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Desperado Chariots

1 ◆L6OaR8HKlk:2021/03/28(日) 22:38:02 ID:1hwLgNFI0
新連載です。よろしくお願いします

795 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:26:03 ID:.buPtdi60
(;;・∀・;;)「あらあら……」


黒間は思わず上唇を這おうとしていた舌を寸でのところで引っ込めた。ドラマが一歩踏み出した足音を、確かに耳にしたのだ
文彦はマイクを取りこぼしそうになりながら掴み上げ、テーブルに膝を打ちながら立ち上がった。記者の中にはその滑稽な様子に失笑を漏らす者もいたが


('A`)「……」


傍らのジョッキーが放った鋭い眼光に、咄嗟に目を伏せた


(;^ω^)「えと、あの、Black  Sheepの内藤 文彦ですお……です」


目は泳ぎ、照明が顔面を滴り落ちる汗を映し出す。傍目から見ても挙動不審な姿に、会場のあちこちから小さく嘲笑が聞こえて来たが、宝木は茶化す事なく静かに耳を傾けた


(;^ω^)「えと、その…………僕らのような新参をライバルと呼んで貰えて、光栄です。それで、その、あの……」


文彦はモゴモゴと口籠った後に、何かを言いづらそうに目を伏せる。少しの間の沈黙に痺れを切らしたのが


(#=゚д゚) 「とっとと喋れやグズが!!何も言えねえなら最初から出しゃばってんじゃねえ!!」


仏頂面で押し黙っていた高城である。苛立ちを拳に乗せて叩いたテーブルの音に、報道陣はビクリと肩を弾ませた


(;^ω^)そ「ご、ごめ……」

('A`)「文彦」


反射的に謝ろうとした文彦を、ドッシリと構える徳雄が止めた。そして、年長者の本八も


(´・ω・`)「ぶちかましてやれや」


珍しく、背中を後押しした

796 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:27:16 ID:.buPtdi60
(;^ω^)「ッ〜〜〜〜〜〜……」


会見に向けた話し合いの中で、文彦は一つだけ要望を出した。それは、跡を濁す形で去った古巣への『けじめ』をつけたいといったものである
Black  Sheep陣営は当初、歩く炎上仕掛け豚(焼豚)である文彦に、会見すら一言も喋らせない方針で貫き通そうとしたのだが、これまで見せたことのない真剣な態度だったのと、何よりここ半年間、文彦の成長を間近で見ていた徳雄の支持、そして親友である木本の懇願もあってか、『それ以外の関係ない事を一言でも抜かしたらミンチ機に放り込んで殺す』という条件の下、特別に許可を出したのだ。そう、キングスマン ゴールデンサークルである
本八も態度こそ渋々であったが、内心では豚に喧嘩を売られるという人生最大最悪の屈辱を味わうバジリスクの苦々しい面を、この日一番の楽しみにしていたのであった

文彦は目を瞑って深呼吸をする。大して緊張は取れなかったが、ようやく踏ん切りはついた


( ^ω^)「ご存知の通り、僕は自分勝手な理由で蟒蛇を早期脱退し、宝木さんを始め沢山の方々にご迷惑をお掛けしました。この場を借りて、謝罪させてください。申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げると、シャッターがその姿を照らす。宝木は変わらず微笑みを携えたまま、文彦に向かって顔を上げろと言おうとしたその時


( ^ω^)「ですが」

( ,,^Д^)「っ……?」


これまで聞いたことのないほど力が込められた声に、言葉を詰まらせた


( ^ω^)「宝木さんが先程仰った通り、あの団体には『僕の才能について来れるプレイヤー』は一人もいなかった。ハッキリ言って、期待外れもいい所でしたお」

( ,,;^Д^)「ふ、文彦……?」


宝木の声は、戸惑いで裏返った。彼が文彦に見せる寛容さは、単に『上の立場』から見下す余裕の表れだ
しかし今、文彦は彼の顎下に『銃口』を突きつけようとしている。それは宝木だけでなく、もう一人にも向けられようとしていた

797 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:29:20 ID:.buPtdi60
( ^ω^)「お集まりの皆様の中には、今年五月にネットニュースにもなった野良試合をご存知の方もいらっしゃる筈ですお。僕と、ここにいるとっく……宇都宮さんだけの、キャプテン落ちチームで、バジリスクの現ジョッキー、高城選手含む蟒蛇二軍の三チームに勝利を納めました。いいですか、1対3、ですお」


凍りつく会場内の雰囲気と相反して、名指しされた高城は怒髪が天を突く勢いでいきり立つ


(#=゚д゚) 「何が言いてえんだ!?アァ!?」


ドンとテーブルを叩いて恫喝する高城に




(# ゚ω゚ )「お前みたいな雑魚を連れて来た分際で僕らを『叩き潰す』なんざ片腹痛いっつってんだお!!!!!!!!!!!」




今度は、一歩も退かなかった

798 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:29:56 ID:.buPtdi60
(#=゚д゚) そ「なっ、あ……?」

( ,,;^Д^)「は……?」

(;-_-)「……」


この場にいる全員だけじゃない。中継を見ている視聴者全員が、オタク丸出しの若者が放つ『覇気』に圧倒された
誰も予想だにしない事態だったのだ。破天荒な本八でも、数々の曰くが付き纏う徳雄でもなく、強者に歯向かう度胸がなさそうな『子ども』が仕掛けるなどと
人とは他人をカテゴライズし、優劣をつけ、カーストという枠組みに嵌めたがるものである。だがこの日、とくと知ったのだ

負け犬にも『牙』がある。一寸虫にも『魂』がある。それがいつ強者へと剥かれても可笑しくはないのだと

799 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:32:12 ID:.buPtdi60
感情の堰が切れた文彦は、もう止まらない。相手に反論の余地を与えず、立て続けに啖呵を切った


(#^ω^)「『強さ、恐ろしさを身をもって知っている』!?バカ言ってんじゃねえお!!未だかつて誰一人として、僕を使いこなせたチームはいなかった!!蟒蛇に在籍している連中だって、固定砲という個性を持つ6shooterを時代遅れの骨董品と見下した!!」


暑苦しいとでも言いたげに、文彦は首元のネクタイを緩めた


(#^ω^)「本当に死ぬほど不本意で気に食わないけど、Black  Sheepというチーム、メンバーによって、ようやく僕のやりたい事が『形を成した』お!!だけど、『完成』はしていない!!チーム結成から予選まで、予選から今日まで、そして今日から本戦まで!!Black  Sheepは成長し続ける!!喰らえば喰らうほど大きくなる!!」


(;; ;・Д・;;)「……」


黒間もまた、呆気に取られている一人であった。投じた一石が、これほどの奔流を引き出すとは予想していなかったからだ
視線を隣にいる青葉へと移すと、彼女もまた期待以上の反応に目を輝かせていた。文彦とバジリスクの『化学反応』は、Black  Sheep推しの青葉にとっても賭けであったからだ
『内藤 文彦』という男子高校生は、見た目を裏切らない子どもである。強きにへつらい弱きをいびり、キャパを超える事態に遭えば幼稚に喚き散らす『主人公とは程遠いモブ』と、多くの者がそのような印象を抱く筈だ
青葉は違った。内藤 文彦に限らず、どのような人種であっても、内に燻る炎が眠っていると信じていた。それが最も熱く爆発する適齢期こそ―――――


(#^ω^)「僕はこの大会で、首級の数を以て6shooterの価値を示す!!誰であろうと、二度と、今後永久に!!時代遅れの骨董品などと呼ばせない!!そして……」

(#^ω^)「蟒蛇の『戦闘最強』という称号を奪い取ってやるお!!!!!!!!!!」


『10代』である

800 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:34:18 ID:.buPtdi60
(;; ;・Д・;;)「……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ひゅー♪」


ほとんど暴走と言ってよい文彦の宣言を嘲笑う者はいなかった。過ちを犯した若き選手の雄叫びは、自身の腕前と愛銃への絶大な信頼に満ち溢れていたからだ
それを何よりも裏付けるのは、Black  Sheepのたった三回の公式記録である。6shooterという使い手を選ぶ武器で、名のあるプロチームを撃破し続けている『実績』が、文彦の宣戦布告が只の虚勢でない事を雄弁と物語っているのだ
ジャパンカップの本戦へ駒を進めたチームは、例外なく全てが『脅威』である。文彦はその存在感を、誰よりも先んじて強烈にアピールしたのだった


