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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】
1
:
名無しさん
:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」
など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。
・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。
83
:
「¥1」
◆uIwU8V3zEM
:2005/07/20(水) 14:35:48
…八木が猛スピードで去ってから数分後のこと、
静まりかえった廊下に人影が見えた。
今日の番組にも出演していた関西の若手ピン芸人、中山功太である。
彼はすたすたと件の自販機に向かい歩いていくと、迷いなく取り出し口に手を突っ込んだ。
そこに先ほど一円玉が「購入」した缶コーヒーがあることを、知っていて当然だという風に。
「あー、やっぱりまだ往復はでけへんか。」
買いに行かすことはできても、取りに行かなあかんのやったら意味ないねんけどなあ。
彼はそう独りごちながら、缶を開けてコーヒーを飲み出した。
「…ぬるなってるし。」
文句を言いつつものどが渇いていたのかすぐ飲み干すと、空き缶をゴミ箱に投げ入れる。
…今日この後暇やしなあ、誰か誘って飯でも行こかなあ。
まさか、今日一緒やった人らの中なら黒の奴おらへんやろしな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、中山は楽屋へと帰って行く。
彼のポケットの中に、じゃらじゃらと音を立てる小銭と、
白い貝の埋まったいびつな小石が、ひとつ。
彼はまだ知る由もない。
不用意に石の能力を使ったことで今日の共演者に狙われるきっかけを作ってしまったことと、
その所為でこれから自分と、とある芸人仲間が厄介事に巻き込まれることを。
手に入れたばかりの石と踏み込んだばかりの戦いは、確実に彼を非日常の世界に導き始めていた。
とりあえず、石を知らない若手の間で今日の出来事が微妙な怪談話となって出回ることは、また別の話。
以上です。ローカルネタがちらほらあってすいません…。
ご指摘、添削等あればお願いします。
84
:
名無しさん
:2005/07/20(水) 23:44:23
乙です!
面白かったです。番組がなんなのかはわかりませんが(田舎なので)
八木が面白すぎです(笑)
85
:
名無しさん
:2005/08/09(火) 13:24:19
作成依頼スレ4とは、関係ないかもしれませんが、(…少し関係あるかな?)
ケンドーコバヤシの、石との出会い編を考えてみたのですが、
添削御願いしたいので投下しても宜しいでしょうか?
86
:
色々不安です…
◆XksB4AwhxU
:2005/08/09(火) 16:16:12
>>85
ですが、
試しに投下してみないと解らないですよね。
時間があるので投下してみます。
「絨毯雲」
やけに風の強い昼だった。
軽快な足取りで、パチンコ屋から出てきた男は満面の笑みで財布を見つめた。
いつもはぺちゃんこになっている筈のその財布は、やけに大きく膨らんでいる。
たまたま座った台が良かったのか、珍しく早起きして開店前から並んでみたのが良かったのか、普段とは比べものにならないくらい当たったようだ。
ムフ、と含み笑いをしてその財布をポケットに仕舞い直すと、横断歩道で立ち止まった。
信号機は、青が点滅していた。
いつもの彼なら点滅くらいでは立ち止まらないが、ふと何かを思いだしたのだ。
こう…当たりすぎるのも、何やな…
最近の、身の回りの違和感には何となく気付いていた。
パチンコの調子が良いとき、悪い事が起こるのは昨今の彼の回りでは増えていたからだ。
彼−小林友治は大きく一度溜息をつき、又青になった信号を見て横断歩道を渡った。
ふと、軽く見上げた空には、小林友治の無意識のうちの不安を纏うように灰色の雲が満ちていた。
87
:
色々不安です…
◆XksB4AwhxU
:2005/08/09(火) 16:36:23
>>86
続き
近場までバイクを使うほど横着者ではない彼だが、今日だけはバイクを使わなかったことを少しだけ後悔した。
いつもなら素通りしてしまうような公園横の通り。
なにやら前の方で子供が騒いでいる。
気になってはいたが、いつもバイクに乗っている時のように我関せずに素通りしようと思った。
目の前を通るまでは。
「やめとけや」
また、自分の意識とは関係なく、その子供の集団のなかのリーダーといえる一人の子供の肩を叩いていた。
子供ははっと気付くと回りの子供を引き連れ逃げていった。
足元を見ると、傷ついたランドセルが落ちていた。
柄にもなく懐かしさを感じながら傷ついた蘭だセルを持ち上げる。
その横に、正にランドセルに背負われているのか、と言うくらい、小さな少年が蹲っていた。
「…お前も、やられっぱなしやったアカンで」
体に付いた砂をはたいて、頭を撫でると少年は小林友治を見上げた。
なんや?
口には出さずに目で返すと、少年はポケットから何かを取り出した。
「僕これを守ってたんだ」
抑揚のない、形式的な言葉を放った少年は、取り出したそれを小林の掌に乗せた。
「おい、これ…」
全て聞き終える前に少年は今までのその少年では無いかのように、素早く立ち去った。
88
:
色々不安です…
◆XksB4AwhxU
:2005/08/09(火) 16:46:12
>>87
続き
一人、取り残された小林友治は、掌の石を見た。
専門の店に出せば、もしかしたらそれなりの値が出るかも知れないその石は何故か、小林友治の手にしっくりときた。
その石を一度、又握りしめる。
…何かを思いだした。
その”何か”が解ったような気がした。
最近、楽屋や廊下から漏れ聞こえる”石”を主語にした会話。
その会話をしている人達の尋常とは言えない雰囲気。
そして何となくだが、その先のことがこれからどんどん
解ってくるような予感を、小林は感じていた。
89
:
色々不安です…
◆XksB4AwhxU
:2005/08/09(火) 16:52:31
>>88
続き
石を財布の中に仕舞ってとりあえず、
今日は帰ろうと思った。
今度はさほど気にもしていない様子で溜息を短くつき、煙草に火を点けた。
そして、遠い目で先刻よりいっそう黒さを増した空を見た。
その表情は、この先小林友治が突き当たる大きな苦悩を予感しているようだった。
…以上なのですが、
じつはコバ氏の石の力をあまりかんがえていませんorz
まだ使う前の話でしたもので…
どうでしょうか?
90
:
名無しさん
:2005/08/09(火) 17:23:13
いいです乙です!
台詞とか雰囲気とかしっかりケンコバさんらしくて、あと文体が好きです。
これから陣内さんと絡めていくんでしょうか?
91
:
◆XksB4AwhxU
:2005/08/10(水) 01:55:43
>>90
ありがとう御座います。
陣内智則との絡みは進行スレで相談していきたいなぁと考えています。
もし他で陣内智則が暴走して其れを誰かが止めて…と言う話を考えている肩が居ないので有れば、小林友治にそれをしてもらいたいなぁ、と自分は考えていたので。
ただそんな話を自分が書けるのかに多大な不安がありますが
92
:
名無しさん
:2005/08/10(水) 05:41:11
関西圏以外はあまりコバを見る機会がなく詳しい情報がないので、
どこかに「小林友治ことケンドーコバヤシ」みたいな文を入れてもらえると助かる。
重箱隅スマソ
93
:
名無しさん
:2005/08/10(水) 23:27:17
すごくいいと思います
94
:
「¥1000」
◆uIwU8V3zEM
:2005/08/14(日) 11:32:12
>>81
の続きというか、本編投下します。
ちょっと長くなるかと思います。
舞台終了後の楽屋。
仕事を終え満足げな若手芸人たちがちらほらと帰りはじめる中、
中山功太はパイプ椅子に腰掛け、じっとてのひらに収まった小ぶりの石を見ていた。
その石は一見すると路傍に転がっている石ころとあまり変わりないようなものだったが、
中山がそれを手の中で転がすと、白い二枚貝の貝殻が埋まっているのが見えた。
持ち上げて蛍光灯の光にかざしたり、貝と石の境目の部分を指でつついてみたり、
そう子供のようなしぐさを繰り返す中山の目は、妙にぼんやりしていた。
「あれ、まだ帰んないの?」
その声にはっと顔を上げると、既に帰り支度を済ませたネゴシックスこと根来川が立っていた。
「ん…ああ、一緒に帰ろか?」
中山は少し遅れて、やや逸れた返答を返した。
「え、っていうか飯行かない?」
根来川は一瞬きょとんとしたものの、すぐにそう提案する。
「この前いい焼き肉の店見つけたって言ってなかった?
そこ行こうよ。安いんでしょ?」
「ええな、行こか。」
そう言って立ち上がると自分の鞄を取り、ズボンのポケットに石を突っ込んだ。
「あれ、何それ?」
「…え?ああ、これ?」
その不自然な物体に気づいた根来川が声を掛ける。
中山は石をポケットから出すと、はい、と根来川に渡した。
「…石?」
「なんちゃら言う貝の化石。こないだ露天商で見っけた。」
「へえ、そんなのもあるんだ。」
根来川は石を手の中で転がしてまじまじと見ている。
「…そこな、ちっちゃいババアがやっとったんやけど。」
「うん」
「売っとんのなんや石ばっかで、おもろいな思て見てたらオレにこれ買え買え言うて、
そんでオレも結構気に入ったし安うしてくれたから、置物代わりにそれ買うたんやけど…」
そこで中山は一呼吸置いた。
中山の様子に、根来川は視線を石から中山に移す。
「…その石、変やねん」
その言葉に根来川は、不思議そうに目を瞬かせた。
「…変?」
「そう」
「…どんな風に?」
「……笑わん?」
「笑わん笑わん」
「うそーありえへーんとか言わん?」
「言わない言わない」
「…絶対?」
「うん、絶対。」
95
:
「¥1000」
◆uIwU8V3zEM
:2005/08/14(日) 11:33:59
その言葉に中山はやっと「誰にも言わんといてな」という前置きつきで話し出した。
根来川の目つきが真剣になる。
「……こないだな、その石な、」
「うん」
「ピカって光って、五円玉浮かしてん」
「ウソォ!!?」
根来川はそう大仰にも見えるリアクションを返すと、手中の石と中山を訝しげに見比べた。
一方の中山は、「言わへんて言うたやん…」とぶつぶつ言っている。
「…ごめん、でも、ありえんない…?」
「ありえへんも禁止ー。」
「いや、でもそうだって」
なおも訝る根来川に文句を言う中山。
そのやりとりをもう少し続けた後、中山がため息をついた。
「ほんまやって、見たんやから。」
「…五円玉浮くとこ?」
「うん。石いじっとったら光って、たまたま机にあった五円玉、浮いてん」
「………ほんと?」
「ホント。」
「…うそお」
「うそちゃうて。」
その応酬も何度か続き、中山は焦れたように頭を掻いた。
「……そんなの、あるの?」
「…ある…んちゃう?あったし。」
そういうと、二人は黙り込んでしまった。
しばらくの沈黙の後で、根来川が口を開いた。
「…その売っとったおばさんのとこ…行った?」
「うん。行ったんやけど、もうその公園にはおらんかった。」
またも少々の沈黙。
手持ち無沙汰そうな根来川は、また石を観察しはじめた。
「…その五円玉どこ行ったの」
石を見ながら言う。
「オレがパニクっとう間に消えた。」
「消えた?」
「…消えた。」
勘ぐるような根来川の目つきに、中山はまたため息を吐く。
「信じてくれへんのー?」
お前やから言ったのに。
特に根来川からの催促があったわけでもないのだが、中山はそう言ってむくれてみせた。
「いや、だってそんなの…」
その反論は、途中で途切れた。
96
:
「¥1000」
◆uIwU8V3zEM
:2005/08/14(日) 11:42:50
…バタンッ!
