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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

1 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:22:52
ずっと前にマーサー王や仮面ライダーイクタを書いてた者です。
マーサー王物語の数年後の世界が書きたくなったのでスレを立てました。

2007年ごろに書いた前作もリンク先に掲載しますが、
前作を知らなくても問題ないように書くつもりです。

SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top

2 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:23:43
【第一部:sayu-side】

我々の住む地球から時空を超え宇宙を超えたところにある、とある世界。
そこにはモーニング帝国と呼ばれる大国が存在していた。
この国の商業、工業は非常に発達しており、SATOYAMASATOUMIも美しい。
他にも、米がうまいぜ、お茶を飲め飲め最高茶葉、漢字最高、長寿大国、美人ぞろい・・・・・・などなど魅力は盛りだくさん。
そして何よりも、武力が強いことで周辺国には知られていた。
モーニング帝国を強豪国たらしめる理由は、やはり「モーニング帝国剣士」の存在が大きいだろう。
10代から20代の少女で構成された剣士集団は小柄ながらも大の大人より強かった。
一騎当千を地で行く彼女らのおかげで国が護られているといっても過言ではない。
平和であることは国民にとって何よりも喜ばしいはずなのだが、
ただ一人、モーニング城の主であるサユ王だけは何とも言えぬ不満を抱いていた。

「このままじゃ、ダメ・・・・・・だよね・・・・・・」

帝国一の美貌とも噂されるサユ王だったが、現在の彼女の表情はどこか物憂げだった。
サユの顔を曇らす悩みの種は、意外にもモーニング帝国剣士にあったのだ。

(私たちの時代と比べると、今の帝国剣士はあまりにも弱すぎる・・・・・・
 いつか本当の敵が現れたとき、あの子たちはちゃんと国を護れるの!?)

線が細く、いかにもか弱そうなサユ王だが、彼女も数年前までは帝国剣士の一員として戦いの日々に明け暮れていた。
鏡のように磨き上げられたレイピアとマンゴーシュを両手に握り、華麗に戦場を舞っていたのだ。
サユが活躍していた頃のモーニング帝国剣士らは「プラチナ剣士」とも呼ばれ、
史上最強と名高い「黄金剣士」にも匹敵するかもしれない、という専らの噂だった。
だが、今の帝国剣士がそのレベルに達しているとはお世辞にも言い難い。

「だからこそ、今日もあの子たちを見届けないと!」

サユ王は日々の業務よりも帝国剣士や研修生らの訓練をガン見、もとい視察すること重要視している。
この国の平和を本気で願っているからこそ、過密スケジュールの合間を縫ってでも訓練場へと足を運ぶのだ。

3 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:24:26
「・・・・・・これだけ?」

訓練場に入ったサユは愕然としてしまった。
汗を流す少女たちで賑わっているのを期待していたのだが、そこにはたった2人しか居なかったのだ。
モーニング帝国剣士は4+4+1の計9名で攻勢されているので、これではあまりにも物寂しい。

「あ、サユ王!」
「おはようございまーす!」

そんな中でも真面目に訓練していたのは、帝国剣士を代表する"剣士団長"の2人だ。
10代とは思えぬ貴賓と妖艶さを兼ね揃えた"実力派"のフク・アパトゥーマ。
国外に支持者が多数いるほど顔が広い"技巧派"のハルナン・シスター・ドラムホールド。
次期モーニング帝王の座はこの2人のどちらかが掴み取るだろうと噂されており、本人達もそのことは自覚していた。
だが、フクもハルナンもそれぞれの部下の扱いには手を焼いているようだった。

「2人ともご苦労様・・・・・・でもね、フクちゃん」
「はい!」
「まず、エリポンは?」
「エリポンは、今ごろ魔法の特訓をしていると思います。」
「あいつはまだそんな無駄なことを・・・・・・じゃあサヤシは?」
「寝てます。」
「やっぱりね、カノンは?」
「城下町に新しいカレー屋さんが出来たとかで、朝から並びにいってしまいました。」
「・・・・・・頭が痛いわ」

部下3名の不在理由を聞いたサユ王は頭を抱えてしまった。
フクが団長を務めるQ期団は高い身体能力を誇り、戦場ではとても頼りになるのだが
それぞれの個性が強すぎるためにこのようなことが多々あるのだ。
そしてそれは、ハルナンが団長を務める特殊戦法使い揃いの天気組団も例外ではなかった。

「サユ王、実は天気組団のアユミン、マーチャン、ハルも・・・・・・」
「言ってみなさい。ハルナン」
「今朝、3人で取っ組み合いの大喧嘩をしたようで、とても訓練に出れる状態では・・・・・・」
(この国の将来が本当に不安なの・・・・・・)

4 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:25:00
9人いるモーニング帝国剣士のうち6人が自分勝手な理由で訓練をサボったので、
サユ王は怒りを通り越して呆れ果ててしまう。

「あの子たちと比べるとフクとハルナンは真面目に訓練してて偉いわね。
 管理不届きとか言いたいことはたくさんあるけども、まぁそれは置いといて。」

叱られると思ってたところで褒められたので、フクとハルナンの表情は明るくなる。
フクがお礼の言葉を考えるより先に、ハルナンが舌を動かしだす。

「そんなことありませんよ!私の剣捌きはまだまだ未熟なので、人の10倍100倍努力しないといけません。
 剣士団長として相応しい実力を手に入れるために、お強いフクさんの胸を借りていたのです。大きな胸を。」
「そんなそんな〜ハルナンも凄いよ〜」
「いえいえ、フクさんの太刀筋をじっくり見させてもらいましたが、やはりまだまだ敵いません。流石です。」
「恥ずかしいな〜」

