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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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(´・ω・`)「この世界の話をお聞かせ願いますか?」
('A`;)(はあ!?)
アイネの顔を見ながら迷うことなく告げるショボン。
焦った様にショボンの顔を見るドクオを見て、
残りの三人もショボンの顔を見た。
しかしショボンはそんなことは全く気にすることなくアイネの顔をじっと見ている。
すると、アイネの上に浮かんでいたエクスクラメーションマークの色が変わった。
('A`;)「え?」
思わず声を出してしまったドクオだったが、
アイネは気にすることなくショボンを見ながら笑い出した。
(アイネ)「合格だ。話してやろう」
('A`;)(はああああああ?)
豪快に笑いながらショボンの顔を値踏みするかのように見るアイネ。
そして笑い終わると、表情を引き締めた。
(アイネ)「私に話をさせる気にさせたのは、あんたが初めてだよ。
だが、全部を話すにはどれだけの夜を重ねればいいのか分からないほどこの世界は広い。
まずは自分で調べるんだね」
立ち上がるアイネ。
そして二階に上がる階段に向かった。
(アイネ)「ついてきな」
(´・ω・`)「はい」
立ち上がったショボンがアイネに続き、
その後を慌てて四人が続いた。
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二階に上がると、人が二人余裕で通れる廊下の先にあるドアに連れて行かれた。
('A`)「おれが泊まったのは手前のドアだ」
川 ゚ -゚)「正式サービスで変わったのか?」
('A`)「分からない……。でも、この受け答えは無かったと思うから、
おそらくは変更したとおもう。
それか、テストの時は実装してなかっただけで、元からこうする仕様だったのか」
ドアは全部で四つ。
階段近くのドアを見ながらドクオは先に進んだショボンの後に続く。
(アイネ)「ここだよ」
アイネが奥の扉の一つを開くと中に入った。
その後をショボン達が続く。
(´・ω・`)「これは」
壁一面の本棚と、そこに収められた本。
ところどころに開いている個所はあるが、ほとんどが埋まっていた。
(アイネ)「ハウンゼン家が集めた知識。
『ハウンゼン=レコード』だ。
これが見たかったんだろ?」
(´・ω・`)「はい」
('A`;)「(えーーーー)」
(;^ω^)「(ショボン)」
ξ゚⊿゚)ξ「(この男)」
川 ゚ -゚)「(これが吉と出るか、凶と出るか)」
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(アイネ)「ホントに度胸があるね。
そういうやつは嫌いじゃない」
ニヤッと笑ったアイネに笑顔で返すショボン。
('A`)「(どういうフラグなんだ?)」
( ^ω^)「(ショボンすごいお)」
ξ゚⊿゚)ξ「(うまくいきやがった)」
川 ゚ -゚)「(吉と出たようだな)」
(アイネ)「といっても、今お前達が読めるのはこの辺りだけだろう」
アイネが扉の近くの本棚に向かい、一冊の本を出した。
そしてそれをショボンに渡す。
(´・ω・`)「【はじまりの街】」
('A`)「この街の名前だな」
表紙に書かれた文字を読んだショボン。
開くと、そこには目次があった。
(´・ω・`)「これは……もしかしてクエストリスト?」
('A`)「なに!」
慌てて横から覗き込むドクオ。
そして目を輝かせた。
('A`)「うを!まじか!」
ξ゚⊿゚)ξ「クエストリスト?」
( ^ω^)「クエストっていうのは、
街や外にいるNPCから請け負うことの出来るアルバイトみたいなものだお。
街の中での簡単なお使いから、外に出て採取したりモンスターを何匹か倒したり、
あとは中ボスクラスのモンスターを倒すなんてのもあるお」
.
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川 ゚ -゚)「クエスト……か。
それで、あの本にはそのリストが載っているのか?」
( ^ω^)「みたいだお。
通常は自分でNPCに声をかけて探さなきゃいけないから、
リストがあればすごく楽になるお」
ξ゚⊿゚)ξ「攻略本みたいって事?」
( ^ω^)「おっお。少し違うけど、そんな感じだと思ってくれていいお」
川 ゚ -゚)「なるほど。
それであんなにドクオが喜んでいたわけだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、なんかテンション下がってない」
三人の視線の先、先ほどまで目をキラキラさせていたドクオが目に見えて項垂れていた。
('A`)「クエストタイトルしか書いてねーじゃん」
(´・ω・`)「どこで請け負えるかも書いてあるよ?」
('A`)「まあそれは少しは役に立つけどさ。
攻略方法はともかく内容も書いてないとか……」
(アイネ)「当たり前だ。
冒険者なら、冒険者らしく自分で埋めるんだね」
('A`)「そりゃそうだけど…」
棚の二冊目を手に取るドクオ。
その本の表紙には【ホルンカ】と書かれている。
('A`)「街ごと有るんだな」
本を開くドクオ。
しかし、今度はクエストネームも書かれておらず、目次には数字だけが並んでいた。
('A`)「……名前も無いとか」
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(´・ω・`)「行くことは出来るけど、
行ったことが無い街の本は見られるけどクエストネームすら分からない。
っていうことかな?
それにほら、この棚の本は出す事も出来ない」
違う棚の本に手をかけるショボン。
しかし出す事すらできない。
('A`)「この部屋、意味あるのか?いやない」
(´・ω・`)「そう?
自分で記録を取ることを考えたらかなり楽だよ?」
('A`)「そりゃそうだけどよ」
(´・ω・`)「それに、ヒントもある。
例えばこのはじまりの街の本。
ここ、ナンバーは書いてあるけどクエストネームは書いてない。
つまり、隠しクエストがあるってことだよね。多分」
('A`)「!なるほど。
隠しが有るか無いかが分かるだけでもかなりの手間が省ける……か?」
(アイネ)「自分の力で埋めることが出来れば、
それは歴史であり、経験であり、知識であり、糧となる。
そして、それ以外にここに来ればいいことがあるかもしれんぞ。
私を始め、ハウンゼンの者は知識や話が好きだからな」
(´・ω・`)「そうですね。ここの本をすべて埋められるよう頑張ります」
(アイネ)「頑張ってくれ。
といってもそれだけじゃ、折角ここに一番最初に来たのにつまらんだろう」
そう言いながら懐から一冊の本を取り出し、ショボンに渡した。
(´・ω・`)「……【アインクラッド】?」
.
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(アイネ)「このアインクラッドの成り立ちと歴史をしたためた本だ。
その本を受け継ぐことが『ハウンゼン家』の当主たる証だから
やることは出来ないが、ここに来ればいつでも読ませてやろう」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(アイネ)「さて、そろそろ夜も更けてきた。
お前達、今夜の宿はとってあるのか?」
(´・ω・`)「いえ……」
アイネに促されて部屋を出る五人。
そして向かいのドアを開けたアイネが、そこに五人を通した。
(´・ω・`)「ここは……」
('A`)「βの時より豪華だ」
ξ゚⊿゚)ξ「なかなかね」
川 ゚ -゚)「居心地が良いな」
一階の最初に通された部屋が嘘のような部屋だった。
中央に置かれたソファーセットは大きさこそ先ほどの部屋のもとの同じだが、
見ただけで格段に良いものであるのが分かる。
部屋には他にも暖炉や燭台があり、天井には小さいがシャンデリアまである。
壁沿いには水差しの置かれたテーブルや棚などが備え付けられていた。
(アイネ)「三日くらいなら、ただで泊めてやろう」
('A`)「(ここでこのルートか……)」
(アイネ)「実はお前達が来る前に玄関にいたずらをされてな。
冒険者がいると分かればいたずらする奴もいないだろう」
ドクオを見ながらアイネが話す。
思わず視線を逸らしたドクオを見て、唇の端で笑った。
(´・ω・`)「いえ、払わせてください」
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('A`)「え?ショボン?!」
(アイネ)「……どういうことだい?」
アイネの表情から笑みが消え、
冷たくショボンを見下ろす。
(´・ω・`)「今はやられてはいないのかもしれませんが、
おそらくここは宿屋をされていたのではありませんか?」
(アイネ)「ああ。そうだ」
(´・ω・`)「でしたら、ちゃんと料金は徴収してください。
【ハウンゼン=レコード】を読みに来る度に泊まらせてもらうわけにもいきませんし、
これからあの部屋を使わせていただくにあたって、
出来るだけ対等でいられるようにさせていただきたい」
('A`)「お、おい……」
(アイネ)「悪いがこの部屋は、というよりこの宿はもともと特別室のみでね。
どの部屋もこの街の通常の宿屋とは格も桁も違う。
あんた達に払えるとは思えないよ」
(´・ω・`)「では、外に宿を取ります。
この本を読む間、一時間ほど先ほどの
【ハウンゼン=レコード】の部屋をお貸し願いますか」
冷たく見下ろすアイネと、臆することなく対峙するショボン。
数分誰もしゃべらずその状態が続き、
ドクオが意を決して話しかけようと口を開こうとしたその瞬間、
アイネが大きな声で笑い始めた。
('A`)「(へ?)」
(アイネ)「意地っ張りなやつは嫌いじゃない。
しかもこのアイネさんに、
元宿屋ギルド総元締めのアイネ=ハウンゼンに意地を通すとは、
気に入ったよ。あんた」
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心底面白そうに笑っているアイネ。
(´・ω・`)「では……」
(アイネ)「だが、あたしにも意地はある。
気に入った奴から宿代を貰うなんて、
アタシの名に傷が付くからね。
しかも他の宿に行かれたなんてことは以ての外だ。
絶対にここに、ただで泊まってもらうよ」
(´・ω・`)「……」
(アイネ)「明日、用事をいくつかこなしてくれ。
それが宿代ってことで良いだろう」
(´・ω・`)「用事ですか?」
(アイネ)「もちろん、今のあんた達にできるレベルでだよ。
今回はこの街の中で色々とお使いをしてもらうだけさ。
勿論、この先出来ることが増えたら色々やってもらうけどね。
それでどうだい?」
(´・ω・`)「そうですね……」
(アイネ)「女の我儘を笑ってきくのも、男の度量ってもんだよ?」
(´・ω・`)「はい。分かりました」
(アイネ)「よし!成立だ!」
笑顔で右手を差し出すアイネ。
そしてショボンも笑顔でその右手を取り、握手を交わす。
(アイネ)「この部屋はいつでもこれから好きな様に使ってくれ」
五人の耳に、チャイムの様な電子音が響いた。
('A`)「クエスト完了!?」
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(´・ω・`)「え!?」
( ^ω^)「お!?」
ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」
川 ゚ -゚)「今のは?」
そして続いて同じような、けれど旋律の違う音が彼らの耳に別々に鳴っていた。
(アイネ)「それじゃまた明日朝に待ってるよ」
呆然とする五人に構うことなく、
アイネはもう一冊小さな本をショボンに手渡した。
(アイネ)「これは一番最初に辿り着いた報酬だよ。
大事に使うんだね」
アイネは今日で一番人の悪い笑顔を見せると、部屋を出て行った。
('A`)「ショボン、それは?」
(´・ω・`)「【アイネの手帳】」
川 ゚ -゚)「アイネの手帳?」
小さな本を開くショボン。
最初の数ページに幾つかの文章が書かれており、
その次のページには数字の羅列が書かれ、
その先のページは空白だった。
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(´・ω・`)「これも基本的にはクエストを記録する手帳みたいだね。
多分明日の『依頼』を筆頭に、
彼女から請け負うクエストでこれを埋めていくんじゃないかな。
そして、最初のページに幾つか書いてあるよ。
この手帳を持って来た者は、
【アイネ=ハウンゼンの宿】を無料で使うことが出来る。
多分ここがその宿なんだろうね。
ただし、継続利用は最長七泊八日。
使用した後は、その直前に継続宿泊した日数分利用することは出来ない。
つまり最大泊数の一週間泊まったら、その後一週間は泊まることは出来ないってことみたい。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列の宿】に泊まる際に、
宿ごとのサービスを受けることが出来る。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列が売る建物】を購入する際に、
手帳を埋めている率に相応した割引価格で購入することが出来る。
他にもいろいろ書いてあるけど、
【ハウンゼン家】はアインクラッドで宿屋とか不動産業を営んでる、
大富豪って感じなのかな。
この手帳はハウンゼン系の店で使える割引パスポートってことみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、結構お得ね」
川 ゚ -゚)「うむ。役立ちそうだな」
('A`)「……」
(;^ω^)「……」
渡された手帳の内容を読んだショボン。
ツンとクーは部屋のソファーの座り心地を確かめながら素直に思ったことを口にしている。
川 ゚ -゚)「?どうした?二人とも呆けた顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「締まりの無い顔が更にぼんやりしてるわよ」
(´・ω・`)「どうしたの?」
ショボンもソファーに腰掛け、
ツンとクーの二人とかけ心地について話しはじめても、
二人はぼんやりと立ちつくしていた。
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(;^ω^)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「ホントにどうしたのさ二人とも」
(;^ω^)「おーー……。
ねえドクオ、あの手帳って……」
('A`)「ああ。おそらく超レアアイテムだ」
(´・ω・`)「ふーん。そうなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、珍しいアイテムなの?」
川 ゚ -゚)「ふむ。まぁ全員がこんなのを持っていたら、
宿屋の商売はあがったりだな」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね」
(´・ω・`)「そうだね。
商売にならないかも」
笑う三人をよそに、ドクオとブーンの表情は更に強張る。
('A`;)「っていうか、超レアアイテムなんてレベルを超えて、
武器で言うところの魔剣クラス、
いや、多分、伝説級(レジェンダリー)……」
(;^ω^)「伝説級武器(レジェンダリー・ウエポン)ならぬ、
伝説級アイテムかお?」
('A`;)「……サーバーに一個しかないやつかも。
さっきあの人【一番最初に辿り着いた報酬】って言ってたよな」
(;^ω^)「うわぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきから何ぼそぼそ話してるのよ。
このソファー座り心地良いわよ。
座ったら?」
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川 ゚ -゚)「レジェンダリー?伝説級?
