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('A`)は撃鉄のようです

1名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 00:03:19 ID:2IYbZA/s0
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876名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:02:40 ID:4w91Gjj60

≪5≫


 少し離れたところで戦闘を観察しながら、ドクオは自身の超能力について考えを巡らせていた。
 ミルナから言われた事だが、このマグナムブロウという能力は撃鉄を起こしてこそ真価を発揮する能力らしい。


 撃鉄を起こすコツは、“どう強くなりたいか”を具体的に想像し、それに集中する事。
 ミルナの場合は“ただ強くなりたい”と単純に考えたら撃鉄が起きたが、ドクオの場合は彼とは勝手が違った。
 そもそもドクオとミルナでは考えている“強さ”の概念がまったく違うのだ。
 彼とは根本が違う今のままでは、ドクオがミルナと同じように撃鉄を起こす事は出来ない。

 だったら俺の“強さ”をそのまま真似るのか?

 撃鉄について話している最中、ミルナにそう言われたのをドクオは思い出した。
 その際ドクオは「違う」と即答した。与えられた力の為に自分を変える気はなかった。
 即答すると「だったらどうするんだ」と話が続いた。ドクオは少しの間考え、ある結論に至った。

 自分を変えるくらいなら、この力そのものを捻じ曲げてやろう。
 その考えのもと、超能力を力尽くで塗り替えるために、ドクオは一晩中マグナムブロウという超能力そのものと戦っていた。
 それは異物を屈服させるのと全く同じ要領だった。戦うことで上下関係を確立し、超能力を我が物とする。


 結果、ドクオはマグナムブロウの改変、あるいは改悪に成功した。
 ミルナ用だったものを自分用に書き換えた今の状態なら、ドクオにも撃鉄を起こす事ができる。

 あと考えるべきは、この力にどんな強さを求めるか……。
 その答えは、案外すぐに見つかった。

.

877名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:04:25 ID:4w91Gjj60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(#'A`)「おおおおおおおお!!」

 空中から攻撃する場合に声を出す必要はまったくない。
 むしろ声を出したせいで攻撃は察知され、相手に回避される可能性は大きく跳ね上がる。

 だが、この攻撃の狙いはあくまで囮としてのかく乱、本命の棺桶死オサムに攻撃を繋げること。
 今はカーチャンの意識を自分に向けるのが得策だ。その為に、ドクオはあえて大声を発したのだ。

(#'A`)(ギコを弾いたあの一発、多分見えるのは俺だけだ)

(#'A`)(今は前に出て、あの一発の正体を掴む!)

 ドクオは左腕を大きく振りかぶった。
 この動作は威嚇のようなもので、本当に拳を打ち出すつもりはなかった。
 ドクオはこの威嚇によって、彼女の反射行動を試しにいったのだ。

 ここで彼女が超能力に頼るなら、確実にさっきと同じ攻撃を出してくる。
 ギコを大きく吹っ飛ばしたあの攻撃、攻撃をまともに受けたギコを見ても致命傷というほどの威力はない。
 それなら危険を冒してでも、今の内に相手の攻撃を見切るべきだ。

 問題はドクオでも見切れなかったあの速度。
 あれをそのままにしておけば、今後どれだけ不意打ちをくらうか分からない――

.

878名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:07:35 ID:4w91Gjj60


 ――そう思った、次の瞬間。

 鋭い炸裂音が鳴ったと思えば、同時に、空中のドクオが不自然にその軌道を変えた。
 真下へ向かっていたものが、一瞬で真横に向きを変えたのだ。

(;,,゚Д゚)「なッ……んだと!?」

 ギコとオサムは咄嗟にドクオを目で追ったが、何が起こったかは今度も分からない。
 ドクオは先程のギコと同じように、あらぬ方向へと吹き飛ばされていく。

(; A )「ッ〜〜!!」

 想像以上に速い一撃。
 痛みは平手打ちを食らったように鋭く、体の奥に響いてきた。

(; A )(ギリッ……本当にギリギリっ……見えた……!)

 見えたのはほんの一瞬。
 ドクオは彼女の攻撃の一端を、視界の片隅になんとか捉えていた。


(#,,゚Д゚)「俺がドクオをカバーする、行け!」

 ギコの指示を受けてオサムが飛び出す。
 同時にギコも走り出し、ドクオの援護に向かった。

.

879名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:09:35 ID:4w91Gjj60


J( 'ー`)し「……彼に戦意が無いのは分かっていたわ。
      あざといわね、そして狡猾だわ」

J( 'ー`)し「そんなことしなくても大丈夫、もう隠す気はない……」

 カーチャンは俯き、カンパニーの制服を脱ぎ捨てた。
 そうしてあらわになったのは彼女の私服、いわゆるババシャツだった。

【+  】ゞ゚)(……?)

 オサムは彼女の方へ走りながら、彼女の行動に集中した。



J(#'ー`)し「見るがいいわ私の能力を! 戦闘体勢をッッッ!!!」

 そう叫び、カーチャンは自身のババシャツを思い切り引き裂いた。
 続けて彼女はブラジャーも外し、豊満なバストをむき出しにしてみせた。


【+  】ゞ゚)

.

880名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:12:47 ID:4w91Gjj60


【+  】ゞ゚;)「うっわ!!」

 走りながら思わず素の反応を出してしまった棺桶死オサム。
 突然目の前で女性(熟女)が半裸になる事案はさすがに彼も未経験だった。

J( 'ー`)し(棺桶死オサム、あなたをこの技で打倒する……)

 スラックスのポケットに両手を仕舞い、大地を踏み締め、彼女は超能力を完全に開放した。
 見るに耐えないと思って目を伏せていたオサムも、その気配を察知して視線を上げ、また目を伏せた。
 やはり直視するには厳しい。

【+  】ゞ゚;)(くっ……変なダメージを負った……)

【+  】ゞ゚;)(だが奴はほぼ丸腰。能力がなんであれ、接近すれば優位に立てる!)


.

881名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:13:43 ID:4w91Gjj60


 オサムを素に戻してしまった一瞬の怯懦。それが彼に植えつけたものは油断だった。
 対してカーチャンは極めて真剣(半裸)。今、二人の間には明確な意識の差があるのだった。

 その差が引き起こしたオサムの愚行――時速150kmという高速への自惚れ。
 例えオサムが高速で動いても、それが単なる真っ直ぐでは対応するのも容易になる

J( 'ー`)し(狙いやすくて助かるわ……)

 オサムが直線を駆けて迫ってくる。しかし、カーチャンの心に焦りや緊張はなかった。

 その時、カーチャンのバストサイズに異変が起こった。
 ボンッと膨らんでいた彼女の胸が、突如として細長く変形したのだ。

 カーチャンは上半身を揺らし、その鞭のように細くしなやかな乳を揺らし始めた。
 乳はやがてオサムに引けを取らない速度にまで達し、空気を叩く炸裂音を鳴らし始めた。
 彼女はそのまま体を大きく開いて構え、棺桶死オサムが攻撃範囲に入るのをじっと待ち構えた。


 一方、男(オサム)の武器は超人的な肉体。

 一方、女(カーチャン)の武器は細長い乳。


 どちらが頑丈で力強いかは、比べるまでもなく歴然としている。
 だがしかし、この女には必殺とも言える技があった。

 遥か昔より女の武器と言われながら、実際には物理的な力をもったことがない器官、乳。
 言ってしまえば脂肪の塊。意図的には動かせず、武器とするにも致命的な欠陥を多数抱えたこの器官が、



 今宵、熟女・カーチャンの手により―――――――飛躍する。



.

882名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:15:04 ID:4w91Gjj60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 およそ一年前、デミタスが初めてカーチャンの自宅を訪れた時。
 ちょうど彼女の息子が家に居たので、デミタスは彼にカーチャンの話を聞いてみた。


 その際、息子・たかしは己の母をこう語った――


('A`)「ものすごく強いです。ええ、物理的にです」


('A`)「ぼく昔いじめられてたんですよね。思えばその時なのかな、アレを初めて見たのは……」

('A`)「……そのですね、笑わないで聞いてくださいね。
   カーチャンがいじめっこをボコボコにしたんです。こう、胸でブッ叩いて」


('A`)「……胸? そりゃアレですよ、オッパイですよ。女性にはみんなついてるアレです」

('A`)「まずカーチャンの能力がですね、巨大化なんです。体の色んなところを大きくできるんです」

('A`)「それでですねぇ、胸を大きくするんです。いや、大きくじゃないか……なんか、長い鞭みたいにするんです」

.

883名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:15:45 ID:4w91Gjj60


('A`)「鞭です、はい」

('A`)「知ってます? 鞭を振ったとき、その先端がどれぐらいの速さに達するか……」

('A`)「ざっくり言えば音速(マッハ)です。で、カーチャンは胸を鞭みたいにして、それを振り回す訳ですね。
    あの能力、大きくした部位は思考で操作できるので、間違って自分を叩くこともありません」

('A`)「えっと……マッハは秒速で、確か300メートルくらいですか?
    そんな武器が二つもあって、縦横無尽に振り回されるんだから、もう大概の防御は無意味ですよ」

('A`)「しかも当たれば致命傷の攻撃です。
   カーチャンも手加減してたと思いますけど、いじめっこ達には逆に謝りたくなりましたね」

 そう言い、たかしは自慢げに微笑んだ。
 だが、それに続いたデミタスの質問に、彼の微笑みはすぐに消えた。


('A`)「……手加減しかなかったら?」


('A`)「……一度、カーチャンを切れさせた事があります。ニート五年目とかの時だったかな」

 たかしは椅子を立ち、デミタスに背中を見せた。

('A`)「ぼくも一応超能力持ってるんですけどね。抵抗する間もなく、こうなりました」

 たかしは上着を脱ぎ捨て、上半身を露にした。
 その背中には爆弾が間近で爆発したような大きな裂傷の痕。
 事前に彼の話を聞いていなければ、まさかこれが女の胸によってできた傷だとは到底思えない。

.

884名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:16:25 ID:4w91Gjj60



('A`)「カーチャンの能力、『セクシーグラマー』は最強ですよ」


('A`)「少なくとも、息子であるぼくにとっては、彼女は世界最強の母親です」

('A`)「能力名も技名もふざけてますけどね、本当に強いんです」


('A`)「あの技、『マッハ乳』は――――」


.

885名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:17:06 ID:4w91Gjj60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 乳を武器とする彼女にとって、両腕はただのデッドウェイト。
 故にこの攻撃をする場合は必ずハンドポケットの姿勢をとり、そのマイナスを消さなくてはならない。

 力の伝達はつま先から開始し、足の親指、足首、膝、股関節、腰へと続いていく。
 このまま肩、腕、拳といけば正拳突きの完成だが、カーチャンの武器は腕ではなく乳だ。

 彼女の場合、つま先から腰へと力が伝達した瞬間、上半身を高速回転させて一気に乳を弾き出す。
 集約された力は鞭のような乳を伝わり、その速度を倍々にしながら先端の乳首に向かっていく。
 仕上げに超能力の肉体操作で『高速』をさらに『加速』させた時――


J(# ー )し「ッッッッ!!」

 奥義、マッハ乳は完成する――――ッ!!

.

886名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:17:49 ID:4w91Gjj60

≪6≫


 意識がなくなる最中、棺桶死オサムが最後に聞いたのはまたしても炸裂音だった。
 いったい何が炸裂したのか――そんな些細な疑問を解く一瞬すらなく、オサムの意識は闇に落ちた。

(;,,゚Д゚)「棺桶死ッ!」

 ギコが叫んだ時には既に遅く、オサムは凄まじい速さでレムナント監獄の方向へと吹き飛ばされていた。
 オサムは監獄を囲む壁に音を立てて激突すると、その壁に巨大な亀裂を残して地面に落ちた。

(;,,゚Д゚)「なんだ……何をやられた!?」

(;'A`)「……ビンタだ、超能力で超強化された超ドギツい一発……」

 地面に片膝をついていたドクオが、立ち上がりながらギコの言葉に答えた。
 ドクオ自身もかなり強い一撃を受けていたが、鍛えた肉体がそのダメージを和らげていた。

(;,,゚Д゚)「……アイツの能力、体の巨大化か?」

(;'A`)「ああ、まず不自然に胸がでかいしな……」

(;,,゚Д゚)「……アレが物理的に俺達より強いんじゃ勝ち目ねぇぞ。俺もお前も物理だろ」

(;'A`)「……いや、勝ち目は作る!」

 強く言いながら前に出る。
 ドクオは背の撃鉄を一瞥し、覚悟を決めた。

.