ハルナンが自称する通り、彼女は歴代の剣士団長の中でも最弱と言ってよいくらいに弱かった。
もちろん彼女にも彼女なりの強みというのがあるのだが、純粋なタイマン性能で言えば部下のアユミンに軍配が上がる。
では何故そんなハルナンが剣士団長というポジションに就けたのか・・・・・・それは卓越した政治力にあったのだ。
アンジュ王国や果実の国などがモーニング帝国の同盟国となったのは彼女の働きが大きく、
その功績を買われて現在のポストを獲得したのである。

(Q期団のフクと、天気組団のハルナン・・・・・・どちらにこの国を任すべきか、というのも難しい問題ね。)

難題にまたも頭を痛めるサユ王だったが、ここでふと気づく。
モーニング帝国剣士にはQ期団にも天気組団にも属していない"もう1人"がいたことを思い出したのだ。

「そういえばオダはどうしたの?」
「私ならここにいますよ。」
「ひゃ!」

前方から急に声が聞こえてきたので、サユは腰が抜けそうになるほどに驚く。
その声こそモーニング帝国剣士の新人、オダ・プロジドリのものだったのだ。

5 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:25:38
「びっくりした、いつからそこにいたの?」
「最初からいましたよ、王が来るずっと前から。」
「え、そうだった?気づかなくてごめんね。」
「いえ、ずっとここに隠れてましたので無理もないですよ。」
「・・・??」

オダがいるのは障害物も何もない、むしろ日あたりの良いくらいに開けた場所だったのでサユは不思議に思う。
そして同時に(相変わらず変な子だなぁ)という感想を抱く。
オダ・プロジドリはQ期団団長のフクや、天気組団のハルと同じく研修生の出身であり、
卓越した実力を買われ、鳴り物入りで帝国剣士に加入したのだが
あまりにも独特な感性を持っているために、サユはどこか苦手に感じていた。
話している言葉の意味がたまに分からなくなるのだ。

「ていうか居るなら挨拶くらいしてよね、一応私も王なんだから」
「それはすいませんでした、でも・・・・・・」
「でも?」
「どうしても見ておきたかったんです。窓からさす光が、サユ王にどのように当たるのか」
「???」
「とても美しかったです。ありがとうございました。」
「は、はぁ・・・・・・どういたしまして。」

期待のホープですらこんな調子なのでサユ王の頭痛はますます酷くなっていく。
訓練場を離れ、王の間に戻っても眉間の皺が取れることはない。
あれこれ思索してみた結果、今の帝国剣士の実力がまだまだであるのも、自分勝手が過ぎるのも、
すべては「危機感が足りていない」ところに理由があるという結論を出すことが出来たのだが、
ではどのようにすれば彼女らに危機感を与えることが出来るのか・・・・・・その策を出すのがまた難しかった。

(一応あるにはあるけど・・・・・・少し危険な賭けではあるのよね)

サユが思いついたのは荒療治だった。
思惑通りにことが運ばなければ、死人が出る可能性のある危険な策である。
だがしかし、これからこの国を背負っていくモーニング帝国剣士たるもの、
それ程度の壁くらい軽々と乗り越えていってもらわなくては困るのだ。
この策を早速実行するために、サユ王は研修生の指導教官を呼びつける。

「ねぇちょっと、研修生に字の上手い子がいたでしょ・・・・・・あの子、ちょっと借りてもいいかな?」

6 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:27:37
とりあえずここまでです。
長いお付き合いになるとは思いますが、どうかよろしくお願いします。

7名無し募集中。。。:2015/05/02(土) 20:51:55
マーサー王復活嬉しい!しかも過去ログまで・・・ありがとうございます

以前のマーサー王の時代とはかなりノリが軽いw今は平和な時代なんだねぇ

8名無し募集中。。。:2015/05/02(土) 22:39:44
作者さんお帰りなさい!
あの頃を思い出して懐かしくて懐かしくてたまりません!
またこのキャラクターたちに会えて本当に嬉しいです
これから生きる楽しみができました!

9名無し募集中。。。:2015/05/02(土) 22:44:46
ちゃゆうううううううううううううううう


みんなさゆが好きなんだね
やっぱりさゆはすごい
また出てきてほしいな

10 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 23:44:03
サユ王が策を練った翌日、王の間には件の"字の上手い研修生"が呼ばれていた。
その研修生は(大半がそうであるように)まだ年端もいかない少女であり、兵としての暦も短いため
王の間に足を踏み入れることはもちろん初めての経験だった。
その表情や小刻みに震える身体からも、不安と緊張がうかがえる。
サユはその研修生を落ち着かせるために、優しい口調で語りかける。
王は小さい女の子には優しいのだ。

「ふふふ、緊張しなくていいのよ」
「はい・・・・・・」
「ところであなた、お名前はなんて言うの?」

サユから名を聞かれた研修生は驚きのあまり、目を大きくしてしまう。
研修生にとって王とは神の如き存在であり、己の名前を知ってもらうことすらおこがましいと考えていたのだ。

「名前なんて恥ずかしいです。死んでも言えません。」
「えっ、じゃあなんて呼べばいいの?せめて苗字だけでも教えてくれないと」
「苗字ならいいです。"クールトーン"って言います。」
「クールトーン?おもしろい、ピッタリな苗字ね。」

