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獣人総合スレ 避難所
1
:
名無しさん@避難中
:2009/03/17(火) 20:14:12 ID:/1EMMOvM0
獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。
なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう!
ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。
エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。
獣人スレwiki(自由に編集可能)
http://www19.atwiki.jp/jujin
あぷろだ
http://www6.uploader.jp/home/sousaku/
獣人総合スレ 5もふもふ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236878746/
【過去スレ】
1:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/
2:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/
3:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/
4:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1231750837/
334
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:05:26 ID:WPHKKZGo0
こんな日に規制だなんて……。
申し訳ございませんが、以下の代理投下をよろしくお願いいたします。
『2月22日のごめんなさい』
コレッタがクロに口を利かなくなってしまった。
いつも学校では仲良し子ネコのコレッタとクロ、そしてミケの三人。いつもの公園でいつもの様に遊びながら、今日だけの夜を待ちわびていたときのこと。
ちょっとのつもりで、クロがいつものようにからかっていたのだが、調子に乗りすぎたのか、笑みを忘れたコレッタはクロの手を叩いていた。
「もう、クロとは遊ばないニャ!!!」
同じ子ネコのクロは、金色の髪をなびかせながら公園から走り去るコレッタの後姿をじっと見つめることしか出来なかった。
いっしょに遊んでいたミケも、いつのコレッタの反応との違いが分かったのか、気まずいそぶりを見せていた。
『いよいよ今夜』だというのに、クロもミケも、コレッタの初めて聞くような声が脳裏に焼きついて、夜まで楽しむ余裕はどこへやら。
「クロ、いけないニャよー」
「だって、コレッタが……」
原因は些細なことだった。クロが、ほんのちょっとやり過ぎただけだった。覆水盆に帰らず、クロの足元をこぼれた水がじわりと濡らす。
もしかして、クロがこぼした茶碗の水は、じわじわと地面に吸い込まれて、再び姿を見せることはもう無いのかも。
そんなことはぜったい無いと信じたいけれど、世の中にぜったいなんか無いんだよ。と、意地悪な空の雲がクロを責める。
―――公園から夢中で走り去ったコレッタは、気が付くと街の真ん中の電車通りにまでに辿り着いていた。
コレッタの母親が生を受ける前より走っていた電車は、生まれながらの鉄輪をきしませ、なんでも無い一日の一場面を描く街の住人。
最近生まれたばかりの自動車と混じって、大きなモーター音を鳴らしながら電車はコレッタの目の前を通り過ぎる。
小さなコレッタには、通りを闊歩する電車が大きく見えた。もしも電車が話を聞けたなら、この街の昔話を聞きたいニャ!と言いたげに。
取り残された軌道敷を見つめるコレッタは、ここは自分の街なんだニャ。と、薄暗い街並みを眺めて手を握り締める。
でも、ちょっと怖い。大きな街の一人歩きはコレッタに早すぎた。いつも優しいお母さんがいないってだけで、ちょっと落ち着かない。
ただでさえちょっぴり不安を抱えているというのに、泣きっ面にハチではなく、コレッタの頬に微かな一滴が刺さる。
「わーん!傘を持って来ればよかったニャ」
そう言えば、出かける前に母親が顔をしきりに洗っていた。小粒だった雨は、走れば走るほど大粒に感じる。
かわいいフリルの付いたスカートも、水滴を吸い込むとコレッタに冷たさを晒す、底意地の悪い布にしかならない。
自慢の金色の髪も、体にまとわり付いて未だ出会わぬ『すてきな男の子』に見せびらかすことも出来ないくらい情け無い。
それに、これ以上濡れるのはいやニャ。雨を避けようと、一本の路地に入り込むと、雨宿りにお誂えの軒先が見つかった。
街を走る電車が生まれる前から建っているような民家。それを無理矢理店に仕立て上げ、長らく街に溶け込んできた存在感。
かすれかけた看板には『尻尾堂古書店』と、立派な毛筆が誇らしげにガンコ親父のような玄関を飾っている姿だが、店自体に威厳は余り無い。
「ふう、ちょっと一休みニャ。疲れたニャあ。ここはどこニャ?」
世間を余り知らぬ子ネコゆえ、コレッタには「昔の本が置いてある所」とぼんやりと理解した。
335
:
2月22日のごめんなさい
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:06:12 ID:WPHKKZGo0
「本屋さん、ですかニャ……。入ってみるかニャ!こんにちはニャー!!」
ガラス戸の入り口が、子ネコの力でもぎこちなく開く。店内は薄暗く、入り口にカギが掛かっていないことだけで、
一応は商いを営まれていることが確認できる。ただ、乱雑に積まれた本でコレッタが一人通れるだけになっている通路は、
およそ客という客を歓迎する光景には、程遠いものであった。コレッタの目には、本棚が初めて来る街の建物に見えた。
知らない街は、心細い。知らない街は、冷たい。誰でもいいからいっしょに歩いてちょうだいニャ。
でもね、脚が凍えていつものように元気良く歩くことが、コレッタになかなかできませんニャ。
「誰かいますかニャー」
狭い通路のどん詰まりには、子どもの背丈ほどある大時計。正確に時を刻み続ける姿にコレッタが見入ると、
女の子に見つめられるのが恥ずかしがったのか、大時計は自分の鐘を鳴らしながら照れ笑いを始めた。
その音につられて、店の奥から本が崩れた音が、雨に晒されたコレッタのネコミミに聞こえた。
「ニャー!!!!!ニャああああ」
「誰だい?お客さんかね?返事しやがれ」
息ぴったりに大時計の鐘が鳴り終わると、しゃがれた老人の声が再びコレッタのネコミミに響く。
―――ミケと別れた意気消沈のクロは、小石を蹴りながら自宅まで帰っていくしかなかった。
お母さんに買ってもらった小さな自慢のブーツも、今は小石の小さな音を鳴らすだけ。
「どうして、コレッタとケンカしちゃったのかニャ」
クロの頭の中で、おまじないのように何度も何度も繰り返すセリフは、クロを解き放つことは無い。
本当は、こんなこと言いたくないだ。だけど、言っておかないと落ち着かないぞ。だって、わたしは女の子。
期待して振り返ってみても、当然コレッタの姿が見当たることはなかった。曇りだけだった空からは、余計な雨粒まで持ってきた。
そんなものいらないニャ。コレッタさえ来てくれれば、一言……クロも。クロは、雨がいっそう嫌いになった。
「いけない!早く帰えらないと、ずぶぬれニャ!!お姉ちゃんに怒られニャ!」
雨にからかわれたクロは、これ以上は勘弁ニャと小石をあきらめて、尻尾を立てて足早に自宅に戻る。
短いお子さまスカートを翻し、トタン屋根を雨音で鳴らす住宅街をクロは、冷たい空気を切って疾走する。
クロの顔に雨が当る。前髪から素敵が滴り、頬を氷のように冷たい冬の雨粒が伝わる。ニーソックスの隙間が冷たい。
クロが『佐村井』の表札掲げた玄関に付く頃には、小雨もすっかり立派な雨に姿を変えていた。
凍える手で扉を開けると、帰宅したばかりだったクロの姉である御琴(みこと)が、玄関にオトナのブーツを履いたまま腰掛けていた。
黒いダウンジャケットを羽織い、革の黒いブーツを履いた御琴の出で立ちに、クロには遠いオトナの香りがした。
「あら、玄子(くろこ)ちゃん。お帰りなさい。びっしょりじゃないの」
姉の御琴は、クロを『玄子ちゃん』と呼ぶ。彼女もまた、クロと同じくクロネコの少女。背はけっこう高い。
少女と言うにはオトナっぽく、オトナと言うにはまだまだ少女の愛らしさが残る佳望学園・高等部の女子生徒。
置き去りにされた玄関の傘立が濡れていないところを見ると、彼女も外出中に雨に遭遇して自宅に舞い戻ってきたようだ。
可愛らしいネコの足跡のプリントされたハンドタオルで、自慢の黒いボブショートを拭きつつ、色気漂う声で「ふぅ」とため息をつく。
尻尾の先からしずくを垂らすクロは姉の姿をじっと見とれて、いつかは訪れることであろう『オトナ』に憧れていた。
336
:
2月22日のごめんなさい
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:06:47 ID:WPHKKZGo0
「玄子ちゃんもいらっしゃい、風邪引いたら大変。びっしょりじゃない」
「う、うん……。分かったニャ」
御琴の横にぴったりとくっついて座るクロは、小さいときからのクセだニャと、姉に照れ隠しをすると、
「甘えんぼ屋さんね」と、雨に降られた髪の毛を御琴の使っていたハンドタオルで丁寧に拭いてもらった。
ハンドタオルを通じて、姉の肉球がクロの頭を優しく撫でる。ダウンジャケットを着た姉に寄り添うクロに、くんくんと姉と雨の匂い。
雨に晒された御琴の黒いブーツからは、水滴がつるりと垂れていた。クロの前髪から垂れる水滴が何滴も何滴も、クロのふとももを濡らし続ける。
子ども向けのクロのブーツには、公園の土が付いていた。
黙っていたクロを見透かしているのか御琴は、妹の尻尾を跳ね上げさせるようなことを言う。
「あらら?まだまだ玄子ちゃんには、お姉ちゃんのブーツは早いかな。踵のある靴は、もうちょっとね」
「そ、そんなこと考えてないニャ!!わたしは……わたしのブーツでいいもんニャ!」
「そう?だって、お姉ちゃんのブーツをさっきから羨ましそうに見てじゃない。ほら、上がったら、シャワーをいっしょに浴びるよ」
「むー」
雨に濡れた革の黒いブーツは、クロには遠いオトナの色がした。
―――「お嬢ちゃんみたいな子が、こんな老いぼれの店に来るなんて、もしや雨でも降るんじゃねえのか」
「おじいちゃん。もう、降ってるニャよ。うわあ、ざんざん降りになったニャ!」
この場所だけ昭和の香りを漂わせた店の奥から、古びた本を掻き分けて一人の老猫がのっそりと現れた。
一見、身なりはそんなに悪くない。少し毛色をやつれさせた尻尾から、イヌハッカの煙草の匂いがする。
雨の日の古本屋は、インクの匂いがいっそう自己主張したがる。コレッタは、インクとイヌハッカの煙草の匂いに包まれて、
大きな瞳をしばしばと細めるしかなかった。それでも老猫は「お嬢ちゃんの手前、煙草を我慢しとるんだ」と、目を細める。
「こんなに濡れて、風邪引くぞ」と、老猫は頭を掻きながらコレッタに清潔なタオルを渡した。
「おじいちゃん。これ、全部おじいちゃんの本かニャ?天井に届きそうだニャ!」
「違う。こいつらの持ち主は、まだ居らん。もしかして、お嬢ちゃんが持ち主になるかもしれんな」
薄暗い店内に、拭いたばかりの白い毛並みのコレッタの姿が、森に迷い込んだ精霊のように光り浮かんで見える。
面倒くさそうに、老猫は大時計の蓋を開けると蓋に付いていたねじ回しを外し、時計板に開けられている小さな穴に差し込み、
ゆっくりとねじ回しを捻ると、大時計の中から機械の軋む音を立てて、自らの命の存在を伝えていた。
「もうこんな時間か。人が必死に机に向かってるというのに、好きなだけ針を回しおって。お前はのんきなヤツじゃのう」
「何してるニャ?とけいに何をしてるのかニャ?」
「お嬢ちゃん、ぜんまいを知らんのか。こうしてやらんと、この時計は止まってしまう。時間も日にちも教えてくれんようになってしまうんじゃ」
確かに時計板には時刻のほかに、小窓で日にちを示すようになっていた。
その日にちを確認すると老猫は、面倒くさそうにイスにしゃがむと再び大時計の姿を眺め始めた。
「なんじゃ。もう、今年もこんな日が来たんじゃな。尚武は、今年も来るのかのう」
「……わ、わたし、今年は行かないもんニャ!!」
「お嬢ちゃんたちの日じゃぞ。何があったか知らんが、寂しいこと言うない」
337
:
2月22日のごめんなさい
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:07:20 ID:WPHKKZGo0
―――風呂上りの姉妹は、せっけんの香りがした。
部屋着に着替えたクロと御琴は、帰って来たときより強くなった雨音を聞きながら、姉妹の部屋で、かりんとうをお茶請けに緑茶を飲んでいた。
くんくんと芳しいお茶の香りは、のんびりと過ごす空間にとても似合う。姉妹が苦手な熱々な温度は避けた緑茶から、程よい湯気が上がる。
「かりんとうだよ。市場で安く売ってたよ」
「むー」
クロの机にはおしゃれに目覚めたお子たちのための本が並び、御琴の机の方はというと、可愛らしいぬいぐるみに混じって、
コレッタのパペットがちんまりと飾られていた。御琴の友人である、イヌの大場狗音がこっそり作ったものだった。
なぜか、御琴がそれを気に入って自分の机に飾っているのだという。
「せっかくの日なのに、止むといいね」
「……や、止まないほうがいいニャ!」
「あらあら。そんなこと言ってたら、コレッタちゃんが悲しむぞー」
かりんとうを摘んだ御琴は、クロの口元に近づけてみた。クロは鼻にかりんとうを近づけると、パクっと一口。
クロの幼い歯が姉の細い指先に触れるが、御琴はまんざらでも無いような表情を見せた。
(オトナを知らない子どもの牙って、実ったばかりの果樹みたいに甘酸っぱいのね)
妹に噛まれた人差し指を悟られないようにくちびるに近づけた御琴は、首を傾けたままの妹のご機嫌を伺う。
「2月22日の夜は、わたしたちネコにとってお祭りの日なのにね。もしかして、玄子ちゃんは、コレッタちゃんとなにかあったのかな?」
「あ、あ、あるわけないニャ!!!あんな子と!!」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、なーんにもなかったのね。ふふふ。コレッタちゃんとまた会えるんだ、嬉しいな」
ぽりぽりとかりんとうをかじる御琴は、大人びたワンピースからちらと見せた脚を自慢することなく、上品にお姉さん座りで雨の日を
日本晴れのピクニックのように楽しんだ。落ち着かないクロの方は、雨の降り具合を気にしながら、両脚を伸ばして手首を舐め続ける。