そう大きな音を立てて、ドアが壁に打ち付けられるように開いた。
それと同時に、空を切るように振るわれた鞭の、ビシッという短い音が響く。
「…無防備すぎやで」
その台詞と共に、男が一人入ってくる。
「へ…?」
根来川は間の抜けた声を上げ、きょとんとした目で男を見つめた。
よく見知った顔。確か、今日の舞台には出ていなかった、筈。
「…っ、畜生」
やっぱり来るんか。
途端、中山の顔つきが変わる。
半ばやけくそのような、戦いの顔。
まだ状況のつかめていない根来川は「え?え?」と二人を見比べた。
がらんと広い室内には中山と根来川、それと男の三人だけが立っている。
「アカンよ、こんな所で石の話なんかしたら」
男がじりじりと、中山と根来川に向かって進み出ていく。
その異様な雰囲気に、思わず逃げるように椅子から離れ後ずさる二人。
だが、すぐ壁際に追い込まれてしまう。
男は口角を意地悪く上げると、ほんの少しだけ悲しそうな目をした。
しかしその色は一瞬で消え、真っ黒い底知れぬ目に変わる。
「えっ…」
根来川はその一瞬の色に気づいた。
「まだ、あんま知らへんねんな。気ぃつけた方がええよ。」
男がその雰囲気に不似合いな助言を皮肉げに呟く。
「…ネゴ、石、貸して」
「えっ、あ、うん」
中山はそれに舌打ちすると、隣の根来川にやっと聞こえるような声でそう伝え手の平を向ける。
この状況に混乱しているものの、その言葉に条件反射的に石を渡そうとする根来川。
男はそんな動作を見逃さなかった。
「狙われるから」
オレみたいなんに。
そう言い終えるか否か、男が黒い光と共に手をかざす。
「…逃げえ!ネゴ!!」
中山が思わず叫んだ。
男の手から伸びる黒い鞭が、根来川にまっすぐ向かっていく。
…黒い長い、人に牙を剥く蛇のように。
一旦ここまでです。
ネゴさんの言葉とか不安な所があるので、添削お願いします。
97
:
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:38:40
前にヒロシの話を投下した者です。大分推敲したんで再&続き投下します。
〔〔黄昏の翠玉〕〕
薄暗い路地裏に、妙な音楽が流れている。一人佇む男が携帯を操作し、その音を止めた。
男――ヒロシは、顔を上げて誰も居ないことを確認し、ため息をついた。
足元には黒の若手達が倒れていた。彼等の目にもう戦意はなく、寧ろ何処か悲しげに見えた。
手の中の石を見つめる。
少し前この石を拾った――それが発端だった。
98
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:39:50
「黒に入りませんか?」
ある日、『黒のユニット』と名乗る若手(名前も知らない男だった)に呼び出された。
「…どうして」
「中立でいたってどうしようもないでしょう。どっちかに付いた方が楽ですよ?」
男は笑みを浮かべ、石を手の中で転がしながら言う。
ポケットの中の石が、熱くなった気がした。ヒロシは、それを握りしめながら昨日の事を思い出していた。
コツン。
「……ん?」
道を歩いていたら靴に何かが当たった。何だろう?と下を見ると、綺麗な石が転がっていた。
(宝石?)
拾って眺めてみると淡い黄緑色が煌めいた。石が手に馴染むような妙な感覚がした。
ふと、ある考えが浮かんだ。ひょっとして、これ、噂の…
(あの『石』か?)
99
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:41:27
「まさか、なぁ」
そう呟いてちょっと迷って――石をポケットに入れ、歩き出した。
――予感は的中したようだ。
『石』のことは噂で知った。最初は、正直冗談だと思った。
だが、『石』にまつわる噂(あの部屋で誰と誰が戦ったらしい、だの、石が汚れてる奴は危険らしい、だの)が耳に入ってくるようになり――次第に、あれは本当の話なのかと思い始めた。
今、男の持つ、黒く妖しく光る石を見て確信した。あれは本当の話だったのだ、と。
石を見つめ、男は笑っている。
「石はこんなに素晴らしい力を与えてくれるのに、白はこれを封印してしまう…もったいないと思いません?」
陶酔したような表情。
「貴方だって力が欲しいでしょう?損はありませんよ、こっちに」「嫌です」
男の言葉を遮って言い放った。そのままお互い睨み合う。
男は笑みを崩さない。
100
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:42:17
『白のユニット』と『黒のユニット』の噂を聞いた時、もし『石』の争い(本当だったらの話だが)に巻き込まれたら――どっちに付くべきだろうと少し考えたことがある。
どっちに付いてもややこしそうだから、中立がいいなと思った。今もそう思っている。
「なら、力づくで行きますよ」
男が笑いながら言った。
と同時に、男の手から糸が何本も出て、辺りに広がる。
「なっ!?」驚いて周りを見る。
「あぁ、びっくりしました?」
俺の能力ですよ、と男が笑う。糸が迫ってくる。
どうすればいい?
ヒロシは内心焦っていた。
糸が腕に絡み付く。降りほどく。
101
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:43:07
(まだ石の力にも目覚めてないのに)―どう戦えと?
もう一度絡み付いてくる。今度は払ってもほどけない。
この石を渡して見逃してもらうか?どうにかして戦うべきか?
…降伏した方が、
糸が体中に巻き付き、あっという間に取り押さえられた。
――とっさに、ポケットの中の石を手の中に握りしめた。
いつもここからの菊地は苛立っていた。上に与えられた指令が原因だった。
どうして俺にヒロシの監視を命じるんだ、と。
この人と自分の相方・山田が仲がいいことくらい、上だって知っているだろうに。
102
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:44:05
…いや、知っているからこそ、か。
山田にバレたら面倒臭いことになるだろう。彼の友人が襲われているのを、黙って見ているのだから。それは避けたい。
それに、もしも、ヒロシが山田と一緒にいる時に黒に襲われて、万が一、敗れてしまったら。
自分に与えられた命令は監視だ。山田を助けようとしても、それは上の命令に逆らった事になる。
牽制のつもりなのか。俺に『裏切るな』と言っているのだろうか。苛立ちが増す。持て遊びやがって。
ふと見ると、ヒロシが取り押さえられていた。冷ややかな目でそれを眺める。
103
:
黄昏の翠玉
◆jReFkq.CTY
:2005/08/21(日) 23:50:50
あの若手は単純な奴だが、あの調子だと心配はないだろう。…うっかり、殺しでもしない限り。
その場合、あのシナリオライターが先に止めている筈だから、心配は無いと思うが。
だが、この任務が解せない。黒に入れるだけなら、自分の監視など必要無いのに。
まぁ何か考えがあるのだろうと思い、監視に集中することにした。
今日はここまでです。長くてすいません(;-Д-)
何かミスがあったら教えて下さい…m(_ _)m
あと、山田さんとヒロシさんが何て呼びあってるか知ってたら教えて下さい…。
104
:
◆jReFkq.CTY
:2005/08/22(月) 00:02:08
忘れてたΣ(´Д`)
男の能力:手から糸を出す。何本も出したり、操ることも可能。
糸が多く太く長い程、体力を消耗する。力を解除すると、糸は消える。
大量スレ消費、すみませんでした…orz
105
:
名無しさん
:2005/08/23(火) 13:05:54
乙。続きが気になる…
106
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:04:25
廃棄小説スレにいた者です。こっちに続きを載せる事にしました。
「な…何これ…」
大木は首を傾げた。
紙には見知らぬ横文字が殴り書きで書かれてあった。指でなぞりながら一字一字ゆっくり読んでいく。
「うー…汚くて読めねえよ…えーっと…せ、ら、ふぃ、な、い、と…“セラフィナイト”…?意味わかんね」
何となく可愛らしい響きの、聞いたこと無いようでどこか聞いたことがある名前。宝石か何かの名前なのだろうか。
何にせよ少し声に出して読むのが恥ずかしい。
言い終わった途端、大木の目の前に転がっていた石が緑色の光を放ち始めた。
石を拾いかけていた男達はそのまばゆい光に目が眩み、石を取り落とす。
石の光が消えると同時に、ひゅるるる…という風の音がして、木の葉がくるくると舞う。
そして、大木の背後から明るい声がした。
「堀内ケン、あ、参上〜っ!しゃきーん!!」
3人の視線が、一点に集中する。
茶髪の男―――ネプチューン堀内健の姿が、そこにあった。
「え〜何何?もうピンチになっちまったワケ?だっらしねーなあ!」
「…はあ、すみません」
堀内は大木の腕を引っ張り、身体を起こさせた。落ちているリュックも拾ってやる。
「じゃあ、ちゃっちゃと終わらせよーぜ。この後収録なんだよ。泰造と潤ちゃん待たしてっからさぁ」
くるりと男達の方へと向き直り、小馬鹿にしたような口調で挑発する。
そしてまんまとその挑発に乗った血気盛んな若手は、相方と思われる男の制止を振り切り、目の前の大物先輩に向けてその赤い光線を放った。
107
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:05:30
常人より遙かに運動神経の良い堀内は身体を器用に折り曲げて光線を交わす。だがその光線は大木のときと同じようにぐにゃりと反転し、再び堀内に向かって襲いかかってきた。
それに気付かない堀内に大木が声を荒げる。
「ちょ、堀内さん、後ろ!」
「お、何ボンス。“志村後ろ!”みたいなこと言っちゃって。……ありゃ」
堀内の唇が「やべっ」と動いたのを大木ははっきりと見た。
「“やばい”ってアンタ…」
その瞬間、真っ赤な光が堀内を包み込んだ。
あまりにもあっけなさ過ぎる展開に、大木はもちろん、光線を放った男も目を丸くしている。だが直ぐにそれは笑みに変わった。
「驚かせやがって!やっぱり堀内さんは原田さん達が居ないとてんで使えませんね!」
「何の話してんの〜?俺にも教えてくれねえ?」
「えっ…」
背後に人の気配を感じた時には、もうすでに堀内が小泣き爺の如く男の背中に負ぶさるようにのしかかっていた。
隣では相方が口を開けて固まったまま突っ立っている。
男は堀内の重さによろけてうつ伏せに倒れ込んだ。堀内は男の頭をこんこんと叩く。
「良いね〜その台詞。久しぶりに本気で頭に来たかもよ?」
段々と声が低くなってくる。どうやら本気で怒ってしまったようだ。
「こ、の…!」
相方の男が木材を横に振り回し、堀内の頭を狙った。確実に避けることの出来ない間合いだった。だが、
