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( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
1
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:37:04 ID:w.OycBSI0
お久しぶりです。2年ほど放置してしまいました。すみません。
VIPはすぐ落ちるとのことなので、こちらをお借りさせていただきます。
今回は最終話一つ前の第7話です。遅かったくせにすみません。
ご存じない方は、下記URLを参考ください。
ブーン文丸新聞 様
第一部 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire/retire.htm
第二部完結編 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire2/retire2.htm
では、開始します。
19
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:58:00 ID:w.OycBSI0
(: ´∀`)「!」
こちらから出る前に、入り口にいる人間から声をかけてきた。
モナーのように、皺枯れた男性の声。
声だけ聴けば、何の変哲もない声だったろう。
しかし、それでもモナー、いやモララーには体中に電撃が走るほどの衝撃だった。
(: ・∀・) =3(まさか……!?)
慌てて変化の魔法を解きながら、モララーは勢いよく扉を開けた。
/ ,' 3「久しぶりじゃね、モララーくん」
(: ・∀・)「スカルチノフ……国王……!」
最終話へつづく……
20
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:58:54 ID:w.OycBSI0
時間を置いたわりに短くてすみません。
最終話は今月中にはあげるので、よろしくお願いします。
普通にVIPであげた方が良かったかもですね。
21
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:27:45 ID:EOwA7npU0
嘘だろ・・・続きが読める日がくるとは・・・お帰り!
22
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:38:21 ID:BUR6wMUkO
続き待ってた!乙
23
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:39:19 ID:qjnFtbgE0
お帰り
乙
24
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:50:28 ID:NmtzNv0E0
正直、諦めていた…
戻ってきてくれて有難う、有難う
25
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 00:40:47 ID:1PYxIUCkO
乙だが、ミランって誰?ミルナの誤字?
26
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/13(金) 00:49:39 ID:nBcM8dA60
>>25
誤字ですね。ミルナ、と書くべきところでした。
設定上ですが、ミルナの本名がミランです。すみません。
そして、3年も経ってまだ覚えていてくださる方々がいて嬉しいです。
あと一話だけですが、頑張ります。ありがとうございます。
27
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 00:52:59 ID:q5jVELg.0
乙!
復活してくれて嬉しい
28
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 01:43:48 ID:KzLmjJs2O
帰ってくるとは…
最終話も楽しみにしてる
29
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 11:33:35 ID:hDLBQLEYO
ちょうどこの前読み返したばかりだった
乙
30
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 13:30:34 ID:GnRk7CWE0
まじでかよ
スレ覧で衝撃受けた
乙
31
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 15:24:03 ID:pbsZ5HSMO
タイトルは知ってたけど読んでなかった
前作から読んできたよ
32
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 18:12:28 ID:KE6afMLMO
ブログ更新しないのか
33
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 05:34:28 ID:Rh1S/2rUO
懐かしすぎワロタ
おかえり
34
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 08:08:24 ID:N6thy2two
貴様ァァ
何回戻ってきて欲しいスレに書いたと思ってんだ!
俺は嬉しいぞ!
乙
35
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 21:00:11 ID:4OtYrMxc0
おかえりぃぃぃぃ!!!
乙です
36
:
名も無きAAのようです
:2012/07/15(日) 04:15:51 ID:0Duv4Uds0
まじか!おかえりいいいいいいい!
37
:
名も無きAAのようです
:2012/07/16(月) 19:24:54 ID:52tJgaj.0
うほ
38
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 06:01:10 ID:78hjOusw0
素晴らしい
39
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 07:02:50 ID:kzCrd4TIO
そういやAll for one〜はどうすんのアレ完結してないよね?
40
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/17(火) 13:08:42 ID:yA095mk60
>>39
そちらも勿論書いていきます。再開までは、ちょっと時間がかかるかもしれませんが……。投げっぱなしはしたくないので。
もともと、長い一話を投下する作品ではないので、波に乗れば更新頻度は早くいけると思います。
41
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 21:51:16 ID:kzCrd4TIO
>>40
うおーマジか
楽しみにしてる
42
:
名も無きAAのようです
:2012/07/18(水) 00:11:19 ID:S2wU4SkgO
おかえりー!
待ってたー
43
:
名も無きAAのようです
:2012/07/18(水) 00:15:30 ID:2h.uvt.oO
Afoofの人だったのか!!
あの作品ずっと待ってるんだから更新してくれ!!
もちろんツンルートで
44
:
名も無きAAのようです
:2012/07/20(金) 00:15:30 ID:bKGRityQ0
待ってたぜ!乙!
45
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:31:38 ID:VC0QHqzQ0
私のミスで、新しくスレを立ててしまいました。
こちらで投下しますので、ご注意ください。
では、最終話いきます。
46
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:33:04 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「久方ぶりじゃのう、モララーくん」
枯れた喉から発されたのは、柔らかくも気高さを感じさせる言葉。
懐旧のこもったその言葉にはどこか優しさも覚える。
(; ・∀・)「何故……こちらが……?」
/ ,' 3「まぁ、それは追々話すとしよう。立ち話もなんじゃ、キミさえよければ上がらせて頂きたいのじゃが」
ドアノブを手にしたまま、半身になってモララーは対応していた。
その余りの不敬さに、モララーは自分を恥じると同時に謝罪の言葉を紡ぐ。
(; ・∀・)「し、失礼しました。どうぞ、何分窮屈な場所でございますが……」
/ ,' 3「そこまでかしこまらなくて結構じゃよ。
ワシはキミに、国王と匹敵するほどの位、大魔術師の称号を捧げたつもりじゃ。
昔のように、盟友(とも)として接してくれればよいぞ」
ほっほっほっ、とスカルチノフ国王は、嫌味さを感じさせない笑いでモララーを許した。
いや、元より不敬などとは、彼は思ってもいない。
立場上、その厳しさを見せることはあれ、平時の彼は王ではなく一人の老人なのだ。
( ・∀・)「……ありがとうございます。では、改めて。いらっしゃいませ」
/ ,' 3「うむ。お、そうじゃ。ロマネスクくん、キミも入りなさい」
( ФωФ)「ハッ!」
キレのある返事と共に、扉の影からヌッと大男が出てきた。
黒騎士に与えられる、金の装飾が入った墨色の全身鎧を着こんでいる。背にはVIP大陸の紋章が刻まれたマントも着用していた。
背中には身の丈ほどもある大剣を携えた彼は、有事のロマネスク・ホライゾネルに他ならない。
47
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:34:44 ID:VC0QHqzQ0
王衣も羽織らず、動きやすい普段着のスカルチノフに対し、彼の格好はとんでもなく場違いにさえ見えた。
しかし、ここまでの道のりや他の護衛がない以上は、それくらいの準備は当然のこと。スカルチノフもそれを踏まえて、彼に重曹をさせた。
裏を返せば、彼一人で一個師団ほどの実力があると信頼をしてのこと。
実際に近衛の位を預かっている騎士より動かしやすく、それでいて匹敵する屈強さを備えているロマネスクを、スカルチノフは非常に気に入っていた。
( ・∀・)「ロマネスク団長まで……。お久しぶりでございます」
と、礼節を持って接そうとしたモララーが頭を下げるより早く
ロマネスクはモララーの前に跪き、深々と頭を垂れた。
( ФωФ)「こちらこそ。お懐かしゅうございます。大魔術師、モララー=レンデセイバー殿」
(; ・∀・)「ちょっ……!? ロ、ロマネスクさん!?」
突然の対応にモララーは焦る。
年下であろうと、敬意を払うべき者には徹底的に。
それを地で行くロマネスクだが、ここまでの行為は今まで見たことがなかった。
以前のような、フランクなやり取りを望んでいたモララーとしては、経年劣化のように、ロマネスクが遠い人になってしまったようで寂しさも覚えた。
( ФωФ)「……というのは、冗談である」
(; ・∀・)「え?」
顔をあげ、少しいじわるそうな笑顔を見せたロマネスクは、重量のある金属鎧を纏ってるにも関わらず
衣服でも着込んでいるかのように、軽々と身体を持ち上げてモララーに手を差し出した。
( ФωФ)「とはいえ、本来階級上ではこれくらいの行為は当然なのである。
お主が知らないだけで、吾輩は常に、お主のことをこれぐらいの気持ちで接していたことだけは、知って欲しかったのである」
( ・∀・)「ロマネスクさん……」
( ФωФ)「堅苦しい挨拶はここまでである。モララー殿、本当に久しぶりである。会えて嬉しいのである」
( ・∀・)「こちらこそ。僕も会えて嬉しいです」
かつての戦友(とも)達は、かつてのようにがっちりと熱い握手を交わした。
48
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:35:33 ID:VC0QHqzQ0
フタ
最終話「双つの肩」
49
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:38:16 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「お待たせいたしました」
/ ,' 3「おぉ、すまないね」
この大陸で最も大きく、産業も農業も全てが主要である王都NEETの主の前に、シルムの紅茶が置かれた。
柑橘系の、甘くも酸味を含んだ空気をその鼻腔へと吸入する。香りを楽しんだ後、王はゆっくりとカップに口をつけて茶を嚥下した。
たったそれだけの動作なのだが、その中に気品さ優雅さを感じさせる空気が、彼から発せられていた。
( ・∀・)「お口に合うか自信がありませんが……」
/ ,' 3「良いのじゃ。キミがもてなしの心を込めて振る舞ってくれたものを、何故美味い不味いの範疇で語るのじゃ?