「コレッタちゃんと夜会に出られるから、今夜は楽しみね。そうだ。『連峰』で買ってきたシュークリームでも持っていこうかな」
「でも、今夜は雨やまないかもニャ」
「大丈夫。コレを作れば」
花の香りがする髪は、御琴の香り。その香りに包まれた机の脇に置いてあるリボンとティッシュを何枚か取り出す。
丁寧な手つきでティッシュを丸め、それをリボンでまるごと結ぶ。もう一枚のティッシュには二つ小さく穴が開けられ、
そこからリボンの先をピョコンと出す。ネコミミのような形に整えられると、『子ネコ』のような形のてるてる坊主が出来上がった。
「コレッタちゃん、そっくりだよ。ふんふんふん」
「むー」
クロは静かに音を立てながら、小さなかりんとうを口にしていた。
―――尻尾堂古書店の老猫は、雨打つ音を聞きながら酒瓶の蓋をひねり、微かに溢れるマタタビの香りに鼻を近づける。
恐らく先ほどまで満たされてたであろうグラスに老猫が、懲りずにマタタビ酒を満たそうとする姿に、コレッタは顔を曇らせながらも
その場からじっと動くことはなかった。口から酒の息が詰まった球体を吐き出した老猫は、子ネコに話を続ける。
「わしが若いころは、ネコの夜会はしょっちゅう開かれておったんじゃ。じゃが、最近は仕事だの、なんだの開かれんようになってのう。
まあ、時代の流れっちゅうものか、分からんが。それでも、この頃は夜会も増え出したみたいじゃな」
話し終わる頃には、グラスいっぱいにマタタビの香り漂う液体が満たされて、老猫はくんくんと鼻を鳴らしていた。
338
:
2月22日のごめんなさい
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:07:52 ID:WPHKKZGo0
スカートをふわりと回して狭い店内の隙間を進み始めたコレッタは、ひもに結ばれた古書の束に手を掛けた。
ほこりがコレッタのまだ濡れた白い毛並みに引っ付くと、子ネコは立ち止まって、ぶんと片手を振る。
手に当った本の山が崩れ、慌ててコレッタはほこりを気にせず、手で押さえて雪崩を食い止め一安心。
危うく本の山に飲み込まれるところだったコレッタは、元通りにしようと本を重ねていると、棚の上部にある一冊の本が目に入った。
「おじいちゃん、あの本取ってニャ」
「なんじゃ、あの本か。取ってやるお返しにお嬢ちゃんの話を聞かせてもらおうかのう」
「か、隠しごとなんか、ないニャ!!」
体全体を使ってコレッタはウソを隠し通そうとしていたが、むしろウソをついていることを老猫にばらしているように見えた。
老猫がゆっくりと立ち上がり、本棚上部からはみ出したコレッタの言う本を取ってあげると、ウソをついたことを
悲しんでいた子ネコに「この本かのう?」と渡すと、ぴょこんとお辞儀をするコレッタの髪が薄暗い店内を明るくした。
「気に入ったか?」
「気に入ったニャ!」
「『100万回生きたネコ』か。お嬢ちゃん、選球眼がいいのう」
「?」
―――暖かいエアコンの元、佐村井姉妹の部屋では、ネコのてるてる坊主がいくつも作られていた。
大きなものから、小さな子。数からすれば、ちょっとした『てるてる坊主の街』が造れそうなくらい。
輪ゴムで形を整えている御琴は、ペンで目を書いているクロに優しく言葉をかける。
「この子、玄子ちゃんにそっくりよ」
「……」
「照れ屋さんね」
彼らを軒先にぶら下げだした御琴は、子ども以上にてるてる坊主作りを楽しみ、鼻歌がクロを呆れさせていた。
御琴が髪を掻き上げる姿が、クロの半分閉じた瞳に映りこみ、大きく頭を揺らしていた。
「眠いの?」
「……眠くないニャぁあ」
「いいよ。お姉さんの膝でゆっくりお休みなさい。玄子ちゃん」
雨に降られたことと、風呂上りで疲れたせいか、クロはまどろみながら姉の膝の中でゆっくりと眠りに落ちた。
暖かい姉の膝は、ケーキのように柔らかい。クロは甘くて幸せな気持ちになる洋菓子に包まれた気がする。
心地よく地面を打つ雨音が、クロを夢見心地の世界へと誘い続け、2月22日の夜を待つ。
339
:
2月22日のごめんなさい
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 22:08:43 ID:WPHKKZGo0
―――老猫に取ってもらった本を大事そうに抱えたコレッタは、公園での出来事を話した。
マタタビ酒をちびちびと口に含み、頬を赤らめた老猫は耳を立てて子ネコの話を聞くと、尻尾をブン!と振る。
「それで、お嬢ちゃんはその子と仲直りしたいのかね」
「……だって、クロが」
「実はのう、わしもお嬢ちゃんと同じ年ぐらいの頃、友人とケンカしたんじゃ。そのときは、ついつい意地になってたんじゃが、
わしがそんなに偉いやつじゃないって分かって、晩にそいつに頭を下げてな。そいつもやっぱり寂しがってたんじゃな。確か、2月22日の……」
「今夜だニャ!!」
「ほれ、傘を貸してやるから、早くおふくろさんの待つ家に戻るんだな。蕗の森の公園で待っとるぞ」
お代は話を聞かせてもらっただけでいいと老猫は、コレッタの手にしている本を包装紙に包んで持たせ、家へと帰らせた。
老猫にお辞儀を繰り返しながらコレッタは、雨の降り続ける街へと消える。
「やれやれ……。わしも下手なウソばっかり言うようになってしまったな。こんなウソじゃ、どこの出版社に出しても一次落ちじゃ」
居間に引っ込んだ尻尾堂のオヤジは、コレッタに話した内容と全く同じ文章の書かれた原稿用紙を一瞥すると、
擦り切れた畳に布団を敷き、ごそごそといつもより早く床についた。夜が近い。
―――クロが目を覚ますと既に部屋は真っ暗だった。きっと時計は夕方をとっくに過ぎてしまったのだろう。
クロとてるてる坊主が残された部屋からは、いつの間にか姉の姿が見えなかった。
眠い目をこすりながらクロは立ち上がり、明かりをつけようとスイッチのある扉の方へと向かうと、部屋に入ってきたばかりの姉に止められた。
「今夜は、このまま」
「あ!そうだったニャ!!」
御琴とクロの声だけが響く、闇の中。
二人の足音だけが、じゅうたんを鳴らす。
街の音は何も聞こえず、ひんやりと冷たい空気が心地よく、間近に迫った春の日が待ち遠しい今宵。
姉に誘われて、窓のカーテンを捲る。
「すごいね」
「すごいニャ!!」
窓からの夜景は、一面の甘い星空だった。見ているだけで吸い込まれるような瞬きに、姉妹の言葉が奪われる。
おおいぬ座のシリウスも、今夜はネコの独り占めを許し、オリオン座のペテルギウスも心なしか控え目に光る。
ケモノたちが住む街の明かりも、今夜だけは我慢して、あまねく星座に明け渡す。お礼に空の星たちも、2月22日を祝福する。
「今年の『ネコの日』は、いつもより特別にきれいだね」
昼間の時と違うダウンジャケットをまとった御琴は「早く出かける準備をするよ」とクロを促す。
だが、じっとコレッタに似たてるてる坊主を見つめるクロには、迷うところがあったのだ。
「コレッタちゃんだって、玄子ちゃんのことを心配してると思うよ。ね?行こ」
「……お姉ちゃん」
クロは大時計の振り子のように揺り動かされた胸を押さえるのが精一杯で、その場を動くことが出来なかったのだ。
だが、姉の春風のような声は勇気になる。慌ててクロは、自分のクローゼットを開くと、よそ行きの可憐なコートを身にまとい、
コレッタが来ているかもしれない蕗の森の公園へと、姉といっしょに足を向けていた。そうだ、新しいブーツも自慢しようかな。
コレッタのヤツ、羨ましがるかも。そして、コレッタにごめんなさい。
今年のネコの日は、星空が眩しい。
おしまい。
以上です。長文ですが、よろしくお願いいたします。
340
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/02/21(日) 23:43:20 ID:WPHKKZGo0
解除がきたようなので、自分で本スレに投下し直します。
お騒がせしました。
341
:
名無しさん@避難中
:2010/02/23(火) 19:00:39 ID:gidzCpFA0
ちょいと質問が在るんだが、遅れに遅れまくってるバレンタインネタの話の中で
英先生の恋愛観にちょびっと影響が出そうで、更に交友関係も少し変化あるから、
今、やるべきかどうか悩んでいるんだ。
まあ、恋愛観に影響が出るといっても「ホンのちょっと考えてみようかな?」程度の変化で、まだ修正は効く段階なんだが。
それでもやっぱり確認は取っておかないとなーと……やっぱ難しいかな?
342
:
名無しさん@避難中
:2010/02/23(火) 20:10:33 ID:r6iJDLxc0
>>341
>>304
343
:
名無しさん@避難中
:2010/02/23(火) 20:41:58 ID:gidzCpFA0
>>342
あまり具体的に書くとネタバレになるから軽く
恋愛観についてはさっき書いた通り、完全に諦めモードからホンのちょっとだけ考えてみるかなって感じで。
交友関係については、今まで付き合いの殆ど無かった人(同性)との間に交友ができる、と言った感じ。
その人にちょっとフリードリヒの名前を聞かれてしまうけど、
たまたま耳にしてしまうだけで深くは追求されず、その為その正体がサン先生だと言うことも知らないまま。
そして、それ以外に付いても殆ど変化無し。立場も変化無し。
344
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 09:21:55 ID:/jPoLsNQO
お、おぉ…
俺以外にも英先生をなんとかしてみたいって考える人いたんだ
いくつか書きながらも俺以外誰得、って薄々思ってたからなんか嬉しい
345
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 14:11:36 ID:JXR2ig0E0
えと、美王の父親です(笑)
とりあえず今日、風邪で会社休んでるんで熱に浮かれた頭で美王と神楽の過去を書
いてみたけど、公開したほうがよいでしょうか? と言ってもプロットだけで詰め
切れてないところが有りますけど。
346
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 14:50:27 ID:/IbOnZ9E0
お父さん!美王さんを僕に(ry
今回投下予定の作品では、神楽の事は全くふれてないので問題無いです。
いや、むしろ出してくれると「ほう、そんな事があったのか」と神楽の事も書き加えるかもw
それと、
>>341-343
の件に問題無ければ夜くらいに投下します。
347
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 17:26:47 ID:JXR2ig0E0
一眠りしてました。
美王と神楽------
中高一貫の女学校、桜女学院中等部に入学したときに出会う。本が好きで物静かな
美王と運動大好き元気っ子の神楽の夫々の第一印象は「5才の坊主」「ネクラ」と
あまり良いものではなかった。
夏も間近な頃に、先輩の苛めに体育館の裏で泣いていた神楽を美王が慰めたのが切
っ掛けで親しく話すようになり、夏の終わりには親友となる。
それからの日々は、まるで姉妹のように連れ添うふたりの姿が学院内に有った。小
さな身長でコートを縦横無尽に駆け巡る神楽と、日暮れの図書室で静に書を手繰る
美王を、周りは「アポロン」「アルテミス」になぞらえて「レトのふたご」と称し
て慈しんだ。
共に進学し高等部二年。神楽から他校の男子生徒から交際を申し込まれたことを相
談されて、美王は自分の親愛の情が実は愛情であったことに初めて気付く。その時
は進展することなく終わったものの、美王のなかに芽生えた恋心とそれを浅ましい
と思う気持との葛藤が始まることとなる。
三年生の時に、あまり成績の思わしくない神楽のために両親が家庭教師を付けるこ
ととなる。何時しかその家庭教師を想う様になっていく神楽に嫉妬を感じた美王は
勉強の時間に毎度神楽の家に押し掛けることとなる。そのために何故か神楽に兄の
悟了に好意を持って居ると勘違いされたり、神楽が家庭教師の居る大学に進路を変
えそうになったりと気苦労は絶えない。
無事大学に進学し、また静かな日々が送れると美王がほっとしたものの、その時期
に神楽は生涯の伴侶となる青年と巡り合う。美王に自分の恋愛感情を話すと良くな
いということを薄々感じ取った神楽は、秘密でその青年と付き合うことになる。そ
んな神楽の態度の変化に不安を感じた美王は、遂に神楽に自分の気持を告げるが、
神楽に拒絶されてしまい、更に恋人の存在も知らされる。
その後、ぎくしゃくとしながらも徐々に関係を修復しながら近づきつつあったふた
りだが、大学二年、ふたりが二十歳を越えた年に神楽が妊娠し大学を辞めて結婚す
ることになる。神楽からの結婚式の招待状を胸に、休学届けを出して美王は旅立つ。
3年後、神楽(西姓からから岡姓になった)の前に英国で学業を修めて復学した美
王が現れ、娘の緑に「私はこれからあなたの伯母に、“勝手に”なる」と告げ、こ
れからも神楽と離れないことを宣言する。
大学で教員免許を取り今は隣の県で英語教師として永く勤める美王は、時間が空く
度に神楽の家に押し掛ける日々を送っている。
-------ここまで。
神楽の旦那は大学の助手だったが、現在は准教授。
緑は現在大学生。美王に憧れて翻訳家になるべく勉強中。
神楽自身は長いこと「いいひとが居たら…」と美王に言い続けて今では口癖のよう
になっているが、今は『こういう生活でも良いかもね』と思い初めている。ただし
娘には結婚して欲しいとは思っている。
もうひとり、豊という名の息子(17才)が居るけど、けも学に在籍させるかどう
か悩み中。
ちなみに、内容は全然違うんだけれども、このふたりの元ネタは、阿部川キネコの
「ミス&ミセス」。
美王にとって“小さくて元気なひと”って言うのは、サンスーシにとっての“大き
くて厳しくて優しいひと”と等価なのかな?って思っております。
348
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 18:01:34 ID:/IbOnZ9E0
>>347
うーむ、深いなぁ……。
何というか決して想いの通じぬ道ならぬ恋は本当に切ないなぁ。
取り合えず何かお願いする事が無ければ、そのまま深夜に投下します。
それと、風邪が早めに治る事を心より祈っておきます。
349
:
名無しさん@避難中
:2010/02/24(水) 19:00:57 ID:/jPoLsNQO
わぁ深い
割と欝ーい
うん把握した。俺には文章化できねぇ。
350
:
名無しさん@避難中
:2010/02/25(木) 02:42:52 ID:VdpdwV8QO
規制なんでこっちで感想
あああああ英先生にキュンキュンするあぁぁぁぁ!!
