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―ヤサシイコト―
31
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 16:31:27 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
――――
「…っで、お前いつからこんな野郎を好き好むようになったんだ?」
玄次郎のところまで来た、紫呉と影楼の二人。 そしてここまでのあらすじを話した直後に玄次郎から返ってきた言葉がこれである。
『ほざけ。儂は元々普通ではないものに興味があるのだ』
悪霊退治にほとんどの者が出払い、今この場には紫呉、影楼、玄次郎の二名しかいない。 そんな中で、玄次郎と影楼は小さな口喧嘩をしていた。
「俺はこんな奴と契約しても良いこと何ざ一つもないと思うがな」
玄次郎は困り果てた顔になりながら、頭をかく。
『別に貴様に議論される覚えはない』
「契約するかどうかは俺の決まることだ!!!」
バチバチと二人の目から火花のようなものが出てくるのではないかと思うくらい、二人は睨み合った。
「………お前ら、どっからどう見ても俺の事シカトしてんだろ」
そんな二人に対して呆れながらツッコミを入れる紫呉。
「今はお前なんかに構ってられないんだよ!お前はどっか行ってろ!!」
玄次郎は顔だけを紫呉に向け怒鳴る。
「…………ヘイヘイ。んじゃ俺はどっかに行くよ…」
「ん、あぁ…」
いつもなら言い返してくる紫呉が、今日は珍しく何も言い返してこない。
『待て、紫呉!今は我々と離れるな。いつ悪霊が襲ってくるか分からんのだぞ!!』
どこかに向かおうとしていた紫呉の肩を掴んで影楼はそう言った。 確かにその通りだ。 いつ先ほどの悪霊が来るかわからない。 だが、
「んなの、さっきのライフル持ってたアンちゃん達に任せとけばいいだろうが。俺はもうこんな事に首突っ込みたくないんだよ」
もう疲れまくりだ。 目の前に化け者が現れるは、変な奴に契約しろとか言われるは、親代わりの男にアッチ行ってろと説教かまさせるは、もう散々な一日だ。
『……一体、貴様はいつまで逃げるつもりだ…』
32
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 19:25:19 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
突然の影楼の言葉に、紫呉は目を見開く。
「何のことだ。クソガキ。…喧嘩売ってんのか?」
ギロッと横目で影楼を見ながら紫呉は呟く。
『現代の者に喧嘩を売ってどうする。儂はただ単に知りたいのだよ、人間でもない悪霊でもない者が必死になって逃げる理由をな…』
「だから…!!」
紫呉はいたって冷静な影楼の服の胸ぐらを掴む。
「何のことだって聞いてんだよ!!」
玄次郎が必死になって止めるのも聞かずに、紫呉は怒鳴り散らした。
「いつまでも大人ぶってんじゃねぇよ!クソガキ!!俺が逃げてるだぁ!!?一体何からだよ!!!?」
『知らぬは、腑抜けぇ!だからこそ興味が湧くと言っておるのだ!!』
影楼もムキになって言い返す。
「いい加減に………」
紫呉は胸ぐらを掴んだ手とは逆の手で拳を作り影楼に向ける。 だが、紫呉の拳が影楼に顔にぶつかる寸前、ものすごい物音が施設中に響き渡った。
33
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 19:54:36 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
音は、施設員がくらす寮から聞こえた。 3人は音のしたほうに瞬時に顔を向ける。 そこには、先ほどの悪霊、いや先ほどより大きくなっている悪霊が立ち込めた砂埃の中に居た。
「…っな…?!(何だあの大きさは?!!」
『先ほどより巨大になっているだと!!?(冗談であろう!?悪霊が巨大化するのは、近隣で死人が複数出た場合だけのはず…』
「さっきの化け物かよ、アレ!?(河南たちはどうなったんだ?!」
3人同時にそれぞれの考えを浮かばせる。 しかも全員が考え終えた瞬間何かが、砂埃の中から3人のところに飛んできた。 それを最初に何か、見破ったのは玄次郎。
「河南、水滸、一体どうした?!」
そう、砂埃の中から飛んできたのは、額から赤い血を流す添と水滸たちだった。
「スんません…。あともうちょいぐらい食い止められると思ったんスけど……。行き成りあいつが巨大化して…」
