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虐待・虐殺小説スレッドPART.4
1
:
管理団
:2007/04/12(木) 23:32:19 ID:???
AA ではない活字の並ぶ 虐待・虐殺系 の 新 し い ス タ イ ル 。
━━━━─────────────────────────────────━━━━
皮を剥がされたしぃが、首筋に大きなフックを刺されて吊され、みぞおちから股間までを
切り裂かれている。裂かれた腹からは、勝手にニュルニュルと腸が飛び出て、こぼれた。
吊された中には、ベビしぃも混じっている。
「ウゥゥゥ イタ イヨ、、、 モウ シナ セテ」
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 「イチャ ヨ ナコ チテ マチャ リ チタ」
|ミ| |ミ| ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
-、. |ミ|、 |ミ| |ミ| :
/;l |ミ|;l |ミ| ,,、 ,.,,.,.,,.,,.,..,, ,.,,. ,,.,,,.,, |ミ|i | ̄ ̄| ̄
/:;,.;ヽ,.,|ミ| | |ミ| /;,:l ミ,,,,,(★)ミ ミ(★),,,,,ミ |ミ| :| |
,:;´ ;::; ;: ; ;|ミ|.;`,、 、ー-- 、__、、ミ|_,,//,、| <ヽ`∀´> <`∀´* >、 i|ミ| :| |
l.,;:.ー、 ;;,:..;|ミ|;:..:.,;l ヽ;.:;r :;;.,;: ;:、_:;:;ヽ;l ⊂ミ 北 ) m 北 ミmヽ |ミ|i | |
 ̄ ̄|;:.;゚-,.ilヽ|/:|ミ|,; :; ;|  ̄ ̄`l>:;,. ;:( ゚,0.`o ;l: ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ i |ミ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽっ ;i|;/lヽ|ミ|;;:; ;/ |;,.: ;(´ ̄`)" ゚。;:l | 労働党 万歳 | . |ミ|, ー--、
>;:;: :;,. ;(O);:く ヽ;;.:` - ´:;: ;: ;;/ | ____ | . |ミ| ;: ;: ;:、´
/:: :; :,. ;:;l|iノ,.:;:.;;ヽ /;":;:);)(;:(;(;:;`;:, | || ★ || | i |ミ|:;: .:.,ー--、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー、,:.;;i | __ ̄ ̄__ | ,(O) ;;: ;:;: ;;:,´
::::::::::::::::::::::::::::::::::|/::::::::::::::::::::::::: \|:::::: /:;ヽi|l;;;: ;;: (゚ノ
「フォルフォルフォル、これが全自動畜産場ニカ?」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
突如、重く冷たい鉄の扉が開き、人が二人、中へ入ってきた。毛皮のコートに、これまた
毛皮の大きな帽子。その帽子に付けられた、大きな赤い星は、彼等が共産国家の兵士で
ある事を、何よりも雄弁に語っていた。
「はい、そのとおりでスミダ」
先に入ってきた男――物腰の低さや、言葉遣いからして、後から入ってきた男の案内役
であろう――は、上機嫌な上官に、この工場の概要を説明し始める。
「ちびギコを使った種付けから、しぃのニクコプンでの飼育、屠殺、解体、全て奴らの手で行われまスミダ」
鳴りやまない笑い声、絶えない悲鳴と怨嗟の声、、、
ここは彼女らの故郷より西に在る、
地 上 の 楽 園 。
384
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:39:43 ID:???
本スレデビュー作、いきます
【マッチ売りのベビ】
①
「マッチ… マッチ カッテクダチャイヨォ… 」
「マッチハ イカガデチュカァ… ヨクモエル マッチデチュヨゥ」
アブ板シティの目抜き通りに、ベビしぃのマッチ売り姉妹がいた。
人々は家路を急ぐもの、これから繁華街へくりだすのか うほっな表情のもの
すでに一杯ひっかけたのか、顔を赤らめているもの・・・
決して人通りがまばらというわけではなかった。
しかし、ベビたちの前で足を止めるものはいない。
ライターだって100円で買えるいまどき、マッチを買うものはいない。
それにしぃが売るものだなんて誰も買いたいとは思わない。
むしろ
「往来の邪魔だ!」
と蹴飛ばされないだけ幸運でもあるのだ。
それでも夕闇はどんどん迫ってくるし、街並みを通り抜ける風も大分冷たい。
冷たい、というより「木枯らし」と表現するほうが正しいかもしれない。
季節は秋深まっているのだから。
「アニャァ… ダレモ カッテクレナイネ…」
「チィ、モウ ヤデチュヨゥ! ハヤク カエリタイデチュヨゥ!」
とうとう耐えかねて、ベビの一匹がぐずりだした。
もう一匹のベビも、ぐっと涙をこらえてそっと寄り添う。
「ミィモ カエリタイデチュ… オナカ チュキマチタ…」
「オテテモ アンヨモ チュメタイ デチュ… コンナノ マターリ ジャナイデチュ…」
木枯らしのなか、大分長いことマッチを売り続けていたのであろう。
ピンク色のお鼻も、淡い桜色のお耳も、今では真っ赤になっている。
マッチの入った籠を持つ小さなオテテは、すっかりかじかんでしまい、手を開くのもやっとの状態だ。
ちっちゃなアンヨもすっかり冷え切ってしまい、痛みすら感じている。
うちに帰りたい。
そう思うのだが、帰るわけには行かなかった。
「 コノママ カエッタラ ママニ チカラレマチュ…」
そう、この幼い姉妹に『マッチ売り』を命じているのは、他でもない姉妹の母なのだ。
「……マンマ、ダッコ チテクレナイ デチュネ…
アンナノ マンマジャナイ デチュ! ギャクサツチュウ ト イッショデチュ!」
「デモ マエハ トッテモ ヤサチイ ママ デチタヨォ…」
姉妹の母親は、いわゆる「アフォしぃ」だった。
姉妹が生まれた当初は、確かに可愛がり世話もしてくれた。
しかし姉妹がベビしぃになった頃、母しぃには男が出来た。
以来母しぃは、この姉妹がすっかり疎ましくなったのだ。
今まで養育費としていたお金は全て男との交際に消え、
それでも足りない分は、姉妹を使い金を稼がせている。
母しぃにとって姉妹はお荷物でしかないが、こうやって寒い街路に立たせ、大して売れもしないものを売らせ
売り上げがあれば全て取れば良いし、寒さで野たれ死ねばそれに越したことは無い。
そのくせ二人がすっかり冷え切った体でうちに帰ってきても、売り上げが無ければ激しく叱りつけた。
それでも姉妹はこんなどうしようもない母親を、未だに母として慕おうとする。
それは時々みせる昔のように優しい母の一面があったから。
だがその「優しいお母さん」は、単にその日男と愛し合い非常に気分が良いだけのことで、
姉妹のことを愛しているからではない。
たまに与える甘いお菓子も、男からの貰いもので自分の口に合わなかっただけ。
そんなことを知る由も無い姉妹は、自分たちが良い子にすれば、母の言いつけをちゃんと守れば
また昔のように優しい母でいてくれる・・・そう信じている。
完全に「虐待」の泥沼の中にいるのだった。
385
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:40:40 ID:???
②
「チィタン、モウスコシ ガンバルデチュ。 キット シンセツナ ヒトガ カッテクレルデチュ。」
「…ウン デモ モウ オテテモ アンヨモ チュメタイデチュ…」
ハァッとかじかんだ手に息を吹きかけ、少しでもぬくもりを得ようと試みる。
ほんの一瞬だけ暖かさを感じるが、すぐに冷たい木枯らしによって温もりは奪われてしまう。
再びかじかみ始める手を見つめ、ベビたちはより悲しみにくれる…
ふと、ミィと呼ばれているベビがかごの中のマッチを見つめ、何かを考え始めた。
自分たちが持っているのは、マッチの入った籠。
そして自分たちが今求めているのは、ぬくもり…
「ハニャッ! コノ マッチデ アタタマリナガラ ウレバ イインデチュ!
