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Loveletter
1
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/01/13(金) 20:55:56 HOST:w0109-49-133-147-8.uqwimax.jp
どうも、ねここです(´・ω・`)
今回のお話、Loveletter(ラブレター)はタイトルでわかると思うけど恋愛/学校もの
プラス友情とかギャクとかシリアスとかちょこちょこ詰め込みます
注意書きはしますがシリアスとか狂ってるの苦手な方は残念ながら見ないでね(´・ω・`)!
まあほのぼのをメインにいきたいと思っているのでできる限り控えめにするけれども
更新率はねここが只今ちがうものにはまってしまっているので少なめ(´・ω・`)
ですが、ひまなときはがんばって更新しますよ!
コメントとかアドバイスとかとか!
いろいろ受けつけてますが基本的なこと(荒らし、中傷、一行レスetc...)とか守れてない方はスルーさせていただきます
よろしくおねがいします(`・ω・´)
347
:
ピーチ
:2012/06/03(日) 14:48:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あー・・・あたしは美術部でございますww←でも全く絵心なしww
別の掲示板か・・・うーん・・・
あたしが今やってるのは、こことね・・・
あ、アメーバやってるよ(^0^)
ねここ、アメーバやってる??
348
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/03(日) 15:21:04 HOST:w0109-49-135-28-249.uqwimax.jp
>ピーチ
美術部楽しそう(`・ω・´)
でも絵心の欠片さえないっていうね(´;ω;`)←
おお、ねここもアメーバやってるよー!
ねここって名前ではないけど(`・ω・´)
349
:
ピーチ
:2012/06/03(日) 19:15:19 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
うーん・・・あたしも絵心は哀しい((泣
うんっ!楽しいよ!・・・先輩とか後輩と喋るのが・・・
おぉっ!?マジマジ!?じゃーさー、ピグともなんない??
あたしもピーチって名前ではないっ!←言い切ってどうするww
350
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/05(火) 19:42:40 HOST:w0109-49-135-38-28.uqwimax.jp
>ピーチ
あー、ピグともはピグ全然やってなくて会える機会少ないから、アメンバーとかじゃダメかな?
ダメだったらピグで大丈夫だけど(`・ω・´)
351
:
ピーチ
:2012/06/05(火) 22:08:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あー、アメンバーか!
うん、いーよーww
たださー、あたしブログに小説の更新しかしてないよ、それでおk?
352
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/06(水) 22:50:51 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 合宿! side未花
「副部長は唯花で部長補佐は梨花だ。この二人ならきっと、未花を支えられるよな」
「あ、ありがとうございますっ」
レオ先輩の言葉に号泣しながら唯花ちゃんが言った。
梨花ちゃんは数秒ポカンとしたあと大声で驚く。
「ま、マジですか?!」
「ああ、マジ」
「えええめめめぐとかしょしょうとかははははなとかいっぱいいますよね?」
「梨花は自分の意見持ってるしハッキリ言えるじゃん」
「そそそれはそうですけど!」
そんなに驚くか。
まあ、そりゃそうだよね。
入部して何ヶ月経ったんだろう、二ヶ月くらいかな?
たったすこしのあいだいっしょにいただけなのに、もう部長補佐って決められるんだもんね。
わたしも一年生のとき吃驚したなあ、と懐かしい思い出に浸っていると、レオ先輩が微笑んでこっちを見つめた。
「……これからがんばれよ」
「もう三年生は引退なんですか……?」
「コンクールで負けたらそこで終わりだよ」
――終わり。
その言葉をきいて不安になったわたしはまた泣き出してしまった。
「ちょ、未花っ」
「いやです……引退しないでください……」
「それは無理だよ、俺だって引退したくないけどさ」
「……ずっと、吹奏楽部にいてください……先輩がいない部活なんていやです……」
みんな好きだけど。
三年生がいなくなるのはさみしい。
「いなくならないでください……引退しないでください……卒業しちゃいやです、せんぱい……」
我侭だってわかってる。
迷惑かけてるって、そんなのわかってるもん。
でも、これだけは譲れないような気がした。
恐る恐る周りを見てみると、みんな怒ってるかと思ったら泣いていた。
レオ先輩も、目が赤くなってるのがわかる。
「せんぱい……?」
わたしが迷惑すぎてうざくて泣いたのかな。
そう思いながらレオ先輩の顔を覗き込むようにして見る。
するとレオ先輩は微笑みながら言った。
「未花は、吹部のメンバーを一番大切にしてるよな」
「え……?」
「俺たちが引退することを考えて泣いてくれるくらい、大切にしてくれてるんだろ?」
「……はいっ」
また涙があふれてきた。
先輩たちはわたしの言葉で泣いたんだ。
人の心を動かすことって、わたしにもできるんだな。
でも、やっぱり不安だよ。
「大切にしてくれる気持ちはすごい嬉しいよ」
そう言ってさらりとわたしの髪の毛を撫でるレオ先輩は、でも引退しなきゃだめなんだよってわたしに伝えてるみたいだった。
――合宿って、辛くて寂しい時期だ。
改めてそれを実感したわたしは、寂しそうな先輩たちの表情を見て何も言えなくなった。
もう我侭なんて、言えなくなってしまった。
-
353
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/06(水) 22:51:37 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
>ピーチ
ID教えてくれればアメンバー申請しにいけるよ(`・ω・´)
小説見たい←
354
:
ピーチ
:2012/06/06(水) 23:25:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
うわーっ!梨花ちゃん凄い驚きようだねーww
こーゆーの見てるとほのぼのしてくる♪
IDはねー、『179−562』だよーww
小説読んだらコメ頼む!←我侭ゆーなっ!
355
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/07(木) 19:40:43 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 合宿! side未花
「なあ未花、俺たち別れよう」
「え……?」
「俺は大学で俺の道を目指すし、未花ももう一人で大丈夫だろ」
「で、でもわたしはレオ先輩がっ」
「……さよなら、未花」
なんで?
レオ先輩、わたしの傍にいるって言ってくれたくせに、どうして?
わけわかんない。
わたしの周りからみんないなくなっちゃう。
やだよ。
「れおせんぱいっ……」
さっきのは夢……?
ホテル内のふかふかなベッドから起き上がると、周りにはいっしょの部屋になったメンバーたちがぐっすりと眠っている。
きゅっと目をこすると涙があふれているのがわかって、多分顔もぐしゃぐしゃかもしれないと思いながら入浴所へ向かった。
「どうしてあんな夢……」
自分でも訳がわからない。
どうしてレオ先輩と別れる夢を見てしまったんだろう。
予知夢とか正夢だったらどうしよう、いやだよ。
もわっとお湯の湯気が顔にかかってくるような気がした。
いつもよりちょっと熱めのシャワーの温度に逆に汗をかいてしまうような気もする。
「……み、未花?」
「ほえっ?」
聞きなれた声に思わず嬉しくなる。
あれ? でもこの声が今聞こえるはずないよ。
聞こえたらおかしいし。
暖簾(のれん)のようなものにはたしかに女湯って書いてたような……。
「ちょ、ここ男湯っ……」
「だ、だって、え? ど、どうしよ……」
もわもわしている空気でレオ先輩の姿はよく見えなかったけど、あたふたしていると足元に水たまりのようになったお湯がパチャパチャと音を立てて跳ねた。
本当にどうしよう。脱衣所からは「混浴がよかった」「女いねーかなあ」っていう会話も聞こえるし。
逃げ場がない……。
わたしが焦っていると、レオ先輩がぐいっとわたしの腕を引っ張った。
「未花、寝ぼけてたの? とりあえず俺の後ろに隠れてて」
「は、はいっ……」
どうしよ、今度はわたし顔真っ赤かも。
レオ先輩の背中とかすごい男の人って感じだし、力強くて頼もしすぎる。
そんなことを考えてしばらく。
わたしとレオ先輩は周りの目を気にしてずっと動け出せなかった。
わたしはなんだかくらくらしてきて――
「未花?!」
それからのことは、よく覚えていない。
-
356
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/08(金) 19:41:43 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 合宿! side未花
「うー……」
「未花っ、大丈夫か?」
「え? れ、れおせんぱい……?」
――熱い。
でも、レオ先輩がうちわで扇いでくれていたからそよ風がふわふわと飛んでくるようだった。
「わたしなんかしましたっけ……」
「あ、ああ……その、男湯間違って入ってのぼせて倒れちゃって」
レオ先輩がすこし気まずように説明する。
そりゃ間違って自分の彼女が男湯に入ったなんて言いたくないよね。
「ごめんなさい……」
「謝んなくていいよ。てか、俺こそごめん」
「なんでレオ先輩が謝るんですか!」
思わず大声を出してしまった。
でも本当に、レオ先輩が謝る要素一つもないし。
「うーん、まあ……謝った理由はいずれわかるよ」
「なんですかそれっ」
もしかして。
「大事にするっては言ったけど別れよう、ごめん」みたいなことなのかな。
やっぱりあれは予知夢だったんだ、と思ったわたしは目に涙を溜めて言った。
「いやですっ……」
「え?」
「別れないでください……わたし、レオ先輩と別れたくないです、ずっと傍にいたいです」
涙があふれてきてよくは見えなかったけど。
レオ先輩の表情は、ポカンとしている表情だったような気がする。
そして、レオ先輩の大きくて優しい感じがする手が伸びてきてわたしの頭に乗った。
――くしゃっと、乱暴に頭を撫でられる。
「なんのことかわかんねえけど、俺は未花と別れるつもりなんてないよ」
「え……? だ、だってっ! ごめんって」
「や、あれは……ほら、不可抗力だったとしても未花の裸見ちゃったわけだしさ」
「あ、え……で、でもわたし夢でレオ先輩と別れる夢を見て!」
なんなのなんなの。
じゃああれは予知夢でも正夢でもなんでもなかったの?
「だーかーらー、未花がどんな夢見たかはよくわからないけど、俺は未花のこと大好きだし愛してるし、別れるつもりはないよ」
うれしすぎる。
よかった、と微笑んだわたしはその後さっきの会話を思い出してかーっと顔が赤くなったのが自分でもわかった。
「れ、レオ先輩わたしの裸みたんですか?!」
「いやごめん! でもアレは不可抗力で」
「ま、まだ見せたくなかったです」
「まだってことはいずれ見せてくれたの?」
「まあ……その予定、ではありました」
恥ずかしいけど、すこし成長したこの会話も好きだな。
-
あわあわわ(´・ω・)
ねむいっす。
357
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/09(土) 19:58:51 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 合宿! side未花
「疲れましたよねえぇ」
「そうだねえ」
梨花がぐてえっとバス内のイスにもたれかかりながら言ったので、それに反応して頷いた。
なんやかんやで内容の濃い合宿が終わり、ちょうど帰るところだ。といっても、学校に着くまで二時間以上はかかるのだけれど。
合宿の最終日にレオ先輩とわたしは同じ部屋になる予定だったのだが、有希先生に見つかってそれは中止になってしまった。
――でも。
「楽しかったですね、レオ先輩」
「すげえ濃かったなー」
「……明後日はコンクールですね」
「ああ、最後だな」
「……やっぱりさみしいです」
「コンクール終わったら引退かぁ」
「ずごい短かったです」
隣にいるレオ先輩に楽しげに話しかけたつもりなのだが、なぜか暗い内容になってしまった。
それはバス内に漂い感染していってしまい、しんみりした空気になる。
「……二年間ありがとうございました」
「こっちこそ、未花にいっつも助けられてたよ」
それはまるで別れを表しているようで――
鈴先輩がわんっと吠えるようにわたしたちに言った。
「そんな悲しい話しないでよ馬鹿!」
「ごごごめんなさい!」
「あ、怒ったわけじゃないんだよ?」
次はさっきとは違うおもしろい空気が漂う。
三年生が卒業するまでに、精一杯感謝の気持ちを伝えたい。
-
358
:
ピーチ
:2012/06/09(土) 23:22:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
わぉ!!美花先輩達可哀そう・・・
まさかの有期先生に見つかった!