サユの目の前にいる研修生は、見た目は小柄な少女ながらもなかなかに冷静な声色を持っている。
まさにクールトーンという苗字に相応しい。サユはそう感じていた。

「じゃあクールトーンちゃん、あなたに重要な任務を与えます。」
「は、はい!」
「その任務とは、なんと書記係でーす!」
「しょき?」

サユの思惑はこうだ。
こんど発刊される新聞に帝国剣士の訓練風景を掲載すると伝えれば、目立ちたがり屋の帝国剣士たちは全員集結するはず。
しかもその記事の元となる手記を研修生のクールトーンが書くとなれば、
なおさら恥ずかしいところは見せられないとやる気を出すことだろう。
そうなれば「サユの策」も実行しやすくなってくる。

「って言うわけなんだけど、引き受けてくれる?」
「・・・・・・」
「ふーん、なるほど」

今しがた説明した内容を高速でメモするクールトーンを見て、サユは感心する。
すべての言葉を漏れなく書き写す姿勢は素晴らしいし、字も見やすくて綺麗だ。
このクールトーンを計画に組み込んだのは正解だったことをサユ王は確信していく。

「分かりました、書記を頑張ります。でも、ちょっと不安です。」
「なにがどう不安なの?」
「メモを取るのはいいんですけど、私、文章力無いから新聞に載るのは恥ずかしいです・・・・・・」
「あーそういうこと?それなら心配しないで、優秀なライターにツテがあるから。」
「優秀なライター?」
「アンジュ王国に昔なじみがいるのよ、昔は素直で可愛かったんだけどねぇ・・・・・・」

11 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 23:48:08
コメント有難う御座います。
前作を知ってる方に見ていただけるのは嬉しいですね。
今作が前作と比べて平和かどうかは、続きを見て判断してくださいw

12名無し募集中。。。:2015/05/03(日) 00:17:11
今北!
職人さん乙です
続きを楽しみにしてます

13 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/03(日) 08:11:24
打ち合わせを終えたサユ王とクールトーンは、すぐさま訓練場へと向かった。
そしてサユの思惑通り、訓練場内には多くの帝国剣士が揃っていたのだった。

「「「「「「「「サユ王、おはようございます!」」」」」」」」

昨日とはうって変わって訓練に精を出している帝国剣士たちを見て、サユはニンマリとする。
そこには居合いの達人サヤシ・カレサスがいる。
"自称"魔法剣士エリポン・ノーリーダーもいる。
「舞う伊達娘。」と称されるアユミン・トルベント・トランワライもいる。
それ以外にも一癖も二癖もあるような現役帝国剣士がたち集結している、その様はまさに圧巻だ。
これだけのメンツを前にしてクールトーンが萎縮してしまわないかとサユは思ったが、
当の本人は思っていた以上に冷静だった。

「クールトーンちゃん、モーニング帝国剣士全員を前にしてどんな気持ち?」
「全員ではありません。」
「えっ?ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・・・あらほんと、8人しかいない。」
「はい、一番大事な人がここにはいないんです。」

クールトーンがそう言うが早いか、訓練場の扉がガチャリと開きだす。
一足遅れて登場したのは現モーニング帝国剣士の最年少、ハル・チェ・ドゥーであった。

「おはようございま〜す、はぁ〜貧血だぁ〜」

ハルの中性的なエンジェルフェイスは、女性支持率TOPだというのも頷けるほどに整っている。
すらっとした長身や、ぶっきらぼうな態度が男性の面をより強調しているのだろう。
だがこのハル、自分がモテているということを自覚しているがゆえに、ひとつ悪い癖があった。

「おや?今日は可愛いお客さんがいるなぁ」

クールトーンを視野に入れるなり、ハルはそちら側へと向かっていく。
そしてクールトーンの顎に軽く触れ、クイッと持ち上げたのだった。いわゆる顎クイだ。
自身の尖った八重歯を見せつけながら、常人なら赤面必至の言葉を平然とした顔で吐いていく。

「君みたいな子の血でも吸えたら僕の貧血も治るんだろうなぁ・・・・・・ねぇ、吸ってみてもいい?」
「あわわ、あわわわわわわ」

ハルの悪い癖、それは過剰なまでの女たらしだ。
上に書いた行為をまったく照れずに実行できてしまうのは凄いし、相手が拒否しない(できない)のも凄い。
他の帝国剣士を前にしても冷静だったクールトーンが、ハルに言い寄られた途端にひどく動揺してしまうほどだ。
恋する乙女の表情になりかけているクールトーンを見て、これはまずいと思ったサユ王がハルの頭にチョップをぶつける。

「やめなさい。」
「いでっ!」
「まったく相変わらずこの子は・・・・・・ほら、何か言うことないの?」
「ごめんなさいサユ王、本当に可愛いのはサユ王でした。」
「そうそう私が一番・・・・・・って違う!遅刻を謝りなさいってこと!!」

14名無し募集中。。。:2015/05/03(日) 11:12:59
このネタのブッコミがまさに作者さんだわ
これが真似できないんだよなぁ

15名無し募集中。。。:2015/05/03(日) 11:32:55
相変わらずのネーミングセンスw『クールトーン』とか…他の12期がどんな名前なるのか恐ろ…楽しみw

16 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/03(日) 13:35:20
ハルの遅刻などもあったため全てが順調という訳にはいかなかったが、
全員揃ってからの合同訓練は非常にスムーズであり、
今のモーニング帝国剣士の強みである、複雑なフォーメーションも合わせることが出来た。
クールトーンもクールトーンで、訓練や合間合間のインタビュー内容を正確に記録して、
王から任命された書記係としての役割を全うしていた。
(ハルへのインタビュー時間だけやたら長かったのが気になるが。)

久しぶりに真剣なムードだったので、3時間の訓練を終える頃には一同はヘトヘトだった。
クールトーンも記録疲れで地面にペタンと座り込んでしまっている。
よって、この場でまだまだ元気なのはサユ王ただ一人だけとなる。
むしろ朝よりも元気なように見える。若いエキスを取り入れたからだろうか?

