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スタンド小説スレッド3ページ

1新手のスタンド使い:2004/04/10(土) 04:29
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

395N2:2004/05/23(日) 12:28

「……『ウェブカッター』」

リル子さんの手中で収束した糸は、その形状を細身の剣のように変えた。
そして、飛来してくる糸を、一閃、二閃、三閃…。
針は微塵に砕け、やはり彼女の手前でその勢いを失った。
こりゃ一体、どういう事だ!?

「ウソ!ウソだよ!!
糸が針を壊せるはずが…」

動揺しうろたえる少女に、すかさずリル子さんの追撃が入る。
まともに入れば少女の身体を二分していた一撃を、彼女は寸での所で回避した。
逃げ遅れた彼女の髪が宙に舞う。

「蜘蛛の糸…と言うとよくネバネバしていて飛んで来た獲物を逃さない、
っていうイメージを抱く方が多いでしょうから、
それで中にはあの糸は全部が粘着性の強いものだとお思いの方もいらっしゃるようですけど、
本当は違うのですわよ。
蜘蛛の巣は蜘蛛自身が歩く必要もありますから、縦糸は切れにくくてツルツルした糸、
横糸は飛んで来た獲物をくっ付ける粘着性のある糸、という風になっているんですわよ」
(ハッ!どうせこんなガキだからこの程度の事も知らなかったんだろうよ)
とっさに後ろへと跳んだ少女を壁際にじわり、じわりと追い詰めながら、
リル子さんが得意げに語る。

「そして私の能力『トリビュート・トゥ・べノム』はそれら2種類の糸を使い分ける能力!
相手の攻撃の威力を殺す粘っこい横糸に、
相手の防御を打ち砕く強く頑丈な縦糸!!
…どう考えても分が悪いようですわね。但し、あなたがですけど」

完全に少女は塀の角へと追いやられた。
再びリル子さんがスタンドのヴィジョンを形成する。

「それじゃ、そろそろ年貢の納め時というやつですわね…」
(覚悟は出来てんだろうな、オラァ!!)

396N2:2004/05/23(日) 12:29

リル子さんが糸を放出すると共にそれを少女目掛け飛ばす。
少女の動きを封じ、一気にタコ殴りにするつもりなのだろう。
だが、少女はその糸を高くジャンプすることで回避した。
そして更に……!

「みる、みる、みるまらーーー!
わむてさん、地球!」
少女の背中から、純白の翼が生える。
あれも針能力の一環…って訳じゃなさそうだ。

「み、み、みるまらっっ!!!」
途端に、彼女の翼から無数の羽根が舞い落ちる。

「みる、みる、みるまらーーー!」
そして羽根は彼女の号令と共に、無数の針の雨と化してリル子さんに降り注いだ。

「…面倒臭い攻撃をしてくれますわね。
これで私を足止めすると同時に自分は逃げようという腹ですか?」
(…このド低脳DQN策士め…)
リル子さんの言葉どおり、少女はその隙に羽ばたいて逃げようとしている。
だが、リル子さんがそれをみすみす見逃す筈も無い。

「…無駄ですわね」
リル子さんの右手中で、瞬時に糸が絡み合い、それは一つの明確な形を創り上げた。
縦糸による骨に横糸による布を組み合わせた、『糸の傘』。
全ての雨が、それによってリル子さんに触れることはない。
そしてオレ達がそちらへと気を取られている内に、
当のリル子さんは左手から伸びる糸で既に少女を捕らえていた。

「ここまで暴れておいて、もうお帰りになるだなんて、ちょっと虫が良すぎませんこと?」
(たっぷりと痛い目に遭わせてやろうじゃねえかよォ〜〜!!)
彼女が手を引くと、少女がそれに釣られて引き寄せられる。
空中で完全にバランスを失い、何もすることが出来ない。
そして、そのままリル子さんの射程内まで入ってしまい、

『オラァッ!!』

顔面にスタンドの拳がクリーンヒット。
だがそれでもリル子さんの手は止まない。

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラァ―――――ッッ!!!!』

『トリビュート・トゥ・べノム』によるラッシュ攻撃。
少女も必死に身体に針を生やして防御するのだが、
その針も拳で破壊され、ほとんど役に立っていない。
最後の一撃で吹っ飛ばされるも、その身体にはまだきっちりと糸が繋がれている。

「まだよ。まだ終わりませんわ。
この横糸、付けるも剥がすも私次第ですもの」
(こんだけじゃ気が治まらねえんだよ!!)

再び少女の身体が引き戻される。
恐らく、これで決着が付くだろう。
オレらの内で、誰もがそう思っていた。

だがしかし、少女は更なる切り札を隠し持っていた。

397N2:2004/05/23(日) 12:30

「み…み…
みるまらー
Iフィールド」

彼女の容姿が再び変化する。
何やら近未来的な雰囲気を漂わせる彼女の前方から、
正体不明のレーザービームが発射された。

「………危ないですわね」
(この期に及んで…往生際の悪いッ…!!)

どこからエネルギーを捻出したかも分からないレーザービームは、
それでもリル子さんの糸を焼き払ってしまった。
已む無くリル子さんもそれを回避する。

「…こ…こまで…痛い目に…遭わされて………!
絶ッ…………対に…許…さんの……だァ……ッ…!!」
少女は完全に怒りに燃えている。
顔面パンチは彼女のプライドを損なうには十分だったらしい。

「みる…みる…」
再びもう聞き飽きたあのフレーズを唱え始める少女。
だが、今回はどこか様子が違う。

「みる…みる…みる…」
彼女の身体に異変が現れ始める。
首から下の部分が徐々に変質してゆくのだ。

「みる…みる…みる…みる…」
それは徐々に衣服の繊維質な質感から、ぬめぬめつるつるした生々しい質感へと変化し…

「みる…みる………みるまらーーーーーーーー!!!!」
彼女の雄叫びと共に、その姿は完全に異形のモンスターと化した。
顔は元の少女のままだが、首から下があたかも蛇のような姿になっている。
そしてその高さは、まさしく「屋根より高い」。

(こいつは…ラミアか!?
ギリシャ神話における子喰いのモンスターを持ち出すとは、
何たるセンスをしている…)
久々にギコ兄の解説キャラっぷりが発揮された。
…ってかさ、それ以前に羽根生えたりビーム撃ったり、
挙句モンスター化するそのとんでも人間っぷりの方を先突っ込めと。

「みるまらーーー!!」
満身創痍から一転、超強化された肉体を得た彼女がリル子さんを攻める。
さっきまでからは想像も付かない破壊力を持つ拳が、
軽々しくガードすることの出来ないリル子さんを今度は壁際へと追い詰めてゆく。

「…この子…何て破壊力…ッ!」
(クソッ、これじゃあスタンドガードするわけにもいかない…!)

少しずつ少しずつ、塀がリル子さんに近づいてゆく。
そしてとうとう、リル子さんは袋小路に追い詰められた。

398N2:2004/05/23(日) 12:32

「ここまで来れば、もうどこにも逃げられないよ!
ここまで痛い目に遭わされたからには、『痛い』なんかじゃ済まさないよ!
みる、みる、みるまらーーー!」
彼女は、その身をアルマジロの如く丸めだした。
そしてそれが巨大な球状になると、そこから再び無数の針が生えた。
…しかし、今度は身体そのものが巨大化しているが故に、
その針一本一本があの杭サイズと同じ位の大きさをしている。
とてもじゃないが、横糸の壁を作っても串刺し必至だ。

「…参りましたね。まさかここまで追い詰められるとは思いもしませんでしたわ」
リル子さんが、いつになく泣き言を言う。

「謝ってももう許さないよ!
みる、みる、みるまらーーー!」
遂に少女が転がり始めた。
もう駄目か!?リル子さん、万事休す!!

「…で、誰が負けると言いました?」
突然態度を豹変させるリル子さん。
…さっきの弱気は何だったんだ。

「無駄無駄ァ!このサイズのトゲボールを避けることは
絶ッ〜〜〜〜〜〜対に出来んのだァ〜〜〜!」
少女は更に走行スピードを速める。
リル子さん、本当にどこへと逃げるつもりだ!?

「…『トリビュート・トゥ・べノム』」
三度リル子さんのスタンドが現れた。
今度は登場して早々、何やら足に力を込めている。

「見せてあげますわ…!
伊達に強化スーツを着込んでいる人をヴィジョンにしている訳じゃないって事を!」
途端、『トリビュート・トゥ・べノム』が跳躍する。
するとリル子さんの身体も、並外れた高さまで飛び上がった。
それは、軽くトゲボールの高さを越えている。
…そして更に、彼女のいた場所には正真正銘『蜘蛛の巣』が張られていた。
そこへと見事に少女が突っ込んでしまう。

「…!!」
リル子さんの策に気付いても、時既に遅し。
彼女はまさしく、完全にリル子さんの獲物となってしまった。
粘着性の高い横糸に捕まり、彼女は完全に動きを封じられた。

「…巣を支える四隅の糸の内二本は地面にくっつけておき、
残り二本は私が手に持っています…どうしてでしょう?」
少女を飛び越え、着地するリル子さん。
それにより、蜘蛛の巣は見事に少女の上から覆い被さる形となった。

「そ…そんな事分かるわけないよ!」
もがきながらも反論する少女。
そんな彼女を、リル子さんは嘲笑するような顔で見据えた。

「それはね…こうするためなんだよォ―――ッ!!」
巣と地面を繋いでいた残り二本の糸も回収する。
それにより、少女は最早網に入ったスイカ状態となってしまった。

「『トワールヤンク』ッ!!」
その少女を、リル子さんはスタンドでブンブン振り回す。
高速回転の気持ち悪さによってか、少女のスタンドはいつの間にか解除されていた。

「いやややゃゃゃゃ
もうやめてー」
悲痛な叫びを上げる少女。
しかしリル子さんの攻撃は止まらない。

399N2:2004/05/23(日) 12:34

「…そしてここに縦糸で制作した『糸の壁』を作っておきました…。
さて、私はこれからどうするでしょう?」
再び少女にリル子さんが問う。

「そ…ッ!!そん……な…の…わか……!
オエッ」
吐き気を催しながら、彼女にはそこまで言うので精一杯のようだ。
その様子を、リル子さんは大そう機嫌良さそうに眺めていた。

「分からない?分からないでしょう、あなたみたいな子供程度には分かるはずないですもんね」
遂にリル子さんの暴言が表面化した。
…ああ、もうこれはどうにも止められなさそうだ。

「んだったらその身で味わってるんだなッ!!」
大方の予想通り、少女は『糸の壁』に叩き付けられた。
もちろん、それだけでリル子さんの怒りが収まるはずもない。

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラァ―――――ッッ!!!!』

怒号と共に、少女の肉体は何度も何度も硬そうな壁に叩き付けられ続ける。
見てるこっちの方が痛そうだ。
そして最後の一撃で、彼女は壁へとめり込んでしまった。
…それでも、リル子さんの怒りは収まらない。

『オラッ!!』
そのまま壁ごと少女を殴り上げ、それを追い越すように再びハイジャンプ。

『オラァッ!!』
上空で飛んで来る少女を迎え撃ち、腹目掛け強烈なかかと落とし。

『…オオオオオオオオォ―――ッ!!』
そして空中で落下の速度を拳の威力に加算する。

『オラァ――――――――――――ッッ!!!!』
最後に全ての威力を右手に封じ込め、少女の身体に衝撃を叩き込む。
あの頑丈な壁はその余波だけで木っ端微塵に砕け散り、
少女自身は大きく喀血してそのまま動かなくなった。

「…十億年早えんだよッ!このガキッ!!」
(…また十年くらい経ったらお越し下さいね)
やるだけのことをやってどうやらリル子さんもスッキリしたらしい。
気が抜けたのか、最後の最後に本音が口から飛び出した。
と言っても今更誰も驚かないが。

400N2:2004/05/23(日) 12:34



「いやー、凄かったよリル子さん!
僕には何が何だかさっぱり分からなかったけど、
とりあえずリル子さんが凄く頑張ってたのだけは『理解可能』!だったよ!」
(超能力戦士リル子さん萌え、いや燃えるぜハァハァ!)
部屋に戻ったリル子さんを、モララーが温かく出迎える。
…こいつも、スタンドが見えないのによくついて来たもんだ。
そこの部分だけは感心するよ。

「…まあ…その…ありがとうございます」
(…お前に褒められても全然嬉しくないわい!)
リル子さん、かなり嬉しくなさそうである。

「…ところでモララーさん、私の願い事、一つ聞いてくれませんこと?」
突然、リル子さんがモララーに尋ねる。
その瞬間、彼の中であらゆる妄想が暴走した。

「そッ…そりゃあリル子さんの願い事だったら何だって聞いてあげるさ!
それで何だい?高い指輪?式場の準備?それとも…?」
(もしかして『本番』ですかーッ!?
(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア!)
…どうやら、完全に勘違いしてるようだ。
南無阿弥陀仏アメーン。

『オラッ!』
リル子さんの右手に集まった、『トリビュート・トゥ・べノム』の塊。
それを高速でぶん投げると、ヒット直前その頭がぬるり、と伸びる。
そして、ぶつかった衝撃の直後高速噛み付きの連撃!!
哀れ、モララーはその牙に噛み砕かれていく。

『オラァ――――ッ!!』
そして最後に、拳で吹っ飛ばされる。
「ヤッダーバァアァァァァアアアアア」
断末魔の叫び声を上げながら、モララーは血飛沫を撒き散らしながら宙を舞い、
頭から壁に突っ込んでめり込んでしまった。
…が、まだヒクヒク動いている。何つう生命力だ。
同族として、誇りに思うと言うか…いや!その前に情けないと言うか…。



(しかし、結局これで見合いはご破算ということらしいな)
熱狂的なバトルが終わって、ふとギコ兄が呟いた。
あ、そういや最初の目的はそれだったんだ。

(大将、これ以上ここにいてもしょうがありませんよ。
早くリル子さんに気付かれないようにここから脱出しましょう!)
ギコが大将に進言する。
大将もそれに頷き、コソーリと逃げようと動き始めた、その時…


「…で、どうしてあなた方がここにいらっしゃるのですか?」
(…逃げられるとでも思ったんですか?)

401N2:2004/05/23(日) 12:35

………!!!!
ピシャリと障子を開く音の後に、怒気のこもった女の声。
まさかッ、これはッ!!

「リ…リル子…これはその…あれだあれ、
一つの社会勉強の一環として…だな…」
青ざめて必至に言い訳をする大将。
だが、それでリル子さんが許してくれるはずが無い。

「………で?」
殺気に満ちたリル子さんの瞳。
やばい、リル子さんは今さっきの少女の時以上に怒っているッ!!

「……悪く思うな、『サザンク……』」
大将がスタンドを発現させようとする。
…が、リル子さんがその前に先手を取る。

『オラァッ!!』
触手のように伸びる『トリビュート・トゥ・べノム』の拳。
そしてそれは、大将がスタンドを出す前にその本体へと届いた。

「ガハァッ!!」
まともに拳を喰らい、大将がダウン。
そんなッ、頼みの綱の大将がやられただとォ――――ッ!?

「心に負い目を持った者は、スタンドの力も激減する…。
いつもそうおっしゃってましたよね?」
ピクリとも動かない大将を見下ろして、リル子さんがそう尋ねた。
大将は何も答えない。

「そして……」
リル子さんの目がこちらへと向けられる。

「覚悟は出来てんだろうな、オラァ――――ッ!!」
リル子さんの全身から、先程のバトルでは見せなかったほどの量の糸が噴き出す。
それに絡め取られ、オレ達三人は身動きが取れない。

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――――ッ!!』
リル子さんのスタンドと本体のダブルラッシュが繰り出された。
…その後オレ達がどうなったか、それは敢えて言うまでも無かろう。

402N2:2004/05/23(日) 12:38



 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



部屋の中では、ある女による男三人虐待ゲームが繰り広げられている。
それを子供三人は、子供特有の冷酷さで冷ややかに眺めていた。
ほったらかしにされた料理を独占しながら、三人がふと呟いた。

「確カニ今回、 イイ『社会勉強』ニハ ナッタヨ・・・」

「『女ハ怖イ』ッテコトガヨォーーー・・・」

「YES! YES! YES! ”OH MY GOD”」

┌─────────────────────────────────────────────────┐
|                                                                          │
|  ・逝きのいいギコ屋・相棒ギコ・ギコ兄                                        │
|  リル子さんに散々痛めつけられる。                                                │
|  本来ならば再起不能になりかねなかったのだが、そこはギコ兄弟の能力でどうにかなったらしい。             │
│  ちなみに、ギコ兄弟の傷はギコ兄が治療したが、彼がギコ屋の治療は拒否したため            .│
│  その傷は相棒ギコが波紋で治療した。                                                   │
│  再起可能。                                                               │
│                                                                          │
│  ・大将                                                                      │
│  一発でダウンしたのは実は見せかけで、その後に控えるラッシュを喰らわないためであった。                 .│
│  しかしそれを見抜いていたリル子さんに、見合い会場・庭園・そして自分のラッシュで荒らした会場の隣の部屋の ....│
│  修理費を全額押し付けられてしまう。                                                    │
│  占めて一千万円超の経済的負担。(金銭的に)再起不能。                                       │
│                                                                          │
│  ・キッコーマソ                                                                  │
│  秋にもなって池に落とされたお陰で、大風邪を引く。                                         │
│  しかもそれなのに帰ってから同罪ということできっちりリル子さんのラッシュを喰らう羽目に。                    │
│  心身ともにダメージが大きく、しばらく再起不能。                                           │
│                                                                          │
│  ・リル子                                                                      │
│  これに懲りず、いつか阿部本人と見合いをしようと目論んでいるようだ。                            │
│  一説には、高級な和室や庭園をブッ壊してスキーリしたとかしてないとか…。                             │
│                                                                          │

403N2:2004/05/23(日) 12:38
│  ・お見合いするモララー                                                          │
│  病院送り。職場への復帰はまだ先らしい。                                             │
│  だがリル子に対する執着心は再起可能。                                              │
│                                                                          │
│  ・みるまら(わむて・葱看)                                                           │
│  余りにダメージが酷く、放置していれば間違い無く死んでいたのだが、                             │
│  見るに耐えられなくなったギコ屋がギコ兄に治療を依頼。                                   │
│  しかし彼が全面的に拒否したため、相棒ギコが波紋で治療する。                                  │
│  と言っても、それは状況が「最悪」から「宇宙ヤバイ」くらいになった程度だが…。                        │
│  少なくともギコ屋達がこの町に滞在している間は、再起することはないだろう。                          │
│                                                                          │
│  ・手を負傷した仲居                                                               │
│  気絶している内にギコ兄が治してあげた。                                                 │
│                                                                          │
│  ・シャイタマー・ジサクジエン                                                                  │
│  この後、食べきれない料理をパックに詰めてもらい、歩いて自宅へと帰った。                           │
|                                                                          │                                                                        
└─────────────────────────────────────────────────┘

  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

404N2:2004/05/23(日) 12:40

                    〃ノノ^ヾ
                    リ´−´ル
.                   (  l:l )
                     |__,l'l_|
                    |___|
                    .し´J

NAME リル子

まず最初に、彼女が椎名編の神尾と同一人物ではないことを記しておく。

地元TV局に所属する女子アナで、「サザンクロス」の実質No2。
穏やかで礼儀正しい口調とは裏腹に、考えていることは余りにどぎつい。
表向きは身分に従っているが、腹の内ではいつ下克上しようと考えているかも分からず、
大将も彼女の動向には結構気を配っているようだ。

見合い・ニュース番組・料理番組と何かとモララー族と接する機会が多く、
さらにどいつもこいつも下ネタ連発で自分に言い寄ってくるため、
完全にモララー族に対しては拒否反応が出ている。
その為か、個人的な恨みなどは全く無いのだが、ギコ屋に対しては
丸耳なのにどうもギコ2人よりも冷たく厳しく当たっているとの噂。

ただ、戦闘実績も高い為、周りからそういう意味では信頼されているのもまた事実である。

405N2:2004/05/23(日) 12:40

                                 使用前
                                 ___
                                <_葱看>
                              / i レノノ))) \
                                人il.゚ ヮ゚ノ人 みるまらー
                                  ∪Yi
                                  く_ :|〉
                                  し'ノ

                                  ↓

                                 使用後
                                   ____
                                 <_葱看>
                                / i レノノ)) ヽ
                                  人il.゚ - ゚ノ、   みるまらー
                                 fヽ{:::::::::::}ノ
                                 (ヽ::::: ::::::|/)
                                  |::|:: ::::::|::ヽ
                                  ヽ::ヽ:::::::| |:::|
                                  ___|::|:::::::| ヽ:ヽ
                                 /:::::||.:::::::|  ||
                              ノ´:::::::::::N):::::::|  /|
                             /:::::O::::::::ヽ|::::::::|  |ノ
                            ノ::::::::::::::::@::::::::::::ノ
                            |:::::::::::O:/ ̄ ̄
                            ヽ::::::::::/
                             ` ̄´

NAME みるまら(わむて・葱看)

2chでみるまら荒らしが流行した頃、ギコ屋町にも現れた謎の少女。
街中でなんかピコピコやってたかと思うと、通行人の首を鎌で斬り落としたりしていたらしく、
噂は街中に広がっていた。
正体は『もう一人の矢の男』の末端の部下で、ギコ屋達が料亭「伍瑠庵」へと向かったという情報を受けて
そこへと向かったはいいが部屋を一つ間違えたお陰でえらい目に遭う
(とは言え部屋が正しかったならば『クリアランス・セール』『バーニング・レイン』『カタパルト』
それにジサクジエンと『サザンクロス』を一気に相手する羽目になっていたので余計悲惨な結果に終わっていたかも知れないが…)。

名前を言わなかったが彼女のスタンド『new model』は肉体を強化してジョジョ第一・二部の吸血鬼のような真似が出来る
肉体強化型・ヴィジョン無しのスタンドである。
…ぶっちゃけ読んで分かったかと思いますが、最初はただの針を出すスタンドの予定でした。
でもそれだとバトルがすぐ終わってしまうので、結局途中から路線変更してこんなとんでも能力に…。
でもまあ、スタンドを強調する為に途中のとんでも肉体強化は当初全面排除の方針だったので、これもまた良し…か?

406N2:2004/05/23(日) 12:41

                  ∧_∧
                 ( ・∀・)
                 ( <V> )
                 | | |
                 (__)_)

NAME お見合いするモララー

リル子と共に『2ch News』に出演する地元テレビ局のアナウンサー。
長年リル子と仕事を続け、同時にリル子にアタックも続けてきたのだが
ことごとく無視され続けて来た。
今回、かなり姑息な真似をすることで強引に見合いへとこじつけたが、
その代償はかなり大きかったようだ。

本来このキャラはアナウンサーとは別人のはずであるが、
展開上同一人物とした。

407N2:2004/05/23(日) 12:42

             ∧蜘∧
            i´((>Ж<))   ∧毒∧
            | |ж#W⌒)  (_》 《_)ヽ
            |J ノ|J\\  WW/>")
            | | |   \⌒~WW/  ⌒)
            ∪∪     ⌒l Ж /# /
                     〉   WW )
                    /  ∧  ヽ
                    (  ( ヽ  ヽ
                    /  /  ヽ ヽ
                   WW )   ( WW

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃          スタンド名:トリビュート・トゥ・ベノム           ┃
┃               本体名:リル子                  .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -A    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -D    .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -C  ....┃  精密動作性 -C......┃   成長性 -D     .┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃強化スーツに身を包んだ某アメコミのキャラがヴィジョンのスタンド。.┃
┃強度に長け、収束させることで絶大な硬度を生み出せる『縦糸』と  ┃
┃粘着性が強く、相手を捕らえることの出来る『横糸』を放出する。   .┃
┃糸で制作出来るものは幅広く、縦糸は鋭い剣にも硬い盾にもなるし..┃
┃横糸は防御網にも捕縛網にもなる。                   ┃
┃またスタンド自身の運動能力は非常に高く、それを利用して      ┃
┃本体が超人的な動きをすることも可能である。               ┃
┃なお、イメージAAにある蜘蛛男はキャラを分かりやすくするため  .┃
┃だけの存在であって(単にコピペ後編集しなかったとも言う)、     ┃
┃実際にはヴィジョンには含まれてはいない。                    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

408N2:2004/05/23(日) 12:42

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃             スタンド名:new model                    ┃
┃               本体名:みるまら                    .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -− ......┃   スピード -−  ..┃  射程距離 -−   . ┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -B    .┃  精密動作性 -− .┃   成長性 -B   ..┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃肉体を変化・変質させる、ヴィジョンの無いスタンド。            .┃
┃本体は主に肉体から無数の針を生み出す攻撃を使っていたが、   ┃
┃その他にも翼を生やす・ビーム・蛇化などといったことも可。     ┃
┃端的に言えば、吸血鬼みたいな事が出来ると考えて貰って       ┃
┃差し支えない。                                  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

409N2:2004/05/23(日) 12:43

以下、以前の話に出てきて紹介し忘れた分を一挙に載せてしまいます。



                  /⌒⌒ミ
                 _|_J_ミ
                  (´∀` )
                  ( ̄| | ̄)
                  |___| |___|
                  (_(_)

NAME 空条モナ太郎

ご存知、スピードモナゴン財団に所属する海洋研究家。
かつてDIOと戦い、その後も『矢』に関して世界中を調査する。
彼のスタンド「スタープラモナ」は時を止める能力を持ち、最強との呼び声も高い。

擬古谷町へは『矢』を持つ者がもう一人いるとの情報を受けてやって来て、
そこで『もう一人の矢の男』、更に彼と戦うギコ屋を発見した。
そして彼の実力に期待し、また本人達の希望もあって
ギコ屋ら3人に『もう一人の矢の男』討伐の協力を依頼する
(丸餅氏の設定の出来た今にして言えば、<仲介人>の契約を結んだと言うべきか)。

また大将とはどうやら昔からの知り合いらしく、
ギコ屋達に「サザンクロス」入団を勧めたのも彼である。

410N2:2004/05/23(日) 12:44

                   /|/|/|
                   /| .//|
                 /// / |
                 ヽ─0─//
              ______ |´∀`||]
              \@ /ヽ ̄ ̄ /\@ /
              / ̄_| ̄| ̄ ̄|  ̄\
              |  _ュ ) |   /\__  |
               \_ノ _|___| (_/
                  ヽ_|_/
                    ミ┴/

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃             スタンド名:スタープラモナ                 ┃
┃              本体名:空条モナ太郎                 ┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -A    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -E   .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -A    .┃ 精密動作性 -A   .┃  成長性 -完成 ......┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃余りにも凄まじいスピードを誇り、時を2秒ほど止める事が出来る。...┃
┃またパワー・精密動作性も素晴らしく、ダイヤモンドほどの      ┃
┃硬度を誇る鉱石を素手で破壊したり、薄暗い写真の背景にいる   ┃
┃蝿の姿を正確に模写することも出来る。                     ┃
┃多くを語る必要の無い、余りに有名なスタンド。               .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

411N2:2004/05/23(日) 12:44

                      (   ▲∧
                     ⊂、⌒⊃゚ヮ゚)⊃

NAME ミィ

『もう一人の矢の男』の忠臣の一人。
半角で喋るので話が理解しにくいことこの上ない。
相手を感染・同化されるという恐るべき種族的能力を持ち、
更にスタンドも相手をミィ化されるウイルスを放出するというとんでも能力である。
しかし、ギコ屋曰く「ってそれスタンドの意味無いやん」。
戦っている最中に「聖母たちのララバイ」を歌ったのは
単に知っていただけなのか、はたまたその世代の人間だからなのか。

『もう一人の矢の男』に異常なまでの忠誠を誓い、彼の命には何の疑いも持たずに従っていた。
その結果、皮肉にも捨て駒として使われてしまった挙句、
ギコ兄によってでぃの脳細胞を植え付けられ完全に思考がでぃ化してしまい、
最後は『電気スタンド野郎』によってギコ屋達もろとも建物ごと強烈な電気を落とされ、
不死キャラであるにも関わらず完全に塵も残らずに焼失してしまった。

412N2:2004/05/23(日) 12:45

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃          スタンド名:シック・ポップ・パラサイト            .┃
┃                 本体名:ミィ                    ┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -A    .┃   スピード -C   ┃  射程距離 -E   .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -C  ....┃  精密動作性 -E ...┃   成長性 -D     .┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃感染した者をミィ化させるウィルスを全身から撒き散らす。       ┃
┃ウィルスは呼吸・皮膚接触等あらゆる方法で感染するが、       ┃
┃空気中で生存していられる時間は極めて短い。                ┃
┃と言っても感染力は非常に高く、身体のパーツの一部が        ┃
┃既にミィ化してしまった時にはそこを切り落としても             .┃
┃手遅れである可能性の方が高い。                     ┃
┃本体による感染能力は接触ないし自身の虐待・虐殺が         .┃
┃条件であるのに対し、こちらはすぐ死ぬとは言えそれなりの       .┃
┃距離までウィルスは届くため、一応このスタンドに意味はある。    .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

413N2:2004/05/23(日) 12:46

                     ,∧_∧
                    X ノ ハヘ X
                     |゚ノ ^∀^)
                    §,     )
                     !!|  Y |
                     (__)_)

NAME 暗殺者(レモナっぽい)

ひろゆきの命でジョナ=ジョーンズを擬古谷町まで暗殺しに来た女。
どうやら本当に女だそうだが、彼女よりもジョナの方が
余程女らしく見えていたようだ。
手裏剣のスタンド『スカイ・ビューティーズ』で彼を殺そうとするも、
冷気で攻撃を全て防がれた挙句、わざと見逃されてしまう。
そのことで逆上した彼女は背後から奇襲をかけるのだが、
何故か逆に彼女が負傷し、最期はジョナに雷ギロチン
『王妃マリーの悲しみ』を落とされ、黒焦げになる。
しかもその上遺体をギコ兄に解析され、女としてのプライド丸潰れ。アーメン。

だがそもそも何故ひろゆきは彼女を使ってジョナを暗殺しようとしたのか?
肝心の部分については、まだ何も明らかにはなっていない。

ちなみに(レモナっぽい)というのはレモナと断言すると本スレでレモナを使う人が出た時に
不都合が出かねない(そして実際使う人が現れたが)ということを考慮した結果である。

414N2:2004/05/23(日) 12:47

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃          スタンド名:スカイ・ビューティーズ            ┃
┃           本体名:暗殺者(レモナっぽい)               .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -B    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -C  ....┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -E   .┃  精密動作性 -A  .┃   成長性 -D     .┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃手裏剣の形状をしたスタンド。                        .┃
┃本体の意志によって多数発生し、相手向かって飛行し、攻撃する。..┃
┃なおどうやらこれは手裏剣の姿をした群体型スタンドではなく、   .┃
┃その都度本体がスタンドパワーを消費して新しく作っているようだ。 .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

415N2:2004/05/23(日) 12:49

予告編:ギコ兄教授の何でも講義

1/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  んじゃ、講義を始めるぞ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
       よろしくお願いします

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚,,)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |  一体何する気なんだろう…?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  変な真似だけは勘弁だぞ…。
         \________________

2/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  今日は『今後の作品予告』についてだ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
        いつ書けるか分からないのに予告
                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ ;)      (゚Д゚ ;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |  それだけの為にこんな大掛かりなセットを…?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  つーか、兄貴の頭身が…。
         \________________

416N2:2004/05/23(日) 12:50

3/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  今後の予定は、次のようになっている。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
      『兄弟の絆』(仮)
      『痛みを分かち合う会』(仮)
      『デムパ(・∀・)ハイッテル』
      『快楽殺人鬼との戦い』(仮)
      以下、最終決戦へ…?