添は四つん這いになりながらも立ち上がろうとする。 そんな添に、玄次郎は「動くな…!」と釘を指す。
「おい、河南!どうし「紫…呉!お前は逃げろ…。あいつは…お前の命を……狙ってんだ!早く…逃げろ!」
添は紫呉の言葉をさえぎり、息絶え絶えになりながらも、そう叫んだ。
『…そ、れに…私達は……まだ十分…戦えん……のよ…!!』
水滸も口から出てくる血を拭いながら立ち上がる。
34
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 20:06:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「な、に言ってんだよ…(みんな俺のために」
紫呉は影楼の服から手を離し、添と水滸を見る。
「何で、そんなボロボロになってまで…(俺のせいなのかよ」
ドンドン紫呉の目が見開かれる。
(なんで皆俺なんかのために…、こんなに怪我してんのに…、皆こんなにボロボロなのに…)
目が滲んできた。 何も考えられなくなってきた。
『………紫呉よ、これはお前のせいではない…』
影楼が紫呉の顔を覗き込んでくる。
『…何ては言わない!』
そしてハッキリ返ってきた言葉。
35
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 20:27:32 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
『これは全て貴様のせいだ、とも言わない。だがこれだけ言っておく…』
影楼は手を腰にあて、胸を張る。
『このまま無力で死ぬこと等ない!!!』
紫呉はその言葉を聞いて先ほどよりも目を見開く。 そして、すぐにうつむく。
「紫呉…」
玄次郎は、眉間にしわを寄せながら紫呉の名を呼ぶ。
「…親父、親父は俺の力は優しいことに使えって言ったよな……。俺、未だにどんなことが優しいことなのか分かんねぇ。でも…」
紫呉は手を地面につけながら立ち上がる。
「皆を守ることが優しいことだってんなら、俺はお前と契約する」
36
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 20:43:28 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
『…ッフ……。よく言った紫呉。…手を出せ』
影楼は決断をした、紫呉に手の平を見せる。 紫呉は、真剣な顔になり、影楼の手に自分の手の平をくっつける。
『後悔するなよ…』
「今更…」
二人の会話が終わった直後、パァァと二人の手が輝き始めた。
その輝きが眩しく、玄次郎は目を閉じた。
37
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 21:12:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「ギシャァァァァァァァァ!!!」
悪霊は施設寮を踏み壊しながら、悲鳴のような叫びを上げる。
しかも、寮を壊しただけじゃ足りないのか、悪霊は施設の大広間を破壊しようと手を伸ばす。 大広間には、少ないとはいえ数十人の施設員たちがいる。
悪霊はそんなことお構いなしに、皮のない手を拳に変え、赤い屋根の大広間に投げ離した。
「…司令官!大広間には…!!?」
「……させるか…」
添のざわめきに対して、紫呉の優しい声が返された。
ゴゴゴゴゴゴッと音を立てながら、悪霊の拳は大広間に刻一刻と近づいていく。 そして、あと一瞬で大広間が潰されるという瞬間、悪霊の腕が消えた。 いや切り落とされた。
「………司令官…。一体どうなったんスカ…」
その光景に目が追いつけず、添から疑問の声が放たれる。
『……影楼と、あの逸れ者よ。一瞬だけ、だけど感じた。影楼の生気とあの子の生気が、混じった生気が…』
水滸は腕を抑えながら巨大な悪霊を見る。 そしてもう一つ、大広間の屋根に片膝をつけながら座る紫呉の姿。 その紫呉の手には、形のはっきりしない黒い刃が握り締められていた。
38
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 21:26:28 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
紫呉は握っている手の力を緩めると、刃は紫呉の影の中に消えていった。
「あれが、第1戦力の力……」