どんなものでも、ワシは喜んで飲むよ」
( ・∀・)「国王……」
( ФωФ)「国王様。ゆっくりと歓談する時間は、私も望んでおります。
ですが余り長時間、国を留守にするのは……」
/ ,' 3「ほっほっほっ。わかっておるよ、ロマネスクくん、わかっておるよ。わかっておる」
少し乾いた笑いをあげてから、国王はカップをゆっくりと置いた。
そして、それから対面に座っているモララーの目を優しく、覗き込むように見据える。
/ ,' 3「本題に入る前に。まず、今キミが何をやっているのか、それを聞かせてほしい。
もちろん、差支えの無い程度で構わんよ。言いたいこと、言いたくないことは誰にだってあるじゃろう。
話せる範囲で、しかし出来るだけ伝わるように、お願いできるかな?」
( ・∀・)「…………わかりました」
モララーは、目をそらさずに答えた。
答えに少し時間を要したのは、拒否反応があったわけではない。
どれだけ話そうか、どれだけ話せるか。それを考えていただけ。
話さない、という選択肢はこの人の前では存在しえなかった。
50
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:40:45 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「まずは、王都を出てからのお話をしましょう」
と、結局モララーは洗いざらい話すことにした。
何故、どうして、を偶に省くことはあったけれど、事細かにこの空白の11年のことを話した。
しかし、内容自体は非常に簡潔だった。
役目が終わったから、城を出たこと。それから、この山中で暮らすことにしたこと。
そこから10年余りは、非常に無味乾燥な話だったのだ。
野菜を作ると決めたこと、城下町で売るようにしたこと。それだけを話すのに数分の所要時間で良かった。
そして一年前。
そう、ここから彼の生活は一気に色を帯びる。
あえて、モララーは誰と会ったのかまでは隠した。目の前にロマネスクが居たことによる配慮なのだろうか。
それでも、彼の語り口調は楽しげであった。
子どもの世界のこと、大人の世界のこと。未だに、悪を掲げる者がいること。
( ・∀・)「とりあえず、騒がれないように彼らはラウンジ大陸に返しておきました。
多分、もう二度と現れはしないでしょう」
と、あえて重い話は軽く話した。これは、先日の毒田ドクオとの死闘の後日談だ。
話し終えて、モララーは一息つく。話した。話せることは全て。
後は一つだけ。話すか、話すまいか。
/ ,' 3「それが大魔法の発生だったわけか……。
まったく、スペルキャンセラーを空間ごと張るなんぞキミにしか出来ん芸当じゃの」
( ФωФ)「しかし、大魔法を打ち消せるほどの具足とは……ラウンジ大陸も恐ろしい武具を発明したものである。
何より、使い手はあの毒田ドクオ……うむむ。うかうかしていられないのである」
51
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:43:35 ID:VC0QHqzQ0
かつて、戦い敗れたことのあるロマネスクは真剣に悩んだ。
今の自分で、果たして勝てるのだろうか。モララーが撃退してくれたのは嬉しい限りだが、果たして後継者などは存在するのか。
たった一つの戦闘から炙り出された心配事はたくさんあった。
/ ,' 3「なぁに。大丈夫じゃろう。その戦闘狂とやらも心が折れておる。特注の具足ということは、つまり高コストの製品じゃろう。
正直に言うが、ラウンジ大陸の文明力よりも我々VIP大陸の方が文明は栄えておる。
それほど高コストの製品を量産できるほど文明が発達しているとは到底思えぬよ」
( ФωФ)「……そうですね。少なく見積もっても、文明の差は10年以上は見受けられますから心配には及びませんね」
/ ,' 3「さて、続きはもうないのかね?」
ロマネスクと安否の話をしていたスカルチノフは、ふいにモララーへ話を振った。
モララーは一瞬のうちに、考える。
言うか、言わざるべきか。
――――ところで、彼が一体何を話していないのか、だが……。
それは、都村トソンのことだった。
何故話さないのか、といえば至極当然。
彼女はラウンジの人間だからだ。
記憶を失っているとはいえ……というところがある。
間違いなく、容姿を見せるだけで国王とロマネスクならば一発でわかるだろう。
この大陸の人間はない、と。
どんな反応を示すだろうか。無条件に忌み嫌っている人たちと違い、哀しき戦争の最前線に立った人たちだ。
少なくとも、拒否反応は示してくるはず。それをどう言いつくろえばいいのだろう。
そして、再び思うのだ。
例えば、話したとしよう。包み隠さずに。
……で、どうして欲しいのだろう。
52
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:45:32 ID:VC0QHqzQ0
そもそも、何で言いにくいんだ?
ラウンジの人だから? 記憶を失っているから、言い訳が難しいから?
……違う。そんなんじゃないはず。
じゃあ、どうして?
( ∀ )「…………」
/ ,' 3「……」
( ФωФ)「? どうしたのであるか、モララー殿?」
モララーは黙ってしまった。
本当は間髪入れずに、何かを話して適当に言いつくろうはずだったのに……言葉が出ない。
何でなんだろう。
何で話したくないんだろう?
……もし、この相手が、例えばシャキンさんだとしたら、多分僕は簡単にさらりと話したであろう。
他にも、あの人やあの人だったら話せるはずだ。
……うん、そうだ。
僕は相手がこの人たちだから話しにくいんだ。
仲がいいからこそ、何か話しにくいものがあるんだ。
でも、じゃあ、それはどうして?
/ ,' 3「モララーくん」
( ∀ )「……はい」
53
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:47:35 ID:VC0QHqzQ0
沈黙を先に破ったのはスカルチノフだった。
手で目を覆うようにしていたモララーは、そのまま答える。
/ ,' 3「あえて言わなかったのじゃが。やはり、どうしても気になることがあっての」
( ・∀・)「……なんでしょう」
/ ,' 3「二階に居る方はどちら様かの?」
(; ・∀・)「!!」
( ФωФ)「二階?」
ロマネスクは周りを一望する。確かに、このテーブルのすぐ脇に階段はある。
それは知っているが、そこの先に人影なんてない。少なくともこの角度からじゃ全く見えない。
更に、ロマネスクよりも体躯の小さいスカルチノフだ。見えるはずがない。
しかし、スカルチノフの指摘は全くもって正解だった。
見えない角度だが、二階のベッドに潜り込んで隠れている女性が居るのだ。
ラウンジ大陸の、都村トソンが。
( -∀-)「……そういえば、忘れていました」
と、観念したかのようにモララーは立ち上がった。
忘れていたのはトソンのことではない。スカルチノフのことだ。
国王スカルチノフは、魔術師でもあった。しかし、戦闘特化ではない。
ちょうど、ツンが似たような能力を持っていたが……要は魔術感覚が非常に優れた人間である。
視覚聴覚などが、生まれつき秀でている。更に、魔術の発生にも敏感であった。
これにより、スカルチノフはモララーの居場所などを見事当てて見せたのだ。
では、何故武士であるトソンが居ることがバレてしまったのか。
54
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:49:47 ID:VC0QHqzQ0
それは、言語変換魔法だ。
初めてトソンに会った時、ラウンジの言葉は全くもって通じなかった。
それをいち早く察知したモララーは、彼女へ言語変換の魔法をかけていたのだ。
常時発動型の魔法であるそれは、今も尚トソンにかかっている。
発生魔力自体は非常に微量であっても、スカルチノフにとっては警笛でも鳴らしていることと同然であったのだ。
トントンと階段を上がっていくモララー。
ベッドのシーツに包まっている人型の隆起に向かって、彼は声をかける。
( ・∀・)「トソンさん。もう、良いですよ」
(゚、゚トソン「……はい」
内容は筒抜けだったし、気配も感じていた。
だからトソンはゆっくりと衣擦れの音を立てつつシーツを捲り、立ち上がった。
モララーはその動作を確認すると、振り返ってゆっくりと階段へ向かい、降りて行った。
その後ろを、トソンはついていく。
少し、怯えながら。
( ・∀・)「ご紹介が遅れて大変申し訳ありません。彼女は都村トソンといいます」
テーブルの前に立ち、手のひらをトソンへ向けながらモララーは紹介をした。
それ以上、言葉は要らなかった。それだけで、一体何者なのか戦争経験者の二人にはわかったはず。
スカルチノフは、黙ってトソンを見ていた。
ロマネスクは、階段から降りてくる時点で既に目を見張り、口をポカンと開けていた。
そして、名前を聞いたと同時にその表情を変える。気づいたのだ。
