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ミニラノベ祭りのようです

1名も無きAAのようです:2012/12/17(月) 23:41:08 ID:lXa62M2.0

〜前回までのあらすじ〜
ラノベ祭りが終わって一段落したところで、今日もまた十分絵祭りがそこでは行われていた。
土日ということもあって凄まじい盛況ぶりを見せたそのままのテンションとノリで、なんと司会者はミニラノベ祭りなるものを提案する。
かつて司会者がまだキレッキレの動きをしていた時!に立案した企画らしい。
果たして我らは、前スレが完走した勢いを保ったまま、作品を書き上げ、投下し、了読し、また十分絵祭りへと繋げることができるのか!?
月曜日を撃破した猛者たちが集った。しかし、そこに待ち受けていたのは鯖落ち……
乗り越えるために移住してきた者達が今立ち上がる――

ルール
・エントリーされた絵を元に作品を書き上げること。
・ジャンルは何でも可。ホモでも可。
・投下レスは20レス前後を目安に、30レスを超えないよう気を付けること。
・水曜の18:00までに投下


〜以下エントリー絵〜

ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_419.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_420.png
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_418.jpg
http://imepic.jp/20121217/033540
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_421.png
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_422.png
http://vippic.mine.nu/up/img/vp102080.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_424.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_425.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_423.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_426.jpg
http://i.imgur.com/3m8XK.jpg
http://l2.upup.be/lFo9ziSdS3
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_427.png

230(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:35:14 ID:iyblDBwI0

ギコはカリカリと扉をひっかきました。
爪が痛くなっても、カリカリ、カリカリとひっかき続けます。


(,,;Д;)「ツンーツンー!!! ツン!!」


ご飯にカツブシさんがかかってなくても、ちゃんと食べるから。
遊んでくれなくてもいいから。お話してくれなくてもいいから。
お布団に入れてくれなくても、髪の毛ひっかかないから。


(,,;Д;)「ツンに、あいたい」

ξ# ⊿ )ξ「この馬鹿猫っ!! 一体、いままで何処に行ってたのよ!!」


その時、大きな大きな怒鳴り声が響きました。
ギコが毛を逆立てながら振り返ると、そこにはギコが大好きな女の子がいました。

くるくるに巻いた金の髪。ひっぱると楽しい黒いリボン。
体の上には暖かそうな毛皮に、ついつい毛づくろいしたくなる赤いマフラー。


ξ゚⊿゚)ξ 「…ほんと、馬鹿なんだから…」


ttp://blog-imgs-55-origin.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_426.jpg

.

231(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:36:43 ID:iyblDBwI0

ツンの目からぽろりと涙がこぼれました。
涙は次から次へとあふれて、ツンのかわいらしい表情をぬらしていきます。


(,,;゚Д゚)「ツン! 花だぞ、春だぞ! 何で泣くんだ?!」

ξ ⊿ )ξ「……いままで、どこに行ってたのよ」


ツンはギコの首輪に、昔つくった袋が結び付けられていることに気づきました。
そして、その袋に飾るように入れられた白い花を見つけました。


ξ ⊿ )ξ「……私が、春になればなんて、言っていたから?
       だから、ギコはいなくなったの?」

(,,*゚Д゚)「そうだぞ。だから、笑って!」


ギコの言葉はツンにはわかりません。
だけど、ツンにはギコがいなくなった理由がわかりました。


ξ ⊿ )ξ「……私は」


ツンの言葉が途切れました。
ギコの体を抱えると、ぎゅっと抱きしめます。


ξ;⊿;)ξ「ギコがいれば……それでよかったのに」

,

232(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:37:26 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐

                   (,,-Д-)ゴルァ


ξ゚⊿゚)ξ「ママやめて! それはパパのよ!」

ノハ ⊿ )「でも、もういらない」

ξ;゚⊿゚)ξ「でも、パパは」

ノハ ⊿ )「パパはもういない。
     こんなもの置いといても意味ないし、もう見たくない」

ξ#゚⊿゚)ξ「ちがう。パパは帰ってくる!
       だって、パパは。パパは言ったもの!!」

ノハ ⊿ )「……ツン。母さんの気持ち、わかって」

ξ;゚⊿゚)ξ「……」


‐‐


ξ;⊿;)ξ「春になれば……、春になればきっとパパが……」


                   (,,-Д-).。oO

233(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:39:42 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐

ギコは何もわからなかったけれど、ツンは本当は知っていました。
ツンはまだ大人じゃないけど、ずっと気づいていました。

春が来たらっていうのは、パパがついた嘘で、
本当はパパとママは「りこん」というものをして、とっくの昔におしまいとなってしまったということに……。


(,,;゚Д゚)「ツン。痛いのか?」


ギコを抱きしめるツンの体は、とても冷たくなっていました。
いなくなったギコを、ツンが探していたからです。


ξ;⊿;)ξ「……ギコ、もういなくならないで」

(,,゚Д゚)「……ツン」


ツンはギコがいなくなってからはじめて、自分がしばらくギコとお話をしていなかったことに気がつきました。
そして、ギコがどれだけ大切な友達だったのか、気づいたのです。

パパはもう家にはもどってこないけど、ギコは帰ってくる。

だから、ツンは毎日一生懸命ギコを探したのです。


ξ;⊿;)ξ「ギコ」


.

234(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:40:27 ID:iyblDBwI0


(,,;Д;)「ツン。ツン泣かないで」


そして、ギコも気づきました。
ギコが欲しかったのは、探していたのは、春でも春風でもなかったことに。


       川 ゚ -゚)「帰れ。春を探して持って帰っても無駄だ。
            お前の願い事はそんなものじゃない」


小さな魔女がギコに入った言葉。
あの時はわからなかったその言葉の意味が、今のギコにはわかります。


ξ ⊿ )ξ「……なんで、ギコが泣くのよ」

(,,;Д;)「だって」

ξ ― )ξ「……」


そして、そんなギコにツンはじっと目を向け。
涙を拭うと、口元を上へと上げました。

.

235(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:41:33 ID:iyblDBwI0


ξ*゚ー゚)ξ「……ありがとう、ギコ。
       帰ってきてくれて。それから、私とずっと一緒にいてくれて」

(,,゚Д゚)「!」


ギコはニャァと声をあげて、ツンの腕に体を擦り付けました。
ツンの腕の中はとてもあったかくて、ギコはすごく幸せな気持ちになりました。


ξ*^ー^)ξ「ギコはずっと私のお友達よ」

(,,*゚Д゚)「うん!! ツンは俺のいちばんのトモダチだ!」


春風よりも、春よりもずっとずっと大切な――ギコの願い事。
ずっとずっと探していたツンの笑顔に、ギコはようやくたどりつたのでした。


        ∧∧
ξ*^ー^)ξ(゚Д゚*,,)


.

236(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:43:19 ID:iyblDBwI0

――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
―――‐―‐‐‐‐‐‐‐
―‐―‐‐‐‐‐‐‐


それから、時は流れました。
むかしむかしというほどむかしではない時から時間は流れ、そして今。


ζ(゚ー゚*ζ「ただいまー、もう疲れちゃったよぉー。
       あれ、お母さん何してるの?」


動物にひっかかれた跡のある古い扉を、若い娘が開けました。
その娘は雪の日に猫を抱えて泣いていた女の子に、とても良く似ていました。


ξ  )ξ「ちょっと、アルバムの整理をね」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、お母さんかわいい! すごく若い!
       えーと、これはお父さんで。あ、私とお兄ちゃんもいる!!」


母親がテーブルに広げた写真を見て、娘ははしゃいだ声を上げました。
そこに写っているのはどれも、娘にとっては懐かしい写真たちです。

http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/GwB5xhcmso.jpg

娘は大喜びでテーブルに近づくと、乗っていた花瓶をどかして写真を机いっぱいに広げました。
今年の写真。娘が1歳の時の写真。母親と父親の結婚式の写真。母親が学生の時の写真。
そこには家族の幸せな思い出たちが、たくさん並べられています。

.

237(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:44:14 ID:iyblDBwI0


ζ(゚ー゚*ζ「あれ、この写真は……」


テーブルの上に広げられた、たくさんの思い出の写真。
その写真の一番下。そこに娘は見慣れない写真を見つけました。


ζ(゚、゚*ζ「お母さんと。えっと、青い猫?」

ξ  )ξ「ああ、これは……」


青い猫と、それを抱え微笑む小さな女の子。
女の子の名前はツン。猫の名前はギコ。
二人はいつも一緒で、一番の仲良し。

それは、ギコの命が終わってしまっても何も変わりません。


ξ*^ー^)ξ「私の大切なお友達よ」


季節は春。
暖かい家のテーブルに飾られているのは、いつかギコが持ってきた白い花にとても似ていました。


.

238(,,゚Д゚)春をさがすようです:2012/12/18(火) 21:45:19 ID:iyblDBwI0


ξ゚⊿゚)ξ春をさがすようです   了 (,,゚Д゚)


.

239名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 21:48:00 ID:iyblDBwI0
以上。
使用イラストは、No.8、No.4、No.3、No.11、No.13
それから、URLをつけていないけど他にもたくさんのイラストを使わせていただきました!

支援ありがとう

240名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 21:50:43 ID:xTrj54dE0
おつ!
あの絵だなこの絵だな、って分かってにやにやしたよ
すっごい和んだ話だった

241名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 21:51:01 ID:JzuOaAKk0
乙!
童話調で楽しみました

242名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 21:56:26 ID:OnBiVeio0
乙!!
とってもかわいかった!

