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FFDQかっこいい男コンテスト 〜なんでもあり部門〜

62284 1/2:2009/04/25(土) 20:41:46
「早く食えよ。片付けが終わらんだろうが。」
「えー、せっかくのプリンなんだから味わって食べさせてくださいよぅ」
「何がせっかくだ。毎食後に食ってるくせしやがって」
「いついかなる時でもプリンには敬意を払って全力で崇め奉り丁寧に食べないと失礼でしょうが」
「……もういい。食い終わったらちゃんとこっちまで持って来いよ」
「んーvvv幸せv」
「………」
「はぁ…vvv」
「…そんなに好きか」
「はい?」
「プリン。そんなに好きか」
「はい!大好きです!」
「そうか。好きか」
「はい!!」
「…俺のことは」
「はい!大好きです!」
「………」
「食べちゃいたいくらい大好きです(にっこり)」
「………そうか」
「(あ、照れてる照れてる)大好きです!」
「……食べられないけどな」

62384 2/2:2009/04/25(土) 20:42:39
「そんなことないです。食べちゃいたいです」
「ちょっ、お前っ…洗い物してんだから邪魔すんな!尻を触るな!」
「じゃあ終わったら触ってもいいんですか?」
「駄目に決まってんだろ!」
「えー。じゃあ抵抗されにくい今のうちに触りまくります」
「ちょっ…アホ…やめっ……邪魔…」
「ああ柔らかいなぁ。顔埋めていいですか?いいですね。埋めます」
「いいですかって聞いておいて返事も待たずに埋めるな!」
「いやぁん尻―」
「邪魔だ!相手なら後でしてやる!どけ!」
「ほんとですか?言いましたね?ちゃんと聞きましたから。
 待ってますからさっさと終わらせてくださいよ」
「やかましい!」
「はい。プリンの容器。ちゃんと持ってきましたよ」
「………」
「無視しないで下さいよー。淋しいじゃないですか」
「……8主」
「何でしょう?」
「………俺も好きだ」
「………」
「………」
「っはい!僕も大好きです!」


そして2人で、プリン味のちゅーをした。

624名無しの勇者:2009/05/06(水) 00:22:33
ちょっと気になったから訊かせてほしいんだけど、
ここって雑談スレ以外のネタスレは需要ある?

625名無しの勇者:2009/05/06(水) 11:28:29
とりあえず投下してみたらどうだろう
該当スレ知らない人も新たな萌えに目覚めるかもしれない

6267×3 1/3:2009/05/20(水) 03:37:03
7主「っもう、またあやしいサイト観てる〜」
3主「健全な16歳男子がオパーイに興味持って悪いか」
7主「でも3主さんてどっちかっていうと男にモテる方だよね?」
3主「違う! 基本ロトの勇者は男女問わず人気あるの!
   でも3女が極端に女にモテるから、変に比較されて誤解されてるだけなの!」
7主「そうなの? でも僕、どうも3主さんって……」
3主「なんだよ」
7主「見てたらいじりたくなってくるんだよね……」
3主「なんだその目は。指ワキャワキャさせんな。にじり寄って来るな」
7主「なに怯えてるのさ、エロ撲委だよ? 変なことするわけないじゃない」
3主「そう言いながら押し倒されてるんですが! そして身体中をなぜ回されてるんですがぁ!」
7主「ほら僕宿舎の風紀委員だし。健全な16歳男子が2次にハマって人生終了するのを黙って見過ごすわけにいかないもん」
3主「それはエロゲの女を本気で俺の嫁宣言してるような廃人だろ! 俺はちゃんと3次派だ!」
7主「そうなの? ごめん僕そういう知識はうといから」
3主「いやお前絶対わざと間違って解釈してるだろ!?」
7主「とか言いながら3主さんも期待してるんでしょ? さっきから全然抵抗してないしw」
3主「いや激しく抵抗してるから! てめえの最強ステータス相手にどうしろってんだ!」
7主「どうもしなくていいよ。わかんないでしょ? 僕がリードするから」
3主「なにをだ…って、うわやめっ! ちょっ、マジでそこはっ……ああっ」
7主「ほら、他人のオパーイなんか見てるより、自分のいじられた方が遥かに楽しいと思うんだけど」
3主「いやそれとこれとは別……はうっ、そんなとこ触んな!」
7主「やっぱりいじり甲斐あるなぁw こんなに感じやすいなんてね。
   ねえ、ベルトで手しばっちゃってもいい?」
3主「いいわけねえだろ! ってかすでに実行してるしぃぃ!」
7主「僕の手が空かないんだもん。さてどうしようかな。実は僕、ぶっちゃけ掘る趣味はないんだよね」
3主「はぁあ? じゃあなんでこんなこと……あうっ、待っ、やめ……これ以上はもうっ……!」
7主「ほら僕、基本MだけどドSでもあるから。見てる方が好きっていうか」
3主「な…んだよ! なに言ってるかわかんねえよ! あっ…や…ぁ……!」

7主「ふふっ。ねえ3主さん――羊さん喚んでもいい?」

6277×3 2/3:2009/05/20(水) 03:44:22
3主「……な…に?」
7主「大丈夫、しっかり躾けてるから、そこらの奴よりよっぽど上手だと思うよ♪」
3主「い、いやだ! そんなの、そんな、本気で……!?」
7主「モフモフしてあったかいし、体力あるし、きっとご満足いただけるかとw」
3主「やだやだやだ、いやだぁ!」
7主「特別大サービスで20頭くらい喚んであげる♪ きっと頭おかしくなっちゃうだろうねw」
3主「やめてくれ! やだ、助けて……!」
7主「そ・れ・で・は……羊さーん!」
3主「いやあぁぁぁあーー!!」






3主「……ヒック……やだぁ……ヒック……」

7主「――じゃあもう変な画像とか見ない?」
3主「ヒック……え?…」
7主「ずっと引きこもって当番サボったり、ご飯なのにいつまでもゲームしてたりしない?」
3主「し、しない……です……」
7主「本当に? 嘘ついたら羊さん喚んじゃうよ?」
3主「しません! 絶対しません! 約束するから、だから……ヒック、ヒック……」7主「はいはい、わかったらいいよ♪ 冗談だから泣かないで、ね? ほら手もほどいたから」
3主「ふ、ふええぇぇん!」
7主「よしよしw すっかり震えちゃってるね〜。怖かった?」
3主「怖いに決まってるだろ! ひでえよ、俺、本気で……」


7主「でも次は本気で羊さんだよ?」
3主「!!」
7主「だからイイ子にならないと、ね……?」

6287×3 3/3:2009/05/20(水) 03:54:36
7主「――という方法で良ければ、僕が3主さんをしっかり更正してあげるよ?」

1主「ふぅ……。あのな、7主。こちらから相談した手前あれなんだが……

   そんなん許せるわきゃねぇだろぉがぁあ!!
   うちのご先祖になにさらす気じゃクソガキがブチ殺すぞワレぇあぁぁぁぁあああ!!!!!」
7主「うわちょっと1主さん落ち着いてなにこのステータス無視した攻撃力うぎゃああああああ!!!!」




3主「うるせーな、さっきからなに隣でゴチャゴチャやってんだ? 2chに集中できねえじゃねえか」カタカタカタ…





なんか急にご先祖を苛めたくなっちゃいました。
ガチじゃないので許してください。

629名無しの勇者:2009/05/20(水) 20:00:07
ご先祖のためなら最強を超えられる1主に萌え(´∀`)

630名無しの勇者:2009/05/21(木) 03:45:40
1主賢者タイム自重www

631名無しの勇者:2009/05/24(日) 03:26:13
「ふぅ……。」てとこはやっぱ賢者タイムなのかwww

泣いてる3主は萌えるな!

632名無しの勇者:2009/05/24(日) 10:08:13
以前本スレで、3主に羊さんの世話をさせようってネタがあったけど、
もしやその「お世話」ってそういう意味だったのか!?w

633名無しの勇者:2009/05/24(日) 16:18:16
>>632
ちょwおまw萌えるwww

634羊×3(エログロ?要注意!!)1/3:2009/05/24(日) 16:21:30
>>632
それならばと実際にやってみたら、なんかエログロになっちゃった……;
結構ハード?だと思うんで、要注意。




 青い空と緑の草原。爽やかな風が渡る牧場に、
 そこだけ不穏な空気に包まれた一角があります。

3主「いやあ!助けて!お願いやめて! やめ…あぁっ…!」
7主「でも3主さんだってやるって言ったでしょ?
   みんなで決めたことなんだし、頑張って羊さんたちの『お世話』してよ」3主「そ、そういう意味じゃな……あうっ、ああ…!」

 そこには足を広げられ、あられも無い格好で柵に拘束されている3主の姿がありました。
 白い裸体の数ヵ所から、小さなモーター音がしています。

7主「さすがに羊さんに細かい愛撫は難しいから、乳首と裏筋のローターは僕からのサービスだよw」
3主「やだよぉ、うっ、外してぇ…はうっ…あっあっ……!」
7主「じゃあまずこの子からね。おいでー」

 7主に呼ばれ、群れの中から1匹がにじり寄ってきました。
 目の前に突き出されている尻の割れ目を舐めたり匂いをかいだりしていましたが、
 やがておもむろに立ち上がり、そして……。

3主「ひぎぁ!痛い!あぐ!ひぁあ…! は…うぐぅ!」

 一気に貫かれ3主は泣き叫びますが、羊さんは気にもしません。
 容赦なく突きまくり、激しいピストンに柵ごとギシギシ揺れています。

3主「ああっはうっ…あっあっ…やぁあ!」

 もはやローター程度の刺激など吹っ飛び、最大まで押し広げられた穴はすぐに痙攣し始めました。
 あまりの激しさに、これが苦痛なのか快感なのかも定かではありません。

7主「どう3主さん、すごいでしょ。こっちの要望なんてお構い無しで犯されまくる感じで。
   これが獣姦の醍醐味ってやつなんだろうね〜。僕は死んでも御免だけどw」

 7主の言葉も耳に入りません。
 下半身に叩き付けられる感覚に、今にも意識が飛びそうです。

3主「ああっ……もうやめっ…お願……あぐっ…あっ……!」

 羊さんの営みがさらに激しさを増し、とうとう熱い液体が放出されました。
 人とは比べものにならないほど大量に注ぎ込まれ、内臓が圧迫されます。
 羊さんのソレが抜かれると、だらしなく拡がったままの後孔から溢れ出して、
 内股や足元の地面をべったりと濡らしました。

7主「よしよしすっきりしたねー。なに、そこらのメスより締まってて気持ち良かったって?」
3主「あ…あぅ……」
7主「じゃあこの調子で、他のみんなもどんどん『お世話』になっちゃおうねw」
3主「いやだ! もう許してぇ!!」
7主「でもこの子だけじゃ不公平だし。それじゃ僕、漁に行くから、
   あとはみんな仲良く順番に楽しんでね。夕方には迎えに来るから」
3主「行かなっ…行かないで! いやっ、助けて! いやぁぁあ!!」

635羊×3(エログロ?要注意!!)2/3:2009/05/24(日) 16:25:29
 7主が行ってしまうと、羊さんたちが一斉に群がってきました。
 どんなに泣いても懇願しても、羊さんたちにはまったく通用しません。

3主「もうやめてっ…! あうっ、苦し…!」

 次々に突き込まれ、大量に注ぎ込まれて、あっという間に胃まで満たされてきました。
 今や3主のお腹は妊娠したようにぽっこりと膨れています。

3主「あ…うそ、ダメ……いやっ、ダメぇ……うぐぇぇえ!」

 さらに何頭かに犯されたところで、ついに堪え切れず口から吐いてしまいました。
 鼻も口も生臭い匂いが広がり、余計に嘔吐感を促します。
 後ろから入れられた獣の精液を口から出してしまったということに、人としてのプライドは粉々です。

3主「だ、誰か…もう…殺して……あっあっ、はうぅ……!」

 何度も吐いて息も絶え絶えですが、羊さんたちは容赦なく責め立てます。
  ときどき間が空いても、ローターの刺激が戻って来るためちっとも休まりません。

3主「はうっ…あう……うぐっ……」

 狂った宴は本当に夕方まで続きました。
 やがて7主が戻って来ましたが、3主は柵に寄りかかったままぐったりしています。

7主「ただいま3主さん。今日はありがとね〜。大丈夫?」
3主「…あ…う……」
7主「おーい。あらま、すっかりおかしくなっちゃった? まあ当然かもだけど。
   とりあえず今きれいにしてあげるからね。まずこれで栓をしてと……」

 7主はプラグを取り出し、3主の後ろの口にズプリと差し込みました。
 かなり太いプラグでしたが、羊さんにめいっぱい拡腸されたためすんなり飲み込みます。

7主「ごめんね、こうしないと羊さんたちのが漏れてきて、洗ってもまた汚れちゃうから。
   じゃあちょっと冷たいけど我慢してねー」

 近くに羊さんの飲み水などを汲むための水道がありました。
 ホースを繋げて3主の身体を一気に洗浄します。

3主「ひ……!」

 急に冷たい水をかけられ、3主の身体は縮み上がりました。
 あそこもキュッと締まったので、7主が挿入したプラグはもう自力では抜けません。

7主「はいおしまい。さすがに疲れたろうから、今日はこの近くの納屋に泊まりなよ。
   羊さんたちにたっぷり飲まされたみたいだし、ご飯いらないでしょ?」

 そう言いつつ、7主は3主から拘束具やローターを外し、羊毛で編んだ柔らかい布でくるみました。
 そしてその上から拘束用のベルトでグルグルにしばってしまいました。
 す巻き状態の3主をひょいっと抱えて納屋に運び、ワラの山の上に転がします。

7主「今日はご苦労様でした! じゃあゆっくり寝てね。明日もまたお願いね♪」
3主「う…ぅ…」

 こうしてその日の仕事は終わりました。
 羊さんの『お世話』はその後数日間も続き、帰ってきた3主は「ヒツジ」の一言だけで何でも言うことを聞く、
 たいへん素直ないい子に変わっていました。

636羊×3(エログロ?要注意!!)3/3:2009/05/24(日) 16:28:59
7主「――とまあ、実際にやったらこんな感じだね。
   青姦、獣姦、輪姦、ある意味放置プレイも入ってるかな?」
1主「ふぅ……。あのな7主、つい興味が沸いてこちらから聞いたのにあれだが……

   そんなんじゃ更正どころか廃人確定じゃぁあ!!!
   この変態サドガキがてめえが羊に輪姦されとけやボケぇぇええ!!!!!」
7主「うわ待って1主さん聞いてちょっと脚色したけど実はうぎゃああああ!!!」


3主「うるせぇぇ!! さっきから聞いてりゃ人を肴になんつう会話してやがんだ!」
1主「あ、ご先祖! 大丈夫だ、今すぐこのエロガキ成敗するから!」
3主「当たり前だ、勝手なことばっかほざきやがって!
   この俺が、たかが10頭や20頭の畜生を相手にしたくらいで人格崩壊するか!」
1主「…………………え?」
3主「そりゃ最初はちょっとビビったけど、慣れたら病み付きになったくらいだぞ。
   なあ7主、今日もいいだろ? 昨日からプラグ入れっぱなしでウズウズしてんだけど」
7主「いやあの、羊さんにも体力の限界っていうのがあるから……。
   こう毎日だと本業にも差しつかえるし」
3主「ええ〜!? 我慢できねーよ!
   あの無理矢理プラグむしり取られるところからの乱暴なスタートとか、
   昨日の羊さんのアレがドロっと出てきて、興奮した羊さんがまたムチャクチャに突いてきて、
   これでもかって熱いのが注ぎ込まれると、もうワケわかんなくなっちゃうのとか……!
   確かに腹一杯になって吐く時はちょっと苦しいし気持ち悪いけど、
   あの人間やめたくなるような屈辱感とか、それでも快楽感じちゃってる背徳感とか、
   ああんもう、思い出すだけでゾクゾクしちゃうのにぃ!」
1主「そ、そんな……うちのご先祖がこんな変態に……」
3主「ほら早く7主、今すぐ牧場に行こう! 別にここに喚んでもいいぞ!」
7主「いやだから今日の『お世話』ナシだよ。ってかどっちのお世話かわかんなくなってきたよ。
   3主さんだってまともなご飯も食べないと身体に悪いし、もうやめた方がいいよ?」
3主「んだとコラ! 誰が俺をこんな身体にしたんだ、ああ?
   いいから喚べよ。もちろん一匹でも途中でご奉仕がおろそかになったら、
   全匹かっさばいてジンギスカンにしてやるけどな!」
7主「ひぃぃ! 羊さん食べないで〜!」
3主「それとも7主が相手してくれんのか、羊さん数十頭分」
7主「無理だよ! たとえ5主さんだって死んじゃうよ!
   まさかこんなことになるなんて……。ねえ1主さんなんとかしてよ!」
1主「あは…あはは……ご先祖が……変態に……」
7主「ああ、1主さんが廃人になってるし!」
3主「おい7主! 早く羊さん喚べ! 羊さんー!」
7主「誰かこの変態勇者なんとかしてぇぇ! このままじゃ羊さん全滅しちゃうよ〜!!」

637名無しの勇者:2009/05/24(日) 20:52:20
>>634-636
(´д`*)ハァハァ
(´д`*)リンカーンハァハァ
なかなか見れないジャンルだったから楽しませてもらったよ!
お腹いっぱい満足しますた!

638「体格」:1+4+α:2009/05/25(月) 01:40:54
本家からネタをお借りしました。匂い薄めです...

 7主「うわっ」
 よろけた7主を支えたのは、家から出てきた1主だった。
 「大丈夫?」
 「あ、はい、ありがとう1主さん...どうしました?」
 支えてくれる1主の顔を見上げると、怪訝そうな顔をしている。
 「7主さん、大丈夫?」
 ばたばたと走りよってきたのは8主と4主だった。
 「また喧嘩してたのか、お前ら」
 一種と一緒に出てきた3主が呆れたように二人を見ると、二人は互いにそっぽを向いている
 「1主?」
 視線を戻し、7主を見ようとした3主も、駆け寄ってきた8主も4主もそこで1主が7主を支えたまま怪訝そうな顔をしていることに気づいた。
 「どうした?」
 「あ、ごめん。7主。4主、ちょっと来て」
 4主が問いかけると、1主は7主を起こした後、4主を手招く。
 思わず7主の顔が引きつり、慌てて3主のほうに駆け寄る。4主はそんな7主の行動に気づいたが、何時ものことなので何も言わず1主の言葉に従った。後ろでは8主も首をかしげている。
 「なんだ?」
 「いや、ちょっと確かめたいことがあって。いいか?」
 「確かめたいこと、ですか?」
 1主の問いに答えたのは問われた4主ではなく8主だった。4主は先ほどの1主と同じような顔をしているが、戸惑いながら頷いた。
 すると、1主はかがんで、4主の膝裏に手を差し入れた。
 「うわっ!?」
 「1主?」 
 「「1主さん?」」
 何時もローラ姫を抱えているからか、驚いて身を強張らせた4主をいとも簡単に抱き上げる。
 いわゆる、お姫様抱っこというその行動に、見ている全員が固まった。
 「う〜ん。やっぱり」
 1主だけが、うんうんと頷いている。
 「1主?」
 何時も悪ふざけをする6、7、8や、5、3などと違い、真面目な1主の取った行動に、4主は固まった首を無理やり見下ろしてくる相手に向ける。
 「な...」
 「な?」
 答えようとした1主は、地獄の其処から響いてくるようなおどろおどろしい声に前方に意識を向けた。
 そこには、真っ黒に近い紫色をまとった8主。何時もの見た目だけの穏やかさをかなぐり捨てている。
 その瘴気の濃さに他のものたちも正気に返った。
 「な、ナにやってるんですかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 あたり一面に響き渡る怒声に、宿舎の中でくつろいでいた5主、6主も顔を出している。
 「なにって、体重量った」
 「「「「「「は?」」」」」」
 怒り狂っている8主にちょっと腰を引きながら、1主は抱き上げた4主を見下ろし、答えた。

639「体格2」:1+4+α:2009/05/25(月) 01:42:38
 「...なんでだコラ?」
 4主の額に皺がよるが、1主は気にせず答えてくる。
 「いや、さっき7主支えただろ?そんとき思ったんだけど」
 「なにが!?」
 「以前、抱えた4主と殆ど変わらないなあって。それで確認した」
 「抱えたっていつだい?」
 「4主とはじめてあった時」
 「そーいえば、はじめてあった時、「今までともに旅をすると言うと俺が運ぶものだった」とかいって抱き上げたな、お前...つーか、降ろせっ!」
 いい加減耐え難いのか、怒鳴る4主に1主は素直に従い、ゆっくり降ろした。
 「流石にローラ姫のほうが軽いが、お前、殆ど代わらないぞ?メシ食ってるか?」
 普通に考えたら、1主は心配して言ってくれている、というのは分かる。
 主人公達の中でも長身に含まれる4主と一番小柄な7主の体重が同じぐらいで、尚且つ7主は太っているわけではない。常識的には、4主がかなりやせているのでは、ということが結果として出る。
 「...(ーー#)」
 「ひぃっっっっ!!」
 「「「「ぷっ」」」」
 本人が気にしていることをずばりと指摘してくる1主に、4主の眉は顰められ、7主は3主の後ろに隠れ、3主、5主、6主、8主は素直に噴出した。
 「あははははははっ!1主さんナイスっ!」
 「ぷっくくくくくっ流石俺の子孫。着眼点最高っ!」
 「確かに4主ほっせぇもんなぁ。しかも其れをダブダブの服であざとく隠してるしっ」
 「く、くくくくくくっ。わ、悪いよ。彼は親切で言っているんだから。ね...あれ?」
 「おや?なんか魔法使ったような疲労感が急に...」
 「あれ?本当ですね?これってもしかして...」
 「って、7主居ないぞ?いつの間に!?」
 「あ、なんか遠くに羊の群れらしきものが遠ざかっていくのが見える」
 「うん。流石戦闘力ピカ1。とっさの判断が素晴らしいよね。ところで、パパ、この感覚覚えあるんだけど」
 状況がいまいち分からない1主を含めた全員が視線を上げると、其処には両手に魔力を宿らせた緑髪の魔王が光臨していた。
 「...いっぺん死んで来いっ!お前らぁぁぁぁぁぁっっ!ミナデインッ!!!」
 「「「「「ぬわーーーーーーーっ!!?」」」」」



 「ただいまー。あれ?」
 「おう、おかえり。ロンダルキアはどうだった?」
 「サマルがまた棺桶入ったんで帰ってきたぞっ」
 「...おつかれさん。今、なんか美味いものでも作ってやる」
 「おおっ!4主の飯美味いから好きだぞっ!あ、そだ。表に炭が転がってたけど、なんだあれ?」
 「...ああ、あれはほうっておいていい。ただのごみだ。後で回収しておくから」
 「そうなんだ。5つも転がってたぞー。ご飯食べたら俺も手伝うぞっ!」
 「ありがとう。2主はいい奴だな...アノデリカシーノナイヤツラトチガッテ」
 「おうっ!」

640名無しの勇者:2009/05/26(火) 20:49:08
>>638
2主に和んだwww

641名無しの勇者:2009/05/27(水) 00:18:44
姫抱っこは正義
そういやいきなり抱きかかえるネタあったなw

642名無しの勇者:2009/05/28(木) 15:14:15
羊さんと3主、たまたま本スレ25見たら、
「3主さんより羊さんの方が大事」
「俺が羊の餌になる方が現実的なのか」
みたいな会話しててドキドキしたw

643彼にとっての…1/3:2009/05/29(金) 01:42:16
638を投稿した者です。
>>640さま
>>641さま
つたない作品にお返事ありがとうございました。
それに励まされ、相変わらず匂い薄めながらも投稿させていただきます。

 緑豊かな平和な村。
 道行く人々はみな顔見知りで、歩いているといきなり剣だの魔法だので襲い掛かってくるお茶目な人が多いが、それでも時間はゆったりと流れていた。
 「いつまでも一緒に…」
 幼馴染の少女が微笑む。頷き、差し伸べられた手を取ろうとした瞬間、背後から爆発音が響いた。
 自分の手を取って走る師匠。薄暗い地下室の埃の匂い。そして、捕まれた手の暖かさと、目の前で己の姿を写し取る少女。
 まって、と手を伸ばそうとした少女は、もう一つの呪文を唱えた。
 それは、一時の強制の眠りをもたらすもの。
 伸ばされたては、少女に届かぬまま闇に包まれた。
 「……っ!」
 手を伸ばしたポーズのまま、起き上がり、そこではじめて其れが夢だと気づく。
 額に張り付く髪を書き上げ、窓の外を見ると、淡い月の光が窓から差し込んでくる。
 「…夢…か」
 首を軽く振るが、不快感は消えてくれない。
 暫く考え、4主はベッドから床に足を下ろした。



 幸い、意外と広い宿舎は、夜にシャワーを浴びても、誰の迷惑にもならない。
 お湯ではなく水を浴びると、意識がはっきりとしてくる。
 流れる水を拾うかのように広げた掌は、農業をやっているにしては日焼けせず、青白い。
 かって、この手は真っ赤だった。失われたものを取り戻すことなど出来ないとわかっていながら、ただひたすら、あの時、眠りの中で聞いた名前にたどり着くため、モンスターを屠り続けた。
 如何して村が襲われたのか、如何して自分が狙われたなのかなど、父や母の言葉だけではよく分からず、ただひたすらに力を求めた。
 戦いから離れたいまでも、命を奪う感触も、命を失う感触も、この手には残っている。
 壁に縋るように寄りかかる。
 己の口を塞いだ手から、水音にかき消されてしまうような小さな嗚咽が漏れた。

644彼にとっての…2/3:2009/05/29(金) 01:43:19
 水を取りにキッチンに向かうと、其処には先客がいた。
 キッチンから続くバルコニーに、月を見上げる影が二つ。
 「3主、5主…」
 声に気づいたように二人は振り返った。5主がにっこり笑って手招く。
 その手に導かれるようにバルコニーに出ると、3主が手をひらひらと振ってくる。
 「5主、帰らなかったのか?」
 生活の主体を此処においている3主と違い、国に家族がいる5主は、イベント以外は殆ど自宅に帰っている。その彼が夜、ここにいるのは珍しい。
 「一度帰ったんだけど、良いお酒が手に入ってね」
 5主が指差した大きな瓶には、透明な液体がかすかに揺れる。
 台所を管理している自分が見たことがないものだから、言葉どおり持ってきたものなのだろう。
 「そうしたら、見事な月夜で、ついね」
 5主の言葉に3主が頷き、4主に席を進めた。ちょうど二人の真ん中を指差され、一瞬躊躇うものの、再度促されて従う。
 手渡されたのはグラスではなく湯のみ。鼻を近づけると、アルコールの匂いのほかに、この前下ろしたばかりのお茶の匂いがする。
 「お茶割り。美味いよ?」
 促されるまま一口含むと、さわやかな緑茶の香りが口内に広がる。
 好みの味にもう一口飲むと、3主も5主も笑っている。
 「…芋焼酎?」
 「そう。嫌い?」
 5主の言葉に小さく首を横に振り、もう一口飲む。
 癖がある酒を緑茶のさわやかさが緩和している。好みの味だな、などと考えていると、3主が嬉しそうに笑った。
 思わず視線で問いかけると、3主は湯飲みを置き、4主の額を指出す。
 「いや、そーゆー笑い、久々だなって」
 その言葉に湯飲みを見下ろすが、自分の表情は見えない。首をかしげて5主を見ると、5主も微笑んでいる。
 その穏やかな微笑みは父親の笑みを思い出させた。すると、3主の方から手が伸び、酒が更に注がれる。
 「ほら、飲め飲め。今飲まないと、他の奴らに飲みつくされちまうぞ?」
 二人に促されるまま、湯飲みを傾ける。
 どこまで気づかれているのかは分からない。ただ、この二人がここにいて、自分を待っていたのだけは確かだろう。
 だって、湯飲みは三つある。
 4主は頬を綻ばせた。
 自分は一人になってしまった。だけど、此処には仲間がいる。失われた命ではないけど、それでも掛替えのない仲間が。ここだけではなく、自分の世界にも。
 こうやって、夜中に起き出して一緒に月見を楽しんでくれる仲間が。
 穏やかで静かな月夜の酒宴は月が沈むまで続けられた。

645彼にとっての…3/3:2009/05/29(金) 01:44:01
 「おっはよーって、5主だ、珍しいな!あ、遠いほうのご先祖も起きてるー」
 「おーう」
 「…おはよう」
 元気良く飛び出してきた2主は、ダイニングテーブルに突っ伏している5主を覗き込んだ。
 横では、3主が頭を抱えている。
 掠れた声でもきちんと聞き取ったのか、2主は元気良く返事を返してくる。その大きな声は、容赦なく二日酔いの頭に響く。
 のた打ち回る二人には気づかず、キッチンから香ってくる良い匂いにつられ、2主はキッチンを覗き込んだ。
 「おっはよー。4主」
 「ん。おはよう。顔洗ってきたか?」
 「うん!ねえねえ、4主、それ、何のスープ?」
 くんくんと良い匂いに鼻を鳴らしながらキッチンに入ってきた2主は、4主がかき混ぜている鍋を覗き込んだ。
 「ああ、味噌汁だ」
 「ミソシル?」
 聞いたことがない名前に2主が首を傾げる。
 4主は小皿を取り、スープを少しだけ入れて味を見ている。そして、2主のために、もう一度小皿に少しだけスープを入れた。
 「味見てくれ。熱いからちゃんと冷ませよ?」
 「うんっ…あ、うまいっ♪」
 途端に上機嫌になる2主から、4主は小皿を受け取った。
 「そうか。2主、スープ皿出してくれるか?」
 「ああっ!俺手伝うッ!…あれ?」
 食器棚に向かおうとした2主が振り返る。4主も釣られたように其方を向くと、2主が此方を覗き込んでいた。
 「どうした?」
 じーーと凝視され、少々居心地悪そうに鍋に視線を戻すと、2主が更に覗き込んでくる。
 「2主?」
 「めずらしいぞ?」
 心底珍しそうな声に顔を上げると、嬉しそうな2主の顔が飛び込んでくる。
 「?」
 「4主、笑ってる。なんかいいことあったか?」
 無邪気な問いかけに4主は、今度こそ鍋に視線を戻し、食器棚を指差した。
 「…そうだな。とりあえず、皿を出してくれ。今日は5主の分もだぞ?」
 「あ、はーい」
 慌てて食器棚に向かう2主を視線だけで追い、4主は再び微笑んだ。



おまけ
 「うっわ、1主さん5主さんお酒臭いっ!」
 「ほんとだ。大丈夫か?二人とも」
 「オジさん二人で酒盛りなんていやらしー」
 「見事に潰れてんなー」
 「大丈夫?」
 「…二本も飲みつくすとは恐れ入った」
 「だなぁ。ワクとは思わなかったよ、パパ」
 「ワクってなんだ?」
 「2主。よそ見するとスープが零れる」

646名無しの勇者:2009/05/30(土) 22:12:36
いいなあ、みんな仲良くて和みます
2主かわいいよ2主

647「ムヒョウジョウ」1/4:2009/05/31(日) 01:02:57
調子にのって第三弾。
前二つよりは匂い濃い目……が、エロなしです。
ピュアピュア視点ですので……。

 カリカリとペンの音が響く。先ほど行った簡易テストの採点をしている4主を2主はじっと眺めていた。
 ここはDQ主人公たちが集まる宿舎。2主はロンダルキアから時々ここに訪れ、遊んだり食べたり、そして現在は4主に勉強を教えてもらっっている。
 『なんで、みんな4主のことムヒョウジョウだっていうんだろう?』
 2主は首をかしげた。仲間たちはみんな4主のムヒョウジョウだっていう。ムヒョウジョウって何だ、と4主に聞いたら、表情がないことだって教えてくれた。
 『そんなことないのに…』
 さらさらと滑るペンを持つ手が止まり、小さく目を伏せる。あれは、困った顔。多分問題が間違っていたのだろう。
 2主は申し訳なくて、小さくなる。
 だって、2主はずっと4主に勉強を教えてもらっているのに、4主は今もたまにあんな顔をする。
 再びさらさらとペンの音がする。そして、今度は鋭い眼差しがかすかに緩む。これは、笑み。
 多分問題があっていたのだろう。手が丸の形を描いたから間違いない。
 2主はうれしくなった。4主はぜんぜんムヒョウジョウじゃない。いつだっていろんな表情を浮かべている。
 再びさらさらと手が滑り出す。かすかに俯いて採点する4主の顔は真剣だと誰が見たってわかる。
 手が止まり、ぱちりと瞬き。それからまたさらさらという音。
 『マツゲ長いなあ…目もキレイだな』
 4主はどこを見てもキレイだ。それを行ったら、3主、1主、5主に笑われた。
 農業をしながらもあまり焼けない白い肌も、森の色の髪の毛も、紫の目もキレイだといったらまた笑われる。
 『あれはカッコいいっていうんだよ』
 『もしくはイケメンだな』
 1主の言葉に大きくうなずく。3主の言葉はわからなかったけど、同じ意味かなと思ったので同じくうなずいた。
 でも、カッコいいのは1主も3主も5主もだ。
 4主は違う気がするといったら、今度は5主も笑う。
 『確かにキレイだね』
 キャシャダシセハタカイケドホソイシカオハトトノッテルシメツキワルイケド。
 三人の言葉が全部わかったわけじゃないけど、4主がキレイだって思っているのは分かったので嬉しくなった。
 特に目がキレイだと思う。ロンダルギアでは見れない色で、どっかで見た色だ。
 「…2主?」
 声に驚いたように顔を上げると、目の前に4主の顔があった。
 突然に驚いてのけぞると椅子が傾く。
 「うわっ!?」
 「ととっ…大丈夫か?」
 転んだと思ったそのとき、伸びてきた手が体を支えてくれる。思わず手を見て、それから4主を見た。
 4主は手が長く、背も高い。でも、腕自体は俺より細いのにとても力持ちだ。
 「ありがとう!」
 「どういたしまして」
 お礼を言うと、また目が緩む。笑ってくれたのが分かったので嬉しくて笑い返した。

648「ムヒョウジョウ」2/4:2009/05/31(日) 01:04:11
 「で、どうした?」
 体を起こし、元通り座ると聞こえてきた4主の声。
 「何が?」
 4主をじぃっと見ると、4主が「それだ」といった。
 「いつの間にか、テストじゃなくて俺を見てる。顔になんかついてるか?」
 4主の手が自分の頬を撫でる。現役の戦士ではないとはいえ、剣の稽古を欠かしてないはずの4主の手は、剣だこが目立たなくて、白くて長くてキレイ。
 『うん、またキレイなとこ見つけた』
 「2主?」
 再び4主の声。あわてて2主は首を振った。
 「ごめん、何もついてない。ただ」
 「ただ?」
 4主の視線が向けられ、なぜか恥ずかしくなって2主は俯いた。しかし、すぐに顔を上げる。
 『人と会話するときは相手の目を見ること』
 これは親から教わったこと。4主にいったらほめてくれた。
 「キレイだと思った」
 「は?」
 怪訝そうな声。4主は目を見開いている。
 『あ、この顔はキレイじゃなくてカワイイ』
 「4主の目、キレイだなあ、って思ったんだ」
 まっすぐ目を見て言うと、4主は再び瞬き、それからついっと視線をそらした。
 「そりゃ、どうも…」
 「4主?」
 視線を合わせてくれない4主を見ると、手のひらで顔を覆っている。キレイな顔も目もほとんど手のひらで覆われてしまっている。
 ちょっとだけのぞいた耳はとっても赤い。
 『これじゃあ、4主の目が見れない』
 ちょっとむっとして、手を引っ張ろうとしたら、4主は自分で手のひらをどけてくれた。
 「いったいなんなんだ…」
 ちょっと疲れた声。これは問題がまったくできなかったときの声と同じ。がっかりさせたのかと考えていると、4主は小さく口の端を上げる。
 これも笑い。でもあんまり見たことないものだ。
 「4主?どうしたの?」
 「いや…ほめてくれてありがとうな?」
 顔をあげると4主はいつもの顔。でも目元がちょっとやわらかいのでまた嬉しくなった。
 「うんっ!あ、そーだっ!」
 勢いよく顔を上げた俺に4主がちょっとのけぞる。
 「どうしたんだ?」
 「ねえ、4主の目の色ってどうやって書くんだっ!?」
 ちょうど今やっていたのは漢字のテスト。せっかくなので聞いてみた。漢字教わったら、どこで見た色か分かるかもしれないし。

649「ムヒョウジョウ」3/4:2009/05/31(日) 01:05:22
 「目の色?う〜ん」
 しばし考え、テストではなく、横に置いてあったメモに4主は書いてくれた。
 差し出されたメモを見たが…。
 「いと….分からない」
 がっくりうなだれると、4主の手が帽子を取っていた俺の頭に載せられる。なでなでは嬉しいが、それより目の色の名前を知りたい。
 4主はメモを再び取り、下におっきくひらがなを書いてくれた。
 「し、あん?いとじゃないのか?」
 「ああ。この先の字がムラサキで、シと読む。次がヤミでアンと読む。で、紫闇(シアン)というらしい。昔仲間が言ってた」
 「仲間?」
 なんで自分の目の色なのに仲間に聞いたんだろう?とりあえず分からないことは聞いてみる、を試すと4主はまた口を小さく上に上げる。
 「色の名前は沢山あるんだ。だから、俺もよく知らなかったんだよ。ああ、ちなみに」
 再びメモにさらさらと漢字を書き、その上にひらがなを書いてくれた。
 「こんぺき?」
 「そう。これがお前の目の色。紺碧(コンペキ)。黒みを帯びた紺色って意味だ。この先の字が紺色のコン、碧ってのはアオ、だな。この名前がついた石があって、聖なる石ともいわれてるんだぞ。とても、キレイな色だな」
 4主の言葉に、顔が熱くなる。なんだろう?褒められたから嬉しいんだろうか?
 「4主のは?」
 尋ねると、4主はまた頭を撫でてくる。今度はちょっとおざなりだ。
 「今いったぞ?紫は分かるな?闇は暗闇とか、あー、つまり、真っ暗ってことだな」
 再び口の端が上がる。伏せられた目はキレイな目の色が隠れてしまうのでちょっといやだ。この表情もキレイだけど、なんか嫌だ。
 だから俺はあわてて4主の服を引っ張った。
 「違うぞ?4主真っ暗じゃないぞっ!」
 かがんでくれた4主の目が再び瞬く。その色を見て、その後ろに見える窓を見てやっと俺はその色をどこで見たか思い出した。
 「4主の目の色、あれだっ!!」
 服を引っ張った腕で、4主を窓のほうに向かせる。窓から見えるのは、夕日が沈むところ。空が淡い紫に染まるその光景が、2主は好きだ。
 「この色だっ!真っ暗じゃないっ!」
 さっきの顔はやめてほしい。口は笑っているのに泣きそうな顔は、2主も一緒に泣きたくなってしまう。
 「2主、痛い…」
 「え?あ、ゴメンっ」
 躊躇いながら告げられた言葉に、2主はあわてて手を離す。それでなくても自分の力がとても強いのは知っている。
 こんなことで4主を怪我させるのは嫌だ。
 あわてて手を離す2主が顔を上げると、再び目を緩めた4主の顔。2主が一番好きな顔だ。
 「…ありがとう、な」
 「どーいたしましてだぞっ!」

650「ムヒョウジョウ」4/4:2009/05/31(日) 01:08:09
 勢いよく手を挙げ、笑うと4主はもう一度頭を撫で、立ち上がった。
 「さて、そろそろ終わりだ。今日は何食べたい?」
 「4主が食事当番かっ!俺、ハンバーグが食べたいぞ」
 「了解っと♪」
 楽しげな声が廊下に響く。
 『こんど、ムヒョウジョウっていってたらいってやろう』
 2主は笑う。4主はとっても表情が豊かだ。自分にはいつも笑ってくれるのだと。
 『あ、でもやっぱりやめた』
 だって、みんながムヒョウジョウだというのなら、これは2主しか知らないことなのだ。だったら秘密にしておきたい。
 『だって、4主の笑みはとってもキレイだから』
 だからこれは、自分だけの秘密。

※紫闇:造語です。こんな色の名前はありません。多分(−−;
一応、続きではないですが、残り3、5、6、7、8と続く予定です。

651名無しの勇者:2009/05/31(日) 08:29:57
2主かわえええ萌える
連作楽しみにしてます!

652名無しの勇者:2009/05/31(日) 20:54:26
イイヨーイイヨー
24萌えにはたまらんです。

653名無しの勇者:2009/05/31(日) 22:32:47
うわぁぁぁぁ。「体格」以外の組み合わせ書くの忘れてましたっ!
ちなみに、以下のようになりますm(_ _)m
「体格」:1+4+α
「彼にとっての…」3→4←5
「ムヒョウジョウ」:24

ではでは、3を投稿します。5は、たぶん来週……。

654過去と今と…… 3→4 1/4:2009/05/31(日) 22:36:04
本家からネタをお借りしました。匂い相変わらず薄めです……。

 魔王を倒した後の感想は、ただ、終わった、だった。
 もちろん達成感もあった。英雄扱いも嫌じゃない。だけど、本当に褒めてほしかった人の手はもう届かないから。
 空を見上げると、きれいな青空。あれを取り戻したのが自分たちという誇りもあるが、それでも、その空の向こうにいるはずの母と祖父、そして神竜の力で復活したであろう父にはもう会えない。
 後悔はしていないが、少し残念だ。
 とりあえず、一ヶ月はのんびりすごした。それから、旅が好きだった仲間はひとり、また一人と旅立っていき、最後に3主が残った。
 仲間たちから定期的に連絡が来るから心配はしてない。だけど、しばらく旅はしたくなかった。
 毎日ぐうたら寝転び、たまに町を散歩する。
 宿代を使い尽くすのもあれなので、小さな一軒家を購入した。ご飯もまあ簡単なものは作れるので大丈夫。
 そうして半年が過ぎ、なんとなく悟らざるを得なかった。もう帰れないのだと。
 後悔はしてない。別れは済ましてきた。一生あえなくても、死んだわけじゃない。そんなこと考えながらふらふらと過ごしていたら、いつの間にか「ニート」といわれた。
 失礼な。別に他人に迷惑かけてないぞ?確かに勇者なんて知られてないけどさ。
 で、やけになって「俺はニート達が幸せに暮らせる国を探す!」なんて冗談でご近所にいって旅に出て…穴に落っこちた。
 しばらく歩いて、出会ったのは紫色のターバンを巻いた男。元戦士の僧侶だと思った。体格いいし。
 しばらく話していると、「勇者」の息子がいるというちょっと変な話。出身国も聞いたことがない国だったので変だなあと歩いていたらはぐれた。
 で、もうしばらく歩いてみると広場について、今度は俺に似た鎧を着てるやつらに会った。
 話してみると、どうも、この二人は俺の子孫らしい。
 変なとこ来ちゃったなーと考えてたら、旅の扉みたいな渦が音を立てる。今までの経験上、また俺の子孫かそれとも先祖かなとか考えていたら、現れたのは一人の男。
 服装はまともだが、俺たちとは違う深い緑色の髪。賢者の髪色も緑だが、それよりずっと深い、森の奥のような深い色。
 最初の二人は俺に似てるかな、と思うが、この男はまったく似てない。
 だけど、どことなく親近感を感じる。なぜだ?まったく似てないのに。
 「そうか、こういう人をびじゅある系って言うんだな」
 2主の声が聞こえてじっくり眺めてみると、確かにひどく整った顔をしている。だけど、それが目に入らないほど、印象的な事があった。そう、多分違うといいながら、否定できないほどの共通点が、男と俺にはあった。
 それは眼差し。正確には、少し前の俺。何かを諦めてしまったような悲しい色の目。
 二人の問いかけにも、言葉少なく答えていた青年は、なんとなく興味を引いた。
 しばらくして、さっきちょっと話した男やら今度は真っ青な髪のでも顔は町人A、ちびっちゃいの、そして、最後にさわやかな笑顔の町人Bが来た。
 いつの間にか、俺にそっくりな女や例の緑色の髪の男に似た女まで現れて、あっという間ににぎやかになり、俺は久しぶりに声を上げて笑った。
 最後に現れた男がこの宿屋を自由に使って良いってんで、早速個室ゲットのために走り出した俺は、途中であの緑色の男が来ないことに気づいた。
 とりあえず部屋を確保してから窓から外をみて、木の影に腰掛けた緑色と、その横に立つバンダナに声をかける。
 慌てて部屋確保に走ってくるやつらの最後尾に、鮮やかなバンダナの後ろから見える深緑。
 俺はほっとして、飯を作るために台所に向かった。

655過去と今と…… 3→4 2/4:2009/05/31(日) 22:39:46
 だけどさ。がんばったら未来にそれなりのご褒美を望むぐらいはいいだろう?
 栄誉だの金だのでもいいけど、やっぱり欲しいのは、大切な人の笑顔。
 少なくとも、生き別れだろうが、俺は家の神さんにいって、一度だけ家族の笑顔をみた。村の人や、旅で出会った人たちの幸せな姿を。
 俺に会えないことを嘆いていたが、それでも俺は無事だと知って笑ってくれた。
 1主は妻に出会えた。5主は奴隷だったが奥さん二人もゲットして、子供までいる。6主も7主も両親健在だし、8主なんて、幼馴染の姫さんゲットだ。
 親がいないとか、家族がいないとか、大切な人と別れたとか、一から十まで幸せって奴はいないが、それでも幸せに終わる。
 だけど、4主は…村を全滅させられ、親は神に殺されたり監禁され、すべてが終わっても誰も待っていない村に一人で帰るだと?
 仲間も別れて…どこに救いがある?頑張った褒美は絶望なんてそんなのありかっ!?
 それどころか、後のリメイクで敵すら救わねばならず、望んだこと何一つかなわねぇってそんなのありかよっ!!
 俺はその資料をつかんで、自分の世界に戻り、ルビスに訴えた。
 だって、4主は、何ももらってない。仲間たちの笑顔だけ、世界の笑顔だけ。だけど、そこには自分が守りたかったものがないなんて。仇すら討てないなんて。」
 これじゃあ、神様の体のいい操り人形じゃねぇかっ!
 俺の言葉に、ルビスは悲しげに目を伏せた。
 「神といえど、理を曲げることはできません。寿命だけでなく、捕食によって失われた命。核を失った体などは私たちですら蘇らせることはできません」
 「カミサマならそれぐらいどうにかしろよっ!……だって、4主は勇者なんて称号まったく欲しがってないじゃねぇかっ!なのに、世界何って抽象的なものしか結果が残らないなんて変だろうっ!?討つべき敵の心すら救うような勇者の大切な村人ぐらい、生き返らせてやってもいいじゃねぇか!!全員とは言わねぇから、大切な幼馴染一人ぐらい、カミサマなら何とかなるだろうがっ!」
 俺の知る4主は、とりあえず短気以外の欠点が見つからない。剣にも魔法にも優れ、人の目をひきつける存在感とカリスマ性。
 それこそ、大国の王様だって4主と並ぶと霞む。だけど、そんなあいつがすべてが終わってしていることは、生まれた村で専業農家。
 そんなことに満足しているような人物が栄誉や称号なんて望むわけねぇだろうっ!?
 少なくとも、俺の旅は大変だった。他の奴らだって。あんな苦しい思いして頑張ってこれが結末かっ!?
 「あなたも、完璧な結末ではないでしょう?相変わらず、優しいのですね」
 そんな言葉は嬉しくない。だって、そんな言葉で心なんて救われない。俺の心なんて救っても仕方がない。救いたいのは、もう、何も望まなくなった大切な仲間の心。あの凍りついた心をどうにかしたいのに……勇者なんて何も出来ない。
 俺は、資料を握り締め、蹲るしかなかった。

656過去と今と…… 3→4 3/4:2009/05/31(日) 22:41:12
 結局俺は帰るしかなかった。ルビスに八つ当たりなんて自己満足でしかないそれに、気分が落ち込む。
 結末は変えられない。俺たちは勇者だけど人だから。カミサマじゃないから。いや、カミサマでも無理だって分かった。
 なんとなく、あの場所はそのために用意されたような気がした。
 4主だけじゃない。俺たちは、同じ立場の人間があまりいない。友も仲間もいるけど、それでもときより押し寄せる孤独感は仲間ですら分かち合えないことがある。
 そんな、俺たちのためののんびり休める場所。
 「っしゃっ!俺はやるぞっ!」
 誰もいない森の中、王者の剣を振り上げて誓う。
 これは気合入れ。俺はこれから皆と一緒に幸せになってやる。あの、終わった直後の俺のような4主の表情を変えてやる。
 過去は無理でも未来は何とかなるはずだ。それが、俺の持論。



 「とはいえ、どうすっかなー?」
 机に突っ伏した。机にはヤフって集めた情報だけじゃなく、しばらく観察したものをまとめたノートも散らばってる。
 「あいつ、なんか悟り開いてねーかぁ」
 趣味、料理(シンシアのため)、読書(ジャンル無視。推理小説から数学書哲学書なんでもござれ)。職業農業。ファッション興味なし。女シンシア以外興味なし。無表情。
 そんな単語が並んだノートを見てため息をつく。
 しばらく観察した結果。未来を明るく、というのはとても難しいという結論に達した。
 手っ取り早く、女だろうと話題を振ってみれば、虚空を見上げてトリップする。
 趣味は、と聞けば料理という地味なこと。あと、ピサロいじめっちう怖い答えもあったが。
 晴耕雨読の生活ってどっかの坊さんかっ!
 どれも明るい未来にはぜんぜん結びつかない。
 「見てくれは良いくせに〜」
 女にモテナイ俺からすれば、買い物に町に下りるたび、町中の女の視線を集めるその造作を無駄にしくさっているのは腹立たしいことこの上ない。
 「まあ、2主には優しいが」
 良いことのひとつは、2主への教師だろう。もともと面倒見が良いのか良く面倒を見ている。
 純粋純朴な彼の相手は、それなりに心を和ますのか、ぶっちょう面が少し緩む瞬間が増えてきた。
 「これも、いいことかなあ?」
 めくったノートのページには、ここ数日の4主と8主のやり取り、というか戦績。
 「最初は和やかだったくせに〜」
 なんとなく生い立ちが似ている二人は、もしかしたら仲良くなるかもと見守っていたら、なぜか犬猿というか鳥竜の仲に。
 「4主が最初に嫌ったんだろうけどさあ、8主も煽りまくるし」
 4主の竜種嫌いは有名だ。経緯を考えたら仕方ないとは思うが、半分竜なのは、8主のせいではない。
 しかも、8主がその4主をからかいまくるので、彼らがそろった状態で喧嘩を見ない日はまったくない。
 それでも、無表情から怒りへジョブチェンジするようになっただけでも進歩ではあるのだが。
 「あとは協力者、か」
 4主をそれとなく観察してて気づいたのは、俺と同じ視点で4主を見ている男。

657過去と今と…… 3→4 4/4:2009/05/31(日) 22:42:13
 いつもはふざけていることが多いセクハラ大魔王だが、時々、探るように4主と他のメンバーの対話を眺めている。
 「おかげで視線があうあう。男とアイキャッチなんてしたくないのに」
 「まったくだな」
 ため息とともにかけられる声は頭上から。見上げると、資料を手に取る不思議な目の紫の王様。
 「どうよ、これ」
 ついでにノートも渡すと、再びこぼれるため息。
 「女性たちと戯れる楽しみも選ばず、おさんどんの毎日か」
 最近では、キッチンに立つ割烹着姿は見慣れてきた。容姿と格好のギャップすら感じない。
 「子孫として、どうだ?」
 問いかけにはノートが手渡される。
 「多分、子孫じゃないな。だったら嬉しかったのだが…妻たちの先祖は多分4女ちゃんのほうだな」
 同じ立場とはいえ、性別の違いからか、4女はわりと前向きだ。そして、シンシアラブなのは分かっているが、種が必要なら馬ぐらい用意するわよ、ぐらい平気で言う強さがある。それに引き換え、4主は合コンに連れて行っても、あの巨乳美女相手に宿舎の愚痴を言う始末。
 二人に共通する意識はシンシアへの思いと……。
 「なあ?」
 再びの問いかけに相手の目が細まる。俺が言いたいことはたぶん相手もわかってる。そして、言ってしまえば、多分二度と俺たちはごまかされない。
 「「彼らは、シンシアが生身でないことに気づいている」」
 そう、みなの前でトリップするのはうそでないが、多分、自覚はしているのだ、もう。
 証拠としては、彼らのバースデー。いつだか、自分の分身がバレンタインデーに二人きりでもシンシアと会話しているのを見たといったが、本当に二人きりになった彼らの間に、シンシアは出てこなかった。
 だって、誕生日だ。彼女がいなければ大騒ぎするはずであろうそれに、彼らは静かだった。
 それが、彼らの自分たち仲間たちへの甘えだと気づいたのはいつだっただろう。
 心を開いた証拠が、そんな分かりにくい甘え方。正直、泣きたい。
 もっと素直に甘えてくれれば、幾らだって手を貸すのに、どうしてそんな婉曲するのだろう。



 それでも、心を開いてくれる為の努力を惜しむつもりはない。だから今日も、昼寝て夜更かし。
 廊下を歩く足音はしないが、起きて注意していれば、誰かが通るぐらいは分かる。
 煌々と照らす満月。そろそろ時期だと見張ってて良かった。
 早速協力者に連絡をいれ、自分はシャワーの音がし始めたらキッチンに向かい湯を沸かす。
 香りの良い煎茶は、最近の彼のお気に入りだ。
 それから程よく暖めた湯飲みを三つ。
 やっぱり5月とはいえ夜は肌寒い。冷より暖がよいだろう。
 そうして、俺らは月夜で濡れネズミならぬ、濡れ緑ウサギを待つのだ。

658過去と今と…… 3→4 1.5/4:2009/05/31(日) 23:06:31
ごめんなさい、一部かけてしまったみたいなので追記。
1/4と2/4の間に入る部分です。

 お互いの簡単な紹介は終わったが、その後、偶々お互いの未来、というか冒険の結果を知ることになった。
 自分もまあ、無難な人生とはいわんが、皆結構波乱万丈だなとか考えながら情報をめくる。
 一応、全員最後はそれなりに幸せか。一部地雷に捕獲されている輩はいるが。
 2主はまあ、最後は結構とんでもないらしいが、話に聞くとまだそこまでいってないそうだから、せっかくだから邪魔してやろう。
 素直で純朴な子孫を、俺は結構気に入っている。
 そして、最後に知った、緑達の冒険の結果をみて、俺は絶句した。
 いやだってさ、確かに皆波乱万丈だよ?だけど、最後には希望の結果をつかんでる。守りたいものを救って、大切な人に幸せをあげられる。
 だけど、これは何だ?
 確かに、俺たちは勇者と言われる者達だ。勇者たるもの、私欲のみで動くのは無理だろう。なんせ、その両肩には世界が乗ってる。

659名無しの勇者:2009/05/31(日) 23:38:09
>一部地雷に捕獲されている輩はいるが。
バロス

ここから643につながるんですね!GJです!

