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Desperado Chariots
1
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/03/28(日) 22:38:02 ID:1hwLgNFI0
新連載です。よろしくお願いします
2
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:41:07 ID:1hwLgNFI0
2121年、世界中が熱狂する『VReスポーツ』があった
『自転戦車』《チャリオッツ》
その名の通り、動力源は人の『脚』。ロードレースに戦車とバトルロワイヤルを組み合わせたこのゲームは
風景、気温、風圧、衝撃、音響。全ての環境が現実と相違なく再現できる球状の専用コクピットに三人一組のチームが乗り込む
一人目、指揮官。戦況を見渡し、瞬時な判断を下す『キャプテン』
二人目、砲撃手。揺れ動く車内で的確なエイム力を要する『ガンナー』
三人目、操縦手。鍛え抜かれた肉体と体力でペダルを漕ぎ続ける『ジョッキー』
固い絆とチームワークで結ばれた彼らは、サーキット、市街地、荒野、平原、熱帯雨林、火山地帯。果ては宇宙やお菓子の国と、各ステージに配置されたNPCの妨害を掻い潜りながら
相手チームより先にゴール。もしくは最後の一チームになるまで生き残り、勝利という栄冠を手にせねばならない
仮想現実だからこそ表現出来る迫力ある異次元空間を、『ゲーマー』と『アスリート』という二大プロフェッショナルが手を組んで駆け抜けるこの競技は
ゲーム史上最も過酷でありながら、リリース当初から数多くのドラマを産み出し、いつしか『eスポーツの金字塔』とまで呼ばれるようになった
そんな激戦の舞台に、意気揚々と乗り込もうとする男が一人―――――
( ´∀`)「子供が産まれるのでチーム抜けます」
(;´゚ω゚`)「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!????????」
たった今、唯一残ったチームメンバーに脱退を表明されたこの中年。日本を代表する老舗和菓子メーカー『参羽鴉』の代表取締役
端的に換言するならば、『金と環境の代わりにメンバーに恵まれない可哀想な社長』であった
3
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:41:49 ID:1hwLgNFI0
『これまで』は
.
4
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:43:08 ID:1hwLgNFI0
(;^A^)「はい、はい……すいません……」
(´・ω・`)「顔きっしょ……」
合縁奇縁。夢を抱いた子供のまま大人になった彼の運命のペダルは
(#^ω^)「ババァ!!!!!!これジャンプじゃなくてシャンプーだお!!!!!漫画雑誌ですらねーじゃねーか!!!!!!」
(´・ω・`)「腹ふっと……」
歪なメンバーとの出会いによって、力強く漕ぎ出されていく―――――
5
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:45:39 ID:1hwLgNFI0
『キャプテン』 ホワイトパワハラワンマン社長。自転戦車ランクD
(´^ω^`)「育休を取れーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!ガキの可愛い写真を撮れーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!奥さんに負担をかけるんじゃねーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
(´^ω^`)「そしてこれが……俺からの祝い金と特別手当じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
子どもの頃からの憧れに挑戦し続ける中年
(´^ω^`)「俺はチャリオッツの舞台で最高の勝負をして最低の評価を戴く男だぜ?卑怯も汚ぇも褒め言葉さ!!」
(´・_ゝ・`)「敵にしても味方にしても最悪ですね。流石です社長」
(´^ω^`)「せやろがい」
『悪役』を夢見る経営者、『大潮 本八』
6
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:47:07 ID:1hwLgNFI0
『ジョッキー』 気弱で使えないフリーター。元ロードレーサー
(;^A^)「いえ……昔の話ですんで……」
(;^A^)「も、もういいっすか……店長に呼び出しくらってるんで……」
かつて、自らが引き起こした不慮の事故によって親友の夢を壊してしまった若者
(#'A゚)「社長だかなんだか知らねえが、人の傷口に塩を塗り込むような真似してんじゃねえ……てめえが構えた店の真ん前で死にてえのか……?」
(´;ω;`)「ぴえん」
(#'A゚)「ぴえんじゃねえ!!!!!!!!!!!!!!!」
『鬼迫』と恐れられた豪脚と激情を隠し持つ『宇都宮 徳雄』
7
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:48:31 ID:1hwLgNFI0
『ガンナー』 人間不信の引きこもり。元プロチーム所属
(#^ω^)「うっせえうっせえうっせえお!!僕はもう終わった選手なんだお!!」
(#^ω^)「ババア!!!!!!!!ご飯おかわりお!!!!!!!!!!」
才能を妬んだチームメイトの裏切りによって、自転戦車界を追われた高校生
( ;ω;)「僕だってもう一度チャリオッツをやりたい!!だけど、だけど!!あの狭いコクピットにどうしても乗れないんだお!!」
(´・ω・`)「痩せたら?」
('A`)「そういう質量的な話じゃねえだろ」
『流撃』の異名を棄てた『内藤 文彦』
8
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:50:26 ID:1hwLgNFI0
かつての因縁
( ・∀・)「恨みは無い。だけど、僕を踏み越えないまま勝負から降りたのは、癪に障った」
(;'A`)「獏良《バクラ》……」
(´・ω・`)「遊戯王みたいな苗字してんな」
( ・∀・)「キミに怯えてしまったあの日の僕を殺す為に、もう一度戦ってくれないか?」
(´・ω・`)「え?無視?俺大企業の社長ゾ?不敬ゾ?」
纏わりつく悪意
:(; ω ):「お……お……」
( ^Д^)「役立たずg(#´゚ω゚`)「こいつが腐れ外道かァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!任せろ今すぐぶっっっっっっ殺すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
(;'A゚)「アンタ年長者で社会人でリーダーだろ少しはモラルってもんを弁えたらどうだ俺が抑えてるうちに早く逃げろド腐れカス外道ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
(;^Д^)「何この人ら怖い」
憧れの化けの皮
( ゚д゚ )「望んでヒールを演じたのではない。あの日の光景は、我々にとっては地獄でしかなかった」
(´・ω・`)「……」
( ゚д゚ )「考え直せ。最高のチームメイトなのだろう。お前さんの独りよがりで、周りまで巻き込むな」
(´⁻ω⁻`)「……」
9
:
予告編
:2021/03/28(日) 22:51:51 ID:1hwLgNFI0
全てを巻き込んで、三つの歪が重なった時
('A`)「良いぜ、乗った。今度こそ『鬼』が、お前を頭から食い千切る」
『最狂』のチームが
(#^ω^)「返り討ちに……してやるお!!」
誕生する
(´⁻ω⁻`)「関係ねえよ」
(´^ω^`)「俺はやりたいようにやるだけじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
.
10
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:00:02 ID:1hwLgNFI0
狙うは日本一を決める大会、『ジャパンカップ』制覇
(´^ω^`)「金に物言わせて作った専用トレーニングルームじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!」
( ^ω^)「随分小ぎれいにしていらっしゃるお」
(´;ω;`)「滅多に使われなかったんだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!」
('A`)「人望無さ過ぎるだろこの社長」
準備期間、半年
(´・ω・`)「開催までに俺は戦術と有力チームのデータ収集並びに番外戦術による揺さぶりを掛ける」
('A`)「番外戦術はやめとけ」
(´・ω・`)「ブサイクは操縦の慣れと更なる体力向上。そしてデブは……」
( ^ω^)「あ!!!!!食べ残しのチョコだお!!!!!」
( ^ω^)<ガブムシャアムベチャグチャガブ
( ^ω^)「やったね」
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「ダイエットだ」
('A`)「本当に大丈夫かな」※Aqua Timez 虹
11
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:02:43 ID:1hwLgNFI0
対するは、『強豪』
_
( ゚∀゚) 『暴れ馬』
(´・ω・`)「装甲、武装を最低限に抑え、ジョッキーの脚力とスタミナでスタート直後から大逃げをかます『ネイキッド・オッキイオッパイダイスキー』」
('A`)「チーム名よ」
( ^ω^)「つまり僕のおっきいおっぱいも狙われる……ってことかお?」
(´・ω・`)「痩せろ。そして早急に死ねデブ」
( ´_ゝ`) 『狩人』
(´・ω・`)「双子の兄弟とその母親のファミリー・チーム。ネイキッド・オッキイオッパイダイスキーのライバルにして重装甲、高火力でゆっくりと確実に追い込みを掛ける狩人『サスガファミリー』」
('A`)「母親?」
( ^ω^)「この道三十年のベテラン選手。現役最高齢にして最強のパワージョッキーと呼ばれてるお。これ写真」
('A`)「……え?こんなん勇次郎じゃん?笑うとこ?コラとかではなく?なんでお前ら真顔なん?」
(=゚ω゚) 『昆虫王者』
(´・ω・`)「砲塔の代わりに短時間の飛行能力と『一本角』を備え付けたマニアック車種『ビートル』の使い手『ムシキング』。リーダーはショタ」
( ^ω^)「版権は?」
(´・ω・`)「バックにセガが付いてる心配すんな」
('A`)「だからってなんで一世紀以上前のレトロゲーからチーム名付けたんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ 『魅惑の王女』
(´・ω・`)「抜群のルックスとボイスを誇る有名アイドルがリーダー。狂信的なファンのキャリーによってJC参加権を得たクソビッチ『スカーレット・プリンセス』」
('A`)「あー……なんか来る途中でそいつの缶バッチジャラッジャラ着けたオタクのヤクザ連中に喧嘩売られた」
( ^ω^)「属性めっちゃ盛ってるじゃん。それどうやって掻い潜ったんだお?」
('A`)「掻い……?いや、反社だし遠慮なく半殺しにした」
12
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:07:18 ID:1hwLgNFI0
( ・∀・) 『流星』
(´・ω・`)「結成から公式戦無敗の超新星。ウチのクソブサイクやクソデブとは違って全員がイケメンで、オールスター人気投票では堂々の女性人気No.1。『ハヤテ』」
('A`)「相変わらずおモテになるようで。アンタも見習ったらどうだ性格ブス」
( ^ω^)「金があっても中身の整形は出来ないんだよなぁ性格クズ」
(´;ω;`)「なんでそんな酷いこと言うの……?」
( ^Д^) 『暴食』
(´・ω・`)「これまでパッとした成績は残せてなかったが、新たなガンナーを取り入れてからはメキメキと台頭を表したカスプロチーム『蟒蛇』」
( ^ω^)「……」
('A`)「オッサン長えこと生きてきて気も使えねえのかよ」
( ^ω^)「違うお。奴らが力をつけて来たのはつい最近で、僕の脱退時期とはズレている。このガンナー、ひょっとして……」
|::━◎┥ 『常勝』
(´・ω・`)「カッコいいマスクでツラを隠したJC二連覇の由緒正しい古参チーム。史上初の三連覇に挑む王者『トップ・ギア』」
(´・ω・`)「当日、観客は彼らの偉業達成を大いに期待して集まるのだろう。だが俺が、俺らがそうはさせねえ」
(´・ω・`)「全チームをブッちぎり!!会場に、日本中に、そして世界中に!!無名のポッと出が優勝するという悪夢のような『雷鳴』を轟かせるのは」
(´^ω^`)「俺たち『ゴロゴロ』だ」
.
13
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:10:25 ID:1hwLgNFI0
('A`)「……」
( ^ω^)「……あー、オッサン。言いにくいんだけど」
(´^ω^`)「なんじゃい」
( ^ω^)「チーム名もうちょいなんとかならねえのかお?」
(´・ω・`)「えっダメ?」
('A`)「だせえ」
( ^ω^)「うん」
(#´^ω^`)「黙れーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!死ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
14
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:11:48 ID:1hwLgNFI0
主演、にこやかクズ『ショボン』
(´^ω^`)「実に長かったあまりにも長すぎたってのはテメーのチンチンの皮のこと言ってんのかーーーーーーーーーーーーー!!!!!!??????おおーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!??????」
(;^ω^)「某界隈で最も有名な台詞とキャラに喧嘩売るなオッサンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
揺れる贅肉『内藤ホライゾン』
(#^ω^)「この腹の肉ブルブルするやつで全然痩せないんだお!!!!!!クーリングオフだクーリングオフ!!!!!!!」
('A`)「22世紀にそんな骨董品使ってる奴初めて見たわ」
暴走ドブサイク『ドクオ』
('A`)「一本折ったら二本も三本も一緒だと思ってバキバキにしてきちゃった。前歯」
(´・ω・`)「クソ野郎の歯ぁ折ったのはどうでも良いんだけどわざわざ持ってくんじゃねえよ食人族かオメー」
製作、『CARGO!!』『∵ Three dot ∴』『異世界BAR MEET』
ウマ娘に影響された男『◆L6OaR8HKlk』
.
