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あと3話で完結ロワスレ
1
:
FLASHの人
:2012/12/09(日) 21:32:05
ルール等詳細は
>>2
を参照
お前が、このロワを、完結させるんだ……!
2
:
FLASHの人
:2012/12/09(日) 21:56:49
【ルール1:前提】
このロワは、
・すでに287話が書かれ
・膨大なフラグが積み重なり
・参加者100名のうち、94名が既に死亡しているロワ
・参加タイトルに関しては自由で、死亡キャラについては設定してもしなくてもよい
です
【ルール2:条件】
・残り6人の中にマーダーが1人残っている
・対主催ルートが基本で、ビルの屋上で主催自らがラスボスとして待っており、生存者は全員すでにビルの中にいる
・あと2時間で現在いる場所は禁止エリアとなる
・生存者の6人のいずれかに、以下の状態異常を振り分けること。一人に押し付けても構わない。
【右腕使用不可(欠損でなくともよい)】【限界寸前(無理な行動をとると死にかねない)】【フラッシュバックによる無力化の可能性】
・武器は自由、不死身や無限回復などのチート能力でなければ制限も解除(ただし297話やっても破綻してないという前提の戦力配分が望まれる)
・首輪爆弾は解除できていない。主催を倒した場合のみ、解除が可能。
【ルール3:結末】
・どんな結末でも構わないが、必ず3話で完結まで持っていかなければいけない
・1人で三話書くのが基本だが、設定だけ考えて他人に書かせる、3話でリレーしちゃう、1話を見てから作者に頼んでアナザーを2話書くなどのイレギュラーな執筆方法も認める。むしろたった3話で出来る事の可能性を見せてほしい。
3
:
FLASHの人
:2012/12/09(日) 21:57:39
第298話(1話目)投下前に必ず以下のテンプレに記入してから投下をしてください
<<ここからテンプレ>>
【ロワ名】
【生存者6名】
【主催者】
【主催者の目的】
【補足】
<<ここまでテンプレ>>
<記入例>
【ロワ名】例:「アケロワ4th」
【生存者6名】例:1.ラグナ=ザ=ブラッドエッジ(ブレイブルーシリーズ)【右腕使用不可】、2.アドラー(エヌアイン完全世界)、3.如月千早(アイドルマスター)【フラッシュバックによる無力化の可能性】、4.ラッキー=クローバー(KOFシリーズ)、5.ワルパッカ(マジカルビート)、6.スーパーソニックブラストマン(ソニックブラストマン)【限界寸前】
【主催者】例:ハザマ(ユウキ=テルミ)(ブレイブルーシリーズ)
【主催者の目的】例:確率事象(コンティニュアムシフト)の一部で、マスターユニット・アマテラスを混乱させるための実験
【補足】例:アドラーは一度転生をしているため、外見はボーナス君(わくわく7)です
4
:
FLASHの人
:2012/12/09(日) 21:58:44
テンプレは以上です
まずは参加表明やら雑談やらしていただいて結構です
ルールに例え穴があっても気にしないで下さい
見つけた穴を悪用やら曲解したってかまいません
どうせ、あと3話で終わってしまうロワなのですから……
5
:
六代目
:2012/12/09(日) 22:04:32
勢いで立てた。反省はしていない。あとはええと、ほら、みんな最終決戦書きたいだろ?
6
:
六代目
:2012/12/10(月) 01:24:58
しばらくダベったり妄想垂れ流すといいと思うんだ僕ァ
7
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 16:28:45
この企画のまとめwikiとか要る?
8
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 16:32:04
ttp://www.twitlonger.com/show/k9nmag
ツイットロンガーも乗せときますね、締切りはスレには書かれてないみたいなんで。
9
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 17:02:46
年末飛び込みぶっこみ企画で締切は一応年内って感じか。
実際にやってみて面白そうだったらいくらでも延長されそうな気もするけどw
10
:
六代目
:2012/12/10(月) 18:17:22
>>7
とりあえず一発ネタのつもりだったのでwikiとか考えてなかった
自分のサイトにまとめようかと思ってた
そもそもワタクシ、wikiの編集がほとんどできません……ので
作っていただいてもいいけど、更新できませぬ
>>9
年内と思ったけどさすがに無理だと思うので1月いっぱい
理想は2月中にまとめきって、3月までにラジオとかしたいと思っています
11
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 19:03:56
>>10
ラジオやるなら是非ともねとらじでオナシャス!
ユースト聴けねえんだこれが……
12
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 22:12:17
6人中マーダーが複数でもOKですか?
あと、主催者の本拠地はビル以外の建造物でもいいでしょうか?
例:ジ・エーデルがソーディアンでドヤ顔してるのがイラついたのでマーダー2人とも一致団結して殴りこみの真っ最中。
13
:
六代目
:2012/12/10(月) 22:17:54
>>11
ユーストのことよくわからないのでいつものようにねとらじですかね
放送用のソフトどこいったか覚えてないけど!
>>12
問題ないです。ていうかそんな縛りにしたら纏まんないと思ったから1にしただけで
6人全員マーダー(対主催全滅済み)とかだっていいんだぜ……
あと、ビルじゃなくてもいいです。同じ場所に全員がいて、その一番上とか下とかに
ボスがいるという状況でさえあれば問題ないです
ただ「この山にボスが……!」とかすると見つけるまでに禁止エリアになるだろという話です
ボスまで一直線であれば大丈夫です
14
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 22:19:48
ボスが固有結界とかで決戦場をつくっちゃうのはありですかね?
屋上までは行くけど、最上階で発動みたいなあれで
15
:
名無しロワイアル
:2012/12/10(月) 22:31:39
質問です。
・この企画は、実際に開催されたパロロワだけでなく、
実際に存在しないロワの最後3話を創作しても良いのですか?
・【ルール2:条件】で、生存者6人に振り分ける状態異常の他に
更に状態異常を振り分けても良いのですか?
16
:
六代目
:2012/12/10(月) 22:36:39
>>14
問題ないと思います
実際にビルで実際に屋上だとファンタジー組とかはせまっ苦しくなると思いますので
あくまでこの「ビルの屋上でボスが待ってる」というのは「わかりやすく目標地点が定まっている」
ということの一例だと思ってもらって結構です
>>15
>実際に存在しないロワの最後3話を創作しても良いのですか?
むしろそのためにある企画です。
頓挫した自ロワを救済するのもアリですが、基本的には妄想にとどめておいた
マイナーだったり壮大すぎだったり、実際にはできないであろうネタをぶち込んで
思う存分完結させていただきたいと思います
>更に状態異常を振り分けても良いのですか?
