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雷光の呪術師

1館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/11(土) 22:59:53 HOST:222-151-086-023.jp.fiberbit.net
初めまして、館脇 燎 (たてわき りょう)と申します。
小説を書くのも初めてで、自分なりに勉強してやって参りました。ここにいらっしゃるのは小説の先輩方だらけなので、頑張りたいと思います。
ジャンルは和風ファンタジーです。学園、アクションが多目になると思いますが、そこをベースに恋愛、ギャグなどを詰め込んでいきたいと思っています。

 注意事項
・戦闘があるのでなるべく控えますが、グロテスク表現の可能性があります。
・チェーンメール、アスキーアート、荒らしはご遠慮下さい。
・盗作は一切していませんが、戦闘有りなので多少似てしまうところがあるかもしれません。その時は申し出ていただけたらと思います。
・誤字脱字の可能性があります。その時は早めの対応をさせて頂きます。
・更新率は週一絶対を目標としています。しかし、学校や体調の都合で狂う場合もありますので、御了承下さい。
・コメント、アドバイスは大歓迎です! お気軽に足を運んで頂けたらと思います。

読んで下さる読者のために、少々あらすじを書いておきます。

現代日本。そこには付喪神と言われる人間に害をもたらす生物が存在していた。
そして、そんな日本にはそれらを浄化し、平和を保つための呪術師という存在があった。
それは古来から存在し、今に永らえている。
とある街に住む少年もまた、その呪術師の一人だった――――

それでは次レスから開始いたします。

2館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/11(土) 23:48:51 HOST:222-151-086-023.jp.fiberbit.net

  〜序章〜

「また十人、犠牲者がボクの力となる……」
 男が一人、月光を瞳に宿しながら空を見上げていた。
 その男の掌はゆっくりと天に翳され、また、口からは声が放たれる。
「――――徴(ちょう)」

「クッ……!」
 運動靴の靴底が地面を強く蹴り、深く足跡を残した。
 その靴底は地面からアスファルトへと踏み付ける対象を変えながら素早く歩を刻む。
(クソッ……!!)
 寝静まった住宅地に、荒い息と呻り声が点々と移動をしていた。
 少年は荒い息を発しながら後ろへ視線を送る。少年が振り返った数メートル後方には、呻りを上げた黒い獣が少年に向かって接近していた。
 接近している獣を例えてみるならば「狼」だが、例えるであって完全な狼ではない。まず、黒い狼など存在しない。最も、進取なら別だが。
 しかし、明治から日本の狼が確認されていない時点でその望みは薄いだろう。だが、どう転がるにせよ、少年が追われていることには変わりは無い。
「全く…何で僕がこんな事を……」
 背後に迫ろうとする獣に注意を配りながら、少年は呟く。
 まだ始まったばかりの高校生活の一日を無事終え、家に帰宅。と、ここまでは良かった。問題はその後だ。
 やけに時間を掛けて宿題を終わらせ、就寝しようと思ったその矢先だった。自分の家の庭から大きな物音がするのだ。
 窓を閉めた部屋の中まで聞こえてくるのだから、外からしたら少しは大きい音だろう。少年は近付くに連れ、耳を澄ませる。
 すると、それは物音ではなく遠吠えだと分かったのだ。
 だが、少年の家では犬は飼っていなかった。だとすると、何が庭にいるのだろうか。
 疑問に思った少年は居間の窓から庭に出た。そこにいたのは――――

 ――――黒い獣。

 その光景を目にした少年は、反射的に足が動き、獣の注意をこちらに向けて家への攻撃を防いだ。
 そして今に至る。
 ここで二つの問題が残された。
 一つは、大きな物音が玄関を破壊されていた音だったと言うこと。
 二つは、追ってくる黒い獣だ。
 少年の予定では、黒い獣から華麗に走り去ってサヨナラバイバイするつもりだった。だが、黒い獣は少年が思ったよりも早く、逃げ切ることが出来ない。それどころか追い付かれそうでもある。
 このような状況になると、自分が華麗に逃げ切ろうとしたのが少し馬鹿馬鹿しくなる。
 ――――と言っても、この少年にはそれが問題である訳では無かった。
 勿論、これがニホンオオカミだとしても、勝てる確証はない。
 だが、それは「常人」である場合で成り立つことだ。そして、この少年はその「常人」を少し外れた枠に存在する。
「ハァ……」
 溜息が一つ、夜の冷たい空気に混ざる。
 すると、それの順序を追うように、少年の足は前後運動を静かに緩めた。
 黒い獣との距離が一気に縮まる。
 少年は振り返り、獣と向かい合わせの状態になった。その時には、獣は飛び掛かるように宙に舞い――――

 ――――黄色く輝く電撃に触れる。

 その電撃は一瞬住宅地に光を発し、獣を弾きながら四方に散った。
 途端、ドサリと言う音が響く。
 アスファルトの上に実を転がした獣に、少年はゆっくりと歩み寄る。獣の動く気配は、無い。
「浄化」
 その二文字が、掌と一緒に獣へ向けられた。
 その言葉に反応し、黒い獣は白という反対色の光に包まれる。まるで、純白の衣に包まれるように。
 獣を包んだ光は少年の掌が引かれると同時に、綿毛が如く散る。
「ハァ……」
 再度、溜息が夜の空気に混ざる。

 世間は言う。この少年は普通だと。
 何故なら、この世界には大きく分けて二種類の人間が存在するからだ。
 一つは「常人」。世間では「一般人」と言った方が理に適っているだろう種族。
 そしてもう一つは、異能の力を持ち、この世界のもう一つの顔と言っても過言ではない存在。それは――――

 ――――呪術師だ。

3館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 11:21:03 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net

  〜第一章「呪術師狩り」〜

 #1
 カーテンの隙間から漏れる光に、峰崎雷眞(みねさき らいま)は目を覚ました。
 時計の方へ目をやると、六時十五分。いつもの起床時刻よりも少し早かった。
「ま、いいか……」
 二度寝何かしたらそれこそ起き辛くなる。雷眞はそう思い、洗面台へと足を運んだ。
 それから、朝食、着替えと朝の支度を着々と済ませ、洞窟を抜け出たような気分にさせる壊れた玄関を通り過ぎる。
「ヤッホー! おはよー、雷眞!」
 家を出た途端、セーラー服姿の少女が大きく声を張り上げる。
 現在、六時四十五分。かなり近所迷惑だ。
「僕は山か」
 雷眞は少女とは裏腹に、ローテンションでセーラー服の横を通り過ぎた。すると、
 グイ。
 と、左腕に圧迫感。
 雷眞は首だけ器用に回して振り向くと、学ランの袖が掴まれているのが分かった。
「玄関壊されただけでブルーになってちゃ、呪術師なんてやってられないよ」
 桃色の髪を靡かせ、羽桜実緒(はざくら みお)は言う。