ソウスレバ マターリシナガラ マッチ ウルコト デキルデチュヨゥ!」
「ハニャァァ! スゴイデチュヨ! ミィタンハ カシコイ デチュゥ!」
本来売り物であるはずのマッチを消費してしまったら、それこそ問題なのだが
ミニマム脳なベビたちにしては十分考えて導き出された結果なのだろう。
ミィはさっそく籠からマッチ箱をひとつ取り出し、シュッとマッチをする。
シュワッと音を立ててマッチの炎は二人をやさしく照らす。
「ハニャァァ… アッタカイ…」
「ハニャーン… マターリ デチュヨゥ…」
二人はマッチの灯に手をかざし、そのぬくもりを感じていた。
しかしそれも束の間のこと。
マッチ一本の炎はたちまち風に吹き消されてしまう。
「ア アニァャ・・・」
「キエチャイ マチュタ…」
やや呆然と見つめる姉妹。
ベビたちにとってマッチの炎はもっと強く燃え続けるだろうはずのものだったのだ。
「モウイッカイ ヤルデチュ!」
「ウン! 」
いともたやすく消えてしまったマッチの残りくずを捨て、新たなマッチをする。
シュバァ…
リンの燃える香りを立てながら、再びマッチに灯がともる。
二人は小さな炎に小さなオテテをかざしてぬくもりを得る。
「ハニャ…オテテモ アッタカーイ デチュ」
「チィノ オテテモ!」
小さな炎でも、二人の冷え切った小さなオテテを暖めるには十分な炎なのかもしれない。
小さな炎を、今度は大切に大切に、消えないように注意しながら燃やして暖を取る。
しかし、ぴゅうと吹いた風が、いとも簡単に吹き消してしまった。
「ア、アァ…」
「マタ キエチャッタ… モウイッカイ ヤリマチュヨゥ!」
「デモ、ミィタチガ ツカッチャッタラ マタ ママニ チカラレマチュ」
「ウゥゥ… チィタチハ マターリ デキナイ デチュカ…」
温もりを得たい。
たったそれだけの願いも自分たちには適わないのだろうか
そんな悲しみに二人が支配されかけたときだった。
386
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:42:04 ID:???
③
「話は聞いたんだからな! ぐすっ」
「グスッ もう心配いらないモナ。」
勢いよく登場したのはモナーとモララーだった。
しかもなぜか、わざとらしくむせび泣いている。
「?? オニィタンタチ ダレデチュカ?」
突然現れた二人に姉妹は驚き、後ずさりする。
そりゃそうだ。
優しく微笑みながら、ではなくむせび泣き…見ようによっては「漢泣き」している
二人組みが登場したのだから。
しかし、そんな心配をよそにモララーは涙を拭きながら、姉妹に声をかける。
「さっきから君たちの事を見ていたモナよ。
こんなに寒いのに、大変だったモナね。辛かったモナね。
でも、もう心配いらないモナ!」
「あぁ!ベビちゃんたちはマッチで温まりたいんだろう?
だったら俺たちがそのマッチを買ってやるんだからな!」
「マッチ カッテ クレルンデチュカ??」
「ああ!」
「そうモナ。それにそんな小さなマッチじゃ十分温まらないモナよ。
お兄さんたちが、そのカゴのマッチを全部…じゃ厳しいから、
半分買い占めてあげるモナ!」
「ハニャ?! ハンブン カッテ クレルンデチュカ?!」
「ハニャーン! オニイタン タチ マターリノ ツカイ デチュネ! チィ ウレチイ デチュヨゥ!」
「よ〜し!そうと決まればまずは場所を移動しよう!
こんな風の通り道じゃ、すぐに消えちゃうんだからな!
裏の空き地ならば風も通らないし人目にもつかないから
安心して火をつけて温まることが出来るよ!」
「じゃあさっそく移動モナ!ベビちゃん達、おいで。ダッコで移動モナ♪」
「ハニャ! ダッコ?! ダッコ チテ クダチャイ!」
「アニャ! ミィモ! ミィモ ダッコ チテクダチャイ!!」
ダッコにすぐに反応した姉妹は、モナーの腕に飛び込んでいく。
小さなベビをひょいっとダッコするモナー。
その顔は優しさにあふれている。
「アニャァァン… マターリ デチュヨゥ…」
「オニィタンタチ ヤチャチクテ テンチチャマ デチュ…」
「はははッ 天使だなんて大げさモナ。」
「そうだよ。今幸せを感じているのは俺たちのおかげなんかじゃなくて、
今まで辛いことを我慢して耐えたベビちゃん達の頑張りがあるからだよ。」
「アニャァァ…チィタチ ガンバッタカラ マターリデキルンデチュネ!」
「ミィタン、ヨカッタネ! ウレチィネ! イッパイマターリナンダヨ!! 」
「ハニャー… ホントニ カゼガ フイテコナイデチュ」
「サムクナイネ 」
「そうだろう、ここなら風も吹き込んでこないから、ゆっくりと火に当たることが出来るよ。」
モナーとモララーが連れてきたのは、ちょうどビルの間にぽっかりと開いた空き地。
なるほど、確かにここならば吹き込む風はなく、マッチのような小さな炎で暖を取るには最適だ。
「ネェネェ、オニィタン アレッテ ナンテカイテルノ? 」
ふと、ミィが壁に書かれた文字を指差して尋ねた。
そこには、スプレーで綺麗に落書きされた文字がでかでかと書かれていた。
「 虐 殺 愛 」と。
387
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:43:10 ID:???
④
「あぁ、あれね。あれは『抱擁愛』って書いているんだよ(笑)。」
「そう、ホウヨウ。ダッコって言う意味だよ(笑)」
にたにたと笑いながら、全く逆の意味を伝える二人。
当然ベビたちに文字が読めるわけが無い。
「ハニャァァ! ダッコ?! チィ ダッコダイチュキ! 」
「ミィモ ダッコ ダイチュキデチュヨゥ! ヤッパリ オニィタンタチ ダッコノ テンチチャマデチュヨゥ! 」
自分たちの運命がしっかりと決まってしまったわけだが、無知というのは悲しいかな。
未だにこの二人がマターリのつかいだと信じてやまない。
文字が読めなかっただけではない。
「虐殺愛」と書かれた文字の後には、真っ白い、大きな十字架が描かれていたのだから、二人が天使と
勘違いしたのも無理はなかった。
すっかり自分たちを信用しきっているベビたちを優しく地面に置き、モララーは空き地の隅から何かを持ってきた。
それは一斗缶のようなもの。
重そうに抱える様子から、中身は液体であろうことが予想される。
「さ、さっそくベビちゃん達をあったかくしてあげなきゃな!