添は唖然とする。 能力が影ということは知っているが、こんな能力だとは思わなかった。
『…あんな、逸れ者が影楼を受け入れる器を…』
水滸も唖然とする。 紫呉にはあったのだ、神を影楼を受け入れる器が。
「…それだけじゃねぇ、あの右腕の輝き。ありゃぁ、どっから見ても……」
玄次郎も唖然としていたが、痛みのあったはずの右手の甲が、赤く輝いていた。 玄次郎、添、水滸の3人はその輝きを見て一言
『覚醒…」
と呟いた。
39
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 21:49:55 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「……………」
紫呉は静かに立ち上がり、悪霊を見つめる。 ヒュゥゥゥ―…と横に流れる夜風が頬に冷たくぶつかる。
紫呉は何も言わず、ただ黙って悪霊を見つめるだけ。 悪霊は切り落とされた腕の付け根を見つめる。
「卑劣なもんだな、神様ってんのは……」
ヤッと発された言葉。 紫呉は自分がいた場所から少し前に歩を進める。
「てめぇらを、そんな姿に変えちまってよぅ…」
紫呉の足はどんどん悪霊に近付いていく。
「だがなぁ、同情は…」
そう言いかけた途端、悪霊はもう片っぽの腕で紫呉を捕まえようとした。 だが「ザンッ!!」という一音で、悪霊の腕は無残に地面に落ちた。
「…しねぇ!!」
紫呉は、その言葉が合図でその場から一瞬にして悪霊の首元に飛び移った。 手には先ほどの刃が握られている。
「その憎しみ、地に落ちろぉ!!!!!」
そして、また「ザンッ!!」という音が響き、悪霊は黒い砂となっていった。
40
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 22:10:17 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
――――
「死者5名、怪我人27名。施設員の中に怪我人、死者はいませんでしたが、今でも動揺があおられています」
日がもうすぐ開けるという時間になって、玄次郎に現状報告がされた。
「…紫呉はどうした?」
玄次郎は報告をした少年に聞く。
「第1戦力、影楼と共に第5戦力、水滸とその契約者、河南:添と共に救護テントの中で寝てます」
「そうか…。アイツ等には今回迷惑かけっぱなしだったからな。起きるまで寝かしといてくれ」
苦笑しながら返す玄次郎に、少年も苦笑しながら「っは」と簡単な返事をしてどこかに去っていった。
(…よく頑張ったな、バカ息子)
今度はウッスラとだが、心から笑って昇りくる太陽に目をやった。
No.3 紫呉の強き決断
to be continued…
41
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 22:13:35 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
No.4 第2の人生
42
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 22:45:55 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「いいか、絶対暴言吐くんじゃねぇぞ」
一体何度この言葉を繰り返されただろうか。 紫呉は頭を痛くしながら「ヘイヘイ」と軽く返している。
『そこまで言わずとも、紫呉は分かっておると思うぞ?』
紫呉が頭を痛くしている本当の元凶、影楼が紫呉の肩で肩車の体制で話しかけた。
今から3日ほど前、紫呉と影楼は契約という名の鎖で繋がれてしまった。 それが夢ではない証拠に、紫呉と影楼の右手の甲には▽と△が重なり合い6角形の印を円で囲んでいる印が付いている。
添がいうにはこの印を「契約印印―ケイヤクインジルシ―というらしい。
「……なぁ、影楼。いい加減降りてくんねぇか?重い…」
『契約した以上、あまり位置をおいてはならん。印印が薄れ、契約がはき状態になってしまう』
だからといって、肩車はないだろう。 何て思ってはいるが、口には出さない紫呉。
まぁ、そうこう言っているうちに着いたのは大広間のドア前。 そこに着くと、玄次郎は携帯を取り出しどこかにかけ始めた。
そして数分ほど経つと、鍵の無いはずの大広間のドアが「ガチャッ」と音を上げた。 その音を聞いた玄次郎は大広間のドアを前に引き、大広間の中に入っていった。
43
