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ネタバレ@ファラミア/*  2

212SS投下 6/7:2004/07/09(金) 11:03
修正:>211 誤4/7 正5/7

<セオドレド/ファラミア/しるけあり> 6/7


















「お気を煩わせる事が、何かございましたか」
 セオドレドの手が止まった。それまでになく思わしげな顔を見せられて、ファラミアは息を飲んだ。
 低く、セオドレドは言った。
「こちらに滞在した最初の晩。ボロミアが、どこで何をしていたか。お聞きになりたくはありませんか」
 ファラミアは、一瞬言葉を失った。
 そして、笑った。
「お忘れですか。セオドレド殿。ボロミアが言わないのなら、わたしはそれを、聞きたいとは思わないのです」
 すっかりやられてしまったとでも言いたげに、セオドレドは頭を抱えた。
「まったく、ファラミア殿という方は」
 俯いてしまった頑強かつ丈高い体に、ファラミアは体をにじって寄り添わせた。そして、自分とセオドレドと、たった二人しかいない部屋で、声を潜めた。
「ひとつだけ、わたしはセオドレド殿にお願いをしなければなりません。というのは、わたし共の間にあったことは、決してボロミアの耳に入れませぬように」
「私はボロミア殿の知るところになっても一向に構いませんが。それに、ファラミア殿らしくもない、不正直さではありませんか」
 ファラミアは、首を振った。
「結果、受けるのが叱責であるなら、良いのですがセオドレド殿。われらは、祝福されてしまいます」
「祝福?」
 思いがけない単語のせいで、つい声が高くなる。ファラミアは、そのセオドレドに頷いて見せた。
「話したが最後、ボロミアは花嫁の父さながらに、男泣きに泣きながら、弟を頼むと、セオドレド殿に何度も頭を下げましょう。そして、ボロミアの気分はおそらく舅以外の何者でもなくなるでしょうが。セオドレド殿は、ボロミアとそのような関係を結びたいとお望みですか」
 セオドレドは、黙って首を振った。光景が目に浮かぶようだった。セオドレドとて、ボロミアが、どのくらいたった一人の弟を可愛く思っているのか、決して知らないわけではなかった。初めて出会ったときの態度が既に、それを物語っていたではないか。
「わたしもご免被りたいのです。彼自身の思いを殺して、わたしの幸せとやらのため、ボロミアに泣かれるなどということは」ファラミアは、言葉を切った。愉快でもない言葉を紡ぎつつ、どこか虚空に視線をやるファラミアの横顔さえ、セオドレドは好ましいと思う。だから、ファラミアの言葉に含まされていることの意味を、セオドレドは考えもしなかった。
 ややあって、セオドレドの顔面に視線を戻したファラミアは、くすくす笑った。「こう申し上げて失礼でなければ、おそらく、セオドレド殿とわたしは、似通っているのです」。
 セオドレドは、ファラミアの心の底を図ろうとでもするかのように、顔を見つめた。
「正確には、求めているものが、と言うべきなのでしょうけれども。更に申し上げるならば」
 ファラミアは、セオドレドの手を取って、指をその隙間に絡ませて握ると、一本一本に、丁寧に口づけた。
「決して手に出来ないものを求めてやまない。そこが似ております」
 口づけに飽きたのか、ファラミアは指先を口に含んで、爪の際の僅かな肉に歯を立てた。愛撫だか手慰みだか判然としない行為にも、セオドレドはファラミアの為すがままに任せていた。
「わたしは、ボロミアが言わないことを聞こうとは思いませんが。ボロミアが、セオドレド殿のおられる国に、何を求めて来たのかくらいは、理解しているつもりです。そして、わたしが理解するに至った多くは、セオドレド殿に負っております」
「ファラミア殿?」
 セオドレドも、さすがにようやく顔色を変えた。だから、ファラミアは片手をセオドレドの頬に触れ、柔らかく撫でつけると、そこに口付けをした。
「ゆめ、お考え違いをなされませぬよう。わたしは、何もセオドレド殿をお恨み申し上げているわけではないのです」


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