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クリフトとアリーナへの想いは Vol.1

1管理人★:2015/04/05(日) 00:08:03 ID:???
クリアリの話題を扱うための待避所です。
ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう!
職人さんによるSS投稿、常時募集!

【投稿内容に関するお願い】
・原作や投下された作品など他人の作品を悪く言うのは控えてください。小説版も含めて。
・趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。
・個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。
・読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。
・性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の場所でお願いします。


    ,. --、
    | |田|| 姫様、お気をつけて
     |__,|_||     __△__ 
     L..、_,i    ヽ___/
 . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ   / ,ノノハ)) クリフトがいるから
   `K~キチス  (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ!
    ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ
    Li_,_/」   ん'vく/___iゝ
     し'`J      じ'i_ノ

クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
 ※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。

115名無しさん:2016/04/17(日) 14:15:53 ID:0nqmETmw
良くも悪くもクリフトのザキは規格外
他の火力が弱い分、1人で戦うならザキを主軸にしないと厳しい

ザキを使わないなら回復しつつ持久戦にならざるを得ない
守備力重視の装備にスカラとマヌーサがあれば、アリーナ戦の脅威は会心の一撃のみ
アリーナの回復手段がやくそうだけなら楽勝で、杖や石といった無限回復なら厳しくなる
奇跡の剣を装備すれば安定はするが、1回のダメージが10近く減ってしまう
互いに決定打がないまま無限回復をし続ける泥仕合で引き分けになればいいけど、
打率25%の改心の一撃を連発される可能性を考えると、MP切れ後のクリフトは苦しい


過去にあったSSだと、決勝の相手はアリーナでなくソロってのがあったな
ソロは優勝インタビューをシンシアへのプロポーズの場にしようとしてるから真剣勝負
アリーナとクリフト、そしてソロさんたち仲間の会話が良くてさ
大会でザキを使わない理由も何気に明記され、SS職人の実力を見せ付けた

後に俺も書き手に加わったが、職人の背中は遥か彼方にあった
職人さん戻ってくれないかな

116名無しさん:2016/04/18(月) 03:54:52 ID:nJfk10AA
せっかくのネタ振りですから、乗らずに終了は勿体ないですね。

強気な戦闘民という性格だけに、アリーナは負けることを想定していないかも。
結婚を回避する口実を兼ねた大会という可能性もあるでしょう。
かわいそうな状況としても、打開に当人や仲間が動けばストーリーが動きます。
後の展開に広がりのある、良いシチュエーションですね。


DSリメイク準拠で概算してみます。

クリフトLv.99
 与ダメージ はぐメタ剣=78、奇跡の剣=63
 守備力 308(103+95+60+50)
アリーナLv.99
 与ダメージ ピアス=40x2(会心250)、爪78(会心340)、鞭105(会心なし)
 守備力 166(116+ひかりのドレス50)

クリフトが相手ということで、アリーナは呪文対策にひかりのドレス。
仮にクリフトがグリンガム装備でも会心を捨てて攻撃力5UP。剣にしましょう。

クリフトが勝つ手段は実質ザキ系のみです。
呪文でアリーナの攻撃を防げても、自分の攻撃が祝福の杖を上回りません。
皆殺しの剣を使えばダメージを20〜40増やせるものの、雀の涙程度です。
約3%の会心の一撃を3連発すれば勝機が見えます。でも厳しいです。
静寂の玉を使われたらクリフト涙目。

117名無しさん:2016/04/18(月) 06:23:42 ID:nJfk10AA
>>116はアリーナが何もかぶっていない試算でした。
金の髪飾りを装備すると、アリーナの被ダメージが3下がりますね。
命の指輪を装備すると、更に4下がります。

クリフトが豪傑の腕輪を装備すると、与ダメージが12くらいUP。
少しは勝率が上がります。

あとはメガンテの腕輪で相討ち狙いくらいしかなさそう。
やはりザキを使わないと苦しそうです。

118従者:2016/04/20(水) 14:40:04 ID:dvtPB6.6
おひさしぶりです、かつて従者と名乗っていた者です。初めての方ははじめまして。
続きに煮詰まりあまりに遠く空けすぎてしまいました。力量と根気のなさに申し訳ない思い。
こうしてまた語ることのできるこの場所と皆さまに心から感謝です。

気持ちだけはありますのでまた時々でも投稿させてもらえたら嬉しいです。
試しに一投稿。ちなみに私はPS版のセリフをもとにストーリー展開させていた者です。

119従者の心主知らず 海辺の村編 1/2:2016/04/20(水) 14:45:44 ID:dvtPB6.6
やっぱりクリフトって変。
あんな頭の痛くなるようなことをいっつも考えてるから胸が苦しくなったり鼻血が出たりするんだわ。
この間海辺の村に行ったときだってそう。

「ここだと毎日泳いだり日光浴をしたりできるからたいくつしないわね」
「日光浴、ですか…………。ひ、姫さまの日光浴!」
「そう、日光浴!」

クリフトの足が止まったみたいだけど気にせず早足で歩く。
何だかお説教が始まりそうな気がして。

「でも水着は持ってきてないし、買おうかな」

ぶはあっ!
いきなり後ろで変な音が聞こえた。
振り向くとクリフトが鼻を押さえてよろめいてた。
手にも服にも血がついてる。

「ちょっとクリフト、どうしたのよ!」

慌てて駆け寄るとクリフトは目をそらした。
もう、なんなのよー。

「……なんでもありません……」
「何でもなくないでしょ、鼻血が出たの?大丈夫?」
「……だいじょうぶです……」
「と、とにかく手当てしなきゃ、どうすればいいの?横になったほうがいいの?」
「い、いえ、横になるのはかえって危険……」
「えーじゃあどうすればいいの?あ、とりあえず荷物は下ろして」

クリフトが安静にしてればすぐよくなるっていうからとりあえず建物の陰に座らせて私も座った。
クリフトはハンカチで鼻を押さえたままぼーっとしてる。

「……大丈夫?」
「……申し訳ありません……」
「そうじゃなくて、大丈夫?」
「……はい……」

血は止まったみたい。よかったー。

120従者の心主知らず 海辺の村編 2/2:2016/04/20(水) 14:51:47 ID:dvtPB6.6
「んもう、びっくりするじゃない。どうせまた頭の痛くなるような難しいこと考えてたんでしょ」
「…………」

クリフトはぼーっとしたまま答えない。

「何考えてたの?」

もう一度聞いた。そしたらクリフトはやっと答えた。聞こえないくらい小さな声で。

「……日光浴による人体への効果と影響について……」
「やっぱり難しいこと考えてたんじゃない」
「……申し訳ありません……」
「別に謝らなくてもいいけど」
「…………」

「……姫さま、あまり肌を晒すのはおやめください」

来た!お説教!でも病人だからって譲らないわよ。

「どうして?」
「それは……」
「どうせまたお肌が荒れるとか言うんでしょ」
「それもありますが」
「あるんじゃない!もう、じいもクリフトも気にしすぎなのよ。ちょっとくらい日に焼けたからって死ぬわけじゃないんだし、
いいじゃない」
「その……困るんです」
「困らないわよ、楽しいじゃない」
「私が困るんですっ」

なんかクリフト、むきになってる?顔赤いし。

「んもう、わかったわよ。じゃあ日光浴はクリフトにも付き合ってもらうわ。それならいいでしょ?」
「え、あ……」
「そうだ、クリフトもいっしょに日光浴すればいいのよ、そしたらきっとよさがわかるわ」
「い、いっしょに?!」
「そうと決まれば水着を買いに行きましょ!あ、その前に着替えなくっちゃね。大丈夫?歩ける?」
「ひ、姫さま…っ」

私はクリフトの手を取って歩き出した。後ろでクリフトが姫さま姫さま言ってるけど気にしない。
心配性のクリフト、そういう人ほどいざそのときになれば自分から進んで日光浴するんじゃなーい?

ぐはあっ!
後ろでまた変な音が聞こえた。つないでた手に少しだけ衝動。どうしよう、振り返ったほうがいいわよね……。
んもう、そんなに体調崩すほど私のことが心配なわけ?そりゃ過保護って言われるわよ。

121名無しさん:2016/04/21(木) 03:38:40 ID:kN6wXz92
>>118-120
乙です!
クリフトの言葉とアリーナの解釈の自然なズレが良いですね
そういう会話から2人の普段の関係が見えてきて、文面以上の奥行きを感じます
微笑ましい絶妙な距離感がたまりませんね

というか、お懐かしい!
お名前は鮮明に覚えているのですが、その名を再び見る日が来るとは夢のようです
再びスレにその名が刻まれたことに感謝の念を禁じえません

122名無しさん:2016/04/21(木) 07:58:59 ID:5dNkr012
2人ともめちゃくちゃ可愛すぎて読んでるこっちが鼻血出そうだよ
おつです!

123名無しさん:2016/04/22(金) 02:51:39 ID:xx15Lz7U
伝説にも似たお方の再来による感激のあまり、視界が鼻血…いや涙で滲むぜ
乙すぎるぜ

124従者:2016/04/22(金) 12:09:47 ID:GvL5W766
>>121-123さん
感想をいただけるどころか私を覚えていてくださった方にお会いできるとは…!
感謝感激のあまり私こそ目から鼻血が
短い書き込みの中にさりげなく垣間見えるお三方の文才に嫉妬です。

実は今後のことで言い訳とお願いをしたく。
次に書き込むときは続きを投下するときだ→煮詰まる→書き込めない→焦ってさらに煮詰まる→さらに書き込めない→遠い年月→現在に至る
という事態に陥っていました。

どうにも私は時系列に沿って投下しようとすると煮詰まるようです。
今後は続きでなくとも単発やネタ、仕上がった場面から投下させてもらえるとゆとりが持てそうです。
(今一番はかどっているのはピサロナイトとロザリーを絡めてのクリアリ)
ちょっと視点が他へ向くと続きがはかどる不思議。(あの教会の夜の続き、目下仕上げ中です;)
いきなり来て申し訳ないのですが、今後そんな感じで流していただけると嬉しいです。

それでさっそくですがあの教会の夜の続きで寝癖のシーンを考えていましてですね。
>>73さん以降ちょうど寝るときの髪型や寝癖の話題になっていて一部そのまま良案いただきました。
皆さまの知識と想像力の豊かさに感涙です。ナイトキャップなんて思いも浮かびませんでしたよ。
私は声を大にして叫びたい。YOUたちこそ書いちゃいなYO!

そこでふと、アリーナはお忍びの旅に出るときいったいどれだけの準備をして壁をけやぶったのかと考えた末このような小ネタが。
例えばこんなクリアリ、いかがでしょうか。

125従者の心主知らず 1/2:2016/04/22(金) 12:16:06 ID:GvL5W766
アリーナ「さあ、今日から自分のことは自分でやるのよ。なんだってできるんだから!」
クリフト「……(知られざる姫さまの日常生活が今や目の前に…)」

アリーナ「ごちそうさまでした!外で食べるご飯ってしんせんでおいしいわね!」
クリフト「……(姫さま、なんと上品に召し上がるのか。やはり気品とは隠そうとして隠せるものでは…)」
アリーナ「えっと、ここはご飯を出してもらったんだから、片づけはやらなくていいのよねっ」
クリフト「……」
アリーナ「ちょっとクリフト、聞いてるの?」
クリフト「あ、はい。そうですね、ここは食堂ですからしたとしても食器をまとめておくくらいですね」
アリーナ「うん!」
クリフト「あの、会計をお願いします」
店員「はい、ありがとうございます」
アリーナ「え?」

アリーナ「ねえクリフト、かいけいってなに?」
クリフト「え?あ、あの、それは……」
ブライ「姫さま、まさかただで飯が食えると思っているわけではあるまいに」
アリーナ「え?」

アリーナ「そっか。お金を払うんだものね。会計ってお支払いのことだったのね。覚えたわ」
クリフト「……。あの、姫さま」
アリーナ「なに?」

なんかクリフトがやけににこにこしてこっち見てるんだけど。

クリフト「もしよろしければ、金銭管理は私にお任せいただけないでしょうか」
アリーナ「えー?」
クリフト「いくらか旅を円滑に進めるお力にはなれると思います」
アリーナ「うーん。でも私、自分のことは自分でやりたいんだけど……」
クリフト「そう、ですか…」
アリーナ「うーん。でもまだお金のことよくわかんないし……」
クリフト「……」
アリーナ「じゃあじゃあ、私がちゃんと覚えるまでお願い!覚えたら私がやるんだから!」
クリフト「はい!姫さま!」

126従者の心主知らず 2/2:2016/04/22(金) 12:21:40 ID:GvL5W766
アリーナ「髪をとくのってけっこう疲れるのね。着替えはなんとかなったけど」

クリフト「……(姫さまは今お部屋で何をされているのだろうか。お困りごとはないだろうか)」

アリーナ「あ!ナイトキャップと歯ブラシ忘れてきちゃった!ちゃんと用意したはずなのに…っ」

クリフト「……(やはりもしものことがあっては……。部屋近辺で警備をしたほうがいいだろうか)」

アリーナ「クリフトに借りるわけにもいかないしお城にはもう戻れないし……どうしよう」

クリフト「……行くか」

クリフト「姫さま、クリフトです」
アリーナ「あ、クリフト!」

アリーナ「よかったわ。ちょうど会いに行こうと思ってたの」
クリフト「わ、わたしにですか!?(ひ、姫さまのパジャマ姿…!)」
アリーナ「うん。あのね、私……」
クリフト「は、はい…!」
アリーナ「あのね……うー……」
クリフト「……」
アリーナ「…………」

アリーナ「あのね!ナイトキャップと歯ブラシ忘れてきちゃったのっ!どうしよう、なくてもいいかなあ」
クリフト「……」

なんかクリフトうつむいてる。なんで?やっぱりないとダメなのかなあ。
そしたらクリフトが顔を上げて言ったの。またやけににこにこして。

クリフト「今夜はもう遅いので無理ですが、明日買いに行きましょうか。似たものがあればいいのですが」
アリーナ「あ…」

アリーナ「そっか!買えばいいんだものね!明日さっそく買いに行くわ!ありがとうクリフト!」
クリフト「はい!姫さま!」

127wiki菅:2016/04/22(金) 22:33:09 ID:RElmhH8A
何度かこちらにも書き込んでいたのですが名乗るの忘れてたので、一応再度確認ということで
クリアリwikiの管理人です
したらばのテンプレが2chからの流用ということで、こちらに投稿されたssもwikiに載せちゃってもOKということで良いでしょうか?

あと2chの本スレが落ちちゃってるんですけど、ツアーやヒーローズ2でまた荒れるのが目に見えてるので2chに新スレは立てなくてもいいですよね?
保守するにも見るのが辛すぎて…


>>118
従者さん乙です!
やっぱりクリアリはかわいいなぁ
ナイトキャップかぶったアリーナ想像したらほんとかわいい

お好きな順に投稿してくださいね
wiki保管でしたらお任せください、この管理人どこまでもついていく所存であります!

