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仮投下スレ

1名無しさん:2015/07/15(水) 00:22:03 ID:YFA/rTa20
作品の仮投下はこのスレでお願いします

640名無しさん:2016/03/15(火) 13:03:14 ID:2h9.07uY0


 バランスの悪い屋根を伝いながら、友奈が叫んだ。

「風先輩!どうして逃げるんですか!」

 風は頑なに返答をしようとしない。
 それどころか、振り向くことすら考えていないようだ。
 明確な拒絶を感じながらも、友奈は再び声をかけた。

「みんなのためになることを勇んでやる、それが勇者部の活動ですよね!?先輩!」

 しかし、その言葉は流される。
 友奈の言葉がどれだけ正しいものだろうと、風の胸には届かない。
 優勝するという魔王の決意は、もはや勇者の呼びかけでは揺らがない。

「っ!」

 キン、と甲高い音がした。
 友奈の拳が、前方から飛来した刀を打ち払ったのだ。刀はあらぬ方向へと飛んで行った。
 言葉を発しない拒絶の次は、攻撃を加えるという拒絶。

「先輩……!」

 挫けそうな表情を一瞬浮かべながら、それでも友奈は諦めない。
 ひときわ強く屋根瓦を踏みしめて、前に向けて跳躍した。

「はあああああぁぁぁぁっっっ!!!」

 もはや実力行使しかない。
 力で倒してでも、話をしてもらうしかない。

「うおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!」

 そして、風もまたそのことを理解したのだろう。
 しつこい勇者を倒すには、やはり撃破するしかないのだ。
 振り向きざまに、大剣を切り払う。


 ここに、勇者と魔王が激突した。


【結城友奈@結城友奈は勇者である】
[状態]:疲労(小)、味覚・左目が『散華』、前歯欠損、顔が腫れ上がっている、満開ゲージ:5
[服装]:讃州中学の制服
[装備]:友奈のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(10/10)、黒カード:なし
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止め、主催者を打倒する。
0:風先輩を、止める。
1:勇者部のみんなと合流したい。
2:早急に東郷さんに会いたい。
[備考]
※参戦時期は9話終了時点です。
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※【銀魂】【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】の世界観について知りました。


【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、優勝する覚悟、魔王であるという自己暗示
[服装]:普段通り
[装備]:風のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(39/40)、青カード(39/40)
    黒カード:樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である、IDカード、村麻紗@銀魂、不明支給品0〜2 枚
     犬吠埼樹の魂カード
[思考・行動]
基本方針:樹の望む世界を作るために優勝する。
 0:魔王ゴールデンウィンドとして、勇者を倒す。
 1:南下しながら参加者を殺害していく。戦う手法は状況次第で判断。
 2:市街地で東郷と会ったら問い詰める。
 3:一時間後、セイバーの元へ向かうか、あるいは……。
[備考]
 ※大赦への反乱を企て、友奈たちに止められるまでの間からの参戦です。
 ※優勝するためには勇者部の面々を殺さなくてはならない、という現実に向き合い、覚悟を決めました。
 ※東郷が世界を正しい形に変えたいという理由で殺し合いに乗ったと勘違いしています。
 ※村麻紗と罪歌の呪いは、現時点では精霊によって防がれているようです。
 ※村麻紗の呪いは精霊によって防がれるようです。
 ※罪歌はただの日本刀だと考え、黒カードにして詳細を確認せずしまい込んでいるようです。
 ※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。

641 ◆X8NDX.mgrA:2016/03/15(火) 13:03:49 ID:2h9.07uY0
投下終了です。タイトルは後で決めます。

642名無しさん:2016/03/17(木) 20:15:35 ID:AS.QkpsQ0
投下乙です。特に問題はないと思います。

643 ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 01:54:29 ID:3vBKHcMg0
一旦仮投下します

644EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 01:54:57 ID:3vBKHcMg0
「ったく、マジか……勘弁してくれよ」
鼻の良い者ならば潮の香も嗅げるであろう海辺近くの道。
そこに、少女を背負って進むアフロの青年―――ファバロ・レオーネがいた。

「気絶して重くなったガキ背負って情婦みてぇな格好の化け物女から必死に逃げて、やっと一息付けそうな場所が見えてきたってのによ……。
禁止エリアだぁ?そういう重要なことは最初に言えってんだよ」
ひとまず基地で腰を落ち着けようとしていたファバロだったが、放送にて禁止エリアという聞きなれない言葉を聞いて腕輪で調べたところ、なんでも放送の度に禁止エリアが増えていき、参加者が禁止エリアに入ると魂が引き剥がされ死亡するそうだ。

そして運悪く、ファバロの目的地だった基地は禁止エリアに選ばれてしまった。
基地でゆっくり今後のあれこれを考えようとしていたファバロの見通しは狂ってしまったことになる。
せめてファバロ一人ならば放送前に基地に着いたかもしれないが、気絶した人間一人背負っての移動は思いの外時間がかかってしまった。

「いつの間にか聖女さんも死んじまってるしよぉ……。
さっきの化け物女といい、どんだけ化け物が溢れてるんだっての」
悪魔ともサシでやりあえるような聖女、ジャンヌ・ダルクも死んでしまった。
先ほどの放送で呼ばれなかったにも関わらずマスターカードの情報では死亡扱いになっていることから、自分が聞き逃した一回目の放送の時点で死んでいたということになる。

「だからよ……俺らみたいな真っ当な人間は、いつくたばっても不思議じゃねぇよな」
アザゼルのような悪魔や、アーミラのような半神半魔に比べれば、普通の人間の力は取るに足らない小石のようなものだ。
一応自分達はかつてそのアザゼルに勝利したが、その勝利も神から賜った武器を使う聖女の力あってこその勝利だ。

「そういやさ……お前も成長したよな。
視野が狭くて後ろの橋にも気づかなかったようなお前がよ、あの時は後ろから聖女さんが来てるのに気付いたんだろ?
大したもんだよ」
あの時は自分たちの武器が全く有効打にならず、ジリ貧状態だった。
正直もうダメかと覚悟したが、まさか頭の固いあの男が機転を利かして戦うとは夢にも思わなかった。


「なぁ、カイザル……!」
いくら前より成長しても、馬鹿正直な本質は変わらない。
どこぞの悪人にいいようにあしらわれたのかもしれないし、化け物に敵わずに殺されたのかもしれない。
どちらにせよ、こういう悪意の溢れる場で長生きできるタイプの人間ではなかった。

そもそも、賞金稼ぎに身を窶した時点で、いつ死んでもおかしくなかったのだ。
そしてカイザルが賞金稼ぎになったのは……ファバロの父親のせいだ。
裏で悪魔が絡んでいようと、ファバロの父がカイザルの父を襲ったという事実は変わらない。
そのせいでリドファルド家が没落したという事実は変わらない。

「ちくしょう……!」
陰鬱な気持ちを抱えながら、ファバロは北へと進む。
基地が禁止エリアになった以上、来た道を戻るか北上するしかないが、まだ先ほどの女が近くにいるかもしれないのに来た道を戻るなど自殺行為だ。
とにかく進むしかない……のだが、その足取りは遅い。
基地以外に近場で休めそうな場所といえばガソリンスタンドだが、残念なことにファバロはガソリンスタンドがどんなものか知らない。
ならば少し遠くまで足を伸ばすかと言えば、長々と少女を背負って行動すれば、その分危険も増す。

「ああ、重いなちくしょう……いっそ捨てちまうか?」
そもそも、こんな小娘一人のために自分が苦労する必要などないはずだ。
確かに戦力として見れば有用だが、逆に言えばそれだけだ。
労力に対しての見返りが小さすぎる。
そもそもこの娘がアーミラのようなナイスバディでもないのに重すぎるのだ。
まぁ、重いと言っても比較対象がそのアーミラと―――

「お前しかいないわけだがな、リタ!」
「……何の話よ?」
「こっちの話だ」



(まったく、運が良いのか悪いのか……)
殺し合いに乗って早々に知り合いと遭遇してしまったリタは、舌打ちの一つでもしたい気分になった。

リタは殺し合いに乗っているとはいえ、表立って動く気はなかったのだ。
本当に繭に願いを叶えるような力はあるのか。
囚われたカイザルの魂を救い出すことはできるのか。
その確証が持てるまでは、行動は下準備に留めるつもりだった。

645EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 01:56:56 ID:3vBKHcMg0

というのも、もし繭の言っていることがハッタリだった場合には、繭を打倒しようとする者たちに混ざるつもりだからだ。
あまり派手に暴れまわると、いざ他の参加者と合流しようとした時に不利益が起こることは確実だ。

あくまで下準備。
確実に殺せると判断した相手にしか手を出さない。

では、この男―――ファバロ・レオーネとその男に担がれている少女は確実に殺せるだろうか?

まずは担がれている少女。
重傷を負っている上に気絶しているので、その気になればココアでも殺せるくらいの存在だ。
計算に入れる必要すらない。

しかし、ファバロはそうもいかない。
この男は歴戦の賞金稼ぎであり、カイザルとアーミラもいたとはいえ自分のけしかけたゾンビを危なげなく殲滅したこともある。
決して勝ち目がないわけではないが、確実に殺せるかと言われれば疑問が残る。
疑問が残るのだが……。

「リタ、お前―――やる気か?」

気付く頃にはもうyou're in a coffin
it's too late if you want to do something




ファバロがリタが殺し合いに乗っていることに気付けたのは何故か?
リタのカイザルへの入れ込み具合を元々知っていたこともある。
アーミラとカイザルがアザゼルに攫われた時には一も二もなく助けだそうとしたし、アザゼルとの会話から一時休戦の取引を持ち掛けてまで自分たちの身を守ろうとしたらしい。
そんなリタがカイザルの死を知って、外道へと堕ちるのを想像するのは容易だった。

だが、一番の要因は……目だ。
かつてアーミラに散々自分の目が嘘を付いている人間の目かと嘯いてきたが、実際良からぬことを企んでいる人間というのは目に移る。
今まで賞金稼ぎとしてたくさんの人間のクズの目を見てきたファバロは、リタの瞳に卑しい光が宿っている事を見逃さなかった。

「ええ、そのつもりよ」
ばれた以上、下手に取り繕う必要もない。
リタはあっさりとその事実を認めた。
分かってる。
こんな馬鹿げた殺し合いに乗るなど、鬼畜にも劣る所業だ。
今ならまだ引き返せる。
まだ誰も傷つけていない今なら。

「悪いけど……カイザルの魂を救うことにしたの」
だけど、それはできない。
村が魔獣に襲われ、自分一人だけ生き残った。
それを認められなくて、死人に鞭打ってまでくだらない家族ごっこを続けた。

「けっ、所詮賞金首だったってことかよ」
今引き返したら、自分はもう進めない。
二百年も引きこもっていた自分と―――カイザルに救われる前の自分と同じになってしまう。
そんなのは御免だ。

ファバロは背負っている少女に何か話しかけながら慎重な手つきで地面に降ろした。
その間も、決してリタから目を離さない。
ファバロはああ見えて意外とお人よしな所もある。
気絶して足手纏いになった少女も、なんだかんだ言いながら見捨てるようなことはしないのだろう。

646EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:00:09 ID:3vBKHcMg0

(アスティオンは戦闘には使わない方が懸命ね……
機械のくせに意思があるみたいだし、最悪手を貸してくれなくなるかもしれないわ)
アスティオンは支給品だが、人殺しをする時に使われて良い気分はしないだろう。
いざという時に飼い犬(猫だけど)に手を噛まれたら目も当てられない。
バトルロワイヤルという長期戦において、一時的なハイリターンと恒久的なローリターンのどちらが重要かは言うまでもないことだ。
白のマスターカードによればアスティオンは攻撃補助をしないが、ダメージ緩和と回復補助能力に特化しているらしい。

これでもし戦闘に特化していたらもっと迷ったかもしれないが、戦闘で使用する際の利益と戦闘以外で使用する利益はトントン。
ただ戦うだけなら相手を無力化した後にカードに戻してから殺せば済む話だが、今回は相手が悪い。
気絶した少女を庇う男と戦っていれば、どう取り繕ってもこちらが悪玉だとバレてしまう。
とりあえず今回は、戦闘後の回復に使うに留めなければならない。
と、なれば……

「……ファバロ、手を組むつもりはないかしら?」
「なにぃ?」
「私だって、できればあんたを殺したくはないもの。
あんただって、カイザルとアーミラを助けたいでしょ?」
リタが行ったのは、勧誘。
勝てるかどうか五分五分の上、心情的にも戦いたくない相手に対する行動てしては妥当な所だろう。

「へっ、俺が?あいつらを助けたいだって?
俺に呪いをかけやがった悪魔の女と、年中俺の命を狙ってる商売敵をか?」
「前もそんなこと言ってたけど、結局賞金稼ぎの腕輪を壊してまで助けにいったじゃない」
彼はお人好しだ。
憎まれ口を叩いたり、良からぬことを企んだりはしても、根っこの所は善人なのだ。
だから―――

「はっ、お断りだ」
こう言われることは、心のどこかで分かっていたかもしれない。


「俺は俺のために生きる」
この殺し合いが始まってすぐ、ファバロはアザゼルと遭遇し、少し話をした。
その時の葛藤を思い出す。
復讐に縛られた生き方なんざ真平ゴメン。
ならば、生かすための生き方はどうか?
アザゼルには教えてやらなかったが……リタには少しだけ胸の内を明かしてもいいかもしれない。

「他人を蹴落としてまで誰かを助けるような生き方ができるんだったら、俺はとっくに親父の後を継いで義賊にでもなってるっての」
結局、ファバロ・レオーネとはこういう男だ。
他人を頼りにしない、他人に寄生しない。
自分を守れるのは自分だけ。
だから、自分らしく生きられる。
友の死に悲しみはしても、畜生にも劣るような所業に手を染めてまで助けたいとは思わない。

「じゃあ、優勝する気……はないわよね、わざわざそんなお子ちゃま背負ってたくらいだし」
「別に義理人情だけで助けたわけじゃねぇよ……ま、殺し合いに乗らない程度の義理人情はあるつもりだけどな」
軽口を叩くファバロだが、その殺し合いに乗っているリタからすれば笑えない話だ。
ここまでくれば、流石にリタも腹をくくる。
リタとファバロは戦うしかないのだ。
しかし、悲壮感はない。賞金首と賞金稼ぎが結局、戻る所に戻っただけ。

「仕方ないわね……!恨むんじゃないわよ!」
カイザルの剣を構えて突っ込む。
彼我の距離は20メートル足らず。
剣を持ちながらでも、全力で走れば数秒で詰められる距離だ。
自分は訓練など受けていないし、型もまるでなっていないデタラメな斬りつけ方しかできない。
それでも、杖でスケルトンをバラバラにできる程の力によってそこそこの脅威となる。
ゾンビとはいえ、銃撃をモロに喰らえば無事ではすまない。
剣を両手で水平に構えて防御の構えを取りつつ、横に平行移動して可能な限り銃弾を避ける。

647EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:01:16 ID:3vBKHcMg0

(やはり、簡単にはいかないわね……
でも、あの妙な武器、火力自体はそれほどでもないみたいね)
見たこともない武器だが、戦闘の後にアスティオンで回復できることも考えれば多少の無茶は聞く。
自分の獲物が剣である以上、近づかなくては始まらない。
腕を飛ばせば一応遠距離攻撃も可能だが、飛ばした後にしばらく片腕で戦わなければならなくなるので却下。
多少のダメージは覚悟して突き進もうとするリタ。
しかし―――

「おらよっと!」
戦闘においては、ファバロが一枚上手だった。
なんとファバロは、自分からリタとの距離を詰め、水平になった剣の切っ先側に身を晒したのである。

「!」
慌てて切っ先を突き付けるが、ファバロの予想外の行動に意表を突かれ、動きが僅かに鈍る。
さらに言えば、突きというのは難しい技だ。
右手に少しでも力を入れてしまうと、太刀筋が簡単にぶれてしまう。
動きも鈍く、太刀筋もぶれた突きを躱すことなど、ファバロにとって朝飯前だった。

斜めに袈裟切りするならば剣の腕が悪くても腕力さえあればかなりの脅威となったであろう。
ゾンビであるリタならば真横、それも切っ先側に回り込まれてしまっても人体の構造を無視して腰を曲げ、袈裟切りを放つことだってその気になれば可能だった。
しかし咄嗟の行動故に、袈裟切りではなく出の早い突きを放ってしまった。

どこまで計算していたかは分からないが、自分は突きを放って腕が伸びきってしまって隙だらけなのに対し、ファバロは身を捻って剣を躱したことで、完璧な体重移動をしている。
そのまま身体のバネをフルに使って繰り出してきた蹴りを、リタは躱すことができなかった。

「ガハッ!」
元々、ファバロとリタにはかなりの体格差がある。
蹴りの一発だって脅威だ。
踏ん張りきれずに後ろへと吹っ飛んでいくリタ。
ファバロは糸巻き型の手榴弾のピンを抜き、容赦のない追い打ちをかける。

「く……!少しは死人を労わりなさいよ。これだから若造は」
軽口を叩きつつバックステップで手榴弾を躱すも、爆風に煽られて身体が熱い。
ゾンビは炎に弱いというのが通説だというのに容赦のないことだ。

(まずいわね……結局、気絶してるお子様とも大分離されたわ。
利用できるかと思ったのだけど、上手くいかないものね)
この攻防によって自分は後退せざるを得なくなり、気絶している少女との距離も離されてしまった。
ファバロにとっては一石二鳥の攻防だったが、自分にとっては骨折り損のくたびれ儲けだ。

と、爆発による煙の中からファバロが突っ込んでくる。
横薙ぎに剣を振るうも、ファバロはナイフで剣をいなしながら懐に潜りこんできた。
近付かれすぎるとナイフの方が強い。
慌てて距離を取ろうとするも、ファバロに右手を掴まれる……と思ったら、次の瞬間には視界が反転し、背中に強い衝撃が走る。

648EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:02:10 ID:3vBKHcMg0

背負い投げ……というには少々大味すぎるが、ファバロが行ったのは確かに背負い投げだった。
掴んだ右腕を振り上げ、そのまま反対側の地面に叩きつける。
普通は右腕だけ掴んで背負い投げなどできない……が、リタは普通ではない。
かつてアザゼルに捕まったアーミラとカイザルを助けようと、アザゼルの空飛ぶ城グレゴールに突入したことがある。
その時にリタを背負ったことがあるファバロは、リタの体重が異常なまでに軽いことを知っていた。
故にファバロは大味な背負い投げを行う大胆な行動に移れたのである。

「ぐぁ……!」
それでも、リタはカイザルの剣を決して手放さない。
必ず返すと誓った、この剣だけは!

