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( ^ω^)は伝説になるようです
1
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:21:09 ID:lttvRft2O
壁。
まだら模様の、苔むす岩壁と金属により築かれた、垂直な壁。
総長二十キロメートルにもおよぶ長大な絶壁を、今一人の若者が登っていた。
2
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:23:49 ID:lttvRft2O
彼は岩場の切れ目に指をかけ、全身の力を用い体を押し上げてゆく。
遮るもののない青空からは絶え間無く太陽が照りつけ、汗ばむその身体には疲労が蓄積されてゆく。
過酷な道のりはまだ序盤の域であり、常人ならば既に心折れそうになる険しさを秘めていたが、この若者はそれすら征服せんとする強靭な意志を持っていた。
3
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:26:53 ID:lttvRft2O
彼の名はブーン。
まだ二十代と若くはあるが、この世界では名の知られた凄腕のクライマーだ。
気を抜けば滑落して即死の危険な岩場で、ブーンは巧みに手を伸ばし、次の足場へ身体を運んでゆく。
歩みは鈍足であり、だが極めて慎重。
それでも運が悪いことに数日前ザイルが切れてしまい、現在命綱なしにここまで登坂してきた彼の熟達した技術は、ひとえに才能であり、またそれを導いてくれた恩人たちのおかげでもあった。
4
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:28:54 ID:lttvRft2O
あと数十メートル登った先に、梁のよう突き出した奇妙な構造物が見える。
ふっ、と浅い息を吐き、全身に力をみなぎらせてより近くまで接近する。
根元の梯子まで手が届いた時、ようやくそこでアンテナの形を取っていることが判った。
( ^ω^)「おお……播種船の遺物だお」
視界いっぱいにそれをおさめながら、感嘆まじりにブーンは呟いた。
5
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:32:52 ID:lttvRft2O
播種船――はしゅせん。
この壁の正体は遠い昔星々の彼方より訪れた移民船なのだ。
長い年月を経て老朽化したものの、船内の電源はまだそこかしこで生きている。
ステップに腰を降ろし、休憩もそこそこに早速荷物をほどくや、ブーンはそこから蛇にも似た一台の機械を取り出した。
6
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 17:45:18 ID:lttvRft2O
背中に覗く電源スイッチを入れると、とぐろを巻いていた蛇がしゅるりと一本の紐へ変わる。
( ^ω^)「行け! 僕のスクワーム!」
主が命じると、するすると蛇が壁の亀裂へと潜り込んでいった。
ブーンの目的は、この船内に眠る超古代文明の遺物を探すことにある。
たとえ発見できなくとも、どこかで充電が出来ないかと期待しなから報告を待っていると、しばらく後に相手からの通信が入った。
('A`)「おーいブーン、ちょっと来てくれないか?」
どうやら蛇がなんらかの遺物を探し当てたらしい。
( ^ω^)「何かあったのかお? ドクオ」
彼が所有するスクワームに搭載された疑似人格AI・ドクオにブーンは応じた。
('A`)「ああ。なんか人らしきモノが倒れているんだけれどよ。
さすがに俺の力じゃ運べねぇんだわ。手伝ってくれ」
( ^ω^)「おkおk。じゃあ直ぐに向かうお。さて、取りあえずは……っと」
壁面に半ば埋もれるように設置されていた、ハンドル式のドアに指をかけて回す。錆び付いていて硬いドアだが、ブーンの鍛えてられた腕力ならばそれすら容易にこじ開ける事ができる。
7
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 19:55:21 ID:gRudsYgY0
構わん続けたまえ
8
:
名無しさん
:2019/04/24(水) 21:47:05 ID:lttvRft2O
( `ω´)「フッ!」
一息で回したドアが奥へと開いて、そのまま室内へとブーンは侵入する。ドクオの報告にある例の人物のものなのか、埃がつもる床の上に、何者かの足跡が奥へ向け続いていた。
一旦屈んで、その足跡をよく調べてみる。埃の厚さから察するに、この足跡はまだ新しい。
どちらにせよ、こんな辺鄙な場所を訪れるなんて余程の物好きに違いない。
( ^ω^)(ま、僕もその内の一人なんだけれどさ)
思索にふけるのを程ほどに切り上げ、ブーンは更に奥へと進んでいった。
9
:
名無しさん
:2019/04/25(木) 13:54:38 ID:PIF6Hy02O
数分後。ドクオのビーコン反応が強まってきた。そろそろだな、とブーンは彼へもう一度通信をつなぐ。
( ^ω^)「ドクオ」
( 'A`)/「おう、こっちこっち」
居場所を告げるためコツコツとドクオが壁を叩いた。首を巡らしようやく彼の下へ辿り着くと、そこには確かに一人の女性が仰向けに倒れている。
川 )
眠っているのかそれとも気絶しているのか。整った顔立ちをした彼女はぴくりとも動かない。その姿を見下ろしながら
「……死んでる?」と相方に訊ねてみるも
('A`)「さぁな」
蛇は首を振るばかり。解らない、というリアクションが返ってきた。
('A`)「取りあえず放っておくのもアレだし運んでやろうぜー」
あとで目覚めたら相手に何者か訊ねてみよう、と二人で決め、ブーンは彼女を背中におぶってやった。
10
:
名無しさん
:2019/04/26(金) 20:12:01 ID:YH88/GiIO
広い、広い大きな背中────
記憶の奥に眠っていた、なにか懐
かしい感覚を呼び覚ます優しいぬくもりがある。
(……父上)
( ^ω^)「お?」
( 'A`)「気がついたみたいだな」
休憩地点へもう間もなくというところで、それまで背負っていた女性の目が覚めた。
川;゚ -゚)「ん……?」
目覚めるや否や、突然目の前に見知らぬ男の顔があり彼女は混乱した模様である。
川;゚ -゚)「……えっと」
( ^ω^)
川;゚ -゚)「……どちらさまでしょう?」
11
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 06:31:17 ID:YXJvIZpIO
そう訊ねる他なく、不安げに発した彼女に対し、肩越しに振り返った男――ブーンはにこやかに自己紹介する。
( ^ω^)「僕はブーンだお」
そう名乗ってから視線を降ろし、
「で、こっちが相棒のドクオ」
と足下を這う金属の生き物を彼が紹介する。
( 'A`)ノ「ヨッ。別嬪だなねーちゃん。
あんたが倒れていたところを俺が発見していま運んでいる最中な訳よ。ここまではおk?」
川;゚ -゚)「あ…ああ……なるほど把握した」
軽口を叩く奇妙な機械と、同じく妙な男──とはいっても、相手の素性をまだ知らぬ所為ではあるか。説明されるがままこくんと彼女は頷いた。
( ^ω^)「別に怪しいものではないからそう緊張しなくてもいいお」
川 ゚ -゚)「……だろうな。君の顔を観るからにどうみたって私を襲う程の度胸があるとは思えない」
(;^ω^)「ちょwwヒドスwww」
突然冷静になるや辛辣な言葉を浴びせられずっこけそうになるブーン。
川 ゚ -゚)「ああ済まない。自他共に私は表裏のない性格と呼ばれているのだ」
(;^ω^)「……ああハイハイそういう事ね。オーケーオーケイ、その様子なら命に別状はなさそうだお。もう降ろしてもいいかお?」
川 ゚ -゚)「君はこんなうら若き乙女に歩けというのかい? なんと鬼畜な……」
(;^ω^)「もうやだなんなのこのひと……」
12
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 06:35:20 ID:YXJvIZpIO
冷却水のながれるパイプが無数に走っている。その中の適当な一本に傷をつけ、こぼれ出た水を組み茶を沸かす。
自分と相手のために用意したコーヒーを目の前の人物に手渡し、「さて、それじゃ君のことを聞かせてもらうお」とブーンは話を切り出した。
( ^ω^)「いったい君は何者なんだお? どうしてあんなとこに倒れていたんだお?」
川 ゚ -゚)「うん、そうだな。話せば長くなるが」
いれたての熱い飲み物にふうふう息を吹きかけながら、クーと名乗る少女は自分の身にこれまでに起きた出来事を語りはじめた。
川 ゚ -゚)「私の故郷はこの壁のすぐ麓にあってな、君みたいな探索者が持ち帰ってきた遺物の復旧を産業にしていたんだ」
('A`)「おお、ひょっとしてヴィップ村のことか? あそこの技術者たちは凄腕だからな。俺も修理で何回か世話になったことがあるぜ」
川 ゚ -゚)「そうだ。知ってるなら話が早い。私の両親はそこでも名の知れたマイスターでね。特にエンジン関係の修復に定評があるんだ。村だけでなく国中に弟子がいるんだぞ」
( ^ω^)「ほう。それはそれは立派な方だお。素晴らしいご両親をお持ちで君も鼻が高いんじゃないかお?」
川 ゚ -゚)「うん、私は両親をとても尊敬していたし、いずれは後を継ぐつもりでいた。ところが──」
13
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 13:36:41 ID:YXJvIZpIO
「あれは一昨年の秋のことだった。
私の父の腕を聞きつけ、どうにか動かせないものかと王都からとある品が運び込まれてきた。
でもそれはこれまで私たちが扱ってきた機械とは全く異なる代物だった。
まるで人間だ──本当に人間そっくりの素材で作られた、眠った妊婦だったんだ。
気味悪がりながらどうにか調査を進め、一年がかりで機動までこぎつけた……そこまでは良かったのだか、目覚めると同時にそいつは村人たちへ襲い掛かってきた。
ある者は首をもがれ、またある者は腹を裂かれて死んだ。奴は殺戮機械そのものだった。
私は、両親に庇われなんとか生き延びたのだか……」
すると突然、言葉を切ったかと思いきやクーは上着を脱ぎはじめた。
14
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 13:41:15 ID:YXJvIZpIO
(; =ω=)「!? ちょ、ちょっと君なにしてんの?!」
あわてて視線を逸らそうとするブーンに、「見てくれ」と彼女が落ち着いた声で言う。
(;^ω^)「い、いや、でも……」
川 ゚ -゚)「良いから。頼む」
動揺するブーンの腕を強引に剥ぎ、クーは素の上体を彼の眼前に晒す。
(; //ω//)「ちょおおおおおおお…………って、え?」
遮るものを奪われ、赤面するブーンの表情が突然、固まった。
( ゜ω゜)「何だ……それは……」
彼は──視た。
クーの白い肌の下で蠢く、異様な隆起の存在を。
麻疹のように点在するそれらが絶えず煽動をくりかえし彼女の身体を作り替えている。特に左脇腹から両胸元にかけてがそれらが顕著で、女性らしき腰のくびれも、膨らみも──何もかもが醜く失われている。
('A`)「化け物かよ」
機械だからだろう。歯にも着せぬ物言いでドクオが感想を告げると
川 ゚ -゚)「そうだ。化け物だ」
言われた当人であるクーもまた、それに憤することなく、ただ頷きかえしていた。
15
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 16:21:48 ID:kzathJR60
ちょい昔のブーン系みたいでいいな
支援
16
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 19:20:15 ID:YXJvIZpIO
コメントどもです。
二瓶勉とか飛浩隆みたいなSFが好きなので、そういうの目指して頑張ります
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
(; ゜ω゜)「……」
ブーンは動揺を隠しきれなかった。
侵食型の攻性生物──噂くらいは耳にしたことがあるが、まさかその被害がこれほど酷いものであったとは。
(; ゜ω゜)「その……なんだ、苦しくはないのかお?」
川 ゚ -゚)「は? なにを言っているんだ君は。苦しいに決まっているだろう」
だから倒れていたんだと、呆れた表情のままにクーは返事をする。
(;^ω^)「……いや、ゴメン。失言だったお。それにしても放置したままという訳にはいかない筈だお。何か治療の手立ては?」
川 ゚ -゚)「ああ、まさにそれを今探しているところなんだ。この壁の何処かに住むと云うハイ・フロスガーの噂を聞いたことはあるか?」
('A`)「んぁ? 知らねぇな……何者だい、そいつは?」
17
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 19:27:33 ID:YXJvIZpIO
川 ゚ -゚)「壁が出来た当時、我々ヒトにに知識を与えたという賢者の末裔さ。
莫大な知識を持つ彼等なら治療法を知っていると思う。
だから、そいつらをまずは探さねば」
('A`)「ほほう。しかしだだ闇雲に探している訳ではあるめぇ」
川 ゚ -゚)「うむ。そこのピザと違って聡いな、君は」
「ちょおまw」
思いがけぬ毒舌にまたもやブーンはずっこける。
彼の名誉のため云うが、ブーンは決して肥満体ではない。むしろ鍛えあげた肉体故の肉太りなのだか、相手はそれを理解していない様子なのだ。
川 ゚ -゚)「知らぬ。存ぜぬ。だから君はピザ」
(♯^ω^)「ぶっとばすぞてめぇ」
(;'A`)「いいから話を進めろ」
18
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 19:34:02 ID:YXJvIZpIO
喧嘩腰になる主人をどうどうとドクオが宥め、クーに説明を促す。
川 ゚ -゚)「おお、済まないな君。えっと、どこまで話したっけか」
( ^ω^)「ハイ・フロスガーを探す手立てがあるという所までは聞いたお」
川 ゚ -゚)「うむ、そうだったな。で──だ。私はこの壁の内部を記した地図を持っているんだ。今は大体このあたりかな」
胸元のポケットから端末機を取り出し、それの画面を映してみせる。
( ^ω^)「おお、これは便利そうだお。これも発掘品かお?」
川 ゚ -゚)「うん。完全ではないが6〜7割はカバーしているはずだよ。少々値は張るがこういうのは大概都に行けば買える。もっともコネは必要だがね……」
('A`)「あんた意外に顔が広いんだな」
「まぁそこは親のコネって奴さ」
もういないけどな、と憂いを含めた表情のまま彼女は乾いた笑みをこぼす。
19
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 20:51:44 ID:YXJvIZpIO
それからカップの残りに口付け、「ふう……」と一息。
川 ゚ -゚)「旨いな……おかげで喉の乾きも癒えたよ。ありがとう」
クーからのはじめての礼に機嫌を良くし、お代わりをブーンは奨めてみたが、「いや、これでもう充分だよ」と微笑みを返された。
川 ゚ -゚)「うん、身体の具合も良さそうだ。もう少し休んだら私はもう行くよ」
( ^ω^)「おっおっ。無理は禁物だお。本当に大丈夫かお?」
川 ゚ -゚)「なんの、これくらい慣れているさ」
('A`)「おうおう。痩せ我慢は禁物だせねぇちゃん。なぁブーン?」
ニィ、と意味深な笑みをこぼし、足元のドクオは同意を促す。無論その意図が解っているブーンもまた
( ^ω^)「だお」
と一つ頷き、「クー、君さえ良ければ一緒に行かないかお?」と同行を持ちかけてみた。
川 ゚ -゚)「ふぇ?」
20
:
名無しさん
:2019/04/27(土) 20:58:14 ID:YXJvIZpIO
思いがけない申し出にクーはきょとんとなる。
「どうかお?」
川; ゚ -゚)「い、いや……それは実に有難いというか、楽しそうな申し出だが……その、なんだ、君達はそれでいいのかい?
そっちにはそっちの用事があるのでは?」
そんな心配に対し
( ^ω^)「もーまんたいだお」
そう即答するブーン。
('A`)「だって、……なぁ?」
( ^ω^)「うん、実際僕のやっている事なんて道楽の延長みたいなものだし……それなら人助けでもした方が余程有意義というものだお」
('A`)「──だとよ。さぁ後はお前さん次第だ。どうする、お嬢ちゃん?」
ここまで言われればもう断る理由などない。
川 ゚ -゚)「ああ……そうだな。しばらく一人旅ばかりで疲れたよ。君達となら随分楽しめそうだ」
──よろしく頼むよ、とクーはほっそり白い指を差し出した。
('∀`)「よっしゃ! 決まりだな!」
( ^ω^)「こちらこそよろしくだお!」
嬉々とした表情を浮かべ、ブーンは彼女と握手する。
こうして彼らの旅に新たな仲間が加わったのであった。
21
:
名無しさん
:2019/04/28(日) 07:37:14 ID:FUb9byxQO
■log.2■
播種船は生きている。
それは周囲の環境を取り込み、そこから老朽化した船体の保持に必要な物質を吸収、加工する。
精製された各種燃料及び部品は『蜘蛛』あるいは『百足』などと呼ばれる自動機械によって運び出され、補修作業が行われている。
時にそれらを捕獲し、解体して下界の住民らに売りさばくのが狩人(マタギ)の仕事だ。
手製のスピアガン表面には無数に貼られたうさぎのステッカー。
プリズム加工されたそれらが天井の照明を反射しキラキラ光る。
ξ#゚⊿゚)ξ「目障り」
二人組の若い女性が瓦礫の森を歩いている。不機嫌そうに顔をしかめ、金髪の少女は相方への不満を洩らした。
从'ー'从「ふええー? ツンちゃんなに怒ってるのぉ?」
22
:
名無しさん
:2019/04/28(日) 08:52:16 ID:FUb9byxQO
ツンの不満の対象――後輩のワタナベはいつも能天気な娘だ。
丁度この時はおやつをかじっており、喋る側からビスケットの破片がぽろぽろこぼれ落ちてゆく。
きたない。
そしてムカつく。
ξ# ⊿ )ξ「お・ま・え・は・やる気あるのかaaaaaaaaaaaaa!?」
とうとう堪忍袋の尾が切れ声を荒げて叫ぶ。
从;'ー'从「ふえっ!? ツンちゃん顔が恐いよ! そんなにおやつ欲しかったのならまだまだ沢山あるから怒らないでよ!? 私食いしん坊だけどそれくらいは気が回るよ!」
ξ# ⊿ )ξ「黙れ汚荷物!」
从;'ー'从「どいひぃぃぃ!?!?!?」
怒りまかせにツンは相手の尻を蹴飛ばした。
23
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 09:31:22 ID:PBCHM9tQ0
続けたまえ
24
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 17:16:51 ID:8ylKk.TcO
>>22
修正
从;'ー'从「ふえっ!?」
さすがにこれにはびくりと手が止まるワタナベ。
从;'ー'从「ツンちゃん顔が恐いよ! そんなにおやつ欲しかったのならまだ沢山あるから分けてあげ――」
ξ# ⊿ )ξ「黙れ汚荷物!」
从;'ー'从「どいひぃぃぃ!?!?!?」
ツンは豪快に彼女の尻を蹴飛ばした。
ちょうどコンテナの隅に腰掛けていたワタナベは、その勢いで宙へと放り出されて急勾配の斜面を転がり落ちてゆく。
从;'ー'从「目がーあああああ?!?目が回るうううううううううう!!」
ξ゚⊿゚)ξ「気合いで止めろー」
ソンナゴムタイナーーッ
暫くして、ゴン!と派手な激突音が下から聞こえてきた。
ξ;゚⊿゚)ξ「やべ、力強すぎた」
どうみても後の祭である。
「はぁめんどくせぇ」
自業自得を嘆きながら、ツンは身体をローブにくくり、ワタナベの後を追った。
25
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 17:44:35 ID:8ylKk.TcO
赤錆の浮いた斜面。
遥か彼方には複雑に絡み合う鉄柱が覗き、谷の狭間には朽ちたまま放置された大橋。どこかから轟々と風の唸り音がきこえる。
ここは一体どこなのか。
予想以上に深いところへと迷い込んでしまったらしい。
川 ゚ -゚)「ナビが反応しない……」
困り果てた顔を浮かべ、クーはこの時出口を探していた。
26
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 18:57:26 ID:8ylKk.TcO
赤錆の浮いた斜面。
遥か彼方には複雑に絡み合う鉄柱が覗き、谷の狭間には朽ちたまま放置された大橋。どこかから轟々と風の唸り音がきこえる。
ここは一体どこなのか。
予想以上に深いところへと迷い込んでしまったらしい。
川 ゚ -゚)「ナビが反応しない……」
困り果てた顔を浮かべ、クーはこの時出口を探していた。
( ´ω`)「えぇー……そんなぁ……こまるおー」
彼女の隣にはブーンがいて、同じく画面を見つめている。
('A`)「何だろうな。恐らく特殊な地場が働いているのかも知れないぞ。お陰で俺も変型出来なくなっちまってるし」
川 ゚ -゚)「八方塞がりという訳か」
( ´ω`)「だお」
('A`)「おいおい、若者がすぐに諦めるなっての」
( ´ω`)「そうは言ってもなぁ」
27
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 20:16:18 ID:8ylKk.TcO
彼らは何故こんな事態に陥ったのか?