660名無しの勇者:2009/06/01(月) 01:22:03
やっぱり伝説の勇者組は特別な感じがする…
個人的に一番ガツンとくる組み合わせだ

超GJ!
わがまま言うと、次は4視点の3の様子も見てみたいです

661名無しの勇者:2009/06/01(月) 10:56:00
純正勇者組いいねーw

二人とも最後に「使い捨て」られた感が強いから・・・(ノД`)
この二人には幸せになって欲しいお。

662名無しの愚者:2009/06/06(土) 02:56:19
5が完成に時間がかかったので先に>>660様の書かれている4主視点の3を妄想したら、最初ホラー最後ガチンコバトルになりました……。
ご、ごめんなさい。なんか怖い話になりそうです(−−;

とりあえず、5、投入します。

663マナーと教養 5→4 1/5:2009/06/06(土) 03:02:49
 「「行きたい行きたいっ〜」」
 「わ、分かった分かった」
 かわいらしい子供のおねだりは、最近構えなかった父親としてはかなえないといけない。
 5主は二人をつれ、宿舎への道のりを歩いた。
 やがて見えてきた家の外に、真っ白なシーツを手際よく取り込む姿。
 「5主?に5勇に5娘?めずらしいな」
 シーツの束から鮮やかな新緑の髪が覗く。
 「ねだられてしまってね」
 「「こんにちわーーー!」」
 柔らかな物腰の声と元気な声に、いつもの鋭い眼差しがかすかに緩む。
 笑みとはとてもいえないが、それでも彼が歓迎してくれているのが分かる。
 彼は己を見ても泣き出さない5主の二人の子供を気に入っているらしい。
 鮮やかな手際でシーツをたたみながら、共に宿舎へ向かう。玄関に回りながら、彼の問いかけは子供たちに向けられた。
 「冒険つれてってもらっているか?」
 「「全然ーーーっ!」」
 元気良く即答。思わず頭を抱えると、冷ややかな眼差しが向けられた。
 「オイ」
 「……反省してます。だからつれて来たんだよ」
 そう言い訳すると、しょうがないとばかりにため息をついた。
 「二人とも、甘いものは好きか?」
 突然の言葉に息子は首をかしげ、娘は元気に「大好きっ」と答える。
 「じゃあちょうど良かった。もうすぐスコーンが焼ける。食べるか?」
 「「うんっ」」
 二人そろっての合唱に、彼の目元が柔らかく笑む。
 「バルコニー行っててくれ。すぐ持ってく。紅茶でいいか?」
 「ああ、楽しみだね。君のお茶は美味しいから」
 さらりと告げられた賞美の言葉には、背を向けるといういささかぶしつけな返答を返されてしまい、5主は苦笑した。
 二人を連れてバルコニーに行き、備え付けられた椅子に座って待っていると、二つお盆を持った4主が来た。
 「すまない。取りに行けばよかった」
 「気にするな」
 あわてて立ち上がるのを言葉で制され、手際よく紅茶と、バスケット入ったスコーンが並べられる。
 馥郁とした香りがあたりに広がり、微笑む。子供たちの視線は、香りよりバスケットに山盛りのスコーンと横に並べたクロッテッドクリームとピンク色のジャムに注がれていた。
 その姿に4主が目を再び緩め、二人の前においた皿に、トングでスコーンをひとつづつおいてやる。
 「さあ、どうぞ。簡単な茶菓子で悪いが」
 「「いただきます」」
 子供たちは早速少し大きめのスコーンの攻略に取り掛かった。

664マナーと教養 5→4 2/5:2009/06/06(土) 03:04:23
 5主は笑いながら、自分の皿にも置いてくれたスコーンを取り合げ、4主に礼を言う。
 彼は気にするなとばかりに目を細めた。
 「美味しいっ!!」
 「うん、美味しいっ」
 今度ははもらなかったな、と子供たちを見ながら、自分もジャムを塗ったスコーンを齧る。
 口に広がるのは甘い白桃の香り。よく見ると、ジャムというよりは、形が少し多めに残っている。
 「本当に美味しいな……これは、君が?」
 問いかけると、一度瞬きして、手で割ったスコーンを皿に置いてこちらを向く。
 「ああ、よく分かったな。売り物にならないのが余ってたから、ちょっと作ってみた」
 ジャムというのは、一つ作るのに数時間かかる代物だ。少なくとも片手間に作れるほど簡単ではないはず。
 「君は本当に器用だな」
 もう一口分スコーンに塗り、齧る。桃の持つ甘みが口の中に広がる。優しい味がサンチョのお菓子を思い出す。
 ほめ言葉の連続に、少し照れたように笑む4主は、子供たちにも褒められている。
 視線がこっちを向いていないのを良いことに、5主はじっくり4主を眺めた。
 先ほど手で割ったスコーンを取り上げ、ジャムを塗って一口食べる。崩れやすいお菓子なのに、彼の皿の周りは綺麗だ。
 2主ではないが、綺麗な人だと思う。
 いつもの喧嘩や口調で見落としがちだが、彼のテーブルマナーは、にわか王の自分がお手本にしたいほど完璧だ。
 生まれつき王族として過ごしている息子や娘、それどころか、今まであったどの王族と並んでも見劣りしない洗練された仕草にため息が出る。
 「なんだ?」
 視線を向けられて自分が凝視していたことに彼もやっと気づいた。
 幸い、子供たちはジャムとスコーンに夢中でこちらには気づいていない。
 「いや、マナーがきちんとしてるなあと思ってね」
 「王族ほどじゃないだろ?」
 カップを取り上げ、紅茶を口に含む其の姿は、典雅とさせ言えよう。改装を重ねてくたびれた宿舎のバルコニーの背景が、王宮の応接間に摩り替わるような気がしてくる。
 正直、彼ほど完璧な人間を5主は知らない。剣も魔法も宿舎でも見劣らず、指揮をさせたら超一流。数学や国語どころか帝王学までこなすなど文武両道。無愛想なのが玉に瑕だが、どこの上流階級の集まりでも通用する高い教養をもつ。
 そのせいか、仲間内で正式な場へは彼を連れて行くことが多い。下手をすると、生まれつき王族であるはずの2主、6主よりも多いくらいだ。まあ、巻き込まれ体質であることも要因の一つであろうが。
 5主自身、彼をこっそり自分の世界に連れて行ったときは、王宮であっても完璧な立ち振る舞いに酷く驚いたものだ。
 根っからの王族ならともかく、彼の出身は小さな村。どうしたって王宮でも通じるような礼儀作法や教養など学ぶべきではない環境のはずだ。
 疑問が顔に出たのか、4主が苦笑する。彼は、言葉にしない表情を読むので、こういうときは心を読まれているような気がしてしまう。
 「まあ、叩き込まれたからな?」
 「叩き込まれた?」
 「ああ。剣や魔法や学問と一緒に。いつか偉い人に会うこともあるだろうってな」
 彼の言葉に、なるほどと頷く。彼の出身は確かに小さな村だが、其の村は、彼を、「勇者」を育てるためだけに作られたと聞く。
 勇者なればこそ、王族と会う機会もまた多いと想定したのだろう。
 そういえば、ニートでおちゃらけまくっている3主も、勇者として教育されてきただけあって、あれでTPOによってはなんでもさらっとこなす。
 学問や剣や魔法など言わずもがな。それどころか、簡単な医学すら時々こなす彼の、現在の宿舎での立場は『お母さん』。
 なんだか酷くもったいない気がする。

665マナーと教養 5→4 3/5:2009/06/06(土) 03:06:13
 苦笑すると、彼は怪訝そうにこちらを見るがすぐに視線を娘に移した。
 手に取ったハンカチが、娘の頬についたジャムを拭う。驚いたように見上げた娘には、新たなスコーンをとってやり、紅茶を注ぎ、ホットウォータージャグで薄めてちょうどいい濃度にする。
 ここは宿舎じゃなかったか?
 そんな考えが浮かんでしまうほどスマートなホスト振りだ。というか、紅茶が濃くなるのを薄めるためのお湯を用意することすら、知らなかったんだが……。
 娘の礼に、彼は頭を撫でてやることで答える。
 自分の笑みが子供を怖がらせると知っているからの行動だが、娘の顔が赤面した理由は多分分かってないだろう。
 「気に入ったか?」
 彼の言葉に娘が大きく頷く。息子も横で同じ動きをしている。
 「本当にすごく美味しいです。これ、どこで売っているんですか?」
 「うん、僕もこれもっと食べたい。父さん、買ってっていいよね」
 二人の言葉に彼が大きく瞬き、そして小さく微笑んだ。そのインパクトたるや、娘だけでなく、息子すら赤面させてしまった。
 『頼むから、娘だけじゃなくて息子まで魅了しないで欲しいのだけどね』
 端正な顔立ちは、女性どころか、男性まで魅了する。宿舎のメンバーにも何人か犠牲者がいるのだ。これ以上争奪戦を繰り広げてほしくないし、何より息子の人生を踏み外させないでほしい。
 頬が真っ赤に染まった息子を眺めながら考えてしまう。
 「これは俺が作ったんだが、もし良かったら、少し持って帰るか?」
 彼の言葉に、子供二人は頷くばかり。苦笑して、言葉を補足してやる。
 「ぜひお願いするよ。妻たちも君の料理のファンだから」
 其の言葉に彼はきょとんとした顔で瞬く。彼は、5主の妻たちとも仲が良い。
 先祖と子孫だからというより、料理のレシピの交換や4主の農業の成果を時々届けるからか。
 おかげで、ここでの悪事は4主を通して、妻たちにはかなり筒抜けなのが痛いところだが。
 「ファンは言い過ぎだろう?」
 「いいや。だって君とレシピ交換した後は必ず作るし。で、どうしても同じ味にならないとか悩んでるしねぇ」
 サンチョやその妻まで巻き込んで一緒にレシピ片手に作るのだが、どうも違うらしいと首を傾げている。
 「今度、城に来て一緒に作ってあげてくれないか?そろそろコックも巻き込んでいるんだ」
 4主は目を伏せる。
 元々、彼は他の世界に行くことをあまり好んでいないらしい。特に、直接影響がありそうな5主の世界には殆ど来てくれない。
 妻たちがこちらに来るか、または息子や娘の願いでくるのがせいぜいといったところか。

666マナーと教養 5→4 4/5:2009/06/06(土) 03:07:21
 『そんなこと気にしなくて良いのに』
 5主はこっそりと笑う。
 もっと妻たちと、子供たちと仲良くなって欲しい。そして、己より世界を救いあげた勇者を愛さない世界など捨てて、グランバニアに住んでしまえばいいのだ。
 天空人の子供さえ残せば、妻たちの存在は失われない。ならば、別に彼である必要はない。残された天空城の主がせいぜい辻褄を合わせるだろう。
 彼が幸せになるのなら祝福しよう。だけど、彼の仲間たちでは、彼を引き止められなかった。なら、自分が貰い受ける。
 包み込んで、溺れるほどに愛を注いであげよう。
 三人の妻も、子供たちも誰もが彼を大切にしているのだから。
 寂しいのなら、もう一人の純正勇者も連れてくればいい。
 裏切り者の大臣や僕より、彼らのほうが国を率いるに相応しい知識も能力もある。
 勿論、本人たちが嫌がるなら無理強いはしないが。
 落ちた天空城の主などに文句を言わせるつもりもない。
 『言う資格ないし。悔しかったら村人全員復活させてみろって言いたいよねぇ』
 「5主」
 カップをゆっくり下ろすと、彼がこちらを見ていた。
 言葉を促すように微笑んでみせると、彼が苦笑した。
 「こんど新作レシピもって伺うよ。だけどな……」
 「うん?」
 「足固めはやめれ。つうか人に仕事押し付けようとするな」 「……ばれたか」
 「ばればれだから。王様ならもう少し腹芸磨け。顔に書いてあるぞ」
 「そこまで正確に当てられるの君だけだから。グランバニアこない〜?今なら宰相の座が開いてるよ〜♪」
 冗談めかしていう僕は子供たちに目配せする。
 子供たち二人は小さく頷き、早速きらきらと目を輝かして天空の勇者を見あげた
 「5主……子供使うな」
 案の定子供に弱い4主はたじろいでいる。
 「「4主さん……だめ?」」
 ハモリは高等技術だな〜とか暢気に眺めていると、4主がこちらを向いた。
 困ったようにこちらを見る彼に、思わず噴出してしまう。
 「笑うなっ!!///」
 「い、いやだってっ。わかったわかった。今回は諦める。ほら、二人とも」
 「「むーーー」」
 じたばたと暴れる二人の頭に、4主の手が置かれる。
 丁寧に撫で、彼は笑みを浮かべた。
 「遊びに行くからって、うわっ」
 子供たちはうれしそうに頷き、抱きつきをかます。
 中々可愛らしい光景に僕は笑った。

667マナーと教養 5→4 5/5:2009/06/06(土) 03:08:57
 今はこの約束だけで良いと思う。
 『諦めるつもりもないけど♪元祖腹黒をなめちゃあいけない』
 5主は宿屋の二階から注がれる視線に顔を向けた。
 『<もっと頑張らないと連れて行くよ?>』
 声を出さずに口だけ動かしたけど、果たして彼には伝わったかな?
 くすくす
 「なに含み笑いしてるんだ?スケベ親父」
 「酷いな」
 5主は紅茶を楽しみながら小さく笑った。
 もう少しだけ待とう。だけど、このままなら連れて行く。
 まだ、協力者にも話していないことだが、彼も巻き込んでいけばなんとなるだろう。
 5主は心をその穏やかな瞳と笑みで考えを心に封じ込めた。 
『あと、少しだけね……』

668名無しの勇者:2009/06/06(土) 04:04:54
投下キテタ-!
今回もGJです!

個人的にはトリの8主がたまらなく待ち遠しいです!

669名無しの勇者:2009/06/06(土) 09:01:23
投下キターー!
4主の完璧っぷりが素敵すぐるw
最後の2階からの眼差しは、やっぱり半竜クンかしら(´∀`)
マターリ続き待ってまつ!


ところで最初ホラー最後ガチンコバトルが非常に気になる……いったいどういう話にw

670名無しの愚者:2009/06/07(日) 00:17:12
最初ホラーなのは、出だしが4の村の話だから。最後は訓練が本気モードに突入だからです。
多分最後は削られます。私戦闘シーン書けません(^^;
そして、7が進まないので音楽聴いてたら、なぜかモード葉っぱ隊の話に……
外伝が出来そうです。と、トリもとい竜さんもまだなんでがんばりますね。

では、7投下。避難所のネタをお借りしてます。

671色気 6+4 1/4:2009/06/07(日) 00:19:58
 「おーこりゃ見事な小望月」
 脱衣所の窓から空を見上げると、満月一歩手前の微妙な丸の月が見えた。
 先日教わったばかりの月の別名を使ってみる。
 教えてくれたのは、最近めっきり子持ちの母な宿舎の主夫だ。2主の家庭教師を務める彼は本当にいろいろなことを知っている。
 農夫な彼は、こんな深夜に起きてはいないだろう。
 というより、自分自身こんな深夜に起きることはあまりない。
 ただ、なんとなく目覚めてしまい、深夜に風呂なんてことを思いついた。こんな贅沢は賭け流しの温泉ならではだろう。
 今回は温泉行きたい、出かけたいと3主と俺がごねまくり、宿舎の歩く家計簿がOKを出したことで、温泉に来た。
 「露天風呂〜♪」
 ちゃかちゃかっと服を脱いで扉を開け、6主は思わず固まった。
 月明かりに照らされた露天風呂の淵に腰掛け、月を見上げる人影が一つ。
 『こここここっここ、ここ、混浴だっけっ』
 背を向けているため、胸元が確認できないし、シルエットからわかる細腰にはタオルが巻かれている。
 しかし、月明かりに照らされた姿はひどく清廉で、白い肌や結い上げた髪とあいまって女神像をみているような気にさせる。
 『だぁぁぁぁぁっ!!女神ってなんだっ!おにいちゃんはノンケだぁぁぁぁぁぁっ』
 「……何首振ってんだ?6主。そんな勢いで振ってるともげるぞ?首」
 思わず盛大に首を横に振っていたことでこちらに気づいたらしい。人影が振りかってあきれ返った声をかけてきた。
 「……4主?」
 「なんで疑問系なんだ?というか、まっぱでずっと立ってると風邪引くぞ?とりあえず湯に浸かれ」
 手で露天風呂を示され、大人しく従う。
 4主も再び湯に体を沈める。しかし、腰掛る岩でもあるのか、上半身は湯の外に出たままだ。
 大人しく湯に浸かった俺を見て満足そうに笑う顔はいつもの強面。なのになんでだろう。その水にぬれた白い肌から目が離せない。
 「よしよし。でもどうした?万年寝たろうのお前がこんな夜中に」
 「それは俺の台詞。どしたん?」
 あまり夜更かしが得意でない4主がこの時間に風呂に入っているの方が不思議だ。
 「昼間ゆっくり入れなかったからな」
 俺たちが集まって何かするとき、静かなことなんてまずない。
 が、俺は、こいつがその雰囲気を嫌いじゃないって知ってる。なんだかんだ言って、寂しがりやなんだ。こいつ。
 なのに、今も村に一人で住んでいるのが信じられない。もっと人の多い町に住めばよいのに。バトランドでもサントハイムでもエンドールでもモンバーバラでもブランカでも移民の町でも良い。
 とにかく、一人じゃないとこに住んだ方が良い。
 村の人たちを忘れろなんて言わない。でも、その為に一生自分が枷を負う必要なんてないのだ。
 悪いのは4主ではない。何もしない神様とうっかり暴走した魔王だ。しかも、原因二人は自分の願いをかなえてもらってるのに、被害者のはずの4主には何もない。
 『あ、なんだか腹たってきた。バーバラには申し訳ないが、やっぱりあの卵壊してくるか』
 「6主?」
 「お。おうっ!?なんだ?」
 突然目の前で話しかけられて思わず大きな声が出てしまう。

672色気 6+4 2/4:2009/06/07(日) 00:20:29
 『っていうか、顔近いぞっ!?』
 目前15cmのところにある顔は、やっぱり端麗な容姿をしている。白い肌を水に湿った新緑色の髪が彩る。
 『おお、睫毛も緑なんだな』
 覗きこんでくる眼差しは紫水晶のように月明かりで煌めく。
 『ここにいたのが俺で良かった……』
 少なくとも、ほかのメンバーの場合、この匂いたつ様な壮絶な色気に対抗できたか怪しい。
 『3主は耐え切れるか、5主は……コイツの精神次第?』
 脳裏に浮かぶのは二人の仲間。彼らはどうもコイツに対して保護者的な態度をとっている。
 『本人たちは気づかれていないと思っているが、皆のおにいちゃんには丸わかりだっ!』
 あの二人がその立場を取っていることに安堵したのはそう遠い過去ではない。
 なんだかんだといって、あの二人に本気になられたら、純朴少年なんて、イチコロだろう。
 他のメンバーなら、ギガソードやギガデインで振り払えても、あの二人は口先一つで丸め込んでしまう。
 『そうしないのは、コイツが大切なんだからなんだろうなあ』
 自分が本気で欲しいと思ってしまったら、どうするか3主は自覚があるのだろう。5主はもとより、遊びで4主を傷つけるつもりは絶対にない。
 『他のやつらは、普通なら問題ないんだろうけど……この色気さえなければ』
 思わずため息がこぼれる。
 「なにさっきから挙動不審なんだ?お前」
 乱暴な言葉だが、その目が口より物を言っている。どうやら心配させてしまったようだ。
 「あー、ちょっとな。いろいろ考えてた」
 「色々?」
 「おうっ!バーバラとターニア二人と一緒にデートするのにはどうすればよいかとか」
 深々とため息をつかれる。うん、なかなか失礼な態度だな。
 だが、顔が離れたんでちょっと安心。俺も正常な男なんで、無自覚に垂れ流される色気に当てられ続けるのは勘弁願いたい。
 「で?」
 「ん?」
 落ちてきた髪を結びなおす姿に視線を逸らしながら問いかけてやると、視線をこちらに向けてくる。
 『だぁら、どうして無意識でそういう色っぽい姿するかなっ!?』
 俺は内心頭を抱える。どういったら伝わるんだろうなーとか考えても答えは出ない。なのでとりあえず思考を元に戻した。
 「だからどうしてこんな遅くに?」
 「理由ゆったろ?」
 不機嫌な声に視線を戻すと珍しく素直にむくれた顔。ついっと視線を逸らすあたり、あんまり言いたくないことらしい。
 そして、体ごと視線を逸らしたため、月光に照らされた背中が見えた。
 そこには、見慣れない傷。肩甲骨の辺りに、まるで肉を引き裂いたかのような傷跡があった。
 俺たちは全員、古傷が体に残っている。いくら回復魔法が発達していても、完全に治せない傷もあるし、そもそも回復魔法のレベルが低いときに残ってしまうことだってあるのだ。
 勿論4主の体にも無数に刻まれた傷があった。ただ、背中はあまりなかったような気がするのだが?

673色気 6+4 3/4:2009/06/07(日) 00:20:51
 「……これが理由」
 俺の視線の位置に気づいたのか、4主の声が届いた。
 「へ?」
 思わず惚けた声を出す俺に、4主が苦笑した。
 「いつもは、モシャス応用して隠してるんだ。背中に傷なんて、みっともないだろう?」
 確かに背中に傷がつくということは、敵に背を向けたか、不意打ちされたということ。この以外と見栄っ張りの純正勇者はそのことを気にしているらしい。
 「マーニャやミネアにあう前、一人で戦っている時についたんだ。まあ、背中の傷でからかうやつなんていないけど、別の意味でからかいそうなクソ竜が一匹」
 「うん、確かに<背中に傷がついた理由>でからかうやつはいない。が、別の理由?」
 「……見た目がさ、翼みたいに見えるんだろう?またウコッケとか言われるのはな」
 4主に言われ、もう一度マジマジと見ると、確かに傷そのものが翼に見えなくもない。
 「成る程」
 鳥ネタはいまだもってこの二人の喧嘩の理由の第二位だ。第一位は言わずもがな、2主関連である。
 「でも、そこまで悪辣ではないと思うんだが……」
 「俺以外にはな」
 断言口調に思わず苦笑がこぼれる。
 『う〜ん。根深いなあ』
 どうもあの腹黒ツンデレはもう少しデレ要素を増やすべきだとつくづく思う。というか、今のコイツ見た時点で襲い掛かるか、鼻血かのどちらかだろう。昼は5分で後者だったし。
 『ま、これは言わないほうがいいかな?理解できないだろうし』
 色気と鈍さが反比例してるのだ、コイツは。
 「にしても、モシャスして若くなってるのか?あんまり変わってないけど」
 「若く?いや、全身かけてるわけじゃなくて、背中だけ」
 「へ?部分変化なんてできるのか?」
 『確か、変化の杖とか全身化けるって聞いたような気がするんだけど』
 昔聞いた知識を思い出してみる。こういうとき、特技もちって便利だとつくづく思う。
 「普通は出来ない。ので、呪文をこうちょちょいと応用」
 「……そんなことするのお前ぐらいだ」
 がっくりうな垂れる俺に4主は不思議そうに首を傾げる。
 『またそういう可愛い仕草するし』
 この天然純正勇者は、魔法+剣を磨くのではなく、もうちょっと自分が回りにどう見られているか自覚して欲しい。

674色気 6+4 4/4:2009/06/07(日) 00:23:00
 真面目な上に時間があるから、すでに完成している魔法の改造なんてやってのけるのだろうが、どうしてその明晰な頭脳は自分の貞操を守るために動いてくれないんだろう。
 『お兄ちゃん頭痛い……』
 「6主?」
 心配そうな声音。初めて会った時から感じていた、凍りついた感情が少しづつ緩んでいるのが分かるそれに、6主は苦笑した。
 「ん〜ま、そろそろ出ようか。逆上せるから」
 「そうだな」
 湯から上がると、4主が横に並ぶ。自分とほぼ並ぶ高い視線は、まっすぐに前を見つめている。
 その姿は凛々しく、頼りがいがありそうなのに、同時にひどく切なくさせる。だから6主は思いついたことを即座に実行する。
 「うりゃっ」
 「うぉっ!?6主っ!?」
 がしっと掴んだその肩は細く華奢だ。この肩を包み込める人物になら、この可愛い弟分を譲ってもいい。だけど、まだまだ、譲る気はない。
 最低でも、この色気に太刀打ちできるレベルでないと。
 無理やり傷つけるつもりなら、天空組+ロト初代巻き込んで盛大にオシオキしちゃるっ!
 「おにいちゃんがんばるっ!」
 「……そーかーよかったなー」
 冷たい視線と冷めた声はちょっと痛かったりするが気にしない。
 だって、おにいちゃんは心配症なんです。

675名無しの勇者:2009/06/07(日) 10:28:37
テラ和んだwお兄ちゃんファイトwww

676名無しの愚者:2009/06/12(金) 23:03:42
投下したの6でした。
そして、4主視点3主のお話はちょっとお待ちください。
書いてたら、マスドラがものすごい悪い人になってしまいました。
ちょっとリテイクします。

では、今度こそ7投下。

677やさしさ 7→4 1/3:2009/06/12(金) 23:05:03
 木漏れ日が木立に差し込んでくる。
 「う〜ん、良い天気」
 ここのところ、雨が続いたから、久しぶりの晴れ間はとても気持ちが良い。
 宿舎には、久々の天気なのに部屋にこもってる3主さんしかいなかったので、僕の分のおやつを食べてから、宿舎の周りにある森をお散歩をすることにした。
 『でも、あの枇杷のコンポートが入ったフルーツゼリーは4主さん作だと思うんだけど、今日はもう帰っちゃったかな?』
 宿舎の男性メンバーは男性には珍しく、全員料理が出来る。しかし、おやつまで手作りするのは4主さんと4女さんぐらいだ。
 しかし、4女さんはめったにおやつなんて作ってくれないので、あれは多分4主さんだと思う。
 あ、あと8主くんもだけど、彼は、おやつはプリンしか作らないから当然除外。
 旬の枇杷を煮詰めてコンポートにしたものを同じく枇杷の味のするゼリーで固めたフルーツゼリーは美味しかった。
 彼の作るお菓子も料理もとても美味しい。
 作った本人のしかめっつらを思い出し、その顔で可愛らしいお菓子を作る姿を想像して思わず笑みが浮かぶ。
 昔は彼が怖かったが、今はそうでもない。
 来た頃と違い、彼の性格は最近やっと把握したから。ちょっとぶっきらぼうだけど、とても優しいってことを。



 僕は昔、彼に酷いことを言ったことがある。
 僕は彼の外見だけを見て、彼の辿った道筋をあまり知らなかった。
 いつも彼の視線に怯え、話しかけられるとただただその視線から逃れたいとしか思わなかった。
 だから、遠くに行ってほしくて、何も考えずにいった言葉。
 『どうせなら天空城に帰ればよかったのに…』
 その時はすごい顔で睨まれたと思った。だけど、本当は彼が自分で言ったとおり、泣きたかったんだと思う。
 その時だって、彼はただ山で取れた山菜を届けてくれただけだったのに。
 僕にはそれが食べ物に思えなかったから、思わず力を振るってしまった。
 親切で山菜を届けてにくれた4主さんに比べ、僕は最低だと思う。
 だって、4主さんはそのことを誰にも言わなかったし、それどころか、山菜には、調理方法のメモすら挟んであった。
 お母さんにそれを渡したら、喜んで調理してくれた。
 はりぎりとこごめ、そして僕が雑草だと思っていた土筆は天ぷらに、菜の花はハマグリと一緒に炊き込みご飯になった。
 お父さんも珍しい料理に喜んでいた。
 土筆の天ぷらは、少し苦味があったけど、サザエの肝ほどじゃなくて、とても美味しいと思った。
 でも、僕はお礼を言えなかった。それどころか、お母さんがお礼に持たせてくれたアンチョビのビン詰めを渡したら、逆に御礼を言われてしまった。
 どうして、そんなに優しく出来るのかと思う。
 少なくとも、僕は4主さんを助けたことなんてない。何時も酷いことを言って、傷つけた。
 それどころか、6主さんに怒られて、4主さんのことを聞いても、5主さんと4主さんの会話を見せられても、僕はただ4主さんの顔が怖いって泣いて、彼がどうしてそうなったかなんて考えたことなかったんだ。

678やさしさ 7→4 2/3:2009/06/12(金) 23:06:42
 今なら、分かる。完全に分かるわけじゃないけど、それでも彼にとっての天空城がどんな存在なのか。僕がなんて残酷なことを言ったか。
 僕には分からない。大切な人を失う辛さは分かっても、帰る所がないという辛さは。
 僕には分からない。全てを奪った憎い相手を許せることが。
 ……僕に分かるのは、あの人はそれが出来たということだけ。
 どうして許せるのだろう。僕なら許せない、と思う。
 もしマリベルが、お母さんやお父さんが、考えるだけでも恐ろしい。
 もう一度4主さんの顔を思い出す。
 最近は、随分と無表情が緩んできた。2主さんの勉強の時は声のトーンが少し優しくなるし、5主さんには時々甘えている。6主さんや1主さんと楽しそうに騒ぎ、おきてくるのが遅い3主さんの為にご飯を作り、8主くんとじゃれ合う。
 僕以外とは、彼はとても仲が良い。
 チクリと、胸の奥が痛くなった気がした。



 考え事をして歩いていたせいか、見慣れない場所に出た。
 澄んだ泉。小さなそれに、岩の壁から水が染み出している。そして、その近くの大きな木に寄りかかって眠る佳人。
 珊瑚礁の海の色のようなエメラルドグリーンの髪。夕闇が沈む寸前の空の色の瞳は今は閉じられている。
 すやすやと眠るその人は、僕がさっきまで考えていた人だ。
 『そういや、お昼寝にちょうど良い時間だもんねぇ』
 一次産業で朝が早い僕や4主さんは、昼寝をすることが多い。
 『洗濯物も取り込んで、おやつを作った後散歩して、あまりの良い天気につい寝ちゃったんだろうなあ』
 今日は珍しく良い天気だし、ここは不思議と風が通り、心地よい。
 さらさらと流れる水の音が、子守唄のように響く。
 よほど疲れているのか、僕が近づいて覗き込んでも、まったく起きない。
 ちょっと思いついて、その鮮やかな緑色の髪に手を伸ばしてみる。
 『うぁ。すっごいサラサラ。8主くんが触りたがるの、分かるなあ』
 掬い上げるとさらりと落ちる。その触り心地のよさに、もう一度掬い上げる。
 鮮やかな緑色がとても綺麗だ。先ほどは海の色に例えたが、この色は、どちらかというと新緑の緑色だ。
 こうして、森にいるとそう思う。
 大地の緑と、空の色を持つ人。今は、この人が空を選ばなくて良かったと思う。
 だって、そうしたら僕たちはこの人に会えなかった。
 皆に会えたこの場所が僕は好きだ。
 気遣ってくれる1主さん。元気で明るい2主さん。意外と相談に乗ってくれる3主さん。ちょっとサロン発言が多いけど、傍にいると暖かい5主さん。楽しくて頼りがいのある6主さん。一緒に弾けてくれる8主くん。そして、哀しいほど優しいこの人。
 僕は皆に何が出来るかと最近考える。
 僕は皆ほど失ったものがない。だけど、僕を気遣ってくれる。そんな優しい皆のために何が出来るだろう。
 幾度も傷つけた、この人に何が出来るだろう。

679やさしさ 7→4 3/3:2009/06/12(金) 23:07:04
 「……7主?」
 優しいテノールが聞こえ、僕は思考のループから突然引き戻された。
 紫色の瞳がぼんやりと僕を見つめている。
 己の手を見ると、掴んだままの髪。
 『え?もしかして僕、ひっぱっちゃった??』
 「ご、ごめんなさいっ!ぼ、僕起こすつもりじゃなくてっ」
 慌てて飛び起きようとした僕の体が、急に引っ張られて4主さんに倒れこんでしまう。
 『え?え?え?え?え?え?』
 頭巾の上から頭を撫でられ、僕の思考はメダパニ状態だった。
 「お前は良くやってるよ」
 頭上から囁かれる声。それは、多分先ほど僕が考えていたことへの返答。
 『もしかして僕、声に出してたっ!?』
 「だから、気にしなくてい…い…」
 声がかすれ、目が閉じられる。頭を撫でていた手が止まる。どうやら、寝ぼけていたらしい。
 泣きそうになる。僕はこの人にはまだ何も出来ていないのに。『良くやってる』なんて言葉一つがこんなに嬉しいなんて。
 力を失って、背に置かれた手が暖かい。
 『そういえば、僕、今日昼寝してなかったな』
 ぽかぽかした陽気が、そんな思考を後押しする。
 僕は迫りくる眠気に逆らわず、4主さんに寄りかかった。
 とくとくと聞こえてくる心音。水のせせらぎ。時折吹く優しい風。
 そんな優しい空間で、僕は考える。
 僕は非力だ。最強ステータスとか言われても、それを生かす技術が、経験が低い。でも、頑張れば、この人を、皆を守れるかな、と考える。
 神と戦う禁忌も僕はあまりない。いつか、マスタードラゴンに挑んでみるのもいいかもしれない。
 ああ、それよりまた、フィッシュベルの僕の家に呼んでみようか。
 お母さんも山菜くれた人だって紹介したら喜んでいたし、4主さんも喜んでくれた。
 身長の高い彼の腕は、僕をすっぽり包み込んでいる。体は、1主さんが行ったように、ちょっと華奢だけど。それでも広い胸元。少し体温が低いが、それでも寄り添うと暖かい。
 まるで森に包まれているようで、僕は微笑み、眠りに引き込まれた。

680やさしさ 7→4 おまけ:2009/06/12(金) 23:07:33
 「で、夜まで帰ってこないから探してみれば」
 「8主、声震えてるぞ……紫色になるのやめれ」
 「そうだよ8主くん。可愛いじゃないか。子猫たちが陽だまりで寄り添って寝てるみたいで」
 「ほんとに、良く眠ってるなあ、起こすの可哀相なぐらいだっ!」
 「6主さんのその声で起きそうですが。起きないですね。っていうか、これが怒らずにいられますか?3主さん、5主さんっ」
 「いや別に。これが7主じゃなくてお前だったらギガデインだが」
 「バギクロスは4主にあたっちゃうから、ドラゴンの杖で一撃かなあ?」
 「俺はギガスラッシュかなぁ」
 「いじめですっ。どうして僕には容赦ないんですかっ」
 「「「それはお前(君)には下心あるから。7主(くん)と違って」」」
 「そんなひどい」

681名無しの勇者:2009/06/13(土) 09:18:56
かわええ〜*
心がほっこらしましたw GJ!

682強く儚い導き 8→4 1/7:2009/06/13(土) 19:46:01
 鳥もといトリです。流石、8さん、3さんを抜いて、ダントツで長くなりました。
 これで1〜8の流れは終わります。それでは、8投下!

 この頃、皆が4主さんに構ってる気がする。
 「ほら。もっと食え。おっきくなれよー」
 「これ以上背が伸びてどうする」
 「横におっきくなれといってるんだ。身長が半分の7主と体重変わらないって細すぎだろう?」
 「余計な世話だっ!!ってか1主さり気に酷いぞっ!半分以上あるだろう、7主は……えと、5分の3ぐらい?」
 「お前も大概酷いな」
 1主さんが当番の時、大皿が出ると、1主さんは4主さんの皿に大盛りにするようになった。4主さんもけっして小食ではないけど、山盛りの焼きそばは流石に多かったみたいだ。少し苦しそうにしていた。
 「4主っ、出来たっ!」
 「ああ。良く頑張ったな」
 「4主がみてくれるおかげだぞっ」
 2主さんのテストの点数が思ったより良かったんだろう。4主さんが2主さんの頭を撫でた。2主さんが嬉しそうに笑い、つられるように4主さんも微かだが笑顔になる。
 「4主ー。この前頼まれてた店リストー」
 「ああ。サンキュ。ふうん、結構価格が違うんだな。今度サイト見せてくれるか」
 「お安い御用だが、これ以上レパートリー増やすのか?」
 3主さんは、元々不思議と4主さんと仲が良い。生真面目農夫な4主さんとニートな3主さんの組み合わせと考えると共通の話題があるのかと考えてしまうが、不思議と二人で居ることを見る。
 「「4主さぁんっ!遊ぼーーっ!」」
 「再度のおねだりに負けました」
 「事前に連絡しろ。おやつたりないぞ?お前の分、無しな?」
 「ええっ!?そんな殺生なっ!?」
 「……変わりに土産持たせてやるから。奥さんたちの分もな」
 5主さんは元々4主さんと繋がりが深いからか、4主さんを気に掛けている上に、最近5勇くんや5妹さんもつれてくる。
 というか、この前の白桃のジャム、僕の口に殆ど入らなかったのが悔しい。美味しかったのに、あっという間にお客さんに食べられてしまった。
 「4主ーっ!また、牛見に行っても良いかっ!?」
 「かまわんが、俺の村は体験村じゃないぞ?ちうか、王子の仕事はいいのか?」
 「いーのいーの。まだリメイクでてねぇし。今度は鳥小屋で卵集めてみたいぞっ!」
 「卵ねぇ。甘いのか出汁かどっちだ?」
 「両方しょもうっ!」
 「どっちかにしぼれっ」
 6主さんは、彼は誰にでも態度が変わらないけど、元々4主さんとは天空組だからか、良く一緒に居る。というか、4主さん振り回しているというか。
 『でも、意外と寂しがりのあの人は嫌がっていないんだよね』

683強く儚い導き 8→4 2/7:2009/06/13(土) 19:48:14
 「7主。昨日はありがとうな」
 「ううん、ボクこそ。鯖っていろんなレパートリーがあるんだね。今度レシピくれる?」
 「ああ、構わない。俺もこの前作ったブイヤベースのレシピ知りたいし」
 「うん。良いよ。じゃ、交換だね♪」
 昨日は4主さんの食事当番に、7主さんが手伝っていた。魚の捌き方を教えていたらしい。
 『鯖のコチュジャン煮はとても美味しかったけど……なんか悔しい』
 前は、トリップする4主さんを遠目で見てた皆が、今は彼に構っている。
 分かっている、彼は優しい。彼は綺麗で壊れそうに華奢で危なっかしくて、誰もが惹かれる。誰もが彼に幸せになってほしいと願う。
 分かってるけど、でも、辛い。
 『触れないで。彼に触れないで。僕が見つけたんだ。僕が最初に……ボクノユイイツヲトラナイデ』
 頭の中を勝手な言葉が巡る。彼は別に誰のものでもないのに。それでも、胸の中に湧き上がるどす黒い感情が止められない。
 僕は足を止め、遠目から皆を見ながら、ここに来たときのことを思い出していた。
 僕はこの場所で、胸に宿っていた淡い思いを塗りつぶしてしまうような、鮮烈な存在に出逢ったのだ。



 突然僕の前に現れた人たち。綺麗な女の人とか、髭のおじさんとかお爺さん。
 「っていうか、『人』は一人もいませんよね?」
 「流石、竜神族の血を引くものですね。私たちは、貴方にお願いがあってきたのです」
 大地色の髪の女性が代表で話しかけてきた。
 彼女の話はこうだった。
 この世界とつながった、でも時代や場所が違う世界で、僕と同じような冒険をした人たちがいる。
 その人たちが、冒険が終わり、疲れを癒す場所を作ったのだと。そして、僕にもそこに向かってほしいと。
 「それだけ、ですか?」
 「そう。それだけ。別に何をして欲しいいわけではないのです。ああ、一つだけ、その場所の説明をして上げて頂けないかしら?」
 「はあ……」
 正直、何が何だか分からなかった。でも、純粋にその人たちに会ってみたいと思ったから、僕は頷いて彼らが指し示す旅の扉に飛び込んだ。
 何が変わるとか、期待したわけじゃない。
 だって、僕には何の憂いもない。仲間は皆仲が良くて、姫と王の呪いは解かれた。その功績で長期の休みと、その後、近衛隊長になるというエリートコースにまで乗ってしまった。
 そう、何の憂いもない。母と父の素性も分かった。亡くなっていたのは悲しかったけど、祖父が全てを捨てて一緒にいてくれる。
 何の憂いもない、はずだった。



 旅の扉で辿り着いたのは森。だけど、人ならぬ彼らが言っていた人たちはすぐ見つかった。
 普通の宿屋よりも大きい建物の前に、色とりどりの人が集まっている。
 全身鎧の堅そうな青年、高貴さを纏う厳しそうな青年。少年だけど、前の二人より存在感のある人。この三人は良く似ていた。血縁なのかも知れないと思った。しかも横にそっくりさんがいるから、双子だとすると四人か。
 紫のターバンの青年は年齢に相応しくない貫禄を感じ、青い髪の少年は生きるエネルギーに満ち溢れているように見えた。

684強く儚い導き 8→4 3/7:2009/06/13(土) 19:50:04
 その横にいる小柄な少年は、周りに負けない力を持っているように感じ、最後に、翡翠色の髪の二人に目がいった。
 一人はくせっ毛の少女。人形のように整った容姿だけど、そう感じないのは、生きるエネルギーに満ち溢れているからか。葡萄色の瞳がきらきらと輝いていた。
 そして、その横に立つ少年。整った容姿は少女同様。しかし、こちらは良く出来た彫像のように見えた。硬質な紫水晶の瞳はどこか遠くを見ているようで、思わず手を伸ばそうとして、隠れている木陰から飛び出してしまった。
 そして小柄な少年に見つかり。あれよあれよというまに中心に引きずられた。
 僕が伝言されたここの説明すると、双子さんが率先して宿屋に飛び込んでいく。
 その勢いに押され、視線をずらすと、木陰に腰掛けた翡翠色の少年。
 近寄って声を掛けると、そっけない言葉。鋭い眼差しが少し怖い。
 「俺は…あまり騒がしくしたくないんだ、すまん」
 ポツリと零れた言葉。
 ああ、なんで気になったのか分かった。この人は僕と同じ。同じ冒険と聞いたのに、仲間なのに、薄い膜が一枚張られているような疎外感。
 種という絶対的な違い。
 だから、僕の言葉に、彼の視線が僕に向けられたのが嬉しかった。
 その硬質な輝きの紫水晶に僕をもっと映して。僕を見て。……一人にしないで。
 少々無理やり伸ばされた手を、彼は確かに取ってくれたのだ。


 足を止めて立ち尽くしていた僕に気づいたのか、1主さんが手を振っていた。
 「8主おかえり」
 爽やかな笑みに、僕も何時も通りの笑みを返せただろうか?
 「「「おかえりー」」」
 天気が良いので、ベランダで全員テーブルについている。
 そういえば、そろそろおやつ時だ。カップのようなものをスプーンでつついている。その中に、緑は二つ。つい何時もの癖で、彼を探してしまう。
 「おお、8主。変わった格好しているな」
 6主さんの言葉に自分の格好を見下ろす。そういえば、今日は同僚の結婚式に出席するので、近衛の正装を来ていたのだ。何時も着替えてくるのに、今日は着替えるのが億劫でそのまま来てしまっていた。
 「近衛の正装かい?良く似合ってるよ」
 「8主にあうぞっ。クンショウもたくさん付いてる」
 「なんか色々じゃらじゃらくっついてるの、勲章だったんだ」
 「こう見ると、確かに近衛隊長って感じだな」
 流石5主さん、目ざとい。そして、2主さん、流石王族です。僕的には7主さんの反応が一番らしいと思うけど。1主さんも、ちょっと興味深そうに見ている。
 「ん?帰ったのか?」
 窓からひょこっと顔を出した4主さんに、僕の体が硬直する。
 何時も、宿舎に来ると真っ先に居場所を確認してしまう人。だけど、今日は、会いたくなかった。
 彼はこちらを見て、微かに眉を顰める。態度には出さなかったと思うけど、油断出来ない。彼は、わずかな表情からこちらの感情を読み取る。肝心なことには全然気づいてくれないが。
 「そんな不安そうな顔せんでも、お前の分もあるよ。甘夏プリン」
 そんな言葉が返ってきたのでどうやら気づかれなかったのだろう。僕は内心胸を撫で下ろした。

685強く儚い導き 8→4 4/7:2009/06/13(土) 19:50:27
 本当なら、食べますって言うべきだと思う。実際、4主さんの作るプリンは絶品だ。しかも、新作のそれは、食べてみたいと思う。
 だけど、僕は首を振った。
 「ありがとうございます。だけど、ちょっと祝い酒で酔ってしまってるので、部屋で休みます。取っといてもらえますか?」
 僕の言葉に、4主さんの目が瞬いた。
 昔見た、硬質な色が柔らかくなった。それは素直に嬉しいと思うのに、それを向けられるのは自分だけではない。
 「8主。具合悪いのか?」
 3女さんの言葉に僕は首を振った。
 「いえ、本当に酔っ払っちゃって、物凄く眠いだけです。こんな寝ぼけ眼でプリンを味わうのはプリンに失礼ですしっ!」
 何時もどおりの態度に、3女さんは苦笑してた。4女さんは我関せずとばかりにプリンをつついている。
 正直、彼女が参戦しないはありがたい。彼女はマイペースがだが、基本スペックが4主さんと同じなのだ。嘘は殆ど見抜かれてしまう。
 彼女が何か言い出す前に、僕は皆に謝ってさっさと自室へ戻った。



 物が詰まれた部屋には寝転がれる場所などない。礼服をさっさと脱ぎ、そこら辺に放る。暫く着ることもないから、後でクリーニングにでも出せば良い。7主さんから借りている魔法の絨毯を広げ、そこにおいてあった寝巻きに着替える。さっさと眠ってしまいたい。
 こんな、うだうだ悩むのは僕らしくないのだ。鬱なのは4主さんだけで十分だ。
 布団に潜り込む。そもそも窓なんてとっくに荷物に埋もれているから、明かりを消してしまえば何も見えなくなる。
 眠りたいのに眠れない。先ほどみた、元同僚の幸せそうな顔がちらつく。
 うん、幸せなのは良い事だ。僕も、ミーティア姫とああなれるとずっと考えてた。
 だけど、僕は彼女と一緒に居られない。僕の時は人と違う。彼女はやがて僕を置いて……逝ってしまう。
 思考がぐるぐる回ってどうしようもなくなった頃、ノックの音が聞こえた。出なければ、僕はもう眠ってしまったと思うだろう。
 コンコン。コンコン。
 ノックが繰り返される。しつこいっ。僕は寝てるんだっ!
 布団を被り直し潜り込む。すると、ノックがやんで、カチャリと扉が開く音がした。
 「……あいっかわらず魔境だな、ここは」
 下から聞こえてきたのは、低いテノール。驚いて布団から顔を出すと、下から絨毯を見上げていたのは、4主さんだった。
 「……4主さん?」
 声が擦れる。ああ、これじゃばれてしまう。
 だけど、4主さんはかまわず、声を掛けてくる。
 「降りて来い。ここじゃゆっくり眠れないだろうが。俺と4女は今日は村に帰るから、特別に部屋を貸してやる」
 少し不機嫌な声。ああ、何時もの彼の声だ。だけど、そうすると僕の中の反抗心が頭を出す。
 「いやです。僕眠いんで。鳥さんと違って、木の枝じゃ眠れません」
 「OK。とりあえず降りて来い。このクソ竜」
 何時もの言葉。でも、気遣っているのか、外に出ろじゃないな。
 思わず小さく笑ってしまう。だけど、降りたくない。暫くそのままでいると、小さなため息が聞こえた。

686強く儚い導き 8→4 5/7:2009/06/13(土) 20:05:26
 『そう、諦めてください。今日はお相手できません。オネガイダカラ、カマワナイデ。イマノボクハナニモミタクナイ、キキタクナイ』
 しかし、そう考えた瞬間、再び絨毯の下で何か声が聞こえ、絨毯が急に下降し始めた。
 『え?これ、7主さんに借りたやつだから、7主さんと借主の僕の言うことしか聞かないはずなのにっ!』
 慌てて起き上がって絨毯に指示を出すが、絨毯は言うことを聞いてくれず、結局4主さんの腰あたりまで降りてしまった。
 4主さんが無言で見下ろしてくる。
 怖い。なんとなく、7主さんっていつもこんな感じなのかと考えた。要するに、僕の思考はメダパニ状態なんだろう。
 「ったく、素直に降りて来い」
 言葉共に、布団ごと体が持ち上げられる。
 「へ?え、えぇぇぇぇぇぇっ!?」
 そのまま肩に担ぎ上げられ、運ばれてしまう。
 『どうしてこの人僕より華奢なのに力持ちなんだっ!?』
 僕が状況が飲み込めない内に4主さんの部屋に着き、僕はベッドに丁寧に下ろされた。
 布団を優しく掛けられ、4主さんはベッドの横に置かれた椅子に腰掛けた。
 手の平が僕の額に伸ばされる。其れから頭をゆっくり撫でられる。
 「熱はねぇな?」
 喉にも触れたので、リンパ腺も確かめたのだろう。
 相変らず甲斐甲斐しい。見下ろしてくる紫水晶は、心配だと言外に告げてくる。違うのに、僕はただ、持て余した感情を落ち着かせたいだけなのに。
 しっとりと冷たい手が僕の額の前髪を書き上げ、目元に触れる。
 指が目元をぬぐい、そこで初めて自分が泣いていることに気づいた。
 彼は何も言わず、お日様のにおいのするタオルを目元に置いてくれる。
 再び頭が撫でられ、手が離れようとする。その手を、僕は慌てて掴んだ。
 「8主?」
 不思議そうな声。しかし、僕の手が導くままに僕の頬に手を置いてくれる。せっかく置いてくれたタオルは落ちてしまったが、それより冷たいこの手のほうが気持ちがいい。
 手に頬を摺り寄せる。彼は困ったような顔で、でも好きにさせてくれる。
 暫くその感触を味わってから、彼を見上げた。
 「聞かないんですね?」
 「……聞いたほうがいいか?」
 彼は優しい。でもとても厳しい。僕が仕舞い込もうとする心を暴こうとする。溜め込んでしまうほうが楽だけど、そうすると心に澱が降り積もる。その恐ろしさを誰より知っているから。だから、自分から吐き出せ、というのだ。
 「聞いてください……今日。同僚の結婚式だったです」
 其れから僕は、ぽつりぽつりと話した。
 確かに祝っていること。でも、置いていかれたような気がしたこと。ミーティア姫のこと。
 自分の寿命のこと。多分、自分は竜神族ほどではなくても、普通の人より遙かに長命だろう。だから、彼女の傍にいてはいけないと思ったこと。
 彼女は好きだ。4主さんへ向ける渇望じゃなくて、一緒に居るととても暖かい、幸せな気分になれる。
 だけど、それじゃあ駄目なんだ。愛していない人に、時の流れの違う僕が傍にいることがどれほどの苦痛を生むか……。
 4主さんが好きだということ以外、自分の心を吐き出した。

687強く儚い導き 8→4 6/7:2009/06/13(土) 20:05:59
 4主さんはただ、時々相槌をうって、頬を、頭を撫でてくれた。
 「ミーティア姫は好きです。でも、僕は彼女を愛していなかった」
 「……好きだからこそ、自分の運命に巻き込みたくなかったんじゃないのか?」
 「いいえ。僕は聖人君子じゃない。本当に大切な人は、相手の都合なんか考えず道連れにするっ。僕は……」
 声が震える。言ってしまいたい。貴方が好きだと。だから一緒に来てくれと。一人は寂しい。置いていかないでと。
 4主さんは小さく微笑んだ。こちらを見下ろす目は優しい。誰だろう、この人。こんな4主さん見たことない。
 「死は、二度訪れるって知っているか?」
 4主さんの突然の言葉に僕は疑問符を浮かべた。表情から答えを得た4主さんが言葉を続ける。
 「一度目の死は肉体の死。二度目は、記憶の死」
 「記憶の、死?」
 僕の頭を4主さんの手が掻き混ぜる。その手の感触が心地よくて、僕は目を細めた。
 「2度目の死は、故人の思い出を生ける者が忘れた時に訪れる死。……死が絆を別つわけじゃねぇ。俺もお前も。いつか、旅の仲間においていかれるだろうさ。それはもう分かっている。だけど、それで最後じゃない。俺たちが彼らを彼女たちを忘れるまで、皆は死なない」
 「なんですか、それ」
 聡いくせに、微妙にずれるのは彼の特性だ、突っ込みの癖に天然入るから、時々ちょっとぼける。
 でも、胸の中の闇に、光が差し込んだ気がする。
 頭を撫でる手が暖かい。本当に欲しいのはこの手。でも、僕の心が怖がっていたのは仲間において行かれること。
 ククールの髪が伸びた、ゼシカの判断の基準がお兄さんじゃなくなって、ヤンガスは例の彼女といい雰囲気で。
 皆進んでいるのに、僕だけ立ち止まっている気がした。一緒に歩きたいのに、歩いていくつもりだったのに、僕の体は、確実に老いのスピードが、時の流れが変わってしまった。
 そして、僕は気づいた。この人も、幾度となく同じことを考えたんだと。考えて考えて、辿り着いた答えを、道を僕に示してくれているんだと。
 「仲間を忘れないでやれ。……それでも寂しかったら、俺のところに遊びに来れば良いさ。どうせ、俺もその頃はシンシアちゃんと二人で、いや、4女も含めると三人でか。そんな感じで隠居してるから」
 物凄く魅力的なお誘い。一部ホラーはいってるけど。どうしてこの人は、こんなに簡単に僕の機嫌を直すのか。
 見上げると、照れているのか、ちょっと視線を逸らしている、耳が赤い。言い馴れないことをいうからだ。
 僕は笑った。完璧で不器用で優しくて厳しい、僕はこの人が好きだ。
 ああ、僕はずいぶんとくだらない勘違いをしていたらしい。
 時の流れが近いからじゃない。異種族とのハーフだからじゃない。優しくて厳しい、不器用なこの人だから好きなんだ。
 いつか言おう。だけど、それは今じゃない。こんな風に、甘やかしてもらえる時間がなくなってしまうのは悲しいから。
 一応、一つ年上のはずなのに、彼は僕を年下のように扱う。
 もう、仲間にも同僚にもしてもらえない年下扱い。
 『でも、いつか下克上したい、かな』
 頭を撫でる手は気持ち良い。でも、本当は、その唇に触れたい。
 悲しい、硬質な瞳を僕の声で潤ませたいのだ。いや、そんな大それたことじゃなくて、微笑んでほしい。きっとこんな綺麗な彼が微笑んだら、とても素敵だろうから。
 『ライバル、増えそうだけどなあ』
 さっきの光景を思い出す。
 うん。頑張らないと。こんなことで止まってる暇なんてない。
 僕は再び頭をかき混ぜる4主さんの手を取り、さっきみたいに頬を寄せる。

688強く儚い導き 8→4 7/7:2009/06/13(土) 20:09:17
 「……4主さん」
 「ん?なんだ?」
 「子守唄、歌ってください」
 「は?」
 不思議そうな4主さんを見上げ、おねだりしてみる。
 4主さんは驚いた顔をしてたけど、僕がじぃっと見上げると、小さくため息をついた。
 「俺は下手だから、笑うなよ?ちょっとでも笑ったら止めるからな?」
 「笑いません。だからお願い」
 小さな、低いテノールが奏でる優しい声が部屋に満ちる。
 その優しさに包まれて、僕は眠りに落ちた。



 「で、朝なんだけど、帰ってこないから見にきたら」
 不機嫌そうな声。葡萄色の瞳が怒りに染まっている。うん、やっぱりこの二人同一人物だ。物凄く怖い。
 4主さんはあのまま眠ってしまったらしい。というか、僕の手がちゃっかり4主さんの手を掴んだままなので、手を振りほどけなかったんだろう。この人らしい。
 「ねえ、8主?」
 「は、はいっ!?」
 「私ねぇ、今日の朝は4主が作ったフレンチトースト食べたかったの。か弱い女の子の手じゃ、生クリーム泡立てるの大変なんだもの」
 「そ、そうですね」
 「うん。物凄く食べたかったのよ?」
 「そういうことって、あ、ありますよね。僕もプリン食べたいことありますし」
 「分かってくれた?」
 「はい」
 「じゃ、選択肢あげましょう。ギガデインとギガソード、どっちがよい?」
 「ど、どっち?」
 「そう。どっち?(はあと)」
 「選ばなきゃ、駄目ですよね?やっぱり」
 「勿論♪ついでに、どっち選んでも、甘夏プリンは私と3女ちゃんで山分けです」
 「ええええっ!?そ、そんなっ!4主さんが僕のために残してくれたプリンっ!!!!!!」
 「いやかましっ!私のフレンチトースト返せっっ!!ギガデインっ!ついでにギガソードっ!」
 「ぬわーっ!!!」

689名無しの勇者:2009/06/14(日) 02:09:31
大作お疲れ様でした!
8主乙女すぎて悶え萌えました8主かわいいよ8主
最後の4女ふいたw
GJでした!!!!