15
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:14:59 ID:1hwLgNFI0
『いつも通り』の連中が
(#´^ω^`)「そのエッチなお尻をおファックしてやるぜーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
戦場を変えて
(#^ω^)「これでもまだ役立たずとほざけるかッ!!クソ野郎ォォォーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
新たなる『激戦』に挑む
(#'A゚)「ここからが鬼のっ……本領だァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!」
16
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:16:14 ID:1hwLgNFI0
『Desperado Chariots』
.
17
:
予告編
:2021/03/28(日) 23:17:46 ID:1hwLgNFI0
(;^ω^)「ブヒィ……ブヒィ……オエッ!!!!!」
('A`)「なぁ、あの調子で減量間に合うと思うか?」
(´・ω・`)「無理だな。強行手段に出よう」
('A`)「強行手段?」
(´・ω・`)「デミー!!犬を放て!!」
(´・_ゝ・`)「畏まりました」
U^ェ^U「ワンワン排除しますワン」
(;^ω^)そ「いや、ちょ……警備用のロボドッグ持ってくんじゃねええええええええええええ!!!!!!!!」
<ギャアアアアアアアアアアアッス!!!!!!!
(´^ω^`)「ギャハハハハハハ!!豚追いだな!!ええ!?」
('A`)「俺も人のこと言えねえが、アンタも相当容赦ねえな」
近日連載開始
18
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/03/28(日) 23:26:00 ID:1hwLgNFI0
全部ウマ娘の所為です
19
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 01:52:17 ID:.9PUEYiM0
やったー
めちゃくちゃ楽しそうだ
20
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 05:41:10 ID:rJo/i8NQ0
え? Three dot の続きは?
21
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 08:12:38 ID:bWCYRcNY0
ワクテカ
22
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 17:35:00 ID:ZrNBpo7M0
これは面白いやつ!! 楽しみ
23
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 17:55:59 ID:41GAmoi60
スリーはもう書くの満足したんでしょ
24
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 00:39:01 ID:f/tyCRGs0
楽しみ、アレが刺さったんだろうな
25
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:07:31 ID:2BHtsTns0
嫌われ者が、好きだ
なんて言うと、矛盾してるだの捻くれているだのと捉われるだろう。だがちゃんと理由はある
忘れもしない2089年。第十二回自転戦車《チャリオッツ》ジャパンカップ。初参戦のチーム『アンラ・マンユ』と、当時世界ランク3位、初の連覇を狙う『トップ・ギア』との一騎討ち
ラストステージ二千メートルの直線を互いに競り合いながら一気に駆け抜け、僅か数ミリの差で勝利した、後に『トップ・ギアの悪夢』と呼ばれる大会
誰もが自転戦車初の快挙を願い、王者の勝利を確信する中で、無名だった『挑戦者』は観衆の前評判を覆して伝説を築き上げた
ホロ・ディスプレイに映っていたのは、会場から絶え間なく降り注ぐ彼らへの罵声とブーイング。しかし彼らは汗だくの顔を伏せもせず、堂々と胸を張って見せたのだ
祝福も称賛も与えられず、その先に大衆の落胆と失望が待ち受けていると知って尚、彼らは『勝ち』に固執し、全身全霊で挑んで掴み取った
その姿はクソガキだった俺にとって、ライダーやレンジャーを越える、とてつもなくかっこいいヒーローに見えたのだ。それと同時に、憧れもした
いつか俺もあの舞台で『主人公』を打ち倒し、観衆の罵詈雑言を物ともせず、己が掴んだ勝利を胸に前を向く
そんなかっこいい『嫌われ者』になりたい。と―――――
26
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:08:34 ID:2BHtsTns0
『Desperado Chariots』
.
27
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:09:20 ID:2BHtsTns0
〜三十二年後〜
.
28
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:10:46 ID:2BHtsTns0
(;´゚ω゚`)そ「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????」
それは、それは
(;´゚ω゚`)そ「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????」
大きく、大きく、階下まで響き渡る悲痛な叫びだった
(;´゚ω゚`)そ「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????」
しつこかった
29
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:13:55 ID:2BHtsTns0
『夢を追うのに年齢は関係ない』。成功した者だけが宣えるテンプレートが存在する。叫んだ彼自身も、入社式かどこかのタイミングでこんなセリフを吐いた覚えがあった
追った結果、叶わなかった者にとっては唾の一つでも吐き捨てたいほど不快な言葉であろうが、確かに『追う』だけならば、それこそ棺桶一歩手前のご老体でも容易いだろう
それ故に、彼は『追える者』が心底羨ましくてならなかった。何故ならたった今、社長室から社内全域に響き渡るような大きな大きな叫び声を上げたのは――――
( ´∀`)「子どもが生まれたのでチーム抜けます」
(;´゚ω゚`)そ「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????」
両の指では事足りないほどの『挫折』を、またしても味わう羽目になってしまったからである
『夢を追うのに年齢は関係ない』。彼はその言葉に唾を吐くほどの嫌悪感を抱いてはいないが、時折こうも返したくなる時がある
『スタートラインにすら立てない俺にも、同じセリフが言えるか?』と
( ´∀`)「ロクに練習も参加できず仕舞いで申し訳ありませんが……妻からもキツく言いつけられておりまして」
(;´・ω・`)そ「ハッ!?」
申し訳なさそうに頭を軽く下げる『元』チームメイトの謝罪が、停止した思考を再起動させる
抜ける理由としてはおめでたい事であるのだ。引き止めるのは元より、露骨に残念さを露わにすること自体が失礼にあたる
「すまない」。そう一言詫びて、彼は父となった社員に手を差し出した
(´・ω・`)「おめでとう。新たな門出だ。立派にやんな、お父さん」
( ´∀`)「お義父さんと呼ばれる筋合いはございません」
(´・ω・`)「そういう意味じゃねーよオメー俺が産まれたばっかの赤ん坊に唾つけとくような節操無しに見えんのかよ」
(;´∀`)「は痛たたたたたたたた」
日輪刀が赫く染まるほどの熱烈な握手(万力の握力)を交わし、社員は子犬に咬まれたかのような困り顔で手を擦りながら退室しようとする
(´・ω・`)「待て。オメー休みは?」
( ´∀`)「は、出産時に有休を頂きましたが……」
(´・ω・`)「あのなぁ……」
30
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:14:58 ID:2BHtsTns0
(#´^ω^`)「アホがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;´∀`)そ「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!????????????」
それは、それは
(#´^ω^`)「育休を取れーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!ガキの可愛い写真を撮れーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!奥さんに負担をかけるんじゃねーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
(;´∀`)「あ、はい……」
大きく、大きく、社外にまで響き渡る
(#´^ω^`)「そしてこれが……俺からの祝い金と特別手当じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;´∀`)そ「いやちょ……入金通知に凄い金額が記載されてる!?」
ホワイト経営者の雄叫びだった
(#´^ω^`)「今日もはよ帰れーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;´∀`)「あ、ありがとうございます!!失礼します!!」
うるさかった
31
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:22:27 ID:2BHtsTns0
『大潮 凡八』は恵まれた人間であった。産まれながらに老舗和菓子メーカー『参羽鴉』の御曹司であり、それに驕らず努力を怠らぬ野心家で
積み重ねた努力を確実な『結果』として残し、四十という若さにして社長の座まで上り詰めるほどの才能を持ち得ていた。俗な言い方をするならば『選ばれた者』である
しかし彼にとっては、ビジネスで収めた成功など取るに足らぬものであった。凡八が最も欲しいものは、金でも社会的地位でも無く――――
(´;ω;`)「チームメイトが集まんねえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
『自転戦車』《チャリオッツ》に参加する為の、チームメンバーなのだから
(´・_ゝ・`)「これで何度目の辞退でしょうかねぇ」
(#´゚ω゚`)「うるせーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!ハゲがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「お前のそういうところ」
二十年来の友人兼秘書である盛岡は、ぎゃあぎゃあと喚く『上司』にやれやれとため息を返すと、手に持つ盆から団子が乗った皿と熱い茶の湯気を立たせる湯飲みをテーブルに置く
凡八は目の前に現れたそれを一串手に取り、まるでラノブンピック2020総合優勝作品『∵ Three dot ∴』42レス目でシリアルバーを貪り食ったディのように口の中へと詰め込み、熱さなど気にせず茶で流し込むと
(´・ω・`)「ハゲって言ってごめん」
まるで憑き物が落ちたかにょ……かの如く落ち着きを取り戻した。噛んでない。かにょとか言ってない
(´・_ゝ・`)「慣れています。気にしていませんよ。くたばれ」
(´・ω・`)「最後の最後で本音が漏れてんだよ」
32
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:23:47 ID:2BHtsTns0
(;´・ω・`)「今回もダメだったか……」
凡八は右手首のなんかすごい腕輪型通信端末『i-ring』に意識を送り、掌に7インチほどのホログラムディスプレイを表示させる
触り心地の無い画面を親指でスワイプし、人員管理アプリから先程の社員データを削除した
学生時代に『ガンナー』として慣らした腕前に期待してスカウトしたのだが、やはり仕事やプライベートを優先し、中々練習に付き合ってはくれなかった
そしてトドメが奥さんの出産である。こうなると彼の人生は巣立ちの時まで子どもに尽くされる。幾ら相手が社長であろうとも、他人の道楽に付き合う暇など無いのだ
(´・_ゝ・`)「社員をスカウトすると言うのがそもそも間違いなのですよ。長時間上司に、それも『社長』もとい『クソ野郎』に長時間拘束される上に残業代も出ない。いくら経験者であっても喜んで付き合う社員などいません」
(´・ω・`)「大ショボン八」
(´・_ゝ・`)「は?」※殺すぞの意
(´・ω・`)「なんでもない」
(´・_ゝ・`)「いいですか社長、貴方には三つの弱みがあります」
(´・ω・`)「無いです」
(´・_ゝ・`)「一つ、社会的地位のある人間であること。二つ、年齢。三つ、クソ野郎」
(´・ω・`)「クソなのは遺伝だから仕方ねーだろ赤ちゃんなんだから」
(´^ω^`)<オギャアアアアアアアアア!!!!!!!!!