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚,,)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |  (仮)ってのはほぼ間違い無くタイトルが変わると思って欲しいんだな!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  まあ、一部好評だった『デムパ〜』はそのままで通すらしいが。
         \________________

4/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ちなみに、そこへと何話か椎名編が割り込んでくるから、覚えておくように。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
       椎名編、忘れてませんか?
                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ :)      (゚Д゚ ;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |  普通は忘れてるって…。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  ありゃほとんど空気と化してるからな…。
         \________________

417N2:2004/05/23(日) 12:51

5/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ちなみに、我々ギコ屋編も番外編を入れようかと考えているところだ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
       聞いて驚くなかれ
                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ )      (゚Д゚ ;)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
  |:;::|::U.:::::::::|   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | へー、どんな話?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  嫌な予感…。
         \________________

6/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  それはこれだァ―――――ッ!!
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━━━∨━━━━━━━━━━━━
       『遥かなる旅路さらば擬古谷町よの巻』

                ∩_∩
━|;;::|∧::::... /━━━━━ |___|F━━  ∧∧
  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚#)
  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
  |::;:|;;;|:::.::::::.|□|  √ ̄ (____ノ √ ̄ (___ノ〜
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧======∧===
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄
    | お    い    ッ    !    !
    \__________________

418N2:2004/05/23(日) 12:51

7/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ちなみにこちらがサブタイトルとなっている。
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       〜ピンク玉も出るよ〜
                ∩_∩
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  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚#)
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | ってタイトルは決定事項かよ!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  つーかピンク玉っつったらあのキャラしかいねえじゃねえか!
         \________________

8/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ん?それがどうしたと言うんだ?
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       なんだ もんくあるか

                ∩_∩
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | ラスボスも倒してないのに擬古谷町見捨てる気か、クラァ!!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  このセリフってやっぱり…。
         \________________

419N2:2004/05/23(日) 12:53

9/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  まあ、深い所は(゚ε゚)キニシナイ!!
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       番外は番外
                ∩_∩
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | こら、ちゃんと質問に答えろ!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  放っとけ、もう何言っても答えないぞ…。
         \________________

10/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  お、そろそろ時間のようだな。
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       長いようで短かった授業も、
       これでお終いです
                ∩_∩
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  |::;;|;│つ::..┌─┐   /⊂    ヽ   /⊂  ヽ
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 結局何がやりたかったんだよ…。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  お前は「ピンク玉」と言いたかっただけとちゃうんか、と。
         \________________

420N2:2004/05/23(日) 12:53

11/11
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  んじゃ、これが宿題だ。
\__  _________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━
       『私とギコ兄』のタイトルで
       400字詰め原稿用紙10枚以上に
       作文を書いてくること
                ∩_∩
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  |:;;:|Д゚;) / ∇      (・∀・ #)      (゚Д゚ ;)
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 何で最後にそういう方向に行くんだ!
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         |  ある意味俺には有利な宿題だな…。
         \________________


  /└─────────────┬┐
. <   Not To Be Continued... Maybe | |
  \┌─────────────┴┘

421新手のスタンド使い:2004/05/23(日) 17:10
ワロタ。N2氏乙!

422:2004/05/23(日) 21:37

「―― モナーの愉快な冒険 ――   吹き荒れる死と十字架の夜・その2」



          @          @          @



 丸耳は、しぃの家に足を踏み入れた。
 土足だが、この際仕方ない。
 モララーの家族は、無事に保護してASA本部ビルに送り届けてある。
 防衛面ではやや不安だが、これから戦場に赴く軍艦に乗せるわけにもいかないだろう。
 後は、しぃの家族を保護するだけだったのだが…

 異常は、すぐに感じ取った。
 しぃの家を包囲しているはずの米兵は、1人も見当たらない。
 引き返したにしても、しぃの家族を拘束したにしても、余りに早すぎるのだ。

 丸耳は廊下をゆっくりと進んだ。
 むせ返るような血の匂い。
 そして、家中に散乱する米兵達の死体。
 総じて、死体の損傷は酷い。
 その手足は、まるで食い千切られたかのように散らばっている。
 一体、ここで何があったのか…

 丸耳は、米兵の傍に転がっていた自動小銃を手に取った。
 そのマガジンは空である。
「交戦した… という事は、相手が見えていた?」
 丸耳は呟いた。

 迷彩服の死体に埋もれて、倒れている女性を発見する。
 丸耳は慌てて駆け寄った。
 女性に息はある。特に外傷もない。
 単に気絶しているだけのようだ。
「まあ、これを見れば仕方ないか…」
 丸耳は、血と挽き肉の洪水である周囲を見回した。

 年齢と風貌からして、この女性はしぃの母親に違いないようだ。
「よっ…と」
 丸耳は、しぃの母親を肩に抱えた。
 あと、この家にしぃタナがいるはず…

 1階はくまなく調べ終わった。
「ここに危険はないようなんで… しばらく失礼しますよ」
 丸耳は、しぃの母親を階段の脇に寝かせた。
 そして、ゆっくりと階段を上がる。

 ――僅かな声。
 女の子のすすり泣き、そして呟きが、丸耳の耳に入った。

「…ここか」
 丸耳は、警戒しながら声の聞こえる部屋のドアを開けた。
 女の子らしく、可愛く飾り付けられた部屋だ。
 多少、過剰ともいえるほどに。
 電気はついていない。
 丸耳は、ゆっくりと部屋に踏み込んだ。

 赤いカーペット。
 元々の赤か、血の赤かは判別がつかない。
 部屋の一番奥に、しぃタナは屈み込んでいた。
 その周囲には、跡形もないほど引き千切られた米兵の死体が散乱している。

「私じゃない… こんなの、絶対に私がやったんじゃない…」
 しぃタナは、すすり泣きながら何度も呟いていた。
「誰ッ…!?」
 そして、丸耳の方を見る。
 ようやく彼の存在に気付いたようだ。
 しぃタナの瞳は、何かに対して怯えきっている。

「私は敵じゃありません。正月にモナー君の家で会ったでしょう。覚えてますか?」
 丸耳は両手を広げて、敵意がない事を示した。
「貴方達を保護しに来ました…」
 そう言いながら、丸耳は『メタル・マスター』のヴィジョンを背後に浮かべた。
「な…何、それ…!?」
 しぃタナは、丸耳の背後に視線をやる。

 ――やはり、見えている。
 無意識の発動。
 米兵達を葬ったのは、彼女の仕業に間違いない。
 米兵にも見えていたらしき事からして、物質融合型か?

 丸耳は、しぃタナに手を差し出した。
「…ASAへようこそ、しぃタナさん」

423:2004/05/23(日) 21:37



          @          @          @



 朝食を済ませて、俺は食堂を出た。
 リナーは、ねここが俺のベッドにいた事を誤解しているだろう。
 彼女の部屋に行く前に、機嫌を直す材料を用意しておくか…
 俺は、武器庫へ向かった。

 当然ながら、武器庫の扉には鍵が掛かっている。
 仕方ない、こっそり『破壊』するか…
 俺はニヤリと笑って、懐からバヨネットを取り出した。

「おや? 何をされてるんです?」
 クルーの1人が、俺に声をかけてきた。
「い、いや! 特に何も…!!」
 俺は、慌ててバヨネットを背中に隠す。

「もしかして、武器が御入り用ですか?」
 武器庫を任されているらしい、このクルーは言った。
 俺は無言で頷く。
 すると、クルーは鍵を開けてくれた。
「では、どうぞ…」
 そう言って、クルーが先に武器庫に入っていく。
 俺は恐縮しながら、彼の後に続いた。

 一体、俺の存在はどんな風に伝わっているのだろう。
 驚くほどの優遇振りだ。

「どうぞ。どれでも持っていってください」
 クルーは銃器を示して言った。
 沢山のラックに、大小様々な銃が並んでいる。
 俺は、飾ってあるリボルバーに目をやった。
 そう言えば、リナーがリボルバーを使っているところは見た事がない。
 彼女は、リボルバーは嫌いなのだろうか。

 何となく、大型拳銃の1つを手に取った。
 どれがリナーのお気に召すか、素人の俺にはさっぱり分からない。
「えーと、女の子へのプレゼント用に最適なのは…?」
 俺は銃をラックに戻すと、クルーに訊ねた。

「女性へのプレゼントですか…?」
 クルーは目を丸くしながら、小型の拳銃を手に取った。
「このM1910はどうです? 少し古い型ですが、軽量で女性にも扱いやすいですよ」

「いや、そういう意味じゃなくて…」
 俺は首を振る。
「ああ、なるほど。そういう事ですか…」
 クルーは、ようやく理解したように頷いた。
「それは難しいな。GAU−8/Aの立射カスタムを所持しているような人ですからねぇ…
 あの人が満足する品があるかどうか…」

 どうやら、彼は正確に理解してくれたようだ。
 それにしても… しぃ助教授は俺達の事を何と説明したんだ?

「これなんてどうです?」
 クルーは、奥の棚からやけに古臭いマシンガンのようなものを引きずり出した。
「MG42。第二次大戦中、連合軍兵士を震え上がらせた由緒ある一品です。
 ここまで美麗な状態のMG42というのは、ちょっと無いですよ」

 俺は、そのMG42とやらを受け取った。
 これなら、リナーは気に入ってくれるだろうか。
 どうせ、俺が見たって分からない。この人を信じるとしよう。

「…ん? これは?」
 俺は、机の上に置かれていた短剣に目をやった。
 何か、すごく惹きつけられるものがある。

「ナチスS・A(突撃隊)の装飾短剣です。装飾刀と言っても、切れ味は折り紙付きですよ」
 クルーは説明してくれた。
 俺は、木製の柄を手に取る。かなり軽い。
 刃には、『Alles fur Deutschland』と刻印されている。
 意味は分からない。
 おそらく、ドイツ語だろう。

「お気に召したのなら、差し上げますよ」
 クルーは、刃に見惚れている俺に告げた。
「えっ、いいモナか!?」
 俺は喜んで、その短刀を懐に仕舞う。
 これって、ASAの備品じゃあ…
 そんなにホイホイ他人にあげてもいいんだろうか。
 このクルーが後ほどしぃ助教授に折檻されては、申し訳ないどころの話ではない。

「では、鍵を閉めますので…」
 クルーは言った。
 俺はMG42を手に取ると、武器庫を出た。
「いろいろすまないモナね…」
 俺は、クルーに礼を言う。
「いえいえ。あなた方の働きに期待していますよ」
 クルーは、そう言って去っていった。
 1回り以上も年齢が上の人にそんな事を言われ、俺は大いに恐縮する。
 さて、リナーの部屋に行くか。

424:2004/05/23(日) 21:39

 リナーの部屋をノックした。
 中から返事がある。
 俺は、恐る恐るドアを開けた。

 リナーは、銃を机の上に並べて整備していた。
 俺の方を横目でちらりと見る。
「何か用か…?」
 リナーは、立ち尽くす俺に冷たく告げた。
 明らかに機嫌が悪い。

「プ、プレゼントモナ…」
 俺は何ら気の利いた言葉もなく、リナーにMG42を差し出した。
「…?」
 きょとんとした表情を浮かべるリナー。

「…君の意図が読めないが、とりあえず受け取っておく」
 リナーはMG42を受け取ると、机の上に置いた。
「それにしても… 女性に銃をプレゼントするとは、君はどういうセンスをしているんだ?」
 
「…」
 何と言っていいか、返答に困る。
 だが、リナーの機嫌はかなり直っているようだ。

「ところで、このイージス艦の武装について教えてほしいモナ」
 俺は、さらに追い討ちをかけた。
 彼女の好きそうな話題に持っていき、完全に機嫌を直してもらおうという策略だ。
 この艦で戦闘に赴く以上、艦の武装は頭に入れておいた方がいいだろう…というのもあるが。

「…ちょっと待て。長期戦になるだろうから、お茶でも入れてこよう」
 リナーはそう言って椅子から立つと、素早く部屋を出て行った。
 ――本気だ。
 どうやら、完全に臨戦態勢に入るようだ。
 もしかしたら、地雷を踏んでしまったのかもしれない。

 リナーは、すぐにお盆を持って戻ってきた。
 やけに日本的な湯呑みを2人分携えている。
 俺はベッドに腰を下ろすと、湯飲みを手に取った。
 その横に、リナーが腰を下ろす。

 お茶を軽くすすって、リナーは口を開いた。
「イージス艦の装備を語るには、まずこの艦が必要となった時代背景を語る必要がある。
 そうすると、話は大艦巨砲主義の崩壊に遡る…」
「ええっ! そこまで遡るモナか!?」
 俺は思わず口を挟んだ。
 大艦巨砲主義の崩壊とは、『航空機が強いから、重くて金のかかる戦艦なんていらなーい』という事だったと思う。
 それは、確か第二次世界大戦の時の話だ。

「…文句があるのか?」
 リナーは俺を鋭く睨んだ。
「いえいえ、そんな滅相もない…」
 俺は慌てて首を振る。

 それからリナーは、長い長い長い話をしてくれた。
 開戦当時の軍事産業の偏り、日本軍部の戦略目標の誤り。対米早期講和政策の失敗。無条件降伏の承諾。
 戦後のソ連の台頭。『核』がもたらした軍事バランス。アジア共産化の脅威。頻発する米ソの代理戦争。
 東西冷戦。そして、『鉄のカーテン』の崩壊…
 ギコがいれば、さぞかし話は弾んだだろう。
 要は、ソ連の対艦ミサイルや潜水艦の脅威に対抗して作られた水上艦が、このイージス艦という事らしい。

「…イージス艦は、長射程ミサイルや攻撃原潜を迎撃する為に生を受けた。
 この艦は、超精密化したシステムと最先端テクノロジーの産物なんだ」
 リナーは、何故か誇らしげに言った。
 俺は、無言で冷たくなった茶をすする。

「さて、それではいよいよこの艦の武装の話をしよう。その際に避けて通れないのが、ミサイルの運用だ…」
 リナーは腕を組んで言った。
 なんと、まだ本題に入らないのか。
「一概にミサイルと一括りにしているが、その種類は多い。
 映画等では、区別をつけず滅茶苦茶に撃っている場合が多いがな。
 対艦、対空、対地、対戦車と、用途ごとにミサイルの性質は全然違ってくる。1つ1つ説明していこう…」
 リナーはそう言って茶をすすった。
 あれも、すっかり冷めているはずだ。

 湯飲みをお盆の上に置くと、リナーは口を開いた。
「まず、対艦ミサイル。水上艦の破壊を目的としたミサイルだ。
 徹甲榴弾と成形炸薬弾の2種類がある。両者とも、爆発でダメージを与えるタイプだ。
 なにぶん攻撃目標が大型だから、炸薬量もそれに応じて増える。
 一部例外を除き、そんなに速度は速くない。攻撃目標となる水上艦は、急激な移動ができないからな」
 ふむふむ。
 対艦ミサイルは、スピードは速くないが威力は高い…と。

 リナーは説明を続ける。
「次に、対空ミサイル。航空兵器を撃墜するためのミサイルだな。
 これは、ほとんどが破片榴弾だ。もともと、対空ミサイルは目標に大ダメージを与える事を目的としていない。
 空を飛んでいるものというのは、少しでもバランスを狂わせれば落ちるからな。
 そして航空機を追尾する以上、その速度は凄まじい」
 なるほど。
 対空ミサイルは、スピードは速いが威力は高くない。それでも、飛行機を落とすには充分…と。

425:2004/05/23(日) 21:40

「そして、対地ミサイル。地上攻撃用だ。
 まあ爆弾のようなもので、破片榴弾が主流だ。
 対地ミサイルというのは、さらに用途が分かれるので一概に説明は出来ない。
 射程1万kmを超える対地ミサイルはICBM(大陸間弾道ミサイル)と呼ばれるな」
 ほう。
 対地ミサイルは、種類も一杯…と。

「最後に、対戦車ミサイル。その名の通り、戦車を破壊するミサイルだ。
 現代の第三世代MBT(主力戦車)は、通常の砲撃では撃破し難いからな。
 このミサイルには、HEAT弾と呼ばれる成形炸薬弾を使用している。
 言わば、対装甲用に特化した専用弾頭だな」
 ふむ。
 対戦車ミサイルは、戦車破壊に特化したミサイル…と。そのままだが。

「これらのミサイル攻撃を防ぎ、また自らも幾多のミサイルで武装した艦が、このイージス艦だ」
 いよいよ本題という風に、解説に力を入れるリナー。
 俺は、何となく姿勢を正した。
 リナーは解説を続ける。
「このタイコンデロガ級イージス艦には、スタンダード艦対空ミサイルとハープーン対艦ミサイル…
 そしてトマホーク巡航ミサイルが装備されている」

「でも、どこにあるモナ?」
 俺は、『アウト・オブ・エデン』で艦の外観を視る。
 ミサイルの発射台のようなものはどこにも見当たらない。
「前部と後部の甲板に、正方形で区切られた区画が見えるだろう…?」
 リナーは言った。

 確かに、前部甲板の真ん中に1.5mほどの正方形の部分がズラリと並んでいる。
 その数、約60個。これは、何かのフタか…?
 後部甲板にも同じものが並んでいるが。

「それが、VLS(垂直発射システム)。ミサイルの格納庫と発射口を兼ねている」
 リナーは解説した。
 なるほど…
 あのフタがパカッと開き、ミサイルが飛び出すわけか。
 フタは、とんでもない数である。
 あの中に、無数のミサイルが…

「で、他の武装だな。艦の前後に1門ずつ装備されているのが、127mm単装艦載砲だ。
 対艦ミサイル、水上艦、陸上目標の破壊とオールマィティに使える。
 君はたった1門しかないとか不平を垂れていたが、1門しかないのは増やす必要がないからだ。
 あの砲は、イージス・システムとのリンクにより同時に100以上の目標を捕捉・撃破できる」

「それは、すごいモナね…」
 俺は、素直に感嘆した。
 砲門数が少ない=弱いという考えは、それこそ大艦巨砲主義の過ちそのものだろう。
 戦闘に於いて、外見で判断するというのは論外である。
 俺は大いに反省した。

「で、艦橋に備え付けられているのがCIWS20mm機関砲だ」
 リナーは説明を続ける。
 あの、ガトリング砲のオモチャみたいなやつか。

「あれは近距離防衛用だ。寸前まで迫った航空機やミサイルを叩き落す役目だな。
 射程距離は1.5Kmと短いが、毎分3000発の発射速度と高い命中率を誇る。
 捜索・探知・脅威度評価・追尾・発砲・弾着修正・撃破確認・次目標探知を全て自動でこなし、
 イージス・システムとリンクして、多数の目標を同時捕捉できる。
 航空機10機程度なら、20秒で叩き落せるな。
 とは言え、この兵装には威力の低さという弱点があるが」
 リナーは一息で言った。
 聞いているこっちも、段々疲れてくる。

 リナーは、言葉を切るとお茶を口にした。
 やはり、喋り続けていると喉が渇くのだろう。
「他にも、対潜ロケット・アスロックを装備しているので、潜水艦とも互角以上に戦える」
「対潜ロケット…? ミサイルとは違うモナか?」
 俺は訊ねた。
「まあ、魚雷のようなものだ。ロケットとミサイルの区別は非常にややこしい。
 映画はもちろん、報道メディアでも混同している場合が多いな。
 無反動砲や携帯ミサイル、誘導と非誘導ミサイル、さらにグレネードランチャーまでごっちゃになっている場合がある。
 さらに、バズーカと呼ばれる対戦車ロケットの固有名詞呼称問題なども無関係ではない…」
 リナーは言った。
 俺はふと時計を見る。何と、もう12時。
 すでに昼時だ。

「リナー、昼食を食べに行かないモナ?」
 俺は、リナーの話が途切れるタイミングを見計らって食堂に誘った。
「あまり食欲はないが… まあ、たまには普通の食事も悪くないな」
 リナーは承諾したようだ。
 俺とリナーは、連れ立って部屋を出た。

426:2004/05/23(日) 21:41


 食堂に入る。
 中は、一息ついているクルー達で賑わっていた。
 長い机といい椅子といい、まさに食堂と言うイメージだ。
 とても最新テクノロジーの結晶、イージス艦の艦内とは思えない。
 俺達は、カウンターに並んだ。
 昼食はうどんとケーキのようだ。

「おっ! あんたが噂の!! 大食いなんだってねぇ。ケーキのイチゴおまけしてあげるよ」
 食堂のオッサンは、ケーキにイチゴを2個乗せてくれた。
 …俺は、どんな風に伝わってるんだ?
 俺達は盆に載せたうどんとケーキを携えて、空いている席を探した。

「あっ、モナーさんとリナーさん!」
 ねここの声。
 彼女は、席についてうどんをすすっていた。
 クルー達はみな同じような格好をしているので、猫の顔を模した帽子はよく目立つ。
 その隣には、無表情のありすの姿があった。
 
「…」
 俺は、つい無言でリナーの方を見た。
 ありすとねここの正面の席は、うまい具合に空いている。
 ここで座らねば、明らかに不自然である。
 リナーは、特に気にしていない様子だが…

「よいしょ…」
 俺は、ありすの正面に腰を下ろした。
 その隣にリナーが座る。
 恐る恐る、周囲の雰囲気を視た。
 別に、不穏な気配はないようだ。
 同時に、何か悲しくなってきた。
 何で、俺がここまで心を痛めなければならないんだ…?
「頂きますモナ」
 俺は割り箸を割ると、うどんを一気にすすり込んだ。

「それにしても… 随分長い間、愛の語らいを続けてましたね」
 ねここは嬉しそうに言った。
 俺はうどんを吹き出す。

「か、監視カメラ…!?」
 俺は、慌ててねここを見据えた。
「ふふふ…」
 ねここは、露骨に目を逸らす。
 …まあいい。
 ねここの言葉からして、会話内容までは聞こえていなかったのは確かだ。

 ふと、渋い顔で固まっているありすの顔が目に入った。
 ありすは、先程から不動でうどんと睨みあっている。
「ありすは、猫舌なんです」
 俺の目線を追って、ねここは言った。

「…で、敵艦隊の規模はどの程度なんだ?」
 リナーは、おもむろにねここに訊ねる。
 ねここの目が僅かに真剣さを増した。
「…第1護衛隊群と第2護衛隊群の出港は確認できました。
 モナー君にも言いましたが、今日の夜には危険域まで到達します」

「護衛隊群…? それって、強いモナか…?」
 俺は何となく訊ねた。
 リナーは俺に視線を向ける。
「第1護衛隊群の旗艦はDDH『しらね』。第1護衛隊にDD『むらさめ』、『はるさめ』、『いかづち』。
 第5護衛隊にDD『たかなみ』、『おおなみ』。
 第61護衛隊にはDDG『はたかぜ』、そしてDDG『きりしま』。ちなみに『きりしま』はイージス艦だ。
 第2護衛隊群の旗艦はDDH『くらま』。第2護衛隊にDD『やまぎり』、『さわぎり』。
 第6護衛隊に『ゆうだち』、『きりさめ』、『ありあけ』。
 第62護衛隊に、DDG『さわかぜ』とイージス艦であるDDG『こんごう』だ」

「…よく知ってますね」
 ねここは、感嘆した様子で言った。
 …いや、艦名を羅列されてもサッパリなんだが。
「あの… もう少し分かりやすく説明して欲しいモナ。DDとかDDGって何モナ?」

「強いのか?なんて曖昧な聞き方をするからだ。強い弱いで言えば、確実に強い。
 DDとかDDGと言うのは、艦種記号だ。
 DDは駆逐艦。まあ、通常の戦闘艦だと思って構わない。
 DDGはミサイル駆逐艦。DDのミサイル複数搭載型だ。イージス艦もDDGに分類される。
 DDHは、DDのヘリコプター搭載型。対潜ヘリは、潜水艦の天敵だ。
 …で、ASAは潜水艦部隊を所有しているのか?」
 俺に解説していたリナーが、ねここに視線をやった。

「…ひみつです」
 ねここは、リナーから目を逸らす。
 うわっ…、火に油を注ぐような事を…!

「そうか…」
 だが、リナーはあっさりと引き下がったようだ。
 何故?
 ブチ切れてもおかしくないと思ったのに…

427:2004/05/23(日) 21:41

「うどん、あつい…」
 そう呟きながら、ありすはようやくうどんを食べ始めた。
 俺も、うどんをすすり込む。

「まあモナー君の『アウト・オブ・エデン』があれば、敵艦隊なんてものの数じゃないですよ」
 ねここは、とんでもない事を言った。
 何と言うか、俺に期待されても困る。
「モ、モナは海戦の事なんて分からないモナ!」
 俺は慌てて言った。
 ねここは、俺に笑顔を見せる。
「私もしぃ助教授も、そんな事は分かってますよ。こちらで全部指示するし、難しい事は全然ありません」
 その言葉を聞いて、俺は胸を撫で下ろした。
 とは言え、俺に何をさせる気なのか…

「ともだち…」
 ありすはそう言いながら、俺をじっと見た。
 そして、俺のケーキに視線をやる。
 ありすは、自分のケーキは食べ終えたようだ。
 皿の上にイチゴのヘタが転がっている。

「…? モナのケーキ、欲しいモナ?」
 俺は、イチゴが2個乗っているケーキの皿に手をやった。
 こくこくと頷くありす。
 ケーキは俺の大好物だが、ここで断るのはあまりに大人気ない。
「じゃあ、あげるモナ」
 俺は、ケーキをありすに差し出した。

「ありがと、ともだち…」
 そう言って、ありすはケーキをもしゃもしゃと食べ出した。
「…モナの事をともだちと呼ぶのは勘弁してほしいモナ。
 モナはウィルスをバラ撒いたり、西暦を終わらせたりはしないモナ…」
 俺はありすに告げた。
 そんなのは無視してケーキを食べ続けるありす。

「…さすがモナーさん。相変わらず女の子に優しいですね」
 ねここは、ろくでもない事を言った。
 しぃ助教授といい、ねここといい…
 俺は、ASAに恨みを買うような事をした覚えはないが。

 俺は、ふとリナーの方に視線をやった。
 この程度、別に怒ってないよな。
「ああ、全然怒っていないさ…」
 リナーは笑顔で言った。
 ほら、大丈夫だ。
 金属製のスプーンが不自然に曲がっているのは、この際見なかったことにしよう。

「ごちそうさま!」
 ねここは、ケーキのスプーンを置いた。
「じゃあ、私はお昼の涼風人から副艦長に戻ります。行こう、ありす!」
 ねこことありすは席を立つと、食堂を出ていった。
 見れば、リナーも食べ終わっている。
「じゃあ、モナ達も部屋に戻ろうモナ…」

 部屋に戻る途中で、俺はリナーに訊ねた。
「それにしても… ねここに『ひみつです』って言われた時、よく怒らなかったモナね」
「別に怒る理由はない。潜水艦部隊の有無は、向こうにとって軍事機密だからな。
 逆に、そんな事を簡単に教えるようでは器が知れる…」

 俺は感心した。
 なるほど。色々あるんだなぁ…
「だが十中八九、ASAは潜水艦部隊を所持しているだろうな」
 リナーはそう断言した。

428:2004/05/23(日) 21:43


 俺達は、再びリナーの部屋に戻った。
 夜まではヒマである。
 リナーは、ゆっくりとベッドに腰を下ろして言った。
「さて、先程は途中になってしまったが…
 愛称が一般名詞化してしまい、混同を引き起こす事例について説明しよう」

 ゲッ! まだ終わってなかったの!?
 俺は思わず後ずさる。

「まあ座れ。先程はバズーカに触れたが、ガトリングとバルカンも混同され…」
 リナーは語り出した。
 もう、しばらくは止まらないだろう。



          @          @          @



 そして、日が暮れた。
 もはや何の話かも良く分からない。
 窓がないので見えないが、時計は7時の針を回っている。

「もう夕食の時間か… すこし中断するか」
 リナーは、時計を見て言った。
 俺はベッドから腰を上げる。
 7時間近く座りっぱなしだったので、腰が痛い。

「リナーは夕食はどうするモナ?」
 俺はリナーに訊ねた。
「食欲はないが… 君に付き合う事にしよう」
 リナーはベッドから立ち上がる。
 俺達は、揃って食堂に向かった。


 今度は、ねここ達には会わなかった。
 夕食はカレーである。
 食堂のオッサンは、量をサービスしてくれた。非常にありがたい。
「今日は金曜日… 金カレーか」
 リナーは、良く分からない事を口にした。


 俺達は、夕食を済ませて再び部屋に戻ってきた。
「いよいよモナね…」
 少し緊張する。
 一体、何をやらされるのだろう。

 ドアがノックされた。
「モナー君、御指名でーす!」
 やけに陽気なねここが顔を出す。
「持ち物は何もいらないので、前部甲板に来て下さい!」
「…分かったモナ」
 俺は返事をする。
 ねここの顔は、すぐに引っ込んだ。

「じゃあ、行くモナ」
 俺は、リナーに声をかける。
 リナーは頷いて立ち上がった。
 俺達は、遊ぶ為にこの艦に乗ったのではない。
 ASAの手伝いに来たのだ。
 心の中で気合を入れると、俺は部屋を出た。
 当然、リナーも一緒だ。

 俺とリナーは、前部甲板に出た。
 夜風が冷たい。
 何か、上に羽織るものを持ってくればよかった。
 甲板の真ん中には、ねここが立っている。
 俺達は、ねここの傍まで歩み寄った。

 風で帽子が飛ばされないように、ねここは左手で帽子を押さえていた。
「はい、どうぞ」
 ねここは、俺に無線機と小冊子を渡す。
 無線機はともかく、この本は…?
 疑問に思いながら、俺は無線機のイヤホンを装着する。
 無線機本体は、胸ポケットに固定した。
「無線機は、もうスィッチが入っています。今は、しぃ助教授に繋がっています。
 あっちに伝える時は、このボタンを押しながらしゃべって下さい」
 ねここは、無線の使い方を説明してくれた。

『聞こえますか、モナー君?』
 イヤホンから、別の艦に乗っているというしぃ助教授の声がした。
「うん、聞こえるモナ」
 俺は返答する。

『では、さっそく働いてもらいましょう。渡した冊子の12ページを開けて下さい』
 しぃ助教授は言った。
 まるで、遠足のしおりだ。

「12ページ…?」
 俺はパラパラと冊子を開いた。
 1ページにつき1機、飛行機の写真がカラーで載っている。
 しぃ助教授が指定した12ページには、胴部に大きな皿のようなものを乗せた飛行機があった。
 かなり特徴的な外見である。
 E−2Cと記されているのは、この飛行機の名前だろう。

『その飛行機、周囲に飛んでませんか?』
 しぃ助教授は言った。
「ちょっと待ってモナ。えーと…」
 俺は、『アウト・オブ・エデン』を発動させた。
 とりあえず、360度完全に把握できる範囲にはいない。
 そこから先は、双眼鏡のように極端に視界が狭くなる。

 俺はもう1度写真を見た。機体の形状を頭に叩き込む。
 そして、再び顔を上げた。
 普通に視るのではなく、周囲の空間をサーチする。
 他の風景は一切無視して、この航空機だけを視界に捉えるように…

429:2004/05/23(日) 21:43

「いたモナ!!」
 俺は思わず叫んだ。
 『アウト・オブ・エデン』は、350Kmほど先に飛行しているE−2Cとやらを捉えた。

「大体でいいので、この艦の進行方向を中心にした角度でしぃ助教授に知らせてあげて下さい」
 ねここは、真剣な表情で言った。
 俺は無線機のスィッチを押す。
「え〜と、右115度の方向、362Km先モナ」
 俺はしぃ助教授に、捉えた飛行機の位置を教えた。
 少しの間。
 メモでも取っているのだろう。
『…やはり、いましたか。他には?』
 しぃ助教授は訊ねてきた。

「他は… いないみたいモナね」
 『アウト・オブ・エデン』で周囲をサーチして、俺は言った。

『では、次に7ページをお願いします』
 俺は、7ページを開く。
 片方の羽根に2個、合計4個のプロペラがついた特徴的な飛行機だ。
 P−3Cとある。

「これを探すモナか?」
 俺は訊ねた。
『ええ。そこそこの数がいると思います』
 しぃ助教授の返答。
 俺はその飛行機の外観を頭に叩き込むと、周囲をサーチした。

 コツは先程掴んだので、今度の捜索は早い。
 …400Km離れたところに1機発見。
 その近くに、もう1機。
 別の場所にもいる。
 探知可能領域には、全部で8機だ。

「8機いるモナ」
 俺は、しぃ助教授に伝えた。
「やっぱり、対潜部隊が動いていますか…」
 ねここが息を呑む。

『じゃあ、その8機の位置を教えて下さい』
「分かったモナ。1機目は…」
 俺は、しぃ助教授に全ての飛行機の場所を伝えた。
『さすがモナー君! すごいですね〜 予想以上の成果ですよ〜!』
 無線機の向こうから、上機嫌なしぃ助教授の声が伝わってくる。
「いやぁ…」
 何となく照れてしまう俺。

『こっちから聞きたいのはそれだけですが、他に何か不審な飛行機は飛んでませんか?』
 しぃ助教授は訊ねてきた。
「え〜と…」
 俺は、『アウト・オブ・エデン』を展開させる。
 飛行機、飛行機、飛行機…と。
 …!!