もちろんOKです。
状態異常の縛りは、最低限これくらいのギリギリ感で挑んでもらわんと困るよチミぃ
と言うだけの話で、それ以上にキツい状態ならいくらでもやってください
むしろ全員HP1からの逆転とかだってむしろ見てみたいのです
17
:
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:11:33
ツイッター経由でなんかの村から来ました。
参加します。
「こういうのはアリなのか」という疑問を込めて7レスほど投下します。
18
:
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:12:46
【ロワ名】DQFFロワイアルS XIII
【生存者6名】
・バッツ(FF5)【右腕欠損】 装備:氷の刃(DQ9)、+α(何か持ってますが出番はありません)
・ロラン(DQ2/ローレシアの王子) 装備:隼の剣改、+α
・リュウ(DQ2/竜王のひ孫)【限界寸前】装備:なし
・マリア(DQ5) 装備:プリンセスガード(FF7)+「なげる」のマテリア
・チャモロ(DQ6) 装備:裁きの杖、フレイムシールド(FF6)、+α
・ライト(FF1/WOL)【フラッシュバック】装備:ブレイブブレイド(FF5)、+α
【主催者】クジャ(FF9)
【主催者の目的】
・自分より長く生きる連中がむかついたので殺し合わせる事にした。むしゃくしゃしてやった。反省はしてない。
・死ぬのが怖いので、ゲーム開始から三日後に無の力を呼び出し、舞台や参加者ごと消滅する気でいる。
・三日以内に優勝者が出た場合は願いを叶えると言っているし、実際にその気もある。
【補足】
・FFDQ板で続いているシリーズ『FFDQロワ』の派生で、継続期間の短期化という目的から
昔の携帯電話にも優しい『状態表を除いた一話を1レス以内にする』制限を課せられたロワの13作目です。
※ただしFFDQ板での話という設定なので、このスレでは『20行×2レス=40行』を1レスと換算します)
・首輪は解除できていませんが、カーバンクルのルビーの光を使うことで主催者側の爆破操作を反射して爆発しなくなりました。
ただし全員リフレク状態の為、回復・補助魔法が実質的に使えません。
・現在時間は三日目22時です。
あと二時間で今いる場所(というより世界全て)が禁止エリア(というか無)になります。
・ビルの中から開始ということで、298話時点の参加者は神羅ビルに似た20階建のビルの20階にいます。
なお、屋上はFFによくある宇宙っぽいラスボス空間になっています。
19
:
298話:風の止む時
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:13:57
――志は一つのはずだった。
首輪は外せていないが、カーバンクルが命の終わりに放った真紅の輝きに守られ、もはや爆破される心配はない。
『無の力』というタイムリミットは迫っているが、階段を駆け上がれば、僅か数分で忌々しい主催者と対面できる。
……そのはず、だった。
「何をしているんですか! バッツさん!」
荒れ狂う氷の刃を炎の盾で受け止めたチャモロが、悲痛な叫びを上げる。
「血迷ったか……!」
竜の本性を曝け出すほどに満身創痍の身でありながら、リュウはマリアとライトを庇って前に出る。
だが、バッツと呼ばれた青年は、静かに答えた。
「悪いな、みんな。俺は最初から一人で生き残るつもりだったんだ」
朗らかなはずの笑みを暗く歪め、左腕で凍てつく切っ先をかざす。
蒼く輝く氷の刃は、彼の魂を示すかのように、血の色に染まっていた
そして、彼の視線の先にあるのは――リュウの盟友たる、ロトの勇者。
「ロラン……お前が殺したレナを生き返らせるためになあッ!」
交錯は、一瞬だった。
仲間達が制止の手を伸ばすよりも早く、殺意を纏った風が奔り。
けれども、片腕を失い威力を欠いたその一閃は、勇者が持つ細身の剣で容易く防がれる。
そして返す刃が、隼の飛翔のように舞い――青年の心臓を、狙い違わず貫いた。
20
:
298話:風の止む時
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:14:34
「すまない……バッツ」
鮮血を吐き、うめき声を上げて倒れる青年の身体を支えながら、ロランは呟く。
『誤解だ』とは言わなかった。
共に一日を過ごした仲間を、治療するどころか看取るしかできなかった以上、弁解の余地など無いのだから。
そしてバッツもまた、口を開かなかった。
諦めの表情だけを遺して逝ったのは、不意打ちを防がれた時点で、レナを救えない未来に気付いていたのだろう。
「……行こう、みんな」
バッツを横たわらせ、隼の剣を二振りし、ロランは仲間に向き直る。
ライトは、小刻みに震える手を抑え、無言で頷く事しか出来なかった。
もしもこの場にいたのがバッツとライトだけだったならば、彼は剣を抜くことすらできずに斬られていただろう。
人に刃を向けることへの恐怖。今は亡き想い人、セーラの豹変と裏切りが刻んだ心の傷。
だが、彼は、自らの弱さを叱咤するだけの精神力を持っていた。
(苦しいのは、本当に苦しんでいるのは、私ではないだろう……!)
人を殺めなければいけなかったロラン、傷ついたリュウ、守るべきチャモロとマリアの前で、弱音など吐けない。
その自負と信念が、折れかけの心を捻じ伏せ、彼を突き動かした。
目を閉じ、祈りを捧げてから、五人は屋上への階段を上っていく。
後には命を失った身体と、静寂だけが遺された。
【バッツ 死亡】【残り 5人】
21
:
299話:最終決戦
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:15:12
そこは不可思議な空間だった。
彼らが駆け抜けた、灰色の床と壁とは打って変わり、星々が煌めく夜空の光景が広がっている。
けれど、足元にはどこまでも広がる透明な床があり、落ちることも果てに辿りつくことも無いように思えた。
呆然と周囲を見回す五人の耳に、乾いた音が響く。
「おめでとう。
ここまで辿りついた君達には、素直に賞賛を送らせてもらうよ」
声の方角に振り向けば、そこには、100人を殺し合いに導いた男――クジャがいた。
微笑を浮かべ、優雅に拍手を鳴らす様に、リュウが吐き捨てる。
「受け取りたくもないわえ」
「それ以前に、貴様と交わす言葉などない」
ライトが言い放ち、マリアが震えながらも気丈に睨みつける。
「例え神や夫が『許せ』と仰っても……憤怒の罪科で煉獄に落とされようとも、貴方だけは許さない!」
「全くです。最も、ゲントの神は、貴方という邪悪を裁けとこそ、命じるでしょうがね」
チャモロが杖を鳴らし、最後に、ロランが剣を抜き放つ。
「お前の首を持って凱旋しなきゃ、サマルやムースやご先祖に、会わせる顔が無ぇんだよ」
彼らの宣戦布告に、クジャはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「無粋だねぇ……戦いで決着をつけようなど、優雅さの欠片も無い」
踊るように宙を舞い、道化じみた所作で腕を広げる――その姿が、不意に掻き消える。
息を呑むマリアの首筋を、背後から、冷たい手がそっと撫ぜた。
「お望み通り始めようじゃないか。『無』に至る前に、最終章に相応しい惨劇をね」
22
:
299話:最終決戦
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:15:45
「マリアッ!!」
可憐な命を散らさんとする死神の手に、誰よりも早く反応したのはライトだった。
硬直するマリアを突き飛ばし、死神から放たれた破壊の光球を己の体で受け止める。
だが、爆ぜた光は、ライトの脇腹を臓器もろとも吹き飛ばし、抉り取った。
血の海に沈むライトの姿に、我に返ったマリアが悲鳴を上げる。
「人のダンスに割って入るなんて、礼儀がなってないねぇ」
せせら笑いながら、クジャは追撃せんと両手を振りかざし――大木のごとき巨竜の尾が、鞭となってそれを阻む。
「トカゲの分際で邪魔をするのかい」
「男と女の仲を裂く……野暮な猿には言われとうないわ」
ぜえぜえと息を吐きながら、それでも投げかけられた嘲笑は、クジャの神経を逆撫でた。
「なら、お望み通り先に死ぬんだね。フレアスター!」
ターゲットをよろめく竜に切り替え、死神は漆黒の炎を手に迫る。
身を守らんとする翼をも焼きつくしながら、その腹に一撃を与え――
だが、元より瀕死であったリュウのどこにそんな力が残っていたのか。
半身を炭化させながらも、彼はクジャの手を掴み上げ、残った生命全てを声に変えて吠えた。
「我が友らよ! やれいッ!!」
その叫びに応えた者は二人。
「リュウちゃん――後は任せろォ!!」
「……グランドクロス!!」
一人は覚悟を定め、剣を奮う。一人は眼鏡の奥に涙を浮かべ、虚空に十字を切る。
そして、ロランとチャモロが放った二重の刃が、リュウもろともクジャを捉えた。
23
:
300話:光は消えない
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:17:08
「ぐうっ!!?」
破壊神をも破壊する膂力と、邪悪を滅する神風の刃に切り裂かれ、鮮血をまき散らすクジャ。
だが死神にはまだ余力が残っていた。
「調子に……乗るなァああああああああああ!!」
光を纏わせた右腕の一振りで、残っていた竜の上半身を粉々に吹き飛ばし、銀髪を朱に染めながら中空に飛ぶ。
剣の届かぬ空の高みで、クジャは両手を天にかざし――その掌に魔力を集め始めた。
「何を……!?」
「決まってるだろう? 全員跡形もなく消してやるんだよォッ!!」
大気が震えだすほどの膨大な魔力に狼狽を隠せない戦士達に、クジャは狂笑を浮かべる。
しかし、その高笑いを切り裂いて、一条の光が彼の胸を射抜いた。
「な……!?」
たまらず血を吐き、バランスを崩す死神の耳に、二つの声が届く。
「剣を振るえずとも……守る勇気がある限り……光は……消え……ない……!」
「戦う力を持たずとも……彼の手を支える事は、できますっ!」
ライトに寄り添っていたマリアが、彼と共に、ブレイブブレイドを投げたのだ。
そして、クジャがそのことに気付いた時には、既に、チャモロとロランが動いていた。
24
:
300話:光は消えない
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:18:33
果たして、クジャは予測できただろうか?
