんに抱き締められた。
「リリー、姫になるの……ずっと皆を幸せにするの……だから、見守ってて?」
「うん……!」
こうして、皆が感動する中、王子(後から聞いたけどスターっていうらしい。)の処分は決まり、この国の王子はいなくなった。けれど、王子様はお姫様になった人が自由に恋すればいいよねって王国で決まって、お姫様という名の物語はラストスパートへの道を進んでいた。
* つづく *
23
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/01(日) 20:22:03 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり 1カ月後、姫決定戦 *
「ぜーったい姫になってね!」
「分かった! リリー、姫になる!」
姫決定戦会場の控え室の中でリリーちゃんと約束を交わし、わたし達(わたしを助けてくれた皆)は観客席へ向かった。因みに、フリルも姫決定戦に出れる。リリーちゃんが「ライバルがいなきゃつまんない。」と言って姫候補として認めてあげたのだ。
* * *
皆が騒ぎ出し、わくわくする中わたしの額には緊張で冷や汗が垂れていた。そんな不安そうなわたしをなつが軽く抱き締めて、緊張を溶かしていく。
「それでは、審査に入ります!」
一人一人の自己アピールが終わり、審査員(王様、女王様、ふわり姫)が審査しだす。緊張のせいか会場の皆がしーんと静まり返っている。そんな中、姫候補全員がステージへ出て、スポットライトを浴びるのを待っている。
「姫に選ばれたのは……!」
ダカダカダカダカッ! 会場に響くプロの人がやるドラムロール。スポットライトがうろちょろと動き出し、まさに今、この国の姫が選ばれようとしている。司会者の人が大きな声で、姫の名前を叫んだ。
「リリー様っ!!!!!」
ワアアアアアアアって、観客席の人がリリーちゃんをお祝いする。わたし達は、それぞれ隣にいる人と抱き合って喜んだ。皆、皆泣いている。
* * *
控え室に戻り、わたしはリリーちゃんを抱っこして喜んだ。その後そっとおろすと、目の前にフリルがいた。フリルは笑顔だ。
「よくやった! リリーならやれると思ったわ! さあ、さっさと那月達を奴隷から外しなさい!」
「わかったー!」
小さい子って、いいなあ……。なんて喜んでいる中、じりじりとなつに危険が迫っていた。
* つづく *
もしかして次で完結?
完結しても番外編を書きますb*
行事とか、同じ場面を違う人目線で見た場合とか。
なのでこれからも見てくださいっ*
24
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/06(金) 17:32:44 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
すみませんっ;
ゴールデンウィーク中におばあちゃんの家に行っていました。
昨日帰ってきていたのですが、PCがヘンになったので直してもらってました((
これからは普通に毎日更新できるといいなあ…(( と思っているのでよろしくお願いしますbb
25
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/06(金) 19:28:17 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「…………っく……………!」
いきなり後ろから聞こえた痛々しい声と共に、倒れるような音。羽音ちゃんがまさかという表情でくるりと振り向いたので、他のみんなも一斉に振り向いた。すると、そこには苦しそうななつの姿があった。
「な、つ……? なつ、なつっ! や………きゃああああああああぁぁあぁぁああぁあっ!」
* * *
ぽつんと真夜中、薄暗い病院に一人。わたしはなつのお見舞いに来ている。正直なつが倒れたということはよく理解できてないんだけど、病室のプレートに佐藤那月様って書いてあることで、段々理解出来るような気がしてた。付き合うまで知らなかったなつの苗字も、今では知らなきゃ良かったって後悔してる。ぼーっとしていると、病室から先生が出てきて、その瞬間に見える病室の中に苦しそうななつの姿を見つけてしまった。それも知らずに、先生はなつの症状を話し出す。
「那月くんは幼い頃から喘息の症状を持っていたようで、別の病院に通っていたようですが、その病院では治療はまだいらないだろうと思われていたようですなあ……前の病院から来た看護師さんに聞いてみたところ、この短期間でかなり悪化しているらしいですよ。倒れた原因は呼吸困難だと思われます。これから呼吸困難が何回も続きますが、あまりにも酷いと死に至る場合もあるのでその覚悟はしておいてください。」
突然告げられた事実にまたぼーっとする。なつが死んじゃうなんて今まで有り得なかったから。喘息のことだって、羽月ちゃんの方が知ってた。何か、今まで自分が何を分かっていたんだろうって不安になってくる。
「……死ぬ覚悟は、なつは出来ているんですか………。」
力無く聞くわたしの微かな声に、先生は深く頷いて、なつの言葉を代わりに告げた。
「那月くんはゆりちゃんのことをとっても大事に思っていたねえ……。「俺は死ぬ覚悟、出来てるけど、ゆりは俺が死ぬことを理解出来てないと思うんで、しばらくそっとしておいてください。」と言っていたよ。………先生も、あんな若い人を簡単に死なせたりしないから安心しなさいな。」
そう言われ、わたしは何を理解したのかも知らずにこくりと頷き病院を去った。
* * *
家に着き、眠りにつこうとすると、ざわざわと胸騒ぎがして、ダメだ。
「病院に電話しよ……。」
少しでもなつの様子が知りたくて、そっと受話器を手に取ってみる。すると、病院から早く出て! とでもいうように電話がきた。不思議そうに電話に出ると、ある事実を伝えられた。
「もしもし、○×病院ですけれども、ゆり様でしょうか? 那月様の様子が急変したのですぐ病院に来てください!]
