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ネタバレ@ファラミア/*  2

1萌えの下なる名無しさん:2004/05/12(水) 00:20
薄幸のゴンドール大将、後のイシリアン大公にして27代執政ファラミア殿に
原作・映画込みで萌えるスレ。
多彩なカプ萌え(攻受不問)から単体萌えまでこちらでどうぞ。

■『萌える子馬亭』の約束(必読)■SS投稿時には必ずお読み下さい。
http://0024.hiho.jp/pony/fellowship_rule.html

■前スレはこちら(過去ログ倉庫)■
http://0024.hiho.jp/pony/last_log/index.html

21:2004/05/12(水) 00:39
た、立ててしまいました。
女神様御降臨も萌え語りもお待ちしております。
「多彩なカプ」については、前スレ>1様及び同スレの終わりの方をご覧下さい。

3パタパー二世:2004/05/12(水) 01:19
>1様
スレ立てお疲れさまです。
現行のスレを過去ログ倉庫の方へ格納いたしました。

4萌えの下なる名無しさん:2004/05/12(水) 23:12
>1 様
スレ立てお疲れ様です。早速やって参りました。

>パタパー二世様
新館をありがとうございます。
過去ログ倉庫でもお世話になります。

ところで、前スレでお話に出ていた
ベレゴンドさんが語っているというお話を拝見したいと、
おねだりしてもよろしいでしょうか。
作者様がご覧になっていればありがたいのですが。

5萌えの下なる名無しさん:2004/05/13(木) 12:56
>4様
ども。前スレでベレゴンド話を書いた者です(w
彼が語り手の話、あるにはあるのですが、長い暗い、おまけに男女カプ前提と
いう、このスレとしてどうか、という代物なので、まだネタ帳に置いたまま
なのです・・・(要するに下書き段階)
新スレが落ち着いてから、投下させて頂くかも知れない、ということでお許し
下さい。

それにしても、ファラミアの「多彩な萌え」一覧(?)を見ていると、愛され
ているなあと(ヘンな意味じゃなくw)思います。にもかかわらず、本人は
「愛してくれたのは兄上だけ」と本気で思いこんでいる気がします。そういう
ところが萌えでもあり、困ったもんだとも思うのです。

6萌えの下なる名無しさん:2004/05/14(金) 13:20
>5様
ベレゴンド話についてお話ありがとうございます。
大将萌えならスレ的にはオッケーとか言ってしまうと、
拡大解釈しすぎでしょうか(汗)
いずれにせよ、お目にかかれるのをお待ちしております。

多彩な萌えにセオドレドも入れてみたい今日この頃。
自分は一人っ子なのに同い年のボロミアには、
弟がいる、と。そして、その弟はなにかとても可愛いとくれば、
セオドレドが、その弟を自分のものにしたいと考えたとしても
仕方ないんではないかと。ファラミアには、ありがた迷惑な愛ですが。

ファラミアは、自分を愛して欲しい人以外の愛は目に入らないのかも。
その代わり、愛して欲しい人の愛は、求めずにはいられない。
エオウィン口説いたりとか、パパに愛されたがったりとか。

7:2004/05/15(土) 21:42
セオドレド・・・それは考えたことなかったけど、ちょっと読んでみたいかも。
どなたか書いて下さらないかしら。

さて、こちらにお引っ越し予定の各スレで「もうネタバレ表示は必要ないので
は?」というご意見が出ていますが、これについて一言述べさせて頂きます。
そもそも「ネタバレ@」表示は「旅の仲間」以外の ネタバレという意味で冠され
たものでしたよね。
ファラミアの登場は二部からなので、その意味でのネタバレは当然のことと
して、映画の彼にはやや特殊な(?)事情があり、その二部の時から「原作で
補完」「SEEで補完」ということがあまりに多いキャラクターでした。
三部でも「とにかくSEE待ち」という状況で、原作からの補完、ネタバレを
前提としなくては、どうにも語りにくい人ではあります。
実際、映画板本スレでは、未だに「戴冠式で彼とエオウィンが笑顔で並んで
いるのはどうしてか?」などという話題が出てくるくらいです。このスレでは
さすがにそういう方はおられないかと思いますが、数字板でもまだまだご新規
さんがいらっしゃるようですし、それらの事情を考え、あえて「ネタバレ@」
表示を残した次第です。
以上は、あくまでこのスレを立てた私の考えであることも申し添えておきます。

8萌えの下なる名無しさん:2004/05/15(土) 21:59
掘り下げるたんびに
いろんなネタがバレそうな大将どの。
でも、国民年金はもれなく納めてそうだ。

9萌えの下なる名無しさん:2004/05/15(土) 22:36
王様は未納っぽそうだなあ。いや、王様がそんなものを払わなくちゃならない
かどうかは知らんが、馳夫さんの時代なんてどうみても納めてなさそう。
疑惑を追及されて、代りに答弁に立つ執政。あげく、なぜか責任をとって辞職、
イシリアンに隠居。とか、しょうもないネタが次々浮かんで来るよ。

10パタパー二世:2004/05/16(日) 23:15
スレッド入れ替えのためちょっと上げます。

>9様
むしろファラミアが糾弾しそうだと思ってしまいました…。
彼が隠蔽工作を行ったら完璧そうだし
執政は敵に回したらいかんよ、王様。とか。

11萌えの下なる名無しさん:2004/05/16(日) 23:30
>パタパー二世様
そう言えばそうかも(w

ついでに、と言ったら失礼ですがage協力します。
(以下ネタバレ)











SEEでピピンとのシーンの追加の件がリオンで出ていますが(と言うか、その
ネタを出したのは実は私です)、'noble and tragic'で'wonderful breadth
of emotion'やら'a killer smile,strong and understanding eyes'やらを
見せて下さるという大将を、早く拝みたいものです。

12萌えの下なる名無しさん:2004/05/17(月) 00:25
>11















>killer smile
大将はゴンドールの「ヨン様」か?

13萌えの下なる名無しさん:2004/05/17(月) 00:47
>12
わははははは・・・それはちょっと・・・イヤかもだ。













以前からけっこう見かけるこれあたりが、そのシーンのものなんじゃないかと言われています。
ttp://www.warofthering.net/photoforum/showphoto.php?photo=2597&password=0&sort=1&cat=all&page=2

14萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:38
流れを遮ってすみません。
セオドレド×ファラミアを言いだした本人です。
ちまちま書いていたものがある程度まとまった形になりましたので、
ご迷惑かもと思いつつも、お持ちしました。

心情的には、セオドレド→ファラミア、潜在的にファラミア→ボロミア。
心情を別にすれば、セオドレド×ファラミアです。
絡みが男女だったりする部分もあるので、
カップリング要素のある箇所だけにさせて下さい。

【割愛部分のあらすじ】
ファラミアは、十代最後の年を迎えています。
ファラミアの見聞を広めさせると同時に、近隣に知己を得させよう
ということで、ボロミアがローハンにファラミアを連れて行きます。
ボロミアはあくまで顔つなぎ役のため、到着の翌朝には、国に帰りました。
話は滞在二日目の夜からです。

堂々として理知的な大将がお好きな方には、辛いかも知れないです。
セオドレドは、ファラミアとボロミアを足して2で割って
更に薄めたような性格になっています。ご容赦を。

4〜5分割になるかと思います。

15萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:44
<セオドレド→ファラミア/しるけなし>1
設定は>>14にあります。一応下げます。















 ボロミアが特にと頼んだというおかげか、セオドレドはファラミアの世話をよく焼いているように、ファラミアには思えた。気にかけていた供の者についても、滞在に不自由ないことを本人たちの口から聞いて、ファラミアは安堵した。ファラミアは、夕食の席でセオドレドに感謝を述べた。それに、セオドレドは笑って頷くばかりだった。
「ところで、ファラミア殿。就寝までいかがなされるご予定ですか」
「特にはこれといってありませんが」
 ファラミアは、正直に告げた。
「それならば、お邪魔でないなら私の部屋においでいただくというのはどうですか。何せ、後数日のご滞在です。時間は惜しいのですよ」
「わたしもです」
 滞在二日目の夜の過ごし方は、そうして決まった。

 セオドレドの部屋は、ファラミア達にと整えられたものより、よほど簡素だった。
 広さは十分に見えたが、家具調度がほとんど無い。背もたれのない長い腰掛けと、毛皮の敷物、書き物用なのか背の低い台、衝立、その向こうは恐らく寝台で、それらのものが部屋の隅にぽつんと置かれているのだった。
 昨晩、寝室に帰ってこなかったボロミアは、ここでセオドレドと過ごしたのだろうかと、ファラミアは何となく、部屋を見回した。
 腰掛けを勧められてそこに座ったファラミアの方に、セオドレドが首を巡らせる。自身は、床に敷かれた毛皮の上に腰を下ろし、腰掛けに背をもたせ掛けていた。だらしないといえばだらしないその格好も、立派な身の丈で、金の長い髪を後ろに編んだこのローハンの人にかかると、まるで一枚の絵のようだと、ファラミアは人ごとのように思った。
「昨日の話の続きですが」
 と切り出されたファラミアは、どの話かと思い起こさねばならなかった。
「ファラミア殿のお誕生の儀の際に、私がファラミア殿にお目にかかったという話です」
「その話ならば、終わりになったのではありませんでしたか。そこまでにしようと、ボロミアが言い、セオドレド殿も同意なさった」
「あの場では、です」
 セオドレドが、にやりと笑った。
「何故ボロミア殿がその時の話を聞かせたがらなかったのか、ご興味はありませんか」
「わたしは」
 ファラミアは、少しの息をついた。
「ボロミア当人が言わないなら、決して聞きたいとは思わないのです」
 ファラミアの言葉を受けたセオドレドは、その顔をまじまじと見つめた。
「まったく、あなた方ご兄弟には敵いません」
 セオドレドは、遠慮なしに笑い声をあげた。その様といえば、腹の底からおかしそうに見えた。
「わたしは、ちっとも滑稽な事を言っている気がしないのですが」
「失礼」
 笑いをおさめようという葛藤が、何やらセオドレドの内で行われているようだった。
「その、ボロミア殿の意に忠実なファラミア殿が、昨夜はその通りになさらなかった。なぜです」
 セオドレドがそれまでより体を起こし、座面に肘をついてそこに体重を乗せ、身を乗り出したので、体が近くなる。
「飼い犬でさえ、何かの弾みには主人に牙を剥きます。ましてや、わたしは犬でもなければ、ボロミアを主人と仰いでいるわけでもありません」
「そういった話で無い事は、先刻ご承知の筈」
「セオドレド殿は、どうも、私というものを買いかぶっておいでのようです」
 一を聞いて十を知るのが当然とでも言いたげなセオドレドの口ぶりに、ファラミアは、大げさに眉根を寄せて見せた。セオドレドは答えず、なぜか声を潜めて話し始めた。

16萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:55
<セオドレド→ファラミア/しるけなし>2
















「まあ、お聞き下さい。ボロミア殿がはばかった部分には触れずに、お話させていただきますよ。私自身は幼子で、ファラミア殿がまだ赤子だったときです」
 と、セオドレドは、両手で乳児の大きさほどに幅を作った。
「私は、その赤子を見て、私のものにしたいと思ったのです。私には、その当時も今も、兄弟がおりませんから」
 すぐさま、ファラミアには合点がいった。自分は覚えてはいないが、セオドレドは思っただけではなく口にしたのだろう。ボロミアの耳に入って子供らしい一悶着が起きたのかも知れない。当時の兄が弟をどのようなものとして捉えていたのかは知るよしもないが、ファラミアの知る限りの兄は、我を通すことに何の疑問も持たない人だった。ならば、セオドレドの物言いが意に添わねば、自然のなりゆきとして抗議もしただろう。
 対して、セオドレドはセオドレドで、遠慮という言葉からは無縁のように今でも見える。当時ならいかばかりだろうか。
 その二人が相対すれば、どのような事態になるのかは、容易に想像がついた。それでも、ボロミアもセオドレドもお互いを嫌っているわけではなく、むしろ好感を持ち合っているのは、ファラミアの目にも間違い無い。不思議に思えるそんな事さえも、セオドレドの人好きのする容貌や語り口に接していると、自然と受け入れられるような気にさせられるのだった。
 なかなかに興味深い人物ではないか、とファラミアはセオドレドを見た。
「もっとも。私にも兄弟のようなものは出来ました。その子たちは、まだ小さくて、私を兄のように慕う様はたいそう可愛らしいものです」
 ファラミアは目を細めた。生まれたときから自分が最年少だったファラミアには、実感としてはセオドレドの気持ちは理解出来るとは言い難かったが、セオドレドの様子は、ファラミアの心に、微笑ましい思いを湧かせるのに十分だった。
「ただ、彼らがいくら可愛らしくても、実際、可愛らしいのですが、あのとき私が欲したその子ではない」
 いつになく、セオドレドが厳しい調子で言い切った。ファラミアの心を包んでいたある種の温かさは、瞬時に消し飛んだ。おかしな事はわずかも無かったが、ファラミアは少しだけ笑った。
「今、セオドレド殿の目の前に図々しくも座り込んでいる、この図体ばかり大きくなってしまった人間も、その子ではありませんな」
「どちらも、同じファラミア殿には違いない。さて、私が言う事は、間違っておりますか?」
「わたしは、赤子の時を覚えていないので、いずれとも」
「私の知る限り、ゴンドール執政のご子息であるファラミア殿は、あなたお一人のみですよ」
 セオドレドは、ファラミアの顔を覗き込み、喉奥で笑った。
「セオドレド殿のような方に、赤子の時分とはいえ望んでいただけて光栄とは存じますが」
 ファラミアは、今、自分がどのような顔をしているのか、あまり自信が無くなってきた。
「わたしの兄はボロミア一人です。わたしが選ぶべくもなく」
「そうでしょうとも。私は、ご兄弟のあり方を大変好ましく思っておりますよ。幼子のときならいざ知らず、私とて、ファラミア殿を年少の兄弟として欲しているわけではない」
「わたしといえば、セオドレド殿と、我が兄を多少重ねるところがありました。失礼だったやも知れません」
 それと意図して、セオドレドの言葉に、直接は無関係な言葉を返した。
「それで、いかがなのです。ファラミア殿は私という人間をどのように見ておられますか」
 いつかのと同じ質問を、セオドレドは繰り返した。ゴンドールの人間は基本的に嘘はつかない。こと、ファラミアがあのボロミアの弟であれば。食いつくだけの価値がある事を、セオドレドは確信していた。
 ファラミアは、答えるのに些かも迷わなかった。
「食えない方だと。無論、良い意味でですが」
 セオドレドは瞬きをして、そして、笑った。
「食えますとも。私は率直に物を申し上げているつもりです。さて、ファラミア殿です。食えぬお方も食うのが私の流儀なのですが、食わせてやろうというおつもりはいかがです」

17萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:57
<セオドレド→ファラミア/しるけなし> 3

18萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:58
>17は失敗です。すみません。改めて。
<セオドレド→ファラミア/しるけなし> 3















「それはまた、一見柔軟に見えて、強引なお話ではありませんか」
 ファラミアが、首を振った。
「強引なものですか。私は、食うとは言いましたが、お伺いをたてておりますよ」
「それでは、申し上げましょう。否、と」
 顔に、やんわりとした笑いを浮かべて、声の調子も穏やかにファラミアは告げた。
「食うだの食われるだの穏やかではない物事は、私の好むところではございませんゆえ」
「ゆえに、昨夜は、ボロミア殿のお心遣いを退けられたと。そういう理解でよろしいのですかな」
 ファラミアは、偽り無いところを言えばそろそろ閉口して来た。
「我が兄はともかく、結果的にではありますが、セオドレド殿がせっかくのお心遣いを、このゴンドールの不肖の息子が無にしたのが無礼であると、お感じになっているのなら、この通り、謝罪致します」
 ファラミアは、腰掛けから降り、セオドレドと同じ高さに体を置いて頭を下げた。
「あなたという方は」
 すっかり毒気を抜かれた様子で、セオドレドはファラミアを見た。
「ひとまず、顔を上げて頂きたく思いますよ。そう。楽になさい」
 長い髪の、まとめられた額に落ちる一筋をセオドレドはかき上げた。
「私は、男女の交わりとは素晴らしい物だと思うのですがね。恐らくは、ボロミア殿も私と意見を同じくしているからこそ、そうなさったのでしょう」
 ファラミアは、やはり首を振った。
「残念ながら。わたしには、喜びが勝るということは無いものです」
 セオドレドは、難しげな表情を作ってファラミアの顔を見ていた。
「思うに、趣向が違えば、感想も変わるのではないですか」
「趣向」
 ファラミアが、頓狂な声を上げた。
「そう。趣向です。自分は、ファラミア殿に五年の長があります。他はともかく、人の睦み合いに関して、お教え出来ることが無いなどという事はないと思いますよ」
 セオドレドの申し出に、ファラミアはセオドレドの顔を、穴が空くのではないかというほど、じっと見つめた。
「ご親切には感謝致します。が、わたしはそれを欲しいとは思わないのです」
 セオドレドは、笑っていた。不意に伸ばされたセオドレドの手が、ファラミアの片手をとらえた。意識しているのかしていないのか、ファラミアには判じがたかったが、その強さは拘束されていると感じさせるに十分なものだった。
「それが何かを見もしないで、一顧だにする価値も無いとおっしゃる。それでは私の立場が無い」
「おっしゃる通りとは存じますが。わたしが申し上げているのは、その事ではありません。直接に経験せずとも、分かることもあります。でなければ、書物というものが存在する意味がありません。そして、わたしは書物を好み、親しんでおります」
 掴まれた手を、ファラミアは引こうとした。が、セオドレドの握力はびくともしなかった。仕方ないので、指の一本ずつを外そうとファラミアはセオドレドの指に手を掛けた。不意をつかれたとはいえ、その手指をセオドレドのそれに絡め取られた時には、息を呑んだ。
「やはり、あまり楽しくない気が致します」
 手は繋がったまま、セオドレドの目をじっと見据えて、ファラミアが憮然と呟く。
「それはまだ、私が何もしておらないゆえでしょう。身をもって経験せねば理解されぬことも、中にはありますよ。とりわけ、身体を使う物事については。ファラミア殿とて、書物に目を通したからといって、それだけで一人前に剣が振るえると思っておられるわけでもないでしょうに」
 セオドレドが、困った風に笑った。
「私は、自身に欲望が無いとは申しません。ファラミア殿に同じものがあるとして、それが私に向けられていなくとも私は構わない。ファラミア殿の内に同じものがあるのかどうか、私はそれを見たい。そして、あなたのうちにあって未だあなたの知らないものがあるならば、それをあなたに知らしめるのは、私でありたい。私が望むのはそれだけです」
 ファラミアには、言葉が無かった。

19萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 20:02
<セオドレド→ファラミア/しるけなし/接触あり> 4
4〜5分割と予告しましたが、二倍弱を見込んでいます。重ねてすみません。












「何も、私がファラミア殿よりも年かさだからと申し上げるのではなく。再びまみえたファラミア殿が、あまりにもファラミア殿であったからです」
「正直に申し上げて、おっしゃる意味が−−分からぬのです」
 ファラミアは、喉を詰まらせた。
「分からないなら、これから見知れば良いだけのこと。私が申しているのは、そのことです。私の知りうる限りのファラミア殿は、書に親しみ、知に長けたお方であり、なおかつ、勇敢さも兼ね備えておられる。ファラミア殿がそのような方としてあられるのは、多くはファラミア殿の資質であり、ある部分においては、ボロミア殿や皆様の教えもあるでしょう。ファラミア殿がこれまで接してこられた学ぶべき事の他にある何事かを、私はファラミア殿にお見せすることが出来るだろうと、申し上げているのです。あるいは、私ではファラミア殿には物足りないということですかな」
 ファラミアは、頭を垂れた。
「セオドレド殿は、わたしを困らせるのがお好みらしい」
「困窮ついでに、私の申し出におつきあい願えませんか」
 うつむいたままのファラミアの首が、弱々しく左右に振られる。
 ゴンドールの息子を侮るおつもりか、と、怒りを露わにされても仕方ない事をしていると、セオドレドは自覚していた。それでも、そうしないではいられないのが、セオドレド自身にもままならないことではあった。
 どこまで、人の立場ばかりを理解しようとするのだろう、と、セオドレドは柔らかなうねりのある、肩を越したファラミアの頭髪を見下ろした。自然と手がそこに伸びる。まるで、少しでも乱暴にすれば壊れてしまう、脆いものを扱うように、ごくそうっとセオドレドは、ファラミアの髪をかき混ぜた。横顔にかかる髪のせいで、表情が見えなくなっているファラミアの、伏せられた口から漏れたかすかな吐息を聞いたような気がした。その色は、決して苦さも困惑もなく、むしろ安んじているように、セオドレドの耳には響いた。そういった事について、セオドレドは恐らく誤らない。わずかでもない経験に裏打ちされた自信が、セオドレドにはあった。
 髪に触れた手を、髪に差し入れ、頬に触れさせる。静かに撫でると、ファラミアの頭がわずかぶれた。もう一方の手も頬に添え、両手でファラミアの頬を包み込む。セオドレドの手が、身の丈に合って十分に大きいためか、あるいは、ファラミアが背丈の割にはたいした大顔面ではないせいか、ファラミアの頬はセオドレドの手に、子供の顔がそうであるようにすっぽりと包まれた。その温かさが、心地よくないといえば嘘になる。ファラミアは、その手にされるがまま頬を委ねていた。
 暖かい手を、ファラミアは知っていた。それは、遙か幼き日には母の手であり、あるいは父のものであったかも知れない。長じては、主にそれは兄の手であった。ボロミアは、彼が必要と感じた事柄については、ファラミアに対して容赦は無かったけれども、そうでないときは、うんと暖かい兄だった。そのボロミアと同じ年に生まれたという、このローハンの世継ぎは、ボロミアを思い出させる手をしていると、ファラミアはぼんやりと思った。だから、セオドレドがファラミアの頭を彼の膝へと導き、そこに安住させようとしたときも、ファラミアは何のわだかまりもなく、それに従った。
 セオドレドの固い大腿に頭を乗せて、ローハンの毛皮の上に体を投げ出す。ファラミアは、深い息をついた。それは、久しく彼の兄から得られない、恐らくは二度と得ることのない、安らかな感触だった。
 目を閉じていたので、セオドレドの顔は見えなかったが、恐らくは微笑んでいるのだった。気配が、部屋を満たす空気がそれを伝えていた。
 セオドレドは、何と言っていたのだったか。自分自身ですら気付かないままに、自分の内にあるかも知れない感覚を教えたいと言っていた。ファラミアは、今、はじめてそれを知りたい、と思った。あるのか無いのかすらも分からないそれを。
 セオドレドならば、出来るのではないかという気がした。少なくとも、有無は知れるだろう。それだけでも、十分に意味のあることなのではないか? 世にある森羅万象に比して、自分は、あまりにも何も知らなすぎる。常々ファラミアはそう感じていた。そのために書を、経験を欲してきた。兄に頼ることも多かった。自分に与えられた環境は、申し分ないものだとずっと感じていたけれども、この見知らぬ国の世継ぎは、自分が経験してきたもの、その延長にきっとあるだろうものごとではない何かを、見せてやろうというのだ。それは、実に得がたい機会ではないだろうか。

20萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 20:05
<セオドレド→ファラミア/しるけなし/接触あり> 5















 ファラミアは、息を飲み込んだ。
 セオドレドの手は、変わらず暖かだった。頬に飽きたのか、ゆるく波うった髪をかきあげるように梳いてくる。頭に手が触れると、指を伸ばして髪の間に見え隠れしている耳の形を確かめるかのように、その輪郭をなぞってくる。それが、こそばゆかった。そして、決して不快ではなかった。むしろ、このまま眠りが自分をさらっていくのではないかと思えるほどの安心に包まれているような気がした。
「私は、案外と幸運なのかも知れません」
 暖かい手だけではなく、セオドレドの低い声が、沸き上がる多少の震えを伴って内からファラミアの体を撫でていく。
「もし、私がボロミア殿のようにあなたの兄だったとしたら、このような形で触れることなど、思いも寄らなかったでしょうからね。長く、共にある時間を得るばかりが、幸福なのではないのだろうと、私は思い始めておりますよ」
 頭だけをセオドレドの体に触れさせて、床に体を投げ出す格好で寝そべっていたファラミアは、身の置き場が無いような気分になってきた。
「こう申し上げて構わないのでしたら、ボロミアの話は、今は、なさらないで頂きたい」
「なぜです?」
「なぜ」
 聞き返された理由こそが、ファラミアにとって「なぜ」だったのだが、セオドレドはどこまで分かって言っているのだろう。
「もしかして、悪いことをしている気分になりますか。それは、何に対してでしょうな」
「セオドレド殿」
 思わず高くなった自分の声に、自分ではっとしてファラミアは口をつぐもうとした。が、それよりも早く、セオドレドの厚みのある大きな手が、ファラミアの口を塞いだ。
「ファラミア殿らしくもない、お行儀の悪さではありませんか」
 見下ろしてくるセオドレドの目に、ファラミアは目で抗議をした。セオドレドは応えるように目を細くしたが、手が緩むことはなかった。膝を立てて、起きあがろうとしたファラミアの体は、その前に自分のものよりも質量のあるセオドレドの体に押されて、僅かに持ち上がっただけで床に伏された。
「今更、何だというのです。もう少し、潔い方だと思っておりましたが」
 ファラミアは、頭を巡らせた。セオドレドの言葉を聞いてはいけない。それよりも、優先してするべき事はある筈である。それは、この体勢から抜ける算段だ。セオドレドの手に当たって自分の顔にかかる自分自身が吐いた息が暑苦しいが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
「私は、自分と同じものをファラミア殿が私に向けずとも構わないとは申しました。が」
 セオドレドは言葉を切った。ファラミアの衣服の上に乗せられたセオドレドの利き手が、ファラミアの脇腹を腋に向けて這い上がってくる。ファラミアの息が、一瞬止まった。お構いなしの手は、口を押さえているものと同様にやはり広く、体の全面に上がってきて胸の筋肉を衣服越しに包んだ。触れられている部分だけではなく、体の全体を、ぞくりとしたものが走っていく。叶うものなら身をよじって逃れたい。反射的にファラミアの心は要求したが、それを現実に出来る可能性は、今のところファラミアには無いように思えた。ファラミアは、無駄なことはしなかった。
 どうする?
 この手の持ち主が、単なる一兵卒であれば事は容易い。自由になる部分を使って、彼に決定的なダメージを与えればそれで良い。体のどこにどれだけの衝撃を与えれば、相手を退かせるのに十分であるかなどということは、ファラミアは知識としても、戦さでの経験からも知りすぎるほどに知っていた。
 しかし、ファラミアの自由を奪おうとしている彼は、ファラミアが決して粗末に扱ってはならない類の人間だった。友好的な繋がりを保持しておくべき国の世継ぎであり、個人としては、ボロミアに気に入られている相手である。国を統治する者の家系に生まれたとはいえ、自分は後継者ではなく、後継者の力となり、共に国を盛り立てるべく運命づけられているのだという強烈な自覚が、ファラミアにはあった。自分自身よりも何よりまず優先させるべきが国であることを思えば、セオドレドの行為を止めるとすればそれは、納得ずく以外にはありようがなかった。
「私に向けられていないのは構いませんが、今ここに向き合っているのが私であるのに、ファラミア殿の内が私でないもので、満たされているのを思い知らされるのには、構わないわけにはいかない」
 ファラミアの言葉を塞いでいた手が退けられる。何かを言う前にファラミアがしたのは、大きく呼吸することだった。なま暖かい自分の息ではなく、新鮮な空気を体に入れたかった。しかし、ファラミアの思惑はセオドレドによって大いに外された。セオドレドは、いつまでも自分の片手を遊ばせてはいなかった。

21萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 20:08
<セオドレド→ファラミア/キス程度あり> 6
















 長じてからは、ファラミアは自分が小柄だとは思ったことは無く、背丈にのみ注目するならば五年早く生まれている自分の兄より、よく育ってはいた。それでも、セオドレドの手はファラミアの手首を易々と自分のものにした。あまつさえ、もう一方の手首さえも拘束した方の下敷きにして床に押しつけ、腕の強さで縫い止めた。
 成すべき事はいよいよ明確となってくるのだが、成し得る事は減じているような気がして、さしものファラミアも、顔色を失いつつあった。せめて自由になっている口が、役に立てば幸い。しかし、最も効果的であろう一言を、口の端に昇らせる事はファラミアにはためらわれた。自分を困難な状況に置いている張本人に対してさえも、脅迫に値するようなまねをする事をするのを、ファラミアはよしとしなかった。
 その一言を口にすれば、セオドレドは間違いなく退くだろう。自分は、行為を阻むのに命を賭すつもりだと言えば。
 跡継ぎにあらずとはいえ、仮にもゴンドール現執政の息子を預けられながら、無事に故国に帰せなかったとなれば、セオドレドは、ひいてはローハンという国は、窮地に立たされるだろう。まさか、一夜の戯れに国を賭けるような真似は、セオドレドもすまい。
 問題は、それがファラミアにとってもまた、かなりの確率で勝つと分かっていても痛手となる賭けだということだった。セオドレドが退いたところで、ファラミア自身、あるいはゴンドールに何か益する事があるわけではない。そして、万が一、愚かにもセオドレドが退かなかったとしたら−−。考え得る限りで最悪の結果がファラミアを待っているだろう。
 ファラミアは自分の命を惜しんだことは無いし、これからも無いだろうが、それは理由によりけりだった。あくまでも命を惜しまぬ事で得られるものがファラミアをそうさせているのであって、己個人の身に降りかかる事態を避けるために落とす命の持ち合わせは、ファラミアといえどもなかった。
 だとすれば、自分に何が出来るだろう?
 ファラミアは口を閉ざした。
 何を思ったか、セオドレドの唇が、引き結んだファラミアの唇に重なる。柔らかくて暖かい、しかし、今のファラミアにはグロテスクなまでに生々しい感触を与えるだけの唇だった。唇の、薄い皮膚を同じ触感を持ったセオドレドのものが、その形に沿ってなぞっていく。ファラミアの首の筋肉がこわばった。唇の表面が持つ乾いた感触だけでも体が総毛立つようなところに、湿った生き物のような舌に自分の唇の間を探られると、考えるまでもなく強く首がひねられた。セオドレドは、何も構わないようだった。ファラミアの動きのせいで、たまたま目の前に来た部分である首に、唇を触れさせたと思うと、ファラミアの筋の張った首に、疼痛が走った。縮こまろうとするファラミアの背に一瞥をくれることもなく、同じ場所の皮膚をきりきりとセオドレドの唇が吸い上げていく。痛みそのものは、大した物ではない。しかし、皮膚を吸われているのだという、その感覚がファラミアには耐え難かった。
 首については、唇ほどは上手くいかなかった。体のうちで自分の意志通り動かせるのは、セオドレドのせいで、かなり限られていたからだ。ファラミアに出来たことと言えば、せいぜい首が向いている角度を変えるくらいのもので、その僅かな動きが、セオドレドの行為に影響を与えることなど、はじめから到底期待出来るものではなかった。セオドレドは、思うままにファラミアの首筋に、小さな痛みを与えた。少なくとも、ファラミアはそう思った。
 ファラミアは、セオドレドの目を見据えた。
「セオドレド殿」
 いつものファラミアの声で、いつもの目だった。セオドレドは、興味深そうにファラミアの視線に応えた。
「何です」
「わたしは、もう十分教わったと思います」
 セオドレドは、目を丸くした。そうして、おかしな顔をした。笑おうか笑うまいか決めかねているような顔だった。
「これで教わったと言われては、私も随分と低く見られたものだと思わざるを得ませんが」
「そうではなく、教わる側の資質の問題として、わたしにはもう十分だという事です」
「何をばかな」
 セオドレドは、作り物ではなく溜息をついた。

22萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 20:09
<セオドレド→ファラミア/しるけなし> 7 【ラストです】


















「私がファラミア殿に何かご教示出来るとすれば、それは、頭で物を考えないことかも知れぬですな」
 今度は、ファラミアが奇妙な顔をする番だった。
「ファラミア殿は人の睦み合いを楽しみとは思わない、と仰いましたが。確かに、利益の類に属するものという意味では、その行為は何も生みはしません。ファラミア殿には、それが苦痛なのでは。無意味としか思えぬ行為をなすことがです」
 見てきたかのようなセオドレドの物言いに、ファラミアは苦く笑いを漏らした。
「わたしとて、戦いや書物の他に意味を見出すことを知っております。歌舞音曲の類は、人の心を鼓舞もし、安らがせもしましょう。それらが、直接に形あるものを生み出さぬからといって、わたしはそれを無意味とは申しませんよ」
「それです。ファラミア殿は、なぜ、美しい物を美しいからという、ただそれだけで愛することに思い至らないのです? 安らがなくても、戦意が高揚しなくても良いではないですか。なぜ、美しいものを美しいと感じる、それだけに留めて語ることをなさろうとしないのです」
 ファラミアは、言葉に詰まった。
「今、恐らく、ファラミア殿は何故、と考えておられる。私に言わせれば、考えずともよろしいのですよ。私の言葉が気に障るなら怒り、可笑しいなら笑う。それだけで十分な時もあるということです。今、私の前にあるこの時は、何もご心配召されますな。私には、ファラミア殿に関する限り、いかなる行いであろうと、受けさせて頂く用意があります」
 ファラミアは、目が乾いているわけでもないのに、何度も瞬きをした。
「まったく、セオドレド殿はよく分からないお方です。二度ほどお会いしているとはいえ、まだ、共に過ごした時間はわずかではありませんか。それを、なぜそこまで仰って下さるのです」
 ファラミアは息をついた。
「何も不思議なことはありません。ファラミア殿だからです。実際、これ以上何か語るのは、それこそ無意味だと申し上げて宜しいですかな。私がお教えしたいのは、考えることではないのですから」
「セオドレド殿は、わたしの知っているどなたとも似ておりませんね」
 ファラミアは背を反らせ、声を殺して笑った。
「ボロミアと重ねることがあったというお話は、どうなりました」
「わたしの目が、曇っていたのでしょう」
 ファラミアは、臆面もなく告げた。
「なかなかに、言って下さる」
 セオドレドは、心底愉快そうに笑っていた。ファラミアも、つられて笑い声をたてた。
「さて、私はファラミア殿に、ある種の教え手として認めて頂けたのかどうか」
「それは、分かりません」
「ファラミア殿」
 咎め立てする様子は微塵もないが、険しい声色にファラミアはセオドレドの顔を、真っ直ぐに見た。
「考えて分からないことは、体験するまでです。そうすれば自ずと知れます。セオドレド殿は、そうおっしゃりたいのでしょう」
「ファラミア殿」
 喉を詰まらせながらもようやく絞り出したような声が、答えた。
「出来れば、場所を変えて頂きたく思います。ここは、大の男が二人も寝転がるに、最適とは思えませんので」
 ファラミアは、自分が背をつけている毛足の長い敷物と、体のすぐ脇にある腰掛けの足を眺めた。
「ごもっともです」
 身を起こして、セオドレドはファラミアの手を引いて立ち上がるのを助けた。広さのある部屋の、片隅に置かれている衝立の、向こうが寝台だとファラミアは最初に部屋を見たときに思ったのを覚えていた。その通りの場所に、セオドレドがファラミアを導くのに、ファラミアは従った。

2314:2004/05/20(木) 20:11
セオドレド×ファラミアでした。なんか半端なところで終了ですが。
後は、しるけのみという感じで。

色々と失礼いたしました。

24萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 20:33
>>14 - 23女神様
セオドレド×ファラミア キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!

リアルタイムで女神様御光臨を拝んじまったですだーーーー!
興奮の余り手が滑ってますごめんなさい(汗)
物慣れない純情大将(;´Д`)ハァハァです
これからどんな事を教わってしまうのかと(;´Д`)ハァハァ

>13
ROTKのパンフの人物紹介にも載っていた写真ですね。
あのパンフは全体的に大将が少ないのでミナスティリスやデネソール様を見てひっそり淋しく萌えてたり orz

25萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 23:45
>>14->>23女神様

お引っ越し後、初めてのSSにハァハァでございます。ドキドキしながら読ませて
頂きました。こ、この後どうなってしまうのですか?
できればその「しるけのみ」部分も読んでみたいと、切にお願い申し上げます。
それにしても、どこまで拡がるのか「多彩な萌え」・・・

26萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 00:19
女神さまキタキタ━━━━(((*゚∀゚*)))━━━━!!!!!
食えないセオドレド様もお若い大将も素敵です。明日への活力になりますた…
こうなったら是非とも、是が非でもしるけを(ry

27萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 21:31
>14です。
>>24様、>>25様、>>26
まとめてですみません。拙文を読んで頂けて嬉しいです。
実はしるけ部分はこれから書くというありさまです。
なにもかも中途半端で、スレ住人の皆様には本当にすみません。

中途半端ついでに、更に中途半端なものを置かせて下さい。
>>22の、直接の続きになります。しるけ皆無です。書き溜めてる部分の最後です。

ファラミア馬鹿一代なセオドレド(子供時代)。
大将スレですけども、セオドレドもお好きな方は、ごめんなさい。
おそらく3分割で。

28萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 21:35
<セオドレド→ファラミア/ねつ造子供時代> 8
>>22から続いています。一応下げます。















 それは、宝物そのものだった。

 ずっと、欲しかった。
 初めて見た時から、ずっと。

 国王である父親に連れられて、初めてゴンドールという国を訪れたのは、まだ六つか七つの頃だったと思う。何でも、その国に二人目の公子様が生まれたお祝いだという。一人目は、自分と同じ年に生まれた方だと聞いた。彼の誕生の際には、国情からは考えられないほどに華やかな祝いが催されたというが、当然、同じく生まれて間もなかった自分にはあずかり知らぬ事だった。
 白の都にも、そこの公子にも、実は興味がまったくなかった。馬や草原の方がいくらも魅力のあるものだと思っていた。ただ、国にただ一人の王子である自分のつとめだと、幼いながらに理解し、父親に従っていただけだった。
 長く退屈な儀式をじっと堪えた。公子の顔などひとつも見えなかった。もっとも、見たいとも思わなかったが。ひとときでも早く故国の草原に帰ることだけを、心に描いて時間をやり過ごした。
 ところが、彼と、彼の父はゴンドールの執政家の面々から、お互いの家族のみでの面会を請われた。父親が言うには、話しに聞く自分と同じ年に生まれた公子が、自分に興味を持って会いたがったからだという。てっきり、儀式が終われば国に帰ると信じていたので、父親に大いに不満をもらし、きつくたしなめられた。
 興味がないものには、ないのだ。
 そうは言っても、これは「ぎむ」であるという。そういわれては従わないわけにはいかない。自分は、父の後に相応しい、立派な世継ぎにならなければいけないのだから。
 仰々しい廊下を、仰々しい執政の衛士たちに導かれて、父親についていった。
 不承不承だったはずなのに、辿り着いた鉄の扉の向こうに見えた光景に、セオドレドは目を奪われた。
 人を圧するような威を備えた背が高く厳めしい壮年の男に、子供の目にも麗しいたおやかな女性。傍らには、強い光をたたえた目をこちらに向ける、自分と背格好の似た子供。そして、彼らの中心にいるのは、恐らく、最近生まれたという二人目の公子なのだ。
 彼らを包む光はやわらかく、まるで、彼ら自身からほのかな光が発せられているのではないか、などという錯覚に囚われるほどだった。軽いめまいにも似た感覚を自分自身から誤魔化すように、父親の後を、必要以上に確かな足取りで進み、国でいつも教わっているとおり父親を真似て跪き、礼をとった。
 下げた後ろ頭に視線を感じた。
 暖かなそれと、貫くような強さで自分を差し一瞬後には通り過ぎたそれ、そして、いつまでも離れない、自分を探っているかのようなそれ。
 中でも熱心に自分に注がれ続けているのは、あの子供のものだと確信した。
 何を見ている。胡散臭いものでも見るような目で。
 気に入らなかった。
 早く顔を上げたかった。そうして、同じ目で彼を見てやるのだ。彼は、一体、どんな顔を見せるだろう? ともあれ、彼の父親らしき執政デネソールは、尊大だった。
「良く参られたな」
「この度は、お招きにあずかり光栄に存じます。第二子様のご誕生、健やかなご成長を、お祈り申し上げます」
 大人同士のつまらない挨拶にはいつも辟易していた。それも「つとめ」だと諭されて、ようやく我慢することを覚えたのだが。
「堅苦しいことはそれくらいになさって。どうぞ、息子の顔を見てやっていただけませんかしら」
 執政の年齢からすれば、かなり年若い、母親である執政の妻が、屈託のない調子で父親と自分の前に進み出た。
 そこで、許しを得て顔を上げた。
 母親らしき人の腕には、夢の中でしか見られないかのような生き物が、小さな寝息を立てて、眠っていた。赤子を見るのは初めてでは無かったが、今、自分が目にしているのは、今まで見たどの赤子とも違っていた。柔らかそうな肌に、それを彩るかのような、光に透ける細い細い産毛。小さな手をふんばって握り、それでも、顔は安んじていて、この世の幸せの全てがまるで彼の元にあるのではないかとでもいう顔で、眠っているのだった。
 セオドレドは目を見張った。赤子から目が離せなかった。

29萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 21:37
<セオドレド→ファラミア/ねつ造子供時代> 9
















「ファラミア様、でございましたかな」
「そうです。そしてこれは、兄のボロミアです。セオドレド様とは同い年になります。ボロミアは、セオドレド様にお会いしたかったのでしたね」
 母親の言葉を受けて、ボロミアは、ばつが悪かったのか顔色を変えた。
「母上」
「ボロミア。まず、お客様にご挨拶するのが礼儀ではありませんか」
 母親にたしなめられたボロミアが、自分と父親の前に進み出、うやうやしく頭を下げた。
 その様が、余りにも儀礼に則った形で完成されていたので、セオドレドはおや、と思わされた。
「このたびは、ファラミア誕生の儀にさいしまして、お祝いいただき、たいへん恐縮に存じております。わたくし、デネソールの一子、ボロミアともうします。おみしりおきいただければ、さいわいにございます」
 少しのよどみもなく述べられる口上に、これが同じ年の人間かと、セオドレドは忌々しささえ感じた。
「ボロミア様自らかたじけのうございます。わたくしはセオデン。これにいるのは、セオドレドです。ボロミア様と同じ年に生をうけましのも、何かのご縁ですな」
 父親が言うのに合わせて、セオドレドは、頭を下げた。
「セオドレドでございます。お目にかかれてこうじんにぞんじます」
 意味は大まかにしか知らない。そらんじているだけの言葉を返す。
「よろしくたのむ」
 言葉と共に差し出された手は、ボロミアのものだった。セオドレドは、そのとき、はじめてまともにボロミアの顔を見た。あの赤子も、こうなるのだろうかとふと思わせるような容貌に、生真面目そうな意志の強い表情が浮かんでいた。
 セオドレドは、ボロミアの手を握った。予想の埒外だったことに、自分と同じ手だと思った。剣を握り、馬の手綱を取ることで出来上がっていく手だった。セオドレドが、はっとしてボロミアの顔を見ると、ボロミアは人なつこい顔で笑った。挑みかける目をボロミアに向けて、それでも笑うと、ボロミアは同じ顔を見せて頷いた。二人は、どちらともなくそれまでより強く、手を握り合った。
 なりゆきを見守っていた大人達から、安堵の空気が伝わってきた。
 正直なところ、セオドレドは赤子を見飽きてはいなかった。いや、むしろ物足りないくらいだった。
 気持ちが態度に出ていたのだろう。彼ら兄弟の母親であるフィンドゥイラスが、セオドレドの目の高さまで、体を低くしてくれた。子供達二人は、その腕の中を覗き込んだ。気付くと、全ての目が、ファラミアに注がれていた。それはまるで、宝物を見るような眼差しだとセオドレドには思われた。
 そう、セオドレドが見たファラミアは、まさに宝物だった。
 ボロミアに至っては、弟を目に入れても痛くないとでも言いたげに、先ほどまでの強さはどこへやらで、ただ体中に喜びを満たして、弟を見ているのだった。ボロミアの手が、壊れ物のような小さな手を握ると、その手がボロミアの手を握り、身じろぎをした。見るからに柔らかそうな頬に指を這わせるボロミアの顔は、彼だけが知る幸せの中にたゆたっているようだった。自分が渇望するものの怖くて出来ないそれを、ボロミアは当たり前の顔をして容易くやってのける様を、セオドレドに見せつけた。見せつけているつもりは、もとよりボロミアには無いのだろうが。セオドレドには、それこそが大いに気に入らなかった。
 それは、おまえのものか? 兄とはそういう存在なのか?
 セオドレドには、上にも下にも兄弟がいなかったので、実際のところは分からなかった。しかし、なぜか言いようのない怒りが、ボロミアに対してこみあげてきた。あるいは、その正体が今なら分かるのかも知れなかった。それは、嫉妬という感情だった。
 内心の動揺を押しとどめながらファラミアを覗き込むセオドレドは、ファラミアが眠りから覚めたのを見た。開かれた目と目が合った。そのとき、ファラミアは確かに笑った。そういう気がしただけかも知れない。しかし、それで十分だった。瞬間、セオドレドの内を、表しがたく、抗いがたい何かが走った。

30萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 21:39
<セオドレド→ファラミア/ねつ造子供時代> 10 【ラストです】














 唐突に、セオドレドはセオデン王に向き直った。人々はセオドレドに視線を移した。その中で、セオドレドは明瞭に言い切った。
「父上。どうかファラミア様を、このセオドレドにちょうだいするよう、デネソール様におねがいしてください。わたしは、ファラミア様と共に国に帰ります」
 セオデンは、顔色を失った。
 ボロミアは、ファラミアとセオドレドの間に体を移して、立ちふさがった。
 赤子の親である夫婦は、顔を見合わせた。
「わきまえよ。セオドレド」
 穏やかだが容赦のないセオデンの一喝に、場の空気が一瞬止まった。セオドレドは、震え出しそうな体と気持ちを無理に保ちつつも、ひるむことなく背を伸ばしていた。
 気まずさを伴った静寂を破ったのは、デネソールだった。デネソールは、セオドレドに向けて言った。
「このファラミアが、もし姫であったならば、そなたに娶らすのはやぶさかではなかったわ。セオデン王がどう申されるかは知らぬがな」
 そうして、笑った。
「父上。ファラミアをどこかにやるなどとは」
「控えよ」
 ボロミアが言いつのるのを、デネソールが制した。ボロミアは引いた。それでも、奥歯を強くかみしめているのだろう。ボロミアの歯ぎしりが、自分にまで聞こえてくるようだった。
「それは、そなたが決めることではない。わしは、セオドレド殿が気に入った。初対面で、わしの子を自分にくれとくるとは、な。そして、その堂々たる物腰よ。のう、セオデン王よ」
「は」
「そなた、良い息子を持ったな」
 皮肉だろうかと考えても、このデネソールの前に来ては詮無いことだった。
「お言葉、有り難くお受けしましょうとも。不肖の息子も、栄誉の念に耐えぬことでしょう」
 父親が、頭を押さえつけたので、深々とお辞儀する形になった。
 両親に促されるまで、ファラミアの姿をセオドレドから遠ざけるように、ファラミアの前に立っていたボロミアの視線が、いつまでもセオドレドの背に刺さった。
 会見は、それだけだった。
 それでも、セオドレドの内に、ファラミアは強烈な印象を残した。別の意味ではその兄も。
 ボロミアはずるい。兄弟だというだけで、ファラミアに対して我が物顔に振る舞えるのだ。それが、なぜ自分ではいけない? いけない理由などないはずだ。ファラミアは、たまたまボロミアの弟として生まれただけだ。ボロミアがそうさせたわけではない。自分のものでもおかしくはない。そう、自分のものであるべきなのだ−−。
 その日は、セオドレドの中で思い出となっていったが、その感情は、幼き日の思い出にはならなかった。
 風の便りでゴンドールの事を聞くたび、セオドレドはファラミアの噂を探した。姿を見ることはかなわなかったが、武に長けた兄、知に長けた弟という鮮やかなほどの対照を持った噂は、嫌というほど耳に入った。いずれは、再会する機会もあろう。そのときに、あの、記憶の中の赤子がどうなっているかを考えると胸が躍った。思い出は、美しいままに取っておくのが良いと人は言う。人は記憶を、美化する物だから、と。自分の思い出も、そのようなものとして、再会した時には打ち砕かれるのかも知れない。それならそれでよし。
 そうして、ついにゴンドールからの使いが来た。
 再び出会ったファラミアは、当然のこととして、自分が覚えていたファラミアの姿をしてはいなかった。しかし、初めて見たあの時に感じたものと違わぬ強さの衝撃を、セオドレドに与えた。セオドレドの体は震えた。再び、覚えのある感情が自分の心の内を支配するのを、セオドレドは禁じ得なかった。あの幼い日のものとは形の違う、それでも、明瞭な感情。
 欲しい、と。

 無垢なだけではない、年月を経て磨かれ、内からの輝きを増したその宝物は、今、自ら自分に手を触れさせようと、セオドレドの前に在るのだった。

31萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 21:43
>14です。
ファラミア馬鹿一代、セオドレドでした。

二晩に渡り、お付き合いありがとうございました。
しるけがお持ち出来るまで、なりを潜めさせて頂きたいと思います。

皆様のやさしさに甘えてのお目汚し、失礼致しました。

32萌えの下なる名無しさん:2004/05/21(金) 23:59
>>28-31

なんだか…なんだかもう赤ん坊の頃から大事に大事に愛されてきたファラミア様に
目頭が熱くなってしまいましただよ…
そしてセオドレド殿のファラミア馬鹿一代っぷりも素晴らしいです(w
女神様、禿げしくGJ(*^ー゚)b

33萌えの下なる名無しさん:2004/05/22(土) 00:05
おお、さっそく続きまで!ありがとうございます。
しかし、セオドレド殿、そんな頃から目をつけていたとは、侮れませんな。
ファラミア馬鹿一代・・・素晴らしい表現です。この先の大将の運命を考える
と、眠れなくなりそうです。

34萌えの下なる名無しさん:2004/05/23(日) 10:16
RotKのCE、USA版やUK版ですが、密林などを経由して申し込まれた方のお手元
にはそろそろ届く頃でしょうか?私は日本版を待つつもりですが、大将ファン
としては、SEEは国外版に手を出してしまいそうです。
以下、ネタバレに属する話なので・・・











中の人のドイツ語ファンサイト(画像の豊富さで有名なところ)に、特典映像の
ネタバレらしきものが数々ウプされているのですが・・・あれはやはりCEの特典
なんでしょうか?国土地理からの映像かと思われるものもあったり。

35萌えの下なる名無しさん:2004/05/24(月) 08:45
>>34
そんなおいしいサイトが有るですか!?
がんがってググって来まつ!

メルファラ書いてみました。
ですがまだ書きかけなので、ウプしていいものかどうか迷いつつ…
女神様がた、途中でも御光臨ご遠慮なくどうぞ。



エオメル/ファラミア しるけ有り(になる予定)




黄金館からは平原が一望のもとに見渡せる。
空に浮かぶ雲が緑の平原に丸い影を落としている。
指輪所持者とエレスサール王の一行がヘルム峡谷に向かって旅立っていったのは、ほんの数刻前のことだった。

「もう見えぬな。」エオメルは呟いた。一人言のつもりだった。
「順調に行程を稼いでおいででしょう。今はもう危険の無い旅路でしょうから。」
エオメルの一人言に応えたのはファラミアだった。年はエオメルより上だが、エオメルの義弟となる男だった。二人は黄金館の建つ丘の上に並んで立っていた。
エオメルは横目でファラミアを見た。ファラミアの穏やかな顔には何の表情も浮かんでいなかった。この男をエオメルはひそかに苦手にしていた。
「風が強い。館に入ろう。」エオメルはきびすを返した。ファラミアも彼に倣った。
「ファラミア殿はまだしばらくエドラスに滞在されるのだろう。」
「はい。ですが三日後には発とうと思います。都をいつまでも空けておくわけにもいきませぬので。」ファラミアは言った。それから、付け加えた。「エドラスも離れがたい地ではありますが。美しい所だ、ここは。」
如才無い受け答えだった。そこがエオメルの気に食わない所だった。
「あなたがこの地を離れがたいのは、我が妹がいるためでもあるだろうな。」
「無論です。エオウィン姫はこの地をさらに雅にしていらっしゃる。」
エオメルの小さな当てこすりに、ファラミアは澄まして答えた。
「婚礼の支度が整ったら、エオウィン姫を迎えに来ようと思います。」
「そうか。」
エオメルは短くうなずいた。ファラミアは続けて言った。
「話し合いたい事がありますので、今夜伺ってもよろしいでしょうか。」
エオメルは足を止め、ファラミアの顔を見た。ファラミアの顔にはやはり特別これといった感情は浮かんでいなかった。エオメルは目をそらした。
「勿論。歓迎しよう。」
ファラミアは軽く頭を下げた。
「では私は供の者に旅支度を言いつけて参りますので。また今夜。」
エオメルはむっつりとうなずいた。ファラミアは薄暗い館から光差す野外へと出て行った。エオメルはその背中を見送った。互いの姿が視界から消えると、彼らは同時に深い溜め息をついた。

36萌えの下なる名無しさん:2004/05/24(月) 08:46
>>35の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













エオウィンが引き合わせるまで、エオメルとファラミアには面識が無かった。お互いに名前とそれにまつわる噂とを聞き知っていただけである。
エオメルの知る限り、ファラミアは妹の結婚相手としては申し分なかった。だがエオメルにとってファラミアはどこか得たいのしれない男であり、そのため苦手としていた。彼自身は認めたくない所だったが。
せめて肩を並べて戦ったことがあれば少しはファラミアの人となりが分かるだろうが、そんな機会はしばらく訪れないだろうとエオメルは思っている。
一方ファラミアはエオメルに負い目を感じていた。彼の妹を娶る事には喜びを感じていたが、そのためにエオメルを孤独にしてしまうことを恐れていた。ファラミア自身父と兄を失ったばかりであり、同じ境遇であるエオメルの事を思いやらずにはいられなかった。そして、彼はエオメルがファラミアを快く思っていない事に気付いていた。エオメルと話し合いたいと申し出たのは、婚礼の打ち合わせのためだけではなく、お互い打ち解ける機会が欲しかったからである。

ファラミアが酒の入った革袋と杯を二つ持ってエオメルの部屋を訪れたのは、まだほんの宵の口のことだった。

3735:2004/05/24(月) 08:46
では皆様、ご歓談ドゾー

38萌えの下なる名無しさん:2004/05/24(月) 11:13
>35-37女神様

ご光臨ありがとうございます!!
興奮してテンションおかしいです。すみません。

「得たいのしれない男」。その通りですね!
妹をかっさらった手腕も凄いですよとエオメルに教えてやりたいです。
エオメルにとって、ますます得たいがしれなくなるに違いないです。
大将がなにかたくらんでるような気がして、
これから、どうなってしまうんだとドキドキします。
大将にあしらわれないように、がんばれ、エオメルですよ!
まだ午前中なのに、変態ちっくで申し訳ないです。
続き、お待ちしてます。お願いします!

39萌えの下なる名無しさん:2004/05/24(月) 22:30
>>35
このところ立て続けに萌えSSが読めて嬉しい限りです。
また皆様、じらしプレイがお得意でいらっしゃる(w 続きも是非お願いします。












そのサイトは Eine(中の人の名前)Fanpage でググるとトップに来ると思いますよ。

4035:2004/05/25(火) 06:42
>>38
ありがとうございます!私も朝っぱらから何やってんだって感じですが力の限りがんがりまつ。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
>>39
無事サイトをハケーンいたしました。大漁の写真(゚д゚)ウマーです。ありがとうございました!


性懲りも無く続いています。女神様がた、途中でもご遠慮なく御光臨くださいますよう。

エオメル/ファラミア しるけ有り(になる予定)
>>36 の続きから





「これは、ファラミア殿、よくいらした。」
エオメルはファラミアを私室に迎え入れた。部屋の中には卓と椅子があった。天井近くの明り取りから弱々しい月の光が差し込み、壁掛けの模様をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「夕食はもう済ませられたか。」エオメルはファラミアに尋ねた。
「はい、十分いただきました。お気遣いのないように。」ファラミアは答えた。二人はどこかぎこちない会話をしながら差し向かいに座った。
エオメルが席に着くか着かないかのうちにファラミアは口を開いて言った。
「率直に申し上げるが、今夜参りましたのは我々の間にあるわだかまりを溶かしたいと思ったためです。」
この不意打ちにエオメルは何の用意もしていなかった。
「それは、我々の間に不和があるとおっしゃりたいのか。」
「違うでしょうか。」ファラミアは応えた。
「私の思い込みに過ぎなければ、これほど嬉しい事は無いのですが。」
エオメルは突然斬り込まれた不快感を無理矢理押し殺して答えた。
「いや、私もその事には気が付いていた。我々はもっと親しくなるべきだ、義兄弟として。」
ファラミアはほっとした様子を見せた。
「それをお聞きして安心致しました。我々の不仲のためにエオウィンを悲しませたくありませんから。」
ファラミアはいかにも屈託なげに笑った。エオメルは苛立ちを覚えた。それは殊更彼らが不仲であることを強調した男のせいだった。そして、その男に彼の妹を奪われるような気分になったせいでもあった。エオメルは自分が常に良い兄だったとは思っていなかったが、それでも妹の幸せに心を砕いてきたことに変わりはなかった。それを、赤の他人から妹の心配をされる筋合いは無いとエオメルは思った。だがそこまで思い至るとエオメルは己の女々しさに気づいた。そしてくだらない嫉妬を燃やす自らを罵った。
「では私から義弟殿に一献差し上げようか。」
エオメルは心の動きを悟られぬように杯を手に取った。ファラミアはそんなエオメルを気遣わしく見つめた。
二人は、お互いの国の繁栄とそれぞれの健康を祈って杯を交わした。

エオメルとファラミアがぎこちなく杯を酌み交わす間にも、夜は静かに更けていった。
彼らがぽつりぽつりと話すのは、大抵は共通の話題になり得るエオウィンの事だった。そして、エオメルは気が付いてみるとほとんど一人で話していたのだった。エオウィンの好きな物、親しい人、幼い頃の武勇伝まで洗いざらい話していた。エオメルは、ファラミアにいいように操られているような嫌な気分になった。ファラミアは聞き上手でエオメルから巧みに言葉を引き出した。エオメルは心中ひそかに苛立った。しかし、水を向けられると喜んで話してしまうエオメルにも問題があると言えた。

41萌えの下なる名無しさん:2004/05/25(火) 06:43
>>40の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













何かの拍子に言葉が途切れた時、エオメルはファラミアを少し困らせようとこう切り出した。
「私ばかりがつまらぬ事を話していて、退屈なさっていないだろうか。ファラミア殿の話もぜひお聞きしたい。」
ファラミアはエオメルの狙い通り困惑した。如才無い彼に似合わず、戸惑いながらファラミアはエオメルに答えた。
「何をお話したらよろしいだろうか。」
エオメルもまた戸惑った。なぜなら、彼らの間にはほとんど接点が無かったからである。二人の間に沈黙が落ちた。
やがてファラミアは沈黙を振り払うように話し始めた。
「エオメル殿が大事な妹御のお話をしてくださったのですから、私は私の兄弟の話をしましょう。エオメル殿はボロミアをご存知か。」
「存じております。」エオメルは答えた。突然会話に出てきた懐かしい人の名前に驚いていた。
「勇敢な武人でいらした。また、人の上に立つ気高さを備えておられた。兵に慕われておいでで、彼の周りには常に明かりが灯されているようだった。おおらかで、一本気で、慕わしい方だったと覚えています。」
「それでは、エオメル殿はボロミアをご存知なのですね。」ファラミアは言った。ファラミアの顔は優しく輝いていた。
「私も彼の真っ直ぐな気性を愛していました。」ファラミアは心を込めて言った。「ローハンの方々が彼に与えてくださった親切を、私は決して忘れますまい。」
「ファラミア殿はまことに兄上がお好きだったのだな。」エオメルは言った。
ファラミアは顔を赤らめた。
「私は、あなたも兄上と同じように好きになりたいと思っているのです。」ファラミアは言った。
「私はボロミア殿ではないが。」エオメルは言った。
「もちろんあの方の代わりなどいません。」ファラミアは応えた。

一瞬、沈黙が部屋を満たした。各々が失われた者たちを思っていた。
短い間の後、エオメルが言った。
「惜しい方を亡くした。」
「ゴンドールでもローハンでも、かけがえの無い方々を失ったのです、この度の戦で、我々は。」ファラミアは言った。
彼の叔父と従兄と、さらに多くの人々を思い、エオメルは押し黙った。

42萌えの下なる名無しさん:2004/05/25(火) 06:44
>>41の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













「腹蔵なく申し上げると」ファラミアは言った。「私はあなたが気懸かりで。」
エオメルはファラミアの言葉を心底から意外に思った。
「何をです。」
ファラミアは躊躇いつつ答えた。
「あなたは親しい身内の方々を失われた。その上あなたの妹を私が奪ってしまう。どんなにか淋しい思いをなさるだろうと思うのです。心を許し合える人々がいないということに。肩を叩く手も無く、ほがらかな笑い声も聞こえず、きっと炉辺の火が消えたような気がなさるだろうと。」
エオメルはファラミアの言葉の中に憐れみを感じた。その憐れみはエオメルを慰めず、神経を逆撫でした。エオメルの心の中でくすぶっていた苛立ちが火種を得て燃え上がった。ファラミアに、この年上の男に思いのままに操られたことや、その無遠慮な態度が心に浮かんだ。だがエオメルは、ファラミアの言葉が的を射ている事を努めて無視しようとした。容易く情に動かされるなどということは、エオメルにとって恥辱に他ならなかった。
「侮らないでいただきたい。」
エオメルの声は雷のように轟いた。
「年少といえど女子供ではない。人恋しがって嘆くような真似などせぬ。あなたの兄上がどうだったか知らぬが、私に同じ情を押し付けないでいただきたい。」
エオメルの言葉を聞くにつれ、ファラミアの顔が青ざめていった。エオメルは息を呑んだ。いつも物静かで動じないと思われたファラミアの顔が、はっきりと苦痛の色を浮かべていた。エオメルは舌鋒の矛先を失い、ただ息を吐いた。ファラミアは身体の内からの苦痛をこらえるように歯を食いしばった。
「気分を害したならば、申し訳無い。決してあなたを侮辱するつもりなど無かった。私は私の事を言ったのだ、そしてもちろんあなたは私とは違う。恐れを知らぬエオルの子でおられる。」
ファラミアはうつむき、灯火が顔に深い陰を落とした。注意深く覆い隠されていた彼の悲しみが露わになった。
ファラミアは大きく息を吐いた。
「帰ります。もう夜も更けた。」
ファラミアは静かに席を立った。エオメルは何か声を掛けたいような気がしたが、どのような言葉もふさわしくないように思えた。
「このように仲違いをしたまま別れるのはあまりに惜しいが」
ファラミアは青ざめた顔に微笑を浮かべた。
「私も平静ではありませんので。」
扉が閉まった。エオメルは先程までの会話を一人反芻した。
割れんばかりに拳を打ち付けられた卓の上で二つの杯が騒々しく鳴った。

43萌えの下なる名無しさん:2004/05/25(火) 20:09
>>40-42女神様

続きありがとうございます!!こんなに早く読めるとは思ってなくって、
思わぬ贈り物をいただいた気分です!すばらしいです!