地を這うだけの、人にすぎぬ勇者が、自分と同じ高みへと昇ってくるなどと。
だが、パラディンとして武道の研鑽を積んだチャモロにとって、ロランを投げ飛ばすことは難しいことではなかった。
そして卓越した身体能力を持つロランにとって、仲間の助力があれば、空へと駆けることは難しいことではなかった。
「ロランさん!」「ロ……ラン……!!」「ロランくん!」
三人の声を背中で受け止め、先に逝った95人と盟友の想いを乗せて、ロランは剣を振りおろす。
「舞えェエエッ! 隼ァアアアアアアアアアアッ!!」
魔法を使えず、技を放てず、それでもなお勇者と呼ばれた王子の剣は。
死神の体を、深く、深く切り裂いた。
――薄れゆく意識の中でライトは聞いた。
首元で鳴った、カチリという金属音を。
そして確かに見た。ロランの。チャモロの。マリアの足元に、二つに割れた首輪が落ちたのを。
空間を満たした柔らかな光の先に、青い空と草原が広がっているのを――
(……ああ……終わったのだな……)
草原の彼方から、クリスタルを携えた黒魔道士が、驚いた様子で駆け寄ってくる。
彼が殺し合いに呼ばれなかった仲間だと気付いたライトは、安堵の笑みを浮かべ、ゆっくりと瞼を閉じた。
96の命を奪った悲劇の結末を見届けて、彼は――光の戦士は、その使命と生涯を終えた。
【竜王のひ孫、ライト 死亡】
【ロラン、マリア、チャモロ 生還】
【生存者 三名】
【DQFFロワイアルS XIII 完】
25
:
◆Wue.BM1z3Y
:2012/12/11(火) 12:19:36
以上で投下を終了します。失礼致しました。
26
:
六代目
:2012/12/11(火) 15:33:49
スレッガーさんかい!?早い!早いよ!?
ということで一人目の投下ありがとうございます。
独自に設定されている「こういうロワである」という縛りに関しては全く問題ありません。
というか、ルール2の条件設定以外に関してはほぼ自由にしていただいて結構です。
つーか、たとえどんなのを投下されようとも、3話で完結してたら審議とか破棄とかありませんから
安心してどんどん投下ください!
で、投下作品についてですが、「こういうこと」です。
意図を汲んでいただけたことを嬉しく思います。
最後の3話でマーダーは動くのか動かないのか、決着はつくのか、どう戦うのか
残り94人の話は入るのか、どこまで掘り下げるのか
そういうものを取捨選択していただく企画であることをご理解いただき
感激の極みです。
内容的にも「やりきった」感が溢れていますし、これバッツは今までどんなモノローグ抱えて
297話過ごしてきたんだとかすごく興味の湧くお話でした。
文章的にはすっきりまとめていますが、もともと設定されている独自ルールのおかげで
なるほどこの文章量にまとめなくてはならないとなればこのくらいの描写に落ち着くのだな
と腑に落ちる感じです。
ともあれトップ投下ありがとうございました!
27
:
六代目
:2012/12/12(水) 14:35:05
おいもっと雑談していいんやで(震え声
28
:
名無しロワイアル
:2012/12/12(水) 14:45:18
雑談可と聞いて。
最終話から考えるっていうのも面白いけどいざやるとなると形にならなくて難しいなぁw
ロワに出たことない作品使ってステマしたい(キリッ
29
:
名無しロワイアル
:2012/12/12(水) 15:27:07
三話っていう縛りで、各書き手が「1話」にどの程度詰め込むかが見えるかもね。
最初の投下のを見たら、自分が書いてるのなんて298話目で最初の投下より文量多いしなwww
説明口調にならず、フラグを自然に出すのって難しいわ
30
:
名無しロワイアル
:2012/12/12(水) 15:33:38
長いと途中で力尽きるからこういう長さを制限するルールがあるって発想は上手いと思ったなぁ。
ロワ終盤付近の長文化に慣れてるだけにああいうふうにやったのはすごいと思った(小並感
それでいてしっかりメリハリつけて話の内容自体も面白いと来て。
31
:
名無しロワイアル
:2012/12/13(木) 17:26:43
今ちょっとプロットこねくり回してるけど…最高5人で主催&ラストマーダー戦こなすのって結構難しいなw
ガチバトル要員ばかり詰め込んでも面白くないからレパートリー付けようとしても悩む悩む…
32
:
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:48:59
二番手、参加させていただきます。
締切りまでに完結させられるかどうかは分かりませんが……頑張ります。
33
:
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:49:35
【ロワ名】まったくやる気がございませんロワイアル
【生存者6名】
トージャム@トージャム&アール【フラッシュバックによる無力化の可能性】
少年B@少年B【限界寸前】
リック・ストラウド@リアルバウト餓狼伝説2
フェイ@FINAL FANTASY USA -MYSTIC QUEST-
ソード(主人公)@DRAGON QUEST SWORD 仮面の女王と鏡の塔【右腕使用不可】
風見幽香@MMDで関節技講座(マーダー)
【主催者】ペプシ本社コンピュータ@ペプシマン+真獅子王@風雲SUPER TAG BATTLE
【主催者の目的】強者と戦う
【補足】昔、非リレースレでやろうとしていたもののリサイクルです。
地図:ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0159.jpg
名簿(折角あるので)
1/20【リアルバウト餓狼伝説シリーズ】
○リック・ストラウド/●李香緋/●アルフレッド/●テリー・ボガード/●アンディ・ボガード/
●ジョー・ヒガシ/●不知火舞/●ギース・ハワード/●ボブ・ウィルソン/●ブルー・マリー/
●フランコ・バッシュ/●ダック・キング/●秦崇秀/●秦崇雷/●ビリー・カーン/
●ローレンス・ブラッド/●ヴォルフガング・クラウザー/●EXアンディ・ボガード/●EXビリー・カーン/●EXブルー・マリー
1/11【トージャム&アール】
○トージャム/●アール/●魔術師/●ワイズマン/●オペラ歌手/
●いたずら小悪魔/●ブギーマン/●芝刈り親分/●凶悪ドクター/●郵便ポストのオバケ/●もぐら
0/9【レッキングクルー('98含む)】
●マリオ/●ブラッキー/●クッパ/●なすび仮面/●スパナゴン/●オニギリ/●女の子/●オヤジ/●土偶
0/8【テトリス武闘外伝】
●ハロウィン/●ミルルン/●プリンセス/●アラジン/●ニンジャ/●オオカミオトコ/●ドラゴン/●グランプリンセス
0/7【がんばれギンくん】
●ギンくん/●ハムくん/●ガツガツ/●お姉さん/●ひろみ/●ダルマさん/●牛
1/6【DRAGON QUEST SWORD 仮面の女王と鏡の塔】
○ソード(主人公)/●セティア/●ディーン/●バウド/●ナッジ老師/●魔王ジェイム
0/5【風雲SUPER TAG BATTLE】
●ロサ/●キム・スイル/●ショー・疾風/●マックス・イーグル/●影獅子王
1/5【FINAL FANTASY USA -MYSTIC QUEST-】
●ザッシュ/●カレン/●ロック/○フェイ/●レッド
0/5【Oh! スーパーミルクちゃん】
●ミルク/●テツコ/●大家/●大統領/●アイパッチ博士
1/5【少年B】
○少年B/●火星に辿り着いた時に先に居たクラスメイト/●先生/●校長/●犬
1/5【MMDで関節技講座】
●初音ミク/○風見幽香/●時報ちゃん/●重音テト/●GUMI
0/5【ニコニコ動画】
●松岡修造/●クワマン(桑名信義)/●ユリウス・ベルモンド/●マクシーム・キシン/●曙太郎(チャド・ジョージ・ハヘオ・ローウェン)
0/4【降魔霊符伝イヅナ】
●イヅナ/●シノ/●ミツモト/●シズネ
0/2【SPYvsSPY】
●ヘッケル(白スパイ)/●ジャッケル(黒スパイ)
0/2【ペプシマン】
●ペプシマン/●ムービーに出てくるオッサン
0/1【マイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー】
●マイケル・ジャクソン
34
:
298話:傷あとをたどれば
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:51:06
――――そして、この私の声を聞いている者、六人の強き者達よ。
時は満ちた、今こそ全てを明かす時。
北に聳えるビルの最上階で会おう。
では、さらばだ。"強者"たちよ。
この悪魔の武闘会が始まってから、70時間が経つ。
生きる者に残されし時間は二時間、二時間後には全区域が禁止エリアとなる。
一秒でも過ぎれば、この場にいる全員に等しく科せられた首輪が爆発して命を奪い去っていく。
誰がどう見ても絶望の未来しか見えない状況に、悪魔は一つの声を流した。
自分はここにいると、そこでこの悪魔の武闘会の全てを明かそうと。
最終局面まで立っていた全ての人間にそう告げた。
そして、この場の残りの命が悪魔の舞台に揃う。
幕が、開ける。
.