243名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:12:14 ID:AHOTzCyw0
>>239
乙です!くるぅいい味出してる!
みんな可愛かったー

続いて投下します

244名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:12:55 ID:AHOTzCyw0

小学生のころ、幼なじみと遊んでいる時に同級生に冷やかされたことがある。
少しぐらい年が離れているだけで、性別が違うだけで。
悲しくて悔しくて、帰り道の公園で幼なじみを見つけたとき、思わず胸に飛び込んだ。


( ФωФ)「どうしたのであるか」
(*ぅー;)「みんなが、みんなが、休みの日にロマといるのはおかしいって
私とロマじゃ年が違うのに、遊んでるなんておかしいっていうの」

http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_425.jpg

しぃはロマネスクのコートに顔をうずめて泣いている。しゃくりあげるその頭を大事そうになでて、ロマネスクは笑う。

( ФωФ)「おかしくなんてないのであるよ。しぃと吾輩は、友達なのだから」
(*ぅー゚)「撿撿うん、」

ともだち、と呟いてロマネスクを見上げる。
ロマネスクのピンと立った耳にふわりと、雪が乗っている。街灯に照らされたそれがとても綺麗で、しぃは微笑んだ。

245名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:13:49 ID:AHOTzCyw0
( ФωФ)「うんうん、それがいいである」
(*゚ー゚)「?」
( ФωФ)「笑ってる顔が、一番似合うのである」

そう言ってくれたから、しぃはずっとロマネスクが好きだ。友達なのだ。
しぃのピンク色の毛並みを手で梳いて、ロマネスクが行こうかと声をかける。当然のように手をつないで二人は歩き出す。


隣の家に住むロマネスク。生まれてからずっと一緒だ。
しぃはロマネスクが読んでいる本を読み、ロマネスクが行くところには興味を持った。
ロマネスクと遊んでいることはしぃにとっては自然なことで、冷やかされたときにはとても悲しかった。
そんな風にみえるのかと。
ロリコン?ロマネスクはそんなんじゃない。そう言ってやりたかった。
友達なんだ、幼なじみなんだ。その仲を疑うなんて下世話だ。

そう思ったのに。

事実、しぃはロマネスクに惹かれていた。あの時の同級生が言った言葉を否定していたくせに、現に。

しぃは高校生になった。ロマネスクはとうに社会人だ。

246名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:16:16 ID:AHOTzCyw0
(*゚ー゚)「8歳かぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたのー、そんな遠く見つめちゃってー」
(*゚ー゚)「デレ...年上ってどう思う?」
ζ(゚ー゚*ζ「デレよくわかんない」

うふ、と笑って同級生のデレが首をかしげる。金髪の巻髪が揺れる。
デレは高校に入ってから出会った友達で、ロマネスクのことは知らない。

ζ(^ー^*ζ「でもぉ、そのくらいで諦めちゃう恋ならやめちゃえば?」

http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_422.png

ふわりと微笑み、グサリと刺す。
デレの鋭さに、言い返すことも出来ずしぃは胸を抑えて笑った。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、移動教室だよー」
(;*゚ー゚)「そ、そうだね」

デレは何もなかったかのように立ち上がって教科書を抱えた。しぃもそのあとに続く。
ざわつく廊下で、唐突にデレがしぃの耳元に口を寄せた。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、うまく行ったならデレにも教えてよね」

応援するんだから、と微笑みながら言われて、しぃは思わず吹き出してしまった。

ζ(゚ー゚*ζ「???」
(*゚ー゚)「デレって、そーゆーとこ面白い」

グサリと刺したその口で、応援するという。どちらも本心なんだろう、その友人の言葉にいつも励まされてしまうのだ。

(*゚ー゚)「そうだよねぇ、諦める理由にはならないものね」

しぃは小さくガッツポーズをして、気合を入れる。思い立ったが吉日だ、そう思った。

247名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:17:07 ID:AHOTzCyw0

('A`)「先輩、なんなんでしょうね、恋って 」

ドクオが情けない声でつぶやく。ロマネスクは失恋を重ねる後輩に同情してしまう。

( ФωФ)「耐えることである」

パソコンのモニターから目をはなさずにロマネスクが答える。

('A`)「耐える、ねぇ...大人ですよね」
( ФωФ)「まだまだてある。身悶えることも多いのである」

口元だけで笑って、仕事するのである、とドクオを叱る。ふかふかとした毛並みを乱暴にかき混ぜて、ため息をついた。

( ФωФ)「若造なのであるよ」

隣の家の可愛い女の子。幼なじみで、ひよこのようにロマネスクになついている。
ロマネスクも年上とはいえ男。しぃが年を重ねるにつれて、女の子らしく成長する様にいつの間にか心を奪われていた。
しぃに嫌われていない自信はあるが、幼なじみ以上の気持ちがあるか聞かれれば頷ききれない。

( ФωФ)「でも諦めるには、理由が足りないのであるよ」

248名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:19:21 ID:AHOTzCyw0
恋に落ちる理由なら、いくつもあるのに。そんなことを思って、苦笑いをした。



その日の夜、しぃを初めて抱きしめた夜のように雪が舞った。
仕事を終えたロマネスクが頭の上に雪を積もらせながら公園を通り抜けようとすると、街灯の下に小さな影があった。

(*゚ー゚)

制服にコートを着て、マフラーを巻いたしぃの姿だった。ロマネスクは小走りにそこへ向かった。

( ФωФ)「こんな、寒い中何してるであるか!こんな遅くに危ないであるよ!」

つい大きな声を出したロマネスクに、少し首をすくめてしぃが笑う。

(*゚ー゚)「ごめんなさい。でも私、どうしても伝えたいことができたの」

私ね、としぃの言葉を最後まで聞いたロマネスクは目を見開く。
そして、すっかり冷えたしぃの体を抱きしめた。




( ФωФ)片思い相互通行のようです(*゚ー゚)

249名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:21:07 ID:iyblDBwI0

すごくかわいい。二人とも幸せになれ!
デレもいいキャラしてるなぁ

250名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:21:21 ID:AHOTzCyw0
以上です。二枚の絵を使わせていただきました。ありがとうございました!

少女漫画風ラノベ?を目指したんだけど、楽しんでもらえたら嬉しいです

251名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:37:32 ID:U/S4YvTM0
うはああああ!ニヤけてしまうわ。乙!

252名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:38:10 ID:oktzSy/E0
ジャンルは何でも可とありますがマジキチも可なんでしょうか

253名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:40:59 ID:GnsIvqeo0
良いんじゃない

254名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:41:37 ID:arWQCkK60
良いかも(*´・ω・)(・ω・`*)ネー

255名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:45:06 ID:iyblDBwI0
いいと思うけど、あんまりアレそうなら閲覧注意とかつけてくれるとありがたいんだぜ

256名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 22:58:17 ID:oktzSy/E0
>>253-255
了解です

ありがとうございます

257名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 23:43:09 ID:2qH0v3V20
vipのほうで投下があったお話のお礼ってここでしてもいいんでしょうか?

258名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 23:51:01 ID:iyblDBwI0
どんとこい!

259名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 23:54:09 ID:U/S4YvTM0
またお礼絵とか描くのか……すごいなぁ

260名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:05:59 ID:IeoPuTWo0
ブーン系ミニラノベ祭りのようです の>>278-281
「( ΦωΦ)は出会ったようです」
絵を使っていただきありがとうございました
まさか使っていただけるとは思っていなかったのですごく嬉しいです
切ない終わり方がとても素敵でした 乙です!
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_432.jpg

261名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:16:49 ID:px2jPo6w0
かなり被っちゃったけど、投下します

262名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:18:33 ID:px2jPo6w0

それはまだ神々が地上にいて多くの種族がいた頃のおはなし。




                              "春風"を探すようです

263名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:19:34 ID:px2jPo6w0

一匹の猫が森の中を歩いていました。
その猫は青い毛とすらりとした尻尾を持っており、その尻尾は荷物を結びつけた木の棒を器用に掴み、ゆらゆらと揺らしています。



(,,゚Д゚)「ここいらに小人はいないか」

木々の間を抜けると開けた場所にでました。
猫は誰もいない、その場所で声を張り上げます。

「おや、これは珍しい。こんなところに誰かがやってくるとは」

誰もいなかったはずの場所に、猫以外の声が降ってきました。

川 ゚ -゚)「なにか用か?」

猫から一番近い木の根元に、猫よりも小さな小人がいました。
その小人は頭に被ったとんがり帽子を直しながら猫に近づきます。

(,,゚Д゚)「この世界で一番の物知りな小人族に、聞きたいことがあって来た」

(,,゚Д゚)「"春風"が欲しいんだ。どこに行けば手に入れられる?」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_424.jpg

川 ゚ -゚)「まさにわたしは、この世界でもっとも知識を持った小人族だ。
     そんなわたしが答えよう。
     "春風"はどこにでもあるし、どこにもないことを」