128管理人★:2016/04/23(土) 03:35:26 ID:???
>>127
お疲れ様です。
著作権法の観点からコメントしておきますね。
著作権法的には、このスレからの転載は、そちらのwikiへの転載に限り自由です。

「※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。」
>>1に記載してあるので、法的には事前に許諾を得ている状態となります。
各種裁判での判例を踏まえ、確実にOKになる記載方法にしてあります。

なお他の場所への転載は、作者の許諾を別途得る必要があります。
次スレでは、この避難所内への転載もOKというテンプレが良いかなとは思います。


こっちは私がガチガチに守っていますが2chはノーガード。
それでも2chに立てるなら、IPアドレスやら何やら強制表示にすると良いのでは。
スレ立て時に「!extend:checked:vvvvvv」を1行目に書くだけのはず。
匿名性が薄れて書きづらくはなりますが、荒らしは減るでしょう。

129管理人★:2016/04/23(土) 16:08:52 ID:???
コテハンの人はトリップを使うのも良いかも知れません。
http://jbbs.seesaa.net/article/360026210.html


あと、2chにスレ立てする場合の1行目。
 (1)IP表示 「!extend:checked:vvvv:1000:512」
 (2)強制コテハン 「!extend:checked:vvvvv:1000:512」
 (3)強制コテハン&IP表示  「!extend:checked:vvvvvv:1000:512」

最適解は(3)に思えますが、効果はやってみないと分かりません。
IPアドレスが分かれば、荒らしのプロバイダに通報して強制退会を狙えるかも。

130従者:2016/04/23(土) 18:06:02 ID:GSSeebbc
>>127
感想ありがとうございます!
あのあとやっぱり一人で旅に出たいと部屋を抜け出しクリフトに見つかりブライにさんざんしかられる、
という設定を入れてしまっているため次の日気まずくなって結局ナイトキャップは買わなかったという残念な展開に……。
時系列に沿った投下をしないデメリットはあとで素敵な発想に巡り合えたとき補完が難しいところです;

投下順のご了承ありがとうございます。その節は訂正分を差し替えていただき本当に感謝です。またよろしくお願いします。
個人的にはこうして書かせていただけるだけで感謝ですのでそこがしたらばであっても2chであってもついていく次第です。

>>129
トリップ……なんともなつかしい響きです。
こちらではなくても大丈夫でしょうか。もし必要であればつけますのでまたご指示をいただければと思います。
お世話になります。


ところで違う話も一つしたいのですが、
いたストでアリーナは雷が苦手という設定がありますがその理由ってどこかでわかりますでしょうか。小説版でしたっけ。
初出がどこだかも曖昧でして……。調べる気力はあるのですがもしすぐわかる方いましたらどうか教えてください…。

132管理人★:2016/04/23(土) 21:27:58 ID:???
>>130
トリップを使わないのは構いません。その結果は自己責任です。
いざとなっても私がIPアドレスとか見て本人確認する義理はないということで。
私の手間が余計に増えなければ、私としては問題なしです。

次スレの1か2でコテハンへのトリップ推奨を記載しようとは思っていますが、
トリップを強制するつもりはありません。

以前に、ss投稿者にトリップを推奨する意見が出たことはあります。
2chのPart13スレで、wiki管の方がテンプレ案の中で。
ただ「職人さんの負担になるかな」ということで自ら廃案にされていました。

133名無しさん:2016/04/23(土) 23:34:45 ID:XSK9yW3E
>>124
流れに逆らってまで乙を言いたくなるほどの感激をありがとうございます乙
アリーナとクリフトの微笑ましい関係性に鼻血が出そうです乙
行間のニュアンスを無理なく読ませる力量に脱帽です乙
台詞だけなのに動作まで見えてくることに驚きを隠せません乙
連載を複数抱える作家であれば、読者の楽しみも倍増ってものです乙
予告でさらに楽しみを膨らませるとは乙

あ、言い忘れてましたが・・・乙!

134名無しさん:2016/04/24(日) 02:44:10 ID:KeODlO1Y
>>127
無法地帯な2chに立てても不愉快になるだけなので個人的には立てたくないですが

立てる理由があるとすれば来る人の多さ?
しかしスレタイにクリアリと付けて来る人を増やしたら案の定、癇癪持ちのお子様が暴れる有様
2chに人を呼び込んで平和にやっていくってのはあまり現実的ではない気がする
強制コテハン&IP表示でどれだけ良くなるのだろうか

2chに画期的な対策が加わるまではwikiとしたらばの充実を考えた方が得策?
作品が多ければ検索にかかりやすくなるんだろうな

135従者:2016/04/24(日) 22:45:20 ID:qzWYjsm6
>>131さんが私宛てだったのかまったく違う話だったのか気になって早起きできるようになった従者です。
アリーナの雷の件解決しました。もし教えようと思ってくださっていた方いましたらありがとうございました。

>>132
自己責任承知しました。今のところ支障が出たことはないので今しばらくは従者のままでお願いします。
やろうと思えばIPアドレスを見て本人確認できるその守備の堅さと教えてくださったお心遣いに感謝です。

>>133
乙言いすぎwなんで皆さんそんなにおもしろいんですかw

本当にありがとうございます。皆さんの声が飛び上がるほど嬉しくて何度も読み返してしまうのですが
その声にお応えできる作品に仕上げられるかはわかりませんので
こうしたほうがクリアリっぽいとかいやその展開はおかしいとかありましたら言っていただけると助かります。
書きたいから書いているとはいえ読者がいてくださるからこそ書けるのだと本当に思います。

一つ、爆笑という言葉は複数人に使う言葉であって一人のときには大笑いなどのほうがよいそうですね。
アリーナを無知にさせてしまいました。物を書こうという人間自身が言葉知らずというのは致命傷です;
それでも書こうとする無謀者ですので何とぞ皆さまおかしいところはおかしいと教えてくだしあ

136従者:2016/04/24(日) 22:51:59 ID:qzWYjsm6
皆さまのおかげで5年がかりのあの教会の夜の続き、やっと目処が立ちそうなので景気づけに前お伝えした
ピサロナイトでクリアリ前置きパートを置いていきます。前置きなのでクリアリ要素少なめです;
どうにも私は前置きの長い話も書いてしまうようで、また従者の前置きか、と軽く流していただけると助かります。

2chへのスレ立てをどうするかという大事な話を遮ってしまって心苦しいですが
私もいつまた書けなくなるかわかりませんしどうか投下できるときに投下させてくだし


ではPS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「ナイト」16シーク分投下します。
勇者は男「ソロ」で進めていきます。戦闘、流血描写がありますのでご覧の際にはお気をつけください。
いろいろな過程をすっ飛ばしてのロザリーヒルですので「?」な描写もありますが何とぞご容赦を。

137従者の心主知らず ナイト 1/16:2016/04/24(日) 22:57:03 ID:qzWYjsm6
キイキイ…。
何かの鳴き声のような耳ざわりな音が聞こえてきた。ここ、確実に何かいる…。私は手を強くにぎり返す。
別に怖いわけじゃないけど、何だか息がつまるような気がした。

私たちは今ソロに続いて塔の地下を進んでる。あたりは静まり返っててみんなの足音だけが響いてた。
長い長い階段をのぼってく。やっと階段が終わりかけた先に人影が見えた気がした。誰か、立ってる…?

「おい、あんた」

ソロが声をかけた。やっぱり人が立ってたみたい。でも返事がない。ソロが前に進み出た。
でも私はなぜかその人に近づく気になれなかった。なんだろう、なぜかドキドキする…。

「ぬぬっ!きさま人間だな…!」

人影はゆらりと動いた。何かが光る。シャラっと金属がすれる音。剣を、抜いた…?
だんだん人影がはっきりしてくる。それは全身を緑色のよろいで固めた騎士だった。

「ここを通すわけにはいかぬ!成敗してくれるわっ!」
「待て!俺たちは戦いに来たんじゃないっ!」
「問答無用」

キィィンッ!!
いっしゅん何が起こったのかわからなかった。気がついたら金属のぶつかる音が聞こえて。
すぐ目の前に騎士がいてソロが剣で受け止めてた。速い…!
私たちは身構えた。きっと速く見えただけ。いつもみたいに戦えばきっと相手の動きだって見えてくるわ。
さっき感じた違和感はこれだったんだ。そう、こいつは敵だったんだ!

「くそっ…」

ソロが剣で騎士を押し返す。騎士はとんだ。え、どこ…!?あんなに重そうなよろいを着てるのに!
ふと口笛のような音が聞こえた。それにこたえるようにキイキイと何かが鳴くような音。
何かが大きく羽ばたくような音と同時に天井から剣を構えた騎士と大きな翼を持った青い竜が突っ込んできた。
ガキィィィンッ!!!キィィンッ!!キィィンッ!!
一撃目をすんででかわしソロが再び騎士の剣を受け止める。そしたら竜が凍えるような吹雪を吐いた。

「ちくしょう!なんだってんだよ!」
「きゃあっ!!」
「姫さまこちらへ!!」
「ソロ!」

138従者の心主知らず ナイト 2/16:2016/04/24(日) 23:01:29 ID:qzWYjsm6
私たちは竜の吹雪にさえぎられソロと離されてしまった。まずはこの竜を何とかしなくっちゃ。
クリフトがすぐに魔法をかけてくれた。私の凍えた手足がほわっとあったかくなって痛みが和らぐ。
吹雪を吐き終えて再び息を吸い込む竜。今がチャンス!!
私はさっきの騎士みたいに高くとんだ。竜はクリフトたちに気をとられてて私に気づいてない。よしっ!

「いっけえええ!!」

私は竜の頭に思いっきりキックした。首が曲がるんじゃないかってくらいこんしんをこめたキック。
竜は大きな音を立てて倒れた。よし!

「姫さま!危ない!!」
「え?」

クリフトが横向きにふっとんだ。そのまま床に叩きつけられる。えっなに?なにが起こったの!?

「クリフトっ!!」
「ギァァアアアッ!!」

目の前に竜がいて私に向かってきた。もう一匹いたんだ…!

「姫さま!」

ブライが私に魔法をかけた。バイキルトだ。力がみるみるあふれてくる。怒りも湧き上がってきた!

「クリフトに何すんのよーっ!!」

するどい口をぬって私は竜のおなかに思いっきりキックした。口から何か吐いて竜は倒れる。

「クリフト大丈夫っ?!」
「わ、私は大丈夫です!それよりもソロさんをっ!」
「……うん!」

向こうで何かがカッと光った。白くてまぶしい光が見えたと同時に雷みたいな大きな音が聞こえた。
衝撃で足がくずれる。

「きゃああっ!!」
「姫さま!」

139従者の心主知らず ナイト 3/16:2016/04/24(日) 23:11:26 ID:qzWYjsm6
私は思わず目をぎゅって閉じちゃった。ううん、ダメよ!今は戦闘中なんだから!

「……大丈夫。大丈夫よ。私は大丈夫!じい!クリフトをお願い!」

震える足を引きずって私は奥に走った。


「うっ……ぐぐぐ……」
「ソロ!」

駆けつけるとソロも騎士も少し離れて立っていて、騎士がふらふらとよろめき後ずさってるとこだった。
血と金属と何かが焼け焦げたような匂い……。騎士のよろいはこわれていた。ソロも服が血まみれだった。
でもソロはふらふらしてない。ちゃんと立ってる。ソロが勝ったのね!!

「何者も…ここを通すことは……」

騎士は床にひざをついたけど剣で支えて立ち上がる。何度も何度も足がくずれては立ち上がろうとする。

「ぐふっ!」

床にぱたぱたと血がこぼれた。騎士はうつ伏せに倒れてく。剣の転がる音と重いよろいのぶつかる音。
でも、まだだ。まだ生きてる…。倒れてもなお両手ではってこっちに進んでくるの。私は背筋がぞっとした。

「ナイト!どうしたのです!?」

どこか遠くで女の人の声がした。騎士が振り返る。

「ロザリー様…いけません…っ」
「ナイト…?」

声が近づいてくる。

「ロザリー様、お逃げください…!」
「ナイト……」

私たちの前に淡いピンクのドレスを着た女の人が現れた。耳がとがってて、色白で、とっても綺麗な女の人。
そう、イムルで夢に出てきたエルフさんだ…!

「まあっ!あなたたちは…!」

140従者の心主知らず ナイト 4/16:2016/04/24(日) 23:16:59 ID:qzWYjsm6
エルフさんは私たちに気づいて驚いた顔をしたけどすぐにきっと唇を結んだ。

「コンドル!ロザリー様を連れて逃げろ!コンドル!!」

騎士が私たちに向かって叫んだ。後ろでバサバサと翼を動かす音。竜に言ったんだ。
でも竜は動かない。力なく翼を上下させるだけ。私が思いっきりキックしたから…。

「コンドル!何をしている!早くロザリー様を連れて逃げろ!!」
「ナイト…」

エルフさんが倒れてる騎士のそばまで近づいてきた。

「大丈夫です。いつかはこんな日が来ると、わかっていました」
「………………ぐっ…!!」

エルフさんは騎士の前でひざをついた。私は何もできなくてただ立ち尽くしてた。ソロも一歩も動かない。
まるで時間が止まったみたいに…。でもクリフトとじいがこっちに来たことで時間は動いてるんだってわかった。

「大丈夫です、ナイト……」
「ロザリー様…っ」

エルフさんが騎士にそっと手を伸ばす。

「ロザリー様…いけません…っ!」

ロザリーと呼ばれたエルフさんは騎士のひび割れたかぶとに手をかけた。きっと外そうとしたのね。
でも少し持ち上げたとたんかぶとはパシッと砕け音を立てて転がった。
中から現れたのは茶色で少し長めの髪にエルフさんと同じくらい耳がとがった男の人。耳が、とがった…?
もしかして、この人もエルフだったの…!?

「ナイト、あなたは…」
「……………………」

騎士とエルフさんはしばらく見つめ合ってたけど騎士がぎゅっと目を閉じて下を向いた。

「コンドル!!何をしている!!早く!!!…がはっ!」
「ナイト…」

141従者の心主知らず ナイト 5/16:2016/04/24(日) 23:22:00 ID:qzWYjsm6
騎士の口からぱたぱたと血がこぼれる。どこか内臓をやられてるんだ。でも竜は動かない。

「大丈夫です……大丈夫……」
「…………っ」

エルフさんは騎士の頭を両手でそっと引き寄せた。

「あ…ロザリー様…っ」
「大丈夫です…」
「っ…」

騎士を優しくぎゅってして、エルフさんはこっちを向いた。私たちをまっすぐ見つめる。なぜか私はびくってなって…。

「あなたたちは、人間ですね……」

エルフさんの腕や服に騎士の血がついていくつも染みを作った。染みはどんどん広がってく。
でもそれを気にもせず、エルフさんはもっと騎士をぎゅってした。まるで守るみたいに……。

「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんをいじめたらしょうちしないよっ!」
「スラちゃん…」

どこからかスライムが現れ前におどり出た。でもおびえてる。怖いんだ…。そりゃしょせんスライムだし……。

「違う…。違うんだ。俺たちは…」

ソロ…。

「申し訳ありません!」

クリフト!

「申し訳ありません。すぐに治療をっ!」
「ピキー!!」
「うわっ」
「クリフト!」

スライムがクリフトに飛びかかった。腕から血が流れる。かみつかれたんだ…!
それなのにクリフトはまったく気にとめず床にひざをついて頭を下げたの。

142従者の心主知らず ナイト 6/16:2016/04/24(日) 23:26:10 ID:qzWYjsm6
「どうか、どうか治療をさせてください…。お願いします!」

クリフト…!

「……ちりょう?」

スライムはしばらくその場で右往左往してたけど少しずつ後ずさりを始めた。
クリフトもひざをついたまま前に進んでエルフさんたちとの距離を詰める。

「きさま……ロザリー様に、近づくな……」

騎士がクリフトをにらみつけた。でもエルフさんが再び両手を騎士の首もとに回して引き寄せる。

「大丈夫ですナイト…」
「っ…っ」

騎士はエルフさんを抱きしめた。片方の手で自分を支えてもう片方の手でエルフさんをぎゅってする。
きっと、守ろうとしてるんだ。いっしょうけんめいエルフさんを守ろうとしてるんだ……。

――自分はどんなに傷ついても…!――

「大丈夫です……大丈夫ですよナイト……」
「ぐ……うっくっ……」

クリフトが誰にともなく頭を下げ、何かをささやき始めた。手当てをするときのいつものささやきだ。

「う…っ……ロザリー様……っ」
「大丈夫ですよ、ナイト…」
「っ……」

クリフトはささやき続ける。優しくて澄んだ声。いつもの声。
でも、今まで聞いたどんな声よりも澄んだ声のような気がした。あたりが優しさに包まれる。
私はクリフトの声に聞き入った。

「っ…ロザリー…さま…っ…」
「大丈夫……大丈夫ですから、どうか体を楽にしてください」
「っ…っ…」
「大丈夫…」
「…いやだ…っいやだああああっ…!!!」

143従者の心主知らず ナイト 7/16:2016/04/24(日) 23:30:46 ID:qzWYjsm6
騎士はエルフさんをもっとぎゅってした。私……なんでだろう、私……。前もこんな光景をどこかで見た気がするの。
どこで…?

――いやだああああっ!!!――

どこで……。

――姫さまあっ!!!姫さまああああっっ!!!!――

クリフト…!
そう、コナンベリーへ向かう途中の砂漠で倒れた私に必死に呼びかけてたクリフト。私はそれを遠くから見てた夢。
どうしてこんなことを思い出すの?あの人はクリフトじゃないのに。あのときとはぜんぜん違う状況なのに……。

――いやだああああっ!!!――

――いやだ…っいやだあああっ…!!!――

――あの人はクリフトじゃないのに…っ――

――姫さまああああっっ!!!!――

私はいつの間にか泣いてた。
ただ戦っただけ。いつもみたいに戦っただけ。最初に攻撃をしかけてきたのは向こうのほうなのに。
それなのに、どうしてこんなに胸が苦しいの…?