「…1機いるモナ」
 『アウト・オブ・エデン』は、380Km離れた位置に飛んでいる機体の姿を捉えた。
 胴体がずんぐりとした特徴的な機体…
 俺は、小冊子をパラパラとめくる。
 24ページに、合致する飛行機が載っていた。

「EA6−Bってのが、左12度、382Kmの位置にいるモナ」
 俺は、しぃ助教授に告げた。

「『プラウラー!?』」
 ねこことしぃ助教授は同時に声を上げる。
『プラウラーって、米空母艦載機ですよね…?』
 イヤホンから、隣にいるねここの声が聞こえてきた。
 それに、しぃ助教授が答える。
『ええ、そのはずです。機体を海上自衛隊に貸与したか、もしくは…』

「モナーさん、周囲に大艦隊はいませんよね…?」
 ねここは俺に訊ねた。
「う〜ん、いないモナね…」
 周囲をサーチした後、俺は答える。

『そうですか…』
 しぃ助教授は、安心したように言った。
『じゃあ、今日のモナー君の仕事はこれで終わりです』

「えっ… もう終わりモナ!?」
 俺は、さっきから無言のリナーに視線をやった。
 彼女は、渋い顔で腕を組んでいる。

「これが、モナーさんの役割ですよ。これから毎日お願いします」
 ねここは言った。
「任せるモナ!!」
 俺は胸を張った。全然楽な仕事だ。

「その冊子と無線機は、モナーさんが持っていてください。では、おやすみなさい!」
 ねここは、元気良く艦内に戻っていった。
 俺とリナーだけがその場に残る。

430:2004/05/23(日) 21:45


「それで… 君は良かったのか?」
 リナーは俺に言った。
 俺は、首をかしげる。
 良かったか、とはどういう意味だ?

「…何が? すごく楽な仕事…」
 その瞬間、俺は思い至った。
 俺がやった事の意味。
 ASAは、敵飛行機の位置を聞いてどうする?
 そんなの、決まっているじゃないか。

「まさか…!!」
 俺は『アウト・オブ・エデン』を展開して、さっき見つけた数々の航空機をサーチした。
 いない。
 1機たりとも、飛んでいない。
 ただ、海上に残骸のようなものが…

「E−2Cって、どういう飛行機で何人乗りモナ…?」
 俺は、リナーに背を向けたまま訊ねた。
 リナーは少し躊躇して答える。
「…E−2C・ホークアイ、早期警戒機だ。乗員は4名で非武装。半径480Kmの索敵範囲を持つ」

 4名の乗員…
 しかも、非武装…

「P−3Cは?」
 俺はさらに訊ねた。
「P−3C・オライオン。乗員は10名。潜水艦を発見、攻撃する為の機体だ」

 10人… それが8機。

「EA6−B…」
 俺は呟くように訊ねる。
「EA6−B・プラウラー。乗員は4人、通信妨害やレーダー撹乱を主とした機体だ」

 …これで4人。
 合わせて、乗員は88人だ。

「俺が、その88人を殺したのか…?」
 俺は声を震わせながらリナーに言った。
「…君が直接手を下した訳じゃない」
 リナーは告げる。
 でも…
「同じ事だろ? 俺が位置を教えなければ、その88人は死ななかった…」

 そうだ。
 完全に失念していた。
 戦争に協力するという事は、こういう事なんだ。
 俺の指摘で、確実に人が死ぬ。
 そんな事に、今頃気付くなんて…

 リナーは、そんな俺を見据えて言った。
「『空爆の最大の障害は、想像力だ』という言葉がある。君は余計な事を考え過ぎだな。
 軍用機に乗っている時点で、彼等は死ぬ事も任務のうちだ」
「でも、俺は軍人じゃない…」
 俺は言った。

 そして、思わず自分の手を見つめる。
 楽な仕事だと… 思ってしまった。
 戦争に手を貸すというのが、どんな事か全く分かっていなかった。
 そんな自分が許せない。
 俺はリナーを守る為、警官を2人殺した。
 『殺人鬼』だった時は15人もの人間を殺している。
 だが… さっきのは、信念も何もない殺害への加担だ。
 楽な仕事だと思いながら、88人を殺すのに簡単に手を貸した。
 リナーの為なら殺すのに躊躇はしないと誓ったが、さっきのは余りにも…

「E−2Cは確かに非武装だが、この機体が収拾した情報は母艦の武器になる。
 あの機の集めた情報で、この艦が沈められる可能性も充分にあった。
 君は、この『ヴァンガード』の乗員360名の命を救ったとも言える」
 リナーは言った。
 突き放したような言い方だが、さっきから彼女なりに慰めてくれているのだ。

「そうモナね… 敵は敵、きっちり区別は付けるべきモナ」
 俺は気を取り直して言った。
「まだこの艦に乗って1日だけど、武器庫の人とか、食堂の人とか…
 色々な人に、モナはお世話になったモナ。その人達を死なせたくないモナ」

 リナーは微笑む。
「それでいい。守るべき者の事さえ考えておけば、例え人を殺す事になったところで…
 決して道を誤りはしない。少なくとも、君はな」
 俺は、リナーの言葉に強く頷いた。

「さて、そろそろ艦内に戻るモナ…」
 俺は、リナーに言った。
 これ以上こんな所で2人っきりでいたら、ねここにどんなからかわれ方をするか分かったものではない。
 俺達は、艦内に戻っていった。

 明日も明後日も、俺はASAに協力して広範囲索敵を行うだろう。
 その度に、飛行機が落とされる。
 だが、それがこの艦を守る事になるのだ。
 俺は、もう迷わない――

431:2004/05/23(日) 21:46


 ――この時は、そう誓った。
 だが次の日、俺の予想を裏切る事態が起きた。
 先程の誓いは、全く無駄になったとも言える。

 飛行機の姿が、1機も視えないのだ。
 しぃ助教授の推論によれば、向こうは相当に警戒しているという事だった。
 向こうにしてみれば、レーダーの探知範囲外から一方的に撃墜されたのだから、当然と言えば当然だろう。
 稀に飛行機を発見しても、すぐに探知外へ消えていくのだ。

「初日の航空機撃墜で、『アウト・オブ・エデン』の探知可能範囲が割り出されちゃったみたいですね」
 しぃ助教授は言った。
 俺は、複雑な気分だった。
 俺の指示で、人が死ぬという事はない。
 だが、この艦にとって役立つ事もできない。
 そんな葛藤を抱え、大きな出来事もなく10日が過ぎた。

 そして、1月21日――
 この日、事態は大きく急変した。 



          @          @          @



「…どうぞ、研究の成果です」
 『蒐集者』は、枢機卿に書類を手渡した。
 航空母艦『グラーフ・ツェッペリンⅡ』。
 その甲板に、黒いコートの男とSS制服の男は立っていた。
 枢機卿の背後には、山田が影のように控えている。

「ふむ、かなり早いな。相当急いでまとめたと見える…」
 枢機卿は、受け取った書類をパラパラとめくった。
「究極生物と吸血鬼、そして『BAOH』のハイブリッド(三種混合体)…
 本当に問題はないのだな?」

 『蒐集者』は笑みを浮かべて頷く。
「ええ。ぽろろの『エンジェルズ・オブ・ジ・アポカリプス』さえあれば…
 あの遺伝子に関与するスタンドならば、何も問題はないはずです」

「やけに、あの子に肩入れするな…?」
 枢機卿は、冷笑を込めた目で『蒐集者』を見た。
「これでも、子供好きなものでね…」
 『蒐集者』は腕を組んで呟く。
 夜風で、漆黒のロングコートがはためいた。

「それにしても… この海域まで来てもう10日でしょう。随分長く待機していますね?」
 『蒐集者』は、周囲の闇を見回した。
 枢機卿は海の彼方を見つめる。
「ASAと海上自衛隊の艦隊が睨み合っているからな。もう少し見届けるのも面白い。
 これを待っていた…というのもあるがね」
 枢機卿は、受け取った書類を示した。
「2月8日にはまだまだ時間がある。まあ、のんびりやるさ…」

「『伝説の傭兵』ももう戻ってきたようですし、準備は万端と言ったところですか…?」
 『蒐集者』は、甲板に不自然に置かれたダンボールに目をやった。
「…ああ。むしろ、予定よりも早く済んでしまった。後は先行した代行者が戻ってくるのを待つのみだ。
 本格攻撃は2月8日より後にしたかったが、まあ仕方あるまい」

「それと… 1さんとやらに会いましたよ」
 『蒐集者』は告げる。
「ほう、それで…?」
 枢機卿は表情を変えない。

「とぼけてくれますねぇ…
 『Model of Next-Abortion Relive』が1体だけではなかったなんて、彼に会うまで知りませんでしたよ」
 『蒐集者』は歪んだ笑みを見せる。
 枢機卿は呆れたように言った。
「…それは知らないはずだろう。私が伏せていたんだからな」

「私を滅ぼす為…ですか?」
 『蒐集者』は、枢機卿を見据える。
 枢機卿は笑った。
「当然だろう。次の世に、お前の居場所があるとでも思ったか? 幻の最強を求めし道化師よ…」

「偽りの理想を求める貴方に、それを言われる筋合いはありませんがね。
 『教会』による至福千年の平和統治など、所詮は夢物語に過ぎない」
 『蒐集者』のコートが軽くはためく。
「貴方が動いた後に残るのは、千年の平和などではない。破壊と殺戮と、幾億の屍のみですよ」

432:2004/05/23(日) 21:47

 枢機卿は、組んでいた腕を下ろした。
 袖元に仕込んである拳銃のグリップを軽く握る。
「59億が死のうが、1億は生き残る。それでも少し多いがね。
 そろそろ、この辺で文明を後退させねばなるまい。過ぎた玩具は愚民に毒だ」

「それで貴方が…? 誰よりも『戦争』を知っている貴方が…?」
 『蒐集者』は笑った。
 枢機卿も笑みを見せる。
「誰かがやらねばならんのなら、私が… 『教会』がやるしかあるまい。
 我々こそが、神に選ばれし神罰の地上代行者。絶対殺害権を行使する者。
 私こそが真の平和主義者。あらゆる争いの根絶を心から願っているのだよ」

「随分と夢想家な事だ… 実に面白い。『戦争』に呪われているのは、人類ではなく貴方の方だというのに」
 『蒐集者』は甲板に並ぶ航空機や、随伴する超々弩級戦艦『ビスマルクⅡ』に視線をやった。

「お前の方こそ夢物語だ。お前の求める最強こそ、世界のどこにもない。
 この世の者を殺し尽くし、残ったお前が最強か?」
 枢機卿は、『蒐集者』を見据える。
 その視線を薄笑いで受け止める『蒐集者』。
 枢機卿は、『蒐集者』の方に一歩踏み出した。
「お前は、すでに神に背を向けし者。『教会』の道を阻むと言うなら、この場でその身を滅ぼしてくれる」
 枢機卿の背後の空間が歪む。

「面白い。ここで私と一戦交えようと…?」
 『蒐集者』のコートが大きくはためいた。
 枢機卿の背後に控えていた山田が青龍刀を構え、鋭い殺気を向ける。

 『蒐集者』は、周囲から幾多もの強い殺気を感じ取った。
 戦闘機の羽の部分に、不敵な笑みを浮かべた男が座っている。
 艦橋部分では、軍装の男が狙撃銃でこちらを狙っていた。
 甲板に置かれたダンボールの中にも、裏の世界で勇名を轟かせた男が潜んでいる。
 他にも、甲板には2人の女学生、肥満した男、包丁を手にした狂人、円筒状の身体を持つ機械人形などの姿があった。

「…なるほど。流石は『ロストメモリー』、一筋縄ではいきそうにないですねぇ…」
 『蒐集者』は軽く両手を広げる。
「それだけではない。お前を敵に回すならば… 『リリーマルレーン』、使わざるをえんだろう」
 枢機卿は、SS制服の裾を翻した。
「さて、どうする…? この場で事を構えるか?」

「…止めておきましょう」
 『蒐集者』は笑みを浮かべて言った。
「貴方の『リリーマルレーン』を完全に消滅させるのは面倒すぎる。
 それに、ここで『ロストメモリー』に欠員でも出したら、私の予定も違ってきますしね…」

「その方が私も助かるな。ここで血を流すには、まだ少し早い…」
 枢機卿は、山田を押し留めるように片手を差し出した。
 行く必要はない、という合図だ。
 山田は青龍刀を下ろす。

「…では、私はこれで。ぽろろに関する事以外、同盟は破棄という事でいいですね」
 『蒐集者』は背を向けた。
「ああ。『教会』はお前を異端と認定する。神の名において滅ぶがいい」
 枢機卿は告げる。
「その時を、楽しみにしていますよ…」
 『蒐集者』の姿は、夜の闇に溶け込むように消えていった。

433:2004/05/23(日) 21:48

 枢機卿はため息をつく。
「…山田殿、奴をどう見る?」
 そして、後ろに控える山田に訊ねた。

「隙だらけだな。容易く斬れる…」
 山田は即座に答えた。
「…だが、斬った後が思い浮かばん。斬ってどうなるのだ、という疑問すら浮かぶ。
 我らも既に人ではないが… あれは、一体何者だ?」

「大した事はない。道を踏み外した求道者に過ぎん…」
 枢機卿は呟いた。
 山田は枢機卿を見据える。
「そう言えば… 『リリーマルレーン』だったか。貴殿の能力も聞いてはおらん。
 能力を容易く他人に教えないのは当然だろうが、護衛に対しては話が別だろう?
 貴殿の得意とする間合いや苦手な間合いを知っておかねば、守るものも守れぬ」

「なるほど、それもそうだな。では、私の護衛を解任しよう。私に護衛は必要ない」
 枢機卿は笑って言った。
「…!!」
 山田は表情を歪ませる。
「…そうまで私は信用がないのか?」

 枢機卿は腕を組んだ。
「そうではない。 …私は、自らのスタンド能力が嫌いなのだよ」
「自らに害を及ぼす類の能力か?」
 山田は訊ねた。
 枢機卿は首を横に振る。
「…いや、単に嫌いなだけだ。
 文献によれば、『過去の記録』を掘り起こすスタンドというのがあったという。
 また、『屋敷幽霊』という異空間に入り込めるスタンドが存在したそうだ。
 この2つを合わせたようなスタンド… と、今は言っておこう」
「異空間だと…? それは、随分と大仰だな」
 山田は言った。

「『リリーマルレーン』の中にある物はこの通り、いつでも取り出せる」
 枢機卿の前の空間が歪み、何か黒いものが突き出た。
 それは、そのまま甲板に突き刺さる。
 ――MP40。
 『シュマイザー』と渾名され、ドイツ戦線で猛威を振るった短機関銃だ。

 枢機卿は、その銃を手にした。
「こんな風に、山田殿のスタンド能力と良く似た戦い方も可能だ」
「…!!」
 山田は目を見開いた。
「『極光』の使い方をご存知であったか…」

「フフ… 互いに、隠し事が多い」
 枢機卿は、MP40を空中に放り投げた。
 そのまま、空間の歪みに消えていく。

 戦闘機の羽に座っていた男が、甲板に飛び降りた。
「ところで… 僕らの出番はまだかい? 10日もこんなところにいたら、潮風でサビちまうよ」

「のんびりと構えるは飽きたかね、ウララー殿?」
 枢機卿は、ウララーの方を向いて言った。
 ウララーは枢機卿を睨みつける。
「そりゃそうさ。僕は壊したくて仕方ないんだ。いい加減にしないと、この船を壊すよ?」

「それは勘弁したまえ。総建造費がいくらかかったと思っている…?」
 枢機卿は冷徹な笑みを浮かべながら、甲板に置いてあるBf109に歩み寄った。
 外見こそ60年前のレシプロ機と同じだが、性能は別物と言っていい。

「仕方ない。そろそろ始めるか…」
 枢機卿は、Bf109に飛び乗った。
 無造作にキャノピーを開けると、操縦席に座る。

「じゃあ、行っていいのかい…?」
 ウララーが歓喜の表情を見せた。
「北海道にある6つのレーダー・サイトは、君が潰すと言っていたな。 …行きたまえ。煉獄の始まりだ」
 枢機卿は告げた。

「フフフフフ… あっはっはっはっは!!」
 ウララーは、笑いながら甲板を歩く。
 そのまま柵を乗り越え、甲板の縁ギリギリに立った。

434:2004/05/23(日) 21:49

「…『ナイアーラトテップ』」
 ウララーが、自らのスタンド名を呟いた。
 周囲に、大きな衝撃が発生する。
 柵が吹き飛び、彼の立っている付近の甲板に無数の亀裂が走った。

 ウララーの背中から、大きな羽根が突き出た。
 それは天使のような翼ではなく、蝶の羽根に酷似している。
 その羽根が大きく羽ばたいた。周囲に黒い燐粉が飛び散る。

 この羽根こそが『ナイアーラトテップ』。
 彼のスタンドである。

「はっ、ははははははははははは!!」
 空母の甲板を蹴り、ウララーの体は大きく飛翔した。
 そのまま、高度を上げ、高度を上げ、高度を上げ――
 燐粉を撒き散らしながら、とてつもない速度で上昇していく。
 彼の体は対流圏を突破し、成層圏に到達した。
 上昇するにつれ、温度が高くなる。
 やがてウララーの体は熱圏を振り切り、そのまま外気圏に飛び出した。

「あはははははは!! 久し振りだけど… 調子はいいみたいだね!! はははは!!」
 彼の背中に生えた『ナイアーラトテップ』から、燐粉が飛び散っている。
 それは、ウララーの体を守るように周囲に広がった。
 狂笑を上げながら、なおも直進し続けるウララー。
 唯一の衛星、月が彼の目前に迫る。

「月…!!」
 ウララーは、そのまま月の重力圏に突入する。
 眼下に広がる巨大なクレーター。暗い砂漠。生物の存在しない死の世界。

「はははッ!! 人類にとっては大きな一歩だが…」
 ウララーは羽根を翻して月の地表ギリギリまで接近すると、その地を大きく蹴った。
「僕にとっては小さな一歩ってヤツだァッ!!」

 とてつもない衝撃。
 渦を描きながら巻き上がる砂塵。
 ウララーの進行方向が真逆になる。
 そのまま、彼は真っ直ぐに飛翔した。
 再び月の重力圏を出る。

 ウララーは、目の前の深蒼の星に向かって宙空を駆けた。
 そのまま、彼の体は大気圏に再突入する。
 北半球、ユーラシア大陸の近くの小さな島国。
 その、さらに小さな北の島目掛けて。
 多大な熱と羽根が反応し、乾いた音を立てる。
 徐々に周囲の温度が下がる。等温層に入ったようだ。

「来たぞ、来たぞ、来たぞ、来たぞ、来たぞォォォォォォォォッ!!」
 まるで彗星のように、ウララーの体は落下していった。
 そのまま、彼は地表に激突する。
 その衝撃は、まるで爆発のように大地を砕いた。
 周囲の建造物は全て吹き飛び、緑の大地は荒涼な砂漠と化す。
 まるで、先程の月の地表のように。

 それでもなお、ウララーの勢いは衰えない。
「チッ… 田舎か…!!」
 ウララーは高速滑空しながら舌打ちした。
 遥か彼方に、明かりが見える。
 街だ。それも、かなり大きい…!!

435:2004/05/23(日) 21:49

「あははははははァ!! 混沌に呑まれろォォォォォッ!!」
 ウララーは、街目掛けて飛翔した。
 明るい光で彩られた夜の街が、みるみる近付いてくる。
 建物の明かりや店のネオン、車のライトが彼を迎えた。
 ウララーの羽根から飛び散る燐粉が、鮮やかな光を放つ。
 その光は乱反射し、質量を持って地上物を破壊した。
 光の直撃を受け、派手に吹き飛ぶ車。
 崩れていく建物。
 削れていく道路や地面。
 そして、人形のように吹き飛んでいく人間達。

「…面白いなァ!! どうだ人間!! お前達も面白いだろう!! あははははは!!」
 ウララーの体は、高層ビルに激突した。
 その瞬間、ビルは光に包まれる。
 『ナイアーラトテップ』から放たれた光に削られ、高層ビルは吹き飛んでいった。
 舞い散る瓦礫。
 パニックを起こし、逃げ惑う人々。
 そして、それらを平等に呑み込んでいく鮮やかな光の渦。
 街は、混沌に包まれた。

「なぁ、凄いだろう。どうだい、僕の『ナイアーラトテップ』はッ!!」
 ウララーは、建造物… いや、地表ごと破壊しながら空を一直線に駆けた。
 すでに街は過ぎ、彼の体は山に突入する。

「さて… そろそろ仕事でもするか…」
 ウララーは、少しだけ進行方向を変えた。
 木を吹き飛ばし、山を削り、破壊の限りを尽くしながら、彼は直進する。
 目の前に、ドーム状の建物が見えてきた。

「フン… あれが、レーダーサイトか」
 ウララーは呟く。
 何かが、彼目掛けて高速で接近してきた。

 ――ペトリオット地対空ミサイル。
 航空自衛隊が有する防空兵器である。
 それが、6発。

「そんなものがなァァァァァッ!!」
 ウララーの周囲に燐粉が舞った。
 鮮やかな光が周囲の空間を包み込む。
「通用するワケねーだろォォォォォォッ!!」

 光に巻き込まれ、ペトリオットは全て爆散した。
 それだけだはなく、光の渦はレーダーサイトをも包む。

「壊れろ、潔く、潔く、潔く、僕の前でなァァァァァ!! アハハハハハ!!」
 ドームに巨大な亀裂が入る。
 過大な重圧を受けたように建物が崩れ、周囲に広がる鮮やかな光に削り取られた。
 瞬く間に、レーダーサイトは爆砕する。

「まず1つ、と…」
 ウララーは数えるように指を折る。
 周囲の森林も軒並み削り取られ、山肌は茶色い土を晒していた。
 その様子を滑空しながら満足げに眺め、ウララーは笑みを浮かべた。

「さぁて… あと5つか」



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

436ブック:2004/05/24(月) 01:38
     EVER BLUE
     第十六話・TALK 〜探り合い〜


 オオミミと天が一緒に甲板に出て来た。
 天が甲板の手すりに背中を預ける。

「そういえば、あの時の天のスタンドって凄かったね。
 あれ、一体どういう仕組みなの?」
 オオミミが天に尋ねた。
 僕の予想では、これは本題ではない。
 いきなり本題を切り出すのも何なので、軽い世間話から入ろうという腹だろう。

「…自分の能力をペラペラ話すスタンド使いが居ると思うわけ?」
 不機嫌そうな顔で、天が答える。
 内心ムカついたが、天の言う事も尤もだ。

「ご、ごめん。
 でも、あんなに凄い力があるのに、
 どうして捕まってた時に能力を使って逃げなかったんだろう、と思って…」
 オオミミが言葉を濁す。
 言われて見ればその通りだ。
 あれだけの力、使わずに大人しく捕まるなんて、この女の性格から見ても考えられない。

「何でアタシが一々あんたの疑問に答えないといけない訳?」
 オオミミを見据える天。
 糞生意気な女め。
 鼻から親指突っ込んで、奥歯ガタガタいわせたろか。

「ごめん…」
 オオミミがしょぼくれる。
 だから、君がそうやって下手に出るからこの女が付け上がるんだよ。
 何回言ったら分かるんだ?

「…アタシの能力は、二重の意味で一人じゃ使えないのよ。」
 天がやれやれといった風に口を開いた。

「え…?」
 オオミミが不思議そうに聞き返す。

「だーかーら、アタシのスタンドは個人プレイが出来ないって言ってるの!
 同じ事何回も言わせる気!?」
 天がやや怒り顔になる。
 こいつがオオミミの質問に答えるとは、意外だ。

「特別にもう一つだけヒントあげるわ。」
 そう言って、天は懐から何やらごそごそと取り出した。
 それをオオミミに突きつける。

「傘…?」
 オオミミが呟く。
 そう、何の変哲も無い折り畳み傘。
 これが、能力と何の関係があるのだ?

「そう、傘よ。
 じゃあ、何であんたはこれを傘だと思ったの?」
 天がオオミミに質問した。
「え?だって、これどっからどう見たって傘…」
 オオミミが訳が分からないといった顔で答える。
 何を言ってるんだ、この女は。
 禅問答でもするつもりか?

「…つまりは、そういう事よ。
 これがアタシの『レインシャワー』の力。
 後は自分で考えなさい。」
 天がそう言って会話を打ち切る。
 結局どういう事なのか皆目見当がつかない。
 全く、勿体つけやがって。

「あの、何で俺にこんな事を?」
 オオミミが尋ねた。
「別に。あんたになら少々教えた所で害は無さそうだし。」
 そっけなく答える天。
 つまりは、オオミミが自分にとっては敵にすらならない腑抜けと言いたい訳か?
 どこまで厭味な女なんだ。

437ブック:2004/05/24(月) 01:39

「…そんな事より、こんな事を聞くためにわざわざ呼びつけたんじゃないんでしょう?」
 天がオオミミに向き直る。
 やはり、天も今のが本題ではない事には気づいていたみたいだ。

「…うん。」
 オオミミが天から視線を逸らす。
「あの、さ。
 天はサカーナの親方には、あの『紅血の悪賊』が何を運んでいたのか知らない、
 って言ってたよね。
 でも、あの女吸血鬼も、男の吸血鬼も、天に変な視線を送ってただろ?
 だから…」
 意を決したようにオオミミが口を開いた。
 というかオオミミ、こんな女に遠慮する必要は無いぞ。

「だから、何よ?
 本当は何か知っているのかこっそり教えてくれ?
 教えないと酷いぞ?
 それともアタシの弱みでも握ったつもりかしら?」
 天が責めるようにオオミミをなじる。

「違う!
 俺は、天が言いたくないなら皆にはこの事は黙っておくつもりで…」
 オオミミが必死に否定する。
 馬鹿、オオミミ。
 そんな事、皆の前でバラしてやればよかったのに。

「…呆れたお人好しの偽善者ね、あんたって。」
 天が大きく息を吐いた。

「ごめん。こんな事、聞かない方がよかった。
 だけど、『紅血の悪賊』や帝國の狙いが何なのか分かれば、
 対策の立てようがあるかもしれない。
 だから、出来れば教えて欲しいと思って…」
 オオミミが呟くように天に言う。

「…悪いけど、本当にアタシは何も知らないわ。
 大方、『紅血の悪賊』が何か勘違いしてるんでしょ。」
 天がもたれ掛かっていた手すりから離れる。
「話は終わり?
 なら、そろそろ部屋でゆっくりさせて貰うわね。」
 天はそう言い残すと、そそくさとその場を離れようとした。

「ごめん…」
 天の背に、オオミミが何度目かの謝罪の言葉を向ける。

「……」
 と、天が急に足を止めた。
「…アタシこそ、ごめんなさい。」
 …ごめんなさい?
 何に?