887名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:19:01 ID:4w91Gjj60


(;'A`)「……俺が一対一でやる」

(,,゚Д゚)「……俺はどうする。勝手に動いていいのか?」

 ギコはドクオの意思を汲み取り、彼を考えなしに引き止めたりはしなかった。

(;'A`)「……死にそうになったら助けてくれ」

(;,,゚Д゚)「……」

(;'A`)「……そうだよ捨て身だよ。けどな、やっぱり雑魚の奥の手は『命懸け』しかねぇだろうが」

(;'A`)「こんなところで止まってられねぇんだ……。カーチャンだろうが何だろうが、ブッ倒してやる!」

 ドクオは左手に拳を作り、悠然とカーチャンに接近していった。

(;'A`)(でも実は勝てる気してねぇんだ……)

(;'A`)(……ここからは、『自惚れ』『慢心』全開の『ヤケクソまっしぐら』でいく……)


(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「……おい、アレ……」

 半ば自棄になりかけていたドクオを呼び止め、ギコは遠くの地面を指差した。
 指した先には、先程カーチャンが脱ぎ捨てたカンパニーの制服が落ちていた。

('A`)「……アレか」

(,,゚Д゚)「……俺とお前、二人でアレ取れるか?」

 多くは語らない。二人の意思は疎通していた。

(;'A`)「……一発デカイのを撃つ。その隙に突っ込め」

(,,゚Д゚)「……アレを取ったら俺は監獄に戻る。中の奴ら呼んでくるまで死ぬんじゃねえぞ」

.

888名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:19:41 ID:4w91Gjj60


 ドクオはギコを置いて前進し始めた。
 徐々にカーチャンとの距離が縮まっていく。

(;'∀`)(死ぬな、か……自信ねぇなあ……)

 カーチャンの攻撃範囲に入らぬよう、十分に距離を置いたところで一旦立ち止まる。
 既に二人は互いを睨んで牽制し合っている。しかし、戦意ではドクオが大きく劣っていた。
 捨て身で特攻する覚悟はあったが、アレと正面切って戦うという覚悟がドクオにはなかったのだ。


(;'A`)(見切れないほど速い攻撃、これ以上近づいたら俺じゃあ絶対避けきれない……)


 ドクオは己の未熟さを痛感していた。
 超能力者との実力差などこれまで散々目の当たりにしてきた筈なのに、いざその差に直面すると「これ程なのか」と膝を折りたくなる。
 体を鍛え、今では銃弾さえギリギリ避けられるようになったのに、今度の相手は音速超えの能力者だ。

 だが、今になってドクオは思う。俺はそういう相手にこそ勝たなきゃならない。
 今後どれだけ理不尽な超能力が相手になるか考えれば、こんな露出ババアは雑魚の部類だ。

 少なくとも、カーチャン属するカンパニーの連中には、これよりもっと強いのが何人も居るだろう。
 なのにこんな所でこんな露出クソババアに負けるようでは、打倒荒巻など笑い話にもならない妄言だ。

 この女を倒して上のステージに這い上がる。
 勝てる気がしない。そんな考えを払拭し、半ば現実逃避し、ドクオは自分を鼓舞した。

.

889名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:20:59 ID:4w91Gjj60


J( 'ー`)し「……最大戦力は倒したわ。それでもまだ、続けるのかしら」

 上半身丸裸でも凛々しい真っ直ぐな態度を見せるカーチャン。
 すぐに攻撃しないのは、ドクオというまるで警戒に値しない男への哀れみだった。


('A`)(マグナムブロウ、ミルナから受け取った俺の能力……)

('A`)(……言葉が通じるか知らねえけど、ちょっとだけ力を貸してくれ)

 ドクオは頭の中に“強さ”を想像し、それに集中した。
 最中に思い返したのは師匠の姿――単純な強さにおいて、ドクオは彼以上の男を知らない。

('A`)(クマーさんの激動、ちょっとパクリます……)

('A`)(……撃鉄と混ぜて『撃動』とか、そんな感じでいくか……)

 思い付いた言葉に、ドクオは思わず口元をゆるめた。
 それと同じくして、彼は背中の撃鉄に確かな熱量を感じ取った。
 彼の背中で畳まれていた撃鉄は、いつしか片翼のように大きく展開していた。


J( 'ー`)し「……?」

 ニヤリと笑ったドクオを不思議に思いながら、カーチャンはとても分かりやすく攻撃の準備を整えていた。

 ハンドポケットというふてぶてしい姿勢のまま二つの乳を揺らし、少しずつ加速しながら振り回していく。
 マッハほどではないが速度は十分。乳の先端が空気を叩き、“パン”という炸裂音を鳴らし始めた。
 乳は硬い地面をえぐり、自由自在にあたりを駆け巡った。
 超能力ありきとはいえ、乳が残像を残して飛び回る凄まじい光景があった。

.

890名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:22:03 ID:4w91Gjj60


 ドクオの撃鉄が起きたのをカーチャンは認めていた。
 それが何を引き起こすか分からないが、所詮は低レベルな殴り合いの能力。
 こんな能力相手なら勝って当然だ、と彼女は警戒するような素振りを見せなかった。

 カーチャンは片乳を特に強く振り回し、それをドクオに向けて放った。
 空中で乳を一気に巨大化させる。質量を増した乳は、鉄球のような威圧感を得てドクオに迫る。

 ドクオは静かに拳を構え、それに対した。

 起きあがった撃鉄のせいか、彼の体には今までにない充足感が満ちていた。
 体中の全ての歯車が一斉に完璧に噛み合ったような、自分自身が一つの存在として完成したような、未体験の充足感。
 そんな自分自身の変化に身を委ねると、固めた拳がさらに硬く力強くなった気がした。

(#'A`)(いけるっ……!)

 巨大な乳、殺人的な乳が圧倒的威圧感をもって襲い掛かってくる。
 ドクオはそれに合わせ、左拳を振り出した。

 その数瞬後、背の撃鉄から光の粒子が爆発するように一気に噴き出した。
 光の激流はドクオを後押しし、拳の威力を数十倍に跳ね上げる。

(#'A`)(負ける気がしねえ――)

 敗北しか知らない男が思った勝利への思考。
 直後、両者の一撃が激突した。

.

891名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:23:05 ID:4w91Gjj60

≪7≫


 ドクオに自分の乳を殴られた瞬間。
 激動が伝わったカーチャンの片乳は大きく波立ち、その勢いを完全に打ち消された。

J(;'ー`)し「――そんなっ!」

 カーチャンの超能力『セクシーグラマー』は、真っ向からの力比べでドクオに敗北した。

(#'A`)「お返しッ……だァッ!!」

 ドクオは腕を大きく引き、再度片乳を殴りつけた。
 乳は衝撃のあまり歪に変形してから、カーチャンに向かって高速で弾き返されていった。

 真正面から飛んでくるのは自分の片乳。
 自分の肉体の一部であるからこそ、それを避け切るのは至難だ。

J(;'ー`)し(乳を操作して回避、あるいは乳を縮小ッ――それじゃあ間に合わないッッッ!!)

J(; ー )し(クッ……ソがァァァァァァァァァァァッッッッ!!)

 カーチャンは咄嗟に決断し、片乳を体から切り離して横に飛んだ。
 つながりを絶たれた乳はカーチャンには当たらずどこかへ飛んでいき、やがて地面に落下して静止した。

.

892名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:24:54 ID:4w91Gjj60


 カーチャンは地面に片膝をつき、せわしなく呼吸した。
 一瞬の出来事が頭の中で少しずつ整理されていく。

J(;'ー`)し(……油断……あるいは自惚れか……)

 片乳を無理にちぎり落とした事で、彼女の右胸からは鮮血が流れ出ていた。

 巨大化してあったとはいえ、その原料は自分の血肉だ。
 切り落とせば傷になる。脂肪は再生できても、乳首は帰ってこない。トカゲの尻尾のように元通りとはいかないのだ。
 彼女はこれから、片乳首のない残酷な日々を強いられる。

J(;'ー`)し(私、病院に自分の片乳もって『乳首くっつけて下さい』って言うのね……)

J(;'ー`)し(屈辱だわ……っていうかそんな事できるのかしら……)


 彼女がそんな事を考えている間に、二人の男が方々へ駆け出していた。

(#'A`)「下手すんなよ!」

(#,,゚Д゚)「たりめーだ!」


J(;'ー`)し「――ハッ!」

 二人の行動を見た瞬間、合点がいった。
 同時に彼女は、光源になりうる物を安易に捨ててしまった自分を強く自責した。

 ドクオは自分に向かって次の攻撃を、しかしギコは自分が脱ぎ捨てたカンパニーの制服のもとへと走っていく。
 目の前の光景が、彼女の思考を一気に加速させた。

J(; ー )し「〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!」

.

893名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:25:40 ID:4w91Gjj60


J(;'ー`)し(ドクオに対応すればギコが光源を手に入れてしまう!
      そうなれば棺桶死オサム復活ッッッ! 囚人も何名かは能力を発動できる!)

J(;'ー`)し(でもギコを追えば彼は確実に私を仕留めに来る! 認めるッ! あの能力なら私を倒せるッ!!)

J(;'ー`)し(防御を捨ててギコを追う!? あるいはドクオを瞬殺してギコをッ――)

J(;'ー`)し(…………)

 カーチャンは今一度心を鎮め、状況を鑑みて思考した。


J(;'ー`)し(いや……)


J(;'ー`)し(……二兎を追って得るものはない。二兎を追えるだけの余力はない。
       具現化したボインも片方は切り離した……)

J(;'ー`)し(……最早これまで、というヤツかしら)

 カーチャンは開き直り、視線をドクオに集中した。

J(;'ー`)し(もうすぐカンパニーの増援が来る……だったら私の最後の仕事は……)

J(;'ー`)し(……この男だけでも、ドクオの一人だけでも倒す。
      後の事は仲間に預ける。それが今の私に出来る最大限の善処……)

.

894名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:27:07 ID:4w91Gjj60


J( 'ー`)し(……後悔なんか死んだ後でいくらでもしてやるわよ……)

 カーチャンは地面を踏み締め、両手をポケットに収めた。
 眼中にはただ一人ドクオの姿だけ。彼女はマッハ乳の体勢に入った。

J( 'ー`)し(一番やってはいけない事は、今ここで後悔して足を止めてしまう事よ……)

J(#'ー`)し(過去の後悔を払拭するのは難しいけど、未来の後悔にだけは今すぐ立ち向かえるのよ!)



(;,,゚Д゚)(あの姿勢……さっきの技じゃねえか!)

 制服を拾ったギコは横目にドクオとカーチャンを一瞥した。
 最早こちらは眼中にないようだったが、代わりに彼女の闘志はドクオ一人に向いていた。
 それがどれほど危険な事かは十分に理解していたが、今はドクオに任せて先を行くしかない。

(;,,゚Д゚)(……すぐに戻る!)

 ギコはドクオに背中を預け、レムナント監獄に急いだ。


.

895名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:28:37 ID:4w91Gjj60



J( 'ー`)し(片乳を失った今、さっきよりも強いマッハを打つには全能力を片乳に集めるしかない……)

J( 'ー`)し(……でも、片乳ではマッハの反動を打ち消せない。
      でも、中途半端に両乳を作っても威力で劣るのは明白……)

 カーチャンはドクオの超能力が自分に勝るという事実をしっかりと受け止めていた。
 しかしそれは諦めや開き直りではなかった。悟りにも似た、冷静な覚悟だった。

J( 'ー`)し(……片乳でマッハを打った瞬間、私の乳は反動によって炸裂する……。
      全身に纏った脂肪も攻撃に回す以上、肉体への反動も最大級ね……)

J( 'ー`)し「……」


J(#'ー`)し(――『良し』だッッッ!!)

 先に待つ自壊、その程度で彼女の足は止まらなかった。
 彼女は目の前の敵にではなく、未来永劫に続く“後悔”に打ち勝とうとしていた。


 ここで中途半端に命を惜しめば、今後カーチャンの人生には“後悔”という名のセーブポイントが出来てしまう。
 後悔とは、未来へ進んだ人間を、一瞬にして後悔したその瞬間にまで連れ戻してしまうものだ。

 今を生き、そして未来へ進む者にとっての最大の敵はいつかの後悔だ。
 奴らは中々倒せないし、やっと倒せたと思っても、不意に思い出しただけで奴らは即復活する。
 しかも時間の経過が奴らを強くするかもしれない。後回しにすればするほど、奴らは強大になって人の心にのしかかる。

 だからこそ、後悔の火種だけは今現在において抹消しなければならない。
 悔いのない生き方とは『今を笑って生きる』ことではなく、『未来の平穏の為に生きる』ということなのだ。

J(#'ー`)し(心に傷を負うくらいなら……マッハ乳の『次』、今ここで使うッ!)

 彼女は両手をポケットから出し、マッハ乳の構えを解いた。
 それを好機と捉えたのか、ドクオの駆け足がより一層速度を増した。

.

896名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:29:25 ID:4w91Gjj60



(#'A`)(もう一度だ! もう一度真正面から行く!)

 両腕を大きく振りながら疾走するドクオ。
 その最中に小さくジャンプし、着地と同時に両足を地面に押し付ける。

 ドクオの両足が、ざりざりと砂埃を巻き上げながら地を滑っていく。
 ドクオは左腕を突き出し、的をカーチャンに絞った。

(#'A`)

J('ー`#)し

 一瞬の目配せ。言葉はないが、どちらも考えは同じだった。
 次の一撃に全力を込める。これで自分がどうなろうと、後のことは全て仲間に任せる。

 ドクオとカーチャン、二人は同時に攻撃体勢に入った。


(# A )「『撃動』のおッ――!!」

 背の撃鉄が輝く粒子を爆発させる。
 粒子は背から片翼のように広がり、彼の肉体に凄絶な推進力を送り込んだ。
 拳を突き出した姿勢のまま、ドクオの体が回転しながら前に撃ちだされる。

 十分に遠心力を得た状態で地面を殴りつけ、ドクオは高高度へと跳躍した。
 拳を振りかぶったまま、ドクオは空中で回転しながらカーチャンに向かって落下していった。
 その時、ドクオの目に見えていたのはカーチャンの背中だった。

(#'A`)(なんだ――?)