「くそっ……また…!?」
振り切った木材は宙を切った。同時に、堀内に乗っかられていた男の背が急にふっ、と軽くなる。
「何だよ!何が起こったんだ!」
慌てて男が起きあがり、相方に詰め寄った。
「消えたんだよ…一瞬で」
「消えたって…」
「まるで…風みたいに、ふわっと…」
108
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:06:38
顔を青くして会話をする男達を、大木は少し離れたブロック塀から覗き込んでいた。
今までくりぃむしちゅーや川島が言っていたことは、ただの冗談だと思っていたのだが。
目の前でこんな光景を見せつけられてしまっては、認めざるを得なくなってしまった。
「つーか堀内さん、どこ行ったんだ?」
ぽつりと呟く。
すると、背後からひゅるるる…と緩やかな旋風が巻き起こり、その中央からふわりと音もなく堀内が現れた。
それに気付かない大木にそろそろと近寄り、思い切り肩を叩いてやる。
「う、うわッ…」
心臓が飛び上がり無意識に叫び声が出る。堀内は自分と大木の口元に人差し指を当て、笑いを堪えながら(しーっ)と言った。
「くーっ、どう?かっけぇだろ俺!忍者みてーだろ!」
「忍者って言うよりお化けですね」
「まあとにかく!」
堀内は大木の眼前に手を突き出す。
「お前に怪我させた奴らを許すわけにはいかねー。俺も何か馬鹿にされたし。一発くらい殴っても文句言われねーだろ」
「でもあいつのビームみたいなの追いかけてくるんですよ?」
大木の言葉を無視してぱきぱきと肩を鳴らし、
「さあ、駆け出し若手君の前座は終了でーす。そろそろ本番行っちゃいましょー、3秒前〜、2、1…」
口元に手を当て、芝居がかった口調で聞こえよがしに叫ぶ。
ゼロ。
そう言ったと同時に堀内の身体に一瞬、テレビがぶれた時のように青黒っぽい影が掛かる。
そして一秒も経たない内に姿が完全に消えた。
「いくら追いかけて来るビームでもさぁ、当たんなかったら意味ねぇよな〜」
わざと遠くに堀内が現れると男が光線を放つ。
光線はしつこく堀内を追いかけ回すが毎回ぎりぎりの所で堀内は消え、倉庫の屋根の上など様々な場所に姿を出す。
109
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:07:49
「あー疲れた。そろそろ終わりにすっか。…っとその前に、痛い目に会ってもらうぜ」
「えっ…うわあ!」
「ボンスの仇、覚悟!」
あろう事か男達の頭上に現れた堀内は、重力に任せて二人の身体をどすんっと地面に叩き伏せた。
「ごめーん、痛かった?不意打ちには注意しねえと」
けたけた笑いながら、気絶して起きあがれない男達の上から一瞬で大木の隣へ移動する。
「…瞬間移動?」
大木が言った。
「そっ。もう気付いてると思うけど、これ全部石の力だから」
「堀内さんの瞬間移動も、あの若手の光線も?…じゃあ俺は…」
「お前のはそのー…あれだ。“呼び寄せ”ってやつ。お前紙読んだろ?セラフィナイトって。俺の石の名前だよ。“天使のお守り”だって。かーいいだろ」
堀内は鼻の下を擦りながら胸を張った。
少し違和感はあるが、まさに「永遠の中2」の彼にはうってつけの石かもしれない。
「魔法みたいですね…」
「マホー?そんな綺麗なもんじゃねーって。まあ詳しいことはそのうち話していくから」
すると、大木の石が光り始めた。
「え、なんか光ってますよ?」
「あー残念、時間切れだ。じゃあ俺、泰造と潤ちゃんのとこ戻るから。シュワッチ!」
石がぱっと強く光ると、堀内の姿も完全に消えた。辺りを見渡してみたが、堀内の声は聞こえない。今度は瞬間移動したわけでは無いようだ。
「…ああ〜何か分かんないけど、これから大変そう…」
大木は夕焼けの空を見上げて、ふーっと溜気を付くのだった。
ばたばたという足音と共に、楽屋のドアが勢いよく開けられる。
「健!お前どこ行っとったんや!」
「俺ずっと此処にいたよ」
「もう本番はじまっとるんやぞ、早よ来い!」
怒鳴る名倉をまあまあ、と原田がなだめる。
スタジオに向かう途中の老化でこっそりと原田が尋ねた。
「ケン、本当は何処行ってたの?」
「ん?ちょっと恩を売りにね……」
110
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:08:05
堀内健(ネプチューン)
石:セラフィナイト [羽のような模様がある。黄緑+白]
能力:瞬間移動。半径100メートル以内の空間ならどこでも移動可能。
条件:一瞬で移動するので長い間姿を消しておくことは出来ない。
連続で使えるが、使うたびに移動範囲が狭まる。
自分以外の物も瞬間移動させられる。
111
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:08:57
長々とすみません。ここで終わりです。
112
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/23(火) 20:13:24
間違い
老化→廊下
113
:
名無しさん
:2005/08/24(水) 21:28:24
長編乙です!爆笑・くりちゅー・ネプのボキャブラ御三家が揃いましたね。
ホリケンの少年漫画っぽいキャラがこの設定にピッタリで、バトルも軽快で面白く、
楽しませて頂きました。
114
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 08:31:53
乙。
面白かったよ。ホリケンはやっぱ白なのかな?
本スレにも投下キボン
115
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/25(木) 17:51:21
白か黒かは考えて無かったりします。
くりぃむが白、爆笑が中立と来たらやっぱネプは黒かなーとは
思ってますが。
他の人はそこんとこどうしたいのか意見欲しいです。
116
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 18:45:01
本スレ投下に一票ノシ
117
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/08/25(木) 19:35:36
大木を襲ったのが『黒』の若手っぽいし(『白』だったら、浄化するにしても
他人の石を無理に奪おうとはしないでしょう、多分)『白』かなとは思うのですが。
118
:
名無しさん
:2005/08/25(木) 20:54:31
恩を売るって言葉から黒のホリケンが下っ端を使った狂言って可能性も…
ってこれは◆BKx〜さんが決めることであってこっちが深読みすることじゃないね。
とりあえず乙です。
119
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/25(木) 23:14:13
じゃあ本スレ投下にあたって、ホリケンが白か黒か考えておきます。
その為に所々直したり書き加えたりしてからの投下になります。
120
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/27(土) 01:41:40
書き加えすぎた…。ここで終わりとか言っておきながらネプサイドの続き
あるんで、こんな設定で良かったら本スレにまとめて投下します。
楽屋では堀内がカチカチと携帯をいじっている。
「ケン、“恩を売った”って誰に?」
静寂を破って、原田が尋ねた。
「さっき、新入りの若手から連絡あったんだ。“せっかく大木さんの石を奪いかけたのに”」
「のに?」
「“堀内さんに邪魔された”だってさ」
一瞬の沈黙。
「あ、れは…邪魔っていうかねー、友達の危機を救っただけだよ。それにまさかあいつらが黒の若手だと思わなかったんだって」
「それ、ホンマか?」
その時、隣で見ていただけの名倉が原田の肩に手を置き、言った。
「泰造、こいつきっと“白”の間者やで」
「はっ…?」
「まっさか!考えすぎじゃない?ケンが俺たちの敵な訳ないでしょ」
「当たり前じゃん!ひっでえよ潤ちゃん!」
堀内は笑いながら名倉を叩く。
「原田さん、名倉さん。スタジオの方お願いしますー」
スタッフの声だ。原田と名倉が振り向き、堀内はどこかホッとした表情を浮かべる。
「…いや、すまんな健。冗談やって」
申し訳なさそうにそう言って名倉は先に出て行った。
原田がジャケットを羽織りながら話しかけてきた。
121
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/27(土) 01:44:25
「そうだ。大木の奴も石持ったんだろ?」
「そうだけど…」
「あいつも黒に引き込んでやろっか。そうだな…明日ロケで一緒になるし」
「あし…!!?…や、いや。そっかあ、頑張ってな〜あはは…」
パタン―――扉が閉められ、楽屋には堀内一人のみになる。だがその数秒後、
「あ、ごめん忘れ物………ケン〜?」
再び原田がドアを開けた時には、堀内の姿は無かった。
「もしもし?大木、お前今すぐ上田と有田んとこ行け。“白いユニット”に入れてもらうんだよ!…いいか、助けてやったんだから俺の言うこと聞けよ!」
誰が見ても一方的過ぎる電話だった。相手が出るやいなや一息で捲し立てるとまた一方的に電話を切る。
伝わったかな?大丈夫だろ、あいつああ見えて物解り良いからな。
携帯をぱたんと閉じ、フェンスに背を預けた。
堀内は一階から一気に誰も居ない屋上まで移動していたのだ。
「…あーびっくりした…」
堀内は白のユニットの人間だが、黒である原田と名倉と共に行動している。いわゆる“スパイ”だった。他の二人が黒であるということから自然と自分も黒の人間だと信じ込ませていた。
もちろん原田と名倉も例外ではない。
「黒は嫌いだけど…俺が白って事が泰造たちにばれるのも色んな意味で嫌だなー…。はあ、俺ってばカワイソ。身の振り方考えなきゃなあ〜」
堀内は何度目かもわからない溜息を吐いた。
122
:
◆BKxUaVfiSA
:2005/08/27(土) 01:48:00
泰造と名倉が黒で、ホリケンは黒のふりしながら二人と一緒に居る
…みたいな感じで。
多少の矛盾は目をつむって欲しい。
123
:
名無しさん
:2005/08/28(日) 21:43:38
投下お願いします
124
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 03:48:57
何となく思いついたけど、元の流れと繋げられる自信が無いので此方に落としてみます。
まだちゃんと決まってない設定もあるのでそこら辺は最後に説明しておきます。
「僕等はただの人形だ」
うし君は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
