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邪気眼少女の攻略法。
422
:
心愛
:2013/06/19(水) 20:54:02 HOST:proxyag037.docomo.ne.jp
「えー、ではこのへんで、抜き打ちの小テストを行います。全員教科書類を机にしまっ―――」
―――教室に衝撃走る。
「春山、行ってこい」
「なんか俺の扱い犬っぽくね?」
「それはそうかもな。人権ないから」
「え、俺には日本国憲法適用されないの?」
それでもこちらは慣れたもので、嬉しそうに軽口を叩く春山が勢い良く挙手。
「はいはいはい先生質問!」
「春山君? これからテストですからまた後に」
「どうしても今知りたいんです! 八十三ページの自由記述の問題なんですけどー」
渋る先生を強引に押し切り、時間稼ぎを開始する。
質問に対する回答が終わっても、息をつく間もなくすぐさまそれっぽい口上をぺらぺらと並べ立てて、また違う問題の解説に移らせていた。
……あいつ案外頭いいよな。
でも、授業終了まであと30分。
それより春山のネタが底を尽きる方が早いだろう。
春山GJ、と親指を立て、俺たちは早急な対策を考えるべくアイコンタクト会議を行う。
誰か他にこの状況を打開してくれる人は、いや、それは無理だとしてもせめて、新しい質問ができるくらい授業に真面目に取り組んでいて春山の助けになるような人は―――
「美羽!」
「黙れ。ぼくは今、天狼(シリウス)を召喚する魔法陣を描くのに忙しい」
「ダメだ使えねえ!」
熱心にノートになんか書いてると思ったら!
「じゃあ、ゆ―――」
「………」
こういうときに役に立ちそうな優等生たる柚木園は、本格的に集中モードに移行していた。
参考書に没頭してしまっていて、ちょっとやそっとの声ではとても気づかせることができそうにない。
『(………やるか?)』
こうなったら仕方ない、なんとしてでも絞り出して、一人ずつ質問責めにするしか―――
「うん? ヒナ、どうしたの?」
不思議そうに首を傾げている姫宮が目に入る。
「あ、そういえばまだテスト始まらないねー」
「姫宮、先生に質問できる!?」
がしっと肩を掴みそうな勢いで迫れば、紅茶色の瞳をぱちくりさせて。
「え、質問? 今?」
「そう!」
「質問、質問……今日の朝ごはんは? とか聞けばいいんだよね?」
「いいわけあるか! 飯から離れろ!」
まだ現実と夢を混同してるの!?
「もっとちゃんとした、時間稼げるようなやつだよ!」
趣旨を理解しているのかいないのか、姫宮は「分かった!」と満面の笑顔を見せ、大きく手を挙げた。
……心配だ。物凄く心配だ。
「えー、春山くん、もういいですか? では、姫宮」
「先生の、1日のスケジュールを教えてください!」
『天然――――っっっ!』
確かに回答に想定される時間は長くなったよ! でもそういう問題じゃない!
ガックリする俺たちを見て、姫宮は「え? え?」としきりに首を捻っていた。
くっ、姫宮に任せたのが失敗だった! バカな質問をするなって怒られる可能性も―――
「私の平日の過ごし方ですか? そうですねぇ」
『…………え?』
先生は白いチョークで黒板にぐるりと円を書き、それに起床時刻やら通勤時刻やらを付け足し始めた。
……………マジで?
「あ! 僕と夕ご飯の時間一緒だ!」
天然と天然が絡むとこういうことになるのか……。
授業終了のチャイムまで残り五分。
現代社会が天然ばかりになったら、世界は平和になるかもしれない、と思った。
423
:
たっくん
:2013/06/20(木) 12:02:25 HOST:zaq31fa4b08.zaq.ne.jp
お前らのくだらんスレなんざ見る気にならんから
424
:
たっくん
:2013/06/20(木) 12:09:35 HOST:zaq31fa4b08.zaq.ne.jp
アホピーチと豚ピーチスレ・・
ご利用下さい。
425
:
ピーチ
:2013/06/22(土) 09:49:31 HOST:em114-51-154-201.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
まさかの人権なし!? え、ちょっと待ってそれで喜ぶ春山君もどうかと思いますけど!
それと夕紀ちゃんの天然さが可愛い! あと先生の天然は笑える!
……毎回毎回思うけど、ここにゃんってやっぱ天才だよね…←
426
:
心愛
:2013/06/24(月) 16:09:55 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
>>ピーチ
それが春山だから仕方ないw
夕紀の天然は書いてて割と楽しいです←
現代社会の先生のボケはここあの実体験!
男子が授業を妨害するためにスケジュール聞いたら、本気で黒板に書き出したというw
あの人の授業は楽だったな…(遠い目)
凡才以下ですが何か?
427
:
ピーチ
:2013/06/25(火) 06:52:41 HOST:em114-51-24-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
彩ちゃんと居たときの印象が消えつつあるよ!?
天然は誰がどう書いても楽しいよねーw
まさかの実体験来た! え、それってどうなの!?(おい
うちの学校の社会担当の先生にそれ言おうものなら授業長引くよきっと…
じゅーぶんすぎるくらてんさいです!
428
:
たっくん
:2013/06/25(火) 12:13:16 HOST:zaq31fa50e8.zaq.ne.jp
[ピーチさんがお亡くなりになられたら]
ピーチさんが死んであの世へ旅立ちました。
本人はおそらく自分が天国へ行けない・・。きっと地獄だろう・・?と思ってらっしゃる。
しかし!しかしですね・・どうか御安心下さい。
もしピーチさんが地獄へ落とされそうになったら
私が閻魔大王様に頼んで差し上げましょう。
『閻魔様・・お願いします!どうかピーチさんを許してやって下さい。
ああ見えても根はいい奴なんです。お願いします!天国へ行かせてやって下さい』と
そうなる日を祈っております。
429
:
心愛
:2013/06/27(木) 21:16:46 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ
そう思わせるのも春山の実力さ…!(多分)
次から長めの最終話になります(`・ω・´)
急にちょっとだけシリアス風味入るけどごめんね!
あとテストなんでまた更新率落ちると思います←
430
:
心愛
:2013/06/27(木) 21:17:09 HOST:proxyag082.docomo.ne.jp
『かくして、少年と少女は微笑みを交わす』
.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚
教室に入ると、クラスメイトは一瞬だけこちらを見てくるも、すぐに何もなかったかのように視線を逸らした。
自分の椅子に座れば、遠くから悪意のある囁きがいくつも聞こえてきた。
―――“僕”は、軽いいじめに遭っていた。
でも、いじめといっても上履きや道具箱を隠されたりする程度の軽いもので、どちらかといえばシカトされている、の方が近かったのかもしれない。
クラスメイトたちにとって僕は意味のないものだったていう、ただそれだけで。
でも、クラスの中心となっている男女のグループと自分しかいないときだけは、面と向かって酷い言葉を投げつけられることもあった。
近寄るな。ウザい。学校になんか来なければいいのに。
幼さゆえの残酷さ。
多数で一人を叩くことで優越感に浸るという、一種の遊びを覚えたばかりの彼らは言い返されないのをいいことにして、僕を玩具同然に扱った。
彼らの表情に本物の嫌悪感はなく、全員がにやにやと楽しそうな笑みを浮かべているのが、その証拠だった。
授業が終わり、クラスメイトたちが帰り支度を始める。
重苦しいため息をつき、僕はランドセルを背負った。
また絡まれる前に一秒でも早く教室を出てしまいたくて、爪先を出口へと向けた―――そのとき、だった。
『それでさぁ―――……うわっ』
誰かが遊び半分に振り回していたらしい箒(ほうき)が飛んできて、一瞬、激しい衝撃に目の前が赤く染まった。
とっさに瞼を閉じた顔からは眼鏡が滑り落ち、がしゃん、と床で音を立てる。
『あ……』
どうやらわざとではなかったらしい。
少しぼやけた視界で探れば、賑やかな例のグループの中でも一際目立つ、人気者の少年だった。
さすがにまずいと思ったのだろう。いつも僕を馬鹿にして笑っているそいつが、ばつの悪そうな顔をしている。
ごめん、の形に唇が動きかけるも、直前で耐えるようにぐっと引き結ぶ。
それはそうだ、こんなところで嫌われている僕に謝ったりしたら、自分の面子がなくなってしまう。
『……っ』
そう理解した瞬間、言葉にしようもない悲しみ、苦しさ、孤独感がガラスの破片のように、胸を突き刺した。
もう、限界だった。
壊れた眼鏡をひっつかみ、無理やりポケットにねじ込む。何も言わずにクラスメイトたちに背を向け、その場を逃げ出した。
チャイムが鳴るなか学校を飛び出し、ひたすら走る。
やがて行き着いたのは、普段から良く来る古びた公園。
ふらふらと引き寄せられるように中に入り、ブランコに腰掛けた。鎖を握る。
差し込む光、鮮やかな夕焼けの色に染まった遊具。静かで美しい、僕にとっての安らぎの場所。
そこで、僕が出会ったのは―――
.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚
「っ―――!」
自室のベッドの上で、俺はがばっと跳ね起きた。
しばらく状況を整理できずに呆然としてから、くしゃりと前髪を書き上げる。
「夢、か……」
背中にぐっしょりと汗をかいていて、不快な感覚に思わず顔をしかめ―――ギィ、という小さな音が聞こえてそちらを見やった。
ドアが開き、ひょこっ、と色素の薄い猫っ毛が覗く。
「あれ、お兄ちゃん起きてたの? おはよ!」
「……ノックくらいしろ」
俺がまだ寝ていたら起こそうと思ったらしい。
勝手に俺の部屋に侵入してきた彩は「ごめんごめん」と全く反省していない声色で謝ったが、俺の顔を見た途端におふざけの表情を消した。
「……どしたの?」
「あー、いや……ちょっと嫌な夢見ただけ」
「へー。せっかくのクリスマスの朝に変な夢見るとか、お兄ちゃんもついてないねぇ」
へらりとしたいつもの笑みを浮かべ。
「じゃあそんなお兄ちゃんのためにー、この彩ちゃんが特別にカルペスの原液を持ってきてあげよう! 疲れたときには甘いものだからね、ちゃんと全部飲むんだぞっ?」
「原液である意味はどこに!?」
大げさに爆笑しながら階下へ向かう速めの足音。
少し遅れて、俺はふっと笑う。
「……分かりやすい気遣いしてんじゃねぇよ、バカ」
431
:
ピーチ
:2013/06/28(金) 06:41:31 HOST:em114-51-13-90.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
春山君どっか違った実力の持ち主だよね!?←
やっぱ彩ちゃん優しいよね! 彩ちゃんみたいな妹欲しい!
てかクラスメイトありえねーわ普通謝るだろ好き嫌いのまえに((
432
:
心愛
:2013/07/04(木) 07:56:47 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp
>>ピーチ
春山だから仕方ないw
彩みたいな妹いても大変だと思うよ…?
次の次から、シリアスモードスタートかな!
433
:
心愛
:2013/07/04(木) 07:57:09 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
―――忘れかけていた、いや、無意識のうちに忘れようと封じ込めていた記憶。
別に大したことじゃない。こんな体験よりもっと、ずっと酷い目に遭っている人だってたくさんいるはずだ。
ただ、子供の鋭敏な感性を以てすれば、どんな些細なことでも小さな傷にはなってしまうわけで。
何だかんだあって彩と朝食を摂りながら、俺は鋭い妹に気取られない程度にぼんやりと考えていた。
でもあの一件がなかったら、美羽―――“ミウ”と出逢えなかったんだから、あいつらには感謝すべきなのかもしれない。
先に食器を片付け、さっさと身支度を済ませてコートを羽織る。
「じゃ、俺これから出掛けるから」
「あ、美羽さんとデートなんでしょ? お兄ちゃんのくせにやるぅー」
「このメールを見てもそう言えるか?」
「ごめんなさい」
昨日の夜届いた呼び出しメールを見せると彩が素直に謝罪した。……内容は想像にお任せする。
☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆゜:*:゜☆
「この世界に生を受けて数万年……。ついに、この刻が訪れた……」
「あー、遅いってことか。一応時間前なんだけどね」
人工的な光を浴びて、サラサラ零れる艶やかな黒髪。
ふんわり柔らかそうなカシミヤのカーディガン、適度な長さのスカートに膝上まであるロングブーツを合わせ、ポンポンつきの白いマフラーを巻いている。
清楚さと幼さ、甘さとが絶妙に入り混じった文句なしの美少女は、先ほどから周囲の視線を集めまくっていた。二つの意味で。
「ふん、別に責めている訳ではない。眷属にも事情があることは承知している。だが今宵こそ、忌まわしき聖夜の光を穢す血誓の宴を―――」
「クリスマスにわざわざ呼び出して悪いな、ってこと?」
そろそろ俺も翻訳業が板についてきたよね。
あとまだ夜じゃないから。周りめっちゃ明るいから。
横を通り過ぎるカップルの方々が皆、『あぁ、電波か……』という可哀想なものを見る目をこちらに向けている。
そりゃあ俺だって、俺を見つけた途端に芝居がかった仕草で手を広げて大仰な台詞で語り出したから何かと思ったけども。
「クリスマスとかいっても基本家にいるから、俺には関係ないようなものだし。……で? 用ってなに」
「む」
呼びつけておいて、用件を告げていなかったことを思い出したらしい。
少しだけ気まずそうに俯く美羽。
「……どうせヒナは暇を持て余しているだろうから、毎年恒例の予定に付き合ってもらおうかと思っただけだ」
「予定? 美羽の?」
美羽さん、ここで本日何度目かのどや顔。
「ああ。なにしろぼくには、リア充共が目の前を通り過ぎるたびに『……ちっ』と舌打ちしつつ横目でガンを飛ばすという重要な任務があるからな」
「どんだけ悲しいクリスマスだよ!」
あまりの器の小ささに涙が出た。
こいつ、本当に俺の初恋の人だよね?
