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貧困スレ
671
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:02:56
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170131-00082127-okinawat-oki
「パートはごみ扱い」…16年働いても最低賃金のまま 元ホテル調理場67歳
沖縄タイムス 1/31(火) 18:15配信
【連載「働く」を考える】
「おばあちゃん、16年も働いているのに時給が上がらないの? 高校生のアルバイトでも少しは上がるのに」
昨年6月まで、ホテルの調理場でパート従業員として働いていた伊礼洋子さん(67)は、高校2年の孫にそう言われたと苦笑いした。
勤めていたのは客室100室超、宴会場もある、地域でも名の通ったホテルだった。他に系列のホテルがあり、全体で200人超が働いていた。
周囲からは「いい給料もらっているんじゃないの」と言われたが、伊礼さんの時給は16年間、その年の最低賃金だった。
月の手取りは保険や税を引かれると9〜10万円台。ボーナスは年2回あったが、税引き後は合計3万円余りしかなかった。
入域観光客数が過去最高を更新し、好調が続く沖縄観光。伊礼さんのホテルでも外国人客が増え、「業績は上がっているはずなのに給料は変わらなかった」。孫たちが好きなチーズケーキの値段が上がったときは「物価は上がるのに、なんで給料は上がらないの?」と割り切れない思いがした。
伊礼さんは約10年前、調理師免許を取得した。自費で講習を受け、試験を受けた。ホテルから一緒に受けた正社員は試験に落ちたが、伊礼さんは合格した。会社に報告したが「パートは何の資格を取っても関係ない」と言われた。「パートはごみ扱い。頑張ったのに一切認めてくれなかった」。当時の悔しさを今でも覚えている。
■ ■
ホテルの朝食バイキングの準備や片付けをするのが伊礼さんの仕事で勤務は週5日、午前4〜11時。
自宅から職場までは5キロほどの距離がある。早朝は路線バスも走っておらず、通勤にはマイカーが必需品だ。約5年前に購入した軽自動車のローンが年に24万円、保険料や自動車税が3万円余りかかる。ガソリン代は月約1万円。数年ごとに車検代も出る。
車の維持費は大きな額になるが、会社から出る通勤手当は1出勤日当たり200円。本来かかるはずのバス賃にも満たない金額だった。
■ ■
伊礼さんは昨年、ホテルを退職した。勤務中に、料理長から「明日から来るな」と言われ、「解雇された」。会社側は「辞職の申し出があった」と主張。そこに至るまでの事実関係でも会社側と意見が対立した。伊礼さんは現在、不当解雇で裁判を起こす準備をしている。
夫と娘夫婦、孫たちと同居する伊礼さん。これまでさまざまな仕事をしてきたがホテルは最も長い職場になった。
「孫たちのためにも70歳まで働き、皆から、よく頑張ったね、おめでとうと言われて退職したかった」。だが、夢はかなわなかった。(文中仮名)(学芸部・高崎園子)
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あなたの働き方、教えて下さい
沖縄タイムスは、連載「『働く』を考える」に合わせ、働き方に関するアンケートをホームページで実施しています。あなたの働き方や不満、疑問に思っていることをお聞かせください。(※沖縄県内で働く人が対象です)
アンケートのページはこちら
672
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:03:24
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170201-00082284-okinawat-oki
けんかの始まりはいつも「お金がない」 夫婦共に働きづめ コンビニ・事務36歳
沖縄タイムス 2/1(水) 17:10配信
【連載「働く」を考える】
「夫婦げんかはいつも『お金がない』から始まる」。夫婦共働きで、仕事を二つ掛け持つ城間友子さん(36)はため息をつく。子ども2人を保育園に預け、週6日働いて得る収入は月10万円前後。夫婦とも非正規雇用で、稼ぎは合わせて月22万円ほどだ。
ホテルで契約社員として働く夫の収入だけでは足りず、知人の紹介で3年前、自宅から車で20分のコンビニエンスストアでパートを始めた。時給750円、1日5時間の週2日勤務。交通費は出ない。夕方には子どものお迎えがあるが定時に終わらず、母や妹に頼むこともしばしばだ。
■ ■
共働きしても、子どもが成長するに連れ、間に合わなくなった。勤務日数を増やそうにも、「時給の割に仕事量が多くて体力的につらい」と断念。別のフルタイムの仕事を求めて派遣会社に登録しようとしたが、「子どもがいるから」「定時には終わることはないから」と断られた。
昨秋、以前勤めていた会社とのつながりで、自宅近くの広告会社で事務の仕事を得た。時給750円で1日6時間半働く。コンビニは人手不足のため辞められず、広告会社に週4日勤務を願い出て、承諾を得た。週6日働きづめになるが「一つの仕事だけでは生活が苦しい」と思った。
共働きで、仕事を二つしても「余裕はない」と城間さん。夫婦の手取り月22万円から家賃6万円を引いた16万円で全てをやりくりしなければならない。光熱費、食費、子ども2人の通園料、車2台の維持費…。自動車税の支払い月や車検の時期にはまとまったお金が必要になるが、車がなければ仕事はできず、2台持たざるを得ない。
仕事帰りにスーパーで買い物をし、保育園に子どもを迎え、夕食から寝かしつけるまで慌ただしく過ぎる。「他のお母さんもそうかもしれないけど、子育てをしながら週6日働くと、時間の余裕も全くない」と話す。
■ ■
夫は朝早くから夜遅くまで働きづめ。城間さんは「こんなに働いているのに給料が低すぎるのが問題。契約社員なのでいつ切られるかわからない不安もある」と打ち明ける。
子どもが最近、水泳やピアノなど習い事に興味を示し始めたが、「『小学校に上がったらね』とごまかすしかない」という。「教育費はこれからどんどんかかるのに」と将来への不安も拭えない。
「できることなら一つの仕事で生活できるくらいの収入がほしい」と城間さん。「掛け持ちしないと生活できないって、沖縄は給料が安すぎると思う」(文中仮名)(学芸部・榮門琴音)
673
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:04:04
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170206-00082929-okinawat-oki
横柄な本社 「人件費を抑えるための沖縄なんだ…」 元カスタマーセンター33歳
沖縄タイムス 2/6(月) 17:10配信
【連載「働く」を考える】
「沖縄の人を下に見ているのか、カスタマーの仕事を下に見ているのか。東京本社の社員の態度にそんな意識が表れていた」。新城玲奈さん(33)は、一昨年末まで4年勤めた職場をこう振り返った。
県内に拠点を置く外資系金融関連会社のカスタマーセンターで金融商品の利用客からの問い合わせに対応する業務を担当した。商品開発を担う本社社員とは電話やメール中心の顔が見えない間柄のため、連携は不可欠。しかし、敬語を使わない、メールの返信が1カ月以上ない、新商品の詳細な説明がないこともよくあった。本社派遣の上司の態度も同様で「仕事を丸投げされた上に、軽くみられている」と感じた。
時給千円超のパートタイム勤務。福利厚生が手厚く、残業代も休日出勤の手当もついた。外資系らしいラフな雰囲気で、「県内の他のパートに比べたら働く環境は整っていた」。
一方、東京との給与格差を痛感した。新城さんの月収は基本給15万円に残業代や契約数に応じた成果報酬を加えた手取りが18万〜22万円なのに対して、ライバル会社が東京で募集していた同じ職種の基本給は23万円。「人件費を安く抑えるための沖縄なんだ」。本社社員の態度がふに落ちた。
■ ■
新城さんは本社社員や上司の言葉遣いへの不満を会社のコンプライアンス室に報告。さらに、顧客と接する沖縄のスタッフに商品やサービスの変更点を解説することや、業務全体の改善点を社内アンケートに記して提出した。「沖縄の人は陰で不満は言うのに、具体的な考えを言わないことが多い。意見が許されている場があるのに言わないともっといいように使われるだけ」と思ったからだ。
新城さん自身、意見を言えるようになったのは県内の大学院のゼミで本土や海外出身の教授、学生らと積極的に討論する場に恵まれたからだと考えている。
だが、大学院を卒業して最初に就職した県出身者が多く働く国の関係機関では、同僚がだらだらと働く雰囲気や男性優位の職場風土に耐えきれず意見すると、部内の上司から負担の大きい仕事を割り振られ、暴言を吐かれた。半年ほどで退職した。「声を上げる人をたたく空気があることも、沖縄の特徴だと感じる」
■ ■
外資系の金融関連会社が国内企業に吸収合併されたのを機に退職した新城さんは、その後1年間海外に留学。視野が広がり、現在は職種や県内外の地域を問わず、経験や働く意欲を発揮できる仕事を探している。「どんなに忙しくても、やりがいが感じられる仕事がしたい」。自分の可能性に期待している。(文中仮名)(学芸部・座安あきの)
674
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:04:30
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170208-00083260-okinawat-oki
「『ありがとう』の言葉だけが支え…」 命預かる仕事、見合わぬ給与 介護士37歳
沖縄タイムス 2/8(水) 17:10配信
【連載「働く」を考える】
「人の命を預かっていて責任も伴うのに、処遇が追い付いていない」。特別養護老人ホームで働く介護士の新垣翔太さん(37)は、賃金の低さに首をかしげる。夜勤を中心に週5日働いて手取りは月15万円だ。
入所者の食事・入浴介助やおむつ替えなど、体力も神経も使う。高齢者の体は軽くぶつけただけでうっ血するほど繊細だが、職場は慢性的な人手不足で、2人でやるべき入浴介助を1人でやることもよくある。
別の施設の介護士に聞いても同じような処遇で、「フルタイムで12〜13万円はざら」。人手不足で働き口を探すのは容易だが「他の所に行っても同じ」と割り切る。
■ ■
県外の介護士より手取りは10万円ほど少ないという。「介護報酬は全国一律で同じ仕事なのに、なぜこんなに違うのか。10万円はどこに消えているんだろう」
介護保険制度では、介護サービスの対価が全国一律で決められているが、人件費比率は施設の経営状況や地域の最低賃金に左右されるという。国の介護職員処遇改善交付金として、新垣さんは月1万円ほど受け取っているが、仕事内容に見合った給料にはほど遠い。
新垣さんは将来、看護師を目指している。学費をためるため、1年ほど前から空き時間に少人数の高齢者が共同生活を送るグループホームでも夜勤を始めた。
老人ホームで午後3時〜翌午前9時まで働き、帰宅して炊事洗濯掃除を済ませ、寝る。早めの夕飯を食べ、グループホームで午後5時〜翌午前9時まで働く。1日休み、これを繰り返す。平均睡眠時間は3〜4時間だが「平気になった」。
日勤もあるが、より給料のいい夜勤を多くこなし、手取りは合わせて20万円。在籍する老人ホームはダブルワークを認めていないが、伏せて働き続けている。
■ ■
ストレスを上手に発散しないと体力も気力も持たない。「権利なのだから取るのが普通」と年休を積極的に取るようにした。
新垣さんは「沖縄で働く人は権利に無頓着なところがある」とみる。「『働ければいいや』って何も言わない。中小企業が多いし、介護士の組合があるとも聞いたことがない」
「今は入所者の『ありがとう』の言葉だけでやっているようなもの。やりがいがあって働くのは好き。一つの仕事で生活できるようになって、もっとゆとりのあるケアをしたい」。それが新垣さんの本音だ。
国が推進する働き方改革に、「介護の人手不足やその人に合った働き方ができるようになれば」と期待している。(文中仮名)(学芸部・榮門琴音)
675
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:14:28
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170214-00084111-okinawat-oki
「最低賃金以下おかしくない?」 炎天下の立ち仕事、時給600円 駐車場係63歳
沖縄タイムス 2/14(火) 17:10配信
【連載「働く」を考える】
シルバー人材センターの会員である山田正彦さん(63)は、金融機関の駐車場案内係として働いている。
勤務は週3日、午前8時〜午後3時。70〜80台が止まれる駐車場で、客を空きスペースに案内したり、長時間止まったままの車があれば店舗に連絡したりする。このほか、駐車場やロビー、ATMコーナーの清掃も業務に入っている。
炎天下に立ちっ放しの仕事。4〜10月にかけての沖縄の暑さは特別で、アスファルトの地面は高温になり、汗だくで働く。
体力的にきついと感じる仕事だが、山田さんの時給は、県の最低賃金714円を下回る600円だ。昼食を除き実働6時間。1日当たり3600円と交通費460円を合わせた4060円が「配分金」としてセンターから支払われる。月に入るのは5万円前後だ。
山田さんは国家公務員として働いていたことがあるが、心を病んで退職した。年金は月8万円余りで、収入は配分金と合わせて13万円ほど。築20年以上の家賃3万5千円のアパートに住み、食費を切り詰めながら生活している。
センターの入会動機は山田さんのように「経済的理由」が5割近くで最も多い。
■ ■
「最低賃金以下というのは、おかしいんじゃないか」。山田さんはそう感じ、シルバー人材センターに問い合わせた。
シルバーの仕事は、発注者から受けた業務を会員に「委任」「請負」する就業形態で、会員は自らの裁量で働く個人事業主のようなもの。雇用関係が生じないため、労働基準法は適用されず、最低賃金の対象外。シルバーはもともと生きがいづくりなどが目的で、生計維持のために働く人を対象にしているわけではない-などの説明を受けた。
山田さんは労働基準監督署も訪れた。労基署でも、契約形態が雇用契約ではなく委任の形のため、労基法や最低賃金法は適用されず、労基署が行政指導することはできない、と言われた。
■ ■
山田さんはセンターを通して、金融機関にも委任料を上げるよう求めたが、断られた。
労働法を勉強し、個人事業者か労働者かは契約の形式ではなく、労働関係の実態で判断されると専門家が指摘していることを知った。
「同じ業務で、警備会社なら最低賃金以上が支払われるはずだ。僕らは一定時間拘束され、業務内容も決まっている、紛れもない労働者。実際の労働実態を見て対価が支払われるべきだ」と訴えた。(文中仮名)(学芸部・高崎園子)
676
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:16:40
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170215-00084284-okinawat-oki
「休憩すると給料減る」実働11時間、食事も早々 タクシー運転手63歳
沖縄タイムス 2/15(水) 17:35配信
【連載「働く」を考える】
「休憩すると給料が減るからね」。タクシー運転手の金城勉さん(63)は、食事もそこそこに長時間、ハンドルを握る。3日夜勤に出て1日休む生活を続けて12年。休日返上で働くこともあり、月25日出て手取りは17万円程度だ。
夜勤は午後5時〜翌日午前5時の12時間。労働基準法は労働時間が6時間を超える時は45分以上、会社の就業規則でも12時間内に4時間の休憩を定めているが、金城さんは「1時間も休んでいない」と打ち明ける。
週末には多い時で25〜30回、客を乗せる。走行距離は一夜で約200キロ。食事は車内で弁当を食べるか、食堂で早々と済ませる。こうした休憩は1時間足らずで、実働は11時間に及ぶ。
■ ■
ところが、「会社の日報では4時間休んだことになっている」。売り上げのうち運転手が受け取る割合は地域や会社によって異なり、首都圏では65%の所もあるが、金城さんは50%前後。売り上げが1万6千円なら給料は8千円で、10時間で最低賃金すれすれになる。会社が実態通り「11時間」と書けば、割る日が出てくる。
金城さんは「会社が労働時間を削って、最賃割れしていないように見せかけている」と指摘する。
働き始めて2年ほどたったころ、「おかしい」と気付き、日報とは別に自分で労働時間を記録し始めた。客が乗り降りするたび、時間と場所を書き留める。会社が給与明細に記した労働時間と比較すると、「一目瞭然」という。
長時間労働は常態化し、「仕事終わりには頭がふらふらする」。健康診断では毎回、中性脂肪や血圧でひっかかるようになった。「前のホテルの仕事ではなかったことなのに。不規則な生活が原因だと思う」
■ ■
それでも売り上げは伸びない。「自家用車もレンタカーも増えて客が減った」と感じる。1カ月当たりの年金は4万5千円。「これでは家賃も払えない。年金だけで生活するのは絶対無理」とハンドルを握り続ける。
年金だけでは足りず、定年退職後に運転手として働き始める人は多いという。職場の平均年齢は60歳に近く、最高齢は75歳。慢性的な人手不足で、「会社もよっぽどのことがない限り雇う」のが現状だ。
同僚の中には、午前7時〜午後5時の日勤後、午前0時まで残業し、翌朝また出勤する者もいた。「売り上げが下がれば運転手から搾取する。殺人的なスケジュールで働いている人がいっぱいいる。人を乗せているという責任があるのに」。疑問が拭えない。(文中仮名)(学芸部・榮門琴音)
677
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:17:06
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170220-00084932-okinawat-oki
「どこまでも追い込むのか」工場と主従関係、旧態然 ダンプ運転手47歳
沖縄タイムス 2/20(月) 17:35配信
【連載「働く」を考える】
10トンダンプの運転手をして20年以上の上原正人さん(47)は生コン工場の会社からコンクリート資材の運搬を請け負う個人事業主だ。工場側から1トン当たりの運搬単価が設定されていて、1日にどれだけ運搬できるかが収入に直結する。
本部町の採石場と那覇市の工場を1日2往復した日当は3万4千円。20日間仕事があれば、ガソリン代などの経費を除いた月収は40万〜50万円ほどになる。しかし、これには規制量を超えて資材を積む法令違反の「過積載」をした場合、という前提がつく。
■ ■
2013年秋、上原さんの月収は10万円を切り、4分の1になった。「ダンプ過積載常態化/生コン工場から『指示』/運転手『断ればクビ』」。13年8月22日の沖縄タイムスにこんな記事が掲載された。公共工事が減る中、建設業界が生コン会社を買いたたき、生コン会社は採算が合わずダンプに過積載をさせるという構図が報道で浮き彫りになった。重量超過で車体はブレーキが効きにくくなり、タイヤの消耗も早いが「だましだまし使っている」危険な状態だった。
上原さんはその問題の渦中にいた。中古でも600万円前後する車両のローン返済に加え、年40万の車検など維持費がかかる。運搬の単価は県が公共工事で見積もる単価の約半値だったが、過積載することでどうにか収支を保っていた。
問題発覚を機に、約50人のダンプ運転手が団結。過積載なく収入を確保できるよう単価引き上げを要求した。ダンプの労働組合を通して交渉を重ね、工場側は1トン当たり200円の単価引き上げに応じた。
だが、その間に工場側はダンプに代わる運搬手段を確保しようとトレーラー業者と契約。1台当たりのダンプ運搬はそれまでの1日2往復から週1〜2往復に激減した。「会社に盾突いたことへの報復に感じた」
■ ■
運転手仲間の多くは、別の工場に仕事を求めた。だが、先回りした工場側がバイト先に運転手名を挙げ「仕事をやるな」と“布令”を出していた。「工場の経営者一族は高級車や豪邸をたくさん所有し財を築いている。それなのに、苦しい俺らをどこまでも追い込み、殺すつもりなのか」。あまりに冷たい仕打ちに、ぼうぜんとなった。
生活が苦しくなった運転手が次々とダンプを手放していく中、上原さんは公共工事や別の民間工事でなんとか食いつないできた。「工場とダンプの主従関係は昔から変わらない業界の体質。弱い立場の運転手がまとまって条件改善を訴えていかないと、体質は変えられない」。業界の不条理に、声を上げ続けていく覚悟だ。(文中仮名)(学芸部・座安あきの)
678
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:18:17
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170222-00085295-okinawat-oki
膨大な仕事量「頭が常にパンパン…」 買収先も驚く給与の低さ 映像配信会社45歳
沖縄タイムス 2/22(水) 17:05配信
【連載「働く」を考える】
「いくら給料がよくても、東京ではもう暮らせない。沖縄の安い賃金で、我慢するしかないのかな」。九州に本社を置く動画コンテンツ配信会社の沖縄支社に勤務する安谷屋尚吾さん(45)は膨大な量の業務を目の前に、ふとそんな徒労感にさいなまれる。
東京の大学を卒業後、アクセサリーの企画販売会社の経営に関わった10年間を含め、20年以上東京で過ごした。3年前、70代の両親の要望で帰郷した。本土の友人は親のために退職したことに驚いたが「自分にとっては自然なこと。放っておけないから仕方ない」。求人広告から比較的賃金がよさそうなこの会社を選んだ。
■ ■
全国約700軒のホテルに映像を配信する事業で、配給会社から買い付けた動画データを各ホテルの仕様に合わせて書き換え、処理する業務を担当している。沖縄の正社員は安谷屋さんとシステム管理者、ウェブデザイナーの3人。毎月新規に送られてくる映像は100本以上で、「頭が常にパンパンの状態。胃をやられてしばらく通院していたこともある」。前任者はうつを患って辞めた。
勤務は午前9時〜午後6時。日ごろ2〜3時間ある残業は締め切りが迫るとそれ以上になり、休日出勤することも少なくない。残業代はなく、月給は手取りで約20万円。一度だけ、残業申請を提出して残業代が支払われたことがあったが、出張で沖縄に来た本社の上司から「だれも残業申請なんか出さないから」とくぎを刺された。
「全国のホテルの映像配信をコントロールしているという自負がある。けれどこの給料じゃ割に合わない」。経営者の縁故者だった前任者の月給が30万円だったことを後で知った。「現地採用された自分は沖縄の相場に合わせて安く使えると思ったんじゃないかな」。何度も上司に賃上げを訴えたが、聞き入れられなかった。
■ ■
以前いた東京の会社では東南アジアから天然石などの材料を仕入れてアクセサリーをデザインし、小売店や通販ショップ向けに販売していた。月給は20万〜70万円。波はあったが、楽しくて苦にならなかった。一方で「自分の根っこは沖縄の人。もう東京のせわしい環境には戻れない」と感じている。暮らしていくと決めた沖縄で「会社の待遇にぜいたくは言えないのかな」とため息をつく。
映像配信会社は昨年、大手企業に買収され、事業効率化のため、沖縄支社は今年末頃の閉鎖が決まった。「仕事を失うことになるけど、安く使われる作業から抜け出せる」。ほっとしたのが本音だ。安谷屋さんの給与の低さに驚いた買収先の幹部が賃金を引き上げる条件で東京転属を打診してきたが、受けるつもりはない。沖縄でも、ものづくりに関わった以前の経験を生かせる仕事がないか、アンテナを張る日々だ。(文中仮名)
(学芸部・座安あきの)=月-水曜日掲載
679
:
チバQ
:2017/03/06(月) 20:22:51
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170306-00087192-okinawat-oki
会社は「残業するな」「事故を起こすな」と言うけれど… 元郵便配達員63歳
沖縄タイムス 3/6(月) 17:10配信
【連載「働く」を考える】
「果たしてこれは人間的な労働だろうか」。2年前に郵便局を退職した照屋一夫さん(63)は、大学ノートに目を落とし、ため息をついた。当時の働き方の問題点が細かく書き留められている。今も、「若い人がつぶされていないか」と気をもむ。
郵便局に38年勤めたが、2007年の郵政民営化以降、働き方に違和感を覚えた。
業務が増え、激務で離職者が相次ぎ、残った社員の業務が増える-の悪循環。郵便物の配達と集荷に販売ノルマが加わり、心身共に疲れ切った。
■ ■
始業は午前8時。朝礼が終わると、駐車場でバイクの走行訓練が始まる。「ただでさえ時間がないのに」と焦りながら、荷台に砂袋を積み、直線やS字カーブをゆっくり走らせる。うまくできず、配達の出発時間が遅れる人もいた。「とにかく無駄が多かった」
終業の午後5時15分まで、配達と集荷を同時にこなす。配達と一口に言っても、はがきや速達、転送など種類は多岐にわたり、時間がかかる。少しでも時間を確保するために、食事はコンビニエンスストアのおにぎりで済ませ、10分足らずで仕事に戻る。それでも間に合わず、翌日に持ち越すことはざら。残業は「自己責任」で、3時間でも1時間分しか出なかった。
販売ノルマも大きくのしかかった。ギフトパック1箱3千円を月3件、年賀状やゆうパックの販売も合わせると、年間20万円のノルマが課された。ペナルティーはなかったが、「無言の圧力があって会社にいられない」。自腹を切ってノルマを達成する「自爆営業」は当たり前で、照屋さんも10万円出したことがある。「年間20万円は正社員の1カ月の手取りに相当する。自爆営業したら1月分が丸々なくなる計算だ」
■ ■
焦りから業務中の事故も相次いだ。照屋さんはバイクの転倒で骨折し、労災を申請した。しかし、申請すると「給料が下がる」「くびになる」と思い込んで諦めたり、週休2日と年休20日をつなぎ合わせて療養したりする人もいた。「会社は『残業するな』『事故を起こすな』と言うが、物理的に無理がある。忙しくて焦るから事故になると訴えたが、駄目だった」
激務に耐えかね、再就職先も狭まる50代前半で辞める人を見るたび、「無念だった」という。退職後の今も、照屋さんのもとには後輩が相談に訪れるという。「体がもたない」「家族がいるから辞められない」。体も心も疲弊した後輩を見ていると、過労自殺した電通社員のことを思い出す。
「健康と引き換えの労働とは何なのか」と照屋さん。「社員をぎゅうぎゅうに締め付けるのではなく、働き方を変えなければ問題は解決しない。働く場がこのような状況で本当にいいのだろうか」(文中仮名)
(学芸部・榮門琴音)=月〜水曜日掲載
680
:
チバQ
:2017/03/07(火) 19:14:38
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170307-00000062-mai-soci
<不利益変更>時給、突然引き下げ…拒否したら出勤停止
毎日新聞 3/7(火) 15:00配信
<不利益変更>時給、突然引き下げ…拒否したら出勤停止
調理師の男性に対し店側が送ったLINEの一部=男性提供
◇事例、相次ぐ
居酒屋やアパレル業界などで、店側が人手不足の時期に高い時給で雇った有期雇用の労働者に対し、一方的に時給の引き下げや勤務日数を減らす「労働条件の不利益変更」を強いる事例が相次いで報告されている。労働組合は「弱い立場につけ込み、悪質だ」と指摘する。【早川健人】
東京都多摩地区の調理師の男性(42)は昨年11月末、求人サイトを見て、同地区の大手居酒屋チェーン店と時給1600円で今年3月末までの「準社員雇用契約」を結んだ。正社員の料理長は「年末年始の繁忙期は時給1200円で募集しても人が集まらなかった」と言い、男性は大みそかも元日も勤務した。
今年1月7日になって、料理長は「本部が2000万円の赤字を出したので、時給を9日から950円に下げさせてほしい」と言ったが、男性は「約束が違う」と拒否して働き続けた。すると、料理長から同28日朝に「突然ですが、人件費が収まらないです。今月は働いてもらうことができなくなりました」と無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡があり、同31日まで4日間決まっていた出勤を断られた。
料理長に「その気がありましたら、来月(2月)もお願いしたい」と時給950円での勤務を頼まれたが、男性は断った。男性は「あまりに一方的。高時給で釣って、賃下げする予定で募集したのではないかと疑いたくなる」と憤る。
労働組合「総合サポートユニオン」には、同じ居酒屋グループの別の店で働く40代女性から「店に『ランチ営業をやめるので、時給1500円を950円に変更する。同意するか、退職か』と言われ、やむなく同意した」という相談が寄せられた。ランチタイム勤務は短時間のためバイトが集まりにくいが、女性は高い時給にひかれて応募した。この店は女性の時給引き下げ後も、ランチ営業を継続しているという。
◇居酒屋運営会社「同意得ている」
居酒屋グループの運営会社は、毎日新聞の取材に「同意を得ずに不利益変更したことはない」としている。
労働契約法は「使用者は、労働者と合意することなく、労働者の不利益に労働条件を変更できない」と規定する。だが、同ユニオンによると、「不利益変更」に関する相談はアパレル業界でもあるという。同ユニオンの池田一慶さん(37)は「法律に詳しくない人は雇い主につけ込まれるが、労働契約法に基づいて損害賠償の請求もできる」と話し、相談を呼びかけている。
681
:
チバQ
:2017/03/08(水) 21:34:47
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170308-00087523-okinawat-oki
「最低賃金以下だったんですよね…」 働く意味を考えたコンビニ、時給664円 大学生22歳
沖縄タイムス 3/8(水) 17:10配信
「最低賃金以下だったんですよね…」 働く意味を考えたコンビニ、時給664円 大学生22歳
当時の給与明細を見ながら「最低賃金以下だったんですよね」とつぶやいた
連載「働く」を考える
「最低賃金以下ですね」。大学4年生の平良美咲さん(22)は、アルバイトをしていた大手コンビニエンスストアの給与明細を握り、つぶやいた。働いていた2014年度の沖縄県の最低賃金は677円のはずだが、給与明細には前年度の最低賃金、「664円」とある。「おかしいと思っていても言えなかった」
生活費に充てるため、土日を含む週3日、午後5時から4〜5時間のシフトに入った。バイトを始める際、口頭で簡単な説明はあったが、労働条件通知書はなかった。大学の掲示板で「最賃677円」のポスターを見て、「最賃より低い」と知った。
■ ■
定時に帰れず、夏休みに22日連続出勤になったこともあったが、「給料がどれくらいになるか楽しみだな」と期待を膨らませ、働いた。ところが、月末になると店主が「時間調整」と称して実働時間を削ってきた。平良さんは「明らかに130時間は働いたのに、給与明細では106時間に書き換えられていた。働くって何だろうと思った」と振り返る。
深夜手当や時間外手当も一切なかった。クリスマスにはケーキ、節分には恵方巻きの購入ノルマがあった。シフト終わりのレジ点検で金額に誤差があると、帳尻合わせで自腹を切るルールもあり、多い時には2千円出した。5時間働いて得られる給料3320円から引けば、そんな日は1680円しか稼げなかったことになる。
平良さんは「ブラックバイトだと思うけど、だんだんまひしていった。労働に関する知識がなくて、言っても言いくるめられると思っていた」と話す。
■ ■
別のコンビニでは、安い時給でも学費を稼ぐために昼夜働き、講義に出られなくなって退学した学生がいたと聞いた。多くの学生が奨学金をもらっていて、借金を抱えて社会に出る。「勉強に専念できればいいけど、学費や奨学金を返済するために貯金している人もいる。働かないと学校に通えないし、生活できない人もいる」と打ち明ける。
バイトを始めて半年たったころ、「留学するので辞めたい」と前もって店に伝えたが、慢性的な人手不足で引き留められ、「代わりの人を探してきて」とも言われた。希望退職日の2カ月前だったが、「早く言って」と叱られた。結局、辞めるまでに3、4カ月かかった。
「口に出して就活に影響したらどうしようと不安があった。今なら異常だと思うことも、働いている時は気付かない。そうやってバイトしている学生は多いと思う」と平良さん。春には社会人になる。「後味は悪かったけど、働き方に目を向けるきっかけになった。頑張れば評価してくれる場所で働きたい」と思っている。(文中仮名)
(学芸部・榮門琴音)=第1部おわり
682
:
とはずがたり
:2017/03/09(木) 20:07:33
2016-09-28
【リアルでガチなレポート】年収600万円サラリーマンが住宅ローン3000万円借り、子ども3人を育てる暮らし
http://www.sekkachi.com/entry/income600_3chilldren_loan3000
2016-10-12
平均的な世帯年収500万円で、平均的な暮らしはできるのか?