「僕等はただの人形だった」
それを聞いたカエル君は強い口調でその言葉を否定した。
「僕等はただの人形だ」
違う違う、と頭だけでなく身体全体を横に振ってうし君はその言葉を否定する。
「今の僕等はただの人形じゃない。意思がある…自分達の意思があるんだ!」
声がするのは一箇所で、それは自分達の口から発せられているものではない。
だがしかし、彼等は実際自分達の意思で動いていた。
自分達の姿を見れば確かに、足の無い胴体の下から伸びているのは人間の腕。
この腕がなければ、中に入っている手がなければ自分達は動けないただの布と綿の塊。
壁に寄り掛った格好で床に座り、ぐったりと項垂れているのはその腕の持ち主。
「じゃあ、彼は何?」
紺の覆面をし、黒ずくめの服を着ている人間を指してうし君は訊ねる。
「元・僕等」
自分達のついている腕だけを地面と垂直に保ったまま動かない人間を見て、カエル君は答えた。
「元?じゃあ今は?」
未だに混乱している様子のうし君は、不安げな声で相方に訊ねる。
「今は…僕等が彼だ」
自信たっぷりにそう告げたカエル君はさらに言葉を続ける。
「そこに居る男の頭の中に僕等は居た。僕等は彼だった…彼が僕等だった」
自分の腕全体を使って、俯いたまま言葉を話す男を指す。
「彼の思ったようにしか動けなかった。彼の思うがままに操られているだけだった」
うし君に反論させない勢いで、カエル君は話し続けた。
「だけど、今僕等はこうして自分の好きな事を…彼の口を通してだけど、好きなだけ話せる!」
覆面の男は項垂れたまま、カエル君の台詞を嬉しそうな声で喋っている。
「僕等は彼に操られてるんじゃない。僕等が彼を操れるようになったんだ!!」
「…そんなの、やっぱおかしいよ」
黙ったままで―彼等はどちらかが話しているときはもう片方は黙っているほか無いのだが―相方の言葉を聞いていたうし君がようやく口を開いた。
「だって僕等は人形で、そんな…魔法みたいなことがあっちゃいけないんだよ」
うし君はあくまでも元の彼の、人間としての常識を持ち合わせているようだった。
だが一方のカエル君は違った。大勢の人間の前で自分達が生きているかのように振る舞い、喋っていたという記憶が強かった。
「僕等は沢山の人と喋って、沢山の人に見られて、お笑いコンビ・パペットマペットとして世間に認められていた」
「違う、それは違うよカエル君…だって僕等は人形で、人間達は僕らを人形としてしか見ていない!」
「家畜の分際で煩いんだよ。そんなに言うならずっと黙ってて。僕は僕のやりたいようにやるから」
そう言いながらカエル君がうし君の頭を強く叩いたとき、うし君の頭から黒いガラスの欠片の様な物が抜け落ちた。
「…頭にノミ飼ってるなんて。さすが家畜だね」
カエル君は床に落ちたそれを見て皮肉を言う。いつもなら何らかの返事をしてくるはずの相方は黙ったままだった。
125
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 03:53:23
「…なんで黙ってんの?反論しなきゃ面白く無いじゃん」
カエル君はそれっきり動かなくなった相方を突付いたり叩いたりしていたが、突然何かに気付いたように大きく手を叩いた。
「そっか、これが原因か」
床に落ちている黒い欠片を拾い上げ、試しに相方の綿の詰まった柔らかい頭に突き刺した。
「…あれ?今僕どうしてた?」
突然動き出した相方を見て、カエル君は理解した。
カエル君の頭の部分…その中に入っている覆面の男の手には、黒い欠片の感触がある。
「これのお陰…ってことか」
カエル君は自分の本来の身体である人形ではなく、
後ろの男の方に意識を集中すれば彼の手でだけではなく身体全体を動かせることに気付いた。
「あっちゃいけない魔法みたいなこと…嫌なら君は黙ってて良いよ」
「何言ってるのカエルく…」
いつまでも煩い相方の後ろにまわって、彼の頭からはみ出している黒い欠片を引き抜いた。
動かなくなった相方の体を、後ろの男の方に意識を集中して動かしてみる。
手を動かすだけで、うし君の身体は簡単に彼の思い通りに動いた。
「ふーん…いつもこんな感じで僕等を動かしてたんだ」
呟いた彼は男の手から相方の体を引き剥がす。
そして同じように、元・自分の身体をも相方の体の中から出た人間の手を使って引き剥がした。
「…僕は、僕だ」
そこから現れた手を見て、彼は呟く。
「操られたりしない。僕は僕の好きなように…」
その掌には黒い欠片。それから流れ込む力を感じたカエル君は、拳を握ってニヤリと笑った。
彼の意識に連動して男の表情が変わる。
彼の…カエル君の心は今まで自分を操っていた男を逆に支配している、という優越感でいっぱいになる。
「この欠片があれば…僕は僕で居られるんだ」
126
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 03:56:49
説明
<何故人形が意思を持ったか>①人形に意思を宿らせる能力者の仕業。
②パペットマペット自身の石の能力が欠片で歪められて。のどちらか。
カエル君が欠片に魅入られて黒に〜というような感じの続きを何となくですが考えてます。
添削お願いします。
127
:
名無しさん
:2005/08/30(火) 13:59:23
乙です!面白かったです。
意思を持った理由は1番でも2番でも面白そうですね。それぞれ動かしがいがあって。
自分パペマペの能力投下した者なんで、お話読めて嬉しいです。
128
:
名無しさん
:2005/09/02(金) 00:22:36
>>127
レス有難うございます。他の人の感想が聞けて嬉しいです。
パペマペの能力面白そうだったので①の方にしようと思います。
②だと能力変えなきゃいけないのでそれは勿体無いですから。
少し手を加えて、あと能力者の能力と人間も考えて…話がまとまったらまた来ます。
129
:
名無しさん
:2005/09/09(金) 11:31:48
ピースの話を書いてみました。
一応今の時点では矛盾しないように書いたのですが、
やはり今ピースが出ている小説が終わるのを待った方がいいですか?
130
:
名無しさん
:2005/09/09(金) 15:57:12
>>129
ここは添削だけなので投下だけならいくらでもどうぞ。
期待して待ってます。
131
:
129
:2005/09/09(金) 21:40:34
ありがとうございます。
お言葉に甘えて投下させてもらいます。
それはある日のこと。ピースの2人がまだコンビを組んで間もない頃の話である。
劇場で行われる笑いの戦いを征し、見事今日をもって500円芸人の肩書きを手に入れた
2人は楽屋にいた。周りの後輩芸人には「おめでとうございます」と祝ってもらい、先輩
芸人には「今日はおごってやる」と声をかけてもらった。
「やったなぁ!マタキチ!」
綾部もちろん上機嫌だ。いつものうんさくさい笑顔を全快にしている。
「やったな。」
又吉は言葉少なく返した。
「なんだよマタキチ。やっと勝ったのに。どっか具合でも悪いのか?」
綾部は相方のいつにも増した無口さに心配して顔をのぞきこんだ。
フイとバツの悪そうな顔をして又吉はそっぽを向いた。その顔を見て綾部に嫌な予感が走った。
「もしかしてお前昨日また石を・・・!」
そう綾部が声を荒げた瞬間だった。楽屋にいる芸人達が一斉にこちらを見た。
そして空気はピンと張り詰めた。若干睨んでいる人間もいるような気がする。
「いっ石を・・・持って帰ったのか〜?しかもそのへんに転がってるなんの変哲もない石を!
マタキチはホントに変なもの集めるなぁ!」
綾部は苦し紛れにうわずった声で意味のわからない言い訳をした。周りの芸人がそれで治
まるとは思えない。しかし芸人達はまた自分達の話に戻った。
張り詰めた空気は作られたなごやかさに変わった。
「アホか。こんなところで、石について大声出すなや。」
「ごめん。で・・・また昨日、石を使って戦闘したんじゃないのか?」
又吉はまた目線を逸らした。
「えぇやんけ別に。俺は白や。黒が襲って来てもしゃーない。
それに白として戦わなあかんやろ。」
「あのなぁ・・・!」綾部はまた声を荒げそうになったが、
我に返り一息ついて小さな声で言った。
「俺は石持ってねぇから白とか黒とかよくわかんねぇけどさ・・・お前が怪我したりすん
のは嫌なんだよ。」
お前を助けることも出来ないんだ。続けて小さくつぶやいた。
又吉はうつむいたまま黙った。
綾部は石を持っていなかった。又吉と同じだけ芸人として活動してきたが、自分に石は
やって来なかった。それは運のいいことだと思っていた。しかし相方や仲間の芸人達が戦
い傷つくのを指をくわえて見ていなければならなかった。
戦いに巻き込まれたくない。
でも大切な人達を守りたい。
132
:
129
:2005/09/09(金) 21:50:23
そのとき楽屋のドアがノックされた。そして入って来たのは又吉の元相方、原だった。
その楽屋にいた芸人達は驚いて原に駆け寄った。
原はある程度芸人達と挨拶を交わしたあと、2人の方へやって来た。
「おめでとう。」
「見に来てたんか。」
又吉はしかめっ面で原を見た。原はにこやかに又吉を見下ろしている。
「今日は綾部に用があって来たんや。」
「えっ、俺?」
思わぬ言葉に綾部は驚いた。
「あ、でも今日は先輩におごってもらったりするんやろ?なら終わった後お前の家の近く
に公園があったよな?そこに来てくれへん?」
「・・・おっおう。」綾部は原の言葉に疑問を感じつつも、その誘いに応じた。
話があるなら携帯で電話したっていいし、メールだってできる。同期なのだから
特に隔たりもない。
又吉も原がなにを考えているのかを不審に思っているようだ。眉間にしわが寄っている。
その場はそのまま別れた。
先輩と飲みに行っている間もあれやこれやと呼び出された理由を考えたが思い当たる節がない。
約束どうり、綾部は原に指定された公園に行った。その公園は広いくせに外灯が少なく
真っ暗に静まっていた。まだ原は来ていないようだ。
綾部はまだ呼び出された理由を考えながら原を待っていた。すると黒い人影が現れ、
こっちに近づいてきた。誰だろう?原だろうか。暗くて見えない。と目を凝していると、
急に横からも人影サッと自分の目の前に現れた。
又吉だ。又吉は綾部に背を向けて少し遠くに見える影を睨みながら
石の力を開放した。
「おっおいっ!何してんだよ!」
綾部が驚いて聞いたが又吉はすでに黒い人影に向かって物語を語り始めていた。
公園は少ない外灯に照らされ真っ暗だ。人影などどこにもない。
又吉は公園には誰もいないという物語を語った。あの人影に捕まってはいけない。絶対に。
又吉はこの物語を続けながら綾部の方を振り返った。しかしその場所に綾部はいない。
まさかと前を見直すと黒い人影が消えている。
しまった・・・!