一言で気持ちがすれ違ってしまうなんて、まさに人間ドラマの様相です。
大将と、エオメルは仲直り出来るのでしょうか。おろおろしてます。
大将が、あんな辛そうな顔をするとは、ちょっとも思っていなかったです。
フォロー可能なのか心配です。エオメルに行動に期待してます。
エオメルの力で、大将の気持ちを安んじさせていただきたいです。
エオメルを信じてます。

続きが気になってそわそわします。続き、お待ちしてますね!

44パタパー二世:2004/05/25(火) 22:11
さっそくの女神様降臨おめでとうございます。
私めも毎夜ドキドキ眺めております・・・。

スレッドの順番入れ替えのためにちょっと上げます。
バタバタしてしまってすみません。

45萌えの下なる名無しさん:2004/05/26(水) 06:37
>>43>>44
ありがとうございます!読んでいてくださる方がいらっしゃるんですね(;´Д⊂)  
ご期待に添えないものばかり書いているのではないかと大それた事を考えています


なぜかまだ続いています。女神様がた、途中でも容赦なく御光臨ください。

エオメル/ファラミア しるけ有り(になる予定)

>>42の続き





その次の日朝早くエオメルは寝台から脱け出した。朝露の下りた草を踏みしだきながらエオメルは厩舎へ向かった。空には靄がかかり、エオメルの髪や肩をしっとりと濡らした。
厩に立つ番兵は時ならぬ王の訪れに驚くかと思いきや、なぜか得心した様子でエオメルに道を譲った。
薄暗い屋内には動物の糞尿の匂いが篭もっていた。エオメルは居並ぶ馬たちに声をかけながら歩みを進めた。
エオメルは不意に厩舎の中に自分以外の人間がいることに気が付いた。彼は柔らかなまぐさが積まれたその傍らに飼葉桶を伏せ、足を投げ出して座っていた。
エオメルが傍によると彼は目を上げた。何故ここにいるのかとエオメルが問う前に、彼は答えた。
「馬を見せていただいていました。」
朝日が差し込み、ファラミアの亜麻色の髪を明るく照らした。

「あなたはなぜここに?」
エオメルは考える前に答えた。
「気を落ち着かせに。」
ファラミアはうなずいた。
「私もです。」
そう言うファラミアの目元には隈が落ちており、ファラミアもまた眠れなかったのだろうとエオメルは悟った。「ボロミアが乗っていた―ボロミアがあなた方にお借りした馬はここにいるだろうか。」
ファラミアは遠くを見る眼差しをした。エオメルは答えた。
「いや、ここにはいない。」
主を失い背を空にして戻ってきた馬が、他の者を乗せて戦場に行ったきり戻らないという事は言わずにいた。ファラミアは微笑んだ。
「あなたは優しい人だ。」
エオメルの心にふと疑問が浮かんだ。
「あなたは人の心を読めるのだろうか。」
「なぜそう思われます?」
ファラミアが問い返した。
「ヌメノールの血を引く方々は、よく人の心を読み未来を見通す力をお持ちとか。今朝もこうして私が来るのをわかっていたようにここにいらした。」
「いつもではありません。」
ファラミアはかぶりを振った。

46萌えの下なる名無しさん:2004/05/26(水) 06:40
>>45の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













「私がここに来たのも、あなたと同じく心を鎮めるために来たのです。」それから少し考えて、付け加えた。
「いや、やはりあなたと会うのを私は知っていたのかもしれない。なぜか行かなければならないような気がしたから。事によるとヌメノーリアンの力が働いたのかもしれない。」
ファラミアは息を吐いた。
「けれど、もしあなたの言うように私に人の心をわかることが出来るなら、昨夜あなたを傷つけることなどなかっただろう。」
ファラミアに苦痛の影が手を伸ばすのを、エオメルは怯えるような気持ちで見守った。
「私はあなたに謝りたい。」
ファラミアは口の端を噛み締めた。その唇が空気を震わせる前に、エオメルは遮った。
「いや、私こそあなたに謝らなければならない。昨夜は大人気ない真似を―ついかっとなって。」
エオメルは自分がいかにも気が利かない、不調法な者の様に感じた。
ファラミアは弱々しく微笑んだ。
「私は焦り過ぎたようです。あなたと少しでも早く距離を縮めたいと。不仲であってはならないと。あなたの妹姫のためにも、あなたのためにも、私のためにも。今まで大事な物があまりにもあっけなく失われていく日々が続き、私はそれに慣れ過ぎていたのかもしれない。惜しい物は早くこの手に掴まねばすぐに消えてしまうと。」
エオメルは思わず己の掌を見た。ファラミアもまた手で砂を掬い取るような仕草をした。やがてファラミアは顔を上げてエオメルを見た。
「けれど今はこうして日々が続き、またこうしてあなたと話す機会を得られるのですね。」
エオメルはうなずいた。それからふと思いついて言った。
「よろしければ共に遠乗りに行かないか。今日は無理だが、明日にでも。」
ファラミアの口元がほころんだ。
「喜んで。」
外からファラミアを呼ぶ声がした。ファラミアは立ち上がった。
「叔父上が呼んでいらっしゃるようだ。」
その言葉の通り厩舎に初老の男が入ってきた。白皙の美丈夫は確かにファラミアの縁戚であるようにエオメルには思われた。
「これは、エオメル殿。」
イムラヒル大公は優雅な会釈をした。
「ファラミアと一緒にいらっしゃったのですか。ご歓談の邪魔をして申し訳ないが、何分急な用事で。よろしいだろうか。」
エオメルはうなずいた。
「では、エオメル殿、失礼。あなたとお話できて本当に良かった。」
ファラミアは叔父に肩を抱かれながら慌しく去っていった。エオメルは奇妙な物足りなさを覚えながら妹が呼びに来るまでそこに立ち尽くしていた。
太陽はすでに高く昇り、白く輝いていた。その日も暑くなりそうだった。

47萌えの下なる名無しさん:2004/05/26(水) 09:36
>>45-46女神サマ!
自分も昨日朝からどきどきして読ませていただいてますです。素敵です!
昨日は朝リアル降臨されてるところだったので、レス挟めませんでした。
続き、ますます楽しみにしてますー。

48萌えの下なる名無しさん:2004/05/26(水) 10:29
>45-46女神様

連日のご光臨!こんなに幸せで良いのでしょうか。
ありがとうございます。

イムラヒル様ご登場で興奮のるつぼです。
急なご用とはなんですかと。
ますますがんばれエオメル!
それにしても、大将の良い人っぷり。
反省すべきところはする。さすが大将です。
大人げないエオメル王。そこが良いところにしても!
大将に先に謝らせるなんて!ですよ。
でも、大切な人が目の前から消えてしまった
大将のせつない心のうちが理解されたみたいで、
ほっと一息つきました。エオメルいいやつです。

回を重ねるごとに、先の展開がさらに楽しみになります。
ありがとうございます!続きを期待しております!

4945:2004/05/26(水) 23:18
今朝書いたレスを自分で読み直したのですが、私ものすごく失礼な事書いてやしませんかΣ(゚д゚|||)
読んでいてくださってる事は知ってたんですが、今まで確信が持てなかったというか、
自意識過剰すぎるんじゃないかとか、なんだかそんなで何て言い訳していいか。
感想をいただけるとは思っていなかったので、本気で真剣にマジで嬉しいです!
踊り回りたいくらいです!

すみません、支離滅裂な事書いてないでSS書いてきまつ orz

それから間違いハケーンしました。
>>45 〜エオメルは悟った。「ボロミアが乗っていた〜
の箇所、台詞の頭で改行し忘れです。設置様、大変申し訳ありませんが倉庫格納の際に
直していただけますでしょうかm(_ _)m
いつもおつかれさまです。素敵なタイトルを付けられるのをいつも楽しみにしてます!

50萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 00:27
>45様
お気になさらず、と申し上げてよろしいでしょうか。
気休めのお役に立つかは分かりませんが、くだらないSSを一つ置いていきます。

<大将とその配下/乾燥注意報> 

 ファラミア配下の兵士達は、車座になって顔を寄せていた。
 彼らの視線は一様に、折りたたまれた一つの小さな紙片に向けられていた。
 紙片が開かれるなり、それまでの和やかな雰囲気は、重苦しい空気に変わった。

 兵達は、久しぶりの息抜きを満喫していた。手っ取り早い娯楽といえば、賭だった。
 適当な金品を持たない彼らは、敗者に罰を科す取り決めをして盛り上がった。
 敗者が決まったところで、思い思いに記された指示のうちのひとつが実行されるべく選ばれたのだが。
 紙片には、一言。
《大将を抱擁》
 冗談にしてもたちが悪すぎると、誰もが思った。

 突然、一人の若者が猛然と起立した。
「私が行きます!」
 皆は一斉に声の方を見た。若者は、入ったばかりの新兵だった。
「お前は敗者ではないし、罰は選び直したって良い」
 古参の一人がなだめた。
 しかし、若い者は引かなかった。
「ゴンドールの者は大言壮語は致しませぬ。一度これと決めた事を覆すなどもってのほか」
 そう叫ぶや、彼は駆けだした。
 あまりの事に、あっけにとられていた一同だが、ややあって我に返った。
「大将に出会う前に、取り押さえろ!」
 鬨の声と共に、残された兵士たちは八方に散らばった。

 ところで、追っ手は間に合わなかった。
 彼らが走り出したとき若者は、彼にとってだけ首尾良くも、彼らが大将の背中を見つけていたのだ。
 彼はしばし立ち止まった。
 目標を凝視しながら、彼は、固唾を飲んだ。
 任務が果たされたかどうかを見届ける証人の不在にも気付かず、覚悟を決めると、姿勢の良い背をめがけて、彼は地を蹴った。

51萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 00:32
なぜか続いてしまいました…。申し訳なく。

<大将とその配下/乾燥注意報> 

 一方、ファラミアは、少し前から背後の物陰に奇異な気配を感じていた。
 ただ、覚えのある空気から自分の部下と知れたので、気付かぬふりを決め込んだ。
 なにせ、今日は彼らにとって貴重な休日である。上官など鬱陶しいだけだろう。
 悲しいかな、接近してきた部下の目的は、さしものファラミアにも予測不可能だった。
「いかなる事態であるかな、これは」
 ファラミアは窮屈そうに振り返った。
 背中側から、年若い部下の腕が回り、自分の胸の下で結ばれていて、体が拘束されていた。
 無我夢中でファラミアの背にくっついていた若者は、間近にファラミアの顔を見た。
「し、失礼致しました」
 彼は腕をほどいて飛び退き、地面に膝をついた。
「謝罪については、必要と思えば聞きもしよう。その前に話せ。誰にそそのかされた? 
嘘偽り無きところを告白するならば、お前については不問に処すが」
 口調は穏やかながらも、剣呑なその声色に、若者は可愛そうなほど萎縮した。
 賭について明かすべきだろうかと、若者はちらりと考えた。
 すぐに彼は危惧した。仲間にまで類が及ぶのでは無いかと。
 もとより、自分が進んで来たのだ。
 ならば、取るべき態度は一つだった。そして、彼は自分に忠実に行動した。
「恐れながら申し上げます。私は、自らの意志により、かような所行に及びました。
理由の如何は問わず罰をいただきたい所存でありますれば、是非に、お聞き届け願います」
 一気にまくしたて、若者は埋まるのではないかというくらいに、頭を地面に寄せた。
 ファラミアは、要領を得ない部下をじっと見下ろしていた。
「顔を上げよ」
 そうして、彼の両肩を支え立ち上がらせた。
 目を白黒させ、まだ事態が掴めないでいるらしい部下に、ファラミアは決然と告げた。
「そなたの覚悟に免じ、今回の件はわたしの胸におさめる」
 胸をなで下ろす間もなく、ファラミアが続けた。
「ただし、忘れるな。二度目はない」
 若者は、応答も忘れ、目を見開いて上官の顔を凝視した。
「しかし、わたしで良かったことだな」
「は?」
 意味するところを掴めず、つい間の抜けた声をあげ、自分の声に、頭が正気を取り戻した。
「仮にわたしが我が兄であったならば、そなたの首は、体にその手がかかる前に
胴体より離れて落ちていたであろうよ」
 瞳に剣呑な光を湛えて、ファラミアは部下の目に視線を合わせた。
 冗談なのか否かも分からないまま身をすくませた部下に、
ファラミアはうって変わって表情を緩めた。
「物の加減を知るように。それに、今後は先走らぬことだ。己が生き残り、皆の命も脅かさぬよう望むならばな」
 平身低頭する部下に一瞥をくれて、ファラミアは立ち去った。

 ほどなくして、仲間の兵達が若者を見つけた。彼は放心していたので、
迎えに来た者達は、抱えて去らなければならなかった。
 それでも、かの若き兵士は、「大将を抱擁した男」として命知らずの代名詞となり、
後々まで兵士達の間に語り継がれることになったという。

くだらないSSは、おしまいにしまして、>45様の続きを熱望です。

52萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 00:59
>>45
ああ、前段は今にも一触即発、というところで決裂、今回もまだまだ続きが!?
待ち切れません〜。し、しるけ・・・

>>50
こーの果報者!であるその部下くんのお名前は何なのでしょう?
もしやベレゴ・・・ry
大将の冷静な対応ぶりも素敵です。映画の大将、胸回りはあるのに腰が細い・・・
って、何を言っているのか自分!?

53萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 04:15
>>50 女神様
うわあ!素敵です、最高です!女神様は私を萌え死なす気ですかと小一時間(ry
大将の背中大将の胸(;´Д`)ハァハァ
命知らずの部下はベレ殿かアンボ殿か、誰にせよ羨ましい限りです!

5449:2004/05/27(木) 08:18
>>47>>48>>50>>52
あ、ありがとうごぜえますだ…。暖かく素晴らしい励ましが身に染みますだ。
前フリ長くて申し訳有りません、後2、3回でエチにこぎつけたいと思います。がんばります!


少し前のレスから続いています。女神様方、途中でもお構いなくガシガシご光臨ください。
>>50女神様、GJ! GJ!! GJ!!! (*´д`*)ハァハァ

エオメル/ファラミア しるけ有り(になる予定)

>>46の続き




ファラミアがエオメルを黄金館のほど近くで見掛けたのは、日も半ばを過ぎた頃の事だった。
エオメルは一人では無かった。笑いさざめく乙女達が彼を取り囲んでいた。エオメルが石段に足を掛け中途半端な姿勢でいるのは、美しく艶やかな乙女の網から逃れきれず捕まったためであるようにファラミアには思われた。ファラミアは微笑ましい気持ちでエオメルの救出に向かった。
エオメルは半ば逃げ腰でローハンの娘たちに対していた。むくつけき男達を相手にするのとはあまりにも勝手が違い、防戦一方の望みの無い戦いを強いられていた。
彼は午前中論功行賞や請願の受理やその他諸々の政務を執り、昼になって黄金館から出た途端に囲まれたのだった。しかもわけもわからぬうちに。最初は顔見知りの騎士や臣と話していたはずだった。それが、気が付くと誰やらの娘やら姉妹やらを紹介されており、今の状況に至っている。独り身の若い王に親族を娶せようという腹積もりに引っかかったのだと気付いた時にはもう遅かった。
致し方なく一人孤独な戦いを繰り広げていたエオメルに、意外な所から救いの手が差し伸べられた。
「ベルファラスの海辺に数多転がる貝殻は白く美しいが、リダーマークの乙女はエレド・ニムライスの山頂に積もる雪のようにさらに白く美しくていらっしゃる。」
ファラミアは彼らの言葉で言った。それから共通語にあらためて言った。
「王におかれましてはかかる娘らの歩く土地を治められることに喜びを感じておいでかな。」
エオメルは救いの手に恥も外聞も無く縋りついた。
「ファラミア殿、かかる麗しき娘らに私は悩まされているのです。」
娘たちが明るく笑い崩れた。娘の一人が進み出て言った。
「悩ませてなどおりませんわ、もちろん恋心にお悩みになる他は!我が君のお心を騒がせる娘はここにはおりませんの?」
エオメルは無意識にファラミアの影に隠れるように下がった。ファラミアは笑って娘に歩み寄った。娘は誇らかに胸を反らせた。

55萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 08:19
>>54の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













「ゴンドールの殿はリダーマークの乙女がお気に召しまして?」
ファラミアは娘に答えて言った。
「ローハンの乙女は白い花のように美しいとお見受けします。」
思いがけず優しい眼差しに合い、娘は覚えず顔を赤らめた。
「だが、今の私の目には、一人の貴い方を除いては谷間に咲く花々の群れと同様に見えるようです。」
娘たちの間から忍び笑いがくすくすとこぼれ落ちた。ファラミアの求婚の顛末はローハンにも鳴り響いていた。
「もしあなた方のお許しがいただければ、王をお貸し願いたいが。」

ファラミアとエオメルは乙女たちに快く送り出された。エオメルは決まり悪げに先に立って歩いた。
「助かった、と礼を申し上げるべきなのだろうな。」エオメルは言った。
ファラミアはそれには答えず、言った。
「女性の相手は苦手でいらっしゃるか。」
「苦手というのではないが、兵たち相手に叱咤したり号令をかけたりするのとは訳が違う。まさが手を上げるわけにもいくまいし。」エオメルは言った。「それにしてもあなたの手腕には頭が下がる。」
ファラミアは軽く首を振った。
「彼女たちの目当ては私ではないのですから、気楽なものです。ローハンの勇敢な乙女らといえど、アングマールの魔王を撃ち滅ぼした盾持つ乙女に勝負を挑む者がいようとは思えませぬ。何よりあなたは若く美しくていらっしゃるのだから、乙女らが胸をときめかせるのは当然です。エオメル殿には言い交わした女性はいらっしゃらないのですか?」
「おりませぬ。」
エオメルは答えた。ファラミアはうなずいた。
「いずれ時が至れば佳き人に巡り会えましょう。」
「あなたとエオウィンのようにか。」
「その通りです。」ファラミアは答えた。
エオメルは素直にその言葉を聞いた。
「しかし、王になった途端あれです。今まで軍団長の地位にいた頃はこのような事など無かったのですが。」エオメルは言った。
「それはあなたが都を留守がちにしていらしたからではないのだろうか。」
「そうかもしれません。」エオメルは答えた。
「しかし、王というのはまたその地位に結び付く物の何と多い事か。私は民を守り導くという事のみを思い描いていたのですが。」
エオメルは、事ある毎に王たる者であることの難しさを痛感せずにはいられなかった。馬に乗り、剣を振るうこととは別の戦いがそこには有った。
「あなたは我が王と同じ事をおっしゃる。」ファラミアが言った。
「エレスサール王が?」エオメルは驚いて言った。
「エレスサール王にはアルウェン王妃がいらっしゃいますので、先ほどあなたを難儀させたような事は別ですが。ところで我々はどこに向かっているのだろうか。」
ファラミアはエオメルに尋ねた。エオメルは足を止めた。
「どこというわけではありませぬ。」
エオメルは言った。
「ただ、一人になりたいと。」
ファラミアは首を傾げた。
「その一人には私も含まれていると考えてよろしいだろうか。」
エオメルは今更思い出したようにファラミアを見た。
「義弟殿さえよければ。」
「では、私が行き場所を決めてよろしいだろうか。」ファラミアは言った。
エオメルはファラミアに引かれるまま大人しくついていった。彼らが向かったのはシンベルミネの花咲く王家の塚だった。





すみません、一旦切ります。

56萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 11:20
>54-55女神様!続きキター!

女性の扱いに手慣れてる?大将カコイイですね。
っていうか、確かにエオメルが極端に苦手そうだなあw
しるけまで、どきどきしながら待ってます。

57萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 12:25
連日連夜のSS投下に天にも上る気持ちですわ〜

ところで>51の、
>「仮にわたしが我が兄であったならば、そなたの首は、体にその手がかかる前に
>胴体より離れて落ちていたであろうよ」
は、「兄上は咄嗟に手が(剣が)出るから危ないyo(´ー`)」なのか、
「兄上に手を出したらただじゃ置かんぞ(#゚Д゚)ゴルァ」なのか。

58萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 15:53
>54-55女神様

大将の如才なさがいかんなく発揮されてるのを
拝見して、うはうはです!大将、口が上手すぎです。
そんな大将が大好きです。
さりげなくエオメル王を助けてやってる優しさも大好きです。
大将の魅力炸裂ですね!

エオメルが、大将に助けられたことを素直に感謝してくれてるのが
なんとも嬉しいです。二人が、いよいようち解け始めてる感じです。
最初は、険悪だった二人が自然とお互いの立場を尊重し認め合う
過程をつぶさに見ることが出来て、幸せの極みです。
しかも、それが毎日続いてるだなんて!

この幸せが、終わるときを考えるとすこし寂しいのですけども、
続きが読みたい気持ちには叶いません。
日々の幸せをありがとうございます!!

59萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 19:08
>54-55女神様
惹かれつつ、微妙にすれ違ったりもするこの二人、この先どうなってしまうの
ですか?こうなったらどこまでも着いて行きますよ!

>50-51女神様
大将の後ろ姿・・・広い背中にほっそい腰(脚も細い)・・・ハァハァ(AA略)
なんか、ヘンネス・アンヌーンではいろいろ大変なことが起きてるんじゃない
かと、妄想が止まりません。
ああしかし、いずれにせよ今回の件が兄君の耳にはいったら、部下A君だかB君
だかの運命は風前の灯という気がします。

60萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 23:45
>50です。
くだらないSSに、あたたかいお言葉の数々をありがとうございました。

>50様 たくましい胸に細い腰…しかも大将の!
想像するだけでたまりませんです<変態一号

>53様 自分で書いておきながら、うらやましかったりです。

>49様 ありがとうございます。慰めになりましたら、何よりです。

>57様

>「兄上は咄嗟に手が(剣が)出るから危ないyo(´ー`)」なのか、
>「兄上に手を出したらただじゃ置かんぞ(#゚Д゚)ゴルァ」なのか。

確かに、どちらとも取れます…。日本語が不自由で申し訳ないです。
あれは大将なりの冗談です。でも笑えません。
意味は、書いた当人としては「危ないyo」の方です。
ですが、どっちでもお好きな方でお願いできればと。

>59様 お言葉に、想像をたくましくしてしまいました。

兄上は、自分ではしっかり者のつもりで、実際は部下に触られ放題です。
ファラミアは、兄上を買いかぶってます。
大将はそのつもりなら、誰にも指一本触れさせないと思われます。

6160:2004/05/27(木) 23:50
連投すみません。
>60で、とんでもなく失礼なことをしてしまいました。
>52様へのコメントが、>50宛ての自己レスに。
>52様、せっかくお言葉をくださったのに、本当に申し訳ありません。どうお詫びして良いか…。

蛇足中の蛇足<知ってしまった兄上>

「ファラミア」
「これは兄上。血相を変えていかがなされました」
「小耳に挟んだのだが。お前、部下に弄ばれたというのは、まことか」
「何と、尾ひれがつき放題でございますな」
「まことなのだな。その身の程知らずの配属は変更するが、異存はないな。わたしの権限で最前線へ立たせようぞ」
「配属替えは構いませぬが。最前線の部隊は、常にこのファラミアが率いております」
「……」
「兄上?」
「部下に隙を突かれるなど、未熟な証拠であるぞ」
「お言葉、肝に銘じます」
「何をしておる」
「兄上を抱擁しております。隙がございましたもので」
「……」
「兄上?」
「兄弟の間で隙も何もあるものか。それに、いつもしていることだ」
「そうでした」
 神妙に頷くファラミアの体に、ボロミアの腕が回された。ファラミアは顔を低くして、ボロミアの唇に唇を触れさせた。
「ファラミア」
「いつもしていることではないですか」
「……」
「兄上?」
「部屋に戻る」
 ボロミアは、腕をほどいてきびすを返した。さして歩かぬうちにボロミアは立ち止まり、ファラミアを振り返った。
「何をしておる。お前もだ」
 ボロミアに気付かれないよう笑うと、ファラミアは小走りに兄の背に向けて駆け出した。

スキンシップ過剰です。
レス番間違いに連日の連投、大変失礼致しました。

6254:2004/05/27(木) 23:55
>>56>>57>>58>>59
ありがとうございます。私はたぶん今すごく幸せなのだと思います。
ほんの少し書き物をしたことはありますけども、いつまでも書き止めたくないと思ったのはこれが初めてです。…というか、まず最後まで書き上げられるかが問題なのですが…。ああこんな事書いちゃっていいのかな、実はこんなに長い話を書くのも初めてです。
さあ、今日中に続きを書き上げましたよ。
明日朝ウプは難しいかもですゴルア

エオメル/ファラミア しるけ有り(になる予定)
>>55の続き





「なぜここに?」エオメルはファラミアに問い掛けた。
「一人になりたいとおっしゃった。」ファラミアは答えた。「ならば、ここほどふさわしい場所は有りますまい。」
緑の塚原には白い星が花咲いていた。辺りは静まりかえり、ただ風の音だけが鳴り響いていた。塚が西側に九つ、東側に八つ並び、マーク代々の王たちが醒めぬ眠りの中に憩っていた。一番新しい塚は、エオメルが父とも慕った故王のためのものだった。エオメルは塚の前まで歩いていき、額づいた。
「あの方の事が偲ばれます。」エオメルは言った。「ファラミア殿は、私の一人になりたいという我が侭を聞き入れて私をここに連れてきてくださったが、ここにいると私は一人ではないのだと感じられます。」
「あなたを見守っている方がいらっしゃる。」ファラミアは言った。
「そうです。」エオメルは応えた。
「もうお会いする事も語り合う事も出来ないが、それでもあの方はここにいらっしゃる。」
エオメルは立ち上がり、誇り高い頭を巡らせた。
「私は決してあの方を忘れることは無いでしょう。」
鳥の群れが空を渡っていった。エオメルは感情の発露を恥じた。
「埒も無い事を言ってしまった。」
ファラミアはかぶりを振った。エオメルはふと気付いたようにファラミアを見た。
「私たちは同じなのですね。」
ファラミアは笑うばかりでそれには答えなかった。
突然の衝動に動かされて、エオメルはファラミアの手首を捉えた。
「あなたはいい匂いがする。」
エオメルはファラミアの首筋に顔を近付けた。ファラミアは素早く身を引いた。
「アセラスではないでしょうか。」
「アセラス?」
エオメルはファラミアの手首を掴んだまま彼の目をのぞきこんだ。
「怪我をしていらっしゃるのか?」
ファラミアは顔を背けた。
「もう癒っております。」
エオメルはファラミアの顔を見ようと首を傾けた。ファラミアはそれとは反対方向に目をそらせた。
「ただ、かぐわしい匂いがするので、擂り潰して水を満たした杯に浮かべたりするのです。お気に召したなら、株を取り寄せましょう。強い植物ですから、気候が合えば根付くはずです。もしかしたらローハンに自生しているかもしれない。」

63萌えの下なる名無しさん:2004/05/27(木) 23:56
>>61の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













ファラミアは抵抗するのをあきらめ、俯いた。緩やかに波打つ髪が顔にかかり、エオメルから表情を隠した。
ファラミアは言った。
「エレスサール王はもうヘルム峡谷にお着きだろうか。」
エオメルは虚を衝かれた。
「さ、騎士だけならば今夜遅くに着くかもしれませぬが。」エオメルは答えた。
「徒歩の者がいるならば、とても。」
ファラミアは目を上げてエオメルを見た。エオメルの顔にはただ驚きの感情だけが浮かんでいた。
ファラミアは幾度か躊躇いながら、唇を湿らせて口を開こうとした。
「あなたは―」
そう言いかけた時、驚くほど近くから澄んだ声がかけられた。
「お兄様。」
エオメルは弾かれたように身を起こした。ファラミアは慌ててエオメルの手を振り解いた。縛めは難なく外れた。
優美な姿が彼らの傍らに立っていた。
「お話のところを邪魔してしまいまして?」
「いや―エオウィン姫。」
ファラミアは、彼に似合わず口ごもった。エオウィンは白鳥のように優雅に首を傾げて彼を見た。エオメルは何故か浮気の現場を取り押さえられた間男のような居心地の悪さを味わった。
ファラミアの頬には桃色の斑点が散っていたが、エオメルの見たところ彼は落ち着きを取り戻したようだった。
「邪魔をしているのは私の方ではないだろうか。兄妹水入らずで話したい事も有るだろうに、気の利かぬ事を。失礼。」
ファラミアは口速に言い、その場を立ち去った。エオメルは唖然として彼を見送った。気が付くと、恐ろしく怖い顔をしたエオウィンがエオメルを睨み付けていた。
「エオウィン、まさかと思うがファラミア殿の前でそのような顔をしないだろうな。百年の恋も醒めるぞ。」
「ご心配無く。ファラミア様は兄上の思うより心の広い方ですわ。」
エオウィンはエオメルに剣突を食らわせた。エオメルはたじたじになった。
「お兄様、ファラミア様を苛めていたのではなくて?」
「いや、まさか。」
エオメルは言った。
「ただ話していただけだ。」
エオウィンは足の爪先から頭の天辺までエオメルを眺め回した。突き通すような眼差しに、エオメルは心の底まで覗かれるような気持ちになった。
エオウィンは溜息を吐いた。
「ならばよろしいのですけれど。」
エオメルは妹を見た。エオウィンは何かを堪えるような表情をしていた。
「私はお二人とも幸せになっていただきたいのです。」
愛情がエオメルの心を満たした。エオメルはエオウィンの肩に手を置いた。
「それは私も同じことだ。お前には幸せになってもらいたい。ファラミア殿と共に。」
エオウィンはエオメルの手の上に手を重ねて置いた。
「お兄様、眉間に皺が寄っておいでですわ。本当にいつまでもお変わりなくていらっしゃること。」
エオメルは思わず自分の顔を撫でた。

64萌えの下なる名無しさん:2004/05/28(金) 00:06
Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ >>60女神様、書き込みかぶってしまいました、申し訳ありません!
唯一の慰めは、交互にならなかったこと か と… orz

すみません、次からちゃんと確かめます。
兄上とラブラブなファラミア様にハッピーな気持ちになれましただ(*゚∀゚*)ポルアアン

65萌えの下なる名無しさん:2004/05/28(金) 00:10
>62-63女神様

即レスせずにはいられないです。興奮しすぎです<自分

明日の朝の楽しみを、今いただいたということですね!ありがとうございます!!
出来ることなら、書きやめないでいただきたく!

大将のかぐわしいにおいに、どきどきです。
色っぽすぎます。大将。独り者のエオメルには毒です。やばいです。
そして、エオウィン!
可愛らしいですぞー。エオメルとの会話が、まさに兄妹!
ぐいぐいとひきこまれます。

話が広がるのが楽しみでたまらないです。
次回は、明日夜でしょうか。<催促するなと
続きを心待ちにしております!!

6660:2004/05/28(金) 09:28
>64様

むしろ勇み足は>60です。
本人的にはSSとはいえないような
小話のためにお気を遣わせてしまい、
女神様にも、スレ住民の皆様にも申し訳ないです。

女神様の続きを待たれてる皆様の
楽しみが減じていないことを祈ります。

67萌えの下なる名無しさん:2004/05/28(金) 21:58
>60=61様
隙だらけの兄君と余裕の弟君、素敵です。
笑えない冗談の大将も好きです。
こんな人たちが指揮官では、部下の皆さんが気の毒にもなりますが(w

それから、自分52ですけど、あまりお気になさらないで下さいね。

68萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 09:56
>62-63様
浮気の現場をとらえられた間男のような表情の
エオメルがなんともいえません。
ファラミアの顔に浮かぶ憂愁の色に思わずくらくらきてしまったんですね。

>50-51様
やがてこのお話はイシリアンの「民話」として
語り継がれていくのであった……
ところで、この新兵君のひたむきさ、
部下A君か部下B君か、というより
部下Z君、という感じですな。

>60様
兄上も隙だらけにみえて、実は、やるな。

69萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 10:58
すみません、遅くなりました (((;゚∀゚) アセアセ
実は1日につき1話分をまとめてアップしようという下らない意地を張ってまして、それで間隔が空いてしまいました。

>60様
いえ、こちらこそお気を遣わせてしまって申し訳ありませんでした。
一週間もスレ寡占状態になって本当に申し訳ありません。残り1回ですので、最後までよろしくお付き合いください。m(_ _)m


エオメル/ファラミア 次こそしるけ有りになる予定

>>63の続き




その後エオメルは去っていったファラミアに心を残しつつ、政務に戻った。
あれこれの雑事をこなしながら、昼間起きた出来事が時折影のようにエオメルの心をよぎった。エオメルはファラミアに感じた不思議な衝動を、彼自身説明出来ないでいた。だが、彼がとった行動が奇妙なものだったという事だけは分かった。成すべき事を全て終えたらファラミアに会いに行こうと思った。ファラミアに会えば、心の片隅に巣くう疑問も全て解けるだろうと思われた。
その思いが功を奏したのか、その日の仕事を成し終えたのは、まだ太陽が草原の地平を茜色に染めつつある頃のことだった。
ファラミアを捜し歩くエオメルに、一人の老人が声を掛けた。
「エオメル様、お久しゅうございます。」
「ギャムリングか。久方振りだな。」
老人の名はギャムリングといい、戦での功績を讃えられて城勤めになった者だった。エオメルとは剣を共にして戦った仲である。
ギャムリングはエオメルにつと近づいて声をひそめた。
「エオメル殿に申し上げたい事がござる。余人を交えぬ場所で。」
エオメルは眉をひそめた。彼らは遮るものとてない広場の中ほどに立っており、夕暮れ時の慌しさに、二人の男に目を留める者などいないようだった。
「ではここで話せばよかろう。」
ギャムリングは老いた忠実な頭を昂然と上げた。
「では、申し上げる。」
「何なりと。」
「ファラミア殿のことで。」
エオメルは少なからず動揺した。心を読まれたような気さえした。
だがギャムリングは彼の反応を見ず、一息に言った。
「エオウィン様の婿殿と親しくなさるのはよろしかろう。だが度を超すと、災いを招きましょうぞ。ローハンの王はゴンドールの僕よと口さがない事を言う者もおりかねませぬ。我が王がゴンドールのエレスサール王を慕っておいでなのは周知の事実ゆえ。」
エオメルは予期せぬ方向から殴られたような気分になった。いわれのない邪推に頬がかっと熱く燃えた。怒りがむらむらと心の底からこみあげてきた。
だが目の前にいるのは長年忠義の士としてローハンに仕えてきた男だった。
エオメルはどうにか怒りを鎮め、尋ねた。
「なぜそんなことを?」
「昼過ぎ頃、王家の塚でファラミア殿とお話なさっているのがここから見えました。」
ギャムリングは答えた。
「あのような人気無き場所でお二人になるのも避けた方がよろしかろうと存じ上げる。御身大事なれば。ファラミア殿とても同じ事。ゴンドールの執政であられる身が異国の地にあって凶事あらば、申し開きのしようも御座いませぬ。」
エオメルの心は冷水を浴びせかけられたように醒めた。
ファラミアはエオウィンの夫となる男であるばかりでなく、強国の重臣でもあった。エオメルはそれを全く失念していた己に怒りさえ感じた。

70萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 10:59
>>69の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













「諫言耳に痛い。」エオメルは言った。
「おわかりいただけましたか。」
ギャムリングは安堵の表情を浮かべた。エオメルは厳しい様子を崩さず、彼を見た。
「ギャムリングよ、セオデン王を覚えているか。」
ギャムリングは戸惑った。
「どうして忘れるはずがありましょうか。」
「私の心にも彼の姿が焼き付いている。」
エオメルは言った。
「セオドレド殿も。同じ館で共に育ち、長じては軍団長として親しくさせていただいた。」
エオメルはしばらく目を閉じ、懐かしい人々を思った。
「彼らを失った事は私にとって大きな痛手だった。」
「我々皆にとってです。」ギャムリングは言った。エオメルはうなずいた。
「一人残され、重責を担うようになり、幾度還らぬ彼らを思っただろうか。かの王であれば、彼であれば、このような不甲斐な無きことは無いだろうにと。」
「エオメル様、何を言われるか。」
エオメルは手を挙げてギャムリングを止めた。
「だがそう思うのは間違いだったのだ。」エオメルは言った。
「私は己のみが辛い、苦しいとばかり思い込んでいた。何故私一人がこのような荷を負わねばならぬのかと。だがそれは思い上がりというものだった。私と同じ境遇にありながら、耐えて務めを果たしている方がおられる。」
それがファラミアである事は明白だった。
「分かってもらえるだろうか、ギャムリング。私は妹婿だけでなく、思いがけず良い知己を得たのだ。彼がいなければ私はいつまでも亡き方々を望み無き頼りとするばかりだっただろう。だが私は、今の私と同じ重責に耐え、民をよく導いたあの方々を誇りに思い、若輩者ではあるが父祖に恥じぬ王でありたいと願う。
それに、ファラミア殿は友情を利用するような方ではない。仮にそうであったとしても、私は彼を信じたいと思う。」
エオメルは真摯だった。
ギャムリングは思わず目に浮かんだ涙をひそかに拭った。
「では、もう何も申しますまい。」ギャムリングは言った。
「ただ、程ほどになされよ。いつまでも二人で話し込まれていては、殿とお近づきになりたい乙女らが臍を曲げましょうぞ。」
エオメルは憮然とした。ギャムリングは皺深い顔をほころばせた。
「いつまでも童のようでおられる。おそれながらそのように不快をすぐ顔に表すようでは王として務まりませぬぞ。」
「なぜ不快と分かる?」エオメルは尋ねた。
「眉の間に皺が。」ギャムリングは答えた。
エオメルは昼間のエオウィンとのやり取りを思い起こした。
ギャムリングのたわいない揶揄は、エオメルの心に小さな棘を残した。

ファラミアは彼の部屋にはいなかった。エオメルは思いつくままにあちこち足を運んだ。
次第に太陽の高度は下がり、すでに空を赤く燃やしていた。エオメルは途方に暮れた。
よくよく考えるならばファラミアは夕食の席に現れるはずだった。疑問はその後にでもただせばよい。エオメルはそう考え、踵を返した。

71萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 11:00
>>70の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













だがその時、鋼が風を斬る音が城の裏手からエオメルの耳に届いた。
軽く足を踏む音が続いたのは、誰かが剣の稽古をしているものと思われた。重ねて剣が空を切る音が続いた。ブーツが地を蹴り、大きく振りかぶられた剣が美しい太刀筋で見えぬ敵を一刀両断にした。
淡い藍に染まりつつある空を背にして、ファラミアが一人剣を振るっていた。
彼が力強く空を薙ぎ払うたび柔らかな髪が躍り、服の長い裾がはためいた。剣は力任せに振るわれているようで、その実骨の髄まで叩き込まれた型が保たれていた。ファラミアは足で地面に大きく半円を描き、返す刀を打ち込んだ。さらに二度、三度。
その姿はエオメルの目にはどこか痛ましく映った。
望まぬ軛に繋がれた若駒が、縛めから逃れようともがき苦しんでいるようだとエオメルは思った。
エオメルはファラミアに近づきかねて十歩ほど離れた場所から声を掛けた。
「ファラミア。」
ファラミアは動きを止めた。しばらく遠くを見つめ、肩で息を付いていたが、やがて額に浮かんだ玉の汗を拭い、エオメルに顔を向けた。
「何か御用か。」
エオメルの背筋が凍った。
ファラミアが薄く浮かべた笑顔の、二つの瞳だけが笑わず冷たく凍り付いていた。エオメルは戸惑い、また失望と小さな怒りを感じた。
「昼間の事だが。」エオメルは切り出した。
ファラミアの肩が揺れた。
「礼を言いに。」
ファラミアは首を傾げてエオメルを見た。
「あなたは私にセオデン王を思い出させてくださった。彼らを思う事は私にとってどれほど慰めになることか。」
エオメルは言った。彼は自分の言葉が空虚に響くのを聞いた。つい先ほどまでとても大事に思われた事が、今は全く価値を失ったように感じられた。
だがファラミアは苦笑し、うなずいた。
「あれはただの思い付きです。私に礼を言われるような事などない。礼を言うとするならば、あなたにそう思わせるほどの方だったセオデン王に。」
エオメルはファラミアから遠く離れた場所に立ち尽くしたまま返答に困っていた。
ファラミアは態度を少し和らげた。
「かつてセオデン王とセオドレド殿にお会いした事があります。あなたは残念ながら務めで都を空けていらしたが。お二人とも豪放磊落、まさに王者の気風を備えたお方だった。館の内にあって、太陽のように内側からエドラスを明るく照らしていらした。」
エオメルの怒りが消し飛んだ。身内を褒められただけで機嫌を直した自分を単純だと思ったが、そのような事は気にならなかった。
「その太陽もすでに落ちてもう見る事は叶わないが。」
エオメルはファラミアに歩み寄った。
「では私の胸の内にあって心を暖かく燃やしているのは残照だと言うべきだろうか。」

72萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 11:00
>>71の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













ファラミアはエオメルが近付いた分だけさりげなく遠ざかった。
「御用がそれだけでしたら、私はこれで。」ファラミアは言った。それから思いついて付け加えた。
「ああ、明日は遠乗りに行く約束をしていたのでしたか。楽しみにしています。」
エオメルはファラミアの態度が急に硬化したことに愕然とした。ファラミアはエオメルに背を向け、立ち去ろうとしていた。
「どうしてそんなにつれなくなさるのか。」エオメルは言った。
「つれないとおっしゃるか。」
ファラミアは髪を乱して振り向き、剣の切っ先をエオメルに向けた。
二人の距離は手をどれほど伸ばしても届かぬほど離れていたが、エオメルは喉元に刃を突き付けられたような錯覚に陥った。
「あなたは全く気付いておいででないが。」
ファラミアは怒りに肩を震わせていた。
「我々は今、薄い刃の上を渡っているのだ。さもなくば断崖絶壁の縁を。」
ファラミアは抜き身の剣を鞘に納めた。彼は刺々しい様子を隠しもせず歩き始めた。エオメルは後を追った。
「あなたが何をおっしゃっているのかさっぱりわからない。」
「わからないならわからなくてよろしい。」
「わからないなりにあなたが気分を害しているのはわかる。このままでは納得がいきません。」
ファラミアは足を速めた。エオメルもそれに続いた。二人はじゅうを打ち倒す程の勢いで回廊を歩いていった。
ファラミアは自室の扉の前で立ち止まった。エオメルはすぐに追い付いた。
ファラミアは振り向き、エオメルに言った。
「また明日お会いしよう。今日はこれで。」
だがファラミアの声は震えていた。エオメルは言った。
「あなたは何をそんなに恐れておいでなのか。」
ファラミアは激情にかられた。
「そうだ、私は恐れている。」
白い歯をむき出してそう言ったファラミアの頬は紅潮し、目はぎらぎらと輝いていた。エオメルは安堵すらおぼえた。氷のような眼差しを向けられるよりは余程ましだった。

二人は戸の前に立ちしばらく睨み合っていた。
だが、やがてファラミアが目を伏せた。彼は言った。
「あなたに出会わなければよかった。」
その言葉はエオメルに少なからぬ衝撃を与えた。ファラミアの怒りがどのような事に端を発していたにせよ、そこまで嫌われていたとは思いもよらなかった。

73萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 11:01
>>72の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













エオメルの男らしい顔は夕闇の中でもはっきりとわかるほど青ざめた。エオメルは冷たい刃がゆっくりと胸に差し込まれていくような感覚に苦しんだ。ファラミアはそれを見てとり、自分の言葉がエオメルに及ぼした影響の大きさに怯えた。
「すまない、八つ当たりだ。」
ファラミアは言った。
「これは私の気持ちの問題だ。あなたには関係ない。」
エオメルはファラミアを見た。
「あなたの気持ちとは。」
エオメルは低く尋ねた。
ファラミアは緩く首を振った。
「それをあなたに知られたくないのだ。」
エオメルは少し考え込んだ。
「では、やはり私と関係有るということになる。」
ファラミアは口を引き結んだ。
「昼間の事なら」
ファラミアは身を硬くした。エオメルは言った。
「あなたと私が同じだと言った事で気分を害しているなら謝ろう。あなたが失った人々を軽々しく扱ったと思われたなら。」
ファラミアの身体から力が抜けた。
「いや、それについてはあなたが謝ることはない。ただ、あなたのように亡き人に良い思い出を持っている人間ばかりとは限らないというだけだ。」
ファラミアは自嘲した。
「この事はもう言わないようにしましょう。」
エオメルはファラミアがひそかに傷付いていたことに驚いた。ファラミアは決してそのような感情を表に出そうとはしなかった。その様子を、雨に打たれうなだれる花のようだとエオメルは思った。
彼を慰めたいという衝動に従い、エオメルはファラミアの頬に手を伸ばした。
途端にファラミアの目に怒りが蘇った。ファラミアはエオメルの手を音高く払いのけた。エオメルは戸惑って身を引いた。
「そのように」
ファラミアは言った。
「思いのままに振舞うのは止めたがよろしい。あなたは王なのだから。」
エオメルはファラミアを見つける前に交わした会話を思い出した。
「ギャムリングにもそういわれた。」
ファラミアは目顔で問い掛けた。エオメルは言った。
「私の部下だ。昼間黄金館からあなたとのやり取りを見ていたそうだ。あなたに必要以上に近付かぬようにと言われた。」
「館から?」
ファラミアは肩をすくめた。
「草原の方は目が鋭くておいでだ。」それから言った。
「ギャムリング殿のおっしゃる通りだ。我々はこれ以上近付いてはいけない。」
エオメルは納得がいかないという顔をした。ファラミアは言った。
「これ以上は罪を犯すことになる。」
「罪?」エオメルは言った。
「何の罪です。」

74萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 11:02
>>73の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













ファラミアは失言に気が付いた。彼の顔色が変わった。
エオメルもまたそれに気が付いた。これまで起きた出来事の数々がエオメルの脳裏に甦った。諍いと、和解。朝日に照らされ、力無く悲しむ彼を美しいと思った事。差し伸べられた手。雨上がりの草地のような、清々しく甘い香り。彼の手首の感触。生き身の人間の暖かさ。
全てを反芻しエオメルは自分の衝動の意味とファラミアと彼の間に流れる感情の正体を悟った。
彼の顔にたちまちのうちに血が昇った。ファラミアは逃げ出したそうなそぶりを見せた。
「逃げないでください。」エオメルは言った。
「これでは堂々巡りだ。」
ファラミアは観念して目を閉じた。
「おっしゃる通りだ。」ファラミアは言った。
「だが、これでもうお分かりだろう。我々はこれ以上仲を深めてはならない。」
エオメルはファラミアの頬に手を伸ばした。ファラミアは今度は抵抗しなかった。ファラミアはエオメルの手の温もりを感じ、エオメルはファラミアの肌の暖かさを覚えた。
太陽は既に沈み、残照だけが空を赤く彩っていた。黄昏時の薄闇が彼らの姿を人目から覆い隠した。
エオメルの心に刺さった小さい棘がうずいた。
「エオウィンの事か。」エオメルは言った。
ファラミアの唇が震えた。
「そうです。」
「せめて我々は友になれまいか。」
「あなたはそれで良くても、私は。」
ファラミアは目を開けてエオメルを見た。
「どうしてあなたを好きにならずにいられるだろう。」
ファラミアは優しくエオメルの手を外した。
「先ほど私はセオデン王の事を太陽のようだと申し上げた。」
ファラミアは言った。
「あなたも同じだ。あなたは光り輝いている。」
エオメルは何も答えられなかった。
ファラミアは言った。
「この事は忘れてください。私ももう申しますまい。そして新しい親族としての私を迎え入れて下さればいい。私自身ではなく。」
ファラミアはエオメルをやんわりと押し退けて部屋に入り、戸を閉めた。
扉を挟んだ両側で、彼らはしばらく立ち尽くしていた。

75萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 16:52
>69-74様
本日も、楽しみに読ませていただきました。
以前から、エオメル王が指輪戦争後、あっという間に
ドル・アムロスの姫君と結婚してしまったことについて
「兄ちゃん、寂しかったんだろな。みんないなくなっちゃって。」
と思っていたのですが、そうか。
日増しにつのってくる義弟への思いを断ち切るためだったのか、
なんて、このお話を読んでいて一人納得してしまいましたぞ。

ところで、毎日雨あられと降る恩寵のせいでしょうか。
執政家兄弟が登場するへーんな夢を見てしまったので、以下ご報告いたします。


ある日、ファラミアはボロミアをつれて映画館にやってきた。
チケットを買って入場しようとすると、チケット売り場の姐ちゃんが
「10元出しな。じゃなきゃ、入れてやらない」と脅しにかかる(何故、“元”!?)。
つまり、チケットを正規の値段(たしか一人1元くらい)で売らず、
姐ちゃん自身に袖の下を渡せ、という意味である。
「仕方あるまい」とか言いつつ、ファラミアは小銭を払うことすら惜しみ、
現金ではなく手持ちの小額切手で間に合わせようとする(大将、ドケチ虫か?)。
その切手がまた、1.78元など非常に半端な額の細かいものばかり。
さすがのファラミアも計算に時間がかかっている。
ボロミアも計算に参加し、「これとこれで3元になる」などと横から口を出している。
計算をしながらもボロミアは「ところでいったい、今日の映画はどんな内容なのか」と弟に聞く。
するとファラミアは、「兄上、あなたについての映画ですよ。」と答える。
しかし、看板を見ると、どう見ても子供向けのアニメである……

覚えているのはこれだけなのです。バカな夢ですみません。
一番の疑問は、使用されている通貨単位がなぜ、
中国の「人民元」なのか、ということです。

76萌えの下なる名無しさん:2004/05/29(土) 19:14
60です。

>67=52様
お優しいお言葉ありがとうございます。気を付けますね。

人目をはばかることを知らない兄弟の過剰なスキンシップは、
ゴンドールの兵、民に見られ放題だと思われます。
各方面から暖かい目で見守られてたら良いのですが。

>68様
コメントをありがとうございます。
件の若者、部下の末席に名を連ねてるだけで精一杯というか、
しっかりしろと。そこを、何とかするのが大将ですが。

大将は誘わせ上手、兄上は、誘い上手ではないかと。
ただし、お互いにしか発揮されません。意味があるのかないのか。

>69様
ありがとうございます。もう少しで終わりなのですね。
終わるのは寂しいですけども…がんばってください。

7769:2004/05/30(日) 07:10
>68様>75様>76様
感想キタ━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━ !!
ありがとうございます!ありがとうございます!心優しい皆様の感想がどんなに励みになったことか!
やっと念願のエチシーンにこぎつけましただ!
長かった…・゚・(つД`)・゚・
では、続きいきます!


エオメル/ファラミア しるけ有り

>>74の続き




次の日の朝、遠乗りに王とその臣とゴンドールからの客人と、そして多くの従者たちが草原に乗り入れた。
エオメルはローハン一足の速い駿馬にまたがっていた。ファラミアもまた客人のためによりすぐられた足の速い馬に乗っていた。
エオメルとファラミアは出会い頭に通り一遍の挨拶をしただけで後は近付こうとすらしなかった。
ファラミアは軽い失望をおぼえながら事が丸く納まったことに安堵した。これで良かったのだとファラミアは自分に言い聞かせた。
遠乗りは和やかに続いた。ファラミアの周りには人が絶えなかった。ファラミアは従者の一人から鳥や花の名をローハンの言葉で何というのかを教わったりしながらそれなりに楽しんでいた。
そんな時だった。
ふと、ファラミアの目とエオメルの目が合った。
ファラミアは、エオメルがにやりと笑った気がした。
ファラミアは黙って目をそらした。だが、胸の中で一つのある決意をした。
ファラミアは人をそらさぬ態度で従者に話しかけた。
「ところで、あの花はローハンの言葉で何というのでしょう?」
「どれでしょうか。」
従者は答えた。ファラミアは後ろめたさを感じながら言った。
「あれです。向こうに咲く、あの小さな黄色い花。」
人のいい従者は客人の疑問に答えるべくファラミアから離れていった。ファラミアはエオメルが近づいてくるのを感じて目を閉じた。
ファラミアが目を開けると、目の前にエオメルがいた。エオメルは短く一言言った。
「付いて来い。」
言うが早いか、馬に拍車を掛け全速力で駆け始めた。ファラミアの胸に愛しい女の面影がよぎった。だがそれも一瞬のことだった。一拍遅れて、ファラミアも駆け出した。
突然走り出した二頭の馬に周囲の人々は唖然とした。しばらくして我に返った従者たちは王とその客人に追い着こうと馬を走らせ始めた。しかし彼らの距離はぐんぐん広がっていく。
エオメルは後ろを向いてそれを確認しながら馬を走らせた。ファラミアの方はそんな余裕も無くやっとのことでエオメルに付いて行くので精一杯だった。二人はどこまでも馬を駆けさせた。
エオメルの口から喜びの雄叫びがあがった。続いて、高らかに笑い声をあげた。ファラミアも馬にしがみつきながらいつのまにか笑っていた。これほど清々しい気分になったのは久方振りだった。

エオメルは目的の場所に着くと、馬を止めた。彼は自分の家の庭のようにその地を知り尽くしており、草原が平らに見えて実は起伏に富んでいることを知っていた。
彼らは馬から下り、遠くに向けて走らせた。従者たちは空の鞍を乗せた馬たちを追っていくだろう。
エオメルとファラミアはすりばち状の窪地に入っていった。窪地には丈の高い草が生い茂っており、目を刺さないように注意しなければならなかった。ファラミアの気分は子供の頃かくれんぼをして遊んだ時のように浮き立った。
窪地の中心地でエオメルは立ち止まった。

78萌えの下なる名無しさん:2004/05/30(日) 07:10
>>77の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













エオメルはファラミアに向き合い、切り出した。
「ファラミア、私は昨夜一晩中考えていた―」
だがファラミアはエオメルを遮った。
「エオメル、何も言うな。」
ファラミアは言った。
「あなたが私に付いて来いと言い、私があなたに付いて来た。それでもう答えが出ている。後は何を言っても言い訳になるばかりだ。結局する事は同じなのだから。」
それから思い直して言った。
「もし、これが私の浅ましい欲望が産んだ勘違いなら、私は今酷い恥をかいたことになるが。」
エオメルは応えた。
「いいえ。」
ファラミアはエオメルを見た。
「いいえ。」
だがエオメルの心にはまだ迷いが残っていた。彼は肉体的にファラミアを求めている事をどう言うべきか考えあぐねていた。ファラミアは苦笑した。
「エオメル、こういう時はこう言うのだ。あなたを抱き締めたい、と。」
ファラミアはエオメルの逞しい身体を見て付け加えた。
「私の両腕はあなたの背中に回りきらないかもしれないが。」
ファラミアはいたずらっぽく笑った。
エオメルは胸を詰まらせた。エオメルは革の手袋を外し、亜麻色の髪をかきわけてファラミアの頬に手を寄せた。
「あなたを抱き締めたい。」
本来なら草原の端から端まで響き渡るほど深く澄んだ声が、みっともないほど掠れた。
ファラミアは、私もだ、と言いかけた。
エオメルはその言葉を唇ごと吸い取った。

エオメルとファラミアは身に着けている物を全て取り去り、身を横たえた。ファラミアの背中の下でヨモギの葉が潰れ、辺りに芳しい香りが漂った。
ファラミアは、つい先日まで見知らぬ男だったはずのエオメルの手が肌を滑るのを不思議に感じていた。もし二日前にエオメルに触れられたならファラミアの心は怒りに燃えただろうと思われた。だが今、ファラミアの心に浮かぶのは静かな喜びばかりだった。
「ファラミア。」
エオメルが言った。
「ファラミア。」
ファラミアの曇りの無い目は恐れがエオメルの心を満たしているのを見抜いた。だがその源までは分からなかった。ファラミア自身もまた恐れを抱いていた。
ファラミアはエオメルほど若くなく、しかも男だった。
恐れが二人の動きを止めた。
太陽は中天にかかろうとしていた。
ファラミアはエオメルの胸元に震える唇を付けた。
エオメルの分厚い胸板の下で心臓が跳ね、逞しい四肢に血液を送り出した。
「エオメル。」
ファラミアは言った。
「私はあなたを抱き締めたい。」
不思議な誇りがエオメルの身体を駆け巡った。

79萌えの下なる名無しさん:2004/05/30(日) 07:11
>>78の続き
エオメル/ファラミア しるけ有り













エオメルはファラミアを傷付ける事を恐れていた。そして何より、欲望を露わにしてファラミアに軽蔑される事を恐れていた。
しかしファラミアはエオメルを許していた。エオメルに傷付けられる前からエオメルを許していた。
エオメルはファラミアのなだらかな胸を撫でた。柔らかく短い毛がエオメルの手に絡んだ。熱く脈打つ器官がエオメルの興奮をファラミアに伝えた。
ファラミアは恐れを捨てた。
ファラミアはエオメルの体の中心を掴み、口に含んだ。エオメルは驚き、ファラミアの頭を押し退けようとした。ファラミアは半ば意地になってその行為を続けた。
ファラミアはもう十分という所までエオメルを昂らせると、その上から身を沈めようとした。
「ファラミア。」
エオメルの目に傷付いた色が浮かんでいた。
ファラミアは間違いを犯した事を悟った。
「ファラミア、私はあなたを抱き締めたい。」
エオメルはファラミアに繰り返し口付けた。ファラミアは目を閉じてエオメルの唇を受けた。ファラミアの口からくぐもった笑い声が洩れた。
エオメルの背中に鳥肌が立った。
エオメルはファラミアの髪を乱暴に引き掴み、唇に噛み付いた。舌と舌が絡み合い、濡れた音を立てた。エオメルとファラミアは声も立てずにお互いを貪り合った。
エオメルは熱く張り詰めた塊をファラミアに押し付けた。ファラミアは目を閉じ、息を吐いた。エオメルは軋みを上げながらファラミアの中に分け入った。ファラミアの目は衝撃に見開かれた。
「ファラミア。」
ファラミアはエオメルを見た。ファラミアの体の中でエオメルの熱が燃えていた。エオメルはファラミアの身体を揺さぶった。ファラミアは口の中で小さな悲鳴をあげた。
エオメルは、ファラミアの目の中で氷の最後の一辺が溶けて瞳に薄い水の膜を張るのを見た。
「ファラミア。」
エオメルは歯を食いしばった。
「あなたを抱き締めたい。」
ファラミアはエオメルの首に両腕を回した。熱い鼓動と共に涙が吹き零れた。
絶頂の訪れは急速だった。
熱が引いた後も、彼らはそのまま温もりを分かち合っていた。

80萌えの下なる名無しさん:2004/05/30(日) 07:12
>>79の続き これでラストです。
エオメル/ファラミア しるけ有り













エオメルは息を吐いてファラミアの上から身を起こした。塩辛い汗の混じった髪がエオメルの口に入った。
ファラミアは身をよじって草むらから起き上がった。背中に貼り付いた葉がぱらぱらと落ちた。
空は青く、太陽は中空にあった。風が二人の汗を冷やしていった。
二人は顔を見合わせた。
そして、二人とも惨憺たる姿である事を認めざるを得なかった。髪は乱れ、草の葉が身体のあちこちに付き、下肢には情事の残滓がこびりついていた。
「酷い姿だ。」エオメルは言った。
「あなたこそ。」ファラミアは応えた。
二人は睨み合った。
「―まあ、いつまでも睨み合っていても仕方が無い。」
「全くだ。」
ファラミアとエオメルは手早く身支度を整えた。目の前に横たわる問題にはあえて触れずにいた。
「さて、これからどうすべきかな。」
ファラミアは言った。エオメルはファラミアの髪から頭をのぞかせている草を抜き取った。
「まずは馬を捕まえ、館に帰る事だ。」
エオメルは言った。ファラミアは首を振った。
「私の場合はまず、馬に乗れるかどうかが問題だな。」
エオメルはファラミアを見た。
「頼むから何も言うな。」
ファラミアはエオメルに釘を刺した。
「それでも私は後悔していないのだから。」
エオメルはファラミアの肩に手を置き、唇を吸った。顔を離すと、エオメルの顔は赤黒く染まっていた。ファラミアは肩を揺らして笑った。
「さすがにもう一遍は無理だが。」
「私が思うに、」エオメルは言った。
「あなたはやはり人の心が読めるのではないか。」
「ヌメノールの透視力と言いたい所だが。」ファラミアは言った。
「あなたに関して言うならば、考える事が顔に出ているのだ。」
ファラミアは澄まし顔で答えた。エオメルはファラミアを抱き締めた。ファラミアはエオメルの背中に腕を回し、力を込めた。
遠くから彼らを呼ぶ声が聞こえるまで、二人は時を忘れてお互いを固く抱き締め合っていた。

8177:2004/05/30(日) 07:12
やっと終わりましただ!長々とスレ汚しして本当に申し訳ありませんでした。
では、そろそろROMに戻ります。最後なのでご迷惑も省みずマルチレスいきます!

>38様
早速のご感想ありがとうございました。ご期待に添えなくて申し訳ありませんでしただ…
何やらよからぬ事を企む大将もぜひ拝見したく。

>39様
サイト情報ありがとうございました!ひっそり萌え心を養わせていただきましただ(w

>43様
実は我ながらあの展開には無理があったかと。大目に見てくだされ orz

>44様
パタパー二世様、ご感想ありがとうございます!子馬亭の更なる発展をお祈り申し上げております!

>47様
朝早くからありがとうございました…・゚・(つД`)・゚・大変な時間にウプしてすみませなんだ。

>48様
イムラヒル大公登場は自分サービスだったり(w 映画でもお目にかかりたかったですだ。

>50 - 60女神様
優しいお言葉ありがとうございましただ。SSには目茶目茶心慰められました!慰められるどころか萌えて萌えて(*´д`*)ハァハァ
大将は誘わせ上手には禿げしくドウーイ (w
本当にいつもお声がけくださって、ありがとうございました。これからも頑張ってください!楽しみにしてます!
ところで実は53は私なのですが、とここでこっそり申し上げたり(ノ´∀`*)

>52様
なかなかエチーに進まなくて申し訳ありませんでしただ。じらしプレイ?(w

>56様
あれはカコイイ大将を狙いましたので、嬉しいお言葉でした。カコイイというよりただのタラシになった気も orz

>57様
いや、我ながら体力の限界に挑戦しました(;´Д`) お声掛けありがとうございましただ…本当に励みになりました。

>58様
こちらこそ、ありがとうございました。m(_ _)m SSをウプしつつ幸せを噛み締めておりましただ。私は毎日お応えすることができたでしょうか。

>59様
まだ着いてきてらっしゃいますか〜(゚ー゚*)ノ゙ 惹かれ合いすれ違いは自分的に萌えテーマですだ。おかげで長くなって申し訳なく・゚・(つД`)・゚・

>68様
浮気を捕らえられた間男のようなというか、エオメルはそのものだとセルフツッコミを(w 大将には憂い顔がよくお似合いですだ。

>75様
何てうらやましい夢を見てらっしゃるんですかと小一時間(ry ドケチ虫な大将も素敵だと申し上げたく(w


ではでは、お付き合いくださってありがとうございましただ!
メルロンモルニエウトゥーリエ、ナマリエ〜(^^ /""

82萌えの下なる名無しさん:2004/05/31(月) 11:50
>81女神様
最後のレス番にご挨拶を。
現在書き込みが止まっているのは、皆さん感動に言葉も出ないからだと思われます。
私も初めから読み直して、もうもう何を申し上げていいのやら・・・
惹かれあって、すれ違って、でも想い合って(互いのことだけではなく、国のことや
周りの人のことも)、草原の風のように爽やかで、そして切なくて・・・
ハラハラドキドキしながらのこの一週間、とても幸せでした。
本当に本当に、ありがとうございました。言葉が足りなくてごめんなさい。

83萌えの下なる名無しさん:2004/05/31(月) 14:33
>81女神様
ほんと、萌え過ぎて何と感想を書いたものやらー、でしたよ。
1週間お疲れ様でした、素敵な作品をありがとうございましたー。

84萌えの下なる名無しさん:2004/05/31(月) 20:21
>>81女神様
完結、おめでとうございます。
そして、日々の更新お疲れ様でした!
女神様のおかげで、ここ一週間スレをみるのが
いつもにも増して楽しみでした。

大将とエオメル王の関係が、だんだん抜き差しならなくなって
来た辺りから、萌え以上に息をのむような気持ちで、
見守らせていただいてました。
エオメルには悪いですが、いざとなって大将にリードされてる様や、
悪い言葉で言えばなんとかの一つ覚えのようなセリフの他には
言葉が出ない、余裕の無さには、微笑ましいものを感じましたが。
大将は、エオメルのそういう真っ直ぐなところが好きなのかもしれない、と
勝手に感じました。大将がはっきり好きだと意思表示をしているエオウィンと兄上も
性格はエオメルに通じるものがありますし。

大将がひとりで剣を振るってる場面が、いちばん好きでした。
大将の姿が目に浮かぶようでした。
いつも、文字から絵を頭に描くことは無いのですが、あの場面だけは
自分にも不思議なことに、例外でした。

今度はイムラヒル様あたりで、いかがですかとか<余計なお世話
最後に。たくさんの幸せをありがとうございました!!

