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雷光の呪術師

22館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/25(土) 14:32:15 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net

 瞬間、雷眞の拳は接近する付喪神へと向けられる。そして、そこからは間髪置かず雷撃が放たれた。
 拳から放たれたその雷撃は、散り散りになった電気の糸一つ一つを吸い寄せて一本の針へと姿を変える。すると、その雷の針は付喪神全てを貫き、一瞬にして雷鳴と同時に撥ね飛ばした。
「浄化ッ!」
 電流を帯びながら宙を飛ぶ付喪神に、雷眞はすぐさま掌を向ける。
 付喪神は重力によって下に落ちるその刹那、白い光を纏って空気中へと消えて行く。
 浄化、成功。
「ッ……」
 小さく残る荒い息。
 急な脱力感に襲われ、雷眞はダラリと腕を垂らした。
 恐らく呪力の多量使用による疲労だろう。昨夜の分もろくに回復していない上に、呪力量の多い攻撃を使用したのだ、呪術師にとってこの量は致命的だろう。
(一体、どうなってるんだ……!)
 雷眞は疲労と格闘しながら、心中で吐き捨て、再度校門を挟む空間へと手を伸ばす。
 先程と同じ、ガラスの冷たい感触。やはり、手はそれ以上前に進まない。
「見事、と申しておくべきか」
 不意を突く声が、雷眞の鼓膜を軽く叩いた。
「ッ!?」
 すぐさま振り返った雷眞は、急いで戦闘態勢に入る。
「驚くなかれ、少年よ」
 怨声と共に、天蓋を被った虚無僧の容姿が雷眞の目に飛び込んだ。
「安心しろ、他の付喪神は消しておいてやった」
 状況を把握できていない雷眞は、五芒星のキーホルダーを握り、右手の中で斧へと変化させる。
 現在、呪術師生徒と一般生徒、及び教師全てが避難した今、学校に残っているのは雷眞だけだろう。そのような現状で桟高に人間が存在すると言うことは、変質者、または呪術手配犯と言うことになる。
「誰だお前、何故ここに……!?」
 雷眞は押し殺した声を相手へ向けた。
「某に戦意はない、まず武器を仕舞え。それが礼儀というものだ」
 しかし、何者かも分からない相手に武器を下ろせるはずはない。雷眞は斧を構えたまま、相手の方を睨み付ける。
 暫く無言の沈黙が続き、流石の相手も折れたのか、天蓋の向こうから口を開く。
「……まあいい。何故某がここにいるか問いたな。昨夜、どのような奴を殺し損ねたか気になったのでな、目を通しておいただけだ」
「……!?」
 天蓋男は、雷眞の愕然を余所に素早く踵を返す。
「ちょっとー! そいつ逃がすつもりなの影知!?」
 刹那、雷眞の背後から女の声がする。
 咄嗟に身を引こうとする雷眞だが、その体はすでに捕らえられていた。
 雷眞の首には白く細い腕が回り、首筋には細く鉄独特の冷たさが感じられている。当たり具合からして、短刀に近い物だろう。
(ッ! いつの間に……!!)
「……邪魔するなと言っただろう」
 溜息の後に怨声じみた声が聞こえ、天蓋男は踏み出した足を止める。
「邪魔も何も殺せばいいじゃないのよ!」
 雷眞のすぐ背後にいるため、澄んだ女声だけが雷眞の耳に届いた。
「あの方は奇数と一の位がお嫌いだ」
 天蓋男は微かに首を回し、少々こちらに顔をやる。
「それならあと九人、殺せばいいじゃない」
(九人……!?)
 雷眞の首筋に、鉄の感触が圧力を増した。
「いや、止めておこう。〈特殊部隊(エリアフォース)〉も近付いている」
 天蓋男は回していた首を戻し、ゆっくりと歩き出す。
「私は嫌よ」
 透き通るような綺麗な声の否定。その声に、天蓋男は立ち止まった。
「最近は付喪神ばっかにやらせて、私退屈してんのよ!」
(付喪神にやらせる……)
 女の言葉は実に痛々しいことを明らかにした。
 この二人の言葉の応酬。完全に昨夜の事件を物語っている。「付喪神」「九人」こういったワードが全ての謎を繋げた。
 何かが関係している。そうとしか思えなかった。
「……いいだろう」
 天蓋男は振り返りながら言う。
「部下にもたまには仕事をやらんとな。〈特殊部隊(エリアフォース)〉は足止めしておこう、制限時間は三十分だ」
 言い終わると天蓋男は視線を戻し、地面に浮かぶ男の影が煙のように立ち上る。
 その影が男を包むと、短い音を残して影と共に姿を消した。
「さあ、と言うわけで始めましょっか」
 背後から女の声が聞こえる。

 雷眞は今、向き合っていた。呪術師狩りの本元に。


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