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タブンネ刑務所14

1名無しさん:2017/05/06(土) 00:36:57 ID:v4JFFnrY0
ここはタブンネさんをいじめたり殺したりするスレです
ルールを守って楽しくタブンネをいじめましょう。

76ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:05:48 ID:tYPZp40w0
二日目は初日にも増して客足が多く、開始20分前には会場前に長蛇の列が出来る程だ
社員たちの苦労もそれに伴って増える… かと思いきやそうでもない
他の部門から助っ人が手助けに入ってくれてよりむしろ昨日より余裕がある感じだ

「かーわいいー!」「餌だよ〜」「こっちおいで〜」
「ミィミィ!」「ミーッミ!」「ミィミ、ミィミ!」

場内の子タブンネ達も跳んだり跳ねたり、鳴いたり擦りついたりと餌をくれアピールに励み
大喜びで貰った餌を頬張る姿は客たちを大いに喜ばせた
人懐っこい子タブンネは客に抱っこされながら餌を食べたりもしていた
一緒に遊んだ子タブンネとの別れを惜しみ、連れて帰るとダダをこねる子供
可愛らしい小さな家族を迎え入れ、微笑みを隠せない老夫婦
カップルが子タブンネを可愛がる姿は、まるで本当の家族のようだ
滑稽な腰ふりダンスを披露し、餌のおひねりを大量に貰い大喜びの子タブンネ姉妹
新しいお母さんを見つけた甘えん坊の子タブンネ
せっかく貰った餌を横取りされて客の女の子に慰められる気の弱い子タブンネ
餌が欲しいのに怖くて自分から人間に近づけず、片隅でミィミィと泣き続ける小さな子タブンネの兄弟
会場のがやがやとした雑音の中には悲喜こもごもの人とタブンネの声が混ざり合っていた

「チィチィ… チィチィ…」

さて、会場に移された小ベビンネはどうしてるかというと、自分が置かれている状況に怯え戸惑っていた
チビママンネの暖かい腕の中で眠っていたハズなのに、目を覚ましたら昨日と同じような人ごみの中…
母親と再開し、一緒に過ごしていた時間が夢だったかのように思えるほどの急激な環境の変化だ


「ミィーミ!」「ミーミ!」「ミッミッ!」
「チィィ…」

しかし、その状況は昨日よりか幾分かはマシである
ケージは買い物籠から展示用の水槽に変わり、注意書きのポップは取れないよう結束バンドで頑強に固定された
これで昨日のようにゴミ箱と間違えられることも無いだろう
それに加え、勇者ンネが仲間に声をかけて護衛隊のような物を作り、ケージの周りを守っている
メスの子タブンネは周りを警戒しながらも時折ガラス越しに小ベビンネを慰め、
オスの子タブンネは人間が近寄ると気を引いて水槽に近づけないようにしていた
人出が増えて余裕ができた女子社員もマメに様子を見に来る事が出来
皆の助けによって小ベビンネはチビママンネが傍に居なくてもでもいくらか安寧を保っている
あくまでも昨日に比べたらの話で、常に泣きそうになってる状態ではあるが

77ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:06:51 ID:tYPZp40w0
『ご来店のお客様に連絡いたします
 本日、午後1時より、タブンネの赤ちゃんの授乳体験を開催いたします
 まるで天使のように愛らしい赤ちゃんタブンネたちを、この機会にぜひともご覧ください』

大したトラブルもなく社員たちが接客に追われているうちに、授乳体験ショーの開始を告げる放送が流れた
すなわち、チビママンネの手からベビンネが奪われる時がやってきたのだ

「…私が行きます」
「え?、大丈夫ざんすか」

女子社員は自らベビンネを連れてくると申し出た
気が利く社員は面倒な客の質問責めにあっていて動けない状況だったのだ
ざんす男は心配したが、女子社員は覚悟を決めていた
あのチビママンネに憎まれようが嫌われようが、
優しいお客さんの下で育ててもらう以外にベビ達が生き延びられる道は無いからである

「フーッ、フゥ…」

準備室の中のチビママンネは気が利く社員によって猿轡を噛まされ、足を手拭いで縛られていた
昨日の反省から、両手は自由にしてベビの世話ができるようにしている
あの最後に残った乳首は赤く腫れ、母乳はベビたちに吸い尽くされていた
しかし8匹のベビたちの空腹を満たす事はできていない

「フ、フゥ、フゥ!」

女子社員の顔を見たチビママンネは嬉しそうな顔をして塞がれた口でフゥフゥと鳴いた
この拘束から解放してくれると思っているからである
だが、女子社員は何も言わず目も合わせず、
部屋の片隅に置いてあるあのショッピングカートの乳母車を持ち出しベビーサークルの柵に横付けした

「フゥ…?」
チビママンネは覚えていた。怖い人間がベビを連れ去るときにあの道具を使う事を
そして困惑している。なぜ優しい人間があれを使おうとしているのかと

「ベビちゃんたち、おいで ミルクの時間だよ」
「チィ♪」「チチー♪」「チッチ!チッチ♪」
「フッ?!」

女子社員は柵の前でしゃがみながら淡々とした口調でベビを呼び寄せた
「ミルク」という単語を覚えていたのだろう、ベビ達は嬉しそうに女子社員の下に集まって行く
そして一番早く近づいてきたベビンネを抱き上げて籠に入れた

「フッ、フッ、フゥゥーー!!」

最初のベビンネが乳母車に入れられた瞬間、チビママンネはハイハイで女子社員へと向かっていった
溢れる涙を抑えることもせず、涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして
その様は身体が大きくはあるがベビ同士の競り合いに負けて母親に甘えんとする小ベビンネそのものだ
やはり血のつながった親子である

そんな哀れなチビママンネも、抱き上げたベビンネが時折振り向いて母親を気にするのも
女子社員はなるべく見ないように、気にしないようにして心を押し殺しながら4匹のベビを載せていく

78ショーケースの裏側で:2017/06/28(水) 00:09:52 ID:tYPZp40w0
「フフィーーーーーーッ!!」

ベビーサークルの金策にしがみ付き、遠ざかる女子社員の背中に向かって叫ぶチビママンネ
それは怒りの雄叫びではなく、悲哀に満ちた懇願の叫びだった
まだ怒りをぶつけられた方が女子社員は気持ちが楽だっただろう
動揺から一度はぴたりと足を止めたものの、チビママンネを振り返ることもせず再び歩き出し
ベビが乗ったカートを押しながら部屋を出て行ってしまった

「チィチィ!」「チーチ…」

カートの上のベビたちはミルクへの期待もありながら、不安の色を見せ始めていた
もちろんみんなチビママンネが泣いてるのを気にしていたのだが
ベビのうちの一匹だけは女子社員の泣きそうになっている顔を、憐れむようにじっと見上げていた

「フーッ、フゥゥゥゥ!!フゥゥゥーッ!!! フィユゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

部屋に残されたチビママンネは4匹のベビたちを抱きしめながら激しく慟哭した
ベビを奪われた事だけではなく、女子社員に裏切られた事への悲しさに
信じきっていた優しい人間にベビを奪い去られるだなんて思ってもみなかった
今朝罪の意識に苦しんでいたのは何だったのか?昨日暴力から庇ってくれたのは何だったのか?
もう人間の事は何もわからず、何も信じられず、ただ嘆き苦しみ泣き叫ぶばかりであった

「ヂィィ…」「フィィ…」

選ばれなかったベビの方もチビママンネの感情が伝わってきて自分も悲しくなり、泣く寸前であった
空腹なのにミルクが貰えなかった悲しみもあったが
ちなみに最後に残ったベビの内約はチビママンネの実子が2匹、お隣さんのベビが1匹、第二飼育室の大ベビが1匹である

「あっ、チカちゃんごめん。機材の準備は終わったから早速始めてよ」
「…はい」

女子社員は胸が張り裂けそうな罪悪感を堪え、笑顔を取りつくろって司会を始める
授乳体験ショーは秘めた悲しみを知る由もなく盛り上がり、拍手と笑い声の中で順調に終わり
出演したベビたちは30分もしないうちに4匹とも売れていった
これは女子社員が慣れない営業トークで頑張ったからでもある

「フゥゥ〜ン!フゥゥ〜ン!!」

4匹のベビが全て売れていった後、準備室にはチビママンネの息が詰まった泣き声が響いていた
ベビーサークルの金柵を血が出る程に握りしめ、ガクガクと体を震わせている
連れ去られたベビの声が遠ざかっていくというのに、
止めることも追いすがることも、お別れの挨拶すらもできなかった
残ったベビたちは空腹でチィチィとお乳をねだり始めたが、今飲ませても一吸いで終わってしまうのは自分がよくわかっている
ベビたちに何もしてあげられない無力さに、自分もベビと同じように泣きじゃくるしかないのだ

79名無しさん:2017/06/28(水) 02:08:56 ID:z853ZngA0
更新乙ンネ
チビママンネざまああああwwwwww

80名無しさん:2017/06/28(水) 21:35:37 ID:2/Wt6G/Y0
ナイス!
小ベビンネは当分売れそうにないが、
その分苦しみも長く続くんだな

81名無しさん:2017/06/28(水) 23:58:57 ID:CncU5Viw0
勇者ンネの護衛隊も長くもちそうにない、護衛自体が売られて最後に小ベビンネが残りそう

82ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:21:46 ID:lwVIkV220
午後二時、会場に異様な客がやってきた
フリルがついた黒紫色の長いスカートのワンピースに、それと似たような色の無造作なウェーブがかかった長い髪
常に見開いたような目をした背が高い薄気味悪い女だ
その女は子タブンネに餌をあげる事もなく、ただきょろきょろと何かを探しながら会場をうろついている
異様な様に子タブンネたちは女を避けていき、場内の社員達は何かしでかすのではないかと警戒していた
女は闇雲に会場を歩きまわった後、ある場所でぴたりと歩みを止めた
小ベビンネのケージの前だ

「ミ、ミィ」「ミ、ミィ〜ン ミィ〜ン…」「ミッミッ!ミッミッ!」

気を引こうとしたり威嚇したりと、子ベビンネ警備隊は怖い女を小ベビンネに近づけまいと頑張っているが
女は気にする様子もなくしゃがみこんで注意書きと小ベビンネを交互に見比べている
自分を見下ろす紫の瞳に小ベビンネは恐怖し、声も出せずにケージの隅で丸まって震えていた

「店員さん、ちょっといいかしら…」
「はい、どういたしましたか?」

怖い女は近くでさりげなく見張っていた気が利く社員に声をかけた
不意を突かれたようで少し動揺した気が利く社員だったが、何とか普通に対応できた

「このタブンネ、怖がりってかいてあるけどどのくらい怖がりなのかしら?」
「そうですね、知らない人に触られたら暴れて泣き叫ぶくらいの人見知りで怖がりですね
 正直あまりお勧めできる子ではないです」
「いーえ… ちょうどそういう子を探していたのよ…。触ってもいいかしら?」
「嫌がって騒ぐと思いますが、まあ軽く触れる程度でしたら大丈夫ですよ」

嫌がると言ったにも関わらず怖い女は嬉々として小ベビンネに手を伸ばした
その手は獲物ににじり寄るアーボのようにゆっくりとした嫌らしい動きで小ベビンネに迫る

「フィッ?!フィッ!フィィィッ!!ゥヂーーー!!!」
「ふふふ、いい哭き声だわ…」

小ベビンネは迫りくる手に恐怖して狭いケージの中を必死のハイハイで逃げまどい
追いつかれて指先で触られた瞬間悲鳴をあげた
本来はタブンネが嫌がる行為はルール違反なのだが
止める役の気が利く社員は買ってくれるかもしれないという期待から黙認していた
周りの客たちも変人と関わり合いになりたくないという心理から助けてくれる様子はない
おまけに女子社員は休憩中である。つまり小ベビンネをこの女から救って人間はいないということだ

「キヂーッ!ギヂーッ!ギヂーッ!!」


首の後ろの皮を掴まれ、持ち上げられてしまう小ベビンネ
痛みと恐怖から大声で泣きわめき、股間からはポタポタと尿の滴が落ちる
弱弱しく短い手足を振り回して抵抗らしきこともするが、何の効果も意味も無いのは明らかだ

「このタブンネ買わせていただくわ」
「ありがとうございます。これがそのタブンネの値札になりますので、こちらを場外のレジに…」

小ベビンネの苦しみとは裏腹に、気が利く社員は嬉々として小ベビンネの値段とバーコードが書かれたカードを取り出す
やっと心配事がひとつ片付いたと安堵しているのだ

「ヂィヂィーッ!ヂィヂィーッ!」

この鳴き方、ベビンネが母親に救いを求める時の泣き方である
準備室のチビママンネもこれを聞いて歯噛みして激しく苦悶してることだろう
怖い女も気が利く社員もそんな事知る由もなく、値札を受け取ろうとしたその時

83ショーケースの裏側で:2017/06/29(木) 03:23:43 ID:lwVIkV220
「ミッミッミィーーー!!」
「な、何?」

怖い女が痛みと声に驚いて振り返ると、1匹の子タブンネがペチペチとお尻を叩いていた
勇者ンネである。小ベビンネの危機に居ても立っても居られず攻撃に転じたのだ

「ああっ、すいません。すぐにやめさせますんで」

すぐさま勇者ンネは気が利く社員に両腕を掴まれて持ち上げられたが、その攻撃の意志は折れない
怖い女をキッと睨みつけて、短い脚をバタバタと動かし眼前の敵に向かって当たらぬ蹴りを繰り出し続ける

「何?わたしと遊びたいのぉ?」
「ピィィッ!?」

怖い女は小ベビンネをケージに戻し、勇者ンネの眼前にヌッと顔を近づける。鼻と鼻がくっ付きそうな近さだ
眼前に広がる悪意に満ちた不気味な笑顔、見開いた紫の瞳、裂けたようなニヤついた大きな口
人間でも恐ろしいと思われるそれに、子タブンネである勇者ンネは耐えられなかった

「ヒッ!ヒュイッ!ピィッ!ヂュアーーーー!!!」

勇者はンネは一層激しく足をバタつかせた
だがそれは攻撃の意思などではなく、目の前の恐怖から必死に逃れようと足掻く哀れな様だ
両目をぎゅっと瞑り、悲鳴を上げながらもがく様にはもはや勇者の姿はない
その様子に怖い女は口角を上げて嬉しそうにエヘエヘと小さく不気味に笑い
攻撃に参加しようと身構えていた護衛隊の子タブンネたちは唖然として戦意を喪失していた

「やっぱりこっちの子にするわ。渡して頂戴」
「かなり荒れているようですのでお気を付けください」

怖い女は暴れる勇者ンネを蹴りが胸に当たるのも気にせず強引に抱き寄せた
気が利く社員は女の腕の中で暴れて怪我をするのではないかと心配したが
抱かれた瞬間勇者ンネはピタリと大人しくなった
もちろん安心しているのではなく、更なる恐怖で動けなくなっているのだ
その抱き方は赤ちゃんを抱っこするような優しい抱き方だったが、
腕の中の勇者ンネはガチガチと歯を鳴らしながら激しく震えている

「ではこちらの値札でお願いします」
「ありがとう、いい買い物したわ…」

怖い女は値札を受け取った後M勇者ンネを抱いたまま出入り口に向かって歩いて行く
その際、勇者ンネは震えながらも時折ミィミィと通り道のタブンネ達に何かを訴えかけていた
「さよなら、元気でね」「こいつに構わないで」「ぼくは大丈夫だよ」
鳴き声の意味は様々だが、その中に誰かに助けを求める言葉は何一つ無かった
仲間やチビママンネをこの恐怖に巻き込まないようにする勇者ンネの最後の強がり、いや勇気である
場内のタブンネ達は餌を食べることも、客に媚びる事も忘れ
これが今生の別れになるであろう勇者の姿をずっと見つめていた

「こんなに怖がって震えちゃって… 私の心が分かるのねぇ?」
「ミィィ…」

これからの勇者ンネの暮らしはそれはそれは恐ろしいものになるのだろう
だが心配はない。仲間を心配する必要も、守る為に戦う必要も、群れのリーダーの息子として振舞う必要もなく
思う存分恐怖と苦痛に泣き叫べるのだから

84名無しさん:2017/06/29(木) 04:32:44 ID:8zAw2Z9I0
盛り上がってまいりましたw

小ベビ命拾いしたみたいだけど
まだまだ恐怖が足りないよね

85名無しさん:2017/06/29(木) 21:53:29 ID:KLeRMVqE0
いいねぇw できれば勇者ンネの悲惨な生活と末路も書いてほしいものです

86名無しさん:2017/06/29(木) 23:07:15 ID:WBUiYk.c0
勇者・チビママ・小ベビンネの末路は気になるよねw
楽には死なせずゆっくり苦しめてくれると嬉しい!