35
:
傷あとをたどれば - A Side 最愛の友 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:51:36
階段を登る。
今にも息絶えそうな一人の少年を背負い、一歩一歩を踏みしめていく。
体を造る全ての要素が悲鳴を上げながら、彼の三本の足を止めようとする。
だが、それでも彼は階段を登ることをやめない。
意地か、根性か、気合か、そのどれかは最早わからない。
ただ彼は足を動かし、一段一段積み上げられた階段を乗り越えていく。
「おい」
異星人、トージャムの小さな背中に背負われた少年がぽつりと呟く。
その声は弱弱しく、今にも消えてしまいそうである。
「降ろせ、もういい」
全てを滅ぼす史上最悪の存在、魔王ジェイド。
自分が焼き殺した壮年の男、バウドから聞いた話よりも何倍も何倍も恐ろしい姿の存在。
それはクノイチの少女シノの体を依り代とし、自分達の目の前に現れた。
彼女が妹のように可愛がっていたイヅナの命を始めとし、ザッシュ、ユリウス、マイケルの命と自分の体力の殆どを奪い去って行った。
もし、アンディが影を手にすることに失敗し、少しでも遅れていれば自分もトージャムも命を落としていただろう。
彼の手によって、自分とトージャムは「生き延びる」事が出来た。
少なくとも、形の上では。
「死人同然の人間に世話焼いて、生きてるやつがくたばるなんて、バカらしい話があるかよ」
もう残りどれだけかわからない体力を使いながら、言葉を続ける。
捨て置けと、そしてお前だけでも先に進めと。
少しの沈黙を置いてから、異星人は上りながら口を開く。
「俺はさ、自分の家で大好きなファッジサンデーを食べながら、アールと一緒にバカやってるだけで良かったんだよ」
その言葉は、誰に向けられたものでもなく。
「友達ってのは何時も傍に居て、何気なく日々接していても、大事さってのは分かんないモンなんだよな」
ただ、ただ紡がれていく。
「でもさ、居なくなるとすげー寂しいし、辛いし、耐えられないんだよ」
この場で失った多くのモノを忘れないように。
「ボロボロボロボロと皆死んで行ってさ、残されたやつの事なんて微塵も考えなくってさ」
一人一人、思い返していく。
この殺し合いに巻き込まれてから最初に出会った、かなりやかましいブーメランの男を。
華麗なダンスで皆を楽しくさせてくれた、白いタキシードの男を。
どういうわけか空を飛ぶ、不思議なライスボールの事を。
何時も明るく笑いながら接してくれていた、兎のような生き物の事を。
そして目の前でゴミクズの様に死んでいった、大親友の事を。
「決めたんだ」
異星人が、先ほどとは違う決意を込めた声を出す。
「もう、これ以上友達を無くさない」
その時に踏み出した一歩は強く。
「ミルルンの友達は、俺の友達だ」
しっかりと、背中の少年へ伝えていく。
「だから、お前は俺の友達だ」
これ以上失いたくない存在がある、今それを背負っている。
「友達置いて、どっか行くやつがいるかよ」
だから彼は進む、足がどれだけ悲鳴を上げようと、彼は進む。
「……勝手にしろ、死んでもしらねーぞ」
――――キミとミルルンは、これからず〜っと友達だよ!
「友達」なんて居ない、だから全てを燃やし尽くすと決めたはずの少年は。
そんな事を言いながら自分に近寄ってきた、兎のような生き物の事を思い出し。
静かに、涙を零した。
そして異星人の足は、大広間へと辿り着く。
.
36
:
傷あとをたどれば - B Side 一本の剣 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:53:18
無言。
"スグレモノメカ"と呼ばれた巨大な機械の残骸が横たわり。
曲芸飛行の達人は壁に赤い華を咲かせ。
狼の姿を持つ侍は体を二つに引き裂かれ。
神に仕えし少女は文字通り"平面"になり。
一組の男女は言葉を交わすことはなく。
コツコツと靴の音だけが響き渡り。
一本のレバーが落とされ、ガチャンと一際大きな音を立て。
少年はゆっくりと女の傍へと歩み寄る。
「行くぞ」
ただ、それだけ。
表情も無く、感情も無く、事務的に少女へと告げていく。
金髪の女、フェイは即座に立ち上がり、少年の胸倉を掴む。
「それでいいの?」
その目に涙を浮かべながら、少年の体を大きく前後に揺さぶる。
「セティアは、セティアは、どんな気持ちでアンタを……!!」
少年は、本来ここにいないはずだった。
圧倒的な力を誇る"スグレモノメカ"に見せた一瞬の隙を突かれ、巨大な足に踏み潰されて終わり。
そんな少年の命を救ったのは一人の少女。
とある国で将来を有望視されていた、僧侶の少女。
彼女がその身を呈し、少年を救った。
――――ねえチャッピー。
踏み潰される少し前、彼女は少年に向けてそう言った。
言葉には続きがあったが、それが語られることは無い。
一瞬、笑顔を見せた後に彼女は"平面"になった。
フェイの究極魔法が完成したのは、それとほぼ同時だった。
少年、ソードは掴まれた手を振り払い、小さく告げる。
「終わらせるまで、振り返ってる暇なんて無い」
少年には一つの決意があった。
自分の世界で魔王が蘇った時も、同じ事をした。
一本の剣を掲げ、一本の剣を背負い、一本の剣を振るう。
敵を裂き、魔を裂き、悪を裂き、平和へ導く。
だから、この場でも同じ事をするまで。
あの悪魔を斬るまで、立ちはだかる者は全て斬る。
剣を振るった先に、平和はあると信じているから。
「ディーンを斬った時から、決めた事」
だから、友を斬った。
始まりの地、そこで見せしめのように殺された女王の姿に怒り狂った友を斬った。
狂いに狂いきり、自分に刃を向けてきた友を斬った。
立ちはだかる存在だったから、斬った。
平和を阻害する存在だから、斬った。
自分にとっての敵だったから、斬った。
目の前に立ちはだかる全てを斬り伏せてきた。
何も考えない。
まだ、事は達成していないのだから。
全てが終わってから、振り返ればいい。
今、振り返っている時間なんて、一秒も無いのだから。
「行くぞ、アンタの"ペプシの知識"は必要だからな」
前へ進み、立ちはだかる者を斬り捨てるだけだ。
かつかつと歩き出すソードの背を見ながら、フェイは思わず壁を殴りつけてしまう。
分かっているのだ。
そんなことに構っている暇など無いことほど時間がないことぐらい、分かっている。
分かっているから、分かっているからこそ辛い。
この地で長く行動を共にした、セティアの気持ちが伝わらないことが。
「ちょっと待っててね」
彼女は誓う。
今は、ソードと共に全てを終わらせる。
その後、彼女の気持ちを必ずソードに伝えると。
静かに、誓う。
動き出したビルのエレベーターが、ゆっくりと大広間へ辿り着いていく。
.
37
:
傷あとをたどれば - C Side 不屈の心 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:54:00
唯一のビルの最上階へ通じるエレベーターがある大広間。
三つの死体の傍で一枚の硝子に開いた大きな穴を眺めながら、男は一人静かに佇む。
小さくため息をついた時、ゴゥンとエレベーターが起動する音を聞き、結果はどうあれソード達は成功したのだと認識する。
オオカミオトコの掴んだ情報通りなら、この一基のエレベーターの辿り着く先に、あの悪魔がいるはずだ。
計算外のことはたくさんあったが、なんとか決戦の地へ向かうことが出来る状況は揃った。
ふと、この場にある三つの死体を作り上げた女の最後の言葉を思い出す。
――――さよなら、"殺人者"さん。
ビルの中層から落下し、命を落とそうとしている時に。
もう一人のブルー・マリーは、ギース・ハワードのように不敵に笑い、その言葉を残しながら死んでいった。
言われてみれば、その通りだ。
人を殺したくないなんてことを言いながら、もう何人かはこの手で殺している。
直接的にも、間接的にも。
大本の原因はこの殺し合いを開いたあの悪魔だが、実際に手を下したのは自分である。
何故か? 生き残りたかったからだ。
「人を殺さず、一人でも多くの人間と生きて帰る」
なんて、所詮夢物語でしかなかったのか。
足下に転がる失われた命達を守ることすら出来ず。
襲われたと言う大義名分を掲げ、今もマリーを殺して生き延びている。
結局、自分も我が身が可愛い存在でしかなかったという事なのだろうか。
初めから人を殺すことを選んでいれば、こんなにも悩まずにすんだのだろうか――――
――――初志貫徹、良い言葉だよね。
自分の初めの思いを、まっっっすぐ、こうぐぅ〜っと貫き通す!
そうすれば、自分の思いは届くよ!
声が聞こえる。
――――心が弱ければ、見れる明日も見れない。
だが逆に言えば、心を強くしていれば見れない明日はない。
だから、どれだけ負けても光を見れる!
