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○。やっぱりさ、運命には逆らえないんだよ ○。

1 ◆jZgVcLWus2:2010/11/16(火) 20:10:14 HOST:i114-183-128-120.s04.a011.ap.plala.or.jp
初めまして、櫻(sakura)です。
此処では私が兄弟愛の物語を書いていきたいと思ってます。
あらかじめ言っておきますので気分害したなどのコメントはおやめ下さい。
荒らしは駄目です、来ても無視ですので…。コメントを下さる場合は1行レスだけは控えて下さい。
では駄文で宜しければどうぞ…―――>>2

2 ◆jZgVcLWus2:2010/11/16(火) 20:47:59 HOST:i114-183-128-120.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」


 あたしが初めて秋を異性として見るようになったのは中2の時だった。
 あたしたち兄弟は双子じゃないけど同い年。
 あたしは4月3日生まれで秋は3月31日生まれ。丸1年近く違うんだけどね…。
 やっぱりさ…兄弟って不幸だよね…。
 あたしでない他の女が秋を連れて行ってしまうなんて…。
 兄弟では出来ない事がその辺に居る女にはやすやすと出来てしまうなんて…―――


 あたしは秋を傷付ける存在でしかない。
 あたしが秋を好きで居たら…
 秋は秋の恋が出来なくなる。


 あたしは秋に優しくしちゃ駄目なんだ。
 優しくしたら…恋しくて愛おしくて…離せなくなっちゃうから…。


 ごめんね、秋。
 大事な…大切なモノを守る為には…
 大事じゃないフリ、大切じゃないフリをしなきゃなんだ…。


 好きで好きで堪らないから…秋のことが大好きだから…。
 ごめんね…秋…。
 矛盾してるって思うかもしれないけど…それが今のあたしに出来る一番の方法だから。


 離れて行って欲しいけど傍に居てほしい。
 ほんとにごめん…秋…―――



続く――

3 ◆jZgVcLWus2:2010/11/20(土) 22:52:14 HOST:softbank219183155041.bbtec.net
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 ねぇ、有彩は俺のこと…


 嫌いになっちゃったの?




 今までずっと傍に居てくれて、自分で出来ることも何でもやってくれてたのに…

 有彩はどうして…

 俺から離れていくの…?



 俺が馬鹿だから?

 勉強も運動も出来なくて何をするのにも鈍間だから…?

 そんな俺に呆れちゃったの?

 チビで女みたいで皆から嫌われてるから…

 そんな俺が兄弟だって認めたくなくなったんでしょ…?




 そりゃそうだよね。
 有彩は勉強も運動も出来ればスタイルも良いし美形顔で…
 
 両親の良いところ全部を貰ったみたいだもんね…――――



in子供部屋

 「ねぇ…もう寝ちゃった?」
 いつものようにベッドの下の段に横になれば上の段に居る有彩に尋ねる。
 「………」
 いつものことながら返事はない。
 起きているのだろうけど…あえてその次の言葉は
 「寝ちゃったか…お休み」
 にしておく。そして今日も眠りについた。

 

続く――

4 ◆jZgVcLWus2:2010/12/26(日) 21:19:31 HOST:i114-183-128-120.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 いつものようにベットの下から声を掛けられる。
 「ねぇ…もう寝ちゃった?」
 あたしはいつものように狸寝入りをして次の秋の言葉を待つ。
 「寝ちゃったか…お休み」


 いつもそうしてきたように今日も変わらず今まで通り…

 だって、あたしたちはキョウダイだから―――…








 








































――翌朝――


 ほんの少しだけ開いているカーテンの隙間から朝日が差し込む。
 眠い目を擦りながら体を起こし欠伸を噛み殺す。

 「もう…朝か…」

 まだ下には規則正しい寝息を立てながら夢の世界で羽を広げているであろう秋が居る。
 秋は朝に弱い。いつも時間ぎりぎりまで寝ていて…

 って、どうでも良いか…そんな事…
 自分で言っときながら自分で話を丸く収めている。
 もし他人に聞かれてたら笑われるなとか内心思いながらベッドを下りで洗面所へと向かう。
 歯磨きを済ませ顔を洗おうとすれば"しまった"と思う。
 洗顔フォームを切らしていた事を忘れていたのだ。
 「お母さん…」
 普通に呼ぶがやはり聞こえる訳もなく
 「お母さんっ」
 少し声のボリュームを上げて呼ぶ。
 「どうしたの? 有彩ー」
 少しして返事が返ってくる。その後何と言えば良いか少し考えた末
 「洗顔フォーム、貸して…」
 だんだん声が小さくなってしまうのは最近の癖。
 昔からだよと友達には言ってるが、昔はこんなんじゃなかった。



 あの現実を知るまでは…










inリビング

 身支度も済み朝食の席へ顔を出せばまだ秋の姿はない。
 いつもの事だ。大体秋がこの場に居る時なんて1年に10回もないのではと思う。
 
 「おい有彩、秋を起こしてきてくれないか?」

 食卓に朝食を並べ始めたお母さんを見たお父さんは新聞をたたみあたしにそう言う。
 あたしも答えはいつも通り
 「分かった…」
 だった。それ以上言う事もないし、別に断る理由もない。




in子供部屋
 
 子供部屋に行けばベッドから足がはみ出し布団はもうかけてるとは言えないような様子の秋の姿があった。
 まだ起きる気配はなく良く寝ている。
 「はぁ…朝…朝だよ、起きな…」
 軽く秋の身体を揺す振ってそう声をかける。
 案の定秋はまだ寝ている。いつも朝はこの程度で起きたりしない。

 「いつもの…いきますか…」

 溜息を漏らしつつそう口にすれば秋の真横へ歩み寄る。
 その場で膝立ちしすぅっと息を吸い込む。
 そして勢いをつけて――――…



 ゴンッ




 いつもに増してすごい音だった。
 「ったいよ!!」
 秋の声もいつもに増して大きかった為か吃驚してその場に座り込んでしまう。
 「あ…朝だって言ったのに…起きないから悪いんでしょ…」
 すると秋はいつもと変わらず
 「そんなの聞こえ無かったよ」
 と返してくる。いつもと変わらない日常…。




 いつも同じ事の繰り返し…そんなの…


 もう飽きちゃったよね、秋?