「名づけてリア充狩り、という」
「物騒なネーミングだけど全然狩れてねぇしむしろ枯れてるしってか美羽にしては安直なつけ方だな!」
だからこそ字面の恐ろしさが際立つってものだ。やってることとてつもなくしょぼいのに犯罪臭がするよ。
……ほんと、どんだけ暇なんだお前―――って言いたいところだけど。
これは美羽なりの、俺を誘う下手な口実だったり……とか、自惚れてもいいのかな。
いや別に変な意味じゃなくて、単なる遊び相手としてワガママを言って気軽に連れ回すことができるくらいには、俺のことを認めてくれてるんじゃないか、なんて考えちゃうんだけど。
「……とにかく、リア充狩りはなしな。今日はどこでも付き合うから」
「……」
「放っといたらさみしがりやの誰かさんが可哀想だし?」
大人しくなっていた美羽がそれを聞くなり髪を逆立てて激昂。
「だっ誰がさみしがりやだ、誰が!」
「一言も美羽とは言ってないけどね」
「……う、ぐ」
434
:
ピーチ
:2013/07/05(金) 03:10:45 HOST:em1-114-73-103.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
弱みさえ握られなきゃ可愛い妹じゃないかー!
メール……何か美羽ちゃんらしいのはふつうに創造がつくw
435
:
心愛
:2013/07/25(木) 16:29:53 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ
弱み握られたら最後だけどねw
ソラが無事に完結したんで、こっちに集中していきますよー!
多分次の次からシリアス展開←
436
:
心愛
:2013/07/25(木) 16:30:23 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp
それなりに煌びやかなイルミネーションの中を二人で歩く。
男女でクリスマス、といえばなんか甘美な響きだけれどもそんな雰囲気もへったくれもなく、まあつまり、いつもの俺たちだ。
邪気眼要素が絡まなければ基本言葉少なな美羽に、クリスマスといえば、と俺が話題を投げかける。
「サンタさん捕まえようとしたんだっけ」
「……よく覚えているな」
そりゃ覚えてるよ。
そんな衝撃的な話を忘れるわけがないし、何より、初めて美羽がちょっとでも心を開いて、俺に話してくれたことだし。
「そもそもなんでそんなことを? 好奇心旺盛だったにしても凄いよな」
「別に、大したことじゃない。プレゼントに違和感を感じるようになって、こうなったら自分でサンタクロースの正体を暴いてやろうと思ったんだ。……美空に聞いてもはぐらかして教えてくれなかったしな」
確かに、美空先輩ならサンタさんは親なのかと訊かれても、妹の夢を壊さないように上手く誤魔化してしまいそうだ。
「プレゼントって?」
「ドールハウスやアクセサリー、それに玩具のティーセットとか」
「……普通じゃね?」
いや、もちろん女の子の好みは知らないけどさ。
昔の彩だったら喜びそうなものばっかりなんだけどな。
「……ぼくが毎年、探検セットや双眼鏡、雪女などばかりを頼んでいたにもかかわらずだぞ」
「今じゃ考えられない健全ぶり! あと雪女ってなに!」
小学生男子にも勝るやんちゃぶり、っていうか雪女の存在が気になりすぎる。本当にもらったらどうするつもりだったんだよ。
そんなある意味純粋無垢な女の子が、今はこの惨状か……。
「う、うるさい! ……あの黒歴史と言うべき子供時代を思い返すと、ぼくも頭が痛いが」
「今も黒歴史絶賛更新中だと思うけど」
「何か言ったか、ヒナ」
「何でもないです」
ぎろりと睨まれ、あんまり怖くないけど一応口を噤む。
「あー、まあ確かに、頼んでたものと違って怪しみ始めるってのはあるよな。でも女の子らしい趣味のものあげたかったんだろ、良い親御さんじゃん」
「それもそうなんだが、」
言い、美羽が遠い目をする。
「……ぼくが調査を決行したその前の年のプレゼントは、ゴールドのクレジットカードだったんだ」
「……わーお」
そりゃあ美羽も怪しむわ。どんだけ夢のないチョイスだよサンタさん……ってツッコむ箇所はそこじゃないな。
結野家の金銭感覚はどうなってるんだ、おい。
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
その後は、美羽に寒い外を歩かせるのもどうかと思ったので、デパートなんかを中心に適当にぶらついた。
さも当たり前のように猫カフェに向かおうとする美羽を「また今度な?」と宥めたり、何か買うでもなく雑談しながら駅前の店内を歩いたり。
とりあえず出ようかと出口に向かったそのとき、俺のスマホに彩から電話がかかってきた。
「では、ぼくは向こうの雑貨店に行っている」
別に大した話じゃないだろうから気を遣ってくれる必要はないと言えばないんだけど、せっかくの申し出だ。
「ごめん」
有り難く乗らせてもらうことにして、外に出てから一旦美羽と別れる。
で、彩の話の内容は、やっぱり全然大したことなかった。
現在に至るまでの状況やら今いる場所やらを根掘り葉掘り訊かれ、
『はあ!? なにそれ完全にデートじゃん! お兄ちゃんなんか買ってあげなよ、ポイントアップのチャンスだよ!』とかなんとか。
怖いくらいいつも通りの妹をあしらいつつ、さっさと通話を切った。
液晶の時計を見て、説明している間に結構時間がたってしまっていたことに愕然とする。どんだけ丁寧に話してたの俺。
「っと、美羽は……」
指定された店に向かおうとして、その途中に小さな人だかりができていることに気づいた。
数人の、柄の悪そうな男の中に美羽の姿を見つけ、サッと血の気が引く。
「な……」
美羽は、そのうちの一人と話しているようだった。
たちの悪いナンパか、不良に絡まれているのかと思った……けど、どうもそんな感じじゃない。
嫌な予感がする。
437
:
たっくん
:2013/07/25(木) 18:48:43 HOST:zaq31fa59cb.zaq.ne.jp
アホピーチ
438
:
たっくん
:2013/07/25(木) 18:49:01 HOST:zaq31fa59cb.zaq.ne.jp
ピーチは頭が悪いです
439
:
ピーチ
:2013/07/25(木) 19:00:18 HOST:em1-114-139-120.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ヒナさん美羽ちゃん久しぶりぃー!←
サンタさんからのプレゼントにクレジットカードはないよね!
……さも当たり前なのね、ネコカフェ
何か美羽ちゃんが話してる人が何となくだけど想像できちゃうのはなぜ!?
440
:
心愛
:2013/07/26(金) 16:47:34 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ
え、想像できちゃう!?
さすがピーチ!
シリアスシーン一回分で終わらせるはずだったのに長くなりそう(つд`)
441
:
心愛
:2013/07/26(金) 16:47:59 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
「―――そっか、南高か。結野、頭良かったもんな」
「美羽!」
はっきりと発音し、さりげなく男たち数人を押しのけ割って入る。
「ごめん、待たせて」
言いながら、あれ? と思った。
大きく着崩したシャツやがっしりした体格からもうちょっと大人かと思ってたけど、顔つきを見るとまだ若い。もしかしたら、全員俺と同じくらいかもしれない。
「ひ、ヒナ……」
それより俺が驚いたのは、美羽と向き合う位置に立って、俺を見て目を丸くしている男だった。
清潔感があって爽やかで、いかにも感じの良い好青年といった風貌。
すらりと背が高く、なかなかの二枚目だ。
美形ではないけど、造作を例えるなら昴さんに最も近い。
この集団の中にこんなイケメンがいたとは、今になるまで全然気づかなかった。
「……知り合い?」
そっと尋ねれば、美羽はこくりと頷いた。
顔色が悪く、声も硬い。
「……中学のときの同級生だ」
人見知りで他人との接触を嫌うところがあるけど、美羽がここまで露骨に苦手意識を出すのを見るのは初めてだ。
やはり、彼女にとって彼らとの再会は歓迎すべきものではないらしい。
なんとかしてここから美羽を連れ出そうと愛想笑いを浮かべつつタイミングを窺っていると、件の男が口を開いた。
「結野、その人彼氏?」
俺をじっくり眺めてから、笑う。
こんな日に二人で出掛けてて、しかも自然に名前呼びしてたら誤解されるのも仕方ない。
けどこいつは今、『結野美羽が連れている男』を見て笑ったんだ。
少し遅れて、徐々に不快感が込み上げてくる。
「……違うけど」
「ふーん?」
興味を失ったように、そいつはすぐに俺から視線を外す。
そして美羽に向き直ると、むかつくくらい爽やかに、にこりと笑った。
「じゃあさ、やっぱり俺と付き合わない? 結野」
「ふざけるな」
面白そうににやにやする周りの男たちや、衝撃的な発言に唖然とする俺と対照的に、間髪入れずそれを一蹴する美羽。
その瞳に曇りはなく、文字通り、こいつがふざけてこんなことを言っていると解釈しているようだった。
「つまらない冗談はよせ。……そんなにぼくが嫌いか、愛川(あいかわ)」
顔を上げ、相手をきつく睨む。
「まさか、本気だよ。今は本気で、付き合ってもいいかなーって思ってる」
愛川とか言うらしい男は、にこやかにそんなことを言ってのけた。
「だって、結野すっごい変わったし。服も普通に可愛いし、一瞬結野先輩かと思った」
「だよなー」と男たちが頷き合う。
当初の毒々しい雰囲気が少し薄れ、美羽が大分親しみやすくなったことを言ってるんだろうけど。
どうも、その言い方が引っかかる。
「やっぱり中身は一緒だけど、そのくらいなら目瞑れるしね」
「……ぼくの容姿が気に入ったのなら、美空にしたらどうだ」
じり、と美羽が一歩下がった。
見せかけの怒りより、内心の怯えが色濃く出る動作。
弱った獲物を追い詰め、傷口を抉り取るように。
残酷な笑みを口元にはりつけ、愛川は決定的な一言を投下した。
「いいじゃん。だってさ、俺のこと好きだったんでしょ?」
……え?
彼の言葉がまったく理解できず、思考が一旦ふつりと途切れた。
「―――――!」
カッと白い頬が熱に染まる。
屈辱か、羞恥か。
スカートの横で握りしめた拳を震わせ、
「……違う」
「嘘。結野、すげえ分かりやすかったもん。みんなだって知ってるよな?」
「違う!」
痛ましい悲鳴。
愛川は一瞬機械のような無表情になるも、すぐに笑顔を取り戻した。
「……あー。もしかしてさ、まだあのこと気にしてんの? 許してよ、わざとじゃなかったんだって」
「あ……あのことって、何すか」
見ていられなくなって口を挟んだ。
愛川はやっと俺の方を見ると、わざとらしく、困ったように苦笑する。
「うーん……でも、結野を傷つけるかもしれないから」
……何をいけしゃあしゃあと。
けれど美羽は実際に、これから告げられる真実に心底恐怖しているように黙り込み、青ざめていた。
442
:
ピーチ
:2013/07/26(金) 22:41:51 HOST:em114-51-65-67.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
何となくだったけどいやーな予感してた……まさか当たるとは…←
つか新キャラさんに悪いけど愛川くんムカつく!
