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Desperado Chariots

1 ◆L6OaR8HKlk:2021/03/28(日) 22:38:02 ID:1hwLgNFI0
新連載です。よろしくお願いします

709 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:29:33 ID:pdeLbfIc0
( ,,^Д^)「この一戦は彼らからジャパンカップに対する『宣戦布告』さ。僕らバジリスクや『クワイエット』がいるブロックで、チャリオッツに精通した強豪にしか伝わらない方法を取るとは恐れ入るじゃないか」

(-_-)「応えるの?」


蟒蛇はラスト・ワン主義の超攻撃型プロ集団。売られた喧嘩は常に買う。明日行われる大規模な予選三回戦で、やろうと思えば早々に決着をつけられる
徳雄に執着する気持ち悪いキャプテンと、『憎悪を隠そうともしない新しいジョッキー』とは違い、フラットな柊木は『その方が都合が良い』と考えた
Black Sheepの宣戦布告が、彼らの思惑以上に広まっているならば、明日は本戦以上の激戦を強いられる筈である。その機に乗ずれば、ライバル候補を楽に蹴落とせるのだ


( ,,^Д^)「どうしようか」


それがわからぬ蟒蛇のトップでは無いが、宝木は戯けた様子で含み笑うだけだった


(-_-)「ハァ……好きにすれば?」


早々に説得を諦めた柊木は、ソフトクリームが溶けた甘いソーダを啜った

710 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:45:43 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



翌日、ジャパンカップEブロック三回戦。勝ち残った75チームの中から3チームが選出される
注目はやはり、三連覇という前人未踏の偉業に挑む絶対王者『クワイエット』と
昨年、惜しくもクワイエットの逃げ切りを許し、二位の座に沈んだ『バジリスク』である。そしてもう1チーム―――――


「先日の二回戦、2位通過でありながら驚くべき撃破数を挙げた『Black Sheep』。こちらなんと、あの参羽鴉グループの代表取締役である『大塩 本八』氏がキャプテンを務めております。西田さん、和菓子業界の大御所の参戦、どう思われますか?」

「いやぁ〜、ね。恐らく、今後公にされるであろう不祥事のね、目眩しなんじゃないかと勘繰っちゃいますよね。彼ね、私生活ではしょうもないこといっぱいやらかしてますからね。でも美味しいですよね参羽鴉のお団子ね。うん。あそこ、食品に関してはどこよりも信頼できますからね」


テーブルの中央で浮かぶホログラムビジョン。その片隅で実況のアナウンサーと解説の年配男性が、肩を並べて三回戦に挑む有力チームの簡単な紹介をしていた
今回が初のジャパンカップである無名のBlack Sheepだが、二回戦の活躍に加えて、悪名高き著名人がキャプテンともなると、否が応でも注目度は高まる
実際、SNSの急上昇トレンドにはBlack Sleepの名前が記されている。内訳の半分は活躍への驚きであり、もう半分は根拠のない八百長疑惑と誹謗中傷だった


(^e^)「ギャハハハハハハ!!人柄がクソだとネットも荒れるなぁ〜!!!!!!!!」

从 ゚∀从「今度鏡買ってやるよマネージャー」


ハヤテのメンバーは、Eブロックの行末を見届ける為に事務所の一室を貸し切って観戦の場を設けた
当初は芸能活動縮小に否定的だった上層部も、ジャパンカップ出場が決定した今では全面協力の構えを見せている
芸能人のジャパンカップ優勝は、事務所に『メジャーリーガー』が所属するも同義なのだ

711 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:49:38 ID:pdeLbfIc0
(,,;゚Д゚)「目立ちすぎだ……どうするんだ今日マジでよ……」

( ・∀・)「文彦くんはなんて?」

(,,;゚Д゚)「『バチクソに喧嘩売ったからえらいこっちゃやでホンマ』と言っていた。大潮さんが採用したアビリティが、『わかる人にはわかる挑発』になっているらしい」

从 ゚∀从「ブンちゃんいつから関西人になったの?」

( ・∀・)「アビリティが挑発に?」

(’e’)「闇市だろ。そりゃ癪に障るわな。古参だと猶更だ」


ハヤテの面々は丸くした目を、この場の顔面偏差値の著しい低下を招いている人物へと向けた


(;・∀・)「わかるんですか?」

(’e’)「なんでわかんねんだよ現役だろオメーら。あからさまにアイテム使用率がバグってんだろが。その場で都度買い足してんだよ」

(,,;゚Д゚)「闇市……あっ、『ブラックマーケット』!!カラス戦術か!!」

从 ゚∀从「何それ?」

(,,;゚Д゚)「大昔に流行ったアイテム戦術さ。チャリオッツ黎明期、腕に覚えのある上位ランカー達の間で流行したんだ。ナーフを受けてからは急速に廃れたそうだが」

(’e’)「『高コストアビリティを使うまでもねえ』っていう意思表示だな。憎たらしいことに、口だけじゃねえってのは撃破数で証明してる。今日は荒れそうだぜ」

从 ゚∀从「へー、詳しいじゃん」

( ・∀・)「上手さん完全にやってたでしょ。なんで教えてくれなかったんですか?」

(’e’)「なんで教えなきゃならないんですか?」

( ・∀・)「意地悪だなぁ」

712 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:51:39 ID:pdeLbfIc0
「さて、運命のEブロック最終戦。モード選択に移ります」


レースかバトロワかの決定は、ゲーム開始直前にクジで決められる。車輛に関しては、予選が終わるまでカスタム不可とされている為、ルールに合わせることはできない
つまりBlack Sheepは、二回戦と同じく『ブラックマーケット』を積んだ状態で三回戦に臨まねばならない


从 ゚∀从「どっちが好都合なんだ?」

(,,゚Д゚)「当然レースだ。勝利条件が上位三位入賞なんだからな。向かう先は敵ではなく、『ゴール』だ。二回戦であれだけキルを稼げたのも、相手の意識がゴールに向いていたから先手を取れたというのもあるだろうしな」

(’e’)「フラグ立ったな」


「決まりました!!『バトル・ロワイヤル』!!最後まで生き残った3チームが、年末の大舞台へと駒を進めます!!」


猫山は顔を両手で覆った


(’e’)「や っ た ぜ」

(,,∩Д∩)「終わった」

(;・∀・)「早いよ」

从 ゚∀从「まだ始まってもねーよ」

713 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:53:02 ID:pdeLbfIc0
「さて、改めてジャパンカップEブロック三回戦の詳細をお伝えします。バトル・ロワイヤルモード、ステージ『円落街』。路面『インターロック』。面積はおよそ32平方キロメートル。NPC出現率は『低設定』。参加総数75チーム。スタンバイタイミングでのカスタマイズは不可となっております」


( ・∀・)「ステージは悪くないね」


チャリオッツのステージには、それぞれバックストーリーが存在する。今回ピックアップされた『円落街』は、天空に浮かぶ滅んだ魔術都市という設定だ
プレイヤー達は、時間経過と共に外周から崩れ落ちていくステージの中で、互いに競い合いながら中央の安全圏を目指して進んでいく
煉瓦造りの廃墟の中には、迎撃用の防衛装置が各所に設置され、かつて街を護っていた『ゴーレム』や『ガーゴイル』が行手を阻む


(’e’)「レンガ路ならまだマシな方だろうな。建物の遮蔽も多いし、ハイドしながらじっくり進行するのが丸い」

从 ゚∀从「こういうのって速攻で真ん中陣取るのもアリだと思うんだけど、どうなん?」

(,,゚Д゚)「18チームだけならそれも手だろうが、これほどの規模だと八方から囲まれて袋叩きがオチだ」


『PUBG』や『Apex Legends』を代表とするバトル・ロワイヤルゲームは、上空から任意のタイミングでステージ入場を行う
チャリオッツも偉大なる先人に倣い、輸送機からパラシュート投下によって降り立つ
この時、最端から縮小に追われつつ接敵を避けて中央の安全圏を目指すか
逆にあえて早々に中央付近に降り立ち、敵チームと有利なポジションを奪い合うかで戦略が分かれる


(,,゚Д゚)「ステージ縮小に合わせてじっくりと中央まで進み、ギリギリまで競合を潰し合わせ、最後に漁夫の利を掻っ攫う……これがバトロワにおける常套手段だ。余程の戦闘狂でなければ、蟒蛇だって初手中央は避ける」

从 ゚∀从「『レッドシューズ』とか『センチピード』とか?」

(,,゚Д゚)「その通りだ。本戦でかち合いたく無いイカれた連中だな」


どちらも蟒蛇に負けじとも劣らない攻撃特化チームである
ラスト・ワンによる『勝利』を目的とする蟒蛇とは違い、彼らは勝敗を問わず『破壊』を楽しむ享楽主義者として恐れられている
タチの悪いチームではあるが実力は本物で、どちらもジャパンカップ本戦出場が決定している


从 ゚∀从「なぁギコにぃ、あのオッサンがそんな大人しくすると思う?」

( ・∀・)「考え難いね」

(’e’)「全部フラグになるからもう喋んなお前」


(,うД゚)「そこまで言うこと無いじゃん……」


繊細な猫山は全否定されなんかもう泣きそうだった

714 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:54:47 ID:pdeLbfIc0
(,,゚Д゚)「いやだが考えてもみろ。ジャパンカップ予選三回戦は、国内最大規模のゲームだ。残り3チームになるまで延々と戦い続けるなんて現実味がなさ過ぎる」

(’e’)「まぁ、言われてみりゃあな。初っ端から全勢力が一塊になるわけでも無し。宇都宮が幾らバケモンでも、息が続かねえだろ」

( ・∀・)「フフフ……果たして本当にそうかな?」

(’e’)「オメーは宇都宮の何なの?」


「さぁEブロック最終戦、全国のチャンピオン候補達が続々と操縦席へと乗り込みます。この75チーム中、たった3チームだけが、栄光への乗車券を手にすることが出来るのです」

「悔いの無いね、試合にしてほしいもんですね。うん」

「ライブ映像は見下ろし型の『フィールドカメラ』と、1プレイヤー集中型の『フォーカスカメラ』の切り替えが可能です。お好み、戦況に合わせてご視聴ください」


『フィールドカメラ』は、マップ全体図を俯瞰で撮影し、ゲームの流れを観戦するモードである
チームはそれぞれ番号を振ってある為、誰が何処で何をしているかも把握し易い
『フォーカスカメラ』は、指定した1チームをTPS形式で集中して撮影するモード
車体の挙動や砲撃、アビリティ使用タイミングなど、プレイスタイルを間近で堪能できる他、推しチームの応援にも用いられる


从 ゚∀从「ブラシ何番?」

( ・∀・)「ブラシて。18番だね」


試合状況を映すメインビジョンの隣には、参戦チーム一覧と生存数を示す『75』の数字が表示されている
撃破された場合、すぐさまチーム名が一覧から削除され、数字が一つ減る。制限時間は設けられていないが、ステージの縮小と残りチーム数が試合経過の目安となる