あ、でも続き気になる!
359
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 12:20:12 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「周りの人に迷惑かけるなよー」
「ちゃんとレオの話聞いてねー!」
ざわつくホール。
ついにコンクール当日ということで、わたしたち青春高校吹奏楽部はコンクール会場であるホールに来ていた。
――だが。
コンクールという緊張を目の前にしたわたしたちはいつも以上にざわついていて、それもなかなか静まらない。
部長のレオ先輩が話し始めてもその声はみんなの声でかき消されてしまっていたので、ついに副部長である鈴先輩までもがみんなを注意した。
「ちょっともー、静かにしてよー」
「……だめだ、静まらないな」
鈴先輩がしゅーんと落ち込みながら諦めてしまった。
レオ先輩もそれに同意してしまう。
こんなとき、わたしが何かできたら。
そう思ってすうっと息を吸って言った。合宿のときみたいにちいさい声じゃなくて、もっと大きな声で。
「みんな! 三年生は最後のコンクールなんだよ? 緊張するのもわかるけど、ここでざわついてうだうだしてたらいくら金賞とったってレオ先輩も鈴先輩も心残りだよ」
よかった、静まってくれた。
今までずっとしゃべってた梨花ちゃんとめぐちゃんが落ち込みながら言った。
「すみませーん……」
「ごめんなさい、気をつけます……」
そのときふいに、わたしの頭に手が乗ってくるのがわかった。
それは予想通りレオ先輩の手で、みんなの前だったから恥ずかしくてわ、と声を漏らしてしまう。
「ありがとな、未花」
「いえいえ、次期部長として当たり前のことをしたまでです……それに、わたしもレオ先輩や鈴先輩の力になりたいし」
すこしでも先輩たちの役に立てたら、それだけで嬉しいんです。
そう言って微笑んだわたしの心にはどこか寂しさを感じさせるものが残っていた。
「未花ちゃんいいこおぉおぉおおおおぉ……」
だーっと何かが流れる音がした。
まさかと思ったら本当に涙だし。鈴先輩滝のような涙を流しながら抱きついてくるし。
「り、りんせんぱい……?」
「こんなに可愛くて優秀で良い子な後輩をもってわたしは嬉しいよっ! やっぱ未花ちゃんが部長でよかったぁあぁあぁぁあぁあ!」
「おい、それは他の人に失礼だろ」
「あ、そか」
レオ先輩も入ってくる。
そして鈴先輩の腕の中にいたわたしはいつのまにかレオ先輩の腕の中にいた。
わたしがドキドキしていると、レオ先輩はわたしをぎゅっと抱きしめながら鈴先輩に言った。
「ていうか未花は俺の彼女なんだから!」
「なにをーうっ! だからって抱きしめるのはレオに関係ないじゃない!」
「いや、将来遥音未花から速水未花になるんだからお前には一切触れさせない!」
「ちょっとお、そんなの関係ないよー」
「関係あるってば」
「馬鹿だなあレオはー」
「いや鈴に言われたくないんだけど」
「え、何を今更冷静に拒否っちゃってんの?」
「いやいや、普通に」
「ちょおっ、ひどーい!」
二人の会話にくすっと微笑を浮かべた。
速水未花、かあ……いつかそうなるのかな。
そう思いながらもう一度二人の会話に耳を傾ける。
「もうっ、じゃあレオは遥音レオでわたしは遥音鈴になる! これで文句ないでしょ?」
「ああ、それならいいぜ」
「よしっ、一件落着〜」
よかったよかった。
――じゃないよ!
なんか話の趣旨変わってるし。
「ちょっ、レオ先輩も鈴先輩も何話してるんですかっ! コンクール前なんですよ?」
「ああ、ごめん。ちょっとね……」
「未花ちゃんにはなーあんにも迷惑かけないから安心してー」
「もう迷惑っていうか、……やっぱなんでもないです」
先輩には強くなりきれないわたしなのでした。
-
360
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 18:52:45 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「今からリハーサル室でチューニングして、すぐステージの裏に移動するからなー」
「周りの人の邪魔にならないように移動してねー」
レオ先輩と鈴先輩がみんなに指示を出した。
はーい、と吹奏楽部員が返事をする。
そして係の人に青春高校吹奏楽部が呼ばれて、ぞろぞろとリハーサル室に入っていった。
みんながチューニングを合わせていく。
そこはもう緊張感で包まれていて、それなのに突然レオ先輩があっ、と声をあげた。
「どうしたんですか?」
「ヤバイ、俺楽器忘れた」
「ど、どこにですか?!」
「……家、だと思う」
「ななな、なんでっ……レオ先輩ヤバイじゃないですか!」
みんながざわつき始めた。
どうしよう、レオ先輩が出ないなんて心残りだよ。
それにピアノがいなくなったら――ピアノソロがあるからだめだ。
今年のコンクールは先輩たちにとってすごく心残りになってしまうと思ったそのとき――
「ばぁか、嘘だよ嘘」
「えっ」
レオ先輩がくしゃっとわたしの頭を撫でた。
「大体ピアノはホールにあるの借りて使うんだしさー」
「……ほ、ほんとだ!」
みんなのあいだにあははは、と和んだ空気がうまれたのがわかった。
すごい、レオ先輩はみんなを和ませようとしてたんだ。
「レオ先輩、ありがとうございます」
「いや、最後くらい部長としてちゃんとしなきゃって思って」
「いっつもちゃんとしすぎてましたよ」
「そうか?」
またあはははは、とみんなが笑い出す。
――うん、なんだかうまくいきそうな気がしてきた。
みんなのチューニングが終わったあと、レオ先輩が微笑みながら言った。
「よしっ、楽しんでこよう!」
『おーっ!』
-
361
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 21:08:58 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
青春高校吹奏楽部がステージに立った。
他の高校の人や審査員の目が光ったような気がする。
そこには保護者の方や青春高校の後輩、先輩もいるのだが――
緊張で、そんなこと考えてられなかった。
その空気が周りに感染しないように必死に押さえ込む。
わたしはフルートだから一番前に座っていて、更にお客さんの目が集まるような気がした。
どうしよう、ソロで失敗しちゃうかもしれない。
そう思ったけど、指揮をするためみんなの前に立った有希先生がわたしに優しく微笑みかけてくれた。
――ああ、大丈夫だ。
そう思ったわたしは笑みを返し、ゆっくりと頷いた。
すっと、有希先生の指揮棒を持った手があがる。
それに合わせてみんなの空気が一気に真剣で集中したものになった。
最初が肝心ってレオ先輩や有希先生が言っていたけれど、本当にその通りだと思う。
すうっと息を吸った。
吹いていて、自分でも驚いてしまった。
フルートが舞うように踊りだし
クラリネットが弾けるように飛び跳ねる
チューバやトロンボーン、ユーフォニウムの低音がそれを支えるように歩きだし
トランペットやサックスが、吹き飛ばすような明るい音を奏でた
そしてピアノが、レオ先輩がみんなに伝えているような気がした。
「絶対大丈夫だ」「みんなは一人じゃない」って。
いつも以上に感情がこもり遠くへ響き渡る演奏。
最後まで、完璧な演奏ができたと思った。
有希先生の合図で立ち上がったわたしたちは、恥ずかしげに――それでも何かをやり遂げた達成感を感じながらステージ裏へと戻っていった。
ぞろぞろと、楽屋へ繋がる階段を上る。
そして青春高校が集まる第三楽屋に戻ったあと、レオ先輩が言った。
「みんな、よく頑張ったよな」
「すごい楽しかったー」
レオ先輩につづき鈴先輩も言ったからわたしも部長補佐として何か言ったほうがよかったのかもしれないけど、わたしは言葉にならない感動を味わっていて何も話さなかった。
レオ先輩がもう一度、みんなに言う。
「五時から結果発表だから、昼飯買うなら買いに行ってもいいし演奏聴きに行ってもいいけど四時四十五分には楽屋に戻ってこいよー」
はーい、と未だに現実の世界に戻ってないような返事をした。
それでもレオ先輩は苦笑しながら声をかける。
「はい、じゃあ……解散っ」
わたしは迷子にならないようにレオ先輩の傍にいることにしよう。
-
362
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/14(木) 10:13:27 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「……すごかった、です」
「ああ、そうだな」
未だに現実の世界に戻されてないわたしは、どこか遠くのほうを見つめながらポツリとつぶやいた。
レオ先輩がおーい、とわたしの顔の前で手をぶんぶん振りながら共感する。
「レオ先輩――」
「ん?」
訊きたいことがあった。
でも、勇気が出なくて言えなくなってしまった。
わたしはもじもじとうつむき加減で考え込んだあと、さみしげに微笑んで言う。
「やっぱりなんでもないです」
「そっか」
レオ先輩はこれ以上訊かないでくれたけど、きっと気づいてる。
わたしがどんな質問しようとしていたか。
――「これで、安心して卒業できますか」
わたしが訊こうとしていたその言葉は、きっととても残酷なものなのだろう。
迷子にならないようにレオ先輩の傍にいると考えていたわたしだが、すこし気まずくなってそそくさと楽屋を出てしまった。
コンビニに行こうか、他の学校の演奏を聴こうか。
いろいろ考えて迷った結果、結局わたしはコンビニに行くことにした。
青春高校が一番に決まってるけど、他の学校の演奏を聴くと自信がなくなりそうで怖かったから。
×
「いてっ」
「あ、誰かと思ったら未花先輩だったんだ」
「梨花ちゃんっ? だれかもわからない人をペットボトルで叩いちゃだめだよ!」
――地味な衝撃が頭に走った。
一瞬ひんやりと頭が冷たくなった気がする。
振り向くとそこには冷えたミネラルウォーターを片手に驚く梨花ちゃんがいて、いろいろ突っ込んでみた。
ツッコミどころが違うかもしれないけど。
「何しにきたんですかー? レオっちは?」
「れ、れおっち?」
「ああ、レオ先輩です。先輩って呼ぶの面倒だったんで」
梨花ちゃんはおもしろい。
ついでに――いや、ついでじゃなくても可愛くておしゃれさん。
ちょっと不良っぽいジャージや制服の着こなしも実は校則ギリギリオッケーだし、気さくで良い後輩だ。
「レオ先輩とはちょっと、ね――わたしが変なこと訊こうとしちゃって」
「訊いたわけではないんですねー」
「うん、直前でやっぱりいいですって言っちゃった」
へへへ、と誤魔化すように笑う。
なんだか虚しくなったわたしは何も買わないで出るのもアレなので適当にジュースでも買って行くことにした。
あ、レオ先輩の分も買おうかな。
ジュースじゃなくチョコとかにして部員みんなにあげたほうがいいだろうか。
そんな思考を巡らせながら、下手したら第三楽屋より狭いんじゃないかってほどのコンビニをうろうろ見て回ったのだった。
×
「あ、未花先輩来たー」
「遅かったですね」
梨花ちゃんとめぐちゃんがこっちを見ながら微笑んだ。
あのあと結局ミニドーナツを部員の人数分買ったのだが、どうやら帰ったころにはみんなもう戻っていたようだ。
コンビニの袋をカサカサ鳴らしながらわたしがレオ先輩にこそっと言う。
「差し入れ買ってきたんですけど、今配っちゃダメですかね?」
「あー、いんじゃね? まだ時間あるし」
「そっか、ありがとうございます」
なになにー?とすこし騒めく部員たちに聞こえるように大きめの声で言った。
「今からミニドーナツ配りまーす、一人一個だからねー!」
結果発表前に第三楽屋で食べたドーナツは、わたしたちに思い出をつくってくれているようだった。
-
363
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/14(木) 22:51:31 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「いよいよですね」