そう思った瞬間又吉の腹に鈍い衝撃が走った。その衝撃で又吉は自分の作った物語から
抜け出し、そのまま倒れこんだ。
「又吉!!」
綾部がしゃがみ込み抱き起こす。綾部には何が起きたかわからない。
又吉は気を失ってしまった。
そして黒い人影が目の前に立ちはだかった。
綾部が見上げた瞬間、背後からヒュッと風が通り抜けたと思ったその刹那、人影は後ろに吹っ飛んだ。
「こっちだ!今のうちに逃げろっ!」
背後から叫んだのは呼び出した張本人の原だった。
綾部は無我夢中で又吉をおぶって原と一緒に走り出した。
これが石をめぐる戦いか・・・。今まで経験したことのない緊張感、そして危機感。
綾部は一心不乱に走った。そして暗い路地を見つけるとそこへ入った。
又吉を降ろし、ヘタリと座り込んだが、原がまだ来ていない。路地から注意深くのぞくと、原がフラフラと走っ
てくるのが見えた。
「原っ!お前大丈夫か!?どっか怪我したのか?」
原に肩を貸し、路地へと入った。
原はハァハァと息を切らしながらなんとか言葉を発した。
「・・・ちょっと貧血になっただけや・・・これが俺の・・・石の能力の代償や。」
息も絶え絶えに原は話した。
「本当は一回でこんなにダメージくらわへん・・・でもコンビを解散して、芸人をやめて
も石をねらってくるやつらがおって、そいつらに対抗してたんやけど、どんどん石の力が
弱くなっていって・・・。今までどうりの力出そうと思ったらどんどんと代償もでかなっ
ていった・・・。さっきの攻撃も相手に尻餅つかせた程度やろ。」
「・・・じゃあこの石は芸人じゃないと力を発揮しない・・・?」
「いや、笑いへの情熱や・・・。」
ふうと一息ついた原は自分の首からペンダントにして吊っていた石を綾部に突き出して言った。
「又吉は相変わらず戦ってるんやろ?平和がほしいとかゆーてさ。
あいつ人が傷つくのとかめっちゃ嫌がるからな。アホや・・・。」
原はふっと鼻で笑った。
「あいつの石は攻撃には向かへん。そんでそれを助けていた俺にはもう力はない・・・。
だから頼む、この石をもらってくれへんか?危険なことに巻き込むのはわかってる。
でもお前の相方守ってやってくれ!このとおりや・・・。」
原は必死に頭を下げた。しばらく綾部は黙ったが、意を決してその石を受け取った。
「俺・・・仲間を・・・マタキチを守りたい。俺だって平和がほしい!」
原は微笑んだ。
「・・・ありがとう。」
パチパチパチ・・・
手を叩く音が路地の入口から聞こえた。
133
:
129
:2005/09/09(金) 22:05:04
>>132
「バナナマンの設楽さん・・・?」
「チッ・・・。」
原は舌打ちをした。
「黒の一番上の人間や・・・気をつけろ。」
綾部はゴクリと喉を鳴らした。
「綾部くん。原くんから石を譲り受けたところ悪いんだけどさ、黒に入らないかな?
もちろん又吉くんも一緒に。」
「嫌です。この石は仲間を守るために使うと決めたんです。人を傷つけるために使いたく
ないんです!」
するとその言葉に反応するように石も光った。設楽はふふっと笑うだけだ。
「綾部その石はな・・・」
原が言い終わる前に綾部は動いた。
何故だろう使い方がわかる。誰だ?俺に話しかけてくるのは。
自分の足下にあるコンクリートに触れ、大きな龍を放った。
「くっ・・・!」
狭い路地だったのが災いし大きな龍は動きずらそうだ。
設楽は龍が自分に激突する瞬間になんとかしゃがみ込んで避けた。
しかし、完璧に避けられるわけもなく傷を負った。しかしかすり傷程度ではない。
「くくくっ・・・さすが・・・すばらしい力だ・・・!」
傷を負ったにも関わらず、設楽は不気味に笑っている。
そしてゆっくり立上がりると同時に石が光り出した。
「綾部君・・・。君は黒の事をどうやら勘違いしているようだ。
少し僕の話を聞いてくれないかな?平和的に話し合いで解決しようじゃないか・・・。」
綾部は応じた。話し合いで解決できるならそうしたかった。
これが罠だということも知らずに・・・。
134
:
129
:2005/09/09(金) 22:05:54
>>133
長くなりました。次で最後です。
又吉はうっすらと目を開けた。ぼんやりと3人の人間が見える。2人の人間は
対峙していて、手前の自分を守る様に立っている人間の後ろには壁にもたれかかって
もう一人がいた。だんだんと対峙している2人の声が聞こえてきた。
「・・・どうかな。分かってもらえたかな?」
「はい・・・。」
だんだんと意識がはっきりしてきた。
「君の相方も起きたようだね。」
向こう側にいる男が言った。
設楽・・・!
又吉の目が大きく見開かれた。
その言葉を聞いた手前の男・・・綾部がゆっくりとこちらを振り返った。その時。
「原・・・。」
設楽が原に目で合図を送った。すると原はひそかに手元に準備していた鉄パイプを
にぎり、綾部の後頭部を一撃・・・ガツンッ。
「綾部っ・・・!」
又吉は瞬時に起き上がり倒れこんだ綾部に駆け寄った。さっき殴られた腹がズキンと痛ん
だが、そんなこと気にしてられなかった。
「綾部!おいっ綾部!」
必死に揺り起こそうとするが全く動かない。
「安心しろ。ちょっと眠ってもらっただけや。」
原が鉄パイプを肩に担いで冷たい目で又吉を見下していた。
「今度は又吉くんと話がしたかったからね。いやあ君の相方達は本当に信じやすい
いい人達だね。君とは違って。」
設楽はニヤリと笑う。
「まさか・・・また・・・。」
又吉に嫌な過去が蘇った。
「君は知ってたんだね。原が芸人でなくなれば石は力を失うと。だから原とのコンビを
解散した。それが原を助ける方法だと信じて。本来、白であった君達の片方が黒に変わってし
まってケンカは絶えなかっただろう?僕は又吉君が折れて黒に入ってくれるのを期待して
たんだけどね。」
又吉はキッと設楽を睨み付けた。瞳には過去に負わされた傷が写っている。
「俺はどうしてもその石がほしいんだよ。アトランティスの力を持つエレスチャルの力を。
全く又吉君、君は手間をとらせてくれたね。」
「原だけじゃなく綾部まで・・・!」
「“説得”させてもらった。もう彼は黒の一員だよ。」
冷たい瞳に又吉が写った。
「大丈夫。綾部君が次起きても、綾部君は変わらず君の事を好きだよ。
でも石に関してはどうかなぁ・・・?」
「うるさいっ!!」
設楽の挑発的でふざけた言葉に又吉は声を荒げた。
もうあんな思いはしたくない。
「もう・・・あんな思いはしたくない・・・。たった一人の相方・・・
もう失いたくない・・・。」
うつむいて、綾部の顔を見た。
「随分と仲がよろしいことで。」
原は鼻で笑った。
又吉はそっと原を見上げ、
「お前だって失いたくなかったんや。お前だって助けたかった・・・。」
原の顔に動揺が走る。原の瞳に過去が写る。
「お前に何がっ・・・!」
原が怒鳴ろうとするのを設楽が制した。
「又吉君。黒に入って黒に染まったフリをして綾部君が人を傷つけないように見張ればいいじゃないか、
“説得”を解けるようにいつも一緒にいたらいいじゃないか。それをやって見せてくれよ。
それが出来れば2人とも抜けさせてあげるよ。」
設楽が本当にそんなことを思っているわけがない。自分の石を破られない自信があるのだ。
「わかった・・・。」
又吉は小さく言った。
「やっと又吉君にも“説得”が利いたかな?」
ふふふと笑い背を向けて設楽は歩き出した。
「言っとくけどな、お前の石なんかにハマった覚えはないで。俺は綾部の目を覚まさせる
ためだけに黒に入るんや。」
設楽は原を従えて去って行った。
取り残された又吉は綾部の顔を見ながらつぶやいた。
「ごめんな・・・ゆうちゃん・・・。」
設楽の高笑いだけが聞こえる。
135
:
129
:2005/09/09(金) 22:11:02
すみません。本当にすごく長くなってしまいました。
読みにくいところもありますので、
もし読んでいただけたら感想をください。
136
:
129
:2005/09/18(日) 21:55:25
今気づいたのですが、この話矛盾してますねorz
ごめんなさい。
137
:
本スレ224
:2005/09/24(土) 01:03:15
本スレで言っていたさまぁ〜ずの番外編を落としにきました。
黒ユニットに分類されているコンビですが、ごく軽い話なのであまり黒っぽくありません。
でも黒でも白でも日常は結構ほのぼのしたところもあるんじゃないかと思って書いてみました。
石は能力スレにあるさまぁ〜ずのもの(もともと能力スレにさまぁ〜ずの設定書き込んだのも自分です)。
能力を使用しているのは三村のみです。
138
:
本スレ224@鈴虫1
:2005/09/24(土) 01:05:34
いつも通りの朝、いつも通りの日常。
自分の車の助手席でボーッとしながら相方の家に着くのを待つ。
窓からのぞく空は灰色の雲に薄く覆われていて、それを通して降りそそぐ朝の陽光はにじむように柔らかい。
今日はスタジオでの仕事だから、スッキリ晴れてくれてもよかったんだけどなあ、などと思いつつ、あくびを一つ。
あいにく、薄曇りの空にできた光の筋に美しさを感じるような感受性は持ち合わせていない。
かぶった赤いキャップのつばをぐい、と左手でひっぱって、視界を遮断する。
昨夜の酒が微妙に残っているので、少し休みたくなって目をつぶった。最近どうにも飲みすぎだ。
「うぃーす」
しばらくすると車はある路地で静かに停まった。
でかい荷物を肩にかけた相方が適当な挨拶とともに後部座席に乗り込んでくる。
とりとめもなく、たわいもない会話を車内に流しながら、テレビ局へと車はむかう。
