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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

119天使のような悪魔の笑顔 ◆qbc1IKAIXA:2011/11/03(木) 01:26:41 ID:PEXuR5os



 台所で作業している音をまどかはボーッと聞いていた。
 草加は家に入るなり時間を確認し、料理を作るから待っているようにと言ったのだ。
 こんな状況で食事の用意が行われているなんて、変な気分だった。
 家の中はとても広く、お金持ちが住んでいたのだろう、と感想を抱く。
 地図にも記載されている、とは草加の弁だ。確かめてみると、『間桐』という人の家らしいことがわかった。
 草加は自身が料理している間、少し休んでいるといいと言っていたが、とてもそんな気にはなれない。
 目をつむると嫌なことばかり浮かんで、怖くてしょうがないのだ。
 杏子は生きていた。だからさやかも生きていて欲しい。いつもの、そばにいた明るい彼女で。
 そう願うのは自然だと思う。
「浮かない顔だね」
 急に声をかけられて、まどかは驚いた。
 声の主はもちろん、草加雅人だ。彼は出来上がった料理を並べ、箸をおいた。
 並べられたのはごはんとお味噌汁。それにさばの味噌煮だ。
 意外と和風な人らしい。いただきます、と互いに言い合い、一つ口に入れる。
「あっ……美味しいです」
 味噌で煮こまれたサバは程良く身がほぐされており、噛みやすい。
 染み込んだ味付けはやや薄いものの、甘すぎずないように調整されていた。
 骨は取り除いているようだが、一見ではわからないほど見た目は崩れていない。
 どうやって取ったのだろうか。まどかは感心する。
 そういえば、自分のパパも主夫のため料理がうまかった。最近は料理上手な男性が増えているのだろうか。
 ただ、草加の場合は何でもそつなくこなすという印象のほうが強い。
「これでも一人暮らしが長かったから、栄養が偏らないように自炊していたんだ。好みの味じゃなかったら、遠慮なく言ってくれ。次までには改善しておく」
「そんな、こんなに美味しいし、文句なんてつけれません」
「そう言ってくれると助かる」
 お互いに笑顔を交わし、食事をすすめる。
 草加は『食べて休んで、体力を蓄えることも君の仕事だ』と、料理に取り掛かる前に言っていた。
 頼りになるとはこの人のことを言うのだろう。助けられてばかりで情けない。
 そう自己嫌悪に陥っているとき、スピーカーを通したような声が響いた。
 ああ、これが放送の始まりか。


 草加は箸を止めて、天を睨みつけた。
 真理が生き延びていることを、そして奴が生き延びていることを、珍しく神に祈った。
 そう、この手で殺してやらないと気が済まない。
 奴だけは絶対に生かしておけない。
 北崎。
 流星塾のみんなの、自分の復讐は絶対に果たす。
 だから草加は一瞬だけ、本性を映した顔を天井に見せた。


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