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雷光の呪術師

14館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/18(土) 15:58:55 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 シンとした学校の中、その一室にブラインドを指で押し下げ校門裏の様子を探る者が居た。
「順調だね、影知(かげとも)」
 白いスーツを着た優男はブラインドから指を離す。
「はい、残りもあと僅かとなって参りました」
 優男の後ろでは、天蓋を被ったいかにも虚無僧のような容姿の男が立っていた。
「あと……何人だっけ?」
「四十一です」
 天蓋男はえらく怨声を込めたような声を発して答える。
「おかしいな、一人半端に残ってたっけ?」
 優男は自分の灰色の髪に指を通し、頭を掻くような素振りを見せてから困惑したような表情になる。
「大変申し上げ難いのですが……昨夜の件で、一人逃がしてあられました」
 低く野太い怨声を耳に入れ、優男はあーあれねと納得した表情へと顔色を変えた。
 さてと、と優男は一息吐いてから言う。
「ここの指揮、任せても良い?」
 振り返り、優男は相手の顔色を窺った。
「某が、ですか……?」
 天蓋のせいで表情は見えないが、天蓋男からは困惑したような声調が伺える。
「影知がそういうの苦手っていうのは分かってるよ。でも、他の者じゃやる気出してくれないでしょ? それに、影知は〈四辻の放浪者(クロスローダー)〉のリーダーでしょ。大丈夫、生かすか殺すかは勝手にしてくれて良いよ」
 すると、優男は日除けがカーテンの方の窓に近寄り、宜しくと一言言ってから両足を縁に掛けた。
「あ、殺すんだったら切りがいい数字にしといてね」
 思い出したように言葉を投げると、次の瞬間、窓の外へ飛び上がりそのまま宙へと消えていった。
「切りのいい数字か……」
 一人残された天蓋男は、優男の言葉を復唱する。
「残りは四十一、キリのいい数字にすると言うことは――――」
 斜め上を見上げて、天蓋男は呟いた。
「一人殺せということか」
 天蓋男は校門裏の見える前方のブラインドに視線を戻し、少しドアの方へさらに視線をずらす。
「居たのか」
 怨声がドアの方に向けられるが、その方向からは返事はない。
 男は少しの間黙ってドアの方を見ていたが、再度ブラインドに視線を戻し、
「邪魔はせぬように」
 と、一言言って姿を消した。

 校門裏。
 雷眞はその場の地面を踏みしめると、羽桜の手を離した。
 その視界に広がった光景は、防戦一方の呪術師生徒。そして、雷眞が昨夜見た狼の姿をした付喪神が、校門裏の道路を埋め尽くす数で迫っていた。
「うっはー! こりゃ腕が鳴るねー、ボキボキと」
「何いってるんだ。僕はともかく、お前は救護の方だろ」
 少し真剣みを帯びた声で雷眞は言い、校門裏の戦域へと足を運ぶ。
(流石に数が多いな……)
 頭で何か考えながら、雷眞は右手を左腰へ伸ばした。
 雷眞が見る限り、付喪神は昨夜と同じで攻撃パターンは物理系統のみ。遠距離から攻撃すれば何とか退治できない気はしない。
 しかし、こちらの世界での滞在時間と力が比例するはずの付喪神にしては随分とパワーがあるように見える。雷眞が走破している間にもかなりの攻撃を食らっている者がちらほら見える。
 瞳を器用に動かし辺りの状況を把握する。瞬間、番が回って来たと言うように付喪神が雷眞に飛び掛かってきた。
 だが、雷眞はそれを待っていたが如く、付喪神へと焦点を合わせる。
 そして次の瞬間、左腰に当てていた右手を付喪神に向かって大きく薙いだ。
 その時、肉を断つような低い音が鳴り、それと共に狼型の体が宙を飛ぶ。
「一匹……」
 そう呟く雷眞の右手には、先程まで存在していなかった斧(バトルアックス)が握られていた。
 宙に飛ばされていた付喪神は重力により地に落とされ、その身体を小刻みに振るわせる。
「浄化」
 そう言って、雷眞は掌を付喪神へ向けた。だがその刹那、背後に気配を感じ取る。
 気配を察して、すぐさま振り返る雷眞。その目が真っ先に捕らえたものは、飛び掛かってくる二匹の付喪神だった。
 雷眞自身、その動きは見える。しかしその動きが見えたとしても、雷眞の体が反応する時間は残されていなかった。
「ッ!!」
 狼の姿の口からは鋭い牙が垣間見る。
 そして、一瞬の間も与えず――――
 ――――ゴォッ!
 と言う颯声。
 その颯声は付喪神を横薙ぎに叩き付け、その体を校舎の壁へとさらに叩き付けた。
「ボケッとしている暇はないぞ」


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