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あと3話で完結ロワスレ

49メモリーズ・ロスト ◆6XQgLQ9rNg:2012/12/15(土) 23:42:55
 けれど。
「トトリちんッ! 私の声が聴こえる? 私が誰だか、分かるッ!?」
 けれど殊子は、呼びかける。
 爆音に掻き消されないよう、大声でトトリに言葉を投げる。
「知ってるよ。殊子さんでしょ」
 当たり前でしょ、とでも言いたげな気安さで、トトリは返答する。
「大うそつきの殊子さん。わたしを騙した殊子さん。お姉ちゃんじゃないのに、お姉ちゃんのフリをした殊子さん」
 トトリの声は穏やかだった。糾弾するでもなく、激昂するでもなく、ただ事実を述べるかのように穏やかだった。
「クマさんと同じくらいに許せない、殊子さん」
 そして、まるでプレゼントをねだるかのように、トトリは小首を傾げて願うのだ。
「殊子さん。早く、死んで。わたし、ベアちゃんと約束したの」
 秘密バッグに手を入れ、
「みんなを殺したら、また会わせてくれるって」
 トトリによく似合う可愛らしい鞄をごそごそとまさぐり、
「ジーノくんに、メルお姉ちゃんに、マークさんに、ステルクさんにミミちゃんにクーデリアさんにイクセルさんにゲラルドさんにロロナ先生に」
 いつしか顔中を涙で染めて、
「お姉ちゃんにもッ! お母さんにもッ!!」
 溢れ出す感情で顔を歪ませて、
「会わせてくれるって、約束したのッ!!」
 隕石を束にしたかのような巨大な爆弾を、取り出す。 
 痛々しかった。
 誰も傷つけたくないと願い、誰かの死に心から涙するトトリを知っているだけに、痛々しかった。
 きっとこんな感情は、欠落を抱え世界に飽き飽きしていた殊子なら、抱きようがなかった感情だ。
「ねえ、トトリちん。ベアっちが見せるのはさ、夢なんだよ」
 それでも別にいいじゃんと、そう思わなくなったのは、世界で生きていくことに意味があると、教えてもらえたからだ。
「私は、トトリちんにそんな生き方をしてほしくない」
 だって。
「私は、生きているトトリちんを知っているから。ちゅーしたくなるくらいに可愛いトトリちんを、知ってしまったから」
「あなたに、そんなことを言われる筋合いなんて、ないよ」
「そうだね。私には、お説教をする資格なんてないって分かってるんだ。だからさ」
 もはやトトリは治せない。彼女の願いを叶えても、致命的に壊れてしまった彼女の精神は戻らない。
 治せるであろう人は、もうこの世には、一人としていない。もしもまだ、そんな人がいるのなら。
 きっとトトリは、壊れていない。
「私が一人でここに残ったのは、トトリちんを説得をするためじゃないんだ」
 もはや言葉は届かないから。
 私はね、と前置きをして、殊子は笑うのだ。
 軽薄そうに、チェシャ猫のように。
「――君に酷いことをするために、ここにいるんだよ」
 本気でいるときに見せる獰猛な笑みを殊子が浮かべた瞬間、トトリは、巨大な爆弾を叫びながら投げつけた。


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