 それは、低姿勢で踏み込みながら体を回転させ、遠心力を加えて放たれる背中からの体当たりだった。
 真正面からの殴り合いと思っていただけに、ドクオはカーチャンの行動に強い違和感を覚えた。

 動作としてはほぼ鉄山靠だったが、彼女がそれ以上に何か仕掛けているのは雰囲気で分かった。
 だが分かったところで攻撃の手を緩めたりはしない。今のドクオは、どんな攻撃ですら力で圧倒できてしまう気がしていた。
 自惚れ慢心でしかないそんな考えが、今なら本当に出来てしまいそうな自信があった。

.

897名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:30:06 ID:4w91Gjj60


 撃動の……。

 そこから続く言葉は、実はまだ思いついていなかった。
 いわゆる必殺技を叫びたい所だったが、目の前のことに必死でなにも浮かばない。

(#'A`)「……のおッ! おっ、おおおおおおおおおお!!!!」

 仕方ないので適当な叫び声で誤魔化した。

 途端、ドクオの拳がカーチャンの背中に激突した。
 空間が歪むような強烈な一撃。それが正面からぶつかりあった事で、凄まじい烈風が周囲にほとばしった。

 手応えはドクオの方にあった。
 力の均衡はほぼ一瞬。
 徐々にマグナムブロウの推進力が競り勝ち始め、カーチャンは少しずつ、後方に押されていった。

 一撃の威力に重きを置く八極拳、その中でも特に知名度の高い鉄山靠。
 一点一瞬一撃の激突で八極拳に勝るものはないが、マグナムブロウの光の激流が生み出す推進力は一瞬では終わらない。
 カーチャンの鉄山靠とドクオのマグナムブロウでは、持続力の点でドクオが圧勝していた。

.

898名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:32:27 ID:4w91Gjj60


(#'A`)「おおおおおおおおッッッッ!!」

 ドクオは込める力をより一層強くし、拳をカーチャンの背中に押し込んだ。
 彼女の背筋を押し潰す感触が拳に滲んでいく。

J(; ー )し「くっ……」

 背中の一点、拳が当たっている部分が焼けるように熱い。
 生身で受けるべきじゃなかったと思いながら、なおも彼女は両足をぐっと踏ん張った。

 勝機があればこその忍耐――
 その事に気付かないドクオは、ただ愚直に前進し続けた。

(#'A`)「おおおおおおおおおお!!」

J(; ー )し「……ふふ」

 間もなくして、彼女は笑った。


J(; ー )し(――“間に合った”)



 彼女は鉄山靠の姿勢をとった時点で、後方へとマッハ乳を発射していた。
 鉄山靠は、マッハ乳を隠す死角を作るための囮だったのだ。

 ドクオの完全死角に放たれたマッハの核爆弾を、肉体操作によって自分自身へと全力で引き戻す。
 それによって自分自身に直撃したマッハ乳は、自分の体を増幅器として更に強化され、体を通して相手を粉砕する。
 その威力は、並居る超能力者のそれとは比較できないほどに強力無比だ。

 無論、マッハ乳が戻ってくるまで耐え切れなければカーチャンの敗北だった。
 生身で受けるには余りにも危険なドクオの一撃を耐え切らなければ、彼女に勝機はなかった。

 しかし彼女は耐え切ってみせた。ゆえに、“間に合った”。

J(; ー )し(後悔は――無いッッッッッ!!)

.

899名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:35:04 ID:4w91Gjj60


 自分自身にマッハ乳が当たった瞬間、爆発的なエネルギーが彼女の肉体を後押しした。
 鼓膜を揺さぶる重々しい衝撃音と、彼女の肋骨が砕け散る破壊音が一気に走り抜ける。

(;'A`)(なんだッ!?)

 ドクオの拳に伝わってきたのは、圧倒的に自分を上回る力だった。
 光の激流を全力にしても、ドクオはその力を抑え切れない。
 早くも勝利を見据えていたドクオの拳が、呆気なく押し戻されていく。

(# A )「こんのッ……!!」

 ドクオも全力でそれに立ち向かったが、二回三回と続け様に発生する力の大爆発にまるで歯が立たない。
 四回目の大爆発の瞬間、ついにドクオの左肩が歪に歪んだ。
 強すぎる反動に肉体が耐え切れず、いよいよ肩が外れてしまったのだ。

(; A )「ぐあっ……!」

 肩が外れた途端、堰を切ったように拳から力が抜けていく。
 瞬間、カーチャンはドクオの懐に潜り込んでいた。

 マッハ乳の一撃を自分自身に当て、その衝撃を鉄山靠の要領で相手にぶつける。
 今は名も無きただの試作技――その最後の一撃が、ドクオの体に炸裂した。

.

900名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:35:51 ID:4w91Gjj60

≪7≫


 銃声が響いた。


 それは余りにも唐突で、寝転んで油断しきっていた状態では気付くのに時間がかかってしまった。
 ミルナは跳ねるように飛び起き、壁際に身を寄せて漆黒の中を見回した。
 肩に熱を感じる。咄嗟の回避だったが、銃撃は右肩を掠る程度で済んでいた。

( ゚д゚ )(……)

 敵の気配がまるで分からなかった。
 長年戦いから遠ざかっていたのが原因か、あるいは敵がそういう能力なのか。
 ミルナは無意識に後者を肯定した。

 分からないのは敵が自分を殺しに来た理由だった。
 自分の存在をピンポイントで知っている人間は極僅かだ。
 この時点で敵は荒巻以外の誰かだと想定できた。荒巻が相手なら、ミルナは既に深手を負っている。

( ゚д゚ )「……なら荒巻の手下か。俺を殺したいならアイツを直接よこすんだな」

 暗闇のなか、まったくの無音でミルナの超能力が発動した。
 彼の右腕に鈍色の装甲が具現化する。しかし、その能力からは往年の迫力が完全に消え失せていた。

( ゚д゚ )(……錆付いてるか)

 ぎし、という軋む音が具現化した装甲から聞こえてくる。
 本当に錆があるんじゃないかと思うほど、彼はマグナムブロウという能力に対して違和感を覚えていた。

 認めたくないがこれが現実。無意味な停滞は人間を確実に弱くする。
 ミルナ自身が知る限り、今の自分は過去最弱の状態に極まっていた。

.

901名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:36:31 ID:4w91Gjj60


 ミルナは空中にランプを具現化した。これも予備動作なしの一瞬の出来事。
 室内に暖色が満ちる。その瞬間、ミルナは敵の顔と位置を正確に把握した。


(;`・ω・´)(なんだとッ!?)

 今度は敵、シャキンの方が反応に遅れた。
 シャキンはミルナに銃口を向けたが、ミルナは構わずに飛び出し、右の拳をシャキンの腹に打ち込んだ。
 しかし攻撃に手応えはない。攻撃が無効化されたような奇怪な感触だけがあった。


 長い長い人生の内、ミルナも無効化系の能力者とは幾度と戦った事がある。
 そういう能力に対する戦法は密封、拘束、力尽くの三種が現実的な選択肢になる。
 海中や砂中に沈める、瓦礫の下敷きにする、両手足を拘束する、無力化できないほど強い一撃を叩き込む。

 今のミルナに力尽くは無理だ。
 両手足を拘束するにも敵の手足にピンポイントで枷を具現化するのは手間がかかる。
 瓦礫の下敷きにするにしても、ここ漆黒の強度は並大抵ではなく、弱った今の状態ではとても壊せない。

 空中のランプが床に落ち、油と火の粉が辺りに飛び散った。
 ミルナは僅かに後退し、敵の目を正面から睨みつけた。

 間を置き、シャキンが小さく言葉を漏らした。

(`・ω・´)「……撃鉄、聞いてた話と様子が違う」

( ゚д゚ )「……」

.

902名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:37:11 ID:4w91Gjj60


 二人の沈黙を裂いたのは、間の抜けたコロコロという音だった。
 ミルナが一瞬床を一瞥すると、迷彩色の球体がいくつも床を転がっていた。

 ――手榴弾か。
 無効化の能力なら確かに効果的だ。

 ミルナは納得ばかりで慌てる素振りを出さなかった。
 死の概念から遠く離れた存在に成り果てている彼には、恐怖や焦燥という感覚がぽっかりと抜け落ちていた。


 手榴弾が炸裂する寸前、ミルナはシャキンを指差して

( ゚д゚ )「伝言だ。考える時間をよこせ。奴に伝えとけ」

 とだけ言い放った。


 次の瞬間、手榴弾から閃光が溢れ返った。

.

903名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:38:09 ID:4w91Gjj60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 超能力は燃料切れで解除され、カーチャンは本来の姿に戻っていた。
 そこに、超能力で見栄えを良くしていた時の面影はない。

 多くの古傷が刻み込まれ、女としての体裁を失うほど鍛え上げられた肉体。
 女の身でありながら肉体の武器化を目指した彼女の姿は、男女の区別を超えた一人の戦士として完成していた。


 カーチャンは、腹の底から上ってきた胃液や血液を思いっきり地面にぶちまけた。
 内臓それ自体が丸っと吐き出されたような盛大な吐瀉吐血。

 片方の乳は回避のために切り捨て、もう片方もマッハの反動で炸裂。
 彼女は両乳から鮮血を垂れ流しており、全身のほとんどを鮮血に染めていた。

 痛みの感覚は薄いが、それは戦闘後の興奮状態が一時的に痛みを和らげているに過ぎない。
 後々凄絶な痛みが襲い掛かってくると思うと、カーチャンは少しばかり憂鬱になった。

J( 'ー`)し(感覚から察するに肋骨はボキボキ、胸骨もイッたわね……背骨大丈夫かしら……)

J( 'ー`)し(おまけに両乳首まで失った……ちゃんと乳を持って帰らないと……)

 最早直立すら苦しい状態でありながら、彼女は頑なに膝を折ろうとしなかった。
 荒野に倒れたドクオを見下ろし、彼女は勝利の余韻をじっくりと味わっていたのだ。
 なんであろうと、立っている方が勝者なのだ。


J( 'ー`)し「伊達酔狂で母親(カーチャン)名乗れるかって話なのよ……」

 そのとき、監獄の方から爆発音が響いてきた。
 カーチャンは反射的に振り返り、それが収まるまで監獄をじっと見つめた。

.

904名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:39:58 ID:4w91Gjj60


 少しすると、監獄からこちらに向かってくる二人の人影が見えた。
 夜目を凝らして人影をじっと見つめる。近づいてきたところで、ようやく二人の顔が分かった。
 シャキンと部隊長の男だった。

J( 'ー`)し「……そっちの用件は終わりました?」

(`・ω・´)「ああ。こっちはかなり苦戦したようだな」

 平静を装い、シャキンと言葉を交わす。

J( 'ー`)し「監獄は放棄します。私の責任ですね……」

(`・ω・´)「どうだろうな、多分何も言われないだろう。
      お前が思う以上に、ここに潜んでいた闇は深い」

J( 'ー`)し「闇、ですか……」

 カーチャンはドクオを一瞥して言った。

J( 'ー`)し「私は光を見ましたよ……」

J( 'ー`)し「……とびきり眩しいのをね……」

J( 'ー`)し「……ふふ、たかしが良い子に育っていれば、きっと彼のように……」

 言い終えた途端、カーチャンは笑顔のまま崩れ落ち、気を失った。
 部隊長の男は彼女を受け止めると、次に地平線の向こうに耳を傾けた。
 聞きなれたエンジンの音。
 砂煙を巻き上げながら、カンパニーの増援部隊がすぐそこまで来ていた。

.

905名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:41:16 ID:4w91Gjj60


 部隊長はドクオを指差した。

「どうします。こいつ、連れて帰りますか」

(`・ω・´)「……当然そうする。俺の独断という事にしておけ」

「言われなくとも」

 部隊長が両肩にカーチャンとドクオを担ぎ、シャキンが向こうの増援部隊の車両に対して手を振ってみせる。
 それと時を同じくして、二人の頭上を巨大な灼熱が飛び越えていった。

「おおッ!?」

 部隊長は灼熱を目で追いかけた。
 灼熱は間もなく部隊の車両めがけて落下し、車両に当たる寸前で何かにぶつかって爆発した。
 車両は一瞬制御を失ったが、すぐに冷静な運転を取り戻して走行を継続した。
 あの灼熱は、増援部隊の能力者達でギリギリ防御できたようだった。

「向こうも増援かよッ!」

 今度は振り向いて監獄側を捉える。そのとき既に、巨大な灼熱の塊が自分達に向かってきていた。
 部隊長は言葉にならない驚嘆を零し、急いで回避運動を取ろうと体を動かした。
 しかし両肩に人間を担いだまま回避が出来る訳も無く、部隊長はピタリと足と思考を止めた。

 部隊長が冷や汗を垂らして「やべえ」と思った瞬間、シャキンがゆっくりと前に躍り出て片手を突き出した。
 灼熱はシャキンの掌に当たると、一秒と経たずしてシャキンの手に握り潰され、消滅した。

(`・ω・´)「びびるな。俺が居る」

「次が来てますからねッ!」

 怒声を残し、部隊長は自分一人で増援部隊の方に走っていった。
 重荷を二つも担いだ状態では足手纏いにしかならない。逃走は冷静な判断に基づいていた。

.