「お腹空いたぁ、はやく食堂いってお昼食べようよ。」
「ダメよカノン、重要な話をするんだからもう少しだけ待って。」
「重要なお話?なんですか?」

突然始まる王からの大切なお知らせに、カノンだけでなくその場の全員がピリッとなる。
クールトーンもサユの言葉を聞き逃すまいと、紙とペンをしっかり構えている。
そしてこれからサユが話す内容は、帝国剣士らを驚かせるには十分なものだった。

「私サユは、今年の11月に王を引退します。」

サユ王の突然な引退発表、
それを聞いた帝国剣士らはハンマーで殴られるような衝撃を覚えた。
王を引退なんて言い回しはおかしいかもしれないが、モーニング帝国ではこれが通常。
帝王は自らの意思で王座を退くことができ、そして次の王が決められていく。
そう、帝国剣士団長の中から新たな王が生まれるのだ。

「次の王は、フクさんと私のどちらですか?」

帝国剣士らがかける言葉を見つけられない中で、ハルナンだけは声を絞り出すことが出来た。
それは候補者の2人のみならず、この場の誰もが気になっている質問だ。
そしてサユは、自身の検討した策の通りに、こう回答する。

「次期モーニング帝王は投票で決めます。一ヶ月後、この場で。」

17 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/03(日) 13:38:01
むしろネタを入れ続けないと書けませんw
今作の名前はあまりひどい悪口にならないようには気をつけますが、
ついついやりすぎちゃうかも><

18 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/03(日) 20:16:42
次期モーニング帝王は投票で決めること。
投票は30日後に、この訓練場で行われること。
投票の対象は現モーニング帝国剣士団長のフクとハルナンであること。
投票の権利を持つ者はフクとハルナンを含めた、現モーニング帝国剣士9名であること。
サユ王自身は投票の権利を持たないこと。
これらの内容をサユ王は説明した。

「どう?制度について何か質問はある?」

正直言って、サユ王には聞きたいことがたくさんあった。
何故このタイミングで引退を決意したのかとか、
王が居なくなったら自分たちはどうすれば良いのかとか、
王を辞めさせないためにはどうすれば良いのかとか、色々だ。
しかしそんな質問を今、この場でぶつけることなど出来やしない。
サユ王の決意を汚すわけにはいかないと皆が思っていたのである。
だが純粋に制度について疑問が有るのであれば話は別だ。
ハルナンは最も気になったことをサユ王のに尋ねていく。

「もしも期日にこの場に来れない場合は、票はどうなりますか?」

ハルナンの質問が期待していた通りのものだったので、サユは顔がにやけそうになる。
もちろんそんな顔をしては場が締まらないので、真面目な表情で返す。

「理由がどうあれ、投票に来れなければ票は無効よ。」
「では、代理投票などは許されますか?」
「許されません。本人による投票以外は決して認めないわ。」
「なるほど、よく分かりました。有難う御座います。」

19名無し募集中。。。:2015/05/03(日) 23:08:02
この話でははるなんだったりして
なんか面白そうだな

20 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/04(月) 11:22:38
「もう質問はないわね?じゃあクールトーンちゃん、そろそろいきましょ」
「あ、はい!」

用件が済むなり、サユ王はクールトーンを連れて訓練場の外へと出て行ってしまった。
現在の帝国剣士らはひどく混乱しているだろうが、いつまでも面倒を見てはいられない。
自分達で現状を把握して、適切な行動をとってくれなくては困るのである。

「さてと、クールトーンちゃん、まずは第一のお仕事お疲れ様。」
「ありがとうございます・・・・・・って第一のお仕事だったんですか?」
「うん、だってこれから1ヶ月間もっともっと忙しくなるんだもの」

クールトーンは不思議に思っていた。
1ヵ月後に投票があるということは、今後起こりうるイベントは「1ヵ月後」でしかないはず。
サユが言うように「1ヶ月間」忙しくなる意味が分からないのだ。
そんなクールトーンの考えを汲み取ったのか、サユ王が説明しだす。

「私の思惑・・・・・・もとい考えでは、この1ヶ月間は平穏無事じゃ済まないはずよ。」
「ええっ、そうなんですか?」
「ひょっとしたら誰か死んじゃうかもね、なんちゃって」

冗談風に言い放つサユだったが、その表情は真顔も真顔だった。
その雰囲気を感じ取ったクールトーンはなんだか怖くなり、涙目になってしまう。

「嫌です・・・・・・帝国剣士さんが死ぬのは嫌です・・・・・・」
「うん、私も嫌。だからこそクールトーンちゃんにはあの子たちを観察してもらいたいの」
「観察?」
「何かおかしいと感じることがあったら、メモに書き写して、すぐに私に伝えてね。
 会議中だろうと、食事中だろうと、お風呂中でもいつでもいいわ、好きな時に接触することを許可します。
 モーニング帝国剣士に密着することがあなたのお仕事なの。あなたにしか出来ないの。やってくれる?」

サユ王の勅令を受けたクールトーンは、今日一番の身体の震えを感じていた。
だが、ここで断れば大好きな帝国剣士が危険に晒されることを十分に理解することが出来た。
ならば、サユ王への返答は決まっている。

「やります!やらせてください。」
「そう言ってくれると思ったわ。」
「でも出来ればドゥーさんにずっと密着したい・・・・・・」
「そこはみんな平等にね?」

21名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 13:14:41
お風呂の中で接触って…クールトーン逃げてーw

ところでタイトルが帝国『剣士』ではなく『拳士』なのはもしかして…?