(,,゚Д゚)「矛盾しているじゃないか。はっきりと言ってくれ」

川 ゚ -゚)「はっきりもなにも、今のが答えさ」

(,,゚Д゚)「ふざけたことを抜かすな。貴様の頭を噛み千切るぞ」

川 ゚ -゚)「ふむ、痛いのは好みではないな。
     しかたない、"春風"に辿りつく方法を教えてやろう」

川 ゚ -゚)「ここからずっと南へ進むと良い。
     そうすれば、お前の求めているものが見つかるだろう」


猫は小人に礼を告げることもなく南へ向かいました。

264名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:20:44 ID:px2jPo6w0

猫は小さな町にやってきました。
その町は小さいなりにも、賑わいを見せています。


そんな中、段ボールに入った少女を見つけました。

川 ゚ 々゚)
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/033540.jpg

少女は道行く人を眺めては、声をかけようとしています。
しかし話すことが出来ないのか、全く声は出ていません。

猫は、少女を嘲笑う目つきで眺めます。

(,,゚Д゚)(馬鹿な子供だ。誰があんな薄汚い子供を拾うものか)

少女はいつからそこにいるのか、髪はボサボサで服は所々擦り切れています。
ろくに食べ物も食べていないのでしょう、頬はこけていました。



それから何時間経ったのでしょうか。
少女はなおも、人に声をかけようとしています。
猫も内心馬鹿にしながら、その様子を飽きもせずに見ていました。

265名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:22:46 ID:9tbBprJw0
しえ

266名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:23:22 ID:px2jPo6w0

('、`*川「あなた、昨日もここにいたわね」

一人の女性が少女の前で立ち止まりました。

('、`*川「一昨日もその前もいたわね」

('、`*川「親に捨てられたの?」

女性はいくつも言葉を投げかけます。
しかし少女はおろおろとするばかり。

('、`*川「あなた、話せないのかしら?」

('、`*川「わたし、この道を毎日通るのだけれど、正直あなたって目障りなのよ」


川 ;々゚)


少女は言われている言葉の意味は理解できるようで、女性の言葉に目を潤ませてしまいました。

('、`*川「あなた、ここで野垂れ死にたいの?」

川 ;々;)

少女はぶんぶんと首を横に振ります。

267名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:24:21 ID:px2jPo6w0

('、`*川「じゃあ、あなたはどうするの?今までみたいにしてたら本当に野垂れ死ぬわよ」

少女は戸惑い、時々手を戻しながらも女性に手を伸ばしました。
その小さな手がしっかりと女性の服を掴みます。

川 ;々;))

声は出ません。
しかし、少女は何かを必死に伝えます。



川 ;々;)) わ た し を ひ ろっ て く だ さ い


('、`*川「あーあ…また変の拾っちゃったなあ」

女性はぼやくと箱の中の少女を抱きかかえました。

('、`*川「うちの孤児院でよければ歓迎するわ」


女性と少女がその場を去った後、猫もその場を後にしました。

268名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:25:40 ID:px2jPo6w0

猫はまた南へ進み、海沿いの町に来ていました。
潮風が猫の青い毛を撫でます。

海岸沿いを歩いていると、空から白が落ちてきました。
真っ白な雪でした。

(,,゚Д゚)(これは寒いはずだ、先を急ごう)

猫は歩みを進めていきます。

269名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:27:39 ID:FkOfLKIc0
複数枚使いか
支援

270名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:28:13 ID:px2jPo6w0

(#゚;;-゚)「待って!おにいちゃん!」

猫の後方から叫ぶ声が聞こえます。
振り返るとマフラーを巻いた女の子が走っていました。

女の子は大きな耳を揺らし、息を切らしています。

( ФωФ)「でぃ!着いてきてはダメなのである」

女の子が一人の男に飛びつきました。
男は抱きついた女の子を離そうとしますが、コートを握りしめているためなかなか上手くいきません。

( ФωФ)「おにいちゃんとの約束を忘れたであるか?」

男の言葉に女の子は首を横に振ります。

(#゚;;-゚)「行っちゃ、やだ」

( ФωФ)「そういうわけにはいかないのである」

(#;;;-;)「いやだいやだ!
      行かないでよ…おにいちゃん…」

271名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:29:13 ID:px2jPo6w0

( ФωФ)「でぃとまた二人で暮らすためには、仕事を探さないといけないのである」

(#;;;-;)「分かってる…分かってるけど…」

( ФωФ)「この町には吾輩の就ける職がないのだ」

( ФωФ)「仕事を見つけたら必ず迎えに行く。
        それまで叔父の家で待っててほしい」

(#;;;-;)「うぅ…ひぐっ」

( ФωФ)「我が輩とてでぃと離れるのは寂しいのである」

( ФωФ)「だからこそ。笑顔で見送ってほしい」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_425.jpg

( ФωФ)「そうすれば、我が輩はでぃの笑顔を思い出して頑張れるのである」

(#;;;-;)「約束だよ?絶対、お迎えにきてね?」

( ФωФ)「我が輩は嘘をつかん!絶対に迎えに行く」

(#う;;-;)

(#゚;;-゚)

(#^;;-^)「おにいちゃん、いってらっしゃい!待ってるから!」

( *ФωФ)「行ってきますなのである!」

女の子は目を赤く腫らしながらも、にこりと笑いました。

男は女の子の頭をぐりぐりと撫でると踵を返します。

猫は暫く、その小さくなっていく背中を見ていました。

272名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:30:03 ID:px2jPo6w0

猫は雪が降り積もった大きな町に来ていました。
大きな時計台も立派な噴水も、白銀に包まれています。


ξ゚⊿゚)ξ「あら、猫さん。寒そうね」

公園を歩いていると金髪の女の子が話し掛けてきました。
猫は知らんぷりで通り過ぎようとしましたが、目に入った女の子の表情があまりにも寂しかったので立ち止まってしまいました。

ξ゚⊿゚)ξ「猫さん、寒そうだからこれをあげるわ」

金髪の女の子はしゃがみ込み、猫の首に青いマフラーをかけてあげました。
しかしそのマフラーは人間用のため、猫にとって大きすぎます。

ξ゚⊿゚)ξ「本当はね、そのマフラーはわたしの好きな人に贈る予定だったの」

そこで猫は気付きました。
青いマフラーと女の子の赤いマフラーはお揃いになっていることに。

ξ゚⊿゚)ξ「今日はクリスマスだから、その人に会いたくて…」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、わたし素直じゃないから…会いたいって直接言えなくて…」

ξ;⊿;)ξ「手の込んだメッセージしか送れなくて…」

ξ;⊿;)ξ「もう五時間待ったけど、彼は来ないの」

ξ;⊿;)ξ「当たり前よね、あんな分かりにくいことしたんだもん」

ξ;⊿;)ξ「わたし…ほんと、馬鹿なんだから…」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_426.jpg

女の子は大粒の涙を流します。
その涙は、猫の艶のある毛に落ちました。

273名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:31:00 ID:px2jPo6w0

(;^ω^)「ツーン!!!!!!」

大声が公園に響きました。

(;^ω^)「またせてごめんだお!暗号解くのに時間かかちゃったんだお!」

ξ;⊿;)ξ「ブー…ン?」

(;^ω^)「おーん、ツンのお鼻が真っ赤になってるお!」

男の子は女の子に駆け寄ると、女の子の頬を両手で包みます。

(;^ω^)「頬っぺたもこんなに冷たくなって…」

ξ;⊿;)ξ「ブーン…来て…くれたんだ…」

( ^ω^)「当たり前だお!僕がツンの誘いを断るはずがないお」

(;^ω^)「でも今回の暗号は難しくてショボンにも手伝ってもらったんだお」

ξ;⊿;)ξ「う、うえええぇぇぇ」

女の子は更に泣いてしまいました。
男の子は困ったように、女の子の頭を撫でます。

ξ;⊿;)ξ「ブーン…ありがと」

女の子は消え入りそうな声で呟きました。


猫は青いマフラーをそっと雪の上に置き、南へ向かいました。

274名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:32:18 ID:px2jPo6w0

猫は原っぱに来ていました。
風がそよそよと吹いています。

小人から南へ行けと言われてからどれだけ歩いてきたのでしょうか。
猫は今までのことを振り返ります。



捨てられた子供とそれを拾った女性

別れを惜しむ妹と旅立つ兄

素直になれない女と彼女を愛する男




どれも猫にとっては理解できないものでした。

利益も無いのに子供を拾う女性も
駄々をこねる子供に笑ってと言った男も
面倒な女を見限ることなく約束の場所に来た男も。


みんなみんな猫には理解出来ませんでした。

275名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:33:14 ID:px2jPo6w0

でも、一つだけ。
そう一つだけ分かったことがありました。

どれも温かかったのです。
それぞれ二人が織りなす空間は温かさで満ちていました。

今まで知りもしなかった心の温もりに猫は驚きました。




そして気付いてしまったのです。
"春風"の正体を。






原っぱには一人の男が立っています。

彼は、まるで"春風"のように優しく温かな温もりを確かに心に感じたのでした。

276名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:34:23 ID:px2jPo6w0

あるところに傍若無人な男がいました。
彼は強さだけを求め、人との関わりを持ちませんでした。

そんな彼に心を痛めた愛の女神は言いました。

「あなたは愛を知っていますか」

男は答えます。

「そんなものは知らない。そんなものはいらない」

女神は悲しげに尋ねます。

「あなたは誰かを憐れ慈しむことも支えたいと思うこともないのですね」

「俺に必要なものは強さだけだ」

それならば、と女神は言います。

「愛の温もりを知らないあなたに、愛を教えてあげましょう」

「さあ、探しなさい。あなたが"春風"を見つけたとき…愛を知った時、あなたは心を知るはずです」



これはまだ神々が地上にいて、多くの種族がいた頃のおはなし。


                        そしてある男が愛を知るおはなし。



                                       "春風"を探すようです  終わり

277名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:36:21 ID:9tbBprJw0

春風の解釈がとてもいいな

278名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:38:11 ID:px2jPo6w0
以上です。四枚の絵を使わせていただきました!