土壇場の裏切りで、命を落としていった者たちの声が。
――――自分を信じて前を行く。
シンプルだけど、難しいナス。
でも一本芯が通ったモノは、すごく強いナス。
それでも前へ、未来へ進んでいった者たちの声が。
そう、初めに決めたのは"一人でも多く生き残る"事。
まだ、生き残っている命がある。
ならば思い通りではなくとも、まだ向かうべき未来があるのだから。
この思いを、貫き通す。
絶対に諦めず、前を向き続けた者たちの分まで。
自分の足で、先へ進む。
それまでは、絶対に諦めない。
「オレは"未来"へ進む」
握り拳を作り直し、まっすぐにガラスへと突き出す。
再確認した自分の気持ちと、折れない心をその手に乗せて。
「お前みたいに、命を奪って悦に入る"殺人者"じゃない」
決別と否定の一言と共に、穴の空いたガラスから目を背け、エレベーターへと目を向けた。
ちょうどその時、一基のエレベーターが大広間にたどり着き、少年を背負った異星人が大広間へつながるドアを開けた。
こうして、残り六つのうちの五つの魂が、このクッパビルの大広間に集った。
38
:
傷あとをたどれば - Get → Set → Ready -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:54:25
駒は揃った。
軽めの自己紹介、情報交換、支給品分配を経て。
その手は最後の扉を開く。
押されるボタンに従い。
轟々と仰々しい音を立て。
箱は導いていく。
この殺し合いの終わりの場所へ。
チン、と軽い音がなる。
そして、重々しく開いた扉の先には。
「あら、遅かったじゃない」
魔人が、悪魔の上に立っていた。
.
39
:
傷あとをたどれば - EX Side 魔人降臨 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:55:01
ビルの最上階。
伸びる青龍の爪を駆使し、持ち前の怪力を使って、ビルの外壁から"無理矢理"入ってきた人間が一人だけいた。
「ははぁ〜ん、大層な趣味だこと」
目を細めながらあたりを見渡し、一言呟く。
エレベーターから真っ直ぐに伸びる絨毯の先で、玉座に座る獅子王へ向かい。
ゆっくりと歩く彼女の靴音がかつ、かつ、かつと一歩ごとに響く。
他には何も無い広大な空間、動くものは彼女一人。
「これで待ってるのがカワイイ女の子だったら……最高なんだけど。
現実はムサい筋肉質の男、なのよねぇ」
明らかに落胆している様子のため息を一つこぼしながらも、彼女はかつかつと靴音をならしながら前へ進む。
両者の距離が程良く詰まったところで、獅子王が重く閉ざしていた口を開く。
「まさか……初めの来訪者が貴様で、しかも一人で来るとはな」
「あら、そんなに意外? 予想できてたんじゃないの?」
いたずらっぽく笑ってみせる女に対し、獅子王は眉の一つも動かさない。
小さくため息をついてから、女は問いかけをする。
「さて、こんなところに呼び寄せて何のつもり?
わざわざ目立つ場所に自ら赴いて来るってことは……」
言葉は、そこで止まる。
獅子王がゆっくりと立ち上がり、剣を抜いて突きつけてきたからだ。
「ここまで生き残った力、私に見せてみよ」
その一言に、反応するように女は笑う。
「やっぱり、ね」
予想通りの答えだった。
主催自ら参加者を呼ぶということは、参加者に何かしらアクションを取りたいということ。
殺し合いを開いてまで成し遂げたかったこと、それは戦闘だ。
幾多もの命を奪いながら生き残るほどの強者と戦いたかった、といったところだろう。
そこで、自らの設けたタイムリミットが近づいてきたのであわてて参加者を呼び寄せたということだ。
今日はカンがよく冴える日だな、などと思いながら女は笑い、拳を握り直す。
「ムサい男と戦うのは趣味じゃないから、一瞬で終わらせるわよ」
火蓋が、落ちる。
女が駆ける。
王が吠え、全身全霊を込めた拳を突き出す。
女が拳を真正面から捕らえる。
空気の流れを生かし、ほんのわずかに王の拳の軌道を逸らす。
一瞬の風圧で手には無数の裂け目が生まれ、頬に綺麗な赤一文字が描かれる。
気を全て攻撃に使っていることを察し、思わず頬をゆがめる。
深く踏み込んだ一歩から、空気を振るわす掌底を王の原へと突き出していく。
びくり、と強靱な筋肉に包まれた肉体が浮き上がる。
そして流れるように突きだしていた右腕に絡み付き、息をつく間もなく間接を極める。
いや、極めるのを飛び越し"破壊"していく。
獅子王の顔が苦痛に歪んだと同時に、女はすり抜けるようにもう片方の腕へと絡みつき"破壊"していく。
それだけ、たったそれだけだった。
40
:
傷あとをたどれば - EX Side 魔人降臨 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:55:43
「これほどまでとは、な」
腕をだらりと垂らしながらも、片膝を突くだけに留まりつつ、王は女へと語り駆ける。
「白々しい、最初からそのつもりだったんでしょ?」
呆れたような声を出し、笑いながら女は一冊の巻物を王の目の前に放り投げる。
「じゃなきゃこんなの支給しないし、あの放送でヒントも言わないわよね」
"秦秘伝書"と書かれた煤けた巻物達は無造作に放り出され、地面を転がっていく。
かつて、ギース・ハワードが「ゴミ」だと称したこの三冊の巻物は、実は続きがあった。
数十年後の未来、それを解き明かし本当の秘伝書を発見した獅子王は書によって力を得ようとしたが、書の極意を習得するには至らなかった。
そこでこの獣神武闘会を開き、書の極意を習得する者が現れることを願いながら、支給品に仕込んだのだ。
「お見通し、か」
そして、書の極意を習得した者は現れた。
自分が夢見た"この上ない強者"と戦う事も叶った。
「満足した。これで、悔いはない」
もう、この薬漬けのボロボロの体を捨てるときが来たのだ。
最後の最後で自分の望みが叶えた事を噛みしめながら、王は男として最後の言葉を残す。
「私の負けだ、この獅子王のサングラスにこの下の階にあるシステムのマスターコードが記されている。
停止させて首輪を解除するなり、好きにしろ」
強者への手向け。
約束していた元の世界への帰還は、この獣神武闘会を管理していたペプシシステムの仕事だ。
そのマスターコードがあれば、自在にペプシシステムを操ることができる。
あとは、勝者のすること。
自分のすることは、無い。
もう片膝を付き、ゆっくりと体全体を地面に預けるように。
獅子王は、息を引き取った。
女はくるりと体を翻し、自分の歩いてきた道を引き返す。
かつ、かつ、かつと再び靴音だけが響く。
何歩目かの事だ、靴音とは違う"チン"という音と共に目の前の扉が開く。
ゆっくりと広がっていく光に対し、彼女はこう言った。
「あら、遅かったじゃない」
幕は、まだ降りない。
41
:
傷あとをたどれば - EX Side 魔人降臨 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:56:20
【真獅子王@風雲SUPER TAG BATTLE 死亡確認】
【クッパビル最上階/早朝】
【風見幽香@MMDで関節技講座】
[状態]:不死身の完全体(?)
[装備]:空龍@RB、海龍@RB、麒麟の篭手@イヅナ、蒼天の靴@イヅナ、蒼龍の爪@FFUSA
[道具]:秦の秘伝書@RB、真獅子王のサングラス、基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:????
[備考]:秦の秘伝書を解読しました。呼び出した空龍、海龍は彼女が"力ずく"で従えています。
【クッパビル中層大広間→????/早朝】
【トージャム@トージャム&アール】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]:トマト@トージャム&アール
[道具]:基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:決戦へ
[備考]:マイケル・ジャクソンのダンスを習得済み
【少年B@少年B】
[状態]:疲労(極)、九割の火傷、色彩感覚喪失、肋骨骨折、ダメージ(大)
[装備]:(シークレット)
[道具]:基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:決戦へ
【ソード(主人公)@DRAGON QUEST SWORD 仮面の女王と鏡の塔】
[状態]:健断絶(右腕)、右目失明、ダメージ(大)
[装備]:エクスカリバー@FFUSA、わんこベスト@DQS、オリハルコンのさじ@DQS
[道具]:基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:決戦へ
【フェイ@FINAL FANTASY USA -MYSTIC QUEST-】
[状態]:MP消費(小)、ダメージ(中)
[装備]:にゃんにゃんクロウ@DQS、神弓@イヅナ
[道具]:人力矢@イヅナ、基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:決戦へ
[備考]:ペプシシステムについての知識を、ペプシマンから聞きました。
一人メドローアを習得済みです。
【リック・ストラウド@リアルバウト餓狼伝説2】
[状態]:疲労(超)、脇腹に感電跡、ダメージ(中)
[装備]:拳
[道具]:基本支給品、(その他、幾つかの支給品)
[思考]:決戦へ
42
:
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:57:35
投下終了です。
主催死亡→首輪解除までにもうワンプロセスを仕組んでみたりなど、ちょっとスレスレなところもありますが……。
ルールに課せられた制限はしっかりとかけてあるつもりです。
しかし、実際にいざ「クライマックス!」をいきなり書くのは難しいですね……w
43
:
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 22:09:25
そして遅れましたが、感想をば。
>>DQFFロワイアルS XIII
投下乙です。
40行という短文という縛りの中、スマートに表現されていて、
なおかつこれまでが鮮明に想像できるような鮮やかな描写で面白かったです。
「何があったのか」が分からないけど、それがいい、本当に面白かったです。
44
:
◆nucQuP5m3Y
:2012/12/14(金) 02:55:58
時間がないけど備忘と決意のためにテンプレだけ投下!!
