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雷光の呪術師

15館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/19(日) 17:34:37 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net

 破格な出来事に呆気に取られていた雷眞は、威儀のこもった声に呼び覚まされ、急いで振り返る。
 声の主は桟浦高校、通称「桟校(しきこう)」の学ランを身に纏い、その袖の部分には白の字に黒く「生徒会」と記された腕章が一際目立っていた。
 彼の顔立ちは、まさに尊顔と言うべきなのだろう。引き締まった口元、鋭くきりりとした目、それと同様な印象を受け持つ眉。何処を見ても不格好という文字は見あたらない。
 極め付けは微かに靡く銀髪だ。
 アイドルがしていそうなその髪型は銀髪によく似合い、彼の前では、その清涼さが彼そのものと言っても過言ではないくらい似合っていた。
「今はこのような状況だ。いつ殺されても可笑しくない」
 再び、威儀のある声は雷眞に向けられた。
 その時、雷眞は気付いた。付喪神が校門裏の地を荒らす中、倒れたままピクリとも動かない者がいるのだ。
 銀髪の少年は雷眞が見ている方向を察したのか、動かない生徒を指さすように言う。
「見ただろう、奴は死んでいる。俺らもああなりたくなければ、もっと周りに注意を払わなければならない。だが、流石に逃げた方が良さそうだな……」
 確かに銀髪の少年が言うように、このままでは危ない。
 多勢の付喪神にこちらの状況を考えると、逃げるという選択肢が妥当なところだろう。
 それに、学校の規則として、死人が出るような戦闘は避けなければならない。最も、雷眞は付喪神相手にそこまでするような正義感は今は無い。
 雷眞の背後で、銀髪の少年が戦略的退避による走破音が鳴る。
 雷眞もそれを聞いて急いで逃走しようとするが、付喪神の吠え声に怯みを見せ、足をもつらせた。
(っと……!)
 少々体勢は崩したものの、地面に手を突いて何とかスタートダッシュは成功する。だが、その頃にはもう付喪神の方もこちらに向かって走ってきていた。
 逃走には邪魔だと思ったのか、雷眞は斧を見つめる。
「仕舞うか……」
 雷眞が力強く柄を握った瞬間だった。斧は光を帯びて段々と小さくなり、その光が消える頃には、掌に収まるくらいの五芒星のキーホルダーとなって、ベルトの左部分に納められた。
 これは、呪術師に必須とも言われる呪術の一つ【器化携帯(きかけいたい)】である。
 呪術師の武器と言われる呪具(じゅぐ)は、普段は持ち歩くのに苦労する物が多い。そのため、その収納手段として、キーホルダーやアクセサリーになるような物を携帯する。呪具の必要時には呪術を使うために必要な「呪気」という物をそれに流すことで、呪われた形、すなわち「呪形(じゅけい)」として呪具を呼び出すのだ。
 運動靴の踏みしめる感覚が、アスファルトの独特の堅さに変わってゆく。
 現在地は中庭と校門裏の境。そのまま校門に接する中庭へ走り込み、急いで学校からの脱出を試みる。
 前方に見える校門。
 ここまでの雷眞のスピードと付喪神のスピード、さらに距離を大雑把に計算したとして、何とか間に合う距離だ。
 厳しい状況の中に、僅かな笑みが雷眞の口に現れる。
 学校全体には対付喪神用結界が張ってあり、そこを抜ければ付喪神は何とか捕まるはずだ。校門裏の結界を破壊されたとして、反対側の結界が破壊されることは、そうそうない。
 そう言えば銀髪少年の姿がない、雷眞は今更になって気付く。
 恐らく、賢そうな雰囲気はあったので、一番近い通路から早々と退避したのだろう。少年の感じからして、「逃げた」とは言いづらい。
 そして早くも校門は目の前だ。
 雷眞が予想した通り、付喪神との距離はまあまあある。
 こうなると足取りも軽く、雷眞は余裕の笑みを浮かべて校門の間を――――
「………え?」
 触れた。
 雷眞の掌には空気だけが触っているはずなのにも関わらず、ガラスのような詰めたい感覚が伝わっていたのだ。
「……え」
 彫刻の如く固まる雷眞。
 後ろからは付喪神が接近し、多対一という絶望の壁が立ち塞がっている。
「クソッ!」
 直ちに雷眞は振り返り、拳を力強く握る。
 この状況では、圧倒的に雷眞は不利だ。しかし、打開策が無い訳ではない。
 たった一つ残された打開策。それは、一点集中攻撃だ。
 付喪神が集団で接近している場合、一発で仕留めやすい。そのため、攻撃範囲を一点に集め、その分呪気を込める量が同じでも威力は充分あると言うことになる。
 そして、不幸中の幸い。付喪神は集団で、それも互いの身を寄せるように集まって迫ってきてる。
 雷眞は先程まで冷たい感覚に晒されていた右手をゆっくりと前に出し、その部分に渾身の呪気を込めた。
「『雷砲針(らいほうしん)』!!』


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