(´・_ゝ・`)「テメー自身も努力しろっつってんだよ」
人が集まらない理由。一つは凡八が社長であること。肩書きを持つ人間、特に大企業の社長とまでなると萎縮する者は大勢いる
部下という立場ならいざ知らず、『チームメイト』という対等の立場となると、『権威』が関係構築の邪魔をしてしまうのだ
二つ目は年齢。現在42歳という年齢は、ビジネスを除いて『仲間』を集めにくい。十代、二十代であるなら同年代と組み、三十、四十となると仕事や育児に追われ、それ以上は家庭や体力の関係上、手を出しにくい
そして三つ目が致命的で、まともな性格の人間なら、『苛烈』を人の形にした情緒不安定のクソ野郎など出来る限り避けて通る。よほど胆力の据わった者か、凡八と同じくらいのイカレでなければチームメイトとして機能しないのだ
33
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:26:52 ID:2BHtsTns0
(´;ω;`)「俺ァいつになったら自転戦車の公式大会に出れるんだよぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
オロロロ〜ンと泣き始めた中年の姿を、不憫半分いい歳した大人が泣くなよキッショいな死ね半分の気持ちを抱いて盛岡が眺める
成り行きが生じて二十年以上『右腕』として共に歩んで来たが、彼の長年の夢である『自転戦車』の公式戦への参加が上手くいった試しがなかった
(´・_ゝ・`)(それでも諦めない辺りは流石と褒めるべきか。往生際が悪いと言うべきか)
自転戦車《チャリオッツ》とは
BTD社が開発した古代の戦闘用馬車と自転車《チャリ》を掛け合わせた洒落の効いたタイトルのVReスポーツだ
『PUBG』や『APEX』のようなバトルロワイヤルに、『Wot』の戦車要素。それに『ロードレース』を掛け合わせた『バトルロワイヤルタンクレース』として知られている
三人一組のチームが三メートルほどの球状コクピットに乗り込み、他チームを蹴落としながらゴールを目指す。ここまで聞けば遊園地にもよくあるようなVRゲームと思われるだろう
だがこのゲーム最大の特徴は、動力源に『人の脚』が使われる処にある。三人の内の一人が実際にペダルを漕ぐと、彼らが乗り込む自転戦車も連動して動き出す仕組みとなっているのだ
当然、脚力が強ければ強いほど速度は上がるし、体力が多ければ多いほど走行距離も伸びる。つまりe『スポーツ』の名の通り、プレイヤーにはアスリート級の能力が求められる
走行距離は短くても10キロ。長いコースであれば100キロを越える場合もあり、『eスポーツ史上最も過酷なゲーム』とも呼ばれるようになった
(´・_ゝ・`)(しかし……たった二人がこうも捕まらんとは)
自転戦車は三人一組が揃って初めて参加できるゲームだ
一人目、指揮官。戦況を見渡し、瞬時な判断を下す『キャプテン』
二人目、砲撃手。揺れ動く車内で的確なエイム力を要する『ガンナー』
三人目、操縦手。鍛え抜かれた肉体と体力でペダルを漕ぎ続ける『ジョッキー』
頭脳、ゲームセンス、そしてフィジカル。三位一体のチームワークが勝敗を左右する
凡八のポジションは『キャプテン』。盛岡も幾度となくそのプレーを見ているが―――――
(´・_ゝ・`)(才能はあるのだがなぁ……)
若くして社長に成りあがっただけはあると頷ける大胆かつ豪快な戦法を得意とするが、問題は彼の手足となるガンナーとジョッキーが追い付かないことだ
上記三つの要素に加え、求める人材に妥協を許さない性格。人が定着しないのも頷ける。のだが
(´・_ゝ・`)(解せないな)
それでも、彼が『夢』を志して三十年以上。スタートラインに立つのにこれほどの時を要するほどの理由では無い
『マジ俺呪われてんじゃねえ?ちょっとお祓い行ってくるわ』と言って向かった神社が縁切りで有名な場所だったのがいけなかったのだろうか
34
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:28:37 ID:2BHtsTns0
(´・_ゝ・`)「それはそうと社長。仕事の件ですが」
不憫ではあるが、本業を疎かにしていい理由にはならない。空いた皿と湯飲みを下げ、自身のi-Ringから凡八の目前にホロ・ディスプレイを展開させる
都内のあるチンp店舗と、そこを仕切る店長の情報。凡八は眉を顰め舌打ちをする。この手の切り出し方で、良い報告を聞いたことが無かった
『|;;;;| ,'っノVi ,ココつ』
(´・ω・`)「あん……この……どこが目でどこが鼻でどこか口かわからんこいつ何したの?」
(´・_ゝ・`)「パワハラです。リークがありました」
(#´゚ω゚`)「クソ野郎がよぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜……」
本来ならば人事部が対処すべき問題だが、『信賞必罰』をポリシーとする参羽鴉は社長が直々に手を下す
社員(奴隷)の労働意欲を保ち、最効率で馬車馬のように働かせる為に必要なのは働きに対する報酬と充実した福利厚生であり
ハラスメントはその為に支払ったコストを台無しにし、著しくモチベーションを低下させる人為的な費用損失なのだ
(#´゚ω゚`)「会社の金を喰い潰すカスは生かしちゃおけねえ……」
(´・_ゝ・`)「左様で」
決して社員を想ってではなく、損益を優先して行動を起こすあたり、やはり経営者たり得る人物なのだと盛岡は常々感心する
だからと言って相応な人格も伴うワケではない辺り、世の中というのはバランス良く保たれているらしい
(´・_ゝ・`)「それとは別件で新商品の試作品評と海外出店の企画会議、お花見シーズンに合わせたドローン茶屋の新デザイン草案の確認が御座いますが」
(#´゚ω゚`)「んなもん秒で終わらせたわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「そのクソめんどくせえ性格と自転戦車以外の手が掛からなくて助かります」
(´^ω^`)「ガハハ!!!!!!!!せやろがい!!!!!!!!」
35
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:29:37 ID:2BHtsTns0
(´^ω^`)
(´・_ゝ・`)
.
36
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:30:30 ID:2BHtsTns0
(´^ω^`)「今の褒めたの?」
(´・_ゝ・`)「では、早速抜き打ち監査に参りましょうか」
(´^ω^`)「なぁて」
.
37
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:32:40 ID:2BHtsTns0
―――――
―――
―
蒙g本八には、不思議な癖がある。ハラスメント報告を受けた時、この男は社長の衣を脱ぎ置き
/ ,' 3「っしゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」 ※(´^ω^`) こいつ
小汚い老人に化け、各店舗の監査に回るのである
そして最後はハラスメントを起こした社員の胸倉を引っ掴み、ただただ頭の中を空っぽにしてシバキ回すのだ
(‘_L’)「老人らしくなさってください。ベジット初登場時みたいになってますよ」 ※(´・_ゝ・`) こいつ
/ ,' 3「元気なお年寄りがいてもええやろがい」
(‘_L’)「オメーのは元気じゃなくて狂気なんだよ何べん説明させんだ頭悪ぃなほんと」
/ ,' 3「お前は毛根の調子が十年前から悪ぃな」
/ ,' 3 チッ
(‘_L’) チッ
変装用の小汚い電気自動車内の空気がギスってきた所で、二人は互いに舌打ちをして車を降りる
『OHANAMI』。参羽鴉が運営する茶屋だ。銘治時代、名古屋で始まった団子屋を、当時のイメージのまま再現した店構えは
「まるで時代劇の中にいるかのよう」「オー、ファッキンレトロファンタスティックキラヨシカーゲ(おお、ファッキンレトロで素晴らしいですね。下品なんですがその……フフ、『勃起』……しちゃいますね)」「このおちゃすごいおいしい」と評判である
(^A^)「いらっしゃいませ〜」
暖簾をくぐると、細身でやや小柄、見るも無残な顔面にブサイクな笑顔を浮かべた店員が、やや声高に出迎える
/ ,' 3「ブッs(‘_L’)「二名です」
(^A^)「かしこまりました〜。二名様ご来店で〜す!!」
<っしゃーせー……
<っせー……
38
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:35:17 ID:2BHtsTns0
(‘_L’)「……」
/ ,' 3「っふぅ〜……魚は頭から腐るっつーが」
(‘_L’)「組織に関しては一概にそうも言えないようですね。まぁ頭は元から腐ってますが」
/ ,' 3「新鮮だもの」
『魚は頭から腐る』。しかし命ある生き物であるならば、生き物が形成するコミュニティであるならば、『血』がせき止められれば『末端』から腐る
居心地の悪い店内に、覇気の無い店員。客が帰った後だというのに、一向に下げられる気配の無いテーブル上の空皿が現状を物語る
参羽鴉は二百年に渡って愛されてきた和菓子ブランドに胡坐を掻き、接客業の基本すら出来ていない。二人は渋い顔を見合わせ、頭痛を堪えるように額を抑えた
(^A^)「お決まりになられましたら、ビジョンメニューからご注文ください〜」
(‘_L’)「はい」
/ ,' 3「っあー……」
運ばれてきたお冷のコップは、くすんで触る気にもなれない。おしぼりはぬるく、生臭かった
/ ,' 3「爆撃って幾らかかる?」
(‘_L’)「国防長官にお伺いしてみてはいかがでしょうか。まずは記録を」
モリオカは自身のi-Ringを起動し、店内の撮影と同時に問題点を書き出していく。手持無沙汰になった本八は、『お品書き』である折り畳み式のビジョンデバイスを開いた
空間に浮かび上がる『オススメ』『一押し』『キャンペーンメニュー』等のホログラムアイコンから『定番』を押すと、団子やおはぎといった参羽鴉の売れ筋商品のビジョンへと移り変わる
/ ,' 3「そういや俺おやつ食ったばっか」
(‘_L’)「そうですか。煮込み雑炊でも頼めば宜しいのでは?」
/ ,' 3「それ来月からだよ」
(‘_L’)「集中してるんで話しかけないで下さいますか?」
/ ,' 3「ぴえん」
39
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:39:47 ID:2BHtsTns0
/ ,' 3「はぁ〜……トイレ見てくる」
(‘_L’)「撮影もよろしくお願いします」
/ ,' 3「今のやり取りだけ切り取ると普通に犯罪のやつ」
重い腰を上げ、手洗いへと向かう。その途中、厨房から怒号が響き渡った
<ったくオメーはよぉ!!何回言えばわかんだよカス!!
<スワセン……スワセン……
<ニヤニヤしてんじゃねえ!!気持ち悪ぃな!!
/ ,' 3(客おるのにこんな怒鳴る奴おる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???????)
こっそり覗くと、先ほどの小柄で顔面ブッッッッッッサイクな青年が叱られている
顔面がファッキンブサイクな以外は、従業員の中では一番まともに仕事をしていた筈だが、『パワハラをする側』からしてみれば関係ないらしい
40
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:40:36 ID:2BHtsTns0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ったくよぉ!!オメーよぉ!!」
(;^A^)「スワセン……スワセン……」
/#,' 3「スゾ……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「は?」
/ ,' 3「やっべ」
殺気を読み取られたのか、パワハラクソ野郎の視線から咄嗟に逃れる。改めて見てもどこが目でどこが鼻でどこが口かわからなかった。なんやこいつヤバ
パワハラクソ野郎は舌打ち一つ漏らすと、再び青年の『説教』に戻る。当然、彼の声はホールにいるモリオカにも届いていることだろう
/ ,' 3(分厚い書類になりそうだな……)
思っていた以上の悲惨な現状に、怒りを通り越して呆れへと至る。簡単にクビを切れるのなら楽でいいのだが、そうは問屋と労働契約法が卸さない
どんな地獄もといハラスメント研修を味わわせてやろうかと考えながら、本八はお手洗いの引き戸を開け
/#,' 3「あんのクソ……」
パワハラクソ野郎の性根と同じくらい汚いトイレに、悪態と小便を垂らしたのであった
41
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:42:14 ID:2BHtsTns0
/#,' 3 ジョロンジョロンジョロンジョロン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
/#,' 3
/#,' 3 ジョロ……チョロ……チョ……ジョロン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
欲しいと思ったんで放尿シーンも入れといたで
42
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:43:58 ID:2BHtsTns0
/ ,' 3「歳取ると尿切れが悪くなってダメだわ……」
そう、歳を取ると股間の栓の締まりが悪くなったりするのである。パンツの中に広がる尿の漏れ。これが中年の衰えなのである
最近勃ちも悪くなって膣内で折れたりするのが悩みの本八。手を洗ってi-Ringでトイレの中をビャッと撮影する所を
(;^A^)「あ」
/ ,' 3「あ」
先ほどまでボロクソに怒鳴られていた青年に、ガッツリ目撃されてしまった
(;^A^)「……」
/ ,' 3「……」
事情を話すのも面倒なんでぶん殴って気絶させようと秒で決意し、拳をガッチリと握りしめたが
(;^A^)「ご、ごゆっくりどうぞ〜」
/ ,' 3「それもちゃうやろ」
何か誤解を招いたのか。青年は気まずそうに目線を逸らし、いそいそとトイレ掃除の準備を始めた
/ ,' 3「なぁちょっと聞いてぇや」
(;^A^)「大丈夫です僕何も見てないんで」
/ ,' 3「やっぱ殴った方が早いわ」
(;^A^)そ「ヒエッ」
本八は拳をガチガチに握りしめ、振りかぶる
43
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:45:40 ID:2BHtsTns0
/#,' 3「死ね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
中年、しかし脂の乗った働き盛りの拳が容赦なくブサイクの顔面へと放たれるが
(;^A )「困りますお客様」
/;,' 3そ「!?」
青年は怯むどころか難なく受け止め、本八の手首を捻りながら背後に回り
/;,' 3そ「痛ぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
腕の関節を極めつつ壁に押し付けた
('A`)「耄碌なさってるのか何だか知らねえが、盗撮誤魔化す為に暴力を振るわれるのは此方としては非常に困りますお客様。長ぇこと生きてる分際でモラルもご存じ無いんでしょうか?」
/;,' 3「いや……ちょ……おま……」
厨房でヘコヘコと頭を下げていた頼りなさげな青年の影は鳴りを潜め、声色は低く口調は乱暴なものへと変化する
頭一つ低い身長と華奢な見た目に反して、一歩も動けぬほどの力強い拘束。そして『老人』に対する情け容赦の無さ
/;,' 3(こいつ……!!)