「そうだな」
結果発表の時間よりすこし早めに座席についたわたしたち青春高校吹奏楽部は、緊張を紛らわすためかみんなこそこそと話していた。
わたしもその中の一人で、隣にいたレオ先輩に話しかける。
――そういえばさっき食べたドーナツの香りとかしてないかな。
ホール内は飲食禁止だけど楽屋ならオッケーされている。
だとしても、ホール内でドーナツの香りをぷんぷんさせていたら疑われて下手したら追い出されてしまうだろう。
「……ドーナツ臭とか、しないですよね」
「ドーナツ臭ってどんなだよ、つうかドーナツは臭くないし」
「あ、そっか」
よく考えればあのおいしいドーナツに対してドーナツ臭というのもどうかと思う。
自分の言ったことにあららと軽く反省したあと、レオ先輩に微笑みかけた。
「でもレオ先輩はいっつもレオ先輩の香りがしますよね」
「な、なんだよそれ」
「教えたくないから秘密です――あっ、始まった」
ふふっと微笑みかけたあと、ステージの上にあがる主催者をじっと見つめた。
主催者のあの赤い蝶ネクタイが――妙に嫌味のように思えてくる。
「……毎年思うけど蝶ネクタイって嫌いです」
「おい、それ言うなよ」
突っ込むレオ先輩にもう一度微笑みかけて言った。
「あ、でもレオ先輩の蝶ネクタイ姿はかっこいいですよ」
緊張からか、思ったことが全部口に出てしまうようだ――
ふうと一息ついて、真剣に結果発表をきくことにした。
たくさんの高校の名前が呼ばれていくなか――
「青春高校、ゴールド金」
金賞を受賞した瞬間、青春高校吹奏楽部付近から歓声がきこえてきた。
でも、他にも金賞はあったけど県大会に出れるのは一校だけだ。
「県大会出場は――」
「青春高校吹奏楽部です!」
さっき以上の歓声があがった。
うれしくてうれしくて――わたしはつい、泣き出してしまった。
県大会に向けて、これからもがんばろう。
-
364
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/15(金) 18:32:27 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「やったぁあぁあ……」
「鈴、喜んでるなら泣くなよ」
「だってだってぇ……」
――結果発表が終わりホールを出たわたしたちは、しばらくオフィスのような場所で固まって抱き合ったり泣いたりしていた。
鈴先輩が大泣きしながらわたしたちのところに来て喜んでいたためレオ先輩に突っ込まれていたが、レオ先輩も微妙に鼻声な気がする。
わたしも相変わらず泣いたままだったけど、それより嬉しさが勝ったからずっと笑っていた。
「でも、正直に言っちゃうと県大会出場って去年も一昨年もでしたよね」
「う、そこにはあんまり触れないで……毎年泣いちゃうんだから」
そうですか、と変に納得してみる。
そしてちらりと他校の人がいるところを見てみると、そこには悔し涙を流した人たちの姿――
――「どうしてわたしたちじゃないんだろう」
きっと、他校の人たちはそう思っているのかもしれない。
「レオ先輩、楽屋戻りましょうよ」
「――ああ、そうだな……おいみんなー、落ち着き次第楽屋戻れよー」
「あ、わたし様子見で残ってますよ」
「じゃああっちは鈴に任せて俺も残るよ、未花だけじゃ心配だし」
「な、なんですかそれっ」
完全に子供扱いされてる。
表情を歪めながら反抗すると、レオ先輩が顔を真っ赤にして言った。
「そういう意味じゃなくて! 心配なんだよ、未花が他の奴にとられないかとか」
わたしより、レオ先輩のほうが子供かもしれない。
「わたしがレオ先輩以外の男の人のところに行くわけないじゃないですか」
顔が真っ赤になった。
それはわたしもレオ先輩も同じで――
「はいストーップ! イチャつくならホテル行け!」
鈴先輩に止められてしまった。
さっきまで泣いてたくせに、とレオ先輩が反抗する。
楽しい日常。
それは三年生がいてこそのもので――いつか、なくなってしまうのだと思うと辛い。
でもそれまで、精一杯楽しみたいな。
-
365
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/17(日) 20:19:29 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / コンクール side未花
「多分もう全員楽屋に戻りましたよ」
「だな、じゃあ俺らも戻るか」
最後の一人を確認して、わたしたちは周りに他に青春高生がいないか探しながら戻った。
青春高校の制服姿は見当たらず、よかったと二人で微笑みながら楽屋へ向かう。
――階段をのぼり第三楽屋へ入ると、そこはさっき以上にざわめいていた。
「あっ、未花ちゃんとレオ!」
「鈴! なんでこんなざわついてんだよ」
「二人を探しに梨花ちゃんとめぐちゃんがそっち行ったんだけど、なかなか戻ってこなくて」
心配させてしまったのだろうか。
二人の会話で梨花ちゃんとめぐちゃんがいなくなったことを察したわたしは、無言で楽屋を飛び出てしまった。
また先輩たちに迷惑かけるかな。
――でも、今はそれより梨花ちゃんとめぐちゃんだ。
これから部長になるわたしが、こんなところで立ち止まってちゃ部員のみんなも頼ることができないだろう。
×
――大きな物音がした。
それは鈍くて重いような音。
ちょっと心配になって、その音が聞こえたほうへ向かう。
「じょ、女子トイレ?」
思わずつぶやいてしまった。
女子トイレで何が起こっているというのだろう。
ちらりと覗いてみると、そこには梨花ちゃんとめぐちゃんの姿。
「梨花ちゃんめぐちゃんっ!」
「み、未花先輩ッ!」
二人の名前を呼んだはいいけど、梨花ちゃんとめぐちゃんは他校の制服の人たちから囲まれていた。
この様子を見る限り、さっきの物音は壁を叩いたのであろう。すこしヒビが入っている。
「未花って聞いたことあるかも、青春高校の吹部の部長と付き合ってる子だよ」
「え、部長ってレオって人でしょ? かっこいいなって思ってたのにぃ」
「次の部長らしいよ」
「じゃあちょうどよくない?」
な、なんなんだろう。
なんか怖いし。
「県大会出場するからって調子に乗んなよな!」
「由那たちのほうが頑張ったに決まってんだろ!」
「お前らの演奏なんか全然上手くねえんだよ!」
「大会棄権しろよ!」
由那って、一斗高校の吹奏楽部の部長さんの名前だ。
ってことはこの人たちは三年生か。
「その、吹奏楽部の方ですか?」
「は? 違うけど」
――だろうと思った。
ちょっと怖い気持ちもあったけど、青春高校の音楽を馬鹿にされてわたしも嫌な気分になった。
「音楽と関わりのない人はそうやってすぐ上手いとか上手くないって決めつけるんです」
梨花ちゃんとめぐちゃんがビクビクしているのがわかって二人に一度微笑みかけてから言った。
二人は安心した様子を見せて、そっとわたしの後ろにくる。
「わたしの演奏が足を引っ張ってるって自覚はあるし、わたしは下手ですけど……青春高校の演奏は馬鹿にしないでください! 頑張ったのなんて、どこも同じに決まってます! 一斗高校が頑張ったのも演奏聴いててわかりました。でもわたしたちも頑張ったんです」
上手く言葉にならない。
でも、わたしはともかく梨花ちゃんとめぐちゃんを巻き込むのは許せなかったから。
「……う、うるさい! お前に何がわかるんだよ!」
一人の先輩がバシンと平手打ちをしてきた――ような気がする。
なんだか感覚がわからなくなったわたしはその先輩が落ち着くのを待ってからポツリと言った。
「……わたしたち、由那さんたちの分も頑張ります。他の高校の人たちの分も頑張って、県大会を突破して全国で金賞とります」
全国までいくのは毎年だった。
でも結果はいつも銀賞。
二位の青春高校として有名だった。
――でも。
わたしたちが気づけなかっただけで、辛くて悔しい人がいっぱいいるんだ。
だからその分頑張らなきゃ。
そう決意して先輩たちに言うと、先輩たちは顔を赤くして言った。
「あ、当たり前だ!」
行こーぜ、とちょっと柄の悪い感じでトイレを去っていく。
でも去り際に、ちいさな声で言った言葉がうれしくて――思わず泣いてしまった。
「がんばって」
知らない人とだってこんなにも分かり合えるんだ。
それを知ったわたしは、やっぱり涙が止まらなくなって梨花ちゃんとめぐちゃんに慰められてしまった。
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366
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/17(日) 23:25:06 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 痛いんじゃなくて、 side未花
「未花っ! 梨花とめぐも……!」
女子トイレを出て楽屋へ向かってすこし歩くと、探しにきてくれたのかレオ先輩と鈴先輩がわたしたちの名前を呼んだ。
何だかんだいって怖かったから、安心してまた涙が出てきてしまう。
でも怖かったよりもやっぱりうれしかったのほうが強くて、さすがに梨花ちゃんとめぐちゃんには呆れられてしまったと思う。
「未花?! 怪我してる?」
「だ、だいじょうぶっ、です」
今まであったことをわたしの代わりに梨花ちゃんが説明してくれた。
そしてレオ先輩はわたしの頭を撫でて優しく微笑む。
「よく頑張ったな」
こんなんで泣くようじゃ、これでレオ先輩に頼っちゃうようじゃまだまだなんだろうけど。
これからもっと、強くなっていきたい。
×
「――ということがあったらしいです」
第三楽屋に戻ってわたしもすっかり泣き止んだ。
レオ先輩はなぜかみんなにその話しちゃうし。
「じゃ、ここで未花から」
「な、なんでですか?!」
「なんでって、張本人だし……次期部長だしさ。コンクールに対する意気込みをどうぞ」
やれと言われたからにはやるしかないんだろうけど。
ちょっと焦った。
「え、えと……どんなに頑張っても報われないこともあると思います。県大会に出場できなかった高校は悔しくて苦しくて――本当に辛いんだと思います」
なんかはずかしい。
でもわたしは話し続けた。
「今までは他校の人の気持ちとか分かってあげれなくて、自分たちのことで精一杯だったけど――きっと分かってあげれなかったから全国で金賞とれなかったんです」
言い切れる自信なんてないけど、他校の人の痛みさえわかれば何とかなるような気がして。
ただ、がむしゃらに頑張るより冷静になったほうがいいと思って。
「今回は、他校の人の痛みや苦しみも十分理解して、その人たちの分も精一杯演奏しましょう」
「はいっ」と揃う返事。
なんだかうれしくなったけど恥ずかしくて、ちらっとレオ先輩のほうを見たらレオ先輩も笑ってくれた。
「よかったよ、未花」
「……レオ先輩のお陰ですよ」
わたしはレオ先輩がいなかったら、ということを想像してちょっとさみしくなって、少し間をあけてから苦笑した。
こんなふうにレオ先輩と部活に取り組めるのって、あと何日なんだろう。
もうきっと、数えれるくらいないのかな。
百日って、人生の三分の一よりちょっと少ないくらいでかなり短いけど。
それくらいもなかったらどうしよう。
ちょっと不安になったわたしは考えるのをやめて、みんなに指示を出した。
「じゃあ、楽器積む人はトラックに運んでください」
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367
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/18(月) 18:38:15 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 強くなりたい side未花
「一、二年生強化期間?」
「ああ、今年から全部活で始まるらしくてさ」
吹奏楽部のミーティング中。
コンクールの練習前にみんなで集まっていたら、みんなをまとめていたレオ先輩がその話をしてくれた。
「どんなことやるんですか?」
一、二年生だけで合宿?