http://www.sekkachi.com/entry/Ave_income_Ave_living
683
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:18:48
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170225-00119219-diamond-soci
白骨化遺体に結核蔓延…西成あいりん地区ホームレスの絶望(上)
ダイヤモンド・オンライン 2/25(土) 6:00配信
入院患者が路上で酒盛りする姿も見られる西成「あいりん地区」。はたからは自堕落に見えるだけの光景だが、ホームレスたちや、彼らを支援する行政、NPO関係者から話を聞いていくと、貧困ゆえに社会生活を営む上で最低限の知識すら身につけられていない彼らの哀しみと絶望が垣間見えた。(写真・文/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
● 点滴しながら酒をくらう 酒は西成住民の必需品
「わいらにとって酒は万能の薬なんや!なんか文句あるんかい!!」――。
大阪・西成「あいりん地区」の玄関口ともいえる場所にある「あいりん労働福祉センター」。地元民の間では“センター”と呼ばれるここには、病院も併設されている。
平日の日中、記者がこの辺りを歩いていると、この病院に入院中の患者と思しき人たちが車椅子に点滴を携えて路上で“酒盛り”しているところに出くわした。
「(酒を飲んでも)ええんですか?ご主人、入院中とちゃいますの?」と声掛けすると、そのなかの1人から、「なんやオノレ?行政か、医者か?堅いことゆうとったらシバキ廻すど。アホンダラ!」と、早速、「西成」ならではの“洗礼”を受けた。
もっとも文字にするとキツく聞こえるこの言葉も、標準語に訳すと、「あなたはどちら様でしょうか?行政関係者、それとも医療関係者です?あまり堅いこといわないでくださいね」という意味である。「シバキ廻すど」や「アホンダラ!」は、「こんにちは」「お元気ですか?」などの挨拶に相当する親しみを込めた言葉だ。
684
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:19:09
なぜそう言い切れるのか。彼らから、「まあ、一杯」とばかりにワンカップ酒が記者に手渡されたからだ。記者に洗礼をしてくれたのはユタカさん(66)。西成での酒について、早速講釈が始まった。
「ここ西成ではな、風邪引いたら喉を酒で消毒する、病気して痛みがあれば酒をかっくろうたら体中、消毒できるがな。怪我してもキツめの酒飲めば一発で治るんや……」
たしかに、西成と酒は、切っても切れない関係にある。早朝8時から開店している居酒屋もあるし、至る所にアルコールを扱った自動販売機が設置されている。その周囲では、簡易宿泊所(ドヤ)で寝泊まりすることもできない日雇い労働者たちが酒を呷って、そのまま路上で寝ている。
● “訳あり”の路上生活者 西成の死亡率はダントツ
「このおじさんにとってはお酒を飲んで路上で寝ている時こそ天国なのでしょう。起きてお酒が切れたら地獄でしょうから」
西成のメインストリーム「三角公園」近くの路上で寝ている60年配の男性を見回っていた、ホームレス等の支援活動をしているシスターはこう語った。
もはやアルコール中毒患者といってもいい人たちが、この西成には数多くいるとされている。だが大阪府・市などの行政や支援NPO関係者の間でも、その正確な数字はわからないという。
「西成で暮らす人たちと一口に言っても、そもそも彼らの多くは全国の建設現場などを廻っている人たち。移動が多い彼らの状況を把握するには無理がある」
西成事情に詳しい大阪市関係者はこう前置きし、続けて次のように語った。
「もちろん西成に住み着いている人もいる。ただ、それは長年、西成で商売を営んでいる人、自宅がある人、もしくは生活保護受給者といった人たち。こうした人たちの状況は把握できる。でも、それ以外の路上生活者については、アルコール中毒者の人数や、その健康状態を把握することが非常に難しい」
無念といった表情で前出・大阪市関係者は語る。西成の路上生活者の多くは、みずからの氏素性を語りたがらない“訳あり”の人たちなのだ。そんな彼らは、行政はもちろん、支援NPOにすら自身の経歴を嘘偽りなしに話すことはない。
だが、実態の解明が難しいこの西成に居つく日雇い労働者やホームレスの人たちの「病」について、ひとつのヒントをこの大阪市関係者から得られた。
「西成区の死亡率は他の大阪市各区に比べても断トツに高い。その死因と医療関係者、そして当の日雇い労働者やホームレスたちの生の声を聞けば何かが見えてくるかもしれない――」
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● 亡くなっても発見されず 白骨化やミイラ化遺体も
この大阪市関係者のヒントをもとに、大阪市西成区の死亡率や死因に当たってみた。
事実、「あいりん地区」を擁する西成区の死亡率(人口千人あたりの死亡数)は、2013(平成25)年時点で21.1‰、第2位の大正区の12.9‰と比べるとその約2倍という高さだった(大阪市調べ)。1位の西成区、2位の大正区、ともに住民の高齢化が著しく、生活保護受給率も他の大阪市各区に比して高い区だ。経済苦と病、そして死は、やはり密接な関係にあるのかもしれない。
その西成区での死因は、男女とも1位はがん、2位は心疾患、3位は肺炎、4位は脳血管疾患となっている。さらに10位以内には高血圧性疾患、肝疾患といった疾患のほか、自殺、不慮の事故などが並ぶ。
地元医療関係者によると、このうち「不慮の事故」とは、事故死ではなく餓死や凍死を指すのだという。
生活保護受給者や、地元支援NPOといった支援団体などセーフティネットの網にかかっている人ならば、誰かが声掛けをする。だから何らかの疾病を抱えていても、その発見が早く、死には至らないことも多い。
しかし、そうではない日雇い労働者やホームレスの場合、誰も声掛けする者がいない。だから、病気の発見が遅れることはもちろん、亡くなった場合もすぐには発見されないのだという。
「ご遺体となって発見された場合、多くは腐敗が進んだ状態です。白骨化したのものも珍しくはありません。まれにミイラ化された状態での発見もあります」。こう語る医療関係者は、その発見が遅いのは生活保護受給や地元支援NPOとの繋がりがないだけでなく、家族との縁が薄いという事情もあると話す。
「彼らの多くは40代から60代の独身男性です。そのうち約6割ないし7割弱が婚歴なし。残りはその回数を問わず離婚経験者。行政や支援NPOはもちろん、家族とも連絡を取っていない。声掛けする人もいないので、こうした状態での発見になるのです」
685
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:33:47
http://diamond.jp/articles/-/119309
2017.2.25
白骨化遺体に結核蔓延…西成あいりん地区ホームレスの絶望(下)
秋山謙一郎 [フリージャーナリスト]+
死期を悟った路上生活者の
不思議な行動
だが西成は都会のど真ん中。路上生活をしているなら、腐敗が進んだ状態、もしくは白骨化での発見というのは、どこか腑に落ちない。これについて前出・地元医療関係者はこう解説した。
500円、800円といった格安ドヤ(簡易宿泊所)すら、一部の人にとっては贅沢。死ぬときくらい…そう考える路上生活者も少なくないという
「人目につかない路上、もしくはドヤに長期間滞在している人たちです。もっとも西成には1泊500円からドヤがありますから。カネを少し貯めて1ヵ月程度、ドヤに宿泊して、そのまま亡くなるという話はよく耳にするところです」
カネがなく、人目につく路上生活のほうが、いざという時、毎日見回りを行っている支援NPOや行政、消防といったセーフティネットの網にかかりやすい。だが、なぜか亡くなる直前に路上生活から足を洗い、ドヤに住む人が少なくないのだという。
自らの死期を悟ってのことなのだろうか?それまで路上生活をしていた人が、無茶なスケジュールを組み、働き、収入を貯めるようになると、「ちょっとアイツ、大丈夫か?」(地元ホームレス・60代)と、日雇い労働者やホームレスたちの間で話題になるという。
前出・医療関係者が続けて語る。
「死ぬときくらい、畳の上で死にたい……本能的にそうさせる何かがあるのかもしれませんね。彼らの多くは発見時の所持金は1000円以下。死因は心疾患、肝硬変、肺炎が主なところです。日頃の不摂生にもかかわらず適切な治療を受けず、酒を呷っていたことがわかるご遺体もありますね」
さて、そうした大阪市に住民登録がない日雇い労働者やホームレスの人たちは、実年齢を聞くと10歳から20歳くらい上に見える人が多い。これは背が低く、歯が欠けている人が多いからだろう。地元支援NPO関係者が声を荒げる。
「子どもの頃から栄養を摂っていないからです。ちなみに彼らのなかで高卒者はほとんどいません。中卒ばかりです。40代でもそう。貧困家庭に生まれ育ち、ロクな教育機会、医療機会に恵まれず、社会とはいえない就労の場に出た人たち――そんな彼らにとって最後に行き着く場所、それが“西成”なんです」
被害に遭っても「酒で治す」
貧困家庭出身者の絶望
路上で寝ている日雇い労働者やホームレスにバットで襲い掛かる、火を放つといった、心なき者たちもいる。だが、被害者である路上生活者たちは病院を受診することもなければ、警察に被害を届けようともしない。
病気や怪我をしても、しばらく休むことしか考えられない路上生活者たちも少なくない。重症化すれば打つ手がなくなり、危険だ
「病院に行くという発想がないからです。だから怪我をしても患部に酒を吹きかけて、そのまま日雇いに出ようとする。あるいはしばらく休んで自然治癒を待つのです。早い段階で保護されれば、まだ手の打ちようはあるのですが、人目を避けた場所に隠れられて重症化すると、もう打つ手なしです」(大阪市関係者)
警察への届け出をしないのは、身元を明かしたくないという理由と、こちらも病院への受診同様、「そもそも警察に相談するという発想がない」(前出・同)という事情が大きい。
そのため骨折や火傷の後遺症が残ったまま、就労を余儀なくされる日雇い労働者やホームレスもいるくらいだ。そんな彼らにとっての憂さ晴らしは「酒」に尽きる。やがて、その度を超えた酒量が体を蝕んでいく。
ともすれば、自堕落な生活の末に、酒に溺れて……と見られがちな「西成」と「酒」の関係。しかし、舞台裏を取材すればするほど、生まれ落ちた瞬間から貧困に苦しんできた彼らの絶望が浮き上がってくる。
「彼らの事情を聞くと、酒に走る気持ちもわからなくはないのですが…。それでも度を超えた酒量は体のことを考えると看護師としては止めなければなりません」(地元病院・看護師)
686
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:34:14
今、「西成」に携わる行政、医療関係者の間で、酒以上に深刻な問題として捉えられているのが「結核」である。
厚生労働省の「結核新規登録患者数・罹患率」や医療関係者が持つ資料によると、2014(平成26)年、新規登録患者数は全国で1万9615人、国内での罹患率は15.4だった。都道府県別では大阪府が1位、大阪市の新規登録患者数は988人、罹患率は36.8と国内罹患率を大きく上回っている。
もっともこの大阪市の新規登録患者数と罹患率は、西成「あいりん地区」に限ると、新規登録患者数は99人、罹患率は383.7と驚異的な数字を示す。これでも多少マシになった方で、2010年には600を超えていたし、それ以前には700を超えていたという。
“訳あり”な人が頼る
3人の闇医者
西成「あいりん地区」に結核が蔓延するのには理由がある。前出・地元医療関係者が語る。
現実生活の痛みを忘れるのは酒が一番――自販機のそばで眠る人たちの心には、そんな絶望が隠れているのだろうか
「栄養状態が良くなく、生活が不安定、かつ日雇い労働者として建設現場やシェルターといった場所での共同生活の場での寝泊りの機会も多い。それで結核が蔓延しやすい」
咳、痰、微熱が長く続く結核の症状も、「医療機関で診察を受ける」という習慣のない日雇い労働者やホームレスたちならば、「泥棒市(詳しくはこちら)で風邪薬でも買おうかいな…」で済ましてしまう。これが症状をさらに悪化させ、感染を拡げていく。
もっとも早朝に路上で商われる「泥棒市」でも、風邪薬の代金は500円から1000円程度と、彼らからすると決して安い値段ではない。その額を薬代として出費するくらいなら、「酒でも飲んだほうがマシやで!」(地元ホームレス・本人によると50代)というのがもっぱらの声だ。
これではとても真っ当な医療を受けることは考えられない。
病気や怪我が重症化した場合、 “訳あり”の人は窮地に陥る。正規の医療機関では身元を明かす必要があるからだ。それができない彼らが頼るのが、「闇医者」だ。
地域住民らの話によると今、あいりん地区には3人の闇医者がいるといわれる。この闇医者は、かつて医師免許を持っていたが何らかの事情で医師免許を剥奪された元医師や、現役医師がこっそりと医業を行う2つのケースにわかれる。どちらも医者としての腕は確かだという。
だが、この闇医者への受診は、諸説あるものの、「薬代込みで1回の診察で1万円。手術が必要となれば5万、10万円という単位で受診料は変わってくる」(前出・地元ホームレス)というから、経済的に逼迫している日雇い労働者やホームレスの受診は難しいのが現状だ。
「たとえ保険証がなくとも『無料低額診療』という制度がある。体調が良くないと思えば、すぐに病院に駆け込んでほしい」(大阪市本庁係長)。行政側とて、ただ現状を放置しているわけではなく、こうした対応メニューを用意している。しかし、行政や地元支援NPOですら把握が困難な、住民登録をしていない日雇い労働者やホームレスにこの声ははたして届くのだろうか。
社会の片隅で身元を隠しながら生きている、あいりん地区の“訳あり”住人たち。生まれた環境ゆえに十分な教育も社会性も身につけられなかった彼らに対しては、ただ支援メニューを作るだけでは到底役に立たない。それでも日々、彼らに支援の手を差し伸べる関係者たちの努力には頭が下がる思いがした。
あいりん地区の問題は、日本が抱える貧困問題、それも最底辺の人たちの窮状に他ならない。貧困問題を放っておくと、どういった事態になるのか、政治家たちにも目を向けてもらいたいと強く感じた。
(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
687
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:34:56
http://diamond.jp/articles/-/115782
2017.1.28
500円売春に不正入手薬…西成あいりん地区の貧困とカオス(上)
秋山謙一郎 [フリージャーナリスト]+
路上生活者たちが大勢集う大阪市西成区の「あいりん地区」。年末年始、真冬の寒空の下でも、多くのホームレスたちが暮らしている。彼らの暮らしぶりは、どのようなものなのだろうか?(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
ブルーシート暮らしが
許されるのは特権階級!?
大阪市西成区北部にある「あいりん地区」。通称・釜ヶ崎、または“西成”とも呼ばれるこの一帯は、寒風吹きすさぶ真冬であっても路上生活者たちがそこら中にいる。
路上暮らしには、どこに布団を敷くかなど、“住民”同士の暗黙のルールがある。西成ならではの秩序があるのだ (写真:秋山謙一郎、以下同)
人が寝ている路上には、乾いた吐瀉物、未だ乾いていない立小便の跡、そして明らかに人のものと思われる糞便があちこちにある。辺りには、これらにアルコールとタバコが入り混じった、むせぶような匂いが立ち込めている。
数年前に比べると随分と薄くなったといわれるその匂いは、鼻腔と喉の奥からしばらくの間、取れることはない。何度すすいでも丸一日残っていた。もちろん服にもこびりつく。記者の場合は2度洗濯してやっと取れたくらいである。だが今、その時着ていた服を見る度に、あの「西成の匂い」が鼻腔の奥から蘇ってくるのが不思議だ。
“西成”は、大阪の新名所・あべのハルカスのあるJR「天王寺」駅から、大阪環状線外回りに乗ること約2分、一駅目のJR「新今宮」駅西口を降りてすぐだ。日雇い労働者や路上生活者の求職の場である「あいりん労働福祉センター」や簡易宿泊所がある。今では随分と整備され、その街並みはかつてとは比べ物にならないほど綺麗になったという。それでも、一歩足を踏み入れると、まるで中学校の歴史の教科書に出てくる「戦後すぐの日本」のような光景が目に飛び込んでくる。
ブルーシート暮らしは、ベテランのみに許される特権だ
公園に目をやればブルーシートで作られたねぐら、路上で布団を敷いて寝ている人、酒盛りをする人、ゴミを漁って食料を求める人、仕事を求める人…、とても平成の日本の今とは思えない。
このうちブルーシートのねぐらに暮らせるのは、長年、西成で暮らす“ベテラン”のみが許される特権だという。路上で暮らすにしても、どこに布団を敷くか、暗黙のルールがある。従わなければ「身ぐるみ剥がれても文句は言えない」(路上生活者・50代)のだそうだ。
熟女AVから児童ポルノまで
泥棒市のカオス
そうした西成ならではの“秩序”に従えない者が、「(生活)保護に日和る」(前出・路上生活者)のだという。そのため、このあいりん地区では生活保護受給者は侮蔑の対象となっているという。
泥棒市に並ぶ衣類や靴はどれも中古品ばかり。児童ポルノや不正入手した医薬品も売られている
労働者と路上生活者の街・西成の朝は早い。早朝4時頃、住民の間では“センター”と呼ばれる「あいりん労働福祉センター」脇の路上では露店商が所狭しと並んでいた。かつては、「もっと大勢の露天商がいた」(地域で暮らす路上生活者・60代)というが、今では行政や警察による取り締まりもあってか、その数はめっきり減ったという。
この露天商は、「昨日奪われた服を、今日売っている」という、冗談とも本気ともつかぬ戯言から、“泥棒市”と呼ばれている。ここでは労働者の街らしく作業着や作業用ヘルメット、安全靴といった建設道具各種のほか、洋服、靴、時計、CDにDVDなども売られていた。
地域住民によると中古車が売られていることもあるという。露天商の1人に写真撮影はいいかと尋ねると、真顔で「100万円出せ」と言う。もし隠し撮りがバレると「誰かにボコボコにされるで!」と忠告された。周囲の人たちも黙って頷く。
そんな泥棒市を廻っていると露天商の1人から声をかけられた。
「お兄ちゃん、DVDどうや?若いのは高いけど熟女やったら1000円でええで!」
手作り感溢れるそのDVDには、「綾乃・71歳」というタイトルが付けられている。「若い子のないの?」と記者が問うと、その露天商は心なしか困惑した表情を浮かべ、「ちょっと高いで…」と言いながら鞄の中からDVDを取り出す。「2500円や!」と露天商は言う。
そのタイトルは、「こころ・10歳」と書いてある。あきらかに10歳前後と思われる女児の全裸写真がDVDに貼り付けてあった。これは違法DVDではないか。記者がそう問うと、この露天商は記者に諭すような静かな口調でこう言った。
「ここに法律なんてあらへんわ。堅いことゆうたらあかん。ストレス溜まるで!」
688
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:35:23
泥棒市では風邪薬から
勃起薬まで手に入る!
そんな会話をしていると、病院で処方された薬ばかりと思われる薬品各種を並べ出す露天商が現れた。その品を見ると、「ロキソニン(鎮痛剤)」「PL(風邪薬)」などに交じって、「タダラフィル」という薬も並んでいた。これを記者が手に取ると、店主がすかさず語り掛けてきた。
「それか?バイアグラみたいなもんやな。効能はいっしょやで。(生活)保護受け取る奴がやな、病院で『小便が出にくい』ゆうたら、まず『前立腺肥大』ちゅう診断が下される。それで処方された薬がコレちゅうわけや。2000円でええで。元気なるで!」
ロキソニンは500円、PLは800円。これら病院で処方される薬品の仕入れ先は「すべて生活保護受給者だ」(西成を根城にする露天商)という。医療費・薬代無料の生活保護受給者のなかには、小遣い欲しさに病気でもないのに病院を受診、そこで処方された薬品を転売する。こうして正規の医薬品が泥棒市に並ぶのである。
朝5時過ぎ、泥棒市をひやかすことなく、パリッとアイロンを効かせた作業服を着た人たちが、センターや新今宮駅の方向へと歩いていく。彼らは何者なのか。露天商に風邪薬を買い物に来たという路上生活者(60代)が教えてくれた。
「あれは、“白手帳持ち”やな。手に職のある職工が多いんや。ご苦労さんなことやで……」
一般土工のみならず、手に職を持つ「白手帳持ち」ですら、十分に報われる給与額とはとても言えない。
ここ西成では、「日雇労働被保険者手帳(通称・白手帳)」を持つ労働者は、もっとも尊敬される存在だ。彼らの多くは長年現場で地道に働き、電気工、給排水衛生工、昇降機工、空調工…と、何がしかの専門性高い技術を身に着けている。
だが路上生活者たちは、心なしか投げやりな物言いで白手帳持ちを語る。それもそのはず、西成の超・エリート、白手帳持ちですら、その給与額は決して高いものではなく、彼らの真面目な仕事ぶりが十分に報われることがないからだ。
ここ10年で「高くても1万5000円だった」(日雇い労働被保険者手帳を持つ日雇い労働者・50代)という白手帳持ちの職工の給与は、今では平均して日給1万2000円くらいだという。
朝5時にマイクロバスに乗り建設現場などに赴き、概ね7時から日が暮れるまで作業に従事する。昼食時に1時間、午前と午後にそれぞれ15分程度の休憩があるものの、体力的にはとてもきつい仕事だ。
缶ジュース1本50円でも
西成では「贅沢品」
「雑工」や「土工」と呼ばれる、手に職を持たない(白手帳持ちではない)日雇い労働者となれば、その給与額は「1日当たり7000円から1万円」というのが相場だ。“白手帳持ち”と3000円から5000円程度の開きがある。
ラーメンやうどんは200円。西成にある食堂は、労働者たちの低賃金を反映した値付けになっている
それに宿泊を伴う現場であれば、そこから食費・住居費合わせて1日当たり3000円から3500円程度が差し引かれる。そうすると日給7000円といってもその手取り額は4000円程度にしかならない。
「疲れてるから一杯飲むにしても、コンビニで130円で売られてる発泡酒が、200円とか、ひどい現場やったら500円ゆうところもある。手元にいくらも残らんわな」(西成を根城にする路上生活者・60代)
西成から「通い」で行ける現場にしても、朝、現地にはマイクロバスで連れて行ってもらうにせよ、帰りは自腹を余儀なくされることがほとんどだという。もっとも、そうそうそんな「通い」の現場はない。
「せやから路上で寝てるのがいちばんええんや!炊き出しもあるし。週に1日か2日働けば1週間は何とか食うてけるしな」(前出・路上生活者)
缶ジュースも「西成価格」。なんと1本30円のジュースもあった
実際、西成では1日働いてもらえる手取り額の4000円もあれば、路上生活なら贅沢しなければ1週間は暮らせる額だ。先に触れたあいりん地区内にある公園で行われる炊き出しなら無料、うどんやラーメン、弁当も100円から200円だ。時折、車で売りに来る「コンビニ廃棄の弁当」であれば、100円で弁当に加えて「(コンビニ販売の)おにぎり」が5つ付く。
「ここでは缶ジュースが1本50円で売ってるけど、それでもこの辺りで暮らす人にとっては、その値段でも高いんや。1本30円でも高いかもしれん。贅沢品なんよ…」(コンビニ廃棄の弁当を売る業者)
住民たちが仕事に出払う朝8時を超えると、あいりん地区にも静寂が訪れる。残っているのは仕事にアブレた人たちか、はなから仕事をするつもりなどない人たちだ。
689
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:36:20
http://diamond.jp/articles/-/115785
2017.1.28
500円売春に不正入手薬…西成あいりん地区の貧困とカオス(下)
秋山謙一郎 [フリージャーナリスト]+
生活保護は受けたくない…
申請を拒む人の理由
仕事にアブレた人たちの過ごし方は様々だ。
「白手帳持ち」たちが泊まるドヤ。一泊1200円でも、西成では“高級ホテル”扱いだ
お堅い勤め人である白手帳持ちたちが、ここ西成では“高級ホテル”の扱いである1泊1000〜1500円のドヤ(簡易宿泊所)で作業服を洗濯してアイロン掛けし、次の派遣先での仕事に備えるのに対し、手に職を持たない路上生活者たちは、朝からあいりん労働福祉センターで寝袋や布団を敷いて寝るか、近隣の飲み屋で一杯引っ掛ける。そして西成のメインストリートである「三角公園」や「四角公園」で仲間たちと憩いの一時を過ごす。
その三角公園に集う、路上生活者の1人で「たぶん、今年、65歳やと思う」と語るシゲルさん(仮名・本人によれば鹿児島県出身)に話を聞いた。
「兄弟も多いし家は貧乏やった。中学出てすぐ大阪に出てきたんや。ヤクザの使い走りもやったけど、根性のうて続かなんだ。もうこの年やから体もきつい。せやから(生活)保護受けよかて思うこともあるんや。でもな、それしたら“家族やった人”に迷惑かかるやろ?」
生活保護受給申請を拒み、路上生活を送り続けるのは、このシゲルさんのように残された家族・親族に行政から連絡が行くことを恐れているというケースの他、路上生活者間でのコミュニティから逸れてしまうことを嫌ってというケースもある。シゲルさんの路上生活者仲間のカズオさん(仮名・70)は言う。
「(生活)保護受けたら、“福祉アパート”ゆう名のドヤで暮らすことになる。そしたらもう仲間とは会いにくいわな。それがな…。辛いんや」
実際、寄る年波に勝てず、路上生活を諦めて生活保護受給を申請、「福祉アパート」を兼ねる簡易宿泊所に住んだはいいが、かつての仲間たちとの連絡を断ち、孤独死に至ったという話は西成ではよく耳にするところだ。
一方、受給したくとも申請できないケースもある。俗に「“手配”がかかっている」と呼ばれる状態にある人だ。
この“手配”には2つの意味がある。ひとつは何らかの犯罪に関わり警察から指名手配されているというもの。そしてもうひとつは、暴力団組織と関わり、そこで下手を打ち(失敗し)、逃げているというケースだ。
「警察、暴力団どちらを問わず、手配がかかっている人は、足がつくことを嫌い生活保護受給を申請することはまずない。また警察や暴力団の目に付かないよう、西成でもおとなしく暮らしていると聞く。そういう人が路上で亡くなると、もう家族はその人の行方を探すことはまずできない」(大阪市関係者)
西成の最危険区域は
なんと警察署付近!
西成の住民たちの多くは、行政や警察といった“官”を毛嫌いする。夜のあいりん地区で、もっとも治安が悪いのは、この西成警察署付近だという
静かに暮らす“手配中”の住民とは違い、多くの住民は行政や警察といった“官”を毛嫌いし、徹底的に反抗する。過去、幾度となく警察相手の暴動も起こしてきた。
「西成署の警察官が暴力団から賄賂をもらっていた」(1990年)、「大阪市による資金貸付を資金枯渇を理由に中止」(1992年)、「飲食店への支払いを巡るトラブルで日雇い労働者が警察に連行されたこと」(2008年)などなど、暴動のきっかけはさまざまだが、いずれも行政や警察への不満を露わにしたものだ。
今でも、1990年の暴動時、テレビの全国ニュースでも放映された、怒る住民たちに土下座する西成署員の姿を捉えた映像が残されている。その西成警察署の建物は、こうした西成の住民性に配慮したのか、まるで要塞のような作りだ。地域住民らによると、夜、あいりん地区では、この西成警察署付近がもっとも危険な場所なのだという。
「公園でモノ盗られたとかチンコロ(密告)しよるヤツがおる。その前にいてまえ(やってしまえ)ってことやな」(70代路上生活者・日雇い労働者)
年が明けてすぐのある日の夜19時過ぎ、その西成警察署付近を歩いていると、「ウー」「ワー」と叫ぶ声が聞こえた。地域住民は、「シャブ中(覚せい剤中毒)やろう」と、何をごく日常のことを聞くのかという口調で記者に話す。
690
:
チバQ
:2017/03/15(水) 19:37:05
この地域住民によると、あいりん地区周辺のあるコンビニのトイレには、「便器に注射器を捨てないで下さい」という張り紙がしてあるという。
事実、覚せい剤とあいりん地区は“相性がいい”。同じ日の夜21時過ぎ、西成警察署裏の路上を歩いていると、目が合った60代と思しき男性が「元気になるもんいる?」と声掛けしてくる。記者が「もしかしてシャブ?」と問いかけると、こう返ってきた。
「いや、バイアグラの代用品やけどシャブがええん?せやったら今週はあかんな。来週くらいにまたこの辺いてくれるか」――。
真に受けていい話なのか、それとも西成ならではの“ジョーク”なのかはわからない。それでも住民たちの話によると、ここ西成に何度も夜通っていれば覚せい剤を手に入れることはさほど難しくはない、ということで一致していた。
1000円の売春婦に遭遇
「それでも吹っかけている」
深夜23時を超えて、四角公園近くの路地を歩いていると、70歳は優に超えていると思われる女性に出くわした。その化粧はまるでドラマで描かれる戦後すぐの時代、米兵を相手にしていた「日本の売春婦」のようなド派手なものだ。だが服装は、年齢相応の地味で質素ないで立ちである。ただ洗濯していないのか、どこか薄汚れた感じが暗い夜道でもわかる。甘苦い体臭、そこに風呂に入っていないのか垢と安もの化粧品の匂いが入り混じっている。
ホームレスたちの家が集まる三角公園や四角公園。その付近の路上では年配の売春婦が活躍していた。
「お兄ちゃん、遊んでいかへん?“1本”でええで。お正月やんか。温めあおうや!」
記者が、「1万円?」と問うと、「1000円や!」と言う。諸説あるものの、地域住民らの話では、西成で“立ちん坊”と呼ばれる路上売春婦の相場は、路上での行為で500〜800円だが、最初は1000円と吹っかけてくるのだそうだ。もっとも「350円まで値切ることができる」(路上生活者・64歳)という声もあった。その路上売春婦に遭遇したというわけだ。ちなみに350円という額は、西成ではカレーライスを食べてもお釣りがくる額である。
この立ちん坊女性の申し出を記者は丁重にお断りしたが、それでも「800円でもええ!」「もう、正月やから大サービス、500円でええで!遊んだって」と必死で営業してきた。
記者はその営業を振り切り走って逃げたが、その立ちん坊女性はすぐに息を切らし、路上にへたり込んでいくのがわかった。後になって振り返ると、取材費の名目で500円渡し、何か話でも聞けば良かったと悔やまれる――そんな記者の思いを、三角公園にいることが多いという路上生活者(43)に打ち明けると、予想もしなかった話を聞くことになった。
「その婆さんも行為しようとは思うてへんと思うよ。ただ寄って行って、それだけで500円もらえれば御の字、350円もらえればよしゆうとこちゃうかな。それに話なんて聞いたら後ろにどんな人間がついとるやわからん。きっとその500円か350円にも“ショバ代”がハネられるとるはずや。逃げるのが正解やで」
年末年始、ここ西成・あいりん地区にいるのは、生活保護のみならず、この時期だけ用意される行政からの宿泊施設への斡旋も拒み、「頑張っている人たち」(支援NPO関係者)ばかりである。
西成ではヒエラルキー上位に位置する超エリートの白手帳持ちや、逆に最底辺にランクされる生活保護に“日和った”者たちが、年末年始、暖房の効いた部屋で温かい料理を食べて過ごすなか、路上生活者たちは彼らなりに周囲に迷惑をかけず、必死で生きているのがわかった今回の取材だった。
691
:
とはずがたり
:2017/03/22(水) 15:24:58
一部の悪質な奨学金受給者と一部の低レベルな奨学金受給者のせいで大多数の奨学生と機構がババ引いてる感じ。
但し,貧困家庭に育つと勉学する力も形成し損ねて折角借りても巧くマネジメント出来ずに終わる可能性もある。その辺の教育も必要かも。
後は殆ど巧く機能してるんちゃうか。──と思ったけど構造は一部の悪質な受給者の存在する生保の制度と似ている。。
となると色々改善も必用なのか?どっちがどうなんだろうか。。
奨学金が「貧困ビジネス」と言われる根本原因
日本の「教育の機会平等」がはらむ歪みとは?
http://toyokeizai.net/articles/-/102020
関田 真也 :東洋経済オンライン編集部 2016年01月26日
「50歳を越えても返済が続く。とてもではないが、結婚や出産は考えられない」
「返済のためにアルバイト漬けになってしまうので、大学を中退せざるをえなかった」
この連載の一覧はこちら
奨学金の貸与を受けた人から、こうした悲痛な声が上がっている。本来人生を豊かにするはずの教育への投資が、逆に人生の選択肢を狭めることになっているという、深刻なものだ。
奨学金と言えば、世界標準ではスカラシップ、すなわち返済不要の給付型のものを指すのが一般的だ。しかし、日本の場合は海外留学向けのもの以外は原則として貸与。平たく言えば、学生個人が負う借金である。
日本において、高等教育における費用は、それぞれの家庭が負担することが普通だ。もし家庭に経済的余裕がなければ、学業と平行して自力で資金を捻出しなければ、学生生活を送ることは難しい。日本の奨学金事業の9割近くを担う独立行政法人日本学生支援機構は、「『奨学金』は、自分の力で有意義な学生生活を送り、将来の夢をかなえるための貴重な手段です」と学生向けガイドブックの中で強調する。
…
もし、高等教育の資金援助といった公益性の高い業務で、効率性をミッションにすることがおかしいと批判するのであれば、そもそも独立行政法人に任せるべきでなく、国がやるべきということが真剣に議論されなければならない。柴田教授は、「入口は奨学金事業の性格を持ちながら、出口は金融の論理で行われているというねじれ現象が、奨学金問題の本質」と指摘する。ただ、国が直接運営すれば、弾力的な財務運営や柔軟な人事管理は困難になり、効率化・サービス向上のインセンティブも働きにくくなるというデメリットもある。
また、奨学金事業に割り当てられる予算が少なすぎるのではないかという根本的な問題もある。限られた予算で運営している以上、ニーズを満たす資力がなければ、結局、給付にすることはおろか、無利子貸与である第一種奨学金の枠も少なくなることは当然だ。結果として、外部から資金調達をする金融的な手法を使わざるを得なくなる、というのが現実だろう。
…
692
:
とはずがたり
:2017/04/12(水) 13:10:53
5歳児を衰弱死させた父親の絶望的な「孤立」 「助けを求めることを知らない」親たち
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-165996.html?page=1
05:00東洋経済オンライン
2014年に神奈川県厚木市内のアパートで、幼い男の子の白骨遺体が発見された。父親が一審では懲役19年の殺人罪に問われたが、今年1月の二審判決ではその原判決が全部破棄され、懲役12年の「保護責任者遺棄致死罪」となった。
693
:
とはずがたり
:2017/04/13(木) 08:52:04
フジマキが格差是正を危惧 「行き過ぎ」は避けるべき
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1046080617/1813
dot. 2017年4月6日 11時30分 (2017年4月6日 17時52分 更新)
694
:
とはずがたり
:2017/04/13(木) 08:52:36
おカネではなく仕事を与えるのは人間の尊厳の為にプラスだが,財源という実効可能性条件を考えると必ずしもベターとは云えない可能性もある。
新潟は新幹線有る癖に上位だが,整備が進みすぎて公共工事が減った見たいな記事を最近読んだ気がするけど何所だっけかな??
ワースト1は秋田、2位・島根…自殺率格差生む「新幹線仮説」とは?
https://dot.asahi.com/aera/2016061300129.html
by 編集部・宮下直之 (更新 2016/6/13 16:00)
自殺者の多くがうつ病を患っているという。自殺を減らすための政策は、うつの原因を社会的に取り除くことにもつながるはずだ。 … 世界保健機関(WHO)は、自殺の多くは防ぐことができる社会的な問題と位置づけている。個人の人生観や選択の結果ではなく、社会的な問題に追い込まれた結果の死という捉え方だ。
警察庁によると、2015年に2万4025人に上った自殺者のうち、原因・動機の上位を占めたのは、健康問題、経済・生活問題、家庭問題だった。 …社会問題の解決に向け行政が打ち出す政策は、自殺の抑止に効果をもたらすのか。大阪大学大学院の松林哲也准教授(政治学・公衆衛生学)は、06年までの25年間に各都道府県が支出した、さまざまな経済政策と福祉政策に関する住民1人あたりの金額と、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数、以下「自殺率」)の関係を統計学の手法で分析した。その結果、経済政策や福祉政策に費やす金額の増加と、自殺率の低下との間に相関関係が見られた。
●公共事業で自殺率低下
特に公共事業への投資や失業対策費は、65歳未満の自殺率を低下させる傾向があった。公共事業の投資額が10%増えた場合、自殺率は約1.1ポイント下がると推定されるという。また失業率の増加は、特に男性の自殺率を押し上げた。離婚率が増加すると自殺率も上がり、その影響を受けやすいのは女性だった。
福祉政策に関しては、生活保護費が増えるほど、65歳以上の自殺率が低下する傾向があった。一方、65歳以上の自殺率は、公共事業投資額とは無関係だった。
松林さんはこう指摘する。
「住民の年齢や性別によって、政策が自殺率に与える影響が違うことがわかった。都道府県により住民の年齢構成も違うので、個別の事情に応じた対策を進めることが重要だと思う。それが実現できれば、効果的な対策が実現できる」
●「秋田モデル」で5割減
都道府県ごとの自殺率を見ると、15年は秋田県が26.8人で最も多く、島根県(25.1人)、新潟県(24.9人)、宮崎県(24.5人)、岩手県と山梨県(ともに24.4人)と続いた。順位は毎年変わるが、東北、山陰、南九州、北陸地方が上位に並ぶ傾向が浮かぶ。
「上位の県は、フル規格の新幹線が走行していなかったり、整備が遅かったりした地域という共通点があるのではないか」
そう「新幹線仮説」を唱えるのは、自殺総合対策推進センター(東京都小平市)の本橋豊センター長(公衆衛生学)だ。新幹線の整備状況は地域のどんな事情を反映しているのか。
「経済的な発展が遅れ、過疎化や高齢化が進んでいる。産業が乏しく、失業率が高くなることで平均所得も低くなり、経済的な困難を抱えやすいという構造的な問題があると思います」
本橋さんは、14年まで20年近く秋田大学医学部で教授を務め、行政や民間団体とともに自殺対策を進めてきた。その取り組みは「秋田モデル」と呼ばれ、対象となった町は、取り組み前に比べて自殺者数を5割近く減らすことに成功した。
政府の自殺総合対策大綱などによると、自殺を図った人の多くがうつ病などの精神疾患を患っていた。本橋さんは、うつ病の早期発見・早期治療をめざすネットワークづくりにも取り組んだ。力を入れたのは相談体制の充実、予防意識の啓発、コミュニティーづくりなどだった。
「自殺する方の多くは、その直前にうつ的な状態になっているが、経済的な問題や家族間でのトラブルを解決しなければ、治療薬を飲んでも根本的な解決にはならない。住民が直面している社会的な問題を解決するため、気軽に相談できたり、周囲に助けを求めたりできることが大切だと考えました」(本橋さん) …
(編集部・宮下直之)
※AERA 2016年6月20日号
695
:
とはずがたり
:2017/04/15(土) 12:53:18
>>694
>新潟は新幹線有る癖に上位だが,整備が進みすぎて公共工事が減った見たいな記事を最近読んだ気がするけど何所だっけかな??
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1419422882/1422
だ。
ここ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1105074193/1815
にも転載しといた。
696
:
とはずがたり
:2017/04/24(月) 18:16:41
32歳で年収140万円フリーターの転落人生「父の蒸発で大学進学を断念、就職先も倒産して…」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170422-01321561-sspa-soci&pos=2
週刊SPA! 4/22(土) 9:00配信
32歳で年収140万円フリーターの転落人生「父の蒸発で大学進学を断念、就職先も倒産して…」
夕食の冷凍食品を働くスーパーで購入。300円、700gのチャーハンを社割で購入。これが2日分の夕食に
5年連続で上昇している日本人の平均年収は420万円(’16年国税庁統計)だが、非正規雇用に限れば170万円まで落ち込む。もはや珍しくない年収100万円生活者の日常に密着。限界の生活を余儀なくされる人々の、その知られざる苦境とは?