その手帳がそんなにすごいのか?」
('A`;)「凄いなんてもんじゃない。
……多分」
(;^ω^)「サーバーに、この世界に一つしかないアイテムかもしれないんだお」
ツンの隣に腰掛けるブーンと、一人用のソファーに腰掛けるドクオ。
テーブルの上に開かれた手帳をこわごわ覗き込む。
(´・ω・`)「レアアイテムかなとは思ったけど、これってそんなに凄いの?」
('A`;)「多分な。
規格外だろ。こんなの」
(; ^ω^)「さっきも言ったけど、
もしかすると世界に一つだけのアイテムかもしれないんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」
川 ゚ -゚)「ほお」
('A`)「……相変わらず感動薄いなおい」
ξ゚⊿゚)ξ「まだそんなに恩恵受けてないし」
川 ゚ -゚)「実感が湧かないな」
('A`)「そうですか」
(´・ω・`)「あとさ、なんかレベル上がってるんだけど」
('A`)「え?あ、さっきの音!」
ウインドウを開いていたショボン。
慌ててドクオが開き、残りの三人もそれぞれに開いた。
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('A`)「……レベル2。
っていうか、もうすぐ3?
なんだこれ……チートすぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、レベル上がったから一緒に行けるんじゃない?」
('A`)「え?ああ……。いや、ダメだ。
レベル上げってのは、戦闘の経験を積むってことでもある。
いくらレベルが上がっても、経験が無いのは恐い」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……」
( ^ω^)「頑張ってくるから、待っててほしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。頑張ってね。
絶対戻ってきなさい」
( ^ω^)「はいだお!」
川 ゚ -゚)「それで、結局なんだったんだ今のは」
('A`)「おれがβの時には、
部屋をただで借りるための隠しイベントだったんだ。
まさか、こんな事になるなんて」
(´・ω・`)「もともとそうだったけどテストのときは隠していたのか、
正式サービスに際して変わったのか……」
川 ゚ -゚)「こういったイベントをするとレベルが上がるのか?」
('A`)「イベントやクエストでも経験値は入るけど、
ここまで入るのは……。
まあ今回のも、本当はもう少し経ってからクリアされるのを想定していたかもしれないな。
ある程度レベルが上がってからなら、
この量の経験値が加算されても簡単にレベルが上がったりしないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、明日頼まれるお使いをちゃんと出来れば、
また経験値が入るかもしれないのね?」
.
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('A`)「そうか。そうだな。可能性はある。
宿代の対価だから、お金やアイテムは手に入らないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私達もやるからね?ショボン」
(´・ω・`)「……うん。分かった」
('A`)「大丈夫だろ。
街の外に出さえしなきゃ」
川 ゚ -゚)「ああ。気を付けるよ」
(´・ω・`)
( ^ω^)「お?ショボンどうしたんだお?
また難しい顔して」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメだって言ってもやるわよ?」
(´・ω・`)「いや、それは一緒にやろう。
安全にレベルを上げられる可能性があるなら、やっておいたほうが良い。
経験も大事だけど、レベル、最大HPを上げられるチャンスを逃す手は無いからね」
( ^ω^)「じゃあどうしたんだお?」
(´・ω・`)「ドクオ、こういったβテストから変更ってのはよくあるのかな?」
('A`)「ん?ああ、そうだな。結構ある。
行けないところが行けるようになったり、クエストが増えたり。
今回みたいに分岐が増えたり」
(´・ω・`)「敵は?」
('A`)「敵?」
(´・ω・`)「見た目は同じモンスターだけど、動きが変わったり、
弱点が変わったり」
('A`)「!あ、ああ。そうだな。ある。…ああ、あるな。うん」
.
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(´・ω・`)「それじゃあ、」
('A`)「ただ、ここ周辺のモンスターと、
次の街に行くまでの道すがらのモンスターは大丈夫だと思う。
まだ武器を持つタイプは出てこないから攻撃のバリエーションも少ないし。
もし出没モンスターが変わっていたら、一度撤退するよ」
(´・ω・`)「うん。気を付けて」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ……」
( ^ω^)「大丈夫だお。
頑張ってくるから、ツンとクーもクエスト頑張って!」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく、能天気なんだから」
( ^ω^)「おっおっ」
('A`)「さて、じゃあそろそろおれ達は行くか」
立ち上がるドクオ。
続いてブーンが立ち上がり、
自然と残りの三人も立ち上がる。
('A`)「見送りは良いぞ。
外に出ないほうが良いだろ?」
(´・ω・`)「うん……。
ドクオ、一つお願いがある」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「出来るだけβテスターだってことが周りに知られないようにしてくれ」
('A`)「?ああ、わかった。
でも、何故だ?」
.
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(´・ω・`)「……長くなるし、杞憂で終わる可能性もある。
……戻ったら説明するよ、だから」
('A`)「わかったよ。
おまえが言うなら隠しておいたほうが良いんだろう。
気を付ける」
(´・ω・`)「うん。よろしく」
ξ゚⊿゚)ξ「……いってらっしゃい」
( ^ω^)「行ってくるお」
川 ゚ -゚)「二人とも、気を付けて」
('A`)「ああ」
互いの顔を見て頷きあう五人。
そしてせめて下まで行こうとする三人をドクオが制し、
ドクオとブーンだけが部屋を出て行った。
扉のしまる音がツンの胸を苦しめ、
クーの心に不安を呼び、
ショボンに後悔を覚えさせた。
けれど三人はそれを外には出さず、
しばらくの間しまったドアを見つめていた。
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おつとおむつ、ありがとうございます。
以上、今回の投下を終了します。
次回、『3.武器』
また、よろしくお願いします。
ではではまたー。
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乙
>>452辺りのドクオとブーンの気持ちすげえわかるわ
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おつー!
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おつおつ
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そんなレアなアイテム持ってて大丈夫なんかな・・
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乙です
現実世界もいいけどやっぱゲームに入るとおもしろい
次の更新まってます!
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それでは、投下を開始します。
今日もよろしくお願いします。
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3.武器
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『はじまりの街』から『ホルンカ』への道。
最短ルートではないが、
ドクオ曰く『モンスターがそれほどでない道』とのことだった。
('A`)「ブーン、片手剣の良さって、なんだと思う?」
( ^ω^)「お?」
ドクオが指示した通りに進んできたブーン。
立ち止まり、道すがらの大樹の下に隠れている二人。
ブーンはやってきた道を、一目散に駆け抜けた道を振り返る。
そこには四体の狼がいた。
闇に浮かぶ赤い八つの光、瞳と思われるその光を見て、
思わず身震いした時に、ドクオに問いかけられた。
( ^ω^)「だいたい初期装備とか主人公は片手剣だおね。
良さ……。良さ……。良さ……」
狼を気にしながらドクオと喋る。
('A`)「大丈夫だ、この場所は後ろの奴には縄張り外だから。
あと一分くらいで叢に戻る。
そしたらこの先に一匹狼が出る。
それは倒そう。
そこでは、順調に倒すことができれば、
倒した後に次の奴が出てくるはずだ。
ここで少し経験を積む」
( ^ω^)「わかったお」
('A`)「で、なんだと思う?」
(;^ω^)「おー。使いやすいのかお?」
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('A`)「それも一つだな。
片手で持って、手の延長線上の流れで攻撃することが出来る。
でも、それは一番じゃないと、おれは思う」
( ^ω^)「じゃあなんだお?」
('A`)「もう片方の手に盾を持てる」
( ^ω^)「おお!そうだおね」
('A`)「剣と盾、攻撃と防御を一つずつもてるんだ。
センスは必要だけど、かなり美味しいと思う」
( ^ω^)「なるほどだお。
あれ?でもドクオはもってないおね?
僕にも買えって言わなかったし」
('A`)「おれのやりたいスタイルには盾が邪魔なんだよ。
スキルスロットも二つしかないから剣と盾で埋まっちゃうし。
で、ブーン、お前も多分盾は持たないほうが良いと思う」
( ^ω^)「なんでだお?」
('A`)「お前の持ち味のスピードが損なわれる可能性が高い。
盾ってのは、相手の攻撃を受けて防ぐのが基本だ。
でもお前の持ち味がスピードなら、避けることが可能かもしれない」
( ^ω^)「スピード……」
('A`)「ただこれはおれの勝手な意見だ。
やりながらスタイルを決めれば良い。
スキルスロットの数にも限りがあるしな」
( ^ω^)「お……」
('A`)「さ、うしろの狼も去ったし、進むぞ。
まずはおれがやるから、二体目はブーンも参加してくれ」
( ^ω^)「わかったお」
.
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立ち上がるドクオ。
ブーンも立ち上がり、二人とも剣を構える。
('A`)「いくぞ」
( ^ω^)「おうっ!」
二人は闇に向かって走り出した。
二人が部屋を出た後、少しの間雑談していたが、すぐに沈黙が襲ってしまった。
それを感じ、立ち上がるショボン。
そして壁際に設置された小さいテーブルの上の水差しを確認して、グラスに手をかける。
(´・ω・`)「飲む?」
ξ゚⊿゚)ξ「え。あ、わたしは……」
川 ゚ -゚)「ああ。頼む。
ツンも飲むだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、うん。そうね。よろしく」
(´・ω・`)「了解」
グラスを三つ用意して水差しを手にしようとすると、間違えて指先でタップしてしまった。
するとウインドウが現れた。
(´・ω・`)?
ウインドウを読み、頷いた後操作を始めるショボン。
.
-
そして横の棚からティーセットを出してグラスを片付け始めた。
川 ゚ -゚)?
ξ゚⊿゚)ξ?