(#^ω^)「ブヒー、ブヒー………」

(#^ω^)「…………」

(;^ω^)「…………????????」


放った一撃の威力を知ってか知らずか、我に返った文彦は、自分が今し方なにをしでかしたのかわからなくなっていた。豚にしては上出来だったが、所詮豚は豚であった


(#=゚д゚) 「こっ……がっ……!!」

(#=゚д゚) 「テメェもういっぺん言ってみろガキィ!!!!!!!!!!!!」


ようやく理解が追いつき、理性を追い抜いて立ち上がった高城が、文彦へと詰め寄ろうとする


( ,,;^Д^)「落ち着いてくださいセンパイ!!」


傍らの宝木が咄嗟に抑え込もうとしたが、怒髪天を突く高城の勢いは留まることなく、舞台袖で控えていたスタッフ数名まで慌てて飛び出す事態となった
騒然とする会場内。宝木は視界の端で、変わらず動じる事無く着席する徳雄の姿を捉えた



('∀`)

( ,,;^Д^)そ「ッ……!!」



地獄の業火で踊る罪人を嗤うがごとく醜悪に歪んだ表情が、『お望み通り、敵を連れてきてやったぞ』と伝えていた―――――

801 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/14(火) 22:42:48 ID:.buPtdi60
続きは明日

802名無しさん:2025/10/14(火) 23:39:34 ID:fZkbkktQ0
ひゃっほおおおおおお!
これを待ってた!!!!

803 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:06:44 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



「乾杯!!」


( ^ω^)そ「フゴッ!?」


銅鑼を鳴らしたかのように力強く取られた乾杯の音頭により、長い時間呆けていた文彦もようやく正気を取り戻した


(´・ω・`)「うわ起きやがった最悪」

(;^ω^)「オッサン……? あれ、記者会見は……?」

(´・ω・`)「記者会見どころか説明会も終わってんだよ。お前立ったまま白目剥いてたぞ」

(;^ω^)「なん…………?」


ここで、文彦のちっちゃいオツムが数時間前の出来事をフラッシュバックする
生中継のカメラの前、全国へ向けて堂々たる大見得を切り、あろうことかバジリスクへの侮辱とも取れる発言をしたのだ
自分がしでかした事態を思い出した文彦の豚面から、サァっと血の気が引いていった。白豚である


(;^ω^)そ「ややややややや、やっちまったおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!え、悪夢これ!!!!!!!?????蟒蛇に喧嘩売ったのマジ!!!!!!????あ、終わったわジャパンカップ。死兆星が見える」

(´^ω^`)「そうやってお前は何回、感情の赴くままに自制もせず暴走して人生の選択を間違えてきたんだろうな?少しは辛抱ってもんを覚えたらどうだ?三歳児じゃねんだからよ」


蹲って頭を抱える文彦に、他人の苦しむ顔を見るのが大好きなクズによるチクチク言葉が浴びせられる
周りにいる参加者は、その光景を怪訝な表情で眺めていた。帰れよもう

804 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:09:07 ID:wAK9t/h.0
(;'A`)「みっともねえ真似してんじゃねえよ……」


そこへ、山盛りのカレーを手に徳雄が戻る。スパイシーな香りが豚の鼻を擽り、今現在何が行われているかを理解した
周りの人々はグラスや皿を手に歓談と飲食を楽しみ、最上階からの夜景が一望できる広いホールの中央では和洋中問わず料理の大皿がズラリと並んでいる


(;^ω^)「晩餐会始まってるのかお!?」

('A`)「おー、楽しみにしてただろ。行ってこいよ」

(;^ω^)「うう…………今は飯が喉を通る気がしないお…………」


口ではそう言いつつも、颯爽と立ち上がって料理の並ぶテーブルへと早豚足で向かっていった。豚なだけあって餌を前にすれば本能が身体を動かすのである


('A`)「たまには面と向かって褒めてやればどうだよ」

(´・ω・`)「なんでわざわざマウント取られるような事を社員でもねえキモオタのクソガキにしなきゃならんの?」

('A`)「チームメイトって言葉わかる?」

805 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:09:46 ID:wAK9t/h.0
本八は側を通ったウエイターアンドロイドのトレーからシャンパングラスを受け取った


(´・ω・`)「で、お前はこの晩餐会、何の為に開催されてると思う?」

('A`)「あ?チーム同士の交流会じゃねえの?」

(´・ω・`)「ま、半分は正解だな。よく観察してみろ」


徳雄はビーフカレーを頬張りながら、辺りを見渡した。参加しているのは本戦出場チームだけでなく、その傍らには恰幅の良い中年男性や、長い口髭を蓄えた老人。落ち着いた和装の御婦人等、社会的地位の高さが伺える人物が半分以上を占めている


('A`)「偉そうな連中が多いな」

(´・ω・`)「だろ?ジャパンカップ協賛企業や大会運営委員会、報道各社の重役に始まり、各プロチームのスポンサー達が一堂に会してる。この晩餐会は交流会であると同時に、金持ちや権力者共の自慢大会でもあるのさ」

('A`)「ハッ、良いご趣味をしてらっしゃる」

(´・ω・`)「ジャパンカップともなりゃ、参加チームの半数以上が常連だからな。その年の順位に応じて、スポンサー間のヒエラルキーも変動する」

('A`)「つまり、牽制も兼ねていると」

(´・ω・`)「腹の探り合いってやつだよ。折角の機会だ。お前も『社会』に揉んでもらえ」


本八は徳雄の肩をポンと叩くと、見栄の火花が飛び交う社交の場へと悠然とした足取りで向かっていった
すぐさま何人かが歩み寄り、賑やかな会話の輪が形成される。普段の有様からは想像できない処世術のなし得る業である

806 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:10:59 ID:wAK9t/h.0
('A`)「社会ねぇ…………」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「右から業務用アンドロイドシェアトップ企業『スターク&キハラ』の専務取締役に、オスカー受賞経歴を持つ大物俳優の上条氏。それと……おお!!eスポーツ庁長官の素直氏ですよ!!錚々たる面子ですねぇ宇都宮さん!!」

('A`)「いや知らんけど……」



i!iiリ゚ ヮ゚ノル

('A`)



i!iiリ゚ ヮ゚ノル「慣れました?」

('A`)「そろそろ来るだろうなと予想はしてた」


複数回の遭遇を経て、徳雄は青葉の神出鬼没に慣れ始めていたのであった

807 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:13:34 ID:wAK9t/h.0
('A`)「来てもらってなんだが、もうあんまり話のネタもねえぞ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「またまたぁ。月チャリの編集長もベタ褒めでしたよぉ?特に文彦くんの宣戦布告には惚れ直したと仰ってましたし」

('A`)「編集長って、アレか?」


徳雄が指す先には


(;;*・∀・;) ;^ω゜)<ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!????????