美羽ちゃん傷付ける気ならさっさとお家帰りなさ((
443
:
心愛
:2013/07/27(土) 14:18:48 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>ピーチ
当たっちゃったw
うん、愛川は思いっきり嫌ってくれていいよ! この時点ではそういう役割ですから!(・∀・)
ただ愛川の心情も事件の内容も分かりにくいと思うんで、後から救済措置とりますw
444
:
心愛
:2013/07/27(土) 14:19:06 HOST:proxy10020.docomo.ne.jp
「―――おかしい、って言ったんだよ」
……なん、だって?
「中学になってもこんな口調で、自分の作ったキャラに酔ってて。おかしいじゃん、どう考えても。だから、教えてあげたんだよ」
「……」
「さすがにみんなの前で言っちゃったのは、悪いと思ってるけどさ」
笑みを絶やさない愛川の最後の台詞に、男たちが一斉に反応した。
「あれはカワイソーだったよな」
「『俺のことホントに好きなら、そういうの全部やめなよ。そしたら付き合ってやる』……だっけ?」
「ちょ、誰だよそれ。そこまで酷くないって」
「でも大して変わんねーだろ」
「え、マジで? そんなこと言ってたんかお前」
「そーそ、それもみんな揃った教室で。やばくね?」
「やべーわ。愛川マジやべーわ」
「あんまり言うと帰るぞ。今日の主役いなくなってもいいわけ?」
「ふざけんな、お前いなかったら女釣れねーだろ!」
げらげらと笑いあう彼ら。
俺は言葉を失った。
まさか美羽が、そんな目に遭っていたなんて。
俺が体験したものの比ではない。
次いで、心無い言葉を放った男が美羽本人を目の前にしても笑っていられるその無神経さに、ふつふつと怒りが沸いてくる。
「でも、俺は本当のことを言っただけだしね。世の中そんなに甘くないよ。ずっとソレやってたら、こんな風に損することくらい、結野だって分かってるだろ?」
「……」
悔しげに俯く美羽に追い討ちをかけるように、
「……へえ。やっぱり、そんなにショックだったんだ、あれ」
「……黙れ」
「登校拒否になっちゃうくらい?」
「黙れと言っている!」
鋭く相手を睨みつけ、声を張る美羽。
否定することができない自分の弱さに、焼けるような悔しさを、嫌悪を、感じている。
肉に食い込むような激痛が、俺の胸にも突き刺さってくる。
―――ああ、そうか。
すとん、と何かが胸に落ちる。
美羽は本当に、こいつのことが好きだったんだろう。
だから、こんなに傷ついた顔をしているのだろう。
きっかけは分からないけど、確かに見た目は格好良いし、クラスの中心にいて注目を集めるリーダーみたいなタイプだ。
何かの弾みで好感を持ってしまっても仕方ないだろう。
それに対して、憤りはしない。
けれど、何より問題なのは。
「……正直、顔ならタイプなんだよね」
愛川が追撃を放つ。
「もう、すぐにやめろとは言わない。少しずつ、分かり合っていけばいいと思うんだ―――って話。……あぁ、俺のことなんてもう好きじゃないか」
お前は何様なんだ。
どうして、そうやって笑っていられるんだよ。
―――美羽は、好きになった奴に、恋をした奴に、裏切られた。
自分の好きなものを、自分そのものを貶され、詰られた。
ずたぼろに傷つけられて、この美羽が、学校に行けなくなるくらい思い詰めて。
「……ははっ、何その顔。結局、偉そうなの口だけじゃん。あのときだって尻尾巻いて逃げたしさぁ」
―――『美羽ちゃんはまた、自分が傷つくことになる道に進もうとしてる』
美空先輩が、喫茶店で俺に言った言葉。
今なら、その意味が分かる。
美羽が愛川から酷い仕打ちを受けたのは、美羽が中二病だったから。
美空先輩は美羽の身に起こったことを勿論知っていて、もう二度とこんな経験をさせないように、妹を正しい方に導こうとしたんだ。
『あたしは美羽ちゃんに、誰かを好きになれるようになってもらいたいの!』
『このままじゃ、美羽ちゃんは誰も―――圭くんのことだって、好きになれないんだよ!?』
恋に臆病になってしまった美羽は、人との関わり合い方が分からない、と叫んだ。
『特定の誰かに必要以上に入れ込んで、そいつが取り返しがつかないくらい、大きな存在になってしまってから……いつか嫌われて、置いて行かれるのが怖いんだよ……っ』
憎んでいない、憎めない。
間違っているのは自分だから。
どうしようもなく、暴力的なまでの“正”を、突きつけられて。
445
:
ピーチ
:2013/07/27(土) 16:51:36 HOST:em114-51-141-181.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
まさかの当たるし! これだけは当たって欲しくなかったし!
よしヒナさん今すぐ愛川くんをぶん殴ろう!←
いやなに、美羽ちゃんを傷付けるんだから問題ないさ!((大あり
446
:
心愛
:2013/07/27(土) 18:22:02 HOST:proxyag036.docomo.ne.jp
>>ピーチ
…ここあはピーチが恐ろしくて仕方ないよ…!(ガクブル
さあ期待に答えろ主人公!
447
:
心愛
:2013/07/27(土) 18:23:12 HOST:proxyag035.docomo.ne.jp
『ひとりにしないで……っ』
『きらわれて、ひとりになるのは、……やだ、よ……!』
旅館で見せた、弱り切った素顔。
俺に嫌われ、置き去りにされることに対して怯えて、震えていた。
「―――……何度も言わせるな」
はっとして見れば、美羽が顔を上げていた。
躊躇から、決意へ。
力強い視線で、愛川をまっすぐに見据える。
「以前はどうであれ、ぼくは、君のことなど何とも思っていない」
足を踏ん張って、気丈に言い放つ。
誇り高い吸血姫がこれ以上情けない姿を晒してたまるかと、上を向く。
……そう。
あんな絶望を味わったのに、なのに美羽は、またゴスロリを着て、カラコンをつけて、きっと中学のときよりずっと痛々しくカッコつけて、入学式に臨んだ。
美空先輩の心配をはねのけて、時間をかけてだろうけど、それでも自分の足で、立ち上がったんだ。
“理想”への意志を、想いを、さらに強く固め直して。
『君は―――強いよ』
……なんだよそれ。
お前こそ、どんだけ、……どんだけ強いんだよ。
不器用な、ただの弱い女の子のはずなのに。
なんでこんなに、バカみたいにまっすぐなんだよ。
「正直に言って不愉快だ。ぼくの事情に口出しをしないでもらおうか」
不愉快だ、だって。
真似をして耳障りな笑い声を立てる彼らに一瞥をくれ、美羽が俺を見上げる。
「行こう、ヒナ。時間の無駄だ」
冷たい声は、必死に震えを隠してる。
……分かるよ。この数ヶ月間、ずっと傍にいたんだから。
俺の手を取り、引っ張る。
ひゅう、と男たちが口笛を吹くのを、はっきりと無視して長い髪を翻す。
……ぞっとするほど美しくて、そして強い。
でも本当は弱くて脆い、ガラス細工のような女の子。
「……ごめん」
俺は。
そんな美羽が、好きだから。
「ごめん、美羽」
小さな手をそっと振り解いた。
安心させるように、精一杯の笑顔を作る。
「ほんとごめん。先、帰っててよ。用事できたから」
「……ヒナ?」
黒い瞳に広がる困惑。
主を困らせるとか眷属失格だよなぁ、とかぼんやりと思った。
「俺、……どうしようもないバカだからさ」
マジで、美羽よりずっとバカだわ俺。器小さい、バカ。
だから、
だから、ちょっと……我慢、できないかも。
美羽をその場に残し、無言で一歩を踏み出す。
何かを察した男たちが笑うのをやめ、不穏に目をギラつかせる。
美羽が小さく息を呑む音が聞こえた気がした、その瞬間。
通行人の悲鳴が上がる。
派手な衝突音がし、床に叩きつけられた愛川が、顔を押さえて呻いた。
―――拳が、痛い。
「……何も知らないくせに」
本当の美羽を、見抜けなかったくせに。
美羽の心を追い詰めて、傷つけて、弄んだくせに。
お前が。
お前、ごときが。
「お前が美羽を―――語ってんじゃねーよ」
448
:
たっくん
:2013/07/27(土) 20:13:14 HOST:zaq31fa4ab4.zaq.ne.jp
またクソスレか・・?
いい加減にしろよ
449
:
ピーチ
:2013/07/27(土) 21:40:44 HOST:em49-252-182-76.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
恐ろしくないよただの平凡以下の人間だよっ!?←
ヒナさん強い! 美羽ちゃんのためならさらに強くなれるよね!
450
:
心愛
:2013/07/28(日) 09:25:58 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ
怒ったガラ悪い人たちからのフルボッコルートまっしぐらですけどね!
ヒロインのために無力な主人公が立ち上がるっていいよねw
ヒナの一番の見せ場かもしれなかった←
451
:
ピーチ
:2013/07/29(月) 13:43:47 HOST:em1-115-85-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
フルボッコルートでも何でも美羽ちゃんのためにやり抜きそうだよね!
ヒナさん無力じゃないよ! 大丈夫だよー!?
うちの彩織に比べればなんてことないさ!←
452
:
心愛
:2013/07/29(月) 17:46:33 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
……あーあ。
不思議と、頭は笑えるくらい冷静だった。
喧嘩どころか、今まで本気で怒ったことすらない俺が、まさか人を殴る日が来るとは。
周りを取り囲むのは血気盛んそうな憤怒の形相の男たち。
で、対する俺は腕力も体力も中の上。こりゃ病院送り決定だな。
ああ、カッコ悪い。
「……っにしてくれてンだよ!」
「調子くれてんじゃねぇよ!」
友人をやられて激昂した一人に胸ぐらを掴まれ、頬を殴られた。血の味が滲む。
「ヒナっ!」
後方から聞こえる美羽の声に泣きが混じる。
「やっ……やだ! やだあ……っ!」
バカ、来んな。
近づこうとする小走りの足音に焦り、振り向こうとして。
無防備になった俺へと、拳が迫る。
「―――させねぇよ?」
金色が視界を遮った。
パアンッ、と小気味よい音。
「一対五って、ヒキョーじゃね? やるからにはタイマンが基本っしょ」
「は……春山?」
口元にうっすら笑みを浮かべる男。
その軽薄そうな話し方は、間違いなくお調子者のクラスメイトのものだった。
「俺、自分から殴んのってあんまり好きじゃないんだこどね。気ィ変わったわ」
突き出された腕が風を切る。
「あっは。俺のダチと遊んでくれたサービス料、みたいな?」
上背もあるし、いかにも喧嘩慣れしていそうな風体。
男たちが警戒して後ずさる。
四人まとめて相手をする気らしい春山を唖然として見ているうちに、あと一人足りないことに気づいて血の気が引く。
「美羽っ―――?」
後ろを見ると、瞳に涙を溜める美羽を、誰かが背中に庇っていた。
「―――女の子を泣かせるなんて」
中性的で、良く通る美声。
「最低だね、君」
くす。
朱色の唇から、艶を含んだ吐息が零れる。
「このお礼は高くつくよ?」
細くすらりとしたシルエット。
お綺麗な顔で笑うそいつ。
「柚木園! おま、なんで……っ」
「話は後で、ね!」
言いながら、鮮やかな蹴りを放つ。
そういえばコレで春山をぶっ飛ばしてたよな、とかそんなことはどうでもいい。
主力の春山をサポートする形で柚木園が応戦。
が、そのどちらとも無意味な攻撃はせず、突っ込んでくる相手を最小限の動きでいなすような感じだった。
喧嘩売るだけ売って、何もできずに突っ立っている俺よりよほど逞しくて……頼りになる。
……ん?
待て、愛川は?