「天―――」
 オオミミが天を引きとめようとしたが、天はそのまま走り去ってしまった。
 オオミミが一人、その場に取り残される。

(オオミミ、何であんな奴にそんなに気を使うんだよ。)
 僕はオオミミに文句を言った。
 オオミミはあの女の尻にしかれてばっかりだ。
 ここは一つ、僕がきっちり言っておかねば。

「…ごめん、『ゼルダ』。」
 オオミミが呟いた。
 本当に君は、そうやって誰にでも謝ってばっかりだな…

438ブック:2004/05/24(月) 01:40



     ・     ・     ・



 オオミミが甲板から降りてから少しして、三月ウサギが物陰からぬるりと現れた。
 三月ウサギのマントが、風を受けて緩やかにはためく。

「盗み聞きなんて、趣味が悪いですよ。」
 と、後ろから軽い声がかかった。
 大して驚きもしない様子で、三月ウサギがゆっくりと振り返る。

「人の事は言えないだろう。」
 三月ウサギが静かに告げた。
 後ろに立っていたのは、タカラギコだった。

「あらら、ばれちゃってましたか。
 姿だけでなく、気配も消しておいた筈なんですけどねぇ。」
 タカラギコが笑いながら頭を掻く。
 三月ウサギは、そんなタカラギコを冷ややかに見つめた。

「…で、どうするんですか?
 今のを、サカーナさんに伝えておくんですか?」
 タカラギコが三月ウサギに尋ねた。

「…ふん。
 あの親父だって間抜けじゃない。
 あの女の嘘なんざ、とっくに見抜いているだろう。
 それに、無理矢理秘密を聞き出した所で、
 『紅血の悪賊』に狙われている事は変わらん。
 それに相手は、『盗んだものを返すから見逃してくれ』、
 などという取引が通用するような相手じゃない。
 どの道戦うか、逃げるか、死ぬかしか選択肢は無いんだからな。
 ならば奴らが何を狙っているかなど、今の所聞くだけ無駄だ。」
 事も無げに、三月ウサギが答える。

「兎に角今は安全な場所に移動して、
 詳しい事を聞くのはそれから、ですか。」
 タカラギコが肩をすくめた。
「ふん、さてな。」
 三月ウサギが手すりに腕を置く。

「しかし、内心気が気ではないのではないですか?
 オオミミ君があなたを差し置いて女の子と二人っきりでお喋りして。」
 タカラギコがからかうように言った。

「…今ここで死ぬか?」
 三月ウサギがマントの中から剣を取り出す。
 無数の刃物が、甲板に突き刺さった。
「ちょ、ちょっと、冗談ですよ!
 暴力はいけません暴力は。」
 タカラギコが慌てて三月ウサギをなだめる。

「……」
 タカラギコの余りに情けない声に気を削がれたのか、
 三月ウサギは無言で刃物をマントの中に戻した。

「いや失敬。
 どうも昔から私は一言多いみたいでしてね。
 同僚にもよく注意されましたよ。」
 タカラギコが剣を収める三月ウサギを見て胸を撫で下ろす。
 三月ウサギは完全にやる気を無くして溜息を吐いた。

439ブック:2004/05/24(月) 01:40

「…貴様、どこまで知っている?」
 三月ウサギが、話題を変えた。
「知っている、と言いますと?」
 そう聞き返すタカラギコ。

「とぼけるなよ。
 帝國の軍事機密が何なのかは私にも全く分からない、
 などという言葉を、完全に信用しているとでも思っているのか。」
 三月ウサギがタカラギコを睨む。
 しかしタカラギコはその視線を軽く受け流した。

「そんな恐い顔しないで下さいよ。
 ただでさえ、さっきのサカーナさんの気迫に圧されて
 肝を冷やしたばかりなのですから。」
 よくもまあ抜け抜けと、と三月ウサギは思った。
 タカラギコは意図的に自分の実力を隠していると、三月ウサギは考えていた。
 むろん、彼もタカラギコと闘って負けるとは考えてはいない。
 だが、何と言うかタカラギコは底が知れないのだ。
 強いとか弱いとかという問題では無く、もっと、別の何か…

「…前に言ったように、こちらもまだ手札を全て見せるという訳にはいきません。
 色々ややこしい問題もありますので。
 ですが、今の所私はあなた達の敵ではありません。
 その点だけは、信用して頂けませんか?」
 タカラギコが三月ウサギの顔を見た。
「『今の所』、か。
 ずいぶんとまあ胡散臭い言葉だな。」
 皮肉気に三月ウサギが呟く。

「すみません。
 こちらもこれから状況がどう変わっていくのか分かりませんので、
 どうしても曖昧な言葉を使わざるを得ないのですよ。」
 タカラギコが申し訳無さそうに言う。

「信用がならない、という点においては信用出来るというやつだな。」
 三月ウサギがタカラギコを見据える。
「これは手厳しい…」
 タカラギコが苦笑する。

「まあ、私があなたの立場なら、矢張り私のような人間は信用しませんけどね。
 ですがまあ、ご一緒させて頂く以上は全力であなた方を護衛させて頂きます。」
 タカラギコが微笑みを浮かべた。

「好きにしろ。」
 三月ウサギがそっぽを向いて答える。
「…だが、少しでもおかしな真似をしてみろ。
 その瞬間、貴様の頭と胴が切り離されるぞ。」
 三月ウサギが低い声で告げた。

「…肝に銘じておきます。」
 タカラギコは相変わらずの笑顔のままでそう返す。


「…そろそろ、島に上陸のようだな。」
 三月ウサギが呟く。
 甲板からは、島の港がすぐそこまで近づいているのが見て取れるのだった。



     ・     ・     ・



 ややくたびれた感じのホテルの廊下を、数人の男が慎重に歩いていた。
 その手には、十字架を模した銃や剣が握られている。
「……」
 先頭を歩いていた男が、手を出して後続の進行を止めた。
 そして、廊下の奥の方にある部屋の一つを指差す。

「…これより、突撃する。
 いいか、相手はあの『ジャンヌ・ザ・ガンハルバード』だ。
 決して気を抜くな。
 日中とはいえ、並みの吸血鬼以上の力を持つと思え。」
 先頭の男の言葉に、後ろの男達が頷く。

「行くぞ…!」
 男達が、部屋のドア目掛けて駆け出した。



     TO BE CONTINUED…

440:2004/05/24(月) 23:07

「―― モナーの愉快な冒険 ――   吹き荒れる死と十字架の夜・その3」



          @          @          @



「月…?」
 モララーは、BARの窓から夜空を眺めた。
「…どうかしたのかょぅ?」
 マスターのぃょぅは、そんなモララーを不審そうに見る。
「…いや、何でもないよ」
 モララーは視線を逸らした。

 ギコは、カウンターに座ってどこかに電話をかけていた。
 地下の秘密基地の電話を使わずに、自分の携帯電話を使っている。
 おそらく、私用だろう。

「10日もBARに入り浸りなんて、ただれてるよね… 僕ら」
 モララーは呟く。
「それにしても、進展がないね…。モナー君達もなかなか帰ってこないし」

 しぃはオレンジシュースを一口飲むと、グラスをカウンターに置いた。
「学校だって休みのままだし… どっちにしても、学校に行ける身の上じゃないけど」
 そう言って、ため息をつくしぃ。

 ここのマスターであるぃょぅは、未成年には絶対にアルコールを出そうとしない。
 その件でモララーがかなり噛み付いたが、ぃょぅは頑として受け付けなかった。
 ちなみに、レモナとつーはぃょぅの『未成年』の範疇には当て嵌まらないらしい。
 それ以前に、2人は人間ですらないが。

「…おう、分かった。じゃあ」
 ギコは、電話を切った。
「誰にかけてたの? 女?」
 モララーが訊ねる。
 しぃの目が鋭く光った。

「まあ、女ってのは確かだが… 人外の一種だ。しぃ助教授とちょっとな。
 明日、モナー達の様子でも見に行こうと思って」
 ギコは携帯を仕舞いつつ言った。
「だから、そんなに睨むなよ…」
 そして、しぃに怯えた視線を向ける。

「えっ!! 僕も行く!!」
 モララーは叫んだ。
 露骨にため息をつくギコ。
「だから、ここの守りはどーすんだよ。俺達は、お尋ね者なんだからな。
 大体、大人数で行ったらあっちに迷惑じゃねーか」
 レモナとつーにも、同じ事言わなきゃならないんだろうな…
 …などと思うと、嫌になってくる。

「でも、かなり陸地を離れてるんでしょ? どうやって乗り込むの?」
 しぃは首を傾げて訊ねる。
「ぃょぅが、ヘリで送ってあげるょぅ」
 カウンター内で話を聞いていたぃょぅは言った。
「マスター、ヘリの操縦できるの?」
 モララーはぃょぅに視線を向ける。
「昔、ヘリの操縦士をやってた事があるょぅ」
 ぃょぅは胸を張った。
「じゃあ、乗っけてってもらおうかな」
 ギコは腕を組んで、店の端に置かれたソファーにもたれた。

「で、モナー君はどう? 危険な目に合ってない?」
 モララーは訊ねる。
「こっちと同じ。膠着状態だそうだ」
 ギコはため息をついた。

「どうも、自衛隊側の動きが緩慢なんですよねぇ…」
 鐘の音と共に、BARの入り口の扉が開く。
 コンビニに買い出しに行っていた局長が帰ってきたようだ。

「向こうが何か企んでるって事か…?」
 ギコは、局長に視線をやる。
 局長はギコに煙草の箱を差し出した。
「そうでしょうねぇ… 吸いますか?」

「…ギコ君は未成年だょぅ」
 ぃょぅは局長を睨んだ。
 ギコが口を開く。
「煙草は止めた。俺は仮にもスポーツマンだし、しぃも嫌がるしな…」

 局長はカウンター席に座ると、煙草に火をつけた。
 リル子とレモナは、後ろの丸テーブルで飲み続けている。
 どうやら、この2人はウマが会う様子だ。
 レモナが酔わないのは当然として、リル子に全く潰れる気配はない。

「虎…!」
 その様子を見て、ギコは呟く。
「お酒強い女の子って、ステキだよね…」
 モララーは瞳を輝かせて言った。
 つーは部屋でおやすみ中である。
 早寝早起きがモットーらしく、妙なところで健康的だ。

「自衛隊は大人しいし、米軍とどの程度結託しているのかも分かりませんしねぇ…」
 局長は紫煙を噴き出した。
 首相官邸に現れたモナークの事も気に掛かる。
 彼は、一体あそこで何をしていた…?

「まあ… 明日ASAの艦に行くんなら、そこら辺の意見も聞いてきてくれません?
 貴方なら、向こうの信用もあるでしょうし」
 局長は、灰皿を手繰り寄せながら言った。
「ああ…」
 ギコは頷くと、腰を上げた。
 その手には、以前にリナーから貰った日本刀がある。

「…辻斬りですか?」
 局長が怪訝な目を向ける。
「…駐車場で素振りだゴルァ! なんつーか、新しいモノが産み出せそうな感じなんだよ…」
 ギコはそう言うと、BARから出ていった。

441:2004/05/24(月) 23:08



          @          @          @



 俺は、カレンダーを見た。
 今日は1月21日。
 もう、10日もこの艦に乗っている事になるのか…

「朝ですよー!! …って、もう起きてますね」
 ねここが、ノックもせずにドアを開けた。
「フフフ… 全てが貴様の思い通りに行くと思うなモナァッ!!」
 俺は、腰に手を当て勝ち誇る。

「今日、ギコさんが様子を見に来るそうですよ」
 そんな俺を無視して、ねここは意外な名を告げた。
「えっ、ギコが…!?」
 俺は思わず声を上げる。
 彼と会うのも久々だ。
 まあ様子を見に来てもらったところで、こっちは別に激戦を繰り広げているという訳でもないのだが。 

「いつ頃こっちに来るモナ?」
 俺はねここ訊ねた。
「え〜と… 確か、今日の夜頃に到着するようです」
 ねここは答える。

「じゃあ、今日の夜もよろしく頼みますね!」
 ねここはそう言って、俺の部屋から出ていった。
 今夜もよろしく…か。
 フフフ…

 俺はベッドに腰を下ろした。
 どうせ、今日も飛行機は見当たらないだろうな…
 …などと思った頃が最も危ない。
 その位は、俺にも分かっていた。
 俺はベッドに寝転がる。
 どうせ昼間はやる事がない。と言うか、甲板に出られない。
 このまま2度寝するか…


 そして、リナーと無為に過ごす午後。
 何故か、銃の解体スピード勝負で盛り上がってしまった。
 銃を解体する速度は、意外な事に俺の方が早かったのである。
 もちろん、『アウト・オブ・エデン』を使った事は言うまでも無いが。
 リナーの負けん気が大いに刺激されたらしく、何度も勝負を挑んできた。
 だが、分解や解体にかけては俺の方が上だ。

「ま、まさか… この分野で君に負けるなんて…」
 分解された30挺近くの銃を周囲に散乱させながら、リナーはがっくりと肩を落とした。
 俺に負けたのが相当に悔しいようだ。
 気がつけば、すでに夕食時である。


 そして、夕食も終えた夜の8時。
 俺とリナーは、甲板に立った。
 背後には寒そうなねここがいる。
 この10日間で日常となった光景であった。

「いないとは思いますが… 念の為にお願いしますね」
 ねここは言った。
「いやいや、これをやる為にモナがいるモナよ…」
 そう言いながら、俺は『アウト・オブ・エデン』の視線を展開した。
 そして、飛行機をターゲットにして周囲をサーチする。
 普通に360度全ての視界を把握するなら、50Kmが限度。
 しかし目標物を絞ったサーチならば、500Kmまでは索敵できる。

 中心は、当然この艦『ヴァンガード』。
 右側の少し離れたところに、しぃ助教授の乗る同型艦『フィッツジェラルド』。
 この艦が旗艦、すなわち艦隊のリーダーらしい。
 そしてこの2隻を囲むように、4隻の艦が展開している。
 この10日、艦隊はずっとこの配置だった。
 リナーの話によれば、中央に主力を集め護衛艦で囲むのを輪形陣と呼ぶようだ。
 ともかく、敵飛行機の機影は見当たらない。

「…やっぱり、いないモナね」
 俺は言った。
『そうですか。では、今日はこれで…』
 無線のイヤホンからしぃ助教授の声がする。
 相変わらず、俺がサーチできる半径500Km以内には航空機は1機もない。
 だが…

「あの… サーチするのは飛行機だけでいいモナか?」
 俺は、背後のねここに訊ねた。
「え…? 何かいましたか?」
 ねここは首をかしげる。

「すぐ近くに、潜水艦がいるモナ…」
 困惑しながら俺は告げた。
「…!!」
 ねここの血相が変わる。

442:2004/05/24(月) 23:09

『無音潜航ですって…!? モナー君、距離と方位、そして深度は?』
 しぃ助教授は早口で言った。
 その様子は尋常ではない。
「右12度、距離3Km、深度200mモナ…」

『3Km!! いつの間に…!!』
 しぃ助教授の焦りや当惑が伝わってくる。
 ねここは素早く無線機のボタンを押した。
「副艦長よりCIC(戦闘情報指揮センター)へ! 至急、対潜準備! 探信音を打って下さい!!」
 そう指示を出すねここ。

『感あり、1隻います!! 距離3000!! 艦種、海上自衛隊『おやしお』型!!』
 イヤホンから、張り詰めた声が伝わってきた。
 CICにいる通信士だろう。

 俺は、『アウト・オブ・エデン』で潜水艦の動きを探る。
 まるで潜んでいるように、その場から動かない。
 その機体横部の発射口が開き、何か円筒状の物体が…
 これは、もしかして…!!

「魚雷モナ!!」
 俺は叫んだ。
「転舵――!! 面舵一杯です!!」
 ねここは大声で指示を出した。
 艦が大きく進路を変え、魚雷の回避を…!!

 その瞬間、艦が大きく傾いた。
 凄まじい衝撃。
 爆音と共に、10mほどの巨大な飛沫が上がる。
 艦がグラグラと揺れ、俺は甲板に転がった。
「…大丈夫か?」
 リナーが即座に俺を引き起こす。

『右舷に被弾!!』
 通信士の必死な声が無線のイヤホンから伝わってきた。
「ダメージコントロール、被害状況を報告して!!」
 ねここが叫ぶ。
「右舷損傷、被害は軽微です! システム・オール・グリーン! 航行に支障はありません!!」
 クルーからの返事。
 どうやら、大した損傷はないようだ。

『全艦、全速前進です!!』
 しぃ助教授の指示が飛んだ。
 この艦を含む艦隊の各艦が、急速にスピードを上げる。

「敵潜水艦は、どこへ…!!」
 ねここは、俺の顔を見た。
 俺は慌てて『アウト・オブ・エデン』を展開する。
 敵は…!!

「しぃ助教授の艦の真下モナ!!」
 俺は叫んだ。
 魚雷を放つと攻撃と同時に、急浮上してきたのだ。
 何の意図で、そんな所にいるんだ?

『真下…!? いつの間に!!』
 しぃ助教授が叫ぶ。
『敵艦確認しました! 距離10、深度30!! 艦底ギリギリの位置です!!
 先程の急速発進の際、スクリュー破泡音に紛れて接近したようです!!』
 これは、しぃ助教授の艦の通信士の声だろう。
『あの一瞬で、そんなギリギリまで接近を… 向こうの艦長は化物ですか!?』
 しぃ助教授の、驚きを帯びた声が伝わってきた。

「このままじゃ、しぃ助教授の艦が…!!」
 俺は、叫び声を上げる。
「大丈夫です。あそこまで接近していれば、逆に向こうも攻撃できません。
 水上の衝撃がモロに伝わる深度にいますから…」
 ねここは言った。
 だが…
 そうなら、こっちからも攻撃できないという事だろう。
 しぃ助教授の艦を巻き込んでしまうのだから。

 リナーが口を開いた。
「最初の攻撃は威嚇同然だ。それによってこちらの船足が早まるのを誘い、その隙に接近した。
 あの位置に入れば、向こうは攻撃を受けない… 向こうの艦長、かなりの凄腕だぞ」
「簡単に言いますが… 距離10mまで接近してるんです。
 ちょっとでも操艦を誤れば、艦底に激突ですよ…?」
 ねここは汗を拭いて言った。

「ああ。信じられん戦法を取る奴だ」
 リナーは、海面に視線をやる。
「しかも、たった1隻で挑んでくるとは…」

 俺は、しぃ助教授の艦『フィッツジェラルド』にぴったりとくっついている潜水艦を視た。
 今度は、何を仕掛けてくる気だ…?

 再び、魚雷発射管が開く。
「…また魚雷が来るモナ!!」
 俺は、声を振り絞って叫んだ。

443:2004/05/24(月) 23:10



          @          @          @



 『フィッツジェラルド』のCICは混乱に包まれていた。
 真下に、敵潜水艦が張り付いているのだ。
「敵潜水艦に動きは…?」
 しぃ助教授は、クルーに訊ねた。
「まだ、動きはありませんが…」

『…また魚雷が来るモナ!!』
 無線機から、モナーの叫び声が聞こえた。
「水側長! 報告を!!」
 丸耳は叫ぶ。

「…敵潜水艦、魚雷発射を確認!! 目標は…」
 水側長は、ディスプレイを注視した。
「当艦でも、『ヴァンガード』でもありません!! 僚艦の『ヘミングウェイ』ですッ!!」
 大声で報告する水側長。
「『ヘミングウェイ』回避運動を取っていますが… 間に合いません!!」

「くッ…!」
 しぃ助教授は唇を噛んだ。
「命中…!! 『ヘミングウェイ』、炎上しています。あれでは、航行は不可能…」
 水側長が告げる。その声は徐々に沈んでいった。

「このコバンザメ、こっちが攻撃できないと思って…!!」
 しぃ助教授は怒気をはらんだ声を上げる。
「…安全な位置に陣取って、先に周囲の僚艦を葬る気でしょう」
 丸耳は状況を素早く分析した。
「このままでは、他の僚艦も危ない…!!」
 しぃ助教授は頷くと、素早く無線機を手に取った。
「全艦散開!! 各艦、陣形を大きく取りなさい!!」

 続けて、しぃ助教授は操舵手に指示を出す。
「速度を上げてジグザグ航法を取りなさい。これ以上、真下には付けさせません!!」
 そして、再び無線機を手に取った。
「このままでは狙い撃ちです!! 全艦、ランダムに蛇行運動!!」

 しぃ助教授は、周囲の海域を捉えたディスプレイを見た。
 3隻の護衛艦が、ジグサグに航行している。
 その中で、『ヴァンガード』だけが高速前進していた。
 しぃ助教授の指示を完全に無視している。
 これは…?
 独自の判断は構わないが、一体どういう意図があって…

 しぃ助教授は、無線機を手に取る。
 そしてスィッチを押そうとした瞬間、通信士の絶叫が響き渡った。
「僚艦『ヘルマン・ヘッセ』、『スタンダール』、『シェイクスピア』、撃沈です…ッ!!」

「…何ですって?」
 しぃ助教授は、ディスプレイを見た。
 表示されているはずの光点が、影も形もない。
 …信じられない。
 これは、何かの間違いか?
 たまたまロストしただけではないのか…?
 3隻の巡洋艦が、一瞬にして葬られるなんて…

「間違いなく、敵の魚雷攻撃です。各艦、2発ずつ直撃を受け…」
 通信士は暗い声で告げた。

「…」
 しぃ助教授は、無言でハンマーを手に取る。
「しぃ助教授、何を…!?」
 丸耳が慌てて声を上げた。
「敵潜水艦は私が沈めてきます。艦隊指揮は貴方に任せましたよ…!」
 しぃ助教授の肩は、怒りに震えていた。

 丸耳は、その肩を押さえる。
「落ち着いて下さい! いくらしぃ助教授でも、それは無理ですよ!!」
「…止めないで下さい!! あの潜水艦、海の藻屑にしてやります!!」
 必死で喰らい付く丸耳を引き摺りながら、しぃ助教授はずかずかとCICの出口に歩み寄る。
「深度30mにいる相手に、何が出来るんですか!!」
 丸耳は、必死でしぃ助教授を押し留めた。

「…」
 ようやく冷静さを取り戻したのか、しぃ助教授はハンマーを置いた。
「まさか、潜水艦1隻にここまで…」
 そして、落胆した表情で呟く。

「そもそも、たった1隻でこっちの艦隊に挑んでくる事自体が異常だったんです。
 世界一の錬度を誇るという海上自衛隊の中でも、この相手は別次元ですよ」
 丸耳は言った。
 しぃ助教授はため息をつく。
「『ヴァンガード』は敵の攻撃を避けたんですね。たった2艦で、この状況をどう打開するか…」
「こちらの潜水部隊が接近していますが、間に合うかどうか…」
 丸耳は、光点が表示されているディスプレイを見ながら言った。

「しぃ助教授!! 大変です!!」
 クルーの1人が大声を上げた。
「…今度は何です?」
 しぃ助教授は、声を落として言った。
 今より大変な状況があるのだろうか。

 クルーは、ディスプレイをチェックしながら告げた。
「こちらに接近してくる複数の艦影を捉えました! 『こんごう』型DDGを2隻確認!
 他にも、『しらね』型DDHが2隻、『はたかぜ』型DDGが1隻、『たちかぜ』型DDGが1隻!
 その他多くのDDが10隻!! 海上自衛隊第1護衛隊群と第2護衛隊群です!!」

444:2004/05/24(月) 23:11

「…!!」
 しぃ助教授は息を呑んだ。
 ディスプレイに表示される、複数の光点。
 それは、囲い込むように周囲から接近してくる。
「…1隻たりとも逃がす気は無し、って事ですか…」
 しぃ助教授は、ディスプレイを凝視して呟いた。



          @          @          @



「先行していた、『ヘミングウェイ』が沈みました…」
 ねここは、暗い顔で言った。
 ショックを受けるのは無理もない。
 同じASAの仲間であり、沈んだ艦の中にも多くの知り合いがいるのだろう。

『全艦散開!! 各艦、陣形を大きく取りなさい!!』
 イヤホンから、しぃ助教授の指示が伝わってきた。
『このままでは狙い撃ちです!! 全艦、ランダムに蛇行運動!!』

 俺は、『アウト・オブ・エデン』を展開した。
 敵潜水艦は今…

「蛇行じゃない、全速前進だッ!!」
 俺はねここに叫んだ。
 全艦が動き出した瞬間、潜水艦は護衛の3隻とこの艦にそれぞれ2発ずつ魚雷を撃ったのだ。
 蛇行のために減速すれば、魚雷の直撃を受ける…!!

「…!?」
 ねここは、俺の方を見た。
 そして、無線機のスィッチを押す。
「副艦長よりCICへ! このまま直進、機関最大戦速!!」
 ねここは、CICにそう指示を出した。
 俺の言葉を信じてくれたのだ。
 『ヴァンガード』が、大きく前方に進む。

『敵魚雷、接近感知!! 距離2000!!』
 通信士の声が伝わってくる。
 俺は、唾を呑みこんだ。
『このまま前進で回避可能…!! ………………やった、回避成功しました!!』

「…ふぅ」
 俺は額の脂汗を手の甲で弾くと、大きなため息をついた。
 ねここも安堵のため息をついている。
「ありがとう。モナーさんの指示が無ければ、今頃は…」

 しかし、俺の『アウト・オブ・エデン』は息をつく余裕さえ与えない。
 展開している3隻の護衛艦が、たちまち撃沈される光景を捉えたのだ。

 CICから、力の無い連絡が来た。
『僚艦『ヘルマン・ヘッセ』、『スタンダール』、『シェイクスピア』、大破炎上…
 3隻とも航行は不能。現在、乗員が退艦しています…』

「そんな、まさか…」
 そう呟いて、ねここは硬直する。
 リナーは口を開いた。
「あれだけ蛇行して海面を乱せば、魚雷のセンサーは相当に狂うはず。
 だが、それを問題にせずに3隻を撃沈した。こちら側の操舵を完全に読んでいる、凄まじい偏差射撃だ。
 相手は、トップクラスのサブマリナーだぞ…」

「…ん? あれは…」
 俺の『アウト・オブ・エデン』は、異常を捉えた。
 50Km先に、1隻の艦が…
 それも、明らかに軍艦だ。
 俺は、艦船を目標にして周囲をサーチする。

「…大艦隊モナ! 囲まれてるモナ!!」
 俺は叫んだ。
 50Km前方に、8隻の大艦隊。
 後方からも、同規模の8隻の艦隊が高速接近している。
 俺の通常探知ギリギリの場所に、今まで待機していたのだ。
 ASAの艦隊を囲い込むように展開しながら…
 そして敵潜水艦の霍乱によって陣形が崩れた今、一気に接近してきた…!

『前方より、大艦隊接近!! 後方からも…!!』
 少し遅れて、CICからの報告。
 ねここは息を呑んだ。
「こちらはイージス艦とはいえ、たった2隻…!」

「でも、やるしかないだろう…?」
 リナーの横には、いつの間にか彼女が持ち込んだ特大ガトリングガンがある。
「潜水艦よりは、まだ戦いやすい相手だ。いざとなれば、接舷して白兵戦で制圧すればいい」
「…本気で言ってるモナ?」
 リナーならやりかねないのが怖いところだ。

 艦橋からの扉が開いて、艦長であるありすが甲板に姿を現す。
「…さすが三幹部、危険に対する嗅覚は並外れているらしいな」
 リナーは、場違いな衣装を着た少女を見て言った。
 ありすは、ゆっくりとこちらへ来る。
 久し振りに感じる、この威圧感と圧迫感。
「サムイ…」
 ありすは、いつものように呟いた。

「…リナーさんの言うとおりです。くじけていてはいけませんね」
 ねここは大きく頷いた。
「ありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』の射程なら、対艦ミサイルの撃墜は可能ですし。
 攻撃に専念すれば、敵の半分くらいは…」

445:2004/05/24(月) 23:13

「…ああ、やってやるモナ」
 俺はバヨネットを取り出した。
 だが、我ながら何をやるのだろう。
 正直、俺はこれっぽっちも役に立ちそうにない。

 無線機のイヤホンから、しぃ助教授の声が伝わってきた。
『全艦…って、もう『ヴァンガード』だけですね。とにかく、全艦に通達です。
 イージス艦の全兵装及び各員のスタンド能力を駆使し、敵艦隊の全艦を撃沈します。
 各員、己の身の防御を最優先にしつつ… 派手にブッ潰してやりなさい!!』

「はは… 結局、こうなるんですね」
 ねここは笑った。
「相変わらずだな、そっちの大将は…」
 リナーはため息をつく。
 そして、夜空に浮かぶ月を見上げた。
「奴等には… 吸血鬼に対して、真夜中に喧嘩を売った事を後悔してもらうか…」



          @          @          @



 非常に狭い空間。
 コーンという音が、定期的に周囲に響いている。
 慣れない者が足を踏み入れば、息が詰まってしまうだろう。
 ここは、潜水艦の艦内である。

 大きなヘッドホンを嵌めている男が、ディスプレイと向き合っていた。
 彼はこの艦の水測長、海中の僅かな音を拾い取る重要な役割だ。
 いわば潜水艦の耳である。
「3隻目の沈没音を確認… ASAのヴァージニア級巡洋艦、3隻とも撃沈です!!」
 水測長は静かに告げた。

「…ヨシ」
 でぃは、ディスプレイを見つめて大きく頷く。
「後は… イージス2隻のみですな、でぃ艦長」
 副艦長は、でぃに言った。

「タイキ…」
 でぃは呟く。
「機関停止、この場に待機だ」
 副艦長は素早く指示を出した。


 でぃは、光点の浮かぶディスプレイを見つめる。
 ここまでは、見事に型に嵌った。
 孫子の教えに、『囲師は周することなかれ』というものがある。
 敵を包囲する時は、一箇所だけ空けておけという事だ。
 完全に追い詰めてしまえば、思わぬ反撃を受ける可能性がある…というだけではない。
 意図的に、相手に逃げ道を用意しておく事で、敵の動きをそこに誘導できるのだ。

 例えば、敵を3箇所の出口しかない家に閉じ込めたとする。
 そして、出口を3箇所ともに火を付けてしまえば、相手の動きが読めなくなる。
 だが、あえて1箇所だけ火を付けなかったら… ほぼ間違いなく、敵はそこから脱出を図るはずだ。

 ASAの敵司令官の指示や対処は的確だ。
 だが、余りに的確過ぎる。幾つかある手段のうち、一番的確な手を選ぶのだ。

 先制攻撃を食らわせれば、追撃を避けるために加速した。
 向こうにとって、一番的確な手だ。
 敵の加速に乗じてギリギリまで接艦すれば、振り切るためにジグザグ航法を取った。 
 向こうにとって、一番的確な手だ。
 ジグザグ移動による海面の乱れに紛れて僚艦を撃沈すれば、艦同士の距離を大きく取った。
 向こうにとって、一番的確な手だ。
 そして海面は大きく乱れ、ソナーがろくに使用できない状態に自らを追い込んだ。
 後は、目の見えない相手を殴るようなものだ。
 こちらは、巻き起こった航跡群を目標に殲滅するだけ。

 完全に、こちらの誘導通りに動いている。
 こちらが意図的に用意した逃げ道に、見事に駆け込んでいるのだ。
 向こうの司令官はスタンド使いとしては優秀かもしれないが、軍司令官としては余りに未熟。
 戦場を肌で感じていない。戦いを自分で組み立てていない。
 現在の向こうの惨状は、全てマニュアル的な判断が招いた事態だ――
 でぃは、ディスプレイに映る敵艦の光点を見つめた。

446:2004/05/24(月) 23:14


「…キタ?」
 でぃは水測長に訊ねる。
「ええ。味方艦隊が接近しています。後は、波状攻撃を浴びせて終わりですよ…」
 ディスプレイをチェックし、笑って告げる水測長。
「手負いの獣は危険だ。まして相手はスタンド使い。接近した時が一番怖い。それを忘れるな」
 副艦長は、そんな態度を戒めるように言った。
「はっ! 甘い認識でした!」
 水測長は慌てて姿勢を正す。

 不意に、クルーの1人が告げた。
「管制機よりデータリンク。距離7000、国籍不明艦を確認。こちらに接近しているようです。
 かなり大型… これは、戦艦クラス!?」
 彼は大声を上げる。

「戦艦クラスだと…?」
 副艦長は、報告をしたクルーの後ろに立った。
「画像は来ているか?」

「…ええ」
 クルーは、機材を操作する。
 ディスプレイに、黒い艦影が表示された。
 副艦長がそれを覗き込む。
 どこからどう見ても、重武装の戦艦だ。
「これは… アイオワ級か…?」

 クルーの1人が口を開いた。
「いいえ… この主砲塔の数、艦橋の形… これは、『ビスマルク』です!」
「『ビスマルク』だと…? ナチスドイツの戦艦を、なぜ今さらASAが模造した…?」
 副艦長は顎に手を当てて呟く。

「…」
 でぃは、ディスプレイを見つめた。
 大ドイツ帝国海軍、超弩級戦艦『ビスマルク』。
 当時のヨーロッパで最強を誇ったとは言え、今ではもはや骨董品だ。
 まともな戦力になるはずがない。

 …これは、本当にASAの艦なのか?
 こんなものを、今さら投入する必要がどこにある?
 彼の嗅覚は感じ取った。
 この戦艦は、ASAに籍を置く艦ではない。

 何か…妙だ。
 こちらの味方でもASAでもない艦が、なぜ接近してくる?
「…コワイ」
 ディスプレイを凝視して、でぃは呟いた。
 漆黒の艦影。甲板にずらりと並ぶ砲塔。
 その姿はまさに、時代の亡霊だ。
 その威容に、でぃは禍々しいものを感じた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
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447ブック:2004/05/25(火) 01:44
     EVER BLUE
     第十七話・TROUBLE MAKER 〜歩く避雷針〜


 僕達を乗せた船は、無事島の港まで着いた。
「よし、錨を下ろせ。」
 サカーナの親方の声に従い、乗組員が錨で船体を港に固定する。

「さて、それじゃあ俺は、燃料だの砲弾だのの交渉に行って来るわ。」
 サカーナの親方が上着を羽織る。
「それでは私もご一緒させて頂きます。
 あなただけに財政を任せては不安ですので。」
 高島美和がサカーナの前に出た。
 まあ、彼女が一緒なら安心だろう。

「2〜3時間は停泊しているのだろう?
 ならば俺は少し島の街に寄らせてもらう。
 剣の補充をしたいのでな。」
 マントをたなびかせながら、三月ウサギが告げた。

「構いませんが、個人の武器の購入は自腹ですよ。」
 冷たい声で高島美和が返す。
「分かっている。」
 無表情で答える三月ウサギ。

「それじゃ、俺もちょっくら外へ散歩に行くとするか。
 この島を出たら、当分娑婆の空気は吸えそうにないしな。」
 ニラ茶猫が軽く背伸びをした。
「あ、なら俺も一緒に行くよ。」
 オオミミが続く。
 全く、君といいニラ茶猫達といい呑気なものだな。
 君達は、『紅血の悪賊』に狙われている真っ最中なんだぞ?