55
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:52:26 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「……ラウンジの方であるか?」
( ・∀・)「えぇ」
( ФωФ)「先ほどのお主の経歴では、彼女の事は出てこなかったのである」
( ・∀・)「意図的に避けていましたから」
( ФωФ)「何故であるか?」
( ・∀・)「……何故ですかね」
( ФωФ)「…………それはお主でないとわからないことである」
( ・∀・)「でしょうね」
/ ,' 3「……ワシには何となくわかるがの」
二人の会話にスカルチノフが割って入る。
視線の先はいつの間にか、トソンではなくモララーに変わっていた。
/ ,' 3「ラウンジ大陸との関係はまだ良くなってはおらん。
更に、ワシらのように戦争経験者からすれば、ラウンジの人間というだけで少し気持ちが揺らでしまうものじゃ
それを配慮してくれたんじゃろう」
もっともらしく、でも正確に。スカルチノフはモララーの心情を語って見せた。
( ФωФ)「そうなのであるか?」
( ・∀・)「……えぇ、そうですね」
56
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:55:26 ID:VC0QHqzQ0
肯定をしたモララーだが、しかし沈黙が挟まれる。
目を閉じて、その内なる心を再度見直し、続ける。
( ・∀・)「でも、それだけではないと思います」
( ФωФ)「……では、再度聞きたいのである。何故なのであるか?」
まるで、父親のように優しい言葉でロマネスクは問う。
( ・∀・)(……あぁ、そっか)
その優しさと慈愛に満ちた言葉、態度を見てモララーはやっとわかった。
何でここまでして、自分は隠したがっていたのか。
( ・∀・)「……純粋に」
そう、ただそれだけなんだ。
(* -∀-)「純粋に、女性を紹介するのが恥ずかしかったんです」
57
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:58:02 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚;トソン「えっ!?」
思いがけない言葉に間髪入れず反応を示したのはトソンだった。
それもそうである。
立派な人格者で、大陸の、いや世界の英雄であるモララー=レンデセイバーにしては、とんでもなく幼稚な理由だったからだ。
( ФωФ)「……」
/ ,' 3「……ふふ」
( ФωФ)「……王様、いくらなんでも失礼かと」
/ ,' 3「そういうお主も、口元が緩んでおるぞ」
( ФωФ)「おや……それは大変失礼を……」
と、二人は必至で笑いを堪えるように会話をしていた。
(* -∀-)「わ、笑うこと……なんですかね?」
その結論にモララー自身もビックリしていたから。思わず質問をしてしまう。
/ ,' 3「いやいや、う、嬉しいんじゃよ、モララー君」
笑いを止めようとするが、まだ止まらない。
ロマネスクは君主の前でいつまでも笑っていては失礼と思い、気合で笑いを止める。
そして、同じように思っていたであろうことを代わりに言った。
( ФωФ)「お主は大事な青春時代を、世界の為に全て投資して戦い、守ってくれたのである。
そんなお主が、まるで子どものように、隠した宝物が見つかってしまったかのように」
( ФωФ)「余りにも普通の理由なことが、吾輩たちは嬉しいのであるよ」
58
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 21:58:32 ID:Ky/Fncb60
うふふ
59
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:00:38 ID:VC0QHqzQ0
魔術に長け、誰にも負けず、一切の隙を見せない。
そんな冷酷にすら思えそうな、圧倒的な魔力を持っているモララー。
いつの間にか、忘れて……いや、知らずに通り過ぎてしまったモララー自身の『心』
街を歩いている快活な青年たちと等しく、それを持ち、表してくれた。
それが、まるで保護者の代わりである彼らは嬉しくて堪らなかったのだ。
(* ・∀・)「おかしくないですか?」
/ ,' 3「おかしくない。普通じゃ。至極当たり前過ぎて、忘れてしまう位じゃ……」
一息つけたスカルチノフはそれだけ言うと、黙り込んでしまった。
そして、何かを思索するかのに中空を見上げた。
数刻にも思える沈黙が続いた後、モララーへ再度顔を向ける。
その表情は、硬くて厳しくて……老人ではなく一介の王としての顔つきになっていた。
/ ,' 3「…………モララー君、一つ尋ねる」
( ・∀・)「はい」
/ ,' 3「現在、取り決められている両大陸間の法律では
原則として許可証の持った人間しか、他大陸には居住出来ないことになっておる」
/ ,' 3「彼女は、それを持っているのかね?」
(゚、゚;トソン「あ……そ、その……」
トソンは焦った。
持っているわけがない。
侵入自体が不法だったし、何より本来の責務で考えるならば、こうやって他大陸の人間に顔を見られることすら禁忌なのだ。
60
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:02:50 ID:VC0QHqzQ0
顔を知られた場合、彼女らの作戦では即刻口封じとして息の根を止めることになっている。
しかし、他大陸でも名ぐらいは聞いたことのある黒騎士ロマネスク=ホライゾネルと
大魔術師モララー=レンデセイバーの口を同時に封じることなど不可能。
トソンはその作戦などすっかり諦めて、一般市民としての仮面をかぶって出てくることを決意していた。
いや、もう彼女自身。その仮面はいつしか、本物の顔となっていた。
モララー暗殺に失敗したその日から、嘘を本当と思い込み、そう勤めて生きて、そして死のうと決意している。
( ・∀・)「言い忘れていましたね。彼女はここに来るまでの記憶がありません
会ったのは近辺の河川ですので、持ち物も同時に紛失してしまったのでしょう」
/ ,' 3「そうだったのか……。では、仕方ないの」
( ФωФ)「規定に従うのであれば、身元確認の為にラウンジに帰ってもらうことになるのである」
( ФωФ)「その方が、彼女の為でもあるし、何よりモララー殿も安心できるであろう」
/ ,' 3「違うかね?」
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「……」
トソンはモララーを見た。
黙って、二人を見ている。
どうするだろう。
普通に考えれば……負担でしかない自分を、置いておく理由はない。
元々、独りになるためにこんな苦行の道を選んでいるのだ。
邪魔な……はず。
61
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:05:31 ID:VC0QHqzQ0
トソンは諦めた。
モララーの口添えがあれば、多分処罰はないであろう。
安全に、無事に祖国へ送り届けてくれるに違いない。
でも……
でも、それでも……
( ・∀・)「それは嫌です」
(゚、゚トソン「!」
自分の気持ちを代弁するように、モララーが口を開いた。
( ・∀・)「規定だろうと、何だろうと。僕は、ここで彼女と共に過ごすことを決めました。」
( ・∀・)「騎士隊長でしょうが、国王でしょうが、法律でしょうが」
( ・∀・)「僕は、従いません」
(゚、゚;トソン「わっ」
力強く言葉を放つと同時に、モララーはトソンの肩を抱き寄せた。
口を真一文字に噤み、力強い意志を視線に込めた。
それでも、彼の姿はまるで子どもが初めて駄々を捏ねるようで、不安がつり上げた眉を震わせていた。
/ ,' 3「……」
( ФωФ)「……」
(; ・∀・)「……」
(゚、゚;トソン「……」
62
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:08:10 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「……よう言うた」
( ・∀・)「えっ……」
/ ,' 3「ワシはな、言われるがままの殺戮狂としてキミを戦線に送り込んだことを、ずっと悔いていたんじゃ」
/ ,' 3「結果的に、世界は平穏になった。それでも、ワシはキミという個人そのものの人生を破綻させてしまったんじゃ。
国として、民の傀儡として、冷酷な命令を下すしかなかったんじゃ。」
/ ,' 3「それが今でも、ワシを縛り付けておる……」
( ・∀・)「国王……」
/ ,' 3「じゃが、キミは立派に成長した。大人としてではない、『人間』として、当たり前の青年になってくれた。」
/ ,' 3「それが嬉しくて仕方ないのじゃよ」
