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ネタバレ@ファラミア/*  2

18萌えの下なる名無しさん:2004/05/20(木) 19:58
>17は失敗です。すみません。改めて。
<セオドレド→ファラミア/しるけなし> 3















「それはまた、一見柔軟に見えて、強引なお話ではありませんか」
 ファラミアが、首を振った。
「強引なものですか。私は、食うとは言いましたが、お伺いをたてておりますよ」
「それでは、申し上げましょう。否、と」
 顔に、やんわりとした笑いを浮かべて、声の調子も穏やかにファラミアは告げた。
「食うだの食われるだの穏やかではない物事は、私の好むところではございませんゆえ」
「ゆえに、昨夜は、ボロミア殿のお心遣いを退けられたと。そういう理解でよろしいのですかな」
 ファラミアは、偽り無いところを言えばそろそろ閉口して来た。
「我が兄はともかく、結果的にではありますが、セオドレド殿がせっかくのお心遣いを、このゴンドールの不肖の息子が無にしたのが無礼であると、お感じになっているのなら、この通り、謝罪致します」
 ファラミアは、腰掛けから降り、セオドレドと同じ高さに体を置いて頭を下げた。
「あなたという方は」
 すっかり毒気を抜かれた様子で、セオドレドはファラミアを見た。
「ひとまず、顔を上げて頂きたく思いますよ。そう。楽になさい」
 長い髪の、まとめられた額に落ちる一筋をセオドレドはかき上げた。
「私は、男女の交わりとは素晴らしい物だと思うのですがね。恐らくは、ボロミア殿も私と意見を同じくしているからこそ、そうなさったのでしょう」
 ファラミアは、やはり首を振った。
「残念ながら。わたしには、喜びが勝るということは無いものです」
 セオドレドは、難しげな表情を作ってファラミアの顔を見ていた。
「思うに、趣向が違えば、感想も変わるのではないですか」
「趣向」
 ファラミアが、頓狂な声を上げた。
「そう。趣向です。自分は、ファラミア殿に五年の長があります。他はともかく、人の睦み合いに関して、お教え出来ることが無いなどという事はないと思いますよ」
 セオドレドの申し出に、ファラミアはセオドレドの顔を、穴が空くのではないかというほど、じっと見つめた。
「ご親切には感謝致します。が、わたしはそれを欲しいとは思わないのです」
 セオドレドは、笑っていた。不意に伸ばされたセオドレドの手が、ファラミアの片手をとらえた。意識しているのかしていないのか、ファラミアには判じがたかったが、その強さは拘束されていると感じさせるに十分なものだった。
「それが何かを見もしないで、一顧だにする価値も無いとおっしゃる。それでは私の立場が無い」
「おっしゃる通りとは存じますが。わたしが申し上げているのは、その事ではありません。直接に経験せずとも、分かることもあります。でなければ、書物というものが存在する意味がありません。そして、わたしは書物を好み、親しんでおります」
 掴まれた手を、ファラミアは引こうとした。が、セオドレドの握力はびくともしなかった。仕方ないので、指の一本ずつを外そうとファラミアはセオドレドの指に手を掛けた。不意をつかれたとはいえ、その手指をセオドレドのそれに絡め取られた時には、息を呑んだ。
「やはり、あまり楽しくない気が致します」
 手は繋がったまま、セオドレドの目をじっと見据えて、ファラミアが憮然と呟く。
「それはまだ、私が何もしておらないゆえでしょう。身をもって経験せねば理解されぬことも、中にはありますよ。とりわけ、身体を使う物事については。ファラミア殿とて、書物に目を通したからといって、それだけで一人前に剣が振るえると思っておられるわけでもないでしょうに」
 セオドレドが、困った風に笑った。
「私は、自身に欲望が無いとは申しません。ファラミア殿に同じものがあるとして、それが私に向けられていなくとも私は構わない。ファラミア殿の内に同じものがあるのかどうか、私はそれを見たい。そして、あなたのうちにあって未だあなたの知らないものがあるならば、それをあなたに知らしめるのは、私でありたい。私が望むのはそれだけです」
 ファラミアには、言葉が無かった。


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