それを説明するには、およそ半日前まで遡らねばなるまい。
クーを仲間に加えて以来、ブーン達は彼女のナビを従い頂上を目指していた。
川 ゚ -゚)「腹が減ったな……」
仲間が増えれば当然食糧の減りも早くなるもので、それまでの蓄えがわずか数日で無くなってしまった。
クー曰く、少し寄り道となるが最寄りの集落で食べ物が調達できるらしい。
さっそく表示された座標へ向かう途中で、彼らはゴンドラを発見する。
28
:
名無しさん
:2019/04/30(火) 21:04:44 ID:8ylKk.TcO
ゴンドラは壁内の階層を結ぶ交通手段だ。遥か古代に造られたものであるため、老朽化して動かないものが大半であるが、どうやらこの路線は使用可能らしい。
中へ乗り込むと自動的にドアが閉まり、そのまま希望の階へ連れていってくれる。
( ^ω^)「凄い眺めだお」
ゴンドラは高速で上昇してゆく。
普段は壁の外側ばかり移動するため、こうして内部を旅するのはブーンにとって新鮮だった。
窓から足下を眺めてみれば、浄水槽を兼ねた巨大な人工湖が広がっている。壁の一部がゆっくりと展開してゆき、外から射し込む光が水面の表面を照らしてゆく。
浮島には停まったままの風車と廃墟が幾つも並んでおり、かつてはそこに人が暮らしていた面影を遺していた。倒壊した風車の根本から伸びるケーブルは、岸から湖の中へ水没し時折スパークを散らしている。
あの箇所に万が一落ちたら命は無さそうだ。
29
:
名無しさん
:2019/05/01(水) 13:13:19 ID:aI8XAmocO
倒壊した風車の根本から伸びるケーブルは、湖の中に浸かり時折激しいスパークを散らしている。あそこに落ちたら命は無さそうだ。
退屈しのぎにそんな事を考えていたその時、突然ガクンとゴンドラが停まった。
( ^ω^)「ん?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
クーと二人で顔を見合わせた次の瞬間、ずるずると車体が下がり始めそのまま急降下していったのだ。
川;゚ -゚)「うわあああああああ!?」
咄嗟に二人は手摺を掴み、屈んで衝撃に備えたものの、想像以上に降下の速度が速すぎてこのままでは不味い。
('A`)「脱出するぞ!」
ドクオは身体を伸ばし二人の手首を絡めると、そのまま反対方向にあった窓を突き破り、勢いよく宙と身を躍らせる。
( °ω°) 「ふぉぉぉおおおおおお!」
なにせこの高度だ。全身を叩く風圧が凄まじい。
('A`)「喋んな!舌噛むぞ!」
声をあげそれを制するや、ドクオは関節の隙間から空気を取り込み、それを圧縮して噴出する。反動効果で落下の速度を緩める狙いだ。
さらに高度を下げるや今度はバルーンを射出。それが破裂したかと思えば中からパラシュートが開いて展開。ぐい、と強引に身体が上方へ引き上げられる衝撃に一瞬襲われた後、そのまま風に流されるようにブーン達は身体が軽くなったのを感じた。
('A`)「このまま降下するぞ」
ドクオの視線が着陸箇所を捕えていた。
30
:
名無しさん
:2019/05/01(水) 13:32:06 ID:aI8XAmocO
随分岸の方へ流されていた。
いや、より正確に表現するならば、ここは密閉空間なので『縁』というべきか。
側壁はもう間近にせまり、それが造る影が深い闇を落とす。
( A )「おい。聞こえるか」
蛇が仲間へと声を掛ける。
川 - )「ああ。だがドクオ。君の姿が見えない」
( A )「悪りぃな。今ので大分バッテリー使っちまった。電池節約したいからライトは勘弁してくれ」
川 - )「成程。構わないさ。それは致し方ない」
おいピザ、起きてるなら返事をしろよとクーは相棒を読んだ。
( XωX)「ウェッぺっ……水飲んじゃったお……」
('A`)川 ゚ -゚)「「汚ねぇな」」
(#^ω^)「何故そこだけ意気投合するのか甚だ理不尽なんですけど」
川 ゚ -゚)b「大丈夫だ。問題ない」
( ^ω^)「解せぬわ」
31
:
名無しさん
:2019/05/01(水) 14:09:47 ID:aI8XAmocO
暗がりに目が慣れるまで少し待ち、再び行動を再開する。
川 ゚ -゚)「まずはなによりも飯だな……」
( ^ω^)「ああ。全くそれには異論なしだお」
言ったそばから腹が鳴る。
Σ川 ゚ -゚)「閃いたぞ!」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「幸い目の前には湖が広がっている」
( ^ω^)「フム」
川 ゚ -゚)「そこでこのピザを餌に魚を釣るというのはドゥーデスカ? オキャクサーン!」
( ^ω^)「やめろおいやめろ」
川 ゚ -゚)「ドゥーデスカー、オマイサーン」
(#^ω^)「聞けよ」
川 ゚ -゚)「ドゥーデスカー、オマワリサーン」
(#^ω^)「ねぇ聞いて。お願いだから聞いて。あと国家権力持ち出すな」
テリィート
ドッリィダーヨ
フタリハ ナッカヨーシ♪
(#^ω^)「その口笛もやめろおおお!!」
川 ゚ -゚)「ええ、埒があかないので無理矢理突き落とします」
(;^ω^)「なんという鬼畜!」
32
:
名無しさん
:2019/05/02(木) 18:37:30 ID:gTEzkx120
期待
33
:
名無しさん
:2019/05/03(金) 07:48:12 ID:THdV51NwO
川 ゚ -゚)+「そして〜ェ!」
「――おおっとォ!突如理由なき大外刈がピザ(笑)を襲ゥゥ!」
(;^ω^)ファッ!?
そおぃ!という掛け声と共にブーンの片足が払われ、派手な水しぶきを上げて水面へ叩き込まれたのである。
川 ゚ -゚)「決まりました! さぁ、判定の結果は!?」
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【もう好きにして】
川 ゚ -゚)「出たああああ!!
史上最高記録の更新です!」
(;'A`)【いいからはよ助けてやれ!】
それにしてもこの女
本当にノリノリである
34
:
名無しさん
:2019/05/04(土) 20:40:25 ID:xTgmCUV.O
(;^ω^)「モガッ! ブグッ! ちょ、オボッ! 溺れ――」
クーが一人漫才に溺れる一方で、件の犠牲者であるブーンは本当に溺れていた。
川 ゚ -゚)=3
「なんだおまえ……
だらしないな、ピザなのに泳げないのか? 尤も溺れようが何だろうが私には関係ないんですけど……」
(;^ω^)「違ッ! 本当に溺れてるんだっての! 何かが僕の足を引っ張って――」
そう言って懸命に抗議を訴えた次の瞬間
「「あ」」
クーとドクオ二人の目の前からブーンの姿が消えた。
(;'A`)「おいお前ェェェェェェェェェェ!!!? 一体どうすんだよバカああああああああ!! ブーン喰われちまったぞ!? 囮どころか本当に餌になっちまったじゃねぇかああああああああああああ!!」
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「うし、閃いた」
川 ゚ -゚)「これは見なかったことにしよう」
(;'A`)「罪悪感をね!
君は罪悪感という感情を覚えようね!? こっわ! なにこのひとめっさ怖っわッッ!!
――って……」
35
:
名無しさん
:2019/05/04(土) 20:56:13 ID:xTgmCUV.O
ドクオははたと動きを止めた。
(;'A`)「う」
水面が突如隆起した。
そこから現れた首長竜を思わせる巨大な機械。
ショベルカーにも似た金属製の歯の内側にはブーンの姿が。
(;°ω°)
捕われていたブーンはこちらと目を見合わす。直感――コイツは『ヤバい』。
「クー!」
言うが早くドクオは腕を引く。
逃げろ。
それを伝える間もなく二人もまた触碗に捕らわれ、バケットの中に閉じ込められてしまう。
川;゚ -゚)「くっそ! なんだこいつ! わっ、馬鹿! 沈むな! 水が――」
水が滝の様に注ぎ込まれてゆく。
それと同時に機械全体がブルブルと震え出す。
(;'A`)「コイツは――」
そのまま機械は、突如光と化し空間を転移したのだ。
36
:
名無しさん
:2019/05/04(土) 21:25:46 ID:xTgmCUV.O
眼も眩むばかりの激しい光と、鼻腔をツンと刺激するオゾン臭。
( ーωー)「ウッ……」
頭の奥には鈍い痛み。
立ちくらみを覚えながら、それでも徐々に目を慣らしてゆくと、いつのまにか知らない空間に来ていた。
( ^ω^)「何が……起こったんだお……?」
自分と同様に身を起こすクーに手を貸し、それから冷静に周囲を見渡した後でブーンは呟く。
('A`)「空間……転移させられたらしいな……こりゃどうも」
川 ゚ -゚)「まさかのイリュージョン」
( ^ω^)「それな。……ってどうするお? こんな場所僕は見覚えがないお」
川 ゚ -゚)「そりゃ私もだよ。しかし参ったな……」
37
:
名無しさん
:2019/05/05(日) 06:24:28 ID:KSs2zg7QO
静電気で乱れた髪を整えた後に、クーは荷物から端末機を取り出す。早速起動し地図を立ち上げようとしたのだが、この場所は該当するデータがなく、空白地帯と表示されたのだ。
( ^ω^)「アチャー……」
ブーンは失望に天を仰ぐ。視界一面を覆うのは赤錆の浮いた鉄骨の群れ。それが上下一面規則的に、途中からは珊瑚の森のよう複雑に絡み合い、奇抜な谷を形成しているのだ。
('A`)「こりゃ飯どころの話じゃねぇよ。早いとこ抜け出さないと延々迷っちまう」
川 ゚ -゚)「そうだな……はぁ……なんだか災難続きだ」
(;^ω^)「僕はクーと出逢ってから得にそれが顕著な気がするお」
川 ゚ -゚)「気のせいだ」
(;^ω^)「アッハイ」
川 ゚ -゚)「オラ、さっさと出口に案内しろバトラー」
(;^ω^)「執事にクラスチェンジした覚えは無いんですけれど……」
川 ゚ -゚)「うるせぇ黙れ」
(;^ω^)「罵倒されるのがデフォとか僕悲しい。ごめん、ちょっと泣いてもいいかな?」
川 ゚ -゚)「うるせぇ黙れ」
( ;ω;)「運命って残酷ゥ!」
38
:
名無しさん
:2019/05/07(火) 18:06:30 ID:LWVxTDP2O
(;'A`)「泣くなよ」
僕(しもべ)の同情を受け、「ドックンだけが味方だお……」とブーンは顔を拭い歩き始める。
バッテリーを持たせるため、ドクオにはスリープモードに入るよう命じた。
川 ゚ -゚)「いいのか?」
( ^ω^)「いざという時の切り札になるから今は休ませておくべきだお」
川 ゚ -゚)「成る程。そりゃ確かに」
その後、二人は会話もなく宙に掛けられた橋を渡る。機械の壁に囲まれた世界は絶えず明滅を繰り返している。
まず一本目の橋を渡りきり、それから少し階段を登ってまた橋を渡る。途中で途切れた箇所は無理をせず引き返し、新たなルートを探る。
( ^ω^)「……」
黙々と歩き続けるが一向に進めている実感が湧かない。徐々に苛立ちが募り始め、気の短いクー等はおいまだなのか、何時になったら着くんだと執拗に彼の背中に声を浴びせていた。
( ^ω^)。oO(クソ面倒臭い女だお)
39
:
名無しさん
:2019/05/07(火) 18:25:09 ID:LWVxTDP2O
配管から汚水が染み出ており、それの作るあぶくが床を濡らす。
時に酸性の成分が含まれており、床が脆くなっているからとクーへ注意を促す。
( ^ω^)(……しんどくなってきたお)
半日――いや、もう二十四時間を経過している筈だ。その間碌に水分すら摂れていないのだ。全身にだるさを感じ始めている。
後ろを歩くクーの様子が心配で、ブーンは足を止め彼女の方へ振り返った。
ξ゚⊿゚)ξ「――」
( ^ω^)「……お?」
ξ゚⊿゚)ξ
( ^ω^)「……ありゃ?」
何時の間にか見知らぬ女の子が背中に立ち、こっちを見つめている。
ξ゚⊿゚)ξ「……誰よ、あんた」
こっちが聞きてぇよ。
40
:
名無しさん
:2019/05/07(火) 18:40:33 ID:LWVxTDP2O
気配を全く感じなかった。だから気づけなかった。いや、もしかした疲れの所為なのかも知れないが、それにしてもこの娘は何者だろう。
( ^ω^)「お?」
臆しもせず、こちらをじっと見つめる彼女をブーンもまた見つめ返す。
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」
流石に警戒心はあるのか、相手が一歩退き腰に吊るした武器と思わしき何かに手を伸ばしかけた。
(;^ω^)「ちょっ、ちょっとちょっと待った! 別に怪しい者じゃないからそれは降ろして欲しいお! それにこっちも聞きたい事があるんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「…………。どうやら敵ではないみたいね」
鞘から引き出しかけた刃物を少女は仕舞う。
(;^ω^)「話が通じる相手でよかったお。ええと……はじめまして。僕は登山家のブーンという者だお」
41
:
名無しさん
:2019/05/07(火) 19:18:06 ID:LWVxTDP2O
やや強張ったままに自己紹介を済ますと、
ξ゚⊿゚)ξ「ツン」
と素っ気なく相手も名乗った。付け加えるように「マタギのツン」と。
聞き慣れない単語に「お?」とブーンは首を傾げる。マタギ? それは姓かなにかだろうか?
( ^ω^)「ええと……ごめん、知らないから教えて欲しいんだけどマタギってなんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「これで」
ツンと名乗る少女は背中に回していた長銃を取りだし、
ξ゚⊿゚)ξ「獲物を駆る。要するにハンターよ」
ブーンの目の前でそれを構えてみせる。声には自信がみなぎり、眼光共々修羅場を潜ってきた気配が窺えた。
42
:
名無しさん
:2019/05/08(水) 12:09:21 ID:zkVMhEBgO
あまり見かけぬ銃だった。
物珍しさに興味を惹かれ、「ちょっとそれ、見せてもらってもいいかお?」とブーンはツンに頼んでみた。
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ……いいけど。壊さないでよ」
( ^ω^)「ありがとだお」
礼を言いそれを受け取ろうとする――
(;^ω^) 「……って、ちょっ! 重っ!」
それは見かけに反してとても重かった。腕力に自信のあるブーンは、虚をつかれ一瞬たたらを踏んでしまう。
ξ゚⊿゚)ξ「ああゴメン。言うの忘れてた」
武骨なフォルムをした彼女の猟銃は、どうやら単発式でその上通常の弾丸ではなく、内部に収納された杭を打ち込むものらしかった。
いつの年代に作られたものだろう。照準器共々、外側は随分古びており、破損の酷い箇所には所々テープが巻かれていた。
( ^ω^)「いや……これは本当に凄い銃だお……」
ほへー、と感心した様子でまじまじとそれを見つめるブーンである。
ξ゚⊿゚)ξ「もう帰してもらっても?」
(;^ω^)っ「あっハイ。長々と借りちゃってごめんね」
43
:
名無しさん
:2019/05/08(水) 12:28:27 ID:zkVMhEBgO
催促され慌てて持ち主へと銃を返す。
ξ゚⊿゚)ξ「ふう……これ背負うと肩が凝るのよね」
くすんだ金色の髪をした少女は、そうこぼしながらスリングを腕に通し、軽々と肩に担いだ。華奢な見た目に反して相当鍛えられているようだった。
「さて」軽く手の埃を払った後で、彼女は向き直りブーンを見上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「聞きたいこと」
( ^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「聞きたいことがあるんでしょ。さっき言ってた」
( ^ω^)「ああそれね、えっと……実は連れが行方不明になってしまったんだお。歳は二十歳くらいで、身長は君よりちょっと上かな? 全体的に無表情な感じで……長い黒髪が印象的な女の子なんだけれど――」
川 ゚ -゚)「お前の目は節穴か」
Σ(;^ω^)「ノウわァっ!」
突然背中から声が聞こえた。
ぎょっとして振り返ってみれば、そこには正に今探している当人がいるてはないか。
44
:
名無しさん
:2019/05/22(水) 21:26:49 ID:yfF0yQFsO
>>43
突然背中から声が聞こえた。ぎょっとして振り返ってみれば、いままさに探しているその人が立っているではないか。
45
:
名無しさん
:2019/05/27(月) 13:03:15 ID:Y0.MJ4ekO
(;^ω^)「クッ、クー! 今まで何処に行ってたんだお!?」
探していたんだお、とまだ驚きのせいで上擦りの残る声でたずねてみれば、
川 ゚ -゚)「なに、ちょっと飯を探しにな」
そうけろりと言ってのけた。
(;^ω^)「飯ィ〜?」
川 ゚ -゚)「そう。飯だ」
これな、と彼女がその首根っこを捕まえあるものを見せる。
从;+ー+从←コレ
(;○ω○)「人じゃねぇかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
川 ゚ -゚)+「クーたんはとんでもないものを捕まえてきたようです」デデーン!