「クリフト…」

お願い死なないで。死なないで……。自分でも不思議に思うくらいそればっかり願ってた。

――バル…――

ミネア……マーニャ……。お願い、助けて……。

――あの人を助けて……――

「あ、ナイト」

クリフトのささやきが終わったと同時に騎士はエルフさんを抱きしめたまま倒れた。

144従者の心主知らず ナイト 8/16:2016/04/24(日) 23:35:18 ID:qzWYjsm6
「ナイト…」

エルフさんはいっしょに倒れたまま騎士の頭をそっとなでる。もどかしくなるような優しい笑顔で。
クリフトは背中を向けたまま動かない。動かない…。

「クリフトぉ…っ」
「…………」

返事もしない。クリフト…っ。

「っ…死んじゃったの…っ?」

クリフトは答えない。少しだけのぞきこんだらすごく真剣な顔してた。クリフト…っ。

「いえ、眠ったみたいです」

横になったままのエルフさんが笑って私に声をかけてくれた。眠った…?

「ありがとうございます、神官さん」

私は恐る恐る近づいて騎士の顔をのぞいてみた。
ほんとだ。息してる。クリフトの魔法が効いたんだ。死んだんじゃない。生きてる。ちゃんと生きてる。
助かったんだ…!

「よかった…っ」

私はへなへなとその場に座り込んでしまった。何だか力が抜けてしまって。
クリフトはエルフさんに頭を下げると私を通りすぎて後ろに走ってった。その先にいたのは竜。

「あ…」

クリフトは再びささやき始める。竜に向かって。私が思いっきりキックしてやっつけた竜……。
私はもう立てなくなっていてクリフトの後ろ姿をずっと見てた。泣き止んだつもりだったのにまた涙があふれる。
クリフト…っ。
しばらくして竜を一匹抱えたクリフトがこっちにやってきた。でも私は怖くてクリフトの顔を見られなかった。

「さすがは姫さまですね。いついかなるときもみね打ちのキックですまされるその慈悲深きお心」

145従者の心主知らず ナイト 9/16:2016/04/24(日) 23:40:04 ID:qzWYjsm6
さっきまで真剣な顔して返事もしてくれなかったクリフトがやっと声をかけてくれた。いつもの声……。
恐る恐る顔を上げるとクリフトはいつもの笑顔だった。いつもの……。

「竜も、大丈夫なの…?」
「はい。二匹とも命に別状はありません」

クリフト…っ!

「よかった……よかったぁ…っっ」
「はい」

みね打ちのキック……ううん、違う。私は本気で戦った。必殺のキックだった。それなのに、クリフト……。

――優しいクリフト……――

ソロが一歩前に出た。

「すまなかった……」

ソロが頭を下げてる。さっきのクリフトみたいに床にひざをついて。ソロまで…。
その後ろにいたじいまで頭を下げてた。あわてて私も頭を下げる。

「俺たちは戦いに来たんじゃないんだ。どうか、信じてほしい…」
「え?いじめにきたんじゃないの?」

エルフさんと騎士のそばで身構えてたスライムがほっとしたようにとろけて伸びた。
エルフさんもさっきのきっとした顔じゃなくて優しい笑顔でうなずいてくれた。

「傷を負わせておいてこんなこと言える立場じゃないが、どうかその男を休ませたい。どこかないだろうか…」

ソロが少しだけ顔を上げて弱々しげに聞いた。ソロ…。

「……どうしましょう。この塔のどこにナイトの部屋があるのかわかりません。……あ。ああ、いえ、大丈夫です。
この先にもベッドがあるのでそこで休ませましょう。敷布もありますのでコンドルたちも休ませられると思います。
ですが、あの……」

エルフさんは少しだけ騎士を見て、またソロを見た。

「私は力がなくて、彼らを支えることができません。どうか連れてきていただけませんか?」

146従者の心主知らず ナイト 10/16:2016/04/24(日) 23:44:56 ID:qzWYjsm6
ソロが当たり前だって言って騎士を抱えた。じいも手伝ってよろいやこてを外して手当てを始める。
よろいとその下に着てるえんじ色の服を脱がせたら騎士の体は血まみれだった。
じいが魔法で氷水を作り出して洗い流す。胸からおなかまで縦につらぬき裂かれたあと……肌は焼け焦げてて……。
私は思わず目をそらした。
エルフさんの案内で私たちは奥のお部屋に通された。騎士を抱えるソロにコンドルと呼ばれた竜を抱えるクリフトが続く。
私はあわててもう一匹のコンドルを抱えてクリフトの後に続いた。

「申し訳ありません、姫さま」
「ううん…」

クリフトが声をかけてくれたけど私は返事だけして黙っちゃった。
ぐったりして動かないコンドル。とっても重い。いつもだったらぜんぜん気にしないのに、今は胸がずきってしたの。


「ん…う……ザリー…さ……」

騎士が力なく手を伸ばす。宙ぶらりんの手。もう意識はないはずなのに、まだ守ろうとしてるんだ…。
エルフさんはそっと手をとった。

「ナイト、大丈夫です。私はここにいますよ。大丈夫ですから、どうかゆっくり休んで」
「っ……」

エルフさんは騎士の手をとったままこっちに向き直った。

「ありがとうございます、皆さん。……皆さんこそ、おけがは大丈夫ですか…?」

スライムがはっとしたようにクリフトの周りで震え始めた。

「ぷるぷるっ!ごめん。ごめんね…。痛い…?」
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。あなたにけががなくてよかったです」
「うぅ…」

クリフトが腕にもう片方の手をかざして何かささやいた。聞こえたのはホイミ。腕にできていた傷がいっしゅんで治った。

「すごーい。すごーい。ぷるぷるっ!」

スライムに笑顔を向けたあと、クリフトは私に向き直って頭を下げた。

「姫さま、治療が遅くなり申し訳ありませんでした」
「ううん、いいのよクリフト。ありがとう…」
「姫さま…」

147従者の心主知らず ナイト 11/16:2016/04/24(日) 23:49:12 ID:qzWYjsm6
思わずお礼を言っちゃった。でも今はほんとにそんな気分だったの。コンドルたちも敷布でゆったり眠ってる。
騎士もコンドルも助かったのは、クリフトがすぐ動いてくれたから。スライムに攻撃されても頭を下げてくれたから……。

――ありがとう…――

クリフトが私にベホイミをかけてくれた。さっきの戦いでの疲れやぬぐい切れてなかった痛みがすっかりなくなった。
ソロもじいも手当てをすませて私たちもやっと落ち着く。
エルフさんにも着替えをするよう言ったらその間騎士の手を握っててほしいって言われて私が握ってあげた。
騎士の手はすっごく震えてた。まるで何かにおびえるみたいに…。力は弱いけどいっしょうけんめい握り返そうとしてるのがわかる。
何をそんなにおびえてるんだろう……。おふとんはしっかりかけてるから寒くはないはず。
私は騎士の手を両手でぎゅってしてエルフさんは大丈夫だよって声をかけたけど騎士の震えは止まらなかった。
エルフさんがありがとうございますって言って戻ってくる。もう一度交代してエルフさんも騎士の手を両手でぎゅってした。

「あなたたちは、やはり人間ですね。けれど……不思議。あなたたちは他の人間とちがってすんだ目をしています……」

エルフさんは私たちひとりひとりを見た。

「何より彼らを救ってくださった……」

エルフさんはいったん視線を騎士に移したけどもう一度私たちをまっすぐ見つめた。

――あなたたちを信じてみましょう――

「私の名はロザリー。どうか話を聞いてください」

世界が魔物たちによって滅ぼされようとしていること。もうそのときはすでに始まっているんですって。
魔物たちをたばねる者の名はピサロ。今はデスピサロと名のり進化の秘法でさらに恐ろしい存在になろうとしていること。
ロザリーはお話ししていった。デスピサロ……。

「お願いです!ピサロさまの……いいえデスピサロの野望を打ちくだいてください!わたしはあの方にこれ以上罪を重ねさせたくないのです……。
たとえそれが……」

――あの人の命をうばうことになろうとも……――

「どうか、どうかお願いします…っ」
「…………」

頭を下げるロザリーの瞳からルビーがこぼれおちた。腕に当たってベッドの下に落ちる。これがみんなの言ってたルビーの涙なのね……。
ソロが落ちたルビーをそっと拾った。でもルビーの涙はソロの手にのったとたんに砕け散った。とけるみたいに消えてなくなる……。

148従者の心主知らず ナイト 12/16:2016/04/24(日) 23:54:17 ID:qzWYjsm6
「…………」

ソロは何にも言わない。クリフトも、じいも……。私もかけられる言葉が浮かばなくて、ずっとだまってた。

「うっうっ……」

ロザリーはずっと泣いてる。いっしょうけんめい声を殺してるけど、すっごく泣いてる……。なんで……。
デスピサロが罪を犯すから?デスピサロを止めるには、殺さなくちゃいけないかもしれないから?

――本当は、死んでほしくないから…?――

「ロザリーってとてもかわいそうな人ね」
「むずかしいものですな。愛し合えばこそそこに悲しみも芽生える……」
「愛…?」

デスピサロとロザリーは愛し合ってるの…?なんで……。そんなの……。そんなこと言われたって……。

「……ごほっ。これはわしにはすこし似合わぬセリフでしたかな」

じいが口をにごした。

「世界が魔物たちに滅ぼされるとはにわかには信じがたい話ですが……今の話がうそだとは私にはどうしても思えません。
戦うしか、手はなかったのでしょうか……」

クリフトがつぶやいた。ひとり言みたいに……。
でも私はクリフトの最後の言葉がよくわからなかった。戦うしか手はなかったのかって、それはだれに対して言ってるの…?

「…………わかった」

ソロがロザリーを見つめたまま小さく、でもはっきり言った。

「デスピサロは、必ず止める」
「………………」

――できる限り、戦わずにすむ方法で……――

ロザリーはソロを見た。驚いた顔をしてたけど、両手で口もとを押さえて、また瞳に涙をあふれさせ、頭を下げて言ったの。

149従者の心主知らず ナイト 13/16:2016/04/24(日) 23:58:56 ID:qzWYjsm6
――ありがとうございます…っ――

その声は震えながらも少しだけ嬉しそうに聞こえた。


「う……っ…」
「ナイト、大丈夫ですよ。大丈夫……」
「っ……」

騎士はロザリーにしがみついた。両手で服をつかんでぎゅってする。ロザリーが手を離したから不安になったのかな。
ロザリーはベッドに座って騎士をひざまくらした。泣き顔を無理に笑ってみせる。
騎士は両腕をロザリーの腰に回して抱きついた。まるで子どもがお母さまに甘えてるみたい。
ロザリーも両手で騎士の頭や肩をそっと包み込む。そのままなでてあげたらやっと安心したみたい、騎士は静かになった。
私はなぜか気になって、騎士のことを聞いてみたの。

「この人、ナイトってお名前なのね」
「……それが、わからないのです……」
「わからない?」
「ナイトは自分のことをピサロナイトだと言うのでナイトと呼んでいるのですが、私はそれは名前ではなくて役職だと思うのです。
でもナイトはそれ以外の名前を教えてくれませんし、ピサロさまに聞いてもそれが名前だとおっしゃるので……。でも、私……」
「……じゃあ、この人のほんとのお名前はわからないのね」
「……ええ……」
「アドンて言ってたぜ」
「え?」

荷物をまとめてたソロが返事した。

「さっき戦ったとき、自分のことアドンって名乗ってた」
「アドン?」
「ああ…」

ロザリーは嬉しそうな顔をして騎士を見つめた。

「アドン…」

騎士の頭や肩を優しくなでる。騎士は静かに寝てる。気持ちよさそう。ロザリーのひざまくらにすっかり安心したみたい。
アドン……どうして今まで名乗らなかったんだろう……。どうしてソロには名乗ったんだろう……。やっぱり耳がとがってる。

150従者の心主知らず ナイト 14/16:2016/04/25(月) 00:03:03 ID:haR8raCM
「この人も、エルフなの…?」
「いえ、この方はピサロさまと同じ魔族の方です」
「この人魔族なの…?」
「ええ…」

魔族……魔物……?私の大ッキライな……。

――ロザリー様を連れて逃げろ!――

あのときの声がずっと頭に響いてる。何度も何度も動かないコンドルに呼びかけてた。
自分も動けない体で必死にロザリーをかばって……。

――いやだ…っいやだあああっ…!!!――

さっきの光景を思い出して私はまた胸がずきってした。
この人はいっしょうけんめいロザリーを守ろうとしてたんだ。ただ守ろうとしただけだったんだ…。

「アドンはずっと素顔を見せてくれなかったのです。
コンドルを呼ぶときやお茶を飲むときに少しだけ口もとは見せてくれるのですが。
こんなかたちでアドンの素顔を見ることができるなんて」

ロザリーはおふとんをかけ直し、アドンの頭を優しくなで続ける。

「アドン…」

――私がここに来るずっとずっと前から私を守ってくれていた人……――

「こういうのをけがの功名っていうのかしら」

ロザリーは私に茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。
自分を守ってくれてた人が私たちのせいでこんなひどい目にあったのに、私たちを一言も責めない…。
本当に、私たちを信じてくれたんだ。

「名前も知ることができましたし、本当にありがとうございます」

すごい人だな…。

「ロザリー」
「なんでしょうか?」
「その……ごめんなさい……」

151従者の心主知らず ナイト 15/16:2016/04/25(月) 00:07:07 ID:haR8raCM
ロザリーは笑顔で小さく首を振った。

「あなたたちのおかげで誰も命を落とさずにすんだのです。本当にありがとうございます。
こちらこそ、お客さまにお茶をお出しするどころかおけがをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
「ぷるぷるっ!ごめんなさい!」
「ん……」

何だか安心する人だなー。

そのあとも私はロザリーといっぱいお話をした。デスピサロのこと、アドンのこと、ロザリーのこと、私たちのこと。
となりに座らせてもらったからお話の合間にアドンの頭をなでたりとがった耳をつっついてみたり。
ソロが買い出しに行ってくるからその間ゆっくり話せよって言ってくれて、じいといっしょにお部屋を出てった。
クリフトはアドンやコンドルの様子を見たり私たちのお話にはんぶん加わったり。スライムも寄ってきてみんなでお話しした。
お城のみんながいなくなったことも話してみたけどロザリーは何にも知らなかったみたい。


デスピサロがみんなをさらったのかどうかもまだわかんないのにロザリーは何度も何度も泣きながら謝ってくれた。
ルビーの涙がアドンの頭に落ちる。でもルビーは砕けなくて、ロザリーがごめんなさいって言いながら取りのぞいた。
魔族はさわってもこわれないんだ…。
泣き続けるロザリーに私はあなたが悪いわけじゃないんだし大丈夫だよって言って笑顔で返した。
デスピサロの名前だけを頼りにばくぜんと続けてきたこの旅が、やっとここで目的地に近づいたような気がしたの。
ソロとじいが戻ってきた。ソロはすっごく落ち込んでるように見えた。じいと何を話してたんだろう……。

「私はここに残ります。まだ彼らの傷も癒しきれていませんし、今何者かに襲われたら一たまりもありませんから」

クリフト…。

「姫さま…。こんなことを申し上げられる立場ではないのですが、その、もしできましたら……その……」

そこまで言ってクリフトはまごまごした。でも私はクリフトの言いたいことが何となくわかったような気がするの。

「どうか……ご一緒に……」
「うん。クリフトが残るんなら私も残る」
「姫さま…」
「アドンにもお城のみんなのこと聞いてみたいし」

私はすぐ返事ができた。何となく思ってたことといっしょだったから。クリフトったら別にまごまごすることないのに。

「ふむ…。いたしかたあるまいな」

152従者の心主知らず ナイト 16/16:2016/04/25(月) 00:11:39 ID:haR8raCM
じいもうなずいてくれた。ソロも小さくうなずいた。

「いえ、どうか行って下さい。サントハイムの皆さまのことは、私からアドンに聞いておきます。
ピサロさまの配下にはアドンと同じか、それ以上に強い方々がたくさんいるのです。どうか万全の態勢でのぞんでください。
私は大丈夫です。アドンの手当ても私がしますから。どうか、ご無事で、またここにお立ち寄りください」
「ロザリー…」
「ぷるぷるっ!ロザリーちゃんはぼくが守るよ!」
「ふふ、ありがとう。スラちゃん」