715 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 11:57:02 ID:pdeLbfIc0
(,,゚Д゚)「クワイエットが21、バジリスクが53……他にめぼしいチームは……」

(’e’)「ブラシと同じ枠組みで一位通過の『Anker Take』が17。他にEブロックで有力候補と言えば……35番『VIP Library』、45番『CHERRY CHASER』、2番『泥男(でぃもん)』、70番『マッハブロー』、55番『天炎BOYZ(あまえんボーイズ)』……三回戦はどこも激戦必至だが、Eブロックはキリがねえな」

(,,゚Д゚)「今年は偏りましたね。お陰で我々は辛うじて一位通過出来ましたが」

从 ゚∀从「運も実力の内ってな」

( ・∀・)「ヨシさん、これってやっぱり……」


猫山は渋い表情を浮かべる。3つしかない出場の座を賭けた75組のバトルロワイヤル
その内2つに、Eブロック二大チームと言っても過言ではない『クワイエット』と『バジリスク』が座るとすれば
残り一つを奪い合う壮絶な死闘となるのは想像に難くない。ましてや死ねば終わりのバトルロワイヤル
『格上とわかっている相手にわざわざ挑むメリットなど一切無い』のだ


(,,゚Д゚)「Black Sheepは二回戦で自分の首を二度も締めている。一つはアビリティによる無言の挑発。もう一つは戦果を『挙げ過ぎた』事だ」

( ・∀・)「無名の新人があれだけ大暴れすれば、自ずと警戒度は上がる。残り一つの席の座も危うくなる、と」

(,,゚Д゚)「危険因子が紛れ込んだとなれば、従来のパワーバランスでゲーム仕切り直す為に、初っ端から結託して襲いかかってくるかもしれない。『出る杭は打て』とな」

(’e’)「奴らの昨日の行動が、他の連中に『チーミング』させる大義名分を作っちまったってこったな。ま、自業自得だ」

( ・∀・)「フフフ……果たしてh(’e’)「うるせえ」


(´・∀・)


从 ゚∀从「けど、あのオッサンが『そこ』まで考えが及ばねえことってあるか?当の本人が一番わかってんじゃねえの?」

(,,;゚Д゚)「それもそうなんだが、自己顕示欲を満たす為というのも否定出来ないんだよな……考えがあっての行動であって欲しいが……」

716 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 12:02:49 ID:pdeLbfIc0
「今、最後のチームが乗り込みました!!年末の大舞台への切符を手にする運命の第三回戦。抱くのは夢かそれとも野望か。自転戦車を乗せた輸送機が……今飛び立ちました!!」


(,,゚Д゚)「始まったか……」


円落街より更に上空から、巨大な輸送機がフィールドを縦断するルートで飛行する
早い者は開始直後には空挺戦車よろしくパラシュート降下を始めているがーーーーー


「22番『拳応』、63番『コタツとキング』、44番『七大生徒会』、序盤から続々と投下を始めております。続けて……」


(’e’)「少ないな……」


ステージ端から中央へとゆっくり進んでいく安全策は、練度を問わず生存率を高める有効手段だ
バトルロワイヤルの勝敗は撃破数ではなく『生存』である。コソコソと逃げ隠れして卑怯と呼ばれる筋合いは無い
むしろ『正攻法』であるのだが、今回に限ってその作戦に則るチームは少なかった

717 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 12:03:33 ID:pdeLbfIc0
( ・∀・)「でも有力チームばかりですね。挑発に乗らなかったと見るべきでしょうか?」

(’e’)「だろうな。しかし……」


『Black Sheep』、『クワイエット』、『バジリスク』は未だ輸送機の席に腰を埋めたままである


(,,;゚Д゚)「なっオイ……なん……ええ?マジで言ってる?あっヤバい息ができコヒュー、コヒュー」

从 ゚∀从「早いって」

(’e’)「オメーらの予選三回戦の時より限界じゃねーか」


Black Sheepの挑発に彼らが乗ったとするならば、本戦進出の道を断ち切る『対の鉞』に他ならない
同じEブロックである以上、突如現れた危険因子は彼らの立場を脅かす存在でもある。放っておくメリットは無い


(’e’)「国内2トップに袋叩きに合うんなら光栄だろ。後で慰めてやりゃあいいんだよ」

(,,;゚Д゚)「上手さん……」

(’e’)「俺は……」


(^e^)「クソほどコキ下すがなぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ギャーーーーーーーーーーーーーーーハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!」


作中三大ゴミカスの一角を成す男がここにいた

718 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 12:04:24 ID:pdeLbfIc0
从 ゚∀从「だから気が早いって。袋叩きに遭うと決まったわけじゃ……」

( ・∀・)「降りた!!」


実況のトーンが二つ上がる


「ここで降りた18番『Black Sheep』!!おおっとこれは!?21番『クワイエット』と53番『バジリスク』も続けて降下!!Eブロックのダークホースを早々に潰すつもりかーッ!!」

「残りも次々と降りていってますね。うん。これは短期決戦にね、なりそうですね」


(,,;゚Д゚)そ「アアアアアアアアアアア!!!!!!?????」

(^e^)「逝ったああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


高岡は『この部屋防音で良かった』と思った


从 ゚∀从「中央ルートっぽい?」

( ・∀・)「そう……いや、どうだろ」


半数以上がBlack Sheepに続いて降下を始めたが、クワイエットとバジリスクの存在に気付いたのか、散り散りに落ちていく


从 ゚∀从「意外と……落ち着いた立ち上がりになりそうじゃね?」


結果、中央付近に降り立つチームは、両手で数えられる程度まで減った

719 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 12:05:12 ID:pdeLbfIc0
( ・∀・)「大潮さんが『挑発』したのは、文彦くんの言動から間違い無いとして、彼の思惑通りの展開なのかな?」

(,,゚Д゚)「むぅ……もし彼がカラス戦術をなぞっているなら、まずはGを稼ぐ必要がある。となると、NPCかプレイヤーを撃破しなければならない。アイテムを購入出来ねば、ブラックマーケットはコストを食うだけの邪魔モノだ」

从 ゚∀从「じゃあよ、初動さえ抑えちまえば楽勝ってことか?」

(,,゚Д゚)「研究不足のチームはそう考えるだろうな」


『考えが浅い』と遠回しに指摘された高岡は、あからさまに不貞腐れる
猫山はそんな可愛げのある後輩の頭を、宥めるようにポンポンと撫でた。ファンが見たら発狂の末に尊死する光景である。なんだ尊死って。気持ち悪いな


(,,゚Д゚)「まぁ古い戦術だから知らないのも無理はない。カラス戦術の使い手はどれも地力が高かった。つまり、アビリティに頼らずとも強かったんだ」

从 ゚∀从「てことは、Gを稼ぐ為に挑発したってのか?」


高岡はイケメンの頭ポンポンに一切響いた様子もなく、ウザそうに払い退けた。従弟の豚とは違ってぞんざいに扱われた経験が少ない猫山はちょっとだけ傷ついた


( ・∀・)「カラス戦術だって見抜いたチームがわざわざ餌になろうとするかな?ちょっとわかんなくなってきたぞ」

(’e’)「……なぁ、そんなに大勢『気づいた』と思うか?」


上手の一言に、ハヤテの面々が顔を見合わせる。年長者でありチームのブレインである猫山ですら、指摘されて初めて『ブラックマーケット』を使っていると気づいたのだ


(’e’)「カラス戦術は、お前ら現役が産まれる前に流行したアンティークだ。プロでも知らねえ奴がいても不思議じゃあねえよ。それを、『挑発』に用いたってんならよ」



「Black Sheep、クワイエット、バジリスク、ほぼ同時に着陸!!開始1分弱で互いに射程圏内だ!!」



(’e’)「『チャリオッツに深く精通しているチーム』に向けたもんなんじゃねえのか?」

720 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:24:46 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



『円落街』の中心には、街全体を浮かべる『魔力石』を納める石造りの神殿が聳え立つ。序盤でこの場所に降り立ったチームは、暫くの間は滑落によるゲームオーバーの心配はない
神殿から半径およそ200メートルまでが『安全地帯』であり、足場の崩壊は境界線に達した時点で一旦ストップする
この段階で複数のチームが生き残っていた場合、1秒毎に1メートルずつ安全地帯の足場が崩れていき、最後には車輛一台分の広さの魔力石だけが残る
勝利するにはゲーム終了までに相手チームを全て倒すか、魔力石に陣取って崩壊から身を守るかの二通りに分けられる


(´・_ゝ・`)「乗ってきたか」

(;@з@)「因縁あるバジリスクはともかく、クワイエットまで釣れるとは……拙者、気が気ではござりませんぞ」


Black Sheepの参謀達も、予選三回戦をオフィスから固唾を飲んで見守っていた


「Black Sheep、クワイエット、バジリスク、ほぼ同時に着陸!!開始1分弱で互いに射程圏内だ!!」


実況のアナウンサーの鼻息が早くも荒くなる。彼が一呼吸置く間もなく、三つのチームは砲口を向け合った
スピンミキサーと6Shooterによる反射的な砲撃に長けたBlack Sheepが真っ先に王者へと標準を合わせ
貫通力と精密性に優れ、チーム名の由来でもある無音の弩砲『バリスタ』を使うクワイエットが、バトルロワイアルにおいて最も脅威となる大蛇に鏃を向け
指定した回数分『跳弾』するまで炸裂しない、弾力がある榴弾を扱える主砲『仏の顔』を搭載したバジリスクが、黒き獲物に牙を剥く


「撃ったァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!Eブロック予選最終戦の火蓋は、王者と大蛇と曲者が切って落としたァ!!!!!!!!!」


『ほぼ同時』に放たれたそれぞれの砲弾は、名刺交換のように互いの装甲を殴り付けた


(´・_ゝ・`)「曲者とは、言い得て妙だね」

(;@з@)「とんでもない博打を打っておられますからな……」

721 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:25:27 ID:pdeLbfIc0
予選開始一週間前。各ブロックの振り分けが発表された時、本八と文彦は珍しく意見を一致させた
『バジリスクがいる以上、レース、バトルロワイヤル問わず終盤は絶対にバトルで決着がつく』
レースの勝利条件は本来ならばゴールに一着で到着する事だが、予選三回戦は3組のチームが勝者となる
従って、バジリスクが終盤にバトルを仕掛けた場合、ゴールするよりも先に残り3組になる方が早いと踏んだ


( A )「バジリスクを差し置いて3組先着する可能性は?」

(  ω )「バジリスクのジャパンカップ出場回数を見てから物言えお。そんなヘマを蟒蛇のネームドチームがするわけねーだろ少しは考えてから発言しろよブス。ったくこれだから素人は困るんだお。会話のレベルについて来れないなら静かにしてもらっていいすか?」

( A )「」


<うわああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!捥げるおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!


