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男「お願いだ、信じてくれ」白蓮「あらあら」
1
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/01/20(水) 05:32:56 ID:GS4PMXIs
このSSは東方の二次創作であり、
男「どこだよ、ここ」幽香「誰!?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1388583677/
男「なんでだよ、これ」ぬえ「あう」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1400909334/l50
の続きとなっております。
そちらを先にご覧くださると幸いです。
また、オリジナル設定、オリジナルキャラ、東方キャラクターの死亡などが含まれますので苦手な方はご注意ください。
13
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/08(火) 18:19:01 ID:miUNNaZg
続き待ってる
14
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/16(水) 11:52:58 ID:W7FJsV4Y
まだか…
15
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/16(水) 14:39:07 ID:IhOb07zA
全何部作なのこれ
16
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/18(金) 03:20:46 ID:4KvHGQKA
そろそろ二ヶ月かぁ
待ってるよー
17
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/03/27(日) 10:15:58 ID:1XpzRH9E
うーんこの
18
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/02(土) 13:57:56 ID:wuGZ03lI
まだかい
19
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/02(土) 18:26:09 ID:iijPpwg2
もう少しの辛抱だよ。多分
20
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:00:11 ID:ny/h//cc
男「よう、幽香」
俺がそう幽香に話しかけた直後に俺は地面に転がっていた。
幽香「誰貴方。私を知ってるってことは外の人間じゃないわよね」
倒れこんだ衝撃でむせる俺の首元にあるのは幽香の手。
無垢な少女の手のように思えるが実際は鉄板すらも引き裂く強力を持っている。
つまり幽香が少し力を入れれば俺は死ぬ。
男「参ったな」
幽香「誰なの。答えなさい」
男「あー、えっと、外から来た人間」
その答えに対し返ってきたものは無言と射殺すような視線。
男「………多分本当のことを言っても信じてもらえない」
男「けど俺はお前の敵じゃない」
幽香「あぁ、そう」
両手をあげて無抵抗を示しても幽香の手が俺から離れることは無い。
21
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:12:50 ID:ny/h//cc
男「分かった、取引だ。俺が知ってる幽香にとって良い情報を教える。それじゃだめか?」
幽香「なんで貴方が私にとって良い情報を持ってるのかしら」
それはとてもごもっともな質問だった。
その質問に対する答えは持っていない。正確に言えば幽香が納得できる答えを持っていない。
男「でも信じてもらわなくちゃ困る。俺のために。それにメディスンのために」
だから幽香が必ず耳を傾ける言葉を使うしかなかった。
効果は絶大。幽香は大きく目を見開き、そして俺の首にかかる手に力が入った。
幽香「どういうこと? 回答しだいでは握りつぶすわよ」
男「まずその手を………いや良い。そのままで良い。もう一度言うが俺は幽香の敵じゃない。むしろ味方と言っても良い。幽香、メディスン。それにアリスのな」
幽香「………」
幽香は俺を殺してしまってもいいかと思案しているようだった。
しかしその瞳がメディスンとアリスへの情で揺れていることは気づいている。あと一つ。あと一つ何かきっかけがあればこの状況を打破できる。
その一歩。俺の考えうる中で一番の効力を持つであろうその言葉は同時に下手を打てば幽香を激情させるだけの賭けを含む。
言うタイミングを間違ってはいけない。幽香が確実的にそれを聞き入れるタイミングを。
だから今はひたすら時間を稼ぐしか。
22
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:20:39 ID:ny/h//cc
幽香「私から見た貴方は限りなく黒。言わなくても分かると思うけど」
幽香「良かったわね。あなた。メディスンの名前出さなきゃ今頃私貴方を殺してるわ」
幽香「それで、メディスンが、どうしたって言うの?」
幽香笑う。
口元だけで。
まだ殺意が俺に向けられていることは明確だ。
男「………」
幽香「ほら、どうしたの?」
幽香の肩越しに天へ昇っていく白い煙が見える。
戦火の煙? 狼煙?
そういえばこの後。
人間「げっ!風見 幽香!!」
人間2「いや、倒せる、いくぞ」
人間3「承知!!」
そうだ。場所は違うがこいつらが来て―――
23
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:24:53 ID:ny/h//cc
幽香「!」
このタイミングだ。
男「メディスンの命が危ない!!」
幽香の意識が俺から三人へ向けられ、さらに相手が武器を持っている。このタイミングしかなかった。
幽香は地面に突き立てていた傘を抜き、向かってくる三人へ向けた。
閃光。一拍の後に轟音。
焼かれた視界が回復した後に見えたのは俺の顔に傘を向けた幽香の姿だった。
24
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:31:00 ID:ny/h//cc
失敗?
いや、成功だ。
幽香の顔から敵意は消えている。この傘はポーズでしかない。
俺は立ち上がり体についた雪を払い、幽香に対面した。
男「俺が今から言うことは全部真実だ。前提条件としてそれを理解してもらわなくちゃ困る」
幽香「で?」
男「俺は未来から来た」
そういった瞬間に俺の額に傘が当てられた。
幽香「道化?」
男「真実だ。撃ってもいいがメディスンはその場合助からないぞ」
幽香「そのメディスンを盾に取ったような喋り方が気に食わないわ」
男「それは謝るが、でも俺は人間で幽香は大妖怪だ。理解はしてくれ」
人間「げっ!風見 幽香!!」
人間2「いや、倒せる、いくぞ」
人間3「承知!!」
25
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:33:04 ID:ny/h//cc
>>24
ミス
失敗?