「でしたら、私もご一緒させて頂きましょう。」
 タカラギコが包帯とベルトに巻かれたパニッシャーを手に取り、背中に担ぐ。
 いつも思うのだが、
 この優男のどこにこれだけの大きさの得物を振り回すだけの力が隠されているのだ?
「この得物だけではどうにも小回りに欠けますしね。
 手頃なサイドアームを手に入れなければ。」
 タカラギコが巨大な十字架をコツコツと手で叩いた。

「…外に出るのは勝手だが、お前ら絶対に目立つような事するんじゃねぇぞ。」
 サカーナの親方が僕達を睨む。

「ふん。こいつらと一緒にしないで貰おうか。」
 三月ウサギがオオミミとニラ茶猫の方に視線を移す。

「おい、そりゃどういう意味だフォルァ!」
 ニラ茶猫が三月ウサギに突っかかった。
「事実を述べたまでだが?」
 皮肉気に返す三月ウサギ。
 それにしても失敬な。
 この僕がついているのに、オオミミをニラ茶猫と同列に語るとは。

「まあまあ、二人とも落ち着いて…」
 オオミミが険悪なムードになった二人の間に入る。

「ふん。」
「けっ。」
 ニラ茶猫と三月ウサギはしばし目線を合わせて火花を散らした後、
 ほぼ同時にお互いそっぽを向いた。
 この二人、仲がいいのか悪いのか…

「…そんなんだから心配なんですよ。」
 高島美和が呆れたように呟く。

「天はどうする?」
 オオミミがふと天に尋ねた。
「アタシは遠慮しとくわ。
 また前みたいに恐いおじさん達に追いかけられちゃたまんないし。」
 天が首を振る。

 良かった、こいつが一緒じゃなくて。
 僕は密かに胸を撫で下ろした。

「兎に角、だ。
 くれぐれも騒ぎは起こすなよ?」
 サカーナの親方が念を押す。

「心配すんな。
 俺が居る限り大丈夫だって。」
 胸を張るニラ茶猫。
 いや、お前が一番心配なんだって。

448ブック:2004/05/25(火) 01:45



 僕とオオミミと三月ウサギとタカラギコの三人で、街中の刀剣屋の品を物色していた。
 ニラ茶猫は三月ウサギと一緒に歩くのが嫌だったのか、船を降りたとたん
『ロイヤルミルクティーと生ハムメロンで潤ってくるぞフォルァ。』
 などと訳の分からない事をぬかしてさっさと行ってしまった。
 まあ三月ウサギとニラ茶猫が一緒だと、
 サカーナの親方が心配していたように騒ぎを起こしてしまう可能性があるので、
 一人でどっか行ってくれて内心ほっとしているのだが。

「ふあ〜ぁ。」
 戦闘に武器を使わないオオミミが、退屈そうに欠伸をついた。
 僕もこういう分野には興味が無い為、いささか辟易している。

「ふむ…」
 タカラギコが大刃のナイフを手に取り、軽く手の平で遊ばせる。
 握り心地を確かめているのだろうか?

「……」
 と、タカラギコが何か訴えるような目で三月ウサギを見つめた。
 何だ?
 こいつらホモか?

「…何だその目は。」
 迷惑そうな顔で、三月ウサギが言う。

「いや、あのですね、恥ずかしながら私、一文無しなのですよ。
 ですから、優しい足長おじさんが何かプレゼントしてくれないかな〜、と。」
 縋るような視線を三月ウサギに送るタカラギコ。
 あんた、金も持ってないのに買い物について来たんかい。
 つーか、最初から人に奢らせるつもりだったのか?

「親父、そこの棚にある剣全部寄越せ。」
 三月ウサギがタカラギコを無視して店主にそう言った。

「ああ、そんな…」
 恨めしそうな声を出すタカラギコ。

「そこの棚の剣を全部?
 お客さん、冗談も大概に…」
 そこで三月ウサギが金色に輝く像をカウンターに叩きつけ、店主の言葉を遮った。
「代金はこれで充分だろう。
 分かったらさっさと剣を売れ。」
 ちょっと待った。
 その金の像って、確か…

「やばいよ三月ウサギ。それ、確か『紅血の悪賊』の船から取ってきた…」
 オオミミが小さな声で三月ウサギに耳打ちする。
 それにしても、三月ウサギはいつのまにそんなもの持って来たんだ。
 それとも、最初からマントの中に隠していたのか?

「こんな趣味の悪い像が、軍事機密な訳はあるまい。
 それに、これぐらい正当な報酬の範疇の内だ。」
 涼しい顔で答える三月ウサギ。
 やれやれ、サカーナの親方がこの事を知ったらどんな顔をする事か。

「…分かりました。
 ですがお客様、こんなに沢山の剣をどうやって…」
 棚に掛けられた大量の刃物を見やりながら店主が尋ねる。

「ふん。」
 質問には答えず、三月ウサギは次々と剣をマントの中に入れ始めた。

「あ、あの、それは一体…」
 その光景に、目を丸くする店主。
「気にするな。ちょっとした手品みたいなものだ。」
 剣を収納しながら三月ウサギが口を開く。

「手品…手品…
 うん、そうだよな。
 こんなの手品に決まってる…」
 現実逃避しているのか、店主がブツブツと独り言を言い始めた。
 この異様な現象を、無理矢理手品とこじつけて納得するのに必死なのだろう。

「いやあ、便利な能力ですねぇ。
 本当に羨ましいですよ。
 私なんか、こんな重いものを一々担がないといけないんですから。」
 背中のパニッシャーに目を向けながら、三月ウサギが溜息を吐く。

「…おだてても、お前の武器は買わんぞ。」
 冷徹に三月ウサギが言い放つ。
 三月ウサギに図星を突かれたのか、タカラギコががっくりと肩を落とした。

「オオミミ君…」
 タカラギコが、今度はオオミミに目を向けた。
「…ご、ごめんなさい。
 俺も小遣い程度しかお金持ってないし、
 果物ナイフみたいなものしか…」
 手を振りながらタカラギコの期待を退けるオオミミ。
「そうですか…」
 タカラギコが残念そうに呟いた。

449ブック:2004/05/25(火) 01:45


「…俺、先に店を出とくよ。」
 退屈が限界に達したのか、タカラギコの視線に耐えられなくなったのか、
 オオミミが外に出ようとした。
 それがいい。
 三月ウサギが剣を全部マントの中にいれるにはまだまだ時間が掛かりそうだし、
 外で何か冷たいものでも飲むとしよう。

「ああ、お気をつけて。」
 タカラギコはオオミミにそう言うと、再び三月ウサギに訴えるような視線を向けた。
 どうやら、まだまだ武器を奢って貰うのは諦めていないらしい。

「うん。俺、この店を出た所から見える位置には居るから、
 終わったら声を掛けてよ。」
 そう言うと、オオミミは刀剣屋の出入り口のドアを潜った。

(さて、どうするオオミミ?)
 僕はオオミミに尋ねた。
「そうだね。
 前にパン屋さんがあるし、そこで何か食べ物でも買おう。」
 オオミミがパン屋を指差した。
(賛成。)
 僕とオオミミは一心同体。
 本来スタンドである僕は食べ物など必要無いが、
 オオミミの感覚を共有する事で味覚を楽しむ事も出来る。
 だから、オオミミが食べた物を僕が味わう事も可能なのだ。

「それじゃ、買いに行こうか『ゼルダ』。」
 オオミミが小銭の詰まった財布を握り締めてパン屋に向かう。
 早く、オオミミ。
 僕はもう待ちきれな―――


「!!!!!!!!!!!!」
 次の瞬間、オオミミの体が何者かの腕に掴まれた。
 驚く間も無く、首に腕を回されて体を捕らえられる。
「…!?」
 自分を捕まえた人を見ようと、咄嗟にオオミミが首を後ろに向ける。
 全身を分厚いコートに包んだ、奇妙な風貌。
 背中には、パニッシャーと同じ位に大きな何かを担いでいる。
 顔はフードを目深く被っている上に、サングラスまでかけているので、
 ぱっと見ただけでは判別がつかない。
 だがオオミミの背中に当たる柔らかな二つの膨らみからして、どうやら女性のようだ。

「…!貴様!!」
 と、そこに数人の男達が駆けつけてきた。
 その手には、十字架を模した武器を持っている。

「動くな!!」
 男達が詰め寄ろうとした瞬間、オオミミを捕らえた女が声を張り上げた。
 その言葉に動きを止める男達。

「動くでないぞ。
 妙な真似をすれば、この者の首をへし折る。」
 凍りそうな程冷たい声。

 …どうやら、騒ぎを起こすのは三月ウサギでもニラ茶猫でもなく、
 僕とオオミミになってしまったようだ。
 畜生。



     TO BE CONTINUED…

450丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:06


 丸耳の少年が、椅子に腰を下ろした。
テーブルを挟んだ対面には、顔も右腕もない男が座っている。

「いらっしゃい…だいぶお疲れのようだけど、欲しければ飲み物くらいは出すよ?」
「いや…必要ない」
 そう言うと、少年の向こう側に座った男が首を振った。
砕け散った右腕に、のっぺらぼうの白い顔。
「そう…ところで、なんて呼べばいいのかな。…あ、名乗りたくないなら構わないよ。
 こっちで勝手に呼ばせて貰うから。『のっぺらぼうさん』『白塗りさん』『片腕さん』…
 いや、『片腕さん』ってのはウチのメンバーとかぶる…」

「…<インコグニート>だ。そう呼んで貰おう」
「『名無しさん』って…僕の偽名ネーミングセンスはそれ以下なのかな?」
「ええと…君の悪口は言いたくないのでノーコメントです」
「それは言ってるのと同じだよ〜…」
 テーブルにのの字を書き始める少年に、<インコグニート>が答えた。
「本名だよ。私が私自身につけた、な」
「あ、そう…で、はるばるこんな所に来たんなら、僕らに用があるんでしょ?」
 のの字を書いていた指が、気を取り直すようにこつん、とテーブルを叩き、中空にくるりと円を描く。

「そうだ…私の用件は二つ。まず、私に敵対するSPM構成員の排除と…『エタニティ』の能力を貸与して欲しい」
 す、と隣に佇んでいた少女の体に緊張が走った。
軽く右手を挙げていきり立つ少女を抑え、そっと口を開く。
「人生っていうのは…何事もギブ・アンド・テイクってものだよね。
 それが見ず知らずの、たった今初めて会ったばかりの奴なら尚更…。
 僕が敵を消して能力を貸せば、その見返りに何をくれる?」

 沈黙。

 お互いに黙ったまま、空気だけが張りつめていく。
永遠とも思える時が過ぎ―――<インコグニート>が答えた。
 world
「世界だ」

「はぇ?」
 少年の後ろで、少女が素っ頓狂な声を出した。

451丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:08

「聞こえなかったか?世界をやろう」

「世界…?」
「そう、世界だ…元々私は『帝王になる』事だけを目的として生まれた存在だからな。
 支配した後のことなど、実のところさしたる興味はない」
「えーと…要するに、『プラモ作るのが好きだけど、場所取るから作ったのくれる』とかそんな感じ?」

 何やらえらく平和な例えになってしまい、少年以外の二人の顔に汗が浮かんだ。
「…いや、その比喩は…」
「待って下さい。話を聞くに、貴方の最終的な目的は『世界の帝王になる』と?」
 今まで話し合いに参加していなかった少女が、初めて自分から口を開いた。

「そうだ」
 情報は隠さない。協力を求めている以上、『信頼』を見せねばならないのだ。
「貴方、自立型スタンドですよね」
「…そうだ」

 …ふと感じる威圧感。目の前の少女に、敵意が宿っている。

「本体が、死亡したのは?」
「千九百…八十七年だったか」

 チリチリチリチリ、肌が焼けるような感覚。
少女の口元に浮かんでいた、薄い笑みが消えていた。

「本体の、名は?」

 しばしの躊躇い。
全てのカードを晒す訳でもないし、彼の名を明かすのには問題はないだろう。

 そう判断し、口を開く。


「―――ディオ・モランドー」


  ―――――!


 その名が出た瞬間、少女の敵意が爆発した。

452丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:09
「貴様ァァァァ―――――ッ!」
 絶叫しながらテーブルを駆け上がり、周囲の空間に揺らぎが生まれる。
「なっ…!」
 驚く間もなく揺らぎが肥大化し、スタンドヴィジョンが浮かび上がった。
ぼんやりとした輪郭の人型スタンド。
わああああん、とざわめきのような音が聞こえる。
 即座に『思念の刃』を展開させ、防御に備え―――


「縛れ―――『エタニティ』!」


 少年の叫びと共に具現化した鎖が、二人の動きを封じた。
ごろりと少女がテーブルに転がり、<インコグニート>の刃と体も椅子に縛り付けられる。

「ふあっ…!」
 締め付けられた少女が、テーブルの上で甘い吐息を漏らした。
鎖の端は空中へ融け込むように同化しており、一ミリも動かせなくなっている。

「ぅぁ…何故、止めるのですか…!コイツのせいで、私達『ディス』は地獄を見たのですよ!!」
「…彼のせいじゃない。彼は只のきっかけだよ。彼がいなくたって、いずれ他の人間がそうなってた」
「しかし…!」

 縛られたまま、憎悪の籠もった目で<インコグニート>をにらみつける少女。
やれやれと溜息を一つ、<インコグニート>へと向き直る。

「済まないけど…『名無しさん』。この話、無かった事にして。
 『世界をやろう』なんてとても信用できないし、万一できても僕らは世界なんていらない。
 ただ今のままでいられればいいんだよ。だから、双方不干渉って事でいいでしょ?」
「…そうか…残念だ」
 言っているものの、断られるのがわかっていたのかあまり悔しそうな口調でもない。
      ディス
「悪いね。僕等のメンバーも納得しそうにないから…お引き取り願うよ」
 そう言うと、刃と体を縛り付けていた鎖『エタニティ』が消滅した。
ふっと刃を消し、<インコグニート>が席を立つ。
「では…また会おう」

  ―――また?

 眉をひそめる間もなく、<インコグニート>は部屋から消えていた。

453丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:10

  ―――また?

 眉をひそめる間もなく、<インコグニート>は部屋から消えていた。

「『また会おう』って…不干渉って言ったんだけどな…あれ?」
 少女に鎖を絡ませたまま<インコグニート>の座っていた椅子を見ると、封筒が一つ置かれていた。
手紙に使うようなものよりも少し大きめの、色気もそっけもない茶封筒。
「…忘れ物?」
「返す必要なんてないです。あんな奴が『エタニティ』を貰おうなんて―――」
「ちょっと黙ってなさい」

 そういうと、『エタニティ』の鎖を少しだけ締め付けてやる。
「ゃあ…ふあンッ!」

「さて、と…」
 卓の上で悶える少女を余所に、椅子の上の封筒を取り上げた。
「…ま、いいよね、ちょっとくらい見ても…」
 爪を使ってぺり、と封を切り、中身を取り出す。
「写真…?」
 中には、輪ゴムで止められた数枚の印画紙が中にまとめられていた。
ぱちんとゴムを外し、中の写真を覗き見る。

 そして―――その中の二人を見て、顔色を変えた。


  長毛種の少年―――『チーフ』。

  丸耳の少年―――『茂名・マルグリッド・ミュンツァー』。


        ・ ・ ・ ・ ・   ・ ・ ・ ・
―――――また会おう、必ずまた、な…


            インコグニート
 顔と右腕のない『名無しさん』の声が、聞こえた気がした。

454丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:11




「…ぅん…」
 ぱちり、と目を開けた。

 右手を上げて目を擦ろうとするが、酷く重い。
目の前に上げて握り拳を作ろうとするが、ぴくぴくと軽い痙攣を起こすだけだった。
そうこうしているうちに力尽き、顔の上に右手を落とす。
 感覚が全くない。
顔面に右手が乗っている感覚はあるのに、右手で顔面を触っている感覚が感じられない。

「…うわぁ…気持ち悪…」

 一人表情を歪めていると、病室に誰かが入ってきた。
「…気付かれましたか」
「ジエン…さん?…えと…私、なんで寝てるの?」
「ええ…と、『ヨーダイガキューヘンシタ』という奴ですよはい」
「HAHAHA、マルミミのドアホウが薬間違えてのぉ。
 数時間もすれば…明日の朝には感覚が戻ってくるじゃろ。
 首のバンソーコーは取ってはいかんぞ。絶対」
「二人とも…何か、隠してます?」


  ぎくんっ。


「………さあ、何の事やら」
「………人を疑うなんて無礼じゃぞ♪」

 辛うじてとぼけていると言っていい状態。
だが、ジエンは冷や汗でスーツがビショビショになっているし、茂名に至っては露骨にキャラが変わっていた。
「…別にいいですよ、話したくないなら」

 ジエンと茂名が顔を見合わせ、ほっと一息。
「まあ、寝てる間に血を抜いて売ったりとかそういう事はしとらんから安心せい」
「ぅぇぁ…そんな事してる人がいるんですか?」
 顔をしかめるしぃに、ジエンが答えた。
「昔はあったらしいですよ。半身不随の人が、足から血を抜かれて…」
「いや〜…聞きたくない〜…」
 おどけて首を振り、ジエンと茂名が笑う。


 実際はそれより酷いコトされたとは、口が裂けても言えなかった。

455丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:12




―――そして、その酷いコトをした張本人はといえば。

「うう……」

 ベッドの上で枕を抱いて、一人思案に暮れていた。

  ―――――胸、凄かったなぁ。たゆーん、って。

(って違う違う違うっ!)
 ピンキィ
 桃色思考の首に縄を繋いで、本来の考えへと引き戻す。
彼女の服をはぎ取って牙を打ち込むまで、全て鮮明に覚えていた。

 今こうして枕を抱いて悶々としているのも『僕』ならば、しぃの首に牙を立てたのも『僕』。
自業自得とはよく言ったものだけれど、この場合はどうなるんだろう。

(あ、また脱線してる…)


―――ひぁ…ぁ、洗っても、洗っても…男の人達の…感触が…消えな…くて…
     汚れた躯…ふぁ…マルミミ君に…好きに…なって…貰えない…!


 思い出す。暗い病室での、しぃの言葉を。

(…やっぱり、これって…告白…だよね。)

 男手一つで育てられたから、女性との付き合いなんて近所のオバさんと虐待されたしぃ族くらい。
学校だって、子供じみた外見のせいで評判は『カワイイ』…
 生まれてこの方、女の子とつきあった事など一度もなかった。

(で…僕は、どう思ってる?)
 …嬉しくないわけは、ない。
しぃ族の女の子は沢山見てきたけれど、その中でも彼女は綺麗だった。
 十四歳という話だったが、とてもそうは見えない大人びた外見。
でも、中身はやっぱり十四歳の女の子…そのギャップが、見る者を引きつける。

                ・ ・ ・ ・ ・ ・
 けれど、それは本当に人間である僕の、人間に向ける愛なんだろうか。
        ・ ・ ・ ・ ・ ・        ・ ・ ・
 それとも、吸血鬼としての僕の、非常食に向ける食欲なのだろうか。


 愛なのか、欲望か―――そこで思考は停止する。
わからないまま前にも進まず、ゴールの無い迷路のようにぐるぐるぐるぐるただ迷う。


  ―――――けどやっぱり凄かったなぁ。サイズの合うブラ家に無かったもんなぁ…って待て待てっ。


 三度脱線する思考を引き戻すが、いつしかうとうとと眠りについていた。




  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

456丸耳達のビート:2004/05/25(火) 22:13

                           @@@@
   @@@@     @@@@      @@@@  (゜д゜@
   (゜д゜@アラヤダ @゜д゜)     ∩゜д゜)   ┳⊂ )
(( ⊂ ⊂丿    (つ  つ ))  ヽ ⊂丿  [[[[|凵ノ⊃
   (_(_)    (_)_)     し'し'    ◎U□◎

 近所のオバさ(ブツッ) 奥様方

                ウルワ  マダム
茂名診療所の近所に済む逞しき人妻達。
男ヤモメの茂名診療所によく晩ご飯を作りに来てくれる他、
しぃのような入院患者の衣服なども無償で提供するなど、     @@@@
茂名診療所は彼女らによる無償の愛で成り立っているのだッ! (゜д゜@ …ケド、デバン ナイノヨネェ…

457ブック:2004/05/26(水) 00:06
     EVER BLUE
     第十八話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その一


「『ジャンヌ・ザ・ガンハルバード』…!」
 男達がオオミミを掴む全身コート女を睨んだ。

「…ふ。」
 僕とオオミミを抱えたまま女が後ろに大きく跳躍した。
 いや、大きくなんてものじゃない。
 その距離実に十メートル以上。
 オオミミを抱え、助走無しでのこのジャンプ。
 明らかに人外のそれである。

「くっ、貴様!」
 男達が僕達へ駆け寄ろうとする。

「動くなと言っておる!」
 女がオオミミの首に回した腕に力を込めた。
 オオミミが、苦しげに声を上げ、その様子を見て男達が悔しそうに動きを止める。

「では、な。」
 女が再び飛翔した。



 まるで風のような勢いで、女はオオミミを抱えながら街中を飛び進んだ。
 街の人々が、驚いた様子でそれを眺めるが、
 女は一向に構わぬ様子でそのまま駆け抜けて行く。

「…そろそろいいじゃろう。」
 そう呟くと、女は薄暗い裏通りで足を止めた。
 そして、オオミミをゆっくりと地面に下ろす。

「……!」
 オオミミが警戒態勢を取る。
 僕も、いつでも出現出来るように準備しておく。
 あの怪力、あの身のこなし、そして陽光を嫌うようなこの格好、
 この女、間違いなく吸血鬼だ。
 まさか、『紅血の悪賊』か…!?

「そう固くなるな、小僧。
 別に取って喰ったりなどせぬ。」
 と、思いがけず和やかな口調で女が喋ってきた。
 その声色に、思わず肩透かしを食らう。

「あの、あなたは…」
 オオミミが何か言いたそうに女に声をかける。

「名乗る程の名は持ち合わせておらぬよ。
 …そうじゃ。
 行きがかり上とはいえ、さっきはすまなんだな。」
 女がオオミミに巾着袋を投げ渡した。

「……!」
 オオミミがその入れ口を開けてみて仰天する。
 巾着袋一杯に、ぎっしりと詰められた金貨。
 何で、吸血鬼がこんな大金を?

「あの、俺、こんなのは…!」
 オオミミが慌てて金貨の詰まった巾着を返そうとした。
 馬鹿、オオミミ。
 君は何でせっかくの儲けを棒に振ろうとするんだ。

「いいから持っておけ。
 先程の迷惑料じゃ。
 子供は素直に駄賃を受け取るのが、可愛げというものじゃぞ?」
 クックと含み笑いを漏らす女。
 その口からは二本の白い牙が覗く。
 フードを被りサングラスをかけている為、顔はよく見えないが、
 恐らく相当の美人だろう。

458ブック:2004/05/26(水) 00:07


「…そういえば忘れる所じゃった。
 お主、この辺りで『紅血の悪賊』に狙われている船があると聞いておるのだが、
 何ぞ知らぬか?」
 …!
 この人も、僕達を追っているのか!?
 だが、今の質問の仕方からして、『紅血の悪賊』ではなさそうだ。
 なら、この人は一体何者なんだ?

「し、知りません…」
 露骨に動揺した様子で答えるオオミミ。
 駄目だ。
 僕から見ても、隠し事してるのがバレバレだ。

「…どうやら、お主は嘘を吐けない性格のようじゃな。」
 女の声が冷たいものへと戻り、一歩オオミミへと近寄る。
 オオミミは後ろに下がろうとするも、背中に壁が当たりそれを阻んだ。

「う、嘘じゃないです。
 俺は、本当に何も…」
 オオミミが冷や汗を流す。
 女は既にオオミミの目と鼻の先まで接近していた。

「!!!」
 いきなり、女がオオミミの顔を伝う汗をその舌で舐め取った。
「この味は、嘘を吐いておる味じゃぞ。」
 汗を舐めただけで嘘か本当かを見抜いた?
 この女、変態か?

(無敵ィ!!)
 このままではヤバい。
 咄嗟に僕が外に出て、女を突き飛ばすべく腕を伸ばす。

「!?」
 しかし、その一撃が当たる事はなかった。
 命中の寸前で、女が紙一重でそれを避ける。

 僕の姿が見えた?
 まさか、この女スタンド使いなのか!?

「!!!!!!!」
 直後オオミミが首を掴まれ、そのまま壁に押し当てられた。

「…驚いたぞ。
 可愛い顔して、スタンド使いだったとは。
 じゃが、どうやら大きな魚が網に掛かったみたいじゃな。」
 女が静かに口を開く。

「さて、すまぬがお主の知っている事、
 洗いざらい唄って貰おうか?」
 女が軽くオオミミの喉を掴む手に力を込めた。

「…本…当に、知らな…い……」
 オオミミが苦しそうに言葉を搾り出す。
 このままだと、非常にまずい。

(無敵ィ!!)
 女に目掛けて左のフックを放つ。
「甘い。」
 しかし、女は背中に担いでいる巨大な「何か」で、巧みにその拳を防御した。
 この人、強い…!

459ブック:2004/05/26(水) 00:07

「…仕方無い。
 あまりこういう真似はしたくないのじゃが…」
 女がサングラスを外した。
 怖気も奮うような、極上の美人。
 しかし、残念ながら今はその美顔に見とれている状況ではない。

「……」
 女が猛禽類の様な瞳で、オオミミの目を覗き込んだ。

「……!!!」
 オオミミがビクンッと痙攣する。
 同時に、彼の意識が一気に遠のいていくのが感覚を通じて分かる。

(……!)
 彼の感覚に同調する形で、僕の意識も持っていかれそうになった。
 遠く遠く遠く遠く遠く遠く遠く遠く。
 心地よい魂の眠りへと…

 …!!
 まずい。
 これは、
 催眠術(ヒュプノシス)…!

「さて、答えて貰おう。
 お前は、何を知っている?」
 女がオオミミの目を見つめたまま尋ねた。
「…はい。その船は、俺達の―――」

(しっかりしろ、オオミミ!!)
 心神喪失状態のオオミミに向かって、僕はあらん限りの声で叫んだ。
「!!!」
 オオミミが、僕の声を受けて正気に返る。

「…!!
 儂の瞳術が破られた!?」
 女の顔が驚愕に歪む。
(無敵ィ!!!)
 そこに生まれる一瞬の隙。
 僕の右拳が、今度こそ女の顔を捉える。
 女性の顔をグーで殴るのは気が引けるけど、今回はまあ不可抗力だ。

「くっ…!」
 殴られた右頬を押さえ、後方に跳ぶ女。
 さっき拳を交えた時の感じからして、
 多分相手の方が戦闘能力に関しては何枚も上手。
 しかも、相手は吸血鬼。
 人間を軽く屠る事が可能な超常生物だ。

「……!」
 ゆっくりと間合いを測るオオミミ。
 だが、勝機は無い事もない。
 今は日中。
 太陽の光は吸血鬼の致命的な弱点だ。
 それならば、僕達で何とか出来る!

「…先程の無礼は詫びよう。
 しかし、儂とて子供の使いでここに来ている訳ではない。
 すまぬが、どうあってもお主には知っている事を話して貰……」

460ブック:2004/05/26(水) 00:08


「!!!!!!!!」
 突然女がその身を翻した。
 次の瞬間、さっきまで女が居た場所に無数の剣が突き刺さる。
 この剣、
 まさか―――

「それ以上の相手は、この俺だ。」
 黒いマントをたなびかせ、建物の屋根から隻眼の男が僕達を見下ろす。
 三月ウサギ、来てくれたのか…!

「お主、何者じゃ!?」
 女が背中の大きな「何か」の包帯とベルトを外した。
 そこから、変な形の凶悪な得物が顔を覗かせる。
 何だ、これは。
 銃とハルバードが合体したようなそんなとてつもないような…

「…俺に銃は効かんぞ。
 そして、この距離ならば投擲(こっち)の方が速い。」
 女に銃口を向けられても、少しも動じぬ様子で三月ウサギが告げた。
 その両手には、既に剣が握られている。
「成る程、大した自身じゃ―――」

「!!!!!!!!」
 刹那、女が巨大な得物を持っているのとは別の手で、
 懐からリボルバー式の大型拳銃を取り出して何も無い空間に向けて構えた。

「…いやはや、折角姿を消していたのに、
 いきなり見つけないで下さいよ。」
 何も居ない筈の空間から聞こえてくる声。
 すると、そこから徐々に人の姿が現れてきた。

「タカラギコさん…!?」
 驚くオオミミ。

「どうやら間に合ったみたいですね。
 いや、実によかった。」
 タカラギコはパニッシャーを女に向けて構えている。
 しかし、彼は一体いつからそこに居たのだ?

「……!」
 張り裂けそうな圧迫感。
 重苦しく圧し掛かる沈黙。
 視線と視線が、
 銃口と銃口が、
 殺気と殺気が交錯する。
 一触即発の緊張感が、あたりを静かに包み込んだ。

461ブック:2004/05/26(水) 00:08



     ・     ・     ・



 ―――三月ウサギとタカラギコがオオミミとジャンヌの元に辿り着くより少し前―――


 俺は噴水前のカフェで、ロイヤルミルクティーと生ハムメロンで潤っていた。
 優雅な一時。
 まさに上流階級の俺に相応しい。

「あいつら今頃武器屋で買物してんのかねぇ。
 ま、どうでもいいけどなフォルァ。」
 本当は少し寂しいのだが、悲しくなるのでその事は努めて考えないようにしておく。

「……?」
 と、通りの向こうが何やら騒がしいのに気がついた。
 何か、事件でもあったのだろうか。
 何気なくそちらに目を向けてみると…

「ブゥーーーーーー!!!!!」
 俺は口に含んでいたロイヤルミルクティーを全部噴き出した。
 オオミミが、全身コートの変人に誘拐されているのが目に飛び込んできたからだ。
 あの野郎、何だってあんな面倒な事に巻き込まれやがる。

「しょうがねぇ奴だな…」
 ほっとく訳にもいかないので、面倒だが助けに行く事にする。
 渋々と席を立ち上がり…

「!!!!!!!!」
 突如、俺は背後から殺意を感じ取った。
 即座に後ろに振り向く。

「あんた誰だよ、おっさん。」
 後ろに居たのは、頭の天辺から一本だけ毛が生えた髭親父だった。
 その顔に、丸い眼鏡をかけている。

「おお、これは失礼。
 実は人を探していましてな。」
 禿親父がピカピカに輝く頭に手を当てた。

「それで、俺に何か関係があるのかフォルァ。」
 警戒態勢を取りながら、禿親父に尋ねる。

「ええ、その探している人の人相が、
 耳の大きい少年、頭に大きなリボンをつけた少女、
 全身黒コートの片目の男、
 …そして、頭に緑色の毛の生えたギコの亜種の男でしてな。」
 …!
 こいつ、『紅血の悪賊』の一味か!