906名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:42:51 ID:4w91Gjj60



(;,,゚Д゚)「一発目外してんぞ!」

|(●),  、(●)、|「向こうにも能力者が居る! この程度では奇襲にもならん!」

 ギコと並んで疾走しながら、ダディクールは再度超能力を発動した。
 ダディの足元で火炎が燃え盛り、それが幾多に枝分かれしてシャキンめがけて走り出す。
 火炎はシャキンの目前でまた一つに合体し、カーテンのように平たく変形してシャキンの視界を赤に染め上げた。

|(●),  、(●)、|「行け!」

(#,,゚Д゚)「おう!」

 ギコは怯まずに加速し、火炎のカーテンに飛び込んだ。
 顔を確かめる前に、ギコは右腕のブレードでシャキンに斬りかかる。
 シャキンは回避するまでもなく、その攻撃を首に受けた。

(`・ω・´)「……」

(;,,゚Д゚)(効かねえだと!?)

 ギコは反射的に腕を引き、シャキンを標的から外した。倒せないなら相手にする必要もない。
 地面を蹴り、今度は部隊長を追いかけて背中に刃を振り下ろす。

(#,,゚Д゚)「そいつは置いていけッ!」

「ッ!」

 部隊長はドクオを捨て、その分身軽なった体でギコの斬撃を回避した。
 ギコは部隊長の背中を見送り、ドクオの傍らに片膝をついた。

(,,゚Д゚)(……生きてるな)

 ドクオの息を確かめてから彼を背中におぶる。

 間もなくダディがギコに追いつき、ダディは手の平を増援部隊に向けて突き出した。
 その動作の瞬間、突き出した彼の手の平から爆発的な火炎が噴き出した。
 火炎は荒波のようにうねりながら増援部隊を囲い込み、彼らを炎の檻に閉じ込めた。

.

907名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:43:38 ID:4w91Gjj60


 足止めを済ませたダディは、ギコの肩を掴んで口早に言った。

|(●),  、(●)、|「我々は下がるぞ! こいつらは棺桶死が一掃する!」

(,,゚Д゚)「は? 一掃っておまっ」

|;(●),  、(●)、|「いいから来い! 巻き込まれるぞ!」

 ダディクールの怒声に交差するように、二人の横をシャキンが走り抜けていく。

(;`・ω・´)「全員退避だ! 身を守れ!」

 無効化の能力者であるシャキンが焦燥感を露にして声を張り上げる。
 すぐさま部隊にざわめきが走った。ヤバイ何かが来る、と彼の素振りから直感的に誰もが理解したのだ。


.

908名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:44:19 ID:4w91Gjj60



 ――地上で誰もが防御退避に急いでいる今現在。
 棺桶死オサムは遥か上空に浮遊し、彼ら全員を眼下に見下ろしていた。


【+  】ゞ゚)「……」

 突然、夜空の雲が棺桶死オサムを中心に吹き飛んだ。
 その現象は彼からの最後の警告、本気で超能力を行使するという宣告だった。

 異能力物質とは別の、棺桶死オサム自身の超能力。
 不可能を可能にする能力――インジャスティス。

 個人のさじ加減一つで天変地異さえ起こせる超能力者、棺桶死オサムは、
 たった一人で世界そのもののと敵対できる希有かつ危険極まりない存在だった。


【+  】ゞ゚)「……憂さ晴らしだ」

 本来ならば気にも留めないただの独り言。
 そんな取るに足らない言葉一つが、次の瞬間、レムナントの荒野を一変させた。

.

909名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:45:22 ID:4w91Gjj60


(;`・ω・´)「……何をするつもりだ……」

 シャキンは唸るような地響きを聞いた。
 やがて大地は震動を始め、轟音を上げながら次々に崩落していった。
 崩落はレムナント監獄周辺を一周し、瞬く間にその亀裂を広げていく。
 亀裂は留まることなく拡大し続け、シャキンらとレムナント監獄との間に底深い峡谷を生み出した。

 まるで人の意思によって大地が動いているような奇妙な感覚。
 シャキンは、そう思う事でしか目の前の現象を理解できなかった。

 地響きが収まり、峡谷の拡大も終わった時。
 シャキンは恐る恐る歩を進め、峡谷の底を覗き込んだ。


(;`・ω・´)「……」

 視界に広がったのは圧倒的な闇。
 大地が根底から分断されたと錯覚するほど、峡谷は底深く見通すことができなかった。

 シャキンは顔を上げ、レムナント監獄を一瞥した。
 さっきまでそう遠くない所にあった監獄は、今はもう遥か遠方にぽつんと点在していた。
 峡谷に囲まれ、浮かぶように存在するレムナント監獄……。
 ほんの一分程度で生み出された壮大な光景に、シャキンは思考を止めて絶句した。
.

910名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:46:02 ID:4w91Gjj60


「……参りましたね……」

 シャキンの隣に部隊長が立ち、頭をかきながら谷底を覗く。
 彼もシャキンと同じように絶句し、乾いた笑い声をもらした。

(;`・ω・´)「……大人しく引こう。まだ見られてる」

 シャキンに言われ、部隊長はそっと夜空を仰いだ。
 おぼろげな人影が、こちらを静かに見下ろしていた。

(……下手に踏み込みゃ次はないってか)

 部隊長は、シャキンの提案に同意した。


「任務は終了だ! 撤退するぞ、今すぐにだ!」

 部隊長が部隊に戻り、指示を出した。
 それを合図に呆然としていた隊員達に士気が戻り、彼らはてきぱきと撤退の準備を開始した。

 撤退の準備はすぐに終わり、シャキンも部隊の車両に向かって歩き始める。
 しかしその途中、シャキンは振り返って上空の棺桶死オサムに何かを言い残した。

(`・ω・´)「――――」

.

911名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:48:06 ID:4w91Gjj60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 あの後、部隊はすぐに撤退した。

 車両の後部、コの字に作られた座席の一角にシャキンは腰掛けていた。
 悪路でガタガタと揺れる車体に気をとられることなく、彼は今回の任務を振り返っていた。


(`・ω・´)(……あの男、まだ生存の意思があった……)

 大人しく死にそうなら殺せ。だが、もし抵抗した場合は生かしておけ。
 今回、シャキンが荒巻から受けた命令はそれだった。命令どおり、シャキンは忠実に仕事を終えたのだ。
 手榴弾で爆破こそしたが、その程度で死ぬ程度の人間でないのは荒巻の口振りから察していた。


「シャキンさん、デミタスさんから通信です」

 カンパニーの隊員が小型のヘッドセットを差し出しながら言った。
 シャキンは遅れてそれに応じ、隊員に礼を言ってからヘッドセットを受け取った。
 ヘッドセットを装着し、マイクに向けて喋り始める。

(`・ω・´)「なんだ」

『……お前だな。そうか』

(`・ω・´)「ああ。でなんだ」

『いつから荒巻の駒になった。汚れ仕事がお好みだったか』

(`・ω・´)「払いが良かったもんでな。秘密にしてて悪かった。今度奢る」

『……金の為に人殺しか、いよいよお前も変わってきたな』

(`・ω・´)「……家族の為だ」

 シャキンはデミタスがふて腐れているのを察知し、簡潔に今回の事情を口にした。
 その一言で事を察したのか、デミタスはしばらく口をつぐんだ。

.

912名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 15:50:37 ID:4w91Gjj60


『……帰ったら有給使って休め』

(`・ω・´)「うちに有給があったのか? 初耳だぞ」

 シャキンはそう言ってデミタスを茶化したが、一息ついてから囁くように言葉を漏らした。

(`・ω・´)「変わらない、俺もお前も。……ずっと変われないままだ。そうだろ」

 デミタスは沈黙し、返事をせずに通信を切った。
 シャキンは天井を仰いでまた一息つき、超能力を解除して車体の揺れに体を預けた。

 目を閉じると、その心地良い揺れに意識を溶かされていくのが分かった。
 今まで気を張り詰めていたシャキンにとって、それは久方振りに感じる安堵だった。

 夜が明けていく。
 シャキンは、そのまま深い眠りについた。

.

913名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 16:00:16 ID:4w91Gjj60

1〜6話 >>391
プロローグ 壁の向こうへ >>406-416
第七話 面汚しの夜 その1 >>419-461
第八話 面汚しの夜 その2 >>474-513
第九話 面汚しの夜 その4 >>531-559 >>560-595
第十話 世界の終わり >>611-646
第十一話 ようこそレムナント監獄へ >>653-694
第十二話 tanasinnの片鱗 >>716-736
第十三話 撃鉄が起きた日 >>738-768
第十四話 Before my body is dry >>798-827

第十五話 撃鉄が落ちた日 >>836-859 >>863-912

あと二話投下したら次スレを立てます
次回は今月末くらいに投下します。寝ます

914名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 19:57:34 ID:FDEgQ.fQ0
久々にシャキン見た
面白い


915名も無きAAのようです:2014/09/06(土) 22:13:45 ID:/ktfzeVk0
正直バトルなのに何回も笑った
でも読み切るとカーチャンかっけえわ

916名も無きAAのようです:2014/09/07(日) 01:59:49 ID:J.8oOZ/20
ARMS好きな俺としてはたまらないノリ

917名も無きAAのようです:2014/09/07(日) 02:04:34 ID:Mst9gI6g0
乙ー。オサムが予想外に強かった

918名も無きAAのようです:2014/09/09(火) 02:12:33 ID:2pcln9zg0
カーチャンが色んな意味でトラウマになったおつ

919名も無きAAのようです:2014/09/19(金) 23:17:26 ID:97De2fPQ0
オサム強すぎワロタ

920 ◆gFPbblEHlQ:2014/09/28(日) 18:04:03 ID:r7UZqFgY0
番外編という寄り道をしているので投下が少し遅れます!
来月半ばには何かしら投下します!

921名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:22:00 ID:H9mWz/r60

≪1≫


 デミタスとシャキンの出会いは二十年ほど前に遡る。

 当時のシャキンは極めて内向的な子供だった。
 だがそれは第三者の認識であって、そういった気性の自覚は本人には微塵もなかった。
 周囲の子供より多少大人びているというだけで、半ば強制的に、彼は独りぼっちの寂しい子供というレッテルを張られていたのだ。

 当時のシャキンが子供らしからぬ雰囲気になったのは、彼の超能力が原因だった。

 全てを完全無効化する能力、 『完全五分(パーフェクト・ドロー)』 。
 子供シャキンにはこの超能力が扱いきれず、超能力が勝手に発動しては人の声など社会生活に必要なものを片っ端から無作為に無効化してしまっていた。
 結果、無という概念を常に身近に感じていたシャキンは、それに順応する為に言動や考えが大人びていったのだ。


(`・ω・´)(目が見えなくなったら、あぶないから立ち止まる)

(`・ω・´)(耳がきこえなくなったら、ノートにかいてもらう)

(`・ω・´)(ぜんぶなくなったら、じっとしてまつ)


 不規則に目や耳が不能になり、最悪の場合では五感すら消えてしまう危険な日常。
 小学校の登下校は毎日親の送り迎えが必須で、少しは超能力を抑えられるようになった小学校高学年まで、彼は不自由な生活を余儀なくされていた。

.

922名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:22:42 ID:H9mWz/r60


 小学校高学年の頃、シャキンは親の都合によって人生初の転校を体験する。
 そこで彼は後生の腐れ縁、盛岡デミタスと出会うのだった。

 厳密には、デミタスと出会ったのは学校ではなく彼の自宅。
 デミタスはいわゆる不登校生徒で、シャキンが彼の家にプリントを持っていったのが出会いの発端だった。


 デミタスの超能力、『毒の姫君(ポイズン・メイデン)』もまた、子供には到底扱いきれない危険な能力だった。
 当時のデミタスは、光があれば勝手に吸収して毒を生み出してしまう大変な感じの子供だった。

 当然学校で毒を垂れ流す訳にもいかず、デミタスは必然的に不登校になった。
 シャキンと似たような生い立ちだが、二人の相違は超能力そのものに対する周囲からのイメージであった。

 シャキンの場合は無差別無効化という、言ってしまえば障害染みたものであり、周囲からの理解を得るのもそう難しくなかった。
 しかしデミタスの場合は毒。それが周囲に与えるイメージは極めて劣悪で、親も同年代の子も、デミタスを汚物のように取り扱っていた。


(´・_ゝ・`)(この世はクソッタレだ)


 必然的にグレた。
 性格がひねくれたのも、この頃の生活が原因だった。

.

923名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:23:48 ID:H9mWz/r60


 ところが完全無効化能力のシャキンにはデミタスの毒がまったく効かなかった。
 グレたデミタスには逆にそれが腹立たしかったが、初めてまともに話せる相手として、シャキンとは特別仲良くなった。
 後日、シャキンが近くに居れば毒が無効化される事が判明。学校との相談の結果、デミタスも学校に行けるようになった。



 二人が超能力を十分に扱えるようになったのは高校入学からしばらく経った頃。
 それから間もなくして、今の二人を決定付ける事件が起きたのだった。


.