しかしまさか相手が獅子宮先生とは。完全に予想外な組み合わせで見事に噛み合ってました。
深いですねえ英先生も獅子宮先生も。読んでてじんわり来ましたわ。
すばらしい長編でした。
351
:
名無しさん@避難中
:2010/02/25(木) 13:21:20 ID:YPTXzIyk0
ちょっと上のプロットにも絡むのでこちらで感想も。
ああ、いいなぁ。実は獅子宮先生は割と好みなんだよなぁ。オールドタイプの不良って感
じですごく好感が持てる。 なかなかこの先が気になってくるお話をありがとうございま
す。
で、美王先生ですけど、今佳望学園にいますけど、実は後10年ほど、55歳ぐらいにな
ったら、請われて桜女学院の院長になる、ってのを想定しております。緑の娘、神楽の孫
が入学してくるのに合わせて…
あわせて、って言うと失礼かもしれませんが、その前のわんこさんの猫の日の話、描こう
として苦戦してます。 こう言う日常ファンタジックな作品って、私には無理かー。
と言うか、どうしても爺さんやらおっさんやらおばさんやらを描きたくなって(笑)
可愛いこっこは難しいです。
352
:
名無しさん@避難中
:2010/03/02(火) 13:34:33 ID:BEK04rM.0
どっかのサイバーテロのおかげでみれなくなってるね
353
:
名無しさん@避難中
:2010/03/08(月) 19:35:38 ID:61QqwTxY0
namidame鯖、鯖PC交換で停止中らしい。
354
:
名無しさん@避難中
:2010/03/08(月) 22:30:22 ID:61QqwTxY0
復活したらしい。
845 :ちきちーた ★:2010/03/08(月) 22:19:28 ID:???0
どうよ? < namidame
最後の過去ログを解凍中
355
:
名無しさん@避難中
:2010/03/13(土) 17:39:37 ID:.bZwUqYg0
本スレ
>>305
の元ネタは何なんだろう……?
何かのアニメのEDが元ネタっぽい気はするが全然思い出せぬ(・ω・`)
356
:
名無しさん@避難中
:2010/03/13(土) 17:41:43 ID:jqRe4WhE0
デュラララだよ
357
:
名無しさん@避難中
:2010/03/13(土) 19:42:22 ID:.bZwUqYg0
>>356
おお、デュラララだったか。教えてくれてトンクス!
358
:
名無しさん@避難中
:2010/03/15(月) 22:13:17 ID:TuqUkB6k0
ライダーこと鎌田の元作者様に質問です。
鎌田を、ここ獣人スレ以外で。
創作発表板の割と目立つスレで、本格的に使わせてもらってよろしいでしょうか?
獣人スレには影響出しません。酷いことにもしません。いいでしょうか?
359
:
名無しさん@避難中
:2010/03/15(月) 22:59:32 ID:G9HnH.IU0
>>358
・鎌田の作者が私であること
・出典スレは獣人総合であること
・目立つスレとやらを教えてホスィ( ゚Д゚)
の、三つをしてくれればスレに向かってハァハァしにいきます。
360
:
◆akuta/cdbA
:2010/03/15(月) 23:00:48 ID:G9HnH.IU0
あ…こういう時こそ作者=鳥だせばいいのかな?
なんだか大活躍しそうでオラわくわくしてきたぞ。鎌田が活躍するなら
大歓迎です。
361
:
名無しさん@避難中
:2010/03/15(月) 23:42:04 ID:TuqUkB6k0
計 画 通 り !! (AA略)
はい、理解しています。キャラクターは崩さないよう注意します。
長編ssの予定で、出典は話の中でわかると思われます。
氏が絵を投下しているスレの中のひとつです。活躍させます。
許可いただいたからには必ず書きます。
ただ筆が遅いので結構先の話になってしまうと思われます。
そこのところはすみません。
362
:
◆akuta/cdbA
:2010/03/16(火) 13:27:16 ID:YZL7V7MU0
>>361
おおー、首を長くして楽しみに待っております。
自分の出入りしているスレが、避難所と獣人総合を除いて2つくらいしか
ないので気になるところw
キャラ自体は多少ハッスルしても全然気にならないので、頑張ってくだちい。
363
:
名無しさん@避難中
:2010/03/18(木) 01:44:23 ID:C3zfHUak0
デュラララの一番上って卓?
364
:
名無しさん@避難中
:2010/03/18(木) 09:52:15 ID:33kWMfNUO
桜女学院ってケモ学に近いかしら?
それと他校の人物を出すために、桜女学院使いたいのだけども大丈夫でしょうか……。
365
:
名無しさん@避難中
:2010/03/18(木) 14:00:30 ID:KuMEkUZw0
>>363
一番上はもちろん康太ん
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/624.html
ttp://www.youtube.com/watch?v=4u_TZ7f8qG8
366
:
名無しさん@避難中
:2010/03/18(木) 14:06:08 ID:zART14UA0
なんとなく隣の県の学校って考えてますけど、そんなに遠くない? 30kmぐらいかしら?
桜女(略称は「おうじょ」かな?だとすると生徒の渾名は「王女様」?)はどしどし使ってください。
ちょっとキャラの背景の確認のために書いてたのが有るのでとりあえず公開しておきますね。
------
中学の制服を受け取りに行くのに一緒に行ってくれるって言って“おばちゃん”が迎えに来る。
「みょうれいのごふじんには『おねぇさん』と呼びかけるのがマナーですよ」と“おばちゃんは”叱
るけど、鼻がひくひくと動くのに私は気付いてる。あれは“おばちゃん”の嬉しいときの仕草。
“おばちゃん”は家に着くと直にママとお茶を始めちゃった。こうなると長いぞ。“おばちゃん”は
あまり喋らないけど、ママの止まらない話に静かにいつまでも相づちを打っている。
しびれが切れそうになったころにようやく“おばちゃん”が腰をあげる。門の外に停めた車の所まで
ママは見送りに来て、私が後ろのシートに潜り込むのを見届けて、満足げに大きくうなづくと私には
行儀良くしてるのよ、“おばちゃん”によろしくねと窓越しに言う。私がリアウインド越しに手を振
ると車はゆっくりと走り出す。
前に、ママが「もうそろそろあの車、買い替えたら?」って訊いたら「アクセル踏めば前へ進んでハ
ンドル切れば曲がりブレーキ踏めばちゃんと止まる。何も不自由は無いのに?」と言ってた。「この
車はあなたとだいたい同い年なのよ」と教えてもらったことがある。「バブルキノデートカーだ」っ
て話してた。バブルキってのが判らないけど、デートカーは判る、デートの車だ。ステキ。
角を曲がりしばらく行ったところで“おばちゃん”はいつものように黙って車を停めると、トランク
から大っきい尻尾用のチャイルドシートを取りだすと助手席にセットしてくれる。もうそんな歳じゃ
あないと言ってみたいところだけれども、私は背が小さいから無いと前が見えないから仕方ない。マ
マが「子供は駄目」って言う助手席にいつもこっそり“おばちゃん”は座らせてくれる。うん、これ
でちゃんとした、ちゃんと揃った。“おばちゃん”と、バブルキノデートカーでデートだ。
駅前の洋服店で制服を受け取ると、今度はもうすぐ通う学校に向かう。名前の通りに門に近づく前か
ら続く桜並木は咲く気満々で蕾が膨らみ始めている。入学式はどんな景色になるんだろう?その桜の
下でママと“おばちゃん”は初めて会ったんだ。私にもそんな友達が出来るだろうか? 窓越しにそ
んなことを考えていたら、“おばちゃん”が「入学おめでとう。そして、ようこそ我が母校に」とに
っこり笑った。 “おばちゃん”の実家はここからすぐだけれど今は隣の県の学校で先生をしてる。
でも、今でもこの学校は“おばちゃん”の学校なんだな。
ゆっくりと県の外れの方まで行き、湖をまわって丘の上に有る公園の横の喫茶店で一休みする。いつ
ものデートコースだ。私はいつものようにココアとアップルパイを、おばさんはコーヒーを飲む。こ
れまたいつものように日々のあれこれをしゃべり続ける。“おばちゃん”は笑いながら相づちを打つ。
帰り道、“おばちゃん”は冗談なのか本気なのか判らない目をして言い出した。「そうね、あなたの
娘があの学校に通うのなら、私も戻ってこようかしら?」
困ったぞ、私の目標は“おばちゃん”みたいな女性になることだ。ひとりでジリツして強く自由に生
きてくことだ。けっこんだってしないゾ、って。 でも“おばちゃん”がこの町に、学校に帰ってく
るんなら、早くけっこんして女の子を生んであげなきゃ!って。 うわー、どうしよう、どうしたら
良いんだろう?
途中で柔道の試合に出ていた弟と応援に駆けつけてたママを拾って(その前にチャイルドシートと制
服をトランクに仕舞って、私は後ろの席におとなしく納まってた)家に送り届け、“おばちゃん”は
帰っていったけれども、私は頭がぐるぐるしてその辺のことはあんまり覚えてない。まぁ明日の朝に
なればそんなのはみんな忘れてるだろう。私はリスだから。
367
:
名無しさん@避難中
:2010/03/18(木) 14:10:02 ID:zART14UA0
あ、すみません、上の366は
>>364
宛です。
368
:
名無しさん@避難中
:2010/03/22(月) 23:33:09 ID:m7atASMAO
世界を創るスレの温泉界にリオが飛ばされたw
369
:
名無しさん@避難中
:2010/03/29(月) 14:49:00 ID:iD.CNZW.0
>>361
の話も気になるけど、
>>326
はどうなったのかなぁ…なんて。
ひっそり楽しみにしてるんだぜ。
370
:
名無しさん@避難中
:2010/03/29(月) 15:43:56 ID:.YDKv./2O
ごめんどっちも俺orz
あぁもうあれもこれもやりたいってどうしようもねえな俺
ランキングのほうは番外編みたいなもので急を要さないんで後回しにしちゃったぜ><
いやいや一段落したら書きます書きますマジで。苦労した集計データもったいないし
待っててとは言いません一旦忘れてください。きっと忘れた頃にやってきますので
371
:
名無しさん@避難中
:2010/03/29(月) 17:59:15 ID:iD.CNZW.0
>>370
同一人物だったとはw
こちらこそ急かしたようですまん。ランキングはいままであまり読んだ事
ないから、楽しみにしつつ影から応援してるぜ!
372
:
名無しさん@避難中
:2010/03/29(月) 18:14:26 ID:.YDKv./2O
ついでと言えば、
>>361
やってこのスレに興味引いてから
>>326
やるって流れが美しいかなーなんて思ったりして…
追い詰められないと動けないタチなんであえて宣言してます。
ああ時間がホスィ
373
:
規制で書き込めないので代理お願いいたします。
:2010/04/05(月) 01:33:27 ID:KYKcQfAA0
垂れ耳を検索してここのまとめサイトに行き着き、
獣人の定義 と言うちょっとした解説っぽい絵を書くくらいの雰囲気と知り、
少し質問させてください。
犬とか豚とかの垂れ耳はどんな構造なのでしょうか?