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 23:19:13 HOST:220.24.115.211
大広間の中にある物は、縦長の机と大量の椅子。 祭り事があると、いつもそこで宴会が開かれる。
が、今回、紫呉の目に入ってきたのは大広間の面影など全く寄せ付けいない場所。 そこは、大広間の何倍もある場所で、中には大画面付きのパソコンが大量に並べられ、縦、横50mはある部屋がズラーと有る所。 木材タイルだった床は鉄タイルに変わり、ロウソク性だった電気はエルイーディーの電気に変わっている。
ここまで変わるとさすがに気持ち悪い。
「…んだ、ここ?」
『我らの本拠地と言った所だ。九神幸の皆はここで集められた』
なぜか少々怒りガチの影楼。 ここに、いい思い出はないらしい。
「にしても、スゲェとこだな。大広間の面影なんかありゃしな「しぃ〜〜ぐぅ〜〜れぇ〜〜くぅ〜〜ん!!!」あぁ゛?」
何か、ものすごい女の声が聞こえ、紫呉は声のかけてきた女を見る。 女は紫呉の遥か前から手を振りながらこちらに走ってきた。
「あ、あれって栞理―シオリ―さんじゃ……って、ブゴエェ!!!」
走ってきた女、雨宮:栞理―アマミヤ:シオリ―は紫呉の腹目掛けて飛んできた。 そして命中。 そして、後ろに二人とも飛んでった。 危機を感じた、影楼は即回避。
「久し振り、紫呉君!!3年ぶりだよね!」
栞理は紫呉の腹に抱きつきながら喜びの声を上げる。
「…ひ、久しぶりッス。栞理さん……」
伸びかけ紫呉は、痙攣しながら栞理に簡単な挨拶を返す。
44
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 23:36:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
―――
「へェ〜。栞理さんも九神幸の一人だったのか?」
紫呉より1歳年上の栞理は、玄次郎と紫呉、影楼を連れ、会議室の中で話していた。
「ウン!私の契約者は『氷冷―ヒョウレイ―』っていってね、氷を操る神なの。今もここにいるんだけど人見知りだからあんまり顔出さない子で…」
栞理は笑顔で返す。 ここまでの話し方から、紫呉に下心があるのは見え見えなのだが、本人は全く気づいてない。
「にしてもすごいよねェ。九神幸で一番強い影楼と契約しちゃうんだから!」
褒める栞理に対して「そんなのことナイっすよ…」と頬を赤らめながら紫呉は言う。
「そういやぁ、ほかの奴らはどうしたんだ?今日大歓迎会するとか言ってなかったか?」
玄次郎は腕組をし、会議室の壁に腰掛けながら栞理に聞く。
「みんなソロソロ来ますよ。霞處君―カオルくん―なんて、顔には出さなかったけど、とっても喜んでましたし」
ニッコリと笑いながら答える栞理の言葉に対して、紫呉は一つ聞き覚えのある者の名があった。
45
:
鳳凰
:2012/09/01(土) 23:58:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「霞處って、真快:霞處―シンカイ:カオル―のことか?!」
紫呉が驚きの声で言うと、「ウン…」と栞理は静かに返す。
真快:霞處。 その男は、茶髪で格好の良い男だ。 いつも冷静沈着で容姿端麗なところが特徴の男だった。 紫呉が文字もまともに書けない頃から一緒にいたせいか、今でも兄のように慕っている。 そんな霞處は今から4年ほど前に就職がどうのこうのでどこかに行ってしまった。 まさか、こんなところで懐かしい者の名を聞くとは考えてもみなかった。
「九神幸、第2戦力『闇世―アンセ―』と契約したの。頭もいいし、体力だってある、少なくとも、今の九神幸は彼が居ないと始まんないて感じなの」
苦笑混じりの突然発言。 紫呉はその言葉を聞いて笑顔がこみ上げてきた。
「…そりゃあ、良かった」
うつむきながらも紫呉はそう言ったが、笑っていたことがすぐに分かった。
『…儂は、あの者を好んだ事はないがな』
影楼の方は、また肩車してもらい、紫呉の頭の上で愚論を履く。
46
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 10:52:33 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「んだぁ、お前、霞處のこと嫌いなのか?」
『儂が嫌いなのは、真快ではなく、闇世の方だ。アイツとはどう足掻いても親しくなれるとは思わん』
機嫌を損ねたのか、影楼はソっぽを向いてしまった。 そんな影楼に深いため息をつく紫呉。