924名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:24:45 ID:H9mWz/r60

≪2≫


 夏休み中盤でありながら補習地獄で夏休み気分をまったく謳歌出来ていない高校生が二人。
 盛岡デミタスはぐったりと椅子に掛けて天井を見上げたまま、大粒の汗を流しながら時間の経過を待っていた。

(;´・_ゝ・`)「くだらねぇー……なにが勉強だバカヤロー……」

(;´・_ゝ・`)「お前は楽そうでいいよなぁ……」

(`・ω・´)「超能力サマサマだ」

 シャキンは超能力のおかげで暑くない。とても快適。



( ^ν^)「……お前らよぉ」

 灼熱の補習室にはもう一人、監督役の教師が居た。
 『鵜入速人』は椅子に逆向きに座り、背もたれに肘をついて二人を眺めていた。

( ^ν^)「ただでさえ金にならねえ事で時間潰してんだからよぉ……。
      せめてこの時間が無駄じゃねえと思わせてくれよ……」

(# ^ν^)「いい加減、暑すぎてムカついてきた……」

(;´・_ゝ・`)「じゃあ帰れよ……俺らも帰れるし一石二鳥なんだが……」

( ^ν^)「お断りだ、ここ終わったら次は部活顧問の仕事なんだよ……」

(;´・_ゝ・`)「てめえサボりかよ、ゴミカス……」

( ^ν^)「罵倒すら満足にできねぇインテリバカが……」

(;´・_ゝ・`)「童貞インポハゲワキガハゲハゲハゲハゲハゲハゲ……」

( ^ν^)「悪口言えばいいってもんじゃねえよ……」

(;´・_ゝ・`)「お前の苗字ひらがなで書くぞ……」

( ^ν^)「コンプレックスには触れるな」


 ※鵜入(うにゅう) 声に出すとキツイ

例:( ^ν^)「うにゅ〜ですっ☆」

.

925名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:25:46 ID:H9mWz/r60


 そのときチャイムが鳴り響いた。
 デミタスは歓喜の呻き声を上げて椅子から転がり落ちた。雑巾のように床を滑った。

(;´・_ゝ・`)「終わった〜〜〜〜」

( ^ν^)「何も終わってねえよ明日も補習だ。ざまあみろバーカ」

(;´・_ゝ・`)「これがいい年した大人のセリフかよ……オタサーの姫みたいな苗字しやがって……」

( ^ν^)「触れるなと言った」

(`・ω・´)「おい、帰りたいんだろ。さっさと片付けろ」

 先に帰る準備を済ませていたシャキンが冷ややかに促す。
 デミタスは重い腰を上げ、荷物をカバンに詰め始めた。

( ^ν^)「しかしお前も災難だな、こんな奴のお守りを何年も」

(`・ω・´)「今更ですよ、それに大した仕事でもないです」

( ^ν^)「仕事の時点で災難だ。良い社畜になれるぞお前は」

(´・_ゝ・`)「おっしゃ帰ろうぜ」

( ^ν^)「おぉ帰れ帰れ。そんじゃあまた明日な、お疲れさん」

(`・ω・´)「どうも」

(;´-_ゝ-`)「帰って寝よ……」

( ^ν^)「あぁデミタス、てめぇは後で職員室だ。夕方ぐらいに来い」

(;´・_ゝ・`)「分かってるよ、じゃあな……」

(`・ω・´)「……」

 デミタスとシャキンは補習室を出て、炎天下の中、岐路についた。

.

926名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:26:28 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(`・ω・´)「――順調なのか?」

(´・_ゝ・`)「ああ、順調に連鎖を組み上げてるところだ」

 あまりの暑さに耐えかねた二人は、少し寄り道してゲームセンターに退避していた。
 デミタスは椅子に座って筐体画面に集中している。
 画面上には、ぷよぷよとしたぷよぷよが規則的に積み上げられていた。

(`・ω・´)「ニュー先生との話だ。お目当ての能力者は見つかったのか?」

(´・_ゝ・`)「それか。まぁ見つかるには見つかるんだが、やっぱ俺の方が強すぎて全然ダメだ」

(`・ω・´)「そうか……気の長い話になりそうだ」

(´・_ゝ・`)「はなっから俺はやる気ねーよ。あいつが勝手に俺を連れ回してるだけだっての」

(´・_ゝ・`)「おいシャキン見とけ――起爆っ」

 画面上のぷよぷよとしたぷよぷよが、デミタスの一手で連鎖を始めた。
 連鎖は瞬く間に伸びていき、画面の殆どを埋めていたぷよぷよは、最終的に10連鎖分の邪魔ぷよとして相手プレイヤーに送りつけられた。

(´・_ゝ・`)「……つまんね」

 デミタスは連鎖の完成を見届けると、席を立ってフラフラとどこかへ歩いていった。

(´・_ゝ・`)(世の中つまんねー事だらけだ……正気を保つので精一杯だぜ……)

 それからも、二人は日が落ちる頃までゲームセンターで時間を潰した。

(´・_ゝ・`)「じゃあな」

(`・ω・´)「ああ」

 デミタスはシャキンと別れ、ニューとの約束のために学校に戻っていった。

.

927名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:27:52 ID:H9mWz/r60

≪3≫


 デミタスの超能力『ポイズン・メイデン』は言わば爆弾だった。
 今でこそ辛うじて制御できているが、それが何を切欠に暴走するかは誰にも分からない。
 毒の能力が制御不能であるという事は、本人にとっても誰にとっても危険極まりない状態なのだ。


 デミタスの担任であるニューは、彼の超能力の不安定さを誰よりも危険視していた。
 学校側に直訴し、デミタスとシャキンを一般クラスから引き離したのもニューである。

 わざわざ二人の為に特別クラスを設けた目的は二つ。
 デミタス自身が超能力を制御出来るよう訓練させる事。
 そして、彼の超能力に改悪形態を作り出す事だった。

 結論から言うと、以上二つの項目は今でも達成出来ていない。
 ニューが二人の担任になって既に二年。成果と呼べるものは何も無い。
 せいぜいデミタスの成績が最悪から普通になった程度で、超能力自体に大した変化はないままだった。

 そんな中、ニューが思いついた行動は実力行使だった。

 デミタスをボコボコにして戦闘不能寸前にまで陥れ、トラウマを植えつけて超能力を使えないようにする。
 それは、超能力者に起こりうる現象として 『ブラックアウト』 と名付けられている現象だった。
 現象の内容は、強い心的外傷、生死を彷徨う重症などを切欠に超能力が使えなくなるというもの。

 ニューはそれを狙い、夜な夜なデミタスを街に連れ出しては、彼をより強い能力者と戦わせていたのだった。

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928名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:29:46 ID:H9mWz/r60


 学校でニューと落ち合ったデミタスは、そのままニューの車に乗り込んで夜の街に出発した。
 窓に差し込んでいた夕日は徐々に暗闇に染まっていき、街灯ばかりがデミタスの顔を照らすようになった。
 いよいよ景色を眺めるのも飽きてくると、デミタスは運転席のニューに渋々話しかけた。

(´・_ゝ・`)「徒労だと思うぞ。随分と長い間、俺に手間暇かけてるけどな」

( ^ν^)「徒労なんて言葉はな、結果を出せなかった人間の負け惜しみなんだよ。
      周囲の人間に『お前は無駄な努力をした』って思われたくない奴の、そういう言葉だ」

(´・_ゝ・`)「知らねぇよ……。大体な、なんでわざわざ弱くなる必要があるんだよ」

( ^ν^)「お前が弱いからだ。化けの皮は若いうちに捨てておけ」

 運転しながら、ニューはデミタスを横目に一瞥した。

( ^ν^)「細かく言えば、お前は精神と超能力の強さが釣り合ってない。
      強すぎる能力を扱うには、それと同等以上の精神力がなけりゃ駄目だ」

(´・_ゝ・`)「……そんな脆いハートしてねぇけどな、少なくともお前より」

( ^ν^)「そうやって。すぐ人と比べる」

(´・_ゝ・`)「揚げ足取りか?」

( ^ν^)「他人が居なけりゃ自分の立ち位置も分からねぇガキは山ほど居る。
      いちいちガキ同士馴れ合って、人を小馬鹿にしながら、自分は違うと唱え続ける……そんなクソガキだ」

(´・_ゝ・`)「……国語のセンセは話が長くて堪んねぇな……」

( ^ν^)「くだらねぇ生き方をすんなって話だ。常識に怯えきった思考停止バカ大学生にはなんなよ」

(´・_ゝ・`)「大学生か、くだらねぇ……」

( ^ν^)「……俺はお前のそういう所を見込んでるんだ」

(´・_ゝ・`)「くだらねぇ事は大嫌いだ、言われるまでもねぇ」

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929名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:30:29 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「今日も前と同じ場所をうろつく。寄り道はナシだ」

(´・_ゝ・`)「あのラブホだらけの所か……イカ臭くて気分が悪くなる」

( ^ν^)「こないだ倒した奴が何人か強いのを集めてくれたそうだ。
      今日こそズタボロに負けて来い」

(´・_ゝ・`)「あいよ……」

 デミタスは視線を外に戻し、ガードレールの上に忍者を走らせ始めた。
 今日こそとは言うが、彼は今日も自分が負ける事は無いと予感していた。

 何か理由や自信があっての予感ではない。
 それはただの直感であり、本人にしか分からない絶妙な感覚だった。
 そして、デミタスの予感が外れた事は一度も無い。

 ニューは適当なコインパーキングに駐車して車を降りた。
 デミタスが後に続いてくるのを確認し、呼び出された場所へと歩き出す。

 二人は道中で少しだけ言葉を交わしたが、そこに無駄な言葉は何も無かった。
 必要最低限に凝縮された言葉は、二人の間に十分な信頼関係がある事の証明だった。


 ニューの案内で到着したのは人気のない高架下の空き地だった。
 そこには四人の男が戦意をむき出して待ち構えていたので、彼らが今日の相手なのはすぐに分かった。

( ^ν^)「行って来い」

(´・_ゝ・`)「……」

 デミタスが四人の男達に向かって歩いていくと同時に、周囲の街灯が激しく点滅し始める。
 やがて街灯は音を立てて炸裂し、周囲に暗闇が満ちたその瞬間、戦いは始まった。

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930名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:31:12 ID:H9mWz/r60

≪4≫



 ガードレール上に忍者を疾走させながら、デミタスは小さく言った。

(´・_ゝ・`)「毎回思うんだけどよ」

( ^ν^)「おう」

(´・_ゝ・`)「こんな面倒なマネせずに、お前が俺の相手すりゃよくねえか」

( ^ν^)「今日も無傷で完勝して、気分が良くなってるのか?」

(´・_ゝ・`)「そんなんじゃねえよ……ただそう思っただけだ」

( ^ν^)「俺が相手、なぁ……」

 赤信号を前にして車を停止させると、ニューはその続きを口にした。

( ^ν^)「やっぱ俺は駄目だ。お前と同じでな、手加減が上手く利かん」

( ^ν^)「そんなのがまともにやりあったら絶対どっちか死ぬ。だから駄目だ」

(´・_ゝ・`)「……お前の方は、精神力と超能力で釣り合い取れてるのか?」

( ^ν^)「平和に生きてられるくらいにはな」

 信号が変わり、車が再発進して動き出す。
 じっくりとハンドルを切り、ニューはデミタスの家に車を走らせる。

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931名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:31:53 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「……俺も昔、お前みたいになってた頃がある」

( ^ν^)「何度戦っても自分の限界が見えない。
      止まるに止まれない……。昔の俺は、そんな感じで毎日暴れ回ってた」

( ^ν^)「言っちゃなんだが、俺でも結構良いところまで行けたんだぜ?
      八仙郷って知ってるか? 武神と互角っていう馬鹿強い連中が居る所だ」

(´・_ゝ・`)「ほーん」

( ^ν^)「具体的に言うとだな、そこの総師範代を引っ張り出すまで俺は行けた。
      でもまぁ、やっぱ本物の強者には勝てなかった……」

 デミタスは反射的にニューの方を見た。

(´・_ゝ・`)「負けたのか?」

( ^ν^)「負けた。そりゃあもうズタボロにな。だが、得る物は十分にあった」

( ^ν^)「望まずに強さを手に入れた奴ってのは、やっぱり本物には勝てない。
      師範代と戦ってほぼ死んだ俺は、そう理解した。俺は本当には強くないんだと、そこで初めて思ったんだ」

 それから少しすると、車はデミタスの見慣れた道に出た。
 窓から夜空を見上げると、住んでいるマンションがすぐ近くに見えてきていた。

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932名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:32:34 ID:H9mWz/r60


 ニューは車をマンションの前に停めた。
 デミタスは無言で車を降り、ニューに背を向けた。

( ^ν^)「……デミタス」

(´・_ゝ・`)「なんだよ」

( ^ν^)「お前の能力は、お前が思ってる以上に怪物染みてるんだぜ。
      だからお前はきっと……俺の時よりもヤバイ『本物』に目を付けられる」

( ^ν^)「……早いとこボロ負けして身の程を知れ。
      強い力を欲しがってる人間に出会う前にな」

 デミタスは振り返って言った。

(´・_ゝ・`)「じゃあお前が相手しろ。口先だけなら、誰だって最強になれるんだぜ」

( ^ν^)「口だけで結構。俺は今の生活が好きなんだ」

(´・_ゝ・`)「……大人の言いそうな事だぜ……」

 吐き捨てるように言い残し、デミタスはマンションへと歩いていった。


( ^ν^)「……」

( ^ν^)「……今年中に相手が見つからなけりゃ、その時にはな……」

 デミタスには聞こえないように、ニューは静かにそう呟いた。

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933名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:34:36 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(;´・_ゝ・`)「あっつ……」