85萌えの下なる名無しさん:2004/05/31(月) 23:13
>81様
私も昨日のうちに読み終わりましたが、
つまらない感想を書くのがもったいないように感じ、
今まで余韻を楽しんでおりました。
不器用でクソマジメなエオメルの
みっともない求愛ぶりが、なんともいとおしい。
大将の、年下の恋人に見せる思いやりも切ないですね。
年をとった二人は、このときのことをどんな風に
思い出すんだろう。

ともあれ、とてもさわやかで美しい作品
ありがとうございました。

8677:2004/06/01(火) 21:31
ど、どうもこんばんは、77です〜…。一度ROMると申し上げておきながら今ひとたび舞い戻って参りました…。
あ、あの、褒められ過ぎて、嬉しいのですが、すごく嬉しいのですが、同時に身の置き所が無い位かなりすごく恥ずかしいです、
色々お言葉をいただきながら申し訳有りません。
それで、スレ汚しご迷惑ついでに訂正したい箇所が一つあるのですが、いいでしょうか。
>>78の冒頭からです。

>エオメルはファラミアに向き合い、切り出した。
>「ファラミア、私は昨夜一晩中考えていた―」
>だがファラミアはエオメルを遮った。
>「エオメル、何も言うな。」
>ファラミアは言った。

上記の箇所を、

エオメルはファラミアに向き合い、切り出した。
「ファラミア、我々は、いや私は、あなたを諦めたくない。エオウィンを憎まぬために。」
ファラミアの返答を聞かず、エオメルは続けた。
「私は昨夜一晩中考えていた。あなたと私の事を考えていた。我々の間にある障害の事を考えていた。」
二人の心に、彼らが等しく愛しく思う女性の影が落ちた。
「あなたも気付いただろう。このままお互いを諦めたならば、我々はいつかエオウィンを憎む。彼女を愛しい妹、愛しい妻と思うのではなく、我々を引き裂いた憎い女と思うようになるのだ。いや、既にそう思い始めている。」
エオメルはうなだれた。金色の誇り高い頭が鈍くくすんだ。
「これほど恐ろしい事は無い。」
エオメルは言った。
「だがそれは彼女を体の良い口実にしているようにも思える。」
少しの沈黙の後、ファラミアは言った。
エオメルは答えた。
「そうかもしれない。それでも私は―」
だがファラミアはエオメルを遮った。
「エオメル、もう何も言うな。」
ファラミアは言った。

に直したいのですが、ど、どんなものかと…。
訂正部分は最初話がくどくなると思って削った部分なんですが、やっぱり必要な気がするので、追加修正していただきたいのです。
一度手放した物に手をつけるのもどうかと思ったのですが、ご、ごめんなさ…。
設置様、重ね重ね申し訳ありませんが、倉庫格納の際修正をお願い致します。
いつもいつもご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。すすすすいません本当に、正直に申し上げればファラメル/メルファラのあれは私です。
あ、あの、地獄のような改行とか改行とか改行とか・゚・(つД`)・゚・

実は、この場を借りて率直に言わせていただければ、このSSは一人の人のために書き始めた物で、その人がここを見ているかどうかはともかくとして、そうでなければ書かなかったというか、書けなかった話です。
かなり色々とツッコミ所のある話ですが、もう一度書けと言われても(言われないと思いますが)書けません。いえヘボい話なのは重々承知なんですが、自分の力量を遥かに超えていると思います。
とはいえ、子馬亭という場所が無ければこの話は決して産まれませんでした。
ここで、場所をいつまでもお借りしてご迷惑をお掛けしたお詫びと、暖かい言葉を下さった事にお礼を申し上げたいと思います。
では、なんだか物凄く恥ずかしいカキコをしているような気がしてきましたので、そろそろここら辺で…。今度はちゃんと消えます。
すみません、その前にマルチレスを。
>82様
あの、真剣に読んで下さって本当にありがとうございました。皆様の反応が不安だったので、すごく嬉しいです!本当に、暖かいお言葉に心慰められました。

>83様
も、萌えてくださいましたか…?そうだとしたら嬉しいのですが。ありがとうございます!

>84様
あのシーンは自分でも絵が浮かんで描いたものですので、ご好評いただけて嬉しいです。エオメルが格好良くならなかったのが我ながら悲しかったですだ。

>85様
う、さわやかで美しい話ですか…。高潔な彼らに非常に手前勝手な事やらせてしまいましたが、これで良かったのかどうか…。良いか悪いかと言われれば良くないんですが。いや自分でそんな事言っちゃいけませんな。
二人が年をとったら、ふとした折にきっと夢のように思い出すと思いますだよ。

では失礼します。色々と、本当にありがとうございましただ。((((((((((゚∀゚)/~ スササササササ

8777:2004/06/01(火) 21:33
勢いあまってageちまったですだ…申し訳ありませぬ orz
最後の最後まで格好悪…

88名無しの1:2004/06/02(水) 00:43
いきなり失礼します。
キャラスレとしては真っ先にお引っ越しして来たものの、内心では、全然人が
来なかったらどうしよう・・・とびくびくしておりました。が、そんな危惧も
どこへやら、という最近の盛況ぶり、嬉しい限りです。
それもこれも、次々素晴らしい萌えをご提供下さった女神様方のおかげです。
ありがとうございました。
現在、他スレもどんどんお引っ越ししていらして、新館の方も賑わうことと
思います。このスレも引き続き「多彩な萌え」を提供していきたいですね。

それにしても、マターリあいのりして来たレゴギムスレ、揃って到着の旅の
仲間たち、そしてどさくさに紛れてちゃっかり一番乗りしていたこのスレ・・・
と、何となく扱う対象を反映しているみたいなところが面白いですね(w
(ローハン勢はまだか!?)
では、またただの名無しに戻って応援させて頂きます。

89萌えの下なる名無しさん:2004/06/02(水) 01:17
>>88
同感です!わたしも嬉しい一人です。萌えは偉大です!
萌えの女神様や仲間の皆様が、こんなにいらっしゃるなんて、
なんて幸せなんだろうと思います。
ファラミア/エオメル女神様の作品が一段落して
寂しくて溜まらず、自分で自分を慰めてみたりです。

そんなものを投下させていただくのも恐縮ですが、
次なる女神様ご降臨までの、間つなぎにでもなれば幸いです。

<大将とその兄/しるけ皆無> 1/3

 白い都の夜が更けた。
 久方ぶりに顔を合わせた、もう若過ぎはしない兄弟は、連れだって片方の部屋に向かっていた。先を行く兄の後ろには、かれより多少背の高い弟が続く。部屋の主である弟が開いた扉を、当然のように兄はくぐり、自分のものならずとも勝手を知り尽くした部屋にしつらえられた長椅子に、迷わず腰を落ち着けた。兄の所作を見届けて、弟は静かに扉を閉めた。
 背の低い、小振りで重厚な長方形のテーブルを直角に挟んだ位置にある長椅子と同じ作りを持った一人がけの椅子に、部屋の主は場所を定めた。兄弟が顔を合わせる。どちらともなく笑いが漏らされた時、扉を叩く音がした。当然のように立ち上がったのは、弟の方だった。
 姿を現したのは、かれが用を頼んでいた使用人だった。弟−−ファラミアは、言いつけておいた物を受け取ると、給仕の任を果たそうとする使用人の耳に顔を寄せ、今日は、少々羽目を外すゆえ水入らずに頼む、と声を潜めて伝えた。思わず微笑を漏らした使用人を咎めることはせず、簡単に労をねぎらうと、ファラミアは、手にした銀の盆を心待ちにする人が待つ部屋に戻った。
 テーブルにファラミアが盆を乗せると、兄−−ボロミアは、長椅子の背に弛緩するように預けていた体を起こして、運ばれた物を覗き込んだ。弟は、その様が、いかにも兄らしすぎるためにこみ上げてきた笑いを、そのまま顔に乗せた。
 その表情は揶揄でも何でもなく、ただ、兄にとって喜ばしいものを目の前に差し出すことが出来た喜びの、素直な吐露に他ならなかった。ボロミアが、銀製品の上に鎮座した陶器製のピッチャーを手に取り、上から下から珍しいものを見るように眺め回すのに任せて、ファラミアは背の高いグラスを二つ、使用に丁度良く並べ、酒を注いだ。
 乾杯を言って、二人はグラスを合わせた。一息で飲めるだけの酒を喉に流した二人の口から、満足の溜息が漏らされた。
 気付けばボロミアの杯はとっくに空で、二杯目は自分で注ごうというのか、ピッチャーに手を伸ばした。いささか慌てたファラミアは、ボロミアの手を押しとどめた。
 ボロミアはファラミアの所作に構わず、笑うと、蒸留酒をあおった。
「火に出会えば、炎を上げるような酒でございますよ」
 自分の手にしたものを申し訳ばかりに舐めながら、念のためとファラミアは注意を促してみた。
「構わぬ」
 屈託無い笑いは、諌言にあまり注意を向けていない証拠だった。ただ、それで良いとファラミアは思う。ボロミアは、欲しいだけ飲んで、酔いたいように酔えば良い。大事には至らない。なぜなら、今、彼の隣には自分がいるのだから。
 そして、人の気を知ってか知らずか(知るわけはない)ボロミアは、お前ももっと飲め、と言い出した。
「ええ。頂いておりますよ」
 グラスを傾けてファラミアは中身を見せたが、ボロミアは納得しなかった。
 催促されたわけではないが、いつの間にか空になったボロミアのグラスに、ファラミアは酒を満たした。グラスに酒が入っているのは、少しの間だけだった。酒はみるみるボロミアの喉の奥に消えた。
 ファラミアも、飲酒が嫌いなわけでも、弱いわけでもなかった。ただ、ボロミアの機嫌のよい様を見る方が、自分が酒に酔うより、随分とファラミアの気分をよくするので、ファラミアはボロミアと共に杯を傾けるときは、酌に徹するのが習慣になっていた。
 羽目を外すのは、二人のうちの一人だけで十分だと、ファラミアは思っていた。
「二人揃いで正体をなくせば、誰が我らを介抱してくれるということもございません」
 自分と同じに飲ませようとする兄に対して、ファラミアが正論を吐くと、
「わたしがするとも。兄だからな」と、立派な言葉が返ってきた。

90萌えの下なる名無しさん:2004/06/02(水) 01:19
<大将とその兄/しるけ皆無> 2/3

 ボロミアは決して嘘つきではない。ただ、心がけだけではどうにもならない事態は、しばしば起こった。それを記憶しているのは、事によればファラミアだけなのかも知れなかったが。
 だから、ファラミアは、ボロミアがどんなに機嫌良くしていようとも、注意深い目を向けることを忘れなかった。
 気だるげに、長く肩につく髪をかき上げると、ボロミアは緩慢な動作で自分の背を長椅子に預けた。言った側からこれですか、とはファラミアは口にはしなかった。他人が見れば笑うかも知れないが、ファラミアは、不安にかられて椅子を立ち、長椅子の足下に膝をついてボロミアの顔を間近に見ようと覗き込んだ。ボロミアは、弟の行動を唐突だと感じたらしい。近づいた顔を初めは目を丸く、続いて面白そうに見ていたが、とうとう彼の方から顔を寄せて来たので、ファラミアは、面食らわされた。
「歌が聞きたい」
 と、気だるげにボロミアは言った。いきなり過ぎやしませんか、などと考えたところで詮無いことだった。酔っぱらいに理屈などない。酒好きな兄のおかげで、ファラミアはそれを早いうちから身をもって知っていた。
「歌がお好きだとは、ついぞ知りませんでしたが」
「お前の声は、耳に心地よい」
 ファラミアの髪に触れたたボロミアの手が、無意味に髪をかき回していく。
 こうしたときにいつもファラミアは、この人の中では自分はまだ、ただ構われたいがために姿を認めればまとわりつき、抱き上げられては高い声ではしゃぐ、小さな子どもなのだろうと思わされる。横幅はともかく、背はとっくに保護者然として振る舞う彼より少しばかり上回ってさえいるのだが、ボロミアはそれに、気付いているのかどうか怪しいものだと、ファラミアは思った。承知した上でかも知れないという、ふと浮かんだ嬉しくない想像を打ち消すように、ファラミアは首を振った。
「歌を」
 気だるげに長椅子に体を埋め、自分を促す兄の足のすぐ脇に、ファラミアは腰を下ろし、長椅子の背もたれと彼の体の間に片手を置いて、自分の体重を支えた。頬杖をつくように肘掛けに乗せた腕で頭を支えたボロミアの耳に、ファラミアは顔を近づけた。そして、囁くような密やかな声で、歌を紡いだ。
 よく聞けば、それは叶わぬ恋の歌だった。旋律に哀調はなく、ただ細く明るい。それだけに、悲しく響いた。目を閉じ、じっと黙して声に聞き入っていたボロミアが、僅かに顔を上げた。
「感傷的に過ぎぬか」
「いつぞや女官が口ずさんでおりました。私が一番最近に、耳にした歌でしたが。お気に召しませんでしたか」
「いや、いや」
 ボロミアが首を振った。
「堪能した。お前の声によく合う」
「感傷的だと」
「わたしは気に入った。それでは足りぬか?」
 ボロミアがまっすぐに顔を見るので、ファラミアは笑おうとしたが、何故か笑えなかった。
「足りぬなど、あろうはずがございません」
 赤みを帯びて見えるボロミアの額に、ファラミアは手を添えた。肌に触れた手の平が、熱を感じた。訳もなく、触れ続けてはいけないような気がして、ファラミアが手を引こうとしたとき、自分のものではない大きな手が、それを阻んだ。あまつさえ、額に押しつけるよう力を加えられた。その強さに、酔っぱらいとは、かくも容赦が無いものかとファラミアは思わされた。
「そのままに。冷たくて、ひどく心地よい」
 ボロミアが息をついた。彼の体に入った酒のにおいが、ファラミアの鼻をつくようだった。そして、額同様、息も熱を帯びているのが否応無くファラミアには感じられた。ファラミアは、困惑を、顔に出したのかどうか。力が抜けて長椅子に伸びた体を持て余したように、ボロミアがぽつりと呟いた。

91萌えの下なる名無しさん:2004/06/02(水) 01:22
<大将とその兄/しるけ皆無> 3/3

「酔った」
「そのようでございますな」
 ファラミアは、苦しく笑った。
「掛布を寄越すよう、言いつけてはくれぬか。部屋に戻るのが億劫でたまらぬ」
「頼めば飛んでくるでしょうが、側仕えの者も、既に休んでおりましょう」
 体をひねって小さなガラス器に水を取ると、ファラミアはそれをボロミアの口に運んだ。
「飲まれますように。多少は楽になります」
 頭を持ち上げるのさえもはや面倒なのか、ボロミアは差し出された器に手を添えることもなく、水が自分の口に注がれるのを待っていた。
 さて、どちらが子どもなのか、と頬がゆるむのを堪えて、ファラミアは求められるまま、そろそろと器を傾けてやった。ゆっくりと喉を上下させ、器を空っぽにしてしまうと、ボロミアは小さく息を吐いた。水を飲むには不自然な姿勢なため、唇の端から伝ってこぼれた水が作った筋を、ファラミアが指で残さず拭った。くすぐったかったのか、弟に面倒を見られているような状況を自覚して居心地が悪いのか、長椅子の上の体が、多少の身じろぎを見せた。ファラミアは、そろそろ本気でボロミアの体が心配になってきた。
「わたしの寝台でお休みになれば良いでしょう。億劫とはおっしゃいましたが、すぐそこです。手をお貸し致しますよ」
「億劫だ」
呟くのがやっとだとでも言いたげに、短く言葉を漏らすと、ボロミアは体を背もたれの側に向けてしまった。子どもですか、あなたは、と喉元まで出かけた言葉を、ファラミアは飲み込まなければならなかった。
「腰掛けなどで休まれたのでは、わたしの心が休まりません。まさか風邪など召されぬでしょうが、何事においても用心が肝要です」
 言葉に返事はなかったが、ボロミアの首が、こっくりと前に傾くのが見えた。
「お分かりいただけましたか。さあ」
 ファラミアの促しに、答えは依然として返らなかった。さりとて体も動かなかった。さてはと思い至ってファラミアが顔を覗くと、案の定、ボロミアは目を安らかに閉じて、寝息を立てていた。永遠に寝かして差し上げましょうかと、不穏な考えがファラミアの頭をよぎらないではなかったが、別に本気ではない。
「ボロミア」
 念のため、耳元に呼びかけてみた。大きく呼吸をしているが、ぴくりとも反応しない体に、ファラミアは仕方なく立ち上がった。
 申し訳程度の扉で隔てられた続き部屋は、自分の寝室になっていた。ファラミアは、使い慣れたそこに立ち入って、木綿で作られた白く、清潔で気持ちの良い厚手の掛布を選んで寝台から手早くはぎ取った。床に引きずってしまわないよう掛布は腕にたたみ込み、大股で、寝込んでしまった兄の元へファラミアは戻った。眠りを妨げないよう注意深く、その体を掛布で包んだ。場所はともかく、身体を保護するものものなく、ただ寝込むよりは随分良い状態だろうか。気休めかも知れないが、少しだけ気が軽くなったので、ファラミアは、少し口をつけただけで放っておかれたままだった酒を改めて手に取り、一息に空けた。視線を転じると、ただ、心を安んじて睡眠に身を任せるボロミアの姿があった。
 自分が、五つ年上の人間を、まるで子ども扱いしているのに気付かないまま、ファラミアは目を細めると、窮屈そうに足が投げられた長椅子の、彼の足の側に腰掛けた。目を覚まさないことを期待しつつ、意趣返しにと、ボロミアの髪に手を触れて、五本の指の間からさらさらと束をこぼすように梳いた。指の股をくすぐっていくような、その感触が無性に嬉しくて、飽きることなく同じ動作をファラミアは繰り返した。気のせいでなければ、忘れかけていたボロミアのにおいがした。自分の内のどこかが満たされるような気がして、ファラミアは知らず表情を緩め、熱をもった目覚めない体に頭を預けると、ファラミアも目を閉じた。
 
 ボロミアが歌を口ずさむなど滅多にない事だったが、その日からしばらく、一部の幸運な者は、世にも珍しいそれを耳にすることが出来たという。しかし、いつどこで覚えた歌なのか、歌った本人にもまるで分からなかった。ボロミアが何度それを尋ねても、ファラミアはただ笑うばかりだった。


 終わりです(汗) 兄上が子供ですみません。

92萌えの下なる名無しさん:2004/06/02(水) 06:57
>>89-91女神様
じんわり萌えるお話、ありがとうございます!
しるけ無しでも色気有り過ぎてどうにかなりそうですよこの兄弟ってば。
弟の前で酔っ払いで子供の兄上、面倒見のいい弟、素敵です!

新館になってからも次々とすばらしい女神様の降臨、
こんなに幸せでいいんでしょうか。この幸せを、
幸薄い大将本人に少しでも分けてあげたいくらいですw

93萌えの下なる名無しさん:2004/06/02(水) 22:28
>>89-91女神様
兄弟が髪を触り合うのが好き。と申し上げてよろしいでしょうか。
原作では黒髪の執政兄弟。映画では二人とも金髪で、兄はさらさら、
弟はふわふわ(くるくる?)って、キャラクターデザインとしては最強。
萌えろと言わんばかりだと思いますね(w

94萌えの下なる名無しさん:2004/06/03(木) 10:33
>92様、>93様
ご感想ありがとうございます。>89です。
兄弟は萌えツボです。
兄上好きな大将が萌えツボと申しましょうか。
多彩な萌えのどこにあっても、大将には兄上好きでいて欲しいとか。
自分語り入っちゃってもうしわけないです。
外見も性格も、似てないようで似てる…似てるようでやっぱり違う
などという兄弟の絶妙さには、萌えるしかなく。萌えまくりです。

>75様
超遅レスすみません。
夢枕に執政兄弟が立つなんて(違)、真剣にあやかりたいです。
勝手に萌えて、勝手に続きを書いてしまいました。
萌え話ではないのですが、おゆるしいただけるでしょうか…。

===
 ボロミアは、映画の内容を持ち出して切手から話を逸らしたついでに、
計算を続ける努力を放棄した。

>しかし、看板を見ると、どう見ても子供向けのアニメである……

 途端、ボロミアの目が輝いた。
 半端な額面の切手と格闘するファラミアをずずいと押しのけて、
ボロミアはチケット売り場の姐ちゃんと対峙した。
 いぶかるファラミアと姐ちゃんが見守る中、ボロミアは自分の懐に手を突っ込み、
窓口に一枚の紙片を突きだした。
「これで手を打たぬか」
 一見しても金目のものではないと分かるそれを、姐ちゃんは胡散臭げに眺めやった。
 彼女は渋々紙片を引き寄せた。と、その紙片が何であるのかを見て取るや否や、
目にもとまらぬ早業で自分の懐に押し込み、GJ!とばかりに、ウインクと共にボロミアに対し、
親指をぐっと立てて見せた。ボロミアも、同じ動作を返した。
「交渉成立。ゆくぞ」
 事の次第が飲み込めず、訝るファラミアの腕を引っ張って、
ボロミアは意気揚々と映画館に入場を決めた。
 暗がりの中でファラミアが見つけた席に二人で落ち着くと、
ファラミアは、いよいよ疑問を口にした。
「窓口係の豹変ぶりときたら! 
兄上は、一体いかなる魔法をお使いだったのです」
「言葉で説明出来ぬのが、魔法なのだ」
 決して口を割ろうとしないボロミアは、欲望が満たされてご満悦だった。
 ファラミアは引っかかりを拭いきれないものの、目的が達成されたことで納得することにした。
 
 魔法という名の取引に、ボロミアが誰にもいわず秘蔵しているファラミアを被写体とした
写真のコレクションから一枚が使われたことを、幸運にも、
ファラミアは知らない。

===
お目汚し失礼しました(汗)

95萌えの下なる名無しさん:2004/06/03(木) 16:43
>94様
兄君・・・ひどい・・・w
そうまでして見たかった映画って、いったい何だったんでしょうか?爆死版のアレ?
(あの映画に弟君が出ていたらどんなキャラデザだったのかと思うと、背筋が凍ります)

話は全然違いますが、デアゴの弟君フィギュアを入手しました。思ったよりはマシだった
のですが、でもやっぱりちょっと微妙・・・
兄君と並べて飾ってあげようかと思っていましたが、そっちがまた、兄君の中の人スレで
「一升瓶ラッパ呑みの酔っぱらいオヤジ」などと言われていたような代物で・・・
「こんなの兄上じゃない!」「私の弟はもっと美しい!」とか言い合いそうです(泣藁

9675:2004/06/03(木) 22:41
>89-91様
大将にとっては貴重な貴重な
「私だけの兄上」の時間ですね。
二人ともなにもせずともいるだけで色っぽいです。

>94様
いやー、あの後こんな展開になっていたのか。
もっとちゃんと夢を覚えていればよかった。
姐ちゃん、果報者や〜。
それにしても兄上、袖の下が必要な場面に
ぶちあたるたびに、「弟の秘蔵写真」をばらまいて
窮地を切り抜けていたのか。知らなかった。

でも、本当に一体なんのアニメだったんだろう。
藤子アニメ「ファラえもん ボロ太の大冒険」とか……。

97萌えの下なる名無しさん:2004/06/04(金) 00:18
>>96
>藤子アニメ「ファラえもん ボロ太の大冒険」とか……。

ファラえもんはボロ太が「たすけて〜」と叫んでもすぐには
助けてくれなそうだなぁ。w
「一体何故そのような状況になったのか、一度ご自分の胸に
聞いてみてはいかがですか?」とか言って。
でも結局最後にはブツブツ言いつつ助けてくれる。

98萌えの下なる名無しさん:2004/06/04(金) 01:18
>>96-97
で、ではライバルはジャイアラとスネレゴでしょうか((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
ジャイアラに激しく言葉責めされる兄上を見かねて、言葉責めで応戦するファラエモソ。
それを楽しげにヲチするスネレゴ(・∀・)ミンナ ナカヨシダネ!

99萌えの下なる名無しさん:2004/06/04(金) 15:38
割り込みすみません。

>95様
怖いもの見たさでキャラデザだけでも、爆死版大将を拝みたかったです。
爆死版の続きは、もう出ないんでしょうね。残念です。

フィギュアご入手おめでとうございます!
ネットで見た限りではパッケージがよさげなだけに、
肝心のフィギュアが微妙だったというのは惜しいことです。
フィギュアは、小さいサイズの詰め合わせにしてくれれば良いのにと。
小さいものなら、多少作りが微妙でも仕方ないとか思えるので。

>96=74様
失礼千万はたらいた上、ご光臨までいただいて、
かたじけないです。

既に、74様の夢とは別物になり果ててるので、
先に謝罪させてください。
兄上は、外見内面ともに優秀な弟がさぞや自慢なのだろうと。
兄上が出す年賀状は(あれば)、弟の写真です。

さて、兄上は気づいてませんが、弟も兄上写真のコレクションを持っています。
兄上所有のコレクションは、微笑ましい画像ばかりですけども、
弟所有の兄上写真のコレクションは、人には見せられない感じで。
写真は門外不出で、その存在と共に墓の中まで大将が持って行きます。

気になるアニメですけども、
「ファラえもん〜」は、藤子映画の常として、
泣ける良い話に仕上がってと信じてます。
物語は、異世界での出会いと別れとか。<誰とですかと。
別れの辛さに大泣き&落ち込むボロ太を慰めるファラえもんの株は、
天井知らずに上がり放題です(という己の願望です)。
ファラえもんでなければ、
キテレツファラミアとボロ助で、大百科とか。
やなせたかしで、姉妹→兄弟変換して、
「ファランパンナちゃんと、ボロールパンナちゃん」とか。

…言い逃げ。

100萌えの下なる名無しさん:2004/06/04(金) 21:42
・・・そしてエオバーガーキッドと。


・・・・・・言い逃げ。

101萌えの下なる名無しさん:2004/06/05(土) 01:40
WOW!もう100スレですか。
記念に・・・も何にもならないけど、夜更けに小ネタを投下させて頂きます。

<ボロ/ファラ しるけ有り>
直接的描写はありませんが、何しろ近親ネタの上、呆れるほどへぼんなので、
イヤな方にはスルー推奨。1スレ分しかないし。









彼の手はいつも優しい。
その手で、彼は私の手を取り、唇で触れ、
「美しい手だ。本来は剣や弓を持つべき手ではない。平和な時代でさえあれば」
と言う。
「でも、それではあなたのおそばにいられない。生も死も共に、との誓いは果たせない」
私は答える。
彼の手はまた、私の髪に触れ、頬に触れ、そして私の体を辿る。
「ああ、しかし、おまえの部下たちは優秀だ。しっかりした盾となっておまえを護り、おまえの体に忌わしい傷を残さない」
「それは名誉でしょうか」
と、私は言う。
彼の体には、大きさも形も様々な傷痕が数多くある。それは彼の名誉だ。
怖れず怯まず、常に先頭に立って、わが国とそこに住む人々を護ろうとした証し、彼の意志と誇りと愛情の表象。
むしろ敬虔な気持ちで、私はその傷痕のひとつひとつにくちづける。
くぐもった声を上げ、彼は私を押しとどめる。
「おまえは、目に見える傷などつけてはいけない。おまえのいちばん深い傷は、見えない所にあるのだから。そして、それを癒すすべを、私は持たぬのだから」
なぜか、涙が溢れそうになる。こぼれ落ちる前に、彼の唇がそれを吸い取り、そしてまた、私の唇に触れる。
自分の涙の味がするキス。その後の温かい抱擁。
「こうしていて下さるだけでいい・・・」
私の声はかすれる。
「不思議だ」
と、彼は言う。
「おまえは、倫理や道徳を重んじる人間だと思っていた。それなのに、このことについては何のためらいもないのだな。初めから」
そう言われることの方が、私には不思議だった。なぜなら私は、これを人倫にもとる行ないだと考えたことは一度もないからだ。
「あなたはためらっている?今でも?」
「おまえは弟だ」
「そう。だから・・・」

彼の手はいつでも優しい。
その手が、私の髪を撫で、涙を拭い、肩を抱き寄せ、私の体をしっかりと抱きしめてくれる。そして、そのまま寄り添って眠る。
子供の時も今も、そのことに何の変わりがあるだろう。その絆を更に完璧なものにする為に、いったい何のためらいが必要だと言うのか。
罪だと言うなら、確かにこれは二重の罪。しかし、私にとっては二重の祝福。

「いつでも、おまえの望む通りにする」
結局、彼はそう言うのだ。
「おまえの望まぬことは何ひとつしない」
あにうえ、と呼びかけると、彼はそっと首を振った。
「名前を呼べ」
「・・・ボロミア」
より深く、より完璧なキスが、それに応えてくれる。
愛しているか、と問うことさえしない。それは既に自明のことなのだから。
生まれた時から、私がその中にあった愛。私の知るただひとつの愛が、ここにあるのだから。


・・・・・・失礼しました。もう寝ます。

102萌えの下なる名無しさん:2004/06/05(土) 01:54
SSが読みたいとか、叫んでもいいですか。
3日あいてないのに欲求不満なんて、贅沢杉ですか。

>>100

>・・・そしてエオバーガーキッドと。
××バーガーキッドってどんなキャラだったかな、と
ぐぐってみたところが…。はまりすぎて!笑い死ぬかと。

唐突に、SSを貼り付けていきます。
>15にある、セオドレド×ファラミア話の割愛部分にして、
導入部です。出して良いものか迷ったのですが。
手持ちをはき出せば、しるけ部分にも勢いがつくかと。
得体の知れない名無しのお嬢さんが出てきます。
カップリングがないので、登場人物を列記しておきます。
4〜5分割で。

<ファラミア/ローハンの娘さん/ボロミア/セオドレド> 1
















「お前の見識が立派なのは、わたしも感心せざるを得ないところだ。しかし、見聞の方はどうかな」
 と、彼の兄は思ったらしい。本人の前でそう口にしたのだから、間違いはない。余計なお世話だと思いもしない弟は、兄、ボロミアの勧めに従って、彼が言うところの「見聞を広める」ための旅に出立することとなった。
 兄が提案した行き先は、ローハンだった。異を唱える理由はどこにもなかった。ファラミアにとって行き先などどこでも構わないようなものだったし、ローハンならばむしろ願ったりだった。
 デネソールは、ファラミアのローハン行きを快諾した。ボロミアの口添えが功を奏したばかりでなく、執政家の人間が若い内から近隣諸国の統治者の知遇を得ておく事は、ゴンドールにとって有用だという判断からだろうと、ファラミアには思われた。
 旅には、ボロミアが同行することに決まった。ローハンが、ファラミアにとって初訪問の地だということもあり、デネソールの後継者が顔を見せるのは、礼儀にかなったことだった。ただ、執政家の人間が、二人も同時に国を留守にするのは決して望ましい状態だというわけではない。ボロミアの滞在は、最小限にとどめておくことになり、そのためボロミアは、ファラミアを送り届けて翌日には、故国に引き返す形で話が整った。
 ボロミアの同行は、ファラミアにしてみれば嬉しくもあり、申し訳なくもあった。
 そのままを伝えるとボロミアは、わたしもたまにはあの国の駿馬が見たいのだよ、と言って笑った。もう一つ、と、ファラミアが聞いてもいない事をボロミアが付け加えた。セオドレドに会えるからな、とボロミアは機嫌良く言った。セオドレドが、現ローハン国王のセオデン王の世継ぎでボロミアとは同い年である程度の事は、ファラミアも聞き知っていた。セオドレドを話題にするボロミアがあまりに愉快そうだったので、ファラミアの内には、まだ見ぬセオドレドに興味が湧くのだった。
 話が整うと、兄弟は、最小限の荷物と手回りの者を伴って、早速といった体で旅だった。

 到着した兄弟は、ローハン王セオデンの歓待を受け、その日の夜は、兄弟のためにと、身内だけを集めたささやかな宴に招かれた。
 セオデンは、恐縮する兄弟をよそに早々に宴の席を辞していった。年寄りのお守りはつまらないだろうから、と、客人には聞こえぬよう、彼の息子に耳打ちをして。
 残された格好になった若い者三人は、床に敷かれた毛織物の上に車座になって、酒を酌み交わした。セオドレドは、兄弟の従者達もこの場に呼ぶつもりでいたらしかった。ボロミアは、それを遠慮した。戦場を離れて主従が同じ場所で共に飲み食いする習慣は、兄弟の国には無かったので、兵達が緊張するからというのがその理由だった。
 セオドレドのその申し出を、ボロミアから聞かされたファラミアは、これが見聞を広めるということかと、妙なところで感心したものだった。
 セオドレドが、ファラミアの杯に酒を満たしながら、上から下までファラミアの姿を眺め回した。
「ファラミア殿は、まことご立派になられた」
 感慨深げなセオドレドの物言いは、ファラミアには意外に思えた。
「わたしの気のせいでなければ、ですけれども。まるで、セオドレド殿は過去わたしに面識があられたように聞こえるのですが」
「気のせいなどではなく、わたしは、お小さい頃のあなたにお会いしておりますよ」
 セオドレドが、ファラミアの顔を真っ直ぐ見て微笑む。さて、対照的なのがボロミアだった。それまで機嫌良く酔っていたと思えば、今はセオドレドをまるで睨み付けるように見ている。気付かないファラミアではなかった。
「どうしました」
「いや」と、ファラミアに向き直ったボロミアの顔からは、先ほどまでの険は消え、いつもの顔で笑って見せてさえいた。

103102:2004/06/05(土) 02:01
>>101女神様
リロードすれば良かったと、今ほど思ったことはないです。
それ以上に、ご降臨うれしいです。ありがとうございます!
今はまともに感想を書ける気がしないので、お詫びとお礼だけで
失礼させてください。
SSを堪能できる明日が、楽しみです。

104101:2004/06/05(土) 10:22
>102様
こ、こちらこそすみませんでした。よりにもよって、あのへぼ・・・と言うか
へっぽことバッティングだなんてすごい災難に遭わせてしまい、申し訳ありません。
どうか、アレのことは捨ておいて、続きをお書き下さい。セオドレドのお話、私も
楽しみにしておりましたので。

105102:2004/06/05(土) 15:12
>>101=104様

こちらのうっかりにも関わらず、あたたかいお言葉、
ありがとうございます。落ち着きました。そして、楽しみにしていた
SS拝見しました。

萌えの方は、落ち着くどころではないです。
なんでも望むとおりにとか言いながら、自分の満足もしっかり
追っちゃう兄上が、すごく兄上らしくて好きです。
兄上としては、大将の体には、ちょっとも傷がついちゃいけないんですね。
自分は、傷なんて気にしないし、傷だらけのくせに(笑)
部下をいつの間にか「愛する民」ではなくて、弟を守るための盾として
見ちゃってるなんて、弟ばか(萌えワードです)兄上の本領発揮かと!

そして愛する対象には枷なんかないと思うし、そう言い切っちゃう
潔い大将が好きです。大将に大いに同感です。
なんで、あの兄弟はあんなにお互いしか見えないのかと。
なんでと言いつつ、生まれながらなのだろうと決めてかかってるのですが。
そこがまた、萌えポイントだったりします。

いとおしさたっぷりの兄弟をありがとうございます。
本当に、この兄弟ってば、一緒にいるだけでなんといいますか、
あやしげな空気を醸しすぎです。
自分にとっては、兄弟の萌えポイントがこれでもかと凝縮されたSSでした。

それなのに、壊れた萌え方しかできなくて、申し訳ないです。
萌えでお返しできれば良いのですが。力の及ぶ限りやらせていただきます!

106101:2004/06/06(日) 00:39
>105様
ひー、あの、あまりのへぼんさに自分でもろくに読み返していないような代物に
過分なお言葉、痛み入ります(汗
ひと言余計な付け足しをすると、弟君って、アタマはいいかも知れないけど、
或る面でどうしようもなく何かが欠落した人だという印象があるのですよ。
原作、映画、fan-fic(w ごっちゃになった勝手なイメージですけどね・・・

107萌えの下なる名無しさん:2004/06/06(日) 14:24
お引越し後初カキコ&初投稿(絵)です。

>89女神様を拝見し、「二人とも酔ったらどうなるのか」と思ったのが発端ですが、
女神様とこの御兄弟とは別物のような気がしますだ。オラドコデマチガッタダカ(´・ω・`)
http://souko.s4.xrea.com/fellowbbs1/bbsnote.cgi
のNo.182になります。






4コマ目がないのは仕様です。

108萌えの下なる名無しさん:2004/06/06(日) 21:48
>>101=106様

>或る面でどうしようもなく何かが欠落した人

分かる気がします。簡単に分かった気になっちゃいけない事かもしれませんが。
紙一重すれすれといえば、大将に失礼かもですが、でもそう思ってます。
頭のいい人は、一般人とは、どこかずれてるという偏見持ちです。
理屈に合うことだけが、人を動かしてるのではないと。そういうところを
理解しきれないんでは、など。

兄上が言う、いちばん深い見えないところにある傷に実は、興味津々なのですが。
いずれ、突っ込んで書かれるご予定などお持ちでしたら、たいへんうれしいです。
(クレクレ厨は嫌われます)。

>>107女神様

兄弟の酒盛りを絵で見られるなんて、思ってもみず。
興奮してなにがなんだかです。すみません。
イラストの感想をご迷惑かもですが、書かせていただきたく!
そちらはイラストの方に、レスさせてください。

109萌えの下なる名無しさん:2004/06/07(月) 23:17
>101様
兄上は罪の意識にさいなまれながらも光を求め、
弟はおだやかに微笑んだままで
地獄に落ちていくのも厭わない、そんな兄弟でしょうか。
といっても、中つ国に「地獄」の概念があったわけではないのでしょうが。

>102様
セオドレドのファラミア馬鹿一代、
続きを楽しみにしています。

>107様
お好きでなかったら申し訳ないのだけど、
ちょっと坂田靖子さん風のとぼけた雰囲気が
なんともいいですねえ。
兄上、果たしてどんな反応を示すのやら。
(坂田さんには常々、執政家やハセヲさんの優雅な生活
を書いてもらえたらなあ、なんて思っています。)

110萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 18:52
>102のつづきを貼らせてください。
まとまりなくて申し訳ないです。

<ファラミア/ローハンの娘さん/ボロミア/セオドレド> 2















「セオドレド殿。その話は蒸し返さない方が我々のためではないだろうか」
 困惑混じりの表情で、ボロミアはセオドレドを見ていた。
「なぜです。私にとっては思い出すのに心地良い、微笑ましい記憶なのですが」
「あれが微笑ましい」
 ボロミアの提案を、一向に意に介さないセオドレドに対して、ボロミアは、むっつりと黙り込んでしまった。
 話が飲み込めないままに、ファラミアは反目する二人の顔を交互に眺めた。その視線が、セオドレドのものと合った時、セオドレドは僅かに肩をすくめた。
「言ってしまえば何の事はないお話です。私は、ファラミア殿ご生誕の儀に、父の供でゴンドールを訪問させていただいたことがあるのです。ファラミア殿にはご両親と、ボロミア殿が付き添われていたのを記憶しておりますが」
「セオドレド殿」
 まるで言葉を遮るかのように、幾分きつい色を含んだボロミアの低い声が響いた。
「承知しました。この話はこれまでに致しましょう」
 赤子だった自分の記憶にない祝いの席で、ボロミアにとって何か面白くないことがあったに違いない。でなければ、セオドレドが今、聞かせたような事は既にボロミアの口からもたらされていただろう。何か分かるかとファラミアはボロミアの表情に気を付けたが、そこから意味のある感情を読み取ることは、ファラミアにも出来なかった。
「そんなお顔をなさらずとも、私は、ファラミア殿を取るような事はしませんよ」
 セオドレドは、ボロミアの顔を面白そうに覗き込んでいた。ボロミアの機嫌は、ますます怪しくなっていく。また、ボロミアはそれを隠そうともしなかった。
「取るだの取らないなどと、人の弟を掴まえて物のように言われるか」
「何をかいわんやです。誰より、それを理解しているのが私でしょうに。物であれば、見合った対価を払えば得られるものをです」
 セオドレドは、笑った。
 ボロミアは、目に見えて憮然としていた。二人の会話を聞きながら、薄々ではあるけれども、ボロミアにとってのわだかまりが何であるのかが、分かってきたようにファラミアには思えた。だから、ファラミアは自分の兄を抱き締めたい衝動にかられたが、場が場であるだけに、とりあえず忘れることにした。
 それにしても、とファラミアは思う。
 憮然としつつもセオドレドの物言いを許しているところを見ると、ボロミアは、セオドレドをかなり好ましく思っているのだろう、と。

 酒も進み、夜も深まりはじめただろう頃、ふと、ボロミアがセオドレドの耳に何事かを囁いた。受けたセオドレドは神妙に頷いた。そして、ファラミアは、思いもしなかった言葉を、ボロミアの口から聞いた。
「これから、わたしはセオドレド殿と折り入っての話があるので、先に休んでいなさい」
「お話、ですか」
「申し訳ない。お部屋にはお世話をさせていただく者を控えさえておりますゆえ、ご不便のないよう、何なりとその者にお申し付け下さい」
 セオドレドが、ファラミアに頭を下げた。
 突然の事に、決して釈然とはしないものの、年長者二人にそう言われると、ファラミアは承諾せざるを得なかった。
 宴はお開きとなった。兄弟のためにと整えられた一室に、セオドレドはファラミアとボロミアを案内してくれた。
 そこは一見して申し分の無い寝室だった。たっぷりした広さの部屋には、天蓋のついた寝台が二つ見えた。天井に届き、外側に向かった壁面全てに備えられたガラスの入った扉の向こうはテラスになっていて、その向こうは、おそらく庭園である。日の光の元で見たなら、緑がよく映えるだろう。外を眺められる位置には、居心地のよさげなソファと背の低い机の対があり、別の壁面には、物を書くのにいかにも適した、机と椅子が備えられているのだった。そうして、セオドレドは一人の女性を、部屋付きの者だと言って二人に会わせた。
 ボロミアは、もはや不機嫌ではなかった。
「ではファラミア。セオドレド殿のご厚意だ。兄に遠慮なく、休ませていただくよう」
「不調法にて、ご不便をおかけするやも知れませぬが、部屋係も出来るだけの事は致しますゆえ」
「お心遣い、かたじけのうございます」
 ファラミアはセオドレドに一礼し、同い年の二人が、自分の前からどこかに消えるのを見送った。
「何かの困りごとが起こればお呼び立てすることもありましょう。その時にはお願い致します」
 そう告げて、ファラミアは部屋係を下がらせた。

111萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 18:53
<ファラミア/ローハンの娘さん/ボロミア/セオドレド> 3













 初めて訪れた土地の見知らぬ部屋に一人になって、ファラミアは嘆息した。
 テラスに続くガラスのはまった扉の前に立って、すっかり闇に覆われた外の風景と、続いて、空に目を向けた。
 様々のことがありすぎた。
 旅の過程は思い出しても愉快なものだった。見る物、聞く物すべてが物珍しいとまでは行かなかったが、ボロミアの言葉の通りに、書物で見ていた事物を肌で感じることもあったし、書物にないものを多々目にした。道すがら、ボロミアは、自分が見聞きした諸々の事の話を、ファラミアに語った。それらは、ファラミアの興味を満たしてくれるものだった。いざ到着してみても、セオデン王やセオドレドが見せた歓待は思いの外居心地が良く、ファラミアを快くさせた。
 解せないのは、ただ一点だけだった。
 ファラミアは、次の誕生日が来れば二十歳になる。既に、兄の後ろについて回らなければ気が済まない子供ではなくなっているとはいえ、ボロミアがここにきて、自分を一人放っておくのに不思議な感じが拭えなかった。なぜなら、この年齢になってなお、ボロミアは、何かにつけてファラミアの世話を焼きたがっていたからである。そもそも、この旅にファラミアが出ることになったのも、ボロミアの意向といえば意向だったはずである。
 敢えて付け加えるならば、ボロミアが自分を一人にした割に、己だけはやたらに楽しげな様子だったのが、ファラミアにとってあまり愉快なことではなかった。ファラミアは、ここに来る前から、セオドレドに会うのを楽しみにしていたボロミアを思い出し、自分を納得させるしかなかった。数日の逗留を許されているファラミアとは違い、ボロミアは明日の朝にはここを発つ身だ。別れれば、二人が次に会うのはいつとも知れない。だから、時間は惜しいのだろう。
 それにしても、だ。
 理屈で理解したところで、心に生じた引っかかりが消えるわけではなかった。
 我ながらつまらない事ばかり考えている、と一人ごちたファラミアは、ボロミアの言う通りに、さっさと休んでしまうことに心を決めた。
 丈高いローハンの者に合わせているに違いなく、二つ並んだ寝台は、並のゴンドールの者よりよく育った兄弟にとっても十分な大きさがあった。その真っ白な上掛けに、客人のために用意された清潔そうな部屋着がきちんとたたまれて置かれていた。
 ファラミアは、それを有り難く借りることにして、のろのろと着替えると、ベッドの一つに腰掛けた。寝ようとは決めたが、眠いわけではなかった。
 すると、扉を叩く音がした。ボロミアが帰ってきたのかも知れない。などという考えがファラミアの頭をかすめた。
 ファラミアは立ち上がり、自分で扉を開けた。

112萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 18:56
<ファラミア/ローハンの娘さん> 4
大将に女性が絡みます。苦手な方はご注意願います。












 しかし、開いた扉の向こうに立っていたのは、偉丈夫ではなかった。
 夜半の訪問者は、二人いた。一人は、既に見知った部屋係だった。その彼女が、まだ少女といっても差し支えないだろう年齢に見える女性を傍らに連れていた。
 嫌な感じがした。
 これから休むところだと告げようとするファラミアの機先を制して少女が口を開いたので、ファラミアは口を挟む機会を失った。少女は、ファラミアに深々と頭を下げた。
「遠方より、ようこそいらっしゃいました。大切なお客様が、ご退屈なさらぬようお相手を務めさせていただきますよう、言いつかって参りました」
 少女の言葉が終わると、部屋係もお辞儀をして見せた。
 今となっては、疑問は何もなかった。
 ボロミアは、是非ともファラミアをこの部屋に一人にしたかったに違いなかった。だから、ボロミアはセオドレドと消えたのだ。そうすると、目の前の少女はボロミアがセオドレドに頼んで寄越させたのであろう。そう考えれば、少なくとも辻褄は合う。
 ありがた迷惑な話ではあったが、恐らくはファラミアのためにと、お膳立てしてくれた年長者二人を、無碍にすることなど出来ない相談だった。何せ一人は自分の兄であり、もう一人は一国の世継ぎかつ、自分がしばらく世話になる相手である。
「お心遣い、恐れ入ります」
 ファラミアが少女に片手を差し出した。少女は、その手に戸惑いを隠せないままの視線を落とし、それから、彼女の隣に控えた部屋係の顔を仰いだ。部屋係の女性の目配せを受けた少女は、差し出された手に、おずおずといった風情で己の手を重ねた。少女は、働き者を思い出させる手をしていた。
「それでは、お休みなさいませ。ご用がありましたら、いつでも隣にお声がけを」
 部屋係は、少女を客の寝室に残して、一礼すると部屋を出た。しばらくは聞こえていた足音も、やがてやんだ。
 取り繕いようもなく落ちつかなげな少女を、ファラミアは部屋のソファに導いて座らせた。
 自分はといえば、机に備え付けられた椅子をソファの傍らに運んで来、そこに腰を下ろした。見上げてはくるものの、どこに視点を定めて良いのか迷っているらしく、彷徨っている少女の視線がファラミアの気持ちを暗くさせた。
 少女が身につけている上等の薄衣は、蝋燭の薄明かりの下でも、少女に似合っているように見えた。けれども、それを少女が決して着慣れている様子はなく、少女からふわりとのぼる甘やかな香りすら、少女には馴染んでいないようだった。少女の、膝の上にきちんと揃えられた両手には、心なしか不自然な力が入りすぎているのが見て取れて、ファラミアはどうにも痛ましい気持ちに襲われた。しかし、それら一切を、ファラミアはおくびにも出さなかった。
「わたしは、まだあなたに名乗っていなかったね。わたしは、ファラミアと申します。数日の間、こちらにお世話になる者です。どうぞ、よろしく」
 目を合わせて語りかけると、少女が口を開こうとした。が、ファラミアは敢えて言葉を繋いだ。
「あなたの名前を、わたしは知らない方が良いかと思う。理由は聞かないでいただきたいのだが。よろしいですか」
 なるべく穏やかに、少女に告げた。
「わたくしは−−」
 細く、上ずった声が少女の口から漏らされた。
「わたくしは、わたくしのお役目を言いつかっております。わたくしは、ファラミア様のお言葉に、否はもうしあげません」
 言うと、唇を引き結んだ。
 どうあって、明らかにそれを生業にしているわけではない様子の彼女が、ここに来るよう定められたのか。ファラミアは、心中に去来する様々を押して微笑んだ。

113萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 18:58
<ファラミア/ローハンの娘さん> 5
大将に女性が絡みます。苦手な方はご注意願います。














「あなたは、物語はお好きですか。歌は、いかがです?」
 伏し目がちだった少女が、大きな瞳を更に大きく見開いて、ファラミアの顔をまじまじと見つめた。
「わたしは、それらを好んでおります。ここは、わたしにとっては初めて訪れた土地です。わたしの知らない伝承や、物語をお聞かせいただければ、大いに役立ちますし、慰めになるのですが」
 少女の喉から、戸惑いの色を含んだ息がかすかに漏れる。
「立派なお国から来られた、立派なお客さまをご満足させるようなものを、わたくしが、お聞かせできるとお思いでしょうか」
「立派、などとおっしゃる」
 ファラミアは、緩く首を振った。
「わたしが思うところによれば、人にとって本当に価値あるものとは、ひとびとが、その暮らしのうちに持っているものです。わたしは、書物に親しみますけれども、ひとびとが経験しているものがあってこそ、それらが価値あるものとして現れるのですよ。何より、書物では得られないものを見聞するために、わたしはこちらに参ったのです」
 ファラミアの言葉に、少女は、目を瞬かせた。
「わたくし、そのようにおっしゃる方には、はじめてお目にかかりました。失礼でなければ、わたくしが存じているものごとを、お話出来ると思います」
 初めて、少女の顔に明るさを見て、ファラミアは目を細めた。
「それは、わたしにとって、ありがたい言葉です。あなたは、わたしを喜ばせてくれる」
 目に見えて恐縮する少女を前に、ファラミアは笑みを絶やさない。
「お話とは素晴らしいものですが、その前にもっと、楽しくなることがあると思いますよ。何か、飲み物をお願いしてきましょう。甘い菓子が、お好みでないなんて事は無いでしょうね?」
 何かを言いつのろうとする少女を、手でやんわりと制して、ファラミアは椅子を立った。「あなたが、あなたが言いつかったことに忠実であろうとするように、わたしのわがままを叶えるよう言いつかってる方もおられるのですよ」
 そうして、ファラミアは部屋を出て部屋係の詰めている隣室に向かった。
 ファラミアが一人で部屋に戻ってからほどなくして、部屋には、葡萄酒と色とりどりの菓子が乗った盆が運ばれてきた。
 ソファと対になった台に盆を置いて係の者が部屋を辞すと、残った二人は、盆を覗き込んだ。ファラミアが機嫌良さそうに笑うのにつられたのか、少女も自然に笑みを見せるようになっていた。
「さて、この素敵な葡萄酒を、わたしにいただけますか」
 ファラミアが差し出したグラスを、少女は慣れない手つきながら葡萄酒で満たした。
「そして、わたしは、あなたに差し上げましょう」
 カップの一つに少女の手を添えさせ、ファラミアが葡萄酒を注いでやった。ファラミアの方から、軽くカップ同士の縁を触れ合わせ、葡萄酒を一口飲み下す。ファラミアが頼んだとおりに、甘い葡萄酒だった。
「口を潤して、お腹がくちくならなければね。弾む話も弾まないというものです」
 そして、共犯者の顔で少女の顔を見、笑った。

 夜がとっぷりと更けて、葡萄酒の瓶が空になった頃、少女のまぶたが重くなってきたようにファラミアには見えた。それでも、睡魔と必死に戦っているらしい。少女が、はっきりと目を閉じることは無かった。これが潮時だろうとファラミアは思った。

114萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 19:00
<ファラミア/ローハンの娘さん> 6
大将に女性が絡みます。苦手な方はご注意願います。















「さて。わたしは、もう休みますが」
 ファラミアの一言に、少女がはじかれたように顔を上げた。恐らくは飲みつけていない酒を、それなりに口にしたため、その顔は赤く染まって見えた。
「幸い、寝台は二つあります」
 ファラミアは、兄弟に一つずつ用意された寝台を視線で示し、少女に向き直った。
「誤解しないでいただきたいのは、わたしがこう言うのは、あなたに、同じ寝台に入りたくないような、何かの欠点があるからではありません。あなたが語ってくれたお話に、わたしは満足させていただきました。ですから、あなたは、十分に言いつかったという役目を果たしている、とわたしは思います。そして、あなたは、わたしの言う通りに、わたしの使う隣の寝台に入って、休まなければなりません。なぜなら、あなたは、わたしの言葉に、否とは言えないはずですからね」
 噛んで含めるように、そんなに年の変わらないように見える少女に対して、ゆっくりと話して聞かせる。
「お言葉のままに、いたします」
「上出来です」
 今すぐにでも眠り込んでしまいたいくらいなのだろう、気丈に振る舞おうとしてはいるものの、少女の口調はおぼつかなくなっていた。足下も怪しいものだと、ファラミアは伺いを立てることなく少女の手を取り、体に気を付けながら寝台に連れて行った。それでもいくぶんか、ためらいを見せる少女を促し、布団に潜り込むのを確かめてから、ファラミアは少女にお休みを言った。
 そうして、自分の寝台に寝転がると、明日は兄が部屋に来るだろうから、その前に起き出さねばと心を決めて、ファラミアも眠りに落ちた。

 翌朝は、思っていたよりも早く、まだ外がほの明るくなりかけた頃に目が覚めた。
 隣の寝台を覗くと、少女は眠っているようだった。
 寝台から起き出し、少女からは死角になる位置を選んで手早く着替えた。部屋係が詰めているはずの、隣の部屋を訪れて、昨夜に飲食したものの片づけと、湯を頼み、居住まいを整える。
「まだ、お休みになっている方がおられるのでね。ごくお静かにお願いいたしますよ」
 と、念を押すことも忘れなかった。
 すっかり支度が調うと、少しばかりの心の痛みには目をつむり、夜が明けきらないうちにと少女に目覚めを促した。少女は、目を開けた。夢の中をたゆたっているようで、像を結んでいないだろう視線だけがファラミアに向けられていた。彼女の頭が、状況を把握するのを待って、ファラミアはその顔に微笑みかけた。
「お早うございます」
 声を潜め、囁くように告げる。目覚めた少女は、寝台から跳ね起きた。
「お早うございます。このような姿はお目にかけて良いものではありませんのに。申し訳ございません」
 寝台を立ってうなだれる少女の、寝乱れて皺の寄った着衣を、どこから見ても立派になるようにファラミアは整えてやった。
「あなたは、あなたに定められたおつとめを十分に果たされましたよ。わたしは、あなたが、わたしを大変満足させてくださったと、しかるべき方にお伝えさせていただきましょう。ただ、今は、ご自分の場所に戻らなければなりません。じきに、わたしの連れが、この部屋に来るはずですが、あなたが彼と顔を合わせるのは、わたしの望むところではありませんので」
「おっしゃる通りに致します」
 少女は、彼女なりの礼を取ると、早々にファラミアの前を辞そうとした。
「待ちなさい」
 声をかけられた少女は立ち止まり、踵を返してファラミアの元に歩み寄った。次の言葉を待つような表情を浮かべた少女の額に、ファラミアは唇を押し当てた。どう反応してよいものか分からないのだろう。動きを止めてしまった少女に、ファラミアは穏やかに微笑んだ。
「これは、わたしの国での挨拶で、感謝のしるしです。わたしは、あなたが、わたしのために大変よくつとめてくれたと思いますので。さあ、お隣のお部屋に行けば、あなたはきっと安心しますね」

115萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 19:03
<ファラミア/ボロミア> 7 【ラスト】
大将と兄上。














 昨夜に、少女を招き入れたときのようにファラミアは手を差し出した。今度は、少女は間違えなかった。重ねられた手を引いて、ファラミアは彼女を扉まで見送った。
 一人になったファラミアは、ソファに体を投げ出した。備えられていた水差しから自分でグラスに水を取り、一息にあおった。朝は少しずつ近づいてきてはいたものの、人々の活動が始まる時間にはしばらくあるようで、外からの物音はごく僅かに過ぎない。二度寝というのも業腹ではあるしと、ファラミアは天井を振り仰ぎ、目を閉じた。

 朝の日差しが強くなる前に、ボロミアは、自分たちにとあてがわれた部屋に戻ってきた。扉を一応叩いてみるものの、初めから返事は期待してはいないようで、ファラミアの声が返るのを待つこともなく、扉を開いて体を部屋に滑り込ませた。
 まず様子を窺った寝台には誰の気配もないと見て初めて、ボロミアは部屋の中を見回した。
「何をなさってるんですか」
 ソファに身を投げていたファラミアは、座り直してボロミアを見ていた。
「ファラミア」
 探していた人物を見つけると、ボロミアは大股に歩み寄り、ファラミアの隣、体が触れ合うほどの近くに座って、ファラミアの顔を覗き込むように見た。
「朝が早すぎるようだが。何か不都合でもあったか」
 怪訝な顔、というより、何かを心配しているかのようなボロミアに、ファラミアは笑って見せた。
「ありません。昨夜は、わたしなりに、大いに楽しませていただきました」
 何を楽しんだとは、ファラミアは言わなかった。
「そうか」
 あからさまにボロミアがほっとした顔を見せたので、ファラミアは大きく息をついた。
「今日はもう、発たれるのですね」
「ああ。王へのご挨拶が叶い次第、発つ」
「…お気を付けて」
 少しばかり力の無いファラミアの声をどう取ったのか、ボロミアは、いつも見せる笑顔で力強く言った。
「続く滞在の事は、セオドレド殿にくれぐれもとお願いしてある。わたしがいなくても、何ら不安に思うことは無い」
「何もかもお世話をかけます。ありがとうございます。…今は、少し休みます」
 閉じた目はそのまま、ファラミアは呟いた。
「疲れたか」
「そうですね。昨夜は、いささか夜更かしが過ぎました」
「たまには良いとも」
 力のない声の調子に、ボロミアは弟の顔を覗き込むと、寝るのに具合が良くなるよう、体の位置を変えてやる。
「食事には、起こして下さいよ」
「兄を信頼せぬか」
 そう言って、ボロミアは笑った。笑うと、それにつられて体が揺れるので、触れ合ったファラミアの体も心地良く揺さぶられた。
 今日の陽が、いつもよりも寝坊であれば良いのに、とファラミアは心の中だけで呟き、昨夜は自分の元に無かった体温を、体の深くにまで感じながらまどろみの中に身を委ねた。

116>102,>110-115:2004/06/08(火) 19:10
スレを、これでもかと消費してすみません。
板の趣旨を考えると、申し訳なさ倍増です。

次なるお目汚しは、
セオドレド×ファラミアにて、【完】としたいです。

117萌えの下なる名無しさん:2004/06/10(木) 10:05
>>102,>>110-115女神様
続きが読めて嬉しかったです。これがあのセオ/ファラにつながるのですね。
いたいけな娘さんを気遣う大将、素敵です。自分だって二十歳そこそこなのに。
しかし、この大人で紳士な人が、セオドレドにはされるがままになってしまう
のですか!?(w
と言う訳で、そちらの続きもよろしくお願いいたします。

>>107女神様
兄弟のほのぼのバカップルぶり・・・好きです(w

しかし>109様。坂田さんは指輪があまりお好きでない、どころかそもそも
読んでいないという話を、以前エッセイで書かれていた記憶があります。
あの方の絵でホビットたちとか見てみたい気はするのですけどね・・・

118萌えの下なる名無しさん:2004/06/11(金) 10:05
>109様、>117様
お声をかけてくださってありがとうございます。
切りの良いところまで。とりあえず、2分割で。
なんかツッコミどころ満載ですが、ご勘弁ねがいたく。