【ロワ名】リ・サンデーロワ
【生存者6名】
黒兎春瓶(呪法解禁!!ハイド&クローサー)
鉢かつぎ姫(月光条例)【右腕欠損】
霊幻新隆(モブサイコ100)【フラッシュバックによる無力化の可能性アリ】
ハクア(神のみぞ知るセカイ)【マーダー:桂馬の復活が目的】
蝉(魔王、waltz)【マーダー:岩西復活を含む魔王世界の存続が目的】
恋川春菊(常住戦陣!!ムシブギョー)【マーダー:ムシブギョー世界の存続が目的】【大量出血。現在止血できているが傷が開けば命の保証はない】
【主催者】
ゼクレアトル(ゼクレアトル 神マンガ戦記)
【主催者の目的】
最も優秀なマンガを残し、仙人サンデーへ移籍させる
【補足】
●週刊少年サンデー、クラブサンデー、裏サンデーから参戦のロワです
●特殊ルールとして消失(デスアピア)が採用されています。
・同じマンガから参戦している者が一人もいなくなった時点でそのマンガの存在そのものが世界から消え失せます。
・世界観や登場人物、彼らに関する記憶までが消滅するため、消失(デスアピア)に気づくことも出来ませんが
ルールとして周知されたため消失(デスアピア)の恐怖は参加者に浸透しています。
・眼前で1タイトル最後の参加者が死亡→消失(デスアピア)の場合のみ、視認していた者に数十秒記憶が残り、
その間に他人に情報を伝えたり筆記して情報を残すことは可能です。
●誰が言い出したのか、全ての話のサブタイは「離散」「りっぱなカバさん」「理解と決別」「リストレイト」「ring a bell!」など「り」から始まります
本編投下は来週くらいになりそうです。
45
:
◆nucQuP5m3Y
:2012/12/14(金) 10:22:25
今気づいたけどwaltz入れるならゲッサンも入るのか
46
:
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:40:56
【ロワ名】それはきっと、いつか『想い出』になるロワ
【生存者6名】
1.ヴァージニア・マックスウェル@WILD ARMS Advanced 3rd【右腕使用不可】
2.カズマ@スクライド
3.クマ@ペルソナ4 ザ・ゴールデン【フラッシュバックによる無力化の可能性】
4.トトゥーリア・ヘルモルト@トトリのアトリエ
5.速水殊子(はやみことこ)@レジンキャストミルク
6.ブルー@サガ・フロンティア【限界寸前まで損耗】
【主催者】ベアトリーチェ@WILD ARMS Advanced 3rd
【主催者の目的】様々な世界の夢から想い出を吸い取り、新世界を作る
【補足】
・会場は電界25次元と呼ばれる夢の世界ですが、ここでの出来事は現実にも反映されます
・ブルーはルージュとの融合後です
・その他参戦作品
ヴァルキリープロファイル
FINAL FANTASY 8
ブレイブリーデフォルト
断章のグリム
マクロスF
47
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:41:32
そこは象牙色をした大理石で造られた、豪奢な城だった。
赤絨毯の敷かれた細長い廊下には等間隔で柱が並び、そのすべてに麗しい装飾が施されている。
白亜の壁には埋め込まれた様々な模様のステンドグラスが、硬質な無機質さを和らげていた。
荘厳と言うよりは、メルヘンチックで美しい内装だ。
けれどこの城には、拭いきれない薄気味悪さで満ち満ちていた。
見上げても天井は見えない。遥かな高みに暗闇だけが溢れかえっていて、根源的な不安を抱かせる。
ステンドグラスからは一筋の光も射し込んではこない。その先にあるのは、ノイズ交じりの真っ黒な世界だ。
城内を照らすのは、金色の燭台で揺れるか細い炎のみ。
頼りない光が照らす廊下はほの暗く、息づくものを拒絶するようだった。
だからこそ、生きている者はよく目立つ。
――相変わらずの雰囲気ね。
足を動かしながらも、ヴァージニア・マックスウェルはそう思う。
内装や造りはかなり違う。部屋の数も階層も増え、以前に来た時よりもかなり広くなっている。
けれどこの不気味さを、ヴァージニアは覚えていた。
ナイトメアキャッスル。
夢魔ベアトリーチェの居城であり、この悪夢の終着駅だ。
やがて廊下は終わる。
立ち止まったヴァージニアの前に、玉座の間へと通じる扉と、その先から漂う夢魔の気配がある。
「ようやく到着か」
隣でカズマが右手で拳を作り、左掌に叩きつける。
「ええ。この先から、ベアトリーチェの気配を感じる」
ヴァージニアは振り返った。
「本当は万全のコンディションで挑みたいけど、時間がないわ。簡単に準備を済ませたら……行くわよ」
「ここまで来たんだ。やれるだけのことをやろう」
ブルーの返答に、ヴァージニアは強く首肯する。
ここに来るまで、彼はかなりの魔力を損耗している。
まだ術は使えると本人は言っているが、無理をすれば生命が危ういだろう。
だがそれだけに、その返答は頼もしかった。
視線を動かす。
「クマも……いいわね?」
問うと、もはや見慣れた着ぐるみがびくりと震えあがった。
「ま、まだ、コトチャンが戻ってきてないクマよ……? それに、トトチャンも……」
声は震えていた。瞳は不安で濁っていた。
先ほどトトリが残した言葉がクマを苛んでいるのは、明らかだった。
けれど、ヴァージニアは彼には頷けない。
「ダメよ。立ち止まってたら、殊子が残った意味がない」
「でも……」
クマの言葉は尻すぼみになり、外には出てこない。俯くその様は、とても小さく見えた。
「あの女が簡単に終わるハズがねェ。終わりやがったら、俺が許さねェ……ッ!」
「殊子を信じよう。1時間後に追い付くって言ってだろう?」
ブルーの言葉と同時に時間を確認すると、殊子と別れてから経過した時間は30分弱だった。
だからヴァージニアは、クマの頭にそっと左手を乗せた。
「ん……分かったクマ……」
「うん、ありがとう」
その言葉だけを投げかけ、ヴァージニアは扉へと向き合った。
左手を、右腰のホルスターに差し入れる。
銃把の硬さを確かめ、握り込み、取り出す。
バントライン93R。
右手に馴染んだその銃を、左手で握り締めて。
ヴァージニアは、目の前の扉を蹴り開けた。
【ヴァージニア・マックスウェル@WILD ARMS Advanced 3rd】
[状態]:右腕使用不可
[装備]:バントライン93R@WILD ARMS Advanced 3rd、プリックリィピアEz@WILD ARMS Advanced 3rd
[道具]:基本支給品、その他支給品
【カズマ@スクライド】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、その他支給品
【クマ@ペルソナ4 ザ・ゴールデン】
[状態]:疲労(大) SP消費(中) トトリ、殊子が心配 トトリの言葉により精神不安定
[装備]:エアガイツ@FINAL FANTASY 8
[道具]:基本支給品、その他支給品
【ブルー@サガ・フロンティア】
[状態]:JP消費業(極大) 強力な術は生命力を消費する
[装備]:聖杖ミスティック・ワイザー@ヴァルキリープロファイル
[道具]:基本支給品、その他支給品
48
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:42:13
◆◆
大広間に爆音が鳴る。
火薬臭さと煙の臭いに目を顰め、強烈な耳鳴りに不快感を覚える。
常人離れした感覚もこんなときには不便だなと思いつつ、速水殊子は硬い床を駆ける。
煙の向こう、絶え間なく飛んでくる物体が見える。
稲妻形の爆弾と雪だるま形の爆弾と束ねられたダイナマイトが、纏めて飛んでくる。
「容赦ないなぁ」
爆発物の群れを前にしても、殊子の呟きには緊張感がなく、顔には軽薄な笑みが浮かんでいた。
「よっ、と」
爪先に力を込め、靴裏で床を叩く。
かつっ、という靴音は一瞬にして三種類の爆音に飲み込まれる。
熱を帯びた爆発と氷を撒き散らす炸裂と電撃の破裂が耳障りな狂騒を奏で、石造りの床を抉り取った。
三種の爆発を横目に、相手の無茶苦茶っぷりに戦慄を覚えていた。
「もう、ちょこちょこと鬱陶しいなぁ」
悔しげな声が耳鳴りの向こうから届く。可愛らしい声の主へと、殊子は視線を送った。