 現代日本には「付喪神(つくもがみ)」と呼ばれる生物が存在していた。
 物に邪念によって宿り、人々に害を与えると言われている。それは古来から存在し、現在もなお、生き続けているのだ。
 では、何故人々は「付喪神」が存在しながらも絶滅することなく今を生きているのか。その答えは単純明快だ。
 呪術師、この存在の結果である。
 呪術師は本来、呪(まじな)いと言う原理から得られた「呪術」という術を扱う物のこと。降雨から連想されやすいのではないだろうか。
 「呪術」は物質を呪い、それを操ることで九十九髪から人々を守護しているのだ。
 そして、ここ日本にいる高校生、峰崎雷眞と羽桜実緒は呪術師の一人。
 日本に複数ある呪術師連盟の一つ、「谺(こだま)」に所属する国家公認の呪術師なのだ。

 掴まれた手を振り払い、雷眞は言った。
「別にブルーになんかなってない」
 そして、ブルーだと思うならお前のせいだ。そう言おうとして口を噤む雷眞。
 相手が傷つくから、という理由で噤んだわけではない。言っても通じないからだ。
「でさぁ、昨日のテレビ見た?」
 急に話題を変える羽桜。
 これでお分かりになると思うが、マイペース過ぎて通じないだろうという訳だ。
 現に今、話題が変えられたのが何よりもの証拠だ。
「いや、お前も分かっての通り、昨日は付喪神を浄化するのに手間取った。僕ん家大した呪工事していないから玄関破壊されたしな」
 我ながら上手いウイットの返しだ。これなら相手のペースで話が進むことは無い。
 雷眞は心中で何度もガッツポーズを繰り返す。
「フーン。で、昨日のテレビのことだけどねー……」
「………」
 駄目だった。
 あの流れなら話に乗ってくれても良いところだが、何せ相手は超マイペースの少女、羽桜実緒なのだ。
 通じるはずもないか、と雷眞は諦め、羽桜のマシンガントークに付き合うことにした。
 しかし、雷眞は疑問に思う。
 昨夜の狼型の付喪神だ。雷眞の家は大した呪工事では無いものの、呪工事という付喪神の攻撃及び呪術に耐性がある建物の一部を簡単に壊した。
 そのような強い付喪神は〈特殊部隊(エリアフォース)〉という専門の警察部隊が街の侵入を制限しているはずだ。
(でもまあ、そのために僕ら呪術師がいるんだよな……)
 いや、与えられた任務を確実に遂行するのが本来の姿ではないのか。雷眞は思わず眉間にしわを寄せて考える。
 すると、明るい笑い声が横から差し込む。
「ぷははー、何そんな難しい顔してんのー? ませちゃってさー」
「ッ……!」
 雷眞は突然、隣でヘラヘラ笑っている羽桜を殴りたい衝動に駆られた。
(全く……)
 しかし、殴るどころか拳さえ握らない。理由は至って簡単だ。
「マイペースには分からないか」
 と言う訳だ。
「でー、昨日信長の特集やってたんだけどサー」
(この歴史オタクがっ……!!)
 この時、雷眞の拳が握られているなど、羽桜は知る由もなかった。

4竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/02/12(日) 13:37:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメント失礼いたします。

冒頭から惹かれる書き方で、とても興味が湧きましたw

まさか女の子も『呪術師』だったとは……。
これから物語がどう進むのかとても楽しみです。

続きも頑張ってください^^

5館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 13:46:39 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net
竜野翔太様≫
コメント有り難う御座います!

冒頭の部分は何度もストーリー構成を立て直して、力を入れた所ですので、そう言って頂けるととても嬉しいです^^
羽桜の行動にもご期待いただけたらと思います。

有り難う御座います。ご期待に添えるよう、精一杯頑張りたいと思います!

6館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 13:49:28 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net
早々と訂正事項です。
「アスファルトの上に実を転がした獣」
ですが、
「アスファルトの上に身を転がした獣」です。

次回からはこのようなことがないよう、気を引き締めていきたいと思います。 m(_ _)m

7:2012/02/12(日) 13:49:57 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
こnです!!!

ジャンルが和風ファンタジーと言う面白そうなジャンルだったので

来て見ました。

まだ全然読んでませんが・・・。←どーでもエエ事w

ではではこれからも頑張ってくださいねノシ


たまにコメしに来ます。

8館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 13:54:58 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net
燐様≫
初めまして。
ジャンルで分かって頂けるとは……大変恐縮です^^
では、御覧になってからお暇な時にコメントいただけたらと思います。

有り難う御座います! 頑張らせていただきます!

9:2012/02/12(日) 14:00:12 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
燎s>>話逸れますが呼びタメおkでしょうか?

結構著者の人には気楽に愉快に話したいので^^

ジャンルで和風とかあまりないんで面白いって思ったんです。

しかもグロも入るって書いてあるので「こりゃ面白そうだな」なんて思ったので

覗いてみただけです。

10館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 15:36:30 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net
燐様≫
呼びタメですか? はい、良いですよ。

グロテスク表現は、まあ流血程度だと思います。
面白いと言って頂けて有り難いです。感想お待ちしております^^

11館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 15:52:45 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net