>>30の続き
<セオドレド×ファラミア/キス程度> 1















 寝台が置かれている側は想像していたよりも、広く感じられた。
 セオドレドに促されて、ファラミアは寝台の縁に腰掛けた。部屋の主はとえいえば、寝台の脇にしつらえられた飾り棚に向かい合っており、何かを手に取り上げているように見えた。
「広いですな」
 敷布に片手を這わせ、柔らかく織られた上等の木綿が持つ手触りを心地良く確かめながら、目にしたままをファラミアは告げ、自分が履いているブーツを片方ずつ、足から抜いて、揃えると自分が座っている物の下に潜り込ませ、腰かけるだけではなく体の全体を寝台に上げた。
 自分の体のせいではない重みで、寝台が沈み込む感じがした。顔を向けると、セオドレドが隣に同じく腰を下ろし、かれの体の陰になる側に、棚から取ったものだろう何かを、寝台の隅へと手から離しているところだった。
 自分に見える横顔からは何も読めなかった。
 ファラミアは、寝台の隅々に視線を投げてから、セオドレドに向き直った。
「この広さなら、馬と一緒にでも寝られそうですな」
 セオドレドは、燭台の明かりの下でも分かる、世にも奇妙な顔をした。
「さすがに馬は寝台に上げませんが」
「冗談です」
 笑って良いのかどうかセオドレドが迷っているように見えたので、黙って寝台の縁で膝を抱えたところに、遠慮無しな体がファラミアの体に寄り添わせされた。肩と肩、腕と腕、それに腰が触れ合うと、否応なくその存在を突きつけられている気分に囚われた。それを、手っ取り早く自分の内に馴致しようではないかと、その肩口に顔を寄せて意識的に大きく呼吸をすると、嗅ぎ慣れないにおいが体を満たしてくるようだった。
 土地が変われば、空気の匂いが変わると聞いたことがあった。確かに、この国に近づくにつれ、故国と違う空気が周囲に濃くなっていくのは感じようとせずとも、感じられた。その、ゴンドールにあるのとはまったく異質な匂いを、この国の世継ぎもまた身の内に持っていた。馴染みの無いそのにおいに、好意を抱くか嫌悪になるかは、まだいずれにも振れるだろう事だったものの、これから決まるのだろうそれがどちらになるのかは、ファラミアにとっては間違いなくセオドレド次第だった。
 ファラミアの後ろ頭の髪に手が回されてきて、自分の頬に自然と落ちてくる髪が、長い指で耳の後ろに取りのけられたのが分かった。暖かい手と指が頬を這っていき、ゆるくうねりのある髪を、指の間に髪の細い束を通すようにして、横顔から後頭部にかけて梳き、ファラミアの耳にかけた。それが、くすぐったくて−−いや、まるで誰かがいつも自分に対してそう接してくるように、幼子扱いされているように感じられて−−ファラミアは声を殺して笑った。セオドレドはといえば、そんなファラミアに目を細くしてさえいたので、急に自分の行いが、状況に相応しくないような気がして、早々に笑いを引っ込めることが出来た。
 ややあって、セオドレドが口を開いた。
「お互いの、好きなものの話をしましょう」
 セオドレドの提案に、ファラミアが顔を上げると、靴を自分の足から取りのけながら、セオドレドは言葉を足した。
「ただし若干、趣向を加えてです」
 靴を脱いでしまい、ファラミアに体を向かい合わせて、寝台の上へと座り直したセオドレドの方へ、ファラミアは、抱えていた膝から腕をほどいて身を乗り出した。
「それはなかなかに面白そうです。して、いかなる」
「一言につき、一つの口づけを」
 ファラミアは実のところ面食らったが、おくびにも出さなかった。そうしたことは、得意だと自認していた。何も好きこのんで身につけたわけではなく、さもなくば日々がままならぬ事だと自ら知れたときに、体得を選択せざるを得なかった技量だった。
 セオドレドの狙いが言葉それ自体なのか、それに付随する接触なのか判じかねたが、おそらくは両方だろうと思い至って、随分と欲張りな話ではないかと、半ば呆れ、半ば感心させられた。ファラミアの興味を強く引いたのは、行為でも言葉でもなく、セオドレドの出方だったが。

119萌えの下なる名無しさん:2004/06/11(金) 10:07
<セオドレド×ファラミア/キス程度> 2
 2分割予定が3分割に。すみません。















「では、言いだした方からお願い致しましょうか」
「願ったりです。では、馬と」
 少しの迷いもなく返ってきた答えが、いかにも名馬の産地と名高い国の世継ぎらし過ぎて、ファラミアは、この五つ年上の丈高い青年を、自分の兄にそうしているように、抱き締めたくなったのだが、衝動は叶わずに消えた。ファラミアが行動を起こす前に、唇をセオドレドのそれに触れられたからだった。かすめるように一瞬だけで離れた口づけとも呼べないような感触に、ファラミアは堪えきれず、肩を震わせて笑った。子供の挨拶でも、もう少しはまともに成されるものではなかったか。一度に全てを白日の下に晒さず、探られているのだという可能性は、経験が深いとも言えず、加えてそうした趣味も持たないファラミアには、さっぱり浮かばなかった。
「わたしの番ですな」
 真っ先に頭に去来したものを、ファラミアは口にしなかった。不審げな顔がファラミアを見ていたのに気付いたけれども、何食わぬ顔で言葉を継いだ。
「白の塔…は、ミナス=ティリスに来られたのならご存じでしょうが」
 説明を加えるつもりもなく、自分に与えられたのと同じだけの、軽い口づけを、ファラミアはセオドレドの唇に与えた。
 触れられるのと自ら触れるのと、どちらも同じくすぐったさをファラミアの内に沸き上がらせた。理由は分かっていた。やはり彼はどこか、自分の兄を思い出させるのだ。セオドレドではなく自分自身に責のあるそれが、ファラミアにはひどく恨めしかった。
「他には。馬が、すべてでしょうか」
「まさか。わが父もです」
 言葉が終わると、柔らかい感触がファラミアの唇を包んだ。触れ合わされるだけにせよ、初めのものよりも口づけらしい口づけに、ファラミアは目を閉じた。まるみを帯びた弾力を、お互いにいい加減味わって、それらは離れた。
「わたしは、歌が好きですよ」
 自分の物ではない唇の感触が消えぬうちに、セオドレドのそれに口唇を触れ合わせると、セオドレドの舌が歯に阻まれて行き先を失うまで、唇を割って口腔に入って来、並びの良いファラミアの歯に舌を触れさせながら、唇の狭間を急がず慌てず、左右にゆっくりと撫でていった。唾液に滑らされる舌が心地悪いわけではなかったが、いつ終わるとも知れない気がして、自分の舌先を伸ばして唇に挟まれた舌をつつくと、顔を触れるか触れないか程度にだけ離して、セオドレドが笑った。
「可愛らしい従兄弟たちも好きです」
 言葉を交わす暇も惜しいとでも言いたげなセオドレドから、唇を包み込むように、ファラミアは深く口づけられた。緩やかに何度か唇を吸われたので、自ら上下に唇を薄く割った。すかさず、舌が歯の上下の間に差し出され、上顎の内側をなぞってくる。緩い動きを止めない舌の裏側に、自分の舌先を触れさせると、舌縁を辿るようにセオドレドのそれが触れてきたと思うと、舌を触れ合わせたまま口を吸われた。さて、どうしたものかと考えている内に、ファラミアは開放され、一息入れることが出来た。
「書物も好きです」
 ファラミアは喉の奥で笑った。セオドレドは訝っているようだったが、人物を挙げ始めたセオドレドに対して、自分は物ばかりを口にしているのが可笑しかったのだとは、告げなかった。そうして、セオドレドの唇に唇を触れた。申し合わせていたわけでもないのに、どちらともなく舌がお互いの口腔を求めた。それまでよりもはっきりと舌が触れ合わされたせいだろう、セオドレド自身という他には、何にも喩えようがない味と、匂いがした。まだ、体に馴染んでいるわけではないけれども、決して不快ではない味が口中に広がり、鼻を抜ける。

120萌えの下なる名無しさん:2004/06/11(金) 10:08
<セオドレド×ファラミア/キス程度> 3 【とりあえずラスト】















 喉を小さく上下させて、口腔に溢れ始めた唾液を、ファラミアは少しずつ喉奥に流した。触れ合っていた舌が引かれたと思うと、再び合わさったときには、舌と共に唾液がファラミアの口中に、ねっとりと入り込んできた。思わず目を見開き、舌を使って、彼のものだか自分のだか、既に判然としないものではあったが、それでもセオドレドのものはセオドレドにと、自分の口腔にある舌に思うだけの唾液を擦りつけた。お互いの舌の間で、なめらかにそれらが混ざり合うと、もう一度喉を使う必要に迫られて、ファラミアは舌を引いた。
 セオドレドが閉じた口の内側で舌を口腔に擦りつけているのが、外側からから様子で分かった。
「ファラミア殿は行為を楽しんだ事が無いとおっしゃいましたが」
 何を思ったのか急に真顔で言われたことに、ファラミアはつい苦く笑った。
「自分が望みもしない相手と、何事であれ、楽しめるものですか」
「さすれば、今ある私の心中は、ご理解いただけましょう」
 締まった腕が背に伸ばされたと思うと、体を抱き込んできた。正直な人柄だと、ファラミアは初めて、彼の内にあるいくばくかを見た気がした。自分とて嘘はつかないが、しかし、それは正直さとは異なる性質のものだと思う。自分の内に無いものは、時にひどく好ましいものだ。
 自分の物よりも広い背にファラミアは迷わず腕を回し、その必要が無いほど体が触れ合っているにもかかわらず自分の体を、セオドレドのそれに寄せた。ぼんやりとした温かさを、体が味わっていた。このまま眠っても良いくらいだという思いを、ファラミアは打ち消した。それでは、せっかくの機会が不意になってしまうではないか。
「続けましょう」
「ファラミア殿ですよ」
「わたしは、セオドレド殿がおっしゃる番だと思いましたが」
 ファラミアにも見覚えのある顔を、セオドレドは見せた。先には、冗談を言ったときだったか。
「私は、ファラミア殿が好きですと、申し上げているのです」
 即答されて、ファラミアはセオドレドの顔を、それまでになくまじまじと見つめた。何故自分なのかと問うても仕方がない事は、ファラミアは既に知っていた。セオドレドは、言うに決まっている。ファラミアがファラミアだからだと。永遠に何の理解の助けにもなりそうもない言葉を、二度聞く気には到底なれなかった。

121118-120:2004/06/11(金) 10:11
色々と、のろくてすみません。まだ終わりません。
大将へんな人でごめんなさい。

女神様のご光臨、皆様の萌え話お願いしたいです。

122萌えの下なる名無しさん:2004/06/11(金) 23:52
>>118-120
お待ちしてました女神様!>>22の続きが読めて嬉しいです・・!
大将がなんだかとてもかわいらしいー。いったいどうなっちゃうの!
セオドレドのゆったりした攻め口がまたたまらない!くらくらしちゃいます・・。

123萌えの下なる名無しさん:2004/06/12(土) 12:19
>>118-120女神様
自分も相手のこともけっこう冷静に観察しつつ、流されていく大将・・・
あああ・・・

124萌えの下なる名無しさん:2004/06/12(土) 20:15
>122様、>123様
のろくさい話にお付き合いくださって、本当にありがとうございます。
なんとお礼を言って良いのかです。

>>120の続きなのですが。今回3分割で。
まだ終わらないのがなんとも申し訳ない限りです。

<セオドレド×ファラミア/脱衣程度)> 1 












 決して小柄とはいえない青年二人が体を伸ばしてなお、十分な広さを持った寝台の上で、二人は互いに体のぬくもりを与え、与えられていた。唇を触れ合わせながら、セオドレドの手に着衣の上から胸を探られると、喉の奥からくぐもった音が、どうしようもなく漏れた。今、セオドレドが要求している物を自覚したファラミアは、手を伸ばし、自分のものではなくセオドレドが着ているものを剥ごうとした。どうせ、お互いいつまでも着衣ではいないのだ。それならば、自分のものを自分で脱ぐという誰憚ることのない当たり前の行為よりは、セオドレドを脱衣させるという、二度とその機会が巡ってこないかも知れない行為を選ぶ方が、よほど有意義ではないか。しかし、蝋燭が投げかける不確かな明かりと自分の手の感触だけを頼りに、見慣れぬローハンの衣装を自分の意のままにすることは、さしものファラミアにも簡単ではなかったので、ファラミア自身に、そのつもりは無かったが、むきになっていたに違いない。
「ファラミア殿、ファラミア殿」
 笑いながら、セオドレドにファラミアの手は押しとどめられた。セオドレドといえば、片手をファラミアの服の合わせにちゃっかりと触れて、迷うことなく着衣をほどいていくのだから、たまったものではなかった。こんな些細な事でさえ、自分は、彼と比べても何も知らないのだと、ファラミアは思い知らされたような気がした。
 いい加減衣服を緩まされてしまうと、普段は確かに体を守るのに役立つ衣類も、鬱陶しく体の邪魔をしているだけに思えてくるのが不思議だった。そうしたファラミアの心中を知ってか知らずか、セオドレドはファラミアの腕を自分の背からやんわりと取りのけて、ファラミアが申し訳程度に引っかけているだけになった服を、ファラミアの体から、寝台の端っこに移した。
 ファラミアも逆らうつもりはないどころか、セオドレドの手を助けるために腕を伸ばしたり腰を持ち上げたりしたのだが、セオドレドの視線が、飾りたてる物が何もない自分の体を、何か眩しいものでも前にしているかのような目で隈なく見つめていくので、さすがに落ち着かない気分に襲われた。
 それではと、手をセオドレドの衣服にかけてみたものの、いっそのこと布切れを裂いてしまえれば話が早い上に、楽だろうにという埒もない思いを味わっただけだった。ほとんど何も成し得なかった手を、セオドレドがやんわりと掴んで、その衣服を留めている部分に導いたおかげで、ようやく目的が果たされることになったときには、無力感に溜息がつい漏れた。セオドレドはファラミアの手だけに任せず、自分で服を脱ぎ捨てるとファラミアの背を、両腕で引き寄せた。
 着衣で触れた時とはまるで比べ物にならない身体の、圧倒されるような存在感は、いつになくファラミアの気分を高揚させた。
 立てられたセオドレドの両膝の間に体を置く格好になって初めて、ファラミアはセオドレドの身体を自分のごく間近に見た。片手をすぐ目の前の肩に預けて膝立ちになると、大きな手に腰を支えようとでも言うのか、両腕に掴まれた。特段害は無いだろうと、任せ切りにして、セオドレドが自分にそうしたように、体の隅々まで見逃すまいと視線を落とし、鍛えられた筋肉の隆起の一つ一つの谷を、指で辿った。
 戦場でさぞかし役に立つだろう締まった体は、目にも肌にも心地良いとファラミアは思う。誰が植え付けた価値観だか、と、答えを知りすぎるほど知っている自分を、ファラミアは自分自身からはぐらかした。
 無骨であるのに滑らかさを持つ裸の皮膚は、ファラミアの意のままに差し出され、二度ほど顔を見ただけの他人に触れさせて、いかなるわだかまりを持つ様子も無い。
 決して愛撫ではなく、あくまで鑑賞でしかないファラミアの行為を、セオドレドは楽しんでさえいるようにファラミアには感じられた。むしろ、気にかけられているのはファラミアの方だった。
「面白いのですか」
 見事としか表現の仕様がない造形に、つい夢中になっていたファラミアだったが、頷く事で応える。
 そのとき、胸にちくりとした痛みが走った。

125萌えの下なる名無しさん:2004/06/12(土) 20:18
<セオドレド×ファラミア/触れ合う程度> 2

















 体の内のものなのか、外のものなのか、いずれにも覚えがあるファラミアは、彼には珍しく混乱した。ファラミアには自由に己の体を触れさせながら、セオドレドは、ファラミアの胸に顔を寄せ、その皮膚のごく僅かな面積を、ひどく彼の唇に吸った。痛みは一つに止まらなかった。少しずつ場所を変えて繰り返し与えられる、体のどこであるともなく痺れさせるような疼痛の連続に、姿勢を保持するのが耐え難くなり、膝立ちで持ち上げられていた腰を、自分の足に落として正座する格好になった。それでも、まだファラミアが求める、落ち着くという事態が叶わないと知れると、意識せずとも両腕を自分の体の後方に引き、寝台について体を支える助けとした。
 腰を抱えるようにして持ち上げる力を感じた。と思うと、後ろから片足にだけ膝裏にセオドレドの腕が入り込んで、足をセオドレドの肩近くまで高くすくい上げられた。突然のことに新たに平衡を得る暇もなく体は、腕の支えでは足りず背から寝台に倒れ込んだ。何事を理解する間も与えられぬまま、片足を折り曲げて持ち上げられ寝台に仰向かされたファラミアの体を、セオドレドは自分の体の下に抱き込んでいた。
 腕に抱えられた片方の足をセオドレドの肩に乗せられて、普段にない自分の体の形が余りにも無防備過ぎはしないかと、ファラミアを落ち着かない気分にさせた。
「苦しくは、ありませんか」
 セオドレドが顔を覗き込んだので、目と目が合った。幸い、鍛錬の成果もあり体が硬い方では無かったので、取らされた姿勢によって体が辛いということはなかった。だが、苦しくなければそれで万事、事も無しとはいかない。
「奇妙な感じがします」
 ファラミアの答えに、問いかけた者は笑って見せただけだった。そうして、何の予告もなくファラミアに心づもりもさせず、ファラミアの一番敏感な部分に指を触れさせてきた。
 息を飲んだ弾みに、喉が高く鳴ったのが、自分の発した音ながら−−あるいは、そのためか、ひどく耳についた。おそらく、身体を合わせているセオドレドにも聞かれているだろう。だから、ファラミアは当然のこととして、謝罪の言葉を口にした。
 セオドレドが困惑するのだとしたら、ファラミアの反応というよりも、むしろそれに対してファラミア自身が見せる対応だと、ファラミアは思ってもいないのだろう。それが火を見るよりも明らかで、セオドレドはファラミアに再び笑ってみせるしかなかった。
「ご自分の、なされることについて、これ以上は何もおっしゃいませぬよう」
 生来のものなのか、彼の生き様がそうさせたのか、見る者を安心させずにはおかない表情を、セオドレドは持っていた。だから、ファラミアは安んじていさえすればそれで良いはずだった。なのに、少しだけ、忌々しさが残るのは何故なのだろう。
 返答として、言葉の代わりにファラミアは腕を持ち上げ、セオドレドの背に回した。
 体にかかってくる、決して楽ではないが無理のない重みも、自分の体を抱く腕の強さも、触れ合っているせいか汗ばんで感じる彼の体が持つ匂いも、ファラミアはすべて自分のものとして、内に取り込もうとしていた。加えて、自分の下腹に無駄としか思えない異物感を与えてくる、セオドレドが持つ欲の、あからさまな発露の一端も。それもまた、かれの紛れもない、しかもより深い部分にある一部にはちがいないばかりではなく、自分とて、器官としては同一のものを有するものだ。にも関わらず、それが持たされている意味は、それぞれで決して同じではないように思えて、仕方が無い。
 それを分けるものの正体を渇望する自分を、ファラミアは自覚していた。おそらく、セオドレドはファラミアがまだ知らぬ答えを、その内に持っているのだ。そうでなければ、セオドレドは、自分に何を教えるというのだろう。
 欲求が明らかになればファラミアは、迷わなかった。そうして、ファラミアの関心を体現したセオドレドのものに、手探りに手を伸ばして、触れた。熱いのは、自分の掌なのかそれとも彼なのか。少しも理由がないのに、めまいがしそうだった。自分が理解しきれないものの、正体が知りたかった。だから、手の中に収まらない彼のものである器官を、掌に転がして、何かを探るように、指をその余裕なく張った表面に隈無く這わせていった。
 自分の身の上に置かれた大きな体が、僅かの間だが落ち尽きを失って身じろいだ。
 その体の持ち主の指が、自分が触れたのと同じ部分を、全体としてきつく戒めるのを感じたのと、胸を中心に、先ほどまでとは比べ物にならないほどの、強い痺れが走っていったのは、ほぼ同時だった。

126萌えの下なる名無しさん:2004/06/12(土) 20:20
<セオドレド×ファラミア/触れ合う程度> 3 【とりあえずラスト】















「ぅあ…」
 意図しない自分の声に、保持しているつもりの平静さが揺らぐのを、いよいよ抑えきれなくなりそうだった。せめて、声は自分がそれを本意として表しているのではないのだと、伝えらたなら、多少なりとも楽になれるだろう。ただ、つい先ほど念を押してきたセオドレドの言葉の意味が理解出来ないファラミアではなく、ならば、いかに空しい努力を必要とされようが、自分の内で処理する他は無かった。だから、ファラミアはせめて口を引き結んだ。
 固い、おそらくは健康的な歯に、胸の申し訳程度の突起が挟み込まれていた。適度に手心は加えられているにしても、滅多にない場所を押しつぶされる感覚と、そこが歯に食い込まれる感覚の双方は、仮に、どちらか一方だけだったにせよ、それだけでおそらくはファラミアには過剰だっただろう。決して己が選べるものではないが、口を開くのを自ら、良しとしないファラミアは、そうするともなく喉だけで呻いた。歯が当たっていく場所を微妙に変えながら、それに噛み合わされていくのは、ただ刺激を受け続けるよりも、よほど堪え辛かった。緩むとつい体を弛緩させることが叶う瞬間を期待するのだが、分かっている事ながら、安堵の息をつく間も無く、新たに加えられる刺激によって、儚い望みとして期待は潰えるのだ。いっそ、与えられるのが純粋に痛みのみだった方が、自分にはましかも知れないと思うところに、なめらかで温度のある舌に、目で見たわけではないが、歯の痕を残しているに違いない部分の周囲から中心を、執拗に撫でられた。
 上下の唇を合わせておくことはもはや叶わず、何を求めてなのか断続的に漏れ出る自分の声は、聞こえないことにした。
 セオドレドのものに触れていた指には、いかに意識しようとも、もう力が入らなかった。持て余した挙げ句、寝台の上に落ちるに任せて投げ出した腕を、セオドレドの背に戻すことも出来なかった。
 急に、自分のものではない呼吸がかかる皮膚を、過剰に熱く感じた。だが、ある部分が他より多少余計に熱を持っていようがいまいが、もはやどうでも良い事だった。すべて解放されるか、すべてを熱に委ねるか。選択肢はどちらかしか無かったし、選択はすでになされていた。
 気怠さと高揚感という相反するものを同時に、自分の身の内に突きつけられてくるのが堪えがたく、ファラミアは身をよじった。が、せっかく変えようとした姿勢は、セオドレドの体重に空しく押し戻された。望むと望まないとにかかわらず、ファラミアの体は従順に、セオドレドの意に従う他、どのようにもやり様がないのだと、今更ながら思い知ることになった。
 それでも自分の、ファラミアにしてみれば無駄に鋭敏なものを包み込んだセオドレドの手は、やはり、温かかった。
 それだけで、体のどことはいわず、痺れていくようだった。セオドレドのその手に、やんわりとした動きを与えられると、いや増していくその、落ち着かないが不快ではない感覚に、頭の先から足のつま先までを、自分の意志に関係なく支配されていくような気がした。
 汗ばんだ手をファラミアは掴む物もなく、きつく握りしめた。そうしたものの、それが余りにも空疎で、固められたばかりの指は、すぐに自らの意志でほどかれた。
 顎の裏側の、やわらかな皮膚にセオドレドの唇が触れたのは分かったが、それは、自分の喉が反らされているからだと、気付くことはなかった。ある意味急所としか言えない箇所を、異国の王子の前に晒してファラミアは、何をすることもなかった。無防備な喉の、皮膚がセオドレドの唇に与えられるちくりとした痛み混じりの痺れと、ゆるやかな、それでいて身体のすべてを、あるいはそれ以上のものをさらって行きかねない感覚とに苛まれて、ファラミアに出来ることといえば、それを望まないまま、息を乱すことくらいだった。

127>124-126:2004/06/12(土) 20:26
だんだん、言い訳が出来ない感じに。
すみません。後1,2回で終わるのではと思われます。

128萌えの下なる名無しさん:2004/06/13(日) 09:22
>124-126女神様!
大将ぎこちなくかわいらしく萌え萌えで、こんな感想はさむのも
大変恐縮なのですが、流麗な文章をとーっても楽しみにして
おります。だから長くなった言い訳なんてなさらないで下さいですよー。

129萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 00:11
>128様
心優しいご感想くださってありがとうございます。
空気が読めない奴なせいか、つい優しいお言葉に甘えてしまいます。
文章は、ときどき意味が通らないのを平気で見過ごしてます。ごめんなさい。

ところで、すごくエロくさい大将が見たいんですけど、そういうネタどなたか
お持ちじゃないでしょうか。

以下、妄想垂れ流しなので、なま暖かくスルーでお願いできれば(汗)

第二次性徴を迎えて兄上に一から面倒を見られる大将とか。
某エロゲーのパクリでアレですが、自分の不注意で、大切な人が生死の境を彷徨う羽目に
陥ってしまったために自分自身を許せなくなり、その自分に罰を与えようと、
自分から誘って恋人でも何でもない関係の人に体を任せる大将とか。
フロドは、大将率いるレンジャー部隊に囚われた時、夜中に人に言えないものを
見てるんじゃないかとか。

…大将スレの品位を一人で貶めてる気がしてきました。失礼しました。

130萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 09:01
>129様
品位も何も、しょせん我らは同じ闇の世界の、更に隠れ里の住人でございますよw
私も、イシリアンの森の中やヘンネス・アンヌーン周辺では何が起きているか
わかりゃしない、などと思いつつも、自分では書けませぬ・・・
と言うより、自分の文章では萌えられません。でも、人様がご提供下さるおさかな
なら、おいしく頂けます。
ので、まずはセオ/ファラの続きをよろしく(て、結局催促してますw)。

131萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 15:10
セオドレド×ファラミア、こっそり続きます。ペース落ちてます。2分割くらいで。

>130様
心強いお言葉ありがとうございます。
そして、ご催促頂けてるうちが花です。たぶん。

>自分の文章では萌えられません。
今までは無かった、つまらない妄想が止まらないのはそのせいかと!
自分がだらだらしてるせいで、おさかなのお裾分けをいただき損ねてるかも
知れないとか思うと、いてもたってもいられず。

<セオドレド×ファラミア/しるけうっすら/ファラミア馬鹿、再び> >126の続き 1













 時折、強張りを見せるファラミアの体は、その中心も例外ではなく、そこへと触れたセオドレドの指に確かな感触で押し戻す力を加えていた。
 セオドレドにはそれが、ひどく愛おしかった。
 愛しいものの体に回した腕を伸ばし、それが得も言われぬ心地良い手触りを持つ事を、己の皮膚で知ったその髪に指を触れさせた。そうすると、浅い息を繰り返しながらも、首がほんの僅か左右される。そこに、何を映そうというのだろう、ファラミアの目が、自分の顔を見上げてくる。それまでになく心細く見える年若い彼の、頭を自分の肩口に抱き寄せ、自分の耳の近くにその吐息を聞いた。浅く、止まらない溜息に似た色を帯びて繰り返される呼吸は、その持ち主が意図しようがすまいが、セオドレドの体の芯を、深く、否応なくくすぐってくる。自分ではない何かの力に動かされでもしたかのように、セオドレドが自分の内にある欲の、普段は眠っているその源を、自分の指に包んでいるファラミアのその部分に押しつけてやると、無意識だろう、抱えた足の内側に入る不自然な力が入るのと、肌にかかる息が、吐き捨てるような荒さを含むのが分かった。
 愛しいものを巻き込んだ指をきつく締めると、体の下でファラミアがそれと分かる音をたてて、息を飲んだ。
 それでも、口は開かれなかった。
 つい今しがた自分が告げたことを、この状況にあっても律儀に覚えているのだろう。それがまたいじらしくも愛おしさを掻き立ててくる。今、この時にあっても、ファラミア自身、そして自分自身さえをも含めた誰をはばかることなく、思う様この体を抱き締められたらどんなに良いかという衝動にかられる。
 こんなにも自分を捉えずにはいない生き物が存在するなどとは、あの、初めてゴンドールを訪れ、執政家の面々に面会した幼い日を迎えるまでは、考えてもみなかった。あるいは、子供の自分が見た夢であったやも知れぬと。自分自身が年月を経てあの時と同じ自分ではなくなろうとも、思いが募りこそすれ消えることは無かったし、今、自分が目に見、肌を触れているのは、疑うべくもない現実そのものだろう。
 歳月は人を変える。−−時に、己の想像の無力さを感じざるを得ないほどに、素晴らしく。
 かつて、自分はかれを宝物だと思った。今、かれを形容するための言葉は、持てそうにもなかった。敢えて名付けようにもそれは、愛だの恋だのでは決してなかった。支配を望むわけでもなかった。唯一確かなのは、どのような意味においても、かれに望まれたいと欲している自分だけだった。
 つまらない連想で、ふと、頭の隅をかれの兄の姿が掠めた。
 年齢のせいばかりではなく、ファラミアよりは遙かに自分と近しい関係にあるボロミアは、愚かにも、近くに在りすぎてそれが、いかなる価値を持つのか本当には理解していなかった。あるいは、傲慢にも。−−傲慢。そうかも知れない。そこに在るのがボロミアにとっては、当然過ぎるほど当然なのだろうゆえに。
 血のつながりの名の下に、いや、それさえ言い訳にしか過ぎないのだとでも言いたげに見えるほど、求め、求められるのが呼吸する事よりも、まるで当然であるかのように振る舞うのを、自分は目の当たりにさせられた。ボロミアだけではない。成人した後にセオドレドが初めて、二人揃って見た兄弟は、だ。
 それはそれで構わなかった。ボロミアと、自分とはまるで違う場所に立っているのだから。どちらがより幸福だろうかなどと比べる必要すらなかった。それぞれが思いたいように思い込んでいればそれで良い。それで全てだ。
 いくら触れても足りない唇に、唇を深く重ねて、呼吸のために乾いたファラミアの口腔に、濡れた舌を入れてやり、潤いを求めるファラミアの舌が、おぼつかない様子ではあるが、十分に湿っている舌に絡み、粘りを帯びた水分を自分の舌に舐め取っていくのに、舌を合わせた。そうしながらも、ファラミアの様子を見ながら、狭くした指でかれの先の終わりまでを、上下させていく。ファラミアは気付いていないのだろうが、寝台に伸びていたはずの足が、いつの間にか膝を曲げて立てられて、強ばったまま時折震えていた。呼吸のために大きく膨まされる胸も、どこか苦しげに見えたが、僅かたりとも、手を緩める気はなかった。

132萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 15:13
<セオドレド×ファラミア/文字通りしるけあり> 2















 汗が、形の良い額に張り付かせた、乱れてなお彼の顔立ちを映えさせる色の薄い髪を、頭に回した手の指で退けてやりながら、引き込まれるようにファラミアの表情を見つめた。そして、セオドレドは、自分の知る限り誰の物でもない頬に、自分の頬を重ねた。汗を滲ませてはいるものの、繊細な、セオドレドから見てもまだ若い体が持つ皮膚は、まるで吸い付くようで、願望が勝るがゆえの思いこみに過ぎないにしても、それが自分を受けいれようとしているかに思えて仕方がなかった。
 なぜだか、ファラミアが、不意に表情を緩めたのが見えた気がした。落ち着く筈のない呼吸は相変わらずだったが、ファラミアは、寝台に預けていた腕をゆるゆると持ち上げて、セオドレドの髪に指を差し入れて、絡ませた。
 セオドレド自身さえ思わないことに、身に鳥肌が立った。
 ファラミアの中心にあるものをゆるく上下していたセオドレドの指が、ファラミアにしてみれば、無理な力でそれを締め上げた。
 突然の事に、ファラミアは高く声が上がるのを、とどめることが出来なかった。
 咄嗟に、年長の彼の名を呼ぼうとしたが、加えられた行為に意味を持った言葉は奪われた。絞られた指が、激しいまでの性急さで、ファラミアの体を誘おうとしていた。体にきついはずなのに、セオドレドの望むままに反応を返している自分のままならない部分を、ファラミアは心の内で呪おうとした。が、それも長くは続かなかった。逆うのを望んだところで逆らいきれない、身体の内から出口を要求してくる苛烈な感覚だけを、ファラミアはいつしか追っていた。片方の足を不自然な形に縛められ、出会って間もない見知らぬ異国の人間の体に体を拘束され、自ら選ぶこと無しに、まるでセオドレドの意志の他には何も自分を動かし得ないのだとでも言いたげに、体は無邪気なほどに追い立てられていく。セオドレドの強い腕がファラミアの肩の片側を、痛みさえをも覚えるほどの力で、寝台に押さえつけていた。ファラミアは、火がついたように叫んだ。身も世もなく体の自由を求めた。そのファラミアを待っていたのは、セオドレドの手の内に、無駄に体液を放出する瞬間だったけれども。
「…っん」
 背と腰が、セオドレドの体に阻まれずに済む程度まで跳ねた。後は、正体なく弛緩するだけだった。息を継ぐことのみで精一杯である中で、ファラミアはセオドレドの顔に、目を向けずにはいられなかった。ファラミアの体から溢れた、放置すれば決して清潔とはほど遠くなる液体を受けて、ファラミアが見たセオドレドもまた、乱れた自分の呼吸に対峙していた。茫然自失に見えるのは、自分の目がくるっているからだろうかと、ファラミアは、普段通りにはきかない頭の片隅にぼんやりと考えた。
 セオドレドは、初めに放った布切れを手探りに見つけて手を拭い、肩に抱え上げていたファラミアの足を寝台に横たえさせて、ファラミアの身のあり方をファラミアの意志に委ねた。

133萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 15:20
<セオドレド×ファラミア/しるけあるかも程度> 3 短いです。【とりあえずラスト】














「ご気分はいかがです」
 問いかけに、ファラミアは首を横に振り、セオドレドに自ら体を添わせた。
「…わたしには、申し上げられません。セオドレド殿を疑ってのことではなく、わたし自身の問題ではありますが、おそらく、何か言えばそれと意図せずとも嘘になりかねません。わたしは、それを望みませんので。…今は、確かに物が言えそうにも、ないのです」
 語尾が弱くなるのを、自覚したがどうにもならなかった。自分自身にとってさえ曖昧模糊なものとしてしか把握できない己の姿など、本当は誰の目にも晒したくはなかった。だから、自分の頭を、自分の片腕に顔を縦断させて抱えた。ただ、見る者が違えば、たとえ両者が同一のものを目にしているとしても、そこから得られる認識は異なるのだという、考えずともごく当たり前でしかない事実が、すっかり失念されていたので、セオドレドが一体、今のファラミアに何を見ているのかなどということは、ファラミアの思い至るところではなかった。
 背中側から伸ばされてきた腕が、両の腋を通り肩を拘束したと思うと、体を引きずられた。
 引きずった張本人は、大人二人が三人でも楽に寝られそうなほどたっぷりとしていて、かつ、見るからに柔らかそうな枕に背を預け、見ようによってはだらしなく体を伸ばして、その上にファラミアの体を仰向かせて引き上げた。無駄を蓄える気配はかけらもないファラミアの腹筋の上で、ファラミアの背後から体に回された腕が、取るに足りない程度の拘束力を発現させて、交差させられていた。セオドレドの両足の間から胸にかけて背を伸ばすと、ちょうどファラミアの頭がセオドレドの肩先に触れた。
 セオドレドは、ファラミアが落ち着きを回復するのを待っていたのかも知れない。息がようやく整った頃に首を少しだけ傾けて、間近にあるセオドレドの顔を見上げると、ファラミアも決して嫌うことができない、件の笑顔が目に入った。そして、セオドレドの肩が、ファラミアの頭を押しやって顔の傾きの角度を変えさせたと思うと、瞬きをしている間に、口づけられた。隙間もなく深く触れ合わされる唇の内側には、いずれの者にとっても既に、それがどちらのものであるかの区別など無いに等しかった。口中を繰り返して吸われると、自分の精が解放されたときのように頭の芯が働かなくなりそうで、何の解決にもならないと知りつつも、目を閉じた。
 一つの感覚が塞がれると、他に向けられる神経は意識せずとも敏感さを増すのだろう。セオドレドの体が与えてくる温度と、セオドレドのにおいが、皮膚に染みるようで心地良かった。自分のものではない滑らかな舌も、唇も、その味も。
 片方の足の、内側をセオドレドの手が筋肉の動きに沿って、撫でていた。その手に身を委ねて視界を得ぬまま、身を包み込むような温かさの内にたゆたうのは、ファラミアにしてみても決して悪いものではなかった。

【続きます】

中途半端な量が、はみ出すなんて…。ごめんなさい。
いつ終わりそうとか嘘になるので、もう言いません。
女神さまのご光臨、みなさまのご歓談お願いします。

134萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 20:51
はい!はい!ここにもこっそりエロを待ちわびている者がおります!
女神様、私の分までこれからもどんどんファラミア様を気持ち良くしてしまってくださいますよう!

ローハンガール、かわゆかったです。
贅沢を申し上げるならセオ/ファラに至る過程もリクエストしたく。

135萌えの下なる名無しさん:2004/06/14(月) 22:19
エロと素敵な連ドラを待たれているところすみません。
おつまみ置き逃げします。しるけ系のお話ではないです。
これを含め5レス分です。

前半(0/3)は現時点での「劇場版オンリー」のやさぐれ気味の大将視点、
後半(1〜3/3)はそれを踏まえた旅の仲間な複数とどたばたです。

受け取り方は人それぞれだとは思うのですが
・執政を継いでいるかどうかあれじゃわからないよー
・戴冠式もなんだかお客さんっぽいんだけど…
・式典中エオウィンとは隣にいたから笑いあっただけ?
・王の手エピソード無し(今のところ)→王様ともたいした接点無いんじゃ?
という、劇場版のみで最大限寂しい解釈から自己フォローしました。

ちょっと前の映画板本スレで、エオウィンとのことでいろいろ
書かれてたのを見て、ついつい書いたは書いたのですが、
最後まで書いてたら今になってしまいまして。

これで「ちっがーう!」と怒らない方だけ…
テーマ?は家出する大将、時はエレスサール戴冠式の日です。

それでは次から4レス、You must come with me.Now.

136135〜:2004/06/14(月) 22:21
<ネタバレ無し劇場版のみ大将・0/3>















空が青い。こうやって、思い切り天を仰いだのは久しぶりな気がする。

父が、いない。兄も、いない。自分を縛るものは、もう何もない。

青い、どこまでも青い空の下での戴冠式の中、私の胸には涼しい風が吹いていた。
還ってきた王という人物は、自分はほとんど知らない人物であったけれども、
来るべき時代を象徴するような、深くゆるぎない何かをたたえた人物であることはわかった。
戴冠式には、来賓にまぎれてこっそり出席してみた。出席してよかったと思う。
自分も含んだ古い時代が終わったことが実感できた。
もう自分は大将ではないだろうし、何くれとなく支えてくれた副官も、
死地に赴く自分に着いて来てくれた部下達も、既に誰もいない。
もう自分には、何も誰も残ってはいないのだ。

…自分だけ何故助けられたのか、自分が助かったところでどうなるというのか、
その煩悶もまだ少し残ってはいたけれど、それはもう真綿で首をしめられるような
息苦しさをもたらしはしなかった。どのみちこの思いは、おそらく今後一生連れて
歩くしかないのだ。さしあたって肝心なのは、自分は助けられて今生きているという事実。

式典はまだ続いていたが、王が通り過ぎた後にこっそり抜け出してしまった。
勝手知ったる城内にするりと紛れ込んで、さてこれからどうしようか。
このまま自分がミナス・ティリスに留まることは、新しいゴンドールにとって
いいこととは思えなかった。人々は自分の後ろに父の姿を思い出すだろうし、
兄の影を見て嘆くだろう。旧体制の面影は、新しい時代には鬱陶しい枷にしかなりえない。

…いや、それは単なる言い訳かもしれない。
人々が思い出すのは良かれ悪しかれ兄や父であって、目の前にいる「ファラミア」は
それを映す鏡に過ぎない、「ファラミア」を見ている人など、これまでもこれからも
いないのだという現実を思い知らされることに、耐えられないだけなのかもしれない…

…どこか、遠く離れた街でひっそり暮らそうか。
いや、傷もだいたい癒えたことだし、いっそ旅に出てみるのはどうだろう。
そうだ、もっとこの世界を見てまわりたい。
焦燥に駆り立てられることなく、寂寥にとりつかれることもなく、
まっさらな気持ちで見てまわりたい。
山も河も森も、きっと今までとは違う姿で目に映るだろう。
イシリアンを越えて、ローハンも越えて、どこまでも行ってみよう。
…そういえばさっき隣にいたひとは、ローハンの姫君らしい。綺麗なひとだったな。

そんなことを考えて、考えた自分に気づいて、心の中でちょっと笑った。
なんだろう、こんなこと考えられたのは、そんな余裕ができたのは、いつ以来だろう。
そうだ、旅に出よう。ここ数年のレンジャー暮らしで野宿は慣れてしまったし、
無茶をしなければ自分の身ぐらい自分で守れるだろう。

そこまで考えて、ひとつ、思い切り伸びをしてみる。
さて、善は急げ、準備をしなくては。
心には、涼しい風がまだ吹いているのがわかる。
振り返って窓越しに見た空は、まだどこまでも泣きたくなるほど青かったけど、
目に浮かんだ涙はこぼれなかったし、哀しいけれど悲しくはなかった。

137135〜:2004/06/14(月) 22:22
<大将と旅の仲間複数・1/3>















「さてアラゴルン、いやエレスサールよ、今後のことなのだが」
式典を無事に終えて、来賓達も思い思いに歓談しつつ大広間まで戻ってきた頃。
還ってきた王にガンダルフが話しかけてきた。
「そなたを補佐する執政のことで、話がある」
エレスサール王は心得ているように頷いて応えた。
「もちろんファラミア殿に執政を継いで働いてもらいたい。私には彼の助けが必要だ」
自分達が黒の門に出撃している間、独裁者を失って揺れるゴンドールを執政家の生き残りとして
しっかり統率し、これまで彼の父だけが携わっていた政治的諸事万端をきちんとまとめて
まるまる引き渡してくれたファラミアを、交わした言葉は少なくとも既に王は信頼していた。
それを見て、白い魔法使いも安心したように頷いた。
「新しい時代に、まことふさわしい新しい執政といえる」
しかし、王は何かに気づいたようにふとあたりを見回した。
「そういえばその彼はどこに…?式典中は見かけた気がするのですが…」
白い魔法使いは、そういえばその当人をしばらくほったらかしにしていたことに気づいた。
「はっ、うっかりしておった!…そもそも今日、式にいたのか?」

ガンダルフと今日の主役のエレスサールまで自分を探し回っているとはつゆ知らず、
元々少ない私物をさっさとまとめて馴染んだレンジャーの装束に身を包んだファラミアは、
すでに馬上の人になってミナス・ティリスの回廊を進んでいた。
しばらく進むと、背後から声がした。
「ファラミア!」
最近彼と知り合いになった小さい人が、彼に向かってまっすぐに駆けてくる。
ファラミア自身はほぼ意識がなかったために実感はないのだが、その小さき人が
自分の命の恩人であることは伝え聞いていたし、深く感謝もしていた。
「ペレグリン・トゥック、どうなされた。式典は?」
馬ごと振り向きつつ、少し距離をおいてその相手に向き合う。
「アナタがいなかったから、探してたんです。これからどうするのかなあって…
でも…どこかへ、行ってしまうの?」
その答えと問いに、ファラミアは視線を落としてわずかに微笑んだ。
この小さき人は自分を探してくれたのだろうか、自分を見てくれていたのだろうか、
そんな思いが彼の脳裏をよぎる。しかし、気持ちは全く揺らがなかった。
そしてピピンも、その微笑から既に答えを読み取っていた。
「…お元気で…そうだ、ホビット庄にも遊びに来て!美味しいものやビールやパイプ草、
たくさん用意して待ってるから!」
それを聞いたファラミアは、ふわりと微笑んだ。
それは以前の彼からはとても想像がつかない、晴れ晴れとした優しい微笑みだった。
「…ありがとう…いろいろ、本当に。…では、ペレグリン、お元気で!」
そう言うと彼はまた馬を返し、背中越しに軽く片手を振ってピピンに最後の別れを告げると、
軽い速足で馬を走らせはじめた。もう振り向くことも思い残すこともない…
そんなファラミアの後姿を、泣きそうに微笑んでピピンは見送った。

138135〜:2004/06/14(月) 22:23
<大将と旅の仲間複数・2/3>















ピピンがこっそり広間に戻った時、こっそりだったのだがあっさりギムリに捕まった。
「どこへ行っておった?まったく、すーぐ何かしでかすからな」
「友達のお見送り…何かあった?」
その問いには、いつの間にか隣に来たレゴラスが答えてくれた。
「うん、ファラミアって人を探してるんだって。これからのことで」
答えながらレゴラスは、目の前のホビットの目が泳いだのを見逃さなかった。
「?…何か、知ってるんだね?ピピン、話して。…ガンダルフ!」
逃げかけたホビットの首根っこは、エルフの王子とあうんの呼吸を持つドワーフに
よってしっかりと捕まえられていた。

「ばっかもん!なんで止めなかった!というか、ヤツもヤツだ!どうして毎度そういう
自虐的で悲観的な発想になるんだか!デネソールも息子の一人二人ちゃんとしつけとけ!」
お互い見ず知らずなエレスサール達とファラミアの間をちゃんと取り持ってやるのを
忘れていたこと、そもそもファラミア本人のことをすっかり忘れていたことを棚に上げて
怒鳴り散らしつつ、ガンダルフは中庭へ出た。戴冠式の準備等忙しかったのもあるのだが、
それを彼に手伝わせるということを考えていなかった自分にも腹が立っているらしかった。
「執政」として、どこかに役目を作ってやっておけばよかった…今更後悔する。
「ガンダルフ、あれ!」
いつの間にかガンダルフを追い抜いていたレゴラスが、彼ならではの身軽さで
目もくらむような高さの中庭の縁の上に立って身を乗り出し、彼方を指差している。
そこには、まだ戦闘の爪跡が残るペレンノールを駆けていく一騎のレンジャーの姿が
かろうじて見て取れた。

「彼は、笑ってるんじゃないかな…」
エルフの目で見たのか、レゴラスがつぶやいた。他の者にはもちろん目では全く
見えなかったのだが、ピピンだけは同意の言葉を告げた。
「うん、僕もそう思うよ…そんな気がする」
このまま行かせてあげて欲しい、その思いを瞳にこめて傍らの魔法使いを見上げた
ピピンだったが、魔法使いはその思いを察しはしてもあっさり一蹴した。
「ダメだ。今から追いかけるぞ。彼にはまだ教えなければならんことがある…
誰の代わりでもなく彼が彼自身として必要とされていることと、愛されているということを」
瞬間曇ったピピンの表情が、ぱっと明るくなって思い切り頷いた。

139135〜:2004/06/14(月) 22:24
<大将と旅の仲間複数・3/3>















飛蔭に乗った白い魔法使いにあっさり追いつかれ、しかも戻る道中に杖で小突かれながら
くどくどとその性根について説教されたファラミアが、大変気まずい顔で
ミナス・ティリスに戻って来たのはそれから少し後のことだった。
中庭までガンダルフに引きずられるように連れて来られると、その場にいた数名の中から
2人のホビット〜1人はファラミアが知っている、先ほど別れの挨拶を交わしたはずの
人物だった〜が飛び出してきて笑いながら彼の両腕にぶら下がって来た。
何がなんだか状況が全くわからなく、ぼんやりとした表情でその重みに耐えている
ファラミアに、還ってきた王がにやにやと笑いながら告げた。
「お帰り。短い間だったけど、家出は楽しかったか?我が執政殿」
呆然と目を瞬かせていたファラミアは、その言葉を聞いてはっとしたように何かを
言おうとしたが、彼が発しようとした言葉は他の数名の騒ぎに飲み込まれてしまった。
「面白い人だね。もっと真面目な人なのかと」
「ふん、まだまだ若いのう。拗ねとるだけだろ?」
「前にも思ったんですけど、結構びっくりすることしますよねキャプテンファラミア」
「サム!…僕、目が覚めてから貴方とちゃんとお話してませんでした。あの後のこととか、
貴方に何があったのかとか、いろいろお話したいです」
口々に話しかけられ、ファラミアはますます混乱した。自分に何が起こっているんだろう、
この人達は誰に何を言っているんだ?自分に語りかけているのか?私に?何故?
その混乱ぶりを微笑ましく、そして少し痛ましく見てから、王は再び彼に呼びかけた。
「ファラミア」
すがるように自分に向けられた揺れる薄青い瞳を、包み込むような気持ちで正面から
見返しながら、王は言葉を続けた。
「ここが、このミナス・ティリスとゴンドールの国が、君の家だろう?
いや、これまでに何があっても、どういう思いがあろうとも、ここは紛れもなく
君が君として守ってきた家で、故郷で、これからも守っていく場所なんだ。
他の誰の代わりでもない、ファラミア自身として…ね。みんなそう思っているんだよ。
君にここにいて欲しいんだよ…これからも頼む、執政殿」
ファラミアは何も言葉を返さなかったが、その潤んだ瞳は彼がその言葉と思いを
まっすぐに受け止めたことを雄弁に語っていた。

それからファラミアは不意にしゃがみこんだ。横のホビット二人を抱え込むように
手を回し、一瞬うつむいてから顔を上げて、目の前にいる一人一人を見渡して言った。
「私は、まだみなさんのことをよく知らない。だからその…知りたいと思うんだが」
その様子を見て、彼は今やっと本当に救われたのではないだろうか、とガンダルフは
思いながら、杖を振り回してその間に明るく割り込んだ。
「あーほらほらみんな中に入らんか。時間はたっぷりある、茶でも飲みながら
ゆっくりおしゃべりしようじゃないか…全く世話の焼けるやつばっかりじゃな」
一同は笑いさざめきながら、青い空の下にそびえる明るい白い塔の中へと入っていった。

その日、ゴンドールで27代目の執政が任命された。王が還り来た日の出来事だった。




おしまい。

140萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 01:03
>135-139様

>来賓にまぎれてこっそり出席
って、大将・・・w
でも、なんだかすごく切なくて、3/3まで読んだら、じんとして涙まで出てきて
しまいました。本当にねえ、大将、特に映画版大将には、いろんな意味で幸せに
なってほしいですよ。
そう言えば「王の手」のシーンて、画像としてはかなり前から出回っていて、
子供向けのフォトノベライズにまで載っているくらいだから、当然SEEに入れて
くれるものと信じています。





SEEでは、戴冠式とイシリアン大公御夫妻の結婚式を一緒に執り行なっちゃう、
大盤振舞いなんだか経費削減なんだか判らない王様が見られるという噂を
聞いたことがありますが・・・本当なんでしょうか?

141萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 01:17
通りすがりに失礼いたします(作品読んでないのにすみません)。

お話の前の<1/3>というのは、3分割分のうちの1つ目、つまり
「これから3レス分使用して投稿するから、雑談等の方はお気をつけ下さい」
という注意であるので、今回の>134-139様のような場合は
<*/4>とするべきではないでしょうか。
それほどレスが活発でないので、そんなに気にすることもないのでしょうが……

こちらのスレは女神様が絶えずご降臨で羨ましく思っているのですが、
長編投稿の際の分割数がなかったり(目安としてでも入れるべきでは?)
他スレ住人ながらちょっとハラハラしていたもので、
差し出がましいとは思いましたが、長文で苦言呈させていただきました。

142萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 02:22
(;´Д`)やれやれ

143萌えの下なる名無しさん:2004/06/15(火) 21:12
>>141>>142
申し訳ありません、どうか謝らせて下さい。
長文を分割数無しに投稿した者です。
141様のおっしゃる事、その通りだと思います。
投稿の際には目安を入れるべきですし、私のした事はマナー違反だと思います。
本来なら全て書き上げてからアップロードすべきでした。しかも分かっていて
したのですから確信犯です。本当に申し訳ありません。
また、皆様大人ですからおっしゃいませんでしたが、スレ寡占状態を見苦しく
お思いの方もいらっしゃったと思います。あえて苦言を呈してくださった
141様に感謝します。
スレの住人様方、女神様方、どうぞお気を損じて下さいませんよう。
心優しい皆様、どうかお聞きくださるよう。
土下座して済む物ならします。見えないと思いますけど土下座してます。
畳の上ですから痛くありませんけどごめんなさい。

個人的には最近他スレが活発化してきてとても嬉しいです。節操無しですので
レゴギムも大好物ですしメリピピスレのSSには涙ぐみました。アラボロスレの流れに
噴き、烽火リレーには前板より心躍らせていました。今はサムフロスレに
女神様が御降臨してくださるのをお待ちしています。
本当に申し訳ありませんでした。
そしてこれからも子馬亭に女神様がたくさん来てくださるのを楽しみにお待ち申し上げております。

144萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 00:53
>135-139女神様

泣きました、泣きましたとも、笑いながら泣かせていただきました。
大将〜・゚・(つД')・゚・  幸せになって下さいまし〜
しかし、
>そういえばさっき隣にいたひとは、ローハンの姫君らしい。綺麗なひとだったな。
って見るべきところはしっかり見てるんですね、大将w

145萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 09:56
>135-139様

大将は自分を、「ゴンドールのキャプテンファラミア」ではなく、
ただのファラミアとして受けいれることが出来たのだろうなと。
本当は親兄弟が生きてるときからただのファラミアとして
愛されてたはずで、だからこそ、旅の仲間のあの言葉なのでしょう。
自分については無頓着な大将、かわいかったです。

146SS投下 1/6:2004/06/16(水) 10:08
万年カレンダー、昨日はヘンネス・アンヌーンでぐれていた頃の大将、
本日は父君なんですね。という訳でーーー

<ネタバレ@ ファラミア/父君 ファラミア/兄君 しるけなし>

・第三紀3003年くらい。兄25歳、弟20歳の設定。
・/で区切ってあるのは、単にファラミア視点という意味。

多分6レス使う筈ですが、いつまで経ってもしるけもエロも色気も出てこない
話で、特に前半は、父と子がただただ陰険に会話しているだけという萌え所の
なさ・・・
それでも良いという方はおつきあい下さい。



ボロミアが、アンドゥイン河口を騒がせていた海賊を掃討してミナス・ティリスに還って来たのは、春たけなわの頃であった。
高齢の父に代わり、二十五歳にして、既に白の塔の総大将との名を冠されていた彼の戦果は、往年の英雄、ウンバールの海賊たちを一網打尽にした後、忽然と姿を消した、かのソロンギルにこそ及ばぬながら、その年齢を鑑みれば称賛に値するものであり、父執政は、
メレズロンドに於て大々的な祝勝会を設けたのであった。
その後、ボロミアは、白の塔の下層で、気心の知れた部下たち、そして都に残っていた弟のファラミアと共に内々の祝宴を開き、エールの樽をあけ、呑み語らった。
その時、ボロミアは弟に向かい、おまえも二十歳になったことだし、共に轡を並べ、ゴンドールとその都の為に戦おう、と言った。
「我らが共に行けるよう、私から父君にお願いしてみよう」
と言う兄の言葉を、ファラミアは誇らしく聞いていた。

ファラミアが執政デネソールの呼び出しを受けたのは、翌日の午後のことだった。
彼の父親でもある執政は、大広間の執政の椅子に座し、彼を待っていた。
「我が子ファラミアよ。そなたもそろそろ、実戦の場で部隊を率いることを学ぶべき時期が来た。執政の子、ゴンドールの大将と称されるにふさわしい働きを示すべき時がな」
低いがよく通る声で執政は言った。
勿論ファラミアも、初陣はとうに済ませ、戦術や用兵についても体系的に学んではいた。
「今朝、そなたの兄が予の許に参り、次に出陣する際には是非そなたを伴いたいと、願い出て行った」
では、ボロミアは約束を守ってくれたのだと思い、再び誇らしい気持ちと、そして兄への感謝と愛情が、ファラミアの胸に湧き起こった。
しかし、執政は
「予は彼に即答はしなかった。これはそなたの身に関わることゆえ、そなたに先に伝えるのが道理であるからだ」
と前置きした後、冷然と言い放った。
「残念ながら、その願い出は却下する」
ファラミアの心も一気に冷えた。
とは言え、これは、幼い頃より憶えのある経験に過ぎない。希望を抱かされ、それが一転して失望に転じるなど、特に父の前では、何度も繰り返されたことであった。
「そなたらは幼き頃より、共に同じ戦場に手を携えて行こうと口約束をしておったそうだが、ゴンドールの執政は、子供の戯言などに取り合ってはおれぬ」
父の言葉の陰に、かすかな嫉妬めいたものが見える。と、ファラミアが感じたその時、父は、その心を見抜くかのようにこう言った。
「その理由は、第一に、執政の息子を二人ながら同じ場所で失う危険は冒せぬからであり、第二に、それと関連するが、戦力を分散させるに当たっては、それぞれ信頼するに足る指揮系統を築くことが必要とされるからだ。以上により、予はそなたにイシリアンの野伏の統轄を命ずる」
失望は既に落胆に転じていたが、ファラミアは、なんとかそれを表情に出すまいとだけはした。
「イシリアンの守りは殊の外肝要であるが、そなたはそこで、そなたの兄とは異なる戦いをなさねばならぬ。山や森の中で、忍び寄る敵の影を少しずつ、だが確実に切り崩すに当たっては、戦略も用兵も、これまで机上で学んだ理論はさして役に立たず、むしろ実戦で得ることの方がはるかに多くなるであろう。そなたには老練の野伏共をつけてやる。彼らから多くを学ぶがよい。またそれは、そなたにはそういう場の方が適していると見込んでのことだ」
そう述べてから、執政はふと語調を変え、
「家臣たちやボロミアは、またさぞ、そなたを不憫がることであろうな」
と言った。

147Sons(タイトルです)2/6:2004/06/16(水) 10:13
一応下げます。














背筋に冷たいものが走るのを、ファラミアは感じた。父の命令にすぐにも諾と答え、この場を立ち去りたいほどだった。
「他人に不憫な者と思わせておくのも才能の一つとして利用できるようになるなら、予もそなたをそう呼んでやってもかまわぬが、して、そなた自身は己を不憫と思うか」
「思いませぬ」
かすれた声で、ファラミアは答えた。父は頷き、
「賢明だ。予もそなたを不憫だなどとは全く思っておらぬ」
と言った。
「分け隔てなく育てたなどと言うつもりは毛頭ない。実際、予はそなたら兄弟を分け隔てしてきたが、それは、ボロミアが世継ぎの長子で、そなたがそうではないからであり、他意あってのことではない」
本当に他意はないかと問う意思は、ファラミアにはなかったが、それにしても父は何を言いたいのであろうかという疑問は、彼の気持ちを落ち着かなくさせた。
彼の父は、表向きの言葉の裏に、常に別の意味を持たせつつ話をする人間だった。そして、そのことを読み取れぬ相手を軽蔑し、反面、それを見透かす者を嫌悪する類いの人物でもあった。
「そなたの立場が、予にも身に覚えのある位置であればなおさらだ」
と、父は意外なことを言った。
「ボロミアがゴンドールの希望の光であるなら、そなたは彼の影に位置することを運命づけられた者だ。予が、かつてこの都で星の鷲と呼ばれた者の影と見なされたように」
「ソロンギル」
ファラミアはその名を口にした。それが、父にとっては禁句に等しいものと承知の上だったが、しかし、それを耳にしても、デネソールが顔色を変えることはなかった。
「彼は大将の器を持ち、多くの者は、その上に王者の風格をさえ見出していた。ほどなくして、ソロンギルは賢明にも都を去って行ったが、彼奴がいる間、予は執政職の何たるかに深く思いを致すところとなった」
父がいかなる意図を以てその話をしているかは、依然として判らない。
「しかるに、現在ソロンギルの位置にいるのはボロミアであり、そなたの立っている場所は、かつて予のいた場所である。それは予が意図したことではなく、そなたらの資質によるものだ。かつ、執政の長子はそなたではなくボロミアであり、わが家系に於て長子相続の原則が崩されることもまたない。そして、これをこそ不憫と言うのだ」
と、父はまたもその言葉を用いた。
「かつて、彼が予に、執政が王になれる機会はないのかと問うたことがあったが、おのが立場と職務を受容すればよいそなたより、優れた王者の資質を持ちながら執政の跡取りたることを義務づけられたボロミアの方こそが、予は不憫でならぬ」

148Sons 3/6:2004/06/16(水) 10:18
続きます。ちょっと短いけれど、区切りの都合です。














一瞬の綻びに、ふと肩の力が抜けた。
これまで、言葉を換え、表現を弄して父が述べてきたことは、つまるところ、そこに帰結するものだったのかと思えた。
しかし、その時ファラミアの胸に去来したものは、決して怒りでも軽侮でもなく、むしろ父への同情だった。そして、そのような感情を抱いてしまったことを、父に気どられてはならぬとも判っていた。
加えて奇妙なことに、父の言葉からは、彼が既に「王還ります時」の予兆を得ているようにさえ感じられたが、それについても今は触れまいと思い、ファラミアは更に表情を引き締め、心を堅固に閉ざして、ただ、
「先ほどのご命令は確かに承りました」
とのみ言った。
「よろしい」
と、執政は言った。
「そなたは、そなたの意志により、その資質にそった方法で兄の佑けとなる道を選択した。しかし、敢えて問うが、兄の影となることに不満はないのだな」
「ありません」
と、ファラミアは答えた。不満と言えば、当分兄から離れなくてはならないことだけだったが、それを父に伝える必要もない。
「白の塔の総大将はボロミア一人であり、兄上の佑けとなれることは、私の誇りでもあります」
そして言った。
「しかしながら、父君、それは義務感によるものではなく、愛情に基くものです」
「愛だと?」
父の薄い唇が引き歪んだ。
「予の前で、軽々しくそのような言葉を口にするでない。また、そなたの申すそれは、いかなる類いの愛か」
再び、背筋に緊張が走る。
「兄弟としての愛です、もちろん」
鋭い灰色の目が、刺し貫くようにファラミアに向けられる。が、やがて、
「まあよかろう」
唇の歪みが、冷笑めいた形に変わった。
「いずれにせよ、愛などというもので人は動かぬぞ、聡明なるファラミアよ。このような時代にあっては特に、人はその運命の僕であり、義務の奴隷に過ぎぬのだから。大将と呼ばれる身となれば、その意味を噛みしめることにもなろう。まして、この先もはや、そなたの兄に護ってもらう訳にもいかぬとなればな」
そして、最後の命令が下った。
「出立の準備はこちらで整える。それまで待機し、大河の東岸の地理をもう一度頭に叩き込んでおくのだ」

149Sons 4/6:2004/06/16(水) 10:22
すみません!うっかりsage忘れました。
ああ、緊張で手が震える・・・
ここから兄君が登場します。












大広間を出た後、疲労感が一気に押し寄せてきた。
一対一で父と話す時には常に緊張を強いられてきたが、それは、父も遠回しに述べたように、自分たちの資質に似通ったものがあり、それをお互いに疎ましく感じながら、なお悪いことには、疎ましく思い合っていることさえも十分認識している為だったかも知れない。
その時、塔の入り口の大扉が開き、廊下の向こうからボロミアがこちらに歩いて来るのが見えた。
「ファラミア」
彼は立ち止まり、兄を待った。
「父君には今朝、一度お目通り頂いたのだが、また呼び出しを受けた。おまえの方はどんなお話だった?」
ファラミアは、ゆっくり首を振った。
「ご自分でお訊き下さい」
しかし、彼は、こう付け足さずにはいられなかった。
「執政の君は、子供の戯言になどつきあっては下さらないそうです」
「どういう意味だ」
兄は眉を顰め、弟の顔を覗き込むようにした。
「何があった。父君からまた何かーー言われたのか」
この人はいつもこんな顔で自分を見るのだ、とファラミアは思った。
自分が赤ん坊の頃から、五歳の時も十歳の時も、二十歳になっても、おそらくこれから先もずっと。
そして、父から面と向かってあのようなことを聞かされた後でも、ボロミアに対する自分の愛情と信頼が微塵も揺るがないのが、我ながら不思議なくらいだった。そこで揺らぐほどの思いであればいっそ楽だったのに、とさえ思えた。
そのまま、彼の胸に顔を埋め、子供のように泣き出してしまいたい。
そうしたところで、おそらく兄は驚くこともなく、肩を抱き、髪を撫でて、何も心配することはないと言ってくれるだろう。幼ない日々、そうであったように。
だが、ファラミアは、すんでの所でその衝動を抑え、
「どうぞ、父君の許に」
とだけ言った。
背中に兄の視線を感じつつ歩き出したファラミアは、途中一度だけ振り返った。
「どうやら私は、弓を修練しなくてはいけないようです、兄上。今度見て頂けますか」
ボロミアの顔が明るくなった。
「もちろんだとも。弓でも剣でも、何でも見てやるぞ」
この笑顔を憶えてさえいれば、どれほど離れていても、自分は自らを保っていけるだろうと、ファラミアは思った。
ーーー私たちは決して、互いを不憫な者だなどと思い合っているのではありません、父君。
胸にその言葉を収め、自分も兄に微笑を返して、ファラミアは白の塔を辞した。

                  ○

150Sons 5/6:2004/06/16(水) 10:26
まだ続きます。














弟の処遇について、ボロミアは執政に強く反対したらしいが、日頃長男に甘い父ではあっても、今回は
「執政の長子と謂えども、執政の決定を覆す権限はない」
と一蹴し、その半月後、ファラミアはイシリアンに向かうこととなった。さすがに愛では動かぬと言ったお方だけのことはあると、ファラミアはむしろ冷めた気持ちで、その成り行きに身を委ねていた。
彼が出立する二日前、ボロミアは、いかなる名目でか、執政の名代としてローハンに使いに出されていた。その時、ファラミアは見送りに出ることすら許可されなかったが、しかし、彼自身の出立に当たっては、執政自ら
「イシリアンは今がいちばん緑の美しい季節だ。それはまた、そなたたちの活動にとっても有利なものとなろう」
と、珍しく気遣いめいたことを口にしたのであった。

そして、北イシリアンにはいって、ファラミアは父の言葉の正しさを知ることとなった。
ヘンネス・アンヌーン周辺の森林は、森の空気を嫌うオーク共はもちろん、地理に不案内な異国の敵たちに対しても格好の防御となっていたし、何より、滴る緑や咲き乱れる花たちは、間近にあるかの忌わしき国の瘴気も、人の心をも浄化する作用があるように思えた。
自分より実年齢も実戦の経験も勝る部下たちが、何やら同情的な視線を送ってくることに、当初は閉口したが、彼らについて、山中を細い抜け道一つ一つに到るまで踏査するのは、辺りにどのような敵が潜んでいるか判らない緊張の下であっても、却って開放的な気分を与えてくれた。
体も神経も酷使するのは、余計なことを考えない為にも都合がよかったが、疲労感はあの白い石の都で父と対峙する時より少ないくらいだったし、平地での戦さとはおおよそ勝手の違う、この地形や環境ならではの戦術戦法を老練な部下たちから学び、討議しあうことは、思わぬ充実感をもたらし、なるほど、父は確かに自分に適した任務を与えてくれたと、今更ながら感心するくらいだった。
執政からは、時折、敵情に関する便りが送られてきたが、不思議なのは、前線に位置する自分たちの得た情報より、都からのそれの方が、より早く、正確な場合が間々あるということだった。
ボロミアからの便りは殆どなく、あったとしても、執政を通じての情報交換や業務連絡の類いであったが、互いに任務に追われる身とあってはそれもやむなしと思い、それ以上のことは考えないようにした。

ファラミアが再び都に戻ったのは、実にその半年後、木々の葉が黄金色に変わり始める頃のことだった。これから迎える冬に備える為と、とりあえずの休暇の意味もあった。
慰労の宴の席上、執政は、次子の前では滅多に見せることのない笑顔と共に、
「我が子よ、父の見込みは正しかったであろう」
と言った。ファラミアも素直に
「はい、父君」
と答えた。実際、離れてみて改めて、父への敬意を持ち直すようになっていたからでもあった。
父の傍らに控える兄は、その時には何も言わなかった。
ただ、ファラミアがミナス・ティリスの大門を通って戻った時、ボロミアは自ら馬に乗り、わざわざ最下層の広場まで迎えに来てくれていた。
野伏の装束に身を包んだ弟の姿を初めて見た時、彼は表情を曇らせた。
「日に焼けたな」
暫しの沈黙の後、兄は言った。
「それに随分痩せたようだ」
「ご心配頂かなくとも、兄上、私はあちらではきわめて充実した日々を送っております。木立ちの中で矢を射ることにもかなり熟達しました。また見て頂けたらと思います」
「ああ、弓でも剣でも見てやろう」
兄は、出立前と同じ言葉を口にした。それから、
「だが、今の私は、むしろおまえが書庫で古文書や巻物に読みふける姿が見たいと思う」
そう言って、どこか寂しげにほほえんだ。

151Sons 6/6:2004/06/16(水) 10:29
ラストです。どうにか6分割に収まりそうです。














宴の後、ファラミアが自室に戻ろうとすると、長い廊下の中ほどに、先に出ていたボロミアが立っているのが見えた。
「ファラミア大将」
と、彼は声をかけてきた。
「もうそう呼ばなくてはいけないな。私の望んだ形ではなかったが、ゴンドールの平和のため相携えて行くには、父君のおっしゃる通り、これが最善であったのかも知れない」
並んで歩き出しながら、兄は弟の肩に手を置いた。
「おまえを誇りに思うぞ、弟よ」
「私もあなたの弟であることを誇りに思います、総大将殿」
「もうおまえを守る必要もないのだな」
そう言って、ボロミアは、再会した時と同じ微笑を浮かべた。
自分の肩を抱く兄の手、以前に変わらぬその温かさを十分感じながらも、ファラミアは言った。
「私も、もはや子供ではありません。自らのいるべき場所も、あるべき姿も弁えております。ですから、私を憐れんで下さる必要も、もうないのですよ、兄上」
「憐れみ?」
問い返して立ち止まり、兄は弟の顔を見た。
「そんな風に思ったことはない。幼き日より、私はただ、おまえに執政の子として相応しい処遇を、また、より良い生き方をと・・・」
言いかけて、彼は不意に言葉を切った。
「いや・・・」
ボロミアは髪をかき上げながら、ひとり言のように呟いた。
「今回の件に関しては、それは嘘だな。いや、おまえの身が心配だったのは本当だが・・・」
「ボロミア?」
半年前別れた時とは、異なる何かを湛える灰緑色の瞳を、ファラミアは見た。
「私は、おまえの姿が見えないのが寂しかっただけだ。おまえが私の傍らにいないのが、ただつらかった」
妙に早口で、ボロミアは言った。
「おまえに会いたかった」
自分の中で、張りつめた弓の弦が切れるような音を立てるのを、ファラミアは聞いた。半年間抑えこんでいたものが溢れ出す。
「兄上・・・」
目を伏せ、ファラミアは頭を兄の肩にもたせかけた。
「私もあなたに会いたかった。兄上・・・兄上・・・」
震える声で口にすると、兄は片手でその頭を引き寄せ、もう片方の手を肩に回して、そっと抱きしめてくれた。
「よく帰って来た」
都でも王宮でもなく、自分の帰るべき場所はここしかないと、温かい腕の中で、ファラミアは感じていた。
「私たちは兄弟だ」
その想いに応えるかのように、ボロミアの声もまた、熱と震えを帯びる。
「何があっても、どれほど離れても、そのことに変わりはない。それを変えることは何ものにもできはしない」
互いの鼓動が一つに重なり、そして、その時初めて、ごく自然なことのように、二人の唇も重なり合っていた。


ーーー父君・・・

脳裡に浮かぶ灰色の冷厳な眼差しに向けて、彼は語りかける。

あなたはやはり間違っておられる。
あなたの理解も認識も超えた所に、それはある。私の頭ではなく、私の胸の内に、この身の奥に、それは確かに存在する。
私を動かす唯一のもの。私たちは二人だけでそれを育ててきた。
そして父君、それを生み出したのは、あなたであるというのにーーー

152146-151:2004/06/16(水) 10:40
>設置様
保管の際は、3、4、6それぞれの頭に一行空け願います。

<言い訳>
実は原作父君がわりと好きだった私。執政殿に対する巷でのあんまりな扱いには
涙を禁じ得ません。だからと言って、自分の書いているものが救済になるとも
思えませんが、次男坊に対する屈折しまくった愛情の片鱗でも感じて頂ければ
幸いです。
ソロンギルの話は余計と言えば余計なのですが、父君こちらにも屈折した愛憎を
抱いていそうなので、ちょっと触れてみました。

・・・にしてもmind reader同士の会話って疲れそー。書く方も疲れました。

153萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 16:31
弟が巣立ちの時期を迎えてちょっぴりさびしんぼな兄上(*´Д`) '`ァ '`ァ
愛情表現が複雑骨折してる父上(*´Д`) '`ァ '`ァ

そして
戦地が別となれば、これが今生の別れになるかもしれないと
毎度毎度出立前夜は5割増で濃厚な一夜を過ごすと予想。


(*´Д`) <・・・・・・。
(; ゚∀゚)=3

おいしく頂きました。ありがとうございます女神様!