「え……………!」
もう、無我夢中に走っていた。早くなつに会いたくて、死んでほしくなくて。だからなつ、生きてて……!
* つづく *
26
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/06(金) 20:33:39 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「先生っ! なつは……なつはっ!」
病院に着いたわたしは、やっとなつが倒れたという事実を理解したように先生に聞く。勿論、望むのは「生きている」という答えのみ。今此処で「死んでしまった」という答えを聞いたらわたしも自殺するような勢いでいた。だから、生きてて! そう願っていたのに、先生はとっても静か。きっと悪い報告なんだろうな、とは思ったけれど、それはただ「苦しいのが悪化した」ぐらいにしか思ってなかった。
「……………落ち着いて、お聞きください。那月くんは、13時46分に―――――――――――…………………
お亡くなりになられました。」
この言葉を聞いた瞬間、わたしは「ああ、死ぬんだ。」って思った。それは、なつのことじゃなくて自分のこと。どうせなら同じ時間に、一緒に死にたかったね。
さようなら、リリーちゃん。可愛くて、実はずっと憧れてたよ。さようなら、羽月ちゃん。喧嘩しても、大好きだったよ。さようなら、フリル。実は素直でいい子だったね。さようなら、りあ。自己中で嫌いだったけど、可愛いところもあったね。さようなら、スター。王子っぽくなかったよね。さようなら、ふわり姫。疑ってごめんなさい。さようなら、璃羽。璃羽にたくさん支えられたよ。さようなら、遊。これは落とし穴じゃなく、「運命」だから。
みんなみんな、大好きだよ。
先生の目の前で、ナイフをぎゅっと握り自分の胸に突き刺そうとした、そのとき!
「やめて……! 叶がいるからには、そう簡単に死なせないわ………!」
見知らぬ女の子の声とともに、一気に泣き崩れた。わたしは間違ってたんだ。なつが死んだからって、わたしが死ぬことないじゃない! わたしはわたしの人生を生きるんだ……!
「なつうっ……なつ! うわあああああああああぁぁぁああぁんっっ!」
* * *
しばらくすると、泣き崩れるわたしの前にたくさんの人が来た。遊達だ……! みんな、泣いている。突然現れた叶っていう子が口を開くのを待つように。
「……皆さん、初めまして。月夜叶という者です。今回は那月の死と聞いて慌てて来たの。……あ、叶は姫決定戦の審査員をやっていました。皆さんに質問ですが、那月を生き返らせたいですか?」
「当たり前だよ……!」
羽月ちゃんが即答して、みんなも頷いた。けどわたしだけは違かった。
「やだ……!」
すると、みんなが正気?! とでも聞くように驚いていた。当たり前だよね。でも……!
「わたしは、生き返らせた偽物みたいななつ、やだよ……! それに、なつが死ぬ覚悟をしていたのは知ってるから、こうしてみんながいるだけでなつは幸せだとおもう………!!」
「そうだね……! 那月くんは、それが一番の幸せだと思うよ。」
「無理に生き返らせても、気まずいだろうしね。」
みんな口々にわたしに賛成してくれた。初めて自分の意見を言えたような気がして、嬉しかったよ。
* つづく *
27
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/07(土) 13:48:05 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「なつ、暑いね!」
(だな……ついこの間まで寒かったのに。)
わたしは綺麗な砂浜に座り、一人でハートの中に色んな色で光るダイヤの入ったネックレスを見つめ話す。まるで目の前になつがいるみたいで、少しでも心がやすらぐから。でも、もう傍になつがいないのは苦しいよ、辛いよ。
「はやく、かえってきてよおっ……………!」
ぽろぽろと涙が流れ落ちる。知ってるよ、なつが死んだことくらい。だから本当はわたしも死にたい。そのために此処に来たんだから。前は叶さんに止められちゃったけど、やっぱり死んだ方がまし。
さよなら、だよ。
ボチャンッ!