いや、成功だ。
幽香の顔から敵意は消えている。この傘はポーズでしかない。
俺は立ち上がり体についた雪を払い、幽香に対面した。
男「俺が今から言うことは全部真実だ。前提条件としてそれを理解してもらわなくちゃ困る」
幽香「で?」
男「俺は未来から来た」
そういった瞬間に俺の額に傘が当てられた。
幽香「道化?」
男「真実だ。撃ってもいいがメディスンはその場合助からないぞ」
幽香「そのメディスンを盾に取ったような喋り方が気に食わないわ」
男「それは謝るが、でも俺は人間で幽香は大妖怪だ。理解はしてくれ」
26
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:54:33 ID:ny/h//cc
幽香「私、実は弱い奴嫌いなの」
男「遊ばないでくれ。真剣なんだよ」
幽香「あらそう」
幽香はつまらなそうな顔をして傘を地面に向けた。
本当に幽香は分からない。メディスンの名前を出したのにまだふざけるとは思っていなかった。
俺がまだ信じてられないだけか。
どちらにせよ、あまり話は長くしたくは無い。
幽香「で、未来から来た貴方は何を知ってるの」
男「人間側が幽香の家に火を放つ。その結果としてメディスンは燃える」
幽香「………」
男「睨まないでくれ、事実だ。だからお願いがある」
幽香「なに」
男「メディスン、アリス、リグルを連れて逃げてくれ」
27
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 16:57:56 ID:ny/h//cc
幽香「………やっぱり貴方変ね」
男「何がだ」
幽香「私と取引して何をするかと思えば私たちに逃げろなんて」
男「幽香」
幽香「分かったわ。それが本当だとは信じてはいないけど、メディスンがそうなるという可能性は考えてなかったわ」
幽香が傘で地面を突く。次の瞬間幽香を中心として今まで咲いていたひまわりが次々にくたりとその身を地面に横たえていった。
幽香「ありがとう。変な人間」
男「男だ」
幽香「そう。それじゃあね、男」
降り続く雪から傘で身を守りながら幽香が静かに歩いていく。
俺はそれを見送り―――
男「あ」
移動手段が無いことに気づいた。
男「ま、待って! 待ってくれ幽香!!」
俺は慌てながら視界から消え行く幽香を追った。
28
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 17:14:02 ID:ny/h//cc
幽香「貴方、本当変な人間よね」
あきれたようで長いため息をつく幽香と俺は空を飛んでいた。
幽香の歩みは思ったよりも遅く、1分程度で幽香に追いついてしまった。
幽香に事情を話し俺は幽香に連れて行ってもらっていた。
翼の生えた幽香の飛ぶスピードは存外に速く、景色が後ろへ後ろへ流れていく。
前のように気絶はしなかったがそれでも空気の壁にぶつかる俺の顔はぐちゃぐちゃで幽香のように涼しい顔はできそうにない。
強制的に体の中へ進入する空気が苦しく、呼吸をするのも難しかった。
咳をするように呼吸をすること十数分、薄れ掛けた意識の中で目的の場所が見えた。
山の中に不自然に存在するこの場所
幽香「着いたわよ。命蓮寺に」
29
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 17:44:28 ID:ny/h//cc
幽香に地面に下ろされるのと同時に俺はひざをおって地面に手を着いた。
乾燥した口が切れて痛む。
何度か大きく息をしてやっと俺は立ち上がった。
響子「わわっ! 大変です!!」
目の前にいるのは小さな少女。俺の腹ぐらいしかない体躯から、俺の何倍もの大声をだした少女は箒を抱きしめて慌てていた。
至近距離から放たれた大声に耳が痛み、俺は耳を押さえた。
その隣で幽香は平気そうな顔で俺を見て笑っていた。
幽香「それじゃあもういいわよね」
男「え、ちょっと待って」
幽香「嫌よ」
にべも無く飛び去っていく幽香は何を言っても戻ってこず、幽香が翼で掻いた空気だけがその場に残った。
男「あー………悪い人じゃないです」
響子「に、人間です!!!!!!!!」
さっきよりもずっと大きい声。木々を揺らすほどのその大声を至近距離で浴びせられた俺が当然耐えれるわけは無く、揺れた脳みそは意識を落とすことで現状を回避しようとした。
30
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 18:22:01 ID:ny/h//cc
目を開けると体に違和感。身動きが取れない。
ぜんぜんというわけではないが腕は動かせないし、足も動かせない。
唯一自由に動く首を曲げて体を見ると縄が俺の体を縛り付けていた。
今俺がいる場所は薄暗くどこかの部屋の中のようだ。
白蓮「目を覚ましましたか」
男「………貴方は」
正座をして俺をじっと見る女性がいた。まず目に入るのは特徴的な髪の色。紫の髪が先に行くにつれ茶色へと変化していく綺麗なグラデーションの髪。
そして身を包むゴシック染みた黒と白のドレス。
白蓮「始めまして。私は聖 白蓮と申します。まずは貴方の自由を奪っていることを謝罪しましょう」
男「あぁ、分かってます。今の俺はただの危ない人でしかないですからね」
白蓮「一つ聞きたいことがあるのですが、なぜ命蓮寺に?」
男「………皆の力になるために」
嘘ではない。俺はじっと聖の目を見つめてそう言った。
俺の瞳の中を覗き込むようにじっと俺を見つめる聖だったが、数秒後に小さく息を吐いて俺の縄と解いた。
31
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 19:07:45 ID:ny/h//cc
ナズ「ちょ、ちょっと待ってくれ聖!。いきなり現れた人間を信用するっていうのかい!?」
少し凝った体をほぐしていると勢いよく障子が開かれさきほどの少女と同じ位の身長をした少女が入ってきた。
その頭にあるのは大きな耳。人間のものではない。ねずみのような形の耳が頭の上らへんに生えていた。
それと腰辺りに揺れるのは尻尾。
ナズ「もしこいつが人間側のスパイだったら」
白蓮「ナズーリン」
ナズ「でも、本当にスパイだったとき」
白蓮「ナズーリン」
ナズ「………警戒はさせてもらうからね」
ナズーリンはそういって俺を睨みつけ、俺の背後に立った。
害意が無いことを示すために両手を挙げてみるも、後ろから感じる視線は俺の首あたりにジリジリとした嫌な感じを植えつける。
白蓮「人を疑うことはよくありませんよ」
ナズ「聖が人を疑わないから私が疑ってあげてるのさ」
32
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/05(火) 19:32:45 ID:OY1y/v2g
ttp://bit.ly/1V6aEDi
拉致監禁
33
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 19:47:02 ID:ny/h//cc
白蓮「申し訳ありません。ナズーリンは悪い子ではないのですが、少し警戒心が強く」
男「いえ、疑われて当然ですし」
ナズ「そう、当然だよ」
男「ただ信じて欲しい。俺は敵じゃないんです」
男「だから」
木で出来た床に頭をつけて聖に懇願する。
俺じゃどうしようできない。
俺一人じゃどうしようもできないから。
男「俺を、助けてください」
34
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 19:55:54 ID:ny/h//cc
白蓮「あらあら」
ナズ「助けてくれ? 助けて欲しいのはこっちのほうだよ」
白蓮「ナズーリン」