ここまではまったくもっていつも通り、かわりばえのしない朝の光景。
…それがほんの少しばかりイレギュラーなものになったのは、二人が局の楽屋に入った後だった。
139
:
本スレ224@鈴虫2
:2005/09/24(土) 01:06:45
扉に貼りつけられた「さまぁ〜ず 三村マサカズ・大竹一樹 様」の文字をちらりと確認して中に入る。
撮りが始まるまでにはまだ余裕があるので、腰をおろした二人はのんびりと行動を開始した。
思い思いにペットボトルに口をつけたり、スポーツ新聞に目を通したりして時間を過ごす。
…そのとき、大竹が何か思い出したようにつぶやいた。
「あー…しまった」
「ん?」
「クーラー消すの忘れた」
「…帰ったらさみぃな」
「さっみぃな」
「高橋は?」
「さっき何かちょっと外すとかっつって出てった、…っと、あれ、どこだ…」
言いながら大竹はカバンをさぐり、タバコをとりだして火をつけようとする。
しかし百円ライターはチチッ、と火花を発するだけで、いっこうに炎が出ない。
「切れてやがる、お前の貸して」
「あー…ちょっと待って、今出す」
140
:
本スレ224@鈴虫3
:2005/09/24(土) 01:08:25
そう言ってジーンズのポケットをまさぐった三村だが、出てきたのはひしゃげたタバコの箱のみだった。
いつもなら減ったタバコの隙間に入っているのだが、今日に限って目当てのライターはない。
どうやら昨晩飲みに行った店にでも置いてきてしまったようだ。
「…入ってねぇわ」
「入ってねえって…どーするよ」
「高橋…って今いねえんだった」
ヘビースモーカーとまではいかないが、タバコが吸えないとそれなりに困る二人は顔を見あわせた。
タバコそのものなら自販機に買いに行けばいいが、ライターとなるとちょっと面倒だ。
しかたなく、廊下でスタッフにでも声をかけてみるか、と立ち上がろうとした三村に大竹が言う。
「お前アレは?アレで何とかなんねーの?」
「アレ?あー、石?」
「おー、アレで『ライターかよ!』とかってツっこめばいいんじゃね?」
「…お前、そのツっこみができるボケしろよ?」
「無理」
「じゃあ俺も無理だから、っていうかピューって飛ぶぞライター、ピューって」
「軽めに言えばいいだろ…あ、『秋の夜に 鳴いてる鈴虫 焼いてみる』は?」
「『なんでだよ!なんで焼いたの?焼かないでよ〜鈴虫を〜』…いや、これ『ライター』とかねえから」
「それ『なんで焼いたの?ライター?』とかにすればいいんじゃね?」
「あー、けどその『なんで』は『何使って』って意味じゃなくて『どうして?』の意味だけどな」
「細けぇよ、いいよ、いけるよ」
「…しょーがねーなー…」
141
:
本スレ224@鈴虫4
:2005/09/24(土) 01:09:43
三村は、ごそごそと財布の中から緑と紫と白が縞模様をつくる美しい石をとりだした。
手の中に石を握り込んで意識を集中させると、それはほんのりと淡く光る。
「おし、準備できた」
「んじゃいくぞ…『秋の夜に 鳴いてる鈴虫 焼いてみた』」
「『なんでだよ!なんで焼いたの?ライター?…
三村が『ライター』と口にしたとたん、ヒュッと空中にライターがあらわれ、大竹めがけて飛んでいった。
至近距離だったせいかライターの速度が意外に速かったため、大竹は「うぉっ!」と小さく叫んでのけぞる。
正面からぶつかるのは避けたものの、ライターは肩に当たってコロリ、と机に転がった。
…焼かないでよ〜鈴虫を〜』」
「ってお前!バカ!」
「へ?」
「おわぁ!」
三村が思わず最後までツっこみきってしまったせいで、今度は空中に一匹の鈴虫があらわれる。
これまた結構な速度で大竹にむかって飛んでいく鈴虫を見送って思わず三村はつぶやく。
「あ、鈴虫…」
「『あ』じゃねえ!」
…鈴虫は見事に大竹の伊達眼鏡のふちにぶち当たり、へろへろと緑茶のペットボトルの中に落ちて討ち死にしたのだった。
142
:
本スレ224@鈴虫5
:2005/09/24(土) 01:10:30
その後大竹は「鈴虫くせえ…」などと微妙な悪態をつきつつ眼鏡を手入れし、タバコに火をつけ。
三村は「ゴメンゴメン」などとあまり反省もなく謝りながら石をしまい、またもとのようにのんびりと時間が動き始めた。
5分後、先ほどのことを忘れてペットボトルに口をつけた三村は、ブフッ、と派手な音を立てて緑茶とともに鈴虫を吐き出すだろう。
大竹は「汚ね!」と後ろに飛びすさり、机の上が大…いや小惨事になり、楽屋は二人の笑い声やらうめき声やらでまた少しばかりにぎやかになる。
…そんなちょっとした、日常の話。
143
:
本スレ224@鈴虫(設定他)
:2005/09/24(土) 01:18:51
三村マサカズ
石:フローライト(螢石)
集中力を高め意識をより高いレベルへ引き上げる、思考力を高める
力:ツッコミを入れたもの、もしくはツッコミの中に出てきたものを敵に向かって高速ですっ飛ばす。
(例1)皿に「白い!」とツッコんだ場合、皿が飛ぶ。
(例2)相方の「ブタみてェな〜(云々」などの言葉に対し「ブタかよ!」とツッコんだ場合、ブタが飛ぶ。
条件:その場にあるものにツッコむ場合はそれほど体力を使わないが、
人の言葉に対してツッコむ場合は言い回しが複雑なほど体力を使う。
また、相方の言葉に対してツッコむ場合より、他の人間に対してツッコむ場合の方が体力を使うため、回数が減る。
ツッコミを噛むとモノの飛ぶ方向がめちゃくちゃになる。ツッコミのテンションによってモノの飛ぶ速度は変わる。
飛ぶものの重さはあまり本人の体力とは関係ないが、建物や極端に重いものは飛ばせない。
今回は(例2)の方で能力を使わせてみました。
石の身につけかたに迷ったんですが、原石のまま持ってる方がらしいかと思ったので、
財布の中にしまってることにしてみたんですが、加工品の方がよかったでしょうか。
なにぶん初めてなので、ビシバシ添削していただけるとありがたいです。
144
:
本スレ224@鈴虫
:2005/09/24(土) 01:21:59
あ、文中の「高橋」はさまぁ〜ずの後輩兼マネージャーの高橋氏です。
145
:
名無しさん
:2005/09/24(土) 01:54:59
ほのぼのしてていいですね。こういうの好きです。
本スレ投下問題ないと思いますよ。
146
:
名無しさん
:2005/09/24(土) 13:28:36
乙。
三村の能力の使い方面白いですね。
本スレ投下大丈夫だと思います。
147
:
本スレ224@鈴虫
:2005/09/25(日) 00:15:07
>>145-146
ありがとうございます。本スレ行ってきます。
148
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:34:51
こんにちは、以前◆BKxUaVfiSA というコテハンでホリケンと大木の話を書いた
者です。事情があってトリップ変わっちゃいました。佐久間一行とあべこうじの
話書いてみたんですが、添削頼みます。
149
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:37:23
困ったなあ、などと呑気に考えながら梯子をよじ登る男が一人。
服装は先ほどまで舞台に立っていたということで、随分奇抜な格好だった。
薄いTシャツに手拭いを首に巻いており、何重にも折り込まれて短くされた緑色のズボンからは健康的な脹ら脛が覗いている。少年のような形だ。
彼の困った、と言うのは、今複数の男に追いかけられている事ではなく、家で待っている200匹のペット兼家族への餌があげられないという事の方が強い。
きっとお腹空かしてるな、死んじゃったりしないかな、と心配事は尽きなかった。
登り切ってたどり着いたのは廃工場の塗炭屋根。所々雨の所為で鉄骨が錆び付き、穴が開いている。
腕を地面と水平に広げ、トントン、トン、と穴を飛び越しバランスを取りながら渡っていく。その後ろから若い男が二人、同じように走ってくる。
決して丈夫とは言えない薄い屋根に、三人もの大の男が乗っていると、さすがに思い切り暴れる、なんて事は出来ない。
屋根の左端と右端にそれぞれが立ったまま対峙する。
「つっかけだけで良く此処まで速く走れましたね、佐久間さん」
一人が、少し慎重に足を踏み出す。塗炭が嫌な音を立てて軋み揺れ、佐久間は「おっとっと…」とバランスを崩しそうになる身体を中腰になり必死に手をばたつかせて整える。
そして揺れが収まったところでゆっくりと身体を起こし、ほっと息を吐いた。
「…う〜ん、見逃せない?」
「無理です。逃がして怒られるのは俺たちなんですから」
ダメ元で尋ねてみると案の定否定された。
「見逃して欲しいなんて言ってきたの、佐久間さんが初めてですよ」
今まで戦ってきた者たちは、どうやら正義感、責任感に満ちあふれ、石の力を駆使して向かってきたらしい。
「黒に入ってくれるなら、何もしませんから、ね?僕らも簡単に人を傷つけたくないんですって」
男たちは、戦いを心からは望んではいないようだった。上の命令なのだろうか。お願いしますよ、彼らは懇願する。
150
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:39:04
「そういえば、佐久間さんザリガニいっぱい飼ってるんですよね」
「それが何?」
「黒に来てくれないと、あなたのザリガニを…」
「何する気だよ…!」
嫌な予感がし、額に冷や汗が浮かぶ。
「全部食べます」
何だって?それはゆゆしき問題だ…!