続く――

5 ◆jZgVcLWus2:2011/01/15(土) 17:26:39 HOST:i114-183-128-120.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 目を薄ら開けるとまだ外は暗かった。
 トイレに行きたくなりもぞもぞと布団から出る。
 昔は有彩も一緒に行ってくれたのにとか考えながら部屋を出てトイレへと向かった。



in廊下

 「やっぱり暗…? なんで明かりが付いてるんだろ…?」

 トイレへ向かう途中、いつもは真っ暗な廊下なのに今日はリビングへの扉から光が漏れていた。
 こんな時間に親が起きてるなんてと思い扉に寄って行き中の音に耳を済ませる。


 「あいつ等ももう中3だ。何時までも子供じゃないんだ。」
 「貴方…何が言いたいの…?」
 「あいつ等の部屋を分けた方が良い。これから先のことも考えて。」
 「……あの子たちに限ってそんなことは無いと思うけど。でも…そうね、考えましょう。」


 部屋を分ける…?有彩と別々の部屋…?
 そんな…なんで?
 話を聞かなきゃ良かったと今更後悔した。




in子供部屋

 トイレを済ませ部屋に戻る。
 部屋では何も知らない有彩が小さな寝息を立てて寝ていた。
 「ねぇ、有彩。僕等の部屋、別々になっちゃうんだって。有彩は…嬉しい?」
 気付けば自分はベッドの梯子を上り有彩の上に居た。
 「有彩、僕等はもう子供じゃないんだって。」
 何も出来ない癖にこんな姿勢になって俺は馬鹿だよね。
 有彩だったらもっと大人な対応をしているだろうに…。
 そう思いながらベッドを下りて自分の布団へ行く。


 ねぇ有彩、俺は有彩が好きだよ…。
 

 有彩、もっと俺を見てよ…。


 俺の傍から離れて行かないで…傍に居て…


 お願いだから…


 一緒に居て―――…





















































――翌朝――


 ―――――ゴンッ




 「ったいよ!!」

 夢の国に居たはずなのに一気に現実の世界へと引き戻される。
 いつものように有彩が俺を起こしに来たのだ。
 朝から頭突きかましてよくもまぁ平然と一日を送っていけるもんだ。
 にしても今日のは痛い。いつも以上に強烈な一発。

 あれ…有彩?

 いつもとは違った有彩の様子が瞳に映る。
 「あ…朝だって言ったのに…起きないのが悪いんでしょ…」
 ……やっぱりいつもと変わんないか…?
 そんな事を思いながら俺はいつものように
 「そんなの聞こえ無かったよ」
 と返す。

 いつもと変わらないはずの一日なのに何だか気分が浮かないのは親の言葉が忘れられないから…?




 有彩…いい加減こんな生活やめようよ。

 俺はもうこんな生活耐えられない…



 ねぇ…一緒に遊ぼうよ、有彩―――…



続く――

6 ◆jZgVcLWus2:2011/02/12(土) 15:25:39 HOST:i58-93-119-188.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



inリビング

 「あ、あのさ…秋に話したい事が…あるんだ…後、ちょっと良い…?」
 最近は自分から必要以上に声を掛ける事なんて無かった。でも今回は特別…。
 「有彩…?うん、分かった。」
 秋の返事を聞いて内心ほっとしてるあたし。
 「じゃあ…1限目の時間にC棟の屋上で待ち合わせ。良いよね?」
 秋の顔色を窺いながら口にする。なんでこんなことしてるんだろ…。
 「…うん。良いよ。」
 秋はちょっと困った様子を見せたけどすぐ笑みを浮かべてそう言ってくれた。


 いつも変わらず繰り返していた輪のような毎日がこの言動をきっかけに一転することとなった――…





in教室

 「ねー、有彩ぁ。1限目バスケじゃん?ウチらとチーム組まない?」
 そっか、さっきの秋の様子の意味を今頃になって理解した。1限目は体育。女子はバスケで…
 「ごめん、ちょっと気分悪いんだ…。だから体育は休む…。」
 男子はサッカーだっけ?秋、運動できないからなぁ…。まぁ、あたしは嘘ついてでもサボるけどね、体育なんて。
 「そっか、じゃあ…お大事にね。皆行こ、遅れたら五月蠅いし…。」
 安堵の溜息ってやつか?思わず零れてしまった。さて、皆が移動してる間にあたしも行こ…。






inC棟屋上

 「あ、秋…。」
 自分の方が早いだろうなんて思ってたが為に秋の方が早くて少し吃驚した。
 「有彩…。」
 自分と秋とのこの距離感がもやもやする。なんで距離を置いているんだろう?
 「1限目、体育だったのにごめんね…。でも、やっぱこれだけは言っておきたいかなって思って…。」
 少しずつ秋に歩み寄りながらそう言葉にする。
 「良いよ、別に…。話って、何?」
 少し秋の言葉が途切れ途切れに聞こえる。良く見れば少し涙目になってる。
 「秋は知ってる…?兄弟愛って言葉…。」
 秋との距離は1メートルほどの所。秋の目が泳いだ。
 「知ってる。でも…いけない事、なんだよね…。」
 あたしが1歩近づいた瞬間な気がビクンと身を震わせた。
 「どうしたの…?秋、変だね…。」
 秋の頬にそっと手を伸ばして触れる。秋の身の震えが伝わってくる。
 「どうも…しなひよ。変なんかひゃなひ…もん…。」
 秋は俯く。その咬み咬みで震えている声が胸に深く突き刺さる。
 「秋は嘘が下手だよ…。あたしのことが怖いの…?」
 秋の態度に胸がきゅっと締め付けられる。避けられてる…本能がそう語っていた。
 「酷い…。有彩は、酷いよ…。何で、何で突き離してたくせに…また引き寄せるの…?」
 そっか、酷いんだ…あたしって。そうだよね、自分勝手過ぎるんだよね。
 「ごめん…。諦めきれ無かった…。自分の気持ちに嘘はつけなかった…。」
 いつの間にか目は涙でいっぱいになってた。見られたくない、秋にこんな姿。
 秋の右腕を引っ張って抱きよせる。あれ…?秋の方頭一つ分くらいおっきい。
 「有彩…。僕……俺も有彩に話したい事があるんだ。」
 サァーっと風が吹き抜けた―――…



続く――

7 ◆jZgVcLWus2:2011/04/02(土) 23:17:28 HOST:i222-150-145-237.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



inリビング

 急いで朝食の席に着くと隣の有彩から声を掛けられた。
 「あ、あのさ…秋に話したい事が…あるんだ…後、ちょっと良い…?」
 最近は有彩から声を掛けて来る事なんて殆ど無かったから吃驚した。
 「有彩…?うん、分かった。」
 別に断る理由もないし…。
 「じゃあ…1限目の時間にC棟の屋上で待ち合わせ。良いよね?」
 でもその後の有彩の言葉に少し困った。だって1時限目は…。
 「…うん。良いよ。」
 でも有彩との話の方が大切だよね。って思ってそう答える。
 有彩と話か…楽しみだな…。