クーとツンが見守る中更にいくつか操作をすると、
トレイの上にティーセットを乗せてショボンが戻る。
(´・ω・`)「なんかね、お茶みたいのがあったんだ」
テーブルにトレイを置いた後、二人の前にソーサーにのったカップを置いた。
ほのかに湯気が立っている。
(´・ω・`)「凄いよね。あたたかいよ」
先程までと同じ位置に座ってカップを手にしたショボン一啜りして、呟いた。
それを見たクーとツンもカップを手に取る。
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとだ……」
川 ゚ -゚)「うむ。あたたかいな」
口を付けると、表情が和らいだ。
川 ゚ -゚)「……優しい味だな。
ほんのり甘い」
ξ゚⊿゚)ξ「昔飲んだような、初めて飲んだ様な。
不思議な味」
(´・ω・`)「……」
そんな二人を見て表情を緩めたショボン。
(´・ω・`)「さて、今日は疲れたでしょ。
早めに休もうか」
.
-
立ち上がり、奥のドアを開けるショボン。
一つ目と二つ目のドアは寝室のドアで、
三つ目は浴室に続くドアだった。
(´・ω・`)「こっちにはお風呂もあるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「今日はとりあえず横になろうかな」
川 ゚ -゚)「ああ」
ショボンが二回目に開けたドアの中を覗く二人。
セミダブルサイズのベッドが二つあり、リビングと同じ色調の部屋は、
落ち着くことが出来そうだった。
ξ゚⊿゚)ξ「この部屋使うから、入ってこないように」
(´・ω・`)「わかってます」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしい」
川 ゚ -゚)「ショボンはまだ休まないのか?」
(´・ω・`)「とりあえずさっきの本を読まないと。
あとあの本の部屋を隅々まで調査したいし」
川 ゚ -゚)「そうか……。
手伝いたいところだが、逆に負担になるだろうから止めておこう。
あまり無理はしない様にな」
(´・ω・`)「うん。ありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと寝なさいよ」
(´・ω・`)「ありがとう。うん。ちゃんと休むよ」
その後明日の事も簡単に決めた後、
ショボンに就寝の言葉を告げてから二人は寝室に入った。
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久々に遭遇した支援
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部屋に入った後、
それぞれにベッドに腰掛ける二人。
スプリングを確かめた後、
ツンはそのままの姿で横たわった。
ξ゚⊿゚)ξ「不思議な気分。
疲れているから眠れそうだけど、
夢の中で眠る様なものなのかな」
川 ゚ -゚)「体が疲れているように感じるが、
現実世界の体は疲れていない。
本当に変な気分だ」
ξ゚⊿゚)ξ「倦怠感?
だるいとか、精神的に疲労しているっていう。
あれなのかな。
それが、身体の疲れのように感じているのかも」
川 ゚ -゚)「……そうか。着替えが無いんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
川 ゚ -゚)「汚れたりしているわけではないが、服は脱がないとじゃないか?
特に防具はそれなりにごわごわしているというか……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、うん。そうね。
この革のやつ、外さないとか。
普通に脱ぐのとは違うのよね」
川 ゚ -゚)「ああ。多分ウインドウで操作るんだと思う」
腰掛けたままウインドウを開くクー。
そして操作をすると、そのままの体勢で胸当てと腰回りの装備品が消える。
川 ゚ -゚)「ふむ。普通に脱ぐよりは楽だな。たたまなくてよい」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってるのよ」
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-
横になったまま、天井を向いたままウインドウを操作するツン。
胸当て、腰の装備が消える。
そしてそのまま布の衣服も全て消した。
川 ゚ –゚)「ツン?」
下着姿になったツンを見て首をかしげるクー。
ξ゚⊿゚)ξ「……パジャマとか欲しいな。
売ってるのかな。そういうの」
川 ゚ -゚)「どうだろうな。自分で作る事も出来るらしいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「私の家庭科のレベルは知っているでしょ」
川 ゚ -゚)「こちらの世界ではスキルが全てだ。
裁縫スキルさえちゃんと持っていれば色々作ることが出来るらしいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ針とか糸とか自分で縫ったりしなくていいの?」
川 ゚ -゚)「そう思われる」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ。やってみようかな」
川 ゚ -゚)「そうしたら私の分も作ってくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「りょうかーい」
白い下着姿のまま掛け布団に包まるツン。
川 ゚ -゚)「何をしているんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「へへへ。ふかふかで気持ち良いよ」
川 ゚ -゚)「まったく」
胸当てや靴といった『装備』のみを解いたクーが立ちあがり、
扉の横のパネルをタップする。
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タップするごとに部屋の光が少しずつ暗くなった。
川 ゚ -゚)「ツンは、真っ暗はいやだったな」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。ありがと」
壁の燭台だけが、ぼんやりとしたオレンジの光で部屋を満たした。
自分のベッドにもぐりこむクー。
何度か寝返りをうった後、ウインドウを出した。
川 ゚ -゚)
小さな電子音が響く。
ξ゚⊿゚)ξ「脱いだ方が気持ち良いでしょ」
川 ゚ -゚)「うむ。
素肌にシーツの感触と毛のもふもふ感が直接当たって、
不思議な気分だ。
ツンも普段はパジャマだよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。パジャマ。クーは浴衣?」
川 ゚ -゚)「寝間着だな。
だが最近はスエットにした」
ξ゚⊿゚)ξ「変えたんだ」
川 ゚ -゚)「楽だな。あれは」
ξ゚⊿゚)ξ「女の子なんだから、可愛いのにしなさいよ」
川 ゚ -゚)「上下グレーではダメか?」
ξ゚⊿゚)ξ「女子力低いので却下です」
川 ゚ -゚)「ピンクはあまり好きではないんだがな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ピンク以外にもオレンジとか花柄とかあるでしょ。
クーは明るすぎない赤が似合うから、そんな感じのにするように」
川 ゚ -゚)「……善処しよう」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
それぞれに掛け布団に包まって会話をする二人。
言葉だけを抜き出せば取りとめのない『普段の』会話。
だがそこに流れる感情は、『普段』とはかけ離れていた。
そして沈黙が訪れる。
隣のベッドの上の友人が身じろぎ一つしないのを感じて、
クーは瞳を閉じた。
ξ゚⊿゚)ξ「寝た?」
川 ゚ -゚)「いや」
ξ゚⊿゚)ξ「そっち、行って良い?」
川 ゚ -゚)「ああ」
閉じると同時に声をかけられ、返事をした。
そして瞳を開けた時には、隣に友人が潜り込んできた。
ξ゚⊿゚)ξ「……ごめんね」
川 ゚ -゚)「いや、大丈夫だ。
セミダブル程度の広さがある」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、そうじゃなくて」
川 ゚ -゚)「それとも何か?私と二人では狭いとでも?」
ξ゚⊿゚)ξ「もう……」
.
-
寄り添うように横たわる二人。
お互いの肌が触れ、自然に繋がれる手。
二人は自他ともに認める親友だが、
性質からべたべたとする方ではない。
同じ格好をして手を繋いで繁華街を歩く女同士を見て
『バカみたい』
と同時に思う程度には冷めていて、気もあっている。
だが、今日は違った。
強く握られる手。
ξ゚⊿゚)ξ「なんか、変なことになっちゃったね」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「デジタルの世界。
ハイテクノロジーの成果。
ゲームの中」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、ゲームの中なのよね。
敵を倒してレベルを上げて、
自分を鍛えて更に敵を倒す。
ゲームの世界」
川 ゚ -゚)「そうだな。ゲームの中。
ゲームの世界だ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、遊びじゃなくなっちゃったんだね」
川 ゚ -゚)「遊んで、勝って、負けて、終わって、帰って、
『楽しかった』って笑うことが、出来なくなってしまった」
ξ゚⊿゚)ξ「ゲームだけど、遊びじゃない。
命がけのゲーム」
.
-
川 ゚ -゚)「武器で敵を倒さなければ、自分が死ぬ。
現実世界の自分が、死んでしまう」
訪れる沈黙。
クーは自分の手を握るツンの手が強くなったのを感じた。
そして彼女が自分に向かって寝返りをうったのを感じ、
なんとなくツンの方向に身体を向けた。
川 ゚ -゚)!
ξ ⊿ )ξ「……ごめん」
つないでいた手が解かれた。
そしてそのかわりにツンの両手はクーの背中に回された。
ξ ⊿ )ξ「ごめん……」
謝りながら、クーに抱きつくツン。
下着越しに互いの体温を感じる。
川 ゚ -゚)「ツン……」
ツンの名を呼び、自分の胸に顔をうずめる彼女の体と頭を抱える様に両手を回すクー。
川 ゚ -゚)「こんな状態になったんだ、私も心細い」
ξ ⊿ )ξ「違うの……」
川 ゚ -゚)「ツン?」
ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、しょぼんのせいだって、思った」
川 ゚ -゚)!
クーに抱きつくツンの腕の力が強くなる。
ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、ショボンに言われる前にそういう風に思っちゃった」
.
-
川 ゚ -゚)「ツン……」
ξ ⊿ )ξ「そして、ショボンが自分のせいだって言った時に、
本当に、本当に一瞬だけど、『その通りだ!お前のせいで!』
って思ったの」
川 ゚ -゚)
ξ ⊿ )ξ「でも信じて!本当に一瞬なの!
すぐにそんなの違うって思ったの!
ここには自分の意思で来たんだって、分かってた!
でも、でも、でも……ごめん……」
川 ゚ -゚)「そんなこと、思って当然だと思う」
ξ ⊿ )ξ!
川 ゚ -゚)「ただ私や、ドクオや、ブーンは、
ツンよりはショボンと付き合いが長いから、
そんな風に思わなかった。
それだけだ」
ξ ⊿ )ξ「ちがう……」
川 ゚ -゚)「あとな、私は……。
そしてきっと、ブーンやドクオも、ショボンの言葉に安心したんだ」
ξ ⊿ )ξ「え?」
川 ゚ -゚)「ショボンは、私達を生きて向こうの世界に戻すと言った。
あいつは不言実行でもあるが、それ以上に有言実行だ。
一度言ったことは、何としてでもやり遂げる。
だから、あいつがそういうなら大丈夫だろうって思ってしまったんだよ
ξ ⊿ )ξ「信頼しているのね」
.
-
川 ゚ -゚)「そんな良いもんじゃない。
私に限って言えば、結局甘えてしまっているんだよ。
あの日、あの土手で私に『qoo』のオレンジを手渡して泣き止ませた後、
要領を得ない私の言葉を組み立てて家まで連れて帰ってくれたあの日のショボンに、
私はまだ甘えているんだ。
あの日繋いでくれた手の温かさに、
私はまだ甘えてしまっているだけなんだ」
ξ ⊿ )ξ「クー」
川 ゚ -゚)「だから、ツンの持った感情の方が当たり前で、当然なんだ。
おそらく、自分を責めているショボンの心もな。
無条件であいつを信じている、
一瞬たりともあいつを責めなかった私達の方が、異常なんだ。
だから、ツンは気にしなくていい」
ξ ⊿ )ξ「でも……でも……」
川 ゚ -゚)「それにツン。
私はツンに感謝しているんだ」
ξ ⊿ )ξ「え?」
川 ゚ -゚)「ツンが言ってくれなかったら、
ショボンの事を信じるだけの、
その言葉にただ従う人形のようになってしまっていたかもしれない」
ξ ⊿ )ξ「クー」
川 ゚ -゚)「それではいけないんだ。
それでは、全ての責任をショボンに押し付けているのと変わらないんだ。
ショボンを頼るのと、すべて任せてしまうのは違う。
自分の事は自分で考える。
ショボンに頼るのはそれからなんだ。
それに頼ってしまうのはショボンだけじゃない。
ドクオにも、ブーンにも、そしてツン」
ξ ⊿ )ξ!
.