>>209
スカート神秘書いた者ですが、
  _
( ゚∀゚)o彡゜デレの黒パン黒パン!!!!

279名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:44:45 ID:FkOfLKIc0
>>278
乙!締め括り方が素敵だ


自分も投下しま。軽く残虐表現注意

280名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:45:59 ID:FkOfLKIc0


曇天の空のようなくすんだ瞳に、冷たい灰色の街を映して
沈んだ色彩達の中に溶け込む暗色のように、その子はそこにいた。


北に位置するこの国の、今のこの時期、路傍で見るにはあまりに軽装。

ついで、遥か遠くを眺め見るような、あるいは何処も見ていないかのような
儚げな表情と瞳に映る、何処とも知れぬ世界が気になって。

ほんの気まぐれに生じた、感情と好奇心が足を動かす。
吐息は白くわだかまって、紡ぐ言葉と共に空に溶け込んでいった。




( ФωФ) 痕 のようです


.

281名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:47:07 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「寒くないのか?そんな薄着で」

( ´_ゝ`)

くるり。
ゆっくりとこちらを向いたその顔は白く、痩せていて
些か栄養失調気味のようにも見えた。

( ФωФ)「……誰かを待っているのであるか?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`)「けもの」

( ФωФ)「うん?」

( ´_ゝ`)「けもの、いなくなるの待ってる」

思いがけない単語に虚を突かれ、次の言葉を見失う。


こちらへ向けられたその顔はひどく儚げで、白昼の幻のようにさえ思えた。
このまま霞んで消えてしまう前にと、じっとその瞳を覗き込む。

冬枯れの景色によく合う、柔らかな灰白色だった。

282名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:48:21 ID:FkOfLKIc0
( ´_ゝ`)「寒くなんかないよ」

( ФωФ)

(*´_ゝ`)「おかあさんのくれたマフラーがあるもの」

( ФωФ)「あ……ああ。そうか」

数秒の間を置いて、それが
先程自分の投げかけた、疑問に対する応えなのだと気がつき、曖昧に返事をする。

首に巻かれた暗い色のそれは、マフラーとは名ばかりで、粗末なボロ布にしか見えなかった。

(*´_ゝ`)

言葉とは裏腹に、カチカチと歯を鳴らして震えながら
にへら。と、無垢な笑みを浮かべたその顔は青白く。
僅かに覗いた前歯は欠けていて、どこか間が抜けて見えた。

283名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:49:06 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「……ここに1人か?お母さんはどこにいる?」

( ´_ゝ`)「どこかなぁ。さっきまでパイを作ってたんだけど。いなくなっちゃった」

( ФωФ)「ここで待ってるように言われたのであるか?」

( ´_ゝ`)「ううん。ここが好きなんだよ。けものから逃げられるから」

ぽつり、ぽつりと言葉を交わすものの、先程の不可解な単語同様
いまひとつ、要領を得る言葉はその口から為されない。


どうやら、年端のいかないその子の頭は
すこぅし、他より遅れているようだった。

284名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:50:24 ID:FkOfLKIc0
(´<_` )「アニー、もう、家にお入りよ」

しばらくすると、単調な声が聞こえた。

現れたのは、顔も、毛並みも、瞳の色も。
階段脇に座るその子とそっくり同じ、瓜二つの子供。
マフラーこそしていないが、質のしっかりしたコートを身に纏っている。

アニーと呼ばれたその子は、自分と同じ顔を見上げて困ったような表情を浮かべた。

( ´_ゝ`)「でも……でも……、おかあさんがいない」

(´<_` )「……家にいるよ。だから、早く。ほら立って」

( ФωФ)「あ、おい」

(´<_` )

-――なんて冷たい瞳だろう。
同じグレーの瞳でも、こちらは無機質で鋭いナイフの色だった。

二の句を告げる隙を与えぬ、氷の眼差しでこちらを睨みつけると
未だ戸惑いを見せるその子の腕をぐいと掴みあげ、立たせてそそくさと歩み去ってしまった。


遠くなる後姿に、はっきりとは聞こえないが、一方的な言葉の端々が聞こえてくる。

「知らない奴と話するんじゃない」

「また母さんに叱られる」

そんなことを言い聞かせているようだった。

285名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:50:37 ID:px2jPo6w0
支援支援

286名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:52:25 ID:FkOfLKIc0
次にアニーに会った時。

同じように青い顔をして、暗い路地の階段脇に座る彼は
前とは違って手袋をつけていた。

それも片方、右手にだけに。


( ´_ゝ`)「ロマネスクは兵隊さん」

( ФωФ)「ああ」

( ´_ゝ`)「おとうさんと一緒だねー」

( ФωФ)「……アニーの父さんも、軍人なのであるか」

( ´_ゝ`)「うん。もうすぐ帰ってくる」

( ФωФ)「何故そう思う?」

( ´_ゝ`)「おかあさんが、ごちそう作って待ってるからね」

父の帰還を待ち侘びる風でもなく、ただ淡々と無感情に。
くすんだ瞳に何も映さず呟く、霧のようなその子の隣で
ロマネスクはそっと目を伏せた。


母親がどんなに美味しいご馳走をこさえて、帰りを待ち侘びていたとしても
その男はもう帰ってこないことを知っていたからだ。

287名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:56:42 ID:FkOfLKIc0
そのまた次に会った時。

今度は、ロマネスクと同じ、種族特有の大きな耳に
粗末な編み物が当てがわれていた。

そしてそれもまた、片方にだけ。

じっと座り続ける彼と同じように、冷えきった石段に腰を降ろして尋ねる。


( ФωФ)「それも母さんがつけてくれたのか?」

( ´_ゝ`)「ん……これ」

すると、毛糸で覆われた方の耳を ひょい、と器用に動かし、前歯の抜けた白い歯を覗かせて
あのどこか人懐っこい、間の抜けた笑みを浮かべるのだった。

(*´_ゝ`)「そうだよ。外に出る時はこれつけなきゃだめ、て」

( ФωФ)「ふむ。この寒さだから当然だな。
        ……まぁ、両方揃っていたら、なお良いのだがな」

( ´_ゝ`)「―――嫌」

返ってきた声の思いがけぬ冷たさに、ロマネスクはそちらを見た。

288名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:57:43 ID:FkOfLKIc0
( ´_ゝ`)「かたっぽでいい。おれ、かたっぽだけがいい」

( ФωФ)「?どうしてだ?そのままだと、残ったもう片方が冷えるだろうに」

( ´_ゝ`)「嫌。嫌!どっちもは嫌だ」

そう言って、何かを恐れるかのように体を縮こめ
毛糸で覆われていない方の耳を、ぎゅっと押さえてうずくまった。

彼が青冷め震えているのは、寒さのせいだけだったのだろうか。


( ФωФ)「……おかしな子であるな、アニーは」

ぽつりと口に出してみると、確かにおかしい。ちぐはぐな防寒着だけではなく、頭のことでもない。
この寒空の下、いつも外で所在無さげに座り込んで、一体何をしているのだろう?

( ФωФ)「……確かこの前も聞いたが。
        アニーは、いつも外で何をしているのだ?誰かを待っているのか?」

( ´_ゝ`)「うん。おかあさん。戻ってくるの待ってる」

( ФωФ)「母さんか。なるほどな。外に働きに出ているのだな」

( ´_ゝ`)「ううん。家にいるよ。だから外で待ってるんだよ」

( ФωФ)「……??」

( ´_ゝ`)「けものくさくて嫌なんだ。早く戻ってこないかな」

柔らかな灰白の瞳にモノトーンの街並みを映しながら、彼は無感情にそう呟くのだった。

289名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 00:58:39 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「そういえば前も言っていたな。『けもの』ってなんのことなんだ?アニー」

その言葉を口にすると、遠くを眺めていたその顔に、仄かに暗い影が差したような気がした。

( ´_ゝ`)「けものがくるよ。こわい、ロマネスク……」

( ФωФ)「え?」

(;´_ゝ`)「あ」

途端、はっと表情を変え、口を噤む。
ロマネスクも同様、冷たい視線を感じて顔をあげた。


(´<_` )


曲がり角の影で、アニーと瓜二つなあの顔がこちらを睨んでいた。

(;´_ゝ`)

アニーが泣きそうな顔をする。
「知らない奴とは話をするな」と言いつけられたのに
それを破ったのを知られてしまったから、焦っているのだろう。

( ФωФ)「……またな。アニー」

急に低くなった温度と、動揺する彼の様子を見て
短い別れの言葉を告げ、すっとその傍を離れた。


冷たい煉瓦の壁に背を預けながら
この前と同じ、手を引き引かれて、家の方角へと向かう2人の子供の後姿を見送った。

290名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:00:51 ID:FkOfLKIc0
数日経って、またアニーに会った時。

今度はもう片方の耳も、あの粗末な耳当てで覆われていた。


―――それなのに、彼は顔を歪めて泣いていた。


( ;_ゝ;)

( ФωФ)「どうした?」

何があったのか尋ねても、幼い子供は泣きじゃくるばかり。

( ФωФ)「……おいで」

その姿がいたたまれなくて。でも、どうしたらいいのか分からなくて。
片腕を伸ばし、少々乱暴に抱き寄せると、自らの胸元にぎゅっと押し付けた。

ロマネスクの羽織る分厚いコートの裾に、白くか細い手が縋りつき、震えた。

291名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:02:36 ID:FkOfLKIc0
::( ;_ゝ;)::「夜になったらけものがくる。こわいよ、ロマネスク」

