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あと3話で完結ロワスレ
35
:
傷あとをたどれば - A Side 最愛の友 -
◆eVB8arcato
:2012/12/13(木) 21:51:36
階段を登る。
今にも息絶えそうな一人の少年を背負い、一歩一歩を踏みしめていく。
体を造る全ての要素が悲鳴を上げながら、彼の三本の足を止めようとする。
だが、それでも彼は階段を登ることをやめない。
意地か、根性か、気合か、そのどれかは最早わからない。
ただ彼は足を動かし、一段一段積み上げられた階段を乗り越えていく。
「おい」
異星人、トージャムの小さな背中に背負われた少年がぽつりと呟く。
その声は弱弱しく、今にも消えてしまいそうである。
「降ろせ、もういい」
全てを滅ぼす史上最悪の存在、魔王ジェイド。
自分が焼き殺した壮年の男、バウドから聞いた話よりも何倍も何倍も恐ろしい姿の存在。
それはクノイチの少女シノの体を依り代とし、自分達の目の前に現れた。
彼女が妹のように可愛がっていたイヅナの命を始めとし、ザッシュ、ユリウス、マイケルの命と自分の体力の殆どを奪い去って行った。
もし、アンディが影を手にすることに失敗し、少しでも遅れていれば自分もトージャムも命を落としていただろう。
彼の手によって、自分とトージャムは「生き延びる」事が出来た。
少なくとも、形の上では。
「死人同然の人間に世話焼いて、生きてるやつがくたばるなんて、バカらしい話があるかよ」
もう残りどれだけかわからない体力を使いながら、言葉を続ける。
捨て置けと、そしてお前だけでも先に進めと。
少しの沈黙を置いてから、異星人は上りながら口を開く。
「俺はさ、自分の家で大好きなファッジサンデーを食べながら、アールと一緒にバカやってるだけで良かったんだよ」
その言葉は、誰に向けられたものでもなく。
「友達ってのは何時も傍に居て、何気なく日々接していても、大事さってのは分かんないモンなんだよな」
ただ、ただ紡がれていく。
「でもさ、居なくなるとすげー寂しいし、辛いし、耐えられないんだよ」
この場で失った多くのモノを忘れないように。
「ボロボロボロボロと皆死んで行ってさ、残されたやつの事なんて微塵も考えなくってさ」
一人一人、思い返していく。
この殺し合いに巻き込まれてから最初に出会った、かなりやかましいブーメランの男を。
華麗なダンスで皆を楽しくさせてくれた、白いタキシードの男を。
どういうわけか空を飛ぶ、不思議なライスボールの事を。
何時も明るく笑いながら接してくれていた、兎のような生き物の事を。
そして目の前でゴミクズの様に死んでいった、大親友の事を。
「決めたんだ」
異星人が、先ほどとは違う決意を込めた声を出す。
「もう、これ以上友達を無くさない」
その時に踏み出した一歩は強く。
「ミルルンの友達は、俺の友達だ」
しっかりと、背中の少年へ伝えていく。
「だから、お前は俺の友達だ」
これ以上失いたくない存在がある、今それを背負っている。
「友達置いて、どっか行くやつがいるかよ」
だから彼は進む、足がどれだけ悲鳴を上げようと、彼は進む。
「……勝手にしろ、死んでもしらねーぞ」
――――キミとミルルンは、これからず〜っと友達だよ!
「友達」なんて居ない、だから全てを燃やし尽くすと決めたはずの少年は。
そんな事を言いながら自分に近寄ってきた、兎のような生き物の事を思い出し。
静かに、涙を零した。
そして異星人の足は、大広間へと辿り着く。
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