22名無し募集中。。。:2015/05/04(月) 18:48:42
プロジドリw

23 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/04(月) 23:29:35
拳士の読み方やクールトーンの正体については秘密です。
秘密にする必要性は薄そうですがw

24 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 07:56:23
「Q期会議〜〜!」

食堂に入ったQ期団の4人は、今後について話し合うために同じテーブル席に着席した。
天気組団も同様に全員で固まっているのを見るに、
声が聞こえないほど距離は遠いとは言え、考えは同じなのだろう。
(ちなみにオダ・プロジドリはテーブル席空いててもカウンター席に座っている。)

「さてみんな、まず聞きたいんだけど……みんなは私に投票してくれる?」

会議はフク・アパトゥーマによる不安げな問いかけから始まった。
同じ団員なので信じてはいるのだが、各個人の考えが分からないため心配になったのだ。
だがそんなモヤモヤも、サヤシ・カレサスの一言で解消されることとなる。

「フクちゃんは王になりたいんじゃろ?なら友達として後押しするのは当然じゃけのぉ」

細いながらも曇りのないサヤシの目を見て、フクは涙が出そうなくらいに喜ぶ。
正直言って友達になった覚えはあまり無いが、自身を慕ってくれることが嬉しいのだ。
そして、エリポン・ノーリーダーもサヤシに続いて支援する。

「もちろんエリも応援するっちゃん!あ、ひょっとして次のQ期団長はエリだったりして?」
「ない……それは絶対ない……」
「ちょっとサヤシー!?」

エリポンとサヤシはよく小競り合いをするがフクを思う気持ちは同じだ。
そしてそれはQ期最後の一人、カノン・トイ・レマーネも感じている。

「フクちゃんが導いてくれたから今の私たちがあるんだよ。
 フクちゃんが同期で良かったし、王になったら誇りに思う。
 だから、私たちQ期のためにも絶対に帝王になってほしい。」

フクと3人は団長と団員の関係ではあるが、それ以前に彼女らは同期だ。
団長として指示はするものの、この間柄に上下関係は無いと考えている。
そのような仲間の心からの支持を受けて、フクはいよいよ泣き出してしまった。
団員は一瞬驚くが、フクが泣くのはいつものことなので笑いながら慰める。

「うっ・・・・・・うっ・・・・・・みんな本当にありがとう。」
「また泣く〜!涙はまだとっとき。」
「王になった時が泣くときじゃろ。」
「ほんとほんと、このペースで泣いてたら涙枯れちゃうよ?」

25名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 11:43:55
懐かしいスレを見つけてしまったw
続き楽しみにしてますね

26名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 11:58:00
懐かしいな
あのときのようにまたちょっとグロめな描写かな

27 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 15:15:19
Q期団が固く結束したことで、フク・アパトゥーマは4つ分の票を獲得した。
しかし帝国剣士の総数は9名。つまり過半数に到達するには「5票」を得る必要がある。
天気組団の4人も票をハルナンに集中してくることが予測されるので、
勝敗はQ期にも天気組にも属さないオダ・プロジドリに委ねられている。
何事も先手必勝。Q期団の皆はカウンター席にいるオダの元へと駆け寄っていく。

「オダちゃん!オダちゃんは誰に投票するの?」

急に先輩4人に囲まれたのでオダは少しぽかんとするが、
すぐに怪しい笑いを浮かべて、自身の考えを述べる。

「決まってるじゃないですか、私は強い人に投票しますよ。
 強い人じゃないと国を背負えませんし、そもそもついていく気がしません。」

オダの返答を聞いたQ期の4人は歓喜する。
彼女は「強い人」としか言っていないが、フクとハルナンのどちらか強いかは明らかだからだ。
2人は過去に何回か模擬戦で戦ったことがあったが、戦跡はなんとフクの全勝。
いくらハルナンが加入時期と比較して伸びたとは言え、研修生として十分な訓練を詰んだフクには敵わないのだ。
Q期は安心しながら元のテーブル席へと帰っていく。

「じゃあオダちゃん、投票日はよろしくね〜」

急に来たかと思えば、また急に帰っていくのでオダはキョトンとするが、
しばし経った後に、誰にも気づかれないように独り言を言い放つ。

「投票しますよ、真に強いと思った方に。」

28 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 15:18:50
ところ変わって天気組団の座るテーブル席。
和やかだったQ期団の雰囲気とは異なり、こちらは何やら深刻なムードだ。

「ハルナン、それ本気で言ってるの?・・・・・・ちょっとやりすぎじゃない?」

天気組団の団長であるハルナン・シスター・ドラムホールドの策を聞いて、
団員のアユミン・トルベント・トランワライは心配と不安の入り混じったような表情をしていた。
同じくイケメン剣士ハル・チェ・ドゥーも引き気味だ。