起き上がりざまに剣を振るうも、ファバロは飛び退って簡単に避ける。
そのまま剣を支えに起き上がり、ファバロを睨み付ける。

「おー、怖い怖い。でもな、一つ忠告してやる。お前の欠点はカイザルと同じだ。とにかく視野が狭い。
もっと周りに目を向けないとな」
「……?何を言っているのかしら?」
「俺がなんでわざわざお前に背負い投げしたんだと思う?」
急に語りかけてきたファバロに対して訝し気な表情を作るリタ。
ファバロは勝ち誇ったようなムカつく顔をしたかと思うと―――


「今だ緑子ぉおおおお!!」
「う、うわあああああ!」

「な!?」
しばらくは気絶したまま動かないと思っていた少女の方向から、突如鬨の声が響く。
まずい。
今自分は少女にガラ空きの背中を晒している。
咄嗟に後ろを振り返るが―――そこには誰もいない。
否、厳密に言えば離れた場所に少女がいるのだが、その少女は依然として気絶したままである。
そして鬨の声は、少女の近くに置いてあるカードから響いている。

「かかったなアホが!」
罠だ、と気付いた時にはもう遅い。
既にファバロは光る剣―――ビームサーベルを取り出して目前に迫っている。
咄嗟に剣で防御するが、ビームサーベルはまるでバターを切るかのように剣をスライスする。

(カイザルの剣が……!)
必ずカイザルに返すと誓った剣が、あっさりと両断された。
そのことにショックを受ける暇もない。
返す刀でリタを両断しようと迫るビームサーベルをなんとか避ける。
しかし、その避け方は先ほどファバロがしたような次に繫げる避け方ではない。
足さばきも体重移動もめちゃくちゃな、避けた後に隙だらけになるような避け方だ。

「まさか、『あの時』に……!」
絶体絶命のピンチの中、先ほどの罠のからくりに気付くリタ。
後から思い返せば、とても単純なことだった。

「察しが良いな、そう、『あの時』だよ」
背負った少女を地面に降ろした時、ファバロは何か呟いていた。
てっきりその少女に語りかけていると思ったのだが……
実はその時にリタからは見えないように緑子のカードを取り出し、合図をしたら鬨の声をあげるように指示していたのである。
やけに慎重な手つきで地面に降ろしたのも、多少説明に時間がかかっても不信感を与えないため。
リタは最初から、ファバロの術中にはまっていたことになる。

「ま、今さら気付いたって遅いけどなぁ!」
無理な避け方をして体制の崩れたリタにトドメを刺すべく、ファバロはビームサーベルを振るう。
剣をバターのようにスライスするあの光の剣に貫かれれば、いくらゾンビとはいえ致命傷だ。
元々二百年前に潰えるはずだった命だ。今さら死ぬのは怖くない。
だが、今ここで自分が死んだら、カイザルはどうなる。
自分は二百年もの間、寂しさに耐えられずにたった一人でくだらないおままごとを続けた。
それでも嫌になるくらい苦しかったというのに、カイザルは寂しさを紛らわすおままごとすらできずに、永遠に―――

「う、」
そんなことはさせない。
繭に本当に願いを叶える力はあるのか、それはまだ分からない。
それでも、この男は今殺さなければならない。
殺し合いに乗っていることがばれた上、自分の情報をばら撒かれたりしたら、せっかくの幼い見た目とゾンビの特殊性の利点が薄くなってしまう。

「うああああああああああああああああ!!!」
そして何より、何より自分自身にけじめを付けたい!
最初にファバロを殺せれば、自分はもう絶対に迷わない。
残った知り合いは敵のアザゼルと胡散臭いラヴァレイのみ。
腐った行動を心情的に阻害するものはなくなる。
我ながら似合わない叫び声をあげながら、最後の意地で左腕をビームサーベルへ突き出す。

649EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:03:25 ID:3vBKHcMg0


ビチャリ、という嫌な音が聞こえた
リタの左腕が切断された音……ではない。
切断されたリタの左腕から飛び出た液体が、ファバロの顔面にかかった音だ。

「んな!?」
流石のファバロもこれは予想外だったらしく、ビームサーベルを振りぬこうとしていた動きが一瞬止まった。
その一瞬の隙を逃さず、リタは右腕の腕輪でビームサーベルを抑えにかかる。
SFチックな音を立てながらも、ビームサーベルは腕輪を切断できない。
ファバロの攻撃を防ぎつつ、隙を作る。
ゾンビの左腕一本にしては十分すぎる対価だ。

リタの左腕から飛び出した液体とは、ガソリンである。
そう、リタはカイザルの遺体を見つけてから、すぐには南下せずに近くのガソリンスタンドへと立ち寄ったのだ。
ガソリンスタンドにて発火性も強く、燃料としても非常に優秀な液体を見つけたリタはなんとかその液体を持ち運ぼうとするも容れ物を持っていなかった。
そこで彼女が選んだのは、自分の体内にガソリンを入れるというゾンビならではの行動だった。

自分の左腕を外し、ホースでガソリンを注入。
右腕も外そうとしたが、こちらは何故か外れなかった。
おそらく、右腕を腕輪ごと簡単に取り外せるリタに対しての繭の制限だと当たりを付けたのだが、そこまでするということは当然腕輪自体にも細工を施しているだろう。
軽い耐久テストをした結果、腕輪はかなり頑丈な素材で作られていることが判明した。
そう、いざという時の盾にもできるくらい頑丈な素材で。

ここに来て、放送までの空き時間を有効に使ったリタと無為に使ったファバロの差が如実に現れた。
殺し合いに乗り、一人で行動したが故に気軽に探索へ動きだせたリタ。
殺し合いに乗らず、気絶した少女を背負ったが故に行動範囲が狭まったファバロ。
道徳的にはファバロが善でリタが悪だろうが、お生憎様リタはゾンビだから道徳など気にかけない。
おそらくリタにとって最大かつ最後であろうチャンスが生まれたことの方が重要だ。

懐に隠し持っていた元々は龍之介の支給品だったブレスレットを取り出す。
龍之介本人の腕輪ではなかったせいか曖昧な情報しか記されていなかったが、白のマスターカードによれば強力なマジックアイテムらしい。
こんな曖昧で不確かな手段に頼るなんて、自分も焼きが回ったものだ。


焼きが回ったついでに、もう一つ柄でもないことをやってみよう。
この男との決着に相応しい台詞がある。
それをカイザルへの手向けとしよう。
気の利いた台詞の一つも出てこないが、そんなものは必要ない。
さぁ、叫ぼう―――あの騎士のように。


「ファバロォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」



(のりピー……!)
神楽が目を覚まして最初に思い浮かべたのは、あの白い女にその身を貫かれた花京院のことだった。
しかし、周囲の光景は先程までの放送局ではなく、野外だった。
近くにはファバロが突っ立っている。気絶した自分を助けてくれた後、上手くあの女から逃げられたようだ。
そのことには素直に感謝するが、やはり花京院は助からなかったらしい。
自分があの女に勝てていれば、花京院を早いうちに手当できたかもしれない。
花京院は死なずにすんだかもしれない。

『てめえ、弱すぎんだよ。
何もかも、兄貴の劣化でしかねえ』

『夜兎の本能を抑えようとするあまり、拳が俺に届く前に死んじまってんだよォ!』

あの白い女の言葉と、かつてとある夜兎に言われた言葉が自分の中で重なる。
結局、自分は誰かを傷つけるのが怖い臆病者だ。
血と戦うと言えば聞こえは良いが、いざという時に本気を出せずにむざむざ仲間を殺させてしまった。

(強くなりたいアル……!)
今まで幾度となく思ってきたことだが、今はひと際強くそう思う。
夜兎の血に頼らずとも、みんなを守れるくらい強くなりたい。
あの白い女にも、馬鹿兄貴にも負けないくらいに……強く。

650EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:04:25 ID:3vBKHcMg0
「ファバロ!」
急に耳元で響いた声にハッと我に帰る。
何故か自分のすぐそばに遊○王みたいなカードが置いてあり、その中で緑子がファバロの名を叫んでいる。

(そもそも、あのハナ○ソ頭はさっきから突っ立って何をやってるアル……え?)
突っ立ったまま動こうとしないファバロに痺れを切らして首を伸ばしてファバロの方を覗き込んだ神楽は、絶句する。
夜兎である自分すらも霞む程異常なまでに青白い肌をした少女が、短剣をファバロに突き刺していた。


ドクン、と心臓が波打ち、血が滾る。

「やめろ……」
ファバロは動かない。
ただ、少女にされるがままになっている。
何をやってるのだと緑子が叫ぶも、ファバロはまるで動かない。

「やめろ……!」
神楽は動けない。
白い女にやられた傷のせいだ。
何をやってるのだと自問するも、身体はまるで動かない。

『どいつもこいつも、やれ意地だ、救いだと。
地獄でやってろ』

『人を傷つけたくない、人を殺したくない、大層立派な考えだ。
このぬるま湯地球ではな』


「やめろぉおおおおおおおおおおおおお!!」



グシャリ、という嫌な音がした。
リタが折れたカイザルの剣でファバロを突き刺した音……ではない。
気絶していた少女が突如起き上がり、リタを殴り飛ばした音だ。

その人ならざる腕力によってありえない程吹き飛ばされたリタは、何が起こったのか理解できなかった。
それはそうだろう。
重傷を負っていた少女が急に起き上がるなど予想できるはずもない。
起き上がった少女が常識外れの腕力を発揮してくるなど予想できるはずもない。

(一体……何が……)
なんとか状況を把握するため起き上がろうとするも―――
次の瞬間、肩を踏みつぶされた。

思わず悲鳴をあげるリタだが、目の前の獣は止まらない。
執拗なまでに何度も何度も、リタの肩を、足を、腕を、腹を踏みつけ続ける。

(見誤ったわね……!ファバロは後回しにして、どうにかして先にこのお子様に対処しておくべきだったわ)
どうせ気絶しているから計算に入れる必要もないと侮っていた少女は、手負いの獣だった。
情け容赦ない、夜の兎が解き放たれた。

こうなっては四の五の言っていられない。
虎の子のアスティオンを使おうと黒カードを取り出そうとして―――腕を蹴り飛ばされた。
嫌な音を立てながら千切れた右腕があらぬ方向へと飛んでいく。
左腕は先ほどのファバロとの戦闘で使い物にならなくなった。

両腕を失い、目の前には獣……いや、化け物がそびえ立つ。
ああ、自分は死ぬんだな、と他人事のように思う。
カイザルの魂を救うこともできずに、ただ無為に死ぬ。
結局、外道は何をしても失敗するようだ。

そう、自分はただの外道だ。
ネクロマンサーとして、ゾンビとして、人殺しに乗った危険人物として。
真っ当な人間というには、余りにも道を踏み外しすぎた。
それでも、ネクロマンサーとしての、ゾンビとしての、危険人物としての生き方は―――全部ひっくるめて自分の性。

(腕輪ごと腕が飛ばされたから捕まらない……なんてお気楽なことにはならないわよね)
これから殺されるというのに、妙に晴れやかな気分だ。
誰も手にかけないうちに死ねるのは、それはそれで悪くないようにも思う。
カイザルの魂を救えずに死ぬのは心残りだが、逆に言えばそれぐらいしか無念はない。
自分は長く生きすぎた。
そろそろ年貢の納め時だろう。


(カイザル、魂が囚われた先で―――私はあんたに呼びかけ続けるわ。
向こうで喋れるかは分からないし、喋れても届かないかもしれない。
それでも、ずっとずっと、呼びかけ続けるわ。
だから、もし私の声が聞こえたら―――ちゃんと返事してよね)

化け物の足が振り上げられる。
狙いはリタの首だ。

(向こうに行ったら、ちょっと今までとは違う私になってるかもね。だって―――)

足で首を撥ねられた。
死ぬのは二度目だが、どうにも慣れないものだ。

(死んだらもう、私はゾンビじゃないから)

【リタ@神撃のバハムートGENESIS 死亡】

651EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:05:01 ID:3vBKHcMg0


我に帰ったファバロの目に移ったのは、立ち尽くす神楽と変わり果てたリタの姿だった。
別にリタが死んでるのはいい。
思う所がないと言えば嘘になるが、リタは殺し合いに乗っていた。
普段より生き死にをドライに今のファバロにとってみれば、死んでも仕方ない存在だと割り切れる。

「おい、神楽……」
だが、神楽の様子がおかしい。
思わず声をかけたファバロは、ゆっくりと振り返った神楽の目を見て絶句する。
目が完全にイッている。

思わずファバロが後ずさった時―――
神楽は声にならない叫びをあげ、北へと走って行ってしまう。

「ちょ、おい……!いってぇ……!」
反射的に呼び止めようとしたファバロだったが、急に腹部が痛み出してきた。
見ると、血が滲んでいた。

「リタの奴、また妙なマジックアイテム使いやがったな。
……なぁカイザル、お前が助けてくれたのか?」
リタのブレスレットによって意識が飛び、抵抗もできずに刺されたファバロが何故こうも元気なのか?
それは、リタがカイザルの剣を使ってファバロにトドメを刺すことにこだわったからである。
ビームサーベルによって壊れたカイザルの剣は、殺傷力が著しく低下していた。
騎士として剣でファバロと決着を付けようとし続けたカイザル。
その姿を知っているが故に、リタは壊れていてもカイザルの剣でファバロを殺すことにこだわった。
つまり、カイザルに助けられたと言っても過言ではない。

「ねぇファバロ、神楽を追いかけないと!」
「あー?」
すっかり忘れてたが、近くには緑子がいたのだった。

「あんな目がイッてる女、わざわざ追いかけてどうすんだよ」
「ファバロ!神楽は君を助けるためにああなったんだよ!」
確かに、リタに殺されかけた自分を助けたのは神楽だ。
だが、明らかにあの神楽はまともではない。
下手に刺激してなにかの拍子にこっちにまで被害が飛び火しないとも限らない。
限らないのだが―――

「ねぇ、ファバロ!」
「だぁもう分かったよ、追いかけりゃいいんだろ追いかければ!」
結局、ファバロ・レオーネとはこういう男だ。
なんだかんだ言いつつ根っこの所はお人よしである。

「そこらへんにちょうどリタが持ってた医療道具があることだし、ちょっくら応急処置したら神楽を追いかけるか」
腹部を押さえつつ近くに散らばったリタの持ち物を回収しながら、ファバロは思う。
これでよかったのかと。
本気で説得すれば、リタは殺し合いに乗るのを止めてくれたかもしれない。
そうすれば死なずにすんだかもしれない。

そんなたらればを考えながら、リタの遺品を回収し続ける。
一瞬、リタの死に顔でも見てみようと思ったが……やっぱり止めた。

明日へとそよぐ風の中、心の中には、ぽっかりと穴が空いたようだった。

【C-2とC-3の境目/一日目・日中】

【ファバロ・レオーネ@神撃のバハムート GENESIS】
[状態]:疲労(大)、腹部にダメージ(小)、精神的疲労(中)
[服装]:私服の下に黄長瀬紬の装備を仕込んでいる
[装備]:ミシンガン@キルラキル グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)
    黒カード:黄長瀬紬の装備セット、狸の着ぐるみ@のんのんびより、小型テレビ@現実、、カードキー(詳細不明)、ビームサーベル@銀魂
[思考・行動]
基本方針:俺は俺のために生きる。殺し合いに乗る気はねぇ。
   0:リタの遺品を回収し、傷の応急処置をする。
   1:神楽を追う。
   2:カイザル……リタ……。
   3:『スタンド』ってなんだ?    
   4:寝たい。
 [備考]
※参戦時期は9話のエンシェントフォレストドラゴンの領域から抜け出た時点かもしれません。
 アーミラの言動が自分の知るものとずれていることに疑問を持っています。
※繭の能力に当たりをつけ、その力で神の鍵をアーミラから奪い取ったのではと推測しています。
 またバハムートを操っている以上、魔の鍵を彼女に渡した存在がいるのではと勘ぐっています。
 バハムートに関しても、夢で見たサイズより小さかったのではと疑問を持っています。
※今のところ、スタンドを召喚魔法の一種だと考えています
※白のマスターカードによって第一回放送の情報を得ました。
※C-2とC-3の境目にリタの持ち物が散乱しています。

652EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:05:48 ID:3vBKHcMg0


鎖が外れ、夜兎の本能に呑まれた神楽。
ファバロの怯えたような目を見た瞬間、本能はファバロから逃げるかのように身体を北へと動かした。
彼女は知らない。
本能に呑まれた自分をかつて止めてくれた少年は、もうこの世にいないことを。
彼女は知らない。
自らの進む先に、大切な仲間の侍や相容れない兄がいることを。

彼女は考えられない。
理性と知性の吹っ飛んだ神楽には、この先に何が待っているかなど―――想像すらできない。

【C-2/一日目・日中】

【神楽@銀魂】
[状態]:暴走、疲労(中)、頭にダメージ(大)、胴にダメージ(大)、右足・両腕・左足の甲に刺傷(行動に支障なし)
[服装]:チャイナ服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らないアル
   1:………………(ひとまず北上する)。
   2:神威を探し出し、なんとしてでも止めるネ。けど、殺さなきゃならないってんなら、私がやるヨ。
   3:銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラ、マダオと合流したいヨ
[備考]
※花京院から範馬勇次郎、『姿の見えないスタンド使い』についての情報を得ました。
※第一回放送を聞き流しました
どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします

653EXiSTENCE ◆45MxoM2216:2016/03/21(月) 02:07:13 ID:3vBKHcMg0
仮投下終了です。
長くなってしまったので、本投下時には前後編にするかもしれません。

何か問題点などございましたら、ご指摘お願いします。

654名無しさん:2016/03/21(月) 10:44:26 ID:5PMyP8X60
乙です
互いの駆け引きが、それぞれらしい心理描写光る話でした
腕輪やカードについて言及したのも良かったです
緑子ルリグの中で一番活躍してるなあ、リタの魂が吸い込まれたのを見ていたら何かヒントを掴めるかも?
本投下に問題はないと思います

655 ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 19:58:25 ID:BdiowsKo0
仮投下します。

656悪意の種、密やかに割れて ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 19:59:40 ID:BdiowsKo0

B-7にあるホテル、その一室。
東側に窓があるその部屋は既に日光が差し込む危険もなく、カーテンが閉められている。
かといって室内の照明器具が点いている訳では無く、結果として部屋の中は、普通の人間が辛うじて活字を読めるか程度の明るさで満たされていた。
薄暗闇に包まれたそんな部屋の中で、唯一ひっそりと自ずから光を放っているものが一つ。
ありふれたサイズの液晶画面であるそこに反射する姿は、先程のシャワーのお蔭で殺し合いの場であるにも関わらず清潔感に溢れる一人の男。

帝王DIO、その人だった。





あれから。
麻雀に快勝し気分を良くしたDIOは、尚も他の娯楽で暇を潰そうとして、娯楽場の案内図を見に行こうとした。
しかし、実際に案内図を見て―――――正確にはその横にあるホテルの案内図を見て、より有意義な時間の過ごし方を発見した。

―――――ホテル内の、綿密な探索。
もしも敵が強襲してきた時、そしてその敵が万が一にでも日光というDIOの弱点を把握し、外に面する場所へ誘導するなどといった姑息な手を使ってきた場合。
こちらも流石にホテルの中を、単に地図で掴んだ概要以上にしっかり把握しておかなければいけない。
吸血鬼としての身体に『世界』という最強のスタンドを持つ自分だが、あのクソッタレの侍共のように、必死に小さい頭を捻って考え付いたなけなしの策が、「偶然」このDIOの域に達することが「万が一にでも」存在するかもしれない。
だが、帝王が完全に地の利を理解しているのであれば、そんなちっぽけな偶然すらも水泡と帰す。
そう、これはこのDIOの勝利をより盤石にし、虫ケラごときがあろうことか二度も勝利するような、間違ってもあってはならない事態を防ぐもの。

DIOの持論の一つに、「恐怖を克服する為に生きる」というものがある。
名声、支配、金、友人―――――それらのものは全て人間が生きている上で安心するために手に入れようとする、という論。
DIOが今しているのは、まさに今「万全を期す」という形で安心を得るという行為だった。

「ふむ、ここは…」

DIOが開いた扉は、そのほかの部屋のような豪奢さがなく、シンプルにデザインされた机が並ぶ事務室。
整理整頓がきちんとなされている―――――というより、机の奇妙なまでの小奇麗さや、ペン立てに入った使用した形跡がほとんどないように見えるペンを見るに、実際には一回も使用されていないのだろう。

「つまりは、このDIOが初めに使うことができるということか」

東向きの窓に念入りにブラインドとカーテンを掛け、部屋を物色しようとして、少し奇妙な事に気付く。
どの机にも、テレビに似た画面が嵌め込まれた、見慣れないものが並んでいる。
しかし、DIOが知るテレビはこんなに薄くないし、そもそも一つあれば十分といった代物の筈だ。
それがいちいち個人の為に用意されているというのは奇妙だし、そもそも娯楽である筈のテレビがこんなに遊びが無いように見える場所に大量に設置されているというのもおかしな話だ。

「面白そうだな…調べてみるとするか」

そう言って机に近寄り、慎重にディスプレイを調べてみる。
間もなく裏面にあるコードが、下にある何やら大きな箱のようなものとつながっていることがわかり、興味の対象はそちらに移る。
手で触ること数十秒、そちらにランプが併設された小さなボタンがあることを知り、迷いなくそのボタンを押しこむ。