「…ツーかよく考えたら、九神幸の奴らってほとんど元施設員たちじゃねェのか?」
紫呉はフト思ったような顔になる。
「もともと、竜泉子供施設所は私たちみたいな人たちを育てるところだからね…」
栞理はうっすらと笑う。 紫呉はまたもその言葉に疑問を抱き、聞き返そうとしたがその前に「ごっメーン、オックレター」と声がし、会議室のドアが開く音がした。
「っあ、きた、きた。確か紫呉君は初対面だったよね。この人…」
『我が、風光―フウコウ―の契約者、街風:満生様だ』
「何、勝手に出てきてんのよ風光」
栞理の話をさえぎって、出てきたのは九神幸の一人であろう男だった。 男は風光と言うらしい。 風光は長髪で、白髪の髪を後ろで一つ結びをしている。 着ているのは中国の韓風映画なんかで、主役が着ているような服の両袖を切り取っているようなもの。 風光自体は、格好の良い青年だが、一瞬だけしか見ないとどこかの不良に見える。
『何を言うか、契約者!我には契約者を死守するという宿命が「言っとくけど私にとっては、アンタが一番の危険物資だから」
キッパリと爆弾発言を言い放った満生。 満生の方は短髪の肌白女。 短いスカートをはいているが、下にスパッツをはいているのが見え見え。 こっちの方は一瞬だけ見ると、男に見える。
『ヒドイではありませぬか、契約者「エーと、アンタが、勝神:紫呉?私は九神幸、第4戦力、風光の契約者。街風:満生。よろしく」
自分の話を二度もさえぎられたせいか、風光は会議室の隅で縮こまってしまった。
「あいつ大丈夫か?」
「あの子は強いけど、心がもろいのよ」
47
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 12:06:49 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
――――
『本当に貴様という者は、寝ても覚めて契約者好きよのぅ…』
あれから数分が経った、会議室。 そこでは今、影楼と風光が雑談していた。
『ほざけ、第1戦力。主には関係なであろう…』
会議室の隅で風光は三角座りをしている。 まるで不貞腐れた子供のようだ。
影楼は、『貴様ウザイのぅ』と言い残して、紫呉たちの座っている机のところに歩いて行った。
「へェ〜。紫呉って今年で17なんだ。んじゃ高校通ってんの?」
会議室にある柔らかそうなソファーにドップリ腰掛けながら満生はゆっくり発言をする。
「いや高校に入ってねぇ。ツーか、行っても学校来んなって言われるし…」
九神幸の本部に来て数十分。 最初は戸惑いしかなかった紫呉も今となっては落ち着いて喋れるようになった。
「こいつは不良っ子だからな。一体誰に似たんだかなぁ?!」
玄次郎はクシャクシャと乱暴に紫呉の頭をかく。 本人は撫でているつもりなのだが。
「親父、鏡見せてやろうか?!!」
「言うようなったじゃねぇか、クソガキ!」
今度は両手で紫呉の頭を撫で回す。 「イっテーよ!」と紫呉は文句を散らすが、嬉しそうにも見える。 まるで本当の家族だ。
「…………全く変わっていないな、紫呉坊主…」
そんな中、会議室のドア付近から聞こえてきた声に、紫呉は顔をそちらに向ける。
「か、霞處!!!」
48
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 12:58:45 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
そう、そこに居たのは、真快:霞處だった。
「久し振りだな、4年振りだから、お前もう17か…」
霞處はトコトコと紫呉の方に歩きながら呟く。 紫呉も霞處の方に歩み寄ろうとした、がその前に
『儂とも久方じゃのぅ。……あの臆病者は姿を現さぬか』
と、影楼が身を乗り出した。
『…何を申すか、隠れ蓑。我が、貴様ふぜいに恐れを抱くとでも思ぅたか…』
影楼の挑発に乗ったのか、霞處の後ろから腰まではある黒髪をなびかせた気品高そうな男が顔半分を隠すお面をかぶって現れた。 特に特徴のない真っ黒な服を着ているのが十分特徴になっている。
『何をほざくか三下。ビクビク怯え契約者の後ろに隠れておったくせにのぅ』
『貴様の目は節穴のようだな。我がいつ契約者の背後に隠れたというのだ』
何故か口喧嘩をはじめる、影楼と闇世。 それを「意味わかんねー」と言いながら見つめる全員。
「…闇世、影楼と会うたび喧嘩するのはやめろ」
「てめぇもだ影楼。いきなり喧嘩すんなよ!」