◆父の蒸発で進学を断念、就職先も経営破綻に。2度の転落で人生を達観
●白川貴文さん(仮名・32歳)
年収140万円/不動産会社フリーター
高校は都内の進学校で中央大学にストレート合格。しかし、思いもよらぬ落とし穴が待っていた。
「父が入学金を持って蒸発し、進学できなくなったんです」
そう話すのは都内で家賃5万円のアパートで暮らすフリーターの白川貴文さん(仮名・32歳)。高校卒業後は不動産会社に就職したが、経営不振で入社6年で倒産。それでもまだ24歳、再び正社員を目指すこともできたと思うが……。
「父親が蒸発した理由もリストラ。僕自身も会社勤めへの不信感が強まったことで、もういいかなって。目に見えるものを売り、時給で確実にお金がもらえるコンビニやスーパーで働くようになりました」
現在働くスーパーでは夕方からの遅番勤務で、11時頃に起床。13時には外出し、アイスコーヒーが216円と安いサンマルクカフェへ。そこで朝昼兼用のパンを食べながら、図書館で借りたミステリー小説を読むのが楽しみだという。
「外食は吉野家などスマホのクーポンで割引の店だけ利用します。夜は冷凍食品が多く、自社スーパーのクレジットカードと社割を使い、10%引きで買っています」
帰宅後も深夜まで、カネのかからない娯楽を楽しむ。
「ラジオが好きなので、基本はそれを流しっぱなし。あと最近はNetflixやHuluの入会時の無料期間で海外ドラマも見ています。母名義も含めてクレジットカードは6枚あるので、半年以上は無料期間で見続けられます」
格安SIMを使っているのでスマホの料金は月2000円ほど。月収は12万円だが、お金を使う趣味もないため、貯金も30万円ある。
「今は生活に困っていないし、自由時間を奪われるので会社勤めはしたくない」と話す白川さん。淡々としたその表情は30代前半にして達観の域に達していた。
<1か月の家計表>
月収(手取り) 12万円
住宅費 5万円
食費 1万円
外食費 1万3000円
水道光熱費 1万円
通信費 8000円
交通費 2000円
娯楽費 1万円
その他雑費 1万5000円
収支 +2000円
― 密着ルポ[年収100万円生活]の恐怖 ―
697
:
とはずがたり
:2017/04/28(金) 15:12:48
母子世帯57%が夜間も勤務 盛岡市と県立大が調査
https://news.goo.ne.jp/article/iwate/region/iwate-81379316
04月27日 10:45岩手日報
児童扶養手当の受給資格を持つ母子世帯のうち、働く母親の57%が午後6時以降も勤務し、小学生の3人に1人が放課後1人で過ごしている―。盛岡市は県立大と共同で、ひとり親世帯の生活実態について初めて調査し、結果を発表した。貧困が深刻とされる母子世帯を取り巻くさまざまな課題が浮き彫りとなった。 母親の就労率は91・6%で、そのうち土日勤務のある人が76・8%を占めた。午前8時以前に働く早朝勤務は27・9%で、午後6時以降に働く夜間勤務の割合は57・6%に上った。 子どもが塾や習い事をしていない人の中で、その理由に「経済的理由」を挙げる人は66・0%。「過去1年間に家族が必要とする食材を買えなかったことがあった」世帯は「よくあった」「時々あった」「まれにあった」を合わせると47・4%に上り、経済的に厳しい状況が裏付けられた。 0?6歳の子どもが思い通りにならない時、「怒鳴る、手を上げる」といった不安定な養育態度をしてしまう人の中で夜間勤務をしている割合は高く、相関関係が見られた。夜間勤務をしながら食事や入浴、寝かしつけなどをする負担は大きく、時間に追われて余裕がない状況が示された。 小学生の児童のうち32・4%が放課後1人で過ごしている現状も明らかになった。こうした子どもたちの居場所づくりも課題と言えそうだ。
698
:
チバQ
:2017/05/05(金) 08:31:36
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170505-00000004-mai-soci
無料低額宿泊所>行政処分予告に恫喝 国会議員秘書が同席
毎日新聞��5/5(金) 7:30配信
無料低額宿泊所の大手運営団体「FIS」幹部らが2012年、千葉県船橋市の宿泊所への行政処分を市から予告された際、衆院議員の秘書を同席させて市の担当者を「なめるな」などと恫喝(どうかつ)し、処分を回避しようとしていたことが市への取材で分かった。団体側はその後も市を提訴して処分の取り消しを求めた。自治体が悪質と判断した場合でも、容易に処分できない実態が浮かんだ。【大場弘行、山本将克】
船橋市は「FIS船橋寮」(定員138人)を立ち入り調査し、6畳間を板で約3畳に仕切ったプライバシーのない居室で4万6000円の入居費を徴収している▽年5000万円以上ある利益の処理が不明--などの問題点を指摘。計7回是正指導したが改善がみられないとして、12年7月13日に「事業の制限や停止を命じる場合もある」と警告した。
これに対し、FISの実質経営者である顧問と代表が1週間後、公明党幹部で当時落選中だった同党衆院議員の私設秘書(現在は公設秘書)を伴って市の担当者3人と面談。市は団体本部の収支報告の提出を求めていたが、顧問は「市が独自に調べればいい」と拒否し、「処分したら好き放題やってやる」「うちらをなめないで」「笑ってられるのも今のうちだ」などと発言した。秘書は顧問の横に黙って座っていたという。
顧問はFISの事業で得た約3億円の所得を申告せず、約1億円を脱税したとして所得税法違反で10年に有罪判決を受け、面談当時は執行猶予中だった。
市が12年9月、船橋寮の新規入居者の受け入れを禁じる行政処分をしたところ、団体側は「裁量の乱用、逸脱がある」とし、処分の取り消しを求めて千葉地裁に提訴した。
訴訟で市側は団体側が面談時に「恫喝に終始した」と主張。団体が「外圧に対する防衛」などの名目で顧問に20年間にわたって月最大2000万円を渡す業務委託契約を結んでいたことも挙げ「まさに貧困ビジネス」と指摘した。1、2審とも処分は適法と判断。昨年3月に団体側の上告が退けられて市側の勝訴が確定し、船橋寮は廃止された。
FISは以前は任意団体として約20宿泊所を運営。現在は複数のNPO法人で宿泊所を運営する形を取っているとみられる。
◇議員事務所「圧力なかった」
議員の事務所などによると、秘書は議員の地盤である東京都内の知人から顧問を紹介され、市側との面談設定を依頼された。秘書は当時は船橋市議だった別の公明党衆院議員に市への取り次ぎを要請。顧問の求めで約30分の面談に同席。市側と名刺交換しただけで発言はしなかった。
事務所は「市側が圧力と感じるようなやりとりはなかったと承知している」と説明。「議員は当時落選中であり、その秘書の立場で圧力をかけるのは不可能」とする一方で、団体の運営内容を知らずに依頼に応じたなどとし、「今後は要請は受けない」とした。献金を含む金銭のやりとりはなく、面談の仲介や同席について、議員本人の指示や了承はなかったという。
これに対し、市幹部は「脅迫に近いと感じたが、訴訟では市の総意として『恫喝』という言葉を選択した」と指摘。実際に対応した職員3人は取材に「秘書の同席は政治的圧力をかけるためと受け止めた」と話した。
取材に対し顧問と団体は「個別の契約、取引は正当な対価で行われており、不当なものはない」と説明したが、「恫喝」の有無については回答しなかった。面談を仲介した衆院議員は「秘書と市をつないだだけ」と答えた。
699
:
チバQ
:2017/05/05(金) 09:19:39
太田昭宏と角田秀穂でしょうね
700
:
とはずがたり
:2017/05/14(日) 19:43:49
命つなぐ食、ピンチ 資金難で倉庫の確保難航 芦屋
https://news.goo.ne.jp/article/kobe/region/kobe-20170514000.html
08:52神戸新聞
大型スーパーなどの余剰食品を譲り受け、福祉施設などに提供している認定NPO法人「フードバンク関西」の活動がピンチだ。この10年で食品取扱量が2倍を超え、倉庫を兼ねた兵庫県芦屋市呉川町の事務所は既に収容能力が限界に達していたこともあり、家主からの退去の求めに応じて来春、退去することになった。ところが、移転先探しは資金などの条件に合う物件がなく難航。同法人は「移転準備もあり、今夏までに見つからなければ活動に影響が出かねない」と危機感を募らせる。(竜門和諒)
同法人は、2003年に芦屋市の米国人が設立した。包装の傷やラベルの印字ミスなどの理由で商品価値を失った食品を、「イオントップバリュ」(千葉市)などの食品企業などから回収。事務所で一時保管し、児童養護施設やホームレス支援団体、母子家庭などに提供している。
12年度からは、市役所などに生活保護の申請に来た人に対し、一時的に食料を提供する「食のセーフティーネット事業」を開始。16年度時点で芦屋、尼崎、伊丹、西宮、川西、宝塚の6市と提携を結んでいる。
さらに、自宅で食事を取れない子どもたちに温かい食事を提供する「子ども食堂」の支援を16年度に始め、今年4月末時点で10団体に食品を提供。2月には、兵庫県内各地の子ども食堂と、それぞれの課題解決に向けて協力する「兵庫子ども食堂ネットワーク」を設立し、同法人が事務局を担う。
同法人が現在の事務所に移転したのは06年。同年度の食品取扱量は70トンだったが、15年度には185トンとなり、食品の受取団体数も同時期の27団体から102団体に増えた。
現在の事務所は、会員から月約10万円で借りている木造2階建て民家。2階は事務スペースとして使っているため、倉庫として使えるのは実質1階だけとなっている。広さは30坪弱で、段ボール箱は天井に届きそうなほど山積みに。場所を確保するため、13年からは近くのアパートの1室も借りている。
同法人は会費や寄付金で運営し、行政からの補助金などはほとんどない。移転先は阪神間で50坪以上の平たんなスペースがあり、月の賃料は20万円まで?などを条件に探しているが、今も見つかっていない。
全国フードバンク推進協議会によると、全国には約80のフードバンク団体がある。近年、各地で子ども食堂の設立が相次ぎ、各団体が食材の供給源として大きな役割を果たしているが、資金不足は共通の課題だ。
同法人代表の浅葉めぐみさん(68)は「私たちが活動をやめるわけにはいかないが、このまま移転先が見つからなければ、活動に支障が出るかもしれない」と指摘。「CSR(社会的責任)活動の一環で倉庫を安く貸してくれる企業はないかなど、あらゆる可能性を探りたい」と話す。
【フードバンク活動】国連世界食糧計画(WFP)によると、食べられるのに廃棄される食品ロスは2014年度、全国で621万トンに上り、世界の食料援助量の2倍に相当。その一方で、子どもの貧困率が「16・3%」(12年、厚生労働省調べ)に達しており、食品ロスを有効利用するフードバンク活動は全国各地で盛んになっている。
701
:
とはずがたり
:2017/05/18(木) 08:51:22
沖縄にばらまきするのでは無く貧困を削減するという明確な目的持って支出して欲しいね。
沖縄に赴任した友人も結構物価高いのに給料安いと怒ってた。
沖縄の「子どもの貧困率」は全国平均の約2倍。原因にある沖縄特有の構造とは?
http://www.huffingtonpost.jp/2017/05/15/diamond-online-okinawa_n_16617898.html
ダイヤモンド・オンライン
投稿日: 2017年05月16日 08時00分 JST 更新: 2017年05月16日 08時00分 JST OKINAWA CHILD
日本国内における子どもの貧困率の2倍近い、沖縄県の子どもの貧困率。全国でもっとも高く、より深刻な状況となっている。沖縄県の貧困の連鎖の実態と、求められる対策について、NPO「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」沖縄代表の秋吉晴子氏に話を聞いた。(取材・文/松原麻依[清談社])
全国で一番低い平均所得 一方で生活コストは割高
2016年4月に公表された沖縄県の子どもの貧困率は29.9%(沖縄県(2016年4月)『沖縄県子どもの貧困実態調査結果概要』より)。これは全国平均、16.3%(内閣府(2015年6月)『平成27年版 子ども・若者白書』より)の約2倍の数値である。
2017-05-15-1494888282-7950911-dol_logo2.jpg本記事は「ダイヤモンド・オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
貧困問題は決して単独で見ることはできず、その人の生まれた地域や家庭、教育環境など様々な要因が絡み合っている。
沖縄県では貧困率そのものも34.8%(戸室健作(2016年3月)『都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討』より)と高く、ワーキングプア率も25.9%(同)。全国の貧困率の平均は18.3%(同)、ワーキングプア率は9.7%(同)で、やはり沖縄県は全国で突出して高い割合を示していることが分かる。そして、県内に困窮した児童が多いのも、こうした環境の連鎖の結果だと考えられる。
「ここ最近の貧困報道で、私たちも自分たちの置かれている状況の厳しさに気づきはじめた」と、語るのは「しんぐるまざぁず・ふぉーらむ」沖縄代表として、13年以上シングルマザーの支援活動を続けてきた秋吉晴子氏だ。秋吉氏の出身は大阪府。1999年に沖縄に移り住み、自らもシングルマザーとして働き家族の生活を担ってきた。そうした中で、島で生活することの厳しさを実感したという。
「まず、沖縄の最低賃金は714円と全国で一番低く、この金額ではフルタイムで働いても生活保護以下の額にしかなりません。その一方で、車社会なので車の維持費にもお金がかかりますし、都市部の住居費も高い。所得の低さと生活コストが比例しているわけではないのです」(秋吉氏、以下同)
沖縄県の平均賃金は23万6300円(厚生労働省『平成28年 賃金構造基本統計調査』より)と全国で最も低いが、那覇市の住宅地の平均地価は福岡市と同じ水準で、家賃も決して安くない。また、都市ガスの普及率が低く、ほとんどの世帯がプロパンガスを導入しているため、公共料金も高くなりがちだ。加えて、生鮮食品をはじめとするさまざまなものは、県外から海を渡って卸されるので、本土の価格より高くなる品も多い。低い所得に見合わない生活コストだ。子どもの貧困問題は、こうした沖縄をとりまく現状の先にある。
貧困家庭に生まれた子どもは、経済的な理由から高等教育を受けるチャンスが減り、学歴はその後の収入に大きく影響する。生まれた時点でついてまわる格差は成人後もその子を貧困に陥れ、さらに次の世代の貧困へとつながっていく。そうした子どもの貧困の連鎖の構造は、ほかの地域でも見られることだが、沖縄県における貧困の連鎖はそれだけでは語れない部分があるという。
連鎖の出発点は沖縄戦 沖縄特有の貧困の構造とは
「沖縄が抱える貧困問題については沖縄戦の時代まで遡って考える必要があると思います。そこが連鎖の出発点ではないかと」(同)
県民の4分の1が死亡した沖縄戦は多くの戦争孤児を生んだが、それにもかかわらず、戦後は米軍の統治下となり児童福祉法の制定や必要な施設の建設などが本州よりも遅れて導入された。そうして最低限の福祉すら受けられずに育った子どもたちがそのまま大人になり、今に続く貧困の遠因になっていると指摘する専門家もいる。
702
:
とはずがたり
:2017/05/18(木) 08:51:38
>>701-702
「また、これだけ本州との距離も離れており歴史も違うことから、風土や人々の気質も当然ほかの都道府県とは異なります。本来なら教育にしろ、経済にしろ、その地域にあったシステムで運営されるのがベストですが、沖縄県は1972年の復帰後、すぐに中央の枠にはめられた。そうした歪みが沖縄を取り巻く困窮の原因の一つではないでしょうか」(同)
また、現在に至るまで続いている基地問題についても、秋吉氏は貧困問題の解決を阻むひとつの原因だと考える。
「米軍基地の存在は、沖縄でもっとも優先すべき問題のひとつとして扱われてきました。毎日のように基地問題が議論されていくなかで、人々が子どもや女性の暮らし、教育の問題に目を向けることはあまりなく、つい最近まで子どもの貧困が周知される機会がありませんでした」(同)
「何もかもが不利な状況で、沖縄では、なるべくして貧困が拡大していった」と、秋吉さんは語る。
対症療法では手に負えない 貧困問題は根本的な治療が必要
ますます貧困問題が深刻化する沖縄において、どのような対策が求められるのだろうか。自らもシングルマザーとして働きながら、10年以上支援の現場に立ち続けてきた秋吉氏は「子どもの貧困の解決には、“社会全体の底上げ”が必要」だと話す。
「たとえば、給食費や制服代など、子どもの学校にかかる費用の無償化を、所得にかかわらずすべての世帯に適用させるという手段もあります」(同)
中間所得層が減り、多くの人の生活水準が落ちている今、支援の対象外であってもそれなりに厳しい家庭が多い。より困窮している人のみに支援を投入することは批判を招く可能性がある。それは社会全体を不寛容にし、貧困の自己責任論が蔓延する原因にもなる。その点、すべての子どもを対象とした支援は、より多くの人の賛同を得やすいだろう。
「さらに、全体的な底上げという意味では『労働単価の引き上げ』が重要です。今の賃金で家賃・公共料金・医療費など必要最低限の支払いができて、それでも子どもを大学に行かせるまでの貯蓄が果たしてできるのか。そこから議論し対策を講じるべきだと思います」
秋吉氏の指摘する「子どもの教育の無償化」や「賃金の引き上げ」といった対策はすべて、貧困問題の根幹にかかわるものだ。沖縄県では、「子ども食堂」の設置やソーシャルワーカーの増員、児童館の設置など様々な問題解決策が提案されている。もちろんそうした対症療法的な支援も大切だが、それ以前に貧困問題には「根本的な治療が必要」だという。
「たとえば、頭が痛いからと言って頭痛薬を処方しただけでは症状は緩和されるかもしれませんが、頭痛の原因は取り除かれません。病気と同じで、貧困問題も本当に健康な体になるためにはどうしたらいいのか考える必要があります。対症療法と同時に、貧困を生じさせる原因となっている社会の仕組みや制度について、いま一度見直し、変えていくという、根本治療をする必要があると思います」(同)
「貧困問題の根本的な治療」は、沖縄県に限らず格差が拡大している日本全土に言えることだ。目に見えやすい対症療法的な支援は、支持も得やすいし資金も付きやすい。しかし、子どもの貧困問題は、もはやそれだけでは手に負えなくなっている。自治体や国が主体となって具体的施策を打ち出していくことが必要だろう。
(松原麻依:清談社)
703
:
とはずがたり
:2017/05/19(金) 19:59:47
2年前の記事
ホリエモンは頭が良いからなぁ。偽悪的に煽って話題作って行かないと喰っていけないからやってる部分強い様に見える。
結構本質的な事突いてるんだけど偽悪的に云ってしまうからやっぱり不愉快。
ホリエモン「貧困問題はやっぱり自己責任だろう」
https://dot.asahi.com/wa/2015040800110.html
(更新 2015/4/10 11:30)
多くの貧困者が存在している日本社会。生活保護など救済システムはあるが、全面的な解決にはならないと、堀江貴文氏は指摘する。
* * *
先日出演した「朝まで生テレビ!」で、私が失業者を擁護するジャーナリストとのやり取りの中で「完全に自己責任じゃん」と発言したことが話題になっているようだ。
貧困者対策を喧伝するジャーナリストは全ての貧困者を等しく助けるべきであるという論理を展開しがちである。日本には生活保護制度などが整備されており、適切に運用されれば、ホームレス生活になったり餓死したりするような事態にはならないはずだ。そういう人たちが存在しているのは果たして行政の責任と言ってしまっていいのだろうか。
この発言の前段階で、ジャーナリストが例としてあげた、横浜のみなとみらい建設に関わった労働者が今は貧困に陥っていることについて、本来であれば景気が良かったころに資産形成をして年老いても収入があるような人生設計をすべきであったと私は思う。
努力して人生設計をして悠々自適の生活をしている人がいる一方、そういうことをしなかった人が貧困に陥っているのは、ある意味自己責任ではないだろうか。
とはいえ生活保護制度があるのだから、それは制度の範囲で助ければいいだろう。それには異論はない。ただし、資産形成をしようとしない人に、それを促したとしても実行するのはごく少数の人だろう。大半は景気が良い時期に散財して、後には何も残らないという状況になるのがオチだろう。しかしホームレスになってしまうというのはそれ以外にも本人たちにも原因があると私は思う。
他人に頼ることができないというプライドの問題も考えられる。義務教育の過程の中で親や先生に「他人に頼ってはダメだ」と教育されるだろう。子どもたちはそれを真に受けて何でも自分で解決しようとする。窮地に陥ったとしても人様に頼るのは良くないことであるという刷り込みを受けているのである。
従ってホームレスになるような事態があっても友達や知人に頼ることができない。見ず知らずのホームレスを家に泊めることができる人は相当な博愛主義者だと思うが、友人が路頭に迷おうとしていたら、少しの間でも支援しようと思うのが人情というものだろう。
しかし、コミュニケーション能力が不足していたり、プライドが高かったりして、他人に頼れない人たちは生活保護を受けることすら拒否、あるいは二の足を踏むのだという。そういった人たちを救うのは果たしてカネの問題なのだろうか?
私は違うと思う。普段から他人の信頼を得るような行動を取り、コミュニケーションを面倒臭がらずに取って、常に困ったときは相互扶助できるような体制を取ったらどうだろうか、と思うのだ。
今や近所付き合いはあまりなくなったようだが、それにかわってソーシャルネットワークがある。趣味や考え方が合う友人たちと簡単に仲良くなることができるのだ。金銭的なセーフティーネットよりも、もっと根源的な人と人との信頼関係のセーフティーネットのほうがよほど強固であるし、長続きするのである。
※週刊朝日 2015年4月17日号
704
:
とはずがたり
:2017/05/19(金) 22:20:19
子どもの虫歯二極化、口腔崩壊も 経済格差背景か
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170519-00000002-kobenext-life
神戸新聞NEXT 5/19(金) 8:00配信
兵庫県内の小中高・特別支援学校で2016年度に行われた歯科検診で、虫歯などが見つかり「要受診」とされた約3万5千人のうち、歯科の受診が確認できない児童・生徒が約2万3千人、65%に上ることが県保険医協会の調査で分かった。未治療の虫歯が10本以上あるなど「口腔(こうくう)崩壊」の子どもがいる学校の割合も35%に上った。同協会は「全体的に子どもの虫歯は減少傾向なのに二極化が進んでいる。背景に貧困などの厳しい社会状況がある」と指摘する。(森 信弘)
調査は17年3月、医師や歯科医師らでつくる同協会が初めて実施。県内の1409校を対象に行い、19%に当たる274校(11万415人分)から回答があった。大阪府や長野県などでも各保険医協会が同様の調査を行ったが、似たような傾向があるという。
受診が確認できなかったのは、小学校が46%、中学校で64%、高校は84%と年齢を経て高くなり、特別支援学校は62%だった。
口腔崩壊の児童・生徒がいる場合、家庭状況について尋ねた(複数回答)ところ「一人親家庭」が37%で最も多く、「保護者の健康への理解不足」(33%)、「経済的困難」(32%)などが目立った。口腔崩壊は調査で計346人おり、同協会は「単純計算で県内に1500〜2千人程度と推定できる」としている。
口腔崩壊の児童・生徒が1人でもいる学校は、中学では19%だが、高校は47%と増加。中学生は永久歯に生え替わるのに伴って減っているとみられるが、高校生の場合は一生使う歯が使えなくなってしまうことになる。特別支援学校も47%と高く、受け入れる医療機関が限られることも影響しているとみられる。
同協会の足立了平理事は「仕事が忙しく、子どもの歯磨きに気を使ってやれない親もおり、家庭状況にあった保健指導や働き方の改革なども必要」とし「今後も調査を続けたいが、できれば行政が取り組んでほしい」としている。
【口腔(こうくう)崩壊】 明確な定義はないが、10本以上の虫歯や歯根しかないような未処置の歯が何本もあり、食べ物をうまくかめない状態を指す。栄養状態が悪くなり、体の成長やあごの発達などに影響する恐れがある。歯科を受診できない背景として貧困問題との関連からも注目され始めている。
705
:
とはずがたり
:2017/05/19(金) 22:21:00
子どもが不幸になるのが一番哀しい。
2017/2/23 20:13
東京、子どもの生活困難2割超 食料買えない家庭も
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201702/0009941349.shtml
東京都内の小学5年、中学2年、16〜17歳の子どもがいる親計約8千人を対象とした都の実態調査で「生活困難層」の割合が全体の2割超に上ったことが23日、分かった。都がこうした貧困実態を調べたのは初めてで、金銭的な理由で食料が買えない家庭や、親子で海水浴に行ったことのない家庭もあった。
世帯所得が約135万円未満や、公共料金滞納など三つの要素のうち、一つ以上に該当すると「生活困難層」、そのうち二つ以上該当すると「困窮層」と分類。
海水浴に行ったことがない割合は、困窮層では小5と中2のいずれも3割前後。全体の約1割で過去1年間に食料が買えなかった経験があった。
706
:
とはずがたり
:2017/05/21(日) 22:12:28
アメリカの話
高卒以下の4割「生活困難」=学歴で格差鮮明―米調査
時事通信社 2017年5月20日 08時02分 (2017年5月20日 23時57分 更新)
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20170520/Jiji_20170520X320.html
【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)が19日公表した2016年の調査によると、学歴が高卒以下の40%が生活が苦しいと回答した。大卒以上は17%にとどまっており、学歴による格差が改めて浮き彫りとなった。ブレイナードFRB理事は「多くの世帯が金銭面で困難を抱えている」と述べ、対策を訴えた。
調査によると、生活は「余裕がある」「賄えている」との回答は全体で70%を占め、前年から1ポイント上昇した。このうち、大卒以上は82%と2ポイント上昇したのに対し、高卒以下は60%で1ポイント低下し、残り4割が生活困難と回答した。
人種間では、「余裕がある」「賄えている」との回答が白人で72.1%だったのに対し、黒人は64.0%どまり。地域間でも都市部の70.3%に対し、地方は67.5%と差があった。
707
:
とはずがたり
:2017/06/01(木) 08:08:52
医療費全額無料の生活保護受給者との格差が酷すぎる。。
<国民健康保険>貧困で無保険に 福岡県で1年間に9人死亡
毎日新聞社 2017年5月31日 09時01分 (2017年5月31日 09時33分 更新)
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20170531/Mainichi_20170531k0000e040223000c.html
福岡県民主医療機関連合会(県民医連)は、昨年1年間に系列医療機関を受診した患者のうち、国民健康保険料が払えず「無保険」状態になるなど経済的な理由で受診が遅れて病状が悪化し、死亡した人が少なくとも9人いたと発表した。系列27病院・診療所を調査。4病院の9人中8人が、がんで死亡していた。県民医連は改善を求める要望書を県に提出した。
県民医連によると、9人は40?80歳代で北九州市や大牟田市などに住み、うち7人が一人暮らしだった。無保険は5人、保険料の滞納で有効期限が限定された「短期保険証」が2人。他は検査の自己負担分が払えないなどの理由でがんの発見が遅れた。
県民医連の洗川和也事務局長は「貧困が拡大する中で手遅れとなった例は氷山の一角。がん治療で医療費が高額になる場合の減免制度を県は周知してほしい」と話す。県医療保険課の山崎義弘企画監は「要望の内容を読み、検討したい」と話した。【吉川雄策】
708
:
とはずがたり
:2017/06/01(木) 08:09:42
日本おもちゃ大賞2017発表!進化し続ける最新おもちゃを一挙紹介
https://news.goo.ne.jp/article/walkerplus/trend/walkerplus-110684.html
05月30日 20:12Walkerplus
日本玩具協会が主催する「日本おもちゃ大賞2017」の授賞式が5月30日(火)、東京国際フォーラムで開催。7部門の大賞が発表された。
全42社、335アイテムの中から大賞に選ばれたおもちゃを部門別に一挙紹介!
■ ボーイズ・トイ部門「ベイブレードバースト 新シリーズ」
ベーゴマを現代風にアレンジした、「世代や国境を超えて遊べる」タカラトミーのバトルホビー。スプリング内蔵で、戦いの後半に再加速する、ローラーで相手の攻撃をいなす、ラバー素材で相手の回転を吸収するといったギミックにより、遊びがさらに面白くなった点が評価された。
■ ガールズ・トイ部門「ラブあみボンボンメーカー」
株式会社アガツマの、いろいろなサイズのボンボンとタッセルグッズが本体1つで作れる女児向けのおもちゃ。サイズ調節機能を使うことにより、大小問わず簡単に作れる機能性と、毛糸のほか、羊毛フェルト・チュールなど素材を変えて作れるのが魅力だ。
■ コミュニケーション・トイ部門「地球まるごとすごろく」
世代や性別を問わず楽しめるおもちゃが選ばれるコミュニケーション・トイ部門では、球体の巨大な盤面のすごろくが大賞に選ばれた。地球儀がモチーフとなっている50センチの球体という斬新なデザインで、吸盤のコマを張り付けて遊ぶことができる。51種類の世界遺産カードや豆知識など、つい誰かに話したくなるような楽しい内容満載のすごろくだ。
■ エデュケーショナル・トイ部門「アンパンマン おしゃべりいっぱい!ことばずかんSuperDX」
シリーズ累計110万台の「ことばずかん」が、子供の成長の証とも言われる「二語文」を追加してパワーアップした商品。日本語だけでなく英語も遊びながら学べる教育性と、おしゃべりの数が2200種類以上という豊富さで、今までよりもっと深く言葉を学べるよう進化している。
■ 共遊玩具部門「くみたてDIY はしるぞっ!ねじねじアンパンマンごう」
ハンディキャップを負った子どももそうでない子どもも隔たりなく遊べるコンセプトで作られたおもちゃを評価する共遊玩具部門では、お子様サイズのカラフルなねじと電動ドライバーを使って、バラバラなパーツから「アンパンマンごう」を組み立てて遊べるDIYおもちゃが選ばれた。スイッチ部分の凸点、各ネジ留めの箇所のガイド、部品の安全への配慮、ねじの統一などにより、視覚に障害があっても不自由なく遊ぶことができる。
■ イノベイティブ・トイ部門「蒸気がシュッシュッ!トーマスセット」
プラレールトーマス25周年記念商品である本品は、煙突からまるで本物のような蒸気が出るのが最大の特徴。「タンクレス蒸気システム」により、さわっても熱くなくカビにくいという安全性と、原作と同じように給水塔から水をトーマスに補給できるというディティール、水の量によってトーマスが発するセリフが変化して本物と遊んでいる気分になれる点が評価された。
■ ハイターゲット・トイ部門「FORMANIA EX ν(ニュー)ガンダム」
大人世代にも今なお絶大な支持を受ける「νガンダム」を、各種素材、技術を多用し精緻なイメージを余すところなく表現。圧倒的な作りこみの完成品ディスプレイモデルが、目の肥えた大人のガンダムファンをもうならせるクオリティに仕上がっている。
そのほか、前年度ヒット・セールス賞として、仮面ライダーエグゼイドの変身ベルトを再現したバンダイ「変身ベルト DXゲーマドライバー」が、特別賞にタカラトミー「リカちゃん」と、パイロットインキ「メルちゃん」がそれぞれ選ばれた。日本おもちゃ大賞に選ばれたおもちゃは、6月3日(土)・4日(日)に東京ビッグサイトにて一般公開される「東京おもちゃショー2017」にて展示される。気になったおもちゃを見つけたら、ぜひ足を運んでみては。【ウォーカープラス編集部/国分洋平】
709
:
チバQ
:2017/06/02(金) 18:56:17
https://this.kiji.is/243283864056399355?c=77955783816085513
困窮世帯の父半数が正社員 沖縄県の貧困実態調査
2017/6/2 17:00
沖縄県は2日、沖縄子どもの貧困実態調査事業の報告書として、15〜16年度に県内小中校生とその保護者を対象に、経済状況が日常生活や進路に与える影響を把握しようと実施した調査の追加分析を発表した。国や県が困窮の基準とする等価可処分所得122万円未満の「困窮世帯」のうち、小1の母親の13・6%、父親の46・2%は「正社員」と答えており、正規雇用でも十分な収入を得られない沖縄の厳しい雇用環境が明らかになった。
小中学生を対象にした「子ども調査」は15年度、県内全域の公立小学校32校の1年生の保護者、23校の5年生とその保護者、公立18中学校の2年生とその保護者に、学校を通して調査票を配布・回収した。各対象者とも有効回答数は約1200票で有効回答率は約7割。16年3月に結果の概要版を発表した。「高校生調査」は16年度、県立全60校の2年生とその保護者を対象に行い、4311組の親子から有効回答を得た(有効回答率59・1%)。17年3月に中間報告を行った。
今回、小中と高校それぞれで分析を進めることで子どもの成長段階による特徴も明らかになった。通常の家計を「赤字」と答えた保護者は高2では32・9%に上り、小1の25・1%より厳しい世帯が増えた。食料を「買えなかった経験がある」とする世帯は小1の25・0%から高2で29・9%、衣料が買えなかった世帯は小1で33・1%から高2は39・2%に悪化した。世帯所得は300万円未満が37・1%から32・2%に減るなど、やや増加しているものの、子どもの成長とともに増える出費に追いついていないとみられる。【琉球新報電子版】
710
:
とはずがたり
:2017/06/19(月) 08:14:24
病気ならなおさなかんし,病気じゃ無い(働くのが嫌だけど資産は無い)とするならばのたれ死にさせるしか無いのが原則論か。
この人手不足の時代になんとか働かせたいけえが。。神経図太くする治療みたいなのはないのかねえ。。
「60代のひきこもり」が増えている
プレジデントオンライン 2017年6月18日 11時15分 (2017年6月19日 07時50分 更新)
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20170618/President_22364.html
「親亡き後」に突入するひきこもりの当事者が増えています。もし、何の対策もしなければ親の支援がなくなった途端、生活は行き詰まり、住まいも追われかねません。「働けない子どものお金を考える会」の代表を務めるファイナンシャル・プランナーの畠中雅子さんが、ひきこもりの子どもを持つ家庭の実態と対策について解説します――。
■79歳男性のSOS「私が死んだら息子は……」
関東に地方に住む79歳の男性はこう言います。
「母親(妻)が亡くなって、働けない息子と2人暮らしをしています。もともと息子と会話する機会は少なかったのですが、この1年くらいは、お互いの顔もろくに見ていない状態です。私ももうすぐ80歳です。息子はひとりっ子、私が死んだら路頭に迷わせてしまうのでしょうか……」
独り言とも、SOSとも取れる、しぼり出すような声でした。
私は「働けない子どものお金を考える会」の代表を務めています。この会は、ひきこもり、ニート、あるいは障がいをお持ちのお子さんを抱えるご家族の家計を考える、ファイナンシャル・プランナーの集まりです。
親だけでなく、お子さんの生涯、とりわけ親亡き後をどう生き抜いていくかを模索する「サバイバルプラン」を中心に資金計画を立てるお手伝いをしています。
高齢化した「ひきこもり」が着実に増えている
その活動もはや25年。四半世紀が過ぎました。
アドバイスを始めた頃は、ひきこもりのお子さんの存在が世の中に認知されていたとはいえず、生活設計のアドバイスをすること自体、奇異な目で見られることも少なくありませんでした。…
同時に、「親が死んだ後の話をするなんて、縁起でもないことを言うな」と、当事者の家族から怒られたこともありました。
25年という時間が流れ、「ひきこもり」という言葉が理解されるようになった今では、私たちが提唱している「サバイバルプラン」を受け入れ、具体的な計画を立て、実行に移してくれるご家庭が増えてきています。
とはいえ、それは、ひきこもりのお子さんの数が増えている現実を表すだけではなく、後述するようにひきこもりの状態から抜け出せないまま、お子さん自身が高齢化している現実も意味しています。
■「50代はもう珍しくありません。最近は60代もいます」
私たちが提唱する「サバイバルプラン」とは、働けない状態がこの先も続くと仮定して、親が持つ資産でどうやって生き抜いていくかを考え抜くプランです。
親が持つ資産というと、金融資産だけをイメージする人が多いのですが、不動産活用も重要なポイントです。親亡き後も、住み続けられる住まいを確保できなければ、生活は行き詰まってしまいます。
住まいを確保する方法として、都市部では賃貸併用住宅への建て替えが選択肢になります。一方、地方在住の場合は、老朽化した家から築浅の家への住み替えを促します。また、親に介護が必要になった場合に備えて、親子別居のプランを立てるケースもあります。
サバイバルプランの具体的な手法については、この連載で徐々に触れていきます。なかでも最近、深刻化しているのは「働けないお子さんの高齢化」です。
711
:
とはずがたり
:2017/06/19(月) 08:14:40
>>710-711
親は80代以上というケースが増加「待ったなしの状態」
私のご相談者の中には、お子さん側がすでに60代に入られたケースが何例も出てきています。50代のご相談者は、もう珍しくありません。ご相談者の親御さんの年齢が80代というケースも増えていて、中にはすでに「親亡き後」へ突入している人も出てきています。ひきこもりの高齢化は、待ったなしの状態になってきているのです。
ひきこもりのお子さんが高齢化すると、「就業は絶望的であり、お子さん自身の生活設計など立てられない」と考えるのが一般的かもしれません。しかし、「早めの対処・対策」を立てることによって、親も子もサバイバルすることは可能です。
■「全く働けない子ども」が2人以上いる家庭も増えた
「高齢化」のほかに見逃せない問題は、ひとつのご家庭に、「働けない状態のお子さんが複数いる」というケースのご相談が増えていることです。2人とも働けないだけではなく、中には3人や4人のお子さん全員が働けない状態のご家庭もあります。
働けない状態にあっても障がい年金を受給することなどで、サバイバルプランが成り立つケースもありますが、本来なら「親亡き後」に手続きなどで力を貸してくれるはずのご兄弟がいないという、別の問題を抱えていることになります。
さらに親側にとっても子ども側にとっても厳しいのは、親が持つ資産が減ってきていることです。企業業績は改善していますが、給与相場はそれほど上がっていませんし、年金受給額も減っています。ひきこもりの子を支える親の資産は減っている
私が相談を受け始めた25年前は、ご相談者の多くが、親(お子さんにとっての祖父母)の持つ資産でサバイバルプランが成り立ちました。ところが、時間が経過するごとに親側の資産に余裕のないご家庭が増え、現在、サバイバルプランが成り立つのはご相談者の半分程度に減っています。
サバイバルプランが成り立たないと思われるご家庭こそ、先ほど申し上げたように早めの対策が必要になります。
資産の少ないご家庭は、厳しい現実に向き合わない傾向があります。「子ども自身がなんとか収入を得てくれれば……」といった現実的とはいえないプランしか立てていないケースが多いのです。厳しい現実から逃避しても、明日や明後日の生活に困るわけでもありません。しかしそれは、いつか訪れる「親亡き後」について先送りしたまま、あるいは考えることをフリーズしたままにしているだけです。
「親亡き後」のお子さんの生活を守るためには、この先も働けない状態が続くという現実を受け入れる勇気が、何よりも重要です。資産が少ないご家庭ほど、1日も早くサバイバルプランづくりに取りかからなくてはいけません。
■今、働いている子が突如、働けなくなる日
また、ひきこもりの問題というと、ごく一部のご家庭の問題であり、自分の家庭とは関係のない話だと捉える方も多いでしょう。ですが、ひきこもり状態ではなくても、フリーターやニート(仕事も通学も求職もしない)のように、定職についていないお子さんが増えている現状*を考えれば、ひきこもり家庭の状況は決してひとごととは言い切れないはずです。
[その他の写真を見る]
(*編注)2017年版「子ども・若者白書」によれば「ニート」を含む若年無業者数(15〜39歳)は2016年で約77万人と依然高い水準にある(ニートの割合は男性2.8%、女性1.6%)。この白書は調査対象の年齢が39歳までであり、実際は40歳以上の者もかなりの数にのぼると推測できる。
「新卒で働き始めた会社で、老後の手前まで働く」というのは、親の世代には常識として通じても、お子さんたちの世代にとっては難しい現実になってきています。「一生働ける仕事に就く」という願いでさえも、かなわない現実があるのだと受け入れる覚悟が必要です。「働けない状態の子どもを抱える」というリスクは、どのご家庭にも起こりえます。そうした現実を、一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。
(ファイナンシャル・プランナー、「働けない子どものお金を考える会」代表 畠中 雅子)
712
:
とはずがたり
:2017/06/19(月) 18:31:55
難関大学を出て金融機関に就職した兄弟が突然40過ぎに引き籠もり化してもそれはそれとして受け入れて設計するのか!?