( ФωФ)「……獣ってなんだ?」

::( ;_ゝ;)::「けもの……。けもの、くる、こわい」

分からない。けものとは何を意味し、この子が何を恐れているのか。
その言葉の意味も、元より、子供の慰め方など皆目分からない。

ただ心の動かすまま、その無骨な大きい手で
コートに顔をうずめ震える子供を、その貧相な毛並を不器用に撫でた。

( ФωФ)

その時―――フと、今日に限って両方揃っている、粗末な耳当てが気になった。

何がどうという理由は無いが、得体の知れない違和感を覚え、そっと手を伸ばす。

粗末な編み物は、軽く摘むだけで簡単に取り外すことが出来た。

292名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:03:36 ID:FkOfLKIc0


次の瞬間、ロマネスクは目を見開いた。


(;ФωФ)「な……!」


隠されていた右耳の、その表面は
焼け焦げた火傷の痣が広がり、痛々しい水膨れを起こしていた。

左耳の方は、まるで大きな鋏を入れたかのような、数本の切り傷が走り
そこからは赤黒い肉が垣間見え、一目見て化膿しているのが分かる酷い状態だった


視線を下げる。

コートを強く掴み震える手の、手袋の指先からは
赤黒い血が滲んで染みを作っていた。

293名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:06:16 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「……」

http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_425.jpg

-――すぅ、と。驚く程の急激さで、心は温度を失い。

冷えきった心で、目の前のその惨状を遠く見つめた。


体を冷やしてはいけないから。そんな、母から子へと与えられるべき当然の温もりは。
知恵の遅れた哀れな子が信じた、心優しい母の思いやりなど、幸せなどそこには無かった。


そっと、初めて会った時から首に巻かれたままの、暗い色のマフラーに手をかける。
泣き続けるアニーは びく、と体を震わせた。

( _ゝ)「だめ!」

( _ゝ)「外に出る時は、絶対、外しちゃいけないって、おかあさんが」


……しゅる

マフラーとは名ばかりの、薄汚れた布きれがあっけなく地面に落ちる。


隠されていたその下には、白い首にきつく絡みつく、細い指の痕が
禍々しく、はっきりと残されていた。

294名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:07:29 ID:FkOfLKIc0

『夜になったらけものがくる』

父親の出て行った家の中、優しい母がフとした瞬間、狂人のようになって暴力を振るう。

まるで悪魔に憑かれた何者かへと変わるその姿が
幼く無垢なその目には、愛する母親ではなく、恐ろしい獣に映ったのだろう。


ロマネスクは無意識にポケットに手をいれ、もう何年も開かない、金のロケットを固く握った。
その中には、双子の赤ん坊を抱き、幸せそうな笑みを浮かべる女の写真が収められている。


::( ;_ゝ;)::


遠い昔に捨て去った家で 自らが残した歪な傷痕が
腕の中で震え 悲痛な泣き声をあげていた。



最低な父親の胸を締め付ける、灰色の憂いが零れ落ちて
煉瓦敷きの地面へ降り積もる雪と共に しんしんと溶け込んでいった。




       キズアト
( ФωФ) 痕 のようです   了.


.

295名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:09:08 ID:FkOfLKIc0
終わりッス!
絵から話を考えるのって面白いな

296名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:11:08 ID:YVAlsiSI0
乙!
ロマネスク・・・今からでも遅くないから帰ってやってくれ・・・

297名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:23:41 ID:hU1631s6O
おおおお乙!虐待つれぇ・・・・

298名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 01:43:51 ID:dWTyvpXA0


299名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:12:15 ID:uAhlUA660
長々と投下する

300名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:13:58 ID:uAhlUA660
学校へ向かう途中、ツンは唐突に言った。


  ,, -  、
{::. }’ノノ' ヽノ: }
..{::. }リ、゚゚〉:: } 「ちくわ大明神」
 {ンr‐'、_,く゛'ン´

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_427.png

( ^ω^)「…は?」

ξ゚゚)ξ「知らないの?その単語を聞くと地獄に落ちる呪いの呪文よ」



301名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:18:05 ID:uAhlUA660
学校へ向かう途中、ツンは唐突に言った。


  ,, -―  、
{::. }’ノノ' ヽノ: }
..{::. }リ、゚⊿゚〉:: } 「ちくわ大明神」
 {ンr‐'、_,く゛'ン´

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_427.png

( ^ω^)「…は?」

ξ゚⊿゚)ξ「知らないの?その単語を聞くと地獄に落ちる呪いの呪文よ」

( ;^ω^)「えー?!なんで?なんで?そんな不吉なこと幼馴染に言っちゃうんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「だって、私だって無理矢理聞かされたんだもーん」

戯けたようにくるくると回る。誤魔化す時はいつもこうだ。

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あんたも誰かに聞かせればいいのよ。そしたら呪い解除よ」

( ;^ω^)「本当かお…んー」

お別れの交差点。呑気に手を振りながらツンは言う。

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、また放課後…まあ、あなたが12時間後までに呪いを解除出来たらだけど!」

( ;^ω^)「しかも期限付きかお?!」

自分と違い進学校の女子高に向かう幼馴染を見送りながら僕は叫んだ。

只今7:00 期限19:00

302名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:20:37 ID:uAhlUA660
( ;^ω^)「…やばいお…結局部活の時間が来てしまったお…」

只今15:00。部活の時間。

誰に唱えても「知ってるし」と帰ってくる問答もいい加減飽きてしまった。

( ^ω^)「まてお…ドクオなら…」

部活仲間のドクオはあまり社交的では無く、友達も少ない。

運がよければ…いける!

そんな期待をしながら部室の扉を開ける。

部室の表札は【カードゲーム部】

303名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:23:44 ID:uAhlUA660

('A`) 「ふふふ、待ってたぞ、ブーン。今日はお待ちかねの…『爆発メランコリック』の日だ」

( *^ω^)「待ちくたびれたお!」

爆発メランコリック。
それはとあるどマイナーカードゲーム。
その名の通り憂鬱を爆発させるほどの面白さ。
しかしそのマイナーっぷりはこのゲームのルールに由来するだろう。
なんと、試合時間10秒。
絵一つ描けやしない。
ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_420.png

 シ ノノヾゝ
 {cソ 'A`〕 「へーいBOON!聞いてくれよー」
 r‐'、_ケヽ

  ,,... 、_
  /´ ,,ノヽ〉
 〈、シ ^ω^) 「oh、ドクゥオ。どうしたんだい?」
  r‐'ヾ\ソ-、

何戦かを繰り返して外もいい夕暮れ時。

('A`) 「…お前にいいたいことがあるんだ」

( ^ω^)「…実は僕もだお」

( ^ω^)('A`) 

( ^ω^)「ちくわ大明神!!!」('A`) 

( ;^ω^)「……」('A`;) 

('A`) 「お前もかよ…」

( ;^ω^)「正直ドクオにそんなこと言い合うような友達がいるとは思わなかったお…」

('A`) 「…カアチャン」

( ;^ω^)(;A;) 

只今16:00 期限19:00

304名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:25:59 ID:uAhlUA660


305名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:26:59 ID:uAhlUA660
( ;^ω^)「ちっ…アテが外れたお!急いで商店街の誰かを当たるお!」

('A`) 「それいい!商店街なら一人くらい知らないヤツがいるかも!あっ…でも教室に忘れ物しちまった…」

( ;^ω^)「ええい!こうなりゃ僕たちは運命共同体だお!ついてくお!」

('A`) 「ありがとう」

バタバタと急いで教室に向かう。
残っているのは図書室勉強組と部室で部活組。
教室方面から音は聞こえない。

ガラリと教室独特の引き戸を開ける。

('A`) 「よし、さっさと取って行…」

しかし、教室には

( ・∀・)「乗るっきゃねえ…!このビックウェーブに!」

女を押し倒しているイケメンと

(////トソン「は、早く…乗ってください!!ガマンできません!私を乗りこなしてください!!!」

ブラとパンツ一枚の女。


( ^ω^)('A`) 

( ・∀・)(゚、゚トソン

(゚、 ゚トソン「これは厄介ですね」

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_418.jpg

僕たちは絶叫した。

306名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:29:31 ID:uAhlUA660
ブラとパンツだけの女って略してブラパンだなぁと思いながら遠くから聞こえるブラバンの演奏を聞きながら思う。

