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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

93 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/23(日) 18:48:40 ID:mfS682sw
投下終了です
問題点などありましたら指摘お願いします

94名無しさん:2011/10/23(日) 19:18:01 ID:QfTE2Tzc
投下乙です!こちらも無事合流、しかし話すべき事は山積み……ってなに嫌なフラグにしかならないのを拾ってますかw

95名無しさん:2011/10/23(日) 20:38:52 ID:6bH4EnU6
投下乙っす
どうにか合流は無事に済んだか…エリア的にもしばらくは安全だな
失敗作…ビリビリの刑に誰かが処されることになるのか…w

96名無しさん:2011/10/23(日) 22:20:07 ID:eoZXBFT.
>>93
乙です。

>>82の一行目の文章が、日本語としてちょっとおかしいみたいです。

97名無しさん:2011/10/24(月) 21:53:24 ID:6DKYcehk
>>93
投下乙ですー。
ふむ、やはり流星塾は地下なのかー。 なにやら危険なものまであるし。
グレッグルは地味にナイス。 見た目からだとアレだが結構バランスはいいメンバーなのかな?

98 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/24(月) 23:14:25 ID:XtedG2Qk
指摘と感想ありがとうございます
文章はwiki収録の際に直しておきます

それにしてもなんでこんな文章になってるんだ

99名無しさん:2011/10/25(火) 21:39:31 ID:n7ITWlVw
投下乙です

言いたい事は既に上で言われているなあ
とりあえず色々としなければならない事が多いんだよなあ…

100名無しさん:2011/10/28(金) 02:12:31 ID:j1eMktMo
投下乙です。
未完成スマートバックルって、装着すると死ぬのか。
満身創痍のたっくんが変身しようとして、止めを刺される図が頭に浮かんだ。

ところで、非常に重箱の隅な指摘で恐縮なのですが、真理の話し方に少し違和感があります。
今回のSSの真理は「分からないわ」「~かしら」みたいなちょっと芝居がかった喋りかたをしていますが、
どちらかと言うと「分かんない。でも…」「~じゃないかな」みたいな、少し砕けた話し方をする子じゃなかったかなと思います。
まどマギで例えると、ほむほむやマミさんよりもまどかに近い感じだったような。


劇場版555の記憶がだいぶ薄れてるので、劇場版真理の話し方はこれで正しい!とかだったらごめんなさい。

101 ◆Z9iNYeY9a2:2011/10/28(金) 03:02:20 ID:8lBTdw0M
おや、そうでしたっけ
一応wikiにて修正してみました
どうも口調はうろ覚えのキャラだと難しいもので

102 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:53:27 ID:QIHkP89I
これより、間桐桜、藤村大河を投下します。

103悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:54:54 ID:QIHkP89I



 飼育箱で夢を見る。
 廃墟の巣穴。
 黒色の蛹。
 誕生の記憶はない。
 繁栄にあつく。
 ルーツは原初からして不明。
 滅日の記憶はない。


        ◇


 ――――…………ィ……―――


 ふらふらと熱に浮かされたように彷徨う。
 あれだけあった高揚感は、身を削る様な飢餓感にすり替わり、まともな思考を奪っていく。
 まるで底なし沼。もがけばもがくほど沈んでいく泥の泉。
 もうどこに向かっているのかわからない。
 そこに向かうことに意味があるのかさえわからない。


 ―――足リ……ナイ―――


 ああ、意味など考えるまでもなかった。
 私はあの人の所へ向かうのだ。
 あの人のために、より多くの人を斃(コロ)すのだ。
 そのために、この飢えを満たして力を付けるのだ。


  ―――足リナイ―――


 だから私は歩いている。
 だってこっちからは、

「―れ? もし――て……桜ち――? やっぱ――――んだ。 よかっ―ぁ、無――ったの―。もうホント心――たんだか―」

 とてもオイシソウな匂いが――――


 フラフラと覚束ない足取りで声のした方へと歩く。
 ゆらゆらと揺らぐ視界で相手を捉える。
 目の前には、舌が蕩けそうなご馳
「―――ふじむら……せんせい?」
 目の前には、最後に見た時と何ら変わりない藤村先生の姿がある。

 あれ……?
 私は今、何を考えていたのだろう。
 頭は熱くてぼうっとしているのに、辺りはとても寒くて、矛盾した感覚に吐きそうになる。
 まるでぬるま湯の泥の中にいるみたいに気持ち悪い。

「よーし、これ――とは士郎と――バーちゃ――遠坂さ――けね。だいじ――――いじょ―ぶ、みんな元――してる――」
 頭がズキズキして、ぐらぐらして、藤村先生の声が良く聞こえない。
 けど先輩の名前で、ふわふわ浮いていた頭がひょっこり顔を上げて、
 姉さんの名前で、ギシリ、と右手に握っていた物を軋ませた。

 ……なにを、軋ませたのだろう。
 恐る恐る右手を覗きこめば、そこには私に力をくれるグリップが。
 腰にはベルトが、いつでも変身出来るように巻かれている。

「あ――も、士郎―――ぱり心配―え。セイ―――ゃんは強―し――坂さ――あ――いい―ら何とか―――だけ――士郎――ら無暗――――突っぱ―――うだ――なあ」
 辛うじて認識出来た言葉から、藤村先生が何を言ったのかを推測する。
 先生は、先輩が心配だ、と言ったのだろうか。

104悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:55:36 ID:QIHkP89I

 ああ、確かに先輩は心配だ。
 もう死んだ姉さんなんかどうでもいいけど。
 先輩はすぐにどこかに行ってしまいそうで、鳥籠にでも閉じ込めてないと安心できない。

 じゃないとあの姉さんに似た人に、先輩を盗られてしまうかもしれない。
 もっと力を付けないと。力を付けて、はやくあの人を殺さないと。

「そ―――ても――難――え。みん―――こん―――に巻き――れる――て。
 殺―合い――てやっ―――るかー! って感――ねー」
 たぶん、殺し合いなんてやれるか、と藤村先生は言ったのだろう。
 まったくだ。殺し合いなんて先輩が悲しんでしまう。
 そんな事は許せない。
 だから殺し合いなんて終わらせないと。
 もっと力を付けて、“悪い人”を殺さないと。

 そのためにも――――タクサンゴハンヲタベナイト。

「ッ――――――――………………!?」
 今……なにを考えた?
 私は一体、“何を食べようとした”?

「私………藤村先生を………?」
 そんなはずない。そんな事考えてない……!

 人間なんて食べれないし、食べたくもない。
 それに食べるということは命を奪うということで、それはつまり殺すということだ。
 藤村先生は“悪い人”じゃないから殺しちゃいけないし、そもそも先生は先輩と同じ大切な人で、


 ………でも、目の前の藤村先生は――――こんなにも美味しそうで――――


「――ゃん、どうし―の? 顔―悪いよ? 具合――悪い―?」
 意識が飛んでいた。ちゃんとしていないと、記憶がコマ送りみたいになる。
 その間に、藤村先生が、私の様子を心配して近づいていた。
 その様子があまりにも無防備で、あまりにも簡単に捕らえれそうで、私は、

「だめ、来ないでください……!」
 出来る限りの力で、必死に自分を抑え込んだ。

 怖い。怖い。怖い。
 私は今、何より自分が怖い。
 どうして私は、藤村先生を殺すことを考えてるんだろう。
 どうして私は、大切な人を食べようとしているんだろう。

「さ――ちゃ――…?」
 私の声に思わず足を止めた藤村先生が、心配そうに名前を呼んだ。

 ああ、どうしてこの人はそんな顔が出来るんだろ。
 藤村先生は本当に私の事を心配して、気に掛けてくれている。
 でもその様子には何の陰りもなくて。
 こんな所に呼ばれたのにまだいつも通りの明るさを保っていて。
 けどそれは、

 藤村先生は何も知らないからで。

「どう― の? なん― ―つも―桜ちゃ― ―ない ?」
「いつもの……私……?」
 その言葉に、グラリ、と天秤が傾く様な音を聞いた。
 いつもなら心が癒されたその明るさが、今はどうしてか癇に障る。

「いつもの私って……何ですか?」
「――らちゃ―  ? ―体――  ?」
 間桐の家の事を黙って、自分が魔術師である事も黙って、セイバーさんの事も黙って。何もかも黙ったまま、藤村先生も、先輩さえも騙していた私の事?
 それともあのジメジメとした薄暗い蟲倉で、よくわからないものに嬲られていた私の事?

105悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:57:18 ID:QIHkP89I

 そんなの決まってる。
 藤村先生は何も知らない。
 先輩が魔術師だって事も知らない。
 何もかも隠していた、嘘の私しか知らない。

「魔術師でも何でもない、なんにも知らないくせに……」
 私の事も、セイバーさんの事も、先輩の事も。
 なんにも知らない、まるで白紙のノートのようで、
 そんなんだと、

「藤村先生。私、藤村先生が思っている様な綺麗な女の子じゃないんですよ?」
 ぐちゃぐちゃに汚したくなってしまう。
「                              」
 真っ白な画用紙を黒いクレヨンで塗り潰すように。まだ誰も踏んでない新雪を滅茶苦茶に踏み荒らすように。ひらひらと舞う綺麗な蝶の肢を一本一本引き千切るように。
 目の前でそれをした時、この人は一体どんな顔をしてくれるのか、想像しただけで笑いが込み上げてくる。

「小さい頃からよくわからないものに触られて、汚れてない所なんかどこにもなくて――――今だって、私の手は真っ赤に汚れていて」
「                              」

 ああ――――私、おかしくなってる。

 そんな事をする意味はないのに。
 そんな事をしたら大切な物を壊してしまうのに。
 そんな事をしたくてしたくて堪らない。
 こんなんじゃ私、きっと先輩に嫌われてしまう。
 でも。

「でもいいんです。こんな私でも、出来る事があったんです。先輩の為に、私が代わりになるんです」
 こんな私でも、先輩の為に出来る事はある。
 今の私だから、先輩の為になれる。

「                              」
「先輩は優しい人だから、こんな殺し合いに呼ばれたら悲しんでしまう。
 先輩は正義の味方だから、きっと誰かを助けるために無茶をしちゃう。
 だからそうなる前に、先輩を悲しませる人はみんないなくなってもらうんです」
「                              」
 ベルトの力さえあれば、誰にも負けない。
 さっきはちょっと油断したけど、もう失敗なんてしない。
 今度こそちゃんと殺してあげるんだから。

「そうすれば先輩は悲しまない。
 そうすれば先輩は傷つかない。
 そうすれば先輩は、ずっと綺麗なまま」
「                              」
 あの夕陽のグラウンドの中、諦めてしまえという思いを、頑張れという想いに変えてくれた少年。
 あの人に守ってもらいたいと願ったから、今度は私が、あの人を守って見せる。
 だから。

「藤村先生。私にとっては、あなただって綺麗な人なんです。
 優しくて、暖かくて、子供みたいで。なんにも知らないからこそ綺麗な藤村先生」
「                              」
 私と先輩と先生の、大切な日常の象徴。
 先生がいなくなったら、先輩が悲しむ。
 先生がいなくなったら、帰る場所がなくなってしまう。

「だから、来ないでください。
 いま近づかれると、わたし――――何をするか、わからない」

 壊したくないのに壊してしまいそうで、近くになんて居られない。
 今にも“影”が粟立って、藤村先生へと襲いかかりそうで怖い。
 自分の事なのに自分がわからなくなりそうなのが一番怖い。

 だからはやく、藤村先生から離れなきゃ。
 はやく“悪い人”をみんな殺して、いつもの日常に帰らなきゃ。

「へんしん」
 体を黒と白の装甲が覆う。跳ね上げられた身体能力で駆けだす。
 見る見る離れていく藤村先生。ただの人間である彼女には決して追いつけない。
「                              」
 その爽快感が心地いい。藤村先生と別れるのが心苦しい。―――から離れるのが口惜しい。
 私を引き止める声がしたけど、止まったら自分がどうなるか分からない。

106悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:58:31 ID:QIHkP89I

「、っ――――――」
 本当は、藤村先生の傍にいたかった。
 藤村先生の傍で、いつものように笑っていたかった。
 あの日溜りのような人と一緒に、先輩に会いに行きたかった。
 けど、今の自分じゃ先生を殺してしまう。

「………ぃ………」
 全身を包む高揚感。
 今までは心地が良かった力。
 今でも心地が良いそれは、けれど。

「こんなんじゃ、足りない」

 もはやより強く、飢餓感を覚えさせるモノでしかなかった。

「足りないから、苦しいんだ。
 足りないから、傍にいられないんだ」
 全身を苛む飢餓感。
 そのせいで私はおかしくなってるんだ。
 “悪い人”じゃないのに藤村先生を殺そう(食べよう)としているんだ。

「――――――――」
 足りないものはわかっている。
 もとより欲しいものは一つだけ。
 それ以外のものなんて何もいらない。
 それを手に入れる為にも、

「早く会いたいです、先輩」

 はやく、先輩に会わなければ。
 先輩に会えば、この渇きも満たされる。
 そうすればきっと、いつもの自分に戻れる。

 けど。

「――――あの人の所為だ」
 こんなに渇きを覚えたのは、あの人と会ってからだ。
 あの人が、姉さんに似たあの人さえいなければ、私はおかしくなんてならなかったのだ。

 あの人がいる限り、私はまたおかしくなってしまうかもしれない。
 せっかく満たされても、また乾いてしまうかもしれない。
 そうしたら今度は、先輩まで殺したくなるかもしれない。

 ―――そんなのは許せない。

「……許せない―――絶対に許さない」
 姉さんみたいな口をきいて、先輩をバカにして、私をおかしくして。

「ははは、あははは………」
 ああ、ホントにおかしい。
 こんなにも腸が煮えくりかえっているのに、あとからあとから笑いが込み上げてくる。

 でも理由は明白だ。
 あの人が私にした事は、間桐の家で私がされた事とはぜんぜん質が違う。
 あんな風にバカにされたことは初めてだった。
 私だけじゃなく、私の大切な人まで貶められたのは本当に初めてだった。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは―――――!!!!」

107悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:59:04 ID:QIHkP89I

       そう。

 こんな屈辱は味わったことがない。
 こんな恥辱は身にうけたこともない。

 ―――だから、愉しい。

 あの人に、この身を焦がすほどの憤怒をぶつけ、叩きつける時がどれほど気持ちよい事か想像もつかない。

 壊す。壊す。壊す。
 少しずつ、一息に、この上なく優しく、痺れるぐらい残酷に、あの命を犯しつくそう。

 そう。

 四肢を引き千切って肋骨をあばいて臓物をよじり出して、助けをこう喉を踏み潰して眼を噛み砕いて頭蓋を切開して脳髄をバターのように地面に塗りたくるその瞬間―――――!


「待っていてください、すぐに殺してあげますから……!」


 愛する人への想いを胸に、憎悪を振りまいて少女は駆ける。
 藤村大河という日常に照らされた少女は、それ故に自身の闇をより濃くさせる。
 それはあたかも、ふらふらと揺れる振り子のように。光に照らされ現れる影のように。

 笑って、狂ったように笑い続けて、少女は全身に紅い紋様を蠢かせていた――――


【B-5/森林/一日目 早朝】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(小)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、無自覚の喪失感と歓喜、強い饑餓、ダメージ(頭部に集中)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身中)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品×2、最高級シャンパン@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:先輩(衛宮士郎)の代わりに“悪い人”を皆殺し
0:先輩に会いたい
1:藤村先生から離れる/あの人(ルヴィア)を惨たらしく殺す
2:先輩(衛宮士郎)の所へ行く
3:先輩(衛宮士郎)を傷つけたり悲しませたりする人は、みんな殺す
4:あの人(ルヴィア)は―――絶対に許さない
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※「黒い影」は桜の無意識(気絶状態)でのみ発現します。桜から離れた位置には移動できず、現界の時間も僅かです
※頭部のダメージにより、外界の認識が難しくなっています。

108悪夢→浸食〜光の影 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 16:59:33 ID:QIHkP89I


        ◇


 そうして間桐桜は、藤村大河の前から走り去って行った。
 慌てて追いかけようと彼女もまた走り出すが、
「ま、待ってよ桜ちゃぶふっ!!??」
 彼女の腕から離れ、その足を掴んだピンプクによって無理矢理に止められた。

「うごごごご。い、いたい……物凄くいた〜い」
 ビタン、と顔面を強打し、激痛に悶える。
 それでもやるべき事があるからと身を起こすが、ピンプクに足を掴まれたままで動けない。

「プクちゃん? お願い離して、はやく桜ちゃんを追いかけないと!」
 足を引っ張りながらピンプクにそう言うが、ピンプクは首を振るばかりで離さない。

「どうして!? 今の桜ちゃん絶対変だった! だからあのまま一人にするなんて出来ないよ!」
 間桐桜は明らかに様子がおかしかった。
 自分が何を言っても上の空で、魔術師だとかなんにも知らないだとか自分は汚いとか、そんなよくわからない事ばかり喋って。
 挙句の果てには士郎の代わりになるとか言って、ヒーローみたいに変身してどこかへ行ってしまった。

 あんな状態の彼女を放っておくことは、これでも根っからの教師である藤村大河に出来る事ではなかった。
 しかし、

「プクちゃん?」
 ピンプクは、明らかに何かに脅えてその体を震わしていた。
 今にも泣きそうなのを堪えて、自分を押し留めていた。

 ピンプクが何に脅えているのかはわからない。
 だが自分の勘も、何かがヤバイことは感じていた。
 それと間桐桜の事は別問題だが、ピンプクを放っておくこともまた、藤村大河には出来なかった。

「………わかったわ、プクちゃん。おいで」
 その言葉で、ピンプクは大河の胸に飛び込んだ。
 それでも怯えたままのピンプクを安心させるように抱きしめる。

「桜ちゃん………」
 もうどこにも姿の見えなくなった間桐桜を思う。

 彼女に何があったのかは分からない。
 今すぐにでも追いかけたいが、今のピンプクの状態ではそれは出来ない。

 けど、間桐桜と話がしたかった。
 そうしていつもの彼女に戻って、いつものように笑って欲しいと思った。


【B-4/教会跡近く/一日目 早朝】

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ、顔面強打
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:桜ちゃんを追いかけたい。けど……
2:事が終わった後だろうとは思うが、一応教会跡に行ってみる
3:士郎と桜を探す
4:セイバーと凛も探す
5:南から聞こえて来た音の正体が少し気になる
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)
※間桐桜の状態が“危険”であると感じ取りました

109 ◆UOJEIq.Rys:2011/10/28(金) 17:00:49 ID:QIHkP89I
以上で投下を終了します。
何か意見や、修正すべき点などがありましたらお願いします。

110名無しさん:2011/10/28(金) 17:04:37 ID:IZmDvcf2
投下乙です!
藤ねえ、無事に生き延びてくれて良かった! 桜もどんどんやばくなっていくなぁ……
彼女がこれから堕ちてしまうのかそれとも立ち直ってくれるか……
もしも士郎と出会ったら、どうなるだろう。

111名無しさん:2011/10/28(金) 17:34:34 ID:eXHvkqVE
投下乙!
あぶねえ…まさにタイガー危機一髪ってところか
桜が最後の一線を踏みとどまれたのは幸運なのか不運なのか…
しかしほんとタイガーが死ぬかと思ってハラハラしましたw

112名無しさん:2011/10/28(金) 21:55:18 ID:Afvmc6vM
>>109
投下乙ですー。
おおお、どうなるかと思ったけどもギリギリ助かったかー。
桜にとってはある意味士郎よりも知られたくない聖域的な人だしなぁ。

113名無しさん:2011/10/29(土) 08:29:00 ID:gAz134O.
投下乙です!

タイガーはなんとかギリギリ、ってとこかな。しかしこれ桜がルヴィアも士郎が好きって知ったらとんでもないことになる予感しかw

114名無しさん:2011/10/29(土) 11:50:33 ID:IusJDN9w
投下乙
プクちゃんかわいいよプクちゃん
タイガーと士郎次第で説得もでき…たらいいな
ここまで堕ちたら難しそうだが

115名無しさん:2011/10/29(土) 22:34:16 ID:a9.5V.e6
投下乙です

タイガーが、或いはタイガーならと思ったけど完全に堕ちた人間には…
とりあえず生きてはいるが桜にとって士郎とは違う意味で特別だったのかなあ…

116 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:24:54 ID:PEXuR5os
草加雅人、鹿目まどか、投下します

117天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:25:29 ID:PEXuR5os


「ここは段差があるから気をつけて」
「はい……きゃっ!」
 可愛らしくバランスを崩すまどかを、草加は片手で軽々と支えた。
 申し訳なさそうな彼女に対し、笑顔を向ける。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
「気にすることはないさ。外灯があるとはいえ、暗いところの移動は危険だからね」
 なだめつつ、周囲を警戒しながら草加は民家が密集する道を進んでいた。
 もともと夜での行動は、オルフェノクが活動時間に決まりがないためお手の物だ。
「けど、本当にわたしの家にむかってよかったんですか?」
「構わないさ。流星塾は逃げないしね。ところで、その喋り方でいいのかな?」
「こっちのほうが楽なんです」
 そうか、とだけつぶやいた。
 草加たちが向かっているところは、彼女の家である。
 最初に提案されたときは煩わしさも感じたが、魔法少女である彼女の友人が集まるかも知れない、と聞いて判断を変えた。
 杏子とは一合だけ交わした間柄だが、力自体は侮れるものではない。
 オルフェノクや三本のベルトに匹敵するくらいの力はあるだろう。
 ならば敵に回さず厄介な敵にぶつけるか、味方にするべきである。
 先は長い。北崎に村上峡児、木場勇治と始末せねばならない存在は山ほどいる。
 対してこちらの武器は不慣れなファイズのベルトのみ。
 乾巧は利用するつもりではあるが、しょせんはオルフェノク。
 いつ敵につくかわかったものではない。
 三原もいない今、戦力の強化は当面の目標である。
 しかし、一つ問題がある。
 乾巧がオルフェノクであることをいつ伝えるかだ。
 杏子や彼女に対し伝えなかった理由は作れる。
 たとえば、
「草加さん、どうしました?」
「乾巧について考えていてね。君や夜神さんたちにも伝えていないことがあるんだ」
「えっ、どうして……」
「俺にもまだ整理がついていない。それに、真理や啓太郎くんに伝わるのは好ましくないんだ。みんなを追い詰めるかも知れないからね」
「そうなんだ……」
 だけど、と笑顔を浮かべながら草加は続ける。
「心の準備ができて、仲間たちにも冷静に受け止めさせる準備ができたら、君にも教えるよ。それまでは俺を信じてくれ」
 これで草加の仕込みは終わりだ。まどかは素直に頷いている。
 それにしても不思議だ。彼女は『普通』すぎる。
 頭が切れていないが、愚鈍というわけではない。
 運動神経は多少心もとないが、それでも同年代に劣っているわけでもない。
 可愛らしい容姿だが、抜群に恵まれているというわけではない。
 なのになぜこの場に呼ばれ、殺し合いを強要されているのか。
 まったくもってわからないが、せいぜい役に立ってもらう。
 草加雅人の復讐のために。

118天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:03 ID:PEXuR5os



 鹿目まどかの家を目指す途中、草加は違和感を感じていた。
 家は彼女の話では特筆した家ではないという。そこら中に見かけるものと大差ないようだ。
 なのに地図に記されている。彼女が参加者だとしても、彼女の家を再現して地図に示す根拠は薄い。
 実際、彼女の実家と変わりないかどうかは行ってみないとわからないが、ほぼ同等のものだったとして思考を進めてみる。
 参加者の家をこの土地で再現し、地図に記す状況といえばなんだろうか。
 名簿と地図を照らし合わせると、参加者の家だと思わしきものがいくらか存在している。
 この『鹿目家』を始め、『間桐家』、『衛宮家』、『Nの城』、そして『西洋洗濯舗 菊池』である。
 ならば啓太郎とまどかの共通点を抜き出すことが、彼女の呼ばれた理由を推察する材料となるわけだ。
 とはいえ、草加がパッと思いついた共通点は少ない。
 二人とも平凡な人間であり、魔法少女やオルフェノクといった超常能力者の知り合いが多いことか。
 なるほどと納得がいった。
 要するに彼女や啓太郎は贄なのである。
 魔法少女やベルトの適合者といった者を本気で殺し合わせるための餌だ。
 地図にはないが、真理もそういう目的で呼び出されたのだろう。腹立たしい。
 主催者を殺す理由がもう一つできた。
 だが、悲観することばかりではない。
 まどかを手元に置いているのは、充分メリットであるということだ。
 啓太郎のように超常能力者の知り合いが多いというのなら、こちら側に取り込めば戦力が増えるということだ。
 と、なると地図に記されている人間には会ったほうがいいだろう。
 まどかや啓太郎と同タイプの人間なら、こちらの味方を増やせる可能性が高い。
 第二の方針になり得る。
「ふぅ」
「疲れてきたのかな?」
「大丈夫! まだぜんぜん平気です」
 強がっているが、疲労しているのは目に見えて明らかだ。
 困ったような表情を作りながら、草加は一つ提案する。
「そこの家で休憩していこう」
「草加さん、ごめんなさい。気を使わせちゃって……本当はいきたいところがあるのに……」
 申し訳ないと主張する彼女を面倒に思いながらも、態度は崩さない。
 優しげな笑顔を浮かべて、諭すような口調を続ける。
「いや、放送というやつが近いから、聞き逃さないように休んでいきたいんだ。『禁止領域』も『脱落者』も必要な情報だからね。付き合ってくれるかな?」
 まどかは顔を真赤にして、首肯した。

119天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:41 ID:PEXuR5os



 台所で作業している音をまどかはボーッと聞いていた。
 草加は家に入るなり時間を確認し、料理を作るから待っているようにと言ったのだ。
 こんな状況で食事の用意が行われているなんて、変な気分だった。
 家の中はとても広く、お金持ちが住んでいたのだろう、と感想を抱く。
 地図にも記載されている、とは草加の弁だ。確かめてみると、『間桐』という人の家らしいことがわかった。
 草加は自身が料理している間、少し休んでいるといいと言っていたが、とてもそんな気にはなれない。
 目をつむると嫌なことばかり浮かんで、怖くてしょうがないのだ。
 杏子は生きていた。だからさやかも生きていて欲しい。いつもの、そばにいた明るい彼女で。
 そう願うのは自然だと思う。
「浮かない顔だね」
 急に声をかけられて、まどかは驚いた。
 声の主はもちろん、草加雅人だ。彼は出来上がった料理を並べ、箸をおいた。
 並べられたのはごはんとお味噌汁。それにさばの味噌煮だ。
 意外と和風な人らしい。いただきます、と互いに言い合い、一つ口に入れる。
「あっ……美味しいです」
 味噌で煮こまれたサバは程良く身がほぐされており、噛みやすい。
 染み込んだ味付けはやや薄いものの、甘すぎずないように調整されていた。
 骨は取り除いているようだが、一見ではわからないほど見た目は崩れていない。
 どうやって取ったのだろうか。まどかは感心する。
 そういえば、自分のパパも主夫のため料理がうまかった。最近は料理上手な男性が増えているのだろうか。
 ただ、草加の場合は何でもそつなくこなすという印象のほうが強い。
「これでも一人暮らしが長かったから、栄養が偏らないように自炊していたんだ。好みの味じゃなかったら、遠慮なく言ってくれ。次までには改善しておく」
「そんな、こんなに美味しいし、文句なんてつけれません」
「そう言ってくれると助かる」
 お互いに笑顔を交わし、食事をすすめる。
 草加は『食べて休んで、体力を蓄えることも君の仕事だ』と、料理に取り掛かる前に言っていた。
 頼りになるとはこの人のことを言うのだろう。助けられてばかりで情けない。
 そう自己嫌悪に陥っているとき、スピーカーを通したような声が響いた。
 ああ、これが放送の始まりか。


 草加は箸を止めて、天を睨みつけた。
 真理が生き延びていることを、そして奴が生き延びていることを、珍しく神に祈った。
 そう、この手で殺してやらないと気が済まない。
 奴だけは絶対に生かしておけない。
 北崎。
 流星塾のみんなの、自分の復讐は絶対に果たす。
 だから草加は一瞬だけ、本性を映した顔を天井に見せた。

120天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:57 ID:PEXuR5os

【D-4/間桐家/一日目 早朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する
3:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
5:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:ひとまず自分の家へ
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

121 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:27:20 ID:PEXuR5os
投下終了
問題点などありましたら、指摘をお願いします

122名無しさん:2011/11/03(木) 01:35:33 ID:iaDmP2Ro
>>121
投下乙ですー。
ここも朝食かーw いや当然なんだけどw
その影で着々と考察を進める草加さん。 やはり頼りにはなる、のだよねー…

123名無しさん:2011/11/03(木) 01:39:07 ID:b77p0FdY
投下乙です。
まどか達はまどかの家に向かうことで決定ですか。
そっちにはおりこがいるので心配です。
他にも危険人物はいますし。

124名無しさん:2011/11/03(木) 07:55:34 ID:rEzvBcJk
投下乙です!
うーん、やっぱり草加さんは色々と良い味だなぁ。ただその子は(今はまだ違うとはいえ)普通の子やなくて一種の神様やw

125名無しさん:2011/11/03(木) 14:27:09 ID:MSGs2B42
投下乙です

火種になりそうな草加さんがロワである意味頼りがいになるとか皮肉だなあ
彼とそりが合う参加者なら組めるけど逆ならなあ…
さて、まどかの家に行くのか。でもそっちはおりこがいるぞ

126 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/06(日) 00:08:04 ID:McpJHrvk
第一回放送投票が開始されます
投票期間は11/7(月)00:00〜11/8(火)00:00の24時間です。


No.1 《第一回放送》―システム01:円環の理― ◆UOJEIq.Rys死

No.2 無題 ◆vNS4zIhcRM氏


上記の二つのOPの内、一番良いと思ったものに投票してください
一人一票での投票となります
無効票でない限り、間違えて他の作品に投票してしまったとしても投票先の変更はできません
ご注意ください

投票スレはhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1308752361/となります

127 ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 20:59:20 ID:t16tFM2A
呉キリカ、ニア分を投下します

128言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:00:19 ID:t16tFM2A
「織莉子は健在のようだけど、魔法少女達も未だ死せず、か……」
 潮風に髪をなびかせながら、呉キリカが1人ぽつんと呟く。
 背後からの陽光を受け、ゆらゆらと揺れる黒髪の煌めきは、鴉の羽根のように妖艶だ。
 そうして後光を浴びながら、西の海岸に立つキリカは、先ほど流れた放送を、反芻し思い返していた。
「あァん、もう、やんなっちゃうなぁ。ここに飛ばされてからというもの、本気で役に立ててないじゃないか」
 がしがしと頭を掻き毟りながら、苛立たしげに吐き捨てる。
 誰かに怒っているわけではない。
 魔王を名乗るマント男に、邪魔をされたことを怒るでもなく。
 現状のそもそもの原因である、あの傲岸な男を呪うでもなく。
 誰でもない己自身の醜態が、誰より何より許せなかった。
「とんだ腐れだ。役立たずだ。いっそ腐れは腐れらしく、腐って果ててしまおうか」
 この身は織莉子のためのもの――そのために人間性を対価に捧げ、彼女は騎士(ナイト)の叙任を受けた。
 それがどうだ。このざまだ。
 かれこれ6時間以上が経つというのに、たった今読み上げられた名前の中に、己が手にかけた者は1人もいない。
 織莉子の役に立つという、何より優先すべき至上任務を、自分は何一つ為せていないのだ。
 そんな役立たずは要らない。愛の守護者が笑わせる。
 唯一無二の存在意義を、果たすことができないのなら、命の価値は無為へと消える。
 死ねよ、死んでしまえよと、己の無能をひたすらに呪う。
「……あー、でも駄目。やっぱり駄目だ。このまま死んでしまったならば、それこそ私は無能のままだよ」
 しかし、そんなろくでもない恨み節は、30秒ともたずに中断された。
 自殺は責任を取ることとイコールではない。
 せめて名誉挽回をせねば、呉キリカの汚名は消えることなく、永遠に人類史に刻まれることになる。
 それはそれでなんか嫌だ。どうせ墓標に刻まれるなら、こんな一文の方がいい。
 すげーカッコいい呉キリカ、愛する織莉子の役に立ち、愛に殉じてここに眠る。
「というわけで前言撤回……まずはあれをどうにかしないと」
 陰湿ムードはこれで終わりだ。
 わざとらしく右手を顎に沿え、斜め上方をキリカが睨んだ。
 魔獣の金眼が見据えるものは、洋上に浮かんだ巨大な影だ。
 見上げんばかりの巨大戦艦――飛行要塞・斑鳩である。
 黄金の巨人に蹴散らされ、キラ対策本部でぐだぐだして、遂にここまで辿り着いた。
 唾棄すべき害悪が立てこもる、極悪外道の本拠地の、その目前にまで到達したのだ。
「やれやれ、恩人も人が悪いね。そりゃあ戦艦だとは言ってたけどさ、それがヤマトだとは聞いてなかったよ」
 大和ならまだマシだったのに、と。
 肩を落とし、溜息をつく。
 魔法少女、そして魔女――人界と魔界の境界を跨ぎ、怪異の領域に触れたキリカには、
 生半可なものが化けて出ようが、そんなものは今更だと、驚かず受け止める覚悟があった。
 ところがバゼットの言っていた斑鳩は、そんな非常識的な常識すらも、一撃で粉砕するほどの、絶大なインパクトを宿していたのである。
 大仰な翼を船体から伸ばし、奇天烈なエンブレムの刻まれたそれは、どう見てもSFの宇宙船だ。
 その内に宿されたテクノロジーが、見た目通りのものであるなら、これは厄介な強敵である。
 レーザー光線だの波動砲だの、危険な粒子だのがばらまかれかねない。さすがに魔法少女でもSFは怖い。
「あの船全部が飲まれるように、速度低下の魔法を張れば……いや、駄目だ。それは少し贅沢すぎる」
 このまま突入するとして、あれに襲われたらどうするか。
 ああでもなければこうでもないと、ぶつぶつとシミュレーションを繰り返す。
 とりあえず、敵艦を速度低下で覆って、全武装を低速化させるというのはNGだ。必要な魔力が多すぎる。
 というかそもそも、レーザー光線を遅めたところで、光速が高速になるだけだ。どの道避けられるとは思えない。
「……あっ、でも向こうは一応、レスキュー隊のお友達募集をしてるんだった」
 少し目を丸くして、言った。
 そうだ、悩む必要などなかったのだ。
 もし仮に見つかったとしても、現状では、こちらが攻撃されることは100%有り得ない。
 仲間を集めている人間が、その相手を殺してしまっては、本末転倒だからである。
「そうと分かれば、行くとしようか。目指すは正面突破あるのみだ」
 くつくつと不敵に笑いながら、少女は砂浜に足跡を刻む。
 こうしてキリカは、本来ならば敵地であるはずの斑鳩へと、堂々と侵入を果たしたのだった。

129言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:01:20 ID:t16tFM2A


(……以上、3ヶ所か)
 きゅ、きゅっ、と油性ペンの音を立て。
 司令室に座したニアが、地図に×印を描き込んでいく。
 合計3マスのエリアは、先の放送で発表された、立ち入り禁止指定の場所だ。
 それぞれ、禁止化される時間にはばらつきがあるものの、今のうちから入らずにおくに越したことはないだろう。
 もっとも、現在地との距離を考えれば、どう足掻いても到達不可能かもしれないが。
(しかし……)
 どうにも解せない、と。
 黒いマーキングの施された地図を、瞳を細めて睨みつける。
 焦点の合わせられた場所は、3番目のG-7エリアだ。
 そこは1つきりの孤島が浮かんでいるだけで、あとは海でのみ占められている。
 本来なら、この斑鳩のような船を調達しなければ、到達することそのものが困難な場所だ。
 状況からして、海路で脱出を図ることが、不可能であろうことも推測できる。
 そこに行こうとする者はなく、そこに行く意味もほとんどない。
(ならば何故、わざわざそこを禁止エリアにしたのか?)
 あくまで無作為に選んだ結果ということか?
 否、それは有り得ない。相手が馬鹿でない限りは、普通こうしたエリアは、事前に選択候補から除外される。
 ランダムに決定する度に、こんな場所ばかりが紛れこんでいては、貴重な禁止枠が勿体ないからだ。
(ならばそこには、理由がある。わざわざ意図的にここを選び、侵入不可能とした理由が存在する)
 火のないところに煙は立たない。
 不可解としか見えない行動には、必ず意図が存在する。
 なれば、この度のこの行動の意図は、
(……ポケモン城の隠匿、か)
 導き出された結論は、それだ。
 この3番目の禁止エリアは、明らかに孤島に存在する施設――ポケモン城を隠すために設定されている。
 恐らくこの施設には、主催の存在に迫れるような、何か秘密が隠されていたのだろう。
 それに転送された誰かが、からくりに気付きかけたので、その追及の手を遠ざけるために、侵入の不可能な場所とした。
 推測するならば、そんなところか。
(狙ってやったというのなら、相変わらず白々しいというか……)
 白けた目つきで、地図から離れた。
 反撃の目を詰むための隠蔽工作……それは理屈としては分かるが、これは明らかに性急過ぎる。
 こんなからくりの解明など、ニアでなくても十分に可能だ。
 ちょっと頭の回る程度の者でも、この不自然さには気付くだろう。誰だって疑いを持つに決まっている。
 いいやそもそもさかのぼれば、このポケモン城の存在そのものが、あまりにも下策というものだ。
 何故、自分達に辿り着くようなヒントを、この儀式の会場に用意したのか。
 止むにやまれぬ事情があったとしても、それならば何故、そんな場所に、参加者の誰かを転送したのか。
(これもまた、反抗を望む者へのヒントのつもりか?)
 であれば、わざとそうしたとしか考えられない。
 それが反抗の手を強めるように、わざと分かりやすいヒントを配置して、わざと気付きやすくなるように禁止エリアにした。
 お前達の望むものはここにあるぞと。
 脱出の手立てが知りたければ、呪いを解いて入ってみろ、と。
 証拠は1つから2つに増えた。
 有り得なくもない、程度の推論は、ここに来て現実味を帯びてきた。
 あるいはこの推理そのものも、お膳立てされた誘導だというのか。
「まったく、嘗められたものですね」
 苛立ちも怒りも通り越し、呆れにも近い声色で、無感動に呟いた。
(まぁ、ぼやいたところで、どうせすぐに調べに行くことはできないが)
 そう思いながら、ニアの視線は、司令室のモニターへと向かう。
 6時間以上を費やした甲斐あって、斑鳩の操縦システムは、9割がた理解を終えるに至っていた。
 残すところの細かいところは、実際に動かしてみれば分かるだろう。
 既に先刻承知の通り、禁止エリアに選ばれた、ポケモン城にはまだ行けない。
 急げば10時までには着けるだろうが、それでも探索にかけられる時間が少なすぎる。
 ならば操舵の練習も兼ね、当初の予定通り、他の参加者を探しに行くべきか――

130言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:03:06 ID:t16tFM2A
「……ん?」
 その、時だ。
 ふと、何の気なしに見た監視モニターに、何者かの影が映っているのに気付いたのは。
(侵入者か……)
 私としたことが迂闊だった。こんな見落としを犯すとは。
 軽く額を抑えながら、己が不始末を自戒する。
 恐らくこの侵入者――黒髪の歳若い少女だ――は、ニアが地図とにらめっこしている間に、この艦内に入ってきたのだろう。
 それに気付けなかったというのは、失態といえば失態である。
 何せこちらには、身を守るための武器がないのだ。
 あれが殺し合いに乗っている人間で、それが気付かない間にここまで来ていたのなら、間違いなく大変な目に遭っていたはずだ。
 ともあれ、あれがバゼットの連れてきた、脱走計画に賛同する協力者という可能性もある。
 まずは相手の声を聞き、行動の指針を確かめなければ。
「――そこの貴方、止まってください」
 艦内放送のスイッチを入れ、マイクに向かって、声を発した。
 モニターに映った黒髪の少女が、ぴくりと身を震わせ足を止める。
 きょろきょろと視線を左右させているのは、カメラか、放送機材を探しているのか。
「落ち着いてください。すぐに貴方をどうこうしようというつもりはありません。
 とりあえずは貴方の名前と、ここに来た理由を聞かせていただけないでしょうか」
 協力的な相手であれば、受け入れる。
 敵対的な相手であれば、ここから逃げる。
 モニター越しに見える彼女が、何を想い、何のためにここに来たのか。
『……やあやあ、キミがニアなんだね?』
 第一声は、こちらの名前。
 大仰に、芝居がかったような動作で、ニアの名前を少女が発する。
『私の名前は呉キリカ。別段怪しい者じゃないよ。我が恩人バゼット・フラガ・マクレミッツの紹介を経て、キミの元へ馳せ参じた次第さ』
 得られた情報は3つだ。
 1つは、彼女の名前が呉キリカであること。
 1つは、ニアの名前を知っていたこと。
 1つは、それをバゼッド・フラガ・マクレミッツから聞き出したということ。
 現状、ニアという人間が、ここに立て籠っていることを知っているのはバゼットだけだ。
 その両者の名前を知っているということは、キリカはバゼットと言葉を交わし、彼女からニアの名を聞き出したということなのだろう。
 言葉の調子から察するに、自分が取っている立場も理解している。
 やましい素振りも見せることなく、自身の名前も公開している。
 敵対しているという線は、考えにくい。
 彼女はある程度バゼットに信用され、この場所へと案内された協力者――そう考えた方が、筋が通る。
「分かりました。ひとまず貴方を、私の所へ案内します。こちらの誘導に従ってください」
 とりあえず、テストは合格だ。
 たとえ本心を隠していたとしても、交渉に持ち込めば、言いくるめるだけの自信はある。
 ニアはこの呉キリカという少女と、対面することを選択した。

131言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:03:50 ID:t16tFM2A


「――はーっはっはっ! よくここまで案内してくれた! そしてたった今よりこの艦は、この私が乗っ取らせてもらう!」
 このくそやかましいシージャック宣言が、対面した呉キリカの第一声であり。
「……バゼットの馬鹿」
 このやたらと簡潔な悪態が、迎え入れたニアの第一声である。
 そりゃまあ、見事に騙されて、ここまで連れてきた自分も大概間抜けだが、バゼットはそれに輪をかけた大馬鹿だ。
 あの女は、こんな見るからに頭が足りなくて、見るからに不審人物な少女を、危険がないと判断したのか。
「無駄な抵抗はするんじゃないよ。生かすも殺すも与うるも奪うも、全ての権限は私にあるんだ」
 元から妙な奴だとは思っていたが、実際に出会った呉キリカは、予想を遥かに超えたパープーだ。
 どこぞの学生服を着た少女は、ろくに武装もしていないのに、根拠もない大口を叩いている。
 身のこなしもバゼットとは異なり、至って年相応の普通の動作だ。特に身体能力に長けているとか、そんな様子はないように見えた。
 これなら死んでいった弥海砂の方が、いくらかマシとも取れるかもしれない。
 だがそれはそれで、分からないことがある。
「貴方先ほど、怪しい者じゃないって言ってませんでしたか?」
 こいつはバレない嘘がつけるほど、腹芸が上手そうには見えないのだ。
「んー? ああ、確かに私は怪しくはないよ。このバトルロワイアルでは至って普通の、誰だってやってそうな殺し屋だもの」
 ああ、成る程。こいつ馬鹿などころか痛い子だ。
 彼女の脳内独自世界では、先ほどの言葉には一片たりとも、嘘偽りはなかったのである。
 そりゃあ確かに分からないわけだ。そんなの顔に出てこないもの。
 こいつは骨の折れそうな相手だ。気だるげに肩を落としながら、ふぅ、と重い溜息をついた。
「さってと、じゃあこっちも質問だよ……キミは何故、こんな馬鹿な真似をしているんだい?」
 たん、たん、とリズムを刻むように。
 場違いに軽快な足音を立て、詰め寄るキリカが問いかける。
「……私は見ての通り、戦って生き残れるほど強くはありません。私がこの場で生き延びるには、こうする他に手はないのです。
 それに、人殺しのゲームに乗るというのは、私の主義に反します」
 貴方に馬鹿と言われたくはありませんでしたが、というのは、さすがに口にはしなかった。
「くっ、はは、主義と来たか。それは無意味というものだよ、キミ。私達の正義以上に、正しいものなど有り得ないんだ。キミの正義に意義はない」
「私達? なるほど、共犯者がいるのですか」
「さぁてね。そこまで話す義理はないよ」
 ステップを踏み、歩み寄り、手元のコンソールに腰を下ろしたキリカを、ニアは冷静に分析する。
 意外に思ったのは、この傍若無人に振舞う少女が、「正義」という言葉を口にしたことだ。
 一見何も考えていない、混沌の権化のような人間に見えて、ある種の信念・倫理観を持ち合わせている。
 口ぶりからして、ノリで名乗っているキラ信者とは違うのだろう。
 殺人で人心を掌握したキラだが、あくまでその目的は犯罪抑止だ。その信者があんな軽々しい口調で、殺すと口にするはずもない。
「……それで? 呉さん、貴方は私をどうするつもりですか?」
 少し棘のこもった語調で、問う。
 自分が正しいと思うことを信じ、正義とする――それがニアの持論だった。
 だから極論するのであれば、キリカがどんな正義を語ろうと、その行為そのものを責めるつもりはない。
 問題はその正義の内容が、自分にとっては気に食わないものであったこと。
 そしてそれを他者に強要し、他人の正義を蔑ろとしたこと。
 それがニアにとっては不快であり、ニアの正義観の範疇においては、紛れもない害悪に他ならなかった。
「もちろん、始末させてもらうよ。キミの存在は邪魔なんだ。私の悲願成就のためには、みんなに死んでもらわなきゃ」
 ああ、鬱陶しい。
 けたけたと笑う黒髪の女は、馴れ馴れしく白いニアに右手を伸ばし、肩を組んで言い寄ってくる。
 金眼に宿された念は、見えない。
 ふざけているのか、本気で殺す気なのか。
 私達の正義とやらに毒されて、人格が壊れきってしまったのだろうか。
 黄金は本音も虚飾も語らず、掴みどころがないという印象を強化させる。

132言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:05:05 ID:t16tFM2A
「いいんですか? 私は貴方がたにとっても、有益な情報を持っているのに」
 Lの後継者になると決めた時から、このような修羅場は覚悟していた。
 しかし、ここで死ぬのはまっぴらごめんだ。
 こんなアホには殺されたくない。ここで死んでしまうくらいなら、いっそキラと刺し違えた方がマシというものだ。
 故にニアは生き残りを賭けて、キリカに対して交渉を切り出す。
 通用するかどうかは分からない。人の話を聞かない馬鹿は、人を騙す賢人よりもやりにくい。
 だからといって何もせず、大人しく殺されるわけにはいかない。
「有益な情報?」
「貴方は気付いていないかもしれませんが、実は私は、既に脱出のルートについて、ある程度目星は立てているのですよ」
「へぇ! そりゃすごいや。でも、じゃあ何でそこに行かないの?」
「色々と事情がありましてね。もうしばらく時間をかけないと、そのルートを使うことはできないんです」
「なら駄目だ、遅すぎる」
 この作戦は失敗だ。
 一瞬煌めいた金の瞳は、しかし即座に熱を失った。
 それくらいの時間も待てないというのか。まるでわがままな子供じゃないか。
 なんてことは口にしない。不満はぐっと胸に留める。
 ヤケになるのはまだ早い。これが駄目でも、交渉材料はもう1つあるのだ。
「それで? 情報っていうのはそれっきり? だったらお粗末な上に役立たずだねぇ、私達の世界には要らないよ」
「勝手に人の限界を決めつけないでください。そうですね……貴方、船は欲しくないですか?」
「船? この宇宙戦艦のことかい?」
「宇宙戦艦ではありませんが、私はこの船の操舵方法を、およそ9割がた把握しています。
 複雑なコンピューター制御がなされていますから、私のような専門家でなければ、動かすことは困難でしょう」
「ふむふむ、成る程。私の運転手になるから、その間だけ生かしてほしいと、キミはそうお願いしているわけだね?」
「必要なら、武装の解析も進めてみましょう。とりあえず今はそういうことで、手打ちにしてはもらえないでしょうか」
 これは嘘だ。
 武装はただ単に使えないのではなく、いずれも撤去されている。
 存在しないものを使う術など、いくら検索したところで見つからない。
 しかし、相手は殺し屋だ。武器が使えるかもしれないというのは、彼女にとって大きなプラスになる。
 それに先ほどとは違って、航行システムは解禁されているのだ。せっかちなキリカも、これを切り捨てはしないだろう。
「ふーむ……」
 ほうら、案の定そうなった。
 顎に手を当て考え込むキリカを前にして、ニアは内心で密かにほくそ笑んだ。
 もちろん、これはあくまで時間稼ぎだ。
 彼女の言うように合わせて斑鳩を動かし、味方が見つかれば、そいつに追い払ってもらえばいい。
 いざという時は、不意を突いて逃げ出せばいいだけだ。
 口やかましい置き物が増えただけ――そう考えれば、まだ気分もよくなる。
「……よっし、いいだろう! こっちも絶賛人捜し中の身だからね。お望み通り、キミを使ってあげようじゃないか」
 ぱちん、と指で音を立て、キリカは提案を快諾した。
「あぁ、でもおかしな考えは持たない方がいいよ? 誰も私からは逃げられないんだからね」
 刹那、頬を這う、指先。
 鳴らした親指と中指と、その間にある人差し指が、掬うようにして動く。
 くい、と顎を持ち上げられ、ニアの目とキリカの目が合った。
 これは戯れではなく、真意。
 光沢はこれまでになく冷徹に煌めき、黒水晶を射抜くように光る。
 今まで面白半分だった少女の、ようやく見せた本気の警告。
 その殺意は本物だ。たとえ見た目が童女でも、この目でひとたび睨まれたなら、常人は為す術もなく竦み上がるだろう。
「……覚えておきます」
 もっとも、天才ニアは常人ではない。
 この程度の殺意の吹雪なら、彼にとってはそよ風だ。
 刺すような殺気をさらりと流し、瞳を細めてそう返す。
 その様子が面白くなかったのか、ちぇっと吐き捨て手を離すと、キリカは立ち上がり、正面モニターの方へと歩いていった。

133言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:06:41 ID:t16tFM2A
「しっかしまぁ、キミも無茶をするもんだね。駄目だよ? 子供は子供らしく、大人しくしてなきゃあ」
 制服の背中を見せながら、遠ざかるキリカが暢気に言う。
 その命を摘み取ろうとする者が、口にしていい言葉ではないように感じたが、もうそこはスルーすることにした。
 ここまででもう慣れきったことだ。いちいちツッコミを入れていては、こちらの神経がもたなくなる。
「ええ、よく言われます。ですが私、こう見えて、多分貴方よりも年上なんですよ」
 とりあえず、訂正すべきはそこくらいでいいだろう。
 ニアの誕生日は1991年――今年の誕生日が来ていないので、現在は18歳ということになる。
 見たところ、ジュニアハイであろうと思われるキリカよりは、確実に年上の年齢だ。
「っ」
 ぴくり、とキリカの肩が動く。
 珍しく、反応は沈黙だ。
 彼女の性格からすれば、えー本当にー、だの、全然見えなかったー、だの、そういう反応が来るだろうと思っていたのだが。
 あるいは、同い年くらいに思っていた相手が、年上だったという事実に、素直にショックを覚えているのかもしれない。
「だから、それは本来私の台詞です。中学生くらいの子供が、人殺しをするなんて、滅多に言うものじゃないですよ」
 背中を向けているキリカからは、その感情は読み取れなかった。
 故にニアはごく自然に、それまでと別段変わらない口調で、世間話のようにそう言った。
 本当に、世間話のつもりだったのだ。
 これまでの自分達のやりとりのように、「余計なお世話だ」という答えの分かり切った、その程度の話のつもりだった。
「――駄目だなぁ、キミは」
 それが間違いだと分かるよりも早く、少女の背中が黒に染まり、
「え、」
 それが間違いだと分からないままに、ニアの意識は暗転した。



 ニアには人の心が分からない。
 もちろん、犯罪心理学には長けているのだろうが、こと人の感情というものに関しては、彼は恐ろしく鈍感で無遠慮だ。
 それが敵であれ味方であれ、遠慮というものを知らないから、相手を苛立たせずにはいられない。
 社交性は人間の最底辺――引きこもりがちな性分と合わせれば、あのLよりも酷いと言っていいだろう。
 故に、いかんせん経験の少ないニアには、それは最期まで読み切れなかった。
 錯乱した犯罪者にとって、その行為がいかに危険なものであったのかを。
 正気を失った犯罪者が、その神経を逆なでされれば、どんな行為に及ぶことになるのかを。
「ニア、それは言っちゃいけなかったんだよ」
 漆黒のキリカは淡々と呟く。
 三爪二対の閃刃は、爛々と赤黒い煌めきを放つ。
 血みどろの爪をだらりと下ろし、金眼の魔獣は眼下を見下ろす。
 狂乱の呉キリカが嫌うことが、この世には全部で4つ存在した。
 1つは愛すべき親友・美国織莉子の悪口を言われること。
 1つはその織莉子と自分の関係について、無責任にとやかく言われること。
 1つは今の自分になる前の、卑屈で根暗で臆病な自分。
 そして残る最後の1つは。
「私は、子供扱いされるのが、大っ嫌いなんだ」
 こればっかりは、耐えられない。
 たとえあの織莉子がそうしたとしても、無視して受け流すことはできない。
 それを彼女にとってはどうでもいい、赤の他人が口にすれば。
「あーあ……せっかくの船、無駄にしちゃった」
 後には、何も残らない。


【ニア@DEATH NOTE(漫画) 死亡確認】

134言っちゃいけなかったんだよ ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:07:11 ID:t16tFM2A


 激情の嵐が吹き荒れた後、そこに残ったのは静寂だった。
 元々静かだった司令室だが、2人が1人に数を減らし、機械の音も消えうせた今、1人が黙れば無音が生まれる。
 そんな静かな室内で、唯一響いていた音が、がさごそと物を漁る音だった。
「うーん、どっちが役に立つかなー……仕方ない、両方持ってくか」
 呉キリカ。
 さながら彼女は不発弾。
 ふとしたことでキレる彼女は、怒りが冷めるのも非常に早い。
 一旦怒りが解消されれば、後にはすっかり忘れている。
 さりとて刹那に凝縮された、憤怒の感情の破壊力は、紛れもなく爆弾の爆発そのもの。
 あっけらかんとした様子で、ニアのデイパックを物色する彼女は、
「あ、これいいね。後で暇潰しにでも使おう」
 すぐ傍らにいたニアを、つい数分前に、血みどろの八つ裂きにしたばかりだったのだ。
 むせかえるような臭気にも、おくびも怯んだ様子もなく、彼女はそこにあったパズルを取る。
 いくらか付着していた返り血は、脱ぎ捨てた制服で拭き取った。
 子供扱いされた腹いせに、怒りに任せてニアを惨殺。
 そうして誰もいなくなったので、ちょうど乾いていた私服に着替える。
 そろそろ用もなくなったので、戦利品であるニアの支給品を物色。
 これらを何の嫌悪感も、いいや疑問すらも覚えることなく、一切のタイムラグを置かぬままに、キリカはやってのけたのだった。
「さーってと、それじゃそろそろずらかるとするかな」
 暢気そのものな声色で、どっこいしょ、と腰を起こす。
 その時ちょうど目に留まったのは、物言わぬ男の遺体だった。
 白一色のニアの姿は、赤一色の肉塊に変わった。
 顔面だけはかろうじて、奇跡的に原型をとどめている。
 しかしそれ以外の箇所は、溢れんばかりの怒りを納めきれず、ほぼ全てがズタズタに引き裂かれていた。
 ミンチとまではいかないが、人体の面影はほとんどない。
「……ま、ここまで徹底的にやったなら、脱出する気も失せるだろうね」
 白い三日月が口から覗いた。
 あはははは、と笑いながら、八重歯の少女が歩み去った。
 希望を求め集まる者には、この死体は最高の警告文になりうるだろう。
 これがお前達の末路だ。滅多なことをしようものなら、お前達も同じ目に遭うぞ。
 きっとバゼットの案内した者は、この無惨に打ち捨てられた遺体から、そんなメッセージを読み取るはずだ。
「私達の邪魔はさせないよ。そう……それが誰であってもね」
 獣は血に濡れ残忍に笑い、闇より来たりて命を食らう。
 黒き魔獣は獲物を求め、斑鳩の司令室を後にした。


【H-2/斑鳩/一日目 朝】

【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの穢れ(2割2分)
[装備]:私服、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)
    スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。ひとまずは美国邸が目的地。
2:まどかとマミは優先的に抹殺。他に魔法少女を見つけたら、同じく優先的に殺害する
3:マントの男(ロロ・ヴィ・ブリタニア)を警戒。今は手を出さず、金色のロボット(ヴィンセント)を倒す手段を探る
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。

※H-2・斑鳩司令室に、ニアの遺体とデイパック(基本支給品入り)が放置されています

135 ◆Vj6e1anjAc:2011/11/12(土) 21:07:37 ID:t16tFM2A
投下は以上です。
問題点などありましたら、指摘お願いします

136名無しさん:2011/11/12(土) 21:14:26 ID:949RMQWE
投下乙です。あーあ、これどうしてくれんだよダメットさんwそしてキリカはキリカしてるなぁ。

137名無しさん:2011/11/12(土) 21:19:12 ID:nOBBdPfw
投下乙です。
ダメットさんマジダメット
あれ?ダメさんが他の参加者にニアの事伝え続けて仮にキリカがここに陣取ったら・・・

138名無しさん:2011/11/12(土) 21:33:57 ID:Q3NAnUTU
投下乙
ニアェ……
地味にダメットさんもピンチだなぁ、これw

139名無しさん:2011/11/12(土) 22:16:36 ID:N00irNi6
>>134
投下乙ですー。
うわ、一瞬上手くいくかと思ったけどこうなっちゃったかー。 ニア南無。
キリカちゃんは相変わらずアホの子かわいいなぁ、壊れてるけどw

140名無しさん:2011/11/12(土) 22:27:02 ID:gobvwYtQ
バゼットの馬鹿……
馬鹿に刃物というか、獣に肉というか、そんなイメージしかねえ。
バゼットの馬鹿……大事なことなので二回言いました。投下乙です

141名無しさん:2011/11/13(日) 14:46:17 ID:SO5OW1iA
投下乙

そしてバゼットさんこれはひどいバゼットさん

142名無しさん:2011/11/14(月) 18:03:16 ID:ptemAUaQ
投下乙です

キリカちゃんは壊れたアホの子だからこれはしゃあないわ
そしてバゼットはダメットと言われても仕方ないわw

143 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:07:21 ID:kC.ZYZwQ
N、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、海堂直也を投下します

144「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:08:14 ID:kC.ZYZwQ

「放送か」
「ええ、そのようですわね」
 はあ、と仰向けの二人はため息をついた。
 正直場所は悪い。草原には障害物がなく、見晴らしがいい。しかもルヴィアはいまだ海堂に担がれている。
 敵意あるものから見れば都合のいい標的だ。
 ルヴィアは遠坂凛を死人と告げる声を受けながら、場を離れる指示を出す。
 胃の奥がムカムカしていた。どこか冷静な部分で禁止領域の場所を記憶しながら、予想以上に腹立っている自分を自覚する。
 遠坂凛が死んだ。
 わかっていたはずだ。聞いていたはずだ。
 魔術師は何より感情を制御しなければならない。名門の出である自分にとっては義務ですらある。
 なのに、抑えられない感情があるのはどういうことか。
 もし誰かに遠坂凜をどうしたかったのかと聞かれたら、答えは決まっている。

 あのメス豚をいつかこの手で屈服させたかった。

 最初にあったのは家の因縁だ。
 言葉を交わし、拳を交わし、ガントを撃ちあってもなお消えない敵愾心。
 何度たたきつぶしても台所に現れる黒いGのごとく復活するしぶとさ。
 小狡く、小賢しく、あきらめ悪く、最後の瞬間まで手を尽くす、遠坂凛が大嫌いだ。
 だからこそ、あの女がこんなにも早く死ぬことが信じられなかったし、信じたくなかった。
 長く生き残る卑怯さを、この自分が認めているというのに、足元に這いつくばる前に死んでしまうなど。
「最後まで気に食わない相手でしたわ……遠坂凛」
 思わず声に出すほど、不快な出来事だった。
「なあ、ちゅーかもしかしたらだけどよ」
 目だけで「なに?」と尋ねる。話すのも億劫だ。
「あの、ですのーと、ってやつだっけか? あれのせいで、なんだ。えーと……」
 言いたいことはわかるが、イライラした物言いだ。
 海堂が優柔不断と言うより、単に言葉が思いつかないだけだろう。
 無視してもいいが、遠坂凛のことは苛立つのでここで話を終わりにしておく。
「まったく関係はありませんわ」
「インチキだっていうのか?」
「いえ、おそらく本物でしょう。あの時あなたに名前を書かれたとき、わたくしは焦ったでしょう?
どれほどの力があるか不明ですけれど、呪いの用途においては効果のある本物だと感じ取れましたわ。
説明を鵜呑みにするなら、儀式も魔力も必要ないのに、因果を操るほどの存在。おそらく創りあげたのは人ではないでしょう。
わたくしたちの世界における宝具、もしくは魔法に通じるなにかを持っているのではないか、と推察しますわ」
「じゃあ、俺様が紙で遠坂凛ってのを殺したことになるんじゃないか?」
 言い淀まないあたり、もしそうなら制裁を覚悟しているのだろう。
 軽薄で頼りなく、間抜けな同行者だが、卑しいものがない精神だけは認めてもいい。
「ありえませんわ。あのノートで死ぬ場合の死因は心臓麻痺。対し、あの遠坂凛の妹が告げていた死因は――――」
「あっ」
 海堂が合点が言ったらしく、ポンと手のひらを叩く。