「確かにそのやり方だったらハルナンは帝王になれると思うよ。ハルには思いつかなかった、凄いと思う。
 でもさぁ、Q期さん達と天気組以外を巻き込む必要ある?ハルたちだけでよくない?」
「作戦を実行するには一人でも多いほうがいいの、それに正直言って、天気組だけじゃQ期さんには勝てない。」
「なんだと!?ハルたちがQ期さんに劣ってるって言いたいのか!」
「いや、私がフクさんに勝てない。」
「あ、そうね。」

あっさりと納得するハルを見て複雑な心境になりながらも、ハルナンは自身の思いを伝えていく。

「やりすぎなのは分かってる。天気組団のメンツやプライドを傷つけてるのも分かってる。
 でも、私はなんとしてもモーニング帝国の帝王になりたいの。だから協力してほしい・・・・・・だめ、かな?」

ハルナンがいつになく真剣に願うのを見て、アユミンとハルは顔を見合わせる。
こうも真剣に頼まれたら、二人は断ることなど出来なかった。

「しょうがないなぁ〜じゃあちょっと頑張っちゃおうかな」
「一応組んであげるけど、結局はハルたちだけでなんとかなることを見せ付けてやるよ。」

2人がノってきてくれたのでハルナンは一安心だ。
だが不安が完全に解消されたという訳ではない。
もう一人の天気組団であるマーチャン・エコーチームが終始無言でうつむいているのがその理由だ。

「マーチャンどうしたの?」
「ハルナンが王になるのはやだ」
「えっ!」
「マーチャン、ミチョシゲさんが王がいいの、やめないでほしい。」
「ああそういうことね・・・・・・じゃあマーチャン、私とフクさんだったらどっちが帝王になってほしい?」
「う〜〜〜〜〜〜ん、じゃあハルナンでいいよ」
「ああ良かった、ここでフクさんって言い出したらややこしくなってたわ」

29 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 15:20:17
今作はグロ描写は極力抑えようとは思ってますが、
気分がノってくるとついついやっちゃうかもですね〜^^

30名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 15:55:23
気分が乗ってくるとグロとかやーね怖い

31名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 16:08:24
イクタ位のグロさでお願いしますw
今マーサー王読み返してたけど前半はまだ大人しめだったのに後半はちょっとトラウマになりそうww

32名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 16:36:48
ダメだ
カレサスとトルベントとプロジドリで噴くw

33 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 22:55:19
「たいへんだぁ・・・・・・サユ王に報告しないと」

天気組会議をこっそり覗き見ていたクールトーンは慌てて王のもとへと向かう。
本当はもっとハルを凝視していたかったが、そんなことも言っていられない。
彼女が王の部屋に向かったとき、サユ王は風呂から上がった直後だった。
もっと長風呂しておけばよかったと後悔しながらも、サユはクールトーンを受け入れる。

「そんなに汗を流してどうしたの?お風呂入る?」
「いえ大丈夫です、実はかくかくしかじかで・・・・・・」
「へぇ・・・・・・さっそく動き出したようね。」

帝国剣士が自分の期待以上の動きを見せてくれたので、サユは嬉しそうな表情をする。
しかし、それとは対照的にクールトーンは悲しげな顔をしていた。
今後起こりうることを想像すると辛くてたまらないのだ。

「王様、なんでこんなことを始めたんですか?」
「え?」
「次の王を決めるだけならもっと優しい方法があると思います。
 でも、このままだと本当に誰かが、Q期団さんの誰かが死んじゃいます・・・・・・
 そんなの、嫌です・・・・・・」

ボロボロと涙を流すクールトーンに胸を痛めるサユ王だったが、
これもモーニング帝国のためだと割り切り、優しく諭しだす。

「あのねクールトーンちゃん、ここだけの話なんだけどね。
 モーニング帝国剣士には新たなメンバーが3人内定しているの。」
「え!!」
「一人は西部地方からやってきた"氷上(表情)の魔術師"と言われている子。
 もう一人は異国からの帰国子女である"音忍者"。あのガキ元帝王とも手合わせしたことがあるそうなの。
 そしてもう一人はクールトーンちゃんも知ってるでしょう。投打ともに怪物級の"二刀流"よ。」
「ああぁ〜!!同じ研修生だから知ってます!!やっぱり帝国剣士になるんですかぁ。」
「正直言って今あげた子たちは逸材揃いよ。今の帝国剣士を簡単に喰っちゃうかもしれない。
 その新人達の上に立つには死線をくぐり抜けた人物でないと難しいわ・・・・・・だから今回の策を練ったの。
 大丈夫、あの子たちならきっと今以上に強くなってくれるはず。だから信じてあげて。」

クールトーンは感激した。
次期モーニング帝国剣士内定者という超超機密情報まで教えてくれたことから、
サユ王の本気を感じ取ったのだ。

「分かりました。私、帝国剣士さんを信じます。」
「あ、ちなみにさっき言った内定者は確定情報じゃないから他言しないでね。
 もしかするとクールトーンちゃんが4人目として入るかもしれないしね。」
「あはは、それなら嬉しいですね。」

34 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 23:00:25
銭湯描写については気をつけますw
話の流れ上やむをえない場所は仕方ないですけどね。

登場人物の名前は決めるまでに結構時間をかけているので、
面白いといわれると嬉しいですね。
カレサスは私も気に入っていますw

35 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/05(火) 23:06:39
銭湯描写じゃない、戦闘描写や・・・・・・
サユ王とクールトーンの銭湯描写とかはありません。

36名無し募集中。。。:2015/05/05(火) 23:17:45
ないのか(´・ω・`)

37名無し募集中。。。:2015/05/06(水) 02:38:48
銭湯描写ちょっと期待してしまったw新帝国剣士加入まで読めるのかな?

