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雷光の呪術師
2
:
館脇 燎
◆SgMmRiSMrY
:2012/02/11(土) 23:48:51 HOST:222-151-086-023.jp.fiberbit.net
〜序章〜
「また十人、犠牲者がボクの力となる……」
男が一人、月光を瞳に宿しながら空を見上げていた。
その男の掌はゆっくりと天に翳され、また、口からは声が放たれる。
「――――徴(ちょう)」
「クッ……!」
運動靴の靴底が地面を強く蹴り、深く足跡を残した。
その靴底は地面からアスファルトへと踏み付ける対象を変えながら素早く歩を刻む。
(クソッ……!!)
寝静まった住宅地に、荒い息と呻り声が点々と移動をしていた。
少年は荒い息を発しながら後ろへ視線を送る。少年が振り返った数メートル後方には、呻りを上げた黒い獣が少年に向かって接近していた。
接近している獣を例えてみるならば「狼」だが、例えるであって完全な狼ではない。まず、黒い狼など存在しない。最も、進取なら別だが。
しかし、明治から日本の狼が確認されていない時点でその望みは薄いだろう。だが、どう転がるにせよ、少年が追われていることには変わりは無い。
「全く…何で僕がこんな事を……」
背後に迫ろうとする獣に注意を配りながら、少年は呟く。
まだ始まったばかりの高校生活の一日を無事終え、家に帰宅。と、ここまでは良かった。問題はその後だ。
やけに時間を掛けて宿題を終わらせ、就寝しようと思ったその矢先だった。自分の家の庭から大きな物音がするのだ。
窓を閉めた部屋の中まで聞こえてくるのだから、外からしたら少しは大きい音だろう。少年は近付くに連れ、耳を澄ませる。
すると、それは物音ではなく遠吠えだと分かったのだ。
だが、少年の家では犬は飼っていなかった。だとすると、何が庭にいるのだろうか。
疑問に思った少年は居間の窓から庭に出た。そこにいたのは――――
――――黒い獣。
その光景を目にした少年は、反射的に足が動き、獣の注意をこちらに向けて家への攻撃を防いだ。
そして今に至る。
ここで二つの問題が残された。
一つは、大きな物音が玄関を破壊されていた音だったと言うこと。
二つは、追ってくる黒い獣だ。
少年の予定では、黒い獣から華麗に走り去ってサヨナラバイバイするつもりだった。だが、黒い獣は少年が思ったよりも早く、逃げ切ることが出来ない。それどころか追い付かれそうでもある。
このような状況になると、自分が華麗に逃げ切ろうとしたのが少し馬鹿馬鹿しくなる。
――――と言っても、この少年にはそれが問題である訳では無かった。
勿論、これがニホンオオカミだとしても、勝てる確証はない。
だが、それは「常人」である場合で成り立つことだ。そして、この少年はその「常人」を少し外れた枠に存在する。
「ハァ……」
溜息が一つ、夜の冷たい空気に混ざる。
すると、それの順序を追うように、少年の足は前後運動を静かに緩めた。
黒い獣との距離が一気に縮まる。
少年は振り返り、獣と向かい合わせの状態になった。その時には、獣は飛び掛かるように宙に舞い――――
――――黄色く輝く電撃に触れる。
その電撃は一瞬住宅地に光を発し、獣を弾きながら四方に散った。
途端、ドサリと言う音が響く。
アスファルトの上に実を転がした獣に、少年はゆっくりと歩み寄る。獣の動く気配は、無い。
「浄化」
その二文字が、掌と一緒に獣へ向けられた。
その言葉に反応し、黒い獣は白という反対色の光に包まれる。まるで、純白の衣に包まれるように。
獣を包んだ光は少年の掌が引かれると同時に、綿毛が如く散る。
「ハァ……」
再度、溜息が夜の空気に混ざる。
世間は言う。この少年は普通だと。
何故なら、この世界には大きく分けて二種類の人間が存在するからだ。
一つは「常人」。世間では「一般人」と言った方が理に適っているだろう種族。
そしてもう一つは、異能の力を持ち、この世界のもう一つの顔と言っても過言ではない存在。それは――――
――――呪術師だ。
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