ナズ「すまない。少し口が過ぎた」
白蓮「話を、聞かせていただけますか」
男「はい」
35
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 20:15:43 ID:ny/h//cc
男「この戦争を終わらせるために、力を貸してほしい」
ナズ「命蓮寺は戦争に不干渉さ。助けを求める妖怪は助けるがこっちからは攻めていかない」
男「そこを、何とか」
白蓮「………」
ナズ「決まりさ聖。頼みなんて聞かなくていい」
白蓮「しかし」
ぬえ「聖ー。さっきの人間にマミゾウが用があるってさ」
廊下から聞こえたのはぬえの声。振り向くとぬえがいた。
元気にして、普通に喋っているぬえが。
白蓮「あら」
男「ぬえ!」
ぬえ「………誰?」
36
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 20:18:49 ID:ny/h//cc
ぬえ「私、貴方のこと知らないんだけど」
男「………い、いや、なんでもない」
ぬえ「ならいいけど。それじゃあ後はよろしく、聖」
白蓮「え、えぇ」
ぬえが遠ざかっていく。ぎっぎっと廊下がたてる音が遠ざかっていく。
白蓮「あの」
男「………なんですか」
白蓮「なぜ貴方は今、そんな泣きそうな顔をしているのですか」
37
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 20:20:39 ID:ny/h//cc
男「おそらく、言っても、信じてもらえそうに無い」
男「きっと夢物語で済まされる」
男「でも、それでも」
男「お願いだ、信じてくれ」
さっきよりも強く頭を床に押し付ける。
白蓮「あらあら」
ナズ「人間。君はバカなのかい?」
男「分かってる、いきなりすぎて」
ナズ「違うよ。そうじゃない」
ナズ「聖は最初から君のことを信じてるんだよ。残念なことにね」
38
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 20:58:32 ID:ny/h//cc
白蓮「聞かせていただけますか」
男「………はい」
男「別の、別の世界の話です。俺は………ぬえを愛していた」
男「そして、ぬえも俺を好きでいてくれていた」
そう、俺はぬえが好きだった。いつも犬のように俺についてくるぬえが。
無邪気なぬえが。
俺を守ってくれるぬえが。
大好きだ。
男「でも、そのぬえは、さっきのぬえじゃなくて、でも、同じぬえで」
自分でも何を言ってるかが分からなくなる。
もうあのぬえとは会えないんだ。そう思うと胸が裂けそうなほどに苦しくて。
その苦しみは俺の口から枷をなくし、あふれ出した俺の感情は酷く支離滅裂なものだったが、聖は頷きながら俺の話を聞いてくれた。
溢れた涙がぽたぽたと床へと落ちていく。
流れる涙を拭うこともせず俺はひたすらぬえに対しての愛を吐き出し続けていた。
39
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 21:17:13 ID:ny/h//cc
一通り吐露をし終えると聖はすっと俺の真正面まで来て微笑んだ。
白蓮「仏教では、愛は執着であり、捨てるべきものであります。愛別離苦の苦しみから逃れるには執着を捨て―――」
白蓮「とは言いますが、愛別離苦こそ愛の証明であり、貴方がぬえを愛してくれていたことの証となります。大乗仏教における慈悲の心とはやはり愛から生まれ行くものであり貴方の中に芽生えたその痛みはきっと貴方のためになるのでしょう」
白蓮「貴方が愛し、貴方を愛していたぬえとの別れは死別よりもずっとつらいものでしょう。貴方が愛したぬえは貴方しか知らないのですから。でも、それでも必然の縁はぬえと貴方が出会えたことに―――いえ、いくらこのような説教をしても無意味ですね」
白蓮「ぬえを愛していただき、ありがとうございます」
聖が頭を下げる。それを見たナズーリンが少し不機嫌そうな顔で頬を掻いた。
ナズ「私は到底君が言ったことを信じれない。何か妄想をしているだけと考えたほうがよっぽど筋が通る」
白蓮「ナズーリン、それ以上は」
ナズ「それでもとりあえず話を聞かせて貰おうか。君がなぜ私たちに助けを乞うたのか」
ナズーリンが肩ひざを立てて座る。鋭く真っ赤な瞳が俺を真剣に見ていた。
そしてどこかでねずみがちゅーと鳴いていた。
40
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 21:19:35 ID:ny/h//cc
頭を上げた白蓮とナズーリンの前にて居住まいを正し、向き合う。
聖が全てを信じてくれるというのなら、俺は全てを打ち明けよう。
今から起こることでどれだけの血が流れるのか。
男「俺は―――未来から来ました」
41
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 22:54:20 ID:ny/h//cc
〜俯瞰視点〜
山の中に移動した命蓮寺。その敷地の中にある1本の木の葉を散らした木の枝にマミゾウは座り紫煙を燻らせていた。
ぬえ「まみぞー。伝えてきたよー、っと」
男がいる部屋のほうから駆けてきたぬえがぴょんと飛び上がりマミゾウの横の枝に腰をかけた。
少し大きく枝がしなり、ぬえは右手でしっかりと枝を握り、落ち着いた頃を見計らってそっと手を離した。
ぬえ「でもどうしたのさマミゾウ。あの人間が気になるって」
マミ「勘じゃよ。何かあると思っただけじゃ」
ぬえ「ふーん。あ、そういえばあの人間私のこと知ってるらしいよ」
マミ「なんじゃと?」
42
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 22:56:25 ID:ny/h//cc
口にくわえたキセルを離し、マミゾウが眉をしかめた。
ぬえ「どうしたのさ、マミゾウ」
マミ「儂は心配性でな。ただちょっと引っかかっただけよ」
ぬえ「何が?」
マミ「見た目から察するに外来人じゃが、なぜ外来人がぬえのことを知っておるのかが分からんのじゃよ」
少し考えたのちにマミゾウは懐から一枚の青々とした大きな葉っぱを取り出した。その葉っぱに紫煙を噴きかけ手を離す。
木の葉はゆらりゆらりとゆっくり落ちてゆき、その木の葉が地面につく前に一匹の狸がその葉っぱを咥え、どこかえ消えていった。
マミ「ちょっと色々探ったほうが良さそうじゃな。この戦争がどこへ行くのかを、の」
43
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:08:42 ID:ny/h//cc
マミ「さぁてぬえ。今日の夕飯の獲物でも捕りに行くかの」
マミゾウが枝から飛び降りる。瞬間的な自由落下の後、地面につく前にその体は急に減速し、すとんとマミゾウは地面へと着地した。
ぬえ「猪でも見つかるといいけど」
マミ「なに、今は熊よ。熊が美味い」
ぬえ「熊かぁ」
ぬえも枝から飛び降りる。しかし地面に着くことはなくふわふわとマミゾウの周りを寝転びながら漂っていた。
一輪「待ちなさい」
そんな二人を妨げる影が一つ。雲居一輪が両手を組んで二人の進行方向を塞いでいた。
一輪「殺生は許さないわよ」
マミ「儂は信者でないから見逃してくれんか」
ぬえ「一輪だってお酒飲むし、お肉も食べるでしょ」
一輪「た、食べてない、食べてないわよ! 変なこと言わないでくれる?」
ぬえ「こないだ食べてたの見たけど」
一輪「あ、あれは托鉢の結果だから、食べちゃわないと」
ぬえ「じゃあ托鉢ってことで」
44
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:14:08 ID:ny/h//cc