(´ ω `)「予選のキモはバジリスクとクワイエットが同じブロックに振り分けられたって所だ。両者が三回戦でぶつかるのは、ほぼ確定と見ていい」

(´ ω `)「となると、クワイエットはバジリスクのスタイルに同調した方が手っ取り早いと判断するだろう。ゴールを妨害されて共倒れになるより、その他を一掃した方が楽で確実とな」

( A )「バジリスクを高く見積もり過ぎじゃねーのか?三回戦は75チームも参加するんだぜ?それをたった1チームで制圧出来るってのか?」

(´ ω `)「『あのアビリティ』ならそれが出来ちまうんだよ。豚が6shooterの性能をフルに引き出せるように、その道の『代表格』ってのがゴロゴロいやがんだ。チャリオッツをちょっと齧った程度のニワカが知ったかぶって俺様に意見してんじゃねーぞブス。半年ROMれやカス」

( A )「」


<ぐわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!増えるうううううううううううううう!!!!!!!!!!!!

722 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:26:35 ID:pdeLbfIc0
ライバル関係であるクワイエットとバジリスクだが、本線より一足先に相見える三回戦はあくまで『通過点』であり、真の決着の場ではない
お互いに予選通過を目的とするならば、利害の一致からの共闘もあり得ない話ではない
そしてバジリスクがいる以上、どのようなルールであれ最終的に潰し合いに発展するのは明確だった


(´ ω `)「ここに、『相乗り』させてもらえねえかなって考えたんだよ」


本八の狙いは、三回戦に置ける『クワイエット・バジリスク・Black Sheepによる共闘』であった


その為に必要なパーツが幾つかあった


(´ ω `)「まずは実力を示さねえことには始まらねえ。『振るい』が終わった二回戦で、圧倒的な戦果を挙げる」


両チームに引けを取らない、実力の誇示


(´ ω `)「そして挑発。こいつは三浦の大将の入れ知恵と、チャリオッツの黒歴史を拝借しよう」


『カラス戦術』を用いた無言の挑発


(´ ω `)「最後は運も絡むが……『その他』の下心を擽るとっておきの甘い餌」


『番狂せ』を匂わせる千載一遇のチャンスシーン


(´ ω `)「この三つが上手くかみ合えば、予選への切符は俺らが独占したも同然よ」

723 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:27:49 ID:pdeLbfIc0
(´・_ゝ・`)「傲慢の極みだね……」


本八がしている事は、『ジャパンカップ初参戦のペーペーが、国内最強クラスと同列である』と吹聴しているようなものだ
九月の半ばに木本が言ったように、この国は『出る杭は打つ国民性』。我が強ければそれだけ顰蹙を買う。ましてや、予選ともなれば格好の獲物だ
実力のある新入りが決勝に出場したいのならば、出来る限り目立たず穏便に、収まるべき椅子に静かに着席すればいい。それが正攻法というものだろう

残念ながら、正攻法は『大潮 本八』のやり方とはマッチしなかった


本八は金や権力、時には暴力すら存分に駆使して欲しい物を手にした後は、恥ずかし気も無く公衆に見せびらかす、クソガキがそのまま大人になったような救いようのない下品な人間である
強いて本八とクソガキの差を挙げるとするならば、手にしたモノは本人にとって、そして他人にとって真に価値があるモノという点だ
誰もが一目見て驚嘆し、羨望し、嫉妬する。その価値があって初めて、本八にとっての『自慢』と成り得る
この予選三回戦は、本八なりの宣戦布告であると同時に、『自慢』を披露する場でもあるのだ

そして彼の『自慢』もまた、お行儀良くゲームが出来るような連中では無かった


「Black Sheepがクワイエットに猛然と迫る!!6shooter有効射程……撃たない!!まさか!?肉弾戦か!?」

「クワイエットは至近距離もね、もの凄く強いですからね。策が無ければ自殺ですねこれはね」

「しかしこれを見逃す蟒蛇ではない!!バジリスクの毒牙が羊の腹を目掛けて襲い来るーーーーーーーーーッ!!」


(;@з@)「宇都宮氏、掛かっておられるのではござらぬか!?クワイエットは『至近距離』こそ避けるべき相手とお忘れなのでは!?」

724 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:29:21 ID:pdeLbfIc0
クワイエットの真骨頂は、遠距離から放たれる無音の射撃ではなく、互いのキャプテンの表情が窺えるほどの『至近距離戦闘』であるとされている
そのワケは、側部装甲に配置されている『四本の太いチューブ』にある
左右に二本ずつ、折り畳まれた状態で装着されている直径30センチほどの太さのそれは、展開時には先端に四つの鉤爪が付いた長さ6メートルの『触手』として機能する
クワイエットのキャプテンは、自らの頭部を隠すマスク兼『ヘッドギア』から脳波を読み取らせて操作し
自転戦車でありながら、『殴る』『掴む』『投げる』『剥がす』といった、動物的なアクションを可能とする
側部装甲兼3コストアビリティとして機能する四本の手足は、某有名アメコミヒーローの名物ヴィランから捩って、『D-Oct』と名付けられた


(´・_ゝ・`)「関係ないだろうね」


D-Octは収納時には装甲として、展開時には手足として機能する。しかしその間、車体側部は薄い鉄板に覆われるだけで防御機能は損なわれる
通常、よほど接近されなければ展開する事はなく、装甲としても至って平凡な耐久値しか持たない。肝心の操作難易度も、開発者本人ですら至難と呼ぶ程に高い
砲撃という遠距離攻撃手段が標準装備であるチャリオッツにおいて、高々6メートルしかない腕は取るに足らず、装甲としても秀でてはいない。装着するにしてもアビリティコストまで要求されるのが致命的であった
D-Octもまた、少々物珍しいだけの失敗装備として、ストレージの奥深くでひっそりと眠る運命を辿ろうとしていた

『王者がその手を取るまで』は


「王者クワイエット!!早々に剛腕を広げる!!バジリスクは間に合わないか!?」


クワイエットは車体を鋭く45度切り返し、迫り来るBlack Sheepと真っ向から対面する。D-Octの展開時に防御力が下がると言っても、あくまで側面だけである
しかし前面装甲も、衝突に対して強固とは言えない円錐型の『ペンシルチェスト』。正面からの砲撃を外側へ逸らす事には長けているが、チャージ前提の重厚装甲には弱い
Black Sheep最大の武器は、文彦と6shooterによる精密かつ刹那の連射。そしてそれを支えるジョッキーの強靭な足腰から繰り出される突進
強力なアビリティを積むまでも無いと結論付けるほどに凶悪な、大潮 本八の『自慢』。まともに受ければ王者とて無傷では済まない

725 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:30:19 ID:pdeLbfIc0
「受け……」


爪を広げたD-Octを突き出し、ドッシリと構えるクワイエット。Black Sheepは速度を落とさず突っ込んでいく
四つの触手はBlack Sheepの車体を正方形の四点で受け止め、蛇腹の腕を曲げて衝撃を吸収する。車体は大きく後退したが、装甲に大きなダメージは生じなかった


「止めたァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!柔が剛を制する!!王者クワイエットの技が光るーーーーーーーーー!!!!!!!」

「何度見てもね、惚れ惚れしますね。D-Octの強みとは言え、中々真似できませんね」


D-Octの耐久値は装甲としては平凡だが、『キャプテンが操作できる車輌装備』としてはトップクラスである
また、鋼鉄製でありながらしなやかな蛇腹のアームは、衝撃を受け止めるクッションとしても機能する
人の『腕』から放たれる攻撃が多種多様であるように、D-Octもまた、盾のみならず『刀』にも『槍』にも『薙刀』にも『槌』にも変化する
その特性は『鋼鉄』の硬度を持つ生物の『筋肉』。訓練次第ではヒトかそれ以上の動物的な瞬発力も発揮出来る
柔と剛、矛と盾を併せ持つ変幻自在の鉄腕。これこそ、クワイエットを王者たらしめる最大の武器であった


(;@з@)「何故撃たぬのでござるか文彦氏!!!???」


木本が声を荒げる。Black Sheepが誇る『最大の武器』は、ファーストショット以降放たれてはいない
6shooterは低火力、短射程、キモオタの臭い豚というハンデと引き換えに、青天井な連射力を秘めた主砲である
『連射してナンボ』の武器を、互いのキャプテンの顔が見えるほど近い至近距離で、未だ発砲されない。木本の脳裏に、文彦が蟒蛇を、チャリオッツを辞めるきっかけとなった試合が過ぎる


(´・_ゝ・`)「木本くん」


しかし同じく傍観者である盛岡は、全てお見通しと言わんばかりに落ち着いた様子で話しかけた


(´・_ゝ・`)「推しである皆鳴ミセリを目の前にしたら、キミはどんな反応をする?」

(;@з@)「え?そ、そりゃあ……舞い上がって昇天して……いや、まさか盛岡氏……」

(´・_ゝ・`)「そのまさかさ。現チャリオッツ王者を前にして、『はしゃいでんだよ』。あのクズは」

726 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:31:32 ID:pdeLbfIc0
日本の頂を狙う挑戦者であり、そして互いに競い合うライバルであると同時に、クワイエットはチャリオッツプレイヤーにとっては神にも等しい存在である
その神が、自身の贈った『挑戦状』を受け取っただけでなく、胸まで貸してくれているのだ。ファンにとっては、垂涎モノのご褒美であった


「大潮選手何故かめちゃくちゃ嬉しそうだ!?ファン心理か!?アイドルとの握手会とでも思っているのかーーーーーーー!?」

「僕もね、シュガー&スパイスのね、握手会行った時あんな感じにね、なりますねうん」


(´・_ゝ・`)「娘も好きなんだよねシュガー&スパイス。彼女達もジャパンカップにも出場するし」

(;@з@)そ「言ってる場合ではござらんのでは!?確かに最高のファンサかも知れませぬが、クワイエットの間合いでガッチリロックアップされたも同然なのですぞ!!」


ロックアップとは、両者ががっぷりと組み合う状態を指すプロレス用語であり、猿渡哲也氏のプロレス漫画のタイトルである
通常、チャリオッツにおいて鍔迫り合いの状況など、『よほど頭キマったチーム同士』でしか発生しないものだが、今回は本八による(あるいは文彦も)、一方的なファン交流イベントとして出来上がってしまっている
クワイエットにとっては全人未踏の三連覇が懸かった大事な一戦。厄介ファンに付き合っている暇はない
何より、バトルロワイヤルに限れば王者を凌ぐ蟒蛇の牙が、間近まで迫っている


(;@з@)そ「ヒィ!?」


バジリスクはジョッキーの世代交代に伴い、前面装甲もチャージ重視に置き換えた
両サイドのフロントを根元に、バンパーを防護するように半周。先端は槍のように真っ直ぐ突き出された二本の太い『角』
突き刺し、抉ることを目的とした、残虐かつ悪辣なそれの名は、悪魔を意味する『ディアボロス』である