『頭を割られてあっけなく、惨めに死んでいました』

 ルヴィアはこの言葉を刻み込んでいた。
 忘れたくても、忘れられない言葉でもあるのだが。
「よって、遠坂凛はあなたにも、わたくしにも殺されていませんわ。幸いなのは、あの紙を悪用される前に処分できたことでしょう。
それで、あなたの知り合いはどうでしたの?」
 自分がしゃべるのは飽きた。次は海堂の番だ。
 海堂は一瞬だけ遠い目をして、顔を歪めた。
「ああ、死んだよ。たくっ、あの野郎……」
「その方もオルフェノクでしたの?」
「いや、ただの馬鹿な人間だよ。自分ら人間が追い詰められてるっちゅーに、オルフェノクの俺様たちを信じてよ。
だからあいつは生き残れないと思ってはいたよ。いたけど……なんで俺様が駆けつけるまで、頑張ってくれねーんだよ」
 舌打ちが一回聞こえる。それ以来、ムスッとしたまま黙り込んだ。
 はぁ、とルヴィアはため息を吐く。幸いといっていいかどうかわからないが、美遊もイリヤも生きている。
 カレイドステッキたちも彼女らの元にいるのだろう。
 美遊はともかく、イリヤが生き延びたならその可能性は高い。
 ちゃんと脳内地図に禁止領域を重ねながら、現在位置が安全であることを確かめた。

145「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:08:59 ID:kC.ZYZwQ
 おそらく自分を担ぐ海堂は、禁止領域のことなんて忘れているだろうから。
 一息ついたら、海堂にも注意しなければならないだろう。なんだかんだ言って、貴重な戦力だ。
 そう思考を続けていたルヴィアは、澄んだ声に出迎えられる。
「ああ、よかった。ふたりとも無事だったんだね」



 身を潜めるために森へと移動したルヴィアは違和感に気づく。
 とはいえ干渉する気はないので、同じく気づいた海堂が反応した。
「おい、ピカチューどうしたんだ? なんかさっきよりも落ち込んでんぞ」
「うん、さっきの放送でちょっとね」
 Nがそっと抱いているピカチュウの頭を撫でた。ピカチュウの顔は悲しみが絶望に変わっている。
 遠坂凛の妹を引き離すときは、まだ怒りに燃える気概があったはずだが。
「放送のおかげでサトシくん以外にもトモダチを亡くしたのを知ったんだ。彼の心は悲しみで満ちている。
ピカチュウ、どうすれば君は心が癒えるんだい? どうすれば君の力になれるんだい?」
 ピカチュウは答えない。顔を伏せ、歯を食いしばるだけだ。
 なるほど、放送は自分たちだけじゃなく、小さな獣にも影響を与えたようだ。
 海堂は口を尖らせたまま、クシャッとピカチュウの頭を乱暴に撫でる。
 気休めにもならないとはやった本人も知っているだろう。
 おそらく、同じく仲間を喪った傷の舐め合いに近い行為だ。
 自分がやるのはゴメンだが、彼らがやるのは口出す気はない。
 ルヴィアは体力と魔力を回復させるのに務めた。
 と言っても、体を休めているだけなのだが。必要事項はもちろん伝えている。
 海堂はともかく、Nは禁止領域について把握していた。賢い子どもだ。
「それで、今後どう動きたいですの?」
 ルヴィアとしてはしばらく動きたくないが、休憩するにも行動するにも指針は必要である。
 さしあたって自分よりは二人の意見を優先したほうがいいだろう。
 仲間に関しては、遠坂凛の妹以外どこにいるのか検討もつかないのだ。
「あー……あの女をとっちめたい。結花がどうなったか聞きてーしな」
「カイドウさん、その途中にフレンドリィショップに寄れないかな?」
「フレンドリィショップ? ああ、俺様たちがいたあの店か。なんでまた?」
「リザードンの治療をしたいんだ。あのときは詳しく探せれなかったけど、もしかしたらポケモンを回復させる“げんきのかけら”があるかもしれない。
今傷ついたまま放置しておくのは、とてもつらいんだ」
 わかってくれるよね、とNは言葉を続けそうな雰囲気があった。
 むしろわかって当然、配慮して当然という態度である。
 ポケモンを優先するのはN個人として勝手だが、場合によってはこちらが同じように動くわけにも行かない。
「なあ、あの女が向かった方向は……」
「そのフレンドリィショップと方向が一緒ですわ。追いかける途中でよっても構わないと思いますわよ。
わたくしやあなたの治療に有用な道具があるかも知れませんし」
 方針が定まったとき、海堂はうっし、と気合を入れた。
 瞬間、体が浮き上がる。
「じゃあさっさといくべ! お前らついてこ……あべしっ!」
「レディに断りもなく、いきなり担ぎ上げないでくださいまし。しかもまた荷物のように……」
「うっせー! 肘はよせ肘はよー! だいたい、人を殴れるくらいなら、自分の足で歩きやがれ!」
「ホーホッホッホッホ! 残念でしたわね。わたくしはまだ歩けるほど体力が回復していませんのよ!」
「いばるな!」
 実際よけいなことに使う体力はない。
 担がれるままにしていると、カサっと茂みの動く音が聞こえた。
 海堂とNも警戒して音の方向を見つめている。
「おい、そこに隠れている奴。出てこい」

146「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:09:40 ID:kC.ZYZwQ
 海堂が代表して告げるが、相手は沈黙を返す。
 自分を担いだまま近寄ると、人影が飛び出してきた。
 Nと海堂の中間に立った相手はこちらを睨みつける。
「ゆ、結花……? うわっ!」
 結花と呼ばれた女は爪を振るってきた。
 上体を倒してかわした海堂の髪が数本ちぎれる。
「お、おい! なにすんだよ、結花!」
 海堂が呼び止めるが、彼女は方向転換してNへと走った。
 このままでは彼が餌食になるだろう。ルヴィアには宝石もガントを撃つ魔力もない。
 しかし、黙っていないのは人間たちだけじゃなかった。
「ピ〜カ〜……」
 バリッ、と宙に火花が散る。帯電を終え、Nの腕から跳んだピカチュウが結花を睨んでいた。
「おい、ピカチュー! そいつは俺の仲間だから手加減を……」

「チュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!」

 海堂が言い終わる前に、ピカチュウは放電を終える。
 電撃が朝のさわやかな空気を切り裂いて、一人の少女へと向かった。
 だが、少女はその場から跳躍して、電撃の落ちる場所から離れた。
 そのまま樹の枝に着地して、狼のような唸り声をあげる。
「……ずいぶんと野生的なお仲間ですのね」
「い、いやぁ……んなことする奴じゃないんだけど」
 頬を引きつらせながら、海堂が戸惑っている。
 ルヴィアも相手がオルフェノクであると想定して、皆にどう対応させるか頭を働かせた。
 ただ一人、Nだけが別の動きを見せる。
「大丈夫だよ、ゾロアーク。彼らは味方だから」



「誰かに化けれるポケモンねぇ〜」
 海堂の感心する言葉に思わず共感する。
 ピカチュウの電撃といい、ポケモンはなかなか優れた生物である。
「とはいえっても、ある程度近くの相手にしか化けれないよ。
だからカイドウさんの仲間……ユカさんだったかな。会ったと思う」
「んだと! お前、本当に結花にあったのか!」
 海堂が問い詰めようと近づくと、黒い人狼の外見を持つポケモン、ゾロアークは唸って威嚇した。
 思わず手を引っ込める海堂に変わって、ルヴィアがNに問い直す。
「それで、ソロアークは結花というお方と出会っていますの?」
「うん、聞いてみるから少し待って。ゾロアーク、君が化けた人とどうして会ったの?」
 ゾロアークは少し黙っていたが、しばらくしてNに話しているように耳に口を近づけた。
 相槌をうつ少年を横目に、いいかげん担がれている体勢はキツイと文句をつける。
 海堂がおぶる形に変える途中で、Nとゾロアークの会話は終わった。
「うん、会ったことがあるって」
「なんだと! おい、どこで会ったか……」
「その前にひとつ確かめさせなさい。もしかしてゾロアークは結花さんを襲いました?」
「んなっ!」
 驚く海堂を視界に入れたまま、Nは静かに頷いた。
「ルヴィアさんの言う通りだよ。ゾロアークは心ない人間に支給されて、ユカさんを襲ったんだ」

「ふざけんなよ、てめえ!!」

 海堂が感情のまま吠え、ゾロアークを睨みつける。
 対する黒いポケモンも臨戦態勢だ。
「あいつを……」
「カイドウさん、どうして怒鳴るのかな?」
「仲間が襲われたんだぞ! 怒らないほうがおかしいだろ!」
「だってゾロアークは心ない人間に使われていたんだ。ピカチュウから察するに、モンスターボールの強制力が強化されている。
だったら、その操った人間に対して怒るのが筋じゃないかな?」
 Nの言葉に海堂を責める意図はない。
 単純に疑問を持った子どもが、大人に答えを求める。その程度の意味合いしかないだろう。
 ルヴィアは黙って見届けるつもりだが、Nとはここで別れるかも知れないと思った。
 Nはポケモンの気持ちがわかると言っていたが、人の気持ちをわからなすぎる。
 人と会話したことが極端に乏しいのだろうか。相手の気持を察せず、ただ正論をぶつける。
 相手によっては、一番残酷な仕打ちだというのに。
「それとも、ゾロアークがポケモンだから怒ったのかな?」
 おそらく、Nが一番聞きたい部分だろう。海堂はどう答えるのか、ルヴィアは待った。
「アホか」

147「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:09:59 ID:kC.ZYZwQ
 海堂は怒りと共に息を吐き出すように告げた。

「お前さんの友だちだから切れるだけで済ませたんだ。これが赤の他人、しかも男だったら問答無用でぶん殴るっちゅーの!
あ、女子どもはお尻ペンペンのお仕置きな。これだからガキは嫌いなんだ」

 むくれる海堂のほうが子どもっぽいが、Nは面食らっている。
「トモダチを怒鳴るの?」
「あーん? だって悪いことしただろう」
「でも悪いのは命令した人じゃないかな?」
「命令されたとしても、悪いことした奴じたいに腹立つだろ、普通。んで、悪いことした奴はダチでも怒ってやるべきじゃねーのか。
俺様なんか木場の野郎にしょっちゅう説教食らったぞ」
「カイドウさんはトモダチに怒られたの?」
「木場の野郎はと、友だちちゃうわ! いや、ちげーちげー。たしかにあいつはと、と、と……」
「照れてないでちゃんといえばいいじゃありませんか。似合いませんわよ?」
「うるせえ! まあ、そーいうこっちゃだから怒ったわけよ。だいたい、ダチ相手に腹たたないなんておかしいだろ。
喧嘩だってしょっちゅーだってのに」
「おかしい……そうなのかな? ピカチュウはよく喧嘩したのかい?」
「……ピカピー、ピカピカチュ。ピカピカッチュー」
「そっか……君はサトシくんとよく喧嘩したのか。そうか……」
 Nは大発見したかのように、小さくつぶやいた。
 ゆっくりとゾロアークに穏やかな顔を向ける。
「ゾロアーク、これからは悪い人の言うことは聞いちゃダメだよ」
 ゾロアークはグル、と一言鳴いてNにモンスターボールを渡した。
「カイドウさん、これでいいのかな?」
「あー、まー……」
「よろしいのでは? 別にわたくしたちが口出すことでも、尾を引かせることでもないでしょう」
「しゃあねえ! 特別に俺様が許してやる」
「なに偉そうに」
 ルヴィアのツッコミを無視したまま、海堂は偉そうに胸を逸らしていた。
 その横をピカチュウを抱えたNとゾロアークが通りすぎる。
「おい、なに無視してんだよ」
「え? まずはフレンドリィショップに行くんじゃなかったかな?」
「いや、そうだけどこう、なんか俺様を称える言葉の一つや二つは……」
「なくていいですわ。N、店に着きましたら、ゾロアークが出会った人間の特徴とプラズマ団について詳しく教えなさい」
「かまわないよ」
「おい、俺様は微妙に無視されてね?」
「はいはい、さっさと進みなさい。ゴー!」
「お前もう体力回復しているだろ! 降りろ!」
「うるさいですわね。レディなんだから丁重に扱いなさい」
「誰がレディだ!」
 海堂とあーだこーだ言い合いながら、Nと共に目的の店へと進んだ。
 もちろん、ルヴィアは見逃していない。自分と海堂を見るゾロアークの瞳が、警戒心に満ちていること。
 それを感じたピカチュウが、実は牽制していることを。
 これからはフレンドリィショップのあと、ゾロアークの案内で海堂の仲間のもとに向かうだろう。
 それまでにトラブルが起きなければいいが。
 ルヴィアは静かに、周囲の状況に気を配った。

148「Narrow」 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:10:20 ID:kC.ZYZwQ


【C-4/森林 北西/一日目 朝】

【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:怪人態、体力消耗
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:とりあえずフレンドリィショップに。その後ゾロアークの案内で結花の元へ。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人)
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:結花……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。
※桜の名前を把握していません


【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:魔力消耗(大)
[装備]:澤田亜希のマッチ@仮面ライダー555、クラスカード(ライダー)@プリズマ☆イリヤ、
[道具]:基本支給品、ゼロの装飾剣@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
0:あの女(桜)…次は見てなさい…
1:フレンドリィショップに向かう。ついでにゾロアークの出会った人物、プラズマ団について聞きだす。
2:元の世界の仲間と合流する。特にシェロ(士郎)との合流は最優先!
3:プラズマ団の言葉が少し引っかかってる
4:オルフェノクには気をつける
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:海堂に礼を言いたいが…まあそのうち
7:遠坂凛の死に複雑な気分
[備考]
※参戦時期はツヴァイ三巻
※並行世界の認識。 『パラダイス・ロスト』の世界観を把握。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※桜の名前を把握していません



【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定、ゾロアークを牽制)サトシのリザードン(戦闘不能、深い悲しみ)
    ゾロアーク(体力:7割、海堂とルヴィアを警戒)
[道具]:基本支給品、カイザポインター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ピカチュウを慰めつつフレンドリィショップに向かう。途中ルヴィアに説明。
2:やはり人とポケモンは共にあるべきでは無いのかな。
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:人を傷付けはしない。なるべくポケモンを戦わせたくはない。しかし、殺人者の女はどうするか
5:ミュウツーとは出来ればまた会いたい。
6:シロナ、サカキとは会って話がしてみたいな。
7:ちょっとカイドウさんが面白い。
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。

149 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/14(月) 20:10:42 ID:kC.ZYZwQ
投下終了します。
何らかのミスがありましたら、指摘をお願いします。

150名無しさん:2011/11/14(月) 22:58:17 ID:xMSueVZw
投下乙っした。
戦力的にはかなり充実してる反面ポケモン関係において不穏な齟齬が。
そろそろNは人間の方も見ておいて…無理か

151名無しさん:2011/11/14(月) 22:59:13 ID:fap2JI7U
投下乙です
気さくなあんちゃんって感じで子どもと相性がいいな、海堂さんは
やっぱ海堂さんだなぁ

152名無しさん:2011/11/14(月) 23:39:50 ID:ptemAUaQ
投下乙です

海堂さんは頼もしいなあ
でも、不穏な影もあるんだよなあ…
Nの歪みをどうこうする事が出来るのだろうか?
海堂さんが頼みの綱だぞ

153名無しさん:2011/11/15(火) 00:29:58 ID:O72cI9VQ
投下乙です。うーん、やっぱり海堂さんは安心できるなぁw
とりあえずNはもっと人を見ようか、いくらポケモン第一だろうと自分も人間なんだしさ。

154名無しさん:2011/11/15(火) 22:08:32 ID:1.Sauat.
>>149
投下乙ですー。
いきなり結花が現れたからビックリしたらゾロアークだったかーw
Nは難しいけど海堂さんには期待できそうですなー。

155 ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:06:57 ID:vsbmJ37I
微調整も終わったので投下いきます

156REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:08:12 ID:vsbmJ37I
ゼロの言葉を信じ、政庁で待つことを決めたユーフェミア。
距離自体はそこまで離れてはいなかった。故にそこにたどり着いたのはゼロと離れて数分後のことだった。
そこは自分の知っている政庁とは何の違いもない建物であった。
自分や姉の執務室もあり、その部屋の中にあるものもユーフェミア自身の知っているものと全く同じだったように思う。

しかし本来あるはずのものの中にはないものもあった。
政庁の基地内を見て回ったが、格納庫にはナイトメアフレームは一機も配置されていなかった。
つまりKMFはこの会場には配置されていないということなのだろうか。

他にも武器の保管庫にも行ってみたが、当然のことながら鍵が掛かっていた。
いくら政庁で勤める皇族といっても流石に武器庫の鍵の場所までは分からない。
ありそうな場所くらいは想像がつくが自分が持っても使えるものではないだろう。

そうして一通り政庁内を見回った後、己の執務室にユーフェミアはいた。
ふとゼロから渡されたものを取り出す。ユーフェミアの身を守り得る物として渡されたものだ。確認しておく必要がある。
赤と白のボール。真ん中のボタンを押すことで使用するらしい。
ボタンを押すユーフェミア。
するとボールが開き、中から光が飛び出し――

「ポッチャマ〜〜〜!!」

水色の小さなペンギンが現れた。

「ポチャ?ポチャ!ポチャポチャー!!」

どうも状況が飲み込めていないらしい。
というかユーフェミアにとっても予想外であった。
身を守る武器というのがまさかこのような可愛らしい生き物だったとは。

「…えっと、私の言葉、分かる?」
「ポチャ…?ポチャ!」

水色のペンギンは頷く。何を言っているかは分からないがどうやら意思疎通は可能のようだ。

「あなた、ポッチャマという名前でよろしいのかしら?」
「ポチャ」

肯定のようだった。だがどうも警戒されている気がする。
もしかして今どのような状況に置かれているのか把握できていないのだろうか。
そうならまず警戒を解く必要がある。

「もしかしてあなたの飼い主って、ヒカリという名前ではないかしら?」
「ポチャチャ?ポーチャ、ポチャ!」

ヒカリという名前はこのポッチャマのボールと共に渡された説明書に書いてあった名だ。
その名を出すと、ポッチャマは大きく反応した。
だがユーフェミアとしてはその後の説明はできればしたくはなかった。
それでも言わないわけにはいかない。

157REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:09:28 ID:vsbmJ37I
「あのね、今私達がおかれている環境なんだけど…」

そうして全てを説明した。
ここが殺し合いの会場であること。
それにヒカリも巻き込まれていること。
話していく度にその青い顔がますます青ざめている様子なのが分かった。

「ポ…ポチャ…」
「正直こんなことを言うのも厚かましいのかもしれないけど…、それでもあなたにお願いしたいの。
 あなたは絶対にヒカリさんの元に返すわ。だから、それまでの間でいい。
 あなたの力を私に貸して欲しいの」

ユーフェミアの中には自分の意思を持ち、人の持ち物であるポッチャマを使役するということに抵抗があった
しかし、だからといって迷っているわけにはいかない。こうしている間にも、きっとルルーシュやスザク、ナナリー達やあのゼロも戦っているのだ。
自分には戦う力がない。だからこそこの生き物に力を貸して欲しいと、そう思ったのだ。

「ポチャ…」

ユーフェミアは知らないことだが、もしこれが命令など強制力のあるものであったらポッチャマは逆らえなかっただろう。
しかしこれは命令ではなく懇願。ゆえにポッチャマにも選択の余地があった。

「ポチャー…、……、ポチャ!」

どうやら頷いてくれたようだった。

「ありがとう!私はユーフェミア、多分短い間だと思うけどよろしくね!」」

短い間。そう、ポッチャマはヒカリの元に届けるまで力を貸してくれるに過ぎないのだ。
ポッチャマもユーフェミアの真摯な言葉を信じることにした。

だが彼らは知らない。
その飼い主がもうこの世にはいないということを。
それを知ることになる放送の時間は、もうすぐそこまで迫っていた。




魔女と罵られる。
体を串刺しにされる。
全身を焼かれる。

魔女となって一体どれだけの罵倒を、処刑を受けただろうか。
だがそれでも死ねない。
私の生きている意味はなんだろう?
今更生きていて何になるのか。
そもそも、なぜ今更生きたいなどと思ってしまったのか―――


『最期くらい笑って死ね! 必ず俺が笑わせてやる!だから――』

『俺は知っているぞ!お前のギアスを、本当の願いを!!』

そんな声が聞こえた気がした。
あれは確か誰の声だっただろうか。

ああ、そうだ。ルルーシュ、お前だったか。

158REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:10:53 ID:vsbmJ37I


「目が覚めたようだな」
「…ここは、政庁か」

C.C.が目を覚ましたとき、そこは机と椅子の並んだ会議室のような場所だった。
それがどこなのか一瞬分からなかったが、アッシュフォード学園から近くにあった場所といえば政庁しか思い当たらなかった。
ちなみにアッシュフォード学園という選択肢はない。C.C.はこれでもあの学園にはある程度は詳しいのだ。

「…ニャースはどこだ?」
「そこで眠っている」

そこ、といって指されたのはC.C.のすぐ傍。ニャースは丸くなって静かに寝息を立てていた。その表情はあまり安らかとは言い難い。
無理もないのかもしれない。敵だったとはいえ自分に近かった存在の死。ゲーチスの説法。さらに突然の襲撃から仮面の男から連れ去られたのだ。
緊張が解けたところで一気に精神的にきたのだろう。

「警戒が解けるまで随分と時間が掛かったぞ」
「ふん、突然現れた仮面の男に拉致されれば当然だろう、スザク」
「…ここでその名を呼ぶのは遠慮してもらいたい」
「あの名簿に書いてあった一人のゼロとはまさかお前の事ではあるまい」
「心当たりならある。私の同行者が教えてくれた」

そう話すスザクはずっとゼロの仮面を被ったままだ。いくらC.C.とて気になってしょうがない。
どういうつもりなのかを問おうとしたところで先に問いかけてきた。

「それにしてもなぜ君はあの時動かなかった?この猫を除くあの場の全員が何もしなかったのはおそらくそれが原因だぞ」
「なぜ、か。さあな。私にも分からん」
「……」
「正直あんなに面と向かってはっきりと魔女などど言われたのは久しぶりでな。どうも昔を思い出してしまったよ。
 あいつが言っていた人を誑かす魔女。ああ、間違ってはいないな」
「だが君は生きようと思ったのではないのか?」
「確かにその通りだ。だがもしかしたら、今までの生き方のように、どこかで贖罪を求めていたのかもしれんな」

多くの人間を誑かし、人の気持ちを弄んで、それで己の願いを叶えようとした自分への罰。
それからは結局逃げられなかったのだろうか。

「ふん、それにしても何が悲しくてお前とこんな話をしなければならんのだ」
「確かにな。本来その役目は私には役者不足だ」
「今度はこっちの質問に答えてもらうぞ。
 その格好は何だ?今からそんな格好をしているとは随分気が早いと言いたいところだが、この場でその格好をする意味が分かっているのか?」
「?何を言っているんだ?ゼロレクイエムは……、ん?まさか…」
「一人で納得したかのような反応をされても困るんだが」
「名簿のゼロのことについてはちゃんとその都度説明している。そして今はこれを外すわけにはいかない」
「なぜだ?」

159REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:12:59 ID:vsbmJ37I

そう問いかけ、スザクがマスクの中で口を開こうとしたとき。

「ポチャ?ポチャ!!」

会議室の扉が開き水色のペンギンと、

「あ、ゼロ。戻られていたのですか」

ユーフェミア・リ・ブリタニアが姿を見せた。



「ここは確か…、D-2、じゃあこれが政庁…」

C.C.を攫った仮面の男を追うさやかはようやく政庁についたところだった。
仮面の男は人一人と猫(?)一匹を抱えているとは思えないスピードであったことと、ゲーチスという同行人を連れていたことがかなりの遅れを誘発していた。
最も同行人のゲーチスに対しては、

「はぁ、はぁ、さやかさん、もう少し、速さを落としてくれたらよかったんですが…」
「ご、ごめんなさい…。大丈夫ですか?」

あまり配慮できていなかったが。
最低限の速さで走ったのだとしても魔法少女と人間なのだ。
置いて行ってしまわないように手を繋いでいたのだが、さやか自身もアッシュフォード学園での出来事が頭の中を占めており同行者への配慮まではあまり気が回せなかった。
ゲーチスも流石に魔法少女の身体能力に合わせるのはきつかった様子で、息を切らせていた。

「はぁ、さやかさん、私は少しここで休んでから中に入りますので先に行っていてください」
「でもそれじゃゲーチスさんが…」
「大丈夫ですよ。落ち着いたらすぐに追いますから。何か思うところがあってあの仮面の人を追ったのでしょう?ならばあなたは早く彼に追いつくべきです」
「……。分かりました。じゃあなるべく早いうちに来てください」

そう言ってさやかは政庁の中へと入っていった。

………


「…行きましたか」

やがて一人になったゲーチス。
走ったことへの疲労があったことは事実だが、それだけが理由で一人になったわけではない。
ここは政庁らしい。つまりあと数時間もすればシロナがやって来るであろう場所だ。
なればこそここからは早いうちに出発しなければまずい。
だがせっかくだ。少し不安要素を減らしておくのもよいだろう。

「出なさい、サザンドラ」

160REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:14:31 ID:vsbmJ37I


(なるほどな、それがこの仮面の理由か)

ユーフェミアと会話するスザクを見ながらさっきまでの疑問を解消するC.C.。
曰くこのユーフェミアは自分達の知るユーフェミアとは別の存在なのだという。
もしそれが本当なら様々な疑問に説明がつくかもしれない。

「えっと、C.C.さん、でいいのかしら?ユーフェミア・リ・ブリタニアです」
「ああ、知っている。お前とは違うユーフェミアだったがな」

確かに彼女相手であればスザクは顔を隠さざるを得ないだろう。
目や言葉の端々には意志の強さが見て取れる。

「時にお前は枢木スザクという男を知っているか?」
「あなたはスザクをご存知なのですか?彼は私の騎士ですが」
「やっぱりな。どんなやつだったか知りたくないか?」
「雑談はそれまでにしておけ。そろそろ時間のようだ」



そんなやり取りの一方でポッチャマはニャースに対して突っかかっていた。

「ポチャ!ポチャポチャ!ポッチャ!」
「おみゃーまでいたのかニャ…。
 あのにゃー、そんな訳ないニャ。あと今はあんまり話しかけないでほしいニャ…」

安眠とは言いがたいものの眠っていたニャースはポッチャマの登場で目が覚めた。
この状況をあまりくわしく把握できていないポッチャマはこの状況がロケット団が関係したものではないかと思い、ニャースに責め立てていた。
だがニャースは憂鬱であった。ポッチャマに旅の仲間が死んだという事実をどう伝えればいいのか。それを改めて説明するとなると気が重かった。

「…あのニャ、落ち着いて聞いて欲しいニャ」
「ポチャ?」
「………ジャリボーイが―」
『06:00、定刻通り死亡者、並びに禁止領域の発表を始めよう』

その時だった。アカギの声がどこからともなく響いてきたのは。

161REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:16:22 ID:vsbmJ37I


ドン ドン

放送が終了したとき、苛立ち混じりにさやかは壁を殴りつけた。
その行為は主催者に対する怒りからの行動ではない。

死亡者の名前が読み上げられているとき、ドキドキしていた。まどかやマミさんの名が呼ばれるのではないか、と。
だが呼ばれた参加者の中には自分の友や先輩はいなかった。気にかけるわけではないが佐倉杏子や暁美ほむらの名もなかった。
つまり知り合いは皆今はまだ生き延びているということになる。
その事実にほっとして、

(何で安心してるのよあたしは…!)

直後にその事実に安心してしまった自分の存在に気付いてしまったのだった。
マミさんのような正義の味方として生きるのではなかったのか。なぜその自分が知り合いが死ななかったというだけで安心などしているのか。
10人死んだのだ。その中にはC.C.やクロの仲間の名もあったではないか。
アッシュフォード学園でのあのポケモン達の悲しんでいる顔が頭の中をよぎる。
そんな者達の思いを無視してまどかやマミさんが死ななくてよかったなど――

「…あたしって最低だ」

Nやゲーチスに言われていたことを思い出す。
さやかにはポケモンがどうとかといったことは出会ったばかりということもありよく分からない。
だが、その中にあった言葉がさやかの心に残り続ける。
結局自分には己に近い物しか見ることはできないのではないかと。


「待つニャーー!」

ふと声が聞こえた。確かその声はニャースのものだ。
その方向を見ると、廊下の向こうを水色の小さな何かが横切り、それを追っているニャースがいた。
ニャースは何か慌てている様子に見えた。あのペンギンは何なのだろうか。ニャースの知り合いだろうか。

あっちから出てきたということはあの仮面やC.C.は向こうにいるということであろうか。
一刻も早くこの自己嫌悪を忘れたかった。だからニャースを追うことよりC.C.と話すことを優先した。


ガチャッ

「何だ。追ってきたのか」

巨大な机にその周りに規則的に並んだ椅子。会議室のようだった。
黒い仮面にマントの男と桃色の髪の女性、そしてC.C.がいた。
C.C.は座り込んで俯いており、女性は何か信じられない物を聞いたかのような顔をしている。仮面の男は分からない。
空気が明らかに暗いのだが今のさやかにはそこまで気が回せなかった。

162REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:17:44 ID:vsbmJ37I
「…何をしにきた?」
「あ、あの白い仮面が言っていたこと!あんたが人を惑わす魔女って…」
「ああ、その話か。――――本当だ」
「…え?」
「聞こえなかったのか?私は魔女だと言ったんだ。
 まあグリーフシードは落とさないがな」

できれば嘘だと言って欲しかった。
もしそれが本当なら、

「ああ、正義の味方であるお前の敵ということになるんじゃないか?」



「どこへ行ったニャ…」

ニャースはポッチャマを探していた。
ポッチャマが走り出していったのはあの放送の直後だ。それも当然だろう。
問題はあの放送で呼ばれた名前だ。

(まさかヂャリガールまで死んでたニャンて…)

サトシに続き、ヒカリの名まで呼ばれてしまったのだ。
さすがにこれまでは想定していなかった。
だが自分ですらそれなりの衝撃があったのだ。主を失ったポッチャマのショックはニャースには計り知れない。
だからこそ早く見つけ出さなくてはいけない。

ふとゲーチスの言葉が脳裏をよぎる。

「あいつの言葉、やっぱりおかしいニャ…」

彼は人とポケモンは異なる場所に生きるべきだと言った。だが主を失ったポケモンは一体どうなるというのだろうか。
別れてよかったと思う者もいるかもしれない。だがあのポッチャマの様子を見て、それでも離すのが正解などとは考えられなかった。

「おや、あなたは…」
「ゲーチス…」

そうしてポッチャマを探すうちにその張本人とバッタリ出会った。

163REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:19:39 ID:vsbmJ37I


「ちょっとやめ――、ゼロ?!」

声をあげて駆け寄ろうとしたユーフェミアをゼロが止める。

「……」
「どうした、殺さないのか?」

さやかはすでに剣を取り出していた。が、まだそれは構えられてはいない。

「お前の仕事は人を惑わす魔女を倒してきたのだろう?なら今更何を躊躇うことがある?」

C.C.は何を考えているのかさやかに自分を殺すようにけしかけているかのような言動を繰り返す。
ユーフェミアにはその行動の意味が分からなかったが、スザクは何を考えているのかは分かっているのか静観を続けている。

「殺せばいいだろう。そうでなければおそらくこの場にいる多くの者を傷つけるだろうな。もしかしたらお前の友達を死なせるかもしれんな」
「…っ!」
「それともお前は他の人間を傷つけるような者であっても殺す覚悟もないのか?甘ちゃんだな。
 お前のようなやつはそうやって戦う事自体が間違っているんじゃないのか」

その言葉を言い終えた瞬間に限界を迎えたのだろう。
さやかは手に持つ剣を振り上げ、そのまま勢いよく振り下ろした。

ガァァァァァァッ

C.C.に向けられたその剣はC.C.の目の前で軌跡を変え、C.C.のすぐ横の壁を切り裂いた。

「…私はあんたと話をしに来たって言ったでしょ…!勝手に殺させようとしないでよ…!」
「お前と何を話せと?」
「何で魔女って呼ばれるようになったのかってことよ…。あんたが悪人かどうかはこっちで決めるわ」
「聞いてどうなる?倒すべきかもしれない敵のことなど知るだけ無駄だろう」
「それでも、相手のこと分かってから、その上であんたのことをどうするか決めたいの」

さやかの中で佐倉杏子という魔法少女のことが思い出される。彼女も初めは敵としかなりえない存在と思っていたのだ。
しかしあの教会で杏子が話した己の過去を聞いて、彼女はそれを背負って生きていることを知った。
目の前の少女が敵なのだとしても、ちゃんと自分で理解しておきたかった。
それはゲーチスやNとのやり取り、あの放送で己に感じた自己嫌悪がさやかの中で持たせた考えだ。

「……。いいだろう。おいス――ゼロ、ユーフェミアを外に連れ出しておけ。
「分かった。ユーフェミア、一端部屋から出よう」
「彼女は、大丈夫なのですか?」
「それはC.C.自身が決めることだ」
「…分かりました」

ユーフェミアはゼロに連れられて会議室から出て行った。


「まあこっちもお前から色々と聞かせてもらったからな。少しぐらいは話すのもいいだろう」
「………」
「そうだな、あれは今から―――」

164REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:21:52 ID:vsbmJ37I


「…それにしても、あなたはお知り合いの方が亡くなられたというのに冷静なのですね」
「彼女とはあくまで仕事上の関係ほどしかなかったからな」

それは嘘というわけではないが本当のことでもない。篠崎咲世子とはナナリーを通じてそれなりに関係もあった上、最後までルルーシュに仕えてくれた一人でもある。
ただ、彼女が死んだと言われてもスザクには実感が沸かなかった。あまりスザクには重要な存在ではなかったのだろうか。

ルルーシュが死んだと聞いたときもそこまで思うことはなかった。スザク自身まだルルーシュを刺したときの感覚を思い出すことができる。
ただ、この場でルルーシュはどう生き、どう死んだのだろうか。
あのビルの爆破がルルーシュの物であったのなら何かと戦っていたのかもしれない。
あるいはゼロレクイエムを成し遂げたことで己の生を否定して死んだのだろうか。
それはもう今となっては分からない。

「君こそ大丈夫なのか?ルルーシュという人は君の知り合いだったのだろう?」
「ええ、私にとって大切な人でした…。彼が生きていたという事実がとても嬉しかった。それなのに…!」
「……」

泣き崩れるユーフェミアを見るスザク。
それは慰めにはならないだろう。むしろ禁忌とも言うべき言葉かもしれない。それは自分にも分かった。
だがスザクはあえて、その問いを投げかけた。

「もしここにいるルルーシュが、君の知っているルルーシュでなければ」
「…え?」
「ここから抜け出すことができれば君の世界のルルーシュに会うことは可能なのではないか?」



「おみゃーが何でここにいるニャ?」
「さやかさんがあなた達を追ってこられましてね。
 用事が済めばすぐに出発しますよ」

ニャースとしてはゲーチスに気を抜くことはできなかった。
ガブリアスの忠告もあったがそれ以上にアッシュフォード学園でのあの言葉がニャースの警戒を煽っていた。
だがあまり警戒心を見せるのも逆に不自然。あえて自然に、普通に振舞う。

「こっちにポッチャマが来なかったかニャ?」
「ポッチャマですか?いいえ、見ていませんね」

こちらに話しかけるゲーチスはあくまでにこやかだ。
ゆえに何を考えているのか読みづらい。
おかしなことをする様子がない以上普通に接するべきだろう。

「何かあったのですか?」
「さっきの放送で知り合いが呼ばれてニャ…」
「それは…、何と言葉をかけたらよいか…」

今はポッチャマを見つけなければいけない。主を失ったポケモンがどういう行動に出るのか、想像するのも嫌だ。
だがその前にゲーチスには聞いておかねばならないこともある。

165REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:23:54 ID:vsbmJ37I
「ニャー、おみゃーはポケモンを解放するためにあんな事言って回っているニャ?
 ポケモンと人間は別々にするのはポケモンのためになると思っているみたいニャが」
「ええ、その通りですね」
「何で人間のおみゃーがポケモンを代表するかの事言ってるのニャ?
 ニャーはポケモンの立場として言わせて貰うにゃが、本当に一緒に過ごすことを嫌がってるポケモンにゃんて極一部にゃ」

たとえトレーナーから酷い扱いを受けているとしてもポケモンがトレーナーを嫌っているとは限らない。
あのシンジという少年にひどい扱いを受けていたヒコザルでもシンジに好かれようと必死だったのだ。
なのになぜそんなポケモンの思いを無視するかのようなことをしようとするのか。
ニャースにはそれが疑問だった。

「なるほど、あなたはやはりポケモンの立場として意見を言うことができる者のようですね」
「だったらニャンにゃ」
「いえ、何でもありませんよ。今はあまり話しているときではないのでしょう?
 長くなりそうですのでまた次の機会にでもゆっくり話しませんか?」
「…確かにそうだったニャ。じゃあニャ、そっちも気をつけるニャ」

そう言ってニャースは走り去っていった。



その後ろに飛ぶ黒い影に気付かぬまま。



「…」
「満足したか?」

知りたいというから全て聞かせてやったのだぞとでも言いたげな顔で言う。
なぜこんなことをしたのだろうか?自分でも何か自棄になっているようにC.C.は感じた。

C.C.の話した内容はさやかには思いもよらぬ話だった。
目の前の自分と少し年上にしか見えない少女が数百年生きているなどどうして思えようか。
あの白い生き物と似たような行為をしていたことなどどうして想像できようか。


「それで、こんな話を聞いた上でお前はどうするのかな?」
「そんな話信じろっていうの?」
「信じられないのも仕方ないことではあるがな。
 だがお前も人のことが言える存在でもないんじゃないのか?魔法少女の美樹さやか」
「…あんたは、それで寂しくなかったの?」
「さあな。ただひたすらに死にたいと願った。ただそれだけだった。
 そんな私のことなど理解してくれた者などいなかった。いや、一人だけいたな。他の者が知りえなかった所までやつが」

あそこまでC.C.に踏み込んできた存在は後にも先にもおそらく奴だけだろう。
ただ利用するだけだったはずの男がこうも自分の中で大きな存在となっていた。
彼と関わったことでそれまでの自分とは大きく変わってしまったことは認めざるをえない。
だがそれほどの男も――

「さっき名前を呼ばれたよ。この私に笑わせてやるとまで言ったあいつも。
 きっと私はこのまま今までのようにまた魔女として生きるしかない。だがお前はそんなことは許せないだろう?」
「…っ!ふざけないでよ!そんな顔をしたあんたを殺すことが正義だって言うの!?」

美樹さやかの正義は人間を傷つける存在を倒すはずのこと。断じて目の前の、今にも死にかねない少女を殺すことではない。


「正義など人それぞれだ。力こそが正義と言った男もいれば父親を殺せば国を救えるとか考えた男なんかもいたな。結果は散々なものだったが。
 そういえばあいつもあいつで悪逆の限りを尽くして人々からの憎しみを自分一人で負うことで世界から争いを取り除こうなどと考えていたな。
 …ではお前の正義とは何だ?」

166REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:26:12 ID:vsbmJ37I
だが目の前の少女に問われてさやかは改めて考えざるをえなかった。そう、自分の中の正義をだ。
それは憧れたあの人のように皆を救うのだというものだったはずだ。

では誰と戦うのだ?
決まっている。魔女のような人を傷つける存在だ。

ならばこの場において魔女となるのは誰だ?人を傷つけるのは誰だ?
それは――

『殺してしまえばいい』
『誰かがそういってました、あなたたちを騙そうとしてた、悪い人だって』


「もういいだろう?お前の答えを聞かせろ」
「……」

さやかはしばらく黙り込んだあと、意を決したように話しかけた。

「クロちゃん…」
「?」
「さっきの学校に、クロちゃんの仲間だっていうルヴィアさんがいたわ」
「ああ、確かあの金髪ドリルだったか?」
「私はもうすぐここから出てまどかの家に向かうわ。
 もう少しでここにクロちゃんが来るんでしょ?あんたにそれを伝えて欲しいの」
「…それを頼むということは私を生かしておくということか?」
「…」
「……くくく」
「…何よ」
「いや、逃げの口実がこんなものだというのがおかしくてな。
 いいだろう。伝えておこう」

それを聞いてさやかは会議室を出て行った。

最後にその背に向かってC.C.は、

「次に会うことがあれば答えを聞かせてもらいたいものだな」

と言った。




167REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:28:31 ID:vsbmJ37I

「もしそうだとしても、ここにいたのはルルーシュなのでしょう?」

ユーフェミアの言葉に迷いはなかった。

「あなたのいた世界に、ブリタニアはあったのですか?」
「ああ、そうでなければ私が存在することはないだろうな」
「そうならきっと、あなたの世界のルルーシュもきっと私が想像しているように戦っていたのでしょう。
 ならば彼が死んだことには変わりないでしょう…」

はっきりとそう言った。

やはり仮面は外せないなとスザクは思う。
もしこの仮面の中の顔を見たとき、彼女はどういう反応をするのだろうか。
きっとこんな自分であっても枢木スザクとして見てくれるのだろう。
この血と裏切りで穢れた自分であっても。それにはきっと耐えられないだろう。

「君を試すようなことを聞いてすまなかった」

だが質問の意味はあっただろう。

「…」

C.C.は何を話しているのだろうか。
物音が聞こえないところから判断してまだそれが起こっているわけではないはずだ。

ガチャッ

やがて扉が開き、青い髪の少女はこちらに目をくれることもなく去っていった。




「全く何をやっているんだろうな。あんな小娘相手に…」

美樹さやかにそこまで思い入れなどないはずなのにこうまで構ってしまった。
冷静になってみればやはりおかしな話だ。
ルルーシュが死んだという事実がそこまでショックだったのだろうか。

「どうやら終わったようだな」
「結局死に損ねたようだがな」

さやかが出て行ってまもなくゼロはユーフェミアを伴って部屋へと入ってきた。

「そういえば聞いてなかったな。ゼロ、お前はこの殺し合いでどう動く気だ?」
「決まっている。私はこの儀式を止めるために動く。君はどうなんだ?」
「私か…。さあ、どうだったかな。当面は預かった伝言を伝えなければならんしな。
 そうそう、確か政庁には9時にここで出会ったやつと集合するという約束をしていたんだった」
「信用できるのか?」
「少なくとも約束した二人に関しては問題あるまい」

9時といえばまだ時間がある。だが来るのがユーフェミアを任せられる者が来るというならば待つのもいいかもしれない。
と、ふと窓の外で黒い煙が上がっているのが見えた。

168REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:30:08 ID:vsbmJ37I

「C.C.、彼女を頼む」
「行かれるのですね」
「何、すぐ戻ってくる」
「どうか気をつけてください。それと…、もし見かけられればあの…水色のペンギンのことをお願いしたいのですが」
「了解した」


そう言って窓から飛び降りた。
ここは何階だっただろうか…?

「あの、C.C.さん…でしたか?」
「ああ」
「あなたはルルーシュのことを知っているのですか?」
「ああ」
「もしよければ…、ルルーシュのことを教えてもらえませんか?
 彼がどのような人間だったのか…」

ルルーシュの死を知りながらもそれを聞くのか、と関心するC.C.。

「まあいいだろう。待っている間の暇つぶしにはなりそうだ」

あいつが死んだ今、生きる意味を見つけることができるだろうか。
見つけられなかったらどうするのだろうか。
それを考えつつユーフェミアの知らないルルーシュのことを話し始めた。

【D-2/政庁内/一日目 早朝】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:魔力減少(中)、精神的ショック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:これからどうしたいのかを考える
1:知り合いとの合流
2:ユーフェミアと話す
3:さやかの答えを聞きたいが、また会えることに期待はしない
4:プラズマ団に興味は無い。
5:ミュウツーは見た目に反して子供と認識。
6:9時まで政庁で待つ
[備考]
※参戦時期は21話の皇帝との決戦以降です
※ニャースの知り合い、ポケモン世界の世界観を大まかに把握しました
※ディアルガ、パルキアというポケモンの存在を把握しました
※桜とマオ以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:防犯ブザー
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル1本)、シグザウエルP226(16/15+1)、スタンガン、モンスターボール(空)(ヒカリのポッチャマ)@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]
基本:この『儀式』を止める
1:C.C.と話す
2:スザク(@ナイトメア・オブ・ナナリー)と合流したい
3:他の参加者と接触し、状況打開のための協力を取り付けたい
4:細マッチョのゼロ(スザク)は警戒しなくてもいい……?
5:ルルーシュ……
[備考]
※CODE19『魔女の系譜�①櫂魁璽疋丯▲后檗戮妊璽蹐陵霪類靴神鐓譴ǂ薀蹈ぅ匹墨△譴蕕貳鯑颪靴燭茲蠅盡紊ǂ蕕了伽�
※名簿に書かれた『枢木スザク』が自分の知るスザクではない可能性を指摘されました
※『凶悪犯罪者連続殺人事件 被害者リスト』を見ました

169REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:33:03 ID:vsbmJ37I


さやかの中では色々なことが一杯一杯だった。問いに対する答えなど出すどころではない。
結局また先延ばしにしたのだ。だが自分でどうにかできるようなことではなかった。

「マミさんなら…、何て言うんだろう…」

あの人ならもしかしたらこれに対して何かしらの解答を持っているだろうか。
もう一度、魔法少女として同じ立場となった今だからこそもう一度話をしたいと、そう考えるさやか。

「待たせてしまってすみません……、ってゲーチスさん?」


入るときに待っているように頼んだ場所にゲーチスはいなかった。
辺りを見回すと、裏手辺りで黒い煙が上がっているのが見えた。

「ゲーチスさん!!」

向かった先には、ボロボロになって倒れたニャースと腕に火傷を負ったゲーチス、そしてあの黒い仮面の男が立っていた。

「っ!!あんた――」
「私ではない。ここへ来たときにはすでに襲撃者は逃げていったようだ」
「そいつはどっちに行ったの!?」
「…向こうの方に逃げていきました」
「分かりました!ゲーチスさん、付いてきてもらっていいですか?」

問いかけたことへの答えを聞く間も惜しいと言うかのように示された方へ走り出すさやか。

「すみません、では彼をお願いしても大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。後のことは私に任せてくれ」
「ゲーチスさん、早く!!」
「では失礼します」




そうして残されたスザク。
ニャースを確かめると意識はないがまだ生きているようだった。
まだ息があったことに少し安心する。もしこのまま死なれてはC.C.に何と言われるか分からない。
だがニャースの処置も大事だがまだ問題は残っている。
さっき見た黒い煙は周囲に生えていた木を燃やしていた。
そこまで多くの木が生えているわけではないので燃え広がる可能性は薄い。
だが放置すると煙につられて危険人物が寄ってくる可能性もある。迅速に消火しなければならない。

「っ…、何処かに消火に使えるものは…!」

170REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:35:51 ID:vsbmJ37I

【D-2/政庁付近/一日目 早朝】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(小)
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:迅速に消火してニャースの手当てをする
2:なるべく早くユーフェミアと同行してくれる協力者を捜し、政庁に行ってもらいたい
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:9時に来る者を見極めてからその後の行動を決める
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※ゼロがユーフェミアの世界のゼロである可能性を考えています
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。


【ニャース@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:瀕死(ポケモン的な意味で)、ダメージ(大)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済)
[思考・状況]
基本:サカキ様と共にこの会場を脱出
0:気絶中
1:????
[備考]
※参戦時期はギンガ団との決着以降のどこかです
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)




さやかと別れた後、ゲーチスはサザンドラを放った。合図があったときに攻撃を仕掛けるように。
サザンドラの存在は隠さなければならない。
が、一人になった今であればボールからは出して自分と離れた場所から付いてくるようにしておいたほうが都合がよかった。

とはいえすぐに行動に起こすとは限らなかったのだが、政庁の周りを歩いていたときに遭遇したのはニャースだった。
あの短いやり取りの中でやはり邪魔な存在と確信したゲーチスは、ニャースをここで消しておくためになるべく姿を見せないようにして始末しろと支持を出したのだ。
ニャースはサザンドラのことを知らないとはいえ姿を見られた上で逃げられた場合、シロナ経由でばれる可能性もあるのだ。
万一のことを考え、自分の支持ではなくサザンドラの判断に任せて行動させておいた。
自分は離れた場所で隠れて見ているだけだったが、ニャース程度ならそれでも十分だろうと、戦闘が始まるまではそう思っていた。

171REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:37:16 ID:vsbmJ37I
だがニャースには予想以上に粘られてしまった。
ゲーチスは知らないことだが、ニャースが未進化であるのは戦闘経験が不足しているためではなく言語能力の代償なのだ。
普段は機械に頼りきりとはいえ経験自体は並以上にはある。
それでも素の能力の差には埋めがたいものがあるのも事実。
問題は全ての判断をサザンドラに一任していたということだ。もしゲーチスの的確な指示の元で動いていれば違っただろう。
結果としてサザンドラは少ないながらも乱れ引っかきによるダメージを受け、ニャースは瀕死にこそなっているが未だに命は残っている。
だがそれだけならばまだいい。想定していなかったわけでもないのだ。
ダメージは病院から持ってきた物を使えばどうにかなるはずだ。仕留め損ねたことに関しては自分の手で止めを刺すこともできる。さやかから貰った拳銃が手にあるのだ。
事はなるべく静かに済ませるつもりだったのだがサザンドラの大文字が小火を起こしてしまったのが大きな誤算だった。
確かにその煙がニャースの目くらましになったことでサザンドラの姿はまともに視認できてはいなかった様子に見えた。
だがもし仮面の男が窓から飛び降りてくるタイミングがもう少し早ければサザンドラをボールに戻すところを、遅ければニャースを殺すところを見られていただろう。
あえて自分で申し訳程度に腕に火傷を作っていたのが幸いだった。
正直今回のことでトレーナーのいないポケモンの限界を垣間見た気がする。

美樹さやかに呼ばれた以上、付いて行かなければ不自然だろう。
仕留めそこなった以上、今回は諦めるしかない。せめて小火で集まってくるかもしれない者に殺されてくれれば御の字だ。

あとは美樹さやかのことが問題である。
想定外のことが重なりすぎたことでどうも彼女への対応も疎かになってしまった気がする。
どうにか彼女を有用な手駒として持っていきたい身としてはこの先でどうにか挽回していかなければならない。



さやかの迷いは果たして己に答えを与えるのか、あるいは絶望を与えゲーチスの駒とさせるのか、また、それがこの先にあるのかは彼女次第になるだろう。
そのどちらに向かうことになるのかは、今はこの二人にも分からない。

【D-2/市街地/一日目 早朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、精神的に疲弊。
[装備]:魔法少女服、ソウルジェム(濁り小)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)、グリーフシード
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:襲撃者を追う
2:ゲーチスさんと一緒に行動する
3:鹿目家や見滝原中学にも行ってみたい。
4:まどか、マミさんと合流したい
5:マミさんと話がしたい
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします

172REINCARNATION ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:39:05 ID:vsbmJ37I
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:表向きは「善良な人間」として行動する
2:理屈は知らないがNが手駒と確信。
3:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
4:美樹さやかが絶望する瞬間が楽しみ
5:政庁からはなるべく離れる
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします



放送を聞いたポッチャマはそれが嘘であると信じたかった。
サトシが、それ以上にヒカリが死んだなどという事実を。
だが放送の主、アカギが嘘を言うとも思えなかった。
信じたくないという思いと信じるしかない現実から逃げるようにポッチャマは走った。
ユーファミアとの約束など忘れ、一人でヒカリを探しに行こうともしたのだがその途端体が動かなくなった。
その事実を受け入れることが怖かった。
もうどうしたらよいかなど全く分からなかった。

主を失ったポッチャマは彷徨う。かつて決意として持ったかわらずの石ももはや虚しさしか表さない。


※ポッチャマは政庁内、もしくは周辺にいます。おそらく政庁からそこまで離れることはないでしょう。

※D-2、政庁付近で小火が発生しました。同エリア内であれば煙を視認できる可能性があります。

173 ◆Z9iNYeY9a2:2011/11/17(木) 22:41:42 ID:vsbmJ37I
投下終了です
そしてまたもや文字化け
wiki収録の際に直しておきます

174名無しさん:2011/11/17(木) 23:49:13 ID:T.v5bP.Q
投下乙っでしたあ
ニャースが危ない!しかしサザンドラ相手に粘った方か…
ギアス勢3人集合か。スザクの方は決着ついてたが2人には辛いかもな
ところでここのC.C.はゼロレクイエムについては知らないのだろうか?反応的にそんな感じがしたが

175名無しさん:2011/11/18(金) 01:40:45 ID:Rwm8/O1E
投下乙です。正直リアルチート仕様なサザンドラ相手にニャースオワタかと思いきや、黒いG並みのしぶとさは伊達や酔狂じゃなかったか・・・しかしこれでガブリアスの警告もあるし晴れてゲーチスは敵認定かな?
そんなゲス親父は相変わらず安定のさやかあちゃんを抱えたままなのが吉と出るか凶と出るか・・・後者な気しかしないのがさやかあちゃんクオリティw

176名無しさん:2011/11/18(金) 11:29:34 ID:j15yjXCk
投下乙です

ニャースは俺も死んだと思ったがしぶといなあw
本当にしぶとい
ギアス組は案の定ショック受けてるがまだ余裕あるのかな? 少なくともさやかちゃんよりはまだ大丈夫かもなw

177 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:47:00 ID:h8iqk6xU
こんな遅い時間ですが完成しましたので投下します

178Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:49:40 ID:h8iqk6xU
「何?それは本当なのか!?」

夜神総一郎とメロ、佐倉杏子は移動中であった。
理由は簡単。あのスマートブレイン跡地から爆発音のようなものが響いてきたからだ。
あの戦いの後であそこに向かった誰かがゼロと戦っているのだろう。
今余波が向かってきても戦うことはできない。そう思い、そこから離れるために移動を開始したのだった。
当然時間は無駄にはできない。その最中にも情報交換をしておくのだった。

最初は佐倉杏子だった。
ここに来るまでの杏子のことなどこの場では本人にしか分からないため判断は難しかった。
だが、これまで魔法少女として基本的に一人で生きてきた佐倉杏子にはゆまという少女を助けた記憶など、増してや連れて行ったことなどないという。
そこはあえて保留にしておいた。
そして先ほどの声はメロと総一郎の互いの情報を明らかにしたときに総一郎があげた驚きの声だった。

「ああ、本当だ。まさかそんなことがあったとは…」

パラレルワールド、平行世界。
まさかそんなものを目の当たりにするとはメロも思っていなかった。
総一郎の世界ではLとキラ、月の戦いはLの勝利となったという。
一方メロの世界ではLは敗北し、キラが正義となりつつある世界が広がっていったという。
お互いの知り合いについての情報を開示しているところで気付いた事実だった。

(道理で夜神月がキラだったことを知っているわけだな)

メロにはLがキラに勝ったのだということを聞いて、複雑な気分になった。
Lが勝ったのは良かっただろうが、もしそうなっていたら自分がニアを超える機会など到底来なかっただろう。
その為にワイミーズハウスを抜け出したのだから。
一方で夜神総一郎はやはりショックを受けていたようだ。
息子が道を誤ったまま世界がそれを認めてしまったという事実に。
彼の脳裏には息子のあの叫びが蘇っていた。


「…それで、君は月を止めるために戦っていたというのか?」
「ああ、死神のノートの存在も知っている」

大体のことは話したものの、夜神粧裕にしたことは伏せておいた。
メロとしてもあれには若干の負い目もある。そしてそれ以上に今変な感情を持たせることはマイナスにしかならない。

「あー、それで、一体どういう事だっていうんだ?もちっと分かりやすく言って欲しいんだけど」

そんな中、二人の会話についていけなくなった様子の杏子は支給品に入っていた羊羹を齧っていた。
総一郎はなるべく分かりやすいように杏子に説明する。といっても総一郎自身もよくは分かっていないのだが。

179Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:51:02 ID:h8iqk6xU

「う〜ん、よく分かんないけど、要するにさっき言ってたゆまって奴があたしのこと言ってたっていうのは…」
「佐倉杏子と千歳ゆまが共に過ごしていた世界があったということだろうな」

そう言うメロもあまりに突拍子のない事実に若干困惑していた。
それならば今までのことに説明がつくとはいえ、簡単に受け入れられる事実ではなかった。

「…そういえば、今は何時だ?」
「そろそろ六時に近いけど、それがどうかしたのか?」
「どうやら時間のようだな」




「クロちゃん、大丈夫?」
「…別にそこまで気にしてないわ」

シロナとクロエは向かった先で拾った少女、巴マミを連れて救急車を走らせていた。
その少女は未だ目を覚まさず、後ろで眠り続けている。
そしてスマートブレイン社へと向かおうとしたところで放送が始まったのだった。

「正直殺しても死にそうな人じゃなかったんだけどね」

遠坂凛。イリヤとカレイドルビーの出会いのきっかけとなった人物。おそらく彼女がイリヤと出会わなければ自分が誕生することもなかっただろう。
いつもルヴィアと喧嘩しては騒ぎを巻き起こすトラブルメーカーだった。
死んだからといってそこまでショックだったわけではない。魔術師とは常に死とは隣り合わせなのだから。イリヤはともかく、クロエはそれを弁えている。
ただ、あのルヴィアとのやり取りが、騒がしいあの声がもう聞けないのだと。
そう思うと何だか寂しいものがあった。

「ねえ、シロナさんはアカギって男のこと知ってるんだよね?」
「ええ」
「少しはニャースから聞いてるけど、詳しく教えて欲しい」

その問いかけは果たして失ったものへの悲しみを紛らわせるためか、あるいは放送者への怒りからか。

「そうね。ちゃんと言っておかないといけないわね」

さっきは己の行動の遅れでゲーチスに遅れを取るようなことになってしまった。
アカギのこともちゃんと話しておかねばならないだろう。




「そんな物が…」
「信じられないかもしれないけど、本当よ。それに本来ならあのディアルガとパルキアは神話の存在なの。
それをアカギは手に入れる方法を発見したの」

説明を受けたが、クロエには信じられるものではなかった。
シロナの連れているガブリアスのような存在の中に、時間と空間を司るような存在がいることなど。
そんなものがあるとすればもはや魔法の領域にいるようなものではないのか。

180Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:52:35 ID:h8iqk6xU
「でもそれって本物なの?その…、力を借りた模倣品とかじゃないの?じゃなきゃ神話の存在なんて…」

聖杯が呼び出すサーヴァントのような存在ではないのかと、むしろそうであったほうが納得ができるという思いを込めてクロエは問いかける。

「いえ、私はこの目で本物を見たことがあるの。アカギがどうやってあの二匹の力を再び手に入れたのかは分からないわ。彼が何を考えてこんなことを始めたのかも、ね」

彼の野望とこの状況にどんな繋がりがあるのか、それを考えるにはまだ情報が足りなかった。
そういえば、野望といえば言っておかなければならないことが一つあった。

「あと、一つ言っておかなければいけないことがあるの」
「あ、ちょっと待って。前に人がいるわ」



「松田…!バカ野郎…」

総一郎が部下の死に悲しむ一方でメロと杏子は優先する人物の名前が呼ばれなかったことに安堵していた。
L、ニア、美樹さやかに鹿目まどかといった者たちはまだ生きているようだった。
夜神月の駒が一つ減ったという事実もいい知らせなのだろうか。
最もメロとしては手放して喜べるわけでもなかったが。

「なあ、お前」
「メロだ」
「その千歳ゆまって、どんなやつだったんだ?」

放送で呼ばれた、知る中でおそらく唯一であろう魔法少女。佐倉杏子を慕っていたという子供。
今この場で唯一それを知っているメロにその少女についてを問いかける。

「…そうだな、最初に会ったときはコンビニから食い物と金を持ち出していたな。
ガキにしてはよくやると関心したもんだ」

それを聞いてやはりその少女をその世界で連れていたのが自分なのだなということを考える杏子。
それもそうだ。もし目の前に人のいないコンビニがあれば、自分も同じことをしただろう。
別の自分が面倒を見ていたという魔法少女。これほど近くにいながら出会うことはなく死んでいった。
果たして自分はどんな思いで千歳ゆまと過ごしていたのだろうか。
もう捨て去った過去、あの巴マミと過ごした記憶が脳裏をよぎり、

「―って巴マミ?」

杏子のソウルジェムが巴マミの魔力の反応を捉えた。つまり巴マミがこちらに向かってきているということだ。

「む?あれは、救急車か?」

見ると救急車がこちらに向かってきていた。あれに巴マミが乗っているということなのだろう。
マミが乗っているのならばあれに殺し合いに乗った人間は乗っていないだろう。乾巧は大丈夫だったのかも気になる。
止めようとして前に出ると、向こうから止まってきた。
そして目の前で金髪の女性と肌が黒い少女が降りてきた。

「あなた達は…」
「そんなに警戒しなくても殺し合いに乗ってねえよ」

181Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:53:43 ID:h8iqk6xU
こちらに向かってくるのにも慎重な動きをしていた二人にそう言って警戒を解かせる。

「そっちに巴マミはいんのか?」
「何で知って…――ってあれ?あんた、もしかして佐倉杏子?」
「へぇ、知ってるのか。なら大丈夫だな。
乾巧ってやつは一緒なのか?」
「?いいえ、私達二人とその巴マミって子だけよ」
(なんだ?マミのやつ失敗したのか?)