スライムに笑顔を向けた後、ロザリーは私たちをまっすぐ見つめた。

「どうか、行ってください…」

優しい目をしてるのに、まるで戦いに行くときみたいな決意をした目に見えた。

「……すまない……」

ソロが再び頭を下げる。クリフトとじいも……。

「ロザリー……ありがとう……」

私たちはロザリーの言葉に甘えて少しでも早くデスピサロに会うことに決めた。

「ねえねえ。いいこと教えてあげる。エンドールの南西の岬の王家の墓にはへんげの杖があるらしいよ。
その杖を使えば魔物たちのお城にも入りこめるんじゃないかなあ」
「へんげの杖?」
「うん。いろんな生きものに変身できるんだよっ」

スライムの突然の助け舟に私はなぜか言葉がつまった。

「……あんたは私たちとデスピサロ、どっちの味方なの?」
「?ピサロさまにもロザリーちゃんにも幸せになってほしいよ?」

「スライムってどこにいるのも変に事情通ね」
「エンドールの南西の岬……。そこはたしかにサントハイムの王家の墓がある場所です。
そのスライムの話は信じるに値すると考えてもよいでしょう」
「ふむ。わがサントハイムの王家の墓に財宝があるというのはたしかな話ですぞ。
しかし……あのスライムなにゆえそのことを知っていたのですかな……」

私たちはひとまずスライムの言うままにエンドールの南西の岬、サントハイム王家の墓を目指すことにした。

153従者:2016/04/25(月) 00:19:12 ID:haR8raCM
短編集「知られざる伝説」より、ピサロナイトの名前はアドンでピサロとは旧友であり直属の騎士、
一度ロザリーを人間から救ったことがありその際に一目惚れするも
ピサロに想い人の護衛を頼まれた際その相手が当のロザリーだったことを知り、
顔と名を隠しピサロナイトとして二人に尽力することを決意、
という設定を入れています。戦闘に関しては小説版の流れも取り入れさせていただきました。
本編ではピサロナイトはこの戦闘で死んでいます。けっこうあっさりです。
ただ、ロザリーから依頼を受けるこのイベントは任意という点と
このイベントで倒さなかった場合その後死んだのかどうかが確定できない点
(特にDS版はロザリーがさらわれた後もしばらくはロザリーヒルにいるためますます確定できなくなっています)、
何よりピサロナイト関連でクリアリを思いついたものでして、
この従者シリーズではイベントをこなしつつもピサロナイトを倒さない、というクリアリルートでお届けしていきたく……
本編には直接影響しない範囲ですのでどうかお付き合いいただけると嬉しいです。

それからコナンベリーへ向かう途中の砂漠から教会での蘇生を扱ったクリアリ(ざっくりとは文章化済み)と
バルザックとマーニャミネアを絡めてのクリアリ(まだ構想のみ)は後ほど投下……できたらいいなあ。
この度は長文にお付き合いいただきありがとうございました。

154名無しさん:2016/04/25(月) 00:56:52 ID:FgPX6Cx6
>>135-136
スレ立ての話が必要ならまた誰かが話すのだから遮っても問題なしですよぅ
従者さんは対話スタイルが同人サイト寄りっぽいので2chよりこちらの方が快適に書けそうな気が
2chでそういう密な対話を気に入らないとか言う人が現れて変な感じになったこともありますし

ともあれ長編乙でございます
こういう作品はwikiでしか読めなかっただけに懐かしさがこみ上げてきますよぅ
現役のスレでこんな作品を読める日が来るとは誰が想像したでしょうか

前から続いてきて先にも続く流れですね
まさしく一連の長編の1シーンといった感じで全体の流れを想像させてくれます
順番通りにフルで書いてたらすごいボリュームになることでしょう
所々切り出して発表してあとは想像で補わせるスタイルはベストな選択に違いありません

ピサロナイト存命という暖かい展開に暖かさが垣間見えて安心感があります
場の空気を行間からにじませながらテンポを崩さず進行する安定感が心地良いです
続編でも別の作品でも、今後の作品に期待が膨らんでしまうというものです
スレから目が離せなくなってしまいましたよぅ

155名無しさん:2016/04/27(水) 02:46:28 ID:R1Yzbmf6
2chは集客力があるのかも知れない。
でも心地良い場所でなければ人は離れていくよね。
書き手を叩き、子供が暴れ、火を注ぐ人までいたら無理。
だから2chでは失敗続きで、人が離れてしまったね。

対するしたらば。
集客力の低さは否めない。
平和だから離れる人は少ないんだろう。
でもあまり増えもしない。
加えて、書き手がいなかった。
書き手が離れてから立った避難所だからね。

そんな中で従者さんに絶大な乙。

書き手がいればスレに魅力が加わるよね。
wikiが更新されればwikiの集客力も上がるはず。
これをきっかけにして人が増えたらいいな。

156従者:2016/04/27(水) 03:22:08 ID:Zdi4sfmE
>>154
対話スタイルも切り出しての発表も力量的気力的に精一杯だからなのですがプラスにとらえていただき恐縮です。
同人サイト寄りとは前にも言われたような気が……もしや154さんは5年前当時もそのように教えてくださった方でしょうか。
お心遣いありがとうございます。本当に居場所があるだけで感謝ですのでご提供いただいたスレと皆さんについていきます。

感想もありがとうございます。さえずりの塔編もそうですが本編に直接影響しない範囲ではけっこう好き勝手やっています。
本編をもとにはしていますがかといって何もかもただ忠実になぞるだけでは物足りなすですよ。
クリアリにつながるならたとえピサロナイトだろうとピサロだろうとエビルプリーストだろうとエスタークだろうと
利用させていただく次第です。そそそその分礼儀は尽くしますとも!
書き込みの度に投下できるわけではないのですが遠く空けすぎることだけはないようにしますのでよろしくお願いします。


お恥ずかしながらヒーローズ関連の知識が浅く情報収集中です。(いただきストリートとDS版もです;)
既出ですがギガンテスを前にした二人のやりとりがぐっときますね。相変わらずのお二人にほっとします。

クリフト「ひ、姫さま、またそんな無茶を!相手はギガンテスですよ!?」
アリーナ「ただでっかいだけじゃない!それともクリフトは私があれにやられちゃうくらい弱いって言いたいの?」
クリフト「そ、そういう事ではありません。姫さまのお力は重々承知しております。おりますが、しかし…」

157名無しさん:2016/04/27(水) 09:04:56 ID:P0etH8SM
従者さん長編乙です

いたストは、最初のSPはアリーナが「クリフトなんか最初から相手にしてないのよね〜(笑顔)」とか、ひどかった記憶が
その次のポータブルなんか、クリフトがいないところで堂々とバカにしながら男プレイヤーをちやほやしてて、最悪でした
DSは前2作とは別人か?ってくらいに微笑ましくて、おすすめできます。メダパニにかかったアリーナがかわいい

ヒーローズはムービーシーンはもちろん、戦闘ステージ中の細かい会話なんかも楽しめるので、実際にプレイしてほしい所ですね
個人的に、ムービーでクリフトがアクトに高所恐怖症の克服法として「好きな女の子と手をつないで幸せな気分で行けば…」と言われた後
世界樹ステージ中にアリーナが突然「一緒に世界樹でバンジーやろう」ってクリフトを誘い始めるのが、深読みできて萌えたなあ

158従者:2016/04/28(木) 09:04:13 ID:n/DILxyc
今さらながらふと思ったのですが、wiki管さんがお任せくださいといってくださったのは
もしや投下順ではなく時系列順に保管してくださるという意味だったのでしょうか。

>>157
貴重な情報をありがとうございます。
クリフトを堂々バカにしながら男プレイヤーをちやほや……ちょっとすぐイメージできないすね;
DS版はPS版とさほど変わりないと思っていたらとんでもないことに気がつきまして。
メダパニにかかったアリーナ……どんななのでしょうか。FC版のアリーナしか知らんですよ。

アリーナ「えーん!おうちに帰りたーい!」

ヒーローズは確かに奥が深そうですね。バンジーてwあの世界観でやるバンジーてどんなw
新規キャラクターとの掛け合いがあるのでは4に取り入れるの難しそうですが
手をつなぐのなどさえずりの塔でさっそくやっちまってますし
またおもしろい情報が入り次第それとなく取り入れてみますね。本当にありがとうございました!

159従者:2016/04/28(木) 09:12:17 ID:n/DILxyc
PS版をもとにはしていますがイラストはFC版の目がくりくりしたアリーナと肩幅の広いクリフトが好きです。
(実はこの従者シリーズもそちらのイメージで描いています)
PS版から入られた方はイメージが違うかと思いますがFC版イラストに当てはめてみてもおもしろいと思いますよ。

先日いつまた書けなくなるかわからないと書いてしまいましたが次書けるのがいつになるかと書いたほうが
聞こえ的によかったですね。たとえおなじ意味だったとしても言い方大事。
教会の夜とピサロナイトでクリアリの続き、今しばらくお時間いただきそうなのでつなぎで恐縮ですが小ネタをどうぞ。
長編も書くようになった私ですが本当は1、2カキコで終わるような単純な話が好きです。

160従者の心主知らず:2016/04/28(木) 09:17:05 ID:n/DILxyc
「ねえクリフトー」
「はい姫さま」
「クリフトってぼうしを外すとふんいき変わるわよね」
「え?」

私は砂漠のバザーに行った夜にクリフトと外でお話しした日のことを思い出して言った。

「こないだの砂漠の夜では男の子の秘密が聞けて楽しかったわ。
クリフトはいっつも難しいことばっか言うと思ってたから、さいしょなに言ってるのかわからなかったもの」
「ひ、姫さま…」
「ねえねえ、また外してみて」
「な、なにをおっしゃるのですかっ」
「えー」

クリフトは私から目をそらした。

「この神官帽は私が私であるための象徴です。言わば私の最後の砦なのです。
これを外されてしまったら私はまた、何を口走るか…」
「砦ってなによ。じゃあじゃあ、そこを攻めおとせばクリフトに勝てるのね?クリフトしゃがんでしゃがんで」
「そ、そんな、姫さま…っ」
「ねえしゃがんでよー」
「姫さまおやめくださいっ」
「ちょっとー」
「お願いですっ」

必死にていこうするクリフト。私はぼうしに手を伸ばすんだけどクリフトは背が高いからなかなか届かない。

「あーもうじれったいわね。えいっ」
「ああっ」

私はクリフトを押したおしてぼうしをひったくった。

「あ、あなたがそんなだからわたしがおかしくなるのですっっ」

161名無しさん:2016/04/29(金) 23:13:28 ID:lfXFZJaA
乙です
漢字で書くところを所々ひらがなで書くのが意味深ですね

162従者:2016/04/30(土) 11:24:41 ID:gxwZAjnU
5年がかりのあの教会の夜の続き、やっと仕上がりました。皆さんに心から感謝です。
初めてご覧になる方もいるかと思いますので簡単にあらすじとご説明を。

私はPS版のセリフをなぞったSS(続き物)を書く者です。(合間になぞらないSSを書くときもあります)
王の病気をさえずりの蜜で治しこれからエンドールの武術大会へ向かうという前夜、
お城の教会に泊まりクリフトや神父といろいろな話をして眠りについたという場面から始まります。
前の内容を知っていなければ読み込めないという話にはならぬようなるべく気をつけますが、
wiki管理者さんが>>1のサイトにて保管してくれていますのでもし読んでいただけたら嬉しいです。

では今回はセリフをなぞらないSSアリーナ視点(一部第三者視点)、「旅立ち」10シーク分投下します。
予告するほどご期待に添える仕上がりになったかは不明ですが、どうぞご覧ください。

163旅立ち 1/10:2016/04/30(土) 11:28:53 ID:gxwZAjnU
――また姫さまと旅ができるだなんて……――
――このクリフト、世界中どこへなりとお供をさせていただきます!――
――嬉しいんです。とても嬉しいんです…!姫さまとこんなに近くにいられることが、私には…っ!――

――クリフトも……いつでも姫さまのお側にいることを望んでいた――
――クリフトを選んでくださったということ、クリフトと過ごしてくださった……――
――クリフトもいずれは……いえ、もうすでに……――

クリフトと神父さまの言葉がやけに耳に残ってる。ふたりとも、あれは本気で言ってたのよね。
きっと本気で言ってた……。

クリフトは私のそばにいることを本気で望んでたんだ。でも、どうして?どうしてそこまで?
わかんない。そんなふうに思われる私ってなんなんだろう。わかんない。
ちょっとだけこわい…。
だって、私がクリフトのそばにいたいなんて思ったことあったかな。
……ああ、そうか。
ひとりで旅に出るのは寂しいからクリフトを連れていきたいって思ったことはあったわ。
もしかしたらクリフトも、ひとりが寂しいから私といっしょに旅に出たかったのかなあ。

「姫さま、神父様、朝ですよ」
「んー」
「姫さま」

クリフトの声がする。うっすら目を開けてみるとすぐ目の前に神父さまがおふとんを頭までかぶってた。
その向こうにクリフトが立ってるのが見える。

「んークリフトおはよー」
「おはようございます、姫さま」
「神父さまー朝だってー」
「あと5分、いえ、3分、時間をください」
「えー」
「朝の二度寝とまどろみは最高だと思いませんか?」
「思うー」
「神父様!」

「朝ですねー。起きますかー」
「ふぁーい」

寝ぼけ顔をこすりながら私は大きく伸びをした。夢を見てた気がするんだけどなんだか思い出せない。

164旅立ち 2/10:2016/04/30(土) 11:32:41 ID:gxwZAjnU
「おはようクリフト。あなたはいつも早起きですね」
「おはようございます神父様、いえそんな」
「姫さまも、おはようございます。夕べはよく眠れましたか?」
「おはようございますー。んー眠れたー」
「それはよかった」
「あ、神父さま寝ぐせー」
「え、どこですか?」
「ここー」
「ああ、本当ですね。恥ずかしいです見ないでください」
「ふふ」
「姫さま。姫さまも、髪が少々乱れておりますよ」
「え、うそっ」

クリフトに言われてあわてて髪をととのえた。ちょっと、少々どころじゃないわ、爆発してるじゃない。

「やだもうー」

昨日ナイトキャップはお部屋に置いてきちゃったの。旅の間はしなかったからもうないのに慣れちゃってて……。

「クリフト、そこのニ段目の引き出しに使っていないブラシがあります。姫さまの髪をといてさしあげなさい」
「わ、私がですか?」
「クリフトといてー」
「そ…っ」

なんとなくつられて言っちゃったけど、クリフトに髪をといてもらうのなんて初めてだわ。
お城にいた時はいっつも侍女にといてもらってたの。お母さまがいた時はお母さまもといてきれいに結ってくれた。
でも旅に出てからは自分でとくことを覚えた。髪もお着替えも、ご飯もお洗たくも、ほんとはぜんぶ自分でやるものなのね。
旅に出て本当にいろんなことを覚えたわ。今までどれだけみんなに甘えてたのかってことも。
でも、今だけは甘えちゃってもいいわよね。これからまたすぐ旅人に戻るんだし。神父さまとクリフトだし。

「で、では姫さま、失礼いたします……」
「うん」

クリフトがブラシを持ってきたから私は反対側を向いた。
神父さまはお着替えをしてるみたい。シャラって金属の音が聞こえるのはロザリオかな。
クリフトもそうだけど、ロザリオってジャマにならないのかな。
パンチをするたびに揺れるだろうしキックをしたら外れるかよけいにからまるかしそう。
そんなことを考えてたらブラシがゆっくり髪にとおった。あ、引っかかった。
クリフトは何回か引っぱってるみたいなんだけどぜんぜんとけない。私の髪、ずいぶんからまっちゃってるみたい。
そしたらクリフトは止まっちゃって。しかもブラシを外しちゃった。さらにおんなじことをもういちど繰り返し。

165旅立ち 3/10:2016/04/30(土) 11:36:32 ID:gxwZAjnU
「ちょ、ちょっとクリフト、そんなやり方じゃぜんぜんとけないわよ。先のほうでかたまるだけじゃない」
「も、申し訳ありませ……姫さま、痛くはありませんでしたか?」
「っもう、クリフトったらまどろっこしいわね。こうやるのよ」

私は左手で髪のつけ根あたりを束にしてつかんで、右手でブラシをクリフトの手ごとつかんで何回かしっかりとおした。
からまった髪がやっとほどけてきれいにとけた。

「ひ、ひめさ…っ」
「そのまんま引っぱると痛いから、こうやって髪を押さえてブラシをとおすの。わかった?」
「…は、はい…」

クリフトは今度は覚えたみたいでちゃんとといてる。でもまだなーんか動きがのそのそしててまどろっこしい。
いつもはなんでもてきぱきやるくせに。髪をつかむ時なんかあんまりゆっくりやるからくすぐったくてむずむずしちゃった。

「…ねえ。クリフトってもしかして、不器用なの?」
「っ…女性の、それも姫さまの髪をとくなどまったくもって想定外です。触れるなどとんでもないことですっ」
「そんなにおこらなくたっていいじゃない」
「い、いえ別に怒っているわけでは…っ」
「おこってるじゃない」

神父さまがくすくす笑ってる。

「神父さまーどうして笑ってるの?」
「いえいえ、これは失礼。それにしても、おふたりは本当に仲良しですね」
「え?」
「そ…」
「な、仲良くなんかないわよっ」
「おや、そうですか?」
「そう!」
「……」
「あ……」

思わず叫んじゃったけど、クリフトがなんにもしゃべらないのが気になってきちゃった。手はゆっくり動いてるけど……。
うう、なんだか振り返れない。でもどんな顔してるかわからないのもこわい。どうしよう。

「あ、そうだクリフト。聞きたいことがたくさんあるのよ!」

166旅立ち 4/10:2016/04/30(土) 11:40:29 ID:gxwZAjnU
そういえば思い出した。
昨日クリフトに聞くことがたくさん出てきて頭の中で整理したんだわ。
でも、なんだったっけ。

「ちょっと待ってね。今思い出すから」

そう、聞きたいことが3つあったのよ。数だけは覚えてるんだけど……かんじんの内容が出てこない。

「ええと、なんだったっけ。えーと……」

いっしょうけんめい思い出してるんだけどどうしてこう思い出したいときに思い出せないのかしら。あーもう!
そしたら後ろでクリフトが笑ったような気がしたの。え、笑った?怒ってない?気まずくなってない?

