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獣人総合スレ 避難所

428太陽とケモノ ◆TC02kfS2Q2:2010/05/10(月) 22:06:22 ID:hvdRUvLI0
ぼくよりちょっと年上の泊瀬谷先生が、子どものように見えてくる。
淡い色のスーツを着こなして、胸元にはカメオで留めたリボン。歩道を鳴らすパンプスは、先生自身を背伸びさせている。
短い髪が初夏の風に揺れて、ネコでなくてもまどろみを誘う心地よさ。「こっちだよ」と、先頭を切るぼくのセンセイは、太陽よりも明るかった。

歩き慣れた大通りを歩く。路面電車が街の風を掻き乱す。クロネコの紳士の毛並みがなびく。
街の一場面を一瞬の風景画にして、泊瀬谷先生は大通りから外れた路地に入ると、ニコリ。
「ここだよ」
若いビルとビルの間にひっそりとたたずみ、老人のように街を見てきた一軒の喫茶店。
軒先からぶら下がる、古びた看板のかすれた文字が、店の年輪を刻む。
都心の喧騒を嫌ってか、切り取られた時間がそのあたりには漂っていた。
「喫茶・フレンド……」
「この間、学校の帰りに見つけたんだよ。入ろっ」
扉を泊瀬谷先生が開くと、鐘の音と若い女の人がぼくらを出迎えた。

ランプのともしび温かく、媚びない家具が心地よい。
店の主人と、若い娘。客はぼくらの他はいない。コーヒーの香りがぼくらを嫉妬する。
エプロン姿の若い店員さんは、長い髪を一つにくくってテキパキと仕事をこなしていた。
じっとよく働く彼女を見つめていると、椅子に座った泊瀬谷先生から「こらっ」といたずらっ子ぽく注意された。
にこりと微笑んで店員さんは、くくった髪を揺らしながらぼくらの席へ注文を取りにやってくる。
「いらっしゃいませ」
「……」
「ご注文はお決まりでしょうか」
「バニラアイスを二つね!アリサちゃん」

メニューを見ずに泊瀬谷先生は、お姉さんに注文を告げる姿は、お得意さま。
「かしこまりました」と、小さなクリップボードに注文をさらりと書くと、踵を返して長い髪を揺らしていた。
そうだ、もしかして泊瀬谷先生なら「狗尾高」のことをちょっとでも知っているかもしれない。
ぼくが「狗尾高」について、どうやって話を切り出そうかと考えていると、短い髪を頬にかけて泊瀬谷先生は、
もじもじと目を合わせることがいけないことの様に、テーブルに目線を落としてぼくに静かに話し出した。

「実はね……。おととい、実家から電話があってね、たまにはウチに帰って来いって言われてね」
「……」
「ヒカルくんにこんなこと話すのもなんなんだけど、家に帰ると……親から怒られちゃうんじゃないかなって」
尻尾の動きからすると、先生はウソをついていない。それよりも、ウソがつけない先生のこと。
「こんなことヒカルくんに話してもしょうがないよね。へへ」
「……」
先生の実家は、ぼくらの住む街から電車に揺られることちょっと。都会でもなく、田舎でもない郊外の町だという。
帰ろうと思えば、すぐに帰ることができるのだが、始めの一歩が重過ぎる。さらに重くなった足は、人を愚痴らせる。
自由気ままに生きているようでも、一抹の苦労を背負っていることに、泊瀬谷先生から読み取ることが出来るのだ。


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