「さあ?
 そんな奴、周りにいくらでも居るだろ?」
 俺はわざと白を切る。

「そう。
 だから…」
 禿親父の殺気が大きくなった。
「お前で五人目だ!!」
 禿親父の横に浮かび上がる人型のスタンドのビジョン。

「『ネクロマンサー』!!」
 俺もスタンドを発動させる。
 蟲を鋼に擬態させ、腕に即席の刃を形作る。

「『アンジャッシュ』!!」
 男がスタンドの指先を俺に向けた。
 キラリと光る指先。

「!!!!!」
 次の瞬間、俺の右肩に小さな痛みが走る。

「…?針!?」
 見ると、俺の右の肩口には細長い針が突き刺さっていた。

「へっ!こんなチンケな得物で、俺を殺れるとでも…」
 すぐに針を引き抜く。
 これしきの傷、『ネクロマンサー』で回復させるまでも…

「があぁ!!!?」
 しかし針を肩から引き抜いた瞬間、そこに直径三センチ程の穴が肩に穿たれた。

「くっ!!!」
 穴から吹き出る血。
 何だ、これは。
 今のが、奴のスタンドの能力か…!?

「儂のスタンドに興奮したか!!」
 禿親父が誇らしげに声を張り上げた。



     TO BE CONTINUED…

462ブック:2004/05/26(水) 23:46
     EVER BLUE
     第十九話・第十八話・CEMENT 〜ガチンコ〜 その二


「くあああぁ!!」
 肩に開けられた穴から血が流れ出す。
 馬鹿な、どういう事だ?
 あんな細い針に刺されただけなのに、針を抜いた途端穴が開くなんて…

「うわ!?」
「きゃあああああ!!」
 俺の様子と、只ならぬ雰囲気に気づいた周りの奴等が、慌ててその場から逃げ出す。

「手前…!」
 肩を押さえながら禿親父を睨みつけた。
 『ネクロマンサー』が、肉に擬態して風穴の開いた傷口を修復する。

「…ずいぶん変な体だな。」
 やや驚いたような表情で禿親父が呟く。
「頑丈だけが取り柄でね。」
 俺はおどけながら答えた。

「お前、『紅血の悪賊』の手合いか…?」
 構えながら、禿親父に尋ねる。
 こんな真昼間に軽装の服で闘いを挑むとは、どうやら吸血鬼ではなさそうだ。
「そうだったら?」
 禿親父が俺と視線を合わせる。
 俺達の近くには既に人は居らず、かなり離れた所に野次馬が囲いを作っている。
 辺りは静まり返り、カフェの前にある噴水の水の音だけが俺の耳に入って来た。

「くっ。お前ら、本当にどこにでも居るのな。」
 うんざりしながら俺は口を開いた。
 全く、こんな辺鄙な島にまで出張って来てんじゃねぇよ。
「それはすまなかったな。
 だが、儂もここで貴様らの足止め、加えて戦力の削減を仰せつかっておる。
 残念だが、貴様にはここで死んで貰おう。」
 禿親父のスタンドが、ゆらりと禿親父の傍に現れた。

「『アンジャッシュ』!」
 そんなこんな考えているうちに、禿親父のスタンドの指から再び針が放たれる。
「ちっ!!」
 避けるのは間に合わない。
 『ネクロマンサー』を擬態させる事で創り出した刃で針を受ける。
 奴のスタンドの右手の五本の指から放たれた五本の針が、
 次々と腕から生えた刃に突き刺さった。

「糞が!」
 一々針を抜いている暇は無い。
 そのまま禿親父に向かって突進する。

「うるぅうぅあぁあ!!!」
 大上段からの振り下ろし。
 禿親父の光り輝く脳天目掛けて刃が襲い掛かる。

「『アンジャッシュ』!!」
 真剣白刃取り。
 禿親父のスタンドが、俺の『ネクロマンサー』の刃を両手で挟んで受け止めた。
 このスピード、近距離パワー型か…!

463ブック:2004/05/26(水) 23:48

「フォルァ!!」
 足の甲の部分で『ネクロマンサー』を刃に擬態。
 そこに生えた刃をで斬りつける様に、禿親父に向かって蹴りを繰り出す。

「いたずらばっかりしおって!」
 禿親父のスタンドが、刃の生えていない部分に足を当てて俺の蹴りを受け止めた。
 だが、ここでは止まらない。
 続けて腕の刃で禿親父の首を狙う。

「馬鹿もーーーん!!」
 禿親父が叫んだ。
 同時に、俺の『ネクロマンサー』の刃に刺さっていた針が引き抜かれる。

「!!!!!!!!!!」
 直後、刃に五つの大きな穴が穿たれ、
 『ネクロマンサー』の刃が虚空に散った。

 これは!?
 いきなり、針が勝手に抜け落ちた?
 いや、それより、
 今開けられた穴は、さっき肩に開けられた穴よりずっと大きい…!

「…!!」
 俺の刃に刺さっていた針が、宙を舞いながら禿親父の指に戻る。
 よく見ると、針の根元には細い糸のような物がくっついていた。
 あれで、針を引き戻したのか。

「!!!!!」
 今度は男の左手の指先が俺に向けられた。
 五本の指から飛び出す針。
 まずい。
 刃で受けようにも、擬態が間に合わ―――

「がっ!!」
 咄嗟に回避行動を取るも、かわし切れずに針の一本が俺の左目に突き刺さる。
「ちぃ!!」
 急いで針を引き抜く。

 ―――ボヒュン

 音を立て、俺の左目ごと頭をくり抜かれる。
「ぐああああああああああああああああ!!!」
 脳を一部を抉り取られ、思考が一瞬濁る。
 加えて、左側の視界が完全に奪われた。

「くううぅ…!」
 追撃を喰らうのは危険だ。
 朦朧とする頭で、何とか禿親父から距離を離す。

「!!!!!!」
 その時、俺の足元の地面がいきなり消失した。
 穴に足を捉えられ、無様にその場に倒れる。

 …!!
 地面に、あの針を打ち込んでおいたのか!

「『アンジャッシュ』!!」
 倒れた俺目掛けて、禿親父のスタンドが針を放つ。

「うおお!!」
 穴から足を引き抜き、何とかかわそうとするが、
 左腕の二の腕に針が一本刺さってしまう。

「くっ…!」
 今度は針を引き抜かない。
 これまで、針を抜いた途端にそこに穴を開けられている。
 恐らく、奴のスタンドの能力は針を刺し、
 それを抜いた瞬間に周囲に穴を開ける能力。
 ならば、針が刺さったままならば、大したダメージにはならない。
 兎に角、今は体勢を立て直す。

464ブック:2004/05/26(水) 23:48

「…吸血鬼も真っ青の再生能力だな。」
 俺の頭に開けられた穴が修復していく様を見ながら、
 禿親父が呆れ気味に口を開いた。
 既に、眼球も殆ど再構築しかかっている。
 我ながら、ぞっとしないスタンド能力だ。

「羨ましいだろ?」
 右腕に刃を生やしながら、禿親父を見据える。
 しかし、ここまでにかなりの『ネクロマンサー』を使ってしまった。
 このままでは、再生しきれなくなってお陀仏になりかねない。

 …だが、何故だ?
 頭の針を抜いたとき、さっき俺の刃に開けた位大きな穴を開ければ、
 いくら俺の『ネクロマンサー』といえど危なかった。
 なのに、何であの時はあんな小さな穴しか開けなかったんだ?
 いや、そういえば、
 今まで開けられた穴の大きさは大きかったり小さかったりまちまちだ。
 …何か、穴の大きさには法則性が有るのか?

「左腕の針を抜かなくてもいいのかな?」
 禿親父がニヤニヤと笑う。
「その手に乗るか。
 針を抜いた途端にそこに穴が開く位、もう気づいてるんだよ。」
 しかし、相手はこの針を引き戻す事で自在に引き抜く事が出来る。
 だとすれば、攻撃の最中に引き抜かれてダメージを受けるよりも、
 今の内に自分で抜いておく方がいいかもしれない。

「ちっ。」
 舌打ちしながら、針を引き抜いた。
 ダメージを受けると分かっていながら自分で針を抜くのは癪だが、仕方な―――


「!!!!!!!!!!!」
 抜いた瞬間、今までで一番大きな穴が左腕に穿たれた。
 その余りの大きさに、腕が千切れて地面に落ちる。

「があああぁ…!!」
 筆舌に尽くし難い程の痛み。
 糞、何故だ。
 何で今回はこんなに大きな穴が。
 いや、考えろ。
 何か法則は有る筈だ。
 さっきの頭の時の穴と、今の穴と、何が違う?
 何か、針を抜く時に違いは…

「!!!!!!!!!!」
 …そうか、そういう事か。

「針が刺さっている時の時間…!」
 歯を喰いしばりながら、俺は呟いた。
 針が刺さっている時間が長ければ長い程、抜いた時に大きな穴が開く。
 それなら、今迄の事も説明がつく。
 頭に刺さったとき、俺はすぐに針を抜いたから穴が小さくて済んだ。
 対して、今の左腕や、刃に刺さった時は、
 すぐに針を抜かずに刺さったままにしておいたから、
 大きな穴が開いたんだ。

「正解。
 だが、それでどうするのだ?」
 禿親父が嘲るように言い放つ。

 その通りだ。
 こんな事が分かったからといって、どうだというのだ。
 禿親父の攻撃への対策にはなっても、勝利の決め手にはならない。
 糞。
 考えろ。
 勝利への道筋を、奴を殺す方法を。

 思考思考思考。
 千切れた左腕からは、噴水のように血が流れている。
 …血……噴水……
 ……噴水………水…

「!!!!!!!」
 そうだ。
 きっと、これなら…!

465ブック:2004/05/26(水) 23:48

「うおおおお!!!」
 俺は千切れた左腕を振るい、そこから迸る血を禿親父に叩きつけた。
「!?」
 血の目潰しを喰らい、僅かに怯む禿親父。
 すかさず、右腕の刃で斬りかかる。

「カツオォ!!」
 しかし相手も近距離パワー型のスタンド使い。
 訳の分からない名前を叫び、紙一重で俺の斬撃を回避する。
 俺の刃は禿親父の服を少し切り裂いただけで、体を両断するには至らなかった。

「たわけめ!服を掠っただけ…」
 そう、『服を掠った』。
 それが出来れば充分だ…!

「ぐああああああああああああ!?」
 次の瞬間、禿親父の服が勢い良く炎上した。

 これこそが、俺の狙い。
 さっき血を撒き散らしたのは、目潰しが本来の目的じゃない。
 俺の血の中に潜む『ネクロマンサー』を、奴の服にくっつけるのが目的だったのだ。
 そして、奴の服で『ネクロマンサー』をリンに擬態させる。
 リンは非常に発火温度が低い物質。
 ちょっとした摩擦熱でも、充分に火を点ける事が出来る。

「おのれ…!!」
 禿親父がカフェの前の噴水に駆け込む。
 そう、お前はそうやって服に点いた火を消すと思ったよ。
 そして、それこそがお前の地獄への片道切符だ!

「『ネクロマンサー』!!」
 左腕を修復する分だけの蟲を残し、残りを全てとある物質へと擬態させる。
 俺の右腕に生まれる、鈍色に輝くコンクリートブロック大の物体。
 これが、俺の切り札だった。

「!!!!!!」
 噴水に飛び込み、体に点いた火を消化する禿親父。
 そこに、作ったばかりの鈍色の塊を放り込んでやる。

「!?」
 水に投げ入れられた塊を、不思議そうな目で見る禿親父。

「…冥土の土産に教えてやる。
 その物質の名前はな―――」
 物質の周囲の水が、沸騰したように泡だった。

「―――金属ナトリウム。」
 そう、水に接触する事で、激しく反応する化学物質。
 その大きな塊が、今大量の水の中に―――

466ブック:2004/05/26(水) 23:49



!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 耳をつんざく様な爆発音。
 それに伴い、噴水からとてつもない大きさの水柱が立つ。
 噴水の中の水が一瞬にして空になり、
 空に巻き上げられた水が天のように地面に降り注いだ。

「おわあ!!」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
 野次馬達が悲鳴を上げる。
 どうやら、爆発のショックでバラバラになった禿親父の肉片も、
 水と一緒に落ちてきたみたいだ。
 まあこっちだって命懸けなのだ。
 これ位は勘弁して貰おう。

「化学の勝利、ってやつだなフォルァ。」
 千切れた腕をくっつけながら、勝利の余韻に浸る。
 これこそが、俺の『ネクロマンサー』の闘い方。
 その真骨頂。
 だけど、何か肝心な事忘れているような…

「あ。」
 思い出した。
 サカーナの親方に、絶対に騒ぎを起こすなと言われていたのだ。

「…ま、しょうがねぇわな。
 不可抗力不可抗力。」
 深く考えるのは止そう。
 そんな事より、今はここから逃げなければ。
「逃げるが勝ち、ってやつだフォルァ。」
 俺はそそくさとその場を立ち去るのであった。



     TO BE CONTINUED…

467:2004/05/28(金) 22:10

「―― モナーの愉快な冒険 ――   吹き荒れる死と十字架の夜・その3」



          @          @          @



 店の外から、ヘリのメインローター音が聞こえた。
「…着いたみたいだょぅ」
 ぃょぅは、カウンターから出る。
「じゃあ、行くか…」
 ギコは荷物を抱えると、ソファーから立ち上がった。

「モナー君によろしくね」
 コーラの入ったグラスを置いて、モララーが言った。
「モララー君… ぃょぅがいない間に、勝手にお酒を漁ったら承知しないょぅ」
 ぃょぅが釘を刺す。
「や、やだなぁ… 僕がそんな事をするはずないよ…」
 モララーは露骨に視線を逸らした。
「…」
 そんなモララーを不審げに見た後、ぃょぅはBARから出ていった。
 ギコが後に続く。
 扉の開閉時の、カランカランという鐘の音が店内に響いた。

 そのまま、ギコとぃょぅは駐車場に出る。
 そこには、ギコの想像より遥かに大きなヘリが着陸していた。
 機体は、黒みがかったグレーにペイントされている。
「H−60・ブラックホーク…?」
 ギコは、呟きながらそのヘリを見上げた。
 これは輸送ヘリじゃなく汎用ヘリだ。
 無論、武装もしている。
 こんなのでASAの艦に近付いたら、撃墜されるんじゃないか?

「さぁ、乗るょぅ」
 ぃょぅはそう言ってヘリに乗り込むと、慣れた様子で操縦席に座った。
 そして、ギコがASAから聞いた座標を地図に書き込む。
「…ちょっと遠ぃょぅ。途中給油が必要かもしれなぃょぅ」
 そう呟きながら、計器類をチェックするぃょぅ。

「確か、このヘリは乗員が3名必要じゃないのか?」
 ヘリに搭乗したギコは、操縦席のぃょぅに訊ねた。
「1人で操縦可能なように改良したょぅ」
 ぃょぅは当たり前のように答える。
「じゃあ、テイクオフだょぅ!」

 ギコとぃょぅを乗せたブラックホークは、たちまち空高く舞い上がった。
「…自衛隊に見つかったらどうするんだ?」
 ギコは訊ねる。
「そうならない為に、五課のヒラ操縦士じゃなくぃょぅが操縦を引き受けたんだょぅ」
 ぃょぅは正面を向いて言った。
 ギコは、窓から夜の町を見下ろす。
 戦争が始まろうが、眼下の風景は変わらない。
 だが、この町にまで戦火が拡大すればどうなるだろうか。
「守るべき町…、か」
 ギコは呟いた。

「昔、ヘリの操縦士をやってたって言ってたな? どこでだ?」
 ふと、ギコは操縦席のぃょぅに訊ねた。
「…ソマリアだょぅ」
 ぃょぅは即答する。
 それからしばらく、2人の会話は無かった。

468:2004/05/28(金) 22:11



          @          @          @



 千葉県、嶺岡山。
 この地に設置されたレーダーサイトが、最初にその異常を捉えた。

「海自では、今頃派手にやってるんだろうな…」
 ずらりと並ぶディスプレイ。
 それに向き合っていた航空自衛隊隊員の1人が、椅子にもたれて言った。
「第1と第2が総出だろう? これでASAの艦隊を潰せれば、戦争も終わるんだがなぁ…」
 その隣の空自隊員が呟く。

「こっちにも特別要請が来たみたいだぞ。
 アレを投下するから、F−2支援戦闘機を1機派遣してくれ…って」
 それを聞きつけて、空自の1人が寄ってきた。 
「アレって… アレだよな」
 椅子にもたれていた隊員が、声を落とす。
「また、マスコミに叩かれるぞ。ウチの幕僚長、こないだも…」
 そう言い掛けた隊員が、ディスプレイに目をやった。
「…おい、何だよこれ!!」

 ディスプレイに広がる光点。
 その数は、40を越えている。
「航空機の編隊…! ASAかっ!?」

 隊員達が、一斉にそれぞれのディスプレイに向かう。
「アンノウン(正体不明機)、時速1000で接近中!! 距離140キロ、高度100!」
「機数、80を超過!!」
「IFF(敵味方識別機)反応なし!! フライトプランにも当該機なし!!」
「百里基地にスクランブル・アラート!!」
「米衛星より、画像来ました!!」

 ディスプレイに、2種類の航空機が映し出される。
「…レシプロ機だって?」
 その前時代的な機体外観に、隊員の1人が呟いた。
「両機とも照合不能!! 戦闘機と爆撃機の2種の模様!! おそらく、ASAの開発した最新機種と…」

「最新なものか…」
 駆けつけてきたレーダーサイトの所長が口を開いた。
「メッサーシュミットBf109、爆撃機はJu87… 共にナチスドイツの機体だ」
「ナチスですって…?」
 隊員は、ディスプレイに見入る。
「でも、60年も前の機体でしょう? それが、亜音速で…」

「改修機だろう… ASAは何を考えている?」
 所長は顎に手を当てた。
 海自からの連絡では、ASA艦隊をかなりのところまで追い込んだらしい。
 それが、なぜ救援に行かない?
 陽動… いや、そもそもこの航空編隊はASAの所属か?

「…向こうは爆装している。通常の領空侵犯対処ではなく、迎撃任務だ。
 百里基地に、第204飛行隊と第305飛行隊を出すよう連絡しろ!」
 余計な思考を打ち切って、所長は指示を出す。
「はっ!!」
 隊員の1人が、素早く無線機を手に取った。

469:2004/05/28(金) 22:12



          @          @          @



 枢機卿は、Bf109のコックピットで闇夜を眺めていた。
 高速で流れていく周囲の風景。
 こんな風に、戦闘機を操縦したのは何十年振りだろうか。

 真っ暗にもかかわらず、視界は完全に良好。
「まあ、闇目の利かない吸血鬼など存在しないからな…」
 枢機卿は笑みを浮かべて呟いた。
 随伴機も、特に問題はない。
 自機が、かなり先行している点を除いて…

「さて…」
 ディスプレイに光点が表示された。
 前方から接近物多数。
「目標確認。随分と団体で来たものだな…」

 F−15J。
 20世紀における最強の戦闘機、F−15・イーグルの航空自衛隊改修機。
 その編隊が迎撃に駆けつけてきたのだ。
 うち、敵機2機が先行。こちらに直進してくる。
 この距離でミサイル攻撃を行ってこない理由はただ1つ。

「あくまで最初は威嚇射撃という訳か…」
 枢機卿は呟いた。
 自機の速度を落とさず、そのまま直進する。
 先行している2機も、真っ直ぐに近付いてきた。

 案の定、F−15Jに備え付けられたバルカン砲が虚空に向かって火を吹く。
 敵機に当たる可能性がある攻撃は、威嚇とは見なされない。
 よって、威嚇射撃は見当違いの方角へ放つ。
 それが、この国のルールのようだ。
「筋は通す…か。その心根、悪くはない…」
 枢機卿は冷たい笑みを浮かべた。

 機内に備え付けられた国際無線が、お決まりの音声を放つ。
『警告する。貴機は、現在領空を侵犯している。至急…』
 英語で告げているのは、先程威嚇射撃を行ったパイロットだろう。
「これだけの編隊を前に警告か。律儀な事だ…」
 枢機卿はため息をついた。
「その愚かなまでの規則遵守… 我らゲルマンと通ずるものがあるな」

 敵編隊の先頭機2機との距離は、どんどん縮まっていく。
 枢機卿は無線機を手に取ると、そのスィッチを押して告げた。
「勇敢なる兵士よ、1つ問おう。命の意味とは何だ?」

『命の意味…? …繰り返す、貴機は、現在領空を侵犯している』
 向こうのパイロットは少し動揺した後、先程の台詞を繰り返した。
 枢機卿は無視して続ける。
「かけがえのない命… 本当にそうか? 例えば、ここから遠い地… アフリカにいる1人の人間。
 消えて無くなったところで、世の中は変わるか?」

『警告に従わなければ、撃墜する。繰り返す…』
 枢機卿の言葉に全く取り合わないように、パイロットは告げた。

「答えは…『何も変わらない』。その人間と関わりのあった者が悲しむのみだ。
 そう。命の価値とは、他者との関連による言わば付加価値なのだよ」
 枢機卿は、まるで日曜日の教会の神父のように話し続ける。

『貴機は、現在領空を侵犯している…』
「そもそも、かけがえのない命とは大いに語弊がある。
 命など、日々失われているではないか。これは、財の損失か?
 軍用機のコックピットに座る君になら分かるだろう。
 そんな筈はない、『かけがえのない命』などは虚構であると…
 人の命を奪う為の機械を操縦している君には分かるはずだ。この愚かなる欺瞞がな…!」
 枢機卿は、目の前の2機をしっかりと見据えた。
 この速度だと… あと20秒後にすれ違う計算になる。

『警告に従わなければ、撃墜…』
 壊れたレコードのように、無線から伝わってくる声。

「――なぜ、そんな兵器などが作られた?
 君が必死ですがっている、領空侵犯とやらのやり取りは何の為にある?
 『かけがえのない命』ではなかったのか? これを偽善といわずして何という?
 問おう。問おう。問おう。問おう。問おう。問おう。君に問おう」
 枢機卿は、両袖から愛銃のP09を取り出した。
 P08のフルオートカスタムが両手に1挺ずつ。
 そのグリップを強く握る。

『黙れ! そんなのは関係ない! これが手続きだからだ!!
 世の中はそういう風に出来てるんだよ!!』
 とうとう我慢できなくなったのか、パイロットは怒声を上げた。
 枢機卿は、満足そうに笑みを浮かべる。

470:2004/05/28(金) 22:13

「そう、世界はそのように構築された。だから私は哀れな魂に告げよう――」

 先頭の2機が目前に迫る。
 枢機卿の機体を囲い込むようにすれ違う瞬間、枢機卿は自機のキャノピーを押し開けた。
 亜音速の空気抵抗が、もろに枢機卿の身体に吹き付ける。

「――Kyrie eleison(主よ憐れみたまえ)」

 枢機卿は操縦席から立ち上がると、大きく両手を広げた。
 まるで、十字を形作るように。
 そして、その両手に構えたP09の引き金を素早く引く。

 フルオートで発射された弾丸は、左右から挟みこむようにすれ違うF−15Jのコックピットを直撃した。
 そのままキャノピーを貫通し、パイロットの頭部を貫く。
 操縦士を失い失速する2機。
 後は、地表に激突するのみだ。

 枢機卿は、場の空気が変わるのを敏感に感じ取った。
 後方に控えているF−15Jの編隊から照射される無数のアクティブ・レーダー、そして殺意。
 様子見から迎撃へ。
 彼等の任務は変更された。
 これで、舞台は整ったというわけだ。

「さあ… 神罰に溺れよッ!!」
 枢機卿は、手許のスィッチを押した。
 機内のステレオから、勇壮な曲が大音響で流れる。

Ka-me-ra-den, wir mar-schie-ren in die neu-e Zeit hin-ein.
「   戦友よ、    我等は    新しき時代へ行進する 」

 メロディーに合わせて、枢機卿は口ずさんだ。
 その曲は、無線機を通じて相手側にも伝わっているだろう。
 敵編隊は、視界ギリギリの地点に展開していた。
 吸血鬼の視力でギリギリという事は、向こうからの目視は不可能。

「有視界戦闘など、過去の遺物というわけか…」
 枢機卿は呟くと、自機のスピードを限界まで上げた。
 アフターバーナーを消費し、その機体速は音速を超える。
 前方から、何発もの対空ミサイルが飛来してきた。

wir sind stets zum Kampf be-reit.
「 我等の戦いの準備は堅い 」

 速度を落とさず、枢機卿はミサイルの雨を切り抜けた。
 超音速で、数々のミサイルのホーミングを振り切る。
 そして枢機卿のBf109は、敵編隊の正面に躍り出た。
 その数、約60機。
 空を覆い尽くす大編隊だ。

Lie-be Mag-de-lein, laB das Wei-nen sein;
「 愛する乙女よ、 悲しむのはやめよ 」

 枢機卿は、素早く周囲に視線をやった。
 全ての情報を分析し、確率・統計的に導き出された最適な行動パターンを割り出す。
 自機の位置。針路。指示対気速度。真対気速度。対地速度。風向風速。射線の保持。Optimum Altitudeの確認。
 敵機の動き。進入飛行経路。飛行高度。失速速度。最小操縦速度。最大運用速度。航空機の姿勢。バイパス比。
 エレメンタルの組み合わせ。各機残存燃料の把握。編隊の有機的関連。各機の射程及び視程。
 気温。気圧。CATの有無。気温逓減率。正規重力計算。遠心力計算。エトヴェシュ補正。
 ランチェスター理論。クラウゼヴィッツ的『戦場の相互作用』の加算。集中効果の法則。
 防御・隊列数分割式。命中率と砲外弾道計算。真空弾道の軌道計算。暴露時間と被弾確率。
 そして、最低限の誤差修正――

「――戦状把握。これより神罰を執行する」

 両手の拳銃で敵機のコックピットに狙いをつけた。
 自機の機銃、機関砲、ミサイル、全てを編隊に照準を合わせる。
 一斉に、バラバラに散る敵編隊。
 もう遅い。全ての試算は済んでいる。

denn wir kampfen ster-ben furs Va-ter-land.
「なぜなら我等は祖国のため死ぬのだから」

 枢機卿の機は、そのまま急上昇した。
 それを追うように高度を上げる機体、守勢に回る機体、距離を置く機体、対応は様々だ。
 まるで、枢機卿の割り出した行動モデルをなぞるように。
 ――射線確保。
 そして、一直線に編隊の中へ突っ込む。

471:2004/05/28(金) 22:14

 枢機卿は、両手の拳銃の引き金を引いた。
 同時に、13mm機銃、20mm機関砲が火を噴く。
 さらに、ミサイルを発射。
 拳銃弾は、コックピット内のパイロットの頭部へ。
 機銃弾や機関砲弾は、燃料タンクへ。
 ミサイルは、機体の胴部へ。

ie-be Mag-de-lein, laB das Wei-nen sein;
「 愛する乙女よ、 悲しむのはやめよ 」

 全機の行動を完全に読んだ偏差射撃に、F−15Jは次々に被弾していった。
 だが、向こうも黙ってやられるはずがない。
 敵機の中距離ミサイルが乱れ飛ぶ。
 それでも、敵機の全ての動作は最初に割り出した行動パターンに符合していた。
 電子機器による誘導は、機関砲の弾道より読むのは容易い。
 ミサイルを避けつつ、敵機体を殲滅しつつ、枢機卿のBf109は敵編隊の間を縦横無尽に駆けた。

 ――オーバーシュート。
 編隊を突っ切ってしまったようだ。
 目の前に、飛行機1つない夜空が広がる。
 急速旋回して、再び編隊の中に飛び込んだ。

 その瞬間、機体に衝撃が走った。
「…!?」
 枢機卿は、真上に視線をやる。
 この機体よりもさらに高度に、1機のF−15Jの姿があった。
 真上からバルカン砲を喰らったようだ。

「…ふむ、いい腕だ」
 機体が大きく揺らぐ。
 この角度で、そしてミサイルが乱れ飛ぶ中で、頭上から見事に射線を通すとは…

 ――どこで読み違えた?
 おそらく、編隊を突っ切って18機目。
 向こうの射線を遮るはずだった敵機を、つい落としてしまったようだ。

 さらに衝撃。
 一瞬の隙に、後方を突かれた。
 エンジン付近に被弾。
 おそらく、頭上の機体と2機編隊。
「素晴らしい連携だ… その技量を賞賛しよう」
 枢機卿は、笑みを浮かべて呟いた。

 Bf109の機体後部は炎に包まれている。
 エンジンが発火しているようだ。
 これ以上の飛行は不可能だろう。

 機体は、とうとう落下を始めた。
 枢機卿は座席から立ち上がると、機体の上に立つ。
 SS制服の裾が、風圧で激しくはためいた。
「さて、困った…」
 そう呟くと、一番近い位置にいるF−15Jに視線をやった。

「少し遠いが… 吸血鬼の肉体ならば、何とか可能か」
 機体の上で助走をつけ、枢機卿はそのまま飛んだ。
 そして、F−15Jの機首部に着地する。
 コックピットの正面に立つ枢機卿。

「な…!?」
 突然目の前に降り立った男の姿に、パイロットは驚きの表情を浮かべる。

denn wir kampfen ster-ben furs Va-ter-land.
「なぜなら我等は祖国のため死ぬのだから」

 枢機卿は、コックピット内に銃口を向けた。
 そのまま、頭部を狙って引き金を引く。
 銃声と破壊音。
 コックピット内に鮮血が飛び散った。

 空を切る轟音。
 枢機卿の乗るF−15Jに向かって、ミサイルが飛んできた。
 機体の背に直立し、枢機卿はその飛来物に目をやる。
「随分と執拗だな。そうまで私の首が欲しいか…」

 銃口をミサイルのシーカーに向けると、枢機卿は引き金を引いた。
 銃弾が命中し、空中爆発するミサイル。
 さすがに間近での爆風は強烈だ。
 枢機卿の体は、機体の背から投げ出された。

「全部潰すつもりでいたが、早くもリタイアか…」
 落下しながら、枢機卿は両手のP09を連射する。
 3機のF−15Jのコックピットを撃ち抜いたが、それで限界だ。
 そのまま、彼は高速で落下していった。

 後方から鳴り響くジェット音。
 Bf109、Ju87で構成される吸血鬼航空部隊がようやく飛来してきた。
 頭上で、F−15Jとの交戦が始まる。

「先行しすぎた事が仇となったか…」
 大空中戦の光景も、みるみる遠くなっていく。
 落下速度は増す一方。
 真下は海である。
 この身体なら、充分に落下衝撃に耐え切れるだろう。
 枢機卿の身体が海面に激突し、高い水柱が上がった。


「せっかくの一張羅が濡れてしまったな…」
 枢機卿は、仰向けで海面に浮いていた。
 そのまま、名残惜しそうに上空を見上げる。
 真上では、『教会』の吸血鬼航空部隊と航空自衛隊が激突していた。
 火花や爆発、機関砲の咆哮が響く。
「…さて、母艦に戻るか」
 枢機卿は呟いた。

472:2004/05/28(金) 22:15



          @          @          @



 俺は、大きく深呼吸をした。
 敵は合わせて16艦。こちらは2艦。
 いくら戦いは数でするものではないと言っても、余りに分が悪い。

「…勝算はあります」
 ねここは、緊張した表情を浮かべながら口を開いた。
「従来の艦隊戦のように、目視できない距離からの撃ち合いならば、こちらに勝ち目はありません。
 でもASA本部ビルが奇襲された時、しぃ助教授は16発のミサイルを撃墜しています。
 向こうはそれを警戒して、ミサイルの使用を控えると思うのです。
 そうなると、近代ではありえないような艦隊接近戦になると思います」

 接近すれば、こちらにはスタンドという強い武器がある。
 少しだけこちらに有利に傾くかもしれない。

「…ミサイル16発を落としただと? なら、私はその3倍は落とす…」
 リナーは、別の意味でやる気のようだ。
 アヴェンジャー機関砲を掴む手に力が入っている。
 とにかく、今は心強い。

「ん…?」
 『アウト・オブ・エデン』が、しぃ助教授の艦の接近を捉えた。
 艦同士の距離を狭め、連携を取ろうというのであろう。
 そして、前方からも近付いてくる物体が…

「…来たモナ!! 右20度から、ミサイル2発!!」
 俺は怒鳴った。
「副艦長よりCICへ!! スタンダードで迎撃を!!」
 ねここが無線を手にして叫ぶ。
 後方から轟音がした。
 この艦から、まるで打ち上げ花火のようにミサイルが飛翔していく。
 それは、そのまま前方へ高速で飛んでいった。
 あれが、スタンダード対空ミサイル…

 ミサイル同士が空中衝突し、両者とも爆砕した。
「当たったモナ! 向こうのミサイルを撃ち落したモナ!」
 俺は興奮して叫ぶ。
 ねここは、俺に視線を向けた。
「モナーさんが早く教えてくれたお陰です。ミサイルが来たら、この調子で…」
「…また来たモナ!!」
 俺は、息つくヒマもなく叫んだ。
「…敵艦が2艦、こちらに近付いてきたモナ!! 後ろの艦からもミサイルが3発…」

「スタンダード3番、4番、5番!! 目標、敵対艦ミサイル!!」
 ねここは素早く反応した。
 再び、発射されたミサイルが前方に向かう。

「敵艦接近か…」
 リナーが、アヴェンジャー機関砲を構えた。
 眼前の海に、肉眼でうっすらと艦影が見える。
 先頭に1艦。その後ろにもう1艦の縦列だ。
 先頭艦の前部に備え付けられた単装砲が、素早くこちらを向いて…

「ありすッ!! お願い!!」
 ねここは叫んだ。
 周囲に、夜を裂くような爆音が響き渡る。
 敵艦の単装砲… そして、リナーのアヴェンジャー機関砲が同時に火を噴いたのだ。

 大きな掌、おそらくありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』が砲弾を弾く。
「うわぁッ!!」
 その瞬間、『ヴァンガード』が大きく揺れた。
 流石に全弾は防ぎきれなかったようだ。
 艦の前部に砲弾が直撃…!!