(;@з@)「バジリスクはBlack Sheepと同様に『撃って殴れる』実力者!!新たなジョッキーは荒削りですが突進力は宇都宮氏をも凌ぎますぞ!!クワイエットに雁字搦めにされてる今、横っ腹に突き刺されば敗北は必至にござる!!」

(´・_ゝ・`)「優秀な解説だなぁ」


国内No.1とNo.2に板挟みにされている絶体絶命の状況に、盛岡は冷めたお茶を淹れなおした
本八は確かに浮かれたミーハーのゴミクズである。しかし、猛者の放つ威光に目を眩ませるほど幼稚ではない


「土手っ腹にバジリスクの毒牙が迫る!!Black Sheepここまでかーーーーーーーーーーッ!!!!!?????」

727 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:33:48 ID:pdeLbfIc0
クワイエットの『矢』がつがれ、鏃がBlack Sheepの眼前へと向けられる。放たれれば一撃貫通は免れない
射線から逃れようにも、D-Octの拘束を振り解かねばならない。これはクワイエットのような『腕』という抵抗手段の無い車体にとっては至難の技である
人同士の取っ組み合いで例えるなら、掴まれた側が身体の押し引きだけで逃れようとするものだ。掴んでいる側は当然、放さないように追随する
離脱の為に必要な動作は、『腕』自体にダメージ与えて彼方から手放すようにするか、あるいは瞬発的な動きで振り払うかである
『自転車』を始め『乗り物全般』において、動物的な瞬発力を発揮するのは至難である。その殆どは、効率的な車輪運動を実現するため段階的に加速する設計がされているからだ
では、Black Sheepは成す術なく額を貫かれ、横っ腹を串刺しにされてしまうのだろうか?
Desperado Chariotsは十話にして、選択肢をミスったギャルゲーのように呆気なく最終回を迎えてしまうのだろうか?否―――――


「前門の王者、側面の蛇!!Black Sheep万事休……いや、アレはーーーーーーーーッ!!!!!!!」


Black Sheepの車体が高速回転。四点を捉えていた爪は、弾けるように振り解かれる
同時に発射された矢は、6shooterの砲身を僅かに削り逸れていく
D-Octからの離脱と射線切りと並行して、側面から迫るバジリスクに標準を合わせ


「Black Sheepここでフルバースト!!しかし!?」


残り五発を全弾発射。元チームメイトだった文彦の才能を知るバジリスクはこれを読んでいたのか、ハンドルを切って回避
Black Sheepは回転が収まるのを待たず、ガムシャラにその場から離れる。戦況はこれでまた平衡に戻った


「バジリスク躱すーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!Black Sheepも絶体絶命の状況から逃れた!!」

「ヒリつく騙し討ちですね。これね、普通の胆力じゃできませんね」


(;@з@)そ「うおーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!惜しいでござる!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「いや、かなり余裕を持って避けてるよ」


盛岡の言う通り、バジリスクは早い段階で首を振っていたが、それでも観る者に『惜しい』と思わせるほどにギリギリの回避であった

728 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:35:38 ID:pdeLbfIc0
(;@з@)「『当たらなければ、どうという事はない』でござるか?」

(´・_ゝ・`)「そうだね……バジリスクは予め文彦くんの実力を把握してる分、警戒の度合いも段違いだ。二回戦までは初見殺しが通用してたけど、これからはそうはいかないだろうね」


砲塔の回転よりも遥かに早く、車体ごと砲口を向けられるのだ。相手からすれば不意打ちに等しい、言わば『未知の挙動』
『予測可能回避不可能』というネットスラングにあるように、スピンミキサーによる高速エイムは予測だけで回避できるような代物ではない
求められるのはジョッキーの直感力。ある種、未来視にも等しい『避け勘』を培わねばならない


(´・_ゝ・`)「流石、国内二位の実力と言ったところかな。それに……」


バジリスクのキャプテンである『宝木 蕗也』は新たなジョッキーに、徳雄の過去に関わりある人物を指名した
プロ選手でありながら、三対一、それも相手はキャプテン落ちという圧倒的な戦力差で臨みながら、公衆の面前で屈辱的な敗北を喫した、ネットニュースにすら上がった半年前の一戦
Black Sheep結成前から『擬似的な6shooter+スピンミキサー』の砲撃を、その身と頭に刻み込まれた唯一の対戦相手


(´・_ゝ・`)「『腐っても鯛』、か」


バジリスクの新ジョッキー『高城 貴虎』。対文彦攻略の要として、これ以上無い人材であった

729 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:37:33 ID:pdeLbfIc0
(;@з@)「半年の間で見違えたのは、宇都宮氏だけでは無いのでござるな……」

(´・_ゝ・`)「ドン底から這い上がった人物は例外なく強くなるものだ。それを見越した采配だとすると、宝木選手はかなりの切れ者だよ」


事実、文彦との対戦前の高城は、蟒蛇所属でありながらパッとした成績を残してはいなかった
アマチュアより才能はあったのだろうが、プロの世界では掃いて捨てるほどでしかなく、そのまま埋もれていくだけの選手だった筈が
『あの日』をきっかけに弾みをつけ、今や突進力と回避力を併せ持つ、蟒蛇筆頭チームの一員である
バジリスクは彼の採用によって、因縁にせよ技術面にせよ、Black Sheepにとって最も手強い相手と成ったのだ


(;@з@)「文字通り、藪を突いて蛇を出してしまったわけですな」

(´・_ゝ・`)「上手いねぇ。座布団一枚」


盛岡は木本という善性とコミュ力に溢れた有能との束の間のストレスフリーな会話に人知れず癒された

730 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:38:35 ID:pdeLbfIc0
「さぁ仕切り直しですEブロック予選最終戦。Black Sheepは距離を取りながらリロードに移っております」

「長いリロードタイムはね、6shooterの弱点でもありますね。うん。しかし……えー……内藤選手、凄まじい早撃ちですね」

「この隙をどう凌ぐかが、チームの力量を……おっと!?」


Black Sheepの進路を妨害するかのように地面が爆ぜる。クワイエットとバジリスクを警戒して少し離れた場所に降り立った他チームが、この機を逃さんと砲撃を開始した


「Black Sheepへ集中砲火!!休む暇は与えられません!!」


(´・_ゝ・`)「どのチームかな?」

(;@з@)「59番『歩苦歩苦』、8番『インビジブル』、31番『三木ONE』にござる!!」


Black Sheepに向かって正面、変形機能を持つ『歩苦歩苦』。右側面に光学迷彩装甲によるステルス戦法を得意とする『インビジブル』
そして左方に車体を黒と赤のカラーリングで二分し、砲塔に二つの円形レーダーを耳のように搭載した、何がとは言わんがミッキーマウスを彷彿とさせる『三木ONE』が待ち構えている
尚、2121年現在、黒赤カラーのミッキーはパブリックドメイン化している為、杞憂は不要である


(;@з@)「クワイエットはっ……!!」


クワイエットは背を見せたBlack Sheepを深く追うことはしなかった
この場に置いて最も警戒しなければならない脅威が、すぐ側で鎌首を擡げているのだ。これを無視して羊を追えるほど、大蛇は優しくはない
それはバジリスクにも言える事であり、この二大チームはBlack Sheepの離脱によって膠着を余儀なくされた


(;@з@)「よし!!」

(´・_ゝ・`)「後門の虎は避けられたか……」


共闘の可能性は万が一であったが、二人はひとまず胸を撫で下ろす。最悪の状況は免れた
1対3の戦況ではあるが、クワイエットかバジリスクのどちらかと対峙するよりは遥かにマシなのだ
Black Sheepは脇目も振らず、正面の歩苦歩苦へと突っ込んで行く。無勢に置いても一切の躊躇いも見せなかった


(´・_ゝ・`)「キマってんね。合宿の成果か」


『歩苦歩苦』は某機動戦士をイメージした白、青、赤のカラーリングが特徴のアマチュアチームである
主砲も長射程高威力を誇る『ビームキャノン』を搭載しており、その弾道はショッキングピンクの閃光を描く
先ほどBlack Sheepを狙った砲撃に、そこまで目を惹くものは無かった

731 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:40:09 ID:pdeLbfIc0
(´・_ゝ・`)「撃ち損ねているね。チャンスだ」

(;@з@)「しかし、食らえば一撃死でござるよ」

(´・_ゝ・`)「さっき言ってたろ?『当たらなければどうと言うことは無い』って」


ビームキャノンは高威力を誇る反面、再装填に時間が掛かる主砲である為、牽制として気安く使うにはリスクがある
このような主砲は、長距離からのスナイプで仕留める『ワンショットワンキル』を主として立ち回らねばならない。相手の砲撃が届く場所にいる時点で、その強みを殺してしまっているのだ

そしてもう一つ、ビームキャノンには致命的な弱点がある。砲弾が光を放つ『光線』であることだ


「歩苦歩苦、向かってくるBlack Sheepへ発射!!しかしこれを難なく避ける!!」


ビームキャノンは発射時、砲身の奥からせり上がるように発光するという特徴がある。マズルフラッシュのような瞬間的なものではなく、『動作の溜め』に近い挙動だ。正面から対峙した場合、発射タイミングが他の主砲よりも掴みやすくなる
原作再現としてのこだわりであったが、こと実用においては『あからさま過ぎる予備動作』として大いに足を引っ張る要素なのだ


(;@з@)「あっ……」


流れ弾は後方のクワイエットとバジリスクの間を通り抜け、更に奥の一際大きな建造物を貫く
瓦礫と共に建物内に眠っていたであろう書物の紙吹雪が舞い上がり、そこに身を潜めていた複数のチームが慌てて飛び出した
睨み合いから解かれた二強は、標的を移し替えてそれぞれ撃破へと向かう―――――


(;@з@)「『違う』!!!!」


否、狙いは『いつでも殺せるような雑兵』ではなく、紙吹雪と共に舞った『一つの書物』


(;@з@)「『トレジャー』でござる!!!!!!!!!!!!」

(;´・_ゝ・`)「オイオイマジか……」

732 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:41:26 ID:pdeLbfIc0
『トレジャー』。ステージ内に点在する超強力なアイテム。ボス級エネミーから確定でドロップする物もあれば、建造物や洞窟、宝箱の中でひっそりと眠っている物もある
入手難易度によってグレードや効力に差はあるが、優位に立つために是が非でも手に入れたい強力な代物である。それが今、クワイエットとバジリスクの手が届きそうな場所で、光輪を纏いはためいている


「早々に現れた円落街のトレジャーの一つ『魔導書アーウィン』!!強力な召喚獣を一定時間使役出来る効果を持っています!!心強い味方!!是非とも手にしたいところ!!」

「下手なボスクラスエネミーより厄介な相手となりますね。何といってもね、倒した所で得るものはありませんからね」

「クワイエットかバジリスク!!どちらかが手にすれば均衡が崩れるのは必須!!しかし届くか間に合うか!?」


(´・_ゝ・`)「いや、こっち見てる場合じゃないよね」


盛岡は少しの狼狽こそ見せたが、国内二強と数多の強豪たちによるトレジャー争奪戦からBlack Sheepへと視点を戻す


(;@з@)「そ、そうでござったな」


木本も『絶対面白い所でござるよ!?』という言葉を辛うじて飲み込んだ

733 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:42:56 ID:pdeLbfIc0
(´・_ゝ・`)「おっと、少し目を離した隙に……」