文彦に頬擦りする屈強な色黒オネエの姿があった。一見すると豚と美ゴリラの絡み合いである。動物たちのじゃれあいに人々は思わず撮影を始めた。そう、さながら檻のない動物園。愛は種族の垣根を越えるのである


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「年下が好みのようでして」

('A`)「ふーん」


ふーんだった

808 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:17:28 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「どうですか?対戦相手を目の当たりしたご感想は」

('A`)「取材か?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いえいえ、ただの世間話ですよぉ。Black Sheepは国内二強と控室一緒だったんでしょう?王者とお近づきになれた感想、気になるじゃないですかぁ♪」

(;'A`)「いけしゃあしゃあとよ……そうだな……」


画面越しと実際に目の当たりにするのとでは、言うまでもなく感じ取れる印象に天と地ほどの差がある
これまでオンラインプレイでの対戦が主だった徳雄にとって、生のプレイヤーとの『険悪さの無い』交流は初めての経験であった


('A`)「迫力あったよ。『お喋り』と『怒りんぼ』がいるバジリスクと違って、徹底して孤高を貫くスタンスが気に入った。静かだしな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ほほう、落ち着いた感想ですねぇ。古参ファンの大潮さんや文彦くんは、はしゃいでたんじゃないですか?」

('A`)「文彦はどうかしらんが、オッサンは楽しそうだったな。この後も全チームにサイン貰いに回るっつってたぜ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ある種、推し活の究極形態ですねぇ」

('A`)「何それ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「え?皆鳴ミセリのライブ行ってませんでした?」

('A`)「あれは…………………………」


(;'A`)「………………………」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「……」


(;'A`)「く、苦行ってこと?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「なんか嫌なことあったんですか?」

809 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:18:39 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まぁいいや。他のチームの皆様とご挨拶は?」

('A`)「いや、してねぇ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それはいけませんねぇ。これから潰し合う仲になるんですから、最低限の礼儀は払いませんと。宜しければ、仲介致しましょうか?」

('A`)「見返りは?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「善意!!私、そんな信用ありません?」

('A`)「うん」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「うん?????????いいからもう行きますよ!!」


顔が良くて胡散臭い女記者の信用度など、峰不二子と同レベルである。徳雄は怪訝なブサ顔を隠そうともせず、やや強引に腕を引かれて会場内を巡り始めた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まずはー……あ、千母さーん!!ご無沙汰しております青葉ですぅ!!」


ライブキッチンにてシェフと会話していた『巨人』が、ゆっくりと振り返る

@#_、_@
 (  ノ`)「おや、青花かい。それと……今話題のBlack Sheepジョッキー様ときたか」

(;'A`)「ど、どうも……」

810 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:19:32 ID:wAK9t/h.0
小柄な徳雄がスッポリと覆い隠せそうなほど背が高く、百戦錬磨のヒットマンが如く彫りの深い表情。そしてバシッと決まったパンチパーマのマダムは、フライパンすら容易く丸められそうな掌を差し出した

@#_、_@
 (  ノ`)「SASUGA×FAMIRYのジョッキー、流石 千母だ。予選での活躍、拝見させて貰ったよ」


『SASUGA×FAMIRY』。ジャパンカップ出場常連チームの一角である
超重量級装甲と超高火力砲を搭載した車体を転がすのは、国内最年長プレイヤーにして四人の子持ちである『流石 千母』
男性顔負けの体躯と、長距離でも一切ペースを落とさず進軍する様から、『不沈古城』の異名を持つ。夫(ハゲ)とは結婚三十五周年を迎えた今でもラブラブのラブである


(;'A`)「あ、ぶ、Black Sheepの宇都宮 徳雄です。よろしくお願いします」


徳雄が手を握り返すと、試すように力強く握り締められた


(;'A`)「うおっ、すげえ…………」

@#_、_@
 (  ノ`)「おや、肝も据わってるようだね」


徳雄は驚きの声こそ上げたものの、退く事も慄く事もなく握手を受け入れた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「悪い癖ですよぉ、千母さん」

(;'A`)「え?な、何が?」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハ、何でもないよ!!思った通り、大した男だ!!ウチのバカ息子共にも見習って貰いたいよ!!」

811 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:20:56 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「SASUGA×FAMIRYのガンナーとキャプテンは、千母さんの双子のご兄弟が担当してらっしゃるんですよ」

('A`)「ああ、それでFAMIRYなんですね。息子さん方はどちらに?」

@#_、_@
 (  ノ`)「どっかほっつき歩いてるよ。全く、幾つになっても落ち着きのない……ああ、すまないね。歳を取るとどうも愚痴っぽくなる」

('A`)「いえ、ウチも手の掛かるガキを抱えてますんで」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハハ!!それだけ頼られてるってことさ!!胸を張りな大将!!」


バンと背中を叩かれ、その力強さに思わず苦笑いした。きっぷの良い、ズッシリと根を張った大木のような『おかみさん』である。軽薄な本八にも見習って欲しかった
これまで蟒蛇のチンピラ連中くらいしかプレイヤーとの接触がなかった徳雄にとって、初めての交流相手としてはピッタリの人選と言えた

@#_、_@
 (  ノ`)「ゆっくり語り合いたいところだが……すまないね。ひと足先にお暇しなきゃならないのさ」


ウエイターアンドロイドが、レストランのロゴが印刷された大きめの紙袋を手に現れる
千母はそれを受け取ると、土産を手配してくれたであろうシェフに礼を言った

@#_、_@
 (  ノ`)「会えて良かったよ。あとこれ。アンタのボスに渡しておいてくれ」


手渡されたのは色紙である。達筆で『流石 千母』と記されていた。世相に疎い徳雄でも「サインってもっと崩した感じのやつじゃね?」と思った

812 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:21:26 ID:wAK9t/h.0
@#_、_@
 (  ノ`)「それじゃあ、お次は本戦で会おう。お互い、ベストを尽くそうじゃあないか」

('A`)「はい。楽しみにしてます」

@#_、_@
 (  ノ`)「青花、あんまりオイタするんじゃないよ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「わかってますってぇ」


去り際に、千母は身を屈めて徳雄の耳元へと顔を寄せた
先ほど美ゴリラと豚の絡みを目撃していた為、僅かに身体を硬直させたが、彼女はたった一言ーーーー

@#_、_@
 (  ノ`)「『NOOD』の相手はするな」


と、忠告だけ言い残して去っていった

813 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:24:31 ID:wAK9t/h.0
(;'A`)「NOOD……って、確か……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「あー、まぁー……色々いますからねぇ」


何でもかんでも全肯定の青葉ですら、言葉を濁した。徳雄は盛岡と木本の二大参謀が仕入れた参加チームの情報は一通り頭に入れていたが、主に『戦術』や『カスタマイズ』など、ゲームプレイに関する事柄である
プレイヤーについては、それぞれの名前だけうっすら覚えてるくらいで、性格や趣味嗜好等の人柄まで踏み込んではいない。あくまで『そこ』を突くのは、脚を使うジョッキーではなく頭を使うキャプテンの領分であるからだ


('A`)「……」


NOODについては、一つだけ気になる点がある。彼らは一足先に『ハヤテ』と対戦し、敗北しているのだ
親友との決着がぶっつけ本番な今、対戦経験のある相手との対話は貴重な情報源となり得る。本八ほどの社交性はないが、挑んでみて損ではない


('A`)「……青葉さん、そいつらってさ」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「はい?」


誰しも『色々』ある。本八には業界人としての大人の余裕が。文彦には土壇場でみせる青い熱さがある。クズとデブにだって、驚くべき事に褒められる点はある
そして徳雄というブスには、並大抵のことでは揺るがない胆力の強さと、『相手から喧嘩を売るように仕向ける』という悪癖があった


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ええと……まぁ、そうですね。概ねそんなタイプです」


徳雄の耳打ちに、青葉が怪訝な表情を浮かべながらも同意すると、ブスの頭の中で大体のプランが決まった


('A`)「じゃあ、NOOD以外のチームの紹介を頼めるか?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「うーわ、いじめっ子のやり口」

('∀`)「『経験豊富』でね」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「笑えませんね」


口ぶりではそう言ったが、意地の悪い笑顔は本心を隠しきれていなかった
こうしてブスと記者による『NOOD釣り上げ大作戦』が人知れず始まったのである

814 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:27:04 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



一方その頃


(;^ω^)「や、やっと解放された…………」


文彦は美ゴリラの襲撃から、這う這うの体で逃れられた。頬にベッタリと付着したファンデーションが、その激しさを『色濃く』物語っている。宮川大輔があの光景を見たらきっと「こんなん凌辱ですやん!!」とツッコむことであろう
しかし美ゴリラはタダの美ゴリラではない。全身脱毛は当然の事、肌艶は二十代と遜色なく、オトコを惑わすコロンも欠かさない
文彦が最も恐ろしかったのは、不覚にも美ゴリラに『ドギマギ』させられた事であった。非モテのキモオタらしくルッキズムに囚われた豚にとって、中年オネエに胸を高鳴らせてしまった経験は、深いトラウマとして刻まれてしまった