-
川 ゚ -゚)「ツンに頼ることだってある。
そして、私はみんなに頼ってもらえるようになりたい。
クーに任せておけば大丈夫だって言ってもらえるようになりたい」
ξ ⊿ )ξ「……クー」
川 ゚ -゚)「今はまだこの胸を貸すことくらいしかできないが、
これからは他の事でも頼られたいよ」
ξ ⊿ )ξ「クー……」
川 ゚ -゚)「それに、私が辛くなったら貸してくれるだろ?」
ξ ⊿ )ξ「!うん!」
川 ゚ -゚)「その薄い胸を」
ξ ⊿ )ξ「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「どうせ薄い胸ですよ。
っていうかなんなのよこの胸は!
体触る時にずるしたんじゃないの!」
川 ゚ -゚)「いや、現実世界より少し小さい気がするんだが……」
ξ゚Д゚)ξ「なんだとーーー!」
その豊満な胸に顔をうずめたまま、更に奥に進むように顔を横に振るツン。
川 ////)「つ、つんやめろ」
背中に回していた手を解き、両手で胸を外側から揉むツン。
親指や人差し指が時折小さな突起に触れるが、
優しく柔らかく、時に強くその柔らかくて白い胸を揉むので夢中であまり気にしていない。
川 ////)「つ、つん」
.
-
ξ゚Д゚)ξ「ここがいいのか!
ここがいいのか!
でかい胸しやがってこの女!」
川 ////)「つ、つん」
押し退けようとしたクーの手がツンのお椀型の胸を包む。
ξ////)ξ「んっ!」
クーの、女性としては少しだけ大きめの手で優しく包める大きさではあるが、
その柔らかさと弾力は見事なものだった。
クーの甘い吐息に紛れ、
ツンの口からも色付いた息が漏れた。
川 ////)「な、なんだツンはこういう風にされたいのか?」
ξ////)ξ「ちょ、ばか、やめなさいよ」
親指の先で突起を弾いた後に下から優しく揉み上げ、
谷間を強調する様に両サイドから押さえる。
川 ////)「ど、どうだ?」
ξ////)ξ「ば、ばか……。こっちだって……」
川 ////)「んっ…」
ξ////)ξ「あっ」
川 ////)「そ、そこは……」
ξ////)ξ「だ、だめ……」
互いの胸や体を弄り始めた二人。
その攻防は、数分後転がった二人がベッドから落ちるまで続いた。
.
-
ベッドから仲良く落ちた二人が我に返り、
互いの顔を見た後笑いあったころ、
隣の部屋ではショボンがダーツをしていた。
(´・ω・`)「……」
灯りの落とされた部屋の中で、
右手で構えた矢は青白く光り輝いている。
(´・ω・`)!
記憶の中の見様見真似だが様になっている姿勢で投げられた矢は、
吸い込まれるように的の真ん中に刺さった。
左手に持っていた別の矢を構えるショボン。
(´・ω・`)「まずは知識。
調べられることは、すべて調べる。
知れることは、すべて知る。
情報は、力だ」
投げられた矢は、青白い光をまとって的に刺さった。
(´・ω・`)「効率よく、力を手に入れる。
少しのことでは死なない体。
能力を身に付ける。
生きるための、力を身に付ける。
それぞれの特性に合致した、それぞれの力。
一人が最強になる必要はない。
いや、『最強』になんてならなくていい。
生き残るための、生き続けるための力があればいい」
二人が部屋に入った後に改めて室内を調査した際に見付けたダーツセット。
二十本の矢は、すでに半数が投げられていた。
.
-
(´・ω・`)「お金の単位はコル。
モンスターを倒せば手に入るけど、それを目的に戦うのは避けたい。
戦いは、自分を鍛えるためだけでいい。
生きるための力を手に入れるためだけでいい。
アイテムを売って稼ぐなら、
売る相手は価格を設定できるプレイヤーの方が最終的には儲けることができるはず
採取、宝箱、ドロップ品よりも、
自分で作って売ったほうが価格をコントロールできる」
呟きとともに手から放れる矢。
寸分の狂いもなく狙った場所に当たっていることは全く意識せず、
自分の思考の中に入っているショボン。
(´・ω・`)「需要と供給。
自分たちにとって必要なもの。
他のプレイヤーにとって必要なもの。
武器、防具、装備、アイテム、生活用品。
おそらくは、武器や防具、装備にアイテムは手に入りやすいはず。
ゲームとしての必需品は、低層階からも準備されているはず。
でも、『生活』のための品はそれほどではないはず。
けれど、これからここで『生活』するのならば、
戦い以外の『遊び』が重要になってくる」
構えた矢の放つ青白い光が部屋の中を飛ぶ。
(´・ω・`)「死なないこと、生きることは考えるまでもない。
その先にある、ここで生活するということを。
笑顔で、笑うことのできる生活をするためにできることを考えろ。
四人の顔に、笑顔を。
泥水を飲むのは、僕だけでいい。
汚い部分は僕だけが知ればいい。
四人には、笑顔で……」
.
-
《ホルンカ》
始まりの街の隣。
大きさは村と呼ばれる程度だが、
宿屋や武器屋といった基本の設備は整っている。
('A`)「さて、ここが目的の村だけど」
村の門をくぐり、圏内に入ったことを確認してから一息ついたドクオ。
そして振り返った。
('A`)「大丈夫か?」
(;^ω^)「つ、疲れたし危なかったけど、無事に着けてよかったお」
('A`)「だな」
剣を杖のようにして立ち、
肩で息をしている友を見つつ周囲を観察するドクオ。
('A`)「まずは一休みするか」
(;^ω^)「お?大丈夫なのかお?
来る途中の話だと、
このクエストを知っている片手剣使いは
殺到するんじゃないかって言ってたおね」
('A`)「思ったより……というか、
全然プレイヤーの気配がない」
( ^ω^)「そうなのかお?」
('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」
( ^ω^)「そうなのかお……」
.
-
('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」
( ^ω^)「そうなのかお……」
('A`)「あれを聞いてすぐ行動に移せたのは、
やっぱり少ないみたいだな。
ショボンがいてくれてよかったよ。
おれ一人だったらここに来る度胸なんて出なかったかもしれない」
( ^ω^)「ショボン……」
剣を鞘にしまい、大きく伸びをしたブーン。
( ^ω^)「ドクオ、行くお」
('A`)「休まなくて大丈夫か?」
( ^ω^)「早く手に入れて、強くなって、みんなのところに帰るんだお」
('A`)「……そうだな」
決意を込めてにっこりとほほ笑んだブーン。
それにつられて笑顔を見せたドクオ。
だがすぐにその笑みは消えてしまった
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「結局ショボンに頼っちまったんだな」
( ^ω^)「ドクオ」
表情と身振りでブーンを促しつつ歩き出すドクオ。
ブーンも慌てて歩き出し、彼の横に並んだ。
('A`)「この世界でなら、おれがイニシアチブをとれる。
あいつを指導して、かばって、一緒に強くなって、
ショボンにおまえもおれたちを頼ったっていいんだって分からせるつもりだったのに」
.
-
( ^ω^)「ショボンに甘えてばっかりだったおね」
('A`)「ああ。
あいつが、その方が笑顔を見せてくれるから、
まずはそれでって思ってただけなのにな」
( ^ω^)「ショボンはまだ気にしているんだおね」
('A`)「多分。
三つ子の魂百までじゃないけどよ、
小学校でいじめられてたからって、
たまたまそれを気にしないおれ等に会って、
なんとなく一緒に遊ぶようになったからって、
そんなに気にしなくていいのによ」
( ^ω^)「本当に、それだけなのかお」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「いや、本当にそれだけなのかなって思ったんだお。
それだけの理由なのかなって」
('A`)「んー。
まあ、いじめが無くなってクラスに馴染みかけたのが小5の途中。
中学校に入る前にはあいつの天才性でまた微妙にはぶられ始めてたからな」
( ^ω^)「中学校に上がる前の春休みに、
本城病院がマシログループの総合病院になって、
ショボンがその子供ってことが広まって」
('A`)「ゴマすって媚びる奴らと、
あからさまに陰口いうやつらばっかりで」
( ^ω^)「私立に通えって聞こえるように言ってたやつもいたおね」
('A`)「いたな。
マジむかついたから、下駄箱にごみ入れといた」
(;^ω^)「ドクオ……」
.
-
('A`)「ツンがあの場にいたらすごいことになってただろうな」
(;^ω^)「初めて学区が違って良かったって思えたお」
('A`)「表立ってのいじめってのは無かったと思うけど、
居心地は良くなかっただろうな」
( ^ω^)「私立に行かなかったのは僕たちと離れたくなかったって本当なのかお」
('A`)「どうだろうな。
おばさんが笑いながら言ってたけど」
( ^ω^)「でも、幼稚園で行ってた私立で持ち上がらなかったのも、
幼稚園でいじめられてたからなんだおね」
('A`)「それも言ってたな。
ま、4歳にして三島由紀夫とか量子力学の本とか読んでたらしいから、
浮いてはいたんだろうけど」
( ^ω^)「それは引く」
('A`)「だよなー」
立ち止まり、互いの顔を見て笑う二人。
('A`)「空気の読み方が大人のそれだったみたいだしな」
( ^ω^)「ショボンにとってはお遊戯とか絵本とか理解の範囲外だったみたいだおね」
('A`)「無理やり合わせても、ダメだっただろうな。
『大人びている』とか言えるレベルじゃないし」
( ^ω^)「見た目は子供、中身は大人」
('A`)「殺人はおきてないぞ」
( ^ω^)「おっおっお」
笑いながら歩き出す二人。
.
-
('A`)「人生経験積んでるわけじゃないから、
あの名探偵ほど子供のふりができてなかっただろうし」
( ^ω^)「本当に子どもなのに子供のふりってのもすごいおね」
('A`)「そういやそうだな」
今度は立ち止まらずに噴き出す二人。
そしてドクオが立ち止まり、ブーンも歩くのをやめた。
目の前には小さな民家。
( ^ω^)「この家かお?」
('A`)「ああ。ここでクエストを受ける。
病気の少女に薬を届けるお使い系だけど、
薬は出現率の低いモンスターからしかドロップできない。
あとでちゃんと話すけど、いろいろ注意点があるから気をつけろよ。
報酬でもらえる片手剣はそのままでも店売りより強いし、
強化次第では3層くらいまで使えるはずだ」
( ^ω^)「わかったお」
('A`)「よし、じゃあ入るか」
扉に手をかけようとするドクオ。
しかしブーンがついてこなかったため、
手をかける前に振り返った。
('A`)「どうした?」
.
-
( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「ぼく、頑張るお。
早く強くなって、みんなのところに戻れるように。
ツンを守れるように。
みんなを守れるように。
……ショボンに頼ってもらえるように」
('A`)「ああ。
おれも頑張る。
頑張るしか、ないんだよな」
決意を込めて頷き合う二人。
そしてブーンがこちらに向かってきたのを見てから、
ドクオは民家の扉を開けた。
《はじまりの街》
日付は既に明日になって数時間経っている。
ショボンは、流れ作業のように手を動かし、
矢を的に当てていた。
(´・ω・`)「どうすればいい……。
どうすればいい……。
みんなを守るには……。
笑顔で過ごしてもらうには……」
既に何度も読んだ本が足元に何冊か置かれている。
先ほどまでは時折思い出したかのように開き、
中を貪るように読んでいたが、
ここ一時間は開くことはなかった。
.
-
(´・ω・`)「まずは今わかっている事実の検証。
僕たちの持つアドバンテージを生かす方法」
先ほどまで青白く光っていた矢は、
今はオレンジ色の光を帯びている。
(´・ω・`)「知識を持つものは妬まれる。
それは、どんな世界でも同じ。
その知識を持たざる者に公平に分配し、
持つ者が持たざる者より不幸にならない限り、
その思いは消えない。
おそらくこの先、βテスターは妬まれ、忌避される。
その仲間である僕らも、その的になる」
ショボンの手から放たれた矢は、
弧を描いて的に刺さった
(´・ω・`)「僕は、僕を、僕自身を見てくれる皆を、
守るためならば、なんだってやる。
誰の命も、僕の命も、気にしない」
手に持った矢は青白く光り、
放たれると同時に光の直線を描きながら的に刺さった。
(´・ω・`)「……きにしない」
意識せずに再び矢を構えるショボン。
しかし手は動かず、オレンジ色の光だけが弱弱しく部屋を照らす。
(´・ω・`)「……父さん……母さん……。
あの爺に何を言われても、頼むから、馬鹿なことはしないでよ……。
……志也兄さん……。
僕達がログインした時にはまだ入っていなかったはず。
このことが報道されるまで何かしらの事情でこちらに来ていなければいいけど……。
……でも、もし……来ているとしたら……」
.