今まで、アスキーアートで言えば U みたいにただ垂れてるだけかと思ったら、
近所の垂れ耳の犬の置物をふと見たら、垂れ耳の後ろの方は、
膨らんだといいましょうか、ぺたっとしておらず、
そう言えば・・・と思い出したタカラ缶チューハイのCMの猪八戒も、
「垂れ耳の後ろの方がぺたっとしてなかったなー・・・」
と気付き、どうして膨らんでいるのか教えて頂けたらと思います。
その置物、小さくて敷地内で遠いし、正面向いてるもので、
よく見れなかったんです。
よろしくお願い致します。
374
:
名無しさん@避難中
:2010/04/05(月) 20:36:20 ID:gXa3zzr.0
>>373
正確じゃないし、判り難いかもしれませんが…
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1019.jpg
375
:
名無しさん@避難中
:2010/04/05(月) 20:44:29 ID:hwhYnr520
ちょっと犬の耳撮って来る
376
:
名無しさん@避難中
:2010/04/05(月) 20:47:24 ID:0PxiojFUO
やっぱうめえぇwww
解説図に和んだのって初めてだw
377
:
名無しさん@避難中
:2010/04/05(月) 20:50:16 ID:hwhYnr520
と思ったら寝てたぜよ・・・
あそこは
>>374
みたいに重なってるのが一番的を得てると思う
378
:
名無しさん@避難中
:2010/04/05(月) 21:04:31 ID:gXa3zzr.0
ついでにこんな感じかな?ってのを作ってみました。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1020.jpg
379
:
名無しさん@避難中
:2010/04/06(火) 03:54:33 ID:/wW9gcz.0
これはわかりやすいなww
380
:
373
:2010/04/06(火) 07:41:01 ID:R4th8tWg0
寝る前はみれなかったけど、見れた!すげー!
ありがとう。
それではまた後ほど改めて。
381
:
373
:2010/04/07(水) 01:51:42 ID:.lmV4DWw0
工作を見て理解しました。確かにこれだと「後ろが膨らむ」感じになりますね。
短い時間で絵と工作ありがとうございます。こんなに短時間で描けるものなんですね。
ホームページとか作ったり、pixivとかでご活躍してるんでしょうか?
宜しかったらヒントを教えていただけると嬉しいです。
犬とか飼った事なくて「耳って成長しながら伸びるんだ」と感心してしまいました。
あと、この絵を見てどーでもいい疑問が2つわきました。
1つは、工作が一番特徴的かな。唇の輪郭線が自然な曲線になってないのはなぜでしょう?
中程でくいっと曲がってますよね、犬歯とかのせいですか?
あともう1つは、昔から思ってる事なんですが、
動物キャラが眼鏡をかけていると、眼鏡のつるって、いつも省略されますよね。
描けないから省略されるんでしょうか?
つるを上下逆さまにすれば、ちゃんと耳に引っ掛ける事ができると思うのですが・・・。
というか昔のSFドラマの猿の軍団で、猿がそんな眼鏡を掛けてました。
それとも別の理由でもあるんでしょうか?
382
:
名無しさん@避難中
:2010/04/07(水) 02:16:10 ID:339vJ6WcO
思えばサン先生犬じゃ誰よりも耳長っげーもんなw
この解説は面白くてわかりやすくて和む
383
:
名無しさん@避難中
:2010/04/07(水) 21:35:20 ID:2dxbmYZc0
あくまで私の画に限って言いますと、唇のラインは大ざっぱに言って「私の描く際の癖」、
眼鏡のつるに関しては「バランスよく描く能力が無い」ってということになりましょうか。
ttp://u6.getuploader.com/sousaku/download/204/furry428.jpg
それにしても、8時過ぎるとオルタローダが完全に沈黙しますね。
384
:
名無しさん@避難中
:2010/04/08(木) 00:56:49 ID:5XtAWvCcO
眼鏡満ち場www
385
:
名無しさん@避難中
:2010/04/10(土) 00:25:04 ID:uaSLCQ4c0
英先生のお見せできない顔にwww
386
:
373
:2010/04/12(月) 01:23:24 ID:plByjTyQ0
返事が遅くなりました。
くだらない感想にまたもや絵を描いていただきありがとうございました。
おかげでいい耳ができました。
387
:
名無しさん@避難中
:2010/04/12(月) 11:24:22 ID:Wjut4TdYO
気が向いたら絵を投下してみてね!
388
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/13(火) 00:10:36 ID:PqUv2agI0
解除が来ない。短いのでも投下するよお……。
『喫茶・フレンドへいらっしゃい』
とある路地裏の喫茶店。
古いたたずまいは個性のうち。時代遅れとは言わないが、ちょっと趣を感じさせる喫茶店。
誰の口とは言わないが、伝え伝わり広がって、ちょっとばかしケモノたちの住む佳望の街の人気を呼んでいた。
店の名は『喫茶・フレンド』と言う。
甘い声を店内に響かせて、二人の客は年代もののテーブルで向かい合わせに仲良く座る女子二人。
すらりと伸びた二人の脚は、よく磨かれたローファーで飾られる。紺のハイソとスカートからはケモノの毛並みが映える。
彼女らは、佳望学園の女子高生。春を迎えたカーディガンの制服姿は、二人をちょっとオトナに見せる。
ランプの明かりが温かく、椅子をぎししと軋ませながら、喫茶店は二人の女子高生を骨董の世界へと導く。
木目の感触をスカート越しに感じて、リオは恐る恐るメニューを眺めるが、向かい正面の子に笑われる。
「ねえ、リオ。何にする?どっちがいいかなあ!」
「えっと……」
メニューを見ながら決めかねているのは、白いウサギの因幡リオ。
ふだんは真面目な風紀委員、だけど放課後だけはみんなといっしょに寄り道でもと、イヌの芹沢モエとここへ立寄ったのだ。
彼女のカバンはきれいかつ質素に、美しくつやを放っている。飾り気は無いが、優等生。細やかかつ、神経質さがちらと見えるではないか。
椅子に立てかけていたリオのカバンがばたりと床に倒れ、頬を赤らめながら立て直すと、モエの尻尾が目に入る。
どう?見て見て?絶好調でしょ?
女の子は甘ーいものがやって来るとなると、もっと女の子になるんです。
御覧なさい、わたしの尻尾。ウソをつくことはイヤだし、隠すつもりはありません。
モエの尻尾が振り切れて、リオの耳がへし折れていた。メガネにメニューを写しながら、リオはモエの顔色を伺った。
「ご注文はお決まりでしょうか」
人間の女性がメモを片手にリオの横に立つと、モエはメニューの上で動かしていた指を止めて、目を輝かせてメニューを指差す。
「じゃあ!わたしは抹茶アイスね!!」
「はい。かしこまりました」
お姉さんは、モエの威勢の良い声にも臆せずニコリと笑ってメモの上に鉛筆を慣れた手つきで滑らす。
少し焦ったリオは、モエの声に圧倒されてまだ決めても無かった注文をお姉さんに伝えた。
後悔は……無いつもり。
「……わたしも同じのを……」
「だって!お願いね!アリサ姉さん!!」
いいよね?いいんだよね?これ以上、あのお姉さんを困らせても、とリオは短い髪を掻きあげる。
長くまとめられたアリサの髪は、二人の少女の目をずっとひきつけていた。女の子は女性に恋するんですよ?
だって、わたしらは女の子。
389
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/13(火) 00:11:30 ID:PqUv2agI0
「リオも同じのにしたんだ」
「そうすれば、一緒に来るじゃないの」
なるほど。同じメニューなら、手間も同じ。リオの合理的な考えは正しい。
しかしながら、モエはちょっとばかし不満気のようにも見えた。リオはモエの顔を少し不思議そうに見ながら、お冷を口にする。
「ところで聞いてくれる?リオー!うちの弟ったら、わたしの……」
モエは弟のことになると話が長くなる。イヤでも耳に入るモエの話を長い耳で捕まえながら、リオはお冷を口にする。
黙っていれば、そこそこなのに。黙っていれば、結構もてると思うのに。と、リオは黙って相手するしかなったのだ。
「お待たせいたしました」
アリサが注文の品を持って、二人の席にやって来た。いや、正しく言うと注文の品では無い。
その証拠にリオが目を眼鏡越しに丸くしているでは無いか。抗することなく、リオは目の前に置かれた『バニラアイス』を見つめていた。
そして、モエの目の前には『抹茶アイス』。真面目のまー子のリオが見逃すはずが無い。
「お姉さん……」
「いいのいいの。女の子二人組みだからサービス、サービス」
「え」
ふと、正面の少女の顔を見ると、まるで夜空の瞬きのような瞳をしているではないか。
どんな山奥の純な空よりも清らかに、どんな春の星よりも輝かしく光るモエの周りは、リオが今まで見たことが無いものだった。
「リオー!わたしもバニラが食べたくなったなあ!一口ちょうだい」
「う、うん」
遠慮がちにモエはリオのバニラアイスに匙を伸ばし、ほんの一口ご相伴に預かった。
至福の顔、花をちりばめた笑み。モエは甘いものを口にしただけで、口数を減らす。
「おいしい!リオもわたしの抹茶アイスを食べなよ!一口だけだよ!」
「う、うん。ありがとう」
そうか。ちょっとずつお互いに違うアイスを楽しめるように、わざと違うものを持ってきたのか。
モエがしきりにメニューの上で指を動かしていたのは、抹茶かバニラか迷っていたからだったのか。
自分の幼さに恥ずかしくなったリオが振り向くと、アリサの長いポニーテールが揺れているところが目に入った。
結局のところ、一口どころか二人で交互に食べあったので、早い話、バニラと抹茶、半分こずつアイスを頂いてしまった。
ところが、お会計しようと二人がレジへと向かうと、お代はバニラアイス二つ分だけだった。バニラと抹茶アイスを頼んだときより100円少なめだ。
「あの…・・・。お会計が……」
「いいの、いいの。抹茶はおまけだよ」
「……いいんですか?」
「それに、あなたの白い毛並みがバニラアイスみたいで、見とれちゃってね」
アリサはリオの手を見て、にっと白い歯を見せた。リオはバニラアイスのように飾り気は無いが、シンプルな白さを持つウサギ。
なんとなくだが、自分に似ていると言われバニラアイスのことがちょっと好きになった。
また来る約束として、スタンプカードを作ってもらい二人は『喫茶・フレンド』を後にした。
「リオのお陰でおまけしてくれたね!」
あっけらかんとしたモエの声がリオの背中を叩くと同時に、モエのカバンが背中に当る。
甘いバニラと大人しい抹茶のアイスを頂いたモエは、再び弟の話でリオの口を閉ざす。
おしまい。
早く解除が来ますように……。
390
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 00:51:07 ID:Qc44rEUIO
をたうさぎ と ぶらこんいぬ。
この娘らマジカワユス
391
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 02:07:20 ID:A8SEGsBsO
アリサお姉さんいいなあ
フレンド行きたいな
392
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 02:14:54 ID:5fEJncbM0
代理投下いってきまー
393
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 02:16:57 ID:5fEJncbM0
代理おしまい!
女子高生'S萌えるゥ!
394
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 08:38:56 ID:5fEJncbM0
しまった…いつもの調子で投下してきたら代理依頼がなかった事に
気づくorz勝手に投下してきちゃってごめんなさい…うわあああああああ。
395
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/13(火) 13:20:03 ID:aMUJ3BCAO
おっけーですよ、大丈夫。本スレが賑わえば!
こちらも書き忘れたのだおorz
お願いというか、名前欄・鳥の部分はそのままコピペ出来ないと思うので
例えば「◆TC02kfS2Q2」を「◇TC02kfS2Q2」の白抜きき◆にしていただければ幸いです(と、よそのスレで見かけた技)。
代理投下ありがとうございます。
396
:
名無しさん@避難中
:2010/04/13(火) 19:57:23 ID:5fEJncbM0
>鳥の部分
なるほど、了解!