ああいえばこういうぬえとそれに振り回される一輪との問答をマミゾウは遠くに眺め煙草の灰を地面に落とした。
マミ「仕方ない。なら儂はちょっと消えるとするかな」
ぬえ「えー。マミゾウだけ良いもの食べるの?」
マミ「土産は持って帰る。明日の朝には戻るから心配せんといてくれ」
一輪「変なことするんじゃないでしょうね」
マミ「何、ただの心当たりを探るだけよ」
一輪の脇をするりと抜けてマミゾウがそう言う。
煙草の匂いと線香の匂いがまじりぬえは二度くしゃみをした。
マミゾウはからんころんと下駄を転がしながら神社から出て行く。
ぬえもそおっと着いていこうとしたところ一輪に首根っこを捕まれ断念した。
45
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:25:21 ID:ny/h//cc
〜男視点〜
俺が語る骨董無形な事実を聖は静かに、ナズーリンはところどころに口を挟みながら聞いてくれた。
ナズ「その話の中では私は、私たちはぬえを除いて全滅している、と。なかなか愉快じゃないね」
ナズ「どう思う、聖」
白蓮「私は、そうですね。これからそんなに悲劇的なことが起きるとは信じたくはありませんね。しかし目を背けてしまえばそれこそ悪手」
白蓮「もしそうなるのならば私は動きましょう。全ての悲劇のために」
ナズ「もしこの人間が言ってることが法螺話だったら?」
白蓮「そうであれば重畳。そうならないと考え、そうなってしまうより、そうなると考え、そうならなかったほうが良いとは思いませんか、ナズーリン」
ナズ「やれやれ、聖の考えは変わらないみたいだ。良かったね、人間」
ナズーリンは頭を掻き、少し小首をかしげて、口角を片方だけ上げて笑った。
男「俺に力を貸してもらえますか」
白蓮「こちらこそ。よろしくお願いいたします」
46
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:37:31 ID:ny/h//cc
命蓮寺の今後について軽く話をした後、案内された部屋は広く二十畳ほどの広さがあり、背の低い長机が並べてあった。
白蓮「肉などはありませんが、食事をしましょう。皆に紹介をするためにも」
男「ありがとうございます」
白蓮「たしか今日は、村紗だったかしら」
星「その通りですよ聖」
お腹を鳴らしながら一人の女性が部屋に入ってきた。
身長は高く、体格も良い。しかしその瞳は優しさと理性を湛えていた。
その髪の色は金と黒。まるで虎のような模様の髪がとても目立つ。
星「貴方は確か、響子が言っていた方ですしょうか」
男「あ、男です。これからここにお世話になることになりました。よろしくお願いします」
星「私は寅丸 星。一応ここに祀られてますので何かご相談でもあればどうぞ」
男「あ、どうも………祀られている?」
星「毘沙門天代理ですよ。さて今日のお昼ご飯が何か、実に楽しみですね」
さらりとものすごいことを流された気がする。
確かに映姫さんは神様だったし、神様はいることは確かなのだろうけど、お昼ご飯を楽しみにして今にも口笛を吹きそうなほどににこにこしているこの女性を誰が神様だと思うのだろうか。
47
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:42:56 ID:ny/h//cc
ナズ「あぁ、祀られてはいるが、神様じゃなく妖怪だよ」
男「あんまり良くわからないな」
ナズ「分からなくていいさ。あまり重要なことでもない」
重要なことではないのだろうか。いや、深く突っ込む必要がないことは確かだけれど。
まぁ神様と言っても種類はいる。きっと映姫さん同様良い神様なのだろう。
ならばこれからお世話になるだろう。優しそうだし。
ナズ「ほら、君も速く席に着きたまえよ。そうだな上座のほうに座るといい。一番奥は聖の席だからその隣で」
男「いいのかな」
ナズ「紹介がしやすい。別に上座だから礼儀がどうのこうのなんて妖怪は気にしないよ」
ナズーリンに促され席に着く。古いい草の匂いがして懐かしい気分になった。
48
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:50:12 ID:ny/h//cc
ぬえ「あ」
次に入ってきたのはぬえだった。ぐったりと上体を落としながら部屋に入ってきたぬえと目があう。
ぬえ「なんで私のこと知ってたのさ」
男「………ちょっと人に聞いて」
ぬえ「人って誰」
男「えっと」
ナズ「ぬえ。そこまでだ」
答えを窮しているとナズーリンがぬえを遮った。
男「ぬえをなんで知っているか。ちょっと今はそれは話せない」
ナズ「というわけだ。一切疑問は受け付けないから速く座りたまえ」
ぬえは何かを言いたそうにしていたがしぶしぶといった様子で席に着いた。
49
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/04/05(火) 23:59:30 ID:ny/h//cc
白蓮「あと三人来るから、もう少し待ってくださいね」
男「あと三人ですか?」
にしては部屋が大きすぎて机も並べすぎだ。普段が7人ならば机は一つでいいはず。
白蓮「色々あってね。今は私たちしかいないのです」
その声色に悲哀を感じたためそれ以上の追求は出来なかった。
とりあえず何かがあったことは確かなのだろう。
しかしそれは過ぎたことで、俺には何もできない。もう終わってしまったことは―――
そういえば銃はどこだ。いつも腰に下げているホルスターはない。
つまり俺は時を戻せない?
俺が持っているアドバンテージは未来を知っているだけ。
過去に戻れないのならば俺は今まで以上に慎重に動かなければいけない。もう零したものを拾い上げることはできないのだ。
いや、今までも零してきたものはたくさんあった。
そうか、霊夢たちに取り返しのつかないことが起きなければ時間は戻らないんだった。
取り返しのつかないことが起きる。それだけは避けなければいけない。霊夢たちが死んでしまったならばもう、この世界は救えないのだから。
――――――?
50
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/06(水) 13:02:21 ID:3UObmBsU
乙!
既に色々と違うだろうし、あとはもう経験で頑張ってくしかなさそうか
51
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/06(水) 19:10:59 ID:ikVo60SM
おつおつ
待ってたよ
52
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/07(木) 16:11:45 ID:pg1V5K26
乙だよ!
53
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/10(日) 11:48:18 ID:jbo/HYls
やっときたか
54
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/25(月) 15:24:06 ID:9YkbqNmE
すいません PCぶっこわれて書きだめ飛びました
もう少しお待ちください
55
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/04/26(火) 21:37:04 ID:/ThwwVQE
ゆっくり待ってる
56
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/04(水) 23:35:33 ID:QuqrGWh.