いや、これはさすがにないよね。
レオ先輩が何か言おうとしたところでバンッと音楽室のドアを蹴り有希先生が誇らしげに入ってきた。
「本当はもう一週間程度で運動部の三年生は引退だから三年生は練習なしになるんだけどさ、吹部は文化祭終わるまでんなことできないから……」
もうそんな時期か。
運動部っていっても野球部はまだ大会があるから例外だろうけど、女子テニス部とか特にボロボロ泣くんだろうな。
「一、二年生はこの音楽室、三年生は旧校舎の音楽室で練習な。打楽器は必要なの持ってけよ。バドラとかティンパニーとか鍵盤系はあるけど」
――旧校舎?
そんなものがあったのか。
わたしは何だか興味を持って、好奇心で微笑んだ。
「わたしも旧校舎行ってみたいです」
「二年生はダメ。危ないから」
「あ、危ないんですか……?」
「一回鍵閉められたらもう出られなくなるしね」
有希先生、サラリと怖いこと言ってるし。
でも入学初日から学校の隅々まで探検して外まで出回ったわたしが旧校舎を知らないなんておかしい――
ってことは、余程危ないと言われているところなのだろうか。
ちょっと怖くなったわたしは三年生の先輩たちに向かってポツリと言った。
「その、気をつけてくださいね」
「未花ちゃんかわいいー! だいじょうぶだよっ」
鈴先輩に抱きしめられる。
レオ先輩がちょ、と手を伸ばしたのがわかってちょっと嬉しくなった。
「わわわ、鈴先輩苦しいですよ」
「えへー、未花ちゃんが可愛すぎてついっ!」
「おい鈴! 未花のこと放せよっ」
なんだかんだあって、明日から強化期間です。
がんばりたいな。
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368
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/18(月) 22:02:40 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 強化期間 side未花
「失礼しま――え?」
普段ならレオ先輩か鈴先輩が鍵を取りに行ってくれているのだけれど、最近はわたしが鍵を取りに行くようにしていた。
職員室に入った途端、大慌てな先生たち――何があったんだろう。
「ゆ、有希先生? 何かあったんですか……?」
めずらしく動揺している有希先生を見る限り、かなりヤバイことだそうだ。
すると有希先生は焦りながらも優しく言う。
「一、二年とか、特に未花には心配させたくないから教えないけどとりあえず鍵ね。早く練習してこい」
何がなんだかわからないけど、他の部員を待たせていることを思い出して「はいっ」と返事をして職員室を出た。
――わたしたちを心配な気持ちにさせることなのかな。
×
「五時までパート練習して、六時から合奏でーす」
わたしが慣れない指示を出すと、みんなもちょっとぎこちない様子で「はーい」と返事をした。
他のパートが集まり始めたから、わたしもフルートを片手にフルートパートを集める。
「わたしたちは1−Aに行こうか」
「うん! ……って、なんか三年生いないとさみしーかも」
「ね、だよね」
唯花ちゃんがへへ、と苦笑するのを見てぶんぶんと首を振り同感した。
それからしばらくパート練習をして、六時に合奏を開始するのであった。
×
「うーん、地区のコンクールまで一年生も間に合ったけど、やっぱり難しいかな?」
「あたし指釣りそうですよ」
梨花ちゃんが指見せながら言った。
こういうのを指導するのも難しい……。
「えと、もっかい合わせて思ったこととか聞きます!」
「はいっ」
潔く返事をしたのはめぐ。
練習に真剣になってくれてるのって、なんか嬉しいかも。
みんなのまとめ役として、たくさんのことを知れた日になったと思う。
よかったな。
×
――おかしい。
三年生の下駄箱で待っているのだが、レオ先輩の姿が一向に見えない。
いや、レオ先輩に限らず吹奏楽部の三年生全員だ。
不安になったわたしは、一旦職員室にいる先生に訊くことにした。
「失礼します。その――って、少なくないですか?」
「い、いや……ちょっとね」
焦る先生。
たしかレオ先輩のクラスの担任だ。
「吹奏楽部の三年生に何かあったんですか?!」
「いや、まあ……見回り当番が吹奏楽部が旧校舎使うからって見に行ったらしいんだけど、面倒臭くなって中にまだ生徒がいるのに鍵閉めちゃったらしくてね……」
なんだ、そんなことか。
もう先生が向かっているなら、そろそろ来るころじゃないか?
あれ、でも。
――「一回鍵閉めたらもう出られないしね」
有希先輩の言ったその言葉が、鮮明に思い出せた。
-
わふーな展開。
どうしましょー。
369
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/19(火) 17:16:23 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 不安 side未花
「わたし、旧校舎行ってきます!」
職員室に来る前見かけたんだ。
普段なら固く警備されて鍵も閉まっている倉庫のような扉が、今日はまるで入ってどうぞというように開いていたのを。
旧校舎は地下にあるって噂を聞いたことがあったけれど、恐らくそれは本当のことだろう。
先生が止めたのも聞かずに、わたしはいつも平然として歩いている廊下を走った。
早く、先輩たちを助けなきゃ。
×
倉庫のような扉の奥はやっぱり地下へとつづく階段になっていて、駐車場とか洞窟とかの薄暗いイメージなのかと思ったら以外と綺麗だった。
階段を一番下まで降りると、上の新校舎とそっくりな――いや、ちょっと違うところもあるけど、大体は同じかな。とにかく廊下がつづいていた。
電気がついているから、きっとたくさんの先生たちが来ているんだろう。
わたしは見知らぬその校舎内を新校舎の音楽室に行くような感じで歩いてみた。
すると新校舎だと音楽室があるであろう場所に――先生たちが集まっていた。
こそっと覗いてみると、音楽室内のレオ先輩たちと連絡を取り合ってるみたい。
「レオ! 具合悪い生徒とかいるか?」
「大丈夫です!」
――よかった。
レオ先輩の返事と声を聞いた限り、みんな元気そうだ。
わたしは安心して思わずその場に座り込んでしまった。
するとその微かな音に気づいたのか有希先生がやってきて――
「未花!」
大きな声で名前を呼ばれた。
ヤバイと思ったけど、扉の向こうからレオ先輩の声が聞こえる。
「未花?」
「レオ先輩ッ!」
先生たちなんか気にしないで、思わずレオ先輩の名前を呼ぶ。
するとレオ先輩の声がまた返ってきた。
「待っててくれたのか?」
「はい……でもなかなか来なくて心配で、不安でっ……うあ、」
泣いちゃだめなのに。
レオ先輩たちはまだ助かってないって思い知らされて、不安な気持ちがまた込み上げてきた。
レオ先輩のあわてた声が聞こえる。
「未花! あと、ドアの前にいる先生方も。ちょっと下がっててください」
「れ、れおせんぱい……?」
先生たちが下がった。
その数秒後。
――鈍くて痛々しい物音。
そしてそれとともに、固く閉ざさっていた扉が倒れてきた。
開いた……?
情報を整理して考えてみると、どうやらレオ先輩が蹴って開けたようだ。
「やー、お騒がせしてすみません。先生方」
「い、いや……すごいねレオくん」
戸惑う先生。
有希先生は平然とした表情で言った。
「そうかその手があったか。未花のためなら冴えてるなレオ」
中にいた三年生の先輩たちも、みんなでレオ先輩に微笑んでいた。
「レオすご!」
「うっ、もう出れないと思ったあっ」
「レオかっこよかったあ」
「惚れちゃったかも」
わたしはぼーっとその様子を眺めていて――
安心して、また座り込んでしまった。
俯きながら泣く。
するとレオ先輩がしゃがみこんでわたしの頭をそっと撫でた。
「心配させてごめんな、未花」
「うっ……レオ先輩、の、ばかっ」
結局わたしは、レオ先輩がいなきゃ弱いままなんだ。
-
370
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/21(木) 19:38:57 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 強くなりたいのに side未花
「わたしやっぱり、部長むいてないのかなあ……」
思わずポツリとつぶやいた言葉は虚しく自分の頭に降り注ぐみたいだった。
地下だから響いて、周りにいた先生や先輩の耳にもきっと届いてしまったと思う。
わたしが俯いたままでいると、レオ先輩が優しく言った。
「――未花が部長やりたくないっていうんなら、俺たちで考え直して別の人に回せるけどどうする?」
変なの。
わたしに部長がむいてないって言われてるわけじゃないのに、レオ先輩の優しい言葉の裏に未花は部長にはなれないって気持ちがこもってるみたいで泣きたくなる。
泣きたくなるくらい、部長が他の人に譲られると悔しいのに――
「他の人に、頼んでください」
震えた声で、わたしはそう告げた。
×
「未花ちゃん、ちょっとおいで」
「鈴先輩?」
次の日のお昼休み。
朝から憂鬱な気持ちで登校して、先輩たちと顔を合わせたくないなと思っていたところに真剣な顔の鈴先輩があらわれた。
断れるはずもなく、お弁当を片手に鈴先輩についていく。
どうやら音楽室のようだ。
鈴先輩が音楽室前で止まったから、わたしも止まって無言でいると音楽室の中から声がきこえてきた。
「でもさ、いっそのこともうあの子にしたら」
「いやそれじゃだめでしょ」
「やっぱ部長とか決めづらい……」
三年生の先輩の声だ。
どうやら部長について話し合っているらしい。
――わたしがあんなこと言ったから。
なんだか罪悪感がうまれてきて、鈴先輩が振り向いたころにはわたしの心は沈んでいた。
「みんなね、未花ちゃん以外に頼れる人はいないの」
「でもわたし、レオ先輩がいなきゃなにもできないし……」
「じゃあその気持ちをみんなに伝えればいいよ。突然部長やめられて、ちょっとショック受けてるんだ」
やっぱり迷惑がられてたのだろうか。
鈴先輩のショックという言葉をきいて更に暗い気持ちになったけど、わたしはそれを軽くするために――自分の罪を軽くしようと、音楽室の扉を開けた。
「――未花」
きる!