-
手が動き、矢が放たれる。
的に向かって弧を描くオレンジの光。
そして中央に刺さっていた矢に当たった。
二つの矢が、床に落ちる。
初めて、的に当たらなかった。
(´ ω `)「……たすけて」
窓の外では、朝の白い光が街並みを照らし始めていた。
.
-
以上、本日の投下を終了します。
乙と支援、ありがとうございます。
次回、『4.スキル』
よろしくお願いします。
ではではまたー。
.
-
乙
-
ショボンも人の子か…
乙
-
正直本編より今の話が面白いわ
おつ
-
おつおつ
-
おつ!
-
>>494
だからこそのシャキンの存在なんだろうな
-
乙乙
-
人の子だけど真ん中に刺さったダーツに当ててるんだよな…
おつ
-
今思ったんだけど>>398の2023年って一年ズレてないすか
-
おむつー
-
こんばんは。
それでは投下を始めます。
今日もよろしくお願いします。
と思ったら。
あーーーーーーー。orz
>>501 様
ご指摘ありがとうございます。
間違えてますね。
はぁ……orz
脳内修正をお願いします。
それでは、はじめます。
.
-
4.スキル
.
-
アインクラッドに囚われてから三日目の昼、
始まりの街の入り口で五人は合流した。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ、無事でよかった」
( ^ω^)「おっお。強くなって帰ってきたお」
('A`)「こいつ頑張ったぞ。もう一人でも往復できる」
川 ゚ -゚)「頑張ったのはドクオも同じだろ。
お疲れさま」
外から手を振ってやってきた二人に駆け寄ろうとするツンとクー。
しかし門の外に出る前にドクオとブーンが慌てて走り始め、
門の中で落ち合うことができていた。
(´・ω・`)「メッセージはもらっていたから無事なのは分かっていたけれど、
顔を見られてやっと安心できたよ。
二人ともお疲れさま」
( ^ω^)「おっお。ショボンもお疲れさまだお」
('A`)「村で飯食べてるときにレベルが急に上がってびっくりしたぞおい」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふん。
私たちがこっちで何もしないと思ったら大間違いよ。
ショボンのよみ通り、あの人の指定したクエストは経験値が得られるのが多かったようよ」
(´・ω・`)「パーティー設定してあれば離れていても加算してくれたからね。
最初のクエストでそれが確認できたから、やれるクエストは全部消化したよ」
( ^ω^)「危ない真似はしなかったんだおね」
川 ゚ -゚)「外に出るクエストはショボンがストップさせたからな」
('A`)「それでここで待ち合わせだったのか」
(´・ω・`)「そういうこと。
フラグは立てまくったから、
いまから六つ消化して、できれば今日中、
遅くとも明日の朝には旅立ちたい」
.
-
( ^ω^)「おっお!戦闘は任せてだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちの戦闘訓練でもあるんだから、
あんたたち二人だけ戦っても仕方ないんだからね」
('A`)「ん。了解」
川 ゚ -゚)「だが、ブーンの戦いぶりを見られるのは楽しみではあるな」
( ^ω^)「おっおっお。
見て驚くなだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……すぐに追いつくからね」
(´・ω・`)「それじゃあ行こうか。
まずは青猪ニ体と、緑猪一体を倒したい」
('A`)「わかった」
それぞれに武器を握り待ちの外に出た五人。
街に残った三人は久し振りの戦闘に少し緊張気味だったが、
帰ってきた二人の落ち着いた身のこなしと指示により、
順調に戦闘を重ねていった。
アイネ=ハウンゼンの宿
消化予定のクエストを消化することはできたが日が落ちてしまったため、
この日もこの宿に泊まることにした。
川 ゚ -゚)「もともとその予定ではあったのだがな」
('A`)「どうした?クー」
川 ゚ -゚)「いや、もっと早くクエストを消化できたら、
今日中に次の町に行きたいとショボンは言っていたなと思ってな」
.
-
('A`)「?ああ。そんなことも言っていたな。
最後にはあいつも戦闘に入れ込んでいたけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとよね。
最初は私とクーが戦うのを後ろでむすっとした顔で見ていたくせして」
リビングでくつろいでいる三人。
ドクオはまだソファーの快適さに慣れていないが、
ツンとクーはゆったりと腰かけている。
('A`)「まあそういうなって。
最初のうち、二人の戦闘はやっぱり危ういところがあったから。
おれとブーンがついてちょうど良い感じだった」
ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもねぇ」
ツンに至っては半分横になっているような姿勢で、
ふかふかのひじ掛けに手をのせて、その上に顎をつけて会話していた。
川 ゚ -゚)「うむ。
長刀と槍はやはり勝手が違うし、
剣技も槍としての技だからまだ慣れていないな。
その点でいえば、ツンの方が武器の使い方はうまいんじゃないか?」
あまりの行儀の悪さに隣に座っていたクーがお尻を軽くたたいた。
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
クーの言葉に疑問符を投げかけてから「良いのよドクオは」と言いながらも起き上がり、
テーブルの上のカップに手を伸ばすツン。
('A`)「こいつの行儀の悪さは知ってるから大丈夫」
川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「変なところで真面目なんだから」
.
-
川 ゚ -゚)「ブーンに嫌われるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでそこでブーンの名前が出てくるのよ」
('A`)「ブーンも知っているから大丈夫だ」
川 ゚ -゚)「さすがは幼馴染ということか」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンといえば、あの二人も遅いわね」
('A`)「そうか?
どうせブーンが寄り道してるんだろ」
視界の左上を気にしながらドクオが答える。
そこにはパーティーメンバーの名前とそのHPバーが表示されていた。
川 ゚ -゚)「最初は少しなれなかったが、
便利なものだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも視界が塞がれるわよね」
同じように表示を見る二人。
一番上に自分の名前とHPバー。
その下に友達四人の名前と対応するHPバーがあり、
今近くにいない二人のHPが満タンのまま動いていないことを確認した。
('A`)「非表示にもできたはずだけどな。
あと透過率を上げて薄くしたり。
でも出来れば慣れておいてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり?」
('A`)「仲間の命綱になるかもしれないからな」
川 ゚ -゚)「だが、五人分でもそれなりに視界を塞がれているから、
これが十人、二十人と増えたら」
('A`)「パーティーは最大六人だから、
増えてあと一人分だよ」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「六人?」
('A`)「そ。
行動を一緒にしたりすることはできるけど、
互いのHPを確認しあえたり戦闘時の効果を分け合えるパーティーを組めるのは、
最大で六人なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」
('A`)「クエストやイベントで参加人数が固定されたりしたら
増減する時もあるかもしれないけど、
滅多にないだろうな」
川 ゚ -゚)「それではやはりあの時のショボンは嘘をついたんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばそうね」
('A`)「何かあったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日お使いクエストをやってるときに、
変な男に声をかけられたのよ。
ちょうどショボンが一人で買い物してて、
私とクーが少し離れたところで待ってた時だったから
ナンパだと思ったんだけどさ」
川 ゚ -゚)「どうせ私たちの容姿に対して
美辞麗句を並べているだけだと思って
全く話しは聞いていなかったんだが、
ショボンが戻ってきたら
『俺も仲間に加えてくれ!』
と言い出したからびっくりした」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
朝から後ろを付いてきてたみたいで、
ストーカーかと思った」
川 ゚ -゚)「なんとなく後ろにいるなと思ってはいたが、
どうせまたツンがつけられているんだと思ったんだがな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
ストーカーもどきのナンパはあんたの方が多いでしょ。
一見清楚系だから」
川 ゚ -゚)「ツンは見た目が派手だから、
とりあえず声をかけてくるようなバカが多いだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
だから昨日の奴みたいに付きまとう系はクー相手よ。
あーでも、昨日の奴はあの時の奴に似てた感じがする。
ほら覚えてる?駅で待ち合わせした時に声をかけてきたバカ」
川 ゚ -゚)「数が多くて覚えきれない」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あの時よ。
あんたがなんだかってお寺にお参りに行きたいとか言って
駅で待ち合わせした時に声かけてきたオールデニムでリュック背負った」
川 ゚ -゚)「ああ。あの時のバカか」
ξ゚⊿゚)ξ「似てない?」
川 ゚ -゚)「雰囲気は似ていたかもな」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。似てたってー」
川 ゚ -゚)「高岡美咲と結城かなえの区別がつかない者に似ているといわれてもな」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクモの顔なんてみんな一緒よ。
っていうか、ちゃんと見てないし。
着こなし方を参考にしているだけなんだから」
川 ゚ -゚)「たかみーの方は芸能界デビューしたみたいだぞ。
ドラマの出演が決まったとかなんとか書いてあった」
ξ゚⊿゚)ξ「へー。やっぱあの雑誌のドクモはそっちに行くんだ。
そういえば水樹リンダも出身だったよね」
.
-
川 ゚ -゚)「ああ。
芸能界への道になってるな。
ツンも原宿辺り歩いてればスカウトされるんじゃないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「興味ないからなー」
('A`)「えっと……いいか?」
二人の脱線した会話に割って入るドクオ。
ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
('A`)「色々と突っ込みたいところはあるんだけどさ、
とりあえずその男とショボンの会話を覚えてる?」
会話を途切れさせられたことは気にせずにドクオを見る二人。
そのドクオの顔はかなり疲れたように見えたが、
二人ともそれに関しても気にしなかった。
川 ゚ -゚)「一言一句覚えているかけではないが、
流れくらいなら」
('A`)「どんなだった?」
川 ゚ -゚)「私たちがクエストを消化しているのを見て、
今のここで既にそんなことをしている人を初めて見た。
仲間に入れてほしい。
そんなことを言っていた」
ξ゚⊿゚)ξ「そしたらショボンが無理って答えて、
でも引き下がらなくて、
結局リアルからの友達で作ったパーティーで
もう入れることはできなとか言って、
何とか諦めさせてたわよ」
('A`)「……ふむ。
そっか……。
ショボンは、驚いてたか?
話しかけられたとき」
-
ξ゚⊿゚)ξ「え?ああ、そうね。
急にだったし。
驚いてたみたいだったけど?」
('A`)「でも、朝から後ろを付いてきてたんだよな?」
川 ゚ -゚)「ああ。ツンの後ろをな」
ξ゚⊿゚)ξ「クーの後ろをね」
('A`)「それはどっちでもいい。
……そっか。
ショボンも落ち着いてるように見せてただけなんだな。
……そりゃ、そうだよな」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?ドクオ」
('A`)「……ほら、ショボンっていいところの坊ちゃんだろ。
だから小さい頃からまぁそれなりに色んなことがあったらしいんだよ。
だから結構視線とか後ろを付いてくるやつとかに敏感なんだけど、
昨日は気付いていなかったんだなと思って」
川 ゚ -゚)「それもそうだな。
マシログループの中枢の関係者の子供。
ショボンの小さい頃は親が医者程度しか周囲には広まっていなかったはずだが、
調べればすぐにわかることだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ、そうよね。
しかも私達のことばかり考えているわけだし」
('A`)「ん?いや、そうか。違うな」
自分の考えに一人納得し、
更に二人に説明して考えをまとめたドクオだったが、
ツンの言葉で今までとは違う答えにたどり着いた。
ξ゚⊿゚)ξ「何がよ」
('A`)「そう、ショボンはおれたちのことを一番に考えている。
だから昨日は二人に対する付きまといや監視なら、気付いただろう」
.