がんばっちょー
57
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/05(木) 12:12:19 ID:AbZeH2Vk
がんばっちょー
58
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/05(木) 13:58:00 ID:v.U5Cw56
PCめ、容赦のない心折りを……
59
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/08(日) 11:01:13 ID:VsAreBCo
俺はPCを許さないよ
60
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/25(水) 20:21:14 ID:TfwLNbrk
やっぱこっちのぬえも可愛い
61
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/05/31(火) 07:13:56 ID:Jc4HZI/k
リアルの忙しさがマッハなのでもうちょっとかかりそうです。
代わりといっては何ですがスカイプのID作りましたのでそちらで質問や生存報告、叱咤激励を受け付けます。
というかただ単に東方やSS好きな友達がほしいです。
ID:nuenueparuparu
62
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/05/31(火) 08:10:08 ID:SeQ9hJqg
生きてた良かった
63
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/01(水) 00:16:46 ID:51e6kvUY
>>61
後で追加する
64
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/01(水) 20:54:30 ID:GdYHPtts
俺も東方好きの友達ほしいよぉー
65
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/06(月) 11:13:30 ID:BszaEa2Y
スマガ臭を感じる
66
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/20(月) 19:11:39 ID:nLqS/0LE
もしもの方の書き溜めとかもあったりはしたんだろか
67
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 16:17:00 ID:93fR5./2
一輪「はいはーい。カレーができたわよー」
何かを考えかけた瞬間、ふすまを足で開けてなかなかの大きさの鍋を持った水色の髪の少女と
水蜜「船幽霊カレーだよ。お肉もはいtt」
米櫃を抱えた黒い髪の少女が入ってきた。
白蓮「今、なんと?」
黒い髪の方の少女が聖の方を見て、小さく口を開けた。聖はそんな少女をにっこりとした笑顔で見ていたがその笑顔の裏に怒りを隠しているように見えた。
白蓮「今、なんと?」
いや、その怒りは隠れてはいなかった。表情は紛れもない笑顔のはずなのになぜか怒られているような気分になってしまう。
水蜜「た、托鉢だからセーフ! もらったものは全部食べないといけない、でしょ?」
一輪「そうです姐さん。親切な妖怪から貰ったんですよ。ねぇ、村紗」
ぬえ「こないだ村紗が狩りしてたよ」
水一「ぬえぇええっ!!」
ぬえの暴露に二人の顔が青ざめる。聖はそうですかと言いながら立ち上がりゆっくりゆっくり二人に近づいていった。
ぬえ「あ、カレーは私が持つから米は寅丸がお願い」
星「はい」
68
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 16:26:20 ID:93fR5./2
ぬえと星が二人の持っている鍋と米櫃を奪い取るように受け取ったのを確認すると聖は二人の襟首を掴みそのまま引きずっていった。
引きずられていく二人の瞳に涙が浮かんでいるのが見え、これから何が行われるかをある程度察したため、心の中で手を合わせた。
響子「おなかぺこぺこです!!!」
そして最後に入ってきた声で俺を気絶させた少女が部屋の中を見回して首をかしげるのと同時にさきほどの二人の悲鳴と、何かを強くたたくような音が響いてきた。
ぬえ「南無三」
星「お腹すきました」
ナズ「あの二人はどうでもいいが、聖のことは待ちたまえよ、ご主人」
男「えーっと、あの」
ナズ「あぁ、気にしなくていい。彼女らの自業自得さ」
それから聖たちが戻ってきたのは10分程度あと。
頬を真っ赤に腫らした二人がしくしくと泣いており、対照的な聖の笑顔がひどく怖かった。
69
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 16:49:16 ID:93fR5./2
聖「料理してしまったものはしかたがありません。感謝していただきましょう」
聖が上座に座りようやく全員がそろった。メンバーを見渡すと非常に髪の色がカラフルだ。
男「あ、カレーだ」
水色の髪の少女が皿に盛られたカレーを俺の前に置く。茶色のルーの中には目立たないくらいの野菜とゴロゴロとした大きな肉が入っていた。
神社では川魚程度しか食べていなかった俺にとって久しい贅沢な食事だ。
久しいといっても時間は巻き戻っているため、久しくはないんだが。
ナズ「カレーは嫌いかい?」
男「いや、カレーが出るなんて驚いただけだ」
ナズ「はは。贅沢に思えるだろう? だけれど残念。カレーしかできないんだ。調味料がいろいろ尽きてね。あるのは少しの醤油、塩コショウ。そして大量のスパイス」
それなら博麗神社と手を組めば贅沢なものが作れそうではあるがおそらく聖は博麗神社と手を組むことはないだろう。あくまで専守防衛だ。
水蜜「私のカレーはいくら食べても飽きないって」
ぬえ「あきた」
水蜜「うぉ」
そうぶっきらぼうに言い捨てるぬえの姿が微笑ましくて眺めているとぬえが怪訝そうな顔で見てきたので傷つく。
分かってはいる。わかってはいるんだけれど。
70
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 17:25:50 ID:93fR5./2
聖「それでは男さん。自己紹介をお願いします」
男「え、あ。はい」
男「人間の、男です。妖怪を助けたくてここに来ました」
ぬえ「はいはーい。しつもーん」
突然手を挙げたぬえに驚いて一瞬言葉が詰まる。ぬえの行動をナズが制そうとする前にぬえはそのまま言葉をつづけた。
ぬえ「人間なのになんで妖怪を助けたいの?」
男「それ、は」
返答に窮する。正直言えば妖怪を助けたいわけじゃなくて、俺の知っている人を助けたいだけだからだ。
助け船は来ない。なぜならここで俺自身の言葉で言えなければ信用なんてものはなくなるからだ。
男「好きな、人がいて。好きな妖怪がいて。そいつら全員を助けるためだ」
ぬえ「へー。じゃあその好きな妖怪以外は助けないの?」
分かっている。好きな妖怪すら守れるか分からないんだ。だから妖怪すべてを助けるなんてことは無理。
だから
男「そいつらはみんなに任せたい」
男「頼む」
71
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 17:32:29 ID:93fR5./2
ぬえ「話にならないね」
ぬえ「いくら土下座したって。あんたの土下座に価値なんかない。だよね」
ナズ「ぬえ」
ぬえ「ナズーリンは黙ってて。聖と星はお人よしだからわかんないだろうけどさぁ。私たちだって慈善事業してる場合じゃないんだ」
ぬえ「私たちに実利は?」
その言葉を否定するものはいない。聖ですら俺の言葉を待っている。
男「実利は。ある」
ぬえ「ただの人間。しかもよわっちぃ人間が? 戦えないから守れない。このままじゃただ飯ぐらいしかできないあんたが?。なんなのさその実益ってのは」
先を知っている俺の唯一の切り札。
俺がもたらせる実利はこれしかない。
だから卑怯なこの切り札を切るしかない。
男「ここにいる7人の命。救ってみせる」
72
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 18:21:20 ID:93fR5./2
俺の言葉にある者は嘲笑、ある者は唖然、ある者は困惑、そしてまたある者は微笑んだ。
当たり前のことだ。
ただの人間が
大妖怪を守ると言ったのだから。
ぬえ「ちょっと待った。私の耳がおかしくなったのかもしれないから聞くけど。なに、あたしたちの命を助けるって?」
男「あぁ」
ぬえ「はっは、冗談の才能はないみたいだね」
一輪「姐さん。私もこの人が言ってることが」
水蜜「うん。私も」
白蓮「………男」
男「はい」
白蓮「あなたはどうやって我々を救うのですか?」
男「ここを離れます」
男「逃げましょう」
73
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 18:28:38 ID:93fR5./2
今はこれしかない。
全員の命を救う選択肢は今俺が知ってる限りではこれしかない。
当然のことながら批難の声は上がった。
ここを捨てて逃げるわけにはいかないのは当然のことだ。
しかし。だがしかし。
ここで折れてしまえば俺はぬえを失う。
もしかしたら今度は命をも奪われるかもしれない!!