力づくで解こうとしても、まるで大木か岩を背にしているかのように動く気配がない。この時、本八から湧き上がった感情は『怒り』でも『恐怖』でもなく
/;,' 3(こいつ!!)
『驚愕』と、『感動』であった
44
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:47:52 ID:2BHtsTns0
『華奢』である事と『貧弱』は必ずしもイコールではない。ライト級のボクサーも脂肪という無駄を削ぎ落とし、殴り合う為のスマートな筋肉を身に着けている
手首を掴む彼の掌は、硬く『マメ』の感触がある。竹刀かバッドかラケットか、はたまた『ハンドル』か。いずれにせよ『アスリート』である事の証拠だった
/;,' 3(こんな所で……こんな場所で!!)
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「何を……お前お客様に何やってんだ!!!!!!!!!!!」
(;^A^)そ「えっあっはい!?」
騒ぎを聞きつけた店長が割って入り、ブサイクな店員を強引に引き剥がす。顔面には再び頼りなさげな作り笑顔が貼り付いていた
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「申し訳ございません!!ウチの従業員が失礼を致しまして!!」
/;,' 3「……」
(;^A^)「えと、あの、店長、そちらのお客様なのですが……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「うるせえ役立たずの疫病神が!!!!!!テメエなんか雇ったのが間違いだ!!!!!!俺のキャリアに泥を……」
/;,' 3「いやお前邪魔」
いきり立つ店長の後頭部を鷲掴みにして、洗面台に叩き付ける
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ゴルシッ!?」
鈍い音と共に失神したどこが目でどこが鼻でどこが口かわからんパワハラクソ野郎はフラフラとよろめいた後、先ほど本八がジョロンジョロンした小便器に頭を突っ込んで動かなくなった
(;^A`)「ええー……」
/;,' 3「お前!!!!!!!!!!!!!」
(;^A`)「アッハ……触んな気色悪い」
45
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:49:21 ID:2BHtsTns0
/;,' 3「俺と一緒に天下取らねえか!!!!!!!??????」
(;'A`)「ハァ?」
/;,' 3「自転戦車、やろう!!!!!!!!!!!やれ!!!!!!!!!!やれやァァァ!!!!!!!!!!!」
(;'A`)「ハァー?????????」
.
46
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:52:47 ID:2BHtsTns0
三十と余年。実に長い、余りにも長い積年の時
(#∵)「とても優秀な警察だ!!!!!!!老人が暴れてると通報があってとても早く駆けつけた!!!!!!!」
('A`)「これですこれ。クz……店長もやられました」
/;,' 3「なぁ!!!!!ワイと自転戦車やろうや!!!!!!!!」
(#∵)「彼から離れなさい!!!!!離れ……とても力強いこのジジィ!!!!!!おい!!手を貸せ相棒!!!!!!」
(#∴)「あたぼうよ!!!!!!オラジジィ!!!!!!ジジィオラ!!!!!!!!」
/;,' 3「どけ!!!!!!!俺は社長だぞ!!!!!!!!!相棒ーーーーーーーーー!!!!!!!!相棒ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
憧れは、未だ手の届かぬ遥か彼方
('A`)「お連れの方もいらっしゃったので其方も連行して頂けたら……右手の窓際でシコシコやってたハゲなんですが」
(#∵)「我々と入れ違いでとても颯爽と帰えられました!!!!!!!!!!!!」
/;,' 3「あの野郎逃げやがったァァァーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
それでも、この出会いは
/;,' 3「金なら払う!!!!!!!金なら払うーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
(#∴)「とても小汚いジジイの癖に何言ってんだ!!!!!小銭じゃ国家権力は動かねえぞ!!!!!!」
('A`)「それって暗に賄賂次第じゃ見逃すって言ってません?とても優秀って世渡りが上手って意味ですか?」
少なくとも本八を、『スタートライン』に立たせた
47
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:53:33 ID:2BHtsTns0
/;,' 3「金なら幾らでも払うからーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
夢に取り憑かれた男の、人生最大にして最高の挑戦。その始まりの―――――
.
48
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:55:51 ID:2BHtsTns0
第一話
『シグナルは鳴った』
.
49
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/17(土) 23:57:36 ID:2BHtsTns0
次回予告
(´・ω・`)「なんで帰ったの……?」
(´・_ゝ・`)「厄介払い出来て都合が良いかなって思ったんで」
(´・ω・`)「我社長ゾ?」
(´・_ゝ・`)「チッ……そうですね……チッ……」
(#´゚ω゚`)「二回も舌打ちしやがった!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「そんなクソどうでもいい事より社長。彼はチームメイトになりますかね?何やら深い事情を抱えてそうですが」
(´^ω^`)「なぁに!!金と暴力で解決出来ねえ問題なんてねえよ!!!!!」
(´・_ゝ・`)「流石ですね社長。反吐が出ます」
(´^ω^`)「ガハハ!!!!!!!せやろがい!!!!!!」
(´^ω^`)
(´・_ゝ・`)
(´^ω^`)「今の褒めてねえよな?」
(´・_ゝ・`)「次回、『Desperado Chariots』第二話。『鬼を宿す男』」
(´^ω^`)「なぁて」
50
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/04/18(日) 00:06:27 ID:GDo9aqzs0
第一話終わりです
ウマ娘観てください
51
:
名無しさん
:2021/04/18(日) 00:09:18 ID:22zWyLGA0
otsu
52
:
名無しさん
:2021/04/18(日) 16:03:16 ID:eI9aunJM0
ジジイミーツボーイクソ笑った 乙!
53
:
名無しさん
:2021/04/19(月) 00:32:51 ID:2Qrpxu8E0
おつ
54
:
名無しさん
:2021/04/19(月) 12:19:59 ID:mhF2UO..0
乙!やはりショボンが暴れるとホント面白い。更新待ってます。
55
:
名無しさん
:2021/04/22(木) 14:45:12 ID:pZEqicrU0
面白い!!!!!!!
乙
56
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 20:44:34 ID:HvEjlB4M0
そいつは、嫉妬するのも憚られるほどの
( ∀ )
強く美しく、そして流れ星のように『速い』男だった
強いて欠点を挙げるとするならば、ダチを見る目は悪かった
( A )
俺みてえにガサツでブサイク、時にはクソ野郎に手を上げることすら厭わないクズを『親友』と呼んだのだから
烏滸がましくも路傍の石ころは、空を駆ける流れ星《スター》に憧れた。目の前で背を見せ続けるその煌びやかな姿を、追い抜きたいと望んだ
己を叩き、磨き、叩き、磨き、叩き磨き叩き磨き叩き磨き、ようやくその背に手が届く所まで、石ころは高く跳び上がった
ただの石ころでさえ、叩き磨けば、背中を突き刺す『凶器』に変わるとも気づかずに
:(; ∀ ):
ああ、違う違う違う
(; A )
俺が望んでいたのは、こんな決着じゃない
流れ星を堕とす『鬼』になんてなりたかったワケじゃねえのに!!
.
57
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 20:48:47 ID:HvEjlB4M0
第二話
『鬼を宿す男』
.
58
:
名無しさん
:2021/05/04(火) 20:51:03 ID:HvEjlB4M0
「あの変態を外に出してもいいのですか?」
「変態でも金を持ってる奴に、我々公僕は逆らえないのさ」
警察署の一室で、二人の刑事が忌々しく見下ろす先。窮屈な取り調べ室から解き放たれた金を持ってる変態は、春先の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み、ググと伸びをした
(´^ω^`)「うおおおおおおおおおおおおおおおおお半日ぶりの娑婆だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」シャバダバダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
うるせっ
(´・_ゝ・`)「お勤めご苦労様です。なに遊んでたんだクズ」
(#´゚ω゚`)「ああ楽しかったぜ……冷てぇパイプ椅子に座ってオマワリとにらめっこだ……誰かさんが釈明してくれなかったお陰でな……」
(´・_ゝ・`)「それは良かった」
朝日に目を眩ませながら、迎えにあがった盛岡の車に乗り込む。シートには竹皮の包みと、茶の入った水筒が先客として乗り込んでいた
ゴリゴリに凝り固まった肩を解し、一晩中叫び続けて嗄れ気味の喉を緑茶で潤す。高級車は振動も音もなく、静かに警察署を後にする
竹皮の紐を解くと、炊き込みご飯のお握りが三つとたくあんが鎮座している。ゴキゲンな朝食に口笛を吹き、一つ手に取り大口で頬張る
(´^ω^`)「うんめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
うるさすぎてAdoみたいになるわ
(´・_ゝ・`)「昨日は随分と興奮してらっしゃったようですが、お手洗いで白い粉でもキメてらっしゃったので?」
(´^ω^`)「馬鹿野郎オメエ俺がキメる白い粉は白玉粉だけよ!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「それはそれでやべーな」
59
:
名無しさん
:2021/05/04(火) 20:52:31 ID:HvEjlB4M0
(´・ω・`)「ジョッキー候補が見つかった」
盛岡はバックミラー越しに本八と目を合わせ、それが『大本命』であることを察した。クリスマスの朝に、プレゼントの箱を前にしたかのような目の色の輝きは、かつて盛岡自身も向けられたことがあった
(´・_ゝ・`)(可哀想にな)
『何を差し置いても、奴が欲しい』。経営者は、人の上に立つ者は、時に金銀財宝や絶世の美女よりも、有能な人材を求める
二十数年前の大学時代。祖父や父と同じく官僚への道を見据えていた盛岡は、ギラギラと目を光らせる若かりし頃の本八によって人生を捻じ曲げられた
今となっては四十を過ぎた『赤ん坊』のお守り役だ。お陰で退屈はせずに済んでいるが、変態に目を付けられた候補者が不憫で仕方が無かった
(´・_ゝ・`)「店員ですか?」
(´・ω・`)「あのブサイクだよ」
(´・_ゝ・`)「ほう」
一目見たら忘れられない、あの似合わぬ愛想笑いのクッッッッッッソブサイクな若者の顔が思い浮かぶ
彼は店長の『お気に入り』だったようで、盛岡がいたテーブル席からも厨房での怒鳴り声が聞こえてきた
(´・ω・`)「お前から見て、どんな印象だ?」
(´・_ゝ・`)「……」
信号が黄色に変わったのに反応して、車は自動的に減速を始める。赤に変わった頃には、揺れを一切感じさせず停車した
しばらくの待ち時間。盛岡は視線を宙に浮かせハンドルを指で叩き、頭の中で昨日の光景を再生する
(´・_ゝ・`)「そうですね……一言で言えば、『不気味』でしょうか」
(´・ω・`)「その心は?」
(´・_ゝ・`)「昨日、誰かさんの手によって病院送りにされたクソ野郎の憂さ晴らしを一手に担っているにしては、妙な落ち着きがありました」
(´^ω^`)「ええことする奴もおるもんやな!!!!!!!!!国民栄誉賞もんや!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「世も末ですね」
60
:
名無しさん
:2021/05/04(火) 20:56:15 ID:HvEjlB4M0
一見すると、腰が低く気も弱そうに見えた小柄な店員だが、少なくとも臆病では無いらしい
理不尽に怒鳴られる者は、そうでない者と比べて勤務態度に過剰なまでの緊張が見て取れる。失敗に対して敏感になり、客の目より上司の目を気にしてしまう
それにしては、あの店員の仕事振りは要領が良いとまではいかなくとも、萎縮した感じは無く、あくまでも自分のペースを維持し続けていた
(´・_ゝ・`)「余程上手く本心を隠しているか、そうでなければ……」
(´・ω・`)「さほど苦には感じていないのか」
信号は青に変わり、車はまたゆっくりと走り出す。本八は一つ目のお握りを食べ終えると、たくあんを一切れ摘まみ上げ、端っこを齧った
(´・ω・`)「実際、奴は錯乱した『老人』の腕を捻り上げて拘束した。躊躇も、容赦も無くな」
腕輪型通信端末『i-Ring』から、録画していた昨日のやり取りをディスプレイ搭載型フロントガラスに映す
前方の景色は映像へと切り替わり、車は自動運転へとシフトする。ちょうど、殴りかかった本八の腕が、若者によって捻り上げられたシーンだった
(´・_ゝ・`)「ほう……」
若者の表情や目の色を見て、盛岡はストンと腑に落ちた。『暴力に慣れ親しんだ者』の顔付きをしていたからだ
理不尽を振るう事によって満たされる些細な支配欲や征服する悦びなど、とうに過ぎ去っているのだろう。その行為を、さも当たり前のように実行に移せる静かな狂暴性を秘めている
思ってもみなかった掘り出し者は、本八と盛岡が求める『チームメイトとしての条件』を悉くクリアしている可能性がある。これほど気に入るのも納得の人材だ
(´・_ゝ・`)(彼ならばもしかすると……)
本八の『権威』を意に介さず、クソ野郎のパワハラを軽く受け流し、情緒不安定な老人の暴力をいとも容易く捻じ伏せた
年齢だけがネックだが、そこは交渉次第でどうとでもなるだろう。兎に角、件の若者は
(´・_ゝ・`)「あり、ですね」
(´^ω^`)「だっるぉぉぉぉ!!!!!!!!!!??????????」
彼ら二人がこれまで出会い、そして別れてきた他の誰よりも、『チームメンバー』として理想的な人物であったのだ
61
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 20:59:54 ID:HvEjlB4M0
(´・ω・`)「フィジカルも申し分ねえ。あの野郎、着やせするタイプだ。樫みてーにミッチミチに詰まった筋肉を感じ取れた」
(´・_ゝ・`)「鴨葱ですね。逃す手は無いでしょう。ですが……」
(´・ω・`)「待て。言いたいことは分かる」
『何故ここまで気合の入った人物が、劣悪な環境下でヘコヘコと頭を下げながら働いているのか』
(´・ω・`)「人には言えねえのっぴきならねえ事情かもしれねえ。だが俺には関係ない。そうだろ?」
(´‐_ゝ・`)「フ……確かに」
誰しも、人には言えぬ秘密の一つや二つ抱えながら生きている。それが他者の生活、要望の妨げになることは万に一つもありはしない
『掘り下げなくても良いこと』であるなら、その労力を他に向けるべきだ。盛岡は浮かんだ疑問をすぐさま頭から消し去り、切り替える
(´・_ゝ・`)「彼の情報を集めましょう。それと、シフトの確認を」
幸いにも、後部座席でお握りを貪る男は、若者が務める飲食チェーンを経営する『社長』であった
(´^ω^`)「頼むぜ相棒。さぁ『ハンティング』だ!!眠れる獅子とやらの尾を踏みに行こうぜ!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「……」
「いや怒らせちゃダメだろ」。口から出掛かった言葉をぐっと飲み込んだ
二十数年間もの長い時を、本八に振り回され続けてきた盛岡だからこそ知っている『力』が一つある
(´・_ゝ・`)「そうですね」
『人の本性、本音を引き出すのが抜群に上手い』。そして、その起点はいつも
『怒り』から始まるのだ
.
