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雷光の呪術師

26館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/03/03(土) 18:33:21 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

「呪気数値が少々高めですね。まあ、でも呪術による痕跡程度でしょう、時間が短ければ有り得る範囲内ですね」
 桟高校門前で、〈特殊部隊(エリアフォース)〉の一人がアスファルトに手を当てて言った。
 それから色々と説明を受け、銀髪の少年が校長に報告をする。
「現状問題は無いそうですので、直ちに生徒を下校させ、様子を見た方が良いでしょうか?」
 頭頂部の部分が妙に禿げている校長は、銀髪の少年の言葉に合わせて相づちを打った。
「うむ、そのほうが良いだろう。しかし、二、三年生が居ないというのにしっかりとやってくれているね。……えーと、なんと言ったかな?」
「小野塚風雅(おのづか ふうが)です。これも務めですので、当然ですよ」
 銀髪の少年小野塚は、機敏に回れ右をすると、全校生徒の下校を試みる。
「……うん、大丈夫だな」
 一クラスずつ確認しながら、小野塚は雷眞達の居る1−Cの確認に入った。
「ん? 峰崎と羽桜が居ないな……」
 何かに導かれるように、小野塚は桟高校舎を振り返り見る。
 見渡す限り、校舎にはヒビや崩れなどが良く目立った。そして、上の階から順々に目で辿り、最後に自分達の居る中庭付近を見渡す。
(この辺りだけ、妙な呪気を感じるが……)
 最終的に自分の足元に目線が進んだ小野塚は、顔を上げ呟く。
「……まさかな」

 風切り音と同時に、斧が地面と平行に薙ぎ払われる。
「遅い遅い」
 女は余裕の様子で言い、その斧を身を伏せることで紙一重に躱した。
 悪戯気な表情を見るからに、わざと紙一重で躱しているのに相違ないだろう。先程から挑発するように紙一重で躱してばかりなのだ。
「そろそろ大技見せてよね」
 瞬間、女は過ぎ去った斧の横を通り過ぎ、雷眞の懐へ潜り込む。
「ッ!!」
 斧のリードが大きい分、雷眞は反応しきれない。そして、それを嘲(あざけ)るような笑みを見せた女は、ナイフの柄頭を雷眞の鳩尾へと叩き込んだ。
 嗄れ声と共に、雷眞の口から空中へと血痕が飛び上がる。
 その刹那、女の持つナイフが半回転し、刃の方を前へ向ける。すると、そのナイフは素早く雷眞の脇を通過した。
「ウワァッ!!」
 叫喚と同時に、雷眞の脇から血煙が飛び散る。
「何よ、遊んでやろうと思ったのにその程度? 呪術師が聞いて呆れるわよ」
 女は、血痕を付けながらアスファルトに転がる雷眞に、冷酷な眼差しを向ける。
「その程度でよくあの付喪神を浄化できたわね。ま、力でごり押しすれば出来なくは無いか」
 声調さえも冷気を帯びてきた女は、ハイヒールをカツコツと鳴らし、一歩ずつ雷眞に近付いて行った。
「それじゃあ――――――」
 女は長い緑髪を靡かせ、大きく息を吸うと、
「―――――死ね」
 氷のように完全に冷え切った女の声は、雷眞の体を麻痺させた。故に雷眞は転げたまま制止している。
 途端、アスファルトに仰向けになった雷眞の肩に、女の掌が押さえ付けるように置かれる。同時に、反対の手が大きく振り上がった。
 そして次の瞬間、ナイフを握った手が、間髪置かずに雷眞に向かって下ろされた。
(もう……駄目か……!)
 ナイフの切っ先は、スローモーションを見ているかのように雷眞の視界を統一し始める。
 そのナイフは垂直に落下し、視界がナイフによって二分割されようとする瞬間、つまり目と目の間に触れる直前、そのナイフは動きを止めた。
 刹那、時が制止したような錯覚。
 暫く経った今、雷眞は相手の方を凝視した。
 それは、雷眞をなぶるつもりでからかっている者の浮かべる表情では無く、必死にナイフを振り下ろそうとしている顰められた表情だった。
「雷眞ー、死ぬんだったら前のめりにならなきゃ〜」
 聞き覚えのある声で放たれる坂本龍馬の名言。後ろにはもう一人いた。
 幾度となく聞こえる「ニハハ」という笑い声。雷眞には相手の陰に隠れていても、その存在を即答できる自身がある。
「にしてもボロボロだね」
 一分一秒もなく、羽桜実緒だと。


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