inC棟屋上

 楽しみにしてたせいかHRが終わるとすぐに俺は教室を飛び出していた。
 早く…早く有彩に逢いたくて。1時限目の体育なんてもうどうでもよかった。
 ただ、有彩の話を聞きたくて…俺の話を聞いてほしくて…。
 でも有彩はまだ来てなかった。いつも有彩の方が早いのに…。
 少しがっかりして空を見上げた。今日はそれなりに天気が良い。そんなことを考えてる時だった。
 「あ、秋…。」
 有彩の声がして屋上への扉の方を見る。少し息が上がってる所を見ると走って来たらしい。
 「有彩…。」
 改めてこうしていると何だか…。
 「1限目、体育だったのにごめんね…。でも、やっぱこれだけは言っておきたいかなって思って…。」
 少しずつ有彩が歩み寄ってきて…。逃げ出したいくらいだった。
 「良いよ、別に…。話って、何?」
 でもあんなに楽しみにしてたのにって考えたら逃げだせなくて。今にも泣き出しそうなのをぐっと堪えてそう言った。
 「秋は知ってる…?兄弟愛って言葉…。」
 有彩がもう残り1メートルくらいの距離まで来てて、じっと見てるから目を合わせるのが怖くて…目が泳いだ。
 「知ってる。でも…いけない事、なんだよね…。」
 有彩の問いに答えながら有彩の足に目を落とす。すると有彩が1歩近づいて来て反射的に体がビクンと震えた。
 「どうしたの…?秋、変だねぇ…。」
 有彩の言葉一言一言が耳に残って頭の中でぐるぐると回る。
 有彩の伸びてきた手に触れてきた冷たい手に僕の身体はガタガタと震える。
 「どうも…しなひよ。変なんかひゃなひ…もん…。」
 僕は…俺は俯き咬み咬みになりながらもそう言う。有彩の優しさがひしひしと伝わってきて…。
 「秋は嘘が下手だよ…。あたしのことが怖いの…?」
 有彩の言葉が酷く胸に突き刺さった。怖いなんて…そんなこと1度も思ったこと無かったのに。今だってこの優しさに溺れてしまいそうで。
 「酷い…。有彩は、酷いよ…。何で、何で突き離してたくせに…また引き寄せるの…?」
 心の何処かでずっと思ってた疑問が口から出てくる。酷いって言うのはこの優しさに自分が溺れないように言った言葉で。
 この優しさに素直に溺れてしまえば良いのに素直になれずにいる俺自身が嫌になって。
 「ごめん…。諦めきれ無かった…。自分の気持ちに嘘はつけなかった…。」
 言葉を聞いてほんとに泣きだしそうになった。俯いてたから有彩の顔は見れなかったけどその声はかなり震えてて今にも泣き出しそうで。俺は最低な奴だって思った。
 こんなに不器用な姉を持ってその不器用さを人一倍理解しててなのに俺は酷いこと言って。
 優しく右腕を引き寄せて抱きしめてくれる有彩に合わせる顔が無かった。だから俺は有彩の顔を胸に埋めさせて強く抱きしめた。
 「有彩…。僕……俺も有彩に話したい事があるんだ。」
 言わなきゃいけない。俺自身に言い聞かせるように…有彩に思いを伝えるように…。
 サァーっと風が吹き抜けた―――…



続く――

8 ◆jZgVcLWus2:2011/12/14(水) 16:09:31 HOST:i114-185-50-174.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 暫くの間は秋の胸で涙を零した。もう、これ以上秋の前で涙を見せない為に。
 これから聞く、秋の言葉はとても怖い。なんて言われるんだろうかと考えると胸が苦しくなってくる。
 ……でもね、こうやって秋の体温を感じていると何故だかほっとしてしまうんだ。
 あぁ、秋はまだあたしのことを受け入れてくれるんだって。
 涙を拭い顔を上げる。もう、あたしは大丈夫。秋の言葉をちゃんと聞けるよ。
 「ぁ、秋…」
 声がまだ少し震える。でも、大丈夫、今なら言える。今言わないと…駄目なんだッ
 「今までごめん。お節介ってくらいに世話焼いて…なのに急に突き離した。」
 秋が聞いててくれている。あたしから目を逸らさずに、見ててくれている。
 「今更言うんじゃ言い訳にしかならない。でも、言わないよりかは良い、そう思うから言うね?」
 秋はコクリと頷く。
 「秋の為と思ってあたしは秋を遠ざけたんだ。秋には秋の恋があるから…あたしはきっと邪魔しちゃうから。」
 伝えたい言葉はたくさんあって、自分でも何が言いたいのか分からない。
 分かりにくても、理解してもらわなくても…あたしの気持ちを聞いてもらえるのなら、それで構わない。
 「だけどそれは間違いだった。だってあたしは…秋じゃないと駄目なんだ。いつも目で追ってるのは秋で、考えないようにって思えば思うほど秋のことが気になる。」
 …知ってるよ。昨日の夜、秋があたしのベッドに来たこと。秋はあたしのことが好き?
 「あたしはね…秋のことが好きだよ。ずっと前から、今も。きっと明日だって明後日だって…変わらずに好き。」
 ずっと伝えられずにいた事、ちゃんと伝えることが出来た。本当に良かった…。
 「今度は、俺の番だね」
 優しく微笑むその顔は、もう先程までの秋とは違くて…ちゃんと伝わっているんだろうと、あたしは思った。



続く――

9:2011/12/14(水) 16:14:36 HOST:zaq7a66c1fa.zaq.ne.jp
櫻!?

ってあの櫻なんか!?←違うかw

10 ◆jZgVcLWus2:2011/12/16(金) 22:02:18 HOST:i118-19-53-151.s04.a011.ap.plala.or.jp
どの櫻を指しているのか分からない(´`;)
そうだと言いたいが此方の勘違いになってしまうと恥ずかしい、だから多分そうだと言っておこうと思う。

≫燐s

11 ◆jZgVcLWus2:2011/12/16(金) 22:33:39 HOST:i118-19-53-151.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 ずっと心配だった。有彩がもしも辛いことを溜めこんで…一人で抱え込んでしまっているのではないかと。
 だから今、こうして泣いている有彩を感じてほっと安心した。暫く俺は有彩に胸を貸し、その間に自分の気持ちの整理を付けていた。
 ずっとずっと、避けられていると感じて…嫌われてしまったと思い続けてきた。
 そうしないと自分が壊れてしまうんじゃないかと思ったんだ。でも、有彩は俺のことを嫌いになったんじゃなかった。
 「ぁ、秋…」
 まだ少し震える声で有彩は俺の名前を呼んだ。何を言われるのか、有彩の一言一言に神経を集中させる。
 「今までごめん。お節介ってくらいに世話焼いて…なのに急に突き離した。」
 有彩の言葉を真正面から受け止めたかった。だから絶対に目は逸らさない。
 「今更言うんじゃ言い訳にしかならない。でも、言わないよりかは良い、そう思うから言うね?」
 俺はコクリと頷く。でも、本当は聞きたくないとも思った。有彩が悲しいことを言うような気がしたから…
 「秋の為と思ってあたしは秋を遠ざけたんだ。秋には秋の恋があるから…あたしはきっと邪魔しちゃうから。」
 やっぱりと思った。有彩の不器用な優しさが身に浸みる。自分よりも人を思うあまり自分のことを…
 有彩のことは誰よりも分かってるつもりでいたはずなのに、俺は全然分かってなかった。
 俺のことを遠ざける時、有彩は一体どんな気持ちでいたんだろう? 分からない、それは本人だけにしか分からない気持ち…。
 「だけどそれは間違いだった。だってあたしは…秋じゃないと駄目なんだ。いつも目で追ってるのは秋で、考えないようにって思えば思うほど秋のことが気になる。」
 有彩の言葉に嘘はない。何故だか理由までは言えないけれど分かるんだ。俺も――同じだから。
 「あたしはね…秋のことが好きだよ。ずっと前から、今も。きっと明日だって明後日だって…変わらずに好き。」
 有彩の本当の気持ち…思った以上に素直で真っ直ぐな言葉。同じ事を思っていたからこそ零れる笑み。
 この告白に俺はなんと言えば良い? 別に特別なことを言う必要なんて無い。俺らしい言葉でこのままの気持ちを素直に伝えればいい。 
 「今度は、俺の番だね」
 俺は有彩ほど頭も良くない。運動も出来ない。でも、有彩と一緒になら――…