62
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:02:18 ID:HvEjlB4M0
―――――
―――
―
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「お前さぁ、俺になんか恨みでもあるワケ?」
『別に恨みも興味もねえよ』。厨房でタバコを吹かしながら、いつも以上に不機嫌とストレスをぶつけてくる店長の言葉を
(;^A^)「い、いえ……」
出来る限り申し訳なさそうな作り笑いを浮かべながら、『宇都宮 徳雄』は聞き流した
仕事もしなけりゃ性格も悪い。その上、顔のパーツがどこにあるのかすら分かりづらいクズにしては、頭蓋骨が頑丈に作られているようで
あれだけ強烈に頭を打ち、小便器に顔面を突っ込んでおきながら、翌日には復帰する辺り、大した量も無い『中身』は無事だったようだ
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ハァー……なんっでさぁ……イカレのジジイってわかっておきながら、ポリの到着まで抑えつけなかったの?」
(;^A^)「そ、それは店長が……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「ハァ!?俺の所為だって言うのか!?おお!?」
幼稚な苛立ちは調理台上のボウルにぶつけられ、床を跳ねては神経を逆なでする金属音を二度、三度と繰り返す
店長の背後、ホールでi-Ringのホロ・ディスプレイを眺めていた他のバイトが、心底迷惑そうな視線を此方へと向けてきた
(;^A^)(どうしろってんだよ……)
昨日の『愉快』な出来事について、徳雄は自身に非は一切ないと思っている。そもそも、目の前のアホが割り込んでこなければ、痛い目に遭わずに済んだのだから
もしも暴力沙汰が無かったとしても、難癖つけていびり散らすのは目に見えているが、ここまで理不尽だと腹に込み上げてくるものがあった
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「なんだその目は!?文句あんのか!?言えよ!!なぁ!!」
(;^A^)「い、いえ……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「あるんだろうが!!使えねえ分際で不満だけは一人前か!?ブッサイクなツラしやがってよぉ!!」
63
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:03:23 ID:HvEjlB4M0
フィルター際まで吸いつくされたタバコを、火も消さずに顔面に向けて指で弾かれる
(;^A^)そ「危ねっ」
反射的に避け、標的を見失った吸い殻は、作り置きの団子の上へと着地した
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「チッ!!ほんっと役に立たねえクズだな!!灰皿の代わりにもなりゃしねえ上に団子まで無駄にしちまいやがってよ!!どう落とし前つけんだ!?ああ!?」
(;^A^)「スイマセン……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「はいはいはいはい口だけの謝罪は聞き飽きてんの!!言葉じゃなく行動で映せっつってんの!!わかりまちゅか!?」
(;^A )「……スイマセン」
頭を深く下げながら、ギリリと握りしめそうになった拳を強い意志を以て解く。殺気が、怒りが漏れないように、重い蓋をイメージして感情を押し殺す
例えどれだけの理不尽や、圧力を敷かれようとも、決して己の中の『鬼』を出してはならない。これが彼が自らに科した『戒め』であった
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「耳が詰まってんのかよ!?きーこーえーまーせーんーでーしーたー!?」
(;^A )そ「っ……」
耳たぶを掴み上げられ、至近距離から鼓膜が突き破れんばかりの大声で怒鳴られる。思わず振りほどこうとして、それも必死に抑え込んだ
興が乗って来たのか、店長は徳雄の耳をグイと引きずり回し、タバコが鎮座する団子の前に押し出した
消えかけではあるが、まだ立ち上る紫煙と、か細い火で炙られた団子の甘い臭いが混じり合って、鼻腔の奥をツンと刺激する
64
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:04:55 ID:HvEjlB4M0
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「ここまでお膳立てしてやったんだからよぉ!?中卒の能無しでもわかるよなぁ!?」
:(; A ):「ぐっ……」
変わらねばならない。己の尊厳を守るために研ぎ澄ませた肉体と心を行使してはならない
自らに必要なのは『耐え忍ぶ心の強さ』。それを得て初めて、徳雄はこれまで培ってきた『鬼』から逃れられる
:(; A ):「は、い……」
もう二度と、あんな思いをさせなくて済むように
もう二度と、怯えた表情をさせなくて済むように
もう二度と、『親友』が歩むはずだった輝かしい未来を閉ざさずに済むように
:(; A ):「……」
宇都宮徳雄は、虐めと代わりないパワハラを、この『OHANAMI』で受け続けていた
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「サッサとしろよこっちも忙しいんだ!!いつまでもてめえみたいなカスに付き合ってられねえんだよ!!」
:(; A ):「……」
調理台に顔面を押し当てられながら、タバコで汚れた団子に手を伸ばす
『我ながら惨めだな』。自嘲こそ浮かべなかったが、自身の意志の固さ、『頑固さ』には呆れて感心してしまう
:(; A ):(『罰』にしちゃあ、上等だろうけどよ……)
なんとか顎を開き、団子を迎え入れる準備を整える。頭上からは、『グヒ』と卑下た嗤い声が降って来た
65
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:05:25 ID:HvEjlB4M0
「何してんだテメェ」
.
66
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:06:36 ID:HvEjlB4M0
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ハァ!?見てわかんねえか躾だよしt……」
どこかで聴いたことのある声に、団子を運ぶ手が止まる。耳を掴む手から解放され、徳雄は身体を台から起こした
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「は……えと、あの……」
先ほどとは打って変わってビクつき始めた店長の前には
(#####´^#ω#^#`)「は???????急に喋れんくなったんか??????????」
信じられねえほどキレ散らかしている中年と
(´・_ゝ・`)「顔ヤバ」
信じられねえほどハゲ散らかしてる中年の姿
その内の一人は見覚えがあった。直接対面したことは無いが、店内に展示してある社長の顔写真は毎日嫌でも目に付くからだ。しかし―――――
(;'A`)「社長……?いや、でも……」
どういうワケか、つい最近会った気がしてならなかった
67
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:09:05 ID:HvEjlB4M0
(#####´^#ω#^#`)「昨日、お客から暴力沙汰に遭ったって聞いたもんで見舞いにきてやったんだがよ……ちょーっとそれどころじゃない現場見ちまったなぁ……?」
(´・_ゝ・`)「ええ。厨房での喫煙に行き過ぎた指導。これは見過ごせませんね」
今にも『エンコ詰めろや』とでも言わんばかりの迫力に、店長の膝はガクガクと震えだす
実際、キレ散らかしてる社長は包丁を手に取り、まな板に思いっきりぶっ刺した。こんなん社長やなくて組長やんって感じ
(#####´^#ω#^#`)「納得のいく説明……してくれるかな?」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「あ……こ、こいつです!!こいつが隠れてタバコ吸ってたんで、キツく指導を!!そ、そうだよな!?な!?」
(;'A`)「……」
最早言い逃れは不可能に近いが、この期に及んで部下に責任を押し付ける根性と、クズ丸出しのしょうもない機転は大したものだと感心する
目尻には涙を浮かべ、怯えと嘆願が入り混じる腐った性根を映し出す目に救いを求められている。『ふざけんな』とでも一言漏らせば、彼は一瞬にして職を失うのだろう
(;'A`)「はい……そうです……」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「!?」
(#####´^#ω#^#`)「ほぉ……?」
漫画や映画でよく見るような、『手を下すまでも無い』という気持ちはこういったものなのだろう
見るも絶えない人間性に、徳雄は自然と、諦念と呆れを含めて虚偽の白状をした
(´・_ゝ・`)「……社長」
(#####´^#ω#^#`)「おう……ちょっとツラ貸せや……」
(;'A`)「ハイ……」
二人の後に続き、バックヤード兼事務所へと続く。背後からは、心底安心したかのような大きなため息が聞こえたのであった
68
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:09:52 ID:HvEjlB4M0
―――――
―――
―
(´^ω^`)「磯野ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!自動戦車やろうぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!」クズゥウウウウウウウンァァン!!!!!!!!!!!!
(;'A`)「え……????????????」
(´^ω^`)
(;'A`)
(#´゚ω゚`)「はいって言えやァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(;'A`)そ「いや何の話っすか?????????????????????」
69
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:12:31 ID:HvEjlB4M0
(´・_ゝ・`)「交渉下手ですか?順序を踏まえて一からご説明ください。お前、叫んだら大体の要求通るとか思ってんのか?四十過ぎて赤ちゃんと同レベルか?」
(´^ω^`)<オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!