 羽桜のマシンガントークを聞き終え、現在、雷眞達が通う学校「桟浦高校(しきうらこうこう)」。
 調度一時限目が終わった頃合いだ。
「ハッ!?」
 授業の間の十分休みに、雷眞の声が教室の中を刹那統一する。
「声おーきーよ雷眞〜。明るい話じゃないんだからサー」
 羽桜は机に頬杖を付き、前のめりになりながら暢気に言う。しかし、その内容は冗談でも「暢気」とは言えなかった。
「いや、でも……昨日の夜九人が……」
「ご臨終ですたー」
 雷眞の言い切る前に羽桜が言った。
 自分で「明るい話じゃない」とか言っておきながら、ここまで明るくしているのは何故だ。マイペースにも程があって欲しい。
「ったく〜、そんなことも知らないの〜?」
 羽桜は暢気に、それでもって蔑むような声色で言う。
 まあ確かに、雷眞自身がニュースをあまり見ないことは事実だ。だが、登校時に信長特集の話でなくこっちの話を優先してくれても良いのではないだろうか。
 うーん、と小さく唸って雷眞は腕を組み天井を見上げる。
 九人の死因は全て付喪神。そして、羽桜の話だとそれらは全て狼のような姿をしていたらしい。つまり、状況が昨夜の雷眞と同じなのだ。
 さらに、死人にも衝撃的な事実が明らかになった。
「今、何て言った……?」
 雷眞は耳を疑い羽桜にもう一度訪ねる。
「ふに……だーかーらー! ご臨終な人々は、全員呪術師なんだってばー!!」
 羽桜の言葉に、雷眞は絵画が如く表情を固めた。
「呪術師、だって……?」
 ふに、と羽桜のふざけた返事が雷眞をさらに混乱させる。
 そう、無くなった九人は全て呪術師だったのだ。
 何を言っても反応しなさそうな雷眞に、羽桜はマイペースに話を続ける。
「新人から上級までよりどりみどりな葉っぱだよん。「聖(ひじり)」の上級呪術師も消されて、連盟大騒ぎだったろうなー」
 呪術が当たり前のこの世界では、呪術師連盟という連盟が築かれている。そこでは多くの呪術師が集い、大掛かりな仕事や時にはふざけた仕事が舞い込んできたりと、何かと賑やかだ。
 そして、先程述べた「谺」と同様「聖」も立派な呪術師連盟の一つである。
 立派も立派で、「聖」は初代から続く日本最強の呪術師連盟。その凄さで遠い地からやってくる呪術師も多い。
 ハッキリ言って、「谺」は「聖」の足元にも及ばない。つまり、「聖」から呪術師が、それも上級の呪術師が付喪神に殺されたのはかなり重大な訳だ。
 ちなみに、「よりどりみどりな葉っぱ」と羽桜は言ったが、「よりどりみどり」の「みどり」は「見取り」である。雷眞は心中でツッコミを入れた。
 何故心中なのかは、はざくらのマイペースから想像できるだろう。
「「聖」もやられたのか……」
 朦朧とする意識の中、雷眞は「よりどりみどり」以外もとりあえず聞いていたようで、小さく呟く。
「差し詰め「呪術師狩り」ってとこだねー、ニハハハハ〜」
 何処までのマイペースな羽桜。
 コイツの頭には自分が「狩られる」という選択肢は無いのだろうか、と雷眞の心中に思わせるような口振りだった。
(ニハハハハって……)
 途端、不意を突くように学校中にけたたましいサイレンの音が降り注ぐ。
 そして、サイレンの中から割って入るように放送が紛れ込んだ。
『警戒警報、警戒警報。現在、校門裏に多数の付喪神が発生。非戦闘生徒は直ちに避難、呪術師生徒は校門裏の包囲に取り掛かれ』
 放送が止み、再びサイレンのみが響き渡ると、生徒達は一斉に動き出した。
 羽桜を残して。
「行くぞ実緒!」
 一人、のほほんとしている羽桜の手を引き、雷眞はそのまま校門裏に急ぐ。

12月峰 夜凪 ◆XkPVI3useA:2012/02/18(土) 11:02:19 HOST:softbank221085012009.bbtec.net
はじめまして、そしてコメント失礼します!

かっこいい題名に釣られて少し前から読んでいました((
まず、文章力の高さにビックリです!初めてとは全然思えないくらいに……!

あと、読んでいて羽桜ちゃんのキャラがいいなー、と思いました。
マイペースな子、好きなのでw 俗に言う一時期(もしかしたら今もでしょうか^^;)ブームになった歴女さんでしょうか((

それでは、次の更新を心待ちにしています!続きも頑張ってください^^

13館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/18(土) 14:07:52 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
月峰 夜凪様≫
初めまして! コメント有り難う御座います!

まず題名を褒めて頂いて有り難う御座います^^
僕の小説の教科書には、題名は「小説の顔」と書いてあったので、シンプルかつ格好いいものを考えてこうしました。
文章力に関しては、毎月ライトノベル、小説、を合計4冊読んで文章力向上に努めています。ですので、小説を始めるまでに勇気が4ヶ月いりました^^;

羽桜さんを気に入って頂けて何よりです。
ヒロインはマイペースが良いと思い、アニメ関係などからも「マイペース」を勉強して挑戦してみました。これからも良いキャラになると良いのですが(笑)
今もまだブームになっているかは分かりませんが、羽桜さんは歴女です^^ 切っ掛けは僕の塾講師が歴女だったからです((

コメント有り難う御座いました! ご期待に添えるよう精進していきたいと思います!

14館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/18(土) 15:58:55 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 シンとした学校の中、その一室にブラインドを指で押し下げ校門裏の様子を探る者が居た。
「順調だね、影知(かげとも)」
 白いスーツを着た優男はブラインドから指を離す。
「はい、残りもあと僅かとなって参りました」
 優男の後ろでは、天蓋を被ったいかにも虚無僧のような容姿の男が立っていた。
「あと……何人だっけ?」
「四十一です」
 天蓋男はえらく怨声を込めたような声を発して答える。
「おかしいな、一人半端に残ってたっけ?」
 優男は自分の灰色の髪に指を通し、頭を掻くような素振りを見せてから困惑したような表情になる。
「大変申し上げ難いのですが……昨夜の件で、一人逃がしてあられました」
 低く野太い怨声を耳に入れ、優男はあーあれねと納得した表情へと顔色を変えた。
 さてと、と優男は一息吐いてから言う。
「ここの指揮、任せても良い?」
 振り返り、優男は相手の顔色を窺った。
「某が、ですか……?」
 天蓋のせいで表情は見えないが、天蓋男からは困惑したような声調が伺える。
「影知がそういうの苦手っていうのは分かってるよ。でも、他の者じゃやる気出してくれないでしょ? それに、影知は〈四辻の放浪者(クロスローダー)〉のリーダーでしょ。大丈夫、生かすか殺すかは勝手にしてくれて良いよ」
 すると、優男は日除けがカーテンの方の窓に近寄り、宜しくと一言言ってから両足を縁に掛けた。
「あ、殺すんだったら切りがいい数字にしといてね」
 思い出したように言葉を投げると、次の瞬間、窓の外へ飛び上がりそのまま宙へと消えていった。
「切りのいい数字か……」
 一人残された天蓋男は、優男の言葉を復唱する。
「残りは四十一、キリのいい数字にすると言うことは――――」
 斜め上を見上げて、天蓋男は呟いた。
「一人殺せということか」
 天蓋男は校門裏の見える前方のブラインドに視線を戻し、少しドアの方へさらに視線をずらす。
「居たのか」
 怨声がドアの方に向けられるが、その方向からは返事はない。
 男は少しの間黙ってドアの方を見ていたが、再度ブラインドに視線を戻し、
「邪魔はせぬように」
 と、一言言って姿を消した。