続く――

12 ◆jZgVcLWus2:2011/12/17(土) 22:32:39 HOST:i118-19-59-107.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 「まずはごめん。さっきのは言い過ぎた。」
 秋は頭を下げて謝ってきた。さっきというのは酷いと言ったことだろうか?
 「有彩が俺のこと嫌いになって離れて行っちゃったんだって…そう思うと凄く怖くなった。」
 今までの日々を思い返るように語る秋。その目は少し潤んでいた。
 「でも…有彩が嫌いになってないって知って…ほっとした。」
 微笑を浮かべてあたしを見てる。秋と目が合わせられることがこんなに嬉しい。
 どうして離れたりしたんだろう? なんで秋のことをもっと見ててやらなかったんだろう?
 でも、もっとちゃんと秋のことを見てたら…こんなふうな気持ちにはならなかったのか?
 「好きって言われて…凄く嬉しかったんだ。俺も有彩のことが……大好きだから!!」
 秋に言われた大好きは、小さい頃に繰り返し言われたのとは違う意味であたしの心を温かくする。
 秋に手を取られる。あぁ、秋の手はあたしの手とは違うんだなって実感した。
 あたしの手は秋の手よりも全然小さくてむちむちと丸っこかった。一方秋の手はあたしみたいにむちむちなんてしてなくてしっかりとした男らしい手だった。
 秋とあたしが離れていた時間、その間に変わってしまったことが次々と見えてくる。
 そのことがなんだか寂しく思えて…だけど嬉しくも思えた。



 「秋…ッ」
 秋に抱きつく。今まで我慢してた分だけ今は秋を沢山感じていたいよ。
 「有彩、大好き…。」
 秋が抱きしめ返してくる。秋の匂いがする。前と変わらない秋が此処にいる。
 外見は変わってしまったかもしれないけれどこの温もりとちょっと控えめな抱きしめ方は変わってない。
 「あたしもだよ、秋。」
 あたしはこんなに素直でいいのかと自問する。でも、答えはすぐに見つかる。だってあたしは我儘な娘。
 いくら秋が大好きと言って抱きしめてくれても、それだけじゃまだまだ足りないよ。




















 離れてた時の分だけ、今だけは……秋を感じさせて?



続く――

13:2011/12/18(日) 14:06:14 HOST:zaq3dc00748.zaq.ne.jp
櫻>>雑談の方に居る櫻さんでしょうか。

違ってたらすみませんm(__)m

14 ◆jZgVcLWus2:2011/12/18(日) 18:19:22 HOST:i118-19-58-234.s04.a011.ap.plala.or.jp
はい、あってますよ。

≫燐s

15:2011/12/18(日) 18:32:22 HOST:zaq3dc00748.zaq.ne.jp
やっぱしw

ならタメでおkだぜぇ(*^_^*)

16 ◆jZgVcLWus2:2011/12/18(日) 19:49:40 HOST:i118-19-58-234.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 もう、今更何を言うべきかなんて考えてる時間はない。月並みで良いから…言葉を発する事に意味があるのだから…
 「まずはごめん。さっきのは言い過ぎた。」
 腰を折って謝る。酷いという言葉は人を傷つける。でも、あの時の俺にはそれ以外の言葉は思い浮かばなかった。
 俺は本当に傷ついてたから。どうしていいか分からなくなってた。そうでなくても馬鹿な俺だから…
 「有彩が俺のこと嫌いになって離れて行っちゃったんだって…そう思うと凄く怖くなった。」
 今までの日々…有彩の温もりを感じられない日々は辛かった。だからこそ、さっきの告白はとっても嬉しかった。
 「でも…有彩が嫌いになってないって知って…ほっとした。」
 思わず笑みが零れてしまう。こんなに幸せだと感じられるのは、今まで離れていた時間が長かったから?
 その分だけ、今がとても幸せに感じられるのかな? だったら、やっぱり有彩のおかげなんだね。 
 「好きって言われて…凄く嬉しかったんだ。俺も有彩のことが……大好きだから!!」
 昔はあんなに自然に出た大好きって言葉が今ではとても勇気がいる言葉だって実感した。
 そっと有彩の手を取る。少し冷えているその手は、俺の手の中に納まるくらいしかない。
 いつの間に…俺はこんなに大きくなっちゃったんだろう? 小さい時は有彩の方が大きくて、追いついたと思ったらまた有彩の方が大きくなっちゃって…
 でも今では俺の方が有彩を追い越してる。俺は有彩より強くなれた? 身体だけ大きくなっちゃってない?




 「秋…ッ」
 有彩が抱きついてきた。俺はちゃんと抱きとめる。
 「有彩、大好き…。」
 有彩の耳元でそっと囁く。大好き、何度言ってもこの気持ちは変わらない、伝えきれない。
 前の有彩と違う匂い。シャンプーを変えたのかな? でも、有彩は有彩だ。
 「あたしもだよ、秋。」
 もっと言って欲しい。もっと抱きしめて欲しい。
 俺ってやっぱり欲張りなのかな? ううん、そんなことない。
 だって、それは有彩も同じだろ?
