(`・ω・´)「快適なんだが」

( ^ν^)「勉強しろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 灼熱の補習室にはデミタスとシャキン、そしてニューの三人が居た。
 先日と同じような光景。ぼんやりとした曖昧な日常が、今日もまた少しずつ過ぎ去っていく。

(;´・_ゝ・`)「なにが勉強だよ……早く帰らせろ……」

(`・ω・´)「あとたった三時間で終わりだぞ。やったな」

( ^ν^)「そうだそうだ。しかも運が良い事に、今日この後は自習にする予定だ」

 ニューがそう言うと、デミタスは途端に目を輝かた。

( ^ν^)「シャキン、お守り頼んだぞ。最後にこのテストやらせといてくれ」

(`・ω・´)「分かりました」

(´・_ゝ・`)「……」


(´・_ゝ・`)「……シャキン、今日だけは俺が飯奢ってやる。コイツ消えたらどっか行こうぜ」

(`・ω・´)「そうだな。学食にでも行くか」

(´・_ゝ・`)「学校出る方向で頼む」

(`・ω・´)「俺は勉強してるから勝手にどっか行け」

(´・_ゝ・`)「……」

 デミタスは押し黙り、わざとらしく溜め息を吐いて机に向かった。

( ^ν^)「扱いが上手いな、参考になる」

(`・ω・´)「慣れです」

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934名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:35:23 ID:H9mWz/r60


 ニューは教鞭を置き、カバンを持って教壇を下りた。

( ^ν^)「じゃあまぁ後は適当にやって帰れ。
      明日明後日も補習だからな、忘れんなよ」

(´;_ゝ;`)「先生、忘れたらごめんなさい……」

( ^ν^)「家庭訪問されたいなら忘れていいぞ、忘れた分だけ教養を叩き込んでやる」

(´・_ゝ・`)「さっさと消えろよ痛いペンネーム苗字ハゲ……」

( ^ν^)「……シャキン」

 ニューはデミタスの悪口を無視し、シャキンの耳元に口を寄せた。

( ^ν^)「明日俺が来なかったら、しばらくの間デミタスを足止めしておけ」

( ^ν^)「このバカを止められんのはお前だけだ、頼んだぞ」

(`・ω・´)「……」



 ニューは居直り、教室のドアを開けた。

( ^ν^)「そんじゃあな! 俺は涼しい部屋で楽しく過ごさせてもらうわ!」

(´・_ゝ・`)「自主性のない子供に何かを強要するのは暴力だと思う……」

 デミタスの小言を背に受けながら、ニューは二人の前から姿を消した。



 その文字通り、ニューは今後一週間、彼らの前に現れなかった。


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935名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:38:09 ID:H9mWz/r60

≪5≫



( ^ν^)「……さてと……」


 暑苦しい補習室を脱出すると、ニューはすぐさまネクタイを緩めて袖をまくった。
 愛車に乗り込み、そのまま今日の目的地に向かう。

 ニューは、今日は昨日よりも更に遠い場所に行こうとしていた。
 行動の理由は、昨日倒した連中が言っていた、とある噂だった。

 噂の中身は“めっぽう強い能力者が手当たり次第に能力者を半殺しにして回っている”というもの。
 もし本当にそれだけ強いのが居るのなら、その男を警察が確保する前に利用しておきたい。
 今日彼が一人で噂の人物に会いに行くのは、その人がデミタスの相手に丁度良いかを試す為だった。

 目標が現れる各ポイントと、各ポイント間の行動ルートは既に想定してある。
 よほど運が悪くなければ、今日の午前一時の段階で、ニューは噂の人に遭遇する。

( ^ν^)(……まさか、俺より強いのが出てきたりしてな)

 鼻を鳴らして笑い、ニューは隣県某所にまで続く長いドライブに集中した。
 そして彼が最終的に行き着いたのは、法の影すら存在しない、裏社会への入り口であった


( ^ν^)(可愛い生徒の為ならば、だ)

 車を適当な所に停めると、ニューは躊躇わずに路地の奥に進んでいった。
 時間にはまだ余裕がある。情報収集も兼ねて、ニューはまず手近なバーに足を踏み入れた。

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936名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:41:03 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「おお……」

 店に入った途端、ニューは思わず感嘆の声を漏らした。
 赤い絨毯、赤い壁、赤い照明と、店内はとにかく全体的に真っ赤だった。

( ^ν^)(これ、マジか)


ミセ*゚ー゚)リ「――いらっしゃい」

 そう言ってカウンターの下から現れたのは、これまた髪と服装を赤色に染め上げた若い女性だった。
 ニューは彼女の手招きに従い、カウンター前の黒い席に腰掛けた。

ミセ*゚ー゚)リ「……」

( ^ν^)「……とりあえずビール」

ミセ*゚ー゚)リ「……ビールね、ちょっと待ってて」

 彼女は冷蔵庫を開けてビールを探し始めた。
 目の前で揺れる彼女のケツを、ニューは死ぬほど血眼になって目に焼き付けた。

( ^ν^)「……良い店だな。貸切っていうのが尚良い」

ミセ*゚ー゚)リ「普段なら客いっぱいなんだけどね……。
     最近は例の噂のせいで、客が遠のいてるの……」

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937名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:44:13 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「今日は貴方で十人目。
      サービスするから、めいっぱい私の仕事に貢献してね」

( ^ν^)「ビールは、あっちのサーバー使うんじゃないのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……あっそうか。そりゃそうね」

( ^ν^)「グラスはそこの冷えたので頼む」

ミセ*゚ー゚)リ「りょーかい。この調子でもっと注文してくれる?」

( ^ν^)「生憎、持ち合わせが少ないんだ。悪いな」

 彼女は笑いながらグラスを取り出し、血生臭い冷蔵庫を閉めた。
 グラスにビールを注ぎ、それをニューの前に置く。

( ^ν^)「……ところで、なんか臭いを消せるものは無いか?
      この店、真っ赤でいいんだが……どうにも換気が出来てないっぽいぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「換気? ……ふぅん。お兄さん、面白いね。いいわ、もうちょっと続けましょう?」

( ^ν^)「誘惑すんなよ……鼻の下が伸びちまう。
      あと実はビール苦手なんだ。適当なジュース出してくれ」

 彼女はニューの注文を受けると、ビールを片付けて代わりにビンのジュースを差し出してきた。
 ニューはそれを受け取り、蓋を開けて直にジュースを一気飲みした。
 鼻腔に停滞していた血の臭いが、ほんの少しだけ和らいで消えた。

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938名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:48:13 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「今日は何の用なの? こんな所に。私に用かな?」

ミセ*゚ー゚)リ「……そうだと嬉しいなぁ……」

 彼女は舌なめずりした。


ミセ*゚ー゚)リ「私、強い人を探してるの。とびきり強い人」

( ^ν^)「店の位置が悪い。捗らんだろう」

ミセ*゚ー゚)リ「んーん。強い人は結構どこにでも居るの……でも、みーんな期待外れ」

ミセ*゚ー゚)リ「……その点、お兄さんはちょっと魅力的かも?」

(; ^ν^)「……」

 彼女はフワリと身を乗り出し、ニューの目の前に顔を寄せた。


ミセ*゚ー゚)リ「――やっぱり。お兄さん、凄く強いのね」

ミセ*゚ー゚)リ「……今日一番かも」

( ^ν^)「……そいつは光栄だな」

 ニューは目を逸らし、ポケットに片手を忍ばせた。

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939名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:48:53 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと特別な良いハナシがあるんだけど、聞いてくれる?」

ミセ*゚ー゚)リ「……って、もったいぶる事でもないの。
      私と友達になってほしいの。まずは交換日記から始めたいな」

( ^ν^)「……断ったらどうなる」

ミセ*゚ー゚)リ「さっき言ったとおり、今日の十人目にするだけよ?
      でも、もしかして……。貴方だったら、私から逃げ切れたりするのかしら?」

(; ^ν^)「ッ!!」

 瞬間、悪寒を感じたニューは跳ねるように席を立ち、彼女を視界に収めたまま壁際に退避した。
 椅子が血塗れの床を転がり、やがて、店内全ての物が動きを止める。




(; ^ν^)「……虚勢張りも限界だ。そろそろ人の血肉も耐え切れん」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、綺麗だとは思わない?
      あれだけ私と茶番できるんだもの。私と貴方、きっと感性が似てる筈よ」

ミセ*゚ー゚)リ「ねえ、お友達になりましょうよ。
      今なら記念にお風呂ご一緒してあげる。この返り血を落とすの、手伝ってくれない?」

 カウンターに肘をつき、彼女は油断しきった状態でニューに話し続けた。

 ニューは彼女の問い掛けには何一つ答えなかった。
 彼は、この状況が既に窮地である事を自覚していた。

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940名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:49:42 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(……コイツはヤバイ。それだけがハッキリと分かる……)

(; ^ν^)(まともに相手したら俺かコイツ、どっちかが死ぬ。それで多分、死ぬのは俺の方だ……。
      デミタスなんかにゃあ荷が重過ぎる……論外もいいとこだ……!)

 ニューはポケットに隠し持っていたペンライトを点け、超能力を発動した。


ミセ*゚ー゚)リ「……そう、お断りなのね」

ミセ*゚ー゚)リ「でもいいの。私、男を追うのは結構好きよ?」

( ^ν^)「俺は女から逃げ切るのが得意だ」

ミセ*゚ー゚)リ「……最ッ高」

 彼女が身をよじって言うと同時に、店内の照明がふっと消えた。
 闇の中、赤色に輝く双眸がニューに視線を向ける。


ミセ*゚ー゚)リ「今日は――」

( ^ν^)「――長い夜になりそうだ、だろ」

ミセ*゚ー゚)リ

 彼女は狂気染みて口角を吊り上げ、それ以上を語らなかった。


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941名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:51:46 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




(´・_ゝ・`)「……なんかよぉ」

(`・ω・´)「……」

(´・_ゝ・`)「暇だよなぁ……」

 ニューが消えて一週間が経過していた。
 その頃にはニューが残した宿題も全て片付き、夏休みの宿題も殆ど終わっていた。
 補習室は相変わらず高温を保っていたが、部屋に吹き抜ける風はいつもより冷たく感じられた。

 デミタスは保冷バッグに山盛り詰め込んできたアイスを取り出し、口に運んだ。

(´・_ゝ・`)「……何度も聞いてるけどよぉ、お前なんか聞いてねえのかよ」

(`・ω・´)「他の教師が言うには有給消化中らしい。そう何度も答えた」

(´・_ゝ・`)「……三回目くらいで思ったんだが、お前もうちょいマシな嘘をつけよ。
      まぁ、お前の嘘なら何か意味があるんだろうが……」

(`・ω・´)「とにかく知らん。知らんものは知らん」

(;´・_ゝ・`)「意地の張り方が馬鹿っぽいんだよ……」

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942名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:54:05 ID:H9mWz/r60


 デミタスは扇風機の前に行き、カッターシャツの胸元をつまんだ。
 体表近くの空気が入れ替わり、汗ばんだ体に冷たさが広がっていく。

(´・_ゝ・`)「俺とアイツが何やってるかは知ってんだろ?」

(`・ω・´)「強敵探しか。それがどうした」

(´・_ゝ・`)「アイツが消えた理由は、多分それだ」

(`・ω・´)「……」

 シャキンは顔を上げてデミタスを見た。

(´・_ゝ・`)「俺に丁度いい相手を探してたら、予想外の大物に当たって大事故……」

(´・_ゝ・`)「十分ありうる話だろうな。しかも、今現在は誰にもアイツの所在が分からない」

(´・_ゝ・`)「……案外死んでるかもな」

(`・ω・´)「……俺を煽ってるつもりか?」

 シャキンの言葉に対して、デミタスは意地悪く笑って反応した。

(´・_ゝ・`)「先に断っとくが……俺は何もしないぞ。
      もし俺の考えが当たりなら、そんな奴を前にして生き残れる保障はない」

(´・_ゝ・`)「もちろん、アイツが生きてる保障もないな。
      仮に生きてたとしても必ず面倒事に巻き込まれてる。俺まで巻き込まれるのはゴメンだ」

(´・_ゝ・`)「俺はこのまま適当に過ごして、あとちょっとの夏休みが終わるのをボーっと待つつもりだよ」

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943名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:55:23 ID:H9mWz/r60