国王は決して、誰にも見せたことのない表情をしていた。
一生懸命、目に浮かぶ涙が頬を伝うことのないように我慢し、震えていた。
/ ,' 3「キミには、大した賞与を与えておらんかったからの……。
良い。それぐらい、良い。」
/ ,' 3「キミがそれで幸せに暮らせるというのならば、法律ぐらいなんじゃ。
民を護るのが法律ならば、今ここではそれは適用されん。キミを傷つける為に法律はあるわけじゃないのだからの」
/ ,' 3「特別賞与として、許す。受け取ってくれるな、大魔術師モララー=レンデセイバーよ」
( ・∀・)「……はい!」
( ・∀・)「ありがとうございます、スカルチノフ国王!」
モララーは深くお辞儀をした。
つられて、トソンもお辞儀をする。
/ ,' 3「うむ。では、行こうかの、ロマネスク隊長」
63
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:10:54 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「……」
ロマネスクは返事をしない。
少し悩み、罰の悪そうな顔を一瞬だけ見せてから、厳しい顔つきになって席を立ちあがった。
( ФωФ)「国王、吾輩もそうしたいのが山々ではあります。
ですが、吾輩も軍人であります。
最低限、義務として行わなければならないことを果たさせて頂きたいのであります」
/ ,' 3「なんじゃ、せっかく丸く収まるかと思ったのに……」
( ФωФ)「堅苦しいけれども、決めたことはせめて実行に移すまで諦めたくないのであります」
/ ,' 3「……わかった」
何の会話をしているのかわからないモララーとトソンが、頭に疑問符を浮かべていると
ロマネスクが、キッとモララーを睨むように見た。
( ФωФ)「大魔術師モララー=レンデセイバー殿。スカルチノフ=R=マキシス王、直々の厳命である!」
( ФωФ)「我が大陸、我が国、我が民の為! 即刻、王都に戻り、最高権威者として仕えよ!」
(; ・∀・)「!」
スカルチノフのサインが書かれた文書を示しながら、ロマネスクは騎士らしく凛然とした態度で命を告げた。
それを見て気づく。そう、彼らがここに来た本来の理由はこれだったのだ。
隠れて存在の安否を詮索にさせるのではなく、堂々とその存在そのものを脅威としてたらしめる。
城に連れ戻すため、二人はモララーを訪ねたのだ。
(゚、゚トソン(……凄いなぁ)
と状況に似つかわしくない呑気なことをトソンは考えていた。
自分の国でも、多分こんなやりとりは滅多に見られないであろう。
最高権力者が最高権力者の引き抜きを行っている場面。これからの人生では二度と、お目にかかれないであろう。
64
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:13:17 ID:VC0QHqzQ0
それだけ凄い、ということを他文化のトソンですら感じられるのだ。
当の本人であるモララーは……
( ・∀・)「……もしも、それをお断りしたら?」
変わらぬ態度で、決意を更に深くしたかのように答えていた。
( ФωФ)「現法律において、王の命、調印を破棄及び拒絶した場合、最高位の涜神行為に当たるのである」
( ・∀・)「つまり、僕を国賊と見なすわけですね」
( ФωФ)「そうなのである。国賊は確認次第取り押さえ、王立の監獄で幽閉なのである」
ロマネスクは背中の剣に手をかけた。
その眼は紛れもなく本気で、やろうとしていることに一切の迷いはなかった。
( -∀-)「……わかりました」
( ・∀・)「とはいえ、僕としてもそう簡単に従えはしません。
黒騎士ロマネスク=ホライゾネル。あなたが僕を取り押さえられるようでしたら、喜んで投獄されましょう」
( ФωФ)「……良いのである。では、外へ出るのである」
( ・∀・)「了解です」
二人の戦士は、先ほどまでの和やかなムードとは打って変わり
ピリピリと、その闘気だけで焦げ付いてしまいそうなくらいの空気を作っていた。
そのまま小屋を出た二人は、なるべく被害の出ない場所へと黙したまま歩いていく。
小屋には、トソンとスカルチノフだけが残されていた。
(゚、゚;トソン「……」
65
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:15:21 ID:VC0QHqzQ0
正直、置いていけぼり感が半端ないトソンは無言でいるしかなかった。
いきなり国王がやってきて、モララーと楽しく話をし、特例を認めると思ったら
次は突然、造反者として処罰を与えると言ってきた。
展開についていけない。
/ ,' 3「お嬢さん」
(゚、゚;トソン「は、はい!? なんでしょうか!?」
/ ,' 3「ほっほっほっ。良いVIP語じゃの。モララー君の言語変換魔法は完璧じゃな。
大抵、微妙なイントネーションなどが違うはずなんじゃが……」
(゚、゚;トソン「はぁ」
/ ,' 3「……心配かね?」
(゚、゚トソン「……というより、何がしたいのか良くわかりません」
/ ,' 3「それもそうじゃろうな。王が許したと思いきや、次は王が別の命令を下したわけじゃからの」
(゚、゚トソン「結局、どうしたいのですか?」
/ ,' 3「どうもこうも。ただ、ワシらは納得したいだけなんじゃ」
(゚、゚トソン「納得?」
/ ,' 3「うむ。彼の意志、彼の想い、彼の心。それらを全て知り、そして自由にしてあげたい。
それが、ワシらが今日、ここに来た理由じゃよ」
66
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:17:54 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚トソン「でも、それは先ほど……」
/ ,' 3「ほっほっほっ。そうじゃがの。次に納得できていないのはモララー君じゃない。
ロマネスクじゃ。あやつもあやつで頑固者でな。やはり、最も信頼し敬愛している者が傍に居てほしいんじゃよ」
/ ,' 3「だから、今度は全身全霊を持って。言葉でダメならば、力をもって、モララー君と話がしたいんじゃよ」
(゚、゚トソン「……」
/ ,' 3「安心せい。すぐに終わるじゃろうて」
不安そうに窓から二人を見据えるトソンの後ろで、国王は優雅に紅茶を啜っていた。
( ФωФ)「先に言っておくのである。お主を殺すつもりは毛頭ないのである」
( ・∀・)「えぇ、それはこちらも同じです」
小屋から少し離れた、森の近くの傍。
以前、ドクオと戦った地で二人は向き合っていた。
( ФωФ)「純粋に、吾輩は騎士の誇りにかけて、お主を倒すのである」
( ・∀・)「わかりました。では、それ相応の敬意をもって僕も対峙しましょう」
モララーは、手を横へ伸ばした。
すると、モララーの肘から先が同時に発生していた白い魔方陣に飲み込まれた。
数回、手先を動かすような仕草をした後に、大魔術師は一本の剣を取り出した。
67
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:19:46 ID:VC0QHqzQ0
長くもなく短くもない。ブロードソードと呼ばれる、銘もない一般的な剣だ。
黒騎士、それも実力だけでいうならば近衛騎士と変わらないロマネスクに対し、この武器の選択は愚の骨頂である。
が、それも何かの作戦なのかと考えロマネスクは行動する。
( ФωФ)「……吾輩はこれを使わせてもらうのである」
そう言いながら、背中の大剣を引き抜いた。
蒼穹を秘めているかのような美しい刀身。無骨な作りではあるが、さぞや名のある武器であることは一目でわかった。
戦後であっても手入れの欠かしたことのない、彼の愛剣である。
お互いの得物を確認すると、そのまま剣先をギリギリ触れ合わないように突き出した
( ・∀・)「では……いざ、尋常に!」
( ФωФ)「勝負である!」
掛け声と同時に、二人は剣先を鉢合わせる。
一瞬だけ飛び散った火花が、決闘の合図だ。
モララーはそのまま、一足飛びで距離を置いた。
しかし、それを読んでいたかのようにロマネスクは前進をしていた。
( ФωФ)「ふっ!」
( ・∀・)「よっ!」
最低限の動きで、しかし最速の斬撃をロマネスクは繰り出した。
刀身ごとたたき折りそうな袈裟斬りをモララーは、軽々といなした。
( ・∀・)「エアロ!」
空いていた左手で、突風を巻き起こす。
たまらずロマネスクは、その場で踏みとどまってしまった。
68
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:21:28 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「フレアボム!」
すかさず連唱。
ロマネスクの周囲に、小さな火球が無数に発生した。
モララーが開いていた手を閉じる仕草をすると、それらは一斉に爆発を巻き起こす!