(;^ω^)そ「うわああああああああああああ!!!!!!!!!!!!忘れろ忘れろ忘れろーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


かぁいそ(笑)


「キミ、大丈夫?」


ボコボコと頭を殴って自傷を繰り返す滑稽な豚に、背後から優しく声が掛けられる


(;^ω^)「大丈夫じゃ………!!」


八つ当たり気味に振り返った文彦は、その姿を目の当たりにして言葉を失った
グリッターチュールのボレロとキャミソールワンピースを合わせた清楚な出立ちで、緩く巻かれた金髪が、灯りに照らされ輝きを放っている
表情はあどけないが、左の口元にだけインクを一滴垂らしたように存在する艶ほくろが、色気のギャップを引き出している
黄金色した瞳は吸い込まれそうなほど大きく映り、視線を逸らすには惜しいと思わせた

815 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:33:23 ID:wAK9t/h.0
(;^ω^)「あ………」


心配そうに小首を傾げた彼女は、日本でハヤテに次ぐ人気のアイドルユニットの一人
そしてBlack Sheepと同じく、今大会がジャパンカップ初出場。チーム名はユニットと同じく『S&S』のガンナー担当―――――


ζ(゚ー゚;ζ「気分悪いの?係員さん、呼ぶ?」


『天ノ川デレ』であった


(;^ω^)そ「ススススススス、スイスイスイスイ!!!!!!!??????」

ζ(゚ー゚;ζ「わっわっ、ごめんね!!急に話しかけちゃって!!」


文彦の最推しは皆鳴ミセリだが、アイドル(女性限定)であるならば一通り網羅している。『S&S』、『スイート&スパイス』は双子姉妹のアイドルユニットである
スイートを担当するのは妹である天ノ川デレ。常に笑顔を絶やさない朗らかな性格と、可愛らしい高音かつ感情豊かな歌声で、ファンを『甘く』魅了する。そのバストは豊満であった
スパイスを担当するのが、姉の『天邪鬼ツン』。此方は対照的に、鋭い眼つきと冷徹とも取れるクールな態度が売りである。しかし一度マイクを握れば一変、大気を震わす熱いハスキーボイスが、観客達の脳を強烈に『刺激』する。そのバストは平坦であった
人は時として相反する二つの要素に惹かれるものである。隠と陽、矛と盾、天使と悪魔、ギャルとオタク。そして『甘さ』と『刺激』
その二つを絶妙なバランスで成り立たせた『一粒で二度美味しい』アイドルユニット。それがスイート&スパイスなのである


(;^ω^)「だいだいだいだい!!!!!!!!!」

ζ(゚ー゚;ζ「おおおおおおお落ち着いて!!ほら深呼吸!!」


極アームズになりかけていた文彦は、天ノ川デレの「すー、はー」という合図と共に豚深呼吸をする。先ほどの淫靡なコロンとは違うソープ系の甘い香りが、美ゴリラのトラウマを上書きしていくのを感じた


(;^ω^)「もっ、もう大丈夫……ありがとうございます……」

ζ(゚ー゚;ζ「ホント?良かったぁ〜……」


バチっと視線が合うと、デレは飛び切りの笑顔をお見舞いする。バクバクと高鳴る鼓動が、もう一段階ギアを上げた。そのまま爆発して死ねばいいのに

816 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:35:13 ID:wAK9t/h.0
(;^ω^)「あっはっ、な、内藤ひゅみ、文彦とと申しますお、申します」

ζ(゚ー゚*ζ「知ってる!!EブロックはBlack Sheepの話題で持ちきりだもんね!!私、天ノ川デレ!!よろしくね、文彦くん!!」


名前呼びである。母親と高岡波音とかいう人類の変異種を除けば、文彦にとって初めての経験であった
これだけでも舞い上がりそうだが、デレは何かに気づいたかのように目を丸くさせると、ハンドバッグからハンカチを取り出して


ζ(゚ー゚*ζ「ほっぺ汚れてるよ?」

(;^ω^)そ「頬ほほほほほアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!???????」


嫌がる素振り一つ見せず、文彦の顔を拭った。天使はライブハウスじゃなくて築地にいるのである
その瞬間僕が見てるものは、間違いなく奇跡で、天使だった。そうじゃなきゃ誰がキモオタの豚なんて相手するかよ


(;^ω^)「いやっ、もっ、大丈夫!!大丈夫ですお!!」

ζ(゚ー゚*ζ「フフ、そう?」


取り繕う余裕もない。目の前にいるのは、アイドル界のトップtierに君臨する一人である。ハヤテのリーダーが従兄弟であろうと、文彦自身は一般豚である。天上人との謁見にも等しかった。賤しい豚は頭を垂れてつくばえ


「デレ!!」


極楽のような一時は、頬を叩くような厳しい声色によって引き裂かれた

817 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:39:00 ID:wAK9t/h.0
灰色を基調としたチャイナドレスに、黒レースのストールをフワリと見に纏い、デレとは対照的な銀髪を縦ロールに巻き上げている
顔の作りこそ妹と瓜二つだが、キュッと結び上がった口元と、吊り上がった目尻から放たれる鋭い眼光が、銀雪に佇む誇り高い狼を連想させる
スイート&スパイスの『刺激』担当、天邪鬼ツンが、平たい胸の前で腕を組んで二人をジロリと睨め付けていた


( `ー´)


その傍らには、付き従うかのように一歩引いた位置で脂が滴るようなトロマグロ・スシを一度に二つ食べる若い男が佇んでいる
此方はツンとは違い、何やら面白そうな表情で行末を眺めていた。男には興味ない文彦はすぐさま視界から消し去った


ζ(゚ー゚*ζ「待っててお姉ちゃん!!ごめんね、呼び出されたみたい。ほら、私って人気者だから」

(;^ω^)「ぞ、存じておりますお」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへー、良かったらこれ使って。返さなくていいから」


デレはハンカチを文彦に押し付けると、断る隙も与えず姉の元へと駆けて行った
そして去り際にクルリと振り返ると、両手を背中に回して満面の笑みを浮かべ―――――


ζ(^ワ^*ζ「本戦、お互い楽しもうねっ!!文彦くん!!」


ダメ押しを放った


(* ^ω^)ノシ「は、はひっ!!はいですお!!ブヒュ!!ブュヒヒヒィ!!!!!!!!」


文彦は殺しても殺し足りないほど気持ち悪く鳴きながら手を振って見送る。美ゴリラのトラウマは、もうすっかり頭から消えていた。単純な作りである


( `ー´)ノシ

( ^ω^)凸

(;`ー´)そ


小さく手を振りかえしてくれた気さくな兄ちゃんには瞬く間に真顔になって中指を立てた。なんかモテそうだしS&Sと一緒に行動してる時点で死ねって感じだった
そうやって男女で露骨に態度を変えるところが女子にウザがられる原因の一つなのを自覚していないのである。つくづく救えない豚であった

818 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:46:19 ID:wAK9t/h.0
興奮する豚を尻目に、デレは姉の腕に絡みついて連れ歩く。人懐っこい妹の姿に、ツンは眉尻を下げて溜息を吐いた


ξ゚⊿゚)ξ「ヒトを誑かすのはやめなさいって、いつも言ってるでしょ……」

ζ(゚ー゚*ζ「えー?親切だよぅ。あ、根野くん、替えのハンカチ貰える?」

( `ー´)「はいよ」


文彦の姿が死角に入ったタイミングで、デレは新しいハンカチを『マネージャー』から受け取り、バッグにしまう妹の『誘惑』は今に始まった事じゃない。詐欺をしただとか、他人の恋人を奪っただとか、悪どい行為に及んでいるわけではないが、真面目かつ誠実な性格の姉にとっては目に余る行動だった
反面、妹は自らの全てを『武器』として使い、世渡りをするべきという強かな思想の持ち主であった。S&Sのマネージャー兼ジョッキーの『根野 誠(ねの まこと)』は、どちらの意見も尊重し、デレをキツく諌めたりもしなかった


