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ネタバレ@ファラミア/*  2

111萌えの下なる名無しさん:2004/06/08(火) 18:53
<ファラミア/ローハンの娘さん/ボロミア/セオドレド> 3













 初めて訪れた土地の見知らぬ部屋に一人になって、ファラミアは嘆息した。
 テラスに続くガラスのはまった扉の前に立って、すっかり闇に覆われた外の風景と、続いて、空に目を向けた。
 様々のことがありすぎた。
 旅の過程は思い出しても愉快なものだった。見る物、聞く物すべてが物珍しいとまでは行かなかったが、ボロミアの言葉の通りに、書物で見ていた事物を肌で感じることもあったし、書物にないものを多々目にした。道すがら、ボロミアは、自分が見聞きした諸々の事の話を、ファラミアに語った。それらは、ファラミアの興味を満たしてくれるものだった。いざ到着してみても、セオデン王やセオドレドが見せた歓待は思いの外居心地が良く、ファラミアを快くさせた。
 解せないのは、ただ一点だけだった。
 ファラミアは、次の誕生日が来れば二十歳になる。既に、兄の後ろについて回らなければ気が済まない子供ではなくなっているとはいえ、ボロミアがここにきて、自分を一人放っておくのに不思議な感じが拭えなかった。なぜなら、この年齢になってなお、ボロミアは、何かにつけてファラミアの世話を焼きたがっていたからである。そもそも、この旅にファラミアが出ることになったのも、ボロミアの意向といえば意向だったはずである。
 敢えて付け加えるならば、ボロミアが自分を一人にした割に、己だけはやたらに楽しげな様子だったのが、ファラミアにとってあまり愉快なことではなかった。ファラミアは、ここに来る前から、セオドレドに会うのを楽しみにしていたボロミアを思い出し、自分を納得させるしかなかった。数日の逗留を許されているファラミアとは違い、ボロミアは明日の朝にはここを発つ身だ。別れれば、二人が次に会うのはいつとも知れない。だから、時間は惜しいのだろう。
 それにしても、だ。
 理屈で理解したところで、心に生じた引っかかりが消えるわけではなかった。
 我ながらつまらない事ばかり考えている、と一人ごちたファラミアは、ボロミアの言う通りに、さっさと休んでしまうことに心を決めた。
 丈高いローハンの者に合わせているに違いなく、二つ並んだ寝台は、並のゴンドールの者よりよく育った兄弟にとっても十分な大きさがあった。その真っ白な上掛けに、客人のために用意された清潔そうな部屋着がきちんとたたまれて置かれていた。
 ファラミアは、それを有り難く借りることにして、のろのろと着替えると、ベッドの一つに腰掛けた。寝ようとは決めたが、眠いわけではなかった。
 すると、扉を叩く音がした。ボロミアが帰ってきたのかも知れない。などという考えがファラミアの頭をかすめた。
 ファラミアは立ち上がり、自分で扉を開けた。


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