( ФωФ)「これしき!」
留まる事を知らないかのように、ロマネスクは爆風に耐えて突貫してきた。
距離を置かれることを恐れた黒騎士は、そのまま倒れこむかのように横薙ぎを払う。
( ・∀・)「甘いですよ!」
ギリギリ範囲であったが、モララーはまたも軽く受け流した。
予想違わず転んだロマネスクの、一瞬の隙をついてモララーは魔法を唱える。
( ・∀・)「ブリザードランス!」
今度は氷で出来た槍が3本、ロマネスク目掛けて飛んでいく。
立ち上がり、迎撃するには時間が足りない。
( ФωФ)「わけがないのである!」
大きく重量のある鎧、武器共に前転をした。
重さなど微塵も感じさせない軽やかな動きで体勢を立て直したロマネスクは、飛んでくる氷の刃を一瞬にして撃砕する。
( ・∀・)「……やはり、一筋縄ではいかないですね」
( ФωФ)「当然である。手加減をしたお主に後れを取るほど、吾輩は衰えていないのである」
69
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 22:22:01 ID:htD3oa8.0
最終話来てたか
支援
70
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:23:10 ID:VC0QHqzQ0
ロマネスクの発言の通り。
モララーは手加減していた。とはいえドクオの時のような、全力全開を求めているわけではない。
あれは、間違いなく敵を殺すための魔法だ。それを今から使え、と挑発しているとも違う。
使っている魔法が下級過ぎるのだ。
片手程度で使える弱い魔法で、ロマネスクを倒せるわけがない。
もちろん、先ほどから魔術師としてあるまじき身体能力は、魔法による効果だが……。
( ФωФ)「……何を笑っているのであるか?」
( ・∀・)「え?」
指摘されたモララーは、自らの口元に手を当ててみた。
頬が吊り上っている。なるほど、確かにこれは笑顔だ。
何故、無意識にそんな表情になってしまっているか。それは考えるまでもなく、気づいていた。
( ・∀・)「あなたと手合せ出来ることが、嬉しいんですよ」
( ФωФ)「え?」
( ・∀・)「ずっとずっと、僕の家族のように接してくれたロマネスクさんと……
自分の大切なものを賭けて戦い、そして越えて見せる」
( ・∀・)「こんな嬉しいことがありますか?」
( ФωФ)「……お主も、大概であるな。戦いは嫌いなのかとばかり思っていたのである」
( ・∀・)「嫌いですよ。大嫌いです。けど、それは命のやり取りだからですよ。
力比べをして、相手を打ち負かすことに関しては、僕は後ろめたさを持ってはいません」
( ФωФ)「お主らしい、答えであるな。なるほど。確かに、そう考えれば吾輩も心躍るのである。
世界最強の魔術師を相手に手合せ出来ることは、騎士として誇りなのである」
( ・∀・)「わかりました。それでは、僕もそれに応えるとしましょう」
71
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:25:54 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「うむ!」
( ・∀・)「いきますよ!」
モララーは手に持った剣を思い切り振りかぶり、横へ払う。
そこは紛れもなく虚空だったのだが、まるで金属が切り裂かれるような甲高い音が鳴った。
( ФωФ)「!?」
切り裂いた線を中心に、視界がズレた。
ロマネスクの捉えている景色は滅茶苦茶だった。モララーの下半身と上半身がかみ合っていないのだ。
その後ろの見える木々さえも、一致していない。
が、それを確認する前に黒騎士は気配に気づく。
目の前の不可解な現象より、もっと確実な存在感が背後にあった。
( ФωФ)「ふんっ!」
敵意と判断すると、大剣を使うより早く後ろに蹴りを入れる。
手ごたえはあった。しかし、有りすぎた。
(; ФωФ)「な!?」
蹴りは、後ろの気配の腹部を貫通し背中まで突出してしまっていた。
けれど、その気配はモララーではなかった。リアルだけれども、そうではない彼の煙による幻術。
モララー自身は、最初からずっと。景色を切り裂いた、まやかしの後ろに居たのだ。
そのまま距離を詰め、ロマネスクの懐に飛び込んでいた。
( ・∀・)「!」
剣を振りかぶるより早く、ロマネスクは体勢を再び整えていた。
蹴りこんだ足を、軸足にして大剣を上段に構えている。
72
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:27:30 ID:VC0QHqzQ0
この距離では下手に回避すると危ない。
モララーは攻撃を変更し、そのまま肘を突き出した。
(; ФωФ)「ぐおっ!」
肘先を硬質化させ、簡易的な爆風魔法で急加速。
固い鎧ごと、ロマネスクは吹き飛ばされた。
そのまま追撃が来る。
雷の魔法がモララーの剣先から発せられた。
規模は大きくなくとも、電撃は体を痺れさせる効果もある。
しかし、騎士のロマネスクでは空中で回避の出来る術はない。
だが回避はせずとも、防ぐことはできた。
振り上げた大剣をそのまま地面に突き刺し、手を放す。
ロマネスクの眼前で、大剣が激しく稲光をあげた。
クルリと空中で身軽に回転をし、着地をすると捻転を利用したままロマネスクは走り出す。
大剣を加速中に、引き抜き一気に距離を詰める!
(# ФωФ)「はぁあああ!!」
今までと同じではいけない。どうせ距離を取られるだけだ。
ならばこそ。ロマネスクは刃圏外で大剣を振り下ろした。
( ・∀・)「うわっと!」
力任せに振り下ろした大地が弾け、モララーに襲い掛かる。
けれど、そんなもの意味がない。一瞬でそれらは砕け散り、モララーには届くことがなかった。
73
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:30:01 ID:VC0QHqzQ0
が、その一瞬があれば充分であった。
ロマネスクはその一瞬で、一足飛びをしてモララーを攻撃範囲内に収めることが出来たのだ。
(# ФωФ)「うぉおおおお!!!」
( -∀・)「!」
ギィン、と高くも鈍い音が鳴った。
騎士による大剣の横薙ぎは、モララーが手に持っていた凡剣を叩き折ったのだ。
二人の間に、土と金属のかけらが舞っている。
一瞬の隙だと思った。
モララーはそれらに見とれていたと思った。
ロマネスクは最後のチャンスだと思い、手首のみで切っ先を返し再び斬撃を振るった。
……はずだった。
(; ФωФ)「な……に……?」
腕が動かなくなっていた。
いや、腕だけではない。足も首も手先も腰も。何もかもが動かない。
正しくは動かないのではない、抗えないのであった。
先ほど砕いた刃と土。
それが紐のような物へ変形し、まるで未知の物質になったかのようにロマネスクの全身を拘束していたのだ。
( ・∀・)「僕の勝ちでいいでしょうか?」
微動だに出来ないロマネスクの首元へ、モララーが人差し指をそっと当てた。
74
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:33:39 ID:VC0QHqzQ0
(; ФωФ)「く……」
もう一度、破れないかと全力を込めた。
けど無駄だった。力が奪われていってしまうかのごとく、ピクリともしない。
魔術師らしい、細身の体がすぐ傍にあるのに……それには決して届かないのだ。
(; ФωФ)「……まったく、お主とはまともな勝負にならないのである」
ため息をつき、ロマネスクは悔しそうに笑いながら、降参した。
――――。
/ ,' 3「気は済んだかね」
( ФωФ)「はい。ありがとうございました。ご迷惑をかけてしまって申し訳ありません」
小屋に戻り、ロマネスクは礼と謝罪を述べた。
ただのわがままであることは、最初からわかっていたのだから。
/ ,' 3「ちなみにあえて聞くが、勝てたのかの?」
( ФωФ)「いえいえ。一太刀も入りませんでしたよ」
/ ,' 3「ほっほっほっ。相変わらず無敵じゃのモララー君は」
( ・∀・)「いえいえ。ロマネスクさんの身体能力には驚かされました。
まさか、剣を折られるとは思ってなかったので」
(゚、゚トソン(本当にすぐ終わっちゃった……)
談笑している三人を見つつトソンはそう思う。
体感としては、来客二人が来てからの話よりずっと短かった。
見ただけで、かなりの腕前と思えるロマネスク相手に短時間で勝利するなんて……。
75
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:36:14 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「ところで、この場合は処罰は如何様に?」
/ ,' 3「もちろん、無効じゃな。処刑失敗というところかの」
( ФωФ)「この令状も必要ないのである」
先ほどの紙を懐から取り出すロマネスク。
その手から何気なくスカルチノフが紙を奪うと、火の魔法を使って燃やしてしまった。
/ ,' 3「さて、満足したことじゃ。これで帰るとするかの」
( ФωФ)「えぇ。そうしましょう」
スカルチノフが離席しようとしたので、黒騎士は優しく椅子を下げる。
ゆっくりと国王は立ち上がると、モララーを見た。
/ ,' 3「モララー君。ワシは今日、大魔術師モララー=レンデセイバーを捜索しにきた」
( ・∀・)「!」
/ ,' 3「しかし、それも叶わず捜査は失敗。森の中を彷徨うだけでおわりじゃ」
/ ,' 3「もしかしたら、もう二度と会えないかもしれない。会うこともないかもしれない」
/ ,' 3「でも、それでもワシは……今日もどこかで、モララーという青年が世界の為に生きていると」
/ ,' 3「そう確信しておる」
( ・∀・)「……おじい様……」
と、うっかり昔の呼び方をしてしまったモララーが慌てて訂正をしようとした。
76
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:39:48 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「ほっ? まだその呼び方をしてくれるのかね?