そういやぁ、8主や4主(PS、DS版)も童顔なのは
寿命が長くて成長がゆるやかだからなのかな

690名無しの勇者:2009/06/14(日) 02:18:45
8は青臭くて可愛いなあ
でも他のどのキャラよりも片思いで終わりそうで(ノ∀`)
(個人的意見ですが)

ホラー最後ガチンコバトルも外伝も期待して待ってます!

691名無しの勇者:2009/06/14(日) 14:47:18
乙でした! 超GJ!
個人的には8主がミーちゃんのことも大事にしてて良かった。
今は自分の寂しさが先に立ってしまうところまだまだ子供だけど、
いつか4主のように、他人を包み込める人間に成長していくんでしょうね。
8主が4主を超えられるのはいつの日か?w

私も外伝マターリ期待してます♪

692変わるもの変わらないもの 84 1/4:2009/06/20(土) 04:34:00
連作のあなざーえんどです。
これがエンディングではないですが……IF世界というとこで。
※1 注意。血の表現や、明確には書いていませんが、「死」の表現が含まれます。
また、かなりオリジナル設定が含まれます。
以上の注意事項に引っかからない方のみ、ご観覧くださいませ。
※2 ちょっとばっかりピロートークが含まれますので、其れが駄目な方もご注意ください。










 目が片方しか開かない。眼球は傷ついていないが、額から流れる血が、固まって目を塞いでしまっていた。左手の肘から下も右足も感覚がない。
 『動け、動いてくれっ』
 片方の目で見えたのは、倒れ付した影。
 『ざまぁない。世界に干渉しないなんて、引きこもっていた罰か』
 彼は己を嘲笑う。かつて、天空の勇者と呼ばれた者。しかし、彼を勇者たらしてめていたのは、仲間と、平和を願う人々だった。
 かつて、勇者と導かれし者たちによって地底深く封じられた地獄の帝王は、それでも、滅んだわけではなかった。
 かの者は、ただ深く、闇深く眠りに付いただけだった。
 それでも、闇が、憎しみや恨み、悪意といったあらゆる負の念を人々が生み出されなければ、その眠りは守られるはずだった。
 勇者は、各国の王達にそれを警告し、自らは姿を消した。天に昇ったとも、地に潜り眠りに付いたともされたが、彼の行方を知るものは居なかった。
 しかし、人々は勇者達の残した平和を、導かれし者達が没した数十年しか持たせることが出来なかった。
 国と国は争い、血は流れ、怨嗟の声が世界中に満ち、闇が、再び力を得てしまった。
 地獄の帝王は、かつての失敗を学んでいた。
 人知れず、野望を持つものへ囁き、世界の希望の光になれたであろう者達を、国々の争いへ巻き込んだ。
 今、世界は疲弊し、かの帝王に逆らえる力を持つものは居ない。
 そうして、地獄の帝王は蘇り、世界を紅蓮の戦火で包み込んだのだ。



 「四百年、しか持たなかったなんてな」
 彼は苦笑する。彼は、かつて、白金の鎧を纏い、優美な剣を振るい、地獄の帝王を封じ込めた。

693変わるもの変わらないもの 84 2/4:2009/06/20(土) 04:34:42
 半分、人ではない神の眷属の血が流れていた彼は、仲間達が全て没した後、生まれた村に結界を張り、その中でのんびりと過ごしていた。
 時折訪れるのは、仲間の直系の子孫か、かつて魔族の王だった銀糸の魔人だけ。
 それ以外は、天の使いすら彼は訪れるのを拒んだ。
 彼と半身と、彼とともにあることだけを望んで全て捨ててきた人と、緩やかに時を過ごしていた青年が外の世界の不穏に気づいたのは、気まぐれに人里に下りた時。
 その裏に、地獄の帝王が居ることに気づいた彼は、一度は封印した剣を再び取り、ともに戦ってくれるものを探し始める。
 しかし、その時には全てが遅すぎた、世界全てが戦渦に巻き込まれ、かつての仲間の子孫もまた国同士の争いに巻き込まれ、次々に倒れていった。
 残されたのは、戦う術を知らぬ幼子数人。
 彼は、半身に幼子を任せ、友と、魔人と三人だけでかつて戦った地獄の帝王に挑まざるを得なかった。



 帝王は強かった。世界中を怨嗟に包みこみ、力をつけていた。それに引き換え、かつての勇者達とはいえ、たった三人。しかも、世界の希望の光はまるで蝋燭の灯のようにか細くなっていた。
 辛うじて再び封じ込めることは出来たが、代償は以前よりはるかに大きい。
 右手を、大地に着く。左の肘と交互に動かし、赤い影へと動いていく。
 外れた兜。額からは赤い筋が頬を伝って流れ落ちている。
 甘い物好きな青年の大好きなカラメル色の瞳は閉じられている。
 青年が彼を呼ぶ声が好きだった。彼を見つけると、バンダナの端がぴょんと跳ねる。その赤い布がはねるのが大好きだった。
 年の割りに幼い寝顔。だけど、これは違う。彼同様、青年もぼろぼろだった。
 必死に手を動かし、閉じた口に耳を寄せる。
 心臓が握りつぶされるような気がした。聞こえるはずの息が聞こえない。
 青年は、こんなことに巻き込みたくなかった。だけど、躊躇う彼に、青年は笑った。
 『居候なんだから、たまには働かないといけませんよね?ま、体も鈍ってたし、ちょうどよいですよ。なんですか?えすたっく?お薬みたいな名前ですよね。そんなの、僕と貴方の敵じゃないですよ』
 手を伸ばす。瞳と同色の煮詰めたカラメルのような甘い色の髪を梳く。
 「くそっ!」
 大地を叩く。今の自分に適うのは、せいぜい傷をふさぐ程度の治癒魔法。
 「どうして……どうして俺にはメガザルが使えないっ」
 血を吐くような叫びが洞窟に響く。
 「こんな、こんなところで失っていいはずないっ!俺はまだ、答えてないっ!全てを捨ててきたこいつに、何も返せてないっ!!」
 止まった涙が再び溢れる。頬を伝う涙が彼の手に落ちても、その手は動かない。
 『また泣いてるんですか?泣き虫ですねぇ』
 『泣かないでください。僕達が……僕が居ます』
 『トロデ王……とおさんにも、姫にも、クックルにもゼシカにも、ヤンガスにも……じいちゃんにも竜神王にもちゃんと言ってきました。貴方の傍に居たいって。そしたら、あの人、中々剛毅で、竜神の装備全部もってって良いって言われました♪』
 竜神王、あんたは気づいてたのか?この世界がまだまだ安定していないと。
 だから、コイツに神具を持たせた。なら、如何して止めなかった?
 「どうして……お前が逝かなきゃならない……いやだ」
 零れ落ちる言葉。
 脳裏に浮かぶのは魔人の言葉。

694変わるもの変わらないもの 84 3/4:2009/06/20(土) 04:36:21
















 『お前は、もう、自分のことだけ考えればよい。もう、世界に、<勇者>に己をささげるな……』
 そんな積りは無かった。ただ、自分の役目が終わったと、引きこもっていた自分に与えられた言葉。最後の、言葉。
 言って、よいのだろうか。最後だとするなら、言ってしまいたい。言ってしまおう。もう、誰も聞いていない。最後ぐらい許してもらえるだろう。
 「いやだっ!ハッッシュ……エイトッ!!生きてっ!!置いて、俺を置いていくなっ!!」
 まだ、暖かい体に縋りつく。しかし、いつもなら頭に添えられる手は動かない。瞳は開かれない。
 「いやだいやだいやだぁぁぁぁぁ」
 子供の頃のように泣きじゃくる。どれぐらいだろう、そんなことを考えていたら、つきりと背に痛みが走った。
 『背?』
 何しろ、全身傷だらけだ。背にも負っていたのだろうか?
 ズクリッ
 考えた瞬間、背中に心臓が移動したように全身の神経が集中した。
 「う、ぁ?」
 全身が焼けるように熱い。特に熱いのは背中。まるで、剣で斬りつけられたかのような痛みに体を抱えるように蹲る。
 ずるりっ。
 異質な音。何とか背を振り返った己の目に映ったのは、翼。
 背中を突き破った所為で根元が朱に染まっている。
 「血?いや、なんだ……」
 天空人の翼は一対。そして、その色は白。しかし、この翼は、二対四枚。色こそ白だが、一枚一枚、纏うオーラの色が異なる。
 一枚は紅玉。燃え盛る炎のような色。一枚は琥珀。大地に眠る木から生まれた宝石の色。一枚は碧石。新緑を慈しむ風の色。一枚は蒼玉。命を繋ぐ水の色。
 「これは……力、戻ってる」
 広がる翼。泉のように満ちてくる力。

695変わるもの変わらないもの 84 4/6:2009/06/20(土) 04:39:50
(注ページ数間違えました。4→6となります)














 手を伸ばす。そこには倒れた青年。
 「これなら、いける……ザオラルッ」
 差し出した手が、暗い洞窟の光で満たした。


 ぱちり。
 思わずそんな音がしそうなほど唐突に目覚めた。
 窓から差し込んでくる光。先ほどの夢の光は、この朝日だったのだろう。
 頭に髪を梳く感触。目の前には、心配そうなキャラメル色の瞳。
 青年は出会った頃からずいぶんと背が伸びた。身長はまだ辛うじて自分が勝っているが、肩幅はとっくの昔に負けている。
 それでも、この子犬のような目は変わらない。
 苦笑すると、青年は首を傾げた。
 「どうしたんです?」
 甘いものを食べると、声まで甘くなるのか。いや、違う。青年のこの態度はもはや彼専用だ。
 青年が、彼以外にこんな優しい声も、丁寧な言葉遣いももうしない。
 「懐かしい、夢を見たんだ」
 手を伸ばし、首に回すと、青年は嬉しげに笑い、抱きしめてくる。
 変わらない。まるで子犬が尻尾を振っているような満面の笑みも優しい声も。
 「懐かしい、ですか?」
 「ああ、翼が生えたときの…懐かしい夢」
 肩に顔を寄せると、顎に手が添えられる。
 掠める口付けの間に除くのは、いたずらっ子の笑み。
 顎に添えられた手はいつの間にか後頭部に、もう一方の手はいつの間にか夜着の裾から滑り込んでいる。

696変わるもの変わらないもの 84 5/6:2009/06/20(土) 04:40:29















 「……朝、なんだが」
 「朝ですね。駄目ですか?」
 子犬の眼差しは本当に卑怯だと思う。しかし、ここで流されるわけには行かない。そんなことになった日には、一日寝台で過ごすことになる。
 「駄目。そろそろ、暗黒神とやらも倒された頃だろう?」
 伸びた髪を引っ張ってやると、痛いですよなんて軽く言いながら頷いた。
 「確認したところ。昨日。彼らが来るのは後一週間ぐらいですかね?」
 「そんなもんか?」
 髪をもう一回引っ張る。青年は彼の頬にキスを落とす。
 「はい。確か、夢を見たのは、倒した直後に宿屋に泊まったときでした」
 「なら、本当に猶予ないだろう?さっさと人の姿を捨て完全な竜になるための儀式を始めないと。」
 彼は青年の手をゆっくり振り解き、半身を起こした。
 長い時をへて、青年同様伸びた髪が寝台に広がる。
 彼としては切ってしまいたいのだが、青年はこの髪が好きで、伸ばして欲しいとねだるので切ることが出来ない。
 自分も、大概甘くなったと思う。
 ため息をつくと、同じく身を起こした青年が抱きしめてくる。
 変わらない。図体が大きくなろうが、この甘ったれなところも全然。
 「いい加減にしろ。準備するぞ。っていうか、さっさと変化しないと。俺もお前も、この姿じゃまずいだろう?」
 再び離れようとするが、がっちりと廻された腕が彼の体を拘束する。

697変わるもの変わらないもの 84 6/6:2009/06/20(土) 04:41:05















 「オイ」
 「明日、儀式を始めます。だから、今日は……」
 ぎゅうっと音がするほど抱きしめてくる青年に、彼は苦笑し、瞼に唇で触れる。
 変わらない青年、変わってしまった彼。だけど、この手を放せないのだから仕方ない。
 「しょうがない、な……ってこらっ!せめてメシ食わせろっ!」
 「色気ない……でも、可愛いです」
 「キスすんな、変なとこ撫でるなぁっ!……ひゃっぁんっ……いい加減にしろーーーーっ!!ギガソーードッ」
 「ぬわーーーっ!!!」


 「竜神王、また朝っぱらからあの方に手を出しておられるのか」
 「懲りない方だよな」
 竜神族の里は今日も平和である。

698名無しの愚者:2009/06/20(土) 04:43:18
>>646さま、>>651さま、>>652さま、>>659さま、>>660さま、>>661さま、>>668さま、>>669さま、>>675さま、>>681さま、>>689さま、>>690さま、>>691さま
皆様、本当にありがとうございました。
一言でも感想をいただけると嬉しいです。

で、思わずおまけ作りました。
>>690さまの意見に思わず同意してしまったので。
あのオトメンじゃ、片思いで終わりそうで……
たぶん84、です。
「変わるもの変わらないもの」>>692-697

699名無しの勇者:2009/06/20(土) 20:06:41
ふぉぉぉぉぉ…!おまけキテタ−−−−−!!!GJGJです!
ふたりともかわいいです(*´∀`*)
楽しませていただきました!

トロデ王、とおさんって呼ばれてたんですね。
トロデ、ミーティア、8主の家族も想像してニヤニヤしました。

700cherry 34 1/4:2009/06/26(金) 00:49:48
4主視点ではありません、突発で34出来ました。
匂いちょっと濃い目です。



 「腹減ったぁ」
 「起きてくるなり、それか」
 独り言のはずのそれに返事が返り、声のほうに顔を向けると、キッチンに立っていた4主だった。
 「あ、らっきー♪腹減った。なんか作ってくれ♪」
 「しゃあねぇな」
 いそいそとダイニングテーブルに座ると、4主はキッチンへ向かった。
 ここに住んでいる自分と違い、彼は己の世界に仕事を持っているため、いつもいるわけではない。しかし、いる場合は苦情を言いながらも飯を作ってくれるため、3主は素直に其れに甘えている。
 まあ、これが自分だけではないのがちょっと惜しいが。
 暫く食卓の爪楊枝を弄り回してると、ワンディッシュにボリューム大目なサンドイッチ。サラダはちゃんと小皿に分けているので、ソースが混じることが無い。カップに注がれた冷たいスープにはパセリとクルトン。サラダにはシーフードと歯応えを考えてパスタ。で、サンドイッチはローストビーフ。デザートはチェリークラフティ。
 「……やっぱりおかん以外のなんか入っているだろう、お前」
 「やかましい。さっさと食え」
 『お?ちょっと不機嫌。ううむ。なんか作ってりゃそれなりにご機嫌なのだが、珍しいな』
 しかも、何時もはなんだかんだ言いながら、飯を食っている間、自分は食わなくても前に座ってくれている彼は、珍しくキッチンに戻ってしまった。
 『本当に珍しい』
 彼は、一人の食卓を嫌う。だからこそ、いつも、誰かが食べている間は席を外さない。
 『なんかあったっけ?』
 サンドイッチに齧り付きながら、昨日のことを反芻してみる。
 『いつもどおり朝飯作って、2主に勉強教えて、7、8主の暴走を拳骨で止めてたっけ』
 そう。昨日は珍しく宿舎が壊れる前に果汁組の暴走を止められた。
 『拳固一発って親父かおかんだよな』
 すっかり宿舎の主夫−っていうかもう主婦でいいだろう−が染み付いている。
 『で、オヤツ抜きって言って、二人に泣き付かれていたっけ?』
 オヤツで釣られる勇者もどうかと思う。というか、それ以前に破壊活動が日常茶飯事なのもどうかと思うが。最近は、魔王たちが一番大人しいとか言われてるし。
 『結局あきらめて全員でオヤツ食べたんだったか。実は2主、7主だけじゃなくて8主まで年下扱いで甘いよな、コイツ』
 チラリとキッチンで動く後姿に視線をやる。
 ことことと何か煮る音。大方、夜の仕込みをしてるんだろう。マメな男である。
 『で、オヤツ食べて……おや?』
 ふと、デザートで出されたチェリークラフティに目をやる。昨日のオヤツは確か、売り物にならないさくらんぼだった。
 これは、其れを流用したものだろう。しかし、彼は妙なところで拘るなので、前の日と同じ食材をメインには持ってこない。それは、デザートもしかりである。
 『どしたんだ?』
 サラダを平らげ、スープに取り掛かる。冷製スープがさっぱりとしてる。
 『あ、そういえば……』
 3主は昨日のおやつの時間の騒動を思い出した。

701cherry 34 2/4:2009/06/26(金) 00:50:17
 「おおー初物だな」
 「ああ。冷蔵庫に小分けにしてあるから、姫や奥方のお土産にもってけ」
 4主の言葉に、1主や5主はありがとうと礼を言ってた。
 残りのメンバーはその間にも、中央に盛られたサクランボに手を出していく。
 「んん〜たまにはフルーツも美味しいですね♪これでプリンがあれば最高なんですけど」
 「美味しいよね♪」
 果汁組はちゃっかり小皿に自分の分も確保している。ほかのメンバーも其れを見て、さっさと小皿に確保を始めた。
 折角の初物を食べつくさんばかりの勢いに、持ってきた4主は先ほどの怒りを持続できず、苦笑していた。
 そんな何時もの午後、不意に3主がサクランボの茎を取り上げ、口に放り込んだ。
 驚いた1主、2主に、3主は舌を出してみせる。
 舌には、茎に結び目が作られていた。
 「すっえぇあろ」
 「ご先祖、なに言ってるかわから無い。でも、懐かしいな」
 1主も茎を一本取り上げ、口に放り込む。暫くもごもごと口を動かし、舌を出して見せた。
 そこには、3主が作ったのと同じような、結ばれた茎があった。
 「ああ、懐かしいですね。僕も良くお城で同僚と競争しましたよ」
 8主が笑い、自分も茎を取り上げる。5主も笑いながら其れに習う。
 「パパは大人になってから知ったけど、巧いよ♪」
 「お兄ちゃんも得意だぞ♪ターニアにやって見せてくれっていわれて練習したんだ」
 6主も茎を取り上げる。7主はちょっと顔を赤らめている。
 「なあなあ、ご先祖、皆、なんだそれ?」
 「知らないのか?」
 1主の言葉に頷くのは、2主と4主だ。首の角度まで同じで、よく似た師弟である。
 3主は苦笑し、再びサクランボを口の中に放り込んだ。
 「口の中で結ぶんです」
 「これが巧く出来るかで、あることが分かるんだな」
 「あること?」
 8主の言葉を引き取ってにやりと笑って見せると、1主、5主も同じように笑う。6主は元よりにこやかで、7主は頬を赤く染めたままだ。
 「おこちゃまは知らんで良いこと♪」
 1主の珍しいにやにや顔に、4主の額に皺が集まる。その袖をくいっと引っ張られ、4主は顔を横に向けた。7主が耳元で囁く言葉に頷いていた4主は、不意に顔をうっすらと赤く染める。
 思わず、といった風に8主が息を飲むのが聞こえた。中々未熟者である。
 「お、お前ら、2主の前でっ!!」
 「怒らない怒らない」
 「このサロン王がっむぐっ!?」
 くすくすと笑う5主は、茎を一本4主の口に放り込んだ。
 やってごらん、という言葉にしぶしぶ従う4主に、1主がニヤニヤしている。
 『自分で振っておいてなんだが、1主がこういうの乗るのは珍しいな?』
 暫くもごもごと口を動かしているが、どうも上手く行かないらしい。だんだん寄せられる額の皺に、ニヤニヤ笑いが4匹に増える。

702cherry 34 3/4:2009/06/26(金) 00:50:55
 「なんだ?お兄ちゃんが教えてやるか?」
 からかう6主を睨みつける4主に思わず笑ってしまうと、睨まれた。
 『結局、あの時は出来なくて、2主、7主を除く皆にからかわれていたっけ』
 ボリュームたっぷりランチを平らげ、チェリークラフティに取り掛かる。
 キッチンでは相変らず、彼が背中を向けている。
 『そういうことか』
 もう一度デザートを見て、3主はにやりと笑った。



 わざと足音を立てず、気配まで消してキッチンの彼の元へ歩み寄る。大きな鍋の前に、小さな小皿が二つ。一つは、デザートを作ったサクランボから取り除いた茎。もう一つは、よれよれになった茎の残骸。其れを確認してから、3主は声を掛けた。
 「練習してたん?」
 想像通り、びくりと4主が肩を震わせる。恐る恐る振り返り、皿を下げに来た3主を見た。
 その顔は、無表情とは程遠く、3主の読みどおりであると語っている。
 「た、たまたまだ。デザート作ったら茎余ったから」
 「たまたま、ねぇ?」
 歩み寄ると、一歩ずれる。再び歩み寄り、水場に背を向けて立つ4主を見上げた。残念ながら、彼は自分より背が高い。
 「教えてやろうか?」
 「え?」
 無防備な表情を向けてくる彼に、小さく笑う。
 小皿から茎を取り上げ、己の口に放り込む。彼は、素直にこちらを見ていた。
 『どうして、こういうことに警戒心が育たないかねぇ?』
 彼の死角になるように手をそっと伸ばし、首を掴んで引き寄せ、唇を奪う。
 紫の瞳が大きく瞬く。そして離そうと3主の胸元を押すが、元より逃がすつもりは無い。
 油断していたからか、あっさり進入出来た舌で、茎を押し込んでやる。
 更に歩み寄り、4主を水場に寄りかからせた。不利な体制で押さえ込んでしまえばこちらの勝ちだ。背はともかく、純粋な力は3主のほうが強い。
 「んむっ……さん……んぅっ」
 涙目で背中を叩いてくる。紫の目が潤む様は、何時見ても3主の心を躍らせる。
 コトコトと何かが煮える音の合間に水音が響く。いや、態と響かせる。彼は耳が良いからか、音に酷く弱い。
 背中を叩いていた手が、単調になり、やがて服を掴む。
 まだ開放しない。油断をすると、するりと抜け出すのだ、この翡翠の小鳥は。
 暫く堪能し、彼の足が力を失ったように崩れ掛けるところで、やっと唇を開放する。
 4主は3主の肩に頭を乗せ、ぐったりとしている。
 汗で張り付いた髪を拾い上げ、耳に掛けてやると睨みつけられた。
 「3主ぅぅぅぅぅ」
 恨めしげな表情。荒い息を耳元で吐かれてそんな顔して、誘ってるとしか思えない。
 「出来ただろ?」

703cherry 34 4/4:2009/06/26(金) 00:51:21
 4主が眉をひそめ、口の中の違和感を己の手で探る。
 出てきたのは、二つ結びされた茎。
 「……3主っ!?///」
 「手伝ってやったろ?……お礼は?」
 にやりと笑い、髪を梳いてやる。4主は再び顔を赤らめる。
 『……其れが誘っているって、いつになったら気づくんだろうな?』
 「お・れ・いは?」
 「……ひゃっ」
 無防備に耳を晒してるから、舐めてやる。4主は小さく声を上げてから口を押さえた。
 『相変らず感度良いなあ』
 「……4主?」
 かしりと甘噛み。さて、いつまで頑張れるかな?
 内心笑うと、4主が再び睨む。しかし、直ぐに顔を起こした。
 『珍しく復活が早い?……もっかい塞がんと逃げられるか?』
 顎を再び掴もうとして、逆に掴まれた。そっと寄せられる唇。
 『オヤ。珍しい』
 折角のお誘いを逃すのは惜しい。触れるだけの唇が離れるのを、再び掴んだ後頭部を引き寄せることで防ぐ。
 舌で唇を突付けば、躊躇いがちに開かれ、舌が絡まる。
 再びキッチンに響く水音。しかし、何かが煮える音はもうしない。視線を向けると、いつの間にか、鍋の火は止められていた。
 『……こういうところが油断ならないんだよな』
 離れる唇。潤んだ瞳につられるように瞼に口付けを落とす。
 「なあ、4主」
 「んだよ?」
 背に廻した手に力を入れる。ぴくりと震える体は逃れようとするが、逃がさない。
 「腹、一杯になったから、運動しねぇ?」
 色っぽい誘いなんて通用しない。この翡翠の鳥を手に入れるには、いつも最後は直球勝負。
 どんなに情欲におぼれても、最後の一線で理性を残すにはただ、欲しいと願うしかないのだ。
 「……ばかやろう。二度と公共の場ではやめれ」
 お答えはこちらも色気の無い言葉。まあ、俺達には其れが似合ってる。
 笑いながら、もう一度だけ、煮詰めたサクランボの色の唇に己の其れを重ねた。

7041主&4主:2009/06/27(土) 15:10:19
カプ要素ほぼなし。本スレの主夫コンビという言葉にみなぎったので

4主「1主、これやるよ」つ梅シロップ
1主「何だこれ? あ、梅のにおいする……つかスゲー甘いんですけど喉焼ける」
4主「青梅を氷砂糖で仕込んだやつ。水とかで割って飲んでくれ。
   ホントは梅酒漬けようと思ったんだが、未成年なので自重した」
1主「…水とかで…割って…飲むだと…?」
4主「そう、カルピスみたいに」
1主「……」
4主「どうした1主? 要らんようなら果汁グミどもにやるけど」
1主「いや、そうじゃない。ありがたく頂くよ。
   ……長く険しいカルピス道を歩ききらんとしていた俺に、新たに立ちふさがる強敵…梅シロップ!
   俺の冒険は、まだ始まったばっかりだぜヒャッハー!」
4主「打ち切り漫画の主人公かお前は!?」


>>701さん乙 4主カワユスwww

705名無しの勇者:2009/06/28(日) 01:08:02
>>700-703
34キターーーーーーーーーー!!!!!!!!!
GJでした! 最高に萌えました! やっぱり純正勇者組はいいなぁ。

3主ってば意外と手慣れてる感じがカコイイぜ惚れるw
どっちも(男以上に男らしい)女主が控えてることだし、
安心してくっついて幸せになっちゃえばいいのに(*´∀`)
……と思うんだけど、
寿命のこと考えるとマジで悲恋になりそうだから困るwヒャッホーイw

706名無しの勇者:2009/06/28(日) 01:46:58
ちょいと質問なんだが、ここって3主スキーと4主スキーが多いん?
この二人がからまないカプ話って需要ある?

707名無しの勇者:2009/06/28(日) 03:41:02
需要が気になる、反応欲しいならウケそうなの書けばいいし
書きたいものがあるんなら需要や反応なんか気にしないでいいのでは。

67や果汁も人気あるしあまり見かけないカプも普通に受け入れられてるスレだと思うけど。

708名無しの愚者:2009/06/28(日) 03:50:40
>>704さん
GJです!!主夫コンビ大好きだっ!
二人がとっても可愛いです。

>>705さん
感想ありがとうございます。
大丈夫ですっ!初代ロトなら寿命の一つや二つ、マスドラ脅して伸ばすぐらいやってのけると信じていますっ!
……逆に、3主と死に分かれたあと、ちび5主と出会うという悲恋→次の恋というネタにも繋げられますし(^^;)

>>706さん
私は4主スキーですが、67とか、76とか読むのは好きですよ♪
過去ログにある、61とか21とか87とか56とかも読む分には
美味しく頂けます。

709名無しの勇者:2009/06/28(日) 07:46:42
ごめん、半年ROMってくんない?
すごいウザいんだけど

710名無しの勇者:2009/06/28(日) 22:25:08
>>709
こらこら、落ち着きなさい。
なんでそんなつっけんどんな言い方しかできないのかしらこの子ったらw
「半年ROMれ」はまず言った方が一番KYってパターンが多いから気をつけた方がいいよ〜w

711名無しの勇者:2009/06/28(日) 23:44:09
なんだこの流れ…

712名無しの勇者:2009/06/28(日) 23:46:37
書いてくれる人激減してたんだし新規さん歓迎だけどなぁ
そのうち慣れるだろうし何をそんなカリカリしてるのかと

713名無しの勇者:2009/06/29(月) 00:07:44
新規さんは歓迎だが、あまりに空気読めてないと正直怖いよ
本スレに迷惑かかったらって考えてしまう
ここでならどんな発言してもらってもスルーすりゃいいだけだが

714名無しの愚者:2009/06/29(月) 00:10:20
>>709さん、みなさん
708です。
すいません。調子乗ってました。
連続投稿もしてしまいましたし。
半年ほどROMってきます。

715名無しの勇者:2009/06/29(月) 00:14:15
ここに来れてる時点で本スレに迷惑かける確率は低いけどな
本当にやばいやつはここにすら来ない

716名無しの勇者:2009/06/29(月) 03:22:00
>>708(714)さん
落ち着いて落ち着いて。たぶん>>709さんは>>707さんに対してだと思います。
あなたのこれまでのレスはすごく周囲に気を遣っているし、どう考えても問題があるとは思えません。
どうか恐れず、今まで通り普通に参加してください。



それと、この際だから言わせてもらいたいのですが。
いくら2chのスレに関連しているからって、「このスレ」にまで「2ch」の流儀を持ち込むのはどうかと思います。
あの、人を小馬鹿にするような、上から目線で物を言うのが当たり前みたいな態度は、
「2ch」だからこそ許されてるんであって、本来は見ず知らずの人にあんな口の利き方をするのは非常識でしょう。
まして、ここの住人のほとんどは妙齢の女性でしょう? 恥ずかしいですよ。
こういう同好の士が集まる場所ですから、堅苦しいのは抜きで楽しくやりたいけれど。
ここは2chじゃないんだから、最低限度の礼節はわきまえてください。

717名無しの勇者:2009/06/29(月) 03:37:26
あ〜いるよね、TPOわからない人。
でも全体で見たらほんの一握りだし、そうカリカリしなさんなw



そろそろこの変な流れ切るよ〜。
なにごともなかったように次ドゾー


718名無しの勇者:2009/06/29(月) 13:20:46
>>708
こんだけ顔文字とか使ってればそりゃ言われるよ
>>710>>716に至っては気持ち悪いにもほどがある
>>708もフォローされたんだからいまさら半年ROMる必要もない

719名無しの勇者:2009/06/29(月) 14:25:24
>>718
おいおい。気持ち悪いにもほどがある、なんて確かに失礼じゃないの?
端で聞いてても気分悪いよ。
709にしたってウザイとか半年ROMれとか、テメーが気に入らないだけだろうに、いきなり何様だこいつとか思ったし。
ガキはスルーに限るってほっといたけど、そんなに気に入らないならあんたらが出て行けばいいんじゃね?
一連の流れからして、709と718が沸いて来なきゃ平和だったと思うけどね。

720名無しの勇者:2009/06/29(月) 14:37:44
一旦切ったのを続けた時点で>>718>>719も同じだよ
ついでに言いたいんだけど、>>716はそこまで人を思いやれるのに、>>707に失礼なことしてるよね。気づいてる?

721名無しの勇者:2009/06/29(月) 15:46:47
全員ウザイ
別にスレ立ててそこで話し合えば?

以下なにごともなかったように


722名無しの勇者:2009/06/29(月) 18:44:10
ロビーだったらいいのかね?
板全体用だからあまり占拠するのは好ましくないのだけど。
34受けスキーは変な人が多いね。

723名無しの勇者:2009/06/29(月) 20:02:09
>34受けスキーは変な人が多いね。
はぁ?一緒にするなバカ。死んでこい。二度とここ来るな。

724名無しの勇者:2009/06/29(月) 22:16:48
>>719 >>723
18歳以下は帰れ

7251→3前提14下品:2009/06/29(月) 23:38:54
1主「頼む、ご先祖にモシャスしてくれないか?」
4主「死ね」
1主「4主…会話の途中でいきなり死ね宣言はよくないと思う」
4主「8主相手なら普通のことだ」
1主「でも俺8主はじゃないし」
4主「そうだな。これが8主だったら宣言する前に死んでもらってる」
1主「お前は本当に物騒な奴だな…」
4主「この状況でその発言はそうなっても文句言えないだろ」
1主「この状況…って」
            
        i    
     o/ ⊥ o   
     /レ  ‘ ̄)  
     》    <\   
    ↑     ↑
    1     4

1主「何がいけないんだ?」
4主「とりあえずしまえ。せめて降ろせ」
1主「武器を出してるのも振り上げてるのもお前の方だろ?
   危ないから降ろしてくれ」
4主「降ろしたら俺の身が危ないだろうが!」
1主「大丈夫だって、モシャスしてもらうまでは何もしないから」
4主「それを踏まえた上で一言目の死ね発言をした俺は絶対に正しいよな」
1主「なんだよ家計以外でもドケチだな。心の狭いやつめ」
4主「今お前が生きてるって時点で俺ほど寛大な男もそういないぞ。
   つーか馬鹿言ってねぇで本物のとこ行けよ」
1主「だって…本物に手を出して俺が消えたら嫌だし…」
4主「俺に手を出して5主の家族がまとめて消えたらどうすんだ」
1主「いやぁ…お前は純粋で童貞のご先祖と違ってそこまでハマらないと思うから…」
4主「褒められてるのか?貶されてるのか?」
1主「ヤリチンとビッチと女王様の素質がありそうなチートキャラだと予測してる」
4主「そうか貶されてるのかありがとう」
1主「どういたしまして。お礼は体で。もちろんモシャス付きで」
4主「だが断る」
1主「頼むよ一生のお願いだ。もう我慢の限界なんだよ。
   このままじゃご先祖を無理矢理獣のようにガッツンガッツン襲ってしまう…」
4主「襲ってこいよ。ヤりたい放題ヤって跡形もなく消えちまえ、お前なんか」
1主「でも俺が消えたら2主だって消えるぞ?」
4主「ガッツンガッツンは嫌だ。誠心誠意丁重に扱え」
1主「……可愛がってくれるのは先祖として嬉しいがお前の過保護はちょっと異常だな」
4主「お前が言うな」

726名無しの勇者:2009/06/30(火) 00:03:01
ワロタwガッツンガッツンすればいいじゃない

727名無しの勇者:2009/06/30(火) 00:34:57
>>725
ワロタwそのうちマネマネ紹介してとか言ってきそうだなwww

728名無しの勇者:2009/06/30(火) 01:10:30
なにこのお馬鹿な1主www好きwwwww

7295主と1主でgdgd 1/4:2009/06/30(火) 12:22:23

―夜の宿舎、台所にて―

1主「お、珍しいな。こんな時間に台所なんぞで遭遇するとは」
5主「やあ。眠れないから寝酒を少々ね…そういう1主は?」
1主「カルピスのベストな割合を思いついたからちょっと試そうかと」
5主「ふふ、君も本当に好きだねぇ…良ければ一杯付き合わないか?おつまみもあるし」
1主「ん〜じゃあお言葉に甘えてご相伴にあずかるとしますか」
5主「ルラフェンの地酒にワインにウィスキーにビールその他色々、好きなの飲んでくれ」

1主5主「「それじゃあ、かんぱ〜い」」

5主「…所でずっと気になってた事があるんだけどさー」
1主「何だ?」
5主「3主とはどこまで進んでるんだい?」
1主「ぅぶふぉ!?」
5主「もうキスまでは済ませたのかな?ん?(ニッコリ)」
1主「いいいいいいやあ何といいますか
  その件の回答につきましてはしかるべき検討をいたしま…」
5主「別に隠さなくても良いじゃないか」
1主「う、いや、その、あー、なんだ」
5主「それともとっくに全部いたしちゃった後なのかな?」
1主「!…馬鹿言え。そこまで簡単にいかねえって」
5主「まさかまだキス止まりなんだーとか言わないよね?」
1主「……」
5主「え、本当にそうなの?」
1主「…くっ!文句あっかよ!?」
5主「……ふふふ、顔が真っ赤だよ(ニヤニヤ)」
1主「うっせ!こっちみんな!!」

7305主と1主でgdgd 2/4:2009/06/30(火) 12:25:04

5主「でも未だキス止まりなんて奥手すぎやしないかい?
  折角だから君が1から手取り足取り腰取り…」
1主「お前と一緒にすんな!んな事こっ恥ずかしくて出来る訳ないだろ!?
  男の相手はした事無いから、正直どうすりゃ良いか分からんっちゅーの!」
5主「逆に男同士なんだから、お互いに気持ちの良い所が分かりやすそうだけど…」
1主「えっ!やった事あんの!?」
5主「いや、やった事は無いから詳しくは分からないけど」
1主「…ビックリした」

1主「…そもそも、ご先祖の童貞喪失の前に処女喪失ってのは…」
5主「だったら君が童貞貰ってあげれば良いじゃないか」
1主「俺が女役!?…確かにまだどっちが女役かはっきりしてないけどさ…(ブツブツ)
  ………う〜…酒!!おかわり!!!濃いめで!」
5主「でも3主が経験豊富でもそれはそれで複雑だろ?
  …はい、おかわりお待ち」
1主「ん、まーな…(ゴキュゴキュ)…ふー、うめー!
  しっかしお前も意外と細かい所まで見てるもんだな」
5主「これでも一応年長者だから、若者達のために気を配るようにしてるのさ
  なんならこれからパパ♪って呼んでくれても良いよ?」
1主「|>いいえ」
5主「つれないねえ〜パパ寂しい……あ、おつまみ追加しようか?」
1主「いや、十分足りるだろ(ゴクゴク)それにしてもこの酒うまいな!」

5主「…カプカプ飲んでるけど、そのお酒口当たりの割に結構強いよ?大丈夫かい?」
1主「へ?どのくらい?」
5主「んーと…大体どぶろくと同じくらいかな?」
1主「げっ!…そういわれるとなんらか、景色…が……あー、5主がぶんしんしてる…」
5主「あらら、もう手遅れだったか」

7315主と1主でgdgd 3/4:2009/06/30(火) 12:27:18

5主「さてさて、1主もいい具合に出来上がったし
  夜も更けてきた事だから、そろそろお開きにしますか」
1主「にゃにおぅ!?おれは酔ってない!
  全っっ然よっれないぞう!!?」
5主「そう言う人に限って確実に酔ってるよね…
  もういい加減に寝ないと明日に響くと思うよ?」
1主「い〜〜や〜〜だ〜〜!!5主もいっしょに!あさまでのみつづけるんだ!!」
5主「そんな子供みたいな事言って…」
1主「……(ゴキュッゴキュッ)」
5主「ちょっと、こら!無言でボトルで煽らないの!!!
  まったく…ほら、いい子だから寝よう……ね?」
1主「…(コクリ)わかった。いっしょならねる」
5主「はいはい仕方ないな。じゃあ手繋いで行こうか?」
1主「おう!(ニコニコ)」
5主「……(満面の笑顔なんて珍しい…幼児還り?)」

5主「お部屋についたよ。ほら、お布団被ってねんねしようね〜」
1主「……(ギュー)」
5主「…分かってる。一緒に寝るから、しがみ付かれると動きづらいよ」

1主「ん…んー…服あっつい…」
5主「わっ!そこまで脱いだらダメだって、風邪引くから……!?
  あっ、ちょっ、せめてパンツだけは…それだけは脱がないで…!」
1主「ん。すずしい」
5主「えー………朝色々誤解されそうだけど…まあ良いか」
1主「おやすみー」
5主「…お休み」

7325主と1主でgdgd 4/4:2009/06/30(火) 12:31:17
―朝―

1主「ん、ふあぁああぁぁ…よく寝た……」
5主「スー……スー……」
1主「!!!!!!????!!!♂×♂?????;
  ……………………はっ!?いかん惚けてる場合じゃ!!5主起きろ!起き」

ガチャ

3主「おーい1主!起こしにきてやった…」
5主「ふぁー…おはよ」
1主「なにこの状況」
3主「……う」
1主「……う?」
3主「うわきものー!!!!!!」
1主「ちがっ!ご先祖!待って誤解だって!!!ご先祖ー!!!!!!!」
5主「あーあ、やっぱりこうなるよな(ニヤニヤ)」
1主「ご先祖ー!!!!!!!!」

733名無しの勇者:2009/06/30(火) 14:52:11
>>725
なんだwwwこの二人wwwAAが秀逸すぎるwww
普段良識派な感じなのに、一旦ボケだすとグダグダだよねこの二人w

>>729
5主の策士ぶりに吹いたw
1主も3主も可愛いなあ

734名無しの勇者:2009/06/30(火) 19:54:29
1主ご先祖大好きだなww

735名無しの勇者:2009/07/01(水) 19:54:50
ご先祖大好きな1主萌えるww

736名無しの勇者:2009/07/03(金) 23:45:06
ご先祖ご先祖な1主可愛いなw

7378+4:2009/07/08(水) 03:23:36
本スレネタお借りします。

7主「先輩って言葉に弱いみたいだよ」
4主「何だかな、おい8主浮かれるのはわかっけど」
8主「先輩かぁ先輩、なんて良い響きだ」
4主「…駄目だアイツ。6主のお兄ちゃんに匹敵する勢いだ」
7主「それは、何とかしないと!おーい8主くん」
4主「8主ー」
7主「プリン星人」
4主「半竜」
7主「信号機」
4主「ファッキンドラゴン」
74「……」
4主「駄目だな」
7主「うん、…4主さんこうなったら8主君をエイトって呼んで」
4主「は?嫌だよ」
7主「じゃなきゃいつまでも晩御飯食べれないよ」
4主「だったら代わりに作れば良いんだろ」
7主「今日はチーズフォンデュなんだよ!」
4主「鍋入れて掻き回すだけじゃんか」
7主「チーズの事はチーズマンに聞けじゃない、ほらエイト君ー」
4主「エ……言えるか!」
7主「そんなに頑なにならなくてもえーっと、とかでもギリいけるから」
4主「いけねぇよ。いかねぇよ」
7主「チッ意気地無し」
4主「今なんか言ったか?」
7主「ううん何も?」
4主「あ、そ。」
4主「いっそパーティーアタックとかは?ある種の混乱だろあれ?」
7主「それが、血が出る迄殴ったけど効果無いんだよね」
4主「うわっ、良く見たらバンダナ赤いの血かよ!?血出る前にやめてやれ!」
7主「先輩かって殴られても尚笑ってるのが怖くて…つい。Mは僕のキャラなのに」
4主「いや、あいつ別にMじゃねーし」
7主「流石4主さん解ってるね」
4主「辞めろその温い視線」
7主「さぁ思いきってエイトー!」
4主「やんねぇよ」
7主「早くしなきゃお腹と背中がくっつくよ?」
兵士「エイト先輩!!」
8主「あれ?どうかしたの?」
兵士「遠方に探索に出ていた部隊が怪我をして戻って来ました!」
8主「何?解った詳細は戻って聞く。王への報告は?」
兵士「済んでいます。お休みの所申し訳ありません」
7主「あらま、8主君も一国の兵士隊長だもんね」
8主「すみません晩御飯支度出来なくて緊急事態なんで戻ります」
7主「あ、うん。気をつけてね」
8主「はい」
兵士「お騒がせしました」
7主「いやいや気にしないで」
8主「遠いとこ来させて悪かったね」
兵士「そんな勿体ないお言葉」
7主「あ、あの子目キラキラしてるあれ、絶対羨望の眼差しだよね」


8主「戻りましたー。もうヘトヘトです」
4主「何でお前そんなに先輩呼びに憧れるんだ?後輩いっぱいいんだろ?」
8主「まぁなんていうか、一度で良いから後輩に蔑ろにされてみたくて」
4主「は?」
8主「何やってもウチの兵士達大袈裟だし、この前も血みどろで帰ってきたから、
お疲れって頭撫でたら恐れ多いとか、今死んでも構わないとか言うんですよ?死
なれたら困るって言うのに青い顔が赤くなって奇病ですかね」
4主「お前もう9主も含めて後輩に近寄るな」
8主「そんなひどい!]

738名無しの勇者:2009/07/08(水) 20:29:05
8主www
ちゃんと会話してる4主と7主もいい味でてますな〜

739名無しの勇者:2009/07/09(木) 00:19:28
> 4主「いや、あいつ別にMじゃねーし」
ちょ、4主、それkwsk

740名無しの勇者:2009/08/04(火) 20:07:13
8主「今日は8月4日で8×4の日ですね」
4主「この100%スイカジュースやるから黙ってろ」
8主「さっき皆で食べた西瓜の皿に溜まってた奴じゃないですか!」
4主「うん、我ながら良い出来の西瓜だった」
8主「ええ、美味しかったです…じゃなくてですね。
  僕が4主さんの果汁をちゅっちゅするのが84の日に相応しいでしょうという事で」
4主「俺の果汁って何」
8主「何でしょう…やっぱ精え」
4主「いや黙れ。いいからホラ、こっちの100%メロンジュースをやろう」
8主「さっき皆で食べた以下略じゃないですか。
  …まあ僕も好き好んであんな味の物を口にしたい訳じゃないですけどね。
  4主さんが恥かしがるのが可愛いから頑張れるというか」
4主「うっせ黙れ」
8主「照れちゃって。
  じゃあ妥協点という事で、4主さんの乳首をちゅっちゅしますか」
4主「フーンあっそう…って勝手に剥くな!?」
8主「折角だから、このスイカ果汁とメロン果汁でも塗ってみますか」
4主「痒くなりそうだから止めろ!」

741名無しの勇者:2009/08/10(月) 13:13:26
萌えれて笑える…二度旨ッ

74284(0/10):2009/08/19(水) 01:19:34
久し振りにコチラを覗かせていただいたら創作意欲が萌えたので、
ちょこっと場所をお借りします。

ちょっとだけ注意事項です。

・84のつもりで書いたんですが、どうにも8主がヘタレすぎて受け臭いですw
・最後の2つを除けば、むしろ48として読めるかも!?
・4主に限らず男前な受けが大好物なものでお許し下さい。

少し長めですが、お付き合い下さい。

74384(1/10):2009/08/19(水) 01:20:33



───お前さ、もう少しあいつのこと真剣に考えてやれよ?

いつもいつもぐうたらと生きているニートが、
ふいに真剣な顔つきで零したことがあった。
あのときは心底不快に思ったものだ。

いったい、何をどう考えてやれというのだ?
あんな、人をからかうことが至上の喜びとばかりに
毎日飽きもせずに喧嘩を売ってくるような奴。



───さすがに、同情してしまうなぁ。

そう云って唇に苦笑を滲ませたのは、妻を2人も娶るという、
彼にとっては不誠実極まりないことを平然とやってのけている男だった。

同情ならば、こちらに向けて欲しい。
どう見ても被害者は自分のほうだろう。
ひっそりと平穏に生きていたいだけなのに、奴のせいで毎日が戦場だ。



「あのさぁ、疲れねぇ?」

毎日のことにふいに気持ちが冷めて、剣を降ろして問い掛けたことがある。
顔を合わせるたびに毎回毎回。鳥竜の仲、だなんて仲間たちは笑うけれど、
4主とて、争い合いたいわけではないのだ。
世界に平和をもたらすための勇者としての力を、
こんな無駄に使うはめになるだなんて。
何だか急に馬鹿馬鹿しくなってしまって、背を向けた。

「……だって、こうでもしないと貴方、僕を見てくれないでしょう?」

小さな、本当に小さな呟きだった。
思わず振り返った4主が見たのは、静かな微笑だった。
初めてみた表情だった。こんな顔もするのか、と正直驚いた。

74484(2/10):2009/08/19(水) 01:21:16

きっと、それからだったと思う。彼の真意を探り始めたのは。
あんな遣り取りがあった後も、彼の暴言は止むことがなく、
つい習い性で相手をしてしまっていた。
けれども、あのときの彼の微笑が頭を離れなくて。

その日、風呂から出て広間を横切る際にテーブルの上に
散らかされたままの菓子の袋の残骸が気になって(おそらく3主の仕業だろう)、
仕方なく片付けてやっていた。
たまたま通り掛かったのだろう8主が、そんな4主の姿を見て早速からかってきて。
風呂上りで帯剣などしていなかったから、素手で殴り掛かった。
それなりに体術もこなす8主をなんとか追い詰め、
床に引き倒して首を締め上げて降参を要求していたときだった。
呼吸を妨げられて苦しいだろう少年が、
それでも楽しそうに笑っているのが不可解で、堪らず聞いてしまった。
「お前、そんなにオレに構ってもらえるのが嬉しいのか?」
「嬉しいですね。とっても」
答えられるように、と少しだけ首元を緩めてやれば、
8主はにっこりと綺麗に笑って見せた。
「そんなにオレのことが大好きか?」
「大好きですとも!」
躊躇いなく云ってのける少年が、無性に憎らしくて。
「……ほざいてろ」
あぁ、本当に馬鹿らしく仕方ない。
こうも簡単に笑いながら平然と嘘を吐けるやつの真意など、
知ろうと思った自分が馬鹿だった。
8主の上から退いて、そのままを背を向ける。
解放された少年が背後で軽く咳き込んでいるのが聞こえたが、
無視しようとして失敗した。
咳の中に、微かに笑う声が混じったからだ。
瞬間的に怒りが沸騰するのが自分でも分かった。
これが、最後だ。
もう2度と、こいつのお遊びに付き合ったりなんかしない!
決意を込めて踵を返して───、「……ぁ?」、硬直した。
少年は、笑っていた。
床に座り込んだまま、苦しそうに胸を押さえて。

まるで───酷く傷付いたと云わんばかりの悲しげな微笑。

74584(3/10):2009/08/19(水) 01:21:54

何て顔だ……いつか見た、静かな微笑みを思い出す。
8主は胸に当てた手をぎゅっと握りしめると、
何かを振り切るように左右に首を振って立ち上がり、
そこでようやく、4主の視線に気付いたらしい。
明らかに狼狽した顔が、かっと赤く染まったかと思えば、
先ほどの4主に劣らぬ勢いで踵を返して広間を出て行く。
4主はと云えば、いまだ呆然と動けずにいた。
なんだ、今のは。
なんなんだ、あいつは!
ぐるぐると色んなものが頭の中を巡った。
3主の、5主の意味深な言葉たち。
8主の浮かべた微笑。……静かな、悲しげな、苦しげな、それ。
大好きだから……構ってもらえて嬉しい?
まさかのまさかだ。有り得ない。
けれど、このままではいけないような気がした。

───真剣に考えてやれよ?

真剣に考えてしまって、良いのか?
これ以上、踏み込んだら戻れなくなりそうで、恐い。
混乱したまま、それでも自然と足が動いた。
向かったのは、8主に割り当てられた部屋。
ドアノブに手を掛ければ、鍵が掛けられていないことが知れた。
鍵を掛け忘れるほど動揺していたのか、それとも追ってくるとは思わなかったのか。
思い切ってドアを開けば、慌てたように少年がこちらを振り返るところだった。
「入って来ないで!……出て行って、下さい」
部屋の中へ一歩踏み入ったところで、剣を突き付けられた。
制止の声は、その剣先同様に微かに震えていて。
更に一歩踏み出せば、悲鳴のような声が上がった。
「出て行けと云ってるでしょう! それ以上近づいたら、何するか分かりませんよ!?」
こんなに上擦った声など、聞いたことがあっただろうか?
この少年は、いつも何処か余裕を感じさせる声音で、それはそれは楽しそうに嬉しそうに
こちらの神経を逆撫でてきたものだが、どうだ。
ぱたん、とドアを閉じてやれば、必死な形相でこちらを睨んでいた少年の肩がびくりと揺れる。
らしくない───あまりにも、らしくない。
「……何をそんなに、怯えてるんだ?」
静かに問い掛ければ、言葉も無く少年の首がゆるゆると振られた。

74684(4/10):2009/08/19(水) 01:22:55

疑念は、すでに確信めいたものに変わっていた。
ただ、決め付けるのはどうだろう。
この8主の反応はどうだ。7主にだってここまで怯えられたことはないというのに。
もう後戻りは出来ない。扉はたった今、自分が閉めてしまった。
だが、前へ進んでどうなる? どうなってしまう?
確かめたところで、どうするつもりなのだ、自分は。
一歩、また一歩と近づくたびに、8主は後退していく。
やがて寝台に突き当たり、そのまま座り込んでしまう。
更に歩み寄れば、その手から力なく剣が滑り落ち、
くしゃくしゃと顔が歪んでいくのを見ながら、4主は困り果てた。
どうにも幼子に悪いことをしているような気分が拭えない。
とうとう両手で顔を覆って嗚咽を漏らし始めた8主を前に、4主は複雑な思いで膝を折る。
赤いバンダナが巻かれた頭を引き寄せれば、ひ、と情けない声が腕の中から聞こえた。
どのくらい、そうしていたのか。
膝立ちのまま抱き寄せた少年の呼吸が落ち着いたのを見計らって、4主はその顔を覗き込む。
予想に違わぬ子供の泣き顔をそこに見て、思わず苦笑すれば、恨みがましそうに睨まれてしまう。
「……楽しそうですね」
「あぁ、なんか、楽しいな」
「……僕の云ったこと、聞いてました?」
何を、と聞き返すことは出来なかった。
強い力に引っ張り上げられたかと思えば、視界がぐるりと回って。
気付けば、寝台の上に押し倒されていた。
「何をするか、分かりませんよ?」
接近を拒まれたときと同じ台詞が繰り返された。
真上から無表情に見下ろされて、4主は逡巡する。
まずい展開になってきた、という自覚はあった。
すぐにでも上に乗っかる少年を突き飛ばして逃げるべきだ、と本能が警告を告げている。
どこか冷めた脳内は、それと相反する考えで埋め尽くされていて。
そろりと持ち上げた手で少年の頬に触れれば、その顔がまた苦しそうに歪んでしまう。
こんな表情をさせたいわけではないのに。
「……そんなに、オレのことが大好きか?」
今とは逆の体勢で放った質問を、再度ぶつけた。
「……ッ、好きですよ大好きですとも!! 何か悪いですか!?」
ついに逆ギレしたらしい少年が唾を飛ばす勢いで声を張り上げる様に、
4主は堪らず噴き出す。
まったく、この半竜人族の少年と来たら!