(`・ω・´)「……言いたい事は分かった。俺に代わりに行って来いって話だな。
      何があっても生き残れる俺なら、確かに大丈夫かもな」

(´・_ゝ・`)「行くなら気をつけて行けよ。
      無効化を無効化する能力者が相手になるかも」

(`・ω・´)「お前こそ、俺を尾行するなら気付かれないようにしろよ」

(´・_ゝ・`)「……決まりだな。言い訳も十分作れた」

 シャキンは席を立ち、デミタスの前に行った。


(`・ω・´)「俺はお前を止めろと言われたが、俺自身が動くのは止められていない」

(´・_ゝ・`)「俺はお前の後を付けていくだけ。別にアイツを探しに行く訳じゃない」

 言い終えると二人は揃って微笑み、戦闘を想定した最低限の用意をして学校を出た。
 まずはシャキンが先行して歩き、彼を見逃さないギリギリの距離にデミタスがつく。

 二人は最初にニューが住んでいるアパートに向かった。
 バス代をケチったので徒歩だったが、徒歩でも夜になる前には到着出来そうだった。


(´・_ゝ・`)(……クソッタレ、俺だって今の生活が気に入ってんだ)

(´・_ゝ・`)(何にもしないまま、いつの間にか全部ブッ壊れてましたなんて冗談じゃねえ……)

 デミタスはやさぐれた心でそんな事を考えながら、じっとシャキンの背中を睨んだまま歩き続けた。


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944名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:56:03 ID:H9mWz/r60

≪6≫


 太陽が沈みきる寸前、二人はようやくニューのアパートに辿り着いた。
 早速部屋に乗り込もうと、デミタスが勇んで歩き出す。

(`・ω・´)「……」

(´・_ゝ・`)「……どうした」

 しかしシャキンはアパートを眺めているばかりで、デミタスの後を追おうとはしなかった。
 考えがまとまったのか、シャキンはやや間を置いてからデミタスの声に応えた。

(;`・ω・´)「……俺一人で行く」

(´・_ゝ・`)「……ここまで来てか。そっから何が見えてる」

 シャキンの超能力『完全五分(パーフェクト・ドロー)』――その改悪形態である『ディープドロー』。
 既に後者の超能力を発動させていたシャキンは、アパート周辺に張られていた結界を見透かしていた。
 デミタスには極普通のアパートが見えていたが、彼にはもっと別の景色が見えていたのだ。


(;`・ω・´)「……敷地の境界線が入り口になってる。
      そこから先は、異空間みたいな所に繋がってる……」

(´・_ゝ・`)「……異空間……」

 デミタスは虚ろに呟いた。

(;`・ω・´)「とっくに戦闘が始まってる。辺り一面が瓦礫の山だ」

(;`・ω・´)「あんなの、化け物が暴れまわってるとしか思えん……」

.

945名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:56:44 ID:H9mWz/r60


(´・_ゝ・`)「……問題ねぇな」

 シャキンの怯懦を一蹴し、デミタスは道路の街灯から光を吸収した。

(´・_ゝ・`)「場所が別空間でむしろ好都合だ。俺も全力で戦える」

(´・_ゝ・`)「シャキン、お前の方こそ居残ってろよ。
      自分が戦力にならないの、自覚してるだろ」

 肩越しに嘲笑を見せてから、デミタスは平然と歩いていって敷地の境界線を跨いだ。

(;`・ω・´)「……盾にはなる!」

 シャキンはそう言い、デミタスを追って異空間に飛び込んだ。


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946名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:58:39 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ニューは廃墟の陰に潜み、遠くで自分を探している少女を様子見していた。
 二人の戦闘が始まってから丸々一週間。
 異空間に存在していた町一つ分を再現した模型は、既に跡形も無く崩壊しきっていた。


ミセ*゚ー゚)リ(やっぱり最初にやりすぎちゃったな。これじゃあ探すにも手間が掛かる……)

ミセ*゚ー゚)リ(でもまぁ、この空間から抜けるには私を倒すしかない――)

 少女、ミセリはその考えを嘲笑った。

ミセ*゚ー゚)リ(――って、そう考えちゃうよね普通。悪いけど、私じゃ空間から出してあげられないの)

ミセ*゚ー゚)リ(お迎えが来るまで残り三週間、じっくりやりましょう……)

 ミセリは周囲をぐるりと見回し、ニューの居場所を思案した。


ミセ*゚ー゚)リ(……流石にもう射程は把握されちゃってるか。半径20メートルには居ない)

ミセ*゚ー゚)リ(お兄さんの能力は遠距離攻撃が出来ないみたいだから安全だけど、いい加減、場を動かさないとね)


.

947名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 14:59:25 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「お兄さ〜〜〜〜〜〜ん!!」

 ミセリは口元に両手を当て、大声でニューを呼んだ。

ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ出てきてくれなきゃまた暴れ回るよ〜〜〜〜〜〜!!」


ミセ*゚ー゚)リ「五秒数えッ――」

 そこまで言い、ミセリは視界の端にニューの影を見つけた。
 ニューはこちらを目視しながら走っていたが、決してミセリに接近しようとはしない。

ミセ*゚ー゚)リ(最大威力は出せないけどッ)

 ミセリは上唇をペロリと舐め、走るニューに人差し指を向けた。
 すると周囲を埋め尽くしている瓦礫が一斉に浮遊し、大群をなして彼女が指差す方向へと飛んで行った。


(; ^ν^)「クソッ!」

 ニューは慌てて進路を変え、崩落したビルの後ろに逃げ込んだ。
 その直後、ビルが瓦礫の直撃を受けて粉々になって崩落した。
 土煙が上がる最中、ニューは姿を眩ませるために再度陰に身を隠す。

(; ^ν^)(状況も、相性も、あの女も、何もかも最悪過ぎるだろ……)

 息を殺し、ニューは現状を整理し始めた。

.

948名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:00:21 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(アイツの超能力、今んとこ確認しただけで三種類もありやがる。
       この空間を作った能力、周囲のものを操作する能力、デタラメに物をブッ壊す能力……)

(; ^ν^)(例外的に複数の能力を持つ事は可能だが、
       基本的に超能力は一人一つが常識で法則の筈だ……)

(; ^ν^)(そこから考えるに、アイツの能力には必ず『コピー能力』がある。
       だが、コピー能力には必ず重い制約か発動条件があるもんだ……)

(; ^ν^)(戦い始めて一週間、最初に接近戦をして以降、俺はこの距離をずっと保ってる。
       つまり距離や言葉は発動条件じゃないって事だが……)

 ニューは生唾を飲んで決断した。

(; ^ν^)(……発動条件を潰せば勝てると思って一週間だ。この案はもう駄目だ、捨てる)


(; ^ν^)(単純に認めよう。アイツは複数の能力を持ってる)

(; ^ν^)(だったら生き残るには接近戦に持ち込んで、即、殺すしかない。
       操作能力による瓦礫弾幕を潜り抜けての接近か……危険だな)

 陰からわずかに顔を出し、ミセリの挙動を観察する。

(; ^ν^)(戦わずに逃げる道もある。が、そろそろ食料も光源も底をつく。
       持久戦は望めない。早々に決着をつけねえとな……)

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949名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:01:02 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(捨て身とまではいかねえが、大怪我覚悟だ――!)

 ニューは弾けるように地面を蹴って走り出し、両腕を大きく振って疾走した。
 一瞬してからミセリが気付き、再び周囲の瓦礫が空に浮かび上がる。

ミセ*゚ー゚)リ「そう来なくちゃっ!!」

 嬉しそうに笑う彼女とは反対に、ニューは直撃寸前のギリギリの所で彼女の攻撃を避けていた。

 それは、前方向から幾多のマシンガンに撃たれ続けるような攻撃だった。
 瓦礫の弾丸を避けてもその先には別の弾丸が来ており、それを回避しても、また別の弾丸が行く先に待ち受けている。
 三次元的に大きく動いても、彼女がちょっと念じれば弾丸の軌道は変化し、ニューを即座に捉えてしまう。

 直撃は時間の問題。
 それから数秒と経たずして、瓦礫の弾丸はニューの右足を撃ち貫いた。

(; ν )「ぐうっ!」

 右足の感覚を失ったニューは前のめりになって地面に倒れた。
 その間にも怒涛の攻撃は止まない。彼は反射的に両手と左足を使い、自分の体を近くの物陰に放り込んだ。
 次いで瓦礫の弾丸が遮蔽物に激突する。彼が隠れた物陰には、瞬く間に巨大な風穴が開いた。

ミセ*^ー^)リ(これで死んじゃったらつまんないなぁ〜〜〜〜〜〜)

 ミセリはニッコニコで物陰を指差しながら、周囲の瓦礫を一分もの間発射し続けた。
 大小入り混じった数百個の瓦礫が一点集中して撃ち出された結果、その地点周辺にはポッカリと空白地帯が出来上がった。
 空まで粉塵が舞い散る中、ミセリは悪路をぴょんと跳ねて進み、ニューの死体を確かめにいった。

.

950名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:01:51 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「……接近して正解、だったかな?」



( ^ν^)「……何をもって正解とするか、によるな」

 ミセリが行った場所に死体はなく、代わりに全快のニューが立っていた。
 期待通りと言わんばかりに、ミセリは恍惚の表情を見せた。

ミセ*゚ー゚)リ「ブッ潰れたトマトみたいになってると思ったのに、どうして生きてるの?
       ああ、本当……私、予想外とか意味不明とか、本当に好きなの……」

( ^ν^)「こんだけ戦ってて、俺の能力も想像できなかったのか?」

 ニューは服についた埃を払い、ふてぶてしく腰に手を当てた。


ミセ*゚ー゚)リ「何となくは。でも詳細までは分からないわ」

ミセ*゚ー゚)リ「例えば――」

 ミセリはニューを指差した。小さな石ころが一つ、ニューに向かって飛んで行く。
 小さいとはいえ石ころの速度は十分で、当たれば痣では済まない程の威力がある。
 だが、石ころはニューの体にぶつかると、その瞬間に粉々に砕け散った。当のニューは顔色一つ変えていなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「――この距離だと、貴方には一切の攻撃が通じない。
       これは最初の戦闘でも同じ。だから何となく、『敵に近いほど強くなる能力』と想像してた」

( ^ν^)「ほう」

ミセ*゚ー゚)リ「でも違うみたい」

ミセ*゚ー゚)リ「さっき私に向かって走り、徐々に接近してきた時の貴方に変化は無かった。
       だから何となく、私の想像は間違いだと分かった」

.

951名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:03:02 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「次に私はこう考えた。
      貴方の能力は『敵から一定距離内に居ると無敵になる能力』なんじゃないかと……」

ミセ*゚ー゚)リ「……でもまだ推理の余地はある。
       少なくとも貴方が何かの条件下で無敵になるのは確定だから、次にこう考えた」

ミセ*゚ー゚)リ「一体、何に対して無敵になる能力なのか……」

 彼女は両手を後ろに回し、微笑んで言った。

ミセ*゚ー゚)リ「それはまだ分からないわ。でももう、この時点で決定事項が一つ」

 途端、彼女の表情は一変して冷たくなった。

ミセ*゚−゚)リ「私、貴方が仲間にならないなら絶対に殺すわ。
       これだけ強い人間が野放しだなんて、不安でしょうがないもの」


( ^ν^)「それはお互い様だ。お前みたいなのは病院に入れても無駄だしな」

( ^ν^)「正義も何も関係ねえ。死ぬべき、殺すべき人間は、一秒一瞬でも早く死ぬべきだ」

ミセ*゚ー゚)リ「正義? ……ふふっ、そうね。正義の味方じゃ私の相手は出来ないわ」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだわ、改めて自己紹介でもしましょうか。勝手にするけど、いい?」

 ニューが鼻を鳴らすと、ミセリはくるっと一回転してスカートを摘み上げた。

.

952名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:04:18 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「――自称『絶対悪』。通称はミセリ。
      所持する超能力はおよそ四つ」

(; ^ν^)「よッ……!?」

 ミセリは指を四本立て、超能力の解説と共にその内の一本を折り曲げた。


ミセ*゚ー゚)リ「まず一つ。半径20メートルの物質を全て意のままに操作できる能力。
      名前は 【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】 。貴方とは今までこれで戦ってきたわ」

 さらにもう一本指を折り曲げ、彼女は言葉をつないだ。
 彼女には、自分の超能力を語ることに何の抵抗もないようだった。


ミセ*゚ー゚)リ「次は 【逆転可能定理(アドバンテージ・アブソーバー)】 。
      これは説明が難しいんだけど、要は逆転出来る能力。
      でもそもそも負けないから、使う機会は本当に少ないの」

 続けて三本目を折り曲げる。


ミセ*゚ー゚)リ「三つ目が 【愚劣化二番煎じ(インスタント・ミニチュアパロディ)】 。
      複数の能力って所で察してると思うけど、コピー能力よ。
      ただし本物の超劣化版しか作れないから、殆ど役に立たないわ」

 最後の指を折り、彼女は微笑んだ。


ミセ*゚ー゚)リ「四つ目、 【Breaking The Rules】 。
      文字通り、いわゆる世の中の常識から抜け出す能力。複数所持はこっちが理由」

 彼女はスカートを摘んでいた指をパッと放した。


ミセ*゚ー゚)リ「以上で自己紹介はおしまい」

ミセ*゚ー゚)リ「……どう? 魅力は感じてくれた?」

.