頬を膨らませるトトゥーリア・ヘルモルト。
その容姿はなでなでしたくなるくらいに愛らしい。だが、両手いっぱいに抱えられた大量の爆発物があまりにもミスマッチだった。
違う。
本当にミスマッチなのは、トトリが躊躇も呵責も戸惑いもなく、初めて出会ったときと変わらない様子で、殊子を殺そうとしている事実だった。
「えーいッ!」
クラフト、フラム、レヘルン、ジオストーン、地球儀。
トトリお手製のアイテムは、確実に殊子の命を奪うべく投擲される。
走り、跳び、転がって回避し、ときには不定量子の反発力場を展開してやり過ごす。
アイテムによる弾幕は、殊子を完全に拒絶しているようだった。
「初めて会ったときもちょっと拒絶され気味だったけど、ここまで酷いとちょっと傷つくにゃー」
ベアトリーチェによる殺戮の悪夢が始まり、トトリと最初に出会った時のことを思い出す。
その記憶が引き金となり、彼女と過ごした時が殊子の脳裏に浮かび上がる。
恐怖に苛まれパニックに陥っていたトトリを抱き締めた温もり。
錬金術について語っていた、楽しそうなトトリの声音。
家族のことを幸せそうに話していた、トトリの横顔。
早乙女アルトを弔ったときのトトリの涙。
舞鶴蜜の死を突き付けられた時に抱き締めてくれた、トトリの優しさ。
覚えている。
この短い間で得た、トトリとの『想い出』を、殊子は覚えている。
トトリと過ごした時間は悪いものではなかった。会えてよかったのだろうと思う。
けれど、それは殊子側の感想だった。
――私じゃなきゃ、よかったんだろうな。
思う。
もしも自分以外の誰かと、トトリが最初に出会っていれば。
たとえば、ヴァージニアやカズマと出会っていれば。
きっと、トトリは壊れなかった。
もっときちんと、トトリの大切な人の死を、正しく悲しんであげられる人が彼女の傍にいればよかったのだろう。
大切な人を何度も何度も何度も亡くしたトトリの傷を。
大好きな姉の死を目の前で見せつけられたトトリの痛みを。
誤魔化さずに癒せる人が、彼女の隣にいればよかったのだろう。
――あるいは、私がもっと早く気付けていればよかったのかな。
思う。
もしも殊子が、もっと早く世界への好意を自覚していたなら。
心に空いた欠落を埋めようとせず、向き合おうとせずに捨て置いていたから、殊子は悲しめなかった。
トトリがどれだけ悲嘆に暮れようとも、結局はどうでもいいのだと思ってしまう自分がいたのだ。
そんな出来損ないの自分のせいで、トトリの大切なものが、致命的なまでに壊れてしまったのは間違いない。
もっと早く、世界が好きだと気付いていれば。
世界は、殊子が思うほど、目覚まし<ハラハラ>時計の思い通りになりはしないのだということに、もっと気付いていれば。
――止めよう。そんな仮定をするために、私はここに残ったんじゃない。
アイテムの猛攻は止まない。
ベアトリーチェが壊れたトトリに与えた特製秘密バッグは、夢の世界にありながら、現実のトトリのアトリエにアクセスできるらしい。
今トトリは、自分のアトリエにたっぷり貯め込んだアイテムを自由に取り出せるのだ。
ならば、アイテムが尽きるまで逃げ続けるのは不可能と言っていい。
それでも、殊子には勝算がある。
この悪夢が始まってから握り締め続けてきた、一枚きりのジョーカーを、殊子は未だ隠し持っているのだ。
それを切ってしまえば、この場は簡単に乗り切れる。
49
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:42:55
けれど。
「トトリちんッ! 私の声が聴こえる? 私が誰だか、分かるッ!?」
けれど殊子は、呼びかける。
爆音に掻き消されないよう、大声でトトリに言葉を投げる。
「知ってるよ。殊子さんでしょ」
当たり前でしょ、とでも言いたげな気安さで、トトリは返答する。
「大うそつきの殊子さん。わたしを騙した殊子さん。お姉ちゃんじゃないのに、お姉ちゃんのフリをした殊子さん」
トトリの声は穏やかだった。糾弾するでもなく、激昂するでもなく、ただ事実を述べるかのように穏やかだった。
「クマさんと同じくらいに許せない、殊子さん」
そして、まるでプレゼントをねだるかのように、トトリは小首を傾げて願うのだ。
「殊子さん。早く、死んで。わたし、ベアちゃんと約束したの」
秘密バッグに手を入れ、
「みんなを殺したら、また会わせてくれるって」
トトリによく似合う可愛らしい鞄をごそごそとまさぐり、
「ジーノくんに、メルお姉ちゃんに、マークさんに、ステルクさんにミミちゃんにクーデリアさんにイクセルさんにゲラルドさんにロロナ先生に」
いつしか顔中を涙で染めて、
「お姉ちゃんにもッ! お母さんにもッ!!」
溢れ出す感情で顔を歪ませて、
「会わせてくれるって、約束したのッ!!」
隕石を束にしたかのような巨大な爆弾を、取り出す。
痛々しかった。
誰も傷つけたくないと願い、誰かの死に心から涙するトトリを知っているだけに、痛々しかった。
きっとこんな感情は、欠落を抱え世界に飽き飽きしていた殊子なら、抱きようがなかった感情だ。
「ねえ、トトリちん。ベアっちが見せるのはさ、夢なんだよ」
それでも別にいいじゃんと、そう思わなくなったのは、世界で生きていくことに意味があると、教えてもらえたからだ。
「私は、トトリちんにそんな生き方をしてほしくない」
だって。
「私は、生きているトトリちんを知っているから。ちゅーしたくなるくらいに可愛いトトリちんを、知ってしまったから」
「あなたに、そんなことを言われる筋合いなんて、ないよ」
「そうだね。私には、お説教をする資格なんてないって分かってるんだ。だからさ」
もはやトトリは治せない。彼女の願いを叶えても、致命的に壊れてしまった彼女の精神は戻らない。
治せるであろう人は、もうこの世には、一人としていない。もしもまだ、そんな人がいるのなら。
きっとトトリは、壊れていない。
「私が一人でここに残ったのは、トトリちんを説得をするためじゃないんだ」
もはや言葉は届かないから。
私はね、と前置きをして、殊子は笑うのだ。
軽薄そうに、チェシャ猫のように。
「――君に酷いことをするために、ここにいるんだよ」
本気でいるときに見せる獰猛な笑みを殊子が浮かべた瞬間、トトリは、巨大な爆弾を叫びながら投げつけた。
50
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:43:17
◆◆
地響きにも似た爆音が去り、残響が聴覚を痺れさせる。
アランヤ村の住人が全員集まってもまだまだ埋まらないほどの大広間が、焦げ臭い煙で溢れかえっていた。
けほり、とトトリは咳を漏らし、舞い上がり付着した埃を払い落す。
一級品のヒンメルシュテルンは、トトリの自信作の一つだった。
魔物の群れを一掃するためではなく、強敵一体を倒すために特性も厳選して作った一発だ。
もはや骨さえも残ってはいないだろう。
これでいい。あと四人だ。
近づいた。
大好きなみんなに会えるまで、もうちょっとだ。
――まずはクマさんを殺そう。もちろん他も殺すんだけど、クマさんは許せないから真っ先に、っと。
目に痒みを感じる。涙がこぼれてくる。
もうもうと広がる煙が沁みるせいだろうと、トトリはすぐに結論付ける。何せ、錬金術で失敗した時にも、よくあった。
それにしても痒い。痒い。痒い。
目尻に手を当て涙を拭う。
それでも、痒みは収まらない。
こんなことをしている場合じゃないと分かっている。時間はないのだ。
早くしないとと思う。
けれど、目の痒みと涙は止まってくれなくて、トトリは瞳を両手で覆う。
掌で、溢れる涙を必死に拭う。
何も見えなくなる。
視界が暗くなる。
真っ暗になる。
――いや……。
涙は止まらない。
ぐじぐじと、じくじくと、目の奥から溢れて零れていく。
――こわい……。
ひぐっ、と、喉の奥で湿っぽい吐息が詰まった。
世界が暗い。
真っ暗が怖い。
理屈はない。思考もない。何が怖いのかすら分からない。分からないから余計に怖い。
根源的な恐怖が心の底から浮かび上がってきて、弾け、トトリを掻き乱していく。
――いや、いや、いや、いや、いや。いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやッ!!