その二人を止める霞處と紫呉。 しかし二人とも一向に止まる様子はない。
『大体、貴様、いつもそんな面被りおって!どこからどう見ても怖がりの赤子にしか見えぬは!』
『何をほざくか、ガキが!われより10cmも小さき貴様に赤子などと言われてたまるかぁ!!』
二人はものすごい音をたて額をブツケ合わせる。
『『殺るかぁぁ!!!!??』』
「てめぇらいい加減にしやがれ!!」
49
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 16:39:46 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
――――
『『…スマなかった…』』
紫呉の怒りが爆発し、頭にタンコブを作った、影楼と闇世。 二人とも頭をさすりながら感情のこもっていない謝罪を放つ。
「ちゃんと謝る気がねぇなら土下座っつったよなぁ…」
『『申し訳ありませんでした!!』』
紫呉の一言で二人の謝罪が丁寧なものに変わる。 これは紫呉が非常に恐ろしい顔で言ったせいか、それとも土下座などしてたまるかというプライドなのかは、皆知るよしなどない。
『主の契約者は非道者だ……!』
『偶然だな儂もそう思う…!』
「何か言ったか、ガキども……!」
『『何も言ってません…!!!』』
ギャグだギャグ。 見ていた者は皆そう思うのであった。 「…っタク」と紫呉は呟きながら頭をかく。
「こりゃぁ、すごい光景ねぇ…」
『同感だ。契約者』
やっと気を取り直した、風光はソファーに座る満生の隣に立つ。
『そう言えば、氷冷はどうなったのだ。まだ顔を出していないようだが?』
満生の隣のソファーに座る、栞理に風光は聞いた。
「まだ実現化してないんだ。いい加減人見知り、直して欲しいんだよねぇ」
最後に「ハハハ」と付け加えて氷冷の話は打ち切り。
50
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 17:23:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「っお、もう皆来てんじゃねぇか…!」
またも会議室のドアが開き、数人の者たちが入ってきた。
「!?……河南…!」
その中に一人見覚えのある男、添が居た。
「ッヨ!」
添は片手を上げ会議室に堂々と入ってくる。
「お前、もう、怪我いいのかよ?!」
「ったり前だろ。あんな怪我なり慣れてんだよ」
一体どんな生活を送っているのだという疑問は他所に置く。
「……ツーか、よく見たら見覚えのある奴、他にもいるじゃん」
紫呉は他の物達を見て喜びのような声を上げる。
「ひっさしぶりだなぁ、ガキンチョ」
入ってきた者の一人が紫呉を見るなりそう言った。
「誰が、ガキンチョだ!…って、須黒!!」
紫呉は自分を「ガキンチョ」と言った男を見るなり、男の名を口にした。 男の名は、城院寺:須黒。 髪は、紫呉と似ていてツンツンヘアー。 色は天然らしいが天然に見えない紫。
「お前も九神幸だったのかよ。…なんか俺ものすごく心傷ついてきたんだけど…!」
紫呉は一人そう言いながら心だけ脱力する。
51
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 17:44:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
―自己紹介1―
「…えっと…僕……九神幸の…第9戦力……草扇―ソウセン―の…契約者で……源本―ミナモト―…弘也―コウヤ―……って…言います……」
気の弱い青年、弘也は聞こえるか聞こえないかの微妙なボリュームで自己紹介をするが、紫呉には全く聞こえない。
『………己自、草扇…』
そして、弘也と契約をした神であろう、少年、草扇もまた微妙な声の大きさで自己紹介をする。 草扇は太い包帯で顔を隠し、白い着物を乱暴に着こなしている。 髪も変わった色で緑。
「…ゴメンこの二人今なんツッたの?」
口の横に手を当て、添の耳元で聞く。
「契約者の方が、源本:弘也―ミナモト:コウヤ―。神の方が草扇―ソウセン―。二人とも気が弱いんだか、喋りたがらないんがかで、何も言わねぇんだ」
「あ、ソウ…」と言いながら紫呉は顔を弘也らに向けた。
52
:
鳳凰
:2012/09/02(日) 18:03:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
―自己紹介(?)2―
「…誰かと思えば、てめぇ」
紫呉は弘也の次に出てきた男を見て愕然とする。 男は片手に携帯を持ち、ゲームをしている真っ最中。