冷たい水の中に飛び込んだ。できるだけ、深いところに行かなきゃ。待っててね、なつ。もうすぐ逝くから……。そのとき、後ろから誰かに抱きしめられた気がした。
「死なないで!」
* つづく *
28
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/07(土) 17:44:42 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
* ゆり *
「きゃ………!」
抱き締めてくる相手は遊だった。遊は焦りつつもわたしを砂浜へ投げるように突き飛ばした。二つに分かれた髪がふわりと宙に舞う。わたしの格好は半袖なのに、遊は分厚いパーカーを着ていた。何で、今は夏なのに……。
「ばか……そんな格好じゃ暑いでしょ? もう夏なんだから、いくら寒がりの遊でもパーカーくらい脱ぎな。」
生きた感じのしない笑みに遊はビクビクしてる。それに、わたしの頭が可笑しいとでも言うように額に遊の大きな手を当てた。その後大きな声で叫ぶ。
「ばかはゆりの方だよ! 今はまだ冬! それに、今日が一番冬で寒い日だよ?! 熱もあるし、家に帰ろうよ!」
「い、や………わたし、なつをまたせてる、の……っはやく、いかなきゃ…………!」
遊、今は夏なのに。わたしは熱なんてないよ。ただ暑くてこうなってるだけだもん。だから心配しないで……………ね。
* * *
暖かい……此処は一体何処なの? 天国かな………あれ、誰かがわたしのことを呼んでる……? なつの声だ……行かなきゃ!
わたしはぼーっとする意識の中必死に光の方へと歩いた。すると、不思議と段々意識が戻っていくのだ。
「………ん……な、つ?」
夢から目覚めると、自然となつの名前を呼んでいた。暖かいのは毛布だったんだな、なんて思っていると、右手は遊がぎゅっと握り締めていた。わたしが目覚めたのに気づき、遊は嬉しそうに笑う。
「ゆりー! よかったあ………。」
「あ、れ……? なつは………?」
わたしは遊なんか求めていない。なつだけを求めている。なつは死んでいるって、頭では理解しているのに心が言うことをきかなくて、死んだなつは何処にいるのかと聞いてみる。きっとまた、不思議がられるんだろうなあ。
「ゆり、そのことなんだけどね。………那月くんは、「ゆりのためにもっと強くなって帰ってくる。」って言って、修行しに行ったよ。楽しみだね! 那月くんが帰ってくるの。」
え………? 今までの、病院でのことは嘘だったの……? 違う、よね。これはただの遊の気遣いだって、分かってる。それは嬉しいけど、なつが死んだのは本当で、寂しくて寂しくてたまらなくなってくる。わたしが涙を零したそのとき、遊が優しく抱き締めてくれた。
「ねえ、やっぱり俺、こんなゆりを見守るのは辛いよ。振られたって分かってても、やっぱり好きなままなんだ。俺さ、頑張って那月くんみたいに強く、かっこよく、優しくなるから。こうやってゆりが寂しいときに抱き締めてあげたいよ。…………ダメ、かな。」
ばか、そんなこと言われちゃ、嬉しくなっちゃうじゃん。……わたしはもし生きていたとしたなら、もう付き合ったりしないって決めてたのに。遊は、わたしの寂しいタイミングもよく知ってて、すぐ慰めてくれる。だから、もうなつのことは忘れよう。さようなら、なつ。
「付き合って………わたしと付き合って、ください……。」
「………! はい。」
ねえ、なつ。わたし、これから遊と幸せな人生を歩んでいくよ。そして、幸せにおばあちゃんになって、なつに会いに行くからね。だから、何十年もの長い間、わたし達を見守っててね。だいすきだよ………!
* * *
「「おめでとー!」」
学校の友達と、リリーちゃん達を呼んでわたしと遊の付き合って一カ月のパーティー。友達に報告するのに一カ月も掛かったのは、わたしも遊も恥ずかしがって言わなかったからなんだけど………。だけど、
「ありがとう! わたし、今すごく幸せだよっ!」
天国にいるなつにこの声が届きますように。って気持ちを込めて、大きな声で言った。恥ずかしさと嬉しさで頬が赤くなる。
みんな、ありがとう。
* おわり *
最後までぐだぐだですみません;
でもこれでおわるのは正直寂しいので、番外編を書いていこうかなーと思います。
そちらも読んで頂けると嬉しいです*
29
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2011/05/08(日) 19:45:28 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp
番外編を書くのはちょっぴり遅れるかも。
三日に一回程度でちょこまか書いていくのでよろしくね☆((黙
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