ξ゚⊿゚)ξ「貴方が甘やかすから増長するのよ。お小言くらい言って欲しいものだわ」

( `ー´)「でもよツンちゃん。今回に限ってはデレデーレ・デーレレのやり方も一理あるんじゃねーの?」

ζ(゚ー゚*ζ「え?なんで今鼻毛神拳伝承者みたいに呼んだの?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が言いたいの?」

ζ(゚ー゚*ζ「あれあれお姉ちゃん?ツッコミ放棄ですか?」

819 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:48:44 ID:wAK9t/h.0
( `ー´)「正味な話よ、俺らの実力はトップクラスの連中より一歩劣ってるワケよ。運良く予選は突破出来たけど、正攻法じゃ優勝は夢のまた夢なんじゃねーの?」

ξ゚⊿゚)ξ「ジョッキーがそんな弱気でどうするのよ……」


ツンは苦言を漏らしたが、キッパリと否定出来ない自分が歯痒かった。先ほど妹が誑かした内藤 文彦だって、この場ではタダのモテなさそうな男子でしか無いが、一度戦場に立てば、あのクワイエットとバジリスクの二強と真正面からやり合えるほどの猛者と化す
S&Sの戦術スタイルはBlack Sheepとは異なるが、『あの2チーム』と対峙して生き残るビジョンは殆ど見えない。もし万が一そのような事態に陥った場合、チームのキャプテンとして『戦う』という判断を下せる自信も度胸も持ち合わせていない
悔しいが、『盤外戦術』に頼らざるを得ないという根野の意見は、現状の実力差を鑑みれば認める他なかった


ζ(゚ー゚*ζ「私もね、ハナから優勝出来るなんて思ってないよ」


縋り付くように、ツンの腕に掛かる力が強くなる。声のトーンは僅かに落ち、不安気に掌が握られる。姉はそれを振り解こうとはせず、優しく握り返した
ハヤテと同じくアイドルとして出場権を勝ち取り、記者会見では多くの報道陣に囲まれた。しかし、確かな実績と実力を持つハヤテとは違い、誰一人として『S&S』が優勝出来るとは思っていないだろう
メディアは挙って、彼女達の本戦出場を『奇跡』というワードを何度も繰り返して取り上げた。まるで実力ではなく、偶然の産物であるかのように

SNSのチャリオッツファンは、残酷な言葉で気軽にTLを賑わせた。『じゃない方』、と


ζ(゚ー゚*ζ「でも、やれることは全部やって、後悔が残らないようにしたいんだ。せっかく授かったチャンスだもん。正々堂々とは程遠いかもしれないけど、悪足掻きくらいさせてよ」


傷つかないわけが無いのだ。実力がハヤテに劣っていようとも、運で勝ち上がったと思われようとも、チャリオッツに懸ける想いは負けていないのだから
姉は妹の覚悟を汲んで、もう一度深く溜息を吐いた。これまでそうだったように、これからもーーーーー


ξ゚⊿゚)ξ「程々にしなさいよ……」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがと、お姉ちゃん♪」


自分の信念より妹を優先するのだろうと、いつも通り諦めながら


( `ー´)「ありがと、お姉ちゃん♪」


ξ#゚⊿゚)ξ「キモいわ!!」


キモいわだった

820 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:50:18 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



それはさて置き


(´^ω^`)「ガーーーーーーーーーハッッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!チンポ!!!!!!!!!!!!」


チンポチンポ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


|(^),  、(^)、|「ダーーーーーーーーーッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!チンポ!!!!!!!!!!!!」


チンポチンポ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「アレが『パーダラ・ブギ』のキャプテン、『西山 伊達昌(だてまさ)』さんですけど、挨拶します?」

('A`)「しない」


ブス&ジャーナリストはオッサンチンポ祭を華麗にスルーして挨拶回りに奔走していた

821 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:52:46 ID:wAK9t/h.0
晩餐会が始まって、既に一時間が経過。徳雄らはこれまで4チームのメンバー挨拶を交わした
一つ目は、機動力なら出場チームの中でも随一。自爆特攻すら厭わない『最狂』の呼び声高い超攻撃型チーム、『レッドシューズ』


(*゚∀゚)「ねぇねぇ、これ見てよ」


ガンナー、『桐見 鶴(きりみ つる)』


('A`)「はぁ……ナイフすか……」


なんかナイフを持ち歩いてるファッションキチゲェだった


(*゚∀゚)「これってねぇ、よく切れるんだよ」

('A`)「そっすか……」

(*゚∀゚)「皮膚をね、スパって切ると、血がプシュってでてくるんだよ」


自分の手首を切るような動作。その異常とも言える動作と言動に、徳雄は―――――


('A`)「切ったことあるんすか?」


一切動じる事なく冷静に返した


(*゚∀゚)「」


桐見は黙った

822 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:53:34 ID:wAK9t/h.0
('A`)「変な人だな……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ああいうキャラで売ってるんです。中高生には人気のインフルエンサーでもあるんですよ、彼女」

('A`)「あのナイフ偽物だよな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「そりゃそうですけど、全く動じませんでしたね。多少はビビりますよ普通」

('A`)「向けられ慣れてるんで」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「そんな人います??????????」


2つ目は、ジャパンカップ最年少キャプテンが在籍する『ムシキング』


(=゚ω゚)ノ「オッサン虫好き!!!!!!!!!??????」

('A`)「声デカ」


U12限定大会『金の卵杯』優勝者でもある、『大森 壱与(いよ)』


(=゚ω゚)ノ「僕はねぇ!!!!!!!!!!アトラスオオカブトが好き!!!!!!!!!!!!オッサンは!!!!!!!?????」

('A`)「うーん……」


徳雄は暫し思案した後


('A`)「蟻かな……」


幼き頃、蝉の死骸を解体する蟻の群れを眺めるのが好きだったのを思い出した。歪んだ幼少期であった


(=゚ω゚)ノ「きっめーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!顔とおんなじくらいきめえーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

('A`)「親御さんどこ?ツラ見せて貰える?」


親の顔が見たかった

823 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:54:25 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「金の卵杯では同年代のジョッキーと組んでいましたが、年齢制限のない大会では召使いの方が担当してらっしゃるようです」

('A`)「ボンボンかよ……クソガキがよ……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「まだ十歳ですしねぇ。でも、将来有望な選手ですよ」


アルバイターで結成された、今大会初出場のアマチュアチーム『朧』


( ><)「あ、青葉さん!!ご無沙汰してるんです!!」


最高で一日37軒の配達記録を叩き出したUberライダーの『輪入道 広人(わにゅうどう ひろと)』
彼も千母と同じく青葉との知り合いだったが、徳雄の目にはより親し気に見えた


('A`)「お友達なんすか?」

( ><)「頼りになるセンパイなんです!!なんてったって青葉さんは、ぬら……ぬら……」


急にヌラヌラ言い出してセクハラかと思い徳雄はとりあえず拳を握った


(;><)「とにかく、僕らの業界では凄い人なんです!!」

('A`)「そうなんだ……バイトの?」

(;><)「いやっ……その……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「言っちゃっていいですよぬらりひょんの孫だって」

(;><)そ「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!なんでもないんです!!!!!!!!」


なんかよくわからないけど、なんかよくない設定があるんだなぁと徳雄は思った

824 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:55:29 ID:wAK9t/h.0
('A`)「もしかして広人くん、小練さんとも知り合いだったりする?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「おお、よくわかりましたねぇ」

('A`)「あの人の周り変な人ばっか集まるじゃん」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「何でこっちを真っ直ぐ見つめるんです?喧嘩か?やるか?」


クワイエットと同じく『トップ・ギア』所属、前大会は五位に終わった強豪『SUPER VOYAGER』


( ^ν^)「……なんか用?」


出会い頭からつっけんどんな態度を取るのは、ジョッキーの『穴本 新(あなもと あらた)』
前三組がイロモノばかりだった為、態度が悪い程度はむしろ可愛く見えた


('A`)「ええと、ご挨拶に伺いました。Black Sheepの……」

( ^ν^)「知ってるよ。随分と持て囃されてるみたいだし」

('A`)「そうっすかね」


穴本は小さく舌打ちをすると、徳雄を真正面から見据えた。表情こそ冷めたような真顔だが、目の奥では確かな闘志が燃え滾っている。初対面だが、徳雄は既に穴本を気に入っていた