「いやっ―――」
美羽の小さな悲鳴。
いつの間に混戦を抜け、近づいたのか。愛川は美羽のすぐ目の前にいた。
しかし、怯える彼女に向かって勢い良く伸ばされた愛川の手を、美羽の後ろから突然現れた影が弾く。
「……ゆいのんに触らないで」
ぱしっ。
大きな瞳を怒りに染める、姫宮だ。
美羽が呆然と呟く。
「……夕紀」
それを聞いて我に返ったように、愛川が笑顔を作った。
「……どうしたの? ここは危ないよ。早く逃げた方が―――」
「バカに―――しないでよっ!」
明らかに姫宮を女の子扱いする愛川を睨み、威勢良く啖呵を切る。
「言われるまでもないよっ。ゆいのん、こっちっ」
心配そうに双眸を揺らす美羽がこちらを見るも、腕を引っ張られて。
愛川を振り切り、姫宮について走り出した。
それを、愛川は追いかけるでもなく黙って見送って。
「……根本、佐藤。みんなも……もういいよ」
その弱々しい声は不思議と全員の耳まで届き、男たちが動きを止める。
「通報されたらどうするんだよ」
「で、でも、こいつらが」
「こっちが退けばいい話だろ?」
「はあ!? お前、やられっぱなしでいいってのかよ!」
騒ぐ声を無視し、周りのギャラリーにちらりと視線をやる。
「ほら、見られてる。警察が来るのも時間の問題だ」
うっと言葉に詰まる彼ら。
あちらもさすがに警察沙汰は御免だろう。
俺を一発殴り返してもいいってのに。
静かに凪ぐ双眸の、何かに耐えるような淋しげな色に誰かの影が重なって、消えた。
453
:
心愛
:2013/07/29(月) 17:53:42 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>ピーチ
…やっぱり頼りになるのは仲間だよね!(大汗)
春山が不良スタイルなのも苺花が男勝りなのも、もとはと言えばこのときに使いたかったからなのですw
でも大丈夫、ヒナも最後にはちゃんと決めてくれるはずさ! 多分!
そ、そんな感じで、次から早速番外編に移って愛川編やります!
このまま完結しても気持ち悪いかなーということで、悪役の救済を先にもってきちゃうよ←
オスヴァルトとかユーリエ、ジルとかと同じで、悪い奴では…ないんだ…!
454
:
ピーチ
:2013/07/29(月) 19:55:02 HOST:em114-51-149-36.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
春山くんかっこいい! 苺花ちゃん凛々しい! そして夕紀ちゃんが!
……愛川くんっていいひとなの←こら
ねぇどうしよう色々思いながらも春山くんがかっこいいっていうのが一番大きいんですが!((
455
:
心愛
:2013/08/01(木) 18:36:49 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ありがとうごぜえます!
こういうアホっぽいけど頭よくて実はいい人、みたいなキャラが慌てたり照れたり(彩相手とかね)かっこよく決めてくれたりするの大好きなんです!
ちょっとでもかっこよく見えたならよかったよ!
男装の麗人が敵を華麗に撃退! みたいな苺花はここあの趣味ですすみません←
夕紀も天然ほんわかにしては頑張ったよ! ちゃんと怒れたよ!
このシーンはずっと書きたかったから嬉しいなーw
仲間大事!
456
:
心愛
:2013/08/01(木) 18:37:18 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
『ごめんなさい尾(つ)けてました』
「この暇人どもめッ!?」
所変わって人目のつかない建物の隙間スペースにて、俺は事情聴取を行っていた。
「だってクリスマスに、ゆいのんとヒナが二人でお出かけだよ? 気にならない方がおかしいよ」
「まったく尾行の動機として成り立たないことはとりあえず置いといて、そもそも何でそのこと知ってんの!?」
「あー、俺が彩ちゃんから情報仕入れたんだよ。そんで柚木園と姫宮ちゃん誘ったの。さっきヒナと結野ちゃん見つけたのも、場所を電話で教えてもらって」
「彩ァ―――っっ!」
あのガキ、さっきの電話であれこれ聞き出したのは春山たちに伝えるためだったのかよ!
「つーか何で彩が春山と連絡取り合ってんの!?」
「い、色々あって?」
俺は額に手を当て、はーっと白い息を吐き出す。
彩がなんで春山と連携するようになったのかとか、柚木園と姫宮も誘われたからってほいほい乗るなよとか、言いたいことはたくさんあったけど。
「まあ全部……結果的には助かったから、いいけどさ」
釈然としないけど、こいつらがいなかったら今頃俺はどうなっていたか分からない。
素直に感謝するにはちょっと引っかかりがありすぎるけれども。
「春山は意外とケンカ強かったし、姫宮も姫宮なりに頑張ってたし、柚木園も登場とか完全に王子だったし」
「え、意外!?」
「えへへぇ。僕頑張ったよ!」
「私は別に、大したことはしてないよ。さすがに力では敵わないし怪我をさせるわけにもいかないから、ほとんど足払いとかで流してただけ」
確かに、春山と柚木園に傷一つないのはもちろん、相手にも怪我はなさそうだった。派手なケンカ、っていうよりは軽い取っ組み合いみたいなものだったのかもしれない。
いや、それより。
「意外ってなんだよヒナぁー! 俺そこそこ強いんだぜ、不良なめんなよ!」
「黙れドM」
……あれだけキレてたのに、手加減できるってどんだけよこいつ。
「っつーか、なんでせっかくこんな日なのに、他人事に首突っ込むんだよお前らは」
「もともと、僕とまいちゃんは一緒に遊びに行くつもりだったからちょうどよかったよ。ね?」
「ちょっ、夕紀! なんでそれ言っちゃうの!?」
「……ん? あれ、ヒナと結野ちゃん、姫宮ちゃんと柚木園ってことはもしかして……俺、ぼっち?」
「もしかしなくてもぼっちだろ」
「うわぁんヒナがひどぉい! 春山寂しい! 結野ちゃん慰めて!」
誰もがなかなか話に入れることができずにいた美羽に、果敢にも春山が突っ込んでいく。
こういうときの春山のテンションというか、気配りは絶妙だ。
「……気色悪い声を出すな。その状況を楽しんでいるくせに何を言う」
「結野ちゃんも冷たいー! でもそこに痺れる憧れるぅ!」
「うぜぇ」
いつものやり取りに、ふっと小さく笑ってみせる美羽。
それでも中二病発言が飛び出さないのだから、相当堪(こた)えているのは誰の目にも明らかで。
「それじゃこれからも暇な俺たちは、二人の予定を全力で邪魔するとしますかね!」
「おいやめろ」
三人は美羽が心配なのだろう、話が一段落ついても離れようとしなかった。
春山の言う通りというか何というか、俺たちはあてもなく、店から店を巡り歩いた。
女の子をナンパしようとする春山を柚木園がシバいたり、柚木園に渡すつもりだったらしい紙袋を春山に指摘されて、赤くなってしまった姫宮をからかったり。
いつも以上に賑やかだったけど―――その間誰も、ついさっき別れたばかりの愛川たちに関することや、美羽の事情に踏み入るようなことは、一言も口にしなかった。
「じゃーなヒナ! 結野ちゃんのことちゃんと送ってやれよ!」
「……分かってるっつの!」
別れ際、春山のさりげない台詞に隠されたメッセージにそう返して三人を見送ると、隣の美羽に話しかける。
「あのさ、美羽。これから時間、ある?」
反応して顔を上げた美羽を見て、俺は安心させるようににこりと笑った。
「行きたいとこ、あるんだ。最後に、俺のワガママにもつきあってよ」
457
:
ピーチ
:2013/08/01(木) 20:47:41 HOST:em114-51-47-231.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
かっこいいんだよ春山くんケンカも強いし!
苺花ちゃんも凄いよね、結構派手にできそうなのに←
……というよりあたしは最初の台詞にびっくりしたぞ!
ごめんなさいが最初だったから何事かと思った!((
458
:
心愛
:2013/08/02(金) 20:40:23 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ごめんなさいから始まるというw
春山と苺花は戦闘要員!
次からやっと…! ってとこだけどまた長くなりそうだうわあああああ(TOT)
459
:
心愛
:2013/08/02(金) 20:41:59 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
「……ここは……」
美羽がぽつりと呟く。
赤い光の乱舞の中、艶を帯びる黒い髪がふわりと広がった。
それだけで胸が詰まり、目頭が熱くなる。
……あのときと同じ、光景。
「ぼくが引っ越す前、良く来た公園じゃないか。奇遇だな、ヒナも知っていたのか」
「……まあ、ね」
しばらく黙って、懐かしそうに目を細め、美羽はブランコや木々、夕焼け空を眺めていた。
そして、俺が口を開くよりも先に。
「ヒナ」
俺を呼ぶと、くるりと振り返って。
「ぼくは今まで、眷属という名の鎖で、君を縛りつけていた」
……何を、言い出すんだ。
美羽が切ない微笑みを浮かべ、言葉を失う俺を見る。
「君は優しすぎるから。嫌がることもせずに、ぼくの理不尽な要求を何でも聞き入れてくれたな」
鮮やかな光を浴びる美羽は、幻想的で、儚くて。
「ぼくは恐れていたんだ。試していた、と言ってもいいかもしれない。……いつ、君がぼくを見放して、嫌うようになるのかと」
眷属の義務だとか主の命令だとか、上から目線で今まであれこれ言いつけていた理由が分かり、絶句した。
美羽は俺を疑っていたのか。
本当にこいつを信用してもいいのか、と。
「でも君は、決してぼくを軽蔑することはなかった。……ぼくのすべてを丸ごと受け入れてくれたのは、君が初めてだったんだ」
美羽は不自然なほどに明るく、にこりと笑う。
「とても、嬉しかった。……でも、もう、無理をしてくれなくていい」
さらりと零れ落ちた髪を指で払い、
「ぼくがいなかったら、君はもっと自由にこの世界を羽ばたける。ぼくと違って、君にはその素質がある」
これは……罪悪感からの言葉、なのか?
愛川と再会したことで、俺への信頼が揺らいでる。
俺が……無理をしている、だって?
「これ以上、自分の欲で君を縛りつけたくない。……契約を解消しよう、ヒナ」
結野美羽という少女を形成する輪郭が儚く霞み、弱々しく曖昧な線へと変質していく。
それはまるで、暗闇に人知れずひっそりと咲く花のように。
「―――ふざけんじゃねぇよっ!」
その瞬間俺を襲ったのは、愛川と対面したときよりも激しく純粋な、怒りだった。
けれどあまりの剣幕に驚いて目を丸くする美羽を見て、すっとすぐに頭が冷える。
「……あ、ごめん。驚かせるつもりじゃなくて……」
「あ、ああ……」
美羽相手にも大きい態度をとれない自分が、ちょっと情けなくなる。
でも。
ここで言わなきゃ、男じゃない。
俺は、覚悟を決めた。
「美羽。これから俺がする話は、簡単に信じられないかもしれないけど……ちょっと黙って、しっかり聞いてて」
「……なんだ、急に」
話の流れを断とうとする俺の台詞に、美羽が怪訝な顔になる。
俺はゆっくり深呼吸して気持ちを落ち着けると、ようやく、告げた。
「俺、ここで……美羽と、逢ったんだ」
「……は……?」
ぽかんとした表情。
それはそうだろう、こんなことを急に言われたって戸惑うだけだ。
「昔……小学生の頃の話だよ。一人で悩んでたときに、俺は美羽に逢って、すごく助けられたんだ」
感情が抜け落ちた瞳を見つめ、俺は身体中がじんわりと汗ばむのを感じながら、さらに言葉を紡ぐ。
「“理想”を探してる、って笑った美羽に、俺はあの日、かけがえのない大切なものをもらった」
“理想”を追いかける少女のまっすぐさ、まばゆいまでのひたむきさ。
それが俺を勇気づけて、ここまで支えてくれたんだ。
「キモいって思ってくれて構わない。小学校でも中学校でも、ずっと美羽を探してた。だから偶然一緒の高校になって、死にそうなくらい嬉しかった」
「……、っ」
「美羽がいるっていうから保健室にまで押しかけたけど、結局本当のことは言えなかった。それでも、どうしても美羽との繋がりが欲しくて、口実みたいに眷属の話を」
「ま……待て! 」
急に止められ、俺は口を噤む。
460
:
ピーチ
:2013/08/03(土) 16:17:41 HOST:em49-252-217-74.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
暇人どもめもちょっと笑っちゃったことは言わないw
昔の公園だー! ヒナさんと美羽ちゃんが出会った場所だー!
うわどーしよヒナさんが本気で怒鳴ったの初めて見た!←おい
461
:
名無しさん
:2013/08/03(土) 16:46:17 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
またクソスレかい? 心愛さんよwww
あんたのスレ見る度にヘドが出るぜww
462
:
京都出身
:2013/08/03(土) 16:47:05 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
貴方そんな事言っちゃいけませんよ
可哀想じゃないですか〜
463
:
七紙
:2013/08/03(土) 16:47:45 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
メガビという以上、仕方ないですな〜
俺は静岡に住んでいますよ〜
京都からだと結構遠いっすね〜
464
:
名無しさん
:2013/08/03(土) 16:48:26 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
おいっww
それさっき聞いたぞww
465
:
七紙
:2013/08/03(土) 16:49:02 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そうだっけ?
466
:
京都出身
:2013/08/03(土) 16:54:45 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
七紙さん
ネオジオの話どうなったんですか?