( ^ω^)「タイトルコールみたいなドヤ顔止めて。ねぇお願い止めて」
46
:
名無しさん
:2019/05/27(月) 13:56:16 ID:Y0.MJ4ekO
さっき知り合ったばかりの男がすっ頓狂な声をあげる一方、「あ!」とマタギの少女は女が掴んでいるその人物を見るやこちらも叫んでいた。
( ^ω^)「おっ? ツンさんこの娘を知っているのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、知っているもなにもウチの馬鹿相棒なんだけど」
気絶中のワタナベを指さしそう教えるや
ξ゚⊿゚)ξ「あー…………ここで処分された方が奴のためかもね」
飯、と言っていたクーの発言に反応したのかそんな事を言ってのける。
川 ゚ -゚)「ん? 君は見ない顔だか……良いのかい? 私は許可が降りればホイホイ食っちまう怖い女だぞ?」
ξ゚⊿゚)ξb「大丈夫だ。問題ない」
( ^ω^)「こえーよおめーら」
なに意気投合してんだお、と流石に全力でツッコミを入れざるを得ない状況に、すかさずブーンは横槍を入れた。
川 ゚ -゚)「話の解らない奴はモテないぞ、ピザ」
(#^ω^)「うるせぇ黙れ」
むんずと彼女の腕から少女を引ったくるや、相手を庇うようにクーから遠ざける。
(#^ω^)「全く……君が言うと冗談が本気になるから怖いお……っと、あ、こりゃ唯の捻挫だお。気絶してるうちに治しておくお」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「チッ、死んでねーのかよ」
(;^ω^)「君なにかこの娘に恨みでもあるの?」
物騒な発言を聞き流し、手早く湿布を取り出すや処置を施す。
47
:
名無しさん
:2019/05/27(月) 16:26:02 ID:NdM.RFJM0
見てるぞ
48
:
名無しさん
:2019/05/27(月) 19:19:27 ID:Y0.MJ4ekO
いやんえっち
原作ありだと筆早いんですがねぇ
遅筆で申し訳無いっすわー
49
:
名無しさん
:2019/05/27(月) 19:19:59 ID:Y0.MJ4ekO
いやんえっち
原作ありだと筆速いんですがねぇ
遅筆で申し訳無いっすわー
50
:
名無しさん
:2019/05/29(水) 18:41:18 ID:sWTNH2LgO
川 ゚ -゚)「ほう……馴れたものだな」
手際がいい。
手持ちぶさたとなり、ブーンの背後からその様子を観察していたクーは、鮮やかな手つきに心から感心する。
( ^ω^)「そりゃもう怪我の絶えない仕事しているからねぇ。こういうのは嫌でも憶えてしまうものだお……っと。はいおしまい」
患部を包帯で包んでワタナベをツンに返す。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、うん。ありがとね……」
流石にここまでしてくれた相手を邪険にすることはできず、ツンは素直に礼を述べた。
( ^ω^)「どういたしましてだお。あ〜……しっかし腹へったぁ……」
川 ゚ -゚)「うむ、全くだな」
言うや否や、二人の胃袋が同時にぐぅと音を鳴らす。
51
:
名無しさん
:2019/05/29(水) 20:33:20 ID:sWTNH2LgO
川; ゚ -゚)「うう……やばい、言ってる側からこれだ……このままでは本気でお腹と背中がくっついてしまいそうだな……」
遂には胃がしくしくと鳴き始めた。胃酸のせいで気持ちが悪い。
(;^ω^)「ツンさん、申し訳ないんだけど何か食べ物持ってないかお?」
ブーンはすがる様少女にそう訊ねる。
ξ゚⊿゚)ξ「何? あんた達お腹空いてるの?」
(;^ω^)コクコクコクコクコクコクコクコク!!川; ゚ -゚)
(;^ω^)「いやもうヤバイ。全力でヤバイ。どのくらいヤバイかって言うと宇宙ヤバイ。俺の空腹で宇宙滅ぶ。即行で滅ぶ。絶体絶命きぶみー飯飯飯飯飯飯飯ィィィィィィ!!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「わ、わかった。わかったから顔近いって」
川; ゚ -゚)「めーーしーーだーーめーーしーーをーーくーーれーーーー!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ヒィィーー!」
52
:
名無しさん
:2019/06/01(土) 07:35:45 ID:XRDcXb96O
その様。恰も餓鬼の如し。
狂気すら漂う二人に囲まれツンは慌てて逃げようとした。
( ^ω^)「あっ! 隊長こやつ逃げようとしているであります! 怪しいであります! 絶体何か隠し持っているでありますゾ!」
川 ゚ -゚)「ナヌ! よっしゃ拿捕だ拿捕! ふんづかまえて搾り上げちまえ!」
( ^ω^)「Yes sir !」
ほんとどうしてこうなった。
いやもうアレが悪い。
全ての元凶はアレなんや。居でよ空腹大明神!
川 ゚ -゚)「搾る時搾れば搾れよ秘密戦隊搾レンジャー!」
( ^ω^)「アッソーレ搾りゃんせったら搾りゃんせ! びーちくびーちく濃厚ドーン!」
姉さん大変です狂気です!
ξ;⊿;)ξ「いやああああああこっちくんなばかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
53
:
名無しさん
:2019/06/01(土) 07:42:12 ID:XRDcXb96O
=┌川 ゚ -゚)┘「ダッシュだーっしゅダッシュ」
=┌川 ゚ -゚)┘「キックえーんどダッシュ」
=┌川 ゚ -゚)┘「何時か決めるぞアへ顔シューーートォーーーー」
( ^ω^)「なにそれ恐いわ」
54
:
名無しさん
:2019/06/01(土) 08:39:41 ID:XRDcXb96O
=┌川 ゚ -゚)┘「そんときー おーれーがー」
=┌川 ゚ -゚)┘「一発退場ーやー」
( ^ω^)「当然ですねわかりますだよこんバカタレが」
┌川 ゚ -゚)┘「コンバカターレV! コンバカターレ!」
(;^ω^)「えっまだ続くの?」
┌川 ゚ -゚)┘「地球の平和をしらんぷりー
大阪府民がないているー♪
はたらけー♪
はたらけー♪
窓際戦隊コンバトリャー
レッドは君だ!だが拒否する!
ブルーは今日も!出社拒否!
イエローの腰痛!ぶり返す!
グリーンはえっと……
あ、もういいや。適当にその辺生えている草で代用ね。
ピンクさんもそれでイイデスね?
異論ない?
おっけおっけーい!
よっしゃ朝までSEXXXXXXXXXXXXXXX」
(;^ω^)「滅べ」
55
:
名無しさん
:2019/06/04(火) 13:08:03 ID:Zv37Y6QMO
な……
なんなんだこいつは。
物凄い馬鹿な歌詞を堂々と歌いながら此方へ迫る女にツンは恐怖を感じた。
馬鹿だ。馬鹿に関わると脳が汚染されてしまう。
ξ#;⊿;)ξ「こっち来るんじゃねぇぇぇぇ!」
少しでも相手を遠ざけようと、闇雲に銃を射ちまくった。だが碌な狙いも着けずに放ってみれば、当然それらは当たる筈もなく弾の無駄遣いになる。
川 ゚ ∀゚)「ふひひひ捕まえたぞ子猫ちゃあああん!」
ξ;X⊿X)ξ「ぎゃん!」
スライディングの姿勢から獲物の足首を蹴り倒し転倒させた。
川 ゚ ∀゚)「剥かれろ! さぁ観念して私にお前のすべてをさらけ出すのだ!」
ξ///)ξ「ちょっ!? やっ、なに服の中に手ぇ突っ込んでんのよぉぉぉぉぉぉぉ」
(;^ω^)←蚊帳の外のひと
从;'ー'从「なにボーっと突っ立っているんですか助けてあげてよぉ……」
いつの間にか介抱された少女が目を醒ましていた。
56
:
名無しさん
:2019/06/04(火) 13:46:26 ID:Zv37Y6QMO
(;^ω^)「えぇ……正直関わりたくない……」
从;'ー'从「だって頼れるのはお兄さんしかいないよぉ……ビスケットあげるからさぁ」
( ^ω^)「任せろ」←現金
( ^ω^)っ●+「クー! これを見るおー」
ワタナベから貰ったビスケットを頭上へと掲げ、ブーンは彼女へ向け大声を放った。
川; ゚ -゚)「そ……それはッ……!?」
クーはそれを目にした途端血相を変えブーンの下へ駆け寄る。
川; ゚ -゚)ハッハッハッハッ
( ^ω^)「クー、待て!」
川; ゚ -゚)ハッハッハッハッ
( ^ω^)「待て!」
川; ゚ -゚)ハッハッハッハッ
( ^ω^)「お座り!」
川; ゚ -゚)「は、早くそれを……」
( ^ω^)「お座り!」
川; ゚ -゚)「くっ……!」
( ^ω^)「よーしよしよし」ナデナデ
川; ゚ -゚)キャインキャイン!
( ^ω^)「じゃあこれは僕がたべるー」
川# ゚ -゚)「おいざけんなテメェ」
57
:
名無しさん
:2019/06/04(火) 18:23:19 ID:Zv37Y6QMO
(#^ω^)「は? まだあげるなんて一言も言ってないんですけどー。折角僕が貰ったんだから貰った人が食べるのが筋なんですー。礼儀なんですー。それをキレるなんてお門違いもいいところだおwww」
散々嫌味を述べた早速ブーンは口に頬張ろうとする。
( ^○^)「あーん」
川;゚ Д゚)「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!」
現実はあまりにも非情だ。
卒倒する彼女を気にも留めず、ブーンは遂にそれを咀嚼、そして嚥下したのだ。
(*^ω^)「ンマーイ!」テーレッテレ-☆
川 ; Д;)
滂沱のままに固まってしまったクーを誰が責めることが出来よう。
ξ;゚⊿゚)ξ「うっわぁコイツ鬼畜ゥ……」 从'ー';从
その一部始終を目撃したツンとワタナベは声を揃えて言う。
( ^ω^)「父ちゃん、俺は、俺は遂に一矢報いたどーーーー!」
クーを出し抜きブーンは高らかに叫んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ。oO(やべぇなんだこいつら……)
唯でさえワタナベの一件で頭が痛いのに、益々面倒な事に巻き込まれそうな気がしてしてツンは頭を抱えていた。
58
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 16:52:48 ID:3fRexFGY0
超スローテンポやな
読んでるけど
59
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 18:47:14 ID:rbIr7iIUO
世界観ガバカバだからなー
起承転結の承と転に関するアイデアが全然思い浮かばねぇ
60
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 10:16:33 ID:ZkQyrMyQO
■log.3■
川 ゚ -゚)「あいをこめーてーアナたまをーおおげさだけーどーぶぅちこんンンンでぇー。りゆうなぁーんてぇーきぃーかぁないでぇーよーねー」
ξ゚⊿゚)ξに「いまだけすべてわぁーすぅれぇぇてぇ。わらわらないでーーうーけとめてー。てーれーていないでぇぇぇ――
ξ#゚皿゚)ξ「……って出来るかボケェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
お前の頭がSuperfryだよッッ!」
川 ゚ -゚)「か〜ら〜の〜〜」
川 ゚ -゚)「ふたりでー写真をとーろーう(意味深)」
おいやめろほんとうにやめろ
(;'A`)「なんというヤマシイレボリューション」
61
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 10:24:34 ID:ZkQyrMyQO
川 ゚ -゚)「……ごめんよ、まだ僕には帰れる所があるんだ。こんなに嬉しいことはない。
わかってくれるよね? ラ●ァにはいつでも会いに行けるから」
( ^ω^)「何処だよわかんねーよ赤い水性で額に『GEKIBAKA』って書いてやろうかついでに突き刺したるわ」
川 ゚ -゚)「やだ……カッコいい……」
从;'ー'从「奥さんこいつ手遅れです」
62
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 13:41:43 ID:UVe5h9CcO
(;^ω^)「うん、知ってる。超知ってる」
ξ゚⊿゚)ξ「逝ってよし」
川 ゚ -゚)+「残念ながら中々死ねない体質なんだなぁコレが!」
――HA〜HAHAHAHAHA!と馬鹿みたいに……いや、実際馬鹿丸出しの高笑いをする当の本人に、「あぁ……」と横の二人は一斉に頭をかかえた。
(;^ω^)「……ほんと死んでくれねぇかなぁ……本当に死んでくれねぇかなぁ!」
川 ゚ -゚)「これこれはっつぁんよそんな簡単に人に死ねとか言うもんじゃないよズズズ……うむ、しかしなんだな……この『蕎麦』って奴はメチャクチャ旨いな! おじーちゃんざるそば御代わり!」
63
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 15:07:36 ID:UVe5h9CcO
( ,'3 )「アイヨォ!」
威勢のよい声が厨房の奥から返ってきた。
(;^ω^)「まだ食うんかい」
ξ#゚⊿゚)ξ「オメー食い方汚ねぇんだよ」
川 ゚ -゚)「気にしたら負けだってばっちゃが言ってた(キリッ)」
碌でもないばーさんである。
ξ゚⊿゚)ξ「ダウト」
川 ゚ -゚)「なぜバレたし」
( ,'3 )「ハイよ、ざる盛り追加お待たせィ!」
川*゚ -゚)「ウッヒョーktkr!」
ここぞとばかりに蕎麦をかっ込むクーと、それに呆れるブーンとツンの二人。ここはツン達が暮らす集落の一画である。
先の縦穴に架かる橋を基軸とし、それに上下方向へコンテナを繋げたもの。補強用の梁が至るところに突き出し、天井はかなり低い。
節電のために設けられた燭台は青白い燐光を放っており、その原料は何か訊ねてみれば生物の体液だと言う。
ξ゚⊿゚)ξ「物資が乏しいところだからね。使えるものはなんでも利用しているのよ……って、汁跳ねたわよ汚ぇなこのボケ!」
川 ゚ -゚)「汚いのはそうやって人を罵る君の心ではありませんこと?」
ξ#゚⊿゚)ξ「あ゙・ん・だ・と !?」
( ´ω`)「ごめんおー。ほんとこいつ失礼な馬鹿でごめんおー」
川* ゚ -゚)「止せやい照れるじゃないか」
( ´ω`)「最早ノーコメント」
64
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 15:38:39 ID:UVe5h9CcO
ξ゚⊿゚)ξ「本気で悪いと思ってるならさっさと消えて欲しいんだけど」
ツンからの辛辣な非難に
(;´ω`)「うん、本当にその通りですお重ね重ね申し訳ない。ただ、生憎道に迷ってしまってどこをどう帰ったらよいやら」
川 ゚ -゚)「なんだよズルズル……いい大ズルズズズ人がズルズル迷子なんてなさズルけズズズズズズズズズズズズー」
(#°ω°)「食うか喋るかどっちかにしろォォォォォォ!」
お前だけには言われたくねぇんだよ死ねヴォケ!と流石に堪忍袋の尾が切れ叫んだ。
川 ゚ -((=(^ω^#)「営業妨害。ダメ。絶ryぐあへぶ」
ブーンの怒りの鉄拳が炸裂した。
65
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 16:24:18 ID:UVe5h9CcO
勢いあまって椅子ごと倒れながらも、しぶとくクーは立ち上がってこう言う。
川 ゚ ∀メ)「ふ……フヘへテメー良いの持ってんじゃry
川 ゚ ∀((●=(^ω^#)
>ぐあへぶ!
川 ∀メ)「……ちょ、人のはなry
●=(^ω^#)
●=(^ω^#)
川 ((●=(^ω^#)
●=(^ω^#)
●=(^ω^#)
ξ*゚∀゚)ξ「効いてる!効いてるぞジョー!やっちまぇブッ倒せ!」
(^ω^ )「御意」
御覧くださいなんということでしょう!
意気投合した二人は見事クソヒロインをぶちのめしたのです!
('A`)――被告人、何か言いたいことはありますか?
川 メ -メ)「まだだ!まだ終わらry」
●=(^ω^#)〜♪
教訓:口は災いのもと
66
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 16:51:32 ID:UVe5h9CcO
( ^ω^)「――ええ。我々は最善の手を尽くしました。そして今日、遂に勝利という名の栄冠を手にしたのです!」
ξ^⊿^)ξワー!パチパチパチパチパチ!
( ^ω^)「有難うございます! 有難うございます! まずはこの感動を温かく見守り、そして祝福してくださった皆様にもう一度心からお礼を申し上げたいと思います。本当に有難うございました!」
ξ^⊿^)ξヨッオトコマエ-!