「いや、相打ちだ」
 リナーは、敵艦を見据えたまま言った。
「このアヴェンジャーで敵艦を撃沈するのは到底無理だが、固定兵装を潰す事はできたようだな…」

 見れば、敵艦の前部単装砲が吹き飛んでいる。
 でも、まだ後部の砲門が残っているはず。
 敵艦は、転舵運動を…

「転舵させるな! 沈めろ!!」
 リナーが叫んだ。
「ハープーン!! 目標、前方敵駆逐艦!!」
 ねここは素早く指示を出す。
 ミサイルが、轟音と共に撃ち上がった。

 ハープーン対艦ミサイル。
 亜音速で飛来、そして水上艦に激突・爆砕する強力なミサイル兵器。
 転舵運動を取っている最中の敵艦に、避ける術はない。

 ハープーンは、敵艦の艦橋に直撃した。
 ミサイル自身の爆発。さらに、火薬庫か何かに引火したようだ。
 敵艦上で誘爆が起こっている。あれでは、航行は不可能だろう。

「やった!!」
 俺は叫んだ。
 こっちに放たれた3発のミサイルも、こちらの対空ミサイルで撃墜したようだ。

473:2004/05/28(金) 22:16

 しぃ助教授の艦『フィッツジェラルド』が、『ヴァンガード』の横に並んだ。
 艦橋のてっぺんに立つしぃ助教授が見える。
 そして、その後ろに影のように控える丸耳。

「気を抜くな! まだまだ来るぞ!!」
 リナーはガトリングを構えて叫んだ。
 俺は素早く前方に視線を戻す。
 もっとも、俺が気合を入れても仕方がないが。

 後ろの1艦が艦砲射撃を放ってきた。
 ありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』の掌が、その砲弾を叩き落す。
「距離が遠い。これでは、あそこまで届かんな…」
 リナーはアヴェンジャー機関砲を構えたまま呟いた。

 『アウト・オブ・エデン』が、ミサイルの接近を感知する。
「ミサイルが来たモナ! 数は1、2、3、いや、もっと… 50発以上!!」
 俺は叫んだ。
 ねここも、ありすも、リナーも、驚きの表情を見せる。
 隣の艦でしぃ助教授が息を呑むのが、無線越しに伝わってきた。
 今から来るのは、まるでミサイルの雨だ。それが、あと30秒後に…!!

「…飽和攻撃! こちらのミサイル処理能力を上回る物量で押してきたか!」
 リナーは、ガトリング砲を仰角30度に向けた。
「構わんさ。落とせるだけ、落としてやろう…」

「サムイ…」
 ありすの周囲に、無数の巨大な掌のヴィジョンが浮かぶ。
 かなり射程の長いスタンドだが… それでも、ミサイル攻撃に対しては余りにも不利だ。
 ありすの身ひとつではなく、艦そのものを防衛しようと言うのだから。
 ねここは無線を操作して言った。
「ウェポン・オール・フリー(全兵装使用自由)。砲雷長の判断で、迎撃及び攻撃を行って下さい」
『了解。 …そちらも健闘を祈ります』
 CICからの応答。
「駄目な時は、総員の退艦を速やかに…」
 そう告げて、ねここは無線を切った。
 そして、前方を見据える。

「…来たぞ!!」
 リナーは叫んだ。
 視認範囲にミサイルの大群が…!!
 それは、星のように正面に点在していた。
 広がった点にしか見えない物体が、徐々に大きくなっていく。
 前方の艦も、ミサイル攻撃とタイミングを合わせるかのように艦砲射撃を繰り出してきた。
 空を切るようなミサイルの飛来音と、単装砲の太鼓のような音が闇夜に響く。

「はいだらー!!」
 ねここは、ミサイル群を見据えて叫んだ。
 『ヴァンガード』と『フィッツジェラルド』から、同時に多数の対空ミサイルが発射される。
 こちらの対空ミサイル、リナーのアヴェンジャー機関砲弾、ありすのスタンド…
 それらが、一斉にミサイルの大群に向かった。
 前方で次々に巻き起こる爆発。
 それは、まるで花火のように俺の目に映った。

 それをかいくぐって、数発のミサイルが飛来する。
「この…ッ!!」
 リナーが、素早くアヴェンジャー機関砲を向けた。
 かなり付近まで接近していたミサイルが、弾丸を喰らって爆発する。
 その爆風に、俺はよろめいた。

「まだ来るのか…!!」
 リナーは、アヴェンジャー機関砲で接近してきたミサイルを次々と撃ち落していく。
 だが、それでも迎撃が追いつかない。
 『ヴァンガード』のCIWS20mm機関砲もフル作動しているが、それでも…
 アヴェンジャー機関砲の射撃を逃れたミサイルが、寸前まで迫る…!!

 轟音と共に、ミサイルはそのまま水没した。
 こちらに迫るミサイルは、次々とあらぬ方向に逸れていく。
 これは、しぃ助教授の『セブンス・ヘブン』…!!

「さすが、しぃ助教授!! 助かりました!!」
 ねここは無線で言った。
『余り私を頼らないで下さい。遠距離になれば、当然精度も弱まりますからね…!』
 しぃ助教授は告げる。
 さらに、しぃ助教授は仮にも人間。
 スタミナにも限界はある。

 向こうは、それでも遠方から次々にミサイルを放ってくきた。
 もう、100発はとっくに越えているはずだ。
 リナーのガトリング、両艦の兵装、そしてしぃ助教授とありすのスタンドを持ってしてもなお、迎撃しきれない。
 飛来したミサイルのうちの1発が、艦首部分に直撃した。

「うわァッ!!」
 『ヴァンガード』がぐらぐらと揺れる。
「大丈夫、これくらいじゃ沈みません!!」
 ねここは叫んだ。

474:2004/05/28(金) 22:17

「…弾切れだ」
 アヴェンジャー機関砲を下ろして、リナーは呟く。
 そこへ1発のミサイルが飛来した。
「…!!」
 リナーはアヴェンジャー機関砲を持ったまま、砲丸投げの要領でその場で1回転する。
 そして、ミサイル目掛けてアヴェンジャー機関砲の砲身をブン投げた。
 頭上で爆発が起こり、砲身の直撃を受けたミサイルが海中に没する。

「…対艦ミサイルを、前方の艦に放つようCICに伝えろ。軌道は超低空だ」
 リナーは、ねここの方に振り返って言った。
「は、はい… でも、間違いなく迎撃されると思いますが…」
 ねここは、急な申し出に困惑して告げる。
「…構わん。急げ!」
 リナーは言った。
 ねここは素早く無線を操作する。
「前方敵艦にハープーン! 軌道は海面スレスレでお願いします!」

 指示の直後、後部発射口からハープーン対艦ミサイルが撃ち上がった。
 リナーは、その場から艦首に向けて真っ直ぐに走り出す。
 まさか…!!

 いったん真上に撃ち上がったミサイルが、誘導に従って下降していく。
 加速をつけたリナーが、艦首から思いっきりジャンプした。
 そのまま、敵艦へ直進するミサイルに飛び乗る。

 前方の艦のCIWS機関砲が作動した。
 たちまちのうちに、こちらが放ったミサイルは撃墜される。
 だがリナーはミサイル撃墜の瞬間、敵艦に飛び移ったようだ。

「本気で、白兵制圧する気モナね…」
 俺は思わず呟いた。
 その瞬間、前方から爆発音が響いた。
 直後に、艦が大きく揺れる。
 艦の右舷にミサイルが当たったのだ。
 損傷の規模からして、ありすの『ゴッド・セイブ・ザ・クィーン』が爆発をある程度抑えたようだが…

「くッ…!!」
 『ヴァンガード』は大きく傾き、俺はよろけた。
 しぃ助教授の艦も、何発か喰らっている。
 この艦よりも損傷は大きいようだ。

『ねここ!』
 無線機のイヤホンから、ねここを呼ぶしぃ助教授の声。
『こちらの後部甲板にミサイルが直撃しました! 怪我人続出です! 至急、治療をお願いします!!』
「分かりました! ただちに向かいます!!」
 ねここは、俺とありすに背を向けて駆け出した。
「…どうやって行くつもりモナか!?」
 俺は叫ぶ。
「内火艇があります!!」
 ねここはそう答えると、ブリッジの中に消えていった。

 内火艇って、ボートに毛が生えたような奴じゃないか…
 そんなもので、この銃弾やミサイルが飛び交う戦場を渡るのか…?
 俺は、隣のありすを見た。
 ゴスロリに身を包んだ少女は、必死な顔で前方を見つめている。
 この艦に迫るミサイルを、もう何発落としたのだろうか。
「ありす、頑張るモナ!!」
 俺は、ありすを激励した。
 応援するしか、俺にできる事はない。

「…だいじょうぶ」
 ありすは頷く。
 その額に、一筋の汗。
 あれほどの射程と力を持つスタンドである。
 この小さい身体に、それを維持し続けるだけのスタミナはあるのだろうか…

「…?」
 『アウト・オブ・エデン』は、不穏な気配を感知した。
 後方から、何かが近付いてくる。
 これは、航空機か…?

 俺は、背後の空を見上げた。
 1機の飛行機が、高速で飛来してくる。
 その胴部と主翼には、見慣れた日の丸。
 機体下部には、爆弾のようなものを装備している。

 ――妙だ。
 これだけのミサイルの雨の中、わざわざ飛行機で爆撃しにくる必要など全くないはず。
 あれは…
 あの爆弾は、何だ?

 『それ』は投下され、『ヴァンガード』の甲板前部に落ちた。
 俺達のすぐ近くだ。
 爆発など起きはしない。
 ただ、その物体は甲板に転がったのみ。
 飛行機は、そのまま速度を落とさずに前方へ飛んでいく。
 これは… 何か、苦い香り…?

 突然、ありすが膝を付いた。
 そして、そのまま甲板に横たわる。

「ありす!!」
 俺はありすに駆け寄った。
 呼吸が荒い。手足が僅かに痙攣している。
 これは――


 ――窒素性化学物質、シアン化水素。組成式はHCN。
 化学兵器として有名で、米軍コードはAC。
 吸入から15秒程で呼吸亢進。
 15〜30秒後に痙攣。
 2〜3分後に呼吸が停止、その後数分で心停止に至る――

 本来、化学兵器を屋外で使う事は兵器運用上ありえない。
 たちまち空中に四散してしまうからだ。
 しかし、これは個人を狙った攻撃だな。
 ASA三幹部ありすの命のみが狙いなのだろう。
 君は吸血鬼だから大丈夫だが… この娘はいくら強大なスタンドを所持していようが、肉体は人間だ。

475:2004/05/28(金) 22:19


「化学兵器だと…!? 女の子なんだぞ!?
 女の子1人を殺す為に、奴等は化学兵器なんか持ち出したっていうのか!?」
 俺は憤慨して叫んだ。
 そして、ゆっくりとありすを抱き起こす。
 ぐったりとして、力が入っていない。

 ――か弱い女… とはとても言えんだろうがな。
 やるなら急げ。
 間に合わんぞ。

「お前に、言われるまでもないんだよッ!!」
 俺はバヨネットを取り出すと、ありすの胸に突き刺した。
 そして、大きく横に薙ぐ。
 肺を犯しているシアン化水素『だけ』を『破壊』――
 さらに、バヨネットで周囲を大きく一閃した。
 これで、空気中のシアン化水素は残らず『破壊』したはず。

 だが、あくまで毒素を取り除いたのみ。
 ありすの容態は悪い。
 俺は無線機のスィッチを押した。
「ありすが化学兵器… ACで倒れた! 急いで救護を!!」
 俺は叫ぶ。
『艦長が…? 了解しました!!』
 CICから迅速な返事が返ってきた。
 その瞬間、艦が大きく揺れる。
 左舷に、ミサイルの直撃を食らったのだ。 
 ありすが倒れた今、この艦はもう持たない…!


 ――『私』に替われ。

「黙れ! お前の力なんて、絶対に借りるか!!」
 俺は叫んだ。
 『殺人鬼』の奴、いつの間にしゃしゃり出てきたんだ?

「くッ…!!」
 俺はありすの身体を抱えると、艦橋に向かって走った。
「ともだち…?」
 ありすが、俺の顔を見上げる。
「黙ってろ! すぐに治るから!!」
 俺は叫んだ。

「大丈夫ですか!!」
 艦橋へのドアが開き、担架を持った艦員達が走ってくる。
「ACを吸ってる! 応急解毒は済ませたから、100パーセント酸素補給を!!」
 俺は、素早くありすを担架に乗せた。
 そして、艦員達を見る。
「この艦はもうダメだから、あんた達も避難を…」
 艦員は、厳しい視線を向けた。
「艦を見捨てて逃げ出したりはしません。私達も戦っています」
「…」
 俺は、思わず視線を逸らした。
「では、あなたも気をつけて!!」
 艦員達はありすの乗った担架を持ち上げると、艦橋の中に走っていった。

 そう。俺は見逃していた。
 戦っているのは、俺達だけじゃない。
 なぜ、この船は沈まない?
 浸水を食い止めているクルーがいる。
 傾く艦を必死で操舵しているクルーがいる。
 敵ミサイルの撃墜の為に、CICでディスプレイと向かい合っているクルーがいる。
 救急の為、艦内を駆け回っているクルーがいる。
 みんな、戦っているのだ。

 『私に替われ』。
 そう、『殺人鬼』は言った。
 奴の力など、借りたくはない。
 だが… もしこのまま『ヴァンガード』が沈んだ場合、多くの犠牲者を出した場合、俺はどうなる?
 醜い力に身を委ねないで良かった、と胸を張れるのか?
 そんな筈はない。
 そんなのは、俺個人のエゴだ。
 俺は、この艦のみんなを――
 そして、この艦のために戦っている人達を守りたい。

 ありすはミサイルを防ぐ為に戦って、化学兵器に倒れた。
 リナーは、たった1人で敵艦に乗り込んで戦っている。
 しぃ助教授は、必死でミサイルを迎撃している。
 ねここは、あっちの艦内を駆けながら怪我人を治療している。
 丸耳は、副艦長として『フィッツジェラルド』を指揮している。
 みんな…
 みんな、戦っている。

 ――だから。

「――だから、俺も戦う」
 俺は、俺の中の『殺人鬼』に告げた。

476:2004/05/28(金) 22:20



          *          *          *



(――だから、俺も戦う)
 私の中の『monar』は告げた。

「…ふむ」
 正面から飛来するミサイル群を見定める。
「君は、ミサイルに対して何もできないと思い込んでいる。
 確かにミサイルの破壊力の前では、吸血鬼の肉体とて抗う術はない。だが、それは――」

 私は、甲板を蹴って高く飛んだ。
「――正面から向かった場合の話だ」
 さらに艦橋を蹴り宙高く跳ねると、虚空をバヨネットで一閃した。
 ミサイルから照射されるレーダー波をまとめて『破壊』する。

「対艦ミサイル・ハープーンのホーミングにはアクティブ・レーダーを使用している。
 向こうの波を一時的に掻き消してやれば、目標を失い迷走するのみ」
 私は、手元のバヨネットを回転させて告げた。
「君の戦い方は未熟だ。ミサイルが射程距離外にあるというだけで、『破壊』できないと匙を投げる。
 もっと注意深く観察すれば、レーダーの波が視えたはずだ」

(…)
 『monar』は無言で私の動きを見ている。
 まるで、戦い方を観察しているように。

 ミサイルの大半は目標を失い、海面に落ちた。
 そんな中、大型のミサイルが向かってくる。

「そして、タクティカル・トマホーク巡航ミサイル。
 これは、誘導にINS及び衛星データ・リンクを使用している。故に…」
 私は、バヨネットを軽く振った。
「衛星からの通信を断つ。これで、トマホークは無力と化す」
 そのまま、水没するトマホーク。

「――以上だ」



          *          *          *



「ああ。分かった――」
 俺は頷いた。
 そして、バヨネットを構える。
「――後は俺がやる」

 飛来してくるミサイル。
 再び、照射されるレーダーの波を『破壊』した。
 続けて、衛星からの電波をも『破壊』する。

 衛星からは、常にデータが送られてくる。
 『破壊』は一時的なものだ。
 トマホークを無効化するには、絶えず『破壊』し続ける必要がある。
 それでも…
 俺は、戦える。

 俺は大きくバヨネットを薙いだ。
 四方から浴びせられるレーダーの波を次々に『破壊』する。
 それだけで、ハープーンは無効化する。
 なぜ、こんな簡単な事に気付かなかったのか…

『どうやら、そっちはモナー君だけみたいですね…』
 無線機から、しぃ助教授の声がした。
「こっちは大丈夫。ミサイルは全部叩き落としてやるモナ!」
 俺は言った。
『…期待してますよ』
 しぃ助教授が告げる。

 前方のミサイル群が、大きく逸れて海中に没した。
 しぃ助教授の『セブンス・ヘブン』だ。
 俺も次々にレーダー波を『破壊』する
 これなら、何とか凌ぎきれる…!


 ――ドス黒い気配。
 何だ、これは…?
 何かが…
 背後から、何か巨大な物が近付いてくる。
 ミサイルや航空機なんて大きさじゃない。
 この艦の1.5倍以上。
 これは、戦艦…?

 それも、間近だ。
 俺とした事が、ここまで接近されてしまった。
 このままじゃ、『ヴァンガード』の後部に激突する…!!

「CIC!! 全速前進だッ!!」
 俺は、無線機に叫んだ。
 俺の指示が通じるのかは分からない。
 だが… 『ヴァンガード』は大きく前進してくれた。
 それでも、間に合わない…!!

『『セブンス・ヘブン』!!』
 無線機から、しぃ助教授の声が響く。
 同時に、凄まじい衝撃が『ヴァンガード』を揺るがした。
 艦後部から響く破壊音。
 俺はよろける体を立て直した。
 現在、なぜかミサイル攻撃は止んでいる。
「一体、何が起こってるモナ…?」
 俺は、甲板を駆けて艦後部に向かった。


 黒い威容。
 戦艦の巨体が、『ヴァンガード』後部にめり込んでいた。
 ヘリ着陸用の甲板が無惨にひしゃげている。
 これだけの重量差があれば、通常なら確実にこちらの撃沈。
 この程度の被害で済んだのは、『セブンス・ヘブン』が激突のショックを分散してくれたからであろう。

「これは…!」
 俺は、謎の艦を見上げた。
 威塊にして醜悪。
 リナーは、戦艦は現代においてほぼ運用されていないと言った。
 だが… これは、どう見ても戦艦だ。
 自衛隊の艦とは思えない。
 それに、どこか異様だ。この艦は気持ちが悪い。

477:2004/05/28(金) 22:21


「…?」
 向こうの艦首に、人影が見えた。
 そして、馬のいななきが聞こえる。
 …馬だって?
 こんな近代戦の最中に、馬?
 そう。人影は馬に乗っていた。

 そのまま、人影は高く跳んだ。
 そして、こちらのヘリ甲板に着地する。
 艦と艦の間を、馬で跳んだ…!!
 そして、馬の背に乗っているあの男は…


 その屈強そうな男は、立ち尽くす俺の姿を見定めた。
 その眼光、普通じゃない。
 一目で分かる。こいつ、恐ろしく強い。
 『蒐集者』のような、化物じみた雰囲気とは質が異なる。
 洗練された、戦士としての強さ。
 これは、そういう類の人種だ。

「我が名は山田――」
 男は馬から降りた。
 その手には、大きな薙刀。
 いや、青龍刀の亜種だろうか。柄がかなり長い。
 俺の『アウト・オブ・エデン』は、その武器に何かを感じ取った。

 山田と名乗った男は、ゆっくりとこちらへ歩み寄りながら口を開く。
「…士ならば構えよ。後ろを見せるなら、斬りはせぬ」

「…!」
 俺は、素早くバヨネットを構えた。
「モナは…」


 ――その刹那。
 一瞬の殺気の後、俺は地を這っていた。
 何が起きた?
 背中が冷たい。
 俺は、倒れているのか?
 そして、胸に刺すような痛み。
 いや、実際に刺されたようだ。
 心臓を貫かれたのか?
 人間だったら、完全に即死だ。

 山田は、倒れ伏す俺に目をくれる事もなく歩いていく。
 艦橋へ向かっているようだ。
 もはや、彼の目に俺は映っていない。

 こいつは、リナーと同じ。
 たった1人で、艦を制圧する気だ。
 だが… これはASAの艦。
 スタンド使いが多数乗っている事は明らか。
 それでも、こいつはたった1人で――?

 『アウト・オブ・エデン』ですら、先程の動きが視えなかった。
 しかも、スタンドによる速さじゃない。
 あの青龍刀にはスタンドが関与しているようだが、それすら使っていない。
 こいつ自身の、磨きぬかれた速さだ。
 俺には、最初から勝ち目などない。
 でも――

「行かせるか…!」
 俺は血を吐きながら立ち上がった。
 心臓を貫かれている。
 吸血鬼でなかったら、当然即死だ。
 でも… みんなが戦ってるのに、こんなところで倒れていられるか!!

 山田は口を開いた。
「ほう、お主も吸血鬼か…」
 しかし、こちらを振り向こうとはしない。
 それどころか、そのまま艦橋に歩いていく。

「待て! お前は、艦内には入れさせない…!」
 俺はバヨネットを構えると、艦橋へ向かう山田に走り寄った。
 その背中に、バヨネットを…
「その意気や良し。だが――」
 山田の手にしている青龍刀が、僅かに傾く。


 ――そして、俺は再び甲板に転がっていた。
 山田の青龍刀が、俺の胸を貫いたのだ。
 俺の方を、一瞥すらせずに。
 もう、殺気すらなかった。
 蝿を払うのと大差はない。

 足音が遠くなっていく。
「――実力が伴わなければ、どうにもならぬな」
 山田の声が、重く響いた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

478:2004/05/28(金) 22:29
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|(†)ヽ
|)))))
| -゚ノi  < …
と)ノ
|ハゝ     × ― モナーの愉快な冒険 ― 吹き荒れる死と十字架の夜・その3
|       ○ ― モナーの愉快な冒険 ― 吹き荒れる死と十字架の夜・その4

479ブック:2004/05/28(金) 22:54
     EVER BLUE
     第二十話・BREAK 〜水入り〜


 三月ウサギが、タカラギコが、謎の女性が、
 張り詰めた空間の中、ただ静かに得物を構える。
 息が詰まる程の圧迫感。
 僕やオオミミが入り込める世界じゃない。
 緊張で、頭がどうにかなってしまいそうだ…!

「…すみませんが、誰かそろそろカードを切ってくれませんか?
 この十字架結構重くて、そろそろ疲れてきたんですよ。」
 そんな状況にも関わらず、タカラギコが呑気な声で喋る。
 しかしそんな口調とは裏腹、微塵も隙を見せはしない。

「この狸め…」
 全身コートの女が、タカラギコにリボルバーを向けたまま睨む。

「……」
 三月ウサギは、剣をいつでも投擲出来る体勢のまま少しも動かない。
 膠着状態が始まってしばらく経つというのに、
 彼等の顔には汗一つ浮かんでいなかった。
 蚊帳の外のオオミミは、全身汗でびっしょりだというのに。

「…得物を下ろせ。
 儂は、今ここでお主らとやりあう心算は無い。」
 埒が明かないと思ったのか、女が停戦を提案した。

「信用出来んな…」
 三月ウサギは構えを解かない。
「そう言うのであれば、まずは貴女から物騒な物を率先してしまうべきでは?」
 タカラギコもパニッシャーを下げはしなかった。

「それは出来んな。
 そこの黒マントの者は、儂が銃を下ろした途端に剣を投げる気満々じゃろう?」
 こうして、停戦条約はあっという間に却下された。
 再び、その場を静寂が包む。

「……!」
「……!」
「……!」
 三人が、微動だにしないまま隙を探り合う。
 互いの気迫で景色が歪むような錯覚。
 ここでの一分が、まるで一時間のようだ。
 一体、いつまでこの状況が続く―――

480ブック:2004/05/28(金) 22:55



!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 突然響き渡る爆発音。
 その場の全ての者の意識が、その音に向けられる。

「!!!!!」
 誰よりも早く反応したのは女だった。
 物凄い跳躍により、一瞬にして僕達から間合いを離す。

「ちっ!!」
 三月ウサギが剣を投げるも、既に女は射程外まで逃げていた。
 剣が何も無い地面に突き刺さり、女は僕達から大分離れた所で着地する。

「…どうやら今回は間が悪かったようじゃな。
 ここは、一旦退く事としよう。」
 銃とハルバードが合体したような武器を背中に担ぎ、女が口を開く。

「じゃが、近いうちに再び挨拶をさせて貰う。
 その時は、もう少し穏便に事を進めたいものじゃな。」
 そう言い残すと、女はその場から飛び去って行った。
 あの人、結局何だったんだ?



「大丈夫ですか、オオミミ君?」
 パニッシャーを下ろし、タカラギコがオオミミに声をかけた。

「あ、はい。
 助けに来てくれてありがとうございます。」
 オオミミがタカラギコに頭を下げる。

「それから三月ウサギも、ありがとう。」
 オオミミが三月ウサギの方に顔を向けた。
「ふん…」
 三月ウサギがそっけのない返事を返す。

「…今の出で立ち、吸血鬼か?」
 と、三月ウサギがオオミミに尋ねた。
「多分…」
 オオミミが生返事をする。

「先日私達の船を襲った連中の仲間ですかねぇ?」
 タカラギコが首を傾げた。

「多分、違うと思う。
 何かそういう感じじゃなかったし。」
 オオミミが首を振りながら答えた。

「しかし、だとすれば一体どこの…」
 三月ウサギが、地面に刺さった剣をマントの中に回収しながら考え込む。
 実際、あの人は何が目的で僕達を探していたのだ?

481ブック:2004/05/28(金) 22:55



「あ、お前ら!」
 と、そこにニラ茶猫が駆けつけてきた。
 随分走ってきたのか、息が大分荒い。
 さらに、服のあちこちが血塗れである。

「ニ、ニラ茶猫、大丈夫!?」
 オオミミが心配そうに声をかける。

「ん?おお、平気平気。
 俺の『ネクロマンサー』は不死身だフォルァ。」
 胸を張るニラ茶猫。
 どうやら、誰かと闘ってきたみたいだ。

「さっきの爆発、お前か…?」
 三月ウサギがニラ茶猫に質問する。

「あ…ああ。
 展開上どうしようもなく、な。
 まあ勝負には勝ったんだから問題無いって。」
 ニラ茶猫が冷や汗を掻きながら答える。
 この馬鹿。
 あれだけ騒ぎを起こすなと言われておきながら、何で爆発なんかさせてんだ?

「…開いた口が塞がらんな。
 貴様、頭脳が間抜けか?」
 呆れた様子で呟く三月ウサギ。

「うるせえな!!
 しょうがねぇだろうが!
 いきなり『紅血の悪賊』に襲われたんだから!!」
 …!!
 『紅血の悪賊』!
 矢張り、ここにもその一味がいたのか…!

「ふん。
 貴様がもう少し強ければ、あれほどの騒ぎも起こさなかったろう。
 どこの三下と死闘を演じていたのかは知らんが、
 実力の程が知れるというものだな。」
 あからさまに三月ウサギが皮肉を言う。

「んだとぉ!?
 じゃあここで、俺が本当に弱いかどうか試してみるか!?」
 腕から刃を生やしてニラ茶猫が構えを取る。
 だから、騒ぎを起こすなと言っているのが分からないのか。
 どうしてこの二人が一緒だと、こうなってしまうのだ?