名前と言えば武器の名前も期待してます

38 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/06(水) 14:28:50
サユ王の引退発表を受けてから2週間、Q期団4人の結束力は日に日に高まっていた。
あれ以来、団員の誰もがサボることなく毎日のように合同訓練を行えている。
今日も今日とで、良い汗を流しているようだった。

「はぁ・・・はぁ・・・やっぱり皆は強いね。
 エリポンのパワー、サヤシちゃんのスピード、カノンちゃんのディフェンスには全然敵わないよ。」

肩で息しながら、湯上りタマゴのような顔でフクは団員たちの良い点をあげていく。
だが褒められた側の3人は素直に喜ぶことが出来ず、苦笑いをしていた。
フクが立っているのに、自分達は床に転がっていることが悔しいのだ。

「いやいや、フクの方が全然強いし!(まぁ、エリはまだ魔法使っとらんけんね)」
「模擬刀戦じゃフクちゃんにはまったく勝てん・・・・・・(まぁ、ウチには本物の刀があるけぇ)」
「あの猛攻を耐え切るのはちょっと無理かなぁ(まぁ、今日はただの訓練着だし)」
「え〜そんなことないよぉ(え〜そんなことないよぉ)」

ここ最近集中的に訓練を行ったおかげで、Q期団は己のストロングポイントとウィークポイントを知ることが出来た。
自身の成長を日に日に実感出来ているので、これまでサボりがちだったことを後悔するほどだ。
それゆえに、天気組団とオダ・プロジドリがしばらく訓練場に顔を出していないことを残念に思っている。

「あの子たちいったいどうしたんやろね、まったく何もしてないってことは無いっちゃろけど」
「天気組団だけやのうてオダちゃんも居ないとかどうかしちょる・・・・・・」
「そうだねぇ、オダちゃん真面目な子なのに」

みなが不思議に思っているところで訓練場のドアがバンと開く。
誰もが天気組団かオダのどちらかの登場かと思ったが、その正体はクールトーンであった。

「君は確かサユ王のお付きの人・・・・・・いったいどうしたの?」
「えっと、Q期の皆さん、サユ王から伝言です。」
「「「「?」」」」
「今から5分以内に城門前に来てください。以上です!」
「「「「?」」」」

39 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/06(水) 14:29:47
武器の名前も考えてますけど、登場はまだ先ですねw
キャラ名・武器の種類・武器名・必殺技名は1セットで考えてます。

40 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/06(水) 15:54:50
サユ王の頼みならば仕方ないと、Q期団はすぐに城門前へと向かう。
しかし呼び込んだ張本人であるサユの姿はそこにはなかった。

「王おらんやん、お付きの人に騙された?」
「あの子が人を騙すような子に見える?」
「うーん、思わん。」

時間指定したくせにサユがいないのはまったくもっておかしな話だが、
王も忙しい人なので予定通りに来れなかったのだろうとQ期らは納得する。
どうせ今日の訓練は終わったので、ここで王をのんびり待とうとした時
前方から"見慣れぬ客人"が現れたことにカノンが気づきだす。

「あの4人、誰なんだろうね?」

カノンが指差したのは、黒を基調とした衣装をまとった集団だった。
一人は巨大な弓を背負い、異様にギラギラしたオーラを発していた。
他の3人が「少女」であるのに対してこの人物だけは「女性」カテゴリに当てはめるのがしっくりくる。
その女性の右にいる少女も同様のギラギラオーラを発しているが、
顔の作りはどちらかと言えば猿、もとい赤ちゃんのように幼かった。
さらに右にいたのは長髪の美しい大女だ。
彼女からは禍々しい雰囲気はまったく感じられず、何が面白いのか分からないが、常に笑っている。
そして最後の一人がまた異様だった。
そのルックスを目にしたエリポンがつい声を漏らしてしまうほどである。

「ひっ・・・何あの子、アザだらけやん・・・・・・」

その少女は、並んで歩く「女性」、「赤ちゃん顔」、「大女」から3歩遅れてついていっていた。
エリポンの言うように彼女の首もと、二の腕、お腹、太ももには多数の青アザがあり、
小柄な体型も相まってとても痛々しく感じられる。
ずっと下を向いているため顔はよく見えないが、おそらく顔面もアザだらけなのだろう。
ショートカットが可愛らしくもあるが、それもよく見れば誰かに無理矢理切られたように揃っていない。
エリポン、サヤシ、カノンが同情の目を向ける中で、フクだけは異なることを考えていた。

(あれ?あの子、ひょっとして・・・)

41名無し募集中。。。:2015/05/06(水) 17:51:32
ジュースきたーー!!!!
連日の更新お疲れさまです!毎日読めて楽しいです!