「…クリフトー」
「はい、姫さま」

あ、普通に返事してくれた。よかったー。ってなんでクリフトが普通に返事するとほっとするのよ。

「あ!思い出した!」

さっきまでぜんぜん思い出せなかったのにほっとしたらなんでか一気に思い出した。

「あのねクリフト、昨日は私、途中で寝ちゃったの。だからクリフトとなに話したか覚えてないの。
それを教えてちょうだい」
「…………」
「それとそれと、どうして私のそばにいたいのかと、あと、どうして最初はいやがってたのかも教えてほしいの」
「…………」
「そうよ。前にもおんなじようなこと聞いた時あったわ。だから今度はちゃんと答えて」
「………………」

クリフトまた黙っちゃった。手も止まってるし。神父さまも黙ってる。しーん。うう、どうしよう。
でも私はクリフトがなにか言ってくれるまでじっと待った。そしたらクリフトがやっと口を開いたの。

「ひ、姫さま……」
「う、うん……」

167旅立ち 5/10:2016/04/30(土) 11:44:44 ID:gxwZAjnU
なんだろう、自分から聞いておいてなんだかドキドキしてきたわ。
これで今までの長年の謎が解けるような気がするの。

「その……そのように一気にいろいろ聞かれましても、何からお話しすればよいか…」
「あ、そっか」

私、あせって一気にいろいろ聞きすぎたのね。

「じゃあじゃあ、どうして私のそばにいたいのかを教えてちょうだい。それがいちばん知りたいの」
「………………」

また黙っちゃった。私、言いにくいこと聞いちゃってるのかなあ。

「おふたりとも、大切なお話の途中で大変申し訳ないのですが……」
「え?」

ずっと黙ってた神父さまが話しかけてきた。お着替えはもうすんだみたい。

「姫さまはいったんお部屋に戻られたほうがいいでしょう。話は旅に出てからもできますから、今は…」
「あ、そっか」

私、昨日はこっそり教会に来たんだった。確かにいちどお部屋に戻って仕切りなおしたほうがいいかも。
せっかく聞いたことがおあずけになっちゃうのは悔しいけど、クリフトとはいつでもお話しできるものね。
そしたらクリフトが小さくため息をついたような気がしたの。ため息っていうか、ほっとしたような…?
私は思わず振り返ってクリフトに言った。

「ちょっとクリフト、今聞いたことちゃんと覚えておいてよね。あとでまた答えてもらうんだから」
「あ、はい姫さま!」

ちょっとびっくりして私を見るクリフト。いつものあわてクリフト。なんでだろう、やっぱりほっとしてしまう。

「髪、もういいわ。ありがと」

私は髪をまとめる振りして目をそらしちゃった。
クリフトの行動ひとつひとつにあせったりほっとしたりするのがなんだか悔しいの。
クリフトのくせに。私よりよわっちいくせに。

168旅立ち 6/10:2016/04/30(土) 11:48:16 ID:gxwZAjnU
「神父さまも、泊めてくれてありがとうございます。お着替えをしたらまた来るわ」
「そうですか。ええ、いくらでもいらしてください」
「クリフトはここにいる?」
「あ、いえ、私も外に行く用事がありますので途中までご一緒いたします」
「うん」
「あの、姫さま、このような大きな忘れ物をされては少し戸惑ってしまうのですが……」

あ、私のまくら!

「うーん、ここに置いてっていい?お城に帰ってきたらまたここに泊まりたいの」
「そんな……こまりましたね。お帰りを待つ間抱きまくらにしてしまいそうです」
「んーいいよー」
「…………」

「何かはなむけでもできればよいのですが、こんな色気のない部屋では……」
「えーいいよー」

神父さまはタンスを開けたり閉めたりなにかさがしてたみたいだけど小ビンを持ってきた。
見たことのある青く透きとおった小ビン。

「ふむ、こんなものしかありませんねえ。持ってきます?聖水。使いかけですけど」
「え、いいの?」
「ええ、いいですとも。来るべき姫さまの門出に使いかけの聖水ではまことに締まりませんが」
「ううん、神父さまありがとう!」

私は神父さまから聖水を受けとった。出かける前にまくと虫よけになるんですって。
ちっちゃいころお出かけするとき神父さまがまいててまき方がすごーくカッコよかったの。
さっそく使おうかしら。

「王に、あなたのお父上にごあいさつしてお出かけくださいね」
「えー?」
「どうかごあいさつを」
「えー」
「姫さま」
「うー。わかったわよ、あいさつね」

169旅立ち 7/10:2016/04/30(土) 11:52:36 ID:gxwZAjnU
私はまず神父さまにあいさつしてクリフトとしずーかに教会を出た。


アリーナたちが出ていったあと、普段の静けさを取り戻した居室で神父はふと呟いた。

「姫さま……。あなたが遺伝や親譲りに嫌悪を示すのは、
あなた自身が幼いころからそのことでつらい思いをされてきたからでしょうか……。
ですが、何も心配することはありませんよ。
何者にも立ち向かっていく力強さと、何者をも愛することのできる心優しさは、亡き王妃そっくりです。
クリフト……」

――姫さまを、どうかよろしくお願いしますよ――

神父はそう言うと少し目を伏せて小さく笑った。
彼女たちがその意味を知ることになるのはもう少し先の話。


「昨日は申し訳ありませんでした」
「え?」
「結局何を申し上げたかったのかはっきりしないままで……」

クリフトがうつむきながら小声でしゃべった。あれ、なんの話だっけ。

「えーと、なんだったっけ」
「…………」
「だ、だから昨日話したこと覚えてないんだって。なんのことで謝ってるの?」
「………………」

うう。
私ってなんでかんじんなこと覚えてないのかなあ。思い出すのだって頭の中でちゃんと整理したのに時間かかったし。
そしたらクリフトがすこしだけ笑ったの。あ、また笑った。
バカにした笑いじゃなくて、おかしい笑いでもなくて、なんだろう、ほっとするような笑い。ほんとになんなんだろう。

「では、改めて申し上げます」
「う、うん」

クリフトは立ち止まった。私をまっすぐ見つめる。

170旅立ち 8/10:2016/04/30(土) 11:56:32 ID:gxwZAjnU
「私は姫さまに、感謝しているということです」

え?

――もしあの日姫さまが城の外へ出なければ、私が外で出ることも、こうしていろいろ学ぶことも、
何より姫さまのおそばにいることはなかったでしょう――

「今まで気づけなかったことや知らなかったことがあまりに多く自分の不甲斐なさに落ち込む時もありますが、
それも含めいろいろ学ばせていただけるこの機会に、おそばにいられるこの時間に、心から感謝しているのです」
「…………」
「姫さま、本当にありがとうございます」
「………………」

「……もしかして、それが答えなの?」
「え?」
「さっきどうして私のそばにいたいのか聞いたじゃない。
それは、今まで気づけなかったことや学べることが、いっぱいあるから?」
「…………」

私はなんとなく思ったまんまに聞いてみた。そしたらクリフトはすこしだけ目をそらしたの。

「それもありますが、その……」
「うん…」
「それだけではありません」

…………。

「……じゃあ、なに?」
「それは……その……」

口ごもるクリフト。でも私はまくしたてないで次の言葉を待った。待ってればクリフトは必ず返事をくれるから。

「その…」
「うん…」
「…………」
「…………」
「………………」
「…………」

171旅立ち 9/10:2016/04/30(土) 12:00:32 ID:gxwZAjnU
「私にも、わからないのです…」
「わからない?」
「っ……」

クリフトはすこしとまどった様子を見せた。なんか、いっしょうけんめい言葉をさがしてますって感じ。

「なんと申し上げればいいのか……その……」
「…………」
「ありませんか?こう、理屈では説明できないようななにか、こう、感情的な心理が……」
「…………」
「と、ともかく私は、ひ、姫さまのおそばにいたいのですっ」

クリフトが早口で言いきった。ちょっと顔が赤くなってる。
まるで思いどおりにならなくて駄々をこねるような、子どもみたいなクリフト。余裕のないクリフト。
…………ぷっ。なんでか笑っちゃった。

「もうー、クリフトったらー」
「恥ずかしい…っ」

両手で顔を隠すクリフト。きっと今真っ赤なんじゃないかな。ふふ。

私がクリフトを連れていきたいって思ったのも別に難しい理由があるからじゃなくて、
ひとりで旅に出るのはなんだか寂しいと思ったから。やっぱりクリフトもひとりが寂しいからなのかな。
でも、私はクリフトを連れていきたい理由が寂しいからなんて悔しくてぜったい言わないって決めたから、
クリフトだってはっきり答えてくれなくても文句は言えないわ。
それになんだか嬉しいの。
だからここまで教えてくれたことに感謝して私はあとのふたつを聞くのはやめた。
クリフトが私のこと嫌いなわけじゃないのはとてもよく伝わってきたしなんだか聞かなくてもよくなっちゃった。

「ありがと」
「姫さま…?」
「言いにくいこと言ってくれてありがと」
「姫さま…」

私はクリフトににっこり笑ってみせた。これからもよろしくね、クリフト。

172旅立ち 10/10:2016/04/30(土) 12:07:01 ID:gxwZAjnU
クリフトといったん別れてお着替えをしてお部屋にいるお父さまにかんたんにあいさつをすませて。
じいがそばにいてなにか話してたみたい。あとで合流するから先に正門まで行っててくれって。
私は荷物をまとめて急いで教会へ。クリフトも荷物をまとめて待ってたみたいでまたいっしょになった。
神父さまに最後のあいさつをして教会を出る。やっと堂々と正門から旅に出られるんだわ!

「あっアリーナ姫さま!ごきげんうるわしゅう!城内異常ありません!」
「うん、おはよう」

兵士があいさつしてきた。昨日会った兵士のひとりだ。どうしよう、昨日のこと謝らなくっちゃ。

「ねえ。……あのね……」
「?…はっ!」
「昨日は、ごめんなさい……」
「?…え、あ、な、何を?ひ、姫さまそのようなっ…あ、頭をお上げください!いったいどうされましたっ?」
「ん…」

私は昨日会った兵士たちに昨日はひとりで寝たくなかったのって言ってみね打ちしちゃったことを謝った。
でもだれも私を責めなくて。
最初に私を見つけた兵士は「あれからお風邪は召されませんでしたか?」って私を心配してくれて。
私がいきなりキックしちゃった兵士は「姫さまがご無事で何よりです!」って叱りもしなかった。
最後に会った兵士はすこしだけ顔が赤くて「昨夜はご無礼をどうかお許しください」ってはんたいに謝っちゃって。
だれも私があのあとどこで寝たのかは聞かなかった。どうしてみんな……。

「それはひとえに姫さまのお人柄によるもの。誰もが皆姫さまを信頼し大切に思っているのですから」
「……そうなの?」
「はい」
「…………」

クリフトの言ったこと、よくわかんない。でも私は兵士たちみんなにお礼を言うのを忘れなかった。

正門でじいとも合流する。
「このブライめの目の黒いうちは姫さまにそうそうムチャはさせませんぞ!」ですって。
お父さまのお許しが出たからもう引き止めるのはやめてちがう作戦に出たみたい。やっぱりじいだなあ。
さあ、向かうはエンドール。今度帰ってくる時は武術大会に優勝した時よ!

173名無しさん:2016/05/02(月) 03:06:56 ID:WTLvu1kU
>>162-172
さらっと書いているように見せながら、心の流れを自然に中心に据えていくスタイルですね
それぞれの登場人物の人柄が見えるのは、書き手の中で全員が生きていて、全員の顔が見えているということなのでしょう
メインキャストから兵士に至るまで、書き手に愛されているんだなと思います
登場する人々を大切に思いながら描いていく優しさ、それは読んでいて心地良いです

前のストーリーを思い出しました
当時は「なんで神父さんが主役になってるんだろう?」と疑問に思ったものです
でも、神父さんも書き手に愛されていて、単なる端役と位置づけられていなかったのでしょうね
全員が等しく表情を持って生きていて、大切に扱われて描かれているのが分かります

あえて最後に言いましょう、乙です

174従者:2016/05/02(月) 12:47:41 ID:cIJ8yws6
>>173
乙ありがとうございます。あまりに冷静な分析力あなたいったい何者ですかw

>当時は「なんで神父さんが主役になってるんだろう?」と疑問に思ったものです
ああやはりそう思いましたよね。私も書いてて思いました。プラスに解釈いただき恐縮です。
実はあれはサントハイムでの失踪事件を背景にサランの神父を絡めたクリアリへとつながる伏線なんです。
ところどころ端折ったのですがそれでも長くて当時途方に暮れていました。

どうにもこの従者シリーズはクリアリを中心にストーリーが展開されるのではなく
一連のストーリーの中にクリアリが存在するというスタイルになっています。
クリアリパートを思いつく→そこに至るまでの準備パートを考える→前置きがやたら長くなってどこがメインかわからなくなる→これってクリアリなのか?→端折れず投下できず煮詰まって自信もなくなる→遠い年月→現在に至る
当時は時系列順に投下しなければという焦りもあったものでお手上げ状態でした。
今は開き直らせていただいたのでなんとか……

今投下中のピサロナイトでクリアリ、投下予定のサランの神父でクリアリでも端折りきれず
同じ疑問を持たせるかと思います。
クリアリが読みたいのにクリアリじゃないパートを読ませられるというのはまことに苦痛かと思いますが
(乙してくださる方にレスしたり個人的な好みをベラベラしゃべったりするのもマイナスだったかと感じております;)
人が集まってくるまでの間に合わせ程度になれたら嬉しいです。
(今後クリアリパートはどこという旨(7/12〜9/12など)を事前に抜き出してみます。少しでも読みやすくなれば幸い)

従者は前置きばかりでまどろっこしいから俺がクリアリ書いてやる、という方をぜひお待ちしております。

175従者の心主知らず 1/2:2016/05/02(月) 12:51:33 ID:cIJ8yws6
「お父さまのお許しも出て気分もスッキリ!さあ、はりきっていきましょう」
「侍女の入れたお茶をゆーっくりとすすってのんびりとしたかったのに。
読みかけの魔法書もたんまりたまっておったしああまったく。ぶつぶつ……」

ブライの独り言は相変わらずだから気にしない!