-
川 ゚ -゚)!
ξ゚⊿゚)ξ!
眉間にしわを寄せて新たな考えを話し始めるドクオ。
クーとツンはその言葉にはっとした。
川 ゚ -゚)「そうか」
ξ゚⊿゚)ξ「私たち狙いじゃなかった」
('A`)「そう、おそらくそいつは…」
ξ゚⊿゚)ξ「狙いはショボンだった!
('A`)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンをナンパしたかったのね!」
('A`;)「違うわボケ!」
たどり着いた答えは違っていた。
川 ゚ -゚)「違うのか?
ショボンは違うと思うが、そういうのを否定はしないぞ?」
('A`)「ナンパから離れろ」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだつまらない」
('A`)「はぁ……」
川 ゚ -゚)「では本当にクエストをしている私たちの仲間になりたかったのか?」
('A`)「本当に『仲間』になりたかったのかはわからねーけどよ。
『今、この状況下でクエストをやっているおれ達』に
いや、『今、この状況下で冷静にクエストを消化しているショボン』に対して、
興味があったのは事実だろうな」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「でも、この街のクエストって初歩の初歩ばかりなんでしょ?
付いてくる必要なんてないし、
クエストのやり方を覚える練習レベルってショボンは言ってたわよ?」
川 ゚ -゚)「うむ。付いてくる必要があるとは思えないが」
('A`)「どんなに簡単なクエストでも、
つまずく奴は躓く。
だから自分がやろうと思っているクエストを先にやっている奴がいたら、
参考にして付いてくる奴だっているよ。
でも多分、今回はそんな話じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「もったいぶらずに言いなさいよ」
('A`)「もったいぶっているわけじゃないって。
っていうか、二人だって本当はわかってるんだろ?」
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ
ドクオの問いかけに口を閉ざす二人。
その行動こそがドクオの言葉が正しいということを示していた。
('A`)「二日経って、一見平穏だけど、
やっぱり小さな騒ぎは起こってる。
平穏といっても、おそらく大体の連中は、
何も行動を起こせずにこの街で宿屋とかに籠ってるんだろう。
ログイン時にもらえる金額が残ってれば、
一番安い宿屋なら一週間くらいなら泊まれるからな。
教会の奥の部屋なら雑魚寝だけどただのところもあったはずだし、
ベッドはないけど出入り自由の建物だってある。
おれ達がいた村にも昨日になってちらほらやってくる奴がいたけど、
あの行動を見る限りおそらくみんなβテスターだ。
で、何が言いたいかっていうと、今この街で冷静にクエストをやる奴なんて、
ほとんどいないってことだ」
.
-
苦しそうに話すドクオ。
それは話すことが苦しいのではなく、
自分が言葉にして出した内容が、
今のこの世界を、自分たちを取り巻く環境が
悲惨なものであるということを改めて明確にしてしまうだからだった。
しかし彼は続ける。
('A`)「おれ達は、幸運なことにこの宿に居られるし、
自分でいうのもなんだけど仲間内にβテスターがいて、
更にショボンが居てくれたからこんなバカ話ができているけど、
ほとんどはまだ絶望していて、活動できていないだろう。
今もう前向きになれてる人なんて、きっとほんの一握りだ。
そんな中でショボンが冷静にクエストをこなしている姿は、
仲間と一緒に行動している姿は、どう見えたか。」
口を閉ざすドクオ。
二人も何も言えず、沈黙が部屋を支配する。
三人の頭には、『羨望』という言葉と、
『嫉妬』という言葉が浮かんでいた。
( ^ω^)「ただいまだおー!」
突然開かれた扉。
重苦しい空気を吹き飛ばす元気な声。
ブーンの登場に、
あからさまにほっとした顔をする三人。
('A`)「おう、お帰り」
ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。
遅かったわね。
どこで道草食ってたのよ」
川 ゚ -゚)「ショボンもお帰り。
買い物はどうだった?」
( ^ω^)「おっおっお。
街のはじからはじまでいったら流石に時間がかかったんだお」
.
-
(´・ω・`)「ただいま。
遅くなってごめんね。
ご飯も買ってきたよ」
ブーンの後ろからショボンが続いて入ってくる。
ショボンは手には何も持っておらず、
テーブルの前まで来るとウインドウを開いた。
( ^ω^)「手に持たなくて良いってのは楽ちんだおね」
同じようにブーンもウインドウを開き、
目の前に浮かんだ操作パネルをタッチしていく。
あっという間にテーブルの上はアイテムで埋め尽くされた。
(´・ω・`)「回復、解毒、麻痺解除といったPOT類。
ドクオに教えてもらった店で買いそろえたよ」
('A`)「安かっただろ?
このフロアだと、多分教えた店が一番安い」
(´・ω・`)「そうなんだ。
じゃあちゃんと場所を覚えないとだね」
出したアイテムからいくつかをいそいそと袋に入れ、
部屋の片隅に移動するショボン。
川 ゚ -゚)「POTを自分で作ったりもできるんだろ?
その方が安くならないか?」
テーブルの上のアイテムを仕分け始めるドクオ。
反対側のソファーに座っているクーがピンク色の瓶を手に取った。
('A`)「できるけど、スキルを鍛えないといけないし、
材料も買ったら街売りより高くなる」
川 ゚ -゚)「採取すればよいだろう」
.
-
('A`)「クー、スキルを鍛えるつもりか?」
川 ゚ -゚)「ああ、折角だからな」
ドクオに向かってにやりと笑うクー。
('A`)「まあ、パーティーって考え方なら、それもありだな。
ソロなら戦闘に役立つスキルを先に覚えてほしいけど」
川 ゚ -゚)「今日手に入れたアレを使えば問題ないだろ?
それに私達はスキルスロットが現時点では余裕があるわけだし」
('A`)「言っておくが『余裕』があるわけじゃないぞ。
戦闘に限っても覚えておいた方がよいスキルはまだたくさんある」
ξ゚⊿゚)ξ「『裁縫』は外さないわよ」
( ^ω^)「『鑑定』も大事だと思うお」
クーの隣でツンが、
ドクオの隣に座ったブーンが既にスキルスロットに入れたスキルを口にした。
('A`)「…『調剤』なら『裁縫』よりはましか」
ξ゚⊿゚)ξ「女には大事なスキルよ」
('A`)「家庭科の成績底辺だったくせして」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょ!何で知ってるのよ!」
('A`)「母ちゃん経由でおばさんから聞いた」
ξ#゚⊿゚)ξ「母さんったらもう……」
川 ゚ -゚)「ツンは設計図は描けるが細かい作業が苦手だからな。
料理も中華はうまかったぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふん」
('A`)「女子中学生が中華鍋を振る姿を想像できない」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
川 ゚ -゚)「ブーン?
顔がこわばっているがどうした?」
(; ^ω^)「お?なんでもないお」
('A`)「2月14日は決死の覚悟でアレを食べなきゃいけなかったから、
それを思い出したんだろ」
川 ゚ -゚)「なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでクーは納得してるのよ!」
(; ^ω^)「お、おいしかったお。ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら」
('A`)
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ「何か言いなさいよ二人とも」
('A`)「よし、仕分け完了。
各自、自分のアイテム欄に入れておけ」
川 ゚ -゚)「分かった」
( ^ω^)「了解だおー」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと三人とも?話は終わってないのよ?」
しゃべりながらもテーブルの上のアイテムを仕分けしていたドクオが、
三人の前にそれぞれアイテムを置いた。
クーとブーンはウインドウを開き、
アイテムを一つずつ確かめながら閉まっていく。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「終わったらゆっくり話しましょう」
ツンも諦めて二人に倣って作業を始めた。
そして四人がアイテムをすべて収納すると、
待っていたかのようにショボンが声をかけた。
(´・ω・`)「お待たせ」
両手で持ったトレイの上には、
五つ皿が乗っていた。
そして皿の上には、
焼けた肉の塊が乗っている。
( ^ω^)「おっおっお!
お肉だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はしゃがないの!」
川 ゚ -゚)「ショボン、ショボンの分のアイテムはあちらの台の上に置いておくぞ」
テーブルの上を片付けるクー。
ブーンは立ち上がってトレイをのぞき込んでいる。
(´・ω・`)「ありがと、クー。
仕分けありがとうね。ドクオ。
ブーン、ちゃんと全員分あるから落ち着いて。
ツン、あそこにおいてあるパンの入った籠を持ってきてもらえるかな」
( ^ω^)「いい匂いだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「了解。
三つともいいのよね?」
川 ゚ -゚)「では私はもう一つの皿をもって来よう。
このサラダも良いんだな?」
立ち上がり、ショボンに頼まれた籠の置いてる部屋の隅に向かうツン。
壁際のローテーブルにショボンの分のアイテムを移動出せたクーも、
ツンの後ろに続いた。
.
-
(´・ω・`)「うん。三つとも。
ありがと、クー」
トレイのまま一度テーブルの上に置くショボン。
( ^ω^)「おいしそうだお!
向こうではパンくらいしか食べなかったから、
お肉うれしいお」
こぶし大の肉はこんがりと焼けており、
その上から褐色のソースがかかっていた。
(´・ω・`)「喜んでもらえてうれしいよ」
にっこりとほほ笑むショボン。
ブーンも笑顔で皿をトレイからテーブルに移す手伝いをする。
( ^ω^)「ドクオも手伝うお」
('A`)「で、ショボンが『料理』か……」
(´・ω・`)「相談せずにスキル決めてごめんね」
('A`)「謝るようなことじゃないけどよ」
ブーンに促され、食事の準備を手伝い始める。
('A`)「いつのまにそんなにレベルを上げたんだ?」
(´・ω・`)「焼くのはタイミングの問題だけだったよ。
もっとレベルが上がるか専用の道具があれば自動になりそうな気がするけどね」
('A`)「かかってるソースは?」
(´・ω・`)「焼く機械の上の棚にいろいろあったんだ。
一回戻った来た時にブーンに詳しく調べてもらったら、
細かい注釈があって、
それに逆らわないでできる限り色々混ぜてみた。
ちゃんと味見もしたからそれほどまずくはないと思うよ」
('A`)「うん……」
.
-
( ^ω^)「おいしそうだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、パン」
川 ゚ -゚)「サラダ……。
この野菜は食べて大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「ちゃんと食用って書いてあったよ。
ドレッシングは肉に使った物の流用だから味が似通っちゃうけど」
('A`)「パンも焼いたのか?」
( ^ω^)「それはさっき一緒に買ってきたやつだお。
ちょっと硬いけど、味はまあまあだおね」
('A`)「向こうで食べた奴と一緒か」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよさっきから」
('A`)「いや、……うん。なんでもない」
ξ゚⊿゚)ξ「変な奴」
( ^ω^)「準備完了!
さあ食べるお!」
全員の前に肉の皿と野菜の皿が一つずつ置かれ、
中央にはパンの入った籠がある。
(´・ω・`)「口に合えばいいけど」
水の注がれたグラスをショボンが配るときには全員が座っていた。
( ^ω^)「大丈夫だお!
いい匂いがするおね!」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。おいしそう」
川 ゚ -゚)「あれから取れた肉とは思えないな」
ξ゚⊿゚)ξ「言うな」
.
-
( ^ω^)「牡丹肉はおいしいお」
(´・ω・`)「処理さえちゃんとすれば、
臭みも抑えられるからね。
今回はソースも濃い味にしたし」
川 ゚ -゚)「ふむ。楽しみだ」
( ^ω^)「それじゃあみんな手を合わせて」
ブーンの合図で手を合わせる五人。
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)
「いただきまーす」
('A`)(´・ω・`)
この世界に来てから初めての、
五人でする食事だった。
( ^ω^)「おいしかったおー。
おなかいっぱいだおー」
両手を広げてソファーの背にもたれかかりながら
天井を見上げているブーン。
ξ゚⊿゚)ξ「お行儀悪いわよ」
川 ゚ -゚)「ツンは言える立場にいないな」
流石にブーンほどではないが、
正面に座るツンも体をソファーに沈ませてひじ掛けにもたれている。
ξ゚⊿゚)ξ「そういうあんたもでしょ」
川 ゚ -゚)「私は自分の事がわかっているからな。
人に言うような真似はしていない」
.