乾巧の連れ戻しに失敗したのなら出てこないのも無理はないのだろうか、と自分を納得させる。
顔を見せることができないというなら無理に出す必要もない。

「もしかしてあなた達あのビルが崩れる現場にいた?」
「ああ、あそこで化け物みたいなやつと戦っていたよ
行くならやめとけ。さっきまでまだ戦ってるやつがいるみたいだしもうすぐ禁止エリアになるんだろ?」
「そうね…。じゃああそこで何があったのか教えて。こっちも出しうる限りは情報を出すから」
「そういえば名乗ってなかったわね。わたしはクロエ・フォン・アインツベルンよ、クロでいいわ。こっちはシロナさん」
「あたしの名前は知ってるんだよな。こっちは―」
「いい、自分で名乗る。メロだ」
「夜神総一郎、警察の者だ」

二人が自分で名乗ったのはやはり住んでいた世界ゆえだろう。
顔と名前を知られることが死につながる敵と戦っていたことで名前を他人の口から言われることに抵抗があった。

「メロ…、それに夜神、ね」
「クロちゃん?どうかしたの?」
「ねえ、ソウイチロウ、あなた夜神月って人の家族?」
「何?!」
「月に会ったのか?!!」

夜神月、という名前を出したとき二人は大きな反応を示した。どうやら夜神総一郎は夜神月の父親らしい。
サヤカの聞いていたことが正しければこのメロという人物は危険人物ということになる。
だがそれが正しいという保障もない。それにメロは聞いていた印象とは違う気がする。
ならば先にするべきなのは――

「その前におじさんに聞きたいんだけど、夜神月ってどういう人物なの?」

無論父親とて知らないこともありえる。だがもしその彼が警戒する人物ならばまず間違いはないはずだ。

「それは夜神月に何か言われたという事か?ちょっと詳しく聞かせろ」

その問いかけにいの一番に反応したのは最も頭の回転が早いメロだった。
もし夜神月について何か手がかりがあるというならばそれを逃がすわけにはいかない。

「あーうん、言っていいのかな?…ま、いっか」

どうも様子もおかしいし言ってしまったことは仕方がない。そう考えて全部を話してしまうクロエ。
当然警戒していなかったわけではない。
しかし直接月から聞いたさやかに対して、クロエが聞いたのはそのさやかから又聞きしたものであった。
そのためキラという存在の脅威性や悪質さなどの部分までははっきり分かっておらず、漠然としたものとしか分かっていなかったのだ。

182Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:55:42 ID:h8iqk6xU
「俺とニア、L、松田桃太に美空ナオミがキラの手先の危険人物だと?それは夜神月が言ったのか?」
「正確には美樹さやかって子からそれを伝えられたんだけどね」
「さやか?おい、お前、さやかに会ったのか?!!」
「え?ああ、うん。会ったよ。会ったけど――」
「どうして先に言わねぇんだよ!」
「いや、だってサヤカからはそんな仲よさそうな印象なかったから…」
「佐倉くん、落ち着くんだ」

興奮する杏子を窘めたのは総一郎だった。だがそんな彼も突然現れた息子の情報に対する驚きを抑えているのが分かる。

「そのさやかって子から月とどこで会ったかは聞いているかい?」
「確か、来てすぐのところでD-4の間桐って家で会ったって言ってたような」
「そうか、意外と近くにいたんだな…」
「まあその後どっちに行ったかまでは聞いてないけど
シロナ?どうかしたの?」
「え、あ、いえ。何でもないわ」

何か考え込んでいる様子であったシロナに声をかけたクロエ。
シロナは月が嘘をついていると言われたとき、ふと思った。もしかしたら美樹さやかという子はかなり危ない状況なのではないかと。
その月という人物の嘘を真に受け、さらにはあのゲーチスとも共に行動することになっていたのだから。
ゲーチスにその誤解を利用されて良からぬことを起こされるのではないか、とふと心配になったのだ。

「でさ、そろそろそっちで何があったのか聞かせて欲しいんだけど」
「あれ?マミのやつから聞いてないのか?」
「それがあの子見つけた時にはかなりの怪我を負ってて気絶していたの。
まだ目を覚ましていないのよね…」
「そうなのか」

色々なことに納得しつつ、まだ未説明のメロと総一郎にもあのビルであったことを話す杏子。
化け物としか言いようのない仮面の男、ゼロとそれと戦っていた乾巧というオルフェノクの男。
乾巧と自分とさらに戻ってきた巴マミ、さらにその場に現れた村上というオルフェノクとおそらく一時的な協力をしてゼロを撤退へと追いやったこと。
そして乾巧を裏切ったらしい木場勇治というオルフェノク。巴マミはゼロと戦う前にその男と戦っていたらしい。
さらに彼に殺されたという乾巧の仲間、菊池啓太郎と魔法少女の千歳ゆま。
仲間の死にショックを受けて去っていった乾巧と彼を追っていった巴マミ。
ここまでが杏子があそこで見た全てだった。
と、話を終えて気付くとシロナとクロエ二人の顔が心なしか青いような気がする。

「何だ?どうかしたのか?」
「…もしかしてあなたの言う乾巧って人、全身から刃みたいなものが突き出た狼みたいなオルフェノクだった?」
「え、まあそんな感じだったとは思うけど、何で知って―ってまさか」

183Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:56:44 ID:h8iqk6xU
シロナは頭を抱えたくなった。その後何があったのかは分からないが味方となり得た者に攻撃をしてしまったということは確かだ。
話を聞く限りでは、仲間を失ってショックを受けていたのを立ち直らせた少女を連れて逃げていたところを攻撃してしまった、ということになるのだろうか。

「シ、シロナは悪くないわ。最初に攻撃しかけたの私だし…」
「クロちゃん、いいのよ…。
あの、どちらか車を運転できる方はおられますか?」
「運転なら私はできるが…」
「この先の政庁という場所に仲間との集合を約束しています。もしよければ向かってもらえますか?」
「構わないが、君は大丈夫なのか?」
「ええ、私は大丈夫です。ガブリアス、お願い」

そう言って白と赤のボールを投げ、ガブリアスを呼び出すシロナ。
視線の先は巴マミを発見した場所に向いている。どうやら乾巧を探しにいくようだ。

「クロちゃん、先に戻っていて。もし移動することになっても私に気を使う必要はないわ」
「え、ならわたしも一緒に―」
「駄目よ。これは私の失敗なの。自分でけじめをつけさせて。
それにあなたまで付いてきたらあの子が起きたときに説明できないわ」
「……」
「ああ、そういえば一つ言い忘れていたわね。
クロちゃん、ゲーチスには気をつけて。あの男は危険よ」
「え…?」

その言葉を最後にシロナは飛び立つガブリアスに乗って去っていった。

「おい、あれは何だ?」
「えーっと、なんかポケモンっていう生き物らしいわ。詳しく聞きたかったら移動しながらでいいなら話すけど?」
「分かった。確か政庁だったな。佐倉くんも行くか?」
「…おい、さやかはどっちに行ったって言った?」
「アッシュフォード学園ってとこに行ったあとで友達の家に向かうって言ってたわ」
「そうかい。じゃあしばらくは大丈夫だな。あたしもそこに連れてけ。マミのことも気になるしな」
「メロ君はどうするんだ?」
「…悪いが俺はここで抜けさせてもらう」
「おい、何でだよ?夜神月ってやつ探すんだろ?おっさんと行ったほうがいいんじゃねえのか?」
「こっちにも色々あるんだよ」

メロとしては仲間がいらないというわけではない。一人で行動するデメリットはよく分かっている。
だが、それを差し引いても夜神総一郎と共に行動するのは気が進まなかった。
夜神総一郎の人格は分かっているし、敵対していないのであれば同行するのも吝かではない。だがもし月を見つけた時のことを考えると共に探すのは止めておきたかった。

184Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 02:57:54 ID:h8iqk6xU

「分かった。なら私に止めることはできないな。気をつけて行くんだぞ」
「最後に一つ聞きたい。
夜神月はたぶんあんたの知ってる夜神月じゃない。俺の知ってる方の夜神月だろう。
それでもあんたはやつを探すのか?」
「ああ」
「そうか。そっちもせいぜい気をつけろよ」

そう言い残して一人バイクを走らせて行った。



「それにしてもマミのやつ、ボロボロじゃねえか…」

救急車の処置室に寝かされているマミは自分が最後に見たときよりボロボロになっているように見えた。
魔法少女としての力が肉体を修復しているため、傷自体はそれほど残っていない。
それでも体や服についた汚れからある程度の判断はできる。特に胸の辺りには明らかに何者かに撃たれたかのような血痕が見える。

(そういや、マミのやつあの事知らないんだよな…)

きっと巴マミはソウルジェムの秘密は知らないはずだ。
だからさやかのように変な気負いをすることなく戦うことができる。

さやかはまどかの家に向かっているといった。なら今のところは親友を気にかけるくらいは可能な精神状態なのだろう。
あの時のように自暴自棄な行動はしない――と思いたい。ともあれこっちが片付いたら追いかけよう。
とりあえず今は、今だけは巴マミの方を優先したかった。
かつて共に戦ったもののあれの後にその下を離れ、その後も一人で戦い続け、そして気がついたら死んでいた存在。
そんな思いなどとうの昔に捨てたはずだったのに、千歳ゆまという少女の話を聞いて思い出してしまった。

(…たく、あたしもヤキが回ったもんだよな。早く起きろよバカ)

眠り続けるかつての師ともいえる存在の傍で、杏子は羊羹を齧りながら目覚めを待った。





(ゲーチスは危ないって言ってたけど…、サヤカってそいつとずっと一緒にいたんじゃなかったっけ?)

美樹さやかはここに来てからずっとゲーチスと共に行動しており、これからの予定も一緒に行動するというものだったような気がする。
彼が病院ではずっとシロナと会話していたこともあり、クロエにはゲーチスがどんな人物なのかイマイチ掴めていない。だからさやかからの話のなかでそれを想像するしかなかった。
もしやばいのならば杏子には説明しておくべきだろうか?
さやかから聞く限りは殺し合いに乗るかどうかは微妙なところと言っていたが、杏子のほうはどうもかなりさやかに入れ込んでいるような印象だった。
などと考えているとふと気になったことがあった。

「ねえ、あんたは息子を追わなくていいの?」

185Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:00:19 ID:h8iqk6xU

隣の運転席で操縦している夜神総一郎に問いかける。
これまでの会話から彼が息子を探しているということは想像できた。そしてその息子を探しているらしいもう一人の男は一人で探しに出て行った。
なら彼も追いたいはずなのではないか?

「息子が他の人に迷惑をかけるようなことをしているのなら、それを放置することは私にはできない」

夜神総一郎にはLやキラと戦う皆が悪人として扱われることは我慢できなかった。もしそのまま誤解が広がればよからぬことが起きるのは目に見えている。
息子の不始末は父親である自分がつけねばならないと、そう考えていた。例えそれが己の知る月とは別の月であっても。
総一郎はこの場にその別世界の月がいるというのは何かの運命かもしれないと思っていた。
Lに勝ったことで道を外し続けている息子の道を正すこと。それがこの場に呼ばれた自分の役割なのかもしれないと。
一つ不安なことがあるとすれば、約束の時間までに流星塾に間に合うかどうかということだが。
まあ行く先に草加雅人の探している少女がいる可能性も否定はできない。
ともあれ自分の都合だけを優先するわけにはいかなかった。

「ふ〜ん、そんなものなのかな?」
「君にもお父さんはいるだろう?父親とはそんなものだ」
「お父さん…かぁ」

クロエには父親のことを言われてもイマイチピンとこなかった。
何はともあれさやかのことだ。今はそんな空気には見えないが言うべきだろうか。

考えている間に4人を乗せた救急車は確実に政庁に近付いていた。



勢いに任せて出てきたものの、正直はっきりとした行き先は特になかった。
やはり早急だっただろうかとメロはふと思う。

「それにしても何を焦っている…?夜神月」

一人になったメロはクロエから聞いた夜神月の情報を考えていた。
彼らとの情報交換はメロにとって大きな進歩であった。何しろ夜神月の動きも把握することができたのだから。
だが、だからこそ腑におちないことがある。

メロ自身は夜神月がキラであることはほぼ確信に近いものだったのだ。しかし夜神月自身は決して尻尾を握らせようとはしなかったはずだ。
それほどまでに慎重に動いていたはずの月が、なぜここにきてこのような行動に出たというのか?
この場ではキラの知名度は低く悪評としては有効ではあるが、それは月=キラと考えている人間に確信を抱かせるリスクも合わせている。
それにニア、自分、松田桃太、美空ナオミ、Lの5人全てというのはいくらなんでも多い。さらに松田桃太までというのはどういうことなのだろう。
正直今までのキラらしくない。

そもそもこういったものはうまい具合に作用すればいいが、今回のようにいかないことだってあり得るのだ。
騙され易く正義感の強い者ならともかく注意深く慎重な者はそうすぐに行動に出るものではない。

(今の夜神月は何かおかしい…。それは何だ?)

平行世界のことを聞いたが、それでもこの夜神月がキラであり、それも自分の世界の月であることは間違いがない。
だがまだ何かが欠けている。まだピースが足りない。

186Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:01:46 ID:h8iqk6xU

(ニアなら何て言うのか…。いや、これは俺一人ですることだ)

おそらくLやニアならば何かしらの仮説くらいは立てているだろうが。
答えを導き出すには夜神月を見つけることができれば一番手っ取り早い。だがやはり一人で行動するにはカードが足りない。
さっきのような怪獣や杏子の言ったゼロとかいう怪人などを相手にするには拳銃と呪術入りらしい宝石一つでは逃げられるかどうかも怪しい。
それに加えて月自身が広めている悪評のこともある。やはり夜神月を先に探すべきだろうか。
あるいはいっそのことシロナとかいう女を追ってみるのもありだろうか。

(一人…か)

ふとバッグをまさぐると出てきたのはあのコンビニで今は亡き少女が持ち出した一枚のチョコ。
それを無造作に食べきると、メロは考察のために止めていたバイクを再び走らせた。

【D-3/東部/一日目 朝】

【シロナ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康、魔力減少(小)、罪悪感
[装備]:モンスターボール(ガブリアス)@ポケットモンスター(ゲーム) 救急車、
[道具]:基本支給品、ピーピーリカバー×1、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、アカギを倒す
1:乾巧を探す
2:ゲームを止めるための仲間を集める
3:N、サカキを警戒 ゲーチスはいずれ必ず倒す
4:間に合うなら9時に政庁に集合する
[備考]
※ブラックホワイト版の時期からの参戦です
※ニャースの事はロケット団の手持ちで自分のことをどこかで見たと理解しています
[情報]

「まどか☆マギカ」の世界の情報(ソウルジェムの真実まで)
「ポケットモンスター(アニメ)」の世界の情報(ニャース談)
「プリズマ☆イリヤ」の世界の情報(サーヴァントについても少々)
「コードギアス 反逆のルルーシュ」の世界の情報
バーサーカー、ボサボサ髪の少年(北崎)は危険人物

【D-3/西部/一日目 朝】

【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本:みんなと共に殺し合いの脱出
1:みんなを探す。お兄ちゃん優先
2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい
3:どうしてサーヴァントが?
4:崩壊したビルに向かう
5:9時に政庁に集合する
[備考]
※3巻以降からの参戦です
※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例)
※C.C.に対して畏敬の念を抱いています
[情報]
「まどか☆マギカ」の世界の情報(ソウルジェムの真実まで)
「ポケットモンスター(アニメ)」の世界の情報(ニャース談)
「プリズマ☆イリヤ」の世界の情報(サーヴァントについても少々)
「コードギアス 反逆のルルーシュ」の世界の情報
バーサーカー、ボサボサ髪の少年(北崎)は危険人物

187Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:03:46 ID:h8iqk6xU

【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:休んでいる暇はない。警察官として行動する。
1:政庁に行き、月の嘘についてを説明する。
2:警察官として民間人の保護。
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。
6:佐倉杏子から、事のなりゆきを聞きたい。
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、ソウルジェム(汚染率:小)、ストレス少々
[装備]:羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入
[道具]:印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:今はマミの様子を見つつ休む
1:とりあえず今だけはマミの面倒を見る
2:その後鹿目邸に向かっているらしいさやかを探す
3:真理を見つけたら草加たちのことを一応伝える
4:いずれ巧への借りは返す
5:夜神月は気に入らない
[備考]
※参戦時期は9話終了後です
※夜神月についての情報を得ました

【D-3/???/一日目 朝】

【メロ@DEATH NOTE】
[状態]健康
[装備]ワルサーP38(8/8)@現実、原付自転車
[道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)
[思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。
1:今は夜神月を優先して探す。シロナは追うか?
2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。
3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない)
4:可能ならばおりこに接触したい。
5:夜神月の行動に違和感。
[備考]
※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。
※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月
※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています)
※平行世界についてある程度把握、夜神月が自分の世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。

188Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:05:12 ID:h8iqk6xU




気がつくと巴マミは真っ暗な闇の中にいた。

ここはどこなの?どうしてこんなところにいるの?
確か私はたっくんと一緒に行動していたはず…。

『マミお姉ちゃん』

ふと声が聞こえる。それはもう聞くことのないはずの声。あのとき木場勇治に殺されたはずなのだから。

「ゆまちゃん?」

闇のなかで少女が立っているのが見える。声をかけながら駆け寄る。

「ゆまちゃん!大丈夫だった――」
『どうしてゆまをみすてたの?』

触れた瞬間そう言って振り返り、同時にゆまの首が落ちた。

「っ!?!?」

ショックで腰を抜かすマミ。そしてゆまの姿は消える。
すると遠くに見覚えのある二人の少女が見える。佐倉杏子と暁美ほむらだ。

「あ、暁美さん、佐倉さん!」

必死で呼びかける。しかし、

『こんなやつと一緒に行けないね』
『私達に触らないで』

返ってきた言葉は強い拒絶だった。

「そ、そんな…、どうして…?」
『それはお前がよく知っているのではないか?』

声が聞こえて振り返ると、後ろにはあの仮面の男、ゼロがいた。

「…っ!あなた…!」
『いいのか?そこで人が殺されそうになっているぞ』

ゼロが指をさした方には、ルルーシュと名乗った人が金髪の女に銃を向けられていた。
腰を抜かしている場合ではない。襲われたからといって死んでいいなどとは思っていない。それに金髪の女も捕らえなければ。
そう思って立ち上がって走り寄るが、間に合わずルルーシュは撃たれてしまった。

「あ、あなたどうしてこんなこと……え?」

189Signum malum ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:05:58 ID:h8iqk6xU
撃った人間を見据える。そこに立っていたのは、紛れもなく自分、巴マミだった。

「私が、ルルーシュさんを…?」
『逃げる背後を容赦なく撃ち抜くか。中々の覚悟だな』
『綺麗事を並べていても所詮は人間か。つくづく失望させてくれる』
「ち、ちが……、私は…」

気がつくと、そんな言葉を投げかけたゼロも木場勇治もいなくなっている。
自分と同じ姿をした何かとルルーシュもどこにもいない。
そしてしばらく先に、茶髪の男性がこちらに背を向け歩いている。

「た、たっくん!!」

それは自分が人を見捨てそうになったときのことを任せた男、乾巧だった。

「待ってたっくん!たっく…、巧…さん?」

近付く度に何かがおかしいことに気付く。そして彼は、

『もう、俺に関わるな』

振り返ることなくそう言って消えていった。

再び一人きりとなったマミ。

ああ、そうなんだ…。全部私のせいなんだ…。
ゆまちゃんが死んだのも、ルルーシュが死んだのも、たっくんが傷ついたのも。
こんな私が誰かと一緒にいるなど…―――――




無論そんな光景は現実のものではない。巴マミはまだ眠り続けている。
だがそんな彼女のソウルジェムが、グリーフシードを使ったばかりにも関わらず、回復に魔力を使ったにしては多い濁りを持っていることは紛れもない現実だった。


【D-3/西部/一日目 朝】

【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:小)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ) 、気絶中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、遠坂凛の魔術宝石×10@Fate/stay night、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る
0:……
1:????
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶がかなり曖昧です
※見ていたものはあくまで夢です。目が覚めたとき内容をどこまで覚えているかは不明です 
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識
※金色のロボット=ロロとは認識していない

190 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/02(金) 03:07:16 ID:h8iqk6xU
投下終了です
おかしなところがあれば指摘お願いします

191名無しさん:2011/12/02(金) 15:29:53 ID:YpMPBbZU
投下乙です
このロワでのキラの空回りっぷりは凄いなw

192名無しさん:2011/12/02(金) 18:06:56 ID:Z5WKd0io
投下乙です。あれ、十話よろしく発狂したマミさんがあんこを射殺する光景が(ry
安定のさやかちゃんも大概だけど、マミさんもある意味でブレないなぁw
つーかシロナさん、もう少し詳しい事言わないと逆にクロがゲーチスに丸め込まれる理由作るだけだろうw

193名無しさん:2011/12/02(金) 21:24:44 ID:GhDkm2rk
投下乙。なんだかいろんなところでややこしくなってる…w
シロナメロは別行動、残りは政庁行きか。
…………あれ、また大混雑する?西部地方はホントカオスやわぁ…。
しかしシロ(ナ)やクロ(エ)やメロとか似た語感なキャラが多いw

194名無しさん:2011/12/02(金) 21:44:35 ID:tFXvPiT2
投下乙

ルルーシュ死んでもメンタルボロボロでもギアス発動中なのがマミさんの辛いところだな…
そして集団の中にいる内になんだか丸くなってる杏子ちゃんが可愛い
しかしシロナさん、戻る方向にはロロもキリカもいるぞ、またうっかりが発動しなきゃいいんだが

>「それは夜神月に何か言われたという事か?ちょっと詳しく聞かせろ」

しかし、この時↑の対応次第ではシロナのうっかりが再発してたかと思うと、地味に今回のメロと総一郎は良い仕事したと思う

195名無しさん:2011/12/04(日) 19:19:15 ID:GCUHMouE
投下乙です

あんこちゃんはなあ、群れるタイプじゃないから暴発する可能性もあったけど丸くなってよかったと思うよw
でもあんこちゃん以外にも火種になりそうなのがちらほらと…
シロナ、お前はその説明で十分だと思ってるのか?

196 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:53:21 ID:CpJKJ9Y2
皆様お久しぶりですー。

>>173
投下乙ですー。
ニャース何とか生き延びたかー。 これでどうなるか、ゲーチスへの一手となるか?
ギアス勢もさやかあちゃんもあんまり余裕無く、何よりポッチャマ……

>>190
投下乙ですー。
上手く接触したかなー、とか思ったら色々と問題だらけだなーw
別れたことで各所でもっと不安なことになる未来しか見えない……

予約入っていないようなので、今更ですがL、北崎、バーサーカー、投下しますー。

197 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:53:58 ID:CpJKJ9Y2
「最強の敵」


同行者の歩みに合わせ、のんびりと南西に向かっていた歩みを、止める。
ようやく日が差し始めた中、Lはたった今流れたばかりの放送の中身を思考する。

(松田に美空ナオミ、それと弥海砂……)

頼りになるというよりは足を引っ張られる事の方が多かった相手だが、それでも数少ない協力者、正義感を持った警察官。
キラ事件の渦中に一度浮上しながら、Lと会う前に姿を消した、かつての協力者。 少なくともその時は信頼出来る能力の持ち主だった。
そして第二のキラ。 死神の目なるものを持つキラの協力者、いや信奉者というべきか。 キラ特定の際に色々と状況をかき混ぜた、犯罪者。

いずれも、死んだ。
Lと何ら関わりの無い所で、Lが何らかの意図を抱くことすら出来ぬままに、死んだ。

(それに、ルルーシュ・ランペルージ)

今わの際の篠崎咲世子との約束は、半ば果たせなかったということになる。
まだ片割れが残っている、などという思考はLに無い。 信じられ、託された約束を果たせなかったという思いのみを抱く。
だが、そういった諸々の感情を表に出す事などない。 人間嫌いにすら見える外見と異なりLは熱いものを心の底に秘めているが、それは後回し。

「熱心だねぇ」

名簿と地図に印を付け、同時に知る限りの死者の情報、性格など何でもいいので思いついた情報を記す。 
Lならば一々印を付けずとも記憶する事は容易いが、彼はそのような過信とは無縁な男だ。
あらゆる情報を、あらゆる側面から集め、整理し、解を導き出す。 それが彼を世界最高の探偵たらしめている要素だ。
そういう行動をしているLに至極のんきそうな声が掛けられる。

「あなたはメモしなくてもいいんですか?」
「うーん、したほうがいいのかなぁ?」

シャルロッテ印なるお菓子をポリポリと食べながらも作業するLとは正反対に、何もしていない北崎。
誰もが行うはずの行為を、必要なのかと論じるほどの、不遜。

「……私があなたに忠告するのもおかしいですが、言うまでもないことです」
「そーお? じゃあさ、僕の分も書いておいてよ」

言いながら、己のディパックをしゃがみこんでいるLに手渡す北崎。
北崎を打倒することを公言しているLに対して、己の支給品全てを渡すという、非常識な行為。
いやそれどころか、誤った情報を書き込まれれば、それが死につながるかもしれないというのに、この余裕。

「……私もそんな面倒は御免なのですがね。 というかいいのですか? 間違えた情報を書き込むかもしれませんよ?」
「へーきへーき、3つくらい覚えられるし、何より君はそんな事はしないよねぇ」

確かに、禁止エリアが二桁もあるのであれば一つ二つ偽ることも可能だろうが、3つとなるとそうもいかない。
そして何より、そのような方法で北崎を討ったとしても、意味がない。
Lは、世界一の探偵である。 それは数多の犯罪者を罪に服させてきたということだ。
犯罪者に対しては卑怯な事でも法に触れることでも何でもするが、それは犯人逮捕の為。 その後に犯した罪に相応しい刑に服させる為だ。
仮に北崎が死刑に相当するとしても、ただ騙まし討ちで殺したのでは、何の罰にもなっていない。
あくまでも、己の手で倒す。 自分が犯した罪の重さを自覚させる。 そうすることで初めて、Lは北崎に勝利したと言えるだろう。

198 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:55:07 ID:CpJKJ9Y2
「ああ、面倒くさい」

そう言いながらも、Lはデイパックを受け取る。
もともと雑事は全てワタリに任せているだけに、Lはこういう作業は好きではない。
だがそれでも、何らかの新情報を得れるかもしれないチャンスを見過ごすなどということはない。
北崎の性格からすると何らかの悪ふざけくらいは仕掛けられている可能性も考慮して中身を探るが、どうやら杞憂だったようだ。
Lのものと同じ支給品の数々と、虎を模したの飾りの付いた竹刀が一本、それだけ。
それは無視しつつ、綺麗とも汚いとも言いがたい文字で禁止エリアを塗りつぶし、死亡者の名に印を付ける。
Lの菓子を勝手に食べながら横目で見ていた北崎が、その中に含まれている施設を見て村上なる人物が可哀相に、と言っていたが後回しだ。
反応からすれば、死者の中に北崎の知り合いは存在しないようだが、そのときについでに聞けばいい。

「ヒカリ、千歳ゆまと。 これで全てですね」
「ご苦労さま、まあ茸しかないけどたんとお食べよ。 茸派とか無いよねぇ」

たんとお食べとは言うがそれは先ほどまでLが食べていたお菓子に他ならない。
お菓子を取られた事と筍派という事実で、Lは北崎はやはり許されざる敵であるという認識を新たにした。

「ところで、平然としておられますが、貴方の知り合いの名は呼ばれなかったのですか?」
「うん、知らない人ばかりだよ」
「そうですか」

仮に親や恋人が死んだとして北崎がどのような態度を取るのか想像も付かないが、少なくともこうも平然としてはいまい。
死んでいたとしても顔見知り程度だろうと考えていたが、どうやらその通りのようだ。

「そういえば、あなたにはどのような知り合いがいるのですか?」
「ん〜、僕の知り合い? そうだねぇ」

僅かに、北崎が考え込み、そして何かを思いついたように笑みを浮かべる。

「聞きたい?」
「ええ、教えて頂けるのでしたら」
「うん、じゃあ、教えてあげなぁい」

返事には、悪ふざけの成分が多大に含まれていた。
その笑顔は、策略とか嫌がらせとかそういう意図ではなく単純にからかっているのだと雄弁に語っていた。

「…………」
「あ、怒った? ウソだよ、ちゃんと教えてあげるよぉ」

ちょっと待ってね、とLより渡された名簿を持ち上げる。
その様子からすれば、さほど真剣に名簿を読んでは居なかったのだろう。 いかにも北崎らしい。
見た目からしてLよりもいくらか若い少年であるが、中身の方も外見相応というところだろう。

「うん、やっぱり僕が知ってるのは村上さんだけだよ。 琢磨くんは死んじゃったし、冴子さんもいないし。
 もしかしたら向こうが僕を知ってるかもしれないけど、それって知り合いとはいわないよねぇ」
「そうですね、それはその通りです」

村上さん、というのは村上峡児という人物で間違いないだろう。 
琢磨くんというのはあの時死んだ男で、冴子さんというのが何者かは知らないが、北崎とはそれなりに親しい位置にいたのであろう、女性。
この場合問題になるのは、琢磨という男がくん付けなのに対して、村上はさん付けで呼ばれている。 それはつまり北崎から何らかの敬意を勝ち取れている存在ということになる。

199 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:55:54 ID:CpJKJ9Y2
「あ〜、そういえばこの木場勇治と乾巧って人も知ってるかな?」

その辺りの人間関係も出来れば把握しておきたいと考えていたLだが、北崎は他の何かを思い出したようだ。

「木場勇治、木場勇治……とその一味。 間違いないね、琢磨くんがよく失敗してベソかいてたよ」
「失敗、ですか?」

琢磨という男の失敗でも思い起こしたのだろう、意地の悪い笑みを浮かべる北崎に、問う。

「うん、オルフェノクなのに人間を殺すのが嫌な人は処分されちゃう事に村上さんが決めたんだけど、彼は何度か琢磨くんが襲って、そのたびに生き延びてたんだよねぇ」
「一味、ですか。 他の何人かもこの場にいるのですか?」
「さぁ、知らないなぁ。 何度か顔を見たような気もするけど一味としか覚えてないし」
「そうですか……」

これは朗報、ということになるのだろうか。
オルフェノクの中にも、人間に友好的な存在があり、それもこの場にいるということだ。
無論、実際に本人に会うまでは何とも言えないが、それでも北崎らを相手に何度か戦ったのは事実なようだ。

「で、この乾巧っていうのは、確かJの代わりに村上さんが連れてきた、僕たちラッキークローバーの新しい仲間なんだけど……」

その事についてさらに問おうとするLであったが、北崎は続けてもう一人の説明に入ろうとする。
進んで解説してくれるなら文句はない、後で細かい点を補足してもらえばいいか、などとLは考え話に意識を戻したのだが、

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

それは、突如として響いた怖気の走るような咆哮によって、中断された。

「………………は?」

一瞬の、自失。
それが何かの声であることすら、Lは咄嗟に理解できなかった。
ただ、半ば呆然と振り向いた先に、家々を破壊しながら進む人型の物体があったことで、それが声であったのだとかろうじて理解出来た。
その物体は、Lに一瞬死神の仲間かと感じさせたほど、Lの常識からはかけ離れた存在であった。
2メートルの半ばを越す長身と、その肉体の全ての箇所を覆う灰褐色の筋肉。
巨人を象って彫られた石像と呼ぶほうがしっくりくる、まさに岩の塊のような、紛れも無い「人体」
それを何か得体の知れない赤黒いもので表面をコーティングし、よりいっそう非生物的な外観を作り出しながらも、それは紛れも無く生物として駆動していた。

「うわぁ……おっきいねぇ」

本能的な嫌悪感と恐怖感で咄嗟に声も出せなかったLを尻目に、北崎は暢気に述べる。
非人間的な造詣ならばオルフェノクで見慣れているし、巨体ならば仮面ライダー・カイザの駆るサイドバッシャーのほうが大きかった。
流石に密度という面で見ればここまでの代物は北崎にも初めてではあるが、それでも恐れとは無縁だ。

「いっくよー」

走り寄る巨体に向かい走り出しながら、オルフェノクへと変身を遂げる。
巨人の目的は完全に不明だが、少なくとも友好的な存在には到底見えない。
最も、北崎は相手が友好的かなどは元より気にしてはいない。 ただ、向かって来ているのが戦って面白そうな相手と認識しただけだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

敵意を剥き出しにして、咆哮をあげながら迫り来る巨人など、これほど面白そうなオモチャが存在しようか。
先だって倒した咲世子という女性も中々楽しめた相手だったが、こっちは見た目からしてワクワクする。
北崎の胴ほどもありそうな腕に、Lの腕よりも太い指という、当たれば唯ではすまないかもしれない凶器のスリル。
それがハンマー、いやむしろロードローラーと呼ぶべき勢いで、叩き付けられる。

200 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:56:33 ID:CpJKJ9Y2
「おっと」

流石の北崎でもこれは後ろに避け、後ろにあった家の外壁が砕け散る。
本気出せば受け止めても大丈夫だとは思っているが、それでも万一ということはある。
叩き付けた威力で、離れたところで見てたLの身体が僅かに跳ねるが、巨人も北崎も気にしない。
巨人はただ振り下ろした右手を支点にして左手を振り回し、北崎はまた後ろに下がりそれを避ける。
そこに向かい今度は右手が振り回される。 下がるのがそこまで好きでない北崎は横に逃げる。
だが巨人の正面側故に左手が間髪居れず叩き付けられ、再び後退する。

右手、    叩き付ける
左手、   振り回す 
左手、  叩き付ける
右手、 振り回す
左手、振り回す
右手叩き付ける


「ちょ、ちょっと、ずるいよぉ?」

北崎とて相手のリーチが上な以上はある程度の防戦という形は覚悟していた。
だがこの速度、まるで黒い渦のように止まらずに迫り続けるというのは予想外に過ぎた。
力で劣るなどとは微塵も考えていないが、あの密度では一度や二度止めた所で弾き飛ばされてしまいそうだ。

「攻撃しっぱなしっているのは反則取られるんだよぉ?」
「■■■■―――」

何のどういうルールかは不明な言葉をつぶやいた途端、状況が変わる。
巨人の正面方向から後退を続けるしか無かった北崎が、一瞬の間に巨人の後方へと回り込む。
その姿は先ほどまでの力に優れた魔人態ではなく、速度に優れたスリムな龍人態へと転じていた。

「■■■■■――――――!!」

姿が変わっていることには何の反応も示さずに、巨人は裏拳気味に右手を振り回す。
本来隙の生まれ易い動作ではあるが、巨人のそれには付け入るべき隙など殆ど見えず、巨人はこれまでの野生めいた態度には反して優れた技術を持っているようであった。

「あはは、こっちだよぉ」

だが、その攻撃が届く前に北崎は再びもと居た位置に戻る。
どれ程の威力のある攻撃だろうと、当たらなければ意味が無い。
再び巨人は両腕で暴渦を巻き起こすが、北崎は決してその範囲には入らない。

「今度はこっちだねぇ」

北崎本人とて言葉ほど余裕があるという訳ではない。
龍人態なら楽に回避できるとはいえ、その状態で万一にも喰らえば重傷は免れない。
かといって魔人態でも防ぎきれるという自信があるわけではなく、何より速さで巨人に劣る。

「反則したし、こっちもペナルティ行くよぉ?」

だから北崎は、早々に勝負に出る事にした。
叩き付け、振り回し、裏拳という今まで見た行動パターンから、最も隙の大きい裏拳を、誘う。
そしてその隙を突き、僅かに腕に触れる事を覚悟しつつ、龍人態の速度で懐に飛び込み、その臓腑を貫く。
本来、北崎は灰化能力を持つ故に相手の身体が触れるのはむしろ優位な行為であるが、これほどの質量差のある相手だと北崎自信もダメージを受けかねない。
それでもそうしたのは、北崎自信が巨人を相当の強敵と感じてたからだ。 無論、己の暇つぶし道具の範囲内としてではあるが。

「■■■■■■■■■――――――!?」

今まで後退一方であった相手の突然の突撃。
元より北崎の早さに付いていけていなかった巨人は、その動きに対応しきれない。
結果として、北崎はさしたるダメージもなく巨人の懐に飛び込むことに成功する。

201 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:57:30 ID:CpJKJ9Y2
「じゃあね、バイバイ」

念のため、と魔人態に変身しなおし、心臓目掛けて腕を振るう。
石像のような筋肉を持つと言っても、実際に石の硬度を持つ訳ではない。
北崎の両腕の竜頭より伸びた突角を持ってすれば確実に貫けるだろう。
肉が厚く上背もある為、内臓まで確実に届かすにはかなりの力を要するが、その程度はどうにでもなる。
多少の脅威であろうと、大きいだけの巨人では、最強のオルフェノクの前では敵足り得ない。
そうして、突角は鈍い金属音を上げながら、巨人の肉体に突き立てられた。





「…………」

Lには、言葉が無かった。
警察権力と世界的に繋がりがある以上、Lとて荒事には不慣れではない。
だが、Lの知る全ての経験のどれと比べても、目の前の光景は非現実過ぎた。
咲世子の動きもLからすれば未知の領域であったが、それでもそれは人間の範疇ではあった。

眼の前のこれは、違う。
これは、御伽噺の、神話の領域だ。
暴走するダンプよりも遥かに早く、遥かに効率的に家々を廃墟に変える巨人と、それに対峙する北崎。
無人の荒野を行くが如く、人類の築いた生息領域を蹂躙し、無に返すその姿は到底生物のようには見えない。
そして、それほどの存在を相手にしながらも、人類を超えた種の最強と名乗る北崎は、互角に戦い続けている。
それどころか、姿を変えた事で戦闘は一方的な物へと転じ、災厄としか思えない巨体すら、翻弄する。

「じゃあね、バイバイ」

北崎の動きが変わったことで、最早Lにはどちらが優勢なのかすら理解できない戦いは、そこで終わる。
いつの間にか巨人の腕の内側に飛び込んでいた北崎は、勝利宣言を上げながら巨人の胸に突角を突き立てる。
鈍い金属音が辺りに響き、そこで戦いは終わった。

「…………あれぇ?」

おかしい。
何かが、おかしい。
鈍い金属音が響くなどという事は、あり得ない。
鋼のような筋肉と称されることはあれど、それが人体として稼動している以上は、硬度を持つことなどあり得ない。
北崎の硬度が不明であるが、生物の肉体は生物の突角を前にしては、貫かれるのが摂理なのだ。
いや、前に見た能力からすれば、それが仮に本物の石像だったとしても、胴体から二つに砕かれるはずであろう。
それが、刺さらない。

「おかしいなぁ、手加減しちゃったのかなぁ?  ……よっと」

己の手に伝わる異様な感触……まるで人間の姿のまま巨大な金属の塊を殴ったかのような反動に、北崎は戸惑う。
思わず呆けたような声を上げてしまったが、戸惑いは一瞬の内に消し去り、逆の手で同じように突くが、結果は同じ。
まるで同等か、それ以上の硬度を持つ物質を相手にしているかのように、刺さってくれない。

「■■■■■■■■■――――――!!」
「わっ、ちょ、ちょとぉ!?」

起きた現実を信じられないように攻撃を続けようとする北崎だが、それ以上の行動は巨人が許さなかった。
捕まえることの出来無かった相手が、己の懐に飛び込んできたのだ、もう逃がす理由はない。

202 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:58:04 ID:CpJKJ9Y2
「は、離せ……よぉ」

片手のみでも容易く掴めるであろう北崎の肉体を、両の掌でしっかりと掴む。
いや、掴むのではなく、押しつぶす。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
「は、な…………」

力で抗し得るなどという北崎の自信など、過信に過ぎなかったのだろう。
力比べには圧倒的に不利な姿勢とはいえ、力に優れる魔人態でもまるで相手にならない。
Lからは北崎の表情は読み取れないが、その動きは明らかに苦悶にもがいていた。

「バーサーカー……」

不意に、そんな単語がLの口から漏れ出でた。
古い伝承に存在する、理性も意思も失い、ただ全ての者を破壊するだけの狂戦士。
名簿にあった名前の、一つ。
何の証拠も無いが、そうなのだろうと理解出来た。 させられてしまった。
推理も確認も反証も、LをLたらしめるありとあらゆる行為を、強制的に放棄させられる明確な存在感。

「…………」

血が出ても構わない、というほどに拳を握り締める。
バカバカしい。 何が数々の難事件を解決した世界最高の探偵だ。
この戦いのどこに、そんなものが入り込む余地がある?
最初から、己の仕業であると憚る事無く主張する圧倒的な暴力を前に、探偵ごときに何ができる?

北崎は、死ぬ。

これは確定事項だ。
Lの情報も策動も何も、全く関係ないところで死ぬ。

その後にLも……死ぬ。

「■■■■■――? ■■■■■■■■■■■■■■■―――――!!!」
「う、わーーーー!!??」

そして、その役立たずな探偵の考察は、ここでも外れる。
巨人――バーサーカーは、突如として北崎の肉体を放り捨てる。
飛ばされた北崎には目もくれず、己の掌を一瞬省みるような動作をした後、出鱈目に両手を振り回すだけだ。
それで、ようやく思い出す。 北崎には触れた物体を灰にするという能力があったことを。
突角は通じなかったが、灰化能力自体はどうやら効いたようだ。
だが、触れた部分を灰にするという小さな攻撃が、あの巨体を殺しきるまでにどれだけの時間を必要とするのか。
そして、もう一つLは気づく。

(目が、……見えていない?)

適当に放り捨てられた北崎を追うこともせず。
いや、追おうとしているのかもしれないが、ただ出鱈目に周囲を破壊しているだけだ。
呆然と眺めていたLの方にも、向かってこようともしない。

203 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:58:47 ID:CpJKJ9Y2
「…………」

充分に身を潜めてから、適当な小石を適当な方向に、投げつける。

「■■■■■■■■■――――!」

反応は、無い。
自分の咆哮で気づかなかったという可能性もあるが、聞こえていないのだろうか。

「…………」

今度は、あえてバーサーカーの視界を通るように小石を投げるが、やはり反応しない。
それどころか、バーサーカーは家々を破壊しながら、そのまま西の方に移動を開始する。

「■■■■■■■■■■■■―――――!」
「待て……よぉ」

その後姿に向かい、北崎が弱弱しく声を上げるが、それにも反応しない。
もしかしたら居場所を捜す為にわざと見えない振りをしているという可能性を考慮に入れながらも、Lは北崎の元に向かう。
そんな動きなど考慮の外とばかりに、周囲を破壊する暴風の姿は、徐々離れていった。


「…………」
「……何で、邪魔するのさぁ」

たっぷり、五百は数えただろうか。
北崎が動かないよう、デイパックごしに身体を押さえていたLは、立ち上がる。
ついで、北崎の不満そうな声。 そう言いながらも、彼は立ち上がる気配を見せない。

「もうちょっとだったのに……何で邪魔したのさぁ」
「もうちょっと、ですか。 ちゃんちゃら可笑しいですね……だってあなた、震えてるじゃないですか」
「…………っ!」

北崎は確かに最強を名乗るだけの能力を持ち合わせている。
人類を超越したオルフェノク種の中でも上の上の能力を持ち、触れた物を灰にするという能力に加えて、堅牢さと素早さに特化した二種類の形態までも使いこなす。
だが、その全ては彼がドラゴンオルフェノクとして再生した際に得たものであり、言ってみれば彼はその才能だけでオルフェノク種の頂点に立ったという事だ。
彼より強い者など誰もおらず、全ての他者は彼の退屈を満たすための玩具でしかない。 そんな認識の中で生きてきた16歳の少年。
北崎は、自身より強いものを知らない。 そんなものに出会うという想像すら、したことが無かった。

「や、やだなぁ、これはアレだよ、ほら、武者震いっていうヤツさ」
「そうですか、ならとりあえずアレを追うとしましょうか」
「追う……?」

その言葉に、北崎は動きを止める。
ああそうだ、Lが言うまでもなく北崎自身の本能が理解していた。

アレには、勝てない。

目にも止まらぬ速度で動ける? 
触れた物を灰にする能力を持つ? 
それが何だというのだ。

204 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 21:59:36 ID:CpJKJ9Y2
力。
ただ圧倒的なだけの、力
あんなものは唯の反則だ。
交渉の余地も何もない、ただの暴力機関。
最初から、これは戦いでも何でも無かった。
ただ、災害が通り過ぎたというだけの、事だった。

「そうです。 追うの、ですよ。
 恐らくは目も耳も機能していないような存在なんて、最強様には楽勝でしょう?」

そして、これからそれを追いかけなければならない。
追いかけて、そして打倒しなければならない。
そう、何の交渉も無いままに、ただ打倒する。
元より、目も耳も効かない相手に、どんな対話を行えるというのか。

(認めましょう)

逮捕でも屈服でもなく、ただ一方的に打倒しなければならない相手の存在を。
死神という超常の存在を認めたように、Lの知略など最初から眼中に無い暴力というものが存在するということを。

認めよう。
認めて、そしてそこから考えるのだ。
何が出来るのか。
何をするべきなのか。

だから、Lは北崎を止めた。
北崎は倒すべき敵ではあるが、アレは敵ですらない。
誓いも願いも、何もかも一切合財を無視しうる、黒い禍。

「では、行きますよ」

言葉に出して、Lの身体が震える。
あまりに強大すぎて、麻痺していた恐怖が今更ながらにLの身体に蘇る。
一度は捨てた命であるのに、それでも恐ろしさが拭いきれない。
だからと言って、諦めという事象は、Lには存在しない。

「……わかってるよぉ」

そう言いながら、北崎が立ち上がる。
その姿は、オルフェノクのものではなく、元に戻っている。

「キミの狙い。 アレと僕をぶつけて、共倒れを狙っているんだろぉ?」
「まあ、そんなところです」

正確に言えば、共倒れになるかすらわからない、という所か。
圧倒的な力だけでも脅威であるのに、それ以上に恐ろしいのがあの謎の防御力だ。
灰化能力だけはどうやら通じたようだが、あの巨体を殺しつくすのに、どれだけの時間が必要なのか。

「いいよぉ、キミの狙いに乗ってあげる。 僕は必ずアレを殺す、そしてソレをキミに見せてあげる。
 そういう約束の誓いを、握手を、しようよ」
 
言いながら、北崎は右手を差し出す。
その手を前に僅かに眉を動かしつつも、やがてLも手を出す。

「勇気があるねぇ、恐くないの?」
「別に、手が片方無くなろうと、最早関係ありません。
 それに、そんなことをしても貴方の最強とやらの証明にはなりません」
「ふーん、琢磨くんとは違うねぇ」

205 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 22:01:19 ID:CpJKJ9Y2
北崎の手を握り続ければ、いずれLの手は、腕は灰になるだろう。
事実、Lは掌に妙な感触を覚えつつある。 だが、かまわず握り続ける。
やがて、どちらともなく手を離し、無言でバーサーカーの後を追う。

最強の背中を、最強でありたいと願う存在と、最強になど興味のない存在は、追いかける。


【E-5/南西/一日目 朝】

【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、
    予備弾倉(9mmパラベラム)?5、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。


【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
1:バーサーカーを追う。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります


【FN M1935 ブローニングハイパワー】
9mmパラベラム弾を13発装填可能なベルギーのハンドガン。
カナダ軍をはじめ、イギリス軍の空挺部隊や特殊部隊を中心に使用されている。




206 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 22:01:46 ID:CpJKJ9Y2
北崎には、運が無い。
例えばこれがこの島に居るもう一人のサーヴァント、セイバーを相手にしていたのであれば、不利でありつつも勝機は存在しただろう。
あるいは、仮に最強のサーヴァントと称されるギルガメッシュが相手であったとしても、勝算は限りなくゼロに近くなるというだけだ。

唯一

そう唯一、この存在こそ、勝利という事象のひとかけらも存在しない相手。
バーサーカー、英霊ヘラクレス。
神々より課せられた十二の試練を乗り越えた、ギリシャ最高の英雄。
その偉業は、そのまま彼の肉体に宝具という形で刻まれている。

即ち、加護と、蘇生。

彼の肉体傷付けるには最高の位階の攻撃を用いるしかなく、それとて一度乗り越えた後は無効とされる。
灰化能力で一度バーサーカーを殺したとしても、未だ彼には8つの命が残されている。
たとえ最強のオルフェノクが最善を賭しても、一人では一度しか殺し得ない。

そんな最悪の暴風は、進む。
元より理性は残っておらず、感覚を失い、今はもう主すらいない。
ただ、遥か遠くにある僅かな魔力を頼りに。
遠く、つかめない星空のようにきらめく、幾つかの魔力を目指し、進む。

その中に、己の目指すものがあると、どこかで理解しながら。

【D-5/南/一日目 朝】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り9、両の掌の表面が灰化
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています

207 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/05(月) 22:02:45 ID:CpJKJ9Y2
以上ですー。
誤字脱字天界におかしな点などございましたら指摘お願いしますー。

長々と申し訳ありませんでしたー。

208名無しさん:2011/12/05(月) 22:13:42 ID:JJeQBuJk
投下乙です。
とりあえず、まず>>207の展開が誤字ってますw

それにしても、バーサーカーは相変わらずの最狂ぶりですねw 北崎を相手にしてすらいないw
そしてLは、知略の通じない相手にどう立ち向かうのでしょうか。

209名無しさん:2011/12/05(月) 22:21:26 ID:FHfMu01Q
諦めていた予想外の投下が。
北崎でもきついよなぁ、バーサーカー。
せめてセイバーなら……投下乙です!

210名無しさん:2011/12/05(月) 22:29:57 ID:3GN/rlpA
投下乙です
バサカさん強えよなーやっぱり
てかL追うのかよ…。どうなることやら

そういや関係ないけど今セイバーって竜殺しの魔剣持ってたよね

211名無しさん:2011/12/07(水) 12:56:38 ID:JSG/qDFs
投下乙
バーサーカー強ぇな
Lと北崎の関係が良好になりそうだな


南空ナオミが出会うことなく消えたとありますが
映画だと電話で「今からキラを捕まえる」と連絡をしていますから出会うことなくはおかしいのでは?
一応Lも監視カメラごしではありますがナオミが自殺するところまで見届けてますし

212名無しさん:2011/12/07(水) 16:45:32 ID:IpYBXptg
投下乙です!
北崎の最大の弱点が裏目にでちゃったか・・・・・・
戦闘経験と呼べるものがろくにないから格上には手も足もでないんだよな
本編でもファイズブラスターやゴートオルフェノクに一方的にぼこられていたし
LはLで相手を殺すための戦略なんて考えたこともないだろうから、今のままじゃよくて北崎死亡ぐらいだし

それはそうとバーサーカー倒すには宝具以外じゃファイズブラスターやりゅうせいぐんや魔王ゼロぐらいじゃないときついかねぇ

213名無しさん:2011/12/07(水) 18:08:50 ID:QCCuJypo
>>212
ざっと考えてみた。
555ライダーズ:フォトンブラッドの毒性が効くか?とはいえバサカの耐性もあるから全ライダー掛かりでも殺せるのは一回限り。ブラスターやオーガの必殺技なら複数の命纏めて持って行けるかも?
ポケモンの大技:技のタイプが多いのは強みだが、いかんせん持ち主のスタンスが不安。使うと死ぬカイザ以外持ち主が危険人物ばっかなライダーもだけど。
ゼロ:魔王ですから。ナナナロロとナナリーも一応ナイトメア持ちだしやれなくも?やっぱり上二つに同じくスタンスが・・・

後はまどか☆イリヤの魔法少女勢も戦力候補だけど、ほむほむはバッシャー損傷してるから厳しいし、他は素の魔力耐性がキツイか?

214名無しさん:2011/12/07(水) 18:26:14 ID:MBwFJgXM
投下乙です

北崎でもバーサーカーはきついか。目と耳があれだけど普通では勝てんか
LはLで北崎もバーサーカーも放置できんとは思ってるだろうなあ。月どころではないか月は月で優勝しか考えてないし…
いや、月もバーサーカー見たらバランス考えろと憤慨するだろうなw

215 ◆vNS4zIhcRM:2011/12/07(水) 22:52:52 ID:ia6rSbo.
皆様感想ありがとうございますー。

>>211
おおう……えーと
>キラ事件の渦中に一度浮上しながら、Lと会う前に姿を消した、かつての協力者。 少なくともその時は信頼出来る能力の持ち主だった。

>とある事件で知り合い、婚約者の仇を取る為にキラ事件へと足を踏み入れ、命を落とした女性。

へと変更しますー。

216 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/08(木) 22:28:21 ID:hyPGLGE6
セイバー投下します

217MEMORIA-黒き騎士の記憶 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/08(木) 22:31:57 ID:hyPGLGE6
「…死んだか、遠坂凛」

それは衛宮邸へと向かう最中、放送が終わったときの話。
呼ばれた者の一人はかつてのアーチャーのマスター、遠坂凛であった。
セイバーの記憶の中にはそこまで重要な人物ではない。せいぜい士郎に聖杯戦争の何たるかの教授をしてもらった程度だ。
だが、彼女の妹である間桐桜にとっては重要な存在であったはずだ。そしてサーヴァントを失った士郎の数少ない味方でもあった。
そんな彼女もこんなにも早く死んだという。

「私の買いかぶりすぎだったようだな」

それでも遠坂凛について思ったことはこれだけである。
もし出会うことがあったとしても斬っていただけだろう。
今重要なのはマスターである間桐桜のことだけ。
セイバーの死者に対する反応は終わった。




そうして、目的とは違うものの誰とも出会うこともなく目的地である衛宮邸へと到着した、のだが――

「…、…??」

衛宮邸は和風建築の建物であった。
第四次聖杯戦争の折、衛宮切嗣が拠点とし、聖杯戦争後はそこが彼と士郎の家となった場所。
セイバーにはとても馴染み深い場所であり、間違えるはずがない。
そしてここはエリアF-7、ここにはそれがあるはずだ。
しかし目の前にある建物は、どう見てもごく一般的な家屋だ。
そこの表札がここが件の衛宮邸であることを証明している。

「………」

釈然としないがここまで来た以上このまま立ち去るのも何だ。
未知の家の扉を、セイバーは開いた。

218MEMORIA-黒き騎士の記憶 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/08(木) 22:33:15 ID:hyPGLGE6

キッチンの棚の中にあったスナック菓子を齧りながら屋内を回る。
どうやら前にここに誰か来たような痕跡があるが気にすることはないだろう。
キッチンにあった椅子は七。一つは士郎のものだとしてあとは大河、桜、凛のものと仮定しても多い。
そして一階を見回ったが、魔術師としての道具、結界といえるものなどは全く見当たらなかった。
そうなると二階だろうか。
階段を上り、二階へと足を踏み入れる。

私室と思わしき部屋が四つあった。
一つ一つに足を踏み入れ、中を確かめる。
内二つは士郎、イリヤスフィールの部屋であることが分かった。
正直想像とはかなり違っており、名前の書かれた私物がなければセイバーとて士郎の部屋とは分からなかっただろう。
もう二つの、二人用の部屋については誰のものなのかはセイバーにも分からなかった。
しかしその片方にはアインツベルンのメイド服があったため、ここが使用人の部屋であることは予測できた。
問題はもう一つの部屋だ。
ここに住んでいた人物が分かれば疑問も解けるのだろうが。
そうしているうちにふと目についたある物。セイバーはそれを取り出した。



スナック菓子の袋はとうに空になっている。他に何かないかと探しにキッチンへと降りた。
元々それを確かめるのは食事の片手間でも大丈夫と考えていたが、いざそれを見ると手は止まっていた。

「やはりな。そういうことか」

彼女が見ていた物。それはアルバムであった。
一般家庭にならばおいてある物とはいえ、まさかこの会場にある家に置いてあるとは思わなかった。(アインツベルンの家を一般家庭と呼べるのかは分からないが)
そこに写っていたのは、ごく一般的な家庭の姿。
ホムンクルスの定めなどとは無関係な様子で育ち、遊ぶイリヤスフィールの姿。
母親の顔をしている、過去の聖杯戦争で器の役割を全うしたはずのアイリスフィール。
そして――

「…そうか、お前は安息を見つけたのだな。衛宮切継」

写っている枚数こそ少ないものの、魔術師の顔ではなく自分が今まで見たこともないような父親の顔をしたかつてのマスターの姿。
いや、あえていえばクルミ探しに興じていたあの時の顔に近いだろうか。どちらにしても自分には見せた事のない顔だった。

219MEMORIA-黒き騎士の記憶 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/08(木) 22:35:47 ID:hyPGLGE6

それが何を意味するのか、セイバーは把握した。
つまりはこの家は平行世界の物なのだろう。おそらく切継とアイリスフィールが聖杯戦争に参加しなかったか、途中で全てを捨てて逃げたか。

「あのアカギとかいう男は第二魔法を使えるということか」

まあセイバーとしてはだからどうしたという話なのだが。
とりあえずあのイリヤスフィールはおそらくこちらの存在なのだろうという推測は立った。
あのイリヤスフィールがあの時のような激しい感情の起伏を表した声をあげたりはしないはずだ。
それにしても――

「……」

この顔を見ていると、自分がどれだけ衛宮切継という男に疎まれていたのかが分かるようだ。

切継がマスターであった日々は英霊の中でも特別な存在である自分には未だに記憶に新しい。
聖杯が何なのかということはあの泥に飲まれこの姿を与えられた時に知った。
だからあの時の切継の判断に今更とやかく思ったりしない。
ただ、もしあの時の切継のサーヴァントが理想を追うアルトリアではなく、全ての絶望を知った今の自分であったなら。
かつてのマスターの中の絶望を理解できたのだろうか?