まあその親の育て方になんか問題があったとしてももうやり直せないだろうけどね。
ニート高齢化で迫られる"老後設計"大修正
無職の子供を抱えるリスクとは
http://president.jp/articles/-/16675
マネー 2015.11.16
畠中 雅子
ファイナンシャル・プランナー、「働けない子どものお金を考える会」代表 畠中 雅子
PRESIDENT 2014年10月13日号
自慢の子供たちが突如ひきこもりに
難関国立大を卒業後、銀行員となった兄。難関私立大を卒業後、証券マンとなった弟。両親の気がかりと言えば、40代になっても結婚していないことくらいだった。それがある日、原因がわからぬまま、兄が一歩も家の外へ出られなくなり、翌年には弟も同じ状態に。
これはファイナンシャルプランナーである畠中雅子氏が目の当たりにした実話である。
「特殊なケースと見られがちですが、ひきこもり予備軍や、働けない予備軍はいま、確実に増えていて、ニートの高齢化も進んでいます。無職の子供を抱えるリスクは、どの家庭にもあるのです」
文部科学省が発表した2014年度学校基本調査(速報値)によると、13年度の「不登校」を理由とする長期(30日以上)欠席者は、小・中学校合わせて約12万人。前年度と比べ、約7000人も増加しているのだ。不登校からそのままひきこもりにつながり、仕事に就けないケースも多い。
「就職難が続いた社会背景も見逃せません。たとえ仕事に就けても、やりたい仕事でないうえに条件も悪く、働き続けにくい状況が生まれています。フリーターや派遣労働者も無職予備軍。『家事手伝い』も隠れた無職です」
一方、親の財力も近年、子供を十分に守れるだけの力を失っているようだ。
「大学生の奨学金利用者は増え続けていて、いまや2人に1人。申請を希望する家庭は、3人に2人ともいわれています。大学の資金ですら支払えない家庭がそれだけ多いということです」
とはいえ、子供を救える一番手は親。親亡き後を見通した、具体的な子供のサバイバルプランを考える必要がある。まず、いつ立てるかがポイント。これは子供の年齢が40歳のときだ。
「30代までは、親御さんも社会復帰の望みを捨てたくないでしょう。また、お子さんが若いとプランが長期にわたって必要金額が高額になり、現実味が薄れます。ただし年金だけは将来子供が受け取れるよう、若いときから支払いが滞らないようカバーしてください」
子供のサバイバルプランとは、親の資産の洗い出しをして、どれくらい貯金や不動産などが残るかをチェックし、それで子供ひとりでどこまで生きられるかを考えていくプランだ。
「盲点となるのが、夫婦のどちらかに先立たれた後。年金収入が減ったり、1人分の生活費が割高になったりして、赤字が増える可能性があります」
現状把握ができたら、子供がひとりで暮らしていくにはどのような財産が、どれだけ必要かを考える。最も重要なのは、親亡き後に子供がひとりで生活しやすい「家」を確保することだ。
家さえ確保できれば、家計は年金中心に立てやすくなる。とはいえ、親が元気なうちにこづかいをあげすぎていると浪費癖がつく。少ないお金でやり繰りする習慣をつけさせておきたい。
ファイナンシャルプランナー
畠中雅子(はたなか・まさこ)
各種メディアに多数の連載をもち、セミナーや講演でも活躍。著書に『ひきこもりのライフプラン』(共著)、『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』など。
713
:
チバQ
:2017/06/21(水) 22:04:41
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170620-00522744-shincho-soci
「派遣のくせに」「立場をわきまえろ!」非正規で働く中年男性に投げかけられる無慈悲な言葉
6/20(火) 6:20配信 デイリー新潮
「派遣のくせに」「立場をわきまえろ!」非正規で働く中年男性に投げかけられる無慈悲な言葉
「派遣のくせに」
はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり、とは石川啄木の歌だが、まさにそんな立場の人は、現代の日本でも数多くいる。厚労省が5月30日に発表した4月の有効求人倍率は1.48倍で、1990年7月に記録したバブル期最高数値を突破。しかし、よく言われるように、そうした数値ほどに好況を実感している人は多くない。
たしかに新卒の学生の就職率は、数年前と比べたら圧倒的に良くなったとされている。一方で、「生まれた時代」や「再就職の時期」が悪かった人は、いまでも理不尽な目に遭っているというのが実態かもしれない。
自身、中年になってからの再就職で苦労をして、さまざまな非正規雇用の現場を経験してきた中沢彰吾氏は、どんなに成果を上げても認められない非正規雇用労働者の悲惨な実情をレポートしている(以下、中沢彰吾著『東大卒貧困ワーカー』より抜粋、引用)。
神奈川県に住む山田信吾さん(54歳・仮名)のケースは、理不尽の極みといってもいいだろう。
***
山田さんは、35歳まで中小企業の管理職を務めていたが、会社が倒産。再就職には微妙な年齢で、すぐに仕事ができる人材企業に登録し、翌日から派遣先の企業で働くことにした。
奇しくもその年、1999年は労働者派遣法が大幅に規制緩和された年だった。
プロの画家を目指していたこともある山田さんは、色合いを見極める目と感性があり、そして細かい作業が得意だった。その特技を生かし、ほどなくして、神奈川県にあるプラスチック部品製造工場で、パイプなどの色を決める染料の調合や、火災の危険がある電炉の管理を任されるようになった。管理職が出勤しない休日に率先して出勤し、工場長代行のような業務もこなした。社員全員が不在のお盆休みには、中国人研修生7人のめんどうを1週間ひとりで見た。
当然、勤務表は残業や休日出勤で真っ赤になったが、諸手当は満額支払われ、山田さんの年収は500万を超えた。現場の上司からもねぎらいの言葉をもらった。ただ、3年間働いても正社員化の話は出なかった。山田さんも収入には満足していたので、あえて正社員化は望まなかった。
しかし、そのことを後悔する日は突然やってきたという。社長が経営効率をアップさせるため、外部のコンサルタントを招き入れ、組織改革の全権を委譲したのだ。そしてそのコンサルタントから、山田さんは思わぬ攻撃を受けることになる。
「派遣のくせに残業が多すぎる」「重要な仕事は正社員がするものだ。派遣のあんたがやってること自体おかしい」「派遣に専用デスクなどいらない」
残業も休日出勤も禁止され、平日は仕事が終わってから自分のスケジュール管理についての反省文を書かされ、改善策を提示するまで退社できなくなった。
毎晩、終電の時間まで無意味な作文を書かされることに耐えられず、山田さんは自らその会社を去った。
山田さんは次に派遣として働いた企業でも、実績を上げた。彼の目と技術によって、検品の精度が上り、返品が大幅に減ったのだ。
ところが、新人の正社員に軽く注意をしたことを根に持たれ、人事部に呼び出され「立場をわきまえろ」と叱責されたことがきっかけとなり、会社にいづらくなり、結局任期切れで雇い止めとなった。
山田さんを派遣していた人材企業は彼が不当な雇い止めにあった際、法律的には自ら矢面に立って彼を守らなければいけなかった。だが2度とも動かなかった。
714
:
チバQ
:2017/06/21(水) 22:04:59
***
中沢氏は、「山田さんが、もし正社員であったなら、前記2社のいずれでも解雇されることなく、業績向上に貢献し、部長くらいに出世したのではないか」と述べた上で、非正規というだけで、優秀で実績を上げても、評価が得られないシステムの問題点を指摘している。
もっとも、この山田さんのケースには、オチがついている。最初の会社は、業務縮小で一時的に利益率が高くなったものの、結局は売上高がジリ貧に陥って、資産の切り売りでしのいでいるという。
任期切れで雇い止めとなった2番目の会社は、山田さんを解雇して間もなく倒産した。その一因は、検品のクオリティが下がり、返品が増加したことにあるという。
正社員だろうが非正規だろうが、人材を大切にしない企業は長続きしないということか。
デイリー新潮編集部
2017年6月20日 掲載
715
:
とはずがたり
:2017/06/26(月) 16:43:11
>これまで日本では、女性は未婚時代には親に、結婚してからは夫に養われる前提で、安く働く存在として扱われてきた。
>それは未婚化が進む中で、未婚のまま、不安定な非正規雇用にしかつけず、十分な収入が得られずに貧困状態にある女性が増えている、ということなのだ。
>筆者がかつて勤めていた横浜市役所では、2000年代当初から、話題になりだしていたことがある。それは、「この子は一度も働いたことがないのですが、親が亡くなった後、どうすればいいですか」と、40?50代の娘を連れて、高齢の親が区役所の窓口にくるというのだ。
>だが、30代の間は、本人も親も「結婚すれば問題はなくなる」と、問題を先送りにする場合が多い。ところが、未婚のまま40代になって、いよいよ「このままではずっと未婚・無業のままかもしれない」と親子ともども不安になり、役所に相談に来る、ということだ。
>しかも残念なことに、働いている女性の方が結婚する可能性が高い。
>厚生労働省が独身者のその後の10年間の継続調査を実施している(『21世紀成年者縦断調査』)が、それによると、結婚や出産する確率が高いのは正規雇用の女性だった。
>さらに内閣府の調査(『少子化と未婚女性の生活環境に関する分析』)によると、正規雇用者より無業の女性の方が「特に異性との交際を望んでいない」者の割合が高く、「いずれ結婚するつもり」という意欲を持つ者の割合も低くなっている。
>なぜか無業の女性の方が、交際や結婚への意欲を失っているのである。つまり、無業の女性が結婚によって状況を変える可能性は高くない、ということになる。
>2010年から関西の大学で教員になって驚いたのは、「結婚がゴール」「どうせ結婚するのに、勉強する意味がわからない」と言ったり、就職活動に行きづまると「したいことがわからないから、しばらくアルバイトでもいいかなあ」と、平気で話す女子学生が少なからずいたことだ。
社会保障・雇用・労働人口・少子高齢化格差・貧困ライフ
「一度も働いたことない40?50代大卒娘」を抱えた高齢親が増加中
「花嫁修業」「家事手伝い」弊害も
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51910
前田 正子甲南大学マネジメント創造学部教授
プロフィール
女性活躍の時代に「無業」の女性たち
日本では少子高齢化が進むとともに、現役世代、つまり働き手が減りだしている。
1995年に約6700万人いた労働力人口は、2015年には約6075万人となり、600万人以上減少した。
現在、男性のほとんどはすでに働いているので、新しい労働力として期待できるのは女性しかない。そういう背景もあり、アベノミクスでは一億総活躍・女性が輝く社会の実現が掲げられ、女性の就業継続を図るだけでなく、管理職比率を上げる動きなども見られる。
世はまさに、女性の活躍ブームであるが、ほんとうに社会は活躍する女性で溢れているだろうか?
一方で、最近では「女性の貧困」も社会的な課題として取りあげられるようになっている。
これまで日本では、女性は未婚時代には親に、結婚してからは夫に養われる前提で、安く働く存在として扱われてきた。
その状況はいまでも変わらず、「女性の活躍」と言われながらも、働く女性の非正規雇用比率があがっているのが現実である。実際、2015年の国民生活基礎調査によると、働いている女性のうち半分近くが非正規雇用である。
それは未婚化が進む中で、未婚のまま、不安定な非正規雇用にしかつけず、十分な収入が得られずに貧困状態にある女性が増えている、ということなのだ。
さらに、世の中には働きたくても働けない人や、そもそも働く気のない女性もいる。こうした無業の女性たちは、働く必要のない人たちなのだろうか。彼女たちは、なぜ働いていないのだろうか。例えば、未婚で無業のまま親元にいる「家事手伝い」と呼ばれる女性は、「いずれ結婚すれば問題は解決する」と思われがちだが、本当にそうなのだろうか。
716
:
とはずがたり
:2017/06/26(月) 16:43:38
筆者がかつて勤めていた横浜市役所では、2000年代当初から、話題になりだしていたことがある。
それは、「この子は一度も働いたことがないのですが、親が亡くなった後、どうすればいいですか」と、40?50代の娘を連れて、高齢の親が区役所の窓口にくるというのだ。
彼女たちが学校を卒業したころは、就職せず、花嫁修業と称して、家でお稽古などをして過ごし、それなりの時期が来たら結婚することは珍しいことではなかったのだろう。だが、たまたま縁なく結婚せず、就業経験もないまま40?50代になった女性たちは、もはや外に出て働く、他人と交わるということも難しそうな状況だったという。
当時は若者への就労支援が始まりだしたころであったが、無業のまま40代になった女性には支援の仕組みもなかった(いまでもほとんどない。多くの就労支援は30代までである)。
この女性たちが次に公的サービスにつながるときは、親が要介護状態になるときか、親が亡くなって年金収入も絶え、生活に行きづまって生活保護の窓口にくるときだ、という危機感を生活保護課では持っていた。
10年か20年後には、50?60代の就業経験のない未婚女性の生活保護受給者が増えるのは避けられないだろう、とも予測していた。
上がる未婚率
こうした女性たちが見過ごされている中、未婚率は上昇している。
図は生涯未婚率(簡略化して言うと、50歳時点で一度も結婚していない人の比率)をまとめたものである。
2015年の国勢調査を見ると、生涯未婚率は、全国では14.1%、東京都では19.2%、大阪では16.5%となっている。全国で見ると、7人に1人の女性は独身で生きていくということなのだ。
果たしてこの未婚の女性たちは、ちゃんと経済的に自立して暮らしていけているのだろうか?
先に述べたように、未婚で無業のまま40代になってしまった女性も少なくないのではないかと思われる。30代など、もう少し早い時期に、何らかの外部の支援とつながることができていれば、ボランティアから始めて仕事へ移行する、といったその人に合わせたゆっくりとしたペースで自立へのステップを踏めたかもしれない。
だが、30代の間は、本人も親も「結婚すれば問題はなくなる」と、問題を先送りにする場合が多い。ところが、未婚のまま40代になって、いよいよ「このままではずっと未婚・無業のままかもしれない」と親子ともども不安になり、役所に相談に来る、ということだ。
しかも残念なことに、働いている女性の方が結婚する可能性が高い。
厚生労働省が独身者のその後の10年間の継続調査を実施している(『21世紀成年者縦断調査』)が、それによると、結婚や出産する確率が高いのは正規雇用の女性だった。
非正規雇用や無業の女性は結婚する確率も低い。特に無業の場合は、無業状態が長期化する中で、社会的ネットワークも失い、出会いの機会もなくなるからであろう。
さらに内閣府の調査(『少子化と未婚女性の生活環境に関する分析』)によると、正規雇用者より無業の女性の方が「特に異性との交際を望んでいない」者の割合が高く、「いずれ結婚するつもり」という意欲を持つ者の割合も低くなっている。
なぜか無業の女性の方が、交際や結婚への意欲を失っているのである。つまり、無業の女性が結婚によって状況を変える可能性は高くない、ということになる。
無業のまま卒業する女子学生
このように、女性にとっても仕事に就き、経済的な基盤を築くことは、現在不可欠になってきている。仕事に就くことによって、経済的安定と自信を得て、社会的ネットワークを広げることが可能になり、出会いの機会にも恵まれることになるからだ。
親はいつまでも生きているわけではない。無業であることは、女性にも大きなリスクであることを、社会として認識するべきなのだ。
だが、2010年から関西の大学で教員になって驚いたのは、「結婚がゴール」「どうせ結婚するのに、勉強する意味がわからない」と言ったり、就職活動に行きづまると「したいことがわからないから、しばらくアルバイトでもいいかなあ」と、平気で話す女子学生が少なからずいたことだ。
717
:
とはずがたり
:2017/06/26(月) 16:43:53
実は大学全体で見ると、大学卒業時に無業で卒業する者は少なくない。
例えば2012年の3月に大学を卒業した女子卒業生の状況を見ると、派遣や契約社員など正規職員でない者が5.8%、アルバイトなどの者が4%、進路が不明のままか、就職もせず進学もせず卒業していった者(その多くが無業者)は15.8%もいた。
その女子学生たちは、2017年には卒業から5年経つ。彼女たちはその後、どうなったのだろうか。新卒一括採用が主流の日本では、卒業時にそのルートを外れると、正規の就職はぐっと難しくなる。
就職状況が好転した2016年3月に大学を卒業した女子でも、派遣や契約社員が4.5%、アルバイトが1.9%、無業者が8.7%であり、人数にすると約2.2万人となる。人手不足だというのに、大卒女子の約11人に1人は進路未定のまま卒業しているのである。
2016年には高校を卒業した女子の57.3%が4年制大学や短大に進学している(この他に専門学校への進学者は約20%)。もはや大学進学者の方が多数派になりつつある中で、その大学を無業で卒業する女子学生がいる。
しかも大学進学率の高い大阪では(2016年に62.6%)、同年の大学卒業生の状況は、派遣や契約社員が5.4%、アルバイトが2.3%、無業者が9.6%と全国平均を上回っている。
実は関西では大学卒業時の無業者の比率が高いだけでなく、女性全体の就業率が低い。2015年の国勢調査から25〜44歳までの女性の就業率を県別に比較すると、神奈川県が最も低いものの、兵庫県・奈良県・大阪府はそれに次いで低い。
未婚無業女性は増えている?
そこで、関西で4年制大学を卒業した後、無業状態でいる20から30代の女性9人にインタビューを試みた。うち3人は若者サポートステーションという就労支援機関の支援を受けている人であったが、他の6人はまったくどこにもつながっていなかった。
最も多かったのは、大学在学時に働くことや将来について深く考えることなく、準備なしに就職活動をしたため、就職できなかったケースである。
そのまま無業状態で30代になっている人もいた。
また初職が非正規であったり、職場環境がひどかったりなどで、仕事を辞めることになり、そのまま無業状態という人たちもいた。中には、30代後半になり、もう働きたくないという人もいた。
高学力であるがゆえに、進路に悩み、転部と転学を繰り返し、12年近く大学に通っていた人もいた。
大学をいったん卒業してしまうと、こうした女性たちを見つけ、支援するすべがない。一方、彼女たちも、無業期間が長期化するにつれ、友人との関係も切れ、社会とのつながりを失っていく。
友人たちが就職・結婚とそれぞれのライフコースを歩むにつれ、例えば「こちらから話すこともないので、メールの返事も返さない間に、連絡も来なくなる。向こうにすればこっちが無視していることになるので」と言う。
そうやって次第に彼女たちは、孤立していき、ますます誰にも相談できないままの状態が続くのである。
じつは、彼女たちのような長期間無業状態にある人たちを支援する機関もあるが、その存在は広くは知られていない。そのうちの一つ、若者サポートステーションという就労支援機関につながった人たちは、偶然のような幸運に恵まれて、支援機関につながったと言っていいだろう。
女性の活躍と言いながら、未婚で無業の女性たちが社会から気づかれないまま、見えない存在になっているのだ。インタビューした全員にはほとんど収入はないが、親元で暮らしているので、生活には困っていない。だが一人でみると貧困状態である。
「将来どうするのか」という問いかけに、「どうせ長生きしないから」、とまで答えた人もいる。しかも、親元が裕福という人はおらず、普通の世帯か、むしろ経済的には苦しい世帯もあった。
これは関西の問題だけでなく、こういう女性が全国的に増えているのではないか、と思われる。
718
:
とはずがたり
:2017/06/26(月) 16:45:32
>>715-717
表2は2015年の国勢調査の速報集計から未婚女性の労働力状況をまとめたものだ。未婚女性全体の人口は総数で示されるが、それは大きく3つ、労働力人口と非労働力人口、そして労働力状態不詳に分けられる。さらに非労働力人口は「家事」「通学」「その他」に分けられる。
この「その他」というのが働いてもいないし仕事探しもしてないが、家事もしていないし、学校にも行っていない、「無業」の人たちだと考えられる。
そういった「その他」の人たちは、25?29歳で1.7%の約3万人。30〜34歳で3%の約3.5万人、35?39歳の3.7%の約3.5万人いることがわかる(年齢が上になるほど総数が減っているのは、結婚によって未婚から抜けていくためである)。しかもその比率も人数も2010年の国勢調査の結果より増えている。
「家事手伝い」は問題がない?
さらにここにはもう一つ問題がある。いわゆる自分を「家事」つまり、「家事手伝い」と答えている女性たちである。
『就業構造基本調査』では、「家事手伝い」と答えて、働いていないという人に、さらに「なぜ無業なのか」を聞いている。すると驚くべきことに、「家事や介護のため」と答える15?44歳までの女性は2割前後に過ぎないのだ。
「家事手伝い」と言いながら、働いていない理由が「仕事をする自信がない」人が1割おり、「特に理由はない」という人が3割近くを占めている。最初に述べたように、女性は無業であっても「家事手伝い」と言えば、本人も周りも安心してしまう。だが、それではいずれ、彼女たちの人生が立ち行かなくなる。
実はこの『就業構造基本調査』を見ると、全国では大学・大学院卒で未婚無業の女性が25〜44歳の年代で約12万人いる(短大高専卒は約10万人)。そのうち2割は働くことを希望していない。働きたいという人でも、実際に求職活動をしているのは、就業希望者の7割に過ぎない。
これまで大卒の女性は恵まれた存在だと思われてきた。だが現状では、その人たちが何万人単位で、無業で未婚のまま過ごしている。
彼女たちを「自己責任だから」「見えない存在だから」とほっておかず、社会とのつながりを持てるようにし、就労意欲を持って求職活動に踏み出せるように支援することが必要だ。
あっという間に親も本人も年を重ねてしまう。貧困状態の中高年女性が増えてからでは遅いのである。
人口減少時代に掲げられた「一億総活躍社会の実現」という政策目標。労働力として注目をされ始めた女性たちの置かれた本当の姿とは?
前田正子(まえだ・まさこ)甲南大学マネジメント創造学部教授。1960年、大阪府生まれ。商学博士。1982年早稲田大学教育学部卒業後、公益財団法人松下政経塾を経て、1992年〜94年まで米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に子連れ留学。慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程修了。1994年〜2003年までライフデザイン研究所(現第一生命経済研究所)勤務。女性の就労や子育て支援の研究を始める。2003年〜2007年横浜市副市長(医療・福祉・教育担当)。2007年〜2010年公益財団法人横浜市国際交流協会理事長。2010年より現職。主な著書に『大卒無業女性の憂鬱』(新泉社、e-honからの購入はこちら、hontoからの購入はこちら)、『保育園問題』(中公新書)、『みんなでつくる子ども・子育て支援新制度』(ミネルヴァ書房)などがある。
719
:
チバQ
:2017/06/27(火) 19:43:31
https://www.moneypost.jp/158838
貯蓄なし世帯が30%超 「貧困化ニッポン」の実態
Tweet Facebook 2017年6月25日 17:00
日本の家計に異変が起こっている。手取り額は過去20年間で月7万円近く減少し、エンゲル係数も29年ぶりの高水準となっている。日本の貧困化はどこまで進んでいるのか? 家計の見直し相談センター・藤川太氏が「貧困化ニッポン」の現状を解説する。
* * *
収入が減って負担ばかりが増える──そんな「貧困化ニッポン」がひたひたと迫っている実態は、次のようなデータからも窺えます。手取り減少時代に家計で何が削られてきたかを見ると、それは顕著です。
総務省統計局がまとめている家計調査ではお小遣いを含む「その他の消費支出」という項目があり、1997年は9万4543円でしたが、その後、減少の一途を辿り、2016年は6万1533円と20年前より3万円近く削られています。
他にも衣服代は2万264円から1万3153円へとカットされています。つまり、お小遣いを減らして衣料品などを買い控えるなど、生活レベルを下げて我慢を強いられているのが現状なのです。
そうなってくると、貯蓄に回す余裕はどんどんなくなっていきます。金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」によると、1997年は10%だった「貯蓄なし世帯」は、アベノミクスが本格化した2013年以降、30%を超える水準で高止まりしています。
いまや3軒に1軒の世帯で貯蓄のない「貧困化」が進んでいるのが実態なのです。問題は、それに歯止めがかかるかどうかですが、残念ながら、税金や社会保険料が今後も増大するのは人口動態からも明らかといえます。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の総人口は2053年までに1億人を割り込み、2060年には9284万人まで減ると見られています。そうしたなか、65歳以上の高齢者は2015年の3387万人から2040年には3900万人台まで500万人も増えて総人口の3割を超え、2060年には4割近くに上る見込みです。
一方で15〜64歳の生産人口は2015年の7728万人から2040年に5978万人と1700万人も減り、2060年には5000万人を割り込むと予測されています。このままでは現役世代の負担を増やさない限り、増大する社会保障費を賄うことができないのは必至の情勢です。
しかも、一人ひとりの負担は着実に増えているのに、国家財政はよくなっていない。2015年度の社会保障給付費(年金・医療・介護など)が116.8兆円であるのに対し、国民から集めた社会保険料収入は60兆円余りにすぎず、その差額は公費負担(税金や借金、資産収入など)で補填しています。
その差は今後、現役世代の負担を増やすだけでは縮まらないことも確実視されています。これまでは若者を中心に非正規雇用を増やしたり、現役世代の税金や社会保険料負担を増やしたりしてきましたが、それもやがて限界に近づき、今後は社会保障を受ける側、つまりは高齢者がターゲットになる可能性が高いでしょう。年金の支給開始年齢が引き上げられたり、介護や医療費の自己負担が増したりすることも十分に考えられます。
そう考えていくと、皮肉なことに、その割を食うのも、将来、高齢者になるいまの現役世代となってしまいます。現役時代に大きな負担を強いられたのに、いざ高齢者になっても支払った分がもらえない恐れもあるのです。「貧困化」は今後ますます進むと見て間違いないでしょう。
【PROFILE】ふじかわ・ふとし/1968年生まれ。生活デザイン株式会社代表取締役。「家計の見直し相談センター」(
http://370415.com
)で個人向け相談サービスを展開する“お金のお医者さん”。『1億円貯める人のお金の習慣』ほか著書多数。
※マネーポスト2017年夏号
721
:
チバQ
:2017/06/27(火) 19:52:37
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017062702000243.html
「子どもの貧困」7人に1人 母子家庭「生活苦しい」82%
2017年6月27日 夕刊
写真
厚生労働省が二十七日発表した二〇一六年国民生活基礎調査で、「子どもの貧困率」は一五年時点で13・9%(七人に一人)だった。三年おきに調査しており、過去最悪だった前回から2・4ポイント下がった。改善は十二年ぶり。厚労省は「雇用状況が良くなり、子育て世帯の所得の増加が主な要因」と分析している。ただ先進国の中では依然として高めの水準。特にシングルマザーなどひとり親を取り巻く状況は厳しく、引き続き対策が求められそうだ。
子どもの貧困率は、平均的な所得の半分に満たない家庭で暮らす十八歳未満の割合を示す。同じ方法で算出した全世代の「相対的貧困率」も0・5ポイント減の15・6%。世帯類型別では、大人一人で子どもを育てる世帯の貧困率が50・8%と極めて高かった。
経済協力開発機構(OECD)の直近のデータでは、加盟国など三十六カ国の平均は子どもの貧困率が13・3%、相対的貧困率が11・4%で、日本はこれらを上回っている。
一五年時点で全世帯の平均所得額は一二年比1・6%増の五百四十五万八千円。子育て世帯は七百七万八千円で5・1%増えた。生活状況は「大変苦しい」「やや苦しい」との回答は計56・5%だった。
子どもがいる女性のうち、仕事がある人は67・2%で、前回調査から4・1ポイント増。子どもの年齢が上がるにつれ、働く割合は増えるが、非正規雇用が大半を占める。
調査は全国世帯(震災があった熊本県を除く)を対象に一六年六、七月に実施。世帯構成は約二十二万四千世帯、所得は約二万五千世帯から有効回答を得た。
<解説> 悪化が続いていた子どもの貧困率が十二年ぶりに改善した背景には、景気や雇用状況の好転があるとみられる。だが、ひとり親家庭の貧困率は依然50%を超えており、きめ細かい実態把握と対策が求められる。
貧困率は所得の状況を表すものだが、今回の国民生活基礎調査でローンを含む借金や貯蓄の状況を見ると、母子家庭では二〇一三年の前回調査に比べ、「借金がある」「貯蓄がない」と答えた割合がいずれも増えた。「生活が苦しい」という割合も母子家庭では82・7%に上り、厳しい状況に置かれていることが分かる。
政府は一四年に子どもの貧困対策推進法を一五年には生活保護の手前の人向けに生活困窮者自立支援法を施行。対策が進んでいるが、一方で見かけ上は他の子と同じような物を持っていても、百円ショップの商品ばかりといったように、現代の貧困は見えにくいと指摘される。
経済状況だけでなく、社会的なつながりを持てているか、適切な食事が取れているか、教育の機会は均等に与えられているかなど多角的な視点で取り組む必要がある。 (共同・市川亨)
722
:
チバQ
:2017/07/13(木) 18:04:37
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-180022.html
"" style="background: transparent; border: none; font-size: 13px; font-style: normal; font-weight: normal; margin: 0px; outline: 0px; padding: 0px; text-decoration: none; vertical-align: baseline; opacity: 1; position: absolute; width: 360px; height: 202.5px; top: 0px; left: 0px; z-index: 0; overflow: hidden;">
妻からも見放された34歳男性派遣社員の辛酸 家賃は3カ月滞納、主食はモヤシ
05:00
妻からも見放された34歳男性派遣社員の辛酸
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は派遣専門の介護職員として働く、サトシさん(34歳)のケースに迫る。
通過する特急列車に飛び込もうとした。そのときだ。すぐ隣で、影のようなものが一瞬早く身を躍らせるのが見えた。スーツ姿の女性だった。今年4月、関東近郊のあるJR駅構内。まさか、先を越されたのか? 呆然としていると、あっという間に周囲は野次馬たちで騒然となった。彼らは遺体や駆け付ける駅員の様子をスマートフォンで撮影し、SNSへと投稿し始めたという。
朝から雨が降る、肌寒い日の出来事だった。派遣専門の介護職員として働くサトシさん(34歳、仮名)は、この日のことをこう振り返る。「リクルートスーツを着た、たぶん、若い女性でした。自分も自殺していたら、こんなふうにさらし者になるんだと思ったら、(死ぬのは)やめようと……。今はただ生きることを頑張る毎日です」。
貯金通帳の残高は「0円」
サトシさんとは自宅近くのファミリーレストランで会った。見せてくれた貯金通帳の残高は「0円」。今年に入ってからは日々の食費にも事欠く状態で、「主食」はモヤシと賞味期限切れ間近で値引きされた豆腐だという。スーパーの試食品コーナーを回ったり、100円ショップでそろえた釣り具で、近くの海で魚をとったりすることもある。ここ数日は、自販機の下に落ちていた100円で買ったパスタを塩ゆでにして腹を満たしている。
水道代を節約するために、用を足すときは最寄り駅に隣接した商業施設内のトイレを、シャワーは派遣先の介護施設に設置された浴室を使う。そこまでして切り詰めても、現在、アパートの家賃は3カ月滞納しており、立ち退きを迫られている状態である。
「ガスはしょっちゅう止められます。水道は最後まで止められないんですが、以前、止められたときは、警察が(安否確認のために)自宅までやってきました」
自殺未遂の話や壮絶な貧乏暮らしを語っているのに、人懐っこい笑みを絶やさない。昼時だったので、会計はこちらで持つので一緒に食べましょうと誘っても、もう済ませてきましたからと、丁寧に断ってくるところにきまじめな人柄がうかがえる。
関西出身で、元は両親と弟の4人家族。最初のつまずきは、高校卒業後に進んだ介護専門学校の実習先でイジメを受けて退学、それが原因でうつ病を発症したことだ。
ちょうど介護保険制度が始まった2000年。ちまたでは、介護専門学校が相次いで開校し、「未来のある仕事」として多くの学生も集まった。しかし、サトシさんが実習で訪れた施設は、職員のほとんどが中高年女性。事あるごとに「こんなの男のする仕事じゃない」とバカにしたように言われたうえ、さらには、声が小さいとしかられたので声を張ると、うるさいと遮られ、質問をすれば「そんなこともわからないの」と怒鳴られ、見よう見まねでやって失敗すると「こんな簡単なこともできない」と陰口をたたかれたのだという。
「男子学生がターゲットにされがちで、結局、クラスメートの4人に1人が退学しました」
介護保険制度が始まった当初は、今と比べて女性職員が多かったのは事実。それまで自身の経験や技術で現場を切り盛りしてきた彼女たちの中には、新制度に戸惑いを抱く人もおり、時にこうした感情の矛先が若い専門学校生に向かうことは、あったのかもしれない。
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チバQ
:2017/07/13(木) 18:05:20
両親とは縁を切り、ひとり上京
うつ病は退学後も悪化し、ついに措置入院をすることになった。学校を辞めることに反対していた両親との関係もこじれる一方。入院中に見下したように「そこまで落ちたのか」と言われたことがきっかけとなり、両親との縁を切り、東京に出ることを決めたという。
ちょうどこの頃、小泉政権によって製造業派遣が解禁。身ひとつで夜行バスに乗り、東京・新宿に着いたサトシさんは程なく工場派遣の仕事に就いた。派遣労働の規制緩和については、不安定雇用を増やすだけだとの批判もあったが、彼は、このときが人生でいちばん楽しかったという。
「収入は(手取りで)15万円ほどでしたが、安定していましたから、仕事仲間と飲みに行く余裕もありました。3年後には正社員になれるという話もあったので、“そのときまでみんなで頑張ろう”と励まし合ったりして。フィリピン人や日系ブラジル人の同僚が“帰国したら商売を始めるんだ”“家族のために家を建てる”と夢を語るのを聞くのも好きでした」
この頃、工場で出会った女性と結婚もした。ただ、彼女の両親は、サトシさんが派遣社員であることを理由に結婚に猛反対したという。妻の実家は代々続く資産家。両親からはひたすら「派遣じゃ、いつ失業するかわからないし、給料も上がらないでしょう。将来厳しいよね」と諭された。彼らはサトシさんの人柄ではなく、「身分」にダメ出しをしたのだ。彼にできたのは、ただ頭を下げ続けることだけ。最後は、彼が妻側の姓を名乗ることを条件に、両親が折れた。後ほど彼女から「(姓が変わることで)娘の結婚を親戚や近所に知られるのが嫌だったみたい」と説明された。理由はもちろん「相手が派遣だから……」。
そして、幸せは一瞬で暗転した。娘が生まれた直後、リーマンショックに襲われたのだ。サトシさんは最悪のタイミングで派遣切りに遭った。やむなく介護の仕事に就いたものの、うつ病が再発。妻の両親からは連日のように責められ、ついには彼女からも「安定した生活がしたい」と離婚を切り出された。条件は、養育費はなし、その代わり、今後、子どもにはいっさい会わないこと。両親からは「娘と孫は責任をもって面倒を見る。孫が大きくなったら、君は死んだと説明するから」と告げられた。
「パパ」という言葉を覚えたばかりだったという娘の写真は1枚もない。未練が残らないようにと、妻がアルバムのたぐいはもちろん、携帯電話の写真データもすべて回収、削除されてしまったからだ。離婚後、1度だけ、彼女の携帯に電話をしたことがある。しかし、すでに番号が変えられていた。このとき「本当に縁が切れたんだな」と実感したという。
「子どもがおカネに困らない暮らしができるならと思って離婚しました。自分は子ども1人育てられない人間なんだと痛感させられました。結局、お義父さんの言うとおりだったんです。嫁にも実家にも迷惑をかけました」。離婚の経緯を語るサトシさんは、最後まで一言も恨み言を口にしたり、周りを責めたりすることがなかった。
難病「ギランバレー症候群」と診断
その後、しばらくはアルコールに頼るなど自暴自棄になったものの、運よく看取りケアを行う介護施設の正社員に。この施設が2年ほどで閉鎖した後は、派遣専門の介護職員になったが、毎日仕事があるわけではないので、年収はわずか100万円ほど。さらに、うつ病の影響からか、時々ひどく身体がだるくなり、思ったように動けない。生活保護の申請は取りつく島もなく門前払いされ、今年初め、ついに下半身が動かなくなり、高熱を出して玄関で倒れていたところを友人に見つかって救急搬送された。異常な状態に最初は危険ドラッグの服用を疑われたが、ほどなくしてギランバレー症候群と診断。これまでの体調不良も、この病気が原因だった可能性があると説明された。「腑に落ちた部分もありましたが、それ以上に将来の不安のほうが大きかったです」。
四肢の麻痺などを伴うギランバレー症候群はいわゆる難病だが、医療費助成の対象となる「指定難病」ではない。医師からは、生活保護を受けられるよう口添えするので、2週間は入院して安静にするよう言われたが、入院費が払えないからと、2日で退院。サトシさんは「生活保護になれば医療費はかからないのに。このときはとにかく働かなきゃ、家賃払わなきゃと、必死すぎて冷静な判断ができませんでした」と言う。
退院後、かろうじて症状は安定しているが、いつまた倒れるかもしれないと思うと、少人数態勢になる夜勤には怖くて就けない。夜勤に入れないと、派遣先を紹介してもらえず、収入は減る一方。ひもじいし、孤独だし、立ち退きの期限は刻々と迫ってくるし――。
724
:
チバQ