953名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:05:23 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)「……」

 ニューは押し黙って考えていた。
 この女の言う事が本当なら勝ち目は全くない。
 しかも今居る空間の能力について何も言わなかったという事は、外に別の能力者が待機しているという事だ。
 仲間が居る可能性がかなり高い。仮に空間を出られたとしても逃げ切るのは困難だろう。

 少なくとも元の生活に戻る事は、今の彼には想像出来なかった。

(; ^ν^)「……仲間になれ、だったな」

ミセ*゚ー゚)リ「そのとおり。あ、鎌をかけたつもりだった?」

(; ^ν^)「何が目的で行動してる。お前は一体……」

ミセ*;゚ー゚)リ「う〜〜〜〜〜ん……」

 ニューの質問に彼女は目を泳がせた。

ミセ*;゚ー゚)リ「私にもよく分からないの。ただ、強い人を集めろって言われただけなの」

(; ^ν^)「……お前が、仲間のリーダーじゃないのか……?」

ミセ*゚ー゚)リ「リーダーだよ? でももう一人居て、基本その人が指示を出すの。
      私、特に目的とか何とかってものがないから、とりあえず彼に従ってる感じ」

ミセ*゚ー゚)リ「一応言うと、私よりその人の方がブッ飛んで強いよ。だから一緒に居るの」

.

954名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:06:17 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「――さて」

 彼女はハッキリと言い、会話を区切った。


ミセ*゚ー゚)リ「これだけ聞かれて全部答えたんだから、良い返事を期待してもいいわよね?」

ミセ*゚ー゚)リ「返事はそうね……自己紹介をしてちょうだい。
      あと、今後どうやって私を倒すつもりだったかも教えてほしいな」

(; ^ν^)(……こいつに出会ったのが俺でよかった。
      デミタスを見たら、こいつは間違いなくアイツに飛びついてきた……)

 デミタスはその思考を最後に、頭の中に渦巻いていた葛藤を捨て、開口した。


(; ^ν^)「……名前はニュー。能力は【マニュアルデストロイヤー】。
      思考して行われたもの全てに対して、無敵になる能力……」

ミセ*゚ー゚)リ「あーだから私が近づいた時はあんな余裕だったんだ。
      右足が戻ったのもそれが理由? 強いね〜〜〜〜それで?」

(; ^ν^)「……接近戦で丸め込んで、隙あらば殺すつもりだった……」

ミセ*゚ー゚)リ「それは無理だったね。死にかけたら二つ目の能力で逆転だもの。
       嘘だと思う? なんならやってみる?」

 そう言うとミセリは挑発的に自分の体を指先でなぞり、馬鹿にするような調子で言った。


ミセ*゚ー゚)リ「どうせさぁ〜〜〜〜〜〜〜このまま私が後ろ向いたら隙ありで攻撃する気なんでしょお〜〜〜〜?????」

ミセ*゚ー゚)リ「決め台詞は『――ちょうど今みたいにな』とか? それで倒せたらカッコイイかも???」


.

955名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:07:47 ID:H9mWz/r60




(; ^ν^)「……ハァ……。いや、もういい……好きにしてくれ……」


 一矢報いる内心すら暴かれ、ついにニューは両手をあげてミセリに降伏した。
 その姿を見るなり、ミセリは満足そうに頬を緩ませた。

ミセ*゚ー゚)リ「仲間になってくれるのね、嬉しいわ」

ミセ*゚ー゚)リ「もう一人のリーダーに電話するから、適当に休んでてね?」

(; ^ν^)「あいよ……」

 ニューは地面に腰を落とし、半ば思考を放棄していた頭をゆっくり回転させた。


( ^ν^)(まあ、命捨ててまで戦う理由はねえしな……)

( ^ν^)(ったく、これからどうなるんだかな……。
      何にせよ人殺しの仲間だ、ロクなもんじゃねえ……)

( ^ν^)(……まあ、世間のしがらみから解放されるって考えりゃ、俺の性分には合ってるか)

( ^ν^)(逃げ出すタイミングも、まあ、あるんじゃないかな……)


.

956名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:09:12 ID:H9mWz/r60



 その時、何者かに電話をしているミセリに異変が起きた。
 彼女は手に持っていた携帯電話を地面に落とし、ガタガタと全身を痙攣させ始めた。


ミセ;゚ー゚)リ「……えっ……」

 異常に震える自分の手を見下ろし、彼女は玉の汗を流した。

ミセ; ー )リ「なにッ……これッ……!」

 言葉を詰まらせながら言い、彼女は地面に倒れて意識を失った。
 ニューは彼女に駆け寄り、その症状から直感すると同時に怒声を放った。



(# ^ν^)「――どうして来やがった!!」

 ニューの声が響き渡っていく。
 程なくして、遠くの瓦礫の上に人影が二つ現れた。

 デミタスとシャキンは、まったく悪びれる様子もなくニューに近づいてきた。


(´・_ゝ・`)「ここまでやるべきか悩んだが、殺すだ何だと物騒だったからな」

(´・_ゝ・`)「サリンもVXガスも辺り一面にぶちまけてやった。
      あんたも能力解除すんなよ。即死するぞ」

(`・ω・´)「とりあえずここを出ましょう。俺なら多分、出口が作れる筈です」

.

957名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:10:29 ID:H9mWz/r60



(; ^ν^)「ンな事どうでもいい! お前らだけでさっさと逃げろ!」

 ニューは慌てて叫び、手を大きく振って二人を追い払おうとした。
 ミセリが毒ガスに倒れた今でも、彼の中では大きな危機感が渦巻いていた。





ミセ*゚ー゚)リ「――言う相手、間違ってるんじゃない?」


 突然、ニューの目の前にミセリが現れた。
 かわりにデミタスとシャキンが姿を消し、ニューは呆気にとられて言葉を失った。

ミセ*゚ー゚)リ「あんまり急だったから。やっちゃった」

 彼女はニューの背後を指差した。
 それは一瞬前まで彼女が倒れていた場所。二人はそこに倒れ、全身を痙攣させていた。


(; ^ν^)「お前ら!!」

 ニューが血相を変えて二人に近づき、その肩を揺する。
 彼らに反応はなく、呼吸も困難になっているようだった。

 ミセリはニューの後ろに立ち、平然と話し始めた。


ミセ*゚ー゚)リ「これが二つ目、【逆転可能定理(アドバンテージ・アブソーバー)】。
      不利的状況を相手と全とっかえ出来る能力。傷とかも全部ね」

ミセ*゚ー゚)リ「だからサリン? VXガス? とかは、全部この子達に押し付けちゃった」

ミセ*゚ー゚)リ「もしかしてお知り合いだった? ごめんなさいね、ついうっかり」

ミセ*゚ー゚)リ「まあ即死技なんて仕掛けてくるんだもの、自業自得よねぇ?」

.

958名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:11:15 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)「黙れッ!!」


 もっと入念に釘を刺しておくべきだった――。
 そして自分も、強さに自惚れて安易な行動を起こすべきではなかった――。


 ニューは自責しながら二人の名を叫んだが、反応は何も返ってこない。
 強力な毒ガスは数分で人を死に至らせる。二人に残された時間は後僅かだった。

 取り返しのつかない現実が、ニューの体からごっそりと活力を奪い取る。
 彼は頭を抱え込み、茫然自失となった。

 それからほんの少しの時が経つと、二人の体は完全に静止した。
 心臓の鼓動すら、完全に止まっていた。


.

959名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:12:07 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あっ」


ミセ*゚ー゚)リ「死んじゃったね。ね」


ミセ*゚ー゚)リ「誰のせいかな? 私? 責任感じちゃうなぁ〜〜〜ほんと」

 ミセリは地面の携帯電話を拾い上げながら言い、電話をニューに差し出した。


ミセ*゚ー゚)リ「はい。お兄さんに話があるんだって。ついでに何かお願いしたら?」

ミセ*゚ー゚)リ「この二人を生き返らせてくださいとか。多分出来るよ」

 何も考えず、ニューは電話を受け取った。
 相手の方が先に話し始めた。


「ニューと言ったな。君が我々に協力してくれるというのは、本当か?」

(  ν )「……一つ、条件がある」

「……可能な限り、叶えよう」


ミセ*゚ー゚)リ

 ミセリは貼り付けたような笑みを浮かべたまま、二人の会話が終わるのを待っていた。
 彼女には確信があった。ニューという男が、もう自分達の手から離れられないという確信が――。


.

960名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:12:47 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 そこは夢の中だった。

 現実のような夢。

 もう夢の中でしか見られない現実。

 学校と、先生と、友達。

 それらが曖昧に点在していただけの、じんわりと過ぎていく現実。


「――強くなり続けろ」


 夢の最後を締めくくる言葉はそれだった。
 途端、全てが闇の中に消えていく。

 デミタスは夢の中で涙を流した。
 夢の中だからこそ、彼は自分の涙を許す事が出来た。

 夢も夏も青春も、全てが闇に消えていった。
 抗う術は何も無く、デミタスはただ、夢が続く限り涙を流し続けた。

.

961名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:13:39 ID:H9mWz/r60

≪7≫


 翌日。

 二人は学校の自習室に来ると、しばらく何もせず、風が過ぎていくのをただ眺めた。
 ニューは今日も来ない。二人はそれを分かった上で、自然とここに来ていたのだった。


(`・ω・´)「……夢を見た。夢のない、現実の夢だった」

(`・ω・´)「……世の中を受け入れろ。夢の中で、先生にそう言われた……」


(´・_ゝ・`)「……泣き言なんか言うんじゃねえよ」

 デミタスは戒めるように言い、席を立った。


(´・_ゝ・`)「俺は奴を追う。あの馬鹿野郎をだ」

(`・ω・´)「……それならまたいつか、必ずあの女に会うぞ」

(´・_ゝ・`)「それまでに強くなる。俺は強くなり続ける……どこまでもだ」

(´・_ゝ・`)「大物気取りで行って、結局、俺は何も出来なかった……。
      忘れてたんだよ。自分がまだ、年端もいかねぇクソガキだってな……」

(´・_ゝ・`)「俺はもう十分幸せだった。
      普通の未来を投げ打ってでも、俺はそれを取り返したい」

.

962名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:14:19 ID:H9mWz/r60


(`・ω・´)「……俺は一人じゃ何も出来ない。
      最強の盾ではあるが、何も出来ない」

(`・ω・´)「俺は……生まれて初めて強くなりたいと思った。
      だからもう『無傷の盾』は終わりなんだ。
      俺みたいなのは特に、傷つく事でしか前に進めないんだ……」


(´-_ゝ-`)「……お互い、やっぱまだクソガキだな」

 デミタスは素知らぬ顔で言い、溜め息をついた。

(`・ω・´)「仕方ないだろ。これから大人になってくんだ」

(´・_ゝ・`)「じゃあ取り合えず、学校辞めて外国に高飛びするか」

(`・ω・´)「……は?」

(´・_ゝ・`)「決まりだな。荷物は最小限にしろよ」


 後日、二人は夏休み最後の思い出作りという名目でパスポートを作り、八月の間に日本を発った。
 そして適当な所で行方を暗まし、二人は孤立無援の生活を開始した。
 何でも屋として日銭を稼ぐ日々……そんな日々が終わりを告げ、二人が荒巻スカルチノフに出会うのは、もう少し後の話だった。


.

963名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:15:44 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 この世界のどこかに―― 一線を超えた超能力者の集団があった。

 彼らは来たる時に備え、気配を殺して仲間を集め続けていた。


ミセ*゚ー゚)リ「……結構集まってきたね」

「……いや、まだ足りない。これだけではtanasinnには遠く及ばないだろう」


( ^ν^)(tanasinnか。意味分かんねぇな……)

 一堂に会した十人程の仲間の一人として、ニューはそこに立っていた。
 集まった能力者が全員只者ではないのは雰囲気だけで容易に察知できた。

 彼らが本格的に動き始めるのは、今より更に十年以上経ってからの事。
 そのタイミングは、ちょうどミルナとドクオが出会った頃に一致していた。


.

964名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 15:16:25 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            番外編その1 「黄昏の海」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

965 ◆gFPbblEHlQ:2014/10/07(火) 15:21:48 ID:H9mWz/r60
番外編その1 >>921-964

16話は来月始めに次スレ立てて投下します
番外編の事が回収されるのはかなり先になります。頑張ります

966名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 19:39:23 ID:tYZGI4uE0
おつ!

967名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 20:39:31 ID:UCF48I460
うおーーーおつ!

968名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 22:11:26 ID:LRwqteAM0
ミセリの能力最強すぎワロタ
番外回収まで頑張ってくれ


969名も無きAAのようです:2014/10/07(火) 23:38:04 ID:9B3qD6XI0
相変わらずぶっ飛んで面白い
ここで新しい勢力とか

ともかく乙!

970名も無きAAのようです:2014/10/08(水) 00:05:03 ID:6e/NiHcM0
いいねえ

971名も無きAAのようです:2014/10/10(金) 08:59:52 ID:cn7zbUEM0
あーいいっすねぇ
風呂敷ひろげてるなぁ

972名も無きAAのようです:2014/10/10(金) 14:04:29 ID:lm3IM14w0
おつ

973名も無きAAのようです:2014/10/11(土) 04:13:05 ID:qcEdszf60
ドクオとエクストがスクライドっぽい

974 ◆gFPbblEHlQ:2014/11/12(水) 21:44:54 ID:XPmDoFPA0
次回投下は来週

975名も無きAAのようです:2014/11/13(木) 01:51:03 ID:D6rIIx5A0
ふぉぉぉぉおおぉ!!


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