ちなみにそんなブラパンさんとイケメンは僕たちの絶叫に駆けつけてくださった教職員から詰問されています。まあ先生方も3人も来なくともよかろうに。

てかブラパンちゃんに服ぐらい着せてやれよ、ブラのホック取れてるし。

( ;・∀・)「いや、誤解なんだ!!ただちょっとトソンがちょっと女性器の調子が悪いから見てって…」

ミセ;゚ー゚)リ「いやいや、それはない」

从 ゚∀从「お前って馬鹿なんだなぁ」

( ゚д゚ )「もうすぐで校長も来るから」

( ;∀;)「いやああああ!!」

|ω;`) 「そんなに僕嫌われてる感じ?」

( ;∀;)「来たあああ!!」

307名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:32:00 ID:uAhlUA660
ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_421.png

v(´・ω・`)> 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」

( ゚д゚; )「校長!いたなら普通に来てくださいよ!」

(´・ω・`)「ちょっとした茶目っ気さ」

本当に思う、なぜお前が校長だ、と。

(´・ω・`) 「さて、お二人さん。我が校では不純異性交遊は禁止で、退学となっていますが…」


(´・ω・`) 「ま、二人には該当しませんね、だって、二人は不純同性交遊だもん」

( ^ω^)「え」

( ・∀・)(^ω^ )チラ

( ^ω^)「女かよ!…いや、ちょっと、まじかお」

( #・∀・)「いえ!校長!心は立派な男です!」

(´・ω・`) 「なら退学になる?」

(;、;トソン「嫌です!彼のいない学校なんて!」

(´・ω・`) 「めんどくさいなぁ、どうする?ミンナ君?」

(;゚д゚ )「俺にどうしろと!?」

( ;^ω^)「はあ、なんか疲れたお…」

('A`;) 「そうだ、ブーン!時間!」

( ^ω^)「あ」

只今18:59 期限19:00

(( ; ゚ω ゚))(('A`;))

無情にも分針が、真上に行った。

308名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:36:08 ID:uAhlUA660

( -ω-)「ん…ん?」

( ^ω^)「ここ…は…」

( ´_ゝ`)「おはよう」

( ;^ω^)そ「わわわ!!」

いきなり遭遇した見慣れぬ景色と男に僕は面食らってしまった。

( ;^ω^)「ここは…」

( ´_ゝ`)「地獄」

( ;^ω^)「まさか本当だったなんて…」

今まで散々馬鹿騒ぎしていたがそれは頭のどこかではこれがただの遊びだと知っていたからだ。

それが、まさか本当だなんて。

( ´_ゝ`)「やっと会えた」

( ^ω^)「へ…?」

( ´_ゝ`)「探してたの、一緒に閻魔様の所に行ってくれる人」

( ;^ω^)「??」

( ´_ゝ`)「俺への罰は、自分の辛い過去を人に話すこと。話したく無いことも全部」

( ^ω^)「う、うん…」

( ´_ゝ`)「君の生前の罪に身合う罰は閻魔様が教えてくれるよ、さあ、行こうか」

( ^ω^)「……」

309名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:41:49 ID:uAhlUA660
('A-) 「ん…ん…ここは…」
('A`) 「はっ!ブーン!!」

川 ゚ -゚)「おそらく、そのブーンとやらはここには居ない」
(;'A`) そ「わわわ!」
突然現れた女に驚く。誰だよ。

川 ゚ -゚)「私はクー。お前は?」
あ、よく見ればなんか可愛い。白いワンピースが似合っ…

川 ゚ -゚)「おい!!!」
( ゚A ゚) 「くぁwせdrftgyふじこlp」
あまりの驚きに変な声が出る。目の前の女が溜息を吐く。

川 ゚ -゚)「とんだ気狂いを拾ったみたいだな」

気狂い…って俺かよ…

('A`;) 「し、失敬な!俺はちゃんとしてる!」
川 ゚ -゚)「ふむ、ちゃんとした人はそのようなことを言わないがな」
最もだ。

川 ゚ -゚)「さて、お前を閻魔様のところへお連れしよう。そこでお前は自分の罪と罰を知るがいい」
('A`) 「あ、お前は閻魔じゃないんだ」
川 ゚ -゚)「私はただの案内人だ」
('A`) 「え、そんなんあるの?働くの辛くない?」
川 ゚ -゚)「辛くはない、なぜならこれは私の閻魔様へのお礼なのだから」
('A`) 「お礼?」
川 ゚ -゚)「こいつのな」
そういって女は肩に乗った魔女の格好をした小人らしき生命体を見せる。

川 ゚ 々゚) 「くるぅー!」
('A`) 「おお、ちっこい…」
川* ゚ -゚)「だろう?」
('A`) 「しかし、また…どうしてこんな可愛い子を…」
川 ゚ -゚)「それを説明するにはちょっと昔話が…」
('∀`) 「教えてくれよ嫌じゃなければ」

310名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:45:27 ID:uAhlUA660
あれは私がまだ人間の浮遊霊だった頃の話だ。
なぜ一人で泣いてたのかは今でもわからない。生前の記憶もなかった。周りに誰もいなかった。
無い無い尽くしのその状態はまだ幼かった私を涙させるには十分だったようだ。

まるで生まれてくる子どものようだ。

生まれた時孤独な新生児は医師に、助産師に、看護師に、母に、父に、親戚に抱かれるうちに孤独感が薄れ、泣き止む。私にとって閻魔様はそんな存在だった。

川; -;)「うっうっうっ…」
「どうしたのであるか?」
頭上から声が聞こえた。

それでも私はまだ泣いている。
「仕方が無いである…えいやっ!」
シュルルルルという不思議な音がした。

するとすぐに。

( ФωФ)「大丈夫であるか?」

頭上から聞こえたはずの声が目の前から聞こえてきた。

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_423.jpg

( ФωФ)「怖いものを見たのであるか?」
男は不思議そうに首を傾げる。

川;-;)「ひとりぼっちで寂しいの」
( ФωФ)「そうか…」
目の前の小さな大人は私に手を翳す。

( ФωФ)「ちょっと待つである…」
するとまたシュルリと何処かへ行った。

311名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:48:29 ID:uAhlUA660
( *ФωФ)「見つかったである!」

またもシュルリと現れた閻魔様の手には段ボールに入った、後にくるうちゃんと呼ばれる生命体だった。

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/033540.jpg

川 ゚ 々゚) 「くるぅー!」
川* ゚ -゚)「可愛い!」
( ФωФ)「…もう未練は無いかな…さ、これから成仏して天国で生まれ変わるである。もちろん、その子と一緒でいいある」

川* ゚ -゚)「…ううん、まだあなたにお礼してない……」
( ;ФωФ)「え?」

川* ゚ -゚)「私、あなたの部下になって手助けする!」
( ;ФωФ)「えー?!折角成仏手続きの変更してきたのに!!!」






川* ゚ -゚)「…という」
('A`) 「今のエピソードでは役に立つどころか迷惑がってるように見えるが」
川 ゚ 々゚) 「くるぅ!」

312名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:51:37 ID:uAhlUA660
( ´_ゝ`)「なるほど、幼馴染が大切なんだ」
歩きながら僕らは話す。
( ^ω^)「うん…悪戯っ子だけど…憎めないんだお」

( ´_ゝ`)「じゃあ案外君の罰は始まってるかもね」
( ^ω^)「え…?」
( ´_ゝ`)「大切な人と会えない罰。罰って嫌なことさせるか好きなことさせないことだろ?」
( ^ω^)「ああ…」

( ´_ゝ`)「ほら、向こうを見てご覧よ」
男の指差す方向を見る。
そこには多量の菓子パンに埋まっている女がいた。
lw;´‐ _‐ノv「お米お米お米OKOME!!!!!米が欲しいよおおおおおおおおおおおお!!!!!」

…とても苦しそうだ。

( ´_ゝ`)「あの子、生前に米騒動とか打ちこわしとかした米泥棒だったらしいよ」
( ;^ω^)「あ、はい…」

納得した。

( ´_ゝ`)「…じゃあそろそろ、俺への罰を始めようかな」

313名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:55:20 ID:uAhlUA660

俺はなぜか親がいなくて園で孤児たちと一緒にいたんだ。
そこでの日々はいつも楽しかった。
兄弟のような同い年の子どもと一緒にいられたんだもの。
でも俺一人だけ突然閻魔様に連れてかれたんだ、泣き泣き園を出たさ。

園から目的地は遠いらしく俺と閻魔様は宿を泊まり泊まり道を進んで行った。
でもある日園の夢を見ちゃって泣き泣き外に出たんだ。
閻魔様が毎朝外の空気吸いに外に出るって知ってたから。

( ;_ゝ;)「うわあああん!」
俺は閻魔様に飛びついた。

( ФωФ)「怖いものを見たのであるか?」

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_425.jpg

( ;_ゝ;)「うわあああん!嫌だよ!!園に帰りたいよおおお!なんで俺だけ連れてかれちゃうんだよおおお」
( ;ФωФ)「だから!君が優秀な死神の血統だから訓練が必要で…」
( ;_ゝ;)「いやだよおおおおお!園に帰りたい!帰りたい!!」

( ;ФωФ)「……」

314名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 03:59:02 ID:uAhlUA660

俺は紙に指につけた墨で絵を描く。

( ´_ゝ`)σ/
( ФωФ)「何を描いているのだ?」
( ´_ゝ`)「弟者だよ」
( ФωФ)「…園のお友達であるか?」
( ´_ゝ`)「ううん、弟者はここにいるよ」

俺は落書いた紙を指で弾く。

( ´_ゝ`)「弟者は偉いんだよ。俺のどんなくだらない話にも相づち打ってくれて、いつも一緒にいてくれるの」
(  _ゝ )「…でも紙からはどうしても出てきてくれないんだよ」
( ;_ゝ;)「俺がちゃんと描けてないから怒ってるのかな?…もっと練習するから…出てきて欲しいなぁ…ううう…さみしいよ…さみしいよ…」