397
:
名無しさん@避難中
:2010/04/21(水) 22:19:58 ID:mOCa4tPY0
ミサミサもリオも月子先輩も、なんかスゲー
398
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:00:27 ID:qOcA2BFE0
規制が長すぐる……。
どなた様か、代理投下お願いいたします。
↓ここからです。
『そらのひかり 泊瀬谷のほし』
佳望学園・天文部部室。
屋上へと通じる階段から脇に外れた最上階の一室。六畳ほどの限られたスペースだが、多くは無い部員のためなら申し分ない広さ。
ただ、スチール製の棚に木製のテーブルが面積の半分を占めて、外の風の香りもせず、どこ誰が見ても『文化系』の部室を印象だった。
卒業生たちが残していった財産を積み重ねると、後輩たちへの期待へと変わる。財産は揺るぎの無い彼らの誇り。
ものがあふれかえることに幸せを感じることが出来る者なら、この空間は非常に心地よい。
しかし、この日に限って部室のスペースを占めている『もの』は、ちょっと困ったものだった。
「芹沢くん、お願い」
「……だって」
「わたしもちょっと……」
ヒツジの女子生徒が目を細めて、天文部の扉を開いて覗き込む。
イヌの男子生徒も同じく目を細めて、天文部の扉を開いて覗き込む。
暖かかくなり、制服も春らしい装いで、彼らはこの季節を待ち望む。しかし、彼らが待ち望んでいるのは春だけではない。
「茜ちゃん、起こしてきてよ。女の子だったら、先生もびっくりしないって」
夜が来る時間も大分遅くなった。天文部のお目当ての星たちも、いつの間にか結構ネボスケになってきた。
芹沢タスクは尻尾を丸めて天文部の部室で、ぐっすりと惰眠を貪る一人の教師を見つめるだけだった。
小さな体を丸くして椅子をベッド代わりに並べ、尻尾をぶらぶらと揺らしながら夜空の夢を見る一人のタヌキ。
これでも、ここ佳望学園の教師であるタヌキは、タヌキ寝入りではなく本当によく寝ていた。
「じゃあ、一緒に声かけようよ。茜ちゃん」
「……うん」
「せーの……」
「「……」」
進まない二人三脚。頬を赤らめるヒツジの夏目茜。
「うーん……。かに座はかわいそうだよー」
勇者に踏まれていいところを見せられなった、哀れなかに座を寝言で慰めてタヌキの教師はそのままぐっすりと夕方の昼寝を続けていた。
そろそろ陽は傾く時間。夕暮れの雲を浮かべて透き通る空気が、今宵も夜空だという予感を刺激する。
「そら先生……。早く起きてください」
天文部の芹沢タスクと夏目茜は、顧問である百武そら先生は星が瞬く夜になると元気いっぱいになることを重々承知だ。
この日も春の大曲線を観測しようと部室にやって来たのだった。しかし、顧問の教師が部室で寝ている。
望遠鏡も、星図も、茜が作ってきたサンドウィッチも準備万端。あとは、夜を待つだけだったのだが、如何せん顧問がアレだ。
タスクが部室側の階段から下の階を覗き込むと、段が織り成すらせん状の渦巻きに吸い込まれそうになった。
「他の先輩たち、来れなくて残念だね」
「……うん」
「そら先生、日中はいろいろ忙しそうだったもんね」
「そうね」
自己主張の弱い二人の優しさは、そら先生の睡眠を妨げないことにした。
そら先生の顔は、大好物である甘いものを食べているときと同じだったからだ。
399
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:01:04 ID:qOcA2BFE0
「のど、渇いたね」
「うん」
「ぼく、飲み物買ってくるけど……茜ちゃんは何がいい?」
「……なんでも」
いちばん困る答えワースト1に入る返答にタスクは目を細め、女の子のリクエストは応じてあげないと、と腰を上げる。
財布の中身を確認すると、うんと頷き、イヌの少年は上履きの軽い音を立てながら階段を下って行き、茜はそら先生の邪魔にならぬよう、
部室へとそっと入り部屋の隅で小さくなって天文学の雑誌を眺めていた。発行はおそよ20年前のもの。
星から見れば、瞬きするくらいの時間だが、茜からすれば生まれる前のこと。そのころから変わらず、天体に思いを馳せる人々。
人は変われど、同じ星を見続けていたんだと、きらめく写真は茜のちいさな思いを鮮やかにする。
「何でもいいが、いちばん困るよ。ウチの姉ちゃんじゃあるまいし」
一人ごとで自分を落ち着かせる癖は、誰にだってあるもの。しかし、一人っきりはやるせない。
校内の自販機コーナーへと飲みものを買いに出かけたタスクは、ふと廊下で一人の男子生徒の背中を見つける。
彼もタスクと同じイヌの少年。毛並みは白く眩しく、尻尾も柔らかく大きい。学年はタスクよりも上だ。
今風と言えば今風だが、落ち着いた風貌と尻尾の動きは同世代の男子と違うものを感じさせる。
そう言えば、前に会ったことがあったっけ……。微かな記憶を胸に、白いイヌの少年に声をかけてみる。
「ヒカルくん!」
「……」
ヒカルと呼ばれた少年は、言葉を出さずにこくりと頷いて、タスクを快く迎え入れた。が、表情はそんなに激しくない。
別に嫌な気分になっているのではないのは、彼の尻尾の動きから見れば一目瞭然だった。
「ヒカルくん。もしかして?」
手に財布を持っているところからすると、ヒカルも同じく買い物に出かけているところだろう。
細かいところに気付く男は、モテモテさんになる第一歩と姉から吹き込まれたタスクは、それを見逃さない。
ヒカルの返事は、タスクが考えているものより幾ばくか簡単なものだった。
「先生からお使い頼まれて」
「へえ。何を買いにですか」
「飲み物」
職員室にて、担任であるネコの泊瀬谷先生に捕まった。雑用を手伝いながら放課後の時間を過ごしていたら、
いつの間にやら誰もいなくなり、生憎ポットのお湯も尽きていたので、小休憩で飲み物を買いに出かけていたのだった。
ご主人さまに忠実な二人のイヌは、共に尻尾を揺らして自販機コーナーへと向かう。
校内・ロビーの一角に据えられた自販機コーナーは、放課後ゆえ閑古鳥が鳴いていた。
逆に、お日さまが休む頃に賑わいを求める方が、間違っていると思うべきだろう。
人がいないせいか二人には、ロビーがいつもよりも広く見える。用も無いけど、ついつい上を見上げる二人。
『羽根がある生徒の皆さん、余り高く飛ばないこと!』と、風紀委員からの張り紙が自販機に張られている。
どこかで見たような、いや、見たことあるけどあんまり知らないような、アニメのキャラが、手書きの吹き出しで紀律を正す。
400
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:01:38 ID:qOcA2BFE0
自販機に明かりは灯っていなかった。しかし、これは節電の為。普通に飲み物を購入するには、なんら変わりは無い。
そう言えば、桜が咲く前よりも『あったかーい』のボタンが減ったような気がする。自販機も衣替えか。
タスクが小銭を自販機に入れて、ボタンを押す。一つ目は自分のもの。オトナに背伸びしたいけれど、ちょっと後戻りして
カフェオレを選択する。ブラックにすればよかったかなと思えども、とき既に遅し。そして、二つ目を買うときに手が止まる。
「……」
茜の分を考えているうちに、しびれを切らした自販機はタスクが入れたコインを吐き出した。
ばつが悪くなったタスクは、ヒカルに自販機の前を譲ると冷たいカフェオレの缶をぎゅっと握る。外は温かくなってきているので心地よい。
ヒカルもタスクと同じくカフェオレのボタンを押したのだが、缶を取り出すと先ほどのタスクのように固まってしまった。
「どうしたんですか」
「先生が『なんでもいい』って言うから」
目を細めたタスクは、同じようなコインが戻る音を耳に響かせていた。
「ヒカルくんって、兄弟がいるんですか」
「いないよ」
ヒカルの返答を聞いたタスクは、じっとヒカルが持つカフェオレの缶を見つめている。
羨ましそうにと言えば正しいが、如何せんその表現は直接過ぎる。ただ、タスクが羨望の眼差しで見つめているものは、カフェオレではない。
「姉ちゃんがいないって、平和な毎日が暮らせていいですね」
高等部のヒカルは、同じ学園の高等部のクラスに通う芹沢モエの顔を浮かべた。
モエはタスクの姉である。同じ血を分けた姉弟なのに、どうしてこうも違うのかヒカルは不思議には思わなかった。
「ヒカルくんって、姉ちゃんと同じクラスでしたよね」
「うん」
きょうもモエはやかましかった。男子生徒の尻尾ランキングと称し、同じ女子生徒であるネコのハルカとウサギのリオらが、
お昼休みのうららかな時間に教室の隅っこに集まり、ノート片手に査定をしているときのこと。
大きな洋犬の血を持つアイリッシュウルフハウンドの封土入潮狼(いしろう)に、ボルゾエの堀添路佐(みちざ)が二人して、
『簡単!炊飯器で作るケーキ100種』と書かれたムック本を捲っていた。他のイヌの生徒よりも長い毛並みを持ちつつ、
丁寧に整えられているために清潔感がある。封土の荒くもオトナの風格漂う毛並み、堀添の鋭くも優しさを感じさせる顔立ち故、
学園内の女子生徒から黄色い声を浴びることほぼ毎日。しかし、彼らはいたってマイペースである。
401
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:02:18 ID:qOcA2BFE0
「封土(ほうど)の控え目さ!堀添の綿花のような華やかさ!他の男子と違って上品だよね!」
「リオー。もしかしてヤツラ狙い系?」
「ち、ちがうもん!ホンのちょっと背が高くて、大人しくて……。アイツらなんかよりも、ごにょごにょ……」
机の荷物掛けに掛けた洋服店の紙袋に入れて隠している『若頭』の同人本を気にしながら、椅子に座って頬を赤らめるリオ。その脇に立つハルカが、
ぽんとリオの肩を叩いていた。隣の机に腰掛けるモエは、脚をぶらせつかせながら携帯をいじっていた。
「ああ!タスクからだ。『今夜は天文部の活動で遅くなるから、よろしく』だって!アイツ、夜は冷えるのに大丈夫かな」
もともと体の弱い弟を案じて、温暖と寒冷を繰り返す季節の夜に外を出歩くことを憂うモエは、眉を吊り上げる。
「じゃあ、モエがタスクくんを迎えにいってあげたら?封土くんと、堀添くんをお供に連れてさ」
「あ、アイツら?そんなことしたら付き合ってるって思われるじゃない!」
モエがあまりにも脚をバタつかせるので、机からぶら下がるリオの紙袋に脚が当る。リオは少し気が気でなかった。
言うまでもなく、封土と堀添を狙うライバルが現れたということではない。
モエの携帯が持ち主のようにやかましく叫ぶ。『ロミオとシンデレラ』の着メールの曲に反応したリオは、モエの携帯を覗き込んだ。
「やっぱり、モエはタスクくん萌えだね?」
「タスクくんを独り占めするなら、お料理をがんばらないと!まずはオムレツからかなあ。今度教えたげる」
「ンモー!リオにハルカったら!」
横目でその光景を見ながら、一人で本を捲っていたヒカルは、タスクの話できょうの出来事を思い出していた。
モエの教室での姿しか知らないヒカルは、家での姿しか知らないタスクを気にして飲みもの代を奢ってやった。
ちなみに、ヒカルの尻尾ランキングは未だ不明である。
「ウチの姉ちゃんって、彼氏いるんですか」
「……」
「いや……。ちょっと、気になって」
あまりにもストレートな、そして純粋なタスクの問いかけにヒカルは口を閉ざし、何も答えないのはタスクに余計な心配をかけてしまうから、
わずかな情報でも言っておこうと一言伝える。確かでは無いかもしれないが、他のクラスの子からの話からすると
確かだと思うほんの一言。だけど、タスクにとっては非常に重要な一言が、小さく響く。
「多分、いないよ。芹沢は」
「多分ですか」
「うん。多分」
「多分かぁ」
タスクは自分の携帯を開き、姉から受け取ったメールを見てみる。
『あまりにも遅くなるようなら、わたしに一報を送ること!』
パチリと携帯をたたむ音を鳴らせて、タスクは俯き加減で誰もいないことをいいことに語りに入る。
タスクのことはモエを通じてよく知っているヒカルだが、普段とは少し違うとヒカルでも感じていた。
また、ヒカルのことはモエを通じてよく知っているタスクだが、普段もきっとこんな感じなのだろうとタスクは感じていた。
「ウチの姉ちゃんの彼氏になるヤツってどんなヤツなんだろうって……。でも、ぼくは姉ちゃんと少なくとも彼氏になるヤツよりかは、
姉ちゃんのことを知ってるし、長く付き合っているから姉ちゃんのことについては、誰にも負けない自信はあるんです」
「……」
「姉ちゃんが喜べば悔しいし、姉ちゃんが悲しめば悲しい。こんな感情持てるのは、世界でぼくぐらいですよ」
「……」
打消しもせず、頷きもしないヒカルは、黙ってタスクを受け止めていた。
俄かにヒカルの尻尾に冷気を感じた。ビクン!!ビクン!!反射で尻尾を丸くする。
402
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:02:50 ID:qOcA2BFE0
「こらー!理由の無い居残りはいけないんだぞお!」
「……」
「ヒカルくんは、先生のお手伝いだから理由はあるよね?」
笑顔でヒカルとタスクを叱る若いネコの教員・泊瀬谷が買ったばかりの缶コーヒーをヒカルの尻尾に当てていた。
泊瀬谷は仕事を終えて帰宅する途中、自販機コーナーに寄ると二人を発見したのであった。
春めく召しものが、泊瀬谷を少なくとも子どものように見せるマジック。
「ヒカルくんが余りにも戻ってくるのが遅いから、自分で買っちゃったね。ごめんね」
きんきんに冷えたカフェオレの缶を握り締めて、泊瀬谷先生は仕事の顔を忘れていた。
茜の分の飲み物をすっかり忘れていたタスクは、頭を掻きながら泊瀬谷のカフェオレを見つめる。
「あの、ぼく。天文部の活動で」
「そうなんだ、百武先生ね。そういえば『春の大三角形が天に現れるまで部室で寝てくるよ』って言ってたっけ」
「そうなんですが……」
タスクとヒカル、そして泊瀬谷はそれぞれ飲み物を持って天文部の部室へ足を向けた。
「雑用はいいんですか」とヒカルは泊瀬谷に尋ねるも「ヒカルくんがあんまり遅いから、終えちゃったよ」とちょっと自慢気。