そして小ベビンネには、紫女を上回る恐怖が待っていてほしい。

87ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:08:49 ID:AxR/HFe.0
その後、特に面白いこともなくあっという間に午後3時、最後の授乳体験ショーの時間だ

「ムフゥゥゥ!!ムフゥゥゥ!!」

今度は気が利く社員がベビを連れていくべく準備室にいるのだが、室内は荒れていた
ベビーサークルが尽く引き倒されて無造作に転がり
敷かれていたペットシートはズタズタに裂かれてて部屋中に散乱していた
チビママンネが怒り狂って暴れたからという事は想像に難くない
たぶんさっきのアレだろうなと気が利く社員はうんざりしながらも自分で納得していた
チビママンネは怒りの表情でフーフーと荒く息を吐いて威嚇を繰り返すが、ベビの姿は見えない
姿が見えないというだけで、気が利く社員は居る所はちゃんと分かっていた
寝床の毛布が不自然に盛り上がりモゴモゴと蠢いているのだから

「それじゃあドレディア、頼むぞ」
「ピチュチュ」
「ムフーーッ!」

目の前にあのドレディアを出されてもチビママンネは怯むことは無かった
自分の後ろのベビの事を想うと、心の底から力が湧いてくる
それが全身に満ち渡り、熱い闘志が漲る。これが愛の力というものだ、
そして愛するベビを守る為、小さなタブンネは大敵に立ち向かっていく。ハイハイで
だがその切なる愛の力も、顔面への眠り粉の直撃で一瞬で闇に沈んでいった

「フィ… フゥ…」

まさか戦うことすら出来ずにベビを奪われるとは…、チビママンネの無念は計り知れない
気が利く社員は悠々と毛布を剥がし、中にいた4匹のベビを回収し
練乳で機嫌を直してからカートの乳母車に載せてドレディアと共に準備室を去っていく
遠ざかる最後のベビたちの楽しそうな声に、チビママンネの閉じた瞳から一筋の涙が流れた

「なにあれ?」「きれーい」「あっ、赤ちゃんだ」「かわいーっ」
「チィ!チィ!」「チィ〜チ♪」「チッチィ〜♪」

ざんす男の案で会場までドレディアに乳母車を押させた所、客の受けは上々だ
ベビンネを世話する優しい森の保母さんか、
森からベビたちを連れて遊びにきたお姫さまにも見えるシチュエーションだ
実際は実母を昏睡させて掠め取ってきた鬼畜なのだが、その可憐な見た目からは何もわかるまい
見物客のの歓声にベビ達も楽しい気持ちになり、呑気にチィチィと可愛さを振りまく
普段は無表情な気が利く社員のドレディアも心なしかうれしそうだ

「兄貴、あのドレディアかなり強そうですぜ…」
「ああ…、どう見てもバトル用のドレディアだな、それもかなり鍛えてる」

客の中にもちらほらとドレディアの強さを見抜くものがいた
このセリフの男二人もそうだ、この男たちはこのイベントで使う子タブンネたちを調達した
あのペットポケモン業者の兄貴分と弟分である
二人とも朝から社長と共にイベントの様子を見に来ていたのだ
…のだが大金が入った直後に巨大デパートに来たもんだから社長がはっちゃけてしまい、
4時間も荷物持ちさせられながら買い物に連れまわされて今に至るというわけだ
そのため二人とも憔悴しきっていてかなりテンションが低い

88ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:12:30 ID:AxR/HFe.0
「ふたりとも!そんなところで見てないで中に入って近くで見ようよ〜」

一方、社長は夏休み中の小学生の如く元気いっぱいである。どこからそんな体力が出てくるのかは乙女の謎だ
三人揃って入場受付を済ませて中に入ると、ざんす男が早足で駆け寄ってきた

「社長さんも社員の皆さんもようこそお越し頂いてありがとうざんすよ
 お陰様でご覧の通りの大盛況ざんす!」
「いえいえ、こちらこそ大量に購入頂いてありがとうございます
 …ところで、授乳体験の方は大丈夫でしたか? 何かトラブルとかございませんでした?」

内心、社長は授乳体験ショーが上手くいくか不安だったのだ
ベビンネも子供も不確定要素の塊、どうしても順調にいくとは思えない

「あー、初回はトラブル続きだったざんすが、2回目3回目は順調そのものだったざんす
 ベビィちゃんたちが思いのほか素直ないい子で助かったざんすよ」

どちらかというよりは素直というよりは単純か楽天的と言ったほうが正しい
感情に敏感な性質が仇となって、ベビンネは好意の感情を向けてくる者に簡単になびいてしまうのだ
もちろん個体差はあり、簡単には心を開かない小ベビンネのような子もいるが

「ミッミ!」「ミーミィ♪」「ミーミ、ミー♪」
「あら、タブンネちゃんたち…」

どんなトラブルかを詳しく聞こうとした所で、社長の周りに5匹ほどの子タブンネが集まってきた
第一飼育室で社長が管理していた子タブンネたちだ
この子タブンネたちにとって社長は地獄のような生活の中、甘いオボンと微笑みと優しい言葉をくれた唯一の人である
そのため、たくさん餌をもらえるようになった今でも顔を覚えていて、そして慕っているのだ
最も、社長はタブンネの個体ごとの顔など覚えてはいないが

「ほらほら、ごはんだよ〜 あわわ、順番順番だよ」
「ミミ〜♪」「ミッミ、ミッミ」「フミィ〜♪」「ミリミィ?」

社長の周りの子タブンネはぞろぞろと増え、20匹近くにに囲まれてる状況となった
子タブンネたちは餌をねだったり足に擦りついて甘えたりと皆社長が大好きな様子だ
そんなタブンネ達に社長は少々窮屈そうにしながらもしゃがんで一匹ずつ手渡しで餌を与えていく

「ふへぇ〜、モテモテざんすね」
「どういう理屈かはよく分からんですけど、社長は子供のタブンネに好かれるタチなんすよ」
「やっぱりちょっとタブンネに似てるからかな?」

弟分がタブンネに似てる発言をした瞬間、社長の餌をやる手がぴたりと止まった
周りの子タブンネたちは恐怖し、ゾゾゾッと一斉に後ずさりして社長から距離を取った

「リマくん、女の子にそんなこと言っちゃあダメだよ…」
「ひっ?!!すいませモガガ…」

社長はおもむろに立ち上がり、謝ろうとする弟分の口に残りの餌を全て突っ込んだ
弟分は冷や汗を流しながらモガモガと苦しんでいる
タブンネは可愛いがぽっちゃりしたイメージがあるので、
女性にタブンネみたいに可愛いなどと迂闊に言うと嫌な思いをされる事があるから注意が必要だ
社長のような最近体重が増加傾向で気にしている女性には特に

「あのバカ思いきり地雷踏み抜きやがって…」
「わ、私も言葉には気をつけるざんすよ」

社長がなんとなくタブンネに似てるという事はざんす男も兄貴分も常々思っていた事で
ざんす男は言わなくて良かったと安堵して、兄貴分は呆れるばかりであった

「ボフフェエ!!」
「フミィ〜ン!」

耐えられなくなった弟分の口から餌の塊が鉄砲水のように噴き出した
その吐き出されて地に落ちたグチャグチャの餌に一匹の子タブンネが駆け寄り、四つん這いになって食べ始める
それは偶然にも、あのざんす男が会社を訪れた際に餌をあげた浅ましいタブンネだった

89ショーケースの裏側で:2017/07/01(土) 01:17:57 ID:AxR/HFe.0
混沌極まる状況だが、ショーが始まると皆そっちに意識が集中し
授乳体験ショーで子供たちが喜んでいるのを見ているうちに社長の機嫌はすっかり治った、
そして終わった後の余韻も消えたときに社長はある事を思い出す
最初のショーで起きたトラブルの詳細をざんす男に聞こうとしていたのだ

「小さいベビィちゃんが触られるのを嫌がっちゃって、ショーに出た子供が泣いちゃったんざんすよ
 何とか代わりのベビィを用意して事なきを得たざんすけどね
 あとは授乳の時哺乳瓶の蓋を外して飲ませた子供がいて…」
「あらら、それは… ところで、その子供を泣かせたという赤ちゃんタブンネは何所に?」
「まだ売れ残ってる筈ざんすよ。あー、あの水槽の中で隔離して販売してるざんすよ
 触っただけで大騒ぎするざんすから正直売れる気がしないざんす」

ざんす男とともに小ベビンネの水槽へ様子を見に行く社長たち
表情や言葉には出してないが、社長は不良品を選別できずに売ってしまったことを後悔し
そして八つ当たり気味に小ベビンネに憤慨しているのだ

「うぇ〜… これは売れないわけだよ〜」
「こりゃ完全に怯えきっちまってますぜ」

社長一行が水槽を覗き込んだ時、小ベビンネはチィとも鳴かずにケージの隅っこで丸くなって震えていた
怖い女のショックは大きく、これでも周りの人間たちから必死に身を隠しているつもりなのだ
護衛隊は既に全滅していた。人間に積極的に構っていったのが災いし売れるのが早かったのである

「この子だったら返品して頂いても大丈夫ですよ」
「ホントざんすか! いや〜良かったざんす。悪いざんすね契約書に返品不可ってあったざんすのに」
「いえいえ、悪いのは私どもの方です。ここまでペットに向かない子が混ざるのはこちらとしても想定外でした
 本来なら選別で弾くべき個体でしたのに気づかずに売ってしまって…」

社長たちが返品について色々と話し合っている所を気になって、女子社員はわりと近くからその様子を見ていた
それに気づいたのは兄貴分である

「おっ、司会をやってたお嬢さんですな、どうかしましたかい?」
「えっ… いえ、あのおちびちゃんを買ってくれるのかなと思って」
「いや、俺たちはここのタブンネたちを納入した会社でね、あのチビを返品する方向で話が進んでるんだ」
「返品!?」

驚いて叫んでしまった女子社員にざんす男と社長が振り向いた
女子社員は失礼なことをしてしまったと焦ったが、
社長がにこやかに笑って軽く挨拶をしたので安心し、思い切って気になることを聞いてみることにした
女子社員が社長に会った第一印象はとても柔和で優しそうで可愛らしく、
子タブンネたちに好かれそうなお姉ちゃんといった感じで
チビママンネの乳首をむしり取った犯人だとは想像にも至らなかった

「あの、あの、返品された後そのおちびちゃんはどうなるのでしょうか…?」
「うーん、うちの飼育室で少しずつ人に慣らしながら育てて、人に懐くようになったら出荷 …かな」

これは社長の体裁を保つ為の嘘
子供を泣かせるようなベビンネなど、くびり殺した後ドブ川にでも捨ててやるつもりでいるのだ

「じゃあ、じゃあ、この子のお母さんタブンネは…!」
「あーそうですな、元いた場所に帰しましょうか」「うん、それでいいよ」

これに答えたのは弟分、本当の事を言っている
野生に返せばまた来年にベビンネを産んでくれるという期待を込めてのことで
乳首をむしり取られてるという事を知らないからの提案であるが

「あの、あの、お母さんタブンネとおちびちゃんを一緒にはしてあげられないんですか?
 このおちびちゃんはお母さんがすごく大好きで、離れたら怖がって泣いちゃって
 粉ミルクよりもお母さんのおっぱいの方が大好きで、…とにかく一緒じゃなきゃ生きていけないんです」
「いやしかしそう言われてもこっちも商売だから、せっかくの商材をみすみす無駄にすることは出来ませんぜ
 でもまぁアンタもずい分入れ込むねぇ」
「この子はベビィちゃんたちのお世話の担当もしてたざんすから、情が移っちゃったみたいなんざんすよ。いやはや」

たとえ恨まれようとタブンネの子供たちを飼い主の下へ送ると決心していた女子社員だが
小ベビンネだけは実の母親がいないと生きていけないだろうと思い続けていた
水槽の中で怯え震える小ベビンネを見ると、その考えに疑う余地はないと確信できる
他のベビンネたちなら優しい飼い主の下で幸せに生活できるだろうが、この子だけは…

「そんな… おちびちゃん…」

女子社員は黙りこくって少し考えた後、注目する4人の前で意を決して口を開く
この状況から小ベビンネを救える方法は、もはや一つしかない

「このおちびちゃん、わたしが買います」

90名無しさん:2017/07/01(土) 02:24:56 ID:p1QSbCu20
乙ンネ

91名無しさん:2017/07/01(土) 04:53:56 ID:4oOWLKvA0
乙乙
小ベビンネはくびり殺された後ドブ川に捨てられる運命は回避したが
チカちゃんの手にかかるコースに変更か

92名無しさん:2017/07/01(土) 07:21:48 ID:QnuqWmzc0
主婦とかならともかく、仕事が有るのに
こんなクソめんどくさい奴飼えるのか?

93ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:50:06 ID:ESC9g.5c0
「ふぇっ!?チカちゃんが買うざんすか!でも大丈夫ざんすかね?このおちびちゃん飼うの難しそうざんすよ?」
「あのお母さんタブンネも一緒に買うつもりです」
「それはいかんざんすよ、あのマーマさんは借り物ざんすのに」
「あ、そういう事なら返さなくて大丈夫ですよ。オマケとしてつけてあげてください」
「なら大丈夫ざんすね、それじゃあ私もオマケして特別に仕入れ値で売ってあげるざんすよ」
「ありがとうございます!」

トントン拍子で買うことが決まり、女子社員は水槽をよいしょと持ち上げて控室に持っていこうとした
買うことが決まった以上ここに置いとけないという理由だが

「あー、買うんだったらこれに入れちまったほうがいいですぜ
 一番安いやつだけどこんなチビなら一個で大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます」

そう言って弟分から手渡されたのはモンスターボール
女子社員が小ベビンネにそっと押し当ててみると、小ベビンネは光とともにボールの中に吸い込まれ、
手の中で2、3度揺れたかと思うと、しゅんとその動きを止めた

「私、ちょっと控室に行ってきます!」

お礼もそこそこに女子社員は控え室に急ぐ、早くチビママンネに会わせてあげたいという気持ちからだ
一人暮らしを始めたばかりでポケモンを2匹も飼うのには不安はあったが、今は楽しみの方が勝っている

「これからずっと一緒かぁ… ふふふ」

準備室に向かう途中で、女子社員は色々と妄想していた
フカフカの寝床を作ってあげて、でも寂しがったら皆で一緒のベッドで寝て
オボンの実とポケモン用のおやつ、どっちが好きかな?
おちびちゃんが大きくなったら、一緒に公園にでも行ってポケモンのお友達も作ってあげよう
大きくなったらきっと怖がりも直ってて…
さみしい一人暮らしで、帰りが待つポケモンが居ることはどんなに素敵な事だろう!
女子社員の中で、タブンネたちと一緒の生活への期待がどんどん膨らんでいった

「フゥゥ…フゥゥ…」

一方、控室ではチビママンネが目を覚まし、そして絶望していた

目覚めたときには居て然るべきはずのベビの姿はなく、愛しい声もすでに遠く聞こえない
ショーの後購入希望者が殺到し4匹とも一瞬で売れてしまったのだ
さらに外からの小ベビンネの声も聞こえなくなっている
ベビたちがいなくなった部屋はシンと静かだ
自分がここで大勢のベビの世話に奮闘していたことが夢だったかと思えるほどに

「フフゥ… フゥ… フフ…」

ひとしきり絶望しきった後、チビママンネはもそもそと奇妙な事を始めた
糞や尿やヨダレのシミがついたペットシートの切れ端を拾い集め、寝床の毛布の上に乗せていく
掃除をしているかと思われるかもしれないがそうではない、ベビたちの痕跡を集めているのだ
知らない人から見れば汚く臭い紙屑だが、チビママンネにとっては大切なベビがここにいたという証、
すなわち形見。ベビのうちの誰も死んではいないが
こんなことをしてもベビが帰ってくる訳ではない、何の意味もないのはチビママンネも分かっている
だがそれでもやらずにはいられない、心が壊れてしまいそうなのだ

94ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:51:17 ID:ESC9g.5c0
「タブンネさん!」
「フィフィィ?」

そんな淀んだ空気の準備室に女子社員が飛び込んできた、チビママンネとは対照的にとても嬉しそうな顔だ
そして突然帰ってきた女子社員に目を丸くして驚くチビママンネ

「ダブンネさん!私と一緒に家へ帰りましょう!友だちに… いや、家族になるんですよ!」
「フゥ?フゥ?フゥゥ??」

チビママンネは女子社員が言ってることがまるで理解できなかった
そして拘束を外してあげようと迫る女子社員に怯えながら後ずさりで遠ざかる

「どうして逃げるんですか?、それを外してあげるんですよ」
「フゥッ!フゥッ!フゥッ!」

女子社員がさらに近づくとハイハイで逃げ出して
寝床の上に置かれた紙片に覆いかぶさり、そして抱きしめた
それは自分の体を盾にして子供たちを守ってるかのような姿だった

「タブンネさんどうしたんですか、なんでそれを…」
「フゥッ!フゥッ!フゥーッ!」

それでもなお猿轡を外そうと差しのべられた手を、チビママンネはペチンと叩き払った
そしてフウフウと悲壮に女子社員へ訴える、「いじめないで、これ以上私から何も奪わないで」と

「フゥーッ!フゥーッ!フゥーッ!」
「タブンネさん…」

酸欠で顔が赤くなっても、チビママンネは涙を流しながら塞がれた口から強く息を吐き続ける
威嚇してるようにも許しを乞うようにも見えるその様は、まるで天敵にでも追い詰められてるかの如くだ

「…そうですよね、私はタブンネさんの大切な赤ちゃんを取っちゃったんです
 一緒になんか、居たくないですよね・・・」

95ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:05 ID:ESC9g.5c0
女子社員は悟った、自分は絶対に許されることはなく、チビママンネとは二度と仲良くなれない事を
小べビンネを救ったと思いこんで舞い上がって、チビママンネの気持も何も考えないで…
楽しい暮らしを呑気に妄想していた自分を殴りたくなる
今の自分がチビママンネにしてあげられる事は、ただ一つしかない

「アレを捕まえるにゃやっぱりポケモンで少々痛めつけなきゃ厳しいんじゃ」
「いや、チカちゃんの目の前でそれをやるのは可哀そうですよ
 僕のドレディアが眠り粉を覚えてるからそれで頑張りましょう」
「それならなんとかなりそうですな、そうしましょうや
 それでダメならこっそり兄貴のルカリオの真空波を…」
「この際奮発して高いボール使っちゃおうよ」

一方、準備室の扉の前では会社の会社の3人と気が利く社員が何やら話し合っていた
連れ帰るにはチビママンネも捕まえさせなきゃいけないという事に後で気づいたからだ
作戦の方針を決めた後、4人は扉を開けた

「あ、皆さん…」
「チカちゃん、それは…」

3人の目に飛び込んできたのは、嬉しそうに小ベビンネを優しく抱きしめるチビママンネと
その姿を見て涙を流しながら微笑む女子社員だった
彼女の足元には、蝶番の所を踏み折られたモンスターボールが

「あ… ごめんなさい。せっかく貰ったものなのに…」
「いや、気にしねぇでいいですぜ。いや、でもそいつらを買うのをやめちまうんで?」
「いいえ、買う事には変わりありません。でも…」

女子社員は社長の顔を見つめてこう切り出した

「あのタブンネさんの親子を、元いた場所に帰してあげてください」
「えぇ! 1万5千円も払って野生に帰しちゃうの!?」
「いいんです、それがあの子たちにとって一番幸せですから
 それで、もう捕まえずにそっとしておいて欲しいです」

女子社員の選択に皆が困惑していると、チビママンネが部屋に危険な人間が集結してる事に気づき
小ベビンネに覆いかぶさって自分の身を縦にして守ろうとした

「チィチィ♪」「フォッ?!」

母親が傍にいると小ベビンネは暢気なもので、乳首に吸いついて母乳を飲みだした
社長はそれを見て「あれ、1個ミスってたかな?」と口から零してしまったが
運よく女子社員に聞かれる事はなかった

96ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:52:49 ID:ESC9g.5c0
「私、あのお母さんタブンネにすごく嫌われちゃったんです。だから、もう一緒には居られないんです
 …でも、最後にもう一回だけ」

そう言いつつも女子社員はチビママンネに歩み寄る
チビママンネ息を荒くして警戒したが
女子社員はそれも気にせず床に膝をつき、チビママンネを抱きしめた

「…ファ?」

チビママンネが感じた女子社員の心の音は温かく優しく、そして切ない
それは昨日、怖い人間から守ってくれた時に抱きしめられた時と何も変わらぬままだった
だったら、なぜあの時自分からベビたちを奪ったりしたのだろうか…?
いくら考えようが、チビママンネの頭では納得する答えは出てこない

「それじゃ、眠らせますよ」
「まったく羨ましいぜ、俺も早く眠りたいよ」

その後チビママンネは眠らせてから箱に入れて持ち出す事が決まり
ドレディアによって再び粉がかけられた
さすがに日に3回もかけられると効きが遅くなってくるようで
眠っているというよりかは微睡んでいるといった様子だ

「チィ… チィ…」

朦朧したまま箱に寝かされる際、
小ベビンネが女子社員に向かってその小さな手を伸ばしているのが見えた
それはまるで、別れを惜しんでるかのように
この人見知りな子が好きになるって事は、やっぱりあの人はいい人間なのかな…
そんな事を最後に思い浮かべ、チビママンネの意識は闇に落ちた


「・・・ミィ!?」

チビママンネが目を覚ました時、そこは車に揺られる暗い箱の中だった
またベビを奪われたのかと一瞬焦ったが、
自分の隣からは聞きなれた小さな可愛らしい寝息が聞こえてくる
ホッと一安心したが油断は出来ない、外からはあの恐ろしい男二人と社長の声も聞こえてくるのだから

「あんないい子に飼われたらあのタブンネも幸せだと思うんだがなぁ」
「そうですぜ、代わりに俺が飼われたいぐらいでさ」
「うぇー、リマくんの変態!」
「まー、一人暮らしだっつうし、それで2匹飼うのは辛ぇもんがあるなー」
「大人になると1メートル超えちまいますからね、そうなると餌もかなり食うし」

97ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:53:42 ID:ESC9g.5c0
そうこうしてるうちに3時間近く経ち、チビママンネの故郷の林に辿り着いた

「それじゃタブンネちゃんたち、出てきて〜」
「ンミミ…」「チィ・・・」

3人は林の近くに車を停め、そこでチビママンネ親子を解放した
2匹ともマーカーをつけておき、間違えて捕まえないように配慮も万全だ
11月の午後6時はもう夜だが、星と月が林を薄明るく照らしている
社長はビデオカメラを回していた。後で証拠として女子社員に送るつもりなのだ

「ここがタブンネちゃんたちの故郷だよ〜」
「ミィ… ミィ…!」「チィ!」

チビママンネは小ベビンネを抱きながらキョロキョロと辺りを見回し、聞き耳を立てた後
トテトテと走りだして脇目も振らずに林の藪の中に入って行った
一刻も早く社長たちから逃げたかったのだ

「…行っちゃったね」
「…はい」
「…私たちも帰ろうか」

社長一行も車を出して帰っていく。3人とも往復6時間の長旅でとても疲れていたのだ

「ミィ!ミィ!ミィ!」

わが子を落とさないように気をつけながらも、林の中を全速力で走るチビママンネ
帰ってこれた事が嬉しくて気持ちは逸るばかりだ
思えば地獄のような三日間だったが、思い出すのはあの女子社員の事だ
一緒にベビの世話を頑張って、おいしい食べ物をくれて、怖い人間から守ってくれて
痛かったお乳を治してくれて、おっぱいも出るようにしてくれて…
悪い人間たちからこの子を取り返してくれたのもあの優しい人間かもしれない
ひょっとしたら、優しい人間は悪い人間にに脅されるか騙されるかして
無理やり酷い事をさせられていたのかもしれない
もしそうだとしたら、悪い人間から助け出して、ここに連れてきてあげたかったな…

「ミィ!」
「ミッミ!」

チビママンネの妄想は不意に浴びせられタブンネの声によってストップさせられた
その声の主はあのお隣さんタブンネである

「ミ、ミィィ…」

本来ならば再会を喜ぶべき場面だが、チビママンネは後ろめたさを感じていた
ベビたちを全員連れ戻してくると言って飛び出したのに、助けられたのは僅かに自分のベビ一匹
お隣さんのベビは一匹残らず人間に連れ去られてしまったのだ

「ミッミミィ! ミィ!」
「ミミィ…!」

それにも関らず、お隣ンネは再会できたことに素直な大喜びだ
お隣ンネは自分のベビの事を人間にさらわれた時点で死んだと思って諦めていた
もちろんベビたちが可愛くない訳はないし、大事じゃない訳でもない
以前に思い知った人間の強さと恐ろしさと兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネの看病
この二つの要因での断腸の思いでの決断である
チビママンネも2日帰って来なかった時点で死んだものと思っていたのである
しかし、この自分よりずっと若い小さなタブンネは諦めずに人間の棲家へと押し入り、
遂には一匹だけであるがわが子を取り戻してしまったではないか
その勇気と奇跡にはただただ賞賛し喜ぶばかりだ

98ショーケースの裏側で:2017/07/02(日) 01:57:09 ID:ESC9g.5c0
「ミィミ!ミィ」
「ミィーミ!!」

お隣ンネの喜ぶ顔で心も軽くなったチビママンネは一緒に巣のある場所に戻った
そこにあるのは懐かしい我が家
しかも、ドリュウズに破壊された屋根が奇麗に修復されている
留守の間にお隣ンネが直してくれていたのだ

「ミィ… ミィ…」「チィ!チィ!」

巣の入り口の前、生きてここまで帰ってこれた事に、チビママンネは嬉し涙を流す
腕に抱かれた小ベビンネもぱぁっと嬉しそうな笑顔で
巣に向かって小さな両手を伸ばし「早く入ろう」とせがんだ

幸せの絶頂のような様相だが、チビママンネとお隣ンネはある事に気が付いていなかった
いや、気が付いていたけど気にしなかったというべきか
いやいや、「気にしないようにされていた」というのが一番正しい表現だろう
自分のすぐ後ろを、四足歩行のポケモンが付いてきた事に

「あのタブンネ親子、あの後どうなるのかな?」
「んー、結構大丈夫じゃないですかね。あの辺にゃでかい肉食ポケモンもいないし
 食い物だって根っこが食えそうな草やドングリもありましたし、山の芋のむかごだって見かけましたぜ
 まぁー赤ん坊が沢山いたら持たねぇでしょうが、母一匹子一匹なら何とかなるでしょう」
「へぇー、じゃあ、なにも心配いらないねー」
「タブンネの心配するなんてらしくないですなぁ」

車の中で呑気な一行だが、社長もまたある事に気がついていなかった
タブンネたちとは違って撮影に夢中で素で気が付いていなかった…
自分のカバンの中に入れていたモンスターボールがパックリと口を開けている事に

「フィッフィーー!」
「ミィ?」「チィィ?」「ミ?」

巣に入ろうとするチビママンネと小べビンネは、不意に聞こえてきた澄んだ高い声に振り返る
そこで月光に照らされて小さな親子を見つめるのは長い耳とリボンの触角を風に揺らすピンク色のポケモン
「シルフィ」と名付けられた社長のペットのニンフィアだった

99名無しさん:2017/07/02(日) 06:16:45 ID:pGRz5IdI0
あーあwww

100名無しさん:2017/07/02(日) 07:23:06 ID:Xj4zVvbI0
小ベビにとって一番の恐怖と絶望とは何か…
あとはわかりますね

101名無しさん:2017/07/02(日) 11:51:54 ID:uz9vm7IU0
助かるはずだったのに自ら破滅して様は面白いな、しかもお隣さんまで巻き込んでww
何はともあれ、これ以上女子社員の手を煩わせなくて良かった。

102名無しさん:2017/07/02(日) 23:23:59 ID:TGS7MXro0
チカちゃんは早くいい男を見つけて幸せになってほしいね
タブンネに心を動かされてはいかん

103タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:16:23 ID:Gixssyhs0
イッシュ地方カラクサタウンの一角にタブンネショップ ミィミィが開店した

文房具や小物、学用品などから子タブンネやタブンネの餌などペットショップの

ようなこともやっていた

店員は店長とタブンネ三匹だけだがタブンネ好きにはたまらない店だった

だがそれはタブンネ好きでない人にとってはどうでもいい店ということでもあった

人口の少ないカラクサタウンではだんだん経営が悪化し店は人手に渡る事になった

104タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:25:35 ID:Gixssyhs0
俺はAタブンネショップミィミィとかいう妙な趣味した店を買い取ったものだ よろしく

早速だが友達のBとCとともに店を改装だ

ちなみに一応俺が店長でこいつらが店員 ジャンケンで勝ったからな

まず奥の部屋からだ部屋の隅にはポケモン用のトイレを設置

壁の何ヶ所かに給水機と餌箱

入り口付近に卵を温めやすい毛布とカゴを置いた

俺たちは元は部屋のリフォームが仕事だったからこの手のものには慣れている

105タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:36:29 ID:Gixssyhs0
店と一緒に買い取ったメスタブ三匹はBのルカリオが連れ出して町の外れにいる

部屋を一旦Bらに任せ町の外れを目指す

タブンネどもを見つけると気づかれないようにトゲキッスを出し

作戦を実行する

まずトゲキッスはルカリオに神速を放ち受けたルカリオは大げさに倒れる

メスンネどもは何が起きたかわからずミーミー騒ぎ出す

すかさずキッスが一匹の耳にエアスラッシュを放つ

片耳が綺麗に切り裂かれ「ミギャァアアア」と耳を抑えて泣き叫ぶ

うるさいと思っているともう一発今度はもう片耳も取れ

バシン バシン キッスの波動弾が触角を撃ち抜くと気絶した

他の二匹は声も出ず足もとを黄色く濡らしている 汚ねえ

106タブンネショップ:2017/07/05(水) 15:51:04 ID:Gixssyhs0
ビュッ バシン ビュッ バシン 他ニ匹もマランネになって気絶すると

ルカリオが起き上がり小型の波動弾をメスンネの口に入れ声帯を潰した

相変わらず器用なやつだ

俺が出て行きトゲキッスをボールに戻すとルカリオはタブンネどもに

癒しの波動を打つ

メスンネどもは目を覚ますと目の前にいる俺に何か言いたげに口をパクパクさせるが

声が出ない まあ出たところでミィミィしか言わんしいいだろ

店に帰ると奥の部屋が出来ていたのでメスンネたちを入れついでにトゲキッスも放つ

タブンネたちの顔が恐怖に染まる

お前らは一生子作りだ

ひとしきり行為が終わり合わせて20ほどのタマゴができるとトゲキッスを戻し

餌箱に産地直送の新鮮な生ゴミを入れる

タブンネは母性が強いからどんな相手とのタマゴでも育ててしまう

奴らも早速悲しそうな顔で卵をカゴに入れ毛布をかけている

ただ悲しそうだがマランネなので笑える

今日はここまでにして部屋に鍵をかけ帰宅する

107名無しさん:2017/07/05(水) 16:16:34 ID:Gixssyhs0
今日も朝からいい天気だ

店に入るとチィチィチィチィすごい声だ

やはり防音設備は必要だなタブンネ農場から世話用メスンネを調達に行っているCに

メールし防音材を買ってきてもらおう

今日は店舗の表の改装だ

5分ほどしてきたBとルカリオと大型の段ボールを運び入れる

108タブンネショップ:2017/07/05(水) 18:10:59 ID:Gixssyhs0
ダンボールから水槽やゲージを出し組み立て式の台に乗せていく

前のオーナーが残していった「タブンネ」「用」「エサ」っていう文字が

可愛らしく書かれたプラスチックの薄い板を

エサ用タブンネに並び替えて貼り付ける

そうしているうちに午前中が終わった

品質チェック兼食事を兼ねてトゲキッスとガブリアス、ヒヒダルマを出して

タブンネの子育て部屋へ

ドアを開けた途端タブンネたちは部屋の奥に逃げて子供を抱えてこっちを睨んできた

109名無しさん:2017/07/05(水) 19:07:25 ID:bT6jz0Mo0
エサ用タブンネ・・・ベビンネを肉食に食わせるとか?ww

睨んでくるのは腹立つな、
子供を大人しく差し出すくらい従順にしつけないと

110タブンネショップ:2017/07/05(水) 20:22:50 ID:Gixssyhs0
すると突然ガブリアスがグルルルルと音を立てた

途端にママンネたちは子供を前に立てて尻を見せて丸くなった

さすがガブと撫でようとすると恥ずかしそうにしている

どうやら腹の音だったようだ

何はともあれベビンネを三匹回収してBがどこからともなく持ってきた七輪をセットした

水槽に入れているベビンネはヒヒダルマとルカリオに覗き込まれて声も出ない

111名無しさん:2017/07/05(水) 20:51:13 ID:Gixssyhs0
水槽に入れた三匹のうち一匹を掴み持ち上げるとぢーぢー

とものすごい声で鳴いて涙とよだれを垂れ流した

ベビの首にロープを巻き上から吊るし七輪の金網にギリギリ足がつくようにして

七輪に火を入れる

もう二匹はポケモン達にやったらキッスが見事に両方真っ二つにしたので

仲良く食べている

キッスからしたら自分の子供なはずだがタブンネだから気にしないのだろう

112タブンネショップ:2017/07/05(水) 23:05:48 ID:Gixssyhs0
七輪が熱くなってくるとチィチィと騒ぎながらステップを踏んで踊り出した