-
隣に座るクーもゆったりとソファーに腰を掛けている。
ツン程ではないが、だいぶリラックスしているように見えた。
そしてさらに二人に共通しているのは、目が既に閉じかけているということだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「なによそれー」
川 ゚ -゚)「はっはっはー」
力のない声で会話をする二人。
('A`)「……三人ともだらけすぎだ」
ドクオはブーンの隣でソファーに浅く腰かけていた。
そして少し前のめりで、
開いたウインドウを操作していた。
(´・ω・`)「今日も疲れたしね。
早く休みたいけど、まずは明日からの予定を打ち合わせよっか」
片付けを終わらせたショボンが戻ってくる。
先ほどと同じトレイをもっており、
その上にはマグカップと大きめのティーポットが乗っていた。
川 ゚ -゚)「手伝おう」
(´・ω・`)「ありがと」
クーとショボンがカップを配り終わると、
四人は浅く腰かけて話をする体制になった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、起きなさい」
( ´ω`)「おー。もう朝かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「バカ言ってないの」
('A`)「まったく」
目をこすりながら体を起こすブーン。
大きくあくびをしたのを見てから、
座ったショボンが口を開いた。
.
-
(´・ω・`)「さて、まずは明日からのスケジュールの確認かな」
('A`)「予定通り『ホルンカ』に向かう」
(´・ω・`)「うん。まずは『ホルンカ』へ。
そこでモンスターと戦うことに慣れるのと、
レベル上げ、クエストの消化をしたい」
川 ゚ -゚)「目標とかあるのか?」
(´・ω・`)「実際にはやるつもりはないけど、
この『はじまりの街』と『ホルンカ』を、
一人で一日で往復できるような強さと経験を積みたい。
ただ、状況を見て『ホルンカ』の次の町への移動も考えてはいる」
ξ゚⊿゚)ξ「街を転々とするってことね」
(´・ω・`)「落ち着けるところがあれば拠点を作るのもありだとは思うけどね。
まずは自分たちのレベルアップ、経験値では表せない経験を身に付けたいと思う」
('A`)「賛成だ。
こればっかりは実践あるのみだからな。
クエストで得られる経験値でのレベル上げなんて、たかが知れてるし。
遭遇する敵によってはすぐに逃げられない場合もあるから、
戦いの経験を積みたい」
ξ゚⊿゚)ξ「逃げたりなんてしないわよ」
川 ゚ -゚)「ちゃんと戦うぞ」
('A`)「……戦略的撤退も覚えてくれよ」
ξ゚⊿゚)ξ「むーーーー」
川 ゚ -゚)「仕方ない。善処してやろう」
('A`)「なぜ上から目線かな」
(´・ω・`)「戦闘やレベル上げに関してはドクオに頼ってしまうけど、
よろしく頼むね」
('A`)「ああ。きっちりやろう」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ホルンカってどんなところなの?」
( ^ω^)「良いところだったお。
こことは違って道とかも舗装されてなかったけど、
家とか木や藁でできてて暖かい雰囲気だったお」
ξ゚⊿゚)ξ「土の道か……」
('A`)「土で汚れたりはしないだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ならいっか」
('A`)「まったくもうこいつは……」
ξ゚⊿゚)ξ「女子には大問題よ」
('A`)「はいはい」
(´・ω・`)「それじゃあ、次は武器とスキルの件だね」
('A`)「それだよそれ!」
ξ゚⊿゚)ξ「なによいきなり大声出して」
('A`)「スキルだよスキル!
とりあえず最初のうちはちゃんとどれを選ぶか相談してだな」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
('A`)「おまえなー」
ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもさ。
基本よくわからないし」
川 ゚ -゚)「そうだな。
とりあえず何が必要とか説明してもらってないわけだし」
('A`)「……」
( ^ω^)「一応聞いたけど、
もう一度ちゃんと聞いておきたいお」
.
-
('A`)「はぁ……」
(´・ω・`)「まずはスキルの基本知識が必要だね」
ため息をついたドクオを見て苦笑いを浮かべながらショボンがウインドウを開く。
ξ゚⊿゚)ξ「基本知識ならわかるわよ。
それくらい。
スキルってのを設定しておかないと、
そのスキルにかかわる作業ができないってことでしょ」
川 ゚ -゚)「片手剣で戦いたかったら『片手剣』、
槍で戦いたかったら『槍』。
服を作りたかったら『裁縫』
料理をしたかったら『料理』」
ξ゚⊿゚)ξ「それくらいわかるわよね」
川 ゚ -゚)「全くだ」
ショボンの言葉に心外だとばかりに知識を披露する二人。
心なしか二人とも胸を張っている。
('A`)「『索敵』、『隠蔽』なんかはわかるのか?」
川 ゚ -゚)「知らん」
ξ゚⊿゚)ξ「知らない」
そして同じテンションでドクオの問いに答えた。
('A`)「はぁ……」
(´・ω・`)「スキルは、本当に大まかに分けると二つに分類できる。
一つは戦闘に直接かかわるスキル。
一つは戦闘に直接かかわらないスキル」
うなだれたドクオに代わってショボンが説明を始めた。
.
-
(´・ω・`)「さっき二人が言っていた『片手剣』や『槍』、
ツンの使ってる『細剣』、『曲刀』、『投擲』なんかが《直接かかわるスキル》になるね。
で、『裁縫』や『料理』、ブーンが鍛え始めてる『解析』なんかが、
《直接かかわらないスキル》になる」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
川 ゚ -゚)「ふむ」
( ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「そして、
《直接かかわらないスキル》の中には、
今言ったような生活を豊かにしたり便利にしたりするスキルのほかに、
戦闘を有利に進めるためのスキルも存在するんだ。
さっきドクオの言った『索敵』は自分の近くにいる敵を見つけやすくなったりできるし、
『隠蔽』なんかは周囲の木や草に隠れたりすることで、
敵をやり過ごすことができるようになったりする」
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
川 ゚ -゚)「ふむふむ」
( ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「そんな感じでスキルはいろいろ用意されているらしい。
だから色々なものを鍛えて戦闘を有利に、
生活を楽しくしたいところなんだけど、
スキルをセットする設定画面には枠が、
スキルスロットが初期では二つしかない。
しかも基本的にスキルはスロットから外すと経験値がゼロに戻るから、
一度鍛え始めたら外すのがもったいなくなる」
ξ゚⊿゚)ξ「あら」
川 ゚ -゚)「なるほど」
( ^ω^)「おー」
.
-
(´・ω・`)「というわけで、スキルを決めるときは、
慎重に自分の戦闘スタイルや生活スタイルをよく考えて、
決めなければいけないってことなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はーい」
川 ゚ -゚)「わかった」
( ^ω^)「おー!」
('A`)「三人ともほんとにわかってる?ねぇ」
ショボンの説明をまともに聞いているのかどうかわからないような受け答えしかしない三人に、
思わずため息混じりの突っ込みを入れてしまうドクオ。
川 ゚ -゚)「聞いてるぞ」
( ^ω^)「聞いてるお」
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてるわよ?
でも、……さ。ねぇ」
川 ゚ -゚)「うむ」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「まあしょうがないよね。
既に僕たちのスキルスロットは五つあるわけだし」
一瞬の空白。
仲間以外誰もいないのに、
何故か周囲の目を気にしてしまう五人。
そしてドクオが大きく息を吐いた。
('A`)「だよなー。
おれも言いながら説得力とかなかったし」
.
-
ξ*゚⊿゚)ξ「そうよね」
川*゚ -゚)「もう五つもあるし」
('A`)「今日クリアしたクエストのうち三つがスキルスロット増加とか、
どんなチートだよ」
( ^ω^)「ショボンはもらえるのがわかってたのかお?」
(´・ω・`)「昨日のうちに消化した二つのクエストの報酬がレアアイテムみたいだったから、
残りのクエストもそうかなって思ったのと、
もしかしたら人数分くれるイベントとかもあるのかなって思ったから、
怪しいやつはできるところまでフラグを立てて、
二人が帰ってくるのを待ったんだ」
('A`)「そうしたらこうなったと」
(´・ω・`)「うん。さすがにこれはバグレベルだよね」
('A`)「だよな……」
自分のウインドウのスキルスロットを見てため息を吐くドクオ。
スロットが増えたことはかなり喜ばしいことなのだが、
今まで公正・公平なプレイヤーとして
多量課金プレイヤーや初心者狩りをするようなプレイヤーを忌避していた身としては、
いくら偶然とはいえ自分の今置かれている状況になんとなく納得がいっていなかった。
( ^ω^)「多分あの三つって、本当は一つしか受けられなかったんだおね」
('A`)「多分そうなんだろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも出来た」
川 ゚ -゚)「ショボンがやらかしたと」
(;´・ω・`)「人聞きが悪いよ。
たまたま時間的タイムラグと同時進行するための穴を見つけただけだよ。
それに僕もアイテムがいっぱいもらえたら良いなとは思っていたけど、
スキルのスロットが増えるとは思ってなかった」
.
-
('A`)「でも、道具の方は狙っただろ?」
(;´・ω・`)「もらっておけるものはいっぱいもらっておこうって思ったけど、
その瓶が更に手に入るとは思わなかったよ?」
川 ゚ -゚)「本当か?」
(;´・ω・`)「ちょっと、クーまでやめてよ」
ドクオがウインドウを操作すると、テーブルの上に小瓶が何個も現れた。
('A`)「《カレス・オーの水晶瓶》
スキルの熟練度を保存することができる……か。
まさかこんなアイテムがあるなんて。
そしてしかもこんなにいっぱい手に入るなんて」
(´・ω・`)「初日のクエスト報酬で一つ手に入れて、
昨日僕が試してみたけどちゃんと使えたよ」
('A`)「メッセージで教えられたときはびっくりした」
( ^ω^)「今日は五人で四回成功したんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?四回だった?」
川 ゚ -゚)「五回だな。
多分ブーンは最初の一回を数に入れていないんだろ。
あれはチャレンジの説明だと思ったら本番だったという、
一種の騙しだから」
('A`)「二十五個。最初の一個を加えたら二十六個か……」
(´・ω・`)「最初のクエストはおそらくあの手帳を持っている人専用だけど、
今日のクエストはほかの人も受けられそうだったよね。
そして説明という名の一回と、泣きの一回で、
誰でもニ個は手に入れられる確率があるってことだよね」
.
-
支援
-
('A`)「そんな簡単なことじゃない気もするけどな。
あのクエストを受けるには、まず手元にこの小瓶が必要なわけだし。
そしてどちらにせよ、システムの穴というかほぼバグを突いて
これだけの量を手入れることができたわけだけど、
あれをやるにはよほどの記憶力が必要だろ?」
(´・ω・`)「それに関しては否定しないけど」
('A`)「通常はレベルを上げないと手に入らないスキルスロットを、
最初からこれだけ持てているのはかなりのアドバンテージだ。
そしてこのアイテムもかなりありがたいアイテムなのは間違いない。
正直こんな能力を持ったアイテムがあるなんて知らなかったし、
かなりのレアアイテムだと思う。
システムの穴をついたとはいえ、
一応正規のルートで手に入れた品だから、
使うことに問題はないとも思う。
…………でもなー。やっぱなー」
頭を抱えてもんどりをうち始めるドクオ。
四人はそれを生暖かい視線で見ていたが、
三分を過ぎたところでツンが切れた。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、いい加減にしなさい」
ソファーの横に置かれた銀のトレイでドクオの頭をたたくツン。
トレイの形が変形などはしていないが、
大きな音が部屋に響いた。
(;A;)「いてぇ!お前何しやがんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌なら使わなければいいじゃない。
小瓶もスロットも。
スロットは二つだけ使ってればいいだけなんだから」
('A`)「え、いや、それはなんか違うっていうか。
折角あるものは使わないとだし」
ξ゚⊿゚)ξ「ならもうグズグズ言わないの!」
('A`)「うえーい」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
.