467
:
七紙
:2013/08/03(土) 16:55:48 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
ネオジオと思い出したけど・・・
昔ドリフターズに荒井ちゅうって人いたの知ってる?
468
:
京都出身
:2013/08/03(土) 16:56:58 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
荒井さん知ってますよ(笑)
志村けんさんの前にいた人でしょう?
いや〜懐かしいですね〜
469
:
京都出身
:2013/08/03(土) 16:57:36 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そういえばアライチュウで思い出しましたけど・・
ピカチュウさんはどうしてるんでしょうね〜?
470
:
七紙
:2013/08/03(土) 16:59:50 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
今年、劇場最新作公開されるんでしょう?
ミューツー再びとか・・
ちょっと質問していい?
荒井ちゅうとピカチュウどう繋がりがあるのよ?
471
:
京都出身
:2013/08/03(土) 17:02:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
僕らの世代の3大用語をお教え致しましょう
ピカ・チュウ
ジコ・チュウ
アライ・チュウ
自己中というのは自己中心の略ですが・・・
472
:
京都出身
:2013/08/03(土) 17:02:44 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
それで思い出したんです
チュウさんの事を
473
:
七紙
:2013/08/03(土) 17:05:03 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
なるほどな〜納得した
ドリフの荒井ちゅうさん良かったよな〜
俺、彼と同年代だもんな〜
474
:
京都出身
:2013/08/03(土) 17:06:34 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
ところでネオジオソフトはもう発売されないのでしょうかね〜
475
:
七紙
:2013/08/03(土) 17:07:14 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そうだな〜
まあ荒井ちゅうさんはいい人だもんな〜
476
:
京都出身
:2013/08/03(土) 17:08:06 HOST:zaq31fa482b.zaq.ne.jp
そう言えば
サトシとピカチュウって付き合い長いですよね〜
477
:
心愛
:2013/08/03(土) 20:54:59 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp
「い、意味が分からない……っ! 君は結局、何を言いたいんだ!」
かなり混乱しているらしくそんなことを言ってくる美羽に、「マジか……」と俺は頭を抱えた。
「ここまで言ったんだから察せよ、もー……」
「だから何を!」
「だから、」
頭が痛い。顔が熱い。心臓がうるさい。
拳を握り、ぐっと足に力を入れて。
俺は十年越しの想いを、告げた。
「―――美羽は俺の、初恋なんだ」
言葉に詰まり、呆然と見つめてくる美羽に、俺は胸の内を打ち明けていく。
「どんなに失敗しても、くじけそうになっても立ち上がって、また理想を求め続けるところが好きだ。バカみたいにまっすぐで、純粋で、強いところも」
「……ぼくは、強くない!」
悲鳴のように叫び、美羽はカタカタと震える。
俺を信じられずに、怯える。
「自分に都合のいい空想の世界に逃げ込んで、みんなに守ってもらうばかりで……っ。今日だって、何もできなかった!」
美羽の声には、小さな嗚咽が混じり始めていた。
歯を食いしばり、さらに続ける。
「ぼくが吸血姫(ヴァンパイア)なのも、魔術組織の魔女なのも、全部全部作り事だ! そんなの分かってる!」
全てを吐き出すように。
美羽は呼吸を荒げ、指で眦を拭った。
「でも、やめられないんだ! 弱いぼくは、この期に及んでも、まだ自分の理想を諦められない……っ!」
おそらく、自分でも何を言っているのか分かっていないのだろう。
ぐちゃぐちゃな思考で、ぐちゃぐちゃな声で、美羽は叫び続ける。
「ぼくは、周りに迷惑をかけるだけなんだ! そんな人間に、誰かに好きになってもらう資格なんてない!」
「もう一回言う」
美羽を遮るようにして、はっきりと声を発した。
「俺は美羽の“理想”に、救われたんだ」
美羽が息を呑む。
俺は彼女に、静かに語りかけた。
この想いが届くように、願いを込めて。
「柚木園と姫宮、それに春山。クラスのみんなだってそうだ」
俺と美羽を取り巻く仲間たち。
妙に個性的で、バカ騒ぎばかりでうんざりすることもあるけれど。
「あいつらは確かに、優しすぎるところがあるよ。でもさ、美羽と一緒にいるのが面白くて仕方ないから、やたらと構ってくるんだろ? 美羽がいい奴だって分かるから、色々絡んでくるんだろ? いるだけで迷惑がかかって、何とも思ってない奴とつきあうほど、あいつらだってお人好しじゃない」
さらに続けて、美羽にとって一番身近な例を持ち出す。
「美空先輩だって、美羽のことが大好きじゃないか。確かに美羽の全部を肯定してるわけじゃないかもしれないけど、それも美羽のことを一番大切に考えてるからだし」
迷惑なんかじゃない。
むしろ、逆なんだ。
ごく単純に、美羽といるのが心底楽しいから、俺たちは美羽を喜んで受け入れる。
「確かに美羽のソレは、世間様から見たら良くない、今すぐやめるべきことだって言われるよ」
美羽のことを良く知らない人なら、いや、たとえそうでなくても、それは普通のこと。
美羽のことを心配するからこそ、安全で正しい道へ導こうとする。
「でも、俺はそうは思わない。美羽が望んでやってることなら、それが一番いいと思ってる」
「……どうして」
うーん、と俺は考え、ひとつの答えを弾き出した。
「たとえば。美羽がそうやって、“理想”に近づくための演技を始めた理由って、格好良いって思ったからだよね」
「……そう、だが」
すぐに剥がれるくらい薄っぺらで、なのに強い意志で固められた仮面。
美羽がそれで、本来の自分を隠すようになったのは。
格好良くて、憧れるから。それもある。
他人を遠ざけ、自分の身を守るため。それもある。
でも多分、もっと根本的な理由があると思うんだ。
「美羽は、さ。本当は……強くなりたかったんじゃないかな」
美空先輩に、二人の過去を教えてもらったことを思い出す。
お父さんの会社の事情でクラスから仲間外れにされ、その反動で、人を寄せつけないようにするキャラを作るようになった、と。
そんな美羽を一番近くで、一生懸命に支えたのは、美空先輩だった。
478
:
心愛
:2013/08/03(土) 20:56:17 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
「美空先輩や、他にも家族の人たちとかさ。みんなに守られているばかりだったから、自分が強い、ヒーローみたいな存在になって、みんなを守りたいって思ったんじゃない?」
さっきも、『守られてばかりで』と零した。
美羽はそういう意識が強いから。
ただ感謝するんじゃなくて、その気持ちを自分の力で返したいって、考えたんだと思う。
それがきっと、美羽の“邪気眼”の始まり。
“理想の自分”とは、孤高のダークヒーロー。
大切なひとたちを、守りたかったんだ。
悲痛なほどの優しさでできた美羽の意志を、どうして否定することができようか。
「そ、んな……こと、」
「もちろんこれは、ただの俺の推測。本当は違うかもしれないよ」
動揺に瞳を揺らす美羽。
俺は彼女を見てきっぱりと言い切る。
「でも俺は、小さいときにそう考えてもおかしくないくらい、美羽が優しい奴だってことを知ってる」
今まで、美羽は他人を遠ざけてきた。
失わないために、持ってはならない。
そして、相手を自分のせいで傷つけないために、近寄ってはならない、と。
美羽はそれだけ、心根のまっすぐな人間だ。
「それで結局、そのひとたちを守れたか、っていったらどうか分かんないけどさ。少なくとも俺やクラスの奴らは、今の美羽と一緒にいられて、幸せだって思ってる」
だったら。
「誰かを幸せにしてる時点で、それは空想でも、虚像でもない。立派な“結野美羽”そのものなんだよ」
誰に異常だって言われても、それでも俺は美羽を肯定し続ける。
世界で一人でもいい。俺は美羽の理解者なんだって、胸を張って宣言してやる。
「それに俺は、そういうの全部ひっくるめて、一人の女の子として、美羽が好きなんだ。……それでも、俺の十年間を否定するつもり?」
肩が跳ねる。
やっと俺の、真剣な気持ちに気づいたかのように、かっと白い頬が赤らんだ。
不安そうに見上げるその瞳を、喰いつかんばかりに激しく見つめ返す。
黒い、瞳。
俺が昔、この場所で好きになったその色が、あのときと同じ夕暮れの光を取り込み煌めいている。
気が遠くなるような時間のあと。
さみしがりやのくせに、他人から好意を向けられることを恐れる少女はこくりと喉を鳴らし、
「ふ……ぇ、ぅあ……っ」
ぽろぽろと涙を零した。
ひく、ひくと時折しゃくりあげながらも、震える唇が言葉を紡ぎ出す。
「ぼくは、……ぼくも……きみ、のことが、」
―――すき、
声にはならなかったけれど、俺の耳にはしっかりと届いた。
全身の神経に甘い戦慄が走る。
火照った顔にさらに血が昇るのが分かる。
「あ……りがと」
違うだろ俺! もっと気の利いたこと言えよ!
でも仕方ない。何しろ、あまりのことに俺の脳はショート寸前なのだ。
頭の中がぐるぐる回る。
そんな俺には気づいていないらしい美羽は涙を拭うと、ちらりとこちらを窺った。
「あの、……ヒナ。契約という形がなくても、ぼくと共にいてくれるか?」
「あ……当たり前だろ!」
つまり……主と眷属じゃなくて、その、そういう関係になりたいってことで……合ってる、よな?
そんなことを言い出す美羽が嬉しいし可愛いしで、ここでスマートに抱き寄せたりできたら完璧なんだけど、残念ながらあまりのことに内心動転しまくり、うわーうわーっと大合唱な俺の手はイメージ通りに動いてくれなかった。
これだから彩にヘタレって言われるんだよまったく。
「では、改めて」
夕焼け空をバックに大仰に腕を広げ、美羽は朗々と声を張る。
「此れなるは《純血の薔薇(Crimson)》一級魔女にして偉大なる吸血姫(ヴァンパイア)、ミウ=黎(ローデシア)=リルフィーユ」
……それでこそ美羽だ。
思わず、俺の頬が緩む。
「たとえ幾千の刻を隔てようとも、我、永遠に汝と共に在ることを誓う」
涙を光らせながら微笑む美羽に、俺も笑って手を差し出した。
「これからもよろしく、美羽」
最初とはまた違った意味を持つ握手。
恥ずかしそうな美羽の笑顔はあのときみたいに、可愛くて、優しくて、綺麗で、何よりもまばゆかった。
479
:
心愛
:2013/08/03(土) 21:04:06 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ
美羽のためなら、ヒナも本気になるんだね!
ってことでついにやりましたヒナ! ここまで長かったああああああ! このヘタレがああああ! (落ち着け
これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! っていいたいとこだけどごめんねもうちょい続くよ!
美羽はここあキャラの中で一番複雑な子でした…。自分でも自分のこと完全に分かってないんだからここあにも分かるかよちくしょう! と歯ぎしりしつつ頑張りましたw
ヒナ、これからも美羽を頼んだぞ!
480
:
ピーチ
:2013/08/04(日) 06:27:48 HOST:em1-114-170-159.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ここにゃんそれヒナさんに酷くない!?
ほんとに春山くんがぼっちになったー! 彩ちゃんとくっつけてあげてぇー!←
作者様! いくら自分でも分かってなくても作者様だから!
ヒナさん! これからも美羽ちゃん守ってあげてね!
481
:
心愛
:2013/08/04(日) 20:44:13 HOST:proxyag102.docomo.ne.jp
『いやあやってくれたね圭くん! あたし今最高の気分だよ!』
テンション最高潮の美空先輩の声が、電話越しに俺の耳を圧迫する。
『ほんとはあたしがぶん殴りたいとこだったんだけど、変な噂になっちゃったら困るなーって必死に我慢してたんだよ! まさか圭くんが代わりにやってくれるなんて!』
さてはあいつか。
なんとなく察したらしく、目を逸らしてひゅーひゅー口笛を吹いている情報漏洩の達人を、俺は横目でギロリと睨んだ。
春山から彩、彩から美空先輩……ってどんだけ俺の妹は俺の友人関係掌握してんだよ。
っていうか先輩、噂がなければ殴る気満々だったんですね……?