川 ゚ -゚)「それではブーンさんの勝利を祝いましてパイ投げならぬ丼投げダアアアアアアアア!」
(#°ω°)「テメェ復活するの早すぎんだよコノヤロウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴウヴヴヴヴヴヴヴヴ!!」
川 ゚ -゚)「しかたがないじゃない。だってギャグほせいだもの。みつを」
( ^ω^)「ねぇお願い空気読んで。頼むから空気読みやがれったら読めや」
gdgd書いてて疲れる
67
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 18:08:27 ID:t3hW/Y/wO
( ,'3 )「ちょいとお兄さん方や」
( ^ω^)「……お?」
暴れ出しそうなブーンを止めたのは、背中から呼び止めた店主の声だった。
( ,'3 )「孫の恩人にあんまりきついこと言いたくはないんじゃか……。もうちょい静かにしとくれんかの。ほれ、周りの迷惑になっとる」
言われて視線を辿ればこちらに突き刺さる複数の非難の目。
(#<●><●>)
(#<●><●>)
(;^ω^)
川;゚ -゚)
はっと我に返った二人は慌てて口を閉じ気まずさに身を縮める。
ξ゚⊿゚)ξ「荒巻さんごめんねーすぐこいつら追い出すからさぁ。
オラ!とっとと出やがれ!」
(;^ω^)「サーセン……」
お代を置き一行はそそくさと店を後にする。
68
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 20:19:49 ID:t3hW/Y/wO
橋の中央部分。
全長数百メートルの往来を人々が行き交う。そこから足下へと視線を移せば、床は光沢を放つメタリックな素材。
ガラス繊維の含まれたそれを指先で弾きつつ、クーは隣のブーンへと話し掛ける。
川 ゚ -゚)「……とりあえず腹は膨れた」
( ^ω^)「……うん。さて、これからどうしようか」
二人はまだ蕎麦屋の前にいる。
先程は店主の好意でドクオの充電もさせてもらえた――と、此処までは順調だか、そこから先はまだ未定のまま。
( ^ω^)「まずはここから出る方法を調べる事が最優先」
('A`)「で、そのついでに食料と水を調達しておかなきゃな」
川 ゚ -゚)「なるほど。じゃあブーン、とりあえず私は村人に話を聞いてみることにするよ。君はどうする?」
( ^ω^)「ん……。僕も一緒について行くお。買い物はその最中にも出来るでしょ」
川 ゚ -゚)「よし、決まりだな」
69
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 13:23:46 ID:bm4ZyTpoO
二人は連れ立って歩き始めた。
雑踏に人影はまばらで、ふと時計に目を落としてみれば時刻は真夜中を過ぎている。
それでも人の気配が絶えぬのは、ここが外界と隔離された一種の密閉空間であるからだ。
自然光が届く範囲は極々限られ、それも集落からは相当に離れている。
更にすべての作物は人工灯で育てられているため、太陽そのものを知らぬ者もまた多い。
(-゜3゚)「外? 外ってなんだ?」
驚いたことにここが船内であることすら知らぬ者さえ居た。
改めてとんでもない僻地へ飛ばされたことを実感する。
(;^ω^)「……参ったおこりゃ」
川 ゚ -゚)「うむ……どうやらここの連中はあまり外に出たがらない質みたいだな。その割には生活が安定している様子だが――」
川 ゚ -゚)「お、あれは何だ?」
ふと、頭上から光が射してきてそれに釣られてクーは視線を上げた。
('A`)「船だ」
70
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 13:40:27 ID:bm4ZyTpoO
青白いイオン・フライトの光が家々の屋根を照らした。
ドクオがぼそり呟いた間にも、徐々に降下して接近しつつある。
(;-゜3゚)「た……大変だ!」
ジャンク屋の若い店主が突然血相を変え家の奥へと駆け込んだ。
川 ゚ -゚)「?」
(;-゜3゚)「姉さん退いてくれ! ほら、あんたらも危ないよっ!!」
突き飛ばすような勢いで外へと飛び出た彼の腕には、ツンに見せられたあの猟銃が握られていた。
男は大声を張り上げ叫ぶ。
(;-゜3゚)「みんな起きろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 襲撃だ!!」
71
:
名無しさん
:2019/07/23(火) 18:00:34 ID:JafY2t6UO
悲鳴。
怒号。
逃げ惑う人々に混じって、様々な声が錯綜する。
応戦開始からわずか数分後に村は炎に包まれていた。
人々が殺到する橋の両端へ向け、飛行艇は容赦なく砲撃を繰り返している。
青白いビームが発射されると、それに巻き込まれた建物がまたも爆炎を噴き上げた。
72
:
名無しさん
:2019/07/23(火) 18:17:31 ID:JafY2t6UO
(;-゜3゚)「チクショウ! 燃料庫がやられた!」
店主が思わず叫んだ。
油に火が着いた所為で炎が猛烈な勢いで膨れ上がってゆく。
ξ゚⊿゚)ξ「消火班! 急いでこっちに来て!」
負けず声を張り上げツンが仲間達を誘導している。
( ^ω^)「ツンさん!」
その姿を見てとるやブーンは彼女に駆け寄った。
ξ゚⊿゚)ξ「あっ、あんた達まだ居たの!? ここは危ないから早く逃げなさい」
( ^ω^)「手伝うお!」
相手の言葉を遮りブーンは直ぐ様手を貸すと申し出た。
川 ゚ -゚)「私も手伝うぞ! 指示をくれ。まずはどうしたらいい?」
73
:
名無しさん
:2019/07/26(金) 21:09:30 ID:AQ.y.01UO
ξ;゚⊿゚)ξ「……っ。すまない。じゃあ早速だけれどあっちへホースを繋ぐのを手伝って。給水口のバルブは左に捻れば開くわ」
川 ゚ -゚)「左だな。よし、わかった。行くぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「気を付けてね!」
川 ゚ -゚)「ああ、君もな!」
ツンに背中を見送られ二人は消火栓の下へと走った。だが、この混乱の最中に上からの攻撃を警戒しつつ、重たいホースを抱えて移動するのは容易な事ではない。
川 ;゚ -゚)「あっ!」
クーの目の前で一組の親子が敵の攻撃に撃たれた。
川 ;゚ -゚)「くっ……何なんだあいつらは!? やりたい放題じゃないか!」
74
:
名無しさん
:2019/07/27(土) 22:19:07 ID:hIjhHaeoO
>>73
誤:
クーの目の前で一組の親子が敵の攻撃に撃たれた。
↓
訂正:
クーの目の前で一組の親子が敵の攻撃に倒れた。
75
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 10:56:46 ID:Z4HLZk/oO
為す術がないもどかしさを感じただ見上げている間にも、更に被害は拡大してゆく。
从;'ー'从「このおぉぉ!!」
見知った顔の少女がすぐ目の前の路地で船に応戦していた。ワタナベは機関銃を持ち出し船底を狙っていたものの、威力が足らぬのか弾かれるばかりで敵の動きを止められない。
川 ;゚ -゚)「!」
破壊された燃料庫から漏れだしたオイルが彼女の足下まで迫っていた。船の砲頭がこちらへ旋回し、ワタナベ目掛けて銃弾を放ってきた。
川 ;゚ -゚)「危ないっ!」
クーが飛び出しワタナベを突き飛ばしたのとほぼ同時。間一髪の差で着弾した箇所が火を拭いた。
猛烈な勢いで二人は吹き飛ばされ、危うく桟の端から放り落とされそうになる。
(;^ω^)「……ッ。あっぶねぇ」
ブーンの額に冷や汗がどっと噴き出す。咄嗟にドクオを縄とし二人の足に絡ませたことで、落下をぎりぎりのタイミングで食い止めてみせたのだ。
76
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 13:46:23 ID:Z4HLZk/oO
川 ;゚ -゚)「……ナイスフォロー」
(;^ω^)「……我ながら最高に見事なファインプレーだったお」
余裕のない表情のまま二人を引き上げた後に、ブーンは息を調えた。
从;'ー'从「お陰さまで助かりましたぁ……。あっ、でも銃が――」
ちらりワタナベの首が何もない虚空へと向けられる。吹き飛ばされた拍子に武器が手を離れ谷底へ落ちてしまった。
川 ゚ -゚)「今はそんなものほっとけ。命があるだけ儲けものだ」
77
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 14:22:06 ID:Z4HLZk/oO
未練があるのかワタナベは中々動けない。
川 ゚ -゚)「さぁ、急げ!!」
クーは無理やり彼女を引き起こしてそのままブーンの方へと預ける。慌ててブーンはたたらを踏んだ。
(;^ω^)「ちょっ、おま!?」
川 ゚ -゚)「いざとなったらそいつを盾にして構わんぞ」
从'ー'从「あ……なーる」
よろしくお願いしますと言わんばかりにペコリと頭を下げた。
(;^ω^)「ねぇちょっと僕の人権は!? 僕の人権はどうなるんだお!?」
川 ゚ -゚)「こまけぇこたぁいいんだよ!」
(;^ω^)「いやそこスルーしちゃ駄目でしょ」
「頼んだぞヒーロー!」と分厚い胸を小突いてクーは脱出を先導する。
(;^ω^)「こういう時だけ行動力を見せるとかあの娘ずるい……」
色々文句はあるが一刻の猶予はない。ままよ、と覚悟を極めブーンは彼女の後に続いた。
78
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 14:25:05 ID:Z4HLZk/oO
>>77
一部抜けていたので修正
クーは業火に巻かれた建物の方を見る。誘爆が次々と橋の上で起こり、このまま此処に留まっている訳にはいかない。
もう消化は間に合わないとクーは見切りを着けた。
川 ゚ -゚)「逃げよう」
从;'ー'从「でもっ!」
川 ゚ -゚)「悔しいだろうが今は生き延びる事が何よりも先決だ」
未練があるのかワタナベは中々動けない。
川 ゚ -゚)「さぁ、急げ!!」
クーは無理やり彼女を引き起こしてそのままブーンの方へと預ける。慌ててブーンはたたらを踏んだ。
(;^ω^)「ちょっ、おま!?」
川 ゚ -゚)「いざとなったらそいつを盾にして構わんぞ」
从'ー'从「あ……なーる」
よろしくお願いしますと言わんばかりにペコリと頭を下げた。
(;^ω^)「ねぇちょっと僕の人権は!? 僕の人権はどうなるんだお!?」
川 ゚ -゚)「こまけぇこたぁいいんだよ!」
(;^ω^)「いやそこスルーしちゃ駄目でしょ」
「頼んだぞヒーロー!」と分厚い胸を小突いてクーは脱出を先導する。
(;^ω^)「こういう時だけ行動力を見せるとかあの娘ずるい……」
色々文句はあるが一刻の猶予はない。ままよ、と覚悟を極めブーンは彼女の後に続いた。
79
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 16:13:54 ID:Z4HLZk/oO
ワタナベいわく、敵の襲撃に備え村の至るところにシェルターが設けられているらしい。秘密の扉を開け中の通路を伝い、橋の真下へと出たブーン達はそこから斜めに伸びる非常階段を下っている。
途中設けられた銃座はどれもみな破壊されていた。
大穴が穿たれた箇所に上半身を失った歩哨の遺体が横たわっており、鉄骨が危うい軋みを発している。もうここも長くは持ちなそうだ。
急ぎ足になりながらブーンはワタナベに尋ねた。あいつらは一体何者かと。
从'ー'从「流石族っていう盗賊の一味だよ。あいつら周囲の村を襲っては物資を根刮ぎ奪ってゆくんだ」
ワタナベの集落は船内工房の付近に築かれた良質な狩場なので、それを目当てに襲撃が絶えないのだという。
从'ー'从「……折角みんなで頑張って村を大きくしてもすぐ奴らに奪われる。あいつらはゴミ以下の糞虫! まさに寄生虫だよ」
憎々しげにそう言い放った時、三人は接近する船の光を感じた。
(;^ω^)「っ! 伏せろ!」
咄嗟に女性二人を庇いブーンが身を屈める。腹ばいの姿勢のまま、金網の張られた彼らのすぐ真下を黒い戦闘艇が通り抜けてゆく。 針鼠のごとくびっしりと砲門が並んで見てとれた。
80
:
名無しさん
:2019/07/28(日) 17:03:12 ID:Z4HLZk/oO
「――こぉのぉおおおお!!!!」
ふと、聞き覚えのある声が耳に飛び込んだ。
おや、と思い視線をそのままずらしてゆくとなんとツンが船の舳先にしがみついているではないか。
(;゚ω゚)「!? ツンさん一体なにをやってんだお!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「ふざけんなゴラァ!!
そんなとこに閉じこまってないで出てこいやゴラァ!」
奇声を上げ船体に撃ち込んだ銛を足掛かりに甲板へよじ登ると、風圧を物ともせず彼女は一直線ブリッジ目掛けて駆け出している。
川 ;゚ -゚)「あのバカっ! あんなとこ張りついて居たらすぐ振り落とされるぞ!!」
クーの不安どうり船体が急に傾きツンの体がよろめいた。
从;'ー'从 「ツンちゃんッッ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「嘗めるなぁッッッッ!」
腰に刺していた電磁ナイフを引き抜きギャリギャリ尾を引きながら無理矢理それを突き立てる。
宙に泳いだ足を素早く元の位置に戻すとツンは猟銃の撃鉄を引き戻した。
ξ゚⊿゚)ξ「食らえ!」
仰け反りながらもブリッジ目掛けて銃をブッ放す。ドンッッ!と腹の底に響く衝撃音が空を貫いた。
川 ;゚ -゚)「やった!?」
弾着と同時装甲の表面が瘤のように膨れ上がった。弾頭の先端部に埋め込まれていた信管が起爆し、強烈な爆風を撒き散らしたのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ヘッ!」
ざまあみろと云わんばかりに口許に笑みが湧いた。
だが結果を目に収めるよりも速く、爆風はツン自身をも巻き込み船は谷底目掛けて墜落してゆく。
(;゚ω゚)「ああああああっ!!」
从;'ー'从「ツンちゃあああああああああああああああんんん!」
彼らの悲鳴も爆風と闇の中に吸い込まれた。
81
:
名無しさん
:2019/08/03(土) 02:10:54 ID:b77NwnJw0
どこで感想や支援を挟むか考えるなこれは
支援
82
:
名無しさん
:2019/08/03(土) 10:27:11 ID:rppIKGggO
しかたがない
だって低クオリティなんだもの
みつを
83
:
名無しさん
:2019/10/01(火) 17:15:07 ID:uU3Ea2mYO
落下する。
落ちてゆく。
落ちてゆく――――――――……。
84
:
名無しさん
:2019/10/02(水) 13:08:13 ID:Ai8OZrCUO
異臭。
そして、「キシュン、キシュン」とリズミカルに音を奏でる何かの作動音。
それらが気を失っていた彼女の覚醒を促した。
ξ゚⊿゚)ξ「――!」
ξ゚⊿゚)ξ「ここは……?」
目を開いた直後、ツンの視界に真っ白な天井が映ってみえた。
背中には衣擦れの感触。清潔なシーツが敷かれたベッドの上に寝かされていて、空調器のフィルターから静かに風がこぼれている。
ξ゚⊿゚)ξ「ここ……何処……?」
85
:
名無しさん
:2019/10/02(水) 13:42:38 ID:Ai8OZrCUO
視線をさ迷わせつつ、見当のつかない彼女は独りこじた。
窓もなにもなく、位置を調べる手がかりはない実に殺風景な部屋。
見るものが見ればそれを病室のようだ、と印象を抱くかも知れない。
だが、産まれてこのかた自分の集落以外ろくに接触をはかった事のないツンにはそんな物があることさえ知らず、ただ困惑してしばらく記憶を思い出そうと試みるばかりだ。
ξ;ー⊿ー)ξ「あー……ダメだ……なんにも憶えちゃない……」
参ったなこれは、とため息をこぼし、それからふと目元にむず痒さを覚え手を持っていこうとした時、奇妙な変化に気付いた。
_,
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
86
:
名無しさん
:2019/10/02(水) 14:25:32 ID:Ai8OZrCUO
毎回AAずれるの何でだろう
半角入力だと空白は認識されないのかな?
87
:
名無しさん
:2019/10/02(水) 19:17:02 ID:Ai8OZrCUO
ξ゚⊿゚)ξ「なにこれ」
はたと手を止めた彼女の指先――右手側の人差し指の裏に、人の顔を思わせる奇妙な点模様の刺青が彫り込まれている。
ξ゚⊿゚)ξ「トライアングル?」
逆三角を描いて配置されたそれには何らかの意図が込められているのかも知れないが、生憎ツンにはそれらに関する知識の持ち合わせがない。
ξ゚⊿゚)ξ「やぁねぇ乙女の餅肌に」
そう言うにはいささか手荒れが酷いが。
ξ゚⊿゚)ξ「まぁいいか。それより本当にここは何処なのよ?」
取り合えずは状況確認をね、と刺青の事は後回しとしてツンはベッドから体を降ろした。
88
:
名無しさん
:2019/10/03(木) 06:17:34 ID:4o6p4TmsO
寝ている間にブーツを脱がされていたらしい。素足のまま足を降ろす。
服は元の格好のままだ。船を攻撃した時スーツを破損していたが、そちらはまとめて床の上に置かれている。
ゴーグル、そしてなにより肝心な得物である銃。それらを用心しながら急ぎ身に付ける。
ξ゚⊿゚)ξ「……うん、まだ弾もバッテリーも残ってる」
そして少し体を動かしてみる。軽い。どういう意図かは解らぬが随分丁寧に処置してくれた模様だ。
少し気味が悪いけれども。
89
:
名無しさん
:2019/10/03(木) 08:45:59 ID:4o6p4TmsO
準備を整え、ツンは正面に見えるドアへと近づいた。ロックされているかに思えたそのドアは意外にもするりと開いた。
ということは、別に監禁するつもりはないという事か。
油断はせぬよう、注意深く観察をしてからドアを跨いだ。廊下は真っ直ぐ奥へと続いている。
ξ゚⊿゚)ξ(……人気を感じない)
廊下の左右に設置されたライトが心細げに進路を照らしている。
ξ゚⊿゚)ξ(この壁の素材は…………何かの樹脂?)
ライトだけではなくそれ自体が微弱に発光している作りとなっていた。
試しにナイフで削れぬものかと傷を付けてみたが、うっすら線の跡が残るばかりだった。見た目以上に強度を持つものらしい。
90
:
名無しさん
:2019/10/03(木) 13:22:50 ID:4o6p4TmsO
>>89
一部修正
見た目以上に強度を持つものらしい。→想像したよりも強度があるらしい。
91
:
名無しさん
:2019/10/03(木) 18:02:05 ID:4o6p4TmsO
ξ゚⊿゚)ξ(壁をくり抜く事が出来ればもしや……と思ったけれど流石にそう上手くは行かないか)
得物を鞘に戻し引続き探索を再開する。
直線の続く廊下は数十メートル先で折れ曲がり、そこから下り坂となっていた。緩やかな傾斜だ。そしてこちらの壁には何かの生物を模したレリーフが埋め込まれている。
ξ゚⊿゚)ξ(一見人のよう……。
でも、所々形が歪んでいる。なんだろう。人から別な物へ生まれ変わる過程を描いているの……?)
いったいこの施設は何なのだろう。
92
:
名無しさん
:2019/10/04(金) 13:05:16 ID:FcJXgw/.O
なにか手掛かりを得られぬものかと、ツンは注意深く観察を進めた。
ξ゚⊿゚)ξ(瘤が膨れて……これは角……こっちは翅みたいな形になっている……まるで化物だわ)
ξ゚⊿゚)ξ(あ、ここに文字みたいなものがあるけどなんて読むんだろ?)
ξ;゚⊿゚)ξ(ううん……駄目だ、さっぱりわからん!)
どうにもなにかを伝えるためのものらしいが、生憎肝心の所が解らない。自分の知識不足が実に悔やる。
ξ;ー⊿ー)ξ「うーん、あたしホントこういうの苦手……考古学者じゃねぇっつーの」
「ハッ! オメー見るからに頭悪そうだもんな」
ξ゚⊿゚)ξ「誰?!」
突然背後からかけられた声に驚き、はっと振り向いた。
93
:
名無しさん
:2019/10/04(金) 18:44:28 ID:FcJXgw/.O
>>92
脱字修正
自分の知識不足が実に悔や【まれ】る。
94
:
名無しさん
:2019/10/09(水) 07:29:50 ID:NCtiS2osO
ξ;゚⊿゚)ξ「ヒッ」
そして次の瞬間、ツンの喉から上擦った悲鳴が漏れた。
丱゚゚゚*゚゚゚丱
そこにいた生き物をなんと形容すればいいのだろう。
先ず――最初に目についたのは顔の両側面に生える奇抜な角。
昆虫の複眼と蛸の口を思わせる醜い顔面はまさしく怪物そのもので、そいつが唇(?)から粘液を垂らしながらこちらに歩み寄ってきているではないか。
95
:
名無しさん
:2019/10/10(木) 07:30:24 ID:46A7480MO
後ずさるツンを無視して更に相手はこちらへと近づき、彼女の目の前に立つ。
ξ;||⊿||)ξ「ひっ……」
そして怪物は口を開き
丱゚゚゚*゚゚゚丱 「指」
と、そう一言。
ξ;||⊿||)ξ「ゆ、指?」
丱゚゚゚*゚゚゚丱 「そうだ。指、ちょっとこちらへ見せてみろ。
なんだ、ちゃんとマーカーあるんじゃねぇか。
じゃあもうビビらせる必要はねぇな」
そう言うや否や怪物は自分の顔面に手をかけビリッ!と皮膚を破り捨てた。
_
( ゚∀゚)「ふぃー。このマスク暑っついのなんのって……」
中から現れたのはツンと変わらぬ人だ。
ξ;゚⊿゚)ξ「……に、人間……?」
_
( ゚∀゚)∩「そういう事。よ、姉ちゃん。ビビらせて悪かったな。
俺の博物館(ミュージアム)へようこそ。客は歓迎するぜぇ」
96
:
名無しさん
:2019/10/10(木) 08:13:28 ID:46A7480MO
悪びれもせずにツンをからかった後、「あ、俺はここの館長のジョルジュな」とウインクを交え名乗った。
ξ゚⊿゚)ξ
なんだこのチャラい男は。
_
( ゚∀゚)「いや、久々にこの層へ降りてきたらなんと女の子が倒れているではあーりませんか!
俺ぁ運命ってやつを感じたね!」
_,
ξ゚⊿゚)ξ
いや、ねぇから。勝手にそういう運命の糸みたいなの結ぶなや。
しっかしコイツ声うるせぇなぁ、とツンは思う。
_
( ゚∀゚)「いや俺っては外見に似合わず優しいって言うか? むしろ紳士って言うか? 兎に角こうズキューン!と来ちゃったの。やばい、助けなきゃ!って」
_
( ゚∀゚)「うんそれでメディカルルームへ君を運んでいった訳よ。あとは簡単スイッチオーン!
いや、誓って言いますけどそれだけですからね!? 服脱がせて変な事とはしてませんからね?! そこんとこ大事ですからね! だから頼むその銃降ろして!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「やかましいわボケ」
_
(;゚∀゚)「アッ、ハイ……サーセン」
陽気な若者は一睨みで萎縮した。
97
:
名無しさん
:2019/10/12(土) 13:21:47 ID:cE8bF/rYO
まだ信用が置けぬと、背中に銃を突きつけられながら、ジョルジュは館内を歩いていた。
_
(;゚∀゚)「やれやれ……そんなに俺怪しい奴に見える?」
ξ゚⊿゚)ξ「どこからどうみても胡散臭いわよ」
_
(;゚∀゚)「さいですか……」
ツンからの回答はにべもない。
レリーフの回廊はまだまだ奥へと続いていた。壁の両側に刻まれているのはやはり例の怪物たち。
ちょうど気になっていたところなので、ツンは訊ねた。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、さっきから気になっていたんだけどこれって何を表してるの」
_
( ゚∀゚)「ああ、そいつらは生け贄だ」
ξ゚⊿゚)ξ「生け贄?」
思いもよらぬ答えが返ってきた。
_
( ゚∀゚)「おう。
俺も詳しい理由は知らないが、大昔この船内で大規模な反乱があったらしくてな。
その時鎮圧用に作られた生物兵器がそいつらって訳だ。
ひでぇ話だが当事その兵器の材料には見せしめに捕われた生身の人間が用いられたらしいぜぇ……?」
ジョルジュはわざとらしく妖しげな口調で話を締めた。
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……。ぞっとしない話ね」
_
( ゚∀゚)「ああ。胸糞悪い事を考える奴ってのは何時の時代も変わらねぇってことさ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだ。胸糞悪い奴らで一つ思い出したわ」
98
:
名無しさん
:2019/10/12(土) 19:37:57 ID:cE8bF/rYO
自分が撃墜した例の船はどうなったのだろう。残骸を見かけなかったとツンはジョルジュに訊ねてみた。
_
( ゚∀゚)「船の残骸? いや、見かけなかったけれどそれが何か?」
ξ゚⊿゚)ξ「私の村を襲いに来た奴らなのよ。私が返り討ちにしてやったけれど、しぶとい連中だから念の為確認しておかないと」
_
( ゚∀゚)「はぁ、あんた若いのに苦労してるんだなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「いや歳はそう変わらないでしょ。あんた幾つ?」
_
( ゚∀゚)「幾つだと思う?」
ξ゚⊿゚)ξ「意外と歳食ってるわけ? じゃあ三十台半ば〜四十台前半ってとこかしら」
_
( ゚∀゚)「ブーツ! 大ハズレ〜wwww
こう見えても1000歳越えてまーすwwwwwww」
ξ゚⊿゚)ξ「なん……だと……」
99
:
名無しさん
:2019/10/12(土) 20:12:16 ID:cE8bF/rYO
作者の健忘録を兼ねたここまでのまとめ
●これってどんな話?