…そのまえに、まずはこれを…!」
というなり、手にした一斗缶のようなものからミィにバシャバシャ〜と中の水をかけた。
「ウミャァァァァ!! チュ、チュメチャイデチュヨゥ!! チャムイデチュヨゥ!! 」
すっかりずぶぬれになってしまい、一気に寒がり始めるミィ。
中の水は腐っていたのだろうか。
なにやら刺激臭もあたりに立ち込める。
「イヤァァ…ン ミィタンヲ イジメチャダメェ! 」
チィは慌ててモララーの足元に駆け寄り、ポカポカとその足を叩き始める。
もっともベビのネコパンチなんて痛くもなんとも無いので意味が無いのだが。
涙と鼻水をたらしながら必死に抵抗しようとするチィちゃんをひょいっと持ち上げ、モララーは優しい微笑を見せる。
「寒そうで可哀想かい?でも今感じるこの寒さが、ミィrちゃんをもっと、も〜〜っと暖かくして、
最高のマターリをあげることができるんだよ!」
「そうモナ!さっきも言ったモナ。
『苦しいことを我慢した人に、幸せが来る』んだよってね♪」
「ソ ソウナンデチュカ… ジャァ ミィタン ガンバッテクダチャイ! マターリノタメデチュヨゥ! 」
よく分からないが、この後に最高のマターリがある、そのことだけを理解したチィは、泣くのをやめてミィに声援を送る。
「チャ…ヂャ…ヂャム゙イ゙デヂュヨ゙ゥゥ マ゙ッヂ… マ゙ッヂグダヂャイヨゥ…」
声援を送られているミィはそれどころではない。
寒くてたまらないのだろう。ガタガタ震え続けている。
いくら寒い中で行水をさせられたにしては若干異常な寒がり方だが…
「マ゙ッヂ…マ゙ッヂ…グダヂャイ゙…」
「ははは、ミィ゙ちゃんはせっかちさんだなぁ!それじゃ、ハイ、マッチ。
一本二本じゃなくて、盛大にいっぱい使うモナ♪なんせマッチはまだまだあるモナよ。」
ずぶぬれになり、ガタガタと震えながらヨタヨタとモナーとモララーの元へ歩み寄ってくるミィ。
その様子をおかしくてたまらない、というように必死に笑うのを押し殺しながらモナーはマッチを一箱、ぽいっと放り投げる。
「マッ゙ヂ… マ゙ッヂ…」
ガタガタと震えながら、ちいさなオテテでマッチを拾い、さっそく火をつけようとする。
しかし震えているせいでマッチをうまく取り出すことは出来ないし、擦ることも出来ない。
「ウニャ… ヒヲ…マチャーリ…」
パラパラとマッチをこぼしながらやっと3本ほど掴み、何度か失敗しながらもようやくマッチをこすることに成功する。
388
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:44:38 ID:???
⑤
しゅばぁぁぁ……
小気味良い音を立てながら、マッチに灯がともる。
先ほどのように1本ではないので火も大きめだ。
これならさっきよりも十分温まることが出来る…
「アニャァ…」
うっとりとその火に手をかざし、マッチの炎で温もりを得て、まさしくマターリが始まった
と、言いたいトコロだが!!!
しゅぼぼっ!!!
「ハ、ハニャニャ?!!??!?!?」
突如、マッチにかざした手が炎に包まれる。
慌ててマッチを投げ捨て、火のついたてをブンブン!とふり火を消そうとするが火はあっという間に燃え広がる。
「ハ…ハニャァァァ!!」
ものの数秒で火達磨となってしまった。
「タチュケテ!! タチュケテェェ!!! チィタァァァン!!!」
「ア… ア… 」
「ダデュゲデ!! ヂィダァァァン!! ナッゴォ ナッゴォォォォ!!! 」
「ア… アニャァ…」
ミィが火達磨になって言う久様子を成す術も無く見つめるだけのチィ。
モナーとモララーを助けてほしいとばかりに見つめる。
しかし、炎に照らされている二人の顔は、焦った様子など無くニコニコとしているだけ。
「やぁ〜さすがにガソリンは引火性が早いモナ。」
「ただのガソリンじゃないからな!北極でも使用されちゃう寒冷地仕様だからな!」
二人の話からすると、どうやらミィが行水させられたのはタダの水ではなかったようだ。
寒冷地仕様のガソリン・・・
ガソリンは気化する際に熱を奪う。
それが寒冷地でもしっかり気化できるようになっている寒冷地仕様のガソリンを浴びせられたのだから、
ミィのあの異常な寒がり方は理解できる。
「オ、オナガイチマチュ! オニィタンタチ ミィタンヲ タチュケテクダチャイ! ナッコチマチュカラァァ!!」
必死にミィの救出を懇願するチィだが、当然その願いは受け入れてもらえない。
「え〜?何を言ってるモナ?せっかくミィちゃんは火に包まれて暖かくなっているのに??」
「そうだ、チィちゃんも暖まりたいんだよね?だったら一緒にダッコしたりしなよ(笑)」
そう言ってモララーは、自分の胸にひしっとしがみついているチィを引き剥がし、
燃え盛るミィのもとへぽ〜〜んと投げた。
「ギャンッ!! イチャイ… ヒィッ !!」
投げ下ろされたチィには痛みを訴え泣いている暇などなかった。
目の前に、火達磨になって焼け爛れながらもなお生きている自分の姉妹が近づいてきているから。
「ヂィダン… ダズゲデ… ダズゲゲ…」
「ヒッ… イ…イヤァァァ… コッチクルナデチュヨゥ!! 」
ずるっずるっと這いながら焼け爛れた体から炎を上げながらミィは近づいてくる。
その姿にミィの面影などなく、立派な化け物と化している。
その姿にすっかり腰を抜かしてしまったチィはうまく逃げることが出来ない。
そうこうしているうちにミィに追いつかれてしまった。
「ダズベゲ… ナ゙ッゴォァ… ヂィダン… 」
「ヤ… ヤァァヨォォウ!! ハナチテェェェ!! 」
がっしと右足を掴まれてしまったチィは、必死に抵抗する。
足をブンブン振りなんとか振りほどこうとするが、ミィの手は離れない。
「ハナセェェェ!!」
とうとうガスッガスッと自分の姉妹を足蹴にしてその手を振りほどいた。
しかし、その足にはミィの炎が引火してしまっている。
「アニャァァァ!! イヤァ!! イヤァァァ!!!」
半ばパニックになりながら、チィは必死に炎を消そうと自分の足を振り回す。
しかしどんどん炎は自分の毛を伝って燃え広がろうとしている。
このままではミィの二の舞だ。
「オミジュ! オミジュゥゥ!!! 」
この火を消すには水が必要。
何とか水はないか…というその時。
水の入った大きな缶が目には飛び込んできた。
「オミジュゥゥ… ケサナキャ… 」
一目散に駆け出し、チィは水の入った缶に飛び込む。
「あ、馬鹿!」
389
:
淡麗
:2007/09/06(木) 14:50:52 ID:???
⑥
ボォォォォォォン!!!!
チィが水缶に飛び込むのとモララーが叫ぶのが重なった瞬間
轟音とともに水缶から火柱が上がり、チィの体は炎に包まれた。
「ハギャァァァァァ?!?!」
何が起こったのかわからず火達磨になり、大暴れのチィ。
がたーんと水缶は倒れ、火達磨のちぃと炎が流れでる。
もうお分かりと思うが、チィが飛び込んだのはモララーが持ってきたガソリン缶だったのだ。
ガソリンを水と間違え飛び込んでしまうとは。
あきれながらも爆笑するモナーとモララーだが、炎にくるまれているチィの様子がミィとは違う。
げぇげぇと炎を吐き出している??
「ブャ゙ォ゙ゲェギャアァァァァァ!!!!」
二人が聞いたこともないような悲鳴を上げながら燃え続けるチィ。
急におなかが膨らみ始め、ジタバタもがいたと思うと
ボンッ!!
臓物を炎の中に撒き散らし破裂してしまったのだ。
その様はまるで花火のよう。
「うおぉぉ… ひどい有様モナ。」
「ガソリンを飲み込んだんだろう。こんなになるなんてな…」
さすがの二人も、爆発の様子に驚いているようだ。
すっかり動かなくなったベビたちを一瞥しながら、モナーがミュージカル役者よろしく手を振り上げ叫ぶ。
「ほんと、可哀想なベビちゃん達モナ!」
それを見てモララーは、ベビたちの遺品となったマッチを一つ取り上げシュッと擦ると、タバコに火をつける。
一仕事の後の一服か。
ふう〜っと紫煙を吐き出し、モナーは語りだす。
「そうでもないさ。
辛い労働から解放されて、ダッコでマターリできたんだから本望だろ。
それに、バイオリズムどおりの人生じゃないか。」
「…? あぁ、あれね。苦しみの次には幸せが来る…
裏を返せば、幸せの後には悲しみが来るってことモナね♪」
はははと笑いながら、モナーとモララーは立ち去る。
未だに燃え続けるベビたちを残して。
390
:
魔
:2007/09/09(日) 15:52:13 ID:???