 もっともっと有彩を感じさせて――…



続く――

17名無しさん:2011/12/19(月) 17:16:39 HOST:wb92proxy09.ezweb.ne.jp
中途半端が一番最低っていう

18 ◆jZgVcLWus2:2011/12/19(月) 21:45:37 HOST:i121-113-148-121.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 授業終了のチャイムが鳴り響く。あたしは秋からそっと離れた。
 「有彩…放課後、空いてる?」
 秋はすぐに声を掛け、放課後の予定を尋ねてくる。あたしは少し考えたふうをする。
 その様子に秋が俯く。あたしは少しおかしくなってくすくすと笑ってしまう。
 「な、なんで笑うんだよっ」
 慌てたように秋がそう言って少し不機嫌そうな顔をする。
 「ごめんごめん。…放課後のことだったよね。」
 まだ若干笑いながらあたしは謝る。小さく深呼吸して話を戻す。
 秋はコクリと頷きあたしのことを見る。
 「…心配しなくても空いてるよ。もう、部活も引退したし…他にも今日は用事はないから。」
 安心した様子でほっと胸を撫でおろす秋の姿はやはり前とは変わってないんだなと思わせた。
 「じゃあ、校門で…待ってるから。」
 嬉しげな笑みを浮かべて秋は言う。
 「分かった、あとでね。」
 軽く微笑んで秋に抱きつく。顔を上げで秋と目を合わせる。
 「うん…あとで。」
 秋はそう言って少しかがむ。逆にあたしは少し背伸びをして秋の頬にキスをする。
 あたしはすっと秋から離れてドアへと向かう。
 「じゃ、放課後…っ」
 手を振りながら少し振り返って言う。秋は少し手を挙げて「校門でね」と付け加えた。










in教室

 「あ、有彩…っ 大丈夫だった?」
 朝、声を掛けてきた子たちが声を掛けてきた。もう皆教室にいる。
 「うん、まぁね…。」
 苦笑しながら席に着くとチャイムは鳴った。

 早く放課後にならないかな…?

 授業中、ずっとそればかり考えていた。



続く――

19 ◆jZgVcLWus2:2011/12/20(火) 21:52:32 HOST:i121-113-148-121.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 授業の終わりのチャイムが鳴っている。このままじゃまだ有彩と会えなくなってしまうような気がして…
 冷静になれば、同じ家の同じ部屋で寝起きしているのだから、そんなことはないのだけれど…とにかく次に繋げておきたかった。
 「有彩…放課後、空いてる?」
 本当は昼休み。いや、次の休み時間が良かった。でも、いきなりそんなんじゃウザがられるかもしれない…そう思うと俺にとって放課後がちょうど良かった。
 有彩を見ると何か考えてるようだった。その様子からもしかしたら友達との予定があるのかもと思い少し落ち込んでしまう。
 少し俯いていると有彩のくすくすと笑う声が聞こえてきた。
 「な、なんで笑うんだよっ」
 「ごめんごめん。…放課後のことだったよね。」
 俺が文句を言うと笑ったまま有彩は謝った。有彩の言葉に俺は頷く。
 「…心配しなくても空いてるよ。もう、部活も引退したし…他にも今日は用事はないから。」
 その答えを聞いて安心した。
 「じゃあ、校門で…待ってるから。」
 「分かった、あとでね。」
 有彩は微笑み抱きついてきた。…目が合う。
 「うん…あとで。」
 言いながら少しかがむ。有彩は少し背伸びをして頬にキスしてきた。
 驚いている間に有彩はもう離れていて、ドアに向かっていた。
 「じゃ、放課後…っ」
 有彩は振り返り、明るくそう言って手を振る。俺は少し手を挙げて「校門でね」と付け加えるように言った。
 有彩が出ていくのを見送ってからゆっくりと教室へ戻った。









in教室

 体育ももう終わっていて皆が教室にいた。
 俺が席に着くと同時にチャイムは鳴った。
 授業が始まる。

 有彩と話が出来た。有彩が大好きと言って頬にだけどキスしてくれた。
 何か別のことを考えなければと思うほど、そのことばかりが浮かんでくるのだった…。



続く――

20:2011/12/20(火) 21:57:53 HOST:zaq7a66c40f.zaq.ne.jp
おお!!!


何かエエやんw

21 ◆jZgVcLWus2:2011/12/21(水) 21:59:08 HOST:i121-113-148-121.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 もうすぐ秋に会える。そう思うといつもは眠くつまらない6限目の授業も少しは楽しく思えた。
 「有彩、有彩…」
 名前を呼ばれて後ろを振り返る。
 「何?」
 「これ、まわってきた。書いて前にまわして?」
 1枚の紙切れを渡された。
 「了解。」
 一応そう言って前を向く。紙切れに視線を落とし書かれていることに目を通す。
 内容はまぁ、簡潔にまとめるとこうだ。
 (3ヶ月後の卒業式の後でクラス会を開く。全員強制参加と言いたいが、予定がある者もいるだろうから、参加する人だけ名前を書いてほしい。)
 「…3ヶ月後とかまだ分かるわけないじゃん…」
 呆れたように呟く。そういえばもうすぐ私立受験だった。あたしは秋に合わせて低いレベルの公立高校を受験する。
 だから…そう、つまりは受験勉強らしいことをしていなかった。ただ、授業の予習復習をしてるだけ。
 ともかく分からないから名前は書かずに前の子を突く。
 「これ、書いて前に回してだって…」
 そう言って渡す。出来れば卒業式の日は家に帰ってやりたい事があった。
 と言っても、まだ3ヶ月後のこと…そのことはまた今度考えればいい。
 今は秋と早く会えさえすればいいのだ。チャイムが鳴った。
 「授業は此処まで。p158の問3と練習問題宿題なー。」
 そう言って授業は終了した。



 「ほらほら、さっさと帰った帰った。」
 あたしの学校に帰りの会というものは存在しない。
 6限目の授業が終わるとそのまま解散。
 掃除当番の人だけが残って教室と廊下を掃除して帰る。
 「有彩ーっ 掃除当番だよ?」
 「え?」
 さっさと校門へ向かおうとしていた所を友達の優里に呼びとめられる。
 掃除当番…そういえばそうだった。あたしは慌てて掃除をするはめになるのだった――…



続く――

22 ◆jZgVcLWus2:2011/12/22(木) 22:23:26 HOST:i118-20-59-218.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 今日の授業はとても長く感じられた。やっと6時間目だ。
 勉強嫌いの俺が寝ないで授業を受けられるようになったのは有彩のおかげ。
 お母さんに「あたしは秋と同じ高校行くよ?」と言っていたのを聞いてからだった。
 有彩と一緒の高校に行くために今は必至で勉強をしている。
 「あ、ここ違うよ。」
 前の席の佐々木君が俺のノートを見て言う。
 「え…そうなんですか?」
 俺はクラスの人とはほぼ敬語で話す。
 「うん。だって源清盛なんて人いないもん。」
 そう言うと声をあげて笑いだした。両隣の人も一緒になって笑っていた。
 「……答え、本当は何が正解なんですか?」
 分からないから聞く。笑われてもしょうがない。今まで勉強をサボってきた罰だ。
 「ん? 答え教えて欲しいわけ? そこは足利尊氏だよ。全然違うしーあはははは。」
 また声をあげて笑われた。
 「そうなんだ。有難う御座います。」
 あえてその笑いをスルーするように笑みを浮かべてお礼を言う。するとつまらなそうに前を向いてしまった。
 もっと頑張らないとと思った。公立を受けるからには社会も理科も手を抜けない。
 気付けば授業終了のチャイムだった…。