:2017/07/13(木) 18:06:00
こうした極限状態の中で迎えた今年4月。衝動的に飛び込み自殺を思い立った。気分転換になればと、JR駅に隣接する商業施設に出かけたのに、楽しそうなカップルや家族連れや、何ひとつ手の届かないショーウインドーの商品を見ているうちに、ふいに死にたくなったのだという。結局、すぐそばにいた女性に先を越され、自殺はかなわなかったが、もはや、喜んでいいのか、悲しんでいいのかわからない。
ここで少し政治の話をしたい。私は、リーマンショックで使い捨てにされ、いまだに人生を立て直せずにいる彼が今の政治に何を望むのか知りたいと思い、選挙には行くのかと尋ねた。すると、彼は「必ず行きます。自民党に投票します。以前は維新の党に入れたこともあります」という。工場派遣を解禁した結果、大量の派遣切りを生み出したのは自民党政権ではないのかと問いかけると、彼はこう答えた。「派遣という働き方を選んだのは僕自身ですから。それに、自民党は子どものための政策に力を入れているように感じます。娘のためにも、未来志向の政治を応援したい」。
自分たちに煮え湯を飲ませたかのようにも見える政治に文句を言うわけでもなく、、変わらず支え続ける――。私には理解できないが、実際には、飽きるほどに見かける光景でもある。
「正社員への誘い」という光明
ただひとつ、最近、サトシさんとって一筋の光明とも思える出来事があった。派遣先の施設から正社員にならないかと誘われたのだ。先日、入居者が亡くなったときの落ち着いた対処が評価されたようだという。「前に働いていた看取りケアの施設では、何人もの高齢者の最期を見守ってきました。(吐血による)血を浴びたこともありますし、呼吸困難に苦しむ人への対応も学びました。ここの看護師から“人の死を扱う仕事なんだから、自信を持ってやりなさい”と言われたことを肝に銘じています」
夜勤がこなせるか、まだ自信はない。しかし、かつて実習先でのイジメにおびえていた頃の自分とは違う。光明というには、まだ心もとない兆しだが、再生のチャンスをつかめるなら、もう一度だけもがいてみようか。そんなふうに思っている。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
725
:
チバQ
:2017/07/13(木) 18:08:01
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-177772.html
年収200万円、32歳男性を苦しめる「官製貧困」 「生活困窮者自立支援制度」相談支援員の悩み
06月29日 05:00
年収200万円、32歳男性を苦しめる「官製貧困」
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は「生活困窮者自立支援制度」の相談支援員、ソウタさん(32歳)のケースに迫る。
「月収20万円? 俺より稼いでるじゃないか」「転職先はボーナスがあるのか……。俺が代わりに行きたいよ」
「生活困窮者自立支援制度」の相談支援員ソウタさん(32歳、仮名)の心の声である。生活に困っている人たちの話を聞き、支援プランを提案するのが仕事だが、彼自身の年収は約210万円。精神保健福祉士という資格に対する手当1万数千円を除くと、毎月の手取りは、自身が暮らす関東近郊の生活保護水準と変わらない。自分より高収入の人に節約のアドバイスをしたり、担当した人の再就職先の待遇が自分より恵まれていたりといったことはしょっちゅうだ。彼はこう言って皮肉る。
「生活に困っている人を助ける仕事が、生活に困る人を生み出しているのです」
自治体は業務を外部委託している
生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至る前の「第2のセーフティネット」として、2015年度にスタート。就労支援や家賃補助、家計相談、子どもへの学習支援など、貧困にかかわる問題をワンストップで相談することができ、窓口業務は、福祉事務所を持つ自治体が実施している。
一方、多くの自治体は業務を社会福祉協議会やNPO法人などに外部委託しており、同制度の主事業である「自立相談支援事業」を直営で行っているのは4割に満たない。委託先の窓口で対応する相談支援員の身分は公務員ではなく、委託先事業者の職員。一部は年収200万円クラスで、ソウタさんがそれに該当する。貧困問題を解決するための制度が、新たな官製ワーキングプアを生み出す温床になっているのだ。
ちなみに、官製ワーキングプアには2つのタイプがある。国や自治体が直接雇用する非正規公務員と、自治体の外部委託先の企業や事業者が雇用する社員・職員だ。前者の低賃金や雇い止めも問題だが、後者の実態はさらに劣悪である。財政難にあえぐ自治体は委託費を切り詰める傾向にあるうえ、委託先の労働実態を把握する義務もないため、一部の職場は最低賃金を下回る時給や賃金未払い、不当解雇などが横行する無法地帯と化している。
いずれにしても、生活保護水準でやり繰りしなければならないソウタさんは、1週間の食費は5000円以内と固く決めており、給料日前はコメだけで食いつなぐこともある。出費を減らすため、家賃がより安いアパートへと引っ越しもした。最近、歯の治療で奥歯を抜いたので、本当なら仕上げに「ブリッジ」を付けなくてはならないが、家計のことを考えると到底無理。いっぱい、いっぱいの生活は心の余裕も奪う。
「自分より高収入の相談者が外食をしていることがわかると、“俺のほうが切り詰めてるのに”と腹が立つし、低収入の人が来ると、“俺はまだマシだな”と安心する。担当した人が好条件の会社に就職が決まっても、喜ぶのではなく、ねたんでしまう。福祉の仕事にかかわる人間がこんなんじゃダメだと、最後はそんな自分が心底、嫌になります」
726
:
チバQ
:2017/07/13(木) 18:08:50
求人票に「賞与あり」と書いてあったが…
同制度の相談支援員として働く前は、希望する仕事に就けず、事務系の派遣社員をしていた。だから、ハローワークで相談支援員の求人を見つけたときは、ようやく精神保健福祉士の資格が生かせると気持ちが高揚したという。「求人票に“賞与あり”と書いてあったのも、とてもうれしかった。自治体の仕事なので安定しているというイメージもありました」。
ところが、ふたを開けてみると、ボーナスはなし。上司からは「業績に応じて支給する」と説明されたが、同僚でボーナスをもらっている人はひとりもいない。身分は正社員だが、年度末に自治体との委託契約が更新されなければ、自分も即失業する可能性が高い。これでは、細切れ雇用におびえていた派遣社員時代と変わらない。一方で、窓口にやって来る相談者には、ソウタさんも公務員に見えるのだろう。「あんたらだけ賃上げしやがって」などとののしられたことは1度や2度ではないという。
理想と現実のギャップに、自己嫌悪にさいなまれる日々。働き始めてすぐ、夜眠れなくなり、洗髪時に髪の毛がごっそりと抜け、円形脱毛症になった。何回か心療内科に通ったが、こちらも治療費と薬代が続かず、今は通院をやめている。
これでは、医療費が無料になる生活保護を受給したほうがよほど人間らしい生活ができる――。以前、職員向けの研修で「僕たちが生活に困ったら、誰が助けてくれるのですか」と不満をぶつけてみた。うんうんとうなずく参加者が何人も視界に入ったことを覚えている。これに対し、厚生労働省から派遣された講師はにこりともせずにこう答えたという。
「生活保護を申請してください。それから、おカネのためにこの仕事をしているのなら、ほかの仕事を探したほうがいいのではないですか」
最近、ソウタさんの失望に追い打ちをかける出来事があった。
職場の共用パソコンで調べ物をしていたときに誤って開いたファイルの中に、自身の雇用主である受託事業者が自治体に提出した見積書を見つけたのだ。そこには、1人当たりの人件費が年間約350万円、賞与2カ月との趣旨の記載があった。事業者は、実際にソウタさんらに支払っている年収よりも150万円近く高い金額で自治体と契約を交わしていたことになる。
しかし、ソウタさんはこのことを告発するつもりはないという。なぜなら、もし不正と判断された場合、事業者は契約更新ができなくなり、自分は失業してしまう。不当な低賃金に泣き寝入りするか、失業覚悟で告発するか――。そんな究極の選択の末の決断だった。
仕事には「ノルマ」もある
仕事には「ノルマ」もあるという。厚生労働省は、新規相談受付件数の目安を人口10万人当たり月24件としており、自治体からは支援員自らが要支援者を発掘して新規相談につなげるよう、ハッパをかけられるのだ。
「窓口で訪問を待つだけでなく、例えば、引きこもり家庭への訪問や、公園のホームレスとの関係づくりなどを積極的にやってほしいと言われます。自治体にしてみると、年収350万円分の仕事をしてくれ、ということなんだと思います。人手不足の問題もありますが、生活保護水準の待遇では、正直、そこまでの要求に応えるだけのモチベーションは保てません」
貧困の現場を歩いて感じることのひとつは、ハローワークの窓口や自治体の生活保護課などで、相談業務に携わる人々の待遇の劣悪さである。ハローワーク相談員の大半は1年ごとの契約を繰り返す非正規職員でたびたび雇用の調整弁にされてきたし、一部の自治体は生活保護のケースワーカー(CW)に人件費の安い任期付き職員や臨時職員を導入、行政の中でも過酷な業務を非正規公務員に押し付けようとしている。
私には、市民と直接向き合う、専門性の高い大切な仕事が、ないがしろにされているようにもみえる。鳴り物入りで始まった生活困窮者自立支援制度だが、肝心の人材の待遇を生活保護水準に置き去りにしたまま、期待した効果を得られると、国や自治体は本当に思っているのか。
727
:
チバQ
:2017/07/13(木) 18:09:30
話をソウタさんに戻す。
待遇への不満が尽きないソウタさんだが、仕事で手を抜くことはない。中でもいったんかかわった相談者への情熱の傾け方は、こちらが少し心配になるほどである。
窓口にやって来るのは、借金を抱えた人やメンタルを患っている人、家賃滞納者、DV被害者、障害者、外国人、刑務所を出所したばかりの人などさまざま。このため、連携先も自治体の福祉部門やハローワーク、不動産会社、医療機関、入国管理局、矯正施設、民間シェルターと多岐にわたる。専門知識よりは、経験と臨機応変な対応が求められるといい、自分のスマートフォンを使い、相談者と一緒に何か使える制度がないか、長時間にわたって探すこともある。職場はWi-Fi環境にないため、携帯電話は月末には決まって通信制限がかかってしまう。
また、ソウタさんは相談者の何人かと「LINE」でも連絡を取り合っている。眠れないという深夜の相談から、冷凍食品の賞味期限まで、さまざまな悩みや質問に、時に丁寧に、時に親密に答えを返している。ごくまれに家計に余裕があるとき、若い相談者を自宅に招き、食事をふるまうこともあるという。
しかし、これでは、公私の区別がつかなくなるのではないか。私がそう尋ねると、ソウタさんは「のめり込みすぎるのはよくないとわかっています。でも、この仕事にはゴールがないなとも思うんです」と言った。条件のよい就職先が見つかるなどのまれなケースを除き、相談者の貧困状態や悩みは24時間続いており、業務時間外だからシャットアウトという線引きは、自分には難しいのだという。
悩んだ末、ソウタさんは、おカネは貸さない、生活保護の不正受給など制度の悪用には加担しないといった約束を自身に課したうえで、いわゆる「共依存関係」に陥らないよう気をつけながら、相談者との交流を続けている。
「中でも、自分と似たような恵まれない子ども時代を送った人を、見過ごすことができないみたいです」
ソウタさんがそれまで避けてきた話題に、さりげなく触れた。言葉少なに振り返った彼の生い立ちは壮絶だった。
親戚の家を転々とし、虐待も受けた
父親の失業をきっかけに両親は離婚。親戚の家を転々とする中で、顔や身体に傷跡が残るような虐待も受けた。彼は多くを語らないが、高校からは生活費も学費もすべて自分で稼がなければならず、賄いがつく弁当店や居酒屋、ファミレスを中心に、時には住み込み仕事も含め、昼夜を問わず、あらゆるアルバイトをこなした。1週間の食費5000円という離れ業ができるのは、この頃に飲食店で覚えた格安レシピが役に立っている。
「荒れた時期もありましたが、大学には進学したかったので、友達と遊ぶのは受験までと決めていました」と言いながら見せてくれた10代半ばの写真。髪の色はど派手で、顔には複数のピアスがついていて、人好きのする笑顔を絶やさない現在のソウタさんとは別人にしか見えない。当時は理系の大学への進学を希望しており、成績は合格水準に達していたが、奨学金の仕組みを詳しく知らなかったという。結局、第1希望は断念、代わりに通信制の福祉系大学に進み、精神保健福祉士の資格を取った。
塾にも行けず、勉強の時間もろくに取れない逆境の下、いくら荒れても決して一線は超えることなく、目標を果たす――。頭がよく、どこか冷めたところのある少年像と、プライベートな時間を削ってまでも相談者とかかわろうとする熱血ぶりは、アンバランスにも見え、なぜか私を不安にさせる。
ソウタさんは人並み外れた意志の力で、貧困の連鎖を断ち切ったかに見えた。しかし、今再び、国と自治体が生み出す貧困に足をすくわれようとしている。現在の年収や両親の離婚のことを考えると、結婚をして子どもを持つことは「怖い」という。
生活困窮者自立支援制度の相談支援員を続ける以上、「明るい未来はひとつもない」と断言する。一方で、いつか「自分の家を持つのが夢」と語った。幼い頃から、親戚の家などをたらい回しにされ、住み込みのアルバイトを繰り返し、最近もまた引っ越しを余儀なくされた。とにかく、ひとところに落ち着いて生活した記憶がないのだ。夢を実現するため、今は毎月3万円を貯金することを目標にしている。もちろん、できる月もあれば、できない月もある。
「アパートでも、戸建てでも、田舎に自分で建ててもいい。将来、安心して暮らし続けることができる自分の家を持ちたい」。その希望だけがソウタさんを支えている。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:29:02
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-175826.html
「追い出し屋」に全て奪われた50歳男性の苦悩 家賃滞納を機に部屋だけでなく家財も失った
06月15日 05:00東洋経済オンライン
「追い出し屋」に全て奪われた50歳男性の苦悩 家賃滞納を機に部屋だけでなく家財も失った
「追い出し屋」に全て奪われた50歳男性の苦悩
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は家賃滞納で住んでいたアパートから突然、締め出され、家財を撤去されるという被害に遭ったケイタさん(50歳)のケースに迫る。
何かが違っている。家賃滞納でアパートを締め出されて1週間あまり。路上から、2階にある自室の窓を見上げたとき、違和感を覚えた。「あれ、カーテンがねぇな」。慌てて玄関まで駆けつけてみると、以前、入室を阻んでいた特殊な施錠具はすでに取り外されていた。恐る恐る扉を開けると、室内はもぬけの殻。テレビに電子レンジ、食器、掃除機、衣類、布団、すべての家財道具が持ち去れていた。
東京都内に住むケイタさん(50歳、仮名)は2年前、住んでいたアパートから突然、追い出され、家財を撤去されるという被害に遭った。「(亡くなった)両親の写真も、母の形見で僕が普段から使っていたマグカップも。すべてのものを持っていかれました。両親の写真はあれっきりだったのに」。
アルバイトや日雇い派遣で両親の面倒を見ていた
専門学校を中退後、自動車部品やコンピュータ関連などいくつかの工場に勤務。長時間残業で体調を崩したこともあったが、いずれも正社員で、生活に困らない程度の収入はあった。しかし、長引く不況で当時勤めていた工場が閉鎖、遠方への転勤か、退職を迫られる事態に。この頃、母親ががんを、父親が認知症を発症したこともあり、ケイタさんは仕事を辞め、アルバイトや日雇い派遣をしながら両親の面倒を見ることにしたという。そして、相次いで2人を看取った後、遭遇したのがリーマンショックによる派遣切りである。
ちなみに、両親の家は持ち家だったが、この家には兄とその家族が住むことになり、ケイタさんは賃貸アパートへと移った。彼は多くを語らないが、兄は両親の介護に一切かかわろうとせず、そのことをめぐって関係がこじれた。ただ、生来、他人と揉めるのが好きではない性格で、結局は兄の望みどおりに実家を譲り、代わりに一切の縁を切ったのだという。
派遣切りに遭い、賃貸アパートに移った後は、介護の仕事に就いて資格も取ったが、ストレスが多く、2年前、突然、持病の糖尿病が悪化。いったん退職して1カ月ほど自宅療養した後、別の職場を探すつもりだったが、折悪しく、正規採用の求人が見つからなかった。やむなく日雇い派遣で食いつないだが、交通費が自腹のうえ、仕事にありつけない日も多く、あっという間に、水光熱費の支払いにも事欠くようになり、2カ月分の家賃計8万円を滞納する状態に追い込まれたのだという。
追い出し行為は一方的で、性急で、悪質だった。
ある日の夕方、日雇い労働から帰宅すると、玄関に特殊な補助錠が設置され、部屋に入ることができなくなっていた。驚いて、賃貸借契約時に大家側から契約するよう求められた家賃保証会社に電話し、すでに新しい仕事を見つけたことや、分割で家賃を支払う意思を伝えたが、対応した男は早急に8万円全額を払うよう求めるばかりで、それができない場合は家財を撤去すると告げてきた。
「なーんで払えないんですかぁ」「そんなに待てませーん」という、終始こちらを見下した物言いに対し、普段、穏やかなケイタさんは家財の撤去は違法で、弁護士に相談すると語気を強めた。すると、男は「そんなの知らない。勝手にすれば」と言って、一方的に電話を切ったという。「最初から追い出しありきの対応でした」。
こうして着の身着のままでアパートから締め出されたケイタさんは、最初、ネットカフェや24時間営業のファストフード店を利用したが、所持金が底を尽いてからは、コンビニエンスストアや公園で夜を明かした。食事は、スーパーの試食コーナーで空腹を満たし、「1日1食、食べたり、食べなかったりの状態」。季節は初夏で、汗ばむ陽気の日もあったが、替えの洋服も下着も買えない。歯磨きやヒゲ剃りは公園のトイレやデパートの障害者用個室トイレで済ませたが、次第に仕事に行くどころではなくなったという。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:33:39
それでも、そのときは「家財までは持っていかれないと思っていました」と言う。ところが、郵便物を確認するためにアパートに立ち寄ったところ、窓にカーテンがないことに気がつき、確認すると、室内は空っぽ。締め出されてから荷物の撤去まで、わずか1週間あまりの出来事であった。
現代の日本で、雨露をしのぐ住まいから突然、放り出され、家財まで奪われる――。「“まさか”という驚きと、“やられた”という怒りが半々でした。このまま路上生活になるしかないのかと思うと、惨めでしたし、不安でした」。
誰もが同じ被害に遭う可能性がある
ケイタさんの経歴を見ると、工場勤務時代の長時間労働や、親の介護のために仕事を辞めた後、なかなか再就職できない「介護離職」問題、リーマンショックによる派遣切りなど、本人の能力や努力ではいかんともしがたい社会的、構造的問題に翻弄されてきた様子がうかがえる。彼自身、「巡り合わせの悪いことが重なったという思いはあります」としたうえで、追い出し被害について「それだけに、(巡り合わせ次第で)誰もが同じ目に遭う可能性があると感じました」と言う。
話は少しそれるが、ここで、ケイタさんがリーマンショック後に就いた介護労働が抱える問題について触れておく。それは、これまでさんざん指摘されてきたサービス残業や低賃金、慢性的な人手不足などではない問題。高齢者から介護職員への「虐待」である。
ケイタさんによると、身体介助などの際、主に認知症の高齢者から蹴られたり、引っかかれたり、かみつかれたり、つばを吐きかけられたりすることは日常茶飯事。「僕ら介護職員の間では、打撲やひっかき傷は珍しくありません。かみつきによる肝炎のリスクもありますが、上司に訴えても、“うちはサービス業だから”の一言で一蹴されてしまう」。認知症ではない人から理不尽に怒鳴られたり、話しかけても手で追い払われたりすることもあるという。
確かに、マスコミなどで話題になるのは、必ずと言っていいほど職員から高齢者への虐待で、高齢者から職員への暴言、暴力に関心が寄せられることはあまりない。
介護業界で働き始めて10年たらず。ケイタさんは両親の面倒をみる中で、介護の仕事を身近に感じるようになったといい、きっかけは派遣切りによる失業だったが、転職は自然な流れだった。身体機能が回復していく入居者を見るとやりがいも感じるという。一方で、心身ともにしんどい仕事なのに、社会の評価は低く、報われない。追い出し被害に遭う端緒となった糖尿病の悪化について、彼は「(入居者による暴言、暴力をきっかけとした)精神的ストレスが原因だったのではないかと思います」と打ち明ける。
話を家賃保証会社による「追い出し行為」に戻す。
はたしてこれは許される所業なのか。結論としては、住まいからの一方的な締め出しや鍵の交換、家財の処分は原則、違法である。確かに、ケイタさんは家賃を滞納したが、関連の現行法には、相対的に弱い立場にある借り主を保護する目的もあり、相当程度の事由や裁判所からの許可などがなければ、貸し主側は借り主を簡単に追い出すことはできない仕組みになっている。もし、「滞納するほうが悪い」という自己責任論だけがまかり通れば、世の中は弱肉強食の無法地帯となり、ホームレスが急増することになりかねない。
一方、家賃保証会社がかかわるトラブルは、リーマンショックの頃から増加しているとされる。家賃保証会社は連帯保証人に代わって滞納家賃を肩代わりするほか、家賃の督促も行う。雇用や収入が不安定化する中で、アパートなどを借りる際、大家側から家賃保証会社との契約も併せて求められるケースが増えており、これに伴い、一部業者による違法行為が横行しているのだ。こうした業者は「追い出し屋」とも呼ばれ、社会問題となってきたが、直接的な法規制や監督制度はないのが実態である。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:34:54
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-171536.html
広告代理店から介護に転職した男性の苦悩 正社員だがボーナスも交通費もナシ
05月18日 07:00東洋経済オンライン
広告代理店から介護に転職した男性の苦悩 正社員だがボーナスも交通費もナシ
広告代理店から介護に転職した男性の苦悩
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は中堅広告代理店をリストラされ、その後、介護の世界へと入ったノリオさん(64歳)の苦悩に迫る。
典型的な「求人票詐欺」である。
東京都内の高齢者向けデイサービスでケアマネジャーとして働くノリオさん(64歳、仮名)が見せてくれたのは、施設を運営する有限会社がハローワークに掲示していた求人票。
「就業時間」の欄に「〜17:00」とあるが、採用後に捺印を求められた雇用契約書には「〜17:30」と記されていたという。また、「休日」は「土日祝他」とあるが、実際は土日だけ。「年末年始休暇」も「〜1月4日」とあるが、休めるのは1月3日まで。「時間外なし」とあるが、残業は毎月20時間以上で、残業代は一部しか支払われない。
もはや「真実」が書かれている箇所はあるのかと突っ込みたくなる代物だが、「うそ」はまだある。
全社員が最低水準の月収19万円
「月平均労働日数」は「20日」とあるが、実際は「22日」。月平均労働日数は、時間外や休日労働に対する割増賃金を算出する際に必要な1時間当たりの賃金の基となる。労働日数が多いほど労働時間も多くなり、所定賃金から割り出される1時間当たりの賃金は安くなる。つまり、月平均労働日数が多いほど割増賃金は低くなる仕組みなのだ。また、「賃金」は「19万〜30万円」とあるが、ノリオさんが知るかぎり、すべての社員が最低水準の19万円にとどまっているという。
以前、就業時間が求人票と違うことを社長と役員に指摘したことがあるが、「わかっていて(雇用契約書に)ハンコ、押したんでしょ」と言い返された。残業代不払いについても「うちは時間ではやってないから」とかわされた。
「だまされたほうが悪いと言わんばかりでした。時間でやっていないなら、何でやっているのかと聞いたら、“件数だ”と言うんです。要はノルマ。もっとたくさんの利用者を連れてこい、ということです」
正社員とはいえ、ボーナスも、住宅手当も、交通費も出ない。仕事に必要な自転車の購入代も、電話代も自腹なのだ。「これでは生活できない」と辞めていく同僚たちは後を絶たず、ノリオさんは勤続2年半にして5人のケアマネジャーのうち、いちばんの古株になってしまった。
会社側にも社員に長く働いてもらおうとの考えははなからないようだという。最近、同僚で正規雇用のシングルマザーが非正規雇用に転換するよう持ちかけられた。シングルマザーなどの「就職困難者」を継続雇用すると、国から助成金が支給される制度があるが、転換話が持ち上がったのは、まさに支給要件を満たす雇用期間が「満了」するタイミングだった。女性が拒否すると、社長はほかの社員らに「(女性の働きぶりに)問題があったら報告して」と言ってきたという。
ノリオさんは「(解雇の難しい)正社員から非正規に降格し、その後で辞めさせようという魂胆が見え見え。降格する理由を見つけるために、私たちに告げ口させようとしているんです。彼女をクビにした後で別のシングルマザーを雇えば、また助成金がもらえますから」と言い、わが事のように憤る。
守銭奴のような経営者にみえるが、彼を絶望的な気持ちにさせるのは、多くの高齢者介護施設の実態が似たり寄ったりだという現実だ。
731
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:35:32
年収は900万円から200万円へ
中堅広告代理店の営業社員だったノリオさんは40代半ばで、経営悪化を理由にリストラ。その後、介護の世界へと入った。ちょうど介護保険制度が始まった2000年のことである。年収900万円から、年収200万円へという落差は衝撃だったが、仕事にはすぐなじんだという。
「最初にオムツの交換をしたときには、“こんなことまでやるのか”とショックを受けましたが、もともとおばあちゃん子で、人とかかわる仕事が好きだったので。利用者さんが話してくれる第2次世界大戦時の学徒出陣の体験談や、(移民政策が進められた中国東北部の)満州からの逃避行の話は、臨場感があって聞きごたえがあります。営業マンのころは接待漬けの毎日で、これからもこんな日が続くのかと、ふと疑問に思うこともあったんです」
エリート会社員だったノリオさんがリストラのターゲットにされた当時は、それなりに思うところもあったろう。しかし、高齢者との交流を満足気に話す様子からは、今は介護の仕事に出合えたことを幸せに感じていることが伝わってくる。
問題は労働条件である。
ノリオさんはさまざまな施設で経験を積むため、これまで5〜6回の転職を重ねてきた。結果的にまともだったのは、いちばん初めに無資格で飛び込んだ、設立から40年近い歴史を持つ社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームだけ。
その後に勤めた土建業者が運営にかかわる施設では、当然のように「残業をするときはタイムカードを押してからにして」と指示された。また、株式会社によるデイサービス施設は、人員基準を満たしていないのに、行政側に虚偽の報告をして人件費を浮かしていた。現場の介護職員の月収は20万円前後なのに、経営者や役員だけが2倍、3倍の報酬を得ている有限会社もあった。こうした問題を施設内外で問題にしたこともあったが、改善されることはなかった。
この間、ノリオさん自身、介護福祉士やケアマネジャーの資格を取り、「施設長」などの肩書きを得たこともあったが、結局、年収が300万円に届くことはなかったという。
広告代理店を退職時にマンションを買ったため、貯えはほとんどなくなった。リストラのごたごたなどで、結婚の機会も逸してしまった。独り暮らしで家賃負担がないので、なんとか生活できているが、貯金をする余裕はない。
認知症の高齢者への「虐待」が横行
悩ましいのはカネの問題だけではない。ノリオさんは「(被害を訴えられない)認知症の高齢者への虐待が、特に若い職員の間で目立ちます」と打ち明ける。それは殴る蹴るといった暴行というより、たとえば、お笑い芸人のはやり言葉を言わせては皆でゲラゲラと笑ったり、おむつ交換のときに局部についての冗談を言い合ったりといった虐待。劣悪な待遇に対するストレス発散を兼ねた「娯楽のような軽さ」が、かえって闇の深さを感じさせる。
経済的な貧しさが、人権意識や責任感の貧しさ、やりがいの乏しさにもつながっていく。「リーマンショックのとき、介護業界を大量の失業者の受け皿とするような安易な政策が進められるのを見て、自分の仕事が雇用の調整弁にされていると感じました。これではスペシャリストが育つはずもないし、仕事に対するプライドも育たない」。
実はノリオさんは年明け以降、職場でのっぴきならない事態に直面している。
きっかけは、非正規雇用への転換を迫られたシングルマザーが労働基準監督署に駆け込んだことだった。このとき、労基署側は残業代未払いも悪質だとして併せて指導。ところが、これを受けた会社側は、あろうことか就業時間を30分延長して18時とするよう就業規則を変えてきたのだ。これまでは時間外に当たっていた時間帯を就業時間内にすれば、残業代の支払いを少しでも抑えられるとの浅知恵だが、これでは時給換算すると70円の賃下げになってしまう。ほとんどの職員がしぶしぶ了承する中、ノリオさんはこれを拒んだ。
732
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:36:19
ちょうどこの頃、ノリオさんはあらためて福祉学を学ぶため、4月から聴講生として大学に入学する準備を進めており、会社側から短時間勤務への変更許可も得ていた。
ところが、会社側は彼が就業時間の延長に応じないとみるや、短時間勤務は認めないと、手のひらを返してきたという。「初めのうちは社長から“頑張ってください”と言われていましたし、業務の引き継ぎも始めていたんです」。
このままでは入学をあきらめるか、会社を辞めるしかない。しかし、爪に火をともすようにして捻出した数十万円の授業料はすでに納めてしまった後である。堪忍袋の緒が切れたノリオさんは現在、地域ユニオンに加入、会社側と団体交渉を重ねている。
我慢することが美徳という価値観
一連の出来事を通し、あらためて痛感したのは、これまでの職場を含め、介護業界の仲間たちが自らの賃金や待遇改善について声を上げることに及び腰であるということだ。
声を上げないどころか、今回、会社側と交渉を始めたことについて、ある同僚からは「利用者さんのことは考えないのですか」と非難された。そのほかの同僚たちもノリオさんのことを腫れ物に触るようにして遠巻きに見ているだけだという。
いちばん悪いのは法律を守らない一部の経営者だし、それを野放しにする行政の不作為であることはわかっているとしたうえで、ノリオさんは「(介護業界には)利用者のために我慢することが美徳であるかのような価値観が強いと感じます。でも、きちんとした労働条件で働くことこそが、利用者さんのためにもなると、私は信じています」と言う。
幸い、職場で同僚たちから村八分にされ、おしゃべりができなくなったからといって嘆く年頃でもない。「声を上げられる人が上げればいい」。それが、第2の生きる場所を与えてくれた介護の世界への恩返しだと思っている。
733
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:37:06
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-169661.html
47歳難病男性が「障害者手帳」を熱望する事情 難病が原因で転職のたびに条件が悪化した
05月05日 05:00東洋経済オンライン
47歳難病男性が「障害者手帳」を熱望する事情 難病が原因で転職のたびに条件が悪化した
47歳難病男性が「障害者手帳」を熱望する事情
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
長年、再生不良性貧血を患っていると聞いていた。しかし、待ち合わせ場所に現れたのは、背が高く、がっちりとした体つきの男性だった。東京都内の学習塾に勤めるマモルさん(47歳、仮名)はこう言って苦笑いする。
「昔、柔道や水泳をやっていたからでしょうか。周りからは病人に見えないみたいで……。実際は、平らな道でもすぐに息切れしますし、地下鉄を乗り換えるだけで貧血で倒れそうになります。いったん出血したら止まらなくなるので、医者からはどんなに小さなケガも絶対にするなと言われています」
いつ脳出血を起こしてもおかしくない
病気がわかったのは20年ほど前。この分野の医療技術が今ほど進んでいなかった当時は、「5年後の生存率は5割」と告げられた。現在は技術が進歩したとはいえ、病状はじわじわと悪化している。最近の血液検査では、赤血球とヘモグロビンが基準範囲を大きく下回ったうえ、血液を固めて出血を止める働きをする血小板は「1万5000/マイクロリットル」と、基準範囲の10分の1に届かなった。医師からはいつ脳出血を起こしてもおかしくないと警告されている。
妻と2人の子どもがいる。主たる家計の担い手として何としても働き続けなければならないマモルさんが、今、のどから手が出るほど欲しいのは「身体障害者手帳」だという。
「ハローワークで仕事を探すとき、手帳があれば専門の相談窓口で条件のよい仕事を紹介してもらえます。でも、血液疾患の場合、手帳はエイズ(患者)にしか交付されません。一般窓口でも求人はありますが、病気のことがわかるとほとんどの会社は採ってくれない。残るのは、誰も行きたがらないブラック企業ばかりです」
障害者の雇用をめぐっては、障害者雇用促進法で企業に対し、労働者の2%に当たる障害者を雇用することが義務づけられている。法定雇用率を達成している割合は大企業のほうが高く、ハローワークのある相談員は「一般窓口に比べ、障害者などを対象にした窓口“専門援助部門”のほうがいわゆる有名企業の求人が集まりやすく、賃金や福利厚生面で条件のよい仕事を紹介しやすいのは確かです」と言う。
長時間労働や低賃金に、体力的・家計的に耐え兼ねて転職するものの、その先にあるのはさらにろくでもない会社ばかり――。「ブラックからブラックへと流され、落とされていく感じ」と嘆くマモルさんはこの20年間、そんな悪循環から逃れられずにいる。
印刷会社の営業社員だったときは、顧客の都合に合わせ、商談や打ち合わせは夕方から深夜にかけて集中したが、月収は約25万円。「残業代も深夜割増手当もほとんどつきませんでした」。塾講師として働いていたときも残業代はゼロ。社会保険への加入義務のある法人だったが、厚生年金や健康保険などは未加入だった。
外資系保険会社では社員と変わらない働かされ方なのに、雇用形態は個人事業主。完全歩合制で、辞める直前の月収は6万円だった。ある検索大手企業の関連会社でもノルマが厳しく、暴言、暴力こそなかったが連日、「もっと単価を上げてください」「できないのは君の能力のせいでしょう」と言われ、真綿で首を絞められるように退職へと追い込まれた。
ある同族経営の会社では、社長がエレベーターから降りてくるたびに社員が拍手で出迎えるという意味不明の習慣があった。お辞儀する社員らの間を歩いていく社長を見送りながら、「ここは北朝鮮かと思いました」と言う。この会社には社員はエレベーターを使ってはいけないとの「規則」まであり、体力的にもたなかった。
現在、勤めている学習塾も、パソコン関係の親会社が税金対策の一環として新たに発足させた一部門だという。正社員とはいえ、学習塾部門が廃止されれば解雇される可能性が高い。何としても採算を上げなければと、休日返上で営業のためのビラ配りに奔走している。
マモルさんが目の当たりにしてきた労働現場は、無法地帯そのものだ。政府は、残業上限「月100時間」をめぐって賛否もある「働き方改革」を進めているが、彼にしてみれば、そんなことより「今そこにある不正」を正してくれと、叫び出したい気持ちである。
734
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:37:31
最終面接通過後の健康診断で「不合格」
マモルさんが絶望したのは、ある会社を、最終面接を通過した後の健康診断で落とされたときだ。面接官たちの反応はよかったから、原因は健診結果にあったとしか思えないという。「僕にはハンデがあるんだと痛感しました。(就職活動において)対等な競争ができないのです。それなのに、制度も法律も助けてはくれない」。
身体障害者手帳の交付基準について東京都福祉保健局は「具体的な障害の程度や、生活への支障を見て判断している」とし、再生不良性貧血だからといって除外はしていないという。が、実際に窓口で交付業務に就いているある担当者は「再生不良性貧血の方には原則、手帳は交付していない」と打ち明けるので、マモルさんの思い込みとは言えないようだ。
また、厚生労働省障害者雇用対策課は「手帳の有無に関係なく、再生不良性貧血のような難病の方もハローワークの専門援助部門を利用することはできる」とするが、マモルさんは「求人票に“身体障害者手帳〇級以上”と書いてあるんです。相談員からも“この求人は手帳のない人には紹介できません”と言われました。これでは利用できないのと同じこと」と憤る。
マモルさんは現在、障害年金を受給しているが、支給が決まるまでの経緯も一筋縄ではいかなかった。
「初めて社会保険事務所(当時)に行ったとき、担当者から“あなた、自分の足でここまで来たんですよね。それだけお元気な方に年金をお支払いするわけにはいきません”と門前払いされました。診断書や保険関係の書類も持参しましたが、専門用語をまくしたてられ、とりつく島がありませんでした。その後、あちこち調べたところ、社会保険労務士を通して申請すると認められやすいという話を聞いたので、なんとか依頼料を工面してもう一度申請したんです。そうしたら、あっけないほど簡単に支給が認められました」
行政担当者の話を聞くかぎり、病気や障害のある人は、手厚く、公平に保護されているようにも見える。しかし、現実には、マモルさんは身体障害者手帳を持つことはかなわず、ハローワークの障害者向けサービスを利用することもできない。障害年金の支給をめぐっては危うく泣き寝入りを強いられるところだった。
「生活への支障というなら、(身体障害者手帳が交付される)発症前のエイズの人に比べ、階段の昇り降りにも苦労する僕のほうが、支障が少ないとは思えないんです。不公平だと感じます」。マモルさんは理想と現実のギャップを前に途方に暮れる。
結婚して1年足らずで病気が発覚
再生不良性貧血と診断されたのは、結婚して1年足らずの頃だったという。新婚の妻は「なっちゃったものは仕方ない」とさらりと言っただけで、その後は何ひとつ変わることなく接してくれた。子どもができたときも、どこかで調べてきたのか「(再生不良性貧血は)遺伝はしないんだって。何とかなるよ」と背中を押してくれた。専業主婦になることを望んでいたが、病気がわかってからは共働きで家計を支えている。