154萌えの下なる名無しさん:2004/06/16(水) 23:26
>146-151様

後半、理屈ではない兄弟の愛情に、ひたすらに萌えました。
素直な兄上につられるのか、大胆に兄上と触れ合う大将に萌え。

前半、父上がソロンギル殿に抱いていた感情は、なかなかに複雑で、
父上の人生というものを考えさせられました。
大将にかつての自分を投影しているくだりには、大いに頷かせていただきました。
勝手な解釈ながら、立場の類似を認めればこそ、大将について理解もし、
甘やかしも出来ないのが父上かもと。
その父上に同情を感じる大将は、大人の格好良さをお持ちで、素敵。
惚れ直しました。

155<父上にとって大将とは?>1/2:2004/06/17(木) 21:44
二番目の息子は兄弟の父にとって、いかなる意味を持っていたのか。
人それぞれ解釈の違いをご理解いただける方向け。

以下ご注意。

・萌えなし・しるけなし・原作準拠。
・死に向かう父上・兄上死にネタ・死にかけ大将・デネソール視点。
・とにかく暗いお話。

>146-151女神様の素敵SSと共通した部分を含みますが、
これは、父の日が近いので父親話という発想に基づいた偶然の産物です。

2レス分使用させて頂きます。

<デネソールとファラミア、デネソールとボロミア/しるけなし>・1/2















 堅牢を世に誇ったミナス=ティリスの、城門が燃えていた。
 瀕死の状態ながらも帰館を果たした、もはやたった一人の息子は、黒の息の元に囚われようとしていた。
 デネソールが何より愛した長子も、彼なりに愛した妻も、とうにここにはいなかった。賢明にも最後まで父の元に残った二人目の息子さえ、仮に、運良く一命を取り留め得たところで、黒の息により、元のままの息子ではいられまい。その時には、もはやファラミアであってファラミアではない悪しき何かが、息子の肉体という殻を纏い、その悪しき者が戴くに相応しい主の元へと赴くのだろう。
 そのような勝手が許されて良い筈が無い。
 いかにあろうと、これは自分の息子だ。よって、これは誰にもやらぬ。悪しき存在にはいわずもがな、たとえそれが魔法使いだろうが、いずれ還り来る王だろうが、だ。

 自分は、旧い時代に生きた。自分の生の根拠は常に、そこに存在した。来るべき次代にではない。
 時代が、音を立てて動いていた。必然により、世のあり方は変わろうとしていた。動き始めた流れは誰であろうとゆるがせられぬ。人の子が、無力だからではない。動かせぬものこそを人は、運命と呼ぶからだ。
 その奔流の中にあっても、己の意志で決定されうる事は、必ず存在する。それは、己自身に対する己の処遇というものだ。
 
 虫の息にある息子が、もう一度口を開くやも、などというささやかな望みは、事ここに至っては、己を空しくさせるばかりだった。

***

 きっかけは忘れた。イムラドリス探索行へ単独で出立する直前だったと、時期については記憶している。おそらくは、ずっと心の内にあったのだろう。尊敬してやまぬ父に、珍しくボロミアが意見した。
「父上は、ファラミアを愛してはおられぬのですか」
 弟への愛情を隠そうともしない兄らしい言葉には、無条件に頬が緩んだ。
「なぜそのように聞く」
「父上のなさりようは、わたしとファラミアでは、幾分異なるよう思われてならぬのです」
「兄弟といえど、別個の人格であるという事に、よもや異存はなかろうな。個にはそれぞれ相応の接し方がある。そなたとて、そなたにとって同じく親とはいえ、この父と先に逝った母と、同一の態度を見せてきたとは言うまい」
 立派な体躯を持ち、総大将にふさわしく育ったゴンドール執政家の長子は、俯いた。
「そなたがいくつの時であったか。随分と、この父に対して我を主張し、手を焼かせおったな」
 思わぬところで話題が自分に移り、ボロミアは内心首をかしげた。

156<父上にとって大将とは?>・2/2:2004/06/17(木) 21:45
<デネソールとボロミア、デネソールとファラミア/しるけなし>・2/2

















「その時分の所行については、申し訳なく存じます。ただ、お言葉ながら、父上。あれは、人というものが形成途上にある折、必要な過程の一つであると、自らご教示下さったかと記憶しておりますが」
「わしは、過去を蒸し返してそなたを責めておるのではない。そなた、己の我によって父の愛情を失うかも知れぬとは、後にも思わなんだか」
「…実を申せば、些かもございません」
「であろうな。そして、そなたの認識は、たとえ無根拠にせよ正しい」
「有り難く存じます」
「そなたの目には余るらしい、あれに対するわしのやりようにも、そなたの弟は異を言わぬ。わしの見立てでは、そなたに不平不満を漏らした事すらなかろう。何故か?」
 目にしない事までをも見通しながら、なぜ肝心要である理由は分からぬのかと、喉まで出掛かった言葉をボロミアは飲み込んだ。ボロミアにとっては、相手が父親でなければ、手が出ていたかも知れない物言いに、声が震えた。
「それこそが、ファラミアが父上を、深く愛しているからではございませぬか」
「さもあろう。そなたがどう判断しようが、事実として、わしはあれを理解しておる。それだけではない。あれ自身もまた、わしを理解しておる。そなたの言う愛、とやらを持つばかりではなくな。ファラミアは、何事においてもわしの言に否は唱えず、従順を常とするのはそなたも知るところであろう。ゆえんは、今、申したところの理解にある」
 父親の言葉に、呼吸すら忘れたかのように耳を傾けていたボロミアの表情は、かつて結果として、泥で縄をなう程度の役にしか立た無かった詩歌の講義中にだったか、偶然垣間見たそれを思い出させた。
「そなたに言うべき事は全て伝えた。下がるがよい」
 ボロミアが父親の前を辞す前に、親子は、お互いへの慈愛に満ちた抱擁を交わした。
 ファラミアの助けになる言葉を、兄弟の父親から引き出すことは適わなかったと、ボロミアは思った。ゆえに、ボロミアは、その会話を己一人の胸に納めたまま旅立ち、逝った。

***

 今や、目の前にいる息子は、口をきくことも叶わなかった。
 己と同じ血を引き、同じ見える目を持つ息子にして、己が生涯で持ち得た最大の理解者、ファラミア二世は、ただ横たわり、父が手を差し伸べようとも決して触れる事の能わぬ死の淵を、孤独のうちに彷徨い続けていた。
 
 時、ここに至れり。

 息子が、己の知る息子であるうちに、己が決めた場所に共に赴こう。最後まで共にあった息子は、最後まで己が連れて行こう。たった一人で、自分の与り知らぬ場所に行かせたりはせぬ。なぜなら、ファラミアは我が子である。それ以上、何を言うことがあろうや?
 命令一下、執政家の忠実なる部下たちは、旧時代最後の執政、そして、ゴンドールの大将ファラミアの父親であるデネソール最後の下命を叶えるべく、動き出した。

 それは、父が与えるどのような処遇にも、決して揺るがぬ愛情と誤ることのない理解を以て応じる息子の思いの上に、それと知って依存し、彼の存在の限り彼に甘え続けてきた父の、一度たりとも父を裏切ることがなかった二人目の息子に対する、最後の甘えだった。

//おわり

157萌えの下なる名無しさん:2004/06/17(木) 23:30
>155-156様
えー、上の方でヘリクツ大魔王な執政殿を書いた者です(w
そうなんですよ、父君とご次男て、実はちゃんと、と言うか誰よりも理解しあって
いたと思うのですよ。理解しあっているから売り言葉買い言葉になってしまうと
いう・・・。ご次男に必要なのは果たして「理解」だったのか、とも思いますし。
間にはいって心痛める兄君には、それこそ理解や納得はできない、親子の在り方
でしょうね。

さて、執政殿にあんまりな扱いをしてくれた筆頭は、実はPJだったりする訳ですが、
某サイトさん情報によると、映画の父君、いまわの際にちゃんと
"Faramia...My son..."
と言って下さっているのだそうです。My son.のところは音声にはなっていない
のですが。よかったね、大将・・・とも言いにくいですよね。あの状況じゃ。

158萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 07:53
>146さま
>155さま

 映画での父上の扱いに憤慨していたことさえも懐かしく思えてしまうほど、
デネソールとしての息子ファラミアを想う心情に感動しました。
それと同時に、こう云った解釈をすんなりと納得させてくれる演技を見せてくれた
俳優さんの素晴らしさに、改めて感謝してしまいます。
 お二方共、素敵なお話をありがとうございました。

159萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 09:30
>157
Faramiaじゃなくて-mirだろ!これじゃローマ字だよ、と自分自身に言っておくw

これだけじゃ何なので、某所で見かけたネタ。
映画の執政ご一家の共通点は「鼻」だけにあらず。「美しい手」もあるのよ。
ちょっと中の人話に傾くけれど、お三方とも、大きいけどゴツくない手で、細く
長いきれいな指をしている。その手であんなこととかこんなこととか・・・と
妄想してしまったことは内緒w
本編では殆ど手袋をしていた弟君が、SEEではその美しい手をふんだんに見せて
下さることを期待しておきます。(何か間違っている気が・・・)

160萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 17:37
ああデネソール&ファラミア大将・・・このスレにお邪魔したのは初めてですが、こんなによいお話を見せていただけるとは!
失礼致しました。

>>146女神様
>>155女神様

素晴らしいSSをありがとう!。・゚・(ノД`)・゚・。

161萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 19:46
>159
あと、兄弟の中の人はどっちも「(国)の代表的セクシー俳優(w」ですよね。
父上の中の人ももしかしたら・・・とか言ってみる(w

セクシー一家(*´Д`)

162萌えの下なる名無しさん:2004/06/18(金) 21:38
父上の中の人もせくしぃデスヨ!!

ああ、ココ最近女神様日和で萌え萌えー

163萌えの下なる名無しさん:2004/06/19(土) 11:08
162タンと同じく、女神様日和で萌え萌えー

ファラミア様は、パパ&兄との関係が一番萌え
ゴンドールを代表するセクシー兄弟&父ということで…

164<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/6:2004/06/20(日) 15:05
個人的嗜好を除くご意見は適宜。

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/6 >133の続き

【苦手な方】護身推奨。専用ブラウザ+NGワード指定orスルー。
【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133
【私信】派生元現行スレご関係者各位 ご英断感謝。

6レス分予定。未完結。以下続く。














「体に、傷が付くかも知れません」
 セオドレドの言葉の意味が咄嗟に分からず、ファラミアは目を開いた。
「出来る限りのことはさせていただきますが。慣れてはおられないのでしょう」
 セオドレドが溜息を漏らすのを、ファラミアは初めて見た。セオドレドは、身を寝台の縁の側に寄せて、飾り棚から取り上げておいたたらしい何かを拾い上げていた。
「わたしは、傷も痛みも慣れております」
 ファラミアはほんの僅か、体を伸ばした。別に嘘ではなかった。鍛錬にせよ、まだ経験が少ないとはいえ、実際の戦においても、少しの傷もなく終えることなどほぼあり得なかった。
「そうでしょうとも。…本来は、そうあっていただきたくは無いのですが」
「ご心配は有り難く思いますが、このような世に、人々のあり方に対し大いに責任を持つべき家系の人間として生まれたからには、当然果たすべきつとめです」
 思わしげな目がじっと見つめてくる。
「私は、世を恨めしく思わずにはいられません。ファラミア殿も、それに、私の可愛らしい従兄弟も−−彼女はまだ幼いのに、剣の訓練をさせろと言って聞かないのですが。剣を持つこと自体はともかく、その先にあるのが戦場であるからには、おいそれと願いを叶えるわけにもいきません。大事な者を危地に置きたいと、願う者はおらぬというのに」
 意外な気がした。案外と心配性らしい。まるで誰かのようだと思い、そう思う自分に対して、首を振った。
「戦場でなくとも剣の技能が、彼女自身を救うということもありましょう。…ご心配はごもっともに思いますが」
 何もかも、自分らが背負おうとするのは、年長者の、あるいは同じ年に生まれた二人の習い性なのだろうかという思いが、ふと頭を掠める。ただ、彼らはなにも理解してはいない。広い背中の後ろに安住し、守られたいなどと、誰が思うというのだろうと。大事な者は危険から遠ざけておきたいというならば、その気持ちは誰であれ同じであろうと、なぜ気付かないのだろう。自分とて例外ではない。セオドレドの幼い従兄弟とやらも、おそらく。
「お聞き苦しい愚痴でしたな。面目ない。私に、お体を向かい合わせていただけますか」
 頷いて、セオドレドの手の助けも借りつつ、体の向きを変えた。腰骨の上に足をまたぐ格好になって、体の安定を図るため、セオドレドの肩に腕を預け、背で腕を交わらせて左右それぞれに掴まった。いかなる思いをもってか、セオドレドの腕が、ファラミアの体を息ぐるしさを感じさせるほどに抱き締めた。溜息と共にすぐに緩められたそれが、自分の背中で、ゆっくりとだが仕事をする気配がしていた。少しだけ首を巡らして見ると、セオドレドが手にしているのは、ガラスで出来ているらしい華奢な細工を持った小さな瓶だった。そこから、セオドレドが中身を彼の手に垂らすと、立ち上る甘い香りがファラミアにまで感じられた。
「冷たいようでしたら、ご勘弁を」
 セオドレドは自分の手の内に香りの良いそれを馴染ませると、ファラミアの後ろに手を這わせ、狭間を探った。
 セオドレドの体温が移ったそれは、冷たさを感じさせることなど一切無かったが、予想していたとはいえ、慣れない場所へ与えられた慣れない感触には、思わず身を竦ませた。ファラミアの感覚に間違いがなければ、皮膚を覆ってなま暖かさを感じさせるそのものの正体は、油だった。人の手が触れることの無い場所に油にまみれた指を滑らされると、ファラミアもさすがに、落ち着くどころではなくなった。意図しないで腰がセオドレドの身体をずり上がり、自分の後ろを揉みしだく無骨な指から、逃がれようとした。しかし、それが許されない事は、すぐに知らされた。ファラミアの片足に掛かった手が、彼の足の外側へそれを引いて、その場所から動かせないよう腕で抑えつけてきた。あまり安定感があるとはいえない姿勢を取らされて、セオドレドの体からずり落ちないよう、ファラミアはそれまでよりも強く、手にした肩にすがった。

165<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/6:2004/06/20(日) 15:06
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 2/6
















「大丈夫です。それほど辛くはありません。…初めは」
 明らかな含みのある物言いと声色に、全身が粟立った。狭間の中心がセオドレドの指に、緩やかにだが押さえられていた。苦痛というほどのものは無かった。油が、驚くほどの滑らかさで、セオドレドの、背丈に見合って長い指を、ファラミアの内側にくわえ込ませた。潤滑に優れていたお陰で、騒ぐほどの痛みを与えられずに済んだと言っても、否定しようのない異物感に、ファラミアの口から常ならぬ呻きが漏れた。
 本来、そこにあるべきではない、他人に所属する身体の部分は、決して長居をしなかった。が、まったく居なくなるわけでもなかった。浅い場所まで後退させた指に、セオドレドは瓶から油を足してきた。伸ばされた指を伝い、ファラミアの身体の内側と繋がっているその場所から、ファラミアの後ろの狭間にも、ねっとりと這うように、それは訪れた。もし、これが自分の体のためにも必要なものなのだと、ファラミア自身が納得していなければ、是非も問わず拭い取っていただろう。そういう類の、強烈な違和感を持つそれは、彼の指と、自分の肌を行くのには足りず、そこから溢れて自分の体の表面をゆるゆると流れて降り、おそらくは、初めにこの寝台でファラミアが触れた、素晴らしく清潔な敷布に染みていた。一度付着してしまえば、拭いようのない油の染みにどんな意味があるのか、当事者の片方であるセオドレド自身はともかく、当然いるだろう彼の部屋の世話をしている者はどう見るだろう。ふと、ファラミアは人ごとなのか、自分の事なのか判然としない不安にかられた。
 セオドレドは、彼が自分で洗うわけでもないだろう真っ白な布を汚して、何も構ってはいないようだった。だから、こうした事態は、セオドレドにはよくあることなのかも知れない、というよりも、間違いなくそうなのだ。
 自分の内側を再び訪れた異物に、思考は唐突に途切れた。一度味わわされたからといってすぐになじめるものではない。それでも、異物感に慣れる事だと、ファラミアは自分に言い聞かせたものの、理屈で割り切ったところで堪えることが叶わない何かに内側から突き動かされたように、顔をセオドレドの首に伏せた。
 なるべく手加減しながら歯を当てると、不思議に少しは気が済んだ。セオドレドが、喉の奥で笑った音が、聞こえたような気がした。身体のどこへたりとも無駄に力が入らないよう、ファラミアは意識して呼吸を深くし、自分の身体でなければ何であれ構わなかったものの、さしあたって、五感にはっきりと感じられるセオドレドの皮膚の事だけを頭に上らす事に決めた。そうして、散漫なのが最も望ましくない事だろうと、目を閉じた。改めて触れてみたセオドレドの肌とはいかなるものかと、興味のあるなしに関わらず無理矢理、感覚をそこに向けさせた。尋常ならざる事態にあっても、まだ感覚は正直だった。服の上からは決して想像もつかない滑らかさに、うっすらと滲む汗のにおい。それから−−。
 舌をセオドレドの皮膚につけてみると、かすかに塩の味がした。その分かりやすいものを除いた何かが、セオドレドの味なのだろうかと、ファラミアは、不意に愉快になって、セオドレドの肌をゆるゆると舐めた。とはいえ、本当は味などどうでも良い事だと自覚していた。ただ自分は、何かをしていなければ安定を保てない気がして、何にでも良いからすがりたかったのだ。
 自分を支える体から、深い息が吐かれた。
 何を思い描いて良いのか見失ったまま、ファラミアは、自分の体の芯を、かすかに上がってくる覚えのある感覚は、気のせいだと思う事にするしかなかった。そうでなければ、一度上り詰めることを思い出してしまった体は、それと望まず、簡単にそちらに向けてさらわれて行ってしまうだろう。

166<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 3/6:2004/06/20(日) 15:06
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 3/6
















 異物は、ファラミアの中を探っていた。身体の内側で動かされるその度に、くぐもった声が漏れたが、それは、意識して聞かないことにした。異物感は決して消える事がなかったが、それだけではない感覚を、体は確かに覚え始めていた。自分のことであるのに、自分自身奇妙な感じがした。しかも、それは、決して歓迎されざるものである異物感に取って代わるのかとさえ思えるほど、だんだんと存在を増し、それを意識せよとファラミアに聞きたくもないのに強弁し続けていた。音声ならば耳を塞げば、あるいは身体を遠ざければ足りる。しかし、自分の身の内のことは、如何様にもしがたいだけだった。
 だからファラミアは、気を逸らそうと、握力の限りにセオドレドの肩を手の内に掴んだ。内側を探る動きが、一瞬だけ、止まった。セオドレドにしてみれば、それは長年に渡り鍛え抜かれて完成された戦士が持つ力で加えられた暴力沙汰でしかなく、本音を言うならば、堪ったものではない強さを持っていた。それでも、何を言う気もなかった。ファラミアの望みならば、多少行きすぎた痛みといえど、甘受出来た。それよりも、ファラミアの体が、どこまで耐えてくるのかが気に病まれた。
 考えても始まらなかった。どのみち成されることに心を痛めるなど、馬鹿馬鹿しい事ではないか。気休めかも知れないが、余計な事は声色には出さず、セオドレドは告げた。
「少し、きつくなりますが。大丈夫です」
 返答はなかったが、頷くのが分かった。ファラミアの息づかいに耳を傾けながら、セオドレドは指を加えた。ファラミアの呼吸が、詰められたようだった。しかし、止めるわけにはいかなかった。ファラミアが、もし何かを耐えなければならないとしたら、まだ、これからの事だった。

 全身が、一つの感覚に支配されようとするのを、ファラミアは感じていた。恐怖とは違う。いや、恐怖かも知れない。自分自身どちらでも良いと分かり切っていることが、頭の中を行き来するのを止められなかった。感情に適当な名前を付けたところで、何の助けにもなるものではない。確かなのは、これは自分が望んだ事であり、そして、自分は逃れられないということだけだった。
 親切にも予告された通り、セオドレドが己の身の内側に指を増やすたび、身体が悲鳴を上げた。息苦しさと、下肢への誤魔化しようのない圧迫感とに、ファラミアの身体は苛まれていた。せめて、内側を穿つものをじっと動かさずにいてくれればと思う。思うが、声はもう出なかった。セオドレドの肩にすがり、ひたすら呻いた。それでも、声を上げずに済んでいる事だけは、救いと言えるのかも知れなかった。

 ファラミアの体温は、心地良かった。何ひとつお互いを隔てる邪魔も無く、それ以上なく直接にファラミアに触れている指にしみこむその温みには、指に触る内側の感触と共に、つい引き込まれそうになる。十分触れている筈であるのに、更に強くそれを感じたいと、セオドレドは念じる。念じながら、内側を貪る。ファラミアの、初めて聞く声は、セオドレドには媚薬に等しかった。それなのにどうしてここまで、時間をかけていられるのかと、己自身を訝りさえした。自分の身にそそり立つものは、手指ではなくこちらにファラミアを寄越せと、煩いくらいに訴えかけ続けているというのに。

167<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 4/6:2004/06/20(日) 15:07
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 4/6

















  しかし、セオドレドは決して忘れてはいなかった。何故、ファラミアがここに、こうしているのかを。
 顔を合わせぬまま過ぎた日々の後にも失せなかった滑稽なくらいの彼への思いこみは、ファラミアの姿形によるものでは、おそらくない。とはいえ、それが何者であれその内側に存在するものが、外側に必ず影響しないわけがない。だから、一目のうちにファラミアが自分を執着させずにはおかなかったのも、不思議はないといえばないが、その、内側に有しているものこそが、セオドレドにしてみれば、一つの奇跡だった。
 どのような物事にせよ、かれは一度は身の内に取り込み、そして、決して元の形ではその内に留めないのだろう。かれの内側に入れられたものは、どんなものでも、かれだけが持つ何かによって繰り返して濾され、かれにしか持てない、はじめとは別の形をした、きれいな何かになって、かれの内に堆積して彼自身を形作っていくのだ。誰しもが、そのようなもので構成されていくのかも知れないが、方法ではなく結果が、唯一見えるものなのだ。
 それが何かは知らない。が、ファラミアは、少なくともセオドレドにとって好ましいもので出来ている。
 ファラミアにとって、持ち合わせる濾紙は多様なほど、そして、漉されるのを待つ材料は、数多いほど良いのだろう。
 セオドレドに対する同情でも欲でも、ましてや、愛などというものでもなく、ファラミアは、ファラミア自身のために、今ここに、こうしている。欲深くも、素材を求めて。
 なるほど、かれは貪欲な教えられる者で、自分は親切極まりない教え手ではないか。たとえそれが、自分の身の内に、彼にとって咀嚼すべき何かが存在しうる間だけであってもだ。今、この時だけを見れば、異を挟む隙もないくらいこの関係は、確かなもので、そして、それは、人の一生から見れば、おそらくは、瞬きする間ほどもない僅かな時間でしかないだろう。
 だが、その今こそが、セオドレドにとって、恐らく最初で最後の好機だった。
 ファラミアにとって、真実自分が何者であるのかは、自分が教え手などという面白くとも何ともないものではなくなったその時に立っていられる場所から、初めて、決まっていくのだ。
 ファラミアは、見られるだけのものを、見れば良い。望むものを望むだけ得れば良い。この腕の中にあるものと引き替えとするのに、僅かでも惜しむべきものが、この身のどこにあるだろうか。

「ファラミア殿」
 呼びかけられたのは知れたらしいが、ファラミアは、顔を上げることも出来ないようだった。
 見える限りセオドレドが覗き込んだ顔は、どこをどう取ろうが虚ろだった。ファラミアには聞こえないように、ほんの僅か溜息を吐いて、セオドレドは瓶に入った油を、自分の煩い場所にいい加減に垂らすと、間違って中身をぶちまければさすがに面倒になるからと、身体を置いている場所から、入れ物を遠ざけた。
 今や、肩に触れているだけで精一杯らしく、力の無いファラミアの片手を、自分の肩から引きはがし、油を中途半端に浴びせたせいで、鈍く光を反射させている己の鬱陶しく主張する場所に導いた。掴んだ手は逆らわなかった。触れた場所を、自分の手の動きで導き、上下させてやると、さすがに肩を震わせていた。セオドレドの望みのまま、形だけにせよファラミアの手が、自分の欲を、彼自身の身に受けいれるための準備を整えていく様には、なかなかに高揚感を煽られた。が、それだけだった。

168<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 5/6:2004/06/20(日) 15:08
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 5/6

















 自分が何か、許されざる罪を犯しているような気に、セオドレドはいきなり襲われた。
 今、自分が手に抱いているものは、特別なのだ。二十年近く待ち、ようやく再びまみえた磨かれた宝物を、自分が得手勝手に扱えるなどと、有り得ることではない。思いこもうとする一方で、言い訳でしかないと思い始めている自分もまた、いるのだ。今更、くどくどと迷っているのが何よりの証拠ではないかと。
 真実を一言で言うなら、これは欲情だ。ご教授だのというきれい事に飾ったところで、この行為は、彼への欲情によって動いている。これは、その止めどのない発現でしかない。
 おそらくは自分の言葉を信じて、慣れない身体を任せている彼を、それと望まず裏切るのだろうか、自分は。考えるほどに身が竦んだ。揺らぐ自分の心を打ち消すように、セオドレドはファラミアの内から、入り込める限りの数と深さで抉っていた指を、ゆっくりと引き抜いた。
「あ…」
 安堵からなのか、自分の声などもはや意識してはいないのか、顎を反らしたファラミアの頬が自分の肩に触れ、切ない喘ぎと吐息に、首筋をくすぐられていく。
 セオドレドは、もう迷ってはいられなかった。ファラミアの腰を自分の腰の上にさし上げるよう両手に持ち上げ、ファラミアには彼自身の膝で、体重を支えるよう誘導した。定まらない体に、難儀している様子のファラミアの肩口に何度も口づけ、殊更優しげな口調を作って、囁いた。
「何一つ、困難な事はございません。ゆっくりと、腰を落として座る。なすべきは、たったそれだけです」
 それだけ、などで在るはずはないと知っていながら事も無げに告げたのは、意識しての事だった。事に至れば嫌でもその身に知れることを、わざわざ事前に語り、不安の材料を余分に与える必要など、これっぽっちもない。
 ファラミアは、セオドレドが驚くほど素直に頷いた。
 思い通りにならないらしい身体を、もどかしさを隠そうともせず緩慢な動きでセオドレドに預けてくる。体重が降りてくる前に、自分で自分の抜き差しならないものをファラミアの狭間にあてがい、ファラミアが間違いない場所に降りてこられるよう、自分自身を手で支えた。
「苦痛は、ほんの初めだけです。ご心配は無用に」
 声色を作って知った嘘を重ねる。初めだろうが終わりだろうが、経験を重ねて体が行為に慣れるまでは、辛いに決まっているのは分かり切ったことだった。正確を期すならば、初めがとりわけ辛い、というべきところを、ファラミアへの気休めというより、ファラミアの翻心を恐れる余りに、自分自身のために嘘ばかりを並べ立てる。それに何の抵抗も無い自分に、嫌悪を感じないわけではない。が、自分が手に入れようとしているものと比べれば、些細なものでしかなかった。
 ともかく、欲しいのだ。仮に、彼が今身を引こうとしたならば、それを笑って受容することなど到底出来そうにもないくらいに。最初で最後の好機に、後も先もない。失うわけにはいかない。ここは勝手知ったる自分の寝室だ。傷つけまいという選択を捨てさえすれば、人一人どうにも出来ない事などないとばかりに、自分は行動出来るのだろう。それは、考え得る限り最悪の事態だった。だから、それを回避するためならば、嘘など安い物だとさえ思う。

169<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 6/6:2004/06/20(日) 15:08
<セオドレド×ファラミア/しるけあり> 6/6 【今回ラスト】















 支えた身体が震えた。
 他人の一部を受けいれようとした場所に、その狭さには到底見合いそうもない体積を持つものが触れて、気後れしたのかも知れなかった。正直なところ、焦れた。ならば、せいぜい、焦らされておこうではないか。
「難しいのですか。それとも、抵抗感があられる」
 ファラミアは、進みもせず、かといって引きもせず、言葉なく首を振るばかりだった。
「少し、休みましょうか」
 片方の膝の上に腰を落とさせ、片手に包み込んだ顔を自分の方へ向かせ、口づける。舌をファラミアの口腔で誘うが、弱々しく触れてきただけで、すぐに力を失った。そんな様も愛おしいといえば愛おしく、両の腕をまだ完成途上の若い体に回して、抱き寄せた。
「わたしには、教わる資格が、無かったのかも知れません」
 訥々と漏らされる言葉に、セオドレドは舌打ちをしたいような気分になった。今ファラミアが告げたのは、今、もっとも耳にしたくない言葉ではなかったか。が、それを言っても始まらない。逃がさなければ、それでいい。
 乱れた髪に、乾いている方の指を差し入れ、子供にするのと変わらぬ程度に、ゆるくかき回し、頬に顔を寄せた。
「何を、教わるおつもりでしたか」
「…頭で、物を考えぬ事をと」
「成る程。ファラミア殿は、まだしっかりと頭を働かせておられる。もっとも、ご無理と悟れば中途で終えるのも、賢いやり方と言えましょう。ファラミア殿のご判断であれば、私も何も申しますまい」
 突き放す言葉は本心などではなく、最後通牒を突きつけられる羽目になるかもしれない賭けだった。ファラミアは、あるいは烈火のごとく怒るかも知れない。そうすれば、ファラミアにとって自分は、教え手ではない何者かにはなれるわけだ。多分、無能か、忌み嫌われる者という位置で。
 自虐的な考えが浮かんで、セオドレドは苦く笑った。
 表情を見られていないのを良いことに、自分の肩口で俯いて下唇をかみしめているファラミアに、畳みかけていく。
「今、ファラミア殿にとって私は何者です。そして、ファラミア殿は?」
 セオドレドの視線に、それまでになくきつく射抜かれて、ファラミアは喉を詰まらせた。それでも、まっすぐにセオドレドに顔を向け、目を見据えた。誇りと矜持のいずれかでも、ファラミアの内に無かったならば、それすらも決して出来なかっただろうが。だが、それだけだった。彼の、直接の血縁者を除いては誰一人として聞くことが無いような、張りを失った弱々しい声が、セオドレドに答えた。
「セオドレド殿は、教え手で…私は、教わる者です」
 そして、それきりファラミアは口をつぐんだ。ファラミアは、決して目を閉じようとはしなかった。その代わり、ファラミアは何度も瞬きをした。はっきりと目を開けば、そこには濡れた双眸が恐らく見えるのだろう。しかし、ファラミアは、それをセオドレドの目に晒すのを、自分に許さなかった。
「ならば、どうなさいます」
「…仰るとおりに、と」
 ファラミアは、緩慢にだが自分から腰を上げた。

【続く】

170<エオメル/ファラミア>カップリングなし 1/2:2004/06/21(月) 19:19
執政一家萌えのところ失礼します。
セクシー執政一家話、おいしくいただきました。
兄貴スレとどちらか迷ったのですが、大将好きなのでこちらに。
エオメル/ファラミアのしょーもない小話です。

登場人物…エオメル/ファラミア、ちょい役…エオウィン 
名前だけ登場…エレスサール、ロシーリエル
ネタバレ原作追補編前提、指輪戦争終結後、エオメル視点、カップリングなし

これを含め、2レス使用させていただきます。

<エオメル/ファラミア/カップリングなし> 1/2















 エオウィンと、ゴンドール執政家のファラミアが婚約したというので、両者の身内を集めての会食が持たれた。エオウィンの実兄であるローハン王・エオメルも、当然その場に出席した。幸せそうな妹の笑顔を複雑な気分で眺めつつも、会は、和やかな空気の内に締められた。
 エオウィンが席を外した時、エオメルはちょっとした違和感に気付いた。原因は、ほどなく自分の義弟にとなるファラミアにあった。気のせいでなければ、ファラミアは、瞬きしないで対象物をじっと見つめていられる猫のように、自分の顔を注視していた。
 ゴンドール執政家といえば、表だって口に出すのはさすがに憚られてはいたが、人間性に加え、男性としての性的魅力に満ちた人物ばかりであると、エオメルの故国・ローハンでも、もっぱらの評判だった。ご婦人方にとっては、真実かも知れぬと他人事として聞いていたエオメルだったが、実際に噂の人物を目の前にすれば、それが己の浅はかな誤認であったと、認めざるを得なかった。
 そのファラミアに長々と見つめられては、さしものエオメルとて心安らいではいられなくなった。だから、エオメルは、ことさら落ち着いた顔を作ったつもりで、ファラミアの元に歩み寄った。
「突然に失礼を。先ほどから、私の方をご覧になっておられたようですが。ご用がございましたか」
「いえ」
 ファラミアは、目を細くして笑った。笑うとまた、それが眩しく感じられてエオメルには珍しく、視線を合わせての会話が困難であるように思わされた。
「ローハンの方は、お国で一番美しいものを、惜しげもなくわたしに下されました」
 ファラミアは言ったが、惜しくないわけがない。エオメルは心中で毒づいた。しかし、妹の幸せのためである。余計な波風は立てまい、と自分を戒めた。
「それが、エオウィンの望みであるからです」
「やはり、兄君であるエオメル殿にとっても、エオウィン姫は、ローハンで一番美しいものなのでしょうね」
 間接的にせよ、身内を手放しで褒められて、エオメルは単純に表情を緩ませた。
「もちろんです」
「そこで、わたしは思ったのです。エオウィン姫がローハンで一番美しいなら、その、たった一人のご兄妹であるエオメル殿は、ローハンで二番目にお美しいのかも知れぬと」
「は?」
 その人物を評する基準として勇猛果敢さはともかく、美を持ち出されたことの無かったエオメルは、間抜けな声で応じざるを得なかった。
「それで、ご結論は」
「血のつながりは、ご兄妹に全ての形質を受け継がせるものではない、ということでした」
 エオメルは、決してファラミアから美的に称揚される事を期待していたわけではなかった。しかし、面と向かっての低評価を、喜ぶ輩もいない。
「お二人とも、何のお話ですの」
 折良くエオウィンが戻ってきて、話が途切れた。
「エオウィン姫が、いかにお美しいかというお話を、エオメル殿とさせていただいていたのですよ」
 エオウィンは顔を赤くして目を伏せた。自分には決して見せることのない、どこの乙女かという可愛らしい姿を、事も無げに妹から引き出すファラミアに対し、エオメルは逆恨みまがいと分かっていながら、この、可愛いが可愛くない年上の義弟に、先ほどの礼も含めて、いずれ目に物見せてくれようと、心の中で誓った。

171<エオメル/ファラミア>カップリングなし 2/2:2004/06/21(月) 19:25
<エオメル/ファラミア/カップリングなし> 2/2















 復讐の機会は、思わぬところから訪れた。
 エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒル大公イムラヒルの息女であるロシーリエルと縁合って夫婦となる事になった。
 それを知らせたときのファラミアの顔は、エオメルには痛快極まりなかった。しかしその様子は、一方で、拭いきれない違和感を湧き起こさせた。
「義弟殿。それではまるで、ご自身が花嫁の父のようです」
「何とでもおっしゃるが良い。わたしが、彼女をどれだけ可愛らしく思っていたか、義兄殿はご存じないのですから」
 未だに、ファラミアはエオメルを「ぎけいどの」と呼ぶ。兄と呼べというのも酷な話だろうと、エオメルも薄々は理解していた。彼にとって「兄上」とは、旅の途上に落命したボロミアの他に存在しえないのだろうから。
 幾度かローハンに立ち寄っていたボロミアの武勇は、エオメルも知るところであったし、実はかなり尊敬もしてたので、彼を見舞った悲劇を、今はゴンドールの王となったアラゴルンから初めて聞かされたときには、それほど近しい関係にあったとも言えない自分でさえ、悲痛な思いがしたものだった。それが、たった二人の兄弟であれば、その心中はいかばかりであろうか。
 末子として生まれているせいか、ファラミアが彼よりも年若い者、か弱い者に殊更情をかけるのは、エオメルも知るところとなっていた。ただし、会食時の態度から言っても、野郎は対象外らしかったが。 
 それでもエオメルは、不意に鼻の奥につんとした痛みを感じた。
「義弟殿の大切な従姉妹殿を泣かせるような真似は、このエオメル、決して致しませぬと、ここに誓いましょう。ですから、どうぞ、お心を安らがせ下さい」
 涙ながらに熱弁をふるうエオメルに、ファラミアは寂しげに笑って見せた。
「義兄殿のお気持ち、確かに頂戴致しました」
 そして、エオメルの額に、柔らかいものが触れた。
「な、何ですか、これは」
 口づけられたのだと気付いて、エオメルはファラミアから数歩飛び退き、自分の手で額を抑えた。
「感謝の気持ちです。義兄殿は、わたしに下さらないので?」
「なぜ、私が」
 まだあたふたとして、酒酔いでもないのにろれつが回らないエオメルに向けて、ファラミアは穏やかに言った。
「誓いを立てる時に口づけを贈り合うのが、わたしどもの習わしなのです。それで、義兄殿は正式に誓われるのですか。それとも、お取り下げなさるのですか」
「取り下げるなど」
 後に引けるはずもなく、エオメルは大股にファラミアに歩み寄り、目を不必要なまでにきつく閉じて、ファラミアの額に唇を触れさせた。
「ありがとうございます。わたしも、これで心安らげましょう」
 微笑むファラミアは、いつかの会食の折と同じく、やはりエオメルの目にも魅力があるものとして映った。
 美しい妻に義理の弟。幸せそうな妹。それらを思うと、エオメルは、自分がとんでもない幸福の中にいるように思えて、また涙ぐんだ。

 かねてより昵懇の仲であるゴンドール王エレスサールから、ゴンドールにかくなる習わしなど存在しないという真実を告げられるまでの、ほんの短い幸せだった。

//終わり

172170-171:2004/06/21(月) 19:30
訂正。

>170 二段落目。
誤>エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒル大公イムラヒルの息女〜
正>エオメルは、義弟となったファラミアの叔父、ドル・アムロス大公イムラヒルの息女〜

以上です。

173萌えの下なる名無しさん:2004/06/21(月) 20:17
>170-171女神様
かわいい兄貴と大将、すごく素敵なお話でした。
ほのぼのでしみじみ。彼らはこれからきっといい「家族」に
なるんだなあと暖かい気持ちに。ありがとうございました。

174萌えの下なる名無しさん:2004/06/21(月) 20:49
>170-171様
兄貴、なんか可愛いなあ。大将、あんたやっぱりヘンな人だw
両国の友好と発展を象徴するかのようなお話、ありがとうございました。

>164-169様
続きが読めて嬉しかったです。しかもまだ続く!?
いつも、「ひー、この先どうなっちゃうの」とドキドキしながら読ませて
頂いていますが、ぎりぎりまで高まる緊張がどう決着するか、見届けたいですね。







いろいろたいへんな思いもされたかと思いますが、あなたのSSを待っている住人も
いることをお忘れなく。
私も、前スレから何回かSSを投下させて頂いておりますが、普段は一住人として、
それこそ多彩な萌えを楽しんでいます。セオファラも、今までなかった視点での
展開に心惹かれます。ぜひ完結までつきあわせて頂きたいですね。

175萌えの下なる名無しさん:2004/06/22(火) 22:13
大将の多彩な萌え万歳。
そこで、大将萌え選手権@ゴンドール。※くだらないネタが許せる人向け。

大将に多彩に萌えてる者の筆頭は、言わずと知れたベ(ry。
ゴンドールに、もし大将ファンクラブがあったら、この人は絶対入ってる。
会員ナンバーは当然一桁台。
当然グッズコレクター。
これまでレアアイテムゲットのために、オークションに身代傾くほどつぎ込んで、
妻にしかられたのも、一度や二度ではきかない。でもオークションは止められない。
地下でこっそり行われてるオークションで、ベ(ryがいつも競り負けてしまう
宿命のライバルの正体は、多分兄上(知らない方が幸せなこともある)。

業務日誌に続いて、大将がどうしたばかりの秘密日記を書くのが、ベ(ryの日課。
立場上、隠れ大将萌えなせいで善良そうなホビットには反動から、つい次々と本音が。
大将萌えこそ我が人生。

しかし、ベ(ryは、兄上の恐ろしさと特権を知らない…。

176萌えの下なる名無しさん:2004/06/22(火) 23:16
大将は大将で兄上ファンクラブの会長とかしてそうですね(w
名誉会長は父君か?
そう言えば以前、ゴンドールの財政の為にご兄弟のブロマイドを売り出す父君
・・・とかいうネタがありませんでしたか?しかし、兄と弟がお互いの分を
買い占めにかかり、僅かに残った弟君の分はベ(ryがかき集めてしまった為、
結局財源確保にはならなかったり。

ベレファラもいろいろ妄想はしているのですが、どうにもへぼんな設定しか
思いつかず・・・報われているんだかいないんだか、または報われなくても
幸せ、なのか、そのポジションの微妙さが好きです(w
出会ったばかりのホビットも、息子までも、自分の萌えに洗脳しようという
はた迷惑なヤツでもあるな・・・W

177萌えの下なる名無しさん:2004/06/23(水) 21:16
>ゴンドールの財政の為にご兄弟のブロマイドを売り出す父君
「ブロマイド」で検索したら、前スレ70番でネタが出てました。
それのことかな?

コピペ「イオナズンのガイドライン」
ネタ一部いただきました。>176様



面接官「特技は大将萌えとありますが?」
ベ(ry 「はい。大将萌えです。」
面接官「大将萌えとは何のことですか?」
ベ(ry 「執政家のご次男を慕うことです。」
面接官「え、次男?」
ベ(ry 「はい。次男です。実の父親から、長男の代わりにお前が死ねば良かったとまで言われます。」
面接官「・・・で、その大将萌えはミナス・ティリスにおいて働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
ベ(ry 「はい。執政殿の命令に反逆して大将のお命を死守します。」
面接官「いや、ミナス・ティリスには大将の命を狙うような輩はいません。それに命令に反逆するのは犯罪ですよね。」
ベ(ry 「でも、近衛兵にも勝てますよ。」
面接官「いや、勝つとかそういう問題じゃなくてですね・・・」
ベ(ry 「ペレグリン君や自分の息子を、大将萌えに洗脳出来るんですよ。」
面接官「ふざけないでください。それにペレグリン君って何ですか。だいたい・・・」
ベ(ry 「ホビットです。小さい人とも言われてます。ペレグリン君というのは・・・」
面接官「聞いてません。帰って下さい。」
ベ(ry 「あれあれ?怒らせていいんですか?語りますよ。大将萌え。」
面接官「いいですよ。語って下さい。大将萌えとやらを。それで満足したら帰って下さい。」
ベ(ry 「運がよかったな。今日は語り尽くすには時間が足りないみたいだ。」
面接官「帰れよ。」



キングゲイナーのがはまりそう。

178萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 12:12
そうきたか(w
キングゲイナーコピペも好きなんだけど、そっち方面の才能がなく、自分じゃ書けない・・・
職人さんカモーンですだ。

179萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 17:44
自分も無理っす。
まじで言うとSS女神様のご光臨もいただきたい。

元ネタ ゲイナー告白
シャア専用板 続・コピペ参上?キングゲイナー ヨリ
繋ぎにドゾ-(AA略




そうだ!
どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!
職人さん!
光臨キボンだァー! 職人さん! 待望しているんだ! 職人さんー!
レスをする前から
光臨キボンだったんだ!
光臨キボンなんてもんじゃない!
職人さんの技をもっと知りたいんだ!
職人さんの技はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
職人さんを賞賛したいんだァ!
勢い余って新スレに移行しちゃうくらい賞賛したーい!
心の声は
心の叫びでかき消してやる! 職人さんッ! キボンだ!
職人さんーーーっ! 待望しているんだよ!
ぼくのこの心のうちの叫びを
きいてくれー! 職人さーん!
萌え対象が同じになってから、職人さんを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
待望ってこと! 光臨キボンだってこと! スレ住人に振り向いて!
職人さんがスレ住人に振り向いてくれれば、ぼくはこんなに苦しまなくってすむんです。
優しい君なら、スレ住人の心のうちを知ってくれて、ぼくに応えてくれるでしょう
ぼくは君をスレ住人のものにしたいんだ! その卓越した技と卓越したすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
投下を躊躇わす輩がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる!
でも職人さんがぼくのキボンに応えてくれれば戦いません
ぼくは職人さんを讃えるだけです! 君の技の奥底にまで礼賛をします!
力一杯の礼賛をどこにもここにもしてみせます!
礼賛だけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから
喜びを分かち合えるのなら、もっとふかい礼賛を、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
職人さん! 君がスレの中にベ(ry/大将しるけたっぷりSSを投下しろというのなら、やってもみせる!


ついでに原文。

そうだ!
どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!
サラ!
好きだァー! サラ! 愛しているんだ! サラァー!
エクソダスをする前から
好きだったんだ!
好きなんてもんじゃない!
サラの事はもっと知りたいんだ!
サラの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
サラを抱き締めたいんだァ!
潰しちゃうくらい抱き締めたーい!
心の声は
心の叫びでかき消してやる! サラッ! 好きだ!
サラーーーっ! 愛しているんだよ!
ぼくのこの心のうちの叫びを
きいてくれー! サラさーん!
クラスが同じになってから、サラを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
愛してるってこと! 好きだってこと! ぼくに振り向いて!
サラが僕に振り向いてくれれば、ぼくはこんなに苦しまなくってすむんです。
優しい君なら、ぼくの心のうちを知ってくれて、ぼくに応えてくれるでしょう
ぼくは君をぼくのものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
恋敵がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる!
でもサラさんがぼくの愛に応えてくれれば戦いません
ぼくはサラを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします!
力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます!
キスだけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから
喜びを分かち合えるのなら、もっとふかいキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
サラ! 君がツンドラの中に素っ裸で出ろというのなら、やってもみせる!

180萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 17:56
リクエストのものではなくて申し訳ないです。
「ユッキーはそれから2年後に死んだ。」ネタ、大将バージョンで。

できれば映画で接触のあるメンツだけで、と思ったのですが、
ベレゴンド親子だけ入れてしまいましたw
人数をちょびっと削ってあるのと、内容いろいろウソっぱちですが、笑って許して・・・

そしてゲイナーネタ!私も激しくきぼん!







父上と兄上が亡くなってからもう随分経ちました。
あの戦争が終わり、王が還ってきた今では、思い出す回数がほんの少しだけ
減ったかもしれません。
ゴンドールにいないみなさんには、戴冠式以来なかなか会えていません。
だから最後にお会いしたのは、もう何年前なのでしょう。
ベレゴンドはその忠誠を買われて白の部隊隊長です。
早くも鬼隊長とか呼ばれて、みんなに畏れられています。
べアギルもついに入隊してしまいました。理想の隊員像は父親だそうです。
ピピンはホビット庄に帰郷後パパになったそうで、しかも子供に私の名前をつけたらしく、
オメデトウというかなんというか・・・気恥ずかしいです。
エオウィンは現在イシリアンに住んでいます。私がミナス・ティリスで執務中は
絶賛文通中、週末婚というものになってしまいました。
五通に一通はすごい手料理付の返事が返ってくる、可愛い奥さんです。
ミスランディアは西へ渡ったらしいです。西の国でまた花火を上げているのでしょうか。
高齢に見えますがあの方達の年齢の感覚はわからないので、ぜひもう一旗揚げてほしいです。
フロドも西の国らしいですね。もう指輪をころがすこともないのでしょう。
サムはホビット庄長になったのですが、時々手紙で庭の手入れについて教えてくれる
親切なホビットです。
そういえばあの時にいたもう一人・・・ゴラムってどうなったんでしょうね。

そして私は今・・・
いろいろあったのですが、まだ執政をやっています。
王はまたオーク狩りと言って外に出てしまいました。
お強いのはわかっていますが、ちょっと心配です。
私自身は、あれから戦闘には参加していません。
・・・しかし兄上、そして、父上。私は最近思うんです。
できることならあの日のオスギリアスに戻って、貴方達とお酒でも飲みたいって・・・

181萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 19:22
"Remember today, little brother."

・゚・(つД`)・゚・

182萌えの下なる名無しさん:2004/06/24(木) 20:05
>180
笑いながら読んでいたら、最後にきて・・・
SEEの特典にはいっている、執政ご一家&ゴンドリアンの記念写真は、わが心の
アルバムにおいても宝物ですよ。

話はそれるけど、他の所で書けないのでここで、というネタ。
どこで見たかは忘れましたが、オスギリアスでの兄上演説後、兵士たちの間を
すり抜けるように大将が駆け寄って行く大将の姿が*ヲトメ*だった・・・と
いうので見直したら、本当でした(w
おまけに、海外でもそれがツボだった人がいるのか、某所でそこのカットが
キャプられてるし・・・
(以下、微妙に中の人話なので下げます)




総じてあの追加エピソードの、中の人の演技って・・・元来、天然な芝居など
決してしない演技派だけに、兄上の前でだけヲトメなファラたん、というのが
彼の解釈なのか!?と思うと、萌えていいんだかいけないんだか。

183182:2004/06/24(木) 23:15
ごめん。後半に書いたようなことはレスを求めている訳じゃないのだ。
ただこう、胸にたまっていたものを吐き出したかっただけなのだ。
(ここ以外に持っていきようのない話題だしw)
そんな訳で、引き続き職人さん&女神様降臨キボンヌ。

184萌えの下なる名無しさん:2004/06/25(金) 00:48
ユッキーネタ>180様GJ!





コピペ 元ネタ "ところでめぐみって萌えないか?"

キングゲイナーはどなたか頼みます。

原作ネタバレ映画混合で語り手は兄上。元ネタのノリの兄上が許せる人だけ。













ところでゴンドールのファラミア大将というのは萌えぬか?
萌えぬか?

あれは、善良なホビットに誘導尋問を仕掛けるのですぞ? 黙っておれば、可愛い髭面の弟なのであるが…
夜な夜な辺境の警備をしておるし。美味しい扱いは父上からいただけぬし…… 涙目の上目遣いを振りまくし。口も上手であるし・・・

しかし 萌えるのですぞッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
うおおぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
誰よりも!!ゴンドール内の誰よりもッ!!中つ国の誰よりも萌えるッッッッッ!!!!!!
萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌え!!!!!

ファラミアの頭を抱えてその髪の毛のにおいを嗅ぎますぞッ!!!!!
ファラミアの簡素な野伏衣装をめくりあげて足を擦りあげてやりますぞッ!!!!!
ファラミアのその帷子を静かに解いて野戦服の上から胸を撫で付けてもいますぞッ!!!!
ファラミアは寝間着は何を使っておりましたかな!?絹のローブか不正直者には見えぬという不思議な衣服であったか?不思議な衣服一択!!
ファラミアは石鹸は何を使っておりましたかな?ドル・アムロスの海草石鹸か?東夷製は不許可!!
ファラミアは下着はちゃんと高価にしてケバ立たない逸品を使っているのですぞ600年以上も風雨に晒された得体の知れぬ腰布は不許可!!
ファラミアは銀器の他では葡萄酒は飲みませぬぞ!生水を直に飲みませぬぞ!死者の沼地に生息する魚はつままぬ!!
ファラミアは作戦前の食事でさえ食前の黙想は欠かしませぬ!不調法な思いをしたホビットが弁明すれば、主人への礼はわれらとてしますと、追い打ちをかけますぞ!!
バター付きパンは両手ではむはむ食すのですぞ!その時上目使いでこちらを見ますぞっ!!そして恥ずかしそうに微笑みますぞッ!
当然じゅうの肉なぞ口にしませぬ!!塩漬け肉か干した果実!!
もしくは上等の赤チーズですぞ!そしてファラミアと親密なキスを交わすと上等の赤チーズの味が交換されるのですなチクショー!!

