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スタンド小説スレッド3ページ

437ブック:2004/05/24(月) 01:39

「…そんな事より、こんな事を聞くためにわざわざ呼びつけたんじゃないんでしょう?」
 天がオオミミに向き直る。
 やはり、天も今のが本題ではない事には気づいていたみたいだ。

「…うん。」
 オオミミが天から視線を逸らす。
「あの、さ。
 天はサカーナの親方には、あの『紅血の悪賊』が何を運んでいたのか知らない、
 って言ってたよね。
 でも、あの女吸血鬼も、男の吸血鬼も、天に変な視線を送ってただろ?
 だから…」
 意を決したようにオオミミが口を開いた。
 というかオオミミ、こんな女に遠慮する必要は無いぞ。

「だから、何よ?
 本当は何か知っているのかこっそり教えてくれ?
 教えないと酷いぞ?
 それともアタシの弱みでも握ったつもりかしら?」
 天が責めるようにオオミミをなじる。

「違う!
 俺は、天が言いたくないなら皆にはこの事は黙っておくつもりで…」
 オオミミが必死に否定する。
 馬鹿、オオミミ。
 そんな事、皆の前でバラしてやればよかったのに。

「…呆れたお人好しの偽善者ね、あんたって。」
 天が大きく息を吐いた。

「ごめん。こんな事、聞かない方がよかった。
 だけど、『紅血の悪賊』や帝國の狙いが何なのか分かれば、
 対策の立てようがあるかもしれない。
 だから、出来れば教えて欲しいと思って…」
 オオミミが呟くように天に言う。

「…悪いけど、本当にアタシは何も知らないわ。
 大方、『紅血の悪賊』が何か勘違いしてるんでしょ。」
 天がもたれ掛かっていた手すりから離れる。
「話は終わり?
 なら、そろそろ部屋でゆっくりさせて貰うわね。」
 天はそう言い残すと、そそくさとその場を離れようとした。

「ごめん…」
 天の背に、オオミミが何度目かの謝罪の言葉を向ける。

「……」
 と、天が急に足を止めた。
「…アタシこそ、ごめんなさい。」
 …ごめんなさい?
 何に?

「天―――」
 オオミミが天を引きとめようとしたが、天はそのまま走り去ってしまった。
 オオミミが一人、その場に取り残される。

(オオミミ、何であんな奴にそんなに気を使うんだよ。)
 僕はオオミミに文句を言った。
 オオミミはあの女の尻にしかれてばっかりだ。
 ここは一つ、僕がきっちり言っておかねば。

「…ごめん、『ゼルダ』。」
 オオミミが呟いた。
 本当に君は、そうやって誰にでも謝ってばっかりだな…


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