「ん、あぁ、お久…」
男は目を一瞬だけ紫呉に向け、すぐに戻した。
「やっぱ、何にも変わってねぇな、宇宙―ソラ―…!」
男の名は、築村:宇宙―ツキムラ:ソラ―。 紫呉とは同い年の男。 ゲームや遊びが大好きで、オセロやトランプ等は負けたことがない。
『築村よ、毎日遊びばかりしていると、イザという時に動けませんぞ!』
そんな宇宙に注意をかける、男は即紫呉に顔を向ける。
『自分は、築村の契約神、火炎―カエン―と申す。階級は第8戦力だ』
こっちの方はハッキリしている神だ。 火炎は、綺麗な赤い髪をした男で、片目眼鏡をしている。 着ているのは無性に袖の長い着物。
「宇宙は喋る気なしかよ!(ホンッとウゼェな、このゲーオタ…」
53
:
鳳凰
:2012/09/03(月) 18:52:36 HOST:i125-203-243-6.s41.a018.ap.plala.or.jp
―自己紹介(?)3―
「次は俺なぁ!ツッテモそう説明しなくてもいいだろ?」
次の自己紹介者は須黒。 こいつは施設出た頃から何も出ていない。
『そんで、僕がこの人の契約者、雷電―ライデン―言うねん。ヨロシュウ』
須黒の肩に手をかけて笑いかけてくる少年、雷電。 自己紹介の言い方から、関西弁であることは理解できた。
(神様って、喋り方みんな違うなぁ……)
これは紫呉が一人だけ思った事。
54
:
鳳凰
:2012/09/03(月) 19:38:43 HOST:i125-203-243-6.s41.a018.ap.plala.or.jp
―自己紹介4―
「っで、アンタが最後か?」
会議室に来た者の中で唯一喋っていない男に、紫呉は話しかける。
「………御神:當真―ミカミ:トウマ―」
男、當真は会議室の壁に背凭れながら、簡単な自分紹介。
パッと見は格好の言い青年だ。 綺麗な茶色の髪は首下でキッチリそろえてある。 肌は白と言うよりは日焼けした様な、微妙な小麦色。
『…私は、己奴の契約者、光玥―コウゲツ―だ。以後宜しくだ』
當真と似て、あまり喋りそうでもない青年、光玥は口まで隠す襟付きの服を着て、無性に袖だけが長い着物を羽織っている。 しかも、その服は腹の部分だけ無し、という、なんとも気風を乱すものを見ている。
「え、え〜と。その宜しく……」
紫呉は二人に手を伸ばす。 すると
『近寄るな、下種野郎』
と二人にそのまま返された。
55
:
鳳凰
:2012/09/04(火) 19:52:13 HOST:i125-203-243-6.s41.a018.ap.plala.or.jp
――――
「…あれ、そう言えば藤乃瀬―フジノセ―さん居なくない?」
そう言ったのは満生。 その一言を聞き、皆が「そう言えば…」と口裏を合わす。
紫呉は「藤乃瀬…?」と一番近くに居た須黒に聞きかえす。 「あ、あぁ…」と須黒は、我に帰ったような顔になりながらも少々くらい顔になる。
「藤乃瀬:琴吹―フジノセ:コトブキ―。正真正銘の女なんだが、チトあの人はきついからな…」
「フぅん。…なんか、名前すげぇな…」と紫呉は笑いながら返した。 この名を聞いて女と言うのは少々腑に落ちない。 その前に人の名である事に驚きだ。
「……藤乃瀬なら、自己任務中だ…」
そう言ったのは當真だった。 自己任務中、つまり単独行動で勝手に任務をしているという事だ。
「たくあの勝手野郎。他の奴の身にもなれっテンダヨ」
クシャクシャと頭をかきながら苦情を漏らす玄次郎。
56
:
鳳凰
:2012/09/04(火) 20:12:03 HOST:i125-203-243-6.s41.a018.ap.plala.or.jp
――――
「紫呉クゥ〜〜ン!」
九神幸本部の自販機前。 赤い低めのソファーに座り片手に缶コーヒーを持った紫呉は何やら考え事をしている。
そんな紫呉の両目に栞理は手をかけた。
「………あぁ゛?」
「だぁ〜れダ!!」
子供の好例ゲーム「私は誰でしょう?」。 だが、はっきり言ってこんなもの、声の主で相場は誰か判断できる者だ。
「……栞理…さん…」
栞理は「ピンポ〜ン!!」と言いながら紫呉の目から手を離し、自分の顔を紫呉に向ける。
「ドッしたの?難しい顔しちゃって」
栞理は紫呉の前のソファーに腰を落とし、紫呉と顔を向き合わせる。
「いや、何か、ここの人たち面シレェなぁと思ってよ」
ゴクッとコーヒーを一飲みし、紫呉は呟く。
「面白い?」栞理はは咄嗟に聞きかえす。 その言葉に「あぁ…」と返す紫呉。
57
:
鳳凰