Black Sheepはワイヤーを使い、歩苦歩苦を引き摺り回している最中であった
固定砲である6shooterの照準を素早く合わせる手段である1コストアビリティ『スピンミキサー』
抜群の汎用性でサポートが可能な3コストアビリティ『ブラックマーケット』
そして残りを、『副砲』兼1コストアビリティ『ハープーン』で埋めた
ワイヤーを結びつけた銛の発射とウィンチによる巻取りが可能で、射程はおよそ10メートルと短いが
取り付け位置を自由に決められるのと、広い視界を持つキャプテンが発射を担うという利点を持ち
尚且つ1コストという手軽さもあって、使い勝手の良い装備として広く重宝されている
これをリアに取り付け、牽引能力を獲得。『押す力』であるチャージの他に『引く力』も扱えるようになった


(´・_ゝ・`)「それにしても……」


牽引に求められるのは足腰の『粘り強さ』。水泳を中心としたスタミナトレーニングに注力した徳雄には、それを引き出すインナーマッスルが十分に備わっていた
そこに着目したBlack Sheepの参謀、木本が提案した『ハープーン』は、ブスの持ち味を存分に活かせる最後の1ピースとして収まったのだ


(´・_ゝ・`)「すごいね」

(;@з@)「はぁ…………」


そう、罪人を市中で見せしめにするべく引き摺り回すかの如く―――――


(;@з@)そ「いやここまでするとは想定してはござらんよ!!!!!!!!???????」

734 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:44:46 ID:pdeLbfIc0
幾ら徳雄がブスの化け物と言っても、フルパーティの車体を縦横無尽に振り回すのは無理がある
木本も、ハープーンはあくまで後続の走行妨害や装甲の一部分を引き剥がすといった補助的な役割担うものとして提案したのだが


(´・_ゝ・`)「いやでも、ハンマーみたく振り回してるけど……」


Black Sheepは孤を描くように走行し、繋がれた歩苦歩苦は廃墟を巻き込みながら振り回されている
その様を、キャプテンの本八はハッチにしがみつきながらゲラゲラ嗤った。人が苦しむ様を娯楽として楽しめるタイプのクズである。こういうクズはインターネットに広く棲息しているので特段珍しくは無かった


(;@з@)「幾らハープーンのワイヤーが強靭といえども、耐荷重というものがあるでござる!!いえ、それより先に装甲が剥がれるのが先……」

(´・_ゝ・`)「ならカラクリがあるね」

(;@з@)「待てよ……歩苦歩苦の主力アビリティは確か……『ムーングラビティ』!!車体に掛かる重力を一時的に6分の1まで軽減する能力!!それを発動しているならあれだけ振り回されるのも説明が付きますぞ!!」

(´・_ゝ・`)「しかし見ての通り、今の状況下での重力軽減は歩苦歩苦にとって悪手でしかない」

(;@з@)「となれば、アイテムによってアビリティを強制的に発動させられたのでござろう。該当するのは恐らく……『暴発剤』にござる」


『暴発剤』。キャプテンがハッチから投擲して使用する手榴弾型アイテムである。これを浴びせられた車体は、最も重たいコストのアビリティを一回限り強制的に発動させられる
妨害系のアイテムとしてシンプルかつ優秀な性能ではあるが、接近しなければ届かない点や、暴発したアビリティに巻き込まれて自滅するリスクがある為、使い所は限られる


(;@з@)「運動補助系アビリティへの効果は的面でござるな」

(´・_ゝ・`)「さぁ、ここからどう返すか……」

735 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:46:05 ID:pdeLbfIc0
歩苦歩苦は遅きに失した。ハープーンに捕えられた時点で、すぐさま装甲を捨てて離脱するべきであった
『振り回される』という未経験の攻撃に、冷静さを欠いた歩苦歩苦のキャプテンはようやく判断の遅れに気づき、反射的にハープーンが突き刺さった装甲部位をパージする


(´・_ゝ・`)「あーあ……」


解放はされたものの、今度は地面を転げ回るハメになる。ムーングラビティの効力も切れ、石畳と装甲の摩擦で火花を散らしながら建造物へと突っ込んだ
瓦礫と土埃に埋もれた車体は横転し、土手っ腹を曝け出している。そこにトドメと言わんばかりに6shooterの砲撃が一発撃ち込まれた


(;@з@)「よし!!ファースト……」


「ファーストキルはなんとVIP Library!!泥男を堕としトレジャー獲得!!二強を出し抜いた!!」


(;@з@)そ「ああ〜!!惜しかった〜!!」

(´・_ゝ・`)「一歩出し抜かれたか。しかし、『競うのは早さじゃあない』」

(;@з@)「そ、その通りでござる!!」


歩苦歩苦の流れ弾が口火を切ったトレジャー争奪戦の盛り上がりと比べ、Black Sheep側の戦況は目立つものでは無かった
ダークホース扱いと言えども、優勝候補の二強と比べれば霞む存在で、実況の目が向いていたのも正直な話『オマケ扱い』に寄る所が大きい


(´・_ゝ・`)「さて、乗ってくれるかな……」


本八の策は、ここからが本番であった

736 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:47:16 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



一方その頃。徳雄、文彦の両名と馴染み深い彼らもまた、Eブロックの行末を観戦していた


「バジリスク、VIP Libraryを撃破ァァァ!!同時に、クワイエットも召喚竜『ジャバウォック』を撃退!!早い、早過ぎる!!これが国内二強の実力かァァァ!!!!!」


(,,゚-゚)「すげー」

(´・_・`)「バジリスクが一枚上手だったな。面倒をクワイエットに押し付けた」


鬼ヶ村スポーツセンターねぐらのオーナーにして、二人の世話を焼いた教官。そして作中一の敏感乳首を持つ薄顔マッチョ『小練 詩音』と、ゲロゲロに甘やかされたが故にデロデロの自己肯定感の塊と化したメスガキ『儀杜 しずく』である
現在、彼らはEブロック最終戦を三画面展開で眺めていた。一つはフィールドカメラで全体の戦況を。残りはそれぞれクワイエットとBlack Sheepのフォーカスカメラである


(´・_・`)「そんでこっちも……」


Black Sheepも実況のマークから外されたものの、歩苦歩苦撃破後に結託した三木ONE、インビジブルも立て続けに撃破。現在、キル数トップである


(´・_・`)「見事なもんだな」

737 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:48:40 ID:pdeLbfIc0
(,,゚-゚)「宇都宮くんのチームは元から攻撃力はあったんでしょ?」

(´・_・`)「それに加え、キャプテンのアシストも光ってる。あのやり方はカラス戦術の『源流』だ」

(,,゚-゚)「源流?」

(´・_・`)「今でこそカラス戦術は蔑称として知られてるが、『Three Robbers』っつーチームが考案した『ワタリガラス戦術』が元となってる。彼らもバトロワで鳴らした猛者でな。NPCには目もくれず、次から次へとプレイヤーを撃破していく様からそう呼ばれるようになった」

(,,゚-゚)「カラス戦術って、アイテムを買い溜めするやり方って言ってたよね?荒稼ぎ無しでどうにかなったの?」

(´・_・`)「言わずもがな、ザコNPCよりプレイヤーを狩る方がGの稼ぎはデカい。1チームにつき1アイテムだけ使用するなら、プレイヤーキルだけでギリギリ賄えんだよ。Three Robbersのキャプテンは、その時々に応じて最適格なアイテムを見極める選択眼に優れてた。荒稼ぎの枠を他のアビリティで埋めることで戦術の幅を広げていたんだ」

(,,゚-゚)「それって有名な話なの?」

(´・_・`)「いいや。当時は『蠱毒』のようなバトロワの大型大会が無かったのもあり、Three Robbersは日の目を見ずにひっそりと引退した。カラス戦術の由来も、環境が荒れたことで歪んだ形で後世に伝わっちまった。俺もこの話は三浦さんから聞いて初めて知ったからな」

(,,゚-゚)「じゃあ三浦のおっちゃんの差金かな」

(´・_・`)「だろうな。普通に考えて辿り着ける答えじゃあねえ。あのオッサン、よっぽど大潮の旦那を気に入ってんだろうよ」

(,,゚-゚)「変わってんね」

(´・_・`)「そうだね」

738 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:49:57 ID:pdeLbfIc0
(´・_・`)「しかしわっかんねえな……」


二回戦の戦果とカラス戦術による挑発を小練も見抜いてはいたが、真意までは未だ計りかねていた
予選の段階でクワイエット、バジリスクを堕とす腹積りであったなら、最序盤の誘い込みとカラス戦術は相性が悪い
ブラックマーケットは資金が尽きない限り汎用性を発揮する息の長いアビリティだが、瞬発火力に置いては劣る。短期決戦を挑む気であるなら、悠長に小銭を稼いでいる暇はない
アイテムの買い込み目的で大勢を誘い出す算段だったのなら、序盤での接触は避けたい二強を呼び出すのは逆効果だ。現に中途半端な数が安全地帯周辺へと散り散りになっている
そもそも、今のBlack Sheepの実力なら、セオリー通り過疎地からじっくりと安全地帯を目指すやり方でも危なげなく予選を突破出来る筈である


(´・_・`)「んー……」


単純に目立ちたいからという理由も、本八の人物像を鑑みればあり得なくはない。一見くだらなく思えるが、実力の誇示は立派な戦術の一つである
クワイエットやバジリスクが真っ先に狙われないのと同じく、周りに脅威であると知らしめることで、競合相手から狙われる確率を減らせるのだ
だがBlack Sheepは実績のないルーキーだ。幾ら実力を見せつけようとも、彼らに並び立てるほどの迫力を放つのは難しい
むしろ危機感を煽り、要注意チームとして早々に処理すべきと判断され、狙われるリスクが増すこともある


(´・_・`)「いや、そもそも『目立たない』方が無理か……?」

(,,゚-゚)「また一人でブツブツ言ってる……」


6shooterという主砲は、性能を象徴する回転式弾倉を搭載した特徴的なビジュアルである
特徴的であるとは即ち、長所短所が一目でわかるという事。対処照準合わせの難易度はアビリティでカバーしたが、『有効射程』までは補えない
『射程で勝るのならば、手の届かぬ範囲から狙撃すればいい』。6shooterより射程の長い主砲など、数えれば切りがない。ほとんどのチームは、Black Sheepに対して埋め難いアドバンテージを握っているのだ
選手の能力はさて置き、車体の見た目から侮られると最初から理解していたBlack Sheepは、思い切って実力を誇示する方向へと舵を切ったのではないか。ここから導き出される答えは―――――