当時、親戚や知人が彼女に離婚するよう勧めていたことを知ったのも、ずいぶん後になってからだったという。「彼女にはっきりと言ったことはありませんが、“不良品”をつかませちゃったなという気持ちはあります。(彼女には)感謝――、それしかないですね」。
現在、一家の収入はマモルさんの月収20万円余りや障害年金、妻のパート収入などを合わせても40万円を超える程度。病気がわかる前に購入したマンションのローン月9万円や家族4人分の光熱水費、食費、通信費、各種保険を払うと、生活はカツカツで貯金はできない。最後に家族で旅行したのは6年前の東京ディズニーランド。「東日本大震災の前日だったので、よく覚えています」と言う。
子どもたちは何とか大学に進ませてやりたい。「できればそこそこいい学校に。できれば国立大学に」と希望はするものの、塾に通わせる余裕はない。長女は、地元自治体が貧困世帯などを対象に行っている無料の学習支援を受けることができたこともあり、今春、何とか希望どおりの公立高校に進学した。
735
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:37:58
2人の子どもたちがいずれも、遠征費や備品代などの負担が少なくて済む文化系のクラブに入っているのは、「おカネのことで気を使ってくれているのかな」とも思う。
刻一刻と体調が悪化していることは、自分がいちばん、よくわかっている。今は通院と投薬で済んでいるが、輸血が必要になる日まで、そう長くはかからないだろう。
「せめて死ぬときはポックリと逝きたい」
マモルさんは「死ぬときはひと思いに逝かなくてはなりません」と言う。団体信用生命保険に加入しており、死亡時にはマンションのローンが全額弁済されるからだ。「今よりも血液の状態が悪くなったり、脳出血を起こしたりして働けなくなってからも生き続けてしまうと、家族に迷惑をかけてしまいます」。
現在のように問題のある企業でしか働けない以上、長患いする余裕はない。せめて死ぬときはポックリと逝かなければ、というのだ。
マモルさんは駅前の待ち合わせ場所まで自転車でやってきた。自宅からは距離があり、体力的にはスクーターのほうが便利なのだが、ケガが怖くて最近は乗っていないという。帰り際、彼が自転車にまたがると、体格がいいので車両が小さく見えた。かすり傷も致命傷になりかねないので、転倒はもちろん、壁や人にぶつかってもいけない。慎重に、ゆっくりと――。駅前の商店街の人波の中へ、肩幅の広い大きな背中が吸い込まれていった。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
736
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:38:49
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-168102.html
46歳貧困男性が自己責任論を受け入れるワケ 怒りも不満もなければ夢や希望もない
04月20日 06:10東洋経済オンライン
46歳貧困男性が自己責任論を受け入れるワケ 怒りも不満もなければ夢や希望もない
46歳貧困男性が自己責任論を受け入れるワケ
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
「苦しまないで死ねる施設をつくってほしいです。たとえば、“何月何日に終わりにしたい”と連絡したら、安楽死とか、尊厳死とかさせてくれるようなシステム。そうしたら、電車に飛び込む人も減るんじゃないでしょうか」
千葉県の派遣社員・カズマさん(46歳、仮名)は、自身が望む「死にざま」について穏やかに語った。その口ぶりからは奇をてらう気配も、かといって絶望に打ちひしがれた様子もうかがえない。
年収は約240万円、貯金はゼロ
180センチ近い身長に、すらりとした体型。デニムとベージュのカットソーという服装には清潔感があり、白髪が目立ち始めてはいるものの、30代といっても通用しそうな見栄えである。
しかし、実際の生活は苦しい。年収は約240万円、貯金はゼロ。親から相続した木造の家屋は気密性が低く、夏は暑く、冬は寒いが、電気代を節約するため、もう何年も冷暖房のたぐいは使っていない。夏は水風呂で身体を冷やす。冬はセーターとダウンジャケットを着て乗り切るのだが、今年も両手がしもやけになったという。
一時、食費を1日300円に抑えることを目標にしていた。そのために、近所の大型スーパーの特売日に、大量の冷凍食品と、2.7リットルのペットボトルに入った1900円ほどのプライベートブランドの格安ウイスキーを買う。昼は「白米8割、残りの2割に冷凍食品のミニハンバーグとかカニクリームコロッケを詰めた弁当」を持参し、夜は夕食代わりにウイスキーを飲んで眠る。「お酒が強いわけではないので、(ウイスキーを)飲む量はそれほど多くありません。だから、1本で2カ月近くもつ。寝つきもよくなりますし、食費の節約にもなるんですよ」。
ところが、1年ほど前に急に抜け毛が増えたほか、前歯の付け根部分が虫歯になるなどの異変が現れ始めた。原因は栄養の偏りである。このため食費1日300円はいったん中断。とはいえ、今も朝はファストフードの100円ハンバーガー、昼は社員食堂の500円のカツカレー、2日に一度は夕食がウイスキーというから、食生活の改善にはほど遠い。
「最近、景気がよくなったと言われているそうですね。それが派遣の給料に反映されることはありませんが、物価が高くなったとは感じます。スーパーの精肉売り場で(値段の高い)和牛売り場のスペースが増えたと思いますし、卵の特売がなくなりました。だから、最近は卵を食べていません」
健康診断はしばらく受けていない。「悪いところが見つかったら、治療におカネがかかるじゃないですか。だったら知らないほうがいい」ということだ。
派遣の給与はよくて横ばい、残業が減った最近は右肩下がりで、自分の生活水準もそれに合わせて切り下げていくしかない。ずいぶん前に新聞の購読をやめ、最近はNHKの受信料を浮かせるため、テレビを捨てた。次は車を手放すしかないが、住まいは千葉の郊外であり、車は必需品でもある。簡単には決断できそうにない。
737
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:39:38
「自己責任と言われれば反論できない」
しかし、過酷な現実に反してカズマさん本人に切迫感はないようにみえる。「困っているというより、あきらめているという感じです。(日常生活や働き方への)不満や憤りはありません。自己責任と言われれば、反論できませんし、言われても仕方ないと思っています」。
彼が実年齢より若く見えるのは、あらがうことなく、早々に現実を受け入れてしまったからなのか。とにかく、貧困にあえぐ一部の人たちがまといがちな焦りや陰りを感じさせないのだ。
父親は霞が関のエリート官僚で、どちらかと言えば教育熱心な家庭で、身分証明を兼ねて持参してくれた中学と高校の卒業証書は、いずれも名の知れた進学校だった。しかし、「勉強は高校で燃え尽きた」と言い、大学は私大の夜間に進学。卒業前に就職先は決まっていたのだが、単位が足りずに留年が決まった。ちょうどバブル経済がはじけたころで、次年度の就職活動はあきらめ、卒業後はアルバイトや契約社員として働いた。
私にはそうは見えないのだが、カズマさんは「自分はコミュ障のところがある」と言う。数年間のアルバイト生活の後、人と接する機会の少ない経理業務なら向いているのではと、簿記やビジネス実務法務の資格を取って面接に臨んだが、経験のない20代半ばを過ぎた男性を正社員として雇ってくれる会社はなかった。
ならば、自営業はどうかと、将来は独立開業できるとして社員を募集していた自転車販売・修理会社に正社員として入った。ところが、そこも6年ほどで退社する。業務の一環として各地の販売店で店長として働いた際、「街の自転車屋さんは思ったよりも来店者とのコミュニケーションが必要な仕事だと気づいてしまったから」だという。
30歳を過ぎた後は、通信関連会社の派遣社員として3カ月ごとの契約更新を繰り返した。不安定雇用ではあるが、今まで雇い止めや長時間のサービス残業、パワハラといった被害に遭ったことはない。リーマンショックのときも契約は切られなかったというから、多分、まじめで優秀な人材なのだろう。
とはいえ、必要な人材をいつでもクビにできる非正規雇用で使い続け、キャリアも評価しない、ボーナスなどの福利厚生もゼロといった働かせ方は十分に理不尽だと思う。
当のカズマさんは淡々と「仕方がないことです。どうしても正社員になりたいわけでもない」と言う。彼は取材中、何度も「しょうがない」「受け入れるしかない」と繰り返した。
欲がないというのか、覇気がないというのか――。そんなカズマさんがただひとつ、意志らしきものを持って語って希望は、意外にも家族との縁を切ることだった。
「自分がこんなに欲のない人間になったのは、物心ついた頃から家族に抑圧されてきたからかもしれない」と言うから、具体的な経験を尋ねると、父親から食べ物の好き嫌いをとがめられ、風呂の残り湯に頭を突っ込まれたことが1〜2度あったことや、姉に頼まれたテレビ番組の録画を忘れたときにひどくしかられたこと、テレビのチャンネル争いに負けたことなどを挙げた。
しかし、当時は、善しあしは別にして親による体罰は珍しくはなかったし、姉とのトラブルにいたってはごく普通の兄弟げんかの域を出ないようにもみえる。
738
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:39:54
自宅の相続をめぐって兄弟とトラブル
両親はすでに亡く、「2人とも腫瘍っぽいもので亡くなったらしい」と言う。筆者には彼の子ども時代の経験より、親の正確な死因を知らないことのほうが驚きだった。理解できたのは、家族と縁を切りたいという彼の願望が、「憎悪」というよりは、「無関心」からくるものなのだということだけだった。
最近、両親が残した自宅の相続をめぐって兄弟ともめた。カズマさんは3人兄弟の末っ子。自宅には独身の彼が住み、評価額の3分の2に当たる金額を兄弟たちに支払うことまでは決まった。
問題は、この価格算定の基準をどうするか。できるだけ低く見積もりたい彼と、そのほかの兄弟の間で折り合いがつかなかったのだ。結局、調停を経て解決。その後、一括支払いのための銀行ローンを組み、現在は毎月約6万円を返済している。事実上の家賃である。
一連の遺産トラブルを振り返るときもカズマさんが口にするのは、兄弟への恨みつらみではなく、「これで家族の縁が切れると思って(調停を)頑張りました。ようやくしがらみから卒業できました」という安堵の言葉なのである。
家族に関心がないから、結婚願望もまったくない。これまで付き合った女性は皆、彼に結婚する気がないとわかると、自然に離れていってくれたという。
カズマさんは敬語もそつなく使えるし、話を聞いた喫茶店では、店内が込み合ってくると隣席に置いていた鞄を動かして席を空ける気遣いを見せることもできる。自炊もしようと思えばできるし、簡単な家屋の修繕や錠前の交換くらいなら自分でできるという。ただ、家族や自分自身、社会、政治など、あらゆることへの関心が薄いのだ。
海外旅行にも興味がないから、パスポートは作ったことがない。選挙にも1度も行ったことがない。選挙に行かない理由について「僕ひとりが行っても結果は変わらないのだから、やっぱり行っても、行かなくても同じ。もし、僕のような人間が全員、投票に行ったとしても投票率が上がるだけで結果は変わらない。そもそも与党にはうんざり、野党にはがっかりしています」と説明する。
「与党うんざり」の理由を問うと、彼はロッキード事件や東京佐川急便事件を挙げた。しかし、時代は大きく変わっている。そんな大規模な疑獄事件を持ち出されても違和感がある。すべての国民が社会や政治に関心を持ち、投票の権利を行使したとき、本当に結果は変わらないのだろうか。カズマさんの主張はどこかで聞いたことがあるような内容でもあり、空疎な響きがしてならなかった。
「死にたいとも生きたいとも思わない」
怒りも不満もなければ、夢や希望もない――。貧しい暮らしにも早々に順応し、あきらめる。それが、生来の性格なのか、カズマさんが言うように生い立ちに起因するものなのか、それとも、社会でもまれる中で培われたある種の防衛本能なのか。筆者にはわからない。ただ、社会を作る多くの人々は、彼のような考えなのかもしれないとも思った。
カズマさんと会ったのは、サクラが満開を迎える直前の頃だった。すべてに諦観していても、サクラは不思議と人に対して”生き死に”について語ることを促すものらしい。淡くほころび始めた並木の下、彼はこう言った。
「死にたいとも思わない。でも、生きたいとも思わないんです」
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:40:34
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-165371.html
母の治療に全て捧げた55歳男性の貧困と苦悩 飲食業界を転々とし身体はボロボロになった
04月04日 11:31東洋経済オンライン
母の治療に全て捧げた55歳男性の貧困と苦悩 飲食業界を転々とし身体はボロボロになった
母の治療に全て捧げた55歳男性の貧困と苦悩
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
誰かが痛みに身もだえている。たぶん、男だが、顔がよく見えない。「痛い! 痛い!」と訴える声が耳障りで、「やかましい!」と怒鳴りつけたところで、目が覚める――。
東京都23区に住むトオルさん(55歳、仮名)さんが、肩から指先にかけての痛みに悩まされるようになって以来、よく見る夢だ。痛みの原因について、医師からは長年、飲食業界で体を酷使してきたためだろうと言われたが、肝心の病名がなかなかわからない。
自分の声にびっくりして飛び起きる日々
「痛がっているのは僕だったという……。いつも、自分の声にびっくりして飛び起きます。そういうときは、痛みのせいで肩から先が固まった状態になっています。こんなふうに――」。そう言って、まるで手錠をかけられるのを待つ犯罪者のように両手首を体の前でそろえて見せた。
生まれ育った地方都市で調理の専門学校を卒業した後、上京。最初に勤めたそば店では毎日13時間近く働いて、賃金は額面で30万円を超えた。住み込みだったこともあり、趣味の洋服にカネをかけても、まだ、貯金に回せる余裕があった。「しだいに仕入れから仕込みまで任されるようになりました。大変でしたが、自分のペースでできるところが性に合っているとも思っていました」。
第2次オイルショックなどを経てバブル経済の足音が聞こえつつあった時代。何もかもが右肩上がりで満ちていく社会の気配は、厨房にいても感じることができ、将来は自分の店を持てると信じて疑わなかったという。
そんな中、故郷の母親ががんになった。離婚して家を出ていった父親や、長じて後は疎遠になった弟に代わり、治療や看病にかかる費用はすべてトオルさんが負担した。がん治療は上を望めば切りがない。彼は多くを語らないが、かかった費用は合わせて1000万円ほど。そば店の店主からはのれん分けを約束され、見合い相手を紹介されるほど目をかけてもらったが、貯めていた開店資金を取り崩してまで母親の面倒を見ていたことをそれとなく批判されて以後、関係がぎくしゃくするようになり、結局、十数年勤めた店を辞めた。
そういえば、当時、付き合っていた女性からは「優しすぎるんだよね」と言われて振られた。今、振り返ると「母親のことが原因だったのかもしれない」と思う。亡くなる直前、母親からも「あんたの人生を壊してごめんね」と言われた。結局、貯金はほとんど底を突いたが、トオルさんは「僕が後悔していないんだから、それでいいんです」と言う。
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:2017/07/13(木) 19:40:55
深夜勤務の間は休憩時間もなし
その後は居酒屋や弁当店などで働いた。当初は住宅手当などがつく福利厚生の手厚い職場もあったが、長引く不況とともに労働環境も劣化。ある居酒屋では、経営悪化を理由に、クビになりたくなければ、約10万円の給与カットと、社会保険の適用をなくすことに同意するよう迫られ、やむなく書類に署名したこともある。
また、ある弁当製造会社では、深夜、ミャンマーや中国出身の外国人労働者を指示しながら総菜を作ったが、賃金は12万〜13万円と低く、深夜勤務が明けた後、そのまま別の飲食店でアルバイトをして生計を立てた。ところが、会社側が無理に利益を上げようとしたため、1日の弁当製造個数が突然200個から1000個に増加。注文に間に合わせるため、夕方に追加で数時間出勤しなくてはならなくなったうえ、深夜勤務の間は休憩時間も取れなくなり、土日の休みもほとんどなくなったという。
この頃は、アルバイトも合わせると連日18時間近く働いた。夕方の追加出勤と深夜勤務の間にできたわずかな合間を縫って1日1度の食事を取り、その後、缶チューハイなど酒の力を借りて強引に数時間仮眠する。そんな生活が1年半ほど続いたが、弁当製造会社での給与は据え置き。残業代も休日出勤手当もなし、給与総額を勤務時間で割ると最低賃金をはるかに下回る「無法地帯」である。たまりかねて、同僚1人とともに個人加入できる労働組合(地域ユニオン)に相談したところ、未払い賃金などは約400万円に上ることがわかった。が、結局、会社が倒産。手にすることができたのは、たったの十数万円だった。
体に異変が現れたのは、その後に勤めた別の弁当店でのこと。主な仕事は毎日100キロの唐揚げを業務用フライヤーを使って揚げることだったが、ある日突然、右鎖骨付近がはれ上がり、首筋がつった。次第に痛みとしびれは両肩、腕、指先にも広がり、今では上着を羽織っても、電車の吊り革をつかんでも悲鳴を上げるほどだ。胸鎖関節炎、リウマチ、線維筋痛症――。さまざまな病名を疑われたが、いまだに原因は不明。医師からは「とにかく飲食業界での無理がたたったことだけは間違いないから、飲食店では働かないように」と命じられ、ここ1、2年は生活保護と週2〜3回の清掃アルバイトで生計を立てている。
トオルさんは母親の病気のことや働き詰めの日々を振り返るときも、「人生、何があるかわからないね」などと言って穏やかな表情を崩さない。そんな彼が唯一、ストレスだと訴えるのが、月1回、生活保護費の支給日に行われるケースワーカー(以下、CW)との面談だ。
「いつも“もっと仕事しろ”と言われます。こっちの話はあまり聞いてくれません」
給与明細を見せながら行われる面談は1分ほど。担当CWは同世代の女性だという。
「もっと仕事をしてください」「生活費くらい自分で稼いでもらわないと困ります」「来月は何回くらい、アルバイトに入れそうですか?」「先月、アルバイトの回数をもっと増やすって言ってたのに、約束と違うじゃないですか。どうするんですか?」
言葉遣いは丁寧だし、声を荒らげられることもない。しかし、彼が体の不調を訴えようとすると、女性は書類を閉じて立ち上がり、無言で「面談終了」を告げてくる。あるとき、隣のブースで、窮状を訴えようとしたお年寄りが孫にあたるような若いCWから「困っているのはあなただけじゃないんですよ」と遮られているのを見て以来、CWの話はただ黙って聞くしかないのだと悟ったという。
働けない人にもっと働けと言ってどうするのか――。
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:41:12
ケースワーカーの対応は「水際作戦」ではないのか?
長らくデフレにさらされてきたうえ、文句を言わずに従うのが美徳であるかのような悪しき習慣が一部に残るともいわれる飲食業界では、低賃金で限界まで働き続ける人も少なくない。トオルさんのケースは業界を象徴する問題だし、ひいてはそれを野放しにしてきた社会の責任ではないのか。何よりCWの対応は、行政が生活保護を受けさせなくする、いわゆる「水際作戦」に当たるのではないか。
私は憤りを覚え、トオルさんに水を向けてみた。が、彼の受け止め方は少し違った。
「僕も何とか働きたいんです。でも、掃除機やモップをかける動作はけっこう肩に負担がかかります。本当に体がついていかないんです。僕の周りにもうそをついて生活保護をもらっている人がいますが、まったくふざけたやつらだと思います。
飲食業界への不満ですか? 性格的に仕事が残っているとやっちゃうんですよ。(こんな働き方は)おかしいと、ちゃんと言わなかった僕も悪い。反省しています」
なるほど、トオルさんの言う「ストレス」とは、生活保護行政に対する憤りというよりは、思うように働けない自分に対するふがいなさからくるもののようだった。
少し話がそれるが、ここで生活保護についての持論を述べたい。
一定の条件下にある国民が生活保護を受けることは憲法で保障された権利であり、国の義務でもある。現在、生活保護受給者へのバッシングは苛烈だが、取材をしていると、確かに不正受給をしている人にも出会うが、一方で、受給条件を満たしているのに生活保護を受けることは「恥」だと考えて申請をしていない人にも出会う。
不正は個別に厳しく取り締まればいい。が、解決すべき構造的な問題は、捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人の割合)の低さである。弁護士や研究者、生活保護を受けている当事者らでつくる生活保護問題対策全国会議によると、日本の捕捉率は2割程度で、ドイツの6割、フランスの9割など諸外国と比べて極端に低い。
いくら受給者や制度をたたいても、もともと不正を働くような厚顔な人間が改心するとは思えない。むしろ、バッシングは人々に「スティグマ(世間から押し付けられた恥や負い目)」を植え付け、捕捉率の低下に拍車をかけるだけだ。そして、それは今も各地で起きている餓死や孤立死、心中といった事件を誘発することになるだろう。
「主張する弱者ほどたたかれる」
ふと、以前、ある識者が取材に対し、現在社会を取り巻く空気について「主張する弱者ほどたたかれる」と言っていたことを思い出した。過重労働の末に何百万円もの未払い賃金を踏み倒され、体を壊し、さらには生保保護のCWからもっと働けと迫られて――。それでもなおトオルさんは「反省」と「自己責任」を口にした。まるで、バッシングの標的とならないすべを本能的に知っている「弱者」であるかのように。ろくでもない社会である。
トオルさんと会った日。この日の朝も、痛みと自分の叫び声で目が覚めたという。
深夜1時すぎ、医師から処方された痛み止めや睡眠導入剤を飲むが、だいたい2〜3時間で効果が切れてしまう。そんなときは、いつも厨房に持ち込んでいたという旧式のラジオのスイッチを入れ、ニッポン放送の番組「あさぼらけ」を聞く。アナウンサーの上柳昌彦さんの落ち着いた低音ボイスを耳にすると、心身が静まるのだという。
飲食業界を選んだことも、結婚をしなかったことも、後悔はないという。ただ、生活保護を受けることも、体が動かなくなることも、すべてが若い頃は想像もしなかった、初めての経験なのだという。
「今はとにかく痛みの原因を突き止め、体を治して働きたい」
胸中の不安と戸惑いは消えない。それでも、おぼろに明けていく朝の気配を感じながら、自分の人生にも再び夜明けが訪れることを信じている。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:41:44
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/life/toyokeizai-163070.html
生活保護63歳独身男性を苦しめる腰痛と貧困 定職には付けず週末の日雇いで糊口を凌ぐ
03月20日 05:40東洋経済オンライン
生活保護63歳独身男性を苦しめる腰痛と貧困 定職には付けず週末の日雇いで糊口を凌ぐ
生活保護63歳独身男性を苦しめる腰痛と貧困
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
※筆者留学の事情により一時中断していた本連載ですが、今回から再開します。
乾燥機の中を紺色のジャージや下着がぐるぐると回っている。週に1度利用する自宅近くのコインランドリー。埼玉県内で生活保護を受けながら、独り暮らしをするタイゾウさん(63歳、仮名)は、単調な動きを眺めながらよくこんな物思いにふける。
「女房がいれば、洗濯はきっとやってくれたんじゃないか。そうしたら、私は(彼女の)そばで好きな本でも読みながら過ごしていたかもしれない。結婚、しとけばよかったなぁ……」
たそがれ時、わずかな洗濯物を抱え、痛めた腰をかばいながら猫背ぎみに歩いていく後姿は、頭髪の白さもあって実際の年齢よりもずっと年上に見えた。
高校卒業後、大学受験に向けた予備校に通うため、故郷の秋田から上京。日本はちょうど高度経済成長期の終わりに差し掛かりつつあった。結局、希望する大学には受からず、そのまま東京で働き始めた。飲食店や健康器具販売、警備会社、運送会社――。20代のころのアルバイトから最近の日雇い労働まで含めると、これまでに20近い仕事に就いてきた。
営業ノルマをこなせずに解雇されたこともあれば、人間関係に嫌気が差して正社員の仕事を自ら辞めたこともある。そうかと思うと、アルバイトとして入った会社の上司から「正社員にならないか」と誘われたことも何度かあるが、いずれも断った。
バブル景気で仕事はいくらでもあった
30代のころはバブル景気真っただ中。往時を「今とは違って探せば、すぐにまともな仕事が見つかる時代でした」と振り返り、正社員になる機会を逃したことについて「働くというのは、大きな建物のきれいなオフィスに出勤するものだという、根拠のない思い込みがあったんです」と後悔をにじませる。
「いくらでも仕事があった」時代の潮目が変わったと実感したのは、2000年ごろ。長年、倉庫整理のアルバイトをしていた会社をリストラされたのだ。気がつけば年齢は40代半ばを超えていた。以降は望んでも正規雇用の仕事は見つからず、さまざまなパートやアルバイトの掛け持ちに加え、複数の派遣会社に登録して日雇い労働をこなした。
几帳面なタイゾウさんはこの頃、勤務先ごとに労働日数や賃金などがわかる自前の「出勤簿」をつけていた。大学ノートの記録を見ると、勤め先には派遣会社のほか、場外馬券場の警備員や公園の巡回監視員、郵便局でのアルバイト、斎場の駐車場などがあり、つねにダブルワーク、トリプルワークの状態だったことがわかる。手取りに当たる毎月の「支給額」は合計でおおむね十数万円にはなったが、日雇い労働しかない月などは「勤務日数」がわずか「3日」「4日」で、手取りが3万円を切ることもあった。
家賃の安いアパートに移り、夏場の暑さは扇風機でしのぎ、冬場は石油ストーブで沸かした鍋の湯で身体を拭いて風呂代わりにするなどして電気代や水道代を節約したが、生活はカツカツ。将来への不安が募る中、ある運送会社の倉庫で、重さ50キロ近い商品のバスタブを持ち上げた瞬間、腰に痛みが走った。いわゆるぎっくり腰である。すぐに病院には行ったものの、クビが心配で会社にはしばらく報告することができず、週末に入れていた別会社の警備員の仕事もだましだまし続けたという。
その後、運送会社の担当者から「腰を痛めたその日に申告しないと労災にはならない」と言われ、困り果てたタイゾウさんは個人加入できる労働組合(地域ユニオン)に相談。言うまでもなく、会社側の説明は虚偽であり、この労組とともに交渉したところ労災は認められた。が、腰痛を抱えながら働き続けることは難しく、契約の更新はかなわなかった。このため、生活保護を申請したのだが、今度は週末の勤務先から「生活保護を受けるなら、そっちで(面倒を)見てもらえばいい」などと言われ、こちらも雇い止めされた。
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:42:01
毎月の収入は11万円前後
腰痛は完治せず、ここ5年ほどは生活保護を受けながら、週末だけ各地の住宅展示場で案内看板を掲げる仕事をしている。保護費と週末のアルバイト代を合わせて毎月手にできるのは11万円ほど。ぜいたくはできないが、「毎日、温かいシャワーを浴びられるようになった。ぜいたくなことです」。腰痛を押してでも週末に働くのは、「(国民年金の保険料を支払うことができる)65歳まで保険料を払ってできるだけたくさんの年金をもらいたいから」だという。
かろうじて生活が安定する一方で、平日は自宅に引きこもることが増えた。
「1週間くらい誰とも口をきかないことがあります。そんなときは、頭がおかしくなりそうになる。結婚? そりゃあしたかったですよ。でも、手元にまとまったカネもないような男が、結婚なんてできないと思っていました」
これまで、結婚を考えるほど深い付き合いをした女性はいないという。私が、おカネは結婚後に共働きしながら貯めてもよかったのではないか? まとまったおカネを得るためにも、「きれいなオフィス」などと言わずに正社員になればよかったのではないか? そう問いかけると、タイゾウさんはしばらく考えた末、こう答えた。
「“小学生までは女の子のほうが男の子より優秀なこともあるけど、高校くらいになるとだいたい逆転するもの”だって。刷り込みとでもいうんでしょうか。小さい頃、両親からこう言われたことが忘れられないんです」
そういえば、彼はよく「男として」という言葉を口にした。「男として家庭を持つ」「男として経済力があれば」「男としての世間体が」――。現代の若者からは一蹴されそうだが、昭和20年代生まれのタイゾウさんが幼い頃に植え付けられた「男性は女性より優れていなければならない」とも聞こえかねない価値観に縛られたとしても、それは仕方がないことなのかもしれない。一方で、彼は最近、こんなふうにも思うようになったという。
「若い頃に住んでいたボロアパートの隣人で、私よりも稼ぎの少ない男の人でも結婚して子どもを育てている人はいました。あの頃、いくら貧乏でかっこ悪くても、今、彼らには(老後の)面倒をみてくれる子どもがいる。子孫を残してる。世間的に見ても普通。結局は彼らのほうが“勝ち組”だったんだと、この年になってようやくわかりました」
子どもが老後の面倒を見てくれるとはかぎらないし、家族のあり方を勝ち負けで評価することには違和感もあるが、それでも、取り返しのつかない過去を、ただ振り返ることしかできないやるせなさは、少しわかる気がした。
それにしても、タイゾウさんが「まとまったおカネ」を得られず、結婚できなかったのは本当に自己責任なのか。何度かあった正社員になれるチャンスを棒に振ったのは事実だが、彼は決して怠け者ではない。途切れることなく働き続け、特に40歳代半ば以降は複数の仕事を掛け持ちして生きてきた。
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:42:20
1990年代初めまでは「厚生年金」に加入
タイゾウさんが見せてくれた「年金加入履歴」からは、むしろ「雇用の質の劣化」がうかがえる。1990年代初めまでは転職先ごとに「厚生年金」に加入していたことがわかるが、バブル景気崩壊以後は、国民年金加入を示す「第一号被保険者」という記載だけになるのだ。当時は非正規雇用とはいえ、勤務時間は正社員並みであるなど厚生年金の加入条件を満たしていた職場もあった。にもかかわらず、厚生年金への加入履歴がないのは、タイゾウさんの勤務先が保険料負担を避けるため、非正規労働者を厚生年金に加入させなかった可能性が高い。
その後は、短時間の仕事を掛け持ちせざるをえなくなり、厚生年金どころではなくなるのだが、月によっては合わせて30日近く働いたり、身体に負担のかかる夜勤続きだったりもした。にもかかわらず、ボーナスや住宅手当といった福利厚生はゼロ。タイゾウさんが腰を痛めたのは、こうした無理がたたったせいかもしれないのに、会社側は当初、労災を認めようとしなかった。
国や経済界は非正規労働の増加を「働き方の多様化」だという。しかし、そこまでして非正規労働を増やしたいなら、タイゾウさんが出合ったような社会保険料の負担を逃れたり、労災隠しをしたりするような企業は野放しにするべきではない。そもそも、掛け持ちしなければ生活できないような働き方が「多様化」と言えるのか。
社会や会社から絞り尽くされたようにもみえるタイゾウさんだが、本人は「年金のことも、労災のことも私に知識がなかったんです」と言って身を縮める。彼は自身を「見栄っ張り」と分析するが、私には超がつくほど「まじめ」にも見えた。
秋田に残った兄はずいぶん前に亡くなり、天涯孤独となった。もう何十年も故郷には帰っていない。最近、無性に故郷が懐かしくなることがあるが、「生活保護の身では何かと世間体が……」と言葉を濁す。年金保険料を払い終え、生活保護ではなく、年金で暮らしていけるようになってから、故郷に帰ることが、今の夢だという。
「これをもらってほしいんです」
タイゾウさんには自宅に近い私鉄駅前の喫茶店で話を聞いた。取材を終えようとしたとき、彼が「これをもらってほしいんです」と言って、私に1枚の白黒写真を手渡してきた。
河原だろうか。パーマっ気のない髪に、ずいぶん昔にはやったすその広いパンツを履いた少女たちが座って弁当を囲み、屈託のない笑顔でこちらを見つめている。その後方ではにかむ男の子が1人。太い眉毛にタイゾウさんの面影がある。高校時代の遠足のスナップ写真だという。
「知り合った人に時々、(写真を)お渡ししているんです。私が死んだという知らせを聞いた人のうち、100人に1人でいいんです。ああそんなやつがいたなと、思い出してくれる人がいればいいなと思って」
写真は彼の生きた証しなのか。果たせないことが多かった過去への後悔、朽ちていくだけの将来への怯え――。そんな気持ちが少しでもやわらぐなら、と私は写真を受け取った。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:42:51
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高学歴56歳男性が「孤独な貧困」に陥った顛末 「本当は東大医学部に行きたかった」と後悔
05月31日 05:00東洋経済オンライン
高学歴56歳男性が「孤独な貧困」に陥った顛末 「本当は東大医学部に行きたかった」と後悔
高学歴56歳男性が「孤独な貧困」に陥った顛末
(東洋経済オンライン)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は双極性障害があり、生活保護を受給して生活するケンさん(56歳)のケースに迫る。
男は店先の路上にしゃがみ込み、たばこをふかしていた。猫背でひどくやせている。フィルターをつまむ指の爪は長く伸び、黒い汚れがたまっていた。待ち合わせをした人だろうか。多分、違う。なぜかそう思い、男の前を通り過ぎ、約束していたファミリーレストランへと入った。しかし、やや遅れて現れたのは、まさにその男性だった。
障害年金と生活保護費で暮らしている
ケンさん(56歳、仮名)。東京都内の私大を卒業し、何度か仕事を変えた後、介護関連会社で人事・経理の職に就いた。年収は800万円ほどあったが、繁忙期は明け方3時、4時ごろまでの残業が当たり前。40代の頃、ストレスからアルコール依存症と双極性障害を発症して失業した。その後は、ローンが残っていた持ち家を手放し、離婚、自己破産――。1人娘は親族の養子となった。現在、仕事はなく、障害年金と生活保護で暮らしている。
テーブルに着いたケンさんはやおら、元妻への批判を始めた。
「15歳年下なんです。大学の卒論を書くのを、僕が助けてあげたら、うちに入り浸るようになってしまって。できちゃった婚です。好みのタイプじゃない。家事も何ひとつ、やってくれなかったし。一度、(出演料で)小遣い稼ぎでもしようと思ったのか、テレビのゴミ屋敷特集の取材を受けていましたね。リポーターが“ああ、ゴミの中に赤ちゃんがいます!”と言っていました。離婚の原因? 僕が30歳年下の子と仲良くなったから。キャバクラで出会った子です」
元妻とは、インターネット上のQ&Aサイトを通じて知り合った。結婚生活は10年ほど。専業主婦だったが、たびたび子どものせいでキャリアを台無しにされたと不満を口にしていたという。
私「離婚の直接の原因はケンさんの不倫ということですね」
ケンさん「不倫じゃないです」
私「肉体関係はなかった?」
ケンさん「それは、ありました」
私「それは不倫と言うのでは」
ケンさん「倫理って何ですか? 彼女も別の男と関係がありました。(彼女の)SNSを見たときにわかりました。お互いさまじゃないですか」
私「……」
表情や語り口の抑揚が乏しいのは、障害の影響もあるだろう。ケンさんは時々、たばこを吸うために席を立った。いわゆる安煙草のひとつ「エコー」を、1日に2箱吸うという。戻ってきた彼に今度は子どものことを尋ねた。
高校生になる娘の親権は元妻が持つが、さまざまな事情で同居が難しくなったため、ここ1年ほどはケンさんと一緒に暮らしていた。しかし、彼が毎日、料理を作ることは難しく、食事は出来合いの総菜や弁当を別々に取ることがほとんど。会話もない日々に嫌気が差したのか、娘は突然、家を出て母親側の親戚の元に身を寄せると、そのままその親戚と養子縁組をしたという。
「(娘から)1度だけ電話があり、“養子になるから”と言うので、“そうしたければ、そうすればいい”と答えました。僕がおカネを渡さなかったことが原因だそうですが、そういうことは言ってくれないとわからない。(親戚たちが)僕を非難しているのは知ってますが、あんたたちよりは、子どものことはわかってると言いたい。絵が得意でね。将来は東京芸大に入ってほしい。写真? ないです。一緒に撮ったことがないので」
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チバQ
:2017/07/13(木) 19:43:09
大事なのは娘より「日本の将来」
娘と離れ離れになって寂しいかと尋ねると、寂しくはないが、生活保護の支給額を減らされたことが不満だという。子どもを親元で育てられなかったことへの後悔や、親戚への感謝の言葉はない。面倒は見られないが、大学の進学先は気にかかる――。ちぐはぐにもみえる主張に戸惑っていると、ケンさんがなぜか突然、森友問題や憲法改正について語り出し、安倍政権の批判を始めた。
たまりかねて「日本の将来と、娘さんの将来、どちらが心配ですか?」と尋ねると、しばらく考えた後にこう答えた。「日本の将来ですね」。
悪いのは自分ではなく、周囲の人たち――。ケンさんの話は終始、そんなふうにも聞こえた。大学卒業後、いくつかの会社を辞めた理由も、上司のパワハラや、サービス残業を告発したことだという。しかし、あらゆる局面において自分だけが正しいなどということはありえない。
生活保護と障害年金を合わせ毎月17万円を超える収入があれば、なんとかやり繰りできるのではないか。足りないと思うなら、なぜ自炊をしたり、たばこ代を節約したりしないのか。年頃の娘と暮らすのに、どうして爪くらい清潔にしないのか――。気がつくと、私の質問はずいぶんと非難がましいものになっていた。
これに対してケンさんは変わらず、淡々と答える。「体調が悪いときは、本当に動けないんですよ。自炊するくらいなら、食事を抜いたほうが楽。格安スーパーで400円の弁当と飲み物を買って、1日1食という日も珍しくありません。そんなときはね、身だしなみなんて、どうでもよくなるんです」。喫煙については、「生活保護を受けていても、たばこを吸う幸せを求める権利はあります」と返された。
反論の余地がない。私には双極性障害のある知人がおり、この病気の過酷さはある程度、知っている。「動けないときは、動けない」というのは決して大げさではない。生保受給者の喫煙については、反論どころか、私の考えとまったく同じである。それに、冷静に考えると、ケンさんは生活保護費が少ないことに文句は言っても、遊興費につぎ込み、生計が立てられなくなっているわけではない。