肉球が焼ける匂いが漂い始めるころ太った首からロープが取れて腹から熱くなった

金網に倒れこんだ すかさずトングで押さえつける

チィギャァァという鳴き声を聞いていると鳴き声が小さくなるほどいい匂いがしてきた

最後にチィという声がすればホカホカ炭焼きベビんねの出来上がりだ

113名無しさん:2017/07/05(水) 23:10:40 ID:CA40zzBw0
いいねぇ、やはりベブンネは焼くのが一番

114ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:12 ID:wkpBM6l60
「ミィィ?」「ミィ?」

捕食者、いやそれ以上にタチの悪いケダモノを前にしているのというのに、チビママンネとお隣ンネはポカンと呆けていた
なにせニンフィアはイッシュには生息していないポケモンで、タブンネ達はその存在すら知らない
容姿から判断しようにも自分たちと同じ桃色の毛並みに青い瞳の容姿はタブンネたちに親近感を覚えさせる
その鳴き声は敵意や威圧感を全く感じさせない澄んだ優しげな声、
そして躊躇なく自分たちの前に姿を現す無邪気さ
これらによってタブンネたちが捕食者と見抜けないのも無理はなかった
つまる所勇者ンネと全く同じ勘違いである

「ミィミ?」

お隣ンネの巣の入り口から子タブンネが出てきた。あの一昨日兄貴分に蹴り飛ばされた子タブンネである
幸い大した怪我ではなく、お隣ンネの献身的な介抱の甲斐あって2日のうちにすっかり完治していた
お隣さんの声と知らないきれいな声がしたので気になって様子を見たくなったのだ

「フフィー♪」

蹴られンネが出てきたのを見るとシルフィはにっこりと笑い、スタスタと歩み寄った
それは獲物に飛びかかる獣と言うよりか、オモチャに駆け寄る子供とも言うべきなんとも無邪気な歩き方だった

「ンミ?」
「フィッフィ!」

体高が自分の身長の2倍程もある知らないポケモンが眼前にまで迫っているというのに、
不思議なことに蹴られンネは全く恐怖を感じていなかった
触覚からの波動のせいもあるが、そのあまりにも天真爛漫な仕草に警戒心を持てなかったのである
ポカンと呆けている蹴られンネを目の前にしてシルフィはとても嬉しそうに一鳴きし
まるで皿に盛られた餌でも食べるかのようにその耳にカプリと食いついた

「ヂギュピーーーーー!!!」
「ンミッ?」「ミミッ??」「チチッ!?」

あまりにも突然な激痛に蹴られンネは泣き叫び、成獣二匹は何が起きたかわからずただ驚くばかりだった
シルフィは加えたまま引っ張り上げ、ブルブルと首を振って蹴られンネを振り回す
手始めに耳を噛みちぎろうとしているのだ
兄貴分の蹴りにも勝る耳が千切れる激痛に蹴られンネの悲鳴はさらに大きくなる

「ミィッ、ミィーーーーッ!!」


わが子の危機に気づいたお隣ンネが全速力でニンフィアに向かっていく
片手間で出した波動では思う心からくる闘志を抑えきることは出来なかったのだ

「フィッ?」

その叫びにシルフィは軽く驚いてピタリと振り回すのを止め、うっかり口の力が緩んで蹴られンネを地に落としてしまう
そしてあろうことかその隙にお隣ンネに子供を奪還されてしまった

115ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:19:47 ID:wkpBM6l60
「フィッフューー!」

シルフィはムッとして高い声で吠えて威嚇したが、声が怖くないのでお隣ンネは意に関さず
子供を抱きかかえたまま巣の中へ飛び込むように潜り込む
逃げ場のない巣に逃げ込むのは愚策かと思われるかもしれないが、このお隣ンネに限ってはそうではない
お隣ンネはなかなか聡明なタブンネで、逃げ切れる作戦があった

夜の巣の中は月の光さえ届かぬ真の闇で、敵はこちらを捕捉することに難儀するだろう
巣の中はタブンネ臭で充満しているので、鼻が利く敵も自分たちを察知するのは困難だ
一方、自分たちは耳のレーダーを使えばある程度は暗闇の中でも自由に動き回れる
敵が巣の中で右往左往している隙にもう一つある出入り口からこっそり逃げ出し、仕上げに入口を塞いでしまう
こうすれば安全な場所まで逃げるのに十分な時間が稼げるだろう
この作戦は父タブンネから受け継いだ生き抜く知恵であった

「ミッグ… ヒグゥ…」「ミーミィ…」

グズグズと泣く蹴られンネを抱きしめて慰めながら、
お隣ンネは巣の中心部で聞き耳を立てあの捕食者が入るのを待ち構えていた
暗さゆえに分からないが、蹴られンネの右耳は幾つもの裂け目が入りズタズタだ
治ったとしても元の形には戻らないだろう

「ミ…?」

その予想に反し、謎の捕食者は何時まで経っても巣に入って来ない
諦めてくれたのならそれが一番だが、気配は未だ入口の前に居座ったままだ
こうなると外に出ることも出来ずただじっと待つしかない
親子で息を殺して耐えていると突然巣の中に甘い匂いがする風がヒュウと吹き込んできた
外は風もない筈なのに変だなと思ったお隣ンネだったが、
思慮する合間もなく体の風が当たっている部分に猛烈な痛みが走った

「ギギギギィッギ、ギィィ!!」「ギヂヂヂヂヂヂ!ヂヂィ!!」

その痛みはお隣ンネ親子にとって全く未体験の痛みだった
例えるなら、グラスファイバーの粉塵を肌の柔らかい所に擦り込まれるような
金属ブラシで全身をメッタ刺しされるような、そんな感じのチクチクした嫌さがある激痛だ

これはニンフィアが使う「妖精の風」という技で、
フェアリータイプのエネルギーを帯びた桃色の風を相手に吹き付けるという技である
しかし屋外や広い場所では相手に当たるまでにエネルギーが飛び散ってしまい
相手に当たる時には大した威力では無くなっている為に弱い技とされているが
このタブンネの巣のようなかなり狭い密室では話は別だ
風に乗ったフェアリーエネルギーが飛び散ることなく濃密なまま容赦なく襲いかかるのだ

116ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:20:23 ID:wkpBM6l60
「フューッ、フィー、フィ〜」
「ググググッ!グググッ!ギギ…!」「フ… フィ…」

悲鳴から効果を確信したシルフィは、加減することなく妖精の風を巣の中に送り続ける
狭い巣の中では風が逃げ場なく全体に吹きわたり、さながら妖精の食器乾燥機といった様相だ
その地獄と化した我が家で、お隣ンネはわが子に覆いかぶさって風から守っていた

妖精の風が当たる箇所、すなわち背中全体は激痛と共に毛が抜け落ち、じわりと血が滲む
敏感な耳はそれにも遙かに勝る想像を絶する激痛に覆われ、お隣ンネの精神を幾度となく気絶寸前に追い込んだ
瞼にも風が当たって血が滲み、目を開けようものなら失明は免れないだろう
呼吸も満足にできない。一息吸っただけで肺に激痛が走ったからだ

だがそんな拷問にもお隣ンネは子供を守るために歯を食いしばって必死に耐え続ける
激痛に震えながらも庇う姿勢は崩さず、床に敷かれた枯草の床から僅かな土臭い空気を吸って息を繋ぐ
蹴られンネもそんな母の強さを触覚から感じ取り、息苦しさと痛い隙間風を懸命に耐えた


「…ミ、ミ?」
「フィッフィ…」

反応が芳しくないのが気に食わず、シルフィは妖精の風を煽るのを止めた
巣の中では突然風が止んだことに親子でひとまずはホッとしたが、
お隣ンネは油断をせずにすぐに次の行動に移った
入口を完全に塞いで風を送れないようにしようと、床の藁をひと固まり手に取った瞬間である
その時、タブンネの親子は暗闇の巣の中で月を見た

一方、巣の外のチビママンネであるが、怯えるわが子を抱いたままでは攻撃する事もできず、
かと言ってピンチの仲間を見捨てて逃げることも出来ず
つまり何をしていいか分からずただうろたえながら見ているだけだった
その見てる前でシルフィの体が光り、何か光の塊のようなものを巣の内部に吐き出していく
そしてキーン、キーンと高い音がしたかと思うと、お隣ンネの巣の屋根がまるで電灯のようにパッと光った

「ミ、ミィ?!」

異常な事態に困惑し、恐れるばかりのチビママンネの目の前で屋根は6回も光った
この頃になると一応お隣ンネが攻撃されているということだけは分かっていた
光るたびに巣の中からお隣ンネの悶え苦しむ音が聞こえてきたから
もはや小ベビンネは関係なく、ただ恐怖で足が竦んで動けなかった

「フィフィー!」
「ミッ?!ミッミ!」

巣の反対側からガサガサと草を踏む音が鳴り、シルフィはタタタと小走りでそこに駆け寄り
チビママンネも距離を取りながらも焦ってその後を追った

「ミヒィ・・・!」「フフッフフィ〜♪」
「グジィー グジィー…」


巣の中から這い出てきたそれが目に入った瞬間、チビママンネは戦慄し、シルフィはフィッフィと嬉しそうに笑った
居た、血と粘液に塗れた赤い肉の塊。お隣ンネのなれの果て、全身の皮を失った姿である
もちろん顔の皮も全て無くなっており、眼球もなく、折れた歯と歯茎を剥き出しにしたそれは何ともおぞましい
肘から先が無くなって白い骨が突き出た腕、ひん曲がって動かなくなった足で地面を這い、
地面に血の跡を残しながらゆっくりとではあるが逃げるように巣から遠ざかっていく

ここで説明しておくとシルフィの放った光の玉はムーンフォースと呼ばれる技だ
現在確認されているフェアリータイプの技の中では最も強力とされている技で
月から由来するエネルギーを炸裂する光弾として打ち出すという何とも美しい技だ
しかしシルフィのそれは見た目とは裏腹に余りにも残酷無比である

何の加減もなく闇雲に巣の中へ打ち出した光弾はお隣ンネ直撃はしなかったものの、
狭い巣の中での破裂は妖精の風のダメージを残していた半身の皮膚を容赦なく吹き飛ばした
その後のムーンフォースも直撃だけはしなかったものの、手足目耳、ついでに残ってた皮まで奪い去り
今の肉ダルマ状態になるに至ったというわけだ

「グジッ、グジッ、グジィィィィ」

お隣ンネ余りの負傷に恐慌して巣から逃げ出したかと思うだろうが、そうではない
この逃走は自分が食われているうちにわが子を逃がすという最後の作戦、哀しき最後の母の愛なのだ
だが誤算だったのはシルフィは食うために蹴られンネを襲ったのではない
タブンネで遊ぶために襲ったのだ

117ショーケースの裏側で:2017/07/06(木) 05:22:25 ID:wkpBM6l60
「フィフィフィッフィィ〜」

お肉丸だしのお隣ンネを前にしてシルフィがやった事は捕食ではなく、妖精の風だった
コレにムーンフォースやったらすぐ死んで面白くないという悪魔的な判断からの技選択だ

「ガゥゴギュルブゲヂギギュビグバァァアアアアア!!!!」

全身急所となったお隣ンネの全身に妖精の風は万遍無く染み入り、
その激痛の上塗りにもはやタブンネの声では無くなった奇声を上げながら
グネグネと激しく体を捩らせたり転がったりしながら悶え苦しんだ
粘液まみれに体じゅうに枯草の切れ端が付着し、それはそれは悲惨なサマだ
暴れているうちに腹が裂けて腸が露出し、それにも妖精の風が当たって苦痛はさらに倍増した
血のあぶくを吐き散らし、はらわたを振り乱しながらのたうち回る様はこの世のものではない
夜の林の片隅に、一匹のポケモンによって地獄が体現していた

「フィフィフィフィフィフィーーーwwww」

シルフィはその命を尽くしたリアクションに興奮して大笑いし、
チビママンネはうずくまってその地獄から必死に目を逸らしていた、
大泣きする小ベビンネを抱きしめ、逃げるために震える足を必死に動かそうと心の中で頑張っているのだ

「ミィッ・・・ ミィッ… ウッミィィィィィィィ!!!」
「フィィ!フフフィ〜♪」

リアクションも鈍り、終わりも近付いて来てるだろうという時に、
突然藪の中から蹴られンネが現れ、シルフィに突進していく
お隣ンネからも草むらに逃げ込んで動かないでと言いつけられていて、その通りこっそり抜け出して隠れていたのだが
母の悲痛な声を聞き、最後の家族を守るために戻ってきてしまったのだ

だが、庇われていたとはいえその体は無事ではなく
方耳は完全に千切れ、片手も手首から先を失い、体の所々で皮が剥がれ赤い肉が見えていて、
普通の子タブンネなら動けなくなる程の辛い怪我だろう
しかし、この蹴られンネはどんなに怖くとも痛くとも、最愛の母を見捨てるなんて出来やしないのだ
その悲痛な勇気と愛に、シルフィは小笑いしながらのムーンフォースで応えた

「ミミーーーーッ!!」
「……!!!」

チビママンネは叫んで蹴られンネを止めようとしたが既に遅く
光弾は胴体の真ん中に直撃し、驚く間も悲鳴をあげる間もなく
蹴られンネは閃光とともに赤い霧となって消えた
骨や肉の破片がポタポタと降り注ぎ、枯れかけた草むらをおぞましい赤い斑点で飾った

「グジィーグジー、グジュグギュルルァゴギィギュググググググググ…」

その時、糸が切れたようにお隣ンネはその命を終えた
耳も目も既に無いというのに、どういう訳かわが子の死がわかったのだろう
その死に顔には安らぎなど一切なく、妖精の風責めの苦悶にも勝る歪みきった絶望の表情だった

「フィッフィ♪ フィッフィ♪」

対照的にシルフィは笑顔で小躍りするように跳ねて大喜びだ
ママ(社長)から禁止されてる妖精の風やムーンフォースもこっそりたくさん使っちゃった♪
でもまだまだまだ遊びたい、こんどはちっちゃい子と遊びたいなぁ
たとえばあのちっちゃい子!

そうしてシルフィは、泣き崩れたチビママンネの腕の中の小ベビンネに熱い視線を向けるのだった

118名無しさん:2017/07/06(木) 19:23:59 ID:Ol0WuxzU0
タブンネは草むらのハッピーセット。
これを教えたのが、同族の勇者ンネwwww

蹴られンネは無謀だったけど、片耳片手損失した子タブが
野生を生きれる訳無いから楽に死ねる最善の選択に感じた。

119名無しさん:2017/07/07(金) 01:40:31 ID:snJqtsJY0
乙乙!盛り上がってまいりました!