74784(5/10):2009/08/19(水) 01:23:31

腹を抱えんばかりに笑い出した4主を憮然と眺め下ろす8主の顔に、困惑が混じり始めた頃。
「オレ、やっとツンデレって言葉の意味を本当に理解出来た気がするよ」
ニヤリ、と笑ってやれば、少年の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。

───同情してしまうなぁ。

好きな子ほどイジメたくなるものだ、と云っていたのは、誰だったろう?
そのときは聞き流してしまったけれど、きっとこのことだった。
なんと分かりにくいことか!
「お前って、本当に馬鹿だったんだなぁ」
「……しみじみと云わないで下さい」
「だって馬鹿すぎるだろ」
「……嫌ってくらい自覚はしてます」
「そりゃいいことだ。あー、馬鹿って治らないんだっけ?」
「……だから馬鹿馬鹿云わないで下さいってば」
「せめてアホだったら治ったのになー」
「……うるさい!!」
「……ッん、」
どうやらからかいすぎたらしい。唇が塞がれた。……同じ熱を持つ、唇で。
直接伝わる吐息が、かすかに震えているのが分かった。
さて、どうしたものか。
今更ながらに困ってしまった。
8主の秘めていた想いを知ってしまった今、今度はこちらが答えるべきだろう。
否か、それとも───。
まったく動かない4主を不審に思ったのか、8主が僅かに唇を離してこちらを伺ってきた。
その黒と呼ぶには柔らかな色合いの瞳が、不安そうに揺れているのが分かる。
無言のまま、見つめ合う。
先に視線を逸らしたのは、8主だった。
同時に身体の上の重みも消えていくのを感じて、4主は思わずその腕を掴んでいた。
「……駄目ですよ、4主さん」
「何、が……駄目なんだ?」
「これ以上は、駄目です。勘違い、してしまいたくなるから」
勘違い。何を?
「……オレは」
「僕に同情してくれるなら……どうか、忘れて下さい」
8主の腕を掴んでいた手が、ゆっくりと外される。
遠ざかる。身体だけではない、心までが、離れていく。

74884(6/10):2009/08/19(水) 01:24:12

「───違う!」
駄目だ、と思った。本能が訴える。今、離してはいけない。
「違いません。僕は、同情なんか欲しくない……!」
再度伸ばした手は、苛立ったように振り払われた。
「誰が同情なんかするか!」
「じゃあ何だって云うんです!? お優しい貴方のことだ、哀れんでくれるとでも!?」
「こんの……馬鹿が!!」
卑屈に哂う8主の顔が見ていられなくて。思わずその頬を平手で打っていた。
その勢いのままに、首元を掴んで引き寄せる。
「あのなぁ、オレはたった今、お前の気持ちを知ったばかりなんだぞ?」
ずっと、嫌われていると思っていた。
気に食わないから、いつも喧嘩を仕掛けてくるのだ、と。
「それなのに、いきなり同情も哀れみもあるか!」
込み上げた感情は、純粋な驚きと、あぁそうだったのかという安心───喜び、だった。
嫌われていたわけではなかったのか、と。
「……嬉しかったんだぞ、これでも」
さすがにこれは照れて、小さな声になってしまった。
8主は呆然とこちらを見ていた。恥ずかしいから、何か反応を返して欲しいのだが。
「……悪かった。でも、そんな痛くないだろ?」
平手を食らわせた頬が、僅かに赤くなっている。
両手が塞がっていたから、謝罪を込めて仕方なく舌を這わせた。
「な───に、するんですか貴方はっ!」
ようやく我に返ったらしい8主が、慌てたように4主の手から逃れる。
4主にしてみれば、ただの謝罪のつもりだったのだが、お気に召さなかったらしい。
「だから悪かったって───ぉわッ」
再び押し倒される。しかし、今度は両手首がまとめて頭上に縫いとめられた。
「じゃあ、からかってるんですか」
「からかってない」
憮然と見上げれば、目を細めた8主がべろりと頬に舌を這わせてきた。
「ぅ、わ……な、ななななにを……っ」
ぞわわっ、と悪寒が走って、堪らす4主は首を竦める。
「何って貴方がさっき、僕にしたことですよ」
しれっと云われて、4主は顔が赤くなってしまうのが分かった。
決してそんなつもりではなかったのだが……
8主には違う形で伝わってしまっていた、ということか。
あーうー、と視線を彷徨わせて唸っていたら、今度は首筋に滑った感触がして慌てる。
「ちょ、こら……!」
「……抵抗すればいい」
上擦ってしまうこちらの声と正反対に、やけに落ち着いた声音で8主が囁く。

74984(7/10):2009/08/19(水) 01:24:48

「嫌なら、逃げればいいでしょう。貴方が本気を出せば、簡単なことだ」
「……ッう、」
声と共に耳元へ吐息が掛かったと思ったら、そのまま舌が潜り込んで来た。
いやだ、と素直に思った。無意識の内に、拘束された両手が逃れようと暴れる。
逃げろとは云うが、拘束する力は強い。簡単に逃がす気はないらしい。
耳朶を甘噛みして、そのまま頬を伝い顎を掠めて降りてきた舌先が、鎖骨の窪みを辿り始めた。
いよいよもって、決断すべきときが来たようだ。
逃げるか、受け入れるか───受け入れる?
それは、8主を好きだと認めることと同義でなければならない。
好きかと問われれば、分からないとしか答えられない。
だって、本当に今さっきまで嫌われていると思っていたのだ。
ならば嫌いか、と問われると───違う、としか云えない。
決して嫌いではない。好きかどうかは分からない。
この場合は、どうすべきなのだろう?
ちり、と鎖骨の上に微かな痛みを感じた。きつく吸い付かれたのだ。
同じような感覚が、首筋にも落とされる。
ぞくりと腰にまで響くそれが、僅かなものでも快感であると悟って、4主はきつく目を閉じる。
そうして、目を開けて8主を睨み据えた。
「……8主。手を、放せ」
自分でも驚くくらい、しっかりとした静かな声だった。
8主の動きがぴたりと止まり、やがてのろのろと顔が上げられた。
そこには、何処かほっとしたような微笑があった。諦めの滲んだ、笑顔。
「……どうぞ」
あっさりと拘束が解かれる。
4主は自由を取り戻した両腕を、そのまま8主の首に回して引き寄せ───口付けた。
狙いを過たぬよう目は開けたままだったから、8主が瞠目しているのがよくわかった。
合わせた唇の隙間から歯列に舌を伸ばせば、びくりと身体を揺らした8主が慌てたように唇を離す。
「貴方は───何を、考えているんですか!!」
「お前のこと」
「な……、」
あっさりと答えれば、8主が絶句した。まぁ、それはそうだろう。
「考えてはいるんだが、どうも答えが出そうにない。たぶん、今日明日じゃ無理だ」
だから、仕方ないのだ。
「とりあえず、好きにしろよ」
好きになれるかは分からないが、嫌いにはなれそうにないのだ。それだけは確信している。
口付けられても、そんなに嫌じゃなかった。自ら口付けるのも、結構平気だった。
……ちょっと、どきどきはしたが。今だって、いつもより動悸は早い。

75084(8/10):2009/08/19(水) 01:25:23

「貴方……馬鹿でしょう?」
長い沈黙の後、ようやく8主が口を開いた。
「散々人に馬鹿馬鹿云っておきながら……っ、貴方のほうが馬鹿じゃないですか!!」
「馬鹿じゃないとは云ってない」
「開き直らないで下さい!!」
「開き直るしかないだろう!?」
首に腕を絡めたまま、至近距離で睨み付ける。
「仕方ないだろ。……なんか、お前の泣き顔見るの、ヤなんだよ」
低く呟いて、8主の目元を舌でなぞれば、微かな塩気を感じた。
「だからさ、とりあえずお試し? 」
「……僕が貴方に何をしようとしてるか、分かってるんですか?」
「分かってるつもりだ。まぁ……一応、オレも男だし」
「お試しなんて軽い気持ちで、男に抱かれてやろうと?」
「本気で嫌になったら全力で抵抗してやるから安心しろ」
「どう安心しろって云うんですか」
「とりあえず、殺しはしないから」
8主の口元が、不服そうにへの字の曲がる。
その結ばれていた口元が次第に緩み始めたところで、こちらの肩口に顔を埋めてきた。
それを膝立ちのまま支えてやって、頭を撫でてやれば微かな嗚咽が漏れ聞こえた。
……泣き顔は見たくない、と云ったのに。
あぁ、だからこそ顔を埋めてきたのか、と思い至り、4主は思わず笑ってしまう。
「お前、本当に可愛いなぁ」
抗議の代わりか、どん、と胸が叩かれた。嗚咽は、まだ止まらない。
ふいに顔が見たくなって、8主の頬を両手で包んで引き上げてやる。
濡れた眦に口付け、赤くなった鼻先を啄ばんで、
嗚咽を堪えるためにだろう食いしばっている口元に唇を重ねた。
解けた唇から情けない声が漏れる前に、と舌を滑り込ませる。
んん、と零れたのは、どちらの吐息だったか。
緩やかに歯列を辿っていたら、調子に乗るな、と云わんばかりに甘噛みされて。
舌先が絡み合い、強く吸われる。
さすがに息苦しくなってきて口付けを解けば、微笑む8主と目が合ってどきりと心臓が跳ねた。
───こんな表情も、初めてみた。
それは、酷く幸せそうで。
こんな顔が見れるのだから、きっと自分は間違った選択はしていないのだろう。
「もう一度……」
小さく乞われるままに目を閉じて、口付けを待つのだった───。

75184(9/10):2009/08/19(水) 01:25:56



───本当に、詐欺だとしか思えない。
ぐったりと仰向けに身体を横たえながら、ぜぇはぁと苦しい呼吸を繰り返す。
ちらりと隣を見遣れば、同じように横になりながら、こちらを見てにっこりと笑う顔がある。

幾度目かの、2人きりの夜である。

顔が見たいから、と云われて、膝を畳まれて圧し掛かられた。
男の身体の構造上、それはとてつもなく負担が掛かる体勢なのだが、悲しいかな、
4主の身体は男としてはかなり柔らかいほうで。
それでも無理な体勢であることに代わりはなく、
こうして終わったあとにじわじわと苦痛が押し寄せてくるのだ。
やはり、最初の躾が悪かったのだと思う。

初めて身体を繋げた夜───8主は涙を見せた。
互いに男相手など初めてで、当然ながら負担が大きかったのは受け入れた4主のほうで。
泣きたかったのはこちらのほうだったはずだ。
身体を内側から裂かれる痛みを、こいつにも味合わせてやりたいくらいだ。
ふつふつと怒りを沸き立たせていたら、ふいに少年は呟くのだ。
ずっと貴方に触れたかった───それが叶って、嬉しくて涙が止まらないのだ、と。
何とも卑怯だと思った。急速に萎んでいく怒気に、気力も萎えたものだ。
それでついつい、甘やかしてしまった。
どうにも8主の涙には弱いのだ。
だから、これっきりだと嘆く少年に、次もあるのだと示唆してしまった。
あまつさえ、またしても空気に流されて2度目も許してしまった。
そうこうするうちに、少年は本来の「腹黒」と称される己の本分を思い出したらしい。
なんだかんだとあの手この手と乗せられて、気付けば数えるのも面倒なくらい、
身体を許してしまっていた。
今度はやらせろ、と立場の逆転を何度も要求しているにも関わらず、
常に受け入れる側として、だ。
どうやら、自分で思っている以上にこの身体は快楽に弱いらしい───。
これでも2、3度はマウントポジションを取ったことがあるのだ。
なのに、気付けばいつも形勢逆転、酷いときは上に乗ったまま貫かれているのだから、
我ながら救いようがない。
単に少年のほうが上手なだけなのかもしれないが。

75284(10/10):2009/08/19(水) 01:27:02

今日も今日とて、ちょっと甘い顔を見せただけでこれだ。
……まぁ散々気持ち良さそうに喘いでしまった後なので、あまり文句など云えないのだが。
「……なぁ」
「なんですー?」
うっすらと汗で湿った髪の毛を引っ張れば、8主がごろりと身体を転がして引っ付いてきた。
「今度こそ、やらせろよ」
「まだ諦めてないんですか?」
肘をついて半身を起こした8主が、額の髪をかき上げながら笑った。
「久し振りに、お前の泣いた顔が見たい」
「でも4主さん、僕の泣き顔を見るのは嫌いだって云ってたじゃないですか」
「……よく覚えてんな」
「貴方の云ったことなら、一言一句、すべて間違えずに覚えてますよ」
彼の気持ちを知らずにいた頃なら、
こうした言葉は全て悪意に満ちた冗談としてしか聞こえなかっただろうが、
今となっては全てが本心だと分かってしまっているから厄介だ。
よくぞこんなこっぱずかしい台詞を堂々と云えるものだ。
「あーもー……信じられねぇええええええ……」
きっと赤くなっているだろう顔を見られたくなくて、8主のいない方へ身体ごと横へ向ける。
けれども隠し切れない真っ赤な耳元へ、少年は殊更声を潜めて囁くのだ。

「僕はねぇ、貴方の泣いてる顔、かなり好きですよ」

駄目だ、もう耐えられない……!!
攻撃呪文の詠唱を始めながら8主のほうを向き直れば、待ってましたとばかりに口が塞がれて、
手の平に集まり始めていた力がパチパチと爆ぜていってしまう。
「ん───ッ!!」
そうして抗議の声は、甘い口付けに溶けていくのだった───。



<了>

753名無しの勇者:2009/08/19(水) 20:13:16
投下キテターーーーーーー!
乙女8主かわいいよ8主カワイイヨハァハァ(´д`;)
4主がいつになく優しいね。こんな84もいいなぁ
742-752乙!!!

754名無しの勇者:2009/08/22(土) 23:17:46
>742-752うおー乙です
4主のことが好き過ぎて泣きじゃくる8主が凄く凄く可愛い
4主じゃなくてもこれは抱き締めてよしよししたくなるw

8主を包み込む4主がまるで怯えたチワワを撫でるご主人様のようで好いw
それにどこか母性のような包容さがあって萌える、しかも4主なだけあってやっぱりエロい
包容から始まって、頬舐めから、口付け→目元舐め→なでなで→顔中にキス攻め
の流れに萌えいでか
なんなのあの人凄くエロいよ最高だ
>742-752素晴らしくGJでした

755名無しの勇者:2009/08/27(木) 22:00:40
久々に来たら…投下も来てた!
乙女8主タマンネ(´д`)ムフー
84ドッチモカワイイヨ…

今更だが大作GJ!

7561→3前提14下品:2009/09/26(土) 02:47:00
>>725続き

7571→3前提14下品:2009/09/26(土) 02:47:26
1主「さてご先祖にモシャスしてきてもらったわけだが…
   ご…ご先祖!ご先祖!3主!3主ぅぅうううわぁあああああん!!
   あぁああ…あっあっー!クンカクンカ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 」
4主「それ現実に言う奴いるんだな」
1主「……ハァッハァッ!ダメだ!そっくりすぎて手が出せない!
   これじゃあ俺の欲望を開放してやることができない…」
4主「十分すぎるほど変態っぷりは見せてもらったが」
1主「違うんだ!こんなんじゃないんだ!もっとこう…ああ、全然足りない…!」
4主「お前普段どんだけ変態を抑え込んでんの?」
1主「ご先祖相手なら必死でセーブしてるからな…
   そう…体はご先祖なのにご先祖じゃないから色々曝け出せるこの奇跡」
4主「……気がすんだなら帰るぞ」
1主「待って!もうちょっとご先祖もどきを堪能したい!」
4主「でもモシャスじゃ似すぎてスーハーするだけしかできないんだろ。
   大丈夫だって、そのくらいならさせてくれるよ本物も」
1主「待て待て!どうせならスーハーよりもっと踏み込んだことしたいし!
   ほら、もうちょっと微妙なそっくりさんとかにできない?」
4主「バーサーカーかプチヒーローでも飼えよ」
1主「そこまで行ったら遠すぎるだろ、人間じゃないし」
4主「剣神とか顔も髪型も結構似てるぞ。色全然違うけど」
1主「アーアーキコエナーイ」
4主「6主の髪を黒に染めるとか」
1主「職業勇者にはあの勇者オーラが足りないからなぁ…」
4主「じゃあ女3主」
1主「女相手の浮気だとローラの目が厳しくって…じゃなくて!
   なんてこと言ってんだお前鬼畜にもほどがあるぞ!女のご先祖が可哀想すぎる!」
4主「そろそろヌッコロしていいか?」
1主「ご先祖はそんなこと言わない」
4主「そりゃ俺はご先祖じゃねぇからな」
1主「やだやだ!今だけは俺のご先祖でいて!」
4主「いいかげんにしないと踏むぞ」
1主「そんな凶悪な表情で凄むのなんてご先祖じゃなゲフッ!!
   ちょっ…どこ踏ん…で……っ!らめぇっ!ぐ、ぐりぐりしちゃらめぇぇ!
   やぁっ…お、女の子になっちゃう…ッ!あぐっ…やめ………に、2主っ…2主たちが……!」
4主「チッ 2主のためにもこのへんにしといてやる」
1主「ハァハァ…ハァ…………」
4主「これに懲りたら代用とか馬鹿なこと考えんじゃねぇぞ」
1主「……女王様ご先祖……新ジャンルすぎる…」
4主「しまった逆効果か!」
1主「衝撃的すぎて…俺のこれからの歴史の冒険の書は…おきのどくですが…」
4主「消すなあああああ!!」




1主「結局変化の杖を借りてローラに使わせてご先祖プレイをすることで事なきをえました」
4主「それ、ローラ怒んねえの?」
1主「本気の浮気されるよりはいいってさ」
4主「器でけぇな」
1主「めでたしめでたし☆」
4主「頭がな」

758名無しの勇者:2009/09/26(土) 20:10:55
ワロタwwwww

759sage:2009/09/27(日) 01:57:52
>757
クソワロタwwww
つかローラ器でかすぎだろうwww

760名無しの勇者:2009/09/27(日) 23:24:26
ローラさん尊敬するっす!!

761名無しの勇者:2009/09/28(月) 22:05:56
ローラさんもマジパネエすけど、4主さんもスゲエっすね!

762名無しの勇者:2009/09/29(火) 08:17:38
1主www
本人の前で必死に欲望を抑え込んでる様も見てみたいww

763名無しの勇者:2009/09/30(水) 21:47:52
冒険の書が消えてやみつきになるような足テク軽々しくおみまいしちゃらめぇ

764名無しの勇者:2009/10/04(日) 19:14:14
4主「葡萄が豊作なので、ジュースにしてみた」
8主「葡萄ジュース? はて、ジュース……ああ、果汁! 葡萄果汁の事ですね!」
4主「ジュースだろ?」
8主「いいえ果汁です」
4主「はいはい果汁果汁。お前にも一本やるよ」
8主「何ですか、その投げ遣りな言い方!
   果汁…いえ、果汁グミに対する侮辱ですね!?」
4主「いきなり切れられても…いや、押し付けようとして悪かったな。
   これは1主にや
8主「あそこで紫に透き通る美しい果汁をカルピスで濁らせている人にですか!?
   それこそ果汁に対する冒涜というものです!
   いいえ、これは僕が頂きます!!」
4主「何も一気にスーパーハイテンションにまでならんでも…ほれ」
8主「ありがとうございます」
4主「洗わなくていいから、後で壜だけ返してくれ」

8主「へー。これ、手作りなんですかー。綺麗な色ですね」
4主「言っておくが、着色料は使ってない。
   保存料も入れてないから、早めに飲みきるように…でないと」
8主「でないと?」
4主「酒税法違反でしょっ引かれる危険性も無きにしも非ず、だ。
   まあ、かびが生えるのが関の山だろうがな」
8主「はーい。でも、本当に綺麗な色ですね…あ。」
4主「ん? どうかしたか?」
8主「いえ。何でもないです」
4主「変な奴だな……じゃあ、他の奴らにも配ってくるから」
8主「ええ、ご馳走様でした」

8主「フゥ…」
8主(光に透かすと、4主さんの瞳と同じ色に見える)
8主「綺麗、だなあ…」

765名無しの勇者:2009/10/05(月) 19:33:22
テラカワイス(´∀`)

766名無しの勇者:2009/10/06(火) 23:13:45
つ山葡萄カルピス
こういう雰囲気は結構好きです。

767名無しの勇者:2009/11/11(水) 10:22:28
近親相○も好きな自分は 1主→3主→3女 とかすごく萌える。
だが女子が絡んでしまうので肩身が狭かったりする。

768名無しの勇者:2009/11/12(木) 17:43:04
それをここで言う必要はまったくないがな

769名無しの勇者:2009/11/12(木) 21:37:59
うわぁ、このおばちゃん冷た〜いw こんな程度もまったく許容できないんだねw
言葉遣いもわざわざ男っぽくして、なにそれ俺カコイイーとか自分に酔ってんの?

770名無しの勇者:2009/11/12(木) 22:18:37
ガキは一生ROMってろ

771名無しの勇者:2009/11/29(日) 02:44:55
1主→3主がメインなら3主→3女要素があったって問題ない
逆に1主×ローラだって3主の片思い話なら書かれるわけだし
変に卑屈になって肩身狭いとか言う必要はないな

33がメインなら住むところが違うと言うしかないが

772名無しの勇者:2009/12/10(木) 23:23:45
んじゃ、1主→3主→←3女でもおkなの?
なるべくメインは1主と3主になるようにはしたいけど、
女出る時点でムカつくとかいう人に問答無用で叩かれそうでなんか怖いなぁ…。

っていうかこのスレ最近、読者層は女性が多いはずなのに、
2chの本スレよりギスギスしてて口悪い人多いから投下するの迷う。
前は結構書いてたし、その頃は和気あいあいしてて楽しかったのに。
700番台のどこかでROMれとか言い出した人が出てから空気おかしくなったよね。

773名無しの勇者:2009/12/10(木) 23:55:52
誰もムカつくとまでは言ってないんじゃない
過去作にだって女の子は出てきてるし
ただ男女カプをここでやることには疑問が残る

774名無しの勇者:2009/12/11(金) 22:19:06
>>772>>1

7751→3(1/2):2009/12/12(土) 01:47:44
空気読まずに投下
1→3です


「ご先祖、いい加減ネットやめろよ」
1主が呆れたように呟いた。3主は画面を食い入るように覗き込みながら返事もしない。
1主は大きくため息をついた。
「はぁ、俺の先祖様が、あれ程憧れていた初代ロトがコイツだなんて…」
1主はそう言ってわざとくさくかぶりを振る。
「うるせー!俺のライフワークなんだよネットは。ジャマしてくれるな」
3主がそういって振り返ると、1主はなんとも言えないような微妙な表情をして3主を見ている。
「…なんだよ」
3主が尋ねると、1主がいや、と首を振る。
「やっぱ、現実味ないなぁって」
古代の魔王を倒した勇者その人とは思えない、今の3主。年は1主より下だし、引きこもって何ぼの生活ぶりだ。
「ご先祖、本当に魔王倒した? だいぶ俺の理想像とちがうんだけど」
「お前の理想像ってどんなだよ。俺ほど勇者の風格をもつ男もいないだろ」
そう言って3主は得意げに腕を組んでみせる。その腕は引きこもりすぎて筋肉が落ちており、まとう服はジャージだ。
1主はうーん、とうなった。
「そうだな、やっぱ勇者ロトなら、25歳以上で、冷静沈着で、近寄りがたい雰囲気で…」
1主がつらつらと条件を上げ連ねだすと、3主がうんざりしたような顔つきになった。まるで自分と正反対だ。
「賢くて、度胸があって、努力家で…」
「俺はどうせ落ち着きも度胸もないよ!ちぇっ」「でも」
1主が突然言葉を切って3主をじっと見つめた。3主は思わず口をつぐむ。
「何でか俺、納得しちゃってんだよなぁ…ご先祖が、勇者ロトだってことに」
はは、と1主がおかしそうに笑った。その表情は、本当に何で納得しているかわかってないみたいな顔つきだ。

7761→3(2/2):2009/12/12(土) 01:48:38
3主はムキになって言った。
「当たり前だろ!俺、勇者ロトだもん」
「こんなに、正反対なのになぁ」
1主が笑って独り言のように言う。
「理想と違ったのに、ずっといると、何でだか、分かる。何でだろ」
1主がそういって、すっと手でわずかに3主の顎に触れた。視線がぶつかる。
「たぶん…ご先祖だから…」
1主のその熱っぽい目に3主は息を飲んだ。それは、ずっと長い間もっていたのだろう憧れとか、尊敬とか、そして
それ以上の何か、が。確かに込められていた。3主は瞬時にかっと顔が赤くなるのを感じた。
「何だよそれ、」
3主は目を合わせていられなくなってそっぽを向いた。そのまま、パソコンの画面に視線をうつす。心臓がどくどくと
波打っている。
「わかんないかなぁ」
1主はまた笑いをこぼして、そのまま何でもなさそうに立ち上がった。
「ネットはほどほどにしろよ」
そういい残して、部屋から出ていった。3主は、じっとして気分を落ち着ける。
(何だ今の)
あの目。
(初めて見た…)
口元を押さえた手が微かに震える。3主はその手を理解できずに見つめた。
「クソッ」
3主はわざと声に出してみた。気をそらそう。
「あと2時間はネットやってやる」
そういって、あとはもう考えまいと、また画面に集中した。

777名無しの勇者:2009/12/12(土) 09:24:02
やきもきするうぅ
ごちそうさまでした

778名無しの勇者:2009/12/12(土) 16:27:08
>>774
なんでもかんでも1に振らないでください。微妙だから聞いてるのにわからないの?
第3者から見たら私含めてうざいのはわかりますが、今後他の人のことも考えてはっきり言わせていただきます。
実力が伴わないなら偉そうにしゃしゃり出てきて仕切らないでください。

779名無しの勇者:2009/12/12(土) 16:42:55
>>778
ネタ書いてるから自分は偉いんだとか勘違いしてる系の厨房か?
荒らしはスルー、ネタもいらないから半年ROMれ

780名無しの勇者:2009/12/12(土) 16:52:10
>>778
ここのやり方が嫌ならサイトなりなんなり作って出てって下さい
半年と言わず一生ROMれ

781本スレ351より 8→4ぎみってか8主が変態くさい:2009/12/16(水) 18:20:54
3主「おらおらあああ抜き打ち清掃じゃワレえぇぇ!!」
8主「いやぁぁぁぁ!押し入り清掃は勘弁してくださいいいいいい!」
3女「さあどんどん捨てちゃおうねっ!……って、あれ?」
8主「あああああああその服溜まりはらめえええええええ!」
3主「なんだこれ。パジャマ?」
3女「パジャマにも見えるけど、4主の服にも似てるな」
8主「違います!それは僕のパジャマです!断じて4主さんの服なんかじゃありません!」
3主「そういや昨日洗濯物が足りねーとか言ってなかったか」
3女「あー言ってた言ってた」
8主「偶然です!ぬれぎぬです!決して匂いを嗅いでくんかくんかすーはーすーはーなんかしてません!」
3主「……」
3女「……」
8主「なっ、なんですかその目は……見るな僕を哀れな物のように見るなあああ!」
3主「判定は?」
3女「有罪(ギルティ)」
3主「……おーーーーーい4主ーーーーーー!!!」
3女「4主ちょっと来て今すぐ来てーーーーーーーー!!!」
8主「いやああああああああああああんらめえええええええええええええええ!」

782名無しの勇者:2009/12/17(木) 21:55:29
8主ww
服以外にも4主使用済み歯ブラシとか持ってそうwww

783名無しの勇者:2009/12/23(水) 02:51:52
4主使用済み歯ブラシが8主使用済み歯ブラシ(性的な意味で)になるんですねわかります

78448で性なる夜 0/3:2009/12/25(金) 20:15:32
48投下いきます。
少々ベタな展開になりました。
ちょっと女装ネタ入りなので、苦手な方はご注意を。

78548で性なる夜 1/3:2009/12/25(金) 20:16:13
「…何、してやがる」
「いえ、ちょっと」
「格好を見るとサンタのつもりらしいが、サンタってのは人の寝込みを襲う生き物じゃなかったよなぁ」
「いえ、サンタです。プレゼント配布中なのでいい子は寝ててください」
「服脱がされかけてんのに寝てられるか。…このアホッ」
「いたいっ! 何するんですか! 人を殴る悪い子にはプレゼントあげませんよ!」
「…念のため聞いておくが、プレゼントってのは俺が脱がされてることと関係ないんだよな?」
「え、何言ってるんですかこれは僕へのプレゼントです。4主さん用のプレゼントは別に用意してありますよー」
「勝手にプレゼントを貰おうとすんな!」
「いたいっ! また殴った!! ひどいっ!」
「勝手にプレゼント貰おうとしてんじゃねぇよ。…てかお前、よく見たらそれ女モノじゃないのか」
「あっバレました? 9主くんの世界で買いました! サンタガールの服です可愛いでしょう?」
「可愛いとか自分で……いやそうじゃなくて…
 なんでそこでガールを選ぶんだお前は…普通のを選べ!普通のを!」
「普通なんてつまらないです。実は4主さんの分もあるんですよーv 着てみてください!」
「人の服を脱がそうとしたり、着てみろっつったり、何がしたいんだお前は」
「何って、ナニですが」
「……(耳で聞いてるハズなのに、エロい字面に変換されるあたり、俺も末期かな)」
「今日こそは4主さんをいただきますよ! 僕、張り切って準備してきたんですから!」
「…準備…って…その袋の中身全部か」
「はいv あっ勝手に見ちゃダメですよ! プレゼントを勝手に見るなんて悪い子です!」
「見ねぇよ。……とりあえずその服貸せ」
「えっあっはい!」
「…………」
「(4主さんのサンタガールwktk!あっビデオカメラ持ってくればよかった!
 仕方ない、携帯の写メで我慢しよう…)」
「おい」
「はっはいっ!? なんでしょう!?」
「背中。閉めてくれないか」
「はぃっ! (うーわぁーうーわぁー! 4主さんの背中!うなじ!あーやばいイイ匂いがする…クラクラす…る…)」

78648で性なる夜 2/3:2009/12/25(金) 20:16:57


ぼふっ

「あれ? ずずず随分積極的ですね」
「まぁ、せっかくサンタがプレゼントくれるっつってんだ。貰ってやろうと思ってな」
「あああああのプレゼント貰ってくれるのは嬉しいんですけど、僕がリードしたいので…その…」
「なんだよ」
「僕の上から降りてもらえませんか?」
「だが断る」
「えっちょっあのっ」
「なんだようるせぇな」
「あの…騎乗位は嬉しいですけど…できれば初めてなので普通で…っていうか僕がリードしたいんですが」
「…さっきから勘違いしてるようだが…騎乗位じゃねぇぞ」
「えっ」
「宝船とかでもねぇぞ。俺が上でお前が下。それで正常位だ。わかったな?」
「えぇぇえぇぇぇぇぇえええええええ…もがっ」
「うるせえよ。お前少し黙ってな」
「(ふわぁ…4主さんの唇…柔らかい…)」
「…お前サンタだろ? とりあえず俺はお前をもらってやる。」
「わ…っ…! んっあっ…やっ…」
「…で、俺からはコレをやるよ。もうちょっと楽しんでからな」
「あっ……んっ……」


「…っん……」

「(あっ…なんかこれ…幸せなのかも…)」

「(いい匂い…体が…ふわふわ…する…)」

「…………………………っぁぁぁぁっ…!」

78748で性なる夜 3/3:2009/12/25(金) 20:18:06

「…おはよう」
「…おはようございます」
「……」
「…あれっ? あっ服っ? あれっ写メがっ4主さんのガールがっ」
「寝ぼけてんのか」
「寝ぼけてなんかないですよっ! 4主さんがサンタガール着てくれたのに写真撮れなかったー!
 もう一回!もう一回着てくださいっ あっでもその前にビデオカメラ取ってきますっ」
「もう一回…ねぇ…」
「そうですよもう一回! 昨日の夜……………ってあぁぁぁぁあああ!」
「朝からうるせぇよ! ふさぐぞ!!」
「あ…あああぁぁあの…昨日…僕…」
「昨日はごちそうさまでしたね」
「…ごちっ……やっぱり…夢じゃ…」
「夢にしようとすんな。現実だ。写メ見るか?」
「とっ撮ったんですかっ!?」
「イった直後に気失ったから撮っておいた」
「ちょっ消してっ消してくださいっ!」
「消したらもう一回撮るぞ。消させねぇけど」
「…もう一回…?」
「別に消さなくても撮るつもりだったし」
「あああのっ…もう一回が…あるんですか…?」
「お前から貰ったふくろの中に、こーんなにゴムが入ってたからな。こんだけしてもいいってことなんだろ?」
「えっ…(あれ…お徳用120個入りなんですけどっ…)」
「この量は一日じゃ無理だしなー…とりあえず今夜もここに来いよ」
「えっ…(今夜!?今夜って言った!? また…あの4主さんと…?)」
「顔赤いぞ。風邪ひいたか? 今日はやめておくか?」
「えっ…!」
「お前さっきから“え”しか言ってねぇぞ。どうなんだよ。」
「…あっあの…僕は…」
「…ほんとに体調悪いなら…やめてもいいんだが…」
「体調は悪いわけではないですけど…」
「じゃぁ決まりな。夜に」
「…ああああの…また、僕が下…?」
「騎乗位がいいならそうするが」
「そうじゃなくて…僕が4主さんに…?」
「…あぁ、そうか。諦めろ。俺はお前を抱く気はあっても抱かれる気はない」
「えー!」
「大丈夫。優しくするから」



「(袋の中に用意していたアレコレは、4主さんの手によって僕自身に使用されることとなりました
 少し、予定と違ったけど、HAPPY Christmas…)」

78848で性なる夜 4/3:2009/12/25(金) 20:20:09
宝船…騎乗位の変形

以前にあったネタとかぶり気味で申し訳ない。
8主を右側にしようとしたらこうなってしまった。

789名無しの勇者:2009/12/25(金) 20:26:36
性夜にプレゼントキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
ごちそうさまですありがとうございます

790名無しの勇者:2009/12/26(土) 22:38:17
あなたがサンタさんだったのか・・・っっ
プレゼントごちそうさまでした!GJ!

791保守コネタ:2010/03/26(金) 21:36:33
4主「……」
5主「どうしたんだい4主、元気がないね。
よーしパパ、4主のこと抱っこしちゃうぞー。ぎゅー!」
4主「……ぎゅー…」
5主「ぎゅー。君はもうちょっと、人に甘えてもいいと思うよ」
4主「……うん…」

5勇「あっズルい! お父さん、僕も僕もー」
5主「おや5勇もかい? よーしおいで!」

5主は りょうてを ひろげて わが子を かき抱いた!
5勇は ひらりと みを かわした!

5主「あれ?」
5勇「4主さん、ぎゅー!」
4主「…ぎゅー」
5主「え? アレ!?」

792名無しの勇者:2010/03/31(水) 09:15:25
ぎゅー‥、('ヮ'*)ノイイワァ

793名無しの勇者:2010/03/31(水) 12:10:56
54キタワァ

794名無しの勇者:2010/03/31(水) 22:18:48
甘えてる4主かわいい(*´∀`)

795sage:2010/08/04(水) 19:06:29
84保守

79684版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)0/9:2011/02/20(日) 22:12:07
突然、萌えが再燃したので投下させていただきます。
映画「恋愛睡眠のすすめ」の8→4パロです。
通し番号がずれたらごめんなさい。

妄想激しい8主のバカで都合のいい夢の話です。
8主が最高にヘタレです。

79784版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)1/9:2011/02/20(日) 22:12:45
一日目

最初は別にどうでもよかった。
端正な顔とか珍しい髪の色とか、それを上回るどす暗い不幸オーラが出過ぎてて、ヒーローにあるまじき陰気さだったので正直お近づきになりたくないと思った。今も別にどうでもいい。
ただ少し、笑った顔が見てみたい。 これはあの仏頂面がだらしなく緩んだらどうなるんだろうという興味本位で、決して好意なんかじゃない。
きっかけは意地の悪い、ちょっとしたいたずら心だ。



「いい天気ですね!」
裏庭で洗濯物を干してる4主さんに声をかける。彼が少し振り向いてとてもイヤな顔をしたのを見たら、僕はとてもいい気分になった。
4主さんは僕を無視することに決めたらしい。何も言わずに洗濯物の続きに取りかかる。
「羽を伸ばせますね!」
「お前はそんな嫌味を言いにわざわざここまでオレを追いかけてきたのか」
あ、反応があった。
「せっかくだし」
「マメだな」
吐き捨てるように言って、後はもう振り返らなかった。
最近は前みたいに簡単に激昂したりしない。お互い慣れすぎてどうでもよくなった。いつも僕が軽くあしらわれて終わる。
でもなんとなくちょっかいを出しに行かずにいられない。もうすでに半分意地だと思う。だって前みたいにすぐこっちを見てくれなくなった。
僕は苛立ちばかり募って、余計に子供みたいな手で嫌がらせをするしかない。こっちを向かせるには、そういう方法しか知らない。
「おい、手伝おうという気はないのか」
「ないです」
4主さんが舌打ちをした。条件反射だ。
悪いとは思わないけど、ひどく気分が悪くなる。4主さんの人相も一層悪くなる。
そういう顔が見たいんじゃないのに。

79884版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)2/9:2011/02/20(日) 22:13:18
「おい!」
ものすごい形相で、 4主さんが駆けてくるなり僕の肩をつかんだ。普段とは違う、乱暴というか強引な態度に面食らう。
「な!なんですか?!」
振り向こうとして、予想外に顔が近くて思わずたじろいだ。しかもえらく興奮していて、頬が上気している。瞳孔も開き気味だ。そんなでも見られる顔という事実に多少イラッとする。イケメンなんて滅んでしまえ。
「お前!」
「はい!」
一瞬間があって突然、粘土が崩れるみたいに4主さんが破顔した。
「お前が錬金釜で作った××××な!あれすごいぞ!○○が□□になるんだ!」
「××××……」
なんだっけ?とか思う間もなく、4主さんが畳み掛ける。
「お前実はすごいんだな!見直したぞ!」
いつもの仏頂面はどこへやら、ものすごくいい笑顔とはこういうことを言うんだろう。しかし僕は思った。この人は笑うと意外とかわいい。いつもこういう顔でいればいいのに。
4主さんが無理矢理僕の腕を取って、ぶんぶんと握手を始めた。骨っぽい感触がした。
「ありがとうな!助かるよ」
4主さんが僕の目を見て、嬉しそうにはにかんだ。あまりに出来過ぎてて気味が悪いけど、僕はとてもいい気分だった。天にも登れそうだ。
あの4主さんが僕に礼を言った。勝ち誇った気分。
僕のしたことが4主さんの役に立つ、それでこんなに喜んでもらえるなら、そのことで僕がこんなにいい気分になるならまあ悪くない。いがみ合うよりよっぽどいいかもしれない。



そこで目が覚めた。
あまりにベタな展開で溜息も出ない。夢の中でなら4主さんともうまくいく。むやみに怒らせたりしない。
完全に願望だ。だって僕は平和主義者で、できるなら誰とも波風立てずに生きていきたいのだ。その方が楽だし。
4主さんはものすごく笑っていた。そして僕に礼を言った。現実じゃまずありえない。
いい気分なのは優越感からだろう。あの4主さんが僕に頭を下げた。決して役に立てたから、4主さんが喜んでいたからではない、と思う。
そんな殊勝なことを僕が考えるなんてありえない。僕はそんな柄じゃない。

79984版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)3/9:2011/02/20(日) 22:13:54
二日目

「今日もご苦労なことで」
今日も今日とて裏庭までちょっかいを出しに来た僕を振り返りもしないで、4主さんが言う。声だけでイヤそうなのがわかって内心ほくそ笑む。
「その鳥面を見ないと一日が始まった気がしないんです」
これは本当。この顔を見て話すと目が覚める。
「暇なんだな」
「いいえ!わざわざ来てるんで!これから錬金釜持って走らなきゃいけないし!」
「お前、錬金と言えばな」
「はい?」
「お前が錬金釜で作ったやつな」
ん?
この流れ、どっかであったような。あれ?
僕が考え込んだ一瞬後に、4主さんが洗濯を干す手を止めて白け切った顔で言った。
「あれ最悪な。なんなのあれ。ガラクタもいいとこだな」
現実は厳しかった。
「もう余計なもん作るなよ」
僕が明らかにがっかりした様子を見て、4主さんはわかりやすく機嫌が良くなった。そのまま鼻唄まで歌って、宿舎へふらふらと歩いていく。
いつだって僕が面白いことが4主さんには面白くなくて、4主さんが面白いことが僕には面白くないのだ。
嫌われてるとは思わないけど、好かれてる気はしない。僕らそんな一触即発な状況でずっといる。

80084版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)4/9:2011/02/20(日) 22:14:29
「よう」
珍しく向こうから挨拶をしてくる4主さんを、僕はふて腐れた顔で迎えた。
「何。どうしたんだよ」
楽しそうな声だ。僕が元気がないのがそんなに楽しいか。
「8主、あれすごく役に立ってるよ。またなんか作ってな」
あれ?僕は顔を上げる。
「これ夢ですか?」
4主さんの顔には、トレードマークの眉間のしわがない。不自然だけどこの方が好きだ。
「そう。お前の夢だよ」
「じゃあ、あなたは僕の想像の4主さん?」
「まあな。機嫌いいだろ?」
確かに。
「本当の4主さんは僕の作ったの、最悪だって言いましたよ」
「言わねえよ。最高だろ」
「もう余計なもの作るなって」
「いやいや。お前はやればできる子なんだ」
「わかりました。とりあえず一言謝ってください」
「………………………………。しょうがねえな。悪かった」
「じゃあもう僕が何しても怒らない?」
「まあ場合によるな」
「僕の夢なのに態度デカイですね」
「じゃあ怒らない」
「…………何かしてくれる?って頼んでも怒らない?」
「内容による」
「そんなひどい」
「アホか」
確実に夢だこれは。こんなに彼が優しい筈がない。
夢ならいっそ、何をやっていいか。僕は気が大きくなっていた。何でもできるし、何にでもなれる。例えば親友。例えば恋人。
「じゃあ……」



朝だった。
なんておいしいところで目が覚めてしまったんだろう。もったいない!
……しかし僕は何をしてもらおうと思ったんだろう。て言うか何だってあの人も二日も連続で、人の夢に出て来るんだ。気軽に出て来ないでほしい。
僕が機嫌のいい4主さんに会いたいみたいじゃないか。自分が本当は4主さんとどう接したいのか再確認させられてるみたいで気分が悪い。
僕の本心なんて別に知りたくない。面倒なのはもう姫だけでこりごり。

80184版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)5/9:2011/02/20(日) 22:14:56
三日目

目覚めのひどく悪い頭を抱えてキッチンへ行くと、例の人がいた。
間が悪い。身勝手な夢を見ちゃったせいで、なんとなくばつが悪くて嫌だ。
目が合ってあからさまに4主さんが身構えたので、僕があえて無視を決め込んだら相手は肩透かしをくらったみたいだった。横を無言で通り過ぎて冷蔵庫へ向かう。
「よう」
夢と同じで、珍しく向こうから挨拶がくる。僕はしょぼくれた顔を上げた。
「……ひどい顔だな。雨でも降るか?槍か?」
眉間のしわは深く刻まれていた。かわいくない。
「……夢見が悪くて」
「お前が?」
ものすごく意外だという顔をされた。心外だ。
「どんな?」
「…………」
言葉に詰まる。あなたの夢ですなんて口が裂けても言えない。
「……ほっといてください」
間髪入れずに舌打ちされた。この人はなんだか最近険悪だ。
僕ら、いつからこんな感じに喧嘩もままならなくなったのだろう。ひどくやりづらい。
前はお互い沸点が低くてすぐキレて、でも言いたいことは言ってた。もっと正面切って喧嘩してたから、嫌な感じじゃなかったし僕は正直楽しかった。
最近は顔を合わせれば舌打ちとかで、真剣に打ちのめされる。
あがけばあがくほどおかしくなって、でも今日こそは変わるかもと思って毎日喧嘩しに行くのに毎日険悪になる。それがきつい。

「8主」
名前を呼ぶその声が、思いがけず柔らかいのでなんかやりきれない気分になる。
「はい」
「お前はさ」
4主さんが言いにくそうに視線を泳がせてから、たっぷり十秒くらい黙った。言いかけてやめるのは一番感じが悪いと思う。
「僕は?」
先を促す。4主さんは目を伏せた後、僕を見た。
「何がしたいんだ?」
「え、」
「そんな、一方的に怒られてもオレはわからない」
「怒るって」
「なんでいつもオレに苛立ってる?」
「え…………」
「言いたいことがあるなら言え。ないなら陰険に怒るな」
「…………」
「そんなんで会う度に悪意をぶつけられると、さすがにこっちもへこむ」
「…………」
「…………。何かオレに言うことは?」

僕はなんて答えたか覚えていない。ただ見切りをつけて去って行った4主さんの顔だけは覚えてる。

80284版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)6/9:2011/02/20(日) 22:15:53
「おーい」
あ、これは。
「…………」
僕の想像の優しい4主さんだ。眉間のしわなし、かわいい笑顔の4主さん。
4主さんは僕の前までゆっくり歩いてきて、僕と目線を合わせるために軽くかがんだ。4主さんの方が少し背が高い。気に入らないがこればかりは仕方がないので、気にしないことにする。
「新しいの、なんか作った?」
錬金釜での話だろう。確かに日頃碌なものを作っていないけど、実は役に立ちたいなんていう願望でもあるのかな。
「作ってないです」
「作れよ。オレが楽しみにしてるだろ」
この想像の4主さんは、本当の4主さんが絶対に言わないことを選んで言ってくるので、あまりのそぐわなさに吹き替えでも見てるようなチグハグな印象がする。
「……これはまた夢で、あなたは僕の想像の4主さんですよね?」
「いかにも。何の確認だ?」
「いや、じゃあ今から言うことも夢の中の戯言だから」
「?」
「見なかったことにしてください……」

これは僕の夢でこの4主さんは実物じゃない。だったら夢の中でくらい、素直になってみてもいいんじゃないだろうか。開き直りつつも恐る恐る、僕は手を伸ばした。
まずその緑の髪に触れる。ゆっくりと手の位置をずらし、その耳と顔と首に触れる。そこまでで緊張しすぎて感極まりそうになって、ひと呼吸入れる。
4主さんは僕のなすがままで、何も言わず薄く笑ってから目を閉じた。
その一連の動作に見とれ、見とれたことにひどく敗北感を覚える。何だってこの人、何しててもこんなに格好いいんだろう。
考えがまとまらなくなって、思考を振り払うように僕はそのままその首に巻き付いた。
「おおぉっ」
驚いた4主さんが呻き声を上げた。予想外に勢いがついていたのか、二人してその場にしりもちをついてしまった。
4主さんは二人分の体重を引き受けて、また呻いていた。しばらくどうしたものかと困っていたようだけど、僕が首にしがみついたまま離れないので、仕方なく4主さんが僕の背中に腕を回して僕を支えた。
「重いんだけど」
「すみません」
「首、苦しいんだけど」
「すみません」
「なあ」
「ごめんなさい」
「何が」
僕は4主さんの首に額を押し付けたまま、話し続ける。唇が動くとたまに4主さんの首筋に触れてくすぐったかったらしく、4主さんがよじって避けようとしたけどびくともしなくて諦める。その時、僕はそこまで気が回らなかった。
「僕は、現実でも夢でも4主さんを困らせてますね」
また避けようともぞもぞしていた4主さんが動きを止めた。
「困らせたいわけじゃないのに、どうしたらいいかわからないんです」
4主さんは黙っている。
「怒らせたいわけでもないんです。普通に会話して、たまには喧嘩したりしたいんです。苛立たせたいわけでもない」
「8主」
4主さんが僕を呼ぶ。
「…………何かオレに言うことは?」
なんとなく、もうごまかす必要はないと思った。これは夢だし、何がどうなってもかまわない。
もうどうだっていい。

「あなたが好きです」
僕は顔を上げず、4主さんも動かなかった。
「なんかもう、この気持ちが好意なのか、ただの執着なのかわからないんです」
「…………」
「僕は、もうどうしたらいいのかわからない」
「……うん」
「………………………………」
「知ってた」
ゆっくり僕の髪をなでて、一回ぐしゃっとする。
何を言っているんだ。知ってるわけないじゃないか。慈しむように優しく髪をなでる手が愛しくて、涙が出そうになった。
夢の中でだけうまくいくなんてひどいじゃないか。こんなに打ちのめされることはない。あんまりだ。
むなしすぎてやりきれない。

80384版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)7/9:2011/02/20(日) 22:16:33


「泣くなよ」
「泣いてないですよ」
「じゃあオレの首を濡らさないでくれ」
「無理です」
「おかしくねえ?」
「これは僕の夢だから許されるんです」
「……なるほど」
明らかに納得してない口調だ。夢のくせに生意気な。
「ていうか僕の夢なら、慰めのキスくらいさらっとしてみせてくださいよ」
「わりーその発想はなかったわ」
「想像力ないですよね」
「お前はありすぎるな」
こんな何気ないやり取りが嬉しくて仕方ない。飢えていたんだなあと実感する。
「するんですかしないんですか」
「えー……マジ勘弁してほしいんだけど、一応聞くけどどこに?」
「そりゃ口でしょう!」
「ふざけんな。調子に乗るな。口はオレにはハードルが高すぎる。全然無理」
「だらしないなあ」
「…………。妥協案を考えようぜ」
「じゃあ五択で。目、耳、鼻、頬、おでこ」
「…………耳かな」
「口はナシなのに耳は有りなんですか!?おかしくないですか!?」
「え!?」
「ど変態じゃないですか!耳の方がハードル高くない!?」
「あっじゃあ無難におでこで!」
「いや僕はどこでもいいんですがね。なんだよ、4主さんもしかしてムッツリですか?」
「……………………」
やってられん、というように4主さんは黙ってしまった。
赤くなって河豚のようにむくれていてかわいい。とか思ってたら突然頬を強くつねられる。
「いたいってば4主さん!あっしかも引っ掻いた!」
軽くミミズ腫れになってしまった頬をさする。

「…………もういいから黙ってくれ」
「わかりました」
4主さんが息を飲んだのがわかった。
「8主」
僕の額にかかる髪をそっとかきあげる。僕も息を飲んだ。
触れるか触れないくらいかのキスだった。
優しすぎて嫌になる。涙が出そうだったけど、僕は泣かない。
「お前に応えてやることはできなくても、嫌われてないってわかって嬉しかった」
そんなことは言わなくていい。僕の勝手な思いなんて引き受けなくていい。優しくなんてしなくていい。
「ありがとな」
ただ、笑顔が見たかったんだ。笑ってほしかった。
それが僕のためじゃなくてもいいから。



ひどく身勝手で疲れる夢だった。起きたばかりなのに疲労困憊だ。
後ろめたくて、今日は4主さんの顔を見られそうになかった。

80484版 恋愛睡眠のすすめ(8→4)8/8すみません:2011/02/20(日) 22:17:11
最終日

わざわざ朝食の時間をずらしたのに、例の人はどっかりダイニングテーブルで新聞を読んでいた。おっさんか。
「……おはようございます」
仕方がないので声をかけたら、4主さんは僕をちらっと見てから思いっきり目を逸らした。返事もない。
……別に、今更そんなんどうってことないけど。
僕はもう4主さんの存在を無視して、朝食の続きに取りかかろう。そう思って冷蔵庫の扉を開けた時、何か痛みが走った。
「いたっ」
少し遅れて、4主さんが顔を上げる。
「どうした?」
「なんか顔に傷ができてるみたいで……」
「ああ……」
顔をしかめて、4主さんが立ち上がった。
「オレが引っ掻いたやつだな。悪い」
「あ、いえ大丈夫で…………」







確かに時間が止まった。僕らは顔を見合わせた。
「ええぇ?!」
「はっ?!」
「ちょっと……」
何が起こったのか理解できない。でも僕らは確かに、同じ夢を見ていたようだ。
咄嗟に思ったのはやばいやばいやばいくらいで、思考回路が完全に壊れた。
あれは夢だったから好き勝手やれたんだし素直になれた。実は全部相手にだだ漏れだったなんて、一体どう取り繕えばいいんだ。お互い本気でシャレにならない。
「……………………えーと」
「えーっと……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
二人ともたっぷり黙ってから、4主さんがぽつりと言った。
「……………………なかった、ことに……?」
「……………………今更?」
「……だよな」
「ですよね」
「……………………どうする?」
「……………………どうするもこうするも」
「……………………」
「……………………」
お互い顔を見合わせて、僕らはついに吹き出してしまった。シリアスでセンチメンタルな夢での自分があまりにも滑稽で哀れだった。
言ってやりたい。真実はもっとシンプルでわかりやすい。
僕らはきっとうまくいくと。



おしまい

805名無しの勇者:2011/02/21(月) 20:48:04
>>796
GJ! GJ!
読み応えのある萌えをありがとう!