長時間労働の犠牲者であることは間違いないが…
彼の話がすべて本当だとは思わない。一方で、介護関連会社で明け方まで残業をした後、キャバクラや居酒屋で深酒をしてストレスを発散。気がついたときには肝機能の状態を示すガンマGTP(基準値50以下)が600を超えていたことや、体重が20キロ落ちて最後には布団から起き上がれなくなったという話はリアルだった。彼が異常な長時間労働の犠牲者であることは間違いない。こうした構造的な問題に目を向けず、彼は妻や娘たちにもっと申し訳ないと思うべきで、生活保護の支給額に文句を言うべきではないなどと考えるのは、本末転倒な話だし、取材する側の傲慢だろう。
これらのことを頭ではわかっているのに、なぜこんなにも釈然としないのか。
ケンさんは取材前、私や編集部と交わしたメールの中で「学歴」を詳細に記載してきた。それによると、都内の進学校を卒業後、いったん国立大学に進み、その後で有名私大の法学部に入り直している。卒業証書も持参してくれた。本人は「共通一次(当時)は9割くらいできていたんです。本当は東大の医学部に行きたかった」と言う。「過去の栄光」は輝かしく、懐かしいものなのか。その頃に戻りたいかと尋ねると、彼はこう答えた。
「いいえ。戻れるとしたら、小学生くらいでしょうか。好きな女の子がいたんです。勉強ばかりするのではなく、彼女にきちんと気持ちを伝えていれば――。大切にしたいと思う人がいたら、もっと周りとケンカをしないようにして、体も大切にする、そんな人生を送れていたかもしれない」
ファミリーレストランを出ると、ケンさんが立ち止まり、「僕はここで」と言った。最初にたばこを吸っているのを見かけた場所である。よく見ると、灰皿が設置されている。喫煙スペースだったのだ。それでも、彼がいわゆるヤンキー座りをして煙をくゆらせ始めると、通り過ぎる人が時々、ギョッとしたような視線を投げかけていく。
貧困にあえぐ人や、障害のある人すべてが清く、正しいはずがない。いつも空腹にさいなまれ、住む場所もない――現代の貧困はそんな単純な姿をしていないことも知っている。しかし、娘より、日本の将来と言ってのけるケンさんを、私はいまだに受け入れることができない。貧困とは何か? 障害者とともに生きる社会とは? 私が思っている以上に「答え」は遠いのかもしれない。
本連載「ボクらは「貧困強制社会」を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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:2017/07/13(木) 19:45:39
http://toyokeizai.net/articles/-/176507
スマホ販売員が風俗で働かざるをえない事情
3カ月更新の派遣で将来を考えるのは難しい
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中村 淳彦 :ノンフィクションライター 2017年06月21日
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、家電量販店で派遣社員として働く、32歳の女性だ。彼女は足りない生活費を賄うため、風俗で働いている。
この連載の一覧はこちら
ある大手家電量販店で携帯電話販売員をする佐伯百合さん(仮名、32歳)は、清楚でかわいらしい女性だった。年齢より若く、20代半ばにみえる。2年半前に離婚、店舗近くにある県内ワンルームマンションに一人暮らしをしている。
「私は仕事をしているので、世間で言われる貧困ではないかもしれません。ですが、女が単身で自立して生きていける世の中とは思えません。いろいろ厳しすぎます」
26歳で結婚、DVとモラハラで離婚
待ち合わせ場所で会うなり、窮状を訴える。大学を卒業して上京、派遣会社に登録して販売員をする。26歳で結婚、DVとモラハラが原因で離婚し、現在に至る。給与は基本給19万円に固定残業代6万円、社会保険が引かれて手取りは21万円ほど。家賃は7万2000円。手取りから家賃を差し引いても、余裕のない生活だが、相対的貧困には該当しない。
喫茶店に入ると、周囲を見回しながらスマホを取り出す。「おカネをあと少し稼ぐために風俗始めたんです」と言い、携帯画面を見せてくれる。卑猥な単語が重なった店名のホームページに、顔にモザイクのかかったネグリジェ姿の女性が写る。ネグリジェをまくり、ヘアーを見せている。ノーパン姿の艶っぽい女性は、目の前にいる佐伯さんだった。
彼女は本業である大手家電量販店の仕事内容と、その収入に不満を持っているようだった。家電量販店1階にある携帯電話売り場で、ある大手キャリアの担当している。
「休憩がなかったり、トイレにも行けなかったり。立ち仕事で休憩なしでずっと接客。新しいiPhoneが出たときとかは、本当に朝5時から夜11時まで働き詰め。私が働いているところは人員不足もあってキツイ。現場で接客するのはほぼ全員が派遣社員で、量販店社員はレジ近くで監視しています。簡単に言えば、派遣の私たちは奴隷とか部品とか、そんな扱いです」
某家電量販店は販売する商材によって編成が分かれ、量販店社員を頂点にして厳然なヒエラルキーがある。派遣販売員の人事の権限は担当社員にあり、彼女が「奴隷か部品」と感じるように、職場はどこに配属されても総じて人間味はなく、販売店社員によるパワハラの温床となっているという。
「たとえば社員が聞いたことに対して答えられなかったら、もう明日から来なくていいよって即クビになります。私たちは“出禁”って呼んでいます。直接雇用されているわけでないから、そういう扱いが当たり前。社員の命令どおり、言い訳せず、絶対服従して動くしか選択肢がないわけです」
絶対権力のある量販店が彼女ら派遣社員に求めるのは、誠意ある接客ではなく、売り上げだ。携帯電話になると本来の目的である本体にプラスαで、何を買わせることができたかを厳しく問われる。
748
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:46:12
高齢者や無知な人に不要な商品を売りつける
「ちょっと前に行政指導を受けて問題になった商品があるのですが、それを売れとか。なるべく高額なSDカード売れとか、量販店のクレジットカードを作らせろとか。お客さんのほうで買いたいなと思ってもらったならいいけど、ノルマがあるのでたとえば“これを買ってくれたら、私が携帯の設定やりますよ”とか、売り場全体が変な方向に進んでいます。携帯とかパソコンに詳しい人には余計な商品を薦めずに契約をすぐ終わらせて、高齢者とか無知な人にはどんどんさまざまな物を売りつけます。私も含めてみんな嫌々売りつけています。正直、すごいストレスです」
無知な客や高齢者に売りつけやすいのは、128GBのSDカードだという。ネット通販などで買えば7000円程度、キャリア経由で買うと倍以上の金額になったりする。高齢者に128GBは必要ないとわかっていても、心を痛めながら適当な言葉を投げかけてどんどん買わせる。
派遣社員と量販店の有期雇用契約は3カ月ごとに更新される。言われたとおりに商品を売らないと、すぐに職を失い生活ができなくなってしまうという。
「無理な販売が多すぎます。クレーム対応に追われているので、数字を出せないスタッフ=結果を出さないスタッフという風に量販店の人間から見られて、みんな無理やり必要ない商品を売り付ける習慣が日常化しています。後日、説明不足だというクレームが多発して、その対応に日々追われて長時間労働になるという悪循環です」
繁忙期になると、トイレにも行けなくなる。多くの派遣販売員たちは、1日トイレに行けないので水分を採らないようにする。
「頭が痛くなって視界が揺れたり、脱水症状っぽくなったり。この前、量販店社員が実績出せなかったキャリアの営業を呼び出して、靴に強力なセメダインをつけて長時間立たせるなんてこともありました。量販店社員からのパワハラはすさまじくて、私はけっこう長く我慢して続けているけど、とても長くできる仕事じゃないです」
現在の職場を語る佐伯さんは、何度も深いため息をつき、表情は終始うんざりしていた。
23歳で社会人になってから、ずっと派遣販売員をしている。家電量販店での現在の日常にはウンザリすることばかりだが、派遣社員はどこに配属されても将来的な展望や希望はなく、日々、心を殺しながら目の前の日常を乗り切るだけとなる。
26歳。結婚すれば、違う風景を見ることができるかもと結婚をしている。たまたま酒場で知り合って、勢いで付き合った5歳上のサラリーマンと入籍。販売員の仕事は継続して、共稼ぎ世帯となった。
「延々とDVされました。記憶がないくらい嫌な思い出で、どうしてあの人と結婚したのかとかは詳しくは覚えていないくらい。結婚して同居初日で、おかしいと思いました。すごくこだわりが強い人で、料理にいろいろ文句つけて、全部手作りじゃないと嫌みたいな。私は仕事をしていて本当に時間がないし、家事も洗濯も文句言われて本当に理不尽だと思いました」
元夫と彼女は同じ週5日勤務で収入も同程度だったが、家事はすべて妻である彼女がやらされた。また、金銭管理は夫で自分の給与は全額夫の通帳に振り込まされた。母親と同じような料理を作れと要求され、給与を取られ、不満が大きくなりすぎ、だんだんと精神的に追い詰められていった。
結婚初日で不満を抱え、1カ月で軽率な選択を後悔した。元夫は結婚生活に満足していたが、だんだんと深い不満を抱える妻と亀裂が生まれる。
佐伯さんは結婚生活のストレスで、体調を崩すことが日常となった。旦那は妻の体調が悪くなると舌打ちして、実家に行くことも病院に行くことも許さなかった。
749
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:46:40
土下座させられて朝まで怒鳴られる
「とにかく、怒る。怒ると止まらなくなっちゃう。私はどうして怒られているのかわからなくて、いつもちょっとしたこと。会話をすると、私が発言した意図とは全然違うとらえ方をして、ずっと朝まで怒鳴り続けるみたいな。土下座をさせられる。具体的なやり取りの詳細はどうしても思い出せないけど、要は自分の思いどおりに動かないとキレて怒鳴って、延々土下座をさせるわけです」
フローリングの硬くて冷たい床に正座して頭を下げながら、朝まで怒鳴り声を聞き続ける。病的なモラハラと気づいて、いくら怒られても自分を責めることはなかったが、精神的にはとことん疲弊した。睡眠時間も減り、日常生活にも支障をきたすようになった。
「最後に朝方まで土下座させられた日、“ちょっとお腹痛いからトイレ行かせてください”って携帯を隠し持ってトイレから110番しました。助けてって警察呼びました。すぐに警察は来てくれて、別々の部屋に移されて、朝方だったので私は自分から頼んで警察に保護してもらいました。それが元夫との最後です。事情を話して仕事は何日か休んでいったん実家に戻りました。それで離婚しました。2年半前です」
実家から職場は2時間以上、とても遠くて通えない。元夫に給与全額を振り込む夫婦生活だったので、おカネはない。クレジット会社から50万円を借りて、現在居住する月7万2000円のアパートを借りた。
「もう、結婚はいいです。これから独りで生きていくって考えると、将来のことも考えます。とても人間扱いされない派遣販売員を一生やる気にはなれないし、そんな人生嫌です。何かしようと思って、離婚後からデザイン系のパソコンスクールに通い始めました」
手取りは月21万円。家賃7万2000円、医療費パソコンスクール2万3000円、借金返済2万円、光熱費1万5000円、携帯代1万円、医療費(DVの影響で精神科へ通っているため)5000円を支払うと、6万5000円しか残らない。仕事で疲れ果てるので外食が多くなる。なんの無駄使いをしなくても、おカネが足りない。
「休日にテレアポのバイトを試してみたけど、疲れるし、稼げないしダメでした。それで数カ月前、サイトで仕事を探していたら人妻風俗ってあるのを見つけて、悩んだけどやってみようって応募しました」
佐伯さんは年収300万円。女性の平均年収276万円(国税庁平成27年分民間給与実態統計調査結果より)より若干高い。元夫も含めた性体験人数は5人で、最終学歴は大学卒、今までに風俗や水商売経験はない。どこにでもいる普通の女性といえる。
日本は高齢者優遇や雇用政策の影響で晩婚化が進み、離婚も増えている。現在、働く時間の融通が利く性風俗は、彼女のような普通に働いても普通に暮らせない女性を続々と飲み込んでいる。風俗嬢の8〜9割は正業を持つ女性のアルバイトと言われていて、その多くは佐伯さんのような一般女性なのだ。
「人妻デリヘルですね。指定されたラブホテルに行って、水着とかナースとかセーラー服とかコスチュームの指定があって、男性がシャワー浴びている間にコスチュームに着替えて待つ、みたいな。基本的にもう相手の好きなようにさせています。店長に“未経験だったら相手に任せて、ダメなことはダメって言っていいよ”って言われているので、そのとおりにしています」
彼女は現在、休日のたびに風俗店に出勤して、見知らぬ男性たちと性的類似行為を繰り返している。風俗で稼いだおカネをメモしていた。見せてもらう。4月2日23500円、4月5日22500円、4月11日20500円、4月14日14500円、4月18日22500円、4月26日23500円。4月は12万7000円を稼いでいる。佐伯さんは、なぜか風俗の話になってから表情は明るい。
「本業と違って、風俗は自分が頑張っただけ、明確に収入が増えるのでやりがいはあります。派遣販売員はどんなに自分が、自分たちのコーナーでいちばんの成績を取ったとしても、1円の還元もない。派遣なので昇進も、人脈が広がることはない。ただただ社員に怒られないで、明日も仕事ができるってだけ。そういう意味では、風俗は自分が評価される。楽しいです。勤めているお店は働いている女性が多い。いつも待機所に人が入りきらないくらい女性がいます。みんな普通の女性ですね」
750
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:46:50
仕事をしながら働けるのは風俗だけ
現在の収入は、手取り21万円に風俗で稼いだ12万円を加え、月33万円。休日を潰して風俗バイトに勤しみ、性的行為を繰り返して、ようやく男性の平均賃金(520万5000円、国税庁平成27年分民間給与実態統計調査結果より)に近づくという計算だ。
「結婚生活のとき、本当に男女が不平等だと思いました。これから独りで生きていくとなると、女性に与えられる賃金では生活はできません。雇用の保証もないし、何度も絶望的な気分になりました。仕事をしながら働けるのは風俗だけだし、風俗はずっと続けようと思っています」
佐伯さんは、童顔で清楚でかわいらしい。とても30歳には見えない。職場ではまじめなベテラン販売員で通っているようで、風俗勤めをしているとは誰も夢にも思わない。
卑猥な単語が重なる風俗店のプロフィールを、もう一度見せてもらう。「若くかわいらしい若妻、正真正銘の素人さんです。美形でお色気も満点!すぐに吸い付きたくなるようなプルンとしたオッパイはたまりません!!スタイル抜群で甘えん坊♪♪」と書いてあった。
経済的な行き詰まりは、すぐに風俗の女性たちの傾向に現れる。もう10年ほど前から、裸の世界は彼女のような普通の女性ばかりだ。女性の平均年収を稼ぐ佐伯さんが、生活に苦境に感じて風俗で働く――その現実は、現在の日本の苦しい状況を写し出す鏡といえる。
751
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:48:05
http://toyokeizai.net/articles/-/166937
一流大卒「官僚の元妻」が貧困に苦しむワケ
15年前の離婚を機に転落が始まった
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中村 淳彦 :ノンフィクションライター 2017年05月25日
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、一流大学卒でキャリア官僚元夫人という経歴をもつ55歳の女性。彼女は離婚を機に貧困に陥った。
この連載の一覧はこちら
「人生、何もかも、うまくいきません……」
東京下町。植草紀子さん(仮名、55歳)は、待ち合わせ場所で顔を合わせるなり、深いため息をつく。表情は疲れ、「美容院に行くおカネがない」ので毛髪はボサボサ。白髪が多く、年齢よりも老けて見える。15年前に離婚、それから転落の一途をたどっているという。
近くに生活する部屋があるというので、見せてもらう。数分歩き、商店街の外れにある小さな学習塾で立ち止まる。建物は木造。小中学生向けの小さな学習塾の中に入り、教室を通り抜け、はしごを上る。なんと学習塾の屋根裏に6畳ほどのスペースがあり、現在、そこに居住しているという。きれいに整頓されているが、狭すぎて満足に生活できる空間ではなかった。高さは女性がギリギリ立てる程度の160センチほど。さらに屋根の形に沿って傾斜している。
違法建築の「屋根裏」に住む
「学習塾の経営者とたまたま知り合いで、塾の手伝いをすることを条件に住まわせてもらっています。2年前、妹の家を追い出されて路頭に迷っているとき、助けてもらいました。屋根裏の部屋は違法建築、出入口ははしごだけ。天井の斜めに沿って足を向ければ、眠れます」
元夫は、なんとキャリア官僚。離婚前までは世帯年収2000万円を超える富裕層で、長年、海外に赴任していた。部屋に昔の写真があった。色あせた紙焼き写真には、きれいに化粧して着物やドレス姿で華やかに着飾る30代の植草さんの姿があった。
華やかなドレスを着ていた植草さんが違法建築の屋根裏に住んでいることのギャップに驚く。明らかに普通の生活を送れていない植草さんは、本人が言うように本当に「転落」していた。
「今がどん底の状態です。今月も電気代とガス代を払えませんでした。ガスはカセットボンベがあるので、何とかなりますが、情けないです。生活は本当に苦しい。それに苦しさは、誰にも話せない。友達だとどうしても同情されてしまうし、同情されても何も解決になりませんし」
外見は疲れていたが、仕草やしゃべり口調に当時を思わせる育ちのいい品性を感じる。
ビジネスホテルの夜勤と学習塾のダブルワーク
今年1月までビジネスホテルの夜勤と、居候する学習塾でのダブルワークをしていた。夜勤は最低賃金に近い給与で、夜10時〜朝8時勤務で日給1万円程度。週3日で12万円ほどになった。もうひとつの学習塾は学生講師の欠勤の穴埋めや清掃をして、平均して月7万円程度を稼いだ。しかし、3カ月前にビジネスホテルに退職を説得されて仕事を失う。理由は夜勤に若い女性が入職したこと。収入は月7万円のみになり、現在は経済的に窮地に陥る。月々の電気代もまともに支払えなくなった。
「電気が使えないと、屋根裏の部屋は真っ暗。小さな窓がひとつだけで、もう本当に暗闇です。情けなくなります。私の人生、どうしてこんなことになったのだろうって。自分自身ではそこまで転落した理由が、わからないのです。気づいたら転がり落ちて、真っ暗な部屋にいました。ホテルを辞めさせられてからは、食べ物も満足に買うおカネがない。食べないと生きていけないので、閉店間際にスーパーに行って、安くなった食べ物を1日1食とか。ガスボンベを使って野菜を煮るとかしています」
年収換算すると84万円しかない。家賃がかからなくとも、最低限の生活すらできようがない。電気を止められると、暗闇に近い冷暖房のない部屋で何日も過ごす。冬になると凍えそうになり、毛布をかぶって朝を待つ。
生命の危機を感じて、一刻も早く仕事を見つけなくてはと思った。ビジネスホテルの仕事を失ってから3カ月、ハローワークやフリーペーパーで求人情報を探し、手当たり次第に応募している。
752
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:48:33
「これ見てください。全部、不採用の通知です。メールもたくさんです」
テーブルの下にА4サイズの書類の山があった。本当にすべてが不採用通知で、メールと合わせると50社は超えていた。履歴は華麗だ。都内にある偏差値70を超える超一流大学を卒業、上場企業に就職。そして、結婚して夫の海外赴任を機に退職する。資格は英検1級。職探しの面接では、そのままの履歴書を提出している。
「最初は得意の英語を生かせる仕事をしたいという希望がありましたが、そんな仕事はありません。だいぶ前にあきらめました。だからホテルの日勤夜勤、近所のスーパーのレジ、コンビニの夜勤、働ければなんでもいいです。でも、全部断られました。本当に全部が全部不採用。年齢以外の理由は、わかりません。もうこのまま死ねってことかもしれません。絶対に採用を断らない風俗店が鶯谷にあるみたいで、最近はそこに応募するか真剣に悩んでいるくらいです」
真剣に「風俗」と言っているので、55歳で風俗嬢になっても何も解決しないことを伝えた。おカネにならない。「……そうですか」とため息をついていた。
「結局、私が積んできたキャリアは、元夫と結婚して海外に行っている間に、ないも同然になったということです。その現実は自覚しているので、キャリアがどうこうより、生きていくおカネを稼ぐ、今望んでいるのはそれだけです。時給換算して、何時間働けば月にいくらになる、来月も生きていけるという安定が欲しい。英検1級すごいね、〇〇大学卒すごいねって言われても、まったく仕事がないので意味ありません」
小さな窓がひとつしかない学習塾の屋根裏に、明日がまったく見えない中年女性の厳しい現実があった。
屋根裏部屋は狭く、暑い。換気もできないので、複数の人間が長居できる場所ではなかった。駅前に戻り、どうして苦しい現状を迎えることになったのか聞く。
「本当に甘やかされて育ちました。バブルでしたし。父親は大企業勤めで、おカネはあって、ピアノが欲しいって言ったら翌日ピアノがあったり。大学も“おまえにぴったりの大学がある”と父親が言うので、そこに進学しました」
同級生の彼氏がキャリア官僚に
大学で同じクラスにいたのが元夫だった。在学中から付き合う。卒業後、彼女は外資系の民間企業に就職、元夫は中央官庁のキャリア官僚となった。結婚し、28歳のときに長女、32歳のときに長男を出産する。海外赴任が決まり、会社を辞めた。
「向こうは家賃が高くて月80万円ほどしました。ただし海外赴任は家賃も含めて手当がたくさんつくので、年収2000万〜2500万円くらいだったと思います。夫婦関係がおかしくなったのは、私の母親ががんになってからです。日本と赴任先を行き来するようになって、私は家庭が不穏になっても母親の看病を優先しました。それで元夫の心が離れちゃったのです」
がんの母親のために何でもしようと、医師が勧める先端医療を全部母親に施した。医療費は極めて高く、2年間で1000万〜1500万円ほどを母親につぎ込んだという。
「全部、夫のおカネです。最初は“手術どうだった?”って心配してくれたけど、だんだん“もう、戻ってきてもいいんじゃないの”って。そのときは、母に何でもしてあげたくてたくさんおカネを使いました。最先端医療と言われるものも試しましたし。夫に甘えて母親の治療をやりすぎて、家庭も二の次にして、最終的に離婚したいと言われました。40歳のときです」
753
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:48:56
いくらおカネをつぎ込んでも、がんは進行するばかりだった。最初は見守っていた元夫も、やがて「人間はあきらめることも大切」と言うようになった。それでも夫の元に戻らずに治療を続けた。あらゆる手段を尽くしたが、母親は亡くなった。夫婦仲は戻ることはなく、数カ月後に離婚届けにハンコを押した。
長女は父親と海外に残り、長男は植草さんと帰国して日本で暮らすことになった。日本でシングルマザー生活が始まった。
「前にいた会社の社長がいい人で、戻っていいってことになりました。でも出戻ると、昔と状況が全然変わっていた。とにかく長時間労働で、朝から終電が当たり前。2年間くらい続けましたが、まだ小学生だった長男が“どうして帰って来ないの”“どうして僕ひとりなの”という状態になってしまって、会社は辞めました。家庭の事情を考慮してほしい、ということを言える雰囲気ではありませんでした」
受験戦争に勝って一流大学を卒業し、社会人としても得意の英語を武器に結果を残した。海外経験もあり、それなりに仕事はできる自負はあった。夫に離婚を切り出されたとき、自分ひとりでも働いて長男を育てることができると思った。最初は何も不安はなかった。
東京で家賃8万円の部屋を借り、長男と2人暮らしを始めた。手取り26万円程度の給与に児童扶養手当4万2000円、夫からの養育費月7万円。経済的に困ることはなかった。しかし、子育てと両立できず退社。それから深刻な貧乏、そして貧困が始まる。
英語を生かせる仕事は「学習塾」だけ
「40歳過ぎて正社員の仕事はまったくありません。英語を生かせる仕事は学習塾しかありませんでした。学習塾で講師をするようになって、年収は3分の1くらい。それから生活するおカネが足りなくなりました。小学校の給食費が払えなくて頻繁に小学校に呼びだされたり、家賃を滞納したり。子供の頃から貧乏の経験はないから、おカネがないという生活は初めてです。どうしていいかわかりませんでした」
学習塾は1コマ1500円程度の収入。頑張って働いても月10万円ほどしか稼げない。毎月数万円が日常的に足りなくなった。
「家賃が払えなくなって、追い出された。長男が中学2年のときから妹夫婦と私と長男で一緒に暮らし始めました。月15万円の一軒家で、私は5万円を負担して食費はそのたびみたいな共同生活です。しばらくは普通に暮らしましたけど、長男が公立高校に落ちて私立高校に進学したのです。同時期に元夫から日本に戻って収入が減るから養育費を減らしてほしいと言われて、家計は本当に苦しくなりました」
私立高校の学費は入学時100万円の納入を求められて、授業料は毎月4万円ほど。養育費が7万円から4万円に減り、しばらくすると元夫からの振り込みはなくなった。長男の高校進学から本格的に生活費に困るようになった。入学金は海外時代に持っていたブランドバッグや、母親の形見の宝石を売ってなんとか切り抜けた。しかし、その後に悲劇があった。
754
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:49:14
「カードを不正に使用される詐欺のような被害に遭い、借金を背負ってしまった。本格的におカネが足りなくなって、毎月何万円かを妹から借りるようになった。それで姉妹関係はおかしくなりました。最終的にはもう一緒には暮らせないということになって、長男の卒業と同時に追い出されました」
長男は奨学金を借りて、地方の私立大学に進学する。学習塾時代の経営者に家のない苦境を相談したら、屋根裏のスペースを提供してくれた。3年半前のことだ。
長男は親元を離れて大学近くのシェアハウスで生活する。長男が大学に入学してからしばらくした頃、成績が悪かった。執拗に注意をしたら「もう、俺にいっさいかまわないでくれ」と絶縁を突き付きられた。長男とはそれから2年半、会っていない。連絡先も住所もわからないという。日本に戻ってきた長女とも久しぶりに会ったが、弟のことで口げんかになり「親と認めてないから」と突き放された。
「屋根裏で暮らすようになってから、年に数回、電気が止まります。真っ暗なところで自分を振り返るのですが、いったい自分の人生ってなんだったんだろうって、いつも思います。家族は崩壊して、子供にも姉妹にも見放されて、レジ打ちの仕事すらさせてもらえない。こんな生活がこれからずっと続くと思うと、気が滅入ります」
話は終わった。一筋の希望すらない厳しい現状があった。
働く意欲はあっても仕事はない
「屋根裏の生活はツラい。狭くて満足に立ち上がれなくて、冷暖房のない暑いし寒いという生活は、私も人間なのでツラいです」
最低限の生活を送れていない。母親のがんの治療に執拗にこだわったことがきっかけで自分の家庭が崩壊し、最終的には仲がよかった妹にも、懸命に育てた長男にも見放された。
「苦しくても、誰も助けてくれない。それに屋根裏から抜け出したくて、どんなに働く意欲があってもどこにも仕事はない。海外にいるときは、20万円を稼ぐのがこんなに大変なこととは思いませんでした。今は1週間後の想像すらできません」
現在進行形でパートを断られ続けている。一昨日もファミリーレストランから不採用の通知があった。
「学習塾は私が住み込み、講師のピンチヒッターや清掃をしているから都合がいい部分もあります。ですから、外に出て普通の暮らしをしたらクビになるかもしれません。若い頃からそれなりに一生懸命勉強して、成果も残した。社会人になってからも、頑張っていました。日本は専業主婦を経験した女性やシングル家庭に厳しすぎます。最低限の暮らしもできないのですから」
最後、小さな声でそう言っていた。家族を失い、キャリアを誰にも認められず、とにかく苦しい。経済的に追い詰められて、自分自身から表情が失われていくのがわかる。最後に少額だが謝礼を渡すと「これで電気代が払えます」と、今日初めて笑顔を見せてくれた。
本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:50:10
http://toyokeizai.net/articles/-/166937
売春で学費を稼ぐ貧困女子大生の悲しい現実
カラダを売らないと学生生活を維持できない
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中村 淳彦 :ノンフィクションライター 2017年04月12日
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、児童養護施設育ちで私立大学に通う20歳の女性。彼女は売春で学費と生活費を賄っている。
東京・池袋。中堅私立大学の夜間部に通う、菅野舞さん(仮名、20歳)と待ち合わせた。文化系サークルに所属し、昼間は中小企業でデータ入力のアルバイトをする。アルバイトは時給1000円だ。後期試験が終わった晩冬は、稼ぎ時となる。いつものように夕方までアルバイトし、さらに20時からお小遣いをくれる中年男性に会う。
「その男性に合わせるからわからないですけど、たぶんエッチもすると思いますよ」
この連載の一覧はこちら
彼女は当たり前のように、そう言う。風貌は茶髪、地味な服装で、どこにでもいる普通の女子大生だ。大学近くの家賃7万円のアパートに1人暮らし。親はいない。児童養護施設育ちで仕送りはなく、どうしてもおカネは足りない。悩んだ末に大学1年春から性風俗、そして2年から特定の中年男性を相手に売春する。
「仕送り」額は減少を続けている
彼女は今年1月25日にアップされた記事(21歳医大生が「売春」にまで手を染めた事情)を読んで、われわれに連絡をしている。
「あの医大生の女の子の記事に対して非現実的、ウソみたいなコメントがたくさんあった。私もそうですけど、今の大学生とか若い子たちの中では、効率的におカネを稼ぐ、稼がざるえないって環境って普通にあることじゃないですか。全然、特別なことではない。だから、私も今の状況を話したら、作り話とか言われるのかなとか。そういう興味で連絡しました」
現在、私大生の貧困は深刻だ。全学生の51.3%(平成26年度学生生活調査)が奨学金を借り、親からの仕送り額は減少を続ける。自宅外学生の親の仕送り額は、1994年の12万4900円から2016年には8万5700円と減少し(東京私大教連調べ)、仕送り額から家賃を引いた平均生活費は1日当たり790円となっている。
親元を離れる地方出身の大学生、特に私大生はアルバイトをしないと生活どころか、生きていけない状況なのだ。そのような厳しい状況の中で、親世代の世帯収入は下がり続け、学費の上昇は続き、授業の出席は厳しい。経済的に追い込まれている大学生を理不尽に使うブラックバイトが大問題となっている。現在の大学生には、“レジャーランド”と揶揄されたかつてのように遊びほうける余裕はない。
「詳しくはないですけど、コメントされている方々の時代は恵まれていたんですよね。だから、学生が風俗に身を落とす意味がわからないというか。風俗で働いていると、中年のお客さんですごく見下してくる人は多い。“どうして、こんな仕事をするの? ブランド物が欲しいの?”みたいな。そんなのおカネのために決まっているじゃないですか。わからないなら、わからないで別にいいし、理解してほしいとも思わない。けど、違和感はありますよね」
菅野さんには、親はいない。仕送りはゼロ円だ。大学を卒業するためには、4年間の学費と生活費のすべてを自分で稼がなければならない。高校2年生のときに進学を決意して、アルバイトをして貯金した。高校と児童相談所の反対を押し切って、上京。受験して、進学した。夜間部を選んだのは授業料が安いからだ。
756
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:51:03
入学してすぐに風俗に行った
一般的な大学生が時給アルバイトで稼げるのは、せいぜい月10万円が限界だ。菅野さんの収入は奨学金と合わせて月16万4000円、家賃を支払ったら残るのは9万円程度。そこから携帯、光熱費、交通費、食費を支払えば、おカネはほとんどなくなる。親のいない彼女は、さらに学費がかかる。
「アルバイトだけでギリギリの生活はできます。けど、どうしても学費が払えない。それは高校生の頃からわかっていたことなので、1年生の春には風俗に行きました。池袋のデリヘルです。1本1万円の店で、出勤は週1日くらい。稼げるのは月6万〜10万円程度かな。風俗で稼いだおカネは、全部貯金して学費にしました」
地元は地方。経済的に無理して上京、進学した。それなりに覚悟があったので、18歳で風俗嬢になっている。その事実を淡々と語るが、知らない男性に性的サービスをする風俗の仕事は精神的に厳しいという。
「1日出勤するだけで精神的にきます。もう、次の日は動けなくなるほど、疲れる。割に合わないです。やっぱり後ろめたさがあって、おカネのためだから仕方ないとか、売れるもの売って何が悪いっていう言い分もあるけど、やっぱり社会的に認められていない一面が居づらくさせるというか。知らない男性を相手に、こういうことしなくちゃ自分は生きていけないって現実が苦しい。あと、カラダが痛い」
デリヘルが提供するサービスは疑似性行為である。知らない男性を相手に会話して愛撫され、欲望の的にされる。精神が削られるだけでなく、10代のまだ成長途上のカラダも疲弊したという。
「つかみ方がひどい人とか、あとヒゲでこすられて痛いとか。胸の上とかすれて、血が出たりすることもあって、すごく疲れるし、1日働いたら次の日はアルバイトに行くのがツライ。カラダを休めたいけど、そんな休んでいる時間はないし。それで、大学の友達からTwitterで男性を探す方法を教えてもらった。まあ、売春ですけど、今はSNSで男性を見つけておカネをもらっています」
この数年、Twitterで援助交際や売春相手を探すことがはやる。未成年の少女が手を染めるケースも後を絶たない。売春防止法違反の容疑で、不特定多数に売春を勧誘した未成年少女が逮捕される事件も起こっている。
「違法ってことは自覚しています。とりあえずTwitterで援助用のアカウントを作る。パパとかパパ活とか援助とか、そういうタグをつけてつぶやく。自然とフォロワーが増えて、どんどんダイレクトメッセージがくる。買いたいって。この人だったら大丈夫かなって人と会う。私だけじゃなくて、そういうアカウントは何千、何万ってありますよ。エッチするときは3万円以上欲しい。1年間くらいやって何人か定期的な人ができました。風俗よりも楽チンです」
彼女はTwitterで3つのアカウントを使い分ける。ひとつは本名で自分の大学名や所属を出す、もうひとつは風俗嬢の名前で愚痴をつぶやく。そして、もうひとつが援助用のアカウントだ。それぞれにまったくつながりはなく、書いている彼女以外には同一人物であることはわからない。
DMの文章を見て「相手」を選ぶ
「メッセージがきたら、言葉遣いをみる。文章がちゃんと書けているかって。普通の人を選びます。あとはおカネを稼ぐことだけが目的なので、10代とか20代前半の若い人は無視。若い人はおカネがないだろうし、値切られたり、恋愛みたいなことを求められるかもしれないから。知らないおじさんと会うのは、嫌だし、怖い。けど、仕方ないことです」
現在、特定の中年男性が3人いる。それぞれ求められる日数が違う。時間を見つけて待ち合わせをする。その日にセックスすれば3万円以上、食事だけならば5000円か1万円をもらう。大学2年以降はTwitter経由の援助交際と個人売春で、10万〜12万円を稼げるようになった。もらったおカネはそのまま学費用の普通預金口座に入金する。4月半ばまでに納入しなければならない数十万円は、もう貯まった。
日本学生支援機構の奨学金が「実質学生ローン」という批判を受けてから、彼女のように風俗や売春に手を染める女子大生はさらに増えている。経済的に追い詰められると稼ぐための手段は、その個人の属性や性格や趣向などを軽く超えてくる。たとえば、処女や彼氏との恋愛を大切にする普通の女子学生が風俗を選択し、普通の男子学生が違法なスカウトや詐欺の手伝いに走ったりする。
普通の女の子が生きるためにカラダを売る――日本の若者の貧困、そして世代間格差、男女格差は深刻だ。現在、風俗客はおカネを持つ層なので中流以上の中年男性がメインとなる。彼女は「違和感はある」とクビをかしげたが、恵まれた時代に育ってさまざまな恩恵を受けてきた中年男性が、学生生活維持のために裸になって必死に稼ぐ若い女の子に説教をしても、その言葉はむなしく響き、相手を傷つけるだけなのだ。
757
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:51:19
彼女は2歳から児童養護施設で育っている。両親は何かの理由で育児放棄し、一人娘を施設に入れた。20〜30人の小さな施設で、主に親から虐待された子どもが入所する。
「虐待の子が多い。ひねくれた子が入ってくるので、子ども同士のいがみ合いばかり。虐待された子はヒステリーを起こしやすいとか、怒りっぽかったり、やっぱり自分も殴る、蹴るって乱暴だったり。あと自傷行為。私は親の育児放棄なので、そういう子とはやっぱり自分は違うって感覚はありました。施設の子はほとんどうまく社会生活を送れていません。仕事に就けなかったり、続かなかったり。その日暮らしで転々としている人が多いですね」
菅野さんは小学校に上がった時点で、自分が普通の育ちでないことを知る。習い事ができない、誕生日やクリスマスに何も買ってもらえない、お年玉がもらえないなど、周りと違うことに悩んだ。自立しないと生きていけないことに高校時代に気づいた。高校を卒業したら、もう誰も助けてくれる人はいなくなる。高校1年のとき、児童相談所に里親制度を薦められて施設を出た。
「過保護で厳しかった。子どもが欲しかったけど、流産して子どもに恵まれなかった夫婦。家庭というのはこういうものとか教えられても響かなくて、気遣いとか助け合って生きるとか、まったくわからなかった。今まで自分だけのことをすればよかったのに、いきなりそんなこと言われてもという感じで。買い物とかしたことがないし、家事もわからないし、家電の使い方とかもわからない。いちいち“どうしてできないの?”って責められた。自分が全否定されたみたいな感覚でした」
里親からは生活や態度の隅々まで注意された。褒められることは何もなく、ストレスばかりがたまった。精神的に不安定になって、学校をさぼるようになった。菅野さんは髪の毛をかき上げて、耳を見せてくれる。耳たぶだけでなく、耳全体にピアスの穴が開いていた。