>>143
〜より続き
天と地の差の裏話
『まとめ』
※
『今月○日午前○時頃、××商店街で中学生の少年一人が、何者かに殺害される事件がありました。
遺体は、額に鋭利な刃物で刺された痕があり、右腕が現場から消失していました。
警察は目撃者からの証言などを頼りに、捜査をすすめていく方針・・・』
うっすらとノイズが掛かったテレビから、そんなニュースが報道されていた。
「・・・チッ」
自分の部屋でそれを観ていた男、ギコはその事件の最初の被害者だった。
青い身体と濃い緑色をした瞳は、種族特有の雄々しさを放つ。
※
メイと名乗った被虐者に予想だにしない攻撃を喰らってから一ヶ月。
その間、暴君を司る男は、この一ヶ月で更におかしく、イカレていった。
『オブジェにしたモララーの腹の中に、メイを虐殺してぶち込む』のを目標にした時の事だ。
どんなに熱くなっても、自分を見失うことなんて全くないのがギコであり、
また、どんなに冷静でも頭のネジがはずれているような思考を持っているのも、ギコなのだ。
(いつ捕まえられるかわかんねェから、剥製にでもするか)
虐殺した後のモララーを見て、ギコはそう思ったのだ。
ここでは、あえて虐殺対象が一般AAだったというのは無視しておく。
普通ならば、『剥製にする過程の内で虐殺をする』という流れになるだろう。
だが、ギコは殆どの行動を自分の感情を優先として行っている。
メイをモララーの腹にぶち込む予定も、モララーをオブジェにした結果も、何のプランもない感情だけの行動で生まれた事。
メイの事がニュースで初めて報道された時は部屋を真っ赤にリフォームしたこともある。
逆に、その時のやり方が不覚にも自分好みの結果となり、それにハマッて他のことは考えなくなったりと極端だ。
タガが外れ、虐殺厨と化したギコは『暴力で繋がった仲間』を中心に、殺人を犯していた。
骨の髄まで恐怖に染め、メイを殺す為の実験台として扱ったつもりが、一般AAの殺害が齎す快感に、溺れていたのだ。
ニュースが違う内容に切り替わった所で、ギコは足元に目線を落とす。
そこには一人の男が手足を縛られ、さるぐつわを噛まされ横になっていた。
その目からはとめどなく涙が溢れ、身体は冷房をかけていないのに酷く震えている。
その男はタカラという名前を持ち、かつてギコと対立していた者だ。
※
タカラは他とは違っていた。
ギコと関わった奴らの中で唯一、力強くギコに反発した男。
その腕っ節も、ギコには及ばないがかなりのものだ。
逆鱗に触れるどころか、しょっちゅう殴りかかってもいた。
だから、ギコに関わったAAの中では病院送りになった回数がずば抜けている。
いつもすぐ退院してきたが、その回数が増える度にタカラの仲間は減っていった。
その理由は、タカラについていけなくなったり、ギコに引き抜かれたりと様々。
しかし、仲間が一人もいなくなっても、タカラは己の正義を信じてギコとぶつかり合った。
だが、今回は違った。
虐殺厨になったギコに捕まり、『虐殺』を宣言されたのだ。
暴力が襲ってくるのではなく、死が自分を穿つ。
タカラの心は恐怖でいっぱいになり、もはやギコの傀儡と全く変わりなくなっていた。
※
「最近は物騒だよなァ・・・虐殺厨の他にも殺人鬼がうろついててよ」
「・・・」
目線を落とし、涙目のタカラに話し掛ける。
案の定といったところか、タカラはこちらを見る事すらなかった。
唯ひたすら、糞虫のように震え、怯えていた。
391
:
魔
:2007/09/09(日) 15:52:46 ID:???
「・・・フン」
腰を上げ、机に立て掛けてあった棒に手を伸ばす。
赤錆に塗れたその棒は、どこかで拾った鉄パイプ。
虐殺に使われる一般的な道具だが、吸った血が他とは違っていた。
ゴリ、と床を鈍器が擦る音が響くと、タカラの身体がわずかに跳ねる。
水色の身体から溢れる脂汗は、見ていて不快でしかない。
「お前らしくねェな。いつも俺を違う意味で楽しませてくれたのによ」
パイプの先をタカラの身体に宛がい、何かを探すように這わせる。
頬から首、胸と腹を通って右腿に来た所で、手を止めた。
「・・・」
すう、と肺に酸素を集め、鉄パイプを振り上げる。
綺麗な曲線を描く、水色の腿が今から自分の手によって形を失う。
骨折の事を『新しい関節が出来た』なんて冗談、誰が言い始めたのか。
ギコはそんなことを考えながら鈍器を握りしめ、一気に振り下ろした。
「ぐぅぅッッ!!!」
許容しがたい鈍い音がして、タカラの上半身が大きく跳ねる。
直後、恐怖で震えていた水色の身体は、痛みに悶えるように暴れ始めた。
タカラの腿は鉄パイプに沿って陥没したかのようになり、そこだけが赤黒く染まっている。
切断、とまではいかなかったが、手応えからして骨は綺麗に砕いたようだ。
上半身が暴れる度、少し遅れて脚がぶらぶらと動くのがまた面白い。
「は。糞虫みてーな反応しやがって」
さるぐつわの奥でもごもごと喚くタカラを眺めながら、立ち上がる。
涙と涎をばらまく顔、脂汗だらけの身体、そして脚へと視線を流す。
皮や肉の潰れ具合から、もうそのまま引っ張ってもちぎれそうだ。
しかし、その赤黒い傷をまじまじと見詰めていると、何か引っ掛かるものが。
(・・・ああ、そうか)
あまり深く考えずとも、靄はあっさりと晴れた。
ギコはおもむろに陥没した腿を、鉄パイプの先端で押し潰す。
「んがぁぁぁぁ!! あああぁぁぁぁ!!」
ぐりぐりと捏ねるのに併せ、タカラが布に噛み付きながら叫ぶ。
もし歯と歯の間にあるものが舌だったら、既にかみちぎっているかもしれない。
ギコが連想したのは、『挽き肉』だった。
鈍器と砕けた骨が全てを破壊し、それに近いものと化していたのだ。
肉をいじるというのは、虐殺で必ずする行為だし、それを好きになれないと虐殺は行えない。
ギコは何度も鉄パイプを持ち上げ、狙いをずらしては押し潰し、捏ねるを繰り返す。
その都度聞こえるねばっこい音、骨がすり潰されていく音。
そしてなにより、その感触とタカラの悶絶ぶりが愉快でしょうがなかった。
「ううぁ、があああぁぁぁァ!!」
「ハハッ、きったねェ声・・・」
何回目かの押し潰しで、手に伝わる感触が緩くなってきた。
肉片もかなりの量が散乱し、血だまりが床を汚している。
どうやら完全にちぎれてしまったようで、 脚を触ってもタカラ側に反応はない。
当の本人は寝そべりながら天を仰ぎ、自分の脚がどうなったかを見たくないようだ。
というよりも、縛られて自由のきかない身体で、必死に痛みから逃げているような。
どちらでも構わないが、確実に疲弊はしているようだし、扱いやすくはなった。
粗い呼吸と激しい上下動をする腹部を舐めるように見詰め、余韻を楽しむ。
暫く堪能した後、邪魔になった脚を取り除く為、足を縛っていた紐を解く。
タカラから紐がするりと離れた途端、急にもう片方の脚がこちらに向かった。
「っ!?」
392
:
魔
:2007/09/09(日) 15:53:46 ID:???