―――――途端、先程まで暗転していた液晶が輝きだした。

やはりテレビのようなものだったのか、と思うDIOの前に現れたのは、しかし彼の興味を引くには十分な一文。




『殺し合いサポート専用パーソナルコンピュータ システム起動』




という、そんな一文だった。

657悪意の種、密やかに割れて ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 20:00:11 ID:BdiowsKo0

「ほう……?」

疑問符と好奇心が同時に顔を擡げる。
薄暗闇の中にぼんやりと浮かぶディスプレイを愉快そうに眺める。
恐らくはテレンスがやっているゲームを司るという、『コンピュータ』というものだろう。
触れた事はなかったが、幸いにもこういった物を扱った事が無い参加者への気遣いか、取り扱いを説明するマニュアルが立ち上がるようになっていた。
もちろんスキップも可能となっており、分かる人間も気分を悪くしない仕様だ。

「随分と親切だな」

小さく呟き、一人になると口が軽くなっていけないなとふと思う。
そして同時に、口元に僅かな笑いが浮かんだ。
無条件な親切―――――そんなものを、こんなに悪趣味な殺し合いを開いた者共に求めるなどもっての外だ。
わざわざ殺し合いのサポートとまで書かれているのだ。殺し合いを促進させるためのものだとは容易に想像がつく。
となると、あるのもホテルだけではないだろう。ここ以外の施設にも、恐らくは設置されている筈。
或いは、脱出の為に活用できないかと考える輩もいるだろうが―――――無駄。
もしここに穴があるのならば、主催は態々自分達から弱点を晒しているという事になる。
よっぽどの馬鹿か、或いは何か理由がない限りは、そんなことをやるとは思えない。

そうこうしているうちにパソコン操作のノウハウもその大部分の説明を終え、マニュアルが表示されていたウィンドウが閉じる。
整理されたレイアウトや専門用語を用いない解説からなる説明はそれなりに分かりやすく、全くパソコンを弄ったことのないDIOも流し見で充分内容を理解できた。
そうして彼にも一通りこのパソコンの扱い方が分かったところで、それまで白塗りだった画面に一文が現れた。
それは、これまでの解説のようなポップな自体ではなく、最初に殺し合いサポート云々と書かれていたものと同じような印象を受けるようなもの。

「『白カードを提示してください……』か」

白カード、というのは、この忌々しい腕輪に取り付けられたこれの事だろう。
てっきりただの首輪代わりかと思ったが、なるほど本人認証にも使えるとは面白い。
どこに見せればいいのかと机を見ると、妙なオブジェのようなものが楕円形の光を出していた。
その中心にカードのような四角が描かれているのを見て、ひとまずそこに腕輪に嵌った白カードを翳してみる。
画面に一本のゲージが現れ、数秒でそれが満たされた後、画面にウィンドウが改めて開かれた。

『認証終了 参加者・DIO』

そんな文字列が浮かび上がり、またその数秒後には通常のデスクトップ画面へと変わる。
表示されていたのは、幾つかのアイコン。
『チャットルーム』、『メール機能』、そして『DIO・個人ファイル』と書かれた一つのフォルダ─────合計四つのアイコンが、画面上に表示されていた。
ざっと

「個人ファイル………なるほど」

その内容は、少し考えれば一瞬で分かる。
恐らくは、DIOのこれまでの行動やらなにやらが記録されているのだろう。
このカードにそれだけの機能があるのかは不思議だが、よく考えてみればその記録が腕輪に残っているという可能性もあったと思い直す。
ともあれ、ここに入っているのは一人の参加者がここまでどうやって過ごしてきたのか、というもの。

658悪意の種、密やかに割れて ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 20:01:04 ID:BdiowsKo0

「見る必要は無いな」

だが、ここにあるものはDIO自身のもの。
如何に時間があるとはいえ、わざわざ見る必要のないものに割く時間はない。
というよりむしろ、そんなに大した事に使えるような情報もないだろう。
その内心は、或いは先の戦闘で慢心により敗北した、そして地下通路で自分の末路を見てしまったという、苦々しい事実を改めて見ることをよしとしなかったというのもあったのかもしれないが─────。

「それより、本題はこっちか」

そんなことを自覚している様子は一切なく、DIOは残る二つのアイコンに交互にカーソルを合わせる。
現在解放されていると思しき二つの機能。
メールはともかく、この『チャット』なるものが何かは全く分からない。
恐らくは海の底で眠っている間に出来た文化の一つだろう。
外界のことについては書籍やエンヤ婆による伝聞だけなので、自分で仕入れた情報といえば深夜にカイロを出歩いた時に目にしたものくらいだ。
ともあれ、チャットというらしきこれの利用価値を確かめないことには話にならない。
二連続でマウスを押す、ダブルクリックというらしい技術を駆使して、『チャットルーム』を開いてみる。
途端に先程と同じようなウィンドウが立ち上がるが、その背景は打って変わって黒塗りのそれ。




M:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』

Y:『私、結城友奈は放送局に向かっています!』

R:『義輝と覇王へ。フルール・ド・ラパンとタマはティッピーの小屋へ』

K:『友奈?友奈なの?私よ、にぼっしーよ』




「………ふむ」

そこにあったのは、アルファベット一文字に続く文字列。
結城友奈や東郷美森、犬吠埼樹は確か名簿にもあった名前だが、果たしてこれはなんだと首をかしげる。
幸いすぐにヘルプがあることに気付き、チャットの仕組みも先と同じように簡単な解説を受けて内容を理解した。
要するに、匿名で情報を流す為のツールという事だ。
余談だが、これはDIO自身には気付きようがないことだが、これはDIO用にカスタマイズされたアカウントの為名簿などと同じようにDIOにも読めるように翻訳もされている。

「情報、か………ホル・ホースが寄越したものがあったな」

危険人物・一条蛍の存在。
それと反対の事を伝えて混乱させるか、と思い立ったが、しかしそれは違うなと首を振る。
対主催を掲げる集団をバラバラにしているのだから、嘘を吐いて信用を上げてやっても自分からそれを壊していく野蛮なタイプなのだろう。
そんな人間の為に態々このDIOが手を煩わせてやる必要性はほんの少しも感じない。

それに、少し気になっている事がある。
このMという人物の書き込み─────『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』。
先程出会ったホル・ホースは、これまでに二人の参加者を殺害したと言っていた。
その二人とは、志村新八と、そして犬吠埼樹。
だが、ここに書き込まれている情報はそれとは食い違うもの。
犬吠埼樹という人物を殺した犯人は、果たしてどちらか。
―――――実際にはこの二人のどちらでもないのだが、それはDIOが知る由もない事実だった。

「ホル・ホースとここの情報、か…」

659悪意の種、密やかに割れて ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 20:02:30 ID:BdiowsKo0

このチャットルームの情報は、お世辞にも簡単に信じられるとは言えない。
何処の誰とも知らぬ人間が書いたものを容易に信じるなど、不用心にも程がある。
しかし、ならばホル・ホースは完全に信用出来る人間かと言われると、こちらもそう簡単に肯定出来はしない。
あの男は良くも悪くも人間的だ。常に強い方に味方し、殺し屋という職業に就きながら己の命に拘る。
その熟練度も並大抵のものではなく、自分を暗殺しようとした時も、常人なら殺気どころかその一挙一動にすら気付かないだろうと言うほどに見事な手際だった。
そんな男が、この殺し合いを生き抜く為に必死で考えを絞らせている―――――そんな時に、帝王と出会ってしまったとするなら。
狡猾な思考を持つ彼は、口から出任せでもどうにか「貢献している」というアピールをこちらに見せつけ、未だに忠誠を誓っているように思わせることで、無事に切り抜けようとしてもおかしくない。
仮にも暗殺者としては逸材だ、このDIOに嘘を吐き信じ込ませるというのもやってのけられないとは言い切れない。
どこか挙動不審な態度も、そう考えれば一応は納得がいく。

「ふむ」

ならば、どうするべきか。
既に先の邂逅から時間は経ちすぎており、ホル・ホースも地下通路からは脱出して地上にいることだろう。
未だに日が沈むには早い時間であり、外に出る事が叶わない身としては追って問い詰めることも出来ない。
一見、この件でDIOが打てる手は存在しないようにも見える。

だが、目の前にあるチャットでならどうか。
これを用いれば、出来ないことは決して皆無ではない。
しかし、かといって不用意な発言をすると、取り消しのできないこのチャットは反対に命取りになりかねない。
慎重に考える事数分、DIOは一つの短い文を流れるように打ち込んだ。


『犬吠埼樹を殺したのはホル・ホース』


思考の末、DIOが最善手として選んだのはその文章だった。
この一文、単純なように見えて面白い効果を齎す可能性があると彼は睨んだのだ。

先程の説明で、イニシャルが表示されることは既に分かっている。
しかし、DIOと同じ「D」を持つ参加者はもとより参加すらしていない。
となると、承太郎や先程出会った侍たち、更には死亡した花京院やポルナレフからDIOについての情報を得た者達は、当然このイニシャルには警戒する筈だ。
例えば、『ホル・ホースは信用できる』という一文なら、きっとホル・ホースに対する警戒は高まるだろう。
だが、その内容がこれならばどうか。
ホル・ホースについての人物評は、恐らくはDIOと同じく伝わっている事だろう。
そして、それならば「わざわざ手下が信用ならないという情報を流すのか」という疑心暗鬼に勝手に陥ってくれる可能性が高いと言える。
承太郎などは、「ホル・ホースがDIOを怒らせた」なんて風に受け取ってくれる可能性すらある。
無論、承太郎たちと何の関わりもない人間にはホル・ホースは警戒の対象として見られるだろう。
だが、それはそれでただ単に根も葉もない噂にしかなり得ない。
東郷美森というもう一人の容疑者が同時に開示されているのだ。暗殺のプロである彼ならば、その程度の疑念があろうと潜り込むのは決して不可能にはなり得ない。
総じて、彼が集団に潜り込もうとすれば、恐らくは「信用しきってはいけないが、かといって無条件で追い払うにも証拠が足りない」程度の信用に落ち着くはず。
その程度の状況ならば、暗殺者である彼は手慣れている筈だ。
もしも彼が未だに忠実な僕であるならば、このDIOの為に人を殺すチャンスはきっと見誤るまい。

660悪意の種、密やかに割れて ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 20:03:15 ID:BdiowsKo0


仮に、の話だが。
もしも、あの男が本当に虚偽の報告をし、帝王を騙そうとしたのならば。
その時は─────惜しい人材だが、次にこのDIOの目の前に現れた時が、奴の命運が尽きる時だ。
せめてもの餞に、もう一度『世界』の能力を見せて葬ってやるのも悪くないか。
そう考えながら、邪悪の化身はにやりと口角を吊り上げた。





─────これは、DIOが気付かなかった、気付きようがなかった事実。
尤も、気付いてもどうしようもなかった事でもある、事実だが。

白カード。
パソコンが個人認証の為に求めたのは、あくまで白カードだけ。
別に、そこにいる人間の白カードを使わなければならないという制約はない。
尤も、カードは基本的に腕輪に嵌め込まれたまま。
遠くにいる人間の白カードを使う事は、基本的には出来ない事だろう。

─────その腕輪を持つ人間が、命を落としていなければ。

つまり、それは。
死者の白カードも、使用が可能だという事だ。

例えば誰かの白カードを持っている、というのならともかく、ホル・ホースへの疑念でテンションが下がる前、麻雀に勝って浮かれていた彼が気付く筈もなかった。
一見利用価値が少ないようにも見える個人ファイルの存在は、この為。
その中に隠されているものが何かは─────未だに明かされず。
パンドラの匣になり得る何十枚ものカードは、開示される時を待っている。



ともあれ。
ラヴァレイという男が蒔いた種は、こうしてゆっくりと育ち始めた。
結実の時は、そう遠くない。




【B-7/ホテル/一日目・日中】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、麻雀に勝ってテンションが高い
[服装]:いつもの帝王の格好
[装備]:サバイバルナイフ@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:主催者を殺す。そのために手っ取り早く他参加者を始末する。
0:さて、この後はどうするかな。
1:夕刻までホテルで体を休める。その後、DIOの館でセイバーと合流。
2:ヴァニラ・アイスと連絡を取りたい。
3:銀髪の侍(銀時)、長髪の侍(桂)、格闘家の娘コロナ、三つ編みの男(神威)は絶対に殺す。優先順位は銀時=コロナ=桂>神威。
4:先ほどのホル・ホース、やはり信用する訳にはいかないかもしれんな。
5:衛宮切嗣を警戒。
6:言峰綺礼への興味。
7:承太郎を殺して血を吸いたい。
8:一条蛍なる女に警戒。セイバーやヴァニラ・アイスと合流した時にはその旨も一応伝えてやるか。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも花京院の肉の芽が取り除かれた後のようです。
※時止めはいつもより疲労が増加しています。一呼吸だけではなく、数呼吸間隔を開けなければ時止め出来ません。
※車の運転を覚えました。
※時間停止中に肉の芽は使えません。無理に使おうとすれば時間停止が解けます。
※セイバーとの同盟は生存者が残り十名を切るまで続けるつもりです。
※ホル・ホース(ラヴァレイ)の様子がおかしかったことには気付いていますが、偽物という確信はありません。
※ラヴァレイから嘘の情報を教えられました。内容を要約すると以下の通りです。
 ・『ホル・ホース』は犬吠埼樹、志村新八の二名を殺害した
 ・その後、対主催の集団に潜伏しているところを一条蛍に襲撃され、集団は散開。
 ・蛍から逃れる最中で地下通路を発見した。
※麻雀のルールを覚えました。
※パソコンの使い方を覚えました。
※チャットルームの書き込みを見ました。
※ホル・ホースの様子がおかしかった理由について、自分に嘘を吐いている可能性を考慮に入れました。



・施設備え付けのパソコンについて
スキップ可能のマニュアルが起動時に立ち上がります。その後、白カードをスキャンする事でパソコンの使用が出来るようになります。白カードについては本人のものでなく、死者のものも使用できます。
使用出来るのは携帯電話やスマートフォンと同じチャット機能・メール、及び個人ファイルの閲覧です。
個人ファイルの細かい内容については後の書き手さんにお任せします。

661 ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/08(金) 20:05:09 ID:BdiowsKo0
仮投下を終了します。
施設のパソコンについて結構踏み込んでしまったので、指摘があれば是非お願いします。

662 ◆NiwQmtZOLQ:2016/04/10(日) 13:02:27 ID:U4XvQGNI0
特に指摘がないようなので、本投下してこようと思います。

663 ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:43:30 ID:D9Yha4U20
仮投下します。

664飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:44:27 ID:D9Yha4U20
放送局の一室。
勇者、セレクター、騎士団長、デュラハン、そして悪魔。
年齢も性別も、種族さえ違う5人が、食事を摂り、顔を突き合わせて話し合っている。
ちなみにフードカードを奪われていたるう子は、多く持っている夏凛から10枚ほど分けてもらっている。
それは奇妙な光景だった――この場が、幾多の世界から集められた人々が殺し合う舞台だということを知らなければ、だが。

話し合いは意外にも円滑に進んでいった。
少なくとも、未だ倒れているウリス――浦添伊緒奈を除けば、この場にいる者は全員、今すぐ事を荒立てるような意図はない。

(ふむ――杞憂だったか)

ラヴァレイは内心で一人ごちる。
賞金首が考えた最悪の可能性は、アザゼルが何らかの形で自分の真の正体を看破しているケースだった。
「見知った顔がいる」と言われたときは少しヒヤリとしたが、副騎士団長「ラヴァレイ」と悪魔「マルチネ」と賞金首「ジル・ド・レェ」が同一人物であることは知らないようだ。
また、今の自分は悪魔と敵対していた「ラヴァレイ」の顔であることからして、揉め事に発展する可能性も考慮していた。
が、多少の挑発的な言葉はあったものの、今の状況では戦意はないことと、大人しく恭順する意思を示すと、アザゼルもそれ以上やり合うことはなく引き下がった。
敵対する勢力の一員であったとはいえ、直接交戦したことはなかったことも幸いしたのだろう。

665飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:44:43 ID:D9Yha4U20
5人のうち三好夏凛、セルティ・ストゥルルソン、アザゼルは元から行動していたこともあり、情報交換は手短に終っていく。
ラヴァレイは己の行動を少しずつ伏せながら語った。
具体的に隠した部分は、本部以蔵との顛末、DIOとの邂逅、そして地下通路で見た「ジョースターの系譜」。
どれも、単独で行動していた時の出来事であり、迂闊に話せば自分に不利をもたらしかねないことだからだ。
6時間以上前に別れた本部が未だ生きているのにも関わらずここにおらず、戦闘の痕跡もないということは、途中で何らかの戦闘に巻き込まれた可能性がある。
もしも今さらのこのことこの場に登場してきて、紅桜のことを責められたときは、「そんなに危ない代物だとは思わなかった」、「本部なら扱えると思った」と言えばよい。
事実として、黒のカードには「妖刀」としか書かれておらず、意識を乗っ取るような感覚にはラヴァレイ自身手にしてみるまで気付かなかったのだから。
また、後に地下通路から映像が見つかり、なぜ話さなかったのかと咎められた場合は、「その時はまだ灯りがともっておらず、映像も流れていなかった」とでも話せばよい。

小湊るう子が、三好夏凛、アインハルト・ストラトス、桐間紗路と散りぢりになった後のことを話し終える。
すると次にアザゼルが興味を示したのは、車椅子の少女――東郷美森が持っていた、今は夏凛が持っている白い犬の姿が描かれたカードだった。

「出してみろ」

アザゼルに促された夏凛が黒いカードをかざすと、巨大犬・定春が姿を現した。
どうやらカードの中で寝ていたところを起されたらしく、寝ぼけつつもかなり不機嫌な様子を見せている。
2人の少女が慌ててなだめに走り、ふわふわした毛を撫でてやる。

「ほう、ケルベロスの一種ですかな」

動物の登場にラヴァレイでさえも、纏う雰囲気をわずかに弛める。

666飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:44:59 ID:D9Yha4U20
(かわいい……!)