「自傷的なものです。耳にピアスの穴を開けて止まらなくなった。両耳だけだと15〜16くらいで、それと舌の裏の筋とかおへその周りとか。全部で30。ピアス用のニードルを買って、カラダに刺して開けるんですよ。深夜にやっていました。リストカットとか好きじゃなくて、ピアスの穴を開けて人に見せて怖がられたり、すごいとか言われたりして、ちょっと満たされたみたいな感じがありました」
里親とは家族になれない。高校2年のとき、東京の大学に進学すると決めた。児童相談所と高校の進路担当の先生は「無理です、働きなさい」と止めたが、聞かなかった。放課後近所のコンビニで働いて、稼いだおカネを全部貯金して進学と上京の費用にする。おカネを稼がないといけないので受験勉強の時間はそんなに割けない。国公立はあきらめて、私大夜間部を志望校にした。合格して、里親に丁重にあいさつをして上京した。2年前のことだ。
「もう誰も守ってくれない」という不安
「大学生になってからは、もう誰も守ってくれない。誰も知っている人がいない。全部自分でやらなきゃいけないし、健康をちょっと崩しただけで生きていけなくなる。プレッシャーはあるし、普通に精神的に厳しいです」
一番のプレッシャーはおカネのことだ。学費と上京の費用で、2年間のアルバイトで貯めた130万円はほぼなくなった。預金がほぼゼロから東京で学生生活が始まって、半年ごとに数十万円の学費の納入期限がある。家賃は7万円と高く、不安しかない。すぐに風俗嬢になった。知らない男性への性的サービスはできればやりたくないことだが、そんな自分の好き嫌いを言っているような状況ではない。
大学ではある文化系のサークルに入った。そこで知り合った同学年の男子学生と付き合うようになった。菅野さんはカバンからiPhoneを取り出した。画面を見せてくる。男性の名前が書いてあり、LINEで通話がつながっている。なぜか通話中だった。
758
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:51:44
「彼氏。1年前から一緒に暮らしていて、離れるときはずっと通話中。はい、共依存です。その人も父親にDVされた経験があって、似たような依存タイプで誰かに必要とされたいみたいな。ずっとつなぎっ放し、向こうがバイトしていたら、終わってからずっと会話する。家に一緒にいる以外は、つなげたまま。もう、ずっとそう。ちょっとでも離れると、自分が不安になっちゃって発作を起こしちゃうし」
自分のことを好きと言ってくれる男性に依存するようになったのは、東京で一人暮らしを始めてから。突然泣いたり、過呼吸が起こるようになった。彼氏と一緒にいるときだけ、不安定が収まる。安心ができる。
「風俗勤めは、すぐバレました。向こうが私の携帯を見た。共依存していると、お互い携帯を見るんですよね。風俗嬢は写メ日記を投稿するじゃないですか。それを見つかって話し合いになったけど、相手も学生だし、辞めたら生きていけなくなる。仕方ないって話して、相手もうつむいて何も言わないので、そのまま無視して働いています。私だって風俗とか売春しないで生きていきたい、でも、今はどう考えても無理です」
彼女がカラダを売ったおカネは、そのまま学費になっている。もし、給付型奨学金があれば、少し不安は取り除かれ、カラダを売らなくてもなんとか学生生活を送ることができる。
同じ境遇の人に「売春やれば」とは言えない
「でも、私みたいな親がいない人間は、たぶん“大学なんかに行くな!”ってコメントでたたかれますよね。たとえば、養護施設出身で大学に行きたいと言った子に、じゃあ、あなたも売春やれば?とか言えないじゃないですか。その子がどうすればおカネを工面して、学費を積み立てられるかを考えたとき、とても自分がやっていることは勧められない。やっぱり給付型の奨学金があればいいのに、とは思いますよ」
大学奨学金が社会問題になり、返済不要の給付型奨学金の必要性が叫ばれた。安倍政権は2017年度から給付型奨学金を新設したが、予算はわずか70億円だった。
カラダを売らないと学生生活を維持できない苦境にいる女子大生は、彼女だけではない。その苦しい状況は、まだしばらく続きそうだ。
本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
759
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:52:45
http://toyokeizai.net/articles/-/163061
シングル母は「介護業界」にズタズタにされた
「唯一正社員で働ける業界」のはずが…
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中村 淳彦 :ノンフィクションライター 2017年03月24日
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。今回紹介するのは、介護業界を渡り歩いてきた、東京多摩地区の団地で暮らすシングルマザーだ。
この連載の一覧はこちら
東京多摩地区のベッドタウン。駅からバスで坂道を上ると、大きな団地群が見える。篠崎千尋さん(46歳、仮名)はシングルマザー、一角にある団地の最上階で家族と暮らす。決して狭くはない2DK。笑顔で部屋に迎えてくれたが、表情は若干引きつり、正常な状態ではないことはすぐにわかった。
さっそくDV体質だった元夫が暴れて空けた壁と冷蔵庫の穴、勤めている介護事業所からの給与不払いを宣言する内容証明、重度ストレス反応と書かれた診断書を見せてくれる。貧困に加えて、さまざまな不穏が重なって追いつめられた状態だった。整理して順番に話を聞くことにする。
「子どもの年玉を使ってから出直せ」
「先月1月10日まで東京都世田谷区の訪問介護に勤めていました。で、1月25日に給与が支払われなかった。催促したら給与を払わないって。おカネは本当にギリギリ、ずっと綱渡りみたいな生活なのでパニックです。それに重度ストレス反応って診断も出て、働くことはしばらく止められています。仮に今から仕事を探しても、どうしても今月と来月の生活は乗り切れない」
つい1週間前。わらにもすがる思いで、生活保護の申請のために福祉事務所に行っている。
「たまたま4カ月分の児童育成手当が出たばかりでした。“育成手当、それに子どものお年玉も、全部使ってから出直すように”と追い返されました」
現在、収入は児童扶養手当月5万2330円と児童手当月2万円、児童育成手当月2万7000円。それに元夫からの養育費6万円。合わせて15万9330円。それに、手取り月12万円ほどの給与を予定していた。介護事業所の通告によって突然12万円が入ってこなくなり、一家は混乱状態になっていた。当たり前だが、給与の不払いは完全に違法である。
「本当にどうしていいか、わかりません。いろいろなことが、あまりにひどすぎます」
現在、預金残高は10万円ほど。おカネがなくなったからといって、生活保護制度が使えるかわからない。育ち盛りの子ども2人を抱え、混乱する彼女の表情は青ざめていた。
「その訪問介護は2カ月で辞めました。何もかもが異常でした。雇用契約書を5回も6回も書かされたり、契約書の金額と給与が違ったり、メチャクチャ。あと事業所のパソコンは個人情報があるので、絶対にエロサイトとか見ちゃダメじゃないですか。女の管理者とその内縁の夫で運営していて、男のほうが1日中エロサイト見ている。私が“やめたほうがいい”って何度言ってもダメ。書類も請求もヘルパーも私ひとりでやらされて、とても続けられないと思った」
760
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:53:11
実態のない勤務表などを作らされた
2000年4月に介護保険制度が始まり、公的機関が担っていた介護が民間に委譲された。特に訪問介護、通所介護の在宅分野の認可基準は極めて低く、介護とはまったく関係ない零細事業者の参入が激増した。素人が高齢者の命を預かる介護事業所を、順調に運営できるケースは少ない。
昨年10月から勤めた訪問介護事業所は、新規参入で立ち上げから数カ月、婚姻関係のない中年カップルが運営していた。介護経験者である篠崎さんに実務を全部押しつける、というマネジメントだった。素人が介護事業所に手を出すと、まず介護保険請求や行政から求められる複雑な書類整備に混乱する。書類に追われて現場の介護がおろそかになる。そして不正請求や虐待、違法労働の温床に、という負の連鎖が起こりがちだ。
「介護だけではなくて、ケアプランの作成から請求まで全部。実際はサービスしていないのに、生活保護受給者にサービスしたという書類を作らされました。あと実態のない勤務表とか。勤務表は常勤7人にしてくれって、知らない人の名前を教えられた。実際に事業所で働いているのはその2人と私の3人だけ、おかしいなって。おそらく訪問介護事業所としての申請から国保連への請求まで、全部不正ってことです。公金詐欺に加担したくないのも、すぐに辞めた理由でした」
書類と請求を担当した彼女の話によると、その訪問介護事業所は人員基準違反に加えて、家族がいない生活保護受給者で不正請求を繰り返したようだ。生活保護の単身世帯は、まずキーパーソンがいない。多くの利用者は、介護事業所が求めればハンコを押す。本人が理解していないので、架空のサービスでも保険請求ができる。介護報酬の50%は国、都道府県、市区町村の税金だ。このように不正する介護事業所に、税金が無限に垂れ流される現実がある。
「辞表を出しても、断固として“辞めさせない”って。脅しみたいに言ってきたのも、常勤の私がいなくなったら誰もいない事業所になるから。それに介護保険だけじゃなくて、雇用系の助成金も不正受給しようとしていたみたいで、私に辞められたらダブルで困る。だから給与払わないって嫌がらせするし、いくら要求しても離職票をもらえない。籍が残ったままなので転職もできない。そんな詐欺のために、自分が利用されて生活がメチャクチャになるとか、本当に耐えられないです」
篠崎さんは崩壊状態の介護事業所に勤めたことでさらに精神状態が悪化し、離職票がないので職探しはできず、給与支払いを拒否されて経済的に追いつめられた。雇用契約書の控えが数枚あった。給与額がすべて異なる。1度だけ支払われた給与は、額面13万3000円。手当はない。東京都の最低賃金割れで、年収換算で159万6000円にしかならない。
「高齢者と介護の仕事は、好き。けど、介護の仕事をしてから、人生がおかしくなりました。負の連鎖がずっと続いています」
彼女は2度結婚に失敗している。10代でできちゃった結婚して、33歳で離婚。離婚理由は旦那の浮気とギャンブル、子どもが高校を卒業するまで毎月養育費はもらえた。離婚をキッカケにヘルパー2級を取得、13年前に大手有料老人ホームに非常勤介護職として入職する。
「介護を始めたキッカケは、子どもにちゃんとした姿を見せたかったから。安定する介護の現場で働いて、子どもをちゃんと育てようと思った。でも、介護がこんな危険な世界とは夢にも思わなかった。今回も含めていろいろな失敗をしています。本当にひどい業界です」
介護は深刻な人手不足が延々と続いている。リーマンショック以降、厚生労働省の雇用政策によって失業者が介護現場に誘導され、昨年からは法務省が主導する刑務所出所者を介護職にするプロジェクトも始まっている。介護保険によって素人経営者が集い、雇用政策によって社会から弾かれた人材が集められ、著しい質の劣化が進むのが現在の介護現場だ。
篠崎さんは有料老人ホームで頑張って介護をした。38歳のとき、同僚の年下の介護職と職場恋愛、妊娠する。再婚、出産となった。そのとき産まれたのが、現在小学3年生の子である。
761
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:53:34
「出産でホームは退職した。育児しながら、近くのスーパーで短時間のパートです。出産してから、旦那の浮気がすごくなった。介護の世界は不倫がすごくて、男も女も旦那がいようが奥さんがいようが、すぐ肉体関係になる。夜勤中にやっちゃったりとか。旦那が休憩中、職場の同僚とラブホテルに行っていることを人づてに聞いた。ホームの向かい側にラブホテルがあって、そこにホームの女の子と。不倫カップルは私が在職中も何十組も見たし、もうムチャクチャですよ」
介護現場の不倫は、どこでも耳にする話だ。特に24時間営業の居宅型の施設は時間が不規則、職員たちの生活は閉塞する。多くは家庭もうまくいかなくなる。つねに一緒にいるのは同じ施設の同僚で、ほかに出会いはない。閉じられた中で、恋愛関係になりやすいのだ。不倫で慰謝料を請求される可能性があることを知らない職員も多く、とにかく乱れた関係に走りやすい。
「ひどかったのは離婚調停中に、旦那とホームの男性職員たちとのハメ撮り写真交換が問題になったこと。休憩中に女性職員とラブホテルに行くのがホームの男性の中ではやって、ハメ撮り写真を撮ってメールで交換みたいなことをしていたみたい。ゲーム感覚で過熱して、最終的にひとり女の子が自殺未遂して騒ぎになった。人手不足だからそんな問題を起こしても、誰もクビにならない」
浮気が発覚してから夫がキレやすくなった
介護職の夫の浮気、不貞行為が発覚したのが結婚3年目。子どもが2歳のとき。そこから家庭での壮絶なDVが始まった。
「最初はメールを見ちゃった。夜な夜ななんかやっているので、見たら、女の子とお風呂に入っている裸の写真で。彼に聞いたら、浮気ってわかった。その子を連れてきて、と話をしたら逆切れ。“はあ? てめえ、俺が謝っているのに何様? てめえ、なんだよ、その態度”って始まった。子どもが小さかったから危険と思って、その場でやめたけど。そこから日々の暴力が始まった」
浮気が発覚してから夫はキレやすくなり、すぐに暴力を振るうようになった。成人した前夫との子どもが家に遊びにきたとき、夫が突然暴れたことがあった。
「なぜか私に暴力を振るいだした。子どもが“暴力はダメだよ”って夫に言った瞬間、沸騰して、子どもの髪の毛を引っ張って引きずりまわした。このタンスにガタガタ、ガタガタ頭をぶつけて、私がかぶさってかばっても暴力をやめない。子どもが警察に電話したら“てめえ、俺を警察に売りやがったな”って発狂して連続キック。でも最終的に、ベランダで泣いているんですよ。俺のことをわかってもらえないって」
夫のDVは、やがて保育園に行くようになった子へ向かった。子への暴力が止まらなくなり、そして彼女の精神状態もだんだんとおかしくなる。恐怖に支配されて、不眠が始まる。言葉使いやささいな仕草、家族の何かが気に食わないと、すぐに怒鳴って暴れた。
「子どもは保育園から小学校1年生まで、本当にずっと暴力をふるわれた。夫は体が大きくて、子どもを平気でフルスイングで殴る。殺される寸前みたいなことも何度もあった。理由は本当にささいなこと。薬を飲まなかったからとか。子どもってかわいがってくれると、親に寄っていくじゃないですか。けど、かわいがっていたかと思うと、突然怒鳴りだして殴るんです」
2DKの壁は所々に穴がある。すべて夫が暴れたときにできたものだ。夫は不貞行為が妻にバレた後も、職場でハメ撮り写真を収集、不貞行為ざんまいで、家に帰ると妻と子への暴力で気を晴らした。数年間、手に負えない状態が続いた。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:53:57
離婚を申し出て、2年前に成立。夫はこの団地の部屋を出ていき、現在は隣の市のアパートで独り暮らしをする。離婚後、篠崎さんと2人の子は夫には会っていない。毎月6万円の養育費は、今のところ月末には振り込まれている。
殴られなくなると不安になる
暴力を振るう夫、父親がいなくなってから、さらなる不幸が始まった。子の様子がおかしくなり、不安定な状態になった。小学校でクラスメートとのケンカやトラブルが絶えなくなり、親からの苦情が殺到して、篠崎さんは現在進行形で学校に何度も呼び出されている。
「DVをされている間は、恐怖で支配されている。それがなくなると、逆に不安になる。悲惨な生活から平穏になって、なにかポッカリ穴が開いたような。私も似たような感覚がある。だから、子どものことがわかる。怒鳴られようがひっぱたかれようが、子どもにとっては、それが普通の生活だった。“殴られることはないんだよ”って環境になった途端、本当に不安になる。先生から頻繁に電話がかかってくるようになったのは、離婚してからすぐ。子どもはDVの影響で、人の気持ちがわからない。やり過ぎちゃう」
トラブルが頻繁に続き、副校長から「DVを受けた子どもは、将来的に性犯罪者になる確率が高い」とまで言われた。児童相談所に行け、特別学級がある学校に転校してほしいなど、学校はもうお手上げといった状態のようだ。
「テスト用紙にバカとか死ねとか書くとか。先生にひたすら暴言を吐くとか、そんな状態みたいです。私も精神科に行ったら、重度ストレス反応って診断。DVの影響で眠れなくなったことが原因で、子どもだけでなく、私もいろんな人とトラブルが絶えない。人間関係がうまくいかなくて。人のせいにしてはいけないけど……」
小学校の先生たちの辛辣な言葉は、彼女自身が先生との人間関係が悪化した末の状態のようだった。
離婚後、再び経験のある介護現場に戻った。非常勤で入職した特養老人ホームは1年半働いた。半年前、入浴介助で転倒しそうになった高齢者を支えたとき、左足を骨折して働けなくなった。労災をもらいながら実務者研修に通い、そのとき、同じ生徒だった前職の訪問介護の管理者に入職を誘われた。そして、不正請求を手伝わされた。
「今日いちばん言いたかったのは、介護事業所はもっとちゃんとしてほしいってこと。特別な能力のないシングルマザーが、唯一、社員として働ける可能性がある業種が介護だから」
圧倒的に女性が多い「介護業界」
介護職は女性の比率が70〜80%と、圧倒的に女性の職場だ。施設系介護職員の平均賃金は正規職で19万3016円、非正規で13万2221円(日本介護クラフトユニオン2015年3月調べ)と圧倒的に安く、シングルマザーたちのセーフティネットとなる反面、低賃金、違法労働を強いるなど、女性の貧困を牽引する業種となっている。
「私が被害に遭った事業所みたいなところを野放しにしていたら、また同じような境遇の女性が被害に遭う。シングルマザーは本当に大変なの、ほんの少しつまずいただけで生活できなくなる。だから介護現場が普通に働ける場所になってほしいんです」
篠崎さんは最後に強い言葉で、そう言う。介護保険がうまく機能しない介護業界の闇は深い。不正する訪問介護事業所を罰するためには、役所の介護保険担当が監査して、不正の証拠をつかまなければならない。数人がかりで準備、調査、結果を精査するので人員と時間がかかる。さらに不正請求や労働基準法を意図的に違反する事業者はもはや膨大で、キリがないのだ。
3時間くらいしゃべり続けただろうか。窓の外は暗くなり、子どもたちが学童から帰る時間だ。言いたいことを吐き出し、すっきりしたのか何度かお礼を言われた。バス停まで送ってくれて、「私には介護の仕事しかない、今度こそちゃんとした事業所を見つけて頑張る」と、笑顔で言っていた。
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:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:55:10
http://toyokeizai.net/articles/-/160604
不倫夫と別れた専業主婦が直面する「貧困」
子どもは小さい、手に職はない
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中村 淳彦 :ノンフィクションライター 2017年03月03日
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。今回紹介するのは、2人の子どもがいるシングルマザー40歳。貯金がある彼女は現在は貧困ではないが、「貧困予備軍」だ。
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2人の子どもがいるバツイチシングルマザー渡邊真由美さん(仮名、40歳)の自宅に足を踏み入れた瞬間、不穏な雰囲気にゾッとした。カーテンが閉めっぱなしで薄暗く、家中の壁の所々に穴が開く。そして、リビングに飾られている何枚もの幸せそうな家族写真は、どれも色あせてホコリをかぶっていた。
「上の中学校3年生の子が引きこもりです。もう1年以上、この家から出ていません」
渡邊さんはあきらめきって苦笑をした。自宅は、東京から電車で1時間以上かかるベッドタウン。最寄り駅から20分以上歩くと、農地の奥に突然、華やかでヨーロピアンな住宅が建ち並ぶ。まるで遊園地のようだ。違和感があった。18年前に30棟以上の戸建てが強引に開発され、その1棟が彼女の自宅だった。
「見てのとおりです。うちはこのありさまで、荒れ果てています。うちだけじゃなくて、両隣も家庭崩壊みたいな状態。もう、狂いそうです」
20畳あるリビングには大理石のテーブルに大型テレビ。窓際にある昔の家族の写真。ホコリを払って眺める。ユニバーサルスタジオジャパン、京都、北海道、海水浴など、幸せそうな家族写真だ。どれも渡邊さんと恰幅のいい男性、真ん中に小さな子どもが笑顔で写る。
現在のところは貧困ではないが…
現在、渡邊さんは収入ゼロだ。月2万円の児童手当と月5万2330円(2016年7月までは4万7000円)の児童扶養手当だけが収入である。2年前の離婚のとき、旦那からこの自宅と高級車、600万円の養育費を一括でもらっている。
渡邊さんは切り崩す貯金があるので、現在のところ貧困ではない。しかし、完全に破綻した生活環境だ。小学校低学年の下の子は社交的な性格で、まだ取り返しのつかない家庭崩壊を理解していない。ひとりでも明るい家族がいることが、彼女の救いとなっている。
「元旦那は年収3000万円くらい。たまたまうちに所得証明みたいなものが送られて、年収は離婚してから知りました。義父が地元では有名な会社社長で、家族経営みたいな感じで旦那は役員。月の生活費は70万円くらいもらっていたので、ずっとおカネのことは考えないで普通に生活していました。元旦那には働くのは絶対ダメだって言われていて、結婚以来ずっと専業主婦です」
15年間、専業主婦を続けた。毎月おカネを預かって家事と育児、家族の日常を支えた。家族でいちばん早く起きて、朝食の準備をする。給食のない上の子のお弁当を作って会社と学校、幼稚園に送り出す。掃除、洗濯をして幼稚園に迎えに行き、夕飯の支度と後片付け、それに寝るまでの子どもの面倒をみていれば1日が終わってしまう。離婚するまで、そんな日々が続いた。
「専門学校を卒業して、すぐに結婚しているんです。旦那が見えっ張りな性格で、専業主婦でいてほしいという人。だから働いた経験はほとんどない。突然、離婚を突き付けられて、働けって言われても本当に難しい。下の子は小学校低学年だし、手に職もないし。本当に私、これからどうすればいいのでしょうか。それに子どもがいるから、働けるのはせいぜい9〜14時くらい。そんなんじゃ、パートも雇ってもらえなかった」
2年前に離婚したとき、それまでの余った生活費の貯金と旦那から一括でもらった養育費600万円が通帳にあった。2年間の生活費でその半分近くが減った。毎月減っていく残高を眺めながら、不安ばかりが膨らむ。このペースだと、あと2年でゼロになる。
「最近、怖くてパニックになる。旦那に専業主婦を強制されて、子どもの育児や家事をさせられて、揚げ句に向こうだけの都合で離婚されて30歳台後半で放り出された。それで先月40歳です。働きたくても仕事はないし、専業主婦だったから、何の仕事もできない。離婚してから自分は社会の誰にも必要とされてないし、死んだほうがいい邪魔な存在なのかなとか、よくそう思う」
764
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:55:39
減る預金通帳を眺めながら、日々焦る。家も車も維持できるのだろうか。家を売ればあと5年くらいは生きることができるだろうかとか。つねに気分は落ち込んでいる。
「2年前に離婚してから、ずっとそんな感じ。上の子は月に何度かは暴れて壁に穴が開くので、家もいつか壊れちゃう。子どもの部屋はゴミ屋敷みたいな感じで、昼夜逆転していて風呂も歯磨きもたまにしかしない。友達も1人もいなくて、学校もお手上げな感じで高校受験は無理。そんな子ども2人抱えて再婚なんて夢みたいな話だし、働くこともできないし、もうどうしていいのか……」
20代前半の女性と浮気、隠し子も…
ヨーロピアンな自宅は一歩踏み入れれば、不穏な雰囲気が広がる。富裕層の平穏な家庭が暗転したのは、離婚が原因だ。どうして、夫婦と家庭は破綻したのか。
「元旦那は6年くらい前から、20代前半のスナックの女と浮気していた。浮気どころか子どもも作って、家庭が2つある。今は不祥事を起こして会社もクビになって、義父も元旦那がどこにいるかわからないって。本当なのかわからないですけどね」
同じ市内にあるスナックを会社は接待でよく使っていた。元旦那はそこで働く20代前半の女性と恋愛し、やがて頻繁に外泊をするようになった。最初は「出張」という言葉を信じていたが、だんだんと疑うようになった。
「義父が6年前に都内に家を買って、それから“東京にいるから夕飯いらない”とか“大阪に出張”みたいなことが増えた。最初はそうかと思っていたけど、朝帰りが続いた。それまで出張なんてなかったのに、急にそんな感じになった。たまに香水のにおいがするとか、口紅がついていたとか。そんなことが増えて、疑って問いただすと“探偵でもなんでもつけろ!”みたいな恫喝。そこまで言うんだったらと、信用するしかなかった」
朝帰りは外泊になり、最終的には毎週のように金、土、日、月を出張と言って家を空けるようになった。3年前、社長である義父が孫の顔を見に来たとき、出張について尋ねた。会社の業務で出張は一度もないことを聞き、浮気が発覚した。
「浮気がバレてからいっさい帰ってこなくなった。2度、旦那がうちに戻って話し合った。旦那はひたすら離婚したい、離婚したいって。私はどうして?って、やり直そうよって何度も言ったけど、もう“別れたい、別れたい”の一点張り。最後の最後、2度目に戻って来たとき“実は子どもがいる。もう2歳”って。浮気したのは3年前、2歳の子どもがいた。妊娠期間含めたらすぐに子どもを作ったってことですよ。ちょっと、どうですか?」
渡邊さんの口調はエキサイトする。離婚が成立して3年間が経っても、到底、納得がいっていないようだ。
「言われて、びっくりしましたよ。えっ!って大声を上げた。そんな状態じゃ、もう、しょうがないじゃないですか。“じゃあ、私たち家族より、そっちの不倫女のほうを選ぶってこと?”って聞いたけど、“そうだね”だって。もういいやって。浮気相手の女は当時20歳ぐらい、今23歳じゃないですか。元旦那は当時、40代後半です」
4年前に浮気が発覚してから、元旦那が戻ってきたのはたった2度。3年前に離婚が成立してから、携帯はつながらなくなって電話の1本すらなくなった。渡邊さんと2人の子どもは、完全に捨てられた。
765
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:56:16
浮気するまでは、まじめな人だった
「浮気するまでは、まじめな普通の人だった。会社のため、社員のため、家族のために仕事していると思っていたのに。不倫して若い女と子どもを作って、二重生活していたなんて。まさかと思いました。当時は現実として理解することに精いっぱいだったし、今も正直信じられない。子どもたちには、まだ本当の理由は伝えていない。“何でパパ帰ってこないの?”って、今でも言う。特に上の子は執着心がすごくて、“パパはどうしたの? パパはどうしたの?”って。それで、またイライラして下の子にあたる」
上の子の異変が始まったのは小学校5年のとき。元旦那が帰ってこなくなった時期と重なる。年の離れた弟へのイジメ、学校での対人トラブルが絶えなくなった。
「上の子は本当にパパっ子だった。元旦那がいたときは怒られるのがこわいから、ブレーキが利いた。いなくなったら、もう好き放題。元旦那はたまにしか帰らなくても、言うこと聞かないと、もう髪の毛ガーッと持って引きずったり。怒る理由は下の子をしつこくイジメるから。嫌がらせばかり。5歳以上離れているのに、自分の機嫌が悪いと本当に徹底的にやる」
上の子は好きだった父親に捨てられた現実を、だんだんと理解した。中学生になって精神的に不安定になる。
「2年前。上の子が中学1年のとき、父親がいなくなったことや、ほかにいろいろ重なって神経性胃炎になり、学校を1週間休んだのがキッカケで、不登校が始まった。学校に行かせたくても、叫ぶし暴れるし、どうにもならなかったです。2学期から行かなくなって、2年生になったら行くって約束したけど、6月くらいにトラブル起こしてまた不登校。だから修学旅行も行ってないし、卒業アルバムにも載ってない」
精神科に行っても、何も好転しなかった。最近1年間、外に一歩も出ないで引きこもる。イライラしっぱなしで家の壁を蹴る、叫び声を上げるなど、状態は悪化の一途となっている。
「暴れても、力は私のほうがまだ強い。ご飯も大して食べないからカラダも小さいし、弱い下の子に当たり散らすだけ。私には歯向かってこない。いや、もう。私は早く自立して出て行ってくれぐらいの気持ち。でも学校すら行けない、外出すらできないのに、自立なんてしようがないですよね。社会に適応できない。普通に自立する妄想すらできない。もう、いろいろあきらめました……。だって、どうにもならないから」
766
:
チバQ
:2017/07/13(木) 19:56:31
「孫の面倒は一生みる」と言ってくれた義父も…
渡邊真由美さん(仮名、40歳)は「働きたくても仕事はない」と言う(写真:編集部)
別に家庭を作った元旦那は消えてしまった。同じ市内に住む資産家の義父も、離婚のとき「孫の面倒は一生みる」と言ってくれたが、上の子の深刻な状況を目の当たりにして近づかなくなった。渡邊さんは窮地に陥った現状に絶望し、これから生きることを半分あきらめてしまっている。
「惨めです。本当に惨め。元旦那とか義父とか見返してやりたいみたいな気持ちがあったから、引っ越しはしなかった。でも、もうダメ。すべてを忘れて、この街から出ようかなって」
朝、下の子を小学校に送り出し、昼近くになると引きこもる上の子がイライラして床をたたく。ドン、ドン、ドドドンという音が天井から聞こえてくると、渡邊さんはうんざりして外に出る。高級車でスーパーへ行き、買い物をして、娘が起き出す14時頃に自宅に戻る。
帰路はいつも足が重い。農地を越えてヨーロピアンな街並みが見えてくると、いつも気分が沈む。玄関を開けて、穴だらけの家に一歩入る。そして、深いため息をつく。
本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
767
:
チバQ
:2017/07/23(日) 18:25:49
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170723-00721413-jspa-life
ユニクロも高くて買えない正社員OL。「実家を出たとたん、生活苦に…」
7/23(日) 8:50配信 女子SPA!
ユニクロも高くて買えない正社員OL。「実家を出たとたん、生活苦に…」
写真はイメージです。
貧困や賃金格差がニュースで報道されていますが、他人事だと感じている人も多いのではないでしょうか?
ところが、何不自由なく暮らしていた人であっても、ちょっとしたきっかけで急に貧困状況に陥(おちい)ることもあるようです。詳しく話を聞いてみました。
「中小企業の一般事務として働き11年。なかなか昇給がなく、いまだに手取り月収15万円という厳しい収入ながらも、実家暮らしのためなんとかやってこれました。
でも、家を出て一人暮らしをしなければならなくなった途端、想像以上に生活が苦しくなってしまって……」と話す、山中沙希さん(仮名・31歳・メーカー/未婚)。
◆母親の熟年再婚きっかけで家を出ることに
家を出るキッカケとなったのは、母親の熟年再婚だったそうです。
「両親は私が高校生のときに離婚したのですが、『妻と娘が二人で暮らしている限りは無償』という条件で、父親名義のマンションにずっと暮らしていたんです。
でも、母が再婚しマンションを出ることになったところ、『まだ値が付くうちにマンションを売りたいので、これを機に沙希もマンションを出てくれ』と言われてしまって。
金銭的に余裕がないので私だけでもマンションに残りたかったのですが、もともとシビアな性格のうえ10年以上ろくに会話をしたこともない父親に甘えることなどできず、仕方のない状況でした」
◆手取り15万円で家賃6万5000円は高すぎた…
山中さんが引っ越し先として選んだ場所は、勤務先まで電車で40分の郊外ターミナル駅。駅から20分ほど歩くアパートなら家賃6万5000円で1DKの部屋に住めるので、都内に住むよりずっとお得だと思ったとか。
「でも、いま考えれば手取り15万円で家賃6万5000円は高すぎですよね。もっと不便で狭くても、家賃4万円程度の部屋にすべきだったんでしょうが、これまで都内の広めのマンションで生活していたのでいきなり感覚を変えられなかったんです」
実家暮らしのときは生活費を3万円入れているだけで、そのほかの固定費はスマホ代1万円くらい。贅沢はできずともオシャレも遊びも不自由を感じることなく楽しめていたそうですが……。
「いまは家賃6万5000円に加え水道光熱費とスマホ代で月に8万円以上は飛んで行ってしまうので、自由に使えるのは7万円弱。しかも、これまでは私が入れた生活費と母のパート代でやりくりしていた食費と日用品代も、全部自分で払うとけっこうかかってしまって。
やれ米だ水だ洗剤だティッシュだと、節約しているつもりでも月に2〜3万円はなくなってしまいます。実家暮らしの頃は母がパート先のスーパーから食材をいろいろもらってきていたので、あれで得しているぶんも大きかったんだなぁと」
◆病気で将来が不安。豆苗を育てておかずに…
そんな山中さんに追い打ちをかけるように、先日甲状腺の病気が発覚。生活に支障が出るほどの病状ではないものの、2週間おきの通院で月5000円〜1万円はかかってしまうとか。
「通院費も痛いですが、『もし悪化して働けなくなってしまったら』と思うと怖くて怖くて。通院費をのぞいても月に3万円程度は自由になるお金がありますが、少しでも貯金に回したいのでもう外食なんかできません。
夜はほぼ自炊で、安いうえに2〜3回は再生できる豆苗にめちゃくちゃ助けられてます。食べた後の根と豆を水に付ければ1週間ぐらいでまた食べ頃に育つので、常時4〜5個は同時に育て、サラダや炒め物、みそ汁と何にでも使っていますね」
また、これまで昼食は月の半分は同僚と1000円程度のランチ、もう半分は500円程度のコンビニご飯で済ませていたそうですが、いまは毎日お弁当だとか。
「中身は豆苗炒めなど夕飯の残り一品に卵焼き、ごましおご飯という毎日同じ質素な内容ですが、『病気になっちゃったから健康のために』というとみんな納得してくれるので助かっています」
768
:
チバQ
:2017/07/23(日) 18:26:08
◆洋服代は郊外型の大型古着屋で購入して節約
そのほか、大幅に節約するようになったのが洋服代。
「以前は月に1〜2万円は洋服代にあてていましたが、いまは無理。プチプラと言われるユニクロすら手が出ないので、家の近くの古着屋で今年流行りの色やデザインの服を血まなこで探し買っています。
郊外って、“ビンテージっぽい古着”ではないフツーの今風の服が一枚数百円で買える大型の古着屋があるんですよ。この点は郊外に引っ越してよかったですね」
◆もっと若いうちにスキルアップ転職しておけばと後悔
ただ、このように頑張っても貯金できるのは月にせいぜい1〜2万円。もっと安い家に引っ越したくても先立つものがなく、不安で眠れない夜も少なくないとか。
「派遣のほうが月々の収入はよかったりするので転職も考えましたが、病気になってしまったし、やっぱり給料が安くても正社員の立場を手放すのは怖い。実家暮らしでなんとかなっていたからって、どうしてもっと若いうちにスキルアップ転職をしておかなかったんだろう……と後悔ばかりしています。
しかも、病気の症状はまだ軽いのに、飲み会も『お酒は病気によくないから』と断り、お金がなくてネイルができないのも『病気で爪が弱ってるから』と言い訳し、何でもかんでも病気のせいにしているうちに鬱々としてきてしまって……。明るい未来を思い描けません」
たまに母親を頼りたくなるけれど、再婚相手との生活を邪魔するのが申し訳なく頼れないという山中さん。なかなか厳しい状況のようです。
―お金がない…女の生活苦シリーズ vol.5―
<TEXT/丸本彩乃>
女子SPA!
769
:
チバQ
:2017/07/23(日) 18:26:52
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170722-01366308-sspa-soci
東京に流れ着いた貧困女子のリアル ネットで出会った男と駆け落ちした末に…
7/22(土) 8:50配信 週刊SPA!
東京に流れ着いた貧困女子のリアル ネットで出会った男と駆け落ちした末に…
※写真はイメージです
「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」という言葉が登場したのが約10年前のこと。その頃、少年少女だった今の「若者」たちは貧困という状況をより身近なものとして育った世代であり、そしてその問題は今、彼ら自身にも降りかかっている。「失われた20年」のなかで生まれ育った世代の苦悩を探った。
◆ネットで出会った男性と駆け落ちした末に……
樋口美里さん(仮名・28歳)は昼は事務職、夜はスナック、土日はキャバクラという3つの仕事を掛け持ちしている。そんな彼女が東京にたどり着くまでの道は、まさに波瀾万丈だった。
「親とウマが合わず、二十歳のときに東北の実家を出て、ネットで知り合った彼と岡山県で暮らし始めました。でも彼は定職に就かず、私だけがバイトで働き詰めになって……その結果、過労で卵巣が破裂して鬱病も併発。長期入院することになったんです」
その後、彼と別れた樋口さんは新たな男性に出会い、岡山県から遠く離れた神奈川県で再び同棲を開始。だが結婚も秒読みかと思われた矢先に破局してしまい、着いた先が現在暮らす女性限定シェアハウスだった。家賃は光熱費を含め4万50000円。10代から30代まで10人の女性が暮らしているが、住人同士の仲が悪く「四畳半の個室に寝に帰るだけの場所」だという。
「23時半までスナックで働いて帰るのは深夜なので、住民との会話もないですね。ほぼ毎日スナックの乾き物とビールを夕飯代わりにして食費も浮かせています。岡山時代の借金がまだ残っているし、一人暮らしの資金を貯めたいから。明日は土曜日なので、午後からキャバクラに出勤。昼職だけだと月15万円しか稼げないので」
これだけ働いても月収が20万円を少し超えるくらいという厳しい生活だが「初めて自由に使えるお金ができたことがうれしい」と樋口さんは話す。取材当日に着てきたワンピースは、水商売の初給料で買ったものだという。
「同世代のコがオシャレを楽しんでいる20代前半に、自分は地獄みたいな生活だった。男は裏切るけど、お金は裏切らないです」
苦しい生活ながら彼女はどこかふっきれた顔をしていた。
※写真はイメージです
取材・文/SPA!若者の貧困問題取材班
日刊SPA!
770
:
名無しさん
:2017/07/23(日) 18:48:02
当事者の自己責任で片付く話ばかりですね。
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