「壁」とよばれるクソデカイ構造物の中を、ブーンとその仲間が旅する話です
●ざっくり粗筋を教えて!
登山家であるブーンが、冒頭で出逢ったヒロイン・クーの治療法を求めて壁の上層部にいる賢者「ハイ・フロスガー」を探すのが主な目的。
旅の途中、クーのいたずらで転移装置に巻き込まれた一行は、「マタギ」と呼ばれる狩人の少女・ツンとワタナベに出会い、彼女らの集落へ案内される。
ところがその晩、村が襲撃者に襲われ混乱の最中ツンが谷底に落とされてしまった。
ツンは「博物館」と呼ばれる場所で目覚め、そこで怪しげな男、ジョルジュから過去、この壁の正体である星間移民船の中で起こったとある事件を知る。←いまここ
100
:
名無しさん
:2019/10/27(日) 06:46:20 ID:UPvSraSwO
想定外な答にあんぐりと口を開ける一方、みごと騙してやったとばかりにゲラゲラと腹を抱えてジョルジュは笑っている。
_
( ゚∀゚)「やーいやーい!! 騙されてやんのーwww」
ξ゚⊿゚)ξ「若作りしたジジイに馬鹿にされるのもなんだなぁ……」
_
( ゚∀゚)「いやジジイじゃねぇし唯のアンドロイドだし」
ξ゚⊿゚)ξ「……先にそれを言いなさいよ紛らわしいわね」
_
( ゚∀゚)「いやだってからかった方が絶対に面白いじゃん?」
ξ;ー⊿ー)ξ「……アンタを作った奴に文句を言えないのが尚更悔しいわ……まぁどうでもいいけど」
_
( ゚∀゚)「うん。俺こういう仕様だから諦めてくれ」
ξ;ー⊿ー)ξ「わかったわかった。分かったからさっさと出口まで案内して。
あたし用事があるから急いで帰らないといけないのよ」
_
( ゚∀゚)「ん?そうなのか?」
なんなら途中まで送ってゆくぞ、とジョルジュは気さくに訊ねてきた。
101
:
名無しさん
:2019/11/06(水) 17:51:32 ID:CZWYLs8gO
ξ゚⊿゚)ξ「本当?助かるわ」
_
( ゚∀゚)「よっし。任せてくれ。そうと決まれば早速ブリッジへ向かうぞ」
ジョルジュは壁に触れ、船内を貫くエレベーターを呼び出した。
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ〜。中々にハイテクな造りね〜」
博物館内のシンプルな外壁に比べて、ここはやけにメカメカしい。自分でも機械を時々いじるせいか、剥き出しの基盤を眺めたり、他にはどんな設備があるか訊ねるなど、ツンは興味深々だ。
102
:
名無しさん
:2019/11/06(水) 18:05:11 ID:CZWYLs8gO
_
( ゚∀゚)「ま、実際は見かけ倒しなんだけれどな。なにせ俺が造られる以前から動いてたっー話だし。老朽化が激しくて修理も大変さ」
_
( ゚∀゚)「お、言ってる側から補修箇所発見だ。悪りぃけどちょっと待ってて貰えるかい?」
ジョルジュはエレベーターを停め、工具箱を取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ「手伝う?」
_
( ゚∀゚)「いや、板取り替えるだけだから一人で十分だ。すぐに戻るよ」
彼は扉を開け、ライトを片手に暗闇の中に降りていった。
103
:
名無しさん
:2019/11/06(水) 19:46:04 ID:CZWYLs8gO
ξ゚⊿゚)ξ「いや、こんな半端なとこで待たされても……」
扉は開いたままだ。
上下に広がる空間は音もなく、実に閑散としている。
ツンは退屈しのぎに、ジョルジュが降りていった暗闇の方を覗き込んでみた。
ξ゚⊿゚)ξ「ねーぇ、ほんとに手伝わなくても大丈夫ー?」
彼のライトはずいぶん先の方まで降りていて、もう声のとどかない距離にいるみたいだ。
ξー⊿ー)ξ「はぁ、なんだかなぁ」
そう小さくため息をこぼしてみた。
急に沢山の事が起こりすぎて頭が疲れている。少し休んでいようと目を閉じ、壁に寄りかかった。
ξー⊿ー)ξ(お、この壁暖房が効いる)
じんわり背中から伝わってくる熱が気持ちいい。
104
:
名無しさん
:2019/11/06(水) 21:17:24 ID:CZWYLs8gO
こりゃあいいわ、と身を預けながらツンは暫し考えごとに耽ってみる。
ξー⊿ー)ξ(……村に戻れたとしてももう何も残っては居ないだろな)
また一から資材を探さねばならないし、それに負傷者を手当てするための薬品や食料、なによりも水。加え燃料。ありとあらゆる物資が不足していることは容易に想像できる。
ξ゚⊿゚)ξ(私に出来ることは狩りと探索……。そうだ!
ジョルジュに頼めば物資を分けてくれるんじゃないかしら。それに輸送も出来ればより復興がはかどるわ!)
せっかくの機会を逃す手はない。
我ながら名案が浮かんだと、ツンは直ぐ様ジョルジュを呼び寄せようと再び穴の方へ首を向けた。
ξ;>⊿<)ξ「ぐ!?」
と、その時突然――――。
急に闇の中から何者かの腕が伸びてきて、ツンは喉をつかまれた。
105
:
名無しさん
:2019/11/07(木) 06:52:58 ID:uplnIymsO
振りほどこうにも、万力のよう強い力で拘束され、彼女は身動きがとれない。
ξ;>⊿゚)ξ(何奴!?)
気道をふさがれもがきながらも、ツンは薄目で襲撃者の姿を捕えた。
l从・∀・ノ!リ人
ξ;>⊿゚)ξ(……子供!?)
無邪気な笑みを浮かべたそれは幼女の姿をしている。
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者の仇なのじゃ!」
ξ;>⊿゚)ξ「兄……者?」
106
:
名無しさん
:2019/11/07(木) 13:08:04 ID:uplnIymsO
絞り出すようにそう問うと、返答の代わりに益々力を強めてきた。見た目と裏腹になんという凶悪な力か。
l从・∀・ノ!リ人「このまま頸椎をへしおってやるのじゃ!」
ぞっとしない事を言う。
ξ;>⊿<)ξ「うあ……ああああ……」
ツンは酸欠状態に陥り手を出すことが叶わない。目玉がむき出しにになる。口元から泡がこぼれた。
ガゴン!と派手な音を立て肩から銃が滑り落ちた。邪魔なそれを少女は外へと蹴り飛ばした。
真下で作業中のジョルジュのすぐ脇を掠め落ちていった。
_
Σ(;゚∀゚)「うおっ!?」
咄嗟にそれを躱しジョルジュは真上を見上げる。
_
(#゚∀゚)「バッカ野郎!危ねぇじゃねぇか!!」
一体なんのつもりだと抗議を叫ぶが、ツンからの返事がない。
107
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 06:40:43 ID:D6UZQF7MO
_
(#゚∀゚)「おぉい! ごめん、とか怪我はない?とか言うことあるだろ!!」
何をやってるんだと痺れを切らしたジョルジュは一旦作業の手を止め、ツンの下へケーブルをよじ昇った。
見上げた視線の先。彼のライトにエレベーターの底が照らされている。
ふと、ジョルジュはわずかな違和感に気付いた。
……箱、揺れていないか?
108
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 06:52:15 ID:D6UZQF7MO
その証拠にケーブルもまたやや揺れている。ツンの身に何か起こったのだ。
_
(;゚∀゚)「おい、嬢ちゃん!」
ようやく元の位置へたどり着いた瞬間、彼は目にした。小柄な幼女がツンの首を絞め、今にも殺さんと残忍な笑みを浮かべているところを。
_
(;゚∀゚)「おい、ガキンチョ! 何やってんだ貴様ッ!」
109
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 08:24:13 ID:D6UZQF7MO
怒号をあげ踏み込んだジョルジュが引き剥がそうとする。
l从#・∀・ノ!リ人「邪魔なのじゃっ!」
そこへ振り返りざま、少女から放たれた裏拳が彼の顔面を襲う。
_
( ゚Д゚)・;'.、「カハッ!」
思いきり直撃を喰らった。
衝撃をまともに浴び、上体が仰け反る。殺しきれない勢いのあまり、頬の人工皮膚がビリリと破けた。
_,
( /д#)「痛ってェ!」
たたらを踏みながらそれでもなんとかドアの縁に指をかけ、ジョルジュは落下を逃れる。
_
( ゚∀#)「てめぇッ!」
彼の人工知能が少女を脅威と見なし、強制排除すべく戦闘プログラムが発動する。
「Ураааааааа! 」
110
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 09:59:23 ID:D6UZQF7MO
ボウ!と彼の豊かな髪の毛が暴発的に伸び、そのまま全身を取り巻いた。
『griffon!』
彼は叫ぶ。発光する彼の金髪が漆黒の翼を造り、その背に風を蓄えジョルジュは突撃する。
『ヴォォォォォォォォォラアア゛ア゛ア゛ア゛ッッ――!!』
腹部のど真ん中めがけて抜き手を放った。
l从;・∀・ノ!リ人「じゃッ?!」
相手――妹者は慌てて緊急回避――避けきれない。
肋骨を砕かれる。更には脇腹も抉られ、内壁に叩き付けられた。
_
(#゚∀゚)「まだ終わりじゃねぇゾッ!」
獰猛に吼えるジョルジュは回し蹴りを放った。妹者の首筋に決まり激しく脳を揺らす。
_
( ゚∀゚)「まだ! まだ! まだまだまだまだ!」
回復の隙を与えず一気に無力化するつもりだ。ヘッドバッドを幾度も叩き込むべくジョルジュの口の端に笑みが零れる。
妹者は脳震盪を起こし動けない。
111
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 10:26:15 ID:D6UZQF7MO
ツンはその間に素早く拘束を逃れた。
ξ>⊿<)ξ「ウッ! えほっ! ケホッ!」
流石に苦しかったらしく何度もえずく。
_
( ゚∀゚)「オラ!これでトドメだッ!」
最後に一層大きく頭を振りかぶって、ジョルジュは仕留めにかかろうとする。ぴくりと妹者の体が動いた。
l从・∀・ノ!リ人「嫌じゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ξ;゚⊿゚)ξ「っ!?」
妹者は渾身の絶叫を発した。
突如、割れんばかりの大音量が二人の鼓膜に襲い掛かる。
虚をつかれたせいで、思わずジョルジュの腕が止まった。妹者はそれを見逃さない。
112
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 11:27:45 ID:D6UZQF7MO
最後に一層大きく頭を振りかぶって、ジョルジュは仕留めにかかろうとする。ぴくりと妹者の体が動いた。
l从・∀・ノ!リ人「嫌じゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ξ;゚ ゚)ξ「っ!?」
妹者は渾身の絶叫を発した。
突如、割れんばかりの大音量が二人の鼓膜に襲い掛かる。
虚をつかれたせいで、思わずジョルジュの腕が止まった。妹者はそれを見逃さない。
_
(;゚∀゚)「うおっ!?」
かば、と跳ね起き妹者は素早くジョルジュの腹を蹴りとばす。
相手の反応が更に遅れ半歩分の間合いが開いた。
「あっ!?」
額を朱に染めつつも、妹者はその彼の腕をかいぐくり逃走を図ろうとした。
l从・∀・ノ!リ人「次に会った時は必ず殺してやるのじゃ!」
捨て台詞を残し彼女は宙へ身を躍らせた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、待て!」
ツンが慌ててその背を追おうとした時にはもうどこにも姿がない。 _
( ゚∀゚)「畜生……逃げられた」
ジョルジュは悔しそうに顔を歪ませた。きっと先ほど彼が見付けた穴から外へ逃げていったのた。
ξ゚⊿゚)ξ「あいつ兄者の仇って言ってたわね。流石族の生き残りか。
ごめん……関係ないあんたまで変なのに巻き込んじゃった……」
ツンは申し訳なさそうにしおらしくそう言う。
_
( ゚∀゚)「なに、気にするなって」
ジョルジュはわしゃわしゃと強引に彼女の髪をかき混ぜた。
ξ゚⊿゚)ξ「ごめん……」
_
( ゚∀゚)「だから何度も言わせるなよ。気にしてねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「……この後付きまとわれるわよ?」
_
( ゚∀゚)「なに。余裕で返り討ちにしてやんよ」
カカ、と自信たっぷりに言い放ち、相手を励ますべくジョルジュはツンの細い背を叩いた。
113
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 11:31:25 ID:D6UZQF7MO
log3_end
遅筆ですまねぇデス
114
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 12:11:31 ID:RuzKxDRA0
乙!
115
:
名無しさん
:2019/11/08(金) 13:12:43 ID:D6UZQF7MO
脳内設定裏話
・ジョルジュを変身させたのは絶対に人形の国を読んだ影響。アバラは未読です
・ツンのスピアガンの元ネタはBLAME!に登場した電基漁師の銛撃ち銃。
クッソカッコいいデザインなので重力子放射線射出装置より好きです。
・方舟の外側は小説家・飛浩隆作品の「ラギッド・ガール」より「蜘蛛の王」の冒頭場面を意識しながら書いてます。
内側はもろBLAME!ですね。
ちゃんとそれっぽい雰囲気が出せてれば良いのですが。
・流石族の船はマトリックスに登場したホバークラフトみたいな感じでおねげーします
・続きはよかけや→「無理言うな」
116
:
名無しさん
:2019/11/09(土) 20:53:44 ID:l4u8w3jI0
otsu
117
:
名無しさん
:2019/11/09(土) 22:35:08 ID:4c1lQf76O
■CAST
( ^ω^)
name:ブーン
profile:この世界きっての実力派登山家。
「壁」とよばれる超巨大建造物を攻略中にクーと出会い、彼女を救う方法を求め行動を共にする。
('A`)
name:ドクオ
profile:自立型AI。
超古代文明の遺物であり、マスターはブーン。基本は蛇型をしており、状況に応じて鞭、バルーン等様々な形態に変形できる。
川 ゚ -゚)
name:クー
profile:壁の麓にあるヴィップ村出身の技術者。
とある遺物に両親を殺され、自身はその時受けた呪いにより命を脅かされている。自らの治療法を求めハイ・フロスガーと呼ばれる賢者を捜している。
118
:
名無しさん
:2019/11/09(土) 22:48:56 ID:4c1lQf76O
ξ゚⊿゚)ξ
name:ツン
profile:壁内奥地に暮らす「マタギ」と呼ばれる狩人一族の少女。
村を襲撃された際に行方不明となり、現在は故郷へ帰るべくジョルジュと行動を共にしている。
从'ー'从
name:ワタナベ
profile:マタギ一族の新米ハンター。
ツンとバディを組み行動しているが、自身のおっとりした性格が常にトラブルを招いている模様。
( ,'3 )
name:荒巻
profile:ワタナベの祖父。
村で蕎麦屋を営んでいる。
119
:
名無しさん
:2019/11/09(土) 23:00:09 ID:4c1lQf76O
_
( ゚∀゚)
name:ジョルジュ
profile:アンドロイド。
ツンが保護された「博物館」の館長を努めており、性格は極めて陽気。
戦闘プログラム「グリフォン」を搭載しており、妹者と交戦した際は凶戦士さながらの活躍を見せた。
l从・∀・ノ!リ人
name:妹者
profile:ツンの村を襲った盗賊「流石族」の生き残りの少女。ツンに殺された兄の復讐を果たすべく命を狙っている。
120
:
名無しさん
:2019/11/10(日) 21:18:34 ID:2OrCnVUQO
催促され慌てて持ち主へと銃を返す。
ξ゚⊿゚)ξ「ふう……これ背負うと肩が凝るのよね」
くすんだ金色の髪をした少女は、そうこぼしながらスリングを腕に通し、軽々と肩に担いだ。華奢な見た目に反して相当鍛えられているようだった。
「さて」軽く手の埃を払った後で、彼女は向き直りブーンを見上げた。
ξ゚⊿゚)ξ「聞きたいこと」
( ^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「聞きたいことがあるんでしょ。さっき言ってた」
( ^ω^)「ああそれね、えっと……実は連れが行方不明になってしまったんだお。歳は二十歳くらいで、身長は君よりちょっと上かな? 全体的に無表情な感じで……長い黒髪が印象的な女の子なんだけれど――」
川 ゚ -゚)「お前の目は節穴か」
Σ(;^ω^)「ノウわァっ!」
突然背中から声が聞こえた。
ぎょっとして振り返ってみれば、そこには今まさに探しているその人がいたではないか。
121
:
名無しさん
:2019/11/10(日) 21:20:04 ID:2OrCnVUQO
>>120
レス間違いです。申し訳ない
122
:
名無しさん
:2019/12/01(日) 10:09:49 ID:9qsUOe32O
■log.4
ドシュ!と勢いよく銃口から射出された銛が、垂直な坑(あな)へ吸い込まれてゆく。
銛の先端部には結わえられたワイヤー。極細の超強化繊維でこしらわれたそれは、ブーンが手にしていたリールをカラカラ勢いよく回し、やがてピタリと停まった。
ぐい、とそれを胸元へ引っ張ってみて、強度を確める。
( ^ω^)「よし」
現在地の床に突き刺した杭に、それらを結わえ付け、腰に吊るしたハーネスとも連結する。
从;'ー'从「……うっひゃあ〜。
これ、先が見えないくらい深いんですけど本当に大丈夫なのぉ?」
降下の支度を整えているブーンにワタナベが恐々と訊ねた。
('∀`)「なんだよ? ひょっとして怖じ気付いちまったか?」
ニヒルな笑みを覗かせ、いひひとからかう様訊ねたのはドクオだ。
( ^ω^)「今からツンさんを捜しに行くというのにそんなんじゃ持たないお」
やれやれと肩を竦め、「それじゃ!」とブーンは我先に宙へと身を踊らせた。
(;^ω^)「うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおマジ怖ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
从;ー;从「もうやだ帰りたい」
('A`)「ダメです行きなさい」
123
:
名無しさん
:2019/12/01(日) 10:23:56 ID:9qsUOe32O
川 ゚ -゚)「ほら、先がつかえているんだぞさっさと行ってくれ」
村人から渡されたザックを背負い、クーは躊躇するワタナベを急かそうとする。
从;'ー'从「いやいやいやいや無理!絶対無理!ほらほらブーンさんだってあんなに叫んでいたし!」
川 ゚ -゚)「埒があきませんな」
( 'A`)「それな」
中々跳ぼうともしない臆病者にしびれを切らして、「よっしゃ今から三秒以内に跳ばないとお前紐無しバンジーの刑な?」と二人は異口同音脅した。
わぁ、君達はとっても鬼畜なフレンズなんだね!