「エンドールでは何が私を待ってるのかしら?うふふっ楽しみね!」
「エンドールまで行けば気がすむか……いや すまない。姫さまはそんなに甘くない。
ぶつぶつ……これは王さまに特別年金をいただかねば。ぶつぶつ……」
「まずは武術大会に出て。それからエンドールのある大陸をずーっと冒険するのよ。
世界を一周してうーんと強くなって帰ったらお父さまびっくりするわ!」
「海の底でも地の果てでもどこへなりと行きましょうぞ。えーどこへでも!」

ブライがすっとんきょうな声をあげた。やっと諦めたみたい。

「うふふ。よろしくね、ブライ」
「まったく……」

私はクリフトを見た。クリフトは考えごとしてたのかな。前を向いたまま歩いてる。

「これから世界中ずっと姫さまといっしょに……」

クリフトが小声で話しはじめた。前を向いたままだからいつもの独り言ね。
私のことをいってる気がしたからいつもならなんの話?って聞くんだけど、私はいいこと考えたの。
もう無理に聞こうと思わないで今度はクリフトを観察することにしたの。
そうしたらどうして独り言を教えてくれないのか、どうして教えてくれなくなったのか、
前とはちがった答えが見つかるかもしれないって思ったから。さっそく観察よ!

「…………」
「…………っ…」

クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあと両手で顔を隠しちゃった。
なかなか手を離さないクリフト。私はずっとクリフトを見てた。

「はっ!」
「あ」

クリフト気づいちゃった。

176従者の心主知らず 2/2:2016/05/02(月) 12:57:41 ID:cIJ8yws6
「ひ、姫さま…」
「うん」
「い、いつから見ていらしたのですか…?」
「えーとね、クリフトが独り言をはじめたあたりから」
「…………あああ…」

クリフトはまた両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。

「ねえクリフト、どうしてそんなに顔が真っ赤なの?」
「そ、それは…っ」
「なに考えてたの?」
「そんなこと…っっ」

クリフトは顔を隠したまま答えない。むー。

「また難しいこと考えてたの?」
「………っ…」
「…………」
「た、たしかにこれから世界中を旅するにあたってのもろもろを考えてはいましたが…っ」
「ふーん。やっぱり難しいことなのね」

クリフトは顔を隠したまんま。こんなにいつまでも顔を隠してるの珍しいわ。
よっぽど熱が出るほど難しいことを考えてたのかしら。たしかに世界中ってうーんと広いものね。
クリフトがやっと落ち着いたみたいで手を離した。その手を胸に当てて私にからだを向ける。

「姫さま、その、申し訳ありませんでした」
「どうして謝るの?」
「いえ、その……会話が円滑に進められず、その……」
「いいわよそんなこと」
「………………」
「っもうー、クリフトったらー」

私はクリフトにいつものことじゃない気にしなくていいわよって言ってにっこり笑ってみせた。
クリフトはしばらくおどおどしてたけどやっと笑ってくれたの。いっしょに前を向いて歩く。

「エンドールとわが国は親しい間柄です。きっと歓迎してくれるでしょう」

クリフトがさらっと言ってのける。
私ではわからない難しいことを考えてくれるクリフト、本当はちょっとだけ頼りにしてるんだから。

177名無しさん:2016/05/02(月) 23:34:56 ID:WTLvu1kU
>>174
むしろ開き直って、端折らず素直に長編を書いた方が楽ではないですか?

クリアリ成分の少ない部分も多い長編でスレを独占するのは問題ですが、専用スレを用意してもらう道もあろうかと思います
冒頭から順に投稿しづらくても、最後に新規スレで手直ししながら順に再投稿できるならそれで解決という気がします
クリアリっぽい部分だけをピックアップして整えてメインスレに投下すればメインスレも潤います

読み応えのあるボリュームの長編があれば、wikiもここもバリエーションが広がって楽しみが増えるでしょう

178従者:2016/05/06(金) 22:18:12 ID:/f.Mh3yE
>>177
貴重なご提案を本当にありがとうございます。全力で考えてきました。

今どうすることが一番楽かといわれたら、今しばらくはこのままの投下を続けさせてもらえることでしょうか。
いかに端的な前置きで展開に破綻なくクリアリできるか、共感いただけるかに今はまだ力を入れてみたいのです。
何ぶん遠く空けてしまいましたので公式も様子が変わったでしょうしこのスレの需要もまだ把握できていません。
もとより次書けるのがいつになるかわからないなどと申している人間です。お心遣い痛み入ります……。

過去スレを改めて見直してきました。いろいろな苦悩があっての避難所とお察し申し上げます。
趣向の合わない作品はスルーということなので現時点ですら楽しく読んでいただけているかわかりませんが
あなた以外にも実は楽しみにしているよ、今回はスルーだけど次は期待しているよ、という方がいてくれると信じて
もう少しこのまま関わらせていただけると嬉しいです。ご提案は今後に備えありがたく控えておきます。

179従者:2016/05/06(金) 22:22:59 ID:/f.Mh3yE
今さらですが>>175‐176を一部訂正したいのです。やはり最初は両手ではなく片手で……
お手数ですが脳内補完をお願いします。失礼しました。

>>175
○ クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあとそのまま顔を隠しちゃった。
× クリフトは嬉しいみたいな切ないみたいな顔して手を胸に当てたあと両手で顔を隠しちゃった。

>>176
○ クリフトは今度は両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。
× クリフトはまた両手で顔を隠しちゃった。ちらっと見えた顔は真っ赤だった。

180名無しさん:2016/05/07(土) 02:56:42 ID:yTXuG.8M
>>178
人が多い時代の2chでも作品に反応する人はそう多くはなかったから、
過疎後に作られた避難所で反応があることが奇跡かと
同人サイトほど密に会話する場所でもないだろうし
過疎が続いてきたんだからめったに来ない人も多いはず

クリアリである限り需要を裏切るくらいでも変化があって楽しめる
悩み煮詰まるくらいなら、あれこれと振り返らずに走り抜けてほしい

見える乙以外に、声にならない乙が存在するので

181名無しさん:2016/05/09(月) 01:47:40 ID:ATmYv9ao
乙するタイミングを逃すことは多々あれど、乙の心は変わりません。

乙する女、略して乙女。
すみません。言いたくなっただけです。

182従者:2016/05/10(火) 22:05:37 ID:WmmW7.EQ
このスレをもう一度日づけから見直してみました。長くて3ヶ月も書き込みのないときがあったのですね。
ここに来たとき思いのほか多くの方に声をかけていただけたので私はまた調子に乗ってしまったようです……。
浅はかで本当に申し訳ありません。お恥ずかしい話です……。

初心に返り少しでも楽しんでいただけるよう、訂正のない作品を並べておけるようやっていきます。
ご返事や反応を本当にありがとうございます。こうしてお話しいただけたこと本当に、私は幸せ者です。


レスと同時に何か投下できたらと練っていたのですがもう少しお時間いただきそうなのですみませんレスのみで。
投下しないのならもっと早くレスすればよかったのにさっそくすみませんでした。また後日伺います。

183名無しさん:2016/05/10(火) 23:53:10 ID:xXjkDHFM
作品投下が始まったことを知らない人がまだ多数派でしょうし、避難所の存在を忘れてる人も多いんでしょうね
ふと思い出したときにwikiを見て新しい作品の存在に気づき、一部の人は避難所に来るのかな?
継続的に作品投下のある避難所であれば、いずれは人が集まるのでは
3ヶ月投稿がなかった時期は2chにスレがあった時期なので、避難所が本スレ化した今は状況が違うはずです

避難所は守られている場所なので平穏が保たれており、作品投下には適しているんじゃないでしょうか
特に従者さんの場合は、今の対話の仕方であれば2chだけは避けた方が良さそうです
無理せず負担のない範囲で、今後ともクリアリファンを楽しませていただけたら嬉しいです

184名無しさん:2016/05/13(金) 01:57:49 ID:XPdVdM/I
今やここが本スレ
ずっと2chでやってきたけど良くも悪くも悪くも2chだったからなー

185従者:2016/05/14(土) 15:07:43 ID:rymdB1q6
ああ、3ヶ月不在は2chと並行していた時期だったのですね。把握もしていなくて;
皆さまが大変だったときに離れてしまっていたことが本当に悔やまれます…

あたたかい声を本当にありがとうございます。
先日過去スレを見直したとき私が書けなくなってから2年たっても名前を呼んでくださっていた方もいました。
今その方々がここにいるかはわかりませんが、どうかご返事させてください。

従者は今ここにおります。帰ってきました。名前を呼んでくださりありがとうございます。


今回はPS版のセリフをなぞらないSSいってみます。
時期はアリーナの幼少期。
クリフトが神学校を卒業してサントハイムへ赴任してからある日のこと、アリーナ視点です。
ちょい役侍女たちとお城のニブい神父さん出てきます。
密着度やたら高いです。でも今回は幼いので微笑ましい……かな。
長くなったので前編後編に分けました。
これまで自分の見た中でクリフトがアリーナに恋をしたきっかけを描いたSSはあまり見かけた記憶がありません。
例えばこんな恋のきっかけ、いかがでしょうか。

186恋をしたのはあの日から 前編 1/14:2016/05/14(土) 15:11:46 ID:rymdB1q6
――クリフトなんかきらい、キライ、大ッキライ!!――


従者の心主知らず 〜恋をしたのはあの日から〜


あたしはずっとぶすっとしてた。クリフトったらあうたんびにお説教のあらしなんだもの。
言葉づかいだってきびしいわ。
「あたし」はお父さまやじいのまえだけ、ふだんは「わたし」、おおやけでは「わたくし」ですって。
いみがつうじれば言葉なんてなんだっていいじゃない。

いつでもあたしのあとをついてきて、おしゃべりいっぱいしてくれて、雨の日は絵本をよんでくれて。
パンチをしたらすぐ泣いちゃって、それでも姫さまぁっていってあたしのあとをついてくるの。
あのころのクリフトはもうどこにもいないんだ……。


「えー神父さまいないのー?」
「はい、今日は急ぎの用がたくさんありましてね。申し訳ありません」
「えー…」
「ですから今日のお勉強は自習です。クリフトとふたりでしていただけますか?」
「えー?」

やだな、クリフトとふたりでなんて。いちにちじゅうお説教をきかされちゃう。
そうだ。休んじゃおう。
あたしは神父さまをおみおくりしたあとクリフトがくるまえにまどをこわしてなんとかお外へはいでた。
きょうはくもひとつなくってとってもいいてんき!んー!きもちいーい!

「姫さま!なんという…!」

あ、クリフト。もう見つかっちゃった。

「やだっ!お勉強なんかしないもんっ!」
「姫さま…!」

あたしはおおいそぎでちかくにあった木にのぼった。

「姫さま危険です!おやめください!」

187恋をしたのはあの日から 前編 2/14:2016/05/14(土) 15:15:32 ID:rymdB1q6
クリフトはすぐいきますといっていなくなった。からだがおっきいからまどからはでられなかったのね。
少ししてむこうから走ってくるクリフト。

「姫さま!下りてください危険です!」

大声でさけぶクリフト。いつものうるさいお説教クリフト。
でも木の下にきたときにはあたしは手のとどかない高いとこまでのぼってた。

「姫さま!」
「やだっ!ぜったい下りないもん!」
「姫さま…!」

あたしはとおくをながめた。きょうはお空がすんでてとってもきれい。風もとってもきもちいい。
こんなきもちのいい日にかたっくるしいお勉強なんかしたくない。クリフトとふたりでなんかもっとしたくない。

――ずっとこのままでいられたらいいのに――

「姫さま!」

クリフトがまた大声でさけんだ。ふ、ふーんだ、おこったって下りたげないんだから。

「今行きます」

え?
うそ、クリフトのぼってきた?ほんとに!?
クリフトはえだに手をかけたり足をかけたりしてる。ほんとにのぼってるの!?

――神父さまだって木の上まではのぼってきたことないのに!――

「クリフトこっちこっちー。ながめがとってもいいのよー?」
「姫さま!それ以上登らないでください!」
「やだもーん」

クリフトどんどんのぼってくる。なんだかわくわくしてきちゃった。

「クリフトはやく、こっちー」
「姫さま……。私は、あなたと遊ぶために登っているのではありません」

188恋をしたのはあの日から 前編 3/14:2016/05/14(土) 15:20:52 ID:rymdB1q6
けっきょくこれ以上はのぼれないってとこまでのぼりきっておいつかれちゃった。

「姫さま……は、はやく下りましょう……」

すこし下をむいてこわい顔でしゃべるクリフト。あーあ、このあといつものお説教がまってるのね。
でも今日はちょっとだけ楽しかったわ。あたしはにっこりわらってみせた。ちょっとびっくりするクリフト。

「姫さま……なにを、ひめさ……姫さま!!」
「あれ?…ちょっとー」
「姫さま!大丈夫です!すぐ持ち上げますからっ!」

木からとびおりようとしたあたしをクリフトがつかんだみたい。からだがぶらーんてなってる。

「ちょっとーはなしてよー」
「なにをいっているのですか姫さま!」
「きゃああっ!姫さま!?」

あ、侍女だ。こわれたまどからのぞきこんでる。

「誰か、誰か姫さまをっ!!」

侍女はだれかをよびにいったみたい。あーあ、お父さまやじいのお説教までまってるわ。クリフトのバカ。

「姫さま、動かないでください!」
「はーなーしーてー」
「姫さま、すぐ、すぐ持ち上げますから…っ」
「だーかーらー」

あ、侍女もむこうからやってきた。そのうしろに兵士がふたり。
あたしははやくおりたくってからだをめいっぱいゆらした。そしたらやっと自由になった。

「きゃああっ!!」
「よいしょっ!!いったあああ…!」ぇぇっ…!!」

足がじんじんする。やっぱりこんかいはちょっと高かったなあ。つぎおりるときは気をつけよっと。

「クリフト?」

189恋をしたのはあの日から 前編 4/14:2016/05/14(土) 15:25:05 ID:rymdB1q6
クリフトは顔を下にしてねてた。ぼうしがとれてる。

「クリフト…?」

もういちどよんだけどクリフトはへんじをしない。

「クリフト…??」
「姫さまご無事ですか!?」

気がついたらまわりにたくさん人があつまってておおさわぎになってた。


「ええ……首の骨にひびが……」

「ええ、命に別状はございません。二、三日ほど安静にしていれば……」

「……はい……はい…。この度は誠に申し訳ありませんでした……」

クリフトが教会にはこばれてからあたしはずっとクリフトを見てた。
クリフトはただねむってるだけだって。そのうちおきるんだって。
だいじょうぶなんだって。
お父さまやじいにいわれていちどおへやにもどる。このあとまってるのはお説教。わかってる。
でもあたしはクリフトのことばっかかんがえてた。

おへやにもどるとちゅうとなりのおへやで侍女たちがなにかしゃべってるのがきこえてきた。

「まったく、姫さまのおてんばにも困ったものだ」

…………。
いつものこと。あたしはおてんばでいうこときかなくて、みんなにめいわくかけるわるい子。
もういいの。いわれなれてるから。

「それにしてもあのお付きの神官は何をやってたんだ。姫さまといっしょに木登りしてたっていうんだろ?」
「外出の際も兵士に何の報告もしてなかったそうですわ」
「いったい何を考えてるんだ…!」

…………。
あたしはおへやにとびこんで大声でさけんだ。

190恋をしたのはあの日から 前編 5/14:2016/05/14(土) 15:29:06 ID:rymdB1q6
「ちがうわ!クリフトはあたしを木から下ろすためにのぼったのよ!クリフトのことわるくいわないで!」

おへやにいたみんながびっくりしてあたしを見る。

「姫さま……失礼いたしました……」

口をそろえてあやまるみんな。どうせうわべだけのみんな。おとなはいっつもほんとのことをいってくれないの。

「みんなみんな大ッキライ!!」

あたしはもういちど教会に走った。だれもあたしをとめなかった。


教会にとびこんできたあたしに神父さまはさいしょびっくりしたけどわらってまねきいれてくれた。
さっきとかわらずねてるクリフト。あたしはまたずっとクリフトを見てた。

「寝る時までロザリオをつけていては肌を痛めてしまいます。これは外しておきましょうね」

神父さまがクリフトのくびからロザリオをはずした。たなの上においたあとあたしの前で片ひざをつく。

「姫さま」
「……」
「あなたがこうしてクリフトを心配してくださるように、王様も、あなたのお父上もまたあなたのことを心配しています。
クリフトはもう大丈夫ですから、さあ、お部屋にお戻りなさい」