しかし、満面笑顔の4主って想像つかないwww

806名無しの勇者:2011/03/02(水) 23:30:21
久々の投下〜!
普通に読み物としても面白かったよ
gj!

80784のはなし 0:2011/03/06(日) 22:03:17
たびたび投下失礼いたします。
8→(←)4のややシリアス長編です。文字数が多くて通し番号が読めないので、
番号だけ振ります。
それではどうぞ〜

>>805,806
ありがとうございます。お楽しみ頂けて何よりです!

80884のはなし 0:2011/03/06(日) 22:06:31
これは、オレが失ったものと再び出会うまでの話。
オレと彼女とある男の、再生の物語だ。

1 意識【4主】

変化は突然だった。ずっと一緒だった彼女が消えた。見えなくなった。
彼女がどういうものだったのかよくわかってなかったけど、存在は確かにあるらしいと思っていた。他の奴らの話を聞いても、オレがいなくて彼女がいる時があったらしいので、どうやらオレだけの幻覚ではないんだと考えていた。
話はできるけど体温は感じられない。触れることもできない、時折透けてしまう彼女をでもオレは好きで好きで、触りたくてもどかしくて泣きたくなることもあった。彼女は何のためにいるのか、オレのためじゃないのか。
科学的に理解できないものでも、自分に都合がよければ人はそれを正当化してしまうもので、彼女は生きているんだとオレは思い込んでいた。オレのために戻ってきた。ここへ。オレと一緒に幸せになるために。
説明のつかないことには目をつぶっていた。そんなものは見なければいい。ひどく盲目的だった。
真っ向からそれを否定してたのが、奴だった。

「消えた?」
外のベンチに二人どっかりと腰を降ろし、オレは話を切り出した。赤いバンダナを巻いた頭を揺らして、奴が訝し気に聞き返す。必要以上にいい天気で木漏れ日がまぶしい。重い話をしてるってのに、まったく不釣り合いだ。
「いなくなっちゃったんですか?前にもありました?」
「わかんねえ。でもこんなにずっといなかったのは初めてだ」
「いつ頃から?」
「一週間くらい……かな」
予想外に奴が真剣な受け答えをしたので、多少オレは面喰らった。もっとバカにされるかと思ってた。
「一週間前に、何か特別なことありました?」
「うーん…………一週間前、ねえ」
正直に言うと、あった。つーかもろにお前関係だろと言いかけて、なんとなくやめる。
オレは何も返事をしていない。曖昧なまま逃げて、お前は別にそれでいいと言った。だから決着がついたことにした。そのまま今に至って、わざわざ呼び出してシンシアの話をしているオレも相当どうかと思うし、呼び出れてのこのこやって来てるお前もそれでいいのかと言いたくなる。8主、お前はオレが好きなんじゃないのかと。
でもこんな話をできそうなのが奴くらいしかいなくて奴の好意に甘えていることだけは確かで、罪悪感を抱えながら奴に会うのはひどく微妙な気分だ。
「…………その、お前に」
「ああ。そうでしたね」
そうでしたねってなんでもない涼しい顔で奴が流した。なんなんだお前、あんなに真っ赤になって必死になってオレに打ち明けたくせに、オレばっかそのことで悩んでバカみたいだ。
「……じゃあ少しは考えてくれたんだ?」
「バカ言うな。ありえん」
「ですよねーいんですけど別に」
どうこうしようとかじゃないし、と付け加える奴の顔は晴れやかで、意味もなく腹が立った。お前が変なこと言い出すからオレが混乱してるってのに、お前は他人顔なんだな。

80984のはなし 2:2011/03/06(日) 22:07:04
「人の気持ちってのは、コントロールできるものじゃないですしね。僕が4主さんを好きになったのも、しょうがないっつーか流れっつーか」
「だいたいさあ、なんで好きだと思ったわけ?」
「うーん、最初はずばり顔ですね。僕、面食いなんで」
「顔………」
顔だけの男と言われてるようで、密かに傷付いた。顔、ね。ふーん。つまらん。
「でもこの人案外不器用かなあと思ったら、なんかこういてもたってもいられなくなっちゃって」
「ふーん……」
「たぶん、理屈じゃないんだと思います。一緒にいたいとか、触りたいとか。見ていたいとか」
「……………」
8主は、オレにオレを好きだと打ち明けてからすごく素直に自分の気持ちを言うようになった。前みたいにつっかかってくるけど、最終的に何が言いたいのかよくわからない感じじゃなくて、もっとストレートに感情が来る。それだけに何も返せない自分が申し訳なくて、でも同情でどうこうは最低だと思うし何をどうすればいいかわからないまま、オレはひたすら黙っている。
木でできたベンチに並んで座るオレと8主の間には、一人分くらいのスペースが空いていて、それがそのまま心の距離みたいだなと思う。それ以上、近くはならない。
「あ」
それまでの話の流れを無視して、突然奴が呟いた。
「え?」
「……いや、でも、なあ……」
腕組をしながら、8主が頭をかしげる。そのはっきりしない態度にイラっとする。
「なんなんだよ?」
「いや、でもあまりに自惚れてるというか……」
「?言ってみろよ」
「……僕に告白されて、少しは僕のこと考えました?」
「は?!」
「だから、すねちゃったんじゃないですかねシンシアさん」
「お前、アホか……ふざけんな」
「いや!真剣なんですけど」
「つきあってられん、お前に話したオレがバカだった。時間を無駄にした」
「そんなー!せっかくの4主さんからのお呼出でうきうきしてきた僕の立場は!」
「知らん。勝手に期待するな。ていうか期待するな」
「わかってますけどね……」
そこで本気でしょげた顔を見せるから、長いつきあいでオレもそれが演技じゃないってわかっちゃうから余計悪いことしたって思うんだよ。そう思わせるお前がずるくて、期待させてるけどその気はない自分もずるくて、面倒臭いと本気で思う。
ずっとこんな関係が続くんだろうか。お前はきつくないか?オレはもっとお前と楽に話がしたいよ。
シンシアの話をしていたのにすっかりずれまくって、オレはあろうことかシンシアのことを忘れていた。たぶん、そういうのが始まりだったんだと思う。

81084のはなし 3:2011/03/06(日) 22:07:40
2 衝動 【4主】

もしかして、が確信に変わる。シンシアはもう二週間姿を見せない。いなくなってしまったのかな、シンシア。
今までも二、三日いなかったことはあった。でもふと気付くとまた隣に戻ってきて、オレの顔を眺めてからにっこりと笑った。その度オレは安心して、戻ってきてくれたんだねと抱き締めようとして、触れない事実に打ちのめされた。
オレは意外と落ち着いている。シンシアについて8主とは逐一話し合っていて、こんな話にクソ真面目につきあってくれる8主に申し訳ないやらやるせないやらでどうしていいかわからないんだけど、奴に話をすると嘘みたいに気持ちが落ち着く。奴が、困りましたねとか言って相づちを打って目が合うと、シンシアがいなくて不安だとか怖いとかどうしようっていうのが全部すっと消えて、奴の声とか手の動きとかそういうものばかりが気になる。8主の手は意外とごつくて、オレはその手が嫌いじゃない。話をしながら、指なげえなとかそいういうことばかり考えている。
なんだか変だと思う。おかしいと思う。
今日も、これから話をしに行く。例のあの外のベンチだ。あそこはもう暗黙の了解で落ち合い場所みたいになっていて、約束の時間が近くなると小走りにそこへ向かっている自分に気付き、嫌になるほど恥ずかしくなる。何してるんだろ。ただあそこにいけば8主がいるってのが、自分にものすごく安心感を与えているらしいのはわかってきた。なんてオレは浅ましいんだろうか。リスクは負いたくない癖に、安心感だけは欲しいなんて。
こんなのおかしいよな。

「よ」
「どうも」
今日も今日とて二人とも時間ぴったりにここへやってきた。顔を見たらなんとなく笑いそうになって、オレは明後日の方向を向いてごまかす。
「その後、どうですか?」
神妙に8主が切り出した。ひざの上に頬杖をついて、指を組む。オレはいつからこんなにこいつの動作を気にするようになったんだ?
「全然。いない」
「そうですか……」
赤いバンダナが、いつもより緩く巻いてあって風になびいている。飛ばされそうで気になって、つい手をのばした。
「お前、これ飛びそう」
言いながら、8主の顔を覗き込む形で頭の両側でバンダナを掴む。何も考えていなかった。奴の髪ごとバンダナを掴み感触を感じて、ものすごく変な顔をしている8主と真正面で目があってから、しまったと思った。
8主は怪訝そうな顔で、オレからバンダナを受け取った。手が、軽く触れた。
「…………すみません」
「あ、いや」
バツが悪いとはこのことだ。奴はオレのことが好きで、オレは期待させるようなことはしないつもりだった。無意識に何してんだろう。あんなに近い距離で、もろに顔を見てしまった。
8主は赤くなったり焦ったりせず、ただ不信な視線をオレによこした。当然だと思った。
「……僕、ちょっともう行きますね」
「ああ……」
バンダナを頭に結び直しながら、奴が立ち上がる。オレは8主の方を見れなかった。シンシアのことはもう、完全に頭から抜け落ちていた。触ってしまった8主の髪とか、一瞬触れた手とか、オレに向けられた見開かれた目とかそういうものが駆け巡っていた。何をしているんだろう。
ちょっと前に言ってた8主の言葉を思い出す。理屈じゃなく、一緒にいたいとか触りたいとか見ていたいと思う。これってなんのことだっけな。

81184のはなし 4:2011/03/06(日) 22:08:56
2 衝動 【8主】

びっくりした。何が起こったのかよくわからなかった。
自分の部屋に逃げるように帰ってきて、僕はベッドにへたり込む。
バンダナを両側から押さえられて、ていうかまずそんなことを4主さんがしようと思ったのが不思議だった。
目が合って、あの人は当然のように僕の顔を見た。全然好きとかそういう感情は含まなかったけど、真正面から僕を見て、僕の表情を見てやっとまずいという顔をした。
なんでそんなに無防備なんだろう。僕が彼をどういうふうに好きかわかってるのかな。少し腹が立った。
本当は、いつだって触りたい。本人の意志がどうであろうと、行けと言われたら飛びついてしまう自信がある。ただ、僕は人として落ちぶれたくない。嫌がる人相手にどうこうしようという気はない。
わかってんだろうか。彼は何を考えているのだろう。ちょっとよくわからなくなった。
考え出すと猛烈にむかついてきて、そもそもあの人は今僕を利用しているとか、なんでちゃんと返事をくれないんだろうとか、ダメならダメでなんで期待を持たすようなことを何回もするのか理解できないとか、不満はいくらでも出てきた。
何がしたいんだろう。僕はその度律儀に振り回されて、いいように使われる。好きだから、会いたいから僕はなんだって尻尾を振って彼のやりたいようにやらせるけど、彼は僕に甘え過ぎじゃないのか。
見返りもないのに、愛想よく彼に合わせている自分が急に空しくなった。可哀想なのは哀れなのはむしろ僕だ。
泣きたくなって、そのままベッドに倒れ込んだ。

ちょうど僕が彼に告白をした日に、シンシアさんは消えた。関係はあるのか偶然なのか。
ずっと好きで、でもだからといって男同士でどうこうする勇気もなくて、でもどうにもできなくなって一人で抱えてるのがバカらしくなって、僕は僕が4主さんを友情じゃなく好きなんだと伝えた。
僕もわざわざ外のあのベンチに呼び出し、嫌々ながらもちゃんと時間通りに来た4主さんの顔を見たら胸がつまった。律儀で、不器用で、どうしようもなく人の良い彼が好きで好きで仕方なくなった。
実際本人を前にしたら全然言葉が出てこなくて、絞り出すみたいに僕はなんとか彼に好きだと告げた。
4主さんは明らかに困ってたけど、一応ありがとうごめんと言って薄く笑った。その顔がまた好きで、見とれ僕は何も言えなくなった。それでいいと思った。僕が彼を好きなことを知ってくれるだけでいい、それ以上は望まない。
人を本気で好きになるのは、こんなに苦しいことなのか。何もいらないから生きていてくれるだけでいいなんて、こんな気持ちがあるなんて知らなかった。何がなんだかわからなくて苦しいけど、それで彼を煩わせたくなくて僕はもう口を噤んだ。
僕らは未だに手さえ触れていない。僕はちょっと触れそうにない。

81284のはなし 5:2011/03/06(日) 22:11:42
3 困惑 【8主】

気が付いたらどっぷり暮れていて、どうやら僕はあのまま眠り込んだらしかった。
8時半すぎ。夕食の時間は一時間以上も前に過ぎている。どうしよう何も残ってなかったら。育ち盛りの男集団なんて飯に関してはただの野獣だ。飯の時間にいない者の取り分は、自動的に他の者の腹に収まる。残飯などはまずありえない。実に合理的でエコ的だ。
まあなくても仕方ない、切なく鳴る腹をなだめるためとりあえず台所へ向かった。
いつもはまだこの時間なら騒がしいはずの台所は、今日は静まり返っていて人の気配がしない。
でも明かりが点いている。誰かはいるみたいだ。ドアから中を覗いたら、4主さんが一人で皿をつついていた。十人掛けの広いテーブルの隅で一人、ぽつりと座っていた。
その姿に、息が詰まった。何で誰もいないの、この人に一人で夕食なんて食べさせちゃダメだ。この時間まで待っても誰も現れずしびれを切らしたのだろう。些細なことだけど、そんなことで一人だと実感させたくはなかった。淋しい気持ちになんてさせたくなかった。全身から滲み出る彼の淋しさに、切なくて苦しくて不甲斐なくて憤りにも似た感情を覚える。
シンシアさん、どこに行ってしまったですか。何でこの人を一人で放っておくんですか。
と思った瞬間、風もないのに台所のドアがけたたましい音をたてて閉まった。人はこれを心霊現象と呼ぶ。なんだか背筋が薄ら寒い。
その音で、4主さんがこちらに振り向いた。目が合った彼はものすごいしかめっつらで、でもなんだか心細げな顔をしていてとても申し訳なくなった。
「……何してんだよ」
不機嫌に僕に声をかける。咄嗟に取り繕おうとしてる4主さんがいじらしくて可愛すぎて、その頭を撫で回してぐちゃぐちゃにしてやりたいと思った。行動に移す勇気もないし実際にやってしまったら歯止めが効かなくなりそうで、そんな衝動は全部想像で終わる。
「……間違えて勢いついちゃって」
僕がやったんじゃないけど。
「一人ですか?」
「ん。みんな出掛けたみたいだな」
今までも二人だったことなんていっぱいあるし、ラッキーとか思ってたけど、今このタイミングではまずい。できれば避けたかった。でも一人にはしたくない。
「……座れば?」
言いながら4主さんが立ち上がる。彼の食事はまだ途中で、僕の分を用意しようとしてくれることに、座ってから気付いた。頭が働かなくて嫌になる。
彼の向かいに腰を下ろしぶんぶんと頭を振っていたら、一式を載せたお盆を持って4主さんが戻って来た。
「犬かよ」
「あ、すみません……」
いつもこんなことしてくれるわけじゃない。さっきの罪悪感から優しいのか、とにかく珍しい彼の態度に面食らう。
「…………大量に、作っちまったんだよな」
ぽつりと決まりが悪そうに呟いて、皿を僕の前に置いた。
「それは……」
返事に困った。殊勝な物言いが、らしくない。
彼はどうやら食欲がないらしく、自分の皿によそった分を持て余していた。つつきはするけど口には運ばない。
そっぽを向きながら行儀悪くスプーンを握り、何も言わず時折僕が食べている様子を伺う。会話は一切なかった。重い沈黙が充満し、僕の食事する音だけが響く。この上なく非常に気まずい。
視線を痛いくらい感じて、緊張しすぎて物を飲み込むのが苦しかった。味なんてわからなかった。
なんなんだこれ、新婚さんか。部屋を包むのは、幸せいっぱいな空気じゃなくてものすごい緊張感だけど。

81384のはなし 6:2011/03/06(日) 22:12:03
必死で飲み下す僕を見ていた彼の目が、ふと止まった。
「おい」
呼ばれて顔を上げたら、彼の手が伸びてきて僕の頬に付いていたらしき米粒をつまんだ。
う、わー………………。
さすがにそれは即行でティッシュで拭われたけど、僕はもうそれどころじゃなかった。顔が赤くなるのがわかった。やばい、そんな子供っぽいとこ見られて、しかも取ってもらって恥ずかしくて彼の顔が見られない。
おかしい。絶対に彼は何かおかしい。なんなんだこの幸せラッシュは。ときめき死にしてしまいそうだ。
「ガキだな」
そう言って鼻で笑う4主さんは、うっすら楽しそうだ。おかしい、いつも僕が彼をからかって逆上させるのに、これじゃ立場が逆だ。
僕はまだ混乱の真っ只中で、返す憎まれ口が出てこない。いつまでも黙り込んで様子がおかしい僕を訝しんで、彼が僕を呼んだ。
「8主」
「わーっ!ちょっと待って!」
「は?」
「すみません、ちょっと、僕、あの……」
「?」
「……期待します、そういうことをされると」
4主さんが、あ、という顔をした。みるみるうちに彼の顔が赤く染まった。その反応って何なんだろう。ここのところ本当に彼がわからない。
額を押さえて4主さんが真っ赤になりながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で言った。
「……完全に、無意識だった」
「無意識……」
「さっきのも。……おかしいなオレ……」
それは確かだったので否定しなかった。彼の中で一体何が起こってるんだろう。
「悪い、オレもう寝るわ。片付け……」
「あ、ああ、……やっときます」
「おお頼む」
ふらふらと立ち上がり、ドアや壁にぶつかりながら4主さんは台所から出て行った。一人残されて僕は盛大に息を吐き出した。呼吸するのもも苦しかった。触れられた頬がそこだけ熱を持ってじんわり熱い。否が応にも意識してしまって叫び出したくなった。
最近さんといると疲れる。今みたいな無意識な彼の態度に、いちいち舞い上がったり打ちのめされたり浮き沈みが激しくてとても消耗する。更に困るのは、僕はそれが嫌じゃないことだ。
好きな相手を振り回すのは楽しい。でも振り回されるのは正直もっと楽しくて、つい期待してしまう。
僕はテーブルに突っ伏した。恋ってこんなに面倒臭くて格好悪くて苦しいものだっけ。触れられただけで赤くなったり、そんな柄じゃないのに全然うまくできないしコントロールが効かない。
残された二人分の食器が今の出来事を強調してるようで、僕はそれをなるべく見ずに乱暴に流しに突っ込んだ。

81484のはなし 7:2011/03/06(日) 22:12:48
4 自覚 【4主】

昨日の今日で気が重い。でも行かないのは、感じが悪い。約束の時間はもうあと10分までに迫っている。
昨日の失態は、今思い返しても自分らしくなかった。でも深い意味なんてまったくなくて、飛ばされそうとか米ついてるとか思ったから動いただけだ。これが他の奴で、例えば2主だったとしても自分は動いただろう。なぜ相手が変わるだけで、そこに含まれる意味も変わってくるのか。なぜ8主相手だと、あんなにも気まずくなるんだろう。
答えは一つ、奴がオレを好きでしかもフラれてるからだ。そういうのいちいち気にして行動してられるか。バカらしくて蹴りを入れてやりたくなる。
しかし、なぜオレは突然奴にそんなことナチュラルにしちゃってんだ?わからないのはそこだ。そしてなぜその一瞬を思い出すと、ちょっと待て!!と自分に言いたくなる程恥ずかしいのに、何度も何度も頭の中で反芻してるんだ?どっちも一瞬の出来事なのに、スローモーションみたいに焼き付いて離れない。嫌に色が鮮やかで、奴の服が目にうるさい。
そんなことをウダウダ考えてる間に、時間が来てしまった。ああ、行かなきゃ。あの赤いバンダナがオレを待ってる。忠犬みたいにひたすら奴は待つだろう。どうしようもなく、たまらない気持ちになった。

いつも通り二人して並んでベンチに座るが、一向に会話が続かない。ていうか話がない。お互い黙り尽くして下を向いている。気がつけば以前より座る位置が近くて、オレが腕を組み替えると8主の腕に当たる。その度に心臓が跳ね上がる。ものすごく緊張している。何だって奴相手にこんなに緊張してるんだろう。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「…………なあ」
沈黙に耐え兼ねてついにオレが声をかけたら、奴が息を吸い込みそれが器官に入ったらしく、思いきりむせた。
「ぶはっげほっ」
「おおっ何だ大丈夫か!?」
「ごほっ…………すみません、なんか、あの」
「なんか?」
一瞬間を置いて、涙目の8主が言いにくそうに口を開く。
「なんか緊張して……」
奴は言うや否や背中を丸め、頭を抱え込んで顔を腕で覆った。
仕方ないので、まだむせているその背中をさすってやる。痩せて筋ばった背中で、骨の感触がした。
あまりに情けない姿だったので、オレは気が抜けてしまった。
二人して同じように緊張してたことにも、なんだか安心した。オレだけじゃなくてよかった。
だから、つい気を抜きすぎたんだと思う。ガードがなくなると、自分でも思ってもみなかったことが口をついて出ることって本当にある。それで初めて知るのだ、心の奥底で無意識に望んでいた本音を。

81584のはなし 8:2011/03/06(日) 22:13:12
お互い緊張が解けしばらく無駄話をして、やっといつものペースに戻ったところで、なんとなく聞いてみようという気になった。
オレとの唯一の共通点。その体に流れる、人間じゃないものの血についてだ。同じような境遇でありながら、オレ達はそれについて話をしたことはなかった。オレは意識して避けていた。して楽しい話じゃないし、傷を舐め合うのは御免だ。
ただふと、奴の考えを聞いてみたいと思った。
「お前はさ、先のこととか考えるか?」
「先のことって?」
「オレもお前も、たぶん半端なく長生きだろ。今の仲間がみんな、先に死んで誰もいなくなった時のこと」
「えー……」
8主はものすごく意外そうな、不思議な顔をした。そして実にあっけらかんと言い放った。
「考えてどうするんですか?」
「え?」
「だって、別に竜神里の人もいるし、僕の世界に長生きな人もチラホラいるし、別に何がどうってことはないんじゃないですか?」
「…………」
「みんなが先に死んじゃうのは悲しいけど……まあ僕が最期を看取ってあげられるし」
「看取る…………」
「いなくなっちゃうのはどうすることもできないし、いなくなった分、仲間を作れば淋しくないと思うんです」
「…………」
「しかも4主さんもいて、楽し……いやいや、退屈しなそうじゃないですか」
「……………………」
想像もしてなかった答えだった。オレは一人残された後、どう生きていくのか不安で不安でたまらなかったのに、奴の考えは不安なんて微塵もないシンプルで楽天的ものだった。それでいいのか?オレが考え過ぎなんだろうか。
うらやましくて、少し焦がれた。なんて強くてしなやかな生き方なんだろう。そんな風に考えることもできるのかと、目からウロコが落ちた。オレもそういう考え方ができてたら何かが変わっただろうか。
「……僕は、4主さんと一緒にいれたらいいなと思ってます」
8主が急に真剣な口調でそんなことを言い出した。
「…………」
勘弁してくれ、このタイミングでそんなことを言うなよ。オレもそうだったらいいなと思ってしまった。それを認めたくなくて、全力で否定しなきゃと思った。
「…………じょーだんじゃない」
「…………」
「だから好きだとか、そうういうのやめようぜ」
8主が明らかに不機嫌な顔になった。オレは、このまま奴に諦めさせるつもりだった。だってオレたち、男同士だ。バカげてる。何ができると言うんだ。
だったらこのままでいる方がいいじゃないか。それの方が、当たり前にずっと……。
「好きで、つきあって、ダメになったらずっと一緒にいられないじゃんか、よ…………」
あれ?
今、なんか、サラっとすごく重大なことを、口走ったような…………。
あれ?え?
……………………。
頭の中も、視界も一瞬真っ白になった。
オレは今何を言った?
……………………。
8主も固まっている。風が、一斉に、吹いた。

「わーーーー!!」
「わーーーー!!」
叫んだのは同時だった。
オレは8主の顔も見ずに一目散にそこから走って逃げた。8主はよく見えなかったけど、たぶん動かなかった。
何言ってるんだ。何考えてるんだ。
あんなの。
あんなの、まるでプロポーズじゃないか。
知らなかった。気付かなかった。最高にバカじゃないかオレ。なんてことだ。
オレ、8主が好きなんだ。
ずっと一緒にいたいんだ。だから、今のままでいたかったんだ。なんつー鈍さなんだろう。でも今、はっきりと言葉で自覚した。
なんだかもう、何もかも投げ出したくなった。心穏やかに生きていきたいのに、8主が嵐のように波紋を落とす。オレはそれに怒ったり傷ついたりはしゃいだりして、平穏なんて夢のまた夢だ。これはひどく疲れるけど、死ぬほど心地がいい。
もうごまかせなくなってしまった。8主からも自分の気持ちからも逃げられない。覚悟を決めなければいけない。
吹き荒れるその嵐の中に身を投じる、覚悟を。

81684のはなし 9:2011/03/06(日) 22:14:46
5 終わりと始まり 【4主】

夕食の時間になっても、風呂の時間になっても8主が降りてこない。
他の奴らは特に気にもせず、思い思いに散りもう寝静まった。オレは8主の部屋の前にいる。
軽くノックをしてみた。返事がない。思いきってドアノブを回したら、カギはかかっていなかったらしくあっさり開いた。
「8主」
ベッドの端で、もぞもぞ動く物体があった。毛布にくるまって奴はぐっすり寝ていた。いい身分だな!と思ったが、何も言わずオレもベッドに腰を降ろす。
部屋をぐるりと見回してから、改めて汚い部屋だと思って思わず苦笑の声が漏れる。
毛布から見える奴の髪の毛がごわごわで、さっき触ったその感触を思い出した。
「……8主、オレさ」
独り言のつもりだった。誰も、聞いてなくていいと思った。ぽつりと本音を吐き出す。
「話をしてる時、ずっとお前の手を見てて」
ずっとお前の手を見ながら思ってたんだ。おかしいかもしれないけど。
「思ったんだ。オレ、おかしいよな」
毛布からはみ出ている、8主の右手を見る。ゆるく握られていて、骨張ってる痩せた手。
「……その手に触ってみたいなんて」


【8主】
誰か部屋に入ってきた音で、目が覚めた。僕はあのまま眠り込んだらしい。この子供体質に少し呆れつつ、眠い目を擦る。
「8主」
4主さんの声だった。彼はゆっくりとベッドの対岸に座り、僕の方をみて声を漏らして苦笑した。
あまりの恥ずかしさに僕はもう狸寝入りを決め込んだ。どうせ僕は子供っぽくて頼りないよ。
「……8主、オレさ」
4主さんがぽつりと言う。最初、僕が起きてることをわかってるのかと思ったが、どうやらそうではなさそうだった。いつもよりすごく声が優しい。そうだこの人、本当は優しい人なのに。
「話をしてる時、ずっとお前の手を見てて」
僕の手?右手が毛布からはみ出てて、意識して動かさないように注意する。妙に緊張する。
「思ったんだ。オレ、おかしいよな」
何がおかしいいんだろう。でもなんだか慈しむような優しい声が、耳に残って僕はずっとこの声を聞いていたいと思った。
「……その手に触ってみたいなんて」

81784のはなし 10:2011/03/06(日) 22:15:06
耳を疑った。言葉が出なかったけど瞬間思わず僕は起き上がってしまって、マンガのように飛び上がって驚いた4主さんがそのまま床に崩れ落ちた。
「なっ!え!!……ええー!?」
「よっ4主さん!あのー!」
立ち上がれないまま後ずさる4主さんに、僕は詰め寄った。もう正気じゃなかった。理性なんて完全に失っていたた。
「いっ今の!あの!」
「いやいやいやいや!!うそうそ!マジ嘘だから!」
言いながら必死で顔を隠す4主さんまであと50センチくらいのところまで、僕はにじり寄る。壁際に彼を追い詰めて、覆い被さるように両手を掴んだ。なんとなく支配欲が満足して、僕はその気があったんだなとか頭の片隅で思う。
「……こっちを見て」
「…………いやだ」
「4主さん!今の、なんですか!」
「嘘だって!間違いだから!」
「確かにこの耳で聞いちゃったんですが!」
「なんで聞いてんだよ!狸寝入りとかマジ感じわりいよ!」
「最初は本当に寝てたんです!」
「理由にならねえ!!」
何がなんでも顔を見せたくないらしい4主さんが、身をよじってうつ伏せになろうとする。僕は彼に馬乗りになって全力でそれを阻止する。掴んだ両腕をがっちり握って、上に引き上げる。
「いたいって!お前!」
「意地っ張りな人にはっおしおきです!」
「ふざけんな!殺すぞ!」
「殺せばいい!どうせ!」
言いながら、僕は泣きそうになった。なぜここまで嫌がられて否定されてるんだろう。なんだか何をしても報われない自分が哀れで、いっそこのままやることやっちゃえばいいと思った。4主さんの意志なんてどうでもいい。嫌がって泣けばいい。僕をいいように振り回してきた罰だ。
思いながら、また涙が出た。後悔して泣く自分をリアルに見てしまった。どうしてこう、何もかもうまくいかないんだろう。
「…………8主」
今度は僕が顔を隠す番だった。込み上げてくる涙が止められなくて、掴んでいた彼の両手を離し僕は僕の顔を隠した。
「8主、ごめん」
4主さんに馬乗りになりながら、僕は嗚咽を漏らして泣いた。今彼にしてしまった暴力や、自分の浅ましさに打ちのめされた。好きだけでそれ以上望まないって思ってたのに、そこからなんて遠いところに自分は今いるんだろう。なぜ好きだけじゃダメで、それより深いことを望むのか。
4主さんが身を起こしてそっと僕の両腕に触れる。
「4主、さん」
しゃくりあげながら彼を呼んだ。
「うん」
「僕、は、あなたが好きだ」
「うん」
「だから、僕ができることは、全部、してあげたいって思った」
思ってた。自分ができることは、全部惜しみなく彼に与えてあげればいいと思った。
「でも、気がついたら、僕はあなたからの見返りを期待してる」
こっちが好きで勝手にやってることで、4主さんが望んだことじゃないのに、やってあげたことに対して見返りを望んでいる。最低なことだと思う。
「そんな自分が嫌で、でも4主さんは僕を否定したり期待させたりするから、僕もだんだんわからなくなってきて」
「ごめん8主。違うんだって」
「だんだん本当に好きなのか、もうただの執着なのかわからなくなってきて……」
「ごめん、な」
彼のおでこと僕のおでこがぶつかった。そんなに近い距離に顔がきてることに気がつかなくて、顔を上げたら唇が一瞬ぶつかった。
「え…………」
「あ、わり」
頭が真っ白になった。4主さんも意図してなかったことらしく、謝ってからものすごく焦って顔を離した。
「……………………」
「……………………」
気まずくてお互いしばらく黙り込んだ。今の、どう思ったんだろう。4主さんの様子を伺おうと思ってちらっと視線を上げたら、同じように僕を覗き込んだ彼とばっちり目が合って、確信した。
お互い、今のキスもどきでもう完全に友情の域を超えたことを理解した。だって僕はもっとキスしたいと思ったし、彼もたぶん同じ気持ちだと思う。こんなんじゃ全然満足できない。
「4主さん」
「…………」
何も答えないのが答えなんだと勝手に解釈して、僕は意を決して手を伸ばした。
首筋にかかる髪を、ゆっくりと払いながら首に触れる。僕が息を飲んだら4主さんも飲んで、なんだか笑ってしまう。緊張しすぎてどうにかなりそうで息を止める。
彼は目を伏せていて、緑色の睫が影を作る。吸い寄せられるようにまぶたに触れた。くすぐったそうに彼が苦笑して、それが可愛過ぎて嫌になった。なんなんだ、突然降って湧いた幸せに目が眩む。
4主さんはずっと何も言わなかった。一回目を閉じて、僕を見た。
友情の終わりと、始まった何かを感じた。今度は触れるだけじゃないキスをした。

81884のはなし 11:2011/03/06(日) 22:17:47
※性描写が含まれています。苦手な方は飛ばして下さいませ。

6 ネイキッド 【4主】

8主の舌が口の中に入って来て、好き勝手に口内を荒らす。嵐みたいに、何回も何回も角度を変えて、飽きる事なくキスが続く。息が続かないと思ったけど8主は全然平気そうで、負けたくなくてオレも平気なふりをする。
やっと離れていったと思ったら今度は首筋にキスをされて、声が出そうになった。
ゆっくりと上体を押され、完全に奴に組み敷かれた状態になる。せめてベッドの上でと思ったけど、お互いにそんな余裕はなかった。奴の体重を感じて、なんとなく落ち着かない気持ちになる。奴の首筋は日の匂いと汗の匂いが混じった匂いがして、でも嫌いじゃなかった。
オレの耳をなめながら、手をオレの上着にかける。ちょっと待てと言いたくなってでも意地で言葉を飲み込んだ。奴の手が上着の中で滑り、最初はためらいがちに、次第に無遠慮にオレの体をまさぐり思わず息が漏れた。
「ん……」
「ダメ?」
耳元で奴が囁いたその声だけで、どうにかなりそうだと思った。なんて声だ。聞いたこともないような甘くて熱っぽい声。語尾が粘る。
一人で冷静を保とうとしてる自分がバカらしくなって、もう雰囲気に酔ってしまおうと思った。こんなのはきっと酔ったもん勝ちだろう。だから、サービスで言ってやろうという気になった。
「8主」
「ん?」
「……お前がオレにしたかったこと、全部やっていいから」
「…………」
8主はがっくりうなだれて黙ってしまった。なんか失敗したかなと思って顔を覗き込んだら、真っ赤になってしつこくオレの視線を避けようとする。さすがに調子に乗りすぎたかと訂正しようとした時、やっと奴が口を開いた。
「夢かなこれ……」
「は?」
「なんかもう嬉しすぎて、死にそう」
そう言った奴が胸が詰まるほど可愛くて、思わずオレは奴の首にしがみついた。そのまま奴の乱れた頭にのっかっていたバンダナを外してやる。
上着をたくしあげられて脱がされそうになって、腰骨が直に床にあたって痛いなと思って床を見たら、8主がやっと気がついて申し訳無さそうな顔をして、ひどく焦りながら上着を丁寧に戻した。
「すみません、ベッドに行きましょう……」
「あ、ああ……」
立ち上がって促されるままベッドへ行こうとすると、また8主が何かに気付いたらしく慌ただしく部屋を出ようとした。
「何!」
「あ、あの!だって何か潤滑油とかないと痛いと思うんですけど……」
「潤滑油?」
どうせオレは初めてでそっち方面の知識なんて薄い。奴の言う通りに任せようと思った。

81984のはなし 12:2011/03/06(日) 22:18:19
※性描写が含まれています。苦手な方は飛ばして下さいませ。

一人残されて、ベッドの中で待ってるのもなんだかなと思って、オレはベッドの端っこに腰を降ろす。落ち着かなくて、好きにされるのを待ってるオレが気恥ずかしくてこのまま逃げてしまいたいと思った。自分の吐いた息が熱くてびっくりする。
五分もしないうちに8主が謎の小瓶を持って戻ってきて、残念なようなほっとしたような気分になった。
8主も座ってるオレを見て、なんとも言えない顔をした。
「それ……」
「なんか風呂場にあったんですけど、たぶん3女さんか4女さんのマッサージオイルみたいの」
「そんなん使ってんのかあいつら」
「まあ女性ですから……」
そういう、セックスするにあたって直接的な物が用意されて、なんだか本当にもう戻れないところにきたなと思う。一線を超えてしまったら本当にもう誤魔化すことはできない。
「……いなくなってるかと、ちょっと思った」
8主がぽつりと言った。オレも逃げようかと思ったとは言わないでおいた。
ここからまた仕切り直しなんて、ひどく馬鹿げていてバツが悪すぎて顔が見られないと思ったけど、奴は同じようにオレにのしかかり、押さえ込むように上からキスをくれる。思わず目を強くつぶったら、8主が息を漏らして笑った。
「へへ」
「……何それ」
自分の黄色い上着を乱暴に脱ぎながら、奴は笑っていた。
「……すごい、緊張してます」
「なんで?お前、別に始めてじゃないんだろ」
よっぽどオレの方がと言いかけて、奴の顔を見て二の句をつなぐのをやめた。そんな嬉しそうな顔しないでくれ。やめてくれよ、オレなんてそんなお前が思ってるほど大層なもんじゃないだろ。
言葉が出なくなって、オレは8主の肩に額を押し付けた。
今度は一気に上着を脱がされ、驚く間もなくまたキスが降ってくる。それに応えようとして、無意識に奴のシャツを強く握りしめる。奴はそこで初めて気がついたみたいに、自分のシャツを急いで脱いだ。そのままブーツとズボンを脱ぎ、少し躊躇ってから下着も脱ぐ。裸になった奴は、華奢だと思ってたけどこそまでじゃなくて、ちゃんと筋肉のついている細身の体つきをしていた。
オレも自分で脱いだ方がいいのかと思ってブーツに手をかけたら、奴がもう片方のブーツを脱がし、オレの肩に軽く歯を立てた。
「いてっ」
突然の奇行にびっくりして呆気に取られていたら、その隙に下着ごと全部脱がされた。なんなんだ。奴はいたずらっ子みたいな顔でにやついている。
「かわいい」
「…………むかつく」
こいつはこういう奴だった。いつだって主導権を握ろうとして勝手に暴走して失敗してオレの神経を逆撫でする。アホか学習しろと思うけど、いつまでも同じことを繰り返して失敗する8主を、馬鹿な子ほどかわいいと思ったことがあるなんて口が裂けても言わない。
奴のことなんか、オレは知ってるつもりで全然何も知らない。どんなことで喜んで、どんなことで泣くのかなんて興味もなかった。今は、何をしたらこいつは笑うんだろうと必死で考えてる。こんなオレなんて頭からまるごとくれてやる。だからもっとお前のことを教えてくれよ。
裸で抱き合うと体温が直に伝わってきて、今までよりもっと近くに感じた。どうしようもなくなって噛み付くみたいに8主にキスをした。

82084のはなし 13:2011/03/06(日) 22:18:56
7 再会 【4主】

目が覚めて、見なれない天井で一瞬驚いてから、状況を理解する。明け方で、カーテンの端からうっすら光が漏れている。黄色くて白い朝の光。部屋の中はグレーで、静まり返っていて少し冷たい。
隣には8主がいびきをかいて寝ていて、いつだって同じペースで無礼なこいつを見ていると安心する。シリアスになりきれなくてオレを泣かそうとして勢いあまって自分で泣いてしまう8主が、たぶん長いことオレは好きだったんだろう。自分でも気がつかないくらい緩やかに、低温火傷みたいにじっくりと8主の熱にやられ、オレはもう何もかも8主に許した。
与えることも与えられることも、優しくすることも優しくされることも。行為自体は痛すぎて何がなんだかわからなかった。ただ8主の手や声や唇の感触とかがいちいち嫌になるほど優しくて、大事にしようとしてくれてることだけはわかった。それで十分だと思った。
いろいろなことが、変わってきている。そういう流れなんだろう。
カーテンから漏れる光が、色を増した。
何があっても人としての自分を捨てられなかった。一番幸せだった時、一番辛かった時、愛や強さを教えてくれたのは人だった。だから、自分も人でありたかった。彼等と同じように太く短くそして強く、一瞬の閃光みたいに生きて死にたいと望んだ。
しかしどうやらそれは叶わなそうで、天空人でもなく人にもなりきれず長い間居場所を探していた。どこにいっても後ろめたさや疎外感を感じて、子供の頃のように何も考えず堂々と当たり前に生きられる場所を探して求めていた。
同時に、この先の気が遠くなるほど長い時間をオレは一人で生きていくんだなと、ぼんやりと考えていた。シンシアもいなくなった今、天空人の血の入ったオレと時間を共有できる人間なんているはずがない。
先は長過ぎて見えなさ過ぎて、不安なのかどうなのかもわからなかった。そこに現れたのが、同じように人外の血を半分持っている8主だった。
渡りに船、みたいな感じだったんだと思う。きっと無意識に、オレ達はずっと一緒にいられる存在を探していたんだろう。初めて会った時から、なぜか目が追わずにはいられなくて、その赤いバンダナをいつも探した。シンシアを裏切ろうとしている自分が許せなくて、気付かない振りをしてきた。
でもずっと好きだったんだ。

光が漏れているカーテンを、そっと開けてみた。
言葉を失った。色の洪水みたいな、圧倒的な光がそこにはあった。色とりどりの極彩色の光たち。刺すように強くてでも優しく自分を包む、昔は当たり前に見えていた光だ。
そうだ、ずっと忘れていた。モノクロの世界を生きていた。世界はこんなに美しかった。失われてから長い間つよく切望していたのに、そのことすら忘れていた。
ずっとここにあったのに、見えていなかった。何もかも失ったあの日、この気持ちも亡くした。世界はあの頃と同じように美しくて優しかったのに、拒んでいたのは自分だった。全てが終わってからも、自分のせいで失われた人達に対して、自分だけ自分のために光の世界で生きていくのが後ろめたくてとても辛くて、ずっと背を向けて目隠しをしていた。
自分の役目は終わったのに、自分はなぜ終わらないのか、まるで罰みたいに生かされているのか、その意味をあれから長く考えていた。
今度は自分で選んだ道を自分のためだけに自由に行けるのに、それを追放や黙殺のように捉えていた。身一つで投げ出されたのだと思っていた。
与えられたのは罰じゃなくて自由だった。
今初めて、感謝したくなった。再びこの景色を見れたことに、生かされたことに、そして8主に。
あれから一人で生きてきたつもりだった。でも本当はいつだって守られていた。何ひとつ、優しくないものなんてなかった。
ごめん。ありがとう。何を言っても言葉では足りなくて、感情が渦みたいに溢れ出して息を飲んだ。
涙が止まらなかった。

「シンシア」
こんなところにいたんだね。やっと会えたね。
ごめんね、今までありがとう。もう、君がいなくても大丈夫だよ。
生きていくからちゃんと。
一緒にいてくれてありがとう。
オレは、君のことも、ずっと好きだったよ。
君がオレのことを好きでいてくれたことも、ちゃんとわかってたよ。
一生に大事に持っておくね。ありがとう。
シンシアは、今までで一番きれいで美しくて笑顔だった。

82184のはなし 14ラスト:2011/03/06(日) 22:19:58
8 愛にすべてを 【8主】

起きた時、そこに寝てるのは僕一人だった。起きぬけに抱きしめるとか、目覚めのキスとかしたかったのに全然ムードのかけらもなく、4主さんは今日も早起きだった。
起こしてくれればいいのに。こんな朝なのに、別にどうでもいいのかな。なんだか僕だけ浮かれてて淋しい。
しぶしぶ身を起こして、なぜか畳まれてまとめられている服を着る。確かその辺に焦って脱ぎ捨てたやつで、4主さんが拾って畳んだのかと思うと異常に恥ずかしくなった。マメな男となんて付き合うもんじゃない。
昨日の色々で乱れた部屋の箇所は全部きれいに整えられていて、まるごと夢だったと言われれば信じてしまいそうだった。そんなに証拠隠滅したいかと疑いたくなる。
後悔してたらどうしよう。
昨日の出来事を証明するものはもう何もなくて、でも僕は彼の声や熱を覚えていて、思い出しては苦しくなりそうだった。最中、僕はずっと彼の睫の生え際や眉間や口元を見ていて、何も言わない4主さんの反応をそれらの微妙な変化で判断するしかなかった。やっぱり相当痛かったみたいだけど、必死で我慢して僕を受け入れようとする彼に胸が詰まった。
与えることや優しくすることはそんなに難しいことじゃない。難しいのはそれを維持していくことだ。彼の警戒心が解けた。僕はその信頼を無くさないように、大事にしよう。
大丈夫、僕はいなくならない。突然嘘のように消えたりなんかしない。
だから安心していい。安心して僕を好きになっていい。大丈夫だからもう、大事な人を持つのを怖がらなくていい。
なんだか泣きたくなった。奪われてしまったものにいつまでも捕われている彼が、小動物のようにうずくまって身を守るしかなかった彼が、今やっと過去になろうとしている。痛々しいその姿をもう見なくて済む。
やっと夜が明けたような、やっと日の光を見たような気分だった。
心の底から祈った。彼と、僕の未来を。

朝から騒がしいキッチンに行くといつもの面子が食卓を囲んでいて、本当に飯を食ってるだけなのかと言いたくなるほど激しいアクションを繰り広げていた。あまりに日常すぎて気が抜けた。
何があったって日常は変わらなくて、そのことに死ぬほど安心する。
その輪の中で、4主さんはうるせーとか言いながら乱暴にコーヒーを注いでいた。
食卓にはきちんと人数分の朝食が並べられていて、こんな日くらい他の人の飯とかどーでもいーじゃないですかと思ったが、彼には譲れぬ問題なんだろう。
キッチンに入ろうとした時、顔を上げた彼と目が合った。あ。僕は一瞬頭が真っ白になって反応が遅れた。
彼は微かに笑った。
その顔を見て、なんとなくもう全部ふっきれたのかなと思った。とりあえずあれでよかったみたいだ。初めて見る穏やかな顔だったから、見なれなくて変な感じがした。
僕も思わず笑顔を返した。
これから楽しいこと、僕といっぱいしよう。もういいって言うくらい退屈しない毎日を送ろう。
嫌になるくらい一緒にいよう。何度だって喧嘩しよう。僕はあなたのために悩むことなんか全然構わない。悩み疲れても平気。
「おっせーよ!」
4主さんが声を張り上げた。隠し切れない笑みが、照れと混じって動揺したらしく思い切りコーヒーをこぼしていた。僕もにやけるのが止められなくて、反射的に憎まれ口を叩いた。
「鳥さんみたいに朝日と同時には起きられませんから!」
「なんだと!表出ろ!」
「望むところです!」
言い合いながら二人して外へ駆け出した。どちらともなく手を伸ばして、僕ら手をつないだ。
顔を見合わせて笑いあった。意味がわからないくらい気持ちが高揚して、目に見えるものすべてが大事で美しく見えた。むせかえるような光に溢れていて全部がキラキラしていた。
隣で屈託なく笑う彼に、抱きしめて百万回でもキスしよう。繋いだ手を二度と離さないように大切に握り締めた。

おしまい

822名無しの勇者:2011/03/07(月) 21:16:58
>>808

ちょ…待ってくれ…
こんな一気に萌えさせないでくれ…!
GJ!そしてごちそうさま!!

823名無しの勇者:2011/03/08(火) 00:46:23
萌えすぎてベッドから落ちた

824名無しの勇者:2011/03/17(木) 00:06:08
>>808
久々に覗いてみたら素晴らしい84が
不器用で手探りな二人にひたすら萌えましたGJ!

82584中心オールキャラ 1/3:2011/03/20(日) 21:57:49
超監督4女


8主「4主さん、僕がツンデレ属性なのは知っていますよね?」
4主「あぁ、なんかそうらしいな」
8主「だから、いつも素直になれないんですけど・・・
   今日は4主さんに伝えたいことがあるんです」
4主「伝えたいこと・・・?」
8主「はい。僕は・・・ずっと前から4主さんのことが・・・」
4主「俺の、ことが・・・?」
8主「・・・・・・ウェッ」
4主「・・・・・・ウエェェエエ」


『はい、カァーーット』


4女「ちょっとぉ!早く次の台詞言ってよ!」
8主「いやいやいや、無理ですって!見てくださいよこの鳥肌。
こんなん続けてたら4主さんみたいになっちゃいますよ」
4主「表出ろこのクソ竜。見ろ!俺のこの蕁麻疹を!」
4女「もう!またすぐ喧嘩して!主演二人がそんなんじゃ撮影がうまくいかないじゃない!
   真面目にやってよね!」

4・8主『いや、無理!!』

4女「困ったわねぇ・・・」
8主「だいたい、BLってなんですか、BLって」
4女「ボーイズラブよ!今流行ってんのよ、主に私らの中でw」
4主「お前らの中でかよwwwテラ迷惑wwwwww」
4女「うるさいわねぇ。大体、一度引き受けた仕事をそう簡単に投げ出すのはよくないわ!
ねぇ、3女ちゃん!」
3女「・・・まあ、男らしくはないな、うん」
8主「・・・3女さんもハマってるんですか?その、BLに・・・」
3女「いや、アタシは興味ないって言ったんだけど、4女が無理やり・・・!」
4女「でも、面白かったんだよねー?」
3女「まあ、うん・・・」
4女「こんだけ野郎どもがそろってる宿舎だもん、
やっぱBLストーリーのひとつやふたつあってもいいじゃない?」
4主「野郎どもがそろってるってだけでBLな世界が溢れてたらまずいと思うぞ、jk」
4女「もう、さっきからうっさいわねぇ!次が控えてんだからさっさと済ますわよ!」
4主「次って・・・俺らのほかにも哀れな犠牲者が?」
4女「モチのロンよ!5主による1主と2主の調教ものと、
6主と7主の兄弟設定ものを予定してるわ」
3女「男3主は編集を頼んであるから、今回は出演はなしだ」

4・8主『・・・・・・・・・('A`)』

82684中心オールキャラ 2/3:2011/03/20(日) 21:59:12
4主「えー・・・とりあえず、男ども全員集合」
8主「皆さん何でこの話を引き受けたのかkwsk」

5主「僕は、妻二人にも見てみたいって言われたしなぁ。
それに人でも魔物でも優しく調教するのは慣れてるしね」
4主「なんか今最後にサラリとすごいこと言ったな。じゃあ次は1主」
1主「俺はローラに『楽しみにしておりますわ、ぽっ』って言われてさ・・・。
  『はい・いいえ』の無限ループするという選択肢すら与えて貰えなかった('A`)」
8主「・・・無限ループがないっていうのが必ずしも良いってわけじゃないんですねぇ。
じゃあ、次は2主さん」
2主「俺はご先祖に頼まれたからな!
びーえるってなにかよくわからないけど、ムーンも応援してくれてたしがんばるぞ!」
4主「・・・まあ、俺もシンシアちゃんに頼まれて、BLの意味も分からず引き受けちゃったしな・・・」
8主「そうなんですよね。実は僕もミーちゃんに頼まれて(ry」
  (まあ本当はどさくさに紛れて4主さんにあんなことやそんなこと
   ギシギシアンアンイヤンソコハダメヨバカーンってできると思って引き受けたんですけどね(・∀・)ニヤニヤ)

4主「ん?なんか今寒気が・・・まぁいい。じゃあ次は6主」
6主「俺はおにいちゃんとして妹の頼みは断るわけにはいかないからな!」
8主「妹の頼みとあれば、BLだろうと何だろうと引き受ける6主さんはおにいちゃんの鏡ですね。
   えぇと、7主さんは?」
7主「僕はマリベルに『アンタも参加してみたらどう?べ、別に私が見たいってわけじゃないんだからね!』
  って言われたからなんだけど、たまにはこういうお尻が痛そうなプレイもいいかなって。ハァハァ」
4主「MはBLすら受け入れるのか・・・?んで、今回安全圏にいる3主は?」
3主「どこが安全圏だよ!3女と4女のGLものならともかく、
   何が楽しくて俺のPCでお前らのBL編集せにゃならんのだ!コレハアラテノイジメデスカ…?」
8主「確かに、そういう意味では安全圏からは程遠いどころか
   PCの中はブラクラまみれで悲惨ですねw」

82784中心オールキャラ 3/3:2011/03/20(日) 21:59:48
4女「はいはい、休憩おしまい!さっさと再開しないと
   告白シーンから3段飛ばししていきなりベットシーンのとこやらすわよ!?」
4主「おまwwwそんなシーンまで撮るつもりだったのか」
4女「当たり前でしょ!つーか、むしろそこが本番ですからwww」
4主「悪いがそこまでは付き合いきれんな。おい、8主。
   いつまでもこんな阿呆なことに付き合ってないで帰るぞ」
4女「ちょっとぉ!途中で帰る気!?」
4主「当たり前だ!ほれ、8主行くぞ!」
8主「・・・4主さん」
4主「ん?なんだ?」
8主「僕はやっぱり物事を途中で放り投げるのはよくないと思うんですよ(・∀・)ニコニコ」
4主「はぁ!?」
8主「4女さん、次はベットシーンでしたよね。
   ・・・はい、4主さん、暴れないでくださいねー」
4主「おい!こら!!8主てめぇ何考えてやがるっ!」
8主「大丈夫ですよ、僕はゴッドランサーと呼ばれている男ですよ?
   下のヤリの方のテクにも自信があります('∀`)b☆」
4主「意味がわからないし笑えない!
   いいからその当たっとるもんをどうにかしてくれ!」
8主「うん、それ無理!・・・ですよ、っと」
4主「わっ、ばかっ!どこ触って・・・ぁ、ん・・・っ」

4女「やればできるじゃない、アンタたち!さあこの調子で『ガンガンいくわよ!』」

8主「イエッサー☆」
4主「・・・モウオヨメニイケナイヨシンシアチャンクスン」




3主「えー・・・最後にこれだけは入れさせてもらうぞ。
 
  『この物語はフィクションであり実在する人物、団体、事件、
   その他の固有名詞や現象などとはなんの関係もありません。嘘っぱちです。
   どっか似ていたとしてもそれはたまたま偶然です。他人のそら似です。』

  ・・・これでよし・・・か?」

828825:2011/03/20(日) 22:03:40
久しぶりに覗いたら再燃したのでちょっと投下。
9が発売される前に書いたネタなのでちょっと色々
おかしなところがあるかもしれませんが
そこは広い心でみてやって下さい。

>>808さんちょう萌えました!