『しかもあれでしょ? ついに美羽ちゃん攻略しちゃったんでしょ!? もー! 圭くんってばどれだけあたしを喜ばせれば気が済むのかな! 今すぐ感動のハグしてあげるよそっち押しかけていい!?』
「遠慮しておきます。……あ、そうだ。その代わりってわけでもないんですが」
俺は人差し指で頬を掻き、
「ちょっと頼みがあるんですけど」
゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚・:*:・。☆゚・:*:・゚☆。・:*:・゚
「―――ごめん。殴ったりして」
「お前、馬鹿じゃないの?」
目の前に座る爽やか系のイケメン様が冷たい一瞥をくれる。
こちらのテンションは最悪だ。
こいつのせいで、さっきから小声で「ちょっと、あの人カッコよくない?」「ほんとだー! でもその前の子は微妙だね」とか囁きが交わされている。ほっとけ。
「いや、いくら腹が立ったとはいえあれはさすがにやりすぎたかと思って。……でも、よく来てくれたよな。絶対断ると思った」
下げていた頭を元に戻しつつそう言うと、イケメン、もとい愛川は不機嫌そうに顔をしかめる。
「……別に、結野先輩に脅されたからだよ。……殺されるかと思ったし」
愛川の連絡先を調べ上げてコンタクトをとり、前にも先輩と入ったことのある喫茶店に来るよう話をつけてくれたのは、もちろん美空先輩だ。
小声で付け足された物騒な一言に、一体どういう手段を用いたのかは言及しないことに決める。
「痛い? それ」
「別に。お前の方が酷いんじゃないの」
つっけんどんだけど、お仲間にやられた俺の頬を心配するような台詞を吐くあたり、根っから悪いわけじゃないんだよなぁ、と俺は苦笑する。
今の愛川は猫を被っていないみたいだけど、こういうさりげないところ、いかにもモテそうだ。
そんな整った顔にうっすらとアザができているのを見て、いたたまれなくなる。
「俺は並みのツラだからいいけど、イケメンの顔に傷つけたとか、こう、後から罪悪感がですね」
「うっせ。……女の子との待ち合わせが、主役がこれじゃ、ってことでパスできてよかったくらい」
「あー、エサにされたのか。チャラチャラしてるように見えてそういうの苦手なのな」
「まあね。……って、なんで俺はお前とこんな話してるわけ?」
すごい。こいつこう見えて、いじりやすさは昴さんレベルだ。
分かりやすい不機嫌オーラを放出する愛川はしかし、店員の女性がアイスティーを持ってくると笑顔で会釈して受け取って、彼女が立ち去ると同時にまた不機嫌な表情になる。
なにこれ、超面白いんだけど。
「……で? どういうつもりだよ」
「うん?」
「なんで俺を呼びつけたんだって話。普通、こんな奴となんか二度と会いたくないはずだろうに」
自嘲してみせるその顔に、姫宮に連れられていく美羽を見送ったときのどこか寂しそうな表情、そして、古い記憶の面影が重なり、ちらついて―――
俺は確信すると、愛川にこう問いかけた。
「なあ。俺の名前、なんだと思う?」
「は? ヒナ、だろ」
「それあだ名!」
大して興味もなさそうな様子でストローを弄びながら言われ、ばんっとテーブルを拳で叩いた。
毎回ヒナヒナ言われてると最近感覚が麻痺してきたけど、ヒナって名字もそういう名前の男もそうそういないと思うんですがね!
「そうじゃなくて。俺の名前、日永、圭なんだけど」
「それがどう―――」
愛川は怪訝そうな眼差しで俺を見て、直後、はっと大きく目を開いた。
482
:
心愛
:2013/08/04(日) 20:50:35 HOST:proxyag101.docomo.ne.jp
>>ピーチ
彩と春山はそこそこいい感じになってるよ多分!
ただお兄様がそれを知ったらどうなるか(・∀・)
ヒナ、がんばって美羽のためにヘタレ卒業してくれたまえ!
悪役を放っておかないここあですw
愛川はコツつかめば割とちょろい←
483
:
ピーチ
:2013/08/04(日) 23:24:36 HOST:em49-252-221-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
美空先輩が怖いー!? ちょっとまってぶん殴りたいって! ついでに年下とはいえ男脅すって!
根っから悪い子じゃないならすぐ美羽ちゃんに謝るのが妥当だと思うなあたしは!←しつこい
ヒナさん……とうとうあだ名が名前に…((
484
:
心愛
:2013/08/05(月) 18:59:11 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ
殴るっていうか、裏から潰す方が性に合ってるかもしれないね!
それができちゃうのが美空ですからw
うん、素直に謝れたらいいんだけどね…←
それができないのが愛川ですからw
次↓、衝撃の事実が明らかに! ってわけでもないかな…。ばればれだった?(´・ω・`)
ヒナと美羽初登場時から、共通点として愛川のことは決めてたんだよね!
ますますヒナ、簡単に許しすぎじゃね? って疑問はあれど後から補足するから大丈夫!
485
:
心愛
:2013/08/05(月) 18:59:37 HOST:proxyag011.docomo.ne.jp
「え……? お前……まさか、日永!?」
素っ頓狂な声を上げる愛川を、「気づくの遅っ」と笑ってやる。
「うそ。だって、眼鏡……」
「コンタクトだよ」
目の辺りを指差しつつそう言えば、向かいの相手はまじまじと俺を見て、小さく呟いた。
「変わった……な」
「だろ?」
愛川は、俺の予想通り―――小学校の頃、俺をいじめていたクラスの中心グループに所属していた、人気者の少年だった。
……ほんと、すごい偶然だよな。腐れ縁っていうか、運命の陰謀めいたものを感じるわ。
昔美羽と出逢った日、あの公園に駆け込む前に俺とちょっとした揉め事を起こした張本人だ。
すぐに眼鏡のことを気にしたのも、その罪悪感があったからなのかもしれない。
そんな、かなり曰く付きの相手だけど―――今は堂々と、愛川のことを見ることができる。
「まあそういうわけで、同じ小学校出身ってことで、仲良く話でも」
ようやくのことで理解して、居心地悪そうに視線を下に落としていた愛川が途端、顔を上げてキッと俺を睨めつけた。
「……意味分かんない」
「何が」
「何がって……決まってるだろ!?」
感情的に声を荒げる。
「俺……お前に、あんなことしたのに。その上、結野まで傷つけて、怒らせて。……それなのに、まだそんな、平気そうに」
「美羽のことは置いとくけど、別に、俺のことはどうでもいいし」
「はあ!?」
「んー、もう割り切ったっていうか。全然気にしてない」
あの一件だって、あのときの俺が妙にこだわっちゃっただけで、本当はただの事故だしね。
愛川はしばらく唖然とし、次に信じられないものを見る目を向けてくる。
「お前……ほんと、バッカじゃないの?」
「そうだよ。それくらいのバカじゃなきゃ、あの美羽と一緒になんかいられないっての」
その返しに、愛川はちょっとだけ、むっとしたような様子を見せた。
俺は再び、美空先輩がこの店で言った台詞を思い出す。
『分かっちゃうんだよねー。たまにいる、あたしじゃなくてその後ろに隠れてる美羽ちゃんの方を狙う子』
「―――お前さ。美羽のこと好きだったんだろ」
率直に言うと、分かりやすくびくりと肩が跳ねた。
「この前も、俺が彼氏だって勘違いして突っかかってきたんじゃないの?」
「……え? 違うのかよ?」
ぽかんとする愛川。
……え、と。
「いやー……まぁ、えーと、あのときは違ったというか、最近違くなくなったっていうか、」
「もういい。だいたいわかった」
愛川はうんざりしたように言い、色々と諦めたらしく大きく嘆息して。
「……結野のあんな顔、初めて見たんだ」
美羽を取り囲むようにしていた愛川たちの集団に俺が割って入ってきたとき、美羽の見せた表情にどうしようもなく苛立った、と愛川は言う。
「俺なんかに絡まれて、困ってたとこを助けられて……安心してる顔。心底、お前を信頼してる顔だった」
切なく物憂げな眼差しは妙に様になっていて、頻繁にこういう表情をしていることを窺わせた。
「そんなに俺と話すのが嫌かよ、って、すごいムカムカして……自業自得なのにな。ああ、今の結野にはちゃんと、そういう顔見せる相手がいるんだ、って」
―――多分、羨ましかったんだと思う。
最後に、愛川はそう零した。
この前言ってた中学のときの話聞かせて、と試しに頼んでみれば、ぽつりぽつりと語り出す。
自分目当てに群がる女に辟易としていた愛川は、よりにもよって、クラス中に嫌われる美羽に惹かれてしまった。
で、だんだん美羽といい感じになってきたのに、最終的には女友達の策略には嵌り込み、美羽を言葉の暴力で傷つけた。
「……うん? つーかさ、その女友達……ヤナセ? さん? がそもそも一番の原因なんじゃないの?」
「いや。あいつはどんな手段を使ってでも、俺をモノにしたかっただけ。自己中心的っていうか、いじめられてる子なんか眼中にも入れないような奴だから。俺のことがなかったら、結野を攻撃することもなかった」
486
:
ピーチ
:2013/08/05(月) 21:22:28 HOST:em49-252-183-216.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
怖いです美空先輩落ち着いて!←
ヒナさんと愛川くんまさかの小学校時代の同級生!
……ヒナさんに対しても美羽ちゃんに対しても、愛川くんって維持はってばっかだよね((こら
487
:
心愛
:2013/08/05(月) 22:25:58 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>ピーチ
そういうことなのですw
その意地の張り具合が全部悪い方向に向いちゃってるんだよ…(=_=;)
でも、だんだんヒナにはある意味素直になってきたぞ!
488
:
心愛
:2013/08/05(月) 22:26:37 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
苦悩の顔で、でも、きっぱりと言い切る。
「悪いのは全部、中途半端に結野をその気にさせて、なのに自分可愛さに負けて、柳瀬の企みに乗った俺」
……ほんと、悪い奴じゃないんだよなぁ。
俺は同情に満ちた表情で、悔しげに俯く愛川を見た。
「そっか……愛川も、つらかったんだな」
「ひ、な……が」
「で、それなんだけどさ」
次いで、俺は慈愛に満ちた表情でにこ。と微笑み、
「―――ごめん、やっぱもっかい殴っていい?」
「なんでだよ!」
お、なかなかのツッコミ。
なんかこういうとこ俺と似てない? ……え、似てない? そうかなぁ。
「だって、つまり毎日嫌になるくらいモテるから、その分大人しい美羽に目が行ったってことだろ? ヤナセさんの行動も、ただのヤキモチじゃんか。同じ男として腹立つ」
「知るか!」
愛川はすっかりご立腹である。
うん。……さて。そろそろ、かな。
俺は後ろにちらりと視線をやってから、声のトーンを落とした。
「……それに、どんな理由があっても、美羽にしたことは到底許せることじゃないし」
「……分かってるよ、そんなこと」
からん、と氷が虚しい音を立てる。
愛川の顔が暗い翳りを帯びた。
「俺だって、悩んで悩んで、何度も謝ろうと思った。でも、結野はそれっきり学校に来なくなって……。家を訪ねて行こうにも怖じ気づいて、結局できずに終わった」
深刻に沈み込む声。
「クリスマスの日、偶然結野を見かけたときに声かけたのは、今度こそ謝ろうって思ってたからなんだ。……でも友達がいたから、上手く切り出せなくて。焦ってたとこに日永が来て、ついイラッとして……また、同じことを繰り返した」
愛川はくしゃりと乱暴に前髪を掻き上げた。
「……っとに、最低だ、俺」
顔を歪ませ、苛立ったように吐き捨てる。
「情けない。自分が嫌になるよ。余計なことはすらすら言えるのに、なんで大事なことは言えないんだろ」
愛川がいけなかったのは、美羽の中二病を受け入れられなかったところじゃない。
いくら美羽の本質を見抜いて好きになっても、それでも美羽の言動をおかしいと思うのは当然といえば当然だし。
それをやめてほしい、なんて、美空先輩だって言っていたこと。
ただ、愛川はほんのちょっと思っていただけのそれを、トラウマになるような状況で、何倍もの酷い言葉にしてしまっただけ。
人前で好きな子を相手にすると特に素直になれずに、流れるように笑顔で嘘をつく。
ここまでくると、いっそ天才的なまでの不器用さだ。
「お前、さてはあれだろ。好きな子ほどいじめちゃうタイプだろ。小学生男子かよ」
「……うるさい」
茶化したらぎろりと睨まれた。
俺は懲りずになおも続ける。
「……え、待てよ。じゃあもしかして小学生のとき、実は俺のことも―――」
「キモいこと言うんじゃない!」
「はいはい、ツンデレツンデレ」
「誰がツンデレだ!」
まあそれは冗談としても、俺のことを心底嫌ってはいなかったことは確かだ。
この様子だと、むしろ逆もありえるんじゃないかな。
なのにただ周りに流されて、したくもないのに同じことをやっていただけ。
協調性の点では満点なんだろうけど。
「ほんと、不器用だよなーお前。人生損してる」
「……ひねくれてて悪かったな」
「ほんとだよ。せっかく美羽のいいとこに気づいたのに、うっかり手放しちゃったんだもんなー。あーあもったいない」
そのおかげで、俺は美羽とこういうことになれたわけですけどね。
にやつく俺を見て愛川が黙って額に青筋を立てたので、とりあえず話を戻すことにする。
「……とにかく。謝る、っていうか、お前が今更殊勝なこと言っても美羽もすんなり信じるとも思えないから、もう仕方ないんじゃね? それより、また変なこと言っちゃったらどうするんだよ」
489
:
ピーチ
:2013/08/06(火) 06:33:21 HOST:em1-114-157-74.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
……愛川くん、ほんとに損するタイプなんだね。モテるせいで←おい
てかヒナさんも寛大だよね! あたし自分いじめてた奴だったら罪悪感ナシに殴って終わるわ!((
490
:
京都出身
:2013/08/06(火) 12:34:54 HOST:zaq31fa4a0d.zaq.ne.jp
【ピーチさんのシールダス20円】
シールダスというのは昔のカードダスの仲間です。
しかし今回のシールダスは以前のシールダスとは異なり、
ピーチさんの体内から放出された汁、すなわち液体を意味します。
シルとシールをかけたシャレです(笑)
有料ですが料金は一回20円、お手頃価格でご提供致します。
業務用自販機として設置させて頂く予定ですが、
何か問題ありますか?
