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獣人総合スレ 避難所

3352月22日のごめんなさい ◆TC02kfS2Q2:2010/02/21(日) 22:06:12 ID:WPHKKZGo0
「本屋さん、ですかニャ……。入ってみるかニャ!こんにちはニャー!!」
ガラス戸の入り口が、子ネコの力でもぎこちなく開く。店内は薄暗く、入り口にカギが掛かっていないことだけで、
一応は商いを営まれていることが確認できる。ただ、乱雑に積まれた本でコレッタが一人通れるだけになっている通路は、
およそ客という客を歓迎する光景には、程遠いものであった。コレッタの目には、本棚が初めて来る街の建物に見えた。
知らない街は、心細い。知らない街は、冷たい。誰でもいいからいっしょに歩いてちょうだいニャ。
でもね、脚が凍えていつものように元気良く歩くことが、コレッタになかなかできませんニャ。

「誰かいますかニャー」
狭い通路のどん詰まりには、子どもの背丈ほどある大時計。正確に時を刻み続ける姿にコレッタが見入ると、
女の子に見つめられるのが恥ずかしがったのか、大時計は自分の鐘を鳴らしながら照れ笑いを始めた。
その音につられて、店の奥から本が崩れた音が、雨に晒されたコレッタのネコミミに聞こえた。

「ニャー!!!!!ニャああああ」
「誰だい?お客さんかね?返事しやがれ」
息ぴったりに大時計の鐘が鳴り終わると、しゃがれた老人の声が再びコレッタのネコミミに響く。

―――ミケと別れた意気消沈のクロは、小石を蹴りながら自宅まで帰っていくしかなかった。
お母さんに買ってもらった小さな自慢のブーツも、今は小石の小さな音を鳴らすだけ。
「どうして、コレッタとケンカしちゃったのかニャ」
クロの頭の中で、おまじないのように何度も何度も繰り返すセリフは、クロを解き放つことは無い。
本当は、こんなこと言いたくないだ。だけど、言っておかないと落ち着かないぞ。だって、わたしは女の子。
期待して振り返ってみても、当然コレッタの姿が見当たることはなかった。曇りだけだった空からは、余計な雨粒まで持ってきた。
そんなものいらないニャ。コレッタさえ来てくれれば、一言……クロも。クロは、雨がいっそう嫌いになった。
「いけない!早く帰えらないと、ずぶぬれニャ!!お姉ちゃんに怒られニャ!」
雨にからかわれたクロは、これ以上は勘弁ニャと小石をあきらめて、尻尾を立てて足早に自宅に戻る。

短いお子さまスカートを翻し、トタン屋根を雨音で鳴らす住宅街をクロは、冷たい空気を切って疾走する。
クロの顔に雨が当る。前髪から素敵が滴り、頬を氷のように冷たい冬の雨粒が伝わる。ニーソックスの隙間が冷たい。
クロが『佐村井』の表札掲げた玄関に付く頃には、小雨もすっかり立派な雨に姿を変えていた。
凍える手で扉を開けると、帰宅したばかりだったクロの姉である御琴(みこと)が、玄関にオトナのブーツを履いたまま腰掛けていた。
黒いダウンジャケットを羽織い、革の黒いブーツを履いた御琴の出で立ちに、クロには遠いオトナの香りがした。

「あら、玄子(くろこ)ちゃん。お帰りなさい。びっしょりじゃないの」
姉の御琴は、クロを『玄子ちゃん』と呼ぶ。彼女もまた、クロと同じくクロネコの少女。背はけっこう高い。
少女と言うにはオトナっぽく、オトナと言うにはまだまだ少女の愛らしさが残る佳望学園・高等部の女子生徒。
置き去りにされた玄関の傘立が濡れていないところを見ると、彼女も外出中に雨に遭遇して自宅に舞い戻ってきたようだ。
可愛らしいネコの足跡のプリントされたハンドタオルで、自慢の黒いボブショートを拭きつつ、色気漂う声で「ふぅ」とため息をつく。
尻尾の先からしずくを垂らすクロは姉の姿をじっと見とれて、いつかは訪れることであろう『オトナ』に憧れていた。


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