 校門裏。
 雷眞はその場の地面を踏みしめると、羽桜の手を離した。
 その視界に広がった光景は、防戦一方の呪術師生徒。そして、雷眞が昨夜見た狼の姿をした付喪神が、校門裏の道路を埋め尽くす数で迫っていた。
「うっはー! こりゃ腕が鳴るねー、ボキボキと」
「何いってるんだ。僕はともかく、お前は救護の方だろ」
 少し真剣みを帯びた声で雷眞は言い、校門裏の戦域へと足を運ぶ。
(流石に数が多いな……)
 頭で何か考えながら、雷眞は右手を左腰へ伸ばした。
 雷眞が見る限り、付喪神は昨夜と同じで攻撃パターンは物理系統のみ。遠距離から攻撃すれば何とか退治できない気はしない。
 しかし、こちらの世界での滞在時間と力が比例するはずの付喪神にしては随分とパワーがあるように見える。雷眞が走破している間にもかなりの攻撃を食らっている者がちらほら見える。
 瞳を器用に動かし辺りの状況を把握する。瞬間、番が回って来たと言うように付喪神が雷眞に飛び掛かってきた。
 だが、雷眞はそれを待っていたが如く、付喪神へと焦点を合わせる。
 そして次の瞬間、左腰に当てていた右手を付喪神に向かって大きく薙いだ。
 その時、肉を断つような低い音が鳴り、それと共に狼型の体が宙を飛ぶ。
「一匹……」
 そう呟く雷眞の右手には、先程まで存在していなかった斧(バトルアックス)が握られていた。
 宙に飛ばされていた付喪神は重力により地に落とされ、その身体を小刻みに振るわせる。
「浄化」
 そう言って、雷眞は掌を付喪神へ向けた。だがその刹那、背後に気配を感じ取る。
 気配を察して、すぐさま振り返る雷眞。その目が真っ先に捕らえたものは、飛び掛かってくる二匹の付喪神だった。
 雷眞自身、その動きは見える。しかしその動きが見えたとしても、雷眞の体が反応する時間は残されていなかった。
「ッ!!」
 狼の姿の口からは鋭い牙が垣間見る。
 そして、一瞬の間も与えず――――
 ――――ゴォッ!
 と言う颯声。
 その颯声は付喪神を横薙ぎに叩き付け、その体を校舎の壁へとさらに叩き付けた。
「ボケッとしている暇はないぞ」

15館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/19(日) 17:34:37 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 破格な出来事に呆気に取られていた雷眞は、威儀のこもった声に呼び覚まされ、急いで振り返る。
 声の主は桟浦高校、通称「桟校(しきこう)」の学ランを身に纏い、その袖の部分には白の字に黒く「生徒会」と記された腕章が一際目立っていた。
 彼の顔立ちは、まさに尊顔と言うべきなのだろう。引き締まった口元、鋭くきりりとした目、それと同様な印象を受け持つ眉。何処を見ても不格好という文字は見あたらない。
 極め付けは微かに靡く銀髪だ。
 アイドルがしていそうなその髪型は銀髪によく似合い、彼の前では、その清涼さが彼そのものと言っても過言ではないくらい似合っていた。
「今はこのような状況だ。いつ殺されても可笑しくない」
 再び、威儀のある声は雷眞に向けられた。
 その時、雷眞は気付いた。付喪神が校門裏の地を荒らす中、倒れたままピクリとも動かない者がいるのだ。
 銀髪の少年は雷眞が見ている方向を察したのか、動かない生徒を指さすように言う。
「見ただろう、奴は死んでいる。俺らもああなりたくなければ、もっと周りに注意を払わなければならない。だが、流石に逃げた方が良さそうだな……」
 確かに銀髪の少年が言うように、このままでは危ない。
 多勢の付喪神にこちらの状況を考えると、逃げるという選択肢が妥当なところだろう。
 それに、学校の規則として、死人が出るような戦闘は避けなければならない。最も、雷眞は付喪神相手にそこまでするような正義感は今は無い。
 雷眞の背後で、銀髪の少年が戦略的退避による走破音が鳴る。
 雷眞もそれを聞いて急いで逃走しようとするが、付喪神の吠え声に怯みを見せ、足をもつらせた。
(っと……!)
 少々体勢は崩したものの、地面に手を突いて何とかスタートダッシュは成功する。だが、その頃にはもう付喪神の方もこちらに向かって走ってきていた。
 逃走には邪魔だと思ったのか、雷眞は斧を見つめる。
「仕舞うか……」
 雷眞が力強く柄を握った瞬間だった。斧は光を帯びて段々と小さくなり、その光が消える頃には、掌に収まるくらいの五芒星のキーホルダーとなって、ベルトの左部分に納められた。
 これは、呪術師に必須とも言われる呪術の一つ【器化携帯(きかけいたい)】である。
 呪術師の武器と言われる呪具(じゅぐ)は、普段は持ち歩くのに苦労する物が多い。そのため、その収納手段として、キーホルダーやアクセサリーになるような物を携帯する。呪具の必要時には呪術を使うために必要な「呪気」という物をそれに流すことで、呪われた形、すなわち「呪形(じゅけい)」として呪具を呼び出すのだ。
 運動靴の踏みしめる感覚が、アスファルトの独特の堅さに変わってゆく。
 現在地は中庭と校門裏の境。そのまま校門に接する中庭へ走り込み、急いで学校からの脱出を試みる。
 前方に見える校門。
 ここまでの雷眞のスピードと付喪神のスピード、さらに距離を大雑把に計算したとして、何とか間に合う距離だ。
 厳しい状況の中に、僅かな笑みが雷眞の口に現れる。
 学校全体には対付喪神用結界が張ってあり、そこを抜ければ付喪神は何とか捕まるはずだ。校門裏の結界を破壊されたとして、反対側の結界が破壊されることは、そうそうない。
 そう言えば銀髪少年の姿がない、雷眞は今更になって気付く。
 恐らく、賢そうな雰囲気はあったので、一番近い通路から早々と退避したのだろう。少年の感じからして、「逃げた」とは言いづらい。
 そして早くも校門は目の前だ。
 雷眞が予想した通り、付喪神との距離はまあまあある。
 こうなると足取りも軽く、雷眞は余裕の笑みを浮かべて校門の間を――――
「………え?」
 触れた。
 雷眞の掌には空気だけが触っているはずなのにも関わらず、ガラスのような詰めたい感覚が伝わっていたのだ。
「……え」
 彫刻の如く固まる雷眞。
 後ろからは付喪神が接近し、多対一という絶望の壁が立ち塞がっている。
「クソッ!」
 直ちに雷眞は振り返り、拳を力強く握る。
 この状況では、圧倒的に雷眞は不利だ。しかし、打開策が無い訳ではない。
 たった一つ残された打開策。それは、一点集中攻撃だ。
 付喪神が集団で接近している場合、一発で仕留めやすい。そのため、攻撃範囲を一点に集め、その分呪気を込める量が同じでも威力は充分あると言うことになる。
 そして、不幸中の幸い。付喪神は集団で、それも互いの身を寄せるように集まって迫ってきてる。
 雷眞は先程まで冷たい感覚に晒されていた右手をゆっくりと前に出し、その部分に渾身の呪気を込めた。
「『雷砲針(らいほうしん)』!!』

16館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/19(日) 18:08:07 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
 分かりやすく、この作品に出てくる用語を記しておきます。

・呪術
 呪気という「気」を使い、物質を呪ったりエネルギーを生み出したりすることが出来る術。

・呪気
 人間にある「気」の一つで、現代では様々な物に応用される。

・呪術師
 呪術を扱う者のこと。

・呪術師連盟
 呪術師が集い、依頼された仕事をこなすための場所。幾つかに分かれる理由は、連盟同士で切磋琢磨するためだという。

・付喪神
 邪念が物に宿った姿。この世界では害を与えることで駆除されている。

・〈特殊部隊(エリアフォース)〉
 対付喪神用の警察部隊。
 指名手配されている呪術師の捜索など、複数の役割を持ち、治安維持に努めている。

・呪具
 呪術師が扱う武器の名称。
 キーホルダーやアクセサリーに変形させ、携帯することが出来る。

現在はこんな感じですね。増える可能性もありますが、ご参考までに。

17:2012/02/19(日) 18:18:10 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
燎s>>こnです。

