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雷光の呪術師

24館脇 燎 ◆SgMmRiSMrY:2012/02/26(日) 18:04:07 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net

「へー、よく知ってるじゃない」
 女は雷眞と数メートル距離を保った状態で悠々としていた。
 相手からすれば、能力を知られたところでどうって事無いと言ったところだろう。実に余裕が見て分かる。
「当然。【神速】は自らに呪いを掛けて、自分の速度を上げる「自呪(ゆりがしり)」の代表的な呪術だからね。」
 雷眞の口からは、まるで用意されていたかのように言葉が放たれる。それもそのはず、呪術の種類は呪術師として必要不可欠の知識だからだ。
 呪術習得の一つには、国家試験を受けて手にすると言った経路があり、国家試験を受ける場合にはペーパーテストで今のようなことを書き綴らなければいけない。
 そして、雷眞はその試験を受けた一人の呪術師である。
「それじゃ、今度はそっちの呪術も見せて貰おうかしら?」
 女は軽くファイティングポーズを取り、雷眞からの攻撃を促した。
(………)
 しかし雷眞は迂闊に動こうとはしない。
 先程の攻撃も、恐らく実力の半分前後と言ったところだろう。わざわざ攻撃を仕掛ける前に「こっちよ」、などと声を掛けたなら尚更だ。
 それに、相手が速度変化の呪術を持っているので、必ずカウンターを仕掛けられると言っても過言ではない。
(迂闊に接近戦は望めないな。出来るだけ相手と距離を取って、慎重に攻撃しないと……)
 そのようなことを考えながら、雷眞は斧を持ち上げ、その切っ先をゆっくりと相手へ向けた。
(いや、むしろ相手に攻撃を促すようにして、攻撃のミスを誘うか。よし、それで行こう……!)
 途端、アスファルトの破片を飛ばす勢いでスタートダッシュによる蹴りが放たれる。
 さらにその足は、水面を小刻みに跳ねる礫のように素早く歩を刻み、女の手前で強くアスファルトを叩いた。
 そして、雷眞は高く宙へと飛び上がる。
(いける……!)
 空中で斧を構え直し、雷眞はその切っ先を相手へ向けた。
「『雷砲針(らいほうしん)』!!」
 瞬間、その切っ先からは電流が放たれ、一本の黄色の針へと姿を変える。
 それはまさしく光の速さで、構えを取った相手に瞬く間さえ与えない。
 しかし、その雷撃が女に触れることはなかった。
「なッ……!!」
 それは、雷眞にとって信じられない光景だった。
 雷撃は女の数センチ手前で砕け散るように電気の角を四方へ飛ばしている。
 そう、数センチ手前で。
「甘ちゃんね」
 女の言葉が雷眞を落とすかのように、重力によって雷眞はアスファルトへと着地する。
 着地した今、雷撃が止められ、それを防いでいた物の姿がゆっくりと正体を現した。
「……ナイフ」
 一つの単語が雷眞の口から発せられると、そのすぐ後に、金属の冷淡な音が響く。
 その残響が残る中、アスファルトの上に転がったのは、一本のナイフだった。
「アナタの呪術は【雷光撃(らいこうげき)】。呪気の摩擦によって発せられた電気を操る呪術だけど、一番の欠点は避雷する物が地学にあっちゃ当たらないって事ね」
 女はさながら名探偵の如く、雷眞の呪術を言い当てた。
 言う通り、雷眞の呪術は【雷光撃】である。
 呪気という呪術のエネルギー源に摩擦を生じさせることで電気を生み出し、それを操っている。
 そして、その欠点さえも当たっている。避雷対象がある場所ではその距離の違いによって命中率が変化するのだ。
 それ故、雷眞が先程斧を使って『雷砲針(らいほうしん)』を繰り出したのは、その距離を縮めるためだった。つまり、今のナイフは雷撃を避ける避雷針となっていたのだ。
「クッ……!」
 雷眞の頬を汗の滴が伝う。
 こちらの攻撃は当たらず、相手の攻撃のみが命中する。
「まさか、それだけなんてんじゃ無いでしょうね」
 相手はアスファルトに転がったナイフを拾い、掌でクルクルと回す。
 逃げる。そんな言葉は選択肢にはない。
 状況は言う。
 今は、戦う事しか出来ないのだと。


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