371
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/21(木) 19:40:32 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
入って一番最初に反応してくれたのはやっぱりレオ先輩だった。
みんなの視線が一気に集まって緊張したけど、それでもわたしの思いを話す。
「わたしは、みんなをまとめてるレオ先輩が輝いてみえてかっこよくみえて……わたしも最初はそう見えたらいいなって思ってたんです。でも、わたしにはレオ先輩がいなきゃ何もできないんだって気づいて――わたしっ」
思わず泣き出してしまったそのとき、レオ先輩があせってわたしを止めた。
「未花、もういいから」
でも優しさで言ったであろうその言葉でさえが、わたしの言い訳なんて聞きたくないって言ってるように思えてしまう。
落ち込んだ瞬間、先輩たちが微笑みながらわたしに言った。
「それを直すための強化期間じゃん?」
「未花、ちゃんとまとめられてるよー」
「てかあたしたちが怖すぎたんだね、ごめんね」
「正直いって未花を嫌いな先輩後輩いないから、堂々として大丈夫だよ」
「リーダーぶっても嫌われないし。リーダーなんだし」
「ほらレオを見てみろ、ああだぞ」
「ああってなんだよ! ――とにかく」
最後にレオ先輩が微笑んで言った。
「未花が俺を必要としてくれてて、彼氏としてうれしかったし。俺が卒業してもいつでも相談乗るよ」
――だからさ、頑張ってみなよ。
レオ先輩の言葉が胸に響いて
わたしは「はいっ」と潔く返事をして、ペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます! それと、これからもよろしくお願いしますっ」
レオ先輩みたいに上手くできない、じゃなくて
わたしなりのベストを尽くすんだ
それはきっと音楽にも関係する
それぞれが自分なりのベストを尽くせてこその最高の演奏なんだろう
このことを早くみんなに伝えたくて
わたしはお弁当を片手に教室に戻ろうとした
のだが――
「なんだよ未花、せっかく来たんだからいっしょにたべようぜ」
「そうだよー、この展開を予想してお弁当持たせたんだしー」
レオ先輩と鈴先輩に引き止められてしまった。
どうしよう、これはかなり恥ずかしい。
「わたしあれだけ立派にお願いしますって言ったのになんなんですかっ、心の中で思ってることとか超恥ずかしいじゃないですか!」
にやにや微笑む先輩たち。
どうやらわたしが先輩みたいに上手にまわるのは無理なようです。
-
372
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/23(土) 17:30:50 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / ベスト! side未花
「じゃあ練習始めま――って、なんで先輩たちがいるんですか!」
「お、未花も言うようになったなー」
「そんなとこに感心しなくていいんです! 旧校舎練習じゃないんですか?」
にこにこと満面の笑みを浮かべながら隣に立つレオ先輩たちに突っ込んだ。
レオ先輩は当たり前だろと言いながら苦笑する。
「旧校舎は危ないから使用禁止になったよ」
「どうせレオ先輩が蹴ってドア破るからいいでしょ」
「破んねえよ! それより未花部長、昼に思ったことみんなに伝えてあげれば?」
なんで知ってるんですかっ、という抗議は心の中に閉まっておいて、わたしがみんなに向かって言った。
「コンクールではあの子みたいに上手く吹けないとか、あの子に負けないようにするとかじゃなくて――自分のベストを尽くしましょう」
パチパチと三年生の先輩が拍手してくれた。
きっと去年のレオ先輩も、元部長や先輩に支えられて今みたいになったのかもしれない。
わたしもがんばらなきゃな、と微笑み、みんなに指示を出した。
「じゃあ五時までパートで基礎練習とコンクール練習しt、五時五分には音楽室にチューニング終わった状態で座っててくださーい」
「はいっ」と声がまとまった。
わたしはにこにことこっちを眺めるレオ先輩の袖をきゅっと掴み、俯きながら言う。
「――わたし、ちゃんとできてますか?」
レオ先輩みたいに、みんなをまとめて周りを見れて。
自分なりのベストはやっぱりそういう風になることなんだと思う。
レオ先輩みたいにじゃなくても、最低限レオ先輩がやっていたことはやり遂げたい。
「――大丈夫、ちゃんとできてるよ。つか、俺もう教えることないくらい成長したし」
レオ先輩は優しくわたしの頭をポンポンと撫でた。
それはどこか切なさを感じさせて――わたしは去年卒業していった先輩たちの姿を思い出した。
レオ先輩もあのように、みんなを置いて卒業してしまうんだ。
「もし――」
もし、できることなら。
このまま此処に居てほしい。
-
未花の気持ちが上手く表現できてるかわからない(´・ω・)
自分たちの演奏は上手くなっていくばかりで、それはすごいうれしくて。
未花もどんどんみんなをまとめられるようになって。
だからこそ三年生の出番も少なくなるし、これから自分が部長としてみんなを支えるのを思い浮かべるとまとめられるかなっていう不安と、レオにいってほしくないっていう願いが込み上げてくるみたいな!
ちなみに未花のいう此処っていうのは、音楽室とか青春高校ってのもあるっぽいけど
やっぱり一番は自分の傍に居てほしいっていう願いですね!
ということでぐっばい!
373
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/26(火) 20:32:57 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 前向きに! side未花
――疲れた。
吹奏楽部であれだけの人数をまとめるとなるとやはり疲れる。
わたしと唯花ちゃんは部活帰りにふたりでマックに来ていて、唯花ちゃんがわたしを気遣ってソファのほうに座らせてくれたからちょっと甘えて大人しくそこにいることにした。
「おつかれ未花ちゃん」
「んー、おつかれえぇ……」
「もー、酔っ払いみたいだから起きなよう」
むにゃ、と寝言を言いながら眠りかけるわたしをぐわんぐわんとふざけて唯花ちゃんが揺らした。
うわうわうわと反応するけれど起きる気にはなれなくて、まるでお母さんに遅刻するよって言われてるみたいな気分になってしまう。
「こーら、おきなさーい!」
「やだー」
「もう――あ、レオ先輩たちだー」
えっ、と反応してみたがこんなだらーんとした姿見せられず、髪の乱れを直しキチンと制服や姿勢を正しくした。
それを見ていた唯花ちゃんに冷めた眼で見つめられる。
「ねえちょっと、そんな眼で見ないで照れちゃう」
「あははー」
照れたところで――入り口のほうに目を向けると、そこには大好きな先輩たちが居て。
なんだかちょっと安心したのが、自分でもわかった。
レオ先輩がこっちに気づいて、にこりと微笑んで手を振ってくれた。
わたしは嬉しくなって思わず――
「レオ先輩っ!」
店内だというのに大声を出してしまった。
周りの冷たい目線が刺さる。
でもそんなの気にしない。
「今日もおつかれ、部長と副部長どうだ?」
「めっちゃ疲れますよおぉ……」
――でも。
そう前置きしてから、微笑んで言った。
「すごく、楽しいです」
そう感じられて、本当によかったと思う。
不安な気持ちが消えたのは、協力してくれる部員のみんなや頼れる副部長の唯花ちゃん、部長補助でわたしを支えてくれる梨花ちゃんに、応援してくれた先輩たちのお陰なんだろうな。
わたしはうれしくなって、先輩たちにポテトをプレゼントしてみた。
「三本までですよー」
「え、未花ちゃんケチー」
「あはは、自分で買ってください」
前向きに、考えていこう。
-
ここで未花のターンはいったん終わり。
ていうか、またすぐ未花のターンになるかもだけど。
終わりが見えないのでもっとがんばります……orz
374
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/27(水) 20:44:07 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / side梨花
「一年生、最近反応悪くない?」
――唯花先輩から、ふわふわした優しい感じでそんなことを言われてしまった。
唯花先輩が言ったからまだぐさっとはきてないものの、それはあたしもかなり気になってた。
「ですよねですよね、なんか……三年生が抜けたからかなぁ」
「それにしても、県大会控えてるのにこの状態はヤバイよ」
そうですよねー、と共感してみたけれどこれを何とかして直すのはあたしの役目なんだ。
あたしは唯花先輩に「がんばりますっ!」と言ってから一年生が集まっているはずの1−Fの教室へ向かった。
×
――なにこれ。
ちょっと、いや、かなり驚いた。
1−Fに詰め込まれた一年生メンバーはそれぞれが思い思いに喋っていて、全然まとまりがない。
誰かが指示して丸くなるとか、机動かしたりして話し合いの場をつくってくれてるかなと思っていたのだがこれじゃ全然だめだ。
「みんな! 机前に寄せて話し合いするよー!」
そう指示しても、手伝ってくれるのは翔とめぐと花くらいだ。
その三人でさえさっきまで喋ってたし。
お腹の中から胸に溜まったイライラ感ともやもやが、一気に飛び出るようだった。
わたしはみんなに怒鳴る。
「一年生! 考えて動いてよ!! なんでこんなになっちゃったの?!」
「何でと言われても」
「悪くなったかなあ?」
きょとんとする一年生部員にもう一度怒鳴った。
「前だったら話し合いするって指示はいった瞬間に机前に寄せて丸くなってたじゃん!!」
「そういえば……」
「そうだった気もする……」
なんでこんな風になっちゃったんだろう。
自分でもわからなくて、ただ感情のままに怒鳴り続けた。
「県大会があるのに、こんなんじゃだめだって唯花先輩にも言われたんだよ! 今まで通りでももうだめな時期なのに、今まで以下だったらもっとだめじゃん!!!」
みんなの表情が引きつってるのがわかる。
それくらいのことを言ってるんだ、そろそろセーブしなきゃ。
そう思ったのに、一度暴走してしまった感情はなかなかおさまらず、勢いに任せて言ってしまった。
「やる気ないなら部活やめればいいじゃん!!!」
なんでうまくいかないんだろう。
-
吹部をまとめられた未花の話と同時進行系の話です。
未花が悩んでるあいだ、梨花も一年生に手こずっていました的な!
やる気ないならやめろっていうのはリアで違う部活の子が言った言葉です←
その子はかなり嫌われちゃっているので(可哀想なんだけどね)
梨花もそんな風にできたらなって思ってます!
梨花が嫌いなわけじゃなくて、部員を団結させるためにだからね^p^←
375
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/29(金) 20:13:59 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 沈黙と陰口 side梨花
1−Fにピリピリとした空気が走り、沈黙がつづいた。
どうしよう、あたしの所為だ。
あたしが一年生部員の顔をのぞくように表情をチラチラ見ていると、こそりと一人の部員がその友達に向かって何か言っているのがわかった。
「――やめろはないよね」
「なんかえらそう……」
そんなコソコソした陰口でさえも、この沈黙の中だと妙に響いて聞こえてしまう。
「ごめんなさい! あたし用事思い出したから帰る!」
自分の所為でできた沈黙と自分に対する不満の陰口に耐え切れず――
あたしは逃げた。
×
「あーあ……逃げちゃった」
早めに家に帰ってきてしまったから、仕事に行っているためお母さんの姿は見えない。
一人きりの家のなか、あたしはリビングのソファに寝そべってポツリとつぶやいた。
ウサギのぬいぐるみを抱き上げて「だめだねあたし」と声をかけるが、それはまるで自分に虚しく降ってきたようだ。
「もうやだ」
このときのあたしは、なんの遠慮もせずみんなに迷惑かけることも考えずに逃げ出したいと思っていた。
みんなの不満や自分のだめなところから逃げて、もう一生関わりたくないと思っていた。
――できることなら、部活もやめてしまいたいくらいだけど。
「……どうしよ」
あたしなんかいないほうが、吹奏楽部は平和だったんだと思う。
他人に迷惑もかけなかったし、何より嫌な思いをする人もいなかったんだ。
はあ、とため息をつくと、悩みやもやもやもいっしょに出ていくかと思ったけどそんなに甘くはなかった。
あたしはまた「もうやだなあ」とつぶやいてみたけど、そのあと突然意識が遠のいていったのがわかった。
なんか
きもちいいかんじ
×
きる!