口にこそ出さない、いや出せないが、セルティも定春の愛らしさに一瞬で魅了されてしまった。
セルティは可愛いものがわりと好きだ。少なくとも、普段から使用するヘルメットに、猫耳のついたデザインを選ぶくらいには。
少しくらいは触ってみても大丈夫だろう、と思い、2人の少女に混ざろうとして。

「面白い。余興に芸の一つでも見せてみろ、犬」

そんな和みかけた空気を見事にぶち壊したのは、またもこの悪魔だった。
定春は飛びのき、歯をむき出しにしうなり声を上げて露骨に警戒心をあらわにする。

(――まったく)

この悪魔は、動物とすらまともにコミュニケーションというものが取れないのか。
もう何度目か分らない呆れを感じながら仲裁に入ろうとして。

事件は起こった。

アザゼルが、ほれほれ、とばかりに不用意に定春に手を伸ばし。
鋭い鳴き声と共に、定春はその手を噛んだ。


場の空気が凍り付いた。


「――ふむ」

アザゼルは、呆けたような顔で手から流れる血と定春を見比べた後。

667飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:45:19 ID:D9Yha4U20
「主人に刃向かう犬は要らん」

おもむろに、片太刀バサミを振り上げた。


「「――!」」


夏凛が、セルティが、悪魔を止めるべく動き――しかし。


「やめて!!」


悪魔を止めたのは、予想外の人物だった。

「やめて下さい!――お願い!」

少女――小湊るう子が、振り上げかかったアザゼルの腕に全身で飛びついていた。

「ええい、離せ!」

左手に走る痛みにも構わず、るう子は悪魔の腕にしがみついて離れない。
これには予想外だったのか、アザゼルは犬の存在も、手の怪我も忘れたかのようにるう子を振りほどく。

「軽い冗談だ――いちいち本気にするな。
 小湊! その犬は貴様が躾けておけ!」

噛み痕から流れる血を拭いながら、ややきまり悪げにアザゼルがぼやく。

668飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:45:38 ID:D9Yha4U20
「ごめんね、怖い思いさせて――もう大丈夫だよ」

るう子は定春のもとに駆け寄り、その首筋に抱きついてなだめながら、黒のカードに戻す。
一連の光景に、セルティは肩を落とし、ため息をつきながら(実際には息はしていないのだが)。

『笑えない冗談だ』

心底からの言葉をPDAに打ち込み、悪魔に突きつける。

「ふん」

悪魔は憎々しげに横を向いた。





『――それで。この後はどうするんだ? 全員揃ってここで人を待つのか?』

そんな騒動があった後。
主導権を握られるのは危険と判断したセルティは、多少強引にでも会話を進めていく。

「うむ――当然、考えている」

その文面に、アザゼルは倒れているウリスを含む5人をじろりと見渡す。

「この俺と小湊はここに残り、4人は残るセレクターの紅林遊月、ひいては役に立つ参加者や情報、アイテムを集めてもらおう。
 連絡の手段も、移動の手段も豊富な現状だ。これだけの戦力、6人そろって待ちぼうけているのは意味が薄い。
 そう思うだろう、なあ三好?」

突然名を呼ばれ、夏凛の頬がピクリと動く。

「……なんで私を呼ぶのよ。私は別に、待っていてもいいけど」

669飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:46:08 ID:D9Yha4U20
「とぼけるなよ。お前の仲間――おおかた先ほどの放送で俺に断りもなくここに呼んだのだろうが、探しに行きたくて仕方ないという顔をしているぞ」

図星を突かれ、夏凛に再び動揺が走る。

「まあ、今さら探しに行っても無駄かもしれんがな」

「……どういう意味よ。友奈は――」

「結城友奈、だったか」

悪魔の顔に、またしても愉悦の笑みが浮かぶ。

「そいつがチャットとやらに言葉を残してから、今の今までいったい何時間が経ったかな?」

ただでさえ疲労の色が濃い夏凛の顔が、一層青ざめる。

「それに返答をして、さらに放送で呼びかけ――ここに現れるどころか、まともな返事の一つすらよこさないではないか。
 つまり考えられるのは、最初に言葉を残した輩が偽物だったか、連絡の手段を失ったか、あるいは既に」

『やめろ』、何度目かすら分らない苛立ちを覚えながらセルティがそうPDAに打ち込み、割って入ろうとして――

「いいの」

夏凛は、それを制する。

「分ってるわよ、そんなことは……! でも、だけどね」

670飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:46:31 ID:D9Yha4U20
そしてアザゼルに向き合い、言い放つ。

「勇者部にはね、こんな掟があるの。
 『なるべく諦めない』ってね……!」

「ほう」

青ざめた顔の中でも、その目に宿る炎。

「……好きにするがいい」

それを品定めするように見ると、アザゼルはそれ以上の興味を失ったかのように顔をそらす。

「それでは、私は騎士としてこのお嬢さんをお守りしましょう。
 別れると仰りましたが、道はどういたしますかな」

夏凛の傍らに、ラヴァレイが立つ。

「うむ、2人は先ほど別れたホル・ホースどもに追い付き合流し、そのまま東の市街地を探索し、遅くとも次の次の放送までには戻ってこい。
 デュラハンはそこの女と2人、北の島を同様に探索し、戻ってこい。
 全員、有事の際はこのPCに連絡をしろ」

『私はそれで構わないが、セレクターを手放していいのか?』

当然の疑問を、セルティは打ち込んで見せる。

「そいつは確かに重要人物なのかもしれんが、同時に俺を殺そうとしてきた危険人物でもある。
 あくまで保険にすぎん爆弾など、あえて手元に置き続けるものでもあるまい?
 それから、既にくたばったという蒼井晶の死体も回収しておきたい所だしな。生きてはいなくても何らかの役には立つかもしれん」

『白のカードか』

671飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:46:49 ID:D9Yha4U20
「ああ。より蒼井に詳しいこいつなら適任でもあるだろう。
 ――小湊! いつまでも寝かせておくな。そろそろ水でも掛けて起こせ」

「は、はい」

アザゼルが青のカードから出した水瓶を受取ったるう子が、伊緒奈さんごめんなさい……と謝りながら水を掛けて起こす。

「う……」

冷たい感触に目覚めたウリスが、頭を抱えながら周囲を見渡す。

「ここは、――っ!」

アザゼルの存在を視界に認め、憎々しげな表情を露わにする。

「ようやくお目覚めだな、女」

アザゼルがウリスを見下す。

「この悪魔……!」

睨み付け、くってかかろうとし――そこで、自分の腕が黒い影に拘束されていることに気付く。
それだけではない。5人もの男女が、自分を取り囲んでいる。

「起きて早早だが、貴様には仕事をしてもらおう。そこのデュラハンと共に行動し、役立つ連中を連れてこい。
 せいぜい、ない悪知恵でも働かせるがいいぞ」

「何を勝手に――」

672飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:47:05 ID:D9Yha4U20
そう言いかけて、再び周囲を見渡し、諦めたようにうつむく。
ウリスは、異常者ではあっても馬鹿ではない。
今の状況で下手にあがけば、即、死に繋がることくらいは十二分に理解できる。

「……何だか分らないけれど、分ったわよ」

「うむ、阿呆は物分りが肝心だ。三好、そのスマートフォンとやらはデュラハンに預けておけ。
 最低限の餞別だ。敵に襲われたら渡してやるがいい。そんな時なら寝首をかく余裕はあるまい」

伊緒奈の危険性を知っている夏凛は、少しためらった後、セルティにスマホを渡す。

『それじゃあ、いい加減にそろそろ行くぞ。
 それから、ここにあった遺体を2つともを埋葬しておきたいが、構わないか』

「……私も、東郷をちゃんと弔ってあげたいんだけど。いいかしら」

「好きにしろ。小湊、忘れずにホル・ホース共に連絡を入れておけ」

命令を受けたるう子が、ノートPCを立ち上げてメールを送る。
文面はこうだった。「夏凛さんたちがそっちに行きます。合流したら、詳しい話を聞いてください」


――こうして、紆余曲折を経て。
放送局に集った6名は2人ずつに分れ、しばし別の道を行く。





2つの遺体を埋葬し、白のカードは集めているという小湊るう子に託した後。
数刻後、デュラハンと少女の姿は島と島を結ぶ橋の上にあった。

「ねえ」

疾走するバイク。

「ねえったら」

673飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:47:28 ID:D9Yha4U20
相変わらず影で括り付けられたままのウリスが、セルティに執拗に話しかける。
始めは無視していたセルティだが、バイクを急停止させる。

『何だ』

「本当にいいのかしら? あの悪魔の言いなりになって私なんかと来て。
 もしも残してきたあの子に何かあったら――」

『余計な気を回さなくてもいい』

ぴしゃりとPDAを叩きつける。

『スマホを奪おう、なんて考えても無駄だよ。仕事柄、君のような危ない女の子には慣れっこでね』

そして、ヘルメットをとって空っぽの頭を見せる。

『それと、私は見ての通りだからな。運転の最中に話しかけられても話せない。
 落ちて怪我なんかすることのないように、しっかり掴まっておくことだ』

「へえ、怖ぁい」

それを見ても、ウリスは依然として飄々としたまま。
やがてバイクは再び走り出す。

(――やれやれ)

674飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:47:46 ID:D9Yha4U20
内心で、またしてもため息をつく。
アザゼルの支配下から一時だけでも逃れたのは僥倖だが、彼に比べたらいくぶん御しやすいとはいえ、新たに火種を抱え込んだ。
悪魔と共に残してきてしまった小湊るう子については――もちろん心配ではあるが、実を言えばそれほど不安ではない。
彼にとっては少なくとも、るう子は待ち望んでいた保護する対象であり、必要もなく追いつめる意図はないということが、会話の端々から理解できたからだ。
巨犬を斬り捨てようとした所を止められた際に、彼女が傷付かないように振り払ったことを見ても分る。
ついでに言えば、自分には扱いづらいと言って自分に銃を渡しもした。
むしろ、不安なのは。

(夏凛ちゃん)

騎士とともに、東の市街地に向った勇者の少女。
出会った時からずっと、彼女が無理をしていることは明らかだった。
そして、仲間だという結城友奈。これも、正直に言ってアザゼルの言う通り、生存の望みは正直いって薄いと感じた。
今の彼女は、僅かな希望にすがりついていることで何とか自分を保っているような状態だ。
……そして、悪魔と同類だというあの騎士。
出会った直後から紳士然とした態度を貫いていたが、彼は本当に信頼のできる人物だったのか。
そもそも、どんな理由があろうと、この殺し合いの場で正体を隠していること自体が、疑わしいといえば疑わしい。

(今さら考えても仕方ないが――無事でいてくれ)

手の届く場所にいる人々を守るために、そして愛する人の元へ戻るために。
不安を抱えながらも、首なしライダーは進んでいく。

675飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:48:09 ID:D9Yha4U20



【E-1/橋上/一日目・午後】

【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】  
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(中)
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ(現地調達)、スタングローブ@デュラララ!!
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(18/20)、青カード(17/20)、小湊るう子宛の手紙
    黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?、ボールペン@selector infected WIXOSS、レーザーポインター@現実
         宮永咲の不明支給品0〜1(確認済)
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
0:今はセルティ・ストゥルルソンに従う。
1:使える手札を集める。様子を見て壊す。
2:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
3:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。    
4:可能ならばスマホを奪い返し、力を使いこなせるようにしておきたい。
5:それまでは出来る限り、弱者相手の戦闘か狙撃による殺害を心がける
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。
※チャットの書き込み(3件目まで)を把握しました。


【セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:VMAX@Fate/Zero ヘルメット@現地調達
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、
    黒カード:PDA@デュラララ!! 、宮内ひかげの携帯電話@のんのんびより、東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である、イングラムM10(32/32)@現実
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を狙う
0:北の島に向かい、紅林遊月および役に立ちそうな人・物を探索。蒼井晶の遺体も回収する。
1:アザゼル……どうしたものか。
2:静雄との合流。
3:縫い目(針目縫)はいずれどうにかする。
4:旦那、か……まあそうだよな……。
5:ラヴァレイに若干の不安。
[備考]
※制限により、スーツの耐久力が微量ではありますが低下しています。
 少なくとも、弾丸程度では大きなダメージにはなりません。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。





放送局のすぐ南の道。
穴を掘っている2人の姿があった。

「東郷……」

勇者の力を借りることで、埋葬するための穴を掘ることはあっという間に終わった。
腹部の血も渇き始めた東郷美森の遺体をそこに横たえる。

676飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:48:25 ID:D9Yha4U20
「あんたが乗った理由は知らないし、知りたくもないわ」

ゆっくりと土をかけていく。

「仇を取る、なんて今はまだ言えない」

友奈と戯れる姿、勇者として敵に立ち向かう姿。
今まで過ごした日々が、夏凛の胸をよぎって止まらない。

「でも、今はゆっくり寝ていてね」

土をかけ終え、手を合わせる。傍らではラヴァレイも同じ動作を見せている。
数十秒ほど、手を合わせ続け――

「……行きましょう」

セルティの話によると、旭丘分校で戦って死んだという少女が、樹の特徴に一致する。
付近に埋葬してきたらしいが、できることなら東郷と同じように自分も弔ってあげたい。

「承知いたしました」

2人は空飛ぶ箒――ヘルゲイザーに乗り込んだ。
この箒は、放送局を出る際にアザゼルから渡されたものだ。
スクーターとどちらを選ぶかと言われ、こちらを選んだ。
前に乗って操作する役はラヴァレイが買って出た。空飛ぶ箒は珍品ではあったが、操作感は馬とさほど変わらなかった。
そのまま、周囲の木々とすれ違う程度の高さを保ちながら飛行する。
この箒の元の所持者は、「撃ち落とされた」という。
位置関係から見て、その犯人は東郷である可能性が高いのだが――夏凛はそのことはなるべく考えないようにする。

677飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:48:41 ID:D9Yha4U20
(三好夏凛――勇者、か)

おくびにも出さないが、賞金首が夏凛との同行を申し出たのは、騎士道などという理由などではない。


『勇者部にはね、こんな掟があるの。
 『なるべく諦めない』ってね……!』


彼女が悪魔に言い放った言葉を思い返す。
仲間を失った、孤独な勇者。
結城友奈とやらも、詳細は知らないが、アザゼルの話を聞く限りではもはや生きてはいないだろう。

ほとんど消えかけている僅かな希望に必死にすがり、ぎりぎりの線で自我を保つ少女。
三好夏凛の「折れる」音は――蒼井晶とは比較にならないほど、心地よいものだろう。

(友奈……風……!)

少女は、一心に仲間を思い続ける。
騎士の歪んだ笑みになど、気付くことはなく。


【E-1/放送局外/一日目・午後】

【三好夏凜@結城友奈は勇者である】
[状態]:疲労(大)、精神的ダメージ(極大)、顔にダメージ(中)、左顔面が腫れている、胴体にダメージ(小)、満開ゲージ:最大
[服装]:普段通り
[装備]:にぼし(ひと袋)、夏凜のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(15/20)
    黒カード:不明支給品0〜1(確認済み)、東郷美森の白カード
[思考・行動]
基本方針:繭を倒して、元の世界に帰る。
0:南回りで東の市街地に向かい、ホル・ホースらと合流し紅林遊月らを探索する。
1:友奈を探したい。
2:樹のことも弔いたい。
3:アザゼル……
4:風を止める。
[備考]
※参戦時期は9話終了時からです。
※夢限少女になれる条件を満たしたセレクターには、何らかの適性があるのではないかとの考えてを強めています。
※夏凛の勇者スマホは他の勇者スマホとの通信機能が全て使えなくなっています。
 ただし他の電話やパソコンなどの通信機器に関しては制限されていません。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※セルティ・ストゥルルソン、ホル・ホース、アザゼルと情報交換しました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。

678飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:48:57 ID:D9Yha4U20
【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康、低空飛行中
[服装]:普段通り
[装備]:軍刀@現実、、ヘルゲイザー@魔法少女リリカルなのはVivid
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:猫車@現実、拡声器@現実
[思考・行動]
基本方針:世界の滅ぶ瞬間を望む。
0:三好夏凜の『折れる』音を聞きたい。
1:東の市街地に向かう。ホル・ホースについてはできれば遭遇したくはないが。
2:アザゼルにはそれなりに気を付けつつ、隙を見て排除したい。
3:セルティ・ストゥルルソンか……一応警戒しておこう。
4:DIOの知り合いに会ったら上手く利用する。
5:本性は極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する。
[備考]
※参戦時期は11話よりも前です。
※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いていました。
※繭に協力者が居るのではと考えました。
※空条承太郎、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、ホル・ホース、ヴァニラ・アイス、DIOの情報を知りました。 ヴァニラ・アイス以外の全員に変身可能です。





放送局、その屋上。
その場所に、悪魔と少女、そして巨大な白い犬の姿があった。
るう子は、疲れた体を休めるように定春の毛の中に体を預けている。

「休んだか」

アザゼルがるう子を起こす。
屋上に身を移したのは、この悪魔の命令だった。
さほど高い建物というわけではないが、ここからならば周囲に遮蔽物もなく、外敵の発見には便利だ。
その上、ここならばアザゼルにはなじみのない近代的な建物の中で迷うこともない。

679飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:49:12 ID:D9Yha4U20
「あの……」

「貴様をただただ俺の下で遊ばせておくつもりはない」

不安げな問いかけを制するアザゼル。

「遊ばせるつもりはないが、これで遊んでみるか」

その手には、2組のカードデッキが握られていた。

「貴様ら『セレクター』とやらは、これを使って戦うのだろう?
 あの貴様らの親玉、繭とやらは、単なる力ではなくこれで打ち倒さねばならん。
 ――予行演習だ。遊び相手になれ、小湊るう子」

デッキの片割れを、タマのカードとともに投げ渡す。

『るう?』

「タマ……!」

カードの中では、ルリグ――タマが眠たげに目を擦っている。

「喜べ、タマ。貴様の大好きな『バトル』とやらの時間だぞ」

思わぬ再会に感慨に浸る間もなく、悪魔の声が響く。

『ばとる……?』

「ああ、そうだ」

『タマ……ばとる、したい。るう! いっしょにばとる、する!』

680飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:49:29 ID:D9Yha4U20
はしゃぎ始めたタマの姿を見つめながら、るう子はこれまでのことを考えていた。

ここまで、自分には何ができたのだろうか。
咲を殺され。
3人が喧嘩別れになるのを止めることはできず。
シャロも殺され。
伊緒奈に誘拐され。
今もまた、こうして悪魔に軟禁されている。

何もできなかった。
状況に流されるまま、目の前で誰かが傷付き、死んでいくのを見ているしかなかった。

――けれど。
カードゲーム。
WIXOSS。

大好きな、これならば。
初めて巡ってきたチャンスなのかもしれない。
自分だって、何かができるかもしれない。

『るう……?』

黙り込んだるう子に、タマが不安げに声をかける。

「ごめんね。ちょっと考え事してた」

るう子は、顔を上げる。

「分かった。――うん。バトル、しよう」

681飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:49:46 ID:D9Yha4U20
その言葉に、タマがはしゃぎ出す。
悪魔もまた、感心したような顔でるう子を見る。

(ほう……)

ただの小娘に過ぎないと思っていたが、この悪魔を前にして、なかなかどうして堂に入った態度を見せる。
「セレクター」――選ばれし者の名は伊達ではないということか。
札遊びをすると言った瞬間のあの目はどうだ。
単に遊びが楽しいだとか、そういったものではない。
もっと根源的なもの――闘争心、それも青く熱いもの――が燃え上ったではないか。

「あの、せっかくだから……賭けて、みませんか?」

「何?」

「私が勝ったら、定春――この子のご飯を、貴方のカードであげてください」

その言葉に、悪魔は一瞬呆け――

「ふはははははは!!」

哄笑した。

「面白い! この俺相手に賭けをするか、小娘!」

るう子は笑みさえ浮かべ、引き下がらない。
アザゼルはさらに愉悦に顔を歪ませる。

「いいぞ――貴様の力、存分に見せてみるがいい」

682飼い犬に手を噛まれる ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:49:59 ID:D9Yha4U20



【E-1/放送局/屋上/一日目・午後】

【アザゼル@神撃のバハムート GENESIS】
[状態]:ダメージ(中)、脇腹にダメージ(中)
[服装]:包帯ぐるぐる巻
[装備]:市販のカードデッキの片割れ@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
    黒カード:不明支給品0〜1枚(確認済)、片太刀バサミ@キルラキル、弓矢(現地調達)
[思考・行動]
基本方針:繭及びその背後にいるかもしれない者たちに借りを返す
0:小湊るう子と対戦し、もちろん勝利する。
1:三好…面白い奴だ。
2:借りを返すための準備をする。手段は選ばない
3:ファバロ、リタと今すぐ事を構える気はない。
4:繭らへ借りを返すために、邪魔となる殺し合いに乗った参加者を殺す。
5:繭の脅威を認識。
6:先の死体(新八、にこ)どもが撃ち落とされた可能性を考慮するならば、あまり上空への飛行は控えるべきか。
7:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』……面白いことになりそうだ。
8:デュラハン(セルティ)への興味。
[備考]
※10話終了後。そのため、制限されているかは不明だが、元からの怪我や魔力の消費で現状本来よりは弱っている。
※繭の裏にベルゼビュート@神撃のバハムート GENESISがいると睨んでいますが、そうでない可能性も視野に入れました。
※繭とセレクターについて、タマから話を聞きました。
 何処まで聞いたかは後の話に準拠しますが、少なくとも夢限少女の真実については知っています。
※繭を倒す上で、ウィクロスによるバトルが重要なのではないか、との仮説を立てました。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。