だけども、本当はヒカルを追いかけたいがために、明日できるからと理由をつけて、後回しにしていたことはナイショの話。
「天文部の活動って、星を見ながら『あの星座は何々の神話で』って話すんでしょ?楽しそうだね」
「冬は寒いですけどね」
夜空とケモノはよく似合う。もしかして、夜空の元ならヒカルと何でもいいから話す口実が出来るんじゃないかと、
泊瀬谷は天文部の活動を羨ましく思っているうちに、茜が待つ天文部部室に三人は到着する。
屋上に近い古びた部屋の扉から茜が角を見せて、タスクの帰りを待っていた。
彼女の様子から見ると、そら先生は未だ夢の中と推測される。
「あ!芹沢くん。こんなの見つけたんだけど」
「なにそれ」
サッカーボールほどの球体に、土台が付いた黒色の物体。段ボール箱に投げ入れられた雑誌に埋もれていたものを、夏目茜が発見したのだ。
物体から電気コードが延びている。少しほこりがかぶっているものの、軽く拭いてやれば、元の姿に簡単に戻るだろう。
ふと、思い出したようにタスクが口火を切る。
「これって、室内用のプラネタリウムだよね」
「そう言えば、部長さんが昔そんなのがあるって言っていたけど……。言っていたっけ……?」
自信なさ気な茜を気遣いながら、タスクは言葉を続ける。
「確か、どこかになくしたって言ってたんだよ。よく見つけたね」
タスクに誉められた茜は、まるで悪いことをしたときのように小さくなった。
誉められれば誰だって嬉しいが、こうも大勢から誉められると、ちょっと茜は萎縮する。
「すごいね!」
しいっと、口の前で指を揃えるヒカルで、泊瀬谷は部屋の中のそら先生のことを把握した。
そして、小さく謝った。
「そうだ。もしかして……これでちょっと」
「なに?ヒカルくん」
子供がいたずらを思いついたような目。ヒカルはそんな目をしていた。
うんうんと、ヒカルの話を聞く三人、そしてヒカル。一つになった気持ちがつぼみをつけた。
ヒカルは化学準備室へと向かうと言い残して、尻尾を揺らしながら階段を降りていった。
残された三人は、ヒカルから言われたようにまだまだ起きないそら先生を起さぬように、音を立てずに準備を始めた。
403
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:03:22 ID:qOcA2BFE0
足音を立てないように、そっと三人は部室に入る。
窓が言うには薄暮の時間だと言う。街が遠く見える丘の上。きょうも一日を癒す夜が来る。
「そおっと、そおっと」
開いているダンボールを一枚の板にして、窓ガラスを塞ぐ。カーテンをかけて薄暗くなってきた光の進入を拒む。
「泊瀬谷先生。確か、暗いところで目が慣れるには、少なくとも15分はかかるんだって……」
「そうなの?」
「そうだね。観測会のときも薄暗いところで、しばらく待っているもんね」
茜は冬の観測会で一緒に凍てつく風を堪えながら、シリウスにうっとりしていたことを思い出した。
暗闇で一緒に目を慣らしながら、タスクと甘い(神話の)お話をしていたことを思い出した。
「持ってきたよ。タイマー」
小声でヒカルが科学準備室から戻ってきた。手には、コードが延びた小さな機械。箱一杯のダイヤルが目立つ。
タイマーをプラネタリウムに繋ぎ、電源をプラグに差し込むと、一同はにっと笑う。
本体のスイッチを入れて準備はOK。LEDが赤く灯り、ダイヤルが差す時間は15分後。それでも、そら先生はすやすやと眠る。
15分間、そら先生はすやすやと眠る……。
あと10分。
まだまだ目が慣れない。しばらく暗闇の中お互いの顔を見合って、目を慣らしながらそら先生の寝顔を覗き込む。まだまだ時間はある。
あと5分。
ヒカルと泊瀬谷の姿が白くぼうっとタスクと茜の目に映り始める。薄暗い中のケモノは、不思議と綺麗に映っていた。
あと3分。
ヒカルの尻尾が隣で据わる泊瀬谷の太腿に触れる。恥ずかしくも、ちょっと幸せそうに泊瀬谷はヒカルを注意する。
あと2分。
まだまだ暗いからと、泊瀬谷はヒカルの指を手探りで摘もうとする。摘めないまま諦める。
あと1分。
そら先生が寝返り打つも、椅子から転がり落ちないという神業を見せる。
あと30秒。
瞬き早くなったタスクは、茜のシャンプーの香りに惑わされる。
あと15秒。
茜が角のリボンを直す。
あと10秒。
いきなり『ロミオとシンデレラ』の着メロが響き渡る。
「いけない!マナーモードに!」
慌てたタスクは携帯を取り出すが、幸い暗闇に目が慣れている状態。
しかし、GOOD NEWS あふたー BAD NEWS。
「う、うーん……。ロミオはペルセウス、シンデレラはアンドロメダだよねー」
ぱぁあっ!!
天井は宙。
星屑がお喋りをはじめ、つられてケモノも目を覚ます。
ほんのひとくち口にすれば、砂糖と光りの味が舌一杯に広がるのだろう。
一粒一粒が狭い部室に広がって、手に取れそうな遥かなる恒星たちが地上のケモノの瞳に焼き付ける。
「うわぁ……」
見てごらん。あれが春の大曲線。天を廻る大きなクマの尻尾から、優しく伸びる曲線の先には一粒の赤い星。
きっと南国の果樹のような刺激的な甘さがするのだろう。うしかい座のアルクトュルスはて夜空をほしいままにしようとするクマの番人だ。
その漢をなだめようと側で微笑むのは、白く輝くおとめ座の星。スピカはきっと母性一杯のミルクの味がするのだろうか。
桜の季節の大きな弓は、言葉失うぼくらを惑わす。
404
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:03:55 ID:qOcA2BFE0
「芹沢くん!夏目さん!今夜はとくにきれいだよ!!最高の夜空を楽しもうね!!」
弓の先にはたぬき座の……、いや。そんな星座、聞いたことが無い。乙女の足元で地上を見下ろすからす座も、見たことが無いと悩んでいた。
たぬき座に並んだ一等星は、どこの星図にも載っていない。ただ、どこの星よりも輝きを放っているようにも見えるのだ。
さっきまで眠りこけていたそら先生。人の創りし明かりだけども、天井の夜空を見上げて諸手を挙げていた。
「あの……先生」
「夏目さん!御覧なさい。うれしいね、うれしいね。あれ?はせやんも?犬上くんも?」
星を枕にしていたそら先生は、薄暗い中で天井の星粒に心奪われている生徒と同僚教師を見つけると、不思議がるどころか
「ようこそ!星たちが奏でる音楽会へ!」と小さな体を震わせながら喜びを表し、一方泊瀬谷は、ヒカルの側に座って
赤らめた頬がそら先生やタスクたちにばれていないか、ちょっと胸を熱くしていた。
さて、そのタスクはと言うと、携帯の明かりで星を消さぬように表に飛び出していた。相手は姉の芹沢モエ。
『遅くなるなら一報を送りなさいって言ったでしょ?今夜は冷えるからね!
きょうはわたし特製のオムレツがタスクを待ってるから、寄り道しないで帰ってらっしゃい!』
女の子スキルは彼氏ができるとレベルアップすると言う。姉の女の子スキルがもしかして知らず知らずのうちに上がっているのではないのかと、
そしてオムレツの出来具合を色々な意味で心配しながら、タスクは姉からのメールを閉じた。
タスクは窓から暗くなりつつ街を見つめて、エプロン姿の姉を思い浮かべる。
天文部部室内では……。
「芹沢くんがいない……よ」
茜の心配そうな声と共に、ヒツジの少女は部室から飛び出す。窓からは瞬き始めた春の星座が、彼女を歓迎していた。
今夜はよい星が見れそうだ。今夜はよい神話が語れそうだ。毎晩出ているはずなのに、この晩だけじっくり見るなんて、なんて贅沢な。
でも、たまには贅沢もいいんだよ。と、そら先生と共に彼らは空を見上げ続けるのだった。
天文部の部室に残された泊瀬谷とヒカルは、まだまだ続く室内の天体ショーに引止められて、言葉を失っているところだ。
「ヒカルくん。あの星、何て名前なんだろう」
「……どれですか」
405
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:04:29 ID:qOcA2BFE0
ヒカルが困る顔を見てみたい。
ヒカルが悩む素振りを見てみた。
ヒカルが星を見上げる姿を見てみたい。
結局は、どんな星でもよかった。泊瀬谷は一際目立つ星を指差して、ヒカルの答えを待っていた。
特に星に関して知識があると言うわけでもないが、ヒカルにどうしても聞いてみたかった。
星を見つめるイヌは、何を思って見上げるのだろう。
手にすることなんかできやしないのに、ましてや天井に映るプラネタリウムだ。
夜は森羅万象、数多のものを生み出す時間だという。
太陽の光で育まれた息吹は、月の静かな明かりで癒される。
目に見えるもの、見えないもの。月の明かりと星の輝きで芽を伸ばし、つぼみを開かせ、月下の花のごとく花咲かす。
花は月の冷たい光に狂い、蔦を伸ばすと、知らず知らずのうちに恥じらいだけの一人のネコに絡みつく。
泊瀬谷は昼間見ているヒカルよりも、夜空の元のヒカルの姿を見て、今までよりも心締め付けられる思いをしていた。
ヒカルがそれに気付いているのかどうかは分からないが、ヒカルの一言が泊瀬谷に絡まる蔦を解く。
「……わかんない」
「そっかあ……。ごめんね」
結局は、どんな星でもよかった。泊瀬谷は星に願いを託して、初めて願いが叶った気がした。
「はせやーん。おとめ座が昇ってるよ!!」
部室の外からそら先生の声が届くと、泊瀬谷は立ち上がりヒカルの手を引いた。
ヒカルの手首の毛並みに泊瀬谷の指が埋まる。
二人は星空を映し出すプラネタリウムをそのままにして、そら先生と天文部部員の待つ日の入りの空へと駆け出した。
「それ!!ヒカルくん!寒いからって、部屋に閉じこもってちゃだめだぞ!」
屋上への階段を駆け上る。澄んだ空気が寒く心地よい。夜空とケモノはよく似合う。
もしかして、夜空の元ならヒカルと何でもいいから話す口実が出来るんじゃないかと、薄暗いことを言い訳に、泊瀬谷はヒカルの指を掴む。
おしまい。
406
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/23(金) 22:05:38 ID:qOcA2BFE0
お借りした主なキャラ。
封土入潮狼(ほうど・いしろう)&堀添路佐(ほりぞえ・みちざ)。
7スレ目・451
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/888.html
夏目茜。
3スレ目・861
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/422.html
もっと活躍していいキャラだと思う!!
投下おしまい。
↑ここまでです。よろしくお願いいたします。
407
:
名無しさん@避難中
:2010/04/24(土) 00:48:20 ID:R3y44l7EO
やばい、これはやばい
商業でもこれだけキュンキュンくるのはなかなか無いよやばいよ
夜空が!春の夜空が広がってる!
408
:
名無しさん@避難中
:2010/04/24(土) 02:38:02 ID:1nEFkU52O
っぐあああぁぁ!死んだ!俺死んだ!
みんなかわいすぎるだろ常考…
やっぱはせやん×ヒカルくんが最強だわ
芹沢姉弟もすげー萌える
409
:
名無しさん@避難中
:2010/04/25(日) 02:12:07 ID:8b4rj27YO
これはすごい
どうしてこうみんなかわいらしいんだ
キュンときたよはせやん
410
:
名無しさん@避難中
:2010/04/25(日) 06:38:20 ID:jj.f272MO
キュン死に必至のスーパーはせやんタイムごちそうさま
411
:
名無しさん@避難中
:2010/04/25(日) 11:27:40 ID:jj.f272MO
ただオロオロしてる茜っちも見逃せぬ
412
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/04/25(日) 16:29:54 ID:raiRMVXs0
本スレに代理投下していただいた方、有難うございます!
しかし、早く規制解除しないのかな……。
413
:
名無しさん@避難中
:2010/04/25(日) 16:43:20 ID:8b4rj27YO
たぶんみんなして規制されてるんだよね
本スレに投下したいなら代行スレに依頼したほうが確実かもしれない
414
:
名無しさん@避難中
:2010/05/04(火) 23:49:48 ID:V0B8BV6k0
本スレか避難所か悩んだけれども、こちらに。
ラジオの人がガイドブックみたいなものを所望していたので、思いついて相関図風なもの
を描き始めたものの思いの外サイズがでかくなってしまい、更には相互のコメントまで手
が回らず、単に画面上にばらまいただけになってしまいました。
なにか、使えるようでしたら…
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1059.jpg
今回初めて描いたひともありますが、描いてないひととかがまだまだいますねぇ。
案外大きい世界だなぁ、けも学って。
415
:
名無しさん@避難中
:2010/05/04(火) 23:54:23 ID:mnALV9L20
これはすげぇww!皆可愛いな!
こんなにいっぱいいたのかぁ、多分俺も全員は把握出来てないな…w
416
:
名無しさん@避難中
:2010/05/05(水) 00:21:38 ID:99BxUt3QO
すげぇw
417
:
名無しさん@避難中
:2010/05/05(水) 22:47:26 ID:99BxUt3QO
チビキャラな獅子宮せんせ可愛い
418
:
名無しさん@避難中
:2010/05/05(水) 23:36:16 ID:pisz8lxY0
なんと!みんな、めんこい!めんこい!
「保健委員の妹(弟)」って……。もしや男の娘だったのか?
水島センセwww せめて作務衣着せてやってくれよwww
419
:
名無しさん@避難中
:2010/05/06(木) 01:48:05 ID:EvEe4iFI0
sugeeeeee!!
