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獣人総合スレ 避難所

3392月22日のごめんなさい ◆TC02kfS2Q2:2010/02/21(日) 22:08:43 ID:WPHKKZGo0
―――老猫に取ってもらった本を大事そうに抱えたコレッタは、公園での出来事を話した。
マタタビ酒をちびちびと口に含み、頬を赤らめた老猫は耳を立てて子ネコの話を聞くと、尻尾をブン!と振る。
「それで、お嬢ちゃんはその子と仲直りしたいのかね」
「……だって、クロが」
「実はのう、わしもお嬢ちゃんと同じ年ぐらいの頃、友人とケンカしたんじゃ。そのときは、ついつい意地になってたんじゃが、
わしがそんなに偉いやつじゃないって分かって、晩にそいつに頭を下げてな。そいつもやっぱり寂しがってたんじゃな。確か、2月22日の……」
「今夜だニャ!!」
「ほれ、傘を貸してやるから、早くおふくろさんの待つ家に戻るんだな。蕗の森の公園で待っとるぞ」

お代は話を聞かせてもらっただけでいいと老猫は、コレッタの手にしている本を包装紙に包んで持たせ、家へと帰らせた。
老猫にお辞儀を繰り返しながらコレッタは、雨の降り続ける街へと消える。

「やれやれ……。わしも下手なウソばっかり言うようになってしまったな。こんなウソじゃ、どこの出版社に出しても一次落ちじゃ」
居間に引っ込んだ尻尾堂のオヤジは、コレッタに話した内容と全く同じ文章の書かれた原稿用紙を一瞥すると、
擦り切れた畳に布団を敷き、ごそごそといつもより早く床についた。夜が近い。

―――クロが目を覚ますと既に部屋は真っ暗だった。きっと時計は夕方をとっくに過ぎてしまったのだろう。
クロとてるてる坊主が残された部屋からは、いつの間にか姉の姿が見えなかった。
眠い目をこすりながらクロは立ち上がり、明かりをつけようとスイッチのある扉の方へと向かうと、部屋に入ってきたばかりの姉に止められた。
「今夜は、このまま」
「あ!そうだったニャ!!」
御琴とクロの声だけが響く、闇の中。
二人の足音だけが、じゅうたんを鳴らす。
街の音は何も聞こえず、ひんやりと冷たい空気が心地よく、間近に迫った春の日が待ち遠しい今宵。
姉に誘われて、窓のカーテンを捲る。

「すごいね」
「すごいニャ!!」
窓からの夜景は、一面の甘い星空だった。見ているだけで吸い込まれるような瞬きに、姉妹の言葉が奪われる。
おおいぬ座のシリウスも、今夜はネコの独り占めを許し、オリオン座のペテルギウスも心なしか控え目に光る。
ケモノたちが住む街の明かりも、今夜だけは我慢して、あまねく星座に明け渡す。お礼に空の星たちも、2月22日を祝福する。
「今年の『ネコの日』は、いつもより特別にきれいだね」
昼間の時と違うダウンジャケットをまとった御琴は「早く出かける準備をするよ」とクロを促す。
だが、じっとコレッタに似たてるてる坊主を見つめるクロには、迷うところがあったのだ。

「コレッタちゃんだって、玄子ちゃんのことを心配してると思うよ。ね?行こ」
「……お姉ちゃん」
クロは大時計の振り子のように揺り動かされた胸を押さえるのが精一杯で、その場を動くことが出来なかったのだ。
だが、姉の春風のような声は勇気になる。慌ててクロは、自分のクローゼットを開くと、よそ行きの可憐なコートを身にまとい、
コレッタが来ているかもしれない蕗の森の公園へと、姉といっしょに足を向けていた。そうだ、新しいブーツも自慢しようかな。
コレッタのヤツ、羨ましがるかも。そして、コレッタにごめんなさい。

今年のネコの日は、星空が眩しい。


おしまい。


以上です。長文ですが、よろしくお願いいたします。


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