42名無し募集中。。。:2015/05/06(水) 17:53:49
あの子ってガキ元帝王と絡みあったっけと思ったらあれかw

43 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/06(水) 23:16:29
「どうかしたの?フクちゃん」
「いや、なんでもない・・・と思う。」

アザだらけの少女が旧友に似ていると感じたフクだったが、
うつむいていたので顔はよく見えなかったし、すぐに通り過ぎてしまったため断定は出来なかった。
アザ少女を含めた黒衣装4人組についてQ期はよく知らなかったが
あまりにも堂々と歩いてきたので、ついつい城の中へと通してしまった。
(その後に門番に対してちゃんと手形を示していたので、正式な客人なのだろう。)

「変な感じの人たち。いったい何だったんやろ。」
「ちょっとまってエリちゃん、また来たよ!」

黒衣装を見送ると同じタイミングで、今度は白衣装の集団が現れてきた。
こちらも同様に若い少女の集まりであり、やはり只者ではないオーラが漂っている。
この白集団に関する情報もエリポン、サヤシ、カノンは持ち合わせていなかったが、
唯一、フク・アパトゥーマだけはその存在を知っていた。

「タケちゃん!!・・・・・・ってことは、アンジュ王国!?」

急に大声を出したので、白衣装の集団は何事かと思ってフクの方を見るが
すぐに視線を戻してまっすぐ門をくぐっていってしまった。
そう、"タケちゃん"と呼ばれた少年・・・少女?・・・少女以外は。

「お、フクちゃんじゃん、久しぶり。」
「やっぱりタケちゃん・・・・・・じゃあさっきの人たちは番長ってこと?いったい何しに来たの!?」

フクは目の前の相手が旧友であるタケ・ガキダナーであることを確信した。
しかしアンジュ王国の重鎮であるタケがわざわざ帝国まで出向く意味が分からない。
他のメンバーが問題なく城内に入っているということは通行手形を発行してもらっているということなのだが、
帝国剣士団長であるフクの耳にいれずに発行するには、サユ王かもう一人の団長であるハルナンの許可が必要なはず。
とにもかくにも分からないことだらけなのでフクはタケに対して質問をしまくるが、
当のタケの返事はそっけないものだった。

「悪いね、何も言えないや。」

そう言い残して他のメンバーに合流するタケを見て、フクはなんとも言えない不安に駆られてしまう。
「訓練場に顔を出さない天気組団とオダ・プロジドリ」「通行手形を持つ黒衣装集団とアンジュ王国の番長たち」
これらの違和感が入り混じることで、フクは考えられうる最悪の事態をイメージしてしまったのである。

「エリポン!サヤシちゃん!カノンちゃん!・・・・・・私たち、大変なことに巻き込まれているのかもしれない・・・・・・!」

44 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/06(水) 23:18:31
SSログ置き場にマーサー王物語「その6」「その7」を追加しました。

>>41
今日でGWは終わりなので更新頻度は落ちるかもですが
なんとか毎日更新は続けたいと思います。

>>42
正確には「ガキさん」と言うよりは「新垣さん」ですねw

45名無し募集中。。。:2015/05/06(水) 23:38:25
>>44
いえいえハロヲタ的には「ガキさん」で間違いないですw

あの方の身内のガキダナーもさすがのネーミングです
更新ゆっくり楽しみにお待ちしてます
頑張ってください

46 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/07(木) 00:00:08
「みんな、今日はマーチャンの誕生日パーティに集まってきてくれてありがとーーーー!!」

マーチャン・エコーチームの一言に、モーニング帝国城の作戦室はシーンとしてしまった。
せっかくアンジュ王国の番長たちと、果実の国の武装集団"KAST"を呼び寄せたというのに
開口一番マーチャンが突拍子もないことを言い出したので、天気組たちは焦りに焦ってしまう。

「何言ってんだよバカ!場を弁えろよ!」
「なんで?ドゥーはマーのこと祝ってくれないの?」
「ていうかサユ王の引退が11月なんだから、今日がマーチャンの誕生日だったらおかしいでしょ」
「むぅ〜ドゥー嫌い!」
「なっ・・・・・・!」

帝国剣士の最年少コンビであるマーチャンとハルの漫才のようなやり取りに
はじめはポカンとしていた客人たちだったが、聞いているうちについつい吹き出してしまう。
特にアンジュ王国の裏番長であり、8年前の大事件からサユ王と知り合いだった彼女は、こういうのが好みなようだった。

「ふふっ、あなたたち面白いのね。」
「すいませんカノン様・・・・・・すぐに辞めさせます。」
「いいのよこれで。私も正直言って堅苦しい会議とか嫌いなのよね。
 そんなことよりもハルナン。私のことをその名前で呼ぶのは辞めてもらえる?」
「えっと・・・・・・なんとお呼びすれば宜しいのですか?」
「"マロ・テスク"と呼んでね。過去の名前は捨てたの。」
「は、はい!失礼しました。マロ・テスク様」

仮にもモーニング帝国の剣士団長であるハルナンに対して横柄な態度を取るマロ・テスクだったが
天気団からも、KASTからも、そしてもちろん他の番長たちからも、それを批判するような声はあがらなかった。
これはマロが、今回来なかったアンジュ王国の表番長と並んで
「食卓の騎士とプラチナ剣士に最も実力が近い人物」と呼ばれているからに他ならなかった。
ヘルメットで殴ったら簡単に倒せそうな顔をしていながら、このマロ・テスクはこの場にいる誰よりも強いのだ。

47名無し募集中。。。:2015/05/07(木) 00:12:56
あれ?カノンって前新聞記者だったような・・・別人?

48名無し募集中。。。:2015/05/07(木) 00:30:58
ヘルメットで殴ったら簡単に〜でわろた


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