【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(小)、左腕にヒビ、微熱(服薬済み)、魔力消費(微?)、体力消費(中)
[服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻 @キルラキル、
[装備]:ホワイトホープ(タマのカードデッキ)@selector infected WIXOSS、市販のカードデッキの片割れ@selector infected WIXOSS、定春@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:黒のヘルメット、宮永咲の白カード、キャスターの白カード、花京院典明の白カード
         風邪薬(2錠消費)@ご注文はうさぎですか?、ノートパソコン(セットアップ完了、バッテリー残量少し)
[思考・行動]
基本方針:誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
0:アザゼルと対戦する。
1:シャロさん、東郷さん………
2:夏凜さん、大丈夫かな……
3:遊月のことが気がかり。
4:魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
[備考]
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。


※キャスター、花京院典明、東郷美森の遺体が放送局付近に埋められました。
※市販のWIXOSSのカードデッキの対戦では、異空間は発生しないと思われます。

683 ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 11:51:10 ID:D9Yha4U20
以上です。
最後にウィクロスを実際に使用して対戦するという展開に踏み込んでいるため、念のため仮投下いたしました。
ご指摘等あればよろしくお願いします。

684名無しさん:2016/04/16(土) 14:31:09 ID:w7G.UDr20
投下乙です
ウィクロスに関してはルリグがタマだけなので大丈夫だと思います
アザゼルさんが前回わざわざ生かしたウリスを危険だからと即遠ざけてなおかつ危険人物にスマホも与えようとしてるのは流石におかしいので、その辺り修正していただければ助かります

685名無しさん:2016/04/16(土) 16:14:17 ID:Hz0uyHjwO
投下乙です!
ここは分割か、相変わらずセルティの胃痛とにぼっしーの心労がマッハ
アザゼルさんとるう子はウィクロスの時間、勝つ気満々なアザゼルさんだけど相手が悪い

一つだけ、指摘という程ではないですが、タマの言動が繭について知っているにしては初期に近すぎるかな、という点が少し気になりました

686 ◆3LWjgcR03U:2016/04/16(土) 18:42:39 ID:D9Yha4U20
ご指摘ありがとうございます。
指摘いただいた部分以外にも、アザゼルのウリスの処遇について直したい部分があるため、修正して投下いたします。
申し訳ありませんが、その際は若干の展開変更があるかと思いますので、ご容赦下さい。

687 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:26:18 ID:my5wRt/E0
仮投下します。

688 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:27:34 ID:f4EOfDks0

 傷付いたガンマンを気絶から回復させたのは、頬を撫ぜる風だった。
 このときホル・ホースには、単なる自然現象に過ぎない風が、やけに優しく柔らかに感じられた。
 まるで純粋な愛情を向けてくる女の、滑らかな肌のような感触。全ての女を敬愛する男にとって、これほど心地いい感覚はない。
 しばらくの間、ホル・ホースは風が流れるのを楽しんだ。

 そうして目を開けたものの、視界が明瞭でない。それは疲労や消耗だけが原因ではないと直感的に理解して、同時にホル・ホースは嘆息した。
 先程の戦闘は、どうあがいても夢ではなく現実。
 ガンマンにとっての生命線の一つである“目”の片方を失ったのだと。

(妙な気分だな、コリャ……)

 片目の視力がない状態は、戦闘では大きなディスアドバンテージだ。
 相手との間合いが測りにくくなる上に、死角が増える。
 地下闘技場のチャンピオン・範馬刃牙と、鎬流空手の使い手・鎬昂昇の勝負が好例だ。
 相手の神経を直接切る技、『紐切り』により視力を奪われた刃牙は、昂昇との間合いを測ることが困難になり、苦戦を強いられた。
 範馬の血を引く天才の刃牙は、それでも対処して見せたのだが。
 スタンド以外に天性の才能を持たないホル・ホースに、チャンピオンと同じことをしろというのは無茶だろう。
 これから先、戦闘には細心の注意が必要になる。

(俺の『皇帝(エンペラー)』が実力を発揮できなくなるのは、ちとショックだぜ)

 声には出さずにぼやくホル・ホース。
 とはいえ視力が悪い、あるいは盲目のスタンド使いも存在はする。
 エジプト9栄神が一柱、『ゲブ神』のスタンド使い・ンドゥールは、砂漠で音や感覚を頼りにジョースター一行を急襲した。
 また、DIOに忠誠を誓ったジョンガリ・Aは、空気の流れから周囲の状況を感じ取り、刑務所内で空条親子をこれまだ襲撃した。
 常人と比べて大きなハンデを抱えているが、その強さは確たるものだ。

 そんな彼らとホル・ホースは根本的に違う。
 ンドゥールは、視覚の代わりに鋭敏な聴覚と感覚を得ている。
 ジョンガリ・Aの場合も同様で、気流を読む独自の感覚、そして彼自身のスタンドによる狙撃の補助があればこそ襲撃が可能だった。
 対するホル・ホースには、先にも述べた通り、天性の才能や鋭敏な感覚機能はない。『皇帝』のスタンド一つで暗殺稼業を続けてきた。
 しかし、そもそもホル・ホースは、己に才能がないことを後悔していない。
 自分が誰より上手い鉄砲を撃つガンマンだと自負しているのだから。

(なにせ、俺のハジキの腕前はグンバツだったからな)

 とはいうものの、ホル・ホースが暗殺者を続けてこられたのは、『皇帝』が暗殺に非常に適したスタンドだったからという点も大きい。
 一般人には見えない銃。本人の目に映る範囲なら、自由に軌道を変化させられる弾丸。
 狙撃手の存在を知らぬ間に、眉間を撃ち抜かれて死んだ人間が、果たしてどれほどいるだろうか。
 強いて言うなら、そのようなスタンドを発現させたこと自体が才能か。

(まあ、ここじゃあスタンドもパンピーに見えちまってるんだけどな……)

 それがこの島では一般人に可視化され、更には左目を失う始末。
 とはいえ、可視化という措置でスタンドが制限されていることは、既に理解していたことだ。
 失明については、何もホル・ホース自身が不覚をとったことばかりが原因ではなく、凶悪な相手と遭遇してしまった不運もその一因だ。
 己の不運を恨むのも、もう何度目になるだろうか。

689 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:28:31 ID:my5wRt/E0
(まぁ、クヨクヨ悩んでも仕方ねぇ。
 いつまでも無防備にはいられねぇし、起きてどこか、安全な場所へ……)

 考えをまとめながら周囲を見回す。他の参加者の姿は見えない。
 危険な参加者がいる以上、安全な場所などありえないのだが、それはそれ。このまま動かずにいる方が危険だと、ホル・ホースは判断した。
 上半身を起こそうとしたが、折れた肋骨が邪魔をする。

「イテテテ……」

 ホル・ホースは戦闘スタイルが拳銃なだけに、特性上こうした物理的な痛みを受けることはあまりない。
 これが本当の骨折り損か、などと留まることのない愚痴や後悔を垂れながら、どうにか立ち上がる。
 体を少し曲げて楽な姿勢を取ることで、呼吸を楽にする。

「あー……まずは水だな」

 そうして落ち着いてから、ホル・ホースは、懐から取り出した青いカードでペットボトルの飲料水を出した。
 喉がはり付くように渇いていたのだ。
 キャップを無造作に開けてその辺りに投げ捨てると、ぐびぐびと一息に飲み干す。
 続けてもう一本。今度は瓶のビールをぐいぐいと飲む。これは流石にイッキとはいかなかったが、それでも時間を空けずに飲み干した。

「かぁ〜っ!美味い!」

 美酒に酔い痴れながら叫んだホル・ホースは、ついでとばかりに赤いカードを使用した。
 取り出したのはハンバーガー。原型はアメリカで誕生したとされ、アメリカ合衆国を代表する国民食と表現されることもあるファストフードである。
 ちなみに、原型が誕生していた時期については諸説あるが、少なくとも二十世紀の初頭には既に生まれていたと考えられている。
 ホル・ホースの着ている衣装からすると、微妙に時期がずれているが、そこはご愛嬌。
 見た目はガンマンでも、一九八七年を生きる男なのだ。

(カードから出た食いもんなんて、怪しすぎるがよぉ……)

 アツアツのハンバーガーをまじまじと見つめるホル・ホース。
 カードから武器が出ることもそうだが、食べ物が出ることはそれ以上の衝撃だ。
 好きな食べ物を、それが美味しく食べられる状態で出現させる。回数制限こそあれ、便利すぎる道具だ。
 スタンド使いの能力でも絡んでいるのかと、半ば本気で考えた。
 本当に食えるのかどうか、そんな不確かな物を食べていいのか、少しばかり逡巡したが、美味しそうな食欲に勝てるはずもなく。

「ええい、ままよ!」
「それでも、食わずにはいられないッ!そんな心情だぜ!」

 食前酒とばかりにビールを口にしてから、フワフワのトーストバンズをガブリとかじった。
 バンズの間に挟まれたシャキシャキのレタスとビーフパティが、口内で絶妙な食感を演出する。
 トマトケチャップの酸味がアクセントになり、口を動かす勢いは更に増す。
 鼻を突き抜けるツンとすました辛味は、マスタード。
 そうかと思えば、香り高いバターも存在を主張してくる。
 口いっぱいに広がる食材の旋律は、食べるそばから涎が溢れて来るほど調和している。
 ゴクリと飲み込めば、ガツンと胃に落ちる感覚。ボリュームもバツグンだ。

「んぐ……、んぐ……」

 その様子、まさしく無我夢中。
 これまで食事をせずに来た反動だろうか、しばしの間、無言でハンバーガーを咀嚼する。
 グルメ番組では、食べてすぐ「おいしい!」「ウマイ!」とコメントが飛ぶが、空腹な人間が美味な食べ物を食べたとき、言葉は失われる。
 極度の緊張から逃れた安堵感も手伝い、ホル・ホースは続けざまにハンバーガーを食べていく。
 まるで、この機を逃せばもう食事をする機会がないと考えているかのように。

 ちなみに、骨折した際には、骨の形成を促すカルシウムやタンパク質を摂取することも重要ではあるが、全体でバランスの取れた食事が一番良いとされる。
 つまりホル・ホースが選んだハンバーガーは失敗というほかないが、本人がそれに気づくことはないだろう。





690 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:29:07 ID:lfKHchzU0

 ここで場面は入れ替わる。

 旭丘分校から飛び出した針目縫は、ゆっくりと歩いて温泉へと到着した。
 悠々と旅館内を歩き回り、誰か獲物がいないかと探し回るも、ほとんど無為に終わる。完全にあてが外れた形だ。
 さてどうしようかと考えて、何の気なしに部屋のテレビをつけると。

『私の名前は三好夏凜。この島の中で、人を探しているの』

 格好の餌がぶら下がっていた。
 少女は緊張した面持ちで、メモを見ながら話している。

『るう子…小湊るう子、紅林遊月、それに浦添伊緒奈』

 縫の耳がピクリと反応する。
 自分の拘束から抜け出した裸の猿。
 確実に殺害しておけば、今のような苦渋を味わうこともなかったかもしれない。
 笑顔を浮かべながら、内心で殺意を滾らせる。

『この三人に、聞きたい事があるわ。
 他にも、『セレクター』と聞いて分かる人がいたら教えて欲しい』

 しかし単純な殺意の他にも、縫の関心を惹く言葉が、画面の中から発される。
 セレクター。選択する者。
 映画館で紅林遊月が話していた、カードゲームに関連する用語だ。

『ええっと、見えるかしら?これが私の端末のアドレスよ。
 さっきの放送で、メールが使えるようになったみたい。
 もし遠くにいても、もし施設の中にパソコンや端末があればそれで連絡も取れると思う』

 放送は続いたが、縫はセレクターへの呼びかけが気になり、これ以降の話は頭に入らなかった。
 遊月から聞いた話はうろ覚えだが、それでも重要な部分は覚えている。
 ウィクロス――夢限少女へと至るためのバトル。

「ルリグに選ばれた少女たちが戦い、三回勝利すれば願いが叶う……」

 そして、三回敗北すれば、願いは反転して叶わなくなる。
 まるでおとぎ話に出てくるような、信じがたい内容だ。
 しかし、生命戦維という超常の存在から生まれた縫が、いまさらその程度の不可思議を認められないはずもない。
 むしろ、繭が「魂」をカードに閉じ込めることができるのは、そうした不可思議な力を応用しているからではないか、とさえ考えていた。

(もしかしてこの放送、かなり重要かもね♪)

 殺し合いは半日が過ぎ、およそ半分の参加者が死亡した。
 残っているのは、縫や流子のように強い力を持つ人物が大半だろう。
 この状況で、島の全域に届く放送を行なうのは危険極まりない。しかし、彼らはそんな危険を冒してでも、セレクターを集める必要があるということだ。
 つまり、セレクターは繭へと繋がる鍵。
 縫は直感的にそう判断すると、目的地を定めた。

「放送局……そこにセレクターが集まるんだね!」

 意気揚々と外に出た縫が目にしたのは、風に吹かれて転がる学生服だった。





691 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:32:32 ID:f4EOfDks0


 場面は再びホル・ホースに転換する。

「さぁーて、次はどうするかね……とと、そうだそうだ」

 赤カードを四回使い、ハンバーガーを食べに食べたガンマンは、腹を撫でてから呟いた。
 特に健啖家なわけでもないのに、食べる勢いと量は普段の倍以上だったことから、空腹の度合いが分かるだろう。
 そんなホル・ホースも、ようやく自分がするべきことを思い出した。

「あぶねぇあぶねぇ。忘れるところだったぜ」

 ホル・ホースはアザゼルから渡されたタブレットPCを取り出した。
 小湊るう子か紅林遊月、あるいは浦添伊緒奈のうち、どれか一人でも発見したら連絡を入れろと言われていたそれ。
 近代人ではないホル・ホースは、今の今まで存在を忘れていた。
 セルティに教わった操作を反復して、どうにかメールの画面を出す。

『夏凛さんたちがそっちに行きます。合流したら、詳しい話を聞いてください』

 出てきたのは、こんな内容のメールだった。
 内容はごくごく自然な連絡。しかし、見た瞬間にホル・ホースは首を傾げた。

「ん……?このメール、誰からだぁ?」

 メールの文面は、ですます調の敬語が使用されている。
 放送局で別れた三人の内、誰がこのような文章を書くか。
 アザゼルは敬語を使う性格ではない。
 セルティは敬語も使いそうだが、今までホル・ホースに対しては使用していない。
 残るは夏凜だが、本人が書いた文章にしては違和感がある。

「するってーと、誰かが放送局に来たってことか」

 となれば考えられるのは、第三者による文章である。
 ホル・ホースたちが別れた後で、何者かが放送局を訪れ、アザゼルたちに協力することになった。
 このメールは、その何者かが送ったものだと考えれば辻褄は合う。

「……ふむ、合流するときたか。
 だったら動かないのも手だけどよ……こっちから向かうのもアリだよなぁ」

 ホル・ホースは考える。
 本来なら今頃は、ラビットハウスへ向かっているはずだった。
 しかし、襲撃され同行者は死亡。この状態で、単騎で進むのでは心もとない。
 夏凜たちが来るまで待つのもいいが、こちらからも放送局方面に向かい、合流して話を聞いてから次の目標を定める方が安全だ。
 誰かと組んで真価を発揮するホル・ホースだからこその臆病さである。

 そうしてホル・ホースは、近くのメルセデス・ベンツを見やった。
 近づいて確認すると、フロントガラスは割れているものの、それ以外の場所、エンジンなどに損傷はないようだ。
 少し寒くなるが、ドライブも可能だろう。

692 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:33:26 ID:f4EOfDks0
「さて、と」

 移動手段は確保できた。あとは来た道を戻るだけ。
 その段階に至り、今まで意図して視界から避けていたものを、ホル・ホースは今再び直視した。
 アインハルト・ストラトスにジャック・ハンマー。凄絶な戦闘を終えた二人の格闘家は、改めて確認するまでもなく絶命していた。
 プロレスの流血試合の後のような、顔面から服に至るまで血みどろになった姿。
 身体のあちこちが傷付き、欠損した状態の二人を見て、ホル・ホースは顔をしかめた。
 特にアインハルトは、元の顔が整っていただけに痛々しさも倍増だ。

「ったく……佳人薄命たぁよく言うぜ」

 美人になるはずの少女もまた、薄命なのだろうか。そんなポエムめいた皮肉を思いつく。
 ホル・ホースは自称『世界で最も女に優しい男』である。
 冗談めかして語るその言葉を抜きにしても、実際にホル・ホースはアインハルトの生き様には強い敬意を抱いていた。
 凶悪な狂人と対峙する勇気。
 不屈の闘志とでも呼ぶべき根性。
 このような場所で、このような若さで死なせるのはあまりに惜しい。

「……ま、ゆっくり休むんだな」

 そうした少女の強さに、今のホル・ホースは生かされているも同然。
 女は尊敬していても、利用することは躊躇わないホル・ホース。しかしこのときばかりは、真顔で黙祷を捧げた。
 再び顔を上げて、次に見たのは筋骨隆々の男の死体。
 こちらには敬意も好感もなく、ただ哀れみの視線のみを向けた。

「テメーも哀れよのぉ……こんな場に呼ばれなければ、格闘技大会で有名になれたかもしれんのに」

 投げかけるのは、憐憫を含んだ言葉。
 確かにバトルロワイアルに招かれなければ、ジャックは地下闘技場で恐るべきファイターとして名を上げていただろう。
 しかし、それはまた、別の話。
 ホル・ホースがそのIF(もしも)を知ることは、おそらくありえない。

「そういや、コイツの着ていた変な学生服……」

 死体をじろじろと見ていたホル・ホースは、あることに気がつく。
 ジャック・ハンマーの着ていた、顔に似合わない学生服。
 空条承太郎が着ているような服が、近くには見当たらないのだ。
 誰かが持ち去りでもしたかと考えたが、それではホル・ホースや他の支給品に目もくれていない理由が判然としない。

「まぁ、俺には関係ねぇか」

 学生服が飛ばされていたところで、ホル・ホースには大した影響は無い。
 おおかた風で飛ばされたのだろうと結論付けた。
 そうして、いよいよこの場を離れようとした、その矢先である。

「やあ☆」

 背後から、可愛らしい声がした。





693 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:34:07 ID:wovwAFeU0

 声をかけて数秒後。
 油をさしていないブリキの人形のように、小刻みな挙動で振り向いたガンマンを見て、縫はにっこりと笑んだ。

「久しぶりだね、ガンマンさん!」
「あ、あ……」

 かろうじて返事をしたホル・ホースだが、その表情は硬いなんてものではない。
 恐怖。絶望。諦観。そうした感情が渦巻いているのが、傍目からでもよく分かる。
 極制服が飛んできた方角に来てみて正解だった。

「首の無いお仲間さんはどうしたの?」
「……」

 歩み寄りながら問いかけると、無言のまま後ずさりされる。
 いくらなんでも恐れすぎじゃないかと、縫としては不満も出てくる対応だったが、我慢して話しかける。
 見ればホル・ホースも怪我をしているらしい。
 周りにある死体と、戦闘をくり広げてでもいたのだろう。
 仲間も近くにいないようで、フラストレーションを発散するにはこれ以上ない相手だ。

「ちょっと遊んでよ♪」
「……はは、お嬢ちゃん。冗談はよくないぜ」

 乾いた声で答えたホル・ホースに、縫は片太刀バサミをくるくると回して見せた。
 縫も傷付いて万全ではないが、元々の身体能力では遥かに上回っているのだ。負ける道理はない。
 さらににじり寄ると、ホル・ホースが声を上げた。

「……提案がある」
「聞いてあげるよ!答えるとは限らないけど☆」

 真面目に返すつもりがないことがバレバレな返事。
 縫は武器を下ろさぬまま、さらに近づいていく。
 それでも、ホル・ホースは真面目な顔で言葉を続けた。

「俺も縫い目の嬢ちゃんも、究極的には目標は同じ。
 このくだらねぇ殺し合いから脱出すること――違うか?」

 縫はこれを否定しない。いや、否定できない。
 ホル・ホースの言葉に間違いはないからだ。
 縫には鬼龍院羅暁のために、神羅纐纈を完成させるという使命がある。
 務めを果たすためにも、元の世界に帰らなければならない。
 ただし、縫が目指すのはあくまで優勝。
 無粋な制限をかけた繭には怒りをぶつけたいが、それ以外の参加者は、利用できるなら利用して、できないなら殺すだけだ。