( ^ν^)「クワイエットの三連覇を阻むのは俺達だ。邪魔すんなら潰す」

('∀`)「ハハッ、いいねぇド直球で。やってみろやコラ」


人知れず散る火花に、青葉は鼻息を荒くした


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「おっほほぉ〜〜〜〜〜!!!!!いいですねいいですねぇ!!やっぱこういうのが晩餐会の醍醐味ですよねぇ!!!!!!おもしれ〜〜〜〜〜〜ッ!!この仕事やっててよかった〜〜〜〜〜ッ!!!!!」


え!!!!!!!!!??????次に来るマンガ大賞2025第一位、ジャンプ+が産んだ稀代の天才漫画家『住吉九』先生の最新作、野球漫画の歴史を変えた『サンキューピッチ』伊能商人のセリフパロディ!!!!!!!??????
サンキューピッチとハイパーインフレーションは名作中の名作なので22世紀でも大人気漫画なのであった。やっぱさぁ、名作ってのは時代を越えて愛されるんだよね。ブラックジャックとかドラゴンボールとかさぁ


(;^ν^)「……」

(;'A`)「……」


そしてバチってた二人は次第に気が抜けていくのであった

825 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:58:36 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「順調ですねぇ」

('A`)「良かったまともな人もいて」


面識があるハヤテとバジリスク、一足先に対面したクワイエットを加えれば、既に半分のチームと顔合わせした事となる ※チンポチンポは除く
二人はここで一旦の休憩を取り、ウエイターからドリンクを受け取って窓際へと移った
国内でも五指に入る超高層ホテル、そして首都東京なだけあって、街の光が彩る地上の景色は絶景で
遠くからでもよく目立つスカイツリーはクリスマスカラーに彩られており、イベントか何かをしているのか、ドローンが編隊を組んで飛び回っているのが見えた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「良い夜景ですねぇ。飛んでるサンタさんとか見れないもんですかね?」

('A`)「ああ……しかしアンタ、どうしてここまで親切にしてくれるんだ?」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「ヤですねぇ水臭い。もうお友達じゃないですかぁ♪」

('A`)「……」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「え?なんで目を逸らすんです?イジメか?泣くが?」

('A`)「俺に友情を騙って近づいてきたのは、大抵が悪意ある連中ばかりだったよ」

i!iiリ゚ ー゚ノル「……」

('A`)「否定しろや…………」

826 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 21:59:43 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「冗談はさておき」


徳雄は儀杜しずくが彼女を嫌っているのもなんとなく納得出来た


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「別に宇都宮さんだけってワケじゃ無いんですよ。良い記事が書けるなら誰にだって手助けするし、コネを作るために恩も売ります」

('A`)「そりゃ…………良い事だな」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「へへ、でしょう?それとね、宇都宮さん」


ここで二人は互いに目配せした。ばら撒いた餌に食いついた獲物が、ゆっくりと近づいてくる気配を察知したのだ。人の少ない場所へ移動したのが功を奏した
「仕掛けましょうか?」という青葉の無言の問いかけに、徳雄は視線を切って夜景へと向ける。「気付かぬふり」と判断した青葉は、そのまま会話を続けた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「私はですねぇ、『善い人』が」


「あーおばちゃーん♪」


間に割り込んできた色黒の男が、覆い被さるように両腕で二人の肩を抱く。酔っている様に見せたいのか、ズシリとのし掛かってきた
アロハシャツにステテコとビーチサンダルといった、クリスマスには程遠い南国スタイルの出立ちで、焼けた肌にはウサギモチーフのタトゥーが刻まれている
眉と唇にはそれぞれピアスが施され、高城とはまた違った反社的な近寄り難さを演出していた

  _
( ゚∀゚)「色男と逢瀬の最中か?相変わらず罪な女だねぇ」


彼こそ、NOODこと『ネイキッド・オッキイ・オッパイ・ダイスキー』のジョッキー、『ジョルジュ・ナガオカ』である

827 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:02:24 ID:wAK9t/h.0
!iiリ゚ ヮ゚ノル「ご無沙汰してますナガオカさん。相変わらず手癖がッ!!」


青葉は自身の胸に伸びてきた手を強く払い抜け、スルリとナガオカの拘束から逃れた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「悪い人ですねぇ」
  _
( ゚∀゚)「おー、イテェ。ツレなさも相変わらずじゃねえか。俺ァいつだって『特別取材』の準備は出来てるってのによ」

('A`)「……」


徳雄は後ろを振り返ると、ナガオカと同じくガラと頭が悪そうな男女が五人、薄ら笑いを浮かべながら『壁』になるように立ち塞がっている
ここまで用意周到とは。挨拶回りは、よほど『プライド』を傷つけたらしい

  _
( ゚∀゚)「で?キミは?」

('A`)「ご挨拶が遅れました。Black Sheepのジョッキー、宇都宮 徳雄と申します」
  _
( ゚∀゚)「うんうん、そうなんだ。で?」

('A`)「はい?」
  _
( ゚∀゚)「いやさ、はい?じゃなくてさ…………ッ!!」


腹に拳が強く叩き込まれる。モロに喰らった徳雄は苦痛で蹲ろうとしたが、肩に回された腕に力づくで上半身を起こされた
流石に暴力は見過ごせないと青葉が割って入ろうとしたが、徳雄はもう一度目配せして制止した

  _
( ゚∀゚)「物事には『優先順位』ってあるの、わかる?挨拶回りもさぁ、ちょっとは頭使ってやってくんねえと、失礼にあたると思わない?」

(;'A`)「ッ……」
  _
( ゚∀゚)「アレアレ?何なのその反抗的な目?いいの?抵抗しちゃって?巷で噂されてる宇都宮くんの悪行は真実だったって世間にバレちゃってもいいの?困るのはキミたちじゃないかなぁ?」

828 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:03:24 ID:wAK9t/h.0
腕は肩から首へと回され、徐々に締め付ける力を増していく。血管が圧迫され、更に呼吸が出来なくなっていった

  _
( ゚∀゚)「センパイには敬意を払わねえと躾されるって、社長サンに教わらなかったのか?ん?折角チャリオッツの大舞台に立てるんだからさぁ、波風立てずにいこうぜ?」

(;'A`)「カッ……クッ……」
  _
( ゚∀゚)「おい返事は?」


立て続けに二発、三発と腹を殴られる。『壁』からはクスクス笑と「かわいそー」「やめてやれって」と、心にもない言葉が聞こえてきた
徳雄は『必死』だった。我慢の限界を迎えた青葉が、引き剥がして馬乗りになって顔面変形するまでボコボコに殴ろうとしたその時―――――


「ちょっと何……うわっ!?」

「え?マジ?」


『壁』を割って現れたのは


(//‰ ゚)「……」


『クワイエット』のジャンクヘッドと


( ・∀・)「お邪魔してごめんなさい。楽し気だったので交ぜて欲しくて」

(;'A`)「!!」


『親友』の姿であった

829 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:06:18 ID:wAK9t/h.0
  _
( ゚∀゚)「おお!!ジャンキーとモラくん!!いやぁ、話題の宇都宮選手と意気投合しちゃってさぁ!!」


ナガオカは悪びれる様子もなく首の拘束を緩めると、徳雄ごとクルリと振り返り親し気に胸を叩いた


(//‰ ゚)「……」


ジャンクヘッドは無言のまま、『出ていけ』と言いたげに出口を指差す
ナガオカはトボけた顔をして仲間や青葉の顔を見渡したが、一歩詰め寄られると観念して徳雄を解放した


(;'A`)「ゲホッ!!ゲホッ!!」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「宇都宮さん!!」
  _
( ゚∀゚)「悪いね、つい『力』が入っちゃって」