ギコは身体を引く事で、それを間一髪で回避。
と同時に、その脚を軽快な音をたてて掴んだ。
タカラを一睨みすれば、そこには少しの怒りが混じった、絶望に染まった表情があった。
「・・・っ」
「悪ィ、やっぱりお前はお前だったな」
歯を見せるように笑い、足首を掴んだ手に力を込める。
骨が軋む不快な音がすると、タカラの身体がまた暴れ始めた。
鉄パイプを一度床に投げ、踵をわしづかみにする。
抵抗が酷くなる前に、ギコは一気にそれを捻ってあらぬ方向へと曲げた。
「ぐっ!!!」
皮と繊維と筋がちぎれていくのが、耳と手を通して全身に伝わるのがわかった。
対するタカラはそれが理解できないのかしたくないのか、顔面蒼白で目をひん剥いてそれを見ていた。
既に片脚を潰しているのに、その反応はかえって新鮮で、かつ滑稽だ。
「どうした? そんな驚いたカオしてよ」
ぐりぐりと取れかかった足を弄りながら、喉を鳴らして嘲笑う。
そして、そのままもぎ取り自身の腹に投げてみる。
水色の足は腹の上をそのまま跳ね、床に転がり落ちた。
「ふ・・・っく・・・」
と、唐突にタカラが涙を流し始めた。
それは恐怖に苛まれて、耐え兼ねた所に泣きわめくそれに近い。
先程より更に酷く、極寒の地に放り出されたかのように震える水色の身体。
タカラの精神は今、更に崩壊し始めようとしていた。
「そう泣くなよ。AAの身体ってのは元々壊れやすいモンだ」
タカラの左脚を持ち上げたまま、ギコは自分の感性で物を言う。
そして、床に倒していた鉄パイプを拾いあげ、それを水色の膝に宛がった。
「特に関節はな」
コンコン、と鉄パイプの先端で膝を叩き、逆手に振りかぶる。
後は居合の如く、一気にタカラの膝を打ち抜いた。
「っっあ!! がああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
凄まじい轟音がして、文字通りそれは爆発した。
まるで至近距離から銃火器で撃ち抜かれたかのように、肉と骨の破片が飛び散っている。
何も知らない他人が見れば、タカラはトラックに轢かれ、両足を巻き込まれた哀れなAAである。
だが、この惨たらしい傷は紛れも無く『ギコが鉄パイプでつけた』もの。
しかも拷問のように何度も打ち付けたのではなく、ほぼ一振りでその脚を粉々にしたのだ。
「はははっ! だから脆いって言ったろうが」
切断された脚、タカラの臑を投げ捨て腹を抱えて笑うギコ。
怯えては叫び、再度怯えてまた叫びと、スイッチを交互に切り替えているようなタカラが非常に愉快で堪らない。
もし対象が糞虫だったら、その切り替えの合間にダッコだのコウビだのと命乞いを挟むだろう。
だが、今目の前にいる芋虫は一般AAであるし、自分と対立をしていた者だ。
さるぐつわを噛ませていなければ、不快さを纏わり付かさせた罵倒しかその口からは出ないかもしれない。
(・・・さて、吉と出るか凶と出るか)
ギコは、タカラの暴れっぷりを眺めながら、小さな葛藤をしていた。
『被虐対象者の慟哭』が最も好きなギコは、虐殺厨になってからそれについて悩まされていた。
糞虫の罵倒ならば、耳にタコができるほど聞いたし、回避方法は腐るほどある。
しかし、見ず知らず、或いは自分に不満がある一般AAを虐殺する時には、少々問題ができていた。
もし対象が憎悪の目でこちらを見ていれば、心を折るのは非常に難しい。
心身共に感服させてからの叫びでなければ、本当の爽快感は得られない。
393
:
魔
:2007/09/09(日) 15:54:50 ID:???
タカラの慟哭を聞きたい。
だが、罵倒は絶対に耳に入れたくない。
『変態』とも『狂人』とも取れるギコの思考。
自分にしか理解できない賭けに挑むか、そのまま身体を破壊していくか。
(・・・でもなぁ、あの反応を見たらなあ)
聞かずにはいられない。
ギコの奇妙なこだわりは、もはや性癖と化していた。
妄想が膨らみ居ても立ってもいられなくなり、鉄パイプを投げ捨てる。
そして、さるぐつわに手をかけた。
「あ! っが・・・」
乱暴にそれを解いてタカラの顎を掴み、眼前に持ってくる。
今の自分の顔は、どんな風に相手に映っているだろうか。
血走った目で見詰めてくる、鼻息の荒い変態だろうか。
それとも、AAの皮を被った悪魔か何かだろうか。
「今、お前の眼に、何が映っているか言ってみな」
はち切れんばかりの気持ちを、必死で抑えながら質問をする。
それでも腕の震えは止まらず、いっそこのまま握り潰したいと思ってしまう。
早く答えが欲しい。一秒が十秒にも感じる。
焦らされるのは好きじゃない。興奮が憤怒に変わる前に、早―――。
「・・・ぃ」
と、タカラの口元がかすかに動いた。
ほぼ同時に聴覚に全神経を集中させていく。
対象の喉から湧き出る空気の振動をかき集める。
『こんなやつに、ころされたくない』
虚ろな目をしつつ、タカラは確かにそう言った。
「・・・ッハ」
最初に洩れたのは、渇いた笑いだった。
一瞬にして興奮は冷め、心臓も落ち着きを取り戻す。
すると、急に発情していた自分が馬鹿らしくなり、額に手を宛てて更に笑う。
狂気に満ちたものではなく、一泡吹かされた時に出るような笑いだ。
「はははっ」
やがて笑う事すらも馬鹿らしく思い、大きく息を吐いて芋虫を見詰め直す。
その顔は形を歪め、もはや表情は読み取れなくなっていた。
それは何故か、答えは至極簡単で、自分がタカラの顎を握り潰そうとしているからだ。
「あーあ、また、ハズレかよ」
吐き捨て、タカラの顎を掴んでいた手に力を込める。
骨が軋むより先に、ぐしゃ、と湿った音をたててそれは弾けた。
「〜〜〜!!!」
もう言葉でもない叫びなんて、聞いてもつまらない。
また暴れるスイッチが入る前に、そのモーターサイクル顔を拳で爆ぜさせた。
「・・・クソが」
死体を蹴り飛ばし、あいた空間に腰を落とす。
虐殺で散乱した肉片は部屋を汚し、ブラウン管の光を虫食いのように遮断していた。
ふう、と溜め息をつき、血と肉に塗れた右手を眺める。
「あの糞虫・・・」
指の欠けた手が、心の中の何かを駆り立てる。
宛もないのに、やるだけ無駄かもしれないのに、また身体が勝手に動く。
これで何度目の『我慢ならない』なのだろうか。
ギコは立ち上がり、血を拭って玄関に足を運ぶ。
そして今、失敗した虐殺の余韻を持って『メイを捜しに』出掛けた。
※
物語は止まらない。
歯車は噛み合わないと回らない。
ひかれあうのは必然的なものであり、それは運命なのかもしれない。
ギコの願い、念いは、もうすぐ叶おうとしていた。
394
:
魔
:2007/09/09(日) 15:55:48 ID:???