「ちょ、ちょっと二人ともやめなよ。」
 事態を重く見たのか、オオミミが仲裁に入る。
「ふん。」
「けっ。」
 オオミミに間に入られ、三月ウサギとニラ茶猫が渋々矛を収めた。

「いやはや、お二人とも仲がよろしいですねぇ。」
 タカラギコが微笑みながら言った。

「誰がこんな奴と!」
「誰がこんな奴と!」
 三月ウサギとニラ茶猫の声がハモる。

「ふん。」
「けっ。」
 声が重なった事にお互いバツが悪くなったのか、二人のムードがより険悪になる。
 この二人、本当に仲が良いのか悪いのか…

482ブック:2004/05/28(金) 22:56


「あ、そうだ。タカラギコさん。」
 と、オオミミが思い出したようにタカラギコに言った。

「はい?」
 きょとんとした顔でタカラギコが答える。

「さっきの女の人からこれ貰ったんです。
 これでタカラギコさんの武器を買いに行きませんか?」
 オオミミが懐から金貨の詰まった巾着袋を取り出した。

 オオミミ、君は何を言ってるんだ?
 せっかくの大金を他人の為に使うなんて。
 それだけのお金があれば、何回フルコースを食べられるか分かっているのか!?

「いえ、そんなの悪いですよ。」
 口では遠慮しながらも、明らかに嬉しそうな顔をするタカラギコ。

「お、おい、オオミミ!
 お前どこでそんな金…」
 吃驚した様子でニラ茶猫がオオミミに質問した。

「さっき恐い女の人に誘拐されちゃってね、
 それで、その人に貰ったんだよ。」
 オオミミが答える。

「ああ!?
 誘拐されて金を貰うってどういうこった!?
 普通逆だろ……ってまあいいや。
 それよりオオミミ、ものは相談だがその金を少し俺に預けて…」
 下品な顔でニラ茶猫がすりよってくる。
 どうせ、ろくな事を考えてはいないだろう。

「駄目。
 ニラ茶猫に渡したって、どうせ博打かエッチな事にしか使わないもん。」
 にべも無くオオミミが断った。

「…!
 馬っ鹿野郎!
 オオミミ、お前俺を何だと思ってやがるんだ!!」
 ニラ茶猫が必死に否定する。

「図星だろう?
 何せお前のベッドの下には『無毛天ご…」
「わーーー!わーーー!!わーーー!!!」
 三月ウサギが何か言おうとした所に、
 ニラ茶猫が大声を張り上げてそれを妨害した。
 『無毛天ご…』?
 一体何の事だ?

「いやはやすみませんね、オオミミ君。
 私が女性であれば、迷わず抱かれたい男ナンバーワンに君を投票しますよ。」
 タカラギコがこれ以上無い笑顔を見せる。
 まるで、新しい玩具を買って貰う子供のように。

「…自分で買い与えた武器が、自分に向けられなければいいがな。」
 三月ウサギがぼそりと呟く。

「そういう事言うの、やめてよ…」
 オオミミが悲しそうな顔をした。
「ふん。」
 三月ウサギがオオミミから視線を逸らす。
 個人的には僕も三月ウサギと同感だ。
 いくら敵意が見られないからとはいえ、オオミミは無防備過ぎる。

「…そういやオオミミ、女に誘拐された、っつてたけど、
 どんな奴だったんだ?」
 重苦しくなった空気を察したのか、ニラ茶猫が話題を変えた。

「あ、うん。
 確か、コートに全身をすっぽり包んでて、
 それから、凄く大きな武器を持ってた。
 何か、銃とハルバードがくっついたみたいな…」

「…!?」
 その時、ニラ茶猫の表情が一瞬だけ変わった。
「…?
 どうしたの?」
 不思議そうに、オオミミがニラ茶猫に尋ねる。

「…いや、何でもねぇ。
 多分、思い違いだ。」
 ニラ茶猫が会話を打ち切る。
 それにしてもさっきの彼の表情は?
 何か思う事でもあったのだろうか。

「どうでもいいが、買い物に行くなら早くしろ。
 『紅血の悪賊』が居たと分かった以上、のんびりは出来んぞ。」
 低い声で三月ウサギが告げる。

「あ、そうだね。」
 頷くオオミミ。

 そうだ、今は考えていたってしょうがない。
 とにかく先に進まなければ。

(オオミミ。何があろうと、君は僕が守ってみせるからな。)
 色々と解けない問題を山積みにしながらも、
 僕はそこで思考を中断させるのであった。



     TO BE CONTINUED…

483( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:48
「ダズヴィダーニャ(ごきげんよう)・・。巨耳モナー・・。」
「ネクロ・・マラ・・ラーッ!」

―巨耳モナーの奇妙な事件簿―『ピッチャーデニー』

雨がしきりに降っている。
そして雨と濃い霧のせいでお互いの輪郭がギリギリ見えるくらいの状態の俺と・・ネクロマララー。
「・・かなりわかりやすい輪郭だなぁ。テメェは。」
「君に言われたくはないよ・・。」
・・ムカつく返し方をしてきやがる
まるで『犬を勝手に吠えさせてる』みたいな風に流しやがって
「・・先輩を殺した時から、テメェは俺の手で『逮捕』すると決めていた。」
「・・それで?」
ネクロマララーは頭の後ろをかきながら、面倒くさそうに言った
「・・テメェを今ココで、『逮捕』するッ!『ジェノサイア act2』ッ!」
俺は思いっきり地面を叩きつけた。
すると地面がブレ、ガチャピン戦とは比べ物にならない量の針が現れる。


「フン・・。まだコッチの少女の方が威圧感があったな・・。」
ネクロマララーのスタンドらしき物が何かを投げる。
・・雨霧のせいで良く見えない。
「『重力弾』。」
一気に地面の針が消える
・・・先輩の時と一緒だ・・・・。
「私は君を助けてやったのだぞ・・?逮捕より先に礼が欲しいがな・・。」
抜かせアホが。
「お前のした事はただの『殺人罪』だ。助けられたから何だ。俺が頼んだ覚えもない。」
「・・そうか。」


・・・!?
なんだこりゃ・・ッまわりの空気が・・薄い・・ッ!
・・あの時と同じだ・・『矢の男』や『殺ちゃん』。『ガチャピン』と同じ様な『威圧感』
だが・・その中でも格別だ・・ッ!『矢の男』と同じくらいの威圧感がありやがる・・ッ!
「しかしがっかりだな。君はまだ『弱い』。スタンドが進化したと聞いて期待したんだがな・・。
私が相手するまでも無いな・・『大ちゃん』ッ!!」


ネクロマララーが一歩引くと後ろからハゲ頭の男が現れた。
「・・ピッチャーデニー・・。」
・・?
何を言ってやがるコイツ・・?
「それじゃあ。大ちゃん。後は頼んだぞ。」
「了解。」
ネクロマララーは雨と霧の中に消えていった
「ちょ・・っ待ちやが・・ッ!」
俺がネクロマララーを追おうとするとハゲ頭の『大ちゃん』と呼ばれる男が立ちはだかった
「・・ッ!邪魔ァッ!」
大ちゃんを思いっきり殴ろうとすると大ちゃんの目の前に現れたキーホルダーくらいの大きさのスタンドに防がれる
「クソがッ!・・?」

484( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:49
俺がもう一発殴ろうとした時。その『異変』に気付いた。
「『右手』が動かない・・?」
俺がその右手を見ていると。キーホルダーくらいの大きさのスタンドが喋り始めた
「キシシッ!オマエ、イマオレヲナグッタダロ?ヨッテ、『ペナルティ』ヲウケテモラウゼッ!」
良く見ると俺の右腕に×印がついていた。
「こ・・これは・・ッ!?」
「イッタダロ?テメェハコトバモワカンネェノカッ!クソガッ!『ペナルティ』ダッツッテンダロガッ!」
プチッ
「テメェッ!図に乗ってんじゃねぇぞッ!スタンドごとk・・」
!?口が開かない・・ッ!?
「キシシシシッ!テメェ、イマオレニ『ボーゲン』ハイタダロ?『ペナルティ』ダゼッ!」


・・ッ!そういう事か・・ッ!
つまり・・アイツに対して『失礼』な事をすると『失礼』をした部分が使えなくなるんだッ!
だからあんな野球の監督の様な格好をしていたのか・・ッ
だとするとどうする・・。矢張り本体のほうを攻撃するしか・・
その時、俺の足元に植物が這う様な感触がした
その感触に反応し後ろを向くと、その植物は殺ちゃんの方向へのびていった。
そして植物の元をたどるとムックの手から伸びていた。
(・・!!ムック・・意識が戻ったのかッ!?)
・・いや、戻ってはいるが・・自分の力で起き上がる事もまだ出来ない様だ
相当なダメージがまだ体にこもってるらしい。
だとすると・・・気付かれるのはマズい。
多分ムックは殺ちゃんを回復させようとしているのだ。
だがソレが見つかってしまうと瀕死のムックがとてつもない危険な状態になる上
殺ちゃんも回復しない。更に殺ちゃんは早く治療しないとヤバい状況だ。
(頼む――ッ気付かれないでくれッ・・)


俺がそう願うと植物は殺ちゃんのスカートの中に入っていった。
殺ちゃんが『あッ――』という声をもらし少し痙攣した。
・・そしてその時、俺の中の『何か』が確実にキレた


「ンンンンンンンンンン(こンのドグサレが)ァ――ッ!!!!!」
俺は瀕死のムックに向かって思いっきりキックを食らわす
「ンンン!ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンァーッ!!ンンンンンッ!ンンンンンァ―ッ!
(テメェッ!気絶してる無防備な少女に何してんだコラァーッ!!言ってみろッ!言ってみろァーッ!)」
・・・ハッ
・・・マズい、ついつい我を忘れてムックを――ッ
「・・・タシカ、ソイツノノウリョクハ・・『ショクブツヲハヤス』ダッタヨナァ・・ソシテソノショクブツノヨウブンヲ・・ヒトニオクリ・・『カイフク』サセルコトモ
デキルンダッタヨナァ――ッ!?」
奴のスタンドが叫ぶ
クソッ!何をやってんだ俺はッ!
「ソノケダマノリョウテニ『ペナルティ』ヲアタエルゼェッ!」

485( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:50

ムックの両手に×マークがつく
・・すまない、ムック。
・・おや?
頭から血流しているムックの手から出ている植物は未だ、伸びていく。
今度はちゃんとスカートの上を登って
・・・でも何故か逆にエロい。
だが一体・・何故・・?ムックの両手は封じられているからこれ以上植物の成長・・!


その時俺は空がいつの間にか晴れている事に気付いた。
そしてさっきまで降っていた雨で濡れている植物・・っていうか雨で濡れてると信じたい(特に先端は)
(・・そうかッ!ムックの出す植物の成長性はとてつもないッ!だからこの少量の雨水(?)と太陽光で成長を続けられるのかッ!)
そして伸びた植物が思いっきり殺ちゃんの腕に突き刺さる。そして殺ちゃんの体が少し打ち震えた
「――ッ・・ここ・・は・・?」
殺ちゃんの傷がみるみる癒えて立ち上がる殺ちゃん。
「チィッ!アノケダマメッ!」
「・・状況がイマイチ理解できないが・・闘っている事は確か・・だな?」
殺ちゃんは大ちゃんに銃を向ける
「ンンンンッ!ンンッ!ンンンンンンン――(殺ちゃんッ!待てッ!アイツの能力は――)」


無常にも喋れない俺の言葉は届かず、弾丸が発射された
そして物凄いスピードで弾丸にあたりに来るスタンド
「キハッ!テメェ・・イマ・・オレヲ『ウッタ』ナッ!?」
自分からあたりに言っただけだろがッ!
そう脳内ツッコミを入れている間に殺ちゃんの右手に×マークがつく
「・・!?馬鹿なッ!右腕が動かんッ!・・このハゲがッ!私に何をしたァッ!」
「キハハハハッ!テメェッ!コンドハ・・ボウゲンヲハキヤガッタナッ!『ペナルティ』ダッ!」
てめぇに暴言吐いたんじゃなくて本体にだろッ!
また脳内ツッコミいれている間に殺ちゃんの口に×マークがつく
「ンンンンッ!?ンンン・・・」
どうやら殺ちゃんもアイツの能力に気付いて来たようだ。


さて・・現在の状況を整理してみようか。
俺は右手・口がつかえない。よって後は左手 両足 ・・。まぁ戦闘に使えるのはこれくらい・・か。
殺ちゃんも俺と同じ・・もしかして『おっぱいミサイル』の出番もッ!?・・ドキドキ。
んでムックは両腕が使えない。その上俺のダメ押しキックで完全に意識を失ってやがる・・。

486( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:50

俺が頭ん中で必死に考えていると殺ちゃんがアイコンタクトで『左に行け』と指示をする。
そうか・・両側から攻撃する気か・・
殺ちゃんの合図と同時に俺は左へ、殺ちゃんは右へ走る
「ンンンンンンンンンンンーッ!(ジェノサイアact.2―ッ!)」
「ンーンンンンンンッ!(リーサル・ウエポンッ!)」
俺と殺ちゃんは同時に攻撃した
スタンドはとまどったが即座に俺の攻撃を受けた。
そして銃弾は大ちゃんめがけてあと何秒かで着弾する位置にきた
「ンンンン・・(終わりだ・・。)」


しかしその時、俺たちは信じがたい物を目撃した
「まだだ・・まだ終わらんよッ!」
なんと、鉄のグローブの様な物で全ての銃弾を受け止めていた
「ン・・ンンンッ(ば・・馬鹿なッ)!?」
俺と殺ちゃんは同時に叫ぶ
「これでも野球選手時代は名キャッチャーでな・・。銃弾くらいなら何発でもとれるぞ?」
大ちゃんは得意げに笑いながら言う。
・・・っていうか野球ボールと銃弾じゃ格が違うだろっ!
「キシシッ!ソシテ巨耳ィッ!テメェニハ、ペナルティダッ!」
俺の左腕に×マークがつく。・・もう両手がつかえねぇのか・・


「ンンン・・ンンンンンンン?(ならば・・これでどうだ?)」
殺ちゃんは左手から大きな銀色の物をだした
その銀色の武器は横からチューブが出ていて、そのチューブは背中についてる大きなドラム缶の様な物についてる
・・・・!そうか、これは!
「ンンンンン・・ンンンンッンンンンンン(火遊びは・・ママと一緒にやりな)・・・。」
殺ちゃんはそう言うと左手に力を込める
そして次の瞬間、銀色の武器から大量の火炎が放たれる。
そう。コレは火炎放射器だ。流石に実体の無い砲撃にはアイツも・・


しかし 俺は 次の瞬間 またもや 眼を 疑った
奴のスタンドが炎を全て飲み込んだのだ
「ブフゥ〜・・テメェ、オレニホノオヲ『ノマセタ』ナッ!『ペナルティ』ダゼッ!」
火炎放射器に×マークがつく
クソッ!やられたっ!もう後がない・・あとは蹴りか・・お・・おっぱいミサイr・・
いやいや違う違う違う。まじめに考えろ俺
しかし無常にも俺の頭にはおっぱいミサイルのイメージばかりが浮かぶ


「ンン、ンッンン!ンッンンンンン・・(なぁ、殺ちゃん!おっぱいミサイ・・)」
俺が殺ちゃんに声をかけようとすると殺ちゃんは後ろを振り向き、俺にアイコンタクトを送った。
『逃げろ』
必死な眼だった為、すぐに伝わった。
そして、俺がどれだけ馬鹿な事を考えてたかわかって恥ずかしくなった。


そして殺ちゃんは手話で『ムックを担げ』と俺に命令する
了解だ。とりあえずここから逃げるしかない・・ッ!
合図と共に一斉に走り出す俺と殺ちゃん
そして途中で枝分かれし、ムックを担いで殺ちゃんの元へ戻った
後ろを振り向くと、大ちゃんが必死で追ってきてるがこの距離だ。多分間に合わないだろう。


しかし俺が前を向いたその時殺ちゃんが大きく弧を描いて宙を舞い、地に落ちた
「グゥッ―ァッ!?」
矢張り自力で成長しただけの花では回復量が少なかったのか
地に落ちた殺ちゃんの古傷から血が吹き出し殺ちゃんは呻き声をあげる

487( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:50
まだ状況が良く理解できない。何が起こった?あいつら・・何をした・・?
そしてパニクった頭を落ち着かせ、前方を見るとマッチョで野球ボールの様な顔をした監督の様な奴が立っていた
・・まさか・・コイツは・・。


「『敵前逃亡』は最大のペナルティを与えるしかないな・・。」
声にも体つきにも面影は残ってないが・・・こいつは間違いない・・さっきのスタンドだっ!
俺は必死で背を向け逃げようとしたが俺が振り向いた場所にすぐに奴は移動してきた
「――ッ!」


「この世から・・――退場しろ」
両腕が塞がれ、ガードもできない俺の顔面に奴のパンチが入る
そして鈍い音がなる俺の口
・・・顎と歯が折れた音と思われる。


「退場ッ!」
そしてさらにもう一発パンチがくる
頭が揺れる。周りの景色がゆがんでみえてきた
「退場退場ッ!」
そんな俺に非常にももう一発食らわされるパンチ。
それも鳩尾に入れられ俺は宙を舞う


「退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場
退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場
退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場
退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場
退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場
退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場退場――ッ!」


宙を舞った俺の体に『退場』ラッシュがあてられる
声にならない叫びが虚空に消える
「この世からァ―――ッ!退場しろォ――ッ!」
そして駄目押しの一発で思いっきり吹っ飛ぶ俺


「さて・・次は・・あの少女だ。」
マッチョなスタンドは殺ちゃんの方へ歩いていく。
しかしその瞬間。スタンドが消えた


「――えッ!?」
大ちゃんは素っ頓狂な声をあげる。
そして次の瞬間、殺ちゃんの回し蹴りを思いっきり食らう大ちゃん
更に手錠をかけた

488( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:51
「く・・そっ!こんなも・・の・・。」
大ちゃんの顔色が変る
俺からは殺ちゃんの後姿しか見えないが、このドス黒く息苦しい感覚
良くわかる。『魔眼』だ。


「外したければ外せ、スタンドを使いたければ使え。ただし・・」
大ちゃんのスタンドが消えて効果が切れたのか、殺ちゃんは自由自在に喋った。
「・・・・貴様のスタンドや、グローブじゃ護れないほどの砲撃をかましてやる。」
深紅に輝いているだろう殺ちゃんの眼に、体中に現れた火器に、流石の大ちゃんも戦意喪失している
「は・・はひ・・ごめんなはひ・・。」


大ちゃんの体がかなり震える。どうやら小便も漏らしているようだ。
こうなってしまうと上級幹部ってのも情けないなぁ・・。
「し・・しかし・・どうやって私めのスタンドをお消しになったのですか?」
大ちゃんは恐る恐る聞く


「その問いには・・俺がお答えしよう・・。」
ヨロヨロしながら俺は立ち上がった。
「ある・・二人の兄弟が・・俺のジェノサイアの応援で力を貸してくれた・・。」
そう。流石兄弟だ彼らに俺のジェノサイアを向かわせて、応援を要請した。
・・・しかしこれでまた出費が・・ッ!


「彼らの能力を使えばアンタのスタンドを『削除』するくらいわけなかった。って訳よ」
本当に頼りになる兄弟だこと。・・・金の問題に眼を瞑ればな。
「・・・・・一応、教えておこう。」
殺ちゃんに連行されてる時、大ちゃんはつぶやいた
「・・・何だ?」
「ハートマンに・・気をつけろ。」
「・・・・?」
俺が頭の上に疑問符を浮かべると、そこから大ちゃんは押し黙ってしまった


「おい。気になるだろ。話せ。」
殺ちゃんが脅迫するも
「よせ。それだけの忠告がもらえただけでありがたいんだ。」
俺は殺ちゃんの肩を叩き言った。
「・・・・・・ああ。」
殺ちゃんはそう言うと、大ちゃんを連行した。
「ハートマン・・か。アイツとも決着をつけなきゃならないな・・。」
俺は雨上がりの青く輝く空を見上げ呟いた

489( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:51
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


〜キャンパス〜

「ふむ・・。まさか大ちゃんがやられるとはな・・。」
『神』が呟く
「なぁ、神さんよぉ。」
後ろにたっていた男が呟く。・・ハートマンだ。
「・・・何だ?」
「ココの『門番』。是非俺様にやらせてくれないか?」
ハートマン軍曹はニヤニヤしながら言った。
「・・ふむ。まぁ良い。・・しかし、珍しいな。貴様が門番などと言うのは・・。」
『神』が言う。
「まぁいいだろ・・。あのウジ虫どもを始末するのは俺だ。どこぞのケツの汚れた豚に渡すことは無い。」


ふいに、ハートマンの口から銀色に輝く牙が見えた
「!!・・まさか・・貴様・・。」
「安心しろ。すぐに片付けてきてやる。俺の戦歴に傷を付けたあのウジ虫どもをな・・。」
ハートマンの眼が紅く輝く
「・・・まぁ良いだろう。期待してるぞ。軍曹・・。」
「Thank you ・・。あ。言い忘れていたが。一応、行けるのは夜だけだからヨロシク・・。」
漆黒のマントをはためかせ軍曹は言った。

490( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:52
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


〜夜・キャンパス前〜

「狙うなら夜しかない・・か。嫌な予感がしてならなくなってきたぜ。」
俺は不服そうに呟く
「まぁ確かに・・。逆に闇夜から奇襲されたらまずいしな・・。」
殺ちゃんもため息をつく
「・・・・。」
そして汗だくで押し黙るムック。
そう。この計画はムックがたてた物だった。


「ま、まぁいいじゃないですKA!とにかく早KU――。」
その瞬間。とてつもない轟音が当たりに響く。
手だ。巨大な手が振り落とされた。それを紙一重でかわすムック
「――なッ!?」
ムックが錯乱する
「落ち着け!この手の野郎は・・アイツしかいねぇッ!」
葉のこすれる音が聞こえると、門の前から人が現れた。
「久しぶりだな。『ハートマン』。」
「軍曹をつけろッ!便所虫がッ!」      リ ベ ン ジ
肌を叩くような強い夜風の中、ハートマンの『復讐戦』が始まった・・。

←To Be Continued

491( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:52
キャンパスでの最終決戦寸前!ここでキャラ復習

登場人物

――――――――――巨耳派――――――――――

 / ̄ ) ( ̄\
(  ( ´∀`)  )巨耳モナー(24)

・幼い頃とてつもなく不幸な境遇に居たAA。強盗さえ居なければ自分は不幸にならなかったと信じ
 警察に憧れ、試験にトップで合格。警察官になることができた。
 現在は義父と義母の家から遠く離れた場所に住んでいる。
 もともと本庁に居たのだが、頭が良かった為、上司達に左遷させられる。
 スタンドは『ジェノサイア』。↓参照。


 <ヽ从/>
  <)从人/>
 </゚∀゚ヽ>ジェノサイア(?)

・巨耳モナーのスタンド。能力は『画面のある物を自由に移動する』事。
 スタンドでありながら人間に酷似した思考を持ち、いつも自由気まま
 巨耳モナーの唯一の『友達』にしてお姉さん的存在。


  彡. (・) (・) ミ
 彡        ミ
 彡   ▲    ミ ムック(5)

・良くわからない。本人は『地球上のAAじゃ私には敵わないNE!!』を良くわからない事を抜かす
 元『ある組織』の幹部だったがその厳しい訓練と非情な作戦に逃亡するも
 ある幹部2人につかまり洗脳される。そして巨耳モナーと闘うも『殺』と名乗る少女に威嚇され惨敗
 ただ、↑の言葉はダテじゃなく、戦闘能力はズバ抜け

 スタンドは『ソウル・フラワー』。ビジョンは下半身の無い人型で胸にバラ。額にひまわり、両肩に紫陽花が咲いている。
 能力は『花を咲かす』こと。ただし、花の栄養分をコントロールして傷等の回復を早めたり、
『どんな風に咲いたどんな花か』などの詳細情報も操作可能。


   ( _ __  ノ
  '⌒/^ミ/^M'ヽヘ`ヽ 
    li/! リ从 リ)〉 }
   )' ゝ(l.゚ -゚ノl `!岳画殺(13)

・ひょんな事から巨耳モナーに協力する事になった少女。
 『魔眼』を持ち、ソレを隠してるコンタクトレンズを外すと
 どんな者でもその場にたったり、目を合わせる事ができなくなる
 普通の成人男性でも気を失わない様にするだけで必死。
 コンタクトをつけた後でも震えは止まらない。

 スタンド能力は『リーサル・ウエポン』。ビジョンは無し。
 体の一部を『自分が一度でも見た事がある重火器』にする能力
 ただし、その重火器が破壊されるとその重火器に変えていた体にダメージを受け
 もう一度その武器を見ないとその重火器は使えない。
 また、結構重い為、出しっ放しは難しく、すばやい移動が出来ない。
 更に体中重火器な為、チャッカマンで弾丸に火をつけただけで大爆発する。
 必殺技は『死ぬが良い』。『死ぬが良い』という決め台詞と共に体中の武器をぶっ放す一斉射撃。

492( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:53
――――――――――キャンパス――――――――――

  ∧_∧
  (  ๔Д๖)がんたれモナー(故)

・巨耳モナーを殺そうとしたAA。
 先輩の不良軍団の中でもリーダー的存在。
 ジェノサイアに吹っ飛ばされ病院送りとなった。
 親がアッチ系な人の為かとても乱暴。『ある組織』の一人らしい

  ∧_∧
  ( ´Д`)128等身(逮捕)

・『キャンパス』の幹部。かなり長い。アンシャス猫達の『ペット』
 『危険レベル97』(最高は100)という称号を持つ怪物
 ちなみにこのレベルがどれくらい高いかと言うと、世界同時多発テロくらい危険。
 その体だけで相手を絞め殺す事も可能。組織の特攻幹部。早い強いキモい。
 でもかなりナイーブで傷つき安い為、扱い難い。
 『氏ね』って言っただけで泣く。『不細工』なんていわれたら立ち直れない人。
 しかしあまりにけなされると『超暴走状態』となり最強の怪物とかす。
 しかもとてつもない量の涙を流し、その涙の水圧で人の頭を吹っ飛ばす事ができる
 この時の状態で『危険レベル97』となる。ムックの手により逮捕。動物園送り

 スタンドは『アクア・ブギー』ビジョンは手が生えている水色の蛇型。
 能力は『水を弾丸並みの強度に変える事』。
 暴走状態のときの涙も弾丸並みの強度になるのでとてつもなく強い。

493( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:54
  ∧,,∧∧_∧ 
 彡 l v lミ l v l)アンシャス猫(故)

・『キャンパス』の幹部。『2匹で一匹』がモットーらしい
 決め台詞は『鈴木宗男デシタ!!』。
 煽るのと心の隙間に漬け込むのがとても上手い。組織中でも洗脳のスペシャリスト。
 失敗するとただ怒らせるだけ。ムックに洗脳をしていたのもこの2匹。
 ガチャピンに頭部を食われ、両者ともに死亡。

 鈴木さんのスタンドは『ピュア・エスケイキズム』。
 半径5メートル以内に現在の自分の心境によって震度が変わる地震を発生させる。
 最大で関東大震災レベルの震度を出すことが出来る。ビジョンはマッチョな男型。
 宗男さんのスタンドは『エンチャント・メント』。
 ビジョンは矢をもった白い女神像。当たった相手の『運』を吸い取る事が出来る。
 この矢に刺されれば刺されるほどジブンは不運になっていき、矢は幸運になる。
 連続で放てる矢は最大で10本まで。

   /ノ 0ヽ
  _|___|_
 ヽ( # ゚Д゚)ノハートマン軍曹(逃亡)

・『キャンパス』の上級幹部。教育係。
 超スパルタで有名でムックを『育てた』張本人。
 口が悪いながらも人望は結構厚い人
 対巨耳戦で片手を失いながらも逃亡。キャンパスに逃げ込んだ。

 スタンドの能力の詳細は不明。
 どうやら床や壁に体をもぐらせ、巨大化させて出す能力



 |::::::::::   (●)    (●)   | 
 |:::::::::::::::::   \___/    |  
 ヽ:::::::::::::::::::.  \/     ノ 大ちゃん(逮捕)

・某野球チームの元監督らしいが、詳細は明らかになっていない。
 頭はスキンヘッドで『ピッチャーデニー』が口癖
 若かりし頃は甘いルックスをもっていたらしい。
 昔、大勢の人達に色々罵倒された事がある為、今の世界が嫌になり『キャンパス』に入った。
 スタンドにも相当の力があり、入ってからすぐに上級幹部まで上り詰めた。トムの恩師
 しかし流石兄弟兄者のスタンドによってスタンドを破壊された上、殺ちゃんの魔眼によって脅迫、逮捕された。
 最後に「ハートマンに気をつけろ」と謎の言葉を残した。

 スタンドは『ニューロシス』。容姿は帽子を被った野球ボール大の顔に小さい体。
 大きさはキーホルダーくらい 能力は自分に対して『失礼』な事をした者に『ペナルティ』を与える事
 例えば左手に持ってる銃で攻撃すれば銃を持っている左手全体を、右手で殴れば右手全体を動けなくさせる
 更に遠隔操作系から近距離パワー型に変化もでき、かなり有能なスタンド。
 結構理不尽な能力の為『理屈が通じないスタンド』と恐れられている。


    /⌒\
   (    )
 ∈--→Ж←-∋  
  ) :::|    |::: (  
 ( ::( ・∀・):: )ネクロマララー(69)

・『ある組織』に属す超上級幹部らしい。
 がんたれモナーを瞬殺するほどの力の持ち主
 普段は結構優しいタイプの人なのだが、戦闘時は一変。組織の最強参謀。
 占いは当たる確立90%。外れた事は今まで『火星が落っこちる』くらい。

 スタンドは『ザット・ガール』。ビジョンはドス黒い顔に鉄製のマスクをつけたスタイル抜群のメイド。
 能力は通常の重力の1.5倍の重力を与える『重力球』と150〜200倍の重力を与える『重力弾』を作り、放つ事。
 因みに重力球の重力発動条件は『相手に当てるor触れる』事だが重力弾の重力発動条件はわかっていない。

494( (´∀` )  ):2004/05/29(土) 14:54

――――――――――謎の敵――――――――――

   〆⌒ヽ
  ( Θ_Θ)ガチャピン(消息不明)

・ 殺を助けた男。一応背は八頭身。
 ムックを殺そうとしているらしく、ジブンの個人情報を漏らすのも嫌う謎の人物。
 アンシャス猫の攻撃を全て防ぎ、さらに始末した。
 普段は結構明るくおちゃらけた性格だが、ムックの事や『食』に関することとなると一変する
 好きな物はスタンド使いの肉。決め台詞は『食 べ ち ゃ う ぞ 』。怖い。
 現在、対巨耳モナー戦後消息不明。

 スタンドは『ジミー・イート・ワールド』。ビジョンは蛙の様な四足歩行で緑色の怪物。
 歩いた跡にカタツムリが這った跡の様な分泌液が付く(無害)
 完全な雑食でゴムから金やダイヤまで噛み砕く顎を持つ。スピードはとてつもなく早く、
 一旦目を付けられたらもう諦めるしかないのかもしれない。

  ∧_∧
  ( :::::::::::)矢の男(消息不明)

・すべてにおいて謎の男。『弓と矢』でスタンド使いを増やしているが
 その目的は不明。部下を殺す非情さと全てを支配するかのような眼をもっている。
 その眼に睨まれた者は精神がイッてしまったりする。
 更に彼がいるだけで周りの空気が変貌し、かなり重くなるらしい。
 スタンドについてはまだ何もわかっていないが、かなりの実力者。
 現在、対巨耳モナー戦後消息不明


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