眺めてると顔がにやけてくる。みんなかわいいなー
こんだけキャラいてもさっぱり被らないってのがまたスゲーな
きっちり描きわける氏の画力もハンパない
420
:
名無しさん@避難中
:2010/05/06(木) 20:34:22 ID:uUr4FtvM0
こうやって実際に絵で見ると、ケモ学のキャラって本当に多いんだなって実感できるなー
421
:
名無しさん@避難中
:2010/05/06(木) 22:57:22 ID:w/oXKMKM0
楽しんでいただけたようで嬉しいです。 UPしてから見直したらまだ50にん位描いて
ないひとが残ってました。 それこそ今注目の喫茶フレンドのアリサさんとか。
ところで、フレンドのマスターの種族って…?
あの画を印刷して、鉛筆で囲ったり繋いだり矢印描いたりハートつけてみたりすると、思
いの外楽しくて、時間があっという間です。 そのうち機会が有れば残りも描いてみたい
と思いますです。
#チラ裏
集英社マーガレットコミックの「デカ☆うさ」(はまさきちい著)はこのスレ住人的に
は如何でしょうか? 独り暮らし大学生男子の元に、体長2mの人語を解するミニうさ
ぎがやって来るって話なんですけど(笑)
422
:
名無しさん@避難中
:2010/05/07(金) 00:52:03 ID:qYUhY1K60
>体長2mの人語を解するミニうさぎ
ミニとちゃう、それ全然ミニとちゃうw
423
:
名無しさん@避難中
:2010/05/07(金) 07:52:22 ID:FT2kH08cO
>体長2mのミニウサギ
「小さな巨人」みたいなものですね。
藤子F不二雄の「ヒョンヒョロ」を思い出した。
424
:
名無しさん@避難中
:2010/05/07(金) 11:55:43 ID:/oDM5tjIO
>>414
種族の違いがあるってのはすごい利点だなとつくづく思った
キャラがこれだけいるのに被らない
425
:
名無しさん@避難中
:2010/05/08(土) 01:27:11 ID:Q0xWNZ.U0
>>424
おバカキャラ一つ取っても三つ有るもんな
・塚本=下品バカ
・利里=純粋バカ
・甲山=完全バカ
426
:
名無しさん@避難中
:2010/05/08(土) 12:32:00 ID:Ua1fPhgUO
バカはバカでも担う役割が違うバカなんだね。
バカだからってバカにできないバカだぜほんと。
つーかこいつらは種族で個性出さなくても個性的w
427
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:05:32 ID:hvdRUvLI0
規制が長い……。
本当は「レス代行スレ」の方がいいのかもしれないが、順番待ちっぽいのでここで投下します。
以下、どなたか代理投下お願いいたします。
>>392
初めてここで「佳望学園」ものを投下したときのイメージぴったりだ。
ちょうど電車を登場させるSSを書き終えたところでした。
烏丸さんをお借りします。
『太陽とケモノ』
びっくりした。
休みの日の昼下がり、図書館帰りの昼下がり。誰も通りかからない、ウチへの近道の細い路地。
たまたますれ違った、見知らぬイヌの男子の二人組み。尻尾がちょっと触れただけなのに、怖い顔して振り向いてきた。
「尻尾ぶつけといて、謝らないわけ?」
「……ごめんなさい」
「はあ?それだけで済むわけ?」
鈍く光る牙、濁った目。小さな子が目を合わせれば、泣き出してしまいそうな面構え。
二人とも目元の傷を隠さず誇りにする姿は、精悍と言えば聞こえがよいが、結局は柄が悪い。
謝れと言うから謝ったのに、言葉は通じても話しが通じないもどかしさ。目を合わせると、余計なことになりそうなのでわざと俯く。
早く帰って借りてきた本を読みたい。出来ることなら面倒なことは避けたいけれど、逃げ出すのは『片耳ジョン』の言葉に背くんだろう。
修羅場を潜り抜け、生きる勇気を諭す彼は、本の中だけでなくとも、ぼくに語り駆けてくる勇敢なオオカミ。
彼が語るには……、
「少年とは、困難が立ちはだかれば立ちはだかるほど喜ぶものさ」
しかし、困った。
「あぁ?突っ立てないで答えないわけ?」
「尻尾痛いわけ?」
彼奴の右手がぼくのカーディガンを掴みかけると、小さな風がぼくの目の前を駆け抜ける。
白く大きな尻尾がピンと上げて、ぼくは後ろに跳んで退く。本能的に右手でぼくの顔を庇う。
面倒なことに巻き込まれそうだと諦めかけたのだが、彼らと目が合うと事態が思わぬ方へと急転する。
「ちょっと待て。やばいぞ」
「あ?……まじ?ウチの高校の?」
「おう。アイツだよな」
「ここでシメてたら、狗尾高マジでやばくなるわけだよな?」
狗尾高。聞いたことはある。でも所詮、聞いたことがあるだけだ。彼らが何を意味して話しているのか分からないが、
とにかくヤツらは、目を見てぼくを『アイツ』だと勘違いしている。すると、尻尾を巻いてどこかへ消えて行った。
あっけに取られたぼくが彼らの背中を見つめていると、聞き覚えのある声がぼくの背中を叩く。
毎日聞いているような、明日も聞くような。若い女性の声だったのは間違いない。
「こ、こらー!!ケンカはいけないんだぞー」
一人のネコが立っていた。ぼくが教壇で見るような姿をしてはいないが、確かにあれは泊瀬谷先生。
ぼくのクラスの担任で、現国の泊瀬谷先生はネコの若い女教師。短い髪が印象的だ。
泊瀬谷先生はトートバッグをブンブン振って、尻尾を膨らませながら路地に向かって叫んでいたが、
縮こまった両肩と、頼りなくアスファルトに踏ん張る足元が先生の勇気を中和していた。
それ故、泊瀬谷先生は、ぼくの方に近づこうとせず、今だにぶらぶらとトートバッグを振っているだけ。
しかし、ぼくの方から先生に近づくと小首を傾げて、泊瀬谷先生が忘れかけていた少女の頃を思い出しているよう。
「ほ、ほら!先生のおかげでヒカルくんも助かったでしょ?」
「……」
「えへへ。怖かったんだ?先生がケーキでも奢ってあげるから、落ち着いて」
本当はヤツらの方から逃げていった。ホントのことを伝えるよりも、そのままにしておく方が幸せなのかもしれない。
大人びた真実は、オトナを傷付けてしまうかもしれないから、ぼくは黙って泊瀬谷先生について行くことにした。
428
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:06:22 ID:hvdRUvLI0
ぼくよりちょっと年上の泊瀬谷先生が、子どものように見えてくる。
淡い色のスーツを着こなして、胸元にはカメオで留めたリボン。歩道を鳴らすパンプスは、先生自身を背伸びさせている。
短い髪が初夏の風に揺れて、ネコでなくてもまどろみを誘う心地よさ。「こっちだよ」と、先頭を切るぼくのセンセイは、太陽よりも明るかった。
歩き慣れた大通りを歩く。路面電車が街の風を掻き乱す。クロネコの紳士の毛並みがなびく。
街の一場面を一瞬の風景画にして、泊瀬谷先生は大通りから外れた路地に入ると、ニコリ。
「ここだよ」
若いビルとビルの間にひっそりとたたずみ、老人のように街を見てきた一軒の喫茶店。
軒先からぶら下がる、古びた看板のかすれた文字が、店の年輪を刻む。
都心の喧騒を嫌ってか、切り取られた時間がそのあたりには漂っていた。
「喫茶・フレンド……」
「この間、学校の帰りに見つけたんだよ。入ろっ」
扉を泊瀬谷先生が開くと、鐘の音と若い女の人がぼくらを出迎えた。
ランプのともしび温かく、媚びない家具が心地よい。
店の主人と、若い娘。客はぼくらの他はいない。コーヒーの香りがぼくらを嫉妬する。
エプロン姿の若い店員さんは、長い髪を一つにくくってテキパキと仕事をこなしていた。
じっとよく働く彼女を見つめていると、椅子に座った泊瀬谷先生から「こらっ」といたずらっ子ぽく注意された。
にこりと微笑んで店員さんは、くくった髪を揺らしながらぼくらの席へ注文を取りにやってくる。
「いらっしゃいませ」
「……」
「ご注文はお決まりでしょうか」
「バニラアイスを二つね!アリサちゃん」
メニューを見ずに泊瀬谷先生は、お姉さんに注文を告げる姿は、お得意さま。
「かしこまりました」と、小さなクリップボードに注文をさらりと書くと、踵を返して長い髪を揺らしていた。
そうだ、もしかして泊瀬谷先生なら「狗尾高」のことをちょっとでも知っているかもしれない。
ぼくが「狗尾高」について、どうやって話を切り出そうかと考えていると、短い髪を頬にかけて泊瀬谷先生は、
もじもじと目を合わせることがいけないことの様に、テーブルに目線を落としてぼくに静かに話し出した。
「実はね……。おととい、実家から電話があってね、たまにはウチに帰って来いって言われてね」
「……」
「ヒカルくんにこんなこと話すのもなんなんだけど、家に帰ると……親から怒られちゃうんじゃないかなって」
尻尾の動きからすると、先生はウソをついていない。それよりも、ウソがつけない先生のこと。
「こんなことヒカルくんに話してもしょうがないよね。へへ」
「……」
先生の実家は、ぼくらの住む街から電車に揺られることちょっと。都会でもなく、田舎でもない郊外の町だという。
帰ろうと思えば、すぐに帰ることができるのだが、始めの一歩が重過ぎる。さらに重くなった足は、人を愚痴らせる。
自由気ままに生きているようでも、一抹の苦労を背負っていることに、泊瀬谷先生から読み取ることが出来るのだ。
429
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:07:07 ID:hvdRUvLI0
「どうしよっかなあ。親が待ってるしなあ」
「お待たせいたしました。バニラアイスです」
トレーに乗ったバニラアイスは、温かくなり始めたこの季節がいちばん美味しく感じると泊瀬谷先生は言う。
小さな音を木のテーブルに響かせて、懐かしい半球を器の上で描くバニラアイス。ウエハース突き刺り、泊瀬谷先生は歓喜の声。
アイスはオトナを子どもに引き戻す力があるんだと、他の誰かに言ったらきっと信じてくれるような、くれないような。
「おいしそうだね」
「はい」
スプーンが器に当たる金属音は、いただきますのごあいさつ。
ほんのちょっと、先生のゆううつを忘れさせることが出来るのなら、無邪気な姿をぼくに晒してもかまいませんよ。
しかし、ぼくはバカなことに先生の頬を緩ませる顔に連れられて、聞こうと思っていた「狗尾高」について聞き忘れた。
―――翌日の朝、学園のホールには人だかりが出来ていた。生徒たちは皆、刷りたての学園新聞を手に話しの種にしている。
女子は甘味店の紹介記事に、男子はクラスのヒロインの写真に、教師は委員会だよりにと人それぞれ興味を抱く。
だが、ぼくが目を止めてしまったのは他でもない『野球部・狗尾高との練習試合、ファインプレイ』の記事であったのだ。
昼休み、ぼくはいつも行き慣れた図書館ではなく、新聞部の部室に足を向けた。
ここなら何らかの情報が手に入るかもしれないと、学園新聞を片手に期待を抱き、不安を背中に扉を叩く。
「どうぞ」と部屋からの返事が、ぼくを迎え入れる。ゆっくりと扉を開けるとカメラのレンズの埃を取っている一羽のカラス少女と、
PC画面に向かってコントローラーを両手で握りながら、一喜一憂という言葉に振り回されるネコ少女がいた。
「あの、高等部の犬上といいます……」
「ああ、もしやあんさん、ヒカルはんなぁ?あんさんの噂は、おなか一杯聞いとりますわ。部長の烏丸どす」
カラスの少女は手を止めて、聞きなれない訛りでぼくをのほほんと見つめていた。
あまり話しをしたことが無いのに、彼女はぼくの名前を知っている。やはり新聞部の情報収集能力の賜物か。
烏丸は手を止めると、備え付けの冷蔵庫から「生八つ橋」を取り出して、殆ど初対面であるぼくに勧めてきた。
ひんやりとした生地が熱いお茶と愛称がよさそうだ。けっして目立つ色彩ではないが、見ていると心和むこの国のお菓子。
カラスは後姿をぼくに向けて、手際よくジャーポットから急須にお湯を注いでいた。
「うっひょー!さすが中ボスだよねー」
一方、ネコの少女は、PCのゲームに夢中だった。花火のような砲撃を放ちながら、深い森の上空を駆け抜ける一人の魔法使い。
相手が仕掛けてくる攻撃をまるで楽しむように、少女はコントローラーで魔法使いをひたすら操る。
騒がしい彼女を気にせずに、烏丸は緑茶を注いだ湯飲みをぼくの目の前に置いた。コトンと使い込まれた机が音を立てる。
「ところで、ヒカルはん。何か御用で?おや、早速最新号を読んでくれはったんやな」
「その……。この記事についてなんだけど」
「『野球部・狗尾高との練習試合、ファインプレイ』かいな。それはウチが低空飛行ギリギリで撮った写真どすえ。よう撮れとるやろ。
そうや。この間、狗尾高のチンピラどもにドつかれそうになっとたやろ?ヒカルはん、大丈夫かいな」
「……もう情報が。大丈夫、ケガはなかったです」
「うぎゃあああ!満身創痍!!」
静かにぼくが話し始めると、ネコの少女は寂しい画面にへばり付きながら、うるさくわめき出した。
430
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:07:49 ID:hvdRUvLI0
私立狗尾高等学校。佳望の街から電車に揺られること一時間ほど離れた海岸に構える男子校。
運動部が盛んで、特に野球部の功績は数え切れないほど。そして、いちばんの特色は。
「狗尾高言うたら、イヌの生徒ばっかりのとこですわな」
烏丸の言葉で、ぴくんとぼくの尻尾がはねる。にっとほくそえむ烏丸の瞳は、鳥類独特の円らなものと、
新聞部としての獲物を追う眼光の鋭さが同居して、彼女独特の色身を帯びていた。
「うちの取材によると、佳望学園・野球部との練習試合ではうちの学校は完敗やったそうでな。
なんでも、スゴ腕のピッチャーがおる言う噂ですわ。そして、そのピッチャー言うのがな……」
「犬上先輩っ。犬上先輩って言うんですね!ご紹介遅れました。わたし新聞部所属・中等部の美作更紗ですっ!