「………」

これ以上は今の自分には何の関係もない話だ。そう頭を切り替え、もっと建設的なことを考えることにする。
あのイリヤスフィールがこのアルバムに載った彼女であったとしても、アインツベルンそのものが無いわけではないだろう。
それによく分からない魔術も使っていた。魔術の世界とは関わりをなくしたようでも本質は変わっていないはずだ。
一方で、アイリスフィールが己の娘を一般人として生きさせるのに聖杯の器の役割を残すとは思えない。
どうにかしてそれを封印したか、あるいは喪失させたか。どちらにしても何かしらの名残はあるはずだ。
それを探してページをめくっているうちに、気になる存在が現れた。
イリヤスフィールと同じ顔をしながらアーチャーを連想する肌の色をした少女。
友人というには似すぎており、家族というにはその存在が現れたのが唐突すぎる。
名簿を調べる。すると、そこにはアインツベルンの名を持つ者がイリヤスフィールの他にもう一人いた。
クロエ・フォン・アインツベルン。まさか黒いからクロエなどという単調な発想ではないだろうが。
シロウのこともある。イリヤスフィールのことは後回しにしてまずはこのクロエという少女を探すとしよう。

220MEMORIA-黒き騎士の記憶 ◆bbcIbvVI2g:2011/12/08(木) 22:37:24 ID:hyPGLGE6
そんなことを考えているうちにアルバムを読み終わったセイバー。
それを元あった場所へと戻し、今後の動き方を考える。
ここは衛宮邸。そうとしか書かれていない。
つまり、ここを本来(というのもおかしいが)の衛宮邸と勘違いした桜がやってくるかもしれない。
あるいはあのクロエと思しき少女が立ち寄ることもあるかもしれない。
しかしもし来なかったときは時間の無駄となるだろう。
ふと時計を見ると、どうもこの場でかなりの時間を使ってしまったようだ。
ここは早めに出発するべきだと判断する。
目的の人物に関しては周囲をうろついていれば案外見つかることもあるかもしれない。

出るならばどこへ向かうとしようか。
間桐邸に行っている可能性は低いだろう。ここは行かなくてもいいと考える。
柳洞寺。ここも正直気がかりだ。だが距離がある。立ち寄る暇があれば寄るくらいでもいいだろう。
そしてもう一つ気になる施設があった。
アヴァロン。すでに失われた己の聖剣の鞘の名を冠した施設。だがやはり遠く、柳洞寺とは別方向となっている。
ともあれどちらを選んでも北に向かうことには変わりない。それに北に行けばシロウとイリヤスフィールにしばらくは会うこともないだろう。

そうして方針を決めたセイバーは今の主を探すために、別世界の主とその家族の住んでいただろう家を出発した。
その中で感じた過去への思いを、もう思い出すことがないように心の奥に閉じ込めて。

【F-4/衛宮邸付近/一日目 午前】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう。まずは北上する
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています

221名無しさん:2011/12/08(木) 22:38:36 ID:hyPGLGE6
投下終了です
「それはないだろ」とか「こんなの絶対おかしいよ!」というところがあれば指摘お願いします

222名無しさん:2011/12/08(木) 22:57:09 ID:sR0JC2io
投下乙です

そっちの士郎の家か
ああ、確かそっちのキリツグは幸せな家庭を築いてたっけ
セイバーから見たら色々と感慨深いよな…
なんかフラグが立った気もするが北は…

223名無しさん:2011/12/09(金) 15:45:21 ID:10nni.g.
投下乙です。
そうか聖杯の正体は知ってるんだなこのセイバーは。キリツグについては…複雑である
「こんなの絶対おかしいよ!」
正しくは衞宮切「嗣」です。間違えやすいので気を付けませう

224 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:31:29 ID:rA5XuZ82
投下します

225少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:32:05 ID:rA5XuZ82

 朝日は昇り、朝焼けから青空に移り変わる。
 森を抜け、平原にたどり着いたとき、時間はちょうど六時となった。
 車椅子の少女ナナリー、人類解放軍の象徴とも言える少女真理、ポケモンブリーダーを目指す少年タケシ。
 三人は時間までにポケモンセンターへと辿りつけなかったことを悔いながら、放送に耳を傾ける。
 内容は三人にとって、衝撃的なものだった。
「咲世子さん……? お兄……様……?」
 固まっている三人の中で、最初に反応したのはナナリーだった。
 声は震えて事実の認識を拒んでいた。
 ただ兄が死んだと聞かされただけ。受け入れるには死体がなく、確証などありはしない。
 だけど、アカギが誰かを殺したとき、肉の焼ける匂いを嗅ぎとった。
 それに、あのときもそうだった。兄が行方不明だと聞かされたときも死体と確証がなかった。
 またも理不尽に奪われる。母も、体の自由も、兄も。
 どうしてこんなに奪われてばかりなのか。優しい世界なんて存在しないのではないか。
『咲世子やお兄様を殺した奴が憎いか?』
(やめて!)
 ネモが問いかけ、ナナリーは歯を食いしばりながら抵抗する。
 彼女は自分の負の感情をもらいし者。漏れ出す殺意に身を任せそうになるのを、必至で堪える。
『なにを迷う。殺し合いはここのルールだ。殺す覚悟があるなら、殺される覚悟もあるということだ。
この二人に頼むか、あるいは置いていってお兄様たちの仇を探せばいい。誰にも非難される謂れはない』
(お願い……やめて……)
 シンジュクでは彼女と契約することになった。
 だが今は、悪魔のささやきにも聞こえるおのれの本心に自己嫌悪するだけだ。
 優しい世界を望みつつ、己の本性は優しさから遠い。何もかも投げ出したくなる。
 そんなとき、彼女の車椅子が押された。
「マリさん、ここに長居してもいいことはありません。ひとまずポケモンセンターに向かいましょう」
 冷静な声音でタケシが先を促す。
 真理は心ここにあらずといった様子だったが、呼びかけに答えた。
「う、うん。確かにボーッとしてるよりマシよね。けど、いいの?」
「放送のことですか? 俺はサトシもヒカリも、死んだなんて信じません。
判断材料はアカギさんの放送しかありません。自分達を騙してプラズマ団のボスだった男です。信じる要素がありません。
だからひとまず、放送で呼ばれた相手は死体を見つけるまで無視しておきましょう」
 さすがに禁止領域はそうもいきませんけど、とタケシは最後に付け足した。
 だがナナリーは車椅子を押す彼の腕が震えていることを感じ取り、地面に手のひらからの血が落ちるかすかな音を聞いた。
 きっとやせ我慢なのだろう。
 タケシという少年は聡い。この放送を楽観的な思考で嘘だと断じるような性格ではない。
 あえてそう言ったのは、きっと自分を、真理を気遣っての行動なのだ。
 兄が死んだ自分。啓太郎という仲間を喪った真理。
 彼だって、サトシとヒカリといった仲間を喪った直後なのに。
「さて、ナナリー、マリさん。そろそろ……」
 いきましょう、とタケシが続けようとしたときだ。
 放送に気を取られて、探知機を見る暇もなかったのが仇となる。
 川を飛び越え、三人の眼前に立つ存在があった。
「あれは……ファイズ? 違う……けど誰?!」
 真理が前に立ち、銃を向ける。ファイズに酷似したベルトの相手もブラスターモードの銃を向けた。
「人を殺すために撃とうとする……あなたは悪い人ですか?」
「あ、ごめん。あなた、女の子?」
 真理が銃を下げて謝罪をすると、相手も銃を収めて変身を解いた。
 つややかな長い髪の、理想的なスタイルをもつ、妖しい魅力がある女性だ。
「頭を怪我しているじゃない!」
 真理は頭部の怪我を発見すると、相手の返事も待たず腕を取る。
 フラっとしたためだろう、肩を貸し始めた。
「タケシ、ナナリーちゃんをお願い。私はこの娘に肩を貸すから」
「もちろんです」
 そのままポケモンセンターを目指そうとした一同に、謎の女性は声をかけた。
「私を助けるつもりなんですか……?」
「当たり前じゃない。そんなフラフラで強がんないの。怪我人は黙って助けられておく、いい?」
 いろいろ聞きたいことを抑えて、真理は相手の返事を待たず言い切る。
 ナナリーはサバサバした対応に感心しながら、ポケモンセンターに向かうままに任せた。
 ただ、ネモが苦虫を噛み潰したような顔をしていたのが気にかかった。



226少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:32:32 ID:rA5XuZ82
 ポケモンセンターの内部は病院を彷彿させた。
 受付のカウンターと、白い印象の部屋。受付に並ぶいくつもの椅子。奥には診察室があった。
 おまけに食堂、宿泊施設が存在しているらしい。
 タケシが言うには、『ポケモンの病院であり、ポケモントレーナーの支援施設』とのこと。
 ひとまず、治療道具は揃っていたため変身していた女性の手当をした。
「さて、これで楽になったはずです」
「ずいぶん慣れた手つきね。こういうことも得意なの?」
「ええ。ポケモンも人も、怪我を診ることはありましたから。それに、美しい方に傷を残すわけには行きません。
不肖、このタケシにできることがありましたら、なんでもおっしゃってください!」
 真理は見直した自分を殴りたくなった。
 しかし、前と違ってキレがなく、言葉も弱々しい。
 グレッグルがツッコミを入れないのがその証拠だ。
「怪我の治療をありがとうございます。私は間桐桜と申します。
あなた方にお尋ねしたいのですが……センパイ、衛宮士郎という男性にお会いしませんでしたか?」
 衛宮士郎という人物名に、思わずタケシと顔を見合わせる。
 ナナリーは首をひねっているが当然だ。
 衛宮士郎は二人が最初に出会った少女、美遊も探していたからだ。
 別れる際、巧たちの情報と交換したのだ。彼女が探している親友、イリヤの兄というため、話題に上がったのは当然の結果である。
「……先輩に会ったことあるんですか?」
「ごめん、私たちが会ったのは美遊って子なんだ。その子も探していたから……」
「美遊? 先輩の知り合いにそんな人は聞いた覚えがありませんが……」
 桜は顎に人差し指を当てて考え込んだ。頭部の痛みからか、集中できるように見えない。
 そこで、横からタケシが質問する。
「ところで気になっていたのですが、そのベルトは人間にも使えるんですか?」
「うーん、見たこないベルトだけど、基本的にオルフェノクしか変身できないし……あっ、もしかして!」
 真理は勢い良く桜の両肩を使んだ。
「あなた、オルフェノクに会わなかった? 最初の会場で燃やされた怪人みたいなの。
鶴か蛇、狼に似たオルフェノクなら、私たちの味方なんだけど……」
「おるふぇのく? 灰色で人の言葉をしゃべる怪物さんには会いました。けど、その前後はよく覚えていません」
 桜は『味方のオルフェノク』の部分を耳ざとく反応し、嘘を告げた。
 飢餓感があるものの多少マシになったため、手当をした相手を殺したくない、と良心が動いたのだ。
 頭部の怪我で戦闘意欲が薄れていたのと合わせて、誰にとってかわからないが幸いだった。
「うわ……」
「マリさん、どうかしましたか?」
 真理が手のひらを顔に当て、苦い表情を浮かべる。
 何を話そうか迷った末、ゆっくりと落ち着かせるように語り始めた。
「間桐さん、落ち着いて聞いて。あなたはオルフェノクになったかも知れない」
「えっ!? それはどういうことですか、マリさん!?」
 強く反応したのはタケシで、桜はおとなしく聞いていた。
「オルフェノクは自分たちの仲間を増やすことができるの。私の仲間以外の連中に出会ったら襲われるしかない。
だから、ベルトが使える。そう考えたほうがつじつまが合うし……」
「…………そうだったんですか」
 本当は桜は襲われていないし、変身できるのはデルタギアの特異性でしかない。
 彼女にとって都合のいい解釈でもあるため、話を合わせたことにしたのだ。
 そうとも知らず、おずおずといった様子でナナリーが真理に尋ねる。
「あの、オルフェノクになったなら人間に戻ることは……」
「そういう例はなかった。私の仲間も死ぬか、オルフェノクになるしかなかったから。
でも、オルフェノクになっても人とわかり合おうとした仲間だっているよ」
「大丈夫でよ。今のところ、オルフェノクになる様子もありませんし」
 桜がニッコリとしながら答えた。
 真理はどこか生気が感じられない笑顔だと思ったが、気のせいだと結論をつける。
「それじゃあ、少しポケモンセンターを探りましょう。基本、自分が知っているポケモンセンターと変わらないと思いますが、一応念には念を入れて」
「うん、積もる話は後回しにして、ちょっと回ろうか。ナナリーちゃんと間桐さんはここで待っててもらえるかな?」
 構わない、という返事を受けて、タケシを伴って施設を進んだ。
 桜の精神状態がいくぶんか落ち着いており、一行の平穏は少しの間だけ保証された。

227少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:32:55 ID:rA5XuZ82



 広い浴槽は音がよく響く。
 タイル貼りの床を、ナナリーを助けながら真理は中の広さに感心した。
 ちょっとした銭湯くらいの広さはある。トレーナーの宿泊施設も兼ねているというのは、伊達ではないということか。
 なぜ今風呂場に訪れているのかというと、理由は単純だった。
 施設の探索中に真理が風呂場を発見したのだ。なかなか広く、十人入ってもまだ余裕があるだろう。
 疲れを癒すにもちょうどいいだろう、と女性陣に提案したのだ。
 ちなみに、タケシがその話にピクピク反応していたのは見逃していない。
 覗きに来る度胸はないだろうし、万が一にはグレッグルがどうにかしてくれる。
 もっとも、別のことで気になることはあるのだが。
 ひとまず、ナナリーの体を洗うため、シャワーの前に座らせた。
「あの、真理さん。いろいろありがとうございます」
「ああ、いいよいいよ。さすがに脱がせたりお風呂に入れたりは、私じゃないとまずいしね」
 怪我人である桜もキツイだろうし、と明るく努めた。
「今までは……放送で呼ばれた咲世子さんがやってくれたのですが……」
「そっか」
 真理は白い背中にそっと手を当てた。
「我慢しなくていいよ」
「ッ!? いえ……真理さんだって、お友達を亡くしたそうじゃないですか。
私も……我慢……しない……と……」
 少しだけ口元が優しく緩む。
 腰まで届く亜麻色の髪の手入れは行き届き、肌は透けるように白い。
 佇まいから育ちの良さが感じられ、こんな荒事に向いていると思えない。
 歳相応の背は狭く、儚いものに見えたが、彼女は今二人の大切な人の死を背負っている。
 そう思った瞬間、啓太郎の温かい笑顔が浮かぶ。いつの間にか、真理は彼女を背中から抱きしめていた。
「あ、あの……」
「放送で死んだ啓太郎は空回りするし、空気は読めないし、すぐ騙される奴だったんだ」
 戸惑っているナナリーのつややかな髪を、施設内で見つけた櫛ですく。
「だけど、いい奴なんだ。今あいつがいたらさ、ナナリーちゃんをほうって置かなかった。
まあ、あいつの構い方はちょっとうざったいけど、でもなんか温かいんだ」
 目を細めて、昔を懐かしむ。まだ洗濯屋があり、巧たちと三人で奇妙な共同生活を送っていた頃を。
「今は無理かも知れないし、まだ実感わかないかも知れないけど、お兄さんやお世話になった人のために泣いてあげて。
私たちにはもう、そうすることしかできないから」
 言い終わる前から、真理もナナリーも声を押し殺して泣いていた。
 死んだものは帰ってこない。悲しいことに、この二人は過去にも実感と経験をしていた。
 だから、傷の舐め合いになろうとも、二人で泣き続けた。

228少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:33:22 ID:rA5XuZ82



 風呂から上がり、ナナリーと自分の着替えを終えた真理は、桜に近寄った。
 声をかけてこちらを向くが、思わず息を呑む色香があった。
 頭を怪我しているため、風呂の中でも刺激しないようにタオルを巻いていた。
 おかげで白いうなじが露わになっているのだが、うっすらと汗が白い肌に浮かび、こちらを圧倒する。
 タレがちな目は遠くを見据えているようで、掴みどころがない。
 こちらの手のひらを余るだろう胸は、この施設で見つけたナース服(タケシいわく、ジョーイさんの衣装らしい)から確かに主張していた。
 ちなみに施設で見つけた服は、真理とナナリーはあっさり解決したものの、桜だけそうは行かなかった。
 主に胸の部分で合うサイズがなかったのだ。ゆえに今の格好である。
 同性なのにこのスペックの差は何だろうか。少し悲しくなるが、ナナリーのことを桜に頼んだ。
 やるべきことがあるのだ。
 彼女は快く引き受けたため、タケシの元へと向かう。
 自分たちが風呂にはいる前に、朝食の用意をすると宣言したきりだ。
 廊下を二回ほど曲がり、食堂らしき部屋の奥へ入ると、厨房でタケシが作り置きしていたスープを温めていた。
 そのついでに見つけた食材を調理したのだろう。焼きたての目玉焼きとハムが食卓に用意されている。
 感心していると、勘づいたのかグレッグルが真理の裾を引っ張った。
 グル〜、と低く鳴いて、あまり可愛くない顔をこちらに向けている。
 言葉は話せないが、何を頼みたいかは検討がついた。無言で頷き、タケシに声をかける。
「こっちのお風呂は終わったよ」
「……あっ! マリさん、こちらの準備も終わりました。自分は少し見まわってから入りますので、三人で先に食べていてください」
 努めて冷静に返答しているが、やはり平常ではないのだろう。
 少し間があった。ふぅ、とため息を内心ついて、どうするか迷った。
 やはり、ここでも啓太郎のことを思い出す。
 あいつはよく泣いた。だが、子どもの前だけはいつも笑顔でいるように、自分で律していた。
 自分の弱さを嘆いていたが、自分より弱い相手に配慮を欠かさない。あいつと、たぶん目の前のタケシはそういう善人なのだ。
 だから、基本は啓太郎に接するのと変らない。
 黙ってタケシの頬を撫でた。
「なっ! マ、マリさんっ!?」
「……やっぱり泣いていたんだ」
「……ッ!? いえ、じ、自分は…………」
「バーカ。無理しないの、年下のくせに」
 笑って優しく小突いた。タケシはしばしの間、呆然としていたものの、だんだん体を震わせていった。
「す、すみません……。自分が……しっかりしないといけないのに……ッ!」
「ううん。むしろいろいろさせちゃってごめんね。本当は私がしなくちゃいけなかったのに。
タケシが辛くないはずないってわかっていた。甘えちゃったね」
「いえ……自分が勝手にや、やったことです、から」
 震えは体だけではなく、声にまで及んだ。
 タケシは立っていられないのか、崩れ落ちる。
「本当はわかっているんです。あんなことをした奴が、アカギさんが、プラズマ団のボスが嘘をつく理由なんてないことを。
だけど、死体を見るまでは信じたくなかった。あの二人ともう会えないなんて思いたくなかった」
 タケシは顔を、火を止めた鍋へと向けた。
「だって、サトシはカントーからずっと一緒にいて、これからも旅を続けるんだと思っていました。
ポケモンマスターになりたいって、ピカチュウと一緒にいろんな強敵を倒して、どんなポケモンとも友だちになれる。
自分はそんなあいつが大好きで、アイツとバトルしてブリーダーの道を目指したのは間違いじゃないって、ちゃんと安心できていたんです。
自分の夢とあいつの夢、どっちが先に叶うかと一緒に語り合ったこともありました。
サトシは本当に強くて、いくつもの大会も上位まで勝ち抜いて、いつかは夢がかなうと思っていました」
 ギリッ、とタケシの奥歯が鳴る。

229少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:34:08 ID:rA5XuZ82
「ヒカリはポケモントレーナーになったばかりで、母と同じトップコーディネーターになるんだ、っていつも言っていたんです。
ポッチャマと一緒に演技を磨いて、ポケモンコンテストに頑張る姿に、自分もサトシも勇気づけられました。
パチリスや他のポケモンとだって、あんなに努力していたのに。リボンだって集まって、グランドフェスティバルに出れるかも知れなかったのに。
自分は……俺は、サトシやヒカリのママさんになんと詫びればいいんだ! ここでオーキド博士と会って、なんと言えばいいんだ!
カスミに、ハルカに、マサトに……うっ、ううぅぅ……」
 真理は顔を伏せたタケシの頭を、いつまでも撫で続けた。
 強がっても、男の子していても、やっぱり年下で、少しだけ責任感の強い子どもなのだ。
 彼女自身が元いた世界のように、人や夢が簡単に失われていく。
 そんな現実に腹が立ってしょうがない。
 だから巧に、ファイズにすべての闇を切り裂き、光をもたらせて欲しかった。


「すみません、みっともないところを見せてしまって……」
「タケシ」
 なんでしょう、と返事するタケシをおもいっきりひっぱたいた。
 タケシはこちらを見て細い目を瞬いている。
「友だちのために泣くことは、みっともなくないよ。違う?」
「マリ……さん……」
 頬についたもみじを見て、力を入れすぎたかと反省はする。
「でも強く殴りすぎたかな。そこはあやま……」

「いえ、ありがとうございます!!」

 タケシの大声に、真理は少しだけ腰が砕けた。
「ええ、自分はここで立ち止まれません。サトシも、ヒカリも、あの二人のことを覚えて、ちゃんと伝えられるのは自分とオーキド博士だけです。
絶対生き残って、こんな理不尽な真似を許しません。ですので、そのための気合を入れてくれて、ありがとうございました」
 今度はゆっくりと、落ち着いた様子で答えた。
 きっと完全には立ち直ることは、まだ無理だろう。
 嫌な話だが、真理は『慣れて』しまった。タケシは『まだ』慣れていない。
 だけど、一歩だけは進めた。だから大丈夫だ。
「じゃあ、私はナナリーちゃんたちを呼んでくるね」
「その前にマリさん……」
 なに、と答えを返すと、なぜか全身が輝いたタケシがそこにいた。
「マリさん。自分はあなたの励ましによってどうにか立ち直れました。この御恩、一生かけてお返しします!
ですので、遠慮なく自分をこき使ってください。そう、明日という希望へと脱出するた……へぶっ! し・び・れ・び・れ……」
 いつものパターンでグレッグルがどくづきを放っていた。
 真理は若干呆れつつ、いくらか調子が戻ったことに安心する。
 本当に一歩進んだ証明がこれなら、悪い気はしない。
 少しだけ口元が緩んだまま、ナナリーたちを迎えに行った。



【B-5/ポケモンセンター/一日目 朝】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(少)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(4/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:とりあえず情報交換から。
2:タケシたちと同行。
3:怪物(バーサーカー)とはできれば二度と遭遇したくない
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません

230少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:34:51 ID:rA5XuZ82

【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(少)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:ピンプク、ウソッキーを探す
1:しっかりマリたち三人を守る。
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
4:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
5:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
6:サトシ、ヒカリの死を元の世界に伝える。
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイアから並行世界の情報を手に入れましたが、よくわかっていません

※このあと桜をナンパするか、それともムサシやポケモンハンターJのようにスルーするかどうかは後続にお任せします。

「お兄さんがお亡くなりになったのですか?」
 ナナリーは二人っきりになった桜にそう尋ねられ、頷き返した。
 目は見えないものの、匂いや気配からは不審なものはない。
 血の匂いがするが、本人も怪我しているということだ。
 おかしいところなど、あるはずがなかった。
「私も、姉が死んでいました」
「えっ……それは……」
「だけど、それは放送前にわかってしまいましたよ。だって姉さんの死体を発見しちゃいましたし」
 なのに、どこかおかしいと感じていた。
 ネモが終始睨みつけているのも、警戒する原因だった。
「それは……悲しかったのですか?」
「悲しい。本当は悲しくないって言いたいんですが、どうでしょう?
姉の死体を見たときは泣きましたよ。だけど、安心の涙だって思っていました」
「安心? お姉さんが死んで安心って、どうして……」
「先輩を盗られることがないからです。もう私はなにも失わなくていい。ずっと縛っていた姉さんから解放されたんです。
なのに、わからなくなってしまいました。あなた達がお風呂で泣いているのを見ちゃってからずっと」
 ニッコリと、虚ろな笑顔を桜はナナリーに向けていた。
 見えるはずないのに、ナナリーは危険を感じた。
「ああ、安心してください。ナナリーちゃん。私はあなた達を殺したくないし、今は休みたいんです。
だから、悪い子にはならないでくださいね」
 くすくす、と無邪気に笑っていた。
 ネモは敵だと認識したのか、ナイトメアフレームを召喚しようとする。
 ナナリーは必死に、彼女を止めた。
 やがて桜は離れ、廊下に向かう。
「園田さんを呼んできますね。どうやら、私の手は借りたくないようですし」
 桜の目線はナナリーではなく、別の場所に向けられていた。
 そこでは、ネモが桜を睨めつけている。彼女が見えているのだろうか。
 だが、桜は何も言わず部屋を出て、ナナリーを一人にした。
『……タケシたちを助けたいなら、一刻も早くあいつとわかれるようにするべきだな』
 ネモが忠告するが、頭が回らない。
 いったいどうなってしまうのか。ナナリーに不安が残った。



 桜は廊下を歩きながら、ずっと頭になにかが引っかかっていた。
 デルタの力は素晴らしい。
 虐げられ続けていた桜が、逆の立場になり暴力を振るえる道具だ。
 真理の説明ではオルフェノクしか使えないとのことだが、実際は違うだろう。
 彼女はデルタと似たベルトしか知らない。このベルトについて知っているのは、今は自分だけだ。
 オルフェノクの新しい情報を聞いたのは運が良かった。そういえば、似たことを蛇のオルフェノクが言っていた気がする。
 危ないところだった。下手をすれば蛇のオルフェノクに奪われていただろう。
 これでこの力を持ち続けられる。
 そこまで考えて、ふと思う。なぜ自分は力を求めているのか。
「ああ、先輩」
 あの人を守るためか。はたして、それだけだったのだろうか。
 思い出しそうで、思い出せない。
 何かのピースがずっと、頭の片隅で引っかかっていた。

231少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:35:10 ID:rA5XuZ82

【B-5/ポケモンセンター/一日目 朝】

【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康
[装備]:呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、ネモ(憑依中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める
1:桜を警戒する。
2:とにかく情報を集める
3:人が多く集まりそうな場所へ行きたい
4:ルルーシュやスザク、アリスたちと合流したい
5:ロロ・ランペルージ(名前は知らない)ともう一度会い、できたら話をしてみたい
6:自分の情報をどこまで明かすか…?
[備考]
※参戦時期は、三巻のCODE13とCODE14の間(マオ戦後、ナリタ攻防戦前)
※ネモの姿と声はナナリーにしか認識できていませんが、参加者の中にはマオの様に例外的に認識できる者がいる可能性があります


【ネモ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康、ナナリーに憑依中
[思考・状況]
基本:ナナリーの意思に従い、この殺し合いを止める
1:桜を警戒する。
2:とにかく情報を集める
3:参加者名簿の内容に半信半疑。『ロロ・ランペルージ』という名前が気になる
4:ロロ・ランペルージ(名前は知らない)を警戒
5:マオを警戒
6:ポケモンとは何だ?
[備考]
※ロロ・ランペルージの顔は覚えましたが、名前は知りません
※参加者名簿で参加者の名前をを確認しましたが、ナナリーにはルルーシュら一部の者の名前しか教えていません

232少女地獄 序章 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:35:30 ID:rA5XuZ82


【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(小)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、無自覚の喪失感と歓喜、強い饑餓(いずれも小康状態)
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)、ジョーイさんの制服
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)
[道具]:基本支給品×2、最高級シャンパン@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:先輩(衛宮士郎)の代わりに“悪い人”を皆殺し
0:先輩に会いたい
1:あの人(ルヴィア)を惨たらしく殺す
2:先輩(衛宮士郎)の所へ行く
3:先輩(衛宮士郎)を傷つけたり悲しませたりする人は、みんな殺す
4:あの人(ルヴィア)は―――絶対に許さない
5:ナナリーたちは今のところ殺す必要はない。
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※「黒い影」は桜の無意識(気絶状態)でのみ発現します。桜から離れた位置には移動できず、現界の時間も僅かです

※桜がネモを認識できたかどうかは後続にお任せします。

233 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/09(金) 20:35:49 ID:rA5XuZ82
投下終了。
何かありましたら指摘をお願いします。

234名無しさん:2011/12/09(金) 20:55:36 ID:10nni.g.
ナース服…だと……イイッ!
しかしあれだ、スタイルの差がひどい。嘘みたいだろ…こいつら同年齢なんだぜ…?
タケシ…両手に華の状態なのにまったく羨ましくない……生きろ!
このチーム先が怖すぎる……投下乙でした。

235名無しさん:2011/12/09(金) 21:29:43 ID:EYx4k93E
投下乙です。そうか、ヤンデルタは無差別じゃなくて奉仕タイプだから相手の出方によっては丸く・・・収まってなくないか?

236名無しさん:2011/12/09(金) 22:45:11 ID:jT3.cCUo
>>221
投下乙ですー。
あー、そういえばそっちのキリツグはかなり幸せそうな家庭でしたねーw
そりゃまあ複雑な気持ちにもなるかー。

>>233
投下乙ですー。
うーむ、桜はどこにどんな地雷が埋まっているか不明なだけで話そのものは出来るのだのぅ。
割と安定傾向かと思った集団がどう転ぶやら。

237名無しさん:2011/12/10(土) 00:41:31 ID:PcCcwRso
投下乙です
これは予想外、まさか普通に合流するとはw
だが桜がどう動くか…。タケシ生きろ!
一つ指摘が
アカギが組織していたのはプラズマ団ではなくギンガ団です

238 ◆qbc1IKAIXA:2011/12/10(土) 01:10:19 ID:DA0gjBdo
おっと、普通にうっかりしていました。
wiki収録時に直します

239名無しさん:2011/12/10(土) 15:32:55 ID:JqzMNjgE
乙でやんす

>「でも強く殴りすぎたかな。そこはあやま……」

>「いえ、ありがとうございます!!」
この台詞の後に「我々の業界ではご褒美ですから!」と続くと思った俺を誰か罵ってくれ

240名無しさん:2011/12/11(日) 13:54:06 ID:CSEbY7ic
投下乙です

俺も普通に合流するとは思わなかったよ
これ、爆発を先延ばししてるだけ、しかもタケシ組も危険人物に見られる可能性ありとかw

241 ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:27:17 ID:ifjirkO6
美国織莉子、サカキ、セイバー分を投下します

242私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:27:53 ID:ifjirkO6
「千歳ゆまが死んだ……か」
 ぽつり――と一言呟いて、名簿の名前を塗り潰す。
 ただそれだけのことでありながら、少女・美国織莉子の所作からは、隠しようのない気品が見て取れた。
「知り合いか?」
「いえ。ですが私にとって、意味のある存在ではありました」
 同行者サカキの問いに対し、答える。
 自らがかのキュゥべえに存在を示唆し、契約へと導いた千歳ゆま。
 元々は鹿目まどか捜索の時間を稼ぐため、撒き餌に利用した娘だ。
 少し前まではいざ知らず、既に契約を終えた彼女には、とりたてて用も役目もなかった。
 もっとも、自分の目的のために彼女を巻き込んだこと、そんな彼女を救えなかったという事実には、少し良心が痛んだが。
(残る魔法少女のうち、警戒すべき人間は2人……巴マミと、暁美ほむら)
 とはいえ、そこで思考を止めるわけにはいかない。
 再び名簿へ視点を落とし、記された名前を見定める。
 この中で問題とすべき相手は、心中で名前を挙げた2名だ。
 魔法少女狩りの犯人・呉キリカと、自分が協力関係にあることを知っている魔法少女、巴マミ。
 倒すべき最悪の魔法少女・まどかを保護している魔法少女、暁美ほむら。
 この2名と対峙することになれば、戦闘は免れないだろう。積極的に殺したいとは思えないが、障害となるのなら、消すしかない。
「ふむ……では、これからどうする? どうやら君の友人とやらは、まだここには来ていないようだが」
 ここ、とサカキが言ったのは、現在地である見滝原中学校だ。
 一通り探りを入れてはみたが、ここにはまだ人の気配がない。織莉子の未来視の力にも、キリカとの再会のビジョンは映らなかった。
「そうですね……それでは、これから私の家に行くとして、それからもう一度ここに戻ってくるというのはどうでしょう?」
「まぁいいだろう。君の力のおかげで、捜索にも時間はかからないわけだからな」
 織莉子の提案を、サカキが承諾する。
 人捜しといっても、実際にやるべきことは、ただ廊下を歩くだけのことだ。
 通りがかった部屋の中に、誰かがいたとするならば、それは織莉子の能力が察知する。
 これだけの余裕を持ったスケジュールも、その能力の賜物だ。
 もっとも実際にやるまでは、もう少し時間がかかるのでは、と思っていたのだが。
「ありがとうございます」
「では行くとするか。君の家の方には、何かあるかもしれんからな」
 言いながら、サカキは教室を後にした。
 織莉子も名簿をデイパックへしまい、彼に続いて廊下へと出る。
 ポケモン城という手掛かりを得たのは、収穫と言えば収穫だった。
 しかしながら、ここに至るまで、彼女はまだ誰とも会えていない。それ故に彼女の力は及ばず、多くの犠牲が出てしまった。
(人の命に、取り返しなんてものはつかないけれど……)
 出来ることなら、より多くの人を救いたい。
 犠牲を対価に得るものは、多いものであった方がいい。
 それを叶えるためにもと、改めて胸中の決意を固めた。



 校舎を出て、正門前。
 オートバジンを停めておいたこの場所に、織莉子とサカキの2人が現れる。
 既に陽の昇った今となっては、懐中電灯の類は不要だ。太陽の光は十分に地上へと行き渡り、手にした地図を明るく照らす。
「こちらは南側ですから、こう、ですね」
「少し回り込むことになるか」
 指先で地図をなぞりながら、我が家への道筋を織莉子が示した。
 このまま北上していけば、川に行き当たることになるはずだ。
 そうしたら後は目印として、橋を探していけばいい。その先は平原になっているから、家の位置も分かりやすいだろう。
「では、行くとしよう」
 言いながら、サカキが銀色の車体へと跨る。
 ここまで来たのと同じように、タンデムで走らせれば、すぐの場所だ。
 もし向こうに尋ね人がいなかったとしても、こちらに戻ってくる頃には、姿を現しているかもしれない。
 ひとまず善は急げということで、サカキはバイクのエンジンをかけたのだが、

243私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:28:33 ID:ifjirkO6
「………」
 返ってきたものは、沈黙と静止だ。
 地図を胸の高さから下ろした織莉子は、しかし彼の声に応えず、静かにその場に立ち尽くしていた。
「どうした?」
 問いかけるも、返らず。
 南東の方をじっと見つめ、少女は微動だにせず沈黙する。
 そこからアクションを起こしたのは、数瞬の間を置いた後だ。
「!」
 刹那、発光。
 織莉子の身体が閃光を放ち、サカキの視界を白一色に染める。
 光輝の粒子を振りまいて、顕現したのは魔術師の姿だ。
 魔法少女への変身――学生服を掻き消して、純白のドレスが織莉子を包んだ。
 右の腕をしなやかに振り上げ、白魚の指先で虚空を指す。
 素早い腕の動作に合わせ、ぎゅん、と空を割く音が響いた。
 背後に出現した数個の宝珠が、ビルの影目掛けて発射されたのだ。
 きん、と。
 闇より響くのは金属音。
 時間差で2個目、3個目と飛来し、またそれに合わせて音が鳴る。おまけにその音量は、繰り返す度にボリュームを増していた。
「――ッ」
 埒が開かないと判断したのか、次いで具現化した数は、8つ。
 合計8個の球体を、一点に密集させて円形に並べる。
 ビルの合間から何かが飛び出し、サカキの視界に映った瞬間。
 スクラムを組んだ宝石群が、左手を突き出す動作に合わせて発射された。
 接近。
 反応。
 激突。
 炸裂。
 轟――と音を伴い爆発。
 燃え盛る爆炎と吹き荒れる爆煙が、市街地の風景を覆い隠す。
「来ます! そこから離れて!」
 ようやく織莉子の口が開いた頃には、サカキも状況を把握していた。
 無言でそれに頷くと、オートバジンのエンジンを再始動させる。
 熱を伴う加速の開始と、襲撃者の殺到は同時だった。
 灰色の煙を引き裂いて、鈍く輝く剣が迫る。
 爆音を立てる銀色の車体が、その場を離れてそれをかわす。
 回避に成功したと見るや、ブレーキをかけ車体を止め、バイクを降りてその姿を見た。
「………」
 サカキの前に現れたのは、漆黒のドレスをまとった少女だった。
 織莉子のそれとは大きく異なり、黒の中に赤が混ざっている。煌々と脈動するラインは、まるで人体の血管のようだ。
 線は細く、背も低い。戦闘向きの体躯とは思えない。
 しかし、手にした黄金の剣の壮観さが、その印象を覆す。見た目通りの相手ではないと、サカキの考えを改めさせる。
 恐らくは美国織莉子同様、単純な身体スペックに頼らぬ超能力の使い手――彼女の言葉を借りるならば、
「彼女も、魔法少女というやつか?」
「いえ……あのような邪悪な魔力を発する者は、今までに見たことがありません」
 同行者から発せられた一言を、織莉子はにべもなく否定する。
 あの暗黒の鎧甲から発せられる、刺々しいまでに暗いオーラは、むしろ瘴気とでも呼ぶべき代物だ。
 どちらかと言えば、魔法少女の成れの果て――魔女に近い力と呼べるだろう。
 しかし魔女と同一視するには、あれは人型を保ち過ぎている。あの異形の怪物とは、明らかに印象を異にしている。
 であれば、サカキのポケモン同様、織莉子にとっては未知の人種だ。

244私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:29:13 ID:ifjirkO6
「驚いたな。よもや、勘付かれるとは思わなかった」
 凛とした、少女の声色で。
 豪胆な武将のごとく、重く。
 相反する2つの印象を内包した、襲撃者の声が響き渡る。
 ガラスのごとき眼球からは、感情が読めない。フラットな発音と相まって、無感情な印象を与える少女だ。
 意志のある魔法少女にも、心ない魔女にも見える存在だった。
「特技のようなものね……生憎と、私に不意打ちは通用しないのよ」
 にこり、と笑みを湛え、織莉子が告げた。
 この鎧の少女が物陰から迫り、サカキを両断する未来――彼女は数十秒前に、それを見たのだ。
 故にそれを迎撃せんと、変身し宝石を放って先手を打った。
 故にそれからサカキを守らんと、稼いだ時間で回避を取らせた。
 未来視の力を持つ美国織莉子には、あらゆる不意打ちが意味をなさない。
「だが、それだけだ。斯様に軽い攻撃では、私の身には届かぬぞ」
 ぶん、と剣を唸らせ、襲撃者が告げた。
 やはり、相当な手練だ。下段に取ったその構えからは、微塵の隙も感じ取れない。
 ほとばしる魔力は濃霧と化し、より深き暗黒へとドレスを染める。
「では、これならばどうかな」
 にぃ、と口元を歪めたのは、サカキだ。
 白い三日月を浮かべる男が、両者の会話に割って入った。
 手にしたモンスターボールを放り投げ、彼もまた臨戦態勢を取る。
 白光から姿を現したのは、紫の怪獣・ニドキング。
 かのポケモン城での戦闘においても、リザードンを撃退した強力な相棒だ。
 ダメージの回復が済んでいない上に、相手は見たところ人間だが、そうも言ってはいられない。
「ほう、見たこともない魔物だ」
「今度は怪物呼ばわりか」
 女の声に、苦笑した。
 どうやらこの黒ドレスの少女も、ポケモンというものを知らないらしい。
 どころか、魔物とまで呼んでいる。そんなものと日常的に触れ合っているとするならば、もはや完全なファンタジーの住人だ。
 やはり彼女も、そして織莉子も、伝説のポケモンが持つ力――空間を超える力により、異界から招かれた存在なのだろうか。
「いずれにせよ、ここで立ち止まるわけにはいかない……」
 黒に対峙するのは、白。
 魔法少女のドレスから湧き上がり、その場を満たしたものは重圧。
 細められた織莉子の藍眼が、莫大なプレッシャーをもって敵を威圧する。
 全てを飲み込み、熱を奪い。
 さながら極寒の吹雪のごとく、見る者の四肢の自由を奪う。
 どう――と鼓膜が揺れた気がした。
 無風のはずの正門前に、突風が吹き荒れたかのような錯覚を覚えた。
 かつてのロケット団総帥が、ほう、と賞賛の声を漏らす。
 気高き令嬢・美国織莉子が、生来備えていた最強の武器は、優雅さでもましてや美貌でもない。
 あらゆる外敵を物ともせず、毅然と、悠然と相対する、この圧倒的なプレッシャーだ。
 その気迫は、魔法少女としての経験で遥かに勝る、あの巴マミですらも沈黙させる。
「貴女が立ちはだかるというのなら、全力で排除させてもらうわ」
 漆黒の騎士を睨みつけ、純白の姫君が宣告した。

245私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:29:47 ID:ifjirkO6


(どうにも、解せん……)
 びゅん、と音を立てながら。
 魔剣グラムを振り回し、漆黒のセイバーが思考する。
 敵の戦力は合計2体。
 浮遊する球体を操る、魔術師と思しき白い女と、コートの男が操る紫の魔物だ。
「ニドキング! だいちのちから、続けてシャドークローをぶつけろ!」
 厳つい男の声に応じて、紫の魔物が叫びを上げる。
 刹那、ニドキングなるそれの雄叫びに呼応し、足元を鋭い衝撃が襲った。
 轟、と伝わるのは地震――否、文字通り大地から迫る衝撃波だ。
 振動、波動、そして瓦礫。
 灰色のアスファルトを粉砕しながら、下方から炸裂する衝撃がセイバーを煽る。
「チッ!」
 ここに来て彼女は、彼が下した、追撃の命令の意図を察知した。
 舞い上がる瓦礫を掻き分けて、ニドキングが突撃を仕掛けてきたのだ。
 漆黒のオーラを纏った爪撃を、黄金の剣を振り上げ、迎撃。
 足場が安定しない。姿勢がままならず、力が入らない。
 なるほど、パワーやスピードだけでなく、心的余裕すら奪い取る有用なコンボだ。
 故に英霊アーサー王は、らしからぬ強引な回避手段を取る。
 切っ先からこちらも暗黒を発し、裂音と共に相手を吹き飛ばす。
 ゆらゆらと金髪をはためかせながら、セイバーは着地するニドキングを見据えた。
(パワーではこちらが勝っている……手数は豊富なようだが、決して押しきれない相手ではない)
 魔物に下した評価が、それだ。
 小柄な割に獰猛な容姿を持った紫の魔獣は、その外見特徴同様、非常に攻撃的な性質を有している。
 コンクリートをも粉砕する技の威力、見かけによらぬ俊敏な身のこなし、どちらもなかなかに強力だ。
 しかしそのどちらもが、一兵卒からの観点によるものである。
 元より己も鈍重なスピードはともかく、パワーではセイバーが上回っていた。
 故に相手の攻撃を恐れず、積極的に踏み込めば圧倒できる――
「――させないわ」
 という目論見を潰すのが、もう一方の存在だ。
 冷やかな女の声と共に、5つの影が飛来する。
 反射的にそれを見定め、バックステップで回避を取った。
 先ほどまで具足のあった場所が、銀の球体によって破砕された。
(そうだな……警戒すべきは、こちらの敵だ)
 崩れた構えを立て直し、その双眸で敵を見据える。
 宝石のごとき球体を操る、全身白一色の魔術師――先ほど相対を宣言した、白い少女だ。
 こちらもニドキング同様、セイバーの剣を退けるにはパワーに欠ける。
 どころか、魔物の背後に立ったまま、前に切りこんでこないということは、耐久力もさほどではないのだろう。
 しかし、こちらが攻めあぐねている原因は、むしろこの女の方にあった。
(こちらの動きを予測しているのか?)
 思考と共に、剣を振るう。
 ニドキングが黒の剣先をかわし、その影から球体が襲いかかる。
 これをグラムをもって弾き返せば、死角から攻め込んでくるのはニドキングの爪だ。
 そして攻撃のタイミングも角度も、男に女が告げ口していた。
 こちらが攻められて困る箇所を、正確に察知し、指摘したのだ。
(……違うな。単純な計算では、ここまで偶然が続くはずもない)
 影を纏う剛腕の一撃を、身を反らしてかわしながら、否定した。
 既にこのように対処された回数は、悠に10回を超えている。
 単純に相手の考えを推測していただけでは、これほどの的中率には至らない。
 こちらの考える最善手と、相手が推測する最善手が、必ずしも一致するとは限らないのだ。
 相手が読み違えるか、あるいは、こちらが悪手を打ちでもしたら、予測は真実との乖離を起こす。

246私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:30:29 ID:ifjirkO6
(ならば、読心の能力を有しているのか?)
 故に想定すべきはそれではなく、それとはまた別の可能性だ。
 考え得るもう1つの可能性へと、推理の対象をシフトした。
 ぐっ、と大地を踏み締め、疾駆。
 弓から矢を解き放つかのように、自らの身体にロケットスタートをかける。
 進むべきは正面ではなく、側面。
 目の前のニドキングを一度無視し、回り込むようにして魔術師を狙った。
「!」
 刹那、目の前に展開されたのは弾幕。
 合計7つの炸裂弾が、瞬時に連続発射される。
 数は多い。しかし、見切れない速さではない。
 足元を狙う石を跳躍して回避。顔面を狙う石をグラムで切断。胴体を狙う石を身をよじって回避。
 巻き起こる灰色の爆風を掻き分け、その先の白い少女へ切りかかる。
 初撃は喉元を狙っての突き――複数の球体を盾にされ、阻まれた。
 追撃は胴体を狙っての薙ぎ――タイミングを読まれ、飛び退かれた。
(やはり、違う。心を読める程度では、こうはならない)
 援護に出たニドキングを振り払いながら、またもセイバーは仮説を否定した。
 今の強襲で試した手は、2つだ。
 初撃では一度に10通りの攻撃パターンを考案し、ギリギリでその中の1つを選び放った。
 追撃は逆に思考回路を全カットし、完全な直感に任せての攻撃を仕掛けた。
 己の攻撃を全てかわされ、猛スピードで突っ込んでくるというプレッシャー下での、この二撃である。
 前者なら限られた時間のうちに、10の攻め手に対応できるはずがない。
 後者ならそもそも思考が存在しないから、攻撃を読み取れるはずがない。
 しかし、彼女はやってのけた。
 読心の限界と穴を突いた、双方の戦術をくぐり抜けたのだ。
(そうなると)
 奴は過程を見てはいない。
 こちらが攻撃に至るまでに、どのような考えを展開しているのかを、覗き見ているわけではない。
 この敵が見据えているのは結果だ。
 意識下、ないし無意識下を問わず、思考の果てに辿り着いた、その結果だけを読み取っているのだ。
 心理ではなく、現象を見ている。
 事実を構築する論理ではなく、論理の後に付随する事実を見ている。
 すなわち、
「未来を読める、ということか」
 考えられるのは、それだけだった。
 白い魔術師は相手の行動判断ではなく、自分の身に起こる未来を予知していたのだ。
 であれば、これまでの行動にも納得がいく。
 こちらの正体すら定かではなかった、最初の闇討ちに対処したことすらも、その一言で証明できる。

247私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:31:03 ID:ifjirkO6
「その通りよ」
 ふわり、とドレスの裾が揺れる。
 たんっ、と着地の音が鳴る。
 緩慢な動作で地に足をつけ、柔らかな銀髪を虚空に揺らした。
 回避運動を終えた末、白き魔術師が着陸したのは、車道のど真ん中だった。
「私は現在だけでなく、未来に起こる事実をも見ている」
 ビルの間から、光が漏れる。
 開けた大通りの真ん中には、遮られることなく陽光が差す。
 純白一色のドレスが、黄金の煌めきに彩られた。
 後光を浴びた装束が、荘厳な銀色に輝いた。
「全てを炙り出す光の前では、あらゆる企みが意味をなさない」
 静かに、波風を立たせぬ声で。
 厳然と、有無を言わさぬ声で。
 日輪の光に照らされて、1人の少女が言葉を紡ぐ。
 そこに宿された威圧感は、さながら戦場の武士のそれだ。
 無双の英霊に対峙してなお、これほどの気配を保てるとは。
 しかもこれほどの濃密な気迫が、年端もゆかぬ小娘のものだとは。
「貴女が何を為そうとも、私の光が全てを照らすわ」
 それは聖女か、教皇か。
 この世全ての善を従え、暗黒を祓うかのように。
 白銀に煌めく未来視の魔女が、堕ちた騎士王へと告げた。



(相変わらずの、ふざけた素質だ)
 苦笑を浮かべ、サカキが心中で呟いた。
 目の前に展開された攻防に、軽い衝撃を覚えつつも、冷静にニドキングを前へと出させる。
 戦闘で目の当たりにしたのは2度目だが、織莉子の未来予知というものは、何度見ても凄まじいものだ。
 もちろん、万能の力ではない。
 そこには数秒先の未来しか見えないという限定条件と、本人の肉体的限界という問題がつきまとう。
 現に先ほどの薙ぎ払いは、完全に回避しきることができず、僅かにドレスの表面を切り裂かれていた。
 恐らくあの漆黒の女剣士と、単独で相対していたのであれば、こうまで凌ぎ切ることはできなかっただろう。
(だが、それを可能としたのがニドキングだ)
 つくづくポケモントレーナー向けの女だ、と。
 自らのパートナーに視点を落とし、次いで織莉子の姿を見据える。
 自分を卑下するつもりはない。現に自己の判断で、あの剣士を退けたケースも存在する。
 しかしこれまでのやり取りの中で、何度かは織莉子のお膳立てによって、よい結果をもぎ取れたケースがあるのも事実なのだ。
 魔法少女とやらのスタンダードが、どれほどの能力であるのかは知らない。
 しかし目の前の敵に比べれば、織莉子の単独での戦闘能力は劣る。
 それを覆したのは知略であり、未来予知であり、そしてニドキングという護衛の存在。
 恐らくこの美国織莉子という少女は、単独での一騎打ちではなく、他者を指揮しての組織戦に長けている。
 そういう資質なのだ、この娘は。

248私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:31:54 ID:ifjirkO6
(だが、だとしてもこれからどうする?)
 後ろ向きな感想を振り払い、敵を見つめて目を細めた。
 そうだ。うっかり失念しかけていたが、今は戦闘中なのだ。
 妙な気の迷いを抱いている暇などない。そんなことを考えるよりも、現状の打開策を考えなくては。
(美国織莉子、そしてニドキング……悔しいが、単体のスペックでは、どちらもあの敵には及ばないようだ)
 実際に戦ってみて分かる。黒いドレスを着た少女は、当初の想像以上の難敵だった。
 妙な影をまとう剣捌きは、ニドキング渾身のシャドークローをも、容易く切り返すほどの破壊力を誇る。
 今は織莉子の先読みによって、何とか持ちこたえている状態だが、それもあくまで互角に過ぎない。
 こちらの損傷が軽微であるように、向こうの損傷もほとんどない。互角同士の戦いでは、ケリがつかないままジリ貧だ。
(そうなると、先の戦闘でのダメージが響いてくるな……この勝負、有利に見えて不利なのはこちらか)
 ちら、とニドキングを見やって、判断した。
 先ほどのリザードンとの戦いで、ニドキングはダメージを負っている。
 無論、現状では軽微なものではあるが、長期戦ともなれば、そうはいかない。
 蓄積された疲労と相まって、どんな影響を及ぼすか、知れたものではない。
 そしてニドキングが倒れた瞬間、こちらの敗北は確定する。織莉子の移動速度では、敵の攻撃を避け続けるのは困難だからだ。
「……なるほど。であれば、これ以上の読み合いは無意味か」
 黄金の剣が持ち上げられる。
 これまで下段に構えられていた、剣士の刃が天へと向かう。
 刹那、ほとばしったのは暗い光だ。
 陽光を覆い隠すかのように、漆黒のオーラが剣へと集った。
 びりびりと大気が震動する。空気が針となったかのように、ちくちくと肌へ突き刺さる。
 この世全ての暗黒を、一点に集束させたかのような。
 膨大な瘴気の結晶体が、少女の手元へと形成された。
(! まずいな、これは……)
「飽和攻撃が来ます、逃げて!」
 どうやら敵は言葉通り、小競り合いには飽きたようだ。
 相手がいくら予知をしても、避け切るだけの余地のない攻撃――強力な広範囲攻撃を放って、一網打尽にする気なのだろう。
「言われずとも……!」
 そしてそれは、わざわざ未来予知に頼らずとも、一目見ただけで誰でも分かる。
 あれ程強大なエネルギーの塊だ。それ以上の使い方など、見当たらなかった。
「ニドキング、最大パワーでだいちのちからを放て!」
 オートバジンに跨りながら、命令を下した。
 ニドキングは即座にそれを実行し、周辺一帯に衝撃を走らせる。
 波動は敵の足元を襲い、瓦礫は織莉子達を覆い隠した。
 爆音はバイクのエンジン音をも掻き消し、サカキを不可視の存在へと変える。
「きゃっ!」
 そのまますれ違いざまに、強引に織莉子の手を引いた。
 荒っぽく2人乗りの形を作ると、モンスターボールのレーザー光を、ニドキングに当てて回収する。
 後はとんずらを決め込むだけだ。あんなものにまともに付き合っていては、いくら命があっても足りない。
「ォオオオオオオオッ!!」
 雄叫びと共に闇が弾けたのは、サカキのバイクがその場を離れ、ビルの影に入り込んだのと同時だった。

249私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:32:38 ID:ifjirkO6


「……またしても、取り逃がすとはな」
 黒と灰色の靄の中、セイバーは静かに独りごちた。
 あのニドキングの使い手の目測は、見事に的を得たらしい。
 足場を崩されたことで安定を失い、瓦礫に阻まれたことで視野を失い、轟音によって聴覚すらも失った。
 そこに放ったあの波動は、ただでさえ低下した索敵能力を、更に削る羽目になってしまった。
 未来が見える向こうからすれば、逃げ出すことなど容易だっただろう。
「どうにも、雑把な戦い方では上手くいかんらしい」
 己の不甲斐なさを恥じ、思い出したようにヘルムを再生成した。
 これまでに経験した戦いは3度。
 一度は衛宮士郎および、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとの戦闘。
 一度は、あの英霊というものを嘗め切った、背の高い女の魔術師との戦闘。
 そして最後の一度が、先の白い魔術師と、紫の魔物との戦闘だった。
 このうち敵を逃したのは、二度。これまでに撃破した敵は、ゼロ。
 最優のサーヴァントなどとおだてられていながら、あまりにも不甲斐ない戦績だった。
「過小評価が過ぎたようだな」
 認めよう。
 この儀式とやらの空間に、油断すべき場所などないのだと。
 適当にあしらって勝てるような、簡単な相手ばかりなのではないのだと。
 であれば、今度は逃さない。
 次なる戦闘の機会があれば、誰であろうと確実に殺す。
 衛宮切嗣の感傷を断ち切り、慢心さえも切り捨てて、セイバーは再び歩を進めた。


【E-7/見滝原中学校前/一日目 午前】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、黒化、魔力消費(中)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています

250私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:08 ID:ifjirkO6


「……大丈夫ですか、サカキさん?」
「気にすることはない。かすり傷だ」
 オートバジンを操るサカキへ、気遣うように織莉子が言う。
 どうやら先の爆発の際、コンクリートの破片が掠めたようだ。
 さほど深くはないものの、黒い左袖が引き裂かれ、赤い血の色が覗いている。
「まぁ、あれほどの脅威から逃れられたのだから、これくらいで済んだのは御の字だろう」
 言いながら、サカキの両手がハンドルを切った。
 角を曲がり、方向を修正して、地図にあった美国邸へと向かう。
 周知の通り、織莉子とサカキは、あの場を危険と判断し、標的をその場に残して撤退した。
 殺し合いを望んでいたであろう者を放置し、おまけにサカキに怪我を負わせてしまった。
 その事実は自責という名の鎖となって、織莉子の心を深く沈める。
「しかし、美国織莉子……本当にあの娘の力には、特に覚えはないんだな?」
「ええ……かなりの強敵であることは、間違いないと思うのですが」
 言いながら、先ほどの戦闘を回想した。
 あの漆黒の戦士の戦闘能力は、並の魔法少女を上回るものだ。
 最後に放った大技の威力は、かの巴マミがキリカを仕留めた際の、あの炸裂弾すらも凌駕している。
 恐らく彼女を倒すには、今以上の戦力と、今以上の連携が必要だろう。
 サカキという第三者を介した、ニドキングとの連携は、あまり勝手の利くものではない。
 それこそあのキリカのように、直接の意思疎通が可能なパートナーの確保が、何よりの必須条件と言えた。
(……キリカ……)
 ふと。
 黒き騎士との戦闘分析から、親友の姿が連想される。
 あの場にもしもキリカがいたら――そんな無責任な仮定が、否応なしに想起されてしまう。
 戦力などと、とんでもない。傷つき苦しんでいるはずの友に、そんな役目を押しつけられるものか。
 彼女は無事でいるだろうか。
 我が最愛の友人は、無事で生きているだろうか。
(私が必ず助けに行くわ)
 今度は私がキリカを助ける。
 己の人格を破壊してまで、私を救ってくれた愛に、今度は私が報いてみせる。
 固く胸に誓いながら、織莉子は行く先を見据えていた。


【F-7北部/一日目 午前】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、疲労(小)、ソウルジェムの穢れ(3割)、白女の制服姿、オートバジン騎乗中
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:美国邸へ行く。調査が終わった後、再び見滝原中学校を調べに行き、その後鹿目邸へ行くことを進言する
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。

251私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:38 ID:ifjirkO6
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)、オートバジン騎乗中
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555、高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(中))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:美国邸へ行き、その後見滝原中学校へ戻る。可能ならばフレンドリーショップやポケモンセンターにも寄りたい
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
※アカギに協力している者がいると考察しています。

【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します

252私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:55 ID:ifjirkO6
投下は以上です。問題などありましたら、指摘お願いします

253名無しさん:2011/12/24(土) 21:14:14 ID:6yY52fdI
投下乙でした
サカキと織莉子の見事なコンビネーション、そしてそれと互角以上のセイバー。
結果は撤退となりましたが怖い状況でした。必ず何らかの痛手を与えるとこは厄介だな…
ところでセイバー、君のマスターは全員一般人とはいえ現在トップマーダーだぞ。

254名無しさん:2011/12/24(土) 22:17:23 ID:uv7j3wXg
乙っす
いい戦いでした
それにしても、もしキリカがこの戦いについて知ったらきっと自分を責めるんだろうなあw
あの時きちんとセイバーをブッ殺しておけば織莉子を消耗させることはなかったのにって

255名無しさん:2011/12/25(日) 06:10:29 ID:ahFlHmGc
投下乙です。
セイバー、というかサーヴァントはやっぱり凶悪ですけど、まだ誰も殺せてませんねw
いつかその威力を存分に振るう時が来るのだろうか。

それはそうと、セイバーの魔力消費についてちょっと指摘です。
これまで二回の闘いを経ても消費した量はまだ微小だったのに、この戦いだけで中まで減るのはちょっと消費し過ぎではないかと思います。
大量に魔力を消費する様な戦闘には見えませんでしたし。

256 ◆Vj6e1anjAc:2011/12/25(日) 12:18:35 ID:wPyVq776
そういえば、似たような大放出系のオーラ攻撃は、今までにやってましたね……
了解しました。では、微小→小に変更とさせていただきます。

……正直、スタミナ馬鹿高すぎね?と思うけど、原作からしてそんなんなのかしら?

257名無しさん:2011/12/25(日) 13:45:33 ID:keVFwJ.M
まあカリバーならまだしも黒版風王結界ですし

258名無しさん:2011/12/25(日) 15:12:48 ID:Gjb.fRk.
受肉して格段に魔力消耗が減ってますからね。桜からの供給は切れてるけども

259名無しさん:2011/12/26(月) 00:15:16 ID:lV4vSmWw
そういや魔力の回復手段て、あるの?

もしスタミナ高すぎと思うのでしたら、回復に制限つけるって方針はいかがでしょうか?

260名無しさん:2011/12/26(月) 00:27:44 ID:7YBKtCdE
>>259
いや、いらねえw
そんな細かいことまで干渉されるのも気分悪いよ

261名無しさん:2011/12/26(月) 16:38:01 ID:ZQLV.W4s
たしかセイバーは竜の因子を持ってるから、呼吸するだけで魔力が回復していくというチート能力があったはず
ついでに肉体の再生能力も半端じゃない(胴体かっさばかれて内臓ぶちまけても数分で復活可能)

士郎と契約していた時も、その能力のおかげで消滅せずにすんだとか

262名無しさん:2011/12/26(月) 20:58:56 ID:wY850yts
バーサーカーにの宝具についても七面倒な設定がありますし、そのあたりはフィーリングでいいと思います
過度に落とし込むことをせず細かく描写する必要はない、という程度で

ちなみに魔力回復で一番手っ取り早い手段は魂食い、生者を食べることです
食べるについては色々な意味があります。ええ色々と

263名無しさん:2011/12/27(火) 18:08:05 ID:IQQacykg
過去ログ読むとハンバーガー食っても魔力は回復しなかったみたいだな

まどマギ系魔法少女がSGの浄化が極めて困難だから、
そっちとバランスとるためにも魔力は自然回復しない方がよさそう

264 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:52:52 ID:HTyC8c2U
夜も遅い時間帯ですが
完成しましたので投下します

265Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:57:37 ID:HTyC8c2U
道を行く二人の元に、定時放送が流れる。
その内容は、道を行く一人と一匹にも少なからぬ影響を与えていた。

「そんな…、遠坂さん…」

呼ばれた名は己の教え子の一人、そして士郎の友人であった遠坂凛。
その名が呼ばれた意味、それが分からぬほど彼女は鈍くはない。
なぜ彼女が死ななければならないのか。
大河の頭の中は疑問だらけであった。

「プクゥ…」
「プクちゃん?もしかしてあなたの知り合いも…?」

ピンプクの仲間も呼ばれたのか、悲しそうに大河の胸に顔をうずめる。
桜の謎の行動、そして呼ばれた教え子。
大河にはもはや何が何だか分からなかった。

そんな疑問を持ったまま、やがて目的地である教会の近くへとたどり着いた。
やはり想像通りだったのか、すでにそこは焼け落ちた後だった。
真っ黒になった、かつて教会をなしていたであろう木材が見えるのみだった。もはや誰もいないだろう。
と、立ち去ろうとしたとき、焼け跡の下に人間の手を見た気がした。

「!プクちゃん、お願い!!」
「プ、プク!」

ピンプクもそれに気付いたのか、その怪力で次々と木材をどけていく。

「ッ?! プクちゃん!見ちゃダメ!!」

そして、その下から現れたのは男の人の死体だった。
大河は怯えるピンプクをその胸に抱くことでそれが見えることを防いだ。
死体の有様は大河ですら正視に耐えられるようなものではなかった。これは火事に巻き込まれた死体ではない。
右腕はなくなり両脚は折れ、胸の辺りは潰れていて、挙句首の向きがおかしかった。
漫画でしか見たことの無いような、だが確かに現実としてそこにある惨殺死体。

この人もさっきの放送で名前を呼ばれた一人なのだろうか。
大河は、改めてこの異常な状況というものをはっきりと理解した。

「こんな所で落ち込んでいてどうするのよ私…!しっかりしなさい!!」

顔を叩いて喝を入れる。
そうだ。まだ士郎や桜ちゃんも生きているんだ。こんなところでグジグジやっている場合ではない。
目の前の死体には、せめて人目につかないように焼け焦げてボロボロになっているが布を被せる。

「どうか安らかに眠ることができるよう祈っています…。遠坂さん…、力になれなくてごめんね…」
「プクゥ…」

やることは山積みだが、まずは桜ちゃんを追わなければならない。
だがあの様子では一人で追うのは危険だろう。
桜ちゃんを助けるためなら危険だろうと行く覚悟はある。だが今の彼女はそれだけでどうにかできる状態ではないだろう。
まず誰か協力してくれる人を探したい。こんな危険なことに付き合ってくれる人がいるかどうか分からないが。
ここからあまり離れていないところに何かの店のような施設があるようだ。まずはそこに行く。

266Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:59:21 ID:HTyC8c2U
「じゃ、気を取り直して!行こう、プクちゃん!」
「プ、プク!!」

彼女は知らない。その死骸を作ったのは、先ほど出会った少女、間桐桜だということを。



「やっぱり回復アイテムの数は少ないな…」

フレンドリーショップにて、ポケモンを回復させるための道具を探しにきたNとそれに同行する海堂、ルヴィア。
瀕死のリザードンの回復にはげんきのかけら、あるいはかたまりが必要であり、フレンドリーショップであればかけらぐらいはあるはずだった。
そう思っていたのだが、どうやら予想は外れたようだ。
先ほどここに来たときからおかしいとは思っていたのだ。このショップ、回復アイテムの棚が随分奥のほうにある。
そして実際行ってみると、傷薬はある程度あったが、いい傷薬は数個、すごい傷薬に至っては一個しかなかった。げんきのかけらなど影も形もない。
そのくせ、ボール類やスプレー系など、この場においては必要なさそうなものに限ってしっかりと並んでいる。
リザードンをボールから早めに出してやりたいと思っていたが、それまでしばらく時間がかかりそうだ。

「話が途中ですわよ」
「ああそうだったね。どこまで話したか…」

ルヴィアと海堂も一応探してはいたが、どれがどういう道具なのか分からないため探し物はほとんどN任せだった。
それでも時間も惜しい。Nからは質問の答えを聞きながら一応道具を見て回っていた

「僕達はね、ポケモンと人間が本当に共に歩める世界を作ろうと思っているんだ」
「その為に彼らを人間から引き離す、と?」
「そう。もし彼らから本当の信頼を得られているならこんなものが無くたって一緒にいられるだろう?」
「ちゅーかよく分かんねーんだけどよ、ポケモンってつまりどういうやつなんだよ?ペットみたいなもんじゃねえの?」
「ペット、というのも少し違うね。
 人間は彼らを共存と称して戦わせ、ポケモンを傷つけていながら競うことでお互いを伸ばしあうと言っている。
 それはおかしいんだ。彼らと人間は対等の存在でなければならない」
「ピカ、ピカピ!!」
「ああ、違うんだよ。君達のように信頼し合っている者を引き離そうってわけじゃないんだ。
 ただ君達のような関係を持ったトレーナーとポケモンってわけでもないんだよ」
「んー、よく分っかんねえなぁ」

確かに海堂が分からないのも仕方がないだろう、とルヴィアは思う。自分でもよく分からない。
つい数時間前に知った存在が元の世界でどのようなものであるかなど分かろうはずもない。
判断材料はN、そして先ほどのゲーチスの言葉ぐらいである。が、これから判断しても偏った答えしか得られそうにない。
まあこれ以上は彼らの問題だろう。自分達がどうこう言うようなことではない。
ただ、どうも胡散臭い印象はあるが。

「どうもここには目当てのものは無いみたいだ。そこまで遠くもないしポケモンセンターまで行こうと思うんだけど、君達はどうするんだい?」
「どうしましょうかしら…?あの女はこちらには来ていないみたいですし…」
「ショージキ俺は結花のことも気になるんだよなー。でも、そのキツネは……っと」

元々あの女を追ってここまで来たのだ。いないとなれば移動したほうがよい。
それにあのゾロアークは言っていたらしい。喋る杖を持った少女と戦わされた、と。
詳しい特徴を聞くと、それは美遊の特徴に当てはまる。戦ったということもありやはり気がかりだ。
だが、そっちに行くにしてもゾロアークの案内を受けるのは難しいだろう。
Nはポケモンセンターとやらに行くと言っている上、ゾロアークは彼にしか心を開いていないようだ。
今でも露骨な警戒心が発せられているのが分かる。

と、唐突にゾロアークが何か物音を捕らえたのか、耳を立てて警戒の様子を見せる。

「ゾロアーク、どうしたんだい?…誰か近付いてくるって?」

ガチャッ
と、その直後、フレンドリーショップの扉が開く。

267Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:00:37 ID:HTyC8c2U

「あの〜、誰かいらっしゃいますでしょうかー?」
「プ?プク!」
「ピカピカ?!」
「プクゥ〜!」
「あ、プクちゃん!」

現れたのは虎縞の長袖と緑のワンピースを纏った女性とピンクの丸い、ポケモンと思わしき生き物だった。

「このピンプクは君の仲間かい?」
「ピカ!」
「プク〜」
「よしよし、ここは大丈夫だよ。僕は君の味方だからね」

ピンプクは知り合いと会えた喜びと安心感からだろうか、泣き出してしまった。
やはり仲間の死がよっぽど堪えていたのだろう。

「あなたは?」
「私は藤村大河、穂群原学園の英語教師よ。よろしくね」
「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申します。以後お見知りおきを」
「海堂直也っちゅーんだ。こっちのクソ生意気なガキはNってんだとよ」
「こら、そんな言葉遣いじゃ駄目でしょ!よろしくね、N君」

「よろしく」

簡潔に自己紹介を済ませる3人。ピンプクの仲間がいたこと、大河の警戒心の無さ(というより雰囲気)からお互いに安全であることが確信できていた。
やはりというか、ゾロアークのみ警戒を解かなかったが。
と、全員の自己紹介が終わったところで、ルヴィアは一つの聞き覚えのある名前に気がつく。

「…一つ伺いたいのですが、穂群原学園と言いました?」
「え?そうだけど、あなたももしかしてうちの生徒?」
「ええ、少し前に留学した者ですわ」
「ちょっと待って、留学した子なんてうちの学校にはいなかったと思うんだけど?」

何かがずれているような気がする。藤村大河という教師が英語教員ではなかったはずだ。

「ミスフジムラでしたわね。あなたの知り合いはこの場に呼ばれていらして?」
「私の知り合いは、士郎…衛宮士郎と間桐桜ちゃんと、遠坂凛さんとセイバーちゃんね。
 遠坂さんは残念だったけど…。誰かと会ったりしてない?」
「え?」

聞き間違いだろうか。
今の答えの中に明らかにおかしな者がいた。

「あなたシェロの知り合いの方ですの?」
「う〜ん、まあ知り合いっていうよりは保護者かなぁ。ルヴィアゼリッタさんって士郎のこと知ってるのよね?
 ほら、あの子って切嗣さん、父親が亡くなってから家に一人じゃない?だからやっぱりちゃんと面倒を見る人必要じゃない」
「……一つ伺いたいのですが、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという少女をご存知かしら?」
「聞いたことないなぁ。士郎の知り合いか誰か?」

違和感が膨れ上がる。
士郎の知り合いというならイリヤのことは知っていなければおかしい。
それにイリヤの父親は家にはいないと聞いていたが、まだ存命だったはずだ。
さらに、セイバーという存在も気にかかる。それはあの時自分達を追い詰めたクラスカードの名前のはず。それと士郎にどんな関係があるというのか。

268Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:02:47 ID:HTyC8c2U
だがそれを問おうとしたとき、先に大河の口から質問が発せられた。

「それで一つ聞きたいんだけど、私の知り合いの誰かと会ったりしていないかな〜って」
「いえ、ワタクシの知る限りではあなたのお知り合いとは会っていないと思いますわね」
「そいや、あのベルト使った女が暴れたあの学校には結構色んなやつ集まってたけど、あん中にいたかもな。
 俺にゃー分かんねーが」

ルヴィアにはNやゲーチスが演説をした場所という印象が強いが、海堂はさっきまで戦っていたあの女の方が記憶に残っているのだろう。
だが、ここで海堂がそれを言った直後、大河の顔色が変わった。


「ベルト…?もしかしてその女の子って、紫の髪をした子じゃなかった?!」
「え、ええ、たしか紫の長髪に赤いリボンをして――」
「桜ちゃんだ!ねえ海堂君、暴れてたってどういうことなの?!!」
「うわ…!ちょ、落ち着けって!な?」
「その人ってあのアッシュフォードって所で人を殺したあの子だよね?」
「おいコラァ!!!」

ただでさえややこしくなっているところに発せられたNの言葉。
当然大河の耳にも届く。

「何でおめぇはいちいち余計なこと言うんだよオイ!ちったあ空気読めや!」
「余計なことって。かなり重要なことだと思うんだけど?」
「ああもう、テメェは向こうであいつらの面倒でも見てろ!!」

余計なことを喋られるとややこしくなると考えた海堂はNを追い払う。
言葉に従いNはピンプクやゾロアークの面倒を見始めた。

「…ねえルヴィアちゃん、今のって、本当?」

誤魔化せそうにはなかった。
しかし先延ばしにしても辛い事実だろう。ルヴィアは口を開く。

「ええ、本当ですわ。それに加えて、私達も彼女に襲われましたわ」

間桐桜がしたであろうことを知っている限りで、魔術については伏せた上で全て話した。


「そんな…!だって桜ちゃんは、とってもいい子で、士郎の手伝いもしてくれるいい子なのに…!!」
「その間桐桜とは、どのような子でしたの?」

空気を読んだ問いではなかったかもしれないが、ルヴィアとしては会話をさせることである程度気を紛らわせることもできると思い、大河に問いかけた。
それに、あの遠坂凛の妹という存在がどのように生きてきたのか、それを聞きたかったのだ。

大河は桜のことを知りうる限り話し始めた。
自分の学園で受け持っている弓道部に所属していて、士郎の家によく手伝いに来ること。
おとなしいいい子で料理やマッサージができること。
話し方もちぐはぐで内容もそれ以上のことを言おうとしていたのだろうが、やはり動揺は収まっていないのか、分かりづらいところも多かった。
説明の大半は皆が聞きたいことからはかなり外れていたが、逆にそれが大河という人間をよく表していた。

また、この会話から確信する。藤村大河は魔術とは何の関わりも持っていないものだということを。
そしてもう一つ、あの女が言っていた先輩とは―――衛宮士郎のことなのだと。

269Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:05:49 ID:HTyC8c2U
「どうして…、そんな…」
「あ〜、そのだな、ちょっくら俺のほうに心当たりがあったりするかなーって」

あまりにも悲しそうな様子を見ていられなかったのか、海堂がフォローを入れ始めた。
考えながら言っているのか説明はあまりスムーズではなかったが。

「あのベルトみたいなやつあったろ?
 あれな、似たようなやつがいくつかあるんだけどよ。
 大体俺達みたいなオルフェノクにしか使えないんだよな。
 一つは人間が使うと変身できずに弾かれちまうんだよな。
 で、もう一つは人間でも変身できるけどその後で灰になっちまうんだよな
 んで、ここまで言やぁ俺が何て言いたいのか、分かるか?」
「…つまりあなたは彼女があのベルトで変身したことで何かしらの異常を引き起こしたと?
 例えば精神汚染や幻覚などの」
「まあ、かもしれねぇってことだけどよ」
「そ、そうよね、桜ちゃんそのなんとかってベルトを使ってちょっとおかしくなっただけなんだよね?」

フォローとしては割と苦しいものでもあったが、それでも少しは大河の気持ちを落ち着かせるのには役立ったようだ。
実際はそのフォローも外れではないのだが、それを知っているものはこの場にはいなかった。

「それで、あなたは彼女に会ったのですわね?」
「え?うん、私を見た途端、何だかよく分からないことを呟きながら逃げていったの。なんか魔術師がどうとかなんにも知らないだとか自分は汚いとか。
 確か北の山道を降りたところを東に向かっていったと思う」
「分かりましたわ。ワタクシがそのマトウサクラを追いましょう。危険ですから貴方はここで待っていてくださいな」
「え?行ってくれるの…?って、私も行くわよ!あの子が苦しんでるなら私だってちゃんと助けてあげたいもの!!」

ルヴィアとしてはついてこられるのには気が進まなかった。
危険なのもあるが、おそらく彼女を追えば自分もあの女も魔術を使うことになるだろうから。
一般人に魔術の存在を知られるのは避けたい。自分と同じ(かもしれない)世界の人間となればなおさらだ。
それにもし海堂のフォローの言葉が当たっていたとして、彼女がああなった原因はそれだけとも思えなかった。
相対したときの叫びは、間桐桜の中に何かしらの歪みを抱えているとしか思えなかった。
それを知らせるのは、大河のためになることではないだろうと思う。

一方で大河も譲らなかった。
大河にとって桜は生徒であり、それ以上にもはや家族のようなものなのだ。
仮にあのベルトのせいで道を間違えてしまったのであれば、ちゃんと元に戻して支えてやるべきだと考えていたのだ。
何の異能的なものの無い、一般人であるからこその思いであるともいえる。

結局折れたのはルヴィアのほうだった。

(全く…、仕方ありませんわね。まあこんな場所でもありますし…。
 魔術を見られても少しぐらいなら誤魔化せますわよね…?)