俺は机を両手で叩いて、俺に投げかけられる言葉を止めた。
男「みんなが言いたいことは委細承知。だけど、だけれど、それでも俺はここで折れるわけにはいかない」
男「証明はできない。根拠もない。力もない。何もない。ないない尽くしのこの俺はただただひたすら」
いやってほどに
男「結果を知っている」
74
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 18:37:50 ID:93fR5./2
妄言 虚言 戯言。
みんなはこう捉えるだろう。
知っているのは聖とナズーリンだけ。
知らないもの多数。
ぬえ「どういう、ことさ」
男「みんな死ぬんだよ。聖も、ナズーリンも、そこのあんたもそこのあんたもそこのあんたも」
男「ぬえを除いてみんな死ぬ」
「っ!」
同じタイミングで俺の首に当てられた三本の手。
一輪「姐さんが死ぬなんて冗談は」
水蜜「笑えないなぁ」
ぬえ「あぁ、笑えない」
75
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 18:41:12 ID:93fR5./2
花を手折るかのように俺の首をへし折ることのできる腕三本。
だけどこんな状況はもう慣れた。
男「あぁ。死ぬんだよ」
男「みんな、豊聡耳神子ってやつに殺される」
「!!」
三本の手が俺の首を獲物を捕らえる蛇のごとく狙う。
それを止めたのは聖でもなく、ナズーリンでもなく。
星「やめなさい!!」
沈黙していた星の一喝だった。
76
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 20:04:39 ID:93fR5./2
星「ここで暴力を振るうようなことはこの私が許しません」
その星のまっすぐな眼差しに射抜かれた三人は不承不承ながらも俺の首から手を放した。
一輪「でも私たちが死ぬなんてふざけたことを言ってるし」
星「なぜそれがふざけたことと決めるけるのですか。たしかに気分が良いことではないかもしれません」
星「だからと言って暴力に訴えるようなど。そのようなことを聖はあなたたちに教えましたか!!」
再び星の一喝。
部屋中を震わす声に水色の髪の少女と黒髪の少女は一歩下がった。
星「ご迷惑をおかけしましたね。男さん」
星「しかし一輪達の考えもまた理解はできる。むしろ一輪達の考えの方が当たり前」
星「あなたはなぜ。私たちが豊聡耳神子に殺される。そこまで断定できるのですか?」
男「俺は………」
言っていいのだろうか。
俺は全てを言って―――
星「どんなことでも良い。教えてはもらえませんか?」
その言葉。その強く優しくまっすぐな金色の瞳は俺の葛藤を消し飛ばすには十分だった。
77
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 20:07:25 ID:93fR5./2
ぬえ「信じられない」
一輪「同じく」
水蜜「同じく」
響子「どういうことでしょー?」
骨董無形な夢物語は当然のことながら信じられなかった。
しかし
星「私は信じますよ。あなたのことを」
一輪「え、なんで!?」
水蜜「いやいやいや、いくらお人よしだからって」
ぬえ「………はぁ」
響子「?」
星だけは他のみんなと違い信じてくれた。
その理由はわからない。
ただ星だけは信じてくれた。
そのことは俺に大きな安心を与えてくれた。
78
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 20:51:18 ID:93fR5./2
一輪「でも寅丸だけ信じても」
ナズ「あ、私も信じてるぞ」
一輪「え?」
白蓮「私も信じていますよ」
ぬえ「三対三。だけど聖と寅丸がそっちいるならどうしようもないね」
ぬえ「でも! 私はあんたに命は預けないからね」
一輪「そ、そうですよ。いくら姐さんが言っても全部まるっきり信じるわけには」
水蜜「そうだって、だって人間なんだよ!?」
再び論争に火が付きそうになる。それを沈めたのは意外にも。
響子「あのぉ」
ぬえ「なにさ」
響子「お腹すきました…」キュルルル
可愛らしくなる腹の虫だった。
聖「食べましょうか」
ぬえ「………うん」
79
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:03:16 ID:93fR5./2
なんとも煮え切らない雰囲気のなかで食事が始まる。
ナズ「あぁ。そういえば男に紹介をしてなかったね。ぬえ、一輪、水蜜、響子」
ぬえ「ん? あぁ、なんでか知らないけど私のこと知ってるらしいからパス」
一輪「………雲居 一輪」
水蜜「村紗 水蜜。以上」
男「あは、あはは」
分かってはいたがどうやら壁は厚いようだ。にべもない反応にがっくりと肩を落とす。
響子「幽谷 響子です! よろしくお願いします!!」
緑の髪の、響子だけが元気よく答えてくれた。
小さな娘のような反応に癒され―――
男「小さな、むす、め」
男「あぁ!!」
大切な事を思い出して立ち上がる。いきなりの行動に対面に座っているナズーリンが目を丸くさせていた。
80
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/25(土) 21:12:28 ID:nEq75F3M
乙乙!!!
81
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:21:52 ID:93fR5./2
いつだ、いつだった。
俺が一番最初に迎えた絶望はいつ来た。
たしか、俺が来てから
男「明後日か、明後日だと!?」
時間がない。
ナズ「い、いきなりどうしたんだい」
男「明後日。明後日なんだよ!」
伝えられないことはわかっているけど、感情が空回りして、同じ言葉しか繰り返せない。
白蓮「男さん。深呼吸。深呼吸をしてください」
聖に言われた通り、深呼吸をする。少し過呼吸気味になった深呼吸のあと落ち着いた俺は明後日起きることを話した。
男「妖怪の子供たちが人間達に殺される」
そう。羽少年たちのことだ。
火に包まれたなんの罪もない少年たちのことだ。
82
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:28:47 ID:93fR5./2
白蓮「今、子供たちが殺される、と?」
男「あぁ。妖怪の子供が数十人程度洞窟の中に隠れてるんですけど。その子供たちが人間の手によってやき」
フラッシュバック。
あの眩い火と黒く染まった笑顔。
そして焦げる匂い。
反射的に口を押える。
食事中だ、吐くわけにはいかない。
白蓮「明後日、ですね」
男「は、はい」
白蓮「私たちは何をすれば?」
男「映姫さんのところへ俺を連れて行ってください。あの場所を知っているのは映姫さんと小町だけです」
83
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:34:54 ID:93fR5./2
一輪「待ってください姐さん。中立だから今まで戦いに巻き込まれてない私たちですよ!? それが博麗のとこと接触したら」
白蓮「男さん。私たちに逃げろと言いましたがもちろんどこに逃げればいいのかも教えてくださるのですよね?」
一輪の言葉を手で制し、聖が俺にそう問いかける。
逃げるべき場所。
その心あたりが一つだけある。
いったこともなければ、見たこともない場所。
だけどそこからも悲劇は始まった
男「逃げこむ場所はあります」
白蓮「どこですか?」
男「………」
男「地底です」
84
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:44:57 ID:93fR5./2
地底。
たしか地底の住民が紅魔館の人たちと殺しあってみんな死んだはず。
ならばその地底の騒乱を事前に止めておけばかなりの人数が死ななくていいはずだ。
どうすればいいのかはわからないがおそらく今はこれがみんなが生き残るための最善手―――!
水蜜「地底!? あんなところへ!?」
白蓮「わかりました。それでは明日私が男さんと一緒に博麗神社へ行きましょう。水蜜、準備は頼みますよ?」
水蜜「へ!? あ、え!?」
なぜか戸惑う村紗。
とにかく明日は聖が連れて行ってくれるそうだ。
もし明日映姫さんと話せて、上手くゆけばあいつらは死なない。
あんなふざけた悪意に巻き込ませたりはしない。
決して!
85
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 21:48:57 ID:93fR5./2
星「事情は分かりました。とにかく罪なき命が奪われるのは私としても是とは思いません」
星「私もできる限りの協力はしましょう。毘沙門天代理の名にかけて、わたしはその子を守護してみせる」
凛々しい表情の星。いや星さんはとても頼りになりそうだ。
星「お代わりです」
凛々しい表情の星さん。
頼りに、なりそうだよな?