※
『今月○日午前○時頃、××商店街で中学生の少年一人が、何者かに殺害される事件がありました。
遺体は、額に鋭利な刃物で刺された痕があり、右腕が現場から消失していました。
警察は目撃者からの証言などを頼りに、捜査をすすめていく方針・・・』
同じ時間に違う場所で、同じ報道を見ていたAAが居た。
「・・・またか」
呟くように嘆き、眉を寄せて溜め息をつく男。
本人は自覚していないが、事件の犯人を最初に追った者であり、名前はウララーという。
ウララーは治安の悪いこの街で擬似警官を勤め、銃を握る事が許されている。
今回の件に関しては、やり方も含め被害が甚大なので、本部の方のみで捜査をしていた。
つまり、引き金を引くだけの警官、ウララーはこの事件に介入できないのだ。
しかし、今のウララーの興味と怒りは、そちらに向けたものではなかった。
ブラウン管の光が、その険しい表情を嫌らしく照らす。
※
フーに出会い、一ヶ月が経った。
その間、ウララーはこれ以上被害者を出さないようにと、化け物を追う事を決意。
しかし、この一ヶ月もの間、情報は全く手に入らなかった。
『片腕が黒い少年』の話は、ノイローゼになりそうな程あちこちで聞いた。
が、ウララーが追い求めている『化け物』の話は全く耳にしない。
まるで街全体が、化け物の事をまるまる隠蔽しているのかと疑心暗鬼になった程だ。
当の本人達なら知っているその理由も、至る所から蚊帳の外のウララーには難解な謎である。
真逆、夢でも見たんじゃないかと頬をつねっても、肩には傷、家には保護した被害者がいる。
まるで雲を掴むような捜索に、ウララーは頭を抱えていた。
と、後方から不意に自室の扉が開く音がした。
振り向くと、そこには扉にもたれ掛かったフーがいた。
「おはよ・・・」
まだ眠気が身体に残っているようで、声に力が入っていない。
「お早う」
そう言って、ウララーは座っているソファーを二回叩く。
フーはそれに反応すると、覚束ない足取りだが、確実にそこに向かう。
ソファーの前に来た所で後ろを向き、ウララーが手を握りそのまま倒れ込むように座った。
「まだ寝足りないんじゃないのか? 無理して起きなくてもいいんだぞ」
赤ん坊のように首がすわってないフーを見て、心配し声を掛けてみる。
「・・・ん」
と、生返事の直後、フーはウララーの肩に頭を置き、そのまま寝息をたてて寝てしまった。
可愛い奴だなと思いつつ、そのフサフサした肩に腕をまわす。
※
フーの眼は治らない、と医師に告げられた。
文字通り『目が潰れている』状態だったので、摘出だけしておいたとのこと。
病気や老衰以外での死が多いこの街で、しかも浮浪者を診てくれたのは本当に感謝している。
だが、本人に取ってそれは喜ばしい事だったのだろうか。
光の無い世界で生かされ、生き地獄を味わうことになってしまうというのに。
そんな悩みは、本人と会話を交える事で解消された。
最初は良くない意味で大人しかった性格も、恐らく本来のフーと思われる明るさが段々と前に出てきていった。
『光が無くなっても、まだ音と匂いが自分にはある』
助けた事への感謝の言葉の前に、フーはそう言った。
街から迫害されている者達なのに、力強く生きることを想い、願う。
ウララーは力無き被虐者に感動し、力を持った自分達を恥じた。
そして、慈悲の心は虐殺の世界では決して無駄ではない事を、再度確認した。
395
:
魔
:2007/09/09(日) 15:56:17 ID:???
※
茶の毛並みを覆う白い包帯を見て、ウララーはそんなことを思い出していた。
(音と匂いが自分にはある。・・・か)
実際、フーはその力強さを、言葉はおろか身体でも見せてくれた。
訓練せずとも一人で立ち、障害物を探らずとも避けて歩くことができたのだ。
それはフーが盲目ということを忘れさせ、大道芸のように魅入ってしまう程のもの。
『眼で見なくても、気で場所がわかる』といったマンガのような出来事だった。
流石に、指を使う細かい事や、箸やスプーンを使った食事はできなかった。
というより、箸やスプーンを扱った事がないと言った方が正しいか。
「・・・っと」
気がつけば、ニュースは既に別の内容に変わっていた。
政治やら外国との問題やら、この街にはあまり関係ないものだ。
どうせなら警察の怠慢っぷりを報道し、それに対する意識改革を狙ってほしい。
国のお偉方の粗を探るよりも、ずっと簡単だと思うのに。
「虐殺厨よりも、警察の方がまともじゃねーのにな」
ウララーは、テレビの中の政治家に向かって愚痴を零した。
「・・・んあ」
番組が終わり、時計の短針が新しい数字を指した所で、フーが起きた。
無い筈の目を、包帯の奥にある瞼をこすり、大きな欠伸を一つ。
一連の動作が終わってから、声を掛ける。
「目は覚めたか?」
「うん」
先程より返事はよくなり、勢いよく寝癖を掻いている。
「もう少ししたら、飯にするか」
※
『片腕が黒い少年』の捜査ができなくても、虐殺厨を裁く仕事に休みはない。
フーと共に朝食を摂った後、ハンドガンを片手に外へと出掛ける。
「さ、いくぞ」
「おー!」
勢いよく飛び出したフーを眺めながら、玄関を逆手で静かに閉めた。
気が重くなる仕事をやっていく中、フーの元気さには助けられる。
フーと一緒に外出するようになったのは、ほんの数日前のこと。
本来なら、盲目な者にとっては付き添いがいても外は危険だらけだ。
なるべく家の中に居させてやりたいのだが、本人が希望してきたことだ。
最初は心配だったが、手を繋いでのんびり歩くのが大半だし、万が一には銃がある。
今ではもう、ウララーが率先して誘うようにまでなっていた。
しかし、擬似警官と浮浪者という立ち位置の違いから、ちょっとした悩みが一つできていた。
「・・・なあ」
「何?」
「今日も、虐殺するのか?」
「あー、できれば・・・したい。かな」
先程の明るさより一転、沈黙が二人を包む。
会話は途絶え、歩数が増える度に気まずい空気が濃くなっていった。
だいぶ間をあけてから、ウララーは口を開く。
「いや、俺は割り切れるから別に構わないんだが」
「でも、遊びで殺すのはウララーは嫌なんでしょ?」
「・・・ああ。どっちが『悪』か、わからなくなるしな」
「警官だもんね。ウララーは」
※
被虐者を殺し、喰らって生きてきたフー。
反対に、被虐者を殺さず、裁いてきたウララー。
その価値観の違いから、このような衝突があった。
街のルールなのだから、ウララーの主張は間違いでもある。
しかし、フーは居候の身であり、あまり我が儘を言える立場でもない。
一緒にいる事が楽しくなってきた所で、別の場所で不自由さが新しく生まれてしまったのだ。
396
:
魔
:2007/09/09(日) 15:57:25 ID:???
※
「うーん・・・」
何かいい案はないかと、顎を摘んで考えるフー。
本気で問題を解決したいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
その気持ちに応えようと、自分も自分なりに考えてみた。
そして、視界にちびギコが飛び込んできた所で、閃いた。
「・・・こういうのは、どうだ」
「え?」
「『悪さをしている被虐者を俺が捕まえ、お前が虐殺する』」
「それは・・・理に適ってるかもしれないけど、都合よくそんなのいるかなぁ」
「目の前に居たから言ったまでだ」
ここで待ってろ、とフーに告げ、握っていた手を街路樹に触れさせる。
そして、足早にちびギコの所に向かった。
彼等から見て天敵である自分達は、昼夜問わず至る所にいる。
だから、普通は身を守る為に物陰に隠れて生きていた。
しかしながら今、目の前にはちびギコが我が物顔でゴミ漁りをしている。
独り言を交ぜてのそれは、どんなに思いやりのあるAAでも『馬鹿』と称してしまいそうな程だ。
「何やってる」
ウララーは近付き、重く刺のある声で質問をする。
するとちびギコは渋々と振り向き、見下した表情でこう返してきた。
「何って、ゴハンを探してるデチ」
「だからって、道路にまで散らかさなくてもいいだろうが」
「そんなの知るかデチ。第一、このチビタンにゴハンをくれないヤツが悪いんデ
チ」
「・・・」
さっそく極論、いや、屁理屈で返してきた。
被虐側が怯えて生きるこの街でこんな切り返しをするなんて、珍しいにも程がある。
恐らく、隣の街か山から降りてきた、比較的運の良い生き方をしてきたのだろう。
「それに、見てたんならなんか恵んでくれるのがお前らの・・・ヒャッ!?」
自分本位な演説が始まる前に、ホルスターから音をたてて銃を抜いてみた。
ちびギコは一瞬青ざめ、驚きの声をあげるもすぐに立ち直る。
「な、なんデチか? そんなオモチャでチビタンを脅すつもりデチか?」
「ハズレだ」
ちびギコが構えるより先に、後方にまわり込む。
そして、首筋より少し上に狙いを定め、グリップの底部で軽く殴る。
「ヒギャッ!?・・・」
と、出来の悪いドラマのようにちびギコはあっさりと気を失い、その場に倒れる。
念のため頬を二、三度叩き、意識が途切れたのを確認した。
ふと、辺りに散乱したゴミを見る。
(・・・やっぱり、片付けないと駄目だろうな)
ウララーは溜め息を零し、フーを呼んでちびギコを持たせた。
そして、ゴミ捨て場にあった箒とちり取りを使ってゴミを集める。
通り掛かったAAに『偉いねぇ』と言われたが、気にしないようにした。
※
「あぁー、なんだかワクワクしてきた!」
集め終えた時には、フーの鼻息はかなり荒くなっていた。
執拗に撫でて部位を確認し、手の中でぐるぐると回したり、逆さ吊りにもしている。
そこまでされても、まだ伸びたままのちびギコには驚かされる。
(俺、そんなに強く殴ったかなあ・・・)
そんなことを考えていたら、フーは我慢できない、といった表情でこちらに顔を
向けていた。
鼻の穴がぷくりと膨らみ、既に興奮しているのがはっきりとわかり、つい苦笑し
てしまった。
「ここじゃ目立つから、近場の公園でな」
「うん!」
やはり、裁くだの虐殺だのと悩むより、フーの笑顔を眺めるのが一番良い。
元気よく返事をしたフーを見て、ウララーはそう思った。
397
:
魔
:2007/09/09(日) 15:58:00 ID:???