涙が止まらない。
止まらない涙を収めるには、瞳から両手を離せない。
両手からは臭いがする。
とてもいやな、臭いがする。
「――つかまえた、っと」
どこかで聞いたような声がした。
誰かの声がした。
柔らかいものが体に触れた。
温かいものが全身を包んできた。
鉄の臭いがした。けれど、いい匂いもした。
目を、開ける。
どこかで見たような顔が、すぐそばにあった。
51
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:43:45
◆◆
小さいな、と殊子は思う。
腕の中にあるこの温もりは、まだとても小さい。
こんな小さい身なんだ。あれだけの悲しみと絶望に襲われたら、潰れてしまうに決まっている。
トトリの髪に、そっと触れる。
震え、怯え、泣きじゃくるトトリの頭を、優しく撫でる。
声にならない声で喚くトトリを、抱き締める。
「ごめんね……」
殊子は謝罪する。
分かってあげられなかった過去を。
「ごめんね……」
直せなくなるまで壊れてしまったというのに、それでも涙一つ流せない現在を。
「ごめんね……」
そして、宣言通りに酷いことを行う、未来を。
殊子は、謝罪する。
トトリの柔らかい髪に触れ、撫で、温もりを感じる。生命がある。『想い出』をくれた、たましいがある。
壊してしまうのは簡単だ。少し力を加えれば、この細い身はあっさりと砕け散るだろう。
けれど、そうしたくはなかった。
だって、この子がいたから。
――私は、みっちゃんがいなくなっても、私でいられたんだ。世界を好きだって、思うことができたんだ。
「ありがとう、トトリちん」
告げる。
そして、殊子は目を閉じる。
心の中に潜り、欠落に手を伸ばす。
そこはかつて、世界があった場所。
城島鏡によって奪われた世界――虚軸<キャスト>、目覚まし<ハラハラ>時計が居座っていた場所。
触れる。
世界の残滓――殊子が握り締めてきたジョーカーに、触れる。
晶も硝子も里緒もネアも、もういない。
舞鶴蜜――大事な義妹も、もういない。
それに、もうこの身は長くない。先ほどの強力な爆弾は、殊子の身を焼き血液を垂れ流させていた。
故に、惜しくはない。
虚軸<キャスト>を奪われ、たった一度しか使えくなった力。
それは抗うことのできない、圧倒的な精神操作だ。
世界の残り滓を、引き摺りだす。
懐中時計の姿をした世界が、トトリの頭の上に浮かび上がった。
52
:
メモリーズ・ロスト
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:44:33
「トトゥーリア・ヘルモルト」
自我境界線の侵食が始まる。
それは殊子にできる、今のトトリを救う唯一の方法だった。
「君は、生まれてからずっと――」
たとえその行為が、トトリの精神を凌辱するものであったとしても。
「ずっと、ずっと、ずっと。独りぼっちで、生きてきた」
たとえその強制催眠が、トトリのたいせつな『想い出』を奪うことになるのだとしても。
「独りぼっちで、生きてきたんだ」
『想い出』に振り回され、現実を壊してしまうくらいならば。
「たいせつな人なんていなかった。大好きな人なんて、いなかった」
一度捨ててしまった方が、救われると思えた。
「だから――」
この催眠は、危険だと分かっていた。
大切な人がいないということは、大好きな人がいないということは、トトリを、かつての殊子にしてしまいかねない。
目覚まし<ハラハラ>時計に出会う前の殊子のように、世界を憎み呪い忌み嫌ってしまうかもしれない。
けれど。
「だから、君は、何もなくしてはいないんだ。なくしてなんか、いないんだよ――」
殊子は、思うのだ。
トトリなら。
悪夢の中で出会ったのに、こんなに綺麗な心を持つ女の子なら。
きっと大丈夫だと、殊子は思うのだ。
きっとこれから、たいせつな『想い出』を作っていけると、そう思うのだ。
ぽん、と。
懐中時計が弾けて。
トトリが、嘘のように泣き止んで。
速水殊子の身は、どさりと崩れ落ちたのだった。
――ごめんよ、みんな。私、追いつけそうにないや。
眼を閉じたまま、仰向けに倒れ込んだ殊子が最期に感じたのは。
頬に落ちる、涙の感触だった。
【速水殊子@レジンキャストミルク 死亡】
【トトゥーリア・ヘルモルト@トトリのアトリエ】
[状態]:記憶改変。独りぼっちでいきてきた
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ベアトリーチェ特製秘密バッグ(トトリが想い出を失ったため、アトリエに接続ができなくなった)
53
:
◆6XQgLQ9rNg
:2012/12/15(土) 23:47:58
以上、298話投下終了です。
レジンキャストミルクの専門用語が出てきてしまい、恐縮ですが……
どこまでキャラに触れたりフラグを昇華したりとかの塩梅が難しいですねー。
54
:
名無しロワイアル
:2012/12/16(日) 00:05:26
う、うおぉ……かっこいい
レジンキャストミルクの元ネタ知らないのが悔やまれますが、十分に状況が理解できる
あと強制催眠で精神安定させるために「独りで生きてきた」の凄まじさ……
これは残り297話も読みたくなる…
クマ何したんだろうなあ……
55
:
名無しロワイアル
:2012/12/16(日) 04:56:04
これって、一度に三話投下しなくてもいいんか
56
:
FLASHの人
:2012/12/16(日) 15:19:36
>>55
いいです
その場合は何ロワか判断できるようにだけお願いします
トリだけだとどの続きか一瞬わからなくなりますので
投下前に【●●ロワ】の2話目投下します
くらいでいいと思います
そろそろまとめ作るかしら
57
:
名無しロワイアル
:2012/12/16(日) 20:10:47
おわあ…これはオレのハードル上がりっぱなしやでえ…
58
:
◆nucQuP5m3Y
:2012/12/18(火) 03:19:25
上でテンプレだけ投下した「リ・サンデーロワ」の298話を投下します
59
:
reserve hunt
◆nucQuP5m3Y
:2012/12/18(火) 03:21:02
そこにあったのは扉だ。
貴族の館にあるように華美で、銀行の金庫にあるように重厚で、巨人の城にあるように巨大で……そして、舞台の書き割りのように嘘臭い扉だ。
しかし、逆にその嘘臭さが、その扉の役割を際立たせている。
これはまさに舞台装置。開ければ終局へと向かう一つの切欠。
作られた終わりへの始まり――
扉の前に佇む人影のうちの一人、蝉は明らかに苛立っていた。
「扉があるなら開けるしかねえだろ。割らずに卵は食えねぇんだ」
その言葉とは裏腹に、彼は率先して扉に手をかけるようなことはしない。
自分達の誰かが開けてくれるのを待っているようだった。
あわよくば、そいつが自分の苛立ちにも答えを与えてくれるのではないか。
死んでしまった相棒の岩西の代わりに、この漠然とした気持ちに指向性を持たせてくれるのではないかと期待していた。
「だいたい……っんだよこれは!」
先ほどの言葉に誰も答えないことに更なる苛立ちを募らせ、手に持った武器に向かって悪態をつく。
彼の手にあるのは一本の果物ナイフだ。
このゲームが行われている島、その島に立ち並ぶ廃墟のひとつから見つけ出して、ずっとバッグにしまっていたものだ。
ナイフ使いの名手である蝉にとっては十分に凶器足りうるものではあるが、あくまでそれは一般人相手の話。
これではこれから挑もうとしている相手はおろか、ここにいる残り五人相手にすら心許ない、そんな攻撃力の装備品である。
「おかしいだろ!こんな、こんなイカれたゲームの、最後の最後まで残ったってのか?俺が?果物ナイフ一本でか?」
「だからそれは……」
その名の如く徐々に大きく響いてきた蝉の声に、思わず声をかけたのは黒兎春瓶だ。
「わーってるよ!」
しかし春瓶の言葉を遮るように蝉はさらに鳴く。
「消えてるんだろ!記憶も!人も!武器も!わかってんだよ!でもよ!」
「納得は……難しいわよね」
呟いたのはハクアだ。
彼女もまた、これから戦う相手を考えたら全く使い物にならないであろう、小型の爆弾一つを手の中で弄んでいる。
「んじゃ、どうするんだ?」
春菊の問いかけに答えるものはない。
ここまで来て、止めるという選択肢はない。
それなのに、ありはしないその選択肢に彼らがずっとカーソルを合わせ続けてしまっているのはひとえに戦力不足によるものだった。
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