すっかり忘れてしまったものかと思っておったんじゃが……」
( ・∀・)「忘れるわけがありませんよ。ただ、歳月が経っていたので……その……」
/ ,' 3「良いのじゃ。時が流れても、場所が離れていても。ワシはキミを家族と思っておる」
( ・∀・)「……はい」
/ ,' 3「寂しくなったら、いつでも来るがよいぞ」
スカルチノフは皺のついた手を伸ばしてモララーの頭を撫でる。
恥ずかしそうに、でも誇らしく青年はそれを受け入れた。
( ФωФ)「そうであった」
小屋を出て、転移魔法で王都まで送ると決めた時だった。
( ФωФ)「モララー殿。吾輩の息子のことである」
( ・∀・)「ブーン君ですか?」
( ФωФ)「うむ。あの子は本物の戦を知らない。
強くなろうと一生懸命なのは良いが、まだ心が未熟なのである」
( ・∀・)「……そうでしょうか?」
( ФωФ)「これからも、ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたロマネスク。
スカルチノフにも再度お礼を言い、モララーは転移魔法を発動し二人の恩人を見送った。
77
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:42:26 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚トソン「何だか、嵐のような方々でしたね」
( ・∀・)「そうだね」
時分は既に夕方だった。
伸びた草地が、さらさらと風でなびいていく。
日中の熱は既に沈静化を始めており、涼やかな風が体を打った。
(; ^ω^)「あ、あのー……」
( ・∀・)「おや、キミたち一体どこに居たんだい?」
小屋の影から、子ども達が出てきた。
何か割り込んではいけなさそうな空気だったので、ずっと自重して隠れていたのだ。
(´・ω・‘)「結構前からここに居たんですけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「具体的に言うのならば、国王様がいらっしゃった辺りから」
(*゚∀゚)「いやービックリしたわ。ホライゾネル隊長も生で見たの初めてだったし!
更にスカルチノフ国王だぜ? 焦ったわー!!」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「どうしたんだい?」
やっと普段通りの声で話せると興奮している子ども達の中で、ブーン一人だけしょんぼりしていた。
( ^ω^)「あの、父ちゃんとの戦いも見ていたんですお」
( ・∀・)「そうなんだ」
78
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:45:32 ID:VC0QHqzQ0
(; ^ω^)「……なんというか、少しでも父ちゃんに近づいたと思ってたんですけど……
思い上がりでしたお。全然雲の上でしたお」
( ・∀・)「……」
( ^ω^)「何だか、自分が恥ずかしいですお。勝手に知った気になっていたんですお。
もっともっと修行して、強くなりたいと思ったんですお」
( ・∀・)「ブーン君」
( ^ω^)「はい?」
( ・∀・)「僕は、キミが未熟だなんて思っていないよ」
( ^ω^)「え?」
( -∀-)「あの戦いの中で、それだけの実力を見極められて、尚且つ意気消沈せずに
更に高みを目指そうとしているキミが、未熟なんてことはない」
( ・∀・)「もっと自信を持っていいよ。キミは強いんだから」
(* ^ω^)「そ、そうですかお? モララーさんに褒められるなんて……とっても嬉しいですお!」
照れくさそうに笑う少年。
後ろで楽しげに話す少年少女。
本当は、教えられた僕自身だったんだ。
彼らと出会い、様々な出来事を経験することで……僕はおじい様やロマネスクさんと討論することができた。
もしも、大戦後何もなく独りで生きていたら……きっと今頃王都で偉そうに指図をしていることだろう。
79
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:47:52 ID:VC0QHqzQ0
本当に、本当に。
キミたちと出会えて、良かった。
ありがとう。
――――。
時刻も時刻ということで、そろそろお開きとなった。
面倒事に巻き込んですまない、と謝ってからモララー達は子どもを見送った。
(゚、゚トソン「あの」
小屋に戻り、一息つこうと椅子に座った時だった。
トソンは立ったまま入り口のところでモララーに声をかけた。
(゚、゚トソン「……正直に聞いて良いですか?」
( ・∀・)「何でしょうか?」
(゚、゚トソン「ここで生活するより、王都で過ごされた方がずっと有意義だと思います」
( ・∀・)「そうだね」
(゚、゚トソン「経済力、権力。共に揃っているなら、無魔法野菜の栽培など一瞬で叶う夢ですよね」
( ・∀・)「かもね」
(゚、゚トソン「おかしいじゃないですか。何でも出来るのに、何でそれほどまで自己犠牲が出来るんですか!?」
80
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:50:50 ID:VC0QHqzQ0
( -∀-)「……」
トソンの質問は、ずっと前から抱いていたものだった。
暗殺を企てたあの馬小屋での夜。その精神の崇高さに打ちひしがれ、彼女はモララーと生きていくと決めた。
けど、その根源は一体なんなのか。それがさっぱりわからない。
( ・∀・)「……そうだね。以前の僕なら、こう答えるよ」
( ・∀・)「それが僕の罪滅ぼしだから。権力など使わず、ただ一人の人間として世界に抗いたいから」
( ・∀・)「こんな感じだろうね」
(゚、゚トソン「……では、今は違うんですか?」
( ・∀・)「うん。違う。全然違うよ」
(゚、゚トソン「……それは?」
モララーは立ち上がり、そしてトソンの正面に立ち。
恥ずかしそうに、けれど真剣に。
言った。
( ・∀・)「キミと居たいから」
(゚、゚トソン「へ?」
( -∀-)「優雅に暮らすより、ここで気兼ねなくキミと過ごしたい。
自分の心で決めた女性と、これからもずっと生きていきたい」
( ・∀・)「それが実現できないならば、僕は富も権力もいらない。だから、断ったんだ」
81
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:53:33 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚*トソン「あ、え……と……」
( ・∀・)「……ダメかな?」
( 、 *トソン「…………ダメなわけがないです」
(* -∀-)「……良かった」
( ・∀・)
(゚、゚トソン
思わず安堵してしまい。ふと見詰め合う二人。
どちらかが何かを言い出すわけでもなく。でも、何か間の悪そうに。
じっと見つめあい。そして、少しずつ距離を詰めていき
息すらかかってしまいそうなほど近くに寄っていた。
( ・∀・) (゚、゚トソン
ガチャ (*゚∀゚)「ちょいとゴメンなー! 忘れもん取りにきたz」
82
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:56:16 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)(゚、゚トソン
( ・∀・ )( ゚、゚トソン
(*゚∀゚)
(*゚∀゚*)
83
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:59:12 ID:VC0QHqzQ0
(゚∀゚*)「みんなぁあああ!!! モララー兄ちゃんとトソン姉ちゃんがチューしてっぞぉおおおお!!!」
(* ^ω^)「な、なんだってーーー!!!??」
ξ*゚⊿゚)ξ「ちょ、まだ夜には早いわよ!?」
(*´・ω・‘)「き、キミたち! あ、あわわ慌て過ぎでしょ? 何をどどど動揺してんだい?」
(* ・∀・)「ちょ、ちょっとちょっと! な、何で? え?」
(*゚∀゚)「や、だから忘れ物取りにきたんだって」
(* ^ω^)「いやー。しかし遂にですかお。待ち焦がれましたお。
二人とも何かそういうの鈍チンだから、心配してたんですお」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、あんたも大概だけどね」
( ^ω^)「? どういうことだお」
ξ-⊿-)ξ「そういうことよ」
(´・ω・‘)「ともあれ、お邪魔してすみませんでした」
( 、 *トソン「いえ……まぁ……」
(*゚∀゚)「で? 結局二人はどういう関係になったわけ?」
( ・∀・)「そういう関係だよ」
( ^ω^)「おー。マジですかお!」
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさんも、もちろんそれでいいんですよね?」
(゚、゚*トソン「……うん」
84
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:01:32 ID:VC0QHqzQ0
(´・ω・‘)「尚更、ボク達はお邪魔みたいだね。さっさと帰ろうか」
用事を済ませ、今度こそとモララーはしっかり転移魔法を使って子どもたちを家に送った。
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「トソンさん」
(゚、゚トソン「はい」
( ・∀・)「僕は、世界中を救うなんて力は持ってない」
( ・∀・)「でも、それでも。僕はこの目に見える小さな幸せだけは。何があっても守っていくよ」
( ・∀・)「だから、これからも一緒に居てくれるかな?」
(゚、゚*トソン「……勿論ですよ。私も、そうしたいです。」
(* ・∀・)「じゃ、改めて。不束ものですが今後とも、よろしくね」
(^、^*トソン「はい! こちらこそ!」
扉を閉じ、二人はぼんやりと明かりの灯った小屋へと入っていった。
85
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:02:45 ID:VC0QHqzQ0
それから
世界最強の魔術師モララー=レンデセイバーは
小さな幸せを生涯、守り続けていったそうだ。
その人里離れた山奥の小屋では
双つの肩が、いつも楽しげに寄り添っていたという。
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
完
86
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:05:14 ID:VC0QHqzQ0
というわけでおしまいです。
完結まで長々とかかってしまいすみませんでした。
前回はまだ続けられるかと思いましたが、今回は本当に完結です。続きはないです。
お付き合い頂いた方々に厚く御礼申し上げます。
連載中のall for〜の方も出来るだけ早く投稿していきたいと思います。
87
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 23:18:02 ID:htD3oa8.0
乙乙
続きが読めるとは思ってなかったんで、復活は嬉しかったよ
お疲れさんす
88
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 23:31:26 ID:Ky/Fncb60
乙
モララーさん流石やでぇ
89
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 00:29:55 ID:4vBKmxtI0
乙です
90
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 01:22:39 ID:rF.ASPZ60
乙
ロマネスクって聖騎士じゃなかったっけ
91
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 01:36:39 ID:V4WD5D5w0
……あ、本当ですね
致命的すぎる。全部書き直したいレベル!!