向こうが魔術を使ってきたときは全てをあのベルトのせいにすれば誤魔化せるだろうか。
探し人の居場所が分かった今、こんなやり取りで時間を取られたくはない。

「でもおい、おめぇの妹はどうすんだよ?そっち追ってたら多分見つけられなくなるんじゃね?」
「確かそっちにはあなたの探し人もいらっしゃるんでしたわね?ならそちらはあなたに任せますわ」
「おいおめぇ、妹のこと心配じゃねえのかよ」
「もちろん心配ですわ。だからあなたに任せると言っているのです。
 N、あなたはどうしますの?」

海堂に追い払われて話にあまり混じってこなかったNにも一応聞いてみるルヴィア。

「僕はポケモンセンターに行きたいな。リザードンを早く回復してあげたいんだ」
「まあ、そうでしょうね」

270Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:07:54 ID:HTyC8c2U

ポケモンセンターは間桐桜の向かった方向の近くにある。Nとはもうしばらく共にいることになるだろう。
と考えているとNはピカチュウの傍で佇むピンクのポケモンに話しかけていた。

「ピンプク、君はどうするんだい?」
「プ?プク!!」
「なるほど、彼女と一緒に行くということでいいんだね?」
「? N君、君もしかしてプクちゃんの言葉が分かるの?」
「…ああ」
「へぇー、すごーい!!ねえねえ、プクちゃんは何て言ってるの?」
「あなたはポケモンを知る人間じゃないのなら、あまり彼らについて詮索するべきではない」
「むー…?別にそこまで言うことないと思うんだけどなー。もう少しオープンになってくれてもいいと思うんだけどなー」
「あまり彼らに関わってほしくないんだ。ポケモンについて余計なことを知ってしまえば強引に引き離すことになりかねないからね。
 アナタがこの子のトレーナーでないのならなおさらだ」
「えっと…、N君?」
「確かにこのピンプクは本来のトレーナーでもないあなたであっても気を許しているようだ。
 でもそれに甘えて何をしてもいいということにはならない。むしろそうだからこそその辺りの分別は必要だ」

何故か大河をピンプクと引き離そうとするN。
大河は何か気に障るようなことを言ってしまったか考え込む。


(何か気に障るようなこと言っちゃったかな…。それにしてもN君、私のこと嫌ってるのかな?…………N?)
「どうかなさいまして?」
「…そういえばNっていえば……もしかして」

何かぶつぶつ言っているが、ルヴィアにははっきり聞き取れない。


「ねえ、ルヴィアゼリッタさん、ちょっと待っててもらってもいい?」
「構いませんけど、どうかなさいまして?」
「5分くらいでいいの。N君と二人で話をしたいの」
「え?」

突然の大河の申し出に、Nは困惑するかのような声を出す。

「いきなりどうしたの?」
「いいから。ちょっと二人っきりにしてほしいの。もちろん、このピカちゃんや黒キツネさんも抜きでね」

そう言うと、ゾロアークは大河に噛み付くかのように警戒心を剥き出しにして威嚇を始める。
余りにも危険なその様に、しかし大河は全く怯む様子を見せない。
海堂がオルフェノクに変身してゾロアークを抑えようかと動く直前、Nが宥めた。

「大丈夫だよ、危険なことなんてないから。少しここで待っていてくれればいいから」

そう言って、Nは大河と共に奥の事務室か何かに入っていった。
納得がいかないのか、ゾロアークは唸り声を上げ続けている。

「フシュルルルルル」
「ピカ、ピカピ!」
「何ですの?あれは」
「さぁ?もしかしたらあのガキにガツンと言ってくれると俺は期待してるんだが」
「?…まあいいですけど」
「で、お前は待―ってうおっと」

271Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:08:43 ID:HTyC8c2U
そう言いながら、ルヴィアから海堂の元に一枚のカードが投げられた。
書かれているのは中世の戦車のような物を繰る戦士の姿。

「何だこれ?」
「おそらくあなたの探しているユカという人の近くには美遊がいるはずですわ。
 そのカードはこの場において使いこなせるのはおそらく二人、その一人が――」
「おめーの妹ってわけか?」
「ここまで言えば分かりますわね」
「おう、つまりこいつをその美遊ってやつに渡せばいいんだな?
 しゃーねえ、それぐらいのことはしてやんよ」
「お願いしますわ。もう行ってもよろしくてよ。
 大切な人なのでしょう?」
「べ、別にそんなんじゃねえよ、ただの仲間だ、ただの。
 …あーくそ!じゃああとのことは任せたかんな!!」

そうして海堂直也は走っていった。
途中でオルフェノクに変身したのだろうかと思うほどのスピードで足音は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。

色々と頼りないところもあるが、何だかんだであの男に助けられたのも事実だ。
それにこんな考えを持つなど笑われそうな話でもあるが、あの男なら何かやってくれそうな、そんな気がしてくるのだ。
自分の目に間違いがなければ、きっと美遊の力にもなってくれるだろう。

「妹を頼みますわよ、カイドウ」

そんな願いをこめて、おそらく声が聞こえることがないと分かっていながらもその男の名前を、おそらく初めて呼んだ。



【C-4/森林/一日目 黎明】

【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:怪人態、体力消耗
[装備]:クラスカード(ライダー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:結花の元へ急ぐ。ついでにルヴィアの妹も探す。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人)
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:結花……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。



272Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:11:40 ID:HTyC8c2U
フレンドリィショップ。
そこは様々な物品を取り扱う店舗であり、当然客の入れない場所には事務室もある。
本来であれば関係者以外立ち入り禁止であるその空間も、関係者の存在しないこの空間においては立ち入ることは容易い。

「こんなところで何の話があるんです?」

その空間、Nは大河の前に二人っきりで立っていた。
そもそもなぜ友達であるピカチュウやゾロアークまで排してこのような場所にいさせられているのか、Nには分からなかった。

「うん、まあ少しね。大したことじゃないの。
 ただね、ちょっと藤村先生、N君とお話したいなーって」
「…分からないな。何がしたいんだい?」
「だからただお話がしたいだけだって。少しでいいの」

全く意図が掴めないNに対して大河は言葉を続ける。

「N君ってさ、夢とかある?」

夢。無論持っている。
ポケモンを人間から解放し、本来の意味で人とポケモンが共存できる世界を作ること。
それが夢、己の存在意義だ。
多くのトレーナー、人間は反対するだろう。でも決して否定はさせない。
それを許すのは、――だけだ。

その夢、理想の全てを話すN。

「あなたも僕を間違っているというのかな?」
「……ううん、私は間違ってはいないと思うな」
「?」

だが予想外なことに、全てを話し終えた後大河から発せられた言葉は肯定だった。
なぜポケモンのことも知らないはずの彼女が僕の理想を肯定できるのか、理解できなかった。

「でもね、その夢を叶えるのに君は一つだけやらないといけないことがあるの、分かる?」

やるべきこと?それは伝説のドラゴンポケモンを従え、僕の理想と対等に渡り合えるようになった彼を倒し――

「人というものを理解すること、それがN君がやらなきゃいけないこと」
「え…?」



「遅いですわよ」
「ごめんごめん、あれ?海堂君は?」
「もう出発させましたわ。向かう場所が違うのなら待たせていても仕方ありませんでしょう?」

5分を若干過ぎた頃、ようやく戻ってきたNと大河。
別にそれをとやかくいうほどルヴィアは狭い心をしてはいないが。
待ちくたびれたのか、ゾロアークはNの元に飛びついていく。
そんなゾロアークの頭を撫でるN。

273Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:13:08 ID:HTyC8c2U


「一体何の話をなされていましたの?」
「うん、ちょっとね。ちょっとした面談みたいなもの。でももう終わったからいいの。
 それじゃ、早く桜ちゃんを追いかけに行こう!!」

好奇心から問うが、返ってきたのは要領を得ない返事。なんだか誤魔化された気がしたが、これ以上聞いても答えは出ないだろう。
だからあの女、間桐桜のことを考える。

あのにっくき遠坂凛の妹、そして――自分の恋敵。
どうもあの女との因縁は彼女が死んで終わったわけでもなさそうだった。
美遊との合流を前にしても、その因縁は無視できるものではなかった。
それに美遊にはサファイアもついている様子。ちょっとやそっとのことで遅れは取らないだろう。なにしろこのルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの妹なのだから。

あの女には遠坂凛の妹であること、そして衛宮士郎に好意を持つことがどういう意味をもつのか叩き込んでやらなければ気がすまない。
無論、藤村大河の言葉でもどうにもならないことが分かればそのときは――殺すだけだ。

それに大河からはまだ聞かなければならないことがある。
彼女の知る衛宮士郎、そしてセイバーとは何者なのかという事を。

「ええ、では参りましょうか」

彼に妹を託したことを間違いではないと信じて、ルヴィアは因縁を清算する戦いに向けて出発した。

(そういえば、結局助けてもらったお礼、言えませんでしたわね…)



あまりに混じり気のない、純粋というものは得てして染まりやすいものだ。
白という色に、少量でも別の色を混ぜるとそれは白ではなくなる。白という色はR、B、Gが均質であるが故、そのバランスを少しでも崩すと白とはいえなくなるだろう。

Nに平穏を与えていたという平和の女神は、彼の心をあまりにもピュアでイノセントと称した。
その心に不純物ともいえるだろうものが混じったのはおそらくあるトレーナーとの出会い。これまで人間に傷つけられたポケモンのみを見て過ごしてきたNにとっては大きな衝撃となった。
そして今、新たな不純物がその心に混じりつつあった。

『N君ってさ、人に対して凄い偏見を持ってると思うのよね』
『君はそのポケモンっていう子達のことは理解してるみたいだけどさ、片方だけ理解していても共存なんて無理だと思うの』
『だってそれを目指すN君も、人間じゃない?』

今まで人間というものはポケモンとは決して相容れないものと、そう考えて生きてきた。
だが、彼女はそんな人間を理解していなければならないと言った。

今までこの理想を理解できず非難する多くのトレーナーの声も聞いてきたが、そのことごとくを人間の勝手と自分の中で切り捨ててきた。
だが、大河の言葉はそう言って切り捨てるには、Nは純粋すぎた。故にその内に小さくも確実に疑問を作りつつあった。
すなわち、『人間とは何なのか』、と。

274Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:14:54 ID:HTyC8c2U
(…うーん、やっぱちょっといきなりすぎたかな?)

やはり大河にとってはあまり自信がなかった。なにしろ自分はあくまで教師でありカウンセラーではないのだから。

Nの夢を聞いたとき、正直外れていて欲しかった嫌な予感が事実であることに気付いてしまった。
もしあの部屋を見ていなかったら、大河とてNの違和感に気付けなかっただろう。

Nの城。つまりさっきまでいたあの場所は彼が住んでいた場所なのだろう。

あの猛獣が暴れたかのような傷痕――彼の連れていた黒いキツネを見てわかった。きっとあのような生き物とずっと過ごさせられたのだろう。
おかしな遊ばれ方をしたおもちゃ、テレビも本もない部屋――それは人と隔離され、ずっと一人で過ごしていたということ。
プクちゃんの言葉が分かるというのもそれが原因かもしれない。何かの本で、狼に育てられた子供の話を読んだことがある。
全ては憶測でしかない。だがNが見ているものを知ってしまった時、それらの憶測が糸のように繋がったのだ。

今にして思えばぞっとする話だ。
虐待どころではない。あそこまでくると親にとって何か都合のいい人形か何かとして育てられたのではないかとさえ思えてくる。

きっと、Nは人とまともに付き合ったことはないのではないか、と大河は感じた。
長い間、そのポケモンという生き物だけと共に過ごし、人というものを知らないで育ったのではないか。そして、自分が人間であることすら知らずに育ったのではないか、と。
そこまで行くと考えすぎかもしれないし、できればそうであってほしいが。

自分には彼の夢は分からない。だから否定することはできない。
人間とそのポケモンという生き物の共存できる世界。よく分からない大河には大きく、立派な夢に思える。
だが、彼は人間を知らない。そしておそらく、自分も人間であるということも知らないのかもしれない。
だからせめてNに人間がどういうものなのかということを、いいところも悪いところも色々と教えてあげたかった。

桜のことも心配だが、だからといってNを放っておくことなど大河にはできなかった。
こういうことは時間が必要だ。慌てても何も変わらない。それでも、きっかけぐらいは作ってあげたかった。

間桐桜、N。
保護者として、教師として、そして一人の大人として助けなければいけない者達。
大河の戦いは始まったばかりだ。


【C-4/フレンドリーショップ/一日目 黎明】

【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:魔力消耗(大)
[装備]:澤田亜希のマッチ@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、ゼロの装飾剣@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:間桐桜を探し、どうにもならないなら引導を渡す
2:元の世界の仲間と合流する。特にシェロ(士郎)との合流は最優先!
3:プラズマ団の言葉が少し引っかかってる
4:オルフェノクには気をつける
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:美遊のことは海堂に任せる
7:大河から詳しい話を聞く
[備考]
※参戦時期はツヴァイ三巻
※並行世界の認識。 『パラダイス・ロスト』の世界観を把握。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

275Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:16:03 ID:HTyC8c2U

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定、ゾロアークを牽制)サトシのリザードン(戦闘不能、深い悲しみ)
    ゾロアーク(体力:満タン、海堂と大河を警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品、カイザポインター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモンセンターに向かう
2:タイガの言葉が気になる。
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:人を傷付けはしない。なるべくポケモンを戦わせたくはない。
5:ミュウツーとは出来ればまた会いたい。
6:シロナ、サカキとは会って話がしてみたいな。
7:人間って、何なの?
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ、顔面強打
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:桜ちゃんを助ける
2:Nをちゃんとした人にしてあげたい
3:士郎と桜を探す
4:セイバーも探す
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)
※間桐桜の状態がデルタギアの影響であると思っています

※フレンドリィショップでは回復アイテムしか探していません。それ以外の物で使える道具があるかもしれません。

276 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:17:55 ID:HTyC8c2U
投下終了です
矛盾などありましたら指摘お願いします
そして予約が長期間にわたってしまい申し訳ありません

277名無しさん:2011/12/28(水) 02:37:31 ID:MOLipgEQ
投下乙です

最初は指摘から
海堂さんはカイザの呪いを知りません
劇場版の啓太郎も知らなかったわけですし、本編だと流星塾組、真理、巧以外はカイザの呪いを目撃していないand説明を聞いていません
草加登場時も、啓太郎は呪いを目撃or説明されるようなじたいには遭遇しませんでしたし、そのあとカイザの呪いに触れているのは草加と花形社長くらいです

そして感想
二組にわかれましたか
地味にルヴィア、Nが危機に直面しているw 特にルヴィアさん……そのセリフは……w
大河いい感じにNに影響与えるようなこと言っているなぁ。胸が暖かくなった。タイガーの胸ないけど
投下乙!

278名無しさん:2011/12/28(水) 05:12:11 ID:8/6j8tOU
投下乙
Nはゲームでは救われないから、彼をいい方向に導けられるかも知れない人と出会ってよかったな

流石先生、Nの心を癒し和らげてくれ 大河の胸は和らいでないけど

279名無しさん:2011/12/28(水) 11:50:22 ID:5SaYG656
>>277については
「で、もう一つは人間でも変身できるけどその後で灰になっちまうんだよな」
の一文さえなければ丸く収まる話でしょうか。
その辺り(海堂がカイザの呪いを認知してるか)は少しあいまいなところがあるので。

それはともかく投下乙。
さすがタイガー!俺たちに出来ないことをあっさりとやってのけるッ
Nに必要なのは良き大人だよね。普段はあんなでも教育者だぜタイガー……
さりげなくポケモン4匹の過多戦力だけど……奪われることを考慮に入れると決して安全とはいえないんだよなぁ

280 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 12:07:13 ID:HTyC8c2U
指摘ありがとうございます
そういえばそうでしたね。その辺りは修正しておきます

281名無しさん:2011/12/28(水) 12:26:57 ID:MOLipgEQ
>>279>>280
それで問題ないと思います
修正お待ちします

282名無しさん:2011/12/28(水) 13:03:58 ID:ED8LgzfA
投下乙です

別れたのか
ルヴィアさんはヤバいなあ。Nもヤバそうだが大河さんがいてくれて助かったよ
でも大河さんは大河さんでやること多いしな…
先が気になるなあ

283 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 14:57:14 ID:HTyC8c2U
修正したものを一時投下スレに投下しておきました
確認お願いします

284名無しさん:2011/12/28(水) 16:38:19 ID:MOLipgEQ
>>283
修正乙です。問題ないと思います

285名無しさん:2011/12/30(金) 18:33:35 ID:P9.Wcx1I
◆Z9iNYeY9a2氏より
今更ですが、「Nの心/人間っていいな」の時刻表記が【黎明】でした。
【朝】か【昼】か【午前】か、指定をお願いします

286 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/30(金) 19:18:31 ID:e6rt8qAk
【朝】でお願いします

287名無しさん:2011/12/30(金) 19:45:26 ID:P9.Wcx1I
対応しました

288 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 18:55:00 ID:MUYBXhzA
お待たせしました
これより投下始めます

289独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 18:57:58 ID:MUYBXhzA
走る美樹さやか。
しかし今の彼女は焦りによって冷静さを失っていた。

ゲーチスを襲った襲撃者。それを探して街の中を走っていた。
あの時のニャースのボロボロになった姿。相手はきっと何かしらの力を持っているに違いない。
だが、今自分には魔法少女としての、人を守るための力があるのだ。戦えない人達を守るために、絶対に襲撃者は逃がしてはいけない。

そんな、何かに急き立てられるかのように走り続けた結果、

「……ゲーチスさん?」

気付くと、守ると決めたはずのゲーチスの姿が見えなくなっていた。
魔法少女の全力疾走に、(身体能力的には)人間でしかないゲーチスがついてこれるはずもない。
探しに戻るか、あるいは襲撃者を追うか、その二つが頭の中で渦巻く。
が、考える時間がもったいないとして、即座に襲撃者追跡に向かう選択肢を選んだ。
時間勝負なのだ。早く片付けて彼の元に戻ればいいと、そう自分に言い聞かせて。

もし、ここで彼女に(利用されているとはいえ)ゲーチスを探すという選択肢が取れるほどの冷静さがあったなら。
その結果ゲーチスに弄ばれることになったとしても。
あのような結果を生むことはなかったかもしれない。



そんな美樹さやかのいる場所からそう遠くもない道路の車道。
政庁に向かう救急車の中での出来事。

「……う…ん?」
「やっと起きたのか、マミ」

政庁も近くまで迫った辺りで、巴マミは目を覚ました。
それを確認した杏子は巴マミに話しかける。

「佐倉…さん…?」
「そうだよ、あたしだ。しっかりしろよ」

まだはっきりと目が覚めているわけではないようだ。詳しい話を聞くのはもう少し待ってからのほうがよいだろうか。

「…?……たっくんは?」
「は?たっくん?……ああ、乾巧のことか。
 なんだよその呼び方。一瞬誰のことか分からなかったじゃねえか」

まさかあの巴マミが他人にそんな呼び方をするとは思わなかったので突如出た呼び名に戸惑ってしまった。
話を聞いた限りでは自分から置いていったという話だったような。言うべきだろうか。

290独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:01:00 ID:MUYBXhzA
「その巴マミって人目を覚ましたの?」
「ん、ああ。まだ半分寝ぼけているみたいだけどな」
「……暁美さん?」

話しかけていると、前に座っているクロが話しかけてきた。
はっきりと目が覚めていないせいか、どうやらその声を自分の知る魔法少女のものと勘違いしているようだった。

(そういやどことなく声似てるよな?)
「マミ、こいつはな、」
「…ひっ!!!?」

前の助手席から顔を覗かせる、自分達とは違う魔法少女についての説明をしようとしたとき、その少女の顔を見たマミの顔が驚愕に包まれる。
それはまるで幽霊でも見たかのような顔、少なくとも杏子はマミのそんな顔を見たことはなかった。

「おい、どうした?!」
「嫌…、来ないで!」

なぜかクロの顔に怯えながら、よりにもよって魔力で作り出したマスケット銃を向け始めた。

「え、何?」
「おい止めろマミ!」

パンッ

状況が掴めなかったクロは反応が遅れてしまうが、慌ててその腕に飛びついた杏子のおかげで銃弾がクロを貫くことはなかった。
しかし、放たれた銃弾はフロントガラスの中央を突きぬけ、前面の視界を遮るほどのヒビを作った。
運転者、夜神総一郎はあまりに突然の出来事にとっさに急ブレーキを踏む。
大きな音をたてながら急ブレーキの衝撃で揺れる車内。。
そんな中、巴マミは後部のドアを体当たりで強引に開いて飛び出して行った。

「マミ!!」
「一体何があった?!」
「知らねえよ!何かいきなり錯乱しやがったんだ。
 お前ら先に行ってろ、あたしはすぐマミ連れて追っかけるから!」
「佐倉くん!」

そう言い残し、マミを追うために救急車から飛び出した杏子。

「私の顔見た途端、いきなり怯えだしたのよ。何が何だか…」
「…彼女のことは佐倉くんに任せて大丈夫なのか?」
「どうもあの反応だと私も行くとややこしくなりそうなのよね。一体何なのよ…?」

あまりにも急な出来事。
ゆえにクロエは一つの可能性を失念していた。
巴マミが自分と同じ顔をした存在――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと遭遇したという可能性を。
まあもしその考えに至ったとしても、一見巴マミとも相性のよさそうに見えた彼女とその行動につながりを求めることなどできないだろうが。



291独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:03:43 ID:MUYBXhzA

走る巴マミの精神状態はかなり不安定だった。
救急車を飛び出すときにドアに体当たりしたことでその体には若干の打撲を負っていた。
しかし、そんな痛みも今の彼女には気にする余裕がなかった。

さっきの少女の顔。それはあの時ルルーシュの前で戦ったあの少女と同じものだった。
そしてそれは、その少女との戦いの中の記憶を掘り起こされるには充分な刺激となってしまったのだ。

あの戦いで私は何をした?
ルルーシュに撃たれた。だから危険と判断して彼を拘束しようとして。
そしてその少女が現れ、戦い――
その先の記憶が断片的にしか思い出せない。

金色のロボット。
吹き飛ぶルルーシュの腕。
そして、炎に包まれる周囲。

(私が…、ルルーシュを…、あの少女を、殺した…?)

それだけの記憶からマミはそれが何を意味するのかに気付く。
つまり、あの時ゆまを見捨てたように、今度はこの手で人を殺してしまったというのか。

もしあの行動が、自分で最良と思い下した判断であればここまで混乱し、不安定にはならなかっただろう。
だが、マミにはそれに至るまでの記憶がなかった。生きろと命じられたギアスは、己の意思とは無関係に彼女を生かすためだけに最良の判断を取らせる。
それが自分というものに対する認識を分からなくさせ、マミの心に得体のしれない恐怖を煽る。
それに加えてティロ・フィナーレを人を殺すために使ったという事実もまたマミの精神を追い詰める。

(違う…、あれは…あんなの私じゃ…)

イリヤスフィールの名を知らず、放送を聞き逃したマミの中では、あの少女は自分が殺したと思い込んでいた。
だからこそクロエの顔を見てそれまでの記憶がフラッシュバックしてきたとき、その少女が自分を責めるために現れたとしか考えられなかった。
そして、今の彼女にはその責めを受けることができる勇気などあろうはずもない。

転びそうになりながらも走るマミの頭の中には、一刻も早くその得体のしれない何かから逃げることしかなかった。



「…どこに行ったっていうのよ…?!」

もうかなり走り回ったにも関わらず襲撃者は見つからない。
その存在が虚実の中にしか存在しないということに、未だ気付いていない。

さやかの中にはゲーチスに嘘を付かれているという発想はない。
元々彼女自身そういった人間の負の部分とは無縁に生きてきたのだ。
弥海砂という、嘘をついて人をおびき寄せたという存在を知ったところで、ゲーチスの黒い部分に気付くはずもない。

彼女の中の焦りが大きくなる。もし見つけられなければ危険にさらされるのはゲーチスなのだから。

そして走り続けるさやかは小さな物音を聞く。
ほんの小さな音。しかし今、何の手がかりもないさやかには、その音は手がかりになりうる唯一の存在だった。

その音がした場所でさやかは、

「…何やってんのよ、あんた」

鎖状に変化させた槍で縛った巴マミの腹を殴り気絶させる佐倉杏子の姿を見た。

292独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:04:50 ID:MUYBXhzA



夜神総一郎が難しい顔をしているのを見て、ふと気になったクロエが話しかける。


「やっぱり心配?」
「当たり前だろう。あんな子供達だけを残して行くなど…」

夜神総一郎は魔法少女が実際に戦っているところを見たわけではない。
だが、そこに自分が行っても何かできることがあるとは思えなかった。
巴マミという少女のことは佐倉杏子に任せるしかない。

「ま、大丈夫だと思うけどね。あの子結構経験積んでるみたいだし」
「何?」
「多分1年かそれ以上は。でもあのマミって方はそれ以上みたいなのが気になるけど」
「……」

ふと思い出す。
確か彼女には家族はいないと言っていた。だがあの少女がどこかの保護施設にいたとは思えない。
ならばそれまでどうやって生きていったというのか。


「どうかした?」
「クロエ君、確かにあの子達はそういう戦いには慣れているかもしれないしそれに手を貸してやることはできないだろう。
 しかしな、だからといって人間というものは一人で生きていくことはできない。導いてやる存在も必要なんだ」
「え?」


かつて弥海砂という、殺人犯に家族を殺された者がいた。
犯人は捕まったにも関わらず司法において裁きを下されることはなかった。
そうして大きく傷ついた彼女は、キラの裁きに救われ、彼に心酔し多くの人を殺す殺人者となった。

無論裁きと称されたそれを肯定するつもりはない。それは例え息子の言葉であっても動かされるものではない。
だが、もしそのときにその犯人に相応の裁きが法によって与えられていれば、あるいは彼女の心の傷を癒す存在があれば。
彼女があそこまで道を外してしまうことはなかったのではないか。
そして法による裁きを与えるのも、当時少女だった彼女の心を癒すのも、それらは我々のような大人がするべきことではないのか。

人間というのは一人で生きるものではないのだ。
特に子供にはそれを導いてやる大人の存在が不可欠だ。
確かに彼女達の戦いというものには力を貸すことはできない。
だがそれでも、彼女達が間違ってしまったときなど、正し、支える存在は必要なのだ。

脳裏に、ずっと共にいたにも関わらず彼の持つ歪みに気付いてやれなかった、息子の姿が浮かぶ。

こんな場所だが出会ったのも何かの縁だ。
あの二人と合流したらその辺りをきちんと教えてやるべきだろう。
特に佐倉杏子とは色々と慌しかったせいで共にいた時間の割にあまり話していない。
少し落ち着いたらそういった話もしてやるべきだろう。
全てを自分ひとりで背負い込もうとせず、もっと周りの人間のことも頼るべきだ、と。

293独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:06:39 ID:MUYBXhzA
「もうそろそろか?」
「あ、うん。だいぶ近付いてきてるわね」

時間は8時になろうかとする今、二人を乗せた車は政庁へ向けて走る。
到着は近い。


【D-2/市街地/一日目 朝】

【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本:みんなと共に殺し合いの脱出
1:みんなを探す。お兄ちゃん優先
2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい
3:どうしてサーヴァントが?
4:9時に政庁に集合する
[備考]
※3巻以降からの参戦です
※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例)
※C.C.に対して畏敬の念を抱いています


【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:休んでいる暇はない。警察官として行動する。
1:政庁に行き、月の嘘についてを説明する。
2:警察官として民間人の保護。
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。
6:二人が気がかりだが…
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。




「…はぁ…はぁ、佐倉さん来ないで!!」
「おい、どうしたってんだよ、何で逃げるんだ?!」

佐倉杏子が巴マミを見つけるのにそこまで時間は掛からなかった。
逃げるマミの魔力を追っていけばすぐに見つけることはできるのだ。
加えて今のマミは走り方すらおぼつかないようだ。やがて足を縺れさせ転んだ所で槍を多節棍に変化させて身動きを封じたのだ。
今のマミを落ち着かせるにはそれしか思いつかなかった。それに下手に銃を撃たれても困る。

294独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:07:46 ID:MUYBXhzA
「離して!あれは私じゃないの、私じゃないのよ!!」
「あーもう、少し落ち着けよ!何があったんだよ?!」
「あ、あの子は私が殺したの…!でもあれは私じゃない…!あんな私知らないの!」
「はぁ?何言ってんだよマミ。あいつは死んじゃいないだろうが。じゃなきゃあそこにいるわけないじゃねえか」

杏子にはマミが何を言っているのかが分からなかった。
先ほど会ったときにはこんな様子ではなかったはずだ。この数時間のうちに一体なにがあったというのか。

拘束されてなお、マミは必死で足を動かし逃げようとしている。
放っておくわけにはいかないが、このまま連れて戻るにはあまりにも危ない。

「ああくそ、仕方ねえ!」
「あぐっ!」

止むをえない。
余りの取り乱しように落ち着かせることを諦めた杏子は、マミの腹に力いっぱいの拳を打ちつけた。
息を吐き出すような音を出してマミは意識を失った。

「はぁ、目が覚めるまでには落ち着くか?」

鎖でぐるぐる巻きにしたまま、抱えあげようと近付く杏子。
荒療治ではあるが、マミの精神状態からするとまあ間違ったやり方とはいえないだろう。
もしこのままの状態で放置しておくと何をしでかすかわからない。

ただ、この場合。

「…何やってんのよ、あんた」

少し間が悪かった。

「え?」

杏子は聞き覚えのある声にふと振り向く。
頭の中が真っ白になった。

青い髪、白いマント、剣を構えるその少女の顔は怒りに彩られている。
それはかつて救えなかった、自分と同じ道を歩みかけ、違う末路をたどった少女。
美樹さやかが立っていた。

「何でマミさんを…」

その言葉を受けてはっと今の状況に気付く。
マミはさやかの憧れの魔法少女である。そんな人を縛り上げ、あげく殴って気絶させる。
そんな行為がさやかにはどう映っただろうか?


弁解しようとするも焦りから言葉が出てこない。
そもそも彼女は鹿目まどかの家に向かったのではないのか?どうしてここにいるのだ?
もし会ったら色々と言いたいこともあった。もし変な方向に行こうとしているならちゃんと言って聞かせないといけないから。
しかし、一時的にだがさやかのことを頭から外してマミのことに意識が行っていた杏子は唐突すぎる邂逅に何を話すべきかをすっかり忘れてしまった。

295独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:09:48 ID:MUYBXhzA
故に、さやかの問いかけには沈黙をもってしか答えられなかった。
今のさやかにそれはまずかったというのに。

「…やっぱり、あんたもそうなんだ?」
「い、いや、さやか、これはだな――」

ガキン!!

混乱する頭を回転させて話そうとした杏子の元にさやかは一瞬で詰め寄り、その剣を振りかざした。
反射神経がかろうじて反応し、その手に新しく槍を作り出して受け止める。

「あんたは!私はあんたならこんなところで殺し合いに乗ったりしないって信じてたのに!!
 よりにもよって!マミさんを!!!」
「ま、待て!少し話を――」
「うるさい!そうやってまた私を惑わそうっていうの?!
 私は違う!あんたみたいに自分のために生きたりなんかしない!」

さやかと杏子の剣戟。それはいつか、初めて二人が会ったときと同じ構図。
元々さやかと杏子の能力、才能自体にはそこまで差はない。初めての戦いにおいては経験の差が決定打となってさやかを追い詰めていた。
しかし、今の戦いでは明らかに杏子が押されていた。
さやかは己の憧れの先輩を守るためにおそらく己の限界を超えるのではないかというほどの動きを見せている。
しかし杏子はさやかと戦う意志はなく、むしろこの状況に戸惑っている。さらに戦いのなかでは己の思考が纏まらず、どうするべきなのかすらはっきり分かっていない。
ゆえに伸縮自在のリーチを持った攻撃も多節棍を用いた拘束技も使用できず、たださやかの攻撃を受けるのみという有様だった。
そして、杏子と全力でぶつかったことのあるさやかだからこそ、そのような動きをする杏子には舐められているとしか考えられず、更なる怒り、苛立ちから剣の一閃をより激しくさせる。

さやかの剣の一閃を、槍で弾く。だがそのあとが続かない。
大振りになって隙だらけの胴体を見せる。だが迷いが攻撃の機会を逃させる。
今の杏子にはかつてのように軽くあしらうような余裕はなかった。

だが杏子自身、そんな自分とあまりに聞き分けのないさやか、こんな現状に少しずつ苛立ってきた。

「ああくそ、いい加減にしやがれ!!」

と、その苛立ちをぶつけるかのようにさやかの剣を力いっぱい弾き飛ばす。体が隙だらけになるのも構わず。

(―あ)

296独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:11:15 ID:MUYBXhzA

そして気付く。
さやかが剣を弾かれた無茶苦茶な体勢から、また新たに作り出した剣をこちらに振りかざしていることに。
本来ならばとれるはずのない姿勢。それができるのは魔法少女故だろう。
それが体に掛かる負荷を度外視してのその一閃。この体勢からそれを避けるのは無理だ。

(――畜生)

それが体に触れるまでの間、まるで時間がゆっくりと進むかのような錯覚にとらわれる。
その中で、ふと脳裏に浮かんでくる光景。これが走馬灯というものなのだろうか。
あの日魔女の結界から出たとき、偶然父親に見られてしまった。
それさえなければ家族が崩壊することはなかったはずだ。
あの時さやかをようやく探し出したとき、すでに手遅れだった。
もう少し早く見つけられていれば。
そして今回。
またさやかを救うことはできなかった。

(なあ神様、なんであたしっていつもこんな――)

そうして弾いた剣が地面に突き刺さったと同時。
さやかの剣は杏子の体を斬り裂いた。



「はぁ、はぁ…」

無茶な体勢から斬りつけた一撃。
それはさやかの肩と背筋に大きな負荷をかけ、筋肉の断裂、捻挫を引き起こしていた。
無論さやか自身そんなことは承知の上だ。これぐらいの犠牲がなくては勝てる相手ではないと思っていたから。
そのはずだった。

「…何でよ?」

痛みも気にすることなく問いかける。
納得がいかなかった。
かつて戦ったときはこんなやつだっただろうか。
今の一撃など、避けられないまでもダメージを最小限に抑えるくらいはできたはずだ。
そもそもそれまででもずっとこんな調子だった。手を抜かれているのかと思っていた。
だから本気で戦っていたのだ。ともすれば死に繋がるかもしれないほどに。
なのに。

「あんたこんなものじゃなかったでしょ!!」

血塗れた剣を振りかざして叫ぶ。
しかし返事などない。
地に伏せた佐倉杏子の体は魔法少女の衣装ではなくいつもの普段着に戻っている。
傷が回復する様子もなければその顔には生気などない。
未だ目覚めぬ先輩の体を縛る鎖も消えていた。

そう、最後の彼女の一撃。
それははっきりと杏子の胸部を裂き、ソウルジェムを破壊していたのだ。

「あのときみたいにもっと攻めてくればいいじゃない!!
 何でよ!私がそんなにおかしいの?!」

その事実を否定したいのか、あるいはそれまでの過程を否定したいのか。
さやかはもの言わぬ骸となった杏子に叫び続ける。
彼女には佐倉杏子に手加減されるような覚えはなかった。せいぜいあの教会での会話だが、この場で巴マミを襲っている彼女がこうなることには繋がらない。
認めたくなかった。自分よりも強かったあの佐倉杏子がこんなに、驚くほどあっさり死んでしまったことを。
だがどれだけ叫んでも現実は変わらない。

297独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:13:21 ID:MUYBXhzA
そして、

「…佐倉、さん?」

その声が一人の魔法少女の意識を覚まさせた。
さやかの意識はその声の主に向かう。

「マ、マミさん、大丈夫ですか?」
「あなたは…誰…?」
「え?」
「あ…佐倉さん!!」

血塗れになって倒れている杏子に気付き駆け寄るマミ。
己の制服が血塗れになるのにも構わずに杏子に呼びかける。

「佐倉さん!しっかりして!佐倉さん!!」

その叫ぶ声は襲われた相手に向かってかけるようなものではなかった。


どうしてマミさんは自分に襲い掛かった相手をこんなに心配しているのだろうか?
もしかしてマミさんと佐倉杏子って何処かで何か関わりがあったのだろうか?

だとしたらちゃんと殺してしまったことについて話さなければいけないだろう。
マミさんならきっと分かってくれるはずだ。

シュルッ

「え?」

そのはずなのに。
何で今この体にはマミさんのリボンが巻きついているの?
何でその銃をこっちに向けているの?
何でマミさんは私のことを、まるで仇を見るような目で見てるの?

「マ…マミさ―」
「何でよ!どうして佐倉さんを!!この子が何をしたっていうの!!」

大声でまくし立てる巴マミ。そこにはかつてさやかが憧れた魔法少女の姿はなかった。
今のさやかは体を縛られており、身動きをとることができない。
だが、もしその拘束がなくとも今のさやかは動くことはできなかっただろう。
例えマミがその手に持つマスケット銃の引き金に指をかけていたとしても。

どうして?ねえ、マミさん、私ですよ?美樹さやかですよ?
私、マミさんみたいにみんなを守れるようになりたくて魔法少女になったんですよ?
これから一緒に戦えるんですよ?
なのにどうして?どうしてそんな目で私を見るの?

それじゃあ、まるで私―――――

298独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:14:57 ID:MUYBXhzA


巴マミにとっての佐倉杏子とはどういう存在なのか。
一言でいえば共に戦ったこともある仲間ということになるだろう。
しかし、両親を失い、ずっと一人孤独に戦ってきたマミにとっては、たとえ仲違いしてしまった後でも大切な、そして唯一の存在であったのだ。
この巴マミにとっては暁美ほむらは利害次第で協力し合える魔法少女ではあるが決して親しい仲ではない。美国織莉子、呉キリカはむしろ敵対する存在である。
千歳ゆまとは関わりこそ薄いものの友達と言えるくらいの関係はあった。だが彼女はもうこの世にはいない。
そして――美樹さやかに至っては存在すら知らない。

だからこそ、その唯一の仲間だったといえる佐倉杏子を殺した相手を目の当たりにして、激情に任せてその手のマスケット銃で相手の頭を吹き飛ばしてしまっても。
それ自体は仕方のないことなのかもしれない。

頭を吹き飛ばされたその魔法少女の死体は目から上を喪失させて倒れていた。
その死体を前に、巴マミは己の行動に大きく後悔していた。

「佐倉さん…!ごめんな…さい…!」

もしあの時自分がしたこととちゃんと向き合えていればこんなことにはならなかったはずだ。
あそこで罪の幻影から逃げ出したりしなければこの魔法少女に襲われて死ぬことなどなかっただろう。
千歳ゆまが死んだときと同じ。全ては自分のせいだ。

仲間を失ったという大きな喪失感がマミの心を絶望で覆う。
もう仲間が誰もいない一人ぼっちという今への絶望感。
それはマミの目には届かないもののソウルジェムの濁りとして表れていく。
だが、そんな中でも一つの希望があったことを思い出す。

「…たっくん?」

もしもの時、お互いの命を預けあった存在、乾巧。
だが今この場にはいない。
さっき飛び出したときにおいていってしまったのだろうか。その辺りの記憶は寝起きの上色々とショックも大きなことがあったためよく覚えていない。
もしそうなら今すぐにでも追わなければいけない。
だがそっちに向かうとまたあの魔法少女の亡霊に会ってしまうかもしれない。

299独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:16:05 ID:MUYBXhzA
今更何だというのだ。
もうこの魔法少女を、殺人者とはいえ殺してしまったのだ。
もはや逃げるだけではなく受け入れなければならないのだろう。

そして最後に杏子の骸をせめて人目につかない通りに隠し、マミは歩き出した。
大きな絶望を、唯一の小さな希望で誤魔化しながら。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ)、大きな罪悪感、精神不安定
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×10@Fate/stay night、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)、不明支給品0〜2(未確認)、グリーフシード(未確認)
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る。だけど…
0:たっくんに会いたい
1:さっきの救急車を追う
2:自分が怖い
3:佐倉さん…
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています  
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識
※金色のロボット=ロロとは認識していない
※銀髪の魔法少女(イリヤスフィール)は死亡しており自分が殺したものと認識
それと同じ顔をした少女(クロエ)はそれゆえに見える幻影と認識
※蒼い魔法少女(美樹さやか)は死亡したと認識




そうしてその場に残った美樹さやかだったもの。
だがそれは少しずつではあるが元の形に戻りつつあった。

300独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:17:08 ID:MUYBXhzA
もし、巴マミが頭を吹き飛ばされていたらまず死んでいたと思われる。
ソウルジェムが頭についているからという話ではない。
彼女はソウルジェムの秘密を知らない。ゆえに多少頑丈であっても心臓や脳など急所を撃たれれば死ぬと考えている。
先に撃たれたのは心臓であったが、脳に働きかける生の呪縛が彼女を生かした。
だがその脳を破壊されれば呪縛は働きかけなくなるだろう。そしてその再生より早く死への絶望がソウルジェムを汚し尽くす。

しかし美樹さやかはその秘密を知っていた。
魔法少女の体などただの抜け殻にすぎないことを。ソウルジェムさえ無事なら死ぬことはないことを。
だからこそ彼女は未だ絶望してはいない。
さらに彼女固有の能力、癒しの力によりその頭部は少しずつ形を戻しつつある。
そして完全に形を取り戻してしばらく後には再び意識を取り戻すことだろう。

だが、それが果たして彼女にとって幸せなことなのか、あるいはこの場で絶望に身を任せてその魂を消滅させてしまったほうが幸せだったのではないか。
それはまだ分からない。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:頭部欠損(回復中)、意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】

※D-3、美樹さやかの近くに基本支給品、羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1が放置されています。

301 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:19:34 ID:MUYBXhzA
投下終了します
おかしなところがあれば指摘お願いします

あと、雑談スレでも言われていましたが
もしゲーチスも書いたほうがよければそこのパートを追加しようと思います
なのでそれについての意見もお願いします

302名無しさん:2012/02/02(木) 19:34:17 ID:iEUJ7OnY
投下おつ
杏子……あんあんされず死亡確認!
さやかさんもマミさんもやばい状況だw
余裕ない人たちだな、ほんとに

ゲーチスはどちらでもいいですかねw
なくても問題なさそうですし

303名無しさん:2012/02/02(木) 22:11:59 ID:mWk6FunE
投下乙
あれ……なんか十話でこんな感じの話を見たような……
原作キャラ同士なのにこうも擦れ違うとは。おまいらちょっとは仲良くせいよwいや無理な状態なのはわかるけど
あんこちゃん……斬られて撃たれてホントご苦労さまです(泣

ゲーチスは……微妙なところですが、先に行けとかでほんの少しだけ出すぐらいは…?
氏の負担にならない程度の追加ならあった方がいいかもしれません
実はこっそりとナズェミデルンディス!しててもいいしねw

304名無しさん:2012/02/02(木) 23:30:58 ID:wyR2ZuYU
投下乙っす。
マミを助けようとしたら、誤解されて一番助けたかったさやかに殺されて絶望する杏子。信頼してた杏子を殺されて、自分を助けようとしたさやかを拒絶し、絶望の中ただ一人さ迷い続けるマミ。信じようとした杏子に裏切られたと思い、憎悪の果てに凶行に走り、その結果信頼してたマミの怒りを買い、わけがわからないまま絶望してゆくさやか。この3人の物語の果てにあるのは絶望しかない。…これなんて昼ドラ?

305名無しさん:2012/02/03(金) 18:03:28 ID:OOExkc6E
投下乙です

これは酷い(褒め言葉)
確かに原作でも微妙な関係だったけどそれがこういう形で火種にするとは…
悲劇だわ…

306名無しさん:2012/02/03(金) 18:12:00 ID:IT6S.cQw
投下乙です。
さやか熱くなりすぎだろ・・・
それにしてもマミさんは運が悪いww
勘違い魔法少女マーダーとか新しすぎる
そしてさやかは月の誤報とゲーチスの説法でアウトかな
これはW発狂マーダー化かな?

307名無しさん:2012/02/03(金) 19:41:20 ID:V8Yl7nhM
投下乙です。
やっぱりやりやがったな豆腐メンタルコンビwwwもうやだこの魔法少女www

おりこマミさんからした安定のさやかあちゃんは冷静な状態ならほむほむの友人の一人、程度のはずがまあものの見事にw

308 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/04(土) 00:24:01 ID:y6tIZUo6
ご意見、感想ありがとうございます
ゲーチスの件ですが書いたほうがいいという意見も見受けられますので若干の描写を追加させてもらっても構わないでしょうか?
おそらく土日中には投下できると思うので

309名無しさん:2012/02/04(土) 01:04:29 ID:M31pzWW.
投下乙です
うわぁ…ドロドロだな…この魔法少女達…
マミさんはこれでたっくんまで死んだら…アァァ…

310名無しさん:2012/02/04(土) 15:20:20 ID:IW0e6gx.
>>308
構わん、やれ
冗談ですお願いしますオールオッケーです待ってます

311名無しさん:2012/02/04(土) 16:26:26 ID:UHqxnhUI
いいんじゃないの
矛盾が無ければいいですよ

312 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:26:47 ID:WftRh.go
こちらでよろしいですかね?
ゲーチス加筆したものを以下のように差し替えさせてください
まず>>293の状態表前の部分を次のように
////
「もうそろそろか?」
「あ、うん。だいぶ近付いてきてるわね……ん?」
「どうした?」
「いや、今何か…」

ふと、クロエの目に一瞬黒い影がよぎった。
おそらく隣で運転中の総一郎には見えていないはず。
アーチャーとしての能力を持つクロエの視力だからこそ、それを視認できたのだ。
その黒い影は六枚の羽と三つの首を持った何かに見えた。
そのような生き物は自然界にはいなかったはずだ。もしかしたらシロナの連れていたガブリアスの仲間のようなものなのだろうか。
それは普通の人間なら見落としてしまいそうなほどの高度を飛び、やがて視界から外れていった。

「…、何だったんだろ?」

何故なのか分からないが、それがクロエにはとても不吉なものに見えた。

約束の時間も一時間と半刻という時間となる今、二人を乗せた車は政庁へ向けて走る。
到着は近い。
/////

313 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:30:12 ID:WftRh.go
>>299>>300のマミさんの状態表以降を次のように
///

「なるほど、なかなか面白いものではありましたね」

魔法少女三人によるこの出来事、その一部始終をゲーチスは見ていた。
正確にはさやかと赤い魔法少女が斬り結んでいるところからとなるが。

あの速さで走る美樹さやかにゲーチスが追いつけるはずもない。
だからサザンドラに上空からさやかの探索をさせておいたのだ。
当然、己の安全も第一であるため、怪しい人物を発見した際はさやかの追跡は諦めて戻ってくるように指示しておいたが、どうやらそれは杞憂に終わったようだった。
すぐにさやかを発見したためすぐにここへ来ることができた。

どうやらこの惨状は美樹さやかの先走りによるものらしい。まあ間接的には煽った自分のせいにもなるのだろうか。

ただ、一つ気になることもある。
あの金髪の少女―外見的特長からおそらく巴マミだろう―はさやかの知り合いと聞いていたが、あの反応はおかしい。
そもそもいくら仲間が殺されたといっても殺す行為にあまりに躊躇いがなかった。少なくとも知り合いにする態度ではない。
その関係自体に興味はないが、あの学園でのNのこともあり少し気になってしまう。

「どうも結論を出すには早いですか。
 さて、どうしたものか…」

近くに寄ってみても、やはり確実に彼女は死んでいる。
頭を吹き飛ばされたのだ。これで生きていたら人間、いや、生き物ではないだろう。

さやかの、あの巴マミに銃口を向けられたときのあの顔。あれは中々のものだった。
それだけに今ここで失ってしまうのも惜しい。だがこうなってしまった以上仕方あるまい。
そうなるとあの巴マミという少女。彼女を駒とするのもいいかもしれない。
だが彼女の向かう方向は政庁だ。行動するなら早く行かなければ。



さやかから視線をそらしているゲーチスはまだ気付いていない。
その、かつて美樹さやかであった骸の異変に。
撃たれた頭部が少しずつではあるが元の形に戻りつつあることに。

もし、巴マミが頭を吹き飛ばされていたらまず死んでいたと思われる。
ソウルジェムが頭についているからという話ではない。
彼女はソウルジェムの秘密を知らない。ゆえに多少頑丈であっても心臓や脳など急所を撃たれれば死ぬと考えている。
先に撃たれたのは心臓であったが、脳に働きかける生の呪縛が彼女を生かした。
だがその脳を破壊されれば呪縛は働きかけなくなるだろう。そしてその再生より早く死への絶望がソウルジェムを汚し尽くす。

しかし美樹さやかはその秘密を知っていた。
魔法少女の体などただの抜け殻にすぎないことを。ソウルジェムさえ無事なら死ぬことはないことを。
だからこそ彼女は未だ絶望してはいない。
さらに彼女固有の能力、癒しの力によりその頭部は少しずつ形を戻しつつある。
そして完全に形を取り戻してしばらく後には再び意識を取り戻すことだろう。

もし、ここでゲーチスが彼女の体に再び視線を戻せば、その異変に気付くだろう。
そうでなければ、異変に気付くことなく、おそらくは巴マミを追ってこの場を去っていくことだろう。

だが、どちらになったとしてもそれが果たして彼女にとって幸せなことなのか、あるいはこの場で絶望に身を任せてその魂を消滅させてしまったほうが幸せだったのではないか。
それはまだ分からない。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:頭部欠損(回復中)、意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

314 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:32:54 ID:WftRh.go
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:表向きは「善良な人間」として行動する
2:理屈は知らないがNが手駒と確信。
3:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
4:美樹さやかは惜しいが仕方ない。次の手として巴マミを駒としようか
5:政庁からはなるべく離れる
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします
※さやかがまだ生きていることには気付いていませんが、もしここでもう一度さやかを見ることがあれば異変に気付くでしょう。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】

※D-2、美樹さやかの近くに基本支給品、羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1が放置されています。
////

これでお願いします

315名無しさん:2012/02/05(日) 18:34:42 ID:ObjH2jc6
乙した。これで大丈夫かと思います

316名無しさん:2012/02/05(日) 18:51:30 ID:r1P8nXjQ
投下乙!
これまでどのロワでもマギカのメイン5人は生き延びてきたが、遂にここで死者が出たか
しかもこんな最悪な形で…
マミさんもさやかも、もろにパラロワというこのロワの特性に絡め取られちまったなあ。
これからいったいどうなるんだー!