( ФωФ)「……ちょっと待つである」

閻魔様はシュルリと何処かへ行った。

ーーー

( ФωФ)「待たせたである」
( う_ゝ`)「どうしたの?閻魔様」
泣き腫らした目を擦っていると閻魔様は帰ってきた。

不思議なことに着ていたコートは膨らんでいた。

( ФωФ)「…我輩の仕事、閻魔業は全ての世界の人間を死後の世界に連れて来て、裁くこと…世界は一つではないのである」

( ;ФωФ)「ふう、やれやれ…お前の『世界』から…連れて来てしまったである」

コートの下には俺の描いた『世界』がいた。

( *´_ゝ`)「……弟者…!?」

315名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:03:17 ID:uAhlUA660
( ФωФ)「死後の世界に連れてきた時点でお前はこの子の支配権は失ったのだ。お前の『世界』のその子のようにこの子が生きる訳ではない。
気をつけるがいい」
( *´_ゝ`)「わかってるって!わーい!わーい!」
( ;ФωФ)「ちゃんと死神修行もするであるよ?!」

そんなうちに俺達は目的地に着いて俺の死神修行も始まった。

死神っていうのは悪霊化した浮遊霊の魂を閻魔様に裁いてもらうために狩って地獄に落とさなきゃいけないんだけどな、それがなかなか難しい。
ーーー
人に在らずモノが、
あらゆる街のゴミ箱を倒し、
建造物に落書きし、
見えないことをいいことに人の耳元で呪いの言葉を囁き、
街の雰囲気を暗くしていた。

曇り空、活気の無い商店街。
  _
( ゚∀゚)「あームカつく…なんで死んじまったんだろう…畜生、あの女…子ども殺したからって道連れしてまで反撃するか…フツー…」

「どんな理由があれど人を殺すのはフツーじゃないと思うよ」

  _
( ゚∀゚)「あ…?てめぇ誰だよ…」
( ´_ゝ`)「死神だよん、貴方の魂、いただきます」

316名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:07:03 ID:uAhlUA660
  _
( ゚∀゚)「死ね、ゴミムシ」
チッと舌打ちをする悪霊、なんか感じ悪いなぁ。

なんて考えてたら突然鎌を振るわれた。
  _
( ゚∀゚)「ぶち殺しけってーい」
( ;∩_ゝ∩)「ぎゃあ!先端怖い!!」
(´<_` )「目を逸らすな」

弟者の野次が聞こえる。
わかってますよ…。わかってるって…。
ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_419.jpg
  _
(; ゚∀゚)「なんだよ…死神の癖に先端恐怖症かよ…変なヤツ…」

( ´_ゝ`)「オレは最弱なんで。いや本当に」

先代の女性は最恐と謳われていた聞きますが。と付け加える。

  _
( ゚∀゚)「てっきり死神って鎌で狩るんだと…お前はどうやるんだよ」

( ´_ゝ`)「俺?俺はね?」

次の瞬間、そいつの直下にあったはずのコンクリをばっこりと凹ませてやった。

ごめんね、コンクリ。

317名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:10:26 ID:uAhlUA660
_
( ゚∀゚)「へー、結構なお手々じゃねーか」
「手だけじゃないよ」
右足が地を蹴る。
もっと高くもっと高く跳びたい。

( ´_ゝ`)「うりゃ!」
カキンと俺の右足が悪霊の鎌に当たる。
  _
( ゚∀゚)「ほほう、右手には強固なガントレット、右足には改造ジャンピング・スティルトか」

ジャンピング・スティルト。ジャンプする目的で足に装着する西洋竹馬。
よくご存知で。

( *´_ゝ`)「俺がデザインしたら閻魔様が職人さんに正確に造ってくれたのー!いいでしょ?いいでしょ?」

(´<_` )「ただし指と墨で描いたハチャメチャなデザイン…」

シーッ!

318名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:16:07 ID:uAhlUA660

少し経って。
  _
(; ゚∀゚)「くっ…なんだよ…この馬鹿力…げほっ」
遥か彼方へ蹴飛ばした鎌さえなければもう大丈夫。怖くない怖くない。
( ´_ゝ`)「羽はとうに千切っちゃったしね」
追い込んで、柵も無いビルの屋上。

  _
( ∀ )「いやだ…地獄はいやだ…」
( ´_ゝ`)「大丈夫、罪を知って罰を受ければ、そんなに怖くないよ」

  _
(:::д:::)「いヤダ…いやだああああああ!!」

( ;´_ゝ`)「ヤバ…悪化しちゃった」

時間が経った悪霊は生前の姿すら忘れて、暴走する。
怖いな、時間って、大切なことまで忘れちゃうから。

「ジジジ…ジジジ…」

生前の姿も、記憶も、心も、言葉も、全て捨てたそれはとても見ていられない物だった。

醜い茶色のような赤褐色なボディー、目なんだかカメラのレンズだかわからない物が頭部に付いてて、極め付けに体の至る所から生えてる刃物。

刃物。
刃物?

( ;_ゝ;)「ぎいやあああ!!尖ってる!!!」

瞬間、ビルの屋上から悪霊に突き飛ばされた。

319名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:18:01 ID:uAhlUA660
( ´_ゝ`)「いててて…」

奇跡的に街路樹がクッションになってアスファルト直撃は免れたようだ。
追撃の為落ちてくる悪霊。
不安定な街路樹に立って跳ぶ準備をしてみる。
多分ね、君が思ってるほど地獄は怖くないよ。

少なくとも俺にはね。

落ちてくる悪霊よりも高く飛んで、地面に蹴り落とす。
ボコボコになった地面。
ま、閻魔様ならちょちょいと直してくれるんだろうな。

壊れかけの悪霊さんに座ってみる。

「ジジジ…ジジジ…ジャナイ…」
( ´_ゝ`)「へ?」
「サイジャク…ジャナイ…ジジジ…」
憶えてた、人語も、俺との会話の記憶も。
嬉しくなって答える。
( ´_ゝ`)「オレは最弱なんで。いや本当に」
ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/vp102080.jpg

320名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:21:04 ID:uAhlUA660

( ´_ゝ`)「OK.魂ゲット」
(´<_` )「おかえり」
( ´_ゝ`)「よし、お仕事終わったし。帰るか」
(´<_` )「んー、もうちょっとここに残りたい」
( ´_ゝ`)「えー…また?」
(´<_` )「…じゃあいいよ、俺だけちょっと観光するから」
( ´_ゝ`)「…そ。じゃあ2時間以内で帰って来いよ」
(´<_`# )「なんでいつもそう決められなきゃいけないんだ、観光ぐらい自由にさせろ!この『世界』にはもう二度と来れないかもしれないだろ?!」
( ´_ゝ`)「他にもいっぱい似たような『世界』あるじゃん…わかった、すぐ帰って来いよ」
ーーー
( ´_ゝ`)「おそい」
( ´_ゝ`)「おそい」
( ´_ゝ`)「おそい」

あんまりにも遅い。
待ってる間に地獄で一番高いオブジェ、昇りきっちゃったし。
ふんだ、あいつなんて自前の足で昇って息切れすればいい。

(´<_`; )「…ハァ…ただいま」
( #´_ゝ`)「遅い!」
(´<_`# )「なんだよ、開口一番…ウザイ」
( #´_ゝ`)「ほら!あんな寂れた『世界』に長々いるから口まで悪くなって!」
(´<_`# )「寂…なんだよ、ウザイ奴にウザイって言って何が悪いんだよ…」

( #´_ゝ`)

ああ可愛くない。
紙の中の弟者はあんなにもいうことを聞いてくれたのに。
あんなにも一緒にいたのに。
もう一回紙になればいいのに。

(´<_`; )「…おい、冗談はやめろよ…足場が…」
( ´_ゝ`)「大丈夫」

俺があのビルから落ちた時は。

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/3m8XK.jpg


( ´_ゝ`)「そんなに痛くなかったよ」




ああ、紙のように、ペラペラ。

321名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:23:28 ID:uAhlUA660

クーに案内されながら歩く。
不意に足元に不思議な感じがして、足元を見る。

(,,゚Д゚) 「よお、くるう」
川 ゚ 々゚) 「くるぅー!」

いつの間にクーの肩から降りたくるうと…

ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_424.jpg

('A`;) 「ね、ね、猫が喋った!!」

川 ゚ -゚)「おお、ギコ、お前は案内終わったのか?」
(,,゚Д゚) 「まあな」
('A`;) 「ね、猫が喋るなんて…」
川 ゚ -゚)「魔法みたいだろう?」
(,,゚Д゚) 「そんなに引きずるなよ…話しづらい…とっとと受け入れろよ!」
川 ゚ -゚)「そんな簡単に受け入れられるわけないだろ」

ーーー

(,,゚Д゚) 「そうだ、くるう、お前の魔法で出して欲しい物がある」
川 ゚ 々゚) 「くるぅー?」
(,,゚Д゚)「春風が欲しいんだ」
('A`*) 「なんか、かっこいい…」
川 ゚ -゚)「騙されるな、ドクオ、この場合の『春風』は酒の名前だ」
('A`iii) 「…なんだ」

ギコハハハと奇怪に猫は笑う。

(,,゚Д゚)「まぁ、歩きながらでも一杯やろうや」
川 ゚ -゚)「断る」
('A`) 「俺も」
川 ゚ 々゚) 「くるうー?」

くるうが猫の持つ袋を突つく。

(,,゚Д゚;) 「こら!これは閻魔様のお使いだ!メッ!」
川 ゚ 々゚) 「くるぅ…」
川# ゚ -゚)「くるうを虐めるな!」

やれやれ、厄介な御一行だ。

322名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:29:56 ID:uAhlUA660
( ´_ゝ`)「俺の話はおしまい。罰も終わったかな」
( ;^ω^)「…その後…弟者さんは…」
( ´_ゝ`)「知らない」