うわああ、真っ白でふわふわの尻尾……イヌ族の尻尾は激萌えです!うらやましいですう!!」
「美作はん、黙っとき!」
ゲームに飽きたのか、さっきまでPC画面に心奪われていたネコの少女は、くるりとぼくの方へと椅子に座ったまま回転した。
短く揃えられた髪、少しぶかぶかのカーディガン、オトナに憧れた紺色のハイソックスとスカートの間が白く光る。
美作と呼ばれたネコ少女は、ぼくの尻尾をにまにまと眺めた後に、妹のように上目遣いでぼくの顔を凝視する。
「これはなかなかなの人材ですぞ!因幡お姉さまにお知らせしなければ!キリッ」
人材?
「白い毛並み!豊かに実るたわわな尻尾!誇り高きイヌ耳!わたくし美作更紗は、犬上先輩に出会えて感激でございますう!」
美作と名乗る少女は、椅子に座ったままキャスターで移動して、本棚から薄っぺらなマンガ本を引っ張り出して
自慢げに見せびらかす。尻尾を立てて目を細める美作は、オトナっぽく決めた紺色のハイソックスを履きこなしても、
ばたばたとさせて落ち着きの無い子どもに逆戻り。烏丸が整理棚を探っているのを背景に、美作はぼくを舐めるように上目遣いで見つめ上げる。
「どんなコスが似合うかなあ。ねえ!い・ぬ・が・み・先輩!」
「コス?なにそれ」
「もっふもふの尻尾を生かして、「ぎんぎつね」の『銀太郎さま』もいいなあ。王道で烏丸部長と組んで『椛・文の……』」
何かの名前を言い切れないまま、烏丸からキャスター椅子を押されて美作はぼくの視界から消えていった。
PCの主導権を烏丸が掌握する。画面は素っ気無いブルーのデスクトップに戻して、棚から取り出したCD-ROMをセットする。
唸り声を上げたPCは、部屋の主人である烏丸には従順であり、抗することなく画像ファイルを開いてくれた。
使い慣れた光学式のマウスを滑らせて、マイ・ピクチャのファイルに並んだ画像の整列には、狗尾高校の野球部員たちが
青い海を背景に球を投げ、バットを振り、自分の毛並みが汚れることを臆することなくホームに滑り込む姿が写っていた。
しかし、烏丸が見せたかったのは、そういうどこにでもある青春のいちページではない。
そんなものなら、オトナたちからの昔話で聞き飽きた。
431
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:08:48 ID:hvdRUvLI0
「ほら、見てみ」
「……そっくり」
初めてだ。
ぼくにそっくりなヤツを見るのは初めてだ。
烏丸が取材のためにこっそり写した野球部員たちの休憩時間。その中の一枚に写る白いイヌの少年。
確かに、彼は狗尾高のユニフォームを身に包み、野球帽から白い髪をはみ出していた。
地面に付きそうな長くてたわわな尻尾が、ブルペンのマウンドに突き刺さりそうだ。
ぼくと同じく真っ白い毛並みで包まれた彼は、まぎれもなくぼくらの野球部を破った、狗尾高のピッチャーであった。
「どうどすえ?興味湧いた?」
「……」
言葉にせずにぼくは烏丸の言葉を肯定すると、せっせと烏丸は毛繕いをしていた。
「すまんのう。うちら鳥はなあ、毛繕いを怠ると空を飛べんさかいな」
「わたしも犬上先輩の尻尾の毛繕いをしたいですう!」
「美作はん、黙っとき!」
烏丸曰く「休みの日の正午に狗尾高に行くと、犬上はんならわかることがある」らしいが、これ以上、烏丸は口を挟まなかった。
「ありがとう」と一礼をして、美作更紗が少しうるさかった新聞部をあとにする。
教室に戻る途中、一人のウサギの少女が廊下でそわそわとしていた。その名は、我らが風紀委員長・因幡リオ。
ボブショートの髪の毛は清潔感に溢れ、理知的なメタルのメガネは正義感が満ちている……、と思う。
「あ!犬上!あんた、新聞部に行った?見たんだよ!あんたが文化部の部室の方へ歩いていく所!」
「行ったけど、何か?」
「そこにさぁ。ちっちゃくて、短い髪のネコの女の子……居たよね?」
ぼくが「うん」と答えたのがいけなかったのか、彼女はポンと手を額に当てて、真っ白な上靴で廊下を慣らす。
「むあああ!新聞部に『委員会だより』の原稿渡さなきゃいけないのになあ。あのさ……犬上。代わりにね、原稿、持ってってくれない?」
「なんで?」
「なんでもないの!!なんでもないんだから」
因幡が力を込めれば込めるほど、ぼくの背中に感じる氷よりも冷たい風。
一方、ぼくの真向かいで因幡は、じりじりとぼくの方から後ずさりをしている。
殺気は本気に変わり、本気は因幡を危機に陥れる。「時間を取らせてゴメン!」と言うものの、ぼくにはどうでもいいことだ。
「ああ!因幡お姉さまぁーーーあ!わたしはどんなキャラにも対応できるように、髪の毛を切ってきたんですよ!!
そうそう!わたし、おこずかいを溜めてやっと手に入れたんですよ!あの制服!因幡お姉さまには『くろこ』、わたしが『みこと』のコスで……」
先ほど新聞部の部室で大騒ぎをしていた美作更紗がすっ飛んで来た。しかし、因幡が目を泳がせる理由と、美作が言っている意味が良く分からない。
「はいはい!分かったから、徹夜で書いてきた『委員会だより』の原稿、渡してあげるから、とっとと新聞部に行こうね」
「ままま!まって!犬上先輩!これ、烏丸先輩からの……やだー!犬上先輩っ」
頬を赤らめる美作は、ぼくに和紙で包まれた封筒を両手で差し出した。毛筆で達筆な烏丸の名が麗しい。
封書を受け取ると、何故か因幡から足を軽く蹴られた。
432
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:09:18 ID:hvdRUvLI0
―――休みの日の午前。処は古浜海岸駅のホームにて。
街の中心部からやや離れた古い木造建築の駅舎のターミナル。時代に取り残された電車が、櫛形のホームで体を休める。
中心の駅とは違って、賑やかさは無いが、高校生のぼくにでもどこか懐かしさを感じる。
元々線路が敷かれていた場所なのか、ぽっかりと不自然に空いた敷地から雑草が生える。遠くの目地へと単線の線路が伸びていた。
閑散としているホームも休日を楽しみたいのか、のんびりとした時間が流れていた。駅員は見るからに暇そうだ。
電車も発車のベルを待ちぼうけ。郊外行きの小さな電車は、わずかな乗客と共に青空を仰ぐ。
天井からは夏を告げるデパートの広告と、カバーを被された扇風機が近い出番を待って釣り下がる。
廃材になるはずだったレールを使った柱は、多くを語ることは無いが、少なからず街の歴史を知っている。
ぼくは街のことをこの柱ほど知らない。若い駅員は、念には念を入れて指差し確認を繰り返していた。
そして、ぼくは烏丸から手渡された一通の封筒を読みかけの文庫本に挟んで、繰り返して見つめていた。
「あれ?ヒカルくん」
「……泊瀬谷先生」
この間言っていた。「今度の休みに実家に帰ろうかどうか」と。
迷った挙句、帰省することにした泊瀬谷先生。イヤイヤながらも、ちょっとは楽しみにしている顔は隠せない。
遅れてきた春の日差しのような白いスカートに、乙女心をくすぐるパンプス、そして、いつものトートバッグは外せない。
「ヒカルくんもこの電車?」
「……はい。狗尾高校に行ってみようと思いまして」
「どうして」
「なんとなく」
学園のとき以上の笑顔で泊瀬谷先生は電車に乗り込み、ぼくもあとに続く。
横一列のシートは暇そうにぼくらを迎え入れた。
「こっち側に座ると、海が見えるよ」
尻尾を先生と反対の方向に向けて、ぼくは少女のようなオトナのネコの隣に座った。
ただ、ぼくには泊瀬谷先生との座席の隙間を詰める勇気はなかった。そっと文庫本を仕舞う。
休日だからとは言え、乗客が少なすぎる。心配する筋合いはないが、ぼくらの他にいる客といえば小さな子どもを連れた
ヒツジの母子と他数名。ぼくらを乗せて、ゴトゴトと単線を走りながら揺れる電車は、ひと息付こうと次の駅に止まるも、
乗客には動きがなかった。遠慮がちに閉まる扉を見つめる以外に出来ることは、隣で座っている泊瀬谷先生の横顔を一瞥すること。
「気付いてくれたかな。お休みの日だから、思い切ってシャンプー変えてみたんだよ」
頭を垂れる泊瀬谷先生の髪の毛が、開いた扉から吹き込む風で揺れる。クラスの女子たちよりも、瑞々しくも甘い香り。
電車が発車する為に扉が閉まると、泊瀬谷先生の髪の毛の香りは一旦落ち着くが、ぼくの鼻をくすぐる香りは忘れられない。
床下のモーター音が低く唸り、電車がカーブをゆっくりと通過すると、つり革が揃って揺れる。
座ることを遠慮して立っている若いオオカミの男性の尻尾も同じように揺れる。
あんまり電車が張り切るので、ソイツは座席に座っているぼくらの背中を、背もたれ越しに押してくる。
433
:
太陽とケモノ
◆TC02kfS2Q2
:2010/05/10(月) 22:09:48 ID:hvdRUvLI0
いつしか電車の中に居たヒツジの親子は下車し、オオカミの弾性もいない。気が付くと車両はぼくらだけになっていた。
どのくらい電車は走っていったのだろう。どのくらい人々が乗り降りしたのだろう。
そして、どのくらい隣に座る先生はぼくに何かを話しかけたかったと思ったのだろう。
悔やんでも、悔やんでも、いくら尻尾を膨らませても、電車はぼくらを下車する駅へと運び続ける。
「佳望電をご利用いただきまして、有難うございます……。この電車は……」
ときおり入る車内アナウンスに助けられ沈黙から逃れていると、ぼくらの顔が反射していただけの車窓に海が写り込む。
初夏の海は新しい季節を迎えることに必死で、すっかり春の景色を忘れてしまっているのが非常に印象的な海岸線。
こっちの席に座ってよかった。誰もいないのをいいことに、泊瀬谷先生の手の甲がぼくの手の甲に当たる。
「先生も、この海を見ながら毎日学校に行っていたんだよ」
やっと口を開いた泊瀬谷先生は、ぼくと話すことを避ける素振りを見せていた。
だけど、ぼくは授業のときではない先生の声が、好きだ。
出来ることなら、泊瀬谷先生から「先生」を奪い取ってしまいたい。
「先生」という肩書きを失った泊瀬谷先生は、きっと迷いネコになってしまうんだろう。
しかしぼくは、迷いネコを放っておこうと悪しき考えを浮かべたり、独り占めしてしまおうと思ったりはけっしてしない。
なぜなら、ぼくも迷いイヌ。道に迷ったお巡りさん、迷子の子ネコに聞いても困るだけ。泣いてばかりのお巡りさん。
どうしていいのか分からない。何していいのか分からない。誰に尋ねればいいのか、まったく見当がつかない。
それでも側にいてくれて「これからどうしようかな」とまぬけだけれども、一緒に同じ目線で道を探したい。
教えてもらうんじゃなくって、いっしょに「せんせい」と歩いてみたい。
だけど、誰もこんな感情は分かってくれないんだろう。そんなことは心得てるけど。
車窓近くの立木は物凄いスピードですっとんで行き、遠くに湛える湾の波はゆっくりと流れ、遥か彼方の白い雲はのんびりと浮かんでいた。
ふと、泊瀬谷先生を見てみると、トートバッグをぼくの方ではなく、反対側の肩に掛けているのに気付いた。
泊瀬谷先生の横顔は、授業では余り見せることはない。というより、見せる機会はない。
ぼくが横顔に見入っている間に、先生がぼくの方を向いてしまったらと思うと、言葉にならないほど恥ずかしい。
幸いなことに、泊瀬谷先生は俯き加減で小さな声で話し出した。
「もうすぐ、狗尾に着くね……」
電車の速度が緩むことに比例して、先生と同じ席に座ることができなくなるという、間違った思い。
ブレーキ音が軋みつつ電車が止まる準備を始めると、ぼくは隣で頬を赤らめる小さなオトナの肩が触れた。
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