 急いで校門へと向かう。もう有彩は来てしまっているかもしれない。
 と思ったのだけれど…まだ有彩は来ていなかった。
 その頃有彩は忙しげに掃除当番をしている最中であるが、そんなことは知らない。
 なかなか来ない有彩の事を考え「どうせなら教室に迎えに行くにしとけばよかった。」と、あとから後悔したように呟いてしまうのであった。



続く――

23 ◆jZgVcLWus2:2011/12/23(金) 22:23:49 HOST:i58-93-127-151.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 思った以上に掃除が長引いてしまった。秋は呆れて帰ってしまっただろうか?
 いや、それはない…そんなこと考えてる暇があったら早く待ち合わせ場所に行くべきだ。
 「じゃ、また明日っ」
 クラスの子に挨拶をしながら鞄をぐしゃっと掴み取るとダッシュで教室を飛び出していた。







 …あ、秋!! 秋の後ろ姿が見えると走っていた速度を少し緩めながら飛びついた。
 「うわッ」
 いきなりで吃驚したらしく、秋は大きな声を出す。そして、少し体制を崩したものの上手く立て直すと不機嫌そうにこちらを見る。
 「遅いよ…有彩の馬鹿っ!!」
 今にも泣きそうなくらいの声で少し裏返ってもいた。
 「来ないかと、思った。」
 俯きながら秋は言う。あたしはそっと抱き寄せた。秋は…とても冷たかった。
 「遅くなって、心細くさせてほんとごめん。」
 抱きしめる腕に力が入る。どうして掃除当番を忘れていたんだろう?
 もっとちゃんと覚えてれば秋はこんなに寒い思いをしなくて済んだのに…
 「良いんだ、有彩。掃除当番だったんでしょ?」
 「うん。でも…なんで知ってるの?」
 「制服じゃないのと…髪に埃が付いてるから。」
 秋には何も言ってないのに、こういうことにだけはいつも察しが良かった。
 秋が髪に付いてしまった埃をとる。
 「ありがと。」
 「どういたしまsはっ…クシュンッ!!」
 「ごめん、風邪ひいちゃったかもしれない…あたしのせいだ。」
 秋がくしゃみをする。ぎゅっと抱きしめてあたしはそう言う。
 「俺は大丈夫。それより有彩が冷えちゃうからもう帰ろう?」
 「そうだね。」
 別にあたしが冷えるのなんてどうでもいい。今は早く家に帰って秋にあたたまって欲しかった。
 秋にとって…今学校を休むのはとても辛いこと。風邪なんてひかせてたまるかっ!!
 




 あたしと秋は足早に家へと向かった。
 


続く――

24 ◆jZgVcLWus2:2011/12/25(日) 19:26:34 HOST:i121-113-144-44.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 「うわッ」
 いきなり誰かが飛びついて来た。思わず大きな声を出してしまうのと同時に、自分に向かってこういうことが出来るのは有彩しか居ないと思う。
 崩しかけた体制を立て直しながらむっとした表情を浮かべて有彩を見る。
 「遅いよ…有彩の馬鹿っ!! 来ないかと、思った。」
 声が裏返ってしまった。恥ずかしいのと安心したのとで俯いてしまう。
 有彩がそっと抱きしめてくれる。有彩の呼吸が荒い。走ってきてくれたんだ…。
 「遅くなって、心細くさせてほんとごめん。」
 有彩の腕に力が入る。有彩の髪に埃が付いてる…しかもジャージだし。
 「良いんだ、有彩。掃除当番だったんでしょ?」
 「うん。でも…なんで知ってるの?」
 「制服じゃないのと…髪に埃が付いてるから。」
 有彩の髪に付いている埃をとる。
 「ありがと。」
 有彩が微笑みながら言う。
 「どういたしまsはっ…クシュンッ!!」
 「ごめん、風邪ひいちゃったかもしれない…あたしのせいだ。」
 有彩はすぐ自分のせいにする。今日のは俺が悪いのに…。それにこの程度で風邪ひくほどやわじゃない。
 「俺は大丈夫。それより有彩が冷えちゃうからもう帰ろう?」
 「そうだね。」
 家に帰ったら有彩とこたつに入りたいな。勉強も一緒にやりたい。
 お母さんやお父さんはどう思うのかな? 姉弟仲良しだって思ってくれるのかな?
 それとも……










 昨日の夜のような事を思うのかな。



続く――

25 ◆jZgVcLWus2:2011/12/28(水) 21:33:56 HOST:i114-181-39-43.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



in子供部屋

 「はッくしゅっ……ズルッ」
 「大丈夫?」
 あぁ、馬鹿は風邪ひかないって本当なのかもしれない。
 あの一回以来秋はくしゃみも咳も全くない。それに比べてあたしは…
 「んー…平気。」
 人の心配しといて自分の事を疎かになるとは情けなさすぎる。
 「そう? 有彩って意外と体弱いんだよね。」
 苦笑しながら秋はそんな事を言う。
 「そこまでじゃない。休み明けで身体が鈍ってただけだし。」
 確かにこの時期は毎年風邪をひくけど、それはお正月という生活リズムが崩れる行事があるからで…
 「そっか。というか鼻かみなよ。」
 秋がティッシュを差し出しながら言う。あたしはそれを取って鼻をかむ。
 「ありがと。…この部屋寒い。」
 少し身震いしながら呟く。そういえば今年は正月も明けたというのにカーペットも無ければヒーターも無い。
 確かにエアコンの暖房は点いているけども寒い。
 「じゃあ、下行こう? ここよりはあったかいよ。こたつもあるし。」
 「うん、そうしようか。」
 秋の意見に賛成してあたし達は下へ向かった。

in居間

 ドアを開けると温かな風があたし達を包みこんだ。廊下がひんやりと冷たく寒かったのもあって居間がとても温かく感じられた。
 「有彩、宿題やろうと思うんだけど…。」
 「うん? それで?」
 「分からないところ、教えて欲しいんだ。」
 あたしはにっこりと微笑む。
 「そっか。分かった、全部答え教えればいいんだね?」
 「…それ、何か酷くない?」
 「ううん、全然酷くないよ。」
 秋が不満そうな表情をして言う。それに対しあたしは微笑んだまま返す。
 「有彩って…変なところで笑顔になるよね。」
 「そう? 普通に優しいお姉さんのつもりなんだけど?」
 「いや、優しいお姉さんだったら一つ一つ教えてくれるものでしょ。」
 分かってないなーという様子で秋がペラペラと話しだす。こうなると15分は平気で喋ってる。
 「全部答え教えたんじゃ意味無いんだよ。分かってくれた?」
 「あーはいはい…分かったから。というか教えてもらう側の人が15分も延々と説教じみたこと言わないでよ。」
 呆れたようにあたしがそう言うと秋は溜息をついた。
 「15分も話してるのに分かってくれないんだね…。」
 いきなり涙目になると秋は言った。この泣き虫があ!!と怒鳴りたいところだが、まぁここは抑えることにする。
 「分かってる。だからさ、早くこたつ入ろうよ。また洟が垂れてきたんだよね。」
 「ごめん…。こたつにも入らずに寒かったよね。現に俺も寒いし。」
 あたしと秋はこたつに入る。近くにあったティッシュを取り鼻をかむ。
 「さ、何処を教えればいいの?」 
 こうしてあたしと秋の勉強会(宿題編)が始まったのである。