膝を突いて咽せる徳雄に軽い調子で謝罪を吐き捨てると、空いた両手に取り巻きの女を抱き込んだ

  _
( ゚∀゚)「これからスイートルームで恒例の『前夜祭』と洒落込むんだけど、みんなもどう?」

(//‰ ゚)「……」

( ・∀・)「折角のお誘いですが、ご遠慮させてください」


にべもなく断られたナガオカは、気を悪くした様子もなく、最後に徳雄を一瞥する

  _
( ゚∀゚)「それじゃ、今度は本戦で会おうぜ。キミにとってジャパンカップが、『いい思い出』になるのを願ってるよ」

(;'A`)「……そりゃどうも」


自身を見下げるナガオカの目は、久々に見る『格下への侮蔑』の目であった
去って行く背中を見ながら、徳雄は彼の目を忘れないように深く深く頭に刻みつけた

830 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:08:39 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「すみません、宇都宮さん。クズに拍車が掛かっているとは思ってなくって」

(;'A`)「いや、構わねえよ。概ね予想通りだ」


『プライドが高く』『傲慢で』『上下関係に固執する』。徳雄が予想したNOODの人物像は、寸分の狂いなく当て嵌まっていた
思わぬ助け舟に、当初の目的であった『ハヤテとの対戦感想』を聞き出せなかったのは残念だったが、徳雄にはそれ以上のものを得たという充足感があった


(;'∀`)「ハハハ……」


徳雄が『必死』だったのは、怒りを抑えていたからではない。『壊し甲斐のある玩具が出現した悦び』を、表に出さないようにしていたからだ
徳雄の悪癖は、『喧嘩を売るように仕向ける』だけに止まらず、『相手を一番屈辱的な方法で叩き潰す』にまで発展する
陰湿な『かわいがり』に加えて、『良い思い出』ときた。初参加のアマチュアチームなど眼中にないと伝えているようなものである
ジャパンカップへの『愉しみ』が、これで一つ増えたのだ。恨むどころか、感謝の一つでも言ってやりたい気分であった


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「何で笑ってんです?マゾなんですか?」

(;'∀`)「ああ、そうかもな。それと二人とも、助かった。ありがとう」

(//‰ ゚)「……」


ジャンクヘッドは無言のまま、会釈もせず出口へと向かっていく。愛想こそ皆無だが、王者と呼ぶに相応しい人格は持ち合わせているらしい。お喋りなチンピラとは正反対の人物であった


( ・∀・)「やれやれ、まさか思ってジャンクさんを連れてきて正解だったよ。命拾いしたね」

('A`)「ああ……まぁな」

( ・∀・)「言うまでもないけどナガオカさんの方がね」

('A`)「え?俺まだヤンチャボーイだと思われてる?」

( ・∀・)「もっと酷くなってると思ってる」


グランドスコイホテルで再戦を誓ってから、半年振りの再会した二人の間には、あの日のような気まずさや緊張は無くなり学生時代のような自然な態度で会話が出来ている
徳雄は人生で最も輝いていた時間に巻き戻ったような気持ちで胸が満たされた

831 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:09:43 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「お邪魔みたいですねぇ」


青葉はこれ以上は野暮と、二人から一歩引いた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「せっかくなんで、お二人のお写真を一枚撮っても構いませんか?」

( ・∀・)「ええ、勿論。いいよね、徳雄」

(;'A`)「……アンタまさか」


『これが目当てで?』という言葉は飲み込み、獏良の手を借りて立ち上がった
先ほど本人が言ったように、打算込みで『良い事』をしている者なのだ。世話になったのは事実なので、文句を吐くのはお門違いだろう


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「はい、チーズ」


青葉はi-ringのカメラで並び立つ二人を手早く撮影し、満足気な表情を浮かべた


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それでは、私はこの辺で」

('A`)「なぁ、青葉さん」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「はい?」

('A`)「さっき、なんて言い掛けてたんだ?」


はて、と人差し指を顎に添え、考える素振りを見せた後


i!iiリ゚ ヮ゚ノル「忘れちゃいました」


あっけらかんと言い放った


('A`)「わかった。付き合ってくれてありがとう」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「いえいえお安い御用ですよぉ。それではお二人とも、ご健闘を祈ります。それでは」


青葉は会釈して、人の集まる方向へと歩いて行った

832 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:10:36 ID:wAK9t/h.0
i!iiリ゚ ヮ゚ノル「♪〜」


若者二人の視線を背に感じながら、『言い掛けた言葉』を思い返す
『あの場所の主人』のような『善き人』が、喜んで脅威を迎え入れる時に見せる挑戦的な表情


異能も何もない『タダのヒト』の、最も暴力的な魅力に強く惹かれるのだ


i!iiリ゚ ヮ゚ノル(面倒を見たくなるのも頷けますねぇ)


機嫌良く鼻歌を歌いながら、自らを『ぬらりひょんの孫』と称する彼女は、人混みに溶け込む様に消えて行った

833 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:12:27 ID:wAK9t/h.0
( ・∀・)「不思議な人だね」

('A`)「驚かされてばかりだよ……アニキと妹分はどうした?」

( ・∀・)「文彦くんといるよ。ヨシさんが会見にいたく感動してね。めちゃくちゃに褒めちぎってる」

('A`)「甘やかすのやめてくんねえかなぁ……」


豚があんな性格になった原因は親族が全肯定し続けたことにあると薄々感じ始めていた


( ・∀・)「大潮さんとも会ったよ。相変わらずみたいだね」

('A`)「あのオッサンが一番はしゃいでんだもんな」

( ・∀・)「っと……どうかな、夜風にでも当たらない?」


急な誘いに少々狼狽えたが、此方に向く視線が増え始めたのに気付き納得した
『あのハヤテの獏良 良樹』が隣にいるのだ。どこにいたって否が応でも注目を集めてしまう


('A`)「行こうか」


二人は足早に、バルコニーへと向かったのであった

834 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:15:20 ID:wAK9t/h.0
―――――
―――



( ・∀・)「ひゃー、こりゃ雰囲気あるね」


バルコニーの中央にはツリーと、その周りに野外用暖炉とクッションソファー。そしてバーカウンターが設置されており、来客達が寒空の下でアウトドア気分を味わっていた
二人は灯りから少し離れた場所にテーブルを見つけ、椅子を夜景へと向けて座った。獏良は、ようやく一息吐けたと大きく溜息を吐く


( ・∀・)「取材がひっきりなしでね。練習もあるし、落ち着く暇も無かったんだ」

('A`)「大丈夫かよ。体調崩したら元も子もねえぞ」

( ・∀・)「今日を越えたら大晦日まで緩いスケジュールだからね。ゆっくり休んで備えるよ。そっちは?」

('A`)「ボスが金持ちのクズだからな。いくらでも便宜は図ってくれてる。『こんなもん』まで用意してな」


そう言ってスーツの袖と、タグ・ホイヤーの腕時計を見せつけた。時計は本八からの借り物だが、身に付けている物の値段を換算すれば、車が一台買えてしまう


( ・∀・)「可愛がってもらってるようだね」

('A`)「どうだか……」


世話を焼いてもらっているのは確かだが、本八の行動には常に立場を弁えさせるようなマウンティングが込められている
それも一つの親心なのかもしれないが、健全とは言い難い。獏良の言葉には、素直に頷くことは出来なかった

835 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:18:54 ID:wAK9t/h.0
( ・∀・)「驚いたよ。予選の三回戦」

('A`)「俺は何もしてねえよ。オッサンの作戦と文彦の力量あってこそだ」


謙遜ではなく、本心であった。体力、膂力こそ向上したが、操縦技術に関しては一流には程遠く、数えきれないほどのフォローを経て、辛うじて本戦への切符を手にしたのだ
本八には大局観が。文彦は言うまでもなく天与の才がある。至らぬ自分はそれに相乗りしただけ。おくびには出さないが、Black Sheepの中で一番不安を抱えているのは、他でもない徳雄であった


( ・∀・)「相変わらず自分に厳しいね。そこがキミの一番の長所で、最も恐ろしい所だ」

('A`)「根が卑屈でね」

( ・∀・)「それは否定しない」

('A`)「オメーよ」


軽口の応酬に、二人は小さく噴き出した。学生時代に戻ったかのような心地は、徳雄の心をじんわりと暖めた
今やトップアイドルである獏良 良樹は、その頃から変わらず徳雄にとって天上の星であった。ハンサムでユーモラスで、誰にでも分け隔てなく朗らかに接する『スーパースター』
そんな彼に『友』と、『ライバル』と認めて貰ったことは、自己肯定感が皆無な徳雄にとって唯一の『誇り』であった


