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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

149 ◆8zwe.JH0k.:2005/10/02(日) 16:37:23
困ったなあ、などと呑気に考えながら梯子をよじ登る男が一人。
服装は先ほどまで舞台に立っていたということで、随分奇抜な格好だった。
薄いTシャツに手拭いを首に巻いており、何重にも折り込まれて短くされた緑色のズボンからは健康的な脹ら脛が覗いている。少年のような形だ。
彼の困った、と言うのは、今複数の男に追いかけられている事ではなく、家で待っている200匹のペット兼家族への餌があげられないという事の方が強い。
きっとお腹空かしてるな、死んじゃったりしないかな、と心配事は尽きなかった。

登り切ってたどり着いたのは廃工場の塗炭屋根。所々雨の所為で鉄骨が錆び付き、穴が開いている。
腕を地面と水平に広げ、トントン、トン、と穴を飛び越しバランスを取りながら渡っていく。その後ろから若い男が二人、同じように走ってくる。
決して丈夫とは言えない薄い屋根に、三人もの大の男が乗っていると、さすがに思い切り暴れる、なんて事は出来ない。
屋根の左端と右端にそれぞれが立ったまま対峙する。
「つっかけだけで良く此処まで速く走れましたね、佐久間さん」
一人が、少し慎重に足を踏み出す。塗炭が嫌な音を立てて軋み揺れ、佐久間は「おっとっと…」とバランスを崩しそうになる身体を中腰になり必死に手をばたつかせて整える。
そして揺れが収まったところでゆっくりと身体を起こし、ほっと息を吐いた。
「…う〜ん、見逃せない?」
「無理です。逃がして怒られるのは俺たちなんですから」
ダメ元で尋ねてみると案の定否定された。
「見逃して欲しいなんて言ってきたの、佐久間さんが初めてですよ」
今まで戦ってきた者たちは、どうやら正義感、責任感に満ちあふれ、石の力を駆使して向かってきたらしい。
「黒に入ってくれるなら、何もしませんから、ね?僕らも簡単に人を傷つけたくないんですって」
男たちは、戦いを心からは望んではいないようだった。上の命令なのだろうか。お願いしますよ、彼らは懇願する。


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