おさらば

185萌えの下なる名無しさん:2004/06/27(日) 02:05
ちょっと前、リオソの兄上スレで、弟は盾乙女と結婚したけど兄上はどんな
女性を妻に選ぶのか、という話題が出たことがあって、その一連のレスを
読みながら、「要するに兄は弟みたいなタイプ、弟は兄に似た感じの人を
妻に選ぶ(選んだ)のですね?そうなのですね!?」と書き込みたくなる心を
必死で抑えておりました・・・

186萌えの下なる名無しさん:2004/06/27(日) 23:31
>>184
我慢してたけど最後のおさらばで吹いてしまった

187萌えの下なる名無しさん:2004/06/28(月) 00:40
>184
通りすがりの者ですが
不調法な思いをしたうえ追い打ちをかけられたホビットのファンとして
吹きながら肯いてしまいますた。

188<セオドレド/ファラミア> 1/4:2004/06/28(月) 13:37
流れ遮ります。4レス分予定。
苦手な方は護身推奨。
嗜好を除く要素についてのご意見は適宜。


<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/4

>169の続き 未完結 以下続く。

【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169
【私信】>164-169へのレスをありがとうございました。












 このような事態にあっても、賢明であるのだ。
 そう思うと、セオドレドは、誰が一体そうさせているのかも忘れて、涙の一つもこぼしたいような気分に襲われた。
 他人の助けなど必要無しに、ファラミアは自分の成すべき事を成す事が確信されたので、一切の手出しは無用であるどころか、障害にしかならないだろうと、両腕は自分の肩幅で背中側について、ファラミアが受けいれなければならない部分だけを別に、セオドレドは楽な姿勢をとった。
 ファラミアは間違いなく知っているのだ。行為は、自身の意志で、自身の手により成された事であるのだと、誰の目にも明らかに、というよりはむしろ自身が得心行く形を作らなければならないということを。
 ならば、自分に出来る事など、せいぜいが、ファラミアにとって都合良くなるよう、大人しく身体を差し出しているくらいのものだ。そして、ファラミアは、彼自身が欲しているものを自分で見出し、その所在と在り方を自ら知るだろう。
 なりゆきは決して悪くはない。彼も自分も、自らの欲しているものを満たし、望むものを得るのだ。まれに見る双方共にお得な取引ではないか、これは。
 それを取引だと信じているのが、ファラミアだけであり、そう信じさせるようにし向けたのが、他ならぬ自分だとしても。
 ファラミアの片手が、セオドレドの肩を掴んで彼自身の身体の安定の助けにしていた。余りにも僅かなので、触れ合っていなければ分からないだろうくらいに、それが小刻みに震えているのが知れた。彼の別の手は、自分が受容すべきセオドレドの部分を、間違えないよう保持するために使われていた。
 事ここに至って、肩を緊張させたのは、セオドレドの方だった。
 自分のものよりも高い位置にある顔を、とても見開く気にはなれない目を細くして仰ぐと、間近に見えたそれは、見間違いでも、愚かな願望が見せる幻でもなく、薄く、笑みを浮かべていた。どんな表情を返して良いのか決めかねているところに、ファラミアの顔が近づけられ、唇が額にやんわりと触れてきた。セオドレドは、つまり、和めば良いのだと得心して、腕に体重を預けるのを片方だけ放棄すると、その手でファラミアの頬をまさぐった。一瞬だけ、くすぐったがる子供のような表情を浮かべたファラミアは、次に気付いたときにはもう、その残滓さえ窺えないくらい、セオドレドが見たはずの心地良いもの全てを、顔から消し去っていた。
 セオドレドの下肢に跨った格好で浮かされていたファラミアの腰が、沈んだ。触れ合わされるべき部分の、体温が交換される形になると、頭の上に聞こえる呼吸が意識してだろう、深くなった。やり方さえ誤らなければ、触れ合った異物の行き場は、それがどんなにあり得ない事としか思えなかろうが、一つしかなかった。
 声も出なかった。
 蝋燭の薄明かりだけが暖かみを醸すほの暗い部屋は、人の呼吸だけが支配しているようだった。
 行為の行方を逃すも逃さないも、ファラミアが自身で選択するさじ加減一つで決まるのだと、ファラミアも理解しているに違いない。そして、ファラミアは捕らえる方に、確実に進んだ。決して望んでの事ではないだろうが、セオドレドの目に映ったファラミアは、煩悶をその表情に伴わせていた。もっとも困難な部分が窮屈そうに身の内に飲み込まれたところで、息を入れようというのか静止したファラミアの背に、セオドレドは片腕だけを回した。必要な体勢を維持しているだけでやっとだろう体を抱き締める代わりに、ファラミアが自らの体重を支え、落とし方を加減しているのに使用している膝を、もう片手で容赦なく払った。姿勢を崩させないために背は支えてやったが、制御を失った体は、自然の摂理に逆らえる筈もなく、下にしていたセオドレドの体に触れるまで、止まらなかった。
 ファラミアの口から、身も世もないような叫びが上がった。
「うあ…」
 高い声が途切れた後も、どのようにして落ち着けば良いのかを探しあぐねているように、ファラミアは声を絞り出し続けていた。

189<セオドレド/ファラミア> 2/4:2004/06/28(月) 13:39
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/4













 他人の一部をセオドレドが望む以上の形で、身の内側にすっかり飲み込んだ愛しいものの背を押して、体をセオドレドは自分の胸に倒させた。他人の出方を構える場合ではないせいか、要求されたまま簡単に身体を預け、ファラミアは僅かの身じろぎも自分に禁止しているかに見えるほど、じっとして動かなかった。それはそうだろう。と、セオドレドも思う。ファラミアは、痛みには慣れているとは言ったが、受けいれたその場所には、生身をヤスリで削がれる程度の苦痛は、当然受けているに違いないので。
 知りながらも、折角触れ合った腰を勝手に浮かされないように、ファラミアの膝の裏に手を入れて、片方ずつ足を真っ直ぐにさせた。
 ついおとといまでは姿を見ることさえ叶わなかったファラミアが、これ以上の身体的接触は望みようもないほど近くにいる。
 それが、全てであるようにセオドレドは思う。一方で、身体は苦痛の一歩手前に、向き合っているのも事実で、行きすぎは何にせよ、本来はそうではないものでさえ、好ましくないものへとその性質を変化させてしまうのだ。
 生身の他人を受けいれた場所を自分の意志で弛緩させる術を、無理もない事だがファラミアは持ち合わせてなかったので、行為に慣れない体は、ファラミアにとっても、苦痛を増すばかりだというのに、加減をしらずセオドレドの身を締め上げてきていた。その証左と言って良いのか、さすがに声こそは上げなかったが、自分の腰の上に体重の全てを預けているファラミアの息は、自然荒くなっていた。
 ファラミアに苦痛を味わわせたいわけではなかった。だから、ファラミアが見せている姿は、どこかセオドレドの胸の内まで苦しくさせるものだった。
 それなのに、否定しようのない恍惚感は、抗いがたくセオドレドを突き上げていた。それを振り捨てるように、ファラミアの顔を覗くと、彼自身が向かい合っている感覚を持て余しているのだろう事が、ファラミアの表情からはありありと見て取れた。彼は、形の良い眉を寄せ、うつむき加減に息が乱れるに任せていた。
 セオドレドは手を伸ばし、呼吸の妨げにならないよう、ファラミアの耳を隠している髪に触れた。
 汗のために、それはしっとりとして指にも、掌にも張り付いてきた。濡れているのは、自分の手かも知れないが、どちらでも良かった。その内側では各々が勝手な物に目を向けているにしても、事実として、今、自分とファラミアは同じ物を分かち合っているのだ。そう思うと、身体には何も原因が無いのに、目眩さえしそうだった。それは、遠い昔に初めてファラミアを見たときの感覚に、少しだけ似ていた。
「んん、ん…」
 意味をなさないうめき声と共に、多分、手持ちぶさただからだろう。ファラミアの両腕がセオドレドの背に回されてきた。
 正直で無防備で、一見頼りなさげに思える姿には、これはどんなに、か弱く保護が必要な生き物なのだろうと、つい惑わされそうになりさえした。だが、セオドレドは幻惑を真実であるかのように自分に思いこませようとするほどには、お人好しにはなれなかった。それでも、ファラミアの体が寄り添わされると、自分自身、それが何であるのか決して理解してるとは言い難い自分の心の内にあるどこか深い場所が、充足を訴えてくるのが明瞭に知れた。
 今感じるそれと、同時に、ファラミアの内側で脈打つ欲惚けたものの存在も認めつつ、さて、身体の充足とそれと、どちらにより重きをおくべきなのだろうかと思いかけ、やめた。まるで別の部分に属しているものが、直接の比較の対象になりうるわけがなかった。自分とボロミアと、どちらのあり方が、より幸福であるのかを考えるのが無意味であるのと同様、意味をなさない比較でしかない。

190<セオドレド/ファラミア> 3/4:2004/06/28(月) 13:40
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 3/4















 ファラミアの呼吸が割合と落ち着いてきたのを見計らい、それは、結び合わせる事が出来るものであるということすら、忘れてしまったかのようなファラミアの唇に口づけた。柔らかく唇をはむ事で応えてくるファラミアに、セオドレドは少しだけ安堵した。
 セオドレドの思うところによれば、必要なのは、ファラミアの体を僅かでも慣らすだけの時間だった。
 だから、セオドレドが掛けた言葉に深い意味は、本来は無かった。
「好きなもののお話を、致しましょうか」
 余裕が無いなりに訝しげな顔が、セオドレドに向けられてきた。
「あれは…終わりでは」
 意識と体を保持しているだけで精一杯だろうに、唐突な問いかけにも答えを返さないではいられない律儀さは、誰に教わったのだろうかと思わされる。どこまでも好ましく、同時に、何故かある部分では痛々しい。
 それでいて、ファラミアは、自分の気を逸らすためだけに、自分の頭を預けている他人の肩口に、緩く額を擦りつけてくる。場合によっては、行為に伴うただの儀礼、あるいは小賢しい演技である以上の感想を得られるものではないそれも、今、行為を見せている者の手にかかった途端、自分が何故ここにあるのかという、最も頭から追い出してはならない事さえをも、簡単にはぎ取っていってしまいかねない、魔法か何かのように思えて仕方がなかった。それは、ファラミアが負うべき責ではなく、だからこそ、セオドレドにとっては質が悪いものとして作用するのだ。その程度を自覚することは、まだ、セオドレドにも容易だった。
「はじめに挙げたのは私、途切れた時も私でした。ということはです、」
 皆まで言わないうちに、ファラミアの顔が緩慢にセオドレドの方に向けられた。
「そう。ファラミア殿の番が一つ分、残っております」
 ファラミアの口が何か言葉を紡ぐかのように開かれかけたが、すぐに、忙しない息の一つと共に失せたのに、がっかりしなかったといえば、嘘になる。
「ファラミア殿は、口を休めて、身体を使うのをご希望ですか」
 言わんとすることが理解されたのだろう。ファラミアは大儀そうに首を小さく何度か振った。予想はしていた。だから構わないはずなのに、セオドレドは急いている自分に気付いた。
「それで結構です」
 言葉を掛けながら、セオドレドがファラミアの腰の後ろに手を回し、尾てい骨に押し当てた指を、腰の終わりまで撫で上げると、ファラミアの体がセオドレドの腰の上で、跳ねた。体に、それまでよりも一層強く、背に食い込むかと思わされるほどファラミアから腕を巻き付けられて、セオドレドはようやく自分が成すべき事を自分の身に、取り戻せたかのような気になれた。
 顔を肩に伏せたファラミアの呼吸は、それまでになく荒く、肌に熱かった。
 観念したのか、ほんの呟くほどの声が、耳をくすぐってきたけれども、意味を持った言語としては聞こえてこなかった。
「何と、おっしゃったのです」
「何…も、と」
「あれらの他、何も?」
 ファラミアは、何も無いと言った。ファラミアの口から漏らされる掠れた音から、なんとか意味が取れたそれは、セオドレドが考えるところによれば、少しだけ本当で、少しだけ嘘だった。

191<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/4:2004/06/28(月) 13:42
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/4 【今回ラスト】














 ファラミアは適当な何かを口にすることもできただろうが、そうはしなかった。だから、いい加減な答えは決して返さないという意味では、その言葉は本当だった。しかし、生を受けて二十年近くになろうかという人間が好ましく思っている事物が、片手に足りないほど挙げたそれで全て、などという事が有り得るだろうか。ファラミアは、そんな言葉を他人に信じてもらえるなどと、本気で考えているのだろうか。だから、皆無だというファラミアの言葉には、故意か否かは知らないが、間違いなく少しの嘘が混入されている。
 ファラミアが、答えるべきものを持たないのではない。口にするのを憚っているのか、あるいは自分の内でそれを、存在しないことにしているのだ。
 口に出来ない何かを、ファラミアは胸の内に、自分自身それを抑圧しながら抱え込んでいる。恐らく、好ましく思っているものであるにも関わらず、だ。要は、それは人目に晒せないほど大切なものだ。つまり、ファラミアが見せたのは、彼自身の自己欺瞞である。そう考えるとしっくりきた。
 とはいえ、ファラミアが口にしないそのものが、セオドレドにしてみればあまりにも見え透いているのに、他人である自分にさえ明らかなものを、自分自身からも隠しおおそうとしている事こそが、セオドレドにはあまり愉快ではなかった。
 路傍の花の一つ一つにいちいち注目し、感嘆する者はそうはいない。しかし、同じものが一輪だけ仰々しい庭園の奥深くに人目を憚るようにひっそりと大切そうに置かれていたならば、どうだろう。どんなに価値のある植物であるのかと、多くの者が思うのではないか。つまり、大切に仕舞い込み、他人の目から遠ざけようとすればするほど、隠された物は、隠している者にとってどんなに重大であるのかが、露見されるのだ。
 そんなことにすら、ファラミアは本当に気付いてはいないのだろうか。
 それにしても、もし、その諸々が真実ならばあまりの扱いではないか。と、セオドレドは思う。望まない言葉を口にする事からは逃れられないならば、何でも良い、僅かでも好ましい何かの名前を挙げるという類の事で、ファラミア自身は苦しい言葉から逃れられる上に、目の前にいる人間の安心が買えるのは明々白々だというのに、ファラミアはセオドレドの心情を安らがせるためになるそれさえ、与えようともしないのだ。それとも、その可能性すらも頭に上らないのだろうか。

 賢明で知に貪欲で、内面を裏切らないうつくしい姿形を持ち、そして、何も知らないファラミア。

 セオドレドが望まれたいと渇望を抱く対象は、紛れもないそのファラミアだった。
 さて、一体、自分は絶望すれば良いのだろうか。
 自問の答えは、考えるまでもなく否だった。今は今、これからはこれからだ。
 分からないなら、確かめれば良い。欲しければ手を伸ばせばいい。手をつかねていては何も変わらない。許されるか否かは、自分が決めることではない。けれども、選択の結末が、どのような形で着地するにしても、それは自分の行為によるものなのだ。誰一人として例外などない。ファラミアも、自分も。
 ならば、成すべき事は一つしかない。ファラミアが既にそうしたように、選択を成すことだ。
 セオドレドは、自分の体の両脇にそれぞれ伸ばされたファラミアの足の、両膝に腕を入れ抱えると、触れ合った場所が少しも離れないよう注意を払いつつ、否を言わせる暇を与えず、自分よりも細いファラミアの体に、じわりと体重を押しつけた。

 【続く】

192萌えの下なる名無しさん:2004/06/29(火) 01:51
>185
言われてみれば確かに(w
そしてこんな風景を考えました。
ネタスレの方が相応しいような話なのでちょっと下げます。


<<MHK(ミドルアース放送協会)の番組・「中つ国・この人3017」でのひとコマ>>









―― ここで、お二人に理想の女性像を伺ってみましょうか。(一同微妙な笑い)
   初めにボロミアさん、貴方の理想は?

B「そうだな、わたくしの場合、出過ぎず己の分を弁えた者が良い。
  といって、自分の意見なく従う者では駄目だ。芯は強く持たなくてはな。

―― なるほど、おしとやかだけれどもしっかりとした女性ですか。ではファラミアさんは?

F「私は兄とは違って(二人顔を見合わせて笑い)、活動的な人が好きです。
  傍にいて、活力を与えてもらえるような。私自身が屋内に篭りがちなので・・・

B「無理に引っ張り出して日に当ててやれねばならんのだ。(笑い)

F「(笑い)そう。それくらい元気な方がいいですね。

――ずいぶん好みが分かれましたね。では次に、容姿の好みを聞いてみましょう。

B「容姿?(しばらくの間)・・・そうだな、(ファラミアを見てから)腰の細い方が良い。(笑い)

――細身が好みですか。では小柄な人の方が?

B「(再びファラミアを見て)いや、身の丈にはこだわらん。さすがにトロルほどあると困るが。

――ははは。(どんな女だYO) ファラミアさんは?

F「(ボロミアをじっと見て) 肉感的な方が好み、ですね。

――おっと、意外ですね。

F「そうでしょうか。(笑い)ああ、でもウルク=ハイほどになるとちょっと勘弁していただきたい。

――あはははは。(だからどんな女だYO!)あとそれから、顔立ちなどはどうですか?

(二人、顔を見合わせる)

B「(ファラミアを見ながら)目の色は青。髪はふわふわとした巻き毛で、色はそうだな、
  わたくしと同じくらい。高貴な血を色濃く表した顔立ちをしていて、

F「(ボロミアを見ながら)緩く巻いた癖毛を肩の辺りまで。瞳は緑、日に透かすと綺麗な
  金に変わる茶色の髪をしている人で、

B/F「(同時に)鼻は高めで。

―― (なんでこんな具体的なんだろう・・・)あ、ありがとうございました。
 えーでは次のコーナーですが〜・・・


(以下割愛)

193萌えの下なる名無しさん:2004/06/29(火) 21:58
>188-191様
そろそろおいで下さるかと思っておりましたぞ(w
緊張感が途切れぬ展開に、そしてファラミアの(本人あまり自覚してなさそうな)
痛々しさにハラハラです。まだ続くって、そんな・・・でも、これだけ心理描写を
書き込んでいらしたら当然ですね。おとなしく次を待ちます。

>192様
公共の電波(ってどこから!?)を使って何を語っているのか、この兄弟は!
これじゃ父上も引き離したくなる訳だ、と同情申し上げ・・・いや、そんなことで
同情されてもお困りでしょうな。
実は>185を書いたのは私なのですが、つまらぬネタをふくらませて下さって、
ありがとうございました。

194萌えの下なる名無しさん:2004/06/30(水) 11:19
理想の女性談義にかこつけて、公衆の面前で
お互いを自慢し合ってるのですねこの兄弟は。

二つ返事で出演を承諾した兄上(※目立つの大好き)に
渋々同調してみたものの、よく考えてみれば、兄上と一緒に
仕事が出来る上に、どさくさに紛れて兄上語り(別名のろけ)を
する絶好のチャンスではないかと思い直してノリノリな大将。
ではありますまいか。

仲良し兄弟に、父上ジェラシー(※実は混ざりたい)。






コピペ。
元ネタ「アンパンマンにインタビューしました」
ファラミアver.











執政家次男にインタビューしました。

Q1「あなたの名前はなんですか?」
A1「ファラミア二世」

Q2「お仕事は?」
A2「主に名を言うもはばかるアレに困ってる中つ国の助けになる事」

Q3「休息がもらえない時、痛くはないのですか?」
A3「正直、めちゃくちゃ痛い。一度泣いた」

Q4「嫌いな人は誰ですか?」
A4「名を言うにはばかる者」

Q5「本当ですか?」
A5「はい」

Q6「本当の事を言って下さい」
A6「父上」

Q7「それはどうしてですか?」
A7「自軍が負けた次の日、よくわたしの野伏部隊の中に傷病兵を混ぜるから」

Q8「それはどうしてですか?」
A8「たぶん嫌がらせ」

Q9「ペレグリンさんをどう思いますか?」
A9「声は可愛い」

Q10「愛妻、エオウィンをどう思いますか?」
A10「どっちかというと、小さい人の方の料理の腕前を、妻のにして欲しかった」

Q11「ファラミア一世という偽物がいますが」
A11「意味わからん」

Q12「一番嫌いな味方は?」
A12「ベレゴンド」

Q13「それはどうしてですか?」
A13「いや・・・誰でもあれはヒク」

Q14「マドリルに一言」
A14「お前だけ原作にないぞ」

Q15「いやな思いでとかありますか?」
A15「前に一度、命からがらで退却に成功したとき、戦況報告やら作戦会議やら次なる任務やらのために、ほんのちょっとしか休んでないのに、部屋に呼ばれた」

Q16「誰にですか?」
A16「父上」

Q17「それはどうしてですか?」
A17「たぶん嫌がらせ」

Q18「駄目になった部下をよくどこかに放逐しますが、あれはその後どうなるんですか?」
A18「ただの野伏になる」

Q19「では野営地などはどこにあるのですか?」
A19「君達の行かないあたりだけどひみつ」

Q20「でも、その元部下が喋ってたという情報もありますが」
A20「えっ!!??」

195192:2004/07/01(木) 01:28
>193-194
きっとこの前後で、お二人とも互いのことをこれでもかと公共の電波に乗せて
中つ国全土に発信しておられることでしょう(w
聞いただけでオナカイパーイになりそうだ。

そしてMHKネタを引っ張って恐縮ですが(w
話があったとき、極めて乗り気な兄上が大将を強引に引っ張り出すのではないかと予想。

<<以下、MHK出演決定時の光景>>






B「ファラミア、MHKから出演依頼がきていたので、承諾しておいたぞ。
F「そうですか、楽しんできてくださいね。
B「なにを他人事のように言っている?もちろんお前も行くのだ。
F「��(゚д゚) そのような話は初耳ですが!
B「そうだったか?では今聞いたので問題なかろう。「中つ国・この人3017」という番組だ。知っているな?
F「(´д`;)
 ・・・?たしかその番組、ゲスト一名が原則では?
B「そうか、では今回が特別なのだな(´∀`)
F「・・・なにかなされましたか、兄上。
B「人聞きの悪い。局の上層部に確認を取っただけだ。ミナス・ティリスの双翼たるゴンドールの大将を、
 よもや一人しか呼ばぬなどという愚かな事はなさらぬだろうな、と。
 彼らは快く承知してくれたぞ(´∀`)アオイカオシテタケドナー
F「・・・貴方という人は。
B「いいではないか、たまにはこのような仕事であっても。・・・それとも、わたくしと一緒では不満か?(´・ω・`)
F「不満など!嬉しいに決まっているではありませんか!
B「では共に出てくれるな?
F「もちろんです。
B「(・∀・)ではこの依頼受諾書にサインをしておくように。
F「えっ(・д・;)既に承諾なされたという話では・・・
B「あちらにはな。お前からの承諾は今もらうところだ。(´∀`)
F「・・・(・ω・;)(謀られた?)



そして物陰からパパン。

壁 |Д゚)
D「・・・(何故執政家3人で出演するよう掛け合わんのだ(゚Д゚#)ゴルァ!)
D「・・・・・・(゚Д゚)
D「(´・ω・`)

  ● λ..........................
パラソティア


--------------------
おそまつ。

196萌えの下なる名無しさん:2004/07/02(金) 01:51
最後にワロタ。そうか、それでデネ侯やさぐれてしまったか...

197萌えの下なる名無しさん:2004/07/02(金) 21:16
小ネタいきます。
MHK出演叶わなかったさびしんぼう父上と、
某所での、兄上が生きてたらエオインシチューを平らげてたにちがいないというお話を
拝見して思い付いたものです。
ご発言者の皆様の意図をねじ曲げてるかも知れません。
他意はありませんのでご容赦を。




<ファラミア/ボロミア、ファラミア/父上/親子群像>









 ローハンに出向いていたボロミアが、ミナス・ティリスに帰投してきた。
 出迎えたファラミアにボロミアは、挨拶の抱擁もそこそこに、一つの包みを手渡した。
「これは?」
「ローハンの土産だ」
「それは、ありがとうございます。しかし、お珍しい事もあるものですな」
 物見遊山の場合はともかく、公務に際してボロミアが何かを持ち帰る事などほとんどなかったので、ファラミアはボロミアの行動を嬉しく思う一方、不思議でもあった。
「今回のは特別なのだ。何せ、ローハンの姫が手ずからこしらえたという、焼き菓子であるからな」
「なるほど。ならば、わたしは兄上と共にいただきとうございますが」
「…わたしは、もうかの国で十分堪能してきたのでな。だからファラミア、それは全てそなたのものとしてよい」
「分かりました。有り難く頂戴致します」
 ボロミアは、旅の疲れが残っているとかで、早々にファラミアの前から姿を消した。

 さて、デネソールは一部始終を見ていた。
 そして、ファラミアはデネソールが見ていたことを知っていた。
 ファラミアは素知らぬ顔で父親に近づくと、ボロミアから貰った包みを差し出した。
「兄上はおっしゃいませんでしたが、わたしは、父上に召し上がっていただきというございます」
 デネソールは、冷笑を浮かべた。
「このようなもので、父の機嫌を取ろうという腹であるか」
「兄上の気持ちを慮ってみたのですが。ご不要でしたら、やはりわたしが頂きます」
「待つのだ。ボロミアの心遣いを無にするわけにはいくまい」
「それでは、こちらは父上に」
 包みはデネソールの所有となった。
 兄がせっかく自分にと与えたものを手放すのが少しも惜しくないといえば嘘になる。しかし、それ以上に、父親が喜ぶなら、物が手元になくとも満足だった。

 翌日。
 ファラミアは、困惑していた。
 ボロミアは姿を見せないし、父親がいつもにも増して、自分に対し冷徹な態度で接してくるのだ。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。


 終わり。

198萌えの下なる名無しさん:2004/07/03(土) 10:40
某所ではイシリアン大公、王様から「今すぐ料理人を雇え」とか勧められていたなあ。
ゴンドール、ローハン両国の友好にまで影を落としかねない姫の手料理、おそるべし。

何をやってもお互い嫌がらせにしかならない親子関係というのも悲劇だな、とマジレス。

199萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 02:05
兄上が姿を見せないのは気まずいからかそれとも本気で体調を崩したのか(w
そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。


でもって、改編コピペネタ吉野家ファラボロ。死にネタ注意。
似たようなのが以前ありましたらご容赦。









そんな事より父上よ、ちょいと聞いてください。任務とあんま関係ないですけど。
このあいだ、大河の岸辺に行ったんです。大河の岸辺。
そしたらなんか川上から小船が流れてくるんです。
で、よく見たらなんかそれに乗って、兄上がどんぶらことやってくるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、いまどき桃太郎の真似なんかしてんじゃねーよ、ボケが。
桃太郎だよ、桃太郎。
なんか靄まで出てきたし。幻想的ふいんき(←なぜか(ry)出してんのか。おめでてーな。
よーしパパベルファラス湾まで行っちゃうぞー、とか無言で語ってるの。もう見てらんない。 パパじゃないし。
お前な、今すぐつかまえてやるから止まってくださいと。
兄弟の再会ってのはな、もっと嬉しいものであるべきなんだよ。
凱旋のスピーチの後で人目もはばからず抱きあったり杯を交わしたり、
互いの無事を喜び合う、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。悲しみなんか、すっこんでろ。
で、やっと手が届くと思ったら、船の中の兄上が凄い荘厳な表情で、後を頼む、とか語ってるんです。
そこでまた涙腺ぶち切れですよ。
あのな、無言の帰還なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
綺麗な顔して何が、後を頼む、だ。
お前は本当に後を頼みたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、本当は生きて還りたかったんだろうがと。
弟の俺から言わせてもらえば今、兄上はかなり、満ち足りた表情、これだね。
何かを成し遂げた男の表情。これが一番いい顔。
兄上ってのは丈高き偉丈夫。おまけに鼻筋の通った顔立ち。これ。
で、それが今は何の曇りもない顔。これ最強。
しかしこれ以外の表情はしないし二度と動かない、いわば抜け殻。
それだったら悩む兄上の方が何万倍もいい。
まあ俺は、おとなしく去っていく船を見送ることしか出来ないんだってこった。

200萌えの下なる名無しさん:2004/07/04(日) 23:47
>199
うおおおお、なんだかすごく悲しいぞ。読んでる方もアンドゥインに身投げ
したくなるくらいです。いや、マジで。

それにしても、ここの住人さんで若葉に行かれた方はおいでなのでしょうか。
199のシーンも、弟君の必殺うるうる目も大画面で見たかったけど、悲しいやら
萌えるやらで、他のお客さんも大勢いる所では困ったことになりそうです。

201萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 01:00
>>199 GJ!
吉野家に涙する日が来ようとは…・゚・(ノД`)・゚・

>>200
今日行って来ますた。
よりによって弟君回想シーンでビニール袋ガサガサさせたヤシがいて
殺意を覚えますた…。兄と父の会話シーンでもだ。
これが最後の映画館鑑賞になったら悔しいのでもう一度行く算段を
しようかと思ってますだ。片道2時間かかるけど。

202萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 09:49
>199様
多分、大将が見せた生涯で一度の悪態。
大将にとってどんなに過酷な場面だったか。
普段の大将からは考えられないあの悪態がすべてかと。



余韻さめやらぬまま、>197に関するフォローらしきもの。
登場は、ファラミア、兄上、エオウィン。
置いてきぼり弟君。得手勝手兄上。








 ほとぼりが冷めた頃を見計らい、憔悴したファラミアの前に、ひょっこり現れたボロミア。
「顔色が優れぬぞ。よほどあの菓子が合わなかったと見える」
「おっしゃる意味が分かりかねますが、菓子ならば、父上に差し上げました。それより、なにゆえ嬉しそうなのですか、兄上」
「嬉しげであったか? それで、父上は」
「ご体調はさておき、ご機嫌の方が如何ともしがたいのです」
「召し上がってしまったのだな…さもありなん」
「何です?」
「気にするな。独り言だ。わたしは父上のご様子を伺って来る」
「ならば、わたしも参ります」
「ならぬ。話がこじれる元だ。この兄に任せよ」
 取り残され、釈然としないファラミア。

 月日は過ぎ、ファラミアは美しく成長した、かのローハンの姫を娶った。
 ファラミアは、新婚にして生まれて初めて彼女の手料理を口にした。
 その時、ファラミアのどこかで、くすぶり続けていた謎が一瞬にして全て解けた。
 そういうことだったのだ。あの日、父親は、ファラミアが菓子の出来を知って父に押しつけ、やっかい払いをしたのだと、誤解したに違いない。
「お口に合いませんでしたの?」
 考え事に気を取られていたファラミアに、可愛い新妻が心配げな顔を見せた。
「まさか。兄が生前、野宿時に作って食べさせてくれた得体の知れない食物に比べても、随分と良い」
 ファラミアにしてみれば、どのような点であれ、今なお慕わしい兄より優れているというのは、最大の讃辞だったのだが。
 エオウィンは、まだ途中だった食事を無言のまま下げた。
 取り残され、釈然としないファラミア。
 しかし、いくら考えても、ファラミアをしてその理由はまったく分からなかった。




 フォロー?終わり。


>そしてファラミアが食べて倒れでもしたらどうしたんだろうなど謎は尽きません。

ベタベタなところで、
後ろ暗さから世話を焼く兄上。小さな幸せを噛みしめる大将希望。

203萌えの下なる名無しさん:2004/07/05(月) 22:23
>202
ひどいよ大将、じゃなくて大公殿下w いや、もっとひどいのは兄上か。
ファラミアって本当に、聡いんだかヌケてるんだか・・・このスレの大将が、
ということかも知れませんが。

>199
しかしあの状況って、兄上から見れば、いちばん会いたかった人に最後に
会えたということなんだろうか、とも思います。
残される立場にとっては、たまったもんじゃないけれど。

204萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 00:58
>202様
そのベタネタに萌えますた(*´Д`*)
僭越ながら、「大将が食べた(そして倒れた)Ver.」で、その後の小話など。







-------------------------------------------------------------
「ファラミア!」
 乱暴に開け放された扉が騒々しい音を立て、ベッドに臥せっていたファラミアはやっとの思いで目を向けた。
 大股で入ってきたボロミアは、恐ろしく不安げな顔で枕の際にかがみこみ、ファラミアの顔を見る。
「倒れたそうだな。大丈夫か?」
「ええ・・・」
 曖昧に頷くと、ボロミアはますます弱った顔をし、ファラミアの腹をさすり、頬を撫で、額に手をやる。
「腹の具合はどうだ。吐き気は治まったか?頭痛は」
「・・・兄上」
 なんでそんなに的確に症状を言い当てられるんですか。
 ファラミアは思ったが、そう尋ねる間をボロミアは与えてくれなかった。
「ああまったく、お前がわたしほど強健ではないと何故思い至らなかったのだろう。それとも疲れて
いたのだろうか。ともかくお前は繊細だから」
「兄上」
「それにしても倒れるとは、よほど参っていたのだな。この際、少し静養するといい。幸い危急のこともない」
「兄上ってば」
「そうだ、その間はわたしが世話をしてやろう。何でも言ってみるがいい。何が欲しい。ん?」
「・・・・・・」
 もしかして貴方原因に心当たりあるんですか等々、問い詰めたい気持ちは大いにあった。
が、それもこれも最後の申し出の前には吹き飛んだも同然だった。
 答えを促すように顔を覗き込んだボロミアに、ファラミアはニコリと微笑み、
「では、林檎が食べたいです」
「いいぞ、剥いてやろう。それから?」
「食べさせては貰えないので?」
「食べさせてやろうとも。他には?」
「それから、歌を聴きながら眠りたい」
「・・・お前はわたしに何をさせたいのだ」
「昔は歌ってくれました」
「うるさくて眠れぬと文句を言ったのはお前ではないか。・・・・・・まあいい。だが、やめてほしくなったら
すぐに言え。まだあるか?」
 ファラミアが首を振ると、ようやくボロミアは笑顔を見せて、弟にキスをした。
「また思いついたら言うがいい。では、望みのものを持ってこよう」
 そうして行きかけたボロミアだったが、ふと扉の前で振り返って、
「眠ってしまいたければそうして構わないからな」
「いいえ」
 ファラミアは小さく笑って答えた。「待っています」
 遠さかって行く足音を聞きながら、ファラミアは久々にのんびりとした気分で目を閉じた。

―――――――――――――――――
で、しばらく後に戻ってきた兄上は、幸せそうな顔でまどろむ弟を前に、起こしていいものやらと
悩むことになるわけで。

205萌えの下なる名無しさん:2004/07/07(水) 21:08
世話焼き兄上ってば、弟を実は構い倒したくて
仕方なかったのではなどと邪推。
これでもかとばかりに甘える大将も、
兄上心をよく分かっておられるようで、微笑ましく。
たっぷり和ませていただきました。



いらんことに、
>204様小話の続きを妄想。







悩んだ挙げ句、添い寝という名案(自画自賛)を思い付いた兄上。
人の布団に潜り込み、ファラミアは昔から良いにおいであるな、などと
浸ってるうち、添い寝のつもりが、お約束通りに熟睡。
寝苦しさで目が覚めてしまった大将は、寝台を占領しつつある兄上を発見。
仕方ない人だとか思いつつ、上掛けを具合良くかけ直してやる大将。
ボロミアが持ち込んだりんごは、不器用にいびつな形で刻まれていて、
どこから見てもボロミア本人の手によるもの。
まどろんだ時間の分、切り口はちょびっと茶色に変わってしまってたりして、
お世辞にもきれいな物ではなかったけれど。
大将は、兄上の寝顔を見つめつつ、大切そうに、そのりんごをかじるのですねえ。
りんごは甘くて酸っぱい至福の味がするに違いないです。

そして、唇に残ったりんごの香りを、眠りこける兄上の唇にお裾分けする大将。
幸せとは、一人で味わうものではなく分かち合うものだから。







一転、本日付某全国紙朝刊プロ野球欄見出し"お兄様ギラギラ"より妄想吐き出し。
当該選手ファンの方、申し訳ありません。


<天体観測執政兄弟> 



場所はミナス・ティリス城壁のどこか。時は深夜。人影は二つ。
頭上には満天の星。
夜の闇では星が、わたしたちの位置を教えてくれるのですね。
などと、夜空をあおぐ大将の横で、よりにもよって、
"お兄様ギラギラ"。

兄上ヤバイです。兄上の身に一体何が起こったのかと。
大将は、お星様よりも兄上を観察するべきではないかと思います。

206萌えの下なる名無しさん:2004/07/08(木) 13:48
(・∀・)イイ!
>205
スリーピングビューティー逆バージョンで。

待っているといったのに、と苦笑する兄上。
椅子に座って目覚めを待ちながら、りんごを一欠片つまみ食い。
全部食べてしまうぞ、と言ってみるものの、相変わらず寝こけたままの大将。
悪戯心で口移しをしてみる兄上。

 りんごのかけらがファラミアの口にころりと転がり込みました。
 すると、どうでしょう!
 みるみるうちに、ファラミアのほおに赤味がさし、彼はぱっちりと目をさましたのです。


って白雪姫かよゴ━━━(#゚Д゚)=○)゚Д)、;'.・━━━ルァ!!


ところで"お兄様ギラギラ"はわかんなかったです。
兄上の体が光ってたってこと(;´Д`)?

そういえば昨日は七夕だったですね。
大河によって引き裂かれた2人が唯一会える日・・・
大将も年に一度兄上に会えたらいいのに(つД`)

207SS投下1/7:2004/07/09(金) 10:56
流れ遮ります。7レス分予定。
苦手な方は護身推奨。
完結します。終盤に向かうほどにへたれ度UP。ご注意。


<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 1/7

>191の続き 完結編

【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,88-191

















 意志のかけらも無いかのように、ファラミアの体は易々と寝台とセオドレドの体の間に挟まれた。苦痛はあるのだろう。セオドレドが見たファラミアは、目を閉じ、口を引き結び、彼の内側にもたらされるあらゆる物を、耐えているようだった。せめてもと、額に張り付いた汗を手で拭ってやる。少しでも、表情が和らいでくれれば、どんなにか助かるだろうと思う。彼に行おうとしていることを思えば、随分と勝手な言い草だったが。
 仰向けに転がった体の腰に、セオドレドが腰を寄せると、堪えきれないのかくぐもった声がファラミアの口から漏れ出でる。それ以上を聞きたい衝動を、ファラミアの体に回した腕に、力を込めることでやり過ごす。セオドレドにとって、今最も気に掛けなければならないのは、ファラミアの体を自分から逃させないことだった。だから、足をすくい上げた腕を、ファラミアの汗ばんだ背に回して体同士をひどく密着させた。
 忘れてはいけない。自分は、選択を成したのだ。
 思い起こすと、ファラミアの首元に顔を寄せ、低く笑った。それは、ファラミアの目から、自分の表情を隠すためだけの行為だった。
「質問を、変えましょうか」
 顔の間近にある耳に囁くついでに、舌で柔らかなその耳朶の形を辿ってやると、抱き込んだ体の肩が、小刻みに揺れた。人間の体のうちでも、とりわけ滑らかな舌触りを持つ耳の後ろの味を、堪能しながら答えを待つ。ファラミアは、その口元に耳を寄せればやっと聞こえるほどに小さく、音を漏らしていたがそれは、どう聞いても意味のある言葉ではなかった。ファラミアの意志が窺えるとすれば、ただ、首を振る、その行為からだけだった。

 分からない。
 体に与えられる不慣れな刺激がそうさせるのか、元々意味など持たせていない質問を選んで投げかけられているのか。それさえも、ファラミアには分からなかった。
 一体、問いかけに答えを得る気があるのか疑わしいことに、喉元に唇の感触を得たのが分かった。すぐに離れるとファラミアが一人合点していたそれは、ファラミアの喉仏を包んだ。ファラミアは、首筋に内側から冷たいものが走るのを感じて、息をのんだ。決して頼りなくもない喉に、はっきりとした形を現している骨を覆っている皮膚を、湿ったセオドレドの舌が、少なくともファラミアの感じたところによれば、我が物顔に触れていく。奇妙な感触から逃れることを期待してファラミアがとった、体を伸張させるという行いは、意図とは逆向きに作用した。体の芯を貫いていくような痛みと疼きが、自分の身のどこともなく駆け上がっていくのだ。それは、単に触れられるよりも、よほど耐え難い感覚だった。誰のせいでもないそれは、ファラミアに常ならぬ高い声を上げさせた。咄嗟に、自分の片手で口を塞いだ。気休めにしかならなかった。むしろ、呼吸を大いに妨げられるのが、自分のしたことながら、恨めしいだけだった。自分の身体を、一切意識せずに済むなら、どんなに楽になれるだろうと、頭の隅で思う。
 望むところのものを得るための、もっとも賢い方法は、じっと動かないでいることだと、ファラミアは学習したが、だからといって、何の役に立ちそうにもなかった。この期に及んでは結局、ファラミアは自分が思い通りに出来るのは、自分の身体くらいのものだと思い知っただけだった。
 ファラミアの都合を、セオドレドが汲んでやる理由は、おそらく無い。
 ほんのごく僅か、緩くセオドレドが腰を寄せただけで、身が裂かれるような思いがした。繰り返されると、自分には逃げ場も救いも、残されていないような錯覚に否応なく陥らされる。楽になりたいと、ファラミアの身体が叫んでいた。それが叶うなら手段など選ぶものかとさえ思った。余計に触れ合わないように、じっと身を潜めるように、ファラミアは身動きすることを、自分に禁じた。それが、セオドレドの意に任せて、自分の身体を融通させることだとしても、進んで余分な苦痛を引き受けることと比べれば、何ということもなかった。
 それでもファラミアは、多少なりとも、意図するところが伝わるかも知れないと、自分の体を拘束するセオドレドの背に、両の腕を回して出来るだけの力で、自分の方に引き寄せた。

208SS投下2/7:2004/07/09(金) 10:58
修正:
【整理】>102,>110-115→>15-22→>28-30→>118-120,>124-126,>131-133,>164-169,188-191
                                                    ~~~~~ 

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 2/7


















 どれだけ体が要求しようとも、目を閉じたくはなかった。
 だから、ファラミアは、自分の目が、自分の意志に関係なく何を語っているのかも理解出来ないまま、セオドレドの目を見上げた。
「お答えは?」
 接触の深さこそそのままだったが、ファラミアを苛んでいた行いだけは止んだ。降って湧いた少しの間も逃すまいとでもするかのように、ファラミアは呼吸を深くした。そのファラミアの髪に、セオドレドの手が触れてくる。思うままには動かない手を、ファラミアはどうにかセオドレドの、その手に添えた。
 今、この時にあっても、ファラミアはその手を、心地良いと思う。なぜ、それのみの存在であってはくれないのかと、ファラミアは思う。詮無いことだと、思いを自らすぐに打ち消した。セオドレドに、それ以外の何かを望んだのは、他ならぬ自分ではないか。
「ファラミア殿」
 自分の名を呼ぶ声は、落ち着きと、錯覚でなければ慈しみさえ含んでいるように聞こえた。体を抱く腕は、ファラミアにとって長年の保護者であり援助者であった大切な人のものを思い起こさせるほどに、心地良かった。余計な痛みさえなければ、一晩このままいるのも悪くはない。そんな事さえ頭に浮かぶ。
 顔を近くに見ようと、自分を見下ろす顔の額に、額を擦り寄せた。セオドレドの、あの笑顔が目に映った。身体がどうあれ安心すれば良いのだと、自分の内なる声が語りかけてくる。
 触れ合った部分から込み上げる苦痛は変わらないものの、内面からの声に従って、ファラミアは表情を緩めた。
「質問を、変えさせて頂きますよ」
 問いかけではなく決定を告げるセオドレドの声は、あくまで穏やかだった。
 頷くことも、首を振ることも忘れたファラミアの、剥き出しになった額に、セオドレドの唇が押し当てられた。思わずファラミアは、目を閉じた。額だけではなく、きめの細かい皮膚を持つ目尻に、こめかみに、頬に、セオドレドの唇が触れていくのを、ファラミアはやけにはっきりと感じていた。少しの暇も与えまいとしているように、セオドレドはファラミアの顔のどこへと言うこともなく、唇を押し当てた。それが、くすぐったくないと言えば、嘘になる。皮膚の感覚だけではない、心の中もまた、唇が持つ独特の微妙な柔らかさでもってくすぐられているような、心地悪くもないが安んじてもいられない、奇妙な感覚にファラミアは囚われた。
「ファラミア殿は、白の塔の何が、お好きなのです?」
 問われている意味がすぐには分からず、ファラミアは、半分熱に浮かされた者が見せるような表情で、セオドレドの顔を覗き込んだ。
 身体が竦んだ。
 身体のあり方に気を取られ続けている頭で、ファラミアは悟った。セオドレドが、自分に何を言わせようとしているのかを。
 誰に告げたこともなかった、墓場まで持ち行くと決めたファラミアの思いを、昨日今日出会ったばかりの他人に見透かされているのは、疑いようもなかった。自覚した途端、全身は小刻みな震えを帯びた。聞き流せば良い。分かっている。それでも、震えはファラミア自身にも、どうしようもなかった。
 ままならぬ体を、十分に鍛錬された太い腕が包んで、きつく戒めた。それで身体の動揺が止むわけではなかったが、それでも、放置されるよりも、いくらかましであるかのように、ファラミアは感じていた。
 苦い表情でファラミアは、抱え込まれた自分の足先に目を向けた。
 セオドレドは、自分にとって丁度良いほどまで膝を折らせ、裸足の足指に口をつけた。足が、意識しないまま逆らうように跳ねたので、セオドレドの体重が膝の裏に向けてかけられてきた。足指の隙間に指を通されると、ファラミアの足は簡単に身動きがとれなくなった。足の指の一つ一つを、口に含みながら、セオドレドの視線がファラミアの顔に向けられてきた。ファラミアには何の感慨もなかった。だから、表情は無かったに違いない。それすら、今のファラミアには知りようがなかった。

209SS投下 3/7:2004/07/09(金) 10:59
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 3/7



















 セオドレドは構う様子もなく、口に含んだ指の腹に歯を立ててくる。肉の感触が良かったらしく、もっと確かに味わおうと、足指の股に舌を伸ばし、指の内側から丹念に舐めていく。ファラミアは、さすがにたまらなくなり、体をよじろうとした。が、身の内に走った苦痛が勝って、結局、何一つ成されなかった。
 ファラミアは一つ大きく息をつくと、セオドレドから視線を逸らし、天井を見上げた。体を硬くしているのが、足の指に入った無理な力からセオドレドにも分かった。舌だけでなく、指を突っ込んで爪の先で指の股の皮膚を掻いてやると、ファラミアの手が、自分で口を塞いだのが視界の端に入った。体を動かさず、声も立てず、視界を塞ぐこともなく。ファラミアは、何をしようとしているのか、セオドレドには理解しかねた。片足に満足がいったので、セオドレドはその足を自分の口から解放した。
 ファラミアはあからさまにほっと息をつき、体を弛緩させた。予想外にもう片方の足を口に含まれると、咄嗟に、ファラミアは肘を寝台について上体を起きあがらせようとした。熟慮の上の行為ではなく、単なる反射だった。だから、ファラミアは自分で腕を寝台に投げ出し、体を元通りに横たえた。
 指の股に舌を触れて、口に含んだ足指ごと強く吸われた。そのたびに揺れようとする足を、ファラミアは意志でもって、その動きを封じた。セオドレドは内心舌を巻いた。が、それと行為とは、まったく別の問題だった。ファラミアの足指がいい加減、唾液にまみれてきたところで、セオドレドはファラミアの足指の一つ一つに、柔らかい口づけを与えた。
 ファラミアを困惑させていた体の震えは、いつの間にか収まっていた。
 自分の体の末端を愛撫する頭の後ろに手を伸ばして、ファラミアは自分の顔近くに、年長者の頭を引き寄せた。大人しく間近に寄ってきたセオドレドが、口付けようとするのを、手を割り込ませて阻み、自分の指を口に含んで唾液を得ると、その指でセオドレドの口を拭った。セオドレドは目を瞬かせていたけれども、気の済んだファラミアが両腕でセオドレドの頭を抱くと、はじめは唇を触れ合わせるだけの、軽い口付けがファラミアの唇に降ってきた。柔らかさを心地良く味わうには、内側に入り込んだ部分が与える感触が、ひどく邪魔ではあったけれど、お互いに、繰り返して唇を触れ合わせた。湿り気を帯びた小さな音が、二人の間だけに聞こえるくらいに、何度も溢れた。
 ロヒアリムらしく一つに編まれたセオドレドの髪を、ファラミアはその流れに逆らわず、撫でた。編み終わりを止めている紐を手探りに見つけると、ファラミアは迷わずそれを引いた。ゴンドールの者がしているよりも、よほど長く伸ばされた髪が、自分の上にある体の、肩から背中に流れ落ちてきた。耳の後ろから指を差し入れて、先端までファラミアは、その淡い色彩の髪を梳き、一房を指の間に捕らえて、自分の頬に押しつけた。
 たっぷりとした厚さを持った背中に回した腕にも、ほどけた髪が絡んだ。ファラミアはそれを指の一本ずつを握って手の中に包み、そうして、締まった肉の形に隆起した背を抱いた。片手では足りず、もう片手もセオドレドの背に上げて、両腕で、彼の体を抱き潰しても構わないくらいの力で抱き、細く息を飲んだ。
 ファラミアは、苦痛を主張するばかりいる内側でセオドレドと触れ合っている部分を、自らより深く、彼が入り込むよう腰を寄せた。
 ファラミアは、上がりそうになる声を、必死で殺した。なんとか成功させると、再び行為を繰り返した。
「ファラミア…殿」
 自分を見下ろしながら呟かれる声の、取ってつけたような敬称が、ファラミアには少しだけ可笑しかった。
 唇同士の触れ合いを求めながら、ファラミアはセオドレドの行為を待った。

 理由は知らない。
 セオドレドは、初めて、ファラミアから自分が望まれているものを知った。その中味が何であれ、その目的がどうであれ、間違いなく自分は、望まれているのだ。
 初めての邂逅とも言えないような邂逅の日。彼に、自分は触れることも叶わなかった。再会を果たした今、ファラミアの体は、考え得る限り一番深い方法で自分の身体と触れ合わされていた。それ以上の何かを欲するのは、贅沢に過ぎるかも知れない。しかし、セオドレドは望まずにはいられなかった。ファラミアに、どんな事でも構わない。望まれたいと。

210SS投下 4/7:2004/07/09(金) 11:00
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7
















 ファラミアは、セオドレドに対し、これ以上なく明瞭に答えを提示していた。
 我ながら、馬鹿なものだとセオドレドは思う。ファラミアの口から、確かな答えを聞こうと、自分で決めたばかりだというのに、もう、その決定を放棄してまるで構わない自分がいるのだ。
 ファラミアが、なぜ今、自分に問いかけとは無関係に望みを見せるのかというその理由が、いかに見え透いていようと、その行いがどれほどあざとかろうと、ファラミアに望まれるなら、そのほかの全ては、枝葉末節ですらなくなってしまう。これ以上、馬鹿げた事があるだろうか。そして、それを自覚しながら、自分は間違いなく、幸福感の頂点に身を置いているのだ。
 それを、何と呼ぶべきだろうか?
 セオドレドは首を振った。自分の髪が鬱陶しく体に張り付いているからだと、そういうことにしておいた。
 ファラミアは、彼が守るべきものを守ろうとしている。自分は、欲しているものを手に入れようとしている。それに、何の問題がある? セオドレドは、自分に言い聞かせた。 もはや、迷いも思考も、必要なかった。
 無理な力が、体の内側からファラミアを貫こうとしていた。声を上げようとした口は、片方で十分ファラミアの口程度は覆ってしまえるほどの、大きな手に塞がれた。自由を封じられた足と、体と。唯一意志に従って動かせる腕に出来ることは、自分の体の安定を得るために、それが自分の体から自由を奪っている張本人のものであっても、手近なものに掴まっておく事くらいだった。
 体の内と外とを揺さぶられながら、一体それが自分のものであるのかどうかも不確かなまま、どんな思考も手放して、自分ではない人間の気が済むまでの、永遠とも思える自分の時間と、自分の持つ全てを、ファラミアは目の前の彼に与えた。
 ファラミアは息苦しくなって、首を仰け反らすと、激しく振った。まともに息をしようというのが、はじめから無理な相談だった。その上、口を塞がれていては、事態はよほど深刻だった。
 以心伝心とはこのことだろうかと思えるほど、ファラミアの状態をセオドレドは汲んだのか、口を覆っていた手を外し、ファラミアの口を自由にした。声を上げれば、少しは状態がましになるかという期待は、間違っていたと、ファラミアはすぐに思い知った。だから代わりに、ファラミアはセオドレドの肩に歯を当てた。我を忘れたファラミアは、肉を噛みしめるかも知れなかった。だが、セオドレドは僅かに呻いただけだった。
 一体、自分は求められたものを与えているのか、求めているものを与えられているのか。
 
 両方に決まっている。
 
 セオドレドは、ともすれば持って行かれそうになる気を絞って、自分とファラミアの体の間に手を割り込ませ、ファラミアの張ったものを探った。ファラミアの顎が上がった。身体的な興奮の証を、手に握り込み、具合を見ながら擦り上げてやる。
 声を発するのも大儀そうなのに、ファラミアは断続的な高い声を、喉の奥から聞かせていた。手の中のものの張りが増したと思った時、なま暖かい粘った液体がセオドレドの手の中に溢れてきた。
 息を荒げるファラミアの背を、それまでよりもきつく抱くと、ファラミアの体の深くに、セオドレドは自分のそれを突き込んだ。それが、充足を告げる合図だった。
 ファラミアは息を詰めると、そこに彼が与える全てを受けいれた。

 お互いを繋ぎ止めていた腕が緩んだ。
 体は触れ合わせたまま、息が整うのを待った。
 汗ばんだせいで、乱れた髪が張り付いている顔を間近に見た。いくらかは自分の責任であると、ファラミアは一房ずつ指に髪の束をつまみ、耳の後ろに回してやった。掌で、撫でつけてやると、なかなか整った格好になって、ファラミアは満足した。
 息が落ち着いてみると、体が痛むのだけが気になった。
 疲労している筈なのに、眠気が自分を攫っていく気配は少しもなかった。
 汗にまみれた体が不快だった。それ以上に、刺激への生理的な反応のまま体外に出された、鬱陶しく粘る体液がまとわりついたままの下肢が、耐え難かった。

211SS投下 5/7:2004/07/09(金) 11:01
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 4/7















 察したのか習慣なのか、自分もまだ平常ではないだろうに、セオドレドが体を起こした。ファラミアは、腕を掴んで引くことで、それを制した。
「まず、体を休める事が肝要かと思います」
 ファラミアの言葉を受けたセオドレドは、あっさりと寝台に体を落とした。せめてもということだろう、乾いた布で、寝台に投げ出されたファラミアの体の隅々を、拭っていった。多少なりとも体に清潔が取り戻されるのは、実際ありがたいものではあったが、こんなものが常備されている事自体が、ファラミアには、呆れて良いのか感心して良いのか分からないところだった。
「わたしも」
 手伝おうと伸ばしたファラミアの手を、セオドレドは握った。そして、清潔な布を握らせる代わりに、指先に口づけた。
「体を休めるのが、肝要ではありませんでしたか」
 セオドレドが笑うので、仕方なくファラミアは手を引き、体の湿り気を布切れに吸い取らせていくセオドレドを、寝台に寝転がったまま、ただ見つめた。

 汗が引いた体を、お互いに寄せて抱き締め合った。
 ファラミアの体を包む人の温みも、肌の具合も、くだらないものだと思っていた疲労感も、決して悪くはなかった。
 息が規則正しくなったと思って顔を覗くと、いつの間にかセオドレドは眠りに落ちているようだった。
 暗がりで姿に目をこらしながら、その長い髪を指に掛けて梳いた。
 彼は繰り返して自分に問うた。
 自分は、答えを持っていた。しかし、彼には答えなかった。
 それでいて彼は何も言わず、ファラミアが仕掛けた誘いに乗った。おそらく、全てを知りながら。
 いくらお互い関わり合いのある国で、責任ある立場に生まれついた者同士とはいえ、二度ほど会ったと言いつつ、自分とセオドレドは、お互いただの他人ではないのだろうか。それが、何故だろう。
 まったく、興味は尽きないではないか。
 そう思い至って、ファラミアが答えるべきものとして最後に残された一つの答えを、ファラミアは得たと思った。そして、発問者の耳元に口を寄せ、回答を与えた。
「セオドレド殿」
 ごく小さな呟きでしかないファラミアの声は、眠りにある者の耳に届いてはいないだろう。ただ、ファラミアはそれで良かった。好きなものの話をしようと提案したのは、確かにセオドレドだったが、考えるまでもなく、セオドレドが欲しているのは、ファラミアが今、答えとして彼に与えることが出来るような、そんなものでは決してないのだろうから。
「好きなもの」でありながら、誰とも、どんなものとも決して並列には語れない特別な存在は、ファラミアには、ただ一人だけだった。そうは言わないが、ファラミアが内に抱え込んだものを、セオドレドは間違いなく、正しく知っている。誰にも口に出来ないそれを共有する彼には、せいぜい、共犯者になっていただこうではないかと、泥のように眠っている特別な一人と自分の知らない何かを分かち合っている、彼と同じ年に生まれた、年長者を見つめながら、ファラミアは思った。
 いい加減煩くなってきた睡魔の誘いに応じて、ファラミアは、セオドレドと枕を並べて眠ることにした。
 馬さえも上げることが出来そうな寝台の上で、ファラミアはセオドレドの体から、自分の体を決して離さなかった。
 
 部屋を満たす薄明かりが、寝台に反射して淡い色を見せていた。
 ファラミアが目を開いたときには、習慣なのか、セオドレドは既に起き出していた。
「これは、失礼致しました」
 ファラミアは上体を起こそうとした。が、痛みが伴うだろうことは彼らしくもなく、失念していた。
「熱い湯を持つよう言いつけてあります。少々お待ち下さい。清潔にすれば、お体も多少は楽になりましょう」
 ファラミアの様子に気付いたセオドレドは、寝台の縁に腰掛けて、ファラミアの髪を労るようにさすった。
 どこか、気遣わしげなのは気のせいではないだろう。ファラミアは素直に問うた。

212SS投下 6/7:2004/07/09(金) 11:03
修正:>211 誤4/7 正5/7

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 6/7


















「お気を煩わせる事が、何かございましたか」
 セオドレドの手が止まった。それまでになく思わしげな顔を見せられて、ファラミアは息を飲んだ。
 低く、セオドレドは言った。
「こちらに滞在した最初の晩。ボロミアが、どこで何をしていたか。お聞きになりたくはありませんか」
 ファラミアは、一瞬言葉を失った。
 そして、笑った。
「お忘れですか。セオドレド殿。ボロミアが言わないのなら、わたしはそれを、聞きたいとは思わないのです」
 すっかりやられてしまったとでも言いたげに、セオドレドは頭を抱えた。
「まったく、ファラミア殿という方は」
 俯いてしまった頑強かつ丈高い体に、ファラミアは体をにじって寄り添わせた。そして、自分とセオドレドと、たった二人しかいない部屋で、声を潜めた。
「ひとつだけ、わたしはセオドレド殿にお願いをしなければなりません。というのは、わたし共の間にあったことは、決してボロミアの耳に入れませぬように」
「私はボロミア殿の知るところになっても一向に構いませんが。それに、ファラミア殿らしくもない、不正直さではありませんか」
 ファラミアは、首を振った。
「結果、受けるのが叱責であるなら、良いのですがセオドレド殿。われらは、祝福されてしまいます」
「祝福?」
 思いがけない単語のせいで、つい声が高くなる。ファラミアは、そのセオドレドに頷いて見せた。
「話したが最後、ボロミアは花嫁の父さながらに、男泣きに泣きながら、弟を頼むと、セオドレド殿に何度も頭を下げましょう。そして、ボロミアの気分はおそらく舅以外の何者でもなくなるでしょうが。セオドレド殿は、ボロミアとそのような関係を結びたいとお望みですか」
 セオドレドは、黙って首を振った。光景が目に浮かぶようだった。セオドレドとて、ボロミアが、どのくらいたった一人の弟を可愛く思っているのか、決して知らないわけではなかった。初めて出会ったときの態度が既に、それを物語っていたではないか。
「わたしもご免被りたいのです。彼自身の思いを殺して、わたしの幸せとやらのため、ボロミアに泣かれるなどということは」ファラミアは、言葉を切った。愉快でもない言葉を紡ぎつつ、どこか虚空に視線をやるファラミアの横顔さえ、セオドレドは好ましいと思う。だから、ファラミアの言葉に含まされていることの意味を、セオドレドは考えもしなかった。
 ややあって、セオドレドの顔面に視線を戻したファラミアは、くすくす笑った。「こう申し上げて失礼でなければ、おそらく、セオドレド殿とわたしは、似通っているのです」。
 セオドレドは、ファラミアの心の底を図ろうとでもするかのように、顔を見つめた。
「正確には、求めているものが、と言うべきなのでしょうけれども。更に申し上げるならば」
 ファラミアは、セオドレドの手を取って、指をその隙間に絡ませて握ると、一本一本に、丁寧に口づけた。
「決して手に出来ないものを求めてやまない。そこが似ております」
 口づけに飽きたのか、ファラミアは指先を口に含んで、爪の際の僅かな肉に歯を立てた。愛撫だか手慰みだか判然としない行為にも、セオドレドはファラミアの為すがままに任せていた。
「わたしは、ボロミアが言わないことを聞こうとは思いませんが。ボロミアが、セオドレド殿のおられる国に、何を求めて来たのかくらいは、理解しているつもりです。そして、わたしが理解するに至った多くは、セオドレド殿に負っております」
「ファラミア殿?」
 セオドレドも、さすがにようやく顔色を変えた。だから、ファラミアは片手をセオドレドの頬に触れ、柔らかく撫でつけると、そこに口付けをした。
「ゆめ、お考え違いをなされませぬよう。わたしは、何もセオドレド殿をお恨み申し上げているわけではないのです」

213SS投下 7/7 最終:2004/07/09(金) 11:06
<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 7/7 【完結】

















 思い起こさずとも知れたことだった。
 この国をボロミアは幾度か訪問していた。
 自分は、初めての異国で一人だった。セオドレドと大事な話があると、ボロミアは言った。それが、ファラミアを単身残すための口実ではないとすれば、それは何か? 
 この国への訪問を提案したのは、ボロミアだった。何故ここなのか?
 ファラミアが尋ねてもいないことを、ボロミアは口にした。ボロミアは、馬を見たいと言った。それから?
 異国の衣服は思いの他、自分を手こずらせた。自分の着衣もセオドレドには異国のもののはずだが、セオドレドはそれを苦にしなかった。つまり、慣れているのだ。何故?
 ボロミアが、セオドレドを相当気に入っている事は、ファラミアにもすぐに知れた。ただ、その意味までは、実際は図りかねねいていた。が、それも昨日の朝までのことだった。
 ボロミアが見せた態度のひとつひとつは、一つの方向をさし示していた。それらは少なくとも、この国に来るまでファラミアの知らないところであったし、今あるこの機会を得なければ、この先に渡っても、ファラミアの与り知らぬ事とされ続けたかも知れないことだった。
「真実を得るということは、素晴らしいものです。常づねわたしは、そう思ってきましたが。今この時ほど、大いに実感したことは無いようにさえ思います」
 ファラミアは笑っていた。
「ボロミアが望むなら、それが何であれ、わたしはボロミアに差し上げたい。それを、ただの思い上がりで無くするだけの力を、わたしは身につけたいと望み、そこそこには成功しているやもと自惚れることも出来ましたが−−よりにもよって、肝心な部分は。ままならぬと、思い知らされたと。こういうわけです」
 そう言って、ファラミアは、苦く笑って見せた。そうしたいのは、むしろ、自分ではなかったかと、セオドレドは思う。
「その口がおっしゃいますか。望み通りになどなりはしません。誰一人です」
「何一つ、ではないらしいですな」
 ファラミアは、声を殺して笑い、絡ませていた指をほどいた。
「ままならぬ。だからこそ、考えぬ事でしょう。幸い、セオドレド殿は、わたしが口にせぬ事ですら正しく理解しておられる。わたしの事も、そして」
 誰とは、ファラミアは言わなかった。言われずともしれたことゆえに、ファラミアも口にしなかったのだろう。
「これを幸運と呼ばずして、何と呼びましょう。せいぜいわれわれは、無い物ねだりに身を焦がして思いを虚しくするより、互いの幸福を望もうではありませんか」
 ファラミアは、セオドレドの体に体を添わせ、両の腕で抱擁を与えた。
「実に、悪くありません−−。まったく、我が兄ながら、ボロミアの目は確かなものです」
 編まれないままの髪に、頬を寄せたファラミアの体に、セオドレドは抱擁を返した。そうしたかったからではなかった。ファラミアが、それを望んでいたからだった。

 扉の方向から、遠慮がちな合図が聞こえた。
 ファラミアは体を離し、主の言いつけを守って来訪した従者を迎えるために立ち上がったセオドレドを、見上げた。
「さて、わたしは、明日には帰国致しますので。残された今日一日を、有意義に過ごす手だてについて、共に考えてはいただけませんか」
「そのように致しましょう」
 セオドレドは答えた。
 ファラミアは、初めて見たときからずっと、セオドレドにとって、内なる宝物だった。それは、短くもない年月を経てなお、セオドレドの夢想さえ超えた輝きでもって、セオドレドの眼前に現された。
 ただ一つ、かつてとの違いは、セオドレドが手を触れられる場所に、彼がその身を置いているということだけだった。
 ファラミアの望みは何でも叶えよう。彼に望まれることが、自分の望みであるのだから。
 さて、自分は望む物を得たのだろうか。あるいは、誰一人として、何ひとつ、得られるものなどないのだろうか。
 体は重く、勝手知った筈の自分の部屋で、扉は遠かった。

【終わり】

お目に入れて下さった皆様へ。ありがとうございました。

214萌えの下なる名無しさん:2004/07/09(金) 15:31
ヽ(´ー`)ノ

215萌えの下なる名無しさん:2004/07/10(土) 11:50
>214
ん?なんじゃ、おまえさんは。この宿に立ち寄ったのなら、感想の一言も
残して行くものじゃぞ。
・・・って、誰のなりきりだよ!w