すごーい!(白目)
124
:
名無しさん
:2019/12/01(日) 12:41:19 ID:9qsUOe32O
高速で落下してゆく恐怖に身がすくむ。
それでも眼は閉じなかったのは、これまで散々落とされてきたが故の慣れがあった所為だろうか。
とにもかくにも、全員が無事に着地できた事でいくらか耐性が付いた。
なにせ、一度の降下で数キロメートルの距離を稼げるのだから歩くより遥かに効率がいい。体力及び食糧の温存にも繋がるのだ。
始めこそ渋って皆の手を焼かせていたワタナベも、数回これを繰り返す内に恐怖は薄れ、最後の方には周囲を観察する余裕さえ生まれていた。
そうして、間もなくワイヤーの予備が尽きそうになりかけた頃、彼女が船の残骸を見付けたのである。
125
:
名無しさん
:2019/12/01(日) 16:30:14 ID:9qsUOe32O
ちょうど栗のイガみたいに中央からぱっくりと割れた状態で、流石族の船は谷底に墜落していた。
激突の衝撃はすさまじかったらしく、周囲には真っ黒に焦げたままの部品が無数に散乱している。
从;'⊿'从「ツンちゃん!」
彼女の安否を確めるべく、駆け足でワタナベはその現場へと向かった。
墜落から数日が経ち、船を覆っていた火は粗方消えているものの、まだ微かな余熱と異臭が漂っている。
川;゚ -゚)「おいナベ!迂闊に近付くな!」
まだ敵が潜んでいるかも知れないんだぞ、と警告を発しながらクーも用心し後を追った。
从;'⊿'从「ツンちゃん!ツンちゃーん!」
忠告も耳に入らず、一心不乱にワタナベは友の名を呼ぶが一切反応は帰ってこない。
瓦礫を次々と退かす。
居ない。
ドクオを呼び彼に生体反応がないか調べてもらう。――ここには反応なし。
从;'⊿'从「そんな……」
不安に襲われ、いつもは能天気な彼女がその表情を曇らせた。
126
:
名無しさん
:2019/12/01(日) 16:58:47 ID:9qsUOe32O
もっとも、だからといって彼女が死んだと決め付けるのは早計だ。
( ^ω^)「あんなに元気な人がそう簡単に死ぬとは思えないお」
と、励ますようにこれはブーンの弁。
川 ゚ -゚)「私も同意見だ。
なぁ、君達はいつも襲撃には備えているんだろ? だったら装備の中に脱出用の何かも入っているんじゃないのか?」
ワタナベのスーツを指差しクーはそう訊ねた。
「えっ?」と一瞬小首を傾げたあと、あ!と何かを思い出したように彼女は声をあげた。
从'ー'从「ああ!あった!そういやあったよ!うん!
あのね、私達のスーツには緊急脱出用にパラシュートが備えられているの」
ほらここだよ、とワタナベは首のうしろにあるスーツの膨らみを指差しそう説明する。
('A`)「なるほど。そりゃあんな開けた空間で暮らしてるんだからいつ滑落してもおかしくはないしな。当然そんな便利なものがあるなら使わない手はないよな」
川 ゚ -゚)「ウム。蕎麦屋のじいさんも言ってたぞ。
あいつは優秀な戦士だそうだからな。多分、そいつで脱出する事も容易い筈だ」
从'ー'从「それじゃあ……」
曇りかけていたワタナベの瞳に光が射す。
( ^ω^)「よし!みんなで手分けしてパラシュートを探すお!
きっとツンさんは生きている!」
応!と皆が威勢よくそれに応えた。
127
:
名無しさん
:2019/12/02(月) 05:55:35 ID:JQTxot4YO
パラシュートが切り離された際に、その帆からはビーコンの機能を果す特殊な粒子が放たれるらしい。
('A`)「なるほど。そしてその粒子が付着している箇所を辿ればツンのいる場所が分かるって訳か」
ワタナベの説明を受けた後にドクオは自らをクーの持つ地図端末と繋ぎ、マップを作製しつつ捜索を始めた。
川 ゚ -゚)「ドクオは本当に便利だなぉ。なぁブーン、こいつ私に譲ってくれないか?」
( ^ω^)「だが断る」
川 ゚ -゚)「どうせそう言うと思ったよ」
( ^ω^)「なぜ聞いたし」
川 ゚ -゚)「知ってるかい。私は諦めの悪い女なんだ」
(;^ω^)「えぇ……」
何処までが本気か解らない性格をしているクーにちょっと警戒しつつ、雑談を交えて結果を待つ。
(ーAー)「…………。ん、よし!判ったぞ!」
数分後にドクオは地図を完成させた。
('A`)「ここからもう少し下に氷の層がある。ツンはそこに居るみたいだ」
最後の信号を目当てに、彼らは移動を始めた。
128
:
名無しさん
:2019/12/02(月) 06:34:28 ID:JQTxot4YO
開放的だった空間がやがて狭まり、密をなすように変わってくる。
ハニカム構造の壁を伝い無数のパイプがそれを貫き、あるいは取り巻き。そうして埋まれた隙間を縫うようにブーン達は次の層を目指す。
足下の配管には錆が浮き、その上にはうっすらともう既に雪が積もっている。
川 > -<)「ふぇーっくし!」
寒さに弱いのか先程からクーはくしゃみをしてばかりだ。
生憎紙を切らしている為に直接鼻に詰め物をして誤魔化しているが、それでも一向に鼻水が出るものだからたまったものではない。
川 > -<)「ううっ!寒いぞなんだここは。鼻だけでなく顔全体が凍ってしまいそうだ!」
絶えず白い息を吐きぶるぶると震えながら皆の後を追う。
(*'A`)「いやー。ここ快適だわぁ……」
一方そんな彼女とは正反対に心地良さそうに雪の上を進むのはドクオ。熱に弱い精密な電子機械には打ってつけの環境であった。
川 > -<)「アタイ、どっくんの事好きだけど今だけは嫌いになりそう……」
(*'A`)「ごめんよー。ほんとにごめんよークー子ー」
なんぞこれ。
( ´ω`)「突っ込む気力も涌かない位クソ寒いからさっさと先行くおー……」
正直ドクオが恨めしいと思いつつも、口に出さないのは彼の優しさか。
129
:
名無しさん
:2019/12/02(月) 22:03:06 ID:kgVooRCI0
支援
130
:
名無しさん
:2019/12/03(火) 09:40:54 ID:B11kpN3YO
ああ、寒いさむいと文句を垂れつつも、ようやく目的地の手前まで辿り着いたブーンの目の前には、頑丈そうな造りの隔壁が待ち構えていた。
( ^ω^)「やれそうかお?」
('A`)「ああ。任せろ」
ドクオのバーナーでそれを焼き切る。
( ^ω^)「よし、押せ!」
重量のあるそれを、全員で体重をかけて倒すと――
川 > -<)「くぅ……?!」
ドスン、と倒れたのと同時、突如強烈な光が眼を射した。
从*'ー'从「わぁ……!」
おもわず閉じてしまった瞳を恐る恐る開いた時、そこに広がる光景にワタナベの口から感動の声がこぼれた。
空。
一面雪模様の大地の上に、産まれて始めてみる真っ青な空が広がっていたのである。
131
:
名無しさん
:2019/12/03(火) 10:45:43 ID:B11kpN3YO
川 ゚ -゚)「え……?」
( ^ω^)「……まさか、外に出れたの?」
連れの少女が感動している一方、大人組の二人は想定すらしていなかった所為で驚き固まっていた。
ドクオはブーンの肩に登りズームで観察、そして観測を始める。
('A`)「……いやはやこいつはたまげたな……」
――現在値・標高6207メートル。座標は北緯52度26分。西経239度41分――
('A`)「要するに完全に外の世界って事だよ」
雄大な景色を視野に収めながら、そう仲間達へドクオは告げた。
132
:
名無しさん
:2019/12/03(火) 11:24:21 ID:B11kpN3YO
( ^ω^)「マジデスカーエース」
('A`)「マジデスヨーエース」
( ^ω^)「じゃあ、地球寄ってく?」
('∀`)「イイねー」
川; ゚ -゚)「まてまてお前ら一体どこへ向かおうとしているのだ?」
ボケてる場合じゃないぞ、と珍しくクーから突っ込みを受け、二人はきりりと顔を引き締める。
( ^ω^)「フム……ひょっとしてここは壁の『目玉』じゃないのかお?」
真面目な表情に戻るやブーンは、ドクオに告げられた座標に思い当たる節がある模様だ。
从'ー'从「目玉?」
とワタナベはそれに首を傾げる。
( ^ω^)「ああ、ナベちゃんは知らなくても当然だおね。
えっとね、僕達下界の方から壁を見上げると途中に大きな穴が見える箇所があるんだお」
そう。丁度それは壁の外壁を貫いてさながら目の様に存在を主張しているのだ。
川 ゚ -゚)「ほら。あの盛り上がってる山の辺りに陽が射すとそこだけ光って、ちょうど目玉っぽく見えるんだ」
中々見応えのあるものだぞ、とクーは自慢げにそう説明する。
从'ー'从「へぇぇ……この旅が終わったらいつか見てみたいな! 勿論ツンちゃんも誘って!」
弾む声で言う純粋な少女に皆は目を綻ばす。
川 ゚ ー゚)「ロリコン。ダメ。絶対」
おいお前ヨダレ垂れてんぞ。
133
:
名無しさん
:2019/12/03(火) 11:32:28 ID:B11kpN3YO
log.4_end
次回、
(-@∀@)「ワイの出番や!」
貴様は端役だけどな!
辿り着いたのは氷の世界。
遺物発掘現場にて物語は大きく動き始める。ご期待下さい。
134
:
名無しさん
:2019/12/04(水) 19:20:27 ID:WzY81AVU0
otu
135
:
名無しさん
:2019/12/04(水) 19:35:33 ID:.OijqPRUO
■log.5
グラン・コフィン。
『偉大なる棺桶』の名を持つその船は、前世紀に建造された浮遊戦艦であり、またラウンジ国当代皇帝・オサムの居城でもある。
クリムゾンレッドの船体に施された彫金の装飾が、陽光を浴び燦然と輝いている。
船底の一部に亀裂が走り、巨大なランディング・ギアが姿を覗かせた。
全長500メートルを誇る豪奢な船は今、『壁』の発掘現場へ向け降下を始めていた。
136
:
名無しさん
:2019/12/05(木) 06:55:25 ID:A/KDcTqgO
*(‘‘)*「アサピー教授。まもなく陛下がお見えになります」
(-@∀@)「おや、もうそんな時間ですか」
助手の少女に呼び掛けられ、アサピーと呼ばれた痩身の男は書き物の手を止めた。
遺跡発掘調査隊の最高責任者である彼は考古学の権威であり、その手腕を買われて現在は『目玉』付近の大規模な発掘を任されているのだ。
崩落事故により下肢を失った彼の生活には、どうしても介助が必要となり義足を装着してもらう。
(-@∀@)「いつも悪いね。ヘリカル君」
*(‘‘)*「お気になさらず。さ、どうぞ」
接続完了と同時に脳波を感知して関節がガシャカジャと動く。
(-@∀@)「うーん。いつも見てるけどやっぱり不格好だねぇ……これは」
姿勢の安定のため彼が選んだのは二足ではなく四足歩行の義足だ。
*(‘‘)*「もう二本足せば完全に虫ですよね。それ」
(-@∀@)「こないだ陛下に会った時キモいな、って真顔で言われて凹んだ」
*(;´`)*「陛下ェ……」
――あの人時々きっつい事言うよね、と複雑な表情を浮かべながら二人は基地の外へと出た。吐息が真っ白に変わりたちまち頬が凍った。
137
:
名無しさん
:2019/12/07(土) 17:07:05 ID:O4w5503wO
黒のサーコートを羽織った複数の衛士を率いて、オサムは船を降りてきた。
その膚は蝋人形の様に白く、生気を感じさせぬ異様な存在感と赤い瞳が強烈な畏怖を感じさせる。
アサピーもまたその例に漏れず、緊張を強いられながらこちらへ来るのを待った。
( ΦωΦ)「陛下の御前である。頭を垂れよ」
護衛の騎士がよく通る声で皆に命ず。
厳粛な空気に促され、慌ただしく作業員たちは頭を下げてゆく。
【+ 】ゞ゚)「……フム」
鋭利な瞳のままそれらを一瞥し、
【+ 】ゞ゚)「よい。面を上げよ」
皇帝オサムの第一声が響いた。
138
:
名無しさん
:2019/12/08(日) 15:59:05 ID:itEctgJIO
皇帝の許可が降り、アサピーは恐る恐る頭を上げる。
(;-@∀@)「御機嫌麗しゅう御座います、皇帝陛下。
本日は陛下自らお出で頂き、恐悦至極でございます――」
【+ 】ゞ゚)「フン、相変わらずつまらぬ世辞だな」
皮肉たっぷりにオサムは鼻息を溢し、それから「あれの作業はどうなっている」と顎をしゃくり訊ねた。
(;-@∀@)「は、はい」
アサピーは彼の視線を辿り、背後の巨大な氷壁の方へ振り返る。
高さ140メートル超にも及ぶ櫓の奥では、『聖柩(アーク)』と呼ばれる遺物の発掘が現在も行われていた。
139
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 06:27:04 ID:5xMJ9FX.O
(-@∀@)「現在の作業進行具合は全体の約七割、といったところです。このまま順調に進めば来年の春までには完了するかと。ですが――」
【+ 】ゞ゚)「何か問題が?」。
(-@∀@)「はい。最近作業員らが奇妙な夢にうなされるそうで……」
【+ 】ゞ゚)「夢?」
(-@∀@)「ええ。なんでも毎晩夢の中に一人の女が現れるそうで、その女が言うには我々はいずれ剥がされるとかなんとか……」
――剥がされる?
『剥がされる』とはこれまた妙な表現だ。
【+ 】ゞ゚)(何かの警告、あるいは予言の類か……?)
140
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 07:07:13 ID:5xMJ9FX.O
「ふむ……」
アサピーの説明にオサムは少し考える素振りを見せ、側近の一人に意見を求めた。
【+ 】ゞ゚)「ロマネスク、お前はどう思う?」
( ΦωΦ)「は。聖柩(アーク)は壁内すべての遺物に関する情報が記されているとの事ですが、もしやするとそれ自体に何らかの力が秘められているのやも知れませんな」
【+ 】ゞ゚)「……うむ。それは俺も考えたぞ。
しかし“剥がされる”とは一体どういう意味だ?」
( ΦωΦ)「史書に由れば、我々人類の祖先はこの方舟を用い星々の彼方からやってきたそうですが、なにせ途方もない時間がかかっています。祖先と我々で異なる進化を遂げたという場合もあるのではないでしょうか?」
【+ 】ゞ゚)「ほう……。すると聖柩は、いずれ我々に何らかの生物的変化をもたらす物だと?」
( ΦωΦ)「これだけ巨大な遺物です。相当大掛かりな仕掛けが施されているとみて、まず間違いは無いでしょうな」
【+ 】ゞ゚)「フウム……進化、か……」
141
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 12:36:29 ID:5xMJ9FX.O
オサムは考える。
もし、ロマネスクの予想が本当の物だとしたらそれによって徒に混乱を招くのは避けるべきだろうか……?
――いや、しかし聖柩もまた機械である事に変わりはない。
制御が可能であれば、それを利用して世界を手中に治める事も可能だ。
【+ 】ゞ゚)「アサピーよ。聖柩が仮にロマネスクの言う通りのものだったとして、貴様がそれを制御することは可能か?」
皇帝に問われ、アサピーは渋面を作りながらそれに答えた。
(-@∀@)「なにぶん不確定要素が多すぎて正直解らないというのが本音です。ですが――」
( ΦωΦ)「ぬ? 教授殿に何かお考えが?」
(-@∀@)「ええ。私がこれまでに調べたところ、どうやら壁内にはハイ・フロスガーと呼ばれる賢者の住まう場所があるそうで」
(-@∀@)「先ずはそこに通じる通路を探しましょう。船内にはそれの手懸かりとなる『博物館』があるようです。博物館は定期的に壁内を循環しているらしく、丁度今から追いかければ間に合うと思えます」
( ΦωΦ)「ほう!」
陰気な見た目と裏腹に中々有能であるな、とロマネスクは心中アサピーの評価を上書きした。
142
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 12:42:46 ID:5xMJ9FX.O
>>141
誤:心中→正:胸中 に訂正
143
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 13:42:35 ID:5xMJ9FX.O
【+ 】ゞ゚)「成程。古の賢者に教えを乞うか……」
悪くない、とオサムはアサピーの提案に口の端を持ち上げた。
(-@∀@)「しかし懸念が一つあります。果たして我々の要求を聞き入れてくれますかどうか……」
【+ 】ゞ゚)「なに。そこは騙すなり脅すなり幾らでもやり方はあるだろう。なぁ、ロマネスク?」
( ΦωΦ)「は。仰せのままに――」
忠臣は恭しく頭を下げる。
【+ 】ゞ゚)「よし。これで方針は決まったぞ。
ロマネスク、ハイ・フロスガー捜索の件は貴様に一任する。速やかに兵を編成し壁内へ向かえ」
( ΦωΦ)「御意」
一礼し、彼は船内へと戻って行く。
【+ 】ゞ゚)「そしてアサピー教授、お主は引き続き発掘の指揮を……と行きたいところであるが、このままではどうなるか不安だな。発掘は一旦中止としよう。
代わりにロマネスクに同行し道案内を頼みたい。可能か?」
(-@∀@)「はい。謹んでお受け致します」
【+ 】ゞ゚)「頼んだぞ」
(さて、この判断は吉と出るか凶と出るか……)
野心に燃える皇帝の視線の先で、巨大な遺物は不気味に沈黙を保っていた。
144
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 14:03:46 ID:5xMJ9FX.O
log.5_end
ようやく物語の全容が見えてきたってばよ(遅い)
145
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 15:04:34 ID:D8tLHZH20
乙!
盛り上がって参りました
146
:
名無しさん
:2019/12/09(月) 19:43:56 ID:5xMJ9FX.O
>>143
誤:教えを乞う→正:教えを請う
の間違いです
次回。傷付いた妹者に接触する女の目的とは――
147
:
名無しさん
:2020/03/29(日) 11:52:42 ID:vwSZhU8M0
初めて見たけど良スレじゃないか、なんでこんなに読者レスが少ないんだ
148
:
名無しさん
:2020/04/06(月) 16:49:11 ID:a2GCLT4k0
>>147
作者が遅筆な上に難しい語彙も多いので、さほど期待されてないからだと思います。
149
:
名無しさん
:2020/04/06(月) 20:22:38 ID:kBl9HVac0
確かに書きためして一気に投下した方がウケはいいよね
面白いしエタる作者も少なく無い中続いてるから応援してるぜ
150
:
名無しさん
:2020/04/23(木) 13:49:02 ID:TkqJgLUY0
作者です。先日スマホデビューしたまでは良かっのですが、なんとフリック入力非対応な機種を選んでしまったがために長文を打つ作業がまったくはかどらす、創作に支障をきたしております。もうやだ
151
:
名無しさん
:2020/04/23(木) 21:00:01 ID:BT3RUwLc0
■log.6
流出。
流れ出るものは、己の紅い血。
溢れ出るものは、敗北の苦い血。
出血多量で妹者の命は途絶えようとしている。
家族の復讐を果たさんと忍び込んだ博物館(ミュージアム)内で、彼女は思わぬ返り討ちに遭い、深手を負って逃走した。
意識が朦朧とするまま彼女は壁外へと迷い込み、やがて雪原の上で倒れてしまった。
152
:
名無しさん
:2020/04/24(金) 06:34:11 ID:5t.ICgSs0
ーーーーーーーー
ガリガリガリガリガリガリ……
( ´_ゝ`)「森とォー。泉にーぃ♪
かぁくぉーぉ〜、まれてぇ〜。
静かに〜ぃ、眠ぅゥる〜ゥ」
(´<_` )「ブル〜♪」
( ´_ゝ`)「ブルゥ〜ハワ〜ァああイ♪」
(´<_`;)「……君には失望したよ」
( ´_ゝ`)「だから……結婚、しよ?」
(´<_`♯)「ねぇよ(真顔)」
( ´_ゝ`)「えぇ……(困惑顔)」
( ´_ゝ`)「よし分かった。
じゃあ僕と恋の有酸素運動、しよ?」
(´<_`♯)「膿サンキューだよクソ蛆野郎」
( ´_ゝ`)「だがそこがいい(かっこはあと)」
(´<_` )「ちょっと母者呼んでくる」
| ^o^ |「やめろくださいしんでしまいます」
(´<_` )「だがそこがいい(かっこ突撃ラブはあと)」
| ;^o^ | 「nan……dato……」
なんぞこれ
153
:
名無しさん
:2020/04/24(金) 17:14:27 ID:CklVuEaU0
(こっちが聞きたい!)