(;´・_・`)「まさかあいつら、舐められるのが我慢ならねえから見せつけたんじゃねえだろうな……?」

(,,゚-゚)「そんなガキみたいな理由ある?」

(;´・_・`)「少なくとも、あの中の一人はやりかねねえだろ」

(,,゚-゚)「あー……」


ブスのことである。ヤンキーはメンツにこだわるクソしょうもない生き物なのだ

739 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:50:42 ID:pdeLbfIc0
(,,゚-゚)「あ、また狙われだした」

(;´・_・`)「お、おお……」


Black Sheepへの『ヘイト』は鎮まることなく、二強と離れたことで散り散りになっていた他チームがこれ幸いと集い始めていた
ジャパンカップのルールはソロプレイ前提だが、利害一致による一時的な共闘は暗黙の了解とされている。よほど悪質で無い限り、咎められる事はない
既に三チームも下したBlack Sheepは、『私刑』の大義名分として通用するほど充分な脅威なのだ


(,,゚-゚)「ひーふーみー……うわ、完全に囲い込みじゃん」

(´・_・`)「……」


マップ上では、Black Sheepを取り囲むように複数のマーカーが動いている。建物の影や入り組んだ路の中など、すぐさま距離を詰められないような位置に陣取り始めた
姿を見せれば速攻で狩られるのは、先程の『デモンストレーション』で明らかとなっている。ワタリガラスに吹く追い風を阻む包囲網が出来上がりつつあった
と、ここで小練はクワイエットとバジリスク側の戦況にも緩やかだが動きがあるのに気づく。Black Sheepと同じく、彼らにも『囲い』が出来つつあった
この状況を訝しんだ彼は、少しの時間を分析に費やし、そして―――――


(;´・_・`)そ「あいつらマジかよ!!」

(,,゚-゚)そ「え!?何が!?」


Black Sheepの狙いに気付き、思わず大声を張り上げた

740 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:51:42 ID:pdeLbfIc0
歩苦歩苦の流れ弾が引鉄となり起こったトレジャー争奪戦。ジャパンカップ出場経験もある強豪VIP Libraryが、果敢にも二強に挑み返り討ちに遭った
だが、その無念を晴らさんと続々と各チームが集まっている。VIP Libraryの散華は決して無駄ではなく、挑戦者達に火を着けたのだ


「これは……ある意味、想定内の事態ではありますね」

「はい。強豪を蹴落とすならね、大勢が共闘出来る予選が一番成功確率が高いですからね。結果論ですが、密集が予想される地点に降り立ったのは不味かったですね」


実況解説の言う通り、格上に対して最も高い勝算を叩き出すなら予選で袋叩きがベストだろう。この予選三回戦は、一時的共闘という形で集団戦に持ち込める唯一の機会だ
これまで今回の状況が発生しなかったのは、競合チームが二強との接触に強い危機意識を抱いていたのと、密集地帯を避けるというセオリーがあったからである。もしも二強が過疎地帯からスタートしていたなら、まず発生しなかった状況なのだ
トレジャーの出現こそ偶然の産物だろうが、Black Sheepは『二強をまとめて密集地へ誘い込む』事に成功している。この段階で、『多数の囲い込みによる一網打尽』を想定させるシチュエーションを用意出来たのだ
何より、VIP Libraryよりも先んじて挑んだのは彼らである。一連のやり取り自体は、Black Sheepとクワイエットをよく知る小練にとっては『小手調べ』程度にしか見えなかったが
現役のプレイヤー達にとっては、『ポッと出のルーキーが、前年度の覇者と準覇者と対峙して生き残る』という快挙として映っている筈だ


(;´・_・`)「Black Sheepが生き残った時点で、クワイエットとバジリスクのイメージは『格落ち』したんだ。『俺らでもやれるんじゃねえか』と欲が出る程度にまでな」

(,,゚-゚)「でも実際に実力が劣ったわけじゃないよね?」

(;´・_・`)「たりめーだ。あん中にはコテンパンにされた連中もワンサカいるだろうよ。だが現に、戦況は二強とBlack Sheep撃破に動き出している。そういう『流れ』が出来ちまってるんだ」


恐らくは、彼らへの挑戦に内心警鐘を鳴らしているプレイヤーもいる事だろう。しかし、川の流れに逆らうのが困難であるのと同じく、一方向を向いた集団心理に抗うのもまた困難である
しかも、『全くの無謀』でないのも強く作用している。勝敗を左右する最も原始的な要素は、結局の所『数』なのだ。彼らはこの局面で、それを思い出した
その上、二強のどちらかを撃破したなら、本戦出場を逃してもお釣りが出る程の大金星である。知名度の向上に、これほどお誂え向きな獲物はそういない
魔境とも称されるEブロックが、大勢が手を組むことで早い者勝ちのボーナスブロックへと転じたのだ


(;´・_・`)「Black Sheepの狙いは、『1対1対1対その他』の構図に持ち込むことだったんだ」

(,,゚-゚)「待ってよ。それってドチャクソ不利じゃない?」

(;´・_・`)「勿論だ。『単体のまま』ならまず勝ち目はない。幾らクワイエットやバジリスクが化け物でもな。だが、この不利な状況を緩和できる、最も手っ取り早い方法がある」


「これは……嘘でしょう、我々は夢でも見ているのでしょうか!?あのクワイエットとバジリスクが!!宿敵である彼らが!!『背中を預け合っている』ッ!!」


(;´・_・`)「『一時的な共闘』だ」

741 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:53:01 ID:pdeLbfIc0
彼らが取ったのは合理的判断である。観客にしてみても、ライバル同士の共闘はボルテージが跳ね上がる最高のシチュエーションだ。だが当人達にとっては不本意であるに違いない。誘いに乗らなければこのような危機的状況に陥らなかったのだから
しかし、それぞれの聡明なキャプテンがこの展開を予測出来なかったとも考えづらい。こうなると理解した上で誘いに乗ったか。あるいは、日本一の頂を目指すライバル達の、内に燻る熱い野望を見くびったかの二択である
そして恐るべくは、本戦出場安全圏内にいた彼らを一転して窮地にまで追いやった大潮 本八の策と、『トレジャー出現』という火に注ぐ油を見事に掘り当てた強運だ


(,,゚-゚)「結局クワイエットとバジリスクを陥れただけで、Black Sheepに得はないんじゃないの?やる意味あった?」

(;´・_・`)「何言ってんだ。あいつらにだけ特大のメリットがあんだろうが。これで『国内No.1とNo.2から狙われることはなくなった』んだからよ。少なくとも、今はな」


彼らを陥れた張本人であるが、同じく窮地の立場にある。生き残る為に少しでも人手が欲しい状況で、憤りのままに潰しに走るのは合理的とは言えない。断腸の思いで受け入れる他ないのだ


(;´・_・`)「やるとするなら数が減った終盤、梯子外すみたく唐突に襲ってくる筈だ。だが、Black Sheepがそれをしないという保証もねえ。各々が眉間に銃を突きつけながら共闘するようなもんだ。しかも、この場合最も不利になるのは『クワイエット』だ」

(,,゚-゚)「なんで?」

(;´・_・`)「『強化手段が乏しい』。レースモードならステージクリア時のショップで安全に補給したり、NPCや他チームの撃破でアイテムを得られる事もあるが、今回はバトロワ。それも息つく暇もないであろうラッシュが予想される。敵の死体を漁ってる暇なんてねえんだ」


アイテムの入手は主にショップでの購入、NPC撃破時に確率でドロップ、撃破した車体から奪うという三つの方法がある
今回のバトルは参加数が多いことから、NPCの出現率は低く設定されている為、ドロップでの入手は望み薄だ
また、ショップに関してもステージ内の『隠しショップ』を見つけない限り購入は出来ない
プレイヤー撃破時にGこそ自動で支給されるが、アイテムに関しては撃破した車体に近づきBOXウィンドウを開く必要がある。大勢から襲われる中で、悠長に漁る暇など無いのだ


(;´・_・`)「Black Sheepは言わずもがな、ブラックマーケットで状況を選ばずショップを利用出来る。バジリスクもクワイエットと同じくアイテムの補給こそ出来ないが、『あのアビリティ』はキルを取れば取るほど強く使える蓄積型だ。あの三チームの中で、ただ消耗を強いられるのはクワイエットだけなんだ」

(,,゚-゚)「最後の狙い目を『移した』の?」

(;´・_・`)「そうだ。大潮の旦那は、終盤のリスクケアまで勘定に入れてたのさ」


怨みを買う首謀者でありながら、損する役回りは他所へと押し付ける。クズの体現者たる男、大潮 本八らしい悪どい手口である

742 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:55:19 ID:pdeLbfIc0
「Black Sheepに動きがありました!!煙幕です!!逃げの一手を打つ気でしょうか!!」


ブラックマーケットで買い込んだであろうアイテム、『スモークグレネード』の煙幕がBlack Sheepの車体を覆い隠す
包囲網を形成していた競合チームが、牽制の為に砲撃を放つ。側面装甲に被弾したのか、大きな火花が弾けたものの、致命的なダメージには至らなかったようで、フォーカス画面から口汚い罵倒が聞こえた
続け様にもう一つスモークグレネードが炸裂する。安全圏を中心に、色濃い煙が辺りに充満した
クワイエット、バジリスクはすぐさま車体を方向転換させ、煙の中へと飛び込み姿を隠す。彼らの背中を追うように砲弾が撃ち込まれるが、此方は空を切るに終わった
追撃はされず、示し合わせたように包囲網は縮まっていく。一時の静けさが訪れた


「煙が晴れるのを待って、一斉射で仕留める算段でしょうか。一方的な展開になりそうですね」

「そうとも限らないですね。少なくとも、三組にとって最悪の展開にはなってませんね」

「と、仰られますと?」

「一斉に飛び掛かられたらひとたまりもね、ありませんからね」


(,,゚-゚)「そうなの?」

(´・_・`)「ああ。煙に巻いたのが功を奏したな」


ゲームであれ何であれ、複数人から敵意を向けられるのは相当なストレスであり、戦わずして戦意を喪失させるのに最も効率的な手段である
一方で『数の優位』を握る側は、見えている勝ち目に戦意が大幅に上昇し、気も大きくなる。精神的余裕はリラックスに繋がり、パフォーマンスを引き出す助けにもなるだろう
しかし勘違いしてはならないのは、予選三回戦に置いて『集団の強み』が万全に発揮できるわけではないという事である


(´・_・`)「二強とBlack Sheep撃破の流れになった所で、結局個人戦であることにゃ変わりねえ。裏切りの可能性は全チームにある。なんせ、椅子は三つしか用意されてねえんだからな」

(,,゚-゚)「そんな上手くいかないってこと?」

(´・_・`)「集団を『組織』として機能させるには、指揮官の役立が不可欠だ。だが指揮を執り行うには主従関係や明確な役割をハッキリさせないとならない。対等な立場で一時的に手を組んでいる中、一人だけ偉そうに指図する奴が出てきたらどう思う?」