317 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:26:15 ID:eSEoQ3Xs
村上峡児、オーキド博士、マオ投下します

318接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:09 ID:eSEoQ3Xs


「ここがしばらく禁止領域にならない。なら今は動かなくても構わないってことね」
 片目を隠している少女は自分に確認するようにつぶやいた。
 日は昇っているもの、廊下の窓は西側にあるため校内は暗い。
 彼女、マオはショーヘアの銀髪をかきあげながら、いまだ目を覚まさないオーキド博士を見下ろした。
 彼女のギアスは相手の目を見なければ発動しない。
 かつ、意識を失っている相手の思考を探るなど不可能だ。
 殺すにしても情報を探ってから始末したいものである。
 先ほどのやり取りと荷物を見たところ、抵抗する手段はないのだろう。彼に関してはこのままでいい。
 確認後、ひと通りゼロの行方の手がかりがないか探ってみたが、それらしきものはない。
 単純に方角から責めるべきか。もしくはゼロに勝てないため、逃げるか。迷ったが、結論は出ない。
 そのため、マオは思考を切り替える。
 死者の名に知っているものがいた。
 ルルーシュ・ランペルージ。接触を望む相手、ナナリー・ランペルージの兄だ。
 事情は知らないが、より自分のギアスが効果的になる好材料と判断した。今のナナリーは感情的になり、付け入る隙はいくらでもあるだろうから。
 もっとも、ゼロとウィッチ・ザ・ブリタニアがわかれている以上、会いに行くべきかは疑問だ。
 もしかしたら魔導器が分離している可能性がある。
 そのため、ゼロと魔女の二人にわかれたのではないか。
 だが、そんなことが起こりうるのか疑問でもある。
 たとえナナリーと魔導器が分離しても、ゼロやウィッチ・ザ・ブリタニアのどちらかと同等の存在ができるとは思えない。
 生き延びるため、魔導器を求めるマオとしては判断を誤るわけにはいかない。
 ナナリーか、魔女か。どちらを追うか思考を続ける。
 答えのでない苛立ちか、床で眠るオーキド博士を軽く蹴った。
 瞬間、靴が床を叩く音が聞こえる。
「正直に答えていただきたい」
 落ち着いた男の声が廊下に低く響く。
「あなたの蹴った男性は生きていますか? そして、危害を加えたのはあなたですか?」
 高級スーツを包まれた、歳の割には若々しそうな男がマオを睨んでいた。


 マオの不運は一つ。
 寝ているオーキドを放って移動しなかったこと。ただそれだけに尽きる。
 まだそのことに気づかず、距離をとって精悍な目を覗き見た。
 シナプスサーキットを通し、相手の思考を認識できるのは、ギアス・リフレインの副次的なものだ。
 だが、副産物は副産物でも強力な代物である。今までこの能力で生き延びてきた。
 今もまた、相手の思考を読み取り、こちらの優位に進める。
 そのつもりだった。
「…………まいったな。あなた、アカギに殺されたオルフェノクの仲間ね」
「ほう? どこかでお会いしましたか?」
「いいえ。ただ、ボクには隠しごとは……」
 マオはすぐさま前方に転がった。薔薇の花びらがいつの間にか待っている。
 一瞬遅れて、先ほどまでマオが立っていた場所が粉砕される。
 粉塵を巻き上げ、片手でコンクリートを破壊しているのは白いスマートな怪人だ。
 村上の姿はとっくにない。
「せっかちねぇ」
「申し訳ありません。あなたの能力を確かめさせてもらいました」
 悪びれもせず、本心を語る相手にマオは顔をしかめた。
「さて、確かに隠しごとは無理そうですね。差し支えなければ、あなたの能力を教えていただけないでしょうか?」
「嫌味ね。だいたい当たりはついているのでしょう?」
「ということは、私の推測で間違いないわけですね」
「『ならば人の思考を読むことが出来るか。この能力を持ったままオルフェノクになれるのなら、上の上にふさわしい』。これでいいの?」
「ええ、証明としては充分です。ついでに、あなたなら続きも読めるでしょう?」
 自信満々な相手で不快になる。
 この村上峡児という男は『ここまで能力を明かすということは、別の本命の力があるということだ』と考えていた。
 事実ではあるが、敵の言いようにされるのは好きじゃない。
「喋りすぎちゃった?」
「しかたありません。心を読める以上、駆け引きの経験は自然と浅くなります。それはこれから学んでいけばいい。
お嬢さん、そろそろお名前を教えていただけないでしょうか? そして我々と共に行きませんか?」
「そうねえ、それもいいわね」

319接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:28 ID:eSEoQ3Xs
 などと、心にもないことをいう。今の目的はこの男から離れること。
 すでに相手はこちらの切り札に警戒を払っているが、このギアスを避けれる奴はいない。
 頬に手を当てるふりをして、いつでも眼帯を取れるようにする。
「オルフェノクになるのも悪くわないわ……なんて、ボクが言うとでもおもった?!」
 素早く眼帯を上げ、隠された左目を晒した。
 C.C.細胞に侵食されて体が痛むが、音を上げず続ける。
 今、この期を逃すほどマオほど頭が悪くない。

「ボクのギアスで幸福の監獄へ行くといい!」

 左目に刻まれた刻印が村上へと放出される。
 ギアスの光を通じて、永遠の夢へと意識を案内された。


「ぐぅ……くっ」
 マオは魔女因子に蝕まれた右手を掴み、歯を食いしばる。
 抑制剤を今消費するわけにはいかない。やはりいつもより消耗が激しくなっていることを自覚しながら、今後のことを考える。
 これで村上は無力となったはずだ。今どのような過去を見ているか、仕上げに入る。
「さて、君は……えっ?」
 戸惑いのつぶやきが上がる。ギアスをかけたはずの相手は優雅ささえ感じる佇まいのまま、こちらに近寄ってきた。
「幸福の監獄。なんのことかと思えば、過去の幸せだった記憶を見せる能力なのですね。
確かに人間相手ならば効果的でしょう。ですがひとつ覚えてください」
 コッ、コッ、と硬い床を革靴が叩く音を聞きながら、マオは左頬に手を添えられるのを黙って見ていた。

「オルフェノクは例外なく、未来にしか幸福はありません。
それさえ理解すれば、あなたの力はもっと上に行けます」

 優しい口調で語りかける村上峡児から、必死で離れた。
 相手は追いかけず、こちらがどう動くか観察している。
 マオは小さなボールを握りしめ、地面に叩きつけた。
「ほう」
 感心する村上の声が聞こえる。
 ボールの中から飛び出したのは、二メートル近い大きさの怪獣だった。
 鼻の上に存在する角が、ドリルのように旋回する。
「あいつを足止めしろ!」
 マオの指示通り、サイドンが村上に突進を開始した。
「サイドン、でしたか。おやめなさい」
 だが、その進みはあっさりと止まる。
 村上峡児の雰囲気が変わったのだ。
「くっ……」
 無意識にうめいてしまうほどの、圧倒的な殺気。
 気圧されながらも、サイドンの方へ視線を動かす。
 背中しか見えないポケモンは、まったく動かなかった。目を見ずともわかる。
 野生の生物であるからこそ、目の前の男に絶対勝てないと理解してしまったのだ。
「私としては貴重なポケモンを失いたくありません。そしてあなたに危害を加えるのも気が進まない。
ポケモンを収めて、私たちとともに行動をしませんか? 上の上たるあなたの能力なら、我々とも対等な関係を結べる。そう信じています」
 村上峡児は笑顔を浮かべ、手を差し出してきた。
 本心を読まれているというのに、豪胆な男だ。
 もちろん、仲間になって欲しいというのは本心だ。ただ、危害を加えない、というのは若干怪しい。
 彼には自分をオルフェノクにするつもりだからだ。若干、とつけた理由は、村上峡児本人はそのことを『危害』と認識していないゆえである。
 マオはため息を小さくつく。迷う余地などない。
「戻りなさい、サイドン」
 ボールを握ったまま、降参のポーズを取る。相手は満足そうに頷いていた。
「歓迎します。それではお嬢さん、あなたの名前をお聞かせください」



320接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:44 ID:eSEoQ3Xs
「なるほど。ギアスユーザーについて、だいたいは理解しました。魔女因子の侵食、抑制剤。なるほど」
 校内の保健室で、マオは自分の持つ情報を全て開示しなければならなくなった。
 別に脅されているというわけではない。村上峡児の態度は、マオの素性や能力のことを詳しく教えても教えなくても良い、というものだ。
 ただ、相手に能力を向けたため、詳しく話さない場合は監視が厳しくなりそうだったのだ。
 魔女を探したいマオにとって、実力のある村上の警戒心は解きたい。
 ゆえに、オルフェノクの寿命に目をつけて、彼が興味を持ちそうな話題をした。
「そうさ。ボクは能力で君たちの問題を知っている。ギアスユーザーの解決策である魔女因子は、君たちにも有益なものだと思うけど?」
「もちろんです。マオさん、よく私に打ち明けてくれました。魔女因子の解析を我が社で行い、あなたにも技術提供をすることを約束します。
もっとも、この状況を打破しなければなりませんが」
「どうにかするつもりなのね。まあ、その実力なら当然かしら?」
「実力など関係ありません。やるべきことを、やれる人がやるだけ。それだけの話しですよ、マオさん」
 マオは肩をすくめて、村上が煎れたコーヒーを口に運ぶ。
 苦味を味わい、心地良い匂いを堪能してからまたも問いかける。
「まあ、ボクがあなたたちの支援を受けるには、世界を超える技術が必要だけどね」
「もちろん奪うつもりですよ。そんな技術、あんな輩に預けておくわけにはいきません。もっと有効に使うべきです」
「あっそ」
 割と失礼に会話を打ち切ったが、村上が気分を害した様子はなかった。もちろん、力で読み取っている。
 そういえば心を読むために目を覗く必要があるのを伝えているはずだが、今まで逸されたことは一度もなかった。
 本心を読まれるくらいどうとでもない、という自信があるのだ。うんざりするほどぶれない男である。
「そういえば、私たちは確かめなければならないことがある。
私が魔王と名乗る男、ゼロと接触したことはお伝えしましたね」
「そうね。ボクもこの校舎で出会っている。魔王の力であなたと出会ったあと、ここに移動したと考えるのが自然ね」
「そのことですが、時間帯を整理しませんか?」
 マオは彼の意見とすりあわせ、それぞれのゼロと出会った時間を照らしあわせた。
 すると不可解なことがわかる。
 村上が魔王と出会った時間と、マオが目撃した時間は重なる部分が多いのだ。
「どういうことなの?」
「考えられることは、魔王が分身できるのか。それとも二人いたのか、と言ったところでしょうか」
「二人いたとすれば、片方が偽物と考えたほうがよさそうね。けど、ボクが目撃した方もギアスユーザーにふさわしい身体能力だった」
「私と戦った相手は、私や上の上のオルフェノクを数名束ねても、苦労しそうな実力者でしたね。これは調査を進める必要があります。よろしいですか?」
「どのみち会ってみないと、ってわけね。了解」
 マオが納得の意を伝えた後、人のうめき声が聞こえる。
 どうやらオーキドが目覚めたようだ。村上がベッドの方に向かった。
 彼女はコーヒーに息を吹きかけ、口元に運ぶ。
 ポケモンはマオが預かることになった。村上に渡そうかと尋ねたが、それはこの儀式を潰してからでいいと言われた。
 こちらが反抗しても簡単に潰せるという自信から来るのだろう。
 自分をオルフェノクにしたい、という追求からどう避けるか。目下一番の悩みである。
 だが、悪いことばかりではない。
 村上はあの魔王(らしき相手)に互角に渡り合った。心を読めるため、本当であることを確認した。
 それ程の実力者を敵に回さずに済んだのは、素直に幸運によるものだと感謝する。
 ならば、マオがすべきことはオルフェノクになることを避けつつ、村上を敵に回さないことだ。
 そうであるかぎり、彼は自分をどうこうするという気はない。
 希望が少し湧いた、と右手の痛みに耐えながら、目を覚ましつつあるオーキドに視線を向けた。

321接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:28:08 ID:eSEoQ3Xs

【C-3/アッシュフォード学園 校庭/一日目 朝】

【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:魔女細胞の浸食(中)
[装備]:左目の眼帯
[道具]:共通支給品一式、魔女細胞の抑制剤、モンスターボール(サカキのサイドン・全快)
コイルガン(5/6)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本:ナナリーの魔道器を奪って魔女となり、この『儀式』から脱出する
1:村上と行動。オルフェノク化は避けたい
2:ナナリー、C.C.、二人のゼロに接触したいが、無理は出来ない。
3:『ザ・リフレイン』の多用は危険。
4:抑制剤を持つものを探す
5:この『儀式』から脱出する術を探す
[備考]
※日本に到着する前からの参戦です
※海砂の記憶から断片的なデスノート世界の知識と月の事、及び死神の目で見たNの本名を知りました。
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:マオのギアス、魔女因子に興味。
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後


【オーキド博士@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:ポケモンの保護、ゲームからの脱出
0:現状の把握。
1:プラズマ団の思想には賛同できない。 理解は出来なくもないが。
2:ミュウツーについては判断できる材料を持ちきれていない。
3:オルフェノクに興味
[備考]
※プラズマ団について元々知っていることは多くありません。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

322接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:28:26 ID:eSEoQ3Xs
投下終了します
問題点がありましたら、指摘をお願いします

323名無しさん:2012/02/10(金) 15:53:59 ID:5GaTLles
投下乙です
社長はやっぱり頼もしいなあ!人類の敵だけど
他のギアス勢がパラレルワールドをしっかり理解してるか
気づかなくても通常営業なのに比べると
マオはナナナ世界と原作のギャップに振り回されてるな

324名無しさん:2012/02/10(金) 16:03:51 ID:XWTHFbHo
投下乙です

社長が頼もしいのは同意。ただ人類の敵なスタンスがどう転ぶか…
人間で碌でもない連中が多いからなあw
マオはとりあえず社長と行動を共にするのか
こいつはこいつで脱出以外にもやる事あるから忙しそうw

325名無しさん:2012/02/10(金) 19:10:51 ID:qePtBLsg
投下乙です。やっぱ社長は格って物があるなぁ、しかしマオも結構ヤバげだしオーキド博士の胃が心配だw

326 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/13(月) 23:13:39 ID:TRaQzhBE
『独りの戦い』においての誤字脱字などを修正、またマミさんの状態表に書き忘れたことがあったので加筆しましたので報告しておきます
追記内容は以下の通りになります
備考欄に※第一回定時放送を聞き逃しました。禁止エリア、死者などは把握していません

327 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:06:43 ID:yLPKO6/U
投下します

328憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:07:18 ID:yLPKO6/U


「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
 獣のような咆哮が周囲に響き渡る。
 ビリビリと空気が震え、地面が揺れる錯覚を起こした。
 草加雅人はアルティメットファインダーと呼ばれる、ファイズの黄色いレンズの下から視線を向けた。
 警戒しないといけない相手だが、本命はあの化け物ではない。
 大柄のオルフェノクが両足を踏ん張って、丸太のように太い豪腕を受け止めていた。
 両手に竜の頭を模した武装をつけたオルフェノクは、この世で一番殺さなければならない存在だ。
 ギリッ、と奥歯を噛み締める。草加雅人は静かにファイズショットを起動させた。



 時間は放送の終わりまで遡る。
 草加の隣でまどかはホッとしていた。彼女の知り合いは全員無事だったのだ、無理も無い。
 草加もひとまず安心といったところか。啓太郎が死んだことに対して、悲しむふりをしておく。
「まさか彼が……」
 そうつぶやいた途端、まどかは申し訳なさそうな顔をしていた。
 おおかた、自分のことだけ喜んで罪悪感を感じているのだろう。わかりやすい。
「あの、草加さん……」
「大丈夫だ、まどかちゃん。彼ならこうなる可能性のほうが高かったんだ」
 沈んだ声を演出しながら、間桐邸の門をくぐる。ここには用はない。
 彼女の家に向かい、済ますべきことを済ましてから流星塾に向かうだけだ。
 なるべく寄り道はしたくない。目的地に向かって歩き出した。


 あまり時間は経たなかったと思う。
 間桐邸を離れて歩道をしばらく歩いていたとき、急に空気が一変する。
 そして突然、大気が震えた。
 吹き飛ぶような衝撃と誤解するほど、爆発的な怒声。
 尻もちをつくまどかをかばいつつ、発信源を探した。
 もっともすぐに見つかる。『それ』は隠れもせず、隠れられるような存在でもなかった。
 パワータイプのオルフェノクよりも一回り大きい体躯。
 柱そのもののような豪腕。杭のように地面にそびえ立つ両足。
 牙を剥き出しに周囲を薙ぎ払いながら進み続けるバケモノが現れた。
 まだ距離はあるというのに、押し潰されると錯覚するほどの迫力がある。
 まどかを立たせながら、草加は流れるようにベルトを巻いた。
「まどかちゃん、できるだけ君の家の方向に逃げるんだ。俺は足止めしたあと、君を追いかける」
「そんな、無茶です!」
「無茶でもやらなくてはいけない。俺に任せるんだ」
 などと言いながら、冷静に生き残る算段を立てる。
 ベルトにファイズフォンを叩き込んだのと、まどかを突き飛ばしたのはほぼ同時だった。
 ブラッドラインに沿って外装が作られる中、相手が視界に入ったはずの自分に反応しないことを気づいた。
 目が見えていないのだろうか。ならばチャンスだと、草加はファイズフォンを変形させる。
 シングルモード、という電子音を確認するのと、トリガーを迷いなく引く。
「こっちだ!」
 草加の声に釣られて、敵はこちらを見た。その顔面に赤い閃光が飛び込む。
 ほぼ効果はないが、自分をターゲットと定めたようだ。
 さて、どうしたものかと草加は思考する。
 この化物から逃げるだけなら距離を取ることで余裕でできるのだが、戦うとなれば話は別だろう。
 現状、まどかを守るのはついででしかなく、さほど優先順位が高いものではない。
 適当に相手をして、逃げてからまどかと合流するか。
 そう考えをまとめた時、背中に衝撃が走る。
「ガハッ! くっ、なにを……」
 よろめきながら振り向き、声を失った。
 忘れもしない。ドラゴンを模した両腕と禍々しい雰囲気を持つオルフェノク。
 ラッキークローバーの一人で、自分たちの仇である男だ。
「きさまぁ!」
「邪魔しないでくれるかな? あれは僕の獲物だ」
 ドラゴンオルフェノクは草加を尻目にバーサーカーへと接近する。
 その灰色の背中を睨みつけながら、草加は歯を食いしばった。

329憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:07:57 ID:yLPKO6/U



 Lたちがバーサーカーを発見するのに大して苦労はなかった。
 ただひたすら直進する相手だ。しかも痕跡を山ほど残している。
 ただ、発見したときに北崎が不機嫌になるのを見逃さなかった。
 その理由を察するのも簡単だったが。
「ファイズのベルトか。邪魔だね」
「知っているのですか?」
「いつも僕達の邪魔をする連中さ。でも、いい遊び相手でもあるんだ。……今はいらないけどね」
 最後の一言が冷たい声音に変わる。同時に魔人の影が顔に浮かんだ。
 ゼリーが潰れたような音が連鎖しながら、隣人が姿を変える。
「冷静に頼みますよ。あなたが勝つにはその灰化能力以外、手はないのですから」
「わかっているよ」
 北崎はそう言い残して戦場へと走った。
 さっそくファイズと呼んだ相手を吹き飛ばしている。協調するのが最善だと思うのだが。
 そして頭の中でどうにかする手を探っているLの視界に、一人の少女が目に入った。
 ポリポリと頭をかきながら、戦場を凝視している彼女に近寄る。
 視線の先に集中しているせいか、Lの足音に気づかない。なんとも危なっかしい。
「よろしいですか? ボーッとしていると危険ですよ」
「ひゃっ!」
 びくっと震えてからおさげの少女はこちらを見た。
 目線で挨拶をして、再び北崎たちへと視線を移す。
「申し遅れました。私、探偵のLです」
「Lさん……? もしかして、夜神さんの言っていた……」
「夜神……若い方ですか? それとも歳をとった方ですか?」
「ええと、年をとった警察官の方で、あなたのことを仲間だと言っていました。はじめまして、わたしは鹿目まどかです」
「そうですか。さっそくで申しわけありませんが、ファイズのベルトを使っている方とお知り合いですか?」
「え? なんでベルトを知って……もしかして草加さんの仲間の方から聞いたのですか!?」
「いいえ。私はあそこで戦っている彼から聞きました」
「戦っているって……まさかオルフェノクと……」
 まどかが一歩後ずさる。一般的な判断は出来るくらい、頭が冷えたようだ。Lは淡々と続ける。
「どう取るかはあなたの勝手ですが一応説明させてもらいますと、私は彼を倒すために共に行動しています。
彼らと敵対するというのなら、あなた方と手を結べると思うのですが、どうですか?」
「倒すため……それで一緒にいるなんてどうして……」
「彼に同行者を殺されましてね。犯罪者は裁かれねばなりません。そのための手段を探し、彼自身は自分の目的のために私を放置している。
おおまかに言えばそのような関係でしょうか」
 まあ、あの厄災を潰すために一時休戦という形ですが、と締めくくる。
 まどかの瞳はこちらを信じきれていない迷いがあったが、かまわない。
「それにしてもまずい。ばらばらで戦っているだけならともかく、ファイズの方は北崎さんまで相手にしようとしていますね。
これでは二人ともあの怪物に殺されてしまいます」
「そんな! 草加さんは……」
「下手すれば彼だけ死ぬでしょうね。よって、あなたの手を借りたいのですが……」
「なんでも言ってください! わたしにできることなら、なんでもします!」
 Lが最後まで告げる前に、彼女は助力を申し出た。
 もう少し優柔不断かと思ったが、話が早い。あとは彼女がどれだけ、草加という人間に信頼されているか。
 これが鍵だろう。
「それでは鹿目さん。あなたに早速お願いしたいことがあります。それは…………」

330憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:08:26 ID:yLPKO6/U


 グッ、と軽く呻いて草加は両足を踏ん張った。
 やはりカイザでないため調子が狂う。首もとをさすり、苛立ちながら後ろに跳ぶ。
 瞬間、踏みしめていた地面が爆ぜて、土砂が天高く舞い上がった。
 拳を打ち下ろしたままの姿勢であるバーサーカーを見据えながら、フォンブラスターの銃弾で牽制をする。
 一瞬でも目を離せば殺られるだろう。草加にとっての仇にして、最大の敵である北崎を殺す機会だというのに。
「はあぁ!」
 オルフェノクとなった北崎が、右腕をバーサーカーの脇腹へとねじ込んだ。
 ひたすら真っすぐに、全力で。
 自分では死にはしないでも、耐えられない一撃だ。なのに、黒い怪物は微動しただけでさほど堪えていない。
 怒りで気が狂いそうになる。
 北崎は、ドラゴンオルフェノクは自分の獲物だ。流星塾の仲間の、自分の仇なのだ。
 なのに、かろうじて人の形をしているとわかる薄汚い存在に自分たちを殺した牙が通用しない。
 腕を無造作に振るうだけで最強のオルフェノクが吹き飛んでいく。
 許せない。
 それだけの力が自分にはない。それどころか使い慣れた力(カイザ)すらない。
 長年の仇をどこの馬の骨かもわからない化物によって奪われかけている。
 ふざけすぎだ。あれは存在してはいけない。
 なにがなんでも倒す。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

 バーサーカーの咆哮が轟き、鉄槌のごとく拳をドラゴンオルフェノクが受け止めた。
 その姿を冷静に見つめ、ファイズショットを起動させる。
 赤い光を携え、甲高い待機音を奏でながら一足飛びにバーサーカーの腹に打ち込む。
 硬いタイヤを殴ったような感触が腕に伝わったのと同時に、後ろに下がる。
 あの程度ではかすり傷にもならない。たたみかけるためにファイズポインターを足に装着した。
「草加さん、あの化物の動きを止めて!!」
 懐かしい声が聞こえた気がした。あの日、いじめられていた草加に手を差し出した少女の声。
 頭の片隅でまどかの声だとわかるのに、かつての安心感のままにバーサーカーを蹴った。
 獣のような唸り声が頭上から聞こえる。嵐のような暴力が飛び込む前に、エンターキーを押し終えた。
 『EXCEED CHARGE』と並のオルフェノクには死刑宣告となるつぶやき。
 鳴り終わると同時に赤い円錐が黒い泥にまとわりつかれたヘラクレスを縛り上げる。

「■■■、■■■■■■■■――――!!」

 なのに、胸部装甲に相手の腕がかすめた。
 軽々と吹き飛ばされながらも、草加は眼下の敵を睨み続ける。
「褒めてあげるよ、君」
 北崎の偉そうなつぶやきに苛立ちが加速した。
 拘束されたバーサーカーへとドラゴンオルフェノクは抱きつく。
「僕は最強なんだ。だから消えてよ。……早く」
 最後だけ低いつぶやきとなって、バーサーカーの体が灰へと変換されていく。
 抵抗しようともがいているが、クリムゾンスマッシュの拘束だけならまだしも、最強のオルフェノクに動きを制限されているのだ。
 逃れられようがなかった。いや、逃れられないはずだった。
「くっ!? まさか……」
 北崎の声音に初めて焦りが混ざる。バーサーカーは徐々にではあるが、北崎とフォトンブラッドの捕縛を解き始めていた。
 ゆっくりと、門をこじ開けるように。
 草加は右足を振り回し、一瞬だけ迷ったがポインターを敵へと向けた。
 再び赤い拘束具がバーサーカーの動きを縫いとめる。
「ハハッ、君は最高だよ!」
 北崎の賞賛もどこ吹く風で、両足に力を込めた。
 だが、膝が崩れて跳べない。悔しくて痛いほど唇を噛み締める。
「■■■、■■■、■■■■■!!」
「抵抗しても無駄だよ。僕は強いんだからっ!」
 一際北崎の声音が高くなる。灰化の速度が増して灰がファイズの仮面にかかった。
 足が力を取り戻したときには、バーサーカーの全身は灰へと変わっていた。

331憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:08:58 ID:yLPKO6/U



「あそこまでうまくいくとは思いませんでした」
 Lは口とは裏腹に、さほど動揺せず状況を分析していた。
 彼の作戦はただひとつ。草加にバーサーカーの動きを止めさせて、北崎で倒すというものだ。
 そういった技があることをまどかも初めて知ったが、驚くべきは草加の対応力か。
 もともと、仲が悪い相手とも戦闘時のみなら動きを合わせられる男だ。同行者である少女がまだ知ることはないが。
「あっはっはっは! ざま〜みろ、僕に勝てる奴はいないんだ」
 灰の山で北崎が変身を解き、機嫌良さそうに笑っている。
 二車線道路の真ん中で灰と戯れる少年と、変身を解かないファイズの姿は傍目から奇妙だった。
 その様子を見ていたまどかは不安になる。震えながら立ち上がるファイズの後ろ姿は今まで見たことがないものだからだ。
 胸に強い感情を秘め、魔女や強い相手に立ち向かう。その姿はまるで……
「まだ終わっていません! 北崎さん、草加さんはそこから下がってください!」
 左隣のLが急に大声を張り上げた。北崎は訝しげに首をかしげている。
 多少ではあったが、距離をとっていたためファイズのほうが先に気づいた。
「■■……」
 低い、獰猛な獣の唸り。少年が戯れていた灰を見る。
 砂山がうねりながら人の姿を型どった。砂ひとつぶひとつぶが骨を、筋肉を、皮膚を構成していく。
 信じられないことだが、再生をしているらしい。
「しつこい、もう一度灰にしてやる!」
 北崎はオルフェノクに変わって再生途中のバーサーカーへと触れた。
 すると、まどかは新たな絶望が訪れたことを理解した。
「なんで灰化しない……」
 伝説上の生き物を模したオルフェノクが戸惑い、隙が生まれる。
 横から再生途中の腕が叩きつけられた。人類の敵であるとはいえ痛々しい光景に、まどかは思わず息を呑む。
 ファイズが立ち上がって相対するが、戦端が開かれる前にLが呼び止めた。
「北崎さん、草加さん。いったん退いてください。予想外の事態ですので、体勢を立て直しますよ」
 草加は振り返り、Lからまどかへと視線を移した。
 少し迷ったように見える。だけど結局、こちらへと戻ってきた。
「北崎さん」
 うながす声に北崎は一度地面を蹴りつけた。顔には悔しさが刻まれている。
 変身を解いた草加もなにか言いたげだったが、まどかの腕をとってLたちの間に入った。
 やがて、再生途中の化物を置き去りに四人はその場から逃げた。

332憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:17 ID:yLPKO6/U



「なるほど、そういうことか」
 道中、一瞬即発の草加と北崎を前にLはすべてを説明終えた。
「事情はわかったし、夜神さんの件もあるから君は信じよう。だけどL、そいつを制御できるなんて思い上がらないことだ。こいつは殺す以外手はない」
「生意気だね、君。今相手してやろうか?」
 北崎の挑発に応えようとする草加の腕を、まどかは掴んだ。
 今の状態で勝てるとは思えない。草加はこちらを見ることもなく、ため息と共に腕を下げてくれた。
「まあ、現状だと私にも余裕がないので、あの怪物の対策を練りたいと思います」
「……あいつが命を複数持っていたなんてね。J君みたいに、三つなのかな」
「オルフェノクにも似たような能力者がいたのですか?」
「まあね。こちらの攻撃が通用しなくなるってのも、ちょっと意味が違うけど似ている」
「前回より強くなる、ということですか。厄介ですね」
「話はもうこれで終わりでいいかな。僕はあいつを始末したい」
「こちらもお前と長く一緒にいるつもりはない」
 敵対する二人は拒絶の意思を見せる。
 北崎には別の目的があり、草加は現状だと勝てないと理解して、まだ争いには発展しない。
 ただ、胃の痛くなる光景ではある。
「それでは我々はアレの情報を集めます。北崎さん、その方針でよろしいですか?」
「構わないよ。じゃあ僕はあっちに向かうから、追いかけてきて。面倒だしあとは任せる」
 北崎はそう言い残し、離れていった。
 姿が見えなくなり、まどかはLに尋ねてみる。
「Lさん、あの人は危険ですし、わたしたちと一緒にきませんか?」
「申し出はありがたいのですが、私にも目的がありましてね。そして、それは草加くん、あなたと利害が一致します」
 ほう、と草加がつぶやいたのを確認して、Lは頷いてから続けた。
「私はあなたに彼を倒して欲しいのです。それもただ倒すのではない。彼に罪を刻みこみ、後悔させてから倒してほしい。
そのための手段を私が考えます。ですので、合流場所を決めて協力し合いませんか?」
 Lの提案を受けて、彼は考えるように顎へと手を当てた。
 まどかはどう結論をつけるのか判断がつかなかったが、草加の返答は早かった。
「こちらこそ手を貸してほしい。あいつらは存在が罪だ」
「ふむ? まあ北崎さん個人に関しては同感です。それで、どこで合流しますか?」
「夜神さんとはすでに合流場所を決めているが、別の時間と場所がいいだろうな。なんの戦力もない状態で鉢合わせされるとまずい。
三回目、四回目の放送のどちらかにD−五の病院で会おう。禁止領域に指定されたなら、その上のエリア、遊園地に変更だ」
「了解しました。それではお互い無事で」
「行く前に忠告だ。おそらくあいつは全部聞いている」
「知っています。それで死ぬのなら、あの化け物を殺すことも、この儀式を潰すことも、北崎さんに敗北を刻み込むこともできないでしょう。それでは」
 飄々と答えながら彼は去っていった。
 その背中を見届ける草加の表情には苛烈な感情が浮かんでいる。おそらく北崎に対してだろう。
 しかし、とまどかは考える。
 初めて草加の激しい感情を目にした。オルフェノクを許せない、許しちゃいけないものがあるのだろう。
 踏み込んではいけないのかもしれない。だが以前、踏み込まなかった結果、一度さやかも杏子もマミも喪うことになった。
 ならば自分は拒絶されようと聞き出すべきだろうか。
 まどかは怒りを秘める青年を前に、結論をつけられずにいた。



【D-5/中央の丘/一日目 朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう。その後、Lとの約束のため病院か遊園地へ
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
5:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

333憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:33 ID:yLPKO6/U

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:ひとまず自分の家へ
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ。もっと踏み込むべきか?
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、
    予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。


【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります

334憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:50 ID:yLPKO6/U

【D-4/道路/一日目 朝】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り8、灰から再生中、灰化に抵抗可能
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています

335 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:10:09 ID:yLPKO6/U
投下終了します。
何かありましたら指摘をお願いします。

336名無しさん:2012/02/26(日) 21:31:28 ID:5HMQHqlU
投下乙です!ああ、これで北崎はバサカに対して完全な無力に……でもまあJさんって同僚の能力からバサカの特性に気付いただけ貢献はしたか?

337名無しさん:2012/02/26(日) 23:23:37 ID:pGvj/qN2

555本編のようなハラハラする絶妙なバランスで成り立っているすれちがいでした

338名無しさん:2012/02/27(月) 00:43:47 ID:pOqkfOvc
投下乙
Lが上手くさばいてる……!草加と北崎という最悪な相手によくぞここまでやったものだ
バサカさん、アウト1ー。スコア獲得はいつの日か……

339名無しさん:2012/02/28(火) 01:25:26 ID:vD.d7buE
投下乙です

Lはよく捌いてくれたぜw
最悪な相手同士の中でよくやった
素直に凄いと思えるよ

340名無しさん:2012/03/14(水) 15:26:41 ID:rOQr6zL.
乙です。
草加…使い慣れないファイズでココまで戦えるのはすごいな

341 ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:18:37 ID:ntcazsgI
暁美ほむら、アリス、ミュウツーを投下します

342外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:20:00 ID:ntcazsgI

 知っている人間の死をどう反応すればいいのか、ミュウツーは決めかねていた。
 サトシに対して良き感情は抱いている。同時に人間という種にはいまだ複雑な感情だ。
 ポケモンであるがゆえ、個人と種をわけて考えるのが難しかった。
 自分を生み出し、利用していた連中しか知らず、人間とは彼らのような存在しかいないと思い込んでいたのもある。
 それに優しき少年は亡くなったのに、悪の限りを尽くすロケット団の首領は生きていた。
 いずれ奴とも決着をつけないとならない。ただ、どう対応するかはいまだ迷っていた。
 人間という存在がわからないからだ。
 さて、とミュウツーは移動を再開する。ちょうど南は禁止領域に指定されるようだが、どうしたものか。
 公園に即した道路をゆっくり歩きながら、周囲の気配を探った。
 瞬間、銃声が聞こえる。続けて、ポケモンの鳴き声、いや泣き声が聞こえてきた。
 銃弾を打たれた恐怖の声ではない。悲哀に満ちた想いが込められていた。
 導かれるようにミュウツーは向かう。
 交差点を曲がると、目的の相手は簡単に見つかった。それもそうだ。
 彼はサイドカーと呼ばれる人間の乗り物に乗る少女の腕に抱かれて、泣いていたのだから。
 人間がいる可能性も考慮していたミュウツーは相手が気づくのを待った。結果、黒髪の少女のほうが反応する。
「動かないで」
 かすかにミュウツーは動揺する。あっさりと背後に回られ、銃器をつきつけられたのだ。
 とはいえ、より気にかかることがある。あくまでポケモンに話しかけた。
『誰かの死を悲しんでいるのか?』
 ミュウツーの問いかけに、ポッチャマが顔を上げた。
 彼を抱いている方の少女は驚いていたが、銃を持つ娘は微動だにしない。
『私は危害を加える気はない。ただ、彼と話がしたいだけだ』
 心からの訴えが風に乗る。黒髪を流すままにしている彼女は、無表情を保っていた。



「お互い、探している人は無事みたいね」
 目が覚めたほむらの言葉を聞きながら、ナナリーの無事をアリスは喜んだ。
 禁止領域と死者を記録している彼女の側で、サイドカーはやはり舗装された道路に限る、と感想を持った。
 このバイク(に変形するKMFもどき)の走破性は高いのだが、凸凹の道は腰にくる。
 できることなら、移動はちゃんとした道路に限定したいと内心文句をつけた。
 もっとも、そうはいかないだろうが。
「……なにか動いた」
 冷静な言葉にはっと意識を戻す。そこからはプロ意識も働き、周囲を警戒した。
 視界の端に何かが動く。グロッグの感触を確かめながら、次の展開を待った。
「ポッチャマ〜ポチャー……」
「ペ、ペンギン?」
 曲がり角から無謀に現れた存在に、アリスは驚いた。
 相手は生物というより、ペンギンのぬいぐるみのような愛らしい存在だ。
 思わずグロッグを下げ、無防備に近寄ろうとする。
「待ちなさい。何を仕掛けてくるかわからない。慎重に行動して」
「わ、わかっているって」
 反論しながらも、警戒態勢を崩さないほむらにやり過ぎだと感想を抱いた。
 目の前のペンギン? は涙を流し、悲しんでいる。今すぐにでも駆け寄って抱きしめてあげたい。
「喋れる、もしくはテレパシーが使える? 事と次第によってはあなたの命はないわ」
 冷徹な警告も無視して、ただ泣き伏せている。進展のない状況にほむらが苛立ったのか、一発足元に撃った。
 銃弾の乾いた音が晴天に響き渡る。
「ちょっと、いきなり発砲はないでしょ!」
「こういう生物が一番油断ならないことを、私は経験しているわ」
 無感情な瞳に甘いと責められているような気がして、アリスはむかっ腹を立てた。
 そもそもこの子は銃を撃たれても反応せず、ただ泣いているのだ。事情はわからないが、ほむらの行動は行き過ぎている。
 無言でバイクを降り、銃を収めてから近寄った。

343外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:20:57 ID:ntcazsgI
「あなた……」
「ねえ、君。どうしたの?」
 アリスが優しい口調で聞き出そうとしても、相手はイヤイヤと首を振るだけだ。
 涙が止まらない生物をとりあえず抱き上げてバイクに戻るり、ほむらの咎めるような視線は無視した。
「ほら、泣いて吐き出せるものは全部吐き出して、すっきりしちゃいなさい」
「あなたは随分と余裕ね」
「皮肉? でも、こんなに無防備でいる相手を撃つのはちょっとね」
 「甘いわね」と吐き捨てるほむらを一瞬だけ睨んだが、もう一つの足音に反応せざるを得なかった。
 またも現れた来訪者は人間でなかった。ただ、愛らしい手元の動物と違い、2メートル近い身長の白い怪物だ。
 切れ目の大きな瞳がこちらに向けられ、口がへの字に曲げられている。意思の疎通が期待できそうにない。
「動かないで」
 なのにほむらはあっさりと後ろに回ってから警告した。答えを期待しているわけではないだろう。
 アリスも返ってくるとは思っていない。
『誰かの死を悲しんでいるのか?』
 しかし予想外の出来事は起きる。低い声の問いかけに答えるように、腕の生物が顔を上げる。
『私は危害を加える気はない。ただ、彼と話がしたいだけだ』
「信用できないわ。あなたはインキュベーターの知り合いかしら?」
『インキュベーター? 私はそのポッチャマと同じくポケモンの一種だ。ミュウツーという』
 アリスは腕の子がポッチャマという名前であることを、頭の片隅においておく。
 相手の言葉通り殺意がないため、ほむらにアイコンタクトを送った。
 だが、銃を収める気配がない。
「ほむら?」
 しかたなく話しかけるが、無視される。アリスはどうするか迷ったが、先にミュウツーが動いた。
 容赦無くほむらは引き金を引こうとするが、それより先に謎の光が彼女の腕を上に向けさせた。
 ポケモンの技、サイコキネシスを手加減した形だとまだわからなかった。
『先に言っておくが、私にその武器は通用しない』
「そう。なら……」
「やめなって。いざというときは私のギアスとあなたの魔法で逃げることができるし、ひとまず様子を見るわよ」
 こちらの指示に対し、不満気な態度を返されるが放置しておく。
 彼らの行動を見届けるのが先だ。
『感謝する。ポッチャマと言ったな。さきほど泣いていた言葉の中に気になる名前があった。ヒカリ、サトシ、と』
「ポ、ポチャ!?」
『私はヒカリという少女を知らない』
 ポッチャマが明らかに落胆したような態度を示す。
『だが、サトシという少年は知っている。彼の優しさに救われたし、その最期も偶然教えられた』
「ポチャ! ポチャポチャ、ポチャ!!」
『残念ながら、彼は殺されてしまった。ポケモンバトルの最中、不意を突かれた。手持ちのリザードンがそう教えてくれた』
「ポチャ……ポチャチャ……」
 またも涙ぐむポッチャマにアリスは焦る。どうやら、ヒカリやサトシと言った人物は彼にとって大切な人らしい。
 アリスにとってかつての妹や、ナナリーのように。
『サトシを殺した女は、因果が巡ったのか別の殺人者に殺された。しかし、私の胸は晴れない。お前もそうなのか?』
「ポチャ〜」
『言うまでもなかったな』
 それからしばらくは、ポッチャマの嗚咽があたりに響いた。
 アリスはゼロたちが追いつく可能性も、他の襲撃者に襲われる可能性も考えて警戒を続けた。
 彼らが大切な人を喪った、悲しみに浸る時間を作るために。

344外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:21:21 ID:ntcazsgI



『私を信用してくれて助かった。礼を言う』
「まあ、あなたよりこの子を信用したからね。正直、まだ疑っているわ」
『そうか。人間ならそれが普通なのか?』
「私の場合は訓練の結果でもあるし。ほむらの方はわからないけど」
 距離をとっているほむらに話をふるが、彼女は一瞥しただけで沈黙を守る。
 なんとも警戒心の高いものである。アリスの方は油断はしていないもの、今すぐ襲い掛かることはないと判断する程度には心を許していた。
 油断だと蔑まれたのなら、それでもいい。誰かを失って悲しむ相手を、たとえ人間でなくても見捨てることができなかった。
(ああ、そうか)
 妹を亡くしたときの自分と、今のポッチャマを重ねたのだ。
 泣きつかれて眠った彼を優しく抱き直し、ミュウツーと向き合う。
「それであなたはどうするの? 私たちと一緒に行く?」
『いや、私は人間を見て回りたい。美樹さやかという、興味のある相手も見つかったことだしな』
「美樹さやかって、ほむらの知り合いよ」
『そうか。ならば、彼女らは学校に集まり、各方面に散った。美樹さやかは北の方面だったが……ポッチャマと仲間のポケモン、ピカチュウは東の方面に向かった。
まさか旧知の彼らと、ポッチャマが知り合いとは思わなかったが』
「へえ。で、私たちはどうするの?」
「……そのポッチャマの仲間とかいう連中を追いましょう」
「どういう風の吹き回し?」
「簡単なことよ。美樹さやかと再会するのはやめたほうが身のため。南には化け物がいるわ。
なら、比較的安全な東に向かうのは当然の判断よ。もっとも、ミュウツーの言うことが本当なら、だけど」
 彼女の疑り深さに辟易しながらも、ミュウツーの顔を伺う。
 彼の表情の変化はわかりづらく、不快に思っているかどうかは判断つかなかった。
『忠告しておく。その東には殺人者も向かっていた。充分気をつけておくことだ』
「うん、ありがとう。他に誰かいた?」
 アリスの質問がきっかけになって、学園の出来事が目の前のポケモンより語られる。
 ほむらの反応は薄かったが、興味がないのだろう。
 ただ、自分は聞き逃せないことが多かった。
「C.C.!? こんなところでウィッチ・ザ・ブリタニアの話を聞くなんて……」
『知っているのか? 彼女はニャースに信頼されていたようだが』
「私たちにとっては死活問題よ」
「ならどうするの? C.C.を追いかけるのかしら?」
 アリスはポッチャマを抱き直しながら、首を横に振った。
「私のことはあと。ナナリーを優先したい」
「そう。なら言うことはないわ。それと、ゼロらしき人物のことはわかっているわね?」
「乾巧に教えたように平行世界とか言うんでしょ。わかっているけど、南にいるゼロと同じ思想かな?」
「そう見たほうが危険は少ないでしょうね」
「かもね。ミュウツーも気をつけて。南にいるゼロはバケモノだから。それと、オルフェノクの木場って奴は人間をつけ狙っている」
『人間を? 私に話しかけた海堂と呼ばれた男はむしろ守ろうとしていたが』
 片眉をしかめ、うなだれた巧の姿を思い出す。
 胸のどこかが重くなりながら、木場の情報を教えた。
「乾巧って人を裏切ったみたい。私たちと別れた、菊池啓太郎が殺された。強化スーツを召喚できるし、実力も魔王と同等と見ていいかも。とにかく、気をつけて」
『人を裏切った。なら、あの場にいた人間も危ないということか』

345外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:21:48 ID:ntcazsgI
 ミュウツーは微かにうなずき、踵を返す。
「どうするの?」
『この付近にいる人間に警告をする。普通の人間を魔王と名乗る輩や、仲間を裏切るような男の犠牲にさせるのは良くないだろう。
私はまだ人間を理解できないが、それくらいは判断がつく』
「そう、じゃあ縁があったらまた会いましょう」
『ああ。それとサカキには気をつけろ。奴はロケット団という組織を率いていた。私からはもうそれだけだ』
 ミュウツーはいい終ると自分たちのもとから離れていった。
 その背中を見届け、頬を緩めながら息を吐く。
「もう気がすんだかしら?」
「刺々しいわね。不満でいっぱいってこと?」
「別にそうでもないわ。ただ、外見が愛らしいからといって肩入れするのはどうかと思うだけよ」
「あんたぬいぐるみにでもトラウマがあるわけ?」
 呆れ半分で言うが、ほむらは肯定も否定もしなかった。
 彼女は無言で半壊のサイドカーに移るよう促す。アリスがポッチャマを抱いているため、運転を代わるつもりなのだろう。
 サイドバッシャーが発進し、比較的安全と思われる東に向かう。
 あいかわらず何を考えているかわからない相手だ。
 特にミュウツーにではなく、ポッチャマに警戒をする態度は。
 まあ、特に手を出す気はないみたいだ。アリスはならばこの子の仲間に会わせてあげたいと、ぼんやりと思った。




【D-2とC-2の境目の公園/一日目 朝】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少)、疲労(中)、頭蓋骨骨折(回復中)
[服装]:魔法少女変身中
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ランダム支給品0〜1(武器類はなし)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒中。ミュウツーは保留。
4:サカキは警戒。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します

346外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:22:10 ID:ntcazsgI

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(小)
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(15+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、
    ポッチャマ(モンスターボールなし。泣きつかれて眠っている)@ポケットモンスター
[道具]:共通支給品一式、ヨクアタール@ポケットモンスター(ゲーム)
    C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:とにかくゼロ達のいた場所から離れる
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
5:ほむらの隠し事が気になるが重要なことでなければ追求はしない
6:ポッチャマを気にかけている
7:ミュウツーはとりあえず信用する
8:サカキを警戒
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します



【ミュウツー@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:軽傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:人間とは、ポケモンとは何なのかを考えたい
1:まだ、相手を選びつつ接触していく
2:プラズマ団の言葉と、Nという少年のことが少し引っかかってる。
3:できればさやかと海堂、ルヴィア、アリスとほむらとはもう一度会いたいが……
4:プラズマ団はどこか引っかかる。
5:サカキには要注意
[備考]
※映画『ミュウツーの逆襲』以降、『ミュウツー! 我ハココニ在リ』より前の時期に参加
※藤村大河から士郎、桜、セイバー、凛の名を聞きました。 出会えば隠し事についても聞くつもり
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

347 ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:22:31 ID:ntcazsgI
以上で投下を終わります。
ミスがありましたら、指摘をお願いします。

348名無しさん:2012/04/18(水) 03:03:58 ID:NHodsOy2
投下乙です!ほむほむは相変わらず必要な事を言わないなぁ。まあ今のさやかあちゃんはどうあがいても絶望だし切り捨てたのはナイス判断かw

349名無しさん:2012/04/18(水) 20:27:26 ID:CZXCRjgE
投下乙です
ほむほむはなあ…w
さやかちゃん切り捨ては、まあ、相性悪い上にまどか至上主義だからなあw

350名無しさん:2012/04/19(木) 20:22:25 ID:djsGsMf2
遅ればせながら投下乙。ほむらさん、もうちょっとこう、手心というか……

351名無しさん:2012/05/23(水) 19:07:59 ID:Exv8fNZ2
ほむらが順調に草加第2号になろうとしてますなぁ・・・もし何かの間違いで出会ってしまったら・・・

352名無しさん:2012/05/24(木) 18:32:22 ID:QiAWKxV6
親近憎悪か同族嫌悪か…

353名無しさん:2012/05/27(日) 20:09:32 ID:FMEKPP4Y
まあ二人とも「自分はこんな奴とは違う」って否定するだろうけどな

354名無しさん:2012/05/28(月) 16:36:22 ID:xZ48PHOE
方向性は微妙に違うがウザさではいい勝負だろうw

355名無しさん:2012/05/29(火) 23:44:11 ID:iGWKlxkc
何かこないだからほむほむアンチがいないか?
一応注意するけどそういう特定のキャラをけなすような発言は控えた方が自分も周りも幸せだぞっと

356名無しさん:2012/06/01(金) 17:56:01 ID:Jgo7PJIU
別にアンチじゃないよ、草加に似てるなと思っただけで
誤解があったなら謝る。すまなかった

357名無しさん:2012/06/01(金) 18:39:04 ID:1EfzzF6Q
アンチとかではなく自分の好きなキャラがウザキャラ扱いされて目が付いただけだろう
自分の主観でアンチ認定はしないほうがいいぞ

358名無しさん:2012/06/01(金) 18:41:58 ID:Jgo7PJIU
言い忘れたけど自分は>>351

359名無しさん:2012/06/02(土) 15:05:49 ID:uURx3Otc
草加さんは愛する者の為に命を捨てて戦う程の人格者なんだから草加扱いは悪口じゃないさ
二人とも愛の為にちょっと過激な行動を取ってるだけだしさ

360名無しさん:2012/06/02(土) 21:02:00 ID:XDxS3b6c
うるせぇ(首が折れる音)再現するぞ

361名無しさん:2012/06/03(日) 04:54:48 ID:tabisBvQ
>>355だけど何かすまんかった……雑談に変なの沸いてたからってちょっと過剰反応だったか?

あ、それと草加さんを殺っちゃうならつサイガドライバー

362名無しさん:2012/06/04(月) 00:09:28 ID:QQ.iGGck
二人が付き合いにくいキャラなのは同意するけどな
ただその二人以外のキャラもクセが大きいぞ

363名無しさん:2012/06/05(火) 18:33:30 ID:Eb8.MxvY
真里、啓太郎、まどか、マミさん(精神が追い詰められてなければ)は
基本まともじゃないか?
杏子や海堂はいざという時はしっかりしてるし

364名無しさん:2012/06/05(火) 22:40:19 ID:9Ucz00sE
他作品も含めていいなら(ただし非マーダーのみ)
N、バゼット、ミュウツーとかがぶっちぎりでロロも相当
あと士郎、たっくん、まどか辺りも意外と曲者

365名無しさん:2012/06/05(火) 23:21:12 ID:yRJHGMOA
>>363
頭可笑しくないマミさんってもうマミさんの意味なくね?ってのは10話のイメージが先行し過ぎるかw
でもおりこでも直後に立ち直るとはいえ死ぬしか顔したしなぁ

366 ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:03:45 ID:cIIvhIGs
ギリギリになってしまい申し訳ありません
これより投下を始めます

367hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:07:31 ID:cIIvhIGs
市街地を歩く三つの人影。乾巧、衛宮士郎、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

食事の後、一人で行こうとする巧だったが放っておけない士郎が一緒に行くと言い出したのだ。
無論巧は付き添いなんかいらないと言ったのだが、士郎は付いていくと譲らず巧のほうが折れる形となった。そしてイリヤは士郎についていくことになったのだ。
その最中だった。放送が始まったのは。

そして放送が終わった後、しばらく歩いたところでルビーが不意に声を出した。

『…イリヤさん、何かすごく嫌な気配を感じるのですが。
 どうもこちらに近づいてきて――』
「…む、あなたは、イリヤスフィール?」
「『ゲッ?!』」

突如現れたスーツ姿の女。
その姿を見た途端、思わず身構えてしまうイリヤ。ルビーも悲鳴に近い声をあげてしまう。

「『バ、バゼット?!!』」
「ああ早く転生、転生を!!」
『いや〜…、今のイリヤさんでは勝ち目なさそうですよ…。士郎さん達もいることですしこの場はおとなしく降参したほうが…』
「そんな〜!!」
「…その反応はやめてください。さすがに傷付きます」
「あー、落ち着けイリヤ。あんたは?」
「バゼット・フラガ・マクレミッツといいます」

士郎から見ればそこまでおかしい人には見えなかった。
イリヤの知り合い、かつルビーのことも知っているということはつまり彼女も魔術関係者ということなのだろう。

「俺は衛宮士郎。イリヤの、その…、兄だ」
「乾巧だ。こいつらとはここで会った」
「なるほど、………。
 一つ伺いますが、彼の素性は分かっているのですか?」

軽い自己紹介の後、バゼットが問いかける。
彼というのは乾巧のことである。

「いや、今のところ軽く自己紹介しただけだけだ。でも信用できると俺は思うぞ」
「ちょっと失礼」
『きゃーどこ触ってんですか〜!』

368hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:09:19 ID:cIIvhIGs
おもむろにルビーを掴みあげるバゼット。
三人には何やらバゼットが怒っているような気がした。

「ゼルレッチ卿の礼装ともあろうあなたが不用意に姿を晒すなど、何を考えているのです?」
『いやぁ、じーっとしているのも性に合わないですし。
 それに私みたいな道具っていちいち話していないと存在とか忘れられそうじゃないですか』
「言っている意味が分かりません。それが存在を明かしてよいことにどうして繋がるのですか」
『だってほら、あなたは知ってるでしょうけど私ってここを抜け出すにはどうしたらいいか〜とか、そういうことに一番近いと思うのですよ。
 それなのに情報を集められなければ何もできないじゃないですか』
「……」

バゼットにはそれが正しいのかどうかの判断まではつかなかった。
ただそれを否定するには彼女とルビーとの関わりがあまりにも薄すぎた。
もしこれが凛やサファイアであったなら反論できただろう。

『もっと状況に応じて臨機応変に生きたほうがいいですよ。特にここから出たいのであれば。
 最悪記憶操作という手段もありますし、そこまで神経質にならなくてもいいんじゃないですか?』
「仕方ありませんね、今だけはその口車に乗せられておきます。しかし話す際の言葉は慎重に選んでください」

「ねえ、お兄ちゃん、いったい何の話をしてるの?」
「あー、まあイリヤは知らなくてもいいことだ」

そんな会話を脇で聞いていた三人。
その会話の意味が分かったのは士郎だけだった。
だからイリヤの問いかけも適当に誤魔化しておいた。
イリヤが魔術師の掟などに触れる必要はないのだから。


「話は終わりました。積もる話もあるようですし腕の処置もしたい。どこか休息の取れる場所はないものか」
「そういえばバゼット、その傷…」

と、イリヤが気付いたように左腕に目をやった。
見ると切り裂かれたスーツの中からは乾いた血の色が見える。

「この件も含めて、色々と伝えておかなければならないこともあります」




369hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:11:47 ID:cIIvhIGs

そうして4人と1本が入ったのは一件の民家である。
生活感などなく、ただ民家にありそうなものを詰め込んだような家。おそらく住人など元から存在しないのだろう。
そしてそんな空間であるからこそ、一般家庭にありそうなものであればある程度はおいてあった。
スーツの袖を千切ったバゼットが傷口の縫合に使っている救急箱、ナイロン糸もそういったものなのだろう。

最も、麻酔も無しにも関わらず声一つあげることなく自分の腕を黙々と縫っていく姿というのは色々とすごい光景であったが。
イリヤは早々に部屋から逃げ、巧も空気を吸ってくるといって出て行ってしまった。
故に今は士郎とバゼットだけが部屋に残っていた。

残ったといっても特にコレといった会話があったわけではない。
せいぜい士郎が手伝いを申し出て、断られたくらいのものだ。

何かしていたかった。彼にとっても彼女があの放送で呼ばれたことは少なからずショックだったのだから。

(遠坂…)

士郎にとっては友人であり仲間であった。ある種の好意も抱いていたかもしれない。
ある意味では全てのきっかけであり、そしてセイバーを失った今では数少ない味方であった。
その存在の死は衛宮士郎には思いのほか堪えるものだったようだ。

(桜…、俺は―――)

彼女はどうしているのだろうか。
やはり自分の姉の死に悲しんでいるのだろうか。あるいはあの影となって人を襲ったりなどしてはいないか。
もし、さっきの放送で彼女の名前が呼ばれていたら俺はどうなっていたのだろうか。
あるいは、どうするべきなのだろうか。
答えは未だ見つからなかった。






部屋の外の廊下、イリヤは傍にルビーを伴って座り込んでいた。

『いいんですか?士郎さんとバゼットさんを二人きりにしたりして』
「……」

よくはなかった。一時休戦とはいえバゼットのこと完全に信用できたわけではないのだから。
それでも今あの空間にはなんとなく戻りたくなかったのだ。

『やっぱりですか。イリヤさん、凛さんの件はまだ受け入れられてはいませんか?』
「……」

イリヤにとって、彼女はある意味全てのきっかけといえる存在であった。
突然現れ、自分を下僕にし、何かとルヴィアと共に変なトラブルを持ち込んでくるトラブルメーカー。

イリヤにはそんな遠坂凛が死んだという事実は未だに受け入れきれていない。
それも当然だろう。今まで彼女自身戦いに身を投じてきたとはいえ、その中で死を見たことはなかったのだから。
ましてイリヤ自身は魔術師ではない。いくら魔法少女に変身できるとはいえ精神的には一般人、小学生なのだ。

370hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:16:14 ID:cIIvhIGs
「…正直、凛さんが死んだって聞いたとき、全然実感なんて沸かなくて、そのうちどこかから出てきそうな気がして。
 ひょっとしたらこれは夢で、もし目を覚ましたらいつもどおりにみんなと騒がしくするような日々に戻れるんじゃないかって、心のどこかで思ってて」
『残念ですがこれは現実のようですね』
「…」
『イリヤさん、あなたは死という現実を目の当たりにしてしまった。
 ですがだからといって、あまり背負いすぎないようにしてください。特に士郎さんのことなど』
「え…っ?」

なぜそこでその名前が出てくるのか、イリヤには分からなかった。

『私もこれまであえて深くは触れてこなかったことですが、今後のために一応言っておくことにします。
 彼は衛宮士郎です。しかしあなたの想う彼とは別人だということは頭に入れておいてください』
「そ、それは…」

イリヤ自身も分かっている。だがどんな存在だろうと衛宮士郎であることには変わりないのだと。
そう考えて受け入れてきた。
だが、ルビーが言うのはそういった話ではないのだ。
なんとなくそんな気がした。

「そんなの、ルビーに言われなくても…」
『それならこっちも安心なのですが』
「…ねえルビー、それならさっき放送で呼ばれた凛さんは――」
『こちらはどちらにしても確信がとれません。あまりそれに期待しすぎないほうがいいと思いますよ』

凛が死んだのが悲しかったはずなのに、ルビーが難しいこと言い出すせいで頭の中が混乱してしまう。
などと思っていると、巧が出ていこうとするのが目に入った。

「あれ…?乾さん行くの?」
「ああ、どうせ俺がいても邪魔っぽいしな」
『おや、士郎さんがそんなこと言いましたかね?』

話しながらも既に靴を履いている。放っておくと本気で出ていきそうだ。
そうなったらきっとお兄ちゃんは追うだろうしそのままあの時のようにセイバーやロボットに出会ってしまうかもしれない。

「待って!」
「…何だよ」
「別に乾さん、殺し合いに乗ってるとかじゃないんでしょ?
 だったらみんなで協力すればいいじゃない。どうして一人でやろうとするの?」
「やらなきゃいけねぇことがあるんだよ。他の奴を巻き込む気はねえ」
『巻き込む、という表現もおかしいですね。きっと士郎さんなら進んで手伝ってくれるでしょうし』
「それがうっとおしいって言ってんだよ」
『おや、もしかしてあれですか?自分が傷つくのはいいけど人が傷つくのは見たくないって本心を見せたくない、とか?』
「…」

一瞬巧の動きが止まる。
その時だった。

「おーい、もう終わったから戻っても大丈夫だぞ」

士郎の声が聞こえる。バゼットの縫合が終わったのだろう。
イリヤは部屋に戻り、巧もタイミングを逃したと言わんばかりに靴を脱ぎなおし、その後に続いた。

371hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:20:49 ID:cIIvhIGs



「それにしても、バゼットさんでもあのセイバーに勝てないなんて…」
『さすがは本物の英霊は格が違うといったところでしょうか』

バゼットが治療を終えた後、居間にて4人はそれぞれの情報を交換していた。
まず出た話は、セイバーの件。バゼットの怪我についての話題が最初となったために出てきた話だった。
斑鳩という施設にいるニアという存在、呉キリカという少女、そしてセイバー。

『もし移動していれば、おそらく彼女はこことは反対側のイリヤさんの家の方角に向かったでしょうね』

それを聞いてイリヤは安心し、士郎は複雑な気持ちになった。
というかバゼットで勝てないとなるとかなり厳しいのではないか、とイリヤは思っていた。


「さて、それではあなたのこともお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「そういえば乾のことまだ聞いてなかったな。この際だし、色々と教えてくれないか?」
「…」

巧の言う情報をまとめたところ、園田真理、草加雅人、長田由香、海堂直也が仲間となりうる人物。
村上峡児、北崎、そして木場勇治が危険人物、ということらしい。
ついでにオルフェノクという存在がどのようなものか、おおざっぱに説明もしてもらっておいた。

「人間を襲うことで仲間を増やす怪物、ですか」
「ああ、元は人間だったって言ってもそうなったら人間の心を無くすんだよ」
((え?))
(なるほど、そういうことですか。全く難儀なものですねえ)
「死徒のようなもの、という認識でよいのでしょうか」

最後のは小声での呟きである。
何はともあれ、士郎達3人の会った人物の中にはその者達はいなかった。それ以前に出会った人物もそこまでいたわけではない。
一方、巧はこの6時間ほどの間に随分と多くの人物と出会っていた。彼の知り合いも多くいたが、士郎達の知り合いはいなかったのだが。

魔王を名乗る仮面の男、ゼロ。
魔法少女を名乗る少女、暁美ほむら、佐倉杏子、そして巴マミ。
アリスという少女にマントを羽織ったルルーシュ・ランペルージという男。

バゼットが好奇心からか魔法少女というものについて詳しく聞きたがっていたが巧は詳しいところまで覚えてはいなかったため説明することはできなかった。

372hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:25:05 ID:cIIvhIGs

『なるほど、魔法少女ですか、興味深い話ですねぇ。ぜひとも会ってMS力を測ってみたいものですね』
「ねえ巧さん、その巴マミって人のことなんだけど―」

巴マミ。金髪で髪をロールしている少女。
イリヤは知っていた。あの金色のロボットが暴れていたあそこで黒髪の男を殺そうとしていたあの人のことだ。
巧の言っている巴マミと同一人物とは思えない。だが状況から言って同一人物としかありえないだろう。

「おい、どういうことだよそれ?!あいつがそんなことするかよ!!」
「だからこっちも分からないんだよ。そもそもあのロボットは何だったんだ?」
「さっき言ったルルーシュとかいうやつが撃ったあとでいきなり出てきたんだよ。
 ああくそ、何がどうなってんだよ…」

話せば話すほどどうなっているのか分からなくなる。
巴マミがそんなことを理由もなくやるはずがない。撃たれたことで混乱していたのだろうか?
考えがまとまらない中、意外なところから思わぬ情報が放たれた。

「一つよろしいですか?マントの男に金色のロボット、と言いましたね?」

会話に入り込んでくるのはバゼット。

「何か知ってるのか?」
「私が知っているわけではありません。
 ただ、私の出会った者の中に呉キリカという少女がいまして。
 仲間と判断し、ここから東にある斑鳩という施設に送ったことは伝えましたね」

呉キリカ。巧はその名前をどこかで聞いたことがある気がした。だがよく思い出せない。
情報のほとんどは啓太郎任せにしていたせいか、と自身のことながら思う。正直知り合いの知り合いのことまでは覚えていない。
そういえば鹿目まどかとナナリー・ランペルージという少女もいたな、と思い出す。

「彼女はここに来てすぐ、冬木大橋とされるあの橋の近くでその存在と交戦したと聞きました。
 マントの男が金色の戦闘兵器を召喚した、とも」
「おいちょっと待て、あいつはスマートブレインが崩れるあそこで会ったって言ってたんだぞ。
 何でそんなところにいるんだよ、おかしいじゃねえか」

巴マミがあの崩壊現場で会ったというルルーシュと金色のロボットを駆るマントの男。
同一人物としたら位置と時間が一致しない。

『あー、これはもしかしてあれですね』
「あれって何よルビー?」
『ほら、あれですよ。平行世界にいる同じ顔をした別人っていうのもいるんじゃないですか?』
「なるほど、確かにそれなら辻褄は合います」

イリヤ自身、クロという存在があったためその辺の理解は早かった。
しかし巧には理解が追い付いていなかった。

と、そこまで話したときだった。
士郎が顔を険しくして立ち上がったのは。

「みんな、気をつけろ」
「お、お兄ちゃん?」
『やばいですよイリヤさん、ここ狙われてます』

373hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:27:14 ID:cIIvhIGs



呉キリカ。彼女は斑鳩を出発後、当初の予定通りに美国邸を目指して移動していた。
その最中であった。魔力を発する存在を感じ取ったのは。

「ん〜、複数?ってことは何人か集まってるってことかな〜?」

複数人相手となると意外と手こずる可能性がある。
魔力消費は抑えておかなければ織莉子を見つけたときにかっこ悪い姿を晒すことになるかもしれない。
この場合は賭けになるが短期決戦で結界を絞って爪を増やして攻撃力をあげるか。
あるいは広めに範囲をとることで分散させて各個撃破にするか。

「ま、その辺は臨機応変に、ってことで」

戦略などを考えるのは得意ではないのだろう。
細かいことは突っ込んでから考えればいい。
そんな、彼女らしいといえばらしい考えの下、キリカはその民家を中心に結界を張る。
そして発動を確認した後そこに突っ込んだ。



それが飛び込んできたのは、結界が張られたことに気付いた士郎とルビーが警戒を促した直後であった。

―ガシャーン!!
窓が割れた、どころかその窓の周囲までもを人の通れる大きさに切り裂きそれは現れた。

「とーう!愛の魔法少女、呉キリカちゃんいざ参上!!」

そんな謎の口上と共に現れたのは黒い服に身を包んだ眼帯の少女だった。
その出現に最も驚いていたのはバゼットである。

「あなたは呉キリカ…?!ニアのところに向かったのではなかったのですか?!」
「お、誰かと思えば大恩人!ってことはちょっと早まったかな〜。
 うーん、まあでも、その、あれだ、些細だ」

バゼットを見て一瞬何か考え込む様を見せるも、直後に自己完結している様子のキリカ。

「まあどうせここで殺せば一緒だろうし、ね!!」

キリカは不意に部屋にあった机を打ち上げ、バゼット、そしてその近くにいた巧に投げつける。
轟音とともに壁が崩れたことによる煙が巻き上がり、視界が塞がれる。

374hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:30:15 ID:cIIvhIGs
最初に襲いかかったのは士郎。
彼を狙ったことに特に意味はない。ただ目についたというだけだ。

「っ…!早い…!」

士郎は干将莫邪を構えて迎え撃とうとするもあまりの速さに対応が追い付かなかった。
それでもかろうじてその手の爪を受け止め切り返したが、それもあっさりとよけられてしまう。

「お兄ちゃん!!」

と、そんなキリカの横から魔力弾を撃ち込むイリヤ。既にその姿は魔法少女のものとなっている。
士郎の前に出て庇い、目の前の敵と向かい合う。

「後ろに下がってて!!
 あなた、お兄ちゃんに手を出さないで!」
「へぇー、君も魔法少女だったんだね。
 じゃ、君から殺すとしようか」

魔法少女であったという事実がキリカの注意を引いた。
それは士郎から気を逸らすことには成功したが、彼女の意識をイリヤが直接受け止めることになってしまった。
純粋かつ狂気に満ちた視線がイリヤに注がれる。

「………!?」

そしてそれはイリヤが恐怖を感じるには十分なほどのものだった。

『イリヤさん!』
「イリヤ!!」

近づくキリカに身動きが取れないイリヤを呼びかけるルビー。そしてイリヤの様子に気付き前に飛び出す士郎。
飛び出した士郎はその手の双剣を振りかざし牽制しようとした。
しかし魔法少女であるイリヤを殺すことを優先としたキリカは士郎を踏み台にすると同時に蹴り飛ばし、増した勢いのままその凶刃をイリヤに向ける。
吹き飛ぶ士郎と立ち尽くすイリヤ。

―ザン
「―――あ」

ルビー自身が作った障壁によりその爪が体を貫くことはなかった。
しかしそれでも守りきれなかった衝撃はイリヤの腕に深い傷を作っていた。
痛みと体から流れ落ちる生々しい赤い液体。それは恐怖で身をすくませていたイリヤをさらにパニック状態に追いやる。
思考が止まり、ルビーを取り落してしまった。

「ほらほら、ぼーっとしてると死んじゃうよ!!」

それでも敵は待ってなどくれない。素早い身のこなしでさらなる一手がイリヤにせまる。

「避けろ、イリヤーー!!」

375hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:31:53 ID:cIIvhIGs
一方投げつけられた机の近くにいた巧は態勢を立て直していた。
投げられた机の影に隠れたせいかバゼットの姿は見えない。
見ると、キリカと言った魔法少女が士郎を吹き飛ばしてイリヤに肉薄する瞬間が目につく。
急いでオルフェノクへと変身して助けに行こうとする。
だが、

「…!!くそ、こんな時に…!!」

これまでの戦いでのダメージが回復しきっていなかったのだろう。
体の痛みが変身を遅らせてしまう。そして相手の動きはその一瞬を命取りとするほどのものであった。
腕を斬られて動けないイリヤとそんな彼女に迫る黒い魔法少女。
変身している暇すらもない。急いでイリヤの元に飛び出し、抱きかかえた態勢で倒す。

「あ……、乾さ――」
「ぼーっとしてんじゃねえよ」

イリヤは庇うことができたものの、巧の肩からは血が流れていた。
それでもキリカの攻撃は終わっていない。起き上がろうとする巧の後ろで爪を振り上げて肉薄し――

「―――お?」

そんな彼女の横から高速の拳が叩きつけられた。

「んぎゃっ?!」

悲鳴を上げて吹き飛ばされるキリカ。
壁を突き抜け廊下の外まで飛んでいったようだ。

「大丈夫だったん――っておい!」

近くまで寄ってきたバゼットはイリヤの足、そして起き上がって近くにいた士郎の腕を掴み、キリカの入ってきた窓があったはずの穴に放り投げた。

「うおっ?!」
「きゃ!」

士郎はどうにか態勢を立て直すが、足を掴まれたイリヤにはそのようなことができるはずもなく。
慌てて飛び出した巧がどうにか受け止めることで地面に激突することは避けられた。

「この場は私に任せてください」

そう言い残してバゼットは窓の前に棚やソファを倒してバリケードを作った。
バゼットの姿は見えなくなるが中からの何かが壊れる音は外まで聞こえてくる。

376hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:34:12 ID:cIIvhIGs
「バゼット!!」
「おい、行くぞ!」
「行くって…、バゼットはいいのかよ!?」
「いいわけねえだろ、でもこいつはどうすんだよ!」

そう言って見せられたのは巧の腕で震えるイリヤ。
腕の傷は深くはないものの血はまだ止まっておらず、少しずつではあるが傷から流れ出ていた。
こんな状態のイリヤを連れたまま戦うことができるかといえば×だった。

「お兄ちゃん…」
「イリヤ…、くそっ…!」

その苛立ちはイリヤを守りきることができなかった自分へのもの。
今はここを離れ、イリヤの手当てをすることが優先なのだろう。
あのような危険人物に一人仲間を残して行くことに後ろ髪を引かれる気持ちを残し、3人はここから離れた。

「…あれ、ルビー…?」



「さて、これで邪魔は入りません」

確か彼女自身が魔法少女、といったか。
このような結界を瞬時に作り出す魔術師というとかなりの能力を持っていることになる。
仮にも魔術協会の人間として、それを惜しみもせずに人目にさらすような者を放置しておくわけにはいかない。
それに"魔法"少女などというものを自称されるのもあまり気のいいものではなかった。

やがて壁を壊しながらキリカはその姿をみせる。

「あはははは、意外とやるじゃないか大恩人!!」
「あなたは優勝を狙ってはいないのではなかったのですか?」
「そうだよ、私は愛しい人を生き残らせるためにみんな殺して回るつもりなんだからさ」
「なるほど、そういうことでしたか」

つまり、これは自分の認識の甘さが招いたことか。
おそらくニアはもう生きてはいないだろう。
彼の計画はそれなりに有用なものであり、可能かどうかは別として失うには惜しいものではあった。
そこにはバゼットも若干は責任を感じずにはいられなかった。

「それではあなたは私の敵か」
「あーあ、本当ならあの魔法少女から殺したかったんだけどね。
 まあ君は大恩人だし特別だから先に殺してあげるよ!」
「そう簡単にいくとは思わないことだ」

あの速さ自体は脅威ではあるがかつて戦った英霊の影、そしてあのセイバーに比べれば劣る。対処できないほどではない。
腕のあの爪にさえ気をつければどうとでもなるだろう。
あとは一応支給品に脅威となるものがないかということにも注意しておかねばなるまい。

「なにしろ私の仕事はあなたのような存在を狩ることなのですから」

爪を振りかざして迫るキリカの前で、バゼットはルーンの刻まれた手袋をはめた。

377hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:36:00 ID:cIIvhIGs


『よよよ、ひどいですよイリヤさん…。
 このバーサーカー女とこんな中二病魔法少女もどきのところにおいていくなんて…』
「片づけたらすぐに追いかけます。それまでは静かにしていなさい」

【G-3/市街地/一日目 朝】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:干将莫邪@Fate/stay night、アーチャーの腕
[道具]:基本支給品2人分(デイバッグ一つ解体)、お手製の軽食、カリバーン@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:ここから離れ、イリヤの治療をする
2:桜、遠坂、藤ねえ、イリヤの知り合いを探す(桜優先)
3:巧の無茶を止める
4:“呪術式の核”を探しだして、解呪または破壊する
5:桜……セイバー……
6:
[備考]
※十三日目『春になったら』から『決断の時』までの間より参戦
※アーチャーの腕は未開放です。投影回数、残り五回
[情報]
※イリヤが平行世界の人物である
※マントの男が金色のロボットの操縦者


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中) 、ダメージ(小)、右腕に切り傷(中)
[装備]:なし
[道具]:クラスカード(キャスター)@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める
1:痛みと恐怖で思考が纏まらない
2:ミユたちを探す
3:お兄ちゃんには戦わせたくない
4:乾巧の子供っぽさに呆れている
5:あまりお兄ちゃんの重荷にはなりたくない
6:バーサーカーやセイバーには気を付ける
7:呉キリカに恐怖
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?