120名無しさん:2017/07/07(金) 03:20:28 ID:mFo2WtWo0
ついに小ベビンネ処刑の時ですね!

戦わず逃げもしないチビママンネ、
想像以上のポンコツぶりw

121名無しさん:2017/07/09(日) 23:25:30 ID:ijU4HYBc0
おおーwニンフィアやりおるw
ここまで来たらタブンネだけに絶望を与えるために生きているようなものだなw

ニンフィア「僕と契約して、タブンネ虐待愛好家になってよ!」

122名無しさん:2017/07/10(月) 01:27:10 ID:0AoNiqfM0
チギュピーっていう泣き声に萌える

123名無しさん:2017/07/13(木) 19:17:15 ID:6uRddFuk0
今話題になってるヒアリをタブンネに襲わせたい

124名無しさん:2017/07/15(土) 03:59:48 ID:3XRDVj260
更新が待ち遠しい

125名無しさん:2017/07/28(金) 21:49:10 ID:7CMONjYQ0
ラストの展開に迷っておられるのだろうか?

126名無しさん:2017/08/02(水) 23:44:05 ID:6uZfIeqM0
のんびり待つのが正解よ

127名無しさん:2017/08/03(木) 00:51:28 ID:dVDxYrFQ0
過去の作品を読み返してたら
「チギュピー!」って叫び声が結構有って面白かったw

128名無しさん:2017/08/03(木) 07:32:57 ID:XgiV6czs0
自分は「チイチ♪」って喜び声がムラッと言うかイラッとしてきて嗜虐心が煽られます

129ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:08:18 ID:9tntAZXM0
「ミィィィ…」

シルフィと目が合ったその時、チビママンネはガクガクと震えだした

悪い人間たちの元からからやっとの思いで我が家に帰ってこれて、
最後に残ったベビちゃんと、仲良しのお隣さんと平和に暮らせると思ってたのに…
あっというまに仲良しのお隣さんは赤ダルマに、可愛かったその子供は赤い飛沫となって消えた
冒険の終わりに待っていたのは平穏などではなく、血に飢えた捕食者
いや、捕食者ですらない、あまりにも残虐極まる桃色の皮を着た悪魔である
そして今、その凶悪な眼差しはこの腕の中で震え泣く幼いわが子に向けられているのだ

「ウッ、ウミィ… ウミィィィィィィィィ!!!!!!」

チビママンネは恐慌して泣きながら走り出し、ただガムシャラに木々の隙間を逃げ続けた
足がが震えてもつれ、何度も転びそうになったがその足は止まらない
母親の恐怖の感情を感じ取って小ベビンネは大泣きし、
シルフィはそれを頼りに足に余力を残しながら悠々と追ってくる
それはまるで幼児と大人の鬼ごっこの如き圧倒的な差だ
命を掛けた追いかけっこの間、シルフィの頭に浮かんでいたのは
母親の前で赤ん坊をいたぶり、その反応を見て楽しむという邪悪極まりない遊戯である

「フミミン!フミミン!ンミーーーッ!!!」
「フィッフィッフィ〜〜♪」

どんなに頑張ろうとも両者の距離は詰まっていき、それが1メートル半にまで縮まった次の瞬間…

「ンミミッ?!」

「バチッ」と破裂したような音とともにチビママンネの両腕が突然軽くなり、
そこにあって然るべきはずの小ベビンネの姿が忽然と消えた
掌と腕にヒリヒリと痺れるような痛みだけを残して
チビママンネには知る由もないが、電光石火という技をシルフィが仕掛けたのだ

「ヂィィィィー!!! ヂィィィィー!!!」
「ン、ンミィィィィィィィィィーーーーッ!!」

悲鳴にハッと振り返ったチビママンネの目に映ったのは、
見ただけで気絶してしまいそうな有りうべからざる光景だった
一番の甘えっ子で、いつもチィチィとママに甘えてきたあの子が
どんなに情けない姿を見せても、最後までママだけを頼ってくれたあの子が
自分のベビも、友達のベビも、知らないべビもみんな奪われて、
優しい人間のお陰で最後にたった一匹だけ守りぬけたはずのあの子が
悪魔に足を銜えられ、ヂーヂーと泣き叫びながら逆さ吊りのままじたばたともがいているのだ
しかも噛まれた所からタラタラと血が流れ、お尻と尻尾の一部を赤く染めている

「ミミーッ!!ビィィーッ!!」

チビママンネは大慌てで取り返そうと両腕を掴んで引っ張るが、シルフィも口を離すことなく引っ張り返す
もちろんその引っ張り合いの負荷は小ベビンネの体に掛かることになり
足首の噛み傷はさらに広がり、両肘はコキリと脱臼してしまう

「ウゴバァァァァァァーーーーー!!!」
「ミッヒ?!」

小ベビンネはさらに増した激痛に泣き叫び、それにチビママンネはハッと気づいて手を放した
ここが南町奉行所のお白洲ならばチビママンネは子供を取り返せていた所だが
残念なことにこの小さな林に大岡越前はいない

130ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:09:05 ID:9tntAZXM0
「ミィ… ミィ… ミィ…!!」

祈るように返してほしいと涙ながらに懇願するチビママンネだが、
それに対する悪魔の返答はまるでぬいぐるみを弄ぶかのように小ベビンネを振り回しながらの拒否であった

「フミ、フミ、フミ〜〜〜ン」

その挑発に対するチビママンネのリアクションは、涙ながらに額を地面に何度も叩きつけての連続土下座であった
母親なら激怒し、反撃に出て然るべき暴挙ではあるが、恐怖する心がそれを止めていた
先の出来事からも判るように、チビママンネは母性が強く子供のために辛苦に耐え抜く強い心はあるのだが
どうしても暴力だけには滅法弱いのである

「フィッフィw」

そのブザマな有様はシルフィを大いに喜ばせ、笑いで顎が緩ませる、
その時、小ベビンネは牙から解放され地に落ちた
叫びすぎて喉を傷めたのであろう。その母に助けを求める鳴き声はガラガラに濁っていた

「ヂイヂィ! ヂィヂイ!」
「ミミミミィ〜〜〜!!!」

情けない歓喜の声を上げ、ペタペタと地面を這いずり小ベビンネに手を伸ばしたチビママンネ
しかし手が触れるよりより早くシルフィは再び小べビンネを銜え上げてしまう。今度齧った所は右耳だ
再び返してと懇願するチビママンネをシルフィは首をプルプルと振ってそれを拒否した
小ベビンネは振り回され、耳を根元から裂く激痛の悲鳴が夜の林に響く

「フィッ!!」
「ンミッ!?」

ベビの耳は弱く、遠心力でブチッとた易く体から離れ、
小ベビンネはその勢いで70センチほど吹っ飛び土の上に投げ出された
あまりの痛さにもはや泣き叫ぶ事もできず
うずくまって痙攣しながらグミッ、グミッ、としゃっくりにもにたうめき声で泣き続けている
生き血が滴る千切れた耳はシルフィがコリコリと食べてしまい
その始終を見たチビママンネはガクガクと震え戦慄した

おちびちゃんの耳は一生元に戻らない。どうしてこんな事に…
涙を流し続けた小さな母の下瞼はヒリヒリと赤みを帯びていた
今日という日ほど、青い瞳が乾かぬ一日はなかっただろう…

「ミィッ… ミィッ… ミィ!!」

哀れな母親は投げ出されたわが子に駆け寄る、
しかし、素早く回り込んできた悪魔にいとも簡単にと赤ん坊を奪われてしまった
次に噛みつかれたのは尻尾だ
またもシルフィは首を振って振り回すが、先ほどよりもかなり動きが激しい
肉が千切れる感触と飛んでいくのが面白かったのだろう
さっきのような事故ではなく、今度は意図的に千切ろうとしているのだ
しかし尻尾は耳に比べて流石に丈夫でどんなに振り回してもなかなか千切れない
その為シルフィはベビをいっそう強く振り回し
チビママンネは取り返そうとそこに手を出したものの
手に顔に激しくわが子を叩きつけられて指は数本折れ、鼻血は出る
それでも諦め事無く何とか掴もうと頑張るが取り返せる気配はまるでない

131ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:09:38 ID:9tntAZXM0
「ンギ゙ィィィィィィィィィーーーー!!!!!!」
「ン゙ミ゙ィ!!?ミ゙ィ!」

「バチン」という太いゴムが切れるような大きな音と同時に、小ベビンネは再び飛んで落ちた
すかさずチビママンネはトタトタと痛めつけられたわが子に駆け寄るがその目前にまで近づいた途端…

「ギッオゴゴゴグオッシュ!ゴブギャァァァァァァ!!!!」
「ンミッ??!」

どういう訳か、小ベビンネが今まで聞いたこともないような激しい濁った声での悲鳴を上げたのだ
ハッとして小ベビンネをよく見てみると、ピンクの肉が露になった血まみれの無残な尻から
グニャグニャした紐のような物が伸びているのだ
そしてそれを自分が踏んでしまっている事に気がつく
チビママンネはこれが何なのか知る由も無いが、皆さんはお判りであろう。これは小ベビンネの腸である
千切れる際に尻尾の周りの皮が下の方に裂けて肛門を巻き込み
吹っ飛ぶ際に尻の皮と共に肛門が取れてしまっていたのだ

「フミミ、ミィ!!」

痛がってる様子から一応は体の一部だということだけは理解できたチビママンネ
慌てて足をどけ、下半身が赤く染まりきったのわが子を素早く抱き上げる
ようやく悪魔の牙からわが子をその手に取り戻す事が出来た
しかし、安らげるはずの母の腕の中にいる小ベビンネは苦痛に顔をゆがませ
口をぱくぱくとさせながらクィー・・・クィー…とか細い苦しそうな声で鳴き続けている
その声は母に救いを求める声だとチビママンネは痛いほど理解できていたが
飛び出したはらわたが地面に触れ夜風に晒され、母親に踏まれるという想像も出来ぬほどの苦しみに
癒しの波動も使えぬ未熟な母タブンネが出来ることなど何一つなかった

「フィッフィッフィ?」

一方、悪魔シルフィはというといまいち状況が掴めず、尻尾がついた血まみれの肉片を口にしながらポカンとしていた
そして母の腕に抱かれた玩具から伸びる紐のような物に興味が移る
それは網の目のような血管に赤い血が流れ、ヒクヒクと鼓動する小さな腸
肉食獣の本能のためだろうか、人間には気味悪く嫌悪するであろうそれに強く惹かれ
何の気なしに前足でその先端ををベシベシと叩いて玩具にし始めた

「ゴギュウルルルグボボッ!!グギギィグギギグゥ!!!」

シルフィが叩くのに同調して、小ベビンネは腕の中で激しく暴れまわる
大腸が1メートル半も離れた小ベビンネに導線のように激痛を直に伝えて来るのだ
苦痛のあまり、小ベビンネはここが母親の腕の中だということも忘れたように荒れ狂う
口の端に赤みの混じった泡を吹きながらヘドバンの如く頭を四方八方に振り回し
それが何度も母親の顔面に当たり痣を作らせた

「ミーミ!ミーミミィ!」

チビママンネは自分の痛みも忘れて必死に宥めようとするが、
小ベビンネが感じている苦痛はそんな事で和らぐような甘いものではない
遂には赤ん坊とは思えないほどの大暴れによって抱きしめる腕が滑り、再度地面にわが子を落としてしまう
シルフィはその時のドサリという音に気をとられ少しだけ腸遊びを止めた
小ベビンネは普通なら痛がって大泣きする所だろうが、地面に横たわったままハァ、ハァと大きく息を吐き続けている
弄るのを止めたことによって苦しみが和らいだからである
落ち葉が積もる地面に打ち付けられる痛みなど、獣にハラワタを直に弄ばれる地獄の責苦に比べたら愛撫にも等しい

「キィッ!!ピィッ!!クキィィィィィィ!!」
「フィッフィwフィッフィw」

シルフィが再び腸で遊び始めたのだ
もはやどうしたらいいかわからなくなっている母の眼の前で小ベビンネはビクンビクンと激しく悶え苦しみ、
泣きわめき白目を剥きながら落ち葉の上をのたうち回る
腸の先端を刺激される度に身をよじらせながらバタバタと暴れる構図
それはまるであのポンプを握ると跳ねるカエルの玩具の様である

「ミ、ミィ・・・
 ミィミィ!ミィミィ!ミーミ、ミッミ、ミミミ、ミィ!!…」

命がけの大冒険の末にたった一匹守り抜いた小さなベビンネ
その命よりも大切なわが子が無残にも玩具にされる様をあまりにも間近で目の当たりにし、チビママンネは思い、叫び訴えた
ベビちゃんがこんなにも苦しんでいるのに、どうしてあなたは喜んでるの?
怖いくらいに遠くへ遠くへ連れ去られて、悪い人間にひどい目に遭わされて、兄弟もお友達もいなくなって…
それでも、優しいひとに出会って助けられて、ようやくこのお家にまで帰ってこれたんだよ
ぴこぴこした小さなお耳も、ふんわりしたちいちゃな尻尾も、お空とおんなじ色のお目目も
とっても、とってもとっても可愛いのに、どうしてそんな酷い事が出来るの?
あのお母さんも男の子も、おちびちゃんも、だれも何も悪いことなんかしてないよ…

132ショーケースの裏側で:2017/08/05(土) 02:10:31 ID:9tntAZXM0
「ミィーッ!!ミィーッ!ビィーッ!!」
「フィ〜w」

チビママンネが声の限り叫ぶの心からの訴えを、シルフィは鼻で笑って流した
たかが使い捨てのオモチャ風情が何を訴えようとマトモに聞いてやる気などないのだ

「ギョグァァァアアアアアアアアア!!!!キハァァァァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーババババババブァ!!!!!」

そしてその必死さを煽るように腸を噛みしめながら引っ張り、小べビンネに一際大きな悲鳴をあげさせる
それは、普通に生きていたら一生出すことはないであろう声の、赤ちゃんが絶対に出してはいけない声の、
口からはらわたを吐き出すが如き狂気と苦痛を孕んだ凄絶な絶叫だった

「フィフィ〜ン♪フィィ〜〜♪」
「ミ、ミィ…」

その叫びにシルフィは大いに喜び、腸を銜えたまま嬉しそうに鼻歌を歌い
チビママンネあまりの光景には泣くことも喚くことも出来ずにガクガクと震えながらただただ絶句していた
そんなチビママンネに、シルフィは腸を口にしたままニッコリと笑いかけた
リアクションが思ったのと違うのでさらに挑発を重ねようというわけだ

「ミィィィィ… クィィィィ…!」

その効果は覿面で、恐怖により縮み上がっていたチビママンネの怒りが再びふつふつと湧き上がってきた
どうしてあんな悲しい苦しい叫び声を聞いて、笑っていられるの?
こんなに可愛いベビちゃんを苦しめて痛めつけて、ズタズタにして泣かせるのがそんなに楽しいの…?
べビちゃんが死んじゃったら、みんなが悲しむんだよ!
わたしも、ここにはいない優しい人間も、いつかここに帰ってくるパパンネも・・・
女子社員と夫ンネの顔が頭に浮かんだ瞬間、怒りとは別の熱いものが湧き出してきた
それは立ち向かう勇気である

「ギィーッ!グミ゙ィィーーーッ!!!」

咆哮を上げ、チビママンネは目の前の悪魔に捨て身の突撃を仕掛けた
それは昔のポケモントレーナーによって「捨て身タックル」と名づけられた技で
本来ならチビママンネの錬度では使えないはずの技だ
だが、心体の全力を以て真っ直ぐ怨敵に突撃するそれは奇しくも技であるそれに一致していた
その勢いにシルフィは突き倒されて腸を放し、チビママンネもまた反動でドンと強く尻もちをついてしまった

133名無しさん:2017/08/05(土) 08:20:33 ID:1b2treDc0
首を長くしてお待ちしてました

134名無しさん:2017/08/05(土) 17:29:54 ID:WikkpBy20
腸をいじるとは思いもよりませんでした!
耳も食べられてまさにハッピーセットですねw

135名無しさん:2017/08/05(土) 20:06:58 ID:Jb2T.oN20
ウゴバァァァァァァーーーーー!!!
グミッ、グミッ
ギッオゴゴゴグオッシュ!ゴブギャァァァァァァ!!!!
クィー・・・クィー…
ゴギュウルルルグボボッ!!グギギィグギギグゥ!!!
キィッ!!ピィッ!!クキィィィィィィ!!
ギョグァァァアアアアアアアアア!!!!キハァァァァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーババババババブァ!!!!!