「だったら、まずはこれを見な」

 そう言いながらホル・ホースが渡してきたのは、タブレットPC。
 画面にはメールの文面が表示されていた。

「そのメールを見れば分かるだろーが、俺は三好夏凜と繋がりがある」
「ふ〜ん。で?それが何だっていうの?」

 ホル・ホースが三好某と関係があろうがなかろうが、些細なことだ。
 しかし、その次に出てきた言葉で、縫の意識は転換する。

「この島から、殺し合いから、脱出できるかもしれねぇ」





694 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:34:42 ID:my5wRt/E0

 ロシアンルーレットというゲームがある。
 リボルバーの弾を一発だけ装填し、何発目に飛び出すか分からない状態にして、二人で自分の頭に向けて引き金を引くゲームだ。
 負ければ即刻死が確定する、狂気のゲーム。
 ホル・ホースは今、それに挑んでいるような感覚だった。

「脱出する方法?」
「あぁそうさ。この邪魔な腕輪も外せて、無事にトンズラこける方法よ!」

 生き延びるためには、多少の嘘はご愛嬌だ。
 縫も興味はあるらしく、問答無用で殺そうとはしてこない。
 ホル・ホースはその猶予を逃さずに、質問を投げかける。

「放送は見たか?」
「放送?……それがどうかしたの?」

 ホル・ホースはその反応から、既にアザゼルの指示のもと、放送が行なわれたことを察した。
 なので、それを前提として話を進めていく。
 脳内では、放送局でアザゼルや三好夏凜たちと交わした情報を必死で思い出しながら。

「あれを流したやつは、俺やセルティの旦那とも組んでいる。
 放送の中身を覚えてるか?
 小湊るう子、紅林遊月、浦添伊緒奈。俺たちはこの三人を集めようとしているんだ」

――ならば俺と三好、そしてセルティで放送局に向かい、セレクター達に繭打倒を呼びかける。

 アザゼルはこう言っていた。
 となれば、第二回目の放送で呼ばれた蒼井晶を除く三人のセレクターへと、放送で呼びかけているはず。
 縫もそれを否定しない以上、当たらずとも遠からずといったところだろう。

「なんでそんなことをするか?
 答えは決まってるぜ。セレクターが繭に対抗するキーパーソンだからだ」

 横目でちらりと縫を見る。
 口を挟んでくる様子がない以上、同じ予測をしていたと考えられる。
 それならば、とホル・ホースは縫の思考に先んじた。

「おーっと、縫い目よ。テメーは今、こう考えただろ?」
『その三人が関係しているというのなら、目の前の男は殺しても構わない』ってな」

 考えを言い当てられたからか、縫は手を止めた。
 二人の距離は、さほど遠くない。
 縫が手にした片太刀バサミを一振りすれば、ホル・ホースは即座に殺される位置だ。

「だが、そうは問屋が卸さないぜ?
 放送局には嬢ちゃんに匹敵する相手が三人以上いる。
 そして俺は、情報を交換したときに、そいつらに嬢ちゃんの危険性を伝えてある」

 その言葉に、縫は怪訝そうな顔つきをした。
 ホル・ホースは顔を上向きにして、得意げな顔で続きを言う。

695 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:35:17 ID:my5wRt/E0

「縫い目の女は危険すぎる。見つけたら即刻殺すべきだ、ってな」

 これは完全なハッタリである。
 縫の情報こそ共有しているものの、即刻殺すことまでは決定していない。
 無論、縫がアザゼルと対峙すれば戦闘は必至なので、完全な嘘というわけでもないが。

「だが俺がいれば、放送局にいるメンバーにも話がつけられる。
 今の縫い目は殺し合いに反対する立場だから、殺さなくていい、ってなァー」

 我ながらチャレンジャーだと、ホル・ホースは自嘲した。
 彼我の実力差を弁えないホル・ホースではない。
 縫なら自分のことを一瞬で料理できるというのは、最初に分校で戦闘したときから理解していたことだ。
 それでも、嘘とハッタリで生き延びようとしている。
 生きる道を見つけようとしている。

「つまり、提案って……」
「そう、一時休戦と行こうじゃねぇか。
 放送局で情報を共有して、この島から脱出するためにセレクターを集める。
 お互い殺し合わずに済む道があるってんなら、それに越したことはねぇだろ?」

 これは賭けだった。
 文字通り命を賭けた勝負だ。負ければ即死。
 勝てたとしても、放送局に危険人物を招くことになるが、そのときはアザゼルにでも任せればいい。
 縫とアザゼルの勝負がどうなるかは分からないものの、このまま無惨に殺されるよりはよほど生き延びる可能性がある。

「……話にならないや。ボクを舐めてるの?」

 しかし、相手は規格外の化け物。
 常識の範疇では予測できない行動をする相手だ。

「ガンマンさんがいなくったって、セレクター以外皆殺しにしちゃえばいいのに」

 ニコニコと浮かべる笑みの下。
 そこにある本心を、ホル・ホースは知ることができない。

「なんでボクが指図を受けないといけないのかな?」

 自由奔放な少女は、束縛されるのが極端に嫌いらしい。
 とんだじゃじゃ馬娘を相手にしたものだと、ホル・ホースは唇を噛んだ。

「っ……舐めてなんかいねぇさ、むしろ俺は嬢ちゃんを恐れてるんだぜ?
 だからこそ、俺は俺自身ができるだけ長生きする道を選ぼうとしているだけさ」

 これは間違いなく本心だ。
 バトルロワイアルの中でも、セルティや刃牙を利用しようと試みたのは、生き延びる確率を上げるためだ。
 自身の命を最優先に。これもまた、人生哲学。

「いーよ、もう。とりあえず斬らせてよ!」
「ま、待て――!」

 しかし、それが通じる相手ばかりではない。
 とうとう片太刀バサミの刃を閃かせた縫を見て、さしものホル・ホースも焦りを隠せない。
 これ以上の猶予はない。選択を誤れば死へ直行だ。

696 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:36:01 ID:f4EOfDks0
「く――分かった!嬢ちゃんの下につく!」

 その言葉に、再び縫の動きが止まった。
 呆けたような顔――というより、信じられない馬鹿を見るような目でホル・ホースを見てくる。
 どうやら予想斜め上の返事だったようだ。

「俺を利用してくれて構わない!いや、むしろ利用しろ!
 たったそれだけで命が助かるってんなら、安いもんだぜ!」

 なりふり構わずに、ホル・ホースは魂の叫びを上げた。
 生きることへの強い執着心が、とうとうその言葉までも口にさせた。

「へえ」

 そして、その言葉が縫の嗜虐心を刺激したらしく。
 口を半月の形に開くと、いかにも楽しそうな声でこう言った。

「じゃあ、ちょっと実験させてよ!」

 そうして気持ち悪いくらいに可愛い笑顔で、ホル・ホースの近くに歩み寄る。

「な、おい、なんだってんだ!?」

 縫に頭を掴まれた、次の瞬間。
 ホル・ホースは、生命戦維を脳内の奥深くまで侵入させられた。
 『精神仮縫い』とは異なる、異物を脳に入れられたことにより走る激痛。

「ぐあああああああああっっっ!!?」

 ホル・ホース自身、どういう状況なのか理解できていないだろう。
 未知の痛みに耐えかねて、両手で頭を押さえたまま、その場に倒れこんだ。

「ぐ、テメー……」
「あーあ、実験失敗かな?残念無念☆」

 少しも残念そうではない声を、朦朧とする意識の中で聞きながら。
 ホル・ホースは、縫のお遊びで殺される自分の不甲斐なさを、痛感していた。

(すまねぇな、アインハルトの嬢ちゃん……)

 その瞬間。
 このまま死んで、諦められるのか。
 そんな、よくある自分への問いかけが聞こえた気がした。





697 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:37:35 ID:lfKHchzU0




 そのとき、不思議なことが起こった!!


 スタンド(幽波紋)とは、生命エネルギーが作り出す像(ヴィジョン)!


 通常『魂』や『精神』と称される、程度の差はあれ、人間なら誰でも持つエネルギーが具現化した存在だ!


 全てのスタンド使いは、エネルギーを自らの意志で使役することができるのだ!


 対する生命戦維とは、文字通り生命を有する戦う繊維!


 太古の昔、宇宙から地球へと飛来した、生物の神経電流を主食とする地球外生命体である!


 縫はその生命戦維を、直接ホル・ホースの脳内へと侵入させたのだ!


 そしてホル・ホースの脳内、更には神経へと、生命戦維が到達した瞬間である!


 生命戦維が持つ強力な生体エネルギーと、スタンド使いが持つ生命エネルギーが共鳴した!







 生命戦維と人間の融合。
 自身も生命戦維でできた子宮で育ち、人間以上の存在となった縫だが、しかし目の前でそうした光景を見るのは初めてだった。
 赤白く光る繊維と、黄金に輝くスタンドのパワー。
 それらが混ざり合うことで発される煌きは、縫の視線を釘付けにした。

「すっごーい!」

 縫はホル・ホースが生命戦維と融合することを期待していたわけではない。
 単純に、相手がもだえ苦しんで死ぬ方法として選んだに過ぎない。
 期待を裏切られた形になるが、それでも縫の表情は満面の笑みだった。

「どうなるのかなぁ、楽しみ!」


【G-2/一日目・午後】
【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(大)、肋骨数本骨折、左目失明、生命戦維との融合の途中
[服装]:普段通り
[装備]:デリンジャー(1/2)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(6/10)、青カード(6/10) 黒カード:不明支給品0〜2、タブレットPC@現実
[思考・行動]
基本方針:生存優先。女は殺さない……つもり。
0:???
[備考]
※参戦時期は少なくともDIOの暗殺に失敗した以降です
※犬吠崎樹の首は山の斜面にある民家の庭に埋められました。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。
※生命戦維との融合を開始しました。今後、どのような状態になるかは後の書き手にお任せします。

698 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:38:09 ID:f4EOfDks0

【針目縫@キルラキル】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に細かい刺し傷複数、繭とラビットハウス組への苛立ち、纏流子への強い殺意
[服装]:普段通り
[装備]:片太刀バサミ@キルラキル
[道具]:腕輪と白カード、黒カード:不明支給品0〜1(紅林遊月が確認済み)、喧嘩部特化型二つ星極制服@キルラキル
[思考・行動]
基本方針:神羅纐纈を完成させるため、元の世界へ何としても帰還する。その過程(戦闘、殺人など)を楽しむ。
   0:ホル・ホースの結末を見届けてから、放送局へ向かう。
   1:紅林遊月を踏み躙った上で殺害する。 ただ、拘りすぎるつもりはない。
   2:空条承太郎は絶対に許さない。悪行を働く際に姿を借り、徹底的に追い詰めた上で殺す。 ラビットハウス組も同様。
   3:腕輪を外して、制限を解きたい。その為に利用できる参加者を探す。
   4:何勝手な真似してくれてるのかなあ、あの女の子(繭)。
   5:神羅纐纈を完成させられるのはボクだけ。流子ちゃんは必ず、可能な限り無残に殺す。
[備考]
※流子が純潔を着用してから、腕を切り落とされるまでの間からの参戦です。
※流子は鮮血ではなく純潔を着用していると思っています。
※再生能力に制限が加えられています。
傷の治りが全体的に遅くなっており、また、即死するような攻撃を加えられた場合は治癒が追いつかずに死亡します。
※変身能力の使用中は身体能力が低下します。少なくとも、承太郎に不覚を取るほどには弱くなります。
※疲労せずに作れる分身は五体までです。強さは本体より少し弱くなっています。
※『精神仮縫い』は十分程で効果が切れます。本人が抵抗する意思が強い場合、効果時間は更に短くなるかもしれません。
※ピルルクからセレクターバトルに関する最低限の知識を得ました。

699 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:39:16 ID:wovwAFeU0
仮投下終了です。
後続に投げる部分が大きいので仮投下させていただきました。
ご指摘あればよろしくお願いいたします。

700名無しさん:2016/04/22(金) 12:23:58 ID:YeNIN2iYO
投下乙
飯テロだこれ
ホル・ホースがんばれ、超がんばれ
本投下は大丈夫だと思います

702 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/22(金) 19:11:17 ID:cX1Mtorg0
感想ありがとうございます。
これから先、指摘がなければ、明日の午後には投下したいと思います。

703名無しさん:2016/04/23(土) 09:28:28 ID:ajVFhJeI0
投下乙です
無事ではないけどとりあえずホルは命の先延ばしはできたかな?
縫の制限を解かれでもされない限りは他参加者への害が増えないように言いくるめようとしているのも流石か
内容には問題ないと思いますが、本投下の際は空条親子の下りは何とかした方がいいと思います
3部アニメのみ視聴ですと意味が通じませんし

704 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/23(土) 17:14:09 ID:MXAB8YRA0
>>703
ありがとうございます。
該当する箇所を削除したものを投下しました。
また指摘等あればお願いします。

705 ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 00:57:50 ID:oto35/Kk0
一旦仮投下します

706Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 00:59:27 ID:oto35/Kk0
「ふむ、5分少々……といったところか」

G-6に位置する映画館。
しかしそこはすでに映画館としての機能を失っていた。
カウンターの奥、ストア商品棚の下、コンセッション周り、休憩室、劇場。
そういった人が隠れられそうな所はことごとく破壊され、劇場に至っては壁に大きな穴が空いている。
映画館内に人っ子一人いないことを確認したヴァニラ・アイスは、休憩がてら自らに課せられた制限を確認する際、意識して映画館を破壊しながら制限を確認したのだ。

敬愛し忠誠を誓うDIOに関すること以外には氷のごとし冷静さをもつ彼がなぜそんなことをしたかというと――――


「これで劇場に隠れ続けるような手は使えんな」

彼は映画館に参加者が殺し合いもせずに立て籠もることを警戒したのである。
ホテル程の設備はないとはいえ、映画館というものは存外入り組んだ構造をしている。
さらに劇場の中では多少騒ごうが外に音が漏れることはない。
もし映画館に殺し合いに乗った強者と乗っていない弱者の双方がいても、運が良ければ鉢合わせることなくニアミスすることもあり得る。
3日間という時間制限がある以上、戦いもせずに逃げ回るネズミは害悪でしかない。
直接的な脅威になりうる堅牢な『要塞』にはならなくとも、こういった施設を破壊することは後々必ずプラスに働くと踏んだ彼は、制限の確認と施設の破壊を併行して進めることにしたのだ。

「妙な感覚だな、慣れ親しんだスタンドの使い心地が変わるのは」

そして彼はクリームにかけられた制限を概ね理解した。
5分少々暗黒空間に入り続けていると、何の前振りもなく唐突にクリームが解除される。

強制的に解除されたすぐ後にもう一度スタンドを発現させようとしても、数瞬のインターバルを置かなければ暗黒空間には入れない。
逆に5分少々の時間制限が訪れる前にスタンドを解除すれば普段通りの使い心地というわけだ。
先ほどクリームの優位性にものを言わせたがむしゃらな攻撃で同盟相手を失ったばかりなことだし、インターバルを挟みながら周りを確認しつつスタンドを使うこと自体はやぶさかでもない。
やぶさかでもないが……。



「あのド畜生女がぁあああああああああああああああ!!!!」



近くに転がっていたゴミ箱を蹴り飛ばす。
中のゴミをまき散らしながら壁に激突しこぎみよい音を立てて砕け散るプラスチック製のゴミ箱。
その光景を見てもはらわたが煮えたくるような激情は鎮まらない。
ヴァニラ・アイス本人にとってやぶさかではなかろうと、彼にとって自分のことなど二の次にすぎない。
それより問題なのは――――。


「手をかけたな……!DIO様のスタンドに!DIO様の『世界』に!!」


クリームに制限がかけられている以上、DIO様のスタンドにもくだらん制限がかけられていることは想像に難くない。
その可能性を自らの制限を確認することで改めて認識したヴァニラ・アイスは激怒した。
自分のスタンドに手をかけられるのは構わない。
だが、DIO様のスタンドにコソ泥以下のこすっからい細工を施すなど到底許されることではない。
もし、もしも『世界』にかけたくだらん制限のせいで、自分も知らないその能力を他の参加者が暴くようなことがあれば――――

「ゆ、許さん……!DIO様は全ての頂点に君臨するお方!そのDIO様の能力を知る人間など存在してはならない!」

707Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:00:32 ID:oto35/Kk0

もちろん、能力を知られただけでDIO様が不覚をとることなど万に一つもあり得ない。
しかし、DIO様の神聖なるスタンドの秘密をゴミカス共が知ってしまうかもしれない……。
それだけでヴァニラ・アイスが激昂するには十分すぎる理由だった。

「どれだけDIO様を馬鹿にすれば気がすむのだ!あのドグサレがぁあああああああ!!!!」

例え劇場の壁が壊れていなくとも外に聞こえるのではないかと思える程の叫び声。
下等生物とDIO様を同等に扱うあの忌々しい地下通路といい、くだらん制限といい、腹立たしいことこの上ない!