491
:
心愛
:2013/08/06(火) 21:01:27 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
>>ピーチ
…ヒナも、ただバカみたいに寛大なわけじゃないんだぜ?(・∀・)
愛川のことは気に入り始めてるけど、ちゃんとケジメはつけますよ!
なんと、次の次くらいで完結だよ! やったー!
このぶんだと美空編もできそうだ…!(つд`)
492
:
心愛
:2013/08/06(火) 21:01:55 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
「そう……だよな」
愛川は落ち込んだようで、声の抑揚を落とした。
しばらく氷が溶けていくグラスを見つめながら、ぼんやりと考えたあと、
「……結野はずっと、誰からも理解されずに、一人で生きていくんだと思ってた」
入学式からしばらくの間、美羽は確かに浮いていたし、孤立していた。それはもう、話しかけるのもためらうくらいに。
もし柚木園や姫宮の協力がなくて、俺も美羽に接触する勇気を出せずにいたら、ずっとその状態が続いたのかな、なんて考える。
「これでも、結野のことは本当に好きだったから。悔しいし、ムカつくし、まだわだかまりはあるけど」
言い、愛川は本当に少しだけど、ふっと笑ってみせた。
「今は、結野が日永みたいな奴と逢えて、良かったと思ってる」
好きになった子の幸せ―――って言ってもいいのかな―――を祝福する。
渋りながらも結局、あれこれと話してくれた愛川が今日、一番素直になった瞬間だった。
自分が不幸にしてしまったという負い目もあるんだろうけど、その真剣でまっすぐな思いはきちんと、俺の胸に届いた。
「悪かったよ、色々と。……って、結野にも言えたらいいのにな」
後半、複雑そうな顔をする愛川。
俺は、それを聞いて。
本日最高レベルの、満面の笑みを浮かべた。
「―――だってさ、美羽」
「…………は?」
すると。
俺と背中を向けあう形で座っていた、すぐ後ろの席の少女がスッと立ち、黒髪を靡かせてこちらのテーブルに歩いてきた。
少し気まずそうな表情。
小柄な彼女は今まで、愛川から見えないよう俺の身体の後ろにすっぽり隠れていたのだ。
動揺した愛川が椅子を蹴飛ばす勢いで、ガタンッと勢い良く立ち上がる。
「結野……っ!?」
うんうん、今日も俺の彼女は可愛いなぁ。いつにもまして気合い入れまくったゴスロリだけど。
「な……なに、その服」
「闇の装束だが、何か問題が?」
「は?」
それにしても、自分の中二病を貶した相手の前に、堂々とフリフリ白黒ファッションで現れた美羽はちょっと凄いと思う。
愛川が混乱状態に陥るのも無理はない。
「って違う! い、いつからそこに」
「……最初からだ。悪いが、話はすべて聞かせてもらった」
愕然とし、端正な顔を引き攣らせる愛川。
油断して話した今までの内容(実は美羽のことが好きだった、とか)を本人に聞かれていたとは、世間体や人の目を気にしたり、本心を隠してしまうところがある彼にとって、この上ない衝撃のはずだ。
あまりの屈辱と羞恥に俯き、わなわな震える愛川は見ものだった。
やがて、ばんっ! とテーブルに千円札を叩きつけ、
「……帰る!」
取り繕うことさえできず大股で歩き去る彼の後ろ姿を、俺はにやにや笑って見送る。
「ざまぁ」
「君は案外性格が悪いな……」
美羽に呆れたような目で見られてしまった。
「あ。誤解されないように言っとくけど、これ、提案は美空先輩だから。……俺もノリノリだったけど」
タダで今までのこと、っていうか美羽のことをチャラにしてやるほど、俺だって甘くはない。
でも、一番の弱点を遠慮容赦一切なく抉ってやったのだ。これくらいで許してやってもいいだろう。
暴力的制裁より遥かに平和的で効果的。
さすがは美空先輩、嫌がらせに関してもプロだ。……それがいいのか悪いのかは置いといて。
「やー、このアイスティー500円もしないのに、あいつ太っ腹だなー。臨時収入臨時収入」
俺は愛川の置き土産をほくほく顔で回収しつつ。
「さすがに可哀想だしお詫びのメール送っとくわ。メアドも美空先輩に聞いといてよかったー。あの人ほんと恐ろしいよなぁ……よし、と。『死ね』とか返信来そうだよねー。照れ隠し乙」
「ぼくにとっては十分ヒナも恐ろしいのだが……」
邪気眼翻訳機にツンデレ翻訳機も兼ねてるとか、俺って高性能すぎじゃない?
493
:
ピーチ
:2013/08/06(火) 23:01:48 HOST:em114-51-177-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
鬼だ! ヒナさん鬼だ!
初めてヒナさんが鬼だと思った!←
…そして愛川くんが可哀そうに思えた((
美空先輩相変わらず美羽ちゃんのためならとんでもないこと考えますね!
494
:
京都出身
:2013/08/07(水) 11:48:01 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪
作詞・たくや
【いい湯だな&さよならするのはツライけど】
ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪
ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪
ここは温泉♪さんずの湯♪
ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪
時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪
495
:
京都出身
:2013/08/07(水) 11:48:18 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチさんの曲です。お聴き下さい♪
作詞・たくや
【いい湯だな&さよならするのはツライけど】
ババアが死んだ〜♪ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならす〜るの〜は〜ツラいい〜いけど〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ピーチが逝くまでごきげんよう♪
ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いい死に顔だ〜♪いい死に顔だ〜♪
突如おばあさんがピーチの背中に〜♪
久しぶり♪久しぶり♪
ここは温泉♪さんずの湯♪
ババンババンバンバン♪ババンババンバンバン♪
いい湯だな〜♪いい湯だな〜♪
さよならす〜るのは〜ツラ〜いい〜けど〜♪
時間だよ!仕方がない!
ここは上州、草津の湯♪
496
:
京都出身
:2013/08/07(水) 11:50:10 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
>>ピーチ
ピーチさん
ちゃんと聴きなさいよ
あんたの曲なんですからね
497
:
京都出身
:2013/08/07(水) 11:56:12 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
ピーチが死んだ〜♪ピーチが死んだ〜♪
いいザマだ〜♪いいザマだ〜♪
じいさんが天国からふらりと舞い降りた〜♪
寿命だよ♪仕方がない♪
ここは温泉、さんずの川♪
ババンババンバンバン♪
498
:
名無しさん
:2013/08/07(水) 12:25:56 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
心の旅のサビ部分
替え歌メドレー
【もしもピーチさんがお亡くなりになられたら・・】
もしも許されるなら〜♪眠りについたピーチを〜♪
かんおけに詰め込んで〜♪火葬場に入れ込んだ〜♪♪
あ〜♪だから今夜だけは〜♪ピーチを見ていたい〜♪
あ〜♪明日の今頃は〜♪かんおけ〜のなか〜♪
499
:
名無しさん
:2013/08/07(水) 12:27:26 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
あ〜明日の今頃は僕は汽車の中〜♪
500
:
心愛
:2013/08/07(水) 17:58:30 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ
最終回の前の回になって主人公の新たな一面が!
…結局、愛川は損しまくってるだけだと思うw
可哀想な子なんだよ…!
でもこれでスパッと許しちゃったんで、ヒナが押しまくって友人関係築いちゃうかもw
愛川は嫌がりそうだけどね! 表面上は!
501
:
心愛
:2013/08/08(木) 20:47:27 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
「おはよ」
休み明けの教室。
入り口でうろうろしている小さく黒い影を見つけ、俺はすかさず声をかけた。
「……おはよう」
びくっとし、顔をちょっと赤らめて観念したようにこっちに歩いてくる。
あんなことがあった後では、三人と顔を合わせづらかったのかもしれない。
でも彼らがそんなことを気にするわけがなく、美羽の姿を認めるや、まず春山がアホくさい挨拶をかました。
「結野ちゃんおっはよーん! 元気ー?」
「美羽! 良かった、今日休みかと思ったよ」
ほっとしたように微笑む柚木園の隣、姫宮がにこにこ嬉しそうに笑っている。
「ゆいのん、いつも通りだね!」
蝶と薔薇をモチーフにしたレースやフリルたっぷりのゴスロリに、リボンつきのヘッドドレス。
いつも通りすぎる衣装に身を包む美羽は、戸惑いをすぐにしまうと誇らしげに胸を反らした。
「……ふん、このぼくが闇の装束を纏わなくなるとでも―――」
「思ったよ?」
「む」
口を『ヘ』の形に曲げる美羽。
ちょっと不満そうだったけれど、そう言われても仕方ないと思い直したようで。
「その……心配をかけたな」
小さい声で言った後、少し時間をかけてから顔を上げる。
「だが、もう大丈夫だ。あの件も、自分の気持ちも、全部解決した」
「……それは、良かった」
言い切る美羽の表情はすっきりと晴れやかで、憑き物が落ちたかのようだった。
……良かったよ、本当に。
「あれはやりすぎだがな、ヒナ」
「なんのことっすかねー」
ジト目を向けられたので、形だけとぼけておいて。
「……でも、あのくらいやんないと気が済まなかったっていうか。美羽に嫌な思いさせたとか、やっぱりそう簡単には許せないし」
「……は、恥ずかしいことを言う奴だな!」
「え、なんで?」
ぼわわわっと赤くなる美羽を見て、俺は首を傾げた。
俺、なんか変なこと言ったっけか。
「おーっ? ヒナと結野ちゃんがなんかイイ感じですよーっ?」
「君は余計なことを言うな!」
イイ感じ? ……ああ、そういえば。
俺は少し前から考えていたことを思い出し、手を打った。
「みんなー。ちょっと聞いてくれる?」
春山にぎゃんぎゃん噛みついていた美羽をはじめ、談笑していたクラスメイトたちが静まり返る。
……今までのクラスには悪い思い出しかなかった俺が、こんな賑やかな空間の真ん中に今立っていることが不思議で、胸がむずがゆいけど悪くない感覚で。
不思議そうにこっちを窺う美羽をちらりと見て、俺はさらに声を発した。
「そのー……ひとつ報告、っていうか」
……美羽に怒られるかもな。
でも、これははっきりさせておきたい。
俺たちの距離は、実を言えばあんまり変わってないけど。
美羽を迎え入れてくれたこのクラスになら、俺たちの新しい関係を話してもいいかなって思ったんだ。
柚木園が感づいたように切れ長の双眸をキラキラさせ、姫宮がきょとんとしてそんな柚木園を見ている。
……ざわざわざわ。
クラスが騒然とし、次第に一部から殺気が漂い始めた。
そして唐突に春山がシャウト、男子生徒がそれに続いて拳を振り上げる。
「彼女持ちはーっ?」
『我らの敵!』
「地球温暖化はーっ?」
『リア充のせい!』
「我らの悲願はーっ?」
『イケメン抹殺!』
「ちょ、待てよみんな。それじゃヒナが入らないだろ?」
「おいこらそこ」
相変わらず、団結力が嫌な方向にばっちりな集団だ。
彼らの熱い叫びを聞いて、姫宮があわあわと慌てている。
「まいちゃんどうしよう……! 彼女持ちは敵だって!」
「大丈夫だよ夕紀。そういう意味なら、私の方が狙われる可能性は高いから」
「どういう意味!?」
そういう意味だろ。……とかツッコんでる場合じゃなく。
502
:
心愛
:2013/08/08(木) 20:48:36 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp
俺は「しーずーかーに!」と再び喧騒を静めると、微妙に照れながらも声を張り上げて、
「実は俺、美羽と付き合うことになっ―――」
「待て、ヒナ」
「ぅえっ?」
変な声出た。
俺の勇気ある宣言を急に遮った美羽は、俺をじっと見上げると。
「さっきから聞いていれば、君たちは何を言っているんだ?」
「え?」
ぽかんと呆ける俺に、美羽は無情な一言を告げる。
「―――ぼくと君は、付き合ってなどいないだろう」
「……………え? …………………えええええええっっっ!?」
この状況で衝撃の事実が発覚した!