('A`)「ハハ……」


それと同時に、常に不安が付き纏っていた。徳雄にとって獏良は唯一無二の存在だが、獏良にとって『友』や『ライバル』は、黙っていようと幾らでも寄ってくるありふれたものだ
いずれ、取るに足らぬ自分を上回る素晴らしい人間が現れて、彼を奪っていくのではないか?自分の存在は上書きされて、『沢山の内の一人』として扱われるようになるのでは無いだろうか?
口に出すのも憚られるような女々しい心配であったが、獏良と出会うまで『交友』というものを築けなかった徳雄には、それが何よりも恐ろしかった

だからこそ、『ぶっ殺そう』という結論に到った


当然、『命を奪う』という意味ではない。暴力に生きてきた徳雄でも、一定の線引きは出来ている。実際に事故が起こったあの日、徳雄は人生が狂うほどの後悔をしたのだ
徳雄にとって『殺す』とは、二度と刃向かえないほどに叩きのめす事を指す。虐げられ続けた徳雄が学んだ、最も効果的な自衛策であり、数少ない趣味であった
顔を見ただけで、名前を聞いただけで震え上がるほどの恐怖を植え付ける。今現在広がっている徳雄の悪評は、その名残だった

『友』、そして『ライバル』である獏良には、より健全に。日本中が注目する大舞台で。そして彼が『最も得意とする分野』で

毎晩寝床で甦るほど強烈に、時間が薄めてくれないほど濃厚に、死の間際に思い浮かぶほど深い敗北を与えて初めて、『星』にとって唯一無二の存在となれるのだ


('A`)(気持ち悪ぃ)


自己嫌悪はある。だが最早、逃げ出す真似は出来ない。本八と出会ってから背中を押し続ける強い意志の風は、事を成し遂げるまで止みはしないのだから

836 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:22:06 ID:wAK9t/h.0
( ・∀・)「僕はさ、嬉しかったんだ」


寒風が強く音を鳴らし、バルコニーにいる客へと襲いかかる。寒さに耐えかねた者が一人、また一人と室内へと戻っていく


( ・∀・)「Black  Sheepの圧倒的な暴力を見て、キミは『あの日』から少しも変わっていなかった。チャリオッツにおいては、策も才能もジョッキーの脚に依存する。あの変則的な動きを可能にしたのは、紛れもなくキミの功績だ」

('A`)「……」

( ・∀・)「それだけ、僕への『想い』が込められていると感じられたのさ」


獏良は立ち上がり、地上に広がる街を見下ろした。街明かりに照らされた横顔に、『スター』の面影は見当たらなかった
徳雄ですらゾッとするような、何もかもを産まれながらに手にした『支配者』の威圧的な表情であった


( ・∀・)「僕が知る中で最も強い男だからこそ、『完璧じゃないキミじゃ許せない』。逃げ出したキミを、恐怖故に連れ戻せなかった『自分を許せない』」


徳雄はこの日、自らに燻る黒い感情は『自分だけのものではない』と知った


( ・∀・)「ぶっ殺すなら、『誰よりも強いキミ以外は認めない』」


『スーパースター』もまた、何者も敵わない『孤高の鬼』に憧れ、自らの存在を勝利によって永遠に刻み付けようとしていたのだ

837 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:24:44 ID:wAK9t/h.0
( ・∀・)「遠慮せずに掛かってくるといいよ。僕の肩にのし掛かる数千万の期待ごと『ぶっ殺してみせなよ』」

( ・∀・)「勿論、僕だって容赦はしない。キミが二度と僕と勝負などしたくなくなる程、惨めな敗北を与えてやる」


徳雄はいてもたってもいられず、テーブルを強く叩いて立ち上がった。黒い感情に火が点り、寒さすら忘れるほどに熱く燃え上がる
敵に溢れた過酷な人生だが、それでも嫌いではなかった。そして今、自分は『誰よりも果報者である』と知った


('∀`)


全人生を懸けてでも、ぶっ殺す価値のある存在が


( ・∀・)


自分と同じくらいの全身全霊の殺意を抱いて、現れてくれたからだ

838 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:27:30 ID:wAK9t/h.0
聖しこの夜、勝ち抜いた18組の『戦車』は、競い合う敵の顔を見て決意を盤石なものとした
前人未到の三連覇に挑む王者、それを阻もうとする挑戦者達、報復に燃える者、老いて尚限界に挑む者、下馬評を覆そうとせん者、身の程を理解させようとする者


(´^ω^`)「チンポ!!!!!!!!!!!!」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル(まだ言ってる……)


憧れの存在が目の当たりにした景色を望む者


(;^ω^)「マジでS&Sのデレたそに貰ったんだお!!すげえいい匂いしたお!!」

从;゚∀从「童貞にエグいことしやがる……悪女じゃん悪女……」

(,,;゚Д゚)「文彦、間違いを犯す前に必ず!!必ず俺に相談するんだぞ!!わかったな!?」

( ^ω^)「なんやお前ら」


己と相棒の価値を、破壊で証明せんとする者。そして―――――


('∀`)「目が潰れるほど鮮烈に魅せてくれや。『スーパースター』」


対照的な二人の男達は


( ・∀・)「心臓が抉れるほど慄かせてくれよ。『鬼迫』」


激しい友情と殺意を燃やし、青春に決着をつける為に



天王山の大晦日、長きに渡って語り継がれる事となる第四十四回ジャパンカップは、師走の速さで差し迫っていた

839 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:27:53 ID:wAK9t/h.0





第二幕 【黒羊の半年】




    完



.

840 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:28:36 ID:wAK9t/h.0
次回予告


(´^ω^`)「いーーーーーーーーーーよいよいジャパンカップ本番だ!!ここまで実に、長かった。あまりにも、長すぎた」

(´・_ゝ・`)「ずっと長いなお前」

(´^ω^`)「ヤバない!!!!!?????ずっと配信でしか見てこなかった選手入場で俺の名前が読み上げられるんだぜ!!!!!!?!!!!」

(´・_ゝ・`)「感慨深くはありますね。ここまで大変だった……」

(´・ω・`)「ああ、大変だった……」


<ブヒッ!!!!!!!!!!!!ブヒヒッ!!!!!!!!!!!!

<うるせえぞ文彦


(´・_ゝ・`)「主に豚が」

(´・ω・`)「主に豚が。それより、裏で進めてた『あの件』はどうなってる?」

(´・_ゝ・`)「どうにか形にはなりましたよ。木本くんが尽力してくれたお陰でね」

(´・ω・`)「めちゃくちゃ褒めちぎって札束叩きつけたい」

(´・_ゝ・`)「そろそろ歪むぞ」

(´・ω・`)「次回、『Desperado Chariots』第十二話。『開幕』」

(´・_ゝ・`)「楽しんできてください」

(´^ω^`)「うん!!!!!!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「無邪気な中年キツ」

841 ◆L6OaR8HKlk:2025/10/15(水) 22:42:13 ID:wAK9t/h.0
終わりですお疲れさまでした

最近めちゃくちゃ机の周りにフィギュアとかぬいぐるみが増えてきて圧迫しています
スグルとバッファローマンが特にデカいです。肩に超人強度乗っかってんのかい

842名無しさん:2025/10/23(木) 19:54:48 ID:h3d3mIQ20
乙乙
ついに本戦か〜
クワイエットの強者感が凄くて好き
記者会見のドクオの対応がカッコ良くて好き

843名無しさん:2025/10/25(土) 10:37:19 ID:/5PdVO9c0
乙です
アホみたいなノリと勢いの中の闘争心がめっちゃいい
次楽しみにしてます

844名無しさん:2025/11/03(月) 01:03:54 ID:0ZtJoxTY0
乙!
記者会見の文彦から主人公ちからの高まりを感じる…本戦が楽しみ
黒羊チームの付け焼き刃でどこまでいけるのか。クワイエットかハヤテとの対戦で明確な差が出てきそう


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