「ハァ――――!ハァ――――!」

だが、ヴァニラ・アイスは逆上しても心の奥底の冷静さを見失わなかった。
制限も確認し、最低限の休養も取った以上、これ以上ここに留まる理由はない。
日中は自由に動けないからこそ、その時間を無駄に過ごすようなことは愚策だ。
日が沈むまでにやれることはやっておかなければならない。

さっさと地下通路を通り、展示物を確認しつつホテルへと向かう――――

「それにしても……」

――――前に、ふと劇場のスクリーンに目を向ける。

『21世紀、世界の麻雀競技人口は1億人の大台を突破ーー』

「なぜ麻雀の映画が?」

そこには数時間前にとある少女が訪れた時と同じように、学生服を着た少女たちが卓を囲んでいる姿が映し出されていた。




「なんだこれは?CDディスク……ではないようだが」

映画館とホテルを繋ぐ地下通路。
そこには『第四次聖杯戦争の様子』『ジョースター一行の旅の風景』『本能寺学園の歴史』といった題名の付けられたDVDが等間隔で並べられ、その下にはタッチパネルが設置されていた。
DVDは透明なケースに入れられており、そのケースを同じく透明な箱に入れるという中々に厳重な保管をされている。

1980年代の人物であるヴァニラ・アイスは当然DVDのことなど存在すら知らないし、タッチパネルも馴染みの薄い代物だった。
僅かな間困惑したが、近くに案内板のようなものを見つけたので確認する。

『参加者と関係のある映像をDVDにして集めました。
DVDの下のタッチパネルに腕輪をタッチさせればDVDを持っていくことができます。
ただし、持っていけるDVDは腕輪一つにつき一枚なのでご利用は計画的に』

「ふむ、DVD……それに、タッチパネルというのか」

案内板にはDVDの利用法について懇切丁寧な説明が載っていた。
これだけ丁寧に説明されれば、DVDの存在はおろか電化製品そのものに馴染みのないような人間でも理解できるだろう。

「なるほど、どこぞの馬鹿がテレビを破壊でもしていない限り、どちらから地下通路を通っても映像を見れるようになっているというわけか」

映画館にあった映像を閲覧できる機材は壊していないし、ホテルならばテレビの1つや2つあって当然だ。
このままホテルへ向かっても日が沈むまでには少し間がある。
ホテルに誰もいなかった場合はこのDVDを見て他の参加者の情報を集めるのも面白い。
幸い自分は範馬勇次郎の腕輪も持っていることからDVDを2枚持っていける。

クリームで箱を破壊して無理矢理すべてのDVDを持っていくことも考えたが、すぐにその考えを頭から振り払う。
あの淫売が用意した腕輪を呑み込めない以上、同じくあの雌豚が用意したこの箱にもクリームは通用しないと考えるべきだ。
忌々しいが、現状自分はあのクサレ脳ミソの掌の上にいることは認めざるをえない。

708Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:01:07 ID:oto35/Kk0

「だが、覚悟しているがいい。
DIO様が優勝なされた暁には、貴様のようなアバズレをあの方は見逃しはしない」

自らの命すら供物として割り切る狂信者。
どのDVDを持っていくか物色しながら、彼は歩き出す。
狂気の忠誠を誓う帝王の元へと少しずつ少しずつ近いづいていることにも気付かずに――――。

【E-6/地下通路/一日目・午後】


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:ダメージ(小)
[服装]:普段通り
[装備]:範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、ブローニングM2キャリバー(68/650)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:双眼鏡@現実、不明支給品0〜1(確認済、武器ではない)、範馬勇次郎の不明支給品0〜1枚(確認済)、ブローニングM2キャリバー予備弾倉(650/650)
[思考・行動]
基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする
   1:さて、どのDVDを持っていくか。
   2:ホテルへ向かい、DIO様の館にも赴く。
3:日差しを避ける方法も出来れば探りたいが、日中に無理に外は出歩かない。
4:自分の能力を知っている可能性のある者を優先的に排除。
   5:承太郎は見つけ次第排除。
   6:白い服の餓鬼(纏流子)はいずれ必ず殺す
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※第一回放送を聞き流しました
 どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします
※クリームは5分少々使い続けると強制的に解除されます。
強制的に解除された後、続けて使うには数瞬のインターバルが必要です。

※映画館の内部は破壊されましたが、倒壊などの危険はありません。

【施設情報・地下通路】
『映画館』⇔『ホテル』間には『映像資料集』が展示されています。
参加者と関わりのある映像をDVDにして展示しています。
DVDを持っていくには下のタッチパネルに腕輪をかざす必要がありますが、一度腕輪をかざすと次からはその腕輪は反応しなくなります。
当然他の腕輪を使えばさらにDVDを持っていくことも可能です。
また、かなり丁寧な説明が案内板に書かれているため、機械に疎い人物でもDVDの仕様を理解できると思われます。

709 ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:02:30 ID:oto35/Kk0
仮投下終了です。
なにか問題点や疑問点ございましたら、ご指摘お願いします。

710名無しさん:2016/06/17(金) 21:00:04 ID:iB6KjuCI0
仮投下乙です
特に問題はないと思います

711夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:56:57 ID:/gRdK6EA0
遅れてしまいましたが、仮投下します。

712夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:57:27 ID:/gRdK6EA0
自動車の形に変化したコシュタ・パワーの運転に大分慣れてきたなと長身の男はふと思った。
人智を超える力と強靭を併せ持つ指先が硬い地面をえぐり続け大きな穴を形成していく。
地面を掘る長身の男は平和島静雄、その傍らには小柄な少女の壊れた人形のような遺体があった。
静雄は埋葬作業による疲労からではない溜息をつくや、今も車の中で眠り続ける少女の事を思う。

一条蛍。
相容れない敵である折原臨也と同行した、最初の仲間であった越谷小鞠の大切な後輩。
纏流子の強襲で傷浅くも倒れ未だ目覚めぬ少女。
小柄な少女の、蒼井晶の遺体を見つけたのはたまたま。
過去いくつもの死体を見てきた静雄でも無残な遺体をそのままにするのは気が咎め、蛍が眠っていることもあり、
簡単にだが弔うことに決めた。


土を被せ、瞑目する静雄。
流子との戦闘の合間に言われた蟇郡の警告が脳内に響く。


――俺が守っていなければ、一条は既に3度は死んでいた


口元を引き締める。
蛍を守れるのか、いやそれ以前に鬼のような自分を見て恐慌してしまわないだろうか……。
怒りに流されて害を撒き散らせてしまわないだろうか……。
不安に胸を押されるようだ。苦悩から汗が一滴流れる。だけどこれ以上喪わない為に折れる訳にはいかない。

「セルティ……」

数少ない友人の名を思わず呟く。彼女は放送では呼ばれていない。
でも縋るつもりはなかった。
彼女は彼女で苦難にぶちあたっている可能性があると思い至ったから。
同時に彼はここに来て漠然とだが仲間が必要だと思った。
せめて自分が戦っている間に同行者を避難させてくれる人を……。


「は……」


漏れた声に含まれるは自嘲。
静雄でさえも殺意と殺意が渦巻くこの地でそれは贅沢とも言える望みかも知れないと思ったから。


「……!」


何かを叩く小さな音。音の発生源は少し離れた所。
停めてある車のドアからだ。
こんこん、とまた音がした。
駆けつけたい衝動を抑え静雄は振り向く。
車の方から軽い緊張が感じられた。静雄は僅かに身をこわばらせ向こうの反応を待つ。

713夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:58:14 ID:/gRdK6EA0

「……」
「……」



音なくドアがゆっくり開けられる。
車内にいた少女は背を屈め、ドアを盾にするようにゆっくりと静雄を見ようとする。
怯えている。小鞠とは反応の差はあれどこちらを警戒しているのは静雄の眼に明らかだった。
静雄は土をかぶせた遺体を意識する。
予想はしていたもののこのタイミングはまずいと彼は内心慌てた。説得する為の言葉も思いつかない。
小鞠を宥めた時に使ったボゼの仮面を出そうと思ったが、余計不審がられるとその考えは却下。
見た目にも静雄は慌てていた。


「……」

少女、一条蛍は姿勢をそのままに目をぱちくりさせ、息を強く吸うと顔を出した。


「平和島、静雄さん……ですね?」
「……ああ」


蛍の視線は静雄の傍らの土の盛り上がりに移った。


「……」
「見ていました」


覗きこむような視線。怯えが少々感じられるものの明確な拒絶は感じられない。
互いにすぐに言葉を発せられず、気まずい生暖かい風のような沈黙が訪れる。
質問と視線に対し静雄の眼差しはすべてを受け止めるかのように真剣だった。


「あの……」
「……」


呼びかけに対し、更なる問を促すように静雄は頷いた。


「その人は平和島さんの知ってる人ですか?」
「……いいや知らない子だ」


蛍は視線を落とした。
目をつむり、しばし何かを考えた後、静雄の全身を観察する。
静雄自身はあまり意識はしてないが、服はあちこち破れ土砂や自らの乾いた血で汚れている。

714夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:58:45 ID:/gRdK6EA0

「……っ」


蛍の瞳孔が開き、右手で胸を押さえた。
気絶する前の状況を思い出したのだろう、静雄にはそう判断でき間近にならない程度まで慌てて近づいた。


「蛍ちゃん」
「……大丈夫、大丈夫です…………」


荒い呼吸を繰返しながら、汗をかきながら何かに耐えるかの様にドアにもたれ掛かる。
静雄は蛍の手を背に当てながらいいかと訊いた。
蛍は顔を向けないまま頷いた。

-----------------------------------------------------------------------------------------


停まった車の中。



「平和島さん、ごめんなさい……」
「謝らなくてもいいよ、責められるのは俺の方だよ」


一瞬、否定するような表情を蛍は向けるが、後悔の混じった静雄の表情から心中を察し、黙った。
実は蛍は蒼井晶の遺体を発見する数分前から意識を回復させていた。
ショックからか流子に強襲される前の記憶が曖昧だった事からか、ゆっくりと走行する車内にいたからか
蛍は静雄をある程度見続ける余裕ができていた。


「……ディオって人とは遭っていないんですよね」


蛍の何度目かの問いに静雄はただただ頷く。
良かったと蛍は思い涙を一滴こぼした。今度こそ言葉でなく心で実感できたから。
もともと蛍は静雄と臨也との諍いの最中でも、静雄が加害者である断定はできず揺れていたのだ。
その上負傷した身体を押して蛍を保護し、見知らぬ少女まで弔う静雄を敵意を持ったまま接し続けられる訳がない。
それに耐えられそうに無いくらいに疲れた。
――今でも折原臨也への親しみを失った訳でも、彼から教えられた疑惑を全て払拭出来たわけでは無い。
だがそれを抱えていて尚、静雄との和解を前提とした対話を彼女は求めたのだ。

「……」
「……」
「蟇郡さん……達は?」


静雄が明らかに嫌悪していた臨也の名は蛍は出さなかった。
彼の表情が苦痛に彩られる。


「蒲郡とあいつは放送で呼ばれたよ、れんげちゃんは呼ばれていない」
「そうですか……」

"あいつ"が臨也であるのはすぐに解った。
嫌でも認識させられる喪失へのショックと、宮内れんげが存命である安堵が心中で交じり合い苦い気持ちをこみ上げさせる。
蛍は続いてラビットハウスにいる仲間達の事の行方を尋ねた。
放送で呼ばれていないのを知りもっと安心した。思わず安堵の息を吐いた。

715夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:59:14 ID:/gRdK6EA0
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情報交換を兼ねた談話の締めくくりは以下のやり取りだった。


「分校に行きたいです」
「解った」


運転に集中する静雄を他所に蛍は車外を時折見回していた。
警戒していると言ってもいい。
臨也を殺害し、蛍に一生消えないだろうトラウマを植えつけた纏流子は死んでいないと推測していたから。
そんな彼女へ、若干不安そうに静雄は顔を向けずに言った。


「……あいつに会わなくていいのか?」


研究所に安置されている折原臨也の事である。


「気にならないと言っちゃうと嘘になりますけど……い」


今はと言いかけて、それを押し留めた。
あの時の臨也の言動は明らかに静雄を破滅に導こうとしていたと今の蛍に判断できるもの。
押しとどめなければ、あそこまで混沌とした感情に任せて不仲な理由を訊いてしまいそうだった。
折原臨也が一条蛍の命の恩人である事は変わりはない。
必要も無しに臨也への悪感情を抱いてしまいそうな質問は止めた方がいいと思えた。


「……悪い、巻き込んじまって」


それを知ってか知らずかの静雄の乾いた声。横顔を見ると渋い表情。
蛍は色んな感情をこり固めたかのようなその一声で、もうこの場で二人の関係を知ろうとする気は失せてしまった。


「……」
「……」


気まずい沈黙を抱えながら車は分校へ向かう。
程なくして旭丘分校の正門前へ到着する。


車から降りた二人は正門へ向かおうとした。


「あの平和島さん?」
「車をカードに戻したほうがよくありませんか?」
「……そういや、そうだな」

盗まれる可能性を思い至った事もあって、静雄は車に手を触れると漠然と戻れと念じた。
車は一瞬で縮小し、1枚の黒いカードへと変化していく。
静雄は珍しく気味悪そうに手にしたカードを見つめた。


「どうしたんです?」
「これ知り合いの持ち物なんだけどな……」

静雄の表情がどこか途方に暮れたように変化する。
蛍は曖昧に笑った。静雄は蛍の方へ顔を向けた。
恐怖の色はほぼ消えていたが、視線はやや彼の顔から外れていた。
仕方がないなと彼は思った。

716夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:59:45 ID:/gRdK6EA0

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二人は校門をくぐり、しばし歩みを進める。
先に分校内の惨状に気づいたのは静雄だった。
察知したのは焼き焦げた僅かな匂いと血臭。
そして程なくして蛍が分校の破壊跡を発見する。
分校に危険が及んでいると判断した彼は蛍を遠ざけようと声をかける。


「蛍ちゃんはここで……」
「……」


拒否。一人校内に行こうとする静雄を、蛍は服を掴んで止める。
静雄はここで二人しかいない事を改めて気付かされる。


「きっと死体があるぞ」
「……が、ガマンします」
「殺人鬼がいるかも知れねえぞ」
「…………その時は」

咎めるような静雄の忠告に蛍はたどたどしく返答する。
大きく息を吸う音がした。


「いっしょに逃げて下さい!」


蛍の必死と取れるの願いに我ながら不謹慎にもあのなあと静雄は思ってしまった。
二人は表情を変えずにしばし黙った。
ままだったが、やがて渋面ながらも静雄を黒いカードを1枚取り出し。
蛍に渡した。


「これは?」
「どこかの国の土産のトーテムポールのような仮面だよ」
「?」
「死体を直にみるのはきつからよ、見ないように気をつけてくれ」
「なんで……」
「それ小鞠ちゃんも気に入ってたと思うから……やるよ」


静雄の返答が淀んだのは誰かの所有物の可能性に気づいたから。
蛍はというと元の形に戻した仮面に怯えることもなく、しげしげと見つめ
やがて抱きしめるかのように両手で抱え、静雄に付いて行った。

717夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:00:53 ID:/gRdK6EA0

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空は既に夕暮れ。
校舎内の探索を終えた二人は途方にくれた顔で手頃なサイズの岩に腰掛けていた。


「……」


蛍は赤カードから出した蜜柑の皮の匂いを嗅ぎながら、蜜柑の実を口に放り込む。
彼女が校舎内でかろうじて嘔吐しなかったのは注意を払っていたのと匂いのきつい果物を現出させたからだ。
静雄は青カードから缶コーヒーを出すや、勢い良く中身を飲み干した。


「私はここでれんちゃんを待った方がいいのでしょうか?」


蛍は静雄ほど虚無感はなかった。
静雄は空き缶を片手で握りつぶし、ほぼ球状になったそれを適当に放り投げた。
返答はない。何枚かの黒カードが擦れる音がした。


「何なんだったんだ、あいつはよ……!」


静雄は見つけたのだ、許せない敵と認識していた衛宮切嗣の死体と彼の遺品である黒カード等を。
ある程度は心に整理つけていた蛍と違って、静雄は切嗣に対する敵意は以前強いままだった。
見つけ次第、締めあげて小鞠殺しの真相を明らかにさせてぶちのめすつもりだったが。
何者かに惨殺されていたのを発見し目標の一つを失って途方に暮れたのだ。
やり場のない感情を、蛍を避難させた上で建物に対しぶつけようとしたのだが(死体に当たり散らすような真似はしたくなかった)、
蛍に大声で止められた事もあって、それはできなかった。


「平和島さん、そろそろいいですか?」


手持ちぶたさにいじっていたカードを静雄に見せる蛍。
回収するだけ気を回せたのは、暴れようとする静雄を止めた直後、頭が冷えたからに過ぎない。
今、蛍がこうして回収品の確認できているのも、彼女が物事に集中したのもあった。


「ああ、頼む」
「えい」


蛍が念じるとカードは1羽の蝙蝠へと変わった。
羽根をパタ付かせて低く飛空するとすぐに蛍の横に止まって大人しくなった。
その様子に二人は和んだのか、表情を和らげてもう1枚のカードに注目した。


「えい」
「……?!」


次に出たのは同じくカード。
ただそれは1枚のカードではない。
数十枚ものカードのセット、いわばデッキ。
所謂、トレーディングカードという名称のそれは種別こそ特定できないものの二人とも知っている玩具であった。


蛍は首をかしげながらも蝙蝠に手を伸ばしてカードに戻す。
カードの裏面を見て、効果を確認する。

718夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:01:27 ID:/gRdK6EA0

「……」


彼女は次にカードデッキを黒カードに戻し、裏面を見る。


「……ルリグ?」


裏面には"詳細はルリグカードから訊くこと"との文面があった。
蛍は戸惑った、それを察した静雄が近づく。
少し迷いながらも蛍はデッキを静雄に渡した。
静雄はわりと慣れた手つきでカードを検分していく。
イラストが少女である以外はありがちとも言えるカードゲームであるのが二人には見て取れた。
やがて静雄はデッキの底に近い位置にあった、仰向けに寝たドクロを彷彿とさせる帽子を被った少女のイラストのカードを発見した。
そのカードはあきらかに他のカードと雰囲気が違っていた。
静雄は小声で寝ている少女に呼びかける。
カードの中の少女は身を捩らせつつ、眼をこすりながら目の前の青年に声をかけた。


「切嗣さん……アンタは……」
「?!」

2人の息を呑む音がした。

「……切嗣さんじゃ……ないですよねー」

緊張を感じ取ってか、ルリグ――エルドラは困ったように頭をかいた。
場の空気が一変した。


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「あの人は上手く行ったら私らルリグに悪いようにしないって言ったんですよ」
「……参加者にはどうこうするとは」
「言ってなかったですね」

しばしば頭に血管を浮かばせながらも、静雄と蛍とエルドラの情報交換は進んでいる。
あの後、切嗣の他に状態の悪いランサーの死体も見つけて、人目のつかない場所に移動させている。
埋葬しなかったのは、悪感情からの拒否感があった……からでなくエルドラが死体から力みたいなのを感じると発言したからであった。
後で調査してから弔うに事にした。
更に魂が封じられたカードからも微小だが力が感じると言った事から、こちらは回収する事にした。

当初エルドラは飄々とした感じで会話を進めようとした節があった。
だが2人の真剣さを察してか途中から真面目に対応していた。


「衛宮さんは誰に殺されたのかも」
「解らないですね、嫌われたのかカードから出してもらえなかったですし」
「……どうしてでしょうか?」
「冗談めかしてですが、正義の味方みたいですねって言ったのがまずかったのかなっと……」
「何だよ……それ!」


静雄の怒りに任せた足踏みが地面をたたき、陥没させた。

719夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:01:56 ID:/gRdK6EA0


「……悪ぃ、続けてくれ」



若干の怯えが交じる2人の顔を見て、静雄はバツが悪そうに片手で頭を抱えた。



「マジで殺し合いが行われてるんですね?」


外見に似合わないくらいの真剣なエルドラの問いかけに蛍は強く頷いた。
静雄はこの殺し合いの今後に思いを馳せ、上空を見上げた、陽はさらに沈んでいる。
つられて蛍も夕空を見上げた。
静雄は呻くようにエルドラへ言う。


「お前最初はこの殺し合いはセレクターバトルと同じようなものだと言ってたよな」
「ええ」
「違ってるて言うのかよ」
「私は繭から一方的に言われただけですからね」
「……」
「セレクターバトルとそう変わらないわ、と」


蛍は首を下げ、意を決したかのように口元を引き締め、腕輪を起動させた。
腕輪に参加者名簿が浮かび上がる。


「エルドラさん、この中であなたの知り合いはいますか?」
「どれどれ……!」
「どうした」
「いやあ……もう、ますますわけが解りませんねえ……」

720夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:07:01 ID:/gRdK6EA0
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蛍が再び校舎に入り、戻ってきた後。


「平和島さん、ラビットハウスへお願いします」
「おう」
「近くにルリグがいたら知らせるっすよ」

今からだと次の放送までには間に合わないだろう。
だがそれを承知の上で3人は向かう事にした。
蛍は約束を果たそうとし、仲間と合流するために。
れんげへの書き置きは校舎に残してある。
静雄は蛍を守りつつ小鞠殺害事件を調査した空条承太郎と対面し、自らのけじめの一つと、蟇郡が果たせなかった小湊るう子を救出するために。
エルドラは小湊るう子、紅林遊月からある確認をとるために。
車に乗り込みつつ静雄は蛍の顔を見た、蛍は僅かに視線を逸らした。
2人はそれに内心少し後悔した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



【F-4/旭丘分校前/一日目・夕方】

【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:東條希への苛立ち、全身にダメージ(中)、疲労(中) 、やり場のない怒り(小)
[服装]:バーテン服、グラサン
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(8/10)
    衛宮切嗣とランサーの白カード
    黒カード:ボゼの仮面@咲Saki 全国編
         縛斬・餓虎@キルラキル
         不明支給品0〜1(本人確認済み)
[思考・行動]
基本方針:あの女(繭)を殺す
  0:蛍を守りたい。強くなりたい。
  1:ラビットハウスに向かい、承太郎と話しあう
  2:小湊るう子と紅林遊月を保護する
  3:テレビの男(キャスター)とあの女ども(東郷、ウリス)をブチのめす