※
それほど時間をかけずに、公園に来た。
虫の鳴く声しか聞こえないところから、他のAAは居ないようだ。
「もしもの事があっても、俺がいるからな」
「ありがと!」
フーはもう、ちびギコを虐殺することしか頭にない。
ウララーには、威勢の良い生返事だけをしておいた。
先ずは覚醒させる為と、開始の合図としてちびギコの耳をもいだ。
「ヒギャアアアァァァ!!?」
皮と肉が裂ける音に重なり、ちびギコの悲鳴が辺りに響く。
手の中でちぎった耳を握ってみると、少しのぬめり気と弾力があった。
久しぶりの感触と音、そして被虐者特有の獣臭さはやはり心地よい。
「チ、チビタンの耳がぁ!? お、お前何するんデチ!!」
意識が戻ったと思えば、もう喚き散らし始めた。
フーはその声と、支えている左腕に掛かる動きから、ちびギコのかたちを妄想する。
が、それなりに暴れてくるので、しっかりとイメージできない。
「おっと・・・もう! 動くなってば!」
イメージするのが面倒になり、そのまま地面に押し付け、同時にしゃがむ。
持っていた耳は投げ捨て、手探りでちびギコの暴れている部分を探す。
と、手に何かがぶつかったので、反射的にそれを掴んでもぎ取ってみる。
「ギャアアアァァァぁぁ!! ぁ、足がああぁぁぁ!!」
どこをもいだのかは、本人が丁寧に教えてくれた。
掴んだ時の手応えからして、足だと予想はしていたが。
しかし、それでもなお暴れ続けるちびギコ。
先程の耳もぎで得た恍惚感も失せ、欝陶しく思える。
「あんまり煩いと、もう片方の足もなくなるよ?」
苛立ちを乗せ、面倒ながら釘を刺してみる。
すると、ちびギコの身体がびくんと跳ねた手応えの後、小刻みに震え出した。
「ひ、酷いデチ・・・ぇぐ・・・」
涙声にもなり、やっと自分の立場を理解したようだ。
恐らく、その小ぶりな顔は涙でくしゃくしゃになっている。
見る事はできなくても、今までの虐殺の記憶と重ねてイメージすれば十分だ。
「道端で悪さをしていたヤツに言われなくないなあ」
「だっ、だって・・・お前らがチビタンに、ゴハン、くれない・・・」
「でも、ゴミ捨て場で探すのは間違いだよ?」
「じゃ・・・じゃあ、どこにあるんデチ・・・」
怯えの中に、自分の言葉に対する興味の色が見えた。
取り敢えず笑顔を見せ、心では『してやったり』と笑い、こう答えた。
「目の前にあるじゃん。ほら」
先程もいだ足を、ちびギコの眼前に持っていく。
「・・・ぉ、お前は鬼、デチか? それ、それとも、悪、悪魔デチか?」
と、ちびギコの涙声に拍車が掛かり、手に伝わる震えが酷くなる。
どうやらかなりの精神的ダメージを喰らったようで、ほんのちょっぴり罪悪感を覚えた。
だが、事実は事実である。
「大真面目だよ。俺もコレ食べて生きてきたもん」
「ふ、ふざけるなデチ・・・この、虐殺厨がぁ・・・」
お決まりの『虐殺厨』発言にも、力が全く入っていない。
まだ始めて少ししか経っておらず、しかも片耳と片足をもいだだけ。
あまりにも脆過ぎる精神に、呆れ返ってしまいそうだ。
だが、死への恐怖をしっかりと把握しているようなので、見方を変えればまだ楽しめる。
(痛め付けるより、も少しイジめてみようかな・・・)
ウララーの前でねちっこい虐殺をするのは、少し気が引けるものだ。
しかし、久しぶりに行う事ができたのだから、心から楽しまなくては意味がない
。
398
:
魔
:2007/09/09(日) 15:59:03 ID:???
「まあまあ、騙されたと思って食べてみなよ」
ちびギコを押さえ付けていた手を、小さな顎の方にまわす。
窒息しない程度に緩く掴むと、その華奢な手で力無く抵抗しているのがわかった。
「い、いやデチ・・・ヤめ、やめて・・・許して、ぇ」
ぎゃあぎゃあ喚くでもなく、虐殺に身を委ねるわけでもない。
ちょうどその間の反応は期待通りでもあり、面白くて仕方がない。
「うりゃ」
半ば強引に、もぎ取った足を顔に押し付ける。
べちゃ、と湿ったものを当てた音はしたが、手応えからして口に入ってはいない。
頬にあててしまったか、本人が口を固く閉じているかの二択だ。
「む、むぐー!! むぅぅぅ!!」
ちびギコの抵抗が酷くなる。
片方しかない足はばたばたと上下に動き、爪先が自分の身体を掠める。
これも予想していた反応だし、欝陶しさなんてものはない。
寧ろ、本気で嫌がっているという事自体が、滑稽で堪らないのだ。
(・・・できれば、そのカオも見たかったかな)
細かな表情は、流石に妄想することはできない。
脂汗をだらだらと垂らしながら、力強く目をつむっているのだろうか。
はたまた、顔面蒼白で白目を剥きかけながらの抵抗だろうか。
不意に、あの時の情景が脳裏に浮かぶ。
散乱したノーネの肉体。視界の中で揺れ動く化け物。
自分の眼が潰される直前の、光を奪った化け物の鋭い爪。
「・・・っ!」
『視覚』の事を気にしたから、あの悪夢が甦ったのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
掘り起こしてしまったトラウマを消そうと、顔を左右に強く振る。
しかし、絶対に癒えることのない心の傷は、その真っ暗な世界にしつこくこびりつき始めた。
なるだけ早くに気を紛らわす為、フーは持っていた足を投げ捨てる。
そして、ちびギコの二の腕をひっ掴み、それぞれの方向におもいっきり引っ張った。
「ぎゃあっっあああアアアぁぁぁぁァァ!!!」
筋のちぎれる音と被虐者の絶叫が、悪夢を洗い流していく。
両腕を奪われたちびギコは、水から上げられた魚を彷彿とさせる程暴れ狂う。
時折生暖かいものが腕に触れるが、それが何なのかは考えるまでもない。
「・・・ふう、っ」
心は落ち着きを取り戻し、肉の感触と血の生臭さを再確認する。
「どうした?」
と、気にかけてくれたのか、すぐ後ろでウララーの声がした。
ちびギコの絶叫をBGMにしていても、その独特の雰囲気でしっかりと聞こえた。
「えっ!? い、いや、なんでもないよ。ただコーフンし過ぎただけだから」
振り向き、咄嗟にごまかしてみたものの、動揺が完全に露になっている。
「そうか、それならならいいんだが・・・無理はするなよ」
「う、うん」
ウララーの冷徹さからくる鈍さに助けられた。
ざ、と砂を蹴る音がして、ウララーが離れたのを確認すると、虐殺を再開する。
「あっ、ああぁ!! あぎゃあァァ!!」
まだちびギコはのたうちまわっているようで、それらしき気配と声がする。
持ちっぱなしだった腕は、足と同じように近くに投げ捨てておく。
どうせ芋虫状態だし、逃げられる心配もないので、試しに放置プレイを行ってみた。
「ああ、うあぁ〜・・・痛い、痛いデチィィ」
絶叫も段々おさまり、痛みを言葉で訴えるようになってきた。
大分疲弊もしているようだし、遊べても後少しだけだろう。
試しにその芋虫の身体を触ってみると、ぬめりとざらつきが同時に掌に伝わってきた。
399
:
魔
:2007/09/09(日) 16:00:06 ID:???