小ベビの悲鳴の表現が、逐一最高すぎるwww素晴らしいwwww

136名無しさん:2017/08/06(日) 11:45:19 ID:m.FBWBAQC
ニンフィアってこんな性格だったの?!イーブイ進化形の中で一番凶悪じゃ
同じ属性でピンクってとこに敵がい心があるのかな

137名無しさん:2017/08/06(日) 12:54:14 ID:UIBeVwtM0
肉食であるという設定はありますね
凶悪なのは個体差かと

138名無しさん:2017/08/06(日) 18:07:41 ID:W5R8YGQ60
べビンネに無理矢理口を開けさせて触覚を突っ込み、「自分で噛みちぎって食べろ。でないと殺すからな」と脅してみたい

139名無しさん:2017/08/07(月) 20:47:53 ID:J4qGePqU0
想像してたよりも凄惨な痛めつけ方で素敵です!

残った身体パーツも滅茶苦茶に解体されてほしいwww

140ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:28:38 ID:F.uk4T/o0
「ミ、ミィ!」

倒れた事で一瞬安心して、わが子に注意を移したのがいけなかった
シルフィが素早く立ち上がりチビママンネに飛びかかってきたのだ
チビママンネは慌ててそれを受け止めて喉笛を噛みちぎられる事だけは避けることができ、
結果的に両者は押し合いの体制になった

体躯も膂力も大分負けているはずだが、チビママンネは何とか地面に押し倒されずに踏ん張っている
子を思う母の心
その奥底から湧き出る怒りによって小さな母の身躯には普段の何倍もの力が漲っていた
愛の力を以てしても押し倒されずに踏んばるのが精一杯なのが悲しいところだが

「ンミ…! フミィ…!」

組み合っている最中、チビママンネの耳はシルフィの心の奥底にあるもの
この鬼畜以下の所業を笑いながら為す邪悪な心の元、その正体を感じ取っていた
それは何の珍しくもない、肉食の生物が持つありふれた狩猟本能、そしてポケモンとしての闘争本能
発散される事無く心の底でドス黒く凝り固まったそれらが、シルフィの心を醜悪極まる悪魔に歪めているのだ

141ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:29:20 ID:F.uk4T/o0
チビママンネに判るのはこの程度の事だが、ここで少しシルフィが何故このような残忍な性格に成るに至ったのか
その来歴をもう少し踏み込んで説明しておこう
元々シルフィはアローラ地方・アーカラ島の野に生きる幼いイーブイであった
それがトレーナーであった社長の妹に捕獲されて彼女の島巡りの旅に加わったのだ
社長の妹は姉とは違い、本当に優しく思いやりがある性格であり
時を待たずしてシルフィは仲間のポケモンたちと同じように戦いを以てトレーナーの助けになりたいと思っていたのだが
扱いはその思いとは真逆の物であった

幼さゆえの力不足、そして愛くるしい見た目のため無理な実戦投入を躊躇われ、
学習装置やリゾートアイランドのアスレチックといった安全な手段で
戦わずして力をつけていくという悶々とした日々を過ごす羽目となる
それでも社長の妹の事は大好きで、可愛がられていくうちに仲良しになりニンフィアに進化し、
地味な努力の結果練度も上がり十分に実践に耐えうる力を身につけた
だがその時には既に遅く、社長の妹は既に島巡りの旅を終えてしまっていた

社長の妹は旅を終えた後はリーグに挑戦せずに普通の生活を選び
シルフィもまた戦いとは無縁の日々を送ることとなる
そしてある時社長が実家を訪れ、可愛らしさに一目ぼれしたため譲り渡されたというわけである
その後のペット暮らしは言わずもがな平和だが退屈なものだ
美味い飯も暖かな寝床も上等な玩具も十二分に与えられ、新しい飼い主とも気が合う
だが、シルフィは常に飢えていた

上に述べた境遇だけではこのような凶悪な性格には成るに至らない
シルフィを狂わせたのは、他でもない社屋で飼育されている子タブンネ達であった
もちもちふっくらとした餅かマシュマロのような柔らかさを思わせる体系、
心に残るミィミィチィチィとか弱く何所か切なさを含んだ鳴き声、
思わず飛びつきたくなるぴこぴこフリフリと扇情的な耳と尻尾
ケージの格子越しにあるその愛くるしい肉の塊は、シルフィの捕食者としての本能を容赦なく焚きつけた
アローラのイーブイとその進化系は人の管理の下でも本来の獣性を大いに残している
何代にも渡るブリーディングによって野性を失いかけている他の地方のそれとは大いに違う
これは地方毎のポケモン図鑑の表記の違いを見比べても判る事だ

シルフィもまた同じく野性を心の隅に置いたままであるが、彼は自分が人に飼われている身分ということをよく理解している
あれらを傷つけるなどしたら飼い主に迷惑がかかってお叱りを受けるであろう事を察し
格子の向こうに決して手を出すことは無かった

辛抱の日々の中、シルフィは子タブンネたちを狩り殺す様を妄想する事で自分を慰めていた
現実で満たされる事無く妄想だけを続けていくうちに、その内容は日々過激さ、陰惨さ、残酷さを増していく
脳内に悪魔を植え育てるが如きその行為は、人知れぬうちにその心までも闇に染めていった

142ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:29:55 ID:F.uk4T/o0
社長に木の実や菓子などを与えられた時、わざわざ第一飼育室にまで持って行って子タブンネたちの目の前で食べることがあった
貧相な餌しか与えられぬ子タブンネたちに御馳走を食う様を見せつけての憂さ晴らしかと思われるだろうが、真実はなお悪い
この時、シルフィは妄想の中でタブンネを喰っていたのだ
目の前のオボンを、ポフィンを、血に塗れて悶え苦しむベビンネに見立て乱雑に千切り喰らう
傍目には餌をやや乱暴に遊びながら食べているようにしか見えないが…
甘味に飢えた子タブンネ達にとっては羨望極まる光景だが、その実は蒲焼の匂いだけで白米を食うが如き惨めな食事であった

そしてある時、シルフィの夢は唐突に叶った
あの子タブンネの反乱に困り果てた男二人に呼び込まれた時である
生きたベビンネを目の前にして、もはや理性も忠義も何もかもが吹き飛んでしまった
思う様目の前の肉を引き裂き喰らい、必死に仇を討たんとする小さな愛と勇気を腹ごしらえに蹂躙した後
シルフィの心に訪れたのは束の間の満足と喜び、そして地の底よりも暗く深い嗜虐への飢え
この喜びを大好きな飼い主と分かち合いたく、ベビンネを銜えて社長のもとへ走った

あの時の勇者ンネと餌食となるベビと出会った事が切欠で、理性という殻を破って魔獣シルフィが現世へと産まれ出たのである

143ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:30:33 ID:F.uk4T/o0
チビママンネがその悪魔と組み合うこと2分弱、動けぬ間にも小ベビンネの命の灯火は刻々と小さくなっていく
しかしチビママンネは何もできない
少しでも力を抜こうものなら眼前にあるこの牙が己の喉に向かう事が容易に想像出来るからだ

一方、シルフィの方はというと次の一手、この遊びのフィナーレに相応しい強烈な一撃を思いつき
何の躊躇もなくそれは実行に移した

「ミミッ!!?」

シルフィの顔面がチビママンネのそれに当たりそうな程に近づいたかと思うと
チビママンネの視界は月に覆われた

その光により目が眩んでいる隙に、シルフィは身を翻してチビママンネから離れる
チビママンネは何のつもりなのか分かりかねたが、間もなくぞわぞわとした胸焼けのような不快感に襲われた
ふと自分の胸を見てみると、提灯のように赤く光っているのが見て取れる
口から体内にムーンフォースを撃ち込まれたのだ

「ンミ… ンミ? グィィィィィィィ??!!!! ジビーーッ!!!」

疑問に思う間もなく不快感は熱さへ、熱さは激痛へと胸の中で目まぐるしく形を変え
食道をゆっくりと下に降りながらチビママンネの体内を蹂躙していく
想像を絶する激痛にのたうち回り、両手で胸を加減なく搔き毟る
その胸は古木のささくれの様に皮膚がめくれ血の合間に剝き身の胸肉を覗かせ
搔き取られた無数の桃色の毛玉がタンポポの綿毛の様にふわふわと宙に舞う
胸の中にある苦痛の元を素手で掻き出さんとしているのだ
余りの激痛に気が狂い分別がつかなくなった事による、正しく狂気の沙汰であった

ブリュリュリュィビチチチィ!! ジビビビビビビ グロロロロェ!

全身が悲鳴を上げ、崩壊しかけているチビママンネの身体から逃げ出すようにあらゆる物が外へと躍り出る
大便、小便、屁、胃液と胃の中身、汗、涙、涎、鼻水。いずれも血の赤みを帯びていた
ムーンフォースの光の塊は止まることなく、五臓六腑を蹂躙しながら体内を下っていく
今度は腹を裂かんばかりに掻き毟るが傷ひとつつかない
既に手の爪が全て剥がれ落ちてしまっていたからだ
一時も頭から離れなかったわが子の姿が、声が、露と消えるほどの苦痛
先ほどまでの母としての覚悟など最早消し飛んでしまっていた

「ギッヒ… ギィィィィィィ!!!!グビィィィィィィィ!!!!」

狂乱の末、チビママンネが最後に取った体勢は
中腰で前かがみにしゃがむ和式便器に跨っているかのような排便の姿勢であった
意外に思えるかもしれないが、物凄く腹が痛い時に取る体勢と考えれば自然な事だろう
とにかくもう、この光の塊を何としてでも体外へひり出してやろうとしているのだ

「キィィィィィィィィィィィィ!!!!!アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「ボムッ」という爆発音、そして閃光と共にチビママンネの姿はシルフィと小ベビンネの前から消えた
ムーンフォースが尻の中で炸裂し、その勢いでで吹き飛んで行ってしまったのだ
まるで屁が爆発して吹っ飛んだ様なコントのオチの如き最後である
彼女がいた筈の場所には夥しい血痕と骨と皮が付いた肉片、そしてズタズタになった両足だけが残されていた

144ショーケースの裏側で:2017/08/10(木) 00:31:31 ID:F.uk4T/o0
「…… フィ…?」

小べビンネはあまりに凄惨な光景に身を硬直させ、泣くこともできなかった
大好きで信頼しきっていた母親が目の前で苦しみ抜い末に無残にも消えうせるという始終
それを余すところなく見てしまった絶望は痛みすら忘れさせるほどだ
対照的にシルフィはスッキリとした満足げな笑顔である、こんな派手な遊びは又と出来まい

一瞬の静寂の後、近くの木の上の方がガサリと鳴り、何かが落ちてきて木の枝が折れた所に突き刺さった
それは変わり果てたチビママンネである
全身血と汚物にまみれ、腰があるべき所には血が滴る内臓がぶらりと垂れ下がっていた

「……」

タブンネの生命力はかくも強く、このような状態になっても意思を失う事は無かった
片目には視力が、血に汚れた両耳には聴覚が辛うじて残されている
しかしこの深手である。それらが命とともに消えうせるのは時間の問題であろう
シルフィは落ちてきたそれを死んだものと思いこんで興味を向けず
小ベビンネは変わり果てたそれを愛する母だと認識できなかった

「チィ… チィ…♪」「フィー?」

チビママンネの目の前で繰り広げられるそれは、あまりにも信じがたい光景だった
愛するベビが腸を引きずりながら悪魔の足に縋りつき、甘え声を出しているのだ
チビママンネの心は再び震えわが子の元へ向かい止めようとした、
が、声は出ず、手は動かず、両の足は何処にあるのかすらわからない

この時、小ベビンネはあまりの絶望で既に心が壊れていた
「ママが死ぬはずが無い、いなくなるはずがない」と思い込むあまり、
あろうことか目の前にいる悪魔を母親だと認識してしまったのだ
桃色の毛皮に青い瞳、間違える要素も無くもないのだが

「フィッフィッフィ〜」「チィ… チィ…」

意外なことに、シルフィは座ってから前足で小ベビンネを優しく抱きよせた
自分を母親だと思い込んでいる事を何となくではあるが理解していたのだ
優しそうなポケモンに無邪気に甘える光景に、チビママンネは気の迷い程度に安堵した
ベビちゃんの可愛さに負けて改心し、もしかして助けてくれるのではないか、と
その時、小ベビンネの無事な方の耳の触覚が不意にシルフィの胸に触れた

『これからたくさんもがき苦しんで死んで あたちを楽しませてほしいな♪』

「チピャァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

それは、この世に生まれ落ちて34日にして生きる希望を全て断たれた赤ん坊の、あまりにも悲壮な慟哭であった

そしてシルフィは己を母と慕う子を嗤いながら痛めつけ始めた
耳を千切り取り、足を噛み折り、突き出して許しを乞う小さな両手を容赦なく噛み千切る
両目は爪で潰された後にほじくり出され、上唇に噛みついてから額にかけて顔の皮を剥ぎ
全身まんべんなく妖精の風を浴びせ、最後に爪で胴を裂き動く内臓を露にしてシルフィの責苦は止まった
口が無事な間、小ベビンネは泣き叫んでいたが、
それは助けを求めるというよりか、母に許しを乞いているような泣き方だった
小ベビンネにとって目の前のピンクは未だに母であり
愛する母に八つ裂きにされるという絶望感は余りにも計り知れない

「…ァ …ァ」

何よりも守りたかったわが子が、守らなければならなかったわが子が、目の前で肉塊にされる
この世で最後に見る光景にしては、余りにも無慈悲が過ぎている
怒ろうが悲しもうが手も足も動かず、祈ろうにもチビママンネは神を知らない
もはや苦しまずに安らかに眠ってくれと願うことだけが、チビママンネが出来る唯一の愛情だ

「フィッフィッフィ〜♪」

そんな切ない母の願いを冒涜し嘲笑うかのように、シルフィは瀕死の小ベビンネに更なる追い討ちをかける
悪魔が選んだトドメの一撃は、剥き出しの内臓に目がけての放尿であった

「ヂュブルルルルルルン!ボルンッ!!」

肺に肝臓に心臓に肺にジョボジョボと放尿され、
湯気が立ち上ると同時に動かなくなりかけていた小ベビンネの身体は激しく痙攣しだす
やがてそれも弱弱しくなり、小便が止まるのを待たずして小べビンネの命の音は完全に消え去った
赤ん坊の消えかけた命の灯火を、母親の目の前で小便でかき消すという邪悪極まる暴挙

それは、チビママンネの心を肉体が滅ぶより早く死に至らしめるのに十分な殺傷力を持っていた

145名無しさん:2017/08/10(木) 09:21:05 ID:E.cC3vGE0
更新ありがとうございます!
シルフィはバトルできなかった欲求不満をようやく晴らせたのですね。

トドメが臓器に小便(笑)
苛立たせてくれたチビ親子に相応しい死に方だwwww

146名無しさん:2017/08/10(木) 09:55:50 ID:3dtleJPI0
しかも小ベビ視点から見れば
他の子を放置してまで自分最優先でいてくれたはずのママからの暴力&とどめの放尿
最後の「あたちを楽しませて♪」の一言もシルフィをママと見間違えていた小ベビにはこのためにママは自分を構っていたのかと言う誤解と更なる絶望を与えるものになるとか悲惨がすぎる

147名無しさん:2017/08/10(木) 20:31:31 ID:FmMU.vIw0
陰惨とか残虐とか通り越して、もはや感動的なくらいw
腹の底から小タブざまぁという笑いがこみあげてくるw

148名無しさん:2017/08/10(木) 23:35:52 ID:27gSByis0
更新乙ンネ
あー子ベビに囲まれてりゃそうなるわな…

149名無しさん:2017/08/11(金) 04:52:33 ID:AxUw3JsM0
エヴァ2号機の補食シーン思い出した。
あの時はもうやめてくれと思ったけど、
相手がタブだといいぞもっとやれに変わるw