あの…少し聞きたい事があるので聞いてもよろしいでしょうか。

これと同じ小説がある掲示板であったので一応聞いておこうかと思いまして…。

もしかしてライナーさんでしょうか。

違ってたらすみませんm(__)m

でも書いてる文章がまったく同じで…。

もしかしたらと思いまして…。

本当に違ってたらすみませんm(__)m

では。

18館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/19(日) 18:50:21 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
燐さん≫
えーと、その点についてはこうお答えしておきます。
僕は友人にパソコンを借りています。
なので、色々とそう言った点はあります。
お言葉ですが、間違っていたら済みませんと言うくらいなら聞かない方が良いと存じます。
僕はその点について、疑いをもたれるのではないかと聞きましたが、名前は自由にしてくれて言いと言われたのでそうしたまでです。向こうも僕です。
僕に対しての侮辱ですか?
大体、僕がもし「ライナーさん」だとして、ここで露顕して嬉しいと思うでしょうか? その逆ですよね。
そう言ったデリカシーを考えて行動した方が良いと思いますよ。

19館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/19(日) 19:02:00 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
パソコンを友人から借りた件で、この掲示板には書き込まないようにします。
彼にこれ以上迷惑を掛けられないので……
自分も自分で、そう言ったことを考慮せずに書き込んだことを深く反省しています。
これ以上何かを背負うのは嫌なので、他の小説によるコメントだけをしていきたいと思います。
それでは失礼します。

20:2012/02/19(日) 19:38:20 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
燎s>>そうだったんですか…。

それならそうと言ってくれれば良かったのに…。

侮辱ですか?

侮辱するつもりは無かったんですか・・・。

そうさせてしまったんならすみませんm(__)m

21館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/25(土) 11:38:10 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net
燐さん≫
僕はあなたのことを知らないので、言ってくれれば良かったのにと言われても困りますが……
それと、侮辱というのはここでほぼ雑談しかしないことです。あくまで感想をお待ちしているので。

〜連絡事項〜
作品を途中で投げ出すのは良くないと思ったので、とりあえず続けたいと思います。
感想やアドバイスなども積極的に言って貰えれば幸いです^^

22館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/25(土) 14:32:15 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net

 瞬間、雷眞の拳は接近する付喪神へと向けられる。そして、そこからは間髪置かず雷撃が放たれた。
 拳から放たれたその雷撃は、散り散りになった電気の糸一つ一つを吸い寄せて一本の針へと姿を変える。すると、その雷の針は付喪神全てを貫き、一瞬にして雷鳴と同時に撥ね飛ばした。
「浄化ッ!」
 電流を帯びながら宙を飛ぶ付喪神に、雷眞はすぐさま掌を向ける。
 付喪神は重力によって下に落ちるその刹那、白い光を纏って空気中へと消えて行く。
 浄化、成功。
「ッ……」
 小さく残る荒い息。
 急な脱力感に襲われ、雷眞はダラリと腕を垂らした。
 恐らく呪力の多量使用による疲労だろう。昨夜の分もろくに回復していない上に、呪力量の多い攻撃を使用したのだ、呪術師にとってこの量は致命的だろう。
(一体、どうなってるんだ……!)
 雷眞は疲労と格闘しながら、心中で吐き捨て、再度校門を挟む空間へと手を伸ばす。
 先程と同じ、ガラスの冷たい感触。やはり、手はそれ以上前に進まない。
「見事、と申しておくべきか」
 不意を突く声が、雷眞の鼓膜を軽く叩いた。
「ッ!?」
 すぐさま振り返った雷眞は、急いで戦闘態勢に入る。
「驚くなかれ、少年よ」
 怨声と共に、天蓋を被った虚無僧の容姿が雷眞の目に飛び込んだ。
「安心しろ、他の付喪神は消しておいてやった」
 状況を把握できていない雷眞は、五芒星のキーホルダーを握り、右手の中で斧へと変化させる。
 現在、呪術師生徒と一般生徒、及び教師全てが避難した今、学校に残っているのは雷眞だけだろう。そのような現状で桟高に人間が存在すると言うことは、変質者、または呪術手配犯と言うことになる。
「誰だお前、何故ここに……!?」
 雷眞は押し殺した声を相手へ向けた。
「某に戦意はない、まず武器を仕舞え。それが礼儀というものだ」
 しかし、何者かも分からない相手に武器を下ろせるはずはない。雷眞は斧を構えたまま、相手の方を睨み付ける。
 暫く無言の沈黙が続き、流石の相手も折れたのか、天蓋の向こうから口を開く。
「……まあいい。何故某がここにいるか問いたな。昨夜、どのような奴を殺し損ねたか気になったのでな、目を通しておいただけだ」
「……!?」
 天蓋男は、雷眞の愕然を余所に素早く踵を返す。
「ちょっとー! そいつ逃がすつもりなの影知!?」
 刹那、雷眞の背後から女の声がする。
 咄嗟に身を引こうとする雷眞だが、その体はすでに捕らえられていた。
 雷眞の首には白く細い腕が回り、首筋には細く鉄独特の冷たさが感じられている。当たり具合からして、短刀に近い物だろう。
(ッ! いつの間に……!!)
「……邪魔するなと言っただろう」
 溜息の後に怨声じみた声が聞こえ、天蓋男は踏み出した足を止める。
「邪魔も何も殺せばいいじゃないのよ!」
 雷眞のすぐ背後にいるため、澄んだ女声だけが雷眞の耳に届いた。
「あの方は奇数と一の位がお嫌いだ」
 天蓋男は微かに首を回し、少々こちらに顔をやる。
「それならあと九人、殺せばいいじゃない」
(九人……!?)
 雷眞の首筋に、鉄の感触が圧力を増した。
「いや、止めておこう。〈特殊部隊(エリアフォース)〉も近付いている」
 天蓋男は回していた首を戻し、ゆっくりと歩き出す。
「私は嫌よ」
 透き通るような綺麗な声の否定。その声に、天蓋男は立ち止まった。
「最近は付喪神ばっかにやらせて、私退屈してんのよ!」
(付喪神にやらせる……)
 女の言葉は実に痛々しいことを明らかにした。
 この二人の言葉の応酬。完全に昨夜の事件を物語っている。「付喪神」「九人」こういったワードが全ての謎を繋げた。
 何かが関係している。そうとしか思えなかった。
「……いいだろう」
 天蓋男は振り返りながら言う。
「部下にもたまには仕事をやらんとな。〈特殊部隊(エリアフォース)〉は足止めしておこう、制限時間は三十分だ」
 言い終わると天蓋男は視線を戻し、地面に浮かぶ男の影が煙のように立ち上る。
 その影が男を包むと、短い音を残して影と共に姿を消した。
「さあ、と言うわけで始めましょっか」
 背後から女の声が聞こえる。