「うへ・・・きったね」
反射的に手を引き、叩いてそれを落とす。
どうやら、両腕の付け根からの出血はかなりのもののようだ。
振り撒いた血で身体を濡らし、更に砂を泥にして付着させてしまっている。
それだけの量の血が失われてるとなると、失血死はすぐそこだ。
(・・・まあ、ある程度楽しんだし、もういいかな)
フーはお別れの意を込めて、瀕死のちびギコに話し掛けた。
「ねぇ、この街には『化け物』と『殺人鬼』が居るって、知ってた?」
「痛ぁ、ぁぅ・・・そんなの・・・知らない・・・」
言葉を返すだけの余裕は見えた。
笑みをうかべ、更に話す。
「俺はね、化け物の方に襲われて、こうなった」
顔に巻いた包帯を指差し、囁く。
「ぇ・・・? ぁ、メクラ・・・」
「ナカは空っぽだよ。だから、もう何も見えない」
「・・・へ、っ・・・ざまあ、デチ」
「そうだね。お前はオレより運がいい」
「・・・」
「化け物に襲わなくて、普通に虐殺されたから・・・」
「・・・」
暫く経っても、返事はなかった。
身体に触れると、既に冷えかかっている。
掌をずらし地面に持っていくと、生暖かい水たまりがあった。
ちびギコの頬らしき個所を撫でながら、フーは呟く。
「生まれ変わるなら、次は普通のAAになれよ」
被虐者でもなく、殺人鬼でもなく、浮浪者でもなく、化け物でもない。
血と肉を見ることのない世界に生まれ落ち、平和に生きてほしい。
※
(って、何言ってんだオレは)
我にも無く、被虐者を哀れんでしまった。
どんな奴に出会っても、必ず見下し、暴言を吐いてくる種族。
そんな奴らに心を許せば、不快感だけがその場に残るというのに。
化け物に襲われてから、価値観でも変わったのだろうか。
それとも、ウララーの正義感や慈しむ心に感化されたのか。
「・・・ま、いっか」
今回は違う意味でスッキリはしたし、新しい発見があったということにしておく。
天を仰いで、肺の中の空気を全て吐き出し、余韻に浸る。
どの位時間が経ったかはわからないが、恐らくそんなに長くはない。
十分に堪能した所で、タイミングよくウララーが声を掛けてきた。
「終わったか?」
「うん。ごめんね、我が儘聞いてくれて」
「それは別に構わない。フーが満足したのなら、それでいい」
「・・・へへ」
その言葉を聞いて少し恥ずかしく、くすぐったい気持ちになった。
でも、自分ばかりというのは、やはり良いものではない。
自由の利きづらい身体だけど、いつか恩返し位はしなければ。
「さて、後片付けをしないとな」
「え?」
「え、ってお前・・・こんな公園の真ん中に死体放置してたら、子供が泣くぞ?」
「ああ、成るほど。いっつもやりっぱなしだったから、つい」
「・・・そりゃあ、普通は業者がやるけどさ」
ずる、とちびギコの身体があった所で音がした。
多分、ウララーが処理の為に持ち上げた音だろう。
「水飲み場に案内するから、お前は手を洗ってこい」
「そんなに汚れてる?」
「ああ。ケチャップで悪戯したみてーに酷い」
「ケチャップって、何?」
「・・・」
400
:
魔
:2007/09/09(日) 16:01:23 ID:???
※
そんな二人のやり取りを、敷居の外から見ていたAAがいた。
彼、ギコにとって忌まわしい思い出のあるこの公園。
本人にとってはこれ程とない屈辱を受け、あまつさえ指までも奪われた場所。
景色として視界に入る度、吐き気はおろか復讐心まで燃え上がる。
しかし、今回はその公園に興味を示してしまう。
正確に言えば、公園で虐殺を行っていた二人のAAにだ。
顔に包帯を巻いた、失明していると思われるフサギコ。
それを見守る、腿に拳銃を装備している黒いモララー。
二人を使えば、自分が今追っている者に近付く事ができるかもしれない。
それが何故なのかは、本人にもわからなかった。
ただ単にその二人に惹かれ、直感で思い付いただけだった。
「・・・クク」
頭の中で、シナリオが一気に描かれていく。
その先にあるのは、メイを殺し、目の前の二人を殺した自分の姿。
『力』を使い、『全て』を支配した血塗れのギコがいた。
※
音もなく、黒いモララーに近付く。
獲物を狙う虎のように静かに、それでいて燃え盛る炎のように素早く。
地面の上を滑るように歩けば、目標の姿はもう目前だ。
「・・・ん?」
隠す気のなかった殺気のせいで気付かれたが、もう腕の届く範囲。
銃を構えてくる前に、顎に一発軽く当てにいく。
「っ!」
殆ど死角からの攻撃を、男はあっさりと受け止めた。
素早い反応に防御の正確さといい、何より自分の殺気に負けない凄み。
腕力も決して弱くなく、タカラのそれよりも強い。
(なかなか骨のある奴だな。いや、そうでないとな)
虐殺とは違う楽しさが芽吹き、笑みが零れた。
だが、当初の目的を忘れては意味が無いので、早く事を進めるようにした。
「・・・何しやがる」
「はじめまして。俺はギコっつーもんだ」
みし、と交わった腕が軋む。
澄んでいるようで、ドロドロに濁った目がこちらを睨んでいる。
嗚呼、こいつを利用する為に生け捕るのが勿体ない。
その力強い真っ黒な眼を、苦痛と慟哭で歪めてみたい。
嬲り殺してみたいが、そこは我慢しなければ。
「悪ィな、手荒な事しかできねーんだ。俺」
「目的は何だ」
「アンタ、擬似警官だろ?」
「・・・」
男は挨拶を交わした時の表情のまま、黙ってしまった。
イエスかノーか本人が言わなくても、腿にある銃で既に把握している。
沈黙を無視し、更に続けた。
「『片腕が黒い少年』っているだろ? ソイツ殺したいんだよ」
その言葉の直後、男の表情が険しくなる。
「・・・協力しろと言いたいのか? 脅迫混じりにか?」
軽蔑の念を込めた一言。
その手前には多少の怒りが見えたが、そんなものは関係ない。
先程の興味と今の怒りが重なり、『虐殺したい』とより強く念ってしまう。
落ち着け、と自分にそう言い聞かせたものの、軽蔑からくる怒りはおさまらない。
乱暴に腕を振りほどき、男の胸倉をひっ掴んだ。
「ッ!」
「見ろよ」
右手を男の顔の前に突き出し、話を続ける。
「俺はアイツに最初にやられたんだ。この公園でな」
「・・・っ」
男は欠けた人差し指を見て、眉をひそめる。
胸倉を掴まれた不快感からか、それとも失くなった指への哀れみか。
「憎いんだよ・・・アイツは指どころか俺のプライドまでズタズタにしやがった」
「・・・いつ、やられたんだ」
「明るみになる前だ。俺が最初の被害者なんだよ」
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