…………。

「お父さまがしんぱいなのは、あたしじゃないのっ」
「姫さま?」
「お父さまがたいせつなのは、お上品で、おしとやかで、お母さまのかわりができるだれかであって、あたしじゃないのっ」
「姫さま……そんなことは……」
「あたしじゃなければよかったの」
「…………」
「あたしじゃなくて、もっとお母さまみたいな、お上品で、おしとやかで、いっつもわらってて、
なんでもいうこときく女の子らしい子があたしだったら、お父さまもあんなにおこったりしなくていいの」
「………………」

191恋をしたのはあの日から 前編 6/14:2016/05/14(土) 15:34:12 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトの手をぎゅってした。

「ねえ神父さま、あたしここにいちゃダメ…?クリフトといっしょにいちゃダメ…?おへやにもどりたくないの」
「姫さま……」
「だって、おへやにもどったってあたしのいばしょなんてないんだもん」

あたしは神父さまをまっすぐ見た。神父さまはこまったようなお顔をしてる。
でもあたしは目をそらさないでずっと神父さまを見てた。そしたら神父さまは手でお顔をかくしたの。

「子どもにこんなことを言わせるなど、王は……神は……!」
「神父さま…?」

神父さまはしばらくお顔をかくしてたけど手をはなしてあたしを見た。
神父さまはとってもやさしいお顔をしてた。

「ええ、姫さま、ぜひここにいてくださいますか?
先ほどは戻るよう申し上げましたが、本当は私も姫さまにここにいてほしいのです」
「…ほんとに?」
「ええ、うそをついてしまって申し訳ありませんでした。
あなたがそばにいてくだされば、クリフトもきっと安心してぐっすり眠れるでしょう」
「うん!」

「王様には私からお願いしておきますよ。クリフトをよろしくお願いしますね」
「ありがとう神父さまっ」

神父さまはおへやをでていった。あたしはクリフトに向きなおる。うれしいはずなのに、なんだかもやもやしてた。
さっきまでわらってたのに、おへやをでていくときちらっと見えた神父さまはこわいお顔をしてたの。
たけのながいぼうしをかぶりなおして、お仕事のときしかつかわないつえをもって、しずかに十字をきってでていった神父さま。
神父さま…?
あたしはクリフトの手をぎゅってした。ちょっとだけつめたい。あたしは思いきってベッドにはいってクリフトをぎゅってした。
クリフトのからだはあったかい。ちょっとだけほっとした。きっと外にだしてたから手はつめたくなってしまったのね。
あたしはもういちどクリフトの手もぎゅってした。あたしがあっためたげる。きょうはクリフトといっしょにここですごすんだもの。
クリフトはやくおきないかな。


「おかあさまぁ…」

じぶんでいってはっとした。あたし今、お母さまっていったの…?

192恋をしたのはあの日から 前編 7/14:2016/05/14(土) 15:38:22 ID:rymdB1q6
お母さまのことはもうあんまりおぼえてないの。
おぼえてるのはいっつもわらってるお母さまのお顔。となりでねむってるお母さまのお顔。

どんなに声をかけてもおきなくて。
つかれておきられないのかなっておもったけど、つぎの日になってもお母さまはおきなくなって。
いつからかまわりがあわただしくなって、お父さまやじいや大臣、神父さままでよくくるようになって。
お父さまがお母さまをおふとんの上からぎゅってしたのを見たことある。

いつだったかお母さまのお顔に白い布をかけた日があったの。
そんなことしたらいきができなくて苦しいじゃないってあたしははんたいしたのに布をとってくれなくて。
あたしはもしお母さまが苦しがってたらすぐ布をとってあげようと思っていっしょにねたの。
でもお母さまはおきなくて。ぜんぜん苦しがらなくて。

どんどんお母さまがつめたくなってくの。どんなに大きな声でよんでもおきないお母さま。
もうにどとおきてくれないお母さま……。あたしをおいてとおいお空にいっちゃうの。

お母さま…!

おぼえてないんじゃない。あたし、あたし…っ

――いっしょうけんめい思いださないようにしてたんだ!――
――おかあさま…っ!!――

「クリフトおきて。ねえおきて。あたし言葉づかいちゃんと気をつけるから。お勉強もがんばるから。
だからおきて。ねえおねがい。おきて……」

クリフトもしんじゃうの……?
クリフトもあたしをおいてとおいお空にいっちゃうの……?

「やだぁ…やだよお……クリフト……クリフトぉ…っ」

あたしはクリフトをぎゅってした。

「やだぁ…やだあぁ…っ」

やだあああ……。

193恋をしたのはあの日から 前編 8/14:2016/05/14(土) 15:42:19 ID:rymdB1q6
どれくらいじかんがたったんだろう。あたしはずっとクリフトをぎゅってしてた。
クリフトはあったかい。つめたくなってない。だからだいじょうぶ。
あたしがつめたくならないようにあっためる。ずっとあっためる。
だって、つめたくならなければクリフトはいつかおきてくれるでしょ?ここにいてくれるでしょ?
そのうちきっとおきてくれるわ。だからあたしはもっとクリフトをぎゅってしたの。

「っ…」
「クリフト?」

クリフトがすこしだけからだをうごかしたような気がした。

「クリフト…?」
「ひめ…さま…?」

とじてた目が……あいた。あいたの。クリフトがおきた……。おきた!おきたんだっ!!
クリフトはぼんやりした目であたしを見た。
あたしはたぶんなみだで顔がめちゃくちゃだったかもしれないけどいっしょうけんめいえがおでクリフトをむかえたの。

「クリフト。アリーナよ。わかる?」
「姫さま……ここは……私はいったい……はっ!姫さまっ」

クリフトはあたしからはなれようとした。あたしはとっさにクリフトの服をつかむ。
もういちどクリフトをおふとんにもどしてぎゅってした。

「やだクリフト。どこにもいかないで」
「何をおっしゃるのです。は、離してください。なんというみだらなことを…!」
「やあだ」

クリフトだ。いつものうるさいお説教クリフトだ。よかった…。よかった…っ。

「よかったああ…っ」
「姫さま…」
「クリフト、さむくない?ぐあいわるくない?あたまいたくない?」
「姫さま……」
「あたし、あたしね……クリフトがしんじゃったらどうしようって…っ」
「勝手に私を殺さないでください」
「うん、よかった……ほんとによかったぁ……っ」
「…………」

194恋をしたのはあの日から 前編 9/14:2016/05/14(土) 15:46:53 ID:rymdB1q6
あたしはクリフトをぎゅってした。

「っ…姫さま…っ」
「よかった…っ」
「………っ…」

クリフトはまだあたしからはなれようとする。

「こ、こんなことが王様に知れたら…っ」
「だいじょうぶ。神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの。あたしはきょうはここにとまるの」
「そんな…!」
「だからだいじょうぶ」
「そんな……」

あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「っ…なぜ……なぜ神父様がそのような……」
「ここにいたかったの」
「…………」
「おへやにもどりたくなかったの」
「………………」

――クリフトといっしょにいたかったの――

あたしはクリフトをまっすぐ見てほんとのことをいった。

「そしたら神父さまがお父さまにおねがいにいってくれたの」
「………………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。びっくりした顔っていうかちょっとこまった顔っていうか。
きっとまってるのはいつものお説教。でもいいの。あたしはもういちどクリフトをぎゅってした。

「あ…」
「ほんとによかった…」
「………………」

あたしはクリフトを見てお母さまみたいににこってわらった。それからまたやさしくぎゅってする。

195恋をしたのはあの日から 前編 10/14:2016/05/14(土) 15:50:54 ID:rymdB1q6
「っ…………」
「クリフトがぶじでよかった…」
「………………」

クリフトのからだはあったかい。生きてる。ちゃんとここにいる。もうだいじょうぶ。だいじょうぶ……。

「姫、さま……」
「うん、もうだいじょうぶ」
「……………………」

お花のにおい……葉っぱのにおい?クリフト、とってもいい匂いがする……。
あたしはなんどもなんどもクリフトの顔を見てクリフトのすがたをかくにんして、ぎゅってした。
クリフトをそばにかんじたかったの。手をのばしてもっとクリフトをかんじる。

「ひめ…さま…」
「うん。よかった…」
「…………姫…っ」
「んっ」

クリフトもあたしをぎゅってしてきた。ちょっとドキっとしちゃった。
でもからだがふるえてる……。クリフト、こわいんだ。いたい思いをしたから……。
あたしがいたい思いをさせちゃったから……。
それにさむいのかも。あっためなくちゃ。あたしがあっためてあげなくっちゃ。

「うん、クリフト。もうだいじょうぶだからね。だいじょうぶだから。
クリフト……ごめんなさい……」

あたしはクリフトのからだをさすった。もういちどぎゅってする。

「ち、ちが……これは…っ」

こんこんて音がした。だれかがおへやのとびらをたたいたみたい。
そしたらクリフトがぱっとあたしからはなれようとするの。あたしはクリフトの服をつかんでひっぱった。
クリフトを引きよせてもういっかいぎゅってする。あわてるクリフト。

「姫さま、神父です。入りますよ」

196恋をしたのはあの日から 前編 11/14:2016/05/14(土) 15:55:01 ID:rymdB1q6
あ、神父さまだ。

「あ、あの、姫さ…っ」
「だいじょうぶだから、クリフト」
「ちが、あの…っ」
「だいじょうぶ」

クリフトはしばらくあたふたしてたみたいだけどあたしのかたに顔をうずめてしがみついた。
うん、だいじょうぶ。

「神父さまーはいってー」

とびらがあいて神父さまがはいってきた。

「おや」
「……っ」

クリフトふるえてる。すっごくふるえてる。どうしてこんなにふるえてるんだろう。

「だいじょうぶよ。クリフト」
「っ……っ」
「…………」

「これはお取り込み中大変失礼いたしました」
「えー神父さまー」

神父さまはこっちを向いたまま下がってとびらをはんぶんしめちゃった。

「クリフト、意識が戻ったのですね。具合いはいかがですか?」

はんぶんになったとびらのむこうからお声をかける。あたしはクリフトを見た。
クリフトはしばらくあたしのかたに顔をうずめてたけどゆっくり顔を上げて神父さまのほうをむいた。
クリフトは切ないみたいな苦しいみたいな顔をしてた。クリフト…?

「神父様…っこんな……」
「…………」
「こんなこと学校では教わりませんでしたっ」

197恋をしたのはあの日から 前編 12/14:2016/05/14(土) 15:59:52 ID:rymdB1q6
え?

「こんな……こんな感情……」
「クリフト…?」
「わ、私は……わたしはいったい…っ」
「…………」
「なぜこんな……こんな……」

クリフト…?

「わたしは、アリーナ姫を……こんな…」
「…………」
「こんな……みだらな……罪…っ」
「………………」

え、なに、どうしたの?どうしてクリフトはこんなにとりみだしてるの?どうして?
神父さまはとびらのむこうでだまってる。クリフトは泣きそうな顔してて……。

「……クリフト」
「神父様っ……」
「………………」

すこしして神父さまがおへやにはいってきた。クリフトの前まできてかがむ。神父さまは……やさしいお顔をしてた。

「今あなたに生じた感情は、人間であればだれもが持ち得ているものです。もちろん私も持っている情です。
学校で教わったことがすべてではありません。何も怖れることはありませんよ」
「……っ…………っ……」
「大丈夫ですクリフト。情を持つこともそれを表に出すことも罪ではありません。
ゆっくり深呼吸をして、肩の力をお抜きなさい」
「……………………」

クリフト…。
クリフトはちからがぬけたのかな。ふっとうしろにたおれこんだの。あたしはあわててクリフトをささえてゆっくりねかす。

「………………」
「クリフト…」
「……………」

198恋をしたのはあの日から 前編 13/14:2016/05/14(土) 16:10:33 ID:rymdB1q6
クリフトはぼんやりした目であたしを見たけどすぐ目をそらしちゃった。クリフト…。
クリフトは神父さまのほうを見る。

「神父様……申し訳ありません……」
「…………」

神父さまはおふとんをととのえてクリフトの頭をそっとなでた。

「まだ体を支えるのも大変でしょう。今はゆっくりお休みなさい」
「………………」

クリフトははいっていおうとしたのかな。口をうごかそうとしてたけどそれは声にならなくて、ゆっくり目をとじちゃった。
口ももううごかそうとしなかった。

「まだ治癒をすませたばかりですからね。疲れていたのだと思います」

神父さまがもういちどクリフトの頭をやさしくなでた。クリフトはもうねむってた。クリフト…。
さっきふたりがはなしてたこと、むずかしくてよくわかんなかった。つみ……つみってなに…?

「姫さまも」
「え?」
「姫さまも、どうか中へ。今夜はずっとクリフトのそばにいてくださいますか?」
「あ、うん!」

神父さまがおふとんを上げてくれてあたしは中にもぐりこんだ。もういちどクリフトをぎゅってする。
神父さまはやさしくわらってくれた。クリフトといっしょにゆっくりおやすみくださいって。
さっきクリフトがいってたのは、あたしがあんまりちかくにいてびっくりしたのとやみあがりでつかれていたのとあって
あせっちゃっただけなんだって。あんまり気にしなくていいんだって。あしたはなせばわかるって。
あたしはまたずっとクリフトを見てたけど気がついたらうとうとしてたの。クリフトのからだがあったかいからだわ。
そう、クリフトはあったかい。ほんとうにもうだいじょうぶ。だいじょうぶなんだ……。
よかった……。ほんとうによかった……。あたしもクリフトをぎゅってしながらゆっくり目をとじた。


「姫さま……。
クリフトの母が天に召され、クリフトもサランへ戻り、ここに遊び相手がいなくなっても、あなたはよくこの教会に足を運んでくださいましたね。
あの時私が、どれだけ嬉しかったか、わかりますか?」
「んー…」

199恋をしたのはあの日から 前編 14/14:2016/05/14(土) 16:14:47 ID:rymdB1q6
神父さまがなにかしゃべってる……。あたしはうとうとしながらきいた。

「あの時あなたは懸命に否定してくださいましたが、当時私は本当に、本当に、自分でもいやになるほど役立たずだったのですよ。
神の声がまったく聞こえなかったのです。何もかも、すべてが疎かになっていて……ニブい神父と言われても仕方がなかったのですよ」
「えー神父さまはなんにもわるくないよー」

神父さまは小さくわらった。

「その言葉にどれだけ救われたことか……。姫さま……あなたのその笑顔に、どれだけ救われたことか……」

神父さまはとおくを見たみたい。

「本当に、失ったものばかりを数えていてはいけませんね……」
「んー…」

――命はこんなにもたくましい――

神父さま…?