154
:
名無しさん
:2020/04/26(日) 06:32:42 ID:hmKa92rk0
( ´_ゝ`) ニップマスター小百合ちゃん!
ニップマスター小百合ちゃん!
ニップマスター小百合ちゃん
ハァ〜 ズンドコズンドコ!
ハァ〜 ズンドコズンドコ!
(´<_` )可及的速やかにケツ移動!
可及的速やかにケツ移動!
嵐のような戯れにケツ移動!
そして輝くウルトラソウッ!
155
:
名無しさん
:2020/04/26(日) 07:33:38 ID:hmKa92rk0
〜〜(m´Д`)m
たすけてくれよ〜
ジョン陀遊
ズンドコズンドコズンドコズンドコ
反町隆史☆失職万雷!
ハァ〜 ズンドコズンドコズンドコズンドコ
ズンドコズンドコズンドコズンドコ
小柳ルミ子☆全力損壊!
( ´_ゝ`)「確定申告☆やっといて!」
ハァ〜 ズンドコズンドコズンドコズンドコ
ズンドコズンドコズンドコズンドコ
( ´_ゝ`)「必殺!捨て子財団の集団的自衛権発動ッッッッッッッッ。」
今日からザリカニ投法!
お父さんザリカニ投法!
乳母捨て山のッッ!主!
つまり!これは!
岡村隆史!
怒るでしかし!
怒っちゃイヤーン!
ポリネシアンバゴーン!
大神官!大神官!(,,^Д^)大神官を讃えろ〜〜
( ФωФ)「以上、正しいマヨネーズの作り方でした」
156
:
名無しさん
:2020/04/28(火) 10:23:43 ID:924Q14eo0
ーーーー少女は悪夢にうなさている
l从;×_×ノ!リ「………う〜ん、う〜ん………」
重体の身である妹者の記憶は混濁しており、夢の中では死んだはずの兄が意味不明な漫才を繰り拡げている。
l从;×_×ノ!リ「………先生、バナナは哺乳類ですか?」
( ´_ゝ`)「俺の中ではそうとも言う」
l从;×_×ノ!リ「………先生、インドメタシンは豊島園の親戚ですか?」
( ´_ゝ`)「いいえ違います。田中君のおばあちゃんの入れ歯はイエスタデイワンスモアかつシュビドゥワ〜〜です」
なるほど、わからん
157
:
名無しさん
:2020/05/12(火) 19:19:37 ID:l3Xujbt20
つまんね
158
:
名無しさん
:2020/05/16(土) 13:44:06 ID:RTXBgn/k0
ふさふさの尻尾がゆらゆらと
159
:
名無しさん
:2020/05/16(土) 18:05:51 ID:4yRP3q/Q0
うわごとを繰り返す妹者の傍らで、それを観察する若い娘がいた。
ふふっ、と彼女が微笑をうかべる。
栗色の瞳は優しく孤を描き、慈愛に満ちたその手は豊かな毛並みで覆われている。
「ご機嫌だなぁ。レモナ」
彼女の機嫌を損なわせる、粗野な呼びかけが背後から響いた。
レモナと呼ばれた獣人の娘は肩越しに振り返る。
|゚ノ ^∀^)「お静かに、ハイン。この娘が目を覚ましてしまいます」
そう言いレモナはそっと人差し指を立てる仕草を見せた。
从 ゚∀从「ご修身だねェ……」
相手はやれやれと首を振る。
「どうせくたばっちまうんだろ?そいつ。
面倒な事になる前にさっさと捨てちまえよ」
160
:
名無しさん
:2020/05/18(月) 07:47:12 ID:HcOEw6Vs0
甲斐甲斐しく少女の介護をするレモナに呆れて、同僚のハインはやれやれと首を振った。
いちおう説得は試みたものの、この強情なケモノ娘は貸す耳など持つまい。
从 ;-∀从「……全く、こんな所で油売ってるとまた料理長(チーフ)にどやされるぞ」
二人は帝国の艦内で働く料理人なのだ。
つい先日、食料庫の中で彼女たちは倒れていた妹者を発見した。
从 ゚∀从「……密航者かよ?」
少女は全身傷だらけの姿で倒れていた。封を開けた瓶や箱が幾つか散乱しており、いつからかそこに忍び込んでいた事が見てとれる。
161
:
名無しさん
:2020/05/19(火) 07:48:59 ID:LG3mZwX60
不味いものを見つけちまったと、途端にハインは顔をしかめた。
艦内の規則は厳格に定められており、不審者を発見した場合は即通報の後、大概は拷問あるいは殺傷処分にされるのだ。
从; ゚∀从「どうするよ……」
そう不安げに意見を求めたところ、意外にもレモナの決断は素早かった。
|゚ノ ^∀^)「助けてあげましょう」
从; ゚∀从「なっ!?おま……」
人として当然の事ですわ、と言うや否や、レモナは軽々と少女を抱き上げ、そのまま倉庫の奥へと歩いてゆく。
162
:
名無しさん
:2020/05/19(火) 07:53:39 ID:LG3mZwX60
呆気にとられるハインを余所に、彼女はドアの前を塞ぐ油の缶を退かす。鍵を開けた。
|゚ノ ^∀^)「ここなら……ね?」
そこは普段滅多に使われる事のない、予備の空き部屋だ。
中は雑然としており、いつ使うのかも分からない怪しい調味料やら、壊れた寸胴鍋やらが無造作に積み重ねられている。
从 ゚∀从「なぁ、ここってーー」
ふとハインは、何時だったか同僚が話していたとある噂を思い出した。
|゚ノ ^∀^)「ーー自殺した女の霊画が出るって例の話でしょう?
まぁ、真相はこっそりやらしい事をする殿方が偽装の為にこしらた唯の作り話なのですけれど」
从 ゚∀从「あーなる……。って、なんでお前そんなこと知ってんだ?」
|゚ノ ^∀^)「そこは企業秘密ですわ」
从 ゚∀从「……見かけに寄らずエッチなんだな、お前……」
|゚ノ ^∀^)「さて、何のことやら?」
163
:
名無しさん
:2020/05/19(火) 08:59:49 ID:mNZdZr.o0
白々しくとぼけながらも、レモナは部屋の奥に古びたソファーを発見し、その上に少女を寝かせた。
相手の傷の具合を確かめる。
|゚ノ; ^∀^)「想像以上ですわ……」
レモナが言葉に詰まる。
素人目にもこれは危険な状態だ。
从 ゚∀从「医療ポッドが使えたらな……」
ふと、耳慣れない単語をハインが発した。「なにかツテが?」とレモナは聞き返す。
从; ゚∀从「あーー……あるにはあるんだか……結構ヤバい橋だぞ。
あまりお薦めは出来ねぇなあ…」
ハインは何故か小声になる。
管理者に纏わる恐ろしい記憶を思い出し、トラウマに駆られた彼女は本気で身震いしていた。
164
:
名無しさん
:2020/06/27(土) 13:06:26 ID:taxjAx260
時間が惜しい。
レモナはハインの先導に従い、艦内中層にある研究室(ラボルーム)へと忍び込んだ。
ちょうど医務室の反対側に覗くこの部屋では、日々怪しげな実験が行われている。
素人にはまったく解らない奇妙な機械があちこちに置かれていた。
それに加えて、なんらかの大型動物が現在解剖されている様子であり、マスク無しではとてもいられない強烈なアンモニア臭が二人の鼻を歪ませる。
从 ゚∀从「全く酷い臭いだなこりゃ」
毒づきながら物影を這って進み、ようやくお目当ての機械の前にたどり着く。
「急げ」
抱き抱えていた少女をその中へ横たわらせ、ハインは蓋を閉めた。容器の脇に覗くコンソールを手早く操作してゆく。
165
:
名無しさん
:2020/06/27(土) 16:20:22 ID:MNJu.LlA0
支援
166
:
名無しさん
:2020/06/27(土) 20:44:11 ID:taxjAx260
設定を終え、あとは開始ボタンを押せば薬液が容器の内部を満たしてゆくーーはずだった。
从; ゚∀从「……あれ?」
突然動きを止めた機械を前に、ハインは首を傾げる。
|゚ノ ^∀^)「……故障ですか?」
从; ゚∀从「い、いや?
確かこの手順で合ってるはずだぜ。
おかしいな?どこか操作間違えたかーー」
様子を尋ねてきたレモナに焦りを滲ませ、ハインは慌ててリセットをかけようとした。
ーーと、その時
167
:
名無しさん
:2020/06/27(土) 20:52:44 ID:taxjAx260
カツ、と二人の背後で何者かの足音が聞こえた。
Σ从; ゚∀从
ぎくりとして、慌てて手を止めハインはそちらへ振り返ろうとする。
/ ゚、。 /
一人の男性と目が合った。白衣を着て、一目で科学者と分かるが異様に鋭い眼をしている。
/ ゚、。 /「おや」
喩えるならばそれは猛禽類の瞳だ。
微妙に片眉をはね上げ、男は不審者の顔を直視するや「これはこれは……」と不敵に口元を歪ませた。
/ ゚、。 /「お前の顔を見たことがあるぞ」
静かな足取りで男は近づき、「おお、そうだ!」と彼女の直前で足を停める。
無造作に髪を掻き上げ、じっと吸い込むような瞳でハインの顔を眺めた。
/ ゚、。 /「思い出したぞ。誰かと思えば何時ぞやの密航者だな?貴様は」
168
:
名無しさん
:2020/06/27(土) 21:56:10 ID:taxjAx260
男の名はダイオードと言う。彼が口を開くや否や、ハインは恐怖に駆られ手の平が震えていた。
/ ゚、。 /「おお、怯えている。
どうした?私が恐いのか?心外だな。どうやらお前は私の事を誤解しているようだがーー」
从# ∀从「……ッ。黙れッーー!!」
突如、相手の口を塞ぐ勢いでハインが大声を発した。
「テメェは……テメェだけはッ……」
わななく口ぶりのまま眼を血走らせ、ハインは男の首を締め上げようとする。
/ ゚、。 /「フン」
意図も容易くその腕を払いのけ、今度はダイオードが逆に捻り上げた。
/ ゚、。 /「なんだ?無粋な奴だな貴様は。暴力はいかんぞ暴力は。そう親に教わらなかったのか?」
从# ∀从「テメェがそれを言うかーー」
細腕に似合わぬ膂力で右腕がギシギシと軋む。ぐうう、と食いしばる歯の隙間から苦悶を洩らしながらも、ハインはダイオードの責めに懸命に堪える。額へ脂汗が滲み始める。
/ ゚、。 /「ほう……頑丈な奴だ。お前の父親もこれ位頑丈であればな」
从# ゚∀从「壊した張本人が何をほざいていやがる!」
娘の命と引換にハインの父親は実験の素体にされ命を落としたのだ。一緒にいた兄弟もまた行方不明である。
/ ゚、。 /「フム、素体は男性より女性の方が定着率が高くてな。
どうだ?貴様も命乞いの代わりに私の素晴らしい研究に力を貸してみないか?」
从;# ∀从「ふっざ…けんなこのキチガイ野郎がっーー」
169
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 06:29:56 ID:OOWNd1bk0
/ ゚、。 /「残念だ」
振りほどくことも叶わず歯軋りを見せるハインに対し、表情一つも変えずダイオードは益々力を込めた。流石にこれ以上は耐えられなくなり、ギャア!と鋭い悲鳴が零れる。
|゚ノ; ^∀^)「……」
同僚の窮地を救わんと今まさにレモナが飛び出す直前だった。
ポッドの扉が開いた。
/ ゚、。 /「ぬ?」
ダイオードの視線が一瞬そちらを捉える。
/ ゚、。 /「何だ? その子を助けるつもりだったのか?」
ほう、と興味深そうに喉元を呻らせ、ダイオードは妹者へ近づく。
170
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 06:37:17 ID:OOWNd1bk0
>>169
最後:喉を唸らせ、に訂正
171
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 11:15:55 ID:OOWNd1bk0
ほう、と興味深そうに喉を唸らせ、ダイオードは妹者へ近づく。そしてやや前屈みの姿勢を取ると、彼女の脈を取った。
/ ゚、。 /「フム、これは驚いた……この状態でまだ生きているとはな」
从# ゚∀从「おい糞ヤロウッッ!そいつに触んなーーグフッ」
/ ゚、。 /「君の意見は求めていない」
顔面へ肘打ちを喰らわせハインを黙らせると、ダイオードは暫し考え込む仕草を見せ次にレモナの方へ向いた。
|゚ノ ;^∀^)「 ひっ」
/ ゚、。 /「この娘は?」
後ずさろうとしたレモナだがポッドの所為で阻まれる。
/ ゚、。 /「もう一度だけ聞こう。この娘は?」
強引に髪を掴み彼女を脅しながら、情報を聞き出そうとする男にレモナは本気で怯えた。
172
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 15:15:36 ID:OOWNd1bk0
|゚ノ ;^∀^)「つ、つい先ほどく偶然見つけた女の子ですわ……」
/ ゚、。 /「ほう?」
怖々と供述したレモナの発言にダイオードは興味を示した。
/ ゚、。 /「つまりは不審者と云う事なのかな? これはこれは興味深い……」
またもや少女の方へ視線を移す。
从; #∀从 「おい、お前……」
/ ゚、。 /「助けたいか?」
相手の発言を遮るように突然ダイオードは訊ねた。
从;# ∀从 「なに……」
/ ゚、。 /「助けたいか?と聞いているのだ」
不敵に彼は口の端を歪めながら問う。
|゚ノ ;^∀^)「貴方……いったい何を……」
/ ゚、。 /「助けてやっても良い、と言っているのだよ」
从 ゚∀从「聞くな! レモナ!
どうせ碌でもない事に決まっている!」
ずきずきと痛む頬を押さえながらハインは叫ぶ。
/ ゚、。 /「だがしかし君達ではポッドは直せない? 違うか?」
ズバリ弱味を握られ二人はぐ、と喉を詰まらせる他無かった。
/ ゚、。 /「おお、幼気な少女よ。お前は運がいい……」
不敵に笑う狂った男を前にレモナとハインは立ち竦む他無かった。
運命は奇妙な方向に転がり始めたのだ。
173
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 15:21:28 ID:OOWNd1bk0
log.6_end
Dr.stoneのゼノみたいなキャラを意識しながら書いてみましたとさ、てへぺろ
174
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 16:08:15 ID:OOWNd1bk0
log.6_end
追う者と追われる者。
暗雲立ち込める中、物語は再びブーン達の視点へーー
175
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 16:09:44 ID:OOWNd1bk0
■log.7
滝を。登ってゆく。
轟々と流れ落ちてゆく水は、その圧倒的な質量のせいで大瀑布と呼ぶに相応しい。
最早雨と言って差し支えのない大量の水しぶきを浴びて、全身ずぶ濡れとなりながらブーン達は滝の傍を歩いていた。行方不明となったツンにはまだ見付からない。
川 ゚ -゚)「安西先生、河童が欲しいです……」
着るものがびしょびしょになっていた所為でそう不満が漏れるのは仕方がない。
ブーンに至っては早々に諦め今は上半身裸だ。
( ^ω^)「イヤンエッチ-!」
川 ゚ -゚)「……ピザがそういうボケをかますとアレだな……問答無用でくり抜きたくなるな……くり貫きたくな……」
(; ^ω^)「ちょっ!?痛い痛い痛い痛い痛いやめて!
その枝どっから持ってきたんだお?!
あと発言の後半部分が恐い! ナベちゃんの銃をこっちに向けちゃらめェェェェェェェェェェ!!!」
从'ー'从「全くキモいですな」
('A`)「甚だ同意ですな」
結論。ピザに人権は無ぇ。
(; ^ω^)「ぇぇ…」
川 ゚ -゚)「乳首こっちに向けんなもぎ取るぞ」
176
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 16:40:28 ID:OOWNd1bk0
相も変わらずクーはこんな調子である。
(; ´ω`)「もうやだ。ほんと疲れるおこの人……」
ブーンはげんなりしながら滑る足下を行く。
ここは外壁とその内側を走る巨大水路の中間地点に当たり、水の浸食作用もあって岩盤が削り取られているのだ。
そうして作られた溝穴をブーンは選び、一行は上を目指している。
途中出逢った旅人から貴重な情報を得ていた。
(,,^Д^)「お、あんたらひょっとして博物館を目指しているのかい?
さっき物騒な連中がそいつを追い掛けて行くのを見たからーー」
('A`)「博物館?」
聞き慣れない単語がここでも出て来た。
(,,^Д^)「おや? 知らないのかい。博物館ってのはその名の通りこの壁のあらゆる歴史が収められた貴重な文化遺産なんだせ」
物知りな若者は気さくにそう教えてくれたのだ。
( ^ω^)「歴史か……」
ブーンはこの情報に強い興味を惹かれた。
川 ゚ -゚)「ひょっとしたら……」
クーも同じ事を考えていたらしく互いに顔を見合わす。
177
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 18:02:34 ID:OOWNd1bk0
ハイ・フロスガーの事が何か分かるかも知れない。ーー二人の脳裏にそんな期待が閃いたのである。
ここ暫くは騒動に巻き込まれていた所為で中間せざるを得なかったが、彼らは本来の目的をまだ忘れた訳ではない。
……どうする?
そわそわする気持ちを抑えながらもブーンは意見を訊ねた。
勿論ツンの捜索も疎かには出来ない事柄だ。
決め手はクーの体調次第。
川 ゚ -゚)「私はーー」
別に問題ないぞ、とそう言いかけた時、急に彼女は眩暈を覚えて足下がふらついた。
(; ^ω^)「おおっと!?」
慌ててブーンが体を支える。
(; ^ω^)「なんだおクー?
