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スタンド小説スレッド3ページ
422
:
さ
:2004/05/23(日) 21:37
「―― モナーの愉快な冒険 ―― 吹き荒れる死と十字架の夜・その2」
@ @ @
丸耳は、しぃの家に足を踏み入れた。
土足だが、この際仕方ない。
モララーの家族は、無事に保護してASA本部ビルに送り届けてある。
防衛面ではやや不安だが、これから戦場に赴く軍艦に乗せるわけにもいかないだろう。
後は、しぃの家族を保護するだけだったのだが…
異常は、すぐに感じ取った。
しぃの家を包囲しているはずの米兵は、1人も見当たらない。
引き返したにしても、しぃの家族を拘束したにしても、余りに早すぎるのだ。
丸耳は廊下をゆっくりと進んだ。
むせ返るような血の匂い。
そして、家中に散乱する米兵達の死体。
総じて、死体の損傷は酷い。
その手足は、まるで食い千切られたかのように散らばっている。
一体、ここで何があったのか…
丸耳は、米兵の傍に転がっていた自動小銃を手に取った。
そのマガジンは空である。
「交戦した… という事は、相手が見えていた?」
丸耳は呟いた。
迷彩服の死体に埋もれて、倒れている女性を発見する。
丸耳は慌てて駆け寄った。
女性に息はある。特に外傷もない。
単に気絶しているだけのようだ。
「まあ、これを見れば仕方ないか…」
丸耳は、血と挽き肉の洪水である周囲を見回した。
年齢と風貌からして、この女性はしぃの母親に違いないようだ。
「よっ…と」
丸耳は、しぃの母親を肩に抱えた。
あと、この家にしぃタナがいるはず…
1階はくまなく調べ終わった。
「ここに危険はないようなんで… しばらく失礼しますよ」
丸耳は、しぃの母親を階段の脇に寝かせた。
そして、ゆっくりと階段を上がる。
――僅かな声。
女の子のすすり泣き、そして呟きが、丸耳の耳に入った。
「…ここか」
丸耳は、警戒しながら声の聞こえる部屋のドアを開けた。
女の子らしく、可愛く飾り付けられた部屋だ。
多少、過剰ともいえるほどに。
電気はついていない。
丸耳は、ゆっくりと部屋に踏み込んだ。
赤いカーペット。
元々の赤か、血の赤かは判別がつかない。
部屋の一番奥に、しぃタナは屈み込んでいた。
その周囲には、跡形もないほど引き千切られた米兵の死体が散乱している。
「私じゃない… こんなの、絶対に私がやったんじゃない…」
しぃタナは、すすり泣きながら何度も呟いていた。
「誰ッ…!?」
そして、丸耳の方を見る。
ようやく彼の存在に気付いたようだ。
しぃタナの瞳は、何かに対して怯えきっている。
「私は敵じゃありません。正月にモナー君の家で会ったでしょう。覚えてますか?」
丸耳は両手を広げて、敵意がない事を示した。
「貴方達を保護しに来ました…」
そう言いながら、丸耳は『メタル・マスター』のヴィジョンを背後に浮かべた。
「な…何、それ…!?」
しぃタナは、丸耳の背後に視線をやる。
――やはり、見えている。
無意識の発動。
米兵達を葬ったのは、彼女の仕業に間違いない。
米兵にも見えていたらしき事からして、物質融合型か?
丸耳は、しぃタナに手を差し出した。
「…ASAへようこそ、しぃタナさん」
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