「母たちよ、見ていますか。あなた方の遺した子どもたちは今、こんなに元気に育っていますよ」

神父さまはずっととおくを見てる。なにを見てるんだろう。でもすこししたらこっちをむいてわらってくれた。
あたしはほっとしていっしょにわらう。そしたら神父さまがあたしの頭もなでてくれたの。とってもおっきくて、昔のお父さまみたいなやさしい手。
あたしはあんしんしてまたゆっくり目をとじた。神父さまはあたしがねるまでずっと頭をなでてくれた。


――次代を担う子どもたちよ、健やかであれ――

200従者:2016/05/14(土) 16:20:04 ID:rymdB1q6
>>192>>193の間もう一行改行したつもりなのに反映されてなかったんだぜ。
最後の神父さんとの会話は例のごとく今後のためのただの伏線です。いつもすみません;

今回、以下より二人はこんな幼少期だったのではと推測したSSとなっております。

FC版より
・クリフトは神学校を主席で卒業

PS版より
・クリフトは幼いころサランの教会で神の道を教えてもらった
・クリフトは昔からどうも身体が弱い(ブライのセリフより)
・アリーナは小さいころサントハイム王妃の葬儀で王家の墓に行った(ことを覚えている)
・アリーナはよく家庭教師の前で居眠りしていた(ブライのセリフより)
・クリフトは玉座の間にてアリーナの命令で代わりにブライの説教を聞いていた(プロローグより)
・クリフトはブライからアリーナが一人旅に出るという情報を聞いていた(FC版と共通)

小説版より
・クリフトとアリーナは乳兄妹

クリフトとアリーナは乳兄妹としてサントハイムで育ったが
クリフトがサランの教会で神の道を教えてもらいそのまま神学校へ。
(神学校の所在はサラン近辺にあるとしてサランの神父さんも教官の一人としました。
5の学校の規模を見るに下手したらあの教会が神学校という可能性もありそうなので)
その後学校を首席で卒業、サントハイムの教会に見習い神官として赴任。
アリーナは次期女王となるべく勉学の時間があり神学のみ(アリーナの希望で)教会にて、
クリフトが赴任してからは(必然的に)クリフトも同席したとしました。
(その他命令(気まぐれ)でクリフトを玉座の間に呼び出したり遊び相手にさせたりもしており
明確な役職としてではないがクリフトに従者の役目もそこそこ果たさせているとしました)

この従者シリーズではとりあえずそんな感じの幼少期でいってみようと思います。
もしイメージと違う方がいましたらどうかご容赦ください。
公式にて詳細が判明次第そちらを優先したいと思います。(すでに抜けなどありましたら教えてください;)
この度はご覧いただきありがとうございました。後編は翌日〜その後の予定です。

201従者:2016/05/14(土) 20:02:43 ID:rymdB1q6
学校は5じゃなくて4のイムルだったorz
誤字も見つけたしもうダメだorzorz

202名無しさん:2016/05/14(土) 22:15:55 ID:S2LTRg/s
>>185
手が離せないのでSSは後で読みますが、言いそびれないうちに…乙です

気分が悪くなる時期には見ない書かないが一番
不在で良かったんじゃないでしょうか

203名無しさん:2016/05/15(日) 05:23:58 ID:2Lhxuwkg
>>201
なんだかお疲れ様です。

過去にも似た場面があったことで、同じシーンに奥行きが!
さすが、一過性のクリアリ萌えシーンでは終わらせませんね。
クリアリにもシナリオにも注目です。

神父様が絶妙な伏線を張ってくれました。
やり過ぎない程度に心に引っかかりを残す力加減がお見事。
今後への期待が高まることを避けようがありません。

204名無しさん:2016/05/20(金) 02:56:24 ID:7.6Y2vZs
コテハンのキャップ持ちだと投稿制限が緩和されるなら良かったけど、
したらばにそういう機能はなさそうだね

205名無しさん:2016/05/23(月) 02:25:16 ID:lwr.tU/w
>>201
後編の前ではあるんじゃが、ここでGJという言葉を贈ることにしようかの
なるほど、前編だけでも一旦の区切りをつけておるようじゃな
さすがの安定感じゃ

206従者:2016/05/24(火) 21:49:27 ID:fD0voP1o
従者です。少々出遅れました。
PS版のセリフをなぞらないSSアリーナ視点「恋をしたのはあの日から 後編」いきます。
お城の神父さんとサランの神父さん出てきます。密着度やっぱりちょいありです。
両神父との関係や城と教会との関係などやや疑問を残す流れかもしれませんが後ほど解消予定です。
取り急ぎクリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞ。

207恋をしたのはあの日から 後編 1/14:2016/05/24(火) 21:55:38 ID:fD0voP1o
あったかい。あったかい。だれかがあたしをぎゅってしてくれてるの。
だあれ?あたしをぎゅってしてくれてるのはだあれ?あたまをなでてくれてるのはだあれ?
お父さま?お母さま?

――姫さま…――

神父さま?

――さようなら…――

え…?
だあれ?だれなの?

だれかがなにかはなしてるのがきこえる。でもあたしはねむくておきられなかった。
やっと目をあけたときあたしはいつもとちがうとこでねてた。
そうだ、きのうは教会にとまったんだった。
まわりを見たら神父さまがそばにいてごあいさつをしてくれた。クリフトは……

「どうしてクリフトはいないの!?」

あたしは大声でさけんだ。クリフトがいなかったの。きのういっしょにねたはずなのに。

「クリフトは……クリフトはお休みをとったのですよ。養生のためしばらくサランで過ごすそうです」
「えーあたしなんにもきいてないわ」
「そうですね……。せめて姫さまが目覚めるまで待ってはと何度も止めたのですが……」
「うー…」

「ねえ神父さまー、きょうのお勉強サランにいっちゃダメ?クリフトにあいたいの。だってなんにもおはなししてないもの」
「そうですねえ……。先日も外出しましたからねえ……。今度はどんな理由で外出しましょうか……」
「うー…」
「………………」

「ああ、視察にしましょう。サランの大聖堂に収めてある女神像の視察と歴史のお勉強。そのついでにクリフトの様子も見てくる。
今回はそんな感じでいってみましょうか」
「うん!」
「あくまでサランの大聖堂に行く理由は女神像の視察です。クリフトと話したあと視察っぽいこともしますので覚えておいてくださいね」
「はーい」

208恋をしたのはあの日から 後編 2/14:2016/05/24(火) 22:01:09 ID:fD0voP1o
あたしはもういちどおふとんにもぐった。おふとんあったかーい。神父さまはたなのそばでご本をよんでる。
あたしはおへやにもどりたくなくってお勉強のじかんまでここにいていいってきいたら
きがえて顔をあらってお祈りしてあさごはんをたべないといちにちがはじまらないからどうかおへやへっていわれた。
それさえおわればまたここにきていいからって。たしかにおなかはすいてきたけど……
それからお父さまに教会にとまるおゆるしをくれたことのお礼をいってくださいって。
お勉強をずる休みしたことも木にのぼったこともあやまらなくていいからお礼だけはしてくださいって。
やだな、お父さまにお礼なんて。

おへやにいくにはお父さまの前をとおらないといけないの。あたしははやく教会にもどりたくって走っておへやへ。
兵士たちをすりぬけてかいだんをのぼったらいつものとこにお父さまもじいもいた。
ごあいさつだけしていそいでとおろうとしたけどアリーナってよびとめられる。やっぱり。
あたしはぶすっとした顔になっちゃったけどいっしょうけんめいお礼をいったの。
そしたらきのうはよくねむれたかですって。
あたしはクリフトがあったかかったからすごーくよくねむれたわっておおげさにいってやった。
じいがちょっとだけさわいだからクリフトはなんにもわるくないわって、クリフトのことせめないでって大声でさけんだの。
そしたらお父さまは……

お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのことも……ぜんぜんおこらなかったの。
神父さまといっしょにサランへいくっていってもそうかって、気をつけていってくるのだぞっていうだけだったの。
なんか……なんかへんなの。
きのうのことがうそみたいにふつうにおきがえをして侍女にかみをといてもらってお祈りをしてあさごはんをすませる。
あたしはまた教会へ。神父さまがまってくれてたみたいでさっそくサランへつれてってくれた。


サランの教会に入る。いつものとこにサランの神父さまはいなかった。クリフトは……
お城の神父さまがシスターにクリフトのことをきいてくれた。

「申し訳ありません、神父様とクリフトは別室でお話をされています」
「ああ……告解室ですか」
「あ、は、はい…」
「…………。告白するようなことなど、何もないと思うんですがねえ……」
「……」

神父さまとシスターがなにかむずかしいおはなしをしてる。なにをはなしてるんだろう。

「姫さま」

209恋をしたのはあの日から 後編 3/14:2016/05/24(火) 22:06:53 ID:fD0voP1o
神父さまがもどってきた。

「クリフトは今サランの神父様とお仕事の話をしているそうです。待っている間に例の視察でも終わらせておきましょうか」
「あ、うん!」

あたしは神父さまといっしょに女神像の前へ。のぼったらながめがよさそうなおっきな女神像。
サランの教会はとってもひろい。おいかけっこができそうなくらい。ものもいっぱいあるからかくれんぼもできそう。
でも走るとクリフトがうるさいからできないの。クリフトはいっつもうるさいの。お説教クリフトなの。
でもきょうはそのクリフトにあいにきたんだわ。

「ああ姫さま、終わったようですよ」

むこうからサランの神父さまがあるいてきた。そのうしろに……あ、クリフトだ。いつものふくとぼうしのクリフト。
ふたりともあたしにあたまを下げてごあいさつする。あたしはいっしゅんサランの神父さまににらまれたような気がした。
サランの神父さまはお城の神父さまにもごあいさつする。

「大司教殿……。またアリーナ姫様をお連れして……視察と称した散策ですか」
「ええ、視察と称した視察です」
「…………。お戯れもほどほどにしていただきたいものです」
「おや人聞きの悪い。どこをどう見ても立派な視察じゃありませんか」

ふたりはそのあともなにかはなしてたみたいだけどあたしはクリフトが気になってずっとクリフトを見てた。
クリフトもあたしに気がついたみたいでこっちにくる。あたしの前まできたらクリフトはあたまを下げたの。

「アリーナ姫さま、この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした」
「なによクリフト、かしこまっちゃって」
「姫さまがご無事で、何よりでした……」
「…………」

「ねえクリフト、これからもいっしょにいられるんでしょ?」
「……はい、変わりなく」
「いっしょにあそべるんでしょ?」
「……はい」
「ん」

よかった……。

210恋をしたのはあの日から 後編 4/14:2016/05/24(火) 22:10:58 ID:fD0voP1o
「クリフト、こんどじょうずな木のとびおり方おしえてあげるからねっ」
「そ、それはまたの機会に……」

よかった。
これからもクリフトといっしょにいられる。
よかった……。

「クリフト」
「はい!」

クリフトがふりかえる。サランの神父さまがよんだみたい。

「立ち話も失礼です。アリーナ姫様を部屋へご案内してさしあげなさい」
「あ……はい」

あたしはクリフトのあんないで今までいったことのないおくのおへやにつれてってもらった。
シスターがのみものをもってきてどうぞごゆっくりっていってでてった。あたりがいっしゅんしんとなる。
あたしはさっそくのみものをのみながらきのう気になったことをきいた。あ、ジュースおいし。

「ねえクリフトー」
「…はい、姫さま」
「きのう侍女がはなしてたのをきいたの。どうしてお外にでたときあたしのこと兵士にいわなかったの?」
「は…?」
「だから、あたしをおいかけたときお外へでたでしょ。そのときどうしてあたしのこと兵士にいわなかったのかなって……」
「………………」

「なぜ、そんなことを……」
「いいじゃない、しりたいの」
「…………」

「……確かに、私らしくない対応ではありました。あなたをかばうなど」
「え?」
「あの時、静かなはずの教会からあまりに不快な音がしたもので、まさかと思えば案の定壊れた窓の先にいらっしゃったのはあなたで」

う。

211恋をしたのはあの日から 後編 5/14:2016/05/24(火) 22:15:55 ID:fD0voP1o
「ただ、神父様から本日の講義は自習と伺っていましたし、嫌気が差してのずる休みだということは一目で把握いたしました」

うう。

「というのはあなたの第一声で確信したわけですが」

ううう。

「私は今はただの神官ですがゆくゆくはサントハイムの教会を任される身になるかもわかりません。
本来ならあなたを無事連れ戻すため王様や兵士に早急にご報告しなければならない立場だったのですが、そうしなかったのは私の怠慢によるもの。
罪深きことです……」

え…?

「ただ、ご報告することは放棄しましたが、かといってあなたのずる休みや木登りを容認したわけではありません。
ですからあの時私が取れる最善の対応は……誰にも知られぬうちに教会に戻っていただくこと、あれ以外には浮かびませんでした」

…………。

「以上です。望む解答は得られましたか?」
「あ……はい……」

えっと……。あたしはいっしょうけんめいあたまの中をせいりした。
クリフトは……ほんとはあたしのことお父さまや兵士にいわなきゃいけなかったたちばで……でも、あたしのこと……かばってくれたんだ……。
きのうのことを思いだしてみる。走りながら大声でさけんでたクリフト。あたしが下りるまでまってなくて木の上までのぼってきたクリフト。
そっか……。そうだったんだ……。そうだったんだ!そう思ったらなんだかうれしくなってきた。

「ありがとうクリフト!」

クリフトのうごきがとまった。

「なぜ、礼を……」
「ありがとう!ほんとうにありがとう!」
「か、勘違いしないでください。あなたのためだけではありません。神父様にご迷惑をおかけしたくなかったからです」

なんかあわててるクリフト。

212恋をしたのはあの日から 後編 6/14:2016/05/24(火) 22:20:37 ID:fD0voP1o
「それにあなたの運動神経のよさは理解していますから、多少の木登りならそこまで危険はないと判断したためです」

あたしはずっとクリフトを見てた。なんかいっしょうけんめいしゃべってるクリフト。なんでかわらっちゃった。

「ありがとうクリフト!」
「〜……」

「今さらではありませんか。こんなこと……」
「えへへ」
「ですが、結局侍女に知られてしまいました。あなたにも危険な思いをさせてしまい……今回の判断はあまりに軽率でした…。
私が暇をいただきサランへ帰ったのは、自粛の意味も込めているのです」
「?じしゅく?」
「自らに処罰を下したのです」
「え、なんで」
「…………」
「お父さまもじいもあたしのことおこらなかったの。クリフトのこともぜんぜんおこってなかったわよ?だから、だいじょうぶよ…?」
「……まさか」
「だいじょうぶだから」
「……まさか……」

――おお、クリフトか。もう体調はよいのか?――
――クリフト、今回の件そなたへの処罰はない。神父への処罰もない。今までどおり日課に励むがよい――
――聞けばアリーナを連れ戻すために木の上まで登ったそうだな。大儀であった――
――アリーナが侍女にそういったのだそうだ――
――昨夜もあやつは教会で寝るといって聞かなかったそうだな。いつも世話になる……――
――なに、サランへ行くと申すか――
――どうしても行くというなら止めはせんが体調がよくなり次第またサントハイムへ戻ってまいれ――
――待っておるぞ――

「なぜ……」

クリフトは下をむいちゃった。なにかいっしょうけんめい考えてる。あたしは……あたしはまちきれなくってきいちゃった。

213恋をしたのはあの日から 後編 7/14:2016/05/24(火) 22:24:48 ID:fD0voP1o
「ねえクリフトー、じしゅくっていつおわるの?あしたにはこっちにこれるの?」
「あ、明日!?明日は……無理です……」
「えー…。じゃああさっては?」
「姫さま……。なぜそんな、私が戻る時期を気にされるのです」
「えーだって」
「……」
「だって、クリフトといっしょにいたいんだもん」
「…………」

クリフトはびっくりした顔であたしを見た。でもあたしはクリフトをまっすぐ見た。そしたらクリフトが目をそらしたの。
口に手をあてて……

「クリフト…?」
「…………」
「クリフトー」
「……あさって」
「え?」
「……あさってには、サイトハイムへ戻ります」
「ほんとに?」
「……はい」
「やったやった!」
「……」
「ありがとうクリフト!」
「ひ、ひめさま!?」

あたしはクリフトをぎゅってした。あれ、このかんじ……このかんじ、どこかで……。
あたしはクリフトを見た。クリフトは……かたまってた。あれ?

「ちょっとクリフト、どうしたの?」
「あ、あなたがどうしたのです!い、いきなり抱きつくなど…っ」
「だってクリフトあったかいんだもん」
「そっ……お、おやめください…」
「えー」

あたしはクリフトにやさしくひきはなされちゃった。っもう、きのうみたいにぎゅってかえしてくれたっていいじゃない。

214恋をしたのはあの日から 後編 8/14:2016/05/24(火) 22:32:28 ID:fD0voP1o
「姫さまこそ、なぜ侍女に、私があなたを木から下ろすためにのぼったと言ってくださったのですか?」
「え?」
「王様から伺いました。姫さまが侍女にそう言ってくださったと……。なぜわざわざそのような……」

クリフトがちらっとこっちを見る。侍女が…?
侍女……あたしがいったことお父さまにはなしてくれたんだ……。
お父さまも、それをクリフトに……。

「一緒に木登りをして自分を危険な目にあわせたと話していれば、私を教会から、ひいてはこのサントハイムから追い出すこともたやすかったでしょうに」
「え、なんでそんなことしなくちゃいけないのよ」
「…………。私を、疎ましく思っていらっしゃったのではないのですか…?」

え…?
クリフトはあたしをじっと見る。すこしだけさみしそうな顔。なにかをつたえたいみたいな顔……。

「……」
「……」
「…………」
「……うーん。たしかにクリフトはうるさいけど……」
「……」
「けど、やだ。いっしょにいないのはいやなの」
「姫さま……」
「だからこれからもいっしょなのっ」

クリフトがあたしを見てる。ずっと見てる。あんまり見てるからこんどはあたしが目をそらしちゃった。

「クリフトは、あたしといっしょにいるのいやだった…?」
「なにを……そんなことあるはずが……とんでもないことです」
「ん…」
「身に余る、光栄です……」

あたしはもういちどクリフトを見た。クリフトは……すこしだけわらってあたしにまたあたまを下げたの。

――おそばに置いてくださり、ありがとうございます――


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