829名無しの勇者:2011/03/23(水) 19:04:48
>>825
嫁にいけない4主さんには、むしろ婿の方から来ると思います。
賑やかで楽しかったよ、乙でした

830名無しの勇者:2011/04/02(土) 04:50:20
>>808-821
萌えとか通り越して号泣した
もう、ただただ幸せになってくれとしか

>>825
とりあえず最後の3主のフォロー(?)に笑ったw

831名無しの勇者:2011/04/08(金) 19:31:30
>>808-821
萌えすぎて胸が苦しい
ありがとう

>>825
ホイホイうまいこと操られてる面々にワロタ

83248  注意書き:2011/05/22(日) 19:36:27
真剣に48です。シリアス悲恋気味です。
B○MP OF ○HIKINの「ラ○・メイカー」が元ネタになってます。
苦手な方や歌のイメージを壊されたくない方はご注意ください。

83348  (1):2011/05/22(日) 19:37:56

コンコン
「……」
コンコン
「……」
コンコン
「……もう、なんだよ……誰だ?」
「名乗るほど大した名じゃないですが」
「帰れ」
「あっ、ひどい。僕まだ名乗ってすらいな」
「帰れ」
「せめて用件尋ねてくださいよ!」
「……何しに来たんだ」
「あなたに笑顔を持ってきました」
「呼んでない。帰れ」
「寒いので入れてください」
「冗談じゃねえ」
「よっこいしょっと」
「なに座ってんだよ」
「ドア越しにでも4主さんと背中合わせになろうと思って」
「…………」
「あ、びっくりしてますね? なんでドアに寄りかかって座ってるのわかったんだろうって?
 まあ声の近さもありますけど一番の要因は勘ってやつですかね」
「いいから早く帰れ。……俺に構うな」
「構うなと言われると構いたくなっちゃうのが男心ってやつですが」
「……っうるせえな! 消えろっつってんだろ、二度と俺の前に姿見せんな!」
「…………。
 ……なんか、そこまで言われるの久々ですね。ああ、耐性無くなっちゃったかも。地味に堪えます」
「……」
「懐かしいですよね。いっぱい周りに怒られましたけど、でも僕なりに考えてるつもりだったんですよ。
 2主さんの勉強にちょっかい出すのも、鳥鳥言うのも。……宿舎崩壊はちょっと違いますけど」
「……そうだな」
「でもなんだかんだで当人同士はわかってたんですよね。本気じゃなくてじゃれ合いだって」
「……俺は結構本気だった」
「え、そうなんですか。僕なりにマジギレ一歩手前でさじ加減計ってたつもりだったんですが」
「あれでか。だとしたらお前の感性疑う」
「それは残念です。ところでこのドアまだ開かないんですか?」
「開かない。帰れ。死ね」
「うわぁちょっと泣きますよホント」
「やめろ鬱陶しい。……早く帰ればいいだろ、トロデーンに」
「……」

834名無しの勇者:2011/05/22(日) 19:39:40
wktk

83548  (2):2011/05/22(日) 19:39:42

「最初はね、あなたのこと嫌いでしたよ」
「……」
「だって最初の印象なんて、苦労してんのは自分だけじゃないのに勝手にトリップとかして
 現実見ないで悲劇のヒーローぶった挙句竜の端くれってだけの理由で関係ない僕とかにまで因縁つけたり、
 結構最悪じゃないですか。いや正直ほんと嫌いでした。あっはっは」
「……」
「だからぶっちゃけ、最初のほうは結構悪意あったんですよね、えへへ。
 ……そうですね、その辺はすみませんでした」
「……」
「なんか、まだまだ僕も子供だったんですよね。それこそ相手がどんな辛さ抱えてるかなんて、
 僕一人が計り知ることはできないのに。それができてたら、今も色々違ったんでしょうかね」
「……」
「……4主さんは、いつだって反応を返してくれましたよね。僕のしょーもない悪意も善意も冗談も、
 なんだかんだ言って毎回ちゃんと受け止めて、返してくれましたよね」
「……」
「まあ、その反応っていうのが大体ギガソードとかギガデインとかの手痛い感じでしたけど。
 でも、無視することはなくて」
「……」
「本気で嫌われてるんじゃないのが、嬉しくて」
「……」
「……」
「……」
「やっぱり開けてもらえませんか」
「帰ってくれ」
「あはは……なんか本当久しぶりですね、ここまで拒否されるのも」
「……」
「……最初は、悪意でしたけど」
「……」
「それでも、僕は……いつからか、本当に……」
「……」
「本気で……あなたに、笑ってほしかったん、です……っ」


(……泣き声)
(泣き声)
(……泣いてんのか)
(ああ、そっか。4主さんも泣いてたのか……)

83648  (3):2011/05/22(日) 19:40:56

「……疲れた」
「そうですね」
「……ここまで来てまだ俺に笑えって言うのか?」
「生き甲斐みたいなもんですから。笑顔を見れなきゃ帰れません」
「……なんでだよ」
「帰れません」
「……」

「……8主」
「はい?」
「……開けないんじゃなくて、開けられない、んだ」
「……」
「……途中から……別に俺らは、嫌い合ってるんじゃないんだって。
 それが、わかって、嬉しかったのは……お前だけじゃ、なくて」
「……」
「しかも、どっかで俺は……失くした居場所とか、果てない寿命とか、
 この身に流れる血とか、色んなもんをごっちゃにしてて」
「……」
「これから先、ずっと……お前の傍にいられたらって、思ってた」

「……開けたいなら、開けてくれ。鍵なんか最初からかかってない。
 俺から開けることはできない。ただ俺は、俺からは、お前に顔向けできない」

「……なんとか言ってくれ……。
 8主、そこにいるんだろ?」

「……いないのか?
 まさか……おい、8主?」

「8主。…………――――8主!!」

ドガシャーン

「……は、な、」
「ていうかわざわざドアから入る必要ありませんよね、そういえば。
 任せてください、僕の手にかかれば最後のカギですら敵じゃなごふっ」
「よりによって壁けやぶんな、このどアホ!!」
「い、いたたた……いやだってコレそういう話ですから」
「そういう話って。とにかくちゃんと直しておけよ、俺の部屋の壁」
「直しておけってことは僕またここに来てもいいんですよね」
「は?」
「今確かにそう言いましたよね。直しにくるからここにいてもいいんですよね。
 というわけで4主さん、僕の話を聞いてください」

「僕、ミーちゃんと結婚します」

83748  (4):2011/05/22(日) 19:42:17

「……」
「他の皆さんには伝えたんですけど、4主さんだけどうしても入れ違いになって、伝えられなくて。
 遅くなってすみません」
「……知ってる」
「そうでしょうね。そう思ったからここに来ました」
「……」
「4主さん。僕のエゴだってわかってます。でもお願いします。
 ……笑ってください。あなたの笑顔を、僕にください」

「…………4主さん」
「……」
「誰も抱きしめてくれなんて言ってないです」
「……」
「そんなとこで笑っても顔が見えなきゃ意味ないじゃないですか」
「……黙ってろ」
「ていうか嫁入り前の清い身体ですよ」
「婿だろ」
「些細な問題です」
「些細なのか」
「些細です」
「……ふ」
「あ」
「……。お前の泣き顔が笑えるなと思って」
「4主さんの泣き顔の方が笑えますよ。ほら鏡」
「なんでそんなもん持ってんだよ。確かに笑、え……る」
「……笑ってますよ」
「……」
「笑ってます。笑っていられますよ、ずっと。僕なんかいなくても」
「……当たり前だろ。自惚れんな」
「さっきまでビービー泣いてたくせに、口の減らない人ですね。
 でも、だったら……それなら、いいんです」
「……」

「きっと……いつか、果てしなく未来には、ここに帰ってくるんでしょうけど」
「……ああ」
「それまでちょっと、行ってきますから」
「ああ。……鍵開けて、待ってるから」


ルララ ルラ ルララ ルラ…

83848  あとがき:2011/05/22(日) 19:43:48
すみません、毛色が違うというか間違ってるかもと投下に踏み切るまで悩んだんですが、
たまにはこういうのもどうでしょう、ということで。
一人でも楽しんでもらえれば幸いです。

839名無しの勇者:2011/05/22(日) 20:07:49
果てしなく未来には帰ってくる、ってのが切ねぇなぁ
寿命的に

8408→4:2011/06/13(月) 02:24:02
自覚があるんだかないんだかの8→4を投下

8418→4 1/3:2011/06/13(月) 02:25:11
梅雨という独特の時季を迎えたこちらの世界では中休みとでもいうのだろうか、久々に晴れた日が続いていた。
だがTVの週間天気予報では明日から再び崩れがちになるという。貴重な晴れ間を謳歌するようにはためく洗濯物を横切り、8主は大きく開けた庭の一部を陣取る。
せっかくの晴天・休暇日・10時のプリンで満たされた腹具合。
これほどの至福が揃っているのだ、満喫しない手はないだろう。乾いた大地に大きく手足を広げて木陰に寝転がれば、空と雲、そして若葉が織りなす見事なコントラストが視界を彩る。
澄んだ空色と瑞々しい緑にかの人のイメージを重ね、眩しさを覚えて8主は目を伏せた。
瞼の裏には朝食後に会話を交わした相手の姿が焼きついたように鮮明に浮かんでいる。
肩元へと緩やかに流れる翠緑の髪、磨き上げられた象牙にも劣らぬ白い肌、整った顔立ちに印象的な碧い瞳。しかし折角の端整なそれらは、しかめっ面によって残念なことになっている。
さらには続いた言葉も厳しく耳に痛いもの。
『梅雨はまだ長いんだ。今日のうちに不気味なダンジョンと化した部屋を片しておけよ』
落ち着いた声音とは裏腹に有無を言わせぬ魔王もかくやという凄味を効かせて、村の作業へと出かけて行った4主を見送りかれこれ2時間は経ったか。
他の面々も皆(ニート兼宿舎警備員以外)は出払った宿舎内。
先程まで身を置いていた自分の部屋の現状を思い起こし、嘆息する。
多少の乱雑さはいなめないものの、さりとて不便を感じることもなく慣れてしまえば快適とさえ思える空間。だが、いざ掃除をするとなると何故ああも絶望を抱かせる場所となるのだろうか。このままではゾーマが得をするだけだと作業を中断したはいいが部屋を出るのも、ドアを閉めるのも一苦労だった。
10時のプリンによって絶望の供給は断たれたわけだが、掃除を再開すれば絶望の無限ループは免れない。
しかしサボってしまえばドラゴンヌッコロス補強版のギガソードが唸りをあげる……
不意に。
8主のそんなダラダラとした取り留めのない思考を逸らすように、風が涼やかな流れに変わる。鋭くも清麗な気配が近づいてくるのを感覚に捉えた。
噂をすれば影とはよく言ったものだ。
知らず口元が緩みそうになるが引き締める。目もまだ開けずに気配がこちらへと辿り着くのを待ってから、口だけを開いた。
「腐っても主人公の一人である僕が絶望に臨み、図らずも魔王に力を与えてしまうような真似はいかがなものかと思った次第です」
「お前が腐っているのには同意するが、それは戯れ言であって言い訳にはならんだろ」
「というわけで来月から本気出します」
「ダメ人間の常套句じゃねえか」
相手の打てば響く反応はいつも8主の心を躍らせる。
堪えきれない気持ちでようやく瞼を上げれば、4主が懐疑心もあらわに腕を組み、双眸を眇めて見下ろしていた。澄んだ蒼穹を思わせる瞳は光の加減か長い睫毛が落とす影によるものか、深みを増した瑠璃色に色づいている。
脳裏に映していたしかめっ面と違わず、現実もまた相変わらずの表情だ。彼が8主に向ける視線や表情の大抵は(日頃の行いがものをいうのだろう)険しく冷然としている。
8主は内心含み笑う。
いつからか不快げに寄せられた眉根や獰猛ささえ漂うそれを、8主は艶やかなものと錯覚するようになった。
そそられるのは嗜虐心か、被虐心か。

8428→4 2/3:2011/06/13(月) 02:26:29
わき返る健全とは言い難い自分でも不可解な感情をいつも通りに笑みへと昇華して、訝る4主に構わず会話を続ける。
「ダメ人間だなんて失敬な。3主さんの『来世から本気出す』っていう言い分に比べれば僕は随分まともな方ですよ?」
矛先を逸らさんとした8主の発言に4主がげんなりとした顔をする。
「だめだアイツ、早くなんとかしn……いや、3主のことは今はどうでもいい。お前のほうも大概だろうが。俺は今朝、今日中に部屋の掃除を済ませろと言ったはずだ。こんなとこで寝てる暇はないぞ」
「しかしですね、僕の部屋の状態は日々の錬金生活で積み重ねて築き上げていった賜物です。一日や二日でどうにか出来るものではありません。4主さんはご存じでしょうか?かのとんち僧侶いわく、あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみと」
「OK、お前のやる気はあてにならんということがよく分かった。今更だがな!」
4主の吐き捨てる言葉の勢いと怒りを湛える瞳に酔い痴れつつ、身を起こす。
わずかに縮んだ距離感。
今や視界には雄大な青と白と緑のコントラストは色褪せ、眼前の青年こそが映える。
「久しぶりの晴れ空です。こんなに綺麗な情景が広がってるんですから、もう少しだけ堪能させてくださいよ」
言い訳めいた8主の言葉を受けて静かに空を見上げた彼が、表情から怒りを収めたように見えたのは麗らかな大空に心奪われたからだろうか。それとも。
愁いを帯びた端麗な横顔に、胸が疼いた。
4主は目を伏せて大きく息をついた。なにかを堪えるようにこめかみに手を当て、再び開いた目で8主を見据えて宣告する。
「……いいだろう。あと10分程度なら許容してやる。それ以上は片付ける権利を放棄したとみなし、こちらでがらくたダンジョン殲滅作戦を遂行する」
愁眉の影もない冷静沈着な指揮官の目だった。
「ちょっと待ってください。部屋そのものを殲滅するような言い方が引っ掛かるんですが」
天候に反した話題の雲行きの不穏さに飛び跳ねる勢いで立ち上がり、8主は慌てて抗議する。
「失敬な。果汁組じゃあるまいし」
「その言い草こそが失敬ですよ!まあ、4主さんにかぎって崩壊ルートの進行は心配してませんけど。明らかに僕の持ち物の行方が怪しいじゃないですか。そもそもがらくた呼ばわりもひどいじゃないですか。この世に雑草などという草がないように、あの部屋にもがらくたなどという物はありません。すべてが尊い宝物ですよ!」
「おもしろくない、出直してまいれ」
「そんなひどい!がらくた呼ばわりの上に渾身の訴えをジョーク扱い!?」
「おもしろくない、出直してまいれ」
「2度も言った!?このフレーズでループはなんともシュール!!あ、なんか語感いいですねこれ。このフレーズでループはなんともシュール!」
「どや顔で言うな。イラッとくるわ」
「ああ、よかった。このままボケ倒されたらどうしようかと思いましたよ……」

8438→4 3/3:2011/06/13(月) 02:27:22
4主のリアクションが素に戻り、息つく間もないやりとりに一区切りつく。
8主は安堵とも疲労ともつかない、それでいてどこか浮き立つ気持ちに自嘲混じりの嘆息とともに肩を落とした。
喜怒哀楽のすべてに合致しているようで、すべてが当てはまらない。自分でも持て余し気味のよく分からない感情を4主が無自覚に引き出し、かき乱す。
鳥ネタ全盛の険悪とした以前の状況から脱した現在の、この振り回し振り回される関係は不快感よりも言いようもない心地良さを8主の胸に生じさせるから、どうにも彼はやみつきになる。
「ほれ、こんなことやってる暇があったら部屋の掃除にとりかかるぞ」
呆れた気持ちを4主はそのまま表情に滲ませながら、それでも。
わざわざ村の仕事を早めに切り上げてまで、8主には余る作業に手を貸そうと戻って来てくれた。
きっと、こんな心遣いにこそ惹かれてやまないのかもしれない。
「でもあと5分くらいはいいですよね?」
「ああ?」
「10分程度なら許すって」
「まぁな。だが適当に切り上げろよ。俺は先に部屋で作業……なんだよ?」
踵を返す動作に移ろうとした身体を引き留めるため伸ばした手は、辛うじて4主の袖を掴む。腕を掴む度胸はなかった。いや、この場合は勇気だろうか?
「そうつれないことは言わずに。毒を食らわば皿まで、死なば諸共の戦場へと向かう前にこの久々の晴天を一緒に満喫しませんか?」
悪態や挑発ならいくらでも出てくるのに。絞り出した本音は減らず口が精々だ。
「……毒やら戦場やらという自覚があるなら、何故そうならないように努めんのだお前は」
肩をすくめた4主のもっともな返しと半眼の咎める視線は痛い。
けれど振り払われなかった手が、密かな望みを汲んでくれた気がした。

そうして二人でわりと和やかなひとときを過ごしたわけだが。
いざ8主の部屋に入らんとすると限界を迎えた扉が吹き飛び、二人まとめて廊下でがらくたに埋もれ、説教と言い訳の不毛なやりとりに移行するのはご愛嬌だろう。

84434女体化ネタ注意 1/1:2011/07/14(木) 22:25:08

3主「いきなりで悪いが4主、童貞を卒業したい」
4主「ほらよ」つ切れ込み入り蒟蒻
3主「ばっ…そういうのじゃなくてだな、ヤらせてくれればいいじゃないか」
4主「そんな事言われたって俺男だし。
それにここではそっちの意味で童貞卒業してんだろ」
3主「ヤダヤダー!女の子とヤるまで童貞なんだー!!」
4主「意味わかんねぇよ!!
しかも女になんかなれるか!」
3主「そこでモシャスの出番ですよお兄さん」
4主「誰がお兄さんだ。
それにあれは誰かに変身する訳であって俺であって俺でないんだぞ」
3主「出来れば女になったお前とヤりたい」
4主「4女に言ってギガソード喰らって来い」
3主「モシャスの応用で何とかなんねーのかよ!!」
4主「頑張れば部分的変化は出来るだろうけど…」
3主「よしならやってみろ」
4主「やだよ、ヤられるし」
3主「わーってるって。俺もそこんとこ男だから我慢するよ」
4主「男だから心配なんだが…モシャス!」

4主は女の姿に変身した!

3主「おおーっ!!スゲェ超可愛い!
美人で胸でかくて細身って正直タイプだわ」
女4「厨2の男が好きそうな2次元の美少女にピッタリ当て嵌まってる訳だな。
もういいだろ、元に戻るぞ」
3主「あっ、ちょ待っ」ゴンッ
女4「なんだよ何処触ってn」
3主「バランスが…わわっ倒れる!」グラッ
女4「俺巻き添え…きゃーっ!!」

ドンガラガッシャーン!!

3主「イタタタ…大丈夫か4主?」
女4「んぅ……ここは…?
貴方は…?」
3主「へ?」
女4「私のご主人様ですか?」

4主はそう言うと頬を赤らめながらふわりと柔らかな笑みを浮かべた。
どうやら家政夫という記憶とこの状況から記憶が混乱しているらしい。
どうするよ俺!?



続く?

845名無しの勇者:2011/07/14(木) 23:48:34
女体化は一言入れて欲しかった…

846名無しの勇者:2011/07/15(金) 13:50:31
名前欄にはそう書いてあるんだから避けようと思えば避けれたんじゃ?
個人的には続いて欲しい

847名無しの勇者:2011/07/15(金) 23:11:11
あ、名前欄にありましたね…失礼しました

848844続き 1/1 女体化ネタ注意:2011/07/21(木) 22:46:05
女4「3主様、お食事をご用意いたしました」
3主「ん。」
女4「では私は洗濯物を干してまいしますね」

にこっと明るい笑顔を残して去る彼女は4主がモシャスで美少女に変身した姿だ。
俺の趣味でこの前5主から分けて貰い、それを改造したエプロンを素裸の上に纏う、俗に言う裸エプロンとかいうやつをしてもらっている。
記憶が混乱して俺>4主という等式を刻み込んでしまったが、幸い今宿舎には俺達しかいない。
だがこの状況をいつまでもそのまんまにする訳にもいかない。(特に4女にばれるとヤバいし)

女4「〜♪」

しなやかな脚に形の良い尻、キュッと締まったウエストなのに丸く柔らかそうな胸は横から見ればその形が如何に美しいかよく分かる。
日に照らされる白い肌と風に揺られる度に見えるうなじに、俺の息子はバイキルト状態だった。

3主「!!(いかんいかん!)」

こんな格好をさせるんじゃ無かったと自分の行いを後悔した。
話を戻そう。
今すぐ4主を襲い××××したいのは事実だがこのままにする訳にもいかないんだ、うん!
4主のおっぱいに顔を埋めてクンカクンカしたいとか、股を開かせて×××をなめ回したいとかも考えるが、それより先に元に戻してやらないと。
だがどうすればいいのか…?
息子を宥めてPCを開いた。

3主「とりあえずYahooだな…」
女4「ご主人様?」
3主「なんだ?」
女4「その…ご主人様の、モノが…」
3主「あ…」

顔を紅潮させて俺のバイキルト状態の息子を指す4主。
その表情だけでグッとくるが、それと同時に見られたというショックを受けた。
この前自家発電中に2主が部屋に来た時依頼のショックだ。

3主「(やべー、すげぇ恥ずかしい)
あの…」
女4「私が、」
3主「はい?」
女4「私がご主人を…慰めさせて頂きます」
3主「えー!!!」

来た!?童貞卒業の時が遂に!?
今?今ですかwwえぇw神龍?
4主はPCを置くちゃぶ台の下に潜り込み俺の息子に震える指を添えた。

女4「すごくビクビクしてて…熱い…」

緊張の余りPCの画面しか見れないが、脱がされる時の布が皮膚を擦る感覚と、柔らかいものが固いそれに触れた途端、つい背筋をびくっと伸びてしまった。
上下に擦り徐々にリズムを付けて行くにつれ、粘着質の音がして恥ずかしい表情を4主に見られていないか、この心臓の鼓動が伝わっていないか等、とにかく集中できなかった。



続くかも?

84952ほのぼの1/4:2011/07/22(金) 21:05:16
2主「はー今日も疲れたぞー…ん?
   おーい5主!何やってるんだー?」
5主「やあ、お帰り2主。今ビニールプールを膨らませていた所だったんだ」シュコシュコ
2主「びにーるぷーる?」
5主「ビニールでできた小さなプールだよ
   あまりにも暑いから水浴びしたくなってね。2主も入るかい?」シュコシュコ
2主「おう入るぞ!大変そうだから手伝うんだぞ!」
5主「ふふっありがとう」ニッコリ
2主「おやすいごようだぞ!」シュコシュコシュコシュコシュコシュコ
5主「はやっ!もう終わっちゃった!?」
2主「えへへじゃあ準備してくるんだぞ!」ワクワク
5主「僕は皆を誘ってみようかな…一応ね」

85052ほのぼの2/4:2011/07/22(金) 21:09:25
5主「1主と3主は部屋で討論、4主と8主は台所でじゃれ愛
   6主と7主は一緒に海にお出掛け…結局僕達だけか」
2主「だれも来れなかったのはざんねんだな…」シュン
5主「よし!」
2主「?」
5主「せっかく2主が膨らませてくれたんだ。僕達だけでも楽しもう!」ニコ
2主「おう!楽しむぞー!!」ワクワク

〜キャッキャウフフ〜

5主「2主は色んな武器を使いこなすだけあって良い身体してるよね
   何か特別な鍛練とかしてるのかい?」ペタペタ
2主「毎朝すぶりして……」ビクッ
5主「ん?」サワサワ
2主「くすぐった…!……ッふ……あはははは!」バシャッ
5主「2主の弱点見つけた」クス
2主「あははっ!…うひゃっ…耳はぁ…こ、こうさんだぞー!……ひぁっ」バタバタ
5主「ふふ……さて、どうしようかなー…」サワサワ

85152ほのぼの3/4:2011/07/22(金) 21:13:23
1主「くぉらー!!!!そこまでっ!教育的指導メラ!!」ダダダダダ
3主「お、ビニールプールなのにすげーでかいな。ヒャッホー!」バチャバチャ
5主「ちぇっ残念、時間切れか」ヒョイ
2主「おー!ご先祖たちも来たのか!」ニコニコ
1主「大丈夫か!?まだ何もされてないか!?腰は痛くないか!?」
3主「おい流石に5主もそこまで鬼畜じゃ…」
1主「ご先祖は甘い!!相手はDQ界屈指のハーレム王だぞ!?
   うっかりしててうぶな2主が傷物にされたらどうするんだ!?」
3主「…ッ…そこまで子孫が可愛いんならお前が四六時中くっついて
   ガードしてやりゃいいだろバーカバーカカニ歩き!!!」

85252ほのぼの4/4:2011/07/22(金) 21:19:27
バタン!ダダダダダ

8主「ちょ、なにもそんなに怒らなくても!」
4主「うるせえ!最近おとなしいと思ってたら久しぶりにてめえは!!」
8主「何が気に入らないんですか!?生クリームですか!?それとも…」
4主「それ以上何か言ったら1週間お前のおやつは無いと思え!!」ギガソード!
6主「呼ばれて飛び出てお兄ちゃーん!!」バーン
7主「誰も呼んで無いから降りてきてよ!」
6主「俺の理想としては樹の上よりもランプの中から飛び出たい!」
7主「じゃあランプっぽい壺あげるから我慢してね
   ちょっと150年くらい出れないけど」
6主「それブオーンの壺じゃん!やだ5主に返してらっしゃい!!」

ワイワイギャーギャー!!

2主「みんな集まるとにぎやかだな!」ニコニコ
5主「ふふっそうだね。…後で皆でスイカ食べようか
   こんな事もあろうかと冷やしておいたから」
2主「おおっ!さすが5主だぞ!」5主「それほどでもないさ」
2主「それほどでもないのか」

「…2人きりも楽しかったな」

終わり

853名無しの勇者:2011/07/22(金) 21:33:10
ほのぼの(´∀`*)

854名無しの勇者:2011/07/23(土) 08:02:01
やだ可愛い!

…8主は生クリームを何に使ったのだ!?

855名無しの勇者:2011/07/25(月) 19:49:00
ありがとうございます。それは4主と8主だけの秘密なのです
決してプリンプry…なんてしていませんとも

8561/1:2011/08/18(木) 12:39:40

8主「もう我慢出来ません!」
4主「まだ駄目だやわらかくなってないだろう」
8主「もうグチョグチョじゃないですか!!
早く入れさせて下さい!!」
4主「まだ。
ほら、トロトロしてきて旨そうだろ?」
8主「だから我慢出来ないんですよっ!!」
4主「ったく、全く理性を抑制出来ないんだな。
でも俺が駄目と言ったら駄目だ」
8主「うぅ〜…せっかく固いのに…」

5主「(はっ!!なんだこの薔薇の花びらが舞うおピンクの空間は。
この様子だと4主が8主に焦らしプレイ?いやいや、これはいつもの調子の「実はぬかづけ作ってました」的な「実は〜だった」オチである可能性が高い。
うん、ここはスルーで…)」

4主「よし、もういいぞ」
8主「やったー!!もう待ちきれ…あっ」バシャッ
4主「熱っ!!……何しやがんだ。
顔に付いてベタベタするじゃねぇか」
8主「す、すみません…でもすごくおいしそう」ピチョ
4主「あっそれはやめろっ!!」

5主「(なーんてこったい!!まさかの予想妄想的中!!
801板とはいえこの状況をやすやすと見過ごすなんて天を仰ぎそそり立つパパの息子…5勇じゃないよ!が黙っていないぜ!!
DQ5主人公こと5主、いざ参る!!)」

5主「お二人さんで何楽しい事やってんだい?
パパもいれとくれー!!!」バンッ
4主「は?」
8主「あぁ丁度よかった5主さん。
ミートソーススパゲティーをつくったのに4主さんがこぼしちゃったので片付けを手伝って下さい」
4主「はぁ!?お前がこぼしたんだろうが!!
床に落ちた汚ぇもんまで食べようとする食い意地の悪さを先に治せ!」
8主「よして下さいよ、ケツが痒くなってきます」
4主「褒めてねぇ…って何処行くんだ5主?
5主ー?」





7主「どうしたの5主さん元気ないよ?」
5主「あぁ…僕そろそろこのノリから解放されたいよ」
7主「よくわかんないけど、とりあえずお水でも飲みなよ」
5主「あ、でも息子…5勇じゃ(ry)は元気だよ!!」
7主「やっぱり羊に飛ばされて下さい」


.

857名無しの勇者:2011/09/19(月) 12:02:58
皆さん文章ウマウマ。萌える

今読み返してたんだが、靭帯さんは完結しないのだろうか…
べ、別に私は応援してるとかいうわけじゃないけどッ!

858名無しの勇者:2011/09/20(火) 11:33:30
ログ読んでると続きをwktkしちゃうよね
でも今年災害が続いているから書き手さんたちの安否が心配
色々大変な方もいらっしゃるだろうから

作戦:気長に待とうぜ!

859名無しの勇者:2011/09/22(木) 21:38:04
>>858 応!!

860名無しの勇者:2011/10/10(月) 19:41:05
誰かおらんかね〜

861名無しの勇者:2011/10/10(月) 23:15:12
いるよー

862名無しの勇者:2011/10/11(火) 01:24:25
ここにもいるよー

863名無しの勇者:2011/10/12(水) 00:01:51
まだまだいるよw
静かに投下期待…

864名無しの勇者:2011/11/06(日) 01:22:10
まだまだおりますとも

865名無しの勇者:2011/11/09(水) 15:57:50
まだまだ!

866名無しの勇者:2011/11/23(水) 11:01:52
静かに投下キターイ

867名無しの勇者:2011/11/23(水) 11:24:12
待つだけじゃなく自分で書いてみるといいかもよー

868歴代衣装 13編 1/3:2011/11/24(木) 20:18:24
ぬるい上に84編が過去レスと微妙にネタ被りですが、久しぶりに9をやったら書きたくなったので投下。
13と84です。

3主?「ただいま帰りました!」
1主「ご先祖!?出かけてたのか!?月曜日でもないのに!?
  火水木金は世間の視線が冷たいから外に行かない、
  土日祝日はリア充とのエンカウント率が高いから外に行かない
  なんて言ってたじゃないか!!」
3主?「あ、いや……」
1主「とうとう一人で外に出る積極性を手に入れたか……子孫は嬉しい!!」

ガバッ

3主?「わっ!?ちょっと待って下さ、」
1主「なに今更照れてるんだか。今日は小さいなーFC版か?」
3主?「あの、違うんです、僕……」
1主「……昨日つけたはずの痕がない。まさか……」
9主「3主先輩の衣装を装備してますが、9主です」
1主「うっわごめん間違えた! 忘れてくれ!!」
パッ
9主「は、はい」
1主「でもお前、なんでこんなとこに?」
9主「こんなとこって……宿舎じゃないですか」
1主「いや、ここは宿舎であって宿舎じゃないんだ」
9主「???」
1主「とにかく頼む。早く本家に帰ってここのことは忘れてくれ」
9主「え、でも」

  クエスト111.11111(ry
  ローラ愛よ!無限に!

9主「はっ! これはクエスト!? ……グスッ」
1主「どうした9主!? なんでいきなり泣き出すんだ!?」
9主「あ、すいません。クエスト配信が止まって久しいので、新しいのを受けられるのが嬉しくてつい……」
1主「そういや一時期9女と『クエストがしたい』ってクエストを出し合ってたな」
9主「そして無限ループと化し1主先輩を泣かせてしまいました。あの時はすみませんでした」
1主「二度としないように。じゃあ、俺のクエスト受けてもらえるな?」

  宿舎(?)の1主から、この場所を忘れるように頼まれた。
  このクエストを受注しますか?

869歴代衣装 13編 2/3:2011/11/24(木) 20:19:30
9主「クエストのタイトルと内容に一切関係がないのが気になりますが……はい!」
1主「よしよしいい子だ。じゃあお礼に俺のグローブを……」
3主「9主。このブルーオーブやるよ」
1主「ご先祖!?いつの間に」
3主「お前が9主に抱きついてたあたりから」
1主「いや違うんだ誤解なんだご先祖チョットマツガエタダケデウワキナンカシマセンオレハゴセンゾヲアイシテマス」
9主「1主さんがカタカナで不思議なことを言っています。
  イシテマス? 僕の知らない呪文でしょうか。レミーラとかギラみたいな」
3主「ローラに言い訳してる時みたいになってんなw そもそも間違えんなって話だが」
1主「ご先祖がようやく外に出る気になったのかと思うと嬉しくて判断力が低下し……」
3主「それより9主、ほら」
1主「若干の皮肉を込めた渾身の言い訳がスルーされた!!」
9主「わぁ、ありがとうございます!」
1主「9主、お前もか!!」

  クエストをクリアしました!

  宿舎(?)の1主から、この場所を忘れるように頼まれた。
  1 2 の …… ポカン! ですべて忘れ、3主からブルーオーブをもらった。
  このクエストは何度でもループできるぞ。
9主「あれ、ここどこだろう? 宿舎に似てるけど……もしかしてダンジョン? 今度9女と探索に来ようかな」

870歴代衣装 13編 3/3:2011/11/24(木) 20:20:23
3主「……よし、とりあえず帰ったか。9主をここに染めるのは抵抗あるもんな」
1主「しかしいいのか、ブルーオーブなんて渡して」
3主「もう使わねーし。それにお前からのお下がりを9主がもらうとか気にくわん」
1主「ご先祖はかわいいな」
3主「そんなことねぇし」
1主「そんなことあるって」
3主「……なんで嬉しそうなんだよ?」
1主「妬いたのかなと思って」
3主「そんなことはある」
1主「そっちはあるのか……。変な所で素直だな」
3主「ローラ愛ねー」
1主「ぐっ……それもか」
3主「お前らなんだかんだいってラブラブだもんなー。いや別に構わないんだぜ?
  お前とローラ姫がくっつかないと2主たち消えちまうし。そのへんのことは分かってて付き合ってんだし。
  でもなー。こっちにいる時まで『ローラ愛』かー。へー」
1主「い、いやあれはローラの愛が無限ループなだけで プルルル
  ヒィ!! ごめんよローラアイシテルヨオレノローラヘノアイモムゲンダヨ!!」
そんなひどいそんなひどいそんなひどい
3主「…………。なぁローラ姫、1主のやつ、さっき9主に抱きついてたぞ」
1主「ふっ、甘いなご先祖。ローラ判定では男はノーカンだ」
3主「あれ? 9主? 9女? なにせ俺ってば、俺と9主が見分けられない男の先祖だからな。
  どっちの9主だったかわかんねぇや。9女かも?」
1主「ご先祖ォォォォ!!」
そんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどい
1主「違うんだよローラ、あれは男の方の9主だし、そもそもご先祖と間違えただけで」
3主「衣装だけで俺と9主を間違えるなんてそんなひどいそんなひどいそんなひどいそんなひどい」
1主「サラウンドはやめろ!!」
3主「そんなひど……むぐ」
チュ
3主「!?」
1主「とにかく誤解だから、うん分かった、それじゃあ今会いに行きます!」
ピッ
1主「はあ……なんとか乗り切ったな。ん、どうしたんだご先祖。顔を赤くして」
3主「に……ニヤニヤしながら言ってんじゃねー!! なんで黙らせる方法がキスなんだ!!」
1主「基本だろ」
3主「しかもこのままローラのとこ行くんだろ!? ほんっと信じらんねえこのスケコマシ!!」
1主「古いなw てか何、もしかして今ので感じた?」
3主「うるせー呪われろ!!」
1主「そんなに俺にローラの所に行ってほしくないと。ご先祖はかわいいなー。
  心配しなくても、ご先祖への愛も無限だよ。なんとかして今日中に帰ってくるから機嫌直してくれって」
3主「……知らん」
1主「こんやもおたのしみしような」
3主「……………勝手にしろ!!」

871歴代衣装 84編 1/3:2011/11/24(木) 20:22:04
4主「……ということがあったと3主から聞いたんだが」
8主「きのうはおたのしみでしたね。要はのろけられただけじゃないですか」
4主「ま、それはお互いさまだしな」
8主「えっ、ちょっ、4主さん僕のこと3主さんにのろけたりしてるんですか!? うわー聞きたいなぁ!!」
4主「いや俺の場合愚痴しかない」
8主「orz」
4主「にしても、羨ましいよな歴代衣装」
8主「そうですねー」
4主「アイテム収集の名目で何回でもピサロをヌッコロせるんだもんな」
8主「そっちですか……」
4主「お前は違うのか?」
8主「あ、いや、そうですね。確かに魔王を何度も倒せるってのは気分いいですよね。
  別に4主さんの衣装手に入れてスーハーしたいなんて考えてません。暗黒神にかけてホントです」
4主「ラプソーンに誓う気かお前は」
8主「えぇ、だから嘘です」
4主「おいこら」
8主「思うだけなら自由じゃないですか!」
4主「口に出してるじゃねぇか!」

872歴代衣装 84編 2/3:2011/11/24(木) 20:22:54
8主「っていうかどうせならコスプレ衣装じゃなくて本物をもらいますよ」
4主「……ドルマゲスが天空の服とズボンを落とす訳をなんとなく把握した」
8主「何言ってるんですか! あんな水陸両用ピエロなんかに、僕が4主さんの服を渡すわけないでしょう!」
4主「自分で振っといてなんだが、お前が俺の服を手に入れることは確定なのか?」
8主「4主さんのタンスから盗った分は全部ちゃんと僕の部屋に保存してあります!!」
4主「よし分かった表に出ろ、むしろ牢屋に入ってこい!!」
8主「そんなひどい」
4主「なにが『思うだけなら自由』だ! 口に出すどころか実行済みとはな」
8主「僕はドラクエの主人公なので人のタンスを漁っても罪にはならないんです」
4主「俺はドラクエ4の主人公だから仲間を投獄しても許されるんだよ」
8主「……DS版のはずの4主さんの笑顔がFC版のように怖いので、謹んで処分を受けることにしようと思います」
4主「素直でよろしい」
8主「でもどこの牢屋に行けばいいんでしょう。こんな下らない理由で使わせてくれる牢屋があるとは思えませんけど」
4主「確かに。……っていうか自分で言うなよ」
8主「まあ僕はとっくに4主さんの愛の虜ですけどね」
4主「寒い。いろんな意味で」
8主「じゃあ人肌で暖めあいましょうか!」
4主「お前は5主か!!」
8主「4主さんが相手なら5主さんをも越えてみせますよ ドヤァ」
4主「いやいらん。重婚したいとか言い出されたらイヤだ」
8主「…………痛恨のいちげき! 僕は心に848のときめきを受けた!
  唐突なデレは卑怯だと思います。びわー」
バタッ
8主「…………」
4主「……おいこら。倒れ込んだ振りして匂いを嗅ぐな」
8主「スーハースーハー」
4主「へんじがない ただのしかばねにしてしまおう」
8主「待って待って生き返ります! だからギガソードはやめてください」
4主「ったく」
8主「ふふ、やっぱり本物の4主さんが一番ですね」
ギュー
4主「はぁ……。今までの話の流れがなきゃ心に484ぐらいのときめきを受けてるところなんだけどな」

873歴代衣装 84編 3/3:2011/11/24(木) 20:23:51
3主「……ということがあったと4主から聞」
1主「無限ループダメ、ゼッタイ!」

874歴代衣装 おまけ:2011/11/24(木) 20:26:31
ネタ的に帰ってもらいましたが、別に9主の参戦を否定する気はありません。
むしろありだと思います、292とか。

2主「なぁなぁ9主、おれ、9主のことすきだぞ!!」
9主「ありがとうございます、ぼくも2主さんのこと大好きです!」
2主「そっか、じゃあおれたちはりょう思いなんだな!」
9主「そうですね、嬉しいです!」

1主「……何だろう、2主と9主が穢れないままなのは喜ばしいはずなのに妙にツッコミをいれたい気持ちが湧いてくる」
5主「ならここで僕が二人にツッコんで入れ ぬわー!」
1主「ベギラマ」

875名無しの勇者:2011/11/25(金) 23:02:28
>>868-874 うわあ…!久々の投稿ktkr

>>4主「へんじがない ただのしかばねにしてしまおう」
8主「待って待って生き返ります! だからギガソードはやめてください」

ここに笑いましたww

876名無しの勇者:2011/11/26(土) 22:07:31
GJと言いたい所だけど蛇足イラネだな。
余り者同士でカップリングとか、せんでええよ。
そんなフォローいらないから。
個人サイトでもないのに作者の言い訳付け足されると萎えるわー
次回は黙ってネタだけを投稿してね。

877名無しの勇者:2011/11/28(月) 13:21:16
ありがたやありがたや!
久しぶりの投稿面白かった!

>>876
すごいなあんた…何様なんだ…

878名無しの勇者:2011/12/17(土) 23:12:58
221 :嫌い :2011/12/17(土) 22:42:19.15 ID:tO+977TI0
竜探求の主雑設定のCP全般

長らく親しんで来ただけにツイッターなどで雪崩れ込んで来た腐女子らに吐き気
職人さんらが築き上げて来た主達のキャラをそういう目で見られる事が耐えがたい
つうか特殊なジャンルなんだから鍵も掛けず堂々と腐萌えしてんじゃねえよ

879名無しの勇者:2011/12/18(日) 13:38:00
ドラゴンクオーターか

880Lin:2012/01/02(月) 15:22:27
無事に年明けましたね。
年明け早々ですが、いきなり濃いものを投下します
・3×8or3→8
・3主がどS
・被害者な8主
・監禁凌辱系
・濃いめの性描写
以上が駄目な方はどうぞ閲覧をお控えください
よろしい方はどうぞ

881遊び 38 1/4:2012/01/02(月) 15:30:40
「珍しいですね、3主さんが僕をわざわざ部屋に呼ぶなんて」
「んー?ああ、まあ……ちょっとな」
僕と3主さんっていうのは、何ともいえない微妙な間柄だ。弄りやすい人ってわけではないし、宿舎の中でも一緒に過ごす時間が少ない(3主さんがパソコンやって自室に引きこもっている)ため、格別に仲が良いというわけでもないからだ。まあ部屋はプライベートな空間だから他人を呼ぶ呼ばないなんて個人の自由ではあるのだが、彼のことをご先祖、と呼び慕っている1主さんでさえ部屋に呼ぶなんてことはあまり無いのでは、と過去を思い出してみる
そんな3主さんの部屋をぐるりと見渡すと、ベッドと電子機器があるくらいで、あとはほとんど何もない。ただし僕の部屋よりはよっぽど片付いているが

はてさて、用事がある、と言われて来たのだがなんの用事だろうか。用件を聞こうと彼の方を振り返る。しかしそこには彼の姿は無かった
「3主さん?」

「用事ってのは、かなり頼みにくいことなんだが」
どさっという、物が床に落下したような音がした
3主が剣を鞘にいれたまま、水平に構えたポーズで止まっている。そしてその足元には、首筋に打撃を加えられてうつ伏せに倒れた8主がいた
「……ごめんな。少しだけ、遊びに付き合ってくれ」
薄れゆく意識の中で3主の声が響く
8主は無理矢理声を絞り出した。バンダナ越しに頭に彼の手の感触があって、剣の鋭い打撃とそれの差異にどうも違和感を拭えなかったのだ
「あ、そび……?」
「まだ意識があったのか。そう、お遊びだ」
それはどんな?
それが一番大事だというのに、そう聞く前に、自分の瞼はついに閉じられてしまった

882遊び 38 2/4:2012/01/02(月) 15:33:52
「本当にやっちまったな」

こうも容易く引っ掛かるとは。しかしそれは相手が無防備なのではなく自分が異常なのだろうことは火を見るより明らかだ。そして自分はそれを重々理解している。理解しながらも自分の手は、自室のドアの鍵を閉めに延びた。かちゃりとロックされた音がする
3主は自嘲の意味を込め頭をわしわしと掻いたあと、気絶して床で寝ている8主を見やる。冒険者のわりには特に筋肉が付いているようには見えない、少年のような肢体。着痩せしているのかどうか、と3主は考えを巡らせた
「まあいいや。どうせ……」
ひとりごちながら彼は8主の腕を掴むと身体を引き上げ、肩に背負う。ずしりとした重みがかかるが、彼はなんてことは無いかのように歩く
そして自らの寝台の上に彼を仰向けに横たわらせた。ぎしりと軋む音がなんだか生々しい
「直ぐにわかることだしな」
そう言うと彼はパソコンを置いているテーブルの近くにある宅配物の箱から、何やら拘束具を取り出した
それをベッドサイドに引っ掛けて固定してから、反対側を8主の左手首に掛け、繋ぐ。右手首も同様にした
あとは邪魔になるだろうと思い、彼のバンダナと、服を留めているベルトを外して、胸元の紐を弛める。また、蹴られては敵わないとブーツを脱がした
バンダナとベルトは邪魔になりそうだと思い、機械的にベッドのすぐ下に放り投げた
その作業を終えてもなお、彼はなんてことはない健やかな顔で眠っている
3主はそろそろ起こしてやろうかと思い、彼の半分開いたままの唇に、自ら口付けをした

883遊び 38 3/4:2012/01/02(月) 15:40:37
息が、苦しい
そしていつもより頭と腹が、若干すかすかする気がする
「う……んん」
口が、呼吸できないように塞がれているのか。いや、これは……何かが暴れている?
感覚が戻ってくると、8主はばっと目を開いた
目の前に陰が出来ていて顔は断定できないが、誰かが自分の口内を貪っているのはわかる
8主は相手を突き離そうと、腕に力をいれた。しかし、それは何か固いものによって阻まれる
「ん!ん、んーー!!」
唯一動く両足で、自分の上にのし掛かる存在の腹の辺りを締め付けると、ようやく気付いたようにその相手はこちらから唇を離した
「お目覚めか、8主」
顔を見て驚愕したと同時に先程の出来事を思いだし、彼は不愉快さを隠さずに3主に食って掛かった
「遊びってなんのことです。それと、何で僕が固定されてるんですか」
「手錠がお気に召さないか?」
「手錠!僕にそんなもの付けて楽しいですか?」
「質問ばかりだな、お前。動揺してるのか」
「当たり前じゃないですか。遊びに手錠って、リアル警泥でもする気ですか」
「俺のいた世界では泥警って言うぜ」
「……それはどうでもいいですよ」
「冷たいな。4主とはあんなに仲が良いのに」
「へ?……うあ、」
チュニックの裾から冷たい手がするりと、肌の上を這い上がってくる。寒気を感じ小さく身震いをした8主の胸の飾りにその手は到達した。やわやわとこちらに触れてくる行為に、彼は怪訝そうな目を3主に向ける
「あのー、一応言っときますけど僕は男ですよ?そんなとこで感じるわけが無いじゃないですか」
「遊びの意味、理解できたか」
「そりゃあここまでされちゃえば嫌でもわかります」
8主の口調は至って強気なうえ、いまだ諦めずに腕をガシャガシャと動かしている
気力は充分なようだーー
3主はそう思うと、暗く笑った

884遊び 38 4/?:2012/01/02(月) 15:51:12
「感じない、か」
飾りをぎゅっと、それなりに力を入れて強めにつまんだ
「いっ!」
8主の背がびくんとしなる
「なに、8主って痛みが良かったりするのか?」
「痛くて捻り潰されるかと思ったんです!」
「ふーん……」
青いチュニックをたくしあげれば、痛みのせいでか存在を主張しだした赤い飾りが目に入った
それを唇で挟むと、8主の胸に鳥肌がたったのがわかった
しかし止めずに、それを舐めて吸って歯を立てたりした
「これの何が楽しいんですか」
しかしまったく表情を変えない8主が、半ばうんざりしたような声音を出す。まあいきなりよがらせるのは無理だな、と3主は胸のうちで呟くと、身体を起こし、ズボンの前を寛げて、膝だちになり8主に告げた
「口開けて」
「……は?」
流石の彼もぽかんとしたような表情をしている。言われたことが理解できないといった表情。彼が知らないことを教え込もうとしているのだと思うと、知らずに背筋がぞくぞくした
ぐいっとその前髪を掴み、その反動で開いた口に、硬度を増した自身をいれて、あとはもう噛みきられないうちに自分で動かす。ほどよく熱くて、溶けてしまいそうな感じがした
8主の口から漏れ聞こえる苦し気な声とか、顔とか、見てるだけでも中々やばかったが

終わりは唐突だった
「ーー!!」
頬から鎖骨にかけて熱い液体をかけられた感覚があり、目を見開く。同性に掛けられただなんて、屈辱もいいところだ
「えろい格好だな、8主」
しかし、上から暗い笑みを浮かべてこちらを見下げる3主さんに、悪態をつくのは憚られた
「所有印みたいだ、これ」
こちらの頬を指でなぞる彼は、どこか恍惚としたような表情を浮かべている。それには思わずぞっとしてしまった
「所有印……」
「そ。お前はその手錠を外せない限りはここから出られない」
3主さんは寝台から降りると、こちらと自分の衣服をご丁寧にも整え、此処から出ていこうとした
「ちょっと、ふざけてないで外してくださいよ!」
「ああ、そうだ」
ドアに手を掛けた所で、彼の動きがぴたりと止み、顔だけがこちらを向く
「今さらだけど、パソコン使う時の音が五月蝿いってずっと注意されてたんだよ。でも音消すの嫌だったから、この部屋、防音にしたんだ」
「はあ!?いつの間にそんな改築してたんですか」
「いつだろうな。まあとにかく、どんだけ騒いでも音漏れはしないから」
「……」
そんな音をうるさいというような繊細な神経の持ち主が宿舎にいるかどうかはさておき。

「また夜に“遊ぼう”な」
ドアは静かにぱたんと閉められた。部屋には一人、監禁されている青年を残して

885Lin:2012/01/02(月) 16:02:43
半端で申し訳ありませんが、いったんここで切らせていただきます。
続きの更新は近々やります

886名無しの勇者:2012/01/03(火) 10:46:26
あけおめ!
投下おつです!38!うっひょい!
続き楽しみにしてます!!
地の文の視点がばらばらなのがちょっと気になりました…

887Lin:2012/01/07(土) 09:40:44
38 遊びの続きです

38、監禁凌辱もの
3主→どS+狂いかけ
8主→哀れな被害者
以上が駄目な方、スルーお願いします
痛い内容ですが、苦情は勘弁してください…

>>886
38わっひょい!コールありがとうございます(*´∀`)
ご指摘もありがとうございます、言われるまで気づかなんだ…;今回もころころ視点は変わりますが、自分なりに訂正はしたつもりです…。読んで萌えていただけると嬉しいです

88838 遊び 5:2012/01/07(土) 09:44:40
side:8主

ガチャガチャ、という音ばかりが響く。もしかしたら手錠から抜けられるかもしれないと努力をしているのだが、取れないのだ。何か特殊な素材を使用した手錠なのかもしれないと思う。それをどうして3主さんが持っていたかは謎だが
「……ネットで買ったんですかね」
カーテンで半分ほど閉まっている窓を見ると、早いことに外は橙色から紫に変わりかけの色に染まり、少しずつ夜の闇が忍び寄っているのがわかる
「また夜に遊ぼうな、だなんて冗談じゃないです」
今度は一体何をされるのやらーー考えただけで背筋が凍る
だから再び手錠を揺し始めた

「よお、8主」
暫くして、ドアの開閉音とともに自分を呼ぶ声がした。続いてカギが締められ電気が付けられる音。部屋に入ってきたのはもちろん3主さんで、トレイの上に、まだ湯気の出ている食事を僕に持ってきた
それはいつも食べているものと変わりないメニューで、箸まで投げて寄越される
「これ、4主さんが作ったものですか?」
「ああ、俺の分だから遠慮すんな。好き嫌いするなよ」
どこから取り出したのかは分からないが、手錠の鍵を使って右手だけそれが外される
手首を見ると赤く擦れ、痣のようになっていて、自分でいうのも何だが痛々しかった
「……万年ラーメン好きのあなたには好き嫌いとか言われたくありません」
「そっか」
くすりと笑った気配がしてそちらを見ると、今日の昼とは違う、いつも通りの3主さんがそこにいて、どこからか調達してきたのだろう、湯を注いだカップラーメンをもってパソコンの前に座っていた
ーー自分の左手首に掛かる手錠と、今目の前にいる、この普段通りの3主さんの、どちらが現実なのか、一瞬分からなくなる
そのまま、もそもそと箸を進めるも、結局トレイにのせられた食事の半分も喉を通らなかった
「ちゃんと食べろよ」
わざわざ持ってきたのに、という顔をした3主さんはかなり不満ありげにこちらを見ている
「こんな状況で、食欲なんてありませんよ」
「じゃあもう食べないのか?」
答えるかわりに、トレイを近くにあった机の上に押しやる。食べ物を残すなんてことはしたくないが、本当に食欲が湧かない
「食べといた方がいいと思うけどな……後のためにも」
呟きと同時にパソコンをシャットダウンした音が聞こえて、どうしたものかと気になった。顔をあげると、途端に照明のスイッチの音が聞こえて、部屋の中が真っ暗になった

88938 遊び 6:2012/01/07(土) 09:49:11
急に暗くなった部屋を見て、いつの間にか本格的な夜が訪れていたことに気付いた。その暗闇に目を慣らしている間に、ぐいっと右手が強い力で引っ張られ、体勢が崩れて寝台に背中からダイブする。右手が引っ張られ、再びベッドサイドに繋がれたのが音でわかった
(もしかしたら今のが脱出のチャンスだったのかも……)
ぼーっとしていた自分の間抜けさに思わず小さく笑う

「余裕だな」
少しむっとしたような3主さんの声が頭上から聞こえた
「あ、ちょっと」
下腹部への唐突な刺激に身体は愚かしいほど素直なもので、即座に背筋にぞわぞわとしたものが走る
3主さんの手がこちらの腰にかかった。と思いきや、素早くズボンを下ろされる
「い、いきなり……」
「まあな」
温い吐息が下腹部にかかるのがわかって息を詰めると、ぱくりと銜えられた。その確かな熱が触覚を犯し、下腹部から聞こえる水音が聴覚を犯す
「うあ……やだ、やだ、嫌ですってば!」
その音を消すように8主は叫ぶ。素直に熱を帯びる身体がなんとも恨めしい
何かが込み上げ、背中をそらせて手のひらに爪を立てて耐える
しかし、次に先端を刺激されたら、もう耐えることなど出来なかった。
目の前がくらくらとし、沸き上がった熱が覚めていく
そしてその全てが収まった頃に唇が離れていった感触があった
「の、飲んだんですか?」
「ああ、うん」
至極当たり前のように返答され、一瞬目眩を覚えた。しかし息を整える間もなしに、胸の飾りを再び探りあてられる。きゅっと摘ままれた時に、ピリッとした痛痒いようなものが走る
どうやら達したあとの敏感な身体はその刺激さえ快いものにすり替えたらしい。まったく、厄介だ
「さ、触らないでください……!」
「んー?昼の余裕はどうしたんだよ」
自分の上にのし掛かる相手は、呑気にそんなことを比較している。対して僕は与えられる刺激にひたすら耐えている。そんな最中、不意に3主さんが理解不能な言葉を呟いた
「でもあんまり虐めすぎると、さすがの8主でも体力がもたなくなっちゃうかな」
体力がもたない?何の話をしているのかはさっぱりだが、なんとなく嫌な予感はした
まあこののち、その予感は見事に当たってしまうわけだが。

