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雷光の呪術師

3館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/12(日) 11:21:03 HOST:222-151-086-018.jp.fiberbit.net

  〜第一章「呪術師狩り」〜

 #1
 カーテンの隙間から漏れる光に、峰崎雷眞(みねさき らいま)は目を覚ました。
 時計の方へ目をやると、六時十五分。いつもの起床時刻よりも少し早かった。
「ま、いいか……」
 二度寝何かしたらそれこそ起き辛くなる。雷眞はそう思い、洗面台へと足を運んだ。
 それから、朝食、着替えと朝の支度を着々と済ませ、洞窟を抜け出たような気分にさせる壊れた玄関を通り過ぎる。
「ヤッホー! おはよー、雷眞!」
 家を出た途端、セーラー服姿の少女が大きく声を張り上げる。
 現在、六時四十五分。かなり近所迷惑だ。
「僕は山か」
 雷眞は少女とは裏腹に、ローテンションでセーラー服の横を通り過ぎた。すると、
 グイ。
 と、左腕に圧迫感。
 雷眞は首だけ器用に回して振り向くと、学ランの袖が掴まれているのが分かった。
「玄関壊されただけでブルーになってちゃ、呪術師なんてやってられないよ」
 桃色の髪を靡かせ、羽桜実緒(はざくら みお)は言う。

 現代日本には「付喪神(つくもがみ)」と呼ばれる生物が存在していた。
 物に邪念によって宿り、人々に害を与えると言われている。それは古来から存在し、現在もなお、生き続けているのだ。
 では、何故人々は「付喪神」が存在しながらも絶滅することなく今を生きているのか。その答えは単純明快だ。
 呪術師、この存在の結果である。
 呪術師は本来、呪(まじな)いと言う原理から得られた「呪術」という術を扱う物のこと。降雨から連想されやすいのではないだろうか。
 「呪術」は物質を呪い、それを操ることで九十九髪から人々を守護しているのだ。
 そして、ここ日本にいる高校生、峰崎雷眞と羽桜実緒は呪術師の一人。
 日本に複数ある呪術師連盟の一つ、「谺(こだま)」に所属する国家公認の呪術師なのだ。

 掴まれた手を振り払い、雷眞は言った。
「別にブルーになんかなってない」
 そして、ブルーだと思うならお前のせいだ。そう言おうとして口を噤む雷眞。
 相手が傷つくから、という理由で噤んだわけではない。言っても通じないからだ。
「でさぁ、昨日のテレビ見た?」
 急に話題を変える羽桜。
 これでお分かりになると思うが、マイペース過ぎて通じないだろうという訳だ。
 現に今、話題が変えられたのが何よりもの証拠だ。
「いや、お前も分かっての通り、昨日は付喪神を浄化するのに手間取った。僕ん家大した呪工事していないから玄関破壊されたしな」
 我ながら上手いウイットの返しだ。これなら相手のペースで話が進むことは無い。
 雷眞は心中で何度もガッツポーズを繰り返す。
「フーン。で、昨日のテレビのことだけどねー……」
「………」
 駄目だった。
 あの流れなら話に乗ってくれても良いところだが、何せ相手は超マイペースの少女、羽桜実緒なのだ。
 通じるはずもないか、と雷眞は諦め、羽桜のマシンガントークに付き合うことにした。
 しかし、雷眞は疑問に思う。
 昨夜の狼型の付喪神だ。雷眞の家は大した呪工事では無いものの、呪工事という付喪神の攻撃及び呪術に耐性がある建物の一部を簡単に壊した。
 そのような強い付喪神は〈特殊部隊(エリアフォース)〉という専門の警察部隊が街の侵入を制限しているはずだ。
(でもまあ、そのために僕ら呪術師がいるんだよな……)
 いや、与えられた任務を確実に遂行するのが本来の姿ではないのか。雷眞は思わず眉間にしわを寄せて考える。
 すると、明るい笑い声が横から差し込む。
「ぷははー、何そんな難しい顔してんのー? ませちゃってさー」
「ッ……!」
 雷眞は突然、隣でヘラヘラ笑っている羽桜を殴りたい衝動に駆られた。
(全く……)
 しかし、殴るどころか拳さえ握らない。理由は至って簡単だ。
「マイペースには分からないか」
 と言う訳だ。
「でー、昨日信長の特集やってたんだけどサー」
(この歴史オタクがっ……!!)
 この時、雷眞の拳が握られているなど、羽桜は知る由もなかった。


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