(,,゚-゚)「ぶっ殺す」

(´・_・`)「え、嘘……そんな嫌?ともあれ指示に従ったら自分だけ損をするかもしれない、騙されるかもしれないという疑念は常について回る。競い合う相手である以上、避けては通れないもんだ」

743 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 20:56:16 ID:pdeLbfIc0
全員が蹴落とし合うライバルであることが、集団の強みである『結束』を形成できない原因となっている
この点に関して言えば、逆境の立場にある三組に分がある。現状打破の為に手を組む必要があるのは共通しているからだ
もしも彼らが、終盤まで誰一人裏切ることなく試合を終えたとしても、それぞれが決勝の椅子に収まるだけで損をする者はいない
しかしそれ以外のチームは、三組を排除し終えた後にもゲームは続く。予選三回戦の勝利条件は、撃破した数や質ではなく『生存』だ
結託もあくまで、勝率が極めて高い脅威を排除して、椅子を空ける為の行動に過ぎない。目的は、『その椅子に座ること』なのだから


(´・_・`)「三組にとって最悪の展開は、解説が言ったように全員が後先考えずにガムシャラに突っ込んでくることだった。指揮の必要もなく、シンプルに物量差で押し潰されるほど怖いもんはない。だがこれも煙幕で出鼻を挫かれた。『様子見』という余地を与えられたことで、揃いも揃ってバカになり損ねてやがる」

(,,゚-゚)「これも計算のう……」

(´^_^`)「当たりまえだぜッ!!このJOJOはなにからなにまで計算づくだぜーッ!!」(ほんとはちがうけどカーズがくやしがるならこういってやるぜ。ケッ!!)


二世紀前の漫画の場面が出た


「ですが、突っ込みたくない気持ちもね、わからなくないですね。あの煙の中にいるのは三頭の虎ですからね」

「安全圏から砲撃で仕留めたいという気持ちがあるわけですね」

「はい。そう易々とね、やられるようなチームじゃないですからね」

「さぁ、煙が晴れようとしています。誰が先に……おっと!?」


(,,゚-゚)「出た!!」


膠着を解いたのは、三組からであった。先頭をBlack Sheep、その後をクワイエットとバジリスクが横並びで追走する
三角形のフォーメーションで、より多くの敵が集まっていた『Black Sheep側』の集団へ向かって突撃する


「Black Sheepが先陣を切る!!二強を差し置いて今回初参戦のルーキーが!!『俺が主役だ』と言わんばかりに突っ込んで行くーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」


(´^_^`)「ハハ!!違いねえ!!」

744 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:11:14 ID:pdeLbfIc0
Black Sheepは前面装甲に『ゴートヘッド』を採用した。砲弾を弾き易い頭蓋骨のような丸みと、軽量クラスでありながら高い硬度を誇る攻防一体の鎧である
中、低威力の砲撃なら数発喰らっても影響は少ないが、先のビームキャノンのような大型砲の一撃には心許なく、防ぐにはアイテムやアビリティによる補強が必須となる
長所はあるがなんて事のないありふれた装甲で、これを一撃で貫ける大型主砲もまた、ありふれている
元より足りない物を補い続けるのがワタリガラス戦術。しかしBlack Sheepは直前にスモークグレネードを二つ購入している。闇市場を賑わせる資金は、とっくに底を尽きていた

その代わりを、後ろの二車輌が担った


「クワイエット、バジリスクの同時発砲!!9番男魂魂(だんこんこん)大破!!25番エスパーク撃破!!」


バジリスクの主砲から放たれた砲弾は、二度の跳弾の後に男魂魂の左側面に直撃し、破裂する
辛うじて撃破は免れたものの、装甲とキャタピラに重大なダメージが残り、戦闘継続は困難となった
クワイエットの矢は真っ直ぐ飛翔し、今まさに放たれようとしていたエスパークの砲口へと吸い込まれるように飛び込んでいく
砲身が鏃に沿って花が咲くように裂けていき、矢に先端が砲弾の雷管と接触し内部で暴発。爆発と共に砲塔が吹っ飛び、走行不能となった


「高火力を誇る2チームが瞬殺!!だが弾幕は避けられない!!どうする気だーーーーーーー!!!!!!!!?????」


二強が撃破したのは、その集団の中で最高の火力を持つ2チームである。言わば、『必要最低限の削り』であり、後の対処は各々の手腕に委ねられる
前後方から三組へ向けて疎に砲弾が発射される。共闘する意識こそ同じだが、息を合わせて一斉射とはいかなかった
それでも十分に脅威だが、着弾までそれぞれにラグがある。百戦錬磨の二強にとって、やり過ごすのは容易かった


「クワイエット!!物ともしない!!降り注ぐ砲弾を四つ脚で捌くーーーーーーーーーーーッ!!」


クワイエットは四脚装甲『D-Oct』を展開し、飛来する砲弾をパンチングの要領で弾いていく
耐久値は平凡なD-Octだが、『装甲』である事に代わりない。中でも先端の四つ爪は、握りしめることで強度を増し、中威力程度の砲撃なら受け流せる


(´・_・`)「いつ見ても凄まじいな」


しかし、音速を越える砲弾を『殴り弾く』など、普通に考えれば現実的ではない。闇雲に振り回せば万に一つの確率で弾けるだろうが、クワイエットは飛来する砲弾を一つ一つ確実に防いでいる
チートの使用を疑うほどの神業は、キャプテンの長いプレイ歴によって培われた『当て勘』によるものだ
敵対車輛の位置や砲撃距離から割り出される着弾のタイミングや位置を、大体の感覚で捉えて爪を『置き』に行く。彼女はこれを四脚全て同時に操作して防いでいる
無論、D-Octの耐久値は徐々に削られる上、一撃の威力が大きな砲撃には一溜りもない。バジリスクのような跳弾による変速軌道を描く砲弾や、Black Sheepのような超高速連射は被弾する事もある

それでも、この唯一無二の防御術はクワイエットが絶対王者たる所以であった

745 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:13:20 ID:pdeLbfIc0
「そしてバジリスク!!『ウルトラファントム』を発動!!砲弾は虚しく空を切るーーーーーーーーーーッ!!」


2コストアビリティ『ウルトラファントム』。0.3秒間だけ車体を透過させる回避アビリティ
砲弾は当然のこと、進路場の障害物をすり抜けて通過する事が出来る。言わば、『無敵』の状態になれる
発動タイミングはシビアであり、90秒という長いCTを要する為、使いこなすのは至難だが、ランク上位勢の中では一定数の使い手がいるトップTierアビリティである
バジリスクは回避行動を取ることなく、着弾ギリギリのタイミングでウルトラファントムを発動し、弾幕を無傷で潜り抜けた
発動が早くても遅くても完全な回避は不可能で、これもまた長いプレイ歴によって培われた『見切り』の能力による賜物であった


「そしてBlack Sheepは……こ、これはーーーーーーーーーッ!!!!!!?????」


文彦こそ二強に引けを取らない『射撃』という類希なる能力を有しているが、これまでメンバーに恵まれなかったキャプテンである本八のプレイ歴は浅く、ジョッキーの徳雄に到っては半年程度である
膂力、攻撃性こそ特出しているが、応用的な技術は身に付いておらず、またアビリティも強力とは言いがたい


「躱しながら突っ込んでいく!!多少の被弾を物ともせず、弾幕の嵐の中を突っ切っていくーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」


あるのは基礎的な操縦技術と、『やられたら殺してでもやり返す』という病的なまでの意地である


(;´・_・`)「あいつスイッチ……」


「衝突ーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!55番天炎BOYZ、大きく吹っ飛ばされるーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


(,,゚-゚)「すげー」

(;´・_・`)「うーわやってるわ…………」


集団の懐に入ったのは、六連射が可能な近距離最速の獰猛な獣である。6shooterの射程に入りさえすれば、一方的に殴られるだけだった黒羊は一変して『鬼』と化す
それだけに止まらず、後からはクワイエットとバジリスクが追いついてくるのだ。初撃で仕留め損ねたツケが何倍にもなって跳ね返ってくるに等しい
ゲームを支配する大潮 本八は、被弾して凹みが目立つ装甲の上で、生来の性悪さを感じさせる下劣な笑い声をあげた。そして―――――

746 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:13:53 ID:pdeLbfIc0




(#´^ω^`)「皆 殺 し だ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」




これから起こす惨劇を、声高らかに宣言したのだった

747 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:14:40 ID:pdeLbfIc0
―――――
―――



同時刻、鮨屋『くおうち』にて


@#_、_@
 (  ノ`)「終いだね。消しとくれ」

( ゚д゚ )「いいのか?まだわからんぞ」

@#_、_@
 (  ノ`)「時間の無駄さね。既に場が『呑まれちまってる』よ。多少は保つかと思ったが、とんだ期待外れさ」

( ゚д゚ )「相変わらず手厳しいな、千母(ちほ)」


窮屈そうにカウンターに座る、身の丈2メートルを越すパンチパーマ・マダムは、脂の滴るようなトロ・マグロスシを一度に二つ食べた


@#_、_@
 (  ノ`)「アンタのお気に入りのボウヤだけが、大局を見据えたゲームプランを企てていた。クワイエットもバジリスクも、まんまとしてやられたね」

( ゚д゚ )「私はあまり褒められたものじゃないと思うがな。彼らもその気になれば、初対面で狩ることも出来ただろう」

@#_、_@
 (  ノ`)「本当にそう思うのかい?」


三浦が浮かべた苦笑いの返答に、彼女は剛気にガハハと笑った


@#_、_@
 (  ノ`)「相変わらず嘘のつけない野郎だね。仮面を被ってた頃が懐かしいよ。しっかし、アンタがそこまで肩を持つたぁ意外だね」

( ゚д゚ )「『我々』のファンと言われちゃあな……多少の情も湧いてくるもんさ」

@#_、_@
 (  ノ`)「ハハハ!!そりゃ、大衆に嫌われた甲斐があったってもんだよ!!」

748 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:17:10 ID:pdeLbfIc0
三浦が淹れなおした熱い茶を、喉を鳴らして飲み干した千母は、湯呑が叩き割れんほど強く叩きつけた

@#_、_@
 (  ノ`)「嫌になるねえ、新時代!!ロートルは忘れ去られ、新たな勇士が時代を築く!!逃れられない新陳代謝さ!!」

( ゚д゚ )「よく言うよ。四十年近く現役を続けている『生きる伝説』と呼ばれるお前が」


『SASUGA×FAMILY』のジョッキーにして、元『アンラ・マンユ』メンバーである流石 千母は、猛獣が震え上がるほど獰猛な笑みを浮かべた

@#_、_@
 (  ノ`)「私はね、勘違いした若造共に身の程を理解らせるのが生き甲斐なのさ。この身体が朽ち果てるまで、チャリオッツから降りる気は無いよ」

( ゚д゚ )「いい趣味していらっしゃるな……」


かつての戦友の悪癖に溜息が漏れるが、年々落ちていく彼女の戦績を思うと、半ば意地もあるのだろうと察せられた
チームを解散してそれぞれ別の道を歩み、結婚して子どもが産まれ、人生の折り返しを過ぎて尚、千母だけがチャリオッツの第一線へと喰らいついている
稀有な女性ジョッキーでありながら、男性顔負けの体躯を活かした古強者。彼女の挑戦は、誰しも逃れることのできない『老い』への挑戦なのだ