で、改めて
>>207->>213
いやもう、章を追うごとに加速するエロさ(誉め言葉)と途切れぬ緊張感に、
殆ど指の隙間からモニターを覗くようにして読み進めてまいりましたが、
なんとハッピーエンディングだったんですね!どう着地するのか、本当に
予測がつかなかったので、嬉しい驚きでありました。
執政のお子さんたちですが、ボロミアの下が「妹」だったら、父君はとっとと
ローハンの嫡子と政略結婚でもさせていたんだろうな・・・などと考えた
ことがありますが、「弟」でも問題はなかった訳ですねw
・・・なんかすごくアホなことを書いている気が・・・
ともあれ、完結おめでとうございました。

216萌えの下なる名無しさん:2004/07/11(日) 23:23
>>207-213
セオファラ小説、完結おめでとうございます。美しい小説でした。読んでて悲しくなりました。
ただ、最初に全部で何スレ消費するか明記しなかったのはマナー違反だったと思います。
私はこのスレの77なので、私が言って良い事では無いんですが。
ご存知無かったのなら、申し訳有りませんでした。
しかしながら、若大将の若々しさが痛々しく萌えでした。おつかれさまでした。

217萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 11:44
>207->213です。
ご意見、ご感想ありがとうございました。
全レス数の見通しが無いまま、なし崩し的に長いものを
投下させていただいたこと、また、護身をお願いせざるをえなかったことについては、
お詫びさせてください。
今後は一名無しとして、大将の多彩な萌えを楽しませて頂きたいと思います。

218萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 12:54
長編投下の際の心得や住人の対応としては、旧館フロスレなどが参考に
なるかも知れませんね。
それでなくとも、大将絡みの話は長くなる傾向がある気がするのですよ。
お悩みキャラな上、外に顕れる言動が不可解だったりするせいでしょうかw
しかし、投稿者としては不可解にならないように、と、自戒もこめて
いろいろ思いました。

219萌えの下なる名無しさん:2004/07/12(月) 15:59
要するに、

ある程度切りのいいところまで話を完結させてから投稿しろ


でFA?<フロスレ心得

220萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 10:44
引っ張って申し訳ないですが。

SS投下のバッティングが、最もいただけない事だろうと。私見ですが。
せっかくのSSも読みづらくなりますし、感想も書きづらいので。
>218中にてご紹介頂いたスレで、長編投稿者様が全体の長さと、
投下時期の予告をされてたのは、バッティングを回避するための
ご配慮だろうと私は理解しました。

もちろん、物語を細切れに見せられるのは困る、という
ご意見が多ければ、投稿者は考慮しなければならないでしょう。

すごい差し出がましい上に、
必要かどうかは分かりませんが、敢えてガイドライン的にまとめるなら、

投稿者
/投下前に、使用レス数を予告する。
/投下前に、投下時期を予告する(しかし、誘い受けウザーと言われるかもしれない諸刃の剣)。
/投下前に、SSの内容をある程度明らかにしておく。
/投下はSSが完結してから。

住人
/スレの主旨に合わないものは、適切なスレへ誘導する。
/スレの主旨と照らして問題なければ、投下時期を承認あるいは示唆する。
/スレの主旨には合うが、自分の趣味と合わないものについては黙ってスルー
 (出来ない方は、よもやおられまいとは思いますが一応)。

こういったあたりで。

明文化されてなくても投稿者が自覚しろよ。出来ないヤツは投下すんなよというものも含め、
この機会に住人からご意見が出れば、今後、新規に投稿される方のお役にも立つのでは無かろうかと。
これもまた私見ですが、投稿の際の敷居が低い、あるいは敷居が明らかである方が、
より多くのSSを拝見出来るのではないかと。

そういう狙いもあって、余計なことではありますが、まとめてみた次第です。

221萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 12:01
>220
しかしながら、そういう「心得」みたいなものは、「旅の仲間のお約束」を
熟読すれば、おのずと理解できることなのではないかと思われます。
そもそも「お約束」自体、初代アラボロスレ等で問題になった諸々を踏まえて
成立したという経緯がある訳ですし。
そういうことを知る為に、たまには他スレや過去ログを覗いてみるのも
いろいろ勉強になると思いますよ。
あと、使用レス数や内容については、従来通り1レス目の最初に明記して
おけばいいのでは?レス数の目安についても同様。
ただ、それが10レス以上にも及びそうな場合や、連載形式を取らざるを得ない
ような時には、前もっての予告も必要かと思います。
それからバッティングを避ける為には、小まめなリロードもお忘れなく、とか。

以上、これまで投稿下さった皆様のSSの「内容」を貶める意図は毛頭ないことを
付け加えさせて頂きます。

222萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 15:40
>221
使用レス数、内容表記について同意。
投下予告は、数レスで終わるような短いものなら不要でしょう。
それから、投稿者様方にはできるだけ一括で投下して戴きたいと思います。
「嗜好の合わないものはスルー」が原則なのは勿論ですが、
何度も何度も(しかも同じ話の続き)だとさすがにストレス溜まります。

223萌えの下なる名無しさん:2004/07/14(水) 19:25
77ですが、私の投稿が混乱を招いたようで反省しています。
悪気は無かったんですが言い訳をすると自分語りウザーになるので止めておきます。

投稿の際のガイドラインについては、220様、また他の皆様のご意見に同意です。
222様、不愉快な思いをさせて申し訳有りませんでした。
実のところ、私が始めた事なので責任を感じていました。真剣に受け止めてくださって
ありがとうございます。私が言うな、とツッコミをくらいそうですが、いいスレですね、
ここは。
1レス消費しておきながら有意義な意見を出さなくて申し訳有りませんでした。

224萌えの下なる名無しさん:2004/07/15(木) 00:27
たびたびの書き込みで、申し訳ないです。>220です。
まず、真摯なご意見をくださったことについて、
お礼を申し上げさせてください。

>221でご提示いただいた内容を受けた上での問題意識の中心は、
「旅の仲間のお約束」として明文化されたガイドラインがあり、
それが成立されるに至った理由も過去ログとして閲覧可能であるにも拘わらず
「心得違い」な振る舞いがなされたのは何故かということです。
そして、「心得違い」の中味が明確になれば、それに属する振る舞いは以後、
回避されやすくなるのではと考えます。
>220に提示させていただいたまとめや、自分の私見が
唯一無二だというつもりは、もちろんありません。
私が申し上げるのも口はばったい事ですが、貴重なご意見の数々、
本当にありがたく思います。

私も、SSを投稿させて頂いている者の一人です。
実際に「心得違い」を為した以上、自省するばかりです。
そして、ご表明下さった>222様はじめ、投稿の形態においてストレスを与えてしまった皆様に。
この場を借りまして改めてお詫びさせて下さい。
今後は、「〜お約束」の再確認はもちろん、
>221様、>222様のご意見を併せまして、肝に銘じさせていただきます。

>77=233様
お話を引っ張ったのは私(>220)ですので。
>216では、必要なご指摘を下さったという印象を、私は持ちました。

>220(=217)でした。SS投稿中から事後まで、お騒がせしてすみません。
以降は、よほどでない限り名無しで。

225221:2004/07/15(木) 10:42
レス数についての文言がダブっていましたね。

さて、お約束通りになっているか心許ありませんが、SSいきます。

<ネタバレ@ ボロ/ファラ しるけなし・・・しめりけ程度?>
*6レス使用予定。
*場所はロスロリアン。
*最後の方でちょっとだけ馳夫さん登場。そして、意外なカプも。

しるけも直接描写もないけど、「あった」ことが前提だし、近親ネタのお嫌いな方は
スルーして下さい。
嫌いじゃなくても、何と言うか・・・いわゆる「砂吐きそー」な話ですので、
ご注意下さい。
まあ、夏の夜の怪談とでもお思い下されば・・・


そこは、平安の裡に守られてある場所と言う。
しかし、木々の太い枝や生い茂る葉が昼も濃い影を作り、夜は不思議な輝きに充ちる黄金の森の中で、ゴンドールの子ボロミアの心の安らうことはない。
昼ともつかず夜とも分たぬ時の中、そしてまた、木々の作り出す濃すぎる大気の中、彼は次第に、今がいつであるのか、自分がどこにいるのかということさえ忘れそうになり、その感覚は、慰安と休息ではなく、むしろ不安と焦燥を彼にもたらした。
森の住人たちが、旅の仲間の休息場所として用意したくれた立派なテントを離れ、ボロミアは、しばしば一人になれる場所を求めて、森の中をさまよい歩いた。その方が、よりこの場所の魔力に捕われることになるかも知れぬと思いつつ、彼は、仲間たち、特に小さい指輪所持者と、王の末裔と名乗るあの男と顔を合わせることを避けた。と言うより怖れた。
彼らはそれぞれに、ゴンドールの子の望みを体現する存在であったから、そして同時に、彼がその望みの困難さを思い知らされる存在でもあったからだ。
森の奥方は、彼の心に囁きかけた。まだ望みはある、と。
しかし、その言葉は本当に希望を語ったものであるのか、ボロミアは今もなお疑っていた。あれは、怖しい誘惑ではなかったか。

ゴンドールの子よ、そなたの望みが叶えられる為に、そなたは何をなすのか。
また、何を必要とするのか。

あなたの  ほんとうの  のぞみは  なに 

===

226SS 2/6:2004/07/15(木) 10:45
<ロリアン>














奥方の声が、今なお私の頭の中で響く。
こうして一人、人目につかぬ木立の奥にいても。
太い木の根に腰を下ろしていても、自分が今眠っているのか、或いは覚めているのかさえ、私には判らない。
あの奥方は怖しい、怖しいかただ。
黄金の森には魔女が住まうという、あの噂は真実であったのだ。
老婆のような、それでいて幼女のようなあの声。
弟がここにいればーー伝承学に詳しい彼であれば、私に知恵を貸してくれるだろうか。この試練に堪える為の力になってくれるだろうか。

そう考えていた、まさにその瞬間、私は自分の目の前に彼の姿を見出す。

「ファラミア・・・」
呼びかける言葉は声にならない。
彼は、最後に別れた時の姿のまま、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「ーー私は夢を見ているのか」
自分の声が、今度ははっきりと聞こえる。
「我らが共に、イムラドリスへと誘なう声を聞いたあの夢のように、私たちは同じ夢の中にいるのか。或いはこれも、あの奥方の力によるものだろうか」
「ボロミア」
彼が私の名を呼ぶ声も、現実の如く耳に届く。
「奥方とはどなたです。ボロミア、あなたは今、どこにいらっしゃるのですか」
そっと手を伸ばしてみる。当然、実体のない幻をすり抜けていくかと思った自分の手は、しかし、確かに彼の腕に触れた。
もう一方の手もゆっくり差し伸べ、私は彼の両腕を掴んだ。
「夢だ・・・」
自分の目から予期せぬ涙が溢れ出すのを、私は感じる。
その目を閉じると、今度は、
「兄上」
と呼ぶ弟の声が私の耳に聞こえ、彼の細い指が私の頬に触れて涙を拭い、私の髪を撫でるのを、私は感じていた。
このような実体、このような感覚を伴う夢が存在するのだろうか。
「なぜ、涙を流すのですか。なぜ、それほどつらい、それほど疲れきった顔をなさるのです」
懐かしい声が囁きかける。
もう一度目をあけ、その顔を見上げると、気づかわしげな表情がそこにあった。
そして彼は、私の頭を両手で抱いたまま身を屈め、私の額にそっと唇を寄せた。その感触も温かさも、もはや現実のものとしか思えない。
「ファラミア」
彼が離れようとした時、私はまたその両腕を掴み、引き寄せ、かき抱き、今度は自分から、唇を彼のそれに重ねた。
弟にするキスではなかった。しかし、彼は拒まない。私たちが最後に過ごしたあの夜のように。
今や、彼の体は私の体の傍らにあり、彼の手は私の頭を抱き寄せ、彼の唇は私の唇を深く受け入れる。
ようやく唇が離れた後、私は彼の肩に頭をもたせかけた。
「おまえのことを思い出さないようにしてきた」
私は言う。
「イムラドリスを発ってからは特に、おまえのことは考えまいとした」
「いとしい兄上、私は一日たりと思い出さない日はありませんでした」
彼は、両腕で私を抱きしめながら言う。
その腕の温かさ、力強さ。もし、これが夢なら、そして、こんなものを見せるのがあの奥方の力だとするなら、あのかたは何と残酷なことをなさるのだろう。

227SS 3/6:2004/07/15(木) 10:47
<ロリアン>














「随分お痩せになって、兄上、あなたの身に何が起きたのですか」
優しい囁きが耳をくすぐる。堪らず、私はその抱擁を解いた。
「夢でないなら、これは罠だ」
私は言った。
「おまえは何者だ。今どこにいる。どこから私を見ている。弟と同じ顔をし、同じ姿をし、同じ声で私に呼びかける、おまえは何者なのだ」
目の前にいる者は、ひどく悲しげな表情を浮かべる。
「私にも判らない。自分がどこにいるのか、あなたがどこにいらっしゃるのか。これが夢なのか、そうでないのかも」
そして、その手が再び私の頬に触れ、その唇は、そこを伝う私の涙を吸い取る。
「でも、あなたは今ここに、私の前にいる。こうして触れることもできる。夢でも罠でもいい。懐かしい兄上、お会いしたかった」
「ファラミア、ファラミア」
もう一度、私は彼の体をきつく抱いていた。
「こうしていてくれ。こうしていてくれるだけでいい」
あの夜、そう言ったのは彼の方だった。
私の腕の中で、眠りに就くその前に、
ーーーこうしていて下さい。朝まで。それだけでいい。
と。
「あんなことをするべきではなかった」
私はそう言っていた。
「あのまま兄と弟としてのみ、別れた方がよかった」
「為したことを後悔などなさらないで下さい、ボロミア」
彼は言う。
「私は悔やんだことなど一度もない。なぜなら、私はこういう風に生まれついた者なのだから。この世に生を享けた時から、それは私の中にあったものなのだから」

この子は、おまえは、自分が何を言っているか判っているのかーーと、問い質したかった。
私たちが共に為したあのことは、一刻の衝動などではなく、長年にわたって私たちを蝕み続けてきた狂気の噴出と呼ぶべきものだったのだろうか。或いは、迫り来る破滅をつかの間忘れ、互いの生を確かめる為に、あれほど強く求め合ったのか。その行き着く先にあるものが不毛の曠野であったとしても。かの忌わしき国の影は、そのような形で、ゴンドールとその都の中枢を侵蝕していたということなのだろうか。
不思議なのは、彼が、日ごろ誰より聡明な私の弟が、それを自明のこととして受け入れ、何ら疑念を抱いていないかのように見えることだ。
「私たちのしたことは、私たちを穢すものではない。何も変わらない。何も失いはしないのです、ボロミア」
彼の言葉が呪いのように、むしろ懲罰のように響く。長い時間をかけて彼をそういう人間にしてしまったのは、私自身であるのかも知れない。
そして、それこそが私の最大の罪だ。私たちが行なったこと以上に。彼の罪もおそらくそこにはない。
他の誰を愛するより、血のつながった実の兄弟を愛した。それのみを至上のものと思いなし、その他の愛に心動かされることはなかった。
私たちの罪はそこにこそある。
そして、その罰はーーー

228SS 4/6:2004/07/15(木) 10:50
<ロリアン>














「私は怖しい・・・」
そう呟きながらも、私の腕は、なおも彼の体を抱いている。夢であれ幻であれ、いま縋るものはそれしかない。
「何が怖しいのですか」
「何もかもがだ。この場所も、我が国の行く末も、私自身も、何もかもが、ただ怖しい」
そして、にもかかわらず、ついに私は言ってしまうのだ。
「おまえに会いたい」
と。
「一刻も早く帰りたい」
もちろんそれは、旅の仲間たちにも、これまでずっと言い続けてきたことだった。ゴンドールの為、ミナス・ティリスを守る為、人間たちの世界の為にーーー
しかし、今はただ、夢でも幻でもない彼に会う為に、私はそこに帰りたい。
互いが別の地へ赴き、もっと危険な戦いの中で、もっと長い期間離れていたこともある。その時でさえ、今ほどつらくはなかった。二度と会えないかも知れないなどと思ったことはなかった。
「あなたがいずこにおられようと、また私がどこにいようと、私は常にあなたのものです。生まれた時からずっと、そうであったように。私の心も魂も、いつもあなたのおそばにあり、あなたをお守りします」
そう言って、彼はまた私の髪を梳き、涙を拭い、額にキスしてくれる。
それは、弟がまだ幼い頃、私が彼を慰め、力づける為にしていたことだ。しかし、今は彼が私にそうしてくれている。
戦さに出る歳となってからは、都に戻る暇とて殆どなかった私が、次なる戦場へと向かう時、目に涙を溜めて、
ーーーあにうえ、いつおもどりですか。
と抱きついてきた、小さいあの子が。
「自分がこれほど弱い人間だとは思わなかった。おまえは、兄のあまりの不甲斐なさを見かねて、現れてくれたのだろうか」
自嘲めいた言葉が洩れる。
彼はそっと首を振った。
「かつて、あなたは私の英雄でした。私の目に、あなたは誰よりも丈高く美しく雄々しく、完全な人として映っていた。あなたは私の光であり風であり、私の世界の中心そのものであり、そういうあなたを、私は愛していたのです」
「それでは、おまえの中の私の地位は、今や失墜するばかりであろうな、弟よ」
「いいえ、ボロミア」
彼の声は優しい。
「あなたは今、そんなに悲しそうな顔をなさっている。苦しみ、傷つき、弱っておられる。でも、私のあなたへの愛が害われることは決してない。あなたは、今も私の世界の中心にいるのです」
そして、また唇が触れあう。
「あなたを愛しています。あなたの強さも弱さも、すべてを愛しています。今までも、そしてこれからもずっと、私の愛が欠けることはない。愛しています、ボロミア。いとしい兄上」
「愛している」
私も言う。それが破滅へと誘なう罠であっても。
呪文のように。誓言のように。祈りのように。
「愛している、ファラミア。どこにいても、この先何が起きようとも、私はおまえだけを愛し続ける。私の過去も未来も、すべてはおまえと共にある」
彼の唇に、彼の耳に、繰り返し繰り返しーーー

===

229SS 5/6:2004/07/15(木) 10:52
<ロリアン>














「ボロミア、ボロミア!」
と呼ぶ自分の声で、ファラミアは目を覚ました。
いとしい人の体を抱いていたはずの腕が、むなしく空を掻く。
「いかがなされました」
見張りの兵が声をかけるのを、
「何でもない。退がれ」
と戻らせた後も、彼は寝台の上に身を起こしていた。
既に薄明かりが射し込み始めた洞窟の中、聞こえるのは滝の音と、夜勤の兵士たちが動き回る僅かな物音だけだった。
いま誰の名を呼んだかを、部下たちに聞かれなかったかと危惧もしたが、聞かれたところで、彼らがきわめて親しい兄弟であったことは周知の事実であったから、特に不審に思われる謂われもなく、また、夢の内容が他所に洩れる訳もなかった。
しかし、夢が本当に他人に作用しないのなら、あのイムラドリスの夢、そして、今まで自分がその中にいた、夢ともつかぬあの出来事は何だったのかと、ファラミアは思う。
彼の手にも唇にも、兄の体、兄の唇の感触が、幻と言うにはあまりにも生々しく残っている。その体温や鼓動まで、ファラミアは、はっきり憶えていた。
現ならぬ場所であれ、兄と巡り会えたことを嬉しく思う一方、二人を共にそこへ導いたものが何であったのか、また、兄の心身に何が起きているのかと思うと、胸騒ぎがしてならない。
「・・・あなたがいずこにおられようと」
夢の中で語りかけた言葉を、彼はもう一度口に上らせる。
「私は常にあなたと共にあります、ボロミア」
兄であり、それ以上の存在でもある、愛する人に。

===

「妃よ、何を見たのか」
銀の髪の王が問う。
水鏡の前に立つ、黄金の貴妃が答える。
「これを通すまでもないこと。とても醜くあさましきものが、今夜この地に出来いたしました」
「して、それはそなたの力によるものか」
貴妃は首を振る。
「わらわの力でも、また、わらわに制御できるものでもありませぬ。あの者の方に、この森の空気に感応する素地があり、それがまた同じ血を持つ者を呼び寄せたまでのこと。あれを、人の子は愛と呼ぶのです。それが闇へと向かうひと足となるとも知らず」
「ああ、だが妃よ、それはまだ闇ではない」
銀の王の唇が、笑みに似た形を作る。
「愚かではあっても、それはとても強い力となって、人の子を動かすのだから。そして、それは未だ破滅に到ってはおらぬ」
「そうであればと思います。しかし、おのが真の望みに気づいたとしても、また自らそれを封じたとしても、この先、あの者の心に平安はない」
言い放つ貴妃の面に浮かんだのは、冷徹さか、諦念か、あるいは慈悲であったかーーー

===

230SS 6/6:2004/07/15(木) 10:54
<ロリアン>ラスト














濃厚でありながら清らかな、朝の空気の中を歩いていたアラゴルンは、探す相手が、大木の隆起した根に腰を下ろしているのを見つけた。
「ボロミア」
声をかけたが、相手は返事もせず、動きもしない。腰かけた姿勢のまま、眠っているようにも見えた。
「ボロミア?」
近づいてもう一度呼ぶと、その体が大きく揺らぎ、それから、
「アラゴルン」
と答えが返ってきた。
彼は、ゆっくり辺りを見回し、
「もう朝か」
と呟いた。
「ああ、ホビットたちが朝食の支度に取りかかっている。あんたを探すように頼まれた」
「食欲がありません」
アラゴルンは眉を顰め、彼の顔を見た。
「何か口に入れておかないと保たないぞ」
「わかっております」
「昨夜は眠れたのか」
「それがよく判らないのです。ずっと覚めていたようでもあり、深い眠りの中にいたようでもあり・・・夢を見ていた気もするのですが、思い出せませぬ」
「夢?」
「とても美しい夢であったようにも思え、怖しい悪夢であったようにも思えるーーこの森の空気のせいであるやも知れませぬ」
そう言いながら、彼は、ここではない、どこか別の世界をさまよい歩く者の目をしていた。
しかし、アラゴルンは、それ以上何か問うことはせず、
「先に行っている」
とだけ言って、踵を返した。そこで、ボロミアもやっと立ち上がった。


「・・・どこにいても、これまでも、この先もずっと」
ふと、そんな言葉がボロミアの口をついて出る。
前を歩く男がちらと振り返ったが、何も問うてはこなかった。
それは、夢の中で誰かが囁いた言葉のようにも思えたが、ボロミアがその意味を自らに問うことはなく、また、その夢の内容を思い出すこともなかった。
今はただ、それが希望をつなぐものとなり得るなら、あの男を都に連れて行くことを考えるべきだと思いつつ、彼は折れたる剣の継承者の後を追って歩き出した。

231221=225:2004/07/15(木) 10:58
6レス使う必要もなかったかも知れませんが、区切り等の都合です。

保管の際には、3、4の間に一行あけ願います。

232萌えの下なる名無しさん:2004/07/15(木) 20:05
>221=225様

良いお話ありがとうございます。
実際に、ロリエンで弟君との夢ともうつつとも付かない邂逅が
兄上の身にあったならばと、夢見さしてもらいました。
それなのに、せっかくの一夜を覚えてないなんて、不憫な。

>長い時間をかけて彼をそういう人間にしてしまったのは、私自身であるのかも知れない。

兄上本人は認めたがらないだろうけども、兄上には
大将が「そういう」ものとして必要だったからこそ、
現在の形に、兄弟の在りようが決定されたのだろうと。
つまり、兄上が、自分自身受容し切れていない部分であろうが、
兄上を含む兄弟にとっての必然が、それをもたらしたのだろうと、
思うわけです。
そして、普段は情より理屈が優先してるのかと思わせてくれる大将が、
兄上の前ではかわいい弟っていうのが、なんともツボです。

兄弟に関係ないところで、ケレ様が持つ存在感に感動。
「殿」の名は伊達ではありませぬな。

233萌えの下なる名無しさん:2004/07/16(金) 20:55
>225

えーと、難しい講釈とかナシで。

萌 え ま す た(*´Д`*)ハァハァ

234225:2004/07/18(日) 12:41
ご感想ありがとうございました。
実は萌ルドールのようじょ(小文字が出せない・・・)ガラ様もけっこう萌え、
と言うかツボなわたくしw
銀の殿の腕に抱っこされつつご託宣を垂れるガラ様にハァハァ・・・(板違い)

リオソの、王様のせいで苦労の絶えない新執政ネタもけっこうツボ。
笑えるアラファラ(エレファラ?)話も、たまには読みたいです。とか言って
みる。

235萌えの下なる名無しさん:2004/07/19(月) 20:18
アラファラ便乗なうえ、どっかでガイシュツだったらスマソですのだが、
指輪戦争終結後のゴンドールで、故ボロミア元総大将を騙る連中が発生。
連中に対してキレる若者27代執政、執政には公正さの重要性を説くものの、
実は騙り野郎には執政同様怒り心頭のエレッサール陛下とか。

236SS<兄弟/イムラヒル> 1/2:2004/07/20(火) 21:34
学生の皆さんは夏休み本番。ということで、いきなり小ネタ@海、行かせていただきます。
アラファラでなくてごめんなさい。

場所は、ドル・アムロス。
登場人物は、執政兄弟中心に、イムラヒル大公を加えた三名。
兄弟の年齢は、兄上二十歳前くらいで。
捏造ものなので、原作との整合性が気になる方にはお勧め出来ないです。
それから、兄上が物知らず過ぎるのが許せない方もご注意いただきたく。
カップリングは、ありません。

2レス分、使用させて頂きます。

<ファラミア/ボロミア/イムラヒル/カップリング要素皆無> 1/2















 ドル・アムロスの海岸は、つかの間の恩寵のように降り注ぐ、目もくらむような夏の日差しに満ちていた。
 この地の大公であるイムラヒルが居城に招いた、彼の夭逝した姉の忘れ形見である兄弟は、石の都では決して目にすることのない海を、それぞれに堪能していた。
 兄であるボロミアは、泳ぎに堪能だったし、その事への自信も手伝ってか、とりわけ、海を気に入っているようだった。
 兄と共に海水に体を任せ、波にたゆたっていた弟、ファラミアは、心地よさげに水に浸かっている兄の方へ向き直った。
「わたしはこれで上がりますので。兄上もご一緒にいかがですか」
 ボロミアは、信じられないとでも言いたげな顔を、弟に投げかけた。
「もう限界なのか。そんなことでは、いざという時が思いやられるが」
「では、兄上はまだこちらにいらっしゃるので」
「ああ。一人で上がれ」
「承知しました。くれぐれも申し上げておきますが、わたしは、ちゃんと兄上をお誘い申し上げましたからね」
「何のための念押しか知らぬが、確かに聞いた」
「それでは、心おきなく上がらせていただきます。兄上は、お気の済むまでごゆっくりと」
 不思議そうな顔を見せる兄を海上に置いて、ファラミアは兄に負けず劣らず達者な泳ぎで、遠浅の砂浜に上がった。見つけておいた適当な木陰に入って、体の水分を拭っていたとき、ファラミアは近づいてくる人影に気付いた。つい身構えたが、その主が知れると、ファラミアは目に見えて表情を緩めた。
 人物は、彼ら兄弟の叔父、イムラヒル大公だった。
「叔父上。このような所までお越しいただいてありがとうございます」
 イムラヒルは、礼儀に則って立ち上がりかけたファラミアに手真似で座るよう促すと、自らも体を低くした。
「いや。来訪を乞うたのは私だ。そなたたちには礼を言わねばな。無論、許可を下さった執政殿にも」
「痛み入ります。われら兄弟、この地を堪能させて頂いております」
「それは何より」
 イムラヒルは、目を細くした。彼にとって、姉が残した子供たちはいくつになっても可愛いのだ。
「ところで、ボロミアの姿が見えぬが」
「ボロミアですか」
 ファラミアは意味深長に笑った。
「兄上は、海がことのほかお気に入りのようで。上がるようお誘いしても、一向に聞き入れて下さらぬのです」
 ファラミアとイムラヒルは、顔を見合わせた。
「私からも、一言申す事にするか」
「叔父上。お心遣いは有り難く思いますが。ボロミアは、常として、自らの身に体験して得心せぬ限りは、梃子でも動かぬのです」
 ファラミアとイムラヒルは、もう一度顔を見合わせた。
「間もなく、私が習慣にしている午後のお茶の時間が来る。ファラミアよ。兄弟二人で私に付き合ってくれるな?」
「喜んで」
 ファラミアは、心からの礼を叔父に見せた。
「では、これよりボロミアを呼び返して参ります。衣服を整え次第、叔父上の元に参上させて頂きますゆえ」
「相分かった」
「ありがとうございます。ボロミアに成り代わり、礼を申し上げます」
「何の。ただ、既に手遅れかも知れぬがな」
 イムラヒルは、波間に見えるボロミアの姿に思わしげな視線をやると、波打ち際に向かうファラミアの背を見送ってから、居城に戻った。

 さて、さすがのボロミアも、叔父の招きとあっては無碍には出来ないとあって、自分の元に舞い戻ってきたファラミアから事情を聞かされるなり、ファラミアに先立つように、海を後にした。ファラミアは、ボロミアの背を追いながら、やれやれと胸をなで下ろした。
 しかし、問題なのは今ではないと、ファラミアは理解していた。

237SS<兄弟/イムラヒル> 2/2:2004/07/20(火) 21:38
<ファラミア/ボロミア/イムラヒル/カップリング要素皆無> 2/2















 叔父、甥でたしなむ午後のお茶の時間は、ファラミアにしてみても愉快なひとときだった。
 ただ、ボロミアにとって不思議な事には、気付けば弟と叔父が、二人して、自分を伺うような目で見つめているのだ。何かと思い、視線を合わせると、つと目は逸らされてしまう。
 同じ事は、夕食の席でも起きた。

「お前と叔父上は、わたしに何か含むところがあるのではないか?」
 夜も更け、兄弟のために用意された部屋に二人きりになって、ファラミアは開口一番、ボロミアから疑問を投げつけられた。
「ございませぬ」
 ファラミアは即答した。ファラミアが兄を欺くような人間でないことは、ボロミアが一番よく理解していた。だから、ボロミアはファラミアの言葉に納得するしかなかった。
「そうか」
 言うと、ボロミアは寝台に体を横たえた。その枕元に顔を寄せて、ファラミアは囁いた。
「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく私に申していただけますか」
「何を困ることがある? まあ良い。分かった。お前も休め」
「お休みなさい。兄上」
 就寝前の挨拶であるキスをお互いの額に送り合ってから、ファラミアも自分の寝台に体を落ち着けた。

 ボロミアは、翌朝、弟と叔父が見せていた視線の意味を、身を以て知ることになった。
 ボロミアは、目が覚めても寝台から起きあがれなかった。全身が、擦りむいた覚えもないのにひりひりと痛むからだった。
「強い日差しを許容量以上に浴びると、人間の皮膚というものは、軽い火傷のような状態になるのです。特に、皮膚の色が薄い方は、日差しに弱いといいます。ボロミア」
 寝間着をはだけて寝台に横たわったボロミアに説明をしながら、ファラミアは、火傷に有効だという薬草の汁をしみこませた布を、赤く腫れた肌の上に広げていった。それでも、望まぬ痛みが不快でないわけがない。ボロミアが恨めしげな目をファラミアに向けてきた。
「そこまで知っていて、なぜ兄に教えず、放っておいた?」
「わたしは、自分が上がる時に兄上をお誘いしました。もっとも、兄上はご自分のなさりたいようになさったわけですが。昨日の今日で、よもや、お忘れになったとはおっしゃいますまい」
 ボロミアは、黙りこくってしまった。
 ファラミアは、寝台に釘付けになるしかなくなった兄の、枕元に持ってきた椅子に座り、本を読みつつ、時折物言いたげに自分を見上げるボロミアの、皮膚の状態の面倒を見ることでその日を過ごした。
 ゆるゆると流れる時間。眼下には砂浜、そして海。耳には、くすぐるような波の音。カーテンで遮られ、一日薄明るい光に満ちた部屋。そして、傍らにはいつになく無力なボロミア。
 あまりに満ち足りた時間を得て、ボロミアには、これからもたまに、日焼けに苦しんでいただくことにしようかと、ファラミアは密かに考えていた。

//終わり

238萌えの下なる名無しさん:2004/07/21(水) 09:26
>236->237様
大将・・・腹黒・・・?
そして(どうでもいいことですが)サンバーン体質の自分には、兄君の
苦しみがよーくわかりますw
夏にふさわしいお話ありがとうございました。

それにしても、ここんとこ東京の暑さは異様だ。なんとかならんのか・・・

239萌えの下なる名無しさん:2004/07/22(木) 13:07
大将と叔父上GJ!(w
ところで泳ぐ時はやはり水着なんでしょーか。もしや裸・・・?

240236:2004/07/23(金) 11:09
【訂正】 >237 第2段落8行目

誤 >「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく私に申していただけますか」  
                                        ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
正 >「もし、何かお困り事が生じましたら、時は問いませぬ。ご遠慮なく、わたしにおっしゃっていただけますか」 


兄上は、自分が動けない分、弟を顎で使いそうな予感。
小ネタの、さらに小ネタ。

「痛い」
「いずれ回復します。今は、我慢なさる他ありませぬ」
「元はといえば…」
「兄上が加減をごご存知ないせいでしたかな」

「喉が渇いた」
「水をいただいてきましょう」
「この姿勢で、どうやって飲むのだ」
「ご心配せずとも、わたしが、飲ませて差し上げますよ」

「退屈だ」
「本をお読みしましょうか」
「お前が選ぶ本は、つまらん」
「そうおっしゃらず」
(朗読。兄上熟睡)

「ボロミアの具合はどうだ」
「これは叔父上。お陰様で、眠れる程度には大丈夫なようです」
「ファラミア。ボロミアはうちの者に任せて、羽を伸ばしてきても構わぬぞ」
「ありがとうございます。ただ、わたしは兄上のお側にあって、お役に立ちたく思います」
「ボロミアも、それを、恐らく知っておるのだな」
「はい?」
「これは、信頼しきっておる者の顔だ」
(顔を見合わせるファラミアとイムラヒル。そして、両者ともに声をたてず笑う)。

//終わり

241萌えの下なる名無しさん:2004/07/23(金) 15:45
今日も暑いっすね。

兄へ「あんたは幼児か!」
弟へ「あんたはおかーさんか!」
そして、兄弟に対する叔父上のスタンスが絶妙。
コワイ父君の目の届かないところでは、ほんとにこんな感じで仲良くして
くれていたらいいな。

242萌えの下なる名無しさん:2004/07/25(日) 01:27
RoTK-CEのレンタルが始まった訳ですが、北米海軍基地のある町でヲタクの
祭典が開かれていまして、そこでSEE追加分に関するかなりのネタバレ情報や
実際の映像のさわりなどが公開された模様。
で、そのパネルディスカッションにおでましになったのが、我らが大将の
中の人と、ゴンドールの小さい騎士の中の人だったのですよ。
大将絡みで復活が期待されるシーンは、あらかたはいっているようですね。
以下、かなりネタバレなので・・・








大将がピピンと兄上のことを話す場面があるそうです。勿論、例の騎士の
制服が大将のお下がりだという話も。二人で笑い合ったり、大将にとっては
僅かな安らぎのひとときだったのでしょうね・・・
なお、大将の中の人が(自分の出番の中で)三部作中最も好きな場面は、
TTT-SEEのオスギリアスだそうで、やっぱりねw という感じですが、RoTKの
中では、「兄上と私の立場が入れ替わっていたら〜」のあたりと、上述した
ピピンとのシーンがいちばん好きなのだそうです。

今から来るべき冬のことを思い、現在の酷暑を少しでも忘れたいです。

243萌えの下なる名無しさん:2004/07/26(月) 01:53
>242サマ、情報ありがとうございます!
うわぁ〜、そんな祭典、うらやまし杉!!
フォー・ゴンドーーーール!!

244242:2004/07/26(月) 21:30
いろんなネタバレ情報を見て回って、改めて思ったのが、実は映画では、
ピピンこそがベ(ry の役割を(大将に対して)担っていたのかも、という
こと。実際に炎の中から助け出したのが彼だったというだけでなく。
ネタバレに関しては、あっと言う間に隠し撮り映像(おいおい)なんてもの
まで出回っているけどーーー










ああ、大将笑ってるよ。ピピンに向けて。それだけで嬉しい自分がいる。
ピピンが大将を慰めると言うか励ます台詞もあるらしい。そこで一気に
ファラピピ萌えが・・・とか言うより、いろいろな人から
「あなたは決してひとりではない」
と言われながらも、一人で行こうとする大将が、なおさら痛々しく思えて
きそうです。

245萌えの下なる名無しさん:2004/07/27(火) 00:22
>242さま
ネタバレ?なのでさげます。












あの隠し撮り(モロ隠し撮りーって感じでしたね)での
ピピンへ向けた笑顔、これまでのどれとも違ってるように見えました。
オスギリアスでボロミアに対しての全開の笑顔、戴冠式でのエオウィンとの
ふわっとした笑顔、フロドたちを放す時の腹くくった笑顔、
どれとも違いますよね…。中の人、ホント上手いなあと思いました。

246SS1/2:2004/07/30(金) 23:29
皆様、夏バテですか?それとも、わが国の祭典に向けての準備中?
という中、SEEネタバレ情報に触発されて、ファラピピ小ネタいきます。
その情報も、以前別の所で見たものとは少し異なるように思えますが、
はっきりしたことが判る前に、あえて書かせて頂きます。

<ネタバレ@ ピピン/ファラミア しるけ皆無>

*/はピピン視点という意味。
*大将オスギリアス撤退後、次の出撃前。
*ファラピピと言いつつ、半分くらいガンピピ。





白い花のような人だと、ピピンは思った。
初めて会った時には、前線から戻ったばかりで血と埃にまみれたその姿を、恐ろしいと感じた。
しかし、この冷やかな石造りの建物の中に佇むその人は、都の公子に似つかわしくない革の胴衣も籠手もまだ身に着けたままでいながら、慎ましく咲く白い花を思わせた。
自分が黒い石の中で燃え落ちる姿を見せられ、この都に来て枯れ果てたその実物を目にした、あの白い木がもし花をつけることがあるなら、この人に似ているかも知れない。
大将と呼ばれる人に対してふさわしい連想ではなかったが、ピピンはそう思わずにいられなかった。

そして、その人は今、実の父親から死を宣告されたにもかかわらず、穏やかな微笑さえ浮かべて、自分の前にいる。
この人の兄はこんな風には笑わなかった、とピピンは思う。
少なくとも、自分やメリーに向ける笑顔は、どこまでも明るく、太陽の光を集めたかのようだった。
それが失われたことは、もちろん自分たちにとっても打撃だったが、その父や弟にとっては、量り知れないほどの影響をもたらすものだったのだと、ピピンは思い知った。

「僕でお力になれることがあれば・・・」
と声をかけると、その人は微笑を浮かべたまま、静かに答えた。
「なすべきことはもうない。自分の身を護ることだけ考えるがよい」

ああ、この人は死ぬ気だ。
そう思った。
父親にそう言われたからだけではない。おそらくあの光を失った時から、この人は死ぬ気だったのだ。むしろ、父親の口からはっきりとそれを告げられることを、望んでさえいたのではないだろうか、と。
しかしーーー

「ガンダルフ!ガンダルフ!」
広い宮殿の中、やっと魔法使いの姿を見出して、ピピンは駆け寄って行った。
「ガンダルフ、どうかあの方を助けて下さい。あの方は死ぬ気です。ガンダルフ、お願いだから、やめさせて下さい」
「ペレグリン・トゥックよ、何の話じゃ」
白い衣にしがみついた手をぐいと引き離し、魔法使いは訊ねた。
それでピピンは、自分が目にしたことを、彼に話して聞かせた。
「こんな時だから、命がけでしなくちゃならないことだってあるでしょう。でも、あんなのは間違ってる・・・」
言ううち、ピピンの目からは涙が溢れ出した。
「ぼ、僕は、ボロミアさんが僕たちの前で斃れた姿が忘れられない・・・今また、その弟さんにまで、死んでなんかほしくないんです。たったひとりで、身を捨ててほしくなんか・・・」

あんなに傷ついたままで。
あんな微笑だけを残して。

247SS 2/2:2004/07/30(金) 23:33
<ファラピピ 2/2>














「しかし、あれも昔から、自分で決めたことに関しては枉げるということのない子じゃったよ。その点は、父や兄とよく似ている。それに、いったん執政の命令が下った以上、そう易々とは覆せん」
「ガンダルフ!」
「だが、おまえさんは、彼の助けになりたいんじゃな」
ピピンは頷いた。

ボロミアの弟だからーーーフロドとサムの無事な姿を最後に確認した人だからーーー
しかし、自分の気持ちがそれだけによるものでないことに、ピピンは気がついていた。
ボロミアには、彼が導いてくれるのであれば、自分はただどこまでもついて行きたかった。だがーーー

「僕は、あの方の為に何かしてさしあげたいんです。何ができるかはわからないけれど」
「そう思う者は、おまえさん以外にも、この都には大勢おると思うぞ」
と言うガンダルフの声は、いつになく優しかった。
「あの子が、ちゃんとそれに気づいてくれるといいのじゃが」
「だから、あなたがそうおっしゃって下さい」
ガンダルフは首を振った。
「言ったじゃろう。人がこうと決めた心を簡単に動かすことなどできん。そんなことは魔法使いの仕事でもないわ。だが、おまえさんならあるいは、本当に何かをなし得るかも知れんな。ホビットには、人間や魔法使いの思い及びもしない力がある。ボロミアの心を最後の最後で踏みとどまらせたのも、おまえさんたちだったのじゃから」
そう言われて、また涙が出そうになった。それがこぼれ落ちる前に、ガンダルフはピピンの肩にそっと手を置いた。
「が、まあ、わしも彼には伝えておかなくてはならんことがある。おまえさんはおまえさんで、その"できること"について考えればよい。さしあたっては、いま身に着けている制服にふさわしい振舞いをすることじゃ、小さい騎士よ」
「この服ですけど・・・」
ピピンは少し腕を広げ、白の木の徴しを捺した黒い胴衣に目を落とした。
「あの方が子供の頃、着ておられたものなのだそうです」
「ふうむ?」
魔法使いは眉を上げた。
「なるほどな。では、あれの父親にも、まだ少しは望みがあるやも知れぬ」
去り際、ガンダルフはもう一度言った。
「忘れるな。おまえさんにできることは必ずある筈じゃ」

あの人を守りたい。
と、ピピンは思った。
どう考えても、身に過ぎた思いには違いない。共に前線に出る訳にいかないことも判っている。
またそれは、ボロミアが自分たちを守る為に命を掛けてくれた、その恩に報いたいというだけの気持ちではなかった。

白の木を燃え尽きさせてはならない。
血を浴び、踏みにじられ、それでもなお端然と咲く白い花のようなあの人を、僕はただ守りたい。
その為に命を掛けることになろうとも。

「できることは必ずある。必ずーーー」
魔法使いの言葉を、もう一度、ピピンは自分の口で繰り返した。


***
お粗末さま。1と2の間に1行あけ願います。

248萌えの下なる名無しさん:2004/07/31(土) 17:56
>246さま

世間は夏祭り準備の予感。

読後の今、気分はまさにベレゴンドです。
この追い込まれっぷりが大将だと思いつつ、
もっと楽になって欲しいのも本当だし。悩まし過ぎます、大将。
ピピンは成人前なのに、見事な腹のくくりっぷりを見せてくれるし。
小さい人には改めて感服しました。

ファラミア=白い花の喩えがぴったりで、一行目がもう萌えだったんですが。

兄上は熱帯雨林のイメージなんですが。中つ国にあるかどうかは…。
あるいは月見草と向日葵とか。嫌なたとえだったらごめんなさい。

249萌えの下なる名無しさん:2004/07/31(土) 19:30
>246さま
大将=白い花にツルッ禿になる程同意ですヽ(゚∀゚)ノ
大将のイメージカラーはなんとなく白、緑、茶・・・まさにお花色。

全然関係ないのですが、
某ケータイ指輪ゲームの人物紹介の大将、
一人キラキラしてて眩しかったです。
大女優用スポットライトでも当てられていたのかと思う程に。

250SS<ベレゴンド執政兄弟> 1/2:2004/08/01(日) 22:43
唐突に、季節感のない小ネタいかせて頂きます。
原作のどのエピソードとも絡みません。捏造ものです。ご注意お願いします。

登場人物はベレゴンド、ファラミア、ボロミアの三名。
主役はベレゴンドです。カップリングはありません。
大将二十代後半くらい。
読み流していただければ幸い、というお話です。
2レス分使用させて頂きます。



<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> 1/2















 ミナス・ティリス第三中隊の近衛兵、ベレゴンドは面食らった。
 今まで無い事に、総大将殿から直々に呼び出しがあったからだった。
 ともかく、ミナス・ティリスでは総大将といえば執政に次ぐ責任者である。その総大将の呼び出しとあらば、何を置いても駆けつけなければならない。夜更けにも拘わらず、ベレゴンドは支持された場所へと急いだ。
 城塞の一角に総大将であるボロミアは、いた。
 ベレゴンドもミナス・ティリスに仕える身である。その姿は見知っていたが、直接に顔を合わせるのは初めてのことだった。平伏しようとするベレゴンドにボロミアは近づき、耳元で低く言った。
「ベレゴンドであるな。事は急を要するのでな。事情は道々話す」
 先に立って大股に歩き出したボロミアに遅れないよう、ベレゴンドは姿勢を正し、足を速めた。ベレゴンドの気のせいでなければボロミアは、通常ならば一介の近衛兵に過ぎない身であるベレゴンドなどが入ることを許されるような場所ではない、執政家の個人的な居住空間へと進んでいた。
 意識に上らすまいとしても、どうしても緊張が勝って身構えてしまうベレゴンドに構わず、ボロミアが振り返りもせずベレゴンドに問う。
「お前には妻があるな」
 何故、今、ボロミアがベレゴンド個人の話を聞きたがるのか、ベレゴンドには実は分からなかった。が、考えても仕方がなかった。
「その通りにございます」
「子供はあるか」
「息子がおります」
「妻子は、かわいいか」
 総大将殿は、何を聞きたいのだろう。ベレゴンドの混乱は増すばかりだった。
「大事に思っております」
「結構な事だ」
 ボロミアが、頷いたような気がした。しかし、総大将殿と会話するというだけで強いられる緊張感から、背中にしたたる嫌な汗をこらえるので、ベレゴンドは精一杯だった。ボロミアとの会話は、ベレゴンドにとっては、光栄というより、ただ、畏怖の念が勝るものだった。
 ベレゴンドが連れて行かれた先は、湯殿だった。ますます訳が分からない。待ちかまえていた女官が、ベレゴンドを中へ引っ張っていく。
「念入りにな」
 ボロミアが女官に告げる声が聞こえた。
「何がどうなっているのです」
 されるがままになるしかないベレゴンドは、普段親交の持ちようもない女官たちに尋ねた。が、答えはなかった。
 すっかり体を洗われ、袖を通したこともないような真っ白なガウンに身を包まされて、ベレゴンドは女官に付き添われて、湯殿から出された。
 まるで品定めされるように、頭のてっぺんから足の先までボロミアの遠慮無しな視線に晒されて、ベレゴンドは居心地悪いことこの上なかった。
「ご苦労」
 女官をねぎらうと、ボロミアは再び歩き出した。置いて行かれてはどうにもならない。ベレゴンドは、目的が知れずとも、どこまでもボロミアに従うしかなかった。
 扉の一つの前でボロミアは足を止めた。
「以降、足音は厳禁である。不用意に気配を立てることも許さぬ」
 殊更抑えた声で告げられた命令に、ベレゴンドはごく低く短く御意と答えた。
 慎重かつ丁重に、ボロミアが扉を開いた。
 広く、薄暗い部屋に、人の気配があることに、ベレゴンドは気付いた。そして、部屋の空気は、ただならぬ湿気と熱に覆われているように感じられた。
 ベレゴンドに指示した以上に注意深く、ボロミアは部屋を進んだ。ベレゴンドは、粗相がないよう神経を尖らせながらボロミアに続いた。
 ボロミアが再び立ち止まったので、ベレゴンドはそれに従った。
 ボロミアの体越しにベレゴンドが見たのは、寝台だった。人の気配はそこにあった。禁じられていたにも拘わらず、ベレゴンドは息を飲んだ。彼が、職務上の義務からだけではなく、崇拝してやまない、ファラミア大将の姿があったからだ。気付かれたのだろう、ボロミアが振り返り、ベレゴンドにきつい非難の目を向けていた。ベレゴンドは、非礼を詫びるために頭を下げるしかなかった。

251SS<ベレゴンド執政兄弟> 2/2:2004/08/01(日) 22:44
<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> 2/2














 ファラミアは、眠っているようだった。
 ベレゴンドの目には、それが安らかな眠りであるようには見えなかった。見間違いでなければ、顔は上気し、ただの寝汗とは思えない玉のような汗が、額に滲んでいた。僅かに開いた唇の間から漏れる息は、多分、熱を帯びてるのだ。
「どう思う」
 いきなりの問に、ベレゴンドは答えることが出来なかった。
「痛々しい事だ」
 悲痛な響きを持つ呟きに頷く事が、ベレゴンドに出来る精一杯だった。
「熱がある。薬の処方を受けたが下がらぬ」
 おいたわしいことだ。そう思ったが、ベレゴンドが声に出すわけにはいかなかった。
「添い寝を言いつける」
 えっ。と声を上げそうになるのを、ベレゴンドは自分の両手で口を塞ぐことで、なんとか抑えた。
 命じられたことは理解出来た。が、聞き違いかも知れないと、礼も忘れてベレゴンドは総大将殿の顔を、目を丸くして見た。
「聞こえぬのか」
 念を押されて、ようやくベレゴンドは体を動かすことが出来た。
「失礼を」
 自分が使っているよりは広い寝台に、ベレゴンドは慎重に慎重を重ねて体を滑り込ませた。こもっている熱と、汗によるしっとりとした湿り気に体を包まれてもなお、自分のしていることが、到底現実とはベレゴンドには思えなかった。
「余計な事を為すな。考えもするな。明朝、迎えの者を寄越す。以上だ」
 ボロミアは、一方的にベレゴンドに告げ、身を翻した。部屋を出ていく気配がベレゴンドにも感じられた。

 大将殿は、目を覚まさなかったのだろう。
 とてもまともに体を向き合わせる気にはなれず、自分の背中越しにようやく盗み見るようにしてベレゴンドが確かめたのは、呼吸のため大きく上下しているファラミアの体だけだった。
 自分は、一体、ここで何をしているのだろう。
 ベレゴンドは何度も自分自身に問うた。
 手を伸ばせば触れられる位置に、大将殿がいる。それどころか、自分は同じ寝台に身を横たえている。これは命令だった。添い寝だ、と総大将殿は言った。いい年をした大人に添い寝が必要なのだろうか。そして、何故自分なのか。もしそれが必要ならば、医術の心得がある者や、兄弟である総大将殿の方が、より相応しいのではないか。
 色々な考えが頭に浮かんだが、何一つ確かな道筋を示すものにはならなかった。

 それにしても、大将殿だ。
 熱に浮かされて寝付いているにしても、佇まいは整っていて、普段見かける様子と変わることと言えば、多少弱々しさが見えるくらいのものだった。
 余計なことを為すな。
 不意に、ボロミアの言葉が頭によみがえってきて、ベレゴンドは自分が、ファラミアの姿に不躾にも見入っている事に気付いた。
 自分も、寝れば良いのだろうかと、ベレゴンドは目を閉じてみた。しかし、ファラミアの呼吸と、体の持つ熱が、殊更、体に染みるように感じられて、寝付くどころではないのが、分かっただけだった。
 それでも、命令は命令だった。気配をなるべく殺し、自分の心臓の鼓動が己の耳に煩いのを我慢しつつ、ベレゴンドは自分の上官の寝台に、寝転がっているしかなかった。
 そうして、まんじりともしないまま、ベレゴンドは朝が来るのを待った。

 視界は暗かった。横たえている体が重かった。
「ベレゴンド」
 名を呼ばれて、くっついたままでいようと粘るまぶたを、なんとか開いた。
 視界に入ったのが、誰なのか頭が認識するまで多少かかった。
「ファラミア…様」
 ベレゴンドは跳ね起きようとしたが、何故かひどい頭痛と倦怠感が体を支配していて、思うようにならなかった。
「迎えが来ている。療病院に寄って指示を仰ぐが良い」
「は…」
 ふらつく体を、迎えだという近衛兵に支えられて、なんとか立ち上がるとベレゴンドは、自分の上官に深々と礼をした。
「いかにも総大将殿の考えそうなことだ。ご苦労だった」
 張りのある声は、病人のそれではないと、ベレゴンドは意識の片隅で思った。本当に良かった。とベレゴンドは思った。
 次に気付いた時には、ベレゴンドの体は療病院にあった。
「風邪だね。まったく、どこで貰ってきたのやら」
 喉に苦い薬を流し込まれたが、大将殿に貰った風邪なら悪くはないかも知れないと、昨夜取れなかった分までも取り戻そうとするかのように、朦朧とする割に痛む頭に心悩ませつつ、ベレゴンドは深い眠りに落ちていった。

252SS<ベレゴンド執政兄弟> (2/2)+1:2004/08/01(日) 22:47
<ベレゴンド/ファラミア/ボロミア しるけなし> (2/2)+1
















***

「兄上」
 身支度を調えたファラミアは、真っ先にボロミアの元に向かった。
「ファラミア。元気になったか。結構な事だ」
 満面の笑みをたたえたボロミアは、熱が引いた弟の体を抱き締めた。
「ありがとうございます。しかし、他人を巻き込むのは感心しませんな」
「気付いていたか。風邪は人にうつすと治るという。単なる民間伝承だと思ってはいたが、試す価値があったというわけであるな」
「兄上…」
 思わぬ溜息が漏れた。
「ベレゴンドはとりわけ信用のおける人物であると、調べはついている。でなければ、任せるものか」
「そのようなことは申しておりません」
「では何だ」
 幼い頃、あの場所にいるのは必ずボロミアだったのだが。
 この兄は、自分の言いたいことになど、一生気付くまいとファラミアは思った。だから、黙って兄の背を抱き返しただけだった。

//終わり

253萌えの下なる名無しさん:2004/08/03(火) 23:11
>250様
あの・・・子馬限定かどうかわかりませんが、ベレって総大将殿の思いつきの
おかげで、いろいろ大変な目に遭ってません?w その反面役得も有り、と。
そして兄上、「弟は心配。でも自分がうつされるのはいや」って・・・w

私事ですが、DVD封入の中つ国住民票で、晴れてゴンドールの民と認定され
ました。これはやはり、今後とも執政家の為に尽くせという啓示でしょうか。
(え、帰還あそばした王様には・・・?)

254萌えの下なる名無しさん:2004/08/04(水) 14:16
>250−252女神様
夏風邪注意ですな。いやあ、べレゴンドさん役得。
でも「ファラミアさまぁー!!」(原作)のひとだからオールおっけー。

>253
いいえ、兄上は涙をのんで職務を優先したのですよ。
白い都の大将と総大将がそろって寝込んでいたんでは
東よりの悪しき風が機に乗じる恐れがある。
なにより、父上がパらんティあで見てるかも、だ!!

255萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 10:50
>パらんティあ
そ れ だ !
そうでなければただの感冒、何を恐れることがあろうか!
と断腸の思いで諦めたのですね、兄上は(w
というかプライバシーの侵害ですよ父上……

256萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 21:20
小ネタを引っ張ってごめんなさいなのですが。
こんな父上出ました。



<父上、次男が高熱に伏せるの報を受け部屋を訪れる>






時は遡り、ファラミアが伏せった直後。
起きあがれないファラミアの枕元で、
無言のまま立ちつくす父上。
その気配のため落ち着かず、眠れないファラミア。

ファラミア心の声:
(責任ある大将の身でありながら伏せるなど
 不甲斐ないとのお怒り、ご尤もです。
 回復後にはどのようなお叱りも受けますゆえ、
 どうか今は療養に専心させて下さい)。

父上心の声:
(父に手の一つも差し出しさえしてくれば、
 握るなり添い寝なりしてやれるというのに、
 なぜこのような時でさえ、ファラミアは父を頼みにしてこぬのだ)。

自分から手を伸ばせば話が早いにも拘わらず、
素直になれない純情(?)父上。
待てど暮らせどファラミアからのアクションが
無いことに業を煮やして自ら退室。

「そしてかれは多くの他のことと同様
このことでも父の不興を買ったのである」(追補編より)。




//双方とも「よく人の心を読」むらしいのに擦れ違う大将と父上。
 …失礼しました。




引用部分の補足
出典:新版指輪物語10追補編/p69
「かれ」…ファラミア
「このこと」…ガンダルフの智恵をファラミアが喜んで学んだこと。

257萌えの下なる名無しさん:2004/08/05(木) 22:11
>256
父上…
部屋を立ち去る時、例によってシニカル笑いをうかべながら
「寝たふりなど」
とか、聞こえるようにつぶやいて
大将の寒気を倍増させているんだろうな(笑)

そんな気配は感じつつ、おろおろしてしまう兄上。
で、ベレを呼ぶのか。風鈴家の人々はつくづく可愛いな。

258萌えの下なる名無しさん:2004/08/06(金) 16:09
いざとなれば父上もファラミアを気遣うのだな。
と、現象だけを見て一人で心温まってる兄上とか。
大将、確かに父兄から愛されてるんだけど、
不憫さ増量(当初比)な気もしたり。

ここらで、"幸せな"大将を禿げしくキボン。

259萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 18:36
>"幸せな"大将
と言われて、何も思いつかないことに気づきました。ひでぇ・・・
う〜ん、イシリアン大公御夫妻のほのぼのバカッポー話とかなら何とか
なるかもだけど、この板的にはどうかと思うし。
それ以外で大将の幸せはどこに・・・?

260萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 21:24
あるだろう、ささやかなのが。
兄上のかげにはなったけど父上の視界にはいったとか。

261萌えの下なる名無しさん:2004/08/09(月) 22:24
父上に久しぶりに声をかけられたとか?
「その醤油をとってくれ。」とか?