 雷眞は今、向き合っていた。呪術師狩りの本元に。

23館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/25(土) 17:28:25 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net

 #2
 雷眞の首筋から鉄独特の感触が消え、首の圧迫感が引いてゆく。
 そして、初めて女が姿を現した。
 緑色の長い髪をツインテールに結び、服装は赤のワンピースに赤いゆったりとしたネックウォーマー。どことなく「赤ずきんちゃん」を思わせるようなコーディネートに見えなくもない。
 可愛さよりも綺麗さが勝っているその顔つきは、そんな容姿をこれこれギャップの醍醐味だと言うように目立っていた。
「……?」
 突然、雷眞は拍子抜ける。
 てっきり、首に刃物を押し付けられているのでそのまま攻撃を仕掛けてくるのかと思った。がしかし、想定外にも相手が向かい合う状態で現れたのだ。
「え? 何で離しちゃうの? 今アンタが思っている事なんてそんなところでしょ」
 女は悪戯気に微笑み、占術師と思わせるように雷眞の心中を見抜く。
「いつ獲物にありつけるか分からないから、今の内に楽しんでおかなきゃねって訳よ」
 両手を腰に当て、さながらモデルと言っても過言ではないようなプロポーションで言った。
 というか自分は「人」でなく「獲物」なのだろうか。雷眞は、そんなことを緊迫した状況に似合わず思う。
 そして、気持ちを落ち着け、軽く深呼吸をする。
「……僕は呪術師として、貴女に今の言葉を後悔させなければならない」
 雷眞は斧を構え、一心に相手の方に視線を添えた。
 相手はハンデとも言えるように雷眞から手を離した。つまり、雷眞を倒す事くらい虫を殺すに等しい、と宣言していることにほぼ変わりないだろう。
 気を引き締め、一瞬たりとも気を抜いてはいけない。気を抜いたら最後――――
(―――― 死ぬかもな……)
「へー、真面目君なのね」
 女は意外そうに呟き、手の中で回してしっかりとナイフの柄を握る。
 相手の構えは、遠距離には向かないが接近戦に徹した空手の構えの一つ。様子を見るに、肉弾戦をしようとしているとしか思えない。
(呪術師じゃ無いのか……?)
 雷眞の頭にそんな考えが過ぎる。
 普通、呪術師と一般人が拳を交えることはない。その答えは簡単で、単に一般人に勝ち目がないからである。
 こちらはすでに呪術を使い、手の内を明かしているようなもの。それなら、相手も呪術師でなければおかしいのだ。
(空間呪術か?)
 雷眞は顔を顰め、相手に全集中を向ける。
 呪術には大きく分けて二種類ある。
 善意の意図となる白呪術。邪悪の意図となる黒呪術だ。
 さらにこの呪術を分けると、合計で六種類になる。これが一般で認識されているであろう分類だ。
 まず最初に白呪術を説明しておこう。
 白呪術には修復、守護といった作用が見られる。
 回復を主流とする「治癒呪術」。呪いの解除などを主流とする「浄化呪術」の二種類だ。
 そして、残りの四種類は黒呪術に分類される。
 黒呪術には白とは逆に、呪いを掛けるといった作用がある。
 物質などを発生させ、それを操る「操作呪術」。呪う対象を別の性質へと変換させる「変換呪術」。呪う対象へ状態を与えたり間接的に攻撃を加える「罰当(ばっとう)呪術」。空間を呪い、転送や声同士をワープさせ通話などを可能にする「空間呪術」だ。
 雷眞が予想したのは、その黒呪術の一つに分類される「空間呪術」だ。
 何故空間呪術を予想したのか、それは雷眞の背後へ気配無く現れたことにある。
 気配を消して忍び寄るとしても、先程まで居た天蓋男の様子がそれまで居なかったことを物語っているし、突如現れたのだとしたら空間呪術で現れたと推測できるからだ。
「フフ、一瞬だから気を付けなさい」
 悪びれた女の笑みが、雷眞へと向けられる。
(来るッ――――!)
 突然、アスファルトが破片を飛ばし、同時に女が姿を消した。
(しまったッ!)
「こっちよ」
 声と同時に、雷眞の腹部から強い衝撃が走る。
「うぐっ……!」
 掠れた苦悶が雷眞の口から発せられ、そのまま大きく後方へ飛ぶ。
 実に一瞬の出来事だった。
 雷眞は確かに集中を相手に向けていた。だが、それすらも躱すように雷眞の方へ移動していたのだ。
(空間呪術じゃない! これは……!!)
 痛みを耐えながら、雷眞は空中で体勢を立て直す。そして、膝を折りながら滑るようにアスファルトへと着地した。
「【神速(しんそく)】か……!」
 掌をアスファルトから剥がし、斧を持ち上げると共に静かに呟く。

24館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/26(日) 18:04:07 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net

「へー、よく知ってるじゃない」
 女は雷眞と数メートル距離を保った状態で悠々としていた。
 相手からすれば、能力を知られたところでどうって事無いと言ったところだろう。実に余裕が見て分かる。
「当然。【神速】は自らに呪いを掛けて、自分の速度を上げる「自呪(ゆりがしり)」の代表的な呪術だからね。」
 雷眞の口からは、まるで用意されていたかのように言葉が放たれる。それもそのはず、呪術の種類は呪術師として必要不可欠の知識だからだ。
 呪術習得の一つには、国家試験を受けて手にすると言った経路があり、国家試験を受ける場合にはペーパーテストで今のようなことを書き綴らなければいけない。
 そして、雷眞はその試験を受けた一人の呪術師である。
「それじゃ、今度はそっちの呪術も見せて貰おうかしら?」
 女は軽くファイティングポーズを取り、雷眞からの攻撃を促した。
(………)
 しかし雷眞は迂闊に動こうとはしない。
 先程の攻撃も、恐らく実力の半分前後と言ったところだろう。わざわざ攻撃を仕掛ける前に「こっちよ」、などと声を掛けたなら尚更だ。
 それに、相手が速度変化の呪術を持っているので、必ずカウンターを仕掛けられると言っても過言ではない。
(迂闊に接近戦は望めないな。出来るだけ相手と距離を取って、慎重に攻撃しないと……)
 そのようなことを考えながら、雷眞は斧を持ち上げ、その切っ先をゆっくりと相手へ向けた。
(いや、むしろ相手に攻撃を促すようにして、攻撃のミスを誘うか。よし、それで行こう……!)
 途端、アスファルトの破片を飛ばす勢いでスタートダッシュによる蹴りが放たれる。
 さらにその足は、水面を小刻みに跳ねる礫のように素早く歩を刻み、女の手前で強くアスファルトを叩いた。
 そして、雷眞は高く宙へと飛び上がる。
(いける……!)
 空中で斧を構え直し、雷眞はその切っ先を相手へ向けた。
「『雷砲針(らいほうしん)』!!」
 瞬間、その切っ先からは電流が放たれ、一本の黄色の針へと姿を変える。
 それはまさしく光の速さで、構えを取った相手に瞬く間さえ与えない。
 しかし、その雷撃が女に触れることはなかった。
「なッ……!!」
 それは、雷眞にとって信じられない光景だった。
 雷撃は女の数センチ手前で砕け散るように電気の角を四方へ飛ばしている。
 そう、数センチ手前で。
「甘ちゃんね」
 女の言葉が雷眞を落とすかのように、重力によって雷眞はアスファルトへと着地する。
 着地した今、雷撃が止められ、それを防いでいた物の姿がゆっくりと正体を現した。
「……ナイフ」
 一つの単語が雷眞の口から発せられると、そのすぐ後に、金属の冷淡な音が響く。
 その残響が残る中、アスファルトの上に転がったのは、一本のナイフだった。
「アナタの呪術は【雷光撃(らいこうげき)】。呪気の摩擦によって発せられた電気を操る呪術だけど、一番の欠点は避雷する物が地学にあっちゃ当たらないって事ね」
 女はさながら名探偵の如く、雷眞の呪術を言い当てた。
 言う通り、雷眞の呪術は【雷光撃】である。
 呪気という呪術のエネルギー源に摩擦を生じさせることで電気を生み出し、それを操っている。
 そして、その欠点さえも当たっている。避雷対象がある場所ではその距離の違いによって命中率が変化するのだ。
 それ故、雷眞が先程斧を使って『雷砲針(らいほうしん)』を繰り出したのは、その距離を縮めるためだった。つまり、今のナイフは雷撃を避ける避雷針となっていたのだ。
「クッ……!」
 雷眞の頬を汗の滴が伝う。
 こちらの攻撃は当たらず、相手の攻撃のみが命中する。
「まさか、それだけなんてんじゃ無いでしょうね」
 相手はアスファルトに転がったナイフを拾い、掌でクルクルと回す。
 逃げる。そんな言葉は選択肢にはない。
 状況は言う。
 今は、戦う事しか出来ないのだと。