【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、治療済み、肩から背中に掛けて切り傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい。
1:隙を見て二人の元から離れたいが、なんとなく死なせたくない
2:この場所から離れる
2:衛宮士郎が少し気になる(啓太郎と重ねている)
3:マミは探さない
[備考]
※参戦時期は36話〜38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者

378hollow ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:38:07 ID:cIIvhIGs
【G-3/民家/一日目 朝】


【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている、応急処置・縫合済)、疲労(中)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×3@プリズマ☆イリヤ、カレイドステッキ(ルビー)@プリズマ☆イリヤ、
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:呉キリカの排除
2:セイバーを追い詰めれるだけの人員、戦力を探す
3:とりあえず会場を回ってみる
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:呉キリカを撃破後、イリヤスフィール達と合流する
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。
※魔法少女やオルフェノクについて、ある程度の知識を得ました(が、先入観などで間違いや片寄りがあるかもしれません)



【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの穢れ(3割)
[装備]:魔法少女姿
[道具]:基本支給品、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)
    スナッチボール×1、魔女細胞抑制剤×1、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
[思考・状況]
基本:プレイヤーを殲滅し、織莉子を優勝させる
1:織莉子と合流し、彼女を守る。ひとまずは美国邸が目的地。
2:大恩人を殺し、魔法少女(イリヤ)を追う。
3:まどかとマミは優先的に抹殺。他に魔法少女を見つけたら、同じく優先的に殺害する
4:マントの男(ロロ・ヴィ・ブリタニア)を警戒。今は手を出さず、金色のロボット(ヴィンセント)を倒す手段を探る
[備考]
※参戦時期は、一巻の第3話(美国邸を出てから、ぬいぐるみをなくすまでの間)
※速度低下魔法の出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※バゼット・フラガ・マクレミッツから、斑鳩の計画とニアの外見的特徴を教わりました。
※バゼット・フラガ・マクレミッツを『大恩人』と認定しました。

379 ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/06(水) 00:39:40 ID:cIIvhIGs
投下終了です
おかしなところがあれば指摘お願いします

380名無しさん:2012/06/06(水) 00:41:08 ID:3B6i8APE
投下乙!
キリカちゃんはあいかわらずトラブルメーカーっすな
ルビーが離れちゃってどうなるか先が読めないw
GJっす

381名無しさん:2012/06/06(水) 12:11:04 ID:iCTT9.CM
投下乙です!
バゼットさんやっぱりいい仕事をしますねw
イリヤの方は、感情が現実に追いついていないといった感じですか。

指摘としては、ルビー(カレイドステッキ)はマスターから十メートル以上離れられませんよ、ってところですね。
そしてルビーがいるなら、イリヤの治癒は出来てしまうというw
あと、いつお手製の軽食を食べるんでしょうw

382名無しさん:2012/06/06(水) 15:48:22 ID:FlM3kH7I
投下乙です

うんうん、こういうこの先がどうなるのかみたいなゴタゴタなのが読みたかったんだよw
久々の投下だぜw

383名無しさん:2012/06/06(水) 18:39:27 ID:OvDDP71A
投下乙です
あれ?キリカと比べたら草加の方がマシじゃね?と一瞬思ってしまった
後長田さんの名前が間違ってますよ

×長田由香○長田結花

384 ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/07(木) 08:22:57 ID:H96g1FbA
感想、指摘ありがとうございます
誤字の方はwikiで修正するとして、
>>381
見落としていました
ただそのままの意味で解釈すると展開自体が変わりそうでもあるので
1、本当にそのままの意味、イリヤから離れられない
2、イリヤから離れると行動できなくなる
3、自分から離れることはできないが、支給品として所持者が変わるのは問題ない
のいずれかの解釈で考えているのですが修正したほうがよいでしょうか?
現SSの時点では一番下の解釈が最も近いのですが

385名無しさん:2012/06/07(木) 09:37:03 ID:y97/Ki5M
>>384
2か3で問題無いと思いますよ
修正お待ちしています

386名無しさん:2012/06/07(木) 10:28:32 ID:/XTzD4ZE
投下乙です!まあキリカはアホの子で行動が読めない分下手なステルスより厄介っていうねw

所有者が死んだりした時を考えると3ですかね?

387 ◆Z9iNYeY9a2:2012/06/09(土) 20:09:49 ID:QAuOKTGs
文章を加筆した部分を修正スレに投下しておきました
ご確認お願いします

388 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:32:41 ID:0Ts8TUk2
投下します

389漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:35:18 ID:0Ts8TUk2
警察署を出発した夜神月。
行先は特に決まっていなかったのだが、しいて言えば安全の確保できる場所に移動したいと考えていた。
今の自分にはノートどころか力になりそうな支給品もないのだ。
あったといえば一本の黒い剣と赤いカードのようなもの。
黒い剣のほうは自分に扱えるものとは思えなかったがどうやら何かしらの力を秘めている様子。駆け引きには使えるだろう。
赤いカードのほうは逃げに徹するのであればそれなりに有用な道具となる。一度しか使えないのがネックだが。

そうして移動しているうちに、大きな戦闘音が聞こえてきた。
警察署から見て南のほうからの音だ。そこまで距離が離れてもいないようだ。

(まさかこの近くで戦闘が…?)

下手に動くと巻き込まれる可能性もある。
見晴のよい離れた場所から様子をうかがうことにしたのだった。

(あれはオルフェノクとかいう生物、それに金色の…ロボット?!)

あんなものまでこの場にあるというのか。
驚愕する月を後目に状況は進んでいく。
場に現れた白い少女と戦う銃使いの少女。あれも魔法少女とかいうものなのだろうか。
そして金髪の少女が、巨大な銃を手に飛び上がり、発砲した。
爆音が響く中で周囲は火に包まれ、その場にいたオルフェノク、白い少女たちは散り散りになって去って行った。

やがて残った金色のロボットも消滅し、マントを羽織った男がその場に残った。

(あの男が、ロボットを動かしていたのか)

男は道に残った一人の男の死骸に近づき、しばらくした後去って行った。

(どうするか…)

あの男は間違いなくこの殺し合いに積極的な一人だろう。
多くの参加者を殺して回るはずだ。
であれば、もし後に裏切ることが前提であっても今は手を組んでおけばことが有利に進むかもしれない。
問題は、今自分の手元にはカードが少なすぎることだ。交渉が決裂したときのことを考えると心もとない。

(いや、もしかしたら賭ける価値はあるかもしれない)

男は近くにあった建物に入っていった。地図にもあるバー・クローバーという施設らしい。

月は支給されていた剣を手に、そしてカードをいつでも使えるようポケットに入れて男を追った。
あのような男の前でこんな剣を持っていても気休めにしかならないだろうが、逆にいえば気休めくらいにはなる。

390漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:36:06 ID:0Ts8TUk2

「誰かな?」

入るために敢えて足音を聞こえるように歩いて、バー・クローバーに入った。
こそこそして入っては余計な警戒を抱かせてしまうからだ。
そして目論見どおりに相手に気付かせる。

「僕は夜神月、さっきのロボットから君が出てくるのを見てね。好奇心から会いにきたんだ」
「ほう、あれを見て私に会いに来るか。なかなかの度胸だ。
それで、要件は何だ?まさかその剣で私を殺せると思っているわけではないのだろう?」

ここまでの会話の中で月はこの男についてある程度の推察を立てた。
おそらくこの男は殺し合いに乗っていても無差別に殺しまわっている男ではない。
いわゆる立ち回りを気にする性格のようだ。
であれば、いける。そう確信した。

「単刀直入に言いましょう。僕と手を組みませんか?」



放送が始まったとき、二人はFー4エリアを目指してバイクを走らせていた。

男の名はロロといった。ロロ・ヴィ・ブリタニア。
殺し合いに乗ってこそいるものの慎重に行動することを心掛けているという。
自分のスタンスに近かったため、申し出をすんなりと受けてもらえた。
なぜそこを目指していたかというと、彼の探すとある人物がそちらに向かうのを月が見かけたためだ。
そういった事情で移動した二人は、突如響いた放送に思いを馳せた。

(松田、美空ナオミ、こいつらが死んだのは僥倖だな。だが)

共に自分の存在を脅かしうる者だった二人。敵が少しは減ったことになるだろう。
ニア、メロ、そしてLが生きているのは警戒しておく必要があるだろうが。
しかし、弥海砂。彼女が死んだのは若干でこそあるものの痛手だった。
彼女がそこまで長生きできる存在とは思っていない。だがこれほどまでに早く死ぬとは。

「C.C.、ゼロ。共に健在か」

そんな月の傍で呟くロロ。だがその名前の意味は分からない。
まだお互いの知り合いについての情報交換を行った程度だ。
会話に気を取られて襲われでもしたら事だ。詳しい情報交換は落ち着いた場所ですることにしていた。

そうしてF‐4にたどり着いたが、ロロの目当ての人物は見つけることはできなかった。
既に移動したということだろう。手がかりもなく、虱潰しに探し回るほど暇なわけでもない。
一旦その人物の捜索は打ち切りどこかに拠点を構えることにするという。

そうして結局警視庁まで戻ってきていた。近くにある施設として、ただ都合のよかっただけである。
それでも月としては一度来た場所だ。何か変化があればすぐに分かる。

「おや、夜神月君ではないですか」

と、警視庁に入ったところで月にとっては数時間前に聞いた声が聞こえた。

見ると、入ってすぐの受付付近の席にゲーチスが座り、その傍で美樹さやかが眠りについていた。

391漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:37:20 ID:0Ts8TUk2



それは偶然だった。
ふと美樹さやかの遺骸にもう一度目を落としたことでそれに気づくことができた。

「これは…?」

彼女の欠けた頭部の形が若干元に戻っているようだった。
さらに近づいてみると、少しずつ彼女の傷が再生していく様子がわかる。

「そんな魔法のようなことが―――ああ、そういうことですか?」

口にして気付いた。
美樹さやかは魔法少女だと言っていた。ならばもしかすると有り得ないことも起こしうるのかもしれない。
例えば致命傷を負っても生存することが可能である、とか。

「ふふふ、美樹さやか。あなたは本当に楽しませてくれますね」

もしまだ彼女が生きているならまだ利用することができる。
目が覚めたときが楽しみになってくる。

だがこの場で彼女の目覚めを待っているというのも危険だ。
政庁から離れつつどこか腰の下ろせるような場所に移動するべきか。
意識のない美樹さやかを抱える。近くに落ちているバッグの回収も忘れない。

そうしてたどり着いたのが警視庁であった。
美樹さやかの目的地へは彼女が目覚めてから移動すればよい。

そうしているうちにやってきたのが、

「おや、夜神月君ではないですか」

夜神月、そして黒髪の男であった。



月としてはゲーチスとの遭遇はどちらかといえば避けたかった部類だ。
彼からは得体のしれない黒さを感じており、底知れぬ不気味さがあったからだ。
それでももし己の世界にいる者であったならばここまで警戒しなかっただろう。
だが、彼の住む世界は月にとってはあまりに未知数。何かしらの力を隠し持っていても不思議ではない。
しかし、出会ってしまったものは仕方ない。できれば迅速にこの場を去りたい。
触らぬ神に祟りなしというやつだ。変に刺激してはまずい。

392漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:38:33 ID:0Ts8TUk2
そう思っていた矢先であった。

「お前、乗っているな?」

ロロが、その月が避けていた部分に触れたのであった。

「乗っている、とは何のことでしょうか?」
「ふん、お前のその腹に隠している闇、隠しきれてはいないぞ?」

ロロはあくまで、直感的に感じ取ったことを言ったにすぎない。
それは月にとっては相容れないやり方だ。

「…あまりそういうことを口に出すのは感心しませんよ。
私はゲーチスと言います。あなたは?」
「ロロ・ヴィ・ブリタニア。いずれ魔王となる男だ」

このやり取りの中で月は直感した。
こいつは狡猾で頭も回る男だ。しかし己の力を過信している節がある。
そうでなければあのような大胆な問いかけはできないだろう。もし何か起これば力ずくで全てを終わらせられるのだから。
実際にそれが可能なほどの力を持っているからたちが悪い。
が、そこが付け入る隙になる。

そしてそれと同じ印象をゲーチスも感じ取っていた。
最もゲーチスは彼の能力を知らないため、月ほど確信することはできなかったが。

それを知ってか知らずか、ロロは話を進める。

「俺も乗っている者だ。だがさすがに全ての参加者を殺すのは骨が折れる。
どうかな?我らと手を組まないか?」
「なるほど、そういうことでしたか。では月君もやはり?」
「ええ」
「ほう、なかなか喰えないお人じゃないですか」

おどけるような口調で話すが、月には彼なら薄々気づいていたのではないかという気がしてならなかった。
自分がゲーチスの黒さをうっすらと感じ取ったように。

「残念ですが私にはある目的がありまして。おそらくあなた達と相容れるものではないかと思うのです」
「そうか、残念だ。ではこの場での一時休戦と軽い情報交換くらいは頼めるかな?」
「それくらいならいいでしょう。しかし会ったばかりの人間をそう信用するというのも考えてしまいますね」
「なら、お互いの持つ手札をそれぞれ公開して話すというのはどうですか?
僕は彼の力を知っていますし、それだけでは不公平になりますから」

ここで敢えて主導権を握ろうと意見を出す月。あまり流されてばかりはまずい。
ロロの力は概ね把握している。だが彼はどれほど把握されているかまではわかっていないはずだ。
だから彼としても話さざるを得ないだろう。
これは取引でもある。ゲーチスの隠しているものを知ることもできるのだから。

「ふん、いいだろう。お互い隠し事はなしだな」
「仕方ありませんね」



393漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:39:06 ID:0Ts8TUk2
ロロは己の持つ能力についてを話した。
ナイトメアフレームという機動兵器、そしてジ・アイスという能力。

ゲーチスは己の持つポケモンについてを話す。
サザンドラという3つの首を持つドラゴン。波動、エネルギー弾を操ることができる。

月は何の能力を持っているわけでもない。だから改めて支給品を開示した。
バイクと黒い剣。しかし今この状況ではこの程度では焼け石に水くらいのものしかないだろう。
するとロロが誰のものを持ってきたのか、持っていたもう一つのバッグから取り出した何かを投げて寄越した。
ゲーチスの持つボールと同じものに見える。開くと、中には全身に刃のついた人型に近い生き物が出てきた。
どうやらこれは元々はゲーチスのポケモンであったらしい。それがロロの拾ってきた誰かのバッグのあったとか。
本来なら自分のものであると取り戻そうとしそうなものだが、ゲーチスは月に預かっていてもらいたいとそれを受け取ることを了承してくれた。
しかも親切なことに傷ついたキリキザンに薬まで施してくれた。

無論、全てを明かしたといっても馬鹿正直に本当に全部話した者はこの中にはいない。
ロロはギアスの能力はヴィンセント搭乗時しか使用できないような言い方をした。もしもの時に油断をさせておくためだ。
ゲーチスは、波乗り、大文字技の存在は隠しておいた。一つは万一の時に水場を移動経路として使う時のため、もう一つは使い勝手を考えての話だ。ポケモンを知らない二人だからこその隠し事だ。
月はポケットに隠したレッドカードの存在は言わなかった。唯一にして一度きりの、今の月にとって最も実用的なアイテムである。小さなものであったため最初に会った時も隠し通すことができたものだ。

こうして上げた以上に、さらにゲーチスは後ろで眠る美樹さやかの詳細についても敢えて詳しくは話していない。
先ほどの戦闘行為のダメージが残っているため眠っているとしか伝えていないのだ。
もし、この少女について詳細を聞けばこのロロという男は彼女を己の手駒にできないかと考えることだろう。それは困る。
美樹さやかは自分の駒として扱っていきたいのだ。このような男に奪われるわけにはいかなかった。
幸いさやかとはここに来てからずっと共にいる仲でいる上、彼女の事情はある程度承知済みだ。もしもの時でも彼女の扱いにはこちらに分がある。
そういった考えがあった。
そもそもゲーチスの欲しているのはあくまで手駒。協力者ではないのだ。それに自分の隠すべき部分
今争いはしないといってもいずれは潰しあうことになるのは目に見えているのだから。


一方で月は若干の焦りがあった。
この場において最も立場の低いのは自分だろうという自覚があった。
ロロやゲーチスのような強力な力があるわけではない。
ゲーチスから施されたキリキザンというポケモンがあってもだ。いや、むしろそれこそが警戒に値する。
これは罠か、あるいはもし自分が裏切ることがあっても対処できるという意図があるかということだ。
だがそんな焦りを表に出すことはない。それに気付いていないという意志表示のためだ。

394漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:40:38 ID:0Ts8TUk2
「さて、では情報交換タイムといこうか」

そして場を仕切るロロ。
各々が様々な思惑を胸に秘めたまま、未だ目覚めないさやかの傍で情報交換が始まった。


【E-3/警視庁/一日目 午前】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式×2、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具(薬系少な目)
    羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:情報交換を行う
2:表向きは「善良な人間」として行動する
3:理屈は知らないがNが手駒と確信。
4:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
5:美樹さやかは自分の駒として手元に置く
6:政庁からはなるべく離れる
7:今のところロロと組むつもりはない
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※月、ロロにはサザンドラの存在と使う技を明かしました。しかし波乗り、大文字の存在と美樹さやかの詳細については話していません


【ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、左頬に切り傷(軽度)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、コルト・ガバメント(5/7)@現実、モンスターボール(空)、不明ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:この殺し合いの優勝者となる
1:ゼロとC.C.の正体を確認し、抹殺してゼロの力を手に入れる
2:ナナリーを抹殺する
3:巴マミを抹殺する。なるべく残酷な方法で
4:夜神月を利用する
5:手駒にできそうなプレイヤーを見つけたら、戦力として味方に引き入れる
6:もう1人のロロ(ロロ・ランペルージ)の名前に違和感
7:ゲーチス、月と情報交換を行う
[備考]
※参戦時期は、四巻のCODE19と20の間(ナナリーを取り逃がしてから、コーネリアと顔を合わせるまでの間)
※ジ・アイスの出力には制限が設けられています。普段通りに発動するには、普段以上のエネルギー消費が必要です
※ヴィンセントには、召還できる時間に制限があります
 一定時間を過ぎると強制的に量子シフトがかかりどこかへと転移します
 また、再度呼び出すのにもある程度間を置く必要があります
 (この時間の感覚については、次の書き手さんにお任せします)
※ゲーチス、月にはヴィンセント、ジ・アイスについて明かしました。しかしヴィンセント使用中でなければジ・アイスは使えないと誤解させる言い回しをしています
[情報]
※「まどか☆マギカ」の魔法少女、オルフェノクについての簡易的な知識
※ルルーシュ・ランペルージとゼロ(ルルーシュ)が別個として存在していると認識

395漆黒の会談 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:41:46 ID:0Ts8TUk2
【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:健康
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night、ジャイロアタッカー@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
    キリキザン(体力半分ほど)ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:優勝し、キラとして元の世界に再臨する
1:情報交換を行う
2:しばらくはロロと行動
3:元の世界で敵対していた者は早い段階で始末しておきたい
4:ミサと父さん(総一郎)以外の関係者の悪評を広める
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ロロ、ゲーチスにはレッドカードの存在は明かしていません


【レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)】
ポケモンに持たせると、攻撃技を当てた相手を強制的に交代させるアイテム。
本ロワにおいては参加者も使用可能である。
ポケモンに発動した場合の効果はゲーム準拠。
参加者に発動した場合は戦闘可能範囲外まで強制移動させられる。

【エクスカリバー(黒)@Fate/stay night】
セイバーの所有する宝具。ただし聖杯の泥の影響で黒化している。
真名を解放することで膨大な魔力を解放可能。だがこれが可能なのは基本的にセイバー本人のみ。

396 ◆bbcIbvVI2g:2012/06/16(土) 21:42:59 ID:0Ts8TUk2
投下終了です
頭脳派キャラはあまり得意ではないのでおかしい所があれば指摘いただけると幸いです

397名無しさん:2012/06/16(土) 23:06:04 ID:4/cn/B7Y
投下乙!
悪い奴らは手を組むものさ

398名無しさん:2012/06/17(日) 00:00:16 ID:/zl/pLBg
投下乙です!月からすれば少なからず駆け引きがやれる腹黒共より、どう動くか分からない錯乱さやかあちゃんが一番厄介だと思うんだ……ほら、やっぱり危険人物しかいないじゃないですかw

399名無しさん:2012/06/17(日) 12:57:54 ID:TIpgiHuk
投下乙です

頭脳派キャラを書くのは難しいがこいつらならこうするだろうなみたいな展開はまだなんとかなるかもね
情報交換はどうなるか気になる。そしてさやかちゃんは会議が終わる前に目を覚まさないと…どうせこの三人ならどうさやかちゃんを利用するかの算段とかもするだろうなあw

400名無しさん:2012/08/23(木) 14:09:50 ID:4tOA1eRA
予約キター

401 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:19:01 ID:E5hoQQIY
これより本投下を始めます

402Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:20:10 ID:E5hoQQIY
藤村大河。
穂群原学園の英語教師。弓道部の顧問。剣道5段。
彼女のプロフィールとしてはこのくらいのものしかないだろう。少なくともこの場においては。
魔術師などではなく、当然のことながらオルフェノクでも魔法少女でもポケモントレーナーでもない。本当の意味で一般人である。
しかし、そんな彼女でも様々な人物と関わりがあった。

魔術師殺しの異名を持つ男、衛宮切嗣。
そんな男の息子、衛宮士郎。
間桐家の魔術師、刻印虫を植え付けられた少女、間桐桜。
他にもサーヴァントや元暗殺者といった存在にも関わりを持っている。

そのような正気の沙汰ではない環境にありながら、それらの異端と関わることもなく、なのに彼らに少なからず影響を与えていた。
衛宮士郎は赤い外套の英霊となり記憶を摩耗させた中においても彼女のことは大切に思っていた。

そして、間桐桜にとってもかけがえのない人間の一人だった。




「ピカ、ピカ。
…ピカピ、ピカピ」

嫌な予感はあった。
突然ピカチュウが駆け出したときにはすでに止めることなどできなかった。
だがNは確かに聞いた。駆け出す直前、ピカチュウが”ヒカリ”と呟いたのを。

Nがその呟きの意味を理解したときには手遅れだった。
追いかけた三人が見たのは、もはや原型を留めていないほどボロボロにされた人間の死骸だった。
辛うじて見える帽子が、おそらく知った人間が見た際の判断材料になるかもしれないという程度のものだった。

ルヴィアも顔を顰め、大河は口を押えて立ち尽くしている。
ピンプクはゾロアークの体毛に入っていたので、これを見てすぐにボールに戻したことでピンプクには見られずに済んだ。

「ピカピ、ピカピ」

ピカチュウはなおもヒカリだったものに呼びかけ続けている。
自分のマスターの死を直接知ることになったのはついさっきのことだ。立て続けに見てしまった仲間の無残な亡骸に大きなショックを受けているのは明白だった。

「N君、ピカちゃんをその子から離してあげて」
「…ピカチュウ」

Nはピカチュウに声を掛ける。
しかしあくまで掛けるだけだ。もしここで離れろと言うと、ピカチュウの意志を捻じ曲げることになるのだから。

403Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:21:19 ID:E5hoQQIY

「…ねえ、N君、この子の姿を隠してあげられる何か、持ってない?」
「今そういった者は持ってないけど、ゾロアーク」
「クシュウ」

ゾロアークに言うと、ヒカリの周囲の空間だけ景色が変わる。
次の瞬間にはヒカリには白い布がかぶせられていた。
当然これは幻影であり、実際にそこに布があるわけではない。しかし今、この場においての視覚的な気休めにはなるし、大河にとってはそれで充分だと思った。

「…?そういえばルヴィアさんは?」
「彼女なら、ちょっと離れるって。でもすぐに戻ってくるって言っていたよ」





嫌な予感があった。
その少女の死体からそう離れていない場所、そこからどうしようもなく嫌なものをルヴィアは感じた。

そもそもここはあの女、間桐桜と戦った近くの場所だ。あの時あの女はこの方向に何があると言っていた?
そしてあのヒカリという少女の傍に落ちていた、血に染まった斧。

見てはいけない気がした。だが見なければいけない気もした。
予感はそれに近づくにつれて確信に近づいていき、そして、

「まったく無様ですわね。ミストオサカ」

そこには、あの時間桐桜の言ったように、頭の割られた遠坂凛の姿があった。

「あなた、どれくらいの借金を残しているか分かっているんですの?
 まさかあなたが借りたものまで返せない人間だったなんて、つくづく見下げ果てましたわ」

その口調は普段の凛に接する彼女の口調と何ら変わりはない。傍から見れば死体と話しているとは思えないだろう。

「さて、そうなった場合、残りの借金はどうしましょうか…、そういえばあなたには妹がいるんでしたわね。
 この際ですし、肩代わりしてもらいましょうか。そしてあなた方遠坂家は、まともに借りたものを返すこともできない情けない一族と末代まで語り継いであげますわ」

いつもであれば、ここで蹴りの一つでも飛んでくるのが普通といえるほどの暴言の数々。しかしそれが動くことなどなかった。

「あなたとの腐れ縁もここまでですわね。それでは、さようなら」

と、こうしてルヴィアと凛の別れは、ルヴィアにとっていつも通りのやり取りで終わりを遂げた。

404Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:21:48 ID:E5hoQQIY



ヒカリを弔ってあげたいと言ったのは大河だった。

「こんな女の子をこんな姿で放っておくなんてできない」
とのことだった。

ピカチュウは顔を涙で濡らしながら同意し、Nもピカチュウの友達を埋葬することを手伝うと申し出た。

「分かりましたわ。ただ、私は少し気になることがありますのでお先に行かせてもらいたいのですが、よろしいかしら?」
「あー、うん、そうよね。これは私の我儘なんだし。でも気を付けてね」

もし彼女がいない間に全てを終わらせられるならそれに越したことはない。
それにこっちにはNや複数のポケモンも共にいるのだ。過剰な期待はできないが何かあった時には逃げることは可能だろう。

「あ、あとね、桜ちゃんに会ったら―――」
「分かっていますわ。その辺りも心配せずともよいですから」

おそらく大河の期待とは正反対のことをしようとしているのだな、と思いつつ。
ルヴィアは北へ歩きだした。





どうしてこんなことになってしまったのだろう。
私は、ただ先輩に死んでほしくなかった。先輩を守りたかった。
きっと先輩は私のためなら命を惜しまないだろう。
でもそんなのは嫌だった。
姉さんのように、一人でも戦える力が欲しかった。

そう思った矢先に、それを見つけてしまった。
デルタギア。
これを使えば一人でも戦うことはできる。先輩に守ってもらわなくても自分の身は守れる。

そう、守りたかっただけだった。
なのに、気がついたら目の前には男の人が倒れていた。正気を取り戻したときには遅かった。
でもそんな気持ちをどこかにやってしまうぐらいそれが楽しくて。それがおかしいことにも気付けなくて。

そんな時、血塗れの斧を持って走る少女を見つけた。
きっと人を殺したんだ。あの人は悪い人なんだ。そう思ったとき、とても自然にその人を撃った。
そして、自分がどうするべきなのかに気付いた。
悪い人を殺そう、と。それが先輩を守ることに繋がる、と。
そう言い訳をして、やってはいけないことを肯定してしまって。

そうして、自分がおかしくなっていることに気が付かないまま、こうしてみんなと行動していました。

405Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:22:14 ID:E5hoQQIY



「それはたぶんバーサーカーだと思います」
「バーサーカー…、狂戦士、ですか?」

合流を済ませた4人は、それまであったことについての情報交換を行っていた。
当初、タケシがグレッグルに殴られたり桜が頭痛を起こしたりと色々な意味でのトラブルもあったが今は落ち着いている。

「はい。でもごめんなさい、名前くらいはわかりますけど、あまり詳しいことは知らなくて…」
「ああいいのよ。名前が分かっただけでも今のところは十分だし。
 でもちょっと気になるんだけど」

バーサーカーについての説明を受けた真理は新たな疑問を問いかける。
バーサーカー、そしてセイバーなる者。彼らの存在自体は美遊からも聞いていた。
聞いていた、と言っても外見や特徴を聞いたわけではなくただ注意するようにと言われたくらいだが。
それだけではなく、桜と美遊の知り合いには衛宮士郎以外にも被っている部分が見受けられた。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、藤村大河。
だが桜は美遊の存在は知らないと言っていた。それだけならばそこまでおかしいとは感じなかっただろう。友達の友達に交友関係があるとも限らない。
問題は美遊の話したクロエ・フォン・アインツベルンについて話した時のことだ。
彼女からはその子はイリヤの双子の姉妹だと聞いていたのだが、そんな人は知らない。
桜自身、イリヤのことはよく知っているが双子の存在など初耳だ。
というより、知らないではなく、桜にとってはそんなものいないはずなのだ。

「本当に知らないのね?」
「はい…」
「そういえば真理さん、覚えてますか?美遊ちゃんが言ってたあの――」
「もしかして、平行世界がどうとか言う話?正直よく分からなかったけど」
『平行世界だと?』

その単語に反応したのはナナリーにしか見えない少女だった。

(ネモ?分かるの?)
『まあな。こいつらに今から言うことを伝えろ』

‐‐‐‐

「えっと、じゃあこの桜さんと美遊の知っている人たちとは違う可能性があるの?」
「ええ、そうらしいです」

ナナリーはネモが言うことを分からないなりに分かりやすく伝えた。と言ってもナナリー自身も分かってはいないのだが。
ただ、もしそうならゼロと兄であるルルーシュが同じ場所にいる説明もつくかもしれないとネモは言っていた。

「それにしても、すごいですねナナリーちゃんは。私の知らないようなことまで知ってて」
「いえ、たまたま知ってただけですから…」

ナナリーにはその言葉をただの感心と受け取りたかった。
しかし、そういった桜の言葉からは明らかに何か含みがあるような気がしてならなかった。
実際、傍にいるネモの警戒も解けてはいない。

情報交換をしながら、四人は一人を除いて特に不安を抱えることもなく歩いていく。

406Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:22:42 ID:E5hoQQIY

そして、彼らが彼女と出会ったのはポケモンセンターを出てしばらく歩いたところにある橋の近く。
そこに、その少女はいた。

「また会いましたわね、マトウサクラ」
「……!」

目の前に立っていたのは金髪でドレスのような服を着た少女。彼女を見たときの桜の表情はすさまじいものだった。

「何で、あなたがこんなところにいるんですか?」
「それはこっちのセリフでしてよ。まさか集団に紛れ込むなんて思ってもいませんでしたもの」

知り合いなのか、とこの場で問いかけられるものはいなかった。
二人の表情や刺々しい会話、そして殺気はただ事ではないことはナナリー、真理、タケシにもすぐに察しがついたからだ。
しかしその後の会話の内容はその中の一人にはあまりにも大きな事実だった。

「一つ尋ねますわ。ヒカリという帽子の少女を殺したのはあなたですの?」
「名前は知らないですけど、帽子をかぶった女の子を殺したのは私ですね。それがどうかしたんですか?」
「なぜ殺したんですの?」
「だってあの人真っ赤に染まった斧を持って歩いてたんですよ?そんな危ない人、殺さないといけないじゃないですか。
 まさかそれで死んだのが姉さんだとは思いもしませんでしたけど」
「嘘だ!!ヒカリはそんなことしない!!」

会話を聞いてタケシが声を荒げる。
三人は状況に付いていけていない。突如現れた少女に突然の罪を晒されることにも、その罪を何事もなかったかのように流す桜にも。
唯一その被害者かつ加害者(桜曰く)である少女の知り合いであったタケシが反射的に反応できただけだ。

「あら?タケシさん、もしかして人殺しを庇うんですか?」
「――っ!?」

その言葉に何を思ったのか、おもむろにバッグから取り出したデルタギアを構え、殺気を放ちながら近づいてくる桜。
さっきまでとのあまりの変わりように身動きを取ることができないタケシ。
だがそのタケシに近づく桜の目の前を黒い何かが通り過ぎた。

「お止めなさい。あなたの相手は私でしてよ」

少女が桜の目の前に向けて指から何かを放ったのがネモには視認できた。
そんな彼女の注意を自分に向けようとする金髪の少女。そして続けた言葉が桜の注意を向ける決定的な言葉となった。

「はぁ、全く、そんな女にはシェロ―エミヤシロウのことなんて任せられませんわね」

ピタリ、と桜の動きが止まる。
その時ナナリー以外の皆が見た桜の表情は忘れられないだろうほどのものだった。

「なんで、あなたまで先輩のこと知ってるんですか…!」
「気に障ったんですの?ならその方から離れなさい。
 あなたの苛立ちなら私が押さえつけて差し上げますわ」
「――変なところばっかり姉さんを思い出させて。いいですよ、まずあなたから殺してあげます。
 変身――」
『complete』

今は桜には目の前の女しか目に入っていない。こいつを早くこの世から、目の前から消し去りたい。
デルタギアのデモンズスレートの影響に強く侵された精神は桜の意識を殺すことに向けさせていた。
そして、それは確実に桜を、そして桜の内を侵食していた。

ここに二人の少女によるリターンマッチが開幕した。

「ま、真理さん、どういうことなんですかこれ?!」
「知らないわよ、私に聞かないでよ!」

一方タケシと真理の二人は今だに混乱が解けない。この短時間に想定外な情報が色々と増えすぎた。

『だからあの女とは離れておけと言ったが、まあここで奴の正体を知る者と会えただけ幸運、か?』
「……」

そしてそんな彼らを尻目に桜を見つめるネモと、その傍にいるナナリーは冷静に状況を見守っていた。

407Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:23:20 ID:E5hoQQIY


「ピカ…」

埋葬は終わり、ピカチュウは悲しそうな目をヒカリに向ける。
Nはその中に、ヒカリとの本当の別れの悲しみと同時に、自分が最も大切に思っていた存在を同じように弔えなかったことへの後悔を感じ取れていた。
しかしNにはピカチュウの思いが分かっても、それを汲み取ることはできない。
アッシュフォード学園での出来事の中ではそれに気付けなかったというのに。

「タイガさん、友達との別れとは、悲しいものなのかな?」
「うん、悲しいものよ。それがもう二度と会えない―なんてことになったら特に」
「……」

Nには実感することができなかった。
ポケモンをトモダチといったが、彼らの力を借りた後はすぐに野に返した。
人間の手で拘束したくないがための方針であったが、それゆえ深いつながりを持ったものとの別れというものはなかったのだ。

「僕は、本当にポケモン達とトモダチだったのかな?」
「うーん、よく分からないけどさ、そういうのって付き合いの長さだけで築けるものでもないのよねー。
 案外出会って数日で仲良くなる、なんてことも少なくないのよ」
「でも、僕は彼らと別れるときに悲しいとは思わなかった。僕にとって彼らはトモダチじゃなかったのだろうか…」

もしかしたら、その悲しい、という感情があるからこそポケモントレーナー達はポケモンを手放さないのだろうか。

「タイガにとって、大事な人っているの?」
「うん、いるよ。そうねー、ここにいちゃう人でいうと二人、かな。
 士郎っていう弟分みたいな男の子と、桜ちゃんって、こっちは言ったかな?妹分みたいな女の子」

その名前を出したときの彼女の顔は、あのトレーナーに付き従うポケモン達を連想させた。
ああ、そうだったのかと納得する。

今まで自分はポケモン達の、人間に対する怒りしか知らなかった。そのようなポケモンとばかりいさせられたから。
でも、そんな僕でも大切だと思える存在を作ることができるのだろうか。
あのトレーナーのポケモン達のように。藤村大河にとっての彼らのように。

「いつかそのシロウって人にも会ってみたいな」
「あははは、それいいかもね。でも気を付けてね。士郎ってパッと見じゃ分からないけど結構扱いづらいんだから」

と、その時だった。

「ピカ?」

ピカチュウの耳が動き、ルヴィアの歩いて行った方を向く。
二人が耳を澄ますと、何かがぶつかるような音が聞こえてきた。

「もしかしてルヴィアさんに何かあったんじゃ…。
 急ごう、N君!!」

そしてNと大河は音の方向へ向けて走り出した。

408Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:23:55 ID:E5hoQQIY



先に近づいてきたのは桜の方だった。
怒りに任せて握った拳を叩きつける。シンプルだがそこにデルタのスペックが合わさるとそれだけでも洒落にならない。

するとルヴィアは懐から取り出したマッチにおもむろに火をつけ上に放り投げる。
突然の行動に気を取られそちらを警戒する桜。次の瞬間飛んできたのは頭に向けての飛び蹴りだった。
元々ダメージを負っていた場所に与えられた衝撃はデルタの鎧を通してでもそれなりのものであり、桜は足元をふらつかせる。
そしてふらついたところを至近距離からのガンドで吹き飛ばす。

朦朧とする意識の中吹き飛ぶ桜。しかし一度戦った相手か、あるいは侵食された精神が攻撃に比重をおいていたためかその後の対応は異常なほど早かった。
かろうじて受け身をとれた桜はいつの間にか手にしていたシャンパンのボトルを投げつける。
無論そのようなものをまともに受けるルヴィアではない。が、それが目の前で弾けては話が別だ。
破片や中のワインが飛び散る中でかろうじて防ぐことができたため大事に至る怪我はなかったが、驚いたまま桜をにらむルヴィア。
飛んでいくそれを桜はデルタムーバーの光線で撃ちぬいたのだ。
一見離れ業に見えるがよく見ると周囲には焦げた跡が見える。腹部には軽いものだが熱線による傷が、ドレスのスカートも数か所穴が開いている。

「今あなたがやってたこと、マネしてみたんですがどうですか?」
「生意気な小娘だこと」

桜はすでに起き上がっており、ルヴィアも傷自体は大したことはない。
ベルトの力はスペックこそ確かだが、桜にはそれを使いこなせてはいない。銃を使わせないようにして確実に体を抑えていけば勝つことはできる。
それはさっきの戦いの中でも気付いていたことだ。
だが、なぜだろうか。ルヴィアの中には妙に苛立ちがあった。

「全く、このような凶暴女をシェロの傍に置いておくなんて、周りの大人は何を考えているのでしょうか」

思い出すのは藤村大河から聞いた間桐桜、衛宮士郎の話。
あることを境に、士郎とは家族同然の生活をしているという桜。それを自然なものと受け入れる士郎。
そこにイリヤスフィールはいないのだから、自分の知る士郎とは違うことは分かっている。
それでも、士郎の近くにいられる彼女を羨ましく感じるところもあったのかもしれない。
だからふと呟いたその言葉自体は彼女に対する煽りだったのだろう。

「それはこっちのセリフです。せっかく先輩は私を守ってくれるって、ずっと傍にいてくれるって言ってくれたのに。
 こんな体の私を受け入れてくれるって言ったのに。
 なのに後から姉さんが私から先輩を盗ろうとする。私が欲しかったもの全部持ってるくせに、今度は先輩まで!」
「そんな人がせっかくいなくなったと思ったのに、なんであなたはそんなに姉さんにそっくりなんですか?
 あなたも私から先輩を奪うんですか?」

桜の心中を聞いて彼女、そして士郎がどのような状況、関係にあるか大まかな把握はできた。こんな体、というのが何を指しているのかは分からなかったが。

そして言葉を終わらせた直後、デルタムーバーともう一つ、支給されていたらしき拳銃をこちらに向けてくる桜。
しかしただ撃つという行為の速さに限ってはルヴィアのほうが早い。ガンドにより両手のそれらは打ち払われて後ろに落ちる。

おそらく自分ではこの女を止めることはできないだろう。大河には悪いがここで殺すしかない
そう自分の中で確定させるが、その判断が少し遅かったことに気付いたのはすぐだった。

「桜ちゃん!!」

そう、その藤村大河がやってきたからだ。

409Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:26:28 ID:E5hoQQIY
「―――え…、あれ…。藤村…先生?どうして――」

隙、というレベルではない。直前まで何をしていたかすら忘れてしまったとでもいうほどの動揺を見せる。
もし今なら仕留めるのは容易かっただろう。ガンドでベルトを撃ち、変身を解除させればあとはこちらのものだ。

それができなかったのは、桜に走り寄る大河に当たりかねないからだ。

「桜ちゃん、それ外して!桜ちゃんはそれのせいでおかしくなってるだけだから!
 大丈夫、先生もちゃんと守ってあげるから!ね?」

デモンズスレートで凶暴化していたはずの精神さえも虚と化し、暴れたかった思いもどこかへ行ってしまう。
しかしベルトを外して変身を解こうとするのを見て、

「ダメ!!止めて!!」

大河を思い切り突き飛ばした。
ルヴィアは近くに倒れこんだ彼女を起こし、大河を庇うように前にでる。

「これは外さないで…、こんなに汚れた私を藤村先生には見られたくない…」

桜にとって、藤村大河は士郎に次ぐ大切な人だった。

間桐の家にいる間は蟲漬けの日々。学校に行っても偽りのようにしか感じられない日常。
そんな中でも衛宮士郎と、藤村大河と共にいる時間だけは心から笑うことができた。

そして士郎が桜の中で全てを受け入れた人であるなら、大河は日常、平穏の象徴だった。
故に、こんな人を殺した姿を、憎悪にまみれて汚れた顔を見られたくはなかった。

そもそも先生は一般人、魔術とは無縁の人間なのだ。
いつか自分が体に埋め込まれたものによって変貌していったとしても、彼女だけには無関係でいて欲しかった。

「何言ってるの!そんな辛そうな声出して私が放っとけると思ってるの?!」

そんな桜の思いとは裏腹に、大河は自分に関わってこようとする。

「桜ちゃんはそんなことする子じゃないんだから、だから、ね?そんなもの捨てて一緒に帰ろう?
 罪を償っていくことは私もちゃんと支えてあげるから」

ああ、先生はまだ私があの日々に戻れると思っているんですね。
でもダメなんです。だって――

「駄目なんです、もう…。先生は私のこと先輩の家にいる時しか知らないじゃないですか…。
 私は先生の思っているような人間じゃない、化物なんですよ…」

ここで殺した人数だけではない。それ以前にも既に人を死なせたことはあるのだ。
加えてデルタギアが自分によくない影響をもたらしていることはわかっている。もうあの生活に戻れるとは思わない。

なのにそんな私を、先生は助けようとする。そんなことには耐え切れなかった。

「私、ここでどんなことしてきたか知ってますか?もう三人も殺してるんですよ。
 私の罪はそれだけじゃないんです。それに、私の体はもう化物になってるんです」

もう戻れないのならばいっそ突き放してほしかった。化物なんかと一緒にいられないと。

「……やっと本音話してくれたね」

なのに藤村先生はそんな私も受け入れようとする。その優しさがあまりに辛い。

「大丈夫、桜ちゃんがどんなになっても桜ちゃんなのは変わらないから。士郎だってそんなことじゃ絶対見捨てたりしないから。
 だからそれを渡して」

それまで皆が何かを隠しており、肝心なところで支えになってあげられない。そう感じていた大河にとって、桜が自分の本音をぶちまけてくれたのは嬉しかった。

410Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:27:19 ID:E5hoQQIY
そんな想いを受け入れて楽になりたいという思いと、それまでの行動ゆえに受け入れてはいけないという思い、そこにデルタギアを手放したくないという思いが重なり思考が混乱していく。

「だ、だってこれを無くしたら私は先輩を…、私は…、私は…!あああああああああああああああああ!!!」

これを手放したら先輩を守ることができない。それは怖い。
混乱する思考は、本来ではありえない、藤村大河に襲いかかるという暴挙をとらせる。
本人ですらわけが分かってない。しかし一般人に向けられたそれはとてつもない脅威なのだ。


「ミスフジムラ!!下がって!!」
「あ、ごめんルヴィアさん!これちょっと貸して!」

その様子を見て大河を庇おうとするルヴィアだが、大河は自分のバッグを渡す代わりにルヴィアのバッグに入っていた剣を取り出し桜の前に出てしまう。

「な…っ?!
 マトウサクラ!!止まりなさい!!」

ルヴィアの声も届かず拳を振りかざす桜。
その場にいた誰もが大河の死を確信し、目を逸らす。

キーーーーン

しかし響いてきたのは大きな金属音だった。
目の前を見ると、桜の拳は大河の横を過ぎ、大河の両刃剣は刃のない側面でデルタの頭を打っていた。

「ほらね桜ちゃん、そんなになったって桜ちゃんはこんな私にも勝てないんだよ?
 桜ちゃんは桜ちゃんなんだから」

ドサッ
完全に戦意を喪失したのか桜は座り込む。それと同時にデルタの変身が解除される。
焦点の合わない目を彷徨わせる桜を、大河は抱きしめる。

「ちゃんと私も面倒見てあげるから、士郎と一緒に帰ろ?また桜ちゃんの作るご飯食べたいな」
「藤村…せん…せ――」



「とりあえずはこれで一件落着、といったところかしら?」
「そのようだね」
「あらN、いたんですの?」

Nの存在に気付いたのは、このいざこざに一段落ついた時だった。
今まで何も声を出さなかったこともあり気付くのが遅れてしまった。

「彼女、すごいね。あの人を止めるなんて」
「まあおそらく私には無理なことであるのは確かですわね」

話している間、ピカチュウは複雑そうな表情でNの足元にいた。
自身の主であり友であった人間の敵を殺した人。少なからず思うところもあるのだろうか。

「ミスフジムラにとってよっぽど大切な人だったのでしょうね。だからこそ命を賭けてでも助けようとしたのでしょう」
「大切な人、か」


そう呟いたNが何を考えているのか、ルヴィアには分からなかった。

411Tiger&Cherry ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:28:37 ID:E5hoQQIY


「…終わったの、よね?」
「きっと大丈夫です。彼女から殺気は感じられません」

真理とタケシの混乱はだいぶ前には収まっていた。
桜を止めるために戦いに割り込むことも考えてはいたものの、ナナリーがあのフジムラと名乗る女の人を信じて見守ろうという強い言葉に従って見ていた。

『…はぁ、人を見る目はやはりお前の方が上か』

ネモの呟きに何が含まれているのか、ナナリーには分からない。
ただ、あの桜の叫びはあまり他人事とは思えないようなところがあった気がする。

「もう大丈夫なんだから、タケシ、それ仕舞いなさいよ」

真理としてはタケシがカイザギアを使わざるを得ない局面に入らなかった安心が大きかった。
また、桜の言っていた自分が化物、という言葉が妙に気になりもした。
しかしそれ以上に思うこともあった。

(…私もあの人みたいに巧を受け入れることができるかな…?)


「あ、あそこにいるのは…、お〜い、ピカチュウ!!」
「ピカ?!ピカピー!!」

帽子をかぶった男の傍に見えた黄色いのとピンク色の生き物。
どうやらタケシの探していたポケモンらしい。

ピカチュウ達は走り寄り、青年もその後ろにゆっくり続いている。タケシも駆け出そうとする。






ぞわっ

「…ピカ?!」
「ゲコッ?!」
「え?」
『ナナリー!!タケシを止めろ!!』



藤村大河が、桜がどんなになっても受け入れるといったのは本心である。
彼女にとってもう桜は家族の一員に等しい存在であり、桜にとっても間桐の家族とは比べ物にならないほど大切に思っていた。

もしも化物が彼女の中にいるならそれを退治しても桜を助ける。そんな意気込みもあった。
なにより、そんなもののせいで泣いてほしくはなかった。

だから――

(士郎、ごめん)

桜を抱きしめる自身の背後に、こんな自分でもわかるほどのおぞましい存在を感じ取り、
それが体を切り刻む痛みを感じ取る瞬間があっても。
それに体を食われているのを感じ取っても。

藤村大河は声を上げることもなく、また桜に恨みを抱くようなことは一瞬もなかった。
最後に浮かんだのは、かつて憧れた人の遺したたった一人の家族、彼女のもう一人のとても大切な存在。

【藤村大河@Fate/stay night 死亡】

412悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:30:06 ID:E5hoQQIY
あれ…、藤村先生…?どうしたんですか?
なんでこんなところで寝ているんですか?
あれ?これ…何?この赤い液体何なの?
だって、今先生は先輩とみんなで帰ろうって――
じゃあこの地面に転がっている手は何なの?
どうして先生にはお腹が、足が無いの?

こんなの、違う違う違う私じゃない。
違う、これをやったのは………私?

「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」



それは藤村大河が、ではなく間桐桜が不幸だったというべきだろう。

彼女自身が言った通り、桜の体には有り得てはならないはずのものが存在している。
間桐臓硯によって埋め込まれた聖杯の破片。
本来であれば(少なくとも他者にとっては)それ自体が大事になるはずはなかったが、彼女の属性、それに間桐の魔術属性が合わさったことで黒い影による惨劇が起きてしまった。

そして、ここで一つの要因が入り込む。
デルタギアの副作用、デモンズスレート。
不適合者の凶暴性をあげ、攻撃的な性格を植え付ける作用。

桜はここに来て半日も経たない間、何度それを使って変身しただろうか。
デルタの力に魅入られ、この短期間に既に6度変身している。
そしてその度に彼女の精神を侵していることに桜は気が付かなかった。

その結果、僅かに感じた力を失うことへの恐れが増幅され、そして放心した結果―――

しかしそれだけならばそのようなことは起こらないはずだ。彼女は今まで殺意をもって人を襲うことに耐えてきたのだから。
だから、不幸だったのだ。

桜は一度、彼女に会った時、一瞬、ほんの一瞬だがおいしそうと、そう思ってしまったことがあった。
それが致命的だった。これは常に魔力を求めて空腹だったのだから。それはもう藤村大河を餌として認識してしまっていたのだから。
だからこれを彼女の前で顕現させてはいけなかったのだ。

それだけでは終わらない。
間桐桜は既に4体の英霊を取り込んでいる。聖杯として完成するには程遠いものだが、普通に考えればそれは莫大な魔力である。
そして、冬木の聖杯である以上、その魔力のもたらすものは決まっている。

すなわち殺戮。

その意志が。桜が強固な意志で押しとどめていた呪いが。
彼女の感情爆発により、溢れ出した―――

413悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:30:42 ID:E5hoQQIY


それに対する確実な対応ができたものはいなかった。
グレッグルがタケシを殴り飛ばしたことでタケシは事なきを得たが。
藤村大河を助けられた者はこの場にはいなかった。

だがそれを責めるのも酷な話だ。
それを前にしては、ネモですら戦慄を覚える存在だったのだから。

「いやああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

その桜の叫び声と共に、

「うわあ?!」
「な、なにこれ…!」

彼らの周囲には漆黒の影が覆っていた。

「これは…一体…」


唯一、魔術師でありあれを見たルヴィアだからこそ分かることがあった。
これは異常なほどの濃度を持つ魔力の泥。おそらくはあの時の間桐桜の使った影の魔術に近い何か。
これに取り込まれたらおそらくは命はないということ。

しかし警告するまでもなかった。
この場にいる誰もが、生物としてその危険性を理解したからだ。

「タイガさん!!ルヴィアさん!!」


皆の周囲を侵食するように現れたその泥だが、唯一Nの周りには少量しか存在していなかった。
おそらく桜がNという存在をこの場において認識していなかったためであろう。

「N!早くここから離れなさい!!
 いいですこと?後ろを向いて、絶対に振り向かずに走りなさい!」

今ここにNがいてもおそらくできることはない。ルヴィア自身自分の身を守るのが精いっぱいだ。
ピカチュウやゾロアークも泥に向けて攻撃しているが、成果が出てないことはNも分かっていた。
Nが一瞬、顔を歪めたように見えた後、ピカチュウ、ゾロアークを伴い後ろを向いて走り出した。

それを確認した後、ルヴィアは泥に向けてガンドを撃ち、泥を弾こうとする。が、魔力の量が違いすぎた。大海に小石を投じるようなものだ。

(せめて宝石でもあれば―――っ!)

その存在を肌で感じ取り振り返る。
背後に現れたのは最初に間桐桜と戦った時に現れた影。
そして振り向いた瞬間には、すでにその触手は目の前に迫っていた。



「くそっ、こうなったら…」

グレッグルによって事なきを得たタケシはグレッグルをボールに戻し、カイザギアを取り出していた。
タケシにはこれに対する知識などない。が、もしあのベルトのせいでこうなったのならこれで対抗できると思ったのだ。
もうこれしか手段がないと判断しての彼なりの決意。

「タケシ駄目!それよりちょっと貸して!!」

と、真理がカイザフォンを取り上げ、携帯電話型のそれを銃のような形に折り曲げる。

『Single mode』

ボタンを押し、カイザフォンを向けた瞬間、それから光線が放たれる。
銃器でもなかなかダメージを与えられないオルフェノクにもダメージを与え、あわよくば倒しうる威力の武器。
確かにそれは当てた部位の泥を消し、地面を露出させた。しかしそれだけだ。周りがすぐにその隙間を覆っていく。

「駄目!これじゃカイザでもたぶん無理、変身してもこれじゃ勝てない!」
「でもマリさん、だったらどうしたら―――危ない!!」

そのまま隙間を覆い尽くそうとし泥の一部が跳ねあがり。
跳ねあがった黒い泥は真理に降り注いだ―――

414悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:31:06 ID:E5hoQQIY
『ナナリー、しっかりしろ!!』
「ネ、ネモ…、これは何なの…?」
『私にも分からん。だがこれはいわば悪意の塊だ。
 解き放たれれば多くの人間を殺すぞ』
「これも、サクラさんが…?」
『少なくともあの女が関わっているのは確実だ。
 ……ナナリー、構わないな?』
「私なら大丈夫、大丈夫だから。だからお願い、みんなを助けて!」



真理に降りかかろうとした泥。しかし真理をそれが冒すことはなかった。
ルヴィアに襲いかかる影の触手。だがルヴィアの肉体は健在だった。

地面から生えた別の触手のような何かが真理に飛び散った泥を、ルヴィアに襲いかかった多数の触手を全て斬り払ったのだ。
謎の触手は地面へと戻り視界から消える。と同時にルヴィアはまた別の大きな魔力に似た気配を感じ取る。

そこに立っていたのは、4メートルはあろうかという巨人。生物的であり鋼の巨人といったほうがいいだろう。
この状況で新手の敵かと警戒したとき、その巨人はルヴィアの傍に立つ影を手に持っていた太刀で切り裂いた。
影が形を失って崩れると同時、さらに振りかざした太刀で今度は周囲の木々を切り裂いた。

倒された木々は泥を押しとどめる防波堤と高台としての足場を形成していく。
巨人はルヴィア、真理、タケシをおもむろに掴み、倒された木々の上に運び上げる。

(敵、ではないですの…?)