( ´_ゝ`)「閻魔様は弟者をどこかに持って行く時に言ったんだあの場所で待ってろ、誰かが迷い込んだら道案内する、そして辛い過去の話をする」
( ´_ゝ`)「地獄は広いんだ。あんなピンポイントに人が迷い込むなんてあり得ないと思った…でも、君は来てくれたね」
( ´_ゝ`)「おかしいな、最初にあんなにも言われたのに…弟者の支配権は俺に無いって」
( ;_ゝ;)「またひとりぼっちだ…閻魔様も…弟者も…俺のことなんか嫌いなんだ…」
( ;^ω^)「……」

僕は口を金魚のようにパクパクさせた。

自業自得だろ、クズが。
多分今も好きだよ。
弟者は多分生きてるよ。

あたりでカーソルが上下するだけだった。

( う_ゝ`)「…着いたよ、閻魔様はいないっぽいけど」

全ての道が繋がった中央に大きな机があった。
上の名札には『閻 櫓魔』。
読み方はエン ロマ でいいのだろうか。

('A`)そ「…ブーン!」
( ;^ω^)そ「あ!!ドクオ!!」

323名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:31:04 ID:uAhlUA660
川 ゚ -゚)「ふむ、お前がブーンか
。私はクー」
(,,゚Д゚) 「ギコだ」
川 ゚ 々゚) 「くるぅー!」
('A`) 「だそうだ、そちらのお連れ様は?」
( ^ω^)「えーっと、兄者です」
( ´_ゝ`)「…どうも」
川 ゚ -゚)「しかし、閻魔様はどこに…」
するとシュルルルと音が聞こえる。
先ほどの大きな机の上に黒のような、紫のような、竜巻ができている。

「むむ!?兄者とクーとギコにくるうとお客様二名であるか?!どの姿をとれば…」
川 ゚ -゚)「…どんなすがたでもいいですよ閻魔様」
(,,゚Д゚) 「俺もだ」
川 ゚ 々゚) 「くるぅー!」
( ´_ゝ`)「…俺は、今は久々の閻魔様に会いたいな」
「…了解した」
竜巻はこの中で言えば兄者に一番近い形態をとった。
( ФωФ)「…久々だな、兄者」
( ;_ゝ;)「ひさ、し、ぶり…」
( ;^ω^)「……」
('A`;) 「お、おい、ブーン、なんであいつ泣いてんだ?!」
( ;^ω^)「それが、いろいろあって…」

( ФωФ)「…久々にお前の絵が見たい、ギコ、袋の物を出しなさい」
(,,゚Д゚) 「はい」

ギコの袋が開かれる。

324名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:33:26 ID:uAhlUA660

( ´_ゝ`)「緑の絵の具とスケッチブック…」
( ФωФ)「好きな物を、描きなさい」
( ´_ゝ`)「好きな…もの?」

兄者はスケッチブックを開き、緑の絵の具チューブをグニャリと曲げる。
出てきた緑を指に付け、迷うこと無くスケッチブックに線を引く。

( ´_ゝ`)「俺に似てて」
( ´_ゝ`)「俺の言うこと聞かなくて」
( ´_ゝ`)「俺のことウザイとか言っちゃって」
( ;_ゝ;)「一期一会な『世界』観光が大好きな!」

紙に描かれた弟者は最初に閻魔に見せた弟者ではなく。

紛れもない彼が一緒に歩んで来た弟者だった。

325名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:36:10 ID:uAhlUA660
閻魔が再びシュルルルと竜巻になったと思えばまたシュルルルと戻ってきた。

( ФωФ)「…これっきりである」

背にはおそらく、兄者の新しい『世界』から連れられた弟者がいた。

(う<_- )「ん…?」
( ;_ゝ;)「弟者!!ごめん!ごめん!痛かったよね?ごめんね!ごめんね!」
(´<_` )「兄者…俺こそごめん…言葉遣い…気をつけるから」
( ´_ゝ`)「ううん、いい。弟者は弟者らしく行きたい『世界』行って俺のことウザがってて。それが弟者だから」
(´<_` )「…そう?じゃあ今度一緒に観光しよう、『世界』。兄者のへったくそなスケッチ旅行も兼ねて」
( ´_ゝ`)「…早速酷い」

(,,゚Д゚) 「とりあえず、俺の功績でハッピーエンドか」
川 ゚ -゚)「よくわからんが私にはお前がただのパシリに見えたが」
川 ゚ 々゚) 「くるぅー」

326名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:37:30 ID:uAhlUA660
( ФωФ)「…では、そこの二人、罪と罰の時間である!!!」
閻魔が僕らに手を翳す。
( ;^ω^)「ひえええ!パンに埋もれるのは嫌だお!!」
(;'A`)「死んでもいいって思ったらなんでも出来る気がしてきた!」

ばっちこい!とドクオが自分の胸を叩く。

てか地獄にいる時点で死んでるんじゃ…あれ?

( ;ФωФ)「お、おかしいである!二人が死んだ記録がどの『世界』にも無いである!!」
(´<_` )「え、そんなことあり得るの?」
( ;ФωФ)「むむ…確かイケナイ言葉とかイケナイ場所に行くとかイケナイ行動することで自動的に地獄に落とされる強制システムはあったであるが…そんな行為をしてるわけでもないし…」
川 ゚ -゚)「システムを確認してはいかがですか?」
( ;ФωФ)「うう、まあ、念には念を入れてやってみるである」

ピピピと大きな机の上にあるコンピュータを閻魔は弄る。

( ;ФωФ)「…は?」
閻魔の操作によるものか、スクリーンのように空中にコンピュータの画面が映し出される。
そこに出された文字は忘れもしない。

『強制地獄送信システム
ワード:ちくわ大明神
猶予:12時間以内に他者に口語伝達(ただし一個体一度のみにしか効果無い)』

327名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:39:07 ID:uAhlUA660
( #ФωФ)「…誰である…こんなことを…」
(,,゚Д゚;) 「あ…俺『春風』でいい感じに酔った時にちくわ食べたくて…弄っちゃったかも」
( #ФωФ)「ギコ…お前へ罰を下す!『春風』はしばらく禁止!!」
(,,;д;) 「そ、そんなぁ…!」

( ;^ω^)「そ!そんなことより僕らですお!!現世に戻れるかお?!」
( ;ФωФ)「申し訳ない…大丈夫である…今手続きを取ったである!!」
閻魔は竜巻になり僕らの周りを旋回する。

( ´_ゝ`)ノシ(´<_` )ノシ

(,,;д;) ノシ川 ゚ -゚)ノシ川 ゚ 々゚) ノシ

( ^ω^)ノシ('A`)ノシ

短い間だけど、ありがとう、楽しかったよ。

みんなの口が同じように、同じ時、同じ場所で動いた気がした。

328名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:40:57 ID:uAhlUA660
( -ω-)「ん…」
( ^ω^)「…おっ?」

目を開けると白い天井。
辺りは全体的に、白い。

('A`) 「病院だ」
( ^ω^)「!ドクオ!!」
('A`) 「しっ」
ドクオは指を口に当てた。
ふとドクオの横を見ると彼の母親がベッドに突っ伏して寝ている。
一人息子が地獄に行ったんだ、心配です離れられないに違いない。

('A`) 「どの先生だろうな、救急車呼んだの」
そういえば、現世の記憶は教室が最後。普通に考えれば教室で唐突に倒れた僕らは救急車に運ばれ、生死危うい状況で寝せられていたのかもしれない。

('A`)「誰そ彼時、ってな」
( ^ω^)「へ?」
('A`) 「この時間帯だよ」
窓を見る。確かに明け方だ。

不意にツンに会いたくなった。

( ^ω^)「…行ってくるお」

ドクオはどこに、とも、やめろ、とも言わなかった。

('∀`) 「…いってこい」

こういう時、こいつと友達で良かったなぁと思う。

329名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 04:43:04 ID:uAhlUA660

ツンの家まで来ると僕は途端に緊張してしまった。
走って来たから暑いけど冬に入院着一枚だった。
こんな時間に突然来るなんて、しかも今日土曜だから休みだ。
もしかしたら爆睡中かもしれない。

( ;^ω^)「うう〜」
いまいちチャイムを押すタイミングが掴めないでいたまま玄関ドアの前でウロウロ。

すると。
ガチャリ。

ξ゚⊿゚)ξ「あ…」
( ;^ω^)そ「……!!!」

扉は開かれてしまった。
ーーー
「近くの公園に行きましょう」

ツンはそういって入院着の裾を引っ張りながら僕を近くの公園まで引きずる。
目印の時計が見えた。

只今AM7:00。僕にとって、休みの日のこの時間はかなりの早起きだ。
目印の時計の前で立ち止まり、ツンは振り向いた。

ξ゚⊿゚)ξ 「…ほんと、馬鹿なんだから…」
ポタポタとツンの目から涙が落ちた。
ttp://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_426.jpg

ξ;ー;)ξ「私の変な呪いのせいで、あんたが死んだと思ったら……」
雪が舞う。
そして僕も泣いた。
ξ;ー;)ξ「…どうしたの?ブーン?何か悲しいの?」
( ;ω;)「悲しいわけじゃないお、嬉しいんだお」

僕をこんなにも想っている人がいる。
そして、僕もその人のことを想っている。
それだけで、それだけで。

ξ゚⊿゚)ξ「…ばーか」
ピンクのマフラーの僕の幼馴染は泣き顔で僕に抱きついた。


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