25館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/02(金) 17:41:06 HOST:222-151-086-012.jp.fiberbit.net
訂正です。
「〜地学にあっちゃ当たらないって事ね」
           ↓
「〜近くにあっちゃ当たらないって事ね」
です。

26館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/03(土) 18:33:21 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

「呪気数値が少々高めですね。まあ、でも呪術による痕跡程度でしょう、時間が短ければ有り得る範囲内ですね」
 桟高校門前で、〈特殊部隊(エリアフォース)〉の一人がアスファルトに手を当てて言った。
 それから色々と説明を受け、銀髪の少年が校長に報告をする。
「現状問題は無いそうですので、直ちに生徒を下校させ、様子を見た方が良いでしょうか?」
 頭頂部の部分が妙に禿げている校長は、銀髪の少年の言葉に合わせて相づちを打った。
「うむ、そのほうが良いだろう。しかし、二、三年生が居ないというのにしっかりとやってくれているね。……えーと、なんと言ったかな?」
「小野塚風雅(おのづか ふうが)です。これも務めですので、当然ですよ」
 銀髪の少年小野塚は、機敏に回れ右をすると、全校生徒の下校を試みる。
「……うん、大丈夫だな」
 一クラスずつ確認しながら、小野塚は雷眞達の居る1−Cの確認に入った。
「ん? 峰崎と羽桜が居ないな……」
 何かに導かれるように、小野塚は桟高校舎を振り返り見る。
 見渡す限り、校舎にはヒビや崩れなどが良く目立った。そして、上の階から順々に目で辿り、最後に自分達の居る中庭付近を見渡す。
(この辺りだけ、妙な呪気を感じるが……)
 最終的に自分の足元に目線が進んだ小野塚は、顔を上げ呟く。
「……まさかな」

 風切り音と同時に、斧が地面と平行に薙ぎ払われる。
「遅い遅い」
 女は余裕の様子で言い、その斧を身を伏せることで紙一重に躱した。
 悪戯気な表情を見るからに、わざと紙一重で躱しているのに相違ないだろう。先程から挑発するように紙一重で躱してばかりなのだ。
「そろそろ大技見せてよね」
 瞬間、女は過ぎ去った斧の横を通り過ぎ、雷眞の懐へ潜り込む。
「ッ!!」
 斧のリードが大きい分、雷眞は反応しきれない。そして、それを嘲(あざけ)るような笑みを見せた女は、ナイフの柄頭を雷眞の鳩尾へと叩き込んだ。
 嗄れ声と共に、雷眞の口から空中へと血痕が飛び上がる。
 その刹那、女の持つナイフが半回転し、刃の方を前へ向ける。すると、そのナイフは素早く雷眞の脇を通過した。
「ウワァッ!!」
 叫喚と同時に、雷眞の脇から血煙が飛び散る。
「何よ、遊んでやろうと思ったのにその程度? 呪術師が聞いて呆れるわよ」
 女は、血痕を付けながらアスファルトに転がる雷眞に、冷酷な眼差しを向ける。
「その程度でよくあの付喪神を浄化できたわね。ま、力でごり押しすれば出来なくは無いか」
 声調さえも冷気を帯びてきた女は、ハイヒールをカツコツと鳴らし、一歩ずつ雷眞に近付いて行った。
「それじゃあ――――――」
 女は長い緑髪を靡かせ、大きく息を吸うと、
「―――――死ね」
 氷のように完全に冷え切った女の声は、雷眞の体を麻痺させた。故に雷眞は転げたまま制止している。
 途端、アスファルトに仰向けになった雷眞の肩に、女の掌が押さえ付けるように置かれる。同時に、反対の手が大きく振り上がった。
 そして次の瞬間、ナイフを握った手が、間髪置かずに雷眞に向かって下ろされた。
(もう……駄目か……!)
 ナイフの切っ先は、スローモーションを見ているかのように雷眞の視界を統一し始める。
 そのナイフは垂直に落下し、視界がナイフによって二分割されようとする瞬間、つまり目と目の間に触れる直前、そのナイフは動きを止めた。
 刹那、時が制止したような錯覚。
 暫く経った今、雷眞は相手の方を凝視した。
 それは、雷眞をなぶるつもりでからかっている者の浮かべる表情では無く、必死にナイフを振り下ろそうとしている顰められた表情だった。
「雷眞ー、死ぬんだったら前のめりにならなきゃ〜」
 聞き覚えのある声で放たれる坂本龍馬の名言。後ろにはもう一人いた。
 幾度となく聞こえる「ニハハ」という笑い声。雷眞には相手の陰に隠れていても、その存在を即答できる自身がある。
「にしてもボロボロだね」
 一分一秒もなく、羽桜実緒だと。

27竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/03/04(日) 21:22:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメント失礼します。

羽桜さんが出てきて戦況がどうなるんでしょう……。
にしても雷眞くん結構アッサリΣ
敵側の女の子が結構お気に入りになってたりしますw早く名前が知りたい。お嬢さん、お名前h((

28館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/04(日) 22:40:31 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
竜野翔太様≫
コメント有り難う御座います!