続く――

26 ◆jZgVcLWus2:2012/01/01(日) 23:10:10 HOST:softbank219183155041.bbtec.net
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



in子供部屋

 「はッくしゅっ……ズルッ」
 「大丈夫?」
 家に帰ると有彩はくしゃみをたくさんした。やっぱり俺のせいで風邪をひいたんだ。
 「んー…平気。」
 有彩の返事はちょっと頼りない感じだった。
 「そう? 有彩って意外と体弱いんだよね。」
 「そこまでじゃない。休み明けで身体が鈍ってただけだし。」
 明らかに言い訳にしか聞こえない。でも、毎年この時期だからそれもあるのかもしれないと思った。
 「そっか。というか鼻かみなよ。」
 ティッシュを差し出すと有彩はそれを取って鼻をかんだ。
 「ありがと。…この部屋寒い。」
 寒そうにしている有彩は少し震えているようだった。確かに寒い。
 「じゃあ、下行こう? ここよりはあったかいよ。こたつもあるし。」
 「うん、そうしようか。」
 俺の意見に有彩はすぐ賛成して下に行くことになった。

in居間

 ドアが開くと温かな風が俺達を包みこんだ。廊下がひんやりと冷たく寒かったのもあって居間がとても温かく感じられた。
 「有彩、宿題やろうと思うんだけど…。」
 「うん? それで?」
 「分からないところ、教えて欲しいんだ。」
 有彩と一緒に宿題をするなんていつ振りだろう? そんなことを思っているとふいに有彩はにっこりと笑った。
 「そっか。分かった、全部答え教えればいいんだね?」
 その言葉に少しイラッとする。全部教えるということは全部俺が分からないということになる。
 「…それ、何か酷くない?」
 「ううん、全然酷くないよ。」
 未だ笑みを浮かべたままの有彩に向かって俺は言う。
 「有彩って…変なところで笑顔になるよね。」
 「そう? 普通に優しいお姉さんのつもりなんだけど?」
 すると有彩はわざとらしい口調で言う。
 「いや、優しいお姉さんだったら一つ一つ教えてくれるものでしょ。全部答え教えたんじゃ意味無いんだよ。分かってくれた?」
 一生懸命話したつもりだったが、有彩は全然聞いていてくれなかったようだった。
 「あーはいはい…分かったから。というか教えてもらう側の人が15分も延々と説教じみたこと言わないでよ。」
 俺は溜息をついてしまう。
 「15分も話してるのに分かってくれないんだね…。」
 有彩には分かってもらえないのだと思うと急に悲しくなった。
 「分かってる。だからさ、早くこたつ入ろうよ。また洟が垂れてきたんだよね。」
 有彩にいわれてはっとする。そういえば有彩は風邪気味だったのだ。なのに15分も立ったまま話を聞いていてくれたんだ。
 「ごめん…。こたつにも入らずに寒かったよね。現に俺も寒いし。」
 俺は謝りありさとこたつに入る。有彩が鼻をかんだ。
 「さ、何処を教えればいいの?」 
 こうして俺と有彩との勉強会(宿題編)は始まった。



続く――

27 ◆jZgVcLWus2:2012/01/05(木) 20:01:48 HOST:i114-185-54-207.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



 …あたし達、姉弟なんだよね。ほんと疑いたくなる。
 顔も性格も全く似てない。いや、それ以上に…同じ中3でなぜここまで学力に差が出来るんだ?!
 「あー…だから此処はこうだって。ほんと理数系+英語できないんだねぇ?」
 あたしは笑みを顔に張り付けたまま秋の宿題の面倒を見ている。
 そう、宿題を見るだけ。なのに…っ!
 「ねぇ秋、なんで此処に中1の教科書を広げなきゃいけないのかなぁ?」
 「しょ、しょうがな良いじゃん…分かんないんだから。」
 秋は、中学に入ってからの勉強内容が頭に残ってない。
 それはもう確信に近かった。秋の馬鹿さ加減がそれを認めざるを得なくさせるから。
 「…あと、質問。何で数学やってる時に国語と社会開く?」
 秋が国語と社会が好きで得意なのは知っている。
 でも、なんで今それに触れる必要があろうか? 秋の大っ嫌いな数学をやっている時に。
 「好きなものも一緒にやった方が効率的かと思って。」
 などとわけ分からんことをぬかす。もう、救いようがない…
 「要するに、飽きたんでしょ。はっきり言いなさよ。」
 溜息をつきながら秋を見る。
 「うん。でも、付き合って貰っといて"飽きた"って言うのはちょっと…」
 おずおずとした様子で言う。そういう所が嫌い。
 なんではっきりしゃっきり出来ないのか?
 もっと自分に自信を持てばいいのにと何度も思ってしまう。
 「まぁいいわ。今のままで、高校いけずに困るのは秋だから。」
 こればかりはあたしには何にも出来ない。
 高校に合格するかどうかは秋次第。
 あたしはただ受かるかどうかも分からない秋に合わせて高校受けるだけ。
 秋には出来る限り勉強教えるけど、やる気がないならそこでおしまい。
 「……有彩は俺と一緒の高校行きたい?」
 秋があたしの様子を窺いながら聞いて来る。
 「そうじゃなかったら同じ高校なんて受けないけど?」
 あたしはそう言って立ち上がる。
 「有彩?」
 「なんか疲れたから寝る。頭痛いし。」
 「え…大丈夫なの?」 
 全く、秋は心配性だ。まぁ、それが良いとこでもあるんだろうけど。
 「あーあ、大丈夫じゃないかも。誰かさんのせいで無駄に頭使ったし。」
 「ご、ごめん。」
 「別に秋のせいなんて言って無いじゃん。」
 素直に謝れる秋が羨ましい。でも、冗談通じないのは…微妙。
 「とにかく寝るから。お母さん帰ってきたら寝てるって言っといて。」
 「うん。分かった。」
 「あ、余計なことは言うんじゃないからね?」 
 秋はコクリと頷いた。あたしはそのまま部屋に戻ってベッドに横になった。
 今思うと、今日1日が本当に長く感じられた。