376
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/29(金) 20:17:04 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 頑張るが楽しくなる日 side梨花
「梨花ー、入るよー」
聞きなれた声がして、あたしはびくっと肩を揺らして起き上がった。
――なんだ、家か。
時間は――六時半だ。
「だだだだれっ?」
「あたしだよもー」
「俺もいるけどさ」
「わたしも来ちゃった」
めぐと翔と花が呆れるようにあたしを見つめながら制服姿でリビングまで来た。
翔と花はともかく、めぐに呆れた目線で見つめられると相当だめなんだなあたしと思う。
「梨花はまた一人で抱え込んでー、だめだなもー」
「みんな心配してるよ」
めぐが乱暴にわしゃわしゃとあたしの頭を撫でた。
仕方ないなーみたいな感じで言ってるけど、これはめぐなりの精一杯の愛情表現なんだろうと思う。
でも、そのあとに言った翔の言葉に思わず「え」と声を漏らした。
「あたしあれだけ酷いこといったしみんなあたしを嫌いになったんじゃ」
「違う違う! 梨花はそんなに信用薄くないよ!」
「え、でも」
あたしは信用できるような存在じゃないし、頼れないほうだと思う。
ハッキリ決断できるめぐや、冷静に考えられる翔とかしっかり周りを見れる花のほうが全然頼れるし。
あたしがそれを認めないでいると、翔が優しく言ってくれた。
「梨花が帰ったあと、みんな梨花は一生懸命だったんだし、自分たちも協力しなきゃなってなったんだよ」
「わたしたちは代表で梨花を元気づけに来てるんだよー。みんなすっごい真剣に練習してたよ!」
「さすがに話し合いは何について話すのか梨花しか知らなかったし、全員居る場で話し合いたいからって中止になったけどさ」
花とめぐも、翔につづいて言う。
三人の言葉からはみんなの優しさが伝わってきて――
「ごめっ、ん、なさっ……」
思わず泣き出してしまった。
みんなを心配させた自分が嫌になっているのか、みんなの優しさがうれしくて泣いているのかは自分でもわからない。
わからない、けど。
もやもやが晴れた。
「あたし、頑張る」
「ようしっ、それでこそあたしたちの梨花だ!」
めぐが勢い良くあたしに抱きついた。
これが日常茶飯事なのに、この抱きつかれた感はいつもとちがくて、めぐの華奢で細い肩に身を預けてまた泣き出してしまった。
翔が羨ましそうな目線でめぐを見つめて、「いいなー」とつぶやいていたのにちょっと顔が赤くなるのがわかる。
あたしにはあたしを理解してくれる仲間がいて
お互いを分かち合える人もいて――
頑張るのが楽しいって思える日が、もうすぐ来るような気がするんだ。
-
377
:
ピーチ
:2012/06/29(金) 20:53:09 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
久々のコメ〜!!
何か梨花ちゃん、凄く「頼れる人」になってるよね!
これだけ書けるねここが凄いと思う!
あたしは文才と言うものが存在してないからな〜ww←あほ。
378
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/29(金) 23:46:58 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
>ピーチ
コメありがとー!
梨花は最初のイメージが消えちゃうくらい良い子にしてやりたかったからw
ねここはすごくないよー(´・ω・`)
でも、こんなこと言ったらきっとこんな気持ちになって、でもこうなったら良いだろうって自分に例えながらやったから書きやすかったかも!
ピーチが文才ないっていうんならねここは文字を打つことでさえ無理だと思う←
379
:
ピーチ
:2012/06/30(土) 00:02:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あーね、確かに最初の印象吹っ飛んだww←要するに単純バカww
いやいや、じゅーぶん凄いからね!!謙遜NO!!
え・・・文字打つことでさえ無理!?
そ、それはさすがに・・・
ってゆーか、あたしには本気で「ブンサイ」と言う言葉が存在してないよ!!←脳内の辞書にその言葉が入っていないと言うねww
380
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/30(土) 19:51:08 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 楽しくて辛い side梨花
「昨日はごめんなさい!」
また、ちょっと憂鬱な放課後がやってきた。
自分が悪いとはいえみんなに許してもらえるかなと考えると不安になってきて、でも謝らないわけにはいかなく一年生が詰め込まれた1−Fにあたしも入っていった。
大きく一礼。
「アタシたちこそ、ごめん」
「梨花が一生懸命なの知ってて酷いこと言っちゃった」
昨日あたしの陰口を言っていた子たちが前に出て、謝ってくれた。
でも正直この二人は悪くないと思う。
あたしが悪いんだ。そう思ってから、二人に向き合って言った。
「二人は悪くないよ、あたしこそ酷いこと言ってごめん」
和解できてよかった、のかな。
×
不協和音に響いた音。
それは合奏の最後の音で、思わず表情を歪めてしまうほどだった。
最近同じパートの違う人に頼らないように学年ごとで練習しているのだが、一年生だけになるとどうも悲惨な演奏になるのだ。
「……イマイチだよねぇ」
最初に発言したのは打楽器を担当していためぐだった。
ピアノは一人だけしかできなくてあたしがすることになったのだけど、めぐはそこで打楽器の才能を発揮させたのである。
――じゃなくて、たしかにその通りだ。
「まずピッチ(※1)が合ってないよね」
翔がベースを持ちながら言った。
それにみんな同感したから、チューニング(※2)をもう一度することにした。
「じゃあフルート」
「はいっ」
それから地道なチューニング作業がつづいて、やっと合奏にはいったのである。
×
「一年生、ピッチよくなってるじゃん」
唯花先輩が微笑みながら言った。
学年での練習後しばらくしてやっと全体合奏が始まったのだけれど、丁寧にチューニングしただけあって褒められたのだ。
「ありがとうございますー!」
「すっごいがんばったでしょ! 二年生よりピッチ合ってるもん」
「結構時間かかっちゃったので、これを五分くらいでできるようにしなきゃいけないんですよね……」
ポツリとつぶやいた言葉に未花先輩が頷いた。
「うん、本番はたくさんの高校がくるから長いあいだリハーサル室も使えないしね……」
「合奏での表現は上手くできてる! あとはピッチだけだ!」
唯花先輩の熱のこもった言葉にみんな「おー!」と賛成した。
唯花先輩ってふわふわしてて優しい先輩だなって思ってたけど
案外情熱的で怒るときは起こってくれる先輩なのかもしれない。
ていうか実際そうだし。
未花先輩は唯花先輩以上にふわっふわしてて優しいってイメージだったんだけど
言うときは言ってくれるし何より正義感が強い先輩だ。
あたしも二人みたいな先輩になりたい。
そして、辛くてそれでも楽しい学校生活や部活の時間をすごしたい。
-
381
:
計
:2012/07/01(日) 13:54:34 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ねwこwこw
>>1
wwwwwwwwwwwwww
382
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/03(火) 21:34:02 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 充実? side梨花
「よう梨花ー! 久し振りだなっ」
「うわ、俊太サン」
「ただいまー」と疲れた様子で部屋にスクールバックを放り投げリビングへ向かうと、そこにはにこりと満面の(いやらしい)笑みを浮かべた俊太サンがいた。
あたしは思わず「うわ」という声を漏らしたが、その隣のお姉ちゃんに目を遣ると何だか久し振りに見た気がして表情が緩む。
「お姉ちゃんも久し振りな感じするねー」
「ね、梨花がバテバテで帰ってきちゃうしあたしも帰るの結構遅いから」
「もしかしてお姉ちゃん、夜遊び?」
「なんでそうなるのっ!!」
――楽しい。
気持ちが和んでいくのが自分でもわかった。
思わず微笑んでいると、お姉ちゃんの隣の俊太サンが自慢気に言ってきた。
「俺のカノジョだかんな」
「うわ何コイツうざい」
落ち込みやがった、俊太サンめ。
そんなんで同情求めようっつったって無駄だし。ていうか可哀想でもないし。
「……被害妄想っていうの?」
「多分……」
お姉ちゃんにポツリと聞いたら、お姉ちゃんは苦笑しながらも頷いた。聞こえたのか、更にうざくなる俊太サン。
「百花あぁ……」
「俊太サンってそういうキャラだったっけ?」
「いやまあ、その……」
まあ、興味ないけど。
あたしはいい加減お腹がすいていたので、キッチンでなにやら料理しているお母さんの元へ行った。
「お腹へった。なんか手伝うよ」
「あら、いいの? じゃあこれ運んでくれない?」
「はーい……ってあれ、一個多くない?」
「あ、これ? 俊太くんのよ」
ありえねえええええぇええええぇええっ!
え、なにこのうざったい状況でお腹すいて死にそうだってのにコイツの顔眺めながら食べなきゃいけないの?
マジ無理!!
怒ったわけではないけど、それに不快感を抱いたあたしは部屋にいってスクールバックを持ってきてからお母さんたちに言った。
「あたし友達の家行ってくる!」
「あれ? 翔くんじゃないの?」
「〜〜っ! そこはどうでもいい!」
怒鳴り声をあげたあと、バタンと乱暴に家のドアを閉めて暗い道を歩いた。
×
ぴーんぽーん
可愛らしい音色が聴こえたが、そんなことどうでもよかった。
お腹がすきすぎて死にそうだ。
「はーい、ってあれ? 梨花じゃん」
「ごめんめぐ……いれて……あ、できれば翔と花も呼んで……」
女子三人+翔っていう組み合わせが基本になってしまったあたしたちだが、ガールズトークしたいときも翔はオマケでついてくる。
そうそう、チョコ買ったときについてくるシールとか、ジュース買ったときにキャップ部分にくっついてくるストラップや磁石みたいなモノ。
扱いは荒いけど、それでも翔自身嫌がってないみたいだし。
「あ、ご飯大盛り二杯で」
「多いな!」
普段はあたしがツッコミだけど、あたしのお腹が限界に近いときはあたしがボケに回ることもある。
ていうか今現にそうだし。お腹ヤバイ!