(;'A`)「ちょっ……あの、幾つか質問、いいっすか?」
余りの様変わりに頭が可笑しくなりそうなのを何とか堪え、徳雄はおずおずと挙手をした
(´・_ゝ・`)「ああ、すまないねウチの社長が人間クズで。どうぞ」
(;'A`)「あの、とりあえず貴方は……?」
(´・_ゝ・`)「申し遅れたね。私は『盛岡 出海(いでみ)』。社長秘書を務めさせて頂いている。そしてこれが」
(´^ω^`)「誰だいって顔してんで自己紹介させて貰うがね!!俺はお団子焼きの『大潮 本八』!!!!!テメーらクズ共を取り纏める社長さんだ!!」
(;'A`)「あ、はい……『宇都宮 徳雄』っす……」
今まで抱いていた『社長』という役職へのイメージは、物の数秒でガラガラと崩れ落ちる
厳格、誠実とは程遠い、悪い意味でそのままの『人間らしさ』に、取り繕うのも忘れて間抜けな自己紹介をしてしまった
(´・ω・`)「まぁ座れよ兄ちゃん。災難だったな色々とよ」
(;'A`)「ハァ……大体はご察しのようで……あの、間違ってたらアレなんですけど……昨日の爺さんですよね?」
(´^ω^`)「ご名答ォ!!!!!!!!!!!!俺と自動戦車やれやァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「だから順序」
(;'A`)「うわぁ……」
(´・_ゝ・`)「いやわかる。やべえのに目ぇつけられたって気持ち凄くわかる。とりあえず我々と話をしてくれるかな?」
(;'A`)「いっすけど……」
70
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:13:27 ID:HvEjlB4M0
(´・_ゝ・`)「交渉下手ですか?順序を踏まえて一からご説明ください。お前、叫んだら大体の要求通るとか思ってんのか?四十過ぎて赤ちゃんと同レベルか?」
(´^ω^`)<オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!
(;'A`)「ちょっ……あの、幾つか質問、いいっすか?」
余りの様変わりに頭が可笑しくなりそうなのを何とか堪え、徳雄はおずおずと挙手をした
(´・_ゝ・`)「ああ、すまないねウチの社長が人間クズで。どうぞ」
(;'A`)「あの、とりあえず貴方は……?」
(´・_ゝ・`)「申し遅れたね。私は『盛岡 出海(いでみ)』。社長秘書を務めさせて頂いている。そしてこれが」
(´^ω^`)「誰だいって顔してんで自己紹介させて貰うがね!!俺はお団子焼きの『大潮 本八』!!!!!テメーらクズ共を取り纏める社長さんだ!!」
(;'A`)「あ、はい……『宇都宮 徳雄』っす……」
今まで抱いていた『社長』という役職へのイメージは、物の数秒でガラガラと崩れ落ちる
厳格、誠実とは程遠い、悪い意味でそのままの『人間らしさ』に、取り繕うのも忘れて間抜けな自己紹介をしてしまった
(´・ω・`)「まぁ座れよ兄ちゃん。災難だったな色々とよ」
(;'A`)「ハァ……大体はご察しのようで……あの、間違ってたらアレなんですけど……昨日の爺さんですよね?」
(´^ω^`)「ご名答ォ!!!!!!!!!!!!俺と自動戦車やれやァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「だから順序」
(;'A`)「うわぁ……」
(´・_ゝ・`)「いやわかる。やべえのに目ぇつけられたって気持ち凄くわかる。とりあえず我々と話をしてくれるかな?」
(;'A`)「いっすけど……」
71
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:15:05 ID:HvEjlB4M0
(´・ω・`)「オメーがどうしてあのクソ野郎を調子に乗らせるような態度を取り続けてるのかとか、なんであれだけされて辞めないのかとかは面倒だから聞かないとして」
(;'A`)「はぁ……それでいいんすかね社長が」
(´・ω・`)「どうせこの後リニューアルと称した大幅な人事異動と店内改装行ってマイナスイメージの払拭をするから」
(;'A`)「じゃあ自分もクビっすか?」
(´・ω・`)「暫く休業という形を取るから、収入は入らねえ。進退は各々に決めてもらう形になる。ただ、お前に関しては別の道も用意した」
i-Ringからホログラムの電子書類を映し出し、スワイプして徳雄の持つi-Ringへと送信する
受信した書類に目を通すと、参羽鴉が運営する自転戦車チームへの入団契約書であった
('A`)「『スカウト』っすか」
(´・ω・`)「せやで」
('A`)「あー……おたくの会社が自転戦車のチーム運営してるって話なんて聞いたことねえんすけど」
(´^ω^`)「おおこれから作るからな!!今んとこ俺しかいねえよ!!」
(;'A`)「はぁ……」
(´・_ゝ・`)「不安になるのもわかるが、これはれっきとした『正社員登用』だ。アルバイトとは給与も待遇も格段に違ってくる。勿論、トレーニング環境や成果に応じた賞与も用意する。悪くない話だろ?チームメイトが『これ』であること以外」
('A`)「そこめっちゃネックじゃないっすか?」
(´・_ゝ・`)「キミ、頭良いね」
(´^ω^`)「お前ら俺が社長ってこと度々忘れない?ぶち殺すぞ?」
('A`)「昨日の段階で腕折っても良かったんすよ?」
(´^ω^`)「聞かずにして置いといたんだけどなんでお前その性格で今まであのクソ野郎ぶっ殺さずに働けてたの?今すげえ感心してんだけど」
72
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:20:24 ID:HvEjlB4M0
('A`)「別に」
ふい、と目を逸らし、不貞腐れたような表情を見せる。本八はすぐさま椅子から立ち上がり、徳雄の視線へと納まった
(´^ω^` 三 ´^ω^`) ニコヤカサイドステップ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とてもウザい顔で。死ねよ
('A`)「『耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ』ってのが、大人じゃないんすか?わざわざ視界に入ってくんなジッと出来ねえクソガキかアンタ?」
(´・_ゝ・`)「こういう奴なんだ。殴っても良いよ」
('A`)「アンタはアンタで本当に秘書か?」
(´^ω^`)「なるほど、一理ある。俺なら普通にぶっ殺すが」
('A`)「……まぁ、俺も昔、相当キレやすいクズだったんで。その矯正も兼ねてっすかね」
(´^ω^`)「」
(´^ω^`)「ん??????????????」
本八と盛岡は顔を見合わせる。アレだけの仕打ちを受けて尚、これまで暴力沙汰を起こさずに済んでいるのだから、既に相当の根気強さは身についているだろう
他の職場へ移れば、並大抵のストレスじゃ動じない筈だ。それでもまだ足りないと感じているから、この場に籍を置いているのだろうか
徳雄にどんな過去があるにせよ、『異常』であることに変わりない。本八はいつものむかっ腹が立つ笑顔のままであった。盛岡は『どうかそのままでいてくれ』と願った
(´^ω^`)「まぁそれはもうええやろ!!クズでも生きていけるんだからさ!!俺と自動戦車やれやァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
('A`)「……その、折角のお誘いなんですけど」
(#´゚ω゚`)「はいって言えやァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;'A`)「うるさっ……辞退させてもらいます」
(#´;ω;`)「やってよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!やってくれなきゃやだやだやだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
73
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:22:58 ID:HvEjlB4M0
床に仰向けになり、三歳児のように泣き散らかしながら手足をバタつかせる四十代のオッサンの姿はそれはそれは見苦しく
(;'A`)「うわぁ……」
(;´・_ゝ・`)「うわぁ……」
まだ頭がまとも(一名頭髪がまともじゃない)な二人は、『社長』に向けて嫌悪感を露わにした。それでもあまえんぼうよりはだいぶマシであった
(;´・_ゝ・`)「その……理由を訊かせて貰えるかい?」
(#´;ω;`)「ひぐっ!!うええええええ!!!!!!!ママーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;'A`)「は、はい……なんで俺?って疑問があるのと……」
(#´;ω;`)「やってやってやってえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!やってくれなきゃやだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;'A`)「多分……やるにせよ長くは続かないっつーか……そうっすね。正直、自動戦車、に……あんま興味もねえし……」
(#´;ω;`)「な゛ん゛て゛そ゛ん゛な゛こ゛と゛い゛う゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(#´・_ゝ・`)「失礼。オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(;´゚ω゚`)・'.。゜「ハヤヒデェ!!!!!!!!!!!!!!!!??????????????」
身体が若干浮き上がるほどの強烈な爪先蹴りを腹に喰らわせると、本八は蹲って静かに苦しみに狂い悶えた
(´・_ゝ・`)「どうぞ」
(;'A`)「アンタらみてーな危ない連中と付き合っちゃいけねえって本能が警告してるからっすかね一番の理由は!!」
(#´・_ゝ・`)「オメーが原因じゃねえかこのクズが!!!!!!!!クズッ!!!!!!!!!クズがよぉ!!!!!!!!!!!」
(;´゚ω゚`)そ「ちょっ、おま、やめ……やめろや!!!!!!!!!!!!!!!」
立て続けにストンピングで社長を攻め続ける秘書を見て、徳雄は自分の判断が間違っていないと確信した
(;'A`)「あの……もういいっすかね?とりあえず、休業になるまでは勤めさせて頂くんで……」
(;´・_ゝ・`)「ハッ!!い、いやもう少し考えて……」
74
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:26:34 ID:HvEjlB4M0
(´ ω `)「燻ってんじゃねえのか?」
.
75
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:28:00 ID:HvEjlB4M0
('A`)「……」
(;´・_ゝ・`)(始まった……!!)
徳雄の『本質』へと、本八は鋭くメスを入れた。よっこらしょと身を起こし、床に胡坐を掻いて徳雄を見上げる
('A`)「……なんすか、燻ってるって?」
(´・ω・`)「とぼけんじゃねえよ若造がよ。オメー、戦わずにはいられねえタイプの人種だろ?」
('A`)「ハハッ、ヤンキー漫画の読み過ぎじゃないっすか?」
(´・ω・`)「『マメ』だ」
(;'A`)「っ……!!」
掌を隠すようにように裏返すのを、二人は見逃さなかった
(´・ω・`)「何も戦いってのは喧嘩や殺し合いだけじゃねえ。『スポーツ』や『格闘技』。点数や順位つけて相手を蹴落とす競技にも当てはまる。鍛錬をすれば、マメや筋肉といった努力の証明が映し出される」
(;'A`)「……それが、何か?」
(´・ω・`)「マメが身に付くほどの努力は、言い換えりゃ『勝ちたい』っつー闘争心の表れだ。だが、今はそれを殺す為に躍起になっている」
(;'A`)「は……?」
(´・ω・`)「『ぶつけ先』を見失ったのか、そいつが原因で何かしら問題を起こしたのかは知らんが……よくもまぁ、無駄な事に体力使ってんな」
('A`)「は?」
(;´-_ゝ・`)「……」
怒りが燃え上がる前の、空気が冷める感覚。『これには、いつまで経っても慣れない』。盛岡のただっ広い額に冷や汗が流れたが、ハンカチを取り出すのも躊躇してしまう
これからそれを一身に受けるであろう男は、顔色を『心底愉快で堪らない』といったものへと変化させていく。喉の奥で、込み上げた笑いがクツクツと音を鳴らした
76
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:32:34 ID:HvEjlB4M0
(´・ω・`)「闘争心をぶつける居場所も、相手もいねえのに、『ただ鍛錬だけは惰性で続けてる』。そんなとこだろうと踏んだんだよ」
('A`)「……手のマメ一つで、そこまで妄想繰り広げられんのか。めでてえ頭してんな、アンタ」
(´・ω・`)「違うなら違うって言えや。俺が欲しいのは、惰性の鍛錬で作り上げた身体と、オナ禁してるみてーに悶々と抑え込み続けてる闘争心だけだ。ハッキリ言って、オメーの過去なんざこれっぽっちの興味もねえよ」
('A`)「ハハッ……一つ良いこと教えてやるよオッサン」
(;´・_ゝ・`)(マズっ……)
盛岡が間に入る隙もなく
(;´゚ω゚`)「ッ!?」
( A )「……」
本八は胸倉を掴み上げられ、ロッカーへと押し当てられる
徳雄からは、今にも喉笛を噛みちぎるんじゃないかと錯覚するほどの怒気が、鼻息となって荒く噴き出した
(#'A゚)「『触らぬ神には祟りなし』っつー、先人のお言葉をよ……」
(;´゚ω゚`)「カッ……ク……」
(;´・_ゝ・`)「……落ち着……!?」
首が締まっている。流石にこれは看過できないと、徳雄を引き剥がそうとしたが
当の本人が示した『止めるな』のハンドサインによって、辛うじて踏みとどまった
(;´・_ゝ・`)(まだ踏み入る気か……!!)