89038 遊び 7:2012/01/07(土) 09:57:57
side:3主

手首には手錠が擦れて赤い痕がつき、胸は苦しげに上下している。窓から仄かに漏れる月明かりがそんな彼の姿をうっすらと照らし出す。その姿に思わず目を細めた
「そう、まだ続きがある」
「本当に止めてください。もう僕若くないんで」
「なんだその変な逃げ口上は。まだ元気だろうよ」
「うぁっ!嫌なもんは嫌なんです、急にこんなの、あんまりじゃないですか!」
ぐりっと膝で刺激を加えると、8主の口からはそんな言葉が溢れ出した。俺は行為の手を一旦止めて、押し黙る
暗闇でもわかるほど8主は黙ってこちらを凝視している。見られていると話しづらいんだが、まあいいか
「……自分でもよく分かってるつもりなんだ。嫌々言われると泣かせたくなるって」
「筋金入りのサドですね」
「多分そうだな」
「僕はマゾではありません。よって放してください」
「嫌だ」
「宿舎にいる仲間じゃないですか。一生のお願いです」
「これでもだいぶ迷ったんだよ。でもこういう結果になった」
「性別は越えられちゃう壁なんですか」
「越えてみないとわからないだろ、そんなの」
……エンドレス。
ああもうキリがない。そろそろ黙らせようか、と思い8主の両足を持ち上げる。さて、初めてやることだらけだが上手くいくかどうか。あまり自信はないが、まぁなるようになるだろう
8主は急なその格好に抵抗するのを忘れ、茫然とこちらの様子をうかがっているようだった。まあ、あちらからしたら、自分の両足の間に俺がいるのだから、そういう反応が妥当だとは思う
「俺、いい加減限界なんだ」
「え、え、あの、無理です!」
何が始まるかは分からずとも、彼なりに危機感は感じとったのだろう。8主はここでようやく腰を離そうと激しく身をよじり、脚をばたつかせ始めた。そんな彼を見てくすくすと笑ってしまう。もちろん脚を離す気などさらさらない
「……悪いけど、もう遅い」
のこのこと俺の部屋にやって来た時点で、既に。
そう呟き、8主の後ろに宛がった自らのそれを、中に押し進め始める。そのきつさに慣らすのを忘れていたことに気付くが、もう止められない
「あぐっ!」
受け入れている側である8主は、その痛みに悲鳴じみた声をあげた。だが、この感覚は凄い
3主は身体を繋げたまま、8主の顔を覗き込んだ
その目をぎゅっと閉じた顔には、先程まであった余裕や強気な態度なんてものはもう欠片もない。今その顔に浮かぶのは、俺から与えられている苦痛だけだ
「わかってないと思うから言うけど、その顔、やばい」
ずん、と思いきり穿ったせいか、その痛みに思いきり背をそらせる8主は(あくまで俺から見たらだが)なんとも扇情的だ
「ひっ……」
彼が鋭く息を呑む。おそらく奥まで入ったからだろう。信じられないことに全部収まった。接合部からは血が流れているため、相当8主の身体に負担がかかっていそうだが。
うん、やはりこういう行為に臨む際は潤滑剤を使わねばと密かに決めた
まあ次があるかどうかは別として、だが。

89138 遊び 8:2012/01/07(土) 10:08:39
side:8主

遊び、の名の通り、人形のように好き勝手にがくがくと揺すられている。自分のなかで熱い何かが蠢く音がする。とにかく酷く痛くて苦しい
しかし思いに反し、律動は徐々に速さを増す
こちらからうっすらと見える3主さんの顔は楽しそうに笑んでいて、見なければよかったと後悔させられるような表情だった
それから幾ばくかもしないうちに、体内に熱いものが注がれて、何かが中で脈打ってるのまで伝わる
「うーん。やっぱ痛かったか、今のだと」
何ですかその緩い感じは。心も身体も痛いなんてもんじゃ済みませんよ……。
それらすべては声には出ずに、瞼がどんどん重くなる
頬を優しく撫でられ、何かを拭われるような感触があった。いやにスースーすると思っていたけど、自分でも気づかないうちに泣いてたのか

「ごめんな」
うっすらと3主さんの声が聞こえた。謝るくらいなら最初からしなければいいじゃないですか。そんな悪態をつく間もなく、僕の視界は黒く塗りつぶされた


×××××××


眩しくて目を醒ますと、朝になっていた
辺りを見渡しても3主さんはいない。そろそろと上体を起こすと案の定下半身が半端なくずきずきして、顔をしかめる
「あれ……」
腕が自由に動くことに驚く。手錠が外されているのだ。手首の、擦れて鬱血した痕も消され、衣服も身体も身綺麗にされている
「うわ、酷い声だ」
散々泣いたり喘いだりしたせいで、声はすっかり掠れている。まったく、あんな鬼畜な人が勇者の元祖だなんて、世も末だ
心中で毒づいてみる
ただ、疑問に思うこともいくらかあった。
どうせ手酷くするなら、最後まで手酷くすればいいのに、それなのに後片付けとかは必ずやっていって、何か妙に謝られたりなんなりしてーーああもう、結局相手が何をしたかったのか、さっぱりわからなくて頭が混乱する
「……訳わかんないですよ。なんなんですか」
そういえば、まだ聞いていないことがある。なんで僕にこんなことをしたのかーー
置かれているブーツを履き、ベルトを閉めバンダナを頭の後ろで結ぶ。立ち上がると足は若干ふらついたが、なんとか踏ん張って歩き出し、3主さんの部屋を出て、リビングへ行った

「8主先輩!」
そこには9主くんがいた。いや、彼だけでなく皆さん勢揃いだった。なんとまあ賑やかな
「どうかしたんですか?眼が腫れていますよ」
そう聞かれて気付く。そんなにも泣いたのか……いや、正確には泣かされたのか、だが。
「大丈夫、ちょっと寝不足なだけですから」
「随分ひどい声だね。それと、急にいなくなったから驚いたよ。あっちの世界にでも帰ってたのかい?」
「……ええ、まあ。そんなところです」
「そうだな。一緒に遊ぶぞって言ってたのに、俺のことなんかほったらかして行っちまうんだから」
声のした方を見ると、2主さんと一緒にいる3主さんが何もなかったかのようにこちらに話し掛けてきた
「ああ、そうでしたね。すみません」
腕が震えそうになるのを必死で抑えた
「じゃあ、また今度な」
「僕出来ない約束はしない主義なんですよ」
「なんだよ、冷たい」
「だからーー」
どすどすと歩いて3主さんに近付き、その腕をがしりと掴み、立ち上がらせる
「今、遊びましょう」
そう言って自分なりには精一杯の笑顔をつくり、腕を引っ張る
「え、あの、8主?」
「確か3主さんの部屋でゲームする予定でしたよね!?」
そう言って有無を言わせずに、再び部屋まで連れて行った
……聞くべきことがあると思っていたから。

89238 遊び 9:2012/01/07(土) 10:34:11
「……」
3主さんの部屋のドアを後ろ手に閉める
僕の前には3主さんが、わけがわからないといった表情をしてこちらを見ている
「僕、これでも怒ってるんです」
「ああ」
「ああ、じゃありません。返事は?」
「……はい」
その時の僕の顔は、自分では見られはしないが3主さんの反応からして恐ろしい形相をしていたのではないかと思った
少しばかり胸のうちがすかっとしたとしたところで、本題に入ることにした
「なんで僕にあんなことをしたんですか」
「……」
「黙ってたって分からないじゃないですか」
「ごめん」
「昨日から謝ってばかりですね」
「聞こえてたのか?」
「ええ。伝説の勇者様が随分情けない声を出すものだなあと」
3主さんは下を向いてしまった。その様子は酷く頼りなげで、とても昨日と同一人物だとは思えない
「聞くまでは、梃子でも動きませんよ」
「……」
しかし彼は押し黙ったままだ
あれ、なんかまずい。目頭が熱くなってきて慌てる
「何か、僕が3主さんの気に食わないことでもしたんですか」
ぐっと奥歯を噛み締めた。そうじゃないと声が震えそうだったから。3主さんはというと、こちらを唖然と見つめている
「僕が嫌いだから、あんなことをしたんですか」
仲間だと思っていたから。男に無理矢理されてショックだったから。多分その両方が、僕を泣かせている要因だ

「……違う」
こちらの頬に手が当てられ、また涙を拭われる。なんだか、いつもこちらばかり泣いている気がして癪に触る
「その逆だ。嫌いな奴になんてあんなことはしない」
はあ、と息をつかれ、両肩に重みを感じた。3主さんが、両腕を乗せてこちらに寄りかかっている。お互いの睫毛が見えるくらいの距離感で、俯いてなんとも情けない顔をしている彼がいた
「言っときますけど、僕はまだ許せませんから」
「わかってる」
「でも許せるように努力はします」
「え……」
ぱっとその顔が上がる。本当に昨日とは別人みたいだと思って、小さく笑ってしまった
まだ僕は3主さんを見て笑える。なら、きっと大丈夫だろう。いつか昨日の出来事を忘れられる日が来るに違いないーーそう思った


「なあ8主。こんな状況で言うのも何だが、聞いていいか」
「なんですか」
「ーーなんでこの部屋に戻って来たんだ?」
「……あの、ちょっと」
そこで、しがみつかれている肩が痛いことに気付いた。3主さんの力が異様に強いのだ。引き剥がそうとはするが、それも出来ない
「可哀想だと思ってせっかく解放してやったのに、本当に無防備だな」
3主さんの顔は、先程までの情けない表情から、能面のような無表情に変わっていた。思わず気圧されてドアにもたれ掛かる。まずい、非常にまずい。これじゃあまた、同じ結果になる。知ってはいるけれど、情けないことに手足が固まったように動かない
「今度は自分から誘ってきたんだから、もっと酷くしてもいいってこと?」
「何言ってるんですか」
「そんなに怯えられると、肯定としかとれないけど」
「違う!僕はただ、戻りたかっただけなんですよ!」
何もなかった頃みたいに。
べろ、と首筋を舐められて悲鳴をあげながらもそう言った
「……馬鹿だな、8主は」
しかしその願いは、笑いながら弾かれた
「ここまで来たら、もう無理に決まってるだろ」
そう言われ無遠慮に服の中に手が入ってくる。なんて冷たい手なんだろうーー感じるより前にそう思った
「3主さんなんて、大嫌いだ」
いつの間にか俯いていた僕の頤に冷たい指がかかる
「それでいい」
「最低ですよ」
「知ってる」
口内から水音がして、そこで舌が絡められているのだとようやく気付く。熱くなる身体とは逆に心は冷えて底に沈んでいくのがよくわかった。膝が震える。足を引っかけられるとあっさりと転び、床に叩きつけられた
なんでそんなに楽しげな様子で笑うんだろう。強敵と戦うような経験をしても、ここまで身がすくむような恐怖は感じたことがなかった
しかしそれとは対照的に、こちらを見下ろしているその目はあまりにも暗くて、底の知れない沼のような色をしている
「こっちに来るな」
「無理だな」
「やだ!嫌だっ!誰か……」
すぐ近くにはドアがあるのに、届かない。あと少しでノブに手が届くのに……!
敬語さえ忘れて半狂乱になる
しかし伸ばした腕は掴まれた
彼が目の前にいる。起こしていた上体が倒される。顔が近づく

「自業自得だな、8主。これから俺とずーっと遊ぶんだから、少しくらいは楽しそうにしてくれよ?」
その言葉は、僕の耳には死刑宣告みたいに聞こえた

89338 遊び 10:2012/01/07(土) 10:46:38
side:3主

「最近、8主くんのこと見てないなあ」

7主が不意に一人ごちる。その場にいた4、5、6主もその話に乗り始めた
「7主もか?俺もだいぶ会ってないんだよな」
「俺も見てねーな。まあ静かになって嬉しいが」
「とか言って実は4主が一番寂しがってたり……なんてね」
「ギガソー」
「うわ、ちょっと待って!」
「ド」
「ぬわーーーーーー!」
「……。でも、正直心配だよね。もう1ヶ月くらい会ってないし」
「そうだな。無断で1ヶ月も宿舎抜けるような奴じゃないから、尚更な」
何言ってるんだよ、凄く近くにいるじゃないか、とは俺は言わない。椅子から立ち上がり、部屋へ向かおうと歩き出す
「もう行くのかい?」
早々に復活したらしい5主が、こちらに聞いてくる。俺はそれに微笑んで返した
「パソコンやろうと思ってな」
まあ本当はパソコンよりもっと楽しいことをするんだけど。それに4主があきれた顔をしてこちらを見てくる
「お前は……。まあいいや、夕飯には降りてこいよ」
「ああ」
相変わらずのオカンっぷりだ、とは言わなかった。言っていざこざになったら、大事な“遊び”の時間が減ってしまうだろうから

「あいつ、何かあったのかな」
3主が部屋に行ったことを確認してから、不意に6主がそう言った
「は?どうしてだよ」
4主が怪訝そうな声で6主に聞き返す。それに6主は頭を掻きながら言った
「よくは分からないんだけど、なんかこう……影ができたっていうか」
「なんだそりゃ」
気のせいだろうけどな、と6主は肩をすくめた


×××××××××

もう喘ぐ元気もないのだろう。代わりに、何かが振動するような低い音ばかりが部屋に響いていた
1ヶ月間、後ろにバイブを突っ込んでいれば自然といい所も見つかり、艶めいた声があがるようになった。
その瞳だけが気だるげに動いて、こちらのことを自分を閉じ込めた当人だと認識する
「これ……止めて……」
「いやだ」
そう言って白濁にまみれた彼の腹を指でついと撫でると、それだけでも彼は身体を震わせ、ぎゅっと目を閉じた
「3主さん……、もう嫌だ……」
あれから1ヶ月経ってもまだ否定し続ける気力のある彼は、なんというか、流石だと思う
「8主から遊ぼうって誘ったのにか?」
「……違う、」
「違わない」
「嘘だ」
「じゃあなんでこんなに気持ち良さそうなんだよ」
白濁のついた指を見せつけて、また1つ何かが壊されたような8主の表情を見る
ああ、そそられる
「……僕が、誘った?」
「そう。忘れたのか」
またそんな、虚ろな瞳で泣きそうな顔をして。
「好きだよ、8主」
もうそう言ったって、どうせ相手に伝わりはしないのだろうが。最初は罪悪感もあった。けれど今は暗い喜びの方が大きくて、そんなものはいつの間にか霞んでしまった。だからこの遊びはまだまだ終わらせる気はない。
「だから、もっと泣いて」
そう言って俺は、さながら壊れかけの玩具のようになった8主の、腫れた瞼にキスをした

××××××××

894Lin:2012/01/07(土) 10:48:28
以上で投下終了です
お目汚し失礼しました
指摘される点が沢山あると思うので、そっと教えていただけると有り難いです

895投稿小説リスト:2012/03/17(土) 18:40:33
>>4-10 :61 / >>13-14 :84 / >>20-23 :84fromDQFFサロン
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>>186-193 【Ligament】[10] / >>376-379 :【Ligament】[11] / 未完

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>>80 :5小ネタ / >>92 :131小ネタ
>>125 :5勇→4ほのぼの[1] / >>129 :5勇→4ほのぼの[2] / >>526 :5勇→4ほのぼの[3]

>>133 :84小ネタ / >>203 :84小ネタ / >>210 :本スレネタ / >>214 :67・>>210追加ネタ
>>226 :84小ネタ / >>233-239 :48 / >>247 :57・67 / >>248 :53・13

>>254 :7&4 / >>257 :34? / >>260 :34?・>>257便乗 / >>261 :>>257別ver
>>267 :67 / >>272-275 :1←3?・4←8? / >>281 :1→3?

>>287-290 :1&3同じ部屋に閉じ込めてみた / >>291-292 :4&8同じ部屋に閉じ込めてみた
>>294-295 :6&7同じ部屋に閉じ込めてみた / >>296 :2&5同じ部屋に閉じ込めてみた

>>302 :67 / >>306-307 :24? / >>312 :上6←7←下6・>>306-307便乗

>>320-326 :13暗め[1] / >>330-336 :13暗め[2] / >>342-346 :13暗め[3]
>>350-355 :13暗め[4] / >>359-364 :13暗め[5] / 完結

>>384-394 :4&5 / >>398 :名無しさん、54への熱き分析

>>403-412 :8→3監禁調教物[1] / >>426-436 :8→3監禁調教物[2] / >>444-448 :8→3監禁調教物[3]
>>454-460 :8→3監禁調教物[4] / >>467-476 :8→3監禁調教物[5] / 未完

896投稿小説リスト:2012/03/17(土) 18:41:22
>>480-481 :1→3 / >>484-487 :2→1 / >>490-491 :67 / >>493-497 :78or87(48、67前提)
>>501-502 :4→2?24? / >>506-510 :78ほのぼの / >>513 :1→3・本スレ23(382−389)ネタ

>>518-519 :8→4前提8&2 / >>524-525 :84・>>518-519の後日談 / >>531 :84
>>533-534 :858? / >>537-539 :8&6・果汁の本領>>533-534続き / >>543 :13

>>547-552 :848・6←7 / >>560-561 :84 / >>574-579 :5&2 / >>585-593 :1→←3←4
>>595 :つぶあん派vsこしあん派  >>597-599 :6→←7  >>605-612 :8→4・67

>>617 :13 / >>620 :67 / >>622-623 :84 / >>626-628 :73 / >>634-636 :羊×3(エログロ?注意)

>>638-639 :1+4【体格】 / >>643-645 :3→4←5【彼にとっての】 / >>647-650 :24【ムヒョウジョウ】
>>654-658 :3→4【過去と今と……】 / >>663-667 :5→4【マナーと教養】 / >>671-674 :6+4【色気】
>>677-680 :7→4【やさしさ】  >>682-688 :8→4【強く儚い導き】
>>692-697 :84(if世界)【変わるもの変わらないもの】 / >>700-703 :34【cherry】

>>704 :1+4 / >>725 :1→3前提14[1] / >>757 :1→3前提14[2]
>>729-732 :13+5 / >>737 :8+4 / >>740 :84 / >>742-752 :84 / >>764 :8+4
>>775-776 :1→3 / >>781 :8→4 / >>785-788 :48 / >>791 :545勇ほのぼの

>>796-804 :8→4【恋愛睡眠のすすめ】 / >>808-821 :【84のはなし】

>>825-827 :84中心オールキャラ / >>832-837 :48  >>841-843 :8→4
>>844 :34(女体化ネタ注意)/  >>848 :34(女体化ネタ注意)>>844続き
>>849-852 :52ほのぼの / >>856 :84?+5

>>868-870 :【歴代衣装13編】 / >>871-873 :【歴代衣装84編】 / >>874 :【歴代衣装おまけ編】

>>880-884 :38【遊び】[1] / >>887-893 :38【遊び】[2]

897348:2012/03/18(日) 13:44:11

3主「こんな感じに>>895-896リストアップしていったが、こうして改めてみるとすごい量だ。圧倒されるな」
4主「レスも900間近だしな。しかし本当すごいな」
3主「作成作業中、読みふけってしまって完成まで予想以上に時間がかかってしまった」
4主「あー、古新聞の処分で俺も似たようなことやってた」
3主「あるあるwwwで、どうよこれ。ネタ数トップから一言」
4主「ぅ、しかしスレの趣旨が特殊なだけになんとも……」
8主「笑えばいいと思いますよ」
3主「8主、いつのまに!?」
8主「4主さんを嬉々として部屋に連れ込んで行くのを見たので。ドアの隙間から様子を窺ってました」
4主「はたから見たら不審者そのものだろうな、おまえの行動は。よそ様でやるなよ」
3主「そのカメラの用途はあえて問うまい」
8主「しかしまあ、圧巻たる量ですね。作品投稿というのは愛なくしては始まりませんよ」
3主「まったくだ。だが本スレもこの場所も最近は過疎気味なのが残念だな」
8主「この場所はまだ連載途中の作品もありますしねえ」
4主「気持ちは分かるが……やはりまだ昨年の混乱は片付いていないし、賑わいを求めても仕方ないだろう」
3主「そうだな。マターリしつつ過去ログを読んで、懐かしさに浸るもよし」
8主「読んだログから感銘を受けて、投下に挑戦してくれる方も現れるかもしれませんし」
4主「この緩やかさも悪くはないさ。ってことで>>858の作戦を拝借しよう」

さくせん [> きながにいこうぜ!

8主「……ところでオチはどうするんです?」
4主「え。俺、そういうの無理。オチ担当は3主に一任する」
3主「賑わいもオチもそう人に求めるな。不平を言うより進んで明かりをつけようぜ」
8主「ごもっともで。では言い出しっぺの法則に従い、僕がひとはだ脱がせましょう。3主さんはカメラをお願いします」
3主「おれにまかせろ!」
4主「待て8主。なぜ俺の服に手をかける。3主も言われるままカメラ構えてんじゃねーよ!」
3主「いいじゃねーか。俺にオチを任せたお前も悪い」
8主「まあこの場所での求められるオチと言えば、こういうことでしょう」
● REC
4主「え、ちょ、や、やめっ……!」

898名無しの勇者:2012/03/19(月) 09:57:45
おおお!おつです!

899名無しの勇者:2012/04/14(土) 22:11:00
ほしゅほしゅ

9004→7:2012/06/05(火) 06:41:59
過去ログ読んで萌えたので初期の4主→ビビり7主

4主「(暇だ……。珍しく宿舎に誰もいない)」
ガチャ
7主「ただいまー。って、うわっ4主さん!?」
4主「よう、おかえり(二人きりだ。少しは仲良くなれるか?)」
7主「(すすす凄い勢いで、ここ、こっち睨んでる!)
   あ、あのあのあのた、ただいま戻りました!」
4主「いや、なんで敬礼してんの?」
7主「あ、悪魔のように口元が歪んだー!
   ぼぼ僕、いや4主さんに対して僕なんて一人称は不遜すぎますよね! いくらでも謝ります! なんなら今すぐ消えます。死にます。
   だから、その僕を藪蚊よりも惨めに叩き潰す為に振り上げたその手をおろしてくださいましませた!
   な、なんでラスボス相手に僕一人なんだよー! 助けてマリベル、アイラ、キーファ!」
4主「(7主、思ってること口に出てる)いや、これはたんなる挨拶で……」
7主「あ、挨拶!? そ、そうですよね! 出会いがしらに辻斬りのごとく、痛恨の一撃で相手を叩き潰すのが魔界流の挨拶ですよね!?
   死にたくない死にたくない死にたくないシニタクナイシニタクナイ」
4主「あ、いや、あのな……(魔界流?)」
7主「ヒィィィ、お父さんお父さん魔王が僕を手招きするよ!」
4主「(シューベルト?)いや、7主あのな……」
7主「な、なんで僕の名前を!? ま、まさか! 太陽も恐れるその凶悪顔でフィッシュベルのみんなを脅して僕の情報を聞き出したの!?」
4主「いや、俺たち元々顔見知り……」
7主「ひどいよ! 僕だけならともかく、村のみんなまで!」
4主「……なんでそうなる」
7主「ウワアァァに睨んでる! メデューサより恐ろしい顔が僕を睨んでる! い、石になっちゃうぅ……!」
4主「(あー、もう。うるさいな)メデューサに睨まれたものがなぜ石になっちまうのか知ってるか?」ニヤ
7主「(゚д゚)……
   (゚д゚ )≡( ゚д ゚)ブンブンブン
   (てか、顔近い顔近い! イシニナッチャウヨ、シンゾウトマルダレカザオリク)」
4主「それはな、メデューサのあまりに恐ろしい形相のせいで、恐怖にすくみ上がった心臓が止まっちまうからさ」ニヤリ
7主「(ミミモトデササヤカナイデ! テラコワス! イ、イマナニカセナカヲツメタイモノガ……! )」
チュ
7主「ク、クチビルニヤアラカイカンショ…qあwせdrftgyせきばんlp」
4主「(お、静かになった)」
7主「……( ゚д ゚)……」

5主「そうして、7主が石像になったまま8年の月日が流れた……」
1主「流れてない。流れてない」
4主「あ、二人ともおかえり」
二人「ただいま」
7主「……( ゚д ゚)……」

901名無しの勇者:2012/06/07(木) 23:29:15
可愛いよ二人とも可愛いよ

902名無しの勇者:2012/08/28(火) 11:44:28
魔笛かw
二人ともかわいいなー

903名無しの勇者:2012/08/31(金) 09:04:31
こんな二人はいやだ

昔書いてたもの。48


■背景がお花畑

4主「ヌッコロス」

8主「チッ、見つかっちゃいましたか…」

4主「逃げんなw待てコラww」

8主「あははw捕まえてみやがれですww」

キャーキャー

他主「………」




■褒め愛?

4主「ああ8主か…今日もまた鱗に似たすべすべな肌だな」イチャイチャ

8主「4主さんこそ、鳥みたいに柔らかい髪の毛…羨ましいです」イチャイチャ


7主「ねえあれはなんなの!?楽しいの!?」

6主「まあそう取り乱すな7主。俺もさっきから悪寒がひどくてな」

3主「メガンテ寸前の爆弾岩を見ているようでどうも落ち着かない」




■新婚さん風に

8主「4主さ〜ん、料理手伝いますよ!」

4主「ああ、助かる」

8主「わ、指切りました」

4主「馬鹿だな8主、慌てすぎだ。指見せろ」

8主「よ、4主さん…わざわざ舐めなくても」



3主「いつから宿舎はリア充の巣窟に…ぐは(砂吐」

6主「いつから…だろうな、おぇ(吐血」

7主「うわぁぁん、鳥肌MAXだよーー!(タヒ」

6主「7主が犠牲に…許すまじ4主8主」






9042/2:2012/08/31(金) 09:07:16
スマソ上の続き。48



〜その後。楽屋裏〜



8主「ふふ……」

4主「くく……」

4主8主「「あははははは!」」

8主「見事な演技でしたよ、4主さん」

4主「8主もな。あの3人の顔は見ものだったぜ」

8主「珍しく馬が合いましたね。じゃあ誤解を解きに行きましょうか」

4主「なあ、8主」

8主「なんですか?」

4主「……俺は、誤解されたままでいいんだが」

8主「へ?」

4主「だから……ああもう、こっち向け」

8主「……」

4主「……」

8主「な、なな、なんできききキスなんか……」

4主「俺はこういうことを8主としたいって言ってるんだよ。で、お前はどうなんだ?」

8主「べ、別に…そんなこと言われても嬉しくなんて全然ないんですからねっっ!」

4主「そのわりに顔が赤いな」

8主「気のせいです!」


1主「ドアの前に棺が一つ。あと3主と6主が倒れてるな」

2主「ふたりとも、なにやらあわをふいているぞ……ドアのむこうになにかあるのか?」

5主「決して覗いてはいけないよ2主。向こうには大人の世界が広がつてゐる」

9主「何がともあれお二人に祝福を!良かったですね」ニコニコ

905名無しの勇者:2012/08/31(金) 09:22:23
>>903-904のもんです。
1主の言う3主→ご先祖に脳内変換してください
間違い多くて本当すまん

906名無しの勇者:2012/10/12(金) 19:15:17

最初は、ただ「純粋な人だなぁ。」と思った。
だって彼は、僕が冗談でついた嘘もそのまま丸ごと信じてしまう。
僕はそれが面白くて、何度も何度も繰り返し彼に嘘を教えた。
だけど彼はそれを、「そうなのか、8主は賢いな!」と言って尊敬の目で
僕を見てくれた。正直、そんな彼にあきれることもあった。
そんなやりとりをしていく内に彼に関していろんなことを知った。
ローレシアの王子であること、1主さんと3主さんをとても尊敬していること、
なかなかロンダルキアが突破できないこと、仲間がとても大切なこと・・・
次第に僕は彼のことを一つ知るたびにもっともっと彼のことを知りたいと
思うようになった。
この時点での僕の彼に対する感情は「尊敬」に他ならなかった。
・・・はずなのに。いつからだろう、彼に送る感情が「愛情」に
変わったのは。いや、きっかけなんて多分なかった。
ふとした時、「ああ、自分は彼が好きなんだな。」と思った。
でも、僕は自分の気持ちに気がついても何もできなかった。
僕の独りよがりの思いで、彼と、みんなとの幸せな日常を壊すなんて
できなかったから。今までどうり、彼の近くに居られれば幸せ。
そう思っていた。
・・・なのに。4主さんが彼に勉強を教え始めた。

907名無しの勇者:2013/01/14(月) 12:55:35
とりあえずほのぼの84

4主「まーたコイツは…」
8主「スースー ムニャムニャ」
4主「おい、8主。こんなとこで寝てたら風邪ひくぞー早く炬燵から出  ろ」
8主「スースー」
4主「おい、8sy…」ガシッ
8主「ムニャ……4しゅさ…ん」
4主「……(手、握られた…)」
4主「…(いつもなら…こんなのんびり出来ないよな…)」
8主「……」ムニャムニャ
4主「…まぁ、たまにはこういうのもいいか…」
8主「ふにー…」
4主「何か猫みたいだな…」
8主「4主…さんの手…冷たくて気持ちいい…です…」
4主「そっか…あー…俺も何か眠くなって…き…たな…」スースー

ーーーーーーーーーーーーー

5主「あ、二人ともこんなとこで寝ちゃってーとりあえず風邪ひくといけないから炬燵からだしとっこと」

5主「ソファーに寝かして毛布を掛けてっと」
5主「ふぅ、これでよし」
5主「……」
5主「にしてもこの二人、いつも喧嘩してるけどホントは仲良いんだなー」

5主「こんな手握りながら寝ちゃってさ」

スースー

908907:2013/01/14(月) 13:00:54
うああっすみませんっ!
4主の「炬燵から〜」のセリフの最後ん所間違って空白入れてしまいましたああ!
読みずらくてすいません、ちょっと吊ってきます!

909名無しの勇者:2013/01/14(月) 18:37:29
吊らないで、吊らないで!
萌えた!ありがとうありがとう

910名無しの勇者:2013/01/16(水) 18:59:43
909さんありがとう!
このスレにまだ住人が居てくれた事が嬉しいです

あと、長編を書いてみようかと思うのですが需要ってまだありますかね…
もしあったら少しずつ投下していきたいです
(内容は848中心で67とか13とかのバトルです)

911名無しの勇者:2013/01/16(水) 20:03:37
まぁ投下してみんしゃい

912名無しの勇者:2013/01/16(水) 20:35:32
需要ありありなんでお願いします!

913名無しの勇者:2013/01/18(金) 22:06:24
911さん、912さんありがとです!
案がだいたい練れたので明日辺りに投下させてもらいます

914名無しの勇者:2013/01/18(金) 22:13:07
変換間違えました…orz
「させてもらいます」→「させていただきます」でした
変換に変なクセがついてる…直しておかなければorzorzorz

9151/5  8+4:2013/01/19(土) 22:44:58
8主「はい!こちら中継です!今僕はヨンシュ村にいます!
自然に囲まれていて空気が美味しいです!ご飯3杯いけます!
お、村人らしきひとが出てきました
怖い!顔が怖いです!眉間におもいっっきり皺がよっていま…」
4主「うるせえよ8主」
8主「何ですかもー、せっかくいい所だったのにー」
4主「どこら辺が良かったのか10文字以内で説明しろよ」
8主「4主さんの顔が怖い所」
4主「うわっ微妙な返ししやがって…というか本当にお前は手伝いにきたのか?邪魔しに来たんだったら帰れよ」
8主「もー邪魔しに来たなんてヒドイですねー」
4主「さっきから無意味な中継やってるお前が何を言う。かれこれ2時間だぞ…飽きないのかよ」
8主「いやいやー2時間なんかじゃヨンシュ村の魅力は語り尽くせませんよー」
4主「はぁ、そうかい。…まぁいい、メシにすっぞ」
8主「待ってました!」

タタタ…

9162/5  8+4:2013/01/19(土) 22:56:45
8主は俺の村によく来る
本人は手伝いに来てると言っているが、はっきりいって邪魔しかしていない
だが、何となく8主がいてくれると心なしか落ち着く
もしかしたら俺は心の底では8主を信頼しているのかも知れない
だからこんな事を言ったのだと思う


「ーなあ、自分がいなくてもいいんじゃないかって思う事はないか?」
「はい!?」
僕は手に持っていた食後のプリンを(4主さんの手作り)とスプーンを床に落としてしまう
もったいない、後で拾って食べよう
5秒ルールだ
いや、今はその事は置いておこう

今、この人はなんて言った?

「いや、もし自分がいなかったとしてもこの世界は変わらなかったんじゃないかなーと思ってさ」

『自分がいなくてもいい存在』そんな悲しい事を何故考えているんだ?

思い当たる節はある
この人は世界を救った後、自分の帰りを待ってくれる人が誰一人いなかった孤独な勇者だから

9173/5  8+4:2013/01/19(土) 23:13:04
だからと言っても今のこの人には大切な仲間がいる
決してー孤独なんかじゃない
なのに何故ーー

「何言ってるんですか4主さん、自分がいなくてもいいなんてーそんなことあるわけないじゃないですか。
それにあなたがいなければ世界は救えなかったじゃないですか、大切で必要な存在ですよ」
僕は言う、だが4主さんは
「でも、もし俺がいなくとも天空の血を引く者さえいればーその者が勇者となり、世界を救えたのかもしれないだろ?」

本当に何なんだこの人は、まるで自分が勇者としてしか必要とされてないような言葉をー
実際そうだったかもしれない
そんな扱いをこの人は受けていたと言うのだから
でもーー

「あのですねぇ、じゃあ仮にそうだったとしましょう。確かに4主さんは『勇者』としては必要ありません、ですが4主さんという人は必要なんですよっ!」
「あなたという人がいなくなったら大好きなシンシアさんや旅の仲間、宿舎の皆さんが悲しみます!絶対です!」
4主さんはこちらを少し唖然としながら見ているー
続けて僕は言う
「あなたはー他の人が自分のことをどれだけ大切に思っているか、もう少し考えてみてください!」

9184/5  8+4:2013/01/19(土) 23:29:37
僕は少し怒っていた
それには理由がある

僕はーー4主さんの事が好きだからだ
友達としてか、いやそれ以上に好きだ
不器用ながらも優しい、そんな4主さんが好きだ
だからーそんな好きな人が『自分はいなくてもいい存在だ』なんて思っていたら怒るに決まっているじゃないか
僕にとってーーいなくてはならない存在なのに
(え?日頃のイタズラ?……素直になれないのは気にしてるんですよ…)

「ーー」
4主さんは僕が怒ってるのに気付いたのか少し唖然としてる
「ーーはは」
「何ですか急に」
「いや、お前の話聞いていたらさーー何か立ち直れたわ」

ここまで人を困らせといていきなり!?
……僕がどれだけ動揺したか
もー4主さんはああああ!!

「OK!表に出て下さい!僕怒りましたからねっ!」
懐かしい台詞を言い、僕は立ち上がった

「8主?ど、どうしたんだよいきなり」
「もういいです!というかそれはこっちの台詞!ほら、行きますよ!」

9195/5  8+4:2013/01/19(土) 23:48:04
その後、俺達はいつも通り喧嘩して
こんな日はもう仕事をする気になれないので早めに作業を切り上げてグダグダしながら宿舎に戻った

本当はあんな事言うべきじゃないのも分かってはいた
ただ、こいつになら言ってもいいんじゃないかと思い言ってしまった
困らせてしまったようだし悪かったと思う
ただ、あいつが俺の事を『必要な存在』と言ってくれたことが、とても嬉しかった

だが、なぜ『自分は必要ないんあじゃないか』なんて考えだした訳はーー


ーズキ

実は最近調子が悪い。パデキアはもう飲んだが、なんだか冷たく、消えていくような感じが収まらない
それに頭の奥でこんな声が聞こえてくる
「オ前ハモウイナクテモ大丈夫ダ、ラクニナレ」

と言われている。この何だか心地いい声に流されそうになる

ーだが、8主が言ってくれた通り俺を必要としてくれている人がいる

(うし、明日からまた頑張ろう)
あいつの為ーーいや、皆のためにも

920915:2013/01/20(日) 00:01:21
今回BL要素は少なめです
色々気になる点があると思いますが生暖かい目でスルーしてやって下さい
続きはのんびり投下させていただく予定です
見てくださってありがとでした!

921名無しの勇者:2013/01/20(日) 00:54:02
乙!楽しみにしてます

9221/1 13 微妙に主ヘン:2013/01/29(火) 19:41:33
5主「はあああああああ……」
3主「ん、どうしたんだ5主。盛大にため息ついて」
5主「…いやさぁ、ちょっと名前の問題なんだけどね」
3主「ああ、トンヌラか」
5主「そう、実はこの前ヤってる時に気づいたんだけどさ…」

ーーーー回想中ーーーー

「あっ!…ふぁ……はあっ」
5主「ふふっ大丈夫かい?」
「ひっ………ん!…はふぅ………」
5主「声…我慢しなくていいよ?」グリッ
「ん!……ああ……」

ーーーーーーーー

5主「……って感じだったんだよね」
3主「おいコラお前!誰とヤってたんだよ!4Pでないって事は奥さん達ではないだろ!」
5主「ははっ誰かなぁ♪ まあそれはさておきこっからだよ」

ーーーーーーーー

「と……」
5主「ん?」
「と……トンヌ…」
5主「……え」
「はっ!…んぁあ……トン…ヌラぁ……」
5主「……」
「トンヌ、ラ…と…ンヌ……らっああああ!」

ーーーーーーーー

5主「…と、なってね」
3主「相手が誰だかはもう置いといて、確かにそれはな…トンヌラか……」
バターン!
1主「そうだよ!俺もなんだよ!分かってくれるか5主!」
3主「ああ…『おっ。て』だもんな…お前」
1主「そう!そのせいかイイ所で何だかギャグになってしまう辛さ!せっかくご先祖が俺の名前を喘ぎながら呼んでくれるのにいいいいいい!」
3主「///!おいこら1主!何どさくさに紛れて言ってんだ!」
1主「俺のご先祖がこんなに可愛いわけがありすぎるうううううって状態なのにだよ!?あんまりだ!」
5主「うんうん。だよね、だよね」
1主「わかってくれるか5主!と、いう事でご先祖!これからは小説ネームのアレフで呼んでくれ!」
3主「ちょっ何で」
1主「お願いだあああ!頼む、ご先祖!」
3主「…………いや、だってさ…は、恥ずかしいし…ってああ!い、いいだろ!別に!俺もその方が好きだし!」
1主「!……ご、ご先祖!ありがとうおお!ヤッターゴセンゾガデレテクレタァワーイ」
3主「今半角カタカナでなんて言った」
1主「きゃっほおおお!」
3主「ちょっおまw6主並にテンション高いぞww」
ワーワー
5主「……」
5主「あれ?僕忘れられちゃってる?」
5主「……じゃあヘンリーにも言っておくか」

923名無しの勇者:2013/01/29(火) 20:25:32
13!13!( ゚∀゚)o彡゜

924名無しの勇者:2013/02/07(木) 21:24:15
お゜っての発音できるご先祖Sugeeee
主ヘンもイイヨイイヨー

9251/4 5+4:2013/05/27(月) 02:19:50
BL要素少なめです。

*****
 会議が終わる。父の残した立場が恨めしい。今すぐ、妻たちの元へ向かいたいのに。
 席を立ち上がる。自分が立ち上がらなければ、皆も立ち上がれない。
 くやしい。だけど、国民を、何より残された生まれたばかりの子供たちを置いてはいけない。
 重厚な扉を開いた先に、それは佇んでいた。
 かつて父から託されたもの。一人では立つことなど物理的に無理なはずのそれが、確かにそこにあった。
 柄の意匠のドラゴンが銜える宝玉が煌く。それは、確かに宝物庫に安置していたはずの、『天空の剣』。
 きらり、きらりと意思を持つかのように宝玉が煌く。どちらかというと華奢な意匠のその剣に、誰もが近づけなかった。
 『心のままに生きなさい』
 ふと聞こえた、記憶の奥底、翡翠色の残影の声。かつて、あの人が言った言葉が耳にこだまする。
 『ここは、私が守ろう。新しい主が振るう力を持つ、そのときまで』
 今度は確かに聞こえた。いや、意思だろうか。でも、不思議とあの声と似ていた。
 新しい主?
 きらり、ともう一度、宝玉が煌く。その脳裏に、生まれたばかりの双子の、男の子の顔が浮かぶ。
 あの子が勇者?父が探していた、そして僕が探し続ける。天空の名を抱くもの?
 『さあ、貴方は貴方の心のままに。私が守ろう。子らを、この国を』
 周りがこの声を聞いていないのは明白。でも、幻聴だと思うにはあまりにその意思は強く、脳裏で瞬いた。
 僕は頷き、周りに意思を告げる。
 頭を下げた。頼む、と。本当はもっと早く下げるべきだった。王だろうがなんだろうが、人に物を頼むときは、頭を下げるものだから。
 剣がもう一度瞬く。まるで、そうだと頷いたように見えた。

9262/4 5+4:2013/05/27(月) 02:20:44
 あれはどこだったのだろう。覚えているのは一面の花畑。父は僕を何時も冒険に連れて行ってくれた。
 もちろん、危険がない場所ばかりだったけど、それでも僕は嬉しかった。
 父は僕を置いて、ほら穴に潜っていった。此処からは危険だから待っていなさいと。
 そういうことも珍しくなくて、僕は大人しく待っていた。
 僕はひとり、村の子供が教えてくれた遊びをしていた。花畑の横のあいた土地に、木の枝で丸を書き、そこを片足でぴょんぴょんと跳ねる。
 「けんぱ、けんぱ♪」
 両足、片足、両足。ぴょこぴょこと跳ねるのに僕は夢中になったけど、やがて、自分で書いた丸はすべて攻略してしまうと、手持無沙汰となった。サンチョも父と共に行ってしまったので、僕はひとりきりだ。
 緑の森に包まれたお花畑はとても綺麗だけど、何だか一人ぼっちになった気がして、僕は座り込んだ。
 「うぇ〜ん、おどぉざ〜ん」
 寂しくて、悲しくて僕は座ったまま泣きだした。
 ぐすぐすと泣いていると、影が出来た。
 「おどぉさんっ!?」
 父が帰ってきたのかと顔を上げた僕の瞳には深い緑色の髪が見えた。
 『サンチョが読んでくれたご本の妖精さん?』
 その髪の色は花畑の周りにある常緑樹のような深い色なので、そうかと思った。髪も絵本みたいに長いし。
 「……どうした?」
 見上げたまま何も言わない僕に心配になったのか、心配そうな声が掛けられた。それでも僕が何も言わないと、躊躇うように伸ばされた手が僕の頭を撫でる。
 その手はとても温かくて、僕は悲しいのがどっかにいってしまった。
 「大丈夫、か?」
 紫色の瞳が心配そうに覗きこんで来る。僕が大好きな夕焼けみたいな綺麗な色だ。
 僕が頷くと、その人は僕の横に腰を下ろした。
 見上げていると、その人は自分の膝に手をついて頭を支える。その拍子に髪がさらりと流れた。
 「…あの……」
 「ん?」
 思いきって話しかけると、その人はちゃんと僕と視線を合わせてくれる。
 「あの、僕、リュカっていうの」
 「そうか。ちゃんと挨拶が出来るんだな。えらいな」
 其の人はにこっと笑って頭を撫でてくれる。褒めてくれたのは嬉しいんだけど、聞きたいのはそれじゃなくて。
 「あの、あのね?」
 「ん?」
 「お姉ちゃんの、お名前は?」
 一生懸命頑張って聞いた瞬間、その人は膝についた手が外れ、前に伏せるような格好になる。
 何か悪いこと聞いたのだろうか?
 其の人はしばらくそのまま動かなかった。そして、不意に立ち上がる。
 「あ、あの、ごめん、怒ったっ!?」
 怒ってしまったのかと慌てて服を掴むと、その人はもう一度屈んで頭を撫でてくれた。
 「いや、そろそろ帰らないといけないんだ……坊やの待っている人もそろそろ帰ってくるから」
 そうして洞窟を指さした其の人に釣られて僕も振り向くと、聞きなれた二人の声が聞こえてきた。
 「坊や、此処で僕に会ったことは内緒な?……それと、僕はお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだから」
 そう言って、その人はくるりと背を向けて歩きだしてしまった。
 慌てて追いかけようとした僕は転んでしまい、再び顔を上げた時は森に溶けてしまったかのように、その姿を見つけることは出来なかった。

9273/4 5+4:2013/05/27(月) 02:21:48
 「リュカっ!?」
 「坊っちゃまっ!?」
 僕が寝転んだままだったので慌てて父とサンチョが駆け寄ってきた。
 父の強い手が僕を抱き上げ、目を軽く擦る。大好きな父の手を暫く味わってから、結果がどうだったと尋ねたら、どうやら、お目当てのものは見つかったけど、手に入れることが出来なかったらしい。
 それから、父は何度もここにやってきた。僕は宿屋でお留守番しているか、と言われたけど、どんなに言われても付いて行った。だって、あそこに行けば、またあの人に会えるかもしれない。
 そうして、僕の予想通り、再び僕はあの人に会った。
 僕が一人になると、まるで風のようにあの人は現れ、僕と遊んでくれた。
 だから、父に悪いと思いながら、僕はここに何度も来れることを楽しみにしていた。
 「お兄ちゃん〜っ」
 「また、来たのか」
 大きな声で呼ぶと、森から溶け出したかのように其の人は現れる。その名は教えてくれなかったので、僕は其の人をお兄ちゃんと呼んでいた。
 「あそぼっ!」
 「はいはい。今日は何をする?」
 「お絵かき〜」
 この日が終わるなんて思っていなかった。何時までも、この人と遊んでもらえると思っていた。
 いつものように持ってきた画用紙に絵を描いていると、その人が顔を上げたのが分かった。
 「お兄ちゃん?」
 「試練を乗り越えたか……リュカ、お父さんもうすぐ戻ってくるよ」
 「???」
 なぜかいつも、この人は父が戻ってくる時間を言い当てる。そして、父には決してその姿を見せないのだ。
 僕は思わず、その服の裾を掴んだ。
 「リュカ?」
 「お兄ちゃん、また、遊んでくれる?」
 どうしてそんな問いかけをしたか、解らない。だけど、何か、僕の中の誰かが、この手を離してはダメだと言っていた。
 「……リュカ」
 其の人は屈んで、僕に視線を合わせた。紫色の瞳が宝石のように煌めいている。
 「心のままに生きなさい。どんな強力な存在だろうと、心だけは、従わせられないはずだから」
 「お兄、ちゃん?」
 「自分の心だけは偽らないで。負けないで。どんなに苦しくても、明日は来るから。きっと、光は見えるはずだから……ごめんな。もう会うことは出来ない……君が頑張って、心のままに生きれば、いつかまた、会えるかもしれない」
 優しく頬を撫でる手。その人は儚く微笑んでいた。
 「……覚えていないのが一番なのだろうけどね」
 その笑顔は綺麗だけど悲しくて、だけど僕の伸ばした手は空を切り、その人の姿はかき消えた。
 そして、そのあとは何も覚えていない。

9284/4 5+4:2013/05/27(月) 02:22:37
 目の前を赤いバンダナの青年が通り過ぎる。それを追って、翡翠色の髪の少年が追いかけていく。
 5主は微笑んだ。
 ああ、あの時あれほど会いたかった人が目の前に居る。
 翡翠色の髪、紫水晶の瞳。妖精の女王より美しく、儚い笑みを浮かべたあの人。
 クロリュウヌッコロスーワーワーギャーギャ-
 『……面影、かけらもないけど』
 ちょっと泣きたくなるけど、当たり前のことだ。自分にとっての過去は彼にとっての遠い未来なのだから。
 本当は、交わらないはずだったその接点。
 あの人は知っていたのだろう。僕が頑張れば会える、と確かに言ったのだから。
 頑張って心のままに、妻たちを愛し、子供たちを愛している。
 だから、出会うことが出来た。
 「……何笑ってるんだ、エロキン」
 「其の呼び名はやめてくれる?3主」
 「この上なくお前を示す言葉だろうが。また羊アタック喰らうようなことか?」
 呆れたような眼差しが向けられる。これは自分の行いが悪いのだろう。
 「いいや、初恋の人を思い出していたんだよ」
 「おんやぁ、お安くないねぇ」
 にやりと笑うと、3主も釣られたように笑う。
 「……僕はね、あの人があんなに儚い笑みを浮かべるのをもう見たくないんだ」
 「ふぅん?」
 「だから、この宿舎を作った人には感謝している。あの子もあんなに笑うようになったしね」
 「邪悪一直線だけどなー」
 赤いバンダナを射程内に捕らえ、ギガソードが炸裂する。
 倒れた青年を足蹴に笑うさまはすっかり魔王だ。
 「……まあ、無表情より良いということで」
 「視線逸らすな、現実を見ろ現実を。なんかパワーアップしてるぞ、あいつ」
 「逸らさせてくれよ」
 思わず零れた言葉は3主に笑われてしまった。
 幸せになってほしいと思った。幸せにしたいと思った。
 ……その努力は実を結んでると思いたい。

929名無しの勇者:2013/05/27(月) 03:14:07
お姉ちゃんwww
5主かわいいなー

930名無しの勇者:2013/05/27(月) 09:03:58
かわええー

931名無しの勇者:2013/06/18(火) 23:33:18
5主可愛いw

93284 1/3:2015/02/22(日) 00:27:45
さわさわと風に靡く木々、空を流れる白い綿雲。
椅子代わりに腰掛けた切り株の脇から生える新芽に触れば、つるりと水を含んで仄かに冷たい。
元幹の樹皮のごつごつとした手触りとはまるで対照的だ。
平地よりもやや標高が高いので気温は僅かに低めだけれど、
日差しの暖かさがあるからさして寒くはない。
凛と澄んだ空気を深々と吸い込んでみれば、それだけで回復効果がありそうだった。
唯一の例外を除いては、辺りに人の気配はない。
身近な生き物と言えば草葉を這う虫や枝上を忙しなく駆ける動物たち、
それと時折上空を行き交う鳥くらいなものだ。
ぴーひょろろ、笛の音のような鳴き声が木霊する。
当然ながらオーブも紋章も此処にはない。

「相変わらずクッソ田舎ですね」

トロデーン城の周りも少し開けた地ではあるけどここまでではないし、
そもそも城自体が多くの人で賑わっているからこんな閑寂はこれっぽっちも感じない。
長閑だと言ってしまえばそれまでだけど、このあまりのド田舎感は正直どうかと思う。
こんなとこで十七年も暮らしていたのなら、そりゃあ世間知らずにもなるはずだ。
その後の旅路でそれなりに常識は身に付けたらしいけど、
最初のうちはご同行されたお仲間方も随分苦労なさったのではないだろうか。
普段は真面目くさっているあの人が時々信じられないようなボケをかます理由も、
彼が生まれ育ったこの土地を見れば推して知るべし、というものだ。

93384 2/3:2015/02/22(日) 00:28:39
「そう思うんならそんな所にボケッと座ってないで余所へ行けよ。
 さっきからずっと傍に張り付いて、監視でもしてるつもりか」
「いやですよ4主さんの監視なんて何の面白味もない。
 フィールドで突っ立って太陽の動きを眺めている方がまだ建設的です」
「じゃあそうすりゃいいだろが」

この山奥にある小さな村――最早村とも呼べないのかも知れない――に暮らす唯一のひと、
畑仕事に精を出している天空の勇者様は、持っていた鍬を杖代わりに立ててその上に顎を乗せ、じとりと此方を睨んできた。
只でさえ目つきが悪いのにそんな顔してたら、以前の7主さんみたいな気の弱い人ならば竦み上がってしまうだろう。
魔物の気配をあまり感じないのもこの所為だったりして。
一瞥するだけでトヘロスの効果。さすが魔王顔と言われるだけのことはある、面目躍如だ。

「別に出て行きたいなんて一言も言ってないでしょう、なんだってそんなに追い出そうとするんですか。
 オニ、アクマ、コケコッコ」
「最後のやつ関係ないだろが!てか前二つもいらねえよ!何なんだ、いきなりルーラしてきたかと思えばいつもみたく喧嘩売りに来たってか?
 そんな下らない理由でこんな田舎までわざわざご苦労なこった」
「4主さんって他の人にはわりと落ち着いた対応なのに、僕に対してだけは短気ですよね。
 そういう差別は良くないですよ」
「OK、胸に手を当てて日頃の行い振り返ってみろ」

おっとやばい、目が座ってきた。これ以上からかうとギガソード発動フラグだ。
やれやれと軽く肩を竦め、風で乾いた唇を湿らせる。

93484 3/3:2015/02/22(日) 00:29:21
「理由なんてないですよ」
「あ?」
「理由なんてないけど、ただなんとなく4主さんの所に来たくなったから来た。
 それだけです。何か問題が?」
「……あ、いや」
「ならいいですよね。では僕に構わず、どうぞ作業を続けて下さい。
 でも出来ればもうちょい構ってください暇なんで」
「……一つの台詞の中に矛盾が盛り沢山だぞ」

4主さんははあ、と息を吐くと、気まずそうに頬を掻いて再び鍬を握り直した。
いや違うな、あれは照れているんだ。その証拠にほら、耳の先が少し赤い。
元々肌がそう黒い方でもないから余計に目立っている。
鍬が振り上げられては下りる度、翠の髪と耳朶のスライムピアスが揺れる。
髪の毛長いよな、邪魔じゃないんだろうか。5主さんみたく結ぶとか、或いは切るかしたらいいのに。ああ、でもやっぱり切っては欲しくないかもな。勿体無いから。

「そこ、何を植える予定なんですか?」
「えーっと……春野菜をいくつか、ソラマメに玉葱にジャガイモ、水菜なんかかな。
 あとは……苺とか」
「苺、」

苺と言えばあらゆるスイーツと相性のよい食材だ。
これは我がプリン研究にも一役買ってくれるに違いない。
俄然瞳を輝かせた僕を、4主さんは子供を諫める母親のような目で見遣った。

「一応言っとくけど、皆で食べるものだからな。お前にだけ贔屓はしないぞ」
「そんなの分かってますよ。でも何が食べたいかのリクエストくらいはしてもいいでしょう?」
「何だよ」
「決まってるじゃないですか」


この閑散とした土地でただ一人、せっせと畑を耕して、家畜を飼って木を植えて。
確かにヒトこそ居ないけれど、生き物の気配はそこら中に満ち満ちている。
すべては彼がやったことだ。滅ぼされ、毒に侵された土地を蘇らせて、もう一度生命を芽吹かせた。あの、やけに野良仕事が様になっている勇者様が。



「苺プリン、食べたいです」



赤く熟れた実の収穫くらいは手伝ってあげてもいいかなと、口に広がる甘酸っぱさを追想しながら僕はちいさく微笑んだ。

935名無しの勇者:2015/02/22(日) 00:35:54
ここ見てる人どれだけ居るか分からないけど折角書いたので投下しときました。

936名無しの勇者:2015/02/22(日) 00:57:44
おおー!久々の更新があって嬉しい!

937名無しの勇者:2015/02/22(日) 01:36:44
乙!
コケコッコわろたwww

938名無しの勇者:2015/02/23(月) 14:29:15
やっぱりこの二人大好きだ!萌をありがとう!