-
薄い胸を持ち上げるように腕を組んでソファーに座るツン。
二人の掛け合いを笑顔で見ていた三人だったが、
ツンが座ると同時に目の前のカップに手を伸ばした。
そのタイミングがあまりに合致したため、
思わず笑ってしまった。
( ^ω^)「おっおっお」
川 ゚ -゚)「ふふ」
(´・ω・`)「 」
ξ#゚⊿゚)ξ「三人は何笑ってるの?」
(;^ω^)「おっ。ツンを笑ってたわけじゃないお」
川 ゚ -゚)「それは誤解だからな」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
(´・ω・`)「さて、じゃあスキルについての相談だけど、
まずは僕の考えを言ってもいいかな」
ツンに睨まれて慌ててフォローを入れた二人。
ショボンは話を変えるように、
というよりは戻すために姿勢を正して四人を見た。
自然とソファーに座りなおしてショボンを見る四人。
(´・ω・`)「まずはスキルスロット。
五つのうち、一つはメイン武器。
これは今使っている部から変えない方向で。
二つ目がサブの武器。
使用している武器に問題が発生した時用に、
一応別ジャンルの武器も練習しておいた方がいいと思うんだけど、
どうだろう?」
.
-
ショボンがドクオを見る。
その視線を追って三人もドクオを見た。
('A`)「おれは反対だな。
武器によって敵との相性ってのは確かに存在するけど、
低層ではそれほど気にしなくてもいいと思う。
あと、同時に二つの武器を練習するってのは無理があると思う」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。
とりあえずは一つで良いかな」
川 ゚ -゚)「ああ。
私も長刀ならともかく、
槍はもう少し練習しないとだめだと思う」
( ^ω^)「ショボンはなにかやりたい武器があるのかお?」
ドクオの意見に賛成をする二人。
ブーンもとりあえずは片手剣だけのつもりだったが、
口から出たのはショボンへの問いかけだった。
その言葉に反応してショボンを見る三人。
(´・ω・`)「あ、うん。
メインには槍として、
サブ武器として《投擲》を入れたい」
('A`)「《投擲》?
あの趣味スキルを?」
( ^ω^)「趣味スキル?」
('A`)「いや、武器や物を投げるスキルだけどよ、
一回投げたら終わりだし、攻撃力の高いものを投げるのっていうのは、
金額の高い武器やレアなアイテムを投げるってことだから、
なかなかハードルが高いというかなんというか……」
川 ゚ -゚)「金持ちじゃないと成り立たないスキルってことか」
('A`)「もしくは自分が武器製造スキルを持つとかかな。
それにそれだけやっても与えるダメージはたかが知れてるだろうし」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンは何でそんなのを?」
(´・ω・`)「僕の目、敵の出現を素早く感知できる力を有効に使うためには、
このスキルが最適かなって思ったんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、出現の時の空間の歪みが見えるっていうあれね」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「あー。
それはそうかもしれないが、
実戦で意味のある使い方ができるにはかなりの練習が必要だろうな」
(´・ω・`)「そうだね。
じゃあ……」
( ^ω^)「武器にブーメランとかないのかお?」
(´・ω・`)!
('A`)「!
あ、ああ。そうだな。
ブーメランは聞いたことないけど、
そういえばなんか戻ってくる投擲武器あるとか。
いや、ドロップする敵がいるとかだったかな。
βの時にそんな噂を聞いたことがある」
川 ゚ -゚)「『戻ってくる投擲武器』?」
('A`)「ああ。
おれも実物は見てないし、
名前も聞いてないけど」
( ^ω^)「じゃああるかもなんだおね。
その武器が手に入ったらそのスキルも使えるんじゃないかお?
しかも武器が手に入ってから覚えるんじゃなくて最初から鍛えておいたら、
かなり使えるんじゃないかお?」
('A`)「あ、ああ。そうだな」
.
-
ニコニコと話すブーン。
眉間にしわを寄せて色々と考えつつ言葉を選ぶドクオ。
('A`)「……ああ。うん。
そんな武器を使えることができれば、
戦闘を優位に進められるかもしれない。
ただ、そのためにスキルスロットを……」
( ^ω^)「五つもあるし、小瓶もあるお。
ある程度使えるまでは個人練習にして、
戦闘に使えるレベルになったらレギュラーでスロットに入れておけばいいんじゃないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよブーン。
すごくブーンらしくない」
( ^ω^)「おー。ひどいお」
川 ゚ -゚)「だが、ブーンの言う通りだな。
これがスロットが二つのままだったり、
アイテムがなかったら諦めないといけないかもしれないが、
今の私達ならそれくらいの余裕を持ってもいいんじゃないか?」
('A`)「でも自主練とかいっても」
( ^ω^)「というか、
ショボンならそれくらい全部考えているように思うけど、
どうかお?」
(´・ω・`)「実は、すでに自主練はしてたんだ」
壁にかかったダーツ用の的を見るショボン。
その視線から、四人も壁の的を見た。
('A`)「ダーツ?」
(´・ω・`)「うん」
立ち上がり、同じく壁に掛けてあった矢を一本手に取り、
少し離れて構える。
四人はじっとそれを見つめている。
.
-
(´・ω・`)「いくよ」
ショボンが気合を入れると矢がオレンジ色に輝いた。
('A`)「おっ」
( ^ω^)「剣技(ソードスキル)だおね」
ξ゚⊿゚)ξ「オレンジだ」
川 ゚ -゚)「オレンジだな」
('A`;)「気にするのそこかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。だって。ねぇ。クーさん」
川 ゚ -゚)「うむ。オレンジは良い色だ」
('A`)「なんだそりゃ」
会話をしながらも視線はショボンに向けたまま。
そしてショボンは外野の声を気にすることなく矢を投げる。
( ^ω^)「おお!」
('A`)「おっ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら」
川 ゚ -゚)「きれいだ」
弧を描いて的の中央に刺さる矢。
矢の動きを目で追うのは困難であったが、
そのオレンジの光は部屋の中に、
自然界ではありえない鮮やかな軌跡を残して消えた。
(´・ω・`)「趣味スキル扱いは運営もなのかな。
一つ目は直線だったけど、
二つ目はこんな風に弧を描く軌道を持った技を使えるようになったよ」
.
-
( ^ω^)「それだけ鍛えたのなら外したくないおね」
(´・ω・`)「スロットが二つだったら槍と投擲になっちゃうから諦めたけど、
今の状況なら良いかなって思って」
('A`)「そのダーツセットは持っていけるのか?」
(´・ω・`)「いや、無理だった。
隣の部屋には移動できたけど、
下の階には持っていけなかったよ。
持っていこうとしたら、自動的にこの部屋のこの場所に移動していた」
('A`)「なら、これから先の自主練はどうやってするんだ?」
(´・ω・`)「ここに泊まるときはダーツセットで。
無理な時は部屋で小石を投げたりすることでできないかなって思ってる」
('A`)「……それよりは、投擲用のナイフを数本買って、
部屋で丸太や非破壊オブジェクトに投げた方がいいだろ」
( ^ω^)「おっ!」
('A`)「回収可能投擲武器がある可能性が少しでもある以上、
そこまで鍛えたスキルを完全に捨ててしまうのはもったいないからな」
(´・ω・`)「ありがと」
('A`)「ただ、メイン武器になるかどうかは不明だから、
まずは槍の練習をしてくれ。
あと、戦闘時スロットには《武器防御》を入れること」
川 ゚ -゚)「《武器防御》?
うむ。あるな」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」
ウインドウを開いてスキルを確認するクー。
('A`)「言葉通り。武器で防御をするためのスキルだ。
それを入れておけば、使っている武器で相手の攻撃を防御することができる」
.
-
川 ゚ -゚)「これをつけておかないとできないのか?」
('A`)「剣の腹で相手の剣を受けたりすることはできるはずだけど、
スキルをつけておかないとまったく補正が働かないから、
ダメージを剣すべてで受けてしまう可能性がある。
滅多にないはずだけど武器破壊が起きてしまったり、
そこまでいかなくても武器の疲弊・摩耗には多大な影響があるだろうな。
それに防御技のスキルも使えるようになるはずだ」
( ^ω^)「おっ!そんなのがあるのかお?」
('A`)「ああ。火を吐いたりするモンスターも出てくるから、
それを避けるため、受けるための特殊技がスキルとして存在しているはずなんだ。
今のところパーティーに盾使いがいないから、
各人で自分の身を守る技をちゃんと持っておいた方がいい」
川 ゚ -゚)「なるほどな」
('A`)「あとは《軽業》とか《疾走》とか……。
あ、あと《容量拡張》関係も取っておきたいし、
うーむ……どうしよう。選べるけどどれを選ぶか……」
先ほどとは打って変わってニヤニヤと笑みを浮かべながらウインドウを操作し始めるドクオ。
残りの四人がイラッとするような笑みだったが、
そんなことは誰も言わず、
けれど呆れてドクオを見ていた。
川 ゚ -゚)「さっき言っていた《索敵》とか《隠蔽》とかは良いのか?」
('A`)「あー。
おれは取るつもりだけど、
基本ソロ向きのスキルだから、
四人には必要ないだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ソロ向き?って、あんた」
.
-
('A`)「あ、いや、別にパーティーを抜けるってわけじゃないぞ。
ただ、先行して次のエリアを見に行ったりすることもあるだろうし、
おれは一人で動くこともあるだろうから、
それ用に鍛えておいた方がよいスキルってことだ。
おれは四人みたいに職業スキルを入れない分、
戦闘に特化した、できれば一人でもフラフラできるスキル構成にするつもりなんだ」
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「悪いショボン。
このセッティングは譲れない。
その分、それを考慮した戦闘を組み立ててほしい。
(´・ω・`)「……わかったよ」
( ^ω^)「で、スキル構成はどうするんだお?」
('A`)「とりあえず、こんな感じっていう自分の方向性を考えてみて、
それに沿ったスキルを構築してみるか。
どうする?今からやるか?
それか一晩考えて、明日出発の前にやるか」
(´・ω・`)「できれば……」
ξ゚⊿゚)ξ「今からやりましょう。
めんどくさい」
川 ゚ -゚)「そうだな。さっさと済ませてしまおう」
( ^ω^)「おっおっお。それがいいお!」
('A`)「よし!やるか!」
満面の笑みを見せるドクオに、
ブーンを除く三人は少しだけなぜこんなに笑顔なのか不思議に思った。
.
-
そして二時間かかって全員の初期スキルを決定するころには、
全員がその理由をわかっていた。
川 ゚ -゚)「(そっか。ドクオは……)」
(´・ω・`)「(RPGとかの技設定とかを決めるのが好きなんだね)」
ξ゚⊿゚)ξ「(そういえば、
桃太郎の持つ武器とかお供三匹の装備とかを
ずいぶん気にしていたわね)」
( ^ω^)「昔からドクオはこういうの好きだおね」
('A`)「楽しいよな!
自分のやる技とか設定とか決めるの!」
川 ゚ -゚)
(´・ω・`)
ξ゚⊿゚)ξ
三人が心の中でため息をついたのを、
二人は知らない。
(´・ω・`)「さて、とりあえずはこれでやってみて、
あとは状況や装備に合わせて変更ってことで」
('A`)「そうだな。
やっていくうちに変更も出てくるだろうし」
( ^ω^)「おっおっお」
ξ゚⊿゚)ξ「もう夜も遅くなったわね」
川 ゚ -゚)「ああそうだな。
明日も早いし、そろそろ寝る時間だな」
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