『怒り』とは、確かに本心を引き出すファクターだ。だが、『憎悪』や『拒絶』をも引き起こす危うさを孕んでいる諸刃の剣でもある
行き過ぎれば、修復が不可能なほどに関係にヒビが入ることは明白。いつもなら、いい塩梅で切り上げている頃だ
(;´・_ゝ・`)(こりゃ、相当入れ込んでやがるな……)
本八は、自他共に認めるクズではあるが、『愚か』ではない。考えあってのことなのだろう
ならば此方は静観を決め込む他ない。盛岡は、自身の胸中で早鐘を鳴らす鼓動を抑え込むように両の腕を組んだ
77
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:36:58 ID:HvEjlB4M0
(#'A゚)「俺からもハッキリ言うぞ?ええ?自動戦車なんてお遊び、付き合う義理も時間もねえ。幾ら金積まれようが、答えは同じだ。『嫌だね。断る』」
(;´゚ω゚`)「キッ……」
(#'A゚)「わかったらとっとと失せろ。そんで二度と俺に関わんじゃねえ。テメーが構えた店の中で死にたくなきゃあな」
(;´ ω `)「……」
決定的な拒絶が突き刺さったのか、本八はガクリと項垂れる。心が折れたと悟った徳雄は、胸倉を掴む力を緩めた
だが、彼は間も無く、身を以て知る事となる。本八の『本質』を
(´^ω `)「ガキが……」
本八が、クズの仮面の下に隠していた、燃え盛るような『怒り』を
(;'A`)そ「なっ……ッ!?」
胸倉の手を振り払い、今度は本八が徳雄の胸倉をキツく締め上げて大きく踏み出し、休憩用のテーブルへと押し倒す
額が触れそうなほど近く。しかしロマンチックな情緒とは程遠い、憤怒に満ちた表情で、困惑を隠しきれない徳雄を見下した
(#´゚ω゚`)「いいかよく……よく聞けよクソガキ……俺の店は、お前の情緒教育の為にあるんじゃねえんだよ……」
(;'A`)「……」
(#´゚ω゚`)「美味えもんと癒しを求めていらっしゃる、お客様の為だ……そしてお前らバイトや社員に、お客様に奉仕した報酬として、賃金を支払ってんだよ……『耐え難きを耐え』だのと『矯正』だのと、テメーの無意味な自己満足に支払う金なんて一銭もねえんだ……わかるか?ええ?」
(;´・_ゝ・`)(うわぁ……)
『もう取り返しつかねえなこれ』。盛岡は早々に諦めムードに入った
78
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:42:32 ID:HvEjlB4M0
(;'A`)「……店がこの有様なのは、俺に非があるとでも言いてえのかよ?」
(#´゚ω゚`)「オメー『も』だ……サッサと抵抗なり報告なりしてりゃあ、俺も高え金払ってリニューアルなんてしなくても良かったんだよ……当然、経営者である俺にも非はある……だけどな」
(;'A`)「……」
(#´゚ω゚`)「労働』に唾を吐くような自分本位の行為が、魂胆が、我慢ならねえんだよ……」
大潮 本八は、『人は感動を食べて生きていける』などと、世迷いごとを宣うような経営者ではない
労働とは金を貰う手段であり、それ以上の意味を持たない。社会貢献など二の次三の次。最優先すべきは労働者一人一人の生活であり、幸福だ
奉仕とは、自己が満たされているからこそ十二分に行える。故に、本八は社員やアルバイトへの賃金、休暇は惜しまず与える。それが更なる『利益』に繋がると確信しているからだ
(;´・_ゝ・`)(そりゃ、キレるわな……)
徳雄が、報復を恐れてパワハラの報告が出来なかったのなら、本八の怒髪が天を衝くこともなかった
だが、本人の口からハッキリと『自己都合』でズルズルと現状を放置し続けていると聞いてしまった
経営者である本八からしてみれば、徳雄は賃金を受け取りながら、客前で自傷行為をしているようなものなのだ。それが何より許し難かった
(#´゚ω゚`)「いいかガキ……俺が提示した自動戦車チームへの勧誘はな……仕事を舐め腐ってるボクちゃんには勿体ねえほどの高待遇なんだよ……高え金払うだけの価値を見出したからだ……」
(;'A`)「……だったらもうちょっとそれらしく振舞ったらどうだオッサン」
(#´゚ω゚`)「振舞ってやってるぜ……?今すぐ足腰立たなくなるまでぶん殴ってやりてえところを我慢してんだからよ……」
(#'A`)「そうかよ……そんじゃあ好きにしたらどうだ?」
(#´゚ω゚`)「言ったなクソガキ……」
言われるがままに、高々と振り上げた腕を
(´・_ゝ・`)「そこまで」
盛岡が、掴んで止めた
79
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:45:29 ID:HvEjlB4M0
(´・_ゝ・`)「頭を冷やして下さい。勝ち目のない喧嘩をする為に、わざわざ出向いたのでは無いでしょう?」
(#´゚ω゚`)「邪魔すんじゃねえ数少ねえ髪の毛毟り取るぞ」
(´・_ゝ・`)「本八」
名を呼ばれた本八は、自らを宥めさせるように目を瞑って深呼吸を繰り返し
(´-ω-`)「……わーったよ」
徳雄の胸倉から手を放した
(;'A`)「っ……恩に着せようってんじゃないっすよね」
(´・_ゝ・`)「こいつに怪我されて困るのは僕なのでね。キミも、これに懲りたら『仕事』に対する認識を改めるべきだ。苦行がしたいなら修行僧にでもなりなよ」
(;'A`)「……」
テーブルから身体を起こし、乱れた襟を整えた徳雄は
('A`)「すんませんでした」
深々と、頭を下げた
80
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:53:29 ID:HvEjlB4M0
(´^ω^`)「初めからそうやって謝っときゃ良いんだよこのバカ!!!!!!!!ブッッッッッッッサイクが!!!!!!!!!クソガキ!!!!!!!!!ヴァーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!俺と自動戦車やれやァァァ!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「はい台無し」
そしてこれが四十代のクソガキの姿であった
(´・ω・`)「で?どういう風の吹き回しだよ?」
('A`)「……反省しただけっす。正直、常識の欠片もなさそうなオッサンに説教されるとは、思いもしなかったっす」
(´・ω・`)「おいデミー、こいつ反省してねえぞ」
(´・_ゝ・`)「至極真っ当な意見だろ。オメーも彼を見習って自分を省みたらどうだ?」
胸倉を掴み合った中年を放っておいて、徳雄は取っ組み合いで大きく動いたテーブルを元の位置に戻し始める
それを見た四十代のクソガキ共も、静かに片づけへと取り掛かった
('A`)「……その、自動戦車の件すけど」
(´^ω^`)「やれやァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!反省を行動で表せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
十秒も静かにお片付け出来なかった
('A`)「やっぱ、すいません、出来そうにねえっす」
(#´^ω^`)「クソがよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「出来ないってのは、キミの性格の矯正が関わっているのかな?」
('A`)「そうすね……社長が仰った通り、昔そいつで一悶着起こしちまって……」
(´・ω・`)「『それだけ』か?」
81
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:55:49 ID:HvEjlB4M0
('A`)「……すいません」
乱雑した丸椅子を、テーブルへと均等に並べた徳雄は、再び頭を下げる
('A`)「答えは変わりません。再三申し上げますが、今回の件は辞退させて頂きます」
(´-ω-`)「……」
(´・_ゝ・`)「……わかった。此方こそ忙しい中、時間を取らせて申し訳なかった」
('A`)「いえ、勉強させて頂きました。短い間ですが、お世話になりました」
(´-ω・`)「ん」
本八は軽く手を振って別れの挨拶に応えると、バックヤードから厨房へと出る扉に手を掛けた
(´・ω・`)「若造」
('A`)「はい?」
(´・ω・`)「何でもかんでも我慢して耐えるだけが大人じゃねえ。誤ちに、真っ向から刃向かえる芯の強さがあって初めて『大人』だ」
('A`)「……はい」
(#´゚ω゚`)「それと!!」
(;'A`)そ「はいぃ!?」
(´^ω^`)「テメーの間違いを素直に認め、反省出来るのも、子供の見本たる大人の姿だ。その点に関しては、オメーは及第点だぜ」
82
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 21:57:52 ID:HvEjlB4M0
(´・_ゝ・`)「……」
本八は抜け目のない男だった。僅かな可能性を増やす為に、最後はご立派な年長者の格を見せ、若者に尊敬の念を抱かせた
タチが悪いのは、語る言葉の全てが『偽り』ではないということ。ただそれを、事もあろうに『自分本位』に使った
相手が老獪な手練れであるならば、効果も薄い。だが標的は二十を過ぎて二、三年の若者だ。年の功は、十分に通用する
(´・_ゝ・`)(二枚舌がよ……)
他人には『自分本位が気に入らない』と言っておきながら、当の本人はエゴの塊だ
二十年前に同じような手口で言い負かされた盛岡にしてみれば、思う所の一つや二つあったが、懐刀となった今となっては、ただただ感心が勝る
(´・_ゝ・`)(狡猾なクズほど厄介なモンはいないな……)
『人の感情を手玉に取る、とんでもねえ畜生だな』と
(´・ω・`)「そんじゃあな。改装まで短い時間だが、後は頼む」
('A`)「……はい、ありがとうございました」
事実、別れを済ませてバックヤードの扉を閉めた瞬間
(´^ω^`)「チョロいぜ」
(´・_ゝ・`)「うわクズ」
盛岡にしか聞こえないほどの声量で、早速本性を表したのだから
83
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:02:22 ID:HvEjlB4M0
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ああ、お疲れ様でした!!」
(´^ω^`)「あー、おめえか」
迫真の『仕込み』の余韻に浸る間も無く、ヘコヘコと情けないお辞儀を繰り返しながら店長が擦り寄ってくる
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「そ、その……奴はどうなされましたか……?ああいえ!!もちろん、監督不行届の私めにも責任はございます!!何なりと処分を!!」
口ではこう言うものの、内心は保身で頭がいっぱいなのだろう。表情がアレなんで傍目には読み取り難かった
(´^ω^`)「うん!!!!!!!悪いようにはしねえよ!!!!!!あいつ自分が悪いって言ってたしな!!!!!!指示あるまで営業続けてて!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「やれやれ……」
『お咎めなし』と捉えたのだろうか。店長の顔色はパッと明るくなった
いつまで経っても我が身が可愛い彼の姿もまた、一つの『大人』の姿なのだろう。徳雄と比べて歳を重ねている分、矯正も難しい
そもそもの元凶はこれなのだ。徳雄への説教など比にならない程の地獄を見せられるのは、そう遠くはない
(´^ω^`)「じゃあな!!お大事に!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「は、はい!!今後とも、社長の為に粉骨砕身、働かせて頂きます!!」
(´^ω^`)「うん!!!!!!!じゃ!!!!!!!!!」
適当な挨拶を返し、本八の嫌に速い歩速に合わせて、二人は店を後にした
84
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:04:35 ID:HvEjlB4M0
(;´-ω-`)「ッハァ〜〜〜〜〜〜〜〜……」
(;´・_ゝ・`)「疲れる……」
車に乗り込んだ瞬間、崩れ落ちるかのように肩の力を抜く。救いようのないアホの店長の相手もそうだが、何より
(;´・ω・`)「めんどくせぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
(;´・_ゝ・`)「やはり一筋縄ではいかない相手ですね……」
チームメイト候補の『頑固』さが、これから先の苦労を確固たるものにしたからだ
(´・ω・`)「はい、わかったこと」
(´・_ゝ・`)「過去に遺恨あり、闘争心の保持、そして根は『クソ真面目』」
(´・ω・`)「もう一つある」
(´・_ゝ・`)「ええ、恐らく過去の問題は『自動戦車』、あるいは『自動戦車に携わる選手』に関わっていると見ていいでしょう」
会話の中で、徳雄は詰まり気味に『自動戦車』と言った。些細ではあるが、『引っ掛かり』としては有効な証言だ
性格を理由に勧誘を断った際、本八が追加で問いただした時も、彼は答えずにただ謝罪しただけであった
(´・_ゝ・`)「つまり、彼の過去と、彼に関わる自動戦車の『何か』さえ突き詰めれば……」
(;´-ω-`)「野郎を陥落させる糸口は掴めるっつーこった……めんどくせえ……俺ァ一介の社長であって、カウンセラーじゃねえっつーの……」
(´・_ゝ・`)「やる気で?」
(´^ω^`)「たりめーだろオイ!!!!!!!!!!!!!あんな逸材は滅多にいねえ!!!!!!!何なら重役として働かせてえくらいだ!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「よほどお気に召したようで」
(´^ω^`)「カカカ!!いーねぇ若いってのはよぉ!!オイ出せ!!時間はねえぞ!!改装や人事異動だってグズグズしてられねえんだ!!とっとと取り掛かるぞ!!」
(´・_ゝ・`)「了解致しました。社長閣下殿」
85
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:06:26 ID:HvEjlB4M0