未だ警戒心は解けない。特に真理にはそれがかつて見た巨大オルフェノクや黒い巨人を連想させ、恐怖心を呼び起こさせる。

『お前たち、早くここから離れろ!!』

しかし、それらは巨人から発せられた声を聞いた瞬間消え、新たに困惑を生み出す。

「な、ナナリーちゃん?!」
『話はあとだ、今からこいつらから抜けられるように足場を作る。お前たちは急いでここから抜け出せ!!』

言うが早いか、巨人は木を切り倒していく。その先、橋を渡ったあたりにはこの泥は届いていないようだ。
しかし泥は防波堤として倒された木々を徐々に汚染、消滅させていっており、足場として倒している木々も長くは持ちそうにない。

「もう!!あとでちゃんと説明してよ!?」

そう言って三人は走り出した。
背後を警戒して、ルヴィアが殿を務めて再び現れた影を牽制しつつ進んでいく。


そして、抜け出すまでの足場を形成するまでもう少しといったところで、彼女は現れた。

「ふふふ、みなさん、どこへ行くんですか?」

三人の後ろに迫っていた影は消失、それと同時に光線が巨人を狙って放たれる。
間桐桜―仮面ライダーデルタ。黒い泥が蠢く中で彼女の放つ銀色のフォトンはこの場では何より異質であり、不気味だった。

「さく―――」
『振り返るな!早く行け!』

放たれた光線を太刀で弾いたナナリーは叫び、ルヴィアすらも残らせようとしない。
間桐桜はもう自分の手に負える存在ではなくなったのだと、いや、元々手に負えるようなものではなかったのだと。
ルヴィアは今更ながらに気付かされた。

415悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:32:28 ID:E5hoQQIY


「へぇ、ナナリーちゃんもやっぱり普通の子じゃなかったんですねぇ」
『……』

ネモは無言で桜に向けてブロンドナイフを発射する。

「う…っ」

桜の体は吹き飛ばされるが、デルタを破壊することはできなかった。
しかし内側には相当のダメージが届いているはず。なのに彼女はゆっくりと、痛みなど感じていないかのように起き上がる。
同時に、マークネモの足元に黒い影が現れる。

『ちぃっ…!!』

その触手がしなる前にネモは下がり、触手の攻撃範囲から逃れる。

間桐桜、いや、デルタを相手にするにはこの得体のしれない泥と神出鬼没の影はあまりにやっかいだった。
特に泥。もしマークネモが足を失い、自身の乗るここまで泥が侵食してきたら対処することはできない。
今はネモが全力でそれの侵攻を抑えている状態であり、ゆえに桜との戦闘に完全には専念できていなかった。



「ねえ、あなたのお兄さん、死んだんだっていってましたよね?
 大切な大切なお兄さん、殺されちゃって。殺した人のこと憎くないですか?」
『…何が言いたい?』
「その人、一緒に殺しにいきませんか?今の私ならあなたのそんな気持ちを叶えてあげられると思うんです」

一瞬、ほんの僅かにナナリーの感情に乱れが生じたのをネモは感じ取る。

(やめろナナリー、こいつの言葉に耳を貸すな!)

さっきの会話の中で投げかけた言葉を、この時ばかりは後悔した。
もしナナリーがそれを望んでしまえば、ナナリーと契約している限りそれに抗う術はない。

「ふふふ、こんな泥人形さんなんかに嫌な感情全部押し付けて、ナナリーちゃんって本当に悪い子♪」

次の瞬間、デルタのいた場所に頭上から太刀が叩きつけられた。
しかし次の瞬間には桜はマークネモの背後に移動しており、そこから光線で撃たれ背から火花が散る。

(くそ、未来視が乱れた…。あんな言葉で心を乱されたか)

しかしある程度の行動のパターンは読めた。
この泥と影は桜を襲うことはない。彼女自身が出しているものなら当然だろう。しかし上手く連携が取れているわけでもなさそうだ。どうにも持て余しているようにも見える。
そして桜自身はあまり動いていない。ほとんどあの強化服の力に頼り切りだ。
加えてそれをもっても、ほとんどが射撃主体。マークネモを相手にするにはそれが最良なのかもしれないし、単純に彼女自身のセンスの問題かもしれない。

背後を振り返ると、さらに光線を放ってくる。
そういう未来が見えたネモは振り向かず飛び上がり、そこからブロンドナイフを飛ばし続ける。
避けることもできずまともに受けているようだったが、狙いは分かっているのかベルトには直撃することはなかった。

地面に着地すると同時に、その場にいた影を踏み潰して行動を封じる。
そして態勢を崩したままの桜にナイフを射出。その腕、足を貫く。

痛みは壮絶なはずにも関わらず無言で動かない桜を、そのまま木に張り付けにする。
ピクリとも動かない桜。
あとはベルトを外し、止めを刺せば終わる。生身状態の桜を斬りつければ、彼女とて殺せるはずだ。

(すまんなナナリー、もうこいつにはこれしか手はないんだよ)

ナナリーの中には殺すことへの抵抗を感じもした。
しかしこの女は生かしておけばもっと多くの人を殺す。それを防ぎたければここで終わらせるしかない。

マークネモは太刀を構えたまま、ベルトに手を伸ばした。

416悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:33:26 ID:E5hoQQIY
時間を掛ければナナリーに危険が迫る。だから迅速に、確実に殺せるようにしなければいけない。
ネモは焦っていた。この得体のしれないものにナナリーが侵されることを。
だから見過ごしてしまった。腕を貫いてもまだ、桜のその手はデルタムーバーを離していないことを。

早く決めたければそのままその太刀で首を落とせばよかったかもしれない。
しかし彼女は、そのスーツを過大評価してしまった。外さなければ倒すのは難しいと思ってしまった。
あるいは、ナナリーの優しさが踏み込ませることを躊躇わせてしまったのかもしれない。


そして、桜に意識を向けるネモは気付いていなかった。
桜のデルタギアを奪われることへの恐怖が、無意識のうちに先の影とは別の、影の使い魔を顕現させていることに。
小人ほどのそれが現れたことに、ネモは足元にそれが取りつくまで気付かなかった。

『な…!まだ、こんな――』

その一瞬、刺さったナイフの力がほんの少し緩み。

「チェック」≪exceed charge≫
『しまった―……!』

ようやく未来を見た時には手遅れだった。
目の前の銀の三角錐がマークネモを撃ちつけていたのだから。

この場においては戦闘中常に未来を見続けるには、そう意識していなければ見ることはできない。
最初に戦ったロロは相性的に不利であり、追い詰められていたこともあって気付けなかったのだ。
そうとは気付かず意識をそれから外してしまった。

今更未来を見ても遅い。見えるのは、この三角錐を通しての必殺のキックを放つ桜。
そんなもの見えたところで動けなければ同じだ。
そして、そのキックはおそらくこのマークネモを持ってしても耐えきることはできない威力を持つと出ている。

(ここまでなのか…?)

マークネモが破壊されれば、ナナリーはこの泥に飲み込まれ、死ぬ。
こちらの拘束から既に解放された桜はこちらに向けてそれを放とうとしている。

(ここで、ナナリーは死ぬ、のか…?こんな女に殺されて…)

こうしている間も、ナナリーからは桜に対する怒りを感じることはできない。
いつもそうだ。この少女は己の怒りを殺し、常に優しい存在であることを心掛け、揚句優しい世界などという夢のような話を信じ続けている。

そして、そんな彼女の負の感情を背負ったのが私――

(…違う)

ならばこの、ナナリーを守りたいという感情は何なのだ?
そう、あの日契約した時から、ナナリーから負の感情を受け取りC.C.のコピーからネモへと変化したあの時から。
ナナリーを守り抜くと決めたはずだ。

(そう、こんな女に殺されるわけにはいかない――
 私はナナリーを守る。私は――)

胸をポインタでロックされ動けないはずの体、その中で太刀を持っていた右腕がピクリと動く。

『泥人形じゃない!私は、ナイトメア・オブ・ナナリーだ!!』

そしてそのキックがマークネモを貫く寸前、

『あああああああ!!』

拘束された中で唯一動いた右腕、その持っていた太刀がデルタを切り裂いた―――

417悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:34:15 ID:E5hoQQIY


「急いで!早くしないとあの影が追っかけてくるんでしょ!?」
「落ち着いて、今はあの影は付いてきてませんわ。だから焦らないで!」
「でもナナリーちゃんは……うわっ!」

泥の上に倒れた木々を踏み台にして進んでいく三人。

例の影をナナリーが引き受けたと言ってもゆっくりはしていられない。
足元の木々はゆっくりと泥に溶かされて消滅していっているからだ。

「あ、やばい!向こうの木、もうほとんど残ってない!!」
「そういえばマリさん、あれ、あの道具!!」
「え!これ?!」

次の木に飛ぼうとした時、その木はほとんど溶け掛けており、人一人乗ることもできそうになかった。
そこで真理はバッグからJの光線銃を取り出し、その木に向かって発射。
すると木はあのときのタケシのように固まり、三人が飛び乗っても大丈夫なほどには頑丈になっていた。

しかし、

「あれ…、次は…?」

そう、それが限度だった。その先の足場は踏み場もないほどに崩れていた。硬化させる以前の問題だ。

ドドドド、ドン

「偶然木が倒れましたわ。行きましょう」

と思っていると、突如木が倒れ新たな足場ができる。

(根元がボロボロだったのが幸いでしたわ)
「あの木もそれで硬くできます?」
「え、ええ。大丈夫、まだ弾は残ってる」

そうしてどうにか次に移ったもののあと少しのところで届いていない。
さらに、ここにきてルヴィアが体の不調を訴え始めた。

「大丈夫ですか?!」
「ええ、大丈夫ですわ…。少し魔力を――いえ、なんでもありませんわ」
「俺に捕まってください。出てこい、グレッグル!!」

タケシはルヴィアの体を支えて歩き、真理の安全をグレッグルに任せる。
が、今迂闊に動くことはできない。先に進めないのだから。
ここはナナリーが追ってくるのを待つしかない。そう思った矢先だった。

「な…、まだ、追ってきますの…?」

泥の中からあの黒い影がまたしても現れる。

「そんな…!じゃあナナリーちゃんは…」
「グ、グレッグル!毒針!!」

グレッグルはタケシの指示に従い口から紫色の針を吐き出すが、その進行を緩めることすらできない。

やがてそれの使役する無数の触手は彼らを捉える。
カイザの変身も間に合わない。

「うわあああ!!」






「リザードン、火炎放射!ピカチュウ、十万ボルト!ゾロアーク、気合玉!」
「グオオオオ!!」「チュウウウウウ!!]

諦めかけた時、影に向けて空から炎と電気と青白い球が降り注いだ。

418悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:35:30 ID:E5hoQQIY

その声を聴き空を見上げた時、タケシは走馬灯でも見ているのかと思った。
その時に空を飛んでいたのは、帽子をかぶりリザードンに乗ってピカチュウを連れた、あれは――

「サト――いや、違う」
「N!どうして戻ってきましたの?!」
「この子達がそう願ったんだよ」


それはあの時離れだしてすぐのこと。
ピカチュウはタケシのことを助けたいと、そう言ったのだ。
これ以上仲間を失いたくないと。無理でも全力を尽くしたいと。
それはリザードンも同じだったようで、ボールを通してもその声が聞こえてきた。

だから、体にダメージの残っているリザードンに無理をいってポケモンセンターまで急いでもらったのだ。
それはリザードン自身が望んだ無茶だった。

そして皆の体力を回復させたのち、今に至る。

「そうだったのか…。ピカチュウ、すまなかったな」
「ピカ」
「ポケモンセンターまで向かったせいで、少し遅くなってしまったことは謝るよ」
「私は逃げろ、といいましたのに。まあ今回は礼を言っておきますわ」
「それに僕も何だか嫌だったしね。見捨てるのは」

Nにはもっと早くから大河の運命が見えていた。にもかかわらず止めることはできなかった。
その判断に間違いがあったと思いたくはなかったが少なからず後悔はあった。
だから見捨てられなかったのだ。

その後リザードンの手により泥から抜け出すことができた。しかし依然ナナリーは追ってこない。
どうしたことか、泥自体は少しずつ減りつつあるが彼女が戻らない以上油断はできない。

「マリさん、俺が行きます」
「タケシ?」
「これがあれば、サクラさんを止められるかもしれない。そうですよね?
 三人は逃げてください。ここは俺がナナリーちゃんとサクラさんを助けてきます」
「そんな…!なら私が行くわよ!何であんたが行かなきゃいけないの?!」
「ピカ!」「グウウ!!」
「ハハハ…、ごめんな、お前たち。こんな辛いことばかり背負わせて。
 でもこういうのは、男である俺がやるべきなんです」

その悲しそうな言葉の中には強い決意があるように見えた。
サトシやヒカリと会うこともできずに自分だけ生き延びてしまったことへの罪悪感もあったのだろう。
それに桜はヒカリに会ったということも気になっていたのだ。

「なるほど、その気概、なかなか見上げたものですわ」
「あなたは――「でも」

と、ルヴィアはそんなタケシの腰を持ち上げ、

「ぐわぁ?!!!」

バックドロップの要領で地面に投げた。

「残念でしたわね。それは私の役割ですわ」

手加減はしたが意識は飛んだようだった。
若干強引だった気がしないでもないが、こうでもしなければおそらく止めることはできないだろう。

419悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:36:39 ID:E5hoQQIY
「あなた達、早く行きなさい。その少女は私が助けますわ」
「待ってよ、何でそこであんたが残るのよ?一緒に行けばいいじゃない。
 ナナリーもきっと戻ってくるから…」
「あれには少し因縁も残っていますし、何よりこうなったのは私の甘さが原因。
 ここから南に下った辺りにカイドウという男と美遊、私の妹がいるはずですわ。詳しい場所はそこにいるキツネが知ってるはず。彼らと合流しなさい」

美遊、そして海堂直也、彼らならば力になってくれるだろう。
特に美遊、そしてカレイドステッキはこの状況を打破しうるかもしれない。もしもアカギ達が第二魔法を使えるというのならば。

「え…、海堂…?それに美遊ちゃんって…、あなたもしかしてルヴィアゼリッタさん?!」
「知ってるなら話は早いですわ。後のことはN、頼みましたわよ」
「―――分かった。あと最後に質問させて。
 また、会えるかな?」
「少し厳しいですわね」
「分かったよ。じゃあ、気を付けて」

あるいはその時藤村大河のバッグを受け取った時には、Nにはその先の彼女の運命は分かっていたのかもしれない。
それでも、最後に掛けた言葉は再会を信じての言葉だった。

そうしてNは気絶したタケシを抱え、真理を無理に引っ張ってその場を離れていった。

(巧―――)

真理は、こんな状況で一人だけ何もできていないのが悔しかった。
そんな彼女が今望むことは一つ。巧に早く会いたい。それだけだった。


【C-5/森林/一日目 午前】

【園田真理@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:疲労(中)、身体の数カ所に掠り傷
[装備]:Jの光線銃(2/5)@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式、支給品0〜2(確認済み)、ファイズアクセル@仮面ライダー555、スマートバックル(失敗作)@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:巧とファイズギアを探す
1:ここから離れる
2:タケシたちと同行
3:南にいる美遊、海堂と合流?
4:巧以外のオルフェノクと出会った時は……どうしよう?
5:名簿に載っていた『草加雅人』が気になる
6:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期は巧がファイズブラスターフォームに変身する直前
※タケシと美遊、サファイアに『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えましたが、誰がオルフェノクかまでは教えていません
 しかし機を見て話すつもりです   
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

420悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:37:18 ID:E5hoQQIY

【タケシ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労(中)、背中や脇腹に軽い打撲、身体の数カ所に掠り傷、気絶中
[装備]:グレッグルのモンスターボール@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:カイザギア@仮面ライダー555、プロテクター@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:気絶中
1:しっかりマリたちを守る。
2:ピンプクとウソッキーは何処にいるんだ?
3:イリヤと出会えたら美遊のことを伝える
4:『オルフェノク』って奴には気をつけよう
5:万が一の時は、俺がカイザに変身するしかない?
6:サトシ、ヒカリの死を元の世界に伝える。
7:並行世界?
[備考]
※参戦時期はDP編のいずれか。ピンプクがラッキーに進化する前
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※美遊とサファイア、ネモ経由のナナリーから並行世界の情報を手に入れました。どこまで理解したかはお任せします

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定?)サトシのリザードン(健康、悲しみ)
    ゾロアーク(体力:満タン、真理とタケシを警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品×2、カイザポインター@仮面ライダー555、タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
     変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:この場から離れる
2:タイガの言葉が気になる
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:タイガ、ルヴィアさん…
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。




『ぐ…くぅ、はぁ…、はぁ…』

それは真理達の元に影が現れる少し前のこと。

デルタのルシファーズハンマーを受けたネモは衝撃の後倒れるネモを起こして状況を確認していた。
一瞬意識が飛びかけたがどうにか持ち直して周囲を見回す。

まずマークネモの状態。胸部にあの攻撃が直撃したようで、大きな穴が開いて外が肉眼で見ることができてしまっている。
機体の汚染状態もまずい。が、これはこの場から離れ、量子シフトを行えば大丈夫だろう。
ナナリーには何度か呼びかけたが反応がない。さっきの衝撃で気を失ったのかもしれない。
そして自身のコンディションはかなりまずい。こうしているだけでも疲労が溜まり、意識が消えそうになる。
あの拘束を振り切るために力を使いすぎたのかもしれない。

だが、その甲斐はあったようだ。
間桐桜の姿は見えない。しかし足元には黒い強化スーツに覆われた右腕が転がっている。
そしてそれは今、目の前で変身が解除されたかのように桜のものであったそれに戻った。
あの時の太刀に手ごたえを感じたのは確かだ。すれ違うあの瞬間、確かに体を切り裂いた。
あれで死んでいるなら最良、生きていてもデルタの変身は解除され体のダメージを考えても戦闘続行は不可能のはず。

『…はぁ、ああ、まずはここから離れないとな…』

もし死んでいるなら、きっとナナリーは悲しむだろう。だが、それも生きているからこそ感じられることだ。
足元の泥はまだ減ってきているとはいえ広がったままだ。この森にはしばらく誰も近寄らないように他の者にも伝えないといけない。

やることはたくさんある。こんなところで休んではいられない―――

421悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:37:57 ID:E5hoQQIY







「 み つ け ま し た 」

次の瞬間聞こえてきたのは桜の声。
それもかなり近い場所だ。今仕掛けられてはまずい。

『…?!何処だ…!』

周囲を見回すが桜の姿は見えない。
すぐ近くから声は聞こえてくるというのに。

すぐ近く、すぐ傍から。

『な…』
「こんなところにいたんですね」

そう、間桐桜はコックピットの中、ネモの背後に立っていた。

服はボロボロであり、肌が露出しているはずの場所からはあの影と同じ色の黒いドレスを纏っているのが見える。
右腕を失い、そこから胸にかけて大きな傷を作っているのは振るった太刀が確実に彼女を切り裂いたという証だ。。
なのに、彼女はどうして平然と動けるのか。

もしあの瞬間、デルタギアがなければ桜とて死んでいただろう。
太刀は確かに彼女に大きなダメージを与えたが、あと一歩のところで心臓に届かなかったのだ。
そして、今の彼女はその傷は動きを阻害するものでこそあれ、行動不能になるほどではなかった。

いつ入り込んだのか分からない。ただ言えるのは、今の自分にはなす術がもうないということだ。
桜は片腕しかない体でネモに抱き着く。

『がっ…!離せ…』
「ねえナナリー、こんな体なんかに頼らずに、私ともっと楽しいことしない?」

桜の抱きついた部分の肌が徐々に黒に染まっていくのが分かる。
さっきの一撃に使った力、加えて核である自分を直接染められている状況。
そして、マークネモは泥に取り込まれつつある。

「ほら、堕ちてしまえば楽しいですよ」
『ぁ…っ、あああああああああ!!!』

そして叫び声を最後に、マークネモは泥の中に沈み、ネモの意識は黒く塗りつぶされていった。



「やっぱり生きてましたのね。本当にしつこいこと」

ルヴィアがその少女を確認したのはNや真理達と別れてすぐのことだった。
そう、間桐桜が目の前を歩いてくる姿を確認したのは。

最も、今の彼女をふつうの人間と呼ぶには大いに抵抗があったが。
右腕を失い、胸から左肩に掛けて大きな傷が見えている。にも関わらずそれを気にする素振りは見せない。
更に服はボロボロで、肌が見えるはずの場所は黒い魔力、あの影と同じ色のドレスに覆われている。

はっきり言ってしまえば、化物だ。

「あの少女、ナナリーという子はどうしましたの?」
「ナナリーなら、変な泥人形と一緒に食べちゃいました。結構魔力溜まったんですよ?
 まあそれでもサーヴァントには敵いませんけど」
「そうですのね。もう戻る気はありませんのね」

こうなったのはあの時殺せなかった自分の甘さのせいだ。
タイガは死に、ナナリーも取り込まれたらしい。それらの責任は自分にもある。

今の桜はデルタに変身していない。よく見ると、腰に巻いているデルタギアは時折火花を散らしている。あの少女もただでは食われなかったということか。
確かに今の自分は魔力を消耗しすぎている。だが変身していないなら魔術抜きでも戦えるだろう。

――そんな言葉で自分を言い聞かせる。
地面の泥は大分引いているが、彼女の足元には僅かに残っている。
あの時感じた恐怖は未だに克服できていないのだから。

「ミストオサカの縁もあります。これ以上の犠牲を起こさせないために私が止めて差し上げますわ」
「怖いんですか?足が震えてますよ?」

そんな強がりも、この女は見抜いている。姉に似て嫌らしい女だ。

「ふふふふっ。私、いつも姉さんの影に隠れて、先輩まで取られそうになっても何もできなくて。
 そんな私でもやっと、姉さんの上に立てるんですから」

やたら高めのテンションで話す彼女。だがルヴィアはもう話を聞く気はない。
気圧されていては負ける。速攻でやらなければ。
そう思い走って近づいていく。

「でも、残念です。もう、姉さんはいないんですから」

不意に声のトーンが下がる。
それと同時に背後から衝撃、ルヴィアの足も止まった。

422悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:39:14 ID:E5hoQQIY
「あなたなら姉さんの代わりになるかもって思ったりもしましたが、それは無理でした。
 似てるだけであなたは姉さんじゃないんだから。
 だから―――さようなら」

ルヴィアは視線を下ろす。その腹部からは


――――――巨大な太刀が生えていた。


同時に襲いかかる激痛。
口から吹き出そうになる血を抑え、首を動かして後ろを見る。

背後の泥、いや、影に近い何かから黒く巨大なものが頭と腕らしきものを見せていた。
言うまでもない。あの時のナナリーという少女が変化した巨人だ。
だがその姿は元の色よりさらに暗く変色し、全身に赤い筋が這っている。
何よりその魔力、先ほど感じたものよりはるかに澱んでいた。

ルヴィアが思い出すのはあの最初の空間。
あの大勢の参加者が集められたあの場で、なお目立っていた存在があった。
バーサーカー。かつて最も手ごわかったと言えるクラスカードの英霊。
だがその姿は遠目から分かるほどの異常な姿をしていた。

そして、今背後にいるそれはまさしくそれと同じ様相をしている。

(この、娘は、一体何を体に…、宿してますの…?)

だが今更それに気づいても遅い。
さらに巨人は、頭についたワイヤー、その先のナイフをこちらに向けている。

ああ、こんな時でもあの女のことが頭をよぎってしまうのはなぜなんだろう。

「全く、こんな有様では…、ミストオサカのことを、笑えませんわね――」

次の瞬間、一斉に発射されたナイフがルヴィアの体を真っ二つに吹き飛ばした。

【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡】



そう、どうでもよかったのだ。
いくらこの女が姉さんに似ていたとしても、それだけなのだ。

私の継げなかった遠坂の家を受け継ぎ、父にも愛された姉さんも。
ずっと蟲に犯され続ける私を助けてくれなかった姉さんも。
私の好意を知りながら先輩を奪おうとした姉さんも。
もういないのだから。

だから、こんなに虫けらのように殺せる。

胸の辺りから真っ二つになった体を影の中に沈める。
人間を食べたにしてはそれなりに魔力を摂ることができた。しかしまだ足りない。

「あなたにはもっと働いて―――あれ?」

そうして、空腹を満たす走狗にしようと呼び出したマークネモだったが、それはたった今光となって消滅してしまった。
残ったのは黒いスーツを着たナナリー。しかし車椅子には座っておらずしっかり二足で立っており、目もはっきり開いている。
最もその姿は普通というには程遠いが。目には光がなく、全身にあの機体と同じ赤い筋が入っている。

桜は彼女達のことを何も知らない。
マークネモのこと。ギアスのこと。それらにかかった制限のこと。何一つ知らない。

「もう少し経ってから試してみようかしら?」

そして、彼女のことも使い勝手のいい人形を手に入れたくらいの認識しかしていなかった。
もしもそれらのことを知っていたら、彼女はまた別の利用方法を考えただろう。
だが、それでよかったのかもしれない。少なくとも他の参加者にとっては。そしてネモ本人にとっても。

今彼女にとっての他の参加者のほとんどは、空腹を満たすための餌と大して変わらない存在だ。
唯一そこから外れていた人は三人。
衛宮士郎、遠坂凛、そして、藤村大河。

「藤村先生」

その中で、たった今自分が殺してしまった存在に、一つの言葉を投げかける。
後ろ、今まで通った道に目をやる。今は見ることができないが、もう少し進めばそれは目に入ることだろう。
あの場において、唯一泥が侵さなかった場所に残された死骸。手足は吸収してしまったがその部位だけは取り込むことを拒絶したモノ。
藤村大河。自分に笑顔というものを教えてくれた存在。

423悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:40:06 ID:E5hoQQIY
薄まりつつある間桐桜の人格の中で、言っておかなければならないと感じた謝罪の言葉を口にする。

「ごめんなさい。私、やっぱり悪い子でした。先生までこんなことに巻き込んでしまって。
 せめて先生には生きててほしかった。何も知らずにいて欲しかった。
 でも安心してください。先生のところには行けないかもしれないけど、ちゃんと罰は受けます」

他の人間なら開き直れた。だが彼女だけは駄目だった。
だから、他のところで開き直ってしまった。

「先輩、待っててくださいね。
 みんな、みんなみんなみんなみんなみんなみんな殺しますから。
 真理さんもタケシさんも、イリヤさんもみんなきちんと殺して、思いっきり悪い子になりますから」
「だから先輩。ちゃんと、私を殺してくださいね」

それが間桐桜としての最後の願い。
正義の味方であり、自分にとってのヒーローであるエミヤシロウに殺されること。

そのために、己の体に溜まりかけているもの、この世全ての悪を受け入れたのだから。

「あはは、あっははははははははははは!!
 あはははははははははははははははははははは!!!!」

笑い続ける間桐桜。そして彼女は気付かない。
その眼から一筋の涙が零れ落ちたことに。
そして、そんな彼女をナナリー、いや、ネモはじっと光のない瞳で見つめ続けた。
その体が泥に沈みゆく間、ずっと。

【C-5/橋付近/一日目 午前】

【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:黒化(大)、『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出、喪失感と歓喜、強い饑餓
    ダメージ(頭部に集中、手当済み)(右腕損失、胸部に大きな切り傷、回復中)、魔力消耗(大)、ジョーイさんの制服(ボロボロ)
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(戦闘のダメージにより不調)、コルト ポリスポジティブ(6/6)@DEATH NOTE(漫画)、黒い魔力のドレス
[道具]:基本支給品×2、呪術式探知機(バッテリー残量5割以上)、自分の右腕
[思考・状況]
基本:“悪い人”になる
0:いずれ先輩に会いたい
1:“悪い人”になるため他の参加者を殺す
2:先輩(衛宮士郎)に会ったら“悪い人”として先輩に殺される
3:空腹を満たしたい
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※学園に居た人間と出来事は既に頭の隅に追いやられています。平静な時に顔を見れば思い出すかも?
※ルヴィアの名前を把握してません
※アンリマユと同調し、黒化が進行しました。戦闘行為をするには十分な魔力を持っていますが知識、経験不足により意識して扱うのは難しいと思われます。
※精神の根幹は一旦安定したため、泥が漏れ出すことはしばらくはありません。影の顕現も自在に出すことはできないと思われます。
※デルタギアがどの程度不調なのかは後の書き手にお任せします
 もう変身できないかもしれませんし、変身しても何かしらの変化があるかもしれません。また、時間経過で問題なく使用可能かもしれません。

424悪意と悪夢―聖杯と魔女 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:40:34 ID:E5hoQQIY


『ナ…―リ―、ナナ……、ナナリー…』
「ん…、ね、ネモ…?ネモなの?」
『ナナリー、きっとお前とこうやって話せるのはこれが最後だ』
「え…?何を言ってるの?」
『全てはお前を守るためだ。お前が受ける呪いは、全て私が引き受けたからな』
『だが、この先は賭けのようなものだ。もしかしたら私の行動はただの時間稼ぎにしかならないのかもしれない』

「待って、そんな!じゃあ桜さんは?!」
『だが最後にこれだけは伝えておく。
 ナナリー、何があっても―――あれを受け入れるな』



「ハッ…」

目が覚めた。
しかし分かったのはそこは気持ち悪いほどわけの分からない何かが辺りを埋め尽くす空間ということだけ。
気配だけでも吐き気のしそうな空間。そして吐き気の原因は辺りを埋め尽くす濃厚な悪意。

「こ…、ここは…何なの?
 え…?ネ、ネモ!!」

手探りで周囲に触れると、地面に巨大なきのこのような形の柔らかい物体が手に当たった。
それはあの時新宿で出会った時のネモの姿そのものだった。

「ネモ!しっかりして、ネモ!!」
『全くバカな人形さん』

ネモに呼びかけると不意に背後から声が聞こえる。
視覚を失った代わりに他の感覚が優れているはずのナナリーが察知することができなかったその存在。
それは桜を模したかのような声で話しかける。

『全部を自分で受け止めるなんて。そのせいで自分の意志すらも失って本当に人形さんになっちゃうんですから』

優しいように聞こえるその声はまるで悪魔の誘惑のようだった。

『ねえナナリーちゃん、私たちを受け入れない?』

まるで深層心理に語りかけるように話しかけるそれ。

『あなたを捨てた父親が、国が憎くないの?
 お兄さんを殺した人に復讐したくないの?
 私なら全部やってあげること、できるんですよ?』
「そんなの…、私望んでません…!!」
『そう、でもいいのよ。すぐに決めなくても。
 あなたが私たちを受け入れてくれるの、ずっと待ってますから』

そう言ったのをきっかけに声が遠ざかっていくのを感じる。
そして最後に―――

『でも忘れないでくださいね。あなたはもう、人を殺したんですから』
「え…?」

そう言い残した言葉が、ナナリーの中にずっと残り続けた。

(ネモ…、兄様…、…アリスちゃん…。私は……)

そうしてナナリーは、この得体のしれない空間の中で一人、答えを探し続ける。
周囲の悪意に流されることに耐えながら。

【C-5/橋付近(桜の泥内部)/一日目 午前】

【ナナリー・ランペルージ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:健康(精神)|黒化、自我希薄(肉体、ネモ)、マークネモ召喚制限中
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
1:私は………

[備考]
※ネモの黒化について
 アンリマユに吸収されたことでネモは黒化しました。
 その際、ナナリーの精神を肉体から隔離したため自我が薄く、現在はほとんど桜の操り人形のようになっています。
 ナナリーがアンリマユを受け入れた時を除き、アンリマユがナナリーの精神まで侵すことはないでしょう。 
※マークネモの制限は黒化前と変わりません。


※B5〜6にかけての森の木々が消滅し、一部更地と化しました

425 ◆Z9iNYeY9a2:2012/08/31(金) 16:41:20 ID:E5hoQQIY
投下終了します

426名無しさん:2012/09/01(土) 00:23:52 ID:kQunr/rs
投下乙です
桜のキル数がまたもや上がってしまったw
こいつ止めれるやついるのかw

あとタケシがまた終了しそうでハラハラしました

427名無しさん:2012/09/01(土) 01:36:22 ID:viPUbc0k
投下乙です
桜……ついに戻れないトコロにいってしまったか……
はたして士郎は彼女を止められるのだろうか

あと状態表の指摘ですが、桜は完全に黒化したのであれば、影の使い魔は自由に召喚できますし、魔力も無尽蔵に使えますよ

428名無しさん:2012/09/01(土) 08:41:10 ID:Tcul8bG2
やっちゃったぜ☆
黒桜爆誕と爆走、もうほんとどうしてこうなった!
とにかくはやく士郎来……いや来てどうにかなるのかコレ。そんな絶望感あふれる投下乙です

>>427
完全に黒化したら無理ゲーじゃないですかやだー!
まあ真面目に考えれば主催が細工をしてないはずもありませんしね。なによりここにはもうひとつの……

429名無しさん:2012/09/01(土) 10:25:09 ID:viPUbc0k
投下乙
桜は完全に(?)黒化し、セイバー、バーサーカーに変わる新たな僕をゲットですか・・・・・・
これにセイバーまで付いたらマジで手をつけられないなw

>>428
使い魔をどうにかできれば、別に無理ゲーってほどでもない
事実、宝石剣という反則があったとはいえ、凛でも簡単に追い詰めれたし
と言っても、その使い魔(サーヴァントなどを含む)をどうにかするのが困難なわけだけどw

430名無しさん:2012/09/01(土) 17:13:14 ID:VBZt8SM.
久々の投下乙です。
タイガー・・・ルヴィア・・・南無三
桜は原作士郎と違う意味で「止まれなく」なった感じですね
もはやカレーっていうより代行者呼ばないと討伐不可なレベル

431名無しさん:2012/09/02(日) 17:17:00 ID:SSkVBLCI
投下乙です

432 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/02(日) 17:50:23 ID:OpWLlmG.
>>427
指摘ありがとうございます
その部分は正直今回やりすぎた感があったのでこんなこと何度もできないよー的な意味合いだったのですが
今読み返したらその下の部分の備考と被ってました
混乱させてしまいすみません、wikiに収録された際には直しておきます

433名無しさん:2012/09/04(火) 01:33:00 ID:ik6cSOJA
投下乙です!相変わらずヤンデルタは酷いなぁwまあ相性ゲーで倒せそうな面子が少なからずいるのが救いか?

434名無しさん:2012/09/13(木) 17:25:07 ID:Q2lNGKt6
予約キター!

435 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:22:46 ID:RPFA1MiA
これより投下します

436Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:26:15 ID:RPFA1MiA
どれだけの間飛び続けただろうか。
もう美遊から充分離れることができただろうか。

怖い。
誰かを殺し、傷つけてしまう自分が。
怖い。
そんな自分を木場さんや海堂さんに見られるのが。

先の放送で呼ばれた名前。その中には木場勇治や海堂直也の名こそなかったが、菊池啓太郎の名前があった。

こんな自分を、正体は知らないまでもよくしてくれた。周りの人間に虐げられてきた結花にとってその存在は大きなものだった。
どうして彼が死ななければならないのだろう?私のような化物が生きて啓太郎さんのような優しい人間が死んでいって。

何も考えたくなかった。ただもう、それこそ鳥のように飛び続け、やがて朽ちてしまいたいとまで思ってしまうほど飛び続けた。
時間ももう分からないほどに。

だからだろうか、彼女は近くにいた存在すらも知覚することができなかった。

「っ!?」

急に翼を焼くような痛みが襲う。

「うああっ!!?」

バランスを崩し地面を転がる結花。
翼の痛みは消えず、恐怖のあまりオルフェノクの姿で辺りを見渡す。
そしてそこに立っていたのは――

「乾…さん?」



『美遊様、焦る気持ちも分かりますが少し休まなければ…』
「分かってる、分かってるけど…!」

痛みを堪えつつも前に走ろうとする美遊。その腕には銃弾による傷がつき、歩いた後の地面を血で濡らしていた。




それは今より時間を遡り、第一回放送の直後まで戻る。
飛び去った長田結花を追う中、突如始まったアカギの放送に思わず足を止めた美遊とロロ。

『凛様が…?!』
「まさか…、そんな…!」

何かとても大きな鈍器で殴られたかのような衝撃。
サファイアの中には信じられないというような驚愕が、美遊の中には大きなショックが生まれる。
長田結花を追わねばならないということをすっかり忘れてしまいそうになる。

「兄…さん……?」

そして隣にいたロロも、信じられないといった表情を浮かべて立ち尽くしている。

437Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:28:32 ID:RPFA1MiA
兄さん。
確かロロ・ランペルージの兄、ルルーシュ・ランペルージ。その名は遠坂凛の名が出る前に呼ばれたためまだ記憶に残っている。
つまり、彼の兄も死んだということだ。

(兄……)


「ロロさん、その―――っ?!!」

話しかけている最中、腕に激痛が走った。
混乱の中で左腕に目をやると、いつの間にか銃で撃たれたかのような痕がついている。

『美遊様!大丈夫ですか?!』
「これは…っ、ロロ……さん…?」
「あ…、う…、くっ!!」
「ロロさん!!」

状況も掴めぬまま、美遊の前から走り去るロロ。
追おうとするが腕から激しい痛みが伝わりその場に蹲ってしまう。

「サファイア…、今のは…」
『分かりません。話しかけられた美遊様だけが急に止まってロロ様が銃を向けてきたのです。
 私が気付いて気をそらしたので大事こそは避けられましたが…、申し訳ありません』
「ううん、いいの。これは私のミスだから…、っ」
『美遊様?!』





兄さんが、死んだ。
そんなの嘘だ。
兄さんは強いんだ。これまでどんな危機も乗り越えてきたんだ。
そう、僕の自慢の兄なんだ。こんなところで名前を呼ばれるはずはないんだ。

自分の中にどれだけそう言い聞かせてもロロの中から不安は、動揺は消えなかった。

そう、兄さんが死ぬはずはないんだ。あのナナリーやユーフェミアですら生きているのに。
でも、もしも本当だったら?
もし、あの時ナナリーに構わず兄さんを探すのを優先していたら、兄さんと合流できたかもしれない。
ナナリー。
どうしてあいつはまだ生きているんだろう?



「ロロさん」

そんなことを考えていると、ふと声が聞こえた。
それは美遊の発した声。だが今の不安定な状態にあるロロには、

(―ナナリー!!)

それが憎きナナリーの声に聞こえてしまった。
そこからの反応は早かった。
ギアスを発動させ、確実に殺すために銃を向け、

『美遊様!!』

438Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:29:48 ID:RPFA1MiA
発砲したところであの喋るステッキの体当たりにより妨害されてしまった。
ロロにとって幸か不幸か、狙いであった心臓を反れた銃弾は美遊の左腕を撃ちぬいていた。
それと同時にギアスが解除され、ロロ自身も我に返った。

そして呼び止める美遊の声を無視して走り出して今に至る。

(兄さん…、兄さん……!!)

今のロロにはあのナナリーの声色を感じる美遊と一緒にいることはできなかった。
それがあいつのことを、まだ生きているナナリーのことをどうしても意識してしまう。

普段のロロであれば美遊を殺すこともあるいは選択できたかもしれない。
だがそんな発想もできないほどに取り乱していた。それは美遊、そしてもしかしたらロロにとっても幸運だったのかもしれない。

ただ、何かに我慢できなくなってしまった。
何かとは何だ?分からないまま、自分の心も定まらないまま、ロロは走り続ける。

兄の死を受け入れたくないという思いを抱いて。




「くっ…!」

腕にはできる限りの治癒魔術をかけたにも関わらず、成果は芳しくない。
出血量こそ抑えられたものの未だに少しずつ血は流れ、痛みも美遊から体力を奪っていた。

『美遊様、このまま行かれては危険です』
「分かってる。でもロロさんと長田さんが…」

失念していた。彼が失ったのは自身の兄なのだ。
そんな状態にあるロロへの気配りを疎かにしてしまった。

遠坂凛が死んだという事実は、表にこそ出していないが美遊に大きなショックを与えていた。
ともすれば彼女の存在に関わるほどの。
それは彼女に無意識の内に強い罪悪感と責任感を植えつけていたのだった。
己の状態すら見えなくなってしまうほどの。

そんな状態で動き続けていれば体力を普段以上に消耗してしまうのも当然だろう。
歩く足取りはふらついている。どころか視線すらもはっきりしているようには見えない。

熱を持つ腕、少しずつではあるが流れ出る血液、そして削られる体力。

『もうこれ以上はいけません…!せめて血が収まるまでは――』
「大丈夫だから。私の体のことは私がよく分かってるから」
『…。美遊様、申し訳ありません』
「え、サファ――――」

言いかけた言葉を最後に、美遊の意識は落ちていった。

439Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:33:05 ID:RPFA1MiA
催眠音波を流し、美遊の意識を奪ったサファイア。
そもそもこうなってしまったのも自分の責任だとも、サファイアは考えていた。

バーサーカーの戦いのダメージもさほど時間を掛けずに治癒することができたはず。にもかかわらずこの銃創の治りは遅い。
それはなぜか。
バーサーカーの戦いの際は、サファイアが付きっきりの状態で、美遊も十分な警戒を払い戦っていた。
しかしロロの放った銃弾はロロ本人ですら予測しえなかったもので、ギアスの効果も合わさり完全な不意打ちであった。
さらにその時対応すべきだったサファイアはロロの暴挙を止めるため美遊の手から離れてしまっていた。
結果、バーサーカー戦のように障壁や保護を張ることができず、もろに銃弾を受けてしまったのだ。

あの時美遊様の手から離れさえしなければ、あるいはもっと早く対応できていれば――
そう考え始めてしまいそうになるのを抑えて全魔力を治癒に注ぐが、治癒の進行は普段と比べて格段に遅かった。

(これは…どうしたら―――)

その時だった。
近くに人の気配を察知したのは。



北崎、Lと別れて鹿目邸へと向かう草加雅人と鹿目まどか。

まどかが迷いの中発するべきかと考えた言葉は、ついに発せられることはなかった。
それは移動の最中、空を飛ぶ灰色の怪人を見たことがきっかけだった。

「草加さん、あれってやっぱり…」
「ああ、オルフェノクだ。
 まどかちゃん、君は先に家に向かっていてくれ。あれを放ってはおけない」
「えっと…、分かりました。気をつけてください」



草加さんはオルフェノクを放っておけないと言っていた。それはきっと正しいのだろう。
最初に会ったあの馬のようなオルフェノク。そして先ほどのあの北崎という男。
共に恐ろしい存在だった。
まどかを襲った方はもちろんのこと、一時的に協力していた彼もまるで戦いを楽しんでいるかのようだった。彼が自分を見ていたあの目は人に向けるものではなかった。
正直まどかとしてはあの時草加の近くにいるべきではないかと思っていた。
だが、馬のオルフェノクに襲われたときの彼の出していた、自分へ向けた殺気。それはまどかに恐怖を植え付けていた。
今まで魔女に殺されかけたことこそあれ、あそこまで明確に殺意を向けられたことなどなかった。それも憎しみからくるものなど。
だから、怖くて逃げ出してしまったのだ。オルフェノクという存在から。

(結局私って足手まといなのかな…?)

さやかちゃんやほむらちゃん、マミさんや杏子ちゃん、草加さん達のような力もなければ。
ユーフェミアさんやLさん、夜神さんのように自分を貫ける確固たる意志もない。
そもそもどうしてこんな何のとりえもない私なんかがこんなところにいるのか。それすらも分からない。

440Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:34:35 ID:RPFA1MiA
『君は途方もない魔法少女になるよ。恐らくこの世界で最強の』
『まどか。いつか君は、最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう』

ふと思い出すのは、キュゥべえの言葉。
もし、あの時契約していれば、皆の力になれたのだろうか?
最高の魔法少女。
あの時は魔法少女の真実を知ってしまった直後であり何も感じなかった。
だが、今のまどかにはとても甘美なものに思えた。思えてしまった。



そんなことを考えつつ家までもうすぐというところに着いたあたりのこと。

『すみません、そこの方!』
「え?」

何者かの声がまどかの耳に届く。

『お願いします!力を貸してください!』
「え、どこ?誰?」

周囲を見回しても人の姿は見えない。実際まどかの視界には人の姿はなかった。

「え?何これ…」

まどかに話しかけていたのは輪っかに羽が生えて真ん中の星が印象的な何か。
何かとしか言えなかった。あえて言うなら魔女の使い魔に見えなくもない。

「つ…使い魔、ならどこかに魔女が…!」
『驚かせてしまって申し訳ありません、お願いします!美遊様を…!』
「え?」

謎の物体に案内された場所、そこはまどかの家からさほど離れている所ではなかった。
そしてそこに倒れていたのは小学生ほどの少女。

「これは…、大変!早く手当てしなきゃ!」

腕にできた大きな怪我。そしてそこから流れる血がただ事でないことはまどかにも分かる。

『お願いします!美遊様を…!』
「う、うん!とにかく家に運ぶから!」

自分にできることがあるかは分からない。もしかしたらただの足手まといなのかもしれない。
それでも、目の前で倒れる少女を助けることくらいはできるかもしれない。

そんな思いを胸に、自身の家を模した建物の扉を開いた。

441Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:36:44 ID:RPFA1MiA


草加雅人。
彼はオルフェノクを憎む存在と考えている。それが例え共に戦う仲間であろうと、かつての同級生であろうと。
そして、育ての親であろうとその心自体は変わらない。

だから偶然見つけた長田結花に対しても、一切の情けも加えることはなかった。

「うぁっ!」

クレインオルフェノクの顔面にファイズの拳が突き刺さる。
吹き飛ばされる結花をさらに蹴り付ける。

もうかなりの攻撃を加えていたが、彼女からの反撃は一切なかった。
どうやらファイズの中にいるのが乾巧だと思っているようだ。
だからあえて声を発することなく、乾のスタイルの真似をして攻撃を加えていたのだ。

(全く、どうしようもない奴だな。君は)

北崎のこともあり、今の草加はかなり機嫌が悪かった。
そこで現れた長田結花は彼にとっては格好の獲物だった。忌み嫌う化物である彼女の存在は。

だが、それを指しおいても、彼はこの女のことは気にいらなかった。
化物でありながらまるで弱者であるかのように振る舞い、木場や乾に守られて過ごすこのオルフェノクが。
こういうやつに限って木場の知らないところで人間を襲っているのではないかとさえ思えてくる。

(お前ら化物がそうやって弱い者みたいなふりして、気持ち悪いんだよな)

さらに気にいらないのは彼女が自分の攻撃を受け入れているということだ。
まるで自分を裁かれたがっているかのように、こちらの攻撃を受け入れている。
あの時の乾巧のようだった。
何があったか知らないが、もう少し抵抗くらいはしてくれないと倒しがいもない。

(そんなに死にたいんだったら、望みどおりにしてやるよ)

蹴り飛ばされた長田結花を見ながら、オルフェノクに止めを刺すための武器を手にとる。
左腰に装着されているツールを右手に取り付け、ファイズフォンのスイッチを押す。
右腕に紅い光が流れ込んだ。

と、その時だった。

「……!」

背後で響く微かな足音。
誰だ、と振り返ったところにいたのは銃を持った一人の少年。

声を出すわけにはいかない。出してしまえばお膳立ては台無しだ。
周囲を注視すると、長田由香は逃げようとしているのかそれとも迎え撃とうとしているのかはっきりしない。
だが少なくとも彼女を味方する存在、というわけではないようだ。

442Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:39:35 ID:RPFA1MiA
声を出したくはない。出してしまえばお膳立ては台無しだ。
周囲を注視すると、長田由香は逃げようとしているのかそれとも迎え撃とうとしているのかはっきりしない。
だが少なくとも彼女を味方する存在、というわけではないようだ。

(はぁ…、せめてこの化物を見て逃げてくれたら楽なんだが――何!?)

思わず声を出しそうになってしまう。
その少年は確かに離れた場所でこっちを見ていたはずだった。
なのに一息ついた瞬間、目の前でその手に持った銃を放ってきたのだから。

もし北崎やファイズアクセルフォームのような高速移動であればそこまで驚きもしなかっただろう。
あるいは何らかの前触れのようなものがあればワープのようなものと判断できただろう。
だが、目の前の少年はいきなり目の前に現れた時には既に銃を構えていたのだ。

訳の分からぬ現象に思わず後ずさる草加。
幸い変身中だったおかげでさほどのダメージこそなかったものの、もしベルトを盗られることがあれば二重の要素で危ない。だから迂闊に動けない。

(チッ…、どうする…、このガキと長田結花、どうするべきか…)



僕はどうしたらいいんだろう。
兄さんはもういない。僕の全てだった兄さんは、いないんだ。

もしかしたら放送が嘘だったかもしれない。そう言い聞かせることもできたかもしれない。
あれさえ見なければ。

それは道をがむしゃらに走っている時に見つけてしまった。
平地に不自然に広がった大量の灰。その中に埋まったカチューシャとリボン。
その瞬間、これが誰のものか分かってしまった。
篠崎咲世子。
さっきの放送で名前を呼ばれた一人だった。
彼女の死自体に別段特別な思いというほどのものはない。せいぜい、あああいつは死んだんだな〜といった感想程度だ。
しかし、ここで彼女の死を知ったことにはある種重要な意味があった。
あの放送が間違っている可能性はかなり低いということ。ここにある咲世子だった何かのように、ルルーシュ・ランぺルージもどこかで物言わぬ骸と化しているのだろう。
もちろん、放送で流した真実の中に嘘を交えることもできたかもしれない。
しかし、ロロはそうやって自分を誤魔化せるほど心を保てている状態ではなかった。

力なく歩いていると、見えてきたのは謎の強化服のようなものを着た誰かが長田結花を殴りつけている光景があった。
もう兄さんもいないのなら、いっそみんな殺してしまうか?そんな投げやりな思いが浮かぶ。

こっちを認識したことに気付いた瞬間、ロロはギアスを発動させて至近距離から銃を撃った。
しかしその装甲はロロの銃弾を弾き傷一つ残していない。
ああ、僕じゃこいつを殺せないのか、と弱気な考えも浮かんでくる。

後ずさる彼(?)を見ながら力のない目は周囲を見回す。

(兄さん、僕はどうすればいいの?)

443Lost the way ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:40:16 ID:RPFA1MiA
【D-6/鹿目邸/一日目 午前】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:目の前の少女を助ける
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんが追ってくるのを待つ
4:乾巧って人は…怖い人らしい
5:オルフェノクが怖い…
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(小)、左腕に銃創、意識無し
[装備]:カレイドステッキサファイア
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@プリズマ☆イリヤ、支給品0〜1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:気絶中
2:結花、ロロを追いかける
3:知り合いを探す(ロロの知り合いも並行して探す)
3:結花の件が片付いたら、橋を渡って東部の市街地を目指す(衛宮邸にも寄ってみる)
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:ナナリー・ランぺルージには要警戒。ユーフェミア・リ・ブリタニアも、日本人を殺す可能性があるので警戒。
6:『オルフェノク』には気をつける
7:凛さん…

[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません

【D-5/一日目 朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:長田結花は殺しておく。目の前の少年に対処
4:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう。その後、Lとの約束のため病院か遊園地へ
5:佐倉杏子はいずれ抹殺する
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
7:可能なら長田結花には俺(ファイズ)を乾巧と思わせておくのも面白いかもしれない
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、怪人態、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:???
1:仮面ライダー(間桐桜)から逃げる
2:仮面ライダー(間桐桜)に言われた通り、“悪い人”を殺す?
3:木場さんの為に、木場さんを傷つける『人間』を殺す?
4:乾さんに倒されるなら―――
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
※目の前にいるファイズが乾巧だと思っています

【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ギアス使用による消耗(中)、精神的に疲弊
[装備]:デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り2個)
[道具]:基本支給品、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個
[思考・状況]
基本:????
1:僕はどうしたらいいんだろう?
?:ロロ・ヴィ・ブリタニアを陥れる方法を考える?
?:ナナリーの悪評を振りまく?
[備考]
※参戦時期は、18話の政庁突入前になります
※相手の体感時間を止めるギアスには制限がかかっています
 使用した場合、肉体に通常時よりも大きな負荷がかかる様になっており、その度合いは停止させる時間・範囲によって変わってきます

444 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:41:40 ID:RPFA1MiA
投下終了です。中途半端なところで終わってすみません
おかしなところがあれば指摘お願いします

445 ◆Z9iNYeY9a2:2012/09/18(火) 00:43:36 ID:RPFA1MiA
一か所ミスがありました
草加達の現在地、時刻のところですが【D-5/一日目 午前】に変更でお願いします

446名無しさん:2012/09/18(火) 19:22:54 ID:NakvvV4c
投下乙。草加ェ……というかロロェ……
全員が精神的にアレなせいでどうあがいても絶望……あ、草加さんはいつもどおりですね

447名無しさん:2012/09/18(火) 20:25:05 ID:ljlq49C6
投下乙です

ロロ、やはりこうなってしまったか・・・
そして全くブレない草加さんさすがです

448名無しさん:2012/09/21(金) 17:43:24 ID:QwF5ZzgQ
草加さんは平常運転!

449名無しさん:2012/09/21(金) 20:37:15 ID:gLfBW6UE
投下乙です

なんかもうねえ…
らしいといえばらしいけどお前らェ…
巻き込まれる側もたまらんなあ…

450名無しさん:2012/10/03(水) 21:01:33 ID:dv4hG/vw
草加さんがいつもどおりでむしろ安心した俺がいる

451 ◆Z9iNYeY9a2:2012/10/17(水) 00:08:37 ID:TV1III3A
事後報告ですみません
自作「Lost the way」において、銃がデザートイーグルということを失念していました
結果威力の方におかしな部分が出てしまったので腕に直撃ではなく掠めたという形に修正させていただきました

あと、死亡者名鑑の項目を作成しておきました
とりあえず雑談スレの過去ログに貼られていたものを載せさせてもらい、残りは暇があれば順次更新していこうかと思います
また、もし項目を作成していただけるなら幸いです

452名無しさん:2012/10/17(水) 10:02:53 ID:rXdYHxDc
この上なく乙!そして感謝!

453名無しさん:2012/10/28(日) 17:50:15 ID:Om1xJQew
一応移転報告
パラレルワールド・バトルロワイアル part2.5
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14759/1351176974/
今後は仮投下等を除いてこちらに投下してください

454名無しさん:2012/11/30(金) 23:30:26 ID:BI5oKLLY
このメンツは波乱の予感

455<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>

456<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>:<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>
<削除されたのは乾巧って奴の仕業なんだ>

457名無しさん:2014/04/01(火) 00:03:33 ID:PjojCqEk
暗い通りの中、一組の足音がまどかの耳に響く。

カツ、カツ、カツ

まどか「あなたは…?」
???「私は美国織莉子」

見慣れない学生服を着た少女はまどかを見下ろしながらそう名乗り―――

織莉子「あなたのような存在を、魔法少女として認めるわけにはいきません!」

襲い来る大量の使い魔達を前に、織莉子は手を掲げる。

織莉子「はっ!変身!」

キピーン



N「パラレルワールドの皆は完全に僕達の敵に回ったようだ…」

ゆまとニャースを後ろに連れた士郎の前で、Nは語る。


そこにあるのは仁義なきバトルロワイヤル。



ぶつかり合うガブリアスとミュウツー。


セイバーオルタの刃とオーガのオーガストランザーがぶつかり合い火花を散らす。



使い魔を前にファイズエッジを振るうファイズ、その後ろには車椅子の少女と黒髪で細身の少年。

「お前、パラレルワールドの人間だったのか、なら次は」
ゼロ「俺が相手だ」

困惑するファイズに対し仮面を被る細身の男―――ゼロ。

その強打がファイズの体を捕える。

458名無しさん:2014/04/01(火) 00:04:08 ID:PjojCqEk



織莉子「次はあなたの番よ」
ほむら「あら、どうして?」ファサ
キリカ「別世界の君たちは許されないんだよ」


刃を振るうキリカと球体を飛ばす織莉子のコンビネーションに苦戦する美樹さやか。



――――そして現る、パラレルワールドの管理者とは?

空間を切り裂く謎の一撃が、周囲の大量の黒き巨人を吹き飛ばす。




巧、士郎、Nの向こうから現れる7人の戦士たち。
彼らは皆、パラレルワールドの住人。

士郎「パラレルワールドの人間…、戦うしかないのか…!」

「変身!」ファイズフォンを掲げる巧。

腕の聖骸布を剥ぎ取る士郎。

モンスターボールを構えるN。

全身を光に包ませ魔法少女衣装に着替えるほむら。

QB「全ての世界の力を結集させるんだ!」





まどか「パラレルワールドの皆が戦うっていうなら…、私も戦わなきゃ…!皆を守るために!」

―――変身!


魔法少女が、サーヴァントが、オルフェノクが、仮面ライダーが走る。

多くの力が入り混じる混戦。

バーサーカーが駆け抜け、マークネモがその巨大な刃を振るう。

ピカチュウの電撃とドラゴンオルフェノクの青い炎がぶつかり合う。


どちらが勝つかを賭けて傍観する死神達と、真相解明に奔走する探偵達。

459名無しさん:2014/04/01(火) 00:05:41 ID:PjojCqEk

「天幕よ、落ちよ!花散る天幕(ロサ・イクトゥス)!」
「ニコ、サキ!行くわよ!」

赤きセイバーが剣を振るってKMFをなぎ倒し。
プレイアデス聖団が並び立ち。

イリヤ、美遊、クロの三人のコンビネーションが巨大な魔女を吹き飛ばす。


パラレルワールドで分かれ並び立つ総勢57人。

「問答無用!」


パラレルワールド・スーパー大戦feat.赤セイバーとプレイアデス聖団


2114年4月1日ロードショー――――


入場者には特製QBステッカー、プレゼント!


どちらの世界が勝つか、映画の結末を決めるのは君だ!
詳細はパラレルワールドバトルロワイヤルwikiにて!

460名無しさん:2014/04/01(火) 13:05:05 ID:7RHAc4Es
なんか混じってるー!?
今年もまた4月ネタ乙ですww

461名無しさん:2014/04/02(水) 19:22:28 ID:e/gPo9nQ
パラロワならではのパラレルな4月馬鹿ネタだったw 乙w

462名無しさん:2015/04/01(水) 00:52:59 ID:laXkM7ak
新シリーズ予告


――――――――今、世界の命運をかけたレースが開幕する。




『さーて始まりました、最速のレーサーの栄光は一体誰の手に!パラレルワールドGP!!
 実況は私、カレイドステッキ・ルビーちゃん。そして解説は』
「え、あれ?私って確か殺し合いの中にいたんじゃ」
『お馴染み、私のマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさんです!』
「ちょっと待ってルビー。一体何がどうなってるのか分からないよ?!」
『全くもー、ボケるには早すぎますよイリヤさん。仕方ありませんね、説明してあげましょう』

カクカクシカジカ

「えっとつまり、並行世界から集めた人たちでレースをして誰が一番速いかってのを決めるってことだよね。
 それでここはルビー達が作ったレース用の固有結界…だっけ?みたいなものだって」
『理解していただけたようで何よりです』
「全然分かんないよ!?そもそもどうしてレースなの!?レースに一体何がかかってるっていうの!?」
『それはですね―――――』

テーン

『おっと、選手の皆さんが入場してきたみたいですね』
「まだ何も聞いてないんだけど!」
『さぁ、選手の皆さんはこちらになります!』


①暁美ほむら:サイドバッシャー

②ナナリー・ランペルージ:マークネモ

③北崎:ジェットスライガー

④草加雅人:オートバシン

⑤クロエ・フォン・アインツベルン:ガブリアス

⑥ロロ・ヴィ・ブリタニア:ヴィンセント

⑦N:リザードン

⑧美遊・エーデルフェルト(ライダー):ペガサス

⑨ゼロ:ガウェイン


『さぁ、最速の称号は誰に与えられるのか!』
「待って!ロボットとか怪獣とか明らかに車に見えないものたくさん見えるんだけど!
 ていうか美遊とクロ何やってるの?!」
『あ、そうそう。このレースは攻撃・妨害・乱入何でもありの特別ルールとなっています。速さだけを競っていては勝てませんから注意してくださいねー。
 あとイリヤさん、ツッコミポイントはちゃんと押さえた上で突っ込まないと疲労が溜まってしまいますよ』
「ルビーがそうさせてるんでしょーーーー!!」







テーン

463名無しさん:2015/04/01(水) 00:57:25 ID:laXkM7ak


突如始まった大規模レース。
KMFが、ポケットモンスターが、神獣が、バイクが走り互いの速さを競い合う。

ミサイルが弾け、宝具が飛び交い。
大気が凍てつき、時間が止まる。

「あれ?どうして私たちって時間停止してても動けるの?」
『解説者権限ですね』

「北崎!お前だけはぁ!!」
「しつこいやつは嫌われるよ…っと」

「私のジ・アイスのギアスで凍り付け!」
「くっ、ガブリアス!!」

白熱するレースの中でやがて発生する死者。


「魔女の力は…俺が――――」

「ステルスロックを進行上に撒いておいたわ」
ドーン
「ほむらーーーー!!」


カチッ

そしてレースの中、一つの異変が。

『さーて始まりました、最速のレーサーの栄光は一体誰の手に!パラレルワールドGP!!』
「あれ?これ、前にも同じことがあったような…」

「これから始まるレースで誰かが死ぬ度に時間が戻ってるっていうの?イリヤ」
「うん、信じてもらえないかもしれないけど、このレース絶対何か変…」
「その死んでるやつってのは…」

「ぐああ!」
「草加ぁ!!」
「どうしてあの人だけ普通のバイクなの?」
『あれ、一応変形するんですけどね』



『まもなくだね。時間を繰り返す度に積み重ねられていく因果は高いエントロピーを生み出す』

「この件から手を引け、乾」
「海堂?!」


そして明かされる、レースの裏に隠された、真実。
バトルロワイヤルというゲーム。


「なるほど、これが真相ってことだね」
「ピカッ」

死にゆく者に対する後悔の想い。


「もうたくさんだ、誰かが犠牲になるのは」

少女の葛藤と、死にゆく仲間達。


「美遊!」
「イリヤ……、あなたは、生きて…!」


「今でも信じてる!意味なく死んだやつは、いないってな…!」

彼らの戦うべき本当の敵は――――

『止めろアリス!これ以上加速すると―――』
「構わない!これがナイトメア・オブ・ナナリーだ!」

アリスのゴッドスピードがぶつかり合う。
その相手は―――――――――


パラレルワールドGPの真の開催目的とは――――



スーパーGP in パラレルワールド
魔法少女大戦

PaRRW掲示板にて投下予定

464名無しさん:2015/04/01(水) 01:28:44 ID:G6hh4CIM
早速のGPネタwww

465名無しさん:2015/04/01(水) 02:31:17 ID:CTgzrjMI
早いよwけど毎年乙!

466名無しさん:2016/04/01(金) 22:58:07 ID:z884J6VE
今年はないのかな……


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