939名無しの勇者:2015/02/27(金) 00:21:01
>>936-938

反応ありがとうございます
自分以外にもここ見てる人がまだいると分かって嬉しい


調子乗ってまた投下です
84シリアスめ、ちょい長

94084 1/6:2015/02/27(金) 00:23:19
緑溢れるこの村の中で、一カ所だけぽつんと置き去りになっている場所がある。



分厚い板を打ち付けて、更には四方に楔を穿って鎖を通し、
幾重にも鍵を掛けて封印してあるそこは彼が持つ中でも最も深い闇の記憶が眠る場所だ。
僕はその鍵のひとつひとつを開錠して鎖を解き、手にした槍で板をぶち破った。
雷光一閃。
いくら厚くても所詮は木、衝撃に耐えきれず文字通り木っ端微塵に砕け散った。
メタルキングの槍をそんな事に使うなんて、と各方面から嘆きの声が聞こえてきそうだがさして気にしない。
武器も道具も使いたいように使ってこそ活きるものだ。
厳重なバリケードを突破した先には、地下へと降りる石造りの階段がある。所々にひびが入り、隙間を苔が侵食していた。
ぽっかりと口を開くその様はまるで地獄の底へと続いているかのようにどこまでも暗い。

「……さて」

常備している松明を取り出して火を灯し、一歩ずつ階段を下っていった。よく見れば足元だけでなく壁にまで亀裂が走っている。
余程激しい衝撃を受けたのだと、否が応にも窺い知れた。
そんな禍々しい雰囲気とは裏腹に、元々そう大仰な造りでもなかった階段は程なく最深部へと到達した。
目の前にあるのはややひしゃげた木製の扉。取っ手は付いておらず、代わりに外側から掛ける型の閂がある。
しかしそれもどうやら壊れているらしく、役目を失ってぶらりと力無く垂れているだけだった。
見たところ内側から壊されているように思える。
恐らく何度も何度も殴られた所為で、閂を留める釘が外れて床に落ちたのだろう。
それを証明するように、赤茶色に錆びた釘が隅の方に転がっていた。
ひとつ深呼吸をした後で、ゆっくりと扉を開けていく。
むわ、と黴と埃の混じった臭いが鼻を襲い、地下特有の湿り気を帯びた空気が肌を撫でた。

94184 2/6:2015/02/27(金) 00:24:43
室内に入ってからすぐに、くるりと振り返って背面の扉を見遣った。
思った通り、そこには空気に触れて黒く濁った、拳形をした夥しい数の血痕があった。
割れた木片が刺さったのか、或いは叩きすぎて皮膚が裂けてしまったのか。

「何にせよ、よく指とか手とか骨折しなかったなあ。実はしてたんだけど気がつかなかった、とかかな」

きっとここから出ようとひたすらに、死に物狂いに足掻いたんだろう。
一度だけその痕をそろりと指先で辿ってから、改めて周囲を照らし出す。
煌々と燃える松明の灯に曝された室内は、予想以上に散々たる有り様だった。
そこかしこに壷や樽の破片が散らばっていて、一歩足を進める度にぱき、だのべき、だのと音を立てる。
恐らくこれもここを脱出するために扉に投げつけたんだろう。もしくはどうしようもなくなって、ただ『外』で起きている惨劇に耐えられずに壊して回ったのか。
たぶん、両方だ。
どのくらいの時間そうしていたのかまでは分からない。
きっと彼にとっては気が狂いそうになるくらいに長い時間だったに違いない。
彼はここで何を考え、何を思ったのか。どれだけの絶望をその心に負ったのか。
今はただ荒れ果て静寂に包まれた部屋で、一人扉に縋って崩折れる背中を瞼に思い描きながら、そっと肺に溜まった息を吐いた。




「…………ここで何してる」




不意に背後から掛かった声に、さして驚きもせずに振り向いた。まあ来るだろうなとは思っていた。
と言うか来て貰わなければ困る。
壊れた扉の向こう、地下室のぎりぎり外側の位置に立っている4主さんの姿を認め、僕はにこりと笑って見せた。

94284 3/6:2015/02/27(金) 00:25:56
「思ったより早かったですね。もう少しくらいはバレないかと思ってたのに」
「質問に答えろ」
「……鬼の居ぬ間に少々散策を、と思いまして」
「ここにはお前の野次馬根性を満たすようなものは無い。出ろ」

普段の数倍は声が低い。まるで呪詛を吐いているみたいだ。やや俯いているせいではっきりとした表情は見えないけれど、
前髪の隙間からのぞく眼差しは氷のように鋭くて冷たい。
そうしていると本当に魔王みたいですよ、なんて軽口も許されないくらいに張り詰めた雰囲気が辺りに満ち満ちていた。
けれど怯んではいられない。でなければ、わざわざ手間をかけてまでここに入った意味がなくなってしまう。

「他は綺麗にしてるのに、どうしてこの部屋だけは片付けてないんですか。掃除好きな4主さんらしくない」
「出ろ」
「折角の地下室なんだから、作物の貯蔵庫とかにしたらいいのに。というか元々そういう目的で使われていたんでしょう」
「早く出ろ」
「ま、多少の補修工事なんかは必要かもですが。いつもみたく6主さん経由でハッサンさんにお願いすればすぐですよ。
 なんなら代わりに頼んできてあげましょうか?」
「さっさと出ろっつってんだよ!!」


怒声が壁に反響してわんわんとうねる。俯いたまま胸元を押さえて荒い息をつく4主さんを、僕はどこか冷めたような気持ちで見つめていた。
何をしているんだろう、この人は。

「そんな風に怒鳴るくらい嫌なんだったら、潰してしまえばいいじゃないですか、この部屋。
 あんな風に面倒な鍵なんてつけていないで。何でわざわざ残してるんです?」
「っ、お前には……関係ない」
「……そうですね。確かにこの部屋のことについては、僕は関係がない」

手にしていた松明を床に落とし、先端に残っていた火を靴底で踏み消した。途端にふっと暗闇が訪れる。

「それなら、そんな所に居ないでちゃんとここへ来てそう言って下さい。僕の目を見ながら、ね。
 そしたら二度とここには近付きません。約束します」
「…………ッ」

94384 4/6:2015/02/27(金) 00:27:21
びく、と身体が震えたのを見咎めて思わず半眼になる。
相変わらず入口で足を止めたまま、4主さんはそこから一歩も動かない。

「どうしたんですか?早くしてください」
「……信用、できない」
「酷いなあ。確かに普段の僕は色々嘘をついたりはぐらかしたりしてばかりですけど、
 今ここでやらかすほどに捻くれちゃあいないですよ」

だから、さっさとここまで来てみせて下さい。
そう言葉にしないまま訴えると、4主さんはひくりと喉を震わせ、奥歯を強く噛み締めたようだった。
そんなことをしたところで何も変わりやしないだろうに。
僕は溜息をひとつ吐くと、その場から動けずにいる4主さんに向かってやれやれと手を差し伸べた。


「ほら」
「っ、なに、」
「いつまでそうして怯えているんです。ここには貴方を閉じ込める人も、貴方を置いていく人も居ませんよ。居るのは僕だけです。
 ……僕は、貴方を置いてはいかない」
「ッ!!」


暗闇にも随分目が慣れてきて、僅かながら4主さんの表情も読み取れるようになった。
紫がかった深い蒼の双眸が子供みたいにぽかんと僕を見つめている。
なんて顔をしてるんだろう。
折角の美形もこれじゃあ台無しだ。

「置いていったりしませんよ。僕はちゃんと貴方の前に、こうして存在している。生きている」
「……はっしゅ」
「だから4主さん」


おいで。


しばらく呆けた後、4主さんは恐る恐る、といった感じで漸く足を踏み出した。一歩、二歩、三歩と震える手を伸ばしながら、
亀の歩みよりも遅い速度で僕の手を目指して近付いて来る。
やがてその指先が触れるか触れないかまで接近したあたりで、ぐい、と手首を掴んで引き寄せた。

「なっ……」
「はい、ゴール」

身長こそ負けてはいるものの、腕力に関してなら4主さんとの間にさほど差はない。むしろ僕に分があるくらいだ。
僕自身そりゃあお世辞にも体格がいいとは言えないけれど、これでも一応暗黒神を打倒した身なのだ。
少なくとも、この人の頭を抱え込むくらいの胸の厚さはある。

94484 5/6:2015/02/27(金) 00:28:51
「8主、離……」
「……この部屋に近付くと、思い出すんでしょう。……ここが滅ぼされた日のこと」
「!」
「まあ、それも当然でしょうね。だからって部屋自体を潰してしまうのは、かつての思い出すらも消してしまうようで怖かった」
「…………」
「結果としてどうしようもなくなって、あんな拙い封印まがいをするに至った……そんなとこですか?」
「……そこまで分かってるなら、わざわざ言うな」
「面倒臭いようで意外と分かりやすいんですよ、貴方の思考は。まあ、だからこそこうして荒療治も出来るんですが」
「……それ、」
「はい?」
「なんで、こんなこと……しようと思ったんだ」

ここでその質問をするのか。まあ自力で悟れだなんて、この人には無理な相談かも知れないけれど。
少し考えれば気付きそうなものなのに。
けれど、これが4主さんだから仕方がない。

「そうしたかったから」
「は?」
「そうしたいと思ったから、したんですよ。4主さんの為にも、僕の為にも。それだけです」
「なんだ、それ……」

呆れを含んだ乾いた笑いがかさりと落ちた。
この人が負った傷は未だに根深い。ふとしたときに泡沫のように浮かんできては夜毎に心を苛んでいく。
青ざめた顔で、この世の終わりが訪れたとでも言わんばかりに魘される姿を一体何度見てきたことか。
いい加減何とかしないとこっちが寝不足になる。
ただそれだけの、酷く利己的な理由だ。
世界を救った勇者にしては随分と頼りなく思える背中を撫でていると、ふ、と開きっぱなしだった扉から吹き込んできた外の風を感じ
微睡むように目を閉じた。
どんよりと沈澱していた空気が、緩やかな微風に浚われていく。

94584 6/6:2015/02/27(金) 00:29:52



「……おい」
「はい?」
「いつまでこうしてるつもりだ」
「んー、もうちょっと?」
「……離せよ」
「嫌です」
「なんで」
「勿体ないですし。それに嫌なら4主さんから離れても良いんですよ」
「……嫌だ」

ぼそりと零して額を擦りつけてくる勇者様の頭をもう一度強く抱え直して、ついでに旋毛のあたりに唇を落とした。
こんな機会でもなければ出来ないことだ。僕は巡ってきたチャンスは逃さず手にする主義なのだ。
しかし美形という人種は髪の先まで余さず美形なんだなと、妙に感心してしまった。
するすると指の間をすり抜けていく翠の感触は旅の途中で触れた清流のそれによく似ている。
髪が綺麗な人は水分がたくさん含まれているから触るとひんやり冷たいのだと、確かククールあたりがそんなことを言っていた気がする。

「今度一緒に片付けましょうか、この部屋。仕方がないから手伝ってあげてもいいですよ」
「……お前の場合、まず自分の部屋を先に片付けるべきじゃないのか」
「それはできない相談ですねえ」


声にいつもの調子が戻ってきている。これなら今夜からはぐっすり安眠できそうだ。



悪夢に怯えるこのひとを、慰める手はもういらない。これからは同じ夢を見ればいいのだから。

946名無しの勇者:2015/02/27(金) 00:32:31
いいなー

947名無しの勇者:2015/02/27(金) 02:15:27
またまた乙!
萌えたよーありがとう

948名無しの勇者:2015/02/27(金) 13:01:32
乙ー
萌えすぎて変な声出た!

9491/2 484:2015/03/04(水) 18:51:48
「4主さあん。悲しい人ですよねえ、あなたって」

へらへら笑いながら、夕飯の支度をする俺へ話しかけてくる信号機。苛立ちを煽る間延びした口調。

「誰よりまともそうに見えて、その実誰よりも狂ってんですよね。よく言いますもんねえ、真の狂人は狂気を隠すって」
「黙れ」
「ま、ここの住民に、すっかりまともな人なんていませんよね。世界を救うなんていうのは、人として大切な何かを失わなくっちゃできないことです」
「黙ってろ」
「人権、安寧、故郷、父親、夢、親友、身分……。幼馴染?」
「ギガソ」
「おおっと」

呪文を奴へ向けて完成させる前に、ひやりと冷たい手が、その細さからは想像できないほど迅速にそして痛いほどの強い力で俺の口をふさいだ。くそ、こいつ力の上限500か。おれは255だのに。
奴は自分の胸元へ突きつけられた俺の指を、空いてるもう一方の手でそっと包んだ。

「すぐに手を出すの、駄目だと思いますよ。勇者として。その聖なる雷、同胞に使わないでくださいよ」
「手、離せ」
「……4主さん。そういえば僕ら、本気で相手の息の音を止めようと殺し合ったことありませんよね。いつも、本当にどっちかが力尽きる直前で、他の誰かが止めてましたもんね」
「俺はいつでもお前を殺したいと思ってるけどな」
「今。ここ。僕ら以外誰もいませんね。止める人はいないわけですね。……うわぁ、なんだか、久々にわくわくしてきちゃいました」

未知の経験へ心を躍らせる冒険者の表情。狭い村の外の世界に夢を見ていた頃の俺も、こんなに楽しそうな笑みを浮かべていただろうか。もう思い出せなかった。
奴は、俺の口を押えていた手を頬へと這わせ、うっとりと息を吐く。

「天空の勇者と、命をかけて戦う……。……とっても、素敵です」
「触るな穢れる」
「ねえ4主さん、僕と」

一回、やってみません?

ぱふぱふなら50ゴールドよ、と妖艶に微笑む娘を気取っているのか、首をかしげてあざとい上目使い。
その深い色の瞳に胸が高鳴る。もちろん怒り的な意味で。

9502/2 484:2015/03/04(水) 18:52:25

「お前、何がしたい?」
「何でもしたいですよ。だってもう、ラスボスも裏ボスもスキルタネ集めて各スキルカンストも錬金レシピコンプリートも全称号獲得も、全部ぜーんぶやっちゃったんです。
僕、兵士ながらに生粋の冒険者気質でしてね。常に冒険していたいんです。わくわくしたいんです。
でも、僕の世界はもう全部終わっちゃいました。だってもう10年、10年以上ですからね。そりゃとっくに遊びつくしちゃいましたよ」
「だから俺で遊ぼうと?」
「ええ。ここに来たのも10年前ですが、まったく飽きませんよ。終わりが無いでしょう。
終わりが無いって素晴らしいことですよ、本当に。僕は2主さんや9主君が羨ましい。
だって、ずっとずっと楽しい仲間たちとスリル満点の洞窟を攻略できるんでしょ。まだ終わりを見てない。
あの何にも代えがたい達成感と、全てをやりきったという恐ろしい空虚をまだ知らない。うらやましいことです」
「じゃあお前ロンダルキア行ってこい。それでブリザードにザラキ食らって死んで来い」
「僕寒がりなんです。この、あったかくて楽しくてにぎやかで終わりのない、楽園が大好きなんですよ。
ついでに4主さんのことも大好きです。あなたといると退屈しませんからね」
「俺はお前が大嫌いだ」
「そんなこと言って、本当は僕と喧嘩するの楽しいんでしょ?知ってますよ」
「くたばれ」
「ええ、くたばらせてみてくださいよ、さあ。どうせ教会に送られるだけですけどね。
だからこんなに退屈で仕方ないんでしょう。嫌になっちゃいますよ」
「お前、何か趣味見つけろよ。昼寝でもPCでも。錬金以外な」
「冒険が僕の趣味で、人生であるんです。退屈だと、僕、死んじゃうんです。お願いです4主さん、僕を楽しませてください」
「夕飯の支度の途中だ。手を離せ。宝の地図にでももぐってこい」
「なるほど、僕に勝てる自信がないから逃げるんですね。ははあ。
意外と臆病ですねえ、天空の勇者様も。まさにチキン」
「よし、表に出ろ」
「そうこなくっちゃ!」

輝くような笑顔になり、俺から手を離す。

「さすが4主さんです。覚悟してくださいね、今日こそ僕のブーメランの錆にしてさしあげますから!」
「こっちの台詞だ」

切っていた野菜にラップをかけて、楽しげに宿舎の庭へ向かうあいつを追いかける。
平凡な日常の中の、かつての冒険を思い出す血沸き肉躍るあいつとの喧嘩。
ほんの少しだけ楽しんでいるなんて、絶対に言ってやらない。

うきうきと弾んでいる、目に痛い色のあいつの背中。
自分の世界に飽きてしまって、英雄たちの集まるこの宿舎さえも退屈と感じてしまったその時は、自称生粋の冒険者のこいつはいったいどこへ行くのだろうか。
せいぜい極寒の地に行って凍死すればいいと思った。

951名無しの勇者:2015/03/06(金) 09:57:28
いいなあこの距離感

95264エロ 0/5:2015/03/23(月) 00:29:56
64の甘エロ投下
がっつりやってるので苦手な人は注意

95364エロ 1/5:2015/03/23(月) 00:30:29



もうとっくに日付も変わった時間帯、寝所に突然何者かがやって来たと思ったら唇を塞がれ、
そのまま息苦しさに咳き込むまでずっと胸元をまさぐられつつディープキスをされていたというのは
強姦として取り扱っても充分許される案件ではないだろうか。
馬乗りになって覆い被さり、鎖骨のあたりまで寝間着をたくし上げて好き勝手に振る舞っていた相手をぎろりと睨みつけると、
枕元の燭台のみが照らす薄闇の中で「ははは」と笑う気配があった。
「……何の真似だ、6主」
「うーん、何て言うか……夜這い?」
「疑問形かよ」
「いや最初はこんなことするつもり無かったんだけどさ。4主の寝顔見てたらムラっときて、つい」
「つい、で人を襲うのかお前は。色魔か」
「別に誰でもいいって訳じゃないぞ? 4主だから襲ったんだ」
「んなきっぱり宣言されても……っておいコラ。その手はなんだ」
「4主ってわりと着痩せするタイプだよな。服の上からだと分かんないけど、直に触るとちゃんと筋肉ついてる」
「話を聞け! って、あ……っ」
奔放に動いていた指が胸の先を掠めた途端、4主は思わず高い声を上げてしまった。その反応に気を良くしたのか、
6主はそこを重点的に責め始めた。くりくりと摘むように擦られては、指の腹でやわく押し潰される。
時折戯れるように強く爪先で弾かれて、その度に身体を震わせながら、4主はやがて自分の奥に
抗い難い熱が灯っていくのを感じていた。
「……ろく、しゅ」
「ん〜?」
「……ゆび、ばっか、嫌だ」
「足りない?」
「足りない……、舐めて」

95464エロ 2/5:2015/03/23(月) 00:31:07
今度は声に出さずにニッと笑うと、6主は請われた通りに舌を這わせた。
突起の周りを円を描くようになぞり、舌先を使って執拗にねぶる。ちゅくちゅくとわざとらしく音を立てて吸っては
揶揄うように甘噛みした。
「んあっ……、あ、あぁ」
「何だかんだで4主っていつもノッてくれるよな。そゆとこ好きだぜ」
「だ、って……お前、嫌だっつっても聞かないだろ……、っあ」
「それそれ。最終的には俺のこと甘やかしてくれんの。お返しに、今日はいっぱい気持ち良くしてやるから」
「……ん」
ちゅ、と触れるだけのキスが落とされ、それに応えるように4主の腕が首に回った。
次第に深くなる口付けの中、6主の手が下着の中へと侵入していく。
「あ……6主、ちょっと待て」
「うん? どした」
「……脱ぐ、から。服」
「ワオ積極的。でも俺的には自分で脱がしたいとこなんだけど」
「お前がやると伸びんだよ……引っ張るから。この間も俺のトランクス一枚駄目にしただろ」
「あーあれな! いや、あの時は失敗だった。悪い悪い」
「……別にいいけどさ。新しいの買ってもらったし」
「下着を贈るのってなんか意味深だよな」
「バーカ」
下らない掛け合いをしている間に身に纏っていたものをすべて脱ぎ捨てた二人は、改めてシーツの上にもたれた。
6主の硬い髪先が4主の耳朶をくすぐり、少しかさついた唇が首筋を辿る。むず痒さに身体を捩ると
その反応を面白がるように益々肌を暴かれた。

95564エロ 3/5:2015/03/23(月) 00:31:39
「あんま気付かなかったけど、こうして見ると結構日焼けしてんのな、肌」
「ん……、まあ、日中は農作業とかしてるし。っあ、」
「胸とか、脇とか、臍とか……日に当たらない部分は他のとこより白いから、暗いとかえって目立ってる。……ここも」
「ひあっ!」
唐突に触れられた4主の中心は未だ柔らかいままだったが、6主の掌がもたらす温度と摩擦にすぐに硬度を増していった。
一見武骨なようでいて意外に繊細な動きをする指先は、付け根の袋からくびれにかけてを幾度も往復し、
やがて鈴口からとろりとした液体が溢れ始めると今度はそこを中心に弄り出した。
4主が嬌声を上げるたびにふわりと目を細め、或いは舌を絡めて吐息を奪い、空いた手でまだ先程の余韻に浸る乳首を再び苛める。
やがてすっかり快楽にとろけ、性器からだらだらと涎のように蜜を垂らして喘いでいる4主の手を自分の牡へと導くと、
6主は眦に浮いた涙を拭うようにくちづけた。
「っあ、あぅ、ん……あっ」
「な、4主も俺の、さわって」
「ふ、ぁ?」
「お前の手さあ、普段から鍬とか握ったり水桶運んだりしてるから、マメできてるだろ?
 それで擦られると、すっげ、きもちいーんだ……、っく」
「は、なんか、ヘンタイくさ……」
「っ、いいじゃん、4主もきもちいーこと、スキだろ?」
「ん、すき……」
身体を起こして向かい合い、舌を重ねながら相手の性器を扱いていく。
その倒錯的な状況に、ひとつまたひとつと理性がゆっくり麻痺していった。
やがて6主の手が4主の後ろに伸び、つぷ、と孔に侵入した。既に互いの精でねらねらと濡れていた指先は
容易く内部に受け入れられ、熱く蠢く襞に飲まれていく。

95664エロ 4/5:2015/03/23(月) 00:32:10
「迎える準備万端、ってカンジ……、かな」
「あぅ! っく、うあ……!」
勝手知ったるとばかりに胎内を動き回る6主の指に、4主はひくひくと震えながら身悶えた。
やがてゆっくりと指が抜かれ、未練がましく糸を引いて惜しむそこを恥じる間もなく
内壁は次いで訪れた熱い楔に即座に食らいついていく。
ぽっかりと空いていた虚が満たされるような感覚に、4主は思わず恍惚とした息を吐いた。
「あ……ん、ああ……」
「っは、やっぱ、いつ入っても良いな、4主の中。俺用に誂えてあるみたいだ」
「っそりゃ、今まで何回ヤッてきたと思ってんだよ……。いい加減、んっ、カタチ覚えるって……あ、」
「まじで? じゃあ、こんなのも、覚えてんの……っ」
「あッ!? ぅあ、ひっ、ああぁ……!」
6主は4主の両腿を抱え込んでより深くまで穿つと、ずぽずぽと泡立つほどに激しく律動した。
固く張り詰めた牡が内側を抉るたびに四肢が跳ね、堪えきれずに溢れた飛沫が腹の上を白く汚す。
「は、ほんとだ。突くたびきゅんきゅん締まってくる……! 型でも、取られてるみたい、だ……っ」
「ふあっ、だから、そう言った……んっ、ふ、んぅ……!」
「ん……4主の中、上も下もあっついな……。最高……ッ」
「んっん、う、んー……!」
咥内を舌で、胎内を陰茎でそれぞれ犯しながら、6主は4主の身体を強くかき抱いた。
背中に回る手が爪痕を刻み、抱えていた脚が腰に絡む。
そのまま二人揃って我を忘れる程に貪り合い、やっと解放の瞬間を迎える頃には、相手の骨を折ってしまうかと思うくらい
力一杯にしがみついていた。

95764エロ 5/5:2015/03/23(月) 00:32:37
「あっあ、あぁ、あーっ……!」
「っく、ぅあ……!」
どくどくと放たれる劣情を、4主は自らも射精しながら受け入れた。恐ろしいまでの愉悦が全身を駆け巡っている。
二、三度腰を揺すられて奥の奥まで注がれてから、未だ繋がったままの相手の頬にゆるりと手を伸ばして汗を拭った。
「……抜かない、のか」
「……抜いてほしい?」
言外にまだこうしていたいと意志を示され、4主は小さく微笑んでからきゅう、と後ろを締めることで応えた。
すぐに硬さを取り戻した剛直が自分の中で膨らんでいく。その快感に酔いしれながら、降りてきた唇を迎えて食んだ。
「な、このまま抜かずに何回出来るか試してみないか?」
「……いいけど、そしたら明日一日分の掃除とか洗濯とか食事当番、全部代われよ。絶対立てなくなる」
「おっけーおっけー。とりあえずは二回目、な……っ!」
「あ……! ちょっと、急すぎ……あ、あぁっ」
再び勢い良く腰を振られ、今度はしがみつく力もなく4主はただ流されるままに喘いだ。
吐き出された精液が潤滑剤代わりになり、より深くまでを貫かれる。


その日は結局朝まで啼かされ続け、一日どころか丸二日は動けなくなった4主によって、6主は向こう一カ月の家事全般を命じられたのだった。

958名無しの勇者:2015/03/23(月) 21:22:11
甘々ごちそうさまです!
なんか4主がふわふわしててかわいいな

95984 0/3:2015/08/04(火) 00:07:44
84の日おめでとう!
ひさびさだけど投下

96084 1/3:2015/08/04(火) 00:08:57
とりあえず一番は顔です、と言われた時には、正直ぶん殴ってやろうかこの野郎、と思った。

そもそも訊いた自分も馬鹿だったのだ。恋に浮かれる町娘でもあるまいに、お前は俺のどこが好きなんだ、だなんて。本当に何とはなしに口をついて出た問いだったが、今にして思えば頭が沸いていたとしか考えられない。
けれど女々しいことだと自覚しつつも、気になるのもまた事実だった。別に相手の口からそれを言わせて愉悦を得ようなどとは思っていない。単純に疑問だったのだ。
顔を合わせれば悪態をつき合い、時には物理的に交戦し、お互い犬猿の仲もとい鳥竜の仲――この呼称は自分達の様子を見た第三者から勝手に名付けられたものであり、断じて自称している訳ではない――でありながら、ふとした瞬間には周囲の目を盗んで唇を重ね、身を寄せ合い、そのまま夜を共にすることもある。
いつからこんな間柄になっていたのか、もうはっきりとは覚えてはいないが、それでも4主は8主とのこの関係が嫌いではなかった。

それなのに、返ってきた答えがそんな身も蓋もないものだったら、思わず渋面を作るのも仕方のないことだろう。
「うわ、4主さん今の顔すっごいブサイクですよ。せっかくの美形が台無しじゃないですか。アイデンティティの崩壊です」
「俺のアイデンティティそこかよ。殴るぞ。つうか殴らせろこの野郎」
「暴力はんたーい。ヤですねえ、これだから単細胞のトリ頭さんは。顔が好みだって言って何が悪いんですか。むしろ褒めてるでしょう」
「悪いとこしかねえよ!」
「どこがですか? 赤が好きとか黄色が一番とか思うのと同じで、4主さんの顔が好きだと思うことは悪いことだと言うんですか。人の好みにケチつける気ですか? まあ確かに貴方は世間一般で言うところの美形で、だからこそ僕もその顔立ちが好きなんですが、それを悪だと責め立てるのはちゃんちゃら可笑しいってもんですよ。だいたい余程の特殊性癖でもない限り誰だって醜いよりは綺麗なものを好むでしょう。貴方はこの世に生まれ落ちてからただの一度も見た目で物事を判断したことがないとはっきり言い切れますか。世の中の人間全てを相手に美醜を以て嗜好を決めるなと糾弾して回るつもりですか?」

96184 2/3:2015/08/04(火) 00:10:33
一分の隙も挟む余裕もなくそうまくし立てられて、4主はただ目を白黒させることしか出来なかった。
そりゃあ確かに歪なものよりは整っている方がいいし、くすんで土気色のものよりは色艶がよい方を選ぶ。
傷がついたものより無傷のがいい。なるほど確かに自分も美醜で物事を判断しているのかもしれない、野菜とか。4主は軽く混乱していた。
「そもそも貴方、人の話ちゃんと聞いてないでしょう。そんなんでよく大所帯のリーダーなんて務まりますね。
 どうせ散々迷惑掛けまくってたんじゃないですか」
「んだとテメ、」
「僕は『一番は』と言ったんです。顔以外にもちゃんとありますよ、好きなとこ」
「は、」
「体つきとか」
「やっぱ殴る」
「あとその外観と噛み合わない口の悪さとか、理知的に振舞っているように見せかけて実は直情的だとか、
 からかわれると怒るくせに構われないとこっそり落ち込む寂しがり屋だとか」
不意にさらりと髪に触れた手に、思わず肩が跳ねてしまったのは不覚としか言いようがなかった。
8主はこうして時折4主の隙をついてはスキンシップを図り、それに動揺する様を見て愉しむという質の悪い趣味がある。
髪をかき分ける指がそのまま頬に触れ、やがて掌全体で包み込んできた。掠めたスライムピアスがちりり、と硬質な音を立て、
親指だけが下唇へと移動する。そのまま幾度も往復されて、どんどんと上昇する体温を止める術を、4主は持ち合わせてはいなかった。
「そうやって今みたく僕の挙動の一つ一つに反応して赤面してるとこ、思春期迎えたオンナノコみたいで
 似合わなすぎてチョーウケるんで大好きです!」
「この野郎!」
放った拳は難なく躱され、代わりに口を塞がれた。どのみち当てる気もなければ避ける気もなかったのだから自分も相当悪趣味だ。
こんな男にまんまと絆されてしまっているのだから。
指の腹とは違った柔らかさに唇を食まれながら、4主は嘆息したい気持ちを誤魔化すように、バンダナの結び目が揺らめく首の後ろへと
手を回した。もしかしなくても今夜はきっとこのまま朝までコースだろう。
やられっぱなしは癪である。せめて逢瀬が終わるまでの間に一回くらい、いや十回くらいは何かやり返してやろう。
4主はそう心に固く誓ったのであった。

96284 3/3:2015/08/04(火) 00:11:15

***


「それで、4主さんの方、こそ、どうなんです……?」
「っ、あ? なに、がっ」
「貴方は、僕の……、どんなとこが好きかって、聞いてんです……よっ」
「ぅあっ!? んな、きゅうに……あ、そだ、」
「?」
「8、主が……俺に、キスする、とき。身長足りないせいで、いつも下から背伸びするみたくなってるとこ……
 かわいくて、けっこう、好きだな、」
「……っぶん殴りますよ、この野郎!」
「はは、これで一回……ん、ああっ!」


果たして朝を迎えるまでに、4主が自らに科した誓いを全うすることが出来たのか否かは、
本人のみぞ知るところである。

963名無しの勇者:2015/08/04(火) 00:11:55
ちょっと1/3のとこ改行失敗しました、すみません

964名無しの勇者:2015/08/04(火) 02:30:45
84の日おめ!&投下乙!
背が低いではなく身長が足りないと表現する4主になんか萌えた
背伸びしてキスする8主もかわいいー

965名無しの勇者:2015/08/04(火) 06:14:55
8/4おめ!素直じゃないからこその饒舌8主かわいいなぁ

966名無しの勇者:2015/12/15(火) 21:43:49
しばらく巡回してない間に投稿キテター
皆さん乙です楽しかったです

967名無しの勇者:2016/04/12(火) 08:50:42
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968名無しの勇者:2016/04/22(金) 19:03:42
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97384(エロあり) 0/2:2016/08/04(木) 23:52:18
もう一年経ったとかシンジラレナイ
懲りずに今年も84投下 84の日おめでとう
エロありなので注意

97484(エロあり) 1/2:2016/08/04(木) 23:54:28

「っあ、う、は……っ」

 寝台の上で獣のように四つん這いになり、揺れる身体を捕らえて更に奥へとねじ込んでいく。
 翠髪が振動に合わせて躍り、普段は隠されている項が露わになった。

「……4主さん、」
「ぅあっ!?」

 其処へ口づけようと身を寄せれば、繋がりがより深くなる。仰け反る背が綺麗な弧を描き、ひときわ高い嬌声が響いた。
 陽に晒されることのない首筋は他の部位に比べて色が白い。ちゅ、ちゅ、と音を立てて啄む度、組み敷いた肢体がびくびくと震え、収斂する内壁が雄を締め付けた。
 それだけで意識を持って行かれそうになるのを腹に力を入れて堪え、更に唇を落とし続ける。

「ひ、ぁあ……!」
「ほーんとココ、弱いですよね。そんなに敏感で大丈夫ですか? 髪の毛が当たるだけでも、感じちゃうんじゃ、ないですか……っ」
「っさい、なわけ……るかっ、あ!」
「どうだか、」

 悔しそうにシーツにしがみつく様を嗤いながらかぷりと歯を立ててやれば、いっそう中の締め付けが増した。
 その快感に煽られるように抱えた腰をより高く持ち上げ、突き刺すように内部を穿つ。ぱん、ぱん、と肉と肉とがぶつかり合う音が部屋に響いた。

「あぅっ、ぁ、ああぁああぁ!」
「く、っあ……!」

 襞がひときわ大きく蠢き、雄を呑み込む圧が増す。4主が達してからいくらも経たずに、8主もまた溢れる熱を放出した。

「ふ、ぁ……」

 どくどくと劣情が自分の中に注がれるのを感じ、4主が甘い声を漏らす。その口端にはたらりと涎が伝い、快楽の軌跡をまざまざと残していた。
 8主は徐に手を伸ばし、今にも滴り落ちそうなその雫を拭った。そのまま腔内まで指を入れると、噛みつかれるかという予想に反してぬめる舌に迎えられる。
 ぴちゃりぴちゃりと、まるで口淫をしているかのようないやらしい水音の合間に、互いの熱い吐息が零れ落ちた。

「ぅ、ふ」
「……指、好きなんですか?」
「んんっ」

 違うとばかりにかぶりを振っておきながら、ねぶる動きは一向に止む気配はない。
 こんな時でも意地を張るかと喉の奥だけでちいさく笑い、ちゅぷ、と生々しい音と共にふやけた指を引き抜いた。

「んぅ……っ」
「はは、糸引いてる」

 しとどに濡れた指先をゆっくりと舐める。単なる唾液でしかない筈のそれも、好いた相手のものだと思うと途端に甘く感じられるから不思議だ。
 どんな甘露よりも癖になる。
 そうして8主が極上の馳走を味わっている間、漸く責め立てから解放された4主はと言えば、倒れ込むようにシーツに身を沈め、上がった呼吸を整えるように深く息を吐いていた。

97584(エロあり) 2/3 ←ミスった:2016/08/04(木) 23:56:30
「……おい、馬鹿竜」
「何ですか阿呆鳥さん」
「イッたんなら一度抜けよ。そんで退け、重い」
「え、まだ嫌ですよ。あと三回くらいはシてからじゃないと」
「殺す気か」
「平気でしょう、枯れてる訳でもあるまいに。……それに」
「ぅあっ!?」

 横たわっていた身体を強引に起こすと、そのまま背後から抱えるような体勢を取る。
 繋がったままの局部がぐちゅりと鳴り、しなやかな太腿が大きく跳ねた。

「や、待っ、まだ」
「知ってます? イッた直後の4主さんの中って、最高に具合が良いんですよ。すごく熱くて、トロットロで……すぐ抜いちゃうなんて勿体無い」
「あ、ゆす、るな、っひ!」

 一度は萎えた筈の雄が胎内でむくむくと膨れ上がっていく。
 これ以上ないほどダイレクトに突きつけられた情欲に、只でさえ敏感になっていた下肢は制止の声とは裏腹に嬉々として自分を貫く楔に食らいついた。

「はぁっ、ぁんッ! あっあ、あぁ!」
「っあー、ほんっと、きもちい……堪んない」

 蠢く肉が、内部にずっぷりと埋め込んだ楔の根元から先端まですべてにいやらしく絡みついて離さない。少し身じろぎするだけで擦れた箇所から熱が弾け、眩暈がするほどの快感を生み出す。
 頭がとろけそうなこの感覚をもっと堪能したくて、胸部に抱き込んだ相手の肌をゆるゆると撫でさする。
 ツンと尖った先端を掠める度に爪先で引っ掻いてやると、啼声にいっそう艶が増した。

「っや、ぁあ……は、しゅ、……それ、嫌だっ」
「ど、して? ココいじられるの、好きでしょう……っ」
「すき、だけど……! そうじゃなくてっ、あ!」

 親指と人差し指で摘みあげ、くりくりと捻ってやれば4主の身体は面白いくらいに反応する。すっかり硬さを取り戻した8主の砲身を、まるで射精を促すようにきゅうきゅうと収縮しながら食んでくるのだ。
 どんなに意地を張ろうとも4主自身が悦んでいるという何よりの証拠だった。
 そんな様子に気を良くした8主がそのままゆすゆすと揺さぶりをかけながら内部の熱を愉しんでいると、それまで嬌声を紡ぐばかりだった口が不意に何事かを呟いた。

「……らを、」
「っ、え?」
「……っ」
「4主さ――うわっ!?」

 聞き返した途端にしかめ面で舌打ちされ、唐突に頭を引き寄せられる。
 無理な体勢に文句を言う前に、熟れた唇が押し付けられた。
 入り込んだ舌が歯列をなぞり、咎めるように此方の舌を噛んでいく。

「……うし、ろから、ばっかじゃなく、少しはそのツラ見せろってんだ、よ……!!」

 この馬鹿竜。
 酸欠なのか羞恥なのか判別のつけかねる状況で顔を赤らめながら罵倒する4主の姿は、8主の心臓を壊すのには充分だった。

「……ああ、もう!」
「っひぁ!?」

 どんなに身体を蹂躙し、思うままに貪っても、こんなたったの一言で敵わないと思い知らされる。惚れた弱みとはよく言ったものだ。
 弱みを握られた側の8主に出来ることと言ったら、せいぜい彼が望んだ通りに動くくらいだ。
 好き勝手に振る舞っているようで、その実彼の掌中で踊らされているだけだ。

「あ――あァ……!」
「こ……して、欲しかったんで、しょう……っ!」
「んっ、あ、ぁあああぁっ!」

 無理矢理に身体を捻って真正面から向き合い、奥の奥まで押し入っていく。しなやかな両脚を肩に引っ掛け、押し潰すように暴いてやれば、紫電の目に隠しようのない欲が浮かんだ。
 もっと欲しいとねだる獣の欲望。
 いくら特殊な血が混じろうと本能の前には逆らえないケダモノだ。
 それなら獣は獣らしく、もう余計なことは考えずに目の前の贄を余すところなく貪り尽くそう。8主はべろりと舌なめずりをし、口元にまで降りてきた汗の雫を舐めとった。

「は……っしゅ、8主、も、いく……ッ!」
「4主さん……っ」

 律動を更に速め、小刻みに揺れる肢体をつよく抱きすくめる。
 やがて8主が限界を迎えた熱を胎内に叩きつけた頃、4主もまた放った飛沫で腹部を白く汚した。

97684(エロあり) 3/3:2016/08/04(木) 23:57:09


* * *

「やっぱり結局は、そういうことなんですよね」
「……何が」
「僕と貴方が。半分違う血が流れていようが、お腹は空くし眠くもなるしセックスだってしたくなるでしょう。そこらへんは普通の人間と変わんないんだよなあと」

 額に貼りついた翠の房を、8主のやや武骨な指が緩やかに梳いていく。その感触がもたらす心地良さを瞼を閉じて享受しながら、4主は確かにな、と囁き返した。

「けど、一応カミサマ連中には貴重な存在らしいからな。あんまり好き放題サカってたらそのうち説教食らうかも知れないぞ」
「んなモン腹の足しにもなりませんね。連中が何と言おうと僕は自分が食べたいときに貴方を食べて、寝たいときに貴方と寝て、抱きたいときに貴方を抱きます」
「……全部俺かよ」
「当たり前でしょう」

 言い捨てる様はやたら豪気で、触れる唇の柔らかさとはまるで正反対なのが面白い。
 4主はくつくつと笑いながら、大嫌いな竜の血を宿す青年の背に腕を回した。


 なあ、見てるかい神様共。
 こんな自分勝手なケダモノ二匹、飼い慣らそうとするだけ無駄だよ。

977名無しの勇者:2016/08/05(金) 05:04:57
おおー!84だありがたや

978名無しの勇者:2016/08/05(金) 21:12:18
今年も84読めて嬉しいよ
ありがとう
えろいなあ……

979名無しの勇者:2016/08/28(日) 14:53:57
素敵でエロい84をありがとうございます…!!
やっぱり84はいいものだ…

98084 1/2:2016/11/05(土) 21:34:42
 単なる身体上の一器官でしかない。
 食事、呼吸、それから会話。日常生活に欠かせないものだとは理解しているが、けれどやっぱりそれだけのものだ。
 それだけなのに、どうしてこうも目が離せないのか。



「4主さん」
「あ?」
「4主さんの唇って薄いですよね」
「どこ見てんだお前」

 家計簿に向かう真剣な表情から瞬く間に呆れ顔へと変貌した4主さんは、電卓を叩く手を止めて胡乱な眼差しを僕に寄越した。

「実際そうじゃないですか。薄くてのぺっとしてて、ついでに血色もあんま良くない」
「へえ」
「おまけにカサついてる」
「ふーん」
「ちなみに僕の唇は張りがあって小振りでふっくら、此方のアスカンタ産高級リップクリームのお陰でいつでもつやつやに潤ってます」
「この世で一番どうでもいい情報をありがとよ。そのまま消え失せろ」
「失敬な。大事なことですよ」
「どこが――」

 胸倉を掴んで強引に引き寄せ、続く言葉を無理矢理に封じる。
 何回か角度を変えながらじっくりとその感触を味わった後、駄目押しにぺろりと舐め上げてから徐に顔を離した。

「ほら。柔らかくって気持ちいいでしょ?」
「…………っ」

 4主さんは何も言わない。けれど、その表情だけで返答は明確だ。
 目元を微かに紅潮させ、瞬きに合わせて紫の瞳に透ける睫毛がしなる様子はまるで絵画で、目つきを緩めて黙ってさえいればぱっと見は本当に非の打ち所のない人なんだよなあとつくづく思う。まあ黙っていなくても美形には変わりないのだけれど、如何せんガラが悪すぎる。

「全く、僕の方はこんなに気を遣ってお手入れしてるってのに、貴方ときたらまるで身嗜みに無頓着なんですから。いくら元がいいからって、あんまりほったらかしだといつかその顔劣化しますよ」
「ほっとけ! ……てかお前、まさかさっきみたいなことする為にわざわざリップクリームだなんて女々しいもん付けてるんじゃないだろうな」
「ジイシキカジョー。歴とした旅の知恵ですよ。唇が荒れてたせいで細菌に感染、なんて事になったら笑い話にもならないでしょう」

 それの予防です、と舌を出して嗤ったら、4主さんは片眉をぴくりと跳ね上げるとああそうかい、と吐き捨てて再び家計簿へと意識を戻してしまった。その横顔がさっきより不機嫌そうに見えるのは、きっと気のせいではないだろう。本当に分かりやすい人だ。

 別段、今言ったことは嘘じゃない。様々な気候の土地を飛び回る上、時にはパルミドのような不衛生な街や、はたまた闇の世界のような別次元にまで足を運ぶのだ。傷口からの感染を防ぐため、僕らの旅では少しでも怪我をすればすぐに薬草を貼るし、乾燥した地域などでは必ずリップクリームを付けるようにしている。あのヤンガスですら(ゲルダさんに脅されて仕方なくとは言え)律儀にやっていたのだ。
 けれども4主さんがほんの僅かに――僕じゃなきゃ気付きもしないレベルで気恥ずかしそうに訊いたさっきの言葉も、理由の一つでない訳ではないのだ。

98184 2/2:2016/11/05(土) 21:35:31
 この人に口付けたいがために、自分の身なりを整える。

 唇に限らず、手や指も。荒れたり掠れてたりしていないか確認して、髪も念入りに洗髪して。服装も――僕と彼とのセンスの差異は置いとくとして、皺が寄ったり汚れがついてたりなんて以ての外だ。体臭にだって気を配っている。
 そうやってこの人を惹き付ける自分を形作ることで、ほんの少しでも「もっと触れたい」とこの人に思わせることが出来たなら、それだけでもう僕の人生の一勝ってものだろう。

「ねえ4主さん。僕ってこう見えて結構負けず嫌いなんですよ」
「は? ……知ってるけど」
「だから勝負と名の付くことには必ず勝ちたいんです。そりゃもう意地でもね」
「何の話を――んっ」

 言い終わる前にまた口を塞いだ。呼吸に合わせて唇をゆるゆると動かし、4主さんのそれを食むようになぞる。翠色の髪を梳いて後頭に手をやり、もう一方の手で逃げられないように肩を抱くと、微かに身じろぎをしたのが伝わってきた。
 いつもみたく立った状態だと上を向かなければいけないが、今みたいに4主さんが座っていれば僕の方から覆い被さってのキスができる。いっそ常にそうしてて欲しい。上向いたままキスし続けるのって結構首が疲れるのだ。長ければ長いほど苦しくなるし、かと言って短く済ませる気もないし。

「ん、う……」
「は……っ、……ん」

 抱き寄せた身体の厚みに少しだけ笑う。確かに身長は一歩及ばないかも知れないが、単純な体格としてならそう負けてはいない。どころか肩や胸板の厚さに関してはこの分なら僕の勝ちだ。ざまあみろ。
 ちゅぷ、と音を立てて顔を離すと、表情こそなんとか取り繕っているものの、4主さんの瞳はすっかり熱に蕩けてしまっていた。けどまあそこに映りこんでいる自分の顔も似たようなものだったのでここは引き分けだ。

「物足りない、って顔してますねえ」
「そりゃお前だろ。馬ー鹿」


 単なる身体上の一器官でしかない。
 それでもこうして磨き上げれば、この人に対する唯一絶対の武器になる。

 さながら銃弾のような、唇という存在。

982名無しの勇者:2016/11/05(土) 23:59:11
84投下乙!
4主を惹き付けるために身なりを整える8主に萌えた

983名無しの勇者:2016/11/06(日) 06:25:34
8主健気だなぁ……

984名無しの勇者:2016/11/08(火) 16:12:53
ところでここって次スレってどうしたらいいんだろう
まだ早い?

985名無しの勇者:2016/11/10(木) 19:40:43
気になってたんだよね
まだ他のスレ動いてるのかな
そもそもスレ立て出来るんだろうか

98684 0/2:2017/08/04(金) 00:49:09
世間は11で賑わってるけど懲りずに今年も84投下に来ました
ここもまた活性化してほしいなあ

98784 1/2:2017/08/04(金) 00:49:51
 目の前がぐるぐると暗くなっていく。
 思わずその場にうずくまると、珍しく焦ったように僕の名を呼ぶ声がどこか遠くからぼやけて聞こえた。


* * *


「……あれ」

 生ぬるい雫がこめかみを伝う感覚で目が覚めた。

 気が付けば仰向けでベッドに寝転がっていて、現状を把握しきれずに暫し茫然とする。
 視界に映るのはよく見慣れた天井の壁紙だけれど、自室のそれとはだいぶ違っていた。まず煤けたりひび割れたりしていないし、人の顔に似た謎のシミもついてない。端的に言って綺麗な、ごくふつうの天井だ。
 視線だけで横を向くと、読書灯のついた小さなキャビネットの上に読みかけの本が一冊置いてあって、「夏野菜のすすめ」というタイトルと一緒にトマトやキュウリなどの野菜の写真が表紙を飾っていた。
 ここは、やはり。どう考えても。

「お、気がついたか」

 ガチャ、と扉が開くとともに掛けられた声で、誰の部屋であるかを確信した。

「……4主さん」
「具合は? 吐き気したり、頭痛かったりとかは」
「いえ、別に……」

 起き上がろうと力を入れたところでくらりと眩暈がした。咄嗟に肩を支えられ、翠色の髪がほんの微かに頬を撫でる。

「っ、」
「バカ、いきなり起きようとするやつがあるか」

 普段よく言われる「バカ」とは全然違う柔らかな声音。例えるならそう、子供に言い聞かせるような。
 一瞬だけ髪の毛が触れ合うくらいに近かった顔はすぐに遠ざかってしまい、なんとも勿体無い気分になった。出来るならもう少し匂いとか温度とかを感じていたかった。

(…………、…………は?)

 一拍おいて、瞬間的に頭を過ぎった思考のあまりの有り得なさに思わず真顔になった。いくらなんでも今のはひどい。何考えてんだ僕は。

「……気持ち悪、」
「ああほら、言わんこっちゃない。とりあえずポカリ持ってきたからこれ飲んで、あと塩飴舐めとけ。ここに置いとくから」

 思わず零れた本音を、目の前の人はうまい具合に勘違いしてくれたようだった。畑仕事に荒れた手がキャビネットの上の本を退かし、空いたスペースにペットボトルと飴の袋が置かれる。ボトルのキャップが一度開封されてからゆるめに締め直される様子を、再び寝台に横たわった僕はフィルムを覗くような心地で眺めていた。
 キャップをわざわざ開けたのは、恐らく未だ手に力の入らない僕への配慮だろう。気が回りすぎていて逆に引く。何この人。なんでこんなに、

「……優しいん、ですね」
「そうでもないだろ。ていうか、いくらなんでも病人相手にいつもみたくやり合うようなことはしねぇよ」

 それだけだ。
 その言葉にほっとしたと同時に、なんとも言えないモヤモヤが胸の内に巣くう。裏を返せば、病気でもなければこの人が僕に優しく接してくれることなどありえないということなのだから。日頃の行いを棚に上げて、心の中でだけケチんぼ、と小さく毒づいた。

「ていうか、何でまた室内で熱中症になんかなったんだよ」
「あー……何か、錬金? 新しいレシピ、試してて……気づいたら、水分取るの、忘れてました」

 程よく冷えたポカリをひとくち飲み下す。独特の甘味がすうっと身体に染み入るようだ。

98884 2/2:2017/08/04(金) 00:50:24
「……試してたって、あの部屋でか?」
「はい」

 釜にアイテムを入れては吐き出され、うまくいきそうな兆しが見えたら抱えながら壁に向かってひと走り。現代科学のアレとかコレで僕んとこの錬金も走らず出来るようになったらしいけれど、長年慣れ親しんだ手法のほうが馴染みが良い。全く悪びれずに即答すると、4主さんは呆れを隠そうともせずに溜め息をついた。

「あんな空調も効かなくて換気もできないような部屋で水も飲まずに走り続けりゃ、そりゃぶっ倒れもするだろうよ」
「……僕も、そう思って水分補給しに行ったんですけど……、時既に遅し、でした」

 階段を降りているときに一瞬ふらっときて、まあ気のせいかとそのまま食堂に向かったら、冷蔵庫へと辿り着く直前に急に目の前が暗くなった。丁度洗い物をしていた4主さんがその場に居たのは僥倖だったと思うべきなんだろう。……それがこの何とも言い難い状況を導いたのだとしても。

「……4女さんは、」
「他の女主とシンシア連れて買い物に行っちまったよ。サマーバーゲンなんだと」
「……さいで」

 間が持たない。
 下手に口を開こうとしたところで、熱にやられた今の頭じゃ碌な言葉を紡げないし、そもそもあまり喋るなと牽制されるだろう。勿論怒りからではなく心配から。
 不快な訳じゃない。落ち着かないのだ。
 こんな風にこの人から優しくされることなんて滅多にないから、どうしていいか分からなくなる。いつもは息をするように湧き出る嫌味も皮肉も、今に限って枯渇中だ。困る。本当に困る。

「そうだ、ちょっとタオル替えるぞ。冷えピタ丁度切らしててな」

 額の汗を軽く拭いてから、ぬるくなったタオルが除けられ、代わりにキンキンに冷えた新しいタオルがそっと置かれる。一瞬だけ触れた指先が同じくらいに冷たくて、恐らく氷水に漬けたのを手ずから絞ってくれたことに思い当たってしまい、落ち着いていた筈の呼吸が一気に苦しくなってしまった。この人は、本当に。

「……めてください、」
「あ?」

 もどかしさをやり過ごそうと瞼を下ろした途端、ゆるゆると溶けるような眠気が思考を侵食してきた。
 4主さんの匂いに満ちた寝台で、4主さんの看病を受けながら眠りに就く。照れ臭いのも恥ずかしいのもあるけれど、それ以上に湧き上がる嬉しさが勝ってしまうのは、きっと身体が弱ってしまっているからだ。そうに違いない。

「……んな風に、優しくされたら……、惚れ直しちゃうでしょう……」

 再び暗転する視界の向こうで、4主さんがどんな表情をしていたのかなんて、僕には知る術のひとつもなかった。


* * *


「……ばか」

 声が上擦りそうになっているのに気付き、相手が眠ってしまったと知りつつも咄嗟に口元を手で抑える。頬が熱を持っているのが嫌でも分かった。
 普段はあれだけつっかかってくる癖に、狡い。卑怯だ。言葉に出来ない非難が湧き出ては沈み、胸の奥にもどかしい澱を堆積させる。
 年上とは思えない8主の童顔にかかる焦茶の髪を払い、4主はいくらか血の気の戻った頬にそっと唇を寄せた。

 こんなときでなければ素直にもなれない、お互いの頑なさを誤魔化すように。

989名無しの勇者:2017/08/06(日) 18:20:17
84投下おつ!
氷水でも手でタオル絞る4主とそこに気付く8主に萌えた

11発売でここも賑わうといいねえ

990名無しの勇者:2017/08/13(日) 00:56:54
今年も84が見れて嬉しい
投下おつです!

991名無しの勇者:2017/08/15(火) 04:00:16
投下乙です!
萌えたよ!

992名無しの勇者:2017/10/15(日) 11:33:38
投下乙!
次スレ立ててもいいかな?テンプレはこのままでいい?

993名無しの勇者:2017/11/22(水) 14:24:14
>>992 お願いします〜!!

994名無しの勇者:2017/11/23(木) 04:22:55
次スレ立てました
テンプレ追加あればお願いします
jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/3012/1511378489/

995名無しの勇者:2017/11/23(木) 05:49:25
スレ立ておつです!

996名無しの勇者:2017/11/24(金) 01:03:21
スレ立て乙!うめうめ

997名無しの勇者:2019/08/05(月) 21:34:00
埋めとく

998名無しの勇者:2020/08/04(火) 12:00:42
うめ

999名無しの勇者:2020/08/12(水) 09:48:11
うめ


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