脳内保管でオネシャス! 黒騎士の部分は聖騎士で!!
92
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 01:51:30 ID:V4WD5D5w0
作者が全て勘違いしてるなんて恥ずかしいですな。
鎧も黒で統一させてるってことは、完璧にやっちまってます。
それらの記述だけ、再度書き直したい。悔しい。というか情けない!!
93
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 03:07:48 ID:AQhY5JyMO
作者が復帰してから読みはじめたので
他の方とは違い自分のなかでは起承転結すぐだった
(゚、゚トソンのメインもしくはヒロインのやつはうるうるさせるね
94
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 06:13:35 ID:a39CYh3.O
乙乙
楽しかった
95
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 08:48:01 ID:Ed/V319MO
最初から最後まで楽しく読めたよ!
何より完結させてくれたことが本当に嬉しい
乙でした
96
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 08:57:22 ID:yuv0NXOQ0
乙!乙乙!
97
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 09:32:07 ID:V4WD5D5w0
/ ,' 3「久方ぶりじゃのう、モララーくん」
枯れた喉から発されたのは、柔らかくも気高さを感じさせる言葉。
懐旧のこもったその言葉にはどこか優しさも覚える。
(; ・∀・)「何故……こちらが……?」
/ ,' 3「まぁ、それは追々話すとしよう。立ち話もなんじゃ、キミさえよければ上がらせて頂きたいのじゃが」
ドアノブを手にしたまま、半身になってモララーは対応していた。
その余りの不敬さに、モララーは自分を恥じると同時に謝罪の言葉を紡ぐ。
(; ・∀・)「し、失礼しました。どうぞ、何分窮屈な場所でございますが……」
/ ,' 3「そこまでかしこまらなくて結構じゃよ。
ワシはキミに、国王と匹敵するほどの位、大魔術師の称号を捧げたつもりじゃ。
昔のように、盟友(とも)として接してくれればよいぞ」
ほっほっほっ、とスカルチノフ国王は、嫌味さを感じさせない笑いでモララーを許した。
いや、元より不敬などとは、彼は思ってもいない。
立場上、その厳しさを見せることはあれ、平時の彼は王ではなく一人の老人なのだ。
( ・∀・)「……ありがとうございます。では、改めて。いらっしゃいませ」
/ ,' 3「うむ。お、そうじゃ。ロマネスクくん、キミも入りなさい」
( ФωФ)「ハッ!」
キレのある返事と共に、扉の影からヌッと大男が出てきた。
聖騎士に与えられる、金の装飾が入った白銀の全身鎧を着こんでいる。背にはVIP大陸の紋章が刻まれたマントも着用していた。
背中には身の丈ほどもある大剣を携えた彼は、有事のロマネスク・ホライゾネルに他ならない。
98
:
名も無きAAのようです
:2012/07/31(火) 19:08:38 ID:0ATSMtLAO
結局電撃の選考どうなったんだ?
99
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/31(火) 19:34:23 ID:NvoWlxrU0
>>98
結局、落ちました。でも講評をもらえたので嬉しかったです。
ストーリーはつまらんけど、キャラクターが活き活きしてるね、と何ともいえない評価でした。
プロの道は険しいです。
100
:
名も無きAAのようです
:2012/08/01(水) 00:58:01 ID:WjAIrc2w0
何次まで進んだの?
101
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/08/02(木) 16:20:24 ID:OLgq5H/U0
ブログの方再開したので、そちらで色々と報告してます。
よろしければ、ご覧ください。
102
:
名も無きAAのようです
:2012/08/04(土) 23:21:51 ID:g0oCRYUUO
面白かった 乙
ブーンの美肌の秘訣は?
103
:
名も無きAAのようです
:2012/08/05(日) 03:18:25 ID:XA0OCOCwO
うわああああああまさか帰ってくるとは思わんかったああああああああああ
超面白かったよおおおおおおモララー末永く爆発しろおおおおおおおおおおおおお乙うううう
104
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/08/05(日) 13:04:12 ID:eHES3fEs0
>>102
モララーさんの新鮮なお野菜パワーですね。
思っていたより、待っていたよーという意見が多くてびっくりしてます。
逃亡だけは、ダメ、絶対と改めて思いました。ご愛読ありがとうございました。
105
:
名も無きAAのようです
:2014/10/23(木) 02:27:49 ID:q1I7r/b20
おつ
106
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:46:59 ID:aUR6lmzc0
こんばんは。
作者です。トリップをうっかり喪失してしまったのですが本人です。
少しアイデアが浮かんだので、今から番外編を投下します。
8年ぶりなので、色々つたない部分ありますが読んでいただけると幸いです。
それでは、始めます。
107
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:47:54 ID:aUR6lmzc0
(;・∀・)「本当に大丈夫?」
(゚、゚トソン「大丈夫ですって。何度も言っているじゃないですか」
(;-∀-)「でも、もしも本当にそうだったら……。」
ε=(゚、゚トソン「もう。なんで当事者の私より、モララーさんの方が心配してるんですか」
(:・∀・)「と、言われても……。僕だって医者じゃないし」
(-、-トソン「……わかりました。では、明日。ちゃんと病院へ行きます」
(゚、゚トソン「だから、ちゃんと。安全に連れて行ってください。ね?」
(;・∀・)「う、うん。わかったよ」
番外編「三日月の涙」 前編
108
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:48:44 ID:aUR6lmzc0
( ・∀・)「……」
白い雪。
室温との差で曇った硝子越しに、モララーは外を眺める。
手にはマグカップが握られているが、熱さは既にない。
しんしんと降り積もる氷の結晶群を、ぼんやりと見つめていた。
(゚、゚トソン「……まだでしょうかねぇ」
キッチンの前に椅子を置いて、同じく座っているトソンがぽつりと呟く。
彼女の持つ、陶器の湯飲みもすっかり冷めてしまっていた。
時計のない部屋。秒針を刻む規則的な音すらも聞こえない。
暖炉からときおり薪が爆ぜて、一瞬だけ空間をよぎる。
それ以外のものは、なにもない。
二人の呼吸どころか、心臓の鼓動すら聞こえそうな静寂。
( ・∀・)「……来た」
遠くで微力な波動を察知したモララーが、小さく言う。
(゚、゚;トソン「は、はい!」
それを合図に、トソンはパタパタと準備を始める。
モララーもその手伝いをするため、腰を上げた。
109
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:50:01 ID:aUR6lmzc0
…………数分後。
満足の出来る状態に仕上がった二人が、顔を見合わせたと同時だった。
(*^ω^)「モララーさん! 僕、やりましたおーー!!」
元気よく、ノックもせず、百点の笑顔で。
ブーン=ホライゾネルが、隠居小屋へと入ってきた。
手には、丸められた紙を持っている。
( ・∀・)「やあ、いらっしゃい。ブーン君」
(゚、゚トソン「いらっしゃい。あらあら、ほっぺに雪ついてるよ」
無作法な少年を二人はにこやかな顔で、迎え入れた。
礼儀なんてどうだっていい。
それぐらい、今日は彼にとって嬉しい日なのだから。
ξ#゚⊿゚)ξ「もう! 一人で勝手に行くな、って言ったじゃないの!」
(´・ω・`)「まあまあ。今更、そんなこと無駄でしょ」
(*゚∀゚)「おーす、モララー兄ちゃん、トソン姉ちゃん。お邪魔しまーす!」
ブーンの後に、遅れてやってきた少年少女。
名門と言われるVIP国立闘技学校の制服の上に、厚手のコートを着ているのが二人。
ごく一般の学校制服の少女が一人。
ξ゚⊿゚)ξ「とと。お邪魔します」
礼を欠いたのに気づき、慌てて名門校の少女が頭を下げる。
長いまつ毛、すっと通った鼻に、薄い唇。
寒さでやや紅色になった頬は、本来は透き通るぐらい白い。
眉目秀麗な彼女の名は、ツン=デ=ジェレイト。
細く繊細な手には、ブーンと同じ巻紙が握られていた。
110
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:51:09 ID:aUR6lmzc0
(´・ω・`)「こんにちは、お邪魔します」
パチンと指を鳴らして、部屋に入ってきた下眉の少年はショボン=ノーファルだ。
体に降りかかる雪を、自動で防ぐ風魔法を解いたのだろう。
室内の温度を確認すると、静かにコートを脱ぎ始めている。
(*゚∀゚)「見てみー! オレも無事、ゲットできたぜ!」
他の三人より、体格も服装もやや劣る少女。
ツー=チェイルは、モララーにとって初めての下界での友人だ。