そして、ここまで嫌われるベビンネは今まで居なかった気がする

150名無しさん:2017/08/12(土) 12:37:19 ID:8t1evfeIC
ニンフィアが肉食ってのこの話で初めて知ったよ
パルレのイメージしかなかったから意外だったわ

151名無しさん:2017/08/12(土) 15:53:08 ID:46BYY41g0
どっちかっていうと雑食じゃね
完全な肉食や草食はそう多くない

152ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:12:44 ID:JxXnoVAA0
「フィッフィ〜♪」

静まり返った林でシルフィはただ一匹歓喜の声をあげた
小便の湯気が立つ血肉の塊と吊られたズタ袋はそれに何の反応も示すことはない

チビママンネの愛と勇気も女子社員の慈悲と友情も
悪魔によっていとも簡単にズタズタに踏みにじられ、汚辱と絶望に塗れながら打ち捨てられた
もし、チビママンネが女子社員が受け入れてたら、女子社員がベビを運ぶ役を買って出なかったら
小ベビンネが怖い女に売れていたら、社長一行がシルフィが逃げ出したのに気づいていたら…

この胃の物がこみ上がって来るような最悪の結末は避けられていただろう
一旦その牙を剥いた運命というものは、血に飢えた獣よりも残酷なのかもしれない

153ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:13:28 ID:JxXnoVAA0
「…残っちゃったですね」
「ミィィ…ミィ」「ミッミッ」

ここで場面は再びデパートに移る
イベントは終わって後片付けもひと段落し、
女子社員は檻に集められた売れ残った子タブンネたちをぼんやりと眺めていた
会場を桃色に埋め尽くす程沢山いた子タブンネも、売れ残ったのは19匹
いずれも人見知りしたり人間を怖がってたりしている消極的な子タブだった
皆一様に怯えきっていて、抱き合ったり丸まったりしながらすし詰めの檻の中でプルプルと震えている
心優しい女子社員も、この子タブンネ達にとっては人間という恐ろしい生き物のうちの一匹でしかないからだ

「きっとこの子たちにも優しいお母さんがいたのだろう」「この子たちはどこに連れて行かれるんだろう」
女子社員は子タブンネ達の切なさと行く末を案じ、気持ちを落ち込ませていた

「この子たちは、これから何所に行くのでしょうか…?」
「う〜ん、まだ決まった訳ではないざんすけど、
 ここに入っているポケモンショップに移してそこに販売するざんすかね〜」
「そうなのですか…」

まあ納得できる返答ではあったが、心のもやつきはさらに大きくなる
この子たちはもはやどうあろうと商品でしかないという冷酷な事実を改めて認識させられたからだ
救われる道は優しい飼い主に買ってもらう以外にないのは分かっているが
こんなに怖がってる子が売れるのだろうか
いや、売れたとしても人間と共に暮らして本当に幸せになれるのだろうか…?

「ハハハ、やったなテイツ君、大成功じゃないか!」
「あっ、どうもこんな所までお疲れさまでざんす!
 いや〜お陰様で200以上いたチビちゃん達も今やこの通りざんすよ!」

憂いの女子社員とは対照的に、やたらテンションが高い中年男性が催事場に現れた
このデパートの本社の社長である
言うまでもなく上機嫌の理由はイベントの大成功によるものだ

「おお、君はショーの司会をやってくれてた子だね!いやー結構な名司会だったよ!」
「それ以外にも早出してトラブルを解決してくれたりお世話も泊まり込みでやってくれましたざんすよ
 今回の一番の功労者と言っても過言ではないざんすね〜」
「…ありがとうございます」

せっかくの店長から直々のお褒めの言葉であるが、女子社員はあまり嬉しさを感じられなかった
作り笑いで愛想は尽したが、その心内では憤りすら感じている
タブンネたちの涙を知ろうともせず、ただ数字だけを見て手放しで喜んでいるこの二人にに

「この成功ぶりなら他の支店でもやる事になりそうだよ、クリスマス前あたりに
 ここでも来年の夏あたりにもう一度くらいやりたいねぇ」

154ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:14:36 ID:JxXnoVAA0
「…子はいつか必ず親から離れていくもの。このタブンネたちはそれが早まっただけだよ」

あまりにも言い訳じみた暴論。だが確かに聞いたはずの女子社員は俯いたまま口を紡ぐ
不思議なことに、その心はこの屁理屈に反論するどころか無理に納得しようとしているのであった
それは、小売の平社員の自分からしてみれば雲の上の存在である本社の社長の言葉という事と
自分が許される理屈を探していた心の弱さのためなのだろう
どんなに心正しくあろうとしようが、
彼女も仕事だからと言い訳してタブンネを傷つけた者たちの一員に変わりはしないのだから

一息程の沈黙の後、女子社員は顔を上げ、最後の反論を喉の奥から絞り出した

「それでも、突然に家族とお別れするのは悲しすぎるのです…」

女子社員は幼少期に母親を事故で喪っていた
それ故、あの母性溢れるチビママンネにあれ程まで入れ込んでいたのかもしれない

155ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:15:27 ID:JxXnoVAA0
またまたところ変わって高級住宅街にあるお屋敷と呼んで差し支えない程の大きさの小奇麗な一軒の家
そこには実業家の夫妻と大学生の娘が暮らしていた
こう書くと何不自由なさそうな裕福な一家だが、夫婦は娘のことで深刻な悩みを抱えていた

「そういえば、アルマ(娘)はどうしてる?」
「デパートに行って帰って来てから部屋に閉じこもってますよ」
「また例のお化け趣味か… 変なポケモンは飼い始めるし全くどうなってるんだ…」

高校まで何の問題もなく優等生そのものだった娘だが、大学に入ってからオカルト趣味に凝り始め
今ではすっかりオカルトマニアと化していた
そんな娘の部屋からは、防音部屋にも関わらず子タブンネの悲鳴が漏れている

「ンビィィィィーーーッ!!ンビィィィィーーーッ!!」
「フフフ、もっと遠慮なく怖がっていいのよ♪」「ムキュウウ♪」

お屋敷の2階の一室、魔道書やまじないの道具などオカルトグッズに飾られた部屋
そこに全身紫ずくめの女と小さなムウマ、そして籠の中で泣き叫ぶ子タブンネの姿があった

娘とはデパートにやってきたあの怖い女で、ムウマはそのペット
そして泣き叫ぶ子タブンネは言わずもがなあの勇者ンネである

「ヒッ?!ヒッ!ヒィッ!!ヒギャァァァァァァァ!!!」

しかし、ここから出してと籠の格子を掴んで揺らしながら泣き叫ぶ姿に、もはや勇者の面影はない
両耳には3本ずつ大きな銀色のピアスが通され、腹と背には大きな魔法陣の焼き印がこんがりと押され
尻尾は溶かした蝋で固められ、左足には鎖鉄球つきの小さな足かせがガッチリと嵌められている
ここに連れてこられた時には勇者ンネは必死に暴れ抵抗していたが
怖い女によって縛りあげられ、上記の装飾が施されると一変して怯えるばかりになった

終の棲家になるであろうゴシック調の装飾を施された大きな黒い鳥籠は比較的まともではあるが
問題はその中に床材として敷かれている物で、それは無数の子タブンネやベビンネの頭がい骨である
ポケモンの頭蓋骨はオカルトショップで各種売っていて、その中から小さいタブンネのそれだけをまとめ買いした物だ
どういう訳だかタブンネの物だけ他のより異様に安かった為に思いついた装飾である
人間がそうであるように、勇者ンネもまた足もとに敷き詰められたそれに本能的な恐怖を覚え震え上がった

156ショーケースの裏側で:2017/08/17(木) 14:16:05 ID:JxXnoVAA0
「ムキュッキュッキュ〜♪ ムキュキュッキュ〜♪」「ふふふ、美味しそうねぇ… どんな味がするのかしら?」

勇者ンネが泣き叫ぶ様に笑顔で大喜びのムウマ。
赤い玉を光らせながらくるくると宙返りして喜びを表現している
ここでの勇者ンネの役割は、前述の扱いが示すとおり愛玩ポケモンなどではない
では何かというと愛しき悪霊への生贄、すなわちムウマの餌である
恐怖を餌とするムウマの腹を満たすために、命尽きるまで心を搾取されるというのが勇者ンネの運命だ

「ハァ、ハァ、ハァ… ハァーッ… ハァ・・・」
「あらぁ、もう限界?」

あまりに泣き叫び過ぎたために疲れ果て、膝をついてゼェゼェと息を切らす勇者ンネ
怖い女はそんな哀れな勇者に情けをかけることなく
「これで元気を出してね」と尻尾の先端にライターでカチリと火をつけた
蝋で固める際に予め蝋燭の芯を仕込んでおいたのだ

「クピャアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!!!」

自らの尻尾が燃えているという事実に恐怖し、勇者はとうに枯れ果てた喉で泣き叫び髑髏の上を転げまわる
火は小さいので毛皮に燃え移るということは無かったが、
チャームポイントであるしっぽを焼かれるという精神的ダメージは人間が思うよりもずっと大きい

「フフフ… 元気になったみたいね。…でもこの仔はなんでこんなのを怖がるのかしら?」

先ほどから勇者ンネを泣かせていたもの、それはノートパソコンに映る動画であった
動画サイトで映画の恐ろしい怪物やら肉食ポケモンの捕食シーンやらいろいろ見せていたのだが
その中で一番怖がったのは、女にとってはまるで意外なことに
手違いで再生したニンフィアが餌を食べるだけの可愛らしい動画であった

157名無しさん:2017/08/17(木) 15:05:27 ID:IOZH/SZQ0
乙ンネ

158名無しさん:2017/08/17(木) 19:10:07 ID:pZ9OUFoY0
おっと、ここで場面転換と来ましたか
勇者ンネも楽に死ねそうにないね

159名無しさん:2017/08/18(金) 20:55:05 ID:HFcL1BMw0
勇者ンネがどうなったか気になってましたけど、良い飼い主に沢山遊んでもらえているので安心しましたw

160名無しさん:2017/08/22(火) 22:11:48 ID:NTPdUjlE0
元々の避難所死んじゃったみたいだな

161ショーケースの裏側で:2017/09/13(水) 23:01:35 ID:DoeBjDB60
「シルフィ〜!! 何所にいるの〜?」

ペット業者の社長と男二人のの声が夜の林に響く
社屋に戻ったと同時に居ないことに気づき、急ぎ戻ってきたのだ
フィッフィーと元気のいい返事が聞こえてきたので、3人は藪を分け入り林の中に入って行った
男二人にはその居場所に思い当たる節があった。あのタブンネたちの巣がある場所である

「なんだいこりゃあ…」 「え…? シ、シルフィは大丈夫だよね…?」

その場所に立ち止まった瞬間、血とはらわたの匂いがぷうんと鼻についた
懐中電灯で照らしてみると、血と肉片と、散り散りになった桃色やクリーム色の毛皮が辺り一面に散らばっている
そして一目みただけではその正体が分かり得ぬ赤黒い肉の塊も

「…ニンフィアのじゃねぇです、こりゃタブンネの毛皮ですぜ」
「そーなの、良かった〜」

もしかしたらシルフィのではないかと身震いしたが、違うと知ってほっと一安心した社長
タブンネが惨殺されてるという事はまるで気にしてないのが彼女らしい

「フィッフィ〜」
「あ、あっちにいますぜ」
「シルフィ!!」

足が取られやすい林の中だというのに、社長は躊躇わずにシルフィヘと駆け寄った
シルフィも嬉しそうにしっぽを振りながら走り寄り、社長に抱き付く
残虐な悪魔も大好きな社長の前では子供に戻ってしまうのだ

「良かった〜… も〜、勝手にボールから出たらダメだよ〜っ!」
「大事は無いみたいで良かったですなぁ… ん?」

不意に兄貴分はシルフィが居た方向に何か異様なものがある事に気がつく
木にぶら下がっている何か…。それが肉塊、タブンネの惨殺死体だと男二人が気づくのにそう時間は要さなかった

「ゲッ!! こりゃさっき放した奴じゃねえか!!」
「な、なんだってこんな事に…」

背格好が似ていたので兄貴分はもしやと思い、死臭に顔をしかめながら亡骸を検めると
予想通りに逃がす際に肩につけたマーカーが見つかった

(ひょっとしてシルフィがやったんじゃないのか?だがどうやって?それにしても酷過ぎる…)

様々な疑問を頭に浮かべながらも、兄貴分はとりあえず社長にこのことを報告した

「えーっ!もう死んじゃったの!?」

野生に返して一時間足らずの間にまさかの死亡。これには社長も声を張り上げて驚いた
言うまでもなくタブンネが可哀想とはそれほど思ってはいないのだが、別の大きな心配がある
これではとても契約を果たしたとは言えず女子社員に代金を返さなくてはならないということだ

「そういえばあの赤ちゃんはどうしたの? 一緒に死んじゃった?」
「あ、そういや見てませんでしたぜ」 

弟分が遅れて死体のある藪の中から戻ってきた

「赤ん坊の死体は近くに転がってましたぜ、いやはやしかし酷ぇ事になってます」

弟分が指したところに兄貴分は向かい、社長も怖いもの見たさで付いてきた
懐中電灯で照らされたそれは、余りに惨たらしく変わり果てたものだった

162名無しさん:2017/09/14(木) 00:01:49 ID:762N629k0
「うーわー、酷いよ〜」
「な、何だってこんな事に?」

乱雑に引き裂かれた胴体から臓器を覗かせ、尻からは腸が巻尺のように飛び出て
手足と耳と尻尾は千切られて無造作に散らばっている
だがそれらより何よりも異常性を示していたのは、ビショビショの全身から立ち込める強い尿臭である
それは下手人が悪意を以て引っかけた物だという事は全員が容易に思い至る事ができた

「食うためじゃねぇ、遊びで殺したんだ」
「えっ?!変質者がこの辺に居るって事?」
「いや、人間の仕業とも思えねぇです」

刃物によるそれではない腹の裂け目と手足の切り口、
そして落ち葉に混ざり転がっているズタズタの耳に残っていた歯型
弟分はその二つから人間の仕業ではないと判断した

だが三人は別の理由から薄々ながら確信していた、尿の臭いに覚えがあったからだ
これをやらかした犯人はシルフィだ… と

「もーっ!シルフィっ!お客様のものに手を出したら駄目なんだよっっ!!」
「フィフィーッ!!…」

突然の叱責にシルフィは驚き、耳を下に下げて困惑した表情をしながらササっと木陰に身を隠した
叱るべき点がややズレている所が社長らしさである
ポケモンを叱るのも大事だが、やらかした事はトレーナーが責任を取らねばならない
社長もまたそれを理解していて、謝罪と返金でもって全うしようとしていた

「…うん、それはそれとして、あの子にちゃんと伝えなくちゃ」

苦虫を噛み潰した様な表情で携帯を取り出し、
デパートを出る際に登録しておいた電話番号にかけようとする社長
しかしポチポチと操作し始めた所で、弟分が止めに入った

「待ってくだせぇ社長! それだけは止めてくだせぇ!」

その言葉で社長の指がピタリと止まった
覚悟は決めていたが、躊躇いと思うところがあったのだ

「そんな事して何になるんすか、だれが得をするんですか!
タブンネの親子は森へ帰って幸せに暮らしてる。そう思い続けていた方があの子にとって幸せですぜ!
 自分が野に離したせいで死んじまったなんて知ったら、どんなに悲しむか…」

普段は社長に頭が上がらない弟分だが、この時ばかりは躊躇いもなく考えを通そうと頑張る
あの女子社員に何か恋でもしたのだろうか? 横で見ていた兄貴分は何も言わずただそう思った

「そうだね… これは見なかった事にしちゃおうか」

ここは優しい嘘をつき通した方がお客様にとって一番いい。そう思うことにして、社長は携帯を閉じた

こうして社長一行はこの惨劇を誰にも教えることはなく、自分たちの胸にしまっておく事にし
すっかりしょぼくれたシルフィもボールにしまって車で会社へと戻って行った

163名無しさん:2017/09/14(木) 06:54:31 ID:oGLFmbSA0
乙乙
シルフィには罪はないね、遊んだだけだしね

164名無しさん:2017/09/14(木) 20:02:51 ID:NKZi4ypY0
更新乙ンネ

165名無しさん:2017/09/15(金) 18:39:56 ID:ayRasExs0
切なさを感じる終わり方。

166ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:11:41 ID:5I/tEMbc0
「ただいまです」
「ミィミィ♪」「…チィ?チィ♪」

