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Purincess*

28ねここ ◆WuiwlRRul.:2011/05/07(土) 17:44:42 HOST:221x248x191x126.ap221.ftth.ucom.ne.jp

     * ゆり *


「きゃ………!」

 抱き締めてくる相手は遊だった。遊は焦りつつもわたしを砂浜へ投げるように突き飛ばした。二つに分かれた髪がふわりと宙に舞う。わたしの格好は半袖なのに、遊は分厚いパーカーを着ていた。何で、今は夏なのに……。

「ばか……そんな格好じゃ暑いでしょ? もう夏なんだから、いくら寒がりの遊でもパーカーくらい脱ぎな。」

 生きた感じのしない笑みに遊はビクビクしてる。それに、わたしの頭が可笑しいとでも言うように額に遊の大きな手を当てた。その後大きな声で叫ぶ。

「ばかはゆりの方だよ! 今はまだ冬! それに、今日が一番冬で寒い日だよ?! 熱もあるし、家に帰ろうよ!」

「い、や………わたし、なつをまたせてる、の……っはやく、いかなきゃ…………!」

 
 遊、今は夏なのに。わたしは熱なんてないよ。ただ暑くてこうなってるだけだもん。だから心配しないで……………ね。


     * * *


 暖かい……此処は一体何処なの? 天国かな………あれ、誰かがわたしのことを呼んでる……? なつの声だ……行かなきゃ!

 わたしはぼーっとする意識の中必死に光の方へと歩いた。すると、不思議と段々意識が戻っていくのだ。


「………ん……な、つ?」

 夢から目覚めると、自然となつの名前を呼んでいた。暖かいのは毛布だったんだな、なんて思っていると、右手は遊がぎゅっと握り締めていた。わたしが目覚めたのに気づき、遊は嬉しそうに笑う。

「ゆりー! よかったあ………。」

「あ、れ……? なつは………?」

 わたしは遊なんか求めていない。なつだけを求めている。なつは死んでいるって、頭では理解しているのに心が言うことをきかなくて、死んだなつは何処にいるのかと聞いてみる。きっとまた、不思議がられるんだろうなあ。

「ゆり、そのことなんだけどね。………那月くんは、「ゆりのためにもっと強くなって帰ってくる。」って言って、修行しに行ったよ。楽しみだね! 那月くんが帰ってくるの。」

 え………? 今までの、病院でのことは嘘だったの……? 違う、よね。これはただの遊の気遣いだって、分かってる。それは嬉しいけど、なつが死んだのは本当で、寂しくて寂しくてたまらなくなってくる。わたしが涙を零したそのとき、遊が優しく抱き締めてくれた。

「ねえ、やっぱり俺、こんなゆりを見守るのは辛いよ。振られたって分かってても、やっぱり好きなままなんだ。俺さ、頑張って那月くんみたいに強く、かっこよく、優しくなるから。こうやってゆりが寂しいときに抱き締めてあげたいよ。…………ダメ、かな。」

 ばか、そんなこと言われちゃ、嬉しくなっちゃうじゃん。……わたしはもし生きていたとしたなら、もう付き合ったりしないって決めてたのに。遊は、わたしの寂しいタイミングもよく知ってて、すぐ慰めてくれる。だから、もうなつのことは忘れよう。さようなら、なつ。

「付き合って………わたしと付き合って、ください……。」

「………! はい。」


 ねえ、なつ。わたし、これから遊と幸せな人生を歩んでいくよ。そして、幸せにおばあちゃんになって、なつに会いに行くからね。だから、何十年もの長い間、わたし達を見守っててね。だいすきだよ………!





     * * *




「「おめでとー!」」

 学校の友達と、リリーちゃん達を呼んでわたしと遊の付き合って一カ月のパーティー。友達に報告するのに一カ月も掛かったのは、わたしも遊も恥ずかしがって言わなかったからなんだけど………。だけど、

「ありがとう! わたし、今すごく幸せだよっ!」

 天国にいるなつにこの声が届きますように。って気持ちを込めて、大きな声で言った。恥ずかしさと嬉しさで頬が赤くなる。




 みんな、ありがとう。





     * おわり *





最後までぐだぐだですみません;

でもこれでおわるのは正直寂しいので、番外編を書いていこうかなーと思います。
そちらも読んで頂けると嬉しいです*


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