凛々しい表情でカレーのお代わりを食べる星さんを見て少し揺らいだ。
86
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 22:17:43 ID:93fR5./2
カレーの味は非常においしかったが肉は食べたことのない味だった。一体なんの肉を使っているのだろう。
食器を洗うことを申し出たがあっさり却下され手持無沙汰になった俺はもうすっかり暗くなった外を見ていた。
灯りは蝋燭と月に光。
散歩するには頼りない光だ。
ナズ「男」
男「おぉ、いたのか」
ナズ「小さくてすまなかったね。それより話が聞きたいんだ。いいかい?」
男「わかった」
ナズ「じゃあついてきてくれ」
87
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 22:18:52 ID:93fR5./2
ナズの後ろに続いていく。長いしっぽが歩くのに合わせて左右に揺れていた。
ぎぃぎぃとなる廊下を十数秒ほど歩き、ナズーリンが立ち止まった。
ナズ「ここだよ。中で星が待ってる」
男「星さんが?」
ナズ「あぁ。君の今までについて聞きたいそうだ。さっき以上に濃い内容のすべてを」
男「分かった。一切の包み隠しなしで話そう。あの人なら信じてくれる」
ナズ「はは、主人は大変なお人よしなんだよ。下手したら聖以上に。だから私が苦労する。それじゃあ言ってきたまえ」
そういって開けたふすまの先にいたのは月の光に照らされキラキラと輝く星さん。
優し気ながら神々しいまるで生きた仏像のような星さんがそこにはいた。
88
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 22:24:21 ID:93fR5./2
星「座ってください」
星さんの視線の先にあるのは一枚の座布団。
星さんから3メートルほど離れた対面に置かれてある座布団に俺は胡坐をかいて座った。
男「話が聞きたいそうですね」
星「えぇ。あなたをもっと信用するために」
男「なぜ星さんは俺を信用してくれるんですか?」
星「信じますよ。あのときのあなたは一輪や水蜜と同じ目をしていましたから。とらわれた聖を助けようとしたときの二人の目を」
男「捕まった? 聖さんが?」
星「えぇ。昔の話ですが。ではあなたの話を聞かせてください」
星「今まであなたがどんな思いをして、どんなに苦しんで、どれだけ愛したのかを」
男「………はい」
星さんに促され語り始める。
誰も救われない3級品の悲劇を。
89
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/06/25(土) 22:49:09 ID:93fR5./2
今日はここまでー
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/26(日) 11:28:41 ID:iPg1YPw2
乙乙乙!!
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/06/30(木) 01:54:16 ID:3F5dZeJ2
まってたー
おつ!
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/07/20(水) 17:41:59 ID:dRAp3Bv6
久しぶりに見たら更新されていた
乙
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/07/23(土) 00:19:50 ID:0SXEkH7E
乙です!
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/02(火) 22:34:57 ID:702g.ROY
ゆっくり待ってますぜ
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/11(木) 04:06:56 ID:aINRd5.I
気長にね
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/15(月) 21:18:22 ID:xy.XIvU.
うんち
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/18(木) 22:13:26 ID:dS3MJYto
〜俯瞰視点〜
夜の闇に紛れるには黒よりも紺の方が良い。
しかし人の目から逃れるためには紺の服を着るよりもずっと良い方法がマミゾウにはあった。
狸の化生であるマミゾウにとっては山を進むなら下手に化けるよりも本来の姿で走った方がよっぽど都合が良い。
草をかき分ける四足の音はかすかであり、大きなしっぽも今は小さくしている。
誰も気づくはずがない。
誰も気づけるはずがないとマミゾウは自負していた。
実際その通りで妖怪の目も人間の目も掻い潜りマミゾウは目的の場所まで近づいていた。
マミ「やれやれ、老体にはなかなか厳しい世の中よのう」
月を背にして見上げるは長い階段。そのうえにあるのはこの幻想郷のルールである博麗神社。
マミゾウはぽんと軽い音をたてながらいつもの姿へとその身を替えた。
いつの間にか口にくわえた煙管から紫煙をくゆらせ、マミゾウはゆっくりと階段を上がっていった。
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/18(木) 22:23:20 ID:dS3MJYto
石でできた階段を疲れた様子無く登っていくマミゾウはふと足を止め後ろに広がる幻想郷の風景を眺めた。
マミ「出迎えかの」
霊夢「どうやって入ったの」
突然現れた―――そう、突然現れた霊夢に驚くことも振り向くこともなくマミゾウは煙管を思い切り吸い込みせせら笑った。
マミ「歩を進めて」
霊夢「聞いてるのは手段じゃなくて方法。結界で覆われている。博麗の巫女とスキマ妖怪の式の作る結界で覆われているこの神社にどうやって入ったの?」
マミ「もちろん結界を開けたまでよ。鍵はなくとも扉は開くからの」
その返答に対し霊夢は軽く下唇を噛みマミゾウの首元へ大幣を当てた。
霊夢「あなたを叩きのめせばいいのかしら?」
マミ「それは困るのう。やりたいことがあったからここに来たゆえ」
霊夢「やりたいこと?」
マミ「何、知り合いに会いに来ただけよ。敵意はない。それと霊夢。お主何か勘違いをしているんじゃないかね」
霊夢「何よ。勘違いしてることって」
マミ「一つはこの結界には隙がある。そしてもう一つは」
マミゾウは煙管から灰を落とし二度下駄で地面を打ち鳴らした。
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/18(木) 22:32:22 ID:dS3MJYto
マミ「ぶちのめす。ではなく」
霊夢「!」
階段の脇にある藪。そこからぎらぎらと輝くのは月を反射させる獣の瞳。
ひとつやふたつではない。数えることすら面倒なほどの数だった。
マミ「殺し合いゆえ、ぶっ殺すの方が適当じゃな」
霊夢「あんた―――」
霊夢は瞬時に状況を理解し左手を懐に伸ばしつつ三歩程度の距離をとった。
マミ「勘違いしないでおくれ霊夢。話に来ただけよ。博麗の巫女にも誰にも手を出すつもりはない。ただ害されれば答えるだけの話」
霊夢「あんたが何か悪だくみをしにここにやってきた可能性は?」
マミ「ないが証明のしようがない。さとり妖怪でも呼んでくるしかないじゃろうなぁ」
霊夢「――――――」
霊夢は視線を絶え間なく動かしたのち、一瞬目を瞑ってため息を吐いた。
霊夢「変な真似をしたらぶちのめすわよ」
マミ「手土産がないうえにこんな時間に来てしまい不躾ですまないのう」
そういってマミゾウはからからと笑ったが霊夢は眉をひそめこめかみを抑えた。
100
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/08/18(木) 23:12:04 ID:dS3MJYto
博麗神社の離れの一室。紫と映姫を机で挟み、マミゾウは二人と向かい合っていた。
小さくあくびをしながら紫が訪ねてきた要件を聞く。