262萌えの下なる名無しさん:2004/08/10(火) 15:27
↑ひ、ひどい!!w

263萌えの下なる名無しさん:2004/08/10(火) 22:03
>260>261
君たち・・・w

264萌えの下なる名無しさん:2004/08/11(水) 13:26
ささやかに愛されてるな、大将w

265萌えの下なる名無しさん:2004/08/13(金) 17:05
だけど御大将、口答えするんだよな…
父上がだんだんおかしくなってきて
「自分が王になるのだ!」みたいなことを言い出しても
「父上、冗談だとしたら全然面白くありませんが
本気だとすれば、かなりおかしいですな」
とかしれっと言いそうだ。

266萌えの下なる名無しさん:2004/08/14(土) 10:51
>265
父上相手に、生真面目な受け答えをする大将かわいいなー。
そんなところはデネソールにそっくりなんでしょうね。

267萌えの下なる名無しさん:2004/08/15(日) 20:43
デネソールに似ているのは大将で、
デネソールの父君は兄上に似ていたのかも。

そんでもってSSなのですが。
兄弟を分ける要素ってなんだろうというところから出発。
テーマは「大人になるってどういうことなんだろう?」
ファラミア視点。
ファラミアを直接指導していたのは教師と兄だったという前提。父上不関与。
登場人物。子どもファラミア、子どもボロミア、教師(捏造)
4レス分予定。

しるけは、なしで。それでは数レス分お借りします。

<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 1/4













 自分というものがある限り、兄の役に立つこと。それが自分の存在理由だった。
 ファラミア、一二歳。
 そして、何より兄は自分の支えだった。

 五歳になった年、母を亡くした。
 何も分からない子どもでしかなかった自分に、役割を教え、道理を説き、義務を自覚せしめたのは、教師たちよりもむしろボロミアだった。なぜならば、ボロミアは誰よりも自分と近しい位置にある。あるいは、あろうとしているからだ。
 時と共に母の記憶は薄らいでいく。父親は、自分を省みる事が稀であるかに思えてならない。父の心の内は知らない。
 そうした環境にあって、感情というままならぬものを受け止めてくれるのは常にボロミアだった。
 疑問に、時に理不尽な物言いに耳を傾け、困り事は無いかと体を抱き締めてくれる。そのたびに得られるのは、安らぎに他ならなかった。誰も代わりはない。懐疑を抱くたび、自分はここにいるべき人間であるのだと、ボロミアが言葉ではなく飽かず繰り返し教えてくれたのだ。

 だから、ボロミアと自分は分かちがたく生涯に渡って共にあるものだと、ファラミアは思っていた。
「大人になる」という事が、自分の理解にある事柄以外の意味を含むものだと、教えられるまでは。
 兄の姿を見上げるたび思ったものだった。早く、ボロミアのようになりたい、と。背が伸びること、体が発達することに伴って身に付く頑強さをファラミアは羨望した。とはいえ、ボロミアもまだ年は十七で、いわゆる「成人」の体と比べれば、ボロミアが持つのもまだ少年のそれには違いなかったが、ファラミアの目には随分、大人であるように感じられていた。ファラミアにとって、目に見えて変わろうとしている自分の体は喜ばしく、誇らしいものだった。
 しかし、体の発達は、重い剣を自在に操ることや、長く早く歩むことだけに役立てるものではないという。教師いわく、こうだ。
「いずれはしかるべき方を妻と迎え、後継者となるお子をなさねばなりません。そのためにも、お体はそれにふさわしく、健康に保たねば」
 それは、「自立」するという事を同時に意味していた。
「もちろん、今すぐ、という事ではございません。しかし、来るべき時のための準備は、今から為さねばならぬでしょう。お気持ちの上でも、お体の上でもです」
「わたしがですか? 執政の後継者は兄です。兄に必要であるのはわかりますが」
「ボロミア様は、もちろんご理解なさっております。ファラミア様が同じくご成長なさり、お力になるとすれば、執政殿にとってもボロミア様にとっても、さぞお心強いことでしょう。そのために必要なことについてお話させていただかねばなりません。つまりはです…」
 初老の講師が語る言葉は、どこか遠くを滑って行くようだった。
 いずれ自分は、ボロミアと離れるのだ。ボロミアもそれを受けいれているという。
 そんなばかな。
 理屈ではなかった。ただ、認めたくないだけだと分かっていた。今すぐ、というわけでさえない。それでも、言いようのない喪失感をファラミアは拭えなかった。

 ファラミアは年の割に口数の多い方ではなかった。暇があれば書物を読みふけり、疑問があれば自分で本を開く。何かと言えば表に出て体を動かそうとする兄とは対照をなす、そういう子どもだった。
 その日を境に、ファラミアの口数はますます減った。
 それを見とがめたのは教師でも父親でもなく、兄だった。
 ボロミアは僅かも待たなかった。
 一日の日課を終え、後は部屋で休むだけだという時間になって、ファラミアは自室にボロミアの訪問を受けた。

268SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代2/4:2004/08/15(日) 20:46
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 2/4
















「兄上?」
 部屋にボロミアを迎え入れつつも、ファラミアは疑問を隠せなかった。逆はよくあることだった。ファラミアは、自分で処理しきれない問題が起こるたびに、ボロミアを頼ったものだ。しかし、ボロミアが自らファラミアを訪ねてくることは、至極稀だった。
 ファラミアが勧めた椅子を、ボロミアは断った。
「今の時間なら横になっていたのだろう。ファラミアは寝ていて良い」
 弟が持つ旺盛な知識欲と頭の回転の良さは、ボロミアも舌を巻くほどだったが、それでもファラミアはやはり一二歳の子どもに違いなく、ボロミアにしてみれば、まだ、かれの保護下に置くべき存在だった。そして、ファラミアもそれに薄々気付くだけの年にはなっていた。「兄上の役に立つ」どころではないのが今の自分ならば、それがたとえ不遜な考えであろうと兄と肩を並べるほどに成長したいと、ファラミアは望まないではいられなかった。教師からあの言葉を与えられた今にして思えば、それに付随する何かがある事を知ろうともしなかっただけの、無邪気過ぎる願いであるにしても。
「それではお言葉にあまえます」
 ボロミアの来訪があるまで寝転がっていた寝台にファラミアは上がって、再び眠る姿勢を取った。そのファラミアの顔が見えるよう寝台の端に腰掛けたボロミアの手が、ファラミアの体を包む布団を引き上げ、ファラミアの肩口辺りに具合良く整えていく。納得いったらしい手が、ファラミアの生来ゆるく癖のある髪に触れると、それだけでファラミアは、心地よさから眠りに落ちてしまいそうになるのだが、それを堪えた。
「どうかなさったのですか。兄上」
 寝転がった姿勢では見上げるしかないので、そうしてファラミアはボロミアの顔を見た。
「どうかしているのは、ファラミアであるとわたしは思う」
 ファラミアは目を瞬かせた。
「なぜそう思われるのですか」
「ファラミア。何か、思い詰めていることがあるのではないか」
 言われて思い出されるのは、教師から聞かされた「大人になる」という事の意味だった。しかし、それをボロミアに吐露して何になるだろう。ファラミアは、片手を伸ばしボロミアの膝を覆う寝間着を手の内に掴んだ。
「それは、おたずねにならないでいただきたく思います」
「兄に、話せぬ事があると申すのだな」
 ボロミアの顔に険しさが浮かんだ。
「それはよほどの重大事に違いないな。ファラミア。ならば、是が非でも耳にせぬわけにはいかぬが。兄は、頼りにならぬか。ファラミア」
「いいえ」
 いつでも兄だけが頼みだというのに、ボロミアはなぜ平気でそう問えるのだろう。
「ならば兄に話してみよ。ファラミア。思うより兄には良い知恵がきっとあるぞ」
 ボロミアの声は優しい。髪に触れたままの手も、また。ファラミアは、ボロミアの寝間着を掴んだ拳を更に強く握りしめた。思うところを口にすれば、ボロミアはこれが自分の弟かと幻滅するだろうか。義務を忘れて何事を言いだすかと呆れ果てるだろうか。
 怖かった。ボロミアの暖かな目が、自分に注がれなくなる可能性を考える事は、ファラミアを何より苦しくさせた。
「ボロミア。−−兄上」
 言うべき事はあるだろうに、言葉が見つからない。ボロミアの膝頭に額を寄せたファラミアの髪を、ボロミアは悪戯でもするようにくしゃくしゃとかき混ぜた。
「辛いことがあったか。−−怖い夢を見たか?」
 後半低く潜められたボロミアの声に、ファラミアの背は思わず竦んだ。それを見越したわけではないだろうが、ファラミアが置いた頭と高さが合うようにボロミアは、足を床に残して腰までを寝台に横たえた。ファラミアの額に、兄の額が触れた。泣き出してしまいたいくらいだった。様子に気付いたのか、ボロミアはファラミアの体にかかる布団の下に腕を入れ、ファラミアの体をボロミア自身の体に触れ合うよう、抱き締めた。
「どんな事にせよ、己の身に降りかかる事は己で受け止めなければならぬ」
「承知して、おります」
 か細い声をボロミアはどう取っただろう。
「だがな。ファラミア。頼みに出来るものがあるなら、そうすることに何もためらう必要はない。結局はお前が負うものであろうともだ。兄に話せば気は軽くなるかも知れぬぞ。わたしは、いつでもそのつもりでいる。お前の信頼に足るようにと」
 そうして、ファラミアの目をまっすぐ見据えてくる。
「兄上、わたしは」
 自分が何を言おうとしているのか、ファラミア自身分かっているわけではなかった。しかし、何も言わないことはつまり、兄にとっては手ひどい裏切りなのだ。

269SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代3/4:2004/08/15(日) 20:49
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 3/4
















「わたしは、ずっと兄上のお側にあって、お役に立ちたく思います」
「うん? もちろんであるとも。誰もそれを咎め立てしたりはせぬぞ」
「兄上。わたしはそれがかなわぬと知りました」
 ボロミアが眉をひそめるのが見えた。
「かなわぬ理由などなかろう。それこそ、お前の心一つであることだ」
「わたしの心は、いま申したままです。かわりはしません」
「やはり、何か悪い夢でも見たのか。心が揺らぐような。−−ファラミア。父上同様にお前は"見える"のだろう。何か見たのだな。ファラミア」
「兄上」
 自分の表情から何かを知ろうとするのかのように、ボロミアは不安を隠そうともせずつめてくる。それがボロミアにとって殊更気がかりになるのは、ボロミアには"見えない"からだろう。得体が知れぬものほど、その正体が何であれそれは恐ろしいものとして立ち現れるのだ。そういえば、ボロミアはロスロリエンに住まうという魔女の話をひどく嫌っていたような記憶がある。ボロミアにとっては、ファラミアが時折語る夢の話も、それとさして変わらぬのだろう。
 それでいてボロミアは、自らの目に見えず、体感しようがないものにも、自分と共に向き合おうとしているのだ。
 ファラミアは思う。誰もボロミアの代わりにはならない。かれが自分の兄だからというだけでは、おそらくない。ボロミアが自分に向ける姿勢が、ボロミアの心のあり方が、自分には必要であるから。それ以上に、それらが何より増して好ましいものだからだ。
 しかし、ファラミアを捕らえて離さないのは、夜に訪れる夢ではない。それが何かと敢えて言わねばならぬならば、それは、来るべき未来に待ち受けている自分が果たすべき役割の一つなのだろう。民を安んじること。国を統べる者を助けること。それと同じ意味で。
「兄上は、大人になるとはどういうことであるとお考えですか」
「いきなりどうした」
 言いながらも、ボロミアはファラミアに与えるべき答えを探しているように見えた。
「人に助けられるのではなく、人を助ける存在になるということではないか。わたしとて、これからの身だが」
「これから」
「そうだ。ファラミア。だからといって心配はいらぬ。ファラミアにはわたしも、父上も、教師たちもついている」
 ついている。そうだ。今はそれが真実だ。だが、不安として心に上るのは「今」ではなく「これから」なのだが。ファラミアは核心を口にする覚悟を決めた。
「どちらからか妻を得て、世継ぎを為すことも、大人になるということであると、聞きました」
「わたしも、それは聞いた。時が来ればそうするのかも知れないが」
 事も無げにボロミアは言う。ボロミアにとってはその程度の事でしかないのだろう。そう思うと、望みもしないのに声が震えた。
「そのときは、わたしはもう、兄上のお側にはいられないのでしょう」
「何をばかな」
 ボロミアは声を殺して笑った。なぜ笑えるのか、ファラミアにはボロミアの気持ちは分かりかねた。ボロミアが足先を使って履き物を脱いでいるのが気配で分かった。そうして、ボロミアは寝台に体の全てを上げ、ファラミアの体を腕だけでなく全身で包み込むよう抱き締めてきた。
「妻子がいようがいまいが、ファラミア。お前は変わらずわたしの弟ではないか。それに、われらの為すべきことに終わりがないとすれば、ファラミア。生涯ずっと、わたしを助けてくれなければ、わたしが困ろうというものだ」
 ファラミアは、自分のものより二回りは大きな兄の体に、まるでしがみつくかのように腕を預けた。
「それに、そのときにはおそらく、ファラミアも自分の妻子を持っているだろう。つまりは、お互い様というわけだが」

270SS<ファラミア/ボロミア> 子ども時代4/4:2004/08/15(日) 20:51
<ファラミア/ボロミア/しるけなし/捏造子ども時代> 4/4

















「兄上…。わたしには、それはまだ見通しの利かない霧の中にあるように、ぼんやりとしたものとしてしか、思い描けないのです」
 ファラミアの額に額を押しつけるようにして、ボロミアは背を震わせて笑った。
「それならば、わたしも同じだ。教師たちは準備が肝要なのですと言うが。わたしに言わせれば、ゴンドールを脅かす存在を滅ぼす力を得ることが、他の何よりも優先されるべきことだ」
 兄らしい物言いだと、ファラミアは思った。
「わたしは、兄上のお力になれますね」
「わたしは、それを望んでいる。それに、ファラミア。それこそ己の心次第だろう」
「わたしの心はすでに決まっております」
 明瞭な口調で、ファラミアは断じた。
「それでこそ、わが弟だ」
 顔を見るとボロミアははちきれんばかりの笑みで、ファラミアを見つめていた。
 他に何も要らない。
 ファラミアはいつも思う。しかし、いつまでこれが自分だけに向けられるものであるのかは、誰にも分からない。助けられるのではない存在が大人というものであるなら、そのうち自分の手からは失われるべく定められたものなのかも知れない。
「兄上。今日はいっしょに休んでください」
 離れてしまわないように、自分のものより太い腕を、自分の腕で絡めとる。
「難しいことを聞いてくると思えば、そのようなことを言う。まだ甘えたい盛りであるらしいな」
 愉快そうなボロミアの声に答えず、眠いわけではなかったが目を閉じた。ファラミアが眠ろうとしているのだと思ったのだろう。ファラミアの耳元に口を寄せ、ほんの僅か囁くような声が、耳をくすぐる。
「今夜は兄がついていよう。一晩休んで、不安は忘れるが良い」
 次に来るのは、額へのキスだ。ほんの僅か触れて離れるだけの。
 どうやら、ボロミアも眠る体勢に入ったらしい。呼吸が深くなるのが分かる。
 愛しくて、満ち足りすぎていて、苦しいほどだった。
 かれは、ファラミアが欲しいと言えばそれを与え、言わずとも与えようとするのだ。
 
 「大人」になりたい。それが兄の役に立つことだから。しかし、同時にそれが失うことを意味するのだとしたら。その流れは不可避なのだろうか。
 どうしたら、失わずにすむのだろう。
 考えても考えても、ファラミアには答えは見えなかった。
 
 そしてそのうち、眠りがファラミアをさらっていった。



【おわりです】

271萌えの下なる名無しさん:2004/08/24(火) 06:03
執政兄弟の過去捏造は最高です。
ファラミアかわいいなー。
いつまでも兄上をお幸せに‥w

272萌えの下なる名無しさん:2004/09/04(土) 02:29
あ、久々に他スレにも書き込みが増えてる。
えーと、このスレ的には・・・と言っても、実はスレどころか板も違う気が
するけど、ここ何日か大将の中の人来日祭りで、燃えるやら萌えるやら
大変でした。また新たな活力が湧いてきそうです。

273SS<ファラミア/エオメル> 1/2:2004/09/10(金) 23:16
大将の萌えネタでなくて申し訳ありません。
ファラミア/エオメルらしきSS置かせて頂きます。
女神様ご光臨までの繋ぎになれば幸いです。2レス分予定です。

時期:指輪戦争終結後。ファラミアとエオウィン婚礼前。
登場人物:ファラミア、エオメル、エレスサール
前提:ファラミアは生真面目である。お兄ちゃん子だった。
    エオメルは妹思いである。ある面では器用さに欠ける。
しるけ:なし。風味だけファラミア/エオメル

ご注意:しるけなしですが、"風味"はあるのでファラミアが
性にあけすけで抵抗感皆無なのが苦手な方には辛いかもです。


<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 1/2















 王が帰還したばかりのゴンドールは、新たな歴史の第一歩を踏み出そうとしていた。
 新体制の執政にと請われたファラミアは、ゴンドールが蓄積した歴史と英知の集積所とも言える、ミナス・ティリスにある書庫の整理に着手した。修復すべき文書、写本を取るべき文献、蔵書の分類法など、書架に向きあったファラミアが考えるべきことは、いくらでもあった。
 ファラミアは集中力に欠けるような性格ではなかったが、あまり心地良いとも言えない視線を受けて作業の手を止め、その元になっているらしい方に顔を向けた。
 いつからいたのか書庫の隅に、ファラミアの妻となるべき女性の実の兄が、壁に背をもたせかけてこちらを見ているのがファラミアの目に入った。
「これは、エオメル殿」
 作業のせいで多少の埃に見舞われた手をはたいてから、ファラミアは義理の兄になる予定の人物に歩み寄った。
「このようなむさ苦しい所までご足労いただくほどの事とは…ご用の向きはエレスサール陛下の所在でしょうか」
 仕事の中断を余儀なくされたにも拘わらず、不快さを微塵も感じさせない機嫌良さで、ファラミアはエオメルに笑顔を向けた。
 一方のエオメルは、ファラミアに投げかけていた過剰なばかりに生真面目な視線を少しも動かさなかった。
「私は、あなたを探してこちらに参ったのです。ファラミア殿」
 多少の強張りを伴いつつ、にこりともしないでエオメルが言う。
 ファラミアの気のせいであるはずもなく、エオメルは神経を尖らせているように見えた。
「ファラミア殿は我が妹を妻とされるお方ゆえ、不躾ながら、兄として多少なりともお人柄を存じ上げておきたいと思いまして」
「得心致しました」
 エオメルの言葉にじっと耳を傾けていたファラミアは、真顔になってエオメルを見た。
「エオメル殿は、私がエオウィン姫の伴侶に相応しいか否かをご心配なさっておられるのですね」
「失礼を承知で申し上げればお言葉の通りです。何せ、われわれはお互いをほとんど存じ上げないのですから」
「お気持ちは理解出来るつもりです」
 ファラミアが難しい顔を見せたので、エオメルは思わずそれを覗き込んだ。
「それにしてもです。エオメル殿のお気をそのように煩わせるような不安材料とは、一体?」
 問わず語りのようにも聞こえるファラミアの言葉に対する答えの持ち合わせは、エオメルには無かった。少なくともエオメルの耳には、ファラミアに関する悪い噂は届いていなかったし、むしろ、ミナス・ティリスでは程度の差こそあれ誰もが彼を慕い、尊敬の念をもって彼に接しているように見えた。だから、具体的な心配事は抱きようがなかった。それでも、たった一人の妹が選んだファラミアという人物は、漠然と気にかかる存在だった。エオメルの意識にあったのはそれだけのことだった。
 言葉のないエオメルの代わりにファラミアが口を開いた。
「どうやら、口になさるのを躊躇われるような事でございますね。もしや、私の男性的機能に問題があるやも知れぬとのご憂慮ですか」
 まるで天気の話でもするかのような響きと口調でもって問われたせいか、ファラミアが言わんとすることをエオメルが理解するのに少しの時間が必要だった。理解したところで、どう応じるべきなのか咄嗟に決めかねたエオメルに、ファラミアは畳みかけるように言葉を続けた。
「いずれ知れることとはいえ、婚礼前にエオウィン姫の兄であるエオメル殿が自らご確認されたいとおっしゃるなら、エオメル殿のご安心のため尽力させていただくのは、やぶさかではありません」
「それは…痛み入ります」
 そう言ってはみたものの、エオメルは困惑を深くするしかなかった。

274SS<ファラミア/エオメル> 2/3:2004/09/10(金) 23:26
<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 2/3
 分割数2の予定が3になりました。ご迷惑お掛けします。














「決して快適な環境とは申し上げられませんが、そこにある閲覧用の机は寝台の代用品くらいにはなりましょう」
 果たして、エオメルは困惑に囚われている場合ではないような気がしてきた。
「少々お待ちをファラミア殿。ご発言が意味するところを、ご自身でご理解なさっておられますか」
 エオメルに言えたのはそれだけだった。みっともなく舌がもつれていたかも知れなかったが、今、気に掛けるべきはそんな事ではなかった。
「私は何事であれ確信なく申し上げたりはしません。従ってご遠慮は無用です」
「遠慮など…」
 していない、という言葉が口から出る前に、ファラミアがエオメルの方へ一歩踏み出したので、エオメルは一歩下がらざるを得なくなった。更に一歩引こうとしたエオメルの体を阻むように、ファラミアが言った通り、数人が並んで書物を閲覧出来るくらいの大きさを持つ机に、エオメルの体が突き当たった。
 ファラミアがもう一歩を踏み出せば、エオメルの体の置き場は無くなるに違いなかった。
 たちの悪い冗談かも知れず、そうでなくともエオメルの立場ではまさか、妹の夫になろうという人物を恫喝するわけにも、ましてや拳を上げるわけにもいかない…が。
 進退窮まったエオメルに対し、ファラミアは本当にもう一歩を踏み出してきた。
 せめて不用意に体が触れ合わないようにと、エオメルは自分の後ろに回した両手を閲覧台について、背を反らした。しかし、引けば引いただけファラミアは間を詰めてくるのだから、あまり有用な行為とは言えなかった。仕方なくエオメルは自分でも何をしたいのか分からないまま、そっと、しかし力のこもった拳を固めた。
「万事休す、といったところかな」
 二人共に覚えのある、少々呆れを含んだ声がファラミアの背後から聞こえた。
 ファラミアはまだ体を固くしているエオメルを余所に、書架の向こうから姿を現した声の主に対して極めて愛想の良い笑顔を向けた。
「エレスサール陛下。ご担当部分は無事片づかれましたか」
 エオメルの視線もまた、ファラミアの体越しにエレスサールに向けられていた。その目に浮かんだのは安堵だけではなく、明らかに助けを求めるものでもあった。
「執政殿よ。その方は、仮にもあんたの義兄となるべきローハン王エオメル殿であろう。そのくらいにしておくというのはいかがかな」
「承知致しました。陛下」
 エレスサールの言葉を受けたファラミアは、あっさりと体を引き、下がった。
「私は自分の仕事を続けて参ります」
 二人に向けて深々と頭を下げると、ファラミアは何事もなかったかのような様子で再び元の書架に向かい、それからは振り返ることもなかった。
 緊張と安堵の余り体の力が抜けたらしいエオメルは、エレスサールが勧めた椅子に倒れ込むように腰を下ろした。
「同じ部屋に私がいるというのによくぞまあ、二人で愉快な会話を交わしてくれたものだ」
 エオメルの視線の高さまで体を低くしたエレスサールは、笑いながらもなだめるようにエオメルの背を軽く数度叩いた。

275SS<ファラミア/エオメル> 3/3:2004/09/10(金) 23:27
<ファラミア/エオメル/+エレスサール> 3/3














「あなたは、いつからおられたのです」
「ファラミアが書庫の整理を始めたときから、ずっとここにいた」
「気付いておられたのならば、もっと早く止めて頂きたかったものですが」
「いや。成り行きが興味深くてな。すまない」
 エレスサールは相変わらず笑っていた。
「笑い事なのでしょうか、一体。…何なのです」
「あれが、我がゴンドールの新しい執政であり、あんたにとっては義弟になるファラミアだ。まあ、笑い事だと思っておく方が、心穏やかに過ごせるであろうよ」
 幾分憔悴気味なエオメルは、溜息が漏れるのを隠せなかった。そのエオメルの耳元にエレスサールは声を潜めて囁いた。
「ファラミアは"兄"というものに対し、少々敏感なところがあるように私には見える。私は兄弟というものを知らぬし、彼ら兄弟がどのような関わり合いにあったのか詳しくは分からぬが」
 はっとしたように、エオメルはエレスサールを見た。エオメルの胸にはファラミアの兄であり、エオメルにとって知己でもあったボロミアの姿が去来していた。
「誰もが変化と無縁ではいられぬ。が、変化は必ずしも不幸と同義ではあるまい。たとえばエオウィンとファラミアは新しい家族になる。そして、エオウィンの兄であるあんたも当然その一員であろう」
 それだけ言うと、エレスサールは自分の役割に戻るためエオメルの傍を離れた。
 エオメルは物言わぬファラミアの背中に注いだ呆然とした視線を逸らせずにいた。他の誰でもない、義理とはいえファラミアの兄になることがお互いにとってどのような意味を為すのかという問いが、エオメルの頭から離れなかった。エレスサールが声を掛けなければ一体どうするつもりだったのかと問いたい心と共に。
 そのエオメルを、ファラミアが振り返った。
 見透かされたのかとエオメルは一瞬ひやりとしたが、ファラミアは屈託無く笑っているように見えた。
 そして何を思ってかエオメルに頷いて見せた。
 そのときエオメルの脳裏には、「笑い事だと思っておく方が…」というエレスサールの言葉がなぜか蘇っていた。


//終わり



不手際すみません。
それでは女神様ご光臨、萌えネタどうぞです。

276萌えの下なる名無しさん:2004/09/25(土) 22:45
せっかく女神様降臨なさってたのに
したらばだからいぶどあだかなかなかここに来られなくて…

不思議ちゃんな大将ですねー。風変わりで楽しかったです!

277萌えの下なる名無しさん:2004/10/06(水) 23:12
ピピたんが自分の子どもにファラミアと名付けた事に対する
感想を目にしたのですが。
ピピたんファンの方に対して失礼だったらごめんなさいという妄想。
萌えネタではありませぬ。






大将は兄上の最期に関して何か良いことを為したのだろうと
考えてましたが、その「何か」がピピたんの内に結実した結果として、
あの名付けがあったのかな、なんて。
ボロミアが愛していた祖国や苦労性の弟を、ボロミアの分まで
自分が見守り幸せにしたいとか。

ボロミアさん大好きの延長上にある感情がそうさせたのかなってことですが、
ピピたんが、ボロミアの愛したものとして大将を認知してくれてるってのが、
妄想の妄想たるゆえんというところで。

278萌えの下なる名無しさん:2004/10/08(金) 01:20
>277
それはあると思いますね>ボロミアの分まで
加えて、映画ピピは執政親子のあのやりとりを目の当たりにしちゃった訳で、
だから、真っ当に親に愛される「ファラミア」も、自分の内に結実させたかった
のかな・・・などと、私も妄想しております。

ところで、SEEの療病院大将の痛々しい画像も出回り始めたようで・・・
盾の姫との出会いはどうやらちゃんとはいるらしいけど、癒しの手はどうなる
のか・・・なかったら暴れちゃうかもw

279萌えの下なる名無しさん:2004/10/08(金) 23:58
>278
癒し手のシーン、カットされていたら私も暴れちゃうよ。
でも入っていたら入っていたで、
萌えのあまり部屋中転げ回りそうだわ(w

280萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 00:20
SEEトレイラー(ティーザーって言う方が合ってるのかな?)来ましたね。
この板的な話は措くとしてw、大将、男前。と言うか、お美しい。
何回も見直しては、そのたびに見とれてしまいます。
ああ、12月が待ち遠しい・・・!

281萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 00:52
>280
見ました見ました。
本当お美しいというかお可愛らしいというか。
なんであんなに可憐なのか・・・(*´Д`)ハァハァ

282萌えの下なる名無しさん:2004/10/17(日) 19:00
もうね、あんなお顔で見つめられたら、そりゃ姫だって落ちますとも。
いや、兄も王も野伏も近衛も、みーんな落ちます。
特に毎日(?)あんな目を向けられていたであろう兄上は、さぞ理性と忍耐力を
試されていたことでしょう。

ところで、癒しの手の新画像も、某所で見ました。やっぱり入れてくれるの
でしょうか。

283萌えの下なる名無しさん:2004/10/23(土) 21:27
>282 入れてくれることを心から願っています。

大将が来る前には
「都のボンボンの面倒なんか見れるかヽ(`Д´)ノ」と不満タラタラだった南の野伏が
実際大将を見て総ベレゴンド化する妄想が頭を離れませんよ、タスケテー。

284萌えの下なる名無しさん:2004/10/24(日) 17:22
>283
(・∀・)イイ!

全然旬じゃない古い画像&ガイシュツだろうとは思いますが禿しく萌えたので・・・
ttp://www.warofthering.net/photoforum/showphoto.php?photo=1515&password=&sort=1&size=medium&cat=514&page=

285萌えの下なる名無しさん:2004/10/24(日) 21:14
>284
萌えました・・・というより禿しく和みました。
しかし実際の執政家はこんな風に笑い合うことなく、
兄が逝き、そして父が逝ったかと思うと・・・。・゚・(ノД`)・゚・。

あと大将の目が三日月型でちょっと笑いました。

286萌えの下なる名無しさん:2004/11/24(水) 22:36
ファラミア様の微笑みは聖母の微笑み

と思える瞬間がある

287萌えの下なる名無しさん:2004/12/07(火) 08:38
SEE予告ロングバージョンはもう公式に上がって来ているし、ネタバレも
各所で出回ってるんだけど・・・けど・・・
大将ファンとしても原作ファンとしても、ちょっとそれってどうなの!?
と小一時間問いつめたくなるような情報が伝わってきていて、
正直なところ、期待は半分くらいにしぼんでしまいました・・・
以下、超ネタバレ。内容も内容なので、嫌な人は絶対!見ないで。










アラゴルン→ファラミアの「癒しの手」カット。王がそれを発揮するのは
エオウィンに対してだけ。
わーん、兄上の背後霊とか出すんなら、そっちを入れてほしかったよ〜。
いや、兄上もに出て来てほしかったのは確かだけど、なにもそんな出方を
しなくても・・・・゚・(ノД`)・゚・。
やっぱり、PJの大将に対する扱いって、はげしく疑問なんだわ・・・

288萌えの下なる名無しさん:2004/12/08(水) 18:38
カットって・・・・・・(;゚ロ゚) (゚д゚;)゚ロ゚;)

289萌えの下なる名無しさん:2004/12/10(金) 01:25
え??は?ちょっとハゲしく動揺……

290萌えの下なる名無しさん:2004/12/11(土) 19:54
気を取り直して(取り直せないかも知れないけど)、あと10分足らずで
TTT地上波初登場だよ、と言ってみる。

291萌えの下なる名無しさん:2004/12/11(土) 22:19
実況板を見ていたら初心者の方が多かった。
じゅうのシーンで御大将が初めて出てきたとき
兄上と勘違いした人がいた。
皆が「弟だよ」と説明すると
「それで同じ役者なのか」と妙な納得をしてしまっていました。
いやあ、新鮮。

292萌えの下なる名無しさん:2004/12/12(日) 00:02
>291
ワロタ

TTT、改めて思った事はアルウェンの出番を削ってファラミア様を(ry

293萌えの下なる名無しさん:2004/12/16(木) 16:12
>287
ショック大………悲しくて潰れてしまいそうだ
PJのイケズ……!
(;_:)

294萌えの下なる名無しさん:2004/12/17(金) 22:39
景気づけにSSとか。おねだりは御法度かもですが、
女神様ご光臨お願いしたいです。


TTTの地上波放映で、大将を堪能させていただきました。
目隠しを当たり前にさせてる大将…。
ホビットたちに食べ物を分け与える気配すらない大将…。
噂には聞いていたので見る前は気にとめてもいなかったのですが、
目の当たりにしたら結構な破壊力でした_| ̄|○

295萌えの下なる名無しさん:2004/12/20(月) 23:15
女神様待ちの間に、おつまみでも。
ちょうどガイドライン板のそのスレで指輪ネタだったので…

元ネタは以下

それはヴェルタースオリジナルで、私は4才でした。
その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、
きっと特別な存在なのだと感じました。
今では、私がおじいいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら、

彼もまた、特別な存在だからです。


**************


そこはオスギリアスで、私は35才でした。
兄と一緒に飲んだ発泡酒はとても美味しくて、こんな素晴らしい日は私にそって
きっと特別な存在の一日なのだと感じました。
でも今では、私が執政。孫バラヒアに語り継ぐのは、父と兄と一族の物語。
なぜなら、

彼もまた、執政の白い杖を受け継ぐ存在だからです。

296萌えの下なる名無しさん:2004/12/23(木) 21:00
ガ板のスレを探したものの見つけられなくて(´・ω・`)ショボ-ン

執政となった大将は、
ゴンドールに王がいる時も空位の時も、
役割は違うけど国を執政家が守ってきたのだと
語ったんだろうかとか。
父親と兄の死をどんな気持ちで捉えてたんだろうかとか。
とりとめのないことを考えてしまいました。

関係ないですが、大将の孫はさぞや可愛いでしょうな。

297萌えの下なる名無しさん:2005/01/05(水) 15:55
|・`) <・・・・・

|ω・`) <前スレ671に萌えました・・・

|´・ω・`)ノ【あぷろだの256】 ッパ
http://souko.s4.xrea.com/fellowbbs/bbsnote.cgi

|`)三サッ


|`) <>287はマジなの?ほんとなの?

298297:2005/01/06(木) 17:58
|`) ・・・・・・

|`)そ <ハッ! 

|ω・`) <297の絵はマドリル+ファラミアです・・・言い忘れた・・・

|`) <なんか忘れたなぁ、なんだろうなぁと思ってたんだよ・・・

299萌えの下なる名無しさん:2005/01/10(月) 17:17
>297女神様!
萌えです萌え!
くたりとした大将と、支えるマドリル氏!いいなあ。

300萌えの下なる名無しさん:2005/01/11(火) 11:31
>297様
苦労の絶えない大将にとって、せめてマドリル氏くらいは心許せる存在で
あってほしいですね・・・
以下、SEEネタバレ。いやな方はスルーよろしく。











実は自分287なんですけど、例の話は本当でした・・・(UK版で確認)
でも、あの流れの中では、まあ入れにくかったんだろうなと、納得は
できないけど理解はしております(諦めモード)。
あ、マドリル氏はちょっとだけ出番が増えてます(笑)。
でも、あの無惨な御最期に変わりはない訳だけど(泣)。

301297:2005/01/12(水) 16:38
|・ω・`)<ファラミアって人の気配で起きてしまいそうだけど、
      この人ならいても寝ていられる、みたいな人が数人いそうな気がします。

>299
|・ω・´)<ありがとうございます!

>300
|・ω・`)<まったくです・・・だからこそ生きていてほしかったマドリルさん・・・





|・ω・`)<以下SEEネタバレに対する感想ですので、嫌な方はスルーしてください・・・

|;ω;`)<SEEの楽しみにしていた部分の半分が煙のように消えてゆきました・・・

|;`) <でもマドリルさんのシーンは増えてるのですか・・・それを楽しみにして待とう・・・

302萌えの下なる名無しさん:2005/02/19(土) 15:11:50
SEEのファラミア大将が超絶美人だった件について

303萌えの下なる名無しさん:2005/02/28(月) 00:46:48
>302
姫と一緒にお見送りシーンの
襟の高い服着た大将は
禁欲的でありながらも非常に艶っぽかったですな。
顔はもちろんのこと、立ち姿のシルエットの美しいことよ。

304萌えの下なる名無しさん:2005/03/01(火) 16:38:56
まず腰が細えろい。エロスサールになって腰からお尻にかけて撫で回したい。
そのわりに性格が固めでえろい。気付いてない。えろい。
SEE観てたらなんか変な汗出る。大将えろい超えろい。

305萌えの下なる名無しさん:2005/03/01(火) 21:54:25
>304
ワロス&全文禿同
中の人は細いわけではないけどえろい身体だ。ラインがえろい。
性格が禁欲的なのが逆にえろい。ヤバい。大将超えろい。
漏れもエロスサールもしくはエロメルになって(ry。

306萌えの下なる名無しさん:2005/03/02(水) 21:51:34
王と執政ってなんかえろいな。
社長と秘書みたいだな。
男の社長に男の秘書がつくなんて
想像したらえろ過ぎた。

307萌えの下なる名無しさん:2005/03/02(水) 23:04:00
なんか「宇宙ヤバイ」のコピペを思い出したけど改変できなかったorz
棺台に寝かされる大将の呻き声えろい。

308萌えの下なる名無しさん:2005/03/03(木) 13:19:31
王と執政えろいっすね〜。
王よ、是非職務中に執政のお尻をナデナデしてくれ。
「陛下、お止め下さい・・・あっ!」「ファラミア、良いではないか良いではないか。」
ってなんか違うか。

309萌えの下なる名無しさん:2005/03/03(木) 16:45:14
セクハラが始まった一週間後に耐えかねて平手打ちをかまして
「立場をご理解ください!」と男らしく叫ぶ執政が浮かんだわけですが。

その後すごい勢いで執政が謝り倒して
政務に戻ってポツリと「激した顔も色っぽいな」とか王様が呟いたりして
恥ずかしさのあまり涙目になりつつ耐える執政が浮かんだわけですが。

兄の墓前で夜中ひっそりと涙する姿をうっかり見ちゃった王様が
うっかり惚れつつ「控えよう・・・」と決意とかしてみたりして。

310萌えの下なる名無しさん:2005/03/04(金) 20:56:52
でも次の日には
早速尻を触っている王様なのでしたー(´ー`)ノ

311萌えの下なる名無しさん:2005/03/04(金) 23:39:38
>309-310
(・∀・)イイ!
執政 苦 労 続 き だな

312萌えの下なる名無しさん:2005/03/06(日) 01:04:41
苦労姿にも色気がある。
それが大将クオリティ。

313萌えの下なる名無しさん:2005/03/07(月) 03:19:00
大将クオリティ 

それはどんな時でもそこはかとなく漂う色気

めくるめく薄幸美人の世界へあなたを誘います

お求めは中つ国エロスサール事務局まで今すぐお電話を
※「ファラミアを一つ」とお申し付けください

314萌えの下なる名無しさん:2005/03/09(水) 20:39:35
  ♨_♨                              
 ( ☼∀☼)                             
☜     ☞                              
  |  |  |                             
 (__)_)

315萌えの下なる名無しさん:2005/03/11(金) 00:13:06
漏れの煩悩のせいか大将=高級娼婦のようなイメージが・・・
ごめんよ、大将

316萌えの下なる名無しさん:2005/03/12(土) 00:55:19
>315
その理由を是非。

317萌えの下なる名無しさん:2005/03/13(日) 23:08:28
や、理由といってもここで散々ガイシュツな
ストイックで禁欲的なのに色気が漏れちゃってる辺りです。
漏れの中では高級娼婦ってそんなイメージが(たぶん違う)

なんかこう、国同士のお付き合いの時に密かに身体を要求されたりとかですね・・・。
本当は断りたいけど断ったらパパンに怒られそうとか、国の将来を考えると断れないとか
そんなこんなで一人悩む大将。

なんてありえない事考えて萌えてしまってる漏れを許して下さい。

318萌えの下なる名無しさん:2005/03/14(月) 23:54:37
>317許す。自分も同じ穴のムジナだから(;´д`)
最初、高級娼婦と聞いて椿姫な大将を妄想してハアハアしてたよ。

自分は大将=深窓の令嬢だな。
野伏の大将なのに・・・。

319萌えの下なる名無しさん:2005/03/15(火) 17:48:48
>>307
あんまり上手にいかなくてスマソ



「宇宙ヤバイ」改め「大将エロイ」

エロイ。大将エロイ。まじでエロイよ、マジエロイ。
大将エロイ。
まず腰細い。もう細いなんてもんじゃない。超細い。
細いとかっても
「キリス・ウンゴルの階段くらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ無限。スゲェ!なんか単位とか無いの。何センチとか何ミリとかを超越してる。
無限だし超細い。
しかもくびれてるらしい。ヤバイよ、くびれだよ。
だって普通はオヤジとかくびれないじゃん。ウルク・ハイがだんだんくびれてったら困るじゃん。
オークとか超細いとか困るっしょ。 飛蔭がくびれて、ガンダルフだけなら乗れるのに、
ピピンも乗せたら動けなかったとか泣くっしょ。
だから中つ国とかくびれない。話のわかるヤツだ。
けど大将はエロイ。そんなの気にしない。くびれまくり。
王様とか撫で回しても飽きないくらい細い。エロすぎ。
無限っていたけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると
「じゃあ、その下にある尻ってどうよ?」
って事になるし、それは誰もわからない。エロイ。誰にも分からない尻なんて凄すぎる。
あと超真面目。約27代目の執政。年代で言うと第三紀の終わり。エロイ。際ど過ぎ。
白い杖返す暇もなく執政。かわいい。
それに超ストイック。超禁欲的。それに超涙目。涙とか平気で出てくる。
涙て。チワワでもうるうるしねぇよ、最近。
なんつっても執政は色気が凄い。王はセクハラとか平気だし。
うちらなんて尻とかたかだかぺろっと触っただけで訴えられちゃうから我慢したり、
薪の上に油まみれで置いてみたり、パランティア使って覗き見したりするのに、
王様は全然平気。執政を触り放題に扱ってる。凄い。エロイ。
とにかく貴様ら、大将のエロさをもっと知るべきだと思います。
そんなエロイ大将を執政にしたエレスサールとか超うらやま。もっとがんばれ。超がんばれ。


お粗末。

320萌えの下なる名無しさん:2005/03/15(火) 20:27:40
>霧ス・雲ゴルの階段くらい?
禿ワロス

321萌えの下なる名無しさん:2005/03/15(火) 23:35:41
>だから中つ国とかくびれない。
くびれ談議禿ワロタ

322萌えの下なる名無しさん:2005/03/16(水) 09:24:43
>319
ワロタ。乙彼!

323萌えの下なる名無しさん:2005/03/18(金) 18:26:48
>白い杖返す暇もなく執政。かわいい。

大将がかわいい理由はそれなのかw
なんとなく分かる気もするけど
大将って健気よね

324滅びの山へ投げ込まれました:滅びの山へ投げ込まれました
滅びの山へ投げ込まれました

325萌えの下なる名無しさん:2005/03/19(土) 20:14:50
>319
ワロタw GJ!

326a:2005/04/13(水) 21:20:21
|∀・)つ[ http://g-castle.com/ ]

327萌えの下なる名無しさん:2005/06/19(日) 17:37:55
思えばこれが僕らの旅の始まりだった…。
http://www.engel-wind.com/blog-lovedor/01/
http://www.engel-wind.com/blog-lovedor/02/

328萌えの下なる名無しさん:2005/10/16(日) 21:28:28
強制sage設定の為スレ移動します。

329萌えの下なる名無しさん:2005/10/16(日) 23:17:14
強制sage設定の為スレ移動します。

330萌えの下なる名無しさん:2005/11/21(月) 11:41:51
アラファラサイトを探して歩いてます。

331萌えの下なる名無しさん:2005/11/23(水) 15:18:11
アラファラサイト、知ってるのは4つぐらいかな
もっとあるんだろうか

332萌えの下なる名無しさん:2005/12/12(月) 11:25:01
冬のカタログ見た
ファラ受けは6サークル
オン専の人もいるだろうから、ファラ/*の人はもうちょっといる計算?

333萌えの下なる名無しさん:2005/12/29(木) 22:50:23
今日の冬コミで始めてエオファラ本買ってみた
うん、いける、いけるよ!
何でもっと早く気がつかなかったんだろう
ファラ受けハマったかも

334萌えの下なる名無しさん:2006/01/05(木) 00:36:31
友人にボロファラ本買ってきてもらったー。

335萌えの下なる名無しさん:2006/01/05(木) 22:12:13
ボロファラ本、あった?

336萌えの下なる名無しさん:2006/01/07(土) 18:25:51
Aまで止まりのラブラブ兄弟本。気持ちはボロファラだと思われる…。
アラ/ファラ本がほしいです。

337萌えの下なる名無しさん:2006/01/08(日) 03:02:21
アラ/ファラ本友達に買ってきてもらって3冊です
自分で行ったらもっと見つけられたかな

338萌えの下なる名無しさん:2006/01/08(日) 13:38:02
アラファラ裏山鹿
3冊もあったなんて素晴らしい。

339萌えの下なる名無しさん:2006/01/08(日) 15:34:15
ここに書き込んでる人って今何人位いるのかな
2人とかで交換日記になってそうな悪寒もしながら書き込んでみる

アラファラやってる人、大きめのイベには参加してる人割といるよ
今度のMPのサークルリストでも参加になってる人いたし

340萌えの下なる名無しさん:2006/01/10(火) 19:54:46
二人で交換日記…だったら寂しいけど
書き込みがあるだけ、よいということで。w
MP行こうか悩むな。

341萌えの下なる名無しさん:2006/01/10(火) 23:00:39
3人目ーノシ
MP、同じく悩み中
もう参加サークルってもう決まってる?

342萌えの下なる名無しさん:2006/01/11(水) 00:10:39
四人目、ファラ受にハマりたてがここに。

343萌えの下なる名無しさん:2006/01/11(水) 06:36:47
五人目w
ファラ受ならなんでも美味しくいただけるけど
アラファラが一番好きかも…。
MP、行くつもりなかったんだけど迷うなあ…。

344萌えの下なる名無しさん:2006/01/12(木) 01:32:35
5人に増えてるw
私もアラファラが一番好き
エオファラも好きだけど

345萌えの下なる名無しさん:2006/01/12(木) 18:15:45
5人もいたなんて(つД`)ウレシイ
私はアラファラ>ボロファラ>ベレファラ>マドリルファラ
エオメル相手だと、エロしか考えられない・・・私の腐脳。

346萌えの下なる名無しさん:2006/01/13(金) 23:17:54
MPの参加サークルリスト、掲載されたみたいね
ちょっと調べてくる

347萌えの下なる名無しさん:2006/01/13(金) 23:32:47
確認漏れがあるとは思うけど・・・
・アラファラ 1
・エオファラ 1

RPSで狩公が1
それとVHでヘルカルで取ってるサークル8で、
その中の3つほどがアラファラやってる所のような希ガス

348萌えの下なる名無しさん:2006/01/15(日) 18:54:56
MP情報ありがとー。
ヘルカルとアラファラがそんなダブっていたとは知りませんでした。
デイジーファンなんですね。私もそうだけど。

349萌えの下なる名無しさん:2006/01/27(金) 23:51:04
アラファラ(の、つもりだったんです)書かせてもらいます。 
王様変です、すいません。
しるけ無しです。


(1/3)
「我が王よ」
いつもの穏やかさからは程遠い、低く地を這う声にエレスサールは静かに固まった。
「や、やあ、我が有能なる摂政、ミナス・ティリスの気高き番人、ゴンド−ルの至宝
ファラミ」
「我が王よ」
おどおどとした挨拶を断ち切って、ファラミアは重々しく繰り返した。
敬愛する主君に対して随分な態度ではあるが、激務が一段落ついて今夜はゆっくりと
休めると寝室に向かえば、窓の外で野伏時代のうす汚いマントを羽織った男が笑顔で
手を振っていたら普通引く。
ましてやそれが先ほどまで一緒にいて、大量の書類を前に頭を抱えていた王だとしたら
第一の臣下としては、ドン引きである。
「………危のうございますから、どうぞこちらに御移り下さい」
細い幹の上で長い足をぶらつかせているエレスサールの姿に、深く溜息を吐きつつも
ファラミアは窓を開いて手招いた。
まったく、近衛兵にでも見られたら洒落にならない。
自分とは違い広い世界を歩いてきた男にとっては、西方世界の偉大なる王が夜中に一人、
木の上に座って摂政と話していようと、特に問題ない事かも知れないが、ファラミアに
とってはひたすら絶対の存在であり、常に威厳に満ちているべき人だ。
節度ある距離を崩すつもりはない。
今はもう遠い日。
同じ様に窓から現れて自分を驚かせていた優しい兄の事を思い出した。
普通にドアから入ればいいものを、少しでも弟を笑わせようと随分と馬鹿らしい事を
繰り返していたが、いつも呆れた顔で部屋に迎え入れていた弟が、それをどんなに嬉しく思っていたかなど、多分ボロミアには想像もつかないことだろう。
しかし、目の前のこの男は兄ではないのだ。
王なのだ。
「さあ出かけよう、早く上着を羽織って来なさい、出来るだけ汚れたヤツを」
ファラミアの回想を破って響いた声は、子供じみて強引だった。
機嫌をとっているつもりなのか、出来るだけ可愛らしく小首を傾げたエレスサールは、
窓枠に飛び移りファラミアの前に降り立つと、急かす様にマントを振り回した。
本当に良く分らない人だ。

350萌えの下なる名無しさん:2006/01/27(金) 23:52:31





(2/3)
もう一度深く息を吐きながらファラミアは、乱れた王のマントの裾を直してやった。 
「このような時刻にお出かけになられるのでしたら、付いて来るなと言われましても
私は何処までも供をいたしますが、どちらへ行くのです?」
「あの、ちょっとそこまで」
目を泳がせて答えるエレスサールに、王らしからぬ事を考えているのだと、摂政の中の
ヌメノールの血が告げている。
「どこまで?」
「あの、燭工通りに」
「何をしに?」
「あ、あの、旨いビールを出す酒場が出来てね」
「……………我が王よ」
民と触れ合うのは良い事だとか、ミナス・ティリスの市場価格について御自らお調べに
なるつもりなのだとか、いくらでも真面目な理由は考え出せたが、ファラミアには
エレスサールが素で飲みに行こうと誘っていると分ってしまった。
それが悪い事だとは思わないが、何故わざわざ、下町の飲み屋なのだ。
勿論、護衛をつける事など思ってもいないだろう、この王は。
王と摂政はそのような馴れ合いをするものではないのに。
「………御身の立場というものについて、どうぞお考え下さい」
急速に顔を引き締めて正論を説くファラミアに、エレスサールは肩を竦めた。
「顔なんて誰も見やしないさ、君の綺麗な顔は目立ってしまうかも知れないけれど
フードを深く被ってしまえば大丈夫、ばれやしない、だから一緒に行こう」
呑気な言い種に目眩すら憶えながら、どうにかして行くのを止めさせようと口を
開きかけると、そっと暖かい指先で唇を押さえられた。
「いいかい?これは重要な責務なのだ。ファラミア」
「は?」
「君をもっと良くしりたい、私を知って欲しい、手っ取り早い方法でいこう」
完全に動きの止まったファラミアに、畳み掛けるように追い詰める手管は、さすがに
海千山千の元野伏だった。
「私達は狭い店の片隅で互いの馬鹿っぷりについて語り合った後、飲み過ぎて道端に
ゲロ吐いて苦しむのだよ、そして明日は酒臭いのをどうにかしようと、二人で惨めに
慌てまくって結局、女官達にねちねち虐められるんだ!楽しいぞ!」

351萌えの下なる名無しさん:2006/01/27(金) 23:53:32





(3/3)
「………………はあ……」
ぽかんと口を空けたファラミアは随分幼く見えて、エレスサールは人の悪い笑みを
浮かべた。
「……………我が王よ」
ここは怒る所か無視する所か迷ったが、ファラミアも引きつった笑いを浮かべてみた。 
「何かございましたら、私は夕星王妃に申し訳が立ちません」 
「アルウェンは君の奥方に夢中なのだよ、私は放っとかれっぱなしなのだ、今夜だって
女同士語り合うのだそうだ、君は聞いていないのかい?」
「は、初耳です」
「奥方達の方が進んでいる、見習いたまえ我が摂政」
どうやら堅苦しくしているのは、自分だけらしいと気付き腹を決めたファラミアは、
王に対して極めて生意気な口調で問いかけた。 
「もちろん今夜は奢って下さると、考えて宜しいのでしょうか?」    
「いやいや、先に酔いつぶれた方が払うのだ」
とうとう耐えきれず腹を抱えて笑い出したファラミアに、アラゴルンと呼ばれる男は
芝居掛かった仕種で友人に手を差し出した。
「君は、私のとても大切な人なのだよ」

ああ、兄上、貴方と同じ様に私を外の世界に連れ出して下さる方がいます
貴方の大きな手を握り返す時、ファラミアは何と幸せ者であった事でしょう
もう、貴方無くしてあの喜びは二度と無いものと思っていました
しかし、今も

「では、お言葉に甘えまして……御一緒に」
小さく俯いてしまったファラミアの言葉は涙声だった。
アラゴルンを酷く動揺させてしまい悪いとも思ったが、止める事は出来なかった。
悲しいだけの涙ではないのだ。
喜びでも泣く事はある、ファラミアは久し振りにそれに気付いた。


お粗末様でした

352萌えの下なる名無しさん:2006/01/28(土) 10:25:29
おお、久しぶりに女神様が!
戸惑う真面目ちゃんなファラミアと、
砕けまくりの王様に萌え萌えです!
ありがとうございました!

353萌えの下なる名無しさん:2006/01/28(土) 13:10:13
本当に久しぶりの女神さまが!嬉しい!
ファラミアの兄回想にいけずな王様…
続きが読みたくなるようなお話でした。w
ありがとうございました!!!

354萌えの下なる名無しさん:2006/01/30(月) 21:01:14
ほんと、続きが気になる二人ですね!
女神様、また気が向かれたら是非続編を

355萌えの下なる名無しさん:2006/02/08(水) 00:01:37
MP行った方いい本買えました?

356萌えの下なる名無しさん:2006/02/08(水) 21:30:40
アラファラの無料配布本をいただいてきました。<MP

357萌えの下なる名無しさん:2006/02/08(水) 22:29:54
本、あったんだ
私も寒さに負けず行けばよかった・・・
こんなにアラファラに飢えているというのに

358萌えの下なる名無しさん:2006/02/08(水) 23:50:17
ボロファラに飢えてますー!

359萌えの下なる名無しさん:2006/02/09(木) 00:16:16
ここでどんな本だったか聞くのは反則?
次のイベとかで探したいんだけど。。。

360萌えの下なる名無しさん:2006/02/09(木) 01:55:03
コピ小説でエッチなし<アラファラ

361萌えの下なる名無しさん:2006/02/09(木) 02:05:52
>360
探すヒントを。。。

362萌えの下なる名無しさん:2006/02/10(金) 10:46:05
すいません。ヒントになるようなものが何もなくて…
サークル名もわからず。

363萌えの下なる名無しさん:2006/02/10(金) 21:52:57
私は2冊入手<アラファラ
両方コピー本で1冊は無料配布だった
サークルは別々
無料配布の方は同じのかな

364萌えの下なる名無しさん:2006/02/10(金) 22:47:20
次にイベントに行った時に探すので
サイズとページ数と表紙の色だけでも教えて貰えないでしょうか

365萌えの下なる名無しさん:2006/02/11(土) 14:34:34
無料配布の方はネットで探したらサイトがあって、アラファラのお話読めました。

366萌えの下なる名無しさん:2006/02/12(日) 13:26:23
>364
表紙は白っぽい水色。
表にアラ裏にファラがそれぞれ同じ構図で横向きに小さく。
サイズはB6で表紙含め28ページ(ノンブルないけど)
中は1段書き。

表紙は白っぽいピンク。
夕焼け?みたいな写真がやっぱり小さく。
サイズはB6で表紙含め16ページ
中は2段書き。
こっちが無料配布。

こんな感じでいい?

>365
言ってるのって同じ無料配布本かな?

で、ボロファラ本は無かったんだろうか。

367萌えの下なる名無しさん:2006/02/12(日) 13:38:35
>366
無料配布本は同じものです。そんな表紙でした。

368萌えの下なる名無しさん:2006/02/13(月) 22:13:02
ありがとう。
今度探してみます。

369萌えの下なる名無しさん:2006/02/14(火) 23:18:48
364です。
>365.366
ありがとうございます
私も次のイベントで探してみます

370萌えの下なる名無しさん:2006/02/23(木) 23:52:19
ボロファラが読みたい…
破滅的で絶望的で不道徳な関係って堪らんよ
それに葛藤だとか後ろめたさとか加わってもうどうにもなりません
女神様プリーズ

371萌えの下なる名無しさん:2006/02/24(金) 22:09:18
>>370が萌えたぎる思いをSSにして
ここに投下してくれると嬉しい

372萌えの下なる名無しさん:2006/02/25(土) 14:10:01
私もボロファラが読みたい…
近親相姦でもラブラブでも、喧嘩でも、兄上死んでても…
兄弟馬鹿(失礼)イチャイチャでも

373萌えの下なる名無しさん:2006/02/27(月) 23:51:16
>>370さん、すまんね、ボロはいないの。 
一応ファラミア総受け、王様変です、レゴラスも変です。
しるけ無しです。


(1/4)
長い戦乱が終わりミナス・ティリスでは建築ラッシュが続いている。
特に歓楽街に至っては、毎週末に新しい酒場が開店していった。
しかし商売敵は増えども、ビールと肉料理が旨いと評判の店、鷲の止り木亭は今夜も
盛況だった。
広い領土の様々な場所から訪れる人々は、この都に新しい活力と多少のトラブルを、
もたらしていく。
それも賑わいの内と割り切れる事と、客についての詮索をしない事、この商売に関わる
上での大切な教訓を知る鷲の止り木亭の主人は賢い男だった。     
彼の目の前を、粗末な身なりの怪し気な二人連れが通り過ぎたが、金さえきっちり
払ってくれる分には、何の問題もない。
それに何よりも今、このミナス・ティリスには帰還せし王が居るのだから。
恐れるものなど何もない。

「やあ、エステル、ファラミア」
「……何でいる?」
上擦った声を上げたアラゴルンの視線の先で、大量の空樽を脇に転がして店内の
一画を陣取ったイシリアンのエルフがにっこりと手招きした。
ぶかぶかの頭巾で耳を隠してはいたが、並外れた美しい顔だちといいその飲みっぷりと
いい、店中の注目浴びまくっていた。
慌ててアラゴルンは自分と連れのフードを深く引き降ろしたが、おかげで更に怪しさが
深まった。
しかし、ここで王と摂政が飲みに来たとばれるよりはましだった。
「レゴラス殿!お久しぶりです、イシリアンで最近お見かけできなかったので寂しく
思っておりました」
アラゴルンの配慮をよそに、ファラミアは満面の笑顔でレゴラスに駆け寄ると、優雅に
ゴンド−ル宮廷様式の一礼をした。
「ああ、ファラミアったら、貴方は本当に可愛い方!」
手を取り合い躍りだしそうな二人の間に分け入って、ファラミアを座席の奥に押し込み
他の客の目から隠すと、アラゴルンは眉間に皺を寄せエルフの前に座り込んだ。
たとえレゴラスといえど、ファラミアとの二人きりの時間を邪魔する者は、今は敵なの
だから。

374萌えの下なる名無しさん:2006/02/27(月) 23:52:50





(2/4)
「レゴラス、一応イシリアンの森の主人の身でだな……少しは飲む場所を考えろ」
自分の事を遠い棚の上に置いといて顔を顰めるエレスサール王の姿に、ファラミアは   
小さく吹き出し、レゴラスは、
「へえ、それでエステル、貴方達はここに何しに来たのさ?」
と遠慮なくせせら笑った。
アラゴルンは子供っぽく口を尖らせると、隣のファラミアを乱暴に抱き寄せた。
「私達は信頼を深める為に、日夜努力をしているのだ」
微妙な手つきで脇腹を撫でる左手をすげなく払い落として、テーブルの下で重い蹴りを
敬愛する主君にいれると、ファラミアはにっこりレゴラスに向き直る。
「本当にお久しぶりですよねレゴラス殿、王宮の方にお顔を出して下されば宜しいのに、
夕星王妃がお会いになりたがっていましたよ」
「ええ、さっき彼女に叱られてきたんですよ、アルウェンは今エオウィンと、えーと
ほらエメオルの彼女なんだっけ名前?」
「ロシーリエル殿ですかな?」
「そう!あの三人で遊ぶのに忙しいから、たまにはエステルの面倒見に来なさいって、
ファラミア殿にばかりお手数かけて申し訳ないってさ」
「それはそれは、夕星王妃のなんと素晴らしいお心づかいなんでしょう」
股間を押さえて呻くアラゴルンを放っといて盛り上がる綺麗所は、なみなみとビールの
入ったゴブレットを仲良く飲み干した。
「真面目な話ファラミア、エステルに虐められていない?」
「とんでもないございません、我が王はそれはお優しく私をお導きくださいます」
「でもさーセクハラっぽい事はされるでしょ?」
「あ、はいそれは時折」
「……おいこら」
「あ、エステル復活」
アラゴルンは荒い息を吐きながらレゴラスをきつく睨み付けると、なんとか椅子に起き
上がった。
「……レゴラス、言っとくがな私とファラミアは相性ピッタリだぞ、いろんな意味で」
「その微妙な言い方はおやめ下さい」
懲りずに肩に回される大きな手に、ファラミアは深々と溜息を吐いた。
いい加減馴れてきてしまった自分にも。

375萌えの下なる名無しさん:2006/02/27(月) 23:53:53





(3/4)
それなりにラブラブに見えなくもない二人の様子にレゴラスは、
「貴方がずっと摂政殿を独り占めしてるって………本当だったんだねぇ」
としみじみ呟くと、アラゴルンに非難を、ファラミアに同情の目を向けた。
「何だそれは」
「アルウェンが言ってた、エステル、少しはエオウェン殿に旦那を返してあげなよ」
すっかり悪者になっているらしい自分の批評に、かなりへこんだアラゴルンは無言で
ゴブレットをあおったが、ひどく咽せて口元を汚した。
ファラミアは笑いながらもビールの泡の付いた頬をそっと指先で拭ってやり、気の毒な
王の為にそれは誤解だと笑った。
「レゴラス殿はからかわれたのですよ、むしろ捨て置かれているのは私達の方なのです
から、御夫人方達はすっかり仲良くなってしまわれまして、まあ、寂しい夫達としては
長い夜をこうして空しく過しているのです」
政務の時には見られない戯けた顔で、レゴラスに向かって肩を竦めた。
「うーわーまだ新婚だったいうのに冷えきってるーじゃあ私、ファラミアを口説いても
怒られないかしら」
ゲラゲラと笑い出したレゴラスを悔し気に見つめていたアラゴルンだったが、不意に
ニヤリと口を曲げると猫撫で声で尋ねた。
「そう言えばレゴラス、確かギムリとしばらく北を旅して来ると言ってなかったか?」
ピタリと動きを止めたエルフに、鋭過ぎる勘を持つ元野伏は更に優しい声を出した。
「ギムリに振られたな?それでこっちに来たんだろ?」
「…………すみませーん、ここで一番強いお酒下さーい、あとはタン塩ー」
アラゴルンを無視して、店の奥に向かって大声で注文を始めるレゴラスを、ファラミアは
慌てて慰めようと手を伸したが、笑いを堪えて震える腕に止められた。
「え、えーとあの」
「放っときなさい、ファラミア」
図星を突かれたレゴラスが自棄になって飲み始める姿に、すっかり機嫌を好くした
アラゴルンは、ファラミアの顎を掴んで引き寄せ耳元に甘ったるく囁いた。
「私は貴方と過ごせる夜を寂しいとも空しいとも思えないのだが、もしかして摂政殿は
お嫌だったのかな」
「わ、私とて、その、そう思っている訳ではございません」
いきなりの王のアップに思わず頬を赤らめると、ファラミアは上目遣いで言い訳をした。

376萌えの下なる名無しさん:2006/02/27(月) 23:54:49





(4/4)
「ほう、では楽しんでいるのだな」
「どっどこを触っておられるのですか!我が王よ!」
「大人しくしなさ……」
したリ顔でにじり寄るアラゴルンの後頭部を、名剣グースヴィネが静かに撫で上げた。
「………我が義弟に何をしておられるのかな?エレスサール王」
「………やあエオメル王、幸多き我が友よ」
急激に温度が下がった背後を振り向かないまま、アラゴルンは汗を滴らせ挨拶をした。
なぜここに来るのとか、あんたも女性陣に構ってもらえない口なのかとか、うわー多分
店中の客に見られてるよとか、ツッコミたい所は沢山あったが、
「エオメル遅かったね、ああ、噂は本当だったよ、可哀想なファラミア……エステルに
あんな事や、そんな事されて……」
美しい顔を歪ませて目尻を押さえたエルフの復讐の言葉に、アラゴルンはファラミアを
抱えてとりあえず店から逃げ出した。
後ろで激しい破壊音が響き、アラゴルンは気の毒な鷲の止り木亭の主人に向かい、
心の中で必死に詫びた。

しかし勿論、これからもファラミアを連れ出す事を止めるつもりはない訳だが。 


お粗末様でした。

377萌えの下なる名無しさん:2006/02/28(火) 00:00:37
改行おかしくてご免なさい。
後は、摂政→執政
ああ、ずっと間違えていた……

378萌えの下なる名無しさん:2006/03/02(木) 00:10:28
面白かったです!ありがとう女神様!
賑やかなお話が読んでみたかったので、すごく楽しかったー
メインはアラファラなのかな
そして王様はセクハラ王なのかw

379萌えの下なる名無しさん:2006/03/16(木) 23:09:55
>>373-377
幸せそうな様子に癒されました!
ありがとうございます。

380萌えの下なる名無しさん:2006/04/23(日) 11:13:11
もう人いないのかな

スパコミでファラ受本がありますように・・・
アラファラでもエオファラでもボロファラでも。

381萌えの下なる名無しさん:2006/04/23(日) 16:05:52
まだいるよーノシ

382萌えの下なる名無しさん:2006/04/26(水) 20:02:51
ここにもーノシ

383萌えの下なる名無しさん:2006/05/02(火) 10:49:12
ファラミアさまあーノシ

384萌えの下なる名無しさん:2006/05/06(土) 20:58:02
いるよーノシ

385萌えの下なる名無しさん:2006/08/11(金) 22:32:46
明日の夏コミはファラ受本を買いまくるぞー

……あったらいいなあ

386萌えの下なる名無しさん:2006/08/11(金) 22:37:24
きっとあるよ!

387萌えの下なる名無しさん:2006/08/13(日) 23:54:20
超萌えエオファラ本に出会ってしまった
アラファラ派だったのに………
だめだ、顔が笑っちゃう

388萌えの下なる名無しさん:2006/08/16(水) 01:35:16
私はボロファラとアラファラでお気に入りを見つけた
まだまだこういう発見はあるんだねー

389萌えの下なる名無しさん:2006/08/17(木) 02:15:45
夏コミ不参加組でしたが、ファラミア本はどれくらいありましたか?

390萌えの下なる名無しさん:2006/08/20(日) 11:59:52
新刊(コピ除く)はアラファラ2・ボロファラ1・メルファラ1・ウィンファラ1

391萌えの下なる名無しさん:2006/08/20(日) 18:54:53
>ウィンファラ
この場合でも表記はこれでいいのかw

コピー除いてもそれだけあったんだね
少ないは少ないけど
まだオフセットで出しているところがあるっていうのがうれしいな

392萌えの下なる名無しさん:2006/08/25(金) 00:06:20
ってことは、コピ本入れるともうちょっとあったってこと?

393萌えの下なる名無しさん:2006/12/06(水) 19:08:04
冬コミ期待していいでしょうか…
アラファラあるといいなあ
ボロファラも…

394萌えの下なる名無しさん:2006/12/09(土) 17:36:11
カタログを見たところでは、ファラ受結構ありそうだけどな
期待しよう

395萌えの下なる名無しさん:2006/12/09(土) 17:47:17
期待値から−1でお願いします
出せるかどうか微妙

396萌えの下なる名無しさん:2006/12/15(金) 22:01:04
もちろん何時までだって待つので、無理しないでください。
ああ、ファラ受本なら夏までだって待てるさ!
……でも、頑張って下さい。

397萌えの下なる名無しさん:2006/12/24(日) 14:51:39
今日は皆さん原稿うpして、王様おかえりなさい祭参戦でしょうか。
腐女子で実況したい…


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