具合が悪いのなら無理せず言って構わないのに」
川; ゚ -゚)「あ、ああ御免。すまない……ちょっと疲れていたのかな?」
ブーンの肩を借り起き上がろうとするクーの息が乱れていた。
(;'A`)「おいクー、お前本当に大丈夫か? 顔青ざめているようにも見えるんだが……」
川; ゚ -゚)「はっはっは。ドクオ氏そんな御冗談を」
从;'ー'从「クーさん本当に無理しない方が……」
腰が重い。膝に力が入らない。
クーは無理やり笑顔を作ろうとするのだが体が言うことを聞いてくれないのだ。
川; - _-)「みんな、悪い。ちょっと休ませて貰えないか……」
明らかに不調な顔色を忍ばせクーはそのまま膝を着いた。
(;'A`)「おい……」
予想だにしない悪事に見舞われ、どうしようかと焦りを滲ませた一行の遠くで、一発の閃光が空を賑わせた。
178
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 20:47:40 ID:OOWNd1bk0
>>177
時間軸に矛盾があったので一部修正
→しばらくして、途中出逢った旅人から一行は貴重な情報を得た。
179
:
名無しさん
:2020/06/28(日) 21:17:34 ID:4htOwbq20
支援
180
:
名無しさん
:2020/06/29(月) 13:17:53 ID:lpZ88rg60
中空を貫く蒼い一閃は、闇を眩く染めそのまま岩石へ命中した。
(`・ω・´)「第一射。命中。続けて第二射に移ります」
( ゚∋゚)「宜しい、やれ」
鳥頭の艦長が命じるや、船体の側面に覗く荷電粒子砲はチャージを終え、凄まじい威力の光を放つ。
一直線に伸びる光は前方の森めがけ放たれていた。そこは浮遊岩石と植物が密を成す特殊環境だ。
岩場に絡む蔦が焼き切られ、揚力を失った巨石が音を立て崩落してゆく。
それは真下にいたジョルジュが操る船ーー『博物館』の装甲を叩き、少なからずダメージを与えていた。
_
(; ゚∀゚)「チイッ!」
折しもブリッジにて仮眠の最中であった彼は、忽ち襲撃に叩き起こされた。
_
( ゚∀゚)「ぽぽ、緊急回避!」
(*‘ω‘ *)「アイサー、だっぽ!」
操縦を担当する白いイタチに似た生き物に命じると、彼女は手早く舵を切り船体を横転。巨大なカタツムリを模した『博物館』は側面のノズルを吹かせ、そのまま滑るように速度を強めた。
(*‘ω‘ *)「装甲修復まで0227秒。館長、デコイを使うっぽ?」
_
( ゚∀゚)「気休めにしかならないだろうがやってくれ。空にして構わねぇからよ」
(*‘ω‘ *)「了解。命あっての物種だっーーぽ!」
181
:
名無しさん
:2020/06/29(月) 17:47:53 ID:mz7lLho20
許可を得たぽっぽは防御兵器を作動。ランチャーの蓋が開き、円筒形の物体が複数射出される。
木々の合間を縫い敵艦めがけて飛行するそれは、突如爆発しておびただしい量の煙を撒き散らした。
敵艦のモニターに一斉にノイズが走る。
(`・ω・´)「ジャミング弾か!」
正確には、電子機器を攪乱させるVXスモーク弾だ。
(;*゚ー゚)「目標、ロストしました!」
白濁したままの画面を前にオペレーターは狼狽える。
( ゚∋゚)「慌てるな。まだ近くにいる」
( ФωФ)「これはいよいよ我々の出番であるな」
既に戦闘服に身を包み、降下艇を駐機させていたロマネスクは静かに述べた。射出用のレールに吊された機体は騎士団専用に改造が施されている。
<ヽ`∀´>「一番槍はウリが貰うニダ」
ノパ⊿゚)「よぉぉぉおおし! 腕が鳴るぜ!」
(-_-)「……」
(#゚;;-゚)「お仕事……がんばる」
( ´∀`)「やべぇうんこしたい」
血気盛んな彼の部下達がにわかに騒ぎ出す頃、ブリッジより出撃の合図が下った。
( ФωФ)「宜しい、参る!」
電磁カタパルトに火が点る。
音速で射出されてゆく機体はまさしく弾丸そのものだ。
(・∀ ・)「超ーーー気持ちいぃーーー!」
機影はたちまち見えなくなる。
( ´∀`)「あっ」
そして奴の括約筋は当然崩壊した。
182
:
名無しさん
:2020/06/29(月) 19:44:53 ID:y0TUni8g0
ないたぁぁってぇぇ〜♪
なにもかわらないっていわれるけどぉぉ〜
だれだあってぇぇ
そんなつもりでなくんじゃないよね
なぁぁやんだってしかたない
あいじゃーすきゃん こんとろー ざ たああいむ
このなぁあがいらんうぇいからあーおーぞーらへ ていくおぉーふ♪
たいむ・うぃーる・てぇぇる
じかんがたてばバレる
辛い…(アーッ)
だから そんなあせらなくたっていい(大嘘)
たいむ・うぃーる・てぇぇる
じかんがたてばバレる
T☆U☆R☆A☆I (アーッ)
明日へ〜のず〜るい近道は〜ないよ〜(断言)
(;´∀`)なん…だと…
なん…だと…
なん(ry
ーー余談だが、後に彼は仲間達から「ミスターブラウン」と呼ばれる事を強要されたそうな。
ふーん、エッチじゃん?
183
:
名無しさん
:2020/06/30(火) 10:31:04 ID:PzglXj/A0
■log.8
風防越しに風を感じる。気圧の調整されたコックピット内でそれは錯覚に過ぎなかったが、流線型の機体は確かに気流を押し分けて目標へ近づいているのだ。
ノパ⊿゚)「居た!」
先行するヒートの機体が目標を捉えた。
(・∀ ・)「ヒューっ! 想像していたよりも大分デカいね!
ロマの旦那、こりゃ久々に狩り甲斐のある獲物ですよ」
古参のまたんきは既に軽口を叩きながらも威嚇射撃を開始している。
( <●><●>)「迂闊に近づくのは愚策である事は解っています」
( ФωФ)「各機、フォーメーションを崩すな」
<ヽ`∀´>「団長は慎重過ぎるニダ。虎穴に入らずんば虎児を得ず、と……」
『ブレイク!ブレイク!』
おわぁ!? と仰天し慌ててロールしたニダーのすぐ真横を銃弾が通り過ぎてゆく。
ノパ⊿゚)「油断!」
<ヽ;`∀´>「す、すまないニダ姐副長。やっぱり正攻法が一番ニダね」
ノパ⊿゚)「遅れるなよ?」
短い叱咤を飛ばし、尾翼に炎を描いたヒートの機体は上昇してゆく。
彼女のマニューバは実に滑らかだ。邪魔な浮遊石の合間を巧みにすり抜け、敵の攻撃を回避した次の瞬間にはもう機首を反転させている。
ノパ⊿゚)「レーダーロック」
ーーファイア!
紅蓮の炎が敵影の横っ腹に突き刺さった。
(・∀ ・)「グレイト!」
184
:
名無しさん
:2020/06/30(火) 11:57:51 ID:wlM3BYTo0
腹の底を揺るがすような、とは正にこういう振動の事を指すのだろう。
実際にはそこまで柔な船ではないが、衝撃の勢いに飲まれてブリッジ内の面子はよろめいた。
(*‘ω‘ *)「右舷に被弾!これ不味いっぽ!」
先程落石のダメージを受けた箇所にもろ、だ。
_
(; ゚∀゚)「見りゃ分かるよそんなん! くっそ、どうにか逃がしてくれないものかね」
(*‘ω‘ *)「白旗は無駄だと思うっぽ」
_
(; ゚∀゚)「だろうね!」
窮地で言葉も投げ遣りなものに変わってきている。
185
:
名無しさん
:2020/06/30(火) 12:20:18 ID:Wfy48f7Q0
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!!」
慌てて駆け込むままに扉が開き、ツンが現れた。
ξ;゚⊿゚)ξ「何が起きてるの?!
また襲撃!?」
おう、と返答ざまにまた衝撃。
(;*‘ω‘ *)「ぽ!?」
踏ん張りが効かずぽっぽが床の上を転げ落ちる。咄嗟に首根っこを掴みそのままツンは胸に抱え上げだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ぽぽちゃん、怪我は無い?」
(;*‘ω‘ *)「客人ありがとうだっぽ……」
小動物を抱き抱えたまま「どうするの」とツンは指示を仰ぐ。
_
( ゚∀゚)「敵さんの数が多い。こりゃ逃げるしかあるめぇよ」
ξ゚⊿゚)ξ「当てはあるの?」
_
( ゚∀゚)+ 「無い!」
ξ ̄⊿ ̄;)!!「少しは期待をさせろようおぃぃ!?」
_
( ゚∀゚)「だからスリルを楽しむんだよ!!」
勇ましくいい放った後ジョルジュはモニターに視線を走らせる。
(*‘ω‘ *)「館長、被弾箇所はどうするんだっぽ?」
_
( ゚∀゚)「どうせ使い物にならねぇ区画だ。いっそ切り離しちまえ」
(*‘ω‘ *)「ラジャー」
命に従い炸薬を作動。
(*‘ω‘ *)「二ブロック纏めて吹き飛ばすっぽ!」
_
( ゚∀゚)「いいね!派手にやろうぜ」
186
:
名無しさん
:2020/06/30(火) 17:54:40 ID:6Sstz5eA0
電気信管が起爆。連結部のボルトが吹き飛び、それによって支えを失った二部屋が爆音と共に廃棄された。
(#゚;;-゚)「嗚呼、もったいない……」
朦朦と立ちこめる煙を遠眼に見つめながら、団員のでぃは呟く。
(-_-)「何?でぃさんあんなの欲しいの?」
同乗するヒッキーは訊ねる。
(#゚;;-゚)「だってウチらの個室より絶対広いでしょ」
(;-_-)「いや……あれ別に住む所じゃ無いと思うけど…………」
ノパ⊿゚)「オラオラ新米!雑談する暇あったらとっとと追い掛けろ!」
パージを終え速力を上げた目標の船が、距離を開き巨石の陰に隠れていったのだ。
バン、と下方向に伸びる無数の小枝が風防に当たり視界を遮っている。
(・∀ ・)「敵も中々やりますねぇ。小細工が鬱陶しくてちょっちイラッ、と来ますわ!」
( ФωФ)「ヒート。奴の脚を止めたい。可能であるか?」
ノパ⊿゚)「よぉぉぉおおし!任せろ!」
187
:
名無しさん
:2020/06/30(火) 18:04:05 ID:6Sstz5eA0
>>186
訂正
バン、と下方向に伸びる無数の小枝が風防に当たり視界を遮ってくる。
188
:
名無しさん
:2020/07/01(水) 14:19:04 ID:7JSCET3k0
自信満々に言い放つや、ヒートはスロットルを全開。そのまま藪の中へ突っ込んだ。
ノパ⊿゚)「うおおおおおお邪魔だ邪魔だああああああ!!」
機銃を惜しみなく使い障害物を薙ぎ払う。
(・∀ ・)「ハハッ!相変わらず副長はやり方が豪快でいいね」
しかし視界が開けた事で皆もやりやすくなったのだ。
<ヽ`∀´>「姐御。お供するニダ!」
彼女の撃ち漏らしをカバーするように後続のニダーも連射開始。障害物が粉々に打ち砕かれ粉塵が流れてゆく。
ノパ⊿゚)「おう!ナイスアシストだニダー。このままママから離れんなよ?」
<ヽ`∀´>「合点承知の助!」
右へ。
左へ。
浮遊する巨大障害物を回避するべく絶えず翼を振る。急激なバンクの合間にも襲い来る対空射撃をも躱し、二重螺旋を描いて二機は飛行。息の合ったコンビネーションを見せる。
_
(# ゚∀゚)「チックショー!全然当たんねぇぞ何だよあいつらの動きは!?」
迎撃用の銃座に跨がるジョルジュは脅威に舌打ちを零した。
これまでにも博物館が敵から襲撃を受ける事は何度もあったが、今回の敵は全く規模が違う。
ξ;゚⊿゚)ξ「ねぇ、こないだみたいに変身してどうにか出来ないの?」
一緒に応戦するツンは早口まみれに問う。
_
(; ゚∀゚)「そりゃちょいと無理ってもんだせ嬢ちゃん、幾ら俺でも空なんか飛べねぇよ!」
189
:
名無しさん
:2020/07/01(水) 20:40:18 ID:NULZqCLI0
これまでにも博物館が襲撃を受ける事は数回あったが、今回の敵は全く規模が違う。
ξ;゚⊿゚)ξ「ねぇ、こないだみたいに変身してどうにか出来ないの?」
一緒に応戦するツンは早口まみれに問う。
_
(; ゚∀゚)「そりゃちょいと無理ってもんだせ嬢ちゃん、幾ら俺でも空なんか飛べねぇよ!」
ξ;゚⊿<)ξ「だって翼生えてたじゃん!」
_
(; ゚∀゚)「ありゃ飾りみたいなもんだよ! 兎に角無理なものは無理なんですぅ!!」
ジョルジュはきっぱりと言い切る。いよいよ余裕が無い。
敵影はすぐ間近へと迫っている。
190
:
名無しさん
:2020/07/01(水) 20:43:23 ID:NULZqCLI0
_
(; ゚∀゚)「こなくそぉぉオオオオ!!!!!!!!!!!!」
射角限界まで砲を下げ弾幕を張る。
必死に撃ちまくり、少しでも敵を遠ざけようと試みても、それすら見透かしていたのか敵機はその下へ潜り込み機銃をばら撒いてきた。
ξ;>⊿<)ξ「ひゃっ!?」
ジャック・ナイフ。超接近した機影が頭上を掠めた。
ノパ⊿゚)「真っ赤なサンタさんからプレゼントだぜ!」
ヒートは容赦なくそこへ爆弾を落としてゆく。
( ФωФ)「ヒート。破壊は程々に留めておくのである」
ノパ⊿゚)「解っているよ団長。けどやれる時にやれる事はきちんとやっとかないとなぁーー」
これで仕上げだ!と最後に放った一発が動力部を直撃した。
_
(; ゚∀゚)「「「〜〜〜!?!!!!!!!!!!ッ」」」
ξ;>⊿<)ξ
(;*‘ω‘ *)
ずずん、と重たい衝撃が船全体を包みツン達は卒然となる。
何処かで爆音が聞こえた。
一拍遅れで部屋が軋み船底が急激に傾き始めた。
(;*‘ω‘ *)「ヤバい!舵が!!」
ヒートが狙っていたのはこの船の反重力推進機関ーー巨体を浮かせ、飛行にも作用する最重要部品だ。当然そこを失えば船は動けなくなる。
周囲の重力場に引かれ博物館(ミュージアム)は岩盤に衝突する。
側壁がゴリゴリと擦られ、座礁した後遂には動きを止めてしまったのだ。
( ФωФ)「これでチェック・メイトであるな」
上空を旋回しつつ目標の完全な沈黙を確かめると、 部下を率いロマネスクは降下していった。
191
:
名無しさん
:2020/07/01(水) 20:46:55 ID:NULZqCLI0
log.8_end
うんこの人の出番なし
192
:
名無しさん
:2020/07/01(水) 22:04:57 ID:q1O3X89M0
otsu
193
:
名無しさん
:2020/07/02(木) 20:53:26 ID:xZe4d9mE0
■log.9
_
(メ ゚∀゚)「いっ、てぇ……」
横転しかけた船内のブリッジにて、ジョルジュは起き上がる。激突寸前ツン達を庇う様に覆い被さっていた為、二人に目立った傷はなくどうにか無事のようだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「あー……ビックリしたぁ」
それでも腰を打ったらしくそこを擦りながら遅れて立ち上がり、周囲を見回すツン。
窓が突き破られ破片やその他諸々が周囲に散乱している。砕けた細かな砂等も一緒に混じっていて、相当これは酷い有様だ。
(;*‘ω‘ *)「二人共大丈夫っぽ?」
_
(メ ゚∀゚)「おう、まぁなんとかな……」
しかしよりによって直撃かよ、と先の攻撃を思い返しながらジョルジュはそちらの方を向く。
ξ;゚⊿゚)ξ「一体全体なんなのよ?」
_
(; ゚∀゚)「そりゃこっちが知りたい位だよ。……ま、兎に角無駄話をさせて貰える余裕は無さそうだ」
ーーすぐに来るぞ、とジョルジュが警戒を促した。
ξ゚⊿゚)ξ「分かっている」
その意図を読み取りツンは速やかに行動を開始した。
_
( ゚∀゚)「そのナイフ1本だけじゃ心許ないだろ。ぽっぽ、武器庫開けられるか?
可能なら案内してってやってくれ」
(*‘ω‘ *)「了解、ねーちゃん着いてくるっぽ」
194
:
名無しさん
:2020/09/25(金) 13:21:56 ID:1VU/OdPI0
漏水している。
爆撃の被害は館内の配水管にも及んでおり、噴出した水のせいで通路はどこも水浸しの有様だ。
階段伝いに2層降りた頃には、もう膝下まで水に浸かっており、ツンはざぶざぶと水をかき分けながら目的地を目指していた。
敵に警戒しつつも廊下の角を幾つか曲がり、やがて彼女は目的地へ到着した。
「ここだっぽ」
ひらり。肩から降りたぽっぽが指差す先には、なるほど厳重そうな扉が待ちかまえている。
ξ゚⊿゚)ξ「人気は?」
中をのぞき込みつつ訊ねた。
(*‘ω‘ *)「大丈夫。ここはそう易々とは開けられない場所だっぽ」
ξ゚⊿゚)ξ「おお……」
照明が点った。中へ踏みこむなり、倉庫内の壁一面を埋め尽くす無数の兵器のヘ踏み込むなり量にツンは圧倒された。
ξ゚⊿゚)ξ「スッゴいじゃんこれ!
なにこれ? ジョルジュが集めたの?」
(*‘ω‘ *)「館長は収集癖があるから。
まぁ伊達に博物館を名乗ってはいないーー伏せろ!!」
突然ぽっぽは警告を促した。
「誰か入ってきたっぽ」
195
:
名無しさん
:2020/09/25(金) 17:38:42 ID:kJXZuN360
声をひそめ、ぽっぽは後方へ視線をうながす。
閉じたはずの強化シャッターが持ち上げられ、見慣れぬ格好をした黒ずくめの男たちがこちらへ踏み込もうとしている。
ξ゚⊿゚)ξ「……物騒な連中のお出ましね」
ちょっと早すぎない?と小声で感想をこぼしつつ、素早くツンは物陰に滑り込み身を隠した。
ちょうど目の前にある戸棚に何丁かの拳銃が置かれている。
威力は心細いが何も持たないよりはまだましか。
ξ゚⊿゚)ξ「これ借りるわよ!」
ポリマーフレーム製の一丁を引っ掴み、銃把の底へマガジンを差し込みバッテリーを接続させた。
196
:
名無しさん
:2020/09/25(金) 18:23:06 ID:kJXZuN360
(;*‘ω‘ *)「あ。ソイツはちょっとーーーー」
《キィィィィィィィィィィィィィィィィンンーーーー》
■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■
■■■■■■■
■■■■■
[stand-by]
■■■■■■■■■■■■■■■
突然。ツンの握る銃が震え始め、鋭い超音波を発した。
(;・∀ ・)「うおっ!何だコレ」
黒ずくめの侵入者達は虚を突かれ耳鳴りの痛みに足をとめる。
ξ;゚⊿゚)ξ「な」
インジケーターランプの光が青から緑ーーそして白に変わり、銃口がスパークする。
(;*‘ω‘ *)「ぼ、暴発するっぽ-!!」
慌てふためきぽっぽは咄嗟にこう叫ぶ。
「とりあえずぶっ放せ!」
197
:
名無しさん
:2020/09/25(金) 20:44:55 ID:UJELZmD60
銃口内の光は膨れ上がり、それを抑える術など誰にもわからない。
ξ;>⊿<)ξ「ひぃっ」
なにかとんでもない物をどうやら掴んでしまったみたいだ。
どう対処したら良いのかわからず、そしてツンの指先は突発的にその引き金を引く。
光が、
(;・∀ ・)
<ヽ`∀´>
(;-_-)
( <●><●>)
その進行を阻む
あらゆる存在を飲み込んだーーーー
198
:
名無しさん
:2020/09/25(金) 20:50:03 ID:UJELZmD60
log.9_END
重力子放射線射出装置の誘惑に勝てないでごさるの巻
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