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雷光の呪術師
23
:
館脇 燎
◆SgMmRiSMrY
:2012/02/25(土) 17:28:25 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net
#2
雷眞の首筋から鉄独特の感触が消え、首の圧迫感が引いてゆく。
そして、初めて女が姿を現した。
緑色の長い髪をツインテールに結び、服装は赤のワンピースに赤いゆったりとしたネックウォーマー。どことなく「赤ずきんちゃん」を思わせるようなコーディネートに見えなくもない。
可愛さよりも綺麗さが勝っているその顔つきは、そんな容姿をこれこれギャップの醍醐味だと言うように目立っていた。
「……?」
突然、雷眞は拍子抜ける。
てっきり、首に刃物を押し付けられているのでそのまま攻撃を仕掛けてくるのかと思った。がしかし、想定外にも相手が向かい合う状態で現れたのだ。
「え? 何で離しちゃうの? 今アンタが思っている事なんてそんなところでしょ」
女は悪戯気に微笑み、占術師と思わせるように雷眞の心中を見抜く。
「いつ獲物にありつけるか分からないから、今の内に楽しんでおかなきゃねって訳よ」
両手を腰に当て、さながらモデルと言っても過言ではないようなプロポーションで言った。
というか自分は「人」でなく「獲物」なのだろうか。雷眞は、そんなことを緊迫した状況に似合わず思う。
そして、気持ちを落ち着け、軽く深呼吸をする。
「……僕は呪術師として、貴女に今の言葉を後悔させなければならない」
雷眞は斧を構え、一心に相手の方に視線を添えた。
相手はハンデとも言えるように雷眞から手を離した。つまり、雷眞を倒す事くらい虫を殺すに等しい、と宣言していることにほぼ変わりないだろう。
気を引き締め、一瞬たりとも気を抜いてはいけない。気を抜いたら最後――――
(―――― 死ぬかもな……)
「へー、真面目君なのね」
女は意外そうに呟き、手の中で回してしっかりとナイフの柄を握る。
相手の構えは、遠距離には向かないが接近戦に徹した空手の構えの一つ。様子を見るに、肉弾戦をしようとしているとしか思えない。
(呪術師じゃ無いのか……?)
雷眞の頭にそんな考えが過ぎる。
普通、呪術師と一般人が拳を交えることはない。その答えは簡単で、単に一般人に勝ち目がないからである。
こちらはすでに呪術を使い、手の内を明かしているようなもの。それなら、相手も呪術師でなければおかしいのだ。
(空間呪術か?)
雷眞は顔を顰め、相手に全集中を向ける。
呪術には大きく分けて二種類ある。
善意の意図となる白呪術。邪悪の意図となる黒呪術だ。
さらにこの呪術を分けると、合計で六種類になる。これが一般で認識されているであろう分類だ。
まず最初に白呪術を説明しておこう。
白呪術には修復、守護といった作用が見られる。
回復を主流とする「治癒呪術」。呪いの解除などを主流とする「浄化呪術」の二種類だ。
そして、残りの四種類は黒呪術に分類される。
黒呪術には白とは逆に、呪いを掛けるといった作用がある。
物質などを発生させ、それを操る「操作呪術」。呪う対象を別の性質へと変換させる「変換呪術」。呪う対象へ状態を与えたり間接的に攻撃を加える「罰当(ばっとう)呪術」。空間を呪い、転送や声同士をワープさせ通話などを可能にする「空間呪術」だ。
雷眞が予想したのは、その黒呪術の一つに分類される「空間呪術」だ。
何故空間呪術を予想したのか、それは雷眞の背後へ気配無く現れたことにある。
気配を消して忍び寄るとしても、先程まで居た天蓋男の様子がそれまで居なかったことを物語っているし、突如現れたのだとしたら空間呪術で現れたと推測できるからだ。
「フフ、一瞬だから気を付けなさい」
悪びれた女の笑みが、雷眞へと向けられる。
(来るッ――――!)
突然、アスファルトが破片を飛ばし、同時に女が姿を消した。
(しまったッ!)
「こっちよ」
声と同時に、雷眞の腹部から強い衝撃が走る。
「うぐっ……!」
掠れた苦悶が雷眞の口から発せられ、そのまま大きく後方へ飛ぶ。
実に一瞬の出来事だった。
雷眞は確かに集中を相手に向けていた。だが、それすらも躱すように雷眞の方へ移動していたのだ。
(空間呪術じゃない! これは……!!)
痛みを耐えながら、雷眞は空中で体勢を立て直す。そして、膝を折りながら滑るようにアスファルトへと着地した。
「【神速(しんそく)】か……!」
掌をアスファルトから剥がし、斧を持ち上げると共に静かに呟く。
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