:2012/09/07(金) 20:12:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
「俺、高校行ってねぇから、こう言うのどう言って良いのか分かんねぇけど…。何かおもしれぇなぁと思ってよ」
紫呉は少し虚空を見つめる。 そんな紫呉を見て、栞理はニコッと笑ってみせた。
『儂は、そうは思わんがな』
「自分の意見言う前に、俺の肩から降りろ」
全く、コイツは…。 そう言いながら自分の肩に座っている影楼を見上げる。
「フフ…。仲良いのね、二人とも」
『そうは思わねぇ」
栞理の発言に影楼と紫呉の反発発言が飛び交った。
(これを仲が良いと言わずなんて言うのかしら…)
また「フフッ…」と笑をこぼし、小さながらも口喧嘩を始める二人を優しく見つめた。
No.4 第2の人生
to be contiinued…
58
:
鳳凰
:2012/09/08(土) 08:39:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
No.5 自分の覚悟
59
:
鳳凰
:2012/09/09(日) 09:32:31 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
夜のビル裏に薄い月明かりが差し込む。
そこには、倒れている数人の男と黒い漆黒の長髪をした女が居た。
女は、倒れながらも四つん這いになり立ち上がろうとする男たちの腹を蹴っていく。
「……クク…」
女は不気味な笑だけを残し、倒れ込む男たちを置きどこかに去っていった。
60
:
鳳凰
:2012/09/09(日) 09:47:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
――――
竜泉子供施設所の施設員寮前のドア付近。 そこには紫呉と影楼の二人が暑そうに座っていた。
「暑いな…」
『あぁ、ものすごく暑いのぅ…』
もう9月に入っているというのに、ものすごく暑い。 残暑にしてはキツすぎだ。
「いつまでこうやってれば良いんだろうな…」
『お前の義父が来るまでだ…』
影楼が言い終えると沈黙が走った。 何故、この二人が紫呉の義父、基、玄次郎を待っているのかというと……。
61
:
鳳凰
:2012/09/09(日) 14:53:06 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
―数分ほど前―
「いいか、お前は九神幸の中で最も強いと言われる影楼と契約したんだぞ」
大広間の椅子に腰掛ける紫呉と影楼に、同じく椅子に腰掛ける玄次郎は改めてそう言った。 その言葉に対し「知ってるつーの…」と呆れながら返す紫呉。 同じことを今まで何十回も言われたからだ。
「…それによってお前はこれから悪霊を倒さなければならない。解かるな」
真面目な顔つきで言ってくる玄次郎を横目に「分かってるって言ってんだろ…」と紫呉は返す。
「……ハァ。影楼…」
ため息混じりに自分の名を呼ばれ、影楼はとっさにキョトンとする。 それは数秒だけで、すぐに真顔に戻り、『なんじゃ?』と聞き返す。
「力の説明してくれ…」
最後に「すぐに戻る」と付け加えて玄次郎は大広間を出て行ってしまった。
『…やはり貴様とあ奴は似ておる』
突然変なことを言われたせいか「あ゛?」と紫呉は無愛想に聞き返してしまった。
『まァ、良い。お前には我らの力の使い方を説明しなくてはな…』
長そうな説明開始。
62
:
鳳凰
:2012/09/09(日) 15:14:36 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
神の力は大きく分けて3つに分けられる。
一つは周りから自分の力を固め、武器化するもの。 水滸のように地面に染み込んだ水を使うのがそのお手本の様なものだ。
もう一つは神経や体に取り付き、攻撃したり、身動きを取れなくするもの。
そして最後が、元からなかったものを、そこに実在させるものだ。
――――
『お前、というか儂の力は二番目のヤツだな。相手や自分の影を武器化させたり、身動きを取れなくさせる』
霞處も同じ分類の能力だそうだ。
「へぇ〜。んじゃ、この前戦った時の、あの刃みたいなのが俺の影から取り出した武器なんだ」
紫呉は眠いと言わんばかりの顔になりながら右手の手のひらを見る。
『アレはお前なりの刃だがな……』
その言葉に、またも「あ゛?」と言い返してしまった紫呉。
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