@#_、_@
 (  ノ`)「長居しちまったね。ごっそさん」

( ゚д゚ )「まいど。ご家族にもよろしくな」


電子決済で会計を済ませた彼女は、ビニール風呂敷に包まれた家族への手土産を取って席を立つ。去り際に一度だけ振り返って、こう訊いた

@#_、_@
 (  ノ`)「紘一。『トップ・ギア外部顧問』のアンタから見て、次のジャパンカップはどこが勝つと思う?」

( ゚д゚ )「クワイエットだ。それがどうした?」


淀みのない即答に、今年度ジャパンカップ本戦出場チームのジョッキーはギラリと眼光を光らせた

@#_、_@
 (  ノ`)「楽しみにしてると、伝えとくれ」

( ゚д゚ )「ああ」

749 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:19:01 ID:pdeLbfIc0
三浦は軽く洗い物と、『夜の貸し切り営業』に向けた簡単な仕込みを済ませた後、再びホログラムビジョンを起動させた
千母が去ってから二十分ほど経過しただろうか。映像内では既にゲームは終了し、ハイライトシーンと共にEブロック突破チームの名が映し出されていた


( ゚д゚ )「『期待外れ』ね……」


目の肥えた千母が、早々に見切りをつけた気持ちもわからなくはない。Eブロックの前評判は、そう簡単に覆るものではないのだから
だが三浦は、徳雄、文彦に修行の場を与え、本八に『ワタリガラス』というアンティーク戦術へ繋がる助言をした張本人は、彼女とは真逆の感想を抱いていた


( ゚д゚ )「たった半年でここまでとはな……『期待以上』だ」


クワイエット、バジリスクと並ぶもう一つの名前。彼の胸中には誤魔化しきれない歓心と、少しの後悔が湧き上がった


( ゚д゚ )「Black Sheep……なるほどな」


『暗雲』を形容する名を背負った連中が、かつての自分を深く抉ったあの景色が見たいと宣った不躾な男が、かつての自分と同じ舞台に立つ
紛れもなく自身が導いてしまったダークホースは、大晦日の戦場を荒しまわる『災害』を思わせる程に成長してしまったのだ


( ゚д゚ )「これは、楽しみだな」


クワイエットの偉業を阻む存在を招き入れた後悔以上に、『チャリオッツファン』としての興奮は膨れ上がっていく一方だった
かつてないほどの激戦を目の当たりに出来るだろうという期待に、三浦は思わず顔を綻ばせてしまう


( ゚д゚ )「おっと、まずいまずい」


強敵の出現に喜んでいては、外部顧問として示しがつかない。一先ず気持ちを切り替えて、『クワイエット予選突破祝勝会』に向けた準備に取り掛かるのであった

750 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:19:47 ID:pdeLbfIc0
かくして、魔と称されたEブロック予選は幕を閉じ


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ハーッハ!!お客さん!!あれね、俺が名付けたチームなんすよ!!」

爪*'ー`)「え!!!!!????アレは私の教え子とダチが所属してるチームなのだが!!!!!!????」

⌒*リ*´・-・リ 「もしもし、しずくちゃん?観てた?勝ったよ!!」


たった三席の出場枠は


(,,゚-゚)「観てた観てた。先生もご満悦だよ。事件解決した後のぬ〜べ〜みたいになってる」

(´^_^`)「よーし、ラーメンでも食いに行くかーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


大衆の期待を裏切ることなく、クワイエットとバジリスクが


(;@з@)「フゥー、気が気ではござらんかった……」

(´・_ゝ・`)「ハハ、本戦が思いやられるね」


そしてBlack Sheepという『異物』も同じく、その席に着いた


(* ФωФ)「母さん!!文彦がやったぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

川*д川「今夜はあの子の大好物、トンカツのバター漬けよーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

751 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:20:27 ID:pdeLbfIc0
彼らの予選での活躍は、メディアでも大々的に取り上げられ


i!iiリ゚ ヮ゚ノル ♪〜


あのハヤテの話題を一時的に霞ませるほどの騒ぎにまで発展した


(,,;Д;)「うおおおおおおおおおおおん!!!!!!うおおおおおおおおおおおん!!!!!!文彦ぉ!!お前は俺の誇りだァ!!!!!!」

(’e’)「カスカスカスカスカスカスカスカスカスカス」

从;゚∀从「ちょ……落ち着けって……こんな両極端の反応になることある?なぁ、モラっち……」


( ・∀・)「ウフフフフフフフ」


从;゚∀从そ「うおお!!お前が一番キメェーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

752 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:25:33 ID:pdeLbfIc0
数日後、第四十四回ジャパンカップ予選の全日程が終了した


 Aブロック出場チーム

・ネイキッド・オッキイ・オッパイ・ダイスキー
・レッドシューズ
・バーダラ・ブギ

 Bブロック出場チーム

・ハヤテ
・ムシキング
・SUPER VOYAGER

 Cブロック出場チーム

・SASUGA×FAMILY
・朧
・センチピード

 Dブロック出場チーム

・シュガー&スパイス
・トリプルスレット
・禁愚堕霧(キングダム)

 Eブロック

・クワイエット
・バジリスク
・Black Sheep

 Fブロック

・OVER ZENITH
・Thunder Bird Rider
・A to Z


参加総数36216チームから勝ち抜いた、日本のTOP18チームが出揃ったのだ
本八がジャパンカップ制覇を志して三十二年。仲間に恵まれず、指を咥えて眺めるしかなかった夢の舞台まで



残り一か月半にまで迫っていた



.

753 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:27:24 ID:pdeLbfIc0
次回予告


(´・ω・`)「実に、長かった。あまりにも、長すぎた」

(´・_ゝ・`)「黙れゴミカス!!いよいよ本番が近づいて来ましたが、その前に一仕事ですね」

(´^ω^`)「取材に記者会見とやること目白押しだ!!おい!!あの豚は絶対にメディアに露出させるなよ!!炎上待ったなしだ!!」

(´・_ゝ・`)「実は、予選が終わってすぐに配信活動を始めてしまったようです」

(;´^ω^`)「終わった……………………」

(´・_ゝ・`)「登録者数と再生数は、どちらも片手で数えられるほどではありますが」

(´^ω^`)「ギャハハハハハハ!!!!!!!!誰もオタクのキモ豚になんざ興味ないってのが数字で表れてんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「マジで仲悪いなお前ら」

(´^ω^`)「ジャパンカップの醍醐味はゲームだけじゃねえ!!バチバチのトラッシュトークバトルも見物なんだよなぁ!!」

(´・_ゝ・`)「徳雄くんに到っては獏良くんとの決着、そして高城選手との因縁がありますからね」

(´^ω^`)「くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!血が見てぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「どこで争わせようとしてんだよ」

(´^ω^`)「次回、『Desperado Chariots』第十一話!!『フェイス・オフ』!!」

(´・_ゝ・`)「大晦日まで、何事も無ければいいですね」

(´^ω^`)「無理じゃね?」

754 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:46:22 ID:pdeLbfIc0
オマケ

チーム名由来集

・Anker Take
( ^ω^)はあらゆるチート使いと戦うようです
モララーが嫌

・青春真っ只中!!
('A`)は青春真っ只中です
オタクブスが急に美少女と同棲するのが嫌

・VIP Library
ζ(゚ー゚*ζあな素晴らしや生きた本のようです
ニュッくんの煮え切らない態度が嫌

・DDDD
/*゚、。 /だし!だし!ダイオードだし!のようです
こさえたガキを他人に預けてる分際で殴られたから殴り返したジョルジュとかいうカスが死ぬほど嫌い
こんなクソ野郎口から内臓出るまで蹴り飛ばして然るべきだろ何一発貰っただけでダウンしとんねん刺し違えてもぶっ殺すくらいの気概見せんかい

・北猛那
( ´∀`)ぼくはモナー
女が軒並み嫌だしデブは嫌通り越して最悪

・厄姫連合
lw´‐ _‐ノv厄姫様は別に不幸では無いようです
読んだことない

・Good Bad Normal
よい('A`)わるい( ゚∀゚)ふつうの( ^ω^)のようです
顔は悪いんじゃないですかね?

・歩苦歩苦
会員制おさんぽクラブ「歩苦歩苦(ほくほく)」のようです
レストランが最悪

・インビジブル
( ^ω^)は見えない敵と戦うようです。
"無貌の怪物(インヴィジブル・ステルス)"が嫌

・三木一
( ・∀・) ミッキ一マウスの力を借りて戦うようです
ディズニーネタを使ったら消されるみたいな風潮が嫌
蒸気船ウィリーはパブリックドメイン化したんだから今後はガタガタ抜かすなよ

755 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:50:10 ID:pdeLbfIc0
・CHERRY CHASER
童貞鬼ごっこのようです
原作は追われる側じゃねえかって思ったけどめんどいからこのままいった

・泥男
泥男はいないようです
沼男おるやんけ。タイトル詐欺か?人を舐め腐るのも大概にせえよ

・マッハブロー
音速パンチのようです
ブスとデブに彼女いたり恋の予感がするのが嫌

・天炎BOYZ
(´・ω・`)しょぼんはあまえんぼうのようです
子どもが酷い目に遭うのが嫌

・拳応
( ^ω^)が拳の王となるようです
幼稚園児の割に語彙が達者

・コタツとキング
( ^ω^)(´・ω・`)('A`)こたつ話のようです
ブスがなよなよしてて嫌

・七大生徒会
( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
デブの分際で十字架の首飾りしてるのが嫌

・Three Robbers
何がとは言わんがそういう話があった

・男魂魂
(*‘ω‘ *) < 男根根
男根は流石にチャリオッツ運営も許さなかった

・エスパーク
川 ゚ -゚)エスパークーのようです
エスパークスってなんだよ結局

756 ◆L6OaR8HKlk:2025/07/17(木) 21:52:25 ID:pdeLbfIc0
終わりですお疲れさまでした
本戦出場チーム名の由来は後日発表します

今日NIKKEのアップデートしたらロビー画面からソラが消えました

757名無しさん:2025/07/19(土) 17:48:38 ID:dHVtCBt20
おつ!

758名無しさん:2025/07/19(土) 21:00:46 ID:yv3TNJwI0
ワクワクしてきた おつ
誤爆といいチーム名由来集といい色んなとこに喧嘩売りまくるのも草


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