×
「ふうー、ごちっす」
あたしのお腹も満たされたところで、あとから来た花が申し訳なさそうにめぐに言った。
「ごめんね、わたしまでご馳走になっちゃって」
「いやいやー、花は良い子だからいいのっ! それに比べて梨花は……」
「良い子と梨花を比べるのは可笑しいと思いまーす」
めぐがブツブツとふざけるようにあたしのことを言い始めたから、あたしもふざけ返してやった。
でもたしかに、花はいいこだ。ついでに翔は大人しい、なぜだ。
「梨花も頑張れば良い子になれるよ」
「あーあーきこえなーい」
「おい!」
あ、ちょっと眠いかも。
空腹が満たされたら眠くなるってちっちゃい子みたいだけど……
おやすみ――
‐
俊太サン登場にテンション上がって俊太サンのキャラがわからなくなった(´・ω・`)
まあ、安定のおかしい系でいこうと思います←
それと梨花ボケめぐツッコミっていうめずらしい感じ!
梨花のボケは意外と好きですw
めぐのツッコミもキレがあって良いと思う←
ちょっとふざけてさーせんw
では次回もお楽しみに。みにみに(・ω・)
383
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/03(火) 21:50:57 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 大切な時間 side梨花
「ささ、じゃあお邪魔なアタシらはいきましょー」
「そうだね! 翔、上手くやりなよー」
――めぐの声が聞こえた。
もやもやしてたその声が段々とハッキリ聞こえてきて、やがてその言葉を理解すると顔が赤くなったのがわかる。
「いやちょっと! めぐも花もここにいればいいじゃん!」
「いやあ、ねえ?」
「お邪魔したら悪いしぃ?」
じゃ、邪魔なんかじゃないのに……!
最近あたしと翔の仲が上手くいってないというか、話すけど友達感覚になっちゃてる。
きっとめぐと花はそれに気づいて二人っきりにさせようとしてるんだろうけど、それは困るのだ。
あたしだってまだ心の準備もできてないし……。
そう思って覚悟を決めてから、できるだけ自然な起きるふりを演じてみせた。
「あ、おはよう梨花」
「しょ……翔?」
あれ。
なんかもうめぐと花がいないんだけど!
こういう時だけ素早いなあ、と思いながら動揺しまくって話しかけた。
「めめめめぐと花は?!」
「めぐと花ならどっかいったよ」
「そそそそっか!!」
動揺が隠せない。
どうしよう、恥ずかしい。
そんなあたしを見て、翔は悪戯っぽく微笑みながらあたしの頬に軽くキスした。
「しょ、翔?!」
「梨花、さっきの話聞いてたんでしょ」
「なんでわかったの?!」
「起きてるっぽかったから」
そんな。
あたしの演技って下手なのかも。
――いや、ただ単にめぐと花の言ってることに動揺しすぎてそれを隠せなかっただけか。
「――大丈夫だよ。俺梨花が望まなきゃ手出したりしないし」
「え、でも」
男の人って、こういうの我慢したくないんじゃないのかな。
俊太サンだって実際そうだし。
よく「百花とイチャイチャしてえー」っていうメールがくるし……全部無視してるけど。
「辛く、ないの?」
あたしが望むのを待つのが辛かったら。
あたしはあたしのせいで翔が辛い気持ちになるのが一番嫌だ。
大人の人がやるようなことは不安だしやりたくないけど、翔が辛いっていうならあたしは構わない。
「……辛い、のかな」
「じゃあ――」
「でも」
翔はあたしの言葉を遮って、優しく微笑んで言った。
「大好きで大事な梨花だから、精一杯尽くしたいんだよ。それに、俺も今はこうやって話せる時間のほうを大切にしたいし」
あたしって幸せだな。
そう、改めて感じたあたしはそっと翔の頬にキスを落とした。
翔が顔を赤くすると同時に、あたしの顔も赤くなるような気がする。
「あたしも翔といる時間、大事にしていきたいな」
――翔が、大好きだから。
‐
あまあまあまあましてんじゃねえよ!←
最近翔と梨花の仲が良くないなーって思って
とりあえずラブラブにしときました!
どうだ、これでお腹いっぱいだろ!←
384
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/07(土) 21:28:55 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 甘い一時 side梨花
「ご迷惑おかけしましたー! ごちそうさまでした!」
「はいはい、もう来んなよ梨花ちゃん」
「え、ひどいっ」
翔とあれから甘いムードをつくったはいいけれどめぐや花の期待している展開にはならなくて、でもあたしはそれでよかったんだと思っていたところ。
るんるん気分でお礼を言うが、肝心なめぐといえばこの通り――不満がありそうな表情だ。
「もうっ、せっかくこのめぐ様が時間を差し上げたというのにっ」
「あは、ごめーん」
「あはじゃねえよこの鈍感馬鹿あぁっ!!!」
「ち、ちがうよ。進展はしたもん」
「どうせ甘いほうにだろ! それ以上甘くなったら溶けるんだよ! 溶けて終わっちゃうよ?! もっとこうさあ、刺激とか苦みが欲しいんだよ! 甘いのはお腹いっぱいなんだよもう!」
めぐの言葉攻撃にやられたあたしはすみませんとちいさく縮こまって謝った。
そっか、甘くなって溶けちゃうのか。
でも、今までちょっと友達に戻った感じですこし甘さ控えめだったからちょうどよかったのかもしれない。
「あたしはしばらくお腹いっぱいだな、溶けてもいいけど」
「溶けて終わってもいいの?!」
「溶けないよ、雪じゃないもん。溶けるといっしょになるんだよ、それで固まるの。ろうそくみたいに!」
あたしたちはどちらかというと。
甘くて熱くて溶けて消えちゃう雪より甘くて熱くて溶けるけど消えずに固まるろうそくに近いのかもしれない。
「あたし、甘いのが好きだよ」
「……勝手にしろ」
どうやらめぐも納得してくれたようだ。
あたしたちの甘い関係を、もっとずっとつづけていきたい。
×
「ただいまー……ってまだ俊太サン帰ってないのかよ馬鹿!」
「え、いちゃ悪いか?」
「すんごい悪い! 今すぐ帰れ馬鹿!」
「いや、今日は百花と大人なことをする予定で」
「〜〜っ! 死ね!!!」
飛び蹴りを食らわせた。
ありえないありえない! お姉ちゃんとヤるとかマジないから!
そう思ったあたしはもう一度俊太サンを蹴ってから一言言った。
「お前帰れ! 死ね!!」
「り、梨花、安心して? あたし俊太とヤるつもりないからさ」
お姉ちゃんが宥めるように言った。
え、マジで?
「じゃあ大人なことって」
「うん、あたしたちホテルに行って一晩寝てくるねっ」
…………。
「ヤる気満々じゃん!!!」
「て、てことでバイバイ! 朝には帰ってくるからさ」
「朝帰りかよ! 夜遊びかよ!」
「お、落ち着いてよ〜……まあお母さんよろしくね!」
「はい、いってらっしゃ〜い! 子供つくっちゃだめよ〜」
「んじゃ、よろしくです」
「は〜い、俊太くんも百花のことよろしくねぇ」
あたし、お姉ちゃん、あたし、お姉ちゃん、お母さん、俊太サン、お母さんの順でしゃべった。
ちょっとヤバイ、無理。
「……お姉ちゃんはっ」
「ど、どうしたの? 梨花」
思わずお姉ちゃんの腕に抱きついてしまった。
「お姉ちゃんは、あたしのお姉ちゃんでいてくれるよね」
この言葉にどんな意味があるのか。
言ったあたしでさえもわからないけど――
あたしのお姉ちゃんじゃなくなるみたいで、こわい。
‐
ヤるとかそこらへんの用語には突っ込まないでください絶対に。←
385
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/14(土) 17:36:35 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / アタシの―― side梨花
「――――梨花」
驚かせてしまったのだろうか。
お姉ちゃんは、一単語分あけてからアタシの名前を呼んだ。
「何言ってんの、梨花は今もこれからもずっとあたしの妹じゃない」
いつからだろうか。
お姉ちゃんの彼氏である俊太サンに嫉妬し始めたのは。
アタシのお姉ちゃんなのにって、心の中でずっと思ってた。
「――心配する必要も嫉妬する必要も、本当はなかったのかもね」
「でもあたしは俊太からあたしを奪おうとしてくれる梨花が大好きだったよ。なんか、大事にしてもらってる感じで」
あ、もちろんいつもの梨花も大好きだけどね、と微笑むお姉ちゃん。
やっぱりお姉ちゃんは、アタシのお姉ちゃんだ。
「まーなんかすげえ感動モノの話になってるけどさ」
アタシとお姉ちゃんの絆が深まったところで俊太サンが入ってくる。
俊太サンも、べつに嫌なヤツってわけではないのかもしれない。
「姉妹とか兄弟とか、幼馴染とかの長い付き合いに勝る愛なんて、余程頑張んなきゃ手に入れられないってことだよな」
俊太サンにしては良いこと言うじゃん、と心の中でつぶやいたあと、アタシはドンッとお姉ちゃんを俊太サンに向かって押した。
あ、ちょっと強すぎたかもしんない。
「「――?!」」
驚くお姉ちゃんと俊太サン。
アタシの予想通り、ふたりは見事にキスした。
「ふたりの関係、認めてあげなくもないよ」
「すっげえ遠回しだな」
「なんか不満なの? 俊太サン」
「いえ、なにも」
あっそ、といいながらアタシは微笑んだ。
俊太サンには相変わらず冷たいような気もするけど、それでもちょっとは見直したし。
「ホテルでもなんでも行ってくればいいよ。ただしお姉ちゃんを泣かせたら許さないから」
「泣かせねえよ! ……多分」
まあ、ふたりが別れることは今後一切ないだろうし。
アタシも、そろそろ翔に甘えてみようかなー。
‐
姉妹愛っていいね!ってことで百花梨花ネタ。
386
:
ピーチ
:2012/07/15(日) 14:46:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
うわぁー!百花ちゃん&梨花ちゃんネター!!
俊太…何か久しぶりに聞いた名前が出てるw
ってゆーかさ、一つ質問してもいいでしょうか
梨花ちゃんって一時期俊太のこと狙ってたよね、何で今って嫌ってんの?