羽桜さんは、結構神出鬼没なキャラです。
「主人公いじめが大切」と僕の参考書にあったので、最初はまだまだ弱いと思います^^;
まさに敵側の女性の「その程度?」な感じですね。
敵方は態々自己紹介させたら何か変なので、後々明かされる予定です。
楽しみにして頂けたらと思います(笑)

29傷羽:2012/03/09(金) 18:45:20 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
こんにちは〜。初めまして。
小説、おもしろかったです。
練りに練った設定が輝いているぜ!ていう感じで。
文章も、戦っている風景がイメージしやすくて好きです(^-^)
失礼しました〜(^^)/~~~

30名無しさん:2012/03/09(金) 22:53:34 HOST:wb92proxy13.ezweb.ne.jp
どこで調べたんですか!?(笑)

31ライナー:2012/03/10(土) 13:14:43 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
傷羽様≫
コメント有り難う御座います!

設定は結構時間を掛けて作り上げたので、そう言って頂けると嬉しいです^^
戦闘模写も自分なりに頑張ったつもりです。
こんな作品でも良ければ、これからも読んで下さいますようお願い申し上げます。

32ライナー:2012/03/10(土) 13:20:20 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 瞬間、雷眞と女の短い空間から間欠泉の如く砂が噴き出す。その砂は一瞬にして女の顎を打ち、強いアッパーのように体ごと中へ飛ばした。
 飛ばされた女は短く苦悶を上げたものの、空中で素早く体制を立て直し、華麗にアスファルトへ着地する。
「編なのが紛れ込んでるじゃない! 何してんのよ影知は!」
 顎に付いた砂を払いながら、女はブツブツと文句を唱えている。
「お前、何でここに……!?」
 脇の痛みを堪えながら、雷眞は上体を起こして羽桜に視線を向けた。
 すると、羽桜はすぐには答えず、笑って桃色の髪を靡かせていた。
「ミオちゃんは、坂本龍馬よりも雷眞が好きだからねー」
 状況を考えない、とんだ告白だった。
 雷眞の顔には不思議と笑みが浮かび、脇の痛みを感じさせない動きで立ち上がる。
「だけど、『雷眞より信長』だろ?」
「あったりぃー!」
 明るい口調で、羽桜は雷眞を指さした。
「ハイハイ、良いハンデが付いたところで、勝負再開ね」
 女は二人の会話を遮り、ナイフを逆手持ちにして構える。
 雷眞は一歩前に出ようとする。が、その前に羽桜が雷眞の前へ立ちはだかった。
「雷眞、『せんしゅこーたい』なんだよ」
 ぎこちない発音に雷眞は苦笑しながら、ドサリとアスファルトへ腰を下ろす。
「今度はおチビなお嬢さんね。止めときなさい、後ろのお兄ちゃんに任せたら? 死ぬと思うけど」
 女はツインテールにした緑髪を弄り、羽桜に交渉をする。
 一見、相手の方が余裕そうに見えるが、恐らく女は後悔するだろう。雷眞は思った。
(言い方の問題だよな……)
 人間には誰でも触れて欲しくないところがあるものだ。特に、体型での差別は最も良くない。
 ブサイクだの、デブだの、チビだの……
 途端、羽桜の表情から笑みが消える。
 怒るでもなく、悲しむでもなく、ただひたすら無表情に。
 しかし、怒っているか、悲しんでいるかと聞かれたら、紛れもなく怒っていると言えるだろう。
 人間、本当に怒ったときは怒った顔にならないものだ。相手を怖いと思わせる表情、つまり無表情という怒気。
「ち、チビじゃないもーんっ!!」
 突然、低い雷鳴のような咆哮が辺りの空気を激しく揺らした。
 あまりの声量に、女は一歩退き、先程よりも頑丈に構えを直す。
 羽桜が一番気にしていること、それは自分の幼児体型だった。これに触れると、いくら雷眞でも手が付けられなくなり(最も通常でも言うことを聞かないが)、徹底的にその言動を発した者を叩きのめそうとするのだ。
 瞬間、女の両側から波のような砂が押し寄せる。
 女はそれを後ろに跳ぶことで躱すが、そのすぐ後に後ろからも砂が押し寄せた。
「ッ!!」
 少し不意を突かれたようだったが、女はアスファルトに足を付け、今度は横へ跳んで砂の波を躱す。
「何なのよコレ!!」
「ふに、【砂紋波(さもんは)】だけど」
 いつもより不機嫌そうに羽桜は言って見せた。
 羽桜の所有する呪術は【砂紋波(さもんは)】。砂を操る呪術だ。
 その効果は、勿論砂を遠隔操作できるのは当然のこと、鉱物を粒子分解することで砂を作り出したり、砂の粒の大きさを変化させ、強度を変えることを可能とする。
 弱点としては、鉱物のない場所では砂を粒子分解できないので、操ることが出来ないということ。だが、ほとんどのところで鉱物は存在するため、空中戦が不利と言った方が適切だろう。
 現在使用している技も、アスファルトを粒子分解し、その砂を操っているのだ。
 女が砂の波を躱している中、次のステップを踏もうとすると、その足は何故が止まっていた。
「クッ!」
 女の足元を良く見ると、アスファルトから出来上がった砂が大きく女の足を捕らえている。
「ふにふに、とどめしちゃうよ」
 羽桜は怨念を込めたような声で、女に掌を翳そうとする。羽桜の勝利、と言ったところだろう。
 しかし、女は簡単にその砂を振り解き、大きく後ろへ跳び下がった。
「……今回は時間切れね。もう三十分経っちゃった」
 そう言って、自分の服に付いた砂を念入りに払う女。そして砂を払い切ると、持っていたナイフを仕舞い、ゆっくりと体裏返し背を向けた。
「また会いましょう。次会う時を楽しみにしてるわ」
 その時だった。周りの背景ごと女は消え、雷眞達に残されたのは、限りなく青い空という背景だった。
「え」
 そんな言葉に、雷眞達はフリーフォールが如く落下していった。

33館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/10(土) 13:22:01 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
済みません、上記の名前は友人の名前を使用してしまいました。
両方とも館脇の方です。申し訳ありません。

34傷羽:2012/03/12(月) 17:54:43 HOST:ntehme084254.ehme.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
新技登場ですね!(。・ω・。)
自分もアクションな感じの小説を書きたいのですが・・・_(._.)_
難しいので館脇さんすごいです・・・はい(-_-;)

35館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/13(火) 22:59:10 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net
傷羽様≫
コメント有り難うございます!
新技、と言うよりかは「術」の種類ですね。技は術の種類から色々と出てくるので。
言ってみれば、雷眞の【雷光撃(らいこうげき)】と『雷砲針(らいほうしん)』の関係的な感じですね。

努力すれば誰だって出来ると思いますよ!
僕も沢山調べましたしね^^
では。


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