続く――

28 ◆jZgVcLWus2:2012/01/07(土) 20:05:26 HOST:i58-93-118-220.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「秋(aki)」



 「あー…だから此処はこうだって。ほんと理数系+英語できないんだねぇ?」
 有彩が怖い。それは俺の本能の叫びだった。にっこりと笑ったまま、宿題を教えてくれている有彩。
 さっきからずっとこの顔。もう、怒ってるんだか呆れてるんだか…分からない。
 「ねぇ秋、なんで此処に中1の教科書を広げなきゃいけないのかなぁ?」
 もう、分からないんだからしょうがないとしか言いようがない。
 「しょ、しょうがな良いじゃん…分かんないんだから。」
 数学なんて嫌だ。どうして算数だけじゃいけないんだろう? 算数だったら分かるのに。
 「…あと、質問。何で数学やってる時に国語と社会開く?」
 数学に飽きると他の教科がやりたくなる。多分誰だってそうだ。これは俺だけじゃない!!
 でも、そんな事有彩に向かって言えるわけもなく…咄嗟に思いついた言い訳を言う。
 「好きなものも一緒にやった方が効率的かと思って。」
 「要するに、飽きたんでしょ。はっきり言いなさよ。」
 有彩が呆れたように溜息をついた。口下手な俺に呆れたのか、それとも馬鹿な俺に呆れたのか。…多分その両方だ。
 「うん。でも、付き合って貰っといて"飽きた"って言うのはちょっと…」
 これは本心。しかし、はっきりとは言えない。俺は臆病者。
 「まぁいいわ。今のままで、高校いけずに困るのは秋だから。」
 やっぱり、自分のことは自分でやらなきゃいけない。いくら有彩でも俺が高校に受かるようにするのは無理だ。
 俺がもう少しやる気を出せれば有彩にだって勉強を教えるくらいのことは出来る。
 「……有彩は俺と一緒の高校行きたい?」
 「そうじゃなかったら同じ高校なんて受けないけど?」
 その言葉が嬉しかった。もう少し頑張ってみようと思った。有彩ばかりではなく自分の力で。
 有彩が立ち上がったので声を掛ける。
 「有彩?」
 「なんか疲れたから寝る。頭痛いし。」
 「え…大丈夫なの?」 
 頭が痛いと聞いて咄嗟に出た言葉。いつも大丈夫かと聞いてしまうけれど、やはり心配性だとか思われているのだろうか?
 「あーあ、大丈夫じゃないかも。誰かさんのせいで無駄に頭使ったし。」
 「ご、ごめん。」
 「別に秋のせいなんて言って無いじゃん。とにかく寝るから。お母さん帰ってきたら寝てるって言っといて。」
 今の場合、誰かさんて言われたら俺以外に当てはまる人なんかいないじゃないか…。
 「うん。分かった。」
 「あ、余計なことは言うんじゃないからね?」 
 一応頷いておく。でも、有彩はどうした?と聞かれたら答えてしまう気がする。
 有彩が居間を出ていくのを見てから残りの数学の宿題にとりかかった。
 「有彩、自分の宿題もちゃんとやってたんだ。」
 さっきまで全然気付かなかった。自分の事でいっぱいいっぱいだった。だけど、有彩は違う。
 俺は、2年と数カ月分、有彩と違う。その分だけ有彩が先に行ってしまった。
 俺が有彩に追い付くには、有彩よりも早くかつスピードを落とさずに行かなければならない。
 それはきっと考えてるよりも何十倍も何百倍も大変で辛いんだ。
 今まで、俺は大変なことは後回しにしてきた。あとで辛くなると分かっていても…。
 今日は特別な日。有彩の気持ちを聞いた、大切な日。自分の気持ちを伝えた、記念日。
 今日からは変わろう。今ままでと違う俺になる。もう逃げない。正面から立ち向かう。
 もう、自分で自分を臆病者だと言わない為に、思わない為に。



続く――

29 ◆jZgVcLWus2:2012/01/22(日) 20:08:26 HOST:i114-185-55-174.s04.a011.ap.plala.or.jp
+弟だから…いけないの?+
「有彩(arisa)」



in子供部屋

 気付いたらもう朝だった。まさか本当にお母さんが来ないとは…ちょっと計算外だった。
 秋の事だからどうせ余計なこと言って秋以上に心配症のお母さんが来ると思っていたのだが…。
 まぁ、いいか。ゆっくり眠れたし。
 「秋…相変わらずだなぁ。」
 こんな寒いというのに布団から手足が飛び出てる。一体どう寝たらこうなるのか…?
 そんな事を考えながら布団の中に手足を入れてやる。普通だったら目を覚ましても良さげだが、秋はこんなんじゃ絶対目を覚まさない。
 洗面所へ行き身支度をする。
 「有彩ー、秋を起こして来い。」
 朝から大きな声出さなくても…もう少ししたらそっち行くのになぁ。
 お父さんは気紛れだから仕方ないかと思いつつ子供部屋へと向かう。
 「秋ー朝だよ、起きな。」
 言いながら秋を揺さぶる。でも、起きる気配はない…。
 「しょうがない、今日もお目覚めの一発いきますか。」
 息を吸って勢い良く――

 ゴンッ

 「…っ」
 「おはよ、秋。」
 秋は額をおさえながら寝ぼけ眼であたしを見る。
 「おはよ…有彩。」
 秋の声の調子が沈んでる気がする。気のせいかもしれないが聞いてみた。
 「何か不満でも?」
 「別に。」
 何故か秋はそう言って布団に潜ってしまった。何がいけなかったのか、あたしには分からない。
 「…秋?」
 「何?」
 返事はすぐに返ってくる。でもこれは明らかに拗ねてる。一か八か言ってみるか。
 「秋、おはようのキスはないの?」
 返事がない。図星か…多分秋が不機嫌なのは昨日のあれがあったのにいつもと変わらず頭突きで起こされたからだろう。
 「…あるよ。」
 その言葉を聞いたと思うと同時に秋の顔が目の前にあった。
 「秋、怒ってる?」
 唇が触れ合う。それはほんの少しの時間だった。
 「怒ってない、今はね。でも、明日からはもうあんな起こし方はしないで欲しいな。」
 「それは構わないけど、起きれるの?」
 少しの沈黙があった。
 「有彩が苦しくなるまでしてくれたら絶対起きれるよ。」
 秋が笑った。冗談で言ったのか、それとも本気で言ったのか、笑いで分からなくなってしまった。
 「…あのさ、それってこっちも苦しくない?」
 「まぁ…その辺は上手くやってよ。お姉ちゃんなんだからさ。」
 秋は簡単に言うけど、そんなのどうすればいいのか分からない。
 キスだって、生まれてから秋としかした事ない。親を除けば。
 こんな時ばっかりお姉ちゃんなんだからって片付けるのはずるいんじゃないかな?
 「有彩?」
 「じゃあ、練習させて…?」



続く――


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