…うん、ごめんね。意味分かんないよね←答えなくてもいいよ((汗
387
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/15(日) 17:21:28 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
>ピーチ
正直ねここ俊太の存在忘れかけてたから登場させてみた←
んーとね、梨花編の小説見ればわかると思うんだけど
梨花が好きなのは俊太じゃなく百花で、俊太と付き合うことで百花がとられないか心配だったんだよ。だから俊太と百花を別れさせて、百花から俊太を放したかった的な。
すっごい無理矢理だよね、すみません←
388
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/15(日) 17:24:56 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / あわただしい一日 side未花 ※未花にかわってますよー
「あわわ、楽器が……」
「未花、持つよ」
「やややいいですよレオ先輩!」
「いやいや、楽器危ないし」
「あう……そうですか……」
「それに――」
一単語分置いて、はずかしそうにポツリ。
「未花に怪我させたくないし」
ああ、なんか朝から熱いかも。
いくら夏とはいえこれは熱すぎないか。別の意味で。
「……そ、ですか……」
顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。
それが更にはずかしく感じちゃってさらに顔が赤くなるっていう、無限ループだ。
今日は待ちに待った県大会。
早いだろって突っ込みは置いといて、みんな一生懸命やってきたんだ。
――きっと、全国に行けるはず。
「せんぱーい、楽器搬出のときにイチャイチャしないでくださいよ」
「トラックぎゅうぎゅうだし時間も遅れてるんで、急ぎますよー」
梨花ちゃんとめぐちゃんに注意されてしまった。
しらっとしたその冷たい目に、わたしは笑いながらペコペコ謝る。
「ごめんなさいごめんなさい! すぐ移動します!!」
全国大会出場は、去年達成できなかった目標だ。
全国にいったらディズニーランドに連れてってもらえるらしいけど、わたしはそれが目的とかじゃなくて。
ただ、みんなと合奏をつづけたい。
全国にいけば、先輩と合奏できる時間も長くなるんだ。
全国にいって全国で金賞とったら――すごくうれしいし、先輩も心残りはないだろう。
わたしはそんなことを思いながら、隅に置かれていたスネアを持ち上げた。
緊張する、だけど楽しみ。
×
「急いでリハ室に移動しまーす!」
時間が遅れているままコンクール会場へ向かったら、結局すぐ楽器を出すハメになってしまった。
あわただしい一日――緊張も、どんどん高まってゆく。
リハ室にいく前にチューニングをしたのだけれど、一年生はとくに短時間でピッチをこまかく合わせられるようになった。
二年生も負けてられないとピッチ合わせを頑張ったので、聴いててとても気持ち良いのだ。
三年生は、元から自分の音程の高低をわかってるからチューニングすごいはやいし的確なんだけどね。
自由曲を一度通してみたけど、なんだか良い感じ。
県大会のレベルまで仕上げきれた感じがするし、音の調子も良い。
なによりみんなが楽しそうに吹いている。
「みんな、もう不安なんかじゃないよね」
不安な気持ちなんて、みんなでいればそんなものなくなってしまうから。
「今日は楽しんでいこう!」
『おー!!!』
‐
早めの展開←
389
:
ピーチ
:2012/07/15(日) 18:23:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あーね、そーゆーいきさつかぁー←バカ。
え、まさかの作者が忘れてる感じですか…
…レオ先輩、楽器を先に言うかーっ!?
まぁ、その後で未花先輩も言ったからいいけどねw
390
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/19(木) 19:32:56 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
>ピーチ
てへぺろ☆←
レオくんは計算高いから楽器を先に言って未花を落ち込ませたんだよきっと←
391
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/19(木) 19:46:40 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 楽しいこと side未花
みんなと合奏できたこと、コンクールに出れたこと。
時には辛く苦しいこともあったけれど、それのお陰でわたしたちの絆は更に深まり、これ以上にないものになったこと。
この全てに感謝し、わたしは――わたしたちは、一生懸命、演奏した。
遠くに飛ぶ音、優雅に響く音、みんなを導いてくれたレオ先輩の、思いを込めた音。
今まで合奏したなかで一番良かったものだとわたしは感じた。
ピッチ合わせだって、学年ごとの合奏練習だって。
大変だったし、余裕がないときにやったものだからみんなのストレスだってたくさん溜まってた。
合奏するたびに増してゆく、みんなの不満。
わたしは挫けそうになったし、挫折しそうにもなったけど、これをレオ先輩は乗り越えてきたんだって思うと頑張れた。
でも、頑張っても頑張っても、みんなの不満が増してゆくだけで――
そんなとき、梨花ちゃんが一生懸命頑張ってくれたのだ。
一年生の絆が、梨花ちゃんへの信頼の厚さが。
一年生だけでなく、二年生をまとめてくれた。
わたしは大きな顔をして頑張ったよって言える立場じゃないのに。
みんなは、梨花ちゃんでなくわたしに、頑張ったねって言ってくれた。
梨花ちゃんも、わたしに笑顔を見せてくれた。
わたしはどれだけ自分勝手で、自己中心的で、我侭なんだろう。
わたしが幼いと思うのなら。
優しくしないで、鼻で笑ってほしい。
×
合奏が終わった。
有希先生を合図にわたしたちが立ち上がる。
立った瞬間、ふらりとよろめくのがわかった。
きっと、わたしだけじゃない。
精一杯気持ちを込めて、息を込めて吹いたあとは誰でも酸欠になるものだ。
でもなんか。
いきが、うまく、すえない。
どうして?
発作は治ったはずじゃ。
病院の先生も完治したって言ってたし。
とにかく舞台でそれを訴えるわけにもいかなく、わたしはよろめく身体を必死に支えながら舞台裏へ移動した。
‐
392
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/19(木) 21:19:36 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / かこきゅう side未花
ただでさえ息が上手く吸えないというのに、人で溢れてもわもわした空気の舞台裏に入ると更に酸素が減ったような気がした。
でもここで迷惑かけちゃだめだ。
わたしはできる限り何もないふりをして俯きながら、早々と舞台裏を去った。
×
吹奏楽部員がみんな入ればけっこうキツいけど、だれもいないときは流石に広く感じる第三楽屋。
みんなは楽器を片付けてから自由なので、楽器ケースを置いた個室に向かっていると思うのだがわたしはそこに入らずフルートを手に楽屋へと戻ったのだった。
(いき、すわなきゃ……。)
荒くなる息。
わたしはもっと必死に、息を吸った。
ガチャリ
第三楽屋のドアが開いた。
そこには有希先生とレオ先輩の姿があって――
わたしは呼吸のことを忘れて、心配させないために微笑んだ。
あ、ちょっと。
くるしい、かも――
「未花!!!」
「れお、せん、ぱ」
レオ先輩の必死な姿。
わたしは思わず倒れ込んでしまい、レオ先輩に支えられている状態だ。
「息吸って!」
袋を口元にあてられる。
やっと息が吸えたような気がした。
わたしはハッキリと、意識を取り戻した。
「ごめんなさい……」
「や、なんか様子おかしかったから来たんだけどさ。来てよかったよ」
「つかアタシが見落とすわけないだろ」
微笑むレオ先輩と、安心したような表情の有希先生。
「それにしても、何で今頃発作が……」
「発作じゃないと思うよ」
「精一杯演奏できて、自分が頑張ったのも認められて、多分うれしかったんだろうな」
そうだ、わたし頑張ってた。
どうしようっていっぱい悩んで、梨花ちゃんに助けてもらったんだ。
「……っ」
涙がでてきた。
「みんな未花が悩んでるのも頑張ってるのも知ってるんだから、自身持てよなー」
レオ先輩が小さな子をあやすようによしよしとわたしの頭を撫でた。
わたしも、みんなに認めてもらえるような努力ができたんだ。
わたしはゴシゴシと涙を拭き取り、レオ先輩と有希先生と、楽器ケースが置いてある個室へむかった。
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393
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/23(月) 09:25:38 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 努力 side未花
「あっ、未花先輩いたー!」
「ごめんね梨花ちゃん、ちょっと色々あって」
わたしが楽器ケースを置いた展示室に戻ってくるなり、梨花ちゃんはわたしを指差した。
探されてたのかな、とちょっと心配になって謝ってみる。
「や、なんか合奏のあと辛そうだったから心配で」
やっぱり、気づかれていたのか。
できるだけバレないように気をつけていたのに……
「なんでもないよ、大丈夫」
「嘘ですそんなの、本当はなんかあったんでしょ?」
「う、それは」
「……未花先輩、仲間じゃないですか。もっと頼ってくださいよ!」
梨花ちゃんが強くわたしに言った。
そのあと力なく微笑んで「アタシ頼れるような人じゃないですけど」とつぶやいていたが、そんなことない。
「実はね、なんか過呼吸みたいになっちゃって」
「発作ですか?!」
「ううん、そういうのじゃなくて、なんか嬉しいのと悲しいのが混ざりあってゴチャゴチャになっちゃって」
上手く言葉にできなかったけれど。
梨花ちゃんはぎゅっとわたしを抱きしめてくれた。
「よかった、また入院とかじゃなくて」
「ごめんね梨花ちゃん、心配かけて……みんなも、本当にごめんなさい」
わたしがみんなに謝ると、みんなは微笑みながら言った。
「何いってんの、アタシたち仲間でしょ」
「未花、いちいち謝ることないよ」
嗚呼。
わたしの周りには、こんなにもあったかくて優しい仲間がいるんだ。
×
「――高校です!」
わあああああ、と周りからわきあがる歓声に、わたしの目は覚めた。
レオ先輩がわたしに気づいて笑い始めるのがわかった。
「え、なにっ」
「全国出場決定だってよ」
本当?!
わたしはひと足遅れてみんなといっしょに喜んだ。
「それにしても寝ちまうとかさー、本当に疲れてんのな」
「す、すみませんっ……」
いや、謝るところじゃないけど、とレオ先輩が笑う。
よかった、先輩たちといれる時間が長くなって。
「全国もがんばりましょうね!」
「ん、楽しんでいこうな!」
一ヶ月後に全国大会を控えたわたしたち。
これからも練習がんばるぞ!
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394
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/30(月) 16:57:11 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
Loveletter きみにおくる愛の手紙 / 全国! side未花
「ちょっと混んでるけど、電車はこれ逃したらもう間に合わないんだよなあ……」
わたしがポツリとつぶやいた。
ついにやってきた全国大会の日――の五日前。
全国に行ったらディズニーランドだぜ!ということで、最初の三日はそれぞれ自由行動で東京に行くもよし、千葉に行くもよしということだそうだ。
まあ、みんな東京に家あるから隣の県への合宿とかホテルに泊まるとか別にどうでもいいんだけどさ。
とにかくホテル前に9時集合だそうから、わたしは急いでいた。
――正確に言うと、吹奏楽部の部員全員。
みんな以心伝心していたのか同じ時間の電車に乗ろうと考えていたのだ。
「うう、キツい……」
「み、未花! そんなエロいこと言わないでよ!」
「キツいって言っただけだけど?!」
「うわああぁ未花変態いぃいいぃ」
そういえば最近唯花がおかしくなったのです。
鈴先輩と絡み始めてから特におかしくなったから、きっと二人でエロいなビデオでも見たのだろう。
「あ、あっち空いてるー」
電車に乗ってしばらくすると、唯花が空いている空間をみつけてそこに移動しはじめた。
わたしもそっちのほうがいいな、と思い後ろにいたレオ先輩に声をかける。
「レオ先輩、わたしたちもいきましょうよ」
「イクとか! 未花マジエロイ!!!」
「もうっ、なんなの唯花!」
遠くから反応する唯花。
きっと他の人の迷惑になっていると思ってあわてて口を塞いだ。
わたしが移動しようとすると、突然電車がぐらりと揺れてレオ先輩に抱きしめられてしまった。
「おい未花、気をつけろよー」
「すみません……でも急に激しく揺れたから」
むー、とわたしが言い訳をしていると、唯花はまた反応した。
「激しく揺れただと?! ちょっとレオ先輩どんだけ激しくヤッてるんですか!! エロいですよ!!!」
「エロくねえよ!」
ついにはレオ先輩までもが突っ込んだ。
なんかいろいろとおかしいけど、楽しいコンクールになりそうでよかった。
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395
:
あんみつ
◆TJ9qoWuqvA
:2012/08/03(金) 11:56:08 HOST:p141213.doubleroute.jp
こんにちは
私もいれて下さい。
ルーナのファンタジー小説と楽しい仲間たち
っていうブログ来てね
396
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/08/04(土) 20:39:15 HOST:EM117-55-68-51.emobile.ad.jp
パソコン新しくなりました!
なのでID変わったかも。
仮にもねここなのでよろしくお願いします←
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