俺は恥も外聞もなく美羽に詰め寄る。
「だって、え!? 俺たち両思いじゃないの!?」
「ああ、相思相愛らしい。素晴らしいことだな」
「だったら!」
「だが、付き合おうなどと言われた覚えはない」
「そういうこと!?」
た、確かにそれを口に出しては言ってなかったかもしれないけど!
でもその場の空気とか、無言の了解とか、とりあえずなんかそういうのあるじゃん! ねえ!?
っていうか俺、今までずっと一人で勘違いしてたの!? なにこれすごい恥ずかしいんだけど!
「じゃあっ、お、俺とつ、付き合ってください……っ」
俺、予定大幅変更でまさかの公開告白である。
ライフが限りなくゼロに近づいている俺を、美羽はこれまたバッサリ切り捨てた。
「だが断る」
「なんでだよ!」
怒っていいよね!? 好きな人とか関係なく怒っていい場面だよねこれ!
むきゃーっと頭を掻きむしる俺に、美羽は平然と。
「恋愛的な意味で好きあっていて、それを双方が承知しているからといって、交際しなければならないという決まりはないだろう」
「そりゃそうですけど……そうか!?」
普通、ほとんどイコールみたいなものじゃないかな!
「って待て待て、眷属じゃなくなるってそういうことじゃなかったの!?」
「同格の存在、つまり魂を分かち合った半身同士になったという意味だ」
「あそう……」
俺はがっくりと肩を落とした。
何気に俺、今ものすごく酷い仕打ちっていうか、辱めを受けてる気がするんですけど。
「ヒナがふられてるー」
「よっ! ふられ男!」
「ちくしょぉおおお――――――っっ!?」
ぎゃはははは、と男女入り混じった爆笑。
……俺の恋は、まだまだ前途多難なようだ。
「日永ー、授業始めていいかー?」
「あれっ!? すみません!」
いつの間にかチャイムが鳴っていたようで、釈然としないまま慌ただしく席につく。
全員が落ち着いたのを確認して先生が出席を取り始め、
「―――水瀬。……森田。……結野」
「………」
「結野?」
「あ。……はい」
ぼーっとしていたのか少し遅れて、美羽が焦ったように返事をする。
すぐに俯いてしまったその表情は髪で隠れているけれど、その隙間から覗く耳がほんのり色づいていて。
……ああ、なんだ。
俺はなんとなく理解する。
……まだ時間がほしい、ってとこか。
思わずくくっと笑ってしまう。
美羽はヴァンパイアがどうのこうのと偉そうな口を叩くくせに妙に内気で、自分に向けられた愛情を受け取るのに慣れていないのだ。
なんといっても俺は、自分でも呆れるくらい気が長い。
この関係に名前をつけるのが、美羽にとって早すぎるというのなら。
いつか彼女の覚悟ができるまで、いくらでも待とう。
……まったく。目の前が眩しすぎて、終わりなんか見えやしない。
不確定で、今もこれからも、ずっとずっと続いていくこの未来。
その中でただひとつ、確かなことがあるとすれば。
「……さっきから、何をじろじろと見ているんだ」
「べっつにー?」
―――思った以上に面倒な邪気眼少女の攻略は、まだ始まったばかりだってこと、かな。
503
:
心愛
:2013/08/08(木) 20:54:44 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp
これにて『邪気眼少女の攻略法。』完! 結! です!
結局進んだのか進んでないのかな感じになりましたがきっと進んでます多分(・∀・)
ずいぶんと長くなってしまいましたが、とりあえず無事にまとめられてほっとしてます…!
今までありがとうございました!
これから、番外編だけちょろっと続く予定です(`・ω・´)
ヒナたちに幸あれー!
504
:
ピーチ
:2013/08/08(木) 21:59:15 HOST:em49-252-150-48.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
ヒナさん最後の最後でふられてるー!? 美羽ちゃん最後だよっ!?
進んでます思いっきり進みまくってます! ただ美羽ちゃん、凄い照れ隠しですな……←
美空先輩が聞いたらお腹抱えて笑い転げそうな感じだよねこれ((
505
:
たっくん
:2013/08/09(金) 00:02:02 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホのピーチさん元気ですか・・?
近々、ピーチさんストーリー作るんで期待してて下さい。
506
:
たっくん
:2013/08/09(金) 00:03:40 HOST:zaq31fa5a9b.zaq.ne.jp
アホピーチ・・?
聞いてるか・・?
シカトするなよ
507
:
心愛
:2013/08/09(金) 21:30:39 HOST:proxyag013.docomo.ne.jp
>>ピーチ
照れ隠しなんです←
確かに爆笑しそうだね美空!
ただ、笑いすぎて壁かなんかに激突しそうw
さっそく番外編始めたんでよろしくです(*^-^)ノ
508
:
ピーチ
:2013/08/12(月) 00:09:43 HOST:em49-252-7-184.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
照れ隠しだって分かるとまた可愛いんだよね美羽ちゃん!
……笑い過ぎてもちゃんと周りは見てくださいね美空先輩!←
509
:
心愛
:2013/08/12(月) 21:11:22 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ
なんかちょっとだけお久しぶりな気がしますーw
ありがとう!
照れ隠しってわかんないとただのツンツンしたキャラだけどねw
美空は周り見てても流れるようにドジるからね…(・∀・)
510
:
ピーチ
:2013/08/12(月) 21:50:58 HOST:em114-51-39-50.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
久しぶりだよね! また三日四日くらい来れなくなるけど!←
ツンツンしてても可愛いってどういうことですか美羽ちゃん!
流れるように……確かにそれじゃ笑うしかないよね…?((
511
:
たっくん
:2013/08/13(火) 14:58:57 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
【ピーチさんが田代まさしさんを救うスレッド】
ピーチさん・・もし貴方が本当に人間としての心を持つ者
あるいは人の気持ちを理解できる人間なら、
私の頼みを聞いて下さい。
依頼内容は『田代まさしさんを救う』です。
ピーチさんにお願いがあります。
田代さんのYせつ行為に耐えてあげて下さい。
田代さんが芸能界に復帰する方法はただ一つ・・
少女に思う存分イタズラをさせてあげる事。これ一点に尽きる!
問題なのは、誰にやらさせるかです。
自ら希望する少女はまずいないでしょうし・・・。
そこで思い出したのがピーチさんです!
こうなったらピーチさんがソッセンしてやらせてあげるしかないと思います。
ピーチさんの身体を田代まさしさんに授けてみてはいかがでしょうか。
貴方を犠牲にする事で田代まさしさんが救われるなら安いもんです。
というわけで宜しくお願いします。
不正行為を認める他ないです。
そうでもしなければ彼のストレスは積もる一方
512
:
たっくん
:2013/08/13(火) 15:06:56 HOST:zaq31fa533d.zaq.ne.jp
【意外にもピーチさんが田代まさしさんを救ってしまうスレ】
ただしピーチさん、これだけは約束して下さい。
田代まさしさんに何をされても、田代さんがどんな行為に出ても
我慢して耐え抜いて下さい。
どうか彼を訴えるのだけはカンベンしてあげて下さい。
もし訴えたらピーチさん、一生恨みますからね。
4 名前:たっくん:2013/08/13 15:05:00 IP:49.250.83.61
もしピーチさんが訴えたら
フリダシに戻ってしまって、
私のせっかくの計画が全てパァ!になってしまうので
宜しく!
513
:
心愛
:2013/08/13(火) 19:26:15 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
>>ピーチ
それは残念だ!
ここあはちまちま更新してるよー(*^-^)ノ
514
:
ピーチ
:2013/08/14(水) 00:54:48 HOST:em1-114-0-148.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
お盆の間だけ出かけるからコメも更新もできないのです←
でも読みたいよー! ここにゃんの神文よみたいよー!
515
:
心愛
:2013/08/14(水) 19:15:13 HOST:proxyag003.docomo.ne.jp
>>ピーチ
残念ながらそのご期待には応えられなそうだよー!
お出かけか!
ごゆっくり……といいたいとこだけど早く帰ってきてくれたら嬉しいな(チラッ
516
:
ピーチ
:2013/08/19(月) 21:40:43 HOST:em1-114-111-160.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>
応えて欲しいけど我儘は厳禁!←
ただいまー! たぶん(?)早く帰ってきたよー!((
517
:
たっくん
:2013/09/12(木) 10:55:10 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
>>516
ピーチさんおはようございます。
カレーを食べてカレーを出すスレです。
念の為に書き込みしておきますね
【カレーを食べてカレーを出すスレッド】
ピーチさん&千春さん、おはようございます。
昨日、カレーを食べた後は必ずカレー(廃棄物)が下から出ると申しましたが
今だに出ません。もうしばらく時間がかかりそうです。
一応念の為に、現状をお伝えしておきますね。
心配されてる方もおられると思うので・・。
現代は情報社会ですからね
何でも情報を入手しておいて損はないと思いますよピーチさん&千春さん♪
次回はピーチ&千春&エルぼんの
無能スレッド設立する予定です。
お楽しみに
無能に生きた小説家たち
3 :たっくん:2013/09/12(木) 10:53:50 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp 【ダイアナ・ストーリー】
突然ですがこれから貴方達の事をダイアナと呼ばせてもらって宜しいでしょうか。
理由は・・貴方達の身体の一部にウンコが出る穴があるからです。
ありますよね?ないとは言わせません。別サイトで女性に質問しました。
ウンコ→大(だい)→ウンコを出す穴→大の穴→だいのあな→だいあな
それを片仮名で表記しますと、ダイアナ〜♪
とまあこのようになります。
品のない言い方をするとケツ穴なんです。
さて・・ここで問題になってくるのは
何故私がこの発言を避けたか・・?御存じですか?
別サイトでこの話したら
ある人が『それだったら最初からケツ穴って言えばいいじゃないか。何故遠まわしに言うんだ?』なんでおっしゃってました。
わたくし下品な発言はあまり好まない性格でして・・
こう見えても結構、上品なんですよ(笑)
だからあえてケツ穴とは言わなかったのです。
大穴(だいあな)のほうが上品かな〜なんて思いまして
518
:
たっくん
:2013/09/12(木) 11:01:08 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
ピーチさんは肛門およびオマ●コが他者より大きいので
大根一本入ってしまう。実験したわけでありませんが、
私はそう確信しています。
これほどスケールの大きい女性、大の穴(だいのあな)に相応しい人物を私は知りません!
まさにダイアナですねピーチさんは
ついでに、千春とエルぼんも
519
:
たっくん
:2013/09/12(木) 11:09:40 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
貴方達が言いたい事、私にはよく分かります。
つまり、私にカレーを食べるな!とおっしゃりたいのでしょう?
でもそんな事、貴方達に言われる筋合いはないです。
余計なお世話ですよ。
カレーを食べる食べないは私が決める事であって
君らが決める事じゃない!
そしてカレーを下(肛門)から出すのも私の勝手ですよ
520
:
たっくん
:2013/09/12(木) 11:41:39 HOST:zaq31fa4b03.zaq.ne.jp
世間のグルメマニアの方々に一言・・・
食べる話ばかりじゃなくてたまには『出す』話もしましょうよ。
いくら料理好きだからと言っても食べっぱなしじゃいけませんよ。
廃棄物を出さないと
食後は確実にウンコが出ますからね間違いないですよこれは
それはぜったい避けられない宿命です
宿命から逃げては駄目なんですよ皆さん
だからたまには出す話もしましょう。
カレーを食べた後は必ずカレーが出る
常識です
食べて終わりじゃないんです。
トイレへ行って下から出て、はじめて間食なんです。
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