佐久間は少し困ってしまった。
自分は喧嘩は好きではないし、戦って勝てる自信も無い。相手が二人もいるなら尚更だ。
何より愛するザリガニたちが食べられてしまう。
とりあえずここから劇場はそう遠くはないし、ポケットに携帯も入っている。助けを呼ぶことは不可能では無かった。
相手に気付かれないようそっと携帯を取り出し、手を後ろに回したまま勘でリダイヤルのボタンを押す。
画面が見えないから誰に掛けているのか分からないがとりあえず三回押した時の相手に掛けてみようと思っていた。
カチ、カチ、カチ。丁度三回押したところで手探りで真ん中の決定ボタンを押す。
「何をしてるんですかっ!」
その時、一人の男が小さな火の玉を指先から出現させ、佐久間に向かって飛ばした。
「あわわっ、喧嘩は止めようって〜痛いだけだから…」
ふわり、と佐久間の手の平が火の玉に向けて翳される。
「この想い、伝われぇ〜っ」
ギリギリまで近づいて来た火の玉は、ポン、と可愛らしい音をたて、一輪の真っ赤なバラに変化し佐久間の手に落ちた。
自分には似合わないな、と佐久間は照れ笑いを浮かべる。男たちは頭の上にクエスチョンマークを浮かべているような間抜けた顔をしている。
その時、
『もしもーし、もしもーし?さっくん、どーしたぁ?』
癖のあるテノールボイスが携帯を通して小さく聞こえた。
(や、ったー)
佐久間は小さくガッツポーズをした。親交もあり、何より石の能力者であるあべこうじこと阿部公二に電話が繋がったのはラッキーだった。
「よそ見するな!」
151
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:40:15
一瞬携帯に目を捕られてしまった佐久間は(しまった)、と顔を上げる。
次の瞬間、目の前に男の拳が迫った。ああ、殴られるな。と他人事のように思った瞬間、頬に鈍い痛みが走り、視界が反転した。
あまりにも見事に顔面ヒットしたので、殴った男の方も、しまった、みたいな顔をして小さな声で「あっ…」と声を漏らした。
はね飛ばされた携帯はガチャン、と斜めの屋根を回りながら滑り落ちていく。
手を伸ばしたが後一歩遅く、携帯は重力に引っ張られ屋根から落下していった。
そして、地面に衝突し、跡形もなく消える―――筈だった。
高い屋根から落ちてきた佐久間の携帯を、下に立っていた誰かが片手で、上手いこと壊さないようパシッ、と軽い音を立ててキャッチする。
もう一方の手には、先程まで使っていたのだろうか、開いたままの彼の携帯が。
佐久間が殴られた顔を押さえながら、上半身を起こして下を覗き込んだ。
「落とし物」
彼――あべこうじは、屋根を見上げ、にっこり笑って携帯を振ってみせた。
152
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:44:57
佐久間一行
エンジェライト(天使を意味する石。マイナス思考の払拭)
能力…平和の念を掌に込め、危険な物を安全な物へと変える。
例)爆弾→クラッカー ピストル→水鉄砲
条件…「つたわれ」で発動。
危険かどうか、自らの判断が必要
153
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/02(日) 16:48:11
まだ続きは考えてないですが、評判良ければ書きますんで。
154
:
名無しさん
:2005/10/02(日) 17:54:57
おっつっつー。
人間が描かれてていい感じですね。
でもエンジェライトはホリケンの石じゃなかったっけ?
155
:
名無しさん
:2005/10/02(日) 23:41:19
ホリケンはセラフィナイトで、これとエンジェライトは別物らしいので大丈夫。
さっくんのほのぼの感が良いですね。
156
:
名無しさん
:2005/10/04(火) 00:38:46
乙です!
さっくんは石の力まで平和的ですね。彼にとてもあっていると思います。
あべこうじナイスなタイミングで登場ですね!
続きお願いします!
157
:
名無しさん
:2005/10/04(火) 00:41:36
129さん
乙です!一気に読んでしまいました・・・
誰か又吉を助けてやれないものでしょうか・・・
続き、楽しみにしてます。
158
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/24(月) 21:02:55
>>151
から
「あべさん…!」
「挨拶もなしに急に居なくなるもんだからさぁ、あははっいやー探しに来てよかったよーホントねぇ」
ひらひらと手を振る阿部は格好付けたように眉を顰め、何とも綺麗な早口でまくし立てる。
「ほら、逃げっから降りといで」
佐久間はその言葉にたちまち笑顔になった。はいっ!と元気よく返事をし、屋根からダイブする。固い地面に頭から落ちていくような体勢に、二人組はわっ、と短い悲鳴を上げて届かない制止の手を伸ばす。
地面に激突する寸前、佐久間は手を前に突き出す。柔らかな光に照らされ、ふかふかのクッション状になった土は落ちてくる身体の衝撃を優しく吸収する。
屋根の上から二人が見下ろしているのが見えた。え〜、とかすっげえ〜、とか若者らしい率直で素直な感想を述べている。
「うわ、さっくんすげー鼻血…!」
え?と手の甲で鼻の周りを触ってみると生暖かい真っ赤な液体がまとわりついた。阿部が言うには、顔半分がその血で染まってまるでスプラッター映画のようらしい。
近くで風船を割られたような、そんな衝撃が強く、痛みというものはあまり感じなかった。だから大したことはないと思っていたが、阿部の引きぎみな表情を伺う限り今の自分は、よっぽど見るに堪えない酷い顔なんだろうなぁ。と佐久間は思った。
「大丈夫ですよー。ね?ほら、骨は折れてないみたいですし」
「ほ、骨…」
目眩を起こしそうになっている阿部を尻目に、ポケットからウェットティッシュを取り出して顔をごしごしと擦る。
血を拭き取りすっきりした顔を見せてやると、阿部もほっとした表情を浮かべた。
159
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/24(月) 21:03:33
そして気を取り直すようにパンッ、と一度手を叩く。
「よし、じゃ逃げるか。ダッシュね、ダッシュ!かけっこには自信あるよ、俺」
格好付けたように変なところで語尾を上げるのは彼のちょっとした癖だ。そういうときは大抵彼の心は自信に満ちている事が多い。佐久間は妙な安心感を覚え小さく笑い「そっすね」と返事をすると、つっかけを履き直し阿部の後ろを付いて走っていった。
ぺたん、ぺたんというつっかけ独特の平たい靴音を鳴らしながら、後ろを振り向いた。
思った通り背後からは屋根から下りた男たちが追いかけてくる。
一応昔テニスはやっていたし、体力にも足の速さにも自信はある。運動馬鹿な訳ではないが、久しぶりの本気の走りに、自然と佐久間は口元を緩ませた。
「ついてこれるもんならぁ、ついてこぉーい!」
走りながらくるりと一回転。
「何テンション上がってんの、ほらこっち!」
息を切らした阿部が佐久間の襟首をやや手荒に掴み、狭い路地裏に逃げ込む。ゴミバケツや空き瓶が散乱している所為でスピードが出せないのを佐久間は不満に思った。何しろ汚い所は大嫌いだった。全力で走るには先程の綺麗な広い道路の方が良かったのだが、何にせよその道路は長く続く一本道だ。万が一こちらが先に疲れるような事があれば捕まってしまう。
160
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/24(月) 21:03:55
そう思えばこういう入り組んだ細い路地は相手を捲くにも有効なのだ。
思った通り向こうも追いかけてくるのに苦戦しているようだ。更に引き離すように足でバケツを倒し、積み重なった木箱…その一番下の段を思いっきりダルマ落としの要領で蹴り飛ばす。バランスを失った木箱の山はガラガラと崩れ落ちた。中身が入ったままだったビール瓶が幾つもその中から転がり出て、雨あられと降り注ぎ敵の進行を防ぐ。
「危ない危ない危ない〜っ」
勢い余って自分たちの方にまで振ってくるガラスの欠片に、手を引かればたばたと前に突き進む。
ガシャン、バリン、と近くに雷が落ちたときにも似た感覚が鼓膜を襲う。佐久間と阿部が通った跡は汚い埃がそこら中に充満した。
煙の向こうから追ってくる声は、もう聞こえない。
「………、やりいっ!」
後ろを振り返りながら尚も走り続け、二人でハイタッチを決めた。
161
:
◆8zwe.JH0k.
:2005/10/24(月) 21:05:25
本スレ過疎気味なんで投下しても大丈夫ですか?
162
:
名無しさん
:2005/10/24(月) 22:54:40
文章的にも全然大丈夫だと思いますよと一書き手の意見。
過疎なのは投稿が少ないからか…お笑いブームの衰退か…
163
:
名無しさん
:2005/10/26(水) 16:05:22
芸人をキープしたまま話の途中で戻ってこない書き手がたくさんいるのも原因だとオモ
164
:
名無しさん
:2005/10/28(金) 14:38:05
>163
こういうことにならないように一芸人=一書き手ルールがないとはいえ、
話の根幹に関わる事件がストップしてたりするからなあ
せめて続きが書けなくなったら放棄宣言がほしいわな
165
:
クルス
◆pSAKH3pHwc
:2005/10/28(金) 17:27:32
>>129
本スレでハロバイ編書いてた者です。
ピース編、読みました。凄く良いと思います。
ハロバイ編終わりましたし、本スレ投下しても良いんじゃないかと。
166
:
名無しさん
:2005/10/29(土) 17:51:18
乙です!
