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雷光の呪術師
32
:
ライナー
:2012/03/10(土) 13:20:20 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
瞬間、雷眞と女の短い空間から間欠泉の如く砂が噴き出す。その砂は一瞬にして女の顎を打ち、強いアッパーのように体ごと中へ飛ばした。
飛ばされた女は短く苦悶を上げたものの、空中で素早く体制を立て直し、華麗にアスファルトへ着地する。
「編なのが紛れ込んでるじゃない! 何してんのよ影知は!」
顎に付いた砂を払いながら、女はブツブツと文句を唱えている。
「お前、何でここに……!?」
脇の痛みを堪えながら、雷眞は上体を起こして羽桜に視線を向けた。
すると、羽桜はすぐには答えず、笑って桃色の髪を靡かせていた。
「ミオちゃんは、坂本龍馬よりも雷眞が好きだからねー」
状況を考えない、とんだ告白だった。
雷眞の顔には不思議と笑みが浮かび、脇の痛みを感じさせない動きで立ち上がる。
「だけど、『雷眞より信長』だろ?」
「あったりぃー!」
明るい口調で、羽桜は雷眞を指さした。
「ハイハイ、良いハンデが付いたところで、勝負再開ね」
女は二人の会話を遮り、ナイフを逆手持ちにして構える。
雷眞は一歩前に出ようとする。が、その前に羽桜が雷眞の前へ立ちはだかった。
「雷眞、『せんしゅこーたい』なんだよ」
ぎこちない発音に雷眞は苦笑しながら、ドサリとアスファルトへ腰を下ろす。
「今度はおチビなお嬢さんね。止めときなさい、後ろのお兄ちゃんに任せたら? 死ぬと思うけど」
女はツインテールにした緑髪を弄り、羽桜に交渉をする。
一見、相手の方が余裕そうに見えるが、恐らく女は後悔するだろう。雷眞は思った。
(言い方の問題だよな……)
人間には誰でも触れて欲しくないところがあるものだ。特に、体型での差別は最も良くない。
ブサイクだの、デブだの、チビだの……
途端、羽桜の表情から笑みが消える。
怒るでもなく、悲しむでもなく、ただひたすら無表情に。
しかし、怒っているか、悲しんでいるかと聞かれたら、紛れもなく怒っていると言えるだろう。
人間、本当に怒ったときは怒った顔にならないものだ。相手を怖いと思わせる表情、つまり無表情という怒気。
「ち、チビじゃないもーんっ!!」
突然、低い雷鳴のような咆哮が辺りの空気を激しく揺らした。
あまりの声量に、女は一歩退き、先程よりも頑丈に構えを直す。
羽桜が一番気にしていること、それは自分の幼児体型だった。これに触れると、いくら雷眞でも手が付けられなくなり(最も通常でも言うことを聞かないが)、徹底的にその言動を発した者を叩きのめそうとするのだ。
瞬間、女の両側から波のような砂が押し寄せる。
女はそれを後ろに跳ぶことで躱すが、そのすぐ後に後ろからも砂が押し寄せた。
「ッ!!」
少し不意を突かれたようだったが、女はアスファルトに足を付け、今度は横へ跳んで砂の波を躱す。
「何なのよコレ!!」
「ふに、【砂紋波(さもんは)】だけど」
いつもより不機嫌そうに羽桜は言って見せた。
羽桜の所有する呪術は【砂紋波(さもんは)】。砂を操る呪術だ。
その効果は、勿論砂を遠隔操作できるのは当然のこと、鉱物を粒子分解することで砂を作り出したり、砂の粒の大きさを変化させ、強度を変えることを可能とする。
弱点としては、鉱物のない場所では砂を粒子分解できないので、操ることが出来ないということ。だが、ほとんどのところで鉱物は存在するため、空中戦が不利と言った方が適切だろう。
現在使用している技も、アスファルトを粒子分解し、その砂を操っているのだ。
女が砂の波を躱している中、次のステップを踏もうとすると、その足は何故が止まっていた。
「クッ!」
女の足元を良く見ると、アスファルトから出来上がった砂が大きく女の足を捕らえている。
「ふにふに、とどめしちゃうよ」
羽桜は怨念を込めたような声で、女に掌を翳そうとする。羽桜の勝利、と言ったところだろう。
しかし、女は簡単にその砂を振り解き、大きく後ろへ跳び下がった。
「……今回は時間切れね。もう三十分経っちゃった」
そう言って、自分の服に付いた砂を念入りに払う女。そして砂を払い切ると、持っていたナイフを仕舞い、ゆっくりと体裏返し背を向けた。
「また会いましょう。次会う時を楽しみにしてるわ」
その時だった。周りの背景ごと女は消え、雷眞達に残されたのは、限りなく青い空という背景だった。
「え」
そんな言葉に、雷眞達はフリーフォールが如く落下していった。
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