帰宅した女子社員を出迎えたのは可愛い二匹の新しい家族
眠る我が子を胸に抱き、満面の笑みを向ける小さなママンネ
そしてうつらうつらと目を覚まし、帰ってきたのに気づくとチィチィと嬉しそうに笑う小さなベビンネ
寂しさや悲しみとは無縁の、今までとは違う暖かな我が家がそこにあった

「ミミー♪」「チッチ!チッチ!」

チビママンネに手をひかれて玄関を上がり、楽しいふれあいが始まる
二匹の頭を撫でたり、オモチャで一緒に遊んだり…
あの時のわだかまりは心が通じ合うとすっかり消え去り
人見知りの小ベビンネも、女子社員に大分心を許すようになってきた

「チカー、ご飯ですよ〜」

皆で居間に行くと、食卓には晩御飯のおかずが並べられていた
ハンバーグ、ポテトサラダ、ほうれん草のバター炒めにコーンポタージュスープ
どれも女子社員の好物で子供のころよく食べていたものだ
チビママンネも見たことがない御馳走に目を輝かしている
そして、嬉しい食卓の向こうに、エプロンを着けた母親がにっこりと微笑みかけていた

「あれ… お母さん…」

あまりにも当たり前のようにそこにいたので一瞬は素のままに受け入れたが
その違和感に気づいた瞬間、女子社員の目の前は白い光に覆われた

167ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:12:21 ID:5I/tEMbc0
「うぁ…」

無機質な蛍光灯の光が寝起きでぼやけた目に突き刺さる
デパートから帰ってきた時には疲れ切っていて
着替えもせずにそのままベッドに倒れこんで眠ってしまっていたらしい
意識がはっきりしていくうちに、ぼんやりと記憶が蘇ってくる
あの小さなタブンネの親子は元いたお家へ帰って行って、お母さんは…
気を逸らすように時計を見てみると既に午前2時を回っていた

「…何か食べなきゃ」

夕食を食べていなかったので普通ならかなり空腹のはずなのだが、あまり食欲がない
とりあえず手軽に小さなカップ麺で軽く済ますことにした
夢の中で見た食卓と頭の中で比べてしまい、女子社員は少し悲しい気持ちになった
食べ物だけじゃない、シンとした中にファンヒーターの音だけが響くこの部屋のなんと寂しいことか

食べ終わって何の気なしに携帯電話をチェックしてみると、一件の見慣れない宛先が
あのペットポケモン業者の社長からだ

「…タブンネさん、森へ帰ったんですね」

メールに添付された画像には、森へ向かっていくタブンネの後姿が写っていた
ベッドに寝転びながらその写真をまじまじと眺める
チビママンネの姿を見ていると冷え切っていた心が暖かくなっていくのがはっきりとわかる

「今頃おうちの中で、親子一緒に仲良くおやすみしてるのでしょうか…」

もし、女子社員が小さな親子の無残な末路を知ってしまったら、
自分の行いを気が狂うほどに後悔し、その心に人生を狂わす程の深い傷を負う事になるだろう
しかし幸いなことか、彼女がそれを知りうることは永遠に無いのだ

女子社員がが見た夢は、何も知らぬ偽善者の身勝手な妄想か、朦朧のうちに彼岸を垣間見たか…

168ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:12:54 ID:5I/tEMbc0
「ミッ、ミッ?!」「グミーッンミーッ!!」
「ちょ、ちょっとなんなのよコイツら!?… ギャァーッ!!」

勇者ンネの目の前であの怖い女が吹っ飛ばされた
最強の戦士にして偉大な群れの長、勇者ンネのパパンネがわが子を救出しに来たのだ

「うわぁーん!覚えてなさいよ〜!!」「キュルルルゥ〜!」
「ミーミィ!ミーミィ!」「ミ、ミィ〜」

長ンネの猛攻に怖い女とムウマは泣きながら一目散に逃げ出していき
勇者ンネは一緒に来ていた自分のママンネに籠から救出された

「ミギュルグ… グミィィィィィィ!! グミィィィィィィィィィ!!!!」
「ミィ、ミィ♪」「ミーミミー!」

勇者は母の胸に飛び込み、今までの恐怖と苦痛を洗い流すように思い切り泣いた
次代の長として常に強くあろうとしている勇者ンネも、母の前ではただの子供なのだ
長ンネもそんなわが子を叱ることなく、微笑んでその頭をそっと撫でた

「ミッミッ」「ミミ!」

母の胸でひとしきり泣き、顔を上げた勇者ンネの目の前にいたのはあのチビママンネだった
泣いている所を見られてアセアセと恥ずかしがったが、そんな勇者を小さな母は抱きしめた

『あかちゃんをたすけてくれて ありがとう』

チビママンネが伝えたかったことはこの感謝の気持ち、ただそれだけである
心から心へ熱いものが伝わり、勇者の心は誇りで高鳴った

「ミィッ!ミィ!ミィィ!!」

長ンネは腕を振り上げ、勇ましく鬨のような大声を上げた、
これから皆で、人間捕まった子供たちを取り戻しに行くと宣言したのだ

「ミィミィ!ミィミィ!」

勇者ンネもそれを真似るように腕を上げ気合いを込めて叫ぶ
これからタブンネの戦士たちの、奪われた仲間を取り戻す勇者の旅が始まるのだ

169ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:13:45 ID:5I/tEMbc0
「ミィィ!?」
大きなガシャンという金属音で勇者ンネは飛び起きた
そして曖昧なままの眼に映るのは、格子越しに見下してくる怖い人間
父に倒され、泣きながら逃げ出した筈のあの人間だ!

「ピーィッ!!??」
「何驚いてるのよ ご飯持ってきてあげたのに」

そう言って怖い女が格子の隙間からねじ込んだのは、緑のヘタがついた白い種の塊のような何か
一体何なのかと具体的に説明するとピーマンの芯だ
無造作に投入されたそれはあろうことか漏らした糞の上に落下してしまった

「ンミ、ミィィ…」

この糞の付いた残飯は自分に与えられた食事だと勇者ンネは理解できていたが
もちろん食べる気になれるはずもない。腹は死ぬほど減っているにも関わらずだ
この最低最悪の食事を前にして、勇者はただ立ち尽くすことしか出来ない

「何してるの、さっさと食べなさい。さもないと…」
「フミュギュギュググワァ!!」

女がライターをカチッカチッと鳴らすと、勇者ンネは震え上がり慌ててピーマンを拾い上げて口に入れた
焼印と尻尾を?燭にされた時の恐怖と苦痛がフラッシュバックしたのだ
無理やり飲み込もうとして何度も嗚咽し、死に物狂いで噛み砕こうとして舌や口内を噛みながら頑張るが
それでも苦みと臭みが2重に重なるそれはなかなか喉を通ってくれない

「ミグーッ!ミグーッ!ンミ゙ッ!!」

涙を流し、目一杯の血が混じった唾液とともに汚物を無理やり喉の奥に流し込む
それが胃に落ちた後、勇者ンネはゼェゼェと苦しそうに息をしながらポロポロと大粒の涙を零した
苦しみは過ぎ去った筈なのに、命令されて糞を食べてしまったという屈辱で涙が止まらない
勇者と呼ばれた子タブンネなら尚更だ

170ショーケースの裏側で:2017/09/30(土) 04:17:05 ID:5I/tEMbc0
「食べたわね、じゃあまた寝ていいわよ…」

怖い女はそう言いながら勇者ンネの籠に厚手のカーテンのような黒い布をかけた
もともと部屋が薄暗いこともあってか、籠の中は自分の手もまともに見えぬほどの真っ暗闇だ

「クミィ・・・」

勇者ンネは寝ころんではいるが眠れない
硬い髑髏の床が、ジンジンと痛み出した焼印と尻尾蝋燭の痕が、化膿しだした耳のピアスの痛みが
口内に残る気持ち悪さが、ピーマンの芯一本では満たされるはずのない空腹が
糞を食わされた屈辱が、弱い自分への悔しさが
勇者ンネが眠りにつくのを寄ってたかって妨げていた

「ミ… ミ…」

眠りもせずにじっとしていると、色々な思い出が頭に浮かびあがってくる
先ほど夢に見たためだろう、一番強く思い出したのは両親の最後の姿だ

聞きなれない大きな音が鳴って、見たことないやつ、人間というやつが現われて…
群れにあった巣はみんな壊され、強かったはずの群れの戦士たちは人間の味方のポケモンに次々と倒され
泣き叫びながら子供を連れて逃げ惑うママンネたちも襲われて子供たちはみんな捕まっていった

その中で父である長ンネはルカリオの波動弾の直撃で臓物をあたり一面に撒き散らしながら息絶え
最愛のママンネは自分や兄弟たちを守ろうとしてドリュウズのアイアンヘッドを顔面に受け倒れた
骨ごとグチャグチャに砕かれた母の顔面を、急速に静まり死に向かっていく父の心音を
勇者ンネは生涯忘れることは出来ないだろう

「フミィ… チィィ…」

その記憶はあまりにも鮮明だ。先ほどまで見ていたあれが夢だということがはっきり分るほどに
自分は何もできず、助けてくれる者はもう誰もおらず、一生ここから出られずに苦しみぬいて死んでいく
そんな絶望が幼い心を夜の闇よりも暗く覆っていた

「チィィ… チィィ…」

だが、そんな勇者ンネの心にただ一つ光明がある
この恐ろしい人間から恩タブの子である小ベビンネを守ったというただ一つの功績だ
それは勇者としての誇りとなり、支えとなって押しつぶされそうな心を正気に保っていた

もし、勇者ンネがあの小さな親子があの忘れえぬ悪魔の牙にかかり
凄惨極まる死を迎えたという事実を知ってしまったら
張りつめた心は粉々に砕け、二度と正気には戻れないだろう
幸か不幸か、この狂っていた方が気が楽な地獄の中、勇者ンネはその真実を知りえることは無いのであった

171名無しさん:2017/09/30(土) 10:45:13 ID:nmNNgb/M0
乙ンネ

172名無しさん:2017/09/30(土) 21:11:08 ID:UdOZI2uI0
チカちゃんには悪いが、死んでくれて本当に良かった
夢で見た様な展開は怒髪天モノなので

173名無しさん:2017/09/30(土) 21:25:59 ID:zDc9/MU60
夢オチ&「現実は非情である」

チカちゃんは早いとこ忘れなさい
その分、勇者ンネが代わりに苦しんでくれるから

174ショーケースの裏側で:2017/10/02(月) 02:19:08 ID:kZV2RQug0
『いや、人が考えるいい物が必ずしもポケモンにとってもいい物だとは限りませんぜ
 このドリュウズも高いフーズよりも車に轢かれたフシデの死骸の方を喜んで食べやがりますし…』 

寝巻に着替え、寝室でベッドに腰掛けるペット業者の女社長
ボーっとする中で先ほど交わした雑談の弟分の何気ないこの一言をぼんやりと思い出していた
寝室にはシルフィも一緒だ
先ほど怒られてしょんぼりしていたが今はケロリとして呑気に毛づくろいなどしている
社長はそんなシルフィを少しの間見つめた後、何かを思い立ったようにふらりと部屋から出て行った

「フィ〜?」

シルフィはトイレに行ったのだろうと思い、特に気に留めなかったが、トイレにしてはずい分と長い
さすがにおかしいと思い、様子を見に行こうかと気迷い始めたとき
社長が両手に何やら色々と下げて部屋に戻ってきた

「シルフィ、今日は特別にお夜食を食べちゃお。好きな方を選んでねっ」
「フィィ〜!」

シルフィの目の前に出されたのは洒落た餌皿に盛られたいつも食べさせている上等なポフィン
もう一つの方なのだが床にゴミ袋を敷き、そこにバケツから何やら薄汚れたピンクの塊をドサリと落とした

「アゥ… ァゥゥ…」
「どう?この子を好きにしちゃっていいんだよ?」

その塊の正体は皆さんお察しの通り血で汚れたの子タブンネだ
腕と足、そして口元から夥しく血を流し、グネグネと腰を曲げながら苦悶の表情でのたうっている
大きな毛抜けがあってデパートに出荷されなかった個体を持ってきたのだ
それにしてもなぜ血まみれなのかというと、社長が食べやすいようにと加工したからである
逃げられないように金槌で脛を両足とも潰し、
叩かれると痛いからと両肘にナイフを入れて関節を壊し
噛みつかれないよう顎を外してからペンチで全ての歯を一本ずつ丁寧に抜いて出来上がりだ
抵抗されてシルフィが怪我などしないようにという親心なのだが
最も、シルフィにしてみれば完全に余計な御世話であり、子タブンネにしてもただの拷問され損である

175ショーケースの裏側で:2017/10/02(月) 02:20:09 ID:kZV2RQug0
「フィッフィィ〜〜♪♪」

シルフィが選んだのは子タブンネの方だ。その選択には全く迷いは見られない
トレーナーの許しをもらって堂々と出来るという喜びも大きかった

「ゥゥゥゥゥゥ!! ァァァ!!!」

本能的に命の危機が分かったのだろう
シルフィが迫ると子タブンネはぎこちないハイハイでバタバタと逃げ出した
手足を動かすたびにズキン!ズキン!鋭い痛みが全身を走り
声が出なくなった口からは音にならなかった悲鳴を赤い涎と共に絶え間なく吐き出し続ける
普通なら体を動かすこともままならぬ針の筵の如き激痛であるはずだが
鼻息が当たる距離にまで迫る死への恐怖がこの哀れな子タブンネを突き動かしている
だがそんな辛苦に塗れた命がけ逃避も、幼い寿命を30秒程伸ばす事だけしか成果は無かった


「ァァァァァァァボボボボボボギュギュ……」

耳に噛みつかれて振り回され、ビタン、ビタンと強く床に叩きつけられると
子タブンネはぐったりと動かなくなった
だが息絶えたわけではなく、背骨にダメージが行って動けなくなっただけである
普通の肉食ポケモンならここで喉笛を噛みちぎって止めを刺すのだが
シルフィは息があるうちに食べたほうが楽しいという理由でそれをしなかった

「クプププププポポポポ・・・」

生きながら臓物を食いちぎられ、白目をむき口と鼻からコポコポと血のあぶくを吹き出す子タブンネ
シルフィは腸を引っ張ったり、肺を噛みつぶして中の空気が弾けるのを楽しんだりと
顔中血まみれになりながら臓物を玩具にしてのお夜食を満喫した

社長は眼前で振り拡げられる惨劇を止める事も諌めることもせずただ見つめていた
その視線は陰惨さへの嫌悪や残虐な光景に対する恐怖などもなく
遊ぶ子供を見つめる母親のような優しいものだった
そしてシルフィが食べ終わるのを待ち、その頭をそっと撫でながら語りかける

「ごめんねシルフィ、私、今までシルフィの事を分かってあげてなかったんだね」
「フィー?」

その謝罪の言葉の内には何か吹っ切れたような爽やかさがあった
すぐ横に転がる無残な骨肉にはとても不釣り合いな

「でもね、私、シルフィの気持ちならよーくわかるよ」
「フィ?」
「私ね、お仕事でたまにいらないタブンネを処分… 殺しちゃうんだけど
 その時に心がきゅーんとなって、すっごく気持ちよくなっちゃうんだ」
「フィ〜??」
「それだけじゃないよ、普通にお世話する時もタブンネちゃんたちをちょっとだけ苛めちゃうんだ
 わざと冷たいお水で洗ったり、おやつをちょびっとしかあげなかったり…
 ふふふ、赤ちゃんたちの前でお母さんタブンネのお乳をペンチで千切っちゃったりもしたんだよ
 怖いね、シルフィ」
「フィーフィ♪」
「ふふふ、おかしいよね。こんなこといけないって、変だって分かってるはずなのにね
 …これは私とシルフィだけの秘密だよっ」
「フィー♪」

そうして社長は先ほどまで可愛い子タブンネだった赤くてヌメつくものをゴミ袋に閉じ
生臭い床を雑巾がけして、シルフィの顔もタオルと濡れティッシュで奇麗にしてから
愛するポケモンと共にベッドに入るのだった




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