あべさく、というかさっくんがいるとほのぼのでいいですねv
ただ血は怖いな・・・顔見れないとはいえよく平気ですね。そして冷静(笑)
167
:
129
:2005/11/02(水) 23:56:14
遅レスすいません。
>>157
ありがとうございます。うれしいです。
また思いついたら書きたいと思います。
>>クルスさん
本スレ投下しても大丈夫でしょうか・・・。
クルスさんの話に支障が出てしまったのではないかと心配しています。
168
:
クルス
◆pSAKH3pHwc
:2005/11/03(木) 17:09:30
>>129
大丈夫ですよ。
私は元々3話で終わらせる予定でしたし、問題は無いです。
169
:
129
:2005/11/04(金) 09:48:03
では本スレに投下したいと思います。
本当にありがとうございます。
170
:
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:47:44
どうも、以前さまぁ〜ずの番外編書いた者です。
気になることもあったので進行会議スレなどで質問してたんですが、
話がもうできてしまったのでとりあえず投下します。
ご意見等よろしくお願いいたします。
本編扱いで次長課長中心です。やたら長いですが、完結してます。
171
:
[タイトル未定−1]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:49:24
…ことの始まりは「石」だ。
井上にとってそれは、朝、玄関で履いた新しい靴の中に転がっていたせいで自分の足の裏に軽く刺さった、
金色の小さなものだった。
井上はその小さな塊を手にとって眺める。
ちょっとぼこぼこしていて、混じりけのない金色がとても綺麗だし、これがこのおろしたての靴の中から
出てきたことも不思議だ。買ったばかりの靴の先にこんなものが入っているなんてこと、あるんだろうか。
ちょっと面白いから河本に見せてやろう、と考えてジーンズのポケットにつっこんで家を出る。
河本にとってそれは、朝、仕度を終えて袖を通したマエ濯屋返りのジャンパーのポケットの中で指先に触れた、
淡い色の小さなものだった。
河本はその小さな石を手にとって眺める。
つるつるしていて、薄い橙色と白がつくる縞模様がとても綺麗だし、これがこのジャンパーのポケットから
出てきたことも不思議だ。洗濯屋でこんなものがまぎれこむなんてこと、あるんだろうか。
ちょっと面白いから井上に見せてやろう、と考えてもういちどジャンパーのポケットに戻して家を出る。
そして2人は楽屋で顔を合わせて、お互いが手にした不思議な石のことを知ることになる。
同じ朝に自分たちのところにやってきたその小さなものが、どんな運命をもたらすかはまだ、知らぬままに。
172
:
[タイトル未定−1]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:50:20
自分が石を手にした瞬間は特に何も思わなかったのだが、楽屋で井上が金色の塊を見せてきたとき、
そしてその石が自分のものと同じように、奇妙な経緯で井上のもとにやってきたと知ったとき、
河本はふとあることに思い当たった。最近芸人の間で石を持つことが流行っている、というのを
どこかで耳にした覚えがある。その石には何か力があるとか、それで何か一部でもめてるとか、そんな話も。
超常現象の類はあまり信じない質だったので、その話を聞いたときは石の力なんて随分うさんくさい、
と思った程度で特別気にしていなかったのだが、あれはひょっとして、この石と関係があるんだろうか。
「聡、変な石の話って知っとる?芸人の間で流行っとるとかいう…」
「あ、何か変な力がどうとかの…」
「そうや」
「詳しいことはよう知らんけど、聞いたことある」
「なあ、この石ってひょっとしてそれと関係あるんちゃう?」
「これが?」
「おかしいやろ、いきなりこんな偶然、俺らんとこ来るなんて」
「んー…そやね」
井上は何か考え込むように、指先で小さな金色の塊をもてあそんでいる。
河本から見てその欠片の色は、メッキされた金属の放つ金色や、何かが着色されて光る金色ではなく、
金という鉱物がもつ本来の色であるように感じられた。
173
:
[タイトル未定−1]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:51:35
もしこの推測が当たっているなら、あの小さな塊は、それなりに高価なもののはずだ。
あまり物欲がなく、金銭への執着も薄い井上のもとにそれがやってきたのはやはり運命と言うべきか。
もし自分だったらどこぞに売りにいったかもしれないが、井上はそれを綺麗な玩具程度にしか思っていない。
だからこそ、売ったりして手放そうなどとはきっと思わないだろう。
楽屋のテーブルの上、金色の塊をちょん、とおはじきのようにつつきながら井上が口を開いた。
「…これも、何か力あるんかな」
「どうやろ、俺のも何かあったりしてな」
河本は言いながら、テーブルに転がした自分の石をじっと見つめる。
綺麗な縞模様は何も伝えることなく静止したままで、答えなど出そうになかった。
見ているだけではどうにもならないので、とりあえずしまっておこうと手を伸ばす。
石を軽く手の中に握り込んだとたん、河本の拳の隙間から淡い光が漏れだした。
174
:
[タイトル未定−1]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:52:22
「な、何?」
驚いて手を開き、乱暴にテーブルの上に石を放り出す。それは橙色の光を放ちながらころころと転がった。
転がった先にあった井上の金色の塊は、河本の石にぶつかったと同時に、内側からふわりと光を放つ。
「うわ、光った!」
2人はしばし呆然と石の放つ光に見とれたが、輝いていた石はほんの30秒もするとその光を失い、
もとの姿に戻ったのだった。お互い無言のまま、石と相方の顔を交互に見やること数回、そして同時に言う。
「「…これ、何かヤバいで!」」
もはやここにある2つの石が、何か特別なものであることは疑いの余地がない。
だがしかし、これがどう特別なものなのかわからない2人はそのまま出番までの時間を悶々と過ごし、
本番中もそれを肌身離さず持ったまま、収録を終えて楽屋へと戻ったのだった。
175
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:53:20
…収録後の楽屋を、訪れる影2つ。
「よお」
「ちょっと邪魔するよ」
軽い挨拶とともに楽屋に入ってきたのは、2人が先ほどまで出演していた番組のMCであるくりぃむしちゅーの
有田と上田だった。最近共演する機会が増えてはきたものの、彼らがコンビで自分たちの楽屋を訪れるのは珍しい。
「どうもおつかれさんです」
「おつかれさんですー」
ふたりは少しばかりいぶかしく思いつつも、多くの番組を持つこの先輩コンビに礼儀正しく頭を下げた。
有田と上田はそれに「おう」などと簡単に応じる。その後、すばやく話を切り出したのは有田だった。
「あのさ、単刀直入に聞くんだけど」
「はい?」
「ひょっとして、石持ってねえか?」
176
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:54:19
見事と言うべき素早い切り込みに、返事をした河本は一瞬あっけにとられた。あまりといえばあまりに直接的な
質問だったので、返答に困ったのだ。石に何か特殊な力があるなら、簡単に持っていると答えてしまうのも
まずいんじゃなかろうか、と思った河本が迷っている間に、井上が代わりに答えてしまった。
「持ってますー」
のんびりした口調だが、これは重大な告白だ。河本は『ちょっと待たんかい!』と思いつつ相方を見やるが、
井上は何ら悪びれたところなく、いつも通りのきょとんとした表情で椅子に腰かけている。
返答を聞いた有田の方も、そう簡単に肯定の言葉がかえってくるとは思っていなかったらしく、ちょっと驚いた顔だ。
上田に至っては頭を抱えている。おそらく有田のバカ正直な質問で慌てたところに、さらにバカ正直な井上の返事が来て
打ちのめされたのだろう。河本はエ?、、に上田に共感した。
「上田、ほらやっぱ持ってるってよ!さっき共鳴したもんなー」
「…おう」
「何?何暗くなってんだよ?」
無自覚な有田とそれに疲れる上田に苦笑しつつ、河本は有田の言葉尻をとらえる。
『共鳴』とはいったい何のことだ?自分たちが石を持っていることが有田たちには伝わっていた理由は?
177
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:55:35
「あの、有田さん、『共鳴』って?何で俺らが石持っとるってわからはったんですか?」
「それはあれだ、俺らも石持ってるから。光ったんだよ」
「?は?」
「ああもう、有田代われ!…悪いな、ちゃんと説明するから」
「はあ…」
ため息まじりに有田を制した上田は、自分の石をとりだし、有田にも2人に石を見せるよう促して、
まず自分たちの石について簡単に語り始めた。河本の基本的な質問から、2人が石を手に入れたばかりで
何も詳しいことを知らないと察したらしい彼に、河本と井上は自分たちのもとに石がやってきた経緯を話す。
上田はそれにじっと耳を傾けてから、はじめは石の共鳴と力について話し、それから白のユニット、
黒のユニットについての説明をして、最後に自分たちが白のユニットに属していることを告白した。
「もしお前らの石の力が使えるものだったら、黒の奴らは自分たちの側にお前らをとりこもうとするだろうし、
それができなきゃ倒して石を奪おうとするだろう。俺らはお前らに『今すぐ白に入れ』とか強制する気はないけど、
できればお前らと戦うようなことは避けたいと思ってる。だからこうして話をしにきたんだ」
178
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:56:29
その言葉に河本は大きく頷いた。上田の話を聞いたところで、今すぐ白につこうとまでは思わないし、
逆に黒につこうとも思わない。わけもわからず戦闘に巻き込まれるのはまっぴらごめんだし、この2人の敵になる気も
さらさらない自分にとって、上田の言葉は至極受け入れやすいものだ。隣で井上も小さく縦に首を振っている。
そんな2人の様子を見て上田の話が終わったと判断したのか、今まで黙って話を聞いていた有田が、『待ってました!』
…とばかりに口を開いた。
「なあなあ、そんじゃさ、まだ2人は自分の石の力がどんなんだかわかってねえの?」
「はい、さっぱりですわ」
「なー、何なんやろな?」
河本は肩をすくめ、井上は河本と顔を見あわせて首を傾げる。石を巡る芸人たちの状況は理解したが、
自分たちの力がわからないことには何をどうすればいいのかさっぱりだ。そんな2人に有田は言う。
「まあでも、黒の奴ら来たら嫌でもわかるよ…ってお前らの力が戦闘に使えなかったらマズいな」
「もしどっちもそうだったら、攻撃系の奴に襲われたらひとたまりもないぞ」
「そっか、そーだよなあ…何か能力わかる方法とかねーのかよー上田」
「んなもん俺が知るか!…うーん、今までの奴らって大体みんなその場で石が発動してたしなあ」
179
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:58:06
有田と上田の2人は後輩の身の上を案じ、戦闘に巻き込まれる前に石の力を特定する方法はないかと考えを巡らせる。
そのとき、有田が突然「あっ!」と小さく叫んだ。
「お前の能力でこいつらの石の記憶読めばいいじゃねーか!」
「おいおい、俺の石じゃ記憶は読めても能力は…いや、前に持ってた奴が使った記憶があるかもしれねーか」
「そうだよ、石が覚えてるかもしれねーだろ」
「けど俺いくらなんでも見ただけで石の名前なんてわかんねーぞ?しかも蘊蓄まで言わないとなんねーし…」
ぶつぶつ言いながら上田は河本と井上にむきなおる。
「ちょっと見せてもらってもいいか?」
「あ、はい」
「どーぞ」
180
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:58:57
差し出しされた2つの石をしげしげと見つつ、上田は「あれ?」と小さく声を上げた。
「この井上のって、ひょっとして金じゃねーか?」
「あ、上田さんもそう思わはります?」
「…え、俺のって金なん?石やないんや」
「ああ、多分。まあこれも鉱物っちゃあ鉱物だしな…よし、こっちだけなら何とかなる」
そう言って上田は井上の金の粒に触れ、蘊蓄を脳裏から引っぱりだす。
「えー、金といえばみなさん、指輪やネックレスなどの装飾品としてお馴染みの貴金属ですが、
これはおそらく人類が装飾に使った初めての金属だろうと言われています。古代エジプトの
ヒエログリフでも金についての記述があるくらいでして…」
181
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 03:59:26
よどみなくつらつらと言葉を並べながら、小さな欠片に残った記憶を読みとっていく作業に入った。
その欠片の記憶は今朝の井上家の玄関、おろしたての靴の中から転がり出て井上とご対面したところまで戻ると、
それ以前は急に真っ暗になる。ただ、真っ暗な中で一瞬、誰かの右手が石にむかって伸ばされ迫る場面が、
映画のワンシーンのように閃いた。男の左手には何か、茶色い大きなものが握られている。
そしてその男の顔がノイズのようにさし込み、消えた。
…その顔は自分の記憶の中にある顔のひとつに重なる。とたん、男が左手に握っていたものの見当がつき、
上田はふっと笑った。石から手を離し、能力の代償である激痛が背中を走り抜けていくのに耐えてから、言う。
「ほとんど真っ暗だったけど、一瞬だけこの石に手を伸ばした奴の顔が…多分アイツ、何か知ってる」
「…アイツ?それ誰だよ上田」
「…ギター持ってた。波田陽区だ」
182
:
[タイトル未定−2]
◆yPCidWtUuM
:2005/11/18(金) 04:01:07
すいません、
>>176
の
>打ちのめされたのだろう。河本はエ?、、に上田に共感した。
は
>打ちのめされたのだろう。河本はおおいに上田に共感した。
です。文字化けしました。
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