盛岡は車のエンジンを始動させ、本社へと車を走らせる
(´・_ゝ・`)「そういえば」
ふと、最後に残った滓のような問題が気になった。『元凶』の始末である
(´・_ゝ・`)「アレの沙汰はどうするおつもりで?」
(´・ω・`)「ああ、あいつね。新卒相当までの降格と減給。地獄のハラスメント研修に送り込んでから半年ほど地下の餅米田園で農作業して貰う」
(´・_ゝ・`)「随分と軽い処罰ですね」
(´・ω・`)「法律とかいうクソルールさえ無けりゃ、切り刻んで生ゴミに出してやりてえよ。なーにが『社長の為に粉骨砕身』だ。この世で最も信用ならねえこと口にしやがって」
(´・_ゝ・`)「では何故、その程度で留めたのですか?」
(´・ω・`)「俺よりもツケを払って欲しい野郎が、あの場に残ってるからな」
(´・_ゝ・`)「ああー……」
(´^ω^`)「吹っ切れたあいつなら、キッチリ型に嵌めんだろ。心残りなのは……」
(´^ω^`)「あいつの中に宿る『鬼』を、この目で拝められねえって事くれえだ」
(´・_ゝ・`)「……今後、嫌というほど味わう羽目になるでしょう。その為の働きかけだ」
(´^ω^`)「おおその通り!!奴には俺の『脚』になって貰わなきゃなんねえ!!」
(´・_ゝ・`)「彼の痛い所を突っつき回して、矛先が此方に向かわなければいいのですが」
(´・ω・`)「そうなんだ大変だね」
(´・_ゝ・`)「大変なのはテメーだ」
本八は車内が揺れるほど、大きな声でガハハと笑う。『鬼』を御さんとせん者の、『悪魔』のような笑い声であった
(´^ω^`)「これからもっと楽しくなるぜぇ!!なぁ、デミー!!」
(´・_ゝ・`)「うるせえな静かに笑え」
盛岡の文句などお構いなしに、本八はまた大きく笑い声を上げたのであった―――――
86
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:09:54 ID:HvEjlB4M0
―――――
―――
―
二人が出て行ってから数分後、バックヤードから出てきた徳雄を迎えたのは、感謝でも謝罪でも無く
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「いつまでここにいるんだよ。クビ切られたんだろ?サッサと荷物纏めて出ていけやクズ」
('A`)「……」
侮蔑をこめた別れの言葉だった
('A`)「……もう暫く、お世話になることを許してくださいました」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ハァー……チッ、何考えてんだあのオッサンはよ……」
『ボス』がいなくなった途端、元の猿山大将に逆戻りだ。先ほど注意されたにも関わらず、またもや厨房でタバコを吹かしている
('A`)「……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「何だよ……文句あんのか!?ああ!?『助けてやった』とでも言いてえのか!?」
('A`)「いえ……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「お前みたいな役立たずを今まで置いてやっただけありがてえと思えよ!!お前が俺に掛けて良い言葉はなぁ!!『身代わりにさせてくださってありがとうございます』だ!!言えよほら……言えよ!!」
('A`)「……」
怒号を見に受けながら、徳雄は本八が言い残した『後を頼む』の意味を考えていた
社長に見込まれたとはいえ、現時点ではアルバイトでしかない自分に、彼は何を『頼んだ』のであろうかと
言葉の綾と言えばそれまでだが、『大人』である彼が、ただの社交辞令で意味の無い言葉を残すとは思えなかった
('A`)「……」
『後を頼む』。それは、若造である自分でも出来ることなのだろう。あの短いやり取りで、自分の本質を見抜いた彼が、任せられない仕事を押し付けはしないだろう
彼はこういった。「何でもかんでも我慢して耐えるだけが大人じゃねえ。誤ちに、真っ向から刃向かえる芯の強さがあって初めて『大人』だ」。と
87
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:11:08 ID:HvEjlB4M0
('A`)「あ」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「ああ!?」
何となく、腑に落ちた気がした。労働を甘く見ていた自分に、あれだけ怒りを燃やした本八が、パワハラの主犯に何もせず去ったのは、その役目を自分に与えたからなのだ
('A`)「あーあー……」
|;;;;|#,'っノVi ,ココつ「なにを惚けてんだよてめえはァ!!!!!!!!」
低い沸点に到達した顔面崩壊太郎が、徳雄の胸倉に手を伸ばす。それよりも、遥かに早く―――――
|;;;;|;,'っノVi ,ココつそ「ングッ……!!」
('A`)「……」
徳雄の右手が、店長の首を鷲掴みにした
('A`)「謝るよ。いつまでも煮え切らねえ態度で、アンタをここまで調子づかせたことを」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「はっ……カッ……!!」
('A`)「その上で、ずっと腹に抱えてたもんもぶちまけてやる」
息を大きく吸い、酸欠で赤く染まっていく顔に向かって
(#'A゚)「いつまでも調子乗ってんじゃねえぞカス野郎がァッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
店長の喚き声を上回る、怒号を発した
88
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:14:48 ID:HvEjlB4M0
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「っ……!!」
(#'A゚)「社長が来た意味をまだ理解してねえのか!?俺らが滅茶苦茶にしちまった店の有様を見に来たんだろうが!!この期に及んでまだ俺にご執心か!?ああ!?」
意識が落ちる寸前で、徳雄は首から手を放す。激しく咳き込む店長を、文字通り『鬼』の形相で見下した
(#'A゚)「これ以上店に泥を塗るような真似すんじゃねえ!!猶予は残ってねえが、少しはマシな営業出来るように足掻いてみせろや!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「てめっ……俺にこんな真似してタダで済むと……!!」
(#'A゚)「あーあーあーあーお前本っ当にバカだな!!俺が何の対策も打たずに日々を耐えてたとでも思ってんのか!?」
i-Ringを起動させ、店長の目の前にホログラム映像を映し出す
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「なっ……」
それは、彼が徳雄に対して行ったパワハラの、紛れもない証拠映像であった
(#'A゚)「ちゃんと『保険』は掛けてんだよ!!マヌケなテメーと違ってな!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「お前……最初から、これが目的で……」
(#'A゚)「……っんでそんな意味のねえことを……俺が求めてんのは!!ちゃんと!!しっかり!!仕事して欲しいだけだ!!こんなもん吹かしてる暇なんてねえだろ!!」
床に転がったタバコを踏み消すと、騒ぎを聞きつけた他のアルバイターが戦々恐々といった様子で厨房を覗いているのに気が付いた
(#'A゚)「てめえらにも言ってんだぞコラァ!!!!!!!!!!アホ面並べてねえで便所でも掃除してこねえか!!!!!!!!」
一喝すると、蜘蛛の子を散らすかのように業務に戻ったのを見て、頭に昇った血を鎮めようと深呼吸をする
店長は唖然としながらも、壁に背を預けて立ち上がろうとしたが、これまで侮っていた相手が見せた怒涛の剣幕に、足腰が怯えて言う事を聞かなかった
89
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:17:31 ID:HvEjlB4M0
(#'A`)「ああ、その……すみ……いや、謝るのは気に食わねえのか……とにかく、社長は店内の改装と人事異動をすると仰ってました」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「は……な……?」
(#'A`)「ただ、すぐに手を下さなかったのは、我々に猶予を与えてくださったんだと思います。恐らく、少ない時間でしょうし、焼け石に水になるかもしれない。それでも……」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「……」
(#'A`)「真っ当な社会人に『生まれ変わる意志』ってのを、示すだけ示してみましょうよ。例えそれが届かなくとも、自分が納得できるように」
返答を待たず、徳雄は開店の準備に取り掛かった。自動戦車に足を踏み入れるつもりは無かったが、それでも今日の出来事は、本八との出会いは
('A`)「ハァー……」
徳雄を、一歩『大人』へと近づけたに違いないのであった
90
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:19:47 ID:HvEjlB4M0
次回予告
(´・ω・`)「結局、アレの過去を掘り返さねえといけねえのクソめんどいわ……」
(´・_ゝ・`)「めんどいのは俺だよその辺の調査全部丸投げしやがって」
(´・ω・`)「それが仕事だろ」
(´・_ゝ・`)「俺の仕事は会社経営の補佐なんだよ」
(´・ω・`)「それはさておき、奴が中退した高校から一人、有力な自動戦車のジョッキーが輩出されてるってのはマジか?」
(´・_ゝ・`)「ええ。アイドルと自動戦車プレイヤー、二足の草鞋を履いています。面白い事に、宇都宮くんと同級生ですね」
(´^ω^`)「ほっほー!!良いねえ!!愉快な匂いが立ち込めてきやがった!!」
(´・_ゝ・`)「すいません屁をこきました」
(;´゚ω゚`)「ゲェェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ヴォオオオオオオオオオオッッッエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!」
(´・_ゝ・`)「次回、『Desperado Chariots』第三話。『流れ星』」
(;´゚ω゚`)「ウッッッエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!死ぬーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
91
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/05/04(火) 22:25:41 ID:HvEjlB4M0
申し訳程度のライスシャワーちゃん要素です。よろしくお願いします
キングヘイローも好きです。誕生日にクラシック三冠成し遂げた一流トレーナーが僕です
92
:
名無しさん
:2021/05/04(火) 23:02:37 ID:3cKWRV6Q0
乙!!!!!! おもろかった
93
:
名無しさん
:2021/05/05(水) 00:59:42 ID:fxbmKoGo0
乙!
先が楽しみで仕方ない
94
:
名無しさん
:2021/05/05(水) 07:48:40 ID:NPt9lS4w0
おつです
95
:
名無しさん
:2021/05/07(金) 16:02:12 ID:.jA7Gthw0
乙乙
ショボンのクズだけど体張ってる案配が見てておもしろい
96
:
名無しさん
:2021/05/18(火) 13:31:01 ID:oEoavgvI0
おつ
次も読む
97
:
名無しさん
:2021/05/18(火) 20:24:21 ID:Ce3s8nNk0
ショボンのような上司が欲しい
98
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/06/19(土) 00:36:45 ID:SnGZq0Ao0
本編には何の関りも無いしウマとファークライ5で三話は全然書いてないんですが今週とてもショックな出来事があったので急に関連作の話をします
御華見衆の参羽鴉シリーズ
(´・ω・`) 信じられねぇくらいギチギチに三人同時に落とし穴にハマったようです ※御三家が酷い目に遭う話
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517198071/
('A`) 大事なことは全部春画が教えてくれたようです ※御三家が酷い目に遭う話
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1559137734
( ^ω^)ビンビン敏感!!乳首一本釣りのようです ※デブの乳首が酷い目に遭う話
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569672415
ブーン系と天華百剣を組み合わせたSSで、今作はこれの二百年後のお話です。勿論、天華百剣要素は何一つ絡まないのでご安心ください
本当はもっと後になってからマジ本編に一切関わらない裏設定として開示しようと思ってたんですが、僕が四年間続けていた『天華百剣』というゲームが八月でサービス終了となる為、タイミング的に今やなと思い立ちました
三話頑張って書きます
99
:
名無しさん
:2021/06/19(土) 15:00:00 ID:58ES51Wk0
ショックでかいよ・・・
100
:
名無しさん
:2021/06/19(土) 18:56:59 ID:zzZ3scoQ0
どんなジャンルだろうと4年触れてたモノと別れるのはキツいな……
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