【一条蛍@のんのんびより】
[状態]:全身にダメージ(小)、精神的疲労(中)、静雄に対する負い目と恐怖(微)
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
    黒カード:フルール・ド・ラパンの制服@ご注文はうさぎですか?、カッターナイフ@グリザイアの果実シリーズ、ジャスタウェイ@銀魂、越谷小鞠の白カード 折原臨也のスマートフォン
    エルドラのデッキselector infected WIXOSS、蝙蝠の使い魔@Fate/Zero、ボゼの仮面咲-Saki- 全国編、裁縫道具@現地調達品
[思考・行動]
基本方針:れんちゃんと合流したいです。
   1:ラビットハウスに向かって、承太郎らと合流する
   2:何があっても、誰も殺したくない。
   3:余裕ができたら旭丘分校でれんちゃんを待つ
[備考]
※空条承太郎、香風智乃、折原臨也、風見雄二、天々座理世、衛宮切嗣と情報交換しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。現状他の参加者に伝える気はありません。
※衛宮切嗣が犯人である可能性に思い至りました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※旭丘分校のどこかにれんげにあてた手紙があります。内容は後続の書き手さんにお任せします。
※エルドラの参加時期は二期でちよりと別れる少し前です。
 ルリグの他に魔力や微弱ながらも魂入りの白カードも察知できるようです。
 黒カード状態のルリグを察知できるかどうかは不明です。

721 ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:07:31 ID:/gRdK6EA0
仮投下終了です。

722名無しさん:2016/07/16(土) 00:32:42 ID:q7uniV0Q0
仮投下乙です
特に問題はないと思われます

723 ◆WqZH3L6gH6:2016/07/16(土) 15:03:15 ID:sma/YgdE0
本スレでの投下が完了しました。
状態表を主に一部修正しました。

724 ◆DGGi/wycYo:2016/07/19(火) 19:43:00 ID:4O4Oo8p20
一応こちらにも
本スレの方で状態表を修正しました

725 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:54:33 ID:Ac9S5Cso0
仮投下します。

726ろうたけたる ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:55:05 ID:Ac9S5Cso0
拾い上げると、それはサングラスをかけた中年男の魂が封じられた白カードであった。


「……桂さん」
「ああ……」


足早に南方を目指していた桂小太郎とコロナ・ティミルが橋を渡ろうとした際。
水面に浮かぶ光るものを発見したのはつい先程。
それは長谷川泰三の白カード。
桂と親交があり、コロナも桂から話に聞いた男。
1回目の放送に名を呼ばれ彼の死を受け入れているが、
いざ死の事実を目の当たりにすると、度合いは異なれど2人ともやるせない気分に陥らざるを得ない。



「どうしますか?」


コロナの問いを聴きながら、桂は周囲を見渡すが長谷川の遺体は容易に見つけられそうにない。


「先に急ごう」


桂は一先ず捜索を諦めると、カードを懐に仕舞いコロナを促した。
淀んだ気持ちを少しずつ吐き出すかのように、両者は南西の島へ繋がる橋へと走って向かった。



「……カードの絵って固定されているんですかね?」
「……証明写真のように至極普通に写っているから、そうだろう」


白カードは死亡者それぞれの感情をまったく写さない。
参加者の誰々が死んだという証にしかなり得ないように思えた。
実際は各地に点在するパソコンを使えば情報を得られるが2人には知る由もない。


「友奈さんと犬吠埼さんのカードも拾えばよかったですかね……」
「……」

結城友奈と犬吠埼姉妹のカードはそれぞれの遺体の下に置いてきている。
2人は無言になり、並走を続け橋を渡る。
空は赤く染まり始めていた。

727ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:56:16 ID:Ac9S5Cso0
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「どうしたんですか桂さん」

コロナは息を切らせながら問いかけた。
桂は黒カードを変化させたスマートフォン素早く効率よく操作している。
それは斃れた勇者の遺品であるスマートフォンだった。
いま2人がいる場はE-4南西のある民家。
桂の提案で休息を取る事にコロナも異論はなかった。
放送ギリギリで目的地に着くのは避けたかったから。
好奇心もあり彼女は桂が操作するスマートフォンを覗き込た。
彼の慣れた手つきに軽く感動を覚えながら、コロナはある一文を見て声を上げる。


M:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』


「それは……」
「……騙りかも知れん」


友奈を単独行動へと駆り立てたチャットの一文。
桂も樹の事は聞いているが、あえてそれのみに囚われず、他の記録をチェックしていく。


D:『犬吠埼樹を殺したのはホル・ホース』


「あれ?」
「順番通りならMの後に送信された文だが……」


桂は表情を変えず思考する。


「今は置いておこう。コロナ殿、三番目の文に心当たりはないか?」
「……はい。覇王はアインハルトさんだと思います」
「単純に捉えるとRはアインハルト殿の協力者と言う事になるな」
「せめて発信者が誰か解ればいいんですが」
「姓か名の頭文字か、あるいは本名か……うむ」
「?」

桂はコロナに顔を向け、スマホを手渡した。


「コロナ殿、発信して確認を取ってくれ」
「え、桂さんの方が」
「いや、もし俺の名からだと確認が取りづらい。下手すれば二つ名でさえ同じになってしまう」
「……解りました、やってみますね」

728ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:57:10 ID:Ac9S5Cso0
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チャットに書き込みして30分が経った。
新しい書き込みはまだない。


「コロナ殿、このゲームに見覚えは無いか?」
「ウィクロスっていうんですか。ないです」

コロナはスマホの画面に映るカードゲームを見て答える。
まったく心当たりがない。


「そうか……どうしたものか」
「そのゲームが何か?」
「ゲームはこれだけなんだ」
「?。桂さん、遊びたい訳じゃないですよね?」
「……まあそうだが。ゲームを入れるにしてももっと知名度の高いのを入れるべきではと思うのだが」
「……現実逃避でゲームにする人はいてもおかしくないとは思いますが……。そう言えば」

疑問に思うコロナ。桂はスマホを操作しWIXOSSのゲームの説明を読み、プレイ画面へと進める。
そしてゲームスタートとは別の項目をクリックした。

「ん。ランキングがあるだと?」
「え」

ランキングは得点が表示されるものではなく、どれだけ運営が用意した対戦相手を倒せたかが表示されるものだった。


「……7人か」
「プレイする人が本当にいるなんて」
「名無しか……特定できんな」


桂は先のゲームプレイヤーの推理を諦めつつも更に操作を続ける。
やがて画面にプレイヤーキャラにあたるルリグの姿が現れた。
桂は質問するかのように顔をコロナへ向けたが、彼女も首を振って否定。
ルリグの姿は頭にターバンを巻いた、肌の色がダークグレーの、白のレオタードのような衣装を着た少女だった。
それは桂達は知る由もないが、数時間前勇者の力を行使したウリスに似ていた。


「この子がクロ……」
「……何かあるな」
「参加者でこの子を……このゲームを知ってる人はいるんでしょうか……」
「いたら手がかりになりそうではあるが」


もし2人が勇者の姿を見ていなければ、注目まではしなかっただろう。
興味を引いた理由の1つはクロの雰囲気が勇者か、あるいは少々繭に通じる幻想的なものがあったからだ。
桂の指が震えた。

「…………」
「桂さん」


コロナはプレイをさせないように咎めるように言った。
だがその口調はゲームセンター行きを止めた時のように強くない。

729ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:58:11 ID:Ac9S5Cso0

戦闘者の役割を忘れていない桂の姿を見て、コロナは思わず視線を落とした。
時間にして18時間未満経過。DIOらとの戦いに敗走を余儀なくされた上に、これまで協力者や仲間も少なからず喪っている。
にも関わらず主催打倒に繋がる情報は現状何一つ得られていない。
今のままではゲームに翻弄され、流されているだけだとコロナは実感した。
アプリWIXOSS。クリアしても殺し合いの打開にはならないだろうが、少々なりとも興味を出せるものをここに来て発見したとなれば。


「わかりました桂さん。もう止めません」
「そうか」


桂は柔らかさを感じる声を上げ、画面を切り替えた。
コロナはそのままプレイをすると思っていただけに少々呆気にとられた。
けど続ける。


「桂さん」
「?」
「後で皐月さん達にそのこと伝えましょうね。他の人にもですけど」
「む」
「こんな状況でゲームを勧めるなんて、普通は不真面目に見られちゃいますから」


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放送まで1時間を切った。
2人はスマホの機能は大体チェックした。
もっとも肝心な機能のも、今。
実体を伴わない花弁が舞う。
緑色の桜の花びらと、どの花とも判別できぬものと。


勇者スマホの力を行使した桂は羽織を着用していた。
その羽織は勇者の戦闘服に酷似している。
それ以外は先程までの服装と容姿のまま。


勇者スマホの力を行使したコロナは、友奈の勇者服と同じデザインのものを着用していた。
ただその色彩はコロナのバトルジャケットと同じ紺色を中心としたものだった。
容姿は髪の色以外に違いはない。その色はアインハルト・ストラトスと同じ緑がかったもの。



「友奈さんの口ぶりだと他の人は変身できなさそうだったのに……」
「……」


戸惑うコロナと若干厳し目の表情をする桂。
黒カードの裏の説明文を見て、疑問に思った2人が試しにと使ってみた結果がこれだ。
コロナは掌を開いては握りを繰りかえす。
2人の感想は多少の違いはあれど共通していた。
未知の力が自らの肉体を増強させていると。


「…………桂さん」
「どうした」
「ちょっと手合わせ願えませんか?」

730ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:58:48 ID:Ac9S5Cso0
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2人は走る。先程とは明確に早い速度で。


「魔法は強化されない?」
「ええ、他の能力はかなり強化されてはいるんですが……」


申し訳無さそうにコロナ。
桂はコロナのいう魔法や魔力をあまり理解はできないというか、しきる事はできない。
だが彼女が得意とする技術は勇者の力と同時に扱うのは困難なのは手合わせしたからか理解はできた。


「DIOのような相手と戦っても単独では……」
「僅かな隙を狙われては、か」
「……アインハルトさんならもっと上手く扱えると思うんですが」
「強いんだな」
「……はいっ」


桂のその言葉は自分とアインハルトに向けられたもののように聞こえた。


「……ところで桂さん、神威と針目縫と、あとアザゼルって人と交渉するって本気ですか?」
「奴も、皐月殿から聞いた針目縫も、多分アザゼルという男も性格的に主催に反感を持つのは予想できる」
「だけど……」
「それ以上、殺し合いを加速させるつもりはない」
「それは分かるんですけど」


コロナからしてもこれだけゲームが進行しているだけに足止めの意味でも、
対主催戦の準備という意味でも、あえて敵対戦力と部分的に協力するという行動は否定できない。
だが、神威とアザゼルはまだしも針目縫と交渉となると不安が強かった。
コロナも皐月から針目縫に関して情報を聞いている。
会話は可能だが、交渉は無理な性分だと。
アザゼルに至ってはもっと情報が少ない。

勇者の力はコロナ同様に桂の身体能力も強化できている。
だが、その強化はコロナのと比べて明らかに見劣りするもの。
コロナから見て単独で神威やDIOと戦っても勝ち目はないと思えたし、桂も否定はしていない。
彼女の心は不安で占められていた。


「……なに。直接面前に出て会話しようとは思わん」
「え?それなら、いいんですが……」
「それも皐月殿と、放送後に連絡してからのつもりだ」
「解りました」


一先ずコロナは安心した。



「まあこの力、移動には便利だろう」
「……ですね」

たなびく桂の長髪を見ながら、ようやくコロナは笑った。

731ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 07:00:26 ID:Ac9S5Cso0
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【F-7/万事屋銀ちゃん付近/一日目・夕方】

【桂小太郎@銀魂】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身して移動中
[服装]:いつも通りの袴姿
[装備]:風or樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    晴嵐@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)
    黒カード:鎖分銅@ラブライブ!、鎮痛剤(錠剤。残り10分の9)、抗生物質(軟膏。残り10分の9)
    長谷川泰三の白カード
[思考・行動]
基本方針:繭を倒し、殺し合いを終結させる
1:万事屋へと向かう。
2:コロナと行動。まずは彼女の友人を探し、できれば神楽と合流したい。
3:神威、並びに殺し合いに乗った参加者や危険人物へはその都度適切な対処をしていく。
  殺し合いの進行がなされないと判断できれば交渉も視野に入れる。用心はする。
4:スマホアプリWIXOSSのゲームをクリアできる人材、及びWIXOSSについての(主にクロ)情報を入手したい。
5:金髪の女(セイバー)に警戒
[備考]
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は風か樹の勇者服を模した羽織を着用します。他に外見に変化はありません。
 変身の際の花弁は不定形です。強化の度合いはコロナと比べ低めです。


【コロナ・ティミル@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身して移動中
[服装]:制服
[装備]:友奈のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    ブランゼル@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(17/20)
     黒カード:トランシーバー(B)@現実
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを終わらせたい。
1:みんなの知り合いの話をしたい。
2:桂さんと行動。アインハルトさんを探す
3:桂さんのフォローをする
4:金髪の女の人(セイバー)へ警戒
[備考]
※参戦時期は少なくともアインハルト戦終了以後です。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は友奈の勇者服が紺色に変化したものを着用します。
 髪の色と変身の際の桜の花弁が薄緑に変化します。魔力と魔法技術は強化されません。


[全体備考]
※結城友奈、犬吠崎風の死体の周辺に散らばっていた黒カードは回収されました。
桂及び皐月・れんげの所持するスマホが風か樹のどちらであるかは次以降の書き手に任せます。
※勇者スマホにアプリゲームWIXOSSがインストールされています。内容は折原臨也のスマホのと同一です。
※桂とコロナが少しばかり模擬戦をしました。
※友奈か風か樹のスマホでチャットに書き込みをしました。
 内容は次回以降の書き手さんにお任せします。

732 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 07:03:04 ID:Ac9S5Cso0
仮投下終了です。
チャットの書き込みは丸投げなので、まずかったら今晩追記します。
タイトルはおもいが付いている方です。
問題点や疑問点がありましたら、ご指摘をお願いします。

733名無しさん:2016/08/01(月) 17:57:55 ID:qMgSr6kc0
仮投下乙です
勇者ヅラと勇者コロナで戦力は大幅にアップしたけど、肝心の散華を把握出来てないのは怖いなぁ
友奈が黙ってたのがここで響いてくるとは…
チャットについては個人的に問題はないかと思います

一つ指摘ですが、>>727で「いま2人がいる場はE-4南西のある民家」とありますが、C-6からF-7を目指してる桂達がE-4にいるにはあり得ないかと思います

734 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 23:17:21 ID:Ac9S5Cso0
>>733
感想とご指摘ありがとうございます。
E-4をE-7に訂正して本投下します。

735 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 23:34:21 ID:Ac9S5Cso0
投下しました。
仮投下の際、ヅラの方針4を裏付ける文が抜けていたので、本スレの>>667に投下しました。

736管理人:2016/08/04(木) 23:47:55 ID:???0
■第三回放送案募集テンプレ

アニメキャラ・バトルロワイヤル4thの第三回放送案(リレーSS)を募集します。
以下をよく読んだ上で第三回放送案を仮投下スレで投稿してください。
他の人の投下に割り込まないように気をつけて下さい。
後に修正要求される可能性があるのでトリップをつける事をお勧めします。

今回は死亡者と3エリア分の禁止エリアの発表を行います。

放送案の内容に企画の進行に問題がある内容の場合は修正要求されます。
問題の度合いによっては修正要求の前に破棄になる可能性もあります。
もし修正作業が修正期間までに間に合わないと本編投稿作品も含めて自動的に破棄になるのでご注意下さい。


【募集期間】08/05(金)00:00〜08/18(木)23:59の14日間。
      修正期間は08/19(金)00:00〜08/20(土)23:59までの2日間の予定です。
      募集作品と本編投稿作品の修正の有無によっては修正期間無しとし、前倒しで投票を行う可能性があります。
      修正期日の翌日の00:00から23:59に投票を行います。
      投票で1位になった作品がアニメキャラ・バトルロワイヤル4thの第三回放送SSとして採用されます。

      募集期間中の放送前のパートの予約投下は08/05(金)00:00〜08/11(木)23:59まで可能です。
      修正は二日間までです。
      
      
     
※補足
第三回放送話は参加者残り24名という事もあり終盤一歩手前、
とはいえクライマックスにはまだちょっと遠いというという後半ながらやや不明瞭な局面です。
主催サイドの新キャラを出すのは構いませんが、現在のゲーム・参加者達の状況をよく把握した上で
今後の進行の阻害になりうる扱いに困るキャラ、設定等を出してしまわないようご注意下さい。

放送前の本編パートの投稿も内容次第では放送案投稿の支障になってしまう恐れがあるので、慎重にお願いします。

737 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:40:54 ID:fIO4wV760
放送案を投下します。

738第三回放送 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:41:25 ID:fIO4wV760
白い部屋と多数の大きな窓に覆われた部屋。
朧気な少女――繭は頭上にある巨大な時計を見上げていた。
午後5時58分。舞台となる会場の上空の陽は殆ど落ちており、夕日は端っこで消えかけの炎のようになっている。
陽光に弱い人外も外出が可能だろう。
そして繭が主軸となり回っているゲームはいよいよ佳境に入った。
今しがた一人が命を落とし、場合によっては5名以上の死者を出すであろう集団戦が部隊の南方で起こっている。
楽しみだ。懸念は定時放送中に決着が着いてしまう場合くらいであろう。
繭はためらわず、放送を開始した。


『今晩は。三回目の定時放送の時間よ
 忙しい方もいるでしょうけど、最低でも名簿と禁止エリアの確認はしておいた方がいいわよ。
 繭、つまらない結末は見たくはないもの。
 まずは禁止エリアの発表よ』


【B-7】
【C-3】
【G-7】



『午後9時になったら、今言ったエリアは禁止エリアになるわ。
 エリア内に留まっている子は時間までに離れなさい。
 それから、自分の支給品確認や禁止エリア予定地を調べてみるのもいいかもね。
 それじゃあ次は死んでしまった参加者の発表を始めるわよ』


【衛宮切嗣】
【東郷美森】
【リタ】
【結城友奈】
【犬吠埼風】
【アインハルト・ストラトス】
【ジャック・ハンマー】
【神楽】
【本部以蔵】
【ファバロ・レオーネ】
【坂田銀時】
【ホル・ホース】
【宇治松千夜】
【東條希】
【香風智乃】

739第三回放送 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:42:18 ID:fIO4wV760


『全部で15人よ。残り24人。
 ふふ……ここまでやる気があるなんて驚いたわ。今夜中に決着がつきそう。
 でもね、決着がいつになるにしても優勝した子にはご褒美を上げるから心配しないで。
 次は正子――午前0時に放送を始めるわ』




放送が終わった。


「……」


繭は一息をつくと、椅子状になった窪みに腰を下ろし考える。
放送数分前に協力者の一人から忠告された繭自らによる白カードの確認と黒カードの確認。
繭は遅くとも優勝者が決まる瞬間までに、カードに封じられた参加者の魂を手元に集めなければならない。
でなければゲーム終了後、予定していた取っておきの遊びができなくなる。それではつまらない。
黒カードに関しては自分の力がちゃんと支給品に影響を及ぼしているかの確認である。
ひとつ妙な動きをしているのがいる。所持者が死んだこともあり放っておこうかと思ったが。
枷を外す所謂、意思持ち支給品が増えても難儀だ。
密かに手を打つか、もしくは臨時放送でもするか。もしくは……。


「……まあ、9時を回ってからでいいわよね」


繭は歩く。協力者たち、ヒース・オスロとテュポーンらの元へ。



「クロがそののままで、シロもシロのままでいてくれればよかったのだけど……」



足取りは重い。まだ身体は健全とまではいかないようだ。
でもヒースらの協力があってこその肉体。このまま時間が経てば……。
そう奮い立たせ、繭は未練を打ち切り、さらにそれを強調するかのように呟く。


「あのシロはタマ、クロはユキ……。
 わたしの知るシロとクロじゃないもの。
 ねえ……もうひとりの繭……。あなたはいまどうしてるの?
 わたしはね、呪いながらしあわせになるの。
 シロとクロが消えてしまった代わりに動けるようになった、このわたしで。
 バハムートといっしょに」


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