人体に害の少ないが、コストがかかる無魔法野菜を率先して斡旋してくれた
最初の商売仲間でもある。
まだあどけなさが残るが、彼女もこれはこれで立派な一人前なのである。
その証である、とある巻き紙を見せびらかしてきたのだ。
( ・∀・)「それは良かった。勉強の成果、出せたんだね」
(*゚∀゚)「なーに言ってんだよ! 兄ちゃんや、みんなが教えてくれたからだろ?」
(゚、゚トソン「お店番やりながらこっちにも来てるんだもの。そんな中で、ちゃんと出来たのはとっても偉いよ」
(*-∀゚)「へへっ、ありがとな。トソン姉ちゃん!」
( ・∀・)「……聞くまでもないとは思うけど。全員……かな?」
ツンは頷き、ショボンもコートから紙を取り出す。
問題ないみたいだ。
111
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:52:23 ID:aUR6lmzc0
――――では。
( ・∀・)「みんな、卒業に試験の合格、おめでとう!」
(゚、゚トソン「おめでとー」
トソンが手に持っていた三角錐の筒を弾く。
中に込められた、微小な魔法が発動し、破裂した。
お祝い用の色とりどりの細長い紙は、机の上の御馳走に被らないよう、放射線を描いて落ちていく。
そう、今日は少年少女らにとって大切な日なのだ。
一般学校のツーは卒業の日。
名門校のブーン達は、それに加えて傭兵テストの合格発表日。
両親への報告も軽々に済ませ、彼らはどうしても報告したい恩人の下へ駆け込んだわけである。
お祝いの言葉をもらうと、各々が料理に手を出し、甘い飲み物を口にしていく。
場も温まってきたところで、徐にブーンが立ち上がると、モララーの前で止まった。
( ^ω^)「ふふん! 見てくださいお! 僕、なんと……五位で合格ですお!」
手に持っていた用紙……傭兵テストの合格通知書をブーンは広げる。
消して色あせない魔法のインクで書かれた文章の最後に、彼の名と
彼が、今年の傭兵テスト騎士コースのトップクラスである証の押印がされていた。
( ・∀・)「それはそれは。ロマネスクさんも喜ぶだろうなぁ」
(* ^ω^)「へっへっへー」
112
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:53:38 ID:aUR6lmzc0
嬉しそうに照れながら、鼻の下をブーンがこする。
と、その横から被さるようにしてショボンが出てきた。
手にした証書は、ブーンの持っているものとほぼ同じ。
文言が、魔術師コースとなっているだけだ。
つまり。
(´・ω・`)「僕は三位でしたよ」
( ・∀・)「ショボン君も、よく頑張ったね。ノーファル家は安泰だ。」
(゚、゚トソン「はー……。知ってはいたけど、みんな優秀なんだねぇ……」
別段成績の良くなかったトソンが、感嘆の声を漏らす。
そんな自慢気な二人をよそに、机に肘を置いて不満そうな人物一人。
(*゚∀゚)「お? そーいや、ツンはどうだったんだ?」
至極平凡な成績の卒業証書を、胸ポケットにしまいこんでいるツーが
ごちそうの肉料理をフォークに刺しながら問う。
ξ#-⊿-)ξ「聞かないでよ、ツーちゃん」
(*゚∀゚)「なんでだ? ツンも結構すげぇって聞いてるけど?」
ξ#゚⊿゚)ξ「そうだけど!」
( ^ω^)(……否定しないのがツンらしいお)
113
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:54:33 ID:aUR6lmzc0
(゚、゚トソン「成績は順位が出てるんだよね? 何位だったの?」
優しくトソンが尋ねると、ツンは嫌そうな顔をして証書を見せた。
そこには、『五位』の意味と取れる内容が書かれていたのだ。
(*゚∀゚)「おぉ、五番? すげーじゃん!」
ξ-⊿-)ξ=3「私は一位合格するつもりで、これまで頑張ってきたのよ。
結果がこれじゃ、納得いかないわ」
(´・ω・`)「実技試験では負けてたんだけどね。筆記試験の方での差が大きくて
それで、ボクの方が勝ってただけさ」
ξ#゚⊿゚)ξ「わざわざ解説しないでよ! 大体、その筆記試験でも
最後の大問の計算ミスなだけじゃない!」
(´・ω・`)「そのミスが、こうして結果として出ているんだから
仕方ないだろう?」
ξ#゚⊿゚)ξ「ムキー! もう一回やったら、絶対私が勝つんだから!」
(´-ω-`)「試験も実戦も同じだよ。次はないもんさ」
ξ#゚⊿゚)ξm9て「部隊に入ったら、絶対遅れはとらないからね!
今のうち、せいぜい優越感に浸ってるといいわ!」
(´・ω・`)「ははは。受けて立つよ」
( ^ω^)「おっおっww 二人とも、元気だおねぇ」
114
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:55:57 ID:aUR6lmzc0
なんてことない、いつものやり取り。
同じコースで、同じくらいの実力者の二人。
よくいがみあって、勝負をけしかけ、モララーに困惑されながらも審判を求める。
二人を、ブーンは穏やかに、ツーが能天気に見つめる。
楽しそうで、優しい。そんな子供たちが好きなトソンは、傍らでほほ笑む。
――いつもと、なにも変わらない風景。
(*゚∀゚)「そっかー。三人とも、春から傭兵部隊だもんなー」
柔らかくて温かい空気が、屋外の温度まで下がったような気がした。
悪気のない、当たり前に出てきた言葉。
それは……ある一つの事実を指し示すことになるから。
(゚、゚トソン「……ということは、もう今まで見たいには遊びに来れなくなっちゃうね」
115
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:57:16 ID:aUR6lmzc0
固まった空気を、トソンは少しだけ間をおいてから切り裂いた。
最初からわかっていたように、諦めを含めた物言い。
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(*゚∀゚)「あ、勿論オレはそのまま家を継ぐから、いつも通りだぜ!」
( -∀-)「そうだね。これからも、ご贔屓にさせてもらうよ」
淹れなおしたアージンのカップを、机に置きながら言う。
( ・∀・)「……」
そして三人を一瞥した。
優秀な彼らだ。
これから部隊に入り、国を守る仕事を始めれば忙しくなるだろう。
……何か。
何かしてあげられないだろうか。
116
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 20:58:48 ID:aUR6lmzc0
地位や名誉の問題じゃない。
この世界に生きている、一人の大人として何か。
少しでも、彼らにしてあげられることは……。
( ・∀・)「……!」
閃きと同時に、拳を掌に軽く叩きつける。
音に気付いた子供たちが、視線をモララーへ集めた。
それを確認すると、いつものような優しい笑顔で、彼は言う。
( ・∀・)「記念に、旅行でも行こうか」
(;´・ω・`)「……え?」
ξ;゚⊿゚)ξ「りょ……」
(* ^ω^)(*゚∀゚)「旅行------!!??」
117
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 21:00:16 ID:aUR6lmzc0
――――――。
大きな雲が、色の濃い青空を泳いでいる。
なだらかではない、積み重なることで生成される入道雲。
輪郭をくっきりと浮かび上がらせる強い日差し。
それは、朱炎の太陽。色濃く枝葉の影を作る、強烈な光を生成している。
耳に届くのは、波の音。
引いては寄せる、浅葱色の水。
陸地付近は透明で、砂の奥には貝殻や石が輝くように反射してまるで宝石のよう。
街では感じられない、べたつく風。
潮の香りを乗せる気流が、乾いた砂を巻き上げていく。
VIP大陸において、今の季節は冬真っ盛りだ。
モララーの住む山奥でなくても、雪は積り、息は白く、手先は赤ばみ、体は震える。
だが、今。
少年少女の眼前に広がっているのは、真逆……『夏』だったのだ。
118
:
名も無きAAのようです
:2020/11/14(土) 21:01:14 ID:aUR6lmzc0
(*゚∀゚)(* ^ω^)「海だーーーーー!!!」
にぎやかし担当の二人は、さっそくエメラルドグリーンの海水へと飛び込んでいく。
耐水性能のある生地で編まれた、簡素な下着のような格好のままで、である。
(* ^ω^)「ぷえー! ホントにしょっぱいお!」
(*゚∀゚)「うぉおお!? すげえ、めっちゃ泳ぎやすい! 浮かぶ! 浮かぶぞ、ブーン!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた達、準備体操くらいしたら? 足攣っても知らないわよ」
どうせ言っても聞かないだろうが、という含みをこめてツンが、浮き輪を片手に声をかける。
彼女はセパレートタイプのフリル付きの水着を着用していた。
夏の日差しに照らされると、その白い肌がより一層まぶしく見える。
( ^ω^)「だいじょーぶだお! ツンも早く来るおー!!」
(*゚∀゚)「来ねえなら無理やりでも行くぞオラーー!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ!? ちょっと、ツーちゃんやめ……キャーー!!」
無理やりツーに手を引かれ、ツンが崩れるように海に飛び込む。
自慢のツインテールをびしょ濡れにしながら、怒りつつも笑顔で反撃した。
ξ*゚⊿゚)ξ「こんのー! くらいなさい!!」
ツンが手に魔力を込めて、波を操った。
騎士の二人には絶対作り出せない形の水を、二人にぶつける。
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