マミゾウは白湯に近いお茶で唇を湿らし口を開いた。
マミ「聞きたいことが一つ、あとそれに関することで頼みが一つ」
映姫「聞きたいこと、とは?」
マミ「ある人間。外の世界の様相をした人間。何か知ってるのではないか?」
紫「知らないわ」
マミゾウの質問に対し、にべもない返答を紫が返す。
紫はにっこりと笑って同じことをもう一度繰り返した。
マミ「そうか。知らぬか」
マミゾウは深く頷いてもう一度お茶で唇を湿らせた。
マミ「その人間がの。妖怪の山で妖怪の子供が殺される。だから助けたいと言っているのじゃよ」
映姫「なぜそれを私に? 妖怪のことは管轄外―――」
マミ「ではないことはとっくに知っておる。この幻想郷で、人里や地底ならともかく山で、森で、儂に知らんことなどほとんどないわ」
マミゾウの丸眼鏡が隙間から入ってきた月の光できらりと輝く。その奥にある瞳はじっと映姫を見据えていた。
101
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/08/18(木) 23:22:29 ID:dS3MJYto
映姫「………わかりました。情報提供ありがとうございます。その人間の言ってることが本当かはわかりませんができる限りこちらでも対策を―――」
マミ「違う。そうではない」
映姫「と、いうと」
マミ「そのガキ共。こちらで保護させてもらう」
映姫「―――っ!?」
紫「へぇ。でもなぜ」
マミ「儂は理由は分からんよ。ただ儂はぬえのために行動してるだけじゃよ。理由は知らんが、儂が動くわけはある」
映姫「その人間、信用できるのですか?」
マミ「儂は知らんよ。ただ」
映姫「ただ?」
マミ「―――まぁいい。そっちが男を知らないのなら関係はなかろう」
紫「………男は、元気?」
マミ「あぁ、元気じゃよ」
紫「そう………。妖怪達にはこっちから伝えておくわ」
マミ「それは助かる。それじゃあ息災を願っておるよ」
102
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/08/18(木) 23:27:40 ID:dS3MJYto
映姫「待ってください」
去ろうとするマミゾウを映姫が呼び止めた。
その表情にさきほどまであった凛々しさはなく開けられた襖から射す光から見えるのは潤んだ瞳であった。
映姫「子供たちを、必ず」
マミ「はっ。こちらにいるのは幻想郷一のお人よし集団よ」
映姫「必ずっ!」
マミ「任せよ。毘沙門天と団三郎の名だけでは不満かね」
映姫「ありがとう、ありがとうございます」
映姫が深々と頭を下げる。
映姫「今度こそ―――」
そして頭を上げるとマミゾウの姿はすでになく、ゆらゆらと青々とした木の葉が落ちていった。
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/18(木) 23:56:24 ID:IsSRcK1U
おぉ、更新してる!
いつも楽しく読ませてもらってます
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/19(金) 01:21:03 ID:8r68Jpfo
キテター
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/19(金) 02:49:11 ID:E/2AKB8k
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
乙です!!
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/20(土) 02:32:43 ID:WKWDgVTk
おつおつ
待ってた
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/30(火) 20:05:07 ID:dFdkm2iY
これで子供たちは
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/08/30(火) 20:29:58 ID:MG2uN9IE
救われる?
109
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/09/08(木) 10:12:37 ID:WnM.9N46
暇が出来たので毎日更新を頑張ります。
110
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/09/08(木) 10:19:11 ID:WnM.9N46
〜男視点〜
月明かりだけを頼りに暮らす日々はもう慣れた。
人工の光すらないこの場所では月の光はいつも以上に明るく輝いてくれているからだ。
月ではウサギがもちをつくという話があるが幻想郷ならばありえるのだろうなぁなんてことを考えつつ開け放った襖から月を見ていた。
星さんの話のあと俺は六畳一間、家具は布団しかない部屋へナズーリンによって案内された。
まぁ、寝ることさえ出来れば十分だ。
問題は明日から俺がどう動けばいいか、だが。
今までの過去を振り返り星さんに伝えたこともあって眠気は現在かなりひどく俺の意識はゆらゆらと揺れていた。
星さんは俺の話を静かに聞いてくれていた。信じてくれているのかどうかは分からないがその金色の瞳はまっすぐ俺を射抜いていて頼りになりそうな気はした。
ナズ「やぁ男。まだ起きているかい?」
男「ん、あぁ。起きているが」
ナズ「どうだい一杯」
そういいながらナズーリンが片手で持ったものを左右に軽く振る。それは徳利だった。
男「酒? いやなんでそんなもんが?」
ナズ「ここは寺だ。禁酒の場所さ。だから酒は溜め込みやすいのさ」
111
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/09/08(木) 10:27:31 ID:WnM.9N46
そうイタズラじみた笑みを浮かべるナズーリンは尻尾をゆらゆらと揺らしながら俺のもとまで歩いてきた。
ナズ「さぁさぁ、まずは一杯」
手渡してきたお猪口にナズーリンがなみなみと酒を注ぐ。ゆらゆらとゆれる酒に俺の顔が映っていた。
お猪口を一息で干すと喉が焼けるような痛みを覚え、胃の中で酒がその存在を主張した。
男「くぅっ。かなりきついなこれ」
ナズ「はっはっは。酒飲みのための酒さ。こんなご時勢だ。酔わなきゃやってれない事だってある」
そう良いながらナズーリンは自分のお猪口に注いだ酒を軽く飲み干した。
男「で、なんのようなんだ」
ナズ「なに、酔えば口のすべりが滑らかになる。そう打算したまでだよ。んくっんくっ。はぁ。やはり酒はいいねぇ。いつだってこれさえあれば幸せにはなれる」
見た目は少女を下回り幼女とまで呼べそうな外見なのに軽く杯を干す。
外の世界ならば大変な問題なのだろうがここは幻想郷。いまさら違和感は覚えない。
ナズ「どうだい。もう一杯」
男「あぁ、頂くよ」
今度はなめるようにちびちびと飲む。味は美味しいのかも知れないがこのアルコールのきつさだ。酒を飲みなれていない俺では楽しめそうにない。
112
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/09/08(木) 10:34:11 ID:WnM.9N46
男「酔ったって話すことなんて何も無いよ」
ナズ「そうかい。まぁいいさ。飲みたまえ飲みたまえ」
話すことなら全て星さんに話した。俺がぬえをどう思っていたのかも全て話した。
だからこれ以上話すことなんかないのにナズーリンは俺のお猪口を空にはしてくれない。
男「だから俺にはこれ以上」
ナズ「構わないって言っただろう。飲みたまえよ」
ナズ「辛いんだろう?」
男「っ!」
その目は俺を訝しんでいた時の目と違い慈愛にあふれた目だった。
俺よりずっと小さいのに俺の心中を見透かしたかのような。
いつだってそうだ。
皆俺よりずっと小柄なのに俺よりずっと強くて大きくて優しくて。
ナズ「飲みたまえよ。さぁさぁ、一杯」
男「………あぁ」
それが嬉しくて辛くて俺は一杯、また一杯と酒を飲み込んでいった。
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