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スタンド小説スレッド3ページ

434:2004/05/23(日) 21:49

「…『ナイアーラトテップ』」
 ウララーが、自らのスタンド名を呟いた。
 周囲に、大きな衝撃が発生する。
 柵が吹き飛び、彼の立っている付近の甲板に無数の亀裂が走った。

 ウララーの背中から、大きな羽根が突き出た。
 それは天使のような翼ではなく、蝶の羽根に酷似している。
 その羽根が大きく羽ばたいた。周囲に黒い燐粉が飛び散る。

 この羽根こそが『ナイアーラトテップ』。
 彼のスタンドである。

「はっ、ははははははははははは!!」
 空母の甲板を蹴り、ウララーの体は大きく飛翔した。
 そのまま、高度を上げ、高度を上げ、高度を上げ――
 燐粉を撒き散らしながら、とてつもない速度で上昇していく。
 彼の体は対流圏を突破し、成層圏に到達した。
 上昇するにつれ、温度が高くなる。
 やがてウララーの体は熱圏を振り切り、そのまま外気圏に飛び出した。

「あはははははは!! 久し振りだけど… 調子はいいみたいだね!! はははは!!」
 彼の背中に生えた『ナイアーラトテップ』から、燐粉が飛び散っている。
 それは、ウララーの体を守るように周囲に広がった。
 狂笑を上げながら、なおも直進し続けるウララー。
 唯一の衛星、月が彼の目前に迫る。

「月…!!」
 ウララーは、そのまま月の重力圏に突入する。
 眼下に広がる巨大なクレーター。暗い砂漠。生物の存在しない死の世界。

「はははッ!! 人類にとっては大きな一歩だが…」
 ウララーは羽根を翻して月の地表ギリギリまで接近すると、その地を大きく蹴った。
「僕にとっては小さな一歩ってヤツだァッ!!」

 とてつもない衝撃。
 渦を描きながら巻き上がる砂塵。
 ウララーの進行方向が真逆になる。
 そのまま、彼は真っ直ぐに飛翔した。
 再び月の重力圏を出る。

 ウララーは、目の前の深蒼の星に向かって宙空を駆けた。
 そのまま、彼の体は大気圏に再突入する。
 北半球、ユーラシア大陸の近くの小さな島国。
 その、さらに小さな北の島目掛けて。
 多大な熱と羽根が反応し、乾いた音を立てる。
 徐々に周囲の温度が下がる。等温層に入ったようだ。

「来たぞ、来たぞ、来たぞ、来たぞ、来たぞォォォォォォォォッ!!」
 まるで彗星のように、ウララーの体は落下していった。
 そのまま、彼は地表に激突する。
 その衝撃は、まるで爆発のように大地を砕いた。
 周囲の建造物は全て吹き飛び、緑の大地は荒涼な砂漠と化す。
 まるで、先程の月の地表のように。

 それでもなお、ウララーの勢いは衰えない。
「チッ… 田舎か…!!」
 ウララーは高速滑空しながら